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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008163
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ワイヤー回路の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20230112BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H05K3/10 A
H01F41/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111499
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松波 明
【テーマコード(参考)】
5E062
5E343
【Fターム(参考)】
5E062DD01
5E062FF01
5E062FG12
5E062FG13
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA16
5E343BB24
5E343BB28
5E343BB61
5E343BB68
5E343DD65
5E343FF30
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】基材に対して熱によるダメージを与えることなく基材にワイヤー回路を形成することができるワイヤー回路の形成方法を提供する。
【解決手段】ワイヤー回路の形成方法は、合成樹脂製の基材13に金属製の端子14を形成する端子形成工程と、端子14にヒーター線17における始点となる先端部17aを熱によって接合する接合工程と、ヒーター線17を基材13に押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13に回路パターンを描画する描画工程と、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断する切断工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基材にワイヤー回路を形成するワイヤー回路の形成方法であって、
前記基材に金属製の端子を形成する端子形成工程と、
前記端子にワイヤーにおける始点となる端部を熱によって接合する接合工程と、
前記ワイヤーを前記基材に押し付けてめり込ませながら前記ワイヤーで前記基材に回路パターンを描画する描画工程と、
前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部から終点となる部位までを前記基材側に残して前記ワイヤーを切断する切断工程と、
を備えることを特徴とするワイヤー回路の形成方法。
【請求項2】
前記端子形成工程では、前記基材における互いに異なる位置に一対の前記端子を形成し、
前記接合工程では、一対の前記端子のうちの一方に前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部を熱によって接合し、
前記切断工程では、一対の前記端子のうちの他方に前記ワイヤーにおける前記終点となる前記部位を熱によって接合した後、前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部から前記終点となる前記部位までを前記基材側に残して前記ワイヤーを切断することを特徴とする請求項1に記載のワイヤー回路の形成方法。
【請求項3】
前記描画工程では、前記ワイヤーを前記基材に押し付けてめり込ませながら前記ワイヤーで前記基材に前記回路パターンを描画する際に、前記基材における前記ワイヤーを押し付けてめり込ませる部分を熱によって軟化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤー回路の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の基材にワイヤー回路を形成するワイヤー回路の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイヤー回路の形成方法として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1には、例えばポリカーボネートなどの合成樹脂材料によって構成される絶縁フィルム(基材)の背面側に例えばニクロム線などの導電性材料によって構成されるヒーターエレメント(ワイヤー)を形成または描画することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-176895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1では、絶縁フィルムへのヒーターエレメントの形成または描画には、印刷、蒸着、スパッタ、メッキ、エッチング、ワイヤーボンディング、インクジェット、又はディスペンサー等を用いることが記載されている。しかしながら、絶縁フィルムへのヒーターエレメントの形成に、例えばワイヤーボンディング工法を用いた場合、次のような問題がある。
【0005】
