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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008192
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/72 20180101AFI20230112BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230112BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20230112BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20230112BHJP
【FI】
F24F11/72
F24F3/00 B
F24F3/044
F24F11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111554
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中下 一成
(72)【発明者】
【氏名】山岡 正洋
(72)【発明者】
【氏名】藏本 誠
【テーマコード(参考)】
3L053
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BA10
3L260AA13
3L260AA16
3L260AB01
3L260BA02
3L260BA13
3L260BA41
3L260BA74
3L260CB62
3L260CB90
3L260FA02
3L260FA03
3L260FA15
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を有効活用して、省エネルギー化を図ること。
【解決手段】屋内に設置されて、ヒートポンプにより加熱された加熱水を供給自在なヒートポンプ式給湯装置11と、そのヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して、屋内の冷却対象を冷却させる冷却処理を行う冷却処理部12とが備えられ、冷却対象として、温度上昇し易い第1冷却対象4と、その第1冷却対象4よりも温度上昇し難い第2冷却対象5とが備えられ、冷却処理部12は、冷却処理において、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱にて第2冷却対象5よりも第1冷却対象4を優先して冷却し、第1冷却対象4を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、第1冷却対象4に加えて、第2冷却対象5を冷却するように構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置されて、ヒートポンプにより加熱された加熱水を供給自在なヒートポンプ式給湯装置と、
そのヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を利用して、屋内の冷却対象を冷却させる冷却処理を行う冷却処理部とが備えられ、
前記冷却対象として、温度上昇し易い第1冷却対象と、その第1冷却対象よりも温度上昇し難い第2冷却対象とが備えられ、
前記冷却処理部は、前記冷却処理において、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱にて前記第2冷却対象よりも前記第1冷却対象を優先して冷却し、第1冷却対象を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、第1冷却対象に加えて、第2冷却対象を冷却するように構成されている熱利用システム。
【請求項2】
前記第1冷却対象のみにて冷却要求がある場合には、前記冷却処理部が、前記ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱にて第1冷却対象を冷却し、第1冷却対象を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、余剰の冷熱を屋外に排出させている請求項1に熱利用システム。
【請求項3】
屋内には、前記ヒートポンプ式給湯装置を設置するヒートポンプ式給湯装置設置空間と、ヒートポンプ式給湯装置にて生じた冷熱を有する冷排気の供給を受ける供給チャンバ空間と、前記冷却対象となる冷却対象空間との夫々が区画された状態で備えられ、
前記冷却処理部は、前記供給チャンバ空間と前記冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な開閉部と、供給チャンバ空間から屋外への排気状態を制御自在な排気部とが備えられている請求項2に記載の熱利用システム。
【請求項4】
