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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081856
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】配管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/06 20060101AFI20230606BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20230606BHJP
   F16L 47/03 20060101ALI20230606BHJP
   F16L 37/088 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
F16L47/06
A62C35/68
F16L47/03
F16L37/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189468
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2021195801
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592123853
【氏名又は名称】株式会社昭和螺旋管製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸永
(72)【発明者】
【氏名】臼井 弘明
【テーマコード(参考)】
2E189
3H019
3J106
【Fターム(参考)】
2E189CB02
3H019GA03
3H019JA01
3H019JA03
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106ED14
(57)【要約】
【課題】配管施工がし易くて、且つ、低コストであり、しかも、経年劣化のし難い信頼性の高い配管継手を提供する。
【解決手段】水用の配管継手1は、一端部に金属製のスリーブ3が設けられるとともに、他端部にスプリンクラーヘッド23と連結可能な金属製のソケット4が設けられ、かつ、スリーブ3とソケット4とを連絡する連絡管部5が設けられた管体2と、一端部がスリーブ3に外嵌合する一方、他端部が樹脂管部21aと連結可能な筒状の継手体8と、を備える。連絡管部5は、樹脂材料により形成される。継手体8の一端部が金属材料により形成される一方、継手体8の他端部が樹脂材料により形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に金属製のスリーブが設けられるとともに、他端部に第1被継手部材と連結可能な金属製の連結端部が設けられ、かつ、前記スリーブと前記連結端部とを連絡する連絡管部が設けられた管体と、
一端部が前記スリーブに外嵌合する一方、他端部が第2被継手部材と連結可能な筒状の継手体と、を備えた水用の配管継手であって、
前記連絡管部は、樹脂材料により形成され、
前記継手体の一端部が金属材料により形成される一方、前記継手体の他端部が樹脂材料により形成されていることを特徴とする配管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の配管継手において、
前記継手体の他端部には、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設されていることを特徴とする配管継手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管継手において、
前記連絡管部の一端部は、前記スリーブの内側に一体に設けられ、且つ、当該スリーブの内側全域を覆っていることを特徴とする配管継手。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の配管継手において、
前記連絡管部には、直線状に延び、かつ、一端部において前記スリーブと結合された第1直線管部と、当該第1直線管部の延び方向とは異なる方向に直線状に延び、かつ、一端部において前記連結端部と結合された第2直線管部と、前記第1直線管部の他端部と前記第2直線管部の他端部とを連絡するように屈曲した屈曲部と、が備えられていることを特徴とする配管継手。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の配管継手において、
前記連結端部は、建物の天井に取り付けられた前記第1被継手部材としてのスプリンクラーヘッドと連結可能であり、
前記継手体の他端部は、前記建物の天井裏に配設された前記第2被継手体としての消防配管と間接的に、或いは、直接的に連結可能であることを特徴とする配管継手。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の配管継手において、
