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特開2023-81664貫入試験機、土質判定方法及び土質判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081664
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】貫入試験機、土質判定方法及び土質判定システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
E02D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195556
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】591226586
【氏名又は名称】兼松サステック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】酒句 教明
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AB04
2D043AC01
2D043BA01
2D043BB04
2D043BC01
(57)【要約】
【課題】音信号により土質を判定する際、測定感度が高く、周辺環境の影響を受け難く耐久性の高い貫入試験機、土質判定方法及び土質判定システムを提供する。
【解決手段】スクリューウエイト貫入試験で用いられる貫入試験機Xであって、軸方向に沿って地中に貫入されるスクリューポイント5bを含む貫入ロッド5と、貫入ロッド5に地上で接続され、マイクロフォン41が内蔵された集音ユニット4と、マイクロフォン41が出力した音信号に基づいて土質を判定する判定部14と、を備え、貫入ロッド5及び集音ユニット4の少なくとも何れか一方には、スクリューポイント5bの摩擦音が空気振動する共鳴室が軸方向に沿って形成されており、共鳴室の内部にマイクロフォン41が位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューウエイト貫入試験で用いられる貫入試験機であって、
軸方向に沿って地中に貫入されるスクリューポイントを含む貫入ロッドと、
前記貫入ロッドに地上で接続され、マイクロフォンが内蔵された集音ユニットと、
前記マイクロフォンが出力した音信号に基づいて土質を判定する判定部と、を備え、
前記貫入ロッド及び前記集音ユニットの少なくとも何れか一方には、前記スクリューポイントの摩擦音が空気振動する共鳴室が前記軸方向に沿って形成されており、前記共鳴室の内部に前記マイクロフォンが位置している貫入試験機。
【請求項2】
前記集音ユニットは、前記共鳴室を内部に形成した集音ロッドと、当該集音ロッドに連結され、前記マイクロフォンが内蔵された蓋体とを有している請求項1に記載の貫入試験機。
【請求項3】
前記貫入ロッドには、前記共鳴室としての中空領域が前記軸方向に沿って形成されている請求項1に記載の貫入試験機。
【請求項4】
前記集音ユニットと前記貫入ロッドとは着脱可能に螺合されている請求項1から3のいずれか一項に記載の貫入試験機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の貫入試験機を用いた土質判定方法であって、
前記スクリューポイントが所定位置に到達したときに前記貫入ロッドの移動を停止させる停止ステップと、
前記停止ステップの後、前記貫入ロッドに前記集音ユニットを接続する接続ステップと、
前記接続ステップの後、前記スクリューポイントを前記所定位置に維持しながら前記貫入ロッドを回転させ、前記マイクロフォンが出力した前記音信号に基づいて前記判定部が前記土質を判定する判定ステップと、を含む土質判定方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の貫入試験機に使用される土質判定システムであって、
