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特開2023-8191外装用石材の取付構造、及び、外壁の施工方法
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  • 特開-外装用石材の取付構造、及び、外壁の施工方法 図1
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  • 特開-外装用石材の取付構造、及び、外壁の施工方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008191
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】外装用石材の取付構造、及び、外壁の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230112BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111553
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤原 治哉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA13
2E110AA43
2E110AA54
2E110AB04
2E110AB22
2E110CA04
2E110CA22
2E110DA10
2E110DA12
2E110DA15
2E110DA16
2E110DB14
2E110DC01
2E110DC02
2E110DC21
2E110DC36
2E110DD03
2E110GA33W
2E110GA33Y
2E110GB02Y
2E110GB13W
(57)【要約】
【課題】躯体側下地に対して石材等の外装材を取り付ける当たり、止水性を確保しながら、躯体側下地からの仕上げ寸法を小さくすること。
【解決手段】躯体側下地3に対して取付金具4を用いて止水パネル5を取り付け、その止水パネル5の表面側に、外装用石材2を受け止め支持する状態で留め付ける受け止め留付部6が備えられ、止水パネル5の表面側に対して、受け止め留付部6にて外装用石材2を直接留め付けている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側下地に対して取付金具を用いて止水パネルを取り付け、
その止水パネルの表面側に、外装用石材を受け止め支持する状態で留め付ける受け止め留付部が備えられ、
前記止水パネルの表面側に対して、前記受け止め留付部にて前記外装用石材を直接留め付けている外装用石材の取付構造。
【請求項2】
前記止水パネルの裏面側には、上下方向に延びる補強材が備えられ、
その補強材には、躯体側下地に取り付けられた取付金具の取付金具側係合部に対して係合自在な補強材側係合部が備えられ、
前記取付金具側係合部に対して前記補強材側係合部を係合させることで、前記止水パネルの面外方向及び面内方向における位置決めを行い、
前記補強材には、前記金具側係合部に対して前記補強材側係合部を係合させる際に、上下方向における前記止水パネルの取付位置を調整自在な上下位置調整部材が備えられている請求項1に記載の外装用石材の取付構造。
【請求項3】
前記受け止め留付部が、前記止水パネルにおいて前記補強材にて補強されている部位に固定されている請求項2に記載の外装用石材の取付構造。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の外装用石材の取付構造を有し、複数の外装用石材を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付ける外壁の施工方法において、
前記躯体側下地に対して前記取付金具を取り付ける第1取付工程と、
その第1取付工程にて取り付けられた取付金具に対して前記止水パネルを取り付け、隣接する止水パネル同士の間の第1隙間を閉塞する第1シール部材を配設させる第2取付工程と、
その第2取付工程にて取り付けられた止水パネルの表面側に前記受け止め留付部にて前記外装用石材を直接留め付け、隣接する外装用石材同士の間の第2隙間を閉塞する第2シール部材を配設させる第3取付工程とを順次行い、
