IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フード開保持治具 図1
  • 特開-フード開保持治具 図2
  • 特開-フード開保持治具 図3
  • 特開-フード開保持治具 図4
  • 特開-フード開保持治具 図5
  • 特開-フード開保持治具 図6
  • 特開-フード開保持治具 図7
  • 特開-フード開保持治具 図8
  • 特開-フード開保持治具 図9
  • 特開-フード開保持治具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081623
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】フード開保持治具
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/02 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B05C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195476
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山敷 久巳
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA09
4F042AB00
4F042DF01
4F042DF36
4F042DH00
(57)【要約】
【課題】フードを所定の開き位置に保持したり解除したりする操作性を向上させることが可能なフード開保持治具を提供すること。
【解決手段】車体に連結された回転開閉式のフードを所定の開き位置に保持するフード開保持治具1であって、車体に対して上方から当接しかつ上方に抜け止めされるように固定される治具本体10と、治具本体10に設けられ、フードを下方からの当接により所定の開き位置に保持する当接支持部12と、治具本体10に回転可能なように設けられ、フードが所定の開き位置へと下降する移動によりフードに設けられたストライカに引掛けられる引掛部13と、を有する。引掛部13は、フードの下降によりストライカに当てられて初期位置から回転し、この回転によりストライカとの当接から抜けることで付勢により初期位置に復帰してストライカの上方への移動を治具本体10との当接による回転止めにより規制するようストライカと係合する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して上向きに開くことができるように連結された回転開閉式のフードを所定の開き位置に保持するフード開保持治具であって、
前記車体に対して上方から当接し、かつ、上方に抜け止めされるように固定される治具本体と、
該治具本体に設けられ、前記フードを下方からの当接により前記所定の開き位置に保持する当接支持部と、
前記治具本体に回転可能なように設けられ、前記フードが前記所定の開き位置へと下降する移動により前記フードに設けられたストライカに引掛けられる引掛部と、を有し、
前記引掛部が、前記フードの下降により前記ストライカに当てられて初期位置から回転し、該回転により前記ストライカとの当接から抜けることで付勢により前記初期位置に復帰して前記ストライカの上方への移動を前記治具本体との当接による回転止め又は先端の返しへの引掛けにより規制するよう前記ストライカと係合するフード開保持治具。
【請求項2】
請求項1に記載のフード開保持治具であって、
前記引掛部が、自重により前記初期位置に保持され、前記フードの下降により前記ストライカに当てられることで自重に抗して前記初期位置から回されるフード開保持治具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフード開保持治具であって、
前記治具本体に設けられ、前記フードが前記所定の開き位置へと下降する移動により前記フードに形成された凹部に入り込んで該凹部との車両前後方向の当接により前記治具本体の前記車体に対する車両前後方向の倒れ込みを防止する転倒防止部を更に有するフード開保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フード開保持治具に関する。詳しくは、車体に対して上向きに開くことができるように連結された回転開閉式のフードを所定の開き位置に保持するフード開保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の車体に電着塗装を施す工程で用いられるフード開保持治具が開示されている。このフード開保持治具は、車体のフードを所定の開き位置に保持することにより、車体を電着槽に浸漬させた際に、フードの裏面に気泡が滞留することを防止する。フード開保持治具は、具体的には、車体に固定される固定部材と、固定部材に対して上下動可能に組み付けられる可動部材と、を有する。
