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特開2023-81925ポリエステルの滅菌工程のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081925
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ポリエステルの滅菌工程のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20230606BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20230606BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61L2/08 108
B65B55/04 B
B65B55/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030994
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2020522662の分割
【原出願日】2018-10-23
(31)【優先権主張番号】62/575,846
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513083004
【氏名又は名称】エボニック コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Evonik Corporation
【住所又は居所原語表記】2 Turner Place, Piscataway, NJ 08854, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ペアレント
(72)【発明者】
【氏名】ボリス オーバーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジエ ルー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリエステルの電子線照射による滅菌を行うに当たり、酸素が媒介する副作用、例えば鎖の切断および/またはポリマー鎖の架橋を回避することが可能な滅菌方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルを滅菌する方法であって、ガラス転移温度(Tg)を有するポリエステルを電子線で照射することを含み、ここで前記ポリエステルは、冷却材24によってそのTg未満の温度で保持され、且つ前記電子線が冷却材を通過しない、前記方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの滅菌工程の間にポリエステルを方向付け且つ冷却するための包装材であって、前記包装材は、
各々ポリエステル顆粒を含有する複数のパケットと、
前記複数のパケットを収容するための容器を定義し、且つさらに、前記容器の上に配置される上部領域と、前記容器の下に配置され一般に前記上部領域に対向する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間で前記容器の周りに配置される複数の側面とを定義するハウジングと
を含み、前記ハウジングは、
隣接するパケット間に配置されてそれらのパケットを分離するための少なくとも1つの仕切りと、
前記複数の側面の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメントと
を含み、前記コンパートメントは冷却材を収容し、前記冷却材は前記容器の直上には配置されておらず且つ前記容器の直下には配置されていないので、放射線が前記冷却材を通過することなく、前記容器は上から下へと、または下から上へと照射されることができる、前記包装材。
【請求項2】
前記ハウジングが、冷却材の脱気のための、前記コンパートメントと流体接続した複数の脱気孔をさらに含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記パケットが実質的に酸素不含である、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
前記少なくとも1つの仕切りが、平行に配列される一般に平面の複数の仕切りを含み、隣接する仕切りの間に1つのパケットが配置されている、請求項1に記載の包装材。
【請求項5】
前記仕切りおよび前記パケットが、前記複数の側面の1つから前記複数の側面の他方への方向に延伸する列において対面して配列されている、請求項4に記載の包装材。
【請求項6】
ポリエステルを滅菌する方法であって、ガラス転移温度(Tg)を有するポリエステルを電子線で照射することを含み、ここで前記ポリエステルは、冷却材によってそのTg未満の温度で保持され、且つ前記電子線が冷却材を通過しない、前記方法。
【請求項7】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸とポリグリコール酸との、および/またはポリカプロラクトンとのコポリマー、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)とポリエチレングリコール(PEG)とのコポリマー、PLGAとポリ(ジオキサノン)とのコポリマー、PLGAとポリ(トリメチレンカーボネート)とのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却材が、ドライアイス、ゲルアイスパック、アイスブランケットまたはそれらの組み合わせである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエステルを約10kGy~約300kGyで照射する、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエステルが、顆粒、粉末、ペレット、バルクまたはそれらの組み合わせの形態である、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリエステルを、実質的に酸素不含でパケット内に包装する、請求項6から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記パケットを、真空封止するか、または真空封止後に窒素でパージする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パケットが、内袋および外袋を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記内袋がポリエチレン、ナイロンまたはそれらの組み合わせを含み、且つ前記外袋が箔を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
