(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081614
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】半導体装置及び制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20230606BHJP
H04L 25/49 20060101ALI20230606BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
H04L25/49 H
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195466
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】帰山 隼一
【テーマコード(参考)】
5H740
5K029
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK03
5K029GG03
5K029JJ03
(57)【要約】
【課題】パワートランジスタを駆動するための回路の面積を大幅に縮小することが可能となる半導体装置を提供すること。
【解決手段】ガルバニックアイソレータと、ガルバニックアイソレータを介して送信信号を送信する送信回路と、ガルバニックアイソレータを介して送信信号に対応する受信信号を受信する受信回路と、2つの入力信号を符号化し、送信信号を生成する符号化回路と、受信信号から、2つの入力信号を復号する復号回路と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバニックアイソレータと、
前記ガルバニックアイソレータを介して送信信号を送信する送信回路と、
前記ガルバニックアイソレータを介して前記送信信号に対応する受信信号を受信する受信回路と、
2つの入力信号を符号化し、前記送信信号を生成する符号化回路と、
前記受信信号から、前記2つの入力信号を復号する復号回路と、を有する半導体装置。
【請求項2】
前記2つの入力信号は、それぞれの値の組み合わせにより複数の状態を有し、
前記符号化回路は、前記複数の状態に基づいて前記送信信号を生成し、
前記復号回路は、前記受信信号が示す前記複数の状態に基づいて前記2つの入力信号を復号する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記符号化回路は、前記複数の状態を、パルスの数、パルスの周波数、パルスの振幅、異なるパルスの組み合わせのうちの少なくとも1つで表す、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記符号化回路は、前記2つの入力信号の状態が変化したときと、状態が変化してから所定時間状態に変化がないときに、前記複数の状態に基づいて前記送信信号を生成する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記2つの入力信号は、それぞれの値の組み合わせにより複数の状態を有し、
前記符号化回路は、前記複数の状態の状態遷移に基づいて前記送信信号を生成し、
前記復号回路は、前記受信信号が示す前記複数の状態の状態遷移に基づいて前記2つの入力信号を復号する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記複数の状態は、第1の状態、第2の状態、第3の状態を含み、
前記符号化回路は、前記第1の状態乃至前記第3の状態の状態遷移に基づいて、インクリメント信号とデクリメント信号を前記送信信号として生成し、
前記インクリメント信号は、前記第1の状態から前記第2の状態への状態遷移と前記第2の状態から前記第3の状態への状態遷移のいずれかを示し、
前記デクリメント信号は、前記第3の状態から前記第2の状態への状態遷移と前記第2の状態から前記第1の状態への状態遷移のいずれかを示す、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記インクリメント信号は、前記ガルバニックアイソレータに第1の方向の電流を流れさせる信号であり、
前記デクリメント信号は、前記ガルバニックアイソレータに第2の方向の電流を流れさせる信号である、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記符号化回路は、前記2つの入力信号が前記第1の状態へ遷移するときは、前記デクリメント信号を二重化し、前記2つの入力信号が前記第3の状態へ遷移するときは、前記インクリメント信号を二重化し、
前記復号回路は、前記二重化されたインクリメント信号と前記二重化されたデクリメント信号により、前記2つの入力信号の状態を検知する、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記符号化回路は、前記第1の状態へ遷移してから所定時間状態遷移がないとき、前記二重化されたデクリメント信号を生成し、前記第3の状態へ遷移してから所定時間状態遷移がないとき、前記二重化されたインクリメント信号を生成する、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記符号化回路は、前記第1の状態へ遷移してから所定時間状態遷移がないとき、前記デクリメント信号を生成し、前記第3の状態へ遷移してから所定時間状態遷移がないとき、前記インクリメント信号を生成する、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記符号化回路は、前記第2の状態へ遷移してから所定時間状態遷移がないとき、前記インクリメント信号と前記デクリメント信号のいずれかを生成し、
