(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081648
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230606BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20230606BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/493
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195524
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】南 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA29
5H770DA22
5H770DA24
5H770DA26
5H770DA30
5H770FA01
(57)【要約】
【課題】インバータの接続台数の自由度を高くすることができ、多様な出力構成の形態を実現することができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置は、第1信号線を介して電気的に接続された、制御回路と、複数のインバータと、を含む。制御回路は、一定の周期で変化する基準信号を第1信号線に出力する。複数のインバータの各々は、基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号線を介して電気的に接続された、制御回路と、複数のインバータと、
を含み、
前記制御回路は、
一定の周期で変化する基準信号を前記第1信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧を出力する、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記複数のインバータのいずれかに含まれている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路と、前記複数のインバータとは、第2信号線を介して電気的に接続され、
前記制御回路は、
第1の基準信号と同期して、交流電圧の出力を開始することを指示する信号である電圧出力開始指示信号を前記第2信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記第1の基準信号の後の第2の基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧の出力を開始する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記複数のインバータの各々は、
前記電圧出力開始指示信号の受信時を起点とした一定時間内に、交流電圧の出力動作に参加することを表す信号であり予め設定された識別子を含む参加信号、及び、アクノリッジ信号を、前記第2信号線に出力し、
前記制御回路は、
前記アクノリッジ信号を交流電圧の出力動作に参加するインバータから受信した後に、前記第2の基準信号を前記第1信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記第2の基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧の出力を開始する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
出力電圧を指示する信号であり、前記識別子で宛先を特定した出力電圧指示信号を、前記第2信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
宛先が自身の前記識別子である前記出力電圧指示信号に応じた電圧の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記複数のインバータの内の前記基準信号に対して0°以外の位相で交流電圧を出力するインバータは、
目標である交流電圧に達するまでは、一定の変化率で出力電圧を変化させるソフトスタートを行う、
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記複数のインバータは、第1インバータから第6インバータまでを含み、
前記第1インバータ及び前記第2インバータは、前記基準信号に対して0°の位相の交流電圧を出力し、
前記第3インバータ及び前記第4インバータは、前記基準信号に対して120°遅れの位相の交流電圧を出力し、
前記第5インバータ及び前記第6インバータは、前記基準信号に対して120°進みの位相の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記複数のインバータは、第1インバータから第6インバータまでを含み、
