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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081723
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】マットレス装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/10 20060101AFI20230606BHJP
   A61G 7/018 20060101ALI20230606BHJP
   A61G 7/057 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
A47C27/10 A
A61G7/018
A61G7/057
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195661
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】草場 大地
(72)【発明者】
【氏名】三宅 萌人
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AB03
3B096AC12
3B096AC14
3B096AD03
4C040AA01
4C040AA04
4C040CC03
4C040EE02
4C040EE08
(57)【要約】
【課題】利用者が寝返りできるかをマットレス装置が判定し、マットレスのかたさや除圧の設定を自動化して利便性を向上させたマットレス装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マットレス装置1は、圧力センサ32の検出値に基づいて、所定時間内の、マットレス本体2の利用者の体動の有無を判定し、エアセル5内のエアの量を増加又は減少させる動作モードの動作時に、所定時間内に利用者の体動が無いとの判定に応じて、動作モードを、エアセル5内のエアの量を増加又は減少させる動作モードからエアセル5内のエアの量を系統別に増減させる動作モードに切り替える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上面で前記基材の短手方向に延材して長手方向に並設され、系統別に独立してエアを増減可能な複数のエアセルを有するマットレス本体と、
前記エアセル内のエアの量を増減させるエアポンプ装置と、
前記エアセル内の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの検出値に基づいて前記エアポンプ装置を制御する制御部と、を備えたマットレス装置であって、
前記制御部は、
前記圧力センサの検出値に基づいて、所定時間内の、前記マットレス本体の利用者の体動の有無を判定する体動判定部と、
前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードと、前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードとのいずれかの動作モードを継続又は切り替える動作モード切替部と、を備え、
前記動作モード切替部は、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の体動が無いとの前記体動判定部による判定に応じて、前記動作モードを、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードから前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードに切り替える、マットレス装置。
【請求項2】
前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードは、前記エアセル内の前記エアの量を増加させる第1の動作モードと、前記エアセル内の前記エアの量を減少させる第2の動作モードと、を備え、
前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードは、第3の動作モードであり、
前記動作モード切替部は、前記第1の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の体動が無いとの前記体動判定部による判定に応じて、前記動作モードを、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードと前記第3の動作モードに順次切り替える、請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第1の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の前記体動があると判定すると、
前記第1の動作モードを継続させる、請求項2記載のマットレス装置。
【請求項4】
前記体動判定部は、前記利用者の体動に基づいて前記前記所定時間内での前記体動の頻度をさらに判定し、
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第2の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が少ないと判定すると、
前記第2の動作モードを継続させる、請求項2又は3のいずれかに記載のマットレス装置。
【請求項5】
