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特開2023-81916アンチセンスを用いて癌を治療するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081916
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】アンチセンスを用いて癌を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230606BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230606BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20230606BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230606BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
A61K39/00 H ZNA
A61K48/00
A61K31/711
A61P35/00
C12N15/113 140Z
C12N5/09
C12M1/00 A
C12M1/26
C12N1/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030687
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2019548594の分割
【原出願日】2018-03-09
(31)【優先権主張番号】62/469,003
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/629,972
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516241599
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ、デイビッド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】フーパー、ダグラス シー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌、とくに脳癌の新しい改善された治療を達成するためのバイオ拡散チャンバーを作製する方法および癌を有する対象を治療する方法を提供する。
【解決手段】インスリン様成長因子1レセプター(IGF-1R)に対するアンチセンス(AS)核酸を用いて癌を治療するための方法を提供する。ASは、患者に全身投与しうるか、又は自己由来癌細胞ワクチンを製造するために使用しうる。実施形態では、ASは、腫瘍細胞と有効量のASとを含む植込み型照射バイオ拡散チャンバーで提供される。チャンバーは、照射され、対象の腹部に植え込まれ、そして免疫反応を刺激して腫瘍を遠位から攻撃する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーを作製する方法であって、
(a)前記対象から得た腫瘍細胞をIGF-1R AS ODNの存在下で前記バイオ拡散チャンバーに封入することであって、前記チャンバー内の腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとの比が約3.75×10:1μg~約6.25×10:1μgの範囲内であり、前記腫瘍細胞が組織モルセレータを用いて前記対象から得られる、封入することと、
(b)前記バイオ拡散チャンバーに照射することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記チャンバーに前記腫瘍細胞を封入する前に前記腫瘍細胞が分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が前記対象からの取出し時に体温を超える温度に暴露されない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が前記対象からの取出し時に37℃を超える温度に暴露されない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組織モルセレータが無菌トラップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組織モルセレータが静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記外側カニューレがサイドアパーチャを含み、且つさらに前記腫瘍細胞が電子制御可変吸引により前記サイドアパーチャに吸い込まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオ拡散チャンバーに配置される前に前記腫瘍細胞がネスチン発現に関して富化される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバー内の前記腫瘍細胞が前記対象から得られた前記腫瘍細胞と比較して接着細胞に関して富化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍細胞が接着細胞から本質的になる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が前記チャンバーへの封入前にIGF-1R AS ODNで処理される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記IGF-1R AS ODNが封入前の前記処理時に約2mg~約6mg/100万細胞で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記IGF-1R AS ODNが封入前の前記処理時に約4mg/100万細胞で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
封入前のIGF-1R AS ODNによる前記処理が約18時間までにわたる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
封入前のIGF-1R AS ODNによる前記処理が約12時間~約18時間にわたる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記IGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記チャンバー内の前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、請求項1に記載のチャンバー。
【請求項18】
前記照射腫瘍細胞が約750,000~約1,250,000/チャンバーの範囲内で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記照射腫瘍細胞が約1,000,000/チャンバーで存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の2つ以上のバイオ拡散チャンバーを前記対象に植え込むことを含む、癌を有する対象を治療する方法。
【請求項21】
約10~約30個のバイオ拡散チャンバーが前記対象に植え込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
約10~約20個のバイオ拡散チャンバーが前記対象に植え込まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記拡散チャンバーが前記対象に約48時間植え込まれる、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が脳癌である、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記脳癌が、グレードII星状細胞腫、グレードAIII星状細胞腫、グレードAIII-G星状細胞腫、及びグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記脳癌がグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、化学療法を用いずに、放射線療法を用いずに、又は両方を用いずに実施される、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1の植込みに続いてチャンバーの第2の植込みを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の植込みが、前記第1の投与から得られた細胞と同時に前記対象から得られた腫瘍細胞を使用する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の植込みが、前記第1の治療が終了した後で前記対象から得られた腫瘍細胞を使用し、前記腫瘍は、再発したものであるか又は前記第1の治療に反応しなかったものである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
脳癌を有する対象にワクチン接種する方法であって、
(i)前記対象から細切腫瘍組織を得ることと、
(ii)前記細切組織を無菌トラップに採取することと、
(iii)前記細切組織から接着細胞を捕集することと、
(iv)配列番号1の配列を有するインスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)と一緒に、前記捕集された細胞をバイオ拡散チャンバーに封入することであって、前記チャンバーが約750,000~約1,250,000腫瘍細胞を含有する、封入することと、
(v)前記チャンバーに照射することと、
(vi)前記チャンバーを前記対象に植え込むことと、を含み、
前記脳癌に対する免疫反応が得られる、方法。
【請求項32】
封入前に18時間までにわたりIGF-1R AS ODNで前記接着細胞を処理するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が約48時間にわたり20個のチャンバーでワクチン接種される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記チャンバー内の腫瘍細胞とAS ODNとの比が、約3.75×10細胞:1μgAS ODN~約6.25×10細胞:1μgAS ODNの範囲内である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記IGF-1R AS ODNが約1μg~約5μgで存在する、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍細胞が体温を超える温度に暴露されない、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
約10腫瘍細胞が前記チャンバー内に存在する、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記脳癌が、グレードII星状細胞腫、グレードAIII星状細胞腫、グレードAIII-G星状細胞腫、及びグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記脳癌がグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
脳癌を有する対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーであって、
(a)照射された腫瘍細胞であって、
前記腫瘍細胞が、前記対象の腫瘍組織から得られた接着細胞を含み、
前記腫瘍細胞が、前記チャンバー内への封入前にインスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)と共にプレインキュベートされる、照射された腫瘍細胞と、
(b)照射されたIGF-1R AS ODNであって、
前記IGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有する、照射されたIGF-1R AS ODNとを含み、
前記チャンバー内の腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとの比が、約3.75×10細胞:1μgAS ODN~約6.25×10細胞:1μgAS ODNの範囲内である、バイオ拡散チャンバー。
【請求項42】
前記IGF-1R AS ODNが約1~約5μgで存在する、請求項41に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項43】
前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、請求項41に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項44】
前記チャンバー内の前記腫瘍細胞が、前記対象から得られた前記腫瘍組織と比較してネスチン陽性細胞に関して富化されている、請求項41~43のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項45】
約10腫瘍細胞が前記チャンバー内に存在する、請求項41~44のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項46】
前記腫瘍細胞が組織モルセレータを用いて前記対象から得られるものである、請求項41~45のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項47】
前記組織モルセレータが静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む、請求項46に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項48】
前記外側カニューレがサイドアパーチャを含み、且つさらに前記腫瘍細胞が電子制御可変吸引により前記サイドアパーチャに吸い込まれるものである、請求項47に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項49】
前記対象から前記腫瘍組織を得るとき、前記組織モルセレータが熱を生成しない、請求項46に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項50】
前記腫瘍細胞が前記チャンバー内に約750,000~約1,250,000の範囲内で存在する、請求項41~48のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【請求項51】
前記チャンバー内の腫瘍細胞とAS ODNとの比が約5.0×10細胞:1μgである、請求項41~49のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インスリン様成長因子1レセプター(IGF-1R)に対するアンチセンス核酸を用いて癌を治療するための組成物及び方法に関する。本開示はまた、腫瘍細胞とIGF-1Rに対するアンチセンス核酸とを含む少なくとも1つの植込み型照射バイオ拡散チャンバー(米国特許第6,541,036号明細書及び国際出願第PCT/US2016/026970号パンフレット(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)を用いて対象を治療することにより癌を治療するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌療法の進歩にもかかわらず、悪性神経膠腫とくに多形膠芽細胞腫及び多くの他の癌の予後は、依然として不良である。標準的治療、たとえば、化学療法、外部ビーム放射線療法、ブラキ療法などに修正を加えても、無進行生存及び全生存の両方でごくわずかずつ改善されるにすぎない。免疫療法試験は、理論上有望であるが、固形腫瘍によりもたらされる難題に対処していない。神経膠腫の治療に関して、国立癌研究所(National Cancer Institute)は、年間発生数を毎年約28,000症例と推定しており、再発神経膠腫の患者を含めると50,000症例超に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、癌とくに脳癌の新しい改善された治療を達成する必要性が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、インスリン様成長因子レセプター1(IGF-1R)を標的とするアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)が、本明細書に記載の治療法で使用されたとき、癌を治療する対象における反応を効果的に刺激することを実証する。特定の態様では、方法は、患者において自己由来癌細胞ワクチンの一部として単独で又は任意選択的に全身投与と共に癌を治療するのに有効である。好ましい方法では、本明細書に開示される方法は、単独療法として、すなわち、化学療法の不在下且つ放射線療法の不在下で有効な癌療法を提供する。
【0005】
実施形態では、本開示は、腫瘍に罹患している対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーを提供する。このバイオ拡散チャンバーは、照射腫瘍細胞と照射インスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)とを含む。実施形態では、腫瘍細胞は、対象の切除部位から取り出される。
【0006】
実施形態では、本開示は、照射IGF-1R AS ODNと照射接着強化細切腫瘍細胞とを含む拡散チャンバーを提供する。このバイオ拡散チャンバーは、細胞に対して不透過性且つIGF-1R AS ODNに対して透過性の細胞膜を含む。
【0007】
実施形態では、腫瘍細胞は、内視鏡デバイスを用いて切除部位から取り出される。さらなる実施形態では、腫瘍細胞は、組織モルセレータを用いて切除部位から取り出される。他の実施形態では、組織モルセレータは、静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む。外側カニューレは、サイドアパーチャを含みうるとともに、さらに腫瘍細胞は、電子制御可変吸引によりサイドアパーチャに吸い込まれる。実施形態では、組織モルセレータは、切除部位で熱を生成しない。そのほかのさらなる実施形態では、腫瘍細胞は、バイオ拡散チャンバーに配置される前にネスチン発現に関して富化される。いくつかの実施形態では、チャンバーの植込みは、対象において腫瘍の再成長を阻害する。いくつかの実施形態では、チャンバーの植込みは、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも36ヵ月間にわたり腫瘍の再成長を阻害する。
【0008】
そのほかの実施形態では、本開示は、腫瘍に罹患している対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーの作製方法を提供する。この方法は、IGF-1R AS ODNの存在下でバイオ拡散チャンバーに腫瘍細胞を配置することと、バイオ拡散チャンバーに照射することと、を含み、腫瘍細胞は、対象において、切除部位で熱を生成しない組織モルセレータを用いて切除部位から取り出される。典型的には、複数のチャンバーが使用される。たとえば、約10個のチャンバー又は約20個のチャンバー。有利には、最適抗腫瘍反応は、チャンバー内の細胞数が約750,000~約1,250,000のときに達成される。たとえば、20個のチャンバーが植え込まれる場合、約1,000,000/チャンバーである。
【0009】
いくつかの実施形態では、組織モルセレータは内視鏡デバイスである。さらなる実施形態では、組織モルセレータは、静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む。そのほかの実施形態では、外側カニューレは、サイドアパーチャを含み、且つ腫瘍細胞は、電子制御可変吸引によりサイドアパーチャに吸い込まれる。
【0010】
実施形態では、本開示は、腫瘍に罹患している対象の治療方法を提供する。この方法は、1つ以上のバイオ拡散チャンバーを対象に植え込むことを含み、1つ以上のバイオ拡散チャンバーは、照射腫瘍細胞と照射インスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)とを含み、腫瘍細胞は、対象において、切除部位で熱を生成しない組織モルセレータを用いて切除部位から取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1a~1gは、代表的バイオ拡散チャンバーを示す。図1a.コンポーネントパーツ、図1b.アセンブルされたチャンバー、図1c.チャンバーをシールするPMMAポートプラグ。
図1-2】図1a~1gは、代表的バイオ拡散チャンバーを示す。図1d.ポリビニリジンフルオライドデュラポア(Durapore)メンブレンの顕微鏡写真、図1e.実際のチャンバーの俯瞰視及び側面視、図1f.及び図1g.外植後のデュラポア(Durapore)メンブレンのH&E染色パラフィン切片、図1f.ヒト試験14379-101の外植リン酸緩衝生理食塩水対照チャンバー、図1g.ヒト試験14379-101の外植ワクチンチャンバー。
図2a図2a~2cは、第I相試験(IND14379-101、NCT01550523)における対象の生存メトリックを示す。図2a.試験における患者の全生存。
図2b図2a~2cは、第I相試験(IND14379-101、NCT01550523)における対象の生存メトリックを示す。図2b.2つの生存コホートのプロトコル生存。9名の患者は疾患進行で死亡し、一方、1名は脳内出血で、2名は敗血症で死亡した。全プロトコル生存は、より長い(N=4)及びより短い(N=8)生存コホートのそれぞれに対して、48.2週間及び9.2週間であった(ログランク=.014)。