前記第1インバータから前記第6インバータまでは、前記基準信号に対して0°の位相の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のインバータが直並列接続されたインバータ発電機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のインバータ発電機では、1個のインバータがマスタ機となり、残りのインバータがスレーブ機となり、同期を取っている。そのため、特許文献1記載のインバータ発電機では、複数のインバータの相互間に配線が必要である。
【0005】
インバータ台数が増えると、配線も増え、複数のインバータに夫々実装される信号線コネクタの数も増える。よって、想定したインバータ台数(例えば、3台)に応じた数の信号線コネクタを複数のインバータに夫々実装したとすると、後でインバータ台数(例えば、6台)を増やすことができない。つまり、特許文献1記載のインバータ発電機は、接続台数の自由度が制限されてしまう。
【0006】
これを防ぐためには、予め想定される最大のインバータ台数を確定し、最大のインバータ台数に応じた数の信号線コネクタを複数のインバータに夫々実装しておかなければならない。
【0007】
本発明は、インバータの接続台数の自由度を高くすることができ、多様な出力構成の形態を実現することができる、電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電源装置は、
第1信号線を介して電気的に接続された、制御回路と、複数のインバータと、
を含み、
前記制御回路は、
一定の周期で変化する基準信号を前記第1信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧を出力する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記複数のインバータのいずれかに含まれている、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御回路と、前記複数のインバータとは、第2信号線を介して電気的に接続され、
前記制御回路は、
第1の基準信号と同期して、交流電圧の出力を開始することを指示する信号である電圧出力開始指示信号を前記第2信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記第1の基準信号の後の第2の基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧の出力を開始する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記複数のインバータの各々は、
前記電圧出力開始指示信号の受信時を起点とした一定時間内に、交流電圧の出力動作に参加することを表す信号であり予め設定された識別子を含む参加信号、及び、アクノリッジ信号を、前記第2信号線に出力し、
前記制御回路は、
前記アクノリッジ信号を交流電圧の出力動作に参加するインバータから受信した後に、前記第2の基準信号を前記第1信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
前記第2の基準信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧の出力を開始する、
ことを特徴とする。
【0012】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
出力電圧を指示する信号であり、前記識別子で宛先を特定した出力電圧指示信号を、前記第2信号線に出力し、
前記複数のインバータの各々は、
宛先が自身の前記識別子である前記出力電圧指示信号に応じた電圧の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする。
【0013】
前記電源装置において、
前記複数のインバータの内の前記基準信号に対して0°以外の位相で交流電圧を出力するインバータは、
目標である交流電圧に達するまでは、一定の変化率で出力電圧を変化させるソフトスタートを行う、
ことを特徴とする。
【0014】
前記電源装置において、
前記複数のインバータは、第1インバータから第6インバータまでを含み、
前記第1インバータ及び前記第2インバータは、前記基準信号に対して0°の位相の交流電圧を出力し、
前記第3インバータ及び前記第4インバータは、前記基準信号に対して120°遅れの位相の交流電圧を出力し、
前記第5インバータ及び前記第6インバータは、前記基準信号に対して120°進みの位相の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする。
【0015】
前記電源装置において、
前記複数のインバータは、第1インバータから第6インバータまでを含み、
