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特開2023-81885封止材の製造方法、及び発光装置の製造方法
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  • 特開-封止材の製造方法、及び発光装置の製造方法 図1
  • 特開-封止材の製造方法、及び発光装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081885
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】封止材の製造方法、及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/13 20230101AFI20230606BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230606BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20230606BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230606BHJP
   H10K 71/15 20230101ALI20230606BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20230606BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20230606BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20230606BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230606BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230606BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230606BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230606BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H10K71/13
H10K50/10
H10K50/844
H10K59/10
H10K71/15
H10K85/10
C08F2/50
C08L33/14
C08K3/34
C09K3/10 B
C09K3/10 E
G09F9/00 338
G09F9/30 309
G09F9/30 365
C08F220/20
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019281
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2018241826の分割
【原出願日】2018-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕基
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、露光時の封止用組成物の硬化性を高めることができ、かつ効率よく封止材を作製できる封止材の製造方法及び発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子4を覆う封止材5を製造する方法であり、酸素を含む雰囲気下で、発光素子封止用組成物を成形してから、発光素子封止用組成物に光を照射することを含む。発光素子封止用組成物は、チオール化合物(A)と、アクリル化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する。アクリル化合物(B)は、アクリロイル基を有する化合物(B1)とメタクリロイル基を有する化合物(B2)とを含む。メタクリロイル基を有する化合物(B2)に対するアクリロイル基を有する化合物(B1)の質量比の値は、1以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を覆う封止材を製造する方法であって、
発光素子封止用組成物をインクジェット法で成形してから、酸素を含む雰囲気下で、前記発光素子封止用組成物に光を照射することを含み、
前記発光素子封止用組成物は、チオール化合物(A)と、アクリル化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、
前記アクリル化合物(B)は、アクリロイル基を有する化合物(B1)とメタクリロイル基を有する化合物(B2)とを含み、
前記化合物(B2)に対する前記化合物(B1)の質量比の値は、1以上である、
封止材の製造方法。
【請求項2】
前記発光素子封止用組成物の25℃における粘度は、1mPa・s以上30mPa・s以下である、
請求項1に記載の封止材の製造方法。
【請求項3】
前記光の波長は、385nm以上である、
請求項1又は2に記載の封止材の製造方法。
【請求項4】
前記チオール化合物(A)は、一分子中に2つ以上のチオール基を有するポリチオール化合物(A1)を含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項5】
前記チオール化合物(A)の25℃における粘度は、2000mPa・s以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項6】
前記発光素子封止用組成物中での、前記チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対する前記チオール化合物(A)の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項7】
前記光重合開始剤(C)は、アミノアセトフェノン系開始剤(C1)を含有し、
前記チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対する前記アミノアセトフェノン系開始剤(C1)の含有量は、1質量%以上である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項8】
前記光重合開始剤(C)は、増感剤(D)を含有し、
前記増感剤(D)は、チオキサントン系増感剤(D1)を含み、
前記光重合開始剤(C)に対する前記チオキサントン系増感剤(D1)の含有量は、1.0質量%以上である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項9】
前記発光素子封止用組成物は、吸湿剤(E)を更に含有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項10】
前記吸湿剤(E)は、ゼオライト粒子を含有する、
請求項9に記載の封止材の製造方法。
【請求項11】
前記発光素子封止用組成物は、溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が0.1質量%以下である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の封止材の製造方法。
【請求項12】
発光素子と、前記発光素子を覆う封止材とを備える発光装置の製造方法であり、
請求項1から11のいずれか一項に記載の封止材の製造方法で前記封止材を作製することを含む、
発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記発光装置は、表示装置である
請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材の製造方法、及び発光装置の製造方法に関し、詳しくは、発光素子を覆う封止材の製造方法、及びこの封止材を備える発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードなどの発光素子を備える発光装置は、照明用途、ディスプレイ用途などに適用されており、今後の更なる普及が期待されている。
【0003】
発光装置の発光素子を封止するにあたっては、例えば組成物にアリル化合物、及びアクリル化合物等のエチレン性不飽和化合物を配合し、この組成物を、発光素子を覆うように塗布して、硬化させることで封止材を作製することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、(メタ)アクリレート系マクロモノマー(a)及びビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体(A)と光開始剤を含有する粘着剤組成物を開示し、この組成物に紫外線を照射することで硬化させて有機EL素子を封止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-222840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、組成物を硬化するにあたって、酸素を含む雰囲気下で露光を行うと、重合反応時に組成物の硬化性が低下し、半導体素子を十分に封止できないといった問題があった。このため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で露光を行う必要があり、封止材を作製するにあたって、不活性ガスの充填及び雰囲気の密閉性の維持等といった製造の工程が煩雑になるという問題もあった。
【0007】
本発明の目的は、露光時の封止用組成物の硬化性を高めることができ、かつ効率よく封止材を作製できる、封止材の製造方法及び発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る封止材の製造方法は、発光素子を覆う封止材を製造する方法であって、発光素子封止用組成物を成形してから、酸素を含む雰囲気下で、前記発光素子封止用組成物に光を照射することを含む。前記発光素子封止用組成物は、チオール化合物(A)と、アクリル化合物(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する。
【0009】
本発明の一態様に係る発光装置の製造方法は、発光素子と、前記発光素子を覆う封止材とを備える発光装置の製造方法である。前記封止材の製造方法で前記封止材を作製することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様には、露光時の封止用組成物の硬化性を高めることができ、かつ効率よく封止材及びこの封止材を備える発光装置が得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における発光装置の第一例を示す概略の断面図である。
図2】本発明の一実施形態における発光装置の第二例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.発光素子封止用組成物
まず、封止材を作製するための発光素子封止用組成物について説明する。
【0013】
本実施形態に係る発光素子封止用組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、一分子中に2つ以上のチオール基を有するチオール化合物(A)と、アクリル化合物(B)と、重合開始剤(C)と、を含有する。本実施形態では、この組成物(X)を成形してから、酸素を含む雰囲気下で、組成物(X)に光を照射することで、発光素子を覆う封止材を作製できる。組成物(X)は、チオール化合物(A)を含有することで、酸素を含む雰囲気下であっても、組成物(X)を重合させるにあたって、酸素阻害が抑制されやすい。このため、組成物(X)を良好に硬化させることができる。さらに、本実施形態では、上述のとおり、組成物(X)が酸素を含む雰囲気下で硬化可能なため、組成物(X)を硬化させて硬化物を得るにあたって、窒素等の不活性ガスを充填して重合時の環境を不活性ガス雰囲気としたり、不活性を充填して密閉性を維持したりといった製造上の工数を低減することができる。このため、本実施形態では効率よく封止材を作製することができる。
【0014】
また、組成物(X)を硬化させるにあたって、酸素を含む雰囲気下であっても、硬化物中に未反応の成分が残存しにくく、また副生成物も残存しにくくすることができる。このため、組成物(X)の硬化物から封止材を作製しても、封止材からアウトガスを発生しにくくすることができる。