前記継手体の他端部には、互いに筒中心線が一致する内筒部及び外筒部を有するとともに当該内筒部及び外筒部の間に前記継手体の他端側から一端側に向けて前記第2被継手部材を嵌挿可能な二重管部が設けられていることを特徴とする配管継手。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の配管継手において、
前記スリーブの外周面には、内周側に凹となるとともに、環状に延びる第1周溝が設けられ、
前記継手体の一端部の内周面には、外周側に凹となるとともに、環状に延びる第2周溝が設けられ、
前記第1周溝及び第2周溝には、スナップリングが組み付けられ、
前記スリーブの外周面における前記第1周溝の前記連絡管部側には、内周側に凹となる第1溝部が設けられ、
前記継手体の一端部の外周面には、内周側に凹となる第2溝部が設けられ、
前記第1溝部には、前記スナップリングの組み付け検査用の第1検査治具が取り付け可能に構成され、
前記第2溝部には、前記スナップリングの組み付け検査用の第2検査治具が取り付け可能に構成されていることを特徴とする配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水を輸送する管を他の管やスプリンクラーヘッド等に連結する際に使用する配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水道管やスプリンクラー巻出配管の如き水を輸送する管は、配管継手を用いて他の管や貯水槽等に連結することが一般的に行われる。例えば、特許文献1に開示されている配管継手は、建物内にスプリンクラー設備を設置する際において、建物の天井裏に延びる消防配管と建物の天井に取り付けられたスプリンクラーヘッドとを繋ぐものであり、細長く延びる管体を備えている。該管体は、湾曲変形可能な金属製の蛇腹部と、該蛇腹部の一端側に一体に設けられた金属製のスリーブと、蛇腹部の他端側に設けられ、スプリンクラーヘッドに連結可能な金属製の連結端部とを有している。スリーブには、略円筒状をなす金属製の継手体の一端側が外嵌合している。そして、配管施工者は、消防配管とスプリンクラーヘッドとの間を配管施工する際において、継手体における他端側の雄螺子部を消防配管の所定の位置に設けられた雌螺子部に螺合連結する一方、管体の連結端部をスプリンクラーヘッドに連結するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-194488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の配管継手において、例えば、互いに連結される継手体の雄螺子部と消防配管の雌螺子部とが異種金属である場合や、互いに連結される管体の連結端部とスプリンクラーヘッドとが異種金属である場合、消防配管から継手体内に水が導入されると、水と上記各連結部分との間において電池が形成されてしまい、当該各連結部分において電蝕(異種金属接触腐食)が発生してしまう。そうすると、特許文献1の配管継手の場合、管体の連結端部に連続する蛇腹部も金属材料で形成されているので、当該蛇腹部においても電蝕が発生してしまい、ひいては、配管継手全体が腐食して経年劣化が早まってしまい、信頼性の低い器具になってしまうおそれがある。
【0005】
また、例えば、建物において多数のスプリンクラーヘッドと消防配管とをそれぞれ繋ぐような配管施工箇所が多い場合、配管施工者による作業工数が増えるので、配管施工にかかる負荷を減らしたいという要求がある。さらには、配管施工箇所が多い場合、配管施工に多数の配管継手が必要となるので、部品単価を下げてコストメリットを出したいという要求もある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配管施工がし易くて、且つ、低コストであり、しかも、経年劣化のし難い信頼性の高い配管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、配管継手を構成する各領域の材質に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、一端部に金属製のスリーブが設けられるとともに、他端部に第1被継手部材と連結可能な金属製の連結端部が設けられ、かつ、前記スリーブと前記連結端部とを連絡する連絡管部が設けられた管体と、一端部が前記スリーブに外嵌合する一方、他端部が第2被継手部材と連結可能な筒状の継手体と、を備えた水用の配管継手を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記連絡管部は、樹脂材料により形成され、前記継手体の一端部が金属材料により形成される一方、前記継手体の他端部が樹