図2c図2a~2cは、第I相試験(IND14379-101、NCT01550523)における対象の生存メトリックを示す。図2c.1名の重度のリンパ球減少の外れ値及び3名の非疾患関連死亡を除いて、線形回帰は、プロトコル生存と登録時のリンパ球数との間に高い相関を呈した(R=.8、p=.0028)。
図3-1】図3a~3dは、関連する生理学的測定によるラジオグラフィー反応を示す。図3a.短い生存コホートの患者イメージングの例。患者TJ11:A~D、患者TJ10:E~H。A、E:術前T1ガドリニウム増強アキシャル像、G:T1ガドリニウム増強コロナル像、C:術前アキシャルFLAIR像。B、D、F、H:それぞれ術後3ヶ月像。図3b.より長い生存コホートの患者イメージングの例。患者TJ06:A~D、患者TJ09:E~H。A、E:術前T1ガドリニウム増強アキシャル像、C、F:術前アキシャルFLAIR像。B、D、F、H:それぞれ術後3ヶ月像。
図3-2】図3a~3dは、関連する生理学的測定によるラジオグラフィー反応を示す。図3c.より長い生存コホートにおける腫瘍の相対脳血液量と見掛けの拡散係数との関係、ADCとrCBVとの間には高い相関が存在する(R=.96、p=.0005)。図3d.短い生存コホートにおける腫瘍の相対脳血液量と見掛けの拡散係数との関係。
図4a図4a~4cは、生存コホート別に外植チャンバーの検査を示す。図4a.外植チャンバーは、生存細胞がなく構造的にインタクトであった。C-p及びC-vチャンバーの両方のメンブレンの外表面は、CD15+及びCD163+細胞で被覆され、C-vメンブレン上の数は劇的に増加した。
図4b図4a~4cは、生存コホート別に外植チャンバーの検査を示す。図4b.より長いコホートでは、VEGF、PDGF-α、IL-11、CCL5、MCP-3、及びMIP-1dが有意にチャンバー上昇し、一方、短いコホートでは、NSE、オステオネクチン、及びYKL40をはじめとするいくつかの可溶性癌マーカが有意に上昇することが、生存コホート間のチャンバー因子分析から明らかにされた。混合判別分析により独立してこれらのコホート差が同定された。
図4c図4a~4cは、生存コホート別に外植チャンバーの検査を示す。図4c.両方のコホートで、神経膠腫マクロファージリクルートメントに関連する2つのケモカインは、C-vにおいて他の測定可能な供給源よりも有意に低かった。ペリオスチン及びCCL2のレベルは両方とも、血清又はSN(腫瘍細胞上清)の値よりも有意に低かったことから、チャンバー内においてこれらのケモカインの細胞産生が排除されたことが示唆される。
図5図5a~5eは、ワクチン接種後のPBMC及びサイトカインのレベルを示す。治療後の期間におけるワクチン接種後の免疫エフェクター細胞シフト及びサイトカイン/ケモカインシフトの逐次測定、より長い生存コホート(患者TJ03、TJ14、TJ06、TJ09)、短い生存コホート例の患者TJ13(すべての他の短い生存コホートについては、図6を参照されたい)。行:図5a.ワクチン接種後の逐次PBMC数。図5b.ワクチン接種後のPBMCサブ集団パーセントの逐次評価。図5c.CCL21及びCXCL12の逐次レベル。図5d.絶対CD14+CD16-マクロファージ数とMCP-1(CCL2)との関係。図5bのマクロファージレベル及び術後CCL2スパイクとの相関に留意されたい。CCl2レベルは、短い生存コホートでは有意により高く維持された(図6参照)。図5e.ワクチン接種後の推定TH-1サイトカイン反応のスケール調整比較(TNF-α×2、CXCL9×350、CXCL10×80)。次のような有意な相関が特筆すべきであった。すなわち、TNF-αスパイクは、両方のコホートでCCL2スパイクと高い相関があった(R=.99、p=.003)。CD14+16-細胞の有意な即時周術期減少(p=.008)は、短いコホートでは見られなかった(p=.78)。より長いコホートでのみ、CD4とCXCL12との間に有意な相関があった(R=.62、p<.0001)。また、全単球数とCD14+16-単球レベルとの間に高い相関があり(図5B及び5D、R=.8、p<.0001)、且つより長い生存コホートでは循環T細胞数と単球数との間の逆相関(R=.66、p<.0001)が特筆すべきであり(図5)、短い生存コホートでは有意差がなかった(図6参照)。
図6図6a~6eは、短いコホート患者(患者TJ01、TJ01、TJ07、TJ08、TJ10、TJ11、TJ12)においてワクチン接種後のPBMC及びサイトカインのレベルを示す。行:図6a.ワクチン接種後の逐次PBMC数。図6b.ワクチン接種後のPBMCサブ集団パーセントの逐次評価(T細胞、B細胞、単球)。図6c.CCL21及びCXCL12の逐次レベル。図6d.絶対CD14+CD16-マクロファージ数とMCP-1(CCL2)との関係。CCl2レベルは、短い生存コホートでは長い生存コホートと比較して有意に高く維持された。図6e.ワクチン接種後の推定TH-1サイトカイン反応のスケール調整比較(TNF-α×2、CXCL9×350、CXCL10×80)。IFN-gも示される。
図7-1】図7a~7hは、ワクチン接種後の特異的腫瘍促進単球細胞集団の低下を示す。実質的腫瘍退縮は、3ヶ月間にわたり観測された。図7a.TME IGF-1R+細胞に関して一相性傾向であり(順序尺度)、初期診断からワクチン接種までのマッチドペアの症例(N=5)では有意差はなく、ワクチンから剖検までのマッチドペア(N=4)ではIGF-1R+細胞の有意な減少を呈する(p=.003)。図7b.初期診断からワクチン及び剖検までの評価可能なパラフィン切片を有する2名の患者(患者TJ06及びTJ10)のIGF-1R陽性細胞。図7c.TME CD163 M2マクロファージに関して二相性傾向であり、診断から再発まで有意に増加し(アペリオ(Aperio)400倍5視野/治療相/患者、左側プロット、マッチドペアp<.0001、N=6)、続いて、再発からワクチン接種後の剖検まで有意に低下する(右側プロット、マッチドペアp<.0001、N=4)。
図7-2】図7a~7hは、ワクチン接種後の特異的腫瘍促進単球細胞集団の低下を示す。図7d.初期診断からワクチン及び剖検までの評価可能なパラフィン切片を有する同一の2名の患者(患者TJ06及びTJ10)のCD163+細胞は、再発時に対してワクチン時にCD163が増加し(マッチドペア、p=.052)、続いて、ワクチン時に対して剖検時にTME CD163 M2マクロファージが有意に減少する(マッチドペア、p=.001)。図7e.短い生存コホートにおける末梢CD163単球と術時に記録したCD163 TAMレベルとの有意な相関(R=.80、p=.02)。図7f.より長いコホートにおける末梢CD163細胞とTAM CD163細胞との有意でない相関。
図7-3】図7a~7hは、ワクチン接種後の特異的腫瘍促進単球細胞集団の低下を示す。図7g.パラフィン切片の蛍光免疫組織化学顕微鏡写真。A、C:ワクチン接種前の2回目の外科切除時及びB、D:剖検時の患者TJ10。E~H:標準ケア後に再切除を受けた膠芽細胞腫患者から得られた剖検検体。I、J:未治療で偶発的に見いだされた死後の膠芽細胞腫。
図7-4】図7a~7hは、ワクチン接種後の特異的腫瘍促進単球細胞集団の低下を示す。図7h.TJ06における初期診断から剖検までの治療反応の経時変化。TMEではCD163細胞の発生は二相性であり、標準的治療後に増加し、ワクチン接種後から剖検まで減少する。CD163 TAMの低下は、腫瘍内のrCBV及びADCの値の両方の増加に関連する。血清中ニトレートレベルは、各ワクチン接種後にスパイクし、付随的rCBV/ADC増加に関連する。
図8-1】図8a~8dは、研究対象のサイトカイン又は血清による未成熟単球の分化を示す。図8a.M2サイトカインによる単球の分極化後のIGF-1Rのアップレギュレーション。M1マクロファージは、IGF-1Rをアップレギュレートしない(***p=.0004)。図8b.材料及び方法に記載のマクロファージ分極化プロトコルに従ってIGF-1R AS ODNで処理した後の単球サブセット分布の差。フローサイトメトリーは、IGF-1R AS ODNがM2マクロファージの除去を選択的に標的とすることを明らかにする。
図8-2】図8a~8dは、研究対象のサイトカイン又は血清による未成熟単球の分化を示す。図8c.プロトコル患者血清は、IGF-1RとPD-L1とを共発現するCD163+表現型に未成熟単球を分化させる。IGF-1R AS ODNは、このマクロファージ集団を100倍濃度領域にわたり用量依存的にノックダウンする。値はすべて、平均蛍光強度である。各患者血清の共インキュベーションのデュプリケート測定による平均の比較。***p<.0001、**p=.0001、p=.0002、◆◆◆p=.0003、◆◆p=.0009、p=.009、
【0012】
【数1】

図8d.図8cの平均のまとめ。
図9図9a~9dは、第1の中間解析の標準ケアと比較して無進行生存及び全生存の両方で有意な改善があったことを示す。図9a.標準ケア(SOC)と比較した全研究コホートの無進行生存(PFS)。黒点線は95%信頼区間である。図9b.全生存(OS)。いずれの場合も、SOCではより低い95%CIに低下するので、有意な改善が示される。図9c.中間解析時の生存コホート別のPFS。図9d.中間解析時の生存コホート別のOS。
図10図10a~10dは、第1b相試験のまとめ並びに先行試験との及び試験内コホート間でのインターフェロンγレベルの比較を示す。図10a.新たに診断されたワクチンコホートにおけるワクチン接種後のIFN-γの増加傾向(p=.06)。図10b.新たに診断されたワクチンコホートにおけるメジアンIFN-γの有意な増加(p=.02)。図10c.20チャンバーコホートにおけるIFN-γレベルの有意な増加***p<.0001、**p<.006、p<.02。図10d.バイオ拡散チャンバーからの標識IGF-1R AS ODNの経時的拡散率。
図11-1】図11a~11jは、ナイーブマウスモデルにおいて炎症誘発性サイトカイン産生に及ぼす完全製剤化バイオ拡散チャンバー(照射と外因的に添加されたAS ODNとの両方)の影響を示す。GL261細胞が単独で充填された外植マウスチャンバー内容物、2μgのIGF-1R AS ODNの添加若しくは5GyのX線照射によるGL261細胞の照射のどちらかの部分製剤、又は完全製剤化自己由来ワクチン(GL261、2μgのIGF-1R AS ODN、及び5Gyのγ線照射)の植込み24時間後のルミネックス(Luminex)分析。図11a.G-CSF、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0117。図11b.IL-1a、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.008。図11c.IL-1b、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0067。図11d.IL-2、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0002。図11e.IL-9、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0413。
図11-2】図11a~11jは、ナイーブマウスモデルにおいて炎症誘発性サイトカイン産生に及ぼす完全製剤化バイオ拡散チャンバー(照射と外因的に添加されたAS ODNとの両方)の影響を示す。GL261細胞が単独で充填された外植マウスチャンバー内容物、2μgのIGF-1R AS ODNの添加若しくは5GyのX線照射によるGL261細胞の照射のどちらかの部分製剤、又は完全製剤化自己由来ワクチン(GL261、2μgのIGF-1R AS ODN、及び5Gyのγ線照射)の植込み24時間後のルミネックス(Luminex)分析。図11f.IL-10、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0001。図11g.IL-12(p40)、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.001。図11h.IL-13、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0065。図11i.IL-15、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0013。図11j.M-CSF、GL261-AS-irr対PBS p=.007。図示されていないが、他に試験したのは次の通りである。IL-6、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0836。GM-CSF、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0854。lix、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0001。kc、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0112。TNF-a、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0082。VEGF、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0004。lif、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0140。IL-7、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0038。IL-12(p70)、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0120。IFN-γ、GL261-AS-irr対GL261-irr p<.0290。
図12図12は、NOBELアンチセンス750μgと、NOBELセンス75μg、7.5μg、DWAアンチセンス750μg、7.5μg、対照と、を対比して***p<.0009、NOBELアンチセンス75μgと、NOBELセンス、DWAアンチセンス7.5μgと、を対比して、IGF-1R AS ODNによる2名の正常対象(暗色及び明色)の末梢血単核細胞(PBMC)の樹状細胞(DC)活性化に関する漸増曲線を示す。
図13図13a~13bは、ワクチン接種マウスに由来するT細胞を利用した完全製剤化チャンバーの内容物のin vitro T細胞反応を示す。図13a.チャンバーから回収された抗原でプライミングされたDCによる炎症誘発性T細胞反応、in vitro完全製剤と無抗原との対比では**p<.01、完全製剤とエキソソームとの対比ではp<.03。図13b.チャンバーから回収された抗原でパルスされたDCによる炎症誘発性T細胞反応、完全製剤と無抗原との対比では**p<.005、完全製剤とエキソソームとの対比ではp<.007。
図14図14a~14dは、NOBELアンチセンス用量漸増に対する二相性反応の模式図である。
図15図15a~15bは、6名の異なる神経膠腫患者に由来する血清の一晩インキュベーションを併用したときの3名の正常対象の同種異系単球のM2分極化を示す。対照は、血清と共にインキュベートしなかった。100pgのNOBELアンチセンスから1μgの有意なノックダウンまで図15aのPDL-1及び図15bのCD163を共発現するM2マクロファージの減少を呈することが、1000倍希釈曲線から明らかにされた。各グラフのラインは総平均である。1μgのNOBELと未治療との対比では***p<.0002。
図16図16は、外植PBS対照チャンバーに対する外植ワクチンチャンバーのサイトカインレベルの比較を示す。***p,.005、***p<.01、***p<.02、**p<.03、p<.05。
図17図17は、側腹神経膠腫腫瘍成長の阻害に及ぼす全身性IGF-1R AS-ODNの二相性反応を示す用量-反応曲線である。10GL261細胞をC57BL/6マウスの側腹に植え込み、20日後、循環CD163陽性細胞の上昇が典型的に観測される期間前に0.75mg(四角)又は0.075mg(三角)の単回用量でNOBEL IGF-1R AS-ODNをマウスの腹腔内に注射した。次いで、マウスの腫瘍発生を続けた。未ワクチン接種マウス(丸)を対照として使用した。
図18図18は、全身性IGF-1R AS-ODN治療が循環M2単球の蓄積を阻害したことを示すフローサイトメトリーデータである。データは、CD163を発現する細胞数のヒストグラムとして表され(右側ピーク)、「媒体」と表示されたラインは、PBS(媒体)で治療された腫瘍植込みマウスを表し、「AS-ODN」と表示された他のラインは、NOBEL IGF-1R AS-ODNで治療された植込みマウスを表す。これらのラインは、図中でアノテートされる。
図19図19は、側腹に神経膠腫細胞が植え込まれたマウスをNOBEL IGF-1R AS-ODN又はPBS(媒体)で治療したときの腫瘍発生率を示す。治療群と未治療群との間で腫瘍発生率に有意差がある(=p<0.05)。
図20図20は、側腹に神経膠腫細胞が植え込まれた且つNOBEL IGF-1R AS-ODNを用いて又は用いずに治療されたTbet欠損マウスにおける腫瘍発生率を示す。群間の腫瘍発生率に有意差があった(=p<0.05)。
図21図21a、21b、及び21cは、経時的逐次採血(術後14~42日目)からプールされたワクチン接種後の患者血清中の炎症誘発性サイトカインレベル(pg/ml)を示す。炎症誘発性サイトカインの有意な用量依存的増加が患者血清で観測された。図21d、21e、及び21fは、腫瘍組織の湿潤重量収量とサイトカイン収量との関係(多項式最良当てはめ)を対象別に示す。処理後、細胞を20個のチャンバーに分配したとき、3グラムの組織の湿潤重量収量で最も高いサイトカイン収量を生成した。
図22図22は、代表的な完全製剤化バイオ拡散チャンバーの模式図である。チャンバーを患者に植え込むと、アンチセンス分子及び腫瘍抗原は、チャンバーの多孔性膜を介して拡散し、腫瘍特異的免疫反応、M2分極化減少、及びM2+細胞数低下をもたらす。
図23図23は、代表的な免疫化方法の模式図である。患者が第1ラウンドのワクチン接種に適正に反応しなければ、手順は、ときには他の治療との組合せで、任意選択的に必要な回数だけ繰り返される。
図24図24a及び25bは、脳腫瘍を有するヒト患者において治療意図群(N=30)のメジアン無進行生存(P-FS)及びメジアン全生存(OS)をそれぞれ例示するカプラン・マイヤー曲線である。(中間解析は以上の図9に示される。)「ワクチン接種」集団は、各チャンバーに2μgのNOBELを入れて植え込まれた20個のチャンバーで治療される。「SoC」集団は、病歴データを用いて表される(N=76)。データは、癌の全生存及び無進行生存の両方の実質的増加を示す。
図25図25a及び25bは、ワクチン接種群及び標準ケア(SoC)群においてそれぞれ同一の性別及びメジアン年齢を比較した無進行生存及び全生存を例示するカプラン・マイヤー曲線である。データは、癌の全生存及び無進行生存の両方の実質的増加を示す。
図26図26a及び26bは、治療から離脱した及び他の原因で死亡した5名の患者を除外したときの無進行生存及び全生存を例示するカプラン・マイヤー曲線である。
図27図27a及び27bは、標準ケア(SOC)プロトコルを終了しなかった9名の患者を除外したときの無進行生存及び全生存を例示するカプラン・マイヤー曲線である。
図28-1】図28a、28b、28c、28dは、高ワクチンコホートにおいて誘発されたIFN-γ反応を細胞収量に基づいて例示する。データは、チャンバー内の細胞数に基づいて最適IFN-γ放出を示す。図28a及び28bでは、細胞収量は百万細胞単位で示される。IFN-γは、平均蛍光強度(MFI)として示される。これらのデータは、各チャンバーが2μgのNOBELを含有する20チャンバーコホートのものである。データは、多項式当てはめ(三次)として示される。
図28-2】図28a、28b、28c、28dは、高ワクチンコホートにおいて誘発されたIFN-γ反応を細胞収量に基づいて例示する。データは、チャンバー内の細胞数に基づいて最適IFN-γ放出を示す。図28c及び20dbは、2000万細胞まで図28a及びbのデータから抽出したものであり、それぞれ、細胞数収量と平均IFNγ反応との間及びピークIFNγ反応との間の実質的に線形の関係を示す。データは、pg/ml単位で示される。
図29-1】図29a、29b、及び29cは、封入前のIGF-1Rアンチセンスのプレインキュベーションに関してチャンバー製剤に対するIFN-γT細胞反応を例示する。図29aは、腫瘍抗原に対するT細胞反応を評価するためのプロトコルを示す。
図29-2】図29a、29b、及び29cは、封入前のIGF-1Rアンチセンスのプレインキュベーションに関してチャンバー製剤に対するIFN-γT細胞反応を例示する。図29bでは、抗原は、in-vivo臨床チャンバーパラダイムに従って調製した。約100万ex vivo GL261腫瘍細胞を単独で又は指定アンチセンス濃度との併用でチャンバーに注入し、チャンバー内で一晩インキュベートした(PBS中に配置した)。翌日、チャンバー内容物を抽出し、ナイーブ樹状細胞をパルスするために使用した。アンチセンスで一晩処理しなかったチャンバー内容物は、指示量のNOBELと共に樹状細胞に添加した。対照用として樹状細胞をナイーブ状態のままにした。抗原による一晩パルスの後、樹状細胞を採取し、サイトカインIFNγに対するELIPSPOT検出抗体で被覆された細胞培養プレートで免疫動物からのT細胞と共に一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、被覆プレートを処理して発色させ、各抗原に反応したIFNγ産生T細胞の数を計数した。GL261細胞+アンチセンスを含有するチャンバーから取り出された物質では腫瘍抗原が検出されたが、細胞単独で培養されたチャンバーからの物質では、樹状細胞(DC)をパルスするときにアンチセンスを物質に添加したとしても、検出されなかったことが、図29bのデータから示される。免疫刺激性腫瘍抗原を産生するためにはチャンバー内でのアンチセンスと神経膠腫細胞との併用が必要とされることが、データから例示される。図29cでは、ペトリ皿にGL261細胞をプレーティングし、100万細胞当たり4mg NOBELで一晩処理したか又は未処理のままにした。次いで、細胞を採取し、チャンバー1つ当たり100万細胞及び2μg NOBELをチャンバーに配置した。次いで、チャンバーをPBS中で一晩インキュベートし、翌日、内容物を抽出した。次いで、樹状細胞をチャンバー内容物でパルスし、以上に記載したようにIFNγ分泌を測定した。アンチセンスとの併用でGL261細胞を一晩処理すると、IFNγを産生する腫瘍免疫T細胞の数の増加により検出される細胞により産生される抗原の量が増強されることが、データから例示される。
