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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081651
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】タイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/28 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B29D30/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195530
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹元 翔
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AM32
4F215AP06
4F215AR09
4F215VA02
4F215VD10
4F215VK02
4F215VL08
4F215VL12
4F215VP10
4F215VP11
4F215VP35
4F215VQ07
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】タイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部の周辺でのエアの残留を低減できるタイヤ製造方法を提供する。
【解決手段】回転支持体に支持された円筒状の第1のタイヤ構成部材の外周面に第2のタイヤ構成部材を圧着するために、前記回転支持体を回転させながら前記第2のタイヤ構成部材の外周面に押圧ローラを押し当てるステッチング工程を備え、前記第1のタイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部において、相対的に径方向外側に位置する端部を外側端部と呼び、相対的に径方向内側に位置する端部を内側端部と呼ぶとき、前記ステッチング工程では、前記オーバーラップジョイント部を通過する前記押圧ローラが前記外側端部の外周面から前記内側端部の外周面に至るよう、所定方向に沿って前記回転支持体を回転させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支持体に支持された円筒状の第1のタイヤ構成部材の外周面に第2のタイヤ構成部材を圧着するために、前記回転支持体を回転させながら前記第2のタイヤ構成部材の外周面に押圧ローラを押し当てるステッチング工程を備え、
前記第1のタイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部において、相対的に径方向外側に位置する端部を外側端部と呼び、相対的に径方向内側に位置する端部を内側端部と呼ぶとき、
前記ステッチング工程では、前記オーバーラップジョイント部を通過する前記押圧ローラが前記外側端部の外周面から前記内側端部の外周面に至るよう、所定方向に沿って前記回転支持体を回転させる、タイヤ製造方法。
【請求項2】
前記第1のタイヤ構成部材がカーカスプライを含んでおり、
前記オーバーラップジョイント部は、前記カーカスプライを円筒状に成形するときに一端部と他端部とを相互に重ね合わせた成形プライジョイント部である、請求項1に記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記ステッチング工程では、前記押圧ローラが前記オーバーラップジョイント部を通過する際に、前記回転支持体の回転速度を一時的に低下させる、請求項1または2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記オーバーラップジョイント部の周方向位置を検出器で検出し、その検出結果に基づいて前記回転支持体の回転速度を一時的に低下させるタイミングを制御する、請求項3に記載のタイヤ製造方法。
【請求項5】