前記集音ユニットと、前記集音ユニットと電気的に接続され、前記判定部を有する土質判定装置と、を備えた土質判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューウエイト貫入試験で用いられる貫入試験機、貫入試験機を用いた土質判定方法、及び貫入試験機に使用される土質判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤調査方法の一つとして、JIS A 1221に規定されるスクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験、以下「SWS試験」と称する)がある。このSWS試験を実施する装置として、地中に貫入されるスクリューポイントを含む貫入ロッドを備えた貫入試験機が知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の貫入試験機は、貫入ロッドの貫入速度および半回転数を自動で計測するものであり、貫入ロッドを支持するチャックスリーブに接触する振動センサにより貫入ロッドの振動を計測し、この振動から音信号を検出して土質を判定する。
【0004】
特許文献2に記載の貫入試験機は、スクリューポイントの内部に共鳴室を設けると共に共鳴室の上部にマイクロフォンを設け、共鳴室で空気振動するスクリューポイントの摩擦音をマイクロフォンで収音して音信号に変換し、土質を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-180655号公報
【特許文献2】特開2015-224489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の貫入試験機は、センサに加速計を使用せざるを得ないため測定可能な周波数の幅が狭く測定感度が非常に悪い上、貫入ロッドの振動を直接計測するものであることから周辺環境の影響を受けやすい。また、特許文献2に記載の貫入試験機は、スクリューポイントにマイクロフォンを設けていることから、マイクロフォンから音信号を取り出すためのケーブルを貫入ロッドに内蔵する必要があり、貫入ロッドの回転時にケーブルが捻れて断線したり、スクリューポイントの強い振動を受けてマイクロフォンが破損したりするおそれがあった。
【0007】
そこで、音信号により土質を判定する際、測定感度が高く、周辺環境の影響を受け難く耐久性の高い貫入試験機、土質判定方法及び土質判定システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る貫入試験機の特徴構成は、スクリューウエイト貫入試験で用いられる貫入試験機であって、軸方向に沿って地中に貫入されるスクリューポイントを含む貫入ロッドと、前記貫入ロッドに地上で接続され、マイクロフォンが内蔵された集音ユニットと、前記マイクロフォンが出力した音信号に基づいて土質を判定する判定部と、を備え、前記貫入ロッド及び前記集音ユニットの少なくとも何れか一方には、前記スクリューポイントの摩擦音が空気振動する共鳴室が前記軸方向に沿って形成されており、前記共鳴室の内部に前記マイクロフォンが位置している点にある。
【0009】
本構成では、マイクロフォンが内蔵された集音ユニットが貫入ロッドに地上で接続されているため、マイクロフォンが出力した音信号を判定部まで有線で接続した場合、ケーブル長を短くすることができる。また、マイクロフォンやケーブルをスクリューポイントおよび貫入ロッドに内蔵する必要が無いため、スクリューポイントの強い振動を受けてマイクロフォンが破損したり、貫入ロッドの回転時にケーブルが捻れて断線したりする不具合も防止できる。
【0010】
本構成における貫入ロッド及び集音ユニットの少なくとも何れか一方には、スクリューポイントの摩擦音が空気振動する共鳴室が軸方向に沿って形成されており、共鳴室の内部にマイクロフォンが位置している。つまり、貫入ロッドの振動を直接計測するのではなく、共鳴室を伝播する空気振動の音を検出するものであり、周辺環境の影響を受け難く、検出感度が高い。その結果、音信号に基づく土質の判定精度を高めることができる。
【0011】
このように、マイクロフォンが内蔵された集音ユニットを地上に設けるといった簡便な構成により、音信号により土質を判定する際、周辺環境の影響を受け難く耐久性の高い貫入試験機となっている。
