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特開2023-81774測位システム、設置補助装置、管理装置、測位方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081774
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】測位システム、設置補助装置、管理装置、測位方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20230606BHJP
   G01S 5/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S5/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195770
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318014809
【氏名又は名称】ALES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】大澤 定夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】大浜 勇作
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友樹
(72)【発明者】
【氏名】楊 一凡
(72)【発明者】
【氏名】大西 健広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】野村 宏利
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062AA13
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC12
(57)【要約】
【課題】測位対象の装置との間の無線媒体による測位信号の送受信を利用した測位に用いられる複数の基準装置の設置の工数の簡易化が可能になる測位システムを提供する。
【解決手段】所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられた設置補助装置が、測位対象空間に設置される。前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標が決定される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力として前記測位対象の装置の位置座標を出力する測位システムであって、
所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられた設置補助装置と、
前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定する座標決定部と、
を備える、ことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
請求項1の測位システムにおいて、
前記設置補助装置の本体は、フレーム構造体であり、
前記基準点及び前記複数の補助点はそれぞれ、前記フレーム構造体の角部に位置する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項3】
請求項1又は2の測位システムにおいて、
前記基準点と前記複数の補助点のいずれか1つの補助点とが同一点である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの測位システムにおいて、
前記座標系の原点は、前記複数の基準装置のいずれか1つの基準装置の設置位置である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかの測位システムにおいて、
前記座標系の原点は、前記複数の基準装置が設置される前記測位対象空間の水平状の底面と、前記複数の基準装置のいずれか1つの基準装置の設置位置を通る垂直座標軸との交点である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの測位システムにおいて、
前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの測位システムにおいて、
前記測位信号の送受信による前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離の測定方式は、ToF(Time of Flight)方式である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの測位システムにおいて、
前記基準装置及び前記複数の補助通信装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、
前記測位信号の送受信による前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離の測定方式は、TDoA(Time Difference of Arrival)方式である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの測位システムにおいて、
前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理された4以上の基準装置であり、
前記測位対象の装置の位置座標は、前記測位対象の装置から送信された前記測位信号が前記複数の基準装置のそれぞれに受信された複数の時間差の情報と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報と、に基づいて計算される、ことを特徴とする測位システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの測位システムにおいて、
