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特開2023-81658圃場評価装置、圃場評価方法および圃場評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081658
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】圃場評価装置、圃場評価方法および圃場評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230606BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195542
(22)【出願日】2021-12-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】村雲 泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 克憲
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動運転機械による作業を前提に、圃場の作業効率性を客観的に評価する圃場評価装置、圃場評価方法及び圃場評価プログラムを提供する。
【解決手段】圃場評価装置1は、1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得部11と、圃場情報に応じて、対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出部13と、作業時間に基づいて、対象圃場における自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価部14と、圃場情報に基づいて、当該対象圃場において自動運転機械が移動する運転経路を生成する経路生成部12、とを備える。時間算出部は、経路生成部により生成される経路に基づいて、自動運転機械による作業時間を算出してもよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得部と、
前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出部と、
前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価部と、
を備える、圃場評価装置。
【請求項2】
前記圃場情報に基づいて、当該対象圃場において前記自動運転機械が移動する運転経路を生成する経路生成部、をさらに備え、
前記時間算出部は、前記経路生成部により生成される経路に基づいて、前記自動運転機械による前記作業時間を算出する、
請求項1記載の圃場評価装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、評価対象とする複数の前記対象圃場に関する前記圃場情報を取得し、
前記経路生成部は、前記複数の前記対象圃場間を移動する圃場間経路を生成し、
前記時間算出部は、前記圃場間経路の移動時間を算出し、
前記圃場評価部は、前記移動時間および前記作業時間に基づいて、前記作業効率を評価する、
請求項2記載の圃場評価装置。
【請求項4】
圃場の形状モデルと、前記作業時間とを対応付けて格納する記憶部を備え、
前記時間算出部は、前記対象圃場の形状を画像識別処理により1又は複数の前記形状モデルに近似させ、前記形状モデルに対応付けられる前記作業時間に基づいて前記対象圃場における前記作業時間を算出する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の圃場評価装置。
【請求項5】
前記時間算出部は、前記対象圃場の周囲の長さ、頂点の数、および前記対象圃場の外周の凹凸形状の少なくともいずれかに基づいて、前記対象圃場における前記作業時間を算出する、
請求項1乃至4のいずれかに記載の圃場評価装置。
【請求項6】
作業と、前記作業に使用する前記自動運転機械の種別又は移動態様とを対応付けて格納する第2記憶部と、
をさらに備え、
前記情報取得部は、前記対象圃場において評価対象とする1又は複数の作業の選択を受け付け、
前記時間算出部は、前記第2記憶部を参照し、選択された前記作業における前記種別又は前記移動態様に基づいて前記作業時間を算出する、
請求項1乃至5のいずれかに記載の圃場評価装置。
【請求項7】
コンピュータが、
1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得処理と、
前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出処理と、
前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価処理と、
を実行する、圃場評価方法。
【請求項8】
コンピュータに対して、
1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得処理と、
前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出処理と、
前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価処理と、
