(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081813
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】精密メタルマスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20230606BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230606BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230606BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230606BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230606BHJP
【FI】
C23C14/04 A
G03F7/20 501
G09F9/00 338
H05B33/10
H05B33/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056018
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】110144888
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517313512
【氏名又は名称】達運精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DARWIN PRECISIONS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.20-1, Guangfu N. Rd., Hukou Township, Hsinchu County, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フアン,クアン-チー
(72)【発明者】
【氏名】リン,チー-ウェイ
【テーマコード(参考)】
2H197
3K107
4K029
5G435
【Fターム(参考)】
2H197AB05
2H197AB13
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA04
2H197HA08
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC35
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029HA03
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】精密メタルマスク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】板体を備える精密メタルマスクであって、板体は、対向する、第1の開口を囲んで定義する第1の内縁を有する第1の表面と、第1の開口に連通される第2の開口を囲んで定義する第2の内縁を有する第2の表面と、を含み、第1の開口に位置して第1の表面に接続される第1の円弧面と、第2の開口に位置して第2の表面に接続される第2の円弧面と、を含む。第3の内縁は、第1の円弧面及び第2の円弧面が接続され、第1の開口及び第2の開口よりも小さい第3の開口を囲んで定義する。第3の内縁は、第1の直線辺と、第2の直線辺と、円弧辺と、を含み、第1の直線辺と第2の直線辺とは、共に夾角を形成し、円弧辺は、第1の直線辺と第2の直線辺との間に接続され、15μm以下の半径を有する精密メタルマスク。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体を備える精密メタルマスクであって、
前記板体は、
対向する、第1の開口を囲んで定義する少なくとも1つの第1の内縁を有する第1の表面と、前記第1の開口に対応して連通する第2の開口を囲んで定義する少なくとも1つの第2の内縁を有する第2の表面と、を含み、
更に、前記第1の開口内に位置して前記第1の表面に接続される少なくとも1つの第1の円弧面と、前記第2の開口内に位置して前記第2の表面に接続される少なくとも1つの第2の円弧面と、を含み、
また、前記第1の円弧面及び前記第2の円弧面が接続され、前記第1の開口及び前記第2の開口よりも小さい第3の開口を囲んで定義する、第1の直線辺と、第2の直線辺と、前記第1の直線辺と前記第2の直線辺との間に接続され、15μm以下の半径を有する円弧辺と、を含む少なくとも1つの第3の内縁を有し、
前記第1の直線辺と前記第2の直線辺とは、共に夾角を形成する精密メタルマスク。
【請求項2】