前記第1インバータから前記第6インバータまでは、前記基準信号に対して0°の位相の交流電圧を出力する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様の電源装置は、インバータの接続台数の自由度を高くすることができ、多様な出力構成の形態を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、比較例の電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態の電源装置の起動時の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態の電源装置の起動時の交流出力電圧波形を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態の電源装置の定常時の交流出力電圧波形を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第1接続例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第2接続例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第3接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の電源装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態について説明するが、第1の実施の形態の理解を容易にするため、先に比較例について説明する。
【0020】
(比較例)
図1は、比較例の電源装置の構成を示す図である。電源装置100は、制御回路101と、第1インバータ102から第3インバータ104までと、を含む。
【0021】
第1インバータ102から第3インバータ104までの内の第1インバータ102が、マスタであり、第2インバータ103及び第3インバータ104が、スレーブである。
【0022】
制御回路101は、通信部101aを含む。通信部101aは、信号線111を介して、第1インバータ102から第3インバータ104までに、電気的に接続されている。通信部101aは、信号線111を介して、第1インバータ102から第3インバータ104までと通信を行う。
【0023】
第1インバータ102は、制御部102aと、電力変換部102eと、を含む。制御部102aは、通信部102bと、第1同期信号生成部102cと、第2同期信号生成部102dと、を含む。
【0024】
通信部102bは、信号線111を介して通信部101aに電気的に接続され、通信部101aと通信を行う。制御部102aは、通信部101aから受信する信号に基づいて、電力変換部102eを制御する。電力変換部102eは、制御部102aの制御下で、直流電圧DCINをR相の交流電圧に変換して出力する。
【0025】
第1同期信号生成部102cは、第1同期信号を生成する。第1同期信号生成部102cは、R相の交流電圧のゼロクロス位置から120°遅れの第1同期信号を生成する。
【0026】
第1同期信号生成部102cは、信号線112を介して第2インバータ103に電気的に接続され、信号線113を介して第3インバータ104に電気的に接続されている。第1同期信号生成部102cは、第1同期信号を、信号線112を介して第2インバータ103に出力し、信号線113を介して第3インバータ104に出力する。
【0027】
第2同期信号生成部102dは、第2同期信号を生成する。第2同期信号生成部102dは、R相の交流電圧のゼロクロス位置から120°進みの第2同期信号を生成する。
【0028】
第2同期信号生成部102dは、信号線114を介して第2インバータ103に電気的に接続され、信号線115を介して第3インバータ104に電気的に接続されている。第2同期信号生成部102dは、第2同期信号を、信号線114を介して第2インバータ103に出力し、信号線115を介して第3インバータ104に出力する。
【0029】
第2インバータ103は、制御部103aと、電力変換部103eと、を含む。制御部103aは、通信部103bと、第1同期信号受信部103cと、第2同期信号受信部103dと、を含む。
【0030】
通信部103bは、信号線111を介して通信部101aに電気的に接続され、通信部101aと通信を行う。
【0031】
第1同期信号受信部103cは、信号線112を介して、第1同期信号を第1インバータ102の第1同期信号生成部102cから受信する。制御部103aは、第1同期信号に同期して、電力変換部103eを制御する。電力変換部103eは、制御部103aの制御下で、直流電圧DCINをS相の交流電圧に変換して出力する。
【0032】
第2同期信号受信部103dは、信号線114を介して、第2同期信号を第1インバータ102の第2同期信号生成部102dから受信する。
【0033】
第3インバータ104は、制御部104aと、電力変換部104eと、を含む。制御部104aは、通信部104bと、第1同期信号受信部104cと、第2同期信号受信部104dと、を含む。
