(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081622
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】車両用内装品
(51)【国際特許分類】
B29C 44/36 20060101AFI20230606BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230606BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20230606BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230606BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20230606BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20230606BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20230606BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20230606BHJP
B60R 13/02 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
B29C44/36
B32B5/18
B60R7/04 C
B29C44/00 A
B29C39/10
B29C44/12
B29C39/24
B60K37/00
B60K37/00 A
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195475
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 親二
(72)【発明者】
【氏名】古田 剣一
【テーマコード(参考)】
3D022
3D023
3D344
4F100
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3D022CA07
3D022CD29
3D023BA01
3D023BB01
3D023BE06
3D023BE14
3D023BE31
3D344AA01
3D344AC03
3D344AC04
4F100AJ10B
4F100AK03B
4F100AK07A
4F100AK15B
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AL09B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA01C
4F100DB04
4F100DC13A
4F100DJ01C
4F100EH36
4F100EJ02
4F100EJ24
4F100GB33
4F100HB00B
4F100JB16B
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD05
4F204AD08
4F204AD25
4F204AD35
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH26
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB11
4F204EB22
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK17
4F204EK21
4F204EL24
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD05
4F214AD08
4F214AD25
4F214AD35
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UB22
4F214UD17
4F214UD21
4F214UF05
4F214UF27
4F214UK24
(57)【要約】
【課題】貯留室に起因する外観及び触感の低下を抑制する。
【解決手段】車両用内装品10の基材11は、自身の厚み方向における一方の面を表面14,17として有し、他方の面を裏面15,18として有し、さらに表面14,17と裏面15,18との間に外側面26を有する。表皮層31は、基材11を表側から覆うことで、基材11との間に発泡成形空間35を形成する。発泡層41は、発泡成形空間35で発泡材料が発泡されることにより形成される。シール部36は、表皮層31が、基材11のうち発泡成形空間35に隣接する箇所に接触されることにより形成され、発泡成形空間35からの発泡材料の漏れを規制する。表皮層31のうち、発泡成形空間35を覆う箇所の表面は意匠面33を構成する。基材11において、シール部36を挟んで発泡成形空間35とは反対側には、シール部36を通過した発泡材料を収容する貯留室45が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の厚み方向における一方の面を表面として有し、他方の面を裏面として有し、さらに前記表面及び前記裏面の間に外側面を有する基材と、