【0012】
他の特徴構成は、前記集音ユニットは、前記共鳴室を内部に形成した集音ロッドと、当該集音ロッドに連結され、前記マイクロフォンが内蔵された蓋体とを有している点にある。
【0013】
本構成のように、共鳴室を内部に形成した集音ロッドを設ければ、貫入ロッドの内部に共鳴室を設ける必要が無く、従来の中実貫入ロッドに集音ユニットを接続するだけで土質判定を行うことができる。しかも、地上に配置された集音ユニットの集音ロッドに共鳴室があるため、スクリューポイント以外の貫入ロッドとその周囲にある土との摩擦によって発生する音が直接的に共鳴室を伝播してノイズが増大するといった不都合がない。
【0014】
他の特徴構成は、前記貫入ロッドには、前記共鳴室としての中空領域が前記軸方向に沿って形成されている点にある。
【0015】
本構成のように、貫入ロッドに軸方向に沿う中空領域を設ければ、貫入ロッドの軸方向長さ分に応じた共鳴室を確保できるため、空気振動の感度を高めることができる。
【0016】
他の特徴構成は、前記集音ユニットと前記貫入ロッドとは着脱可能に螺合されている点にある。
【0017】
本構成のように、集音ユニットと貫入ロッドとが着脱可能に螺合する形態であるため、土質判定時のみ集音ユニットを装着すれば良く、マイクロフォンの振動ダメージを極めて小さくすることができる。
【0018】
上記何れかの貫入試験機を用いた土質判定方法の特徴は、前記スクリューポイントが所定位置に到達したときに前記貫入ロッドの移動を停止させる停止ステップと、前記停止ステップの後、前記貫入ロッドに前記集音ユニットを接続する接続ステップと、前記接続ステップの後、前記スクリューポイントを前記所定位置に維持しながら前記貫入ロッドを回転させ、前記マイクロフォンが出力した前記音信号に基づいて前記判定部が前記土質を判定する判定ステップと、を含む点にある。
【0019】
上述した作用効果を有する貫入試験機を用いた土質判定方法は、貫入ロッドの移動を停止させた後、貫入ロッドに集音ユニットを接続してから貫入ロッドを回転させて音信号を検出するため、集音ユニットの回転を必要最小限とすることができる。よって、貫入ロッドの回転時にケーブルが捻れて断線したり、スクリューポイントの強い振動を受けてマイクロフォンが破損したりする不具合を防止できる。
【0020】
上記何れかの貫入試験機に使用される土質判定システムの特徴構成は、前記集音ユニットと、前記集音ユニットと電気的に接続され、前記判定部を有する土質判定装置と、を備えた点にある。
【0021】
上述した作用効果を有する貫入試験機を用いた土質判定システムは、従来の貫入試験機に後付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】貫入試験機の全体構成図である。
図2】集音ユニットの蓋体を示す分解斜視図である。
図3】第一実施形態に係る集音ユニット及び貫入ロッドを示す断面図である。
図4】第二実施形態に係る集音ユニット及び貫入ロッドを示す断面図である。
図5】土質判定方法を示すフロー図である。
図6】本実施例と比較例とで計測した音圧レベルの比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る貫入試験機、土質判定方法及び土質判定システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)で用いられる貫入試験機として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
図1に示すように、貫入試験機Xは、土質判定装置1と、支柱2と、支柱2に沿って昇降可能な昇降台3と、先端にスクリューポイント5bを有する貫入ロッド5と、貫入ロッド5を保持するチャック5cと、貫入ロッド5に地上で接続される集音ユニット4と、貫入ロッド5を回転駆動する回転モータ6と、スプロケット7を回転駆動する昇降モータ8と、制御装置9とを備えている。本実施形態における貫入試験機Xは、制御装置9により駆動制御される自動貫入試験機である。土質判定システムYは、土質判定装置1と集音ユニット4とを備え、集音ユニット4が出力した音信号に基づいて土質判定装置1が土質を判定する。貫入ロッド5は、同一形状の複数のロッドが継ぎ足し可能であり、以下、先端にスクリューポイント5bを有する一番目のロッドを第一貫入ロッド5aと称する。
