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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081729
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ウレタン系止水剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/18 20060101AFI20230606BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20230606BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230606BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230606BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230606BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230606BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230606BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C09K17/18 P
C08G18/76 057
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/32 003
C08G18/66 074
C08G18/48 033
C08G18/48 004
C08G18/76 014
C08G18/08 042
C09K3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195670
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 紫郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清志
【テーマコード(参考)】
4H017
4H026
4J034
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB03
4H017AD06
4H026CA06
4H026CB08
4H026CC04
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
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4J034CC08
4J034CD04
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4J034DB03
4J034DB04
4J034DB05
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4J034DF20
4J034DF22
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4J034DG03
4J034DG04
4J034DG08
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4J034HC67
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4J034KC17
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4J034KE02
4J034QA01
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4J034QA05
4J034QB14
4J034QC05
4J034RA08
4J034RA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】残存するMDIモノマーが低減され、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で高強度の硬化体を形成し、優れた止水性を発揮するウレタン系止水剤を提供する。
【解決手段】ポリオールと、MDI系イソシアネートを含む有機ポリイソシアネートとを、MDI系イソシアネートに由来するイソシアネート基と、ヒドロキシ基の当量比が1.5以上2.0以下となるように反応させて得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、シリコーン系消泡剤を含有し、前記ポリオールは、多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを付加重合させた数平均分子量が300以上7,000以下のポリエーテルポリオールAと、数平均分子量が300未満の2官能の低分子ポリオールとを含有し、前記有機ポリイソシアネートは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有する、ウレタン系止水剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種のMDI系イソシアネートを含む有機ポリイソシアネートとを、
前記MDI系イソシアネートに由来するイソシアネート基と、ヒドロキシ基の当量比(NCO/OH)が1.5以上2.0以下となるように反応させて得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
シリコーン系消泡剤を含有するウレタン系止水剤であって、
前記ポリオールは、
多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させた数平均分子量が300以上7,000以下のポリエーテルポリオールAと、
数平均分子量が300未満の2官能の低分子ポリオールとを含有し、
前記有機ポリイソシアネートは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有する、
ウレタン系止水剤。
【請求項2】
前記有機ポリイソシアネートが、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを20質量%以上70質量%以下の割合で含有する、請求項1に記載のウレタン系止水剤。
【請求項3】
残存する未反応の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが5質量%以下である、請求項1又は2に記載のウレタン系止水剤。
【請求項4】
