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特開2023-81692畜舎管理装置、畜舎、及び、畜舎管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081692
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】畜舎管理装置、畜舎、及び、畜舎管理方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20230606BHJP
   A01K 1/01 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
A01K1/00 C
A01K1/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195615
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】514004699
【氏名又は名称】人吉アサノ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】浦川 敬
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA02
2B101AA04
2B101AA07
2B101BB03
2B101BB10
2B101CA04
2B101CC15
2B101EB17
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、畜産業従事者の作業負担を軽減可能な畜舎管理装置、畜舎及び畜舎管理方法を提供する。
【解決手段】畜舎1は、畜舎の建物2に設置された第1子機3と第2子機4、建物2外に設置された親機5を有する畜舎管理装置を備える。第1子機3は、畜舎1内における有害ガス濃度等の環境情報の観測機能及び観測結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する。第2子機4は、家畜に対する有害環境を改善する管理機器に接続され、制御信号の受信機能及び受信した制御信号に基づき管理機器を制御する制御機能を有する。親機5は、前述の観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づき自動又は手動で第2子機4へ送信する管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、同制御信号を送信する制御信号送信機能を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜舎に設置され、該畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、
前記畜舎内に設置されると共に、同畜舎内に設置されて同畜舎内における家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、
前記第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて自動又は手動で前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を送信する制御信号送信機能を有する親機と、
を備える
畜舎管理装置。
【請求項2】
前記第1子機の観測機能が、畜舎内の温度、湿度及びアンモニア濃度を対象として観測するものであり、
前記第2子機に接続された前記管理機器が、換気ファン及び畜舎内の床面を洗浄する洗浄液の吐出ポンプである
請求項1に記載の畜舎管理装置。
【請求項3】
前記親機が、入力される前記環境情報に関する閾値を記憶可能な閾値記憶機能を更に有し、前記制御信号生成機能が、該閾値と前記第1子機から受信した観測データとを対比して、同観測データに係る数値が前記閾値に近づくか又は超えた際に、前記換気ファンと前記吐出ポンプの両方、又は、同換気ファンあるいは同吐出ポンプのいずれか一方の制御信号を生成し自動送信するように設けられている
請求項2に記載の畜舎管理装置。
【請求項4】
前記親機が、受信した前記観測データと生成した前記制御信号のいずれか一又は両方を記憶する信号データ記憶機能を更に有する
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の畜舎管理装置。
【請求項5】
前記親機が、インターネット回線に接続され、前記信号データ記憶機能に記憶された前記観測データと前記制御信号のいずれか一又は両方を外部情報通信端末に送信可能なインターネット送信機能を更に有する
請求項4に記載の畜舎管理装置。
【請求項6】
前記親機が、インターネット受信機能を更に有し、前記制御信号生成機能が、該インターネット受信機能を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて前記管理機器の制御信号を生成する
請求項5に記載の畜舎管理装置。
【請求項7】
前記第1子機と前記親機、及び、前記第2子機と前記親機の間の信号伝達が無線方式である
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の畜舎管理装置。
【請求項8】
収容された家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器が設置された建物と、
該建物に設置され、同建物内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、
前記建物内に設置されると共に、前記管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、
を備える
畜舎。
【請求項9】
畜舎に設置された第1子機により、該畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信する第1ステップと、
前記畜舎内に設置されると共に、同畜舎内に設置されて同畜舎内における家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続された第2子機により、制御信号の受信し、受信した制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する第2ステップと、