【0025】
昇降台3は、所定重量の錘3aと、回転モータ6と、チャック5c及び貫入ロッド5と、昇降モータ8との荷重を受けており、貫入ロッド5に1kNの荷重を負荷した状態で貫入試験可能に構成されている。集音ユニット4は、貫入ロッド5に着脱可能に螺合されており、土質判定時には、貫入ロッド5に集音ユニット4の荷重が加わる。昇降台3は、支柱2に沿って鉛直方向に配置された案内チェーン2aと噛み合うスプロケット7を有しており、このスプロケット7が案内チェーン2aを回転させることにより、上昇可能に構成されている。
【0026】
貫入ロッド5は、軸方向に沿って地中に貫入されるスクリューポイント5bを含む長尺状に形成されている。この貫入ロッド5のスクリューポイント5bとは反対側の端部には、マイクロフォン41が内蔵された集音ユニット4が螺合される雄ねじ部51が形成されている。スクリューポイント5bは、JIS A1221に規定されるように、全長200mmに対して1回の捻りが加えられたドリル形状となっている。
【0027】
チャック5cは、チャック軸(不図示)で貫入ロッド5を保持しながら、回転モータ6の駆動力により貫入ロッド5と共にチャック軸が回転可能に構成されている。チャック5cの上部には、貫入ロッド5の端部に形成された雄ねじ部51が露出しており、この雄ねじ部51に集音ユニット4を螺合する形態であることから、集音ユニット4が貫入ロッド5に対して着脱可能に構成されている。貫入ロッド5は、昇降台3を上限位置(地表から1m)に待機させた状態でチャック5cに装着され、継ぎ足し可能に構成されている。また、チャック5cには、荷重センサとしてのロードセル39が設けられており、このロードセル39により貫入ロッド5にかかる荷重を測定することができる。
【0028】
回転モータ6は、インダクションモータ等で構成されており、駆動軸(不図示)の端部にロータリエンコーダ(不図示)が取り付けられており、ロータリエンコーダの出力値に基づいて制御装置9により回転制御される。回転モータ6には一方向クラッチ(不図示)が設けられており、スクリューポイント5bの捩りに合わせて貫入ロッド5を地中にねじ込む方向に回転モータ6が正転駆動したときには、貫入ロッド5が回転し、反対に回転モータ6が逆転駆動したときには空転して貫入ロッド5が回転しない。
【0029】
昇降モータ8は、インダクションモータ等で構成されており、遊星歯車等の減速機構(不図示)を介して駆動軸(不図示)とスプロケット7とが一体回転する。昇降モータ8は、駆動軸の端部にロータリエンコーダ21が取り付けられており、ロータリエンコーダ21の出力値に基づいて制御装置9により回転制御される。昇降モータ8には一方向クラッチ(不図示)が設けられており、昇降台3が上昇する方向に昇降モータ8が正転駆動したときにはスプロケット7が回転し、反対に昇降モータ8が逆転駆動したときには空転してスプロケット7が回転しない。スプロケット7が回転したとき、貫入ロッド5には、昇降台3の総重量に基づく1kN(最大試験荷重)から昇降モータ8の出力トルクに基づく上昇力を減算した荷重を負荷することができる。一方、スプロケット7が回転しないとき、貫入ロッド5には、昇降台3の総重量に基づく1kN(最大試験荷重)を負荷することができる。
【0030】
また、昇降モータ8には、スプロケット7の回転に伴うパルス信号を出力するロータリエンコーダ17が設けられており、制御装置9は、該パルス信号を処理することにより、昇降台3の昇降量、昇降速度に基づき、貫入ロッド5の貫入量、貫入速度を演算する。
【0031】
制御装置9は、少なくとも回転モータ6及び昇降モータ8の作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムを含んでおり、コンピュータのASIC,FPGA,CPU又は他のハードウェアを含むプロセッサにより実行される。制御装置9は、昇降モータ8の駆動を制御するインバータ制御部92と、回転モータ6の駆動を制御するインバータ制御部93と、これらインバータ制御部92,93に指令を送るメイン制御部91とを有している。