【0015】
組成物(X)の高い硬化性、及びアウトガスの発生の抑制は、以下で詳細に説明する組成物(X)の組成によって実現可能である。
【0016】
組成物(X)の25℃における粘度は、1mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を常温下でキャスティング法、インクジェット法等で塗布して成形することが可能である。特に、粘度が30mPa・s以下であると、組成物(X)をインクジェット法で塗布する場合に、ノズルからの組成物(X)の吐出速度が低下しにくい。この粘度が20mPa・s以下であればより好ましく、15mPa・s以下であれば更に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましい。
【0017】
組成物(X)の40℃における粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下であることも好ましい。この場合、常温における組成物(X)の粘度がいかなる値であっても、組成物(X)を僅かに加熱すれば低粘度化させることが可能である。このため、加熱すれば、組成物(X)をキャスティング法といった方法で成形することが容易であり、組成物(X)をインクジェット法で成形することが可能である。また、組成物(X)を大きく加熱することなく低粘度化させることができるので、組成物(X)中の成分が揮発することによる組成物(X)の組成の変化を生じにくくできる。この粘度が20mPa・s以下であればより好ましく、15mPa・s以下であれば更に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましい。
【0018】
このような組成物(X)の25℃又は40℃における低い粘度も、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0019】
組成物(X)の硬化物の、厚み寸法が10μmである場合の、全光透過率は、90%以上であることが好ましい。この場合、硬化物を発光装置1における封止材5に適用すると、封止材5を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を特に向上できる。このような硬
化物の光透過性も、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0020】
以下、組成物(X)が含有する成分について、更に詳しく説明する。
【0021】
まず、チオール化合物(A)について説明する。
【0022】
組成物(X)は、上述のとおり、チオール化合物(A)を含有する。チオール化合物(A)は、一分子中に1つ以上のチオール基を有する。具体的には、チオール化合物(A)は、一分子中に1つのみのチオール基を有する化合物、及び一分子中に2つ以上のチオール基を有するポリチオール化合物(A1)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。チオール化合物(A)は、組成物(X)の硬化反応時の酸素阻害を生じにくくできる。そのため、チオール化合物(A)は、大気雰囲気下等の酸素含有雰囲気下で組成物(X)を硬化させやすくできる。酸素阻害については、後述する。
【0023】
チオール化合物(A)の25℃における粘度は、2000mPa・s以下であることが好ましい。この場合、チオール化合物(A)は、組成物(X)の粘度を上昇させにくい。このため、チオール化合物(A)は、組成物(X)の保存安定性を向上させるのに寄与することができる。そのため、組成物(X)を、溶剤によって粘度調整しなくても、インクジェット法で容易に成形することができうる。チオール化合物(A)の25℃における粘度は、1800mPa・s以下であればより好ましく、1500mPa・s以下であれば更に好ましい。チオール化合物(A)の25℃における粘度の下限は、特に制限されないが、例えば20mPa以上である。なお、本明細書における粘度は、レオメータを用いて、せん断速度1000s-1の条件で測定される。レオメータとして、例えばアントンパール・ジャパン社製の型番DHR-2を使用できる。
【0024】
チオール化合物(A)は、一分子中に2つ以上のチオール基を有するポリチオール化合物(A1)を含有することが好ましい。この場合、ポリチオール化合物(A1)は、組成物(X)の保存時に組成物(X)内で硬化反応をより起こりにくくでき、このため組成物(X)の保存安定性をより高めることができる。
【0025】
ポリチオール化合物(A1)の、一分子中のチオール基の数は、2つ以上であれば特に制限されない。例えば、ポリチオール化合物(A1)は、一分子中に2つのチオール基を有する2官能チオール化合物(A11)、一分子中に3つのチオール基を有する3官能チオール化合物(A12)、及び一分子中に4つのチオール基を有する4官能チオール化合物(A13)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。もちろん、ポリチオール化合物(A1)は、一分子中に5つ以上のチオール基を有する化合物を含有してもよい。
【0026】
また、チオール化合物(A)の有するチオール基は、1級チオール基、2級チオール基、及び3級チオール基のいずれを含んでいてもよい。チオール化合物(A)が例えば2つのチオール基を有する場合、より具体的には例えばチオール化合物(A)が2官能チオール化合物(A11)を含有する場合、2官能チオール化合物(A11)は、二つの1級チオール基を有する化合物を含有してもよく、一つの1級チオール基と一つの2級チオール基とを有する化合物を含有してもよく、二つの2級チオール基を有する化合物を含有してもよく、一つの2級チオール基と一つの3級チオール基とを有する化合物を含有してもよく、二つの3級チオール基を有する化合物を含有してもよい。チオール化合物(A)は、2級以上のチオール基を二つ以上有する化合物を含有することが好ましい。この場合、チオール化合物(A)は、組成物(X)の粘度をより上昇しにくくできる。これは、2級以上のチオール基を2つ以上有する化合物においては、チオール基周りの立体障害が大きくなることで、組成物(X)の保存時にチオール化合物(A)が特に反応しにくくなるからであると推察される。
【0027】
チオール化合物(A)は、上述のとおり、組成物(X)の硬化反応時に酸素阻害を生じにくくできる。酸素阻害とは、本実施形態においては、アクリル化合物(B)の重合反応の系中に酸素が存在することで、アクリル化合物(B)の重合反応が阻害されることである。チオール化合物(A)が酸素阻害を生じにくくできるのは、組成物(X)の硬化反応時にアクリル化合物(B)と、チオール化合物(A)とによって、エン-チオール反応が起こるためであると考えられる。具体的には、アクリル化合物(B)の重合反応中に、酸素が存在すると、重合中のアクリル化合物(B)に由来するラジカル種が酸素と反応して、過酸化物が生成しうる。生成したこの過酸化物は、過酸化物同士でカップリング反応したり、重合反応において生長中のラジカルと反応したりすることで、通常重合反応を停止させうる。この場合、組成物におけるアクリル化合物(B)の重合反応を良好に進行させ、十分に硬化させることが難しい。ここで、チオール化合物(A)は、酸素との反応によって生成したアクリル化合物(B)の過酸化物と反応することで、チオール化合物(A)に由来するチイルラジカルが生成し、組成物(X)の重合反応における生長反応を進行させるためのラジカル種を再生させることができる。また、チオール化合物(A)は、光重合開始剤(C)と反応することによっても、チイルラジカルを生成しうる。そのため、チオール化合物(A)は、組成物(X)の重合反応において、酸素が存在しても、重合反応に必要なラジカル種の失活を抑制することができ、組成物(X)の反応が阻害されにくいと考えられる。このように、組成物(X)は、大気雰囲気下などの酸素を含む雰囲気下であっても硬化しやすい。このため、組成物(X)から硬化物を作製するにあたって、窒素などの不活性ガス雰囲気下といった条件、及び密閉性を確保した条件下でなくても、組成物(X)の硬化物が効率よく作製されやすい。そのため、組成物(X)から硬化物、その硬化物からなる封止材、及びその封止材を備える発光装置を作製する際の、製造上のコストの低減、及び製造上の工数の低減にも寄与することができる。酸素を含む雰囲気とは、例えば酸素濃度150L/m3以上の雰囲気である。もちろん、酸素を含む雰囲気に含まれる成分は、酸素のみに限らず、例えば不活性ガスを更に含んでもよい。
【0028】
チオール化合物(A)は、例えばペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及びペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、チオール化合物(A)に含まれうる成分は、前記に限られない。
【0029】
チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対するチオール化合物(A)の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。チオール化合物(A)の含有量が0.5質量%以上であると、組成物(X)の粘度をより低減させることができ、かつ組成物(X)の保存安定性が特に得られやすい。また、チオール化合物(A)の含有量が10質量%以下であると、組成物(X)の硬化性をより向上させることができる。また、この範囲内であると、組成物(X)を成形するにあたって、特にインクジェット法で成形しやすい。チオール化合物(A)の含有量は、1質量%以上8質量%以下であればより好ましく、2質量%以上6質量%以下であれば更に好ましい。
【0030】
組成物(X)は、上記のとおり、アクリル化合物(B)を含有する。
【0031】
アクリル化合物(B)全体の25℃での粘度は、50mPa・s以下であることが好ましい。この場合、アクリル化合物(B)は、組成物(X)の低粘度化に寄与することができる。アクリル化合物(B)全体の粘度は、30mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましい。また、アクリル化合物(B)全体の粘度は、例えば3mPa・s以上である。
【0032】
アクリル化合物(B)全体の40℃での粘度が50mPa・s以下であることも好ましい。この場合、アクリル化合物(B)は、加熱された場合の組成物(X)を特に低粘度化させることができる。アクリル化合物(B)全体の粘度は、30mPa・s以下であれば更に好ましく、20mPa・s以下であれば特に好ましい。また、アクリル化合物(B)全体の粘度は、例えば3mPa・s以上である。
【0033】
アクリル化合物(B)が含みうる化合物について説明する。
【0034】
アクリル化合物(B)は、一分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。すなわち、アクリル化合物(B)は、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物(B10)と、一分子中に1つのみの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル化合物(B20)とを含む。なお、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」と「メタクリ」とのうちの少なくとも一方のことである。また、アクリル化合物(B)において、一分子中に1つ以上のアクリロイル基を有する化合物を化合物(B1)といい、一分子中に1つ以上のメタクリロイル基を有する化合物を化合物(B2)ともいう。化合物(B1)及び化合物(B2)は、多官能(メタ)アクリル化合物(B10)又は単官能(メタ)アクリル化合物(B20)のいずれかに含まれうる。
【0035】
アクリル化合物(B)は、化合物(B1)と化合物(B2)とを含有することが好ましく、化合物(B2)に対する化合物(B1)の質量比は、1以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)を硬化させるにあたって、組成物(X)の硬化性をより向上させることができる。
【0036】
