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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081679
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】分散剤、塗工液組成物及び感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B41M5/337 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195591
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】日高 和弘
(72)【発明者】
【氏名】寒風 公晴
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB21
2H026CC07
2H026DD02
2H026DD48
2H026FF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロイコ染料、顕色剤、増感剤等の感熱発色成分を従来に比べ、より短時間で所望の粒子径まで細かく分散可能な分散剤、感熱発色成分と分散剤とを含む感熱記録層形成用の塗工液組成物、及び支持体上に前記塗工液で形成された感熱記録層を有する感熱記録体を提供する。
【解決手段】ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分の分散剤であって、該分散剤が、以下の条件を満足する共重合体(D)のアルカリ中和塩を含むことを特徴とする分散剤。
(1)(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とからなるモノマーの共重合体(D-1)、及び/又は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類とからなるモノマーの共重合体(D-2)、である
(2)酸価が40~400mgKOH/gである
(3)重量平均分子量が3,000~30,000である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分の分散剤であって、該分散剤が、以下の条件を満足する共重合体(D)のアルカリ中和塩を含むことを特徴とする分散剤。
(1)(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とからなるモノマーの共重合体(D-1)
及び/又は
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類とからなるモノマーの共重合体(D-2)
である
(2)酸価が40~400mgKOH/gである
(3)重量平均分子量が3,000~30,000である
【請求項2】
アルカリが、アンモニア、水酸化ナトリウム、ジメチルエタノールアミンの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分と、請求項1または請求項2に記載の分散剤とを含むことを特徴とする感熱記録層形成用の塗工液組成物。
【請求項4】
支持体上に、請求項3に記載の塗工液組成物で形成された感熱記録層を有する感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱発色成分の分散剤、分散剤と感熱発色成分とを含む感熱記録層形成用の塗工液組成物、及び支持体上に塗工液で形成された感熱記録層を有する感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報記録媒体のひとつとして感熱記録体が使用されている。感熱記録体は、紙やフィルムなどシート状の支持体を含み、その一方面に感熱記録層を有している。感熱記録層は、ロイコ染料、顕色剤、増感剤等の感熱発色成分をそれらの分散液とした後、分散液を支持体上に塗布乾燥して形成される。
【0003】
感熱発色成分の分散液を得るために、保護層や感熱層のバインダーとしても用いられているポリビニルアルコールに代表される水溶性樹脂が分散剤として広く用いられているが、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂は分散剤としての能力が十分とは言えず、感熱発色剤成分の分散性や、分散に要する時間がかかりすぎるといった課題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、耐薬品性、耐油性、記録感度、地肌白色度等が良好で、さらに優れた耐水性、耐水可塑剤性等を有する感熱記録体およびその製造方法を提供することを課題とする発明が記載されており、実施例において、結着剤およびロイコ染料や顕色剤の分散剤として機能するスチレン-アクリル酸-アクリルアミド共重合体アンモニウム塩水溶液を用いる旨、記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、耐水性、耐酒性、耐食酢性に優れた感熱記録体を提供することを課題とする発明が記載されており、分散剤として、スチレンマレイン酸共重合アンモニウム塩が記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、分散工程において体積平均粒子径を0.3μm以下まで微粒子化しても分散液の著しい粘度上昇や液の経時安定性が低下することのないロイコ染料分散液を用いることにより、地肌の白色度が高い感熱記録材料を提供することを目的として、質量平均重合度が100~400であり、変性度0.2~1.0モル%のカルボン酸変性ポリビニルアルコールをロイコ染料の分散剤として用いる発明が記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3のカルボン酸変性ポリビニルアルコールについては、ロイコ染料の分散剤としての市販グレードが存在しないことからも、他に課題を有することが考えられるほか、特許文献1、2に記載された分散剤は、いずれも各々前記した課題の解決を目的とするものであって、依然として、ロイコ染料等の感熱発色成分を含有する分散液を所望の粒子径まで細かく分散することに時間がかかるという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-301461号公報