前記復号回路は、前記第2の状態へ遷移後、前記インクリメント信号と前記デクリメント信号のいずれかを受信した場合は、前記2つの入力信号が前記第2の状態を維持していると判断する、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記2つの入力信号は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されるハイサイドスイッチ用のPWM信号と、PWM制御されるローサイドスイッチ用のPWM信号である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記符号化回路は、前記2つの入力信号に禁止されている状態を検出した場合は、予め決められた処理を行う、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記復号回路は、前記受信信号に異常状態を検出した場合は、予め決められた処理を行う、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
負荷を駆動するためのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチと、
前記ハイサイドスイッチを制御するための第1のPWM信号と、前記ローサイドスイッチを制御するための第2のPWM信号を出力するコントローラと、
前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号に基づいて、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチを駆動するゲートドライバと、を有し、
前記ゲートドライバは、
ガルバニックアイソレータと、
前記ガルバニックアイソレータを介して送信信号を送信する送信回路と、
前記ガルバニックアイソレータを介して前記送信信号に対応する受信信号を受信する受信回路と、
前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号を符号化し、前記送信信号を生成する符号化回路と、
前記受信信号から、前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号を復号する復号回路と、
前記復号された第1のPWM信号に基づいて、前記ハイサイドスイッチを駆動する第1のドライバ回路と、
前記復号された第2のPWM信号に基づいて、前記ローサイドスイッチを駆動する第2のドライバ回路と、を有する、
制御システム。
【請求項16】
前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号は、それぞれの値の組み合わせにより複数の状態を有し、
前記符号化回路は、前記複数の状態に基づいて前記送信信号を生成し、
前記復号回路は、前記受信信号が示す前記複数の状態に基づいて前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号を復号する、
請求項15に記載の制御システム。
【請求項17】
前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号は、それぞれの値の組み合わせにより複数の状態を有し、
前記符号化回路は、前記複数の状態の状態遷移に基づいて前記送信信号を生成し、
前記復号回路は、前記受信信号が示す前記複数の状態の状態遷移に基づいて前記第1のPWM信号と前記第2のPWM信号を復号する、
請求項15に記載の制御システム。
【請求項18】
前記複数の状態は、第1の状態、第2の状態、第3の状態を含み、
前記符号化回路は、前記第1の状態乃至前記第3の状態の状態遷移に基づいて、インクリメント信号とデクリメント信号を前記送信信号として生成し、
前記インクリメント信号は、前記第1の状態から前記第2の状態への状態遷移と前記第2の状態から前記第3の状態への状態遷移のいずれかを示し、
前記デクリメント信号は、前記第3の状態から前記第2の状態への状態遷移と前記第2の状態から前記第1の状態への状態遷移のいずれかを示す、
請求項17に記載の制御システム。
【請求項19】
前記インクリメント信号は、前記ガルバニックアイソレータに第1の方向の電流を流れさせる信号であり、
前記デクリメント信号は、前記ガルバニックアイソレータに第2の方向の電流を流れさせる信号である、