を実行する、圃場評価プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圃場評価装置、圃場評価方法および圃場評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転の農機が普及している。このような農機は、圃場の形状に基づいて、当該圃場での運転経路を自動で生成する。したがって、圃場の形状により様々な運転経路が生成される結果、同一面積であっても形状により作業効率が異なる。そこで、自動運転の農機を使用することを前提に、圃場における作業の効率性を客観的に表す技術が必要とされている。
【0003】
特許文献1には、農業機械で行った農作業の農作業データを取得する第1取得部と、第1取得部で取得した農作業データに基づいて、農作業のスコアを圃場毎に算出する評価演算部と、を備える農作業評価システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、面積当たりの作業時間等に基づいて、実際に行った農作業を評価するシステムが開示されている。
【0005】
特許文献3には、土地を形状に基づいて評価するにあたり、評価対象とする土地を近似した多角形で形成される対象図形を入力する所在・図面入力部と、対象図形内に含まれる内部最大矩形を検出する内部最大矩形検出手段を有する形状減価率判断部と、を備え、形状減価率に基づいて対象土地を評価する評価システムが開示されている。
【0006】
特許文献1および2記載のシステムは、農作業を評価するものであり、圃場を評価するものとは観点が異なる。
【0007】
特許文献3記載のシステムは、自動運転農機による経路生成を前提とするものではなく、そもそも宅地の評価を行うシステムであるので、圃場の作業効率を評価するには十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許公開公報 特開2017-068533
【特許文献2】特許公開公報 特開2017-129939
【特許文献3】特許公開公報 特開2008-040663
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自動運転機械による作業を前提に、圃場の作業効率性を客観的に評価する圃場評価装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る圃場評価装置は、1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得部と、前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出部と、前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価部と、を備える。
【0011】
前記圃場情報に基づいて、当該対象圃場において前記自動運転機械が移動する運転経路を生成する経路生成部、をさらに備え、前記時間算出部は、前記経路生成部により生成される経路に基づいて、前記自動運転機械による前記作業時間を算出するものとしてもよい。
【0012】
前記情報取得部は、評価対象とする複数の前記対象圃場に関する前記圃場情報を取得し、前記経路生成部は、前記複数の前記対象圃場間を移動する圃場間経路を生成し、前記時間算出部は、前記圃場間経路の移動時間を算出し、前記圃場評価部は、前記移動時間および前記作業時間に基づいて、前記作業効率を評価するものとしてもよい。
【0013】
圃場の形状モデルと、前記作業時間とを対応付けて格納する記憶部を備え、前記時間算出部は、前記対象圃場の形状を画像識別処理により1又は複数の前記形状モデルに近似させ、前記形状モデルに対応付けられる前記作業時間に基づいて前記対象圃場における前記作業時間を算出するものとしてもよい。
【0014】
前記時間算出部は、前記対象圃場の周囲の長さ、頂点の数、および前記対象圃場の外周の凹凸形状の少なくともいずれかに基づいて、前記対象圃場における前記作業時間を算出するものとしてもよい。
【0015】
作業と、前記作業に使用する前記自動運転機械の種別又は移動態様とを対応付けて格納する第2記憶部と、をさらに備え、前記情報取得部は、前記対象圃場において評価対象とする1又は複数の作業の選択を受け付け、前記時間算出部は、前記第2記憶部を参照し、選択された前記作業における前記種別又は前記移動態様に基づいて前記作業時間を算出するものとしてもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る圃場評価方法は、コンピュータが、1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得処理と、前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出処理と、前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価処理と、を実行する。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る圃場評価プログラムは、コンピュータに対して、1又は複数の対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する情報取得処理と、前記圃場情報に応じて、前記対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する時間算出処理と、前記作業時間に基づいて、前記対象圃場における前記自動運転機械の作業効率を評価する、圃場評価処理と、を実行する。