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第2の動作モードの動作時に、前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が多いと判定すると、
前記動作モードを、前記第2の動作モードから前記第1の動作モードに切り替える、請求項2から4のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【請求項6】
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の前記体動が無いと判定すると、
前記第3の動作モードを継続させる、請求項2から5のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【請求項7】
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が少ないと判定すると、
前記第3の動作モードを継続させる、請求項2から6のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【請求項8】
前記動作モード切替部は、
前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が多いと判定すると、
前記動作モードを、前記第3の動作モードから前記第2の動作モードに切り替える、請求項2から7のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【請求項9】
前記体動判定部は、
前記体動の頻度を、前記所定時間内の前記利用者の前記体動の回数に基づいて判定する、請求項4から8のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレス装置の利用者が、例えば仰臥位で長期間にわたってベッドに横たわって寝返りをしないでいると、利用者に床ずれ(褥瘡)が生じることがある。この床ずれ(褥瘡)を抑制する技術として、例えば、特許文献1には、患者の寝姿勢の身長方向に並設された複数の第1セルと複数の第1セルとが別々の配管系統により空気が給排されるエアマット装置において、患者が寝返りできないとの判定に基づいて、複数の第1セルの内圧と、複数の第1セルの内圧が交互に減少、増加を繰り返すようにセルの内圧を制御し、床ずれを抑制する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、長手方向に並ぶ複数のセル部により構成されたエアマットレスにおいて、セル部内の内圧の変動に基づいて横臥者の体動を検出し、検出された体動から寝返りの頻度を判定し、寝返りの頻度が所定の頻度以下のときに、複数のセル部のうち、空気を封入するセル部を変更して床ずれを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5592725号公報
【特許文献2】特開2004-49388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2には、寝返りができる利用者がマットレス装置を利用した後に、寝返りのできない利用者がマットレス装置を利用したとき、又はその逆に、寝返りのできない利用者がマットレス装置を利用した後に、寝返りができる利用者がマットレス装置を利用したとき、又は、利用者の身体状態が悪化し、寝返りができていた利用者が寝返りできなくなってきたときに、寝返りができるか否かにより、利用者がマットレスのかたさや除圧の設定を変更する必要があり、手間がかかっていた。
例えば、寝返りができる利用者がマットレスをかために設定(内圧を高めに設定)して利用した後に、寝返りのできない利用者がマットレスのかたさの設定の変更(内圧を低めに設定)を行わなかった場合には、床ずれ(褥瘡)が発生する可能性があり、寝返りのできない利用者がマットレスをやわらかく設定(内圧を低めに設定)して利用した後に、寝返りができる利用者がマットレスのかたさの設定の変更(内圧を高めに設定)を行わなかった場合には、寝返りがしにくくなってしまう。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑み、利用者が寝返りできるかをマットレス装置が判定し、マットレスのかたさや除圧の設定を自動化して利便性を向上させたマットレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、基材と、前記基材の上面で前記基材の短手方向に延材して長手方向に並設され、系統別に独立してエアを増減可能な複数のエアセルを有するマットレス本体と、前記エアセル内のエアの量を増減させるエアポンプ装置と、前記エアセル内の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの検出値に基づいて前記エアポンプ装置を制御する制御部と、を備えたマットレス装置であって、前記制御部は、前記圧力センサの検出値に基づいて、所定時間内の、前記マットレス本体の利用者の体動の有無を判定する体動判定部と、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードと、前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードとのいずれかの動作モードを継続又は切り替える動作モード切替部と、を備え、前記動作モード切替部は、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の体動が無いとの前記体動判定部による判定に応じて、前記動作モードを、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードから前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードに切り替えるものである。