脂材料により形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記継手体の他端部には、エレクトロフュージョン接合用電熱線が埋設されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記連絡管部の一端部は、前記スリーブの内側に一体に設けられ、且つ、当該スリーブの内側全域を覆っていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1又は第2の発明において、前記連絡管部には、直線状に延び、かつ、一端部において前記スリーブと結合された第1直線管部と、当該第1直線管部の延び方向とは異なる方向に直線状に延び、かつ、一端部において前記連結端部と結合された第2直線管部と、前記第1直線管部の他端部と前記第2直線管部の他端部とを連絡するように屈曲した屈曲部と、が備えられていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第1又は第2の発明において、前記連結端部は、建物の天井に取り付けられた前記第1被継手部材としてのスプリンクラーヘッドと連結可能であり、前記継手体の他端部は、前記建物の天井裏に配設された前記第2被継手体としての消防配管と間接的に、或いは、直接的に連結可能であることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第1又は第2の発明において、前記継手体の他端部には、互いに筒中心線が一致する内筒部及び外筒部を有するとともに当該内筒部及び外筒部の間に前記継手体の他端側から一端側に向けて前記第2被継手部材を嵌挿可能な二重管部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第1又は第2の発明において、前記スリーブの外周面には、内周側に凹となるとともに、環状に延びる第1周溝が設けられ、前記継手体の一端部の内周面には、外周側に凹となるとともに、環状に延びる第2周溝が設けられ、前記第1周溝及び第2周溝には、スナップリングが組み付けられ、前記スリーブの外周面における前記第1周溝の前記連絡管部側には、内周側に凹となる第1溝部が設けられ、前記継手体の一端部の外周面には、内周側に凹となる第2溝部が設けられ、前記第1溝部には、前記スナップリングの組み付け検査用の第1検査治具が取り付け可能に構成され、前記第2溝部には、前記スナップリングの組み付け検査用の第2検査治具が取り付け可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、第1被継手部材と該第1被継手部材に連結される連結端部とが異種金属の場合において、例えば、連結端部にて電蝕が発生しても、連結端部と連続して形成されている連絡管部は樹脂材料で形成されているため、連絡管部において電蝕が発生するのを抑えることができる。したがって、電蝕により配管継手全体の信頼性に影響を及ぼしてしまう事態を回避できる。また、第2被継手部材と連結される継手体の他端部が樹脂材料で形成されているため、継手体の他端部と第2被継手部材とにおいて電蝕が発生するのを防ぐことができる。このように、配管継手全体において電蝕による腐食が発生し難くなるので、経年劣化のし難い信頼性の高い配管継手にすることができる。さらに、連絡管部及び継手体の他端部は、樹脂材料で形成されているため、特許文献1の如き金属製の配管継手に比べて低コストにすることができるとともに、配管継手全体が軽量になるので、配管施工がし易くなって配管施工者の作業負荷を減らすことができる。
【0017】
第2の発明では、継手体の他端部と第2被継手体とを互いに接触させて接触部分に電気を流すことにより継手体と第2被継手体とが互いに溶着して一体となるようになる。したがって、特許文献1の如き配管継手を用いて配管施工者が配管施工を行う際において、配管施工者による雌螺子部に対する雄螺子部のねじ込み量が配管施工者の意に反して不足してしまうといった作業のばらつきが発生し難くなるので、配管継手と第2被継手部材との間の電蝕の発生を防止しつつ、継手体の他端部と第2被継手部材との連結箇所において水漏れが発生するのを確実に防ぐことができる。
【0018】
第3の発明では、スリーブの内周面が樹脂材からなる連絡管部の一端部に覆われるようになるので、配管継手内が水で満たされてもスリーブの内周面が水に直接的に接触しなくなる。したがって、水を介して金属製のスリーブと他の金属製の部材との間に電気が流れることで、例えば、金属製のスリーブにおいて電蝕が発生するのを抑制できる。
【0019】
第4の発明では、例えば、継手体の他端部が連結される消防配管と管体の連結端部が連結されるスプリンクラーヘッドの位置とが直線状に配置されていない場合であっても、管体に屈曲部が存在するので、特許文献1の如き金属製の蛇腹部を設けずに消防配管とスプリンクラーヘッドとを繋ぐことができる。