前記第1隙間の方が、前記第2隙間よりもその間隔が大きく設定されている外壁の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材等の外装用石材を躯体側下地に取り付ける外装用石材の取付構造、及び、その外装用石材の取付構造を用いた外壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外装用石材等の外装材を乾式にて躯体側下地に取り付けるに当たり、外装材の裏面側に止水パネルを設ける必要がある。そこで、従来、躯体側下地に対して取付金具等を用いて止水パネルを取り付け、躯体側下地に取り付けられた止水パネルに対して取付金具等を用いて外装材を取り付けているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-331986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の取付構造では、外装材の仕上げ面の内側(躯体側)に、止水パネルを取り付けるスペースを確保する必要がある。よって、止水パネルの仕上げ寸法に加えて、外装材の仕上げ寸法が必要となり、躯体側下地からの合計の仕上げ寸法が大きくなってしまう。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、躯体側下地に対して石材等の外装材を取り付ける当たり、止水性を確保しながら、躯体側下地からの仕上げ寸法を小さくできる外装用石材の取付構造、及び、その外装用石材の取付構造を用いた外壁の施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、躯体側下地に対して取付金具を用いて止水パネルを取り付け、
その止水パネルの表面側に、外装用石材を受け止め支持する状態で留め付ける受け止め留付部が備えられ、
前記止水パネルの表面側に対して、前記受け止め留付部にて前記外装用石材を直接留め付けている点にある。
【0007】
本構成によれば、躯体側下地に取り付けられた止水パネルの表面側に対して、受け止め留付部にて外装用石材を直接留め付けるので、外装用石材の耐風圧及び地震力に対する強度を受け止め留付部にて負担しながら、外装用石材を取り付けることができる。しかも、外装用石材を取り付けるに当たり、止水パネルの仕上げ寸法は必要になるものの、止水パネルの表面側に外装用石材を直接留め付けるだけのスペースを確保すればよく、その確保すべきスペースを小さく抑えることができる。これにより、外装用石材の耐風圧及び地震力に対する強度を受け止め留付部にて適切に負担しながら、外装用石材の内側の止水パネルにて止水性を確保し、躯体側下地からの仕上げ寸法を小さくすることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記止水パネルの裏面側には、上下方向に延びる補強材が備えられ、
その補強材には、躯体側下地に取り付けられた取付金具の取付金具側係合部に対して係合自在な補強材側係合部が備えられ、
前記取付金具側係合部に対して前記補強材側係合部を係合させることで、前記止水パネルの面外方向及び面内方向における位置決めを行い、
前記補強材には、前記取付金具側係合部に対して前記補強材側係合部を係合させる際に、上下方向における前記止水パネルの取付位置を調整自在な上下位置調整部材が備えられている点にある。
【0009】
本構成によれば、止水パネルの裏面側に補強材を備えることで、外装用石材を直接留め付ける止水パネルの補強を行うことができ、外装用石材の支持強度を適切に補強することができる。しかも、躯体側下地に取り付けられた取付金具に対して止水パネルを取り付けるに当たり、取付金具側係合部に対して補強材側係合部を係合させるだけで、止水パネルの面外方向及び面内方向における位置決めを行うことができ、施工性の向上を図ることができる。しかも、取付金具側係合部に対して補強材側係合部を係合させる際に、上下位置調整部材にて上下方向における止水パネルの取付位置を調整することができるので、施工性の向上を図りながら、上下方向において止水パネルを適切な位置に取り付けることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記受け止め留付部が、前記止水パネルにおいて前記補強材にて補強されている部位に固定されている点にある。
【0011】
本構成によれば、受け止め留付部が、止水パネルにおいて補強材にて補強されている部位に固定されているので、外装用石材の荷重を受ける受け止め留付部の支持強度を向上することができ、外装用石材を適切に支持することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、第1~第3特徴構成の何れかに記載の外装用石材の取付構造を有し、複数の外装用石材を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付ける外壁の施工方法において、