照射前にポリエステルを包装材に加えることをさらに含み、前記包装材は、
ポリエステルを含む複数のパケットを収容するための容器を定義し、且つさらに、前記容器の上に配置される上部領域と、前記容器の下に配置され一般に前記上部領域に対向する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間で前記容器の周りに配置される複数の側面とを定義するハウジングを含み、前記ハウジングは、
隣接するパケット間に配置されてそれらのパケットを分離するための少なくとも1つの仕切りと、
前記複数の側面の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメントと
を含み、前記コンパートメントは冷却材を収容し、前記冷却材は前記容器の直上には配置されておらず且つ前記容器の直下には配置されていないので、放射線が前記冷却材を通過することなく、前記容器は上から下へと、または下から上へと照射されることができる、請求項6から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ポリエステルを滅菌する方法であって、ポリエステルを電子線で照射することを含み、前記ポリエステルが実質的に酸素不含のパケット内に包装されている、前記方法。
【請求項17】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸とポリグリコール酸との、および/またはポリカプロラクトンとのコポリマー、PLGAとPEGとのコポリマー、PLGAとポリ(ジオキサノン)とのコポリマー、PLGAとポリ(トリメチレンカーボネート)とのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエステルを約10kGy~約300kGyで照射する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエステルが、顆粒、粉末、ペレット、バルクまたはそれらの組み合わせの形態である、請求項16から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記パケットを、真空封止するか、または真空封止後に窒素でパージする、請求項16から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記パケットが、内袋および外袋を含む、請求項16から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記内袋がポリエチレン、ナイロンまたはそれらの組み合わせを含み、且つ前記外袋が箔を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
医療用途のバイオ材料は、使用前に滅菌する必要がある。1つの滅菌技術は、電子線(Eビーム)照射を使用することによる。しかしながら、バイオ材料、例えば生分解性ポリエステルのEビーム滅菌は、それらの用途を妨げかねない有害な副作用をもたらすことがある。
【0002】
概要
1つの態様において、本発明は、ポリエステルの滅菌工程の間にポリエステルを方向付け且つ冷却するための包装材を提供する。前記包装材は、各々ポリエステル顆粒を含有する複数のパケット、およびその複数のパケットを収容するための容器(receptacle)を定義するハウジングを含む。前記ハウジングは、前記容器の上に配置される上部領域と、前記容器の下に配置され一般に前記上部領域に対向する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間で前記容器の周りに配置される複数の側面とを定義する。前記ハウジングは、隣接するパケット間に配置されてそれらのパケットを分離するための少なくとも1つの仕切りと、複数の側面の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメントとを含む。前記コンパートメントは冷却材を収容する。冷却材は容器の直上には配置されず、且つ容器の直下には配置されないので、放射線が冷却材を通過することなく、容器は上から下へと、または下から上へと照射されることができる。
【0003】
他の態様において、本発明は、ポリエステルを滅菌する方法であって、ガラス転移温度(Tg)を有するポリエステルを電子線で照射することを含み、ここで前記ポリエステルは、冷却材によってそのTg未満の温度で保持され、且つ前記電子線が冷却材を通過しない、前記方法を提供する。
【0004】
他の態様において、本発明は、ポリエステルを滅菌する方法であって、ポリエステルを電子線で照射することを含み、前記ポリエステルが、実質的に酸素不含でパケット内に包装されている、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、滅菌工程の間、ポリエステルを方向付け且つ冷却するための包装材、および前記包装材を保管および輸送するためのコンテナを有する包装システムの分解立体図である。
図2図2図1の包装材の側面図である。
図3図3は、図2のライン3-3に沿った包装材の断面図である。
図4図4は、図2のライン4-4に沿った包装材の断面図である。
図5図5は、図2の包装材の第1の仕切りの平面図である。
図6図6は、図2の包装材の第2の仕切りの平面図である。
図7図7は、Eビーム線量が、種々のポリエステルのインヘレント粘度(IV)に及ぼす影響を示すプロットである。
