(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081854
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】離型油
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A23D9/00 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188891
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2021195303
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592007612
【氏名又は名称】横浜油脂工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591066362
【氏名又は名称】築野食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 健浩
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC03
4B026DG01
4B026DK05
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】保存安定性が良好な新たな離型油を提供する。
【解決手段】食用油脂と、米油由来レシチンと、を含有する離型油。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂と、米油由来レシチンと、を含有する離型油。
【請求項2】
前記食用油脂が、米油である請求項1記載の離型油。
【請求項3】
前記米油由来レシチンが、前記米油由来レシチンの質量基準で米由来リン脂質を7~9質量%含むものである請求項1又は2に記載の離型油。
【請求項4】
前記離型油は、前記米油由来レシチン以外の離形成分を含まない請求項1又は2に記載の離型油。
【請求項5】
前記離型油は、1か月保存後の粘度の変化率が1~10%である請求項1又は2に記載の離型油。
【請求項6】
前記離型油は、1か月保存後の導電率の変化率が1~10%である請求項1又は2に記載の離型油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型油に関する。さらに詳しくは、本発明は、米油由来レシチンを含む離型油に関する。
【背景技術】
【0002】
離型油とは、食品の製造中に食品が、天板、焼き型、抜き型等の調理器具(以下「食型」ともいう)に付着しないように使用されるものである。中でも、製造中に食型から食品の自重で食品を剥離する工程では、付着防止作用のある離型油が、製造コスト削減に大幅に貢献している。例えば、焼き菓子生地は焼成された際に、食型に焦げ付きやすく、焼き上がった焼き菓子が食型にくっついた状態になるが、離型油を刷毛やモップ、グリーサー等で食型に塗布しておくことによって、焼き上がった焼き菓子類の型離れが簡単で容易になる。そのため、焼成食品の製造において、焼成後に食型と生地との焼き付きを防止して、製品をスムーズに取り出し、きれいに仕上げるために、離型油は欠くことのできない食品製造用剤となっている(特許文献1参照)。
【0003】
離型油には、レシチンや乳化剤が配合されることが一般的である。レシチンとしては例えば菜種油由来のものが使用される。これらの菜種油や乳化剤の食品表示には、遺伝子組み換え作物「不分別」として表記されることが多い。この遺伝子組み換え作物(GMO(Genetically modified organism)、以下「GMO」ともいう)は、効率的な品種改良により、食糧問題を解決するための農業生産性の向上に、大きな期待が寄せられているものである。日本において、GMOとして販売が認められている作物としては、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤの8種類が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GMOについては、人体や環境への影響に対する懸念の声があり、例えば、食品としての安全性、環境への組換え遺伝子の拡散、生態系のかく乱、有機栽培など周囲の農業生産への影響、遺伝的多様性の喪失等が指摘されている。様々な研究機関からGMOの安全性について説明されているが、多くの消費者は、GMOを避け、遺伝子組み換え作物ではない作物(Non-Genetically modified organism、以下「Non―GMO」ともいう)を選ぶ傾向がある。離型油についても上述と同様にNon―GMOが好まれる傾向がある。