前記基材を表側から覆うことで、前記基材との間に発泡成形空間を形成する表皮層と、
前記発泡成形空間で発泡材料が発泡されることにより形成された発泡層と
を備え、さらに、前記表皮層が、前記基材のうち前記発泡成形空間に隣接する箇所に接触されることによりシール部が形成され、前記発泡成形空間からの前記発泡材料の漏れを前記シール部により規制するようにした車両用内装品であって、
前記表皮層のうち、前記発泡成形空間を覆う箇所の表面は意匠面を構成し、
前記基材において、前記シール部を挟んで前記発泡成形空間とは反対側には、前記シール部を通過した前記発泡材料を収容する貯留室が形成されている車両用内装品。
【請求項2】
前記基材は、一般部と、前記一般部の端縁部に形成され、かつ前記外側面を有する端末部とを備え、
前記端末部は、前記一般部よりも表側へ突出する突部を有しており、
前記シール部は、前記端末部の少なくとも前記突部の前記外側面に前記表皮層が接触されることにより形成されている請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項3】
前記貯留室は、前記端末部の少なくとも前記外側面のうち、前記シール部を挟んで前記発泡成形空間とは反対側となる箇所において開口する切欠きにより構成されている請求項2に記載の車両用内装品。
【請求項4】
前記切欠きは、前記端末部の前記外側面と裏面とに跨がって開口している請求項3に記載の車両用内装品。
【請求項5】
前記端末部の前記外側面のうち、前記貯留室を挟んで前記シール部とは反対側に隣接する箇所に対し前記表皮層が接触されることにより、前記貯留室からの前記発泡材料の漏れを規制する補助シール部がさらに形成されている請求項2~4のいずれか1項に記載の車両用内装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と表皮層との間に発泡層を有する車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された車両用内装品は、基材、表皮層、発泡層及びシール部を備えている。基材は、自身の厚み方向における一方の面を表面として有し、他方の面を裏面として有する。表皮層は、基材を表側から覆うことで、基材との間に発泡成形空間を形成する。表皮層のうち、発泡成形空間を覆う箇所の表面は意匠面を構成する。発泡層は、発泡成形空間に発泡材料が注入されて、同発泡材料が発泡することにより形成される。発泡層は、車両用内装品にソフト感を付与し、触感を向上させる。シール部は、表皮層が、基材のうち発泡成形空間に隣接する箇所に接触されることにより形成され、発泡成形空間から発泡材料が漏れ出るのを規制する。
【0003】
さらに、上記特許文献1に記載された車両用内装品における基材は、発泡材料の貯留室を備えている。そのため、発泡材料は、シール部を通過しても貯留室に収容される。発泡材料は、車両用内装品の外部に漏れ出ることを抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された車両用内装品では、シール部及び貯留室は、隣り合う発泡成形空間の間であって、意匠面の裏側に形成されている。そのため、これらのシール部及び貯留室は、意匠面に凹凸部分を生じさせ、車両用内装品の外観を低下させる。また、乗員は、車両用内装品の意匠面のうち、凹凸部分に触れるおそれがある。意匠面は、凹凸部分では平滑でない。そのため、乗員が凹凸部分に触れた場合の触感は、凹凸部分がないものに比べ低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用内装品は、自身の厚み方向における一方の面を表面として有し、他方の面を裏面として有し、さらに前記表面及び前記裏面の間に外側面を有する基材と、前記基材を表側から覆うことで、前記基材との間に発泡成形空間を形成する表皮層と、前記発泡成形空間で発泡材料が発泡されることにより形成された発泡層とを備え、さらに、前記表皮層が、前記基材のうち前記発泡成形空間に隣接する箇所に接触されることによりシール部が形成され、前記発泡成形空間からの前記発泡材料の漏れを前記シール部により規制するようにした車両用内装品であって、前記表皮層のうち、前記発泡成形空間を覆う箇所の表面は意匠面を構成し、前記基材において、前記シール部を挟んで前記発泡成形空間とは反対側には、前記シール部を通過した前記発泡材料を収容する貯留室が形成されている。
【0007】
上記の構成によれば、車両用内装品の製造に際し、基材が表皮層によって表側から覆われることにより、同表皮層と基材との間に発泡成形空間が形成される。この発泡成形空間に発泡材料が注入される。注入された発泡材料が発泡することで、発泡成形空間に発泡層が形成される。
【0008】