なお、コンピュータプログラムは、各種のデータ読取可能な記録媒体に格納して提供したり、インターネット等のネットワークを介してダウンロード可能に提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0018】
自動運転機械による作業を前提とした、圃場の作業効率性を客観的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明に係る圃場評価装置が、作業での使用を想定する自動運転機械の1例であるドローンの斜視図である。
図2】本願発明に係る圃場評価装置の全体概念図である。
図3】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
図4】本願発明に係る圃場評価装置、および上記圃場評価装置にネットワークを通じて接続されるドローンの機能ブロック図である。
図5】上記圃場評価装置が有する記憶部に格納されているテーブルの1例である。
図6】上記圃場評価装置により圃場に生成される経路の1例を示す模式図である。
図7】上記圃場に生成される経路の別の例を示す模式図である。
図8】上記圃場評価装置により生成される、複数の圃場間を移動する圃場間経路の例を示す模式図である。
図9】上記圃場評価装置による圃場の評価結果を示す例であって、(a)圃場ごとの評価値の分布を示すヒストグラムの例、(b)圃場を管理する法人ごとの評価値の分布を示すヒストグラムの例、(c)圃場を有する地区ごとの評価値の分布を示すヒストグラム、(d)圃場面積と、効率および作業時との関係を示す散布図の例である。
図10】上記圃場評価装置が、圃場を評価する流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
圃場評価装置1は、自動で移動する農機の作業しやすさという観点で圃場を評価する装置である。圃場評価装置1は、1又は複数の圃場を対象圃場として、評価を行うことができる。圃場評価装置1は、圃場の個数、面積又は形状といった圃場の情報を取得するとともに、この圃場で自動運転の農機が作業をした場合の作業時間を取得する。また、圃場評価装置1は、この作業時間に基づいて、圃場における作業効率を算出する。
【0021】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0022】
まず、発明に係る圃場評価装置が、農作業での使用を想定する自動運転機械の1例として、ドローンの構成について説明する。
図1に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の筐体110からのび出たアームにより筐体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1におけるx方向を進行方向とする。
【0023】
回転翼101の各セットの外周には、略円筒形を形成する格子状のプロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4が設けられ、回転翼101が異物と干渉しづらくなるようにしている。プロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4を支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0024】
回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足が伸び出ている。
【0025】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0026】
ノズル103-1、103-2は、散布物を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、散布物とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0027】
タンク104は散布物を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、タンク104と各ノズル103-1、103-2とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、散布物をノズルから吐出するための手段である。
【0028】
図2にドローン100の飛行制御システムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されているが、接続関係は例示であり、これに限られない。ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404は、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0029】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、散布物の貯留量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。操作器401は、ユーザインターフェース装置としての入力部および表示部を備える。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0030】
圃場403は、ドローン100による散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。圃場403は、畑および水田を含んでよい。