【特許文献2】特開2004-181781号公報
【特許文献3】特開2008-254436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ロイコ染料、顕色剤、増感剤等の感熱発色成分を従来に比べ、より短時間で所望の粒子径まで細かく分散可能な分散剤、感熱発色成分と分散剤とを含む感熱記録層形成用の塗工液組成物、及び支持体上に前記塗工液で形成された感熱記録層を有する感熱記録体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ロイコ染料、顕色剤、増感剤等の感熱発色成分の分散剤として、特定の共重合体のアルカリ中和塩を含む分散剤を用いることで、従来に比べてより短時間で所望の粒子径の分散液が得られることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、
<1>ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分の分散剤であって、該分散剤が、以下の条件を満足する共重合体(D)のアルカリ中和塩を含むことを特徴とする分散剤、
(1)(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とからなるモノマーの共重合体(D-1)
及び/又は
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類とからなるモノマーの共重合体(D-2)
である
(2)酸価が40~400mgKOH/gである
(3)重量平均分子量が3,000~30,000である
<2>アルカリが、アンモニア、水酸化ナトリウム、ジメチルエタノールアミンの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記<1>に記載の分散剤、
<3>ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分と、前記<1>または<2>に記載の分散剤とを含むことを特徴とする感熱記録層形成用の塗工液組成物、
<4>支持体上に、前記<3>に記載の塗工液組成物で形成された感熱記録層を有する感熱記録体、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来に比べ、より短時間で所望の粒子径の分散液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本記載に限定されるものではない。
【0014】
本発明の分散剤は、感熱発色成分の分散剤であり、後述する条件を満足する共重合体(D)のアルカリ中和塩を含む。
【0015】
<感熱発色成分>
感熱記録体の感熱記録層に含まれる感熱発色成分は、主としてロイコ染料(A)、顕色剤(B)であり、感熱記録層の発色感度を高めるために、必要に応じて増感剤(C)を用いることがある。本発明の分散剤は、これら(A)~(C)感熱発色成分の少なくとも1種類を分散した分散液を得るために用いるものである。
【0016】
<ロイコ染料>
ロイコ染料(A)は特に限定されず、任意に単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ロイコ染料(A)の例としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリドなどのトリフェニルメタン類;3-(N-エチル-N -イソペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランなどのフルオラン類;3,6,6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕、3,6,6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3'-フタリド〕などのフルオレン類を挙げることができる。
【0017】
<顕色剤>
顕色剤(B)は、ロイコ染料を発色させることのできる電子受容性化合物であればよく、任意に単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顕色剤(B)の例としては、例えば、安息香酸などの有機酸;サリチル酸亜鉛などの有機酸の金属塩;4,4'-スルホニルビスフェノールなどのフェノール類;4,4’チオビス(6-ターシャルブチル-2-メチルフェノール)などのチオフェノール類;N,N’-ジフェニルチオ尿素などのチオ尿素誘導体;3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジフェニルスルホン類などを挙げることができる。
【0018】
<増感剤>
増感剤(C)は、感熱記録層の発色感度を高められるものであればよく、任意に単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。増感剤(C)の例としては、例えば、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、p-ベンジルビフェニル、m-ターフェニル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ベンジル、2-ナフトールベンジルエーテル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトン酸フェニルエステル、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)などを挙げることができる。