【0020】
第5の発明では、配管継手が消防配管とスプリンクラーヘッドとにそれぞれ連結された状態において、消防配管から導入された水で配管継手内が満たされるようになっても、配管継手における管体や継手体において電蝕が発生するのを抑制できる。
【0021】
第6の発明では、継手体の二重管部に第2被継手部材が嵌挿されると、内筒部と外筒部との間に第2被継手部材が挟まれた状態において、継手体の二重管部と第2被継手部材とが連結されるようになる。したがって、配管継手の継手体と第2被継手体との連結剛性を向上することができ、例えば、継手体と第2被継手体の連結箇所において水漏れが発生するのをより確実に防ぐことができる。
【0022】
第7の発明では、第1溝部及び第2溝部にスナップリングが組み付けられた後、例えば、第1溝部に取り付けられた第1検査治具を一側に引っ張るとともに、第2溝部に取り付けられた第2検査治具を他側に引っ張ることで、スナップリングの組み付け状態を検査することが可能となる。これにより、スナップリングの組み付け不良の有無を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る水用の配管継手を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る水用の配管継手が用いられたスプリンクラー装置の概略説明図である。
図3図1のIII-IIIにおける断面図である。
図4】変形例に係る図3相当図である。
図5】変形例に係る図3相当図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る図3相当図である。
図7】変形例に係る図6相当図である。
図8】変形例に係る図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
《第1実施形態》
図1は、本発明の第1実施形態に係る水用の配管継手1を示す。該配管継手1は、図2に示すように、スプリンクラー装置20の一部構造に用いられるものであり、建物の天井裏S1において水平方向且つ天地方向に延びる消防配管21と、建物の天井22に取り付けられた金属製のスプリンクラーヘッド23(第1被継手部材)とを繋いでいる。
【0026】
配管継手1は、略L字状をなす管体2を備えている。該管体2には、図3に示すように、金属製(例えば、鋼材などの金属材料)のスリーブ3と、金属製(例えば、鋼材などの金属材料)のソケット4と、樹脂製(例えば、ポリエチレンなどの樹脂材料)の連絡管部5とが備えられている。
【0027】
スリーブ3は、図3に示すように、管体2の一端部に設けられるとともに、略円筒状をなしている。
【0028】
ソケット4は、図3に示すように、管体2の他端部に設けられるとともに、略角筒状をなしている。該ソケット4の内側面4aは、雌螺子が螺刻されており、該内側面4aの雌螺子がスプリンクラーヘッド23に螺刻された雄螺子と螺合連結されるようになっている。
【0029】
連絡管部5は、図3に示すように、略L字状をなし、かつ、第1直線管部5aと、第2直線管部5bと、屈曲部5cとを備えている。
【0030】
第1直線管部5aは、第1筒中心線C1に沿って直線状に延びるとともに、その一端部がスリーブ3の内側に一体に設けられ、かつ、該スリーブ3の内側全域を覆っている。なお、第1直線管部5aとスリーブ3とは、インサート成形により一体に成形されている。
【0031】
第2直線管部5bは、第1直線管部5aの延び方向と略直交する第2筒中心線C2に沿って直線状に延び、かつ、その一端部がソケット4とインサート成形による一体成形により結合されている。該第2直線管部5bは、第1直線管部5aよりも管長さが長く設定されており、かつ、その外面には、図1に示すように、径方向外側に張り出すとともに第2筒中心線C2に沿って直線状に延びる突条部5dが第2筒中心線C2を中心とした周方向に等間隔に所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0032】
屈曲部5cは、第1直線管部5aの他端部と第2直線管部5bの他端部とを連絡するよう屈曲する形状をなしている。
【0033】
スリーブ3の外周面における中途部の屈曲部5c寄りの位置には、図3に示すように、径方向外側に張り出すとともに第1筒中心線C1周りに延びる環状張出部3aが形成されている。
【0034】
環状張出部3aは、屈曲部5c側の第1張出部3bと、屈曲部5cから遠い側の第2張出部3cとで構成されていて、該第1張出部3bは、第2張出部3cよりも外側に張り出す形状をなしている。第1張出部3bの外周面には、内周側に凹となるとともに第1筒中心線C1を中心として環状に延びる第1周溝3dが形成されている。
【0035】
スリーブ3の外周面には、一端が屈曲部5c側となるように樹脂製の第1絶縁リング6a及び第2絶縁リング6bが屈曲部5c側から順に外嵌合されている。