【0031】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。
【0032】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ハードウェア装置により構成されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を取得してもよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0033】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。
【0034】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に散布物を散布した後に、あるいは、散布物の補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。発着地点406は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0035】
図3に本願発明に係る散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0036】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0037】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0038】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0039】
流量センサー510は散布物の流量を測定するための手段であり、タンク104からノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は散布物の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。
【0040】
生育診断カメラ512aは、圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。また、生育診断カメラ512aは、例えばマルチスペクトルカメラであるが、可視光線を受光するカメラであってもよい。病理診断カメラ512bは、圃場403に生育する作物を撮影し、病理診断のためのデータを取得する手段である。病理診断カメラ512bは、例えば可視光線を受光するカメラである。生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bは、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。
【0041】
侵入者検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きが生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは異なるため、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。注入口センサー517はタンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0042】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0043】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、吐出量の調整や吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0044】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザーは、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0045】
●圃場評価装置の概要
図4に示すように、圃場評価装置1は、例えばドローン100とネットワークNWを通じて互いに通信可能に接続されている。ただし、本発明の技術的範囲においては、必ずしもドローン100と接続されている必要はなく、圃場評価装置1に自動運転機械の運転経路を生成する機能があれば足りる。
【0046】
圃場評価装置1は、ハードウェア構成であってもよいし、営農クラウド405上に構成されていてもよい。圃場評価装置1は、無線又は一部もしくは全部が有線により接続された複数の装置により構成されていてもよい。
【0047】
●圃場評価装置1の機能部
圃場評価装置1は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として、主として、情報取得部11、経路生成部12、時間算出部13、圃場評価部14、出力部15、通信処理部16および記憶部20を有する。
【0048】
記憶部20は、第1機能部および第2機能部の例であり、少なくとも圃場評価において参照される情報を記憶する機能部である。
図5は、記憶部20に記憶されているテーブルT1の例を示す図である。テーブルT1には、作業と、作業に使用する自動運転機械の種別又は移動態様とが対応付けられて格納されている。作業の項目は、例えば耕起、代掻き、田植え、農薬散布および肥料散布等が格納されている。そして、テーブルT1には、これらの作業に使用する自動運転機械の種別が格納されている。自動運転機械は、自動で運転経路を生成して自動運転を行う機械全般を指す。自動運転機械は、例えば耕運機やトラクター、田植え機等の農機である。また、自動運転機械は、農作業を行うドローンであってもよい。なお、自動運転機械は農作業を行う機械に限らず、所定の領域を網羅的に移動して作業を行う機械、例えば清掃用ロボットであってもよい。
