(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008177
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】光伝送システム
(51)【国際特許分類】
G02B 26/00 20060101AFI20230112BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230112BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230112BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230112BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20230112BHJP
H04B 10/075 20130101ALI20230112BHJP
【FI】
G02B26/00
G02B5/28
G02B5/18
G02B5/26
H04J14/02
H04B10/075
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111528
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】591102693
【氏名又は名称】サンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】桜井 康樹
【テーマコード(参考)】
2H141
2H148
2H249
5K102
【Fターム(参考)】
2H141MA12
2H141MA23
2H141MB23
2H141ME01
2H141ME04
2H141ME06
2H141ME09
2H141ME13
2H141MF16
2H141MZ13
2H141MZ16
2H148FA01
2H148FA09
2H148FA11
2H148FA12
2H148FA22
2H148GA01
2H148GA12
2H148GA25
2H148GA62
2H249AA02
2H249AA50
2H249AA59
5K102AA01
5K102AD01
5K102KA15
5K102KA42
5K102LA52
5K102MB10
5K102MC03
5K102MD01
5K102MD03
5K102MH04
5K102MH07
5K102MH12
5K102MH22
5K102PC12
5K102PC16
5K102PH13
5K102PH31
5K102PH49
5K102RB02
5K102RB03
(57)【要約】
【課題】光伝送システムにおいて、通過帯域外のノイズを大きく減衰可能、且つ、通過帯域の制御を適切に実行可能な技術を提供する。
【解決手段】光学フィルタ30は、入力光に含まれる複数の波長成分のうち、一部の波長成分を選択的に出力光として通過させるように構成される。光学フィルタは、可動要素40を備える。コントローラは、パワーモニタ60により計測される出力光に対応する光のパワーに基づき、可動要素を制御することにより、通過帯域を移動させる。光学フィルタは、通過帯域の中心波長を含む第一の波長帯域において、ゲイン曲線が中心波長にピークを有する凸関数に対応し、第一の波長帯域に隣接する第二の波長帯域において、凸関数より急峻な傾きを示すフィルタとして構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光に含まれる複数の波長成分のうち、一部の波長成分を選択的に出力光として通過させるように構成される光学フィルタであって、通過帯域を周波数軸上で移動させるための可動要素を備える光学フィルタと、
パワーモニタにより計測される前記出力光に対応する光のパワーに基づき、前記可動要素を制御することにより、前記通過帯域を移動させるように構成されるコントローラと、
を備え、
前記光学フィルタが、前記通過帯域の中心波長を含む第一の波長帯域において、ゲイン曲線が前記中心波長にピークを有するガウス関数又はスーパーガウス関数で定義される凸関数に対応する第一の振幅周波数特性を有し、前記第一の波長帯域に隣接する前記第一の波長帯域より前記中心波長から離れた第二の波長帯域において、前記ゲイン曲線が前記凸関数より急峻な傾きを示す第二の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成される光伝送システム。
【請求項2】
前記コントローラは、計測される前記パワーがピークを示すように前記可動要素を制御することによって、前記通過帯域の中心波長を前記入力光に含まれる信号成分の中心波長に調整するように、前記可動要素を制御する請求項1記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記光学フィルタは、前記第一の波長帯域において、前記ゲイン曲線が、前記ガウス関数、又は、前記スーパーガウス関数としての次数1以上3未満のスーパーガウス関数に対応する第一の振幅周波数特性を有し、前記第二の波長帯域において、前記ゲイン曲線が、次数3以上のスーパーガウス関数に対応する第二の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成される請求項1又は請求項2記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記光学フィルタは、前記可動要素に加えて、
前記入力光の伝播経路に配置される透過型回折格子と、
