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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081915
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】修飾されたL-アスパラギナーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20230606BHJP
   C12N 9/82 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 14/27 20060101ALI20230606BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C12N9/82 ZNA
C07K14/27
C07K19/00
A61K38/46
A61K47/64
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030460
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2019571042の分割
【原出願日】2018-06-21
(31)【優先権主張番号】17177237.9
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/523,061
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/671,086
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519426911
【氏名又は名称】ジャズ ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,ラース
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,アン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】修飾されたL-アスパラギナーゼを提供する。
【解決手段】L-アスパラギナーゼ活性を有する修飾されたタンパク質であって、前記修飾されたタンパク質が四量体であり、前記四量体の各単量体が、i)特定のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を含む第1ポリペプチドと、ii)100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む第2ポリペプチドと、を含む、前記修飾されたタンパク質である。さらに、前記修飾されたタンパク質の単位用量を含む組成物であって、単位用量は、1U/kgから25U/kgであり、がんの治療に使用される、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質であって、前記(ポリ)ペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る、前記修飾されたタンパク質。
【請求項2】
前記L-アスパラギナーゼが配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する請求項1に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項3】
前記修飾されたタンパク質がL-アスパラギナーゼとポリペプチドとの融合タンパク質であり、且つ前記ポリペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る請求項1または2に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項4】
前記ポリペプチドが約100~約600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り、好ましくは、前記ポリペプチドが合計約200のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基または合計約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り、好ましくは、前記プロリン残基が前記ポリペプチドの約10%を超えて且つ約70%未満を構成し、好ましくは、前記ポリペプチドがアミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)または前記配列の全体もしくは一部としての前記配列の円順列型もしくは多量体(複数可)を含むまたはそれから成る、請求項3に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項5】
(a)前記ポリペプチドが配列番号7または9で示されるようなアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、
(b)前記ポリペプチドが配列番号8または10で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含み、またはそれから成る、
請求項3または4に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項6】
(a)前記修飾されたタンパク質が配列番号11または13で示されるようなアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、
(b)前記修飾されたタンパク質が配列番号12または14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含み、またはそれから成る、
請求項3~5のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項7】
L-アスパラギナーゼと、それぞれが独立してペプチドR-(P/A)-Rである1以上のペプチドとの修飾されたタンパク質であり、
(P/A)はプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るアミノ酸配列であり、Rは前記アミノ酸配列のN末端アミノ基に連結される保護基であり、
はそのアミノ基を介して前記アミノ酸配列のC末端カルボキシ基に結合されるアミノ酸残基であり、
各ペプチドは、前記ペプチドの前記C末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基と前記L-アスパラギナーゼの遊離のアミノ基とから形成されるアミド結合を介して前記L-アスパラギナーゼにコンジュゲートされ、
前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基の少なくとも1つが前記L-アスパラギナーゼのN末端αアミノ基ではなく、好ましくは前記アミノ酸配列が合計15~45のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り、好ましくは前記アミノ酸配列が20のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り、または前記アミノ酸配列が40のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り、且つ好ましくは前記プロリン残基が前記アミノ酸配列の約10%を超えて且つ約70%未満を構成する、請求項1または2に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項8】
前記アミノ酸配列が、AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)またはAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号15)であり、好ましくはRがピログルタモイルまたはアセチルであり、及び/またはRがε-アミノヘキサン酸である請求項7に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項9】
前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基の少なくとも1つが前記L-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であり、または
前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基が前記L-アスパラギナーゼの任意のリシン残基(複数可)のε-アミノ基(複数可)及び前記L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基(複数可)を含む群から選択され、好ましくは前記L-アスパラギナーゼは4つのサブユニットで構成され、請求項7または8に記載の9~13のペプチドが前記L-アスパラギナーゼの各サブユニットにコンジュゲートされる、請求項7または8に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項10】
前記ポリペプチドまたはペプチドが前記修飾されたタンパク質の免疫原性の低下に介在する請求項1~9のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質をコードする核酸であって、
好ましくは、前記核酸が
(a)配列番号12または14のヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)(a)で定義されるようなヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、及び
(c)(a)または(b)で定義されるようなヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸
から成る群から選択される、前記核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸または請求項12に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~6及び10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または請求項11に記載の核酸の調製のためのプロセスであって、前記プロセスが請求項13に記載の宿主細胞を培養することと、前記培養物または前記細胞から前記修飾されたタンパク質を単離することとを含む、前記プロセス。
【請求項15】
請求項7~10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質を調製するプロセスであって、
前記プロセスが
(a)式R-(P/A)-RC-actの活性化されたペプチドを前記L-アスパラギナーゼとカップリングしてRが保護基である前記L-アスパラギナーゼとペプチドとの修飾されたタンパク質を得ることを含み、
式中、RC-actはRのカルボキシ活性化形態であり、R及び(P/A)は調製される前記修飾されたタンパク質で定義されたとおりであり、Rは(P/A)のN末端アミノ基に連結される保護基であり、
好ましくは、前記活性化されたペプチドにおける前記アミノ酸残基RC-actの前記活性化されたカルボキシ基は活性があるエステル基である、前記プロセス。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または請求項14もしくは15に記載のプロセスによって調製される前記修飾されたタンパク質を含み、任意でさらに薬学上許容できる担体(複数可)または賦形剤(複数可)を含む医薬組成物。
【請求項17】
疾患の治療で使用するための請求項1~10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または請求項14もしくは15に記載のプロセスによって調製される前記修飾されたタンパク質または請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記疾患がL-アスパラギンの枯渇によって治療でき、且つがんである請求項17に記載の使用のための修飾されたタンパク質もしくは請求項17に記載の使用のための組成物、または
がんの治療のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質、請求項14もしくは15に記載のプロセスによって調製される前記修飾されたタンパク質もしくは請求項17に記載の組成物
[好ましくは前記がんが非固形がん、好ましくは白血病もしくは非ホジキンリンパ腫であり、前記白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)もしくは急性骨髄性白血病(AML)であってもよく、
好ましくは、前記修飾されたタンパク質が未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて患者にて低い免疫原性反応を引き起こす]。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとの組み合わせである修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。修飾されたタンパク質は、L-アスパラギナーゼと(ポリ)ペプチドとの間での化学的コンジュゲートまたはまたは融合タンパク質として修飾されたタンパク質を発現させることによるものを含むいくつかの方法で形成することができる。本明細書で提供されるのはまた、修飾されたタンパク質をコードする核酸、それを含むベクター及び/または宿主細胞、ならびにそれらの製造のためのプロセスである。修飾されたタンパク質を含む組成物及び医学、特にがんの治療におけるそれらの使用が開示される。本発明の別の態様では、L-アスパラギナーゼはErwiniaに由来し、及び/またはそれは配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する。
【背景技術】
【0002】
L-アスパラギナーゼとして一般に知られるL-アスパラギンアミノ加水分解酵素活性を持つタンパク質は小児における急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に長年にわたって上手く使用されている。ALLは最も一般的な小児悪性がんである(Avramis,(2005),Clin.Pharmacokinet.44,367-393)。
【0003】
L-アスパラギナーゼはホジキン病、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ肉腫、細網肉腫、及び黒色肉腫を治療するのにも使用されている(Kotzia,(2007),J.Biotechnol.127,657-669)。L-アスパラギナーゼの抗腫瘍活性は、ある特定の悪性細胞がL-アスパラギンを合成する能力がないことまたは低下した能力に起因すると考えられている(同文献)。これらの悪性細胞はL-アスパラギンの細胞外供給を依存する。しかしながら、L-アスパラギナーゼ酵素はL-アスパラギンのアスパラギン酸とアンモニアへの加水分解を触媒し、それによってL-アスパラギンの循環しているプールを枯渇させ、L-アスパラギンなしではタンパク質合成を行うことができない腫瘍細胞を殺傷する(同文献)。
【0004】
E.coliに由来するL-アスパラギナーゼはALLの治療法で最初に使用された酵素薬であり、米国ではElspar(登録商標)として、または欧州ではKidrolase(登録商標)及びL-アスパラギナーゼMedac(登録商標)として市販されている。L-アスパラギナーゼはまた、他の微生物からも単離されており、たとえば、L-アスパラギナーゼタンパク質はErwinia chrysanthemiに由来し、クリサンタスパーゼと命名され、Erwinase(登録商標)として市販されている(Wriston,(1985),Meth.Enzymol.113,608-618、Goward,(1992),Bioseparation,2,335-341)。たとえば、Erwinia chrysanthemi 3937(Genbank受入番号AAS67028)、Erwinia chrysanthemi NCPPB 1125(Genbank受入番号CAA31239)、Erwinia carotovora(Genbank受入番号AAP92666)、及びErwinia carotovora subsp.artroseptica(Genbank受入番号AAS67027)を含むErwiniaの他の種に由来するL-アスパラギナーゼも特定されている。これらErwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼは互いに約91~98%のアミノ酸配列同一性を有する一方で、Erwinia carotovoraのL-アスパラギナーゼはErwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼとおよそ75~77%アミノ酸配列同一性を有する(Kotzia,(2007),J.Biotechnol.127,657-669)。
【0005】
細菌起源のL-アスパラギナーゼは高い免疫原性及び抗原性の潜在力を有し、感作された患者にて穏やかなアレルギー反応からアナフィラキシーショックまで及ぶ有害反応を引き起こすことが多い(Wang,(2003),Leukemia,17,1583-1588)。E.coliのL-アスパラギナーゼは特に免疫原性であり、静脈内投与または筋肉内投与の後、成人の78%及び小児の70%もの高さに達するE.coliのL-アスパラギナーゼに対する抗アスパラギナーゼ抗体の存在の報告がある(同文献)。
【0006】
Escherichia coli及びErwinia chrysanthemiに由来するL-アスパラギナーゼはその薬物動態特性で異なり、それぞれ異なる免疫原性プロファイルを有する(Klug Albertsen,(2001),Brit.J.Haematol.115,983-990)。さらに、E.coliに由来するL-アスパラギナーゼで治療した後に発生する抗体はErwiniaに由来するL-アスパラギナーゼと交差反応しないことが示されている(Wang,(2003),Leukemia,17,1583-1588)。従って、Erwiniaに由来するL-アスパラギナーゼ(クリサンタスパーゼ)はE.coliのL-アスパラギナーゼに反応する患者におけるALLの二次選択治療として使用されている(Duval,(2002),Blood,15,2734-2739;Avramis,(2005),Clin.Pharmacokinet.44,367-393)。
【0007】
微生物のL-アスパラギナーゼの投与に伴う免疫原性を低下させる別の試みでは、メトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)によって修飾されているE.coliのL-アスパラギナーゼが開発されている。このいわゆるmPEG-L-アスパラギナーまたはOncaspar(登録商標)(Enzon Inc.)として市販されているペガスパルガーゼは1994年ALLの二次選択治療のために米国で最初に認可され、2006年以来、小児及び成人におけるALLの一次選択療法のために認可されている。
【0008】
Oncaspar(登録商標)は、5kDaのmPEG-コハク酸スクシンイミジル(SS-PEG)を用いて複数のリシン残基で修飾されているE.coliのL-アスパラギナーゼである(米国特許第4,179,337号)。SS-PEGは酵素による加水分解にまたはわずかなアルカリ性pH値で感受性である不安定なエステル結合を含有する第1世代のPEG試薬である(米国特許第4,670,417号)。これらの特性は試験管内及び生体内の双方での安定性を低下させ、薬剤の安全性を損ない得る。
【0009】
さらに、E.coliに由来するL-アスパラギナーゼに対して発生する抗体はOncaspar(登録商標)と交差反応するであろうことが明らかにされている(Wang,(2003),Leukemia,17,1583-1588)。これらは中和抗体ではなかったが、これらの知見は生体内での交差過敏性または交差不活化の高い可能性を明瞭に示した。実際、報告の1つでは、ペガスパルガーゼ治療を受けた小児の30~41%がアレルギー反応を有した(同文献)。
【0010】
外見上のアレルギー反応に加えて、「無症状の過敏症」の問題が最近報告されたが、それによって患者は過敏症反応の臨床的な証拠を示すことなく抗アスパラギナーゼ抗体を生じさせる(Wang,(2003),Leukemia,17,1583-1588)。この反応はE.coliのL-アスパラギナーゼ及びペガスパルガーゼに対する中和抗体の形成を生じ得るが、過敏症の外見上の兆候がないために、これらの患者はErwiniaのL-アスパラギナーゼに移行されず、従って、彼らが受ける有効な治療はさらに短い期間である(Holcenberg,(2004),J.Pediatr.Hematol.Oncol.26,273-274)。
【0011】
Erwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼによる治療は、E.coliに由来するL-アスパラギナーゼに対する過敏性がある場合に使用されることが多い。しかしながら、ErwiniaのL-アスパラギナーゼ治療を受けている患者の30~50%もの多くが抗体陽性であることが観察されている(Avramis,(2005),Clin.Pharmacokinet.44,367-393)。さらに、Erwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼはE.coliのL-アスパラギナーゼよりも短い消失半減期を有するので、それをさらに頻繁に投与しなければならない(同文献)。Avramisらによる研究では、Erwiniaのアスパラギナーゼは劣った薬物動態特性を伴った(Avramis,(2007),J.Pediatr.Hematol.Oncol.29,239-247)。従って、E.coliのL-アスパラギナーゼ及びペガスパルガーゼはErwiniaのL-アスパラギナーゼに比べてALLに対する好ましい一次選択療法となっている。
【0012】
多数のバイオ医薬品が上手くペグ化され、長年、市販されている。しかしながら、多くの場合、ペグ化したバイオ医薬品は修飾されていないバイオ医薬品と比べて著しく低下した活性を示す。Erwinia carotovoraに由来するL-アスパラギナーゼの場合、ペグ化は試験管内でのその活性をおよそ57%に低下させたことが観察されている(Kuchumova,(2007),Biochemistry,(Moscow),Supplement Series,B:Biomedical Chemistry,1,230-232)。Erwinia carotovoraに由来するL-アスパラギナーゼはErwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼ(クリサンタスパーゼ)に対して約75%の相同性しか有さない。Oncaspar(登録商標)については、その試験管内の活性はE.coliの修飾されていないL-アスパラギナーゼと比べておよそ50%であることも知られている。
【0013】
従って、本発明の根底にある技術的課題は、従来技術の治療法、特に一部のペグ化されたアスパラギナーゼの限界及び短所を回避する、たとえば、白血病または非ホジキンリンパ腫のようながんを治療する手段及び方法の提供である。
【0014】
この技術的課題は特許請求の範囲にて特徴付けられる実施形態の提供によって解決される。
【発明の概要】
【0015】
一態様では、本発明は、(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。好ましい態様では、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するL-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。
【0016】
本発明は、とりわけ、以下の項目に関する。
1.(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質であって、前記(ポリ)ペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る、前記修飾されたタンパク質。
【0017】
2.前記L-アスパラギナーゼが配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する項目1に記載の修飾されたタンパク質。
【0018】
3.前記L-アスパラギナーゼが配列番号1のアミノ酸配列を有する項目1または2に記載の修飾されたタンパク質。
【0019】
4.前記修飾されたタンパク質が、未修飾のL-アスパラギナーゼのものより高いアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性を有する項目1~3のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0020】
5.前記修飾されたタンパク質が、未修飾のL-アスパラギナーゼよりも少なくとも約20%高いL-アスパラギン枯渇活性を有する項目1~4のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0021】
6.前記L-アスパラギナーゼが四量体である項目1~5のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0022】
7.前記L-アスパラギナーゼとポリペプチドとの修飾されたタンパク質であり、前記ポリペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る項目1~6のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0023】
8.前記ポリペプチドが、約100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、特に約200~約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る項目7に記載の修飾されたタンパク質。
【0024】
9.前記ポリペプチドが、合計約200のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、または合計約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る項目7に記載の修飾されたタンパク質。
【0025】
10.前記プロリン残基がポリペプチドの約10%を超えて且つ約70%未満を構成する項目7~9のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0026】
11.前記ポリペプチドが複数のアミノ酸反復を含み、前記反復がプロリン及びアラニンの残基から成り、6以下の連続するアミノ酸残基が同一である項目7~10のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0027】