すなわち、絶縁フィルムは汎用性の合成樹脂製であるため、金属同士を接合するワイヤーボンディング工法を用いて絶縁フィルムにヒーターエレメントを形成すると、ワイヤーボンディング工法で発生する大きな熱量によって絶縁フィルムが溶けてしまう。このため、絶縁フィルムに対して熱によるダメージを与えることなく絶縁フィルムにヒーターエレメントを形成することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するワイヤー回路の形成方法は、合成樹脂製の基材にワイヤー回路を形成するワイヤー回路の形成方法であって、前記基材に金属製の端子を形成する端子形成工程と、前記端子にワイヤーにおける始点となる端部を熱によって接合する接合工程と、前記ワイヤーを前記基材に押し付けてめり込ませながら前記ワイヤーで前記基材に回路パターンを描画する描画工程と、前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部から終点となる部位までを前記基材側に残して前記ワイヤーを切断する切断工程と、を備えることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、金属製の端子にワイヤーにおける始点となる端部を熱によって接合する際に、当該熱が直接的に合成樹脂製の基材に加わらないので、当該基材に加わる熱を効果的に低減できる。このため、基材に対して熱によるダメージを与えることなく基材にワイヤー回路を形成することができる。
【0008】
上記ワイヤー回路の形成方法において、前記端子形成工程では、前記基材における互いに異なる位置に一対の前記端子を形成し、前記接合工程では、一対の前記端子のうちの一方に前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部を熱によって接合し、前記切断工程では、一対の前記端子のうちの他方に前記ワイヤーにおける前記終点となる前記部位を熱によって接合した後、前記ワイヤーにおける前記始点となる前記端部から前記終点となる前記部位までを前記基材側に残して前記ワイヤーを切断することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、金属製の一対の端子にワイヤーにおける始点及び終点を熱によってそれぞれ接合する際に、当該熱が直接的に合成樹脂製の基材に加わらないので、当該基材に加わる熱を効果的に低減できる。したがって、一対の端子をワイヤーで接続するワイヤー回路を、基材に対して熱によるダメージを与えることなく基材に形成することができる。
【0010】
上記ワイヤー回路の形成方法において、前記描画工程では、前記ワイヤーを前記基材に押し付けてめり込ませながら前記ワイヤーで前記基材に前記回路パターンを描画する際に、前記基材における前記ワイヤーを押し付けてめり込ませる部分を熱によって軟化させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ワイヤーを基材に対して容易にめり込ませることができる。このため、ワイヤーを基材に押し付けてめり込ませながらワイヤーで基材に回路パターンを描画する描画工程を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材に対して熱によるダメージを与えることなく基材にワイヤー回路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の部品の平面模式図である。
図2図1の2-2線矢視断面図である。
図3】基材にヒーター回路を形成するヒーター回路形成装置を示す側面模式図である。
図4】基材にヒーター回路を形成するときの最初の状態を示す断面模式図である。
図5】基材にヒーター回路を形成するときの途中の状態を示す断面模式図である。
図6】基材にヒーター回路を形成するときの最後の状態を示す断面模式図である。
図7】変更例の描画ユニット内の接合ユニットが使用位置にあるときの状態を示す側面模式図である。
図8】変更例の描画ユニット内の接合ユニットが非使用位置にあるときの状態を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ワイヤー回路の形成方法をヒーター回路の形成方法に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、部品11は、ワイヤー回路形成を必要とする合成樹脂製品全般に用いられる。すなわち、部品11は、例えば車両におけるミリ波レーダー装置及びLiDAR(Light Detection and Ranging)センサーなどを隠すとともにワイヤー回路の一例としての融雪用のヒーター回路12を有したカバー、エンブレム、及びガーニッシュなどに用いられる。
【0015】
部品11は、矩形板状をなす合成樹脂製の基材13と、基材13に形成された一対の金属製の端子14と、基材13に形成されるとともに一対の端子14同士を電気的に接続するヒーター回路12とを備えている。一対の端子14のうち、一方は第1端子15とされ、他方は第2端子16とされている。
【0016】
基材13は、ほぼ全ての合成樹脂によって構成することができる。基材13は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂などの汎用樹脂、あるいはポリカーボネート(PC)などのエンジニアリングプラスチックなどによって構成される。