反射面を有し、前記透過型回折格子からの透過回折光に含まれる前記入力光の分散した複数の波長成分のうち、前記反射面に一定の角度条件で入射した波長成分を前記出力光として反射するように構成される反射ミラーと、
を備え、前記可動要素は、前記コントローラにより制御されて、前記分散した複数の波長成分の前記反射面に対する相対的な伝播経路を変更することにより、前記通過帯域を移動させるように構成される
請求項1~請求項3のいずれか一項記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記可動要素は、角度可変鏡であり、
前記角度可変鏡は、前記透過型回折格子からの前記透過回折光を前記反射ミラーに向けて反射する鏡面の角度を変更することにより、前記分散した複数の波長成分のうち前記反射ミラーの前記反射面に入射する波長成分を変更するように構成される請求項4記載の光伝送システム。
【請求項6】
前記反射ミラーと前記透過型回折格子との間には、前記透過型回折格子から前記反射ミラーに向けて伝播する前記透過回折光に含まれる前記分散した複数の波長成分のそれぞれの伝播方向を、光軸に平行に調整するためのレンズを少なくとも含むテレセントリック光学系が設けられ、
前記反射ミラーは、前記反射面として、前記通過帯域の前記中心波長に対応する波長成分が入射する地点を頂点とした凸形状の反射面であって、前記光学フィルタが前記第一の振幅周波数特性及び前記第二の振幅周波数特性を有するように形状付けられた反射面を有する請求項4又は請求項5記載の光伝送システム。
【請求項7】
前記反射ミラーと前記透過型回折格子との間には、前記透過型回折格子から前記反射ミラーに向けて伝播する前記透過回折光に含まれる前記分散した複数の波長成分のそれぞれの伝播方向を、光軸に平行に調整するためのレンズを少なくとも含むテレセントリック光学系が設けられ、
前記反射ミラーは、前記反射面として、前記光学フィルタが前記第一の振幅周波数特性及び前記第二の振幅周波数特性を有するように反射率の分布が特徴付けられた反射面を有する請求項4又は請求項5記載の光伝送システム。
【請求項8】
前記反射ミラーと前記透過型回折格子との間に、前記透過型回折格子から前記反射ミラーに向けて伝播する前記透過回折光に含まれる前記複数の波長成分のそれぞれの伝播方向を調整するためのレンズを備え、
前記レンズは、前記光学フィルタが前記第一の振幅周波数特性及び前記第二の振幅周波数特性を有するように、前記通過帯域の前記中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の伝播方向が光軸から傾く収差を生成するように配置される請求項4又は請求項5記載の光伝送システム。
【請求項9】
前記反射ミラーと前記透過型回折格子との間に、前記透過型回折格子から前記反射ミラーに向けて伝播する前記透過回折光に含まれる前記複数の波長成分のそれぞれの焦点距離を調整するためのレンズを備え、
前記レンズは、前記光学フィルタが前記第一の振幅周波数特性及び前記第二の振幅周波数特性を有するように、前記通過帯域の前記中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の焦点が前記反射面から離れる収差を生成するように配置される請求項4又は請求項5記載の光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長分割多重(WDM)光通信技術を用いた光通信ネットワークが知られている。光通信ネットワークには、光ファイバの伝送損失を補償するために、光増幅器が配置される。光増幅器としては、例えばエルビウムドープ光ファイバ増幅器(EDFA)が知られている。
【0003】
光増幅器では、光信号の増幅時に、光信号にASE(Amplified Spontaneous Emission)ノイズが付加される。このため、光通信ネットワークには、ASEノイズを除去するための波長可変フィルタが配置される。
【0004】
波長可変フィルタとしては、回折格子を備える波長可変フィルタが知られている(例えば特許文献1,2参照)。回折格子を備える波長可変フィルタは、入力光に含まれる特定波長成分のみが出力光ファイバに光結合するように、回折格子で分散した入力光をミラーで反射する。ミラーは、鏡面の角度を変更可能に構成される。鏡面の角度調整によって出力光ファイバに光結合する波長帯域が変化する。
【0005】
この他、波長可変フィルタを通過した光のパワーをパワーモニタで計測し、計測されたパワーに基づき波長可変フィルタの通過帯域を制御する技術が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
波長可変フィルタの通過帯域は、温度変化し、外的環境により緩やかに経時変化する。そのため、波長可変フィルタを通過した光のパワーをパワーモニタで計測し、計測されたパワーに基づき鏡面の角度を調整する。
【0007】
例えば、波長可変フィルタにおける鏡面の角度は、パワーモニタで計測されたパワーが最大となるように調整される。これにより、波長可変フィルタの通過帯域は、その中心が光信号の中心波長に一致するように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開2008/0085119号公報
【特許文献2】特開2008-203508号公報
【特許文献3】特開2017-063293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光通信ネットワークには、逼迫するデータトラフィックに対応するため、周波数利用効率の向上が求められている。波長の異なる複数の光信号を一本の光ファイバで伝送するWDM技術を前提とする大容量ネットワークにおいては、周波数軸上で密に光信号を配置可能であることが重要である。