【0034】
通信部104bは、信号線111を介して通信部101aに電気的に接続され、通信部101aと通信を行う。
【0035】
第1同期信号受信部104cは、信号線113を介して、第1同期信号を第1インバータ102の第1同期信号生成部102cから受信する。
【0036】
第2同期信号受信部104dは、信号線115を介して、第2同期信号を第1インバータ102の第2同期信号生成部102dから受信する。制御部104aは、第2同期信号に同期して、電力変換部104eを制御する。電力変換部104eは、制御部104aの制御下で、直流電圧DCINをT相の交流電圧に変換して出力する。
【0037】
第1インバータ102から第3インバータ104までの交流出力を直並列接続する場合、第1インバータ102から第3インバータ104までの交流出力は同期が取れている必要がある。電源装置100では、マスタである第1インバータ102が、第1同期信号及び第2同期信号を第2インバータ103及び第3インバータ104に送信することにより、第1インバータ102から第3インバータ104までの交流出力の同期を取っている。
【0038】
この場合、第2インバータ103及び第3インバータ104は、制御速度に対して十分速い速度で、第1同期信号及び第2同期信号を受信する必要がある。そのため、第2インバータ103は、信号線112及び114を介して、第1インバータ102に電気的に接続されている。また、第3インバータ104は、信号線113及び115を介して、第1インバータ102に電気的に接続されている。
【0039】
インバータ台数が増えると、配線も増え、第1インバータ102から第3インバータ104までに夫々実装される信号線コネクタの数も増える。よって、想定したインバータ台数(例えば、3台)に応じた数の信号線コネクタを第1インバータ102から第3インバータ104までに夫々実装したとすると、後でインバータ台数(例えば、6台)を増やすことができない。つまり、電源装置100は、接続台数の自由度が制限されてしまう。
【0040】
これを防ぐためには、予め想定される最大のインバータ台数(例えば、6台)を確定し、最大のインバータ台数に応じた数の信号線コネクタを第1インバータ102から第3インバータ104までに夫々実装しておかなければならない。これにより、実装スペース及びコストが増大する。
【0041】
(第1の実施の形態)
[構成]
図2は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、制御回路2と、第1インバータ3から第3インバータ5までと、を含む。
【0042】
第1の実施の形態では、制御回路2は、第1インバータ3から第3インバータ5までとは別体としたが、本開示はこれに限定されない。制御回路2は、第1インバータ3から第3インバータ5までのいずれかに搭載(内蔵)されても良い。これにより、電源装置1は、設置スペース及びコストを抑制できる。
【0043】
第1の実施の形態では、インバータの台数を3台としたが、本開示はこれに限定されない。インバータの台数は、2台又は4台以上であっても良い。
【0044】
第1の実施の形態では、比較例とは異なり、第1インバータ3から第3インバータ5までは、マスタ又はスレーブに分けられていない。
【0045】
制御回路2は、通信部2aと、同期信号送信部2bと、を含む。制御回路2は、第1インバータ3から第3インバータ5までとは別体の場合、ECU(Engine Control Unit)であることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0046】
通信部2aは、信号線11を介して、第1インバータ3から第3インバータ5までに、電気的に接続されている。信号線11は、CAN(Controller Area Network、ISO 11898)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。通信部2aは、信号線11を介して、第1インバータ3から第3インバータ5までと通信を行う。
【0047】
信号線11が、本開示の「第2信号線」の一例に相当する。
【0048】
同期信号送信部2bは、信号線12を介して、第1インバータ3から第3インバータ5までに、電気的に接続されている。同期信号送信部2bは、信号線12を介して、一定の周期で変化する同期信号を第1インバータ3から第3インバータ5までに送信する。同期信号は、50Hzの50%デューティの矩形波信号が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0049】
信号線12が、本開示の「第1信号線」の一例に相当する。同期信号が、本開示の「基準信号」の一例に相当する。
【0050】
第1インバータ3は、制御部3aと、電力変換部3eと、を含む。制御部3aは、通信部3bと、同期信号受信部3cと、ID設定部3dと、を含む。
【0051】