【0003】
フード開保持治具は、可動部材の上端にフードが係止され、可動部材の下端が固定部材に引掛けられることで、フードを車体に対して所定の開き位置に保持する構成とされる。フード開保持治具は、作業者によって、可動部材の下端の固定部材に対する引掛けが外されることで、フードを所定の開き位置に保持する状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-126221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フード開保持治具のフードに係止される部位と開き保持状態を解除する部位とが上下に離れて位置するため、操作性向上に改善の余地がある。そこで、本発明は、フードを所定の開き位置に保持したり解除したりする操作性を向上させることが可能なフード開保持治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のフード開保持治具は次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明のフード開保持治具は、車体に対して上向きに開くことができるように連結された回転開閉式のフードを所定の開き位置に保持するフード開保持治具である。フード開保持治具は、治具本体と、当接支持部と、引掛部と、を有する。治具本体は、車体に対して上方から当接し、かつ、上方に抜け止めされるように固定される。当接支持部は、治具本体に設けられ、フードを下方からの当接により所定の開き位置に保持する。
【0008】
引掛部は、治具本体に回転可能なように設けられ、フードが所定の開き位置へと下降する移動によりフードに設けられたストライカに引掛けられる。引掛部は、フードの下降によりストライカに当てられて初期位置から回転し、この回転によりストライカとの当接から抜けることで付勢により初期位置に復帰してストライカの上方への移動を治具本体との当接による回転止め又は先端の返しへの引掛けにより規制するようストライカと係合する。
【0009】
上記構成によれば、治具本体を車体に固定し、フードを所定の開き位置へと下降させることで、当接支持部がフードと当接すると共に引掛部がストライカに係合される。この当接と係合とにより、フードの所定の開き位置からの下降と開きとを防止することができる。また、引掛部をフードのストライカとの引掛けから外すことにより、治具本体を動かすことなく、フードの開き保持状態を簡便に解除することができる。このような構成により、フードを所定の開き位置に保持したり解除したりする操作を簡便に行うことができる。
【0010】
また、本発明のフード開保持治具は、更に次のように構成されていても良い。引掛部が、自重により初期位置に保持され、フードの下降によりストライカに当てられることで自重に抗して初期位置から回される。
【0011】
上記構成によれば、引掛部を、バネ等の付勢部材を用いることなく、初期位置に保持したりストライカにより押し回された位置から初期位置に復帰させたりすることができる。
【0012】
また、本発明のフード開保持治具は、更に次のように構成されていても良い。フード開保持治具が、治具本体に設けられる転倒防止部を更に有する。転倒防止部は、フードが所定の開き位置へと下降する移動により、フードに形成された凹部に入り込んで、凹部との車両前後方向の当接により治具本体の車体に対する車両前後方向の倒れ込みを防止する。
【0013】
上記構成によれば、転倒防止部のフードの凹部への入り込みにより、治具本体の車体に対する姿勢をより安定させることができる。それにより、フードを所定の開き位置により適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るフード開保持治具の概略構成を表す側面図である。
図2図1を車両前斜め下方から見た斜視図である。
図3図1を車両後斜め上方から見た斜視図である。
図4図1の正面図である。
図5】フード開保持治具の斜視図である。
図6図4のVI-VI線断面図である。
図7図4のVII-VII線断面図である。
図8】フードの下降によりストライカが引掛部に当てられた状態を表す部分拡大図である。
図9】フードの下降により引掛部がストライカに係合した状態を表す部分断面図である。