【0010】
1波長400Gbps及び100GHz間隔のWDMネットワークにおいて、64Gboundで多値変調された400Gbps信号は、周波数軸上でほぼ同一の幅64GHzの帯域を占有する。この信号が光増幅器で増幅されて伝送される場合、隣接チャンネルにASEノイズが生じる。波長可変フィルタは、ASEノイズを除去し、WDM信号のSN比を改善するために、光増幅器の後段に配置される。
【0011】
波長可変フィルタとしては、ガウシアン形状の振幅周波数特性、換言すれば挿入損失特性を有するフィルタが広く使われている。しかしながら、この種のフィルタでは、ゲイン曲線、換言すれば挿入損失曲線の傾きが緩やかであることから、64GHzの帯域を占有するWDM信号を通過させながら、周波数軸上で100GHz離れて位置する隣接チャンネルのASEノイズを大きく減衰させることは難しい。
【0012】
一方、波長可変フィルタに矩形状の振幅周波数特性を付与すると、通過帯域外のノイズを大きく減衰させることができる。しかしながら、この場合には、通過帯域がフラットであることから、光信号の中心波長付近で通過帯域をずらしてもパワーモニタにより計測されるパワーに大きな変化が生じない。従って、パワーに基づいて、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に精度よく合わせることが難しい。
【0013】
そこで、本開示の一側面によれば、光伝送システムにおいて、通過帯域外のノイズを大きく減衰可能、且つ、通過帯域の制御を適切に実行可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一側面に係る光伝送システムは、光学フィルタと、コントローラとを備える。光学フィルタは、入力光に含まれる複数の波長成分のうち、一部の波長成分を選択的に出力光として通過させるように構成される。
【0015】
光学フィルタは、通過帯域を周波数軸上で移動させるための可動要素を備える。コントローラは、パワーモニタにより計測される出力光に対応する光のパワーに基づき、可動要素を制御することにより、通過帯域を移動させるように構成される。
【0016】
本開示の一側面によれば、光学フィルタは、通過帯域の中心波長を含む第一の波長帯域において、ゲイン曲線が中心波長にピークを有する凸関数に対応する第一の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成される。凸関数は、ガウス関数又はスーパーガウス関数で定義され得る。
【0017】
本開示の一側面によれば、光学フィルタは、第一の波長帯域に隣接する第一の波長帯域より中心波長から離れた第二の波長帯域において、ゲイン曲線が上記凸関数より急峻な傾きを示す第二の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成される。
【0018】
上述した周波数特性を有するように光学フィルタを構成することによれば、通過帯域内の信号減衰を小さくしながら、通過帯域外のノイズ減衰を大きくすることができる。すなわち、通過帯域外のノイズを、通過帯域の近くの波長帯域から効果的に低減することができる。
【0019】
この光伝送システムによれば更に、通過帯域の周波数特性が凸形であることから、通過帯域の移動に伴う、通過帯域の中心と信号中心との間の乖離が、パワーモニタにより計測されるパワーの変化に現れやすい。従って、通過帯域の中心波長を、光信号の中心波長に調整する制御を精度よく実行することができる。
【0020】
本開示の一側面によれば、コントローラは、計測されるパワーがピークを示すように可動要素を制御することによって、通過帯域の中心波長を入力光に含まれる信号成分の中心波長に調整するように、可動要素を制御し得る。このような可動要素の制御を含む光伝送システムによれば、通過帯域の中心波長を、光信号の中心波長に精度よく調整することができる。
【0021】
本開示の一側面によれば、光学フィルタは、第一の波長帯域において、ゲイン曲線が、ガウス関数、又は、次数1以上3未満のスーパーガウス関数に対応する第一の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成されてもよい。
【0022】
本開示の一側面によれば、光学フィルタは、第二の波長帯域において、ゲイン曲線が、次数3以上のスーパーガウス関数に対応する第二の振幅周波数特性を有するバンドパスフィルタとして構成されてもよい。
【0023】
このように第一の波長帯域と第二の波長帯域との間でゲイン曲線の傾斜に差異を設けることによれば、通過帯域外のノイズを、通過帯域の近くの波長帯域から効果的に抑制することができる。
【0024】
本開示の一側面によれば、光学フィルタは、可動要素に加えて、透過型回折格子と、反射ミラーと、を備えてもよい。透過型回折格子は、入力光の伝播経路に配置され得る。反射ミラーは、反射面を有し得る。
【0025】
反射ミラーは、透過型回折格子からの透過回折光に含まれる入力光の分散した複数の波長成分のうち、反射面に一定の角度条件で入射した波長成分を出力光として反射するように構成され得る。可動要素は、コントローラにより制御されて、分散した複数の波長成分の反射面に対する相対的な伝播経路を変更することにより、通過帯域を移動させるように構成され得る。
【0026】
本開示の一側面によれば、可動要素は、角度可変鏡であり得る。角度可変鏡は、透過型回折格子からの透過回折光を反射ミラーに向けて反射する鏡面の角度を変更することにより、分散した複数の波長成分のうち反射ミラーの反射面に入射する波長成分を変更するように構成されてもよい。
【0027】