アクリル化合物(B)は、多官能(メタ)アクリル化合物(B10)を含有することが好ましい。この場合、多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、組成物(X)の硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を高めることができる。多官能(メタ)アクリル化合物(B10)の量は、例えばアクリル化合物(B)全体に対して50質量%以上100質量%以下である。アクリル化合物(B)は、多官能(メタ)アクリル化合物(B10)のみを含有してもよい。
【0037】
多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、例えば1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ペンタトリエストールテトラアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、ヘキサジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ビスペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0038】
多官能(メタ)アクリル化合物(B10)のアクリル当量は、150g/eq以下であることが好ましく、90g/eq以上150g/eq以下であることがより好ましい。多官能(メタ)アクリル化合物(B10)の重量平均分子量は、例えば100以上1000以下であり、200以上800以下がより好ましい。
【0039】
多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、ベンゼン環、脂環及び極性基のうち少なくとも一つを有する化合物を含んでもよい。極性基は、例えばOH基及びNHCO基のうち少なくとも一方である。この場合、組成物(X)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、硬化物と無機材料製の部材との間の密着性を高めることもできる。多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタトリエストールテトラアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。これらの化合物は、組成物(X)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、これらの化合物は、硬化物と無機材料製の部材との間の密着性を高めることもできる。
【0040】
多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、特に下記式(1)に示す構造を有する化合物(B101)を含有することが好ましい。
【0041】
CH2=CR1-COO-(R3-O)n-CO-CR2=CH2 …(1)
式(1)において、R1及びR2の各々は水素又はメチル基、nは1以上の整数、R3は炭素数3以上のアルキレン基であり、nが2以上の場合は一分子中の複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
化合物(B101)は、式(1)に示す構造を有すること、特に式(1)のR3の炭素数が3以上であることにより、封止材5の水との親和性を高めにくい。このため、発光素子4が水によって劣化しにくい。R3の炭素数は、例えば3以上15以下である。また、化合物(B101)は、式(1)に示す構造を有すること、特に一分子中に二つの(メタ)アクリロイル基を有することにより、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を高めることができる。また、式(1)のnは、例えば1以上12以下の整数である。
【0043】
アクリル化合物(B)に対する化合物(B101)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(B)に対する化合物(B101)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
【0044】
化合物(B101)は、特に沸点が270℃以上である化合物(B102)を含有することが好ましい。すなわち、アクリル化合物(B)は、式(1)に示す構造を有し、かつ沸点が270℃以上である化合物(B102)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の保存中、及び組成物(X)が加熱された場合に、組成物(X)からアクリル化合物(B)が揮発しにくい。そのため、組成物(X)の保存安定性が損なわれにくい。また、組成物(X)の硬化物中に化合物(B102)が未反応で残留していても、硬化物から化合物(B102)に起因するアウトガスが生じにくい。そのため、発光装置1内に、アウトガスによる空隙が生じにくい。発光装置1中に空隙があると空隙を通じて発光素子4内に水分が侵入してしまうおそれがあるが、空隙が生じにくいと、発光素子4内に水分が侵入しにくい。なお、沸点は、減圧下の沸点を換算して得られる常圧下の沸点であり、例えばScience of Petroleum, Vol.II. P.1281(1938)に示される方法で求められる。化合物(B102)の沸点は280℃以上であればより好ましい。
【0045】
アクリル化合物(B)に対する化合物(B102)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が効果的に高められ、かつ封止材5からのアウトガス発生が効果的に低減され、更に封止材5の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(B)に対する化合物(B102)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
【0046】
化合物(B102)の25℃での粘度は25mPa・s以下であることが好ましい。この場合、化合物(B102)は組成物(X)の粘度を低めることができる。化合物(B102)の25℃での粘度は、25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。また、化合物(B102)の25℃での粘度は、例えば1mPa・s以上であり、3mPa・s以上であれば好ましく、5mPa・s以上であれば更に好ましい。
【0047】
化合物(B102)は、例えばアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルと、ポリアルキレングルコールのジ(メタ)アクリル酸エステルと、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルとからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0048】
アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、式(1)においてnが1である化合物である。この場合、式(1)におけるR3の炭素数は4~12であることが好ましい。R3は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよい。特にアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、サートマー社製の品番SR213、大阪有機化学工業社製の品番V195、サートマー社製の品番SR212、サートマー社製の品番SR247、共栄化学工業社製の品名ライトアクリレートNP-A、サートマー社製の品番SR238NS、大阪有機化学工業社製の品番V230、ダイセル社製の品番HDDA、共栄化学工業社製の品番1,6HX-A、大阪有機化学工業社製の品番V260、共栄化学工業社製の品番1,9-ND-A、新中村化学工業社製の品番A-NOD-A、サートマー社製の品番CD595、サートマー社製の品番SR214NS、新中村化学工業社製の品番BD、サートマー社製の品番SR297、サートマー社製の品番SR248、共栄化学工業社製の品名ライトエステルNP、サートマー社製の品番SR239NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,6HX、新中村化学工業社製の品番HD-N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,9ND、新中村化学工業社製の品番NOD-N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,10DC、新中村化学工業社製の品番DOD-N、及びサートマー社製の品番SR262からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0049】
ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、式(1)においてnが2以上である化合物である。nは例えば2~10であり、2~7であることが好ましく、2~6であることも好ましく、2~3であることも好ましい。R3の炭素数は例えば2~5である。炭素数が多いほど、硬化物の疎水性が高くなり、封止材5が水分を透過させにくい。ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、特にジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート及びトリテトラメチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、特にサートマー社製の品番SR230、サートマー社製の品番SR508NS、ダイセル社製の品番DPGDA、サートマー社製の品番SR306NS、ダイセル社製の品番TPGDA、大阪有機化学工業社製の品番V310HP、新中村化学工業社製の品番APG200、共栄化学工業株式会社製の品名ライトアクリレートPTMGA-250、サートマー社製の品番SR231NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル2EG、サートマー社製の品番SR205NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル3EG、サートマー社製の品番SR210NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル4EG、三菱化学社製の品名アクリエステルHX及び新中村化学工業社製の品番3PGからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0050】
アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、例えばプロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールを含有する。また、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、例えばダイセル社製の品番EBECRYL145を含有する。
【0051】
アクリル化合物(B)中の、沸点が270℃以上である成分の百分比が80質量%以上であることが好ましい。アクリル化合物(B)が化合物(B102)を含有する場合は、アクリル化合物(B)中の、化合物(B102)を含めた沸点が270℃以上である成分の百分比が、80質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が特に損なわれにくく、かつ硬化物からアウトガスが特に生じにくい。アクリル化合物(B)中の、沸点が280℃以上である成分の百分比が80質量%以上であれば、更に好ましい。
【0052】
化合物(B101)は、化合物(B102)以外の化合物(B103)を含有してもよい。
【0053】
多官能(メタ)アクリル化合物(B10)は、一分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B104)を含有してもよい。すなわち、アクリル化合物(B)は、化合物(B104)を含有してもよい。この場合、化合物(B104)は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。アクリル化合物(B)が化合物(B104)を含有すると、化合物(B104)は、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を特に高めることができる。
【0054】