【0017】
ヒーター回路12は、ワイヤーの一例としてのヒーター線17によって構成されている。ヒーター線17は、例えば、銅やアルミニウムなどを主材とする裸線、エナメル線、及びマグネットワイヤーなどによって構成される。マグネットワイヤーは、銅もしくはアルミニウムを主材としたワイヤーであって且つ絶縁層及び自己融着層を有したワイヤーである。
【0018】
一対の端子14は、共に矩形板状をなしており、基材13に対して例えばインサート成型によって形成される。一対の端子14は、例えば基材13の表面13aにおける端縁部に、表面13aと面一になるとともに互いに離れて異なる位置に配置されている。ヒーター線17は、基材13の表面13aに予め設定された回路パターンを描くように延びて形成されるとともに、両端部が一対の端子14に対してそれぞれ接続されている。
【0019】
この場合、ヒーター線17は、基材13の表面13aに半分程度がめり込んだ状態になっている。すなわち、ヒーター線17は、基材13に対して半分程度が埋まるとともに、残りの半分程度が基材13から露出した状態になっている。
【0020】
次に、一対の端子14が形成された基材13の表面13aにヒーター回路12を形成するためのヒーター回路形成装置20について説明する。
図3に示すように、ヒーター回路形成装置20は、基材13を支持する矩形板状のステージ21と、ステージ21の上方に配置された描画ユニット22と、ステージ21の上方に配置された接合ユニット23とを備えている。ステージ21は、その上面に載置される基材13を固定可能に構成されている。描画ユニット22及び接合ユニット23は、それぞれロボットアーム(図示略)によって支持されている。すなわち、描画ユニット22及び接合ユニット23は、それぞれロボットアーム(図示略)によって三次元的に自在に移動されるようになっている。
【0021】
描画ユニット22は、鉛直方向に延びる筒状の本体ケース24を備えている。本体ケース24の下端部は、下方に向かうほど外径が小さくなるテーパー状をなしている。本体ケース24には、ヒーター線供給装置(図示略)から供給されるヒーター線17を本体ケース24の側部に形成された開口から内部に取り込んで本体ケース24の下端開口24aから基材13の表面13aへ送り出す送出部25が設けられている。
【0022】
本体ケース24の下端部には、描画部26及び切断部27が設けられている。描画部26は、送出部25によって本体ケース24の下端開口24aから基材13の表面13aへ送り出されるヒーター線17を基材13の表面13aに押し付けながら基材13の表面13aが軟化する程度の熱を発生させてヒーター線17を基材13の表面13aにめり込ませる。
【0023】
描画部26は、例えば、ヒーター線17を超音波によって縦方向(基材13の表面13aと直交する方向)に振動させながら基材13の表面13aに押し付ける超音波ホーンを有した超音波振動装置によって構成される。この場合、描画部26は、振動する超音波ホーンのヒーター線17への接触によってヒーター線17を縦方向に振動させることで、ヒーター線17と基材13の表面13aとの間に基材13の表面13aが軟化する程度の比較的低い温度の摩擦熱を発生させる。切断部27は、例えば、ヒーター線17を切断刃によって切断する切断装置によって構成される。
【0024】
接合ユニット23は、ヒーター線17を端子14に熱によって接合するものである。接合ユニット23は、例えば、ヒーター線17を超音波によって横方向(基材13の表面13aに沿う方向)に振動させながら端子14に押し付ける超音波ホーンを有した超音波振動装置によって構成される。この場合、接合ユニット23は、振動する超音波ホーンのヒーター線17への接触によってヒーター線17を横方向に振動させることで、ヒーター線17と端子14との間にヒーター線17と端子14とが溶接される程度の比較的高い温度の摩擦熱を発生させる。
【0025】
次に、上記した部品11を製造するべく、基材13の表面13aにヒーター回路12を形成する方法について説明する。
図3に示すように、基材13の表面13aにヒーター回路12を形成する場合には、まず、基材13の表面13aの端縁部における互いに異なる位置にインサート成型によって第1端子15及び第2端子16を形成する(端子形成工程)。続いて、描画ユニット22を、本体ケース24の下端開口24aが基材13の表面13aにおける第1端子15の直ぐ横の位置である初期位置Sと対向する位置に移動させる。
【0026】
続いて、送出部25により本体ケース24の下端開口24aから基材13の表面13aにおける初期位置Sへヒーター線17を送り出す。ヒーター線17の先端が基材13の表面13aにおける初期位置Sに接触したら、描画部26によりヒーター線17の先端を基材13の表面13aにおける初期位置Sに押し付けてめり込ませる。
【0027】
このとき、描画部26は、ヒーター線17を振動させることで、ヒーター線17の先端と基材13の表面13aの初期位置Sとの間に基材13の表面13aが軟化する程度の比較的低い温度の摩擦熱を発生させる。このため、ヒーター線17の先端は、基材13の表面13aにおける初期位置Sに円滑にめり込んで接合される。続いて、図4に示すように、描画ユニット22を、本体ケース24の下端開口24aが基材13の表面13aにおける第1端子15と対向する位置に移動するように、基材13の表面13aに沿って移動させる。
