(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081932
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】線維性癒着の処置のための高精製フカン
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20230606BHJP
A61K 31/737 20060101ALI20230606BHJP
A61P 41/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230606BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C08B37/00 H
A61K31/737
A61P41/00
A61P43/00 105
A61L31/04 120
C08L5/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031393
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2021504161の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】62/711,335
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/711,364
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/711,372
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,392
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,399
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,413
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/722,135
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/722,137
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,311
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,318
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,328
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/793,514
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/793,654
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,223
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,228
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,235
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.GORE-TEX
(71)【出願人】
【識別番号】521030700
【氏名又は名称】エーアールシー メディカル デバイス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】スプリンゲイト、クリストファー マイケル ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ミレー、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ダスワニ、サイレシュ ハレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、フソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、アイリーン シャオ ティン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ホイ ティン
(57)【要約】
【課題】他の利点の中でも特に線維性癒着を抑制する、変性され且つ/又は精製されたフカン及び対応するフカン含有組成物のために、組成物、方法、システムなどが提供される。
【解決手段】前記精製/変性フカン及びフカン組成物では、出発フカン組成物に見られるような非フカン成分又は不純物のレベルが低下している。かかる低減された望ましくない成分又は不純物としては、例えば、フカンに結合している望ましくない成分、並びにフカンの一部でないか又は化学的に及び/若しくはイオン的にフカンに結合していない組成物中の化合物が挙げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フカンポリマー構造及び対イオンを含むフカン、ここで前記フカンポリマー構造は25%w/w超のフコース、10%w/w未満のガラクトース及び40%w/w超の硫酸(sulfate)からなり、前記フカンは17%以下の対イオンを含み、且つ前記フカンはフコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が97%w/w超である、前記フカン。
【請求項2】
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が99%w/w超である、請求項1に記載のフカン。
【請求項3】
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が99.9%w/w超である、請求項1に記載のフカン。
【請求項4】
前記対イオンが医薬的に許容される対イオンである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項5】
前記医薬的に許容される対イオンがナトリウム及びカリウムのうち少なくとも1つからなる、請求項4に記載のフカン。
【請求項6】
有効分子量範囲が50kDa~5,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの1つの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム、有効分子量範囲が1kDa~6,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの1つの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム、及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が6mmの1つの40mmガードカラム、ここで前記2つの分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム及び前記1つのガードカラムは30℃のカラムコンパートメントに収容されている;
30℃の示差屈折率検出器;
0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム移動相流;及び
ピーク分子量が2,200kDaの第1デキストラン標準品、ピーク分子量が720kDa~760kDaの第2デキストラン標準品、ピーク分子量が470kDa~510kDaの第3デキストラン標準品、ピーク分子量が370kDa~410kDaの第4デキストラン標準品、ピーク分子量が180kDa~220kDaの第5デキストラン標準品、及びピーク分子量が40kDa~55kDaの第6デキストラン標準品からなるピーク分子量標準曲線に対する定量(quantification)
からなる水系ゲル浸透クロマトグラフィー構成を用いて測定される場合に、分布の少なくとも60%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項7】
分布の少なくとも92%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有する、請求項6に記載のフカン。
【請求項8】
100kDaより大きい重量平均分子量を有する、請求項6に記載のフカン。
【請求項9】
硫酸化レベルが20%w/w~60%w/wである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項10】