請求項18に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニックアイソレータを用いた半導体装置及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、電力変換装置、照明装置など、高電圧で動作する装置では、パワートランジスタ(パワーMOSFETやIGBT)が使用される。一方、パワートランジスタを制御するMCU(Micro Controller Unit)は、低電圧で動作する。このようなパワートランジスタとMCU間の通信には、コンデンサやトランスフォーマ等のガルバニックアイソレータ(以下、アイソレータと呼ぶ)が使用される。
【0003】
近年、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の普及に伴い、アイソレータを用いたシステムの小型化が要求されるようになってきている。
【0004】
特許文献1には、トランスフォーマを半導体チップ上に形成するオンチップトランスフォーマに関する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、オンチップトランスフォーマ及びオンチップコンデンサを小型化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5504903号公報
【特許文献2】特許第5375952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モータや照明装置等の負荷の制御(回転数や明るさの制御)には、PWM(Pulse Width Modulation)信号による制御が広く使われている。例えば、3相(U、V、W相)モータをPWMで制御する場合、6個(U、V、W、U-bar、V-bar、W-bar)のパワートランジスタが必要となる(特許文献2の
図21、22参照)。この場合、アイソレータも6個必要となる。1つのトランスフォーマで、直径300~400μm(またはこの2倍)のチップ面積が占有される。更にトランスフォーマ周辺の数100μmには、他の回路は配置できない。アイソレータの数が増えると、アイソレータを搭載する半導体チップの小型化が困難になる。
【0008】
特許文献2には、ローサイド側(U-bar、V-bar、W-bar)の信号をMUX、DEMUXすることで、アイソレータの数を減らす技術が開示されている(特許文献2の
図25)。しかしながら、複数ビットの信号がまとめて送受信されるため、通信遅延を招く。また、複数ビットの信号の送受信中に入力信号が変化した場合の対応が困難である。従って、特許文献2で開示されている技術は、リアルタイム性が必要な制御への適用は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態に係る半導体装置は、ガルバニックアイソレータと、ガルバニックアイソレータを介して送信信号を送信する送信回路と、ガルバニックアイソレータを介して送信信号に対応する受信信号を受信する受信回路と、2つの入力信号を符号化し、送信信号を生成する符号化回路と、受信信号から、2つの入力信号を復号する復号回路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
前記一実施の形態によれば、パワートランジスタを駆動するための回路の面積を大幅に縮小することや、ワイヤボンディングの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施の形態1に係る半導体装置のブロック図である。
【
図2】
図2は実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】
図3は実施の形態1に係る3相モータ制御システムのブロック図である。
【
図4】
図4は実施の形態1の変形例に係る半導体装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は実施の形態2に係る半導体装置のブロック図である。
【
図6】
図6は実施の形態2に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】
図7は実施の形態3に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】
図8は実施の形態3に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】
図9は実施の形態3に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】
図10は実施の形態4に係る制御システムのブロック図である。
【
図11】
図11は実施の形態5に係る制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施の形態に係る半導体装置及び制御システムについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要件または対応する構成要件には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態の少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0013】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態1に係る半導体装置100のブロック図である。半導体装置100は、モータ等の負荷を駆動するハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)とローサイドスイッチ(パワートランジスタ)をPWMで制御するための装置である。