前記ポリオールが、さらに多価アルコールにエチレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドと炭素数3若しくは4のアルキレンオキサイドとを、エチレンオキサイドが20質量%以上となる割合で付加重合させた、数平均分子量が800以上5,000以下のポリエーテルポリオールBを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールAが、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、及びビスフェノールAからなる群から選択される少なくとも1種の多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させたものである、請求項1~4のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【請求項6】
前記低分子ポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【請求項7】
さらに希釈剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【請求項8】
前記希釈剤が、プロピレンカーボネート、ガンマーブチルラクトン、植物油系脂肪酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、2-オキソ-4-メチル-1,3-ジオキソラン、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項7に記載のウレタン系止水剤。
【請求項9】
さらにキシリレンジイソシアネートを含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【請求項10】
さらに硬化促進剤を含有する請求項1~9のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系止水剤に関するものであり、より詳しくは、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で高強度の硬化体を形成し、優れた止水性を発揮するウレタン系止水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン系止水剤は、トンネル工事における止水や空洞部の充填、ひび割れが発生したコンクリート構造物の防水補修等で広く使用されている。中でも親油性ウレタンプレポリマーを主成分とする止水剤は、少ない薬液量で発泡硬化し、トンネル背面のような比較的大きな空隙等も効率よく充填し、高い止水効果を発揮することができる。
【0003】
近年、ウレタンプレポリマーを構成する有機ポリイソシアネートとして、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のMDI系イソシアネートが広く使用されている。しかし、従来のウレタンプレポリマー型止水剤には未反応のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)モノマーが残存しており、作業者の労働環境を損なうおそれがあった。
【0004】
未反応MDIモノマーを低減するため、比較的高分子量のジオールに対し過剰量のMDIを反応させてプレポリマーを製造し、遊離のMDIを減圧留去する方法(特許文献1)や、プレポリマー反応生成物をモノマー状ジイソシアネートの沸点よりも僅かに低い沸点を有する少なくとも1種の不活性溶媒の存在下に蒸留する方法(特許文献2)が提案されている。しかし、これらの方法では高沸点のMDIをプレポリマーの熱分解を避けながら除去するため、薄膜蒸留等の高コストな精製工程が必要である。
【0005】
一方、ポリオールとMDIの化学量論的な反応当量比(NCO/OH)を2.0以下にすれば理論上はプレポリマーにMDIは残存しないが、反応中にオリゴマーが生成して増粘したり、得られるプレポリマーの長期安定性が損なわれる。
後処理工程や精製工程を伴わないモノマー性ジイソシアネートの含有量の少ない反応性ポリウレタンの製造方法として、2,4’-MDIを主成分とするモノマー性ジイソシアネートと分子量60~2000のジオールとを、NCO/OHが1.05/1~2.0/1で反応させる方法(特許文献3)が提案されている。
また、低粘度、低モノマー含量の2,4’-MDIプレポリマーの製造方法として、2,4’- MDIと平均官能基数が3~8のポリエーテルポリオールとをNCO/OHが2未満で反応させる方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-176252号公報
【特許文献2】特表2003-515635号公報
【特許文献3】特表2004-534132号公報
【特許文献4】特開2006-37099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3や特許文献4で使用されている2,4’-MDIの2位のNCO基は立体的に反応しにくい位置にあるため、4’位のNCO基に比べて反応性が低い。そのため、4’位のNCO基が優先的に反応してプレポリマー化し、過剰にMDIを配合しなくても低粘度のウレタンプレポリマーが得られ、残存モノマーも少なくすることができる。しかしながら、そのようなウレタンプレポリマーを止水剤として用いた場合、未反応の2位のNCO基の反応性が低いため、硬化速度が遅くなり、十分な止水効果が得られない。
また、そもそも残存MDIモノマーが少ないウレタンプレポリマーはNCO含有量(単位質量当たりのNCO基の量)が低いため、大量の水の存在下では硬化しにくいという側面もある。
【0008】
そのため、MDIモノマーの残存量が低減され、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度で且つ水の存在下で硬化し、十分な止水性能と強度を持つ硬化体を形成するウレタン系止水剤はこれまでなかった。
本発明は、残存するMDIモノマーが低減され、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で高強度の硬化体を形成し、優れた止水性を発揮するウレタン系止水剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、所定のポリオールの組み合わせと、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有するMDI系イソシアネートを反応させて得られるウレタンプレポリマーが、低粘度でかつ水の存在下で硬化体を形成し、優れた止水性能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]~[10]に関するものである。
【0011】
[1]ポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種のMDI系イソシアネートを含む有機ポリイソシアネートとを、
前記MDI系イソシアネートに由来するイソシアネート基と、ヒドロキシ基の当量比(NCO/OH)が1.5以上2.0以下となるように反応させて得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