総炭水化物含有量が27%w/w~80%w/wである、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項11】
グルクロン酸、グルコース、マンノース、ラムノース及びキシロースの総含有量が、総炭水化物含有量に対する割合として12%w/w未満である、請求項10に記載のフカン。
【請求項12】
水に50mg/mLの濃度で溶解される場合に4cP~50cPの粘度を有する、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項13】
白色固体である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項14】
水に1mg/mL~100mg/mLの濃度で溶解される場合に透明無色である溶液を形成する、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項15】
アセチル含有量が5%w/w未満である、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項16】
5mmのコールドプローブを備えた600MHz分光計により、溶媒シグナルを抑制しつつ70℃で、各回256~512回の走査として8ずつ回数を増加させつつ、炭素次元における10~30ppmの範囲で、2D 1H-13C異核多量子コヒーレンスによって測定される場合に、前記フカンの有するアセチル含有量が0%w/wである、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載のフカン。
【請求項17】
医学的に許容しうる緩衝剤又は希釈剤の中に治療上有効量の請求項1~請求項16のいずれか一項に記載のフカンを含む、医学的に許容しうる組成物。
【請求項18】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載のフカンを0.02mg/mL~100mg/mL含む医療組成物であって、動物における疾患又は状態を処置するために使用される、医療組成物。
【請求項19】
前記医療組成物が医療機器である、請求項18に記載の医療組成物。
【請求項20】
前記疾患又は前記状態が線維性癒着である、請求項18又は請求項19に記載の医療組成物。
【請求項21】
ヒト以外の動物における疾患又は状態を処置するための0.01mL/kg~15mL/kgを含む用量範囲の請求項18又は請求項19に記載の医療組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年7月27日に出願された米国仮出願第62/711,364号;2018年7月27日に出願された米国仮出願第62/711,372号;2018年7月27日に出願された米国仮出願第62/711,335号;2018年8月1日に出願された米国仮出願第62/713,399号;2018年8月23日に出願された米国仮出願第62/722,135号;2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/755,311号;2019年1月17日に出願された米国仮出願第62/793,514号;2019年6月13日に出願された米国仮出願第62/861,223号;2018年8月1日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/713,392号;2018年8月1日に出願された米国仮出願第62/713,413号;2018年8月23日に出願された米国仮出願第62/722,137号;2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/755,318号;2019年6月13日に出願された米国仮出願第62/861,228号;2018年11月2日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/755,328号;2019年1月17日に出願された米国仮出願第62/793,654号;及び2019年6月13日に出願された米国仮出願第62/861,235号の恩恵を主張し、その内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
フカン(フコイダンを含む)は、硫酸化多糖である。一般的に言えば、このことは、それらが多くの糖類から構成される分子であり、前記糖類に付加した硫黄原子も有することを意味する。主要糖類は、6個の炭素原子を有し且つ化学式C6H12O5を有する糖である「フコース」と呼ばれる。「フコイダン」(又はフコイジン)は、褐藻(海草)に由来するフカンを示す。フカンは、単独で存在することが可能であり、あるいは他の糖の混合物、例えば、キシロース、ガラクトース、グルコース、グルクロン酸及び/又はマンノースなどの糖との混合物の状態で存在することも可能である。これらの他の糖は、フカンを有する海草又は他の原料から抽出されうる。フカンは現在、褐藻(海草)、ナマコなどの天然原料に由来するが、本明細書に記載される「フカン」は、フカンの(1又は複数の)究極的原料にかかわらず、本明細書で考察されるフカンの化学的モチーフ及び構造的モチーフを有するポリマー分子を含む。
【0003】
フコイダンはAdenocystis utricularis、Ascophyllum nodosum、Chorda filum、Cystoseirabies marina、Durvillaea antarctica、Ecklonia kurome、Ecklonia maxima、Eisenia bicyclis、Fucus evanescens、Fucus vesiculosis、Hizikia fusiforme、Himanthalia Elongata、Kjellmaniella crassifolia、Laminaria brasiliensis、Laminaria cichorioides、Laminaria hyperborea、Laminaria japonica、Laminaria saccharina、Lessonia trabeculata、Macrocystis pyrifera、Pelvetia fastigiata、Pelvetia Canaliculata、Saccharina japonica、Saccharina latissima、Sargassum stenophylum、Sargassum thunbergii、Sargassum confusum、Sargassum fusiforme及びUndaria pinnatifidaを含む褐藻類の多様な種から得ることができるが、これらに限定されるものではない。これらの例示的な種は全て分類学上の褐藻綱(Phaeophyceae)から出たものであり、これらの種の大部分は、ヒバマタ科(Fucales)又はコンブ科(Laminariaceae)に入る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フコイダンを含むフカンは、線維性癒着の形成を予防、抑制、又は処置するためのバリア器具(barrier device)として供するにおいて有効であることが示されている。フカンには他の関連する疾患及び状態の処置への用途も見いだされている。
したがって、所望の分子量分布及び/又は硫酸化レベルを有するように改変したフカンを含む精製フカンの調製物には、まだ満たされていない需要が存在する。本組成物、本システム及び本方法などは、これらの利点及び/又は他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
組成物、方法、システムなどは、フカン及びフカン含有組成物のために、他の利点の中でも特に線維性癒着を抑制するために提供される。本明細書におけるフカン及びフカン組成物は、特定のレベルの所望の特定されたフカン成分を有する、精製/改変フカンを含むフカンを含む。本出願の本文では、精製/改変フカン及び精製/改変フカン組成物に度々言及する。かかる言及は、特許請求の範囲におけるものを除いて、又は文脈から精製/改変フカン及び/又は精製/改変フカン組成物に明確に限定されない限り、本明細書に記載のすべてのフカン/フカン組成物を含む。いくつかの実施形態では、前記フカン及びそれらを含有する組成物は、医学的用途及び外科的用途に適している。前記フカン及びフカン組成物では、原料フカン組成物に見られるような非フカン成分又は不純物のレベルが低下している。そのような望ましくない成分又は不純物には、例えば、フカンに結合(例えば、イオン結合、共有結合、水素結合など)している望ましくない成分、並びにフカンの一部でないか又は化学的に及び/若しくはイオン的にフカンに結合していない組成物中の化合物が含まれる。望ましくないフカン成分は、前記フカンに対して(例えば、質量基準で(w/w))定量化可能である。非フカン化合物及び望ましくないフカン成分は、以後、集合的に前記フカン及び/又は本明細書中のフカンを含む組成物の不純物と称される場合がある。これらの精製/改変フカンは、例えば、不純物によるフカンの医学的使用及び外科的使用における危険な合併症を減らすことができる。