【0036】
第1絶縁リング6aは、第1張出部3bの屈曲部5cから遠い側で、かつ、第1張出部3bから離間した位置に配設されている。第1絶縁リング6aにおける第1筒中心線C1に沿う方向の断面は、略L字状をなしていて、第1絶縁リング6aは、第2張出部3cの角部に沿って第1筒中心線C1周りに延びる形状になっている。
【0037】
第2絶縁リング6bは、スリーブ3の屈曲部5cから遠い側の端部に対応する位置で、かつ、第1絶縁リング6aから離間した位置に配設されている。第2絶縁リング6bにおける第1筒中心線C1に沿う方向の断面は、略L字状をなしていて、第2絶縁リング6bは、スリーブ3の屈曲部5cから遠い側の端部に沿って第1筒中心線C1周りに延びる形状になっている。
【0038】
第2張出部3cにおける第1絶縁リング6aの屈曲部5c側には、ゴム製の第1環状シール部7aが外嵌合され、スリーブ3の第1絶縁リング6aと第2絶縁リング6bとの間には、該第1環状シール部7aよりも大形のゴム製の第2環状シール部7bが外嵌合されている。
【0039】
スリーブ3の外側には、筒中心線が第1筒中心線C1に一致する略円筒形状の継手体8が配設され、該継手体8は、スリーブ3の第1張出部3b、第1絶縁リング6a、及び、第2絶縁リング6bに外嵌合している。
【0040】
継手体8は、一端側略半分が金属材料(例えば、鋼材)で形成された金属構成部9を備える一方、他端側略半分が樹脂材料(例えば、ポリエチレン)で形成された樹脂構成部10を備えている。すなわち、継手体8の樹脂構成部10を除く部分が金属構成部9になっていて、樹脂構成部10は、インサート成形により金属構成部9と一体に成形されている。
【0041】
金属構成部9の一端部には、その他端側に位置する第1中途部9aよりも拡径された第1拡径部9bが設けられ、該第1拡径部9bの内周面かつ第1周溝3dに対応する部位には、外周側に凹となるとともに第1筒中心線C1を中心として環状に延びる第2周溝9cが形成されている。第1周溝3d及び第2周溝9cには、スナップリング15が拡径方向に付勢された状態で装着されている。
【0042】
一方、金属構成部9の他端部には、その肉厚が第1中途部9aの厚みよりも厚く、かつ、第1中途部9aよりも拡径された第2拡径部9dが設けられている。
【0043】
樹脂構成部10の一端部には、その他端側に位置する第2中途部10aよりも拡径された第3拡径部10bが設けられ、該第3拡径部10bが第2拡径部9dとインサート成形による一体成形により結合されている。
【0044】
一方、樹脂構成部10の他端部には、その肉厚が第2中途部10aの厚みよりも薄く、かつ、第2中途部10aよりも縮径されたテーパー部10cが設けられている。
【0045】
第2中途部10a及びテーパー部10cの外周面には、外側に突出するターミナルピン11が第1筒中心線C1に沿う方向に所定の間隔をあけて一対設けられている。
【0046】
第2中途部10aの内部には、第1筒中心線C1周りを螺旋上に延びるエレクトロフュージョン用の電熱線12が埋設され、該電熱線12の一端が一方のターミナルピン11に接続される一方、電熱線12の他端が他方のターミナルピン11に接続されている。
【0047】
そして、消防配管21の樹脂管部21a(第2被継手部材)を継手体8の樹脂構成部10に嵌挿した状態において、一対のターミナルピン11を介して電熱線12に電気を流すことにより、消防配管21の樹脂管部21aと継手体8の樹脂構成部10とがエレクトロフュージョン接合により互いに溶着して一体となる、つまり、消防配管21の樹脂管部21aと継手体8の樹脂構成部10とを直接的に連結している。
【0048】
このように、本発明の第1実施形態によると、スプリンクラーヘッド23と該スプリンクラーヘッド23に連結されるソケット4とが異種金属の場合において、例えば、ソケット4にて電蝕が発生しても、ソケット4と連続して形成されている連絡管部5は樹脂材料で形成されているため、連絡管部5において電蝕が発生するのを抑えることができる。したがって、電蝕により配管継手1全体の信頼性に影響を及ぼしてしまう事態を回避できる。また、樹脂管部21aと連結される継手体8の樹脂構成部10が樹脂材料で形成されているため、継手体8の樹脂構成部10と樹脂管部21aとにおいて電蝕が発生するのを防ぐことができる。このように、配管継手1全体において電蝕による腐食が発生し難くなるので、経年劣化のし難い信頼性の高い配管継手1にすることができる。さらに、連絡管部5及び継手体8の樹脂構成部10は、樹脂材料で形成されているため、特許文献1の如き金属製の配管継手1に比べて低コストにすることができるとともに、配管継手1全体が軽量になるので、配管施工がし易くなって配管施工者の作業負荷を減らすことができる。
【0049】