本開示の一側面によれば、反射ミラーと透過型回折格子との間には、透過型回折格子から反射ミラーに向けて伝播する透過回折光に含まれる分散した複数の波長成分のそれぞれの伝播方向を、光軸に平行に調整するためのレンズを少なくとも含むテレセントリック光学系が設けられてもよい。
【0028】
本開示の一側面によれば、テレセントリック光学系が設けられた光伝送システムにおいて、反射ミラーは、通過帯域の中心波長に対応する波長成分が入射する地点を頂点とした凸形状の反射面であって、光学フィルタが第一の振幅周波数特性及び第二の振幅周波数特性を有するように形状付けられた反射面を有してもよい。このような反射面の形状付けによって、光学フィルタに上述した周波数特性は付与され得る。
【0029】
本開示の一側面によれば、テレセントリック光学系が設けられた光伝送システムにおいて、反射ミラーは、光学フィルタが第一の振幅周波数特性及び第二の振幅周波数特性を有するように反射率の分布が特徴付けられた反射面を有してもよい。このような反射率の分布の特徴付けによって、光学フィルタに上述した周波数特性は付与され得る。
【0030】
本開示の一側面によれば、反射ミラーと透過型回折格子との間に、透過型回折格子から反射ミラーに向けて伝播する透過回折光に含まれる複数の波長成分のそれぞれの伝播方向を調整するためのレンズが設けられてもよい。
【0031】
この場合、レンズは、光学フィルタが第一の振幅周波数特性及び第二の振幅周波数特性を有するように、通過帯域の中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の伝播方向が光軸から傾く収差を生成するように配置され得る。このような収差を利用して、光学フィルタに上述した周波数特性は付与され得る。
【0032】
本開示の一側面によれば、反射ミラーと透過型回折格子との間に、透過型回折格子から反射ミラーに向けて伝播する透過回折光に含まれる複数の波長成分のそれぞれの焦点距離を調整するためのレンズが設けられてもよい。
【0033】
この場合、レンズは、光学フィルタが第一の振幅周波数特性及び第二の振幅周波数特性を有するように、通過帯域の中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の焦点が反射面から離れる収差を生成するように配置され得る。このような収差を利用して、光学フィルタに上述した周波数特性は付与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】光伝送システムの構成を表すブロック図である。
【
図3】
図3Aは、透過型回折格子と反射ミラーとの間のテレセントリック光学系を説明する図であり、
図3Bは、反射ミラーに入射する光の焦点位置を説明する図である。
【
図4】反射ミラーにおける反射率の分布を説明する図である。
【
図5】波長可変フィルタの挿入損失特性を示すグラフである。
【
図6】スーパーガウス関数で定義される挿入損失曲線を示すグラフである。
【
図7】波長可変フィルタの挿入損失特性を、入力光の周波数スペクトルと共に示すグラフである。
【
図8】通過帯域の移動によってパワーモニタで計測されるパワーの変化を説明するグラフである。
【
図9】第一変形例における反射ミラーの構成を説明する図である。
【
図10】第二変形例におけるレンズの焦点位置に関する説明図である。
【
図11】第三変形例におけるレンズを通過した光の伝播方向に関する説明図である。
【
図12】従来の波長可変フィルタの挿入損失特性を、入力光の周波数スペクトルと共に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(1)主実施形態
図1に示す本実施形態の光伝送システム1は、WDMネットワークにおける光信号を光増幅器10で増幅して下流に伝送するように構成される。
【0036】
この光伝送システム1は、光増幅器10による増幅時に、光信号に付加されるASEノイズを除去するために、光増幅器10の後段に、光学フィルタとしての波長可変フィルタ30を備える。
【0037】
波長可変フィルタ30は、可動要素として、角度可変鏡40(詳細後述)を備える。波長可変フィルタ30は、角度可変鏡40の鏡面40Aの角度変更により通過帯域を変更可能であるように構成される。
【0038】
光伝送システム1は更に、波長可変フィルタ30の通過帯域を制御するための構成要素として、パワーモニタ60と、コントローラ70とを備える。パワーモニタ60は、波長可変フィルタ30の後段に設置される。波長可変フィルタ30を通過した光は、分岐されて、パワーモニタ60に入力される。
【0039】
パワーモニタ60は、入力される分岐光に基づき、波長可変フィルタ30を通過した光のパワーを計測する。パワーモニタ60によるパワーの計測信号は、コントローラ70に入力される。
【0040】
コントローラ70は、角度可変鏡40の制御によって、波長可変フィルタ30の通過帯域を制御するように構成される。具体的に、コントローラ70は、パワーモニタ60からの計測信号に基づき、波長可変フィルタ30の通過帯域の中心を、伝送対象の光信号の中心波長に合わせるように、角度可変鏡40の鏡面40Aの角度を制御する。
【0041】
波長可変フィルタ30の通過帯域は、仮に角度可変鏡40の鏡面40Aを固定した状態であっても、温度等の環境により微小変化する。すなわち、通過帯域の中心を光信号の中心波長に合わせた後でも、鏡面40Aの角度調整なしでは、通過帯域の中心が、光信号の中心波長からずれていく。
【0042】
コントローラ70は、このずれを補正するために、角度可変鏡40を制御する。具体的には、コントローラ70は、パワーモニタ60により計測されるパワーがピークを示すように、鏡面40Aの角度を制御する。これにより、波長可変フィルタ30の通過帯域は、その中心が、波長可変フィルタ30に入力される光の主成分である光信号の中心波長に一致するように調整される。