JIS K6301準拠のA型デュロメータによる前記押圧ローラの硬度が55以下である、請求項1~4いずれか1項に記載のタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステッチング工程を備えたタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造方法として、ステッチング工程を経てグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)を成形する手法が知られている。ステッチング工程では、成形ドラムに支持された円筒状の第1のタイヤ構成部材の外周面に第2のタイヤ構成部材を圧着することを目的として、成形ドラムを回転させながら第2のタイヤ構成部材の外周面に押圧ローラが押し当てられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ステッチング工程を実施した場合であっても、第1のタイヤ構成部材と第2のタイヤ構成部材との間にエアが残留することがある。このようなエアの残留は、タイヤの成形不良の原因になりうるため、出来る限り低減することが望まれる。本発明者が調査したところ、第1のタイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部の周辺でエアが残留しやすく、これに対策を講じることで大きな改善効果が得られることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-117173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部の周辺でのエアの残留を低減できるタイヤ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤ製造方法は、回転支持体に支持された円筒状の第1のタイヤ構成部材の外周面に第2のタイヤ構成部材を圧着するために、前記回転支持体を回転させながら前記第2のタイヤ構成部材の外周面に押圧ローラを押し当てるステッチング工程を備え、
前記第1のタイヤ構成部材に含まれるオーバーラップジョイント部において、相対的に径方向外側に位置する端部を外側端部と呼び、相対的に径方向内側に位置する端部を内側端部と呼ぶとき、
前記ステッチング工程では、前記オーバーラップジョイント部を通過する前記押圧ローラが前記外側端部の外周面から前記内側端部の外周面に至るよう、所定方向に沿って前記回転支持体を回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】グリーンタイヤを成形する工程を模式的に示す半断面図
図2図1(C)のX-X矢視に沿った成形ドラムの縦断面図
図3図2の要部拡大図
図4】オーバーラップジョイント部を示す断面図
図5】帯状プライを形成する工程を模式的に示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のタイヤ製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は、グリーンタイヤの成形工程の一例を模式的に示す半断面図である。まずは、図1(A)に示すように、成形ドラムD1において、インナーライナゴム1、リムストリップゴム2、カーカスプライ3(後述する帯状プライ60)を順に巻き付ける。これによって、カーカスバンドをなす円筒状のグリーンケース10Aが成形される。次に、図1(B)に示すように、成形ドラムD2において、グリーンケース10Aの両サイドにビード4を組み付け、そのビード4の周りでカーカスプライ3を折り返す。これによって、ターンアップが施された円筒状のグリーンケース10Bが成形される。
【0010】
そして、図1(C)に示すように、成形ドラムD3において、グリーンケース10Bの外周面に、所定の断面形状を有するサイドウォールゴム5をタイヤ周方向に沿って巻き付ける。続いて、後述するステッチング工程によってサイドウォールゴム5をグリーンケース10Bに圧着させる。これによって、サイドウォールゴム5が貼り付けられた円筒状のグリーンケース10Cが成形される。本実施形態では、図1(A)~(C)の各工程を別個の成形ドラムD1~D3において実施しているが、これに限られず、共通の成形ドラムを用いて実施することも可能である。
【0011】
また、図1(D)に示すように、成形ドラムD4において、ベルトプライ6,7、トレッドゴム8などを順に巻き付ける。これによって、円筒状のトレッドバンド20が成形される。そして、図1(E)に示すように、成形ドラムD5において、グリーンケース10Cをトロイダル状に膨出変形させ、その径方向外側に配置したトレッドバンド20と合体させる。このようにして成形した未加硫のグリーンタイヤを、図示しないタイヤ加硫金型を用いて加硫成形することにより、空気入りタイヤが製造される。
【0012】