前記畜舎内又は同畜舎外に配置された親機により、前記第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて自動又は手動で前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を送信する第3ステップと、
を備える
畜舎管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎管理装置、畜舎、及び、畜舎管理方法に関する。詳しくは、簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、畜産業従事者の作業負担を軽減可能なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、豚、牛、鶏等の家畜を飼う畜産業において、これら家畜を飼うための建物(以下「畜舎」)が使用されている。そして、当然のことではあるが、放牧地等の屋外とは異なり、畜舎内は家畜の病気予防等の観点から清潔に保つことを要し、即ち、清掃する必要がある。畜産業従事者の判断にもよるが、一般的に、畜舎内を良好な環境に保持するために清掃が毎日行われており、畜産業従事者の作業負担は大変大きい。
【0003】
このような作業負担を軽減すべく、例えば、下記特許文献1に記載されているような畜舎の無人洗浄消毒システムが提案されている。当該システムは、洗浄ロボットによる洗浄動作後に撮像カメラによる洗浄エリアの撮像を行い、制御部は撮像画像と基準画像を対比して洗浄が完了したか否かを判定し、洗浄が完了するまで洗浄動作、洗浄エリアの撮像及び洗浄完了判定を繰り返し、洗浄が完了すると無人走行洗浄装置を次の洗浄エリアへ移動することを特徴としている。
【0004】
当該システムによれば、無人走行洗浄装置を遠隔操作により走行させて指定した洗浄エリアの排泄物の汚れ位置を特定し洗浄ロボットを通じて効率よく洗浄作業が行なえるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-247938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の無人洗浄消毒システムは、使用される無人走行洗浄装置が、回転可能に軸支された支柱、支柱に対して伸縮および回転可能な多関節アーム、及び、アーム先端に洗浄液または消毒液を噴射可能なノズルを備えた洗浄ロボットと、洗浄ロボットに設けた畜舎内の洗浄エリアの撮像手段と、ノズルへ配管供給する洗浄液または消毒液の供給手段と、制御手段とを具備する複雑な構造であって、日常的なメンテナンスを要することが考えられる。
【0007】
また、同無人洗浄消毒システムは、無人走行洗浄装置に搭載された洗浄ロボットを使用して行うものであるが、無人走行洗浄装置はそれなりに大きな車輌であり、既存の畜舎でこれを円滑に走行させるためには、床面の段差を無くし走行しやすいようなレイアウトにする等の改装を要する可能性がある。
【0008】
つまり、特許文献1記載の無人洗浄消毒システムは、通常高額な複雑且つ大掛かりな装置であり、更に畜舎の改装を伴うようであれば、小規模な畜産業従事者にとって手間や費用の面で、導入及び運用がしづらいものであると考えられる。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、畜産業従事者の作業負担を軽減可能な畜舎管理装置、畜舎、及び、畜舎管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の畜舎管理装置は、畜舎に設置され、該畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、前記畜舎内に設置されると共に、同畜舎内に設置されて同畜舎内における家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、前記第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて自動又は手動で前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を送信する制御信号送信機能を有する親機と、を備える。
【0011】
ここで、第1子機は、前述の観測機能を有することにより、設置された畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測することができる。そして、第1子機は、前述の観測データ送信機能を有することにより、観測された畜舎内の温度等の環境情報を信号化し、観測データとして送信することができる。
【0012】
第2子機は、接続された管理機器を制御して畜舎内における家畜に対する有害環境を改善することができる。なお、第2子機に係る管理機器の制御は、親機から送信され、受信機能で受信する制御信号に基づいて行われる。
【0013】
「畜舎内における家畜に対する有害環境」とは、例えば、畜舎内における極端に高低な気温、湿度、浮遊粉塵濃度、又は、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度あるいはアンモニア濃度等の家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらの組み合わせに係る環境であり、このような環境を改善可能な管理機器としては、例えば、換気扇、送風機、エアコン、吸塵機、ミストやオゾン等の発生機等が挙げられ、更には、有害ガスの発生源となる糞尿を清掃するための洗浄液や消毒液の噴霧機あるいは射出機、これらを制御するポンプ等の機器も挙げられる。なお、「畜舎内における家畜に対する有害環境」は、上記事例に限定するものではなく、飼育家畜により異なる有害環境があり得るし、その場合の有害環境を改善するための機器や設備装置は、上記事例で記載した機器に限定されるものではない。
【0014】
親機は、前述の観測データ受信機能を有することにより、第1子機からの観測データを受信することができる。これにより、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を入手することができる。
【0015】