前記冷却対象空間として、前記第1冷却対象となる第1冷却対象空間と前記第2冷却対象となる第2冷却対象空間とが区画された状態で備えられ、
前記開閉部として、前記供給チャンバ空間と第1冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な第1開閉部と、供給チャンバ空間と第2冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な第2開閉部とが備えられている請求項3に記載の熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を利用可能な熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式給湯装置は、ヒートポンプにより水を加熱して、その加熱水を供給自在としており、ヒートポンプにより水を加熱する際に冷熱が生じることから、その冷熱を有効活用することが望まれている。
【0003】
そこで、従来、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を利用して冷却対象を冷却させる熱利用システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のシステムでは、ヒートポンプ式給湯装置の熱交換装置を屋内に設置することで、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を屋内にて利用可能とし、例えば、屋内の空気を冷却対象として、屋内の冷房を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-096798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、熱交換装置を屋内に設置して、単に、屋内の空気を冷却しているだけであり、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を有効活用できておらず、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱をどのように活用するかの点で改善の余地があった。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を有効活用して、省エネルギー化を図ることができる熱利用システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、屋内に設置されて、ヒートポンプにより加熱された加熱水を供給自在なヒートポンプ式給湯装置と、
そのヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を利用して、屋内の冷却対象を冷却させる冷却処理を行う冷却処理部とが備えられ、
前記冷却対象として、温度上昇し易い第1冷却対象と、その第1冷却対象よりも温度上昇し難い第2冷却対象とが備えられ、
前記冷却処理部は、前記冷却処理において、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱にて前記第2冷却対象よりも前記第1冷却対象を優先して冷却し、第1冷却対象を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、第1冷却対象に加えて、第2冷却対象を冷却するように構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、ヒートポンプ式給湯装置を屋内に設置しているので、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱にて屋内の冷却対象を冷却させる際に、その冷熱を搬送する距離を短くでき、熱ロスや搬送エネルギーの増大を抑制して、省エネルギー化を図ることができる。
しかも、冷却処理部は、冷却処理において、第2冷却対象よりも第1冷却対象を優先して冷却するので、温度上昇し易い第1冷却対象を効果的に冷却することができながら、第1冷却対象を冷却したときの余剰の冷熱にて第2冷却対象をも冷却することができる。
【0010】
このように、温度上昇のし易さを考慮して、第1冷却対象と第2冷却対象との間での優先順位に応じた冷却を行いながら、ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱を余すことなく有効に活用して、第1冷却対象及び第2冷却対象を効果的に冷却することができ、省エネルギー化を効果的に図ることができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記第1冷却対象のみにて冷却要求がある場合には、前記冷却処理部が、前記ヒートポンプ式給湯装置にて生じる冷熱にて第1冷却対象を冷却し、第1冷却対象を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、余剰の冷熱を屋外に排出させている点にある。