図1で示される通り、半導体装置100は、符号化回路(Code)1、送信回路(Tx)2、アイソレータ3、受信回路(Rx)4、復号回路(Decode)5、ドライバ回路6、7を有する。
【0014】
符号化回路1は、外部のMCU等で生成されたハイサイドスイッチ駆動用のPWM_H信号と、ローサイドスイッチ駆動用のPWM_L信号とを符号化することで1つの出力信号を生成する回路である。
【0015】
送信回路2は、符号化回路1の出力信号をアイソレータ3に送信する回路である。受信回路4は、アイソレータ3で受信した信号を復号回路5に出力する回路である。送信回路2、アイソレータ3、受信回路4は、従来(例えば、特許文献1、2)と同様のものであるため、詳細説明は省略する。
【0016】
アイソレータ3は、キャパシタやトランスフォーマ等で形成されるガルバニックアイソレータである。
【0017】
復号回路5は、アイソレータ3と受信回路4経由で受信した符号化された信号を復号することで、2つの出力信号(PWM_H、PWM_L)を生成する回路である。
【0018】
ドライバ回路6、7は、復号回路5で復号された信号に基づいて、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチを駆動する信号OUT_H、OUT_Lを生成する回路である。
【0019】
次に、符号化回路1と復号回路5の動作について、詳細に説明する。
図2は、符号化回路1と復号回路5の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0020】
図2では、PWM_H信号がオン(Hi)、オフ(Lo)、オンと変化している。また、PWM_L信号は、オフ、オン、オフと変化している。PWM制御では、デッドタイムが設けられ、PWM_HとPWM_Lが同時にオンになることはない。デッドタイムは、PWM_H信号のオンからオフへの変化点から、PWM_L信号のオフからオンへの変化点の間に設けられる。同様に、PWM_L信号のオンからオフへの変化点から、PWM_H信号のオフからオンへの変化点の間に、デッドタイムが設けられる。従って、符号化回路1に入力される信号は、(PWM_H、PWM_L)=(L、H)、(L、L)、(H、L)となる。ここで、(PWM_H、PWM_L)=(L、H)を状態1、(PWM_H、PWM_L)=(L、L)を状態2、(PWM_H、PWM_L)=(H、L)を状態3と定義する。
【0021】
本実施の形態1では、符号化回路1は入力信号の状態を検出し、検出された状態を所定期間内のパルス数で表現する。具体的には、
図2で示される通り、状態1が1パルス、状態2が2パルス、状態3が3パルスで表現されている。
【0022】
符号化回路1で生成された各パルス信号は、送信回路2、アイソレータ3、受信回路4を介して復号回路5に入力される。
【0023】
復号回路5は、入力されたパルス信号に基づき、元のPWM_H、PWM_L信号を復号する。復号する動作は、符号化動作と逆となる。すなわち、復号回路5は、入力信号のパルス数から状態を検出し、検出された状態に応じた出力信号を生成する。具体的には、
図2で示される通り、パルス数が1であれば状態1であり、(PWM_H、PWM_L)=(L、H)となる信号が生成される。パルス数が2であれば状態2であり、(PWM_H、PWM_L)=(L、L)となる信号が生成される。パルス数が3であれば状態3であり、(PWM_H、PWM_L)=(H、L)となる信号が生成される。
【0024】
図3は、半導体装置100を3相モータ制御システム200に適用した図である。
図3で示される通り、3相モータ制御システム200は、インバータ201、絶縁型ゲートドライバ202、MCU(Micro Control Unit)203、3相モータ204を有する。
【0025】
インバータ201は、3相モータ204を駆動するためのハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)211~213と、ローサイドスイッチ(パワートランジスタ)214~216を有する。ハイサイドスイッチ211、212、213が、それぞれU相、V相、W相のスイッチである。ローサイドスイッチ214、215、216が、それぞれU_bar相、V_bar相、W_bar相のスイッチである。
【0026】
絶縁型ゲートドライバ202は、
図1で示した半導体装置100が3セット搭載される。すなわち、符号化回路221、アイソレータ222、復号回路223、ドライバ回路224、225が、U/U_bar相用のゲートドライバである。符号化回路226、アイソレータ227、復号回路228、ドライバ回路229、230が、V/V_bar相用のゲートドライバである。符号化回路231、アイソレータ232、復号回路233、ドライバ回路234、235が、W/W_bar相用のゲートドライバである。なお、
図3では、半導体装置100の送信回路と受信回路は、それぞれ符号化回路と復号回路に内蔵されているものとして省略している。
【0027】
