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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008190
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】電磁接触器の機械ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/32 20060101AFI20230112BHJP
   H01H 50/00 20060101ALI20230112BHJP
   H01H 51/10 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01H50/32 B
H01H50/00 E
H01H51/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111552
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 耕明
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 遼太郎
(57)【要約】
【課題】電磁接触器の機械ラッチ装置において、ラッチ支えの戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業を不要にし、利便性を向上させる。
【解決手段】ラッチ支え22は、側方に突出し釈放側を向いたラッチ面44が形成された突出部33を有する。回動部材24は、一端側が回動可能に支持され、他端側が突出部33に向かって付勢されており、ラッチ支え22が釈放側にあるときには、他端側の外周面51が突出部33の先端に当接することでラッチ支え22が投入側へ変位することを許容する。また、ラッチ支え22が投入側にあるときには、他端側がラッチ支え22における変位方向の位置に応じて回動し、先端面52がラッチ面44に対向することで、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁接触器の接点支えに連結されて釈放側と投入側との間で変位可能であり、側方に突出し釈放側を向いたラッチ面が形成された突出部を有するラッチ支えと、
前記ラッチ支えの側方で一端側が回動可能に支持され、他端側が前記突出部に向かって付勢されており、前記ラッチ支えが釈放側にあるときには、他端側の外周面が前記突出部の先端に当接することで前記ラッチ支えが投入側へ変位することを許容し、前記ラッチ支えが投入側にあるときには、他端側が前記ラッチ支えにおける変位方向の位置に応じて回動し、他端側の先端面が前記ラッチ面に対向することで、前記ラッチ支えが釈放側へ戻ることを前記変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する回動部材と、を備えることを特徴とする電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項2】
前記ラッチ面は、前記回動部材の側から前記ラッチ支えの側に向かうほど前記投入側から前記釈放側に向かうように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項3】
前記ラッチ面は、前記回動部材の側から前記ラッチ支えの側に向かうほど前記投入側から前記釈放側に向かうように階段状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項4】
電磁石によって駆動され、前記ラッチ支えの側から前記回動部材における他端側の前記外周面に向かって前進するときに、先端で前記回動部材における他端側の前記外周面を押し返すプランジャを備えることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【請求項5】
前記回動部材は、手動によって前記回動部材を回動操作する手動操作部を備えることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の電磁接触器の機械ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器の機械ラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
停電や電圧降下によって電磁接触器を遮断させたくない回路や、常時、通電の消費電力を抑えたい場合には、電磁接触器の投入状態を機械的に保持することが要求されるため、機械ラッチ装置が電磁接触器に取り付けられる。特許文献1に示される機械ラッチ装置では、接点支えに連動してラッチ支えが投入側に変位したときに、ラッチ支えの肩部にラッチレバーのローラを引掛けることで、ラッチ支えが釈放側に戻ることを機械的に阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-251601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁接触器の制御コイルを励磁しているとき、ラッチ支えの肩部とローラとの間には僅かな隙間(遊び)が設けられているが、接点支えのストローク量は電磁接触器の機種や、同じ機種の場合でも個体差によって異なるため、隙間の大きさにも違いが生じる。電磁接触器の制御コイルを非励磁にすると、隙間の分だけラッチ支えが戻るため、隙間の大きさによっては、外径の異なるローラに交換するなどして、隙間の調整作業が必要であった。