図10】引掛部がストライカとの係合から外された状態を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(フード開保持治具1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るフード開保持治具1の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中、前方向は車両の進行方向を指す。また、以下の説明において、「車幅方向」と示す場合には、各図中の左右方向を示す。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0017】
図1図4に示すように、本実施形態に係るフード開保持治具1は、自動車の車体2に電着塗装を施す工程において、フード4を所定の開き位置に保持するために用いられる治具として構成される。具体的には、フード開保持治具1は、車体2のラジエータサポートアッパ3(以下、ラジサポアッパ3)に固定される固定部11を備えた治具本体10と、治具本体10に設けられてフード4を下方からの当接により上記所定の開き位置に保持する左右一対の当接支持部12と、を有する。
【0018】
また、フード開保持治具1は、フード4を上記所定の開き位置へと下降させることにより、フード4の前端下部に設けられた金属製U字状のストライカ4Aと係合する引掛部13を有する。引掛部13は、上記ストライカ4Aとの係合により、ストライカ4Aの上方への移動、すなわちフード4の開きを規制可能となる構成とされる。そのため、フード4をフード開保持治具1に係合させてから車体2を電着槽へと浸漬させることにより、フード4を所定の開き位置に保持しながら車体2及びフード4の電着塗装を行うことができる。
【0019】
その結果、電着塗装時に、フード4の裏面に当たる気泡をフード4の開いた傾きに沿って外部へと適切に逃がして、フード4の裏面に気泡が滞留することを適切に防止することができる。したがって、車体2及びフード4に良好な電着塗装を施すことができる。なお、フード開保持治具1によりフード4を保持する所定の開き位置は、フード4の形状や塗装条件等に合わせて設定される、閉じ位置と全開位置との間の開き位置である。フード4は、その左右両サイドの後端部が、車体2に対して不図示のヒンジにより上向きに開いたり下向きに閉じたりすることができるように連結されている。
【0020】
フード開保持治具1は、上記電着塗装を行った後、作業者によりフード4との係合状態から外されて、車体2のラジサポアッパ3から取り外される。フード開保持治具1は、上記電着塗装の前後で、作業者による車体2及びフード4に対する着脱作業を車体2の正面に立つ位置から簡便かつ合理的に行うことができるように構成されている。以下、フード開保持治具1の各部の具体的な構成について詳しく説明する。
【0021】
(フード開保持治具1の各部構成)
図5に示すように、フード開保持治具1は、その治具本体10が、複数本の丸パイプ材や板材が正面視横長な四角枠状を成す形に組まれた構成とされる。具体的には、治具本体10は、その左右の枠側部を成す上下方向に真っ直ぐ延びる左右一対の側辺パイプ10Aを有する。また、治具本体10は、各側辺パイプ10Aの上端から車幅方向の内側に真っ直ぐ延びる形に曲げられた左右一対の上辺パイプ10Bを有する。
【0022】
また、治具本体10は、各側辺パイプ10Aの下端から前方に真っ直ぐ延びる形に曲げられた左右一対の底辺パイプ10Cを有する。また、治具本体10は、各底辺パイプ10Cの前端と各側辺パイプ10Aの上端との間に斜めに真っ直ぐ延びるように一体的に架橋された左右一対の斜めパイプ10Dを有する。また、治具本体10は、各底辺パイプ10Cの前後方向の中間部から下方に真っ直ぐ延び出すように各底辺パイプ10Cに一体的に結合された左右一対の垂下パイプ10Eを有する。
【0023】
また、治具本体10は、各上辺パイプ10Bの間に一体的に架橋された車幅方向に真っ直ぐ延びるアッパ架橋パイプ10Fを有する。上記各上辺パイプ10Bとアッパ架橋パイプ10Fとによって、治具本体10の枠上部が形成されている。また、治具本体10は、各側辺パイプ10Aの上下方向の中間部間に一体的に架橋された車幅方向に真っ直ぐ延びる中間架橋パイプ10Gを有する。また、治具本体10は、各垂下パイプ10Eの下端部間に一体的に架橋されて各垂下パイプ10E間を平面視U字状に延びる形で繋ぐロア架橋パイプ10Hを有する。ロア架橋パイプ10Hは、治具本体10の枠下部を成す。
【0024】