図8図8は、A: 未処理のポリエステル、B: 25kGyで処理されたポリエステル、およびC: 冷却材としてのドライアイスと共に25kGyで処理されたポリエステルを示す一連の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本発明の任意の実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に示されるかまたは以下の図面に描かれる構成および要素の配置の詳細には限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施態様が可能であり、様々な方法で実施または行うことが可能である。
【0007】
1. 定義
特段定義されない限り、本願内で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって慣例的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含めて本書面が支配する。好ましい方法および材料を以下で説明するが、本発明の実施または試験において、本願内で説明されたものと類似または均等な方法および材料を使用できる。本願内で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照をもってその全文が本願内に含まれるものとする。本願内で開示される材料、方法および例は、説明のためだけであり、限定することは意図されていない。
【0008】
本願内で使用される際、用語「含む」、「有する」、「できる」、「含有する」およびそれらの変化形は、開放型の移行句、用語または文言であり、さらなる行為または構造の可能性を排除しないことが意図されている。単数形は、文脈上明らかにそうではない場合を除き、複数の対照物を含む。本開示は、本願内で示される実施態様または要素「を含む」、「からなる」、および「から実質的になる」他の実施態様も、明示的に記載されていてもいなくても想定している。
【0009】
接続語「または」は、その接続語によって関連付けられた1つ以上の挙げられた要素のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。例えば、「AまたはBを含む装置」との句は、Aを含みBが存在しない装置、Bを含みAが存在しない装置、AとBとの両方が存在する装置に関し得る。「少なくとも1つのA、B、…およびN」または「少なくとも1つのA、B、…Nまたはそれらの組み合わせ」との句は、最も広い意味において、A、B、…およびNを含む群から選択される1つ以上の要素、つまり、A、B、…またはNの要素の1つ以上の任意の組み合わせを意味し、単独の任意の1つの要素、または含まれ得る1つ以上の他の要素との組み合わせ、挙げられていないさらなる要素との組み合わせを含むことを意味すると定義される。
【0010】
量に関連して使用される修飾語「約」は、記載された値を含み、文脈によって示された意味を有する(例えば、少なくともその特定の量の測定に関連する程度の誤差を含む)。修飾語「約」はまた、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するとみなされるべきである。例えば「約2~約4」との表現は、「2~4」の範囲も開示している。「約」との用語は、示された数字の±10%に関し得る。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲も示すことがあり、且つ「約1」は0.9~1.1を意味することがある。「約」の他の意味、例えば丸めは文脈から明らかであり、例えば「約1」は0.5~1.4を意味することもある。
【0011】
実質的に酸素不含または実質的に酸素を含まないとの文言は、本願においては、空間から酸素を除去する能力における真空包装工程の固有の制限に鑑み、ほとんど酸素不含、または酸素不含に近いとして定義される。実質的に酸素不含とは、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、0.9ppm未満、0.8ppm未満、0.7ppm未満、0.6ppm未満、0.5ppm未満、0.4ppm未満、0.3ppm未満、0.2ppm未満、0.1ppm未満、0.05ppm未満、0.01ppm未満、または0ppmの酸素が存在することに言及できる。
【0012】
2. 包装システム
図1は、滅菌工程の間、ポリエステルを方向付け且つ冷却するための包装材12、および前記包装材12を保管および輸送および冷却するためのコンテナ14を有する包装システム10を図示する。
【0013】
コンテナ14は、フレーム16、例えば板紙箱、または内側18と外側20とを定義する他の構造または材料を含む。フレーム16は、他の紙製品から、または他の構成においては、他の材料、例えばポリマーから形成され得る。フレーム16は一般に、フレーム16の内側18上の包装材12のための封入具を定義する。図示される構成において、フレーム16は、6面の平行六面体、たとえば直方体である。他の構成において、フレーム16は他の形状を有することができる。図示される構成において、コンテナ14は約26インチ(長さL1)×約15インチ(高さH1)×約24インチ(幅W1)の全体的な寸法を有する。「約」との用語は、包装システム、包装材、コンテナ等の寸法に関する場合、±2インチを意味すると理解されるべきである。他の構成において、長さL1は22~30インチであり、高さH1は11~19インチであり、且つ幅W1は20~28インチである。さらに他の構成において、任意の適した寸法、例えば任意の方向において60インチ以下が可能である。
【0014】
フレーム16は、断熱性の裏地22、例えばStyrofoam(登録商標)(例えば独立気泡押出ポリスチレンフォーム)の裏地、またはフレーム材料よりも熱伝導性が低い他の適した断熱材料を含み得る。断熱性の裏地22は、フレーム16の内部で、フレーム16の6面の1つ以上に隣接して配置され得る。図示される構成において、断熱性の裏地22は、フレーム16の6面の全ての内側に配置される。他の構成において、断熱性の裏地22は、フレーム16の外側に配置され得る。コンテナ14は、フレーム16の内側で、裏地22に隣接して配置されるコンテナ冷却材24、例えばドライアイス(二酸化炭素)も含む。コンテナ冷却材24は、任意の適した形態、例えばペレット、スラブ等のドライアイスを含み得る。他の構成において、コンテナ冷却材24は、他の物質、例えばアイスブランケット、ゲルアイスパック等を含み得る。コンテナ冷却材24は、断熱性の裏地22の6面の1つ以上に隣接して配置され得る。図示される構成において、コンテナ冷却材24は、断熱性の裏地22の6面の全ての内側に配置される。