【0006】
このような背景の下、本発明者等が検討した結果、離型油に用いるレシチンとして米油由来レシチンに着目し、米油由来レシチンを含む離型油を完成した。さらに、米油由来レシチンを含む離型油について基本特性の向上を検討したところ、所定の米油由来レシチンを用いることで、保存安定性がさらに向上することを知見した。
以上より、本発明は米油由来レシチンを含む離型油を提供することを課題とする。また本発明は保存安定性が良好な離型油を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の内容に関する。
〈1〉食用油脂と、米油由来レシチンと、を含有する離型油。
〈2〉食用油脂が、米油である〈1〉記載の離型油。
〈3〉米油由来レシチンが、米油由来レシチンの質量基準で米由来リン脂質を7~9質量%含むものである〈1〉に記載の離型油。
〈4〉離型油は、米油由来レシチン以外の離形成分を含まない〈1〉~〈3〉のいずれかに記載の離型油。
〈5〉離型油は、1か月保存後の粘度の変化率が1~10%である〈1〉~〈4〉のいずれかに記載の離型油。
〈6〉離型油は、1か月保存後の導電率の変化率が1~10%である〈1〉~〈5〉のいずれかに記載の離型油。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、米油由来レシチンを含む離型油が提供される。本発明によれば、保存安定性が良好な離型油が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A、
図1B、
図1Cは、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2に係る離型油の1日目、1週間後、1月後の様子を示す写真である。
【
図2】
図2A、
図2B、
図2Cは、実施例3、実施例4、比較例3、比較例4に係る離型油の1日目、1週間後、1月後の様子を示す写真である。
【
図3】
図3A、
図3B、
図3Cは、実施例5、実施例6、比較例5、比較例6に係る離型油の1日目、1週間後、1月後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
〔離型油〕
本発明者等は、上述の課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、種々の食物油について分析を行ったところ、既存の食物油の中でも、米油はアレルゲンフリーであり、また物理特性が良好であることを知見した。さらに、米油由来レシチンを離型油の主成分として使用してみたところ、経時的に粘度や導電率の変化率が低く、外観変化が少ないことから、保存安定性に優れていることを発見した。本発明は上記発見に基づくものである。
即ち、本発明は、食用油脂と、米油由来レシチンと、を含有する離型油に関する。食用油脂としては、大豆油や菜種油等の穀物由来の油脂の他に米油を選択できる。これにより、離型油の原材料の選択の幅が広がることができる。
この離型油は保存安定性が良好な離型油である。
【0012】
離型油に用いられる食用油脂は、常温で液状の食用油脂であれば特に限定されるものではない。例えば、常温で液状の食用油脂として、大豆油、菜種油、ごま油、コーン油、綿実油、米油、サフラワー油、ひまわり油、オリーブ油等が例示される。食用油脂は、Non―GMOであることが好ましい。自然志向の消費者に受け入れられやすいからである。
なかでも大豆油、菜種油、米油が好ましく、米油がより好ましい。溶解性能や離型性能等の性能において、大豆油や菜種油も優れるが、米油のほうがより優れているからである。
前述の油脂を2種類以上混合した調合油でもよいが、米油を単独で用いることが好ましい。後述の米油由来レシチンと併せて使用することで、離型油の原料の調達や管理が容易になることが期待できるからである。
【0013】
離型油は、保存安定性が良好である。長期間保存しても、粘度や導電率の変化率が低く、外観変化が少ないので保存安定性に優れている。
離型油が調製された日の粘度及び導電性と、一週間後、一カ月後の粘度及び導電率との変化率を算出した場合、変化率が10%以下であることが離型油の保存安定性の目安である。本発明の離型油は、粘度及び導電性の変化率が1~8%であり、上述の基準変化率よりも低い変化率であり、安定性に優れているといえる。
【0014】
米油由来レシチンとしては、例えば米油由来レシチンの質量基準で米由来リン脂質を7~9質量%含む米油由来レシチンを用いることが好ましい。具体的には築野食品工業株式会社製の米油由来レシチンの試作品「TUYOF‐L」を用いることができる。