また、治具本体10は、アッパ架橋パイプ10Fの車幅方向の中間部から前方に真っ直ぐ延び出すようにアッパ架橋パイプ10Fに一体的に結合されたアッパ延出パイプ10Jを有する。また、治具本体10は、中間架橋パイプ10Gの車幅方向の中間部から前方に真っ直ぐ延び出すように中間架橋パイプ10Gに一体的に結合された中間延出パイプ10Kを有する。また、治具本体10は、アッパ延出パイプ10Jと中間延出パイプ10Kとの間に一体的に架橋された前後一対の縦パイプ10Lを有する。
【0025】
前後一対の縦パイプ10Lは、そのうちの前側の縦パイプ10Lが、各側辺パイプ10Aと平行に上下方向に真っ直ぐ延びる形に設けられている。一方、後側の縦パイプ10Lは、前側の縦パイプ10Lに対して僅かに前傾した角度で延びる形に設けられている。それにより、前後一対の縦パイプ10Lは、互いの前後方向の間隔が上方に向かって狭まる形に設けられている。また、治具本体10は、前後一対の縦パイプ10Lの上端部間に跨って一体的に結合された三角板10Mを有する。
【0026】
三角板10Mは、その表裏面を車幅方向に向けて上向きに凸となる形に設けられている。三角板10Mは、図7に示すように、その基部の前後面が、互いに平行に上下方向に真っ直ぐ延びる平行面M1とされる。また、三角板10Mは、その平行面M1の立ち上がった先から先端までの前後面が、山の各斜面を成すように斜めに延びる傾斜面M2とされる。それにより、三角板10Mは、上方に向かって前後方向の幅が先細り状に狭まっていく構成とされている。
【0027】
図5に示すように、治具本体10は、アッパ延出パイプ10Jに回転可能なように組み付けられた可動パイプ10Nを有する。可動パイプ10Nは、側面視逆L字状に曲げられた形状を成す把持部N1と、把持部N1の上端から図示左方に真っ直ぐ延びる形に曲げられた掛かり部N2と、を有する。把持部N1は、図示上下方向に真っ直ぐ延びる部分と、その下端部から図示前方に真っ直ぐ延びる形に曲げられた部分と、を有する側面視逆L字状を成す形状とされる。
【0028】
把持部N1は、その逆L字の前方に延び出る部分が、作業者により直接把持されて手動による回転操作が行われる操作部として機能する。また、可動パイプ10Nは、その掛かり部N2の図示左方に延び出した先の端部に、図示下方に折り返される形に曲げられた返しN3を有する。上記可動パイプ10Nは、その掛かり部N2の基部、すなわち把持部N1との繋ぎ目の近傍箇所が、アッパ延出パイプ10Jの外周部に、同外周部に沿って回転可能となる状態に連結されている。
【0029】
詳しくは、上記可動パイプ10Nの掛かり部N2の基部は、アッパ延出パイプ10Jの各縦パイプ10Lの間を延びる部分の外周部に回転可能なように連結されている。それにより、可動パイプ10Nは、アッパ延出パイプ10Jに対して、同図に示すように掛かり部N2を前後一対の縦パイプ10Lの間に通したり間から外したりするような回転を行える状態として設けられている。可動パイプ10Nは、その自由状態では、自重により掛かり部N2が前後一対の縦パイプ10Lの間に通されて略水平状の姿勢をとる状態(初期位置の状態)に保持される。
【0030】
上記初期位置の状態では、可動パイプ10Nの把持部N1は、前後一対の縦パイプ10Lの図示右側に位置する。詳しくは、可動パイプ10Nの把持部N1は、その逆L字の前方に延び出る部分が、前側の縦パイプ10Lの右側の領域を前後に跨って延びる形に設けられる。上記初期位置の状態から、可動パイプ10Nは、そのアッパ延出パイプ10Jを中心とした正面視時計回り方向の回転は許容される。しかし、可動パイプ10Nは、上記初期位置の状態からの正面視反時計回り方向の回転は、把持部N1と前側の縦パイプ10Lとの当接により規制される。
【0031】
また、治具本体10は、アッパ架橋パイプ10Fの左右各側の端部に一体的に結合された逆U字状に曲げられた形状を成す左右一対の逆U字パイプ10Pを有する。左右一対の逆U字パイプ10Pは、それぞれ、アッパ架橋パイプ10Fから上方に向かって逆U字状に真っ直ぐ延びる形に設けられている。
【0032】
また、治具本体10は、中間延出パイプ10Kに一体的に結合された前突出パイプ10Qを有する。前突出パイプ10Qは、中間延出パイプ10Kの右側部に、同右側部に沿って前方に真っ直ぐ延びる部分と、その前端部から図示下方に向かって僅かに斜め前方向きとなるように真っ直ぐ延びる形に曲げられた部分と、を有する側面視逆L字状を成す形状とされる。また、前突出パイプ10Qは、その下斜め前方に延び出た先の端部が、更に前方に折れ曲がる形に曲げられた形状とされる。
【0033】