12.前記ポリペプチドが、アミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)または前記配列の全体もしくは一部としての配列の円順列型もしくは多量体(複数可)を含むまたはそれから成る項目7~11のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0028】
13.(a)前記ポリペプチドが配列番号7または9で示されるようなアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、
(b)前記ポリペプチドが配列番号8または10で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含み、またはそれから成る
項目7~12のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0029】
14.(a)前記修飾されたタンパク質が配列番号11または13で示されるようなアミノ酸配列を含み、またはそれから成り、
(b)前記修飾されたタンパク質が配列番号12または14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含み、またはそれから成る
項目7~13のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0030】
15.前記ポリペプチドがランダムコイルのポリペプチドである項目7~14のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0031】
16.前記修飾されたタンパク質がL-アスパラギナーゼとポリペプチドとの融合タンパク質である項目7~15のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0032】
17.L-アスパラギナーゼと、それぞれが独立してペプチドR-(P/A)-Rである1以上のペプチドとの修飾されたタンパク質であり、
(P/A)はプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るアミノ酸配列であり、Rは前記アミノ酸配列のN末端アミノ基に連結される保護基であり、
は前記アミノ酸配列のC末端カルボキシ基にそのアミノ基を介して結合されるアミノ酸残基であり、
各ペプチドは、前記ペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基と前記L-アスパラギナーゼの遊離のアミノ基とによって形成されるアミド結合を介してL-アスパラギナーゼにコンジュゲートされ、
前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基の少なくとも1つは前記L-アスパラギナーゼのN末端αアミノ基ではない、項目1~6のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0033】
18.前記アミノ酸配列が合計15~45のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る項目17に記載の修飾されたタンパク質。
【0034】
19.前記アミノ酸配列が20のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る項目17または18に記載の修飾されたタンパク質。
【0035】
20.前記アミノ酸配列が40のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る項目17または18に記載の修飾されたタンパク質。
【0036】
21.前記プロリン残基が前記アミノ酸配列の約10%を超えて且つ約70%を構成する項目17~20のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0037】
22.前記アミノ酸配列がAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)またはAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号15)である項目17~21のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0038】
23.Rがピログルタモイルまたはアセチルであり、及び/または
がε-アミノヘキサン酸である項目17~22のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0039】
24.前記修飾されたタンパク質に含まれるペプチドがランダムコイル構造を採用する項目17~23のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0040】
25.前記修飾されたタンパク質に含まれるペプチドのすべてが同一である項目17~24のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0041】
26.前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基の少なくとも1つが、前記L-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基である項目17~25のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0042】
27.前記ペプチドがコンジュゲートされる前記遊離のアミノ基が、前記L-アスパラギナーゼの任意リシン残基(複数可)のε-アミノ基(複数可)及び前記L-アスパラギナーゼのN末端αアミノ基(複数可)を含む群から選択される項目17~26のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0043】
28.前記L-アスパラギナーゼが4つのサブユニットで構成され、項目15~24のいずれか1項で定義されたような9~13のペプチドが前記L-アスパラギナーゼの各サブユニットにコンジュゲートされる項目17~27のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0044】
29.前記ポリペプチドまたはペプチドが前記修飾されたタンパク質の免疫原性の低下に介在する項目1~28のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質。
【0045】
30.項目1~16のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質をコードする核酸。
【0046】
31.前記核酸が、
(a)配列番号12または14のヌクレオチド配列を含む核酸、
(b)(a)で定義されたようなヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、及び
(c)(a)または(b)で定義されたようなヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸
から成る群から選択される項目30に記載の核酸。
【0047】
32.項目30または31に記載の核酸を含むベクター。
【0048】
33.項目30または31に記載の核酸または項目32に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0049】
34.前記宿主細胞がPseudomonas fluorescens及びCorynebacterium glutamicumから成る群から選択される項目33に記載の宿主細胞。
【0050】
35.項目1~16、29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または項目30もしくは31に記載の核酸の調製のためのプロセス。
【0051】
36.項目33または34に記載の宿主細胞を培養することと、培養物または前記細胞から前記修飾されたタンパク質を単離することとを含む項目35に記載のプロセス。
【0052】
37.項目17~29のいずれか1項で定義されたタンパク質を調製するプロセスであって、
前記プロセスが、(a)式R-(P/A)-RC-act(式中、RC-actはRのカルボキシ活性化形態であり、R及び(P/A)は調製される修飾されたタンパク質で定義されたとおりであり、Rは(P/A)のN末端アミノ基に連結される保護基である)の活性化されたペプチドをL-アスパラギナーゼとカップリングして、前記L-アスパラギナーゼとRが保護基であるペプチドとの修飾されたタンパク質を得ることを含む前記プロセス。
【0053】
38.前記活性化されたペプチドにおける前記アミノ酸残基RC-actの前記活性化されたカルボキシ基が活性のあるエステル基である項目37に記載のプロセス。
【0054】
39.項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質を含む組成物。
【0055】
40.任意でさらに薬学上許容できる担体(複数可)または賦形剤(複数可)を含む医薬組成物である項目39に記載の組成物。
【0056】
41.薬物として使用するための項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または項目39もしくは40に記載の組成物。
【0057】
42.患者にて疾患、たとえば、L-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患の治療で使用するための項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または項目39もしくは40に記載の組成物。
【0058】
43.患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療する方法であって、前記方法が、前記患者に有効量の、項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質または項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または項目39もしくは40に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【0059】
44.L-アスパラギンの枯渇によって治療できる前記疾患ががんである、項目42に記載の使用のための修飾されたタンパク質、項目42に記載の使用のための組成物、または項目43に記載の方法。
【0060】
45.がんの治療での使用のための項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質、項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または項目39もしくは40に記載の組成物。
【0061】
46.がんを治療する方法であって、項目1~29のいずれか1項に記載の修飾されたタンパク質、項目35~38のいずれか1項に記載のプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または項目39もしくは40に記載の組成物の対象への投与を含む、前記方法。
【0062】
47.前記がんが非固形がんである項目44もしくは45に記載の使用のための修飾されたタンパク質または項目44もしくは45に記載の使用のための組成物、または前記がんが非固形がんである項目44もしくは46に記載の方法。
【0063】
48.前記非固形がんが白血病または非ホジキンリンパ腫である項目47に記載の使用のための修飾されたタンパク質もしくは項目47に記載の使用のための組成物、または前記非固形がんが白血病または非ホジキンリンパ腫である項目47に記載の方法。
【0064】
49.前記白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)もしくは急性骨髄性白血病(AML)である項目48に記載の使用のための修飾されたタンパク質もしくは項目48に記載の使用のための組成物、または前記白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)もしくは急性骨髄性白血病(AML)である項目48に記載の方法。
【0065】
50.前記修飾されたタンパク質が未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて前記患者にてより低い免疫原性反応を引き起こす、項目42、44、45及び47~49のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~49のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~49のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
51.前記修飾されたタンパク質が未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、生体内でのより長い循環半減期を有する項目42、44、45及び47~50のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~50のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~50のいずれか1項に記載の方法。
【0067】
52.前記修飾されたタンパク質が未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、より大きなAUC値を有する項目42、44、45及び47~51のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~51のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~51のいずれか1項に記載の方法。
【0068】
53.前記患者が、E.coliのL-アスパラギナーゼまたはそのペグ化された形態に対して過敏性の既往を有している項目42、44、45及び47~52のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~52のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~52のいずれか1項に記載の方法。
【0069】
54.前記患者がErwiniaのL-アスパラギナーゼに対して過敏性の既往を有している項目42、44、45及び47~53のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~53のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~53のいずれか1項に記載の方法。
【0070】
55.前記治療が前記修飾されたタンパク質の静脈内投与を含む項目42、44、45及び47~54のいずれか1項に記載の使用のための修飾されたタンパク質、または項目42、44、45及び47~54のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または項目43、44及び46~54のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】アミノ基を介したクリサンタスパーゼのN末端保護P/Aペプチドとのコンジュゲートの化学を示す図である。(A)及び(B)は、固相ペプチド合成によって得られた、(それぞれ)20または40のPro/Alaの残基を含有するP/Aペプチド(配列番号16及び17、アミノ酸配列は配列番号5及び15にて示される)の化学構造を示す。C末端の化学的活性化の際のペプチドの重合を回避するために、N末端をピログルタミル(Pga)残基で保護した。アミノヘキサン酸(Ahx)をペプチドのC末端に組み込んでリンカーとした。(C)非求核塩基であるN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、Hunigの塩基)の存在下で、溶媒としてのDMSOを伴ってC末端にてベンゾトリアゾール誘導体であるテトラフルオロホウ酸O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(TBTU)によって、N末端保護したP/Aペプチドを活性化する。遊離のヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を放出しながら、その後、ペプチドのHOBt活性エステルを用いて、ペプチド結合またはイソペプチド結合の形成を介してP/Aペプチドによってクリサンタスパーゼのアミノ基(リシン残基のε-アミノ基またはN末端のα-アミノ基)を誘導体化する。このカップリングステップは、有機溶媒の含量が30%以下の水溶液(たとえば、PBS緩衝液)で実施される。P/A-クリサンタスパーゼの修飾されたタンパク質は、透析及び/またはクロマトグラフィー(たとえば、イオン交換クロマトグラフィー)によって残留するP/Aペプチド/カップリング試薬から精製されてもよい。
図2】クリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahxのカップリング比の最適化を示す図である。実施例1に記載されているように、E.coliで産生された組換えクリサンタスパーゼをPga-P/A#1(20)-Ahxペプチド(配列番号16及び17、アミノ酸配列は配列番号5及び15にて示される)とコンジュゲートした。ペプチド対タンパク質の比は1mgのクリサンタスパーゼ当たり3.5mg~10mgの間でのP/Aペプチドで変化させた。各カップリング反応に由来する7μgのクリサンタスパーゼをゲルに負荷した。さらに、タンパク質のmg当たり0.3~10mgのペプチドの比でのカップリング反応のミックスをサイズ基準(「Std」)として適用した。カップリングしたP/Aペプチドの数は右側で指し示したようなコンジュゲートされていないクリサンタスパーゼから出発しているそのラダーにおけるバンドを数えることによって決定することができる。レーン「kDa」:Pierce(商標)の未染色タンパク質分子量マーカー(Thermo Fisher Scientific)。
図3】アニオン交換クロマトグラフィーを介したクリサンタスパーゼ/Pga-P/A(40)-Ahxペプチドカップリング生成物の精製を示す図である。実施例2に記載されているように、E.coliで産生された組換えクリサンタスパーゼをPga-P/A(40)-Ahxペプチド(図1B)(配列番号17、アミノ酸配列は配列番号15にて示される)とコンジュゲートした。AIXランニング緩衝液(25mMのホウ酸/NaOH、pH9.0,1mMのEDTA)に対する透析の後、85mLのSource(商標)15Qカラムにてアニオン交換クロマトグラフィーを行った(A)。NaCl濃度勾配を適用することによって、酵素修飾されたタンパク質は、280nmでのUVトレースによって明らかにされたように単一の鋭いピークで溶出した。残りのカップリングしなかったペプチド及び280nmでのUV吸収を欠いている化学コンジュゲートの他の非タンパク性副産物の分離は225nmでのUVトレースによってモニターした。(B)アニオン交換クロマトグラフィーによる精製後のクリサンタスパーゼ/Pga-P/A(40)-Ahxの修飾されたタンパク質のSDS-PAGE解析(レーン1)。タンパク質のmg当たり0.3~10mgのペプチドの比でのカップリング反応のミックスをレーン2に適用してクリサンタスパーゼ単量体当たりのカップリングしたP/Aペプチドの数を決定できるようにした。PageRuler(商標)Plusの予め染色したマーカー(Thermo Fisher Scientific)をレーン「M」に適用した。
図4】アニオン交換クロマトグラフィーを介したクリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahxペプチドカップリング生成物の精製を示す図である。実施例3に記載されているように、E.coliで産生された組換えクリサンタスパーゼをPga-P/A(20)-Ahxペプチド(図1A)(配列番号16、アミノ酸配列は配列番号5にて示される)とコンジュゲートした。AIXランニング緩衝液(25mMのホウ酸/NaOH、pH9.0,1mMのEDTA)に対する透析の後、85mLのSource(商標)15Qカラムにてアニオン交換クロマトグラフィーを行った(A)。NaCl濃度勾配を適用することによって、酵素修飾されたタンパク質は、280nmでのUVトレースによって明らかにされたように単一の鋭いピークで溶出した。残りのカップリングしなかったペプチド及び280nmでのUV吸収を欠いている化学コンジュゲートの他の非タンパク性副産物の分離は225nmでのUVトレースによって明らかにした。(B)アニオン交換クロマトグラフィーによる精製後のクリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahxの修飾されたタンパク質のSDS-PAGE解析(レーン1)。タンパク質のmg当たり0.3~10mgのペプチドの比でのカップリング反応のミックスをレーン2に適用してクリサンタスパーゼ単量体当たりのカップリングしたP/Aペプチドの数を決定できるようにした。PageRuler(商標)Plusの予め染色したマーカー(Thermo Fisher Scientific)をレーン「M」に適用した。
図5】E.coliにおけるPAS化したクリサンタスパーゼの産生のために発現ベクターのクローニングを示す図である。(A)2つの逆に方向付けられたSapI制限部位を介したPA#1c/1b(400)(配列番号10)の遺伝子カセットへのシームレスな挿入の後の(A)pASK75-SapI-クリサンタスパーゼ(配列番号4)及び(B)その誘導体pASK75-PA400-クリサンタスパーゼ(配列番号14)のプラスミドマップを示す図である。401のアミノ酸残基を伴うPA#1ポリペプチドをコードする反復性の低いヌクレオチド配列及びクリサンタスパーゼの構造遺伝子と同様に細菌のEnxシグナル配列(SPEnx)のコーディング領域を含む生物学的に/薬理学的に活性がある(プレ)タンパク質PA#1(400)-クリサンタスパーゼ(配列番号13)の構造遺伝子をtetプロモーター/オペレーター(tetp/o)の転写制御下でクローニングする。XbaI及びHindIII制限部位が隣接する発現カセットの外側のプラスミド主鎖は遺伝子発現ベクターpASK75のそれと同一である(Skerra,(1994),Gene,151:131-135)。PA#1(200)(配列番号11)に融合したクリサンタスパーゼの発現のためのプラスミドをPA#1b(200)遺伝子カセット(配列番号12)を用いて同じ方法でクローニングした。
図6】PA200またはPA400に遺伝子融合した組換えクリサンタスパーゼのSDS-PAGE解析を示す図である。(A)ペリプラズム抽出(PPE)、硫酸アンモニウム沈殿(ASP)及びアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)の後の成熟PA#1(400)-クリサンタスパーゼ融合タンパク質(配列番号13)の10%SDS-PAGEによる解析。(B)ゲルは精製した成熟PA#1(200)-クリサンタスパーゼ(レーン1)(配列番号11)またはPA#1(400)-クリサンタスパーゼ(レーン2)(配列番号13)の5μgの試料を示す。マーカータンパク質(M)のサイズを左に示す。PA#1(200)-クリサンタスパーゼ及びPA#1(400)-クリサンタスパーゼの融合タンパク質はそれぞれ約105kDa(レーン1)及び200kDa(レーン2)の見かけの分子サイズを持つ単一の均質なバンドとして現れる。不十分なSDS結合に起因して、PA融合タンパク質は一般に、たとえば、PA#1(200)-クリサンタスパーゼ単量体について算出された質量51kDaまたはPA#1(400)-クリサンタスパーゼ単量体について算出された質量67kDaよりも有意に大きいサイズを示す(Schlapschy,(2013),Protein Eng.Des.Sel.26:489-501)。
図7】PAS化したクリサンタスパーゼ変異体のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。(A)未修飾のクリサンタスパーゼ、ならびにPga-P/A(20)-AhxまたはPga-P/A(40)-Ahx(それぞれ実施例3及び2に記載されている)のいずれかに化学的にコンジュゲートされたクリサンタスパーゼ、及びPA#1(200)(配列番号7)またはPA#1(400)(配列番号9)のポリペプチド(実施例5に記載されている)に遺伝子融合した組換えクリサンタスパーゼの溶出特性の重ね合わせである。1mg/mLの濃度での150μLの精製タンパク質をPBS緩衝液で平衡化したSuperdex(商標)S200 10/300GLカラムにか供した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィー設定でのピークを100%に対して正規化した。(B)SuperdexS200 10/300GLカラムを用いた(A)からのクロマト図についての較正曲線である。マーカータンパク質(オボアルブミン:43.0kDa、ウシ血清アルブミン:66.3kDa、アルコール脱水素酵素:150kDa、β-アミラーゼ:200kDa、アポフェリチン:440kDa)の分子量の対数をその溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線によって当てはめた。四量体クリサンタスパーゼ、そのPA#1ペプチド修飾タンパク質及びその組換えPA#1融合タンパク質(黒四角)の観察された溶出体積から、それらの見かけの分子サイズを以下のように決定した。クリサンタスパーゼ:105kDa(真の質量140kDa)、クリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahx修飾タンパク質:531kDa(真の質量228kDa)、クリサンタスパーゼ/Pga-P/A(40)-Ahx修飾タンパク質:820kDa(真の質量284kDa)、PA200-クリサンタスパーゼ:595kDa(真の質量205kDa)、PA400-クリサンタスパーゼ:1087kDa(真の質量269kDa)。これらのデータは、化学的にコンジュゲートされたP/Aペプチド及びPA#1ポリペプチドとの遺伝子融合は双方とも大きく拡大された流体力学的体積を付与することを示している。
図8】PAS化したクリサンタスパーゼ変異体のESI-MS解析を示す図である。(A)実施例3に記載されているように調製した精製クリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahx修飾タンパク質の電子スプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって得られた生のm/zスペクトルは質量スペクトルを得ることにデコンボリューションされた(B)。観察された質量種は9~14のペプチドとコンジュゲートされたクリサンタスパーゼに明確に割り当てることができた(表3参照)。しかしながら、主要なピークは、SDS-PAGEによるペプチドカップリングの比の決定に相当するものである、10~13のペプチドを伴うタンパク質種についてのみ観察された(図4B参照)。(C)及び(E)は実施例5で調製したPA200-クリサンタスパーゼ及びPA400-クリサンタスパーゼの融合タンパク質の生のm/zスペクトルを示す。デコンボリューションした質量スペクトル(D)及び(F)はそれぞれ51164.75Da及び67199.17Daの質量を示したが、それは51163.58Daの算出された質量にほぼ完璧に対応する。