ここで、絶縁型ゲートドライバ202は、第1と第2の半導体チップを搭載した1つの半導体パッケージで構成される。第1の半導体チップには、符号化回路221、226、231、アイソレータ222、227、232が搭載され、第2の半導体チップには、復号回路223、228、233、ドライバ回路224、225、229、230、234、235が搭載される。あるいは、第1の半導体チップに符号化回路221、226、231を搭載し、第2の半導体チップにアイソレータ222、227、232、復号回路223、228、233、ドライバ回路224、225、229、230、234、235を搭載してもよい。あるいは、絶縁型ゲートドライバ202は、第1~3の半導体チップを搭載した1つの半導体パッケージで構成してもよい。この時、第1の半導体チップには符号化回路221、226、231が搭載され、第2の半導体チップにはアイソレータ222、227、232が搭載され、第3の半導体チップには復号回路223、228、233、ドライバ回路224、225、229、230、234、235が搭載される。
【0028】
MCU203は、3相モータ204が所望の動作となるように、3相のPWM信号を生成し、絶縁型ゲートドライバに供給する。実際には、MCU203は、3相モータ204の回転角や電流をセンサで検知しながらPWM信号を生成する。PWM信号の生成方法については、一般的な技術であるため説明は省略する。
【0029】
図3を見れば明らかなように、従来、3相に合わせて6セット必要であった送信回路、アイソレータ、受信回路が、3セットで済む。
【0030】
(効果)
以上のように、本実施の形態1に係る半導体装置100では、PWM_H、PWM_L信号の状態に応じて符号化する符号化回路と、符号化された信号を復号する復号回路とを設けた。これにより、パワートランジスタを駆動するための回路の面積を大幅に縮小することや、ワイヤボンディングの削減が可能となる。
【0031】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した状態1~3を所定期間内のパルス数ではなく、パルスの周波数、パルスの振幅、異なるパルスの組み合わせなどで符号化してもよい。
【0032】
[変形例]
図4は、実施の形態1の変形例である。実施の形態1では、符号化回路1は、入力信号の状態の変化に合わせてパルス信号を生成していた。本変形例では、符号化回路1は、入力信号の状態に変化がないときでも状態を示すパルス信号を生成する。
図4では、状態1((PWM_H、PWM_L)=(L、H))の途中で、状態1であることを示すパルスが生成されている。すなわち、本変形例では、状態1への変化時、状態1の途中、状態1からの変化時の3回、1パルスの信号が生成される。なお、2回目のパルスは、1回目のパルス生成から所定時間経過後に生成すればよい。
【0033】
(効果)
本変形例では、入力信号の状態に変化がない時でも、状態を示すパルス信号を生成する。これにより、送信側(符号化回路側)と受信側(復号回路側)とで、状態のずれが発生することを抑制することが可能となる。
【0034】
[実施の形態2]
図5は、実施の形態2に係る半導体装置100aのブロック図である。実施の形態1との違いは、ステートマシン8が追加されていることである。また、本実施の形態2では、符号化回路1と復号回路5の動作が実施の形態1とは異なる。
【0035】
実施の形態1で説明したように、モータ制御、インバータ、電源回路で使用されるPWM_H、L信号にはデッドタイムが設けられ、PWM_H、L信号の変化は
図5の下図のような状態遷移に限られる。本実施の形態2では、この状態遷移をインクリメントとデクリメントで表現する。すなわち、状態1から状態2への遷移と状態2から状態3への遷移はインクリメントとし、状態3から状態2への遷移と状態2から状態1への遷移はデクリメントとする。符号化回路1は、PWM_H、Lのインクリメントに対応する信号とデクリメントに対応する信号を生成する。
【0036】
図6は、符号化回路1、復号回路5、ステートマシン8の動作を説明するためのタイミングチャートである。本実施の形態2では、符号化回路1は、トランスフォーマ(アイソレータ3)に流す電流パルスの向きによってインクリメントとデクリメントを表現している。トランスフォーマの受信側コイルに現れる電圧は、送信側コイルに流れる電流のdi/dtに比例する。また、送信側のコイルに流れる電流を立ち上げたときの電流の向きにより、受信側コイルに現れるパルスの向きが決まる。また、送信側コイルに流れる電流を立ち下げて0にすると、受信側コイルには逆向きのパルスが現れる。符号化回路1はこれらの現象を利用して、インクリメントとデクリメントを表現する。すなわち、インクリメントは、
図5で示すように、送信側コイルに実線の矢印の方向に電流を流した後、電流を0にする。受信側コイルには実線の矢印の方向にプラスの電位差を持つパルスが現れたのち、逆向きのパルスが現れる。デクリメントは、送信側コイルに破線の矢印の向きに電流を流した後、電流を0にする。受信側コイルには破線の矢印の方向にプラスの電位差を持つパルスが現れたのち、逆向きのパルスが現れる。なお、
図6では、受信側コイルに実線の矢印の方向にプラスの電位差を持つパルスをプラスのパルスとして、破線の矢印の方向にプラスの電位差を持つパルスをマイナスのパルスとして表現している。
【0037】