また、治具本体10は、各底辺パイプ10Cの垂下パイプ10Eより前側の領域の下側部に、下方に向かって円筒状に延び出す形に結合された左右一対のレッグ10Rを有する。更に、治具本体10は、各レッグ10Rの下側部に、前方に向かって平板状に延び出す形に結合された左右一対の平板状の掛プレート10Sを有する。各掛プレート10Sは、それらの前端側の左右の角部が丸められた形状とされる。
【0034】
上記構成により、治具本体10は、図1図4で前述したラジサポアッパ3に対して適切に固定した状態に組み付けることができる構成とされる。また、治具本体10は、上記四角枠状を成す形に組まれると共に各枠間に補強部材が架橋された構成により、曲げや捩りに対する構造強度が適切に高められた構成とされる。それにより、治具本体10は、フード4をラジサポアッパ3に対して適切に所定の開き位置に開いた状態に保持することができる構成とされる。
【0035】
上記治具本体10は、その各底辺パイプ10Cと各レッグ10Rと各掛プレート10Sとによって、図3図4で前述したラジサポアッパ3に固定される固定部11が形成される。固定部11は、具体的には、次のようにラジサポアッパ3に固定された状態に組み付けられる。すなわち、先ず、図6に示すように、その各掛プレート10Sと各レッグ10Rとを、ラジサポアッパ3の天板3Aに貫通して形成された対応する各差込孔3B内に上方から斜めの角度で差し込む。
【0036】
そして、上記差し込み後に、各底辺パイプ10Cをラジサポアッパ3の天板3A上に接地させる。それにより、各掛プレート10Sが、ラジサポアッパ3の対応する各差込孔3Bの下側で各差込孔3Bを前方に越えて張り出す状態にセットされる。上記組み付けにより、治具本体10は、ラジサポアッパ3に対して、天板3A上に起立した状態に保持されると共に、天板3Aからの抜け方向(上方向)の移動が各掛プレート10Sの天板3Aへの引掛かりによって規制される状態(固定状態)に保持される。
【0037】
ラジサポアッパ3は、横断面逆U字状を成すパネル形状で車幅方向に長尺状に延びる構成とされる。ラジサポアッパ3は、その所々の箇所が、車体2の他のパネル部に一体的に結合されている。
【0038】
また、治具本体10は、図5に示すように、その各逆U字パイプ10Pによって、図2及び図4で前述したフード4を下方からの当接により所定の開き位置に保持する各当接支持部12が形成される。各当接支持部12は、具体的には、次のようにフード4を下方からの当接により所定の開き位置に保持するようになっている。すなわち、先ず、治具本体10の固定部11が上述したラジサポアッパ3に固定された状態で、フード4を車体2に対して開いた位置から下降させる。
【0039】
それにより、図2に示すように、フード4の裏面の左右2箇所の位置に形成された対応する横長状の各嵌合溝4Cが、治具本体10の各逆U字パイプ10Pの上辺部分に上方から嵌り込んだ状態に当接する。上記当接により、治具本体10は、各逆U字パイプ10Pによってフード4を下方から支えると共に、各嵌合溝4Cへの嵌り込みによって、フード4に対する前後方向の移動が規制された状態に保持される。
【0040】
その結果、治具本体10は、各逆U字パイプ10Pによってフード4を定位置で安定的に支持することができる状態となる。また、治具本体10は、各逆U字パイプ10Pの各嵌合溝4Cへの嵌り込みによって、フード4から受ける反力により前後方向に傾倒されることがないよう定位置に安定的に保持される状態となる。
【0041】
また、治具本体10は、図5に示すように、その可動パイプ10Nによって、図2及び図4で前述したフード4の前端下部に設けられたストライカ4Aと係合する引掛部13が形成される。引掛部13は、フード4を上記各当接支持部12によって下支えされる所定の開き位置まで下降させることにより、フード4のストライカ4Aと係合するようになっている。
【0042】
具体的には、上記フード4の下降により、図8に示すように、その移動の過程で、ストライカ4Aの下辺部分が、初期位置にある可動パイプ10Nの掛かり部N2に図示上方から当接する。ストライカ4Aは、フード4の裏面から下方に向かって側面視U字状に真っ直ぐ延び出す形に設けられている。ストライカ4Aは、車体2の一連の塗装処理後にラジサポアッパ3に組み付けられる不図示のフードロックとの間でフード4を閉じた位置にロックするロック機構を構成するものである。
【0043】
上記可動パイプ10Nは、ストライカ4Aとの当接により、図9に示すように、フード4の下降に伴って、掛かり部N2がストライカ4Aにより正面視時計回り方向に押し回される。そして、可動パイプ10Nは、上記回転の進行により掛かり部N2がストライカ4Aとの当接から抜けることで、自重により初期位置へと復帰する。その結果、可動パイプ10Nは、掛かり部N2がストライカ4AのU字の内部に図示左方から通された状態に切り替わる。