【0049】
自動運転機械の種別は、作業により異なる種別が格納されていてもよいし、同図に示すドローンのように、農薬散布と肥料散布の両方で使用できる自動運転機械があってもよい。また、テーブルT1には、各作業において自動運転機械を使用しない、人手による移動態様が合わせて格納されていてもよい。
【0050】
移動態様は、各自動運転機械における作業ごとの態様を示す。移動態様は、例えば作業幅、作業時の移動速度、圃場間移動時の移動速度、想定馬力等が含まれる。圃場間移動時の移動速度は、自動運転による移動速度の他、作業者による手動運転時に想定される移動速度を、自動運転による移動速度とは別に格納していてもよい。また、移動態様は、圃場内を作業せずに移動する場合の移動速度が含まれていてもよい。さらに、移動態様は、自動運転機械が方向転換、例えば旋回をする場合の速度が含まれていてもよい。例えば、ドローンのように複数の作業で使用する機械の場合には、行う作業によって異なる移動態様で移動する場合があってもよい。
【0051】
情報取得部11は、対象圃場の形状に関する圃場情報を取得する機能部である。圃場情報は、例えば農林水産省等の公的機関が公開している圃場の座標データ、又は測量データであってもよい。また、圃場情報は、あらかじめGNSSを有する装置を用いて取得した測量データであってもよい。この測量データは、GNSS機能を有するスマートホン又は所定の測量装置等を保持して圃場を巡回して取得したデータであってもよい。また、測量データは、GNSS機能を有するドローンを飛行させて測量したデータであってもよい。測量データは、2次元データであってもよいし、高低差を考慮した3次元データであってもよい。
【0052】
なお、圃場情報には、自動運転機械が立ち入れない進入禁止エリアの情報が含まれていてもよい。進入禁止エリアは、水平方向および高さ方向に規定される、3次元方向に広がりを有する領域であり、例えば障害物を中心にして描かれる直方体状の領域である。なお、進入禁止エリアは、障害物を中心に描かれる球状の領域であってもよい。
【0053】
情報取得部11は、圃場評価装置1の適宜の記憶部から圃場情報を呼び出してもよいし、ネットワークNWを通じて別途の情報源から圃場情報を取得してもよい。
【0054】
情報取得部11は、互いに離間した複数の圃場を、対象圃場として受け付けてもよい。複数の圃場の選択は、例えば、点在する複数の圃場を1人の土地保有者が保有している場合等、同じ作業者が同一の自動運転機械を用いて複数の圃場の作業を行う場合に行われる。このような構成によれば、複数の圃場を一括して作業する場合を想定して、当該複数圃場の作業効率を評価することができる。
【0055】
また、情報取得部11は、対象圃場において評価対象とする1又は複数の作業の選択を受け付けてもよい。作業選択を行うユーザは、圃場の用途等や、評価を要する作業の種類に応じて評価する作業を選択することができる。情報取得部11は、通信処理部16を介して作業選択を受け付けてもよいし、圃場評価装置1に備えられた適宜の入力手段により作業選択を受け付けてもよい。
【0056】
経路生成部12は、圃場情報に基づいて、当該対象圃場において自動運転機械が移動する運転経路を生成する機能部である。
【0057】
経路生成部12は、対象圃場のうち、圃場情報に含まれる圃場形状から、進入禁止エリアを除いたエリアを移動許可エリア70i、80i(図6図7参照)として決定してもよい。なお、経路生成部12は、自動運転機械の種別ごとに、進入禁止エリアを異ならせてもよい。例えば、陸上走行の機械においては、障害物の高さに関わらず避けて走行する必要がある一方、ドローン100は空中を飛行するため、障害物の高さ方向の大きさによっては障害物の上空を飛行することが可能である。自動運転機械の種別により、障害物の高さ方向の大きさに基づいて進入禁止エリアとするか否かを決定する構成によれば、機械種別ごとの作業効率性をより正確に評価できる。
【0058】
経路生成部12は、移動許可エリア内に運転経路を生成する。
図6に示すように、例えば経路生成部12は、移動許可エリア70i内を往復して略網羅的に走査する運転経路を生成する。
【0059】
また、図7に示すように、経路生成部12は、移動許可エリア80iを複数のエリアに分割し、分割したエリアごとに経路を生成してもよい。より具体的には、経路生成部12は、移動許可エリア80iを、1又は複数の整形エリア81iと、整形エリア81iよりも面積の小さい1又は複数の異形エリア82i,83iと、に分割する。経路生成部12は、特に移動許可エリア80iを上空から俯瞰した際に凹多角形状である場合、移動許可エリア80iを分割する。凹多角形は、多角形の内角の少なくとも1個が180°を超える角である多角形であり、言い換えれば凹部形状を有する多角形である。経路生成部12は、凹部が発見された場合、当該エリアの分割処理を行う。凹部が発見されない場合、これ以上の分割は不要と判定し、処理を終了する。
【0060】
また、経路生成部12は、整形エリア81iをさらに外周エリア811iと内側エリア812iとに分割し、エリアごとに運転経路を生成してもよい。外周エリア811iは、自動運転機械の作業幅を有する環状のエリアである。自動運転機械の作業幅は、自動運転機械の種別および作業内容により異なる。例えばドローン100が薬剤散布を行う場合の作業幅は薬剤の散布幅である。また、ドローン100が監視を行う場合の作業幅は、監視用ドローンである場合は、監視可能幅である。このように、作業幅は、自動運転機械の筐体幅とは異なっている。