図9】オスCD-1マウスへの単回IVボーラス投与に続く時間プロファイルに対する平均(±SD)血漿濃度を示す図である。図はオスマウスへの単回IVボーラス投与に続くPA・クリサンタスパーゼのコンジュゲートの血漿アスパラギナーゼ活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
一態様では、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する組換えL-アスパラギナーゼと、(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。本明細書で提供されている「修飾されたタンパク質」、「L-アスパラギナーゼ」、「(ポリ)ペプチド」等の用語に関して本明細書で与えられる説明及び定義が準用される。「組換えL-アスパラギナーゼ」という用語は本明細書で使用されるとき、天然のErwiniaのL-アスパラギナーゼのアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するL-アスパラギナーゼの組換え形態を指す。「組換えの」という用語は組換えで産生されたL-アスパラギナーゼ、たとえば、L-アスパラギナーゼをコードする核酸を含む宿主細胞にて産生されるL-アスパラギナーゼを指し得る。
【0073】
修飾されたタンパク質はさらに向上した血漿半減期を示すので、コンジュゲートされていない各L-アスパラギナーゼと比べて作用の延長された持続時間を示す。これは投与頻度、従って副作用の負荷の減少を可能にする。本発明はまた本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を調製するプロセスも提供する。
【0074】
ある特定の態様では、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対する少なくとも85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するL-アスパラギナーゼと、(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。「プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る」という用語は、少なくとも1つのプロリン残基と少なくとも1つのアラニン残基が存在する、すなわち、少なくとも1つのプロリン残基と少なくとも1つのアラニン残基の双方が存在しなければならないことを意味する。好ましい態様では、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を有する組換えL-アスパラギナーゼと、(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。一態様では、L-アスパラギナーゼは四量体(すなわち、4つのサブユニットまたは単量体で構成されるL-アスパラギナーゼ)である。例となるサブユニットまたは単量体は配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0075】
一態様では、(ポリ)ペプチドは(すなわち、ポリペプチドまたはペプチド)は、本明細書に記載されている修飾されたタンパク質の免疫原性の低下、たとえば、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べた修飾されたタンパク質の免疫原性の低下に介在する。
【0076】
添付の実施例で示すように、未修飾のクリサンタスパーゼと比べてPA#1(200)-クリサンタスパーゼタンパク質は109%の、及びPA#1(400)クリサンタスパーゼタンパク質は118%の酵素活性を有した。実施例5を参照のこと。このことは、本明細書に記載されているようなアスパラギナーゼのポリペプチドとの融合が酵素活性に影響を及ぼさないことを実証している。驚くべきことに、活性はPA-ポリペプチドの長さと共に上昇さえした。
【0077】
さらに一般的に、本明細書で提供されている修飾されたタンパク質は未修飾のアスパラギナーゼと比べて同じまたは実質的に同じ(酵素)活性を有する。(酵素)活性はNesslerアッセイによって評価されてもよい。Nesslerアッセイの詳細は添付の実施例で提供されており、及び/または従来技術、たとえば、Mashburn,(1963),Biochem.Biophys.Res.Commun.12,50(全体が参照によって本明細書に組み入れられる)にて開示されている。従って、一態様では、本明細書で提供されている修飾されたタンパク質はNesslerアッセイによって評価されたとき、未修飾のアスパラギナーゼと比べて同じまたは実質的に同じ(酵素)活性を有する。「未修飾のアスパラギナーゼ」という用語は本明細書で使用されるとき、天然のアスパラギナーゼ、すなわち、本明細書で定義されているような(ポリ)ペプチドとの融合/コンジュゲートによって修飾されていないアスパラギナーゼを指す。
【0078】
たとえば、「未修飾のアスパラギナーゼ」は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するL-アスパラギナーゼである。好ましい態様では、「未修飾のアスパラギナーゼ」は配列番号1のアミノ酸配列を有するL-アスパラギナーゼである。
【0079】
一部の態様では、本明細書で提供されている修飾されたタンパク質は未修飾のL-アスパラギナーゼの(酵素)活性よりも高い(酵素)活性を有する。(酵素)活性は、たとえば、Nesslerアッセイによって評価されてもよい。Nesslerアッセイの詳細は添付の実施例で提供されており、及び/または従来技術、たとえば、Mashburn,(1963),Biochem.Biophys.Res.Commun.12,50(全体が参照によって本明細書に組み入れられる)にて開示されている。従って、一態様では、本明細書で提供されている修飾されたタンパク質はNesslerアッセイによって評価されたとき、未修飾のL-アスパラギナーゼの(酵素)活性よりも高い(酵素)活性を有する。「未修飾のアスパラギナーゼ」という用語は本明細書で使用されるとき、天然のアスパラギナーゼ、すなわち、本明細書で定義されているような(ポリ)ペプチドとの融合/コンジュゲートによって修飾されていないアスパラギナーゼを指す。たとえば、「未修飾のアスパラギナーゼ」は配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するL-アスパラギナーゼである。好ましい態様では、「未修飾のアスパラギナーゼ」は配列番号1のアミノ酸配列を有するL-アスパラギナーゼである。たとえば、修飾されたタンパク質は、特にNesslerアッセイによって評価されるとき、L-アスパラギナーゼの(酵素)活性よりも、特に未修飾のアスパラギナーゼ(酵素)活性よりも少なくとも5%及び/または30%まで(たとえば、少なくとも10%、15%、20%、25%、(またはそれ以上)高くあり得る(酵素)活性を有する。上記の説明は特に本明細書で提供されている融合タンパク質(たとえば、L-アスパラギナーゼとポリペプチドの修飾されたタンパク質であって、ポリペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るもの)に適用されるが、それらに限定されない。
【0080】
一部の態様では、修飾されたタンパク質は未修飾のL-アスパラギナーゼのアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性よりも高いアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性を有する。たとえば、修飾されたタンパク質は、特にNesslerアッセイによって評価されるとき、L-アスパラギナーゼのアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性よりも、特に未修飾のL-アスパラギナーゼのアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性よりも少なくとも5%及び/または30%まで(たとえば、少なくとも10%、15%、20%、25%、(またはそれ以上))高いアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性を有することができる。一部の実施形態では、アスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性はNesslerアッセイによって測定されてもよい。アスパラギンの加水分解の速度は放出されるアンモニアを測定することによって決定されてもよく、本明細書で開示されている修飾されたタンパク質を用いてそれから放出されるアンモニアの量を、L-アスパラギナーゼまたは未修飾のL-アスパラギナーゼを用いたアンモニアの量と比較してもよい。追加の態様では、前記修飾されたタンパク質は未修飾のL-アスパラギナーゼのL-アスパラギン枯渇活性よりも高いL-アスパラギン枯渇活性を有する。たとえば、修飾されたタンパク質は、特にNesslerアッセイによって評価されるとき、L-アスパラギナーゼのL-アスパラギン枯渇活性よりも、特に未修飾のL-アスパラギナーゼのL-アスパラギン枯渇活性よりも少なくとも5%及び/または30%まで(たとえば、少なくとも10%、15%、20%、25%、(またはそれ以上))高いL-アスパラギン枯渇活性を有する。本発明はまた、修飾されたタンパク質を含む医薬組成物、及び治療法で使用するための、薬物として使用するための、または医学で使用するための修飾されたタンパク質または医薬組成物にも関する。
【0081】
一般に、修飾されたタンパク質は化学的カップリングまたは遺伝子融合(別のタンパク質またはペプチドとのコンジュゲートの場合)によって得ることができる。「融合タンパク質」という用語は本明細書で使用されるとき、(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上のポリペプチドとを含む修飾されたタンパク質に主として関し、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。この文脈では、ポリペプチドは約200~約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成ることができる。そのようなポリペプチドの例となるアミノ酸配列は配列番号7または9にて示されている。
【0082】
修飾されたタンパク質が化学的カップリングによって得られるならば、それは(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上のペプチドとを含み、ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。この文脈では、ペプチドは、合計10~100のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、約15~約60のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、約15~約45のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、たとえば、約20~約40、たとえば、20のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、または40のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成ることができる。そのようなペプチドの例となるアミノ酸配列は、AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)またはAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号15)である。
【0083】
特に「修飾されたタンパク質」という用語が化学的カップリングによってまたは融合タンパク質として得られる修飾されたタンパク質を指すならば、すなわち、主としてそれが(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含むのであれば、「修飾されたタンパク質」という用語は本明細書で使用されるとき、「コンジュゲート」という用語と相互交換可能に使用することができ、(ポリ)ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。同様に、「未修飾の」及び「コンジュゲートされていない」という用語は本明細書では相互交換可能に使用することができる。
【0084】
本発明はまた、(a)式R-(P/A)-RC-actの活性化されたペプチドをL-アスパラギナーゼとカップリングして、L-アスパラギナーゼとRが保護基であるペプチドとの修飾されたタンパク質を得ることを含む、修飾されたタンパク質を調製するプロセスにも関するものであり、式中、RC-actはRのカルボキシ活性化形態であり、R及び(P/A)は調製される修飾されたタンパク質にて定義されたとおりであり、Rは(P/A)のN末端アミノ基に連結される保護基である。
【0085】
添付の実施例(参照.実施例1、表1)では、修飾されたタンパク質は種々の質量比の活性化されたペプチドとアスパラギナーゼとを用いて調製することができることが実証されている。たとえば、10:1(活性化ペプチド:アスパラギナーゼ)、7.5:1、5:1または3.5:1の質量比を使用することができる。5:1以下の比を使用すれば、修飾されたタンパク質の(酵素)活性が最も高いことが観察された(参照.実施例1、表2)。従って、上記の本明細書に記載されているプロセスでは、5:1以下、たとえば、5:1、4:1、3.5:1または3:1の活性化ペプチド:アスパラギナーゼの質量比を使用することが有利であり得る。「質量比」という用語は本明細書で使用されるとき、本明細書で定義されているような活性化ペプチドと本明細書で定義されているようなアスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1で示されるようなアスパラギナーゼ及び配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を持つタンパク質)の分子量の比を指す。「分子量」は通常、科学単位ダルトン(Da)を用いて本明細書で示される。ダルトン(Da)で本明細書にて示されるようなアスパラギナーゼまたはペプチドの分子量単位は統一原子質量単位(u)の代替名であることは周知である。従って、たとえば、500Daの分子量は500g/モルと同等である。「kDa」(キロダルトン)という用語は1000Daを指す。
【0086】
アスパラギナーゼまたはペプチドの分子量は、当該技術で既知の方法、たとえば、質量分光法(たとえば、エレクトロスプレーイオン化質量分析、ESI-MS、またはマトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)、ゲル電気泳動(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS-PAGE)、流体力学法(たとえば、ゲル濾過/サイズ排除クロマトグラフィー、SEC、または勾配沈殿)、または動的(DLS)もしくは静的な光散乱(たとえば、多角光散乱、MALS)を用いて決定することができ、あるいは、アスパラギナーゼまたはペプチドの分子量はアスパラギナーゼまたはペプチドの既知のアミノ酸配列(及び存在するならば、既知の翻訳後修飾)から算出することができる。好ましくは、アスパラギナーゼまたはペプチドの分子量は質量分光法を用いて決定される。
【0087】
本発明はまた、修飾されたタンパク質、または修飾されたタンパク質をコードする核酸の調製のためのプロセスにも関する。一部の態様では、プロセスは、たとえば、Saccharomyces cerevisiae及びPichia Pistorisのような酵母、ならびにEscherichia coli、Bacillus sp.、Pseudomonas fluorescens、Corynebacterium glutamicum及び以下の属、Serratia、Proteus、Acinetobacter及びAlcaligenesの細菌宿主を含む細菌、放線菌、真菌、藻類、及び他の微生物を含む群から選択される宿主にてL-アスパラギナーゼを産生させることを含む。グルタミナーゼ活性を欠いているアスパラギナーゼの変異体を発現するNocardiopsis alba(全体が参照によって本明細書に組み入れられるMeena,et al.(2014),Bioprocess Biosyst.Eng.October,2014,Article)及び全体が参照によって本明細書に組み入れられるSavitri,et al.(2003),Indian Journal of Biotechnology,2,184-194にて開示されたものを含む他の宿主が当業者に既知である。
【0088】
修飾されたタンパク質は、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するL-アスパラギナーゼと(ii)1以上のポリペプチドとを含む融合タンパク質であることができ、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。
【0089】
プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るポリペプチドにおけるプロリン残基はポリペプチドの約10%を超えて且つ約70%未満を構成してもよい。従って、ポリペプチドにおけるアミノ酸残基の総数の10%~70%がプロリン残基であることが好ましく、さらに好ましくはポリペプチドに含まれるアミノ酸残基の総数の20~50%がプロリン残基であり、一層さらに好ましくは、ポリペプチドに含まれるアミノ酸残基の総数の30%~40%(たとえば、30%、35%または40%)がプロリン残基である。
【0090】
ポリペプチドは複数のアミノ酸反復を含んでもよく、前記反復はプロリン残基及びアラニン残基から成り、6以下の連続するアミノ酸残基が同一である。特に、ポリペプチドは、アミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)または配列の全体または一部として配列の円順列型または多量体(複数可)を含んでもよく、またはそれから成ってもよい。
【0091】
好ましくは、ポリペプチドは配列番号7もしくは9で示されるようなアミノ酸配列を含むもしくはそれから成り、またはポリペプチドは配列番号8もしくは10で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むもしくはそれから成る。修飾されたタンパク質は、(a)配列番号11もしくは13で示されるようなアミノ酸配列を含むもしくはそれから成り、または(b)配列番号12もしくは14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むもしくはそれから成ることが本明細書では好ましい。一態様では、ポリペプチドはランダムコイルポリペプチドである。
【0092】
一部の態様では、修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質はコンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼのアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性よりも高いアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性を有する。たとえば、修飾されたタンパク質は、特にNesslerアッセイによって評価されるとき、未修飾のL-アスパラギナーゼのそれよりも少なくとも5%及び/または30%まで(たとえば、少なくとも10%、15%、20%、25%、(またはそれ以上))高いアスパラギナーゼ活性またはグルタミナーゼ活性を有することができる。さらなる態様では、修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質におけるL-アスパラギナーゼはアミン結合によってポリペプチドの末端残基に直接、共有結合され、及び/または融合タンパク質は組換えで製造される。好ましい態様では、修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質はL-アスパラギナーゼとポリペプチドとの間にリンカーを含む。例となるリンカーはアラニンアミノ酸残基であってもよい。本発明はまた、修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質を含む医薬組成物、または治療法におけるその使用、または薬物としての使用のための医薬組成物、または医学における使用のための医薬組成物にも関する。
【0093】
本発明は、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質、特に融合タンパク質をコードする核酸にも関する。好ましくは、核酸は、(a)配列番号12または14を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子、(b)(a)において定義されているようなヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子、及び(c)(a)において定義されているようなヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸分子から成る群から選択される。
【0094】
本発明の一態様はさらに、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質または本明細書で定義されているような核酸の調製のためのプロセスに関する。プロセスは本明細書で定義されているような宿主細胞を培養することと、培養物または前記細胞から前記修飾されたタンパク質を単離することとを含んでもよい。本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質、特に融合タンパク質を調製するプロセスは、修飾されたタンパク質、特に融合タンパク質の発現を引き起こす条件下で修飾されたタンパク質、特に融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターで形質転換された宿主細胞またはそのベクターを含む宿主細胞を培養することを含むことができる。一部の態様では、宿主細胞は上で列挙した群から選択される。
【0095】
本発明はさらに、患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療する方法に関するものであり、前記方法は前記患者に有効量の、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質を投与することを含む。L-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患はがんであり得る。本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質は、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べて患者にて低い免疫原性反応を引き出し得、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、生体内での長い循環半減期を有し得、及び/またはL-アスパラギナーゼ(特にコンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼ)と比べて単回投与の後、大きなAUC値を有し得る。
【0096】
本発明によって解決される課題は、試験管内での高い生物活性、安定なタンパク質・修飾因子の結合、生体内での長い半減期、たとえば、反復投与に続くL-アスパラギナーゼ製剤に対する抗体反応の低下または消失によって証拠付けされるような有意に低下した免疫原性、及び/または、たとえば、E.coliに由来しないL-アスパラギナーゼを用いた第1選択治療に感受性を発生している患者のための二次選択治療としての有用性を持つL-アスパラギナーゼ製剤の提供であると見なすことができる。
【0097】
この課題は、特許請求の範囲にて特徴付けられる実施形態によって、特に、L-アスパラギナーゼと、修飾因子、すなわち、(ii)(ポリ)ペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質を提供することによって、及びそれを調製する方法及びそれを使用する方法を提供することによって本発明に従って解決される。
【0098】
一態様では、本明細書に記載されているのは、未修飾のL-アスパラギナーゼタンパク質と比べて改善された薬理学的特性を持つ修飾されたL-アスパラギナーゼである。
【0099】
「修飾されたL-アスパラギナーゼ」という用語は本明細書で使用されるとき、本明細書で定義され、記載されているような「(ポリ)ペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る、(i)L-アスパラギナーゼと(ii)1以上の(ポリ)ペプチドとを含む修飾されたタンパク質」を指す。本発明の一態様では、L-アスパラギナーゼは、Erwiniaに由来し、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する。
【0100】
本明細書に記載されている修飾されたL-アスパラギナーゼ、たとえば、(ポリ)ペプチドがプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る1以上の(ポリ)ペプチドにコンジュゲートされたまたは融合されたL-アスパラギナーゼは、特に、Erwinia及び/またはE.coliに由来するL-アスパラギナーゼまたはペグ化L-アスパラギナーゼ、またはErwiniaに由来する未修飾のL-アスパラギナーゼによる治療に過敏性(たとえば、アレルギー反応または無症状の過敏性)を示す患者における使用のための治療剤として役立つ。本明細書に記載されている修飾されたL-アスパラギナーゼはまた、疾患の再発、たとえば、ALLの再発を有している及び別の形態のアスパラギナーゼで以前治療されたことがある患者における使用のための治療剤としても有用である。
【0101】
Erwinia chrysanthemi(Pectobacterium chrysanthemiとしても知られる)はDickeya chrysanthemiと改名されている。従って、Erwinia chrysanthemi、Pectobacterium chrysanthemi及びDickeya chrysanthemiという用語は本明細書では相互交換可能に使用される。
【0102】
特別に定義されない限り、本明細書で使用される用語は当該技術での普通の意味に従って理解される。
【0103】