【0006】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物、システム、方法などは、フカンポリマー構造及び対イオンを含むフカンを含みうるものであって、前記フカンポリマー構造は、本質的にフコース、ガラクトース、及び硫酸(sulfate)からなり、前記フカンは、約17%以下の対イオンを含み得、前記フカンにおけるフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンの総含有量は、90%w/w超、94%w/w超、95%w/w超、97%w/w超、99%w/w超、又は99.9%w/w超でありうる。いくつかの実施形態では、前記フコースの含有量は、25%w/w、30%w/w、又は35%w/wを超え得る。前記ガラクトースの含有量は、10%w/w又は5%w/w未満でありうる。前記対イオンの総含有量は、17%w/w、14%w/w、10%w/w、又は7%w/w未満でありうる。
【0007】
対イオンは、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、エチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ヒスチジン、リジン、N-メチルグルカミン、メグルミン、プロカイン、トリエチルアミン、亜鉛、カルシウム、及びマグネシウムのうち少なくとも1つなどの医薬的に許容される対イオンでありうる。前記医薬的に許容される対イオンは、ナトリウム及びカリウムのうち少なくとも1つを含むか、少なくとも1つからなるか、又は少なくとも1つから本質的になり得る。
【0008】
有効分子量範囲が約50kDa~約5,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム1つ、有効分子量範囲が約1kDa~約6,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム1つ、及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が6mmの40mmガードカラム1つ、ここで前記2つの分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム及び前記1つのガードカラムは約30℃のカラムコンパートメントに収容されている;
約30℃の示差屈折率検出器;
0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム移動相流;及び
ピーク分子量が約2,200kDaの第1デキストラン標準品、ピーク分子量が約720kDa~約760kDaの第2デキストラン標準品、ピーク分子量が約470kDa~約510kDaの第3デキストラン標準品、ピーク分子量が約370kDa~約410kDaの第4デキストラン標準品、ピーク分子量が約180kDa~約220kDaの第5デキストラン標準品、及びピーク分子量が約40kDa~55kDaの第6デキストラン標準品から実質的になるピーク分子量標準曲線と照らし合わせての定量(quantification)
から実質的になる水系ゲル浸透クロマトグラフィー構成を用いて測定される場合に、分布の60%w/w以上が100kDaより大きい分子量分布を、前記フカンは有しうる。
【0009】
前記フカンは分布の少なくとも92%w/w又は97%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有しうる。前記フカンは、100kDaより大きい重量平均分子量及び約20%w/w~60%w/w、約30%w/w~55%w/w、又は約35%w/w~52%w/wの硫酸化レベル(sulfation level)を有していてもよい。総炭水化物含有量は、27%w/w~80%w/wでありうる。総炭水化物含有量に対する割合としてのグルクロン酸、グルコース、マンノース、ラムノース、及びキシロースの総含有量は、約12%w/w未満でありうる。前記フカンは、50mg/mLの濃度で水に溶解される場合に、約4cP~50cP、約10cP~40cP、又は約15cP~30cPの粘度を有していてもよい。前記フカンは白色固体であり得、また1mg/mL~100mg/mLの濃度で水に溶解される場合に、透明無色でありうる溶液を形成する。前記フカンのアセチル含有量は、5%w/w未満又は2%w/w未満でありうる。5mmのコールドプローブを備えた600MHz分光計により、溶媒シグナルを抑制しつつ70℃で、各回256~512回の走査として8ずつ回数を増加させつつ、炭素次元における10~30ppmの範囲で、2D1H-13C異核多量子コヒーレンスによって測定される場合に、前記フカンの有するアセチル含有量が実質的に0%w/wでありうる。
【0010】
また、本明細書に記載のフカンを製造又は使用することを含む方法が本明細書に含まれる。これらの方法は、前記フカンを使用して線維性癒着を処置することを含む。
【0011】
また、医学的に許容される緩衝液又は希釈剤中に治療上有効量の本明細書に記載のフカンを含む医学的に許容される組成物、並びに動物の状態又は疾患を処置する方法であって、特に前記状態又は疾患を処置するために前記医学的に許容される組成物を選択すること及び治療上有効量の前記フカンを前記動物に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。そのような投与は、約0.5mg/kg~50mg/kg又は約0.04mg/kg~25mg/kgの前記フカンを前記動物に投与することを含みうる。前記治療上有効量はまた、約0.2mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1.5mg/kg~3mg/kg、又は5mg/kg~10mg/kgでありうる。
【0012】
前記状態又は疾患は、前記動物の標的部位での線維性癒着であり得、前記投与は、前記治療上有効量を前記標的部位に投与することを含みうる。約0.02mg/mL~100mg/mLの前記フカンを含む医療組成物も本明細書に含まれ、前記医療組成物は、動物の疾患又は状態を処置するように設計及び構成される。そのような医療用組成物は、約0.5mg/mL~5mg/mLの前記フカン又は約2.5mg/mLの前記フカンを含みうる。前記医療用組成物は、液体医療機器でありうる医療機器であってもよい。前記医療組成物は、液体医薬組成物でありうる医薬組成物であってもよい。前記疾患又は状態は、線維性癒着でありうる。
【0013】
また、動物の疾患又は状態を処置するための、約0.01mL/kg~15mL/kg、0.03mL/kg~4mL/kg、0.06mL/kg~2mL/kg、又は約2mL/kg~4mL/kgを含む用量範囲(dosage range)の請求項0~請求項0のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用が提供される。前記方法はまた、前記患者における標的部位に前記医療用組成物を投与することを含む、患者の線維性癒着を処置することを含む。前記標的部位は手術部位であり得、前記投与は、a)前記手術部位における手術創を開けた後、b)手術中、及びc)前記手術創を閉じた後、のうち少なくとも1つにおいて行われてもよい。前記投与は、手術後且つ前記手術創を閉じる前に行ってもよく、3分未満、2分未満、又は1分未満かかる場合がある。前記標的部位は、病変、擦過傷、及び傷害部位のうちのうち少なくとも1つでありうる。前記標的部位は、骨盤腔、腹腔、背側腔、頭蓋腔、脊髄腔、腹側腔、胸腔、胸膜腔及び心膜腔、関節、筋肉、腱、並びに靭帯のうち少なくとも1つの中又は1つに位置しうる。
【0014】
また、出発フカン組成物から不純物を除去して精製/改変フカンを得るための方法であって、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
凝集助剤を前記出発フカン組成物に添加して反応混合物を生成すること、
前記反応混合物を加熱することによって前記不純物を凝集させて、凝集した不純物を生成すること、及び
前記凝集した不純物を除去すること、を含む方法が本明細書において提供される。
【0015】