【0032】
昇降モータ8の駆動を制御するインバータ制御部92は、メイン制御部91からのトルク指令を受けて、ロードセル39の値をフィードバック制御して貫入ロッド5に負荷される実荷重を目標の試験荷重に設定する。このとき、制御装置9は、スプロケット7の回転数から貫入ロッド5の貫入量を演算し、深度ごとの実荷重を記憶する。貫入ロッド5に負荷される実荷重が最大試験荷重を超え、貫入ロッド5の貫入速度が所定値以下になると、回転モータ6の駆動を制御するインバータ制御部93は、メイン制御部91からのトルク指令を受けて、貫入ロッド5を地中にねじ込む方向に回転モータ6を正転駆動させる。このとき、制御装置9は、スプロケット7の回転数と回転モータ6の回転数とから、貫入ロッド5が所定量貫入するごとに、貫入ロッド5の半回転数を演算し、深度ごとの半回転数を記憶する。そして、制御装置9は、深度ごとの実荷重及び半回転数から地盤強度の評価指標値(Nsw値)を演算する。
【0033】
このNsw値を算出する際、深度ごとの土質を判別することにより、より必要な地盤設計定数が分かるため、本実施形態における貫入試験機Xには、集音ユニット4と土質判定装置1とを備えた土質判定システムYが設けられている。この土質判定装置1は、制御装置9と集音ユニット4との間を有線にて接続される。土質判定装置1は、少なくともスクリューポイント5bの摩擦音を検出して土質を判定するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムを含んでおり、コンピュータのASIC,FPGA,CPU又は他のハードウェアを含むプロセッサにより実行される。なお、土質判定装置1と集音ユニット4とを無線接続しても良いし、土質判定装置1を制御装置9に内蔵しても良い。
【0034】
土質判定装置1は、入力部11と記憶部12と抽出部13と判定部14とを備えている。入力部11は、集音ユニット4のマイクロフォン41が検出した音のデジタル信号(以下、「音信号」と言う)を受信する通信インターフェースである。記憶部12は、各種プログラムと共振周波数データと土質基準データとを記憶するハードウェアである。抽出部13及び判定部14の詳細は後述する。
【0035】
[第一実施形態]
第一実施形態に係る集音ユニット4について、図2図3を用いて説明する。図3に示すように、中実長尺状の貫入ロッド5と、共鳴室42が閉空間として形成された集音ユニット4と、が着脱可能に螺合されている。図2図3に示すように、集音ユニット4は、共鳴室42を内部に形成した集音ロッド4aと、集音ロッド4aに螺合されて共鳴室42を閉塞する蓋体43を有している。共鳴室42は、スクリューポイント5bの摩擦音が空気振動する閉空間となっている。
【0036】
集音ロッド4aは、軸方向に沿って所定の長さ(例えば、200mm)を有する共鳴室42が内部に中空形成された筒状に形成されている。集音ロッド4aは、蓋体43の側の一端部に雄ねじ部4a1が形成され、貫入ロッド5の側の他端部に貫入ロッド5の雄ねじ部51に螺合される雌ねじ部4a2が形成されている。集音ロッド4aの一端部に形成された共鳴室42にはマイクロフォン41を収容する収容空間が形成されており、集音ロッド4aの他端部に形成された共鳴室42が閉塞部材44にて閉塞されており、蓋体43と閉塞部材44との間で共鳴室42が閉空間となっている。本実施形態における共鳴室42は、雌ねじ部4a2の側から所定の直径(例えば5mm)の切削ドリルで穿孔した後、雌ねじ部4a2の側を貫入ロッド5と同種の材料から成る閉塞部材44にて閉塞して形成される。
【0037】
図2に示すように、蓋体43は、マイクロフォン41を保持する弾性部材43aと、弾性部材43aを保持する分割部材43bと、分割部材43bを固定する固定部材43cとを有しており。弾性部材43aは、分割部材43bに係止される段部43a1が形成されており、この段部43a1により下方向の移動が規制された状態で分割部材43bに挟圧されて固定されている。