本明細書で使用されるとき、文脈が別様に必然的に決定しない限り、用語「含む(inlucding)」は「限定せずに含む(including,without limitation)」を意味し、単数で使用される用語は複数を含むものとし、逆もまた同様である。
【0104】
本明細書で使用されるとき、用語、「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する」という用語、またはそれらの文法的変形は、述べられた特徴、完全体、ステップまたは成分を特定すると解釈されるべきであるが、1以上の追加の特徴、完全体、ステップ、成分またはそれらの群の追加を排除しない。「~を含む(comprising)」/「~を含む(including)」/「~を有する」という用語は「~から成る」及び「実質的に~から成る」を包含する。従って、「~を含む(comprising)」/「~を含む(including)」/「~を有する」という用語が本明細書で使用されるときはいつでも、それらは「実質的に~から成る」または好ましくは「~から成る」によって置き換えることができる。
【0105】
「~を含む(comprising)」/「~を含む(including)」/「~を有する」という用語は任意のさらなる成分(または同様の特徴、完全体、ステップ、等)が存在することができることを意味する。
【0106】
「~から成る」はさらなる成分(または同様の特徴、完全体、ステップ、等)が存在できないことを意味する。
【0107】
「実質的に~から成る」またはその文法的変形は本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、完全体、ステップまたは成分を特定すると解釈されるべきであるが、追加の特徴、完全体、ステップ、成分またはそれらの群が請求される生成物、組成物、装置または方法、等の基本的な特徴及び新規の特徴を物質的に変化させない場合に限り、1以上の追加の特徴、完全体、ステップ、成分またはそれらの群の追加を排除しない。
【0108】
従って、「実質的に~から成る」は、具体的なさらなる成分(または同様の特徴、完全体、ステップ、等)、すなわち、生成物、組成物、装置または方法の本質的な特徴に物質的に影響を及ぼさないものは存在できることを意味する。言い換えれば、「実質的に~から成る」という用語(用語「実質的に~を含む(comprising substantially)」と相互交換可能に本明細書で使用することができる)は、生成物、組成物、装置または方法の本質的な特徴が他の成分の存在によって物質的に影響を受けないという条件で、必須の成分(または同様の特徴、完全体、ステップ、等)に加えて生成物、組成物、装置または方法にて他の成分の存在を許す。
【0109】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は本明細書で別様に指示されない限り、±10%を指す。
【0110】
本明細書で使用されるとき、「a」または「an」は1以上を意味し得る。
【0111】
本明細書で使用されるとき、「アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患」という用語は、状態または疾病に関与するか、その原因となる細胞がL-アスパラギンを合成する能力を欠いているまたは低下した能力を有する状態または疾病を指す。L-アスパラギンの枯渇または喪失は部分的であることができ、または実質的に完全で(たとえば、当該技術で既知である方法及び装置を用いて検出できないレベルまで)あることができる。
【0112】
本明細書で使用されるとき、「治療上有効な量」という用語は所望の治療効果を生じるのに必要とされるタンパク質(たとえば、アスパラギナーゼまたはその修飾されたタンパク質)の量を指す。
【0113】
本明細書で使用されるとき、「L-アスパラギナーゼ」という用語はL-アスパラギンアミノ加水分解酵素活性を有する酵素である。L-アスパラギナーゼの酵素活性は、アスパラギンからアスパラギン酸とアンモニアへの脱アミド化だけでなく、グルタミンからグルタミン酸とアンモニアの脱アミド化も含み得る。アスパラギナーゼは通常4つの単量体で構成される(が、一部は5つまたは6つで報告されている)。各単量体は約32,000~約36,000ダルトンであることができる。
【0114】
微生物から既知の方法によって単離された多数のL-アスパラギナーゼタンパク質が当該技術で同定されている(たとえば、全体が参照によって本明細書に組み入れられる、Savitri及びAzmi,Indian J. Biotechnol.2,(2003),184-194を参照のこと)。最も広く使用され、市販されているL-アスパラギナーゼは、E.coliまたはErwinia chrysanthemiに由来し、その双方は50%以下の構造的相同性を共有する。
【0115】
以下は本発明に従って使用される「L-アスパラギナーゼ」に関する。Erwinia種間では、Erwinia chrysanthemiとErwinia carotovoraに由来する酵素の間で通常、75~77%の配列同一性が報告され、Erwinia chrysanthemiの異なる亜種間ではおよそ90%の配列同一性が見いだされた(全体が参照によって本明細書に組み入れられるKotzia,(2007),Journal of Biotechnology,127,657-669)。一部の代表的なErwiniaのL-アスパラギナーゼには、たとえば、Erwinia chrysanthemi NCPPB1066に対する配列同一性のパーセントを開示している以下の表1で提供されているものが挙げられる。
【表A】
【0116】
表1のErwiniaのL-アスパラギナーゼの配列及びGenBankの登録は参照によって本明細書に組み入れられる。治療法で使用される例となるL-アスパラギナーゼは、E.coliから、及びErwinia、具体的にErwinia chrysanthemiから単離されるL-アスパラギナーゼである。
【0117】
L-アスパラギナーゼは微生物から単離される天然の酵素であってもよい。それらは、E.coliのような微生物を作り出す組換え酵素技術によっても製造することもできる。例として、本発明の修飾されたタンパク質で使用されるタンパク質は、E.coli株で産生される組換えタンパク質、好ましくは、組換えE.coli株で産生されるErwinia種、特にErwinia chrysanthemiに由来するタンパク質であることができる。
【0118】
酵素はその比活性によって同定することができる。従って、この定義には、他の生物、さらに詳しくは他の微生物にも存在する定義された比活性を有するポリペプチドすべてが含まれる。類似の活性を持つ酵素は、PFAMまたはCOGとして定義される特定のファミリーへのグループ分けによって同定できることが多い。PFAM(配列比較のタンパク質ファミリーのデータベース及び隠れマルコフモデル、pfam.sanfferac.ukl)はタンパク質の配列比較の大きな収集を表す。各PFAMは、複数の配列比較を視覚化する、タンパク質のドメインを確認する、生物間の分布を評価する、他のデータベースへのアクセスを得る、及び既知のタンパク質構造を視覚化するのを可能にする。COG(タンパク質のオーソロガス群のクラスター、vv-ww.nebi.nlm.nih.gov/COG/)は、30の主要な系統発生株を表す43の完全に配列決定したゲノムに由来するタンパク質配列を比較することによって得られる。各COGは、前の保存されたドメインの同定を可能にする少なくとも3つの株から定義される。
【0119】
配列同一性の比率を同定する手段は当業者に周知であり、それには、特にBLASTプログラムが挙げられ、それは、ウェブサイトで示される初期設定パラメーターと共にウェブサイトblast.ncbi.olo.nih.gov/Blast.cgiから使用することができる。次いで、たとえば、初期設定パラメーターでのプログラムCLUSTALW(ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.html)を用いて、得られた配列を利用する(たとえば、並べる)ことができる。既知の遺伝子についてGenBankで与えられた参照を用いて、当業者は、他の生物、細菌株、酵母、真菌、哺乳類、植物、等にて同等の遺伝子を決定することができる。この日常の作業は、他の微生物に由来する遺伝子との配列比較を実施すること、及び縮重プローブを設計して別の生物における対応する遺伝子をクローニングすることによって決定することができるコンセンサス配列を用いて有利に行われる。
【0120】
当業者は、L-アスパラギナーゼ活性を実質的に保持するタンパク質を選択し、設計するやり方を理解するであろう。L-アスパラギナーゼ活性を測定するアプローチの1つは、Mashburn,(1963),Biochem.Biophys.Res.Commun.12,50(全体が参照によって本明細書に組み入れられる)によって記載されたようなNesslerアッセイである。
【0121】
本発明の修飾されたタンパク質の特定の態様では、L-アスパラギナーゼは配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%の相同性または配列同一性を有し、さらに具体的には添付の配列表で述べられているような配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相同性または配列同一性を有する。「相同性」及び「配列同一性」という用語は本明細書では相互交換可能に使用される。
【0122】
「配列番号1の配列を含む」という用語(たとえば、L-アスパラギナーゼは配列番号1のアミノ酸配列に対して100%の相同性または配列同一性を有するならば)は、アスパラギナーゼのアミノ酸配列が配列番号1に厳密に限定されなくてもよく、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の追加のアミノ酸を含有してもよいことを意味する。言い換えれば、本明細書で使用されるL-アスパラギナーゼが配列番号1のアミノ酸配列に対して100%の相同性または配列同一性を有するならば、L-アスパラギナーゼは配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはそれから成る。「含む」という用語はこの文脈では配列番号1のL-アスパラギナーゼのアミノ酸配列が1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の追加のアミノ酸を含有してもよいことを意味する。
【0123】
特定の態様では、タンパク質は配列番号1のアミノ酸配列を含む、またはそれから成るErwinia chrysantherniのL-アスパラギナーゼである。別の態様では、L-アスパラギナーゼは、シグナルペプチド及び/またはリーダー配列の有無にかかわらず、Erwinia chrysantherniのNCPPB1066(全体が参照によって本明細書に組み入れられるGenBank受入番号CAA32884)に由来する。
【0124】
L-アスパラギナーゼ、好ましくは配列番号1のL-アスパラギナーゼの断片も本発明の修飾されたタンパク質で使用されるL-アスパラギナーゼの定義の範囲内に含まれる。「アスパラギナーゼの断片」という用語(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼの断片)は、アスパラギナーゼの配列が本明細書で例示されているアスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼ)におけるよりも少ないアミノ酸を含み得るが、依然としてL-アスパラギナーゼ活性を付与するのに十分なアミノ酸を含み得ることを意味する。たとえば、「アスパラギナーゼの断片」は、本明細書で例示されているアスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼ)の1つの少なくとも約150または200の隣接するアミノ酸(たとえば、約150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、321、322、323、324、325、326の隣接するアミノ酸)である/それらから成る断片であり、及び/または前記断片は本明細書で例示されている前記アスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼ)のN末端から50までの(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50までの)アミノ酸が欠失されており、及び/または前記断片は本明細書で例示されている前記アスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼ)のC末端から75または100までの(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、75、80、85、90、95または100までの)アミノ酸が欠失されており、及び/または本明細書で例示されている前記アスパラギナーゼ(たとえば、配列番号1のアスパラギナーゼ)のN末端及びC末端の双方でアミノ酸が欠失されており、欠失したアミノ酸の総数が125または150までのアミノ酸であることができる断片である。
【0125】
ポリペプチドは、その酵素活性を保持しながら、1以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失及び/または付加によって修飾することができることは当該技術で周知である。この文脈における「1以上のアミノ酸」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10、またはそれ以上のアミノ酸を指すことができる。たとえば、タンパク質の機能的特性に影響を及ぼさない化学的に同等のアミノ酸による所与の位置でのアミノ酸1つの置換は一般的である。置換は以下の群の1つの範囲内での交換として定義されてもよい。
・小型の脂肪族で非極性またはやや極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
・極性で負に荷電した残基及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln
・極性で正に荷電した残基:His、Arg、Lys
・大型の脂肪族で非極性の残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys
・大型の芳香族残基:Phe、Tyr、Trp
【0126】
従って、1つの負に荷電した残基を他の負に荷電した残基に置換すること(たとえば、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換)、または1つの正に荷電した残基を他の正に荷電した残基に置換すること(たとえば、リシンのアルギニンとの置換)を生じる変化は機能的に同等の生成物を生じると予想することができる。
【0127】
アミノ酸配列におけるアミノ酸が修飾される位置及び修飾の対象となるアミノ酸の数は特に限定されない。技量のある熟練者はタンパク質の活性に影響を与えることなく導入することができる修飾を認識することができる。たとえば、タンパク質のN末端またはC末端の部分における修飾は、ある特定の状況下ではタンパク質の活性を変えないと予想され得る。アスパラギナーゼに関して、特に、多くの特性評価が、特に活性がある触媒部位を形成する配列、構造及び残基に関して行われている。これは、酵素の活性に影響を与えることなく修飾することができる残基に関する手引きを提供する。細菌起源に由来する既知のL-アスパラギナーゼはすべて共通する構造的特徴を有する。すべてが、2つの隣接する単量体のN末端とC末端のドメイン間で4つの活性部位を持つホモ四量体である(全体が参照によって本明細書に組み入れられるAghaipour,(2001),Biochemistry,40,5655-5664)。すべてが、その三次構造及び四次構造にて高度の類似性を有する(全体が参照によって本明細書に組み入れられるPapageorgiou,(2008),FEBS J.275,4306-4316)。L-アスパラギナーゼの触媒部位の配列は、Erwinia chrysanthemi、Erwinia carotovora、及びE.coliのL-アスパラギナーゼ(II)の間で高度に保存されている(同文献)。活性部位の柔軟なループはアミノ酸残基14~33を含有し、構造解析はThr15、Thr95、Ser62、G1u63、Asp96、及びA1a120がリガンドに接触することを示している(同文献)。Aghaipourらは、Erwinia chrysanthemiのL-アスパラギナーゼの4つの活性部位の詳細な解析を、その基質と複合体化した酵素の高分解能の結晶構造を調べることによって行っている(Aghaipour,(2001),Biochemistry,40,5655-5664)。Kotziaらは、Erwiniaの幾つかの種及び亜種に由来するL-アスパラギナーゼの配列を提供し、タンパク質はErwinia chrysanthemiとErwinia carotovoraとの間で約75~77%の同一性しか有さないにもかかわらず、それらはそれぞれ依然としてL-アスパラギナーゼ活性を有する(Kotzia,(2007),J.Biotechnol.127,657-669)。MoolaらはErwinia chrysanthemi3937L-アスパラギナーゼのエピトープマッピング試験を行い、アスパラギナーゼの免疫原性を低下させる試みにて種々の抗原性配列を変異させた後でさえ酵素活性を保持することができた(Moola,(1994),Biochem.J.302,921-927)。L-アスパラギナーゼで行われてきた広範な特性評価を考慮して、当業者は酵素活性を保持しながら断片を作り、及び/または配列置換を行うやり方を決定し得る。
【0128】
本明細書で使用されるとき、たとえば、組成物における成分の寸法、体積、量、濃度、プロセス温度、プロセス時間、収量、流速、圧力及び類似の値、及びそれらの範囲を修飾する「約」という用語は、化合物、組成物、濃縮物または使用製剤を作るのに使用される典型的な測定及び取り扱いの手順を介して、これらの手順における不注意な誤りを介して、方法を実施するのに使用される出発物質または成分の製造、供給源または純度における差異を介して発生し得る数量、及び類似の検討事項における変動を指す。「約」という用語はまた、たとえば、特定の当初濃度または混合の組成物、製剤または細胞培養物の経時劣化によって異なる量、及び特定の当初の濃度または混合の組成物または製剤を混合するまたは処理することによって異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されようとされまいと、本明細書に添付されるクレームはこれらの量に対する同等物を含む。「約」という用語はさらに述べられた参照値に類似する値の範囲を指してもよい。ある特定の実施形態では、「約」という用語は述べられた参照値の10、9、8、7、6、5、4、3、2、1パーセント以内に入る値の範囲を指す。
【0129】
本発明の文脈では、驚くべきことに、プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る1以上のペプチドの特定のC末端アミノ酸残基(R)を介したL-アスパラギナーゼへの化学的コンジュゲートは、アスパラギナーゼの分子当たり前記ペプチドの特に高いカップリング比を有するので、かなり低下した免疫原性及び向上した血漿半減期を有するL-アスパラギナーゼで修飾されたタンパク質を提供できるようにすることが見いだされている。この新規の技法はその触媒活性を損なうことなくL-アスパラギナーゼに適用することもでき、それは本明細書に記載されている対応する修飾されたタンパク質の治療価値を大きく高めることがさらに見いだされている。
【0130】
一態様では、本明細書に記載されているのは、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するL-アスパラギナーゼと、(ii)1以上のペプチドとを含む修飾されたタンパク質であり、ペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。
【0131】
好ましい態様では、修飾されたタンパク質はL-アスパラギナーゼと、それぞれが独立してペプチドR-(P/A)-Rである1以上のペプチドとの修飾されたタンパク質であり、式中、(P/A)はプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るアミノ酸配列であり、Rはアミノ酸配列のN末端アミノ基に連結される保護基であり、Rはそのアミノ基を介してアミノ酸配列のC末端カルボキシ基に結合されるアミノ酸残基であり、各ペプチドは、ペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基とL-アスパラギナーゼの遊離のアミノ基とから形成されるアミド結合を介してL-アスパラギナーゼにコンジュゲートされ、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基の少なくとも1つはL-アスパラギナーゼのN末端のαアミノ基ではない。
【0132】
一部の態様では、修飾されたタンパク質の単量体は、修飾の後、約350、400、450、500のアミノ酸から約550、600、650、700または750のアミノ酸までを有する。追加の態様では、修飾されたタンパク質は約350~約750のアミノ酸、または約500~約750のアミノ酸を有する。
【0133】
本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質に含まれる各ペプチドは独立してペプチドR-(P/A)-Rである。従って、本明細書に記載されている修飾されたタンパク質に含まれるペプチドのそれぞれについては、N末端保護基であるR、アミノ酸配列(P/A)、及びC末端アミノ酸残基であるRはそれぞれ独立してそれらのそれぞれの意図から選択される。従って、修飾されたタンパク質に含まれる2以上のペプチドは同一であってもよく、またはそれらは互いに異なってもよい。一態様では、修飾されたタンパク質に含まれるペプチドのすべてが同一である。
【0134】
さらに、修飾されたタンパク質に含まれるペプチドは好ましくは、特に修飾されたタンパク質が水性環境(たとえば、水溶液または水性緩衝液)に存在する場合、ランダムコイル構造を採用する。ランダムコイル構造の存在は、当該技術で既知の方法を用いて、特に、たとえば、円偏光二色性分光法(CD)のような分光技法によって決定することができる。
【0135】
ペプチドR-(P/A)-Rに含まれる、化学的にコンジュゲートされた修飾されたタンパク質における部分(P/A)は、合計10~100の間のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、合計15~60のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、合計15~45のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、たとえば、合計20のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基、たとえば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成ることができるアミノ酸配列である。好ましい態様では、アミノ酸配列は20のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る。別の好ましい態様では、前記アミノ酸配列は40のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る。ペプチドR-(P/A)-Rでは、部分(P/A)に含まれるプロリン残基の数の(P/A)に含まれるアミノ酸残基の総数に対する比は好ましくは10%以上且つ70%以下、さらに好ましくは20%以上且つ50%以下、及び一層さらに好ましくは25%以上且つ40%以下である。従って、(P/A)におけるアミノ酸残基の総数の10%~70%がプロリン残基であることが好ましく、さらに好ましくは(P/A)におけるアミノ酸残基の総数の20%~50%がプロリン残基であり、一層さらに好ましくは(P/A)におけるアミノ酸残基の総数の25%~40%(たとえば、25%、30%、35%または40%)がプロリン残基である。さらに、(P/A)は連続したプロリン残基を含有しない(すなわち、それは部分配列PPを含有しない)ことが好ましい。好ましい態様では、(P/A)はアミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号5)である。別の好ましい態様では、(P/A)はアミノ酸配列AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA(配列番号15)である。
【0136】
ペプチドR-(P/A)-RにおけるR基は、アミノ酸配列(P/A)のN末端アミノ基、特にN末端αアミノ基に連結される保護基であってもよい。Rはピログルタモイルまたはアセチルであることが好ましい。
【0137】
ペプチドR-(P/A)-RにおけるR基は、そのアミノ基を介して(P/A)のC末端カルボキシ基に結合され、そのアミノ基とそのカルボキシ基の間で少なくとも2つの炭素原子を含むアミノ酸残基である。Rのアミノ基とカルボキシ基の間での少なくとも2つの炭素原子は、Rのアミノ基とカルボキシ基の間で少なくとも2つの炭素原子の距離を提供してもよいこと(たとえば、Rがω-アミノ-C3-15アルカン酸、たとえば、ω-アミノヘキサン酸である場合である)が理解されるであろう。Rはω-アミノヘキサン酸であることが好ましい。
【0138】
一実施形態では、ペプチドは、Pga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH(配列番号16)またはPga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH(配列番号17)である。「Pga」という用語は「ピログルタモイル」または「ピログルタミン酸」の略語である。「Ahx」という用語は「ω-アミノヘキサン酸」の略語である。
【0139】
添付の実施例でも明らかにされているように、特にω-アミノヘキサン酸を含む本明細書で定義されているようなC末端アミノ酸残基Rの使用は、アスパラギナーゼの分子当たりの、プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドの有利に高いカップリング比を修飾されたタンパク質に提供するのを可能にするので、有利に低下した免疫原性及び有利に向上した血漿半減期を修飾されたタンパク質に提供するのを可能にする。
【0140】
本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質では、各ペプチドR-(P/A)-Rは、ペプチドのC末端アミノ酸残基Rのカルボキシ基とL-アスパラギナーゼの遊離のアミノ基とから形成されるアミド結合を介してL-アスパラギナーゼにコンジュゲートすることができる。L-アスパラギナーゼの遊離のアミノ基は、たとえば、L-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基または側鎖のアミノ基(たとえば、L-アスパラギナーゼに含まれるリシン残基のε-アミノ基)であってもよい。L-アスパラギナーゼが複数のサブユニットで構成されるならば、たとえば、L-アスパラギナーゼが四量体であるならば、複数のN末端α-アミノ基(すなわち、各サブユニットに1つ)があってもよい。一態様では、本明細書で定義されているような9~13のペプチド(たとえば、9、11、12または13のペプチド)をL-アスパラギナーゼに(たとえば、L-アスパラギナーゼの各サブユニット/単量体に)化学的にコンジュゲートすることができる。