前記測位対象の装置は無線ICタグである、ことを特徴とする測位システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの測位システムにおいて、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置及び前記複数の補助通信装置のそれぞれと通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、前記座標決定部と、前記座標系における前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかの測位システムにおける前記複数の基準装置の設置作業を補助する設置補助装置であって、
所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられている、ことを特徴とする設置補助装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかの測位システムにおける前記複数の基準装置及び前記複数の補助通信装置のそれぞれと通信ネットワークを介して通信可能な管理装置であって、
前記座標決定部と、前記座標系における前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項14】
測位対象の装置と互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力として前記測位対象の装置の位置座標を出力する測位方法であって、
所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられた設置補助装置を、測位対象空間に設置することと、
前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定することと、
を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項15】
請求項11又は13に記載の管理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信するためのプログラムコードと、
前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、設置補助装置、管理装置、測位方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS人工衛星からの電波が届きにくい屋内などのエリア内において、測位される測位対象の装置(以下「対象装置」ともいう。)と既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間の見通し内環境(LOS環境)で電波、音波、光などの無線媒体を送受信し、その送受信の結果を入力として前記測位対象の装置の位置座標を出力する測位システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/155437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記見通し内環境(LOS環境)での電波などの無線媒体の送受信を利用した従来のシステムにおいて、複数の基準装置の設置の工数を簡易化したい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る測位システムは、測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力として前記測位対象の装置の位置座標を出力する測位システムである。この測位システムは、所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点のそれぞれに前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられた設置補助装置と、前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定する座標決定部と、を備える。
【0006】
本発明の他の態様に係る装置は、前記測位システムにおける前記複数の基準装置の設置作業を補助する設置補助装置である。この設置補助装置は、所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられている。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る装置は、前記測位システムにおける前記複数の基準装置のそれぞれと通信ネットワークを介して通信可能な管理装置である。この管理装置は、前記座標決定部と、前記座標系における前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報を記憶する記憶部と、を備える。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る方法は、測位対象の装置と互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力として前記測位対象の装置の位置座標を出力する測位方法である。この測位方法は、所定の座標系における前記複数の基準装置の位置座標の基準となる基準点が設定され、前記基準点との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点が設定され、前記複数の補助点に前記複数の基準装置との間で前記無線媒体による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置が設けられた設置補助装置を、測位対象空間に設置することと、前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定することと、を含む。
【0009】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記管理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信するためのプログラムコードと、前記設置補助装置が設置された測位対象空間における前記複数の基準装置のそれぞれについて、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の前記無線媒体による測位信号の送受信により、前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離を測定し、前記距離の測定結果に基づいて、前記座標系における前記基準装置の座標を決定するためのプログラムコードと、を含む。