シール部は、表皮層が、基材のうち発泡成形空間に隣接する箇所に接触されることにより形成される。このシール部により、発泡成形空間からの発泡材料の漏れが規制される。
また、たとえ発泡材料がシール部を通過しても、その発泡材料は貯留室に収容される。そのため、発泡材料が車両用内装品の外部に漏れ出ることが抑制される。
【0009】
ここで、基材に貯留室が形成されることで、車両用内装品には凹凸部分が少なからず生ずる。しかし、貯留室は、基材において、シール部を挟んで発泡成形空間とは反対側に形成されている。
【0010】
一方、車両用内装品の意匠面は、表皮層のうち、発泡成形空間を覆う箇所の表面によって構成される。
従って、貯留室が上記の条件を満たす箇所に形成されることで、同貯留室は、意匠面から遠ざかった箇所に位置する。そのため、車両の乗員が車両用内装品の意匠面を見た場合、貯留室の形成に伴い生ずる凹凸部分は、乗員の視線から外れた箇所に位置し、乗員には見えない、又は見えにくい。
【0011】
また、上述したように、貯留室が意匠面から遠ざかった箇所に位置することから、乗員が貯留室に触れることが起こりにくい。従って、凹凸部分に触れることに起因する触感の低下も起こりにくい。
【0012】
上記車両用内装品において、前記基材は、一般部と、前記一般部の端縁部に形成され、かつ前記外側面を有する端末部とを備え、前記端末部は、前記一般部よりも表側へ突出する突部を有しており、前記シール部は、前記端末部の少なくとも前記突部の前記外側面に前記表皮層が接触されることにより形成されていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、基材のうち、一般部と、端末部の突部とが表皮層によって表側から覆われることで、一般部と表皮層との間に発泡成形空間が形成される。この発泡成形空間に発泡材料が注入される。注入された発泡材料が発泡することで、発泡成形空間に発泡層が形成される。この発泡層の形成に際し、突部は、注入された発泡材料の流れを受け止める機能を発揮する。
【0014】
端末部の少なくとも突部に表皮層が接触されることにより、基材のうち発泡成形空間に隣接する箇所に対する表皮層の接触が行なわれて、シール部が形成される。
上記車両用内装品において、前記貯留室は、前記端末部の少なくとも前記外側面のうち、前記シール部を挟んで前記発泡成形空間とは反対側となる箇所において開口する切欠きにより構成されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、端末部の少なくとも外側面のうち、シール部を挟んで発泡成形空間とは反対側となる箇所には、切欠きが開口されている。そのため、発泡材料がシール部を通過した場合、その発泡材料は、端末部の開口部分から切欠き内に収容される。
【0016】
ここで、端末部では、突部が一般部よりも表側へ突出している。基材では、突部の分、端末部の厚みが一般部の厚みよりも大きくなる。
そのため、端末部に対し、シール部及び切欠き(貯留室)を形成しやすくなる。
【0017】
また、基材が射出成形法等の樹脂成形法によって形成される場合、上記のように突部を有する端末部が設けられることで、一般部と端末部とで厚みに差が生ずる。この厚みの差が大きいほど、成形後の収縮度合いに差が生ずる。厚みの大きな部分である端末部に、「ひけ」と呼ばれる凹み(窪み)が生じ、車両用内装品の外観を損なうおそれがある。
【0018】
この点、上記のように、端末部に切欠きが形成されることで、端末部の実質的な厚みが小さくなる。そのため、一般部の厚みと端末部の実質的な厚みとの差が小さくなり、端末部の成形後にひけが生じにくくなる。
【0019】
上記車両用内装品において、前記切欠きは、前記端末部の前記外側面と裏面とに跨がって開口していることが好ましい。
切欠きは、上記の構成によるように、端末部の外側面と裏面とに跨がって開口されることにより、基材の厚み方向のうち、裏面を含む裏面側の領域に位置する。そのため、端末部の外側面のうち、切欠きよりも表側の領域が広くなる。従って、基材の厚み方向における広い領域をシールするシール部を形成することが可能となる。
【0020】
上記車両用内装品において、前記端末部の前記外側面のうち、前記貯留室を挟んで前記シール部とは反対側に隣接する箇所に対し前記表皮層が接触されることにより、前記貯留室からの前記発泡材料の漏れを規制する補助シール部がさらに形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、補助シール部では、端末部の外側面のうち、貯留室を挟んでシール部とは反対側に隣接する箇所に対し表皮層が接触される。シール部に加え、上記補助シール部によっても発泡材料の漏れが規制される。従って、発泡材料のシール性能をさらに高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記車両用内装品によれば、貯留室に起因する外観及び触感の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態における車両用内装品の部分断面図である。