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記エアセル内の前記エアの量を増加又は減少させる動作モードは、前記エアセル内の前記エアの量を増加させる第1の動作モードと、前記エアセル内の前記エアの量を減少させる第2の動作モードと、を備え、前記エアセル内の前記エアの量を前記系統別に増減させる動作モードは、第3の動作モードであり、前記動作モード切替部は、前記第1の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の体動が無いとの前記体動判定部による判定に応じて、前記動作モードを、前記第1の動作モードから前記第2の動作モードと前記第3の動作モードに順次切り替えるものである。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第1の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の前記体動があると判定すると、前記第1の動作モードを継続させるものである。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記体動判定部は、前記利用者の体動に基づいて前記前記所定時間内での前記体動の頻度をさらに判定し、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第2の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が少ないと判定すると、前記第2の動作モードを継続させるものである。
【0011】
(5)上記(2)から(4)のいずれか1つの構成において、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第2の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が多いと判定すると、前記動作モードを、前記第2の動作モードから前記第1の動作モードに切り替えるものである。
【0012】
(6)上記(2)から(5)のいずれか1つの構成において、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記所定時間内に前記利用者の前記体動が無いと判定すると、前記第3の動作モードを継続させるものである。
【0013】
(7)上記(2)から(6)のいずれか1つの構成において、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が少ないと判定すると、前記第3の動作モードを継続させる、請求項1から5のいずれか1項に記載のマットレス装置。
【0014】
(8)上記(2)から(7)のいずれか1つの構成において、前記動作モード切替部は、前記体動判定部が、前記第3の動作モードの動作時に、前記前記所定時間内での前記体動の頻度を判定し、前記体動の頻度が多いと判定すると、前記動作モードを、前記第3の動作モードから前記第2の動作モードに切り替えるものである。
【0015】
(9)上記(4)から(8)のいずれか1つの構成において、前記体動判定部は、前記体動の頻度を、前記所定時間内の前記利用者の前記体動の回数に基づいて判定するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、利用者が寝返りできるかをマットレス装置が判定し、マットレスのかたさや除圧の設定を自動化して利便性を向上させたマットレス装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るマットレス装置を示す斜視図である。
図2】マットレス本体の短手方向の中央部における長手方向の一部断面図(図1の矢印A-A断面)である。
図3】マットレス装置の内部構成を模式的に示す平面図である。
図4】マットレス装置の制御を行うための構成を説明するブロック図である。
図5】マットレス装置のコントローラ基板のブロック図である。
図6】マットレス装置のポンプユニット周りの斜視図である。
図7】マットレス装置の操作部を模式的に示す正面図である。
図8】マットレス装置の動作を示すフローチャート図である。
図9】使用者とマットレス装置のエアセルとの関係を模式的に説明する図であって、標準マットレスモードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが給気されている状態を示す。
図10】同じく、自動体圧調整モードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが給気されている状態を示す。
図11A】同じく、除圧モードで、A系統のエアセル5Aが除圧され、B系統のエアセル5Bが保持されている状態を示す。
図11B】同じく、除圧モードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが保持されている状態を示す。
図11C】同じく、除圧モードで、A系統のエアセル5Aが給気され、B系統エアセル5Bが保持されている状態を示す。
図11D】同じく、除圧モードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが保持されている状態を示す。