【0010】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記設置補助装置の本体は、フレーム構造体であり、前記基準点及び前記複数の補助点はそれぞれ、前記フレーム構造体の角部に位置してもよい。また、前記設置補助装置の本体は、直方体等の底面が多角形となった柱状の立体図形構造を総称する4つ以上の前記基準装置又は前記測位対象の装置を設置可能なフレーム構造体であってもよい。
【0011】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記基準点と前記複数の補助点のいずれか1つの補助点とが同一点であってもよい。
【0012】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記座標系の原点は、前記複数の基準装置のいずれか1つの基準装置の設置位置であってもよい。
【0013】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記座標系の原点は、前記複数の基準装置が設置される前記測位対象空間の水平状の底面と、前記複数の基準装置のいずれか1つの基準装置の設置位置を通る垂直座標軸との交点であってもよい。
【0014】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波であってもよい。
【0015】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位信号の送受信による前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離の測定方式は、ToF(Time of Flight)方式であってもよい。
【0016】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記基準装置及び前記複数の補助通信装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理され、前記測位信号の送受信による前記基準装置と前記複数の補助通信装置との間の距離の測定方式は、TDoA(Time Difference of Arrival)方式であってもよい。
【0017】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の基準装置は、互いの時刻同期又は時刻差が管理された4台以上の基準装置であり、前記測位対象の装置の位置座標は、前記測位対象の装置から送信された前記測位信号が前記複数の基準装置のそれぞれに受信された複数の時間差の情報と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報と、に基づいて計算されてもよい。
【0018】
前記測位システム、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位対象の装置は無線ICタグであってもよい。
【0019】
前記測位システムにおいて、通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信可能な管理装置を備え、前記管理装置は、前記座標決定部と、前記座標系における前記複数の基準装置の設置位置の座標の情報を記憶する記憶部と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測位対象の装置との間の無線媒体による測位信号の送受信を利用した測位に用いられる複数の基準装置の設置の工数の簡易化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図。
図2図1の測位システムの対象装置の測位時における基準装置、対象装置及び管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
図3図1の測位システムの基準装置の設置時における基準装置、設置補助装置の補助通信装置及び管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
図4】設置補助装置の補助通信装置と基準装置と間の距離の測定に用いることができるToF方式の測距技術の一例を示す説明図。
図5】基準装置の設置作業を補助する設置補助装置の一例を示す斜視図。
図6】実施形態の測位システムにおける複数の基準装置の設置時の基準装置と設置補助装置の補助通信装置との間の無線通信の一例を示す説明図。
図7】実施形態の測位システムにおける複数の基準装置の設置時の基準装置の位置座標の決定の手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る測位システムは、タグ(測位対象の装置)と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数のアンカー(基準装置)との間で、見通し内環境(LOS環境)で超広帯域(UWB)の電波による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果を入力としてタグ(測位対象の装置)の位置座標を出力する測位システムである。例えば、本実施形態の測位システムは、前記測位信号の送受信に基づくTDoA(到達時間差)方式又はToA(Time of Arrival)の測距推定法のアルゴリズムを用いてタグの位置座標を計算して出力する。
【0023】
本実施形態のTDoA方式の測位システムは、例えばGNSS人工衛星からの電波が届かない又は届きにくい屋内などのエリア内におけるタグの位置座標の測位に適する。本実施形態の測位システムは、タグなどの測位対象の装置の位置をリアルタイムに測位するリアルタイム位置測位システム(RTLS:Real Time Location System)の実現に適する。
【0024】
