(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081612
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】旋回丸鋸ユニット 並びにこれを具えたボード加工盤
(51)【国際特許分類】
B27B 5/18 20060101AFI20230606BHJP
B27G 3/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B27B5/18
B27G3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195462
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190725
【氏名又は名称】シンクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 範久
(72)【発明者】
【氏名】兼高 正治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一登
(57)【要約】
【課題】 旋回丸鋸ユニットにおいて丸鋸刃を旋回させる構造をシンプルなものとして、旋回応答を瞬時に且つ正確に行わせ、装置全体としての作業効率を向上させ得る新規な旋回丸鋸ユニット並びにこれを用いたボード加工盤の開発を技術課題とする。
【解決手段】 本発明の旋回丸鋸ユニット1は、ユニットフレーム2と、旋回フレーム3と丸鋸刃本体5とを具えて成り、更にユニットフレーム2に対し旋回フレーム3を旋回駆動させる旋回駆動モータ6と、丸鋸刃本体5を駆動する丸鋸刃駆動モータ7とを具え、旋回フレーム3の旋回中心が、旋回駆動モータ6の出力中心と合致する構成であり、且つ丸鋸刃本体5の回転中心が、丸鋸刃駆動モータ7の出力中心と合致する構成であることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットフレームと、このユニットフレームに旋回自在に設けられる旋回フレームと、この旋回フレームに設けられる丸鋸刃本体とを具えた旋回丸鋸ユニットであって、
この旋回丸鋸ユニットは、旋回フレームを旋回駆動する旋回駆動モータと、前記丸鋸刃本体を駆動する丸鋸刃駆動モータとを具え、
前記旋回フレームの旋回中心が、旋回駆動モータの出力中心と合致する構成であり、且つ丸鋸刃本体の回転中心が、丸鋸刃駆動モータの出力中心と合致する構成であることを特徴とする旋回丸鋸ユニット。
【請求項2】
前記旋回駆動モータは、トルクモータを適用するものであり、ステータをユニットフレームに配し、ロータを旋回フレームの旋回軸に設ける構成であることを特徴とする請求項1記載の旋回丸鋸ユニット。
【請求項3】
前記旋回フレームの旋回中心は、旋回フレームと丸鋸刃本体と丸鋸刃駆動モータとを含む部材の重心位置に対し、許容合致状態に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の旋回丸鋸ユニット。
【請求項4】
前記丸鋸刃本体は、集塵カバーを具えるものであり、
この集塵カバーは、その上方に配置された円環状の集塵ダクトと連通し、且つこの円環状の集塵ダクトの内側空間に、前記旋回駆動モータが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の旋回丸鋸ユニット。
【請求項5】
テーブル上に載置したワークに対し、旋回丸鋸ユニットを作用させて目的とする切り出し加工を行うボード加工盤であって、
このボード加工盤は、平面視矩形状のワークテーブルと、このワークテーブルを幅方向に跨ぐように設けられ、ワークテーブルの長手方向に沿って移動自在の走行フレーム、と、この走行フレームの幅方向と上下方向とに可動状態に支持される旋回丸鋸ユニットとを具えて成り、
この旋回丸鋸ユニットとして、請求項1から4のいずれか1項記載の旋回丸鋸ユニットが適用されることを特徴とする旋回丸鋸ユニットを具えたボード加工盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板等のボード材から、目的とする加工形状の資材を切り出す場合に適切な旋回丸鋸ユニット並びにこれを具えたボード加工盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合板や化粧ボード等は、例えばいわゆる3×6板(サブロクバン)と称される幅約90cm・長さ約180cmの定形板材として供給され、各施工場所において求められる仕様に応じて、鋸盤やルーター等によりカット加工等して利用されている(例えば特許文献1・2参照)。