【0141】
上記によれば、一態様では、ペプチドが化学的にコンジュゲートされる遊離のアミノ基の少なくとも1つはL-アスパラギナーゼのN末端α-アミノ基ではない(すなわち、それとは異なる)。従って、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基の少なくとも1つはL-アスパラギナーゼの側鎖アミノ基であることが好ましく、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基の少なくとも1つはL-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが特に好ましい。
【0142】
さらに、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基は、L-アスパラギナーゼのリシン残基(複数可)のε-アミノ基(複数可)、L-アスパラギナーゼまたはL-アスパラギナーゼの任意のサブユニット(複数可)のN末端α-アミノ基(複数可)、及びそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基の1つはN末端α-アミノ基である一方で、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基の他のもの(複数可)はそれぞれL-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが特に好ましい。あるいは、ペプチドがコンジュゲートされる遊離のアミノ基のそれぞれはL-アスパラギナーゼのリシン残基のε-アミノ基であることが好ましい。
【0143】
本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質は、本明細書で定義されているようなL-アスパラギナーゼと1以上のペプチドとで構成される。対応する修飾されたタンパク質は、たとえば、L-アスパラギナーゼ1つと、それぞれL-アスパラギナーゼにコンジュゲートされる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55(以上)のペプチドとから成ってもよい。L-アスパラギナーゼは、たとえば、単量体タンパク質であってもよいし、または複数のサブユニットで構成されるタンパク質、たとえば、四量体であってもよい。L-アスパラギナーゼが単量体タンパク質であるならば、対応する修飾されたタンパク質は、たとえば、単量体L-アスパラギナーゼ1つと、それぞれ単量体L-アスパラギナーゼにコンジュゲートされる9~13(以上)(たとえば、9、11、12または13)のペプチドとから成ってもよい。単量体L-アスパラギナーゼの例となるアミノ酸配列は配列番号1に示される。L-アスパラギナーゼが複数のサブユニット、たとえば、4つのサブユニットで構成されるタンパク質であるならば(すなわち、前記L-アスパラギナーゼが四量体であるならば)、対応する修飾されたタンパク質は、たとえば、4つのL-アスパラギナーゼのサブユニットと、それぞれL-アスパラギナーゼの各サブユニットにコンジュゲートされる本明細書で定義されているような9~13(以上)(たとえば、9、11、12または13)のペプチドとから成ってもよい。L-アスパラギナーゼのサブユニットの例となるアミノ酸配列は配列番号1に示される。同様に、L-アスパラギナーゼが複数のサブユニット、たとえば、4つのサブユニットで構成されるタンパク質であるならば(すなわち、前記L-アスパラギナーゼが四量体であるならば)、対応する修飾されたタンパク質は、たとえば、4つのL-アスパラギナーゼのサブユニットと、それぞれL-アスパラギナーゼ四量体にコンジュゲートされる30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55(またはそれ以上)のペプチドとから成ってもよい。一態様では、本発明はL-アスパラギナーゼと複数の化学的に連結されたペプチド配列とを有する修飾されたタンパク質に関する。さらなる態様では、ペプチド配列の長さは約10~約100、約15~約60または約20~約40である。
【0144】
プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドは、前記L-アスパラギナーゼの1以上のアミノ酸、たとえば、リシン残基及び/またはN末端残基に共有結合されてもよく、及び/またはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドは、L-アスパラギナーゼの表面におけるリシン残基及び/またはN末端残基のアミノ基を含む接触可能なアミノ基の少なくとも約40、50、60、70、80または90%から約60、70、80、90または100%までに共有結合されてもよい。たとえば、L-アスパラギナーゼ当たり、接触できる約11~12のリシン残基があり得、プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドにコンジュゲートされるであろう約9~12のリシンがあり得る。さらなる態様では、プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドは、前記L-アスパラギナーゼの全リシン残基の約20、30、40、50、または60%から約30、40、50、60、70、80または90%までに共有結合される。さらなる実施形態では、プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るペプチドはリンカーを介してL-アスパラギナーゼに共有結合される。例となるリンカーには、全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開番号2015/0037359で開示されるリンカーが挙げられる。
【0145】
加えて、前記修飾されたタンパク質は、約25μgのタンパク質/kgの用量で少なくとも約5、10、12、15、24、36、48、60、72、84または96時間の半減期、及び/または未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて生体内での長い循環半減期を有し得る。さらに、前記修飾されたタンパク質はL-アスパラギナーゼと比べて血漿薬剤濃度-時間曲線下の大きな面積(AUC)を有し得る。
【0146】
本発明に係る修飾されたタンパク質は当該技術で既知の方法を用いて調製することができる。特に、それは、以下に記載されるプロセスを用いて、及び/または実施例に記載される手順に従って、またはそれと同様に調製することができる。
【0147】
本発明はさらに、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質を調製するプロセスに関するものであり、該プロセスは(a)式R-(P/A)-RC-actの活性化されたペプチドをL-アスパラギナーゼとカップリングして、L-アスパラギナーゼとRが保護基であるペプチドとの修飾されたタンパク質を得ることを含み、式中、RC-actはRのカルボキシ活性化形態であり、R及び(P/A)は調製される修飾されたタンパク質で定義されたとおりであり、Rは(P/A)のN末端アミノ基に連結される保護基である。
【0148】
活性化されたペプチドに含まれるカルボキシ活性化C末端アミノ酸残基RC-actはペプチドに関して本明細書で記載され、且つ定義されているようなアミノ酸残基Rであってもよく、Rのカルボキシ基は活性化されたカルボキシ基の形態である。好ましくは、活性化されたペプチドにおけるアミノ酸残基RC-actの活性化されたカルボキシ基は活性があるエステル基である。
【0149】
C-actの活性化されたカルボキシ基が、活性があるエステル基であるならば、それは好ましくは以下の活性があるエステル基:
【化1】

のいずれか1つから選択される。
【0150】
特に好ましい活性があるエステル基は1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)活性エステル基である。従って、RC-actの活性化されたカルボキシ基は以下の式:
【化2】

(HOBt活性エステル基)の基である。
【0151】
プロセスはさらに、ステップ(a)の前に、R及び(P/A)が調製される修飾されたタンパク質で定義されたとおりであり、Rが(P/A)のN末端アミノ基に連結される保護基である式R-(P/A)-Rのペプチドを活性化されたP/Aペプチドに変換するさらなるステップを含んでもよい。
【0152】
たとえば、RC-actの活性化されたカルボキシ基として1-ヒドロキシベンゾトリアゾール活性エステル基を有する活性化されたペプチドを得るために、ペプチドを活性化ペプチドに変換するステップは、ペプチドを塩基の存在下で1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)のホスホニウムエステル、ウロニウムエステルまたはイモニウムエステルの塩と反応させることによって実施することができる。HOBtのホスホニウム、ウロニウムまたはイモニウム誘導体の塩は好ましくは、テトラフルオロホウ酸O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(TBTU)である。
【0153】
カップリングステップ(a)及びペプチドを活性化ペプチドに変換する先行の任意のステップは、たとえば、El-Faham,et al.,2011,Chem.Rev.111(11),6557-6602、Montalbetti,et al.,2005,Tetrahedron,61(46),10827-10852、Klose,et al.,1999,Chem.Commun.18,1847-1848、Valeur,et al.,2007、Carpino,et al.,1995,J.Am.Chem.Soc.117(19),5401-5402)、Valeur,et al.,2009,Chem.Soc.Rev.,38(2),606-631、またはHermanson,2013,Bioconjugate techniques.Third edition.Academic pressのいずれかにおける文献に記載されたペプチドカップリングまたはアミド結合形成の手順を用いて実施することができる。そのような手順に好適な試薬及び反応条件は、前述の文献及びそれらの中で引用されたさらなる参考文献にさらに記載されている。追加の記載は、米国特許第8,563,521号、同第9,260,494号、及び同第9,221,882号に見いだされ、これらすべては、全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0154】
任意のステップ(b)で必要とされるような、保護基Rを取り外す手順は当該技術で周知であり、たとえば、Wuts,et al.,2012,Greene’Protective Groups in Organic Synthesis.Fourth Edition.John Wiley & Sons及び/またはIsidro-Llobet,et al.,2009,Chem.Rev.109(6),2455-2504に記載されている。従って、任意のステップ(b)は、たとえば、前述の参考文献のいずれかにて対応する保護基Rについて記載されているように実施することができる。
【0155】
一部の態様では、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するL-アスパラギナーゼと、(ii)ポリペプチドとを含む修飾されたタンパク質に関するものであり、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。一態様では、修飾されたタンパク質は融合タンパク質である。プロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成るポリペプチドは、約200~約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基の長さを有してもよい。言い換えれば、ポリペプチドは、約200~約400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成ってもよい。好ましい態様では、ポリペプチドは、合計約200(たとえば、201)のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成り(すなわち、約200(たとえば、201)のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基の長さを有し)、またはポリペプチドは、合計約400(たとえば、401)のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る(たとえば、約400(たとえば、401)のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基の長さを有する)。一部の好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7または9で示されるようなアミノ酸配列を含み、もしくはそれから成り、またはポリペプチドは、配列番号8または10で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含み、もしくはそれから成る。一部の態様では、好ましくは修飾されたタンパク質が融合タンパク質であり、各単量体が約350、400、450、500アミノ酸から約550、600、650、700、750または1000までのアミノ酸を有する修飾されたタンパク質は単量体とP/Aのアミノ酸配列とを含む。追加の態様では、修飾されたタンパク質は約350~約800のアミノ酸または約500~約750のアミノ酸を有する。
【0156】
たとえば、ポリペプチドは米国特許第9,221,882号で調製されたペプチドを含む。
【0157】
好ましい態様では、修飾されたタンパク質は、(a)配列番号11または13で示されるようなアミノ酸配列を含む、もしくはそれから成る、または(b)配列番号12または14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含む、もしくはそれから成る。本明細書では、修飾されたタンパク質は、(a)配列番号11または13で示されるようなアミノ酸配列を有するタンパク質、(b)アスパラギナーゼにて1~65のアミノ酸が欠失される、挿入される、付加されるまたは置換される(a)で定義されたようなタンパク質、(c)配列番号12または14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるタンパク質、(d)(c)で定義されたような核酸分子の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質、(e)(a)~(d)のいずれか1つのタンパク質に対して少なくとも85%の同一性を有するタンパク質、及び(f)(c)または(d)で定義されたような核酸のヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質を含むことが企図される。
【0158】
本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質は4つのサブユニットで構成されてもよく、サブユニットは(a)配列番号1で示されるようなアミノ酸配列を有するタンパク質、(b)アスパラギナーゼにて1~65のアミノ酸が欠失される、挿入される、付加されるまたは置換される(a)で定義されたようなタンパク質、(c)配列番号2で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるタンパク質、(d)(c)で定義されたような核酸分子の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリッド形成する核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質、(e)(a)~(d)のいずれか1つのタンパク質に対して少なくとも85%の同一性を有するタンパク質、及び(f)(c)または(d)で定義されたような核酸のヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質から成る群から選択される。
【0159】
具体的には、修飾されたタンパク質がL-アスパラギナーゼとポリペプチドとの修飾されたタンパク質であるならば、本発明は本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質をコードする核酸に関するものであり、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。好ましい態様では、修飾されたタンパク質は融合タンパク質である。好ましい態様では、核酸は、(a)配列番号12または14のヌクレオチド配列を含む核酸、(b)(a)で定義されたようなヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、及び(c)(a)で定義されたようなヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸から成る群から選択される。
【0160】
さらなる態様では、本発明は、配列番号12または14から成る群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に関する。コードされるポリペプチドはランダムコイルを形成してもよい反復性のアミノ酸配列を含むが、コードする核酸は好ましくは反復性の低いヌクレオチド配列を含む。言い換えれば、核酸はPAが豊富なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことができ、前記コーディングヌクレオチド配列は14、15、16、17、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50または約55のヌクレオチドの最大長さを有するヌクレオチド反復を含む。本明細書で開示されているような反復性の低い核酸は反復性の高い核酸分子に比べて有利であることができる。特に、本明細書で使用される反復性の低い核酸分子の遺伝的安定性を改善することができる。
【0161】
一部の態様では、ヌクレオチド配列はL-アスパラギナーゼとポリペプチドとを含む修飾されたタンパク質のいずれかをコードする配列であり、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成り、好ましくは、このアミノ酸配列を有する融合タンパク質がL-アスパラギナーゼ活性を有するという条件で、1以上のアミノ酸が付加される、欠失される、挿入されるまたは置換されることを除いて、修飾されたタンパク質は本明細書に記載されている融合タンパク質である。
【0162】
追加の態様では、本発明はL-アスパラギナーゼとポリペプチドとを含む修飾されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む(組換え)ベクターに関するものであり、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成り、好ましくは、修飾されたタンパク質は本明細書に記載されているような融合タンパク質であり、ベクターは修飾されたタンパク質(たとえば、融合タンパク質)を発現することができる。さらなる態様では、本発明はまた、本明細書に記載されている(組換え)ベクターを含む宿主にも関する。宿主は、たとえば、Saccharomyces cerevisiae及びPichia Pistorisのような酵母、ならびにEscherichia coli、Bacillus sp.、Pseudomonas fluorescens、Corynebacterium glutamicumならびに以下の属Serratia、Proteus、Acinetobacter、及びAlcaligenesの細菌宿主を含む細菌、放線菌、真菌、藻類、及び他の微生物であってもよい。他の宿主は当業者に既知であり、グルタミナーゼ活性を欠いているアスパラギナーゼの変異体を発現するNocardiopsis alba(全体が参照によって本明細書に組み入れられるMeena,et al.(2014),Bioprocess Biosyst.Eng.October,2014,Article)及び全体が参照によって本明細書に組み入れられるSavitri,et al.(2003),Indian Journal of Biotechnology,2,184-194にて開示されたものを含む。
【0163】
本発明は、上記で本明細書に記載されている核酸、すなわち、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質をコードする核酸、特に、L-アスパラギナーゼとポリペプチドとの修飾されたタンパク質、たとえば、融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターに関するものであり、ポリペプチドはプロリン及びアラニンのアミノ酸残基のみから成る。好ましい態様では、核酸は、(a)配列番号12または14のヌクレオチド配列を含む核酸、(b)(a)で定義されたようなヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、及び(c)(a)で定義されたようなヌクレオチド配列に対する遺伝暗号の結果として縮重である核酸から成る群から選択される。
【0164】
本発明は本明細書で定義されているような核酸を含む、または本明細書で定義されているようなベクターを含む宿主細胞に関する。例の宿主は上記で列挙されている。
【0165】
本発明はさらに、本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質、好ましくは融合タンパク質を調製するプロセス、またはそれをコードする核酸を調製するプロセスに関する。プロセスは、本明細書で定義されているような宿主細胞を培養することと、培養物または前記細胞から前記修飾されたタンパク質を単離することとを含むことができる。プロセスは、修飾されたタンパク質(好ましくは融合タンパク質)の発現を引き起こす条件下で宿主細胞(たとえば、修飾されたタンパク質(好ましくは融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸及び/またはベクターで形質転換された宿主細胞またはそれを含む宿主細胞)を培養することを含むことができる。例の宿主は上記で列挙されている。
【0166】
多数の好適なベクターが分子生物学の当業者に知られている。プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ及び遺伝子操作で従来使用されている他のベクターを含む好適なベクターの選択は所望の機能に左右される。
【0167】
当業者に周知の方法を用いて種々のプラスミドを構築することができる。たとえば、Sambrook,(2012),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載された技法を参照のこと。典型的なプラスミドベクターには、たとえば、pQE-12、プラスミドのpUCシリーズ、pBluescript(Stratagene)、発現ベクターのpETシリーズ(Novagen)またはpCRTOPO(Invitrogen)、lambda gt11、pJOE、pBBR1-MCSシリーズ、pJB861、pBSMuL、pBC2、pUCPKS、pTACT1が挙げられる。哺乳類細胞での発現に適合する典型的なベクターには、E-027 pCAG Kosak-Cherry(L45a)ベクター系、pREP(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO-pSV2neo、pBPV-1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2-dhfr、pIZD35、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pcDNA3.1、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGEMHE(Promega)、pLXIN、pSIR(Clontech)、pIRES-EGFP(Clontech)、pEAK-10(Edge Biosystems)pTriEx-Hygro(Novagen)及びpCINeo(Promega)が挙げられる。Pichia pastorisに好適なプラスミドベクターの非限定例は、たとえば、プラスミドpAO815、pPIC9K及びpPIC3.5K(すべてInvitrogen)を含む。
【0168】
一般に、ベクターは、クローニング及び発現のための1以上の複製開始点(ori)及び遺伝様式、宿主における選択のための1以上のマーカー、たとえば、抗生剤耐性、ならびに1以上の発現カセットを含有することができる。好適な複製開始点の例には、たとえば、完全長のColE1、pUCプラスミドに存在するもののようなその切り詰め型、SV40ウイルス及びM13ファージの複製開始点が挙げられる。選択可能なマーカーの非限定例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、dhfr、gpt、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ブラスチシジンまたはジェネティシンが挙げられる。さらに、前記ベクターは、前記ヌクレオチド配列または本明細書で定義されている核酸分子に操作可能に連結される調節性配列を含む。
【0169】
ベクターに含まれるコーディング配列(複数可)、たとえば、ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、確立された方法を用いて転写制御配列(複数可)及び/または他のアミノ酸をコードする配列に連結することができる。そのような制御配列は当業者に周知であり、それには限定しないで、転写の開始を確保する制御配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、及び任意で、転写の終結及び転写物の安定化を確保する制御配列が挙げられる。転写の開始を確保するそのような制御配列の非限定例は、プロモーター、翻訳開始コドン、エンハンサー、インシュレーター及び/または転写の終結を確保する制御配列を含む。さらなる例には、Kozak配列及びRNAのスプライシングのためのドナー部位とアクセプター部位が隣接する介在配列、分泌シグナルをコードする核酸配列、または使用される発現系に応じて、発現されたタンパク質を細胞区画または培養培地に向かわせることができるシグナル配列が挙げられる。
【0170】