そして、親機は、前述の制御信号生成機能を有することにより、受信した観測データに基づいて自動又は手動で第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成することができる。これにより、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらの環境を改善する制御信号を生成することができる。
【0016】
更に、親機は、制御信号送信機能を有することにより、生成された制御信号を送信することができる。これにより、第2子機が制御信号を受信することができる。
【0017】
このように、親機は、観測信号受信機能、制御信号生成機能及び制御信号送信機能を有することにより、第1子機から受信した環境情報に係る信号を受信して、畜舎内の環境改善に係る制御信号を生成及び送信し、第2子機を通じて管理機器を制御することができる。
【0018】
なお、親機は、第1子機及び第2子機と離隔配置が可能な構造となっており、畜舎外に設置してもよいし、畜舎内に設置してもよい。そして、親機を畜舎外(例えば、畜舎外の管理棟等)に設置した場合、畜産業従事者は、空調が整備され、畜舎の臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から畜舎の管理を行うことができる。つまり、畜産業従事者の業務効率の向上や労働環境向上にも寄与することができる。また、「畜舎内における家畜に対する有害環境」は、数値によっては、家畜のみならず畜産業従事者にとっても有害であることが多く、畜舎外から畜舎を管理することで畜産業従事者の健康被害も未然に防ぐことが可能となる。
【0019】
このように、本発明の畜舎管理装置は、第1子機、第2子機及び親機を備える簡易な構成であり、設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。また、本発明の畜舎管理装置は、ユーザーである畜産業従事者(以下、単に「ユーザー」という場合がある)が畜舎の家畜収容スペースに滞在しなくとも、同装置を設置した畜舎内の環境を良好に保持することができ、ユーザーの作業負担を軽減することができるものとなっている。
【0020】
更に、本発明の畜舎管理装置は、既存の畜舎にも大きな改装を行うことなく容易に適用可能なものとなっている。そして、本発明の畜舎管理装置を既存の畜舎に適用し、既設の管理機器を活用できる場合には、既設の管理機器の廃棄や新規機器の導入が不要となって工事費用等が抑制することもでき、畜産業従事者の経済的負担の軽減を図ることもできる。なお、本発明の畜舎管理装置は、新築の畜舎に適用することも当然可能である。
【0021】
また、第1子機の観測機能が、畜舎内の温度、湿度及びアンモニア濃度を対象として観測するものであり、第2子機に接続された管理機器が、換気ファン及び畜舎内の床面を洗浄する洗浄液の吐出ポンプである場合は、畜舎内の空調を行うと共に床面を洗浄することができ、畜舎内の衛生環境を更に向上させることができる。
【0022】
詳しくは、第1子機が観測した環境情報に基づいて、親機が第2子機に接続された管理機器の制御信号を生成及び送信し、同管理機器である換気ファン及び吐出ポンプを稼働させて畜舎内の空調を行うと共に床面を洗浄することができる。これにより、畜舎内は、家畜にとって快適な温度等の雰囲気下になると共に、アンモニア発生源となる糞尿がポンプから吐出された洗浄液によって床面が洗浄され、畜舎内の衛生環境が更に向上する。なお、換気ファン及び吐出ポンプは、そのいずれか一方を稼働させる態様と、両方を稼働させる態様が含まれる。
【0023】
また、親機が、入力される環境情報に関する閾値を記憶可能な閾値記憶機能を更に有し、制御信号生成機能が、閾値と第1子機から受信した観測データとを対比して、観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた際に、換気ファンと吐出ポンプの両方、又は、換気ファンあるいは吐出ポンプのいずれか一方の制御信号を生成し自動送信するように設けられている場合は、畜舎内で行われる空調及び床面の洗浄を自動化することができ、ユーザーの負担を軽減しながらも、畜舎内の衛生環境を更に向上させることができる。
【0024】
詳しくは、前述の閾値記憶機能を有することにより、入力される環境情報に関する閾値を記憶する機能を親機に付与することができる。そして、制御信号生成機能は、第1子機から受信した観測データと閾値記憶機能に入力され記憶した閾値とを対比し、観測データに基づく数値が閾値に近づくか又は超えた際に、換気ファンと吐出ポンプの両方、又は、換気ファンあるいは吐出ポンプのいずれか一方の制御信号を生成し自動送信することができる。
【0025】
つまり、ユーザーが畜舎の環境を常時監視しなくても、親機によって、受信した観測データと閾値を比較して自動で管理機器の制御判断が行われ、換気ファンあるいは吐出ポンプの一方又は両方を稼働させて畜舎内の空調及び床面の洗浄が行われることになる。これにより、昼夜に亘るユーザーの監視及び制御判断の負担を軽減することができて、更には、出張先や旅行先等の外出先からも畜舎の管理を行うことも可能となる。この結果、ユーザーの労働環境の改善や休暇取得等の労働条件向上にも寄与することができ、併せて、親機による即時対応によって、畜舎内の環境を常時良好に保持することができる。
【0026】
なお、「閾値」としては、対象となる家畜に健康被害が及ぶおそれがある温度、湿度及びアンモニア濃度の数値が挙げられ、入力される「閾値」は、温度、湿度及びアンモニア濃度の中から選択された少なくともいずれか一に係る数値であり、温度、湿度及びアンモニア濃度の中から選択された二以上に係る数値であってもよい。
【0027】
また、制御信号生成機能については、状況に応じて、換気ファンと吐出ポンプの両方、又は、換気ファンあるいは吐出ポンプのいずれか一方のみの制御信号を生成し自動送信するように設定してもよい。例えば、温度、湿度及びアンモニア濃度の全てに係る観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた場合は換気ファンと吐出ポンプの両方が稼働する制御信号を生成する設定、温度及び湿度の両方、又は、温度又は湿度のいずれか一方のみに係る観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた場合は換気ファンと吐出ポンプの両方が稼働する制御信号を生成する設定、温度及び湿度の両方、又は、温度又は湿度のいずれか一方のみに係る観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた場合は換気ファン又は吐出ポンプのいずれか一方が稼働する制御信号を生成する設定、アンモニア濃度に係る観測データに係る数値が閾値に近づくか又は超えた場合は換気ファンと吐出ポンプの両方が稼働する制御信号を生成する設定、等が挙げられる。