特に、本実施形態の測位システムは、複数の補助アンカー(補助基準装置)を有するアンカー設置台(設置補助装置)を用いることにより、測位に用いられる複数のアンカーの設置の工数の簡易化が可能になる測位システムである。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図である。図1において、測位システムは、複数の測位可能空間(以下「測位対象空間」ともいう。)10A,10Bのそれぞれにおいて、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置(以下「アンカー」ともいう。)20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)を備える。測位システムは、測位可能空間10A,10Bのそれぞれにおける測位対象の装置(以下「対象装置」という。)30A,30Bを更に備えてもよい。測位システムは、複数の基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)のそれぞれと通信可能な管理装置40を更に備えてもよい。管理装置40は、対象装置30A,30Bと通信可能であってもよい。
【0026】
なお、図1の例は、対象装置30A,30Bの位置をTDoA方式で測位する測位システムを示しているが、ToA(Time of Arrival)方式などの他の測位方式で対象装置30A,30Bの位置を測位してもよい。
【0027】
また、図1の例では、測位可能空間10A,10Bの数が2の場合について示されているが、測位可能空間の数は単数であってもよいし、3以上であってもよい。また、各測位可能空間10A,10Bにおける基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)の数はそれぞれ4であるが、測位可能空間における基準装置の数は5以上であってもよい。また、各測位可能空間10A,10Bにおける対象装置30A,30Bの数は1であるが、測位可能空間における対象装置の数は2以上であってもよい。
【0028】
また、以下の説明において、各測位可能空間10A,10Bに共通する事項について説明するときは測位可能空間10と記載する。また、各基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)に共通する事項について説明するときは、基準装置20又は基準装置20(1)、20(2)、・・・と記載する。また、各対象装置30A,30Bについて記載するときときは対象装置30と記載する。
【0029】
複数の基準装置20は、建物などの内部の2次元又は3次元の測位可能空間10の互いに異なる複数の位置に設置される。複数の基準装置20の設置位置は、水平方向の位置及び高さの少なくとも1つが互いに異なる。設置位置は、測位可能空間10内のできるだけ離れた位置が好ましい。なお、複数の補助アンカー(補助基準装置)を有するアンカー設置台(設置補助装置)を用いた複数の基準装置20の設置時の座標系の設定及び基準装置の位置座標の決定のより詳しい説明については後述する。
【0030】
基準装置20の数は、例えば測位方式のアルゴリズムに応じて設定される。例えば、TDoA方式で3次元空間における対象装置30の位置を測位する場合、基準装置20の数は例えば4以上である。なお、2次元のエリアで対象装置30の位置を測位する場合は、基準装置の数は3以上であってもよい。
【0031】
複数の基準装置20は、装置間に適用可能な任意の同期方法により、互いの時刻同期又は時刻差が管理されている。複数の基準装置20はそれぞれ、互いの時刻同期又は時刻差が管理された内部クロックを備える。
【0032】
ここで、上記「時刻同期」とは、複数の基準装置20の間で特定の時点どうしを同期させることを意味し、「時間同期」とも言われることがある。また、上記時刻同期が管理される場合の例としては、例えば、複数の基準装置20のそれぞれとの間の位置関係(例えば距離)が既知である位置に共通の送信装置を設置した状態で当該送信装置から送信された信号を複数の基準装置20が受信した受信タイミングのタイムスタンプの時刻差を測定し、その時刻差を基準装置間のOffset値として管理装置40などに保持することが挙げられる。この基準装置間のOffset値は、後述のTDoA方式の測位において対象装置30の複数の基準装置20との間の距離の計算に用いられる基準装置間の受信時間差(タイムスタンプの差)の補正に用いることができ、複数の基準装置20の間の時刻同期を行うことなく、対象装置30の現在位置の計算(推定)が可能になる。なお、上記Offset値は、初期設定の後、所定のタイミングに(例えば所定周期の定期的なタイミングに)、上記共通の送信装置からの信号の受信タイミングのタイムスタンプの時刻差を測定して更新してもよい。
【0033】
複数の基準装置20のそれぞれが設置された既知の位置座標は、例えば、測位対象空間10に予め設定された座標系における相対的な位置座標である。本実施形態における複数の基準装置20の位置座標は、測位対象空間10内の任意の点に原点が設定された直交座標系における相対的な位置座標であってもよい。例えば、複数の基準装置20の位置座標は、いずれか1つの基準装置20の設置位置を通る垂直座標軸上の任意の点に原点が設定された直交座標系における相対的な位置座標であってもよい。
【0034】
測位対象空間10の所定の座標系における複数の基準装置20の位置座標は、後述のようにアンカー設置台(設置補助装置)の複数の補助アンカー(補助基準装置)と基準装置20との間の測位信号の送受信によって決定することができる。
【0035】
複数の基準装置20の位置座標を、後述の補助アンカー(補助基準装置)と基準装置20との間の測位信号の送受信によって決定できない場合は、一般的な測量技術(例えば、トータルステーション、レーザ測距センサー)を使った測量作業を行って決定してもよい。また、複数の基準装置20の一部又は全部がGNSSの人工衛星からの電波を受信できるエリアに配置されている場合は、前記一部又は全部の基準装置20の既知の位置座標としてGNSS受信機で測定された位置座標を使用してもよい。この場合の位置座標は、例えば、緯度、経度及び高度であってもよいし、ある基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。また、ある基準点を原点としたENU(東East(m)、北North(m)、上Up(m):基準点からの相対距離)座標への変換座標系であってもよい。
【0036】
対象装置30は、例えばIC無線タグ(以下「タグ」ともいう。)である。対象装置30は、タグのほか、台車、フォークリフト、各種の部品、又は、各種の製品であってもよい。対象装置30は、移動中の装置若しくは一時停止中の装置であってもよいし、又は、固定配置された装置であってもよい。
【0037】