【0015】
コーナー用ブロック26は、包装材12がコンテナ14内に収容された際に、包装材12とコンテナ14との間の間隙をもたらす。コーナー用ブロック26はまた、以下により詳細に説明されるとおり、包装材12を固定する。コーナー用ブロック26は、発泡材料または任意の適した材料から形成され得る。図示された構成において、8つのコーナー用ブロック26が用いられる。しかしながら、他の構成において、コーナー用ブロック26の数は、様々な形状のコンテナ14および包装材12にとって最も適するように変化できる。
【0016】
包装材12は、ハウジング28(図1~4)を含み、それは、内側34と外側36とを定義する底30および/または蓋32を含み得る。図示された構成において、ハウジング28は6面の平行六面体、例えば直方体であるが、他の構成においては他の形状または他の数の面も有し得る。図示される構成において、包装材12は約20インチ(長さL2)×約8インチ(高さH2)×約17インチ(幅W2)の全体的な寸法を有する。他の構成において、長さL2は16~24インチであり、高さH2は4~12インチであり、且つ幅W2は13~21インチである。さらに他の構成において、任意の適した寸法、例えば任意の方向において48インチ以下が可能である。
【0017】
ハウジング28は、内側34上で複数のパケット40(以下でより詳細に説明)を収容するための容器38を定義する。図2を参照して、ハウジング28は一般に、容器38の上に配置される上部領域42(例えば前記6面の第1の面)、容器38の下に配置され、一般に前記上部領域42に対向する底部領域44(例えば、前記6面の第1の面に対向する他の面)、および容器38の周りに配置される、前記上部領域42と前記下部領域44との間の複数の側面46(例えば、前記6面の残り)を定義する。複数の側面46は一般に、上部領域42と下部領域44との間で容器38の周りに環を形成する。「上部」、「下部」、「上」および「下」との用語は、本願において使用され得る際、任意の固定された参照点に対する相対的な用語であり、重力に関する方向付けは必要としないことが理解されるべきである。むしろ、それらの用語は一般に、互いに対する領域および方向を定義する。
【0018】
包装材12は、隣接するパケット40の間に配置されてそのパケット40を分離するための少なくとも1つの仕切り48(またはインサート)を含む。図示された構成において、少なくとも1つの仕切り48は、実質的に平面50を有する複数の仕切り48を含む(図5)。仕切り48は、容器38内部で互いに対面し且つ平行に一列に配置されて、パケット40の1つが配置される隣接する仕切り48の各々の対の間の間隙52を定義する。図示される構成において、各々の間隙52は1~2インチ(例えば約1.5インチ)であるが、他の構成においてはより大きいまたは小さくてもよい。仕切り48の列は、複数の側面46の1つから、対向する側であり得る複数の側面46の他方の方向に延伸する。図示される構成において、11個の仕切りの間に10個のパケットが配置されている。しかしながら、他の構成において、任意の適した数のパケット40を用いることができる。例えば、他の構成において、8~12個のパケット、6~14個のパケットなどを用いることができる。包装材12は、複数の仕切り48に対して横手に(例えば複数の仕切り48に垂直に)配置される一対のインサート54も含む(図3および図6に示すもの)。
【0019】
包装材12は、複数の側面46の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメント56も含む(図1、3および4)。コンパートメント56は、複数の側面46の1つの一部に沿って、複数の側面46の1つに沿って、複数の側面46の2つに沿って、複数の側面46の3つに沿って、または複数の側面46の全てに沿って延伸できる。例えば、コンパートメント56は、図1に示すとおり、ハウジング28の複数の側面46の4つ全てに配置されて、容器38を側面46上で取り囲むが、上部42または下部44では取り囲まずに、環を形成する。コンパートメント56は、容器38の端部で配置された仕切り48とハウジング28との間で、さらにインサート54とハウジング28との間で定義され得る。他の構成において、他のインサート、仕切り、壁または構造を用いて、コンパートメント56を容器38から分離できる。
【0020】
コンパートメント56は、ハウジング28の内側且つ容器38の外側に配置される冷却材58、例えばドライアイス(二酸化炭素)を収容する。冷却材58は、任意の適した形態、例えばペレット、スラブ等のドライアイスを含み得る。他の構成において、冷却材58は他の物質を含み得る。冷却材58は、容器38の直上には配置されておらず、且つ容器38の直下には配置されていないので、以下でより詳細に説明するとおり、放射線が冷却材58を通過することなく、容器38は上から下へと、または下から上へと照射されることができる。
【0021】
ハウジング28は、冷却材58の脱気のために、コンパートメント56と流体接続している複数の脱気孔60を含む。図示される構成において、脱気孔60は、底30および蓋32における開口部として形成され、各々の脱気孔60は、一般に、上から下の方向に延伸する細長いスロットの形態を有する。図示される構成においては10個の脱気孔60が用いられ、各々のパケット40について1つの脱気孔60が備えられる。しかしながら、他の構成において、脱気孔60の数、大きさおよび形状は変化することがあり、パケット40に相応している必要はない。
【0022】
包装材12は、トレイ62(図1)も含み、前記トレイは容器38を覆い(従ってパケット40を覆い)、且つ冷却材58がコンパートメント56から容器38へと溢れることを防ぐ。トレイ62は、カバー部64を含み、前記カバー部は実質的に平面であり、容器38上に配置されて、容器38を覆うことができる。カバー部64の寸法は一般に、容器38の上限の相応の寸法と合致する。トレイ62は、カバー部64からぶら下がるフラップ66も含み、それはカバー部64に対して横手であってよい。フラップ66は、容器38の端部で仕切り48に直接的に隣接して容器38内に延伸する。従って、トレイ62は、容器38内でパケット40を固定し、冷却材58が容器38に入ることを防ぐ障壁を提供する。トレイ62は紙製品、例えば板紙、カード用紙などから、または他の構成においては他の適した材料、例えばポリマー、繊維などから製造され得る。包装材12がコンテナ14内に配置される場合、コーナー用ブロック26がコンテナ14内で包装材12を固定して、パケット40を保持している容器38へと冷却材58が動くことを防ぐ。