具体的には建造物の施工にあたっては、コンパネ等と略称される定形の合板から、目的形状の型枠板を切り出して得、これらを組み合わせて所望のコンクリート型枠を構成することが行われている。このような合板の切り出しは、近時現場での加工ではなく、設計仕様に応じて、工場で予め切り出して用意する傾向にある。もちろん、このような型枠用のボードに限らず、化粧合板等にあっても予めこれを設置する場所に応じた切出加工が求められている。
そして、このような切出加工にあたっては、切断線の方向を自在に設定できる旋回丸鋸ユニットが好適な加工機材として用いられている。
【0003】
しかしながら、切断作用を直接担う丸鋸刃に関し、これを旋回させて向きを変える現状の機構は、駆動源たる旋回駆動モータと、これを減速して旋回フレームを駆動する減速機構系の中継部材とを必要とする構成となっている。このため丸鋸刃の旋回等、作業手段の切り換えを含むタクトタイムの短縮化が充分達成できておらず、加工効率の向上についても一定の限界があった。
特に、例えばコンクリート階段等を施工する際に用いる型枠材などを得るにあっては、頻繁に鋸刃の向きを変えてボードを階段状に連続的に切り出して行く必要があり、このような加工を行う場合には、前記不都合が顕著に現われる。
加えて、動力の伝動系が複雑になると、歯車等のバックラッシュも相乗的に大きくなり、正確な鋸刃の角度設定が得にくい、つまり切り込み方向の切換変更が行い難いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-155801号公報
【特許文献2】特開平6-23703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、特に丸鋸刃を旋回させる構造をシンプルなものとして、旋回応答を瞬時に且つ正確に行わせ、装置全体としての作業効率を向上させることができる新規な旋回丸鋸ユニット並びにこれを用いたボード加工盤を開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず請求項1記載の旋回丸鋸ユニットは、
ユニットフレームと、このユニットフレームに旋回自在に設けられる旋回フレームと、この旋回フレームに設けられる丸鋸刃本体とを具えた旋回丸鋸ユニットであって、
この旋回丸鋸ユニットは、旋回フレームを旋回駆動する旋回駆動モータと、前記丸鋸刃本体を駆動する丸鋸刃駆動モータとを具え、
前記旋回フレームの旋回中心が、旋回駆動モータの出力中心と合致する構成であり、且つ丸鋸刃本体の回転中心が、丸鋸刃駆動モータの出力中心と合致する構成であることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の旋回丸鋸ユニットは、前記請求項1記載の要件に加え、
前記旋回駆動モータは、トルクモータを適用するものであり、ステータをユニットフレームに配し、ロータを旋回フレームの旋回軸に設ける構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載の旋回丸鋸ユニットは、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記旋回フレームの旋回中心は、旋回フレームと丸鋸刃本体と丸鋸刃駆動モータとを含む部材の重心位置に対し、許容合致状態に設定されていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載の旋回丸鋸ユニットは、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記丸鋸刃本体は、集塵カバーを具えるものであり、
この集塵カバーは、その上方に配置された円環状の集塵ダクトと連通し、且つこの円環状の集塵ダクトの内側空間に、前記旋回駆動モータが配置されていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載のボード加工盤は、
テーブル上に載置したワークに対し、旋回丸鋸ユニットを作用させて目的とする切り出し加工を行うボード加工盤であって、
このボード加工盤は、平面視矩形状のワークテーブルと、このワークテーブルを幅方向に跨ぐように設けられ、ワークテーブルの長手方向に沿って移動自在の走行フレーム、と、この走行フレームの幅方向と上下方向とに可動状態に支持される旋回丸鋸ユニットとを具えて成り、