【0019】
<分散剤>
本発明の分散剤は、以下の条件を満足する共重合体(D)のアルカリ中和塩を含んでいればよい。
(1)(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とからなるモノマーの共重合体(D-1)
及び/又は
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類とからなるモノマーの共重合体(D-2)
である
(2)酸価が40~400mgKOH/gである
(3)重量平均分子量が3,000~30,000である
【0020】
本発明の分散剤は、上記した(1)~(3)の条件全てを満足した共重合体(D)のアルカリ中和塩を含むことで、従来の分散剤に比べて短時間での所定の粒子径までの分散を達成できる。
【0021】
本発明の共重合体(D)において用いる(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0022】
本発明の共重合体(D)において用いる(メタ)アクリル酸エステル類は、(メタ)アクリル酸エステルであればよく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの直鎖、分岐又は環状アルキルのエステル;(メタ)アクリル酸ベンジルなどのアリールエステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの官能基含有エステル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルなどのグリコール構造を有するエステルなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、直鎖、分岐又は環状アルキルのエステルであり、より好ましくは、アルキルの炭素数が2~18の直鎖、分岐又は環状アルキルのエステルであり、更に好ましくは、アルキルの炭素数が2~8の直鎖、分岐又は環状アルキルのエステルであり、特に好ましくは、アルキルの炭素数が2~8の直鎖又は分岐アルキルのエステルである。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0023】
また、本発明の共重合体(D)において任意で用いるスチレン類とは、付加重合成性を持つ芳香族化合物を指し、具体的には、スチレン;4-メチルスチレン、p-ヒドロキシメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;αメチルスチレンなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、スチレンが好ましい。
【0024】
共重合体(D)は、特に限定なく、公知の製造方法により得ることができる。通常は、アルコールなどのモノマーやその重合物を溶解し得る溶媒中で溶液重合して得るか、乳化剤等でモノマーを水中乳化した状態でモノマーを乳化重合して得る。溶液重合の場合、共重合体(D)をアルカリ中和塩とする工程の前後で、必要があれば溶液重合時に用いた溶媒を留去してもよい。
【0025】
共重合体(D)は、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とからなるモノマーの共重合体(D-1)であるか、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類とからなるモノマーの共重合体(D-2)でなければならないが、共重合体(D-1)と共重合体(D-2)の混合物であってもよい。
【0026】
共重合体(D)の酸価は、感熱発色成分の分散性の観点から、40~400mgKOH/gである必要がある。酸価が40mgKOH/g未満、あるいは酸価が400mgKOH/gを超えるいずれの場合も感熱発色成分の分散能力が不十分となる。50~350mgKOH/gであることが好ましく、60~320mgKOH/gであることがより好ましい。なお、本発明において酸価は、JIS K0070-19K0070-1992の中和滴定法に基づいて測定した値をいう。
【0027】
共重合体(D)の重量平均分子量は、3,000~30,000である必要がある。重量平均分子量が3,000未満であると、分散能力に欠けたり分散後の塗工液組成物の安定性に劣ったりする。また、重量平均分子量が30,000を超えると、アルカリ中和して水性溶液とする際の工程におけるハンドリングや、塗工液組成物調製時のハンドリング、あるいは感熱記録層を形成する際の塗工適性や塗工量の調整に不便を伴う。4,000~28,000であることが好ましく、6,000~25,000であることがより好ましい。なお、本発明において重量平均分子量は、以下の条件によりGPC法にてポリスチレン換算で測定したものである。
装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
カラム:東ソー株式会社製 TSK-gel SUPER MULTIPORE HZ-HとSUPER MULTIPORE HZ-Mを連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン、0.35mL/分
標準:TSKgel標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
【0028】
<共重合体(D)のアルカリ中和塩の調製>