ID設定部3dには、第1インバータ3を一意に特定する識別子が、予め設定されている。ID設定部3dは、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ(登録商標))、ディップスイッチ等が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0052】
通信部3bは、信号線11を介して通信部2aに電気的に接続され、通信部2aと通信を行う。通信部3bは、通信を行う際、ID設定部3dに設定されている識別子を使用する。
【0053】
同期信号受信部3cは、信号線12を介して同期信号送信部2bに電気的に接続され、同期信号を受信する。制御部3aは、同期信号に応じたタイミングで、電力変換部3eを制御する。電力変換部3eは、制御部3aの制御下で、直流電圧DCINをR相の交流電圧に変換して出力する。
【0054】
第2インバータ4は、制御部4aと、電力変換部4eと、を含む。制御部4aは、通信部4bと、同期信号受信部4cと、ID設定部4dと、を含む。
【0055】
ID設定部4dには、第2インバータ4を一意に特定する識別子が、予め設定されている。
【0056】
通信部4bは、信号線11を介して通信部2aに電気的に接続され、通信部2aと通信を行う。通信部4bは、通信を行う際、ID設定部4dに設定されている識別子を使用する。
【0057】
同期信号受信部4cは、信号線12を介して同期信号送信部2bに電気的に接続され、同期信号を受信する。制御部4aは、同期信号に応じたタイミングで、電力変換部4eを制御する。電力変換部4eは、制御部4aの制御下で、直流電圧DCINをS相の交流電圧に変換して出力する。
【0058】
第3インバータ5は、制御部5aと、電力変換部5eと、を含む。制御部5aは、通信部5bと、同期信号受信部5cと、ID設定部5dと、を含む。
【0059】
ID設定部5dには、第3インバータ5を一意に特定する識別子が、予め設定されている。
【0060】
通信部5bは、信号線11を介して通信部2aに電気的に接続され、通信部2aと通信を行う。通信部5bは、通信を行う際、ID設定部5dに設定されている識別子を使用する。
【0061】
同期信号受信部5cは、信号線12を介して同期信号送信部2bに電気的に接続され、同期信号を受信する。制御部5aは、同期信号に応じたタイミングで、電力変換部5eを制御する。電力変換部5eは、制御部5aの制御下で、直流電圧DCINをT相の交流電圧に変換して出力する。
【0062】
なお、第1インバータ3から第3インバータ5までには、出力電圧(例えば、100V、240V等)のデフォルト値が予め設定されていることとしても良い。そして、出力電圧をデフォルト値から変更する必要がある場合に、制御回路2が、信号線11を介して、出力電圧を第1インバータ3から第3インバータ5までに指示しても良い。
【0063】
同様に、第1インバータ3から第3インバータ5までには、位相(例えば、0°、120°遅れ、120°進み等)のデフォルト値が予め設定されていることとしても良い。そして、位相をデフォルト値から変更する必要がある場合に、制御回路2が、信号線11を介して、位相を第1インバータ3から第3インバータ5までに指示しても良い。
【0064】
[起動時の動作]
図3は、第1の実施の形態の電源装置の起動時の動作を示すフローチャートである。
【0065】
制御回路2の同期信号送信部2bは、ステップS100において、信号線12を介して、第1の同期信号を第1インバータ3から第3インバータ5までに出力する。第1の同期信号は、同期信号送信部2bが出力する第1番目の同期信号が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0066】
制御回路2の通信部2aは、第1の同期信号の立ち上がり又は立ち下がりと同期して、交流電圧の出力動作に参加する第1インバータ3から第3インバータ5までの識別子を夫々含む複数の電圧出力開始指示信号を、信号線11を介して、第1インバータ3から第3インバータ5までの通信部3bから5bまでに、送信する。
【0067】
なお、このとき、制御回路2の通信部2aは、出力電圧を指示する信号であり、識別子で宛先を特定した出力電圧指示信号(例えば、100V指示、240V指示等)、位相を指示する信号であり、識別子で宛先を特定した位相指示信号等をも、第1インバータ3から第3インバータ5までに送信しても良い。
【0068】
第1インバータ3の通信部3bは、電圧出力開始指示信号の受信時を起点とした一定時間内に、ステップS200において、交流電圧の出力動作に参加することを表す信号であり、ID設定部3dに設定されている識別子を含む参加信号を、信号線11を介して、通信部2aに送信する。これにより、第1インバータ3は、交流電圧の出力動作に参加する。第2インバータ4の通信部4bは、ID設定部4dに設定されている識別子を含む参加信号を、信号線11を介して、通信部2aに送信する。これにより、第2インバータ4は、交流電圧の出力動作に参加する。第3インバータ5の通信部5bは、ID設定部5dに設定されている識別子を含む参加信号を、信号線11を介して、通信部2aに送信する。これにより、第3インバータ5は、交流電圧の出力動作に参加する。