アクリル化合物(B)が化合物(B104)を含む場合、アクリル化合物(B)に対する化合物(B104)の百分比は0質量%より多く25質量%以下であることが好ましい。化合物(B104)の百分比は10質量%以上であればより好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができる。また、化合物(B104)が25質量%以下であると、化合物(B104)に起因する組成物(X)の粘度上昇が生じにくい。化合物(B104)の百分比は20質量%以下であれば、組成物(X)の粘度上昇が特に生じにくくなる。
【0055】
アクリル化合物(B)が式(1)に示す構造を有する化合物(B101)を含有する場合、化合物(B101)は、式(1)中のnの値が5以上の化合物を含まないことが好ましい。(R3-O)nがポリエチレングリコール骨格である場合に、式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含まないことが特に好ましい。化合物(B101)が式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、アクリル化合物(B)に対する、式(1)中のnの値が5より大きい化合物の百分比は、20質量%以下であることが好ましい。また、化合物(B101)が式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、化合物(B101)は、nの値が9よりも大きい化合物を含まないことが好ましく、nの値が7よりも大きい化合物を含まないことが更に好ましい。これらの場合、組成物(X)の粘度上昇が特に生じにくくなる。
【0056】
アクリル化合物(B)は、上記のとおり、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)を含有できる。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。また、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、組成物(X)の粘度の低減に寄与できる。アクリル化合物(B)が単官能(メタ)アクリル化合物(B20)を含有する場合、アクリル化合物(B)全量に対する単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の百分比は、0質量%より多く70質量%以下であることが好ましい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の百分比が0質量%より多ければ、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)によって組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の百分比が5質量%以上であれば更に好ましい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の百分比が70質量%以下であれば、組成物(X)及び硬化物から、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)に起因するアウトガスが生じにくい。また、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の量が70質量%以下であれば、アクリル化合物(B)中の多官能の成分の量が確保できるため、多官能の成分によって硬化物の耐熱性を特に向上できる。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の百分比が50質量%以下であればより好ましく、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が40質量%以下であれば更に好ましく、30質量%以下であれば特に好ましい。
【0057】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジキシルエチル(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノ(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド付加物、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、及び3-(メタ)アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0058】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、脂環式構造を有する化合物を含有することが好ましい。脂環式構造を有する化合物は、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0059】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、下記式(10)に示す化合物(B201)を含有することも好ましい。この場合、組成物(X)を低粘度化させやすく、かつ組成物(X)から作製される封止材5に、パッシベーション層6といった無機材料製の部材との密着性が付与されやすい。また、化合物(B201)は、低い粘度を有するわりには、揮発しにくい性質を有する。そのため、組成物(X)を保存していても、組成物(X)には単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の揮発による組成の変化が生じにくい。
【0060】
【化1】
式(10)において、R0はH又はメチル基である。Xは単結合又は二価の炭化水素基である。R1からR11の各々はH、アルキル基又は-R12-OH、R12はアルキレン基でありかつR1からR11のうち少なくとも一つはアルキル基又は-R12-OHである。R1からR11は互いに化学結合していない。
【0061】
Xが二価の炭化水素基である場合、Xの炭素数は1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。二価の炭化水素基は、例えばメチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。Xが単結合又はメチレン基であれば特に好ましい。この場合、化合物(B201)は、分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
【0062】
1からR11のうち少なくとも一つがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましい。アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐を有してもよい。すなわち、例えばアルキル基がブチル基である場合、ブチル基は、t-ブチル基でもよく、n-ブチル基でもよく、sec-ブチル基でもよい。アルキル基がヘキシル基である場合、ヘキシル基は、t-ヘキシル基でもよく、n-ヘキシル基でもよく、sec-ヘキシル基でもよい。アルキル基がオクチル基である場合、オクチル基は例えばt-オクチル基でもよい。アルキル基がメチル基又はt-ブチル基であれば特に好ましい。この場合、化合物(A21)が分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
【0063】
式(10)において、シクロヘキサン環の4位のみに、アルキル基又は-R12-OHが接続していることが好ましい。すなわち、R1からR11のうち、R6及びR7の少なくとも一方がアルキル基又は-R12-OHであり、残りの各々がHであることが、好ましい。R1からR11のうち、R6のみがアルキル基又は-R12-OHであり、残りの各々がHであることが、特に好ましい。この場合、式(10)に示す化合物は、良好な反応性を有することができ、かつ封止材5に無機材料製の部材との密着性を特に付与しやすい。これは、式(10)に示す化合物におけるシクロヘキサン環がボート型の立体配座を有し、かつ4位にある嵩高いアルキル基又は-R12-OHが擬エクアトリアル位に位置しやすいためであると、考えられる。式(10)に示す化合物がこのような構造を有することで、式(10)に示す化合物における(メタ)アクリロイル基の反応性が高められると考えられる。また、式(10)に示す化合物がこのような構造を有すると、式(10)に示す化合物は、封止材5中の自由体積を大きくしうる。そのため封止材5と無機材料製の部材との間の界面自由エネルギーが小さくなりやすく、そのため封止材5と無機材料製の部材との密着性が高くなりやすいと、考えられる。アルキル基又は-R12-OHが嵩高いほど、アルキル基又は-R12-OHが擬エクアトリアル位に位置しやすくなる。この観点からすると、アルキル基又は-R12-OHの炭素数が多いほど好ましく、またアルキル基又は-R12-OHが分岐を有していることが好ましい。例えばアルキル基又はR12がt-ブチル基を有することが好ましい。
【0064】
式(10)において、シクロヘキサン環の3位及び5位の各々のみに、アルキル基又は-R12-OHが接続していることも好ましい。すなわち、R1からR11のうち、R4及びR5の少なくとも一方がアルキル基又は-R12-OHであり、R8及びR9の少なくとも一方がアルキル基又は-R12-OHであり、残りの各々がHであることが、好ましい。R1からR11のうち、R4及びR5の一方のみがアルキル基又は-R12-OHであり、R8及びR9の少なくとも一方がアルキル基又は-R12-OHであり、残りの各々がHであることが、より好ましい。R1からR11のうち、R4及びR5の少なくとも一方がアルキル基又は-R12-OHであり、R8及びR9の一方のみがアルキル基又は-R12-OHであり、残りの各々がHであることも、より好ましい。この場合も、式(10)に示す化合物は、良好な反応性を有することができ、かつ封止材5に無機材料製の部材との密着性を特に付与しやすい。これは、式(10)に示す化合物におけるシクロヘキサン環がボート型の立体配座を有し、かつ3位と5位の各々における嵩高いアルキル基又は-R12-OHが擬エクアトリアル位に位置しやすいためであると、考えられる。このために、シクロヘキサン環の4位のみにアルキル基又は-R12-OHが接続している場合と同様に、式(10)に示す化合物における(メタ)アクリロイル基の反応性が高められ、かつ封止材5と無機材料製の部材との密着性が高くなりやすいと、考えられる。アルキル基又は-R12-OHが嵩高いほど、アルキル基又は-R12-OHが擬エクアトリアル位に位置しやすくなる。この観点からすると、アルキル基又は-R12-OHの炭素数が多いほど好ましく、またアルキル基又は-R12-OHが分岐を有していることが好ましい。例えばアルキル基又はR12がt-ブチル基を有することが好ましい。
【0065】
1からR11のうち少なくとも一つが-R12-OHである場合、R12の炭素数は1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。R12は、例えばメチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。R12がメチレン基であれば特に好ましい。この場合、化合物(B201)は、分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
【0066】
式(10)において、R1からR11の各々がH又はアルキル基であり、かつR1からR11のうち少なくとも一つがアルキル基であれば、特に好ましい。この場合、式(10)に示す化合物は、特に低い粘度を有することができ、そのため組成物(X)が特に低い粘度を有することができる。そのため、組成物(X)をインクジェット法で特に成形しやすくなる。
【0067】
化合物(B201)は、下記式(11)に示す化合物、下記式(12)に示す化合物及び下記式(13)に示す化合物からなる群から選択される、少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
【0068】
【化2】
【0069】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が、式(11)に示す化合物と式(12)に示す化合物とのうち少なくとも一方を含有すれば、特に好ましい。この場合、組成物(X)を特に低粘度化しやすく、封止材5のガラス転移温度を特に高めやすく、更に封止材5と無機材料製の部材との密着性を特に高めやすい。また、式(11)に示す化合物及び式(12)に示す化合物は、揮発しにくいため、組成物(X)の保存安定性を向上させやすい。