【0043】
例示的な波長可変フィルタ30は、
図2に示すように構成される。この波長可変フィルタ30は、光入出力部31、コリメータ33、透過型回折格子35、レンズ37、及び、反射ミラー39を、角度可変鏡40に加えて備える。
【0044】
光入出力部31は、光サーキュレータ311と、光サーキュレータ311に接続された入力光ファイバ313、出力光ファイバ315、及び、内部光ファイバ317と、を備える。光増幅器10からの光は、入力光ファイバ313を通じて波長可変フィルタ30に入力される。
【0045】
入力光ファイバ313を通じて波長可変フィルタ30に入力される光である入力光は、光サーキュレータ311を通じて、内部光ファイバ317に伝送される。コリメータ33が内部光ファイバ317の端部に配置されており、入力光は、コリメータ33によりコリメートされた後、透過型回折格子35に伝播する。
【0046】
透過型回折格子35は、コリメートされた入力光の伝播経路に設けられる。透過型回折格子35の回折角は、入射光の波長に依存する。透過型回折格子35は、この波長依存性によって、コリメートされた入力光を、複数の波長成分に空間的に分離する。コリメータ33からの入力光は、透過型回折格子35を透過し、複数の波長成分が空間的に分散した透過回折光として、角度可変鏡40に伝播する。
【0047】
角度可変鏡40に伝播した透過回折光は、角度可変鏡40の鏡面40Aで反射されて、透過型回折格子35を再透過する。透過型回折格子35を再透過した透過回折光は、複数の波長成分が空間的に分散した状態で、レンズ37を通って反射ミラー39側に伝播する。
【0048】
図2に示される実線矢印は、通過帯域の中心が、光信号の中心波長に調整された状態での光信号の伝播を概念的に示している。
図2に示される破線矢印は、通過帯域外のノイズ成分の伝播を概念的に示している。
【0049】
角度可変鏡40は、コントローラ70により制御されて、鏡面40Aの角度を変更するように構成される。角度可変鏡40は、例えばMEMSミラーである。
図2における一点鎖線矢印は、角度可変鏡40の鏡面40Aの角度が回転により変化することを示している。
図2における太矢印は、反射ミラー39に伝播する透過回折光の反射ミラー39に対する相対位置が、鏡面40Aの角度変化によって、反射ミラー39の反射面39Aに平行な方向に変化することを示している。
【0050】
レンズ37は、テレセントリックレンズであり、
図3Aに示すように、透過型回折格子35からの透過回折光、詳細には、透過回折光に含まれる空間的に分散した複数の波長成分のそれぞれを、その伝播方向が、レンズ37の中心を通る光軸に平行であるような光線に変換する。
【0051】
反射ミラー39は、平坦な反射面39Aの中心がレンズ37の中心を通る光軸上に配置され、反射面39Aの中心からの法線が光軸に一致し、反射面39Aが、
図3Bに示すようにレンズ37の焦点位置に配置されるように、設置される。
【0052】
図2、
図3A及び
図3Bは、同じ波長可変フィルタ30の構成を示すものである。
図3A及び
図3Bでは、光の伝播方向及び焦点位置の説明のために、透過型回折格子35、レンズ37、及び反射ミラー39の配置が、概念的に簡易表現されている。
図3Bにおいて破線は、波長毎の光線に対応し、
図3Bは、反射ミラー39に入射する光線の焦点位置が反射面39A上にあることを説明している。
【0053】
すなわち、レンズ37は、透過型回折格子35と反射ミラー39との間に、透過型回折格子35からの透過回折光を反射ミラー39に結像するテレセントリック光学系を構成する。レンズ37は、透過回折光に含まれる複数の波長成分の伝播方向を、反射ミラー39の反射面39Aに垂直な方向に調整する。
【0054】
上述したように、透過型回折格子35からの透過回折光は、入力光に含まれる複数の波長成分が空間的に分散した状態にあるが、反射ミラー39の反射面39Aは、入力光に含まれる複数の波長成分の空間的な広がりに対して、小さい。
【0055】
このため、反射面39Aには、角度可変鏡40における鏡面40Aの角度に応じた、入力光に含まれる複数の波長成分のうちの一部の波長成分が選択的に入射する。具体的には、通過帯域の中心に対応する波長成分が、レンズ37の中心を通る光軸に対応する反射面39Aの中心に、反射面39Aに垂直な方向から入射して、反射面39A上で焦点を結ぶように、一部の波長成分が選択的に反射面39Aに入射する。
【0056】
反射ミラー39は、空間的に分離した複数の波長成分のうち、反射面39Aに一定の角度条件で入射した波長成分として、反射面39Aに垂直に入射した上記一部の波長成分を選択的に出力光として反射する。
【0057】
図3A及び
図3Bは、入力光に含まれる波長λ1~波長λzまでの波長成分のうち、波長λmから波長λnまでの波長成分が、反射ミラー39の反射面39Aに入射し、残りの波長成分が、反射面39Aからはずれた位置を伝播することを示している。
【0058】
反射ミラー39で反射された出力光は、反射ミラー39までの往路を逆方向に戻るように伝播して、コリメータ33を通じ、光サーキュレータ311に伝播する。光サーキュレータ311に伝播した出力光は、出力光ファイバ315を通って光伝送システム1の下流に伝播する。
【0059】
上述の波長可変フィルタ30の構成により、波長可変フィルタ30では、入力光に含まれる複数の波長成分のうち、一部の波長成分が選択的に出力光ファイバ315に結合し、出力光ファイバ315から出力光として下流に伝送される。
【0060】