図11E】同じく、除圧モードで、A系統のエアセル5Aが保持され、B系統エアセル5Bが除圧されている状態を示す。
図11F】同じく、除圧モードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが保持されている状態を示す。
図11G】同じく、除圧モードで、A系統のエアセル5Aが保持され、B系統エアセル5Bが給気されている状態を示す。
図11H】同じく、除圧モードで、A系統、B系統のエアセル5A、5Bが保持されている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0019】
(実施形態)
(マットレス装置1)
マットレス装置1は、図1に示すように、マットレス本体2とポンプユニット3とから成っている。
マットレス本体2は、基材としの下部層4(例えば、ウレタンフォームなど)と、下部層4の上面で短手方向に延在して長手方向に並設され、互いに独立してエアを増減可能な複数のエアセル5と、エアセル5の上面に配設された上部層6(例えば、ウレタンフォームなど)と、エアセル5の短手方向の両側で下部層4に設けられたサイドサポート部7とを備えている。複数の各エアセル5は、略円柱状を呈しており、後述するように、A系統とB系統の2系統の複数のエアセル5A、5Bからなり、A系統の14個のエアセル5AとB系統の15個のエアセル5Bとが長手方向に交互に設けられている。なお、エアセル5の個数は上記に限られない。
【0020】
下部層4には、利用者がマットレス本体2の上に仰臥したときに足元となる側の一部を、短手方向に切欠いた切欠部4Aが形成されており、これにより、切欠部4Aが形成されている下部層4の短手方向の長さは、切欠部4Aが形成されていない下部層4の短手方向の長さより短くなっている。そして、この切欠部4Aに、ポンプユニット3が配設されている。ポンプユニット3の詳細は後述する。
使用時には、上部層6の上面は、インナー保護フィルム8と、さらにその上面のトップカバー9によって被覆され、下部層4の下面は、ボトムカバー10によって被覆される。
【0021】
また、マットレス装置1は、下部層4の厚さが6cm、エアセル5の厚さ(直径)が5cm、上部層6の厚さが2cmであり、マットレス本体2の総厚は13cmである。なお、下部層4、エアセル5、上部層6の各厚さは上記に限られない。また、マットレス装置1は、上部層6を備えていなくてもよい。
【0022】
上記した基本的な構成をもとに、マットレス装置1について、図3から図7を参照して、更に詳しく説明する。図3は、マットレス装置1の内部構成を模式的に示す平面図である。図4は、マットレス装置1の制御を説明するためのブロック図である。図5は、図4のコントローラ基板31のブロック図である。図6は、ポンプユニット3周りの斜視図である。図7は、ポンプユニット3に配置されたマットレス装置1の操作部13を模式的に示す正面図である。
【0023】
図3は、図1において、マットレス装置1から上部層6、インナー保護フィルム8及びトップカバー9を取り除き、ポンプユニット3、エアセル5A、5B、背上げセンサ11、ヒーター12の配置を模式的に示している。ポンプユニット3と背上げセンサ11は、エアセル5の一側である右側に配置されており、したがって、利用者が仰臥したときに、ポンプユニット3のある方が、利用者の足元側となり、背上げセンサ11のある方が、利用者の頭部側となる。なお、図3では、エアセル5の短手方向の長さを簡略的に全て同じ長さで示している。また、ポンプユニット3と背上げセンサ11の位置は上記に限られない。
【0024】
前述のように、エアセル5は、2つの系統から構成されており、一つ置きに、A系統とB系統に分かれている。すなわち、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bが交互に長手方向に配列されている。なお、図3では、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bの個数を簡略的にそれぞれ10個として表しているが、エアセル5の個数や寸法は、マットレス装置1の主たる利用者の状況や用いられる場面によって、任意に設定すればよい。また、エアセル5は、2つの系統に限らない。例えば、3つの系統でも4つの系統でもよく、系統の数は任意に設定することができる。
【0025】
ポンプユニット3の天面側である上面側には、図6図7に示すように、操作部13が設けられており、有線又は無線によってポンプユニット3に接続されている。
ポンプユニット3は、操作部13による操作によって、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bを、系統別に、介在するエアの流路を通じてエアの増減を行う。
以下、エアセル5へエアを増加させることを給気、エアセル5からエアを減少させること除圧(排気)、エアセル5へエアを増減させることを給排気ともいう。
【0026】
背上げセンサ11が、有線又は無線によってポンプユニット3に接続されており、ポンプユニット3は、下部層4が背上げ又は背下げされたときに、適切にエアセル5のエアの増減を行う。
また、ヒーター12が、ポンプユニット3に接続されており、ヒーター12を作動させて、寝床内の温度を調整する。ヒーター12は、エアセル5の上面側で、利用者の足元側に配設されている。ヒーター12の配置は上記に限られない。
【0027】
次に、マットレス装置1の制御を行うための構成を説明するブロック図について、図4及び図5を用いて説明する。