【0028】
ヒーター線17は、描画ユニット22の基材13の表面13aに沿う移動に伴って、送出部25により本体ケース24の下端開口24aから基材13の表面13aに向けて送り出される。続いて、図5に示すように、描画ユニット22が第1端子15と対向する位置を横切ったら、ヒーター線17における始点となる先端部17aと第1端子15とが重なる位置に接合ユニット23を移動させる。
【0029】
続いて、接合ユニット23によりヒーター線17を振動させることで、ヒーター線17と第1端子15との間にヒーター線17と第1端子15とが溶接される程度の比較的高い温度の摩擦熱を発生させる。これにより、ヒーター線17における始点となる先端部17aと第1端子15とが溶接される。すなわち、一対の端子14のうちの一方である第1端子15にヒーター線17における始点となる先端部17aを摩擦熱によって接合する(接合工程)。この接合工程を行った後は、接合ユニット23を基材13の表面13aから上方へ離れるように退避させる。
【0030】
引き続き、第1端子15と対向する位置を横切った描画ユニット22を、ヒーター線17によって基材13の表面13aに予め設定された回路パターンが描画されるように、基材13の表面13aに沿って移動させる。このとき、送出部25により本体ケース24の下端開口24aから基材13の表面13aに送り出されるヒーター線17を、描画部26により順次に基材13の表面13aに押し付けてめり込ませる。
【0031】
すなわち、描画部26によりヒーター線17を基材13の表面13aに押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13の表面13aに上記回路パターンを描画する(描画工程)。これと同時に、描画工程では、基材13の表面13aにおけるヒーター線17を押し付けてめり込ませる部分、すなわち基材13の表面13aにおける上記回路パターンを描画する部分を、描画ユニット22の移動に伴って順次に熱によって軟化させる。
【0032】
この場合、描画部26は、ヒーター線17を振動させることで、ヒーター線17と基材13の表面13aとの間に基材13の表面13aが軟化する程度の比較的低い温度の摩擦熱を発生させることで、基材13の表面13aを軟化させる。このため、ヒーター線17は、基材13の表面13aに容易且つ円滑にめり込む。したがって、描画工程が円滑に行われる。
【0033】
そして、図6に示すように、描画ユニット22により基材13の表面13aにヒーター線17で上記回路パターンを描画した後には、描画ユニット22が第2端子16と対向する位置を横切るように描画ユニット22を移動させて停止させる。このとき、ヒーター線17における第2端子16と重なる部位17bは終点となる。続いて、ヒーター線17における終点となる部位17bと第2端子16とが重なる位置に接合ユニット23を移動させる。
【0034】
続いて、接合ユニット23によりヒーター線17を振動させることで、ヒーター線17と第2端子16との間にヒーター線17と第2端子16とが溶接される程度の比較的高い温度の摩擦熱を発生させる。これにより、ヒーター線17における終点となる部位17bと第2端子16とが溶接される。すなわち、一対の端子14のうちの他方である第2端子16にヒーター線17における終点となる部位17bを摩擦熱によって接合する。
【0035】
この接合を行った後は、接合ユニット23を基材13の表面13aから上方へ離れるように退避させる。その後、切断部27により、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断する(切断工程)。つまり、切断工程では、第2端子16にヒーター線17における終点となる部位17bを熱によって接合した後、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断する。これにより、基材13の表面13aにヒーター回路12を形成されて上記した部品11が製造される。
【0036】
このように、本実施形態のヒーター回路12の形成方法では、基材13の表面13aに対するヒーター線17の接合(埋め込み)と、一対の端子14に対するヒーター線17の接合とを、一つの作業工程として実施できる。このため、実質的な作業工程の数を低減できる。
【0037】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ヒーター回路12の形成方法は、基材13に金属製の端子14を形成する端子形成工程と、端子14にヒーター線17における始点となる先端部17aを摩擦熱によって接合する接合工程と、ヒーター線17を基材13に押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13に回路パターンを描画する描画工程と、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断する切断工程と、を備えている。
【0038】
この構成によれば、金属製の端子14にヒーター線17における始点となる先端部17aを熱によって接合する際に、当該熱が直接的に合成樹脂製の基材13に加わらないので、当該基材13に加わる熱を効果的に低減できる。このため、基材13に対して熱によるダメージを与えることなく基材13にヒーター回路12を形成することができる。