本発明の目的は、電磁接触器の機械ラッチ装置において、ラッチ支えの戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業を不要にし、利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器の機械ラッチ装置は、電磁接触器の接点支えに連結されて釈放側と投入側との間で変位可能であり、側方に突出し釈放側を向いたラッチ面が形成された突出部を有するラッチ支えと、ラッチ支えの側方で一端側が回動可能に支持され、他端側が突出部に向かって付勢されており、ラッチ支えが釈放側にあるときには、他端側の外周面が突出部の先端に当接することでラッチ支えが投入側へ変位することを許容し、ラッチ支えが投入側にあるときには、他端側がラッチ支えにおける変位方向の位置に応じて回動し、他端側の先端面がラッチ面に対向することで、ラッチ支えが釈放側へ戻ることを変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する回動部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ラッチ支えが投入側にあるとき、変位方向の位置に応じて回動部材の先端面がラッチ面に対向することで、ラッチ支えが釈放側へ戻ることを、変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する。したがって、ラッチ支えの戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業が不要となり、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電磁接触器の機械ラッチ装置を示す図である。
図2】ラッチ支えを示す図である。
図3】回動部材を示す図である。
図4】機械ラッチ装置12の外観図である。
図5】回動部材の動作を示す図である。
図6】比較例を示す図である。
図7】回動部材の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。なお、奥行方向の手前側は変位方向の釈放側に対応し、奥行方向の奥側は変位方向の投入側に対応する。
図1は、電磁接触器の機械ラッチ装置を示す図である。
停電や電圧降下によって電磁接触器11を遮断させたくない回路や、常時、通電の消費電力を抑えたい場合には、電磁接触器11の投入状態を機械的に保持することが要求されるため、機械ラッチ装置12が電磁接触器11に取り付けられる。ここでは、電磁接触器11の一部を二点鎖線で仮想的に示し、詳細な説明は省略する。
【0010】
以下、機械ラッチ装置12について説明する。ここでは、縦方向の一方から見た構造を示しており、説明を簡単にするために接点部については図示を省略している。機械ラッチ装置12は、ケース21と、ラッチ支え22と、捩じりばね23と、回動部材24と、電磁石25と、プランジャ26と、を備える。
ケース21は、外形が略直方体であり、電磁接触器11における奥行方向の手前側に取り付けられる。
ラッチ支え22は、ケース21内で幅方向の略中央に配置され、奥行方向の奥側がケース21の開口部13から突出し、電磁接触器11の接点支え14に連結されることで、釈放側と投入側との間で変位可能である。ここでは、接点支え14の一部を二点鎖線で仮想的に示し、詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、ラッチ支えを示す図である。
ラッチ支え22は、基体31と、脚部32と、突出部33と、b接点部34と、a接点部35と、を備える。
基体31は、変位方向及び縦方向に沿った略板状であり、縦方向の略中央には、変位方向に沿って延び、幅方向に貫通した貫通穴41が形成されている。
脚部32は、基体31の投入側に設けられており、投入側に沿って延びている。脚部32には、投入側の端部に、縦方向に沿って形成された凹溝42が形成されている。凹溝42は、釈放側が幅方向の両側に拡張され、縦方向から見て略T字状に形成されている。凹溝42が電磁接触器11の接点支え14に対して縦方向に沿って嵌め合わされることで(図1参照)、ラッチ支え22が接点支え14に連動して釈放側と投入側との間で変位可能となる。
【0012】
突出部33は、基体31における幅方向の一方側で、且つ貫通穴41の投入側に形成されており、幅方向の一方側に突出し、釈放側を向いたラッチ面44を有する。貫通穴41は、投入側が突出部33にまで達しており、ラッチ面44の一部を投入側に向かって凹となるように形成されている。ラッチ面44は、回動部材24の側からラッチ支え22の側に向かうほど投入側から釈放側に向かうように傾斜しており、縦方向及び幅方向に沿った平面に対して例えば20度前後の傾斜角度である。突出部33の先端は、バリが生じないように面取りされていることが望ましい。
【0013】
b接点部34は、縦方向に貫通した略角筒状であり、基体31における幅方向の一方側で、且つ貫通穴41よりも釈放側に形成され、図示しない可動接触子を弾性支持する。b接点部34は、ラッチ支え22が釈放側にあるときに可動接触子を図示しない固定接触子に接触させ、ラッチ支え22が投入側にあるときに可動接触子を固定接触子から離間させる。