【0069】
制御回路2は、第1インバータ3から第3インバータ5までから夫々送信される参加信号によって、交流電圧の出力動作に参加するインバータを把握できる。これにより、制御回路2は、アクノリッジ信号を第1インバータ3から第3インバータ5までから受信する必要があることを把握できる。
【0070】
第1インバータ3から第3インバータ5までの通信部3bから5bまでは、電圧出力開始指示信号の受信時を起点とした一定時間内に、ステップS202において、信号線11を介して、識別子を含むアクノリッジ信号を制御回路2の通信部2aに送信する。アクノリッジ信号は、次の基準信号(第2の基準信号)の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングから交流電圧を出力する旨を表す。
【0071】
制御回路2の同期信号送信部2bは、アクノリッジ信号を第1インバータ3から第3インバータ5までから受信した場合に、ステップS102において、第1の同期信号の周期が終わったタイミングで次の同期信号(第2の同期信号)を信号線12に出力する。第2の同期信号は、同期信号送信部2bが出力する第2番目の同期信号が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0072】
第1インバータ3から第3インバータ5までの制御部3aから5aまでは、第2の同期信号の立ち上がり又は立ち下がりを受信した場合に、ステップS204において、第2の同期信号の立ち上がり又は立ち下がりに対して、設定又は指示された位相で同期する交流電圧の出力を開始する制御を行う。
【0073】
これにより、第1インバータ3から第3インバータ5までは、第2の同期信号の立ち上がり又は立ち下がりにおいて、交流電圧の出力を開始できる。
【0074】
図4は、第1の実施の形態の電源装置の起動時の交流出力電圧波形を示す図である。
図4において、タイミングt
0は、第2の同期信号の立ち上がり(又は立ち下がり)タイミングを表す。
【0075】
波形201は、第1インバータ3が出力するR相の電圧を示す。波形202は、第2インバータ4が出力するS相の電圧を示す。波形202は、波形201と比較して、120°遅れている。波形203は、第3インバータ5が出力するT相の電圧を示す。波形203は、波形201と比較して、120°進んでいる。
【0076】
波形204は、S相の目標(理想)電圧を示す。波形205は、T相の目標(理想)電圧を示す。
【0077】
基準信号が50Hzの場合、基準信号の1周期は20msである。制御回路2から第1インバータ3から第3インバータ5までへの指示信号の送信及び第1インバータ3から第3インバータ5までから制御回路2へのアクノリッジ信号の送信は、1msから2ms程度で可能である。従って、第1インバータ3から第3インバータ5までは、第2の基準信号の立ち上がりのタイミングt0から、一斉に電圧を出力できる。
【0078】
従って、第2インバータ4は、出力電圧が目標(理想)電圧に達する点206までは、一定の変化率で変化する電圧を出力し、点206以降は、S相の交流電圧を出力できる。また、第3インバータ5は、出力電圧が目標(理想)電圧に達する点207までは、一定の変化率で変化する電圧を出力し、点207以降は、T相の交流電圧を出力できる。
【0079】
つまり、電源装置1は、ソフトスタートを実現することが可能である。
【0080】
図5は、第1の実施の形態の電源装置の定常時の交流出力電圧波形を示す図である。
【0081】
波形211は、同期信号を示す。波形211で示すように、同期信号は、タイミングt10で立ち上がり、タイミングt11で立ち下がり、タイミングt12で立ち上がる。
【0082】
タイミングt10からタイミングt12までが、交流電圧の1周期である。
【0083】
波形212は、第1インバータ3が出力するR相の電圧を示す。波形212で示す様に、R相の電圧は、上昇しながらタイミングt10でゼロクロスし、下降しながらタイミングt11でゼロクロスし、上昇しながらタイミングt12でゼロクロスする。
【0084】
波形213は、第2インバータ4が出力するS相の電圧を示す。波形213で示す様に、S相の電圧は、タイミングt10で位相が-120°であり、タイミングt11で位相が60°であり、タイミングt12で位相が-120°である。
【0085】
波形214は、第3インバータ5が出力するT相の電圧を示す。波形214で示す様に、T相の電圧は、タイミングt10で位相が120°であり、タイミングt11で位相が300°であり、タイミングt12で位相が120°である。
【0086】
また各インバータは、同期信号の立ち上がり(又は立ち下がり)のタイミングで、各インバータが出力している電圧の位相と、設定又は指示された位相とのズレを矯正することで、位相が安定した出力が得られる。