好適なプロモーターの例には、限定しないで、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、lacZプロモーター、ニワトリβアクチンプロモーター、CAGプロモーター(ニワトリβアクチンのプロモーターとサイトメガロウイルス前初期エンハンサーの組み合わせ)、ヒト伸長因子1αプロモーター、AOX1プロモーター、GAL1プロモーター、CaMキナーゼプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーターまたはtacプロモーター、lacUV5プロモーター、T7またはT5プロモーター、Autographa californicaの多核多角体病ウイルス(AcMNPV)多面体プロモーター、または哺乳類及び他の動物の細胞におけるグロビンのイントロンが挙げられる。エンハンサーの一例は、たとえば、SV40エンハンサーである。転写終結を確保する制御配列/配列の非限定の追加の例には、SV40ポリA部位、tk ポリA部位、またはAcMNPV多面体ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0171】
さらに、発現系に応じて、ポリペプチドを細胞区画に向かわせるまたはそれを培地に分泌させることができるリーダー配列を本明細書で提供されている核酸のコーディング配列に付加してもよい。リーダー配列(複数可)は翻訳の開始配列及び終結配列とインフレームで構築され、好ましくは、リーダー配列は翻訳されたタンパク質またはその一部の分泌をペリプラズムまたは細胞外培地に向かわせることができる。好適なリーダー配列は、たとえば、BAP(細菌性アルカリホスファターゼ)、CTB(コレラ毒素サブユニットB)のシグナル配列、E.coliにおけるDsbA、ENX、OmpA、PhoA、stII、OmpT、PelB、Tat(ツインアルギニン転座)、及びウシ成長ホルモン、ヒトキモトリプシノーゲン、ヒト第VIII因子、ヒトIg-カッパ、ヒトインスリン、ヒトインターロイキン-2、MetridaまたはVargulaに由来するルシフェラーゼ、ヒトトリプシノーゲン-2、Kluyveromyces marxianusに由来するイヌリナーゼ、Saccharomyces cerevisiaeに由来する接合因子アルファ-1、メリチン、ヒトアズロシジン及び真核細胞における類似物のシグナル配列である。
【0172】
ベクターはまた、正しいタンパク質の折り畳みを円滑にするための1以上のシャペロンをコードする追加の発現可能な核酸配列も含有してもよい。
【0173】
一部の態様では、本発明のベクターは発現ベクターである。発現ベクターは、本発明の核酸分子、たとえば、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とアスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列とを含む核酸の複製及び発現を指図することができる。
【0174】
上記で本明細書に記載されているような核酸分子及び/またはベクターは、たとえば、非化学的方法(エレクトロポレーション、ソノポレーション、光学形質移入、遺伝子の電気転写、本発明の核酸分子と細胞を接触させた際の流体力学的送達または自然に発生する形質転換)、化学に基づく方法(リン酸カルシウム、DMSO、PEG、リポソーム、DEAE-デキストラン、ポリエチレンイミン、ヌクレオフェクション、等)、粒子に基づく方法(遺伝子銃、マグネトフェクション、インパレフェクション)、ファージもしくはファージミドベクターに基づく方法及びウイルス法によって細胞への導入のために設計されてもよい。たとえば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、Semliki Forestウイルス、またはウシパピローマウイルスのようなウイルスに由来する発現ベクターは標的とする細胞集団への核酸分子の送達に使用されてもよい。
【0175】
本発明はまた、本明細書に記載されているベクターまたは核酸で形質転換される宿主細胞または非ヒト宿主にも関する。「ベクターで形質転換された宿主細胞または非ヒト宿主」という用語は本明細書に記載されているようなベクターまたは核酸を含む宿主細胞または非ヒト宿主に関することが十分に理解されるであろう。ポリペプチドの発現のための宿主細胞は当該技術で周知であり、真核細胞ならびに原核細胞を含む。上記に記載されている宿主細胞のための適切な培養培地及び培養条件は当該技術で既知である。
【0176】
「宿主または宿主細胞を培養すること」には、宿主または宿主細胞における本明細書で定義されているような融合タンパク質を含む修飾されたタンパク質及び/または本明細書で定義されているようなポリペプチド及び/またはアスパラギナーゼの発現が含まれる。
【0177】
本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質及び/またはポリペプチド及び/またはアスパラギナーゼの単離の方法は、限定しないで、たとえば、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはStrep-タグIIまたはHisタグのような融合タグを用いた)、ゲル濾過(サイズ排除クロマトグラフィー)、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、硫酸アンモニウム沈殿または免疫沈降のような精製ステップを含む。これらの方法は当該技術で周知であり、たとえば、Scopes,(1994),Protein Purification-Principles and Practice,Springerにて一般的に記載されている。そのような方法は実質的に純粋なポリペプチドを提供する。前記純粋なポリペプチドは好ましくは少なくとも約90~95%(タンパク質レベルで)、さらに好ましくは少なくとも約98~99%の均質性を有する。最も好ましくは、これらの純粋なポリペプチドは医薬品の用途/適用に好適である。
【0178】
L-アスパラギナーゼとポリペプチドとを含む修飾されたタンパク質はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とアスパラギナーゼをコードする核酸配列とを含む核酸分子を発現させることによって調製することができることが想定される。発現された修飾されたタンパク質を単離することができる。あるいは、修飾されたタンパク質は、プロリン及びアラニンのみから成る前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または核酸配列を含む宿主を培養する/生じさせることによって調製することができる。従って、核酸は宿主で発現される。産生されたポリペプチドを単離することができる。産生されたポリペプチドは、たとえば、ペプチド結合または非ペプチド結合を介してアスパラギナーゼにコンジュゲートすることができる。
【0179】
本明細書に記載されている修飾されたタンパク質はアスパラギンの枯渇によって治療できる疾患の治療に使用することができる。アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患は好ましくは、たとえば、非固形がんのようながんである。好ましくは、非固形がんは白血病または非ホジキンリンパ腫である。白血病は好ましくは急性リンパ芽球性白血病(ALL)または急性骨髄性白血病(AML)である。たとえば、修飾されたタンパク質は、成人及び小児の双方における急性リンパ芽球性白血病(ALL)または成人及び小児の双方における急性骨髄性白血病(AML)の治療で、または治療にて使用するための薬物の製造で有用である。アスパラギンの枯渇が有用な効果を有すると予想される他の状態の治療での本明細書に記載されている修飾されたタンパク質の使用が企図される。そのような状態には、以下:血液悪性腫瘍、NKリンパ腫、膵臓癌、ホジキン病、急性骨髄性白血病、急性骨髄単球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ肉腫、細網肉腫、黒色肉腫、及びびまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含むが、これらに限定されない悪性腫瘍またはがんが挙げられるが、これらに限定されない。がんは、たとえば、肺癌または乳癌のような固形がんであってもよい。アスパラギンの枯渇に反応する代表的な非悪性の血液疾患には、免疫系が介在する血液疾患、たとえば、HIV感染が原因で起きるもの(すなわち、AIDS)のような感染性疾患が挙げられる。アスパラギン依存性に関連する非血液疾患には、自己免疫疾患、たとえば、関節リウマチ、SLE、自己免疫、コラーゲン血管疾患、等が挙げられる。他の自己免疫疾患には、変形性関節症、Issac症候群、乾癬、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、硬化性全脳炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、炎症性腸疾患(たとえば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動型肝炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、及びグレーブス病が挙げられる。疾患を引き起こすことが疑われる細胞を、好適な試験管内または生体内のアッセイ、たとえば、増殖培地がアスパラギンを欠く試験管内のアッセイにてアスパラギン依存性について調べることができる。
【0180】
本発明はさらに、患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療する方法に関するものであり、前記方法は前記患者に有効量の修飾されたタンパク質を投与することを含む。一部の好ましい態様では、L-アスパラギンの枯渇によって治療できる前記疾患は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、または非ホジキンリンパ腫である。一部の態様では、L-アスパラギンの枯渇によって治療できる前記疾患は、NKリンパ腫及び膵臓癌を含むが、これらに限定されないがんである。追加の実施形態では、本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、前記修飾されたタンパク質のL-アスパラギナーゼと比べて前記患者にて免疫原性の低い応答を引き出す。
【0181】
一部の態様では、上記に記載されている修飾されたタンパク質は、前記修飾されたタンパク質の未修飾のL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、生体内での長い循環半減期を有する。本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、5U/kg(体重(bw))または10μg/kg(タンパク質含量ベース)の用量で投与されると、少なくとも約12、24、48、72、96または120時間の間、血漿L-アスパラギンのレベルを低下させることができる。本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、25U/kg(bw)または50μg/kg(タンパク質含量ベース)の用量で投与されると、少なくとも約12、24、48、72、96、120または144時間の間、血漿L-アスパラギンのレベルを検出不能のレベルまで低下させることができる。本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、50U/kg(bw)または100μg/kg(タンパク質含量ベース)の用量で投与されると、少なくとも約12、24、48、72、96、120、144、168、192、216または240時間の間、血漿L-アスパラギンのレベルを低下させることができる。本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、約10,000から約15,000IU/m(約20~30mgのタンパク質/m)までに及ぶ用量で投与されると、少なくとも約12、24、48、72、96、120、144、168、192、216または240時間の間、血漿L-アスパラギンのレベルを検出不能のレベルまで低下させることができる。
【0182】
本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、単回投与の後、ある期間(たとえば、24、48または72時間)の間L-アスパラギンの枯渇の類似のレベルを生じることができる。
【0183】
本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、同等のタンパク質用量で投与された未修飾のL-アスパラギナーゼよりも長いt1/2を有することができる。上記に記載されている修飾されたタンパク質は、前記未修飾のタンパク質のL-アスパラギナーゼと比べて単回投与後、大きなAUC値(たとえば、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍)を有することできる。
【0184】
一部の態様では、本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、単回用量の投与の後、特定の期間の間、たとえば、約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間以上、有意な抗体反応を生じない。たとえば、修飾されたタンパク質は、少なくとも8週間、有意な抗体反応を生じない。一例では、「有意な抗体反応を生じない」は、修飾されたタンパク質を受け入れている対象が抗体陰性として当該技術で認識されているパラメーターの範囲内で特定されることを意味する。抗体のレベルは当該技術で既知の方法、たとえば、ELISAまたは表面プラスモン共鳴アッセイによって決定することができる(そのそれぞれが全体として参照によって本明細書に組み入れられるZalewska-Szewczyk,(2009),Clin.Exp.Med.9,113-116、Avramis,(2009),Anticancer Research,29,299-302)。修飾されたタンパク質はこれらの特性の任意の組み合わせを有してもよい。
【0185】
一部の態様では、本明細書に記載されている修飾されたタンパク質による治療は一次選択治療法として投与される。別の態様では、修飾されたタンパク質による治療は、患者にて、特にALLの患者にて二次選択治療法として投与されるが、その際、「無症状の過敏症」を含むアレルギーまたは過敏性の客観的な兆候が、他のアスパラギナーゼ製剤、特にネイティブのEscherichia coliに由来するL-アスパラギナーゼまたはそのペグ化変異体(ペガスパルガーゼ)に対して発生している。アレルギーまたは過敏性の客観的な兆候の非限定例には、アスパラギナーゼ酵素に対する「抗体陽性」を調べることが挙げられる。具体的な態様では、修飾されたタンパク質は、ペガスパルガーゼによる治療の後、二次選択治療法で使用される。患者は、E.coliのL-アスパラギナーゼに対する過敏症の既往があってもよいし、及び/またはErwiniaのL-アスパラギナーゼに対する過敏性の既往があってもよい。過敏性はアレルギー反応、アナフィラキシーショック及び無症状の過敏性から成る群から選択されてもよい。
【0186】
L-アスパラギナーゼによる治療に続くALL患者における再発の発生率は高いままであり、小児ALL患者のおよそ10~25%が早期(たとえば、導入療法後30~36ヵ月での維持療法段階の間での一部)の再発を有する(Avramis,(2005),Clin.Pharmacokinet.44,367-393)。E.coliに由来するL-アスパラギナーゼで治療された患者が再発すると、E.coli製剤によるその後の治療は「ワクチン接種」効果をもたらし得、それによってE.coli製剤はその後の投与の間に免疫原性を高めていく。本明細書に記載されている修飾されたタンパク質は、他のアスパラギナーゼ製剤で以前治療された再発ALLの患者、特にE.coliに由来するL-アスパラギナーゼで以前治療された者を治療する方法で使用されてもよい。疾患の再発は、E.coliのL-アスパラギナーゼまたはそのペグ化形態による治療の後、発生し得る。
【0187】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする患者に治療上有効な量の上記に記載されている修飾されたタンパク質を投与することを含む、急性リンパ芽球性白血病を治療する方法を対象とする。具体的な態様では、週に約2回から月に約1回に及ぶ、通常、週に1回から2週に1回のスケジュールで約1500IU/m~約15,000IU/m、通常約10,000~約15,000IU/m(約20~30mgのタンパク質/m)の用量で治療が施される。上記に記載されている修飾されたタンパク質は、単剤として投与されてもよく(単剤療法)、またはグルココルチコイド、コルチコステロイド、抗癌化合物を含むが、これらに限定されない化学療法剤、またはメソトレキセート、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ビンクリスチン、サイクロホスファミド及びアントラサイクリンを含むが、これらに限定されない他の作用物質の併用の一部として投与されてもよい。例として、ALL患者は、導入、補助または強化、及び維持を含む3つの化学療法フェーズの間での多剤化学療法の成分として上記に記載されている修飾されたタンパク質を投与されるであろう。具体例では、上記に記載されている修飾されたタンパク質は、アスパラギンシンターゼ阻害剤(たとえば、全体が参照によって本明細書に組み入れられるWO2007/103290にて述べられたような)と共に投与されない。別の具体例では、上記に記載されている修飾されたタンパク質は、アスパラギンシンターゼ阻害剤と共に投与されず、他の化学療法剤と共に投与される。上記に記載されている修飾されたタンパク質は、多剤化学療法投薬計画の一部として他の化合物の前に、後で、またはそれと同時に投与することができる。
【0188】
具体的な実施形態では、方法は、約1U/kg~約25U/kg(たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25U/kg)の量またはそれと同等の量(たとえば、タンパク質含量ベースで)の上記に記載されている修飾されたタンパク質を投与することを含む。送達される修飾されたタンパク質の量は、多数の要因、たとえば、化合物のIC50、EC50、生物学的半減期、患者の年齢、大きさ、体重及び身体状態、ならびに治療される疾患または障害に左右されるであろう。考慮されるこれらの要因及び他の要因の重要性は当業者に周知である。ある特定の実施形態では、投与される修飾されたタンパク質の量は患者の身体の表面積の平方メートル当たり約10国際単位(IU/m)から50,000IU/mまでに及んでもよい。追加の態様では、修飾されたタンパク質は、約5、約10及び約25U/kgから成る群から選択される量で投与される。別の具体的な態様では、修飾されたタンパク質は、約1,000IU/mから約20,000IU/mまでに及ぶ(たとえば、1,000IU/m、2,000IU/m、3,000IU/m、4,000IU/m、5,000IU/m、6,000IU/m、7,000IU/m、8,000IU/m、9,000IU/m、10,000IU/m、11,000IU/m、12,000IU/m、13,000IU/m、14,000IU/m、15,000IU/m、16,000IU/m、17,000IU/m、18,000IU/m、19,000IU/m、または20,000IU/m)用量で投与される。別の具体的な態様では、上記に記載されている修飾されたタンパク質は、当該技術で既知の方法及び装置を用いてL-アスパラギンが検出不能であるレベルまで枯渇させる用量で、単回用量で約3日間~約10日間(たとえば、3、4、5、6、7、8、9または10日間)の期間投与される。
【0189】
修飾されたタンパク質は、L-アスパラギンを検出不能のレベルまで枯渇させる用量で約3日間~約10日間、約5日間~20日間、約1日間~15日間、または約2日間~30日間、投与されてもよい。修飾されたタンパク質は、L-アスパラギンを検出不能のレベルまで枯渇させる用量で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間から約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20日間までの期間投与されてもよい。修飾されたタンパク質は、静脈内にまたは筋肉内に投与されてもよい。追加の実施形態では、前記修飾されたタンパク質は、週当たり1回もしくは2回、週当たり1回未満、または単剤療法として投与されてもよい。
【0190】
本発明は、本明細書で定義されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質を含む組成物に関する。組成物は、任意でさらに薬学上許容できる担体(複数可)または賦形剤(複数可)を含む医薬組成物であってもよい。
【0191】
本発明はまた、上記に記載されている修飾されたタンパク質を含む医薬組成物にも関する。具体的な態様では、その製造にどんな細菌供給源が使用されていても、たとえば、現在利用できる自然のL-アスパラギナーゼ(たとえば、Kidrolase(登録商標)、Elspar(登録商標)、Erwinase(登録商標))のような医薬組成物は、溶媒で再構成される凍結乾燥粉末としてバイアルに含有される。別の態様では、たとえば、ペガスパルガーゼ(Oncaspar(登録商標))のような医薬組成物は、適当な取り扱い、たとえば、筋肉内、静脈内(点滴及び/またはボーラス)、脳室内(icv)、皮下の経路を介した投与を可能にする「使用準備済み」の溶液である。
【0192】
修飾されたタンパク質は、それを含む組成物(たとえば、医薬組成物)を含めて、標準の技法を用いて患者に投与することができる。技法及び製剤は一般にRemingtonのPharmaceutical Sciences,22nd ed.,Pharmaceutical Press,(2012)にて見いだされ得る。好適な剤形は、用途または投与経路、たとえば、経口、経皮、経粘膜の経路、または注射による(非経口の)経路にある程度依存する。そのような剤形は、治療剤が標的細胞に到達できるようにすべきであり、または別様に所望の治療効果を有するべきである。たとえば、血流に注入される医薬組成物は好ましくは可溶性である。本発明に係る医薬組成物は薬学上許容できるその塩及び錯体として製剤化することができる。薬学上許容できる塩はそれらが投与される量及び濃度で存在する非毒性の塩である。そのような塩の製剤は、それがその生理的効果を発揮するのを妨げることなく化合物の物理的特徴を変えることによって薬学上の使用を円滑にすることができる。物性の有用な変化には、融点を下げて経粘膜投与を容易にすること、及び溶解度を上げて高い濃度の薬剤の投与を容易にすることが挙げられる。本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質の薬学上許容できる塩は、当業者が十分に理解するであろうように、錯体として存在してもよい。薬学上許容できる塩には、たとえば、硫酸塩、塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、及びキナ酸塩を含有するもののような酸付加塩が挙げられる。薬学上許容できる塩は、塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、フマル酸及びキナ酸を含む酸から得ることができる。薬学上許容できる塩にはまた、カルボン酸またはフェノールのような酸性官能基が存在する場合、たとえば、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミン、及び亜塩を含有するもののような塩基付加塩も挙げられる。たとえば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、上記を参照のこと。そのような塩は適当な対応する塩基を用いて調製することができる。薬学上許容できる担体及び/または賦形剤も本発明に係る医薬組成物に組み込んで特定のアスパラギナーゼの投与を容易にすることができる。本発明の実践で使用するのに好適な担体の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、たとえば、ラクトース、グルコース、もしくはスクロースのような種々の糖、または種々のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理的に適合する溶媒が挙げられる。生理的に適合する溶媒の例には、注射用水(EFI)、生理食塩水及びデキストロースの無菌溶液が挙げられる。本発明に係る医薬組成物は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、局所(経皮)または経粘膜の投与を含む種々の経路によって投与することができる。全身性投与については、経口投与が好ましい。経口投与については、たとえば、化合物は、たとえば、カプセル剤、錠剤、ならびにたとえば、シロップ、エリキシル、及び濃縮ドロップのような液状製剤のような従来の経口剤形に製剤化することができる。あるいは、注射(非経口投与)、たとえば、筋肉内、静脈内、腹腔内及び皮下の注射が使用されてもよい。注射については、医薬組成物は、液体溶液、好ましくは、たとえば、生理食塩水、ハンクス溶液、リンガー溶液のような生理的に適合する緩衝液または溶液にて製剤化される。加えて、化合物は固形形態で製剤化され、使用直前に再溶解または懸濁されてもよい。たとえば、修飾されたタンパク質の凍結乾燥形態を製造することができる。具体的な態様では、修飾されたタンパク質は筋肉内に投与される。好ましい具体的な態様では、修飾されたタンパク質は静脈内に投与される。
【0193】
全身性投与は経粘膜または経皮の手段によっても達成することができる。経粘膜または経皮の投与については、透過されるバリアに適する浸透剤が製剤で使用される。そのような浸透剤は当該技術で周知であり、それには、たとえば、経粘膜投与用での胆汁塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。加えて、透過を促進するのに界面活性剤が使用されてもよい。経粘膜投与は、たとえば、鼻内噴霧器、吸入器(肺送達用)、直腸坐薬または膣坐薬を介してもよい。局所投与については、化合物は、当該技術で周知のように軟膏、膏薬、ジェル、またはクリームに製剤化することができる。
【0194】
一態様では、本発明は治療法における本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質の使用にも関する。使用は、L-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療する方法として上記に記載されているL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療することのためであってもよい。一態様では、本発明は、薬物として使用するための/治療法で使用するための/医学で使用するための本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を含む組成物に関する。
【0195】