【
図2】上記実施形態における基材の部分断面斜視図である。
【
図3】上記実施形態において、金型装置を用いて表皮層、発泡層及びシール部を形成する途中の状態を示す部分断面図である。
【
図4】
図3の発泡成形空間に発泡材料が注入されつつシール部が形成される様子を説明する部分断面図である。
【
図6】上記実施形態において、車両用内装品の中間製品が金型装置から取り出された状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図2に対応する図であり、変更例の貯留室を有する基材の部分断面斜視図である。
【
図8】表皮材の端部予定部が上記
図7の変更例の端末部の外側面に接触させられてシール部及び補助シール部が形成される様子を説明する部分拡大断面図である。
【
図9】
図2に対応する図であり、変更例の貯留室を有する基材の部分断面斜視図である。
【
図10】
図2に対応する図であり、変更例の貯留室を有する基材の部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、車両用内装品の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本実施形態での車両用内装品は、車室内において乗員が触れたときに、触感としてソフト感が要求される内装品である。車両用内装品としては、例えば、車室内の前部に配置されるインストルメントパネル、ダッシュボード等の車室前部内装パネルが挙げられる。また、コンソールサイドも車両用内装品として挙げられる。
【0025】
<車両用内装品の概略構成>
図1に示すように、車両用内装品10は、基材11、表皮層31及び発泡層41を積層してなる三層構造を有している。次に、各層について説明する。
【0026】
〈基材11〉
図1及び
図2に示すように、基材11は、車両用内装品10の骨格部分を構成する部材である。基材11は、PP(ポリプロピレン)等の硬質の樹脂材料が用いられて、射出成形法等の樹脂成形法によって形成されている。
【0027】
基材11は、一般部12及び端末部21を備えている。一般部12は、略水平状態に配置された横壁部13と、横壁部13の周縁部から垂下する縦壁部16とを備えている。横壁部13は、自身の厚み方向における一方(上方)の面を表面14として有し、他方(下方)の面を裏面15として有している。縦壁部16は、自身の厚み方向における一方(
図1の左方)の面を表面17として有し、他方(
図1の右方)の面を裏面18として有している。
【0028】
端末部21は、一般部12の端縁部、より詳しくは縦壁部16の下縁部に形成されている。端末部21は、縦壁部16の表面17よりも表側へ突出する突部22を有している。
ここで、端末部21の各部を規定するために、縦壁部16の厚み方向と同一の方向(
図1の左右方向)を端末部21の厚み方向というものとする。端末部21は、自身の厚み方向における一方(
図1の左方)の面を表面24として有し、他方(
図1の右方)の面を裏面25として有している。表面24は、突部22の分、表面17よりも表側に位置している。これに対し、裏面25は、裏面18と同一平面上に位置している。
【0029】
端末部21は、表面24と裏面25との間に外側面26を有している。外側面26は、互いに厚み方向に隣り合う傾斜面27及び水平面28を備えている。水平面28は、外側面26のうち、裏側の部分に位置しており、裏面25に繋がっている。傾斜面27は、外側面26のうち、水平面28よりも表側に位置しており、表面24に繋がっている。傾斜面27は、表面24に近づくに従い高くなるように、水平面28に対し傾斜している。
【0030】
〈表皮層31〉
図1に示すように、表皮層31は、主として車両用内装品10の質感向上、触感向上等を図る目的で用いられている。表皮層31は、オレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)からなる合成皮革(合皮)によって、厚みの均一なシート状に形成されている。表皮層31は、TPO以外にも、ポリウレタン、塩化ビニル等によって形成されてもよい。
【0031】
表皮層31は、主部32及び端部34を備えている。主部32は、一般部12を表側から覆うことで、同一般部12との間に発泡成形空間35を形成している。主部32は、基材11の表面14,17,24から表側へ離れた箇所に位置している。主部32の表面は、車両用内装品10の意匠面33を構成している。
【0032】
端部34は、主部32の端縁部に繋がっており、端末部21の外側面26(傾斜面27及び水平面28)に接触している。端部34が接触する外側面26は、基材11のうち発泡成形空間35に隣接する箇所に該当する。互いに接触する端部34と傾斜面27とにより、シール部36が形成されている。
【0033】
〈発泡層41〉
発泡層41は、車両用内装品10にソフト感を付与するための層であり、上記発泡成形空間35で発泡材料M1(