【0012】
第1冷却対象のみにて冷却要求がある場合には、第1冷却対象のみを冷却すればよいので、第1冷却対象を冷却した状態で余剰の冷熱を有する場合に、その冷熱をそのまま屋内に存在させておくと、冷却させなくてもよい機器等を冷却させてしまう可能性がある。
そこで、本構成によれば、冷却処理部が、第1冷却対象を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、余剰の冷熱を屋外に排出させているので、冷却させなくてもよい機器等を冷却させてしまうことを防止することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、屋内には、前記ヒートポンプ式給湯装置を設置するヒートポンプ式給湯装置設置空間と、ヒートポンプ式給湯装置にて生じた冷熱を有する冷排気の供給を受ける供給チャンバ空間と、前記冷却対象となる冷却対象空間との夫々が区画された状態で備えられ、
前記冷却処理部は、前記供給チャンバ空間と前記冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な開閉部と、供給チャンバ空間から屋外への排気状態を制御自在な排気部とが備えられている点にある。
【0014】
本構成によれば、屋内には、ヒートポンプ式給湯装置設置空間と供給チャンバ空間と冷却対象空間とが区画された状態で備えられているので、供給チャンバ空間は、ヒートポンプ式給湯装置設置空間から、ヒートポンプ式給湯装置にて生じた冷熱を有する冷排気の供給を受けると、熱ロスを抑制しながら冷排気を貯留させておくことができる。
【0015】
開閉部は、供給チャンバ空間と冷却対象空間との連通部を開状態に制御することで、供給チャンバ空間に貯留された冷排気を冷却対象空間に供給させて、冷却対象空間を冷却させることができる。開閉部は、供給チャンバ空間と冷却対象空間との連通部を開状態に制御するだけで、冷排気を搬送するための搬送エネルギーの増大を招くことなく、冷却対象空間の冷却を行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
排気部は、供給チャンバ空間から屋外へ冷排気を排気することで、余剰な冷熱を有する冷排気を屋外に排出することができる。
【0016】
このように、冷却処理部として、開閉部及び排気部を備えるだけで、冷却対象空間の冷却だけでなく、余剰な冷熱を有する冷排気の屋外への排出も行うことができ、構成の簡素化を図りながら、冷却処理を適切に行うことができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記冷却対象空間として、前記第1冷却対象となる第1冷却対象空間と前記第2冷却対象となる第2冷却対象空間とが区画された状態で備えられ、
前記開閉部として、前記供給チャンバ空間と第1冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な第1開閉部と、供給チャンバ空間と第2冷却対象空間との連通部の開閉状態を制御自在な第2開閉部とが備えられている点にある。
【0018】
本構成によれば、第1開閉部は、供給チャンバ空間と第1冷却対象空間との連通部を開状態に制御することで、供給チャンバ空間に貯留された冷排気を第1冷却対象空間に供給させて、第1冷却対象空間を冷却させることができる。第2開閉部は、供給チャンバ空間と第2冷却対象空間との連通部を開状態に制御することで、供給チャンバ空間に貯留された冷排気を第2冷却対象空間に供給させて、第2冷却対象空間を冷却させることができる。第1冷却対象空間と第2冷却対象空間とが区画されているので、お互いに影響を受けることなく、第1冷却対象空間及び第2冷却対象空間の両方において冷却を適切に且つ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】熱利用システムの概略構成における第1冷却処理の状態を示す図
図2】熱利用システムの概略構成における第2冷却処理の状態を示す図
図3】熱利用システムの概略構成における第3冷却処理の状態を示す図
図4】第1~第3冷却処理の実行可否を示す表
図5】第1~第3冷却処理の何れかを選択する動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る熱利用システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この熱利用システムは、図1図3に示すように、ホテルや病院等の各種の建物1に適用可能であり、ヒートポンプにより加熱された加熱水を供給自在なヒートポンプ式給湯装置11と、そのヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して、建物1における屋内の冷却対象を冷却させる冷却処理を行う冷却処理部12とが備えられている。
【0021】