本発明の共重合体(D)のアルカリ中和塩は、共重合体(D)の酸価に対し、50~110%当量のアルカリを用いて水性溶液とすることで得られる。ここで、水性溶液とは、水で均一に希釈することが可能な溶液である。通常は水溶液であるが、水と相溶性のあるアルコール等、均一な水性溶液となるものであれば、水以外の溶媒を含んでいても良い。分散剤に含まれる共重合体(D)のアルカリ中和塩の濃度は、感熱記録層形成用の塗工液組成物の最適な濃度や粘度を勘案して適宜調整できるが、好ましくは20~40質量%である。
【0029】
共重合体(D)のアルカリ中和塩を得るのに用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機アミンなどが挙げられるが、アンモニア、水酸化ナトリウム、ジメチルエタノールアミンの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この中でも、感熱発色成分の分散性の観点からジメチルエタノールアミンがより好ましい。
【0030】
<感熱記録層形成用の塗工液組成物及びその調製>
本発明の感熱記録層形成用の塗工液組成物(以下、単に塗工組成物と称することがある)は、ロイコ染料(A)、顕色剤(B)、増感剤(C)の群から選ばれる少なくとも1種の感熱発色成分と、分散剤とを含むが、その他成分として、感熱記録層の形成させるために慣用の種々のバインダー成分を適宜混合して用いても良い。その具体例としては、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子の他に;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン;スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス、などが挙げられる。その他の成分として、たとえば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、ポリスチレンなどの無機または有機の充填剤や、脂肪酸金属塩、ワックス類などの滑剤、あるいは紫外線吸収剤、保存安定剤、着色剤、消泡剤などを必要に応じて含有していてもよい。塗工組成物は、感熱発色成分と分散剤とを混合、分散することで得ることができる。複数の感熱発色成分を含む塗工液組成物とする場合は、その分散方法は特に限定されず、それぞれ個別に分散してから混合しても良いし、あるいは全ての感熱発色成分を纏めて分散しても良い。分散装置としては、例えばビーズミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ジェットミルなどを用いることができる。ビーズ(メディアともいう)を用いた分散方式が好ましく、直径が0.5mm以下のジルコニアビーズを用いるか、又は、直径が0.5mm~1.0mmのジルコニアビーズを用いて粗粉砕し、次いで直径が0.5mm以下のジルコニアビーズを用いて分散することにより微粒子化が達成される。
【0031】
塗工液組成物の粒子径は、動的光散乱法/レーザードップラー法による粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック UPAEX150)により測定される90%累積粒子径(以下、単に粒子径D90と称する)を言う。前記粒子径D90は、2.0μm以下であることが好ましい。また、前記塗工液組成物の粘度は、塗工適性やハンドリングの観点から25℃でのB型粘度計での測定値が、10~800mPa・sであることが好ましい。なお、本発明の実施例においては分散時間の短縮を簡便的に評価するため、250ccポリ瓶に、0.3mmジルコニアビーズ25部、分散剤(共重合体(D)として6部)、感熱発色成分30部、イオン交換水50部、及びSurfynol104E(日信化学工業社製)0.1部を測り取りペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)にて振とうして得た一定時間分散毎の塗工液組成物の粒子径D90を分散状態の評価指標とした。
【0032】
<感熱記録体及びその作製>
本発明の感熱記録体は、支持体上に前記塗工液組成物で形成された感熱記録層を有する。支持体としては、感熱記録体の支持体として通常使用されているものであれば特に限定されず、紙、合成紙、ラミネート紙等が挙げられる。
【0033】
支持体上への感熱記録層の形成は、支持体上に塗工液組成物を塗布して乾燥させればよい。塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法、エクストルージョン塗布法などが挙げられる。
【0034】
<感熱発色層以外の層>
本発明の感熱記録体は、少なくとも支持体上に前記感熱記録層を有していれば良いが、感熱記録層を保護する保護層や支持体と感熱記録層との間に中間層を有していても良い。保護層や中間層は、バインダー、及び無機又は有機の充填剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0035】
保護層や中間層に用いる前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて公知のバインダーを適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉又はその誘導体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はその誘導体が挙げられる。
【0036】
保護層や中間層に用いる無機又は有機の充填剤としては、前述した感熱記録層の場合と同様なものが適用可能であるが、水酸化アルミニウムやシリカなどが特に有用である。無機又は有機の充填剤の量は、保護層全体の30質量%~80質量%が好ましく、40質量%~70質量%がより好ましい。 前記保護層の付着量は3.0g/m以下であり、これより多いと保護層の下側の感熱記録層への熱の移動に支障をきたすことがある。