図30-1】図30a、30b、30c、及び30dは、マウスモデルにおいて有効性に及ぼすネスチン発現レベルの影響を例示する。図30aは、高レベルのネスチンがIGF-1Rアンチセンス治療後の生存の改善に関連することを示す。高レベル又は低レベルのネスチンタンパク質を発現するGL261細胞とさらには4mgのアンチセンスとを含有するチャンバーをマウスの側腹に植え込んだ。対照群は、アンチセンスを添加せずに高ネスチン発現細胞のみを収容した。チャンバーは、側腹に24時間残存させた。次いで、数週間にわたり免疫反応を発生させ、チャンバー植込み後35日目にマウスの頭蓋内にチャレンジした。チャレンジ後の生存に関して非免疫対照さらには免疫マウスをモニターした。
図30-2】図30a、30b、30c、及び30dは、マウスモデルにおいて有効性に及ぼすネスチン発現レベルの影響を例示する。図30bは、高レベルのネスチンがより良好な臨床疾患スコアに関連することを示す。データは、完全製剤化チャンバーを用いたワクチン接種後の正所性モデルにおける脳腫瘍進行に関連するスコア罹患率を治療コホート別に示す。
図30-3】図30a、30b、30c、及び30dは、マウスモデルにおいて有効性に及ぼすネスチン発現レベルの影響を例示する。図30c及び図30dは、高レベルのネスチン発現に関連するGL261細胞に対する抗体の産生の増加を示す。図30cは、実験マウスの血清を用いて実施し、GL261細胞に対する抗体反応性に関して試験した、チャンバー植込み後28日目/頭蓋内植込み前の細胞ELISAアッセイのデータを示す。マウスから採取した全血から血清を単離した。血清は、ELISAアッセイを用いてGL261細胞に対する全IgG反応性に関して試験した。図30dは、実験マウスの血清を用いてGL261細胞に対する抗体反応性に関して試験した、頭蓋内チャレンジ後35日目/チャンバー外植71日後の細胞ELISAのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書に定義されていない用語はすべて、当技術分野で認識されているそれらの通常の意味を有する。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「a」、「an」、「the」などの用語は、とくに文脈上明確な要件がない限り、単数及び複数の参照対象を含む。
本明細書で用いられる場合、数値の前に付くときの「about(約)」という用語は、その値±10%の範囲内を表す。たとえば、「約100」は、90及び110を包含する。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「自己由来」という用語は、同一個体から得られる細胞又は組織を意味する。
本明細書で用いられる場合、「自己由来癌細胞ワクチン」という用語は、部分的には、個体から腫瘍細胞を単離してこの腫瘍細胞をex vivoで処理することにより生成される治療剤を意味する。次いで、細胞は、腫瘍細胞が単離された個体に再投与される。実施形態では、自己由来癌細胞ワクチンは、腫瘍細胞のほか、追加の成分、たとえば、緩衝剤及び/又はアンチセンス核酸を含みうる。実施形態では、「自己由来癌細胞ワクチン」は、腫瘍細胞と1つ以上の追加の成分とを含有するバイオ拡散チャンバーを意味しうる。ある特定の態様では、「自己由来癌細胞ワクチン」は、本明細書では「完全製剤化バイオ拡散チャンバー」ともいう「完全製剤化チャンバー」でありうる。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「完全製剤化チャンバー」又は「完全製剤化バイオ拡散チャンバー」という用語は、第1の量のIGF-1R AS ODNと共にチャンバーに封入する前に処理してもしなくてもよい、自己由来腫瘍細胞と腫瘍マイクロ環境(TME)に含まれる他の細胞とを含むバイオ拡散チャンバーである。細胞に第2の量たとえば少なくとも2μgのIGF-1R AS ODNの外因的添加を行って封入し、次いで、5Gyのγ線照射でチャンバーに照射する。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「低分子」という用語は、核酸、ペプチド、タンパク質、及び他の化学物質(たとえば、細胞により産生されるサイトカイン、成長ホルモンなど)を含むが、細胞、エキソソーム、マイクロベシクルを含まない。
【0018】
本明細書で用いられる「IGF-1R発現を標的とする」という用語は、IGF-1Rに結合するように設計された配列を有するアンチセンス核酸を投与することを意味する。
本明細書で用いられる場合、「全身投与」という用語は、対象の体全体にわたり物質の送達を達成することを意味する。典型的な全身投与経路としては、非経口投与、経真皮投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、及び筋肉内投与が挙げられる。
【0019】
他の投与経路としては、経口投与、鼻投与、局所投与、眼内投与、頬腔内投与、舌下投与、膣投与、肝内投与、心内投与、膵内投与、吸入投与、及び植込みポンプ投与が挙げられる。
【0020】
アンチセンス分子
アンチセンス分子とは、ワトソン・クリック塩基対合則によりmRNAの相補的標的配列に結合することにより機能する核酸のことである。標的mRNAの翻訳は、相補的ヘリックス間でハイブリダイゼーションが行われるとき、活性機序及び/又は受動的機序により阻害される。受動的機序では、mRNAと外因性ヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションは、リボソーム複合体によるメッセージの読取りを防止する二本鎖の形成をもたらす。活性機序では、ハイブリダイゼーションは、RnaseHの結合を促進し、これによりRNAを破壊するが、アンチセンスをインタクトな状態で残して、他方の相補的mRNA標的にハイブリダイズする。一方又は両方の機序は、悪性表現型に寄与する又はそれを持続するタンパク質の翻訳を阻害する。治療剤として、アンチセンス分子は、はるかに選択的であるので、従来の薬剤よりも有効で且つ毒性が低い。
【0021】
本明細書に開示される方法及び組成物は、癌を治療するためのアンチセンス分子の使用を含む。典型的には、アンチセンス分子は、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス分子は修飾リン酸骨格を含む。ある特定の態様では、リン酸骨格修飾は、ヌクレアーゼ分解に対するアンチセンスの耐性を増加させる。ある特定の実施形態では、修飾はロックドアンチセンスである。他の実施形態では、修飾はホスホロチオエート結合である。ある特定の態様では、アンチセンスは1つ以上のホスホロチオエート結合を含有する。ある特定の実施形態では、ホスホロチオエート結合は、ヌクレアーゼ耐性を付与することによりアンチセンス分子を安定化させ、それによりその半減期を増加させる。いくつかの実施形態では、アンチセンスは部分的にホスホロチオエート結合しうる。たとえば、アンチセンスの約1%まで、約3%まで、約5%まで、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、約95%まで、又は約99%までホスホロチオエート結合されうる。いくつかの実施形態では、アンチセンスは完全にホスホロチオエート結合される。他の実施形態では、ホスホロチオエート結合はホスホジエステル結合と交互でありうる。ある特定の実施形態では、アンチセンスは少なくとも1つの末端ホスホロチオエートモノホスフェートを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、アンチセンス分子は1つ以上のCpGモチーフを含む。他の実施形態では、アンチセンス分子はCpGモチーフを含まない。ある特定の態様では、1つ以上のCpGモチーフはメチル化される。他の態様では、1つ以上のCpGモチーフはメチル化されない。ある特定の実施形態では、アンチセンス分子が対象に投与されるとき、1つ以上の非メチル化CpGモチーフは先天性免疫反応を誘発する。いくつかの態様では、先天性免疫反応は、Toll様レセプター(TLR)への非メチル化CpG含有アンチセンス分子の結合により媒介される。
【0023】
ある特定の実施形態では、アンチセンス分子は、少なくとも1つの末端修飾又は「キャップ」を含む。キャップは、5’及び/又は3’キャップ構造でありうる。「キャップ」又は「エンドキャップ」という用語は、オリゴヌクレオチドのどちらかの末端の化学修飾を含むとともに(末端リボヌクレオチドに対して)、5’末端の最後の2つのヌクレオチド間及び3’末端の最後の2つヌクレオチドの間の結合の修飾を含む。キャップ構造は、標的配列との分子相互作用や細胞機構を損なうことなくエキソヌクレアーゼに対するアンチセンス分子の耐性を増加させうる。かかる修飾は、in vitro又はin vivoにおけるその効力の増加に基づいて選択しうる。キャップは、5’末端(5’キャップ)若しくは3’末端(3’キャップ)に存在しうるか、又は両方の末端に存在しうる。ある特定の実施形態では、5’及び/又は3’キャップは、ホスホロチオエート一リン酸、脱塩基残基(部分)、ホスホロチオエート結合、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、ホスホロジチオエート結合、反転ヌクレオチド又は反転脱塩基部分(2’-3’又は3’-3’)、ホスホロジチオエート一リン酸、及びメチルホスホネート部分から独立して選択される。ホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合は、キャップ構造の一部のとき、一般に5’末端の2つの末端ヌクレオチド間及び3’末端の2つの末端ヌクレオチド間に配置される。
【0024】
好ましい実施形態では、アンチセンス分子は、インスリン様成長因子1レセプター(IGF-1R)の発現を標的とする。IGF-1Rは、インスリン受容体と70%の相同性を共有するチロシンキナーゼ細胞表面レセプターである。そのリガンド(IGF-I、IGF-II、及びインスリン)による活性化時、それは増殖、トランスフォーメーション、及び細胞生存をはじめとする広範な細胞機能をレギュレートする。IGF-1Rは、正常成長の絶対条件ではないが、悪性組織に生じうる足場非依存条件における成長に不可欠である。腫瘍におけるIGF-1Rの役割のレビューは、バサーガ(Baserga)ら著、「ビタミンとホルモン(Vitamins and Hormones)」、第53巻、p.65~98、1997年(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。
【0025】
ある特定の実施形態では、アンチセンス分子は、成長因子又は成長因子レセプター、たとえば、IGF-1RなどのDNA又はRNAに対するオリゴヌクレオチドである。
ある特定の実施形態では、アンチセンスは、IGF-1Rを指向するデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)である。IGF-1Rの全長コード配列は、配列番号19として提供される(たとえば、PCT/US2016/26970号パンフレット(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0026】
ある特定の実施形態では、アンチセンス分子は、RNA又はDNAのどちらかを含んで、IGF-1Rシグナル配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。IGF-1Rのシグナル配列は30アミノ酸配列である。他の実施形態では、アンチセンス分子は、RNA又はDNAのどちらかを含んで、IGF-1Rシグナル配列の一部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス分子は、RNA又はDNAのどちらかを含んで、IGF-1Rのコドン1~309に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、アンチセンス分子は、RNA又はDNAのどちらかを含んで、IGF-1Rのコドン1~309の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、又は少なくとも約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、IGF-1R AS ODNは、約15ヌクレオチド~約22ヌクレオチドの長さである。ある特定の態様では、IGF-1R AS ODNは、約18ヌクレオチドの長さである。
【0028】
ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、18℃では二次構造を形成するが、約37℃では二次構造を形成しない。他の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、約18℃でも約37℃でも二次構造を形成しない。さらに他の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、いずれの温度でも二次構造を形成しない。他の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、37℃で二次構造を形成しない。特定の実施形態では、二次構造は、ヘアピンループ構造である。
【0029】
いくつかの態様では、IGF-1R AS ODNは、配列番号1のヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、配列番号1又はそのフラグメントに対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、又は100%の同一性を有しうる。いくつかの実施形態では、IGF-1R AS ODNは、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む。
【0030】
ある特定の態様では、IGF-1R AS ODNは配列番号1からなる。NOBELは、ホスホロチオエート骨格とIGF-1R遺伝子のコドン2~7に相補的な配列とを有する18マーのオリゴデオキシヌクレオチドである。したがって、NOBELは、IGF-1Rを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)である。5’末端でIGF-1R遺伝子の相補的配列として誘導されるNOBEL配列は、
5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’
である。
【0031】
NOBELは安定な貯蔵寿命を有し、ヌクレアーゼ分解に耐えてそのホスホロチオエート骨格による。NOBELの投与は、当業者に公知のオリゴデオキシヌクレオチドの導入に関連する標準的方法のいずれかで提供可能である。有利には、NOBELを含めて本明細書に開示されるAS ODNは、毒性をほとんど/まったく伴うことなく投与しうる。マウス試験(尾静脈中40μg)に基づく約2g/kg(スケール調整)のレベルでさえも、毒性問題を示さなかった。NOBELは、当業者に公知の通常の手順に従って製造可能である。
【0032】
アンチセンス分子、たとえば、配列番号1のNOBEL配列はまた、米国特許第9,744,187号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるように、1つ以上のp-エトキシ骨格修飾を含みうる。いくつかの実施形態では、アンチセンス分子の核酸骨格は、少なくとも1つのp-エトキシ骨格結合を含む。たとえば、アンチセンス分子の約1%まで、約3%まで、約5%まで、約10%まで、約20%まで、約30%まで、約40%まで、約50%まで、約60%まで、約70%まで、約80%まで、約90%まで、約95%まで、又は約99%までp-エトキシ結合されうる。結合の残りの部分は、ホスホジエステル結合又はホスホロチオエート結合又はそれらの組合せでありうる。好ましい実施形態では、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合の50%~80%は p-エトキシ骨格結合であり、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合の20%~50%は、ホスホジエステル骨格結合である。
【0033】
各種IGF-1Rアンチセンス配列は、NOBEL配列のマルチモダリティー作用のいくつか又はすべてでバイオ活性である。18マーのNOBEL配列は、IGF-1Rレセプターダウンレギュレーション活性とさらにはTLRアゴニスト活性との両方を有し、マウスにおけるさらなる実験から、両方の活性がin vivo抗腫瘍免疫活性に必要であることが示唆される。AS ODN分子は抗腫瘍活性を有するが、相補的センス配列は、同様にCpGモチーフを有するにもかかわらずそうした活性を有していない。
【0034】
ある特定の実施形態では、アンチセンス配列は、表1に示される配列番号1~14からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アンチセンスは、配列番号1~14の1つ以上に対して90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、アンチセンスは、配列番号1~14の1つ以上に対して80%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、アンチセンスは、配列番号1~14の1つ以上に対して70%の配列同一性を有する。
【0035】
【表1】

ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、配列番号1~14のいずれか1つのヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、配列番号1~14のいずれか1つ又はそのフラグメントに対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、又は100%の同一性を有しうる。
【0036】
いくつかの実施形態では、アンチセンス分子は、細胞内でIGF-1R経路の下流の遺伝子の発現をダウンレギュレートする。ある特定の態様では、下流遺伝子はヘキソキナーゼ(HexII)である。いくつかの実施形態では、アンチセンス分子は、細胞内でハウスキーピング遺伝子の発現をダウンレギュレートする。いくつかの態様では、ハウスキーピング遺伝子はL13である。
【0037】
ある特定の態様では、IGF-1R AS ODNは、化学合成される。ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、固相有機合成により製造される。いくつかの態様では、IGF-1R AS ODNの合成は、フロースルー技術を用いて密閉ケミカルカラムリアクターを備えたシンセサイザーで行われる。いくつかの実施形態では、固体担体上の各合成サイクルシーケンスは、全長IGF-1R AS ODNが得られるまで逐次行われる複数のステップからなる。ある特定の実施形態では、IGF-1R AS
ODNは、液状形態で貯蔵される。他の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、貯蔵前に凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥IGF-1R AS ODNは、使用前に水に溶解される。他の実施形態では、凍結乾燥IGF-1R AS ODNは、使用前に有機溶媒に溶解される。さらに他の実施形態では、凍結乾燥IGF-1R AS ODNは、医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、医薬組成物は液状医薬組成物である。他の態様では、医薬組成物は固形医薬組成物である。追加のアンチセンス核酸は、米国特許出願公開第2017/0056430号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)にも記載されている。
【0038】
自己由来癌細胞ワクチン
緒言
免疫療法は、現在、1つの共通の細胞性抗原を用いて血液学的悪性腫瘍を標的とするように使用されている。残念ながら、固形腫瘍は、はるかに複雑であり、同定不能な数の腫瘍特異的標的を有して悪性状態への遺伝子変化のエピジェネティック進行を示す。さらに厄介なことに、WHO診断の癌群内には腫瘍表現型の顕著な変動が存在する。自己由来細胞ワクチンは、すべてのかかる変動及びすべてかかる標的を包含して固形腫瘍癌に理想的な対象特異的免疫療法になるであろう。しかしながら、自己由来癌細胞ワクチンは、連続継代により腫瘍表現型が変化して一連の腫瘍特異的抗原が減少するため、初代細胞培養から誘導することができない。このため、実現しがたいロットリリース認定が各継代で必要となるであろう。本開示は、図22に示されるように、新たに切除された細切腫瘍細胞をプレーティングして24時間以内にデポ抗原としてそれを再植込みすることにより、こうした懸念を排除する。ある特定の態様では、本明細書で達成される優れた結果は、本明細書に記載の具体例の中でもとくに、適切な数の細胞がチャンバー内に存在することを保証することにより得られる。
【0039】