ちなみに、図1図3は、いずれも、建物1に適用した熱利用システムの概略構成を示すものであり、同様の概略構成を示している。図1図3において、ヒートポンプ式給湯装置11からの冷排気が通流する部位が異なるものであり、開状態のダンパを白抜きにて示し、閉状態のダンパを黒塗りにて示し、冷排気の通流状態を白抜き矢印にて示している。
【0022】
ヒートポンプ式給湯装置11は、建物1における屋内のヒートポンプ式給湯装置設置室2(ヒートポンプ式給湯装置設置空間に相当する)内に設置され、ヒートポンプにより水を加熱して加熱水(温水)を生成するように構成されている。ヒートポンプ式給湯装置設置室2には、ヒートポンプ式給湯装置11の全体に加えて、ヒートポンプ式給湯装置11にて生成した加熱水(温水)を貯留自在な貯湯槽21、屋外の外気をヒートポンプ式給湯装置11に供給する給気ファン22が備えられている。ちなみに、ヒートポンプ式給湯装置11は、建物1における各種の機器を設置自在な屋内機械室となっている。
【0023】
建物1には、ヒートポンプ式給湯装置設置室2の他に、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じた冷熱を有する冷排気の供給を受ける供給チャンバ室3(供給チャンバ空間に相当する)と、第1冷却対象となる第1冷却対象室4(第1冷却対象空間に相当する)と、第2冷却対象となるボイド5(第2冷却対象空間に相当する)と、空調対象室6とが備えられている。建物1には、ヒートポンプ式給湯装置設置室2と供給チャンバ室3と第1冷却対象室4とボイド5と空調対象室6との夫々が区画された状態で備えられている。
【0024】
この実施形態では、例えば、ヒートポンプ式給湯装置設置室2の上方側に供給チャンバ室3が位置する状態でヒートポンプ式給湯装置設置室2と供給チャンバ室3とが上下方向に隣接して配設されている。第1冷却対象室4は、上下方向に並ぶヒートポンプ式給湯装置設置室2と供給チャンバ室3とに左右方向で隣接して配設されている。ボイド5は、供給チャンバ室3及び第1冷却対象室4から上方側に延びるように配設されている。
【0025】
ヒートポンプ式給湯装置設置室2には、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じた冷熱を有する冷排気を供給チャンバ室3に供給する冷排気供給部23が備えられている。冷排気供給部23は、冷排気が通流する流路として構成され、ヒートポンプ式給湯装置11に内蔵されたファン等の送風動力を用いて、ヒートポンプ式給湯装置11から供給チャンバ室3に対して冷排気を供給自在となっている。
【0026】
供給チャンバ室3は、機器等が備えられておらず、冷排気の供給を受けて、その冷排気を貯留自在な室であり、別室等と連通部にて連通させるだけで、貯留している冷排気を別室等に供給自在に構成されている。
【0027】
第1冷却対象室4は、受電設備等の発熱機器41、第1冷却対象室4内の空気を屋外に排出させる排気ファン42が備えられている。第1冷却対象室4は、運転中に常時発熱のある発熱機器41が備えられた電気室等であり、温度上昇し易い室となっている。
【0028】
ボイド5は、建物1の上下方向に延びる吹き抜け空間となっており、その上端部に、ボイド5内の空気を屋外に排出させる換気部51が備えられている。
【0029】
空調対象室6は、例えば、居室等にて構成され、ボイド5を挟んで左右両側に位置する状態で建物1の各階に備えられている。空調対象室6には、屋外の外気又はボイド5内の空気を通流させる空気通流部61と、その空気通流部61にて通流する空気を空調処理自在な外調機62とが備えられている。空気通流部61には、屋外から外調機62への外気の供給量を調整自在な外気側ダンパ64(例えばモータダンパ)と、ボイド5から外調機62への空気の供給量を調整自在なボイド側ダンパ65(例えばモータダンパ)とが備えられている。
【0030】
外調機62は、空気通流部61にて供給される空気を空調処理し、空調処理後の空気を吹き出し部63から空調対象室6内に供給する空調運転を行うことで、空調対象室6の空調を行っている。外調機62は、空調運転として、例えば、空気通流部61にて供給される外気等の空気を冷却処理する冷却運転、空気通流部61にて供給される外気等の空気を加熱処理する加熱運転、空気通流部61にて供給される外気等の空気をそのまま空調対象室6に供給するナイトパージ運転(夜間外気冷房運転)等の各種の運転を実行可能に構成されている。ちなみに、外調機62は、冷却運転において、空気通流部61にて供給される外気等の空気を冷却処理する際に、空気を冷却処理するだけでなく、空気を冷却・除湿処理することもできる。
【0031】
ここで、外調機62にて冷却運転を行う場合には、温度の低い空気を冷却する方が、消費エネルギーの低減を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。また、外調機62にてナイトパージ運転を行う場合にも、温度の低い空気を取り込むことで、建物1の室内を効果的に冷却させることができる。