a接点部35は、幅方向に貫通した略角筒状であり、基体31における幅方向の他方側で、且つ貫通穴41よりも釈放側に形成され、図示しない可動接触子を弾性支持する。a接点部35は、ラッチ支え22が釈放側にあるときに可動接触子を図示しない固定接触子から離間させており、ラッチ支え22が投入側にあるときに可動接触子を固定接触子に接触させる。
【0014】
図3は、回動部材を示す図である。
図中の(a)は、回動部材24を幅方向の外側から見た図であり、図中の(b)は、A‐A断面を縦方向の一方側から見た図である。回動部材24は、ラッチ支え22の貫通穴41よりも縦方向に大きい。また、内部が中空であり、幅方向に広くなっている奥行方向の手前側が開放され、幅方向に狭くなっている奥行方向の奥側が閉塞されることで、縦方向から見て、幅方向及び奥行方向に沿った断面が略V字状になっている。回動部材24における奥行方向の奥側には、ラッチ支え22の突出部33に対向する外周面51と、奥行方向の奥側を向いた略平らな先端面52と、が形成されている。回動部材24は、奥行方向の手前側に、縦方向に沿った円柱状の支軸53が挿通されており、支軸53によって回動可能な状態でケース21に支持されている。回動部材24の内部では、捩じりばね23に支軸53が挿通されている。捩じりばね23は、一端側がケース21の内周面に当接し、他端側が回動部材24の内周面に当接しており、回動部材24における奥行方向の奥側を突出部33に向かって付勢している(図1参照)。
【0015】
回動部材24の外周面には、縦方向の一方側に突出した円柱状の手動操作部54が形成されている。
図4は、機械ラッチ装置12の外観図である。
ケース21には、縦方向における一方側の側面に、手動操作部54を露出させる長穴55が形成されている。手動操作部54は、ケース21の側面よりも僅かに出っ張る長さに設定されている。長穴55は、回動部材24が回動するときの手動操作部54の軌道に沿って円弧状に延びている。
【0016】
図1に示すように、電磁石25は、ケース21内でラッチ支え22よりも幅方向の他方側に配置されている。ここでは、電磁石25を二点鎖線で仮想的に示し、詳細な説明は省略するが、図示しないスプール、制御コイル、ヨーク、及び復帰ばねを備えている。そして、制御コイルへの通電によって励磁されると、復帰ばねの弾発力に抗してプランジャ26を幅方向の一方側へ前進させ、制御コイルへの通電を停止し非励磁状態にすると、復帰ばねがプランジャ26を幅方向の他方側へと後退させる。
プランジャ26は、電磁石25のスプールに挿入された継鉄であり、幅方向の一方側に突出した円柱状の突出棒28が形成されている。突出棒28は、ラッチ支え22の貫通穴41を介して幅方向の一方側へ突き抜けており、半球状に形成された先端が回動部材24に対向している。
【0017】
《動作》
次に、第一実施形態の主要な動作について説明する。
図5は、回動部材の動作を示す図である。
図中の(a)は、回動部材24が初期位置にある状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22が釈放側にあり、回動部材24は、外周面51がラッチ支え22における突出部33の先端に当接している。すなわち、回動部材24は、捩じりばね23の弾発力に抗して奥行方向の奥側が幅方向の一方側へと変位した初期位置にある。このとき、ラッチ支え22は投入側に変位することが許容されている。
【0018】
図中の(b)は、回動部材24が初期位置から回動した状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22が投入側にあり、回動部材24が捩じりばね23の弾発力によって回動し、奥行方向の奥側が幅方向の他方側へと変位している。このとき、回動部材24の先端面52が突出部33のラッチ面44に接触することで、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを機械的に阻止している。
図中の(c)は、回動部材24が初期位置からさらに回動した状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22が(b)の状態よりも投入側にあり、回動部材24が捩じりばね23の弾発力によって回動し、奥行方向の奥側が(b)の状態よりも幅方向の他方側へと変位している。このとき、回動部材24の先端面52が突出部33のラッチ面44に接触することで、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを機械的に阻止している。
【0019】
次に、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを機械的に阻止したラッチ状態を解除する動作について説明する。一つはプランジャ26を駆動する方法である。すなわち、投入時に、電磁石25でプランジャ26を幅方向の一方側へ前進させることで、突出棒28が回動部材24を押して、奥行方向の奥側を幅方向の一方側へ変位させる。もう一つは手動操作部54を手動操作する方法である。すなわち、投入時に、ユーザが回動部材24の手動操作部54を操作することで、奥行方向の奥側を幅方向の一方側へ変位させる。このように、回動部材24が初期位置に戻ることで、ラッチ支え22のラッチ状態が解除される。