【0023】
各々のパケット40は、第1および第2のパケット面68を定義し、パケット40は互いに対して、および隣接する仕切り48に対面して配列される。パケット40は、箔、ポリマーまたは任意の他の材料製であってよく、且つ各々、以下により詳細に説明される工程において滅菌されるべきポリエステル顆粒(以下でより詳細に定義する)を含有する。各々のパケット40は、ポリエステル顆粒がパケット40の内側で実質的に酸素不含環境下にあるように、真空包装され且つ封止される。
【0024】
3. ポリマーの滅菌方法
ここで、電子線の放射を使用することによるポリマー、特にポリエステルの滅菌方法が開示される。1つの態様において、ポリエステルを滅菌する方法であって、ガラス転移温度(Tg)を有するポリエステルを電子線で照射することを含み、ここで前記ポリエステルは、冷却材によってそのTg未満の温度で保持され、且つ前記電子線が冷却材を通過しない、前記方法が開示される。
【0025】
電子線滅菌の間、滅菌されるべきポリマーに大量のエネルギーが導入され得る。このエネルギーは熱を生成する作用を有することがあり、その熱がポリマーの温度を上昇させてポリマーの融解をもたらすことがある。滅菌の間にポリマーを(例えばそのTg未満に)冷却することは、試料中の融解を最小化できる。しかしながら、ポリマーを冷却材中で直接的に包装することはできず、なぜなら、これは電子の吸収および散乱を引き起こすことがあり、そのことが滅菌されているポリマーに適用される線量の不規則性をもたらしかねないからである。ポリエステルをそのTg未満に保ち且つ電子線が冷却材を通過しないことによる開示される方法は、滅菌の間のポリマーの融解の問題を軽減できる。従って、開示される方法において、(例えば顆粒形態の)ポリエステルは照射の間に融合し得ない。
【0026】
前記方法は、様々な線量の電子線照射を使用できる。例えば、ポリエステルを、10kGy~約300kGy、例えば約15kGy~約250kGy、約10kGy~約200kGy、または約15kGy~約50kGyで照射できる。いくつかの実施態様において、ポリエステルを10kGyより上、12kGyより上、15kGyより上、または17kGyより上で照射できる。いくつかの実施態様において、ポリエステルを、300kGy未満、250kGy未満、200kGy未満または150kGy未満で照射できる。
【0027】
前記ポリエステルは、高められた温度下で凝集の影響を受けやすい任意のポリエステル、並びに酸素が媒介するポリマー鎖の切断および/またはポリマー鎖の架橋の影響を受けやすい任意のポリエステルであってよい。ポリエステルの例は、限定されずに、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ乳酸とポリグリコール酸との、および/またはポリカプロラクトンとのコポリマー(例えばポリ(乳酸-co-グリコール酸)-PLGA)、PLGAとポリエチレングリコール(PEG)とのコポリマー、PLGAとポリ(ジオキサノン)とのコポリマー、PLGAとポリ(トリメチレンカーボネート)とのコポリマー、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、ポリエステルはポリ乳酸、PLGAまたはそれらの組み合わせであってよい。前記ポリエステルは、約1kDa~約500kDa、例えば約2kDa~約400kDaまたは約3kDa~約300kDaのMwを有し得る。さらに、コポリマーを含む実施態様において、コポリマーは、最終製品の意図する目標に依存して、様々な供給比の異なるモノマーを有し得る。
【0028】
さらに、ポリエステルは、様々な異なる形態で存在できる。例えば、ポリエステルは顆粒、粉末、ペレット、バルクまたはそれらの組み合わせの形態で存在できる。ポリエステルは、上述のとおり、パケット中に包装されることができ、且つそのパケットは実質的に酸素不含であることができる。いくつかの実施態様において、ポリエステルは顆粒の形態であってよく、その顆粒は実質的に酸素不含でパケット内に包装されている。パケットは、真空封止されているおかげで、実質的に酸素不含であることができる。いくつかの実施態様において、パケットを真空封止した後、不活性ガス、例えば窒素および/またはアルゴンでパージできる。他の実施態様において、パケットを不活性ガスでパージした後、真空封止することができる。パケットは、内袋と外袋とを含み得る。内袋は、ポリエチレン、ナイロンまたはそれらの組み合わせを含み得る。外袋は箔を含み得る。
【0029】
パケットは、それをポリエステルの照射のために有用にする有利な特性を有し得る。例えば、内袋は、電子線照射の前、その間および/またはその後に、約10lbf/in~約15lbf/inの封止強度を有し得る。さらに、外袋は、電子線照射の前、その間および/またはその後に、約13lbf/in~約20lbf/inの封止強度を有し得る。内袋および外袋の封止強度の値は、袋の任意の側(例えば上部、下部等)で測定してよい。
【0030】
開示される方法は、ポリエステルが、電子線の照射によって誘発される、酸素が媒介する副作用、例えば鎖の切断および/またはポリマー鎖の架橋を回避することを可能にできる。従って、開示される方法は、ポリエステルが、照射工程の間に特定の物理的特性、例えばインヘレント粘度、分子量および/または多分散性を保持することを可能にできる。例えば、照射後のポリエステルは、照射前のポリエステルのインヘレント粘度に対して約0%~約15%のインヘレント粘度の変化、例えば照射前のポリエステルのインヘレント粘度に対して約0.1%~約13%の変化、または約0%~約12%の変化を有し得る。さらに、照射後のポリエステルは、照射前のポリエステルのMwに対して約0%~約20%のMwの変化、例えば照射前のポリエステルのMwに対して約0.1%~約17%の変化、または約0%~約16%の変化を有し得る。