【0032】
そこで、複数の空調対象室6の夫々における外調機62を運転させるに当たり、冷却運転を行う場合及びナイトパージ運転を行う場合には、制御部16が、第1温度センサT1にて屋外の外気温度を取得し、第2温度センサT2にてボイド5内温度を取得し、その外気温度とボイド5内温度とを比較して、外気側ダンパ64及びボイド側ダンパ65のどちらのダンパを開状態とするかを制御している。
【0033】
ボイド5内温度の方が低い場合には、図1及び図2中、実線矢印にて示すように、制御部16が、ボイド側ダンパ65を開状態として、ボイド5内の空気を外調機62に供給している。逆に、外気温度の方が低い場合には、図1及び図2中、点線矢印にて示すように、制御部16が、外気側ダンパ64を開状態として、屋外の外気を外調機62に供給している。
【0034】
このように、外調機62が冷却運転やナイトパージ運転を行うに当たり、ボイド5内を冷却しておくことで、ボイド5内の空気を有効活用した外調機62の運転を行うことができ、省エネルギー化や建物1の室内を効果的に冷却させることができる。そこで、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して冷却する屋内の冷却対象を、第1冷却対象室4とするだけではなく、ボイド5を追加している。第1冷却対象室4は、運転中に常時発熱する発熱機器41が備えられているので、温度上昇し易い第1冷却対象空間となっている。それに対して、ボイド5は、第1冷却対象室4よりも温度上昇し難い第2冷却対象空間となっている。
【0035】
ヒートポンプ式給湯装置11を運転させることで、ヒートポンプ式給湯装置11にて冷熱が生じ、その冷熱を有する冷排気が冷排気供給部23にて供給チャンバ室3に供給されている。冷却処理部12は、供給チャンバ室3に貯留されている冷排気を供給することで、屋内の第1冷却対象室4やボイド5を冷却させる冷却処理を行う。
【0036】
この冷却処理を行うために、冷却処理部12は、供給チャンバ室3と第1冷却対象室4との連通部の開閉状態を制御自在な第1開閉部13と、供給チャンバ室3とボイド5との連通部の開閉状態を制御自在な第2開閉部14と、供給チャンバ室3から屋外への排気状態を制御自在な排気部15と、第1開閉部13、第2開閉部14及び排気部15の作動状態を制御する制御部16とが備えられている。第1開閉部13、第2開閉部14及び排気部15は、いずれも、例えば、モータダンパにて構成することができる。
【0037】
冷却処理部12は、冷却処理として、第1冷却処理、第2冷却処理、第3冷却処理の3種類の冷却処理を実行自在に構成されている。以下、各冷却処理について説明する。
【0038】
(第1冷却処理)
第1冷却処理は、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して、第1冷却対象室4を冷却させるための処理である。制御部16は、図1に示すように、第1開閉部13を開状態とし、且つ、第2開閉部14及び排気部15を閉状態として、供給チャンバ室3の冷排気を第1開閉部13を通して第1冷却対象室4に供給して、第1冷却対象室4を冷却している。このとき、制御部16は、第3温度センサT3にて第1冷却対象室4の室内温度を取得しており、その室内温度が所定温度範囲(例えば、設定上限温度以下の温度範囲)内になるように、第1開閉部13の開度を制御している。例えば、制御部16は、第3温度センサT3の検出温度(第1冷却対象室4の室内温度)が高くなるほど、第1開閉部13の開度が開き側になるように、第1開閉部13の開度を制御している。
【0039】
建物1における給排気については、給気ファン22により、ヒートポンプ式給湯装置11にて必要な空気量がヒートポンプ式給湯装置設置室2に導入されている。ヒートポンプ式給湯装置11からの冷排気が、供給チャンバ室3を介して第1開閉部13により、第1冷却対象室4に導入されているので、その冷排気の導入分が、排気ファン42により屋外に排出されている。このように、建物1における給排気の流れとしては、給気ファン22→ヒートポンプ式給湯装置設置室2→供給チャンバ室3→第1開閉部13→第1冷却対象室4→排気ファン42となっており、給気ファン22、ヒートポンプ式給湯装置11に内蔵されたファン等、排気ファン42の送風動力により、この空気の流れが実現されている。
【0040】
(第2冷却処理)
第2冷却処理は、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して、第1冷却対象室4を冷却させ、余剰の冷熱にてボイド5をも冷却させるための処理である。制御部16は、図2に示すように、第1開閉部13及び第2開閉部14を開状態とし、且つ、排気部15を閉状態として、供給チャンバ室3の冷排気を第1開閉部13を通して第1冷却対象室4に供給するとともに、供給チャンバ室3の残りの冷排気を第2開閉部14を通してボイド5に供給して、第1冷却対象室4に加えて、ボイド5を冷却している。
