(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081618
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】化学反応システム
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20230606BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B01J19/24 A
B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195470
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 光亮
(72)【発明者】
【氏名】辻川 順
(72)【発明者】
【氏名】成相 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D020
4G075
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC02
4D020BC06
4D020BC10
4D020CB08
4D020CC09
4D020CD01
4D020CD10
4G075AA04
4G075AA61
4G075BA01
4G075BB04
4G075BD03
4G075BD04
4G075BD17
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC25
(57)【要約】
【課題】反応に用いるガスを反応に適した圧力及び流量で反応器に供給することが可能な化学反応システムを提供する。
【解決手段】化学反応システム1は、ガスを圧縮する圧縮機31と、圧縮機31で圧縮されたガスの流量を調節する流量調節部33と、圧縮機31で圧縮されたガスを圧縮機31の吸込口に戻す戻り流路34と、戻り流路34に設けられ、圧縮機31で圧縮されたガスの圧力を調節する圧力調節部35と、流量調節部33によって流量が調節されたガスから反応生成物を生成する反応器37とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮されたガスの流量を調節する流量調節部と、
前記圧縮機で圧縮されたガスを前記圧縮機の吸込口に戻す戻り流路と、
前記戻り流路に設けられ、前記圧縮機で圧縮されたガスの圧力を調節する圧力調節部と、
前記流量調節部によって流量が調節された前記ガスから反応生成物を生成する反応器と、
を備える、化学反応システム。
【請求項2】
前記圧縮機によって圧縮されたガスの圧力変動を吸収するタンクをさらに備える、請求項1に記載の化学反応システム。
【請求項3】
前記ガスは二酸化炭素を含む、請求項1又は2に記載の化学反応システム。
【請求項4】
化学吸収法により二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を備え、
前記圧縮機によって圧縮されるガスは、前記二酸化炭素回収装置から放散された二酸化炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化学反応システム。
【請求項5】
前記反応器に水素を供給する水素供給部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の化学反応システム。
【請求項6】
前記反応生成物は炭化水素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化学反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因として問題視されており、世界的に二酸化炭素の排出を抑制する動きが活発化している。大気中への二酸化炭素の排出量を削減し、二酸化炭素を有効に利用する方法として、排出ガス中の二酸化炭素からメタンを製造するメタネーション技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、二酸化炭素及び水素からメタンを製造するメタン製造装置が開示されている。メタン製造装置は、メタン化反応を生じさせる第1反応器と、第1反応器の下流側に配置され、メタン化反応を生じさせる第2反応器と、第2反応器に供給される反応混合ガスの圧力を昇圧する昇圧部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばメタネーション反応及びFT反応(フィッシャー-トロプシュ反応)などでは、圧力が高い程、反応生成物の収率が多くなる。そのため、圧縮機により圧縮されたガスを反応器に供給することにより、反応生成物の収率を高くすることができる。しかしながら、圧縮機は高圧で小流量のガスを流すことが容易ではなく、圧縮機で圧縮したガスを反応器に直接供給した場合、反応内の圧力及び流量を適正に保てないおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、反応に用いるガスを反応に適した圧力及び流量で反応器に供給することが可能な化学反応システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る化学反応システムは、ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮されたガスの流量を調節する流量調節部と、圧縮機で圧縮されたガスを圧縮機の吸込口に戻す戻り流路とを備えている。化学反応システムは、戻り流路に設けられ、圧縮機で圧縮されたガスの圧力を調節する圧力調節部と、流量調節部によって流量が調節されたガスから反応生成物を生成する反応器とを備えている。