図1(C)で示したサイドウォールゴム5の貼り付けに関し、図2~4を参照して詳しく説明する。図2は、図1(C)のX-X矢視に沿った成形ドラムD3の縦断面図であり、ステッチング工程を実施する前の状態を示している。図3は、図2の矩形枠RFで囲まれた部分の拡大図である。図3では成形ドラムD3の外周面を平坦に描いているが、実際には緩やかに湾曲している。回転支持体である成形ドラムD3は、軸10を中心として回転可能に構成されている。成形ドラムD3の回転は、駆動装置11によって駆動される。成形ドラムD3が回転する速度やタイミングは制御装置12によって制御される。
【0013】
成形ドラムD3は拡縮可能に構成されており、そのための機構は従来公知である。成形ドラムD3は円筒状の外周面を有し、その外周面にグリーンケース10Bが嵌合されている。円筒状のグリーンケース10Bに縮径状態の成形ドラムD3を挿入した後、その成形ドラムD3を拡径することにより、グリーンケース10Bが成形ドラムD3によって嵌合状態で支持される。グリーンケース10Bの外周面には、図示しない供給装置から供給されたサイドウォールゴム5が巻き付けられている。サイドウォールゴム5は、図1(C)のように一対で配設されている。
【0014】
押圧ローラ13は、成形ドラムD3の外周面と対向するようにして配置されている。押圧ローラ13は、変位シリンダ14(例えば、エアシリンダ)を介して、図示しない移動装置に支持されている。変位シリンダ14は、サイドウォールゴム5に向けて押圧ローラ13を変位させるアクチュエータとして機能する。移動装置は、成形ドラムD3の軸方向に沿って移動自在に構成されている。変位シリンダ14及び移動装置の作動は、制御装置12によって制御される。押圧ローラ13、変位シリンダ14及び移動装置は、一対のサイドウォールゴム5に対応して一対で設けられている。
【0015】
グリーンケース10Bの外周面にサイドウォールゴム5が巻き付けられると、ステッチング工程が実施される。ステッチング工程では、成形ドラムD3によって支持された円筒状のグリーンケース10B(第1のタイヤ構成部材に相当)の外周面にサイドウォールゴム5(第2のタイヤ構成部材に相当)を圧着するために、成形ドラムD3を回転させながらサイドウォールゴム5の外表面に押圧ローラ13を押し当てる。その際、変位シリンダ14が伸長し、それに応じた圧力で押圧ローラ13がサイドウォールゴム5に押し付けられる。押圧ローラ13は、変位シリンダ14のロッドの先端に回転自在に設けられているため、従動的に回転する。
【0016】
図3は、グリーンケース10Bに含まれる(カーカスプライ3の)オーバーラップジョイント部30の周辺を示す。図4は、そのオーバーラップジョイント部30を抽出して示している。グリーンケース10Bに含まれるオーバーラップジョイント部30(以下、単に「ジョイント部30」と呼ぶ)において、相対的に径方向外側に位置する端部を外側端部31と呼び、相対的に径方向内側に位置する端部を内側端部32と呼ぶ。ジョイント部30では、外側端部31と内側端部32とを相互に重ね合わせているために段差が形成され、それにより外周面が隆起している。
【0017】
本発明者が研究したところ、ステッチング工程を実施してもグリーンケース10Bとサイドウォールゴム5との間にエアが残留するのは、押圧ローラ13がジョイント部30に乗り上げる際に段差を跳び越えてしまい、そのためジョイント部30の脇30sに押圧ローラ13が十分に押し当たらないことが主な原因であることが判明した。また、そのような押圧ローラ13の跳び現象は、押圧ローラ13が図3右側に相対移動する(換言すると、位置P2からジョイント部30を経由して位置P1に至る)場合において、特に顕著に発生することが分かった。
【0018】
そこで、本実施形態におけるステッチング工程では、ジョイント部30を通過する押圧ローラ13が外側端部31の外周面から内側端部32の外周面に至るよう、所定方向に沿って成形ドラムD3を回転させる。即ち、図3において、押圧ローラ13が図3左側に相対移動する(換言すると、位置P1からジョイント部30を経由して位置P2に至る)よう、成形ドラムD3をR1方向(図2参照)に回転させる。外側端部31と内側端部32との位置関係が反対であれば、成形ドラムD3をR2方向(図2参照)に回転させる。これにより、ジョイント部30に乗り上げる押圧ローラ13は外側端部31の外周面に沿って移動するため、押圧ローラ13の跳び現象が抑えられる。その結果、ジョイント部30の周辺でのエアの残留を低減し、延いてはタイヤの成形不良(エア入り不良)の発生を抑制できる。
【0019】
押圧ローラ13の跳び現象を抑えるには、押圧ローラ13の硬度を低めて、ジョイント部30を押圧するときの反動を軽減することも有効である。かかる観点から、押圧ローラ13の硬度は、55以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。また、押圧ローラ13に所要の耐久性を付与する観点から、押圧ローラ13の硬度は40以上であることが好ましい。この押圧ローラ13の硬度は、JIS K6301準拠のA型デュロメータによる硬度を指す。