前記第2の開口は前記第1の開口よりも大きく、前記第3の内縁と前記第1の内縁は、前記第1の表面に垂直な方向に3μm以下の高さを有し、前記第3の内縁と前記第1の内縁は、前記第1の表面に平行な方向に2μm以下の幅を有する請求項1に記載の精密メタルマスク。
【請求項3】
前記第3の内縁は、前記第2の表面よりも前記第1の表面に近い請求項1に記載の精密メタルマスク。
【請求項4】
前記第1の表面と前記第2の表面との間に、20μm~50μmの範囲にある厚みが定義される請求項1に記載の精密メタルマスク。
【請求項5】
前記第3の内縁は、矩形である請求項1に記載の精密メタルマスク。
【請求項6】
前記第3の内縁は、多角形である請求項1に記載の精密メタルマスク。
【請求項7】
対向する第1の表面と、第2の表面と、を含む板材を提供するステップと、
前記第1の表面に第1のレジストフィルムを設けるステップと、
前記第1のレジストフィルムに、前記板材上の第1のエッチング範囲を囲んで対応し、第1の直線辺と、第2の直線辺と、前記第1の直線辺と前記第2の直線辺との間に接続され、8μm以下の長さを有する第3の直線辺と、を含む第1のエッジを有し、前記第1の直線辺と前記第2の直線辺とは、共に第1の夾角を形成する、少なくとも1つの第1のパターンを有する第1の露光マスクを設けるステップと、
前記第2の表面に第2のレジストフィルムを設けるステップと、
前記第2のレジストフィルムに、前記第1のパターンよりも大きく、前記第1のエッチング範囲に対応する前記板材上の第2のエッチング範囲を囲んで対応し、第4の直線辺と、第5の直線辺と、前記第4の直線辺と前記第5の直線辺との間に接続されるとともに、前記第3の直線辺と互いに平行であり、前記第1の表面に平行な方向において、5μm以上30μm以下の距離だけ前記第3の直線辺から離間している第6の直線辺と、を含む第2のエッジを有し、前記第4の直線辺と前記第5の直線辺は、共に第2の夾角を形成する、少なくとも1つの第2のパターンを有する第2の露光マスクを設けるステップと、
を含む精密メタルマスクの製造方法。
【請求項8】
前記第1の直線辺と前記第4の直線辺とは互いに平行であり、前記第2の直線辺と前記第5の直線辺とは互いに平行である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の夾角は、前記第2の夾角と同じである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の露光マスクを介して前記第1のレジストフィルムを露光させることで前記第1のレジストフィルムを現像し、前記第1のレジストフィルムに前記第1のパターンを形成することで前記第1のエッチング範囲を露出させるステップと、
前記第2の露光マスクを介して前記第2のレジストフィルムを露光させることで前記第2のレジストフィルムを現像し、前記第2のレジストフィルムに前記第2のパターンを形成することで前記第2のエッチング範囲を露出させるステップと、
を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の表面をエッチングすることで前記第1のエッチング範囲に第1の開口を形成するステップと、
前記第2の表面をエッチングすることで前記第2のエッチング範囲に前記第1の開口と互いに連通される第2の開口を形成するステップと、
を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の表面と前記第2の表面との間に、20μm~50μmの範囲にある厚みが定義される請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密メタルマスク及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日まで、人々の生活レベルの高まりに伴い、電子製品の適用が生活に欠かせない部分となり、その中で、表示画面を有する電子製品がますます普及している。これに対して、科学技術の急速な進歩により、電子製品に対する人々の要求や期待も高まりつつある。
【0003】
従って、如何に生産コストを維持しつつ、表示装置の表示品質を効率的に向上させるかは、間違いなく業界において非常に着目される重要な課題の1つである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的の1つは、ディスプレイ基板上に蒸着によって形成される画素がより明確で鮮明な形状を有することを可能にし、それにより、ディスプレイの表示品質を効果的に向上させることができる精密メタルマスクを提供することにある。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、板体を備える精密メタルマスクであって、前記板体は、対向する、第1の開口を囲んで定義する少なくとも1つの第1の内縁を有する第1の表面と、第1の開口に対応して連通する第2の開口を囲んで定義する少なくとも1つの第2の内縁を有する第2の表面と、を含み、更に、第1の開口内に位置して第1の表面に接続される少なくとも1つの第1の円弧面と、第2の開口内に位置して第2の表面に接続される少なくとも1つの第2の円弧面と、を含み、また、第1の円弧面及び第2の円弧面が接続され、第1の開口及び第2の開口よりも小さい第3の開口を囲んで定義する、第1の直線辺と、第2の直線辺と、第1の直線辺と第2の直線辺との間に接続され、15μm以下の半径を有する円弧辺と、を含み、少なくとも1つの第3の内縁を有し、第1の直線辺と第2の直線辺とは、共に夾角を形成する精密メタルマスクである。