図4参照)が発泡されることにより形成されている。発泡層41は、本実施形態では、ウレタン樹脂の発泡体によって形成されている。この場合、発泡材料M1は、ポリオール及びイソシアネートといった2種類の主原料に触媒、発泡剤、整泡剤等を混合したものである。
【0034】
さらに、本実施形態の車両用内装品10は貯留室45を備えている。
<貯留室45>
図1及び
図2に示すように、貯留室45は、発泡材料M1がシール部36を通過しても、その発泡材料M1を収容することのできる空間(部屋)である。貯留室45は、基材11に形成された切欠き46により構成されている。本実施形態では、切欠き46は、外側面26のうち、シール部36を挟んで発泡成形空間35とは反対側となる箇所(水平面28)と、裏面25のうち、外側面26に隣接する箇所とに跨がって開口している。切欠き46は、四角形の断面形状を有している。
【0035】
ここで、横壁部13の厚み方向(上下方向)と、縦壁部16の厚み方向(
図1の左右方向)とに対し直交する方向(
図1において紙面と直交する方向)を、奥行き方向とする。切欠き46は、端末部21において、奥行き方向に互いに離間した複数箇所に形成されている。
【0036】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
<(1)表皮層31、発泡層41及びシール部36を形成する方法について>
この方法の実施に際しては、
図3に示すように、表皮層31よりも大きな表皮材51と、射出成形法等の樹脂成形法により別途形成された基材11(
図2参照)と、金型装置60とが用いられる。
【0037】
表皮材51は、表皮層31の主部32となるように賦形(形成)される予定の主部予定部52と、端部34となるように形成される予定の端部予定部53と、表皮層31の形成後に切除される予定の切除予定部54とからなる。
【0038】
金型装置60は、成形凹部62を有する第1成形型61と、基部72及び成形凸部73を有する第2成形型71とを備えている。第1成形型61及び第2成形型71の少なくとも一方は、上下方向へ移動可能に設けられている。この上下方向への移動により、第1成形型61及び第2成形型71は、互いに接近及び離間する。
【0039】
成形凹部62は、自身の下端に開口部63を有し、上端に内横壁面64を有している。また、成形凹部62は、開口部63と内横壁面64との間に内縦壁面65を有している。成形凹部62の内横壁面64と内縦壁面65の上部とによって、主部予定部52を賦形して、主部32を形成するための賦形面66が構成されている。内縦壁面65の下部は、端部予定部53及び切除予定部54が沿わされる内余剰面67を構成している。
【0040】
第1成形型61には、複数の第1空気吸引通路(図示略)が形成されており、各第1空気吸引通路の一方の端部が、賦形面66において開口されている。また、第1成形型61には、複数の空気供給通路(図示略)が形成されており、各空気供給通路の一方の端部が内余剰面67において開口されている。
【0041】
これに対し、成形凸部73は、基部72から上方へ突出している。成形凸部73は、上端に外横壁面74を有し、基部72と外横壁面74との間に外縦壁面75を有している。外横壁面74と、外縦壁面75の上部とにより、基材11が装着される被着面76が構成されている。外縦壁面75の下部は、切除予定部54が密着状態で接触される外余剰面77を構成している(
図4参照)。
【0042】
第2成形型71には、複数の第2空気吸引通路(図示略)が形成されており、各第2空気吸引通路の一方の端部が外余剰面77において開口されている。
表皮層31、発泡層41及びシール部36の形成に際しては、まず、第1成形型61と第2成形型71とが離間、すなわち、金型装置60が型開きされる。
【0043】
成形凸部73の被着面76に基材11が被せられる。横壁部13の裏面15が外横壁面74に接触させられ、縦壁部16の裏面18が外縦壁面75に接触させられる。
表皮材51が、第1成形型61の成形凹部62の近くに配置される。表皮材51がヒータ(図示略)によって180℃以上となるように加熱されて、軟化させられる。
【0044】
加熱が終わったところで、
図3に示すように、金型装置60が型締めされる。この型締めに際し、第1成形型61と第2成形型71とが接近する過程で、成形凸部73が基材11を伴って、成形凹部62に入り込む。
【0045】
主部予定部52と賦形面66との間の空気が、第1空気吸引通路を通じて真空吸引される。表皮材51のうち、賦形面66に対向する主部予定部52が、その賦形面66の形状に追従するように変形(賦形)させられる。このようにして、表皮層31の主部32が形成される。このとき、表皮材51のうち、端部予定部53及び切除予定部54は、内余剰面67に沿った状態となり、端末部21及び外余剰面77から離間している。
【0046】
(1-1)ここで、本実施形態では、突部22が、縦壁部16よりも表側へ突出している。そのため、一般部12及び突部22を主部予定部52によって表側から覆うことで、発泡成形空間35を形成することができる。