【0020】
既述の通り、グリーンケース10Bはカーカスプライ3を含んでいる。本実施形態において、ジョイント部30は、そのカーカスプライ3を円筒状に成形するときに一端部と他端部とを相互に重ね合わせた成形プライジョイント部である。つまり、ジョイント部30は、図1(A)のように成形ドラムD1に帯状プライ(後述する帯状プライ60)を巻き付けて円筒状に成形する際に生じたジョイント部である。帯状プライを巻き付けるときの始端部が内側端部32となり、終端部が外側端部31となる。このような成形プライジョイント部は、円筒状をなすカーカスプライ3の周方向の一箇所に形成されている。
【0021】
図5は、帯状プライ60を形成する工程を示す概略図である。上述の通り、この帯状プライ60を成形ドラムD1に巻き付けることにより円筒状のカーカスプライ3が成形される。帯状プライ60は、複数の短冊状プライ50によって形成される。短冊状プライ50は、図示しないカレンダーロールなどから供給されたトッピングシート40を、裁断装置41によって所定長さに裁断することにより形成される。この所定長さは、カーカスプライ3の幅に対応した寸法に設定される。トッピングシート40は、引き揃えられた複数のカーカスコード3Cに未加硫ゴムをトッピングして形成されている。
【0022】
形成された短冊状プライ50は、裁断装置41による裁断方向と平行な方向に搬送され、先行する短冊状プライ50の搬送方向後方側の端部と、後続する短冊状プライ50の搬送方向前方側の端部とが重ね合わされる。そして、短冊状プライ50の端部同士が重ね合わされた状態で圧着装置51が幅方向に移動することにより、複数の短冊状プライ50が接合される。所定数の短冊状プライ50を連接することにより、所定長さを有する帯状プライ60が形成される。このように帯状プライ60を形成するときに短冊状プライ50の端部同士を相互に重ね合わせたジョイント部61は、裁断プライジョイント部と呼ばれる。
【0023】
図5の例では、短冊状プライ50を接合した後にゴムテープ62を貼り付けている。ゴムテープ62は、成形ドラムD1に巻き付けられた帯状プライ60(即ち、図1(A)のカーカスプライ3)とインナーライナゴム1との間に介在する。ゴムテープ62は、加硫成形時の拡張が大きいバットレス領域に配置されている。バットレス領域は、タイヤのサイドウォールにおける径方向外側の領域であり、平坦な舗装路での通常走行時には接地しない部分となる。バットレス領域にゴムテープ62を配設することにより、インナーライナゴム1に対するカーカスコード3Cの押し当たりを抑えることができる。
【0024】
本実施形態では、成形プライジョイント部であるジョイント部30の態様に基づき、成形ドラムD3を所定方向(図2のR1方向)に回転させる例を示したが、このジョイント部30は裁断プライジョイント部であってもよい。但し、成形プライジョイント部では、外側端部31と内側端部32との間にゴムテープ62が介在することと相俟って、裁断プライジョイント部よりも段差が大きくなる傾向にあるため、押圧ローラ13の跳び現象が起こりやすい。したがって、エアの残留を低減する効果を高めるうえでは、ジョイント部30が成形プライジョイント部であることが好ましい。
【0025】
ステッチング工程では、押圧ローラ13がジョイント部30を通過する際に、成形ドラムD3の回転速度を一時的に低下させてもよい。これにより、押圧ローラ13の跳び現象を抑える効果を高めて、エアの残留をより効果的に抑制できる。かかる成形ドラムD3の回転動作は、制御装置12によって制御される。制御装置12は、押圧ローラ13とジョイント部30との相対位置に基づき、押圧ローラ13がジョイント部30を通過するタイミングを把握できる。グリーンケース10Bが成形ドラムD3によって支持された時点で、ジョイント部30の周方向位置が常に一定である場合(例えば、図3のようにジョイント部30が常に軸10の真上に位置する場合)は、そのジョイント部30の位置情報を制御装置12に一旦入力しておけばよい。
【0026】
ジョイント部30の周方向位置を検出器で検出し、その検出結果に基づいて成形ドラムD3の回転速度を一時的に低下させるタイミングを制御してもよい。ジョイント部30の位置を都度把握することにより、ジョイント部30の周方向位置が一定しない状況にも対応できる。この場合、サイドウォールゴム5を巻き付ける前に、またはサイドウォールゴム5を巻き付けながら、グリーンケース10Bを一周以上回転させて、ジョイント部30の位置を検出することが好ましい。検出器には、レーザ変位計など、対象物との距離を検出可能な非接触タイプの距離センサ15が好適に用いられる。成形プライジョイント部と裁断プライジョイント部とは、段差の大きさや長さなどに基づいて区別できる。