【0028】
また、親機が、受信した観測信号と生成した制御信号のいずれか一又は両方を記憶する信号データ記憶機能を更に有する場合は、親機が記憶した観測データと制御信号の記録を、ユーザーは親機から直接的又は間接的に知覚することができる。これにより、ユーザーは畜舎内の環境変化とその対処に関する履歴を理解あるいは把握でき、更なる対処の要否判断や、以後の畜舎運営の知識に役立てることができる。
【0029】
なお、「親機から直接的」及び「知覚する」とは、例えば、親機が有するモニタ等を介して、数値化された観測データと制御信号を読み取る態様が挙げられる。また、「親機から間接的」及び「知覚する」とは、例えば、親機に接続されたパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)のモニタ等を介して、あるいは、親機に接続されたサーバやインターネット回線を通じて接続された外部情報端末の表示画面を介して、数値化された観測データと制御信号を読み取る態様が挙げられる。
【0030】
また、親機が、インターネット回線に接続され、信号データ記憶機能に記憶された観測データと制御信号のいずれか一又は両方を外部情報通信端末に送信可能なインターネット送信機能を更に有する場合は、ユーザーは、畜舎から離れていても、情報通信端末を通じて畜舎の情報を得ることができる。
【0031】
詳しくは、ユーザーは、信号データ記憶機能に記憶された観測データの情報を得ることにより、畜舎内の環境変化を知ることができる。加えて、ユーザーは、信号データ記憶機能に記憶された制御信号の情報を得ることにより、外部情報通信端末で受信した制御信号の履歴を閲覧することで、畜舎内の環境変化を改善した管理機器の稼働履歴を知ることができる。なお、ここで「制御信号」は、畜舎内の環境変化を知ったユーザーが手動で行った制御、親機において自動で行われた制御、のいずれか又は両方を含むものである。
【0032】
また、親機が、インターネット受信機能を更に有し、制御信号生成機能が、同インターネット受信機能を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて管理機器の制御信号を生成する場合は、ユーザーは、畜舎から離れていても、情報通信端末を通じて親機にリクエストを送信し、畜舎内の管理機器を手動で制御して畜舎内の環境を改善することができる。
【0033】
また、第1子機と親機、及び、第2子機と親機の間の信号伝達が無線方式である場合は、畜舎内での配線が不要で、設置時の手間が少なくて済む。また、設置後において、畜舎内での配線が目に付くことがないため見た目が良く、加えて、家畜が配線を囓る等の行為に起因する故障の発生可能性が無い。このため、装置設置前後の作業負担を軽減することができる。
【0034】
上記の目的を達成するために、本発明の畜舎は、収容された家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器が設置された建物と、該建物に設置され、同建物内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測する観測機能、及び、該観測機能により観測された結果を信号化して送信する観測データ送信機能を有する第1子機と、前記建物内に設置されると共に、前記管理機器に接続され、制御信号の受信機能、及び、受信した該制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する制御機能を有する第2子機と、を備える。
【0035】
ここで、建物は、家畜を収容することができる。つまり、建物は畜舎である。そして、建物は、管理機器によって家畜に対する有害環境を改善することができる。
【0036】
第1子機は、前述の観測機能を有することにより、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測することができる。そして、第1子機は、前述の観測データ送信機能を有することにより、観測された畜舎内の温度等の環境情報を信号化し、観測データとして送信することができる。
【0037】
第2子機は、接続された管理機器を制御して畜舎内における家畜に対する有害環境を改善することができる。
【0038】
なお、前述した第1子機及び第2子機は、建物内又は建物外に配置された親機と無線方式又は有線方式で接続される。親機は、少なくとも、第1子機から送信された観測データを受信する観測データ受信機能、受信した観測データに基づいて自動又は手動で前記第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成する制御信号生成機能、及び、生成された制御信号を送信する制御信号送信機能を有する。
【0039】
親機は、前述の観測データ受信機能を有することにより、第1子機からの観測データを受信することができる。これにより、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を入手することができる。
【0040】
そして、親機は、前述の制御信号生成機能を有することにより、受信した観測データに基づいて自動又は手動で第2子機に対して送信する管理機器の制御信号を生成することができる。これにより、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらの環境を改善する制御信号を生成することができる。
【0041】
更に、親機は、制御信号送信機能を有することにより、生成された制御信号を送信することができる。これにより、第2子機が制御信号を受信することができる。そして、第2子機に係る管理機器の制御は、親機から送信され、受信機能で受信する制御信号に基づいて行われる。
【0042】