前記躯体側下地に対して前記取付金具を取り付ける第1取付工程と、
その第1取付工程にて取り付けられた取付金具に対して前記止水パネルを取り付け、隣接する止水パネル同士の間の第1隙間を閉塞する第1シール部材を配設させる第2取付工程と、
その第2取付工程にて取り付けられた止水パネルの表面側に前記受け止め留付部にて前記外装用石材を直接留め付け、隣接する外装用石材同士の間の第2隙間を閉塞する第2シール部材を配設させる第3取付工程とを順次行い、
前記第1隙間の方が、前記第2隙間よりもその間隔が大きく設定されている点にある。
【0013】
例えば、施工方法としては、先に、止水パネルの表面側に受け止め留付部にて外装用石材を直接留め付け、その外装用石材が留め付けられた止水パネルを、躯体側下地に取り付けられた取付金具に取り付けることも考えられる。
【0014】
しかしながら、この場合には、複数の外装用石材を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付けるに当たり、止水パネル同士の間の隙間が、止水パネルの表面側に留め付けた外装用石材にて隠れてしまい、止水パネル同士の間の隙間にシール部材を配設させるシール作業が行えなくなる。
【0015】
そこで、本構成によれば、第2取付工程では、取付金具に対して止水パネルだけを取り付けることで、隣接する止水パネル同士の間の第1隙間が露出することになり、その第1隙間に第1シール部材を配設させるシール作業を行うことができる。しかも、第3取付工程では、止水パネルに外装用石材を直接留め付け、隣接する外装用石材同士の間の第2隙間に第2シール部材を配設させるシール作業を行い、外装用石材同士の間の隙間にも第2シール材を介在させることができる。
【0016】
このように、第1取付工程、第2取付工程、第3取付工程を順次行うことで、隣接する止水パネル同士の間の隙間、及び、隣接する外装用石材同士の間の隙間にシール部材を適切に介在させながら、複数の外装用石材を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で適切に取り付けることができる。
【0017】
しかも、第1隙間の間隔を第2隙間よりも大きくすることで、第1シール部材の大きさを、追従性を良好にしてシール機能を維持できるだけの大きさとすることができ、止水パネルにおける止水ラインでの止水性を十分に確保することができる。更に、第2隙間を第1隙間よりも小さくすることで、縦横に複数並ぶ外装用石材同士の間の隙間を小さくして、意匠性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】外装用石材の取付構造の概略構成を示す側面図
図2】外装用石材の取付構造の要部を示す建物の外方側から見た正面図
図3】外装用石材の取付構造の上方側部位を示す平面図
図4】外装用石材の取付構造の下方側部位を示す平面図
図5】外壁の施工方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る外装用石材の取付構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
この外装用石材の取付構造1は、図1図3及び図4に示すように、外装用石材2を乾式にて躯体側下地3に取り付けるものであり、複数の外装用石材2を縦横に並ぶ状態で取り付けて建物の外壁を構築している。外装用石材2は、所定の厚みを有する矩形状のパネルにて形成されており、石材を含むものであればよい。躯体側下地3は、例えば、建物の内方側に配設された柱や二次部材等の鉄骨とすることができる。
【0020】
図1は、上下方向に並ぶ状態で取り付けた複数の外装用石材2のうち、1つの外装用石材2を中心に示した側面図である。図3及び図4は、左右方向(外壁の面内方向)に並ぶ状態で取り付けた複数の外装用石材2のうち、隣接する2つの外装用石材2の隣接部位を中心に示した平面図である。
【0021】
この外装用石材の取付構造1では、図1図3及び図4に示すように、躯体側下地3に対して取付金具4を用いて止水パネル5が取り付けられ、その止水パネル5の表面側(図1における左側、図4における下方側)には、図1及び図4に示すように、外装用石材2を受け止め支持する状態で留め付ける受け止め留付部6が備えられている。外装用石材2は、躯体側下地3に取り付けられた止水パネル5の表面側に対して、受け止め留付部6にて直接留め付けられている。止水パネル5に対して留め付ける外装用石材2の数については、例えば、1つの止水パネル5に対して、縦横に並ぶ状態で複数の外装用石材2が留め付けられている。
【0022】