一態様では、本発明は、患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患の治療で使用するための本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を含む組成物に関する。本発明はまた、患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療するための薬物の調製における本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を含む組成物の使用に関する。本発明はまた、患者にてL-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患を治療する方法にも関するものであり、前記方法は前記患者に有効量の本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質、本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような組成物を投与することを含む。好ましくは、L-アスパラギンの枯渇によって治療できる疾患はがんである。
【0196】
好ましい態様では、本発明は、がんの治療で使用するための本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を含む組成物に関する。本発明はまた、がんを治療するための薬物の調製における本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質を含む組成物の使用にも関する。本発明はまた、対象に本明細書に記載されているような修飾されたタンパク質または本明細書に記載されているようなプロセスによって調製される修飾されたタンパク質、または本明細書に記載されているような組成物を投与することを含む、がんを治療する方法にも関する。
【0197】
本明細書では、治療される対象は哺乳類、特にヒトであることが好ましい。
【0198】
がんは非固形がんであってもよく、たとえば、白血病または非ホジキンリンパ腫である。好ましくは、前記白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)または急性骨髄性白血病(AML)である。
【0199】
修飾されたタンパク質は、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べて患者にて免疫原性が低い反応を引き出し得る。修飾されたタンパク質は、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、生体内での長い循環半減期を有し得る。修飾されたタンパク質は、コンジュゲートされていないL-アスパラギナーゼと比べて単回投与の後、大きなAUC値を有することができる。患者は、E.coliのL-アスパラギナーゼまたはそのペグ化形態に対して過敏性の既往を有し得る。
【0200】
本発明は、以下の非限定の図及び実施例を参照してさらに説明される。
【実施例0201】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0202】
実施例1:ピログルタモイル-P/A(20)-アミノヘキサノイル-クリサンタスパーゼの調製のためのカップリング比の最適化
4.38mgのPga-P/A#1(20)-Ahxペプチド(図1A、TFA塩、純度98%、PSL Peptide Specialty Laboratories、Heidelberg,Germany)(配列番号16、アミノ酸配列は配列番号5に示す)を66.3μLのDMSOに溶解した。その末端カルボン酸基を介したP/Aペプチドの化学的活性化は、500mMのTBTU(CAS#125700-67-6;Iris Biotech、Marktredwitz,Germany)のDMAO溶液23.7μLとDIPEA2.7μLとのペプチド溶液への添加及びボルテックス撹拌によって開始した(図1C参照)。この設定で、ペプチドの濃度は25.8mMであり、DIPEA、TBTU及びPga-P/A#1(20)-Ahxの間でのモル比は5:5:1であった。25℃での10分間のインキュベートの後、表1に従ってエッペンドルフチューブにて混合物を希釈した。
【0203】
2mg/mLの濃度でのDickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼ(クリサンタスパーゼ、配列番号1、E.coliにて産生された組換え(ロットRE-LAP-P57D)の溶液をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS:115mMのNaCl、4mMのKHPO及び16mMのNaHPO,pH7.4)にて調製し、表1で述べられた体積に従って各エッペンドルフチューブにピペットで入れた。反復ピペッティング及びボルテックス撹拌によって混合した後、25℃で30分間カップリング反応を行わせた。250mMの最終濃度にグリシン(Tris塩基で調整したpH8.0)を添加することによって反応を止めた。
【0204】
【表1】
【0205】
修飾されたタンパク質のSDS-PAGE解析を図2に示す。個々のバンドはそれぞれ1つのカップリングしたP/Aペプチドが異なるタンパク質で修飾されたタンパク質に対応する。タンパク質のmg当たりの0.3~10mgのペプチドの比によるカップリング反応のミックスの追加の適用は、コンジュゲートされなかったタンパク質から出発する連続したラダーにおけるバンドの計数を可能にしたので、カップリングしたP/Aペプチドの数を正確に決定することができた。バンドの強度はQuant v12ソフトウェア(TotalLab、Newcastle upon Tyne,UK)を用いてデンシトメーターで定量し、そのバンド強度について加重したクリサンタスパーゼ当たりのカップリングしたペプチドの数の算術平均値を算出した(表2参照)。クリサンタスパーゼのmg当たり3.5mgのP/Aペプチドはクリサンタスパーゼ単量体当たり9~12のP/Aペプチド(平均値:10.4)の範囲でのカップリング比を生じた。クリサンタスパーゼのmg当たり10mgのP/Aペプチドまで適用する質量比を高めることがクリサンタスパーゼの当たり10~13のP/Aペプチド(平均値:12.0)のカップリング比を生じるというわずかな上昇にしかつながらなかったということは、アクセスできるアミノ基の飽和を示している。
【0206】
ランニング緩衝液として25mMのNa-ホウ酸、pH9.0,1mMのEDTA及びタンパク質を溶出するために0~1MのNaClの濃度勾配を用いたMonoQ HR5/5カラム(GE Healthcare)におけるアニオン交換クロマトグラフィーによって、修飾されたタンパク質を精製した。各クリサンタスパーゼ修飾タンパク質のL-アスパラギナーゼのアミノ加水分解酵素活性は、L-アスパラギン酵素活性を介して遊離するアンモニアのNessler試薬との反応によって決定した。手短には、50μLの酵素溶液を、0.015%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有する100mMのホウ酸ナトリウム緩衝液、pH8.6における20mMのL-アスパラギンと混合し、37℃で15分間インキュベートした。200μLのNessler試薬(Sigma-Aldrich)の添加によって反応を止めた。この溶液の吸光度を450nmで測定した。活性は、参照としての硫酸アンモニウムから得られた較正曲線から算出した。結果を表2で要約する。
【0207】
【表2】
【0208】
実施例2:ピログルタモイル-P/A(40)-アミノヘキサノイル-クリサンタスパーゼの調製
28mgのピログルタモイル-P/A#1(40)-Ahxペプチド(配列番号17、アミノ酸配列は配列番号15で示す)、図1B、TFA塩、純度98%、Almac Group、Craigavon,UK)を1324μLの無水DMSO(99.9%、Sigma-Aldrich、Taufkirchen,Germany)に溶解した。その末端カルボン酸基を介したP/Aペプチドの化学的活性化を達成するために、500mMのTBTU(CAS#125700-67-6、Iris Biotech、Marktredwitz,Germany)のDMSO溶液162μLを加え、混合した後、14μLのDIPEA(99.5%,バイオテクノロジー等級,Sigma-Aldrich)を加えた。混合物全体を手短にボルテックス撹拌し、25℃で20分間インキュベートした(図1C参照)。この設定で、ペプチドの濃度は5.41mMであり、DIPEA、TBTU及びPga-P/A#1(40)-Ahxの間でのモル比は10:10:1であった。
【0209】
3.5mLの氷冷クリサンタスパーゼ溶液(配列番号1)(PBSにて2mg/mL)を活性化したペプチド溶液(1.5mL)と混合し、5:1のPga-P/A#1(40)-Ahxとクリサンタスパーゼの質量比を生じ、室温で30分間インキュベートしてカップリングさせた。再生セルロース膜透析管(MWCO 50kDa,Spectrum Laboratories、Los Angeles,CA)を用いて、5LのAEXランニング緩衝液(25mMのNa-ホウ酸、pH9.0,1mMのEDTA)に対して溶液を透析し、Source(商標)15Q樹脂を詰めたHiScale(商標)16/40カラム(GE Healthcare)でのアニオン交換クロマトグラフィーに供した。カラムはAEXランニング緩衝液で平衡化し、タンパク質で修飾されたタンパク質は1カラム容量での0~150mM及び0.25カラム体積での150~1000mMのNaClの区分化濃度勾配を用いて溶出した(図3A)。
【0210】
タンパク質のmg当たり0.3~10mgのペプチドの比でのカップリング反応のミックスから得られたラダーと並行して溶出液をSDS-PAGEに適用することは、クリサンタスパーゼ単量体当たりの9~11のPAペプチド(平均値:10.0)のカップリング比の決定を可能にした(図3B)。実施例1に記載されているNesslerアッセイを用いて決定されたクリサンタスパーゼ/PA(40)修飾タンパク質の酵素活性は、同様にアッセイされた未修飾のクリサンタスパーゼの活性の78.2%だった。
【0211】
実施例3:ピログルタモイル-P/A(20)-アミノヘキサノイル-クリサンタスパーゼの調製
21mgのピログルタモイル-P/A#1(20)-Ahxペプチド(配列番号5、図1A、TFA塩、純度98%、PSL Peptide Specialty Laboratories、Heidelberg,Germany)を1376μLの無水DMSO(99.9%、Sigma-Aldrich、Taufkirchen,Germany)に溶解した。その末端カルボン酸基を介したP/Aペプチドの化学的活性化を達成するために、500mMのTBTU(CAS#125700-67-6、Iris Biotech、Marktredwitz,Germanyから購入した)のDMSO溶液114μLを加え、混合した後、10μLのDIPEA(99.5%、バイオテクノロジー等級、Sigma-Aldrich)を加えた。混合物全体を手短にボルテックス撹拌し、25℃で20分間インキュベートした(図1C)。この設定で、ペプチド濃度は7.58mMであり、DIPEA、TBTU及びPga-P/A#1(20)-Ahxの間でのモル比は5:5:1であった。
【0212】
3.5mLの氷冷クリサンタスパーゼ溶液(配列番号1)(PBSにて2mg/mL)を活性化されたペプチド溶液(1.5mL)と混合して5:1のPga-P/A#1(40)-Ahxとクリサンタスパーゼの間での質量比を生じ、室温にて30分間インキュベートしてカップリングさせた。再生セルロース膜透析管(MWCO 50kDa、Spectrum Laboratories、Los Angeles,CA)を用いて、5LのAEXランニング緩衝液(25mMのNa-ホウ酸、pH9.0,1mMのEDTA)に対して溶液を透析し、Source(商標)15Q樹脂を詰めたHiScale(商標)16/40カラム(GE Healthcare)でのアニオン交換クロマトグラフィーに供した。カラムはAEXランニング緩衝液で平衡化し、タンパク質で修飾されたタンパク質は1カラム体積での0~150mM及び0.25カラム体積での150~1000mMのNaClの区分化濃度勾配を用いて溶出した(図4A)。
【0213】
タンパク質のmg当たり0.3~10mgのペプチドの比でのカップリング反応のミックスから得られたラダーと並行して溶出液をSDS-PAGEに適用することは、クリサンタスパーゼ単量体当たりの10~13のPAペプチドのカップリング比(平均値:11.9)の決定を可能にした(図4B)。実施例1に記載されているNesslerアッセイを用いて決定されたクリサンタスパーゼ/PA(20)修飾タンパク質の酵素活性は、同様にアッセイされた未修飾のクリサンタスパーゼの活性の91.2%だった。
【0214】
実施例4:様々な長さのP/A配列にN末端融合したクリサンタスパーゼのペリプラズム産生のための発現プラスミドのクローニング
Dickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼの成熟アミノ酸配列(UniProt IDP06608)をコードする合成DNA断片を遺伝子合成供給業者(Thermo Fisher Scientific、Regensburg,Germany)から入手した。この遺伝子断片(配列番号4)は、XbaI制限部位と、それに続くリボソーム結合部位と、Enxシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と、それに続くGCCアラニンコドンと、非コーディング鎖上の第1のSpaI認識配列GCTCTTCと、11のヌクレオチドのスペーサーと、コーディング鎖上のその認識配列GCTCTTCとは逆相補性の方向での第2のSpaI制限配列と、それに続く、成熟L-アスパラギナーゼのコーディング配列に直接連結されるGCCアラニンコドンと、最終的にそれに続くHindIII制限部位とを含んだ。
【0215】
標準の手順(Sambrook,(2012),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って、隣接する制限部位XbaI及びHindIIIを介してこの遺伝子断片をpASk75にクローニングした。得られたプラスミド(図5A)をSpaIで消化し、それはSpaI認識部位と、L-アスパラギナーゼのコードされた成熟N末端の直前の位置で適合5’-GCC/5’-GGC付着末端を持つ切断されたベクター主鎖とを含有する小さな(30bp)のDNA挿入断片の遊離につながったが、それは理想的にプロリン/アラニンが豊富なアミノ酸反復配列をコードする反復性が低い核酸分子の挿入に適する。双方とも製造元の指示書に従ったPromega Wizardゲル抽出キット(Promega、Mannheim,Germany)を用いたベクター断片の単離及び熱感受性のアルカリホスファターゼFastAP(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)による脱リン酸化の後、EarI制限消化を介して、それをpXL2-PA#1b(200)(配列番号8)から切り出したPA#1b(200)遺伝子カセット、またはpXL2-PA#1c/1b(400)(配列番号10)から切り出したPA#1c/1b(400)遺伝子カセットにライゲーションした。得られたプラスミド(配列番号12及び配列番号14)(図5B)は、生物学的に活性があるタンパク質クリサンタスパーゼに融合したプロリン/アラニンが豊富なアミノ酸反復配列から成る融合タンパク質(配列番号11及び配列番号13)の(E.coliにおけるペリプラズムでの分泌の際Enxシグナルペプチドの生体内での処理の後)細菌での発現を可能にする。
【0216】
実施例5:PA#1(200)配列またはPA#1(400)配列のいずれかとクリサンタスパーゼとの間での融合タンパク質の細菌での産生及び精製
PA#1(200)-クリサンタスパーゼ及びPA#1(400)-クリサンタスパーゼの融合タンパク質(算出質量:それぞれ、51kDa及び67kDa)は双方とも、公開された手順(Schiweck,(1995),Proteins,23:561-565)に従って、100mg/Lのアンピシリンで補完した合成グルコース無機培地を伴った8Lの卓上発酵槽を用いて実施例4に由来する発現プラスミドpASK75-PA200-クリサンタスパーゼまたはpASK75-PA400-クリサンタスパーゼ(図5B)を内部に持つE.coli W3110にて25℃で産生された。組換え遺伝子の発現は、培養物がCD550=40に達するとすぐ500μg/Lのアンヒドロテトラサイクリン(Skerra,(1994),loc. cit.)を加えることによって誘導した。2.5時間のインキュベート時間の後、遠心分離によって細胞を回収し、氷冷ペリプラズム分画緩衝液(500mMのスクロース、1mMのEDTA、200mMのホウ酸/NaOH、pH8.0、2ml/L及びOD550)にて10分間再懸濁させた。15mMのEDTA及び250μg/mLのリゾチームを加えた後、細胞懸濁液を氷上で20分間インキュベートし、数回遠心分離し、組換えタンパク質を含有する透明な上清を回収した。
【0217】
1mMのEDTAを含有する15LのPBSに対して4℃で少なくとも6時間、ペリプラズム抽出物をそれぞれ2回透析し、0.2μmの硝酸セルロース膜(GE Healthcare)を用いて濾過し、硫酸アンモニウム(欧州薬局方グレード、Applichem,Darmstadt,Germany)を25℃で25%の飽和まで加えることによって沈殿させた。遠心分離の後、上清を取り除き、沈殿物をAEXランニング緩衝液(25mMのNa-ホウ酸、pH9.0、1mMのEDTA)に再懸濁し、5LのAEXランニング緩衝液に対して4℃にて少なくとも6時間透析した。透析したタンパク質溶液を遠心分離によって残りの不溶性物質から清澄化し、Source15Q樹脂を詰め、Akta(商標)純化装置システム(GE Healthcare、Freiburg,Germany)に接続され、AEXランニング緩衝液によって平衡化した85mLのHiScale(商標)カラム(GE Healthcare、Freiburg,Germany)を用いた減法アニオン交換クロマトグラフィーに供した。純粋なタンパク質を含有するカラム通過画分(図6A及び6B参照)を5LのPBSに対して2回透析した。
【0218】
凝集の兆候がない均質なタンパク質調製物が、それぞれ8Lの発酵槽1つからPA#1(200)-クリサンタスパーゼについては128mg及びPA#1(400)-クリサンタスパーゼについては48mgの最終収量で得られた。タンパク質濃度は、19370M-1cm-1の算出された吸光係数(Gill,(1989),Anal.Biochem.182:319-326)を用いて280nmでの吸収を測定することによって決定した。融合タンパク質の酵素活性は実施例1に記載されているNesslerアッセイを用いて決定した。この設定で、同様にアッセイされた未修飾のクリサンタスパーゼに比べてPA#1(200)-クリサンタスパーゼ融合タンパク質は109%の酵素活性を有し、PA#1(400)-クリサンタスパーゼは118%の酵素活性を有した。これは、少なくとも401アミノ酸の長さまでのP/AポリペプチドとのクリサンタスパーゼのN末端融合が酵素活性に影響を及ぼさないことを実証している。
【0219】
実施例6:分析用ゲル濾過による遺伝的に及び化学的にPAS化したクリサンタスパーゼ双方についての流体力学的体積の測定
ランニング緩衝液としてのPBS(115mMのNaCl、4mMのKHPO、16mMのNaHPO、pH7.4)と共にAkta(商標)純化装置10システム(GE Healthcare)を用いて、0.5mL/分の流速でSuperdex(商標)S200上昇10/300GLカラム(GE Healthcare Europe、Freiburg,Germany)にてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。再生セルロースの使い捨て限外濾過装置(MWCO 10kDa;Merck-Millipore,Darmstadt,Germany)を用いて、PA#1(200)またはPA#1(400)のポリペプチドに遺伝子融合させた組換えクリサンタスパーゼ(実施例5に記載されている)及びPga-P/A(40)-Ahxペプチド(実施例2に記載されている)またはPga-P/A(20)-Ahxペプチド(実施例3に記載されている)と化学的にコンジュゲートされたクリサンタスパーゼをPBSで1mg/mLの濃度に調整した。濃縮したPAS化酵素及びPAS化していない酵素の150μLの試料を個々にカラムに供し、クロマトグラフィーのトレースを重ね合わせた(図7A)。5つのタンパク質はすべて単一の均質なピークとして溶出した。
【0220】
カラムの較正(図7B)については、以下の球状タンパク質(Sigma、Deisenhofen,Germany)の適切な混合物を0.5mg/mL~1.0mg/mLの間のタンパク質濃度でPBSにて適用した:チトクロームc:12.4kDa、オボアルブミン:43.0kDa、ウシ血清アルブミン:66.3kDa、アルコール脱水素酵素:150kDa、β-アミラーゼ:200kDa、アポフェリチン:440kDa、サイログロブリン:660kDa。
【0221】
結果として、組換えPA融合タンパク質及び化学的にコンジュゲートした酵素調製物は双方とも、同じ分子量の対応する球状タンパク質よりも有意に大きなサイズを示した。P/A(ポリ)ペプチド部分のサイズが増すとともに、この分子量/流体力学的体積の不均衡はさらに大きくなった。PA(200)-クリサンタスパーゼについての見かけのサイズ上昇は融合していないクリサンタスパーゼと比べて5.1倍だったのに対して、真の質量は1.5倍大きいに過ぎなかった。融合していないクリサンタスパーゼと比べたPA(400)-クリサンタスパーゼについての見かけのサイズ上昇は10.4倍だったのに対して真の質量は1.9倍大きいに過ぎなかった。この観察は、本発明に係るPro/Alaポリペプチドのセグメントによって生物学的に活性があるクリサンタスパーゼ酵素に付与された大きく増大した流体力学的体積を明瞭に示している。
【0222】
実施例7:化学的にまたは遺伝的にPAS化したクリサンタスパーゼのESI-MS解析
すべて1mg/mLの濃度での、実施例3に由来するPga-P/A(20)-Ahxを伴ったクリサンタスパーゼの精製した化学修飾タンパク質250μL、及び実施例5に由来する組換えPA200融合タンパク質250μLとPA400融合タンパク質250μLを、ランニング緩衝液として2%v/vのアセトニトリル、1%v/vのギ酸を用い、Akta(商標)純化装置システムに接続された1mLのResource(商標)RPCカラム(GE Healthcare、Freiburg,Germany)に供した。20カラム体積にわたる2%v/vのアセトニトリル、1%v/vのギ酸から80%v/vのアセトニトリル、0.1%v/vのギ酸までのアセトニトリル勾配を用いてタンパク質を溶出した。陽イオンモードを用いたmaXis(商標)micrOTOF機器(Bruker Daltonik、Bremen,Germany)でのESI質量分析を介して、溶出したタンパク質を直接分析した。クリサンタスパーゼ/Pga-P/A(20)-Ahx化学修飾タンパク質の生のm/zスペクトルを図8Aに示す。デコンボリューションした質量スペクトル(図8B)によって明らかにされた質量は表3にて与えられる。質量の分布は実施例2に記載されているSDS-PAGE解析によって決定されたカップリング比に一致する。
【0223】
組換えPA#1(200)-クリサンタスパーゼ(配列番号11)融合タンパク質の生のm/zスペクトルを図8Cに示す。デコンボリューションした質量スペクトルは51164.75Daの質量を明らかにしたが(図8D)、それはこのタンパク質の計算上の質量(51163.58Da)と本質的に一致する。組換えPA#1(400)-クリサンタスパーゼ融合タンパク質(配列番号13)の生のm/zスペクトルを図8Eに示す。デコンボリューションしたスペクトル(図8F)は67199.17Daの質量を明らかにしたが、それはこのタンパク質の計算上の質量(67201.99Da)と本質的に一致する。これは、PA200またはPA400のいずれかに遺伝子融合したインタクトなクリサンタスパーゼ酵素が高度に均質な形態でE.coliにて産生され得ることを明瞭に明らかにしている。
【0224】
【表3】
【0225】
実施例8:アスパラギナーゼ活性
PAS化されたL-アスパラギナーゼの酵素活性をL-アスパラギンのL-アスパラギン酸への変換の触媒によって決定した。この反応は変換されたL-アスパラギンのモル当たり1モルのアンモニアを遊離する。Nessler試薬を用いて放出されたアンモニアを検出する。Nessler試薬の存在下で、アンモニアは450nmでの吸光度測定によって定量することができる水溶性の黄色の錯体を形成する(Mashburn,et al.(1963),Biochem.Biophys.Res.Commun.12,50)。L-アスパラギナーゼ酵素活性の1単位(国際単位またはIU)は分当たり1μmolのL-アスパラギンの変換を触媒する酵素の量として定義される。試料の比活性(IU/mg)はIU/mLで表されるL-アスパラギナーゼ活性の値をmg/mLで表されるタンパク質濃度で除すことによって決定される。PAS化された配列を持つタンパク質単量体の質量を測定した。
【0226】
L-アスパラギナーゼ活性の測定は、試料が、その後、飽和L-アスパラギン濃度のもとで37℃にて15分間インキュベートされる一連の最終酵素濃度に希釈されるエンドポイントアッセイに基づく。反応はNessler試薬の添加によって停止され、反応によって生成されるアンモニアの量は、基準として使用される硫酸アンモニウムの既知の量から構築される較正曲線から外挿される。次いで各試料についてアンモニアに対する酵素濃度のプロットを作成し、曲線の傾きを反応時間で除してIU/mgでの比活性を得る。比活性はIU/mgとして報告され、四捨五入した整数で報告される。
【0227】
修飾されたタンパク質または融合タンパク質のそれぞれについて、当初の試験結果を以下の表に示す。
【表4】
【0228】
実施例9:薬物動態
PAS化された融合タンパク質(PA-200)としての、またはPA-ペプチド(PA-20)に化学的にコンジュゲートされたE.coliで発現された組換えクリサンタスパーゼの薬物動態プロファイルをCD-1マウスに対する単回静脈内ボーラス用量の投与に続いて特徴付けた。CD-1マウスは健常マウスのモデルである。
【0229】
動物はすべて、投与に先立って得た体重に基づいて尾静脈側面を介した単回静脈内(IV)ボーラス(10mL/kg)を受け入れた。個々の用量は最も最近の体重に基づいて算出し、適正な用量を提供した。投与の1日目は試験0日目の体重に基づいた。動物はすべて、死亡、異常、及び疼痛や苦痛の兆候について1日2回、朝1回と午後1回観察した。
【0230】
PAS化したアスパラギナーゼを25IU/体重kgの単回IV用量としてマウスに投与した。マウスの群に25IU/体重kgで投与し、投与に続いて10日(240時間)までの計画された時間に血漿試料を採取した。マウスの血漿におけるアスパラギナーゼ活性を、前の実施例に記載されているような適格な生化学的アッセイを用いて測定した。時間データに対する平均血漿アスパラギナーゼ活性(n=4)をプロットし(図1)、薬物動態解析を行った。
【0231】