【0008】
化学反応システムは、圧縮機によって圧縮されたガスの圧力変動を吸収するタンクをさらに備えていてもよい。
【0009】
上記ガスは二酸化炭素を含んでいてもよい。
【0010】
化学反応システムは、化学吸収法により二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を備え、圧縮機によって圧縮されるガスは、二酸化炭素回収装置から放散された二酸化炭素を含んでいてもよい。
【0011】
化学反応システムは反応器に水素を供給する水素供給部を備えていてもよい。
【0012】
反応生成物は炭化水素を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、反応に用いるガスを反応に適した圧力及び流量で反応器に供給することが可能な化学反応システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る化学反応システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る化学反応システム1は、二酸化炭素発生源10と、二酸化炭素回収装置20と、圧縮機31と、タンク32と、流量調節部33と、戻り流路34と、圧力調節部35と、水素供給部36と、反応器37とを備えている。
【0017】
二酸化炭素発生源10は、例えば、燃料が燃焼されることによって二酸化炭素を排出する発電所及び工場などである。二酸化炭素発生源10はボイラを含んでいてもよい。
【0018】
二酸化炭素回収装置20は、二酸化炭素発生源10から発生した二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収装置20は、二酸化炭素発生源10から発生した二酸化炭素を回収することにより、大気中に放出される二酸化炭素の量を低減することができる。
【0019】
二酸化炭素回収装置20は化学吸収法により二酸化炭素を回収してもよい。二酸化炭素回収装置20は、
図1に示すように、吸収塔21と、放散塔22と、供給配管23と、還流配管24と、熱交換器25と、冷却器27と、気液分離器28とを含んでいてもよい。供給配管23は、吸収塔21の下部と、放散塔22の上部とを接続する。還流配管24は、放散塔22の下部と、吸収塔21の上部とを接続する。供給配管23及び還流配管24には、熱交換器25が設けられる。
【0020】
吸収塔21は、二酸化炭素を含有するガスと吸収液との気液接触によって二酸化炭素を吸収する。放散塔22は、吸収塔21で吸収された二酸化炭素を放散する。吸収液はアルカリ性溶液であってもよい。吸収液は、具体的には、アルカノールアミン及びアルコール性水酸基を有するヒンダードアミンの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。吸収液は、より具体的には、モノエタノールアミン(MEA)を含んでいてもよい。
【0021】
吸収塔21の下方から供給された二酸化炭素を含有するガスは、吸収液と気液接触し、ガスに含まれる二酸化炭素が吸収液に吸収される。二酸化炭素を吸収した吸収液は、供給配管23を通じ、熱交換器25によって加熱された後、放散塔22の上方へ送られる。熱交換器25によって加熱された吸収液は、放散塔22の上方から二酸化炭素を放散しながら滴り落ち、放散塔22の底部に滞留する。放散塔22の底部に滞留する吸収液は図示しないリボイラによって加熱され、吸収液から二酸化炭素が放散される。放散された二酸化炭素を含むガスは、放散塔22の天頂に設けられたガス排出口から排出される。
【0022】
一方、放散塔22の底部に滞留する吸収液は、還流配管24を通じ、熱交換器25で冷却された後、吸収塔21の上部へ送られる。この際、供給配管23を通る吸収液と還流配管24を通る吸収液の熱とが熱交換され、供給配管23を通る吸収液が加熱され、還流配管24を通る吸収液が冷却される。吸収塔21の充填材より上方から供給された吸収液は、二酸化炭素発生源10から供給された二酸化炭素を含有するガスと気液接触し、二酸化炭素が再び吸収液に吸収される。吸収塔21内で二酸化炭素が除去されたガスは、吸収塔21の天頂に設けられたガス排出口から排出される。
【0023】
放散塔22のガス排出口には、配管26が接続されている。配管26には、冷却器27と、気液分離器28と、流量調節部30と、圧縮機31と、タンク32と、流量調節部33と、反応器37とが設けられている。放散塔22から放散されるガスは、冷却器27で冷却され、気液分離器28によって二酸化炭素を含むガスが分離される。二酸化炭素回収装置20から分離されるガスは、例えば質量比で90%以上、95%以上又は99%以上の二酸化炭素を含有する。
【0024】