【0031】
前記方法は、いくつかの異なる冷却材(上述のとおり)を使用して、ポリエステルの温度をそのTg未満に保持することができる。例えば、適した冷却材は、限定されずに、ドライアイス、アイスブランケット、ゲルアイスパック、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、冷却材はドライアイスであってよい。
【0032】
前記方法は、照射前に、上述のとおりポリエステルを包装材に加えることをさらに含むことができる。例えば、前記方法は、照射前にポリエステルを包装材に加えることをさらに含むことができ、その際、前記包装材は、複数のパケットを収容するための容器を定義し、且つさらに、前記容器の上に配置される上部領域と、前記容器の下に配置され一般に前記上部領域に対向する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間で前記容器の周りに配置される複数の側面とを定義するハウジングを含み、前記ハウジングは、隣接するパケットの間に配置されてそれらのパケットを分離するための少なくとも1つの仕切りと、前記複数の側面の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメントとを含み、前記コンパートメントは冷却材を収容し、前記冷却材は前記容器の直上には配置されておらず且つ前記容器の直下には配置されていないので、放射線が冷却材を通過することなく、前記容器は上から下へと、または下から上へと照射されることができる。
【0033】
他の態様において、ポリエステルを滅菌する方法であって、ポリエステルを電子線で照射することを含み、前記ポリエステルが、実質的に酸素不含のパケット内に包装されている、前記方法がここで開示される。
【0034】
一般に、ポリエステル、パケット、電子線照射の線量、照射後のポリエステル特性に関する上記の記載は、ポリエステルを電子線で照射することを含む方法であって、ポリエステルが実質的に酸素不含のパケット内に包装されている、前記方法に適用可能である。簡潔化のために、ここではこの説明は繰り返さない。
【実施例0035】
4. 実施例
例1および2で使用されるポリマーについての名称:
ポリマー1: ポリ(D,L-ラクチド) - IV 0.22dL/g - Mw 19kDa;
ポリマー2: ポリ(D,L-ラクチド) - IV 0.33dL/g - Mw 32kDa;
ポリマー3: ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) - IV 0.20dL/g - Mw 18kDa - ラクチド:グリコリドの供給比50:50;
ポリマー4: ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) - IV 0.37dL/g - Mw 41kDa - ラクチド:グリコリドの供給比50:50;
ポリマー5: ポリマー3と同様且つ高密度化;
ポリマー6: ポリマー4と同様且つ高密度化;
ポリマー7: ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) - IV 0.20dL/g - Mw 14kDa - ラクチド:グリコリドの供給比75:25;
ポリマー8: ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) - IV 0.38dL/g - Mw 38kDa - ラクチド:グリコリドの供給比75:25;
ポリマー9: グルコース開始剤を用いた分枝ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) - IV 0.50dL/g - Mw 66kDa - ラクチド:グリコリドの供給比55:45。
【0036】
例1 - 電子線滅菌実験I
ポリマーの分解の最も直接的な影響は、分子量の損失およびインヘレント粘度の減少である。試料をクロロホルム(0.1% w/v)中に25℃で溶解させてウベローデキャピラリー内で測定する調和インヘレント粘度(IV)法を使用して、暴露されていない試料および暴露された試料と試験した。具体的には、3つの異なる包装方法を実施した: 1)真空包装、2)N2パージを用いた真空包装、および3)空気包装。異なる包装方法の試料を、2つの異なる線量40kGyおよび200kGyでのEビーム照射を介して滅菌した。暴露された材料のIVデータを表1に列挙する。項目1~3に示されるとおり、Eビーム暴露後、空気包装の試料は、真空包装の試料およびN2パージを用いた真空包装の試料と比較してより低いIVを有する。線量を40kGyから200kGyへと増加させると、真空包装の試料のIVは0.29dL/gのままである(項目4)。しかしながら、空気包装の試料のIVは0.25dL/gへとさらに低下する(項目5)。これは、酸素の除去がポリマーの分解を低減させる原因となり得ることを示している。同様の傾向が、ポリマー10の滅菌においても観察された。さらに、真空包装の試料におけるIVの低下(項目6)は、空気包装の試料におけるもの(項目7)よりも少ないことが観察される。
【0037】
電子線処理によってもたらされる鎖の切断および分解に起因して、IVは線量の増加に伴って著しく減少することが予測されたが、IVの減少は最小限であった。試料の真空包装は、酸素のフリーラジカルの量を減らし、それによってフリーラジカルの損傷の量を減らすという仮説が立てられる。
【0038】
【表1】
【0039】
例2 - 電子線滅菌実験II
この例は、電子線滅菌が複数のポリマーに及ぼす影響をさらに評価する。具体的には、この実験では、いくつかの制御放出ポリマーを評価し、ポリマーの外観、分子量およびインヘレント粘度におけるそれらの変化を調べた。包装材の封止強度も試験した。
【0040】
方法
材料の受け取り: ポリマー試料を滅菌施設から受け取り、冷蔵条件で保管した。下記の表2に受け取ったポリマーを列挙する。
【0041】
【表2】
【0042】
受け取った試料は無傷で、可視の欠陥はなかった。試料は触ると冷たく、4℃で保管された。
【0043】
包装: 表3に列挙された20グラムの試料を、内側の包装としてのポリエチレン/ナイロンの袋、および箔で裏張りされた袋内に包装した。内袋と外袋との両方を真空封止した。
【0044】