【0038】
分割部材43bは、ピン43b1により位置決めされた状態で対向する一対の半円筒部材で構成されており、複数(本実施形態では4つ)のボルトBで固定部材43cに固定されている。固定部材43cは、円筒部材で構成されており、内周面に集音ロッド4aの雄ねじ部4a1が螺合される雌ねじ部43c1が形成されている。このように形成された集音ユニット4の蓋体43の上面には、マイクロフォン41と土質判定装置1とを電気的に接続するケーブルCが露出している。
【0039】
このように、共鳴室42を内部に形成した集音ロッド4aを設ければ、貫入ロッド5の内部に共鳴室42を設ける必要が無く、従来の中実貫入ロッドに集音ユニット4を接続するだけで土質判定を行うことができる。しかも、地上に配置された集音ユニット4の集音ロッド4aに共鳴室42があるため、スクリューポイント5b以外の貫入ロッド5とその周囲にある土との摩擦によって発生する音が直接的に共鳴室42を伝播してノイズが増大するといった不都合がない。
【0040】
[第二実施形態]
第二実施形態に係る集音ユニット4及び貫入ロッド5について、図4を用いて説明する。本実施形態に係る集音ユニット4は、第一実施形態に係る集音ロッド4aを省略して、蓋体43を貫入ロッド5に接続する構成としている。つまり、蓋体43の雌ねじ部43c1は、貫入ロッド5の雄ねじ部51に螺合される。蓋体43の構造は、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
貫入ロッド5は、共鳴室42が内部に中空形成された円筒状に形成されている。貫入ロッド5は、同一形状で構成された複数のロッドが結合可能な継ぎ足し構造となっており、先端にスクリューポイント5bを有する一番目の第一貫入ロッド5aを有している。
【0042】
1つの貫入ロッド5は、蓋体43の側の一端部に雄ねじ部51が形成され、他の貫入ロッド5の側の他端部に他の貫入ロッド5の雄ねじ部51に螺合される雌ねじ部52が形成されている。共鳴室42は、貫入ロッド5の雄ねじ部51の先端面と同等の開口面積を有する第一中空領域42a1と、第一中空領域42a1より縮径して軸方向に延在する第二中空領域42a2と、第二中空領域42a2よりも若干拡径してマイクロフォン41を収容可能な第三中空領域42a3とが連通して形成されている。このように、貫入ロッド5には、共鳴室42としての中空領域42a1,42a2,42a3が軸方向に沿って形成されている。
【0043】
スクリューポイント5bの内部に共鳴室42(第一中空領域42a1)と連通する中空空間を形成しても良いし、スクリューポイント5bを中実ドリルで形成しても良い。スクリューポイント5bの内部に中空空間を形成した場合、この中空空間にスクリューポイント5bの摩擦音が直接伝搬され、共鳴室42を介してマイクロフォン41が摩擦音を検出することとなる。つまり、本実施形態に係る中空領域42a1,42a2,42a3は、貫入ロッド5のうちスクリューポイント5bの内部まで連続して形成されても良い。
【0044】
このように、貫入ロッド5に軸方向に沿う中空領域42a1,42a2,42a3を設ければ、貫入ロッド5の軸方向長さ分に応じた共鳴室42を確保できるため、空気振動の感度を高めることができる。なお、第二実施形態における貫入試験機Xは、スクリューウエイト貫入試験における土質判定用として使用することができる。つまり、JIS A 1221に規定されるスクリューウエイト貫入試験には、従来のような中実貫入ロッドを備えた貫入試験機を用い、スクリューウエイト貫入試験の参照データ取得目的に第二実施形態における貫入試験機Xを使用すれば良い。
【0045】