【0006】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第2の開口は第1の開口よりも大きい。第3の内縁と第1の内縁は、第1の表面に垂直な方向に3μm以下の高さを有する。第3の内縁と第1の内縁は、第1の表面に平行な方向に2μm以下の幅を有する。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第3の内縁は、第2の表面よりも第1の表面に近い。
【0008】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第1の表面と第2の表面との間に、20μm~50μmの範囲にある厚みが定義される。
【0009】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第3の内縁は、矩形である。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第3の内縁は、多角形である。
【0011】
本発明の目的の1つは、コーナーにおける半径が15μm以下である開口を有する精密メタルマスクを容易に製造することができ、精密メタルマスクは、蒸着によりディスプレイ基板上に形状がより明確で鮮明な画素を形成することを可能にするのに有利であり、ディスプレイの表示品質を効果的に向上させることができる精密メタルマスクの製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、対向する第1の表面と、第2の表面と、を含む板材を提供するステップと、第1の表面に第1のレジストフィルムを設けるステップと、第1のレジストフィルムに、板材上の第1のエッチング範囲を囲んで対応し、第1の直線辺と、第2の直線辺と、第1の直線辺と第2の直線辺との間に接続され、8μm以下の長さを有する第3の直線辺と、を含む第1のエッジを有し、第1の直線辺と第2の直線辺とは、共に第1の夾角を形成する、少なくとも1つの第1のパターンを有する第1の露光マスクを設けるステップと、第2の表面に第2のレジストフィルムを設けるステップと、第2のレジストフィルムに、第1のパターンよりも大きく、第1のエッチング範囲に対応する板材上の第2のエッチング範囲を囲んで対応し、第4の直線辺と、第5の直線辺と、第4の直線辺と第5の直線辺との間に接続されるとともに、第3の直線辺と互いに平行であり、第1の表面に平行な方向において、5μm以上30μm以下の距離だけ第3の直線辺から離間している第6の直線辺と、を含む第2のエッジを有し、第4の直線辺と第5の直線辺は、共に第2の夾角を形成する、少なくとも1つの第2のパターンを有する第2の露光マスクを設けるステップと、を含む精密メタルマスクの製造方法である。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第1の直線辺と第4の直線辺とは互いに平行であり、第2の直線辺と第5の直線辺とは互いに平行である。
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第1の夾角は、第2の夾角と同じである。
【0015】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記方法は、第1の露光マスクを介して第1のレジストフィルムを露光させることで第1のレジストフィルムを現像し、第1のレジストフィルムに第1のパターンを形成することで第1のエッチング範囲を露出させるステップと、第2の露光マスクを介して第2のレジストフィルムを露光させることで第2のレジストフィルムを現像し、第2のレジストフィルムに第2のパターンを形成することで第2のエッチング範囲を露出させるステップと、を更に含む。
【0016】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記方法は、第1の表面をエッチングすることで第1のエッチング範囲に第1の開口を形成するステップと、第2の表面をエッチングすることで第2のエッチング範囲に第1の開口と互いに連通される第2の開口を形成するステップと、を更に含む。
【0017】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、前記第1の表面と第2の表面との間に、20μm~50μmの範囲にある厚みが定義される。