また、継手体8の樹脂構成部10と樹脂管部21aとを互いに接触させて接触部分に電気を流すことにより継手体8と樹脂管部21aとが互いに溶着して一体となるようになる。したがって、特許文献1の如き配管継手を用いて配管施工者が配管施工を行う際において、配管施工者による雌螺子部に対する雄螺子部のねじ込み量が配管施工者の意に反して不足してしまうといった作業のばらつきが発生し難くなるので、配管継手1と樹脂管部21aとの間の電蝕の発生を防止しつつ、継手体8の樹脂構成部10と樹脂管部21aとの連結箇所において水漏れが発生するのを確実に防ぐことができる。
【0050】
また、スリーブ3の内周面が樹脂材からなる連絡管部5の一端部に覆われるようになるので、配管継手1内が水で満たされてもスリーブ3の内周面が水に直接的に接触しなくなる。したがって、水を介して金属製のスリーブ3と他の金属製の部材との間に電気が流れることで、例えば、金属製のスリーブ3において電蝕が発生するのを抑制できる。
【0051】
また、例えば、継手体8の樹脂構成部10が連結される消防配管21と管体2のソケット4が連結されるスプリンクラーヘッド23の位置とが直線状に配置されていない場合であっても、管体2に屈曲部5cが存在するので、特許文献1の如き金属製の蛇腹部を設けずに消防配管21とスプリンクラーヘッド23とを繋ぐことができる。
【0052】
また、配管継手1が消防配管21とスプリンクラーヘッド23とにそれぞれ連結された状態において、消防配管21から導入された水で配管継手1内が満たされるようになっても、配管継手1における管体2や継手体8において電蝕が発生するのを抑制できる。
【0053】
《第1実施形態の変形例》
なお、本発明の第1実施形態では、継手体8の樹脂構成部10は、一重管構造としていたが、図4及び図5に示すように、内筒部13a及び外筒部13bを有する二重管部13を設け、該二重管部13における内筒部13aと外筒部13bとの間に樹脂管部21aを継手体8の他端側から一端側に向けて嵌挿できるようにしてもよい。このように、継手体8の二重管部13に樹脂管部21aを嵌挿可能にすると、内筒部13aと外筒部13bとの間に樹脂管部21aが挟まれた状態において、継手体8の二重管部13と樹脂管部21aとが連結されるようになる。したがって、配管継手1の継手体8と樹脂管部21aとの連結剛性を向上させることができ、例えば、継手体8と樹脂管部21aの連結箇所において水漏れが発生するのをより確実に防ぐことができる。
【0054】
また、本発明の第1実施形態では、第2直線管部5bの管長さを第1直線管部5aよりも長く設定していたが、図5に示すように、第2直線管部5bの管長さを第1直線管部5aよりも短く設定してもよい。これにより、天地方向に狭い天井裏S1にスプリンクラー装置20を設置する場合であっても、配管継手1は、管体2の第2筒中心線C2と天地方向とが略一致する姿勢において消防配管21とスプリンクラーヘッド23とを繋ぐことができる。
【0055】
《第2実施形態》
次に、図6を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については説明を省略し、該第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0056】
第2実施形態に係る配管継手1は、スリーブ3、第1環状シール部7a、第2環状シール部7b、及び、継手体8の金属構成部9の構造が第1実施形態と異なっている。
【0057】
また、第2実施形態に係る配管継手1は、第1絶縁リング6a及び第2絶縁リング6bが備えられていない点で第1実施形態と異なっている。つまり、第2実施形態に係る継手体8の金属構成部9は、スリーブ3における第1張出部3b及び該第1張出部3bの屈曲部5cから遠い側の部分(径方向外側に張り出していない部分)に外嵌合している。
【0058】
第2実施形態におけるスリーブ3の環状張出部3aは、第1張出部3bのみ設けられている。換言すると、第2実施形態におけるスリーブ3の環状張出部3aは、第2張出部3cが設けられていない。
【0059】
第1張出部3bにおける第1周溝3dの屈曲部5c側(連絡管部5側)には、内周側に凹となるとともに、第1筒中心線C1を中心として環状に延びる第3周溝3eが設けられている。該第3周溝3eは、スナップリング15の組み付け検査用の第1検査治具J1が取り付け可能に構成されている。
【0060】
スリーブ3の外周面における第1張出部3bの屈曲部5cから遠い側の部分には、内周側に凹となるとともに、第1筒中心線C1を中心として環状に延びる第4周溝3fと第5周溝3gとが設けられている。該第4周溝3fには第1環状シール部7aが外嵌合される一方、第5周溝3gには第2環状シール部7bが外嵌合されるようになっている。また、第2実施形態では、第1環状シール部7aと第2環状シール部7bとは、略同一の大きさとなっている。
【0061】