この旋回丸鋸ユニットとして、請求項1から4のいずれか1項記載の旋回丸鋸ユニットが適用されることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、旋回フレームの旋回中心が旋回駆動モータの出力中心と合致し、且つ丸鋸刃本体の回転中心が丸鋸刃駆動モータの出力中心と合致するように構成されるため、これらの伝達系に減速機構などの中継部材を設けずに済み、例えば丸鋸盤の切込方向を変更する旋回作業を短時間で行うことができる。また、これら動力の伝達系をシンプルに構成することができ、中継部材として歯車等を用いた場合のバックラッシュが解消でき、丸鋸刃の切込方向変更(角度設定)を、より正確に且つ円滑に行うことができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、旋回駆動モータの具体的構成を現実のものとする。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、旋回フレームの旋回中心は、旋回フレームと丸鋸刃本体と丸鋸刃駆動モータとを含む部材(丸鋸盤)の重心位置に対し、許容合致状態に設定されるため(ほぼ合致するように設定されるため)、丸鋸盤を円滑に且つ安定して旋回させることができ、旋回開始から停止といった一連の動作における慣性を極力抑え、上記旋回作業(切換作業)をより短時間で行うことができる。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、円環状の集塵ダクトの内側空間に、旋回駆動モータが配置されるため、旋回駆動モータを旋回丸鋸ユニット内にコンパクトに収めることができ、旋回丸鋸ユニットをよりシンプルに構成することができる。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか1項記載の旋回丸鋸ユニットを適用するため、例えばコンクリート階段等を施工する際に用いる型枠材を一枚のボード材から切り出す場合、頻繁に丸鋸刃の向きを変えて階段状に連続して切り出しを行う必要があるが、このような作業を円滑に且つ安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の旋回丸鋸ユニットを具えたボード加工盤を示す斜視図(a)、並びに本図(a)におけるA方向から視た骨格的説明図(b)である。
【
図2】旋回丸鋸ユニットを異なる方向から視た二種の斜視図(a)・(b)である。
【
図3】旋回丸鋸ユニットを縦断面状態で示す斜視図である。
【
図4】旋回丸鋸ユニットを示す側面図(a)、並びに正面図(b)、並びに本図(b)におけるB方向から視た下面図(c)である。
【
図5】旋回丸鋸ユニットの分解斜視図(a)、並びに旋回ストッパの作用状態を示す二種の平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0018】
以下、本発明の旋回丸鋸ユニット1、並びにこれを具えたボード加工盤100について具体的に説明する。
まず旋回丸鋸ユニット1は、適宜のボード加工機等に搭載し得るものであって、一例として
図1に示すように、ボード加工盤100に取り付け、ワークWに対し適宜の切込角度を切換選択して、所望の切り込み加工を行うものである。ここで
図1中の符号W1は、ワークWから所望形状に切り出された材を示しており、例えばここでは切り込み方向が適宜ジグザグ状に切り換えられ、階段状の材(切り出した材W1)が得られる様子を図示している。
【0019】
以下、旋回丸鋸ユニット1について説明する。
旋回丸鋸ユニット1は、一例として
図3に示すように、ユニットフレーム2と、このユニットフレーム2に旋回自在に設けられる旋回フレーム3とを具えて成り、この旋回フレーム3に対し、丸鋸刃本体5と丸鋸刃駆動モータ7とを具えて成る丸鋸盤Mを支持させる。
ユニットフレーム2は、旋回フレーム3を適宜の角度、往復旋回させる旋回駆動モータ6を具える。また旋回丸鋸ユニット1は、旋回フレーム3の旋回中心が、旋回駆動モータ6の出力中心と合致するように構成され、且つ回転部材である丸鋸刃本体5の回転中心が、丸鋸刃駆動モータ7の出力中心と合致するように構成されており、これが本発明の大きな特徴の一つである。
【0020】
以下、旋回丸鋸ユニット1を構成する各部材について詳しく説明する。
まずユニットフレーム2は、ユニットベース21を主要部材とし、このものは例えば上記
図3に示すように、強度部材として側面断面視で横T字状を構成する金属部材であり、天面パネルとなる保護カバー27を装着した状態で視ると、一例として
図2・
図5に示すように、側面視横L字状を成し、平面視では矩形状の形状を呈する。