【0018】
本発明の上記の実施形態は、少なくとも以下の利点を有する。
【0019】
(1)板材上の第1のパターンの第3の直線辺の長さを8μm以下に制御し、かつ、第2のパターンの第6の直線辺と第3の直線辺との第1の表面に平行な方向における離間距離を5μm以上30μm以下に制御することにより、ユーザは、板材に対するエッチングによる製造プロセスの後に、第3の開口のコーナーに対応する円弧辺の半径が15μm以下である精密メタルマスクの板体を簡単で容易に形成することができる。
【0020】
(2)第3の開口のコーナーに対応する円弧辺の半径は15μm以下であるため、精密メタルマスクを蒸着の製造プロセスに用いて、例えば有機発光ダイオードのディスプレイの基板上に画像を表示するための画素を形成する場合、各画素のコーナーにおける形状をより明確で鮮明にし、有機発光ダイオードのディスプレイの表示品質を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による精密メタルマスクを示す平面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による精密メタルマスクを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による精密メタルマスクの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【
図7】本発明の他の実施形態による精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【
図8】第1の表面をエッチングしようとする
図4の精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【
図9】第1の表面に対するエッチングが完了した
図4の精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【
図10】第1の開口がレジスト材料で充填されており、第2の表面をエッチングしようとする
図4の精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【
図11】第2の表面に対するエッチングが完了した
図4の精密メタルマスクの製造方法を示す工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面で本発明の複数の実施形態を説明し、明らかに説明するために、数多くの実際の細部を以下の説明で併せて説明する。しかしながら、これらの実際の細部は本発明を制限するためのものではないことが理解すべきである。換言すれば、本発明の一部の実施形態において、これらの実際の細部は必要なものではない。そのほか、図面を簡略化するために、ある従来慣用の構造と素子を図面に簡単で模式的に示し、すべての図面には、同一の符号は同一又は類似の素子を表す。かつ、実施上で可能であるなら、異なる実施例の特徴を交互に適用することができる。
【0023】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、当業者に理解されることができる通常の意味を有する。更に言えば、通常使用される辞典における上記用語の定義は、本明細書の内容における本発明の関連分野と一致する意味として解読されるべきである。特に明記しない限り、これらの用語は、理想的又は過度に正式的な意味として解釈されない。
【0024】
図1~
図2を参照されたい。
図1は、本発明の一実施形態による精密メタルマスク100を示す平面図である。
図2は、
図1の線分A-Aに沿った断面図である。本実施形態において、
図1~
図2に示すように、精密メタルマスク100は板体110を含む。実際の応用には、板体110の材質は、鉄-ニッケル合金であってもよい。板体110は、対向する第1の表面111と第2の表面112とを含む。板体110の第1の表面111は、第1の開口OP1を囲んで定義する第1の内縁113を有する。板体110の第2の表面112は、第1の開口OP1に対応して連通する第2の開口OP2を囲んで定義する第2の内縁114を有する。板体110は、第1の開口OP1内に位置し、第1の表面111を接続する第1の円弧面115と、第2の開口OP2内に位置し、第2の表面112を接続する第2の円弧面116とを更に含む。さらに、板体110は、第1の円弧面115及び第2の円弧面116が接続される第3の内縁117を有し、第3の内縁117は、第1の開口OP1及び第2の開口OP2よりも小さい第3の開口OP3を囲んで定義する。さらに言えば、第3の内縁117は、直線辺117aと直線辺117bと円弧辺117cとを含み、直線辺117aと直線辺117bとは、共に夾角θを形成し、円弧辺117cは、直線辺117aと直線辺117bとの間に接続されるので、円弧辺117cは第3の開口OP3のコーナーに対応する。注意すべきなのは、本実施形態において、円弧辺117cは、15μm以下の半径Rを有する。