米油由来レシチンの配合量に関しては、離型油の性状に影響がない限りは特に限定されるものではないが、上述のTUYOF‐Lを例に取ると、好ましくは離型油の全質量に対して1~30質量%以下、さらに好ましくは10~20質量%である。1質量%未満であれば、配合の効果が十分でなく、30質量%を超えると、離型油の外観や性状に影響を及ぼし好ましくなく、また離形性能の向上が見込めないからである。
【0015】
上述の米油由来レシチンの試作品「TUYOF‐L」の製法の概要を説明する。
まず米ぬか粗油を水和攪拌する。次に得られた水和攪拌物を遠心分離機にて、油とガム質(リン脂質分+油分)に分離する。分離の際に排出圧を調整することでガム質中のリン脂質分を調整することができる(幸書房 菰田衛著 「レシチン‐その基礎と応用」 1991年7月25日初版 P57参照)。具体的には、排出圧の条件を、既存品[築野食品工業株式会社製、商品名「ライスレシチンオイル」(リン脂質含量約30%)]の排出圧よりも高く設定することで、リン脂質分が低い試作品のTUYOF―L(リン脂質含量約8%)が得られる。
【0016】
離型油は、食用油脂と米油由来レシチンが含まれれば離型油としての機能を発揮するので、他の成分を添加しなくてもよい。しかし、例えば、対象製品に期待される風味や対象製品の製法によっては、上記成分に加えて、離型油の性状に影響がなく、食品用に用いられるものであれば、種々の成分を配合してもよい。例えば、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤、ワックス類、加工澱粉、水、香料などが挙げられる。離型油は、遺伝子組み替え作物を含まないことが好ましい。
上述の離型油は、従来の離型油において頻用されている成分、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、食品用のワックス類(例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ホホバ油、蜜蝋、鯨蝋、木蝋)及び澱粉類(例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉等の澱粉、化工澱粉)のいずれも含まない態様においても、本発明の優れた効果を発揮することができる。
【0017】
離型油は、対象食品に影響を及ぼさない限り、いかような形態でも使用することができる。例えば刷毛による金型への塗布、噴霧器による噴霧、もしくは食品表面へ塗布することもできる。
【0018】
離型油の使用量に関しては、対象食品に影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではないが、対象となる食品の種類や食型の大きさや形状によって使用量を変えることが望ましい。使用量が少なすぎると十分な離型効果が得られないことがあり、逆に使用量が多すぎると経済性も損ねる上に、食品の外観を損ねたり、食型の汚れにつながったりするといった不具合が発生する場合がある。
【0019】
〔離型油の製造方法〕
離型油を製造するには、例えば、食用油脂、米油由来レシチン及び必要に応じてその他の成分を前述の配合割合で適宜混合し、40℃~100℃で加温して溶解、撹拌し、室温まで冷却することにより製造される。また、室温まで冷却した離型油を、噴射剤とともにエアゾール容器に加圧封入することでエアゾール製剤が製造される。
【0020】
本発明品は食品用の離型油として使用される。食品としてはパン類、ケーキ、バターケーキ、ペイストリー、クッキー、ビスケット、どら焼き、シフォンケーキ、カステラ等の菓子類、たこ焼き等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0021】
上記の通り、米油由来レシチンを含む離型油が提供される。ここで、世界情勢の急激な変化に伴い、原材料の高騰や入手困難な事態が想定されるなか、離型油の安定供給と価格維持を図れるようにするため、離型油の原材料の選択の幅を広げることが求められていた。離型油のレシチンとして、米油由来レシチンを用いることは、係る課題の解決にもつながることでもあった。
【0022】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0023】
離型油について中心に説明してきたが、離型油は、使用の簡便性及び適正量の均一塗布の容易性の面から、噴射剤とともにエアゾール容器に封入されたエアゾール製剤の形態とすることができる。
【0024】