シリコーン系消泡剤を含有するウレタン系止水剤であって、
前記ポリオールは、
多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させた数平均分子量が300以上7,000以下のポリエーテルポリオールAと、
数平均分子量が300未満の2官能の低分子ポリオールとを含有し、
前記有機ポリイソシアネートは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有する、
ウレタン系止水剤。
[2]前記有機ポリイソシアネートが、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを20質量%以上70質量%以下の割合で含有する、[1]に記載のウレタン系止水剤。
[3]残存する未反応の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが5質量%以下である、[1]又は[2]に記載のウレタン系止水剤。
[4]前記ポリオールが、さらに多価アルコールにエチレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドと炭素数3若しくは4のアルキレンオキサイドとを、エチレンオキサイドが20質量%以上となる割合で付加重合させた、数平均分子量が800以上5,000以下のポリエーテルポリオールBを含有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
[5]前記ポリエーテルポリオールAが、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、及びビスフェノールAからなる群から選択される少なくとも1種の多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させたものである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
[6]前記低分子ポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
[7]さらに希釈剤を含有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
[8]前記希釈剤が、プロピレンカーボネート、ガンマーブチルラクトン、植物油系脂肪酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、2-オキソ-4-メチル-1,3-ジオキソラン、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[7]に記載のウレタン系止水剤。
[9]さらにキシリレンジイソシアネートを含有する、[1]~[8]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
[10]さらに硬化促進剤を含有する[1]~[9]のいずれか1項に記載のウレタン系止水剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウレタン系止水剤は、残存するMDIモノマーが低減され、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で高強度の硬化体を形成し、止水効果を長期にわたり持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のウレタン系止水剤の主成分として使用する末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、特定のポリオールの組み合わせと、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種のMDI系イソシアネートを含む有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるものである。
【0014】
<ポリオール>
本発明で使用するポリオールは、多価アルコール又は多価フェノール類にプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させた数平均分子量が300以上7,000以下のポリエーテルポリオールAと、数平均分子量が300未満の2官能の低分子ポリオールとを必須として含有する。
【0015】
<ポリエーテルポリオールA>
ポリエーテルポリオールAは、多価アルコール又は多価フェノールにプロピレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、プロピレンオキサイドが80質量%以上となる割合で付加重合させた数平均分子量が300以上7,000以下のポリオールである。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノン、レゾルシン、フロログルシンなどの単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォンなどのビスフェノール類などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂強度を高めて発泡性を安定化させる観点から、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、及びビスフェノールAが好ましい。
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、付加させたアルキレンオキサイドの総質量に基づいて、プロピレンオキサイドの割合が80質量%以上であれば好ましく、90質量%以上であればより好ましい。
ポリエーテルポリオールAの数平均分子量は300以上7,000以下であるが、500以上、6,000以下のものがさらに好ましく使用できる。
【0016】
ポリエーテルポリオールAの含有量は、MDI系イソシアネートとの親和性を高め、止水性を高めるために親油性を発揮し、得られるウレタンプレポリマーの増粘を起こりにくくする観点から、ポリオール全量に対して5~90質量%使用することが好ましく、7~70質量%であればより好ましい。
【0017】
<低分子ポリオール>
ポリオール成分として、さらに数平均分子量が300未満の2官能の低分子ポリオールを用いることで、ウレタンプレポリマーの硬化性を高めることができる。低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0018】
低分子ポリオールの含有量は、ウレタンプレポリマーの硬化性と製品安定性の観点から、ポリオール全量に対して10~95質量%使用することが好ましく、30~93質量%であればより好ましい。
【0019】
<その他のポリオール>
ポリオール成分としては、本発明の目的を損なわない範囲で、前記ポリエーテルポリオールA以外のポリエーテルポリオールを併用することができる。