【0047】
(1-2)また、本実施形態では、成形凹部62の下部に内余剰面67を形成し、成形凸部73の下部に外余剰面77を形成している。そのため、内縦壁面65と外縦壁面75との間であって、基部72と端末部21との間に、端部予定部53及び切除予定部54を変形させるための変形用空間78を形成することができる。
【0048】
次に、第1空気吸引通路を通じた真空吸引が停止される。この停止のタイミングと略同じタイミングで、
図3~
図5に示すように、発泡成形空間35への発泡材料M1の注入が開始される。
【0049】
(1-3)
図4に示すように、発泡材料M1が発泡成形空間35にある程度注入されたところで、変形用空間78の空気が矢印Bで示すように真空吸引される。真空吸引は、変形用空間78において、端部予定部53及び切除予定部54と、外余剰面77との間の空気が第2空気吸引通路を介して吸引されることによりなされる。端部予定部53及び切除予定部54に対し、外余剰面77側から吸引力が作用する。表皮材51は、上述したように、加熱により軟化させられているため、容易に変形し得る。そのため、上記吸引力により、端部予定部53が外側面26に追従するように変形するとともに、切除予定部54が外余剰面77の形状に追従するように変形する。
【0050】
また、上記真空吸引と略同時に、内余剰面67における空気供給通路の開口部分から、空気が矢印Cで示すように、端部予定部53及び切除予定部54に吹き付けられる。この空気により、端部予定部53及び切除予定部54に対し押し付け力が作用する。そのため、端部予定部53が外側面26に対し、より一層追従するように変形する。また、切除予定部54が外余剰面77に対し、より一層追従するように変形する。
【0051】
上記変形用空間78で行なわれる真空吸引及び空気の吹き付けにより、端部予定部53が傾斜面27に対し密着状態で接触させられてシール部36が形成される。また、切除予定部54が外余剰面77に対し密着状態で接触させられる。
【0052】
発泡成形空間35へ注入された発泡材料M1は、泡化反応及び樹脂化反応を伴いながら、同発泡成形空間35の端に位置する端末部21まで拡がろうとする。
(1-4)端末部21において、一般部12よりも表側へ突出する突部22の内側面23は、発泡成形空間35の端に位置している。内側面23は、発泡材料M1の流れ方向に対し、略直交している。そのため、発泡材料M1の上記流れを受け止める機能を突部22に発揮させることができる。
【0053】
(1-5)端末部21に達した発泡材料M1は、同端末部21の表面24よりも下方において、基材11及び表皮層31(表皮材51)の間を通ろうとする。ここでの発泡材料M1は、発泡材料M1自体のほか、発泡材料M1が発泡してできるガス、泡状流動体(粘性ウレタン等の未固化発泡体)等も含まれる。
【0054】
この点、端末部21の表面24よりも下方にシール部36が形成されている本実施形態では、端部予定部53が傾斜面27に密着している。そのため、発泡材料M1が傾斜面27と端部予定部53との間を通って漏れ出ることが、シール部36によって規制される。
【0055】
(1-6)また、本実施形態では、外側面26のうち、シール部36を挟んで発泡成形空間35とは反対側となる箇所に、切欠き46が開口されている。
そのため、発泡材料M1がたとえシール部36を通過しても、その発泡材料M1を、外側面26(水平面28)における開口部分から切欠き46(貯留室45)内に収容させることができる。
【0056】
従って、発泡材料M1が車両用内装品10の外部に漏れ出るのを抑制することができる。また、第2空気吸引通路内に発泡材料M1が入り込んで詰まるのを抑制することができる。
【0057】
(1-7)特に、本実施形態では、切欠き46が、上記奥行き方向に互いに離間した複数箇所に形成されている。
そのため、シール部36を厚み方向へ流れた発泡材料M1を、複数の貯留室45のうち、発泡材料M1が通過した箇所に近い貯留室45に収容することができる。
【0058】
(1-8)本実施形態では、真空吸引と、空気の吹き付けとによって端部予定部53を変形させて、傾斜面27に密着させることで、シール部36を形成している。
そのため、下記の種々の効果が得られる。
【0059】
〈1-8A〉端部予定部53を密着させることのできる端末部21の形状、特に外側面26の形状の自由度、ひいては、発泡材料M1をシールすることのできるシール部36の形状の自由度を高めることができる。
【0060】
この点で、本実施形態では、成形型、治具等によって表皮材を基材に押し付ける場合に比べ、優れている。
〈1-8B〉金型装置を型締めすることで、表皮材の一部を基材に押し付けてシール部を形成する従来の方法では、シール部の形状によっては、表皮材と金型装置とが強干渉する。この強干渉により、皺が入ったシール部が形成されるおそれがある。この場合、シール部において表皮層の外観が低下する、シール性能が安定しない等の問題が起り得る。
【0061】