【0025】
第3の開口OP3のコーナーに対応する円弧辺117cの半径Rは15μm以下であるので、精密メタルマスク100を蒸着の製造プロセスに用いて、例えば有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode:OLED)ディスプレイの基板300に画像を表示するための画素を形成する場合、各画素のコーナーにおける形状をより明確で鮮明にして、有機発光ダイオードのディスプレイの表示品質を効果的に向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態において、
図2に示すように、第2の開口OP2は、第1の開口OP1よりも大きい。第3の内縁117と第1の内縁113は、第1の表面111に垂直な方向に3μm以下の高さHを有する。第3の内縁117及び第1の内縁113は、第1の表面111に平行な方向に2μm以下の幅Wを有する。蒸着の製造プロセスを行う場合、板体110はOLEDディスプレイの基板300の下方に位置し、板体110の第1の表面111はOLEDディスプレイの基板300に当接するように配置される。
【0027】
さらに言えば、
図2に示すように、板体110の第1の表面111と第2の表面112との間に厚みTKが定義され、厚みTKの範囲が20μm~50μmである。以上のように、高さHが3μm以下であるため、第3の内縁117は、第2の表面112よりも第1の表面111に近い。
【0028】
本実施形態において、
図1に示すように、第3の内縁117はR角を有する矩形であり、すなわち、円弧辺117cはこのR角を定義し、直線辺117aと直線辺117bとが共に形成する夾角θは90度であるが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
図3を参照されたい。
図3は、本発明の他の実施形態による精密メタルマスク100を示す平面図である。本実施形態において、第3の内縁117は多角形であり、すなわち、直線辺117aと直線辺117bとが共に形成する夾角θは90度に等しくない。例えば、
図3に示すように、第3の内縁117はR角を有する六角形であり、円弧辺117cはこのR角を定義するが、本発明はこれに限定されない。他の実施形態において、第3の内縁117は、実際の状況に応じて、八角形及び任意の閉じた幾何学的形状であってもよい。
【0030】
図4を参照されたい。
図4は、本発明の一実施形態による精密メタルマスクの製造方法500を示すフローチャートである。本実施形態において、
図4に示すように、製造方法500は、以下のステップを含む(いくつかの実施形態に言及されるステップは、特にその順序が記載されている場合以外、実際の必要に応じてその前後の順序を調整することができ、ひいては同時に又は部分的に同時に実行することができることを理解すべきである)。
【0031】
(1)板材110’を提供する(ステップ501)。
図5を参照されたい。
図5は、
図4の精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態において、
図5に示すように、板材110’は、対向する第1の表面111と第2の表面112とを含む。第1の表面111と第2の表面112との間には厚みTKが定義され、厚みTKの範囲が20μm~50μmである。実際の応用には、板材110’の材質は鉄-ニッケル合金であってもよい。
【0032】
(2)板材110’の第1の表面111に第1のレジストフィルム120を設ける(ステップ502)。
図5に示すように、第1のレジストフィルム120は、板材110’の第1の表面111に既に設けられている。
【0033】
(3)第1のレジストフィルム120に第1の露光マスク130を設ける(ステップ503)。
図5に示すように、第1の露光マスク130は、板材110’と第1の露光マスク130との間に位置する第1のレジストフィルム120に既に設けられている。さらに、
図6を参照されたい。
図6は、
図5の矢印Bに沿った平面図である。
図6に示すように、第1の露光マスク130は、第1のパターンP1を有する。例えば、本実施形態において、第1のレジストフィルム120は、ポジ型レジストであり、すなわち、第1のレジストフィルム120の露光部分は現像液に可溶であり、未露光部分は現像液に不溶である。したがって、第1のパターンP1は、第1の露光マスク130に実質的にくり抜かれている。現像が終了した後、第1のレジストフィルム120の現像液に不溶な未露光部分が板材110’上に残り、第1の露光マスク130の第1のパターンP1が板材110’上に転写されて、後述する第1のエッチング範囲Z1が定義される。
【0034】
図7を参照されたい。