中でも、水との親和性を高めて樹脂全体に均一に水を取り込み止水性を上げる観点から、多価アルコールにエチレンオキサイドを単独又はエチレンオキサイドと炭素数3若しくは4のアルキレンオキサイドを、エチレンオキサイドが20質量%以上となる割合で付加重合させた、数平均分子量が800以上5,000以下のポリエーテルポリオールBを好ましく用いることができる。
多価アルコールとしては、ポリエーテルポリオールAの出発原料である多価アルコールとして例示したものが挙げられる。
これらの中でも、プレポリマー化時の粘度を大きくしないためエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールが好ましい。
【0020】
炭素数3若しくは4のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-、1,4-あるいは2,3-ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらアルキレンオキサイドは付加せずにエチレンオキサイドのみを付加してもよいし、エチレンオキサイドとこれらのアルキレンオキサイドの2種以上の併用(ブロックまたはランダム付加)としてもよい。これらのなかでも、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用することが好ましく、これらをブロック付加の形で用いることがさらに好ましい。エチレンオキサイドと炭素数3若しくは4のアルキレンオキサイドを併用する場合、付加させたアルキレンオキサイドの総質量に基づいて、エチレンオキサイドの割合が20質量%以上であれば好ましく、30質量%以上であればより好ましい。
【0021】
ポリエーテルポリオールBの数平均分子量は1,000以上5,000以下であれば好ましく、1,500以上、4,500以下のものであればさらに好ましく使用できる。
【0022】
ポリエーテルポリオールBの含有量は、上記の観点から、ポリオール全量に対して1~20質量%使用することが好ましく、3~10質量%であればより好ましい。
【0023】
さらに本発明の目的を損なわない範囲で、上記したもの以外のポリオールを使用することができる。そのようなポリオールとしては特に限定されるものではないが、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオールを挙げることができる。これらのポリオールを使用する場合、ポリオール全量に対して0~30質量%の量にて使用することが好ましい。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン又はトリメチロールプロパン等のポリオールとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等の飽和又は不飽和の多価カルボン酸、若しくはこれらの酸無水物との縮合生成物やポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらポリエステルポリオールは必要に応じ二種以上を混合使用することもできる。この中でも特に数平均分子量が100~50,000のものが好ましく、200~20,000のものがさらに好ましく使用できる。
【0025】
ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール又はジプロピレングリコール等のポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応して得られるものが挙げられる。これらポリカーボネートポリオールは必要に応じ二種以上を混合使用することもできる。
【0026】
<MDI系イソシアネート>
本発明で使用する前記有機ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下MDI系イソシアネートともいう)を含み、そのうちポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを必須とする有機ポリイソシアネートである。
ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのいずれであってもよく、また、これらの任意の混合物であってもよい。
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネートの多核縮合体であり、下記一般式(1)で表されるものである。
(式中、nは1以上の整数を示し、好ましくは1~5整数である。)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)と称されることもあり、二核体と称される1分子中にベンゼン環及びイソシアネート基を各2個有するジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)との混合物であってもよい。
ジフェニルメタンジイソシアネートの変性体としては、イソシアネート基の一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド、イソシアヌレート、ウレトジオン等で変性したものが挙げられる。
これらの中でも、親油性を高め、樹脂強度を上げる観点から、前記有機ポリイソシアネートの総質量に対して、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを20質量以上含有するものが好ましく、30質量以上含有するものがより好ましく、40質量以上含有するものがさらに好ましい。
また、得られるウレタンプレポリマーの粘性の観点から、前記有機ポリイソシアネートの総質量に対して、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを70質量%以下含有するものが好ましく、60質量%以下含有するものがより好ましい。
【0027】
<非MDI系イソシアネート>
前記有機ポリイソシアネートとしては、本発明の目的を損なわない範囲で、MDI系イソシアネート以外の非MDI系イソシアネートを併用することができる。
非MDI系イソシアネートとしては、m-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4´-ジイソシアネート等の添加が可能であるが、法規制と安全性の観点からm-キシリレンジイソシアネートが好ましい。
非MDI系イソシアネートは、有機ポリイソシアネート全量に対して20質量%以下の量にて使用することが好ましい。
【0028】
<ウレタンプレポリマー>
プレポリマー化は、ポリオールおよび有機ポリイソシアネートを合成反応装置に仕込んで撹拌し、60~160℃で反応させて行なうことが通常である。本発明において、ポリオールとMDI系イソシアネートの反応当量比NCO/OHは、1.5以上2.0以下である。NCO/OHを2.0以下とすることで、MDIモノマーが理論上残らない。