角度可変鏡40における鏡面40Aの角度が、コントローラ70により制御されることにより、反射ミラー39の反射面39Aに対する複数の波長成分のそれぞれの相対的な伝播経路、換言すれば相対位置が
図2及び
図3Aに示す太矢印方向に変化し、それにより、波長可変フィルタ30の通過帯域は、周波数軸上でスライド移動するように調整される。
【0061】
特徴的なことに、本実施形態において、反射ミラー39の反射面39Aは、その全体において一様な反射率を有さず、
図4に示すように、非一様な反射率の分布を有した構成にされる。
【0062】
具体的には、反射面39Aは、通過帯域の中心に対応する波長の光が入射する反射面39Aの中心から、透過型回折格子35による波長分散方向に、段階的に反射率が低くなる反射率の分布を有する。この反射率の分布は、波長可変フィルタ30が、
図5に示す入力光の挿入損失特性、換言すればゲイン特性を示すように決定され、反射ミラー39に付与される。
【0063】
図5に示される挿入損失特性のグラフは、周波数の横軸と、挿入損失(IL)の縦軸、換言すればゲインの縦軸と、を有するグラフである。波長可変フィルタ30は、図示されるように、次数の異なる複数のスーパーガウス関数の組み合わせに対応する凸形状の挿入損失特性を有するバンドパスフィルタとして構成される。
【0064】
波長可変フィルタ30は、通過帯域の中心周波数fcにおいて、0dB(デシベル)の挿入損失を示し、中心周波数fcを中心とする第一の波長帯域において、中心周波数fcにピークを有する次数n=1のスーパーガウス関数で定義される挿入損失曲線に従う凸形状の挿入損失特性を有する。
【0065】
波長可変フィルタ30は、第一の波長帯域を挟んで第一の波長帯域に隣接する第二の波長帯域において、中心周波数fcにピークを有する次数n=5のスーパーガウス関数で定義される挿入損失曲線に従う挿入損失特性を有する。挿入損失曲線は、ゲイン曲線に対応し、挿入損失特性は、波長可変フィルタ30の振幅周波数特性に対応する。
【0066】
次数nのスーパーガウス関数で定義される挿入損失曲線は、次式で表される。次式において、fcは、中心周波数を意味し、Δνは、中心周波数fcからの周波数差を意味し、BW3は、-3dBの帯域幅を意味する。
【0067】
【0068】
図6は、次数nのスーパーガウス関数で定義される挿入損失曲線を、次数n=1,2,4,6のそれぞれについて示す。
図6は、次数n=1の挿入損失曲線を、実線で示し、次数n=2の挿入損失曲線を、破線で示し、次数n=4の挿入損失曲線を、一点鎖線で示し、次数n=6の挿入損失曲線を、二点鎖線で示す。
【0069】
従来の波長可変フィルタは、ガウシアン形状の挿入損失特性を有し、その挿入損失曲線は、ガウス関数、又は、次数n=1のスーパーガウス関数に従う。
図6から理解できるように、スーパーガウス関数に従う挿入損失曲線は、次数nが大きくなるほど、中心周波数fcの周囲で、平坦な曲線になり、中心周波数fcから離れるほど、挿入損失の傾きが大きい曲線になる。
【0070】
図12には、1波長400GbpsのWDMネットワークにおける光の周波数スペクトルを、横軸を周波数とするグラフ上に実線で示す。光信号としての64Gboundで多値変調された400Gbps信号は、周波数軸上でほぼ同一の幅64GHzの帯域を占有する。この信号が光増幅器10で増幅されて伝送される場合、ASEノイズが付与されるため、隣接するチャンネルの光信号(WDM信号)のSN比が劣化する。
【0071】
ASEノイズが付加された光信号に対応する入力光を仮に挿入損失曲線がガウス関数に従う波長可変フィルタでフィルタリングする場合、100GHz未満の通過帯域幅BW
3で、100GHz離れた隣接チャンネル付近のノイズ成分を信号成分よりも40dB以上小さくすることができる。
図12において示される破線は、ガウス関数で定義される挿入損失曲線に対応する。
【0072】
しかしながら、こうした波長可変フィルタによってASEノイズを減衰させても、依然としてASEノイズは無視できない程度に存在する。ASEノイズの減衰のために、通過帯域幅BW3を狭くすれば、信号成分の挿入損失が大きくなってしまう。
【0073】
そこで、本実施形態では、挿入損失0dBの中心周波数fcを中心した挿入損失が-3dBまでの通過帯域に対応する第一の波長帯域においては、次数n=1のスーパーガウス関数に従う挿入損失曲線を示し、中心周波数fcから離れた位置で、第一の波長帯域を両側から挟み、第一の波長帯域に隣接する挿入損失が-3dBより大きい第二の波長帯域においては、次数n=5のスーパーガウス関数に従う挿入損失曲線を示す挿入損失特性が付与されるように、波長可変フィルタ30が設計される。すなわち、波長可変フィルタ30が上記挿入損失特性を有するように反射ミラー39の反射面39Aにおける反射率の分布が、設定される。
【0074】
挿入損失曲線が、第一の波長帯域及び第二の波長帯域において異なる次数のスーパーガウス関数に従う挿入損失特性を示すバンドパスフィルタ型の波長可変フィルタ30によれば、第二の波長帯域において、ガウス関数や次数nの小さいスーパーガウス関数よりも、挿入損失の傾きが大きい。
【0075】
従って、この波長可変フィルタ30によれば、通過帯域の挿入損失を小さく抑えつつ、隣接チャンネルに影響するASEノイズを効率よく減衰させることができる。すなわち、本実施形態によれば、
図7において、ハッチングされた部位のノイズ成分を、従来よりも効果的に減衰させることができる。
図7において示される破線は、波長可変フィルタ30の挿入損失曲線に対応する。
【0076】
本実施形態のように、第一の波長帯域が、次数n=1のスーパーガウス関数に従うことによれば、第一の波長帯域を、第二の波長帯域と同様の高い次数nのスーパーガウス関数で定義するよりも、パワーモニタ60で計測されるパワーに基づいて、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に合わせる通過帯域の制御を精度よく行うことが可能である。