従来の研究では、自己由来腫瘍細胞の代わりに抗原提示細胞を用いて自己由来細胞ワクチンを設計してきた。このパラダイムでは、治療前の血漿白血球分離(plasma leukopheresis)から対象の単球を集めて、ex vivoで自己由来樹状細胞(DC)に分化させる。次いで、対象の腫瘍粗ライセートに樹状細胞を提示してDC活性化/成熟を誘発し、より後の時点で、今度は腫瘍抗原でクロスプライミングされた成熟樹状細胞をDCワクチンとして対象に注射する。しかしながら、ex vivo分化は、in vivoでのみ生じるいくつかの主要な刺激性成分が欠けている。そのほか、造血前駆体からのDCの分化は、高価な設備で多くの労力を要する細胞処理を行う大規模なin vitro操作を必要とする。本開示は、内因的DC成熟プロセスと、適切な免疫反応の発生を促進する免疫モジュレート性及び免疫刺激性のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)と、を提供することにより、こうした懸念を回避する。より具体的には、本開示は、患者に由来する分散腫瘍細胞と照射アンチセンス分子とを含むバイオ拡散チャンバーを提供する。これは治療有効期間にわたり患者に植え込まれる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、照射腫瘍細胞とアンチセンスとバイオ拡散チャンバーとの組合せは、局所免疫反応をシミュレートするように協奏的に作用するとともに、M2細胞を低減又は排除して免疫系の減衰を防止することにより反応を増強すると考えられる。
【0040】
そのため、本開示は、新たに切除された腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとを含む照射植込み型バイオ拡散チャンバーが癌免疫療法に有効な対象特異的自己由来細胞ワクチンとして安全に機能することを示す。したがって、対象において腫瘍細胞を選択的に標的とする免疫反応を開始するための特許請求された植込み型バイオ拡散チャンバーの使用は、癌とくにGBMを治療するための新しい有意な方法を提供する。
【0041】
バイオ拡散チャンバー
代表的な拡散チャンバーは、第1の端部及び第2の端部の2つの端部を有するチャンバーバレルを含む。実施形態では、バイオ拡散チャンバーは、ミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)により製造されるデュロポア(Duropore)メンブレンなどの多孔性細胞不透過性メンブレンにより片側がキャップされた小リングである。任意選択的に、多孔性メンブレンを用いてシールするように1つの端部のみを開口した状態で残して、チャンバー本体の一部として端部の1つを密閉しうる。メンブレンは、強くて可撓性のある化学処理に耐えうるプラスチック、テフロン(登録商標)、ポリエステル、又はいずれかの不活性材料で作製可能である。チャンバーは、いずれかの物質、たとえば、限定されるものではないが、プラスチック、テフロン(登録商標)、ルーサイト、チタン、プレキシガラス、又はヒトに対して非毒性で耐容性が良好ないずれかの不活性材料で作製可能である。そのほか、チャンバーは、滅菌処理に耐えられるようにすべきである。いくつかの態様では、拡散チャンバーは、使用前にエチレンオキシドで滅菌される。他の好適なチャンバーは、2018年1月24日出願の米国仮特許出願第62/621,295号明細書、米国特許第6,541,036号明細書、PCT/US16/26970号パンフレット、及び米国特許第5,714,170号明細書(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0042】
ある特定の実施形態では、メンブレンは、低分子の通過を可能にするが、細胞の通過を可能にしない(すなわち、細胞は、チャンバーから出ることもそこに入ることもできない)。いくつかの態様では、メンブレンの細孔の直径は、チャンバーからの核酸及び他の化学物質(たとえば、細胞により産生されたサイトカインなど)の拡散を可能にし、チャンバーと植え込まれた対象との間の細胞の通過を不能にする。本開示に有用なバイオ拡散チャンバーは、チャンバーと植え込まれた対象との間の細胞の通過を不能にするいずれのチャンバーも含むが、ただし、チャンバーは、チャンバーと対象との間の因子の交換及び通過を可能にするものでなければならない。そのため、ある特定の態様では、細孔サイズは、チャンバーに出入りする100μm超の体積の物質の通過を防止するカットオフを有する。いくつかの実施形態では、メンブレンの細孔は、約0.25μm以下の直径を有する。たとえば、細孔は、約0.1μmの直径を有しうる(図1参照)。特定の態様では、細孔は、直径0.1μm~0.25μmの範囲内である。また、ランゲ(Lange)ら著、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)、1994年、第153巻、p.205~211、及びランザ(Lanza)ら著、トランスプランテーション(Transplantation)、1994年、第57巻、p.1371~1375(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。この細孔直径は、チャンバーに出入りする細胞の通過を防止する。ある特定の実施形態では、拡散チャンバーは、0.1μmの細孔サイズの親水性デュラポア(Durapore)メンブレン(ミリポア(Millipore)、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を有する14mmルーサイトリングから構築される。
【0043】
ある特定の実施形態では、バイオ拡散チャンバーは、IGF-1R AS ODNが拡散してチャンバーから送出されうるメンブレンを含む。いくつかの実施形態では、IGF-1R AS ODNの約50%は拡散して約12時間でチャンバーから送出され、IGF-1R AS ODNの約60%は拡散して約24時間でチャンバーから送出され、IGF-1R AS ODNの約80%は拡散して約48時間でチャンバーから送出され、且つ/又はIGF-1R AS ODNの約100%は拡散して約50時間でチャンバーから送出される。
【0044】
模範的方法では、バイオ拡散チャンバーをアセンブルするために、第1の多孔性メンブレンは、耐密シールを形成するように接着物質(glue)及び圧力を用いて第1の拡散チャンバーの片側に装着されている。第2の多孔性メンブレンは、第2の拡散チャンバーリングに同様に装着される。メンブレンは、より耐密なシールを同様に提供しうるゴムガスケットを用いて所定の位置に固定可能である。拡散チャンバーリングは、乾燥させるために一晩放置される(少なくとも8時間)。次いで、第1の拡散チャンバーリング及び第2の拡散チャンバーリングは、接着物質を用いて互いに装着され、そして乾燥させるために一晩放置される(少なくとも8時間)。好ましい実施形態では、第1のチャンバーリングと第2のチャンバーリングとの接合プロセスは、2つのリング間の接着を促進するために溶媒として2ジクロロエタンを使用することを含む。たとえば、2つの多孔性メンブレンを示す図22を参照されたい。代替法では、チャンバーは、多孔性メンブレンを含有する側を1つのみ有しうる。
【0045】
チャンバーのバレル部分には、チャンバーが植え込まれた後で対象の身体の外側からアクセスして拡散チャンバーに補充できるようにするキャップによりカバー可能な1つ以上の開口(たとえばポート)が提供される。開口は、汚染を伴うことなく且つ対象に害を加えることなく内容物の多数回の逐次サンプリングを可能にするので、対象で実施される植込み手順の回数を有意に低減する。患者への植込み前に、ボーンワックス、ポートプラグ、又はPMMAなどで作製されたキャップを用いて1つ以上の開口をシールしうる。キャップは、ネジ込み型のセルフシーリングゴムにして開口に取付け可能である。いくつかの構成では、拡散チャンバーは、2つ以上の注入開口又はポートを含有しうる。チャンバー内容物のサンプリングは、対象の身体の外側でキャップを取り外して通常の針及びシリンジを挿入するように開口にアクセスすることにより、実施可能である。いくつかの実施形態では、チャンバーは、取出しデバイスをさらに含みうる。かかるデバイスは、患者からのチャンバーの取出しを容易にする。
【0046】
実施形態では、チャンバーは、治療的宿主免疫反応を促進する目的で腫瘍抗原が拡散してチャンバーから送出されるように設計された抗原デポとして機能する。外因性IGF-1R AS ODN及びex vivo照射は、炎症誘発反応を促進する。この製剤は、臨床上及びラジオグラフィー上の改善、プロトコルによる長期生存に関連し、外因性活性医薬成分(API)と腫瘍免疫作用を誘発又は増強すると解釈される照射とを含む新規な自己由来細胞ワクチンとなる。さらに、低濃度のIGF-1R AS ODNの添加は、炎症誘発反応にきわめて重要である(図12)。
【0047】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)腫瘍細胞と(b)有効量のアンチセンス分子とを含む、癌に罹患している対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーを提供する。他の実施形態では、(a)腫瘍細胞と有効量のアンチセンス核酸とを含むバイオ拡散チャンバーを得ることと、(b)バイオ拡散チャンバー及び内容物に照射することと、(c)治療有効期間にわたり照射バイオ拡散チャンバーを対象に植え込むことと、を含む、対象において癌を治療する方法が提供される。
【0048】
ある特定の実施形態では、IGF-1R AS ODNは、約0.5μg~約10μgの範囲内の量でバイオ拡散チャンバー内に存在する。ある特定の態様では、IGF-1R
AS ODNは、約1μg~約5μg/チャンバー又は約2μg~4μg/チャンバーの範囲内の量で存在する。特定の態様では、IGF-1R AS ODNは、約2μg/チャンバーの量で存在する。特定の態様では、IGF-1R AS ODNは、約4μg/チャンバーの量で存在する。理論により拘束されるものではないが、これらのレベルは、対象においてM2免疫刺激反応を回避しつつ対象においてTh1反応増強を促進すると考えられる。
【0049】
ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、チャンバーへの封入前にIGF-1R AS ODNで処理されない。しかしながら、典型的には、腫瘍細胞は、チャンバーへの封入前にIGF-1R AS ODNで処理される。封入前に細胞を処理する時間は、さまざまでありうる。たとえば、腫瘍細胞は、最大約4時間、最大約6時間、最大約8時間、最大約12時間、又は最大約18時間にわたり、封入直前にex vivoでIGF-1R AS ODNを用いて処理しうる。典型的には、腫瘍組織は、約12時間~約18時間にわたり封入前にex vivoで処理しうる。便宜上、細胞は、一晩まで前処理を継続した後で封入しうる。理論により拘束されるものではないが、封入前の処理は、腫瘍抗原の刺激生成に望ましい役割を果たすと考えられる。
【0050】
封入前の処理に使用されるIGF-1R AS ODNの量は、約1mg~8mg/100万細胞、たとえば、約2mg~約6mg/100万細胞、約3mg~約5mg/100万細胞の範囲内でありうる。典型的には、封入前の処理に使用されるIGF-1R AS ODNの量は、約4mg/100万細胞である。
【0051】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞のex vivo処理のIGF-1R AS ODNは、少なくとも約2mg/ml~少なくとも約5mg/mlの範囲内の濃度で使用される。ある特定の態様では、IGF-1R AS ODNは、少なくとも4mg/mlの濃度で使用される。具体的な実施形態では、IGF-1R AS ODNは、4mg/mlの濃度で使用される。
【0052】
ある特定の実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODN及びチャンバーに存在するIGF-1R AS ODNは、同一である。他の実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODN及びチャンバーに存在するIGF-1R AS ODNは、異なる。ある特定の実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、又は少なくとも約50ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、約15ヌクレオチド~約22ヌクレオチドの長さである。ある特定の態様では、腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、約18ヌクレオチドの長さである。
【0053】
ある特定の実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、18℃では二次構造を形成するが、約37℃では二次構造を形成しない。他の実施形態では、腫瘍細胞を治療するために使用されるIGF-1R AS ODNは、約18℃でも約37℃でも二次構造を形成しない。さらに他の実施形態では、ex vivoで腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、いずれの温度でも二次構造を形成しない。他の実施形態では、腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、37℃で二次構造を形成しない。特定の実施形態では、二次構造は、ヘアピンループ構造である。
【0054】
いくつかの態様では、腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、配列番号1のヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、配列番号1又はそのフラグメントに対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、又は100%の同一性を有しうる。ある特定の態様では、腫瘍細胞を処理するために使用されるIGF-1R AS ODNは、配列番号1である。
【0055】
ある時間にわたり腫瘍細胞をAS-ODNで処理した後、AS-ODNを除去して新たなAS-ODNをチャンバーに添加し、次いで、対象への植込み前に照射する。ある特定の態様では、バイオ拡散チャンバーは、約1Gy、約2Gy、約4Gy、約5Gy、約6Gy、約10Gy、又は最大約15Gyの量でγ線照射により処理される。ある特定の態様では、照射線量は約5Gy以下である。他の態様では、照射線量は少なくとも約5Gyである。いくつかの態様では、照射線量は5Gyである。ある特定の実施形態では、バイオ拡散チャンバーは、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、又は少なくとも5回照射しうる。いくつかの実施形態では、チャンバーは、対象への植込み前に約24時間未満で照射される。他の実施形態では、チャンバーは、対象への植込み前に約24時間照射される。さらに他の実施形態では、チャンバーは、対象への植込み前に少なくとも約24時間照射される。さらに他の実施形態では、チャンバーは、対象への植込み前に約48時間以下で照射される。さらに他の実施形態では、チャンバーは、対象への植込み前に少なくとも約48時間照射される。
【0056】
腫瘍細胞は、典型的には、植込み前に照射などにより死滅させるが、細胞を死滅させる必要はなく、実際には、抗原の放出を促進するために細胞を生存状態で維持することが有利なこともある。そのため、ある特定の実施形態では、植込み前に細胞に照射しないこともある。しかしながら、安全上の目的で、対象への腫瘍生細胞の放出を防止することが望ましい。
【0057】
腫瘍細胞は、さまざまな数で拡散チャンバーに配置可能である。ある特定の実施形態では、約1×10~約5×10腫瘍細胞が各拡散チャンバーに配置される。他の実施形態では、約1×10~約1.5×10腫瘍細胞が拡散チャンバーに配置される。さらに他の実施形態では、約5×10~1×10腫瘍細胞がチャンバーに配置される。対象を有することは使用しうる。我々は、腫瘍細胞の数が対象の抗腫瘍反応に影響を及ぼしうること及び所望の結果を得る機会を増加させるために適切な範囲を選択すべきであることを発見した。図28は、20個のチャンバーが植え込まれた患者のデータを示し、免疫反応に対応する細胞収量(何百万もの細胞)を示す。抗腫瘍免疫反応は、1つのチャンバーに約750,000~約1,250,000細胞の範囲内が最適であり、約100万細胞/チャンバーにピークを有する。照射腫瘍細胞を含有する複数のチャンバーが投与され、最適免疫反応を維持するために、細胞数/チャンバーは好ましくはその範囲内に維持される。好ましくは、腫瘍細胞はインタクトであり、本明細書に記載されるように自己分解したり損傷したりもしない。
【0058】
ある特定の実施形態では、チャンバー内の細胞とAS ODNとの比を維持することが好ましいこともある。そのため、ある特定の態様では、チャンバーは、約2μgのAS ODNと、750,000~1,250,000細胞たとえば1,000,000細胞と、を含有しうる。そのため、細胞とAS ODNとの比は、約3.75×10~約6.25×10/μg AS ODNの範囲内、たとえば、約5.0×10細胞/μgでありうる。そのため、20個のチャンバーを収容する典型的患者では、AS ODNの全用量は約40μgである。
【0059】
典型的には、投与は、本明細書に記載されるようにチャンバーで行われるであろうが、ある特定の態様では、照射細胞及びIGF-1R AS ODNは、チャンバーや他の容器に物理的に一緒に閉じ込めることなく対象に共投与しうる。そのため、この方式を用いるある特定の方法では、照射細胞及びIGF-1R AS ODNは、対象の生理機能により制限される体内で、分散、拡散、又は代謝される。そのため、ある特定の態様では、たとえば、使用に供される腫瘍細胞は、チャンバー用として本明細書に記載したように調製してIGF-1R AS ODNと共に投与しうるが、投与は、物理的容器内に閉じ込めなくてもよい。かかる投与は、典型的には筋肉内である。
【0060】
チャンバー用腫瘍組織調製物
自己由来ワクチン接種に使用される腫瘍細胞は、対象から外科的に取り出される。実施形態では、腫瘍細胞は、組織モルセレータを用いて患者から取り出される。抽出デバイスは、好ましくは、静置外側カニューレ内の高速往復内側カニューレと電子制御可変吸引とを組み合わせる。外側カニューレは、1.1mm、1.9mm、2.5mm、又は3.0mmの直径と、10cm、13cm、又は25cmの長さと、を有する。装置はまた、サイドマウスカッティングとブラントデシケーター端部から0.6mmに位置するアスピレーションアパーチャとに依拠する。除去される組織内へのアパーチャの弱い前進圧力と吸引との組合せによりサイドアパーチャ内に所望の組織を引き込んで、内側カニューレの往復カッティング動作を介して制御された正確な組織切除を可能にする。重要な特徴は、回転ブレードが存在しないことであり、これにより、意図されない組織がアパーチャに引き込まれないようにする。好適なデバイスの例は、ミリアド(Myriad)(登録商標)組織アスピレータ(ニコ・コーポレーション(NICO Corporation)(登録商標)、インディアナポリス、インディアナ州)であり、これは直接的、微視的、又は内視鏡的な可視化を併用して軟組織の取出しに使用しうる侵襲を最小限に抑えた外科システムである。剃毛組織を吸引し、採取チャンバーに収集し、そして無菌組織トラップに採取する。無菌組織トラップへの組織の採取時、血液は調製物から除去される。好ましくは、無菌トラップは、トラップの底部の採取ディッシュと、トラップへのアクセスを提供するステムと、を含有する。トラップ構造はまた、トラップからの組織の取出しを容易にするためにトラップから取出し可能な内側レードル形構造を含有しうる。
【0061】
好ましくは、モルセレータは、切除部位でもそのシャフトに沿っても熱を発生することがなく、組織取出しのために超音波エネルギーを必要としない。そのため、特定の実施形態では、腫瘍組織は、細切腫瘍組織(すなわち、熱の不在下で且つ任意選択的に超音波処理の不在下でサイドマウスカッティングにより得られた腫瘍剃毛組織)である。有利には、アスピレータ抽出物及び細切組織は、他の方法により取り出された組織よりも高い生存能を有する。抽出プロセスは、部分的には取出し時に高温への腫瘍細胞の暴露が制限されるため、より高い腫瘍細胞生存能を維持すると考えられる。たとえば、本明細書の方法は、取出し時に25℃超に腫瘍細胞を暴露しない。そのため、細胞は、体温すなわち約37℃を超える温度に暴露されない。
【0062】
対象から得られる腫瘍組織の量は、さまざまでありうる。好ましくは、量は、患者から得られる湿潤腫瘍組織換算で少なくとも1グラム、少なくとも2グラム、少なくとも3グラム、又は少なくとも4グラムである。組織は、無菌組織トラップから取り出され、大きな組織片を破壊するために無菌ピペットを用いてピペッティングすることにより脱凝集される。次いで、脱凝集された細胞懸濁物は、無菌組織培養プレート上の血清含有媒体中に配置され、組織培養インキュベーターでインキュベートされる。このプレーティングステップは、接着により所望の機能細胞を富化するように機能し、調製物からデブリを除去するのに役立つ。そのため、本明細書に記載の治療に使用される腫瘍細胞は、好ましくは、腫瘍組織由来の接着細胞から本質的になるか又はそれからなる。
【0063】
あらかじめ決められたインキュベーション時間後(たとえば、6、12、24、又は48時間後)、細胞はプレートから取り出される。細胞は、擦取により、化学的方法(たとえばEDTA)により、又は酵素処理(たとえばトリプシン)により、取り出しうる。細胞は、1つ以上の拡散チャンバーに配置される。いくつかの実施形態では、細胞は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又はそれ以上の拡散チャンバーに分割される。多くの場合、20個のチャンバーが使用される。いくつかの実施形態では、各拡散チャンバーは、等しい細胞数を含有する。いくつかの実施形態では、第1の拡散チャンバーは、第2のチャンバーよりも多くの細胞を含有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞は、チャンバー内に配置される前に選別される。いくつかの実施形態では、細胞は、チャンバー内に配置される前に1つ以上の細胞マーカに関して選択することにより富化される。選択は、たとえば、ビーズを用いて又は当業者に公知の細胞選別技術により実施しうる。いくつかの実施形態では、チャンバー内に配置された細胞は、1つ以上のマーカに関して富化される。