【0028】
(ポンプユニット3)
ポンプユニット3は、図4に示すように、制御部としてのコントローラ基板31を備えており、電源コード14(AC100V)を介して外部電源に接続される。コントローラ基板31には、圧力センサ32A、圧力センサ32Bが実装されている。圧力センサ32Aは、A系統のエアセル5Aの圧力を検知するものであり、具体的には、A系統のエアセル5AとA系統の電磁弁34Aを結ぶA系統のエアの流路内の圧力を検知するものである。圧力センサ32Bは、B系統のエアセル5Bの圧力を検知するものであり、具体的には、B系統のエアセル5BとB系統の電磁弁34Bを結ぶB系統のエアの流路内の圧力を検知するものである。
【0029】
さらに、コントローラ基板31には、利用者に対するむれ対策に用いるブロワ33、エアセル5への流路を開閉して系統別の圧力調整を行う電磁弁34(A系統の電磁弁34A、B系統の電磁弁34B及び各系統の排気を行うE系統の電磁弁34E)、各系統への給気を行うエアポンプ35、背上げ角度を検知する背上げセンサ11(傾斜スイッチ)、ヒーター12、ポンプユニット3の設定変更(入力)などの操作を行う操作部13が、それぞれ接続されている。
【0030】
エアの流路は、エアポンプ35から、エアポンプ35の吸音を行って静粛性を保つレゾネーターバッグ36、エアの流路を開閉する電磁弁34を経由して、エアセル5に接続されている。コントローラ基板31は、電磁弁34を系統別に制御でき、エアセル5は、一斉にエアが増減されることも、系統別にエアが増減されることも可能である。エアポンプ装置は、本実施形態では、電磁弁34、エアポンプ35から構成されている。
【0031】
コントローラ基板31には、操作部13が接続されており、操作部13の操作ボタンに対応して、むれ対策ON/OFF用のタクトSW、ひえ対策ON/OFF用のタクトSW、寝心地選択<しっかり/ふつう/やわらか>用のタクトSWが実装されている。
【0032】
(コントローラ基板31)
コントローラ基板31は、圧力センサ32との関係において、図5のような各部を有している。まず、コントローラ基板31には、計時用のタイマー部311が設けられている。また、コントローラ基板31には、体動判定部312、記憶部313、動作モード切替部314が設けられている。
【0033】
体動判定部312は、圧力センサ32の検出値に基づいて、タイマー部311で計時した所定の時間内に、マットレス本体2の利用者の体動の有無を判定するものである。
記憶部313には、エアセル5内のエアの量を増加(給気)させる第1の動作モードである標準マットレスモード(しっかりモード)と、エアセル5内のエアの量を減少すなわち除圧(排気)させる第2の動作モードである自動体圧調整モード(やわらかモード)と、エアセル5内のエアの量を系統別に増減(給排気)させる第3の動作モードである除圧モードの各動作モードが記憶されている。
動作モード切替部314は、体動判定部312による利用者の体動の有無や体動の頻度に応じて、記憶部313に記憶された標準マットレスモード(しっかりモード)と自動体圧調整モード(やわらかモード)と除圧モードのいずれかの動作モードを継続又は切り替えて、電磁弁34とエアポンプ35を制御するものである。
【0034】
(圧力センサ32)
所定の時間間隔で圧力センサ32の出力をコントロール基板で圧力データとして測定する。なお、圧力センサ32の出力の測定間隔は任意に設定することができる。
また、圧力センサ32の出力は、エアポンプ35の脈動などのノイズを検出しないようにフィルタ処理が行われている。
【0035】
(電磁弁34、エアポンプ35)
次に、電磁弁34とエアポンプ35を用いた給気状態と、除圧(排気)状態及び保持状態について説明する。
給気状態は、エアセル5の内圧を上げる状態であり、まず、電磁弁34を給気状態にし、エアポンプ35を給気状態にする。次に、圧力センサ32でエアの流路の圧力を確認し、設定圧力以上の状態が所定時間継続したら保持状態にする。その後、圧力が設定圧力未満であれば、エアポンプ35を給気状態にし、圧力が設定圧力以上であれば、保持状態にする。
具体的には、A系統のエアセル5Aに給気する場合には、A系統の電磁弁34Aを開とし、B系統、E系統の電磁弁34B、34Eを閉とし、エアポンプ35を開とする。
B系統のエアセル5Bに給気する場合には、B系統の電磁弁34Bを開とし、A系統、E系統の電磁弁34A、34Eを閉とし、エアポンプ35を開とする。
【0036】
除圧(排気)状態は、エアセル5の内圧を下げる状態であり、まず、エアポンプ35を除圧(排気)状態にし、電磁弁34を除圧(排気)状態にする。次に、圧力センサ32でエアの流路の圧力を確認し、設定圧力以下の状態が所定時間継続したら保持状態にする。その後、圧力が設定圧力以上であれば、電磁弁34を除圧(排気)状態にし、圧力が設定圧力未満であれば、保持状態にする。
具体的には、A系統のエアセル5Aを除圧(排気)する場合には、A系統、E系統の電磁弁34A、34Eを開とし、B系統の電磁弁34Bを閉とし、エアポンプ35を閉とする。
B系統のエアセル5Bを除圧(排気)する場合には、B系統、E系統の電磁弁34B、34Eを開とし、A系統の電磁弁34Aを閉とし、エアポンプ35を閉とする。
【0037】
保持状態は、エアセル5の内圧を保持する状態であり、エアポンプ35を保持状態にし、電磁弁34を保持状態にする。
具体的には、エアセル5の内圧を保持する場合には、A系統、B系統、E系統の電磁弁34A、34B、34Eを閉とし、エアポンプ35を閉とする。
【0038】
(操作部13)
次に、図7を用いて、操作部13の構成について説明する。