図7は、本発明の他の実施形態による精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態においては、
図7に示すように、第1のレジストフィルム120として、実際の状況に応じてネガ型レジストを選択してもよく、すなわち、第1のレジストフィルム120の露光部分が現像液に不溶であり、未露光部分が現像液に可溶である。したがって、第1のパターンP1は、第1の露光マスク130の外形によって定義される。現像が終了した後、第1のレジストフィルム120の現像液に不溶な露光部分が板材110’上に残り、第1の露光マスク130の第1のパターンP1が板材110’上に転写されて、後述する第1のエッチング範囲Z1が定義される。
【0035】
図6に戻って、より具体的には、第1のパターンP1は、板材110’上の第1のエッチング範囲Z1(第1のエッチング範囲Z1は
図5又は
図7を参照)を囲んで対応し、第1の直線辺131aと第2の直線辺131bと第3の直線辺131cとを含む第1のエッジ131を有し、第1の直線辺131aと第2の直線辺131bとは共に第1の夾角αを形成し、第3の直線辺131cは第1の直線辺131aと第2の直線辺131bとの間に接続されるため、第3の直線辺131cは第1のパターンP1のコーナーに対応する。本実施形態において、第3の直線辺131cは8μm以下の長さLを有する。
【0036】
(4)板材110’の第2の表面112に第2のレジストフィルム140を設ける(ステップ504)。
図5に示すように、第2のレジストフィルム140は、板材110’の第2の表面112に既に設けられている。同様に、第2のレジストフィルム140は、実際の状況に応じてポジ型レジスト又はネガ型レジストを選択してもよい。読みやすくするために、後述の説明では、第2のレジストフィルム140について、ポジ型レジストを例として説明する。
【0037】
(5)第2のレジストフィルム140に第2の露光マスク150を設ける(ステップ505)。
図5に示すように、第2の露光マスク150は、板材110’と第2の露光マスク150との間に位置する第2のレジストフィルム140に既に設けられている。
図6に示すように、第2の露光マスク150は第2のパターンP2(第2の露光マスク150は
図6において板材110’などによって覆われているため、第2のパターンP2は点線で示される)を有し、第2のパターンP2は第1のパターンP1よりも大きく、板材110’上の第2のエッチング範囲Z2(第2のエッチング範囲Z2は
図5又は
図7を参照)を囲んで対応する第2のエッジ151を有し、第2のエッチング範囲Z2は第1のエッチング範囲Z1に対応し、第2のエッジ151は第4の直線辺151aと第5の直線辺151bと第6の直線辺151cとを含み、第4の直線辺151aと第5の直線辺151bとは共に第2角度βを形成し、第6の直線辺151cは第4の直線辺151aと第5の直線辺151bとの間に接続され、したがって、第6の直線辺151cは第2のパターンP2のコーナーに対応する。さらに、第6の直線辺151cと第3の直線辺131cは互いに平行であり、第6の直線辺151cと第3の直線辺131cは第1の表面111に平行な方向において距離Xだけ離間している。注意すべきなのは、本実施形態において、距離Xは、5μm以上30μm以下である。
【0038】
また、本実施形態において、
図6に示すように、第1の直線辺131aと第4の直線辺151aとは互いに平行であり、第2の直線辺131bと第5の直線辺151bとは互いに平行であり、これにより、第1の夾角αは第2の夾角βと同じになる。換言すれば、第1のパターンP1と第2のパターンP2とは、同一形状の輪郭を有する。
【0039】
さらに言えば、製造方法500は、以下のステップをさらに含む。
【0040】
(6)第1の露光マスク130を介して第1のレジストフィルム120を露光させることで第1のレジストフィルム120を現像し、第1のレジストフィルム120に第1のパターンP1を形成することで第1のエッチング範囲Z1を露出させる(ステップ506)。
図8を参照されたい。
図8は、第1の表面111をエッチングしようとする
図4の精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態において、
図8に示すように、第1の露光マスク130は既に除去されており、第1のエッチング範囲Z1が既に露出されており、かつ、板材110’の第1の表面111をエッチング準備しようとする。
【0041】
(7)第1の表面111をエッチングすることで第1のエッチング範囲Z1に第1の開口OP1を形成する(ステップ507)。
図9を参照されたい。
図9は、第1の表面111に対するエッチングが完了した
図4の精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態において、
図9に示すように、板材110’の第1の表面111は、エッチングにより第1の開口OP1が既に形成されている。