【0065】
いくつかの実施形態では、治療有効期間にわたるバイオ拡散チャンバーの植込みは、対象において癌の再発を低減又は排除する。ある特定の態様では、バイオ拡散チャンバーの植込みは、対象において癌に関連する腫瘍体積の低減を引き起こす。さらに他の実施形態では、治療有効期間にわたるバイオ拡散チャンバーの植込みは、対象において腫瘍の排除を誘発する。いくつかの実施形態では、チャンバーの植込みは、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも36ヶ月間にわたり、又は無期限に腫瘍の再成長を阻害する。
【0066】
バイオ拡散チャンバーは、次のように、すなわち、対象の皮下、腹腔内、及び頭蓋内に、植込み可能であるが、これらに限定されるものではない。ある特定の実施形態では、拡散チャンバーは、良好なリンパ液排出及び/又は血管供給を有する身体の受容部位、たとえば、腹直筋鞘に植え込まれる。他の実施形態では、治療後に拡散チャンバーを空にして治療に再使用できるように、補充可能なチャンバーを利用しうる。ある特定の態様では、複数、好ましくは5~20の拡散チャンバーを単一対象で使用可能である。
【0067】
ある特定の実施形態では、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、又は少なくとも約50のチャンバーが対象に植え込まれる。いくつかの実施形態では、10~20個のチャンバーが対象に植え込まれる。好ましくは、約20個のチャンバーが対象に植え込まれる。ある特定の実施形態では、腫瘍細胞は、各チャンバーに等しく分配される。
【0068】
典型的には、チャンバーは、ある時間後に取り出される。たとえば、チャンバーは、約24時間、約48時間、約72時間、又は約、96時間にわたり対象に植え込みうる。約48時間にわたる植込みは、有益な治療アウトカムに関連する。したがって、好ましい植込み時間は約48時間である。ある特定の実施形態では、ワクチン接種手順は、1回/患者で実施される。他の実施形態では、ワクチン接種手順は、複数回/患者で実施される。実施形態では、ワクチン接種手順は、単一患者で2回、3回、4回、5回、6回、7回、又は8回実施される。実施形態では、ワクチン接種は、所与の期間にわたり7日ごと、14日ごと、28日ごと、又は1ヶ月ごと、3ヶ月ごと、又は6ヶ月ごとに繰り返される。さらなる実施形態では、ワクチン接種手順は、患者の癌がなくなるまで定期的に繰り返される。
【0069】
理論により拘束されるものではないが、バイオ拡散チャンバーの植込みは、チャンバーから拡散して送出された腫瘍抗原に対する免疫反応が達成されるように植込み部位又はその近傍でM2細胞の排除又は低減を引き起こすと考えられる。ある特定の態様では、植込み部位におけるM2細胞の排除又は低減は、CD4 T細胞への抗原提示細胞(APC)による自己由来腫瘍抗原の提示増強をもたらし、インターフェロンγ(IFNγ)の産生及び1型腫瘍免疫の誘導をもたらす。ある特定の態様では、腫瘍抗原特異的CD4 T細胞によるIFNγの産生及びIGF-1R AS ODNの抗M2効果は、1型抗腫瘍免疫並びに循環系及び腫瘍マイクロ環境からの抗炎症性M2細胞の減少を駆動し、腫瘍成長を間接的に妨害する。いくつかの態様では、腫瘍抗原特異的CD4 T細胞によるIFNγの産生及びIGF-1R AS ODNの抗M2効果は、腫瘍細胞及び腫瘍マイクロ環境(M2細胞)に対するエフェクター媒介損傷の抑制を解いて、腫瘍抗原を認識するメモリーT細胞をプログラムするより長いプロセスを開始する。ある特定の実施形態では、抗腫瘍適応免疫反応は、腫瘍退縮の継続を維持する。
【0070】
任意選択的に、チャンバーに導入される細胞は、ある特定の細胞型が富化されうる。細胞骨格関連クラスVI中間径フィラメント(IF)タンパク質のネスチンは、神経幹細胞マーカとしてのその重要性が従来から有名である。我々は、ある特定の脳腫瘍サンプルでネスチン陽性細胞(ネスチン+細胞)が良性組織と比較して富化されること及びこの関連物質が治療反応の改善に対応することを発見した。そのため、ある特定の態様では、ネスチン発現の程度を評価するように対象の腫瘍の生検を行うことが可能であり、したがって、ある特定の態様では、チャンバー細胞は、良性組織と比較してネスチン陽性(「+」)細胞が富化される。理論により拘束されるものではないが、ネスチンは、抗腫瘍免疫反応を起こすのに有用な好適な抗原に関連するマーカを提供すると考えられる。したがって、チャンバーに植え込まれる細胞は、対象から抽出したとき全体として腫瘍細胞集団と比較してネスチン+細胞が富化されうる。図30は、ネスチンが富化された腫瘍サンプルを反応の刺激に使用したときに得られた免疫反応の増強を例示する。
【0071】
全身投与
チャンバーの植込みの代わりとして又は補足として、IGF-1R AS ODNは、全身投与しうる。そのため、実施形態では、IGF-1R AS ODNは、全身投与用医薬組成物で提供される。IGF-1R AS ODNのほか、医薬組成物は、たとえば生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を含みうる。組成物はリン脂質を含みうる。いくつかの態様では、リン脂質は、生理学的pHで非荷電であるか又は中性電荷を有する。いくつかの態様では、リン脂質は中性リン脂質である。ある特定の態様では、中性リン脂質はホスファチジルコリンである。ある特定の態様では、中性リン脂質はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)である。いくつかの態様では、リン脂質は本質的にコレステロールフリーである。
【0072】
いくつかの態様では、リン脂質及びオリゴヌクレオチドは、約5:1~約100:1のモル比又はそれから演繹しうるいずれかの比で存在する。各種態様では、リン脂質及びオリゴヌクレオチドは、約5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、又は100:1のモル比で存在する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチド及びリン脂質は、オリゴヌクレオチド-脂質複合体たとえばリポソーム複合体などを形成する。いくつかの態様では、リポソームの少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%は、5ミクロン未満の直径である。各種態様では、組成物は、少なくとも1種の界面活性剤たとえばポリソルベート20などをさらに含む。いくつかの態様では、全リポソームアンチセンス製剤の少なくとも約5%は界面活性剤からなり、且つリポソームの少なくとも約90%は5ミクロン未満の直径である。いくつかの態様では、全リポソームアンチセンス製剤の少なくとも約15%は界面活性剤からなり、且つリポソームの少なくとも約90%は3ミクロン未満の直径である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの集団はリポソームの集団に組み込まれる。
【0073】
いくつかの態様では、医薬組成物は液状医薬組成物である。他の態様では、医薬組成物は固形医薬組成物である。
ヒト対象におけるアンチセンスの全身投与の投与量は、約0.025g/kg、約0.05g/kg、約0.1g/kg、約0.15g/kg、又は約0.2g/kgでありうる。ある特定の実施形態では、全身投与の投与量は、0.025g/kg~0.2 g/kgでありうる。いくつかの実施形態では、投与量は約0.2g/kgである。他の実施形態では、投与量は0.004g/kg~0.01g/kgである。他の実施形態では、投与量は0.01g/kg未満である。さらなる実施形態では、投与量は0.01g/kg~0.2g/kgではない。ある特定の態様では、アンチセンスは凍結乾燥粉末として供給され、投与前に再懸濁される。再懸濁されある場合、アンチセンスの濃度は、約50mg/ml、約100mg/ml、約200mg/ml、約500mg/ml、約1000mg/ml、又はそれらの量の間の範囲でありうる。
【0074】
ある特定の実施形態では、AS ODNは、たとえば、術前に腫瘍負荷を低減するために、術前に全身投与しうる。たとえば、AS ODNは、術前24時間まで、36時間まで、48時間まで、又は72時間までに投与しうる。特定の態様では、医薬組成物は、術前約48~約72時間で投与しうる。典型的には、かかる状況では、投与は静脈内ボーラスによる。
【0075】
組合せ療法
歴史的には、癌療法は、放射線療法、化学療法、又はその両方を併用して対象を治療することを含むものである。かかる方法の取組みは、数多く報告されている。しかしながら、有利には、本明細書に開示されるチャンバー植込み方法は、癌を有する対象を単独療法として治療するために使用しうる。そのため、本明細書に開示される方法は化学療法も放射線療法も含まないことが好ましい。しかしながら、本明細書の単独療法により達成される優れた効果にもかかわらず、ある特定の状況下では、チャンバー法を他の療法たとえば放射線療法と組み合わせることが有益なこともある。ある特定の実施形態では、放射線療法としては、限定されるものではないが、内部線源放射線療法、外部ビーム放射線療法、及び全身放射性同位体放射線療法が挙げられる。ある特定の態様では、放射線療法は外部ビーム放射線療法である。いくつかの実施形態では、外部ビーム放射線療法としては、限定されるものではないが、γ線療法、X線療法、強度変調放射線療法(IGRT)、及び画像誘導放射線療法(IGRT)が挙げられる。ある特定の実施形態では、外部ビーム放射線療法はγ線療法である。照射は、チャンバー植込み前又は植込み後にたとえばサルベージ療法として施しうる。典型的には、かかるサルベージ療法は、癌が再発したと判定されるまで実施されない。
【0076】
そのため、ある特定の組合せ法では、本明細書に記載のチャンバー法及び全身法及び組成物はいずれも、単独で又は放射線療法若しくは化学療法との組合せで同一対象において使用しうる。本明細書に記載の組合せ法では、チャンバー植込みは、好ましくは第一選択の療法として使用される。対象の免疫系は、他の療法により阻害されてチャンバー植込みの治療効果を低減する可能性があるので、最初にチャンバー植込みを使用することが望ましい。
【0077】
任意選択的に、チャンバー植込み前に全身投与を実施しうる。かかる方法は、プライミング法として対象免疫系を増強するために使用可能である。プライミング法は、先行療法の結果として対象の免疫系が損なわれた場合にとりわけ有利でありうる。
【0078】
全身投与を組合せで使用する場合、AS ODNは、自己由来癌細胞ワクチンを用いた患者の治療の少なくとも2週間前、少なくとも1週間前、少なくとも3日間前、又は少なくとも1日前に全身投与しうる。他の実施形態では、AS ODNは、自己由来癌細胞ワクチンすなわちチャンバーを用いた患者の治療の少なくとも1日後、少なくとも3日後、少なくとも1週間後、又は少なくとも2週間後に全身投与しうる。
【0079】
任意選択的に、対象は、1回目のワクチン接種後に記載の方法を用いてチャンバーにより再ワクチン接種しうる。2回目以降の追加のワクチン接種では、組織取出し時に対象から採取して貯蔵した腫瘍細胞を使用しうる。任意選択的に、2回目以降の追加のワクチン接種では、対象から取り出して本明細書に記載されるように処理した新たな腫瘍組織を使用しうる。対象に残留するいずれの腫瘍も、同一抗原を発現しうるので、デポ剤として作用して再刺激を提供しうる。しかしながら、再発腫瘍は、新たな抗原を発生しうるので、抗腫瘍反応を刺激する追加の選択肢を提供しうる。後続のワクチン接種は、1回目の治療が終了し且つ腫瘍が再発した後又は対象が1回目の治療に反応しなくなった場合でありうる。
【0080】
IGF-1R AS ODNで治療される対象
好適な対象は、癌を有する動物であり、典型的には、対象はヒトである。膠芽細胞腫などの脳癌は本明細書に開示される方法がとくに奏効するが、本方法は癌一般に適用される。したがって、本開示は、神経膠腫、星状細胞腫、肝癌、乳癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆嚢癌、古典的ホジキンリンパ腫、食道癌、子宮癌、直腸癌、甲状腺癌、黒色腫、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、及び膵癌からなる群から選択されるものを含めて癌の治療方法を提供する。具体的な実施形態では、癌は神経膠腫である。ある特定の態様では、神経膠腫は再発悪性神経膠腫である。いくつかの実施形態では、癌は星状細胞腫である。ある特定の実施形態では、治療の候補となる対象は、WHOグレードII、WHOグレードIII、又はWHOグレードIVの腫瘍に罹患している。いくつかの態様では、腫瘍は星状細胞腫である。ある特定の実施形態では、腫瘍は、グレードII星状細胞腫、AIII(IDH1 R132H突然変異グレードIII星状細胞腫)、AIII-G(多形膠芽細胞腫の星状細胞腫の特性を有するIDH1野生型グレードIII)、又はグレードIV星状細胞腫から選択される。
【0081】
グレードIV星状細胞腫は、最高グレード神経膠腫であり、膠芽細胞腫(GBM)と同義である。3又は4/100,000の年間発生率で、GBMは成人において最も一般的な悪性原発脳腫瘍である。標準ケア療法(典型的には、放射線療法とテモゾロミドを用いた化学療法との組合せ)は十分に機能せず、GBM患者のアウトカムは依然として不良であり、メジアン寿命予想値は15~17ヶ月である。有利には、本明細書の方法は、新たに診断された脳癌を治療するために使用しうるとともに、たとえば標準ケア療法で以前に治療された患者で再発膠芽細胞腫を治療するためにも使用しうる。そのため、ある特定の態様では、対象は、新たに診断されたGBM対象又は再発GBM対象でありうる。対象は、好ましくは、免疫抑制的ないずれの治療法でも以前に治療されていない者である。特定の態様では、適格対象は、18歳超の年齢であり、且つ60以上のカルノフスキースコアを有する。任意選択的に、対象は、両半球疾患を有しておらず、且つ/又は自己免疫疾患を有していない。
【0082】
任意選択的に、治療の候補となる対象は、対象で腫瘍生検を実施することによる同定しうる。いくつかの実施形態では、単球の存在に関して対象の腫瘍がアッセイされる。ある特定の態様では、単球としては、限定されるものではないが、CD11b+、CD14+、CD15+、CD23+、CD64+、CD68+、CD163+、CD204+、又はCD206+の単球が挙げられる。腫瘍における単球の存在は、免疫組織化学を用いてアッセイしうる。ある特定の実施形態では、治療の候補となる対象は、対象の全末梢血単核細胞(PBMC)の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%を超えるCD163+M2細胞を示す。ある特定の態様では、対象は、対象の全PBMCの約20%を超えるCD163+M2細胞を示す。
【0083】
さらに他の実施形態では、治療の候補となる対象は、対象の血清中の1種以上のサイトカインの存在により同定される。こうしたサイトカインとしては、限定されるものではないが、CXCL5、CXCL6、及びCXCL7、IL6、IL7、IL8、IL10、IL11、IFN-γ、並びにHSP-70が挙げられる。
【0084】
さらに他の実施形態では、治療の候補となる対象は、対象の血清中の1種以上の成長因子の存在により同定される。こうした成長因子としては、限定されるものではないが、FGF-2、G-CSF、GM-CSF、及びM-CSFが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、バイオ拡散チャンバーによる治療の候補となる対象は、サイトカインの特定のセットのレベルを測定することにより同定される。いくつかの実施形態では、対象は、健常対象と比較してこれらのサイトカインのレベルの上昇を有する。本明細書で用いられる場合、「健常対象」という用語は、癌やいずれの他の疾患にも罹患していない且つバイオ拡散チャンバーによる治療を必要としない対象を意味する。
【0086】
特定の実施形態では、サイトカインは、抗腫瘍免疫反応を補うためにチャンバーに添加しうる。たとえば、チャンバーに添加されるサイトカインは、CCL19、CCL20、CCL21、及びCXCL12及びそれらの組合せからなる群から選択しうる。
【0087】
ある特定の実施形態では、循環CD14+単球は、健常対象と比較して上昇したCD163レベルを有する。いくつかの態様では、循環CD14+単球上のCD163レベルは、健常対象と比較して、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、又は少なくとも約100倍に上昇する。特定の実施形態では、循環CD14+単球上のCD163レベルは、健常対象と比較して約2倍に上昇する。
【0088】
他の実施形態では、治療の候補となる対象は、M2細胞の方向に未分化単球を分極化する血清を有する。ある特定の態様では、未分化単球を併用した対象の血清のインキュベーションは、限定されるものではないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、及び/又はCD206をはじめとする単球上の1種以上の細胞表面マーカの発現を誘発する。他の態様では、未分化単球を併用した対象の血清のインキュベーションは、対象の血清を併用してインキュベートされない単球と比較して単球上の1種以上の細胞表面マーカの発現を上昇させる。ある特定の態様では、細胞表面マーカとしては、限定されるものではないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、及び/又はCD206が挙げられる。いくつかの態様では、1種以上の表面マーカのレベルは、対象の血清を併用してインキュベートされない未分化単球と比較して、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、又は少なくとも約100倍に上昇する。特定の実施形態では、1種以上の表面マーカのレベルは、対象の血清を併用してインキュベートされない未分化単球と比較して約2倍に上昇する。対象の血清により分極化された単球は、FACSを用いて測定しうる。
【0089】
標的細胞
理論により拘束されるものではないが、AS ODNは、IGF-1R発現をダウンレギュレートすることにより、対象のM2細胞の低減及び/又はM2細胞への細胞の分極化の阻害を行うと考えられる。いくつかの実施形態では、M2細胞におけるIGF-1R発現は、アンチセンスで処理されていない細胞と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%ダウンレギュレートされる。M2細胞におけるIGF-1R発現は、定量RT-PCRにより測定しうる。
【0090】
いくつかの実施形態では、M2細胞におけるIGF-1R発現は、アンチセンスの単回投与を受けた後、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、又は少なくとも約6週間にわたり、対象においてダウンレギュレートされた状態を維持する。
【0091】
いくつかの態様では、M2細胞におけるIGF-1Rの発現のダウンレギュレーションは、IGF-1Rを発現しない細胞と比較して対象のM2細胞の選択的低減を引き起こす。ある特定の実施形態では、対象のM2細胞は、アンチセンスで治療されていない対象と比較して、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%低減される。他の実施形態では、M2細胞集団は排除される。たとえば、バイオ拡散チャンバーの植込み後、M2細胞集団は、バイオ拡散チャンバーの植込み前の集団の約1%、約2%、約5%、又は約10%でありうる。対象のM2細胞は、FACSを用いて測定しうる。ある特定の態様では、治療後、M2細胞は排除される。すなわち、FACSにより検出不能である。他の態様では、M2細胞の減少は、プロキシアッセイを用いて測定しうる。たとえば、処理の前後で対象から血清を得てM2細胞に分極化するその能力を評価しうる。本明細書に開示される方法で処理した後、M2細胞に分極化する血清の能力は、約80%~約100%、約20%~約60%、又は約10%~約50%低減される。
【0092】
いくつかの実施形態では、M2細胞におけるIGF-1Rの発現を標的としてM2細胞に細胞死を引き起こす。ある特定の実施形態では、細胞死は壊死である。他の実施形態では、細胞死はアポトーシスである。アポトーシスは、本開示の目的では、プログラム細胞死として定義され、限定されるものではないが、原発腫瘍及び転移腫瘍の退縮を含む。アポトーシスは、膨大な数の生理学的及び病理学的プロセスにおいてきわめて重要な役割を果たす広範にわたる現象であるプログラム細胞死である。壊死は、これとは対照的に、さまざまな有害条件及び毒性物質に対する細胞の反応である偶発的細胞死である。さらに他の実施形態では、M2細胞におけるIGF-1Rの発現を標的としてM2細胞に細胞周期停止を引き起こす。
【0093】
キット
完成チャンバーの作製には、複数のコンポーネント及び複数のステップが必要とされる。本開示の他の一態様では、本明細書に開示される方法を実施するためのコンポーネントを含有するキットが提供される。ある特定の態様では、キットは、一方の部分又は2つの半体に存在しうるチャンバー本体を含む。また、1つ以上のメンブレン、接着物質、及び溶媒(たとえば、アルコール又は2ジクロロエタン)を含めて、チャンバーをシールするアイテムも含まれうる。任意選択的に、メンブレンは、シールを形成するようにチャンバーに超音波溶接しうる。キットはアンチセンスODNを含む。任意選択的に、ODNは2つの部分に分配しうる。対象から外科的に取り出した後で細胞を処理するための第1の部分及び対象に導入する時に細胞と組み合わせるための第2の部分。他の任意選択的キットアイテムとしては、細胞を培養するための培地及び培地における細菌成長を防止するための抗生物質が挙げられる。