【0061】
異形エリア82i,83iは、整形エリア81iよりも1個当たりの面積が小さいエリアであり、外周エリア811iおよび内側エリア812iを規定することができないエリアである。経路生成部12は、策定される各エリア811i,812i,82i,83iに対し、経路生成が可能なエリアか否かを判定し、経路生成の対象となるエリアを確定する。整形エリア81iおよび異形エリア82i,83iは、その形状により、運転が不可能な場合があるためである。経路生成部12は、自動運転機械の運転性能に基づいて定められる所定値に基づいて、経路生成が可能なエリアか否かを判定する。自動運転機械の運転性能とは、自動運転機械が等速運転に至るまでに要する助走距離、および等速運転から停止までに要する停止距離を含む。また、自動運転機械の運転性能には、薬剤散布や監視における作業幅を含む。
【0062】
経路生成部12は、例えば、外周エリア811i又は内側エリア812iの長辺が、自動運転機械が等速運転に至るまでに要する助走距離および停止に要する停止距離に基づいて定められる所定値未満である場合、当該外周エリア811i又は内側エリア812iに経路生成を行わない旨の決定をしてもよい。例えば、外周エリア811i又は内側エリア812iの長辺が、助走距離および停止距離を合計した値未満であるとき、経路生成を行わない旨の決定をする。また、経路生成部12は、外周エリア811i又は内側エリア812iの最短辺が自動運転機械の作業幅に基づいて決定される所定値未満であるとき、経路生成を行わない。より具体的には、外周エリア811i又は内側エリア812iの最短辺が自動運転機械の作業幅未満であるとき、経路生成を行わない。当該所定値未満である場合、経路が生成できないためである。
【0063】
また、経路生成部12は、策定される異形エリア82i,83iそれぞれに対し、ドローン100の運転が可能か否かを判定する。異形エリア82i,83iに対する経路生成規則は、長辺方向に向かって一方に飛行する経路、又は一往復する経路を生成する規則である。そこで、異形エリア82i,83iの最短辺が自動運転機械の作業幅に基づいて決定される所定値未満であるとき、経路生成部12は、自動運転機械が当該異形エリア内の経路生成を行わない。
【0064】
また、異形エリア82i,83iの長辺が、自動運転機械が等速運転に至るまでに要する助走距離および停止に要する停止距離に基づいて定められる所定値未満である場合も、経路生成を行わない旨の決定をする。例えば、異形エリア82i,83iの長辺が、助走距離および停止距離を合計した値未満であるとき、経路生成を行わない。
【0065】
図5に示す経路生成部12は、経路生成対象エリアに、所定の経路生成規則に基づいて運転経路を生成する。経路生成部12は、外周エリア811i、内側エリア812i、異形エリア83iのそれぞれに運転経路を生成し、生成された各運転経路を連結することにより、移動許可エリア80iの運転経路を生成してもよい。連結の順序は任意である。経路生成部12は、各エリアに対し異なる経路生成規則に基づいて運転経路を生成する。例えば、経路生成部12は、外周エリア811iには1回周回する周回経路811rを生成する。また、経路生成部12は、内側エリア812iには経路生成対象エリア内を複数回往復し、隣接する往復路同士又は隣接する往路と復路が往路起点側から往路終点側へ広がる又は狭まるように走査する往復運転経路812rを生成してもよい。経路生成部12は、異形エリア83iには当該エリアの長辺方向に向かって一方に移動する経路、又は一往復する異形エリア運転経路83rを生成してもよい。
【0066】
経路生成部12は、自動運転機械の種別により異なる運転経路を生成する。経路生成部12は、テーブルT1に格納されている移動態様の情報を参照し、この情報を係数として経路生成規則に当てはめて運転経路を生成する。すなわち、経路生成部12は、同じ生成規則で、かつ自動運転機械の種別ごとに異なる係数に基づいて運転経路を生成する。例えば、作業幅の広い自動運転機械は、作業幅の狭い機械に比べて往復回数が少なくなる一方、幅の狭い領域には経路が生成できず、当該領域では作業ができない場合がある。また、経路生成部12は、自動運転機械により異なる経路生成規則に基づいて運転経路を生成してもよい。経路生成部12は、所定のフォーマットに基づいて生成された経路生成規則を適宜追加し、記憶することで、様々な自動運転機械の経路生成が可能である。
【0067】
経路生成部12は、圃場内において作業せずに移動する圃場内移動経路を、作業しながら移動する運転経路とは区別して生成してもよい。圃場内移動経路は短いほど好ましいが、圃場内を重複なくいわゆる一筆書きで運転するのは困難であり、圃場内の経路は複数の運転経路が圃場内移動経路で連結されて構成されるのが通常である。
【0068】
また、図8に示すように、経路生成部12は、情報取得部11が複数の圃場を対象圃場として評価する旨の情報を取得している場合には、複数の圃場F間を移動する経路、すなわち圃場間経路rを生成する。圃場間経路rは、1個の圃場から他の圃場に移動する経路であってもよいし、複数の圃場を巡回する経路全体を示す概念であってもよい。
【0069】
時間算出部13は、圃場情報に応じて、対象圃場における自動運転機械の作業時間を算出する機能部である。時間算出部13は、経路生成部12により生成される運転経路に基づいて、自動運転機械による作業時間を算出する。
【0070】