【表3】
【0045】
輸送: 表3に列挙された各々の試料の3つを集め、各々の試料の1つのセットを組にして、バッグ内に入れ、そのバッグについて特定の暴露線量をラベル付けした。各々の試料上のラベルを暴露線量でマークし、暴露後にそれらを混同しないようにした。暴露線量は、17.5kGy、25kGyおよび35kGyであった。その包装物を冷蔵庫内で、4℃で保管した後、それらを8個の冷凍保冷パックと共に、認定された輸送容器に入れた。試料を照射(dosing)まで4℃で保管した。
【0046】
照射: 試料を4℃で保管し、仕分けし、そして17.5kGy、25kGyおよび35kGyの電子線照射で照射した。次いで、試料を冷蔵室に戻し、認定された同じ輸送容器内で8個の冷凍保冷パックと共に輸送した。
【0047】
電子線処理後の材料の受け取り: 試料を冷たい状態で受け取り、箔の袋から取り出した。材料の凝集が(いくつかの試料において)生じたことがわかった。凝集は、線量の増加と共に増加しているように見えた。試料を開け、約2~3グラムの各々の試料を、プラスチックのねじ蓋を備えたラベル付けされたガラスバイアル内に入れて分析に送った。
【0048】
結果
暴露された試料を、1セットの暴露されていないままの試料と共に、IVの試験およびゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(溶剤としてクロロホルム、およびポリスチレン標準に対して較正)のために分析に送った。結果を以下の表4に列挙する。
【0049】
【表4】
【0050】
全ての分析データを検証し、元のGPCデータのいくつかの統合を再評価して、不一致が誤った結果をもたらすことがあるベースラインを正規化した。
【0051】
低分子量の酸ポリマーについてのGPCにおける「テーリング」によって引き起こされる、Mnおよび多分散性の分析に起因するいくつかの歪んだ結果があることがわかった。これは、それらのポリマーのためのGPCの公知の問題である。これは、高いPDIをもたらすポリマー3、ポリマー5およびポリマー7についてのデータにおいて顕著であった。それらのデータは傾向を示すための相対的なデータとして使用できる。
【0052】
インヘレント粘度: ポリマーの分解の最も直接的な影響は、分子量の損失およびインヘレント粘度の減少である。電子線処理によってもたらされる鎖の切断および分解に起因して、IVは線量の増加に伴って著しく減少することが予測されたが、IVの減少は最小限であった。例1と同様に、試料の真空包装は、酸素のフリーラジカルの量を減らし、それによってフリーラジカルの損傷の量を減らすという仮説が立てられる。表5におけるデータは、その製品の仕様に沿って暴露前および暴露された材料を列挙する。IVに及ぼす影響は最小限であり、且つ全ての製品のIVは仕様の範囲内のままであった。
【0053】
【表5】
【0054】
それらの影響は図7においてグラフ的に理解できる。IVにおけるより大きな変化は、より高い出発IVを有するポリマーによって実現されることが注記される。
【0055】
粒子の融解: 電子線滅菌は、生成される熱の量が少ないので、ポリマー材料の好ましい滅菌方法である。生成される熱のいくつかは、ポリマーについての比熱から計算できる。式Δ℃=0.239×kGy/h、およびh=0.27964cal/g℃および0.5497cal/g℃(Thomas S, Yang W, Advances in Polymer Processing: From Macro-To-Nano-Scales. Cambridge UK: Woodhead Publishing: 2009: 414ページによって開示され、前記文献は参照をもってその全文が本願に含まれるものとする)を使用して、35kGyでのポリマー温度の最大の上昇は約15.2℃~約29.9℃であると予測された。
【0056】
ポリマーを4℃で滅菌器に入れたが、より低い線量であっても融解が生じた。温度がガラス転移温度より上に高められたので、融解が生じたと考えられる。予測されたよりも高い温度の変化は、系の構造、例えば包装および箔で裏張りされたコーティングによって引き起こされることがある。この融解を回避するために、第2のセットの材料をドライアイス内で包装するようにとの指示書と共に送った。ドライアイス内で暴露された試料は、35kGyであっても融解を示さなかった。(図8参照)。
【0057】
密封システム: 20グラムのポリマー9の試料を、上述のとおりパケット内に包装した。暴露された試料と暴露されていない試料とを、ASTM F88/F88M-15 Standard Test Method for Seal Strength of Flexible Barrier Materialsによって分析した。その結果は、電子線滅菌における線量依存性はなく、外側の封止における袋ごとの封止強度における小さなばらつきがあることを示した(表6参照)。内袋は著しいばらつきは示さなかった。このデータは、密封システムにおける製造元のデータによって裏付けられている。従って、密封システムは、ポリエステルの滅菌のために適しているはずである。
【0058】
【表6】
【0059】
この例は、線量17.5、25および35kGyでの電子線滅菌がポリマーに及ぼす効果を調査した。17.5または25kGyの線量は、見積もられた汚染微生物数に基づく滅菌に適していると予測され、35kGyは過剰な暴露を表す。イオン化滅菌は、鎖の切断、架橋またはそれら2つの組み合わせをもたらしかねないフリーラジカルを生成することがあり、それはポリマーの分子量における増加または減少において反映され得る。IVは分子量に比例するので、同様の変化はIVについて見えるはずである。
【0060】
全ての線量で、IV値は変わらないままであるか、またはわずかな減少が実証されたかのいずれかであった。ポリマーのIVの全ては、表5からわかるとおり、元の仕様内のままであった。表7からわかるとおり、分子量において気付かれた同様の減少がある。より大きな分子量を有するポリマーは、分子量における減少のパーセントが最も高かった。
【0061】
包装は試験された線量で適していることを示す。試料を真空封止して酸素含有率が低減され、それによって酸素のフリーラジカルの影響が低減され、そのことが、Eビーム滅菌の間の保護要因であるという仮説が立てられる。
【0062】