そして当該ユニットベース21の平板状部分である駆動マウント部22において、以下述べる種々の駆動系等の固定部材を支持するとともに、駆動マウント部22の端部には、このものと直交するほぼ垂直の昇降マウント部23が一体に形成されている。
この昇降マウント部23は、後述するボード加工盤100に取り付けるための副昇降リニアベアリング24を具えている。
更にユニットフレーム2は、駆動マウント部22の下方に集塵ダクト26を吊り下げ状態に具えて成り、この集塵ダクト26は、縦断面視で矩形状を呈し、全体的に円環状を成すように形成されている。また駆動マウント部22の上方には、上述したように保護カバー27が設けられている。
【0021】
このようなユニットフレーム2に対し、他のフレーム部材として、上述した旋回フレーム3が設けられる。この旋回フレーム3は、旋回軸31が、前記固定フレームとなるユニットベース21に対し、旋回できるように構成されたものであり、旋回軸31の中心を中空状としてケーブル案内孔31aを設ける。因みに、このケーブル案内孔31aは、丸鋸刃駆動モータ7への給電配線を通すためのものである。
また旋回軸31は、具体的にはラジアルベアリング321及びスペーサーカラー322を介して回動自在に固定側、すなわちユニットフレーム2側の部材に吊り下げ状態に取り付けられ、その下端には旋回駆動モータ6のロータ62に固定されるフランジ33を具える。このフランジ33は、その下面に吊持ブラケット34を固定するものであり、この吊持ブラケット34を介して前記丸鋸盤Mつまり丸鋸刃本体5と丸鋸刃駆動モータ7とを吊持状態に支持する。
【0022】
次に、丸鋸刃本体5について説明する。このものは適宜の直径寸法を有する丸鋸刃であって、この丸鋸刃本体5の周囲(上部を覆う周囲)に、更に集塵カバー51を具える。この集塵カバー51は、一例として
図2(a)に示すように、その一部から切粉排出ダクト52を斜め上方に向かうように延長形成して成る。また切粉排出ダクト52は、一例として
図3に示すように、上端に円環状の旋回カバー53を具えるものであり、この旋回カバー53は、前記ユニットフレーム2側に固定状態に取り付けられている集塵ダクト26の底部及び内面板を実質的に構成している。これにより丸鋸刃本体5の周辺、つまり集塵カバー51内と集塵ダクト26とは、切粉排出ダクト52によって連通するように構成され、丸鋸刃本体5による切り込みに伴って生じるワークWの切削粉は、集塵カバー51内から切粉排出ダクト52を経由して集塵ダクト26に吸引され、最終的には集塵ダクト26に接続された集塵ホース26aから外部に排出される(
図2参照)。
【0023】
また、集塵ダクト26は、ユニットフレーム2に固定される一方、前記旋回カバー53が丸鋸刃本体5の旋回に伴い旋回できるように構成され、結果的に集塵ダクト26内部は、丸鋸刃本体5の旋回に関わらず、密閉状態に保持される。より詳細に説明すると、例えば
図5・
図3に示すように、集塵ダクト26は、ダクト矩形断面を形成する外側板と天面板とが一体に形成され、縦断面視でL字状を成すダクト外環部を構成する。一方、旋回カバー53は、ダクト矩形断面を形成する内側板と底面板とが一体に形成され、縦断面視でL字状を成すダクト内環部を構成する。そして、これら両部材を内外に組み合わせることにより、内部を空洞状とする円環状の集塵ダクト26を立体的に構成するものであり、集塵ダクト26と旋回カバー53との接続部は、上下両面ともに外方からシールフラップ261・531で密閉するように構成される。このような構成によって、集塵ダクト26は、旋回カバー53が旋回(回動)しても、集塵ダクト26内の気密状態が維持される構造となっている。
また集塵ダクト26が、円環状に形成されることから、この円環状の内側空間を利用して、前記旋回駆動モータ6が配置される。もちろん、このような構成は、旋回駆動モータ6のコンパクトな収容に寄与するものであり、ひいては旋回丸鋸ユニット1全体を、よりシンプルに構成し得るものである。
【0024】
次に、このような部材の駆動系統について説明する。
まず旋回駆動モータ6としては、トルクモータを適用するものであり、一例として
図3に示すように、ステータ61とロータ62とが上下に重ね合わせ状態に配設されている。このうちステータ61は、前記ユニットフレーム2におけるユニットベース21に固定され、一方、ロータ62は、前記旋回フレーム3における旋回軸31のフランジ33と固定され、ロータ62が旋回フレーム3の駆動源のモータとなっている。その結果、ロータ62の回転中心は、前記旋回フレーム3の回転中心と合致する構成となっている。
【0025】