前記出発フカン組成物を提供することは、前記出発フカン組成物を溶液として提供することを含んでいてもよく、前記方法はさらに不純物が低減された溶液中の前記精製/改変フカンを回収することを含んでいてもよい。前記不純物を凝集させることは、大気圧を超える圧力において前記反応混合物を加熱することを含んでいてもよく、前記凝集助剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び/又はアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、及び/又はシアン化物などの塩を含んでいてもよい。前記凝集助剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び/又はアンモニウムの水酸化物及び/又は酸化物を含みうる塩基を含んでいてもよい。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0016】
精製/改変フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去するさらなる方法は、
固体である出発フカン組成物と、不純物を溶解するように構成されているがフカンを溶解できない抽出媒体とを提供すること、
前記出発フカン組成物を前記抽出媒体と混合して精製/改変フカンと前記抽出媒体との混合物を生成すること、及び
前記抽出媒体から前記精製/改変フカンを分離すること、を含んでいてもよい。
【0017】
前記方法は、固体である前記精製/改変フカンを回収することをさらに含みうる。前記抽出媒体は、相対極性が0.765未満のうち少なくとも1つの有機溶媒を含みうる。相対極性の値は、吸収スペクトルの溶媒シフトの測定値から正規化することができる。例えば、Christian Reichardt, Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry, Wiley-VCH Publishers, 3rd ed.,2003を参照されたい。前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンゼン、ジエチルエーテル、デカメチルシクロペンタシロキサン、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、ヘプタノール、オクタノール、及びデカノールのうち少なくとも1つを含んでいても良い。前記抽出媒体はさらに、塩基、界面活性剤、及び酸化剤のうち少なくとも1つを含みうる。前記固体の出発フカン組成物を提供することは、溶液から前記出発フカン組成物を沈殿させることを含んでいてもよい。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0018】
精製/改変フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去するさらなる方法は、
溶液中の懸濁不純物を含む、不純物を含有する出発フカン組成物を提供すること、
イオン性多価不純物沈殿剤を用いて前記不純物を前記溶液から沈殿させることにより、懸濁不純物と沈殿不純物と上清溶液との混合物を生成すること、及び
前記上清溶液から前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を分離すること、を含みうる。
【0019】
前記方法はさらに、前記精製/改変フカンを含む前記上清溶液を回収することを含んでいてもよい。前記イオン性多価不純物沈殿剤は、二価又は三価のカチオンの塩を含みうる。前記塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、及び/又はシアン化物でありうる。前記カチオンは、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅、及び/又は鉄でありうる。前記イオン性多価不純物沈殿剤は、二価又は三価のカチオンの塩基を含みうる。前記塩基は、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅、及び/又は鉄の水酸化物及び/又は酸化物でありうる。前記上清溶液から前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を分離することは、懸濁不純物と沈殿不純物と上清溶液との混合物に凝集剤を添加することにより、前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を凝集させることを含んでいてもよい。前記凝集剤は、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カリウム、リン酸マグネシウム、アクリルアミド、アクリル酸、アルミニウムクロロハイドレート、ポリ塩化アルミニウム、タンニン、ホルムアルデヒド、メラミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドのうち少なくとも1つを含みうる。前記方法は、約7~14のpHを維持することをさらに含みうる。前記pHを維持することは、塩基を添加することを含みうる。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0020】
精製/改変フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法は、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
前記出発フカン組成物のpHを約8~14に調整すること、
細胞成分を溶解するように構成されている細胞破壊剤を前記出発フカン組成物に添加して、前記細胞破壊剤と、生体分子溶解物と、前記出発フカン組成物とを含む反応混合物を生成すること、及び
前記細胞破壊剤及び生体分子溶解物を前記反応混合物から除去すること、を含みうる。
【0021】
前記出発フカン組成物を提供することは、溶液である前記出発フカン組成物を提供することを含んでいてもよく、前記方法は不純物が低減された溶液中の精製/改変フカンを回収することをさらに含みうる。前記細胞破壊剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤でありうる界面活性剤を含んでいてもよい。前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化ベンザルコニウム、Triton X100(登録商標)、Triton X114(登録商標)、Brij(登録商標)界面活性剤、Tween(登録商標)界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。前記細胞破壊剤及び前記生体分子溶解物を除去することは、前記細胞破壊剤及び生体分子溶解物を凝集させるよう構成された凝集剤を前記反応混合物に加えることを含みうる。前記細胞破壊剤を除去することは、前記細胞破壊剤を、前記反応混合物に不溶性にするように構成された沈殿剤を当該反応混合物に添加して沈殿物を生成することを含みうる。前記生体分子溶解物を除去することは、前記生体分子溶解物を前記反応混合物に不溶にするように構成された沈殿剤を前記反応混合物に添加して、沈殿物を生成することを含むことができる。前記方法は、前記沈殿物を凝集させるよう構成された凝集剤を前記反応混合物に添加することをさらに含んでいてもよい。前記凝集剤は、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カリウム、リン酸マグネシウム、アクリルアミド、アクリル酸、アルミニウムクロロハイドレート、ポリ塩化アルミニウム、タンニン、ホルムアルデヒド、メラミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドのうち少なくとも1つを含みうる。
【0022】
前記アニオン性界面活性剤を除去することは、アニオン性吸着を含みうる。前記カチオン性界面活性剤を除去することは、カチオン性吸着を含みうる。前記非イオン性界面活性剤を除去することは、ミセル相分離を含みうる。また、前記界面活性剤を除去することは、疎水性吸着を含みうる。前記界面活性剤を除去することは、
前記界面活性剤の濃度が所定の濃度未満になるまで前記反応混合物を希釈すること、及び
前記界面活性剤を含む前記反応混合物を、分画分子量が前記界面活性剤の最大分子量を超えるタンジェンシャルフロー濾過フィルタによる透析濾過に供することを含みうる。
【0023】