【0037】
支持体上への保護層や中間層の形成は、感熱記録層の形成と同様にして行う。
【0038】
本発明の感熱記録体は、形状に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ラベル状、シート状、ロール状、などが好適に挙げられる。用途としては、レジのレシートなどのほか、裏面に接着剤層と剥離台紙を順次積層して感圧型感熱記録ラベルとして用いたり、裏面に常温(10℃~30℃)では粘着性を有しないが加熱時に粘着力を発現する熱活性型粘着層を設けて剥離台紙を必要としない熱活性型感熱記録ラベルとして用いたりすることができる。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」及び「%」のうち、単位の記載が無いものは全て「質量部」及び「質量%」である。
【0040】
(製造例1)
<共重合体(D)の製造>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた4つ口セパラブルフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,000部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら内温143℃まで昇温した。滴下ロートには、モノマーとしてアクリル酸50部、メタクリル酸40部、メタクリル酸メチル710部、アクリル酸ブチル200部、重合開始剤としてジ-tert-ブチルペルオキシド25部を均一に混合したモノマー混合物を仕込み、内温143℃のフラスコ内に3時間かけて滴下した。滴下終了後、内温140℃で2時間保温した後、内温190℃まで昇温してフラスコ内の溶媒及び未反応物を留去した。留去後、フラスコから取り出して冷却し、固形の共重合体(D-1-1)を得た。共重合体(D-1-1)の重量平均分子量(Mw)は10,000、酸価は60mgKOH/gであった。
<分散剤1の調製>
撹拌機、冷却器、温度計を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水671部を仕込み、攪拌しながら粉末とした共重合体(D-1-1)300部を仕込んだ。その後、アルカリとして、ジメチルエタノールアミン29部(共重合体(D-1-1)の酸価当量)を加えて内温80℃まで昇温した。その後、内温80℃で2時間保温して共重合体(D-1-1)を溶解し、共重合体(D-1-1)を30質量%含有する分散剤1を調製した。
【0041】
(製造例2~14、16)
<共重合体(D)の製造>
溶媒の種類及び仕込み量、モノマーの種類及び仕込み量、重合開始剤の仕込み量を表1のように変えたほかは、製造例1と同様にして固体の共重合体(D-1-2)、(D-2-1)~(D-2-12)、(RD-2)を得た。各共重合体の重量平均分子量(Mw)、酸価を表2に示す。
<分散剤2~14、16の調製>
水の仕込み量、アルカリの種類及び仕込み量(全て各共重合体(D)の酸価当量)を表3のように変えたほかは、製造例1と同様にして共重合体(D-1-2)、(D-2-2)~(D-2-12)、(RD-2)を30質量%含有する分散剤2~14、16を調製した。なお、アンモニア水は28%アンモニア水を用いた。
【0042】
(製造例15)
<アクリルアミドを含有するモノマー共重合体(RD-1)の製造及び分散剤15の調製>
攪拌機、冷却器、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコにイソプロピルアルコール429部、アクリル酸300部、メタアクリル酸30部、スチレン470部、アクリル酸ブチル100部、アクリルアミド100部、ノルマルドデシルメルカプタン15部、アゾイソブイロニトリル20部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら30分間かけて内温85℃まで昇温した。85℃で1時間保持した後、アゾイソブチロニトリルを1部添加した。さらに1時間保持した後、28%アンモニア水274部、イオン交換水2160部を仕込み、10分撹拌した。次いで内温を95℃まで昇温し常圧蒸留し、イソプロピルアルコールを除去することで、スチレンアクリル酸アクリルアミド共重合体(RD-1)を30質量%含有する分散剤15を得た。共重合体(RD-1)の重量平均分子量(Mw)は15,000、酸価は250mgKOH/gであった。
【0043】
(製造例17)
<アニオン性ポリビニルアルコール(RD-3)分散剤の調製>
撹拌機、冷却器、温度計を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水800部を仕込み、攪拌しながら染料・顕色剤の分散用ポリビニルアルコールとして一般的なスルホン酸基を有するアニオン性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスL3266 株式会社三菱ケミカルホールディングス製)200部を仕込んだ。その後、内温80℃まで昇温し、2時間保温して、アニオン性ポリビニルアルコール(RD-3)を20質量%含有する分散剤17を得た。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1、表2の略号の説明
PGM-Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(還流温度:143~146℃)
Xy:キシレン(還流温度:138~141℃)
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
St:スチレン
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