次に、丸鋸刃駆動モータ7について説明する。このものは一般的なブラシレスモータ等を用いるものであり、本体ケーシング71に対し、前記吊持ブラケット34が固定されるとともに、モータの出力軸72が丸鋸刃本体5に接続され、丸鋸刃の回転を図るものである。これにより丸鋸刃駆動モータ7の出力軸72の中心と、丸鋸刃本体5の中心とが合致する構成となっている。因みに丸鋸刃本体5・丸鋸刃駆動モータ7・旋回フレーム3の一体部材(丸鋸盤M)としての重心位置は、旋回軸31の旋回中心とほぼ合致することが好ましく、これは丸鋸盤Mの旋回をより安定的に行うためであり、また旋回開始から旋回停止までの一連の旋回動作を円滑に且つ短時間で行うための構成である。
ただし、現実的には旋回フレーム3の旋回中心を、前記重心位置と完全に合致させることは難しいため、実際には、丸鋸盤Mの一連の旋回動作がスムーズに行え、支障が生じない範囲であれば、上記旋回フレーム3の旋回中心と前記重心位置とは幾らかのズレが許容されるものであり、この意味で特許請求の範囲では「許容合致状態」と称している。
【0026】
また旋回軸31は、その上端においてブレーキユニット8を具え、このブレーキユニット8は、非回転でありながら軸方向に摺動自在に構成されるブレーキステータ81と、旋回軸31とともに回転するブレーキロータ82とを具えて成り、例えばボード(ワークW)の切り込みを行っている場合などには、ブレーキステータ81を軸方向に摺動させて、旋回軸31と共回りするブレーキロータ82に密着状態に押し付けることにより、旋回軸31を回転させないようにするものである(ブレーキ作動時)。
一方、丸鋸盤Mの切り込み方向を変更するような場合には、ブレーキステータ81をブレーキロータ82から離反させ、旋回軸31を回転できる状態にするものである。なおブレーキロータ82からは、例えば歯付きベルト等のタイミング設定できる伝動ベルトを介してエンコーダ(図示省略)が駆動される。これによりプログラム指令に従って旋回軸31の作動状況が制御され、例えば旋回・停止あるいは逆旋回等がコントロールされる。
【0027】
次に旋回ストッパ9について説明する。このものは、旋回軸31が時計回りまたは反時計回りに最大限回転(旋回)した際に、それ以上の旋回を阻止するためのものであり、一例として
図5に示すように、駆動マウント部22にボルト等によって固定状態に立設されるストッパー軸91と、旋回軸31とともに回転(旋回)するストッパーロータ92とを具えて成る。
ストッパーロータ92は、当接部932を有するロータ本体93と、ロータ本体93の上下に設けられるカバー体94とベース体95とを具えて成り、ベース体95が旋回軸31とネジ止めなどによって固定され、一体となって回転(旋回)するように構成される。
【0028】
またロータ本体93は、概ね円板状の本体部931を具え、この本体部931の外周側に突出する張出部が前記当接部932となり、本体部931と一体に形成される。そして、旋回軸31が時計回りまたは反時計回りに最大限回転(旋回)した際、この当接部932の側面を、ストッパー軸91の側部に当接させることにより、旋回軸31をそれ以上回転させないものである。
ここで
図5(b)は、ベース体95つまり旋回軸31が時計回り・反時計回りに最大限回転(旋回)した様子を示している。本図では、鋸軸(旋回軸31)が旋回角0°のとき、当接部932の一側面を、ストッパー軸91の側部(ここでは下側)に当接させて、旋回軸31がそれ以上旋回しないようにしている(平面視、反時計回りの回転を阻止している)。
【0029】
一方、鋸軸(旋回軸31)が旋回角360°のとき、当接部932の反対側の側面を、ストッパー軸91の反対側の側部(ここでは上側)に当接させて、旋回軸31がそれ以上旋回しないようにしている(平面視、時計回りの回転を阻止している)。
なお、このようなストッパー軸91と当接部932との当接によって、それ以上の回転を阻止する構造は、そのままでは旋回軸31の外形寸法及び当接部932の幅寸法が存在することから、旋回軸31の回転角が厳密には360°未満となる(これを回転未達成域とする)。そのため本実施例では、ロータ本体93に、溝状の角度補充部933を形成しておき、これにより旋回軸31と共回りするベース体95を、ロータ本体93に対し余計に回転できるようにしておき、上記回転未達成域を補うようにしている。このような構成により、旋回軸31(ベース体95)が360°回転できる構成となっている。
因みに、旋回軸31の回転角度は、理論的には旋回駆動モータ6の回転次第で、言わば制限なく設定できるものであるが、本実施例では実用上、充分な角度として、上述したように360°に回転角度を設定したものであり、そのための旋回ストッパ9である。