流量調節部30は、配管26において、二酸化炭素回収装置20の下流に設けられている。流量調節部30は、放散塔22内の圧力に応じて配管26を流れるガスの流量を調節する。放散塔22内の圧力は、二酸化炭素の放散を促進するため、吸収塔21内の圧力よりも低くなるように設定される。放散塔22内の圧力は、吸収液の種類にもよるが、例えば0.1MPaG~0.2MPaGであってもよい。
【0025】
なお、本実施形態では化学吸収法を利用した二酸化炭素回収装置20について説明した。しかしながら、二酸化炭素回収装置20は、例えば、圧力スウィング吸着法、温度スウィング吸着法、膜分離濃縮法又はこれらの組み合わせなどによって二酸化炭素を回収してもよい。
【0026】
圧縮機31はガスを圧縮する。圧縮機31によって圧縮されるガスは、二酸化炭素を含んでいる。圧縮機31によって圧縮されるガスは、具体的には、二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素を含んでいる。圧縮機31は、吸込口と吐出口とを有しており、吸込口から吸い込まれたガスは圧縮されて吐出口から吐出される。
【0027】
圧縮機31は、スクロール圧縮機又はレシプロ圧縮機であってもよい。これらの圧縮機は、ガスを反応器37に必要な圧力にまで圧縮することができ、吐出流量を小さくすることができる。そのため、後述する戻り流路34及び圧力調節部35により、反応に適した圧力及び流量の二酸化炭素を反応器37に容易に供給することができる。
【0028】
圧縮機31の吐出圧力は、0.3MPaG以上3MPaG以下であってもよい。吐出圧力は0.5MPaG以上であってもよい。また、吐出圧力は2MPaG以下であってもよい。圧縮機31の吐出流量は、例えば7L/分~50L/分であってもよい。吐出流量は8L/分以上であってもよい。また、吐出流量は30L/分以下であってもよく、20L/分以下であってもよい。
【0029】
上述したように、放散塔22内は減圧されるため、反応器37での反応を効率的に進行させるには反応器37内の圧力を例えば0.3MPaG以上にすることが好ましい。しかしながら、圧縮機31で圧縮したガスを反応器37に直接供給した場合、過剰な量のガスが反応器37に供給されてしまい、目的とする反応を効率的に実施できないおそれがある。例えば、1mL/分~10mL/分のような流量のガスを圧縮機31から反応器37に上記のような圧力で直接供給することは困難になるおそれがある。そこで、本実施形態では、タンク32、流量調節部33、戻り流路34、圧力調節部35を用いて反応器37に二酸化炭素を供給している。
【0030】
タンク32は圧縮機31によって圧縮されたガスの圧力変動を吸収する。タンク32はガスを収容する空間を有している。タンク32には圧縮機31から供給されるガスをタンク32内に供給するための供給口と、タンク32内のガスを排出するための排出口とが設けられている。供給口及び排出口は開放され、圧縮機31と流量調節部33と圧力調節部35とが連通している。タンク32の容量は10L以上40L未満であってもよい。容量が10L以上である場合、圧縮機31からのガスの圧力変動をさらに良好に吸収することができる。また、容量が40L未満である場合、タンク32内にガスを充満させる時間を低減することができるため、化学反応システム1を迅速に起動することができる。なお、化学反応システム1はタンク32を備えていなくてもよく、例えば配管26の径を拡張し、圧縮機31によって圧縮されたガスの圧力変動を配管26によって吸収してもよい。
【0031】
流量調節部33は、圧縮機31で圧縮されたガスの流量を調節する。流量調節部33は圧縮機31の吐出流量よりも少なくなるように、圧縮機31で圧縮され、反応器37へ供給されるガスの流量を調節することができる。これにより、吐出圧力が高い圧縮機31を用い、圧縮機31の吐出流量が多くなった場合であっても、反応器37に供給されるガスの流量が圧縮機31の吐出流量よりも少なくなる。したがって、反応器37に適量のガスを供給することができる。流量調節部33は、マスフローコントローラーを含んでいてもよい。
【0032】
戻り流路34は、圧縮機31で圧縮されたガスを圧縮機31の吸込口に戻す。具体的には、戻り流路34は、タンク32から導出され、流量調節部33に導入される前のガスを圧縮機31に戻す。戻り流路34は、配管26において、圧縮機31の上流側及び下流側に接続される。具体的には、戻り流路34は、配管26において、流量調節部30と圧縮機31との間、及び、圧縮機31と流量調節部33との間に接続される。本実施形態では、戻り流路34は、配管26において、タンク32と流量調節部33との間に接続されているが、圧縮機31とタンク32との間に接続されていてもよい。
【0033】
圧力調節部35は、戻り流路34に設けられ、圧縮機31で圧縮されたガスの圧力を調節する。本実施形態では、圧力調節部35によって圧力が調節され、圧縮機31の吐出口、流量調節部33の入口、及び圧力調節部35の入口の圧力が実質的に同じ圧力となっている。したがって、圧力調節部35は、タンク32内の圧力を調節することができる。圧力調節部35はリリーフ弁を含んでいてもよい。圧力調節部35によって圧力が調節されることにより、反応器37に適正な圧力のガスを供給することができる。圧力調節部35によって調節される圧力は、反応器37で必要な圧力に応じて適宜設定することができる。圧力は、例えば、0.3MPaG~3MPaGであってもよい。