【0044】
それにより、可動パイプ10Nは、フード4が所定の開き位置から開かれる移動を前側の縦パイプ10Lとの当接により規制することができる状態となる。具体的には、フード4が所定の開き位置から開かれる方向に動かされると、ストライカ4Aの下辺部分が可動パイプ10Nの掛かり部N2を図示下方から押圧する。それにより、可動パイプ10Nが、正面視反時計回り方向に押し回される力を受ける。しかし、把持部N1が前側の縦パイプ10Lと当接することで、この方向の回転は規制される。
【0045】
上記回転規制により、フード4を所定の開き位置から開く方向の移動が規制される。その際、フード開保持治具1の組み付け位置のバラつきにより、ストライカ4Aが可動パイプ10Nの掛かり部N2の先端付近に当接することがあっても、掛かり部N2の先端に形成された返しN3がストライカ4Aの下辺部分に引掛かるようになっている。そのため、ストライカ4Aを掛かり部N2に適切に当てて、フード4の開きを適切に規制することができる。
【0046】
上記引掛部13は、ストライカ4AのU字の内部に通された状態から、次の手順により簡便に外される。すなわち、先ず、作業者が可動パイプ10Nの把持部N1を掴んで、可動パイプ10Nを正面視時計回り方向に回転させる。それにより、図10に示すように、掛かり部N2がストライカ4AのU字の内部に通されていた状態から外される。したがって、この状態からフード4を開くことで、フード4をフード開保持治具1との係合状態から外すことができる。
【0047】
以上が、フード開保持治具1の引掛部13に纏わる構成となっている。フード開保持治具1は、この他、図5に示すように、転倒防止部14と、前当たり部15と、を備える構成とされる。転倒防止部14は、上述した三角板10Mによって形成される。前当たり部15は、上述した前突出パイプ10Qによって形成される。
【0048】
転倒防止部14は、具体的には、図2及び図7に示すように、作業者がフード4を所定の開き位置へと下降させることにより、三角板10Mがフード4のストライカ4Aの右隣に貫通して形成された通し孔4B内に図示下方から通される。その際、三角板10Mは、その先端の前後面が各傾斜面M2により山状に先細りした形状とされていることにより、フード4の通し孔4B内に円滑にセンタリングされた状態に通される。
【0049】
上記三角板10Mは、上記フード4の下降により、図7に示すように、通し孔4Bに対して基部側の平行面M1が入り込む位置まで通される。それにより、治具本体10は、三角板10Mの各平行面M1が、通し孔4Bの前後の周縁に対向した状態にセットされる。その結果、治具本体10は、上記三角板10Mの各平行面M1と通し孔4Bの前後の周縁との対向により、フード4に対して前後方向に傾倒されることがないよう定位置に安定的に保持される状態となる。ここで、通し孔4Bが、本発明の「凹部」に相当する。
【0050】
図5に示すように、前当たり部15は、前述した固定部11がラジサポアッパ3(図1参照)に固定された状態にセットされた際に、前突出パイプ10Qの先端が、ラジサポアッパ3に結合された不図示のブラケットに後方から当接した状態にセットされる。それにより、治具本体10が、フード4を閉じる前の状態であっても、ラジサポアッパ3に対して適切に自立した状態に保持されるようになっている。
【0051】
以上をまとめると、本実施形態に係るフード開保持治具1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0052】
すなわち、フード開保持治具(1)は、車体(2)に対して上向きに開くことができるように連結された回転開閉式のフード(4)を所定の開き位置に保持する治具として構成される。フード開保持治具(1)は、治具本体(10)と、当接支持部(12)と、引掛部(13)と、を有する。治具本体(10)は、車体(2)に対して上方から当接し、かつ、上方に抜け止めされるように固定される。当接支持部(12)は、治具本体(10)に設けられ、フード(4)を下方からの当接により所定の開き位置に保持する。
【0053】
引掛部(13)は、治具本体(10)に回転可能なように設けられ、フード(4)が所定の開き位置へと下降する移動によりフード(4)に設けられたストライカ(4A)に引掛けられる。引掛部(13)は、フード(4)の下降によりストライカ(4A)に当てられて初期位置から回転し、この回転によりストライカ(4A)との当接から抜けることで付勢により初期位置に復帰してストライカ(4A)の上方への移動を治具本体(10)との当接による回転止めにより規制するようストライカ(4A)と係合する。