【0041】
このとき、制御部16は、第1冷却処理と同様に、第3温度センサT3にて第1冷却対象室4の室内温度を取得しており、その室内温度が所定温度範囲内になるように、第1開閉部13の開度を制御している。制御部16は、この第1開閉部13の開度制御に加えて、室内温度と比較設定温度(例えば、設定上限温度よりも所定温度だけ低い温度)との温度差に応じて、第2開閉部14の開度を制御している。余剰の冷熱がある場合、第3温度センサT3の検出温度(第1冷却対象室4の室内温度)が低くなるほど、余剰の冷熱量が多くなっていると考えられる。そこで、例えば、比較設定温度を設定し、第3温度センサT3の検出温度(第1冷却対象室4の室内温度)と比較設定温度とを比較することで、比較設定温度に対して、第3温度センサT3の検出温度(第1冷却対象室4の室内温度)がどれだけ低くなっているかの温度差(比較設定温度-室内温度)を求めている。これにより、制御部16が、その求めた温度差(比較設定温度-室内温度)が大きくなるほど、第2開閉部14の開度が開き側になるように、第2開閉部14の開度を制御している。
【0042】
建物1における給排気については、給気ファン22により、ヒートポンプ式給湯装置11にて必要な空気量がヒートポンプ式給湯装置設置室2に導入されている。ヒートポンプ式給湯装置11からの冷排気が、供給チャンバ室3を介して第1開閉部13により、第1冷却対象室4に導入されているので、その冷排気の導入分が、排気ファン42により屋外に排出されている。また、供給チャンバ室3の残りの冷排気が、第2開閉部14により、ボイド5に導入され、換気部51にて屋外に排出されている。このように、建物1における給排気の流れとしては、給気ファン22→ヒートポンプ式給湯装置設置室2→供給チャンバ室3→第1開閉部13→第1冷却対象室4→排気ファン42のメイン系統と、供給チャンバ室3の残りの冷排気→第2開閉部14→ボイド5→換気部51のメイン系統の途中部位から分岐した分岐系統との2つの系統となっており、給気ファン22、ヒートポンプ式給湯装置11に内蔵されたファン等、排気ファン42の送風動力により、この空気の流れの2つの系統が実現されている。
【0043】
(第3冷却処理)
第3冷却処理は、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を利用して、第1冷却対象室4を冷却させ、余剰の冷熱を屋外に排出させるための処理である。制御部16は、図3に示すように、第1開閉部13及び排気部15を開状態とし、且つ、第2開閉部14を閉状態として、供給チャンバ室3の冷排気を第1開閉部13を通して第1冷却対象室4に供給するとともに、供給チャンバ室3の残りの冷排気を排気部15を通して屋外に排出している。このとき、制御部16は、第1冷却処理と同様に、第3温度センサT3にて第1冷却対象室4の室内温度を取得しており、その室内温度が所定温度範囲内になるように、第1開閉部13の開度を制御している。
【0044】
建物1における給排気については、給気ファン22により、ヒートポンプ式給湯装置11にて必要な空気量がヒートポンプ式給湯装置設置室2に導入されている。ヒートポンプ式給湯装置11からの冷排気が、供給チャンバ室3を介して第1開閉部13により、第1冷却対象室4に導入されているので、その冷排気の導入分が、排気ファン42により屋外に排出されている。また、供給チャンバ室3の残りの冷排気が、排気部15により、屋外に排出されている。このように、建物1における給排気の流れとしては、給気ファン22→ヒートポンプ式給湯装置設置室2→供給チャンバ室3→第1開閉部13→第1冷却対象室4→排気ファン42のメイン系統と、供給チャンバ室3の残りの冷排気→排気部15のメイン系統の途中部位から分岐した分岐系統との2つの系統となっており、給気ファン22、ヒートポンプ式給湯装置11に内蔵されたファン等、排気ファン42の送風動力により、この空気の流れの2つの系統が実現されている。
【0045】
冷却処理部12は、冷却処理として、第1~第3冷却処理の何れかを行うが、いずれの冷却処理においても、第1冷却対象室4を冷却していることから、どの冷却処理を行っても、第1冷却対象室4を冷却させることができる。よって、常時発熱のある発熱機器41が備えられた第1冷却対象室4を優先して冷却することができ、第1冷却対象室4を効果的に冷却することができる。
【0046】
制御部16は、ヒートポンプ式給湯装置11の運転中に、冷却処理部12にて第1~第3冷却処理の何れかを行うが、まず、制御部16は、図1に示すように、冷却処理部12にて第1冷却処理を優先的に行う。第1冷却処理では、供給チャンバ室3に貯留されている冷排気を第1冷却対象室4に集中的に供給することから、第1冷却対象室4を集中的に冷却させることができる。
【0047】