対象装置30は、図1中の実線の矢印で示すように、複数の基準装置20のそれぞれに対して所定の無線媒体による測位信号の送信を行う。測位信号の送受信に用いる無線媒体は、電波、音波、光などの無線媒体である。本実施形態では、無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる。UWBは、広帯域(例えば、数GHz帯中の任意の周波数を中心とした数百MHzの帯域幅)の微弱電波での通信技術であり、IEEE802.15.4で定義されている。
【0038】
管理装置40は、例えば、インターネットなどの通信ネットワーク45に構築されたクラウドコンピュータシステム(以下「クラウドシステム」ともいう。)である。管理装置40は、単一又は複数のコンピュータ装置で構成したサーバであってもよい。管理装置40と複数の基準装置20との間の通信は、例えば有線又は無線の通信回線を介して行うことができる。通信回線は公衆回線であってもよいし専用回線であってもよい。
【0039】
図2は、図1の測位システムの対象装置(タグ)30の測位時における基準装置(アンカー)20、対象装置(タグ)30及び管理装置40の主要な構成の一例を示すブロック図である。
図2において、基準装置20は、UWB通信部210と、記憶部230と、情報の送信部としても機能するNW通信部240とを備える。UWB通信部210は、対象装置30の測位時における測位信号の受信部としても機能する。
【0040】
UWB通信部210は、例えばUWB無線通信モジュールで構成されている。UWB通信部210は、対象装置30の測位時に、対象装置30からUWBの電波で送信(発信)された測位信号を、アンテナ211を介して受信する。また、UWB通信部210は、対象装置30から受信した測位信号に含まれる情報と、測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを出力する。
【0041】
対象装置30から送信される測位信号の送信フォーマットは、例えば、フレーム制御情報(Frame Control)、送信連続番号(Sequence Number)、対象装置30を識別可能な対象装置識別情報(TAG ID)、メッセージ識別情報(Message ID)、測位管理識別情報(Purpose ID)及びデータエラー修復用情報(CRC)を含む。測位管理識別情報(Purpose ID)は、例えば、測位の目的、測位の結果の用途及び測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報である。
【0042】
記憶部230は、UWB通信部210から出力された測位信号に含まれる各種情報と、測位信号の送受信結果の情報である測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを互いに関連付けて記憶する。
【0043】
NW通信部240は、有線又は無線の通信回線を介して管理装置40と通信する。NW通信部240は、記憶部230に記憶されている対象装置30の測位に関する測位関連情報を管理装置40に送信する。管理装置40に送信される測位関連情報の送信フォーマットは、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)を含む。
【0044】
図2において、対象装置30は、測位信号の送信部としても機能するUWB送信部310と、記憶部330とを備える。
【0045】
UWB送信部310は、例えばUWB無線通信モジュールで構成され、前述の測位管理識別情報(Purpose ID)を含む送信フォーマットを有する測位信号を、アンテナ311を介して送信(発信)する。測位信号は、例えば、パルス状の信号であり、所定の時間間隔で周期的に発信される。
【0046】
記憶部330は、UWB送信部310から送信する測位信号に含める情報を記憶する。また、記憶部330は、基準装置20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶してもよい。
【0047】
図2において、管理装置40は、NW通信部410と測位計算部420と記憶部(DB)430とを備える。NW通信部410は、対象装置30の測位時における測位信号の送受信結果の情報の受信部としても機能する。
【0048】
測位計算部420は、対象装置30の測位時における対象装置30の位置座標の計算部として機能する。
【0049】
NW通信部410は、有線又は無線の通信回線を介して複数の基準装置20と通信する。NW通信部410は、対象装置30の測位時に、対象装置30の測位に関する測位関連情報を各基準装置20から受信する。基準装置20からの測位関連情報は、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)を含む。
【0050】
測位計算部420は、各基準装置20から受信した測位関連情報に基づいて、例えば、対象装置30毎に、対象装置30の現在位置を計算して測位する。測位計算部420は、各基準装置20から受信した測位関連情報に基づいて、測位管理識別情報(Purpose ID)毎に、且つ、対象装置30毎に、対象装置30の現在位置を計算して測位してもよい。
【0051】
本実施形態のTDoA方式の測位システムにおいて、対象装置30の現在位置は、例えば次のアルゴリズムにより計算することができる。ここで、前述の図1の測位可能空間10Aにおいて、対象装置30Aから送信された測位信号が4箇所の基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)に到達した受信時刻(Timestamp)をT1、T2、T3、T4とし、測位信号の伝搬速度をv[m/s]とし、対象装置30と基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)のそれぞれとの距離をD1、D2、D3、D4とし、基準装置間の測位信号の受信時間差をΔT12=T1-T2、ΔT13=T1-T3、ΔT14=T1-T4、ΔT23=T2-T3、ΔT24=T2-T4、ΔT34=T3-T4とすると、次の(1)~(6)の関係式が成立する。
【数1】
【0052】