【0094】
任意選択的に、キットのチャンバーは、アイレット又はチャンバーに装着されて接続材料を受け取るように適合化された他のデバイスを用いて、互いにあらかじめ接続しうる(たとえば、縫合糸により)。有利には、複数のチャンバーをあらかじめ接続することにより、外科医により所望の数のチャンバーを容易に導入したり取り出したりしうる。
【実施例0095】
実施例1
再発膠芽細胞腫を有する患者における自己由来腫瘍細胞及びIGF-1R AS ODNによるワクチン接種
判定基準及び研究目的
標準的療法に失敗した後の12名の対象を治療のために登録した。各患者は、次の判定基準:年齢>18歳、60又はそれよりも良好なカルノフスキーパフォーマンススコア、且つ、待機的外科的再切除を妨げる併存症がないことを満たした。対象は、腫瘍免疫を刺激する目的で照射自己由来腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとを含有する10個のバイオ拡散チャンバーを腹直筋鞘に24時間植え込むことにより治療した。臨床上及びラジオグラフィー上の安全性さらには免疫反応に関して患者をモニターした。研究目的には、安全性及びラジオグラフィー反応の評価さらには免疫機能及び免疫反応を調べる探索目的が含まれていた。
【0096】
【表2】

実験プロトコル
組織アスピレータ(ニコ・ミリアド(NICO Myriad)(登録商標))を用いて患者から腫瘍組織を外科的に取り出して無菌組織トラップに配置した。指定BSL-2設備に無菌組織トラップを移し、そこで腫瘍組織を処理してバイオ拡散チャンバーに配置した。植込み前にバイオ拡散チャンバーに照射した。
【0097】
腫瘍組織を取り出す手術の翌日、10個の照射バイオ拡散チャンバーを対象の腹直筋鞘に植え込んだ。24時間後、それらは取り出した。
バイオ拡散チャンバーは、術時に取り出した自己由来腫瘍細胞を含有していた。バイオ拡散チャンバーに添加する前、配列5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’(NOBEL)を有する第1の量(4mg/ml)の18マーIGF-1R AS ODNで細胞を一晩(約12~18時間)前処理した。AS ODNが免疫モジュレート性を有することを示すデータに基づいて、第2の量(2μg)の外因性NOBELアンチセンスをチャンバーに添加し(C-v)、続いてチャンバーに照射した。各患者に10個のチャンバーを植え込んだ。PBSを含有する11番目の対照チャンバー(C-p)も植え込んだ。
【0098】
放射線学的評価
フィリップス(Philips)1.5T及び3T MRIスキャナー及びGE 1.5T MRIスキャナーを用いて、逐次イメージング評価を実施した。12名の全患者においてルーチン解剖学的MRI特性を2名の神経放射線科医により評価した。動的磁化率強調(DSC)MR灌流及び15方向拡散テンソルイメージング(DTI)の生理学的MRI技術も利用した。オンノルディック・アイス(Nordic Ice)ワークステーション(バージョン2.3.14)でMR灌流及びDTI後処理を実施した。対側正常白質と対比してrCBVを計算した。DTIデータから平均拡散係数(平均拡散率)を計算した。
【0099】
免疫学的評価
免疫機能のベースラインを評価するために、術前1週間で血漿白血球分離を実施した。術後7、14、28、42、56日目及びワクチン接種後3ヶ月ごとに血液を得た。遠心分離により血清画分と細胞画分とを分離し、赤血球溶解緩衝液で細胞を処理した。フローサイトメトリーにより白血球を定量するか又は-80℃のDMSO中に貯蔵するかのどちらかを行った。血清試料も-80℃で貯蔵した。イージーサイト8HT(EasyCyte 8HT)(ミリポア(Millipore))と、ヒトCD4、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20、CD45、CD56、CD80、CD83、及びCD86(すべてBDバイオサイエンシズ(BD Biosciences)製)並びにCD163(R&Dシステムズ(R&D Systems))に特異的な蛍光コンジュゲートmAbと、を用いて、フローサイトメトリーを実施した。フロージョー(FlowJo)ソフトウェア(ツリー・スター・インコーポレーテッド(Tree Star Inc)、アシュランド、オレゴン州)を用いて、採取後分析を実施した。ルミネックス(Luminex)ビーズアレイ(ミリポア(Millipore)製のヒトサイトカイン/ケモカインパネルI、II、及びIII)と、HCMBMAG/ MILLIPLEX Magキャンサーマルチプレックスアッセイ(emdmillipore.com)と、を用いて、血清中サイトカイン因子を定量した。これはDKK-1、NSE、オステオネクチン、ペリオスチン、YKL-40、及びTWEAKを含めて幹細胞機能に関連する神経膠腫に対する6種の血清中マーカを含んでいた。グリース(Greiss)法(グリーンL.C.(Green L.C.)ら著、1982年、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal Biochem)、第126巻、p.131-8)に従って、血清中ニトレートレベルをアッセイした。すでに記載されているように、ホルボール12-ミリステート,13アセテート(PMA)とイオノマイシンとを用いてT細胞刺激を実施した(フェアブルッヘ,I.(Verbrugge,I.)ら著、2012年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、第72巻、p.3163~74)。
【0100】
以上に示されたルミネックス(Luminex)キットにより、腫瘍細胞上清(SN)中及び外植チャンバー内容物中のサイトカイン/ケモカインレベルを分析した。標準的免疫組織病理学的検査のために、対をなすワクチンチャンバー及び対照チャンバーのメンブレンをパラフィンに包埋した。
【0101】
GFAP(グリア線維性酸性タンパク質)、IGF-1R、CD163、CD14、vWF(フォンウィルブランド因子)、CD4、及びCD8に対する免疫組織化学又はエモト,K.(Emoto,K.)ら著、2005年、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Histochem Cytochem)、第53巻、p.1311~21に記載の方法に適合する蛍光免疫組織化学により、腫瘍組織セクションを評価した。低、中、及び強と等級付けされる染色強度及び限局的又は瀰漫的として記述される染色パターンと共に0(染色なし)~6(強い拡散染色)の順序尺度を用いて、アペリオ(Aperio)により定量的に又は経験を積んだ神経病理学者(LCK)により定性的に、免疫陽性細胞を計数した。死後の剖検は、脳の検査に限定し、知見は、剖検時に診断された処理済み又は未処理の膠芽細胞腫のアーカイブパラフィンブロックと比較した。ナイーブ単球のカノニカルin vitro分極化又は登録時のトライアル対象に由来する血清と共に共インキュベートされたナイーブ単球を含む混合実験は両方とも、すでに記載されているように実施した(ハーシャイン,LA(Harshyne,LA)ら著、2015年、ニューロ・オンコロジー(Neuro Oncol)、第18巻、第2号、p.206~15、ソリナス,G.(Solinas,G.)ら著、2010年、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、第185巻、p.642~52)。
【0102】
統計解析
p<0.05で対応のない両側t検定又はマッチドペアt検定により、異なるサンプルの定量的尺度間の統計的有意水準を決定した。カプラン・マイヤー分析及びログランク比較により確証される有意性により、生存分析を実施した。混合判別分析を含めて統計解析はすべて、JMPバージョン11ソフトウェア(SAS、ノースカロライナ州)を用いて実施した。
【0103】
安全性評価及び臨床経過
1つの重篤有害イベント(SAE)のみ、プロトコルに関連した(白血球分離後の大腿静脈血栓症)。9名の患者は腫瘍進行に屈し、一方、3名の患者は他の原因で死亡した。5名の剖検を実施した。
【0104】
初期診断からのメジアン全生存は91.4週間であり、他の再発神経膠腫免疫療法試験と比較して優れていた(図2a)。48.2週間及び10週間という有意差のある2つのプロトコル生存コホートが、それぞれ、より長い生存コホート及びより短い生存コホートとして同定された(図2b)。1つの外れ値(患者TJ03)を除いて、我々は、プロトコル生存と登録時のリンパ球減少の程度との間の有意な相関を実証した(図2c)。初期診断時及びプロトコル登録時のCBC値の比較から、標準的療法後の平均リンパ球数の有意な低下(65%)が示唆された(N=8、p=.012、対応のあるt検定)。
【0105】
ラジオグラフィー反応
2名の神経放射線科医(K.S.T.及びA.E.F.)により、ルーチンMRI特性を評価して等級付けした。より長いコホートでは、原発腫瘍部位の増強サイズ及びFLAIRエンベロープの減少が、より遅い進行と共に観測された。両方のコホートの解剖学的反応の例は、図3a及び3bに示される。生理学的MRI測定は、こうした解剖学的観測を補った。臨床的に改善しつつ相対脳血液量(rCBV)の逆説的増加を有していた3名のより長期の生存者(患者TJ03、TJ06、及びTJ09)を含めて7名の患者で逐次DSC MR灌流を実施したが、この効果は一過的であり、より持続的なrCBVの減少が見られた。逐次15方向DTIデータには、疾患退縮に関連する腫瘍細胞性の低下を反映して罹患半球で見掛けの拡散係数(ADC)値の増加を示した2名の長期生存者(患者TJ03及びTJ06)が含まれていた。我々は、短いコホートでは見られない、逆説的rCBV反応とADC増加との間の高い相関に注目した(図3c及び3d)。より長いコホートの対応する血清中ニトレートレベルは、炎症反応が開始される可能性を反映した(データは示されていない)。
【0106】
生存コホート別に周術期血清と対比した外植チャンバーの検査
外植チャンバーは、生存細胞がなく構造的にインタクトであった。C-p及びC-vチャンバーの両方のメンブレンの外表面は、CD15+及びCD163+細胞で被覆されたが、C-vメンブレン上の数は劇的に増加した(図4a)。
【0107】
全研究コホートでは、チャンバーの可溶性内容物の分析から、対応する周術期血清中レベルを超えるいくつかの成長因子及びサイトカイン/ケモカインの有意な上昇が明らかにされた。その多くは、神経膠腫腫瘍マイクロ環境(TME)で数多く報告されている。試験した78種のサイトカイン/ケモカインのうち32種は、血清を超えて有意に上昇し、マッチドペア分析から、以下の表2に記されるようにサイトカインの有意な上昇が明らかにされた。
【0108】
【表3-1】
【0109】
【表3-2】

これらの上昇は、封入腫瘍細胞により産生されたサイトカイン/ケモカイン又はチャンバー内に拡散した局所先天性免疫反応により産生された因子のどちらかであると解釈された。
【0110】
より長いコホートでは、VEGF、PDGF-α、IL-11、CCL5、MCP-3、及びMIP-1dが有意にチャンバー上昇し、一方、短いコホートでは、NSE、オステオネクチン、及びYKL40をはじめとするいくつかの可溶性癌マーカが有意に上昇することが、生存コホート間のチャンバー因子分析から明らかにされた。混合判別分析では、独立して、これらのコホート差が同定された(図4b)。
【0111】
いずれのコホートでも、ペリオスチン及びCCL2のレベルは両方とも、チャンバー(C-v)内の方が血清値又はSN値よりも有意に低かったことから、チャンバー内ではこれらのケモカインを産生する細胞が排除されることが示唆される(図4c)。
【0112】
生存コホート別のワクチン接種後の血清中サイトカイン/ケモカイン及びPBMC
評価された78種のサイトカイン/ケモカインのうち24種のレベルは、以下の表3に示されるように、より長いコホートの血清では短いコホートと比較して有意に高かった。
【0113】
【表4】

術後に血清中CCL2のスパイクが起こったが、2名の患者では再手術時に不在であった。CCL2レベルは、短いコホートでは術後の全期間にわたり有意により高い状態を維持した。こうした術後のスパイクは、TNF-αスパイクと高い相関があった(図5及び6)。
【0114】
短いコホートと比較してより長いコホートでは、実際のCD4及びCD8のT細胞数さらには樹状細胞(DC)数は有意により多く、周術期CD14+16-数は有意により少かった。より長いコホートでのみ、CD4細胞とDC細胞との間及びCD4とCXCL12との間に有意な相関が存在した。PMA及びイオノマイシンによる刺激後にIFNγをはじめとするTh-1サイトカインの産生が短いコホートよりも有意により高くなることが、より長い生存対象の14日目のPBMCから明らかにされた(データは示されていない)。ワクチン接種後のT細胞、単球、及び炎症誘発性ケモカイン/サイトカインの循環レベル間の協調変化は、4名の対象のうち3名で見られた。全単球数とCD14+16-単球レベルとの間の最も高い相関は特筆すべきであった(図5b及び5d)。より長いコホートでは循環T細胞数と循環単球数との間の逆相関もまた特筆すべきであり(図5)、短いコホートでは有意差はなかった(図6)。免疫抑制性細胞集団と炎症誘発性細胞集団との間の予測可能な相互関係さらには単球-ケモカインの関係から、より長いコホートでより高い免疫適応性が示唆された。
【0115】
パラフィン切片の検査
外科的介入から剖検までのパラフィン切片を4つの症例で分析に利用可能であったので、我々はワクチン接種後のTMEを調べることができた。我々は、再手術及び未治療のGBM患者のトライアル剖検と剖検とを比較した(図7)。マッチドペアでワクチン接種後のIGF-1R陽性細胞の有意な減少が免疫染色により明らかにされた。これは蛍光免疫組織化学により確証された(図7a及び7g)。豊富なCD163TAM及びIGF-1R+細胞が両方とも、再発又は未治療の神経膠腫剖検のどちらとの定性的比較によっても明らかにされたので、剖検アーチファクトとして細胞が失われるといういずれの懸念も低減された(図7g)。
【0116】
CD163TAMは、初期手術及び剖検の両方とのマッチド比較で再発時にピークとなった(図7c及び7g)。患者TJ06及びTJ10は、すべての治療相を通じて評価可能なサンプルでこうした傾向を裏付けた(図7b及び7d)。TJ06の場合には、CD163細胞は、2回目のワクチン接種後に減少し、剖検まで存続した。この減少は、各ワクチン後にいずれも増加したrCBV及びADCの値さらには血清中ニトレートレベルに逆相関した(図7f参照)。
【0117】
末梢単球との関連を探究したところ、短いコホートでは末梢CD163+単球とCD163TAMとの間に強い相関が見られたが(図7e)、より長いコホートでは見られなかったことが(図7f)、特筆すべきことであった。
【0118】
我々は、どちらのコホートでもワクチン接種後にTMEにT細胞集団の出現を見なかった。
対象の血清と未分化単球との共インキュベーション
患者の循環CD163+単球の起源を探究するために、我々は、最初に、カノニカルM1及びM2サイトカインのIFN-γ及びIL-4をそれぞれ用いてナイーブ単球を分極化した。我々は、M2分極化のみを用いてIGF-1Rのアップレギュレーションを観測した(図8a)。M2分極化CD163+集団は、IGF-1R AS ODNと共にインキュベートしたときに選択的にノックダウンされた(図8b)。
【0119】
続いて、我々は、ナイーブ単球とすべての研究対象から得られた血清とを共インキュベートして、IGF-1RとPDL-1との両方を共発現したCD163+細胞の出現を実証した(図8c)。IGF-1R AS ODNで処理すると、IGF-1R、PD-L1、及びCD163を発現する細胞は、図8dにまとめられた平行的且つ用量依存的な方式で有意にノックダウンされた(図8c)。
【0120】
考察
改訂された自己由来細胞/チャンバーベース多形膠芽細胞腫(GBM)ワクチン接種試験は、有意な安全上の問題をなんら引き起こさなかった。
【0121】
我々は、このワクチンパラダイムに対している異なる反応を示す有意差のある2つの生存コホートを同定した。図5及び6を参照されたい。より長いコホートの対象は、典型的には、術後及びワクチン接種後、腫瘍特異的抗体アイソタイプと、IgG1、IgG3、IL12、CXCL10、CXCL12、CCL7、CCL19、及びCCL21をはじめとするTh1免疫に一般に関連したサイトカイン/ケモカインと、のレベルの上昇を呈した。これらのサイトカイン/ケモカインのレベルの上昇は、短いコホートでは見られなかった。したがって、Th1免疫に一般に関連したサイトカイン/ケモカイン(たとえば、IgG1、IgG3、IL12、CXCL10、CXCL12、CCL7、CCL19、CCL21)のレベルは、術後/ワクチン接種後、生存を予測するために及びさらなる治療ストラテジーを通知するために評価しうる。興味深いことに、CCL21及びCXCL12は、CpGアジュバントと相乗作用し、ワクチン接種パラダイムにおいてDCの遊走能及びT細胞刺激能を増強する。また、より長いコホートにおけるGM-CSF、IL-6、Flt3L、及びSCFの特筆すべき上昇は、DC増殖を増強可能であり、ワクチン接種後のpDCの有意な76%増加に寄与しうる。また、CD4細胞の有意な上昇、さらにはCD4細胞、pDC、及びサイトカインCXCL12の間の相関から、T細胞増殖の誘導の成功は、免疫シナプス時にCXCL12により促進されることが示唆される。
【0122】
短い生存コホートの患者は、典型的には、ワクチン接種前により長い治療コースに付されてリンパ球減少症を生じていた。したがって、ワクチン接種は、正常リンパ球レベルの患者すなわち非リンパ球減少症の患者に投与したときに最も有効である。また、治療誘発リンパ球減少症及びより低いCD4:CD8比は、テモゾラミドが原因であるみなしうる。(標準ケアには、テモゾラミドを伴う原体放射線照射と、術後6週間で開始された維持テモゾラミドと、が含まれた)。より長い全生存の帰趨には、腫瘍抗原への慢性暴露及び持続的神経膠腫阻害シグナルによるT細胞枯渇が含まれるであろう。同様に、単球/マクロファージは、ワクチン接種後にごく限られた変動を伴って反応性の明らかな欠如を有していたが、末梢CD14+16-細胞とTAMとの間には識別可能相関があった。TAMは、CCL2産生に関連付けられており、この相関は、腫瘍成長を促進する閉ループ増幅となって現れうる。これを裏付けるように、短いコホートに見いだされる血清中CCL2レベルの上昇は、神経膠腫患者において間葉遺伝子発現プロファイル及び予後不良に関連付けられている。
【0123】
外植チャンバーは、封入TMEのユニークなスナップショット及び初期免疫反応との関わりを提供した。より長いコホートのチャンバーのサイトカイン上昇は、総括すると、ワクチン接種がTh1反応を誘発してこのコホートの血清がTh1免疫に関連した腫瘍特異的抗体アイソタイプを含むことを示唆した。混合判別分析は、IFN-γ、TNF-α、及びIL12の産生との関連を確立した。
【0124】
これとは対照的に、短いコホートのチャンバーは、標準的療法後、神経膠腫幹細胞(GSC)に関連する耐性の出現を表す癌マーカのより大きな上昇を有していた。1つの目立った例外は、対応のある血清値と比較してすべてのチャンバーで劇的に低下したペリオスチンレベルであった。神経膠腫の腫瘍促進細胞集団は、TAMとGSCとを含み、前者は、同一の血管周囲ニッチで後者を支持し(シュウ,W(Zhou,W)ら著、2015年、ネイチャー・セル・バイオロジー(Nat Cell Biol)、第17巻、p.170~82)、且つ両方とも治療ストラテジーの標的となる。GSC分泌ペリオスチンによりリクルートされるM2マクロファージは、腫瘍成長に重要な役割を果たすので、その排除は治療上の利点を有するであろう。処理された腫瘍細胞を含有するチャンバー内のペリオスチンレベルの低減から、この因子自体を分泌するGSCがIGF-1R AS ODNの標的であることが示唆される。
【0125】
とくに、既存の免疫抑制(標準ケアに係る前治療に基づく)にもかかわらず、我々は、12名の患者のうち4名でワクチン接種後に炎症誘発反応により裏付けられたラジオグラフィー上及び臨床上の改善を確証した。これらの患者はまた、プロトコルで有意な生存優位性を有していた。この生存差をさらに探究して、我々は、より長いコホートにおけるより高レベルの免疫適応性に注目した。
【0126】
ワクチン接種後のIGF-1Rの低減は、幾人かの対象においてより長いプロトコル生存に関連付けられた。特定の理論になんら拘束されるものではないが、ワクチン接種パラダイムによりこれらの個体において促進された1型免疫機序の結果としてIGF-1R+細胞集団がノックダウンされる可能性がある。
【0127】
我々がin vitroで示してきたように、IGF-1R AS ODNは、ワクチン調製物に含まれるCD163+細胞を不活性化することにより、その免疫モジュレート性因子を排除して1型免疫を促進する。さらに、ワクチンチャンバーから拡散して送出されるいずれのIGF-1R AS ODNも、それらが到達するM2マクロファージに対して類似の効果を有する。これは、PDL-1、他の免疫モジュレート性因子、血管形成因子、栄養補助物、及び腫瘍浸潤物をはじめとするさまざまな腫瘍促進リガンド及び因子を発現する細胞が標的となる新規なプラットフォームに相当する。
【0128】
より長い生存患者コホートと短い生存患者コホートとのラジオグラフィー観測差は、ワクチン接種パラダイムがより広範な神経膠腫TMEに影響を及ぼすという考え方のさらなる裏付けを提供する。より高いrCBV値は、典型的には、腫瘍進行に関連付けられ、MR灌流は、より長いコホートで一過的な増加を有するにすぎない(これまで記載されていない知見)。ADC測定は、腫瘍進行(より低い値)と細胞損失として我々が解釈したもの(より高い値)とを区別した。このワクチン接種パラダイムは、IGF-1R細胞とCD163+TAM集団との両方の低下に関連付けられるので、ADC値の上昇は、これを反映したものである。