第一実施形態及び第二実施形態に係る貫入試験機Xは、マイクロフォン41が内蔵された集音ユニット4が貫入ロッド5に地上で接続されているため、マイクロフォン41が出力した音信号を土質判定装置1まで接続するケーブルCのケーブル長を短くすることができる。また、マイクロフォン41やケーブルCを貫入ロッド5に内蔵する必要が無いため、貫入ロッド5の回転時にケーブルCが捻れて断線したり、スクリューポイント5bの強い振動を受けてマイクロフォン41が破損したりする不具合も防止できる。さらに、貫入ロッド5の内部で断線ポイントを探す必要が無いため、複数の貫入ロッド5を継ぎ足した場合でも、貫入ロッド5を分解して修理する必要が無く、メンテナンスが容易である。また、集音ユニット4と貫入ロッド5とが着脱可能に螺合する形態であるため、土質判定時のみ集音ユニット4を装着すれば良く、マイクロフォン41の振動ダメージを極めて小さくすることができる。
【0046】
第一実施形態及び第二実施形態における貫入ロッド5及び集音ユニット4の少なくとも何れか一方には、スクリューポイント5bの摩擦音が空気振動する共鳴室42が軸方向に沿って形成されており、共鳴室42の内部にマイクロフォン41が位置している。つまり、貫入ロッド5の振動を直接計測するのではなく、共鳴室42を伝播する空気振動の音を検出するものであり、周辺環境の影響を受け難く、検出感度が高い。その結果、音信号に基づく土質の判定精度を高めることができる。
【0047】
[土質判定装置及び土質判定方法]
図1に示すように、土質判定装置1の抽出部13は、ケーブルCから入力部11を介してマイクロフォン41が検出した音信号を取得し、共鳴室42の大きさに応じた共振周波数に基づいて、スクリューポイント5bの音信号を抽出する。第一実施形態では、集音ロッド4aの内部に共鳴室42を形成しているため、軸方向の長さLが一定であるが、第二実施形態では、貫入ロッド5の継ぎ足し本数によって共鳴室42の軸方向の長さLが変動する。共鳴室42の大きさしての軸方向の長さLとした場合、共振周波数fは、f=V(音速)×Lで算出することができる。抽出部13は、この共振周波数f未満の周波数成分を抽出するローパスフィルタを用いても良いし、共振周波数fに応じて求めた所定の低周波成分をノイズとして除去するハイパスフィルタを用いても良い。なお、抽出部13を省略して、マイクロフォン41が検出した音信号を全て用いても良い。
【0048】
土質判定装置1の判定部14は、抽出部13が抽出したスクリューポイント5bの音信号と、記憶部12に記憶されている土質基準データとに基づいて、土質を判定する。土質基準データは、判定される土質毎に、当該土質であることを判定するための音の基準値を有している。この判定部14の判定結果は、土質判定装置1の表示画面で表示したり、印字したり、制御装置9に送信したりされる。
【0049】
続いて、図5を用いて土質判定方法を説明する。本実施形態に係る土質判定方法は、スクリューポイント5bが所定位置(0.25mの倍数)に到達したときに貫入ロッド5の移動を停止させる停止ステップ(図5の♯53)と、停止ステップの後、貫入ロッド5に集音ユニット4を接続する接続ステップ(図5の♯54)と、接続ステップの後、スクリューポイント5bを所定位置に維持しながら貫入ロッド5を回転させ、マイクロフォン41が出力した音信号に基づいて判定部14が土質を判定する判定ステップ(図5の♯55)と、を含んでいる。
【0050】
集音ユニット4を装着していない状態の貫入試験機Xを用いて、SWS試験(貫入試験)を実施する(#51)。上述したように、貫入試験では、制御装置9が回転モータ6及び昇降モータ8を制御して、所定位置(0.25mの倍数)に到達するまで繰り返し実施する。そして、スクリューポイント5bが所定位置に到達したとき(#52Yes)、貫入試験を一時停止する(#53、停止ステップ)。このとき、制御装置9が昇降モータ8を制御して、貫入ロッド5に負荷される荷重がゼロとなる無荷重状態とする。
【0051】
集音ユニット4と土質判定装置1とを備えた土質判定システムYを、貫入試験機Xと制御装置9との間に接続する(#54、接続ステップ)。このとき、集音ユニット4の荷重が貫入ロッド5に負荷されるため、貫入ロッド5に負荷される荷重がゼロとなるよう、制御装置9が昇降モータ8を制御する。次いで、制御装置9が回転モータ6を制御することにより無荷重状態で貫入ロッド5を回転させて、土質判定装置1が土質を判定する(♯55、判定ステップ)。
【0052】