第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有する場合には、制御部16が、図2に示すように、冷却処理部12にて第2冷却処理を行うことで、第1冷却対象室4に加えて、ボイド5を冷却している。これにより、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を余すことなく有効に活用して、第1冷却対象室4だけでなく、ボイド5を効果的に冷却させることができる。
【0048】
このとき、ボイド5が冷却されることから、外気温度(第1温度センサT1の検出温度)よりもボイド5内温度(第2温度センサT2の検出温度)の方が低くなる。よって、外調機62が冷却運転やナイトパージ運転を行うに当たり、制御部16が、図2中、実線矢印にて示すように、ボイド側ダンパ65を開状態として、ボイド5内の空気を外調機62に供給している。これにより、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じた冷熱にて冷却されたボイド5内の空気を利用して、外調機62が冷却運転やナイトパージ運転を行うことができ、空調対象室6の冷房を効率よく行いながら、省エネルギー化を図ることができる。
【0049】
第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有するか否かの判定については、例えば、第1冷却対象室4の室内温度を用いて判定することができる。第1冷却処理を実行することで、第1冷却対象室4が冷却されることから、第1冷却対象室4の室内温度が低下することになる。このとき、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有する場合には、第1冷却対象室4の室内温度が大きく低下することになるので、第1冷却対象室4の室内温度が大きく低下しているか否かを判定することで、余剰の冷熱が有るか否かを判定することができる。そこで、制御部16は、例えば、第1冷却対象室4の室内温度(第3温度センサT3の検出温度)と比較設定温度とを比較して、室内温度(第3温度センサT3の検出温度)が比較設定温度よりも低くなっていると、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有すると判定することができる。
【0050】
また、供給チャンバ室3における供給可能冷熱量、及び、第1冷却対象室4における必要冷熱量を求め、それらを比較し、供給可能冷熱量の方が必要冷熱量よりも大きいと、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有すると判定することもできる。供給チャンバ室3における供給可能冷熱量は、例えば、供給チャンバ室3の室内温度やヒートポンプ式給湯装置11からの冷排気温度等を用いて求めることができる。第1冷却対象室4における必要冷熱量は、例えば、第1冷却対象室4における発熱機器41の発熱量等を用いて求めることができる。
【0051】
このように、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有するか否かの判定の仕方については適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、冬期等、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有するからといって、第2冷却処理を行うと、建物1内においてボイド5やボイド5に隣接する部位が冷却されてしまい、凍結等の問題が生じることになる。
【0053】
そこで、冬期等、ボイド5を冷却する必要がなく、第1冷却対象室4のみにて冷却要求がある場合には、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有すると、制御部16が、図3に示すように、冷却処理部12にて第3冷却処理を行う。これにより、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有する場合に、余剰の冷熱を屋外に排出させることができ、建物1内においてボイド5やボイド5に隣接する部位が冷却されてしまい、凍結等の問題が生じるのを回避することができる。
【0054】
このように、冬期等では、外気温度(第1温度センサT1の検出温度)がボイド5内温度(第2温度センサT2の検出温度)よりも低くなるので、外調機62が運転を行うに当たり、制御部16が、図3中、点線矢印にて示すように、外気側ダンパ64を開状態として、外気を外調機62に供給している。
【0055】
上述の如く、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有するからといって、一律に第2冷却処理を行うと、かえって不都合を生じることから、例えば、第2冷却処理と第3冷却処理とのどちらを行うか等、実行不可の冷却処理と実行可能の冷却処理とを、季節や時間帯等に応じて予め設定しておくことができる。
【0056】