エアゾール製剤については、対象食品に影響を及ぼさない限り、いかような形態をとることができる。例えばそのエアゾール容器の素材については、ブリキ、アルミ、プラスチック又はその複合構造をとることができる。噴射剤については、食品用途に使用できるものであれば、液化ガス剤、圧縮ガス剤のいずれでも使用することが可能である。噴射剤の配合量は、噴射性、焼型への付着効率等を考慮すると、離型油の全質量に対して10~80質量%であり、好ましくは25~65質量%である。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0025】
以下、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0026】
以下の実施例1~6、参考例1~6に示すように、米油由来レシチンを含む離型油が調製されることが示された。
【0027】
〔実施例1〕
(離型油の調製)
室温に保たれた米油(築野食品工業株式会社製、商品名「米白絞油」)90質量部に、米油由来レシチン(築野食品工業株式会社より提供を受けた、米由来リン脂質を8質量%含む試作品「TUYOF‐L」)10質量部を混合し、溶解を確認後、サンプル瓶に充填して離型油を調製した。
【0028】
〔実施例2〕
米油80質量部に米油由来レシチン20質量部を混合したことを除き、実施例1と同様にして離型油を調製した。
【0029】
〔実施例3〕
米油を菜種油に置き換えたことを除き、実施例1と同様にして離型油を調製した。
【0030】
〔実施例4〕
米油を大豆油に置き換えたことを除き、実施例1と同様にして離型油を調製した。
【0031】
〔実施例5〕
米油99質量部に米油由来レシチン1質量部を混合したことを除き、実施例1と同様にして離型油を調製した。
【0032】
〔実施例6〕
米油70質量部に米油由来レシチン30質量部を混合したことを除き、実施例1と同様にして離型油を調製した。
【0033】
〔参考例1、2〕
米油由来レシチンを既存品(築野食品工業株式会社製、商品名「ライスレシチンオイル」)に置き換えたことを除き、実施例1、2と同様にして離型油を調製した。
【0034】
〔参考例3〕
米油を菜種油に置き換えたことを除き、参考例1と同様にして離型油を調製した。
【0035】
〔参考例4〕
米油を大豆油に置き換えたことを除き、参考例1と同様にして離型油を調製した。
【0036】
〔参考例5〕
米油99質量部にライスレシチンオイル1質量部を混合したことを除き、参考例1と同様にして離型油を調製した。
【0037】
〔参考例6〕
米油70質量部にライスレシチンオイル30質量部を混合したことを除き、参考例1と同様にして離型油を調製した。
【0038】
実施例1~6及び参考例1~6の組成を表1にまとめて示す。
また実施例1~6及び参考例1~6のリン脂質含有量と後述の離形性評価結果をまとめて表2(塗布量0.2g)、表3(塗布量0.5g)に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
(経時安定性:外観変化、物性値)
実施例1~6及び参考例1~6の離型油を、恒温槽を用いて25℃に保持し続けた。そして、1日目、1週間後、1月後の離型油の外観変化の様子をそれぞれ目視観察した。目視観察の結果を
図1~
図3に示す。また実施例1~6及び参考例1~6の離型油の物性値として、1日目、1週間後、1月後の粘度(mPa・s)及び導電率(pS/m)を測定した。物性観察の結果を表4に示す。
(目視観察の基準)
透明であること。
(粘度(mPa・s)の基準)
粘度が50~100mPa・sであること。
(導電率(pS/m)の基準)
導電率の値に経時で変化がないこと。
【0043】
【0044】
【0045】
図1、
図3に示されるように、目視観察の結果、米油ベースの実施例1、2、5、6の離型油は、1日目において透明であり、1週間後、1カ月後においても、外観変化は見られなかった。一方、対応する参考例1、2、5、6の離型油は、1日目において透明感はなく、1週間後、1カ月後に、図中サークルで示す部分に外観変化が見られた。
【0046】
図2に示されるように、植物油脂ベース(菜種油、大豆油)の実施例3、4と、それに対応する参考例3、4のいずれも、図中サークルで示す部分に外観変化が見られた。しかし、実施例3、4の方が参考例3、4よりも外観変化がほとんど見られず、外観性状は改善されていた。
【0047】
表4Bに示すように、物性試験(粘度及び導電率)の結果、全ての実施例の1週間後及び1カ月後の両方における物性値のいずれもが誤差10%以内であった。一方、参考例では、1週間後及び1カ月後の両方において、物性値のいずれもが誤差10%以内となるものはなかった。