復号回路5は、入力されたパルス信号に基づき、インクリメント/デクリメントを復号する。ステートマシン8は、インクリメント/デクリメントに基づき、元のPWM_H、PWM_L信号を復元する(
図5の下図の動作を行う)。ステートマシン8は、初期状態(状態1~3のいずれかの状態)が予め決められている、あるいは、送信側から状態が通知されることが必要となる。
【0038】
(効果)
本実施の形態2を3相モータ制御システム等に適用した場合は、実施の形態1と同様に回路の面積を大幅に縮小することができる。更に、符号化/復号する信号が短い信号(パルス数が少ない信号)となるため、信号の送受信にかかるレイテンシと電力も削減することが可能となる。
【0039】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る半導体装置は、実施の形態2と同様である。本実施の形態3では、符号化回路1と復号回路5の動作が実施の形態2とは異なる。
上述した通り、実施の形態2では、ステートマシン8の初期状態(状態1~3のいずれかの状態)を予め決めておく、あるいは、送信側の状態を通知することが必要となる。そこで、本実施の形態3では、状態そのものを通知する機能を追加する。
【0040】
図7は、符号化回路1と復号回路5の動作を説明するためのタイミングチャートである。実施の形態2と同様に、符号化回路1は、PWM_H、Lのインクリメントに対応する信号とデクリメントに対応する信号を生成する。ただし、符号化回路1は、状態1あるいは状態3への遷移時、パルスを二重化する。すなわち、
図7で示される通り、状態3から状態2への遷移は実施の形態2と同様のデクリメントを示すパルス(マイナス側の1パルスとプラス側の1パルス)を生成し、状態1から状態2への遷移は実施の形態2と同様のインクリメントを示すパルス(プラス側の1パルスとマイナス側の1パルス)を生成する。そして、状態2から状態1への遷移は、デクリメントを示すパルスを2つ生成し、状態2から状態3への遷移は、インクリメントを示すパルスを2つ生成する。これにより、送信側がいずれの状態にあるかを確定することができ、送信側と受信側の状態の不一致を抑制することが可能となる。
【0041】
送信側と受信側の状態をより正確に同期させるため、状態遷移がない期間中に、インクリメント/デクリメントを示すパルスを周期的に送信してもよい。
図8は、状態遷移のない期間(状態1が続く期間、状態3が続く期間)に、上述の二重化されたインクリメント/デクリメントのパルスが送信されていることを示している。状態1が続く期間中は、デクリメントのパルスが周期的に送信される。状態3が続く期間中は、インクリメントのパルスが周期的に送信される。これにより、受信側は、送信側の状態を周期的に把握することが可能となる。
【0042】
周期的に送信するパルスは実施の形態2で説明したインクリメント/デクリメントを示すパルスでもよい。
図9は、状態遷移のない期間(状態1が続く期間、状態3が続く期間)に、実施の形態2のインクリメント/デクリメントのパルスが送信されていることを示している。受信側では、状態1が続く期間中(状態1への遷移を示す二重化されたデクリメントのパルス受信後)にデクリメントを示すパルスが送信されても、状態1から更なる状態遷移は行われない。同様に、状態3が続く期間中(状態3への遷移を示す二重化されたインクリメントのパルス受信後)にインクリメントを示すパルスが送信されても、状態3から更なる状態遷移は行われない。従って、受信側は、送信側の状態を正常に検知することが可能となる。
【0043】
なお、状態2の期間中にパルスを送信する場合は、実施の形態2のインクリメントまたはデクリメントを示すパルス、すなわち二重化されていないパルスを送信すればよい。受信側では、状態2の期間中(状態3からデクリメントパルス、または状態1からインクリメントパルスを受信後)、二重化されていないパルスを受信した場合は、状態2の維持と解釈することで送信側の状態を検知することが可能となる。
【0044】
(効果)
本実施の形態3では、実施の形態2と同様の効果と、送信側と受信側の状態の不一致を抑制することが可能となる。
【0045】
[実施の形態4]
図10は、実施の形態1に係る半導体装置100を、別の制御システムである電源回路(降圧コンバータ、昇圧コンバータまたは昇降圧コンバータ)400に適用した図である。
図10で示される通り、電源回路400は、コイル401、ハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)402、ローサイドスイッチ(パワートランジスタ)403、ゲートドライバ404、コントローラ405を有する。
【0046】
ゲートドライバ404は、
図1と同様の構成であり、符号化回路406、アイソレータ407、復号回路408、ドライバ回路409、410を有する。なお、
図10では、半導体装置100の送信回路と受信回路は、それぞれ符号化回路406と復号回路408に内蔵されているものとして省略している。
【0047】
同期整流型の降圧または昇圧コンバータでは、ハイサイドスイッチ402とローサイドスイッチ403が相補的にオン/オフし、同時にオンになることはない。従って、実施の形態1と同様の動作を行う符号化回路406と復号回路408を用いることで、電源回路の面積を大幅に縮小することが可能となる。