AAm:アクリルアミド
MAn:無水マレイン酸
MA-nBu:マレイン酸モノn-ブチルエステル(無水マレイン酸とn-ブタノールのハーフエステル)
DTBP:ジ-tert-ブチルペルオキシド
【0047】
【表3】
【0048】
表3の略号の説明
DMEA:ジメチルエタノールアミン
NaOH:水酸化ナトリウム
KOH:水酸化カリウム
TEA:トリエタノールアミン
【0049】
<分散剤のロイコ染料分散性評価>
(実施例1)
250ccポリ瓶に、0.3mmジルコニアビーズ25部、分散剤として製造例1記載の分散剤1を16部(共重合体(D-1-1)として4.8部)、ロイコ染料(3-ジ-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ODB-2))30部、イオン交換水54部、及びSurfynol104E(日信化学工業社製)0.1部を測り取りペイントシェーカーにて120分間振とう後、イオン交換水70部を添加して均一になるように混合した。その後、ジルコニアビーズを除去し、塗工液組成物L1を得た。なお、振とう開始から60分、90分経過後に塗工液組成物を25部ずつ採取し、120分振とう後の塗工液組成物とともに、その塗工液組成物の粒子径(D90)を、動的光散乱法/レーザードップラー法による粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック UPAEX150)を用いて測定した。測定結果を表4に示す。D90の値が2.0μm以下になる時間が早いほど、分散性に優れている。
【0050】
(実施例2~14、比較例1~2)
分散剤の種類を表4のように変えたほかは、実施例1と同様にして塗工液組成物L2~L16を得た。塗工液組成物L2~L16の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表4に示す。
【0051】
(比較例3)
250ccポリ瓶に、0.3mmジルコニアビーズ25部、分散剤として製造例17記載の分散剤17を24部(共重合体(RD-3)として4.8部)、ロイコ染料(3-ジ-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ODB-2))30部、イオン交換水46部、及びSurfynol104E(日信化学工業社製)0.1部を測り取りペイントシェーカーにて120分間振とう後、イオン交換水70部を添加して均一になるように混合した。その後、ジルコニアビーズを除去し、塗工液組成物L17を得た。塗工液組成物L17の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4より、実施例1~14の塗工液組成物L1~L14の粒子径は、D90の値が90分間振とう時点でいずれも2.0μm未満となっていることから、用いた分散剤はロイコ染料の分散性に優れていることが分かる。一方、比較例1~3の塗工液組成物L15~L17の粒子径は、D90の値が90分間振とうしても2.0μm以上であり、実施例に比べていずれも分散性に劣ることが分かる。
【0054】
<分散剤の顕色剤分散性評価>
(実施例15)
実施例1のロイコ染料を顕色剤(4,4’-スルホニルビスフェノール)に置き換え塗工液組成物M1を得た。塗工液組成物M1の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表5に示す。
【0055】
(実施例16~28、比較例4~5)
分散剤の種類を表5のように変えたほかは、実施例15と同様にして塗工液組成物M2~M16を得た。塗工液組成物M2~M16の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表5に示す。
【0056】
(比較例6)
比較例3のロイコ染料を顕色剤(4,4’-スルホニルビスフェノール)に置き換え塗工液組成物M17を得た。塗工液組成物M17の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5より、実施例15~28の塗工液組成物M1~M14の粒子径は、D90の値が90分間振とう時点でいずれも2.0μm未満となっていることから、用いた分散剤はロイコ染料の分散性に優れていることが分かる。一方、比較例4~6の塗工液組成物M15~M17の粒子径は、D90の値が90分間振とうしても2.0μm以上であり、実施例に比べていずれも分散性に劣ることが分かる。
【0059】
<分散剤の発色剤分散性評価>
(実施例29)
実施例1のロイコ染料を発色剤(1,2-ジフェノキシエタン)に置き換え塗工液組成物N1を得た。塗工液組成物N1の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表6に示す。
【0060】
(実施例30~42、比較例7~8)
分散剤の種類を表6のように変えたほかは、実施例29と同様にして塗工液組成物N2~N16を得た。塗工液組成物N2~N16の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表6に示す。
【0061】
(比較例9)
比較例3のロイコ染料を発色剤(1,2-ジフェノキシエタン)に置き換え塗工液組成物N17を得た。塗工液組成物N17の各時間における粒子径は実施例1と同様に測定した。測定結果を表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6より、実施例29~42の塗工液組成物N1~N14の粒子径は、D90の値が90分間振とう時点でいずれも2.0μm未満となっていることから、用いた分散剤はロイコ染料の分散性に優れていることが分かる。一方、比較例7~9の塗工液組成物N15~N17の粒子径は、D90の値が90分間振とうしても2.0μm以上であり、実施例に比べていずれも分散性に劣ることが分かる。