前記方法はまた、前記出発フカン組成物を提供した後且つ前記細胞破壊剤を除去する前に、キレート剤を前記反応混合物に添加することを含んでいてもよい。前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン及び/又はクエン酸を含んでいても良い。前記方法はさらに、前記細胞破壊剤を除去する前に酸化剤反応停止剤(oxidant-quenching agent)を前記反応混合物に添加して、前記反応混合物中の酸化剤の反応を停止(quench)すること、又は前記出発フカン組成物を提供した後且つ前記細胞破壊剤を除去する前に、静菌剤(bacteriostatic agent)を前記反応混合物に添加すること、を含んでいてもよい。前記静菌剤は、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、塩化ベンザルコニウム、エタノール及び/又はチオ尿素を含みうる。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0024】
精製/改変フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法は、
不純物を含む出発フカン組成物を水性出発溶液中に提供すること、
前記水性出発溶液を有機溶媒と混合して、水相有機相混合物を生成すること、及び
前記水相有機相混合物を分離して水性部分及び有機部分を得ることを含んでいてもよい。
【0025】
前記方法はさらに、前記精製/改変フカンを含有する前記水性部分を回収することを含んでいてもよい。前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンゼン、デカメチルシクロペンタシロキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ヘプタン、酢酸イソブチル、アニソール、酢酸イソプロピル、1-ブタノール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ペンタン、1-ペンタノール、エチルエーテル、及び酢酸プロピルのうち少なくとも1つでありうる、相対極性度が0.765未満である有機溶媒を少なくとも1種含みうる。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0026】
出発フカン組成物のカチオン含有量を変更する方法は、
出発フカン組成物を出発溶液中に提供すること、及び
タンジェンシャルフロー濾過フィルタを通るキレート剤溶液を用いて前記出発溶液をタンジェンシャルフロー濾過フィルタを通しての透析濾過に供し、保持フカン組成物を生成すること、を含んでいてもよい。
【0027】
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン、又はクエン酸のうち少なくとも1つを含みうる。前記保持フカン組成物は、本質的にナトリウム及び/又はカリウムからなるカチオン含有量を有しうる。
【0028】
精製/改変フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法はさらに、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
超臨界抽出装置で70バールを超える適切な圧力及び30℃を超える適切な温度に前記出発フカン組成物を供すること、
超臨界抽出装置に超臨界流体を充填して、前記超臨界流体中に不純物を除去すること、並びに
前記抽出された不純物を含む超臨界流体を所定の時間後に除去すること、を含んでいてもよい。
【0029】
前記方法はさらに、超臨界抽出装置に残留している前記精製/改変フカンを回収することを含んでいてもよく、前記圧力は約70バール~約2000バールであってもよく、前記温度は約30℃~約300℃であってもよい。前記出発フカン組成物は、液体または固体でありうる。前記超臨界流体は、二酸化炭素、エタノール、エタン、塩酸、フッ化水素酸、硫酸(sulfuric acid)、及び硝酸のうち少なくとも1つを含みうる。前記所定の時間は、約5分~50時間でありうる。除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分、及びDNAのうち少なくとも1つを含みうる。
【0030】
これらの態様及び他の態様、特徴、並びに実施形態は、以下の発明を実施するための形態及び添付の図面を含む、本出願内に示されている。他に明確に述べられていない限り、全ての実施形態、態様、特徴などは、任意の望ましい方法で調和及び適合させる、組み合わせる、並びに順序を変えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、タンジェンシャルフロー濾過でキレート剤を使用して、出発フカン組成物のカチオン含有量を変更し、低分子量非フカン成分を除去するための例示的なシステムを概略的に示した図である。
【
図2A】本明細書における方法に従って処理されたある種のフカンが構造的変化を経ることを示すNMR結果を示す。
【
図2B】本明細書における方法に従って処理されたたある種のフカンが構造的変化を経ることを示す二次元NMR結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
前記図面は、本明細書の組成物、方法などのいくつかの態様の例示的な実施形態を提示する。本明細書に記載のシステム、方法などの実施形態は、図面に示されていないさらなる特徴又は工程を含む場合がある。さらに、本明細書に記載されている例示は、システム、方法などの実施形態を1又は複数の形態で示しており、そのような例示は、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施形態は、網羅的ではなく、例えば、以下の発明を実施するための形態において開示される詳細な形態に本開示を限定しない。
【0033】
本明細書に示される組成物、システム、方法などは、精製/改変フカンを含む。本明細書の組成物は、医学的処置、手術後の処置、疾患抑制などに有効でありうる。いくつかの実施形態では、前記フカンはフコイダンである。本明細書の精製/改変フカンは、それ自体、医療機器、医療材料、組み合わせ製品であってよく、それらに含められてもよく、又は医薬的に許容される治療的及び/又は医学的に有効な組成物中に含まれてもよい。
【0034】
以下の段落は、精製/改変フカンを含む本明細書に記載のいくつかの組成物の簡潔かつ全般的な考察に移る。それらの組成物は、選択した方法に応じて、溶液、懸濁液、固体、ゲル、又はその他のモダリティなどの適切な反応混合物を使用して実行できるさまざまな方法で出発フカン組成物から本明細書に記載の方法を使用して製造されうるものを含む。
【0035】
組成物
本明細書に示される組成物、システムなどは、特定の実施形態では、フカン及び医学的に許容される精製/改変フカン並びに外科的癒着、関節炎、乾癬、又は所望により他の疾患などの線維性癒着の処置のための、治療上有効量の精製/改変フカンを含む組成物を提供する。前記精製/改変フカンは、約75%w/w超のフコース、ガラクトース、及び硫酸(sulfate)の総含有量、例えば、約80%w/w超又は84%w/w超のフコース、ガラクトース、及び硫酸の総含有量を有しうる。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンはさらに少なくとも1つの対イオンを少なくとも約5%w/w、7%w/w、9%w/w、10%w/w、又は11%w/wまで含みうる。いくつかの実施形態では、前記対イオンは、医薬的に許容される対イオンである。いくつかの実施形態では、前記対イオンは、フカン上に存在する硫酸基にイオン結合している。医薬的に許容される対イオンには、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、エチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ヒスチジン、リジン、N-メチルグルカミン、メグルミン、プロカイン、トリエチルアミン、亜鉛、カルシウム、及びマグネシウムが含まれうる。フカンの硫黄含有成分は、C-O-S結合を介して結合されている。このような結合の酸素は、様々な要因に応じて、主に炭素又は硫黄のいずれかに結合していると見なすことができる。本明細書で使用される「硫酸」という用語は、両方の実施形態を指す。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に記載の精製/改変フカンは、少なくとも約85%w/w、90%w/w、94%w/w、97%w/w、又は98%w/wのフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンを含む。例示的な対イオンには、最大約7%w/w、8%w/w、9%w/w、10%w/w、11%w/w、12%w/w、13%w/w、14%w/w、又は15%w/wのカルシウム、マグネシウム、カリウム及び/又はナトリウムが含まれる。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンは、少なくとも約25%w/w、30%w/w、又は35%w/wのフコースを含む。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンは、約10%w/w、5%w/w、又は4%w/w未満のガラクトースを含む。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンは、フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオン成分の合計から本質的になるか、又はフコース、ガラクトース、硫酸及び対イオン成分の合計からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のフカンは、前記フコース及びガラクトース以外の全ての糖成分を実質的又は完全に欠いている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のフカンは、グルクロン酸、マンノース、ラムノース、キシロース、ガラクトース、又はグルコースのうち1つ又は複数を実質的に又は完全に欠いている。この一文で使用されている「実質的に欠いている」とは、そのような糖成分の存在があったとしても、その存在が医薬的及び医学的に重要ではないほど十分に低いことを示す。