プレポリマー化の際、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ステアリルアミン、ジメチルデシルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンテトラミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のアミン系触媒、モノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、テトラオクチルスズ、ジオクチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系触媒を使用してもよい。
ウレタンプレポリマーのNCO含量は、好ましくは、0.50~4.00質量%、さらに好ましくは1.50~3.50質量%である。
【0029】
<シリコーン系消泡剤>
本発明に使用するシリコーン系消泡剤としては、例えばオイル型シリコーン消泡剤、オイルコンパウンド型シリコーン消泡剤、自己乳化型シリコーン消泡剤、エマルジョン型シリコーン消泡剤、変性シリコーン消泡剤などが挙げられる。変性シリコーン消泡剤としては、例えばアミノ変性シリコーン消泡剤、カルビノール変性シリコーン消泡剤、メタクリル変性シリコーン消泡剤、ポリエーテル変性シリコーン消泡剤、アルキル変性シリコーン消泡剤、高級脂肪酸エステル変性シリコーン消泡剤、アルキレンオキサイド変性シリコーン消泡剤などが挙げられる。中でも、破泡効果に優れる点で、オイルコンパウンド型シリコーン消泡剤が好ましい。
なお、シリコーン系消泡剤の主成分としては、シリコーン樹脂、シリコーン油から適宜選択でき、中でも特にジメチルポリシロキサンが好適である。また、オイルコンパウンド型とは、シリコーンオイルにシリカ粉を配合したもので、エマルジョン型とは、オイルコンパウンドをO/W型エマルジョンとしたものである。
【0030】
シリコーン系消泡剤は市販品を使用してもよく、例えば信越化学工業(株)製のシリコーン消泡剤(KM-72、KM-72F、KM-72S、KM-72FS)、ダウ・東レ(株)製のシリコーン消泡剤(シリコンSAG-471、DK-Q1-049、ANTIFOAM A COMPOUND FOOD GRADE、SH 5500 COMPOUND、ANTIFOAM C EMULSION FOOD GRADE、SM5571 EMULSION)などが挙げられる。
シリコーン系消泡剤は、本発明の一液型止水剤の全成分の総質量に対して0.01~1質量%の量にて使用することが好ましい。
【0031】
<ウレタン系止水剤>
本発明のウレタンプレポリマーは、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で短時間で硬化体を形成するため、地山からの湧水やトンネル等の地中構造物における漏水箇所に注入して止水する止水剤として特に好適に用いることができる。
【0032】
<希釈剤>
本発明のウレタン系止水剤には、プレポリマー化反応中及び反応後の増粘を抑制するため、必要に応じて希釈剤を配合することができる。希釈剤としては、高沸点で臭気が少なく、高引火点で活性水素を有しないものが好ましく、具体的には、プロピレンカーボネート、ガンマーブチロラクトン、植物油系脂肪酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、2-オキソ-4-メチル-1,3-ジオキソラン、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、またはこれらの混合物が挙げられる。
希釈剤を使用する場合、本発明のウレタン系止水剤の全成分の総質量に対して20~60質量%の量にて使用することが好ましい。
【0033】
さらに本発明のウレタン系止水剤には、前記ウレタンプレポリマーの低粘度化や高強度化のため、必要に応じてさらに非MDI系イソシアネートを配合することができる。
非MDI系イソシアネートとしては、m-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4´-ジイソシアネート等の添加が可能であるが、法規制と安全性の観点からm-キシリレンジイソシアネートが好ましい。
また、本発明のウレタン系止水剤には、貯蔵安定性を向上するため、モノイソシアネートを配合することができる。モノイソシアネートとしては、オクタデシルイソシアネート、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及びp-トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)などが挙げられる。なかでも、p-トルエンスルホニルイソシアネートが好ましい。
【0034】
また、必要に応じて、整泡剤、消泡剤、架橋剤、着色剤、樹脂改質剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐久性改良剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0035】
本発明のウレタン系止水剤は、水の存在下で前記ウレタンプレポリマーが水と反応して硬化体を形成するが、硬化反応を促進させるための配合剤として、トリエチルアミン、ジメチルトデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン等の三級アミンを添加することができる。
【0036】
さらに、施工状況に応じて、本発明のウレタン系止水剤の他にエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂(メチルメタアクリレート等)、スチレン系樹脂などを併用してもよい。これらの樹脂を併用する場合、本発明の止水剤に用いるウレタンプレポリマーの質量に対して1~50質量%配合することができる。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。なお、本実施例において、数平均分子量はGPCを用いて測定した。
<GPCの測定条件>
装置:東ソー製 HLC-8120GPC
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.1%
試料注入量:20μl
検出器:RI
【0038】
実施例1
撹拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1Lの合成装置にビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(数平均分子量600)を12.0g、ジエチレングリコールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物を6.0g、低分子ポリオールとしてジプロピレングリコールを82.8g加えた。次いで同装置にイソシアネート成分としてポリメリックMDI(BASF INOAC ポリウレタン(株)製 商品名「ルプラネートM11S」)を350g、希釈剤としてプロピレンカーボネートを243g加え、100℃に昇温し3時間反応させて、NCO含量が12.0%のウレタンプレポリマーを得た。