【0020】
《作用》
次に、第一実施形態の主要な作用について説明する。
接点支え14のストローク量は電磁接触器11の機種によって異なるため、従来構造では、ラッチ支えの戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業が必要であった。
そこで、第一実施形態における電磁接触器11の機械ラッチ装置12は、ラッチ支え22と、回動部材24と、を備える。ラッチ支え22は、電磁接触器11の接点支え14に連結されて釈放側と投入側との間で変位可能であり、側方に突出し釈放側を向いたラッチ面44が形成された突出部33を有する。回動部材24は、ラッチ支え22の側方で一端側が回動可能に支持され、他端側が突出部33に向かって付勢されている。また、ラッチ支え22が釈放側にあるときには、他端側の外周面51が突出部33の先端に当接することでラッチ支え22が投入側へ変位することを許容する。また、ラッチ支え22が投入側にあるときには、他端側がラッチ支え22における変位方向の位置に応じて回動し、先端面52がラッチ面44に対向することで、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する。これにより、ラッチ支え22の戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業が不要となり、利便性を向上させることができる。また、回動部材24は、単一の部品であるため、部品点数の増大を抑制でき、組み立ても容易である。
【0021】
ラッチ面44は、回動部材24の側からラッチ支え22の側に向かうほど投入側から釈放側に向かうように傾斜している。これにより、ラッチ支え22の位置に応じて、回動部材24の先端面52がラッチ面44に対向し、ラッチ支え22が釈放側へ戻ることを、変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止することができる。しかも、ラッチ支え22の戻りを機械的に阻止する部分の隙間をゼロにすることができる。したがって、電磁接触器11の制御コイルを非励磁にしても、ラッチ支え22の戻りを抑制することができる。また、ラッチ面44の輪郭に応じて回動部材24が従動するカム構造において、ラッチ面44には段差がないので、回動部材24は段付き感のない滑らかな動作が可能となる。さらに、突出部33のラッチ面44や回動部材24の先端面52に高度な寸法精度が求められるわけではないため、製造コストの増大を抑制できる。
【0022】
機械ラッチ装置12は、プランジャ26を備える。プランジャ26は、電磁石25によって駆動され、ラッチ支え22の側から回動部材24における他端側の外周面51に向かって前進するときに、先端で回動部材24における他端側の外周面51を押し返す。これにより、ラッチ支え22のラッチ状態を容易に解除することができる。
回動部材24は、ユーザによって回動操作される手動操作部54を備えている。したがって、回動部材24の手動操作部54がユーザによって操作されるときに、奥行方向の奥側が押し返される。これにより、ラッチ支え22のラッチ状態を容易に解除することができる。
【0023】
次に、比較例について説明する。
図6は、比較例を示す図である。
図中の(a)は、縦方向の一方側から見た図である。図において、ラッチ支え71は肩部72を備えており、ラッチレバー73はローラ74を備えている。比較例では、ラッチ支え71が投入側に変位したときに、ラッチ支え71の肩部72にラッチレバー73のローラ74を引掛けることで、ラッチ支え71が釈放側に戻ることを機械的に阻止していた。図中の(b)は、ラッチ支え71の戻りを機械的に阻止する部分の拡大図である。電磁接触器11の制御コイルを励磁しているとき、肩部72とローラ74との間には僅かな隙間d(遊び)が設けられているが、接点支え14のストローク量は電磁接触器11の機種によって異なるため、隙間dの大きさにも違いが生じる。電磁接触器11の制御コイルを非励磁にすると、隙間dの分だけラッチ支え71が戻るため、隙間dの大きさによっては、外径の異なるローラ74に交換するなどして、隙間dの調整作業が必要であった。
【0024】
《第二実施形態》
《構成》
第二実施形態は、ラッチ支え22の戻りを機械的に阻止する部分の構造を変化させたものであり、それ以外は前述した第一実施形態と同様の構成であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7は、回動部材の動作を示す図である。
ここでは、前述したラッチ支え22、突出部33、及び回動部材24を、新たなラッチ支え22a、突出部81、及び回動部材82に変更してある。
【0025】
突出部81は、ラッチ面83a~83cが、回動部材82の側からラッチ支え22aの側に向かうほど投入側から釈放側に向かうように階段状に形成されている。ここでは、幅方向の一方側から他方側に向かって、ラッチ面83a、ラッチ面83b、ラッチ面83cの順に、変位方向の位置が釈放側へ上ってゆくように設定されている。ラッチ面83aは、縦方向及び幅方向に沿った平面であるが、ラッチ面83b、83cは、回動部材82の側からラッチ支え22aの側に向かうほど投入側から釈放側に向かうように僅かに傾斜している。夫々の段差高さは同一であり、例えば0.5mm程度である。