【0087】
なお、上記では、第1インバータ3から第3インバータ5までは、同期信号の立ち上がりのタイミングに対して、0°、-120°及び120°の位相の交流電圧を出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。第1インバータ3から第3インバータ5までは、同期信号の立ち下がりのタイミングに対して、0°、-120°及び120°の位相の交流電圧を出力することとしても良い。
【0088】
また、第1インバータ3から第3インバータ5までは、何らかのトラブルが発生した場合には、信号線11を介して、トラブルが発生した旨の通知信号を制御回路2に送信すると良い。制御回路2は、トラブルが発生した旨の通知信号を受信した場合、信号線11を介して、交流電圧出力を停止する指示信号を、第1インバータ3から第3インバータ5までに送信すると良い。これにより、電源装置1は、第1インバータ3から第3インバータ5までのいずれかにトラブルが発生しても、第1インバータ3から第3インバータ5までを停止できる。
【0089】
[まとめ]
[1]電源装置1では、第1インバータ3から第3インバータ5までは、信号線11及び12と電気的に接続されていれば良い。つまり、第1インバータ3から第3インバータ5までは、2個の信号線コネクタを有していれば足りる。そのため、後でインバータの台数が増えても、第1インバータ3から第3インバータ5までは、信号線コネクタを増やす必要がない。これにより、電源装置1は、接続台数の自由度を高くすることができる。
【0090】
[2]特許文献1では、マスタが交流電圧出力→120°経過(ゼロクロス)→1つのスレーブが交流電圧出力→120°経過(ゼロクロス)→もう1つのスレーブが交流電圧出力、となる。つまり、特許文献1では、3相の電圧が出揃うまでに時間が掛かる。また、特許文献1では、3相の電圧がばらばらのタイミングで出始めるので、後段にブレーカを設け、3相の電圧が出揃ったらブレーカをオンにする必要がある。つまり、特許文献1では、後段にブレーカが必要である。
【0091】
一方、電源装置1では、同期信号が50Hzの場合、同期信号の1周期は20msである。制御回路2から第1インバータ3から第3インバータ5までへの指令信号の送信及び第1インバータ3から第3インバータ5までから制御回路2へのアクノリッジ信号の送信は、1msから2ms程度で可能である。従って、
図4のタイミングt
0に示すように、第1インバータ3から第3インバータ5までは、第2の基準信号の立ち上がりのタイミングから、一斉に電圧を出力できる。これにより、電源装置1は、ソフトスタートを実現することが可能である。また、電源装置1は、後段にブレーカが不要である。
【0092】
<第2の実施の形態>
図6は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0093】
第2の実施の形態の電源装置1Aは、第1の実施の形態の電源装置1と比較して、第4インバータ6から第6インバータ8までを、更に含む。
【0094】
第4インバータ6から第6インバータ8までの内部構成は、第1インバータ3から第3インバータ5までの内部構成(
図2参照)と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0095】
第1インバータ3から第6インバータ8までの出力端子は、端子モジュール21に電気的に接続されている。端子モジュール21は、第1インバータ3から第6インバータ8までの出力端子の接続関係を変更できる。
【0096】
端子モジュール21は、外部から供給される制御信号に応じて、第1インバータ3から第6インバータ8までの出力端子の接続関係を変更できるようにしても良い。
【0097】
図7は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第1接続例を示す図である。第1接続例では、第1インバータ3及び第2インバータ4の出力電圧の位相は0°に指示又は設定され、第3インバータ5及び第4インバータ6の出力電圧の位相は120°遅れに指示又は設定され、第5インバータ7及び第6インバータ8の出力電圧の位相は120°進みに指示又は設定されている。
【0098】
端子モジュール21は、第1インバータ3の一端及び第2インバータ4の一端を、ノードN1に電気的に接続する。端子モジュール21は、第1インバータ3の他端及び第2インバータ4の他端を、ノードN2に電気的に接続する。
【0099】
端子モジュール21は、第3インバータ5の一端及び第4インバータ6の一端を、ノードN2に電気的に接続する。端子モジュール21は、第3インバータ5の他端及び第4インバータ6の他端を、ノードN3に電気的に接続する。
【0100】
端子モジュール21は、第5インバータ7の一端及び第6インバータ8の一端を、ノードN2に電気的に接続する。端子モジュール21は、第5インバータ7の他端及び第6インバータ8の他端を、ノードN4に電気的に接続する。