【0037】
特定の実施形態では、本明細書に示される精製/改変フカンは、線維性癒着並びに他の疾患及び/又は状態などの他の標的の抑制、予防、除去、軽減、又はその他の処置を含む複数の適用のために使用されうる。処置は、前記フカンが、典型的には、外科医又は他の専門家によって、線維性癒着(又は他の疾患若しくは状態)を含むと、又は線維性癒着(又は他の疾患若しくは状態)に相当に罹患しやすいと同定された選択標的部位である標的部位における線維性癒着の形成の軽減又は予防など、標的疾患又は他の状態の発現を軽減させるか又は予防することを含み、例えばすでに存在する線維性癒着の除去を含む、存在する疾患又は他の状態の除去も含む。かかる抑制、予防、除去、軽減、又はその他の処置のために、前記フカン組成物は、典型的には、医学的に許容しうる医療機器、組み合わせ製品、又は結合剤、アジュバント、賦形剤(excipient)、並びに、所望により、二次薬物であって前記フカンに付加されないが前記組成物中に含まれるもの及び/又は前記フカンに付加されうるものなどの、追加的な医学的に活性な物質などの追加的な成分を含む医薬的に有効な組成物において、提供される。
【0038】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の精製/改変フカンを含む組成物は、固体、例えば、約7%w/w未満の含水量、例えば、約6%w/w未満、5%w/w未満、4%w/w未満、3%w/w未満、又は2%w/w未満の含水量を含む固体組成物でありうる。
【0039】
前記精製/改変フカンの分子量分布は任意の所望の適切な測定システムを用いて測定することができる。異なるシステムは、実質的に同一構成を有する異なる組成物から、又は異なって測定される場合は同一バッチからも、異なる読取値又は結果を生じることが可能である。1つの適切な測定システムは、実質的に、有効分子量範囲が約50kDa~約5,000kDaの、ヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填された、内径が7.8mmの1つの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム、有効分子量範囲が約1kDa~約6,000kDaの、ヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填された、内径が7.8mmの1つの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム、及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填された、内径が6mmの1つの40mmガードカラムであって、約30℃のカラムコンパートメントに収容されている前記2つの分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム及び前記1つのガードカラム、約30℃の示差屈折率検出器、0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム移動相流、並びに、実質的に、ピーク分子量が約2,200kDaの第1デキストラン標準品、ピーク分子量が約720kDa~約760kDaの第2デキストラン標準品、ピーク分子量が約470kDa~約510kDaの第3デキストラン標準品、ピーク分子量が約370kDa~約410kDaの第4デキストラン標準品、ピーク分子量が約180kDa~約220kDaの第5デキストラン標準品、及びピーク分子量が約40kDa~55kDaの第6デキストラン標準品からなるピーク分子量標準曲線に対する定量、からなる水系ゲル浸透クロマトグラフィー構成である。前記ピーク分子量標準曲線は、さらに、ピーク分子量が3kDa~5kDaのデキストラン標準品を含んでもよい。
【0040】
本明細書に記載の精製/改変フカンは分子量分布を有していてもよく、前記分布の少なくとも約25%w/w、30%w/w、40%w/w、50%w/w、60%w/w、70%w/w、75%w/w、90%w/w、92%w/w、97%w/w、又は98%w/wは100kDa超である。本明細書に記載の精製/改変フカンは、分子量分布を有するフカンを含んでいてもよく、前記分布の少なくとも約50%w/w、60%w/w、70%w/w、80%w/w、又は90%w/wは200kDa超である。本明細書に記載の精製/改変フカンは、分子量分布を有していてもよく、前記分布の少なくとも約25%w/w、30%w/w、40%w/w、50%w/w、60%w/w、70%w/w、又は75%w/wは500kDa超である。本明細書に記載の精製/改変フカンは分子量分布を有していてもよく、前記分布の少なくとも約5%w/w、10%w/w、20%w/w、30%w/w、又は40%w/wは1600kDa超である。
【0041】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、約100kDa超の重量平均分子量を有していてもよく、例えば、約100kDa~約10,000kDa、約200kDa~約8,000kDa、約350kDa~約8,000kDa、約450kDa~約8,000kDa、約580kDa~約8,000kDa、又は約800kDa~約2,000kDaである。本明細書に記載の精製/改変フカンは、約70kDa超のピーク分子量を有していてもよく、例えば、約70kDa~約1200kDa、約100kDa~約1200kDa、約200kDa~約1200kDa、約400kDa~約1200kDa、又は約400kDa~約900kDaである。
【0042】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、約50kDa超、約50kDa~約1,000kDa、約70kDa~約1000kDa、約150kDa~約1000kDa、約250kDa~約1000kDa、又は約250kDa~約700kDaの数平均分子量を有していてもよい。
【0043】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、約10%w/w~70%w/w、約20%w/w~65%w/w、約30%w/w~60%w/w、又は約40%w/w~60%w/wの硫酸化レベルを有していてもよい。
【0044】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、総フコース:総硫酸のモル比が約1:0.5~1:4、約1:0.8~1:3.5、約1:1~1:2.5、約1:1.2~1:2.0、又は約1:1.5~1:3であってよい。本明細書に記載の精製/改変フカンは、総フコース+ガラクトース:総硫酸のモル比が約1:0.5~1:4、約1:0.8~1:3.5、約1:1~1:2.5、約1:1.2~1:2.0、又は約1:1.5~1:3であってよい。