取付金具4は、図1図3及び図4に示すように、左右方向(外壁の面内方向)及び上下方向に所定間隔(例えば、外装用石材2の幅に対応する間隔)を隔てる状態で複数配設されている。取付金具4は、躯体側下地3側に取り付ける第1取付金具41と、止水パネル5側を取り付ける第2取付金具42とが備えられ、第1取付金具41と第2取付金具42とが溶接等により接合されて一体的に備えられている。
【0023】
第1取付金具41は、図3及び図4に示すように、外壁の面内方向(建物の左右方向、図3及び図4における左右方向)に延びる面内延設部位41aと外壁の面外方向(建物の内外方向、図3及び図4における上下方向)に延びる面外延設部位41bとを有する平面視でL字状に形成されている。第2取付金具42も、面外方向に延びる面外延設部位42aと面内方向に延びる面内延設部位42bとを有する平面視でL字状に形成されている。第1取付金具41の面内延設部位41aは、捨てプレート43を介して、溶接等により接合させる状態で躯体側下地3側に取り付けられている。第1取付金具41の面外延設部位41bと第2取付金具42の面外延設部位42aとが溶接等により接合されており、第1取付金具41と第2取付金具42とが、面外方向において重複する状態で備えられている。第2取付金具42の面内延設部位42bは、止水パネル5の裏面側(図1における右側、図3及び図4における上方側)に備えられた補強材7に係合する状態で止水パネル5側を取り付けている。
【0024】
止水パネル5は、例えば、矩形状の鉄製のプレートにて形成されており、上下方向及び左右方向(外壁の面内方向)において、複数の外装用石材2を縦横に並ぶ状態で留め付けることができるだけの幅を有している。上下方向に隣接する止水パネル5同士の間、及び、左右方向(面内方向)に隣接する止水パネル5同士の間には、図1図3及び図4に示すように、第1隙間S1が形成されており、その第1隙間S1を閉塞する第1シール部材81が備えられている。止水パネル5の上下方向の両端部及び左右方向の両端部には、建物の内方側に折り曲げた折り曲げ部5aが備えられている。隣接する止水パネル5における折り曲げ部5a同士の間が第1隙間S1となっており、その折り曲げ部5a同士の間に第1シール部材81が配設されている。これにより、止水パネル5及び第1シール部材81にて、建物の外方側から内方側への雨水等の侵入を防止することができ、建物の内外方向(面外方向)において、止水パネル5及び第1シール部材81が配設されている箇所が止水ラインとなっている。
【0025】
図1に示すように、止水パネル5の裏面側(図1における右側)には、上下方向で止水パネル5の全長に亘って延びる補強材7が備えられている。補強材7は、図1図3及び図4に示すように、面内方向(左右方向)において、取付金具4の配設箇所に対応する位置に配設されている。このように、補強材7は、止水パネル5の裏面部の全体に亘って備えられておらず、取付金具4の配設箇所に対応する一部の領域のみに備えられている。
【0026】
補強材7は、図3及び図4に示すように、面内方向(図3及び図4における左右方向)に延びる面内延設部位71と面外方向(図3及び図4における上下方向)に延びる面外延設部位72とを有する平面視でL字形状に形成されている。補強材7の面内延設部位71は、図1及び図4に示すように、ビス8等により止水パネル5の裏面側に固定されている。補強材7の面外延設部位72が取付金具4に対する取付箇所となっており、補強材7と止水パネル5とを一体的に取付金具4に取り付けるようにしている。
【0027】
補強材7を取付金具4に取り付けるに当たり、図2に示すように、補強材7と取付金具4とを係合させる状態で取付金具4に補強材7を取り付けている。図2は、取付金具4や補強材7等を示す建物の外方側から見た正面図である。そのために、補強材7には、図2における右側に示すように、取付金具4の取付金具側係合部44に対して係合自在な補強材側係合部73が備えられている。取付金具側係合部44は、第2取付金具42の面内延設部位42bに配設され、上方側を開放させた凹状の溝部44aにて形成されている。それに対して、補強材側係合部73は、補強材7の面外延設部位72に配設され、下方側を開放させた凹状の溝部73aにて形成されている。これにより、取付金具側係合部44の溝部44aと補強材側係合部73の溝部73aとがお互いに嵌まり込んで係合自在となっている。取付金具側係合部44の溝部44aの上端部には、補強材側係合部73を溝部44aとの係合位置に案内自在な傾斜部44bが備えられ、補強材側係合部73の溝部73aの下端部にも、取付金具側係合部44の溝部44aを溝部73aとの係合位置に案内自在な傾斜部73bが備えられている。
【0028】