季節に応じて設定する場合には、図4の表に示すように、夏期及び中間期には、第3冷却処理を実行不可とし、且つ、第1冷却処理及び第2冷却処理を実行可能として設定し、冬期には、第2冷却処理を実行不可とし、且つ、第1冷却処理及び第3冷却処理を実行可能として設定することができる。このように設定することで、夏期や中間期では、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を余すことなく有効に活用して、第1冷却対象室4だけでなく、ボイド5を効果的に冷却させることができるので、ボイド5内の空気を利用して、外調機62が冷却運転やナイトパージ運転を行って、空調対象室6の冷房を効率よく行いながら、省エネルギー化を図ることができる。また、冬期では、ヒートポンプ式給湯装置11にて生じる冷熱を活用して、第1冷却対象室4を冷却することができながら、余剰の冷熱を外部に排出して、余計な冷却を効果的に防止することができる。
【0057】
また、第2冷却処理と第3冷却処理とのどちらを行うかの条件については、季節や時間帯だけでなく、ボイド5の冷熱の利用状況やボイド5内の温度等の各種の条件に基づいて、第2冷却処理を行うのか、又は、第3冷却処理を行うのかを設定しておくこともできる。
【0058】
以下、図5のフローチャートに基づいて、制御部16が、第1~第3冷却処理のうち、どの冷却処理を行うのかを選択する動作について説明する。
【0059】
まず、制御部16は、ヒートポンプ式給湯装置11が運転されているか否かを判定しており、ヒートポンプ式給湯装置11が運転されていると、冷却処理部12にて第1冷却処理を行う(ステップ#1のYesの場合、ステップ#2)。ちなみに、ヒートポンプ式給湯装置11は、貯湯槽21に加熱水(温水)を貯湯すべき貯湯要求等に応じて運転されており、ヒートポンプ式給湯装置11との間での通信等により、制御部16が、ヒートポンプ式給湯装置11が運転されているか否かの運転情報を取得している。
【0060】
次に、制御部16は、第1冷却対象室4を冷却しても余剰の冷熱を有する冷熱余剰状態であるか否かの判定を行っており、冷熱余剰状態であると、季節が冬期であるか否かの判定を行っている(ステップ#3のYesの場合、ステップ#4)。冷熱余剰状態であるか否かの判定は、例えば、上述の如く、第1冷却対象室4の室内温度(第3温度センサT3の検出温度)と比較設定温度とを比較して、室内温度(第3温度センサT3の検出温度)が比較設定温度よりも低いか否かによって行うことができる。また、季節が冬期であるか否かについては、制御部16等に内蔵されたカレンダー機能を用いて、判定することができる。
【0061】
季節が冬期ではなく、夏期又は中間期である場合には、制御部16が、冷却処理部12にて第2冷却処理を行う(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5)。また、季節が冬期である場合には、制御部16が、冷却処理部12にて第3冷却処理を行う(ステップ#4のYesの場合、ステップ#6)。
【0062】
このようにして、制御部16は、冷熱余剰状態であるか否か、及び、季節がいつであるか等の条件に応じて、第1~第3冷却処理の何れかを選択して、その選択した冷却処理を冷却処理部12にて行っている。
【0063】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0064】
(1)上記実施形態では、第1冷却対象空間となる第1冷却対象室4と第2冷却対象空間となるボイド5とを1つずつ備えているが、第1冷却対象空間及び第2冷却対象空間を複数備えることもでき、その数については適宜変更が可能である。
【0065】
(2)上記実施形態では、第1冷却対象空間を、常時発熱がある発熱機器41が備えられた第1冷却対象室4とし、第2冷却対象空間を、ボイド5としているが、第1冷却対象空間は、温度上昇し易い空間であればよく、第2冷却対象空間は、第1冷却対象空間よりも温度上昇し難い空間であればよく、第1冷却対象空間及び第2冷却対象空間をどのような空間とするかについては適宜変更が可能である。
【0066】
(3)上記実施形態では、供給チャンバ室3を備えているが、供給チャンバ室3を備えずに、例えば、ヒートポンプ式給湯装置設置室2と第1冷却対象室4とを直接連通させてその連通箇所に第1開閉部13を備え、ヒートポンプ式給湯装置設置室2とボイド5とを直接連通させてその連通箇所に第2開閉部14を備え、ヒートポンプ式給湯装置設置室2と屋外とを直接連通させてその連通箇所に排気部15を備えることもできる。
【符号の説明】
【0067】
2 ヒートポンプ式給湯装置設置室(ヒートポンプ式給湯装置設置空間)
3 供給チャンバ室(供給チャンバ空間)
4 第1冷却対象室(第1冷却対象空間)
5 ボイド(第2冷却対象空間)
11 ヒートポンプ式給湯装置
12 冷却処理部
13 第1開閉部
14 第2開閉部
15 排気部

図1
図2
図3
図4
図5