【0045】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、約27%w/w~70%w/w、約30%w/w~80%w/w、約40%w/w~90%w/w、又は約50%w/w~100%w/wの総炭水化物含有量を有していてよい。本明細書に記載の精製/改変フカンは、総炭水化物含有量に対する割合として約30%w/w~100%w/w、約40%w/w~95%w/w、又は約50%w/w~90%w/wのフコース含有量を有していてもよい。本明細書に記載のフカンは、総炭水化物含有量に対する割合として0%w/w~60%w/w、約5%w/w~30%w/w、又は約8%w/w~10%w/wのガラクトース含有量を有していてもよい。本明細書に記載のフカンは、総炭水化物含有量に対する割合として約0%w/w~10%w/wのグルクロン酸含有量、総炭水化物含有量に対する割合として約0%w/w~7%w/wのマンノース含有量、総炭水化物含有量に対する割合として0%w/w~4%w/wのラムノース含有量、及び総炭水化物含有量に対する割合として0%w/w~20%w/wのキシロース含有量を有していてもよい。本明細書に記載のフカンは、約30%w/w未満又は約12%w/w未満のグルクロン酸、マンノース、ラムノース、グルコース、及びキシロースの総含有量を有しうる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書中の精製/改変フカンは、水に50mg/mLの濃度で溶解される場合、約4cP~約50cP、約5cP~約40cP、約10cP~約30cP、約15cP、約20cP、又は約25cpの粘度を有する。ある一定の実施形態では、本明細書中の精製/改変フカンは、水に1mg/mL~100mg/mLで溶解すると、無色透明、淡黄色透明又は淡褐色透明である溶液を形成する。
【0047】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、ペースト、ゲル、パッチ、フィルム、スプレー、液体、ローション、クリーム、溶液、懸濁液、固体、インプラント、ミクロスフェア、又は他の所望の形態で提供されうる。
【0048】
本明細書に示される組成物は、本質的に精製/改変フカンからなる固体でありうる。精製/改変フカンは、本質的にフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンからなり得る。
【0049】
本明細書において精製/改変フカンは、約0.01mg/mL~約300mg/mL、例えば、約0.1mg/mL~約100mg/mL、約1mg/mL~約50mg/mL、及び約20mg/mL~約80mg/mLのフカンを含む溶液に存在し得る。前記フカンは、本質的にフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンからなり得る。
【0050】
前記精製/改変フカンは、約100mg/mL~約1000mg/mL、例えば、約100mg/mL~約500mg/mL又は300mg/mL~約800mg/mLのフカンを含むゲルに存在し得る。前記フカンは、本質的にフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンからなり得る。
【0051】
本明細書において精製/改変フカンは、約100mg/mL~約1000mg/mL、例えば、約100mg/mL~約500mg/mL又は約300mg/mL~約800mg/mLのフカンを含むフィルムに存在し得る。前記フカンは、本質的にフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンからなり得る。
【0052】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、医療機器の構成要素、組み合わせ製品、及び/又は任意の数の医薬的に許容される賦形剤(excipients)を含む医薬組成物、例えば、ゼラチン、ヒプロメロース、乳糖、注射用水(USP規格適合)、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸・クエン酸緩衝液、プルロニック、セルロース、アルギン酸塩、アクリル酸塩、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、キトサン、注射用賦形剤、又は乳酸リンゲル液USPとして投与されうる。
【0053】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、ペースト、ゲル、パッチ、フィルム、スプレー、液体、ローション、クリーム、溶液、懸濁液、固体、インプラント、ミクロスフェア、又は他の所望の形態で投与されうる。
【0054】
前記精製/改変フカンは、静脈内、関節内、病巣内、膣内、直腸、筋肉内、腹腔内、皮下、局所、鼻腔内、眼内、又は経口投与経路で投与されうる。前記精製/改変フカンは、直接患部に送達されうる。前記精製/改変フカンは、ポリマー剤形からの制御放出を介して、患部に継続的に放出されうる。
【0055】
本明細書に記載の精製/改変フカンは、精製/改変フカン及び少なくとも1つの他の薬剤を含む医薬組成物の成分として投与されうる。前記薬剤は、パクリタキセル、ドキソルビシン、カンプトテシン、エトポシド、ミトキサントロン、メトトレキサート、メナジオン、プラムバギン、ジュグロン、β‐ラパコンシクロスポリン、スルファサラジン、ステロイド、ラパマイシン、レチノイド、ドセタキセル、コルヒチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びリボザイムのうち少なくとも1つでありうる。
【0056】
ある一定の実施形態において、本明細書に記載の精製/改変フカンは、アセチル含量が、約5%w/w未満、約2%w/w未満、又は約0%w/wでありうる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の精製/改変フカンは、それぞれ256~512スキャンの8増分において、炭素寸法において10~30ppmの範囲で、5mm低温プローブを備える600MHz分光計において溶媒信号抑制により70℃での2D1H-13C異核多量子コヒーレンスによって測定されるとき、アセチル含量が実質的に0%w/wである。
【0057】
方法
例えば、フカンを含む出発フカン組成物、例えば、原料フカン組成物、又は他のフカン含有組成物から、フカンを精製及び/又は改変するための方法、システムなどが提供される。本明細書で使用される「不純物」は、フコース、ガラクトース、硫酸又は対イオンではないフカンの任意の成分、及びフカンを含む組成物中に存在する任意の非フカン成分又は化合物または物質を指す。前記フカンには、例えば、フカンにイオン結合及び/又は化学結合したタンパク質、フカン高分子構造の一部であるフコース及びガラクトース以外の糖残基、フカンに化学結合した他の糖類、及びフカンに結合していないが、原料フカン組成物などの出発フカン組成物中に存在する非フカン不純物などの不純物が見られる場合がある。そのような不純物の例として、限定されないが、微粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、バクテリア、細胞成分、及びDNAが挙げられる。そのうちのいくつかは発色団を含み、そのため出発フカン組成物には茶色、黄色、及び緑色の存在が認められ、そのいくつかは、前記出発フカン組成物中のフカン又はその一部にイオン結合及び/又は化学結合していることがある。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法などを使用してフコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンを少なくとも約88%w/w、89%w/w、90%w/w、91%w/w、92%w/w、93%w/w、94%w/w、95%w/w、96%w/w、97%w/w、97.1%w/w、98%w/w、98.8%w/w、99%w/w、99.5%w/w、又は99.9%w/w含む精製/改変フカンを調製しうる。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンは、フコース、ガラクトース、及び硫酸を少なくとも約75%w/w、78%w/w、80%w/w、82%w/w、又は84%w/w含む。いくつかの実施形態では、前記精製/改変フカンは、不純物を約0.1%w/w未満、0.5%w/w未満、1%w/w未満、2.9%w/w未満、3%w/w未満、4%w/w未満、5%w/w未満、6%w/w未満、7%w/w未満、8%w/w未満、9%w/w未満、10%w/w未満、11%w/w未満、又は12%w/w未満含む。これらの不純物の一部は、フカンの医学的及び/又は外科的使用において危険な合併症を引き起こす可能性がある。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、線維性癒着の予防などの医学的用途及び外科的用途に適した不純物のレベルが低い精製/改変フカンを提示している。
【0059】
以下の段落では、本明細書に記載の精製/改変フカンを製造するために使用されうる方法論のいくつかの簡潔かつ全般的な説明に移る。
【0060】
物理的に誘導される凝集(flocculation)