【0054】
上記構成によれば、治具本体(10)を車体(2)に固定し、フード(4)を所定の開き位置へと下降させることで、当接支持部(12)がフード(4)と当接すると共に引掛部(13)がストライカ(4A)に係合される。この当接と係合とにより、フード(4)の所定の開き位置からの下降と開きとを防止することができる。また、引掛部(13)をフード(4)のストライカ(4A)との引掛けから外すことにより、治具本体(10)を動かすことなく、フード(4)の開き保持状態を簡便に解除することができる。このような構成により、フード(4)を所定の開き位置に保持したり解除したりする操作を簡便に行うことができる。
【0055】
また、引掛部(13)が、自重により初期位置に保持され、フード(4)の下降によりストライカ(4A)に当てられることで自重に抗して初期位置から回される。上記構成によれば、引掛部(13)を、バネ等の付勢部材を用いることなく、初期位置に保持したりストライカ(4A)により押し回された位置から初期位置に復帰させたりすることができる。
【0056】
また、フード開保持治具(1)が、治具本体(10)に設けられる転倒防止部(14)を更に有する。転倒防止部(14)は、フード(4)が所定の開き位置へと下降する移動により、フード(4)に形成された凹部(4B)に入り込んで、凹部(4B)との車両前後方向の当接により治具本体(10)の車体(2)に対する車両前後方向の倒れ込みを防止する。
【0057】
上記構成によれば、転倒防止部(14)のフード(4)の凹部(4B)への入り込みにより、治具本体(10)の車体(2)に対する姿勢をより安定させることができる。それにより、フード(4)を所定の開き位置により適切に保持することができる。
【0058】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0059】
1.本発明のフード開保持治具は、自動車の車体に電着塗装を施す工程で用いられるものの他、電着塗装以外の時にフードを所定の開き位置に保持するために用いられるものであっても良い。
【0060】
2.フードを下方からの当接により所定の開き位置に保持する当接支持部は、フードを車幅方向の1箇所又は3箇所以上で下支えする構成であっても良い。また、当接支持部は、フードを車両前後方向の1箇所又は複数箇所で下支えする構成であっても良い。
【0061】
3.引掛部は、自重により初期位置に付勢保持されるものの他、治具本体との間に掛けられるバネにより初期位置に付勢保持される構成であっても良い。また、引掛部は、ストライカの上方への移動を、治具本体との当接を伴うことなく、引掛部の先端に設けた返し(図9に示す返しN3)にストライカを引掛けることで規制するものであっても良い。
【0062】
4.治具本体の転倒防止部が入り込むフードの凹部は、フードの裏面のストライカに隣り合って設けられる通し孔の他、フードの裏面に設けられる部品の取付孔等の各種の孔や溝から成るものであっても良い。
【0063】
5.治具本体を車体に対して上方から当接し、かつ、上方に抜け止めされるように固定する固定部は、車体のラジエータサポートアッパ以外のパネル部に固定される構成であっても良い。また、治具本体の固定部は、車体に対して上方からの差し込みにより抜け止めされるように固定されるものの他、側方又は前後方向からの差し込みにより抜け止めされるように固定されるものであっても良い。また、上記固定部の車体に対する固定は、ビス等の差し込み式の締結構造やスナップフィット嵌合構造を用いて上方に抜け止めされるように固定するものであっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 フード開保持治具
2 車体
3 ラジエータサポートアッパ
3A 天板
3B 差込孔
4 フード
4A ストライカ
4B 通し孔(凹部)
4C 嵌合溝
10 治具本体
10A 側辺パイプ
10B 上辺パイプ
10C 底辺パイプ
10D 斜めパイプ
10E 垂下パイプ
10F アッパ架橋パイプ
10G 中間架橋パイプ
10H ロア架橋パイプ
10J アッパ延出パイプ
10K 中間延出パイプ
10L 縦パイプ
10M 三角板
10N 可動パイプ
10P 逆U字パイプ
10Q 前突出パイプ
10R レッグ
10S 掛プレート
11 固定部
12 当接支持部
13 引掛部
14 転倒防止部
15 前当たり部
M1 平行面
M2 傾斜面
N1 把持部
N2 掛かり部
N3 返し
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10