第2取付金具42の面内延設部位42bは、面内方向に沿う姿勢となっており、補強材7の面外延設部位72は、面外方向に沿う姿勢となっており、第2取付金具42の面内延設部位42bと補強材7の面外延設部位72とがお互いに直交する姿勢となっている。これにより、取付金具側係合部44に対して補強材側係合部73を係合させることで、止水パネル5の面外方向及び面内方向における位置決めを行っている。このように、取付金具側係合部44に対して補強材側係合部73を係合させるだけで、取付金具4に対して、止水パネル5と補強材7とを一体的に取り付けることができ、施工性の向上を図ることができる。しかも、面外方向及び面内方向において止水パネル5と補強材7とを所望位置に位置決めさせる状態で取り付けることができるので、止水パネル5と補強材7との位置調整作業の簡素化を図ることができ、この点でも施工性の向上を図ることができる。
【0029】
補強材7には、図1図3に示すように、補強材側係合部73に加えて、上下位置調整部材74が備えられている。上下位置調整部材74は、取付金具側係合部44に対して補強材側係合部73を係合させる際に、上下方向における止水パネル5と補強材7との取付位置を調整自在に構成されている。上下位置調整部材74は、補強材7の裏面側に固定された板状体74aと、その板状体74aに固定されたナット74bと、板状体74aを貫通する状態でナット74bに螺合されたボルト74cとが備えられている。ボルト74cは、その下端部が取付金具4の上端部に当接する状態で備えられている。ボルト74cを回転操作して、ナット74bに対してボルト74cを上下動させることで、ナット74bよりも下方側へのボルト74cの突出量を変更させて、取付金具側係合部44と補強材側係合部73との係合深さを調整して、取付金具4に対する上下方向での止水パネル5と補強材7との取付位置を調整自在となっている。
【0030】
補強材7の面外延設部位72には、図1に示すように、上下方向において、取付金具4に対応する位置に切り欠き部72aが形成されており、その切り欠き部72aの上端部に補強材側係合部73が配設されている。上下方向において、1つの止水パネル5に対して複数の外装用石材2と留め付けるので、取付金具4は、上下方向で所定間隔(例えば、外装用石材2の幅に対応する間隔)を隔てる状態で複数配設されており、切り欠き部72a及び補強材側係合部73も上下方向に所定間隔を隔てて複数配設されている。それに対して、上下方向における止水パネル5及び補強材7の取付位置の調整は、上下方向の1箇所で行えばよく、上下位置調整部材74が、止水パネル5及び補強材7の上方側部位に対応する1箇所に配設されている。
【0031】
図1に示すように、止水パネル5の表面側には、外装用石材2を受け止め支持する状態で留め付ける受け止め留付部6が所定間隔(例えば、外装用石材2の幅に対応する間隔)を隔てる状態で複数配設されている。受け止め留付部6は、上下方向に延びる上下延設部位61aと面外方向に延びる面外延設部位61bとを有する側面視でL字状のアングル部材61と、そのアングル部材61の面外延設部位61bを上下方向に貫通するピン部材62とが備えられている。
【0032】
アングル部材61は、上下延設部位61aが止水パネル5の表面部に当接する状態で止水パネル5に対してビス8にて固定されている。この固定箇所には、止水パネル5の裏面側に補強材7が配設されており、アングル部材61が、止水パネル5に加えて、補強材7を貫通する状態でビス固定されている。このようにして、受け止め留付部6のアングル部材61が、止水パネル5において補強材7にて補強されている部位に固定されている。
【0033】
アングル部材61の面外延設部位61bは、外装用石材2の下端部に当接して外装用石材2を下方側から受け止め支持している。ピン部材62は、外装用石材2の下端部に形成された係合用孔部21に係合されている。このピン部材62と係合用孔部21との係合により、アングル部材61に対して、面内方向及び面外方向での外装用石材2の移動が規制されている。ピン部材62は、下方側に隣接する外装用石材2の上端部に形成された係合用孔部21にも係合しており、上下方向に隣接する外装用石材2に亘る状態で係合している。
【0034】
ちなみに、下方側の外装用石材2における係合用孔部21とピン部材62との間の隙間に接着剤等が充填されて、下方側の外装用石材2とピン部材62とが固定されているのに対して、上方側の外装用石材2における係合用孔部21とピン部材62との間の隙間に弾性部材等が充填されて、上方側の外装用石材2とピン部材62との間で多少の移動が許容されている。
【0035】