【0070】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、環状エーテル構造を有する化合物を含有することも好ましい。環状エーテル構造を有する化合物における環状エーテル構造の環員数は3以上が好ましく、3以上4以下がより好ましい。環状エーテル構造に含まれる炭素原子数は、2以上9以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。環状エーテル構造を有する化合物は、例えば3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0071】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、25℃での粘度が20mPa・s以下である少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)が低粘度化しうる。
【0072】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、80℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物は高いガラス転移温度を有しうる。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、90℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも一種の化合物を含有すればより好ましく、100℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも一種の化合物を含有すれば更に好ましい。
【0073】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、沸点が200℃以上である少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、組成物(X)の保存安定性を低下させにくい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、沸点が250℃以上である少なくとも一種の化合物を含有すれば、更に好ましい。
【0074】
単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が、25℃での粘度が20mPa・s以下であり、かつ80℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも一種の化合物を含有すれば、特に好ましい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が、25℃での粘度が20mPa・s以下であり、かつ沸点が200℃以上である少なくとも一種の化合物を含有することも、好ましい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が、80℃以上のガラス転移温度を有し、かつ沸点が200℃以上である少なくとも一種の化合物を含有することも、好ましい。単官能(メタ)アクリル化合物(B20)が、25℃での粘度が20mPa・s以下であり、80℃以上のガラス転移温度を有し、かつ沸点が200℃以上である少なくとも一種の化合物を含有すれば、特に好ましい。
【0075】
特に単官能(メタ)アクリル化合物(B20)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、高いガラス転移温度、低い粘度及び高い沸点を有するため、組成物(X)、硬化剤の特性を特に高めることができる。
【0076】
アクリル化合物(B)は、分子骨格中にケイ素を有する化合物(B41)、分子骨格中にリンを有する化合物(B42)、及び分子骨格中に窒素を有する化合物(B43)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を更に含有することが好ましい。この場合、硬化物及び封止材5とパッシベーション層6といった無機材料製の部材との間の密着性が向上する。このため、封止材5と無機材料製の部材との間に隙間が生じにくく、この隙間を通じた発光素子4への水分の侵入が起こりにくい。アクリル化合物(B)は、特に、分子骨格中に窒素を有する化合物(B43)(以下、窒素含有アクリル化合物(B43)ともいう)を含有することが好ましく、チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対する窒素含有アクリル化合物(B43)の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物及び封止材5と無機材料製の部材との間の密着性が向上できるとともに、組成物(X)を硬化させるにあたって、組成物(X)の硬化性を更に向上させることができる。窒素含有アクリル化合物(B43)の含有量は、12質量%以上50質量%以下であればより好ましく、15質量%以上35質量%以下であれば更に好ましい。なお、化合物(B41)、化合物(B42)及び窒素含有アクリル化合物(B43)は分子骨格中にある原子の種類で規定されている。そのため、多官能(メタ)アクリル化合物(B10)及び単官能(メタ)アクリル化合物(B20)の各々に含まれる化合物と、化合物(B41)、化合物(B42)及び化合物(B43)の各々に含まれる化合物とは、重複しうる。
【0077】
化合物(B41)は、例えばアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(例えば信越化学工業社製の品番KBM5103)及び(メタ)アクリル基含有アルコキシシランオリゴマー(例えば信越化学工業社製の品番KR-513)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。ただし、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルの沸点は260℃であるため、アクリル化合物(A)がアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを含有する場合、アクリル化合物(A)に対するアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルの百分比は10質量%以下である必要がある。
【0078】
化合物(B42)は、例えばアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートといった、アシッドホスホキシ(メタ)アクリレートを含む。
【0079】
窒素含有アクリル化合物(B43)は、例えばアクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ-トからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0080】
アクリル化合物(B)が化合物(B41)、化合物(B42)及び窒素含有アクリル化合物(B43)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する場合、アクリル化合物(B)に対する化合物(B41)、化合物(B42)及び窒素含有アクリル化合物(B43)の合計量の百分比は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であれば更に好ましい。
【0081】
組成物(X)は、アクリル化合物(B)以外のラジカル重合性化合物(G1)を含有してもよい。ラジカル重合性化合物(G1)は、一分子に二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能ラジカル重合性化合物(G11)と、一分子に一つのみのラジカル重合性官能基を有する単官能ラジカル重合性化合物(G12)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。アクリル化合物(B)とラジカル重合性化合物(G1)との合計量に対するラジカル重合性化合物(G1)の量は、例えば10質量%以下である。多官能ラジカル重合性化合物(G11)は、例えば一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。なお、多官能ラジカル重合性化合物(G11)が含みうる成分は前記には限られない。単官能ラジカル重合性化合物(G12)は、例えばN-ビニルホルムアミド、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンオキサイド、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、単官能ラジカル重合性化合物(G12)が含みうる成分は前記には限られない。
【0082】
光重合開始剤(C)は、光が照射されるとラジカル種を生じさせる化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤(C)は、例えば芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。組成物(X)100質量部に対する光重合開始剤(C)の量は、例えば1質量部以上10質量部以下である。また、チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対する光重合開始剤(C)の量は、例えば1質量%以上12質量%以下である。
【0083】
光重合開始剤(C)は、アミノアセトフェノン化合物(C1)、及びアシルフォスフィンオキサイド化合物(C2)からなる群からなる少なくとも一種の化合物を含有することが好ましく、光重合開始剤(C)は、アミノアセトフェノン化合物(C1)を含有することがより好ましい。光重合開始剤(C)が、アミノアセトフェノン化合物(C1)を含有する場合、チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対するアミノアセトフェノン化合物(C1)の含有量は、1.0質量%以上15質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)に光を照射させて硬化させるにあたって、組成物(X)の硬化性をより向上させることができる。特に、アミノアセトフェノン化合物(C1)の含有量が1.0質量%以上であると、未硬化のアクリル化合物(B)に由来するアウトガスの発生をより抑制することができる。また、100質量%以下であると、組成物(X)の保存安定性を良好に維持することができる。チオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対するアミノアセトフェノン化合物(C1)の含有量は、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
【0084】
アミノアセトフェノン化合物(C1)の例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、及び2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン等が挙げられる。
【0085】
アシルフォスフィンオキサイド(C2)の例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0086】
光重合開始剤(C)は、光重合開始剤(C)の一部として、増感剤(D)を含有することも好ましい。増感剤(D)は、光重合開始剤(C)のラジカル生成反応を促進させて、ラジカル重合の反応性を向上させ、かつ架橋密度を向上させうる。
【0087】
組成物(X)中の増感剤(D)の含有量は、例えば組成物(X)の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。増感剤の含有量がこのような範囲であれば、酸素を含む雰囲気下で、で組成物(X)をより硬化させやすくなる。
【0088】