操作部13は、次のような、操作ボタン及び動作状態を示すLEDを備えている。
操作ボタンとしては、むれ対策ボタン131<ON/OFF>、ひえ対策ボタン132<ON/OFF>、寝心地選択ボタン133<しっかり/ふつう/やわらか>が設けられている。
【0039】
動作状態を示すLEDとしては、むれ対策LED131L(緑色)、ひえ対策LED132L(緑色)、寝心地選択LED133L<3灯、しっかり(緑色)/ふつう(緑色)/やわらか(緑色)>)が設けられている。
【0040】
次に、図8から図11Hを用いて、本発明のマットレス装置1の要部の動作について説明する。
本実施形態のマットレス装置1は、電源のONにより、前述したように、体動判定部312による利用者の体動の有無や体動の頻度に応じて、記憶部313に記憶された標準マットレスモード(しっかりモード)と自動体圧調整モード(やわらかモード)と除圧モードのいずれかの動作モードを、自動的に継続又は切り替えるものである。
【0041】
利用者により電源がONにされると、全自動モードが作動する(ST1)。
全自動モードが作動すると、まず、動作モードが、標準マットレスモードに設定される(ST2)。
標準マットレスモードでは、A系統、B系統のエアセル5A、5B内の圧力を、例えば、4.0kPaに設定し、エアセル5A、5B内の圧力が設定値となるように、電磁弁34とエアポンプ35を制御する。当該設定値は、利用者の寝返りがしやすくなる値であれば、上記に限られない。
標準マットレスモードでの利用者とマットレス装置1のエアセル5の関係を図9で模式的に示した。
標準マットレスモードの状態で、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態にして、圧力センサ32の出力値を検出し、圧力センサ32の圧力値に基づいて、利用者の体動の有無を判定する(ST3)。
利用者の体動の有無を判定についての詳細は後述する。
【0042】
ST3で、所定時間内に利用者の体動があると判定されると、標準マットレスモードが継続され、電磁弁34とエアポンプ35によりエアセル5を給気状態とする(ST2)。
ST3で、所定時間内に利用者の体動がないと判定されると、床ずれ(褥瘡)のリスクが高まるため、動作モードを、自動体圧調整モードに切り替える(ST4)。
自動体圧調整モードでは、A系統、B系統のエアセル5A、5B内の圧力を、例えば、2.5kPaに設定し、エアセル5A、5B内の圧力が設定値となるように、電磁弁34とエアポンプ35を制御する。当該設定値は、床ずれ(褥瘡)のリスクを低くする値であれば、上記に限られない。
自動体圧調整モードでの利用者とマットレス装置1、エアセル5の関係を図10で模式的に示した。
なお、図9図10では、エアセル5A、5B内の圧力の設定値が異なるが、図9図10に記載したドットは同じ密度(色の濃さ)で表されている。
自動体圧調整モードの状態で、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態にして、圧力センサ32の出力値を検出し、圧力センサ32の圧力値に基づいて、利用者の体動の有無を判定する(ST5)とともに体動の回数を判定する(ST6)。
【0043】
ここで、利用者の体動の有無と体動の回数による利用者の体動の頻度の判定について説明する。
まず、圧力センサ32の出力値を確認する。続いて、圧力センサ32の出力値が所定値以上大きくなった場合は、体動ありと判定し、体動の回数である判定カウントを1インクリメントする(判定カウントM+1)。
続いて、所定時間(例えば、30分)後に、判定カウントを確認する。
判定カウントが、例えば、「5>判定カウントM≧1」であれば、体動が少ないと判定する。また、判定カウントが、例えば、「判定カウントM≧5」であれば、体動が多いと判定する。したがって、上記条件を満たさない場合には、体動なしと判定する。
なお、判定カウントMは電源がオフされた場合には0にリセットされる。所定時間の具体的な時間及び判定カウントの閾値は上記に限られない。
【0044】
図8に戻り、ST5で、所定時間内に利用者の体動があると判定されると、ST6で、体動の回数である判定カウントが「5>判定カウントM≧1」であれば、体動が少ないと判定し、自動体圧調整モードが継続され、電磁弁34とエアポンプ35によりエアセル5を給気状態とする(ST4)。
一方、ST6で、体動の回数である判定カウントが「判定カウントM≧5」であれば、体動が多いと判定し、床ずれ(褥瘡)のリスクが低下したと判定し、動作モードが、標準マットレスモードに切り替えられ、電磁弁34とエアポンプ35によりエアセル5を給気状態とする(ST2)。
また、ST5で、所定時間内に利用者の体動がないと判定されると、さらに床ずれ(褥瘡)のリスクが高まるため、動作モードを、除圧モードに切り替える(ST7)。
【0045】
除圧モードでは、電磁弁34とエアポンプ35を以下のように制御する。
まず、A系統の電磁弁34Aとエアポンプ35を除圧(排気)状態とする。
A系統のエアセル5A内の圧力を、例えば、1.0kPaに設定し、A系統のエアセル5A内の圧力が設定値となるように、電磁弁34とエアポンプ35を制御する。当該設定値は、上記に限られない。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Aで模式的に示した。
次に、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態とする。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Bで模式的に示した。