【0030】
本発明の旋回丸鋸ユニット1は、以上述べたような構成を具えるものであり、この旋回丸鋸ユニット1は、例えばボード加工盤100の走行フレーム120に対して取り付けられ、一例として
図1に示すような、旋回丸鋸ユニット1を具えたボード加工盤100(以下、単にボード加工盤100と称する)が構成される。以下、このようなボード加工盤100について説明する。
まず図中符号110はワークテーブルであって、このものは支台フレーム111の側面に側面ガイドレール112を長手方向に設けるとともに、前記ワークテーブル110の上面にサクションノズル113を多数設ける。またワークテーブル110の周囲四辺には、複数の当て定規114を上方に突出するように配設する。このような構成により、ワークテーブル110に支持したワークWは吸引保持され、且つ当て定規114によって正確な位置決めが成された状態で載置される。
【0031】
そして、このワークテーブル110を跨ぐように、一例としてガントリータイプの走行フレーム120が設けられる。もちろん走行フレーム120自体は、必ずしもこのような門形に形成される必要はなく、ワークテーブル110の幅が狭いような場合には、いわゆる片持ち状態に構成しても差し支えない。
【0032】
走行フレーム120は、両側の脚部フレーム121上に架け渡されるように上枠フレーム122を具え、両方の脚部フレーム121の内側にはリニアベアリング123を設けている。このリニアベアリング123は、前記ワークテーブル110の支台フレーム111の側面ガイドレール112を案内として滑走し、走行フレーム120がワークテーブル110上を円滑に且つ安定して走行できるように構成されている。
【0033】
また走行フレーム120の上枠フレーム122には横行レール124が設けられ、この横行レール124を支持部材として横行ベース130が設けられる。すなわち横行ベース130は、横行リニアベアリング131を前記横行レール124に対応する位置に設け、上枠フレーム122の幅方向に沿って移動できるように構成されている。この横行ベース130の前面板たるサポート板132には別途主昇降レール133が設けられる。この主昇降レール133に対して、その上方に主昇降シフトモータ134が設けられるとともに更に前記横行ベース130を横行移動させるためのボールネジである横行スクリューシャフト及び横行駆動モータ(いずれも図示省略)が搭載される。
【0034】
また横行ベース130に対しては主昇降レール133を支持部材とする昇降ベース140が設けられる。この昇降ベース140は、主昇降リニアベアリング141が主昇降レール133に対し、噛み合い状態に取り付けられる。そして昇降ベース140は、主昇降シフトモータ134に駆動されるスクリューシャフト135により昇降駆動される。
また、当該昇降ベース140には、副昇降レール142が設けられるとともに副昇降シフトモータ143が設けられ、その出力軸に接続されたスクリューシャフト144が、前記旋回丸鋸ユニット1に設けられたメネジブロック25に螺合し、旋回丸鋸ユニット1の昇降シフトを担う。
【0035】
なお、このような構成から理解できるように、ボード加工盤100の走行フレーム120に設けられる旋回丸鋸ユニット1は、全体として昇降ベース140に支持された状態で大きなストロークで上下移動できるように構成される(これを「主昇降」とする)。その一方で旋回丸鋸ユニット1は、昇降ベース140に設けられた副昇降シフトモータ143の駆動により昇降ベース140の昇降ストロークより、はるかに小さい寸法の昇降ストロークで昇降動できるように構成されている(これを「副昇降」とし、一例として100mm程度の上下ストロークである)。
因みに、旋回丸鋸ユニット1をダブルで昇降動自在としたのは、例えば
図1に示すように、ボード加工盤100には、旋回丸鋸ユニット1の他にルーターユニット150を併設することが多く、このルーターユニット150を作動させる際には、旋回丸鋸ユニット1をわずかにワークWから浮き上がらせて、ルーター加工に支障が生じないようにしておくためである。同様に詳細な図示は省略するが、ルーターユニット150も旋回丸鋸ユニット1が作動しているときには、ルーターユニット150がワークWに作用しないようにわずかに上昇させておく構成を具える。
【0036】
本発明は以上述べたような構成を有するものであり、以下その作動態様について説明する。
(1)ワークの設定・ボード加工盤の準備作業