【0027】
事前に付けた印M(図4参照)に基づいてジョイント部30の周方向位置を検出器で検出し、その検出結果に基づいて成形ドラムD3の回転速度を一時的に低下させるタイミングを制御してもよい。かかる印Mは、例えば、図5または図1(A)に示す工程においてカーカスプライ3(帯状プライ60)の外周面に付けることができる。この場合、検出器としては、印Mを検出可能なカメラ16を使用できる。図4では、三角形の印Mを採用しているが、印の形状はこれに限られない。印Mの色彩は、カーカスプライ3の色彩(通常は黒色)とは異なる色彩にしてもよい。
【0028】
また、ジョイント部30の向き(即ち、外側端部31と内側端部32との位置関係)を検出器で検出し、その検出結果に基づいて成形ドラムD3を所定方向に沿って回転させるようにしてもよい。かかる方法によれば、ジョイント部30の向きが一定しない状況にも対応できる。例えば、検出器としてのカメラ16で印Mの三角形の向きを検出し、それに基づいてジョイント部30の向きを検出することが考えられる。その場合、制御装置12は、検知した印Mの三角形の向きが図4の向きであれば成形ドラムD3をR1方向(図2参照)に回転させ、図4とは逆向きであれば成形ドラムD3をR2方向(図2参照)に回転させる。
【0029】
以上のように、本実施形態のタイヤ製造方法は、成形ドラムD3に支持された円筒状のグリーンケース10B(第1のタイヤ構成部材に相当)の外周面にサイドウォールゴム5(第2のタイヤ構成部材に相当)を圧着するために、成形ドラムD3を回転させながらサイドウォールゴム5の外周面に押圧ローラ13を押し当てるステッチング工程を備える。グリーンケース10Bに含まれるオーバーラップジョイント部30において、相対的に径方向外側に位置する端部を外側端部31と呼び、相対的に径方向内側に位置する端部を内側端部32と呼ぶとき、ステッチング工程では、オーバーラップジョイント部30を通過する押圧ローラ13が外側端部31の外周面から内側端部32の外周面に至るよう、所定方向(図2ではR1方向)に沿って成形ドラムD3を回転させる。これにより、押圧ローラ13の跳び現象を抑えて、オーバーラップジョイント部30の周辺でのエアの残留を低減できる。
【0030】
本実施形態では、第1のタイヤ構成部材としてのグリーンケース10Bがカーカスプライ3を含んでおり、オーバーラップジョイント部30は、そのカーカスプライ3を円筒状に成形するときに一端部と他端部とを相互に重ね合わせた成形プライジョイント部である。裁断プライジョイント部に比べて段差が大きくなりがちな成形プライジョイント部の態様に基づいて成形ドラムD3を所定方向に回転させることにより、エアの残留を低減する効果を高めることができる。
【0031】
ステッチング工程では、押圧ローラ13がオーバーラップジョイント部30を通過する際に、成形ドラムD3の回転速度を一時的に低下させてもよい。かかる方法によれば、押圧ローラ13の跳び現象を抑える効果を高めて、エアの残留をより効果的に抑制できる。また、その場合、オーバーラップジョイント部30の周方向位置を検出器(例えば、距離センサ15やカメラ16)で検出し、その検出結果に基づいて成形ドラムD3の回転速度を一時的に低下させるタイミングを制御してもよい。これにより、ジョイント部30の周方向位置が一定しない状況にも対応できる。
【0032】
JIS K6301準拠のA型デュロメータによる押圧ローラ13の硬度は55以下であることが好ましい。これにより、ジョイント部30を押圧するときの反動を軽減して、押圧ローラ13の跳び現象をより効果的に抑えることができる。
【0033】
本実施形態では、グリーンケース10Bに含まれるカーカスプライ3の外周面にサイドウォールゴム5を圧着するためのステッチング工程について説明したが、これに限られず、本開示の方法は、他のタイヤ構成部材を圧着するためのステッチング工程においても採用することができる。
【0034】
本開示のタイヤ製造方法は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
3 カーカスプライ
5 サイドウォールゴム(第2のタイヤ構成部材)
10B グリーンケース(第1のタイヤ構成部材)
13 押圧ローラ
15 距離センサ(検出器)
16 カメラ(検出器)
30 オーバーラップジョイント部
31 外側端部
32 内側端部
D3 成形ドラム(回転支持体)
図1
図2
図3
図4
図5