【0129】
まとめると、我々は、改善された組合せ神経膠腫ワクチン製剤の安全性プロファイルを確立し、臨床上及びラジオグラフィー上の改善に関連付けられる免疫パラメーターの変化を実証した。腫瘍成長を促進する特異的単球細胞集団(たとえば、IGF-1Rを共発現するCD163+細胞)をノックダウンすることが約束されるので、このパラダイムは、免疫無防備を生じない治療スキームを提供する。
【0130】
結果のまとめ
プロトコル治療に関連するグレード3毒性は存在せず、初期診断からのメジアン全生存は91.4週間であった(図2a)。48.2週間(「長い」)及び10週間(「短い」)のメジアン生存を有する2つのプロトコル生存コホートが同定された(図2b)。より長い生存対象は、脳血液量(rCBV)の一過的上昇と、一過性充血及び細胞損失として解釈される見掛けの拡散係数(ADC)値の持続的上昇と、を含むイメージング所見を有していた。ワクチン療法は、腫瘍マイクロ環境(TME)からの腫瘍促進CD163+M2及びIGF-1R+細胞集団の持続的損失をもたらした。CD163+T細胞の起源を探究するためにin vitro実験を実施したところ、こうした実験から、対象の血清が未成熟単球をIGF-1RとPDL-1との両方のアップレギュレーションを有するCD163+細胞に分化させることが確認された。IGF-1R AS ODNを用いた後続のインキュベーションは、このM2集団の用量依存ノックダウンをもたらした。これは、ワクチンチャンバー内でIGF-1R AS-ODNにより処理された封入TME(腫瘍マイクロ環境)の免疫原性を示唆する。ワクチンパラダイムは、耐容性が良好で有利なメジアン生存を有する。
【0131】
実施例2
膠芽細胞腫を有する新たに診断された対象へのワクチン接種
我々は、標準的治療に失敗した再発悪性神経膠腫を有する患者に植え込まれるバイオ拡散チャンバーを含む製剤化組合せ物の一部として送達される自己由来細胞ワクチンを含むワクチンプロトコルの生物学的有効性を実証した。
【0132】
実施例2には、20個のチャンバーを24又は48時間及び10個のチャンバーを24又は48時間植え込むことを含む、新たに診断された神経膠腫患者へのワクチン投与に対する反応を記載する。いずれの場合も2μgのNOBELをいずれの場合も照射前にチャンバーに添加した。1回目の中間解析で標準ケアと比較したとき、無進行生存及び全生存の両方で有意な改善が見られた(図9)。このことは、ワクチン接種後のより高用量のコホートの性能に起因して最も顕著に現われた。我々は、最初に、再発時に治療された患者と比較して新たに診断された患者におけるワクチン接種後の有意に高いピーク及び平均のインターフェロンγレベルに注目した。新たに診断された神経膠腫患者を登録する試験では、我々は、全血清測定の測定時の各ワクチン用量漸増に伴うIFN-γの顕著で有意な増加に注目した。より長い植込みを行ったときのより高いインターフェロンγレベルは、アンチセンスがバイオ拡散チャンバーから拡散して送出される速度にほぼ相関する。
【0133】
これらのデータは図10にまとめられており、自己由来チャンバーワクチンが新たに診断された膠芽細胞腫患者において抗腫瘍反応を誘発することを例示する。我々は、IFNγレベルの増加が腫瘍抗原に対する患者の反応を表しうることにさらに注目した。そうであれば、抗腫瘍免疫及びアウトカムの改善の予測因子となりうる。最後に、再発患者と対比して新たに診断されたGBM患者で得られたよりロバストな反応は、対象の免疫系の影響を例示しており、第一選択の療法としての患者へのワクチン接種を支持する。
【0134】
実施例3
完全製剤化チャンバーはより大きなアジュバント活性を有する
完全製剤化チャンバーは、自己由来腫瘍細胞と腫瘍マイクロ環境(TME)に含まれる他の細胞とを含み、植込み前に4mg/mlのIGF-1R AS ODNで6時間処理される。次いで、処理されたTMEに少なくとも2μgのIGF-1R AS ODNの外因的添加を行って封入し、次いで、5Gyのγ線照射でチャンバーに照射する。
【0135】
我々は、チャンバーの数を増加させた。つまり、各患者が摂取するIGF-1R AS
ODNの用量を前の研究と比較して増加させた。たとえば、植え込まれるチャンバーの数を2倍にすると、植え込まれてチャンバーから拡散して送出可能なアンチセンスの量は2倍になる。つまり、AS ODNの用量は、20個のチャンバーに分割されて約40μgであった。
【0136】
アンチセンス配列とくにそのパリンドロームCpGモチーフ及び神経膠腫細胞との直接的混合物は、in situで抗腫瘍免疫を有効に開始する。注目すべきことに、同一のパリンドロームCpGモチーフを有するセンス配列は、ワクチンパラダイムにおいて無効である。そのほか、アンチセンス配列は、満足な反応を得るために腫瘍接種物と直接混和しなければならない。M2単球分極化を阻害するIGF-1R AS ODNの用量は、IGF-1Rの発現をダウンレギュレートするのに必要な用量よりも少なくとも1桁少ない。
【0137】
前臨床動物モデリングでは、我々は、ワクチン接種後に大脳皮質に植え込まれた同種同系GL261神経膠腫細胞を拒絶したC57 BL6マウス由来の治療用IFN-γ産生CD4T細胞を再刺激する各種抗原調製物の有効性を評価した。従来法を用いてこれらの動物の脾臓からCD4T細胞を単離し、各種GL261抗原調製物と共にインキュベートされた抗原ナイーブマウス由来の骨髄由来樹状細胞に添加した。自己由来腫瘍細胞を含む完全製剤化ワクチンチャンバーの可溶性画分から回収された抗原、外因性アンチセンス、及び照射は、不完全製剤よりも多数のIFN-γ産生CD4T細胞を有意に誘導した。
【0138】
24時間にわたりC57BL/6マウスの側腹に植え込まれたさまざまなGL261調製物を含有するチャンバーの分析でも、完全製剤化チャンバーが最も免疫原性であることを示す証拠が提供される。IGF-1R AS ODN及び照射は各々単独でPBS対照を超えるサイトカインの上昇を引き起こすが、32種のサイトカインのうち16種は、IGF-1R AS ODNと組み合わせたときに照射のみを含めてすべての他の変動要因を超えて有意に上昇した。放射線誘導炎症誘発性サイトカインネットワークにより一般に産生されるIL-1β、IL-6、及びTNF-αを含めて、これらのうち少なくとも11種のサイトカインは炎症反応に関連付けられる。
【0139】
完全製剤化チャンバーに対する炎症誘発反応は、再発膠芽細胞腫の患者に対する我々の2回目の第1相ヒト試験で検証された。我々は、ワクチン接種後の2つの明確に異なる生存コホートに注目し、免疫適応性、ワクチン接種後の炎症誘発反応、及びより長い生存(未公開観測)との関連性を確立した。とくに、我々は、チャンバー内の腫瘍細胞への照射によりおそらくさらに補われる、Th1表現型の方向にCD4+細胞をダイレクトする局所TLR9DC活性化として我々が解釈したより長いコホートにおけるワクチン接種後の高いCD4:CD8比に注目した。
【0140】
実施例4
ナイーブマウスにおける完全製剤化チャンバー
ナイーブC57B6マウスでは、完全製剤化ワクチンチャンバーの植込みは、部分製剤化チャンバーよりも初期免疫反応の誘発に有意により有効であった。1チャンバーを用いて24時間にわたりマウスの側腹にワクチン接種した。チャンバー内容物は、内容物なし(PBS)から部分製剤化チャンバー(GL261神経膠腫細胞単独、AS ODNを併用したGL261、又はGL261と5Gy照射)及び完全製剤化チャンバー(GL261、AS ODN、及び照射)まで変化させた。
【0141】
図11に示されるように、部分製剤化ワクチンチャンバー(すなわち、腫瘍細胞を含有するがアンチセンス分子を含有しないワクチンチャンバー)が植え込まれたマウスと比較して完全製剤化ワクチンチャンバーが植え込まれたマウスにおいてより多くの炎症誘発性サイトカインの産生が見られた。
【0142】
実施例5
IGF-1R AS ODNによる正常サンプルにおける用量依存樹状細胞活性化
2つの正常ドナー源由来のPBMCを用いて、NOBELアンチセンスさらにはすでに使用された配列(NOBEL配列の2コドン上流の18マーDWAであり、アンドリュース(Andrews)ら著、2001年、「悪性星状細胞腫におけるインスリン様成長因子I型レセプターに対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの使用を含むパイロット研究の結果(Results of a pilot study involving the use of an antisense oligodeoxynucleotidedirected against the insulin-like
growth factor type I receptor in malignant astrocytomas)」、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol)、第19巻、p.2189~2200に記載されている)による用量依存DC活性化を評価した。
【0143】
NOBELアンチセンスに対するセンス配列も一緒に、PBMCをアンチセンス配列と共に一晩インキュベートし、次いで、CD123+、CD68+活性化DC集団をゲーティングしてフローサイトメトリーにより分析した。図12に示されるように、NOBELアンチセンスは、非刺激対照又はNOBELセンス配列と有意差のある且つDWA配列よりも有効な用量依存DC活性化を生じた。これらのデータは、NOBEL配列が他のIGF-1 ASと比較してもとりわけ有効であることを例示する。
【0144】
実施例6
ワクチン接種マウスに由来するT細胞を利用した完全製剤化チャンバーの内容物に基づくin vitro T細胞反応
我々は、拡散チャンバーの小細孔サイズ(100nm)を考慮して、エキソソームが植込み時のチャンバーメンブレンを介して拡散する腫瘍抗原源である可能性が高いという仮説を立てた。GL261神経膠腫細胞とIGF-1R AS ODNとを含む側腹注射によりC57B6マウスにワクチン接種したところ、後続の脳実質内腫瘍チャレンジから完全に保護された。我々は、次の抗原源:1/GL261細胞とIGF-1R AS ODNとがロードされ、照射され、そしてマウスの側腹に24時間植え込まれたチャンバーの遠心分離上清、2/37℃の等張PBS培地で一晩インキュベートして同様に調製されたチャンバーの遠心分離上清、3/GL261細胞から調製されたエキソソームを用いてIFNγ用Elispotアッセイにより完全製剤化チャンバーの内容物に対するこれらのマウスに由来するワクチン接種腫瘍治療T細胞免疫反応性を評価した。これらの抗原調製物を腫瘍抗原ナイーブマウス由来の樹状細胞に添加し、次いで、GL261免疫マウスの脾臓から単離されたCD4T細胞に添加するか、又はT細胞への添加前に一晩インキュベートして抗原処理及び提示を行った。T細胞と抗原と樹状細胞との24時間共培養の後、ElispotアッセイでIFNγ産生CD4T細胞の数を定量した。チャンバー内容物と各種希釈倍率のGL261エキソソームとを比較した。24時間PBSインキュベーションから回収されたチャンバー内容物を用いたときのみロバストなIFN-γ反応が抗原提示によりアッセイされることが、Elispotの結果から明らかにされた。植え込まれたチャンバーでもプレインキュベーションなしで樹状細胞が含まれる対照Elispotアッセイでも、エキソソームとの有意差を生じなかった。TMEに由来する抗原は、本質的にエキソソームのものではなく、腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとを含有する照射チャンバーで最も豊富に産生され、それらは植込み時に消費され、且つDCによる抗原提示を必要とすること、が、データから明らかにされる。結果を図13にまとめる。
【0145】
実施例7
M2単球/マクロファージ分極化への二相性用量反応
in vivoでM2分極化を阻害するNOBEL IGF-1R AS-ODNの最適用量を決定するために、C57BL/6マウスの側腹に106GL261細胞を注射した。20日後、単回0.75又は0.075mg用量のNOBEL IGF-1R AS-ODNをマウスの腹腔内に与えた。次いで、マウスの腫瘍発生を続けた。
【0146】
in vivoにおけるM2発生に関してNOBELアンチセンスの用量漸増は、逆説的二相性反応を生じた。用量探求漸増のどちらの極限用量でもM2単球のノックダウンを生じたが、中間用量では実際にはM2単球発生を刺激する。米国特許出願公開第2017/0056430号明細書には、4mgの単回用量は類似の実験できわめて有効であることが示された。本実験では、0.075mgの単回用量はきわめて有効であったが、0.75mgの中間用量は予想外なことにそれほど有効でなかった。(図17)。いずれの特定の理論又は作用機序にも限定、束縛、又は拘束されるものではないが、我々は、二相性作用がNOBEL配列の免疫刺激属性の帰趨でありうるという仮説を立てる。
【0147】
AS ODNによる単球分極化の阻害に有効な用量は、ワトソン・クリック塩基対合則に従ってIGF-1R翻訳をダウンレギュレートするのに必要な用量よりもかなり少ない。注目すべきことに、0.075mg用量/マウスと等価なin vitro用量は、IGF-1Rをすでに発現している細胞にはまったく影響を及ぼさない。ヒト単球を用いたin vitro漸増実験から、分極化M2単球の表現型又は機能に影響を及ぼすこととはとは対照的に、分極化を防止するIGF-1R AS-ODN処理の能力には実質的な差が明らかにされる。
【0148】
図14に示されるように、最低用量は、最高用量と同一の有効性を達成することから、NOBELアンチセンスとM2発生との間の複雑なダイナミクスが示唆される。DC活性化に対する一相性反応に基づいて、理想的チャンバー用量は最大DC活性化のポイントになるであろう。
【0149】
実施例8
NOBELにより単球分極化を阻害するための用量反応曲線
我々は、植え込まれたチャンバーから実現可能に局所的に拡散して送出される全濃度範囲内のレベルまでNOBELアンチセンス漸増を実施した。
【0150】
図15に示されるように、さまざまな濃度のIGF-1R特異的AS-ODN(NOBEL)の存在下又は不在下で、膠芽細胞腫の患者から得られた6つの異なる血清と共に、3つの正常PBMC採取物由来の同種異系ナイーブ単球を一晩インキュベートした。各々着色ドットは、個別膠芽細胞腫患者由来の血清を表す。CD163を含むマーカの発現は、フローサイトメトリーにより評価した。CD163発現レベルは、蛍光コンジュゲートCD163抗体で染色された細胞の平均蛍光指数として表される。
【0151】
各患者の血清は、IGF-1R及びPDL-1の両方のアップレギュレーションを伴ってM0単球からM2CD163表現型への分化を引き起こした。患者血清を用いずに培養されたM0細胞(対照)は、非常に低レベルのCD163を維持したが、血清中一晩インキュベーションは、このM2マーカの発現を強く誘発した(未処理)。培養培地へのIGF-1R特異的AS-ODNの添加は、用量依存的なCD163発現の上昇により示唆されるようにM0-M2分極化を阻害した。我々は、100pgから始めて1μgの有意阻害レベルに達するまでの衰微傾向に注目した。こうしたデータから、チャンバーから拡散して送出される過剰のアンチセンスは、先天性免疫の初期段階でTh1反応の開始を促進可能であることが確認される。
【0152】
実施例9
CL261神経膠腫細胞が植え込まれたマウスにおける抗炎症性M2単球の出現の防止
GL261神経膠腫細胞が植え込まれたC57BL/6マウスは、M2単球を発現する循環CD163の数の上昇と並行して腫瘍を発生する。我々は、神経膠腫細胞が単球のリクルートメント及びM2への分極化を引き起こす因子を産生するという仮説を立てた。これらの細胞は、次いで、そうした産物が腫瘍進行を促進する腫瘍組織に浸潤する。IGF-1R AS-ODNによる全身治療は、M2細胞の出現を防止することにより腫瘍形成を阻害しうる。
【0153】
C57BL/6マウスの側腹に10GL261細胞を植え込み、20日後、単回用量の4mg NOBEL IGF-1R AS-ODNを腹腔内又は静脈内に与えた。
14日後、動物から末梢血を得て、CD163発現に関してフローサイトメトリーにより循環単球を評価した。図18は、CD163を発現する細胞数のヒストグラムを示し(右側ピーク)、「媒体」と記されたラインは、PBS媒体で処置された植え込まれたマウスを表し、「AS-ODN」と記されたラインは、AS-ODNで処置された植え込まれたマウスを表す。データは、CD163+細胞が有意に減少することを示す。CD204又はCD206を発現する細胞の出現は、同様に阻害された(データは示されていない)。植え込まれなかった正常マウス由来の末梢血は、高レベルのCD163、CD204、又はCD206を有する細胞を含有していなかった(データは示されていない)。
【0154】
実施例10
側腹に神経膠腫細胞が植え込まれたマウスの全身IGF-1R AS-ODN治療は腫瘍の発生を予防する。
【0155】
C57BL/6マウスの側腹に10GL261細胞を植え込み、20日後、循環CD163陽性単球の出現の前に、単回4mg用量のNOBEL IGF-1R AS-ODNを腹腔内又は静脈内に与えた。他の群のC57BL/6マウスには対照としてPBSを注射した。次いで、両群のマウスの腫瘍発生を続けた。図19に示されるように、治療群と未治療群との間の腫瘍発生率には有意差があり、NOBEL治療マウスは、腫瘍フリー状態を維持する可能性がかなり高かった(=p<0.05)。
【0156】
実施例11
側腹神経膠腫腫瘍成長の全身IGF-1R AS-ODN阻害は抗腫瘍免疫に依存しない。
【0157】
Tbetは、T細胞関連転写因子であり、Tbet欠損マウスは、抗神経膠腫免疫を行う能力が欠如している。側腹神経膠腫腫瘍成長のIGF-1R AS-ODN阻害が抗腫瘍免疫に依存しないかを試験するために、C57BL/6背景のTbet欠損マウスの側腹に10GL261細胞を植え込み、20日後、単回4mg用量のNOBEL IGF-1R AS-ODNを腹腔内又は静脈内に与えた。次いで、マウスの腫瘍発生を続けた。
【0158】
図20に示されるように、Tbet欠損マウスには治療抗神経膠腫免疫を行う能力がないにもかかわらず、PBSで治療されたマウスとNOBEL IGF-1R AS-ODNで治療されたマウスとの間で腫瘍発生率に有意差があった(=p<0.05)。
【0159】
実施例12
NOBELを用いてチャンバー内でネスチン+幹細胞を標的とする
我々は、in vitroでNOBELアンチセンスによりネスチン+幹細胞を用量依存的にノックダウン可能であることを示し、さらにこの細胞が自己由来細胞ワクチン後にTMEから排除されることを示した(試験14379~101、未公開観測)。神経膠腫腫瘍マイクロ環境(TME)の一部である幹細胞として、それを選択的にノックアウトすることは明らかな治療効果を有する。胚性放射状グリア細胞を支持する形態で、この細胞は、そのデザイン及び長い突起により、脳全体にわたり神経膠腫細胞を配置可能にするスキャフォールドとして機能しうる。CD163TAMと共にそれを除去することにより、この腫瘍の浸潤性さらには腫瘍成長自体を逆転させうる。チャンバー内の標的となりうる細胞として、胚性起源であることから、この細胞由来の抗原は、非常に免疫原性がありうるとともに腫瘍特異的でありうる。ネスチンは、神経プロジェニター/幹細胞で主に発現され、VI型中間径フィラメントとして細胞質に位置する。また、それは、神経膠腫幹細胞の表面タンパク質及びバイオマーカとして同定されている。したがって、この集団をビーズ選択して富化することにより、チャンバーの炎症誘発力価を増加させることが可能であろう。ジン(Jin)ら著、「細胞表面ネスチンは神経膠腫幹細胞のバイオマーカである(Cell surface Nestin is a biomarker for
glioma stem cells)」、バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem Biophys Res Commun.)、2013年4月19日、第433巻、第4号、p.496~501を参照されたい。
【0160】
実施例13
チャンバー製剤に及ぼす照射の影響
完全製剤化チャンバーの調製時、自己由来腫瘍細胞(すなわち、新たに切除された腫瘍組織)は、血清フリー培養でプレーティングされ、第1の量のIGF-1R AS ODNで任意選択的に処理され、その後、ex vivo照射で処理される(図1f及び1g)。第2の量のIGF-1R AS ODNは、照射前にチャンバーに添加される。
【0161】
自己由来ワクチン接種は、植込み前に腫瘍から離れた部位で組合せ物への照射を含み、我々のデータは、腫瘍退縮を有する免疫反応を支持するので、これらのデータは新規なアブスコパル効果を支持する。典型的には、アブスコパル効果は、標的腫瘍へのin situ照射後の抗腫瘍免疫の活性化に起因し、それは照射から遠く離れた部位で腫瘍退縮をもたらす。この特定の製剤では、チャンバーへのCpGモチーフを有する外因性アンチセンスの添加及びγ線照射による後続処理は、メモリーT細胞の活性化、増殖、及び生存に関与する遺伝子をアップレギュレートすることが示されている。かかる製剤はまた、Tregの発生及び免疫寛容の誘発に関与する遺伝子の活性化を防止する。そのほか、IGF-1Rのダウンレギュレーションは、この表面レセプターを過剰発現している細胞の放射線感受性を増強する。IGF-1R AS ODNとの共インキュベーションはまた、標的腫瘍細胞(in vivoのみ)及び腫瘍関連M2マクロファージのアポトーシスを促進する。5Gyの照射は、すべての封入細胞の死をもたらし、死腫瘍細胞から放出された腫瘍抗原の提示を補う危険/損傷関連分子パターン(又はDAMPS)として知られる内因性危険シグナルの放出を引き起こす。
【0162】
実施例14
将来的チャンバー製剤の炎症誘発剤を同定する手段としての外植チャンバー