増感剤(D)は、例えばチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤;9,10-ジブトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン等のアントラセン系増感剤;アントラキノン、1,2-ジヒドロキシアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン系増感剤;1,4-ジエトキシナフタレン;p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジエチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン系増感剤;p-ジメチルアミノベンゾフェノン、p-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系増感剤;及びp-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジエチルアミノベンズアルデヒド等ベンズアルデヒド系増感剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。増感剤(D)は、チオキサントン系増感剤(D1)を含有することが好ましい。光重合開始剤(C)に対するチオキサントン系増感剤(D1)の含有量は、1.0質量%以上90質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化性をより向上させることができる。光重合開始剤(C)に対するチオキサントン系増感剤(D1)の含有量は、10質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。特に、光重合開始剤(C)がアミノアセトフェノン化合物(C1)を含有する場合、アミノアセトフェノン化合物(C1)に対するチオキサントン系増感剤(D1)の含有量は、1.0質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、増感剤(D)による効果が特に顕著にあらわれる。
【0089】
組成物(X)は、光重合開始剤(C)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸-2-ジメチルアミノエチル、p-ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。
【0090】
組成物(X)は、重合禁止剤を含有してもよい。特に、組成物(X)におけるチオール化合物(A)が1級のポリチオール化合物を含有する場合、組成物(X)の保存安定性をより向上させることができる。ポリチオール化合物(A)及びアクリル化合物(B)の合計量に対する重合禁止剤の含有量は、0.5質量%以上5質量%以下であると好ましい。重合禁止剤の例としては、ヒドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1,4-ベンゾキノン、tert-ブチルヒドロキノン、及び4-tert-ブチルピロカテコール等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0091】
組成物(X)は、吸湿剤(E)を更に含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物が水分に曝されても、吸湿剤(E)が水分を吸収することで、硬化物及び発光装置1における発光素子4が劣化しにくくなる。吸湿剤(E)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この場合、硬化物は、高い透明性を有することができる。
【0092】
吸湿剤(E)は、吸湿性を有する無機粒子であることが好ましく、例えばゼオライト粒子、シリカゲル粒子、塩化カルシウム粒子、及び酸化チタンナノチューブ粒子からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。吸湿剤(E)は、ゼオライト粒子を含有することが特に好ましい。
【0093】
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子は、例えば一般的な工業用ゼオライトを粉砕することで製造できる。ゼオライト粒子を製造するに当たって、ゼオライトを粉砕してから水熱合成などによって結晶化させてもよく、この場合、ゼオライト粒子は特に高い吸湿性を有することができる。このようなゼオライト粒子の製造方法の例は、特開2016-69266号公報、特開2013-049602号公報などに開示されている。
【0094】
ゼオライト粒子は、ナトリウムイオンを含有することが好ましく、そのためゼオライト粒子はナトリウムイオンを含有するゼオライトを原料として作製されることが好ましい。ナトリウムイオンを含有するゼオライトのうちA型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種を原料とすることがより好ましい。ゼオライト粒子が、A型ゼオライトのうち4A型ゼオライトを原料として作製されることが特に好ましい。これらの場合、ゼオライト粒子は、水分の吸着に好適な結晶構造を有する。
【0095】
吸湿剤(E)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この平均粒径が200nm以下であれば、硬化物は特に高い透明性を有することができる。また、この平均粒径が10nm以上であれば、吸湿剤(E)の良好な吸湿性を維持できる。なお、この平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。なお、測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。吸湿剤(E)の平均粒径は、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であれば更に好ましく、70nm以下であれば特に好ましい。また、吸湿剤(E)の平均粒径が20nm以上であることが好ましく、50nm以上であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に良好な透明性と吸湿性とを有することができる。
【0096】
吸湿剤(E)の累積90%径(D90)が300nm以下であることが好ましく、100nm以下であれば更に好ましい。この場合、硬化物は特に高い透明性を有することができる。
【0097】
組成物(X)が吸湿剤(E)を含有する場合、組成物(X)の全量に対する吸湿剤(E)の割合は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。吸湿剤(E)の割合が1質量%以上であれば、硬化物は特に高い吸湿性を有することができる。また、吸湿剤(E)の割合が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度を特に低減でき、組成物(X)がインクジェット法で塗布可能な程度の十分な低粘度を有することもできる。吸湿剤(E)の割合は、3質量%以上であれば更に好ましく、5質量%以上であれば特に好ましい。また、吸湿剤(E)の割合は、15質量%以下であればより好ましく、13質量%以下であれば特に好ましい。
【0098】
組成物(X)は、吸湿剤(E)以外の無機充填材を更に含有してもよい。特に、組成物(X)は、ナノサイズの高屈折率粒子を含有することが好ましい。高屈折率粒子の例はジルコニア粒子を含む。組成物(X)が高屈折率粒子を含有すると、硬化物の良好な透明性を維持しながら、硬化物を高屈折率化することができる。そのため、組成物(X)の硬化物を発光装置1における封止材5に適用した場合に、封止材5を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を向上することができる。高屈折率粒子の平均粒径は、5nm以上30nm以下の範囲内であることが好ましく、10nm以上20nm以下の範囲内であれば更に好ましい。
【0099】
組成物(X)中の高屈折率粒子の割合は、硬化物が所望の屈折率を有するように適宜設計される。特に高屈折率粒子は、硬化物の屈折率が1.45以上1.55未満の範囲内になるように組成物(X)に含有されることが好ましい。この場合、発光装置1の光の取り出し効率が特に向上する。
【0100】
組成物(X)は、分散剤(F)を含有してもよい。分散剤(F)は組成物(X)中の成分の分散性を向上できる。このため、分散剤(F)は、ポリチオール化合物(A)に起因する組成物(X)の粘度の増大と保存安定性の低下とをより生じにくくできる。なお、分散剤(F)は、粒子に吸着しうる界面活性剤である。また、組成物(X)が吸湿剤(E)を含有する場合には、分散剤(F)は、吸湿剤(E)を良好に分散させることができるため、硬化物及び封止材5が吸湿剤(E)を含有するにもかかわらず、硬化物及び封止材5の透明性が吸湿剤(E)によって低下されにくい。また、分散剤(F)は、組成物(X)の保管中における吸湿剤(E)の凝集を効果的に抑制できる。そのため組成物(X)の保存安定性が吸湿剤(E)によって低下されにくい。
【0101】
分散剤(F)は、粒子に吸着されうる吸着基(一般にアンカーともいう)と、吸着基が粒子に吸着することでこの粒子に付着する分子骨格(一般にテールともいう)とを、有する。分散剤(F)は、例えばテールがアクリル系の分子鎖であるアクリル系分散剤と、テールがウレタン系の分子鎖であるウレタン系分散剤と、テールがポリエステル系の分子鎖であるポリエステル系分散剤とからなら群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。吸着基は、例えば塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうち少なくとも一方を含む。塩基性の極性官能基は、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、及び含窒素複素環基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。酸性の極性官能基は、例えばカルボキシル基とリン酸基とからなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。分散剤(F)は、例えば日本ルーブルリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ及び味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0102】
組成物(X)が吸湿剤(E)を含有する場合、吸湿剤(E)100質量部に対する分散剤(F)の量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。分散剤(F)の量が5質量部以上であることで、分散剤(F)の機能が効果的に発現でき、また60質量部以下であることで組成物(X)の硬化物(封止材)中の分散剤(F)の遊離の分子が封止材と無機材料製の部材との間の密着性を阻害することを抑制できる。また、分散剤(D)の量は15質量部以上であればより好ましく、50質量部以下であることもより好ましく、40質量部以下であればより更に好ましく、30質量部以下であれば特に好ましい。
【0103】
分散剤(F)は、必要に応じて組成物(X)に配合される。例えば、組成物(X)が、吸湿剤(E)を含有しない場合、吸湿剤(E)が分散性を低下させにくいものである場合等には、分散剤を含有しなくても、組成物(X)は、保存安定性を有する。
【0104】
組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)から硬化物を作製する際に組成物(X)を乾燥させて溶剤を揮発させるような必要がなくなる。このため、組成物(X)がチオール化合物(A)を含有していても、組成物(X)及び硬化物からアウトガスが生じにくい。また、組成物(X)の保存安定性が更に高くなる。そして、組成物(X)から封止材を作製することで、封止材5は、実質的に溶剤を含まないことを実現できる。このため、発光装置1において、封止材5から発生するアウトガスに起因する空隙を生じにくくできる。溶剤の含有量は、0.5質量%以下であればより好ましく、0.3質量%以下であれば更に好ましく、0.1質量%以下であれば特に好ましい。組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は不可避的に混入する溶剤のみを含有することが、特に好ましい。
【0105】
上述の成分を混合することで、組成物(X)を調製できる。組成物(X)は25℃で液状であることが好ましい。
【0106】