このように、親機は、観測信号受信機能、制御信号生成機能及び制御信号送信機能を有することにより、第1子機から受信した環境情報に係る信号を受信して、畜舎内の環境改善に係る制御信号を生成及び送信し、第2子機を通じて管理機器を制御することができる。
親機を畜舎外に設置した場合、ユーザーは、空調が整備され、畜舎の臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から畜舎の管理を行うことができる。つまり、ユーザーの業務効率の向上や労働環境向上にも寄与することができ、ユーザーの健康被害も未然に防ぐことが可能となる。
【0043】
このように、本発明の畜舎は、簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、ユーザーの作業負担を軽減することができるものとなっている。
【0044】
上記の目的を達成するために、本発明の畜舎管理方法は、畜舎に設置された第1子機により、該畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信する第1ステップと、前記畜舎内に設置されると共に、同畜舎内に設置されて同畜舎内における家畜に対する有害環境を改善可能な管理機器に接続された第2子機により、制御信号の受信し、受信した制御信号に基づいて接続された前記管理機器を制御する第2ステップと、前記畜舎内又は同畜舎外に配置された親機により、前記第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて自動又は手動で前記第2子機に対して送信する前記管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を送信する第3ステップと、を備える。
【0045】
ここで、前述した第1ステップを備えることにより、畜舎に設置された第1子機が、畜舎内の温度、湿度、浮遊粉塵濃度又は家畜に対する有害ガス濃度のいずれか一又はこれらを組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信することができる。
【0046】
そして、前述した第2ステップを備えることにより、畜舎内に設置された第2子機が、受信した制御信号に基づいて、これに接続された管理機器を制御することができ、同管理機器の機能を以て畜舎内における家畜に対する有害環境を改善することができる。
【0047】
更に、前述した第3ステップを備えることにより、畜舎内又は畜舎外に配置された親機が、第1子機から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて自動又は手動で管理機器の制御信号を生成し、生成された制御信号を第2子機に対して送信することができる。
【0048】
なお、親機を畜舎外に設置した場合、ユーザーは、空調が整備され、畜舎の臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から畜舎の管理を行うことができる。つまり、畜産業従事者の業務効率の向上や労働環境向上にも寄与することができ、畜舎外から畜舎を管理することで畜産業従事者の健康被害も未然に防ぐことが可能となる。
【0049】
このように、本発明の畜舎管理方法は、第1ステップ乃至第3ステップからなる簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、ユーザーの作業負担を軽減することができるものとなっている。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、畜舎内の環境を良好に保持することができ、畜産業従事者の作業負担を軽減可能な畜舎管理装置、畜舎、及び、畜舎管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明に係る畜舎の内部構造を示す斜視説明図である。
図2】本発明に係る畜舎管理装置の通信経路の構成を示す説明図である。
図3図2に示す畜舎管理装置の構成部品を示しており、(a)は第1子機の構造の模式図、(b)は第2子機の構造の模式図、(c)は親機の構造の模式図、である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1図3を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0053】
〔畜舎及び畜舎管理装置〕
畜舎1は、建物2と、建物2に設置された第1子機3と、建物内に設置された第2子機4とを備える。なお、畜舎管理装置は、前述した第1子機3及び第2子機4、そして親機5により構成され、本実施形態において親機5は建物2外の管理舎(建物2a)に配置された態様である。畜舎1及び畜舎管理装置の各部について、以下詳述する。
【0054】
(建物2)
建物2は、家畜Pを収容可能な構造物であり、屋根、外壁及び床21を有し、床21は床スラブ211上面にスノコ22が配設された構成である(図1参照)。また、建物2は、収容された家畜Pに対する有害環境を改善可能な管理機器として、換気ファン23及び床面21を洗浄する洗浄液の吐出ポンプ24が設置されている(図1参照)。
【0055】
床スラブ211上面は、排出溝212方向へ傾斜して設けられている。吐出ポンプ24から洗浄液を吐出する吐出口241は、床スラブ211上面とスノコ22の間に配設されており、吐出された洗浄液を以て、床21の一部に設けられた排出溝212(又は排出口)へ家畜Pの糞尿(排泄物等)が流れるように設けられている(図1参照)。
【0056】
なお、本実施形態の建物2は、その内部に、一又は複数匹(頭・羽)の家畜Pを収容可能な畜房を構成する間仕切りが設けられた態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、間仕切りの無い態様であってもよい。
【0057】
また、本実施形態の建物2は、床21が床スラブ211とその上に配設されたスノコ22から成る構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、床となる箇所にオガクズを敷き詰めた態様(オガクズ畜舎)であってもよい。なお、オガクズ畜舎の場合、管理機器として、前述の洗浄液の吐出ポンプに代えて、天井等にオゾン発生装置を配設した態様であってもよい。
【0058】
(第1子機3)