【0046】
所定時間(例えば、600秒)後に、A系統の電磁弁34Aとエアポンプ35を給気状態とし、圧力センサ32Aの出力を確認する。所定時間は上記に限られない。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Cで模式的に示した。
ここで、圧力センサ32Aの出力が、設定圧力未満であればA系統の電磁弁34Aとエアポンプ35を給気状態とし、設定圧力以上であれば、A系統の電磁弁34Aとエアポンプ35を除圧(排気)状態とする。
次に、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態とする。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Dで模式的に示した。
なお、図11C図11Dに記載したエアセル5A、5Bのドットは同じ密度(色の濃さ)で表されている。
【0047】
続いて、B系統の電磁弁34Bとエアポンプ35を除圧(排気)状態とする。
B系統のエアセル5B内の圧力を、例えば、1.0kPaに設定し、B系統のエアセル5B内の圧力が設定値となるように、電磁弁34とエアポンプ35を制御する。当該設定値は、上記に限られない。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Eで模式的に示した。
次に、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態とする。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Fで模式的に示した。
【0048】
所定時間(例えば、600秒)後に、B系統の電磁弁34Bとエアポンプ35を給気状態とし、圧力センサ32Bの出力を確認する。所定時間は上記に限られない。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Gで模式的に示した。
ここで、圧力センサ32Bの出力が、設定圧力未満であればB系統の電磁弁34Bとエアポンプ35を給気状態とし、設定圧力以上であれば、B系統の電磁弁34Bとエアポンプ35を除圧(排気)状態とする。
次に、電磁弁34とエアポンプ35を保持状態とする。
この状態での利用者とマットレス装置1のエアセル5との関係を図11Hで模式的に示した。
なお、図11G図11Hに記載したエアセル5A、5Bのドットは同じ密度(色の濃さ)で表されている。
そして、所定時間(例えば、600秒)後に、A系統の電磁弁34Aとエアポンプ35を除圧(排気)状態として、上記制御を繰り返す。所定時間は上記に限られない。
すなわち、除圧モードでは、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bを交互に給気状態、除圧(排気)状態として、利用者の体とマットレス本体2との接触部が一部に集中することを防止し、床ずれ(褥瘡)の抑制を図っている。
【0049】
図8に戻り、ST8で、所定時間内に利用者の体動があると判定されると、ST9で、体動の回数である判定カウントが「5>判定カウントM≧1」であれば、体動が少ないと判定し、除圧モードが継続され、電磁弁34とエアポンプ35を上述のように制御して、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bを交互に給気状態、除圧(排気)状態とする(ST7)。
一方、ST9で、体動の回数である判定カウントが「判定カウントM≧5」であれば、体動が多いと判定し、床ずれ(褥瘡)のリスクが低下したと判定し、動作モードが、自動体圧調整モードに切り替えられ、電磁弁34とエアポンプ35によりエアセル5を給気状態とする(ST4)。
また、ST8で、所定時間内に利用者の体動がないと判定されると、除圧モードが継続され、電磁弁34とエアポンプ35を上述のように制御して、A系統のエアセル5AとB系統のエアセル5Bを交互に給気状態、除圧(排気)状態とする(ST7)。
【0050】
なお、上記実施形態では、図8のST3で、所定時間内に利用者の体動がないと判定されると、動作モードを、自動体圧調整モード(ST4)に切り替える例を示したが、ST3で、所定時間内に利用者の体動がないと判定されると、動作モードを、自動体圧調整モード(ST4)を介さずに除圧モード(ST7)に切り替えるようにしてもよい。
【0051】
以上のように、マットレス装置1は、利用者により電源がONにされると、全自動モードが作動して、図8に記載された制御フローを繰り返し、標準マットレスモード(しっかりモード)と自動体圧調整モード(やわらかモード)と除圧モードのいずれかの動作モードを、自動的に継続又は切り替える。
【0052】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0053】
1…マットレス装置
2…マットレス本体
3…ポンプユニット
4…下部層(基材:ウレタンフォーム)
5A…エアセル(A系統)
5B…エアセル(B系統)
6…上部層(ウレタンフォーム)
11…背上げセンサ
13…操作部
14…電源コード
31…コントローラ基板(制御部)
32A…圧力センサ(A系統)
32B…圧力センサ(B系統)
34A…電磁弁(A系統)
34B…電磁弁(B系統)
34E…電磁弁(E系統)
35…エアポンプ
36…レゾネーターバッグ
312…体動判定部
314…動作モード切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H