第1実施形態における継手体8の金属構成部9では、第2拡径部9dが金属構成部9の他端側に行くに従って拡径するよう構成されていたが、第2実施形態における継手体8の金属構成部9では、第2拡径部9dが第1中途部9aから段差状に拡径している。これにより、第1中途部9aが内周側に凹となるとともに、第1筒中心線C1を中心として環状に延びる第6周溝9eを構成するようになっている。該第6周溝9eは、スナップリング15の組み付け検査用の第2検査治具J2が取り付け可能に構成されている。
【0062】
第2実施形態では、スリーブ3の第3周溝3e及び継手体8における金属構成部9の第6周溝9eにスナップリング15が装着、つまり、組み付けられた後において、該スナップリング15の組付け状態を検査する検査工程が実施されるようになっている。該検査工程では、まず、第1検査治具J1がスリーブ3の第3周溝3eに取り付けられるとともに、第2検査治具J2が金属構成部9の第6周溝9eに取り付けられるようになっている。次に、第1検査治具J1を第1筒中心線C1の延び方向一方側(屈曲部5c側)に引っ張るととともに、第2検査治具J2を第1筒中心線C1の延び方向他方側(屈曲部5c側とは反対側)に引っ張ることで、スナップリング15の組付け状態(組付け不良の有無)が検査されるようになっている。
【0063】
第2実施形態によれば、樹脂製の第1絶縁リング6a及び第2絶縁リング6bを備えないことで、より耐熱性に優れた金属製のスリーブ3と継手体8の金属構成部9との接触面積を増やすことができる。これにより、スリーブ3と継手体8の金属構成部9との嵌合箇所に火災等による熱が作用した場合であっても、該嵌合箇所からの水漏れの発生をより確実に防ぐことが可能となる。
【0064】
また、第2実施形態によれば、第3周溝3e及び第6周溝9eにスナップリング15が組み付けられた後、例えば、第3周溝3eに取り付けられた第1検査治具J1を一側(第1筒中心線C1の延び方向一方側)に引っ張るとともに、第6周溝9eに取り付けられた第2検査治具J2を他側(第1筒中心線C1の延び方向他方側)に引っ張ることで、スナップリング15の組み付け状態を検査することが可能となる。これにより、スナップリング15の組み付け不良の有無を確認することができる。
【0065】
《第2実施形態の変形例》
なお、本発明の第2実施形態では、第3周溝3e及び第6周溝9eが環状に延びるよう設けられていたが、第1検査治具J1及び第2検査治具J2を取り付け可能であれば、外周面の一部領域にのみ設けられていてもよい。
【0066】
また、本発明の第2実施形態では、検査工程において第1検査治具J1を一側に引っ張るとともに、第2検査治具J2を他側に引っ張る例について説明したが、いずれか一方の検査治具を動かないよう固定しつつ他方の検査治具のみ引っ張るようにしてもよい。
【0067】
また、本発明の第2実施形態では、継手体8の樹脂構成部10は、一重管構造としていたが、図7及び図8に示すように、内筒部13a及び外筒部13bを有する二重管部13を設け、該二重管部13における内筒部13aと外筒部13bとの間に樹脂管部21aを継手体8の他端側から一端側に向けて嵌挿できるようにしてもよい。また、本発明の第2実施形態では、第2直線管部5bの管長さを第1直線管部5aよりも長く設定していたが、図8に示すように、第2直線管部5bの管長さを第1直線管部5aよりも短く設定してもよい。
【0068】
《第1実施形態及び第2実施形態の変形例》
また、本発明の第1実施形態及び第2実施形態では、配管継手1は、略L字状をなしていたが、直線状であってもよい。
【0069】
また、本発明の第1実施形態及び第2実施形態では、継手体8は、消防配管21の樹脂管部21aとエレクトロフュージョン接合していたが、ヒートフュージョン接合するようにしてもよい。
【0070】
また、本発明の第1実施形態及び第2実施形態では、継手体8は、消防配管21と直接的に連結していたが、別の配管継手等を介して消防配管21と間接的に連結するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、水を輸送する管を他の管やスプリンクラーヘッド等に連結する際に使用する配管継手に適している。
【符号の説明】
【0072】
1 配管継手
2 管体
3 スリーブ
3d 第1周溝
3e 第3周溝(第1溝部)
4 ソケット(連結端部)
5 連絡管部
5a 第1直線管部
5b 第2直線管部
5c 屈曲部
8 継手体
9 金属構成部(継手体の一端部)
9c 第2周溝
9e 第6周溝(第2溝部)
10 樹脂構成部(継手体の他端部)
12 電熱線(エレクトロフュージョン接合用電熱線)
13 二重管部
13a 内筒部
13b 外筒部
15 スナップリング
21 消防配管
21a 樹脂管部(第2被継手部材)
22 天井
23 スプリンクラーヘッド(第1被継手部材)
J1 第1検査治具
J2 第2検査治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8