第1子機3は、畜舎管理装置を構成する部材であり、建物2内であって、畜房等の収容された家畜の近傍となる箇所に設置されている(図1図2参照)。第1子機3は、そのケーシング内に、観測機能部31、観測データ送信機能部32、電源部(図示省略)、シリアルポート311及びBluetooth(登録商標。以下省略)通信部312を有する(図3(a)参照)。なお、図1及び図2に示す本実施形態では、1機の第1子機3が設置されているが、これに限定するものではなく、例えば、畜房が広い場合は2機以上の第1子機を増設した態様であってもよい。
【0059】
観測機能部31は、建物2内(特に家畜の近傍となる箇所)の環境情報を観測する機能を有する。本実施形態で、観測機能部31は、温湿度センサ、二酸化炭素濃度センサ及びマルチチャンネルガスセンサを有し、マルチチャンネルガスセンサは、家畜に対する有害ガス(一酸化炭素、メタン、二酸化窒素、エタノール、アンモニア、プロパン、水素及びブタンの濃度)を計測可能なものを採用している。
【0060】
観測データ送信機能部32は、観測機能部31により観測された結果を信号化して送信する機能を有する。本実施形態で、データ送信に係る通信規格は、Zigbee(登録商標。以下省略)であるが、これに限定するものではなく、例えば、Bluetooth、UWB(Ultra Wide Band)等であってもよい。
【0061】
電源部は、観測機能部31や観測データ送信機能部32等の第1子機3の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、バッテリー等を内蔵する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であってもよい。
【0062】
シリアルポート311及びBluetooth通信部312は、観測機能部31の一部を構成する部材であり、シリアルポート311は有線方式で、Bluetooth通信部312は無線方式で、それぞれ観測機能部31と接続されるものであり、シリアルポート311を介して接続される外部観測機器やBluetooth通信機能312を有する外部観測機器と接続されて、該外部観測機器からの観測情報を受信することもできる。なお「外部観測機器」としては、建物2内の温度計や湿度計等が挙げられ、既設又は新設のいずれの態様も含まれる。
【0063】
(第2子機4)
第2子機4は、畜舎管理装置を構成する部材であり、管理機器である換気ファン23及び吐出ポンプ24に接続された態様で、建物2内に設置されている(図1図2参照)。第2子機4は、そのケーシング内に、受信機能部41、制御機能部42、アナログ接続ポート421、HDMI(登録商標。以下省略)接続ポート422、及び、電源部(図示省略)を有する(図3(b)参照)。なお、図1及び図2に示す本実施形態では、2機の第2子機4が設置されているが、これに限定するものではなく、例えば、接続される管理機器の数に応じて第2子機を増設した態様であってもよいし、設置された各管理機器の距離が近いようであれば1機の第2子機に各管理機器を接続した態様であってもよい。
【0064】
受信機能部41は、親機5が生成し送信した制御信号を受信する機能を有する。本実施形態で、受信機能部41が受信する制御信号は、換気ファン23及び吐出ポンプ24の制御信号であるが、これに限定するものではなく、例えば、オゾン発生装置の制御信号等、収容された家畜Pに対する有害環境を改善可能な管理機器を制御する制御信号を受信する機能を有していてもよい。また、本実施形態で、受信可能な制御信号に係る通信規格は、Zigbeeであるが、これに限定するものではなく、例えば、Bluetooth、UWB等であってもよい。
【0065】
制御機能部42は、換気ファン23及び吐出ポンプ24と有線方式又は無線方式で接続され、受信機能部41で受信した制御信号に基づいて換気ファン23及び吐出ポンプ24を制御する機能を有する。
【0066】
電源部は、受信機能部41や制御機能部42等の第2子機4の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、バッテリー等を内蔵する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であってもよい。
【0067】
アナログ接続ポート421は、換気ファン23及び吐出ポンプ24との接続部分であり、これを介して各機器への制御信号を送信することができる。
【0068】
HDMI接続ポート422は、これを介してモニタ等に接続可能であり、例えばモニタに接続して、親機を介して受信した観測データを表示し、畜舎内で作業する者が周辺環境の観測データを目視することができる。また、HDMI接続ポート422は、警報器に接続することもできる。これにより、畜舎内で作業する者は、目視によって環境情報を得て、畜房の環境を改善するために換気ファン23及び吐出ポンプ24等の管理機器を直接操作したり、目視又は警報の聴取によって、人体にとって不快または有害な数値に達した際に一時的に待避したりするための情報を得ることができる。
【0069】
(親機5)
親機5は、畜舎管理装置を構成する部材であり、本実施形態では建物2a内に設置されている(図1図2参照)。親機5は、そのケーシング内に、観測データ受信機能部51、制御信号生成機能部52、制御信号送信機能部53、閾値記憶機能部54、信号データ記憶機能部55、インターネット回線接続部56、インターネット送信機能部57、インターネット受信機能部58、及び、電源部(図示省略)を有する(図3(c)参照)。
【0070】
観測データ受信機能部51は、第1子機3から送信された観測データを受信する機能を有する。
【0071】
制御信号生成機能部52は、第1子機3から受信した観測データと後述する閾値記憶機能部54に記憶された閾値とを対比して、同観測データに係る数値が前述の閾値に近づいた際に(超えた際も含む)に、換気ファン23と吐出ポンプ24を制御する制御信号を自動生成する機能を有する。また、制御信号生成機能部52は、インターネット受信機能部58を介して外部情報通信端末から受信したリクエストに基づいて、前述の制御信号を生成する機能も有する。
【0072】
制御信号送信機能部53は、前述の生成された制御信号が伝達され、同制御信号を第2子機4へ自動送信する機能を有する。
【0073】