2.発光装置の構造
次に、発光装置1の構造について説明する。発光装置1は、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5とを備える。封止材5は、発光素子4に直接接触した状態で発光素子4を覆ってもよく、封止材5と発光素子4との間に何らかの層が介在した状態で発光素子4を覆ってもよい。発光装置1は、例えば照明装置であってもよく、表示装置10(ディスプレイ)であってもよい。
【0107】
発光素子4は、例えば発光ダイオードを含む。発光ダイオードは、例えば有機EL素子(有機発光ダイオード)とマイクロ発光ダイオードとのうち少なくとも一方を含む。発光素子4が有機発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えば有機ELディスプレイである。発光素子4がマイクロ発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えばマイクロLEDディスプレイである。なお、ELとはエレクトロルミネッセンスのことであり、LEDとは発光ダイオードのことである。
【0108】
封止材5は、上記で説明した発光素子封止用組成物の硬化物であることが好ましい。
【0109】
発光装置1の構造の第一例を、図1を参照して説明する。この発光装置1は、トップエミッションタイプである。発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある発光素子4、及び支持基板2と透明基板3との間に充填されている封止材5を備える。また、第一例では、発光装置1は、支持基板2の透明基板3と対向する面及び発光素子4を覆うパッシベーション層6を備える。すなわち、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5との間に、パッシベーション層6が介在している。
【0110】
支持基板2は、例えば樹脂材料から作製されるが、これに限定されない。透明基板3は透光性を有する材料から作製される。透明基板3は、例えば、ガラス製基板又は透明樹脂製基板である。発光素子4が有機EL素子を含む場合、有機EL素子は、例えば一対の電極と、電極間にある有機発光層とを備える。有機発光層は、例えば正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層及び電子輸送層を備え、これらの層は前記の順番に積層している。図1には、発光素子4は一つだけ示されているが、発光装置1は複数の発光素子4を備え、かつ複数の発光素子4が、支持基板2上でアレイを構成していてもよい。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。
【0111】
発光装置1の構造の第二例を、図2を参照して説明する。なお、図1に示す第一例と共通する要素については、図2図1と同じ符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。図2に示す発光装置1も、トップエミッションタイプである。発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある発光素子4、及び発光素子4を覆う封止材5を備える。
【0112】
発光素子4が有機EL素子を含む場合、有機EL素子は、第一例の場合と同様、例えば一対の電極41、43と、電極41、43間にある有機発光層42とを備える。有機発光層42は、例えば正孔注入層421、正孔輸送層422、有機発光層423及び電子輸送層424を備え、これらの層は前記の順番に積層している。
【0113】
発光装置1は複数の発光素子4を備え、かつ複数の発光素子4が、支持基板2上でアレイ9(以下素子アレイ9という)を構成している。素子アレイ9は、隔壁7も備える。隔壁7は、支持基板2上にあり、隣合う二つの発光素子4の間を仕切っている。隔壁7は、例えば感光性の樹脂材料をフォトリソグラフィ法で成形することで作製される。素子アレイ9は、隣合う発光素子4の電極43及び電子輸送層424同士を電気的に接続する接続配線8も備える。接続配線8は、隔壁7上に設けられている。
【0114】
発光装置1は、発光素子4を覆うパッシベーション層6も備える。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。パッシベーション層6は、第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62とを含む。第一パッシベーション層61は素子アレイ9に直接接触した状態で、素子アレイ9を覆うことで、発光素子4を覆っている。第二パッシベーション層62は、第一パッシベーション層61に対して、素子アレイ9とは反対側の位置に配置され、かつ第二パッシベーション層62と第一パッシベーション層61との間には間隔があけられている。第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62との間に、封止材5が充填されている。すなわち、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5との間に、第一パッシベーション層61が介在している。
【0115】
さらに、第二パッシベーション層62と透明基板3との間に、第二封止材52が充填されている。第二封止材52は、例えば透明な樹脂材料から作製される。第二封止材52の材質は特に制限されない。第二封止材52の材質は、封止材5と同じであっても、異なっていてもよい。
【0116】
上記に例示した構造を有する発光装置1における封止材5を、本実施形態に係る発光素子封止用組成物から作製できる。すなわち、発光素子封止用組成物は、発光素子4のための封止材5を作製するために用いられる。さらに言い換えれば、発光素子封止用組成物は、好ましくは封止材作製用の組成物、発光素子封止用の組成物、あるいは発光装置製造用の組成物である。
【0117】
3.封止材の作製方法及び発光装置の製造方法
組成物(X)を用いる封止材5の作製方法及び発光装置1の製造方法について説明する。
【0118】
本実施形態では、組成物(X)を成形してから、酸素を含む雰囲気下で、組成物(X)に光を照射する。組成物(X)に含まれる成分は上述したとおりである。これにより、組成物(X)の硬化物を含有する封止材を作製できる。本実施形態では、組成物(X)に光を照射するにあたって、大気雰囲気下といった酸素を含む雰囲気下であっても、組成物(X)を良好に硬化させやすい。また、組成物(X)の硬化物及び封止材からアウトガスが発生しにくい。このため、組成物(X)から封止材5を作製するにあたり、製造上のコストの低減、及び製造上の工数の低減ができうる。なお、酸素を含む雰囲気下とは、上記で説明したとおり、例えば酸素濃度150L/m3以上の雰囲気である。もちろん、酸素を含む雰囲気に含まれる成分は、酸素のみに限らず、例えば不活性ガスを更に含んでもよい。
【0119】
組成物(X)をインクジェット法で成形することが好ましい。すなわち、組成物(X)をインクジェット法で成形してから、組成物(X)に紫外線等の光を照射して硬化することで、封止材5を作製することが好ましい。この場合、組成物(X)及びその硬化物に異物が混入しにくく、そのため発光素子を覆う封止材を作製するにあたっての歩留まりが悪化しにくくできる。これにより、発光素子と、発光素子を覆う封止材とを備える発光装置1の製造効率を向上することができる。なお、組成物(X)を成形するにあたっては、酸素を含む雰囲気下であってもよいし、酸素を含む雰囲気以外の雰囲気下であってもよい。
【0120】
組成物(X)をインクジェット法で塗布するに当たっては、組成物(X)が常温で十分に低い粘度を有する場合、例えば25℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合には、組成物(X)を加熱せずにインクジェット法で塗布することで成形できる。
【0121】
組成物(X)が加熱されることで低粘度化する性質を有する場合、組成物(X)を加熱してから組成物(X)をインクジェット法で塗布して成形してもよい。組成物(X)の40℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合、組成物(X)を僅かに加熱しただけで低粘度化させることができ、この低粘度化した組成物(X)をインクジェット法で吐出することができる。組成物(X)の加熱温度は、例えば20℃以上50℃以下である。
【0122】
より具体的には、例えばまず、支持基板2を準備する。この支持基板2の一面上に隔壁を、例えば感光性の樹脂材料を用いてフォトリソグラフィ法で作製する。続いて、支持基板2の一面上に複数の発光素子4を設ける。発光素子4は、蒸着法、塗布法といった適宜の方法で作製できる。特に発光素子4を、インクジェット法といった塗布法で作製することが好ましい。これにより、支持基板2に素子アレイ9を作製する。
【0123】
次に、素子アレイ9の上に第一パッシベーション層61を設ける。第一パッシベーション層61は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0124】
次に、第一パッシベーション層61の上に組成物(X)を、例えばインクジェット法で成形して、塗膜を作製する。発光素子4の形成と組成物(X)の塗布のいずれにもインクジェット法を適用すれば、発光装置1の製造効率を特に向上できる。なお、組成物(X)をインクジェット法以外の方法で成形してもよく、例えばキャスティング法で成形してもよい。
【0125】
続いて、塗膜に光を照射することで硬化させて、封止材5を作製する。封止材5の厚みは例えば5μm以上50μm以下である。塗膜に照射させる光の波長は、組成物(X)の組成によって適宜調整すればよいが、例えば可視光であってもよく、紫外光であってもよい。塗膜に照射する光の波長は、例えば385nm以上である。光を照射するための光源としては例えばLEDを用いることができる。照射する光の波長は、385nm以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)に光を照射して硬化する際に、照射光による発光素子4へのダメージを低減することができる。通常、照射波長の波長が大きくなると、樹脂組成物の硬化性が低下しやすいが、組成物(X)は、チオール化合物(A)を含有することで、比較的長波長の光源を使用しても、硬化性が良好である。これにより、組成物(X)から封止材5、及びこの封止材を備える発光装置1を作製すると、発光装置1の製造効率をより向上させることができる。
【0126】
封止材5の厚みが4μm以上50μm以下であることも好ましく、4μm以上15μm以下であると更に好ましい。上述のとおり本実施形態ではインクジェット法で組成物(X)の小さな液滴を高密度に成形しやすいため、4μm以上15μm以下という薄型の封止材5を実現させやすい。このように封止材5を薄型化すると、発光装置1内で封止材5に引っ張り応力及び圧縮応力が生じにくくなる。そのため、フレキシブルな発光装置1を実現しやすくなる。
【0127】
次に、封止材5の上に第二パッシベーション層62を設ける。第二パッシベーション層62は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0128】
次に、支持基板2の一面上に、第二パッシベーション層62を覆うように、硬化性の樹脂材料を設けてから、この樹脂材料に透明基板3を重ねる。透明基板3は、例えばガラス製基板又は透明樹脂製基板である。
【0129】
次に外部から透明基板3へ向けて光を照射する。光は透明基板3を透過して硬化性の樹脂材料へ到達する。これにより、硬化性の樹脂材料が硬化し、第二封止材52が作製される。
【0130】
さらに、上述のとおり組成物(X)の硬化物からなる封止材5は良好な耐熱性を有することができる。そのため、封止材5に重ねてプラズマCVD法といった蒸着法でパッシベーション層6(第二パッシベーション層62)を作製する場合に、封止材5の温度が上昇しても、封止材5は劣化しにくい。また、発光装置の使用時に、発光装置1の温度が上昇しても、封止材5は劣化しにくい。
【0131】