【0077】
上述したように、次数nが3未満の次数nのスーパーガウス関数に従う挿入損失曲線は、通過帯域の中心周波数fc付近で、比較的凸型であるが、次数nが3以上のスーパーガウス関数に従う挿入損失線は、中心周波数fc付近で、比較的フラットである。
【0078】
波長可変フィルタ30が中心周波数fc付近でフラットな挿入損失曲線を示す場合、パワーモニタ60により計測されるパワーがピーク(最大値)を示すように、コントローラ70が、角度可変鏡40の鏡面40Aの角度を調整して、波長可変フィルタ30における通過帯域の中心を、光信号の中心波長に調整しようとしても、これを精度よく実行することができない。
【0079】
なぜなら、中心周波数fc付近でフラットな挿入損失特性では、通過帯域の中心を、光信号の中心波長からずらしても、計測されるパワーに目立った変化が生じないためである。通過帯域をスライド移動させて、計測されるパワーの変化を観測しようとしても、
図8に示すように、中心周波数fc付近での挿入損失曲線が次数n=4以上のスーパーガウス関数に従う場合には、パワーの変化がほとんど見られない。
【0080】
図8に示すグラフは、偏差δの横軸、及び、パワーモニタ60で計測されるパワーの縦軸を有するグラフであって、中心周波数fc付近の挿入損失曲線が次数n=1,2,3,4のスーパーガウス関数に従う場合の、偏差δに対して計測されるパワーの変化を示す。偏差δは、周波数軸における通過帯域の中心の光信号の中心周波数からの差である。
【0081】
グラフによれば、次数n=3以下であるときには、偏差δ=0付近で、パワーの変化が凸形状を示す。但し、現実的には、次数n=3であっても、計測されるパワーのピークを精度よく観測して、通過帯域の中心を光信号の中心波長に合わせる制御を行うことは、難しい。
【0082】
このため本実施形態では、第一波長帯域の次数nを1に設定している。別例として、波長可変フィルタ30は、第一の波長帯域において、ガウス関数又は次数1以上3未満のスーパーガウス関数に従う挿入損失曲線を示し、第二の波長帯域において、次数3以上のスーパーガウス関数に従う挿入損失曲線を示すように、設計されてもよい。
【0083】
波長可変フィルタ30は、第一の波長帯域において、中心周波数fcにピークを有するガウス関数又は次数1以上3未満のスーパーガウス関数で定義される凸関数に従う挿入損失曲線を示すように、設計されてもよい。波長可変フィルタ30は、第二の波長帯域の挿入損失曲線が、第一の波長帯域の挿入損失曲線に対応する凸関数の第二の波長帯域での傾きよりも急峻な傾きを示すように、設計されてもよい。こうした設計によっても、同様に、ASEノイズの低減及び通過帯域の制御に好適な挿入損失特性を、波長可変フィルタ30に付与することができる。
【0084】
(2)第一変形例
第一変形例の光伝送システム1は、主実施形態とは異なる反射ミラー391を備える点を除いて、主実施形態と同様に構成される。
【0085】
すなわち、第一変形例の波長可変フィルタ30は、主実施形態の波長可変フィルタ30における反射ミラー39を、異なる特徴を有する反射ミラー391に置き換えた構成にされる。以下では、反射ミラー391の構成を、
図9を用いて選択的に説明し、主実施形態と同様に構成されるその他の部位の説明を省略する。
【0086】
本変形例の反射ミラー391は、湾曲した反射面391Aを有する点、及び、反射面391Aが均一な反射率を有する点で、主実施形態の反射ミラー39とは異なる。この反射ミラー391は、主実施形態と同様に、反射面391Aの中心がレンズ37の中心を通る光軸上に位置するように、且つ、反射面391Aの中心からの法線が光軸に一致するように配置される。
【0087】
反射面391Aの前段に構成されたテレセントリック光学系により、透過型回折格子35で分散した入力光に含まれる複数の波長成分は、光軸に平行な光線として、反射面391A側に伝播する。
【0088】
反射面391Aは、中心に頂点を有する凸形状にされており、通過帯域に対応する波長成分は、通過帯域の中心から空間的に離れた波長成分ほど、法線が光軸から角度を有した反射面391A上の部位に入射する。通過帯域の中心波長に対応する波長成分は、反射面391Aの頂点に入射する。
【0089】
主実施形態と同様に、第一変形例の波長可変フィルタ30によれば、反射ミラー391で反射する光のうち、光軸に平行に伝播する光が出力光ファイバ315に光結合する。反射面391Aに入射し、出力光として反射される波長成分の出力光ファイバ315に対する光結合率は、法線が光軸から角度を有した反射面391Aの部位に入射する通過帯域の中心からずれた波長成分ほど下がる。この光結合率の低下は、挿入損失の増大に対応する。
【0090】
すなわち、本変形例では、反射面391Aに、湾曲を意図的に付与することにより、波長可変フィルタ30に、主実施形態と同様の
図5に示す挿入損失特性を付与する。換言すれば、反射面391Aは、波長可変フィルタ30が
図5に示す挿入損失特性を有するように、形状付けられる。
【0091】
第一変形例によっても、波長可変フィルタ30には、主実施形態と同様の挿入損失特性が付与されることから、光伝送システム1は、ASEノイズを効果的に低減することができ、更には、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に精度よく制御することができる。
【0092】
(3)第二変形例
第二変形例の光伝送システム1は、主実施形態とは異なるレンズ371及び反射ミラー393を備える点を除いて、主実施形態と同様に構成される。