閾値記憶機能部54は、入力される環境情報に関する閾値を記憶する機能を有する。本実施形態において入力される閾値は、少なくとも家畜Pに健康被害が及ぶおそれがある温度、湿度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、粉塵濃度、亜酸化窒素濃度、メタン濃度及びアンモニア濃度の数値であるが、これに限定するものではなく、センサ等で検知可能なものであれば、ユーザーが適宜種類及びその閾値を設定しうる。
【0074】
信号データ記憶機能部55は、親機5が受信した観測データと、親機5で生成した制御信号の両方を記憶する機能を有する。
【0075】
インターネット回線接続部56は、インターネット送信機能部57及びインターネット受信機能部58に接続され、機外とインターネット通信可能に接続するポート部分である。インターネット送信機能部57は、信号データ記憶機能部55に記憶された観測データと制御信号の両方を外部情報通信端末に送信する機能を有する。インターネット受信機能部58は、外部情報通信端末からのリクエストを受信し、制御信号送信機能部53に送る機能を有する。
【0076】
電源部は、観測データ受信機能部51や制御信号生成機能部52等の親機5の構成部品を稼働させる電力を供給する。本実施形態で、電源部は、ACアダプタ付き電気コードを介して外部から入力される構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、バッテリー等を内蔵する構造であってもよい。
【0077】
なお、本実施形態において、第1子機3と親機5、及び、第2子機4と親機5の間の信号伝達は、無線方式であるが、有線方式を除外するものではない。
【0078】
〔畜舎及び畜舎管理装置の作用、畜舎管理方法〕
図1図3を参照して、畜舎1及び畜舎管理装置の作用、畜舎管理方法について説明する。
【0079】
畜舎管理方法は、少なくとも下記の第1ステップ、第2ステップ、第3ステップ、を備える。具体的には、
(1)第1ステップでは、畜舎1に設置された第1子機3により、畜舎1内の温度、湿度及び家畜Pに対する有害ガス濃度を組み合わせた環境情報を観測し、観測された結果を信号化して観測データとして送信し、
(2)第2ステップでは、畜舎1内に設置されると共に、第2子機4により、制御信号の受信し、受信した制御信号に基づいて接続された換気ファン23と吐出ポンプ24を制御して、畜舎内の空調を行うと共に床面を洗浄し、
(3)第3ステップでは、畜舎1内又は畜舎1外である建物2aに配置された親機5により、第1子機3から送信された観測データを受信し、受信した観測データに基づいて自動又は手動で第2子機4に対して送信する換気ファン23と吐出ポンプ24の制御信号を生成し、生成された制御信号を送信する。
【0080】
畜舎1及び畜舎管理装置の作用について説明する。
第1子機3は、観測機能部31を有することにより、設置された畜舎1内の温度、湿度、家畜に対する有害ガス濃度を組み合わせた環境情報を観測する。そして、第1子機3は、観測データ送信機能部32を有することにより、観測された畜舎1内の温度等の環境情報を信号化し、観測データとして送信する。
【0081】
そして、第1子機3の観測データ送信機能部32は、データ送信に係る通信規格がZigbeeであるため、端末に中継機能が付与され、中継を繰り返す事でZigbee素子同士が通信を行うことで情報伝達が可能であり、低電力消費であるためバッテリーでも長期間稼動し、無配線のネットワークを構築することもできる。また、第1子機3のシリアルポート311及びBluetooth通信部312は、シリアルポート311を介して接続される外部観測機器やBluetooth通信機能312を有する外部観測機器と接続されて、該外部観測機器からの観測情報を受信することもでき、拡張性が高い。
【0082】
第2子機4は、第1子機3が畜舎1内におけるアンモニア濃度や室温の上昇(畜舎1内における家畜Pに対する有害環境)を観測した際に、親機5から受信した制御信号に基づき、接続された換気ファン23及び吐出ポンプ24を稼働させる制御を行う。これにより、畜舎1内は、家畜Pにとって快適な温度等の雰囲気下になると共に、アンモニア発生源となる糞尿が吐出ポンプ24から吐出された洗浄液によって床面が洗浄され、畜舎1内の衛生環境が改善される。
【0083】
つまり、第2子機4の受信機能部41は、親機5が生成し送信した制御信号を受信する。そして、受信機能部41は、データ送信に係る通信規格がZigbeeであるため、端末に中継機能が付与され、中継を繰り返す事でZigbee素子同士が通信を行うことで情報伝達が可能であり、低電力消費であるためバッテリーでも長期間稼動し、無配線のネットワークを構築することもできる。
【0084】
第2子機4の制御機能部42は、換気ファン23及び吐出ポンプ24と接続され、受信機能部41で受信した制御信号に基づいて換気ファン23及び吐出ポンプ24を制御する。なお、制御信号は、アナログ接続ポート421を介して、換気ファン23及び吐出ポンプ24へ送信する。
【0085】
HDMI接続ポート422は、これを介してモニタ等に接続可能であり、例えばモニタに接続して、親機を介して受信した観測データを表示し、畜舎内で作業する者が周辺環境の観測データを目視することができる。また、HDMI接続ポート422は、警報器に接続することもできる。これにより、畜舎内で作業する者は、目視によって環境情報を得て、畜房の環境を改善するために換気ファン23及び吐出ポンプ24等の管理機器を直接操作したり、目視又は警報の聴取によって、人体にとって不快または有害な数値に達した際に一時的に待避したりするための情報を得ることができる。
【0086】
親機5は、観測データ受信機能部51を有することにより、第1子機3からの観測データを受信する。これにより、畜舎1内の温度等の環境情報を入手することができる。
【0087】
親機5の制御信号生成機能部52は、第1子機3から受信した観測データと閾値記憶機能部54に記憶された閾値とを対比して、同観測データに係る数値が前述の閾値に近づいた際に(超えた際も含む)に、換気ファン23と吐出ポンプ24を制御する制御信号を自動生成する。なお、ユーザーの選択により、換気ファン23と吐出ポンプ24を制御する制御信号を手動で生成させることもできる。なお、制御信号生成機能部52は、インターネット受信機能部58を介して外部情報通信端末であるパソコンD1やスマートフォンD2から受信したユーザーのリクエストに基づいて、前述の制御信号を生成することもある。