時間算出部13は、少なくとも経路長に基づいて自動運転機械の移動をシミュレートすることで作業時間を算出してもよい。この場合、作業時間の算出は、経路長を移動速度で除することで求められる。また、時間算出部13は、経路における方向転換又は旋回の回数を考慮して作業時間を算出してもよい。方向転換および旋回は、直進に比べて時間を要するため、同じ経路長であっても、旋回の回数が多い経路の方が作業時間が長くなるためである。
なお、時間算出部13は、実際に自動運転機械が経路を移動して作業を行った場合の時間を計測することで、作業時間を算出してもよい。
【0071】
また、時間算出部13は、経路生成部12により運転経路が生成できないエリアに対しては、当該エリアの面積に人手による作業時間を当てはめて、作業時間を算出してもよい。この場合、時間算出部13は、自動運転機械の作業時間と、人手による作業時間とを合算して、対象圃場における作業時間を算出する。時間算出部13が算出する作業時間は、運転経路が生成できないエリアが大きいほど長くなる。
【0072】
時間算出部13は、経路生成部12により圃場間経路が生成されている場合には、当該圃場間経路の移動時間を算出してもよい。時間算出部13は、例えば、テーブルT1を参照し、圃場間移動経路長と圃場間移動時の移動速度とに基づいて移動時間を算出する。時間算出部13は、圃場間移動時の移動速度として、自動運転による移動速度を採用してもよいし、手動運転において想定される移動速度を採用してもよい。また、時間算出部13は、情報取得部11を介していずれの移動速度を採用するかを選択する入力を受け付けてもよい。また、時間算出部13は、圃場内において作業せずに移動する圃場内移動経路がある場合には、当該経路と圃場内移動時の移動速度とに基づいて圃場内移動の移動時間を算出してもよい。時間算出部13は、自動運転機械の作業時間に、圃場間経路の移動時間、圃場内移動経路の移動時間および人手による作業時間のうち1又は複数を加算することで、対象圃場における作業時間を算出する。時間算出部13は、圃場間経路の移動時間、圃場内移動経路の移動時間および人手による作業時間が長くなるほど、作業時間を長く算出する。
【0073】
時間算出部13は、対象圃場の形状を画像識別処理により1又は複数の前記形状モデルに近似させ、形状モデルに対応付けられる作業時間に基づいて対象圃場における作業時間を算出してもよい。例えば、時間算出部13は、圃場の形状が長方形に近似できる場合には、圃場内経路が短く、重複する経路も短くなるため、作業時間も短時間となる。また、時間算出部13は、対象圃場のうち形状モデルから逸脱する面積に基づいて作業時間を算出してもよい。より具体的には、近似モデルから逸脱する面積が多い程、作業時間を長く算出してもよい。さらに、時間算出部13は、対象圃場に当てはめる形状モデルの個数に応じて作業時間を算出してもよい。自動運転機械の経路は、例えば各形状モデルに対して生成され、生成された複数の経路を圃場内移動経路で連結することで対象圃場における経路とすることが想定される。したがって、1個あたりの対象圃場に近似する形状モデルの個数が多いほど圃場内移動経路が長くなり、作業時間が長くなるためである。
【0074】
時間算出部13は、対象圃場の周囲の長さ、頂点の数、および対象圃場の外周の凹凸形状の少なくともいずれかに基づいて、当該対象圃場における作業時間を算出してもよい。例えば、時間算出部13は、対象圃場の周囲の長さが長いほど、作業時間を長く算出する。対象圃場の周囲の長さが長い場合、対象圃場の面積が広い、又は形状が複雑であることが想定されるためである。面積に対して周囲の長さが長いほど、対象圃場の形状が複雑であることが想定されるため、時間算出部13は、面積と周囲の長さとに基づいて作業時間を算出してもよい。また、時間算出部13は、対象圃場の頂点の数が多いほど、作業時間を長く算出する。頂点の数が多いほど、対象圃場の形状が複雑であることが想定されるためである。さらにまた、時間算出部13は、対象圃場の外周に凹形状が含まれているか否かを判定し、凹形状が含まれる場合には作業時間を長く算出する。また、時間算出部13は、凹形状の個数が多いほど、作業時間を長く算出してもよい。自動運転機械の経路は、長方形状の圃場を往復して走査する経路を想定しているため、凹形状が多いほど圃場を分割して経路を生成する必要が生じる。その結果、圃場内移動経路が長くなるため、作業時間が長くなることが想定されるためである。このような構成によれば、自動運転機械の経路を実際に生成して作業時間を算出する構成に比べて、計算処理負担が軽減される。
【0075】
時間算出部13は、記憶部20を参照し、情報取得部11により選択を受け付けた作業における種別又は移動態様に基づいて作業時間を算出してもよい。この構成によれば、選択される作業における作業時間がより正確に算出できる。
【0076】
圃場評価部14は、対象圃場の作業時間に基づいて、対象圃場における自動運転機械の作業効率を評価する機能部である。圃場評価部14は、例えば、作業時間を圃場面積で除することにより評価値を算出する。また、圃場評価部14は、移動時間および作業時間に基づいて、作業効率を評価する。この移動時間は、圃場間移動の移動時間と、圃場内移動の移動時間とを含んでいてよい。
【0077】