デポ抗原デバイスとして適用した後に回収された外植バイオ拡散チャンバーはまた、前臨床マウスモデル及びヒト試験で確証された初期免疫反応を記録するリポジトリーとして機能する。適切なPBS(ダミー)チャンバー対照を用いたチャンバー内容物の特徴付けは、宿主免疫反応(ダミー対照を超えるサイトカイン/ケモカインの内方拡散)さらにはチャンバー内の細胞によるサイトカイン/ケモカイン/DAMPSの産生(ダミーチャンバーでは検出不能)の両方を理解する手がかりを提供する。一連のサイトカインの一貫した存在は、将来的製剤へのこうしたサイトカインの外因的添加を約束する。例として、CCL21及びCXCLは両方とも、PBSチャンバーを超えてワクチンチャンバーで上昇し、CpGアジュバントと相乗作用し、ワクチン接種パラダイムでDCの遊走能及びT細胞刺激能を増強する。図16及び17を参照されたい。チャンバー製剤へのこうしたサイトカインの外因的添加は、初期Th-1反応を増強しうる。
【0163】
実施例15
チャンバー内の細胞対IGF-1R AS ODNの最適比はより高いサイトカイン値をもたらす
照射された腫瘍細胞及びAS NOBEL ODN(2μg)を各々含有する20個のチャンバーを用いて患者に48時間ワクチン接種した。いずれの場合も、患者は、必須のトーマス・ジェファーソン大学病院(Thomas Jefferson University Hospital)(TJUH)標準ケア(SOC)療法を受けた。続いて、ある特定の時点で無進行生存(P-FS)(すなわち、癌の発生や寛解を示さずに生存する患者)及び全生存(OS)を決定した。図21a~cは、ある特定の時点で反応を例示する。図24~27は、患者のアウトカムを例示し、治療(「ワクチン接種」)を受けた患者と過去の標準ケア(「SOC」)を受けた患者とを比較する。チャンバー内の細胞対IGF-1R AS ODNの最適比を決定するために、我々は、ワクチン接種後の患者の血清中の炎症誘発性サイトカインレベルを測定し、これらのサイトカインレベルを各患者から取り出された腫瘍組織の細胞数と比較した。
【0164】
初期に、図21a~cに示されるように、炎症誘発性サイトカインの有意な用量依存的増加が患者の血清で観測された。IFN-γの全レベルは、最大用量コホートできわめて有意に上昇した。IL12及びTNFaのレベルも、このコホートで上昇した。
【0165】
各患者に対する14~42日目の3つのサイトカイン値の各々をプールして、IFNγ、IL12、及びTNFaの平均値に対してプロットした。4及び5の類似の当てはめ度を有する2つの多項式プロットから、ピーク炎症誘発性サイトカイン値が明らかにされた(図21d~f)。
【0166】
図24a及び24bは、全体として治療意図群の無進行生存及び全生存を例示するカプラン・マイヤー曲線を示す。ワクチン接種患者では、約35%超は生存して20ヶ月間無進行であった。これとは対照的に、SoC治療患者の10%未満は20ヶ月間の無進行生存を示した。全生存も同様にかなり改善され、患者の約40%は25ヶ月間を超えて生存したが、SOC治療はその時点で約5%生存を示す。図24b。
【0167】
図25a及び25bは、両群で女性数/男性数が12/18となるように対応させた61.5歳のメジアン年齢の患者の生存データを示す。この場合も、データは各種時点で有意に改善された生存を例示する。
【0168】
試験時、一部の患者はプロトコルから離脱し、他の者は関連のない原因で死亡した。図26a及び26bは、離脱患者又は他の原因で死亡した患者のデータが不在の生存データを例示する。この場合も、ワクチン接種患者は、有意により良好な性能を示す。ある特定の患者は、標準ケアを終了できなかった。そうした患者を除くデータは、図27a及び27bに示される。これらのデータから、ワクチン接種法は、標準ケアプロトコルに従わないとき有効であることが確認される。
【0169】
図28a及び28bは、患者の反応に及ぼす投与細胞数の影響を例示する。IFN-γレベルは対象の反応に対応する。より高いIFN-γレベルは、より良好な患者免疫反応ひいては抗腫瘍反応に関連付けられる。この場合、我々は、細胞の適正漸増数を決定することによるその反応を最適化した。ピーク反応は、評数20(すなわち2000万細胞)近傍であり、20個のチャンバーに分配される。そのため、ピーク反応は約100万細胞/チャンバーであるが、各々20個のチャンバーに分配されて植え込まれる約1500~2500万細胞、すなわち、750,000細胞~1,250,000細胞/チャンバーの範囲で優れた反応が得られる。これらのデータから、最適化ワクチン接種プロトコルの有効性が実証される。
【0170】
実施例16
ネスチン発現に関して富化された細胞集団を用いたワクチン接種により媒介される抗腫瘍反応の増強
チャンバー内のIGF-1R処理神経膠腫細胞による抗原の産生は、チャンバーパラダイムを用いて免疫された且つ抗原の存在を検出するためにコンジェニックGL261細胞が頭蓋内にチャレンジされたC57BL/6マウスから単離された神経膠腫免疫T細胞を用いてex vivoで試験した。免疫T細胞のドナーとして機能するマウスを次のように免疫した。すなわち、GL261細胞とアンチセンスとが充填された完全製剤化チャンバーを側腹に24時間植え込んだ。細胞のみを有するアンチセンスなしのチャンバーも、アンチセンス活性の対照として植え込んだ。実験全体を通じてマウスから採血し、GL261細胞に対する抗体反応性に関して血清を試験した(図30c、30d)。チャンバー植込みの35日後、マウスの頭蓋内に定位的にGL261細胞をチャレンジした。個別マウス群の生存及び疾患の臨床徴候をチャレンジ後少なくとも40日間モニターした。生存及び臨床疾患スコアは、図30a及び30bにそれぞれ示される。
【0171】
磁気ビーズを用いて免疫マウスの脾臓からCD4+T細胞を単離した。免疫CD4T細胞に抗原を提示するために使用したナイーブ樹状細胞(DC)は、自己由来非免疫C57BL/6マウスの骨髄から単離した。さまざまな条件下でチャンバー内で一晩培養されたGL261細胞から回収されたGL261抗原と共に一晩培養することによりDCをパルスし、類似のチャンバーが対象に植え込まれたときの抗原産生と対比して何が起こっているかを映し出した。チャンバーは、GL261細胞単独又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3つの異なる用量のアンチセンスを併用したGL261のどちらかを含有していた。アンチセンスを用いずに培養されたG261細胞由来の抗原調製物にさまざまな用量のアンチセンスを添加して、チャンバー内のアンチセンス内容物又はアンチセンスの影響が最適抗原産生に関与するかを決定した。抗腫瘍細胞免疫の主要な尺度であると考えられるIFNγ産生を用いて、T細胞活性化に及ぼす各種抗原調製物の刺激作用を評価した。図29aに示されるように、ELISPOTアッセイにより定量された反応細胞の特定数が示される。
【0172】
抗原の産生を刺激するために、我々はin-vivo臨床チャンバーパラダイムに従った。約100万ex vivo GL261腫瘍細胞を単独で又は指定アンチセンス濃度との併用でチャンバーに注入し、チャンバー内で一晩インキュベートした(PBS中に配置した)。翌日、チャンバー内容物を抽出し、ナイーブ樹状細胞をパルスするために使用した。アンチセンスで一晩処理しなかったチャンバー内容物は、指示量のNOBELと共に樹状細胞に添加した。対照用として樹状細胞をナイーブ状態のままにした。抗原による一晩パルスの後、樹状細胞を採取し、サイトカインIFNγに対するELIPSPOT検出抗体で被覆された細胞培養プレートで免疫動物からのT細胞と共に一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、被覆プレートを処理して発色させ、各抗原に反応したIFNγ産生T細胞の数を計数した。
【0173】
図29bに示されるように、GL261細胞+アンチセンスを含有するチャンバーから取り出された物質では腫瘍抗原が検出されたが、細胞単独で培養されたチャンバーからの物質では、DCをパルスするときにアンチセンスを物質に添加したとしても、検出されなかった。このことから、免疫刺激性腫瘍抗原を産生するためにはチャンバー内のアンチセンスと神経膠腫細胞との存在が必要とされることが示される。
【0174】
アンチセンスを用いた一晩処理の影響を試験するために、我々はまた、チャンバーへの細胞の追加前に4mgのアンチセンスと共に細胞を一晩インキュベートした。ペトリ皿にGL261細胞をプレーティングし、100万細胞当たり4mg NOBELで一晩処理したか又は未処理のままにした。次いで、細胞を採取し、チャンバー1つ当たり100万細胞及び2μg NOBELをチャンバーに配置した。次いで、チャンバーをPBS中で一晩インキュベートし、翌日、内容物を抽出した。次いで、樹状細胞をチャンバー内容物でパルスし、以上に記載したようにIFNγ分泌を測定した。
【0175】
図29cに示されるように、アンチセンスによるGL261細胞の一晩処理は、4mgアンチセンスで一晩処理されたGL261細胞でDCをパルスしたときIFNγを産生する腫瘍免疫T細胞の数が増加することにより検出されるように、この細胞により産生される抗原の量を増強する。
【0176】
ネスチンを発現する神経膠腫腫瘍細胞サブセットが免疫原性の増強に関連するかを決定するために、より高レベル対より低レベルのタンパク質ネスチンを生じる条件下で成長させたGL261細胞を含有するIMV-001(NOBEL)アンチセンスあり又はなしのチャンバーでマウスを免疫した。後続のGL261神経膠腫細胞の頭蓋内植込みに対抗する長期保護(図30a、30b)さらにはマウスによるGL261抗体の産生(図30c、30d)を評価した。
【0177】
高レベルのネスチンとアンチセンスとを有するGL261細胞を含有するチャンバーは、類似の細胞を有するアンチセンスなしのチャンバーよりも又はアンチセンスの有無にかかわらず低ネスチンGL261を有するチャンバーよりもかなり良好に免疫保護を誘発した。また、チャンバーに入れられた高レベルのネスチンを発現するGL261細胞は、マウスにおいてGL261特異的抗体産生を誘発する点で、低ネスチンレベルを含有するものよりも優れていた。しかしながら、抗体産生に関して、アンチセンスが含まれていても影響は最小限に抑えられた。
【0178】
参照による組込み
本明細書で参照される特許及び刊行物はすべて、その全体が本出願をもって参照により組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図2a
図2b
図2c
図3-1】
図3-2】
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28-1】
図28-2】
図29-1】
図29-2】
図30-1】
図30-2】
図30-3】
【配列表】
2023081916000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0178
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0178】
参照による組込み
本明細書で参照される特許及び刊行物はすべて、その全体が本出願をもって参照により組み込まれる。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
癌を有する対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーを作製する方法であって、
(a)前記対象から得た腫瘍細胞をIGF-1R AS ODNの存在下で前記バイオ拡散チャンバーに封入することであって、前記チャンバー内の腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとの比が約3.75×10 :1μg~約6.25×10 :1μgの範囲内であり、前記腫瘍細胞が組織モルセレータを用いて前記対象から得られる、封入することと、
(b)前記バイオ拡散チャンバーに照射することと、を含む方法。
[項目2]
前記チャンバーに前記腫瘍細胞を封入する前に前記腫瘍細胞が分散される、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記細胞が前記対象からの取出し時に体温を超える温度に暴露されない、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記細胞が前記対象からの取出し時に37℃を超える温度に暴露されない、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記組織モルセレータが無菌トラップを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
前記組織モルセレータが静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記外側カニューレがサイドアパーチャを含み、且つさらに前記腫瘍細胞が電子制御可変吸引により前記サイドアパーチャに吸い込まれる、項目6に記載の方法。
[項目8]
前記バイオ拡散チャンバーに配置される前に前記腫瘍細胞がネスチン発現に関して富化される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
前記チャンバー内の前記腫瘍細胞が前記対象から得られた前記腫瘍細胞と比較して接着細胞に関して富化される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記腫瘍細胞が接着細胞から本質的になる、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記細胞が前記チャンバーへの封入前にIGF-1R AS ODNで処理される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項目12]
前記IGF-1R AS ODNが封入前の前記処理時に約2mg~約6mg/100万細胞で存在する、項目11に記載の方法。
[項目13]
前記IGF-1R AS ODNが封入前の前記処理時に約4mg/100万細胞で存在する、項目12に記載の方法。
[項目14]
封入前のIGF-1R AS ODNによる前記処理が約18時間までにわたる、項目11に記載の方法。
[項目15]
封入前のIGF-1R AS ODNによる前記処理が約12時間~約18時間にわたる、項目11に記載の方法。
[項目16]
前記IGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有する、項目1に記載の方法。
[項目17]
前記チャンバー内の前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、項目1に記載のチャンバー。
[項目18]
前記照射腫瘍細胞が約750,000~約1,250,000/チャンバーの範囲内で存在する、項目1に記載の方法。
[項目19]
前記照射腫瘍細胞が約1,000,000/チャンバーで存在する、項目18に記載の方法。
[項目20]
項目1に記載の2つ以上のバイオ拡散チャンバーを前記対象に植え込むことを含む、癌を有する対象を治療する方法。
[項目21]
約10~約30個のバイオ拡散チャンバーが前記対象に植え込まれる、項目20に記載の方法。
[項目22]
約10~約20個のバイオ拡散チャンバーが前記対象に植え込まれる、項目21に記載の方法。
[項目23]
前記拡散チャンバーが前記対象に約48時間植え込まれる、項目20~22のいずれか一項に記載の方法。
[項目24]
前記癌が脳癌である、項目20~23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
前記脳癌が、グレードII星状細胞腫、グレードAIII星状細胞腫、グレードAIII-G星状細胞腫、及びグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)から選択される、項目24に記載の方法。
[項目26]
前記脳癌がグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)である、項目25に記載の方法。
[項目27]
前記方法が、化学療法を用いずに、放射線療法を用いずに、又は両方を用いずに実施される、項目20~26のいずれか一項に記載の方法。
[項目28]
第1の植込みに続いてチャンバーの第2の植込みを含む、項目20に記載の方法。
[項目29]
前記第2の植込みが、前記第1の投与から得られた細胞と同時に前記対象から得られた腫瘍細胞を使用する、項目28に記載の方法。
[項目30]
前記第2の植込みが、前記第1の治療が終了した後で前記対象から得られた腫瘍細胞を使用し、前記腫瘍は、再発したものであるか又は前記第1の治療に反応しなかったものである、項目28に記載の方法。
[項目31]
脳癌を有する対象にワクチン接種する方法であって、
(i)前記対象から細切腫瘍組織を得ることと、
(ii)前記細切組織を無菌トラップに採取することと、
(iii)前記細切組織から接着細胞を捕集することと、
(iv)配列番号1の配列を有するインスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)と一緒に、前記捕集された細胞をバイオ拡散チャンバーに封入することであって、前記チャンバーが約750,000~約1,250,000腫瘍細胞を含有する、封入することと、
(v)前記チャンバーに照射することと、
(vi)前記チャンバーを前記対象に植え込むことと、を含み、
前記脳癌に対する免疫反応が得られる、方法。
[項目32]
封入前に18時間までにわたりIGF-1R AS ODNで前記接着細胞を処理するステップを含む、項目31に記載の方法。
[項目33]
前記対象が約48時間にわたり20個のチャンバーでワクチン接種される、項目31又は32に記載の方法。
[項目34]
前記チャンバー内の腫瘍細胞とAS ODNとの比が、約3.75×10 細胞:1μgAS ODN~約6.25×10 細胞:1μgAS ODNの範囲内である、項目31~33のいずれか一項に記載の方法。
[項目35]
前記IGF-1R AS ODNが約1μg~約5μgで存在する、項目31~34のいずれか一項に記載の方法。
[項目36]
前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、項目31~35のいずれか一項に記載の方法。
[項目37]
前記腫瘍細胞が体温を超える温度に暴露されない、項目31~36のいずれか一項に記載の方法。
[項目38]
約10 腫瘍細胞が前記チャンバー内に存在する、項目31~36のいずれか一項に記載の方法。
[項目39]
前記脳癌が、グレードII星状細胞腫、グレードAIII星状細胞腫、グレードAIII-G星状細胞腫、及びグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)から選択される、項目31に記載の方法。
[項目40]
前記脳癌がグレードIV星状細胞腫(多形膠芽細胞腫)である、項目39に記載の方法。
[項目41]
脳癌を有する対象に植え込むためのバイオ拡散チャンバーであって、
(a)照射された腫瘍細胞であって、
前記腫瘍細胞が、前記対象の腫瘍組織から得られた接着細胞を含み、
前記腫瘍細胞が、前記チャンバー内への封入前にインスリン様成長因子レセプター1アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)と共にプレインキュベートされる、照射された腫瘍細胞と、
(b)照射されたIGF-1R AS ODNであって、
前記IGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有する、照射されたIGF-1R AS ODNとを含み、
前記チャンバー内の腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとの比が、約3.75×10 細胞:1μgAS ODN~約6.25×10 細胞:1μgAS ODNの範囲内である、バイオ拡散チャンバー。
[項目42]
前記IGF-1R AS ODNが約1~約5μgで存在する、項目41に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目43]
前記IGF-1R AS ODNが約2μgで存在する、項目41に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目44]
前記チャンバー内の前記腫瘍細胞が、前記対象から得られた前記腫瘍組織と比較してネスチン陽性細胞に関して富化されている、項目41~43のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目45]
約10 腫瘍細胞が前記チャンバー内に存在する、項目41~44のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目46]
前記腫瘍細胞が組織モルセレータを用いて前記対象から得られるものである、項目41~45のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目47]
前記組織モルセレータが静置外側カニューレ内に高速往復内側カニューレを含む、項目46に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目48]
前記外側カニューレがサイドアパーチャを含み、且つさらに前記腫瘍細胞が電子制御可変吸引により前記サイドアパーチャに吸い込まれるものである、項目47に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目49]
前記対象から前記腫瘍組織を得るとき、前記組織モルセレータが熱を生成しない、項目46に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目50]
前記腫瘍細胞が前記チャンバー内に約750,000~約1,250,000の範囲内で存在する、項目41~48のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
[項目51]
前記チャンバー内の腫瘍細胞とAS ODNとの比が約5.0×10 細胞:1μgである、項目41~49のいずれか一項に記載のバイオ拡散チャンバー。
【外国語明細書】