【0101】
つまり、端子モジュール21は、第1インバータ3及び第2インバータ4と、第3インバータ5及び第4インバータ6と、第5インバータ7及び第6インバータ8と、を3相Y(スター)結線する。
【0102】
これにより、ノードN1からR相の交流電圧が出力され、ノードN3からS相の交流電圧が出力され、ノードN4からT相の交流電圧が出力される。
【0103】
図8は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第2接続例を示す図である。第2接続例では、第1インバータ3及び第2インバータ4の出力電圧の位相は0°に指示又は設定され、第3インバータ5及び第4インバータ6の出力電圧の位相は120°遅れに指示又は設定され、第5インバータ7及び第6インバータ8の出力電圧の位相は120°進みに指示又は設定されている。
【0104】
端子モジュール21は、第3インバータ5の一端及び第4インバータ6の一端を、ノードN5に電気的に接続する。端子モジュール21は、第3インバータ5の他端及び第4インバータ6の他端を、ノードN6に電気的に接続する。
【0105】
端子モジュール21は、第5インバータ7の一端及び第6インバータ8の一端を、ノードN6に電気的に接続する。端子モジュール21は、第5インバータ7の他端及び第6インバータ8の他端を、ノードN7に電気的に接続する。
【0106】
つまり、端子モジュール21は、第3インバータ5及び第4インバータ6と、第5インバータ7及び第6インバータ8と、を3相V結線する。
【0107】
これにより、ノードN5からR相の交流電圧が出力され、ノードN6からS相の交流電圧が出力され、ノードN7からT相の交流電圧が出力される。
【0108】
端子モジュール21は、第1インバータ3の一端及び第2インバータ4の一端を、ノードN8に電気的に接続する。端子モジュール21は、第1インバータ3の他端及び第2インバータ4の他端を、ノードN9に電気的に接続する。
【0109】
つまり、端子モジュール21は、第1インバータ3と、第2インバータ4と、を並列接続する。
【0110】
これにより、ノードN8からR’相の交流電圧が出力され、ノードN9からS’相の交流電圧が出力される。
【0111】
図9は、第2の実施の形態の電源装置の端子モジュールの第3接続例を示す図である。第3接続例では、第1インバータ3から第6インバータ8までの出力電圧の位相は0°に指示又は設定されている。
【0112】
端子モジュール21は、第1インバータ3の一端及び第2インバータ4の一端を、ノードN10に電気的に接続する。端子モジュール21は、第1インバータ3の他端及び第2インバータ4の他端を、ノードN11に電気的に接続する。
【0113】
端子モジュール21は、第3インバータ5の一端及び第4インバータ6の一端を、ノードN11に電気的に接続する。端子モジュール21は、第3インバータ5の他端及び第4インバータ6の他端を、ノードN12に電気的に接続する。
【0114】
つまり、端子モジュール21は、第1インバータ3及び第2インバータ4と、第3インバータ5及び第4インバータ6と、を単相3線結線する。
【0115】
これにより、ノードN10からR相の交流電圧が出力され、ノードN11からN相の交流電圧が出力され、ノードN12からS相の交流電圧が出力される。
【0116】
端子モジュール21は、第5インバータ7の一端及び第6インバータ8の一端を、ノードN13に電気的に接続する。端子モジュール21は、第5インバータ7の他端及び第6インバータ8の他端を、ノードN14に電気的に接続する。
【0117】
つまり、端子モジュール21は、第5インバータ7と、第6インバータ8と、を並列接続する。
【0118】
これにより、ノードN13からR’相の交流電圧が出力され、ノードN14からS’相の交流電圧が出力される。
【0119】
このように、電源装置1Aは、第1インバータ3から第6インバータ8までが設定又は指示された位相で交流電圧を出力することにより、種々の結線及び種々の出力電圧を得ることが可能である。
【0120】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1、1A、100 電源装置
2、101 制御回路
3a、4a、5a、102a、103a、104a 制御部
2a、3b、4b、5b、101a、102b、103b、104b 通信部
2b 同期信号送信部
3、102 第1インバータ
3c、4c、5c 同期信号受信部
3d、4d、5d ID設定部
3e、4e、5e、102e、103e、104e 電力変換部
4、103 第2インバータ
5、104 第3インバータ
6 第4インバータ
7 第5インバータ
8 第6インバータ
11、12、111、112、113、114、115 信号線
21 端子モジュール
102c 第1同期信号生成部
102d 第2同期信号生成部
103c、104c 第1同期信号受信部
103d、104d 第2同期信号受信部