上記関係式(1)~(6)を用いて未知の変数である距離D1、D2、D3、D4を求めることができる。この求めた距離D1、D2、D3、D4それぞれを半径とし、基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)の既知の位置座標を原点とした4つの球面の交点を求める任意のアルゴリズムにより、3次元の測位可能空間10Aにおける対象装置30の現在位置を数センチメール(例えば3~10cm)の精度で計算することができる。
【0053】
測位計算部420から出力される対象装置30の現在位置の測位結果は、例えば、管理装置40において、又は各種サーバや基準装置などにおいて、測位管理識別情報(Purpose ID)の各種サービスに利用することできる。
【0054】
記憶部(DB)430は、測位計算部420での計算に用いる測位関連情報、測位計算部420で測位管理識別情報(Purpose ID)毎に且つ対象装置30毎に計算された測位結果を記憶する。また、記憶部(DB)430は、複数の基準装置20のそれぞれに予め設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0055】
図3は、図1の測位システムの基準装置(アンカー)20の設置時における基準装置(アンカー)20、設置補助装置(アンカー設置台)50の補助通信装置(補助アンカー)500及び管理装置40の主要な構成の一例を示すブロック図である。なお、図3において基準装置20は設置対象の基準装置である。また、図3において、前述の図2と共通する構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図3において、補助通信装置500のUWB通信部510は、基準装置20の設置時における測位信号の送受信部としても機能する。また、補助通信装置500のUWB通信部510は、基準装置20の設置時に、アンテナ511を介して、基準装置20にUWBの電波で測位信号を送信する。更に、UWB通信部510は、アンテナ511を介して、設置対象の基準装置20から返信された測位信号を受信する。また、補助通信装置500のUWB通信部510は、設置対象の基準装置20へ測位信号を送信した送信時刻情報(Timestamp)と、当該基準装置20から返信された測位信号を受信した受信時刻情報(Timestamp)とを出力する。
【0057】
補助通信装置500から送信される測位信号の送信フォーマットは、例えば、フレーム制御情報(Frame Control)、送信連続番号(Sequence Number)、近距離無線通信のPAN(パーソナルエリアネットワーク)のグループ識別情報(PAN ID)、PANにおける通信先(基準装置20)のアドレス(Destination Address)(1~n)、PANにおける通信元(補助通信装置500)のアドレス(Source Address)(1~n)、メッセージ識別情報(Message ID)を含む。
【0058】
補助通信装置500の記憶部530は、UWB通信部510から出力された測位信号に含まれる各種情報と、測位信号の送受信結果の情報である測位信号の送信時刻情報(Timestamp)及び受信時刻情報(Timestamp)とを互いに関連付けて記憶する。
【0059】
補助通信装置500のNW通信部540は、記憶部530に記憶されている設置対象の基準装置20の測位に関する測位関連情報を、管理装置40に送信する。管理装置40に送信される測位関連情報の送信フォーマットは、例えば、補助通信装置(自装置)500を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、設置対象の基準装置20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、設置対象の基準装置20への測位信号の送信時刻情報(Timestamp)及び設置対象の基準装置20からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)を含む。
【0060】
図3において、設置対象の基準装置20のUWB通信部210は、基準装置(自装置)20の設置時における測位信号の送受信部としても機能する。また、基準装置20のUWB通信部210は、基準装置(自装置)20の設置時に、アンテナ211を介して補助通信装置500からUWBの電波で測位信号を受信した、当該測位信号をUWBの電波で補助通信装置500に返信する。
【0061】
図3において、管理装置40のNW通信部410は、基準装置20の設置時における測位信号の送受信結果の情報の受信部としても機能する。
【0062】
管理装置40の測位計算部420は、基準装置20の設置時における測位に用いられる座標系(例えば、直交座標系)における基準装置20の座標を決定する座標決定部としても機能する。座標決定部としての測位計算部420は、設置補助装置50が設置された測位対象空間10における複数の基準装置20のそれぞれについて、基準装置20と複数の補助通信装置500との間の無線媒体による測位信号の送受信により、基準装置20と複数の補助通信装置500との間の距離を測定し、その距離の測定結果に基づいて、前記座標系における基準装置20の座標を決定する。
【0063】
図4は、設置補助装置50の補助通信装置500と基準装置20との間の距離の測定に用いることができるToF方式の測距技術の一例を示す説明図である。図4は、見通し内環境(LOS環境)にある補助通信装置500と基準装置20との間の距離D[m]を測定する場合の例である。図4において、イニシエータとしての補助通信装置500がUWBの電波による測位信号を送信(発信)してからレスポンダーとしての基準装置20から当該測位信号に対する応答信号を受信までの時間をTloop[s]とし、基準装置20が上記測位信号を受信してから上記応答信号を送信(発信)するまでの時間をTreply[s]とすると、補助通信装置500と基準装置20との間の距離を一方向に伝搬する伝搬時間ToF[s]は、次式(7)で表される。
【数2】
【0064】
上記伝搬時間ToF[s]に光の速度c[m/s]を掛け合わせると、補助通信装置500と基準装置20との間の距離D[m]が求まる。
【0065】
管理装置40のNW通信部410は、基準装置20の設置時に、設置対象の基準装置20の測位に関する測位関連情報を補助通信装置500から受信する。補助通信装置500からの測位関連情報は、例えば、補助通信装置500の基準装置識別情報(Anchor ID)、設置対象の基準装置20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、補助通信装置500から基準装置20へ送信した測位信号の送信時刻情報(Timestamp)及び基準装置20からの測位信号を補助通信装置500が受信した受信時刻情報(Timestamp)を含む。