これに対し、真空吸引と、空気の吹き付けとによってシール部36を形成する本実施形態では、表皮材51と金型装置60とが強干渉せず、シール部36に皺が入りにくい。皺が原因で、シール部36の外観が低下したり、シール性能が不安定になったりするのを抑制できる。
【0062】
(1-8C)真空吸引及び空気の吹き付けのいずれか一方のみによって端部予定部53を変形させて外側面26に接触させる場合に比べ、同端部予定部53を同外側面26に強く接触させることができる。端部予定部53の傾斜面27に対する密着性を高め、シール性能のより高いシール部36を形成することができる。
【0063】
(1-8D)車両用内装品の端部において、仮に発泡層が露出していると、その露出部分を別部品によって覆って隠す必要がある。
これに対し、本実施形態では、車両用内装品10の端部に基材11の端末部21が位置している。そして、表皮材51の端部予定部53が端末部21を覆っている。そのため、車両用内装品10の端部において、発泡層41が露出しない。露出部分を別部品によって覆って隠さなくてすむ。
【0064】
なお、発泡層が露出する場合としては、例えば、車両用内装品の外部に、同車両用内装品に繋がった状態でシール部を作成し、発泡層を形成した後に、シール部を切除する場合が挙げられる。この場合、切除した箇所において発泡層が露出する。
【0065】
ところで、発泡成形空間35に注入された発泡材料M1が硬化することで、
図6に示すように、基材11と表皮層31とが、ソフトな発泡層41によって一体化された中間製品81が得られる。
【0066】
続いて、発泡材料M1の注入と、真空吸引と、空気の吹き付けとが停止される。金型装置60が型開きされ、中間製品81が取り出される。中間製品81から表皮材51の切除予定部54が、
図6の例えば一点鎖線で示す箇所Dにおいて切除されると、目的とする
図1に示す車両用内装品10が得られる。
【0067】
<(2)車両用内装品10の外観及び触感について>
図1に示すように、基材11に貯留室45が形成されることで、車両用内装品10には少なからず凹凸部分が生ずる。
【0068】
(2-1)しかし、本実施形態では、貯留室45が、基材11(端末部21)において、シール部36を挟んで発泡成形空間35とは反対側に形成されている。
一方で、車両用内装品10の意匠面33は、表皮層31のうち、発泡成形空間35を覆う箇所の表面によって構成される。
【0069】
従って、貯留室45は、意匠面33から遠ざかった箇所に位置する。そのため、乗員が車両用内装品10の意匠面33を見た場合、貯留室45の形成に伴い生ずる凹凸部分は、乗員の視線から外れた箇所に位置し、乗員には見えない、又は見えにくい。
【0070】
また、上述したように、貯留室45が意匠面33から遠ざかった箇所に位置することから、乗員が凹凸部分に触れることが起こりにくい。従って、凹凸部分に触れることに起因する触感の低下も起こりにくい。
【0071】
その結果、貯留室45が設けられたことに起因する車両用内装品10の外観及び触感の低下を抑制することができる。
<(3)基材11の樹脂成形について>
基材11が射出成形法等の樹脂成形法によって形成される場合、上記のように突部22を有する端末部21が設けられることで、一般部12と端末部21とで厚みに差が生ずる。この厚みの差が大きいほど、成形後の収縮度合いに差が生ずる。厚みの大きな部分である端末部21に、「ひけ」と呼ばれる凹み(窪み)が生じ、車両用内装品10の外観を損なうおそれがある。
【0072】
この点、上記のように、端末部21に切欠き46が形成されることで、端末部21の実質的な厚みが小さくなる。一般部12の厚みと端末部21の実質的な厚みとの差が小さくなり、端末部21の成形後にひけが生じにくくなる。
【0073】
<(4)その他の事項>
(4-1)端末部21では、一般部12(縦壁部16)よりも表側へ突出する突部22の分、一般部12よりも厚みが大きくなる。
【0074】
そのため、端末部21に対し、シール部36及び切欠き46(貯留室45)を形成しやすくなる。
(4-2)切欠き46が、端末部21の外側面26と裏面25とに跨がって開口されることにより、同切欠き46は、端末部21の厚み方向のうち、裏面25を含む裏面側の領域に位置する。端末部21の外側面26のうち、切欠き46よりも表側の領域が広くなる。従って、端末部21の厚み方向における広い領域をシールするシール部36を形成し、より高いシール性能を得ることができる。
【0075】
(4-3)本実施形態では、表皮層31の賦形、発泡層41の形成、及びシール部36の形成を、第1成形型61及び第2成形型71といった少ない数の成形型で、しかも、短時間で行なうことができる。
【0076】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
<車両用内装品10の形状について>
・基材11、表皮層31及び発泡層41を積層してなる三層構造を有することを条件として、車両用内装品10の形状が上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