【0039】
(2)上記ヒーター回路12の形成方法において、端子形成工程では、基材13における互いに異なる位置に一対の端子14を形成し、接合工程では、一対の端子14のうちの一方にヒーター線17における始点となる先端部17aを熱によって接合し、切断工程では、一対の端子14のうちの他方にヒーター線17における終点となる部位17bを熱によって接合した後、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断する。
【0040】
この構成によれば、金属製の一対の端子14にヒーター線17における始点及び終点を熱によってそれぞれ接合する際に、当該熱が直接的に合成樹脂製の基材13に加わらないので、当該基材13に加わる熱を効果的に低減できる。したがって、一対の端子14をヒーター線17で接続するヒーター回路12を、基材13に対して熱によるダメージを与えることなく基材13に形成することができる。
【0041】
(3)上記ヒーター回路12の形成方法において、描画工程では、ヒーター線17を基材13に押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13に回路パターンを描画する際に、基材13におけるヒーター線17を押し付けてめり込ませる部分を熱によって軟化させる。
【0042】
この構成によれば、ヒーター線17を基材13に対して容易にめり込ませることができる。このため、ヒーター線17を基材13に押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13に回路パターンを描画する描画工程を円滑に行うことができる。
【0043】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
図7及び図8に示すように、描画ユニット22に接合ユニット23を内蔵するようにしてもよい。すなわち、描画ユニット22の本体ケース24内に接合ユニット23を配置するようにしてもよい。この場合、接合ユニット23は、本体ケース24の下端開口24aから突出する使用位置(図7に示す位置)と、使用位置から上昇させた非使用位置(図8に示す位置)との間で移動可能に構成される。
【0045】
・端子形成工程では、基材13に対して端子14を必ずしもインサート成型によって形成する必要はない。
・端子形成工程では、必ずしも基材13における互いに異なる位置に一対の端子14を形成する必要はない。すなわち、端子形成工程では、基材13に端子14を1つだけ形成するようにしてもよい。
【0046】
・描画工程では、ヒーター線17を基材13に押し付けてめり込ませながらヒーター線17で基材13に回路パターンを描画する際に、必ずしも基材13におけるヒーター線17を押し付けてめり込ませる部分を熱によって軟化させる必要はない。
【0047】
・描画工程では、ヒーター線17を基材13に対して半分以上めり込ませるようにしてもよい。
・切断工程では、ヒーター線17における始点となる先端部17aから終点となる部位17bまでを基材13側に残してヒーター線17を切断した後に、第2端子16にヒーター線17における終点となる部位17bを熱によって接合するようにしてもよい。
【0048】
・接合ユニット23は、ヒーター線17に通電することによってヒーター線17を抵抗発熱させる装置、局所的に熱風を供給して加熱するスポットヒーター、レーザーを照射して加熱する装置、電磁誘導加熱(Induction Heating)を使って局所的に金属部分のみを加熱して半田付けを行うIHスポットリフロー技術を利用した装置などであってもよい。
【0049】
・切断部27は、ヒーター線17における切断したい箇所に過剰に通電することによってヒーター線17を抵抗発熱させてヒーター線17を焼き切ることが可能な装置によって構成してもよい。
【0050】
・ヒーター回路形成装置20は、基材13と、描画ユニット22及び接合ユニット23とを相対移動可能に構成してもよい。すなわち、ヒーター回路形成装置20は、例えば、基材13の表面13aにヒーター回路12を形成する場合に、描画ユニット22及び接合ユニット23を固定した状態で基材13を水平方向に移動させるようにしてもよい。この場合、基材13は、水平方向に移動可能に構成されたステージ21を介して水平方向に移動される。
【0051】
・基材13は、板状(平面状)に限らず、立体的な形状であってもよい。
・ワイヤーは、ヒーター線17に限らず例えば信号線によって構成してもよい。
・ワイヤー回路は、ヒーター回路12以外の電気回路であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
11…部品
12…ワイヤー回路の一例としてのヒーター回路
13…基材
13a…表面
14…端子
15…第1端子
16…第2端子
17…ワイヤーの一例としてのヒーター線
17a…先端部
17b…部位
20…ワイヤー回路形成装置の一例としてのヒーター回路形成装置
21…ステージ
22…描画ユニット
23…接合ユニット
24…本体ケース
24a…下端開口
25…送出部
26…描画部
27…切断部
S…初期位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8