さらに、全ての製品のIVが仕様内のままである一方で、周囲温度で滅菌された製品は工程によって生成された熱によって物理的な融解を示すことがわかった。この問題は、系および工程内にドライアイスを包含することによって緩和された。
【0063】
【表7】
【0064】
例3 - 電子線滅菌実験III
電子線照射に暴露されるポリマーのために、インプロセスの冷却キャリアが開発された。キャリアは試料を電子線に対して特定の向きに保持する。キャリアは冷却材も特定の向きに保持するので、冷却材は試料を通過する電子線から隔離される。従って、電子線から生成される熱が試料の凝集、凝結、または融解を引き起こさないように、試料が冷却される。この場合、滅菌された試料は流し込み可能な粉末または顆粒状物質として有用である。
【0065】
ポリ乳酸ポリマーまたはポリラクチド-co-グリコリド酸ポリマーの試料を、粉末または顆粒の形態として包装した。試料を板紙箱内に包装した。その箱を、冷却材との混合を防ぐための物理的な障壁と共に他の箱内に入れた。材料を17.6、25、35、50、100または200kGyでの電子線滅菌に暴露するために送った。電子線滅菌の結果は表8でわかる。
【0066】
【表8】
【0067】
従って、キャリアは、物理的特性において最低限の変化を有する滅菌ポリマーを有することの利点をもたらす環境を提供する。これは、滅菌の付形剤を、製品の追加的な処理、例えば粉砕またはミリングの必要なく無菌工程内に組み込むことを可能にできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを滅菌する方法であって、ガラス転移温度(Tg)を有するポリエステルを電子線で照射することを含み、ここで前記ポリエステルは、冷却材によってそのTg未満の温度で保持され、且つ前記電子線が冷却材を通過しない、前記方法。
【請求項2】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸とポリグリコール酸との、および/またはポリカプロラクトンとのコポリマー、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)とポリエチレングリコール(PEG)とのコポリマー、PLGAとポリ(ジオキサノン)とのコポリマー、PLGAとポリ(トリメチレンカーボネート)とのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却材が、ドライアイス、ゲルアイスパック、アイスブランケットまたはそれらの組み合わせである、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステルを10kGy~300kGyで照射する、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルが、顆粒、粉末、ペレット、バルクまたはそれらの組み合わせの形態である、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステルを、実質的に酸素不含でパケット内に包装する、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記パケットを、真空封止するか、または真空封止後に窒素でパージする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記パケットが、内袋および外袋を含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
前記内袋がポリエチレン、ナイロンまたはそれらの組み合わせを含み、且つ前記外袋が箔を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
照射前にポリエステルを包装材に加えることをさらに含み、前記包装材は、
ポリエステルを含む複数のパケットを収容するための容器を定義し、且つさらに、前記容器の上に配置される上部領域と、前記容器の下に配置され一般に前記上部領域に対向する下部領域と、前記上部領域と前記下部領域との間で前記容器の周りに配置される複数の側面とを定義するハウジングを含み、前記ハウジングは、
隣接するパケット間に配置されてそれらのパケットを分離するための少なくとも1つの仕切りと、
前記複数の側面の少なくとも1つの中に配置されるコンパートメントと
を含み、前記コンパートメントは冷却材を収容し、前記冷却材は前記容器の直上には配置されておらず且つ前記容器の直下には配置されていないので、放射線が前記冷却材を通過することなく、前記容器は上から下へと、または下から上へと照射されることができる、請求項からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ポリエステルを滅菌する方法であって、ポリエステルを電子線で照射することを含み、前記ポリエステルが実質的に酸素不含のパケット内に包装されている、前記方法。
【請求項12】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸とポリグリコール酸との、および/またはポリカプロラクトンとのコポリマー、PLGAとPEGとのコポリマー、PLGAとポリ(ジオキサノン)とのコポリマー、PLGAとポリ(トリメチレンカーボネート)とのコポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエステルを10kGy~300kGyで照射する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエステルが、顆粒、粉末、ペレット、バルクまたはそれらの組み合わせの形態である、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記パケットを、真空封止するか、または真空封止後に窒素でパージする、請求項11から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記パケットが、内袋および外袋を含む、請求項11から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記内袋がポリエチレン、ナイロンまたはそれらの組み合わせを含み、且つ前記外袋が箔を含む、請求項16に記載の方法。