【0034】
水素供給部36は反応器37に水素を供給する。水素供給部36は水素を反応器37に供給することができれば特に限定されないが、太陽光、風力及び水力などの再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解して得られたものを使用してもよい。このような水素を用いることにより、化学反応システム1全体として、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0035】
反応器37に供給される二酸化炭素に対する水素の量の比は、適宜設定することができるが、例えばモル比で1以上であってもよく、2以上であってもよく、3以上であってもよく、3.5以上であってもよく、4以上であってもよい。また、反応器37に供給される二酸化炭素に対する水素の量の比は、例えばモル比で8未満であってもよく、6未満であってもよく、5未満であってもよく、4.5未満であってもよい。なお、メタネーション反応の場合、反応器37に供給される二酸化炭素に対する水素の量の比は、量論比である4であってもよい。
【0036】
反応器37は、流量調節部33によって流量が調節されたガスから反応生成物を生成する。具体的には、反応器37は、タンク32から導出されたガスを含む原料から反応生成物を生成する。本実施形態においては、反応器37は二酸化炭素を含む原料から反応生成物を生成する。
【0037】
反応生成物は炭化水素を含んでいてもよい。反応器37で炭化水素を生成することにより、二酸化炭素の排出を抑制するだけでなく、二酸化炭素を有効利用することができる。炭化水素は、アルカン及びアルケンの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらの炭化水素は、メタネーション反応又はフィッシャー-トロプシュ反応によって生成することができる。アルカン及びアルケンの少なくともいずれか一方は、炭素数が1から4の炭化水素を含んでいてもよい。炭素数が1から4のアルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン及びブタンが挙げられる。炭素数が1から4のアルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン及び1,3-ブタジエンが挙げられる。なお、これらの中でも、メタン、エタン及びプロパンは、都市ガスの燃料とすることができる。また、炭素数が2以上4以下のアルケンは、プラスチックの原料にもなるため有用である。なお、反応生成物は、上記以外の化合物を含んでいてもよい。
【0038】
反応器37は、シェルアンドチューブ型反応器のような多管式反応器、流動層型反応器又はスラリー床型反応器を含む公知の反応器を含んでいてもよい。反応器37には、原料が通過する流路内に触媒が配置されており、原料が触媒に接触することによって炭化水素が生成される。触媒は、生成する炭化水素の種類の観点から選択され、例えば鉄触媒又はコバルト触媒などの公知の触媒を使用することができる。鉄触媒の場合は軽質炭化水素を主に生成することができ、コバルト触媒の場合はワックスを含む重質炭化水素を主に生成することができる。また、鉄触媒の場合はアルケン及びアルカンを主として生成することができ、コバルト触媒の場合はアルカンを主として生成することができる。なお、鉄触媒は活性成分として鉄を含む触媒であり、コバルト触媒は活性成分としてコバルトを含む触媒である。反応器37での反応条件は特に限定されないが、例えば、反応温度が200℃~500℃であり、圧力が0.3MPaG~3MPaGである。反応器37で生成された反応生成物は、図示しない分離精製装置で分離精製されてもよい。
【0039】
配管26における流量調節部30と圧縮機31との間には、排気配管41が接続されていてもよい。また、圧力調節部42が排気配管41に設けられていてもよい。圧力調節部42により圧力を調節し、排気配管41からガスを逃がすことにより、配管26における流量調節部30と圧縮機31との間の圧力が高くなるのを抑制することができる。圧力調節部42の設定値は、例えば10kPa以下であってもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る化学反応システム1の動作について説明する。まず、二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素を含むガスは圧縮機31で圧縮される。圧縮されたガスは、タンク32に供給される。流量調節部33の入口側圧力が圧力調節部35の設定圧力未満の場合には、流量調節部33は反応器37にガスが供給されないように閉じられている。タンク32内の圧力が圧力調節部35の設定圧力を超えた場合には、タンク32内のガスが戻り流路34を経由して圧縮機31の吸込口に戻される。圧縮機31は、戻り流路34を経由して戻されたガスと、二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素とを含む混合ガスを圧縮する。
【0041】