投与に先立って及び投与の後およそ6時間、24時間(1日目)、48時間(2日目)、51時間(2日目)、54時間(2日目)、60時間(2日目)、96時間(4日目)、168時間(7日目)、及び240時間(10日目)に血液試料を採取した。尾切断(尾端切断)採血法を採用した。最初の採血のために尾の遠位端でおよそ1~2mm切断し、逐次の採血はすべて痂疲を取り除き、尾をなでることにより血流を促すことによって同じ部位から採取した。時点当たりおよそ100μLの血液を冷KEDTA(Minivette)試料採取管に採取した。血液を遠心分離に適した管に移した。血漿の単離のために、試料はすべて試料採取のおよそ20分以内に、およそ4℃を維持するように設定された冷却遠心機にて3,000×gでおよそ10分間遠心分離した。遠心分離に続いて、血漿の最大量を回収し(30μLを目標とする)、プラスチックバイアルに入れた。プラスチックバイアルを試験まで-65℃~-85℃で保存した。
【0232】
以前記載された(Allas,et al.(2009),Blood,114,2033)ように血漿試料にてアスパラギナーゼ活性をアスパラギナーゼの濃度として測定した。R(終末消失速度定数、λzを推定するのに使用される線形回帰用の相関係数の平方)が0.8より大きい場合にのみ、濃度対時間プロファイル(t1/2、CL及びVss)の終末相の十分な特徴付けに依存するパラメーターの報告を行った。薬物動態のデータを解析のためにPhoenix WinNonlinv6.4(Certara/Pharsight)に取り込んだ。IVボーラス投与のモデルにてわずかな試料採取での非コンパートメント法を用いて時間データに対する血漿アスパラギナーゼ活性を分析した。アッセイの定量の限界(10U/L)を下回る活性値を群平均の計算ではゼロに設定した。名目上の用量レベル及び試料採取時間を計算に使用した。t1/2の推定値はPA-20クリサンタスパーゼについては50.2時間であり、PA-200クリサンタスパーゼについては17.9時間であった。
【0233】
本発明は以下のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を参照する。
【0234】
本明細書で提供されている一部の配列はNCBIのデータベースで利用することができ、www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=geneから読み出すことができる。これらの配列はまた、注釈付きの配列及び修飾された配列にも関係する。本発明はまた、本明細書で提供されている相同性配列、及び簡潔な配列の変異体を使用する技法及び方法も提供する。好ましくは、そのような「変異体」は遺伝的変異体である。
【0235】
配列番号1:
Dickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼのアミノ酸配列
ADKLPNIVILATGGTIAGSAATGTQTTGYKAGALGVDTLINAVPEVKKLANVKGEQFSNMASENMTGDVVLKLSQRVNELLARDDVDGVVITHGTDTVEESAYFLHLTVKSDKPVVFVAAMRPATAISADGPMNLLEAVRVAGDKQSRGRGVMVVLNDRIGSARYITKTNASTLDTFKANEEGYLGVIIGNRIYYQNRIDKLHTTRSVFDVRGLTSLPKVDILYGYQDDPEYLYDAAIQHGVKGIVYAGMGAGSVSVRGIAGMRKAMEKGVVVIRSTRTGNGIVPPDEELPGLVSDSLNPAHARILLMLALTRTSDPKVIQEYFHTY
【0236】
配列番号2:
Dickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列
GCAGATAAACTGCCGAATATTGTTATTCTGGCAACCGGTGGCACCATTGCAGGTAGCGCAGCAACCGGCACCCAAACCACAGGTTATAAAGCCGGTGCACTGGGTGTTGATACCCTGATTAATGCAGTTCCGGAAGTTAAAAAACTGGCCAATGTGAAAGGTGAACAGTTTAGCAATATGGCCAGCGAAAATATGACCGGTGATGTTGTTCTGAAACTGAGCCAGCGTGTTAATGAACTGCTGGCACGTGATGATGTTGATGGTGTGGTTATTACCCATGGCACCGATACCGTTGAAGAAAGCGCCTATTTTCTGCATCTGACCGTGAAAAGCGATAAACCGGTTGTTTTTGTTGCAGCAATGCGTCCGGCAACCGCAATTAGCGCAGATGGTCCGATGAATCTGCTGGAAGCAGTTCGTGTTGCCGGTGATAAACAGAGCCGTGGTCGTGGTGTTATGGTTGTTCTGAATGATCGTATTGGTAGCGCACGCTATATTACCAAAACCAATGCAAGCACCCTGGATACCTTTAAAGCCAATGAAGAAGGTTATCTGGGCGTTATTATTGGCAATCGCATTTATTATCAGAATCGCATTGATAAACTGCATACCACCCGTAGCGTTTTTGATGTTCGTGGTCTGACCAGCCTGCCGAAAGTTGATATTCTGTATGGCTATCAGGATGATCCGGAATATCTGTATGATGCAGCCATTCAGCATGGTGTTAAAGGTATTGTGTATGCAGGTATGGGTGCAGGTAGCGTTAGCGTTCGTGGTATTGCAGGTATGCGTAAAGCAATGGAAAAAGGCGTTGTTGTTATTCGTAGCACCCGTACCGGTAATGGTATTGTTCCGCCGGATGAAGAACTGCCGGGTCTGGTTAGCGATAGCCTGAATCCGGCACATGCACGTATTCTGCTGATGCTGGCACTGACCCGTACCAGCGATCCGAAAGTGATTCAGGAATATTTTCATACCTAT
【0237】
配列番号3:
Dickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼのアミノ酸配列
シグナルペプチド:1~28;クローニング中に取り除いた:29~39;40~366:アスパラギナーゼ
【化3】
【0238】
配列番号4
Dickeya chrysanthemiのL-アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列(合成)
塩基160~1140(太字)でコードされる成熟アスパラギナーゼ。従って、L-アスパラギナーゼをコードするヌクレオチド配列は160位から1140位までのヌクレオチドに及ぶ。
【化4】
【0239】
配列番号5:
PA(20)ペプチドのアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA
【0240】
配列番号6:
PA(20)ペプチドをコードするヌクレオチド配列
GCCGCGCCAGCGGCCCCGGCCCCTGCCGCGCCCGCTGCTCCCGCCCCTGCTGCCCCAGCC
【0241】
配列番号7:
PA(200)-ポリペプチドのアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAA
【0242】
配列番号8:
PA(200)-ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
GCCGCGCCAGCGGCCCCGGCCCCTGCCGCGCCCGCTGCTCCCGCCCCTGCTGCCCCAGCCGCCGCTCCTGCGGCACCTGCGCCCGCCGCGCCGGCAGCGCCGGCACCGGCAGCTCCGGCGGCCGCGCCTGCAGCTCCTGCACCGGCGGCTCCAGCAGCCCCGGCGCCGGCCGCACCTGCGGCGGCGCCCGCGGCGCCTGCACCCGCAGCGCCTGCGGCACCGGCCCCAGCAGCCCCTGCCGCCGCACCGGCTGCGCCTGCCCCAGCGGCCCCCGCTGCCCCGGCCCCGGCGGCTCCAGCCGCAGCGCCTGCCGCCCCAGCGCCCGCAGCACCGGCGGCACCAGCTCCGGCGGCGCCGGCGGCGGCTCCGGCAGCTCCGGCCCCTGCTGCGCCGGCTGCGCCGGCTCCGGCGGCCCCTGCGGCGGCTCCGGCCGCACCTGCACCTGCCGCGCCGGCTGCTCCGGCCCCGGCTGCCCCAGCAGCGGCACCAGCAGCGCCTGCTCCTGCGGCGCCTGCAGCTCCGGCGCCGGCAGCCCCGGCCGCCGCACCCGCGGCTCCAGCCCCCGCCGCTCCAGCAGCCCCCGCGCCAGCTGCACCTGCTGCC
【0243】
配列番号9:
PA(400)-ポリペプチドのアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAA
【0244】
配列番号10:
PA(400)-ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
GCCGCGCCAGCGGCCCCGGCCCCTGCCGCGCCCGCTGCTCCCGCCCCTGCTGCCCCAGCCGCCGCTCCTGCGGCACCTGCGCCCGCCGCGCCGGCAGCGCCGGCACCGGCAGCTCCGGCGGCCGCGCCTGCAGCTCCTGCACCGGCGGCTCCAGCAGCCCCGGCGCCGGCCGCACCTGCGGCGGCGCCCGCGGCGCCTGCACCCGCAGCGCCTGCGGCACCGGCCCCAGCAGCCCCTGCCGCCGCACCGGCTGCGCCTGCCCCAGCGGCCCCCGCTGCCCCGGCCCCGGCGGCTCCAGCCGCAGCGCCTGCCGCCCCAGCGCCCGCAGCACCGGCGGCACCAGCTCCGGCGGCGCCGGCGGCGGCTCCGGCAGCTCCGGCCCCTGCTGCGCCGGCTGCGCCGGCTCCGGCGGCCCCTGCGGCGGCTCCGGCCGCACCTGCACCTGCCGCGCCGGCTGCTCCGGCCCCGGCTGCCCCAGCAGCGGCACCAGCAGCGCCTGCTCCTGCGGCGCCTGCAGCTCCGGCGCCGGCAGCCCCGGCCGCCGCACCCGCGGCTCCAGCCCCCGCCGCTCCAGCAGCCCCCGCGCCAGCTGCACCTGCTGCCGCTCCTGCTGCCCCTGCTCCCGCTGCCCCCGCCGCCCCCGCCCCAGCTGCCCCCGCTGCCGCACCTGCTGCCCCAGCTCCCGCTGCCCCAGCCGCGCCGGCCCCCGCAGCTCCAGCCGCGGCACCAGCTGCCCCAGCTCCAGCGGCGCCTGCTGCCCCGGCCCCCGCGGCACCGGCTGCCGCGCCCGCAGCTCCAGCGCCTGCTGCACCGGCTGCTCCGGCACCCGCCGCGCCAGCAGCTGCCCCTGCGGCACCAGCTCCTGCTGCCCCCGCGGCACCTGCACCCGCTGCCCCGGCGGCAGCTCCCGCCGCGCCAGCCCCTGCAGCTCCTGCTGCACCTGCTCCTGCCGCCCCTGCTGCTGCCCCTGCTGCTCCAGCCCCTGCAGCACCGGCCGCTCCAGCTCCTGCCGCTCCTGCCGCTGCGCCCGCTGCTCCAGCCCCAGCTGCGCCAGCAGCTCCTGCACCTGCTGCCCCTGCCGCCGCCCCTGCGGCTCCAGCACCTGCTGCACCGGCCGCCCCGGCGCCCGCTGCCCCCGCAGCAGCCCCAGCCGCACCCGCTCCAGCAGCTCCCGCAGCCCCAGCACCCGCAGCACCAGCCGCC
【0245】
配列番号11:
アスパラギナーゼ-PA(200)-融合タンパク質のアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAADKLPNIVILATGGTIAGSAATGTQTTGYKAGALGVDTLINAVPEVKKLANVKGEQFSNMASENMTGDVVLKLSQRVNELLARDDVDGVVITHGTDTVEESAYFLHLTVKSDKPVVFVAAMRPATAISADGPMNLLEAVRVAGDKQSRGRGVMVVLNDRIGSARYITKTNASTLDTFKANEEGYLGVIIGNRIYYQNRIDKLHTTRSVFDVRGLTSLPKVDILYGYQDDPEYLYDAAIQHGVKGIVYAGMGAGSVSVRGIAGMRKAMEKGVVVIRSTRTGNGIVPPDEELPGLVSDSLNPAHARILLMLALTRTSDPKVIQEYFHTY
【0246】
配列番号12:
アスパラギナーゼ-PA(200)-融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(XbaI/HindIII)
塩基127~1710(太字)でコードされた成熟融合タンパク質(配列番号11)。従って、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号12の127位から1710位までのヌクレオチドに及ぶことができる。その結果、本明細書で使用されるような「配列番号12で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むまたはそれから成る修飾されたタンパク質」という用語は、「配列番号12の127位から1710位までで示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むまたはそれから成る修飾されたタンパク質」としてさらに狭く定義することができる。
【化5】
【0247】
配列番号13:
アスパラギナーゼ-PA(400)-融合タンパク質のアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAADKLPNIVILATGGTIAGSAATGTQTTGYKAGALGVDTLINAVPEVKKLANVKGEQFSNMASENMTGDVVLKLSQRVNELLARDDVDGVVITHGTDTVEESAYFLHLTVKSDKPVVFVAAMRPATAISADGPMNLLEAVRVAGDKQSRGRGVMVVLNDRIGSARYITKTNASTLDTFKANEEGYLGVIIGNRIYYQNRIDKLHTTRSVFDVRGLTSLPKVDILYGYQDDPEYLYDAAIQHGVKGIVYAGMGAGSVSVRGIAGMRKAMEKGVVVIRSTRTGNGIVPPDEELPGLVSDSLNPAHARILLMLALTRTSDPKVIQEYFHTY
【0248】
配列番号14:
アスパラギナーゼ-PA(400)-融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(XbaI/HindIII)
塩基127~2184(太字)でコードされた成熟融合タンパク質(配列番号13)。従って、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号14の127位から2184位までのヌクレオチドに及ぶことができる。その結果、本明細書で使用されるような「配列番号14で示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むまたはそれから成る修飾されたタンパク質」という用語は、「配列番号14の127位から2184位までで示されるようなヌクレオチド配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むまたはそれから成る修飾されたタンパク質」としてさらに狭く定義することができる。
【化6】


【0249】
配列番号15:PA(40)ペプチドのアミノ酸配列
AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA
【0250】
配列番号16:修飾されたPA(20)ペプチド
Pga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH
【0251】
配列番号17:修飾されたPA(40)ペプチド
Pga-AAPAAPAPAAPAAPAPAAPAAAPAAPAPAAPAAPAPAAPA-Ahx-COOH
【0252】
本明細書で引用されている参考文献はすべて参照によって完全に組み入れられる。今や本発明を完全に記載したが、本発明は、本発明及びその実施形態の精神または範囲に影響を及ぼすことなく、条件、パラメーター、等の広い且つ同等の範囲内で実践されてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
【配列表】
2023081915000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-アスパラギナーゼ活性を有する修飾されたタンパク質であって、前記修飾されたタンパク質が四量体であり、前記四量体の各単量体が、i)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を含む第1ポリペプチドと、ii)100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む第2ポリペプチドと、を含む、前記修飾されたタンパク質。
【請求項2】
前記第1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項1に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項3】
前記第1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項2に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項4】
前記第1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項5】
前記修飾されたタンパク質は、配列番号1の4つのコピーから成る四量体のアスパラギナーゼ活性又はグルタミナーゼ活性と比較して、より高いアスパラギナーゼ活性又はグルタミナーゼ活性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項6】
前記アスパラギナーゼ活性又はグルタミナーゼ活性は、配列番号1の4つのコピーからなる四量体のアスパラギナーゼ活性又はグルタミナーゼ活性と比較して、少なくとも20%高い、請求項5に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項7】
前記各単量体は、前記第2ポリペプチドにおける2以上のインスタンスと別々にカップルする、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項8】
前記修飾されたタンパク質は、第1ポリペプチドにおける4つのインスタンス及び前記第2ポリペプチドにおける30~55のインスタンスを含む、請求項7に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項9】
前記第1ポリペプチドにおけるアクセス可能なアミノ基の40%~100%は、前記第2ポリペプチドのインスタンスと別々にカップルする、請求項7又は8に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項10】
前記第2ポリペプチドは、100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項11】
前記第2ポリペプチドは、200~400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項12】
前記第2ポリペプチドは、200~400のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基から成る、請求項11に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項13】
前記プロリン残基は、前記第2ポリペプチドの10%を超えて高く70%未満を構成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項14】
前記第2ポリペプチドは、6以下の連続するアミノ酸残基が同一である、請求項1~13のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項15】
前記第2ポリペプチドは、配列番号7または9で示されるようなアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項16】
前記第2ポリペプチドは、配列番号7または9で示されるようなアミノ酸配列から成る、請求項15に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項17】
前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドは、1つの融合タンパク質である、請求項1~16のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項18】
前記第2ポリペプチドは、前記第2ポリペプチドのC末端アミノ酸のカルボキシ基と前記第1ポリペプチドのリジン残基のε-アミノ基とから形成されるアミド結合を介して前記第1ポリペプチドとコンジュゲートする、請求項1~17に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項19】
前記第2ポリペプチドのN末端は、ピログルタモイル基又はアセチル基である、請求項1~18のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項20】
前記修飾されたタンパク質の各単量体は、同一である、請求項1~19のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項21】
前記修飾されたタンパク質は、少なくとも90%の純度を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の修飾されたタンパク質の単位用量を含む組成物であって、前記単位用量は、1U/kgから25U/kgである、組成物。
【請求項23】
前記組成物は、薬学上許容できる担体又は賦形剤をさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、静脈内に投与されるために構成される、請求項21-23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
疾患の治療に使用される、請求項1~20に記載の修飾されたタンパク質又は請求項22~24に記載の組成物。
【請求項26】
前記使用は、前記組成物を、週に2回から月に1回の間で投与することを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物は、単剤療法として投与される、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物は、化学療法剤とともに投与される、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は、アスパラギンシンセターゼ阻害剤とともに投与されない、請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記疾患は、がんである、請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記がんは、非固形がんである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記非固形がんは、白血病もしくは非ホジキンリンパ腫である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
L-アスパラギナーゼ活性を有する修飾されたタンパク質であって、前記修飾されたタンパク質が四量体であり、前記四量体の各単量体が、
i)リーダー配列、
ii)L-アスパラギナーゼの単量体ユニットを含む第1ポリペプチド、及び、
iii)100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む第2ポリペプチド、
を含む、修飾されたタンパク質。
【請求項34】
前記第1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を含む、請求項33に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項35】
前記リーダー配列は、細菌性アルカリホスファターゼシグナル配列、コレラ毒素サブユニットB、ツインアルギニン転座、ウシ成長ホルモンシグナル配列、ヒトキモトリプシノーゲン、ヒト第VIII因子、ヒトIg―カッパ、ヒトインスリン、ヒトインターロイキン-2、MetridaまたはVargulaに由来するルシフェラーゼ、ヒトトリプシノーゲン-2、Kluyveromyces marxianusに由来するイヌリナーゼ、Saccharomyces cerevisiaeに由来する接合因子アルファ-1、メリチン、ヒトアズロシジンを含む、請求項33又は34に記載の修飾されたタンパク質。
【請求項36】
L-アスパラギナーゼ活性を有する修飾されたタンパク質であって、前記修飾されたタンパク質が四量体であり、前記四量体の各単量体が、L-アスパラギナーゼの単量体ユニットを含む第1ポリペプチドと、100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む第2ポリペプチドと、を含み、前記修飾されたタンパク質は、エレクトロスプレーイオン化質量分析、はマトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、ゲル電気泳動、ゲル濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、勾配沈殿、動的光散乱、又は静的光散乱によって決定される、検出可能な凝集を含まない、修飾されたタンパク質。
【請求項37】
L-アスパラギナーゼ活性を有する修飾されたタンパク質であって、前記修飾されたタンパク質が四量体であり、前記四量体の各単量体が、L-アスパラギナーゼの単量体ユニットを含む第1ポリペプチドと、100~600のプロリン及びアラニンのアミノ酸残基を含む第2ポリペプチドと、を含み、前記修飾されたタンパク質は、第1ポリペプチドの4つのコピーから成る四量体の流体力学的半径の5.1~10.4倍の流体力学的半径を有する、修飾されたタンパク質。
【請求項38】
N末端からC末端まで、
i)細菌のEnxシグナル配列、
ii)配列番号7又は9、及び
iii)配列番号1、
を含む、修飾されたタンパク質。
【請求項39】
請求項38に記載の修飾されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターであって、前記ヌクレオチド配列は、tetプロモーターによる転写制御下にある、ベクター。
【外国語明細書】