回動部材82は、奥行方向に延びており、奥行方向の奥側には、ラッチ支え22aの突出部81に対向する外周面84と、奥行方向の奥側を向いた縦方向から見て半円状の先端面85と、が形成されている。なお、支軸53によって回動可能に支持されていること、円柱状の手動操作部54が形成されていること、及び奥行方向の奥側がばねによって突出部81に向かって付勢されていることは、前述した第一実施形態と同様である。
【0026】
《動作》
次に、第二実施形態の主要な動作について説明する。
図中の(a)は、回動部材82が初期位置にある状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22aが釈放側にあり、回動部材82は、外周面84がラッチ支え22aにおける突出部81の先端に当接している。すなわち、回動部材82は、捩じりばね23の弾発力に抗して奥行方向の奥側が幅方向の一方側へと変位した初期位置にある。このとき、ラッチ支え22aは投入側に変位することが許容されている。
【0027】
図中の(b)は、回動部材82が初期位置から回動した状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22aが投入側にあり、回動部材82が捩じりばね23の弾発力によって回動し、奥行方向の奥側が幅方向の他方側へと変位している。このとき、回動部材82の先端面85が突出部81における一段目のラッチ面83aに接触することで、ラッチ支え22aが釈放側へ戻ることを機械的に阻止している。
図中の(c)は、回動部材82が初期位置からさらに回動した状態である。ここでは、接点支え14に連動してラッチ支え22aが(b)の状態よりも投入側にあり、回動部材82が捩じりばね23の弾発力によって回動し、奥行方向の奥側が(b)の状態よりも幅方向の他方側へと変位している。このとき、回動部材82の先端面85が突出部81における三段目のラッチ面83cに接触することで、ラッチ支え22aが釈放側へ戻ることを機械的に阻止している。
その他の動作については、前述した第一実施形態と同様である。
【0028】
《作用》
次に第二実施形態の主要な作用について説明する。
第二実施形態における電磁接触器11の機械ラッチ装置12は、ラッチ支え22aと、回動部材82と、を備える。ラッチ支え22aは、電磁接触器11の接点支え14に連結されて釈放側と投入側との間で変位可能であり、側方に突出し釈放側を向いたラッチ面83a~83cが形成された突出部81を有する。回動部材82は、ラッチ支え22aの側方で一端側が回動可能に支持され、他端側が突出部81に向かって付勢されている。また、ラッチ支え22aが釈放側にあるときには、他端側の外周面84が突出部81の先端に当接することでラッチ支え22aが投入側へ変位することを許容する。また、ラッチ支え22aが投入側にあるときには、他端側がラッチ支え22aにおける変位方向の位置に応じて回動し、先端面85がラッチ面83a~83cに対向することで、ラッチ支え22aが釈放側へ戻ることを変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止する。これにより、ラッチ支え22aの戻りを機械的に阻止する部分の隙間を調整する作業が不要となり、利便性を向上させることができる。また、回動部材82は、単一の部品であるため、部品点数の増大を抑制でき、組み立ても容易である。
【0029】
ラッチ面83a~83cは、回動部材82の側からラッチ支え22aの側に向かうほど投入側から釈放側に向かうように階段状に形成されている。これにより、ラッチ支え22aの位置に応じて、回動部材82の先端面85がラッチ面83a~83cの何れか一つに対向し、ラッチ支え22aが釈放側へ戻ることを、変位方向に沿った複数の位置で機械的に阻止することができる。また、ラッチ面83a~83cの輪郭に応じて回動部材82が従動するカム構造において、ラッチ面83a~83cが階段状に形成されているので、回動部材82は節度感のある動作が可能となる。
他の作用効果については、前述した第一実施形態と同様である。
【0030】
《変形例》
第二実施形態では、ラッチ支え22aが釈放側へ戻ることを変位方向に沿った三つの位置で機械的に阻止する構成について説明したが、これに限定されるものではない。したがって、ラッチ面の数量を変更することによって、変位方向に沿った二つの位置や四つ以上の位置で機械的に阻止する構成としてもよい。
【0031】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0032】
11…電磁接触器、12…機械ラッチ装置、13…開口部、14…接点支え、21…ケース、22…ラッチ支え、23…捩じりばね、24…回動部材、25…電磁石、26…プランジャ、28…突出棒、31…基体、32…脚部、33…突出部、34…b接点部、35…a接点部、41…貫通穴、42…凹溝、44…ラッチ面、51…外周面、52…先端面、53…支軸、54…手動操作部、55…長穴、71…ラッチ支え、72…肩部、73…ラッチレバー、74…ローラ、22a…ラッチ支え、81…突出部、82…回動部材、83a…ラッチ面、83b…ラッチ面、83c…ラッチ面、84…外周面、85…先端面、d…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7