すなわち、自動運転機械で走行する経路が簡潔に描ける圃場は、作業効率のよい圃場であるといえる。また、圃場内経路又は圃場間経路が長い場合や、旋回の多い経路が必要な圃場は、前述の圃場と比較して作業時間が長く、作業効率の評価値は小さくなる。さらに、自動運転機械での作業が不可能なエリアが大きい場合には、人手の作業が発生する結果、作業時間が増大し、作業効率の評価値は小さくなる。このような構成によれば、自動運転機械での作業を前提に、圃場の形状に応じて作業効率を客観的に評価することができる。ひいては、土地の資産評価や与信リスクの算定に際しても、圃場の生産性をより的確に評価する要素となりうる。また、選択される作業に応じた評価値を算出できる構成によれば、当該対象圃場に適した作業を特定することで、作物選定の一助とすることができる。さらに、自動運転機械の導入により見込める効率化の程度が算定されるので、管理者にとって自動運転機械の導入の契機とすることもできる。
【0078】
また、テーブルT1において、同一の作業に対し複数の自動運転機械が紐づけられている場合には、経路生成部12は、自動運転機械の種別ごとに異なる移動経路を生成し、時間算出部13がそれぞれ作業時間を算出した結果、圃場評価部14は、当該対象圃場における自動運転機械の種別ごとの評価値を算出できる。この評価値は、圃場の管理者又は自動運転機械の製造販売業者は、当該圃場に導入すべき機械の選定の一助とすることもできる。
【0079】
出力部15は、圃場評価部14により決定した対象圃場の評価結果を、適宜の表示部に出力する機能部である。出力部15は、圃場評価装置1に備えられた表示部の他、ネットワークNWを介して接続された端末に表示してもよい。端末は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートホン等、適宜のものであってよい。出力部15は、自動運転機械の種別ごとの評価値を表示してもよい。また出力部15は、選択された対象圃場ごとの評価値を表示してもよい。さらに、出力部15は、選択された作業の評価値を表示部に表示してもよい。出力部15は、土地の資産評価や与信リスクの算定結果を表示してもよい。出力部15は、例えば土地の資産評価結果と作業効率の評価値との関係を複数格納するテーブルを参照し、対象圃場の評価値に応じて土地の資産評価値を推定して表示してもよい。
【0080】
図8は、出力部15により出力される圃場間経路rの生成結果を示す図である。同図においては、複数の圃場Fと、圃場間を移動する圃場間経路rが付番されている。出力部15により圃場間経路の生成結果を出力する構成によれば、評価の過程が明確になる。
【0081】
図9は、対象圃場の評価結果の例を示す図である。図9(a)は、圃場ごとの評価値の分布を示すヒストグラムの例、図9(b)は、圃場を管理する法人ごとの評価値の分布を示すヒストグラムの例、図9(c)は、圃場を有する地区ごとの評価値の分布を示すヒストグラムの例である。出力部15は、例えば、当該ヒストグラムを適宜の表示部に表示した上で、評価対象圃場が属するバーの表示態様を、他のバーとは異ならせて表示する。この構成によれば、作業効率の分布又は相対評価を閲覧者に視覚的に確認させることができる。また、評価値の高い圃場の管理者と、低い圃場の管理者とが情報交換を行うことで、効率化の改善に資する場合もある。
【0082】
図9(d)は、圃場面積と、効率および作業時との関係を示す散布図の例である。プロットP1は、圃場面積と作業効率の評価値との関係を示しており、プロットP2は圃場面積と作業時間との関係を示している。同図に示すように、同じ圃場面積の圃場であっても、作業効率および作業時間は圃場の形状により異なり、ばらつきがある。出力部15は、当該散布図を適宜の表示部に表示してもよい。
【0083】
通信処理部16は、ネットワークNWを通じて適宜の装置と情報を送受信する機能部である。通信処理部16は、例えば適宜の入力装置から、圃場又は作業の選択に関する情報を受信してもよい。通信処理部16は、農林水産省等の公的機関が公開している圃場の座標データ又は測量データを格納する装置、又はGNSS機能を有する装置から、圃場情報を受信してもよい。通信処理部16は、作業、機械種別およびその移動態様に関する情報を受信し、記憶部20のテーブルT1に格納してもよい。通信処理部16は、ドローン100を始めとする自動運転機械から、対象圃場における作業時間の実績値を受信してもよい。通信処理部16は、例えば表示部を有する出力装置に、圃場の評価結果を送信してもよい。
【0084】
●処理フロー
図10に示すように、まず、1又は複数の対象圃場の選択を受け付ける(S11)。ついで、選択された対象圃場の圃場情報を取得する(S12)。ついで、1又は複数の対象作業の選択を受け付ける(S13)。ついで、経路生成部12により、選択された対象圃場に対する運転経路を生成する(S14)。対象圃場が複数選択されている場合には、各対象圃場内における運転経路を生成する。また、経路生成部12により、圃場内移動経路を生成してもよい。ついで、当該対象圃場に生成される圃場内の作業時間を算出する(S15)。ついで、対象圃場が複数選択されている場合には(S16でY)、経路生成部12により、対象圃場間を移動する圃場間経路を生成する(S17)。また、時間算出部13により、圃場間経路に要する移動時間を算出する(S18)。ステップS18に次いで、又はステップS16において対象圃場が複数ではない場合、ステップS19に進む。ステップS19では、圃場評価部14により、作業効率の評価値を算出する。
【0085】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかる圃場評価装置によれば、自動運転機械による作業を前提に、圃場の作業効率性を客観的に評価することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10