まず加工対象となるボード状のワークWをワークテーブル110上の適宜の位置に載置する。この際、ワークWは、当て定規114により基準位置に設定されるとともに、サクションノズル113によりワークテーブル110上に確実に固定される。
一方、ボード加工盤100の準備作業としては、適宜、CADデータ等によりワークWをカットして得る製品に対応した切り込み線等の指示データを入力する。このような入力指示があった後、適宜の始動信号を送ると、走行フレーム120及び横行ベース130が所望位置に稼動し、切り込み作業の開始位置に丸鋸刃本体5が位置するようにXY座標値で特定される始発点を設定する。もちろん、この際、丸鋸刃本体5は、ワークWの上方で位置(待機)するように設定される。
【0037】
(2)旋回丸鋸ユニットの旋回開始
次いで、旋回丸鋸ユニット1は、適宜設定された切り込み方向(角度)に丸鋸刃本体5を向ける。この動作は、旋回駆動モータ6の駆動により成されるものであり、指令信号に従ってロータ62が旋回し、このものに一体に取り付けられた旋回軸31が適宜旋回して、丸鋸刃本体5を指定された切り込み方向に設定する。
このとき本発明では、旋回駆動モータ6の出力側であるロータ62に取り付けられた旋回軸31が実質的な出力軸であるが、ロータ62と直結されているため旋回軸31はロータ62の旋回に従った動きを、確実且つ迅速に設定することができる。
【0038】
因みに、旋回軸31と、その駆動源たる旋回駆動モータ6との間に、何段階かの駆動伝達機構を介在させた場合には、それらの駆動伝達機構の間にバックラッシュ等が生じる。そのため、このような場合には丸鋸刃本体5の設定角度が必ずしも正確に成されず、且つ切換作動に要する時間も本発明のようなダイレクトドライブに比べれば、はるかに長い時間を要する。
なお、旋回丸鋸ユニット1を旋回させる際、旋回開始時には当然ながらブレーキユニット8は作動させないが、ワークWの切り込みを行っている間、つまり丸鋸盤Mへの給電中は、ブレーキユニット8を作動させ、丸鋸盤Mが旋回しないようにしている。
また、このブレーキユニット8についてもブレーキロータ82は、前記旋回軸31に直結されており、そのブレーキ作動も極めて正確に成される。更に、このような旋回状態等を検出するエンコーダは、前記ブレーキユニット8のブレーキロータ82の回転を検出して正確に位置を把握するため、旋回軸31を正確に位置決めすることができる。
【0039】
(3)切り込み開始
このようにして丸鋸刃本体5を始発の切り込み位置に設定した後、前記ユニットフレーム2が、ボード加工盤100における昇降ベース140のスクリューシャフト144の回転により下降して、回転する丸鋸刃本体5がワークWの切り込みを行う。この切り込みにあたっては、当然ワークWたるボードからの切削粉、いわゆる切粉が生ずるが、この切粉は、集塵カバー51により周囲に飛散しない状態で、且つ集塵ダクト26とそれに接続された集塵ホース26aからの吸引によって排出され、作業環境の悪化を防いでいる。また、このとき集塵ダクト26と、丸鋸刃本体5側の旋回カバー53との関係について述べると、旋回カバー53は前記円環状の集塵ダクト26の下面及び内側面を実質的に形成しており、固定された集塵ダクト26に対して旋回カバー53が、丸鋸盤Mの旋回に従って、回転することが許容されている。
【0040】
(4)切り込み方向の切り換え
このようにして丸鋸刃本体5による最初の切り込み作業、つまり最初の一直線上の切り込みが成された後、更に切り込み方向を変更した切り込み作業を行う場合には、一旦、丸鋸盤M(丸鋸刃本体5)をワークWから上昇させる。この操作は、昇降ベース140の副昇降シフトモータ143を駆動させ、スクリューシャフト144の回転によりユニットベース21ごと上昇させ、丸鋸刃本体5の作用位置(切り込み位置)をワークWから引き上げるようにする。そして再度プログラムに従い、旋回駆動モータ6を駆動して予め設定された方向にロータ62を回転(旋回)させ、回転終了時に前記ブレーキユニット8により確実な停止を図り、ワークWに対する旋回駆動モータ6の切り込み位置を設定する(切り込み姿勢の固定を図る)。また、このような切り込み方向の変更に伴い、前記走行フレーム120と横行ベース130とを適宜相互に移動させ、丸鋸盤Mを所望のXY方向に移動させる。このようにして、丸鋸盤Mを、次の切り込み位置と切り込み方向に設定したら、丸鋸盤Mを下降させ、丸鋸刃本体5によるワークWの切り込み(次の切り込み)を行う。
以下、このような操作を適宜、繰り返し行うことにより、予め設定されたプログラムに従ったワークWの切断加工が行え、例えば
図1に示すような階段状の型枠材等、ワークWから所望の形状に切り出した材W1が得られるものである。