【0042】
(8)第2の露光マスク150を介して第2のレジストフィルム140を露光させることで第2のレジストフィルム140を現像し、第2のレジストフィルム140に第2のパターンP2を形成することで第2のエッチング範囲Z2を露出させる(ステップ508)。
図10を参照されたい。
図10は、第1の開口OP1がレジスト材料で充填されており、第2の表面112をエッチングしようとする
図4の精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態において、
図10に示すように、第2の露光マスク150は既に除去されており、第2のエッチング範囲Z2が既に露出されており、かつ、板材110’の第2の表面112をエッチングしようとする。第1の開口OP1は、レジスト400で既に充填されているため、第2の表面112に対するエッチングが第1の開口OP1に影響を及ぼさない。
【0043】
(9)第2の表面112をエッチングすることで第2のエッチング範囲Z2に第2の開口OP2を形成する(ステップ509)。
図11を参照されたい。
図11は、第2の表面112に対するエッチングが完了した
図4の精密メタルマスクの製造方法500を示す工程模式図である。本実施形態において、
図11に示すように、板材110’の第2の表面112は、エッチングにより第2の開口OP2が既に形成されている。
【0044】
(10)レジスト材400、第1のレジストフィルム120及び第2のレジストフィルム140を除去する(ステップ510)。レジスト材料400が除去された後、第1の開口OP1と第2の開口OP2とが互いに連通され、第1のレジストフィルム120及び第2のレジストフィルム140が除去された後、
図2に示すように、板材110’は精密メタルマスク100の板体110を形成する。
【0045】
板材110’上の第1のパターンP1の第3の直線辺131cの長さLを8μm以下に制御し、かつ、第2のパターンP2の第6の直線辺151cと第3の直線辺131cとの第1の表面111に平行な方向における離間距離Xを5μm以上30μm以下に制御することにより、ユーザは、板材110’に対するエッチングによる製造プロセスの後に、第3の開口OP3のコーナーに対応する円弧辺117cの半径が15μm以下である精密メタルマスク100の板体110を簡単で容易に形成することができる。
【0046】
以上をまとめると、本発明の上記実施形態に開示された技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0047】
(1)板体上の第1のパターンの第3の直線辺の長さを8μm以下に制御し、かつ、第2のパターンの第6の直線辺と第3の直線辺との第1の表面に平行な方向における離間距離を5μm以上30μm以下に制御することにより、ユーザは、板体に対するエッチングによる製造プロセスの後に、第3の開口のコーナーに対応する円弧辺の半径が15μm以下である精密メタルマスクの板体を簡単で容易に形成することができる。
【0048】
(2)第3の開口のコーナーに対応する円弧辺の半径は15μm以下であるため、精密メタルマスクを蒸着の製造プロセスに用いて、例えば有機発光ダイオードのディスプレイの基板上に画像を表示するための画素を形成する場合、各画素のコーナーにおける形状をより明確で鮮明にし、有機発光ダイオードのディスプレイの表示品質を効果的に向上させることができる。
【0049】
本発明を実施形態で以上のように開示するが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、様々な変更及び修正を行うことができ、したがって、本開示の保護範囲は、後に添付する特許請求の範囲で定義されたものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0050】
100 精密メタルマスク
110 板体
110’ 板材
111 第1の表面
112 第2の表面
113 第1の内縁
114 第2の内縁
115 第1の円弧面
116 第2の円弧面
117 第3の内縁
117a,117b 直線辺
117c 円弧辺
120 第1のレジストフィルム
130 第1の露光マスク
131 第1のエッジ
131a 第1の直線辺
131b 第2の直線辺
131c 第3の直線辺
140 第2のレジストフィルム
150 第2の露光マスク
151 第2のエッジ
151a 第4の直線辺
151b 第5の直線辺
151c 第6の直線辺
300 基板
400 レジスト材料
500 製造方法
501~510 ステップ
A-A 線分
B 矢印
H 高さ
L 長さ
OP1 第1の開口
OP2 第2の開口
OP3 第3の開口
P1 第1のパターン
P2 第2のパターン
R 半径
W 幅
TK 厚み
X 距離
Z1 第1のエッチング範囲
Z2 第2のエッチング範囲
α 第1の夾角
β 第2の夾角
θ 夾角