【0066】
図5は、基準装置20の設置作業を補助する設置補助装置50の一例を示す斜視図である。図5において、設置補助装置(アンカー設置台)50は、所定の座標系における複数の基準装置20の位置座標の基準となる基準点P0が設定され、その基準点P0との相対的な位置関係が既知の4箇所以上の複数の補助点(図示の例では4カ所の補助点)が設定されている。設置補助装置50の複数の補助点に、複数の基準装置20との間で無線媒体(例えば、UWBの電波)による測位信号を送受信可能な複数の補助通信装置500(1)~500(4)が設けられている。
【0067】
設置補助装置50の本体51は、直方体状のフレーム構造体であり、基準点P0及び複数の補助点はそれぞれ、フレーム構造体からなる本体51の角部に位置している。設置補助装置50のフレーム構造体は、運搬・収容時の折り畳み状態と使用時の展開状態とを取り得る折り畳み可能な構造体であってもよい。また、当該フレーム構造体は、運搬・収容時の分解状態と使用時の組み立て構造の状態とを取り得る分解・組み立て可能な構造体であってもよい。また、当該フレーム構造体は、運搬・収容時に上記展開状態又は上記組み立て構造の状態であってもよい。
【0068】
設置補助装置50の本体51は、直方体等の底面が多角形となった柱状の立体図形構造を総称する4つ以上の補助通信装置又は対象装置(測位対象の装置)を設置可能なフレーム構造体であってもよい。また、かかる立体図形の他にも、T字型、Y字型、H字型、O字型といった形状、例えばジャングルジムのような直方体の組み合わせ、言い換えると、1点を中心に3方向に延びる線状の図形を基本構成(T字やY字)として、この基本構成を任意の数組み合わせた図形を含むものであってもよい。
【0069】
図5の例では、基準点P0と複数の補助点が別々の点に設定されているが、基準点P0と複数の補助点のいずれか1つの補助点とが同一点であってもよい。また、図5の例では、前記座標系は直交座標系であり、その直交座標系の原点は上記基準点P0に設定されているが、座標系は直交座標系以外の座標系でもよいし、また、座標系の原点は上記基準点P0以外の測位対象空間10内の任意の点に設定してもよい。例えば、座標系の原点は、複数の基準装置20のいずれか1つの基準装置の設置位置であってもよい。また、座標系の原点は、複数の基準装置20が設置される測位対象空間10の水平状の底面(例えば室内の床面)と、複数の基準装置20のいずれか1つの基準装置の設置位置を通る垂直座標軸との交点であってもよい。
【0070】
図6は、本実施形態の測位システムにおける複数の基準装置20の設置時の基準装置20と設置補助装置50の補助通信装置500との間の無線通信の一例を示す説明図である。図7は、本実施形態の測位システムにおける複数の基準装置の設置時の基準装置の位置座標の決定の手順(S100)の一例を示すフローチャートである。なお、図6及び図7は、複数の基準装置20の数がnであり、設置補助装置50の複数の補助通信装置500の数が4である場合の例を示している。また、図6及び図7の説明において、基準装置20を「アンカー」、設置補助装置50を「アンカー設置台」、補助通信装置500を「補助アンカー」という。
【0071】
図7において、まず、作業者は、測位対象空間10において基準点P0をどこに設定するかを決定し、その基準点P0の目標点にアンカー設置台50の基準点P0が位置するように、展開状態又は組み立て構造の状態にあるアンカー設置台50を設置する(S101)。
【0072】
管理装置40は、対象装置30の測位に用いられる直交座標系(X,Y,Z)の原点(0,0,0)を、基準点P0に設定する。すなわち、座標系の原点(0,0,0)はアンカー設置台50の基準点P0であり、その原点を通る仮想鉛直線が上方向プラスのZ軸(垂直座標軸)である。また、基準点P0から補助アンカー500(3)に向かう方向が座標系のX軸のプラス方向であり、基準点P0から補助アンカー500(4)に向かう方向が座標系のY軸のプラス方向である。
【0073】
次に、作業者が1台目のアンカー20(1)を設置すると、そのアンカー20(1)の位置座標が、次のようにToF測距によって決定される(S102)。このToF測距では、複数の補助アンカー500(1)~500(4)とアンカー20(1)との間で前述のToF方式による測距が行われ、その測距の結果である補助アンカー500(1)~500(4)それぞれとアンカー20(1)との間の距離の測定結果の情報が、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから管理装置40に送信される。管理装置40は、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから受信した測定結果の情報に基づいて、上記座標系におけるアンカー20(1)の設置位置の位置座標を決定する。
【0074】
次に、作業者が2台目のアンカー20(2)を設置すると、そのアンカー20(2)の位置座標が、1台目のアンカー20(1)と同様に、次のようにToF測距によって決定される(S103)。すなわち、複数の補助アンカー500(1)~500(4)とアンカー20(2)との間で前述のToF方式による測距が行われ、その測距の結果である補助アンカー500(1)~500(4)それぞれとアンカー20(2)との間の距離の測定結果の情報が、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから管理装置40に送信される。管理装置40は、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから受信した測定結果の情報に基づいて、上記座標系におけるアンカー20(2)の設置位置の位置座標を決定する。
【0075】
作業者が設置した3台目以降のアンカー20(3)~20(n)の位置座標についても、1台目のアンカー20(1)及び2台目のアンカー20(2)と同様に、ToF測距によって決定される(S104)。
【0076】
管理装置40は、上記手順で決定した各アンカーの位置座標を前述の記憶部(DB)430に記憶して登録する。
【0077】