なお、上記の説明では、本実施形態の発光素子封止用組成物は、発光素子を封止するための封止材を作製するために特に好適に用いられることを説明したが、組成物(X)は、インクジェット法で成形される種々の物を作製するために用いることができる。このため、組成物(X)の用途はこれに限定されず、他の用途としてカラーフィルタを構成するカラーレジスト用の材料、ITO電極間の絶縁するための層間絶縁材料、表示装置の光の反射率及び透過率を調整するためのインデックスマッチング層を作製するために用いてもよい。具体的な例として、例えば、例えば、組成物(X)に蛍光体を含有させ、この組成物(X)からカラーフィルタにおけるカラーレジストを作製してもよい。この場合、カラーフィルタにおけるカラーレジストを高密度にかつ精度よく作製しやすい。このカラーフィルタを、例えば有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイといった表示装置に設けることができる。
【実施例0132】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は実施例のみに制限されない。
【0133】
1.組成物の調製
下記表に示す成分を混合することで、実施例及び比較例の組成物を調製した。
【0134】
なお、表中に示される成分の詳細は次のとおりである。また、下記の各成分の粘度はレオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用し、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定された値である。
【0135】
(1)アクリル化合物
(1-1)多官能アクリル化合物
・アクリル化合物1:三官能のアクリル化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート、粘度106mPa・s、ガラス転移温度62℃、屈折率1.472、沸点300℃以上、サートマー社製、品番SR351S。
・アクリル化合物2:二官能のアクリル化合物であるポリエチレングリコール200ジメタクリレート、粘度14mPa・s、新中村化学株式会社製、品名A-200。
・アクリル化合物3:二官能のアクリル化合物であるポリエチレングリコール200ジアクリレート、粘度17mPa・s、新中村化学株式会社製、品名4G。
【0136】
(1-2)単官能アクリル化合物
・アクリル化合物4:単官能のアクリル化合物であるイソボルニルアクリレート、粘度8mPa・s、ガラス転移温度97℃、沸点260℃、大阪有機化学工業株式会社製、品名IBXA。
・アクリル化合物5:単官能のアクリル化合物であるジシクロペンタニルアクリレート、粘度13mPa・s、ガラス転移温度120℃、日立化成株式会社製、品名FA-513AS。
・アクリル化合物6:ジシクロペンタニルメタクリレート、粘度12mPa・s、ガラス転移温度175℃、日立化成株式会社製、品名FA513M。
・アクリル化合物7:単官能のアクリル化合物であるアクリロイルモルホリン、粘度12mPa・s、ガラス転移温度145℃、KJケミカルズ株式会社製。
・アクリル化合物8:単官能のアクリル化合物であるヒドロキシエチルアクリルアミド、粘度280mPa・s、ガラス転移温度98℃。
【0137】
(2)チオール化合物
・チオール化合物1:ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)。一分子中に4つのチオール基を有する、4官能の2級チオール化合物。粘度1100mPa・s(25℃)、昭和電工株式会社製、品名カレンズMT(登録商標)PE1。
・チオール化合物2:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン。一分子中に3つのチオール基を有する、3官能の2級チオール化合物。粘度7500mPa・s(25℃)、昭和電工株式会社製、品名カレンズMT(登録商標)NR1。
・チオール化合物3:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン。一分子中に2つのチオール基を有する、2官能の2級チオール化合物。粘度21mPa・s(25℃)、昭和電工株式会社製、品名カレンズMT(登録商標)BD1。
・チオール化合物4:ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)。一分子中に4つのチオール基を有する、4官能の1級チオール化合物。粘度430mPa・s(25℃)、堺化学工業株式会社製、品名カレンズMT(登録商標)PE1。
【0138】
(3)重合開始剤
・光重合開始剤1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、BASF株式会社製、品名IrgacureTPO。
・光重合開始剤2:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン。アミノアセトフェノン系光重合開始剤、BASF株式会社製、品名Irgacure907。
・光増感剤1:2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン。チオキサントン系増感剤。
【0139】
(4)吸湿剤
(4-1)ゼオライト粒子1
ゼオライト粒子1は、下記の方法で製造され、そのD50は60nm、そのD90は110nm、pHは11である。
【0140】
出発物質のゼオライト粉として平均粒径5μmの4A型ゼオライト・ナトリウムイオンを用意し、このゼオライト粉100gとイオン交換水100gとを混合してスラリーを調製した。
【0141】
このスラリーに粒径100μmのジルコニアビーズ400gを入れてから、ビーズミル粉砕機でスラリー中のゼオライト粉を3時間粉砕することで、Na系ゼオライトの平均粒径が120nmにした。このときのスラリー流量は10kg/h、スラリー粘度は10mPa・sである。
【0142】
続いて、スラリーから粒径100μmのジルコニアビーズを取り除き、それに代えて粒径50μmのジルコニアビーズ400gを入れてから、ビーズミル粉砕機でスラリー中のNa系ゼオライトを1時間粉砕することで、ゼオライト粉の平均粒径を70nmにした。このときのスラリー流量は10kg/h、スラリー粘度は6mPa・sである。
【0143】
続いて、スラリーから粒径50μmのジルコニアビーズを取り除き、それに代えて粒径30μmのジルコニアビーズ450gを入れてから、ビーズミル粉砕機でスラリー中のゼオライト粉を1時間粉砕することで、ゼオライト粉の平均粒径を60nmにした。このときのスラリー流量は10kg/h、スラリー粘度は4mPa・sである。
【0144】
続いて、スラリーを、180℃の温度下で2~3時間放置することで、微粉砕されたゼオライト粉を得た。このゼオライト粉を乳鉢で解砕してから、メッシュを通過させることで粒径を整えることで、ゼオライト粒子1を得た。
【0145】
なお、ゼオライト粒子のpHは次の方法で測定した。ポリエチレン製の瓶にゼオライト粒子0.05gとイオン交換水99.95gとを入れてから、瓶を恒温槽に入れて、90℃で24時間加熱した。続いて、瓶の中の液の上澄みのpHを、堀場製作所製のコンパクトpHメータ<LAQUAtwin>B-711を用いて測定した。
【0146】
(4-2)ゼオライト粒子2
ゼオライト粒子2は、下記の方法で製造され、そのD50は150nm、そのD90は250nm、pHは11である。
【0147】
出発物質のゼオライト粉として平均粒径5μmの4A型ゼオライト・ナトリウムイオンを用意し、このゼオライト粉100gとイオン交換水100gとを混合してスラリーを調製した。このスラリー中のゼオライト粉を、ゼオライト粒子1の場合に準じた方法で、平均粒径が150nmになるように粉砕した。
【0148】
続いて、スラリーを、180℃の温度下で2~3時間放置することで、微粉砕されたゼオライト粉を得た。このゼオライト粉を乳鉢で解砕してから、メッシュを通過させることで粒径を整えることで、ゼオライト粒子2を得た。
【0149】
(5)分散剤
・分散剤1:ルーブリゾール株式会社製、品名SOLSPERSE41000、リン酸基を含有する界面活性剤。
【0150】
2.評価試験
実施例及び比較例について、次の評価試験を実施した。その結果を表に示す。
【0151】
2.1.粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
【0152】
2.2.タック性(硬化性)
組成物を平滑な台の上に塗布してから、これにシーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、ピーク波長395nm、出力100mW/cm2の条件で光を15秒間照射することで光硬化させた。光を照射する際の雰囲気は、実施例1-19及び比較例1では、酸素を含む雰囲気(酸素濃度210L/m3)とし、比較例2及び3では、窒素雰囲気(酸素濃度5L/m3)とした。これにより、厚み10μmのフィルムを作製した。試験者が、このフィルムの表面に指で触れて、タックの有無を判断した。その結果、試験者がタックを感じない場合を「A」、タックを感じた場合を「C」と、評価した。実施例1~19では、窒素雰囲気で光を照射した比較例2及び3と同等の硬化性を達成できることがわかった。
【0153】
2.3.透過率
組成物を塗布して塗膜を作製し、この塗膜を、シーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、ピーク波長395nm、約100mW/cm2の条件で15秒間光を照
射して光硬化させることで、厚み10μmのフィルムを作製した。光を照射する際の雰囲気は、上記2.2.の場合と同様である。このフィルムの、JIS K7361-1による全光線透過率を測定した。
【0154】
2.4.硬化物アウトガス評価
組成物の硬化物を加熱した場合のアウトガスをヘッドスペース法でサンプリングしてガスクロマトグラフにより測定した。ヘッドスペース用バイアルに組成物を100mg入れ、組成物に、シーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、ピーク波長395nm、約100mW/cm2の条件で光照射して組成物を硬化させた後、バイアルを封止し、80℃で30分間加熱してから、バイアル中の気相部分をガスクロマトグラフに導入して分析した。その結果、発生したガスが300ppm以下であった場合を「A」、300ppmを超え500ppm未満であった場合を「B」、500ppm以上であった場合を「C」と評価した。
【0155】
2.5.インクジェット印刷性
インクジェットプリンターとしてリコー社製の型番MH2420を用い、組成物をインクジェットプリンターのカートリッジに入れ、インクジェットプリンターにおけるノズルからカートリッジ内の組成物を吐出しうることを確認してから、ノズルから組成物を吐出させてテストパターンを連続で印刷した。その結果、組成物を1時間吐出できるとともに吐出動作が安定していた場合を「A」、組成物を1時間吐出できたが吐出動作が断続的に不安定になった場合を「B」、吐出開始から1時間経過前にノズルが詰まって組成物を吐出できなくなった場合を「C」と、評価した。
【0156】
2.6.密着性
石英ガラス片(寸法50mm×25mm×1mm)の表面上に、プラズマCVD法によって厚み100nmの窒化ケイ素膜(屈折率1.81)を作製した。この、窒化ケイ素膜の上に組成物を塗布して厚み50μmの塗膜を作製した。これにより第一試験片を作製した。
【0157】
別の石英ガラス片(寸法76mm×52mm×1mm)表面上に、プラズマCVD法によって厚み100nmの窒化ケイ素膜(屈折率1.81)を作製した。これにより第二試験片を作製した。
【0158】
第一試験片における塗膜の上に、第二試験片における窒化ケイ素膜を、両者が接触する領域の寸法が25mm×25mmとなるように重ねた。続いて、塗膜を、シーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、約100mW/cm2の条件で15秒間光を照射することで、硬化させた。光を照射する際の雰囲気は、上記2.2.の場合と同様である。
【0159】
次に、二つの石英ガラス片の間の密着強度を、JIS-K-6850に準じ、引張剪断(引張速度5mm/分)試験を行うことで、評価した。
【0160】
2.7.保存安定性
組成物を窒素雰囲気下、40℃の温度で1か月間放置した。この試験の前の組成物の粘度と、試験の後の組成物の粘度とを、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定し、その結果から、粘度の変化率を算出した。この変化率が5%未満である場合を「A」、5%以上10%未満である場合を「B」、10%以上である場合を「C」と評価した。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
図1
図2