タンク32内の圧力が圧力調節部35の設定圧力に達した後、流量調節部33は開かれ、反応器37に供給されるガスの流量が流量調節部33で調節される。流量調節部33の入口側の圧力は、圧力調節部35によって所定の圧力となるように調節されている。そのため、流量調節部33で流量が調節された二酸化炭素ガスは、適正な圧力で圧縮機31へ供給され、反応が進行する。
【0042】
圧縮機31は、戻り流路34を経由して戻されたガスと、二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素とを含む混合ガスを圧縮する。また、圧縮機31で圧縮されたガスは、圧力調節部35で圧力が調節され、戻り流路34を介して圧縮機31の吸込口に継続的に戻される。そのため、圧縮機31を連続的に稼働させ続けることができ、圧縮機31を断続運転しなくても反応器37にガスを安定して供給することができる。また、圧縮機31にインバータを接続しなくても、反応器37にガスを安定して供給することができる。
【0043】
以上説明した通り、本実施形態に係る化学反応システム1は、ガスを圧縮する圧縮機31と、圧縮機31で圧縮されたガスの流量を調節する流量調節部33と、圧縮機31で圧縮されたガスを圧縮機31の吸込口に戻す戻り流路34とを備える。また、化学反応システム1は、戻り流路34に設けられ、圧縮機31で圧縮されたガスの圧力を調節する圧力調節部35と、流量調節部33によって流量が調節されたガスから反応生成物を生成する反応器37とを備える。
【0044】
本実施形態に係る化学反応システム1では、戻り流路34に設けられた圧力調節部35を用い、圧力が調節されたガスを流量調節部33で流量を調節して反応器37に供給することができる。したがって、本実施形態に係る化学反応システム1によれば、反応に用いるガスを反応に適した圧力及び流量で反応器37に供給することができる。
【0045】
本実施形態に係る化学反応システム1は、反応に用いるガスを反応に適した圧力及び流量で反応器37に供給することができるため、小型の反応器37を用いる場合に適している。化学反応システム1は、例えば、試験的に反応生成物を生成したい場合などに好適に用いることができる。また、再生可能エネルギーを利用した水素を用いる場合、立地などの理由により、水素供給量が律速になる場合がある。このような場合、小型の反応器37を用いることで、最適な反応条件で反応を進行させることができる。
【0046】
化学反応システム1は圧縮機31によって圧縮されたガスの圧力変動を吸収するタンク32をさらに備えていてもよい。このようなタンク32により、反応器37に供給されるガスの流動が変動することを抑制し、ガスの流動を安定にすることができる。
【0047】
上記ガスは二酸化炭素を含んでいてもよい。これにより、大気中に排出される二酸化炭素の量を低減し、目的とする反応生成物を得ることができる。
【0048】
化学反応システム1は化学吸収法により二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置20を備えていてもよい。圧縮機31によって圧縮されるガスは、二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素を含んでいてもよい。本実施形態に係る化学反応システム1では、戻り流路34によってガスを循環させることができるため、圧縮機31を連続的に稼働し続けても、圧縮機31の吸込口側の圧力が低くなりすぎることを抑制することができる。そのため、圧縮機31によって二酸化炭素回収装置20内のガスが吸引されて圧力バランスが崩れるのを抑制することができる。また、二酸化炭素回収装置20で回収された二酸化炭素から反応生成物を得ることができる。
【0049】
化学反応システム1は反応器37に水素を供給する水素供給部36を備えていてもよい。水素は再生可能エネルギーを利用して水から得ることができる。そのため、化学反応システム1全体の二酸化炭素排出量を低減することができる。
【0050】
反応生成物は炭化水素を含んでいてもよい。これにより、化学反応システム1によって炭化水素を得ることができるため、燃料やプラスチックなどの原料として用いることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、圧縮機31によって圧縮されるガスが二酸化炭素を含む例について説明した。しかしながら、圧縮機31によって圧縮されるガスは、二酸化炭素に代えて、一酸化炭素などの他の化学成分を含んでいてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、圧縮機31によって圧縮されるガスが二酸化炭素回収装置20から放散された二酸化炭素を含む例について説明した。しかしながら、圧縮機31は、二酸化炭素回収装置20を介さず、二酸化炭素発生源10から排出されたガスを直接圧縮してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0054】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13『気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 化学反応システム
20 二酸化炭素回収装置
31 圧縮機
32 タンク
33 流量調節部
34 戻り流路
35 圧力調節部
36 水素供給部
37 反応器