【0078】
<端末部21における切欠き46(貯留室45)の位置について>
・
図7~
図10に示すように、切欠き46を、裏面25及び外側面26のうち、外側面26のみにおいて開口させる。そして、外側面26のうち、貯留室45を挟んでシール部36とは反対側に隣接する箇所に対し端部予定部53の一部が接触されることにより、補助シール部37(
図8参照)が形成されてもよい。
【0079】
この補助シール部37により、貯留室45から発泡材料M1が漏れるのを規制することができる。補助シール部37による発泡材料M1の漏れ規制が加わる分、発泡材料M1のシール性能をさらに高めることが可能となる。
【0080】
<発泡層41を形成する樹脂材料について>
・発泡層41が、ウレタン樹脂とは異なる種類の樹脂の発泡体によって構成されてもよい。
【0081】
<シール部36について>
・シール部36は、表皮層31が端末部21における突部22のみの外側面26に接触されることにより形成されてもよい。また、シール部36は、表皮層31が突部22と、それよりも裏側の部分とに跨がって接触されることにより形成されてもよい。
【0082】
<切欠き46(貯留室45)の形態について>
・
図7及び
図10に示すように、切欠き46は、上記奥行き方向に延びる溝状に形成されてもよい。
【0083】
この変更例によると、大きな貯留室45が必要な場合にも対応可能である。また、上記奥行き方向のどの箇所からでも、シール部36を通過した発泡材料M1を貯留室45に収容させることが可能である。
【0084】
・切欠き46は、
図9に示すように、奥行き方向に互いに離間した複数箇所に形成されてもよい。
<切欠き46(貯留室45)の断面形状について>
・
図7~
図10に示すように、切欠き46(貯留室45)の断面形状が上記実施形態の断面形状とは異なる形状に変更されてもよい。
【0085】
図7及び
図8の切欠き46は、三角形の断面形状を有し、
図9の切欠き46は、台形の断面形状を有し、
図10の切欠き46は、矩形(長方形)の断面形状を有している。
図9の変更例では、切欠き46の表側の内面46aが水平に形成されている。
図7及び
図8の変更例では、切欠き46の表側の内面46aが表面24に近づくに従い低くなるように傾斜している。内面46aの傾きが急峻になるに従い、切欠き46の断面形状が小さくなる。従って、要求される切欠き46の大きさに応じて、内面46aの傾きを設定することが望ましい。
【0086】
その他、上記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)一般部、及び前記一般部の端縁部に形成された端末部を備える基材と、
前記一般部を表側から覆う主部、及び前記端末部の外側面に接触することでシール部を形成する端部を備える表皮層と、
前記一般部及び前記主部の間に形成された発泡層と
を備える車両用内装品に適用され、成形凹部を有する第1成形型、及び成形凸部を有する第2成形型を備える金型装置と、主部予定部及び端部予定部を有する表皮材とを用いて、前記主部、前記発泡層及び前記シール部を形成する方法であって、
前記基材を前記成形凸部に装着し、前記第1成形型に配置された前記表皮材を加熱により軟化させた後、前記金型装置を型締めすることで、前記主部予定部及び前記一般部の間に発泡成形空間を形成するとともに、前記発泡成形空間に隣接する変形用空間を形成し、
続いて、真空吸引により前記主部予定部を前記成形凹部の形状に追従するように変形させて前記主部を形成し、
前記発泡成形空間に発泡材料を注入して前記発泡層を形成しつつ、前記変形用空間の前記端部予定部を、前記成形凸部の外余剰面側へ吸引するとともに、前記成形凹部の内余剰面から空気を前記端部予定部に向けて吹き出して、同端部予定部を前記端末部の前記外側面に接触させて前記シール部を形成する。
【0087】
上記の方法によれば、金型装置の型締めにより、発泡成形空間及び変形用空間が形成される。軟化された表皮材の主部予定部が真空吸引により賦形されて主部が形成される。発泡成形空間に発泡材料が注入されて発泡層が形成される。変形用空間に配置された端部予定部が、成形凸部の外余剰面側へ吸引される。成形凹部の内余剰面から空気が端部予定部に向けて吹き出される。端部予定部が端末部の外側面に接触されて、シール部が形成される。
【0088】
このように、変形用空間において真空吸引と空気の吹き出しとが行なわれることで、端部予定部が変形用空間で変形されてシール部が形成される。そのため、表皮材の端部予定部を密着させることのできる端末部の形状、特に外側面の形状の自由度、ひいては、シール部の形状の自由度を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
10…車両用内装品
11…基材
12…一般部
14,17…表面
15,18…裏面
21…端末部
22…突部
26…外側面
31…表皮層
33…意匠面
35…発泡成形空間
36…シール部
37…補助シール部
41…発泡層
45…貯留室
46…切欠き
M1…発泡材料