【0088】
親機5の制御信号送信機能部53は、制御信号生成機能部52で生成された制御信号が伝達され、同制御信号を第2子機4へ自動送信する。
【0089】
親機5の閾値記憶機能部54は、親機5の出荷時であるか又はユーザーの購入後に入力された、家畜Pにとって好適な数値である環境情報に関する閾値を記憶する。これにより、前述した制御信号生成機能部52の制御信号生成機能と協働して、観測データと閾値とのを対比、換気ファン23と吐出ポンプ24への制御信号の生成の自動化が可能となる。
【0090】
親機5の信号データ記憶機能部55は、親機5が受信した観測データと、親機5で生成(自動又は手動の両方を含む)した制御信号の両方を記憶する。親機5のインターネット回線接続部56は、親機5の機外とインターネット通信可能に接続し、インターネット送信機能部57は、信号データ記憶機能部55に記憶された観測データと制御信号の両方をパソコンD1やスマートフォンD2に送信し、インターネット受信機能部58は、パソコンD1やスマートフォンD2からのリクエストを受信し、制御信号送信機能部53に送る。
【0091】
これにより、ユーザーは、親機5が記憶した観測データと制御信号の記録について、親機5が有するモニタ等を介して直接的に知覚するか、又は、親機5にアクセスするか或いは信号データ記憶機能部55のデータが記録されたサーバD3にアクセスして、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して間接的に知覚することができる。
【0092】
そして、ユーザーは、畜舎1から離れていても、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して、親機5に記憶された観測データの情報を得て、畜舎1内の環境変化を知ることができる。同様に、ユーザーは、パソコンD1やスマートフォンD2を使用して、親機5に記憶された制御信号の履歴を閲覧でき、畜舎1内の環境変化を改善した換気ファン23と吐出ポンプ24の稼働履歴を知ることができる。
【0093】
ユーザーは、信号データ記憶機能部55に記憶した前述の観測データや制御信号を閲覧することで、畜舎1内の環境変化とその対処に関する履歴を理解あるいは把握でき、更なる対処の要否判断や、以後の畜舎運営の知識として役立てることができる。
【0094】
そして、親機5は、第1子機3から受信した環境情報に係る信号を受信して、畜舎1内の環境改善に係る制御信号を生成及び送信し、第2子機5を通じて換気ファン23と吐出ポンプ24を制御する。
【0095】
なお、第1子機3と親機5、及び、第2子機4と親機5の間の信号伝達が無線方式であることで、畜舎1内での配線が不要で、設置時の手間が少なくて済む。また、設置後において、畜舎1内での配線が目に付くことがないため見た目が良く、加えて、家畜Pが配線を囓る行為に起因する故障の発生可能性が無い。このため、装置設置前後の作業負担が軽減される。
【0096】
このように、畜舎管理装置を備える畜舎1は、第1子機3、第2子機4及び親機5が協働することにより、畜舎1内の環境を良好に保持することができ、ユーザーの作業負担を軽減可能なものとなっている。畜舎1を使用した畜舎管理方法についても同様である。
【0097】
畜舎1は、親機5は、第1子機3及び第2子機4と離隔配置された構造となっていることから、ユーザーは、空調が整備され、畜舎の臭気等が届かない、快適に過ごせる環境から畜舎1の管理を行うことができる。つまり、ユーザーの業務効率の向上や、健康被害予防を含む労働環境向上にも寄与することができる。
【0098】
畜舎1が備える畜舎管理装置は、第1子機3、第2子機4及び親機5を有する簡易な構成であり、設置作業が容易で、装置の調達及び設置コストを低減化することができる。更に、本発明の畜舎管理装置は、新築の畜舎1に適用可能なことは当然であるが、既存の畜舎にも大きな改装を行うことなく容易に適用可能なものとなっている。そして、畜舎管理装置を既存の畜舎に適用し、既設の管理機器を活用できる場合には、既設の管理機器の廃棄や新規機器の導入が不要となって工事費用等が抑制することもでき、ユーザーの経済的負担の軽減を図ることもできる。加えて、既設の管理機器が、専業メーカーの精密な機器である場合、これを利用できることにより、第1子機3の観測機能部31を観測機能が少ないコストの安い部品にして簡素化するか、又は、部品を省略することもできるので、製品単価を下げることができる。
【0099】
そして、畜舎管理装置を備える畜舎1によれば、ユーザーが畜舎1の環境を常時監視しなくても、親機5によって観測データと閾値を比較して自動で換気ファンと吐出ポンプの制御判断が行われ、これらを稼働させて畜舎内の空調及び床面の洗浄が行われる。これにより、昼夜に亘るユーザーの監視及び制御判断の負担を軽減することができて、更には、出張先や旅行先等の外出先からも畜舎1の管理を行うことも可能となる。この結果、ユーザーの労働環境の改善や休暇取得等の労働条件向上にも寄与することができ、併せて、親機による即時対応によって、畜舎1内の環境を常時良好に保持することができる。換言すると、畜舎1は、様々な環境値をモニタリング・記録・監視することで、現在人手で行っている作業を自動化したり、経験と勘頼りの管理項目を数値化したりすることができるものとなっている。
【0100】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二等の言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0101】
1 畜舎
2 建物
21 床
211 床スラブ
22 スノコ
23 換気ファン
24 吐出ポンプ
241 吐出口
2a 建物
3 第1子機
31 観測機能部
311 シリアルポート
312 Bluetooth通信部
32 観測データ送信機能部
4 第2子機
41 受信機能部
42 制御機能部
421 アナログ接続ポート
422 HDMI接続ポート
5 親機
51 観測データ受信機能部
52 制御信号生成機能部
53 制御信号送信機能部
54 閾値記憶機能部
55 信号データ記憶機能部
56 インターネット回線接続部
57 インターネット送信機能部
58 インターネット受信機能部
P 家畜
D1 パソコン
D2 スマートフォン
D3 サーバ
図1
図2
図3