このように、基本的には、止水パネル5の表面側に対して、受け止め留付部6にて外装用石材2を直接留め付けることで、外装用石材2を支持している。よって、外装用石材2の耐風圧及び地震力に対する支持強度は、受け止め留付部6にて負担するようにしている。この実施形態では、受け止め留付部6による外装用石材2の留め付けに加えて、外装用石材2の裏面側と止水パネル5の表面側との間に接着剤83を介在させて、接着剤83にて外装用石材2の裏面側を止水パネル5の表面側に接着させている。これにより、受け止め留付部6による外装用石材2の留め付けと接着剤83による接着とを併用して、外装用石材2を支持している。
【0036】
上下方向に隣接する外装用石材2同士の間、及び、左右方向(面内方向)に隣接する外装用石材2同士の間には、図1図3及び図4に示すように、第2隙間S2が形成されており、その第2隙間S2を閉塞する第2シール部材82が備えられている。このように、止水パネル5同士の間の第1隙間S1を閉塞する第1シール部材81だけでなく、外装用石材2同士の間の第2隙間S2を閉塞する第2シール部材82も備えられている。ここで、第1シール部材81は、止水ラインを形成するためのものであり、シール機能を発揮する上で十分な大きさが求められるので、第1隙間S1は、第2隙間S2よりもその間隔が大きく設定されている。
【0037】
以下、図5に基づいて、外装用石材の取付構造1を有し、複数の外装用石材2を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付ける外壁の施工方法について説明する。
【0038】
この外壁の施工方法では、第1取付工程(図5(A)参照)、第2取付工程(図5(B)参照)、第3取付工程(図5(C)参照)を順次行うことで、複数の外装用石材2を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付けている。
【0039】
第1取付工程では、図5(A)に示すように、躯体側下地3に対して取付金具4を取り付けている。取付金具4は、第1取付金具41と第2取付金具42とが一体的に備えられているので、捨てプレート43を介して、第1取付金具41と第2取付金具42との一体物を溶接等により躯体側下地3に接合させて、躯体側下地3に対して取付金具4を取り付けている。このとき、躯体側下地3等の施工誤差等を考慮して、取付金具4の取付位置が調整されている。
【0040】
第2取付工程では、図5(B)に示すように、第1取付工程にて取り付けられた取付金具4に対して止水パネル5を取り付け、隣接する止水パネル5同士の間の第1隙間S1を閉塞する第1シール部材81(図1図3及び図4参照)を配設させている。止水パネル5と補強材7とが一体的に備えられているので、取付金具4に対して止水パネル5と補強材7との一体物を取り付けている。この取り付けは、図2の右側に示すように、第2取付金具42に対して補強材7を上方側から接近させて、取付金具側係合部44と補強材側係合部73とを係合させるだけでよく、施工の省力化を効果的に図ることができる。
【0041】
第3取付工程では、図5(C)に示すように、第2取付工程にて取り付けられた止水パネル5の表面側に受け止め留付部6にて外装用石材2を直接留め付け、隣接する外装用石材2同士の間の第2隙間S2を閉塞する第2シール部材82(図1図3及び図4参照)を配設させている。
【0042】
このように、第1取付工程、第2取付工程、第3取付工程を順次行うことで、複数の外装用石材2を外壁面に沿って縦横に並ぶ状態で取り付けて、建物の外壁を構築している。このとき、例えば、建物の外壁の面積が大きい場合には、外壁の全体を複数の分割領域に分割して、その分割領域毎に、第1取付工程、第2取付工程、第3取付工程を順次行いながら、外壁の全体を構築することもできる。
【0043】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
(1)上記実施形態では、外装用石材2の裏面側と止水パネル5の表面側との間に接着剤83を介在させて、接着剤83にて外装用石材2の裏面側を止水パネル5の表面側に接着させているが、外装用石材2の裏面側と止水パネル5の表面側との間に接着剤83を介在させずに実施することもできる。
【0045】
(2)上記実施形態では、取付金具4が第1取付金具41と第2取付金具42とを備えた例を示したが、各種の取付金具を適用することができ、その形状や数については適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 外装用石材の取付構造
2 外装用石材
3 躯体側下地
4 取付金具
5 止水パネル
6 受け止め留付部
7 補強材
44 取付金具側係合部
73 補強材側係合部
81 第1シール部材
82 第2シール部材
S1 第1隙間
S2 第2隙間
図1
図2
図3
図4
図5