実施例4については参考例4に比べ誤差が40%程度改善されており有意性があることがいえた。
植物油脂ベース(菜種油、大豆油)の実施例3、4は、米油ベースの実施例に比べて、溶解性や離型性能が劣る結果になった。しかし、実施例3、4に対応する参考例3、4と比べると外観性状は改善されており、物性データ(粘度、導電率)の変化率が低いことから、優位性があることがいえた。
【0048】
(離型性)
[離型油の離型性の評価]
25℃で一週間保管した、実施例1~6及び参考例1~6の離型油を用いてマドレーヌの焼成試験(離型性の評価)を行った。その際、それぞれの各離型油をブリキのマドレーヌ型に所定の厚みで塗布し、型の中にバターケーキの元を注いだ後焼成してバターケーキを作製した。その後、以下の基準に基づいて各離型油の離型性(焼成後の剥がれやすさ)を評価した。
(離型性評価試験)
離型性評価を以下の手順で行った。
1)実施例1~6、参考例1~6の離型油をそれぞれ、ブリキのマドレーヌ型に一穴あたり0.2g又は0.5g塗布した。
2)小麦粉;24%、ベーキングパウダー:1%、全卵:25%、砂糖:25%、マーガリン:25%の組成で調製したバターケーキ生地を、マドレーヌ型に充填した。
3)上下180℃のオーブンに2)のマドレーヌ型を入れ14分加熱した。
4)焼き上がりのマドレーヌ型をひっくり返し以下の基準で離型性を評価した。
10秒の間に自重で落下した場合=3点、
ひっくり返した状態で上下に軽く振り3回以内の上下の振りで落下した場合=1点、
3回振っても落下しなかった場合=0点、
5)各実施例及び参考例に対し、バターケーキ12個分の評価値の平均値を算出した。
得られた評価結果を表5、表6に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
表2、表3は、実施例1~6、参考例1~6のリン脂質含有量を示している。一般に、リン脂質含有量が高くなるほど離型性能が良好になる傾向がある。そのため、表5に示されるように、0.2g塗布の条件において、実質レシチン含有量が一番高い参考例6が最も離型性能が良好であった。
表6に示す0.5g塗布の条件において、実施例2、6は参考例6よりもリン脂質含有量が少ないにも関わらず、参考例6と同様に離型性能が良好であった。これは、参考例6はレシチンの溶解性が悪く、理論量溶けていなかったと考えられる。また離型油の塗布量を表5の0.2gから表6の0.5gの条件としたことで、レシチンの溶解性の差がより顕著になったものと考えられる。実施例2に用いたレシチンはリン脂質含有量が参考例6よりも少ないにも関わらず、参考例6のレシチンよりも溶解性が良いことこら、参考例6と同様の良好な離型性能が示された。
表6において、リン脂質含有量が最も少ない実施例1が良好な離型性能を示したことからも、実施例1に用いたレシチンの良好な溶解性が示された。
【0052】
実施例5の結果より、米油由来レシチンを1質量%添加することにより離型性能が発現することが確認された。なお、表示していないが、米油由来レシチンの含有量が1質量%未満の場合、離型性能は発現されなかった。このことより米油由来レシチンの最低1質量%は添加必要であることがいえた。
【0053】
実施例2、実施例6の結果より、米油由来レシチンの含有量が20質量%と30質量%では離型性能は頭打ちであった。このことより米油由来レシチンの含有量は、離形性能と経済性の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましいことがいえた。
【0054】
表2は、0.2g塗布の条件におけるリン脂質含有量と離形性評価の関係を示している。
実施例4と実施例6の対比より、リン脂質含有量が増えるほど、離形性が向上することが示された。
【0055】
表3は、0.5g塗布の条件におけるリン脂質含有量と離形性評価の関係を示している。米油を用いた実施例4と参考例4の対比より、実施例4のほうが少ないリン脂質含有量で良好な離形性評価が得られることが示された。実施例2と参考例2(大豆油使用)の対比、並びに、実施例3と参考例3(菜種油資料)の対比においても同様の結果が示された。以上よりレシチンとしてTUYOF‐Lを用いることで、少ないリン脂質含有量で離形性が向上することが示された。
離型油は、米由来レシチンの溶解性が良好であり、粘度や導電率の変化率が低く、外観変化が生じづらいので、保存安定性に優れている。また離型油はレシチン溶解量が理論値に極めて近いので、少ない塗布量であっても有利な離型効果を発揮する。離型油はNon-GMOでる米由来レシチンを含有するので、自然志向の消費者に受け入れられやすい。