【0048】
なお、実施の形態1だけでなく、実施の形態2、3と同様の半導体装置を電源回路400に適用することも可能である。
【0049】
(効果)
以上のように、電源回路に実施の形態1~3の半導体装置を適用することで、電源回路でも実施の形態1~3と同様の効果を得ることが可能となる。
【0050】
[実施の形態5]
図11は、実施の形態1に係る半導体装置100を、別の制御システムである絶縁型コンバータ500に適用した図である。
図11で示される通り、絶縁型コンバータ500は、トランスフォーマ501、ブリッジ回路502、ゲートドライバ503、コントローラ504を有する。
【0051】
ゲートドライバ503は、
図1の構成を2セット、すなわち、符号化回路505、510、アイソレータ506、511、復号回路507、512、ドライバ回路508、409、513、514を有する。なお、
図11では、半導体装置100の送信回路と受信回路は、それぞれ符号化回路505、510と復号回路507、512に内蔵されているものとして省略している。
【0052】
ブリッジ回路502は、フルブリッジ回路でもハーフブリッジ回路でもよい。ハーフブリッジ回路(ハイサイドスイッチ1つ、ローサイドスイッチ1つ)の場合は、ゲートドライバ503は、
図1と同様の構成となる。
【0053】
本実施の形態5では、従来、4セット必要であった送信回路、アイソレータ、受信回路が、2セットで済む(フルブリッジ回路の場合、ハーフブリッジ回路の場合は、従来2セット必要だった回路が、1セットで済む)。
【0054】
なお、
図11では、半導体装置100を電力送信側(1次側)のブリッジ回路に適用したが、電力受信側(2次側)の同期整流用パワートランジスタのゲート駆動に用いてもよい。
【0055】
また、実施の形態1だけでなく、実施の形態2、3と同様の半導体装置を絶縁型コンバータ500に適用することも可能である。
【0056】
(効果)
以上のように、絶縁型コンバータに実施の形態1~3の半導体装置を適用することで、絶縁型コンバータでも実施の形態1~3と同様の効果を得ることが可能となる。
【0057】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更され得る。例えば、符号化回路が、2つの入力信号に対して禁止されているパターンを検出した場合は、MCUにエラーを通知するようにしてもよい。あるいは、禁止されているパターンが検出された場合は、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチの両方をオフにするようにしてもよい。禁止されているパターンとしては、次のようなものがある。(PWM_H、PWM_L)=(H、H)のとき、(PWM_H、PWM_L)=(H、L)または(L、H)が一定時間以上続くとき、一定時間はPWMの周波数で決めればよい(例:PWMの周波数5KHzの場合は、一定時間は200us)。
【0058】
また、復号回路が、特定の異常状態を検出した場合は、MCUにエラーを通知するようにしてもよいし、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチの両方をオフにするようにしてもよい。異常状態とは、次のようなものである。受信した信号が一定時間以上(例:200us)変化しない。受信した信号が定義されていない符号や信号パターンを有する。受信した信号が定義されていない状態遷移を示す。定義されていない状態遷移とは、状態2を介さずに状態1や状態3に遷移する場合である(すなわち、デッドタイムが設けられない場合である)。あるいは、実施の形態2において、状態1からデクリメントを受信した場合、状態3からインクリメントを受信した場合である。
【符号の説明】
【0059】
1 符号化回路
2 送信回路
3 ガルバニックアイソレータ
4 受信回路
5 復号回路
6、7 ドライバ回路
8 ステートマシン
100、100a 半導体装置
200 3相モータ制御システム
201 インバータ
202 絶縁型ゲートドライバ
203 MCU
204 モータ
211~213 ハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)
214~216 ローサイドスイッチ(パワートランジスタ)
221、226、231 符号化回路
222、227、232 ガルバニックアイソレータ
223、228、233 復号回路
224、225、229、230、234、235 ドライバ回路
400 電源回路
401 コイル
402 ハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)
403 ハイサイドスイッチ(パワートランジスタ)
404 ゲートドライバ
405 コントローラ
406 符号化回路(送信回路含む)
407 ガルバニックアイソレータ
408 復号回路(受信回路含む)
409、410 ドライバ回路
500 絶縁型コンバータ
501 トランスフォーマ
502 ブリッジ回路
503 ゲートドライバ
504 コントローラ
505、510 符号化回路(送信回路含む)
506、511 ガルバニックアイソレータ
507、512 復号回路(受信回路含む)
508、509、513、514 ドライバ回路