最後に希釈剤としてヒマシ油脂肪酸エステル(伊藤製油(株)製 商品名「リックサイザーC-101」)139g、キシリレンジイソシアネート(三井化学(株)製 商品名「タケネート500」)を139g、シリコーン整泡剤(ダウ・東レ(株)製 商品名「VORASURF L-5340」)0.2g、シリコーン系消泡剤(SAG-471;ダウ・東レ(株)製)0.1gを加えて、本発明のウレタン系止水剤1のサンプル液を得た。
【0039】
実施例2~16、比較例1~7
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、低分子ポリオール、イソシアネート及び希釈剤の種類と配合量を表3、表4に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン系止水剤のサンプル液を得た。なお、表3、表4中の各原料の略称は以下の通りである。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
<低分子ポリオール>
・DPG:ジプロピレングリコール
・EG:エチレングリコール
・PG:プロピレングリコール
・1,4’-BG:1,4’-ブタンジオール
<MDI系イソシアネート>
・M11S:ポリメリックMDI:ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(BASF INOAC ポリウレタン(株)製 商品名「ルプラネートM11S」)
・M5S:ポリメリックMDI(同「ルプラネートM5S」)
・MR-200:ポリメリックMDI(東ソー(株)製 商品名「ミリオネートMR-200」)
・NM:混合MDI:4,4’-MDIと、2,4’-MDI(2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)との混合物(東ソー(株)製 商品名「ミリオーネートNM))
・MT:4,4’-MDI(東ソー(株)製 商品名「ミリオネートMT」)
<希釈剤>
・GBL:ガンマーブチルラクトン
・PC:プロピレンカーボネート
・C-401:ヒマシ油脂肪酸エステル(伊藤製油(株)製 商品名「リックサイザーC-401」)
<非MDI系イソシアネート>
・XDI:キシリレンジイソシアネート(三井化学(株)製 商品名「タケネート500」)
<シリコーン系整泡剤>
・L-5340:シリコーン系整泡剤(ダウ・東レ(株)製 商品名「VORASURF L-5340」)
<シリコーン系消泡剤>
・SAG-471:オイルコンパウンド型シリコーン消泡剤(ダウ・東レ(株)製)
・DK-Q1-049:オイルコンパウンド型シリコーン消泡剤(ダウ・東レ(株)製)
【0043】
[性能評価]
上記実施例1~16及び比較例1~7で得たウレタン系止水剤のサンプル液を以下(1)~(11)の性能評価試験に供した。結果を表3、表4に示す。
【0044】
(1)粘度測定
JISK1557-5:2007プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法に基づき、B型粘度計(ブルックフィールド社製)にてNo.2、No.3及びNo.4のローターを30~60rpmで回転させ、各サンプル液の20℃での粘度を測定した。
(2)NCO含量
JISK1603-1:2007のプラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験に基づき測定した。
(3)4,4’-MDIモノマー残存量
液体クロマトグラフ装置HPLC-prominence(島津製作所製)及びカラムDevelosil C30-UG 5μm(野村化学製)を用い、THF:水=4:6にて検量線を作成して、各サンプルに含有する4,4’-MDIモノマー残存量を測定した。
(4)サンプル外観
目視にて、サンプル液に濁りや不純物が発生していない透明な状態であることを確認し、透明であれば外観を良好とした。
(5)硬化時間
100mLのポリカップにサンプル液40gとジメチルミリスチルアミンを0.3g添加し、それに20℃に温調した水道水2.0gを加えてスパチュラーで10秒間攪拌する。水を添加して混合液が硬化して糸を引き始めた時間を計測して「硬化時間」とした。また樹脂がポリカップからあふれ出した場合は、500mLのポリカップに変更して同様の試験を行った。
(6)硬化樹脂の外観
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂の硬化30分後の樹脂外観を観察した。大きな発泡やボイドがなく、低発泡の硬化樹脂であるならば良好とした。
(7)硬化樹脂の硬度
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂の硬化30分後の樹脂硬度を測定した。測定はSHORE D(株式会社上島製作所製)にて実施した。
(8)発泡倍率
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂の硬化30分後の発泡倍率を測定した。発泡倍率は、サンプル液の体積と比較して決定する。
(9)圧縮強度
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂から円柱状の試験片(40mmφ×20mmH)を切り出し、硬化24時間後の圧縮強度をテンシロン万能試験機((株)オリエンテック製UCT-2.5T)を用いて、JIS K7220-2006 「硬質発泡プラスチック-圧縮特性の求め方」に準拠して測定した。
(10)収縮率
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂の硬化24時間後の樹脂の収縮率を、硬化30分後の体積と比較して測定した。
(11)透水係数
上記(5)の試験で得られた硬化樹脂の透水係数を、JIS A-1218「土の透水試験方法」に準拠して測定した。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
表3、4の結果に示すとおり、本発明に係るウレタン系止水剤は、残存するMDIモノマーが低減され、従来のMDI系ウレタンプレポリマーと同程度に低粘度でかつ水の存在下で高強度で透水係数が十分に小さい硬化樹脂を形成するという結果が得られた。なお、硬化樹脂の圧縮強度が高く、かつ透水係数が小さいと、止水効果を長期にわたり持続させることが期待できる。
これに対し、比較例1では樹脂の親油性が弱く、脱泡作用が弱いため発泡倍率が下がらず、硬化樹脂の強度が低い、比較例2では、イソシアネート原料が大過剰であるため多量のMDIモノマーが残存する、比較例3では、低分子のポリオールからなる樹脂であるため均質な硬化樹脂が得られず、透水係数が大きい、比較例4では、親油性ポリオールのみからなるプレポリマーのため、粘度が高く脱泡性や水との相溶作用が悪く、透水係数が大きい、比較例5では、イソシアネート基とOH基の比率が低く、反応中に樹脂全体がゲル化した、比較例6では、ポリメリックMDIの含有率が低く、硬化樹脂の強度が低い、比較例7では、消泡剤がないため発泡倍率が下がらず、硬化樹脂の強度が低いといった問題があった。