貫入ロッド5を回転させることにより、スクリューポイント5bの摩擦音が共鳴室42の閉空間に空気振動し、マイクロフォン41が検出した音のデジタル信号がケーブルCを介して土質判定装置1に伝達される。このとき、制御装置9が回転モータ6の回転数や回転時間を予め設定された値で制御することにより、土質判定装置1が所定時間に亘ってデジタル信号を受信する。
【0053】
土質判定装置1の抽出部13は、マイクロフォン41が検出した音信号を取得し、共鳴室42の大きさに応じた共振周波数に基づいて、スクリューポイント5bの音信号を抽出する。土質判定装置1の判定部14は、抽出部13が抽出したスクリューポイント5bの音信号と、記憶部12に記憶されている土質基準データとに基づいて、土質を判定する。土質判定の具体的方法は、例えば、特許文献2(特開2015-224489号公報)に記載の方法を用いることができる。つまり、抽出部13にて抽出された音信号と記憶部12に記憶されている土質基準データ(土質の音信号の基準値)とを比較し、当該比較の結果に基づいて、所定位置毎の土質を判定する。土質の音信号の基準値としては、音信号の音圧レベル毎に細粒分含有率をマップ化したものが挙げられる。
【0054】
土質判定装置1による土質判定が終了した場合(#56Yes)、貫入試験を継続するとき(#57Yes)には、貫入試験機Xと制御装置9との間に接続された土質判定システムYを取り外して、貫入試験を再開する(#58)。
【0055】
図6には、特許文献2(特開2015-224489号公報)に記載のようにスクリューポイント5bの内部に共鳴室及びマイクロフォンを設けた従来例と、第一実施形態における集音ユニット4を貫入ロッド5に地上で接続した本実施例との音圧レベルの比較図が示されている。比較例では、スクリューポイント5bの摩擦音が直接的に共鳴室に空気振動する空気音となるが、本実施例では、スクリューポイント5bの摩擦音が貫入ロッド5に固体音として伝搬し、この固体音が共鳴室42を空気振動する空気音として伝搬する。図6に示すように、摩擦音の伝播経路が異なるにも関わらず、比較例と本実施例とを比べた場合、同等の音圧レベルとなったことから、本実施形態では、判定精度を維持しつつ、マイクロフォンやケーブルを貫入ロッド5に内蔵することなく耐久性の高めることができる点が実証できた。特に、本実施形態では、集音ユニット4が地上に設けられていることから周囲のノイズを拾うことも懸念されたが、スクリューポイント5bの摩擦音における固体音が共鳴室42を空気振動する空気音として伝搬することにより、ノイズの影響を受けること無く、土質判定することができる事が分かる。
【0056】
[その他の実施形態]
(1)貫入試験機Xは、制御装置9により駆動制御される自動貫入試験機として説明したが、錘3aを手動で着脱しながら貫入ロッド5を地中に貫入させる手動貫入試験機であっても良い。
(2)第一実施形態の集音ユニット4に接続される貫入ロッド5は、第二実施形態のように共鳴室42としての中空領域が軸方向に沿って形成されていても良い。
(3)上述した実施形態では、マイクロフォン41を共鳴室42の端部に設けたが、共鳴室42の途中に設けても良く、マイクロフォン41が地上に位置している限り、設置位置は限定されない。
(4)上述した実施形態では、集音ユニット4と貫入ロッド5とが着脱可能に螺合している形態であったが、集音ユニット4と貫入ロッド5とを常時接続した形態であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、スクリューウエイト貫入試験の地盤調査に用いられる貫入試験機、貫入試験機を用いた土質判定方法、及び貫入試験機に使用される土質判定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 :土質判定装置
4 :集音ユニット
4a :集音ロッド
5 :貫入ロッド
5b :スクリューポイント
14 :判定部
41 :マイクロフォン
42 :共鳴室
42a1,42a2,42a3 :中空領域
43 :蓋体
X :貫入試験機
Y :土質判定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6