なお、図7の例では、1台目のアンカー20(1)からn台目のアンカー20(n)まで、アンカーの設置及びToF測距によるアンカーの位置座標の決定を1台ずつ順に行っているが、各アンカー20(1)~20(n)の設置及びToF測距による各アンカー20(1)~20(n)の位置座標の決定を順不同に並行して行ってもよい。
【0078】
また、図7の例では、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれとアンカー20との間のToA方式による距離の測定結果の情報を補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから管理装置40に送信しているが、ToA方式の測距に用いられるタイムスタンプのデータを補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから管理装置40に送信してもよい。この場合、管理装置40は、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから受信したタイムスタンプのデータを用いて補助アンカー500(1)~500(4)とアンカー20との間の距離を計算する測距処理を実行し、上記座標系におけるアンカー20の設置位置の位置座標を決定する。
【0079】
また、図7の例において、2台目以降のn台目のアンカー20(n)(n≧2)については、補助アンカー500(1)~500(4)と座標決定済みのn-1台目までのアンカーを用いて設置位置の位置座標を決定してもよい。例えば、4台目のアンカー20(4)の設置位置の位置座標は、補助アンカー500(1)~500(4)と座標決定済みの3台目までの複数のアンカー20(1)~20(3)を用いて決定してもよい。
【0080】
また、図7の例では、設置対象の複数のアンカー20(1)~20(n)の位置座標をToF方式の測距によって決定しているが、設置対象の複数のアンカー20(1)~20(n)の位置座標の一部又は全部をTDoA方式の測距によって決定してもよい。この場合、補助アンカー500(1)~500(4)と設置対象のアンカー20(1)~20(n)は、互いの時刻同期又は時刻差が管理されている。
【0081】
TDoA方式による測距では、測位信号の送信機が設置対象のアンカー20(1)~20(n)のそれぞれであり、測位信号の受信機が補助アンカー500(1)~500(4)である。アンカー20(1)~20(n)はそれぞれ、前述の対象装置30の測位時の場合と同様に所定の送信フォーマットからなる測位信号を、UWBの電波で送信(発信)する。補助アンカー500(1)~500(4)はそれぞれ、アンカー20からUWBの電波で送信(発信)された測位信号を受信し、受信した測位信号に含まれる情報と測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを含む所定の送信フォーマットの測位関連情報を管理装置40に送信する。管理装置40は、補助アンカー500(1)~500(4)から受信した測位関連情報に基づいて、アンカー20の位置座標を算出して決定する。
【0082】
また、TDoA方式による測距を用いる場合も、各アンカー20(1)~20(n)の設置及びToF測距による各アンカー20(1)~20(n)の位置座標の決定を順不同に並行して行ってもよい。
【0083】
また、TDoA方式による測距を用いる場合も、TDoA方式の測距に用いられるタイムスタンプのデータを補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから管理装置40に送信し、管理装置40が、補助アンカー500(1)~500(4)それぞれから受信したタイムスタンプのデータを用いて補助アンカー500(1)~500(4)とアンカー20との間の距離を計算する測距処理を実行し、上記座標系におけるアンカー20の設置位置の位置座標を決定してもよい。
【0084】
また、TDoA方式による測距を用いる場合も、2台目以降のn台目のアンカー20(n)(n≧2)について、補助アンカー500(1)~500(4)と座標決定済みのn-1台目までのアンカーを用いて設置位置の位置座標を決定してもよい。
【0085】
以上、本実施形態によれば、測位対象空間10に複数の基準装置20を設置する際に、その測位対象空間10に設置補助装置(アンカー設置台)50を設置することにより各基準装置20の位置座標が管理装置40に自動登録される。従って、複数の基準装置20の設置の際に各基準装置20の設置位置の位置関係(例えば基準装置間の距離)を実測して登録する場合に比して、複数の基準装置20の設置の工数の簡易化が可能になる。
【0086】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに測位システムの構成要素(例えば、基準装置、対象装置、管理装置、補助通信装置)は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0087】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、通信モジュール、Node B、Node G、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0088】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0089】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0090】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0091】
10 :測位可能空間(測位対象空間)
20 :基準装置
30 :対象装置(測位対象の装置)
40 :管理装置
45 :通信ネットワーク
50 :設置補助装置(アンカー設置台)
51 :本体フレーム
210 :UWB通信部
211 :アンテナ
230 :記憶部
240 :NW通信部
310 :UWB通信部
311 :アンテナ
330 :記憶部
410 :NW通信部
420 :測位計算部
430 :記憶部
500 :補助基準装置(補助アンカー)
510 :UWB通信部
511 :アンテナ
530 :記憶部
540 :NW通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7