【0093】
すなわち、第二変形例の波長可変フィルタ30は、主実施形態の波長可変フィルタ30におけるレンズ37及び反射ミラー39を、異なる特徴を有するレンズ371及び反射ミラー393に置き換えた構成にされる。以下では、第二変形例のレンズ371及び反射ミラー393の特徴を、
図10を用いて選択的に説明し、主実施形態と同様に構成されるその他の部位の説明を省略する。
【0094】
本変形例の反射ミラー393は、平坦な反射面393Aを有する。反射面393Aは、その全体に亘って、均一な反射率を有する。反射ミラー393は、反射面393Aの中心がレンズ371の中心を通る光軸上に位置し、反射面393Aの中心からの法線が光軸に一致するように配置される。
【0095】
レンズ371は、透過型回折格子35からの透過回折光に含まれる分散した複数の波長成分を、レンズ371の中心を通る光軸に平行な光線に変換するように設計される。レンズ371は更に、レンズ371の中心を通る通過帯域の中心波長に対応する波長成分が反射面393Aの中心で焦点を結ぶように設計される。但し、レンズ371は、中心から波長分散方向に離れた各位置で、異なる焦点距離を有するように設計される。
【0096】
すなわち、レンズ371は、レンズ371の中心から波長分散方向に離れた位置を通過する、通過帯域の中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の焦点位置が反射面393Aからその法線方向に離れる球面収差を生成するように設計される。
【0097】
このような設計により、本変形例の波長可変フィルタ30は、レンズ371の球面収差を利用して、反射面393Aの中心から波長分散方向に離れた位置で反射面393Aに入射する波長成分ほど、挿入損失が大きくなるように設計される。具体的には、挿入損失曲線が、主実施形態と同様に、
図5に示す挿入損失曲線に一致するように、レンズ371は、設計される。
【0098】
第二変形例によっても、波長可変フィルタ30には、主実施形態と同様の挿入損失特性が付与されることから、光伝送システム1は、ASEノイズを効果的に低減することができ、更には、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に精度よく制御することができる。
【0099】
(4)第三変形例
第三変形例の光伝送システム1は、第二変形例とは異なるレンズ373を備える点を除いて、第二変形例と同様に構成される。
【0100】
すなわち、第三変形例の波長可変フィルタ30は、第二変形例の波長可変フィルタ30におけるレンズ371を、異なる特徴を有するレンズ373に置き換えた構成にされる。以下では、第三変形例のレンズ373の特徴を、
図11を用いて選択的に説明し、第二変形例と同様に構成されるその他の部位の説明を省略する。
【0101】
本変形例の波長可変フィルタ30は、第二変形例と同様に、平坦で反射率が均一な反射面393Aを有する反射ミラー393を備える。反射面393Aは、その中心がレンズ373の中心を通る光軸上に位置するように配置される。
【0102】
レンズ373は、レンズ373の中心から波長分散方向に離れた位置を通過する、通過帯域の中心波長から離れた波長帯域の波長成分ほど、対応する波長成分の伝播方向が、レンズ373の中心を通る光軸から傾く球面収差を生成するように設計される。
【0103】
このような設計により、本変形例の波長可変フィルタ30は、レンズ373の球面収差を利用して、反射面393Aの中心から波長分散方向に離れた位置で反射面393Aに入射する波長成分ほど、出力光ファイバ315に対する光結合率が低下し、挿入損失が大きくなるように、設計される。具体的には、挿入損失曲線が、主実施形態と同様に、
図5に示す挿入損失曲線に一致するように、レンズ373は、設計される。
【0104】
第三変形例によっても、波長可変フィルタ30には、主実施形態と同様の挿入損失特性が付与されることから、光伝送システム1は、ASEノイズを効果的に低減することができ、更には、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に精度よく制御することができる。
【0105】
以上、変形例を含む本開示の例示的実施形態を説明したが、本開示は、説明された例示的実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、本開示の技術は、各種タイプの波長可変フィルタに適用可能であり、波長可変フィルタ30の構成は、上述した実施形態に限定されない。
【0106】
本開示の技術は、出力光に対応する光のパワーに基づき、波長可変フィルタ30の通過帯域を制御する。上記実施形態によれば、この出力光に対応する光のパワーは、出力光のパワーそれ自体である。
【0107】
しかしながら、出力光に対応する光のパワーは、出力光のパワーと対応関係を有するものであれば十分であり、例えば入力光から出力光を除いた光のパワーであってもよい。この場合には、通過帯域の中心を、光信号の中心波長に調整するために、出力光以外の光のパワーが最小となるように、角度可変鏡40の鏡面40Aの角度を制御することができる。
【0108】
この他、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0109】
1…光伝送システム、10…光増幅器、30…波長可変フィルタ、31…光入出力部、33…コリメータ、35…透過型回折格子、37,371,373…レンズ、39,391,393…反射ミラー、39A,391A,393A…反射面、40…角度可変鏡、40A…鏡面、60…パワーモニタ、70…コントローラ。