高レベルの不純物を含む、原料フカン組成物などの出発フカン組成物は、不純物の凝集に供されるものであり、これは物理的に誘導される凝集でありうる。上記の方法は、出発フカン組成物を提供すること;凝集助剤を前記出発フカン組成物に添加して反応混合物を生成すること;前記反応混合物を加熱することによって前記出発フカン組成物において前記不純物を凝集させること;凝集した前記不純物を前記反応混合物から分離すること;及び前記分離の後、所望の前記精製/改変フカンを回収することを含みうる。
【0061】
前記反応混合物を加熱することによる前記不純物の凝集は、大気圧を超える圧力に前記反応混合物を供しながら、前記反応混合物を加熱することを含んでいてもよい。適切な凝集助剤として、限定することなく、塩及び/又は塩基、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び/又はアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、酸化物、水酸化物及び/又はシアン化物、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、リン酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、アンモニウムクロライド、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。前記反応混合物から凝集した前記不純物を分離することは、前記反応混合物の遠心分離、濾過、析出又は流体力学的流動分離のうちの1又は複数を含んでいてもよい。
【0062】
本明細書における方法などは、凝集助剤を添加する前に前記出発フカン組成物を脱塩することをさらに含んでいてもよい。前記脱塩は、分画分子量(MWCO)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)フィルタを通して水中溶液である前記出発フカン組成物を透析濾過することを含んでいてもよい。前記透析濾過は、前記出発フカン組成物を蒸留水によって透析濾過することを含んでいてもよい。前記分画分子量TFFフィルタは、前記精製/改変フカンにおける所望の分子量分離点又はターゲットよりも小さい分画分子量、例えば、50kDa、70kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa又は1000kDaの分画分子量を有しうる。
【0063】
前記方法は、塩基性環境又は中性環境において実施されうる。前記出発フカン組成物の凝集助剤を添加することは、そのため、前記出発フカン組成物を塩基性にして前記出発フカン組成物におけるフカンが分解するのを防止又は抑制することを含んでいてもよく、これはフカンが酸性環境において分解する傾向があるためである。他の実施形態において、前記方法は、前記反応混合物をpH7以上において又はその付近で維持することによって実施されうる。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記出発フカン組成物は、溶液として提供されうる。上記の方法による処理に適切なフカンの例として、限定することなく、フコイダンが挙げられ、溶液中のフカン濃度は、0.01%w/v~50%w/vであってよい。上記の方法によって除去されうる不純物として、限定することなく、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAが挙げられる。
【0065】
固相抽出
例えば原料フカン組成物など、非常に不純物のレベルが高いものを含む、所望されないレベルの不純物を含有する原料フカン組成物などの出発フカン組成物に含まれるフカンは、固相抽出に供される。前記方法は:他の不純物の中に不純物を含む固体状態の出発フカン組成物と、不純物を溶解するように構成されているがフカンを溶解できない抽出媒体とを提供すること;前記出発フカン組成物を前記抽出媒体と混合して、溶解されていない固体フカン組成物と、溶解した不純物を含有する前記抽出媒体と、の混合物を形成すること;溶解した不純物を含有する抽出媒体から、精製された溶解されていない固体状態のフカンを分離すること;及び、前記精製/改変フカンを前記抽出媒体から除去した後、前記精製/改変フカンを固体として回収することを含みうる。前記分離は、例えば、遠心分離、濾過、析出及び流体力学的流体分離のうちの1又は複数を含んでいてもよい。
【0066】
前記抽出媒体は、例えば、塩基、界面活性剤及び酸化剤のうちの1又は複数を含みうる。フカンを溶解しない適切な抽出媒体として、相対極性が0.765未満である有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンゼン、ジエチルエーテル、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、ヘプタノール、オクタノール及びデカノールが挙げられる。適切な塩基として、限定することなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及び水酸化カルシウムが挙げられる。適切な酸化剤として、限定することなく、過酸化水素、過酸化尿素、及び次亜塩素酸ナトリウムを含む酸化漂白剤のうちの1又は複数が挙げられる。適切な界面活性剤として、限定することなく、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween(登録商標)、Brij(登録商標)及びTriton(登録商標)の範囲の界面活性剤;アニオン性界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム;並びにカチオン性界面活性剤、例えば、塩化ベンザルコニウム(BAC)が挙げられる。本明細書における方法に適した特定のフカンとしては、限定されないがフコイダンが挙げられる。オリジナルの、例えば、出発フカン組成物の、前記抽出媒体による処理は、1分から120時間まで延長しうる。
【0067】
前記方法は、出発フカン組成物を固体形態で提供する前に出発フカン組成物を脱塩することをさらに含んでいてもよい。脱塩は、分画分子量(MWCO)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)フィルタを用いて水中溶液である出発フカン組成物を透析濾過することを含みうる。透析濾過は、出発フカン組成物を蒸留水によって透析濾過することを含んでいてもよい。分画分子量TFFフィルタは、精製/改変フカンにおける所望の分子量分離点又はターゲットよりも小さい分画分子量、例えば、50kDa、70kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa又は1000kDaの分画分子量を有しうる。透析濾過は、適切なプレフィルタを通して出発フカン組成物を予備濾過して、粒子状物を除去することをさらに含んでいてもよい。前記方法は、出発フカン組成物を固体形態で提供する前に溶液中の適した出発フカン組成物を凍結乾燥することをさらに含んでいてもよい。前記方法は、出発フカン組成物を固体形態で提供する前に適切な出発フカン組成物を溶液から沈殿させることをさらに含んでいてもよい。適切な沈殿剤として、限定することなく、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、アセトン、メタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、グライム、ジグライム、ジオキサンが挙げられ、フカンの溶解度は、沈殿させる流体の極性が減少するにつれて減少する。上記の方法によって除去されうる不純物としては、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
化学的に誘導される沈殿
高レベルの不純物、例えば、懸濁した粒子状物を含有する、原料フカン組成物などの出発フカン組成物は、化学的に誘導される不純物の沈殿に供される。ある一定の実施形態において、前記方法は、出発フカン組成物を出発溶液中に提供すること;イオン性多価不純物沈殿剤を用いて前記出発溶液から不純物を沈殿させて、懸濁不純物と沈殿不純物と上清との混合物を提供すること;前記上清溶液から前記懸濁不純物及び沈殿不純物を分離すること;及び前記懸濁不純物及び沈殿不純物を前記上清から分離した後に、所望の前記精製/改変フカンを含有する前記上清溶液を回収することを含みうる。
【0069】
適切な不純物沈殿剤として、二価カチオン及び三価カチオンのイオン性多価塩及び/又は塩基が挙げられる。かかる適切な塩の例として、限定することなく、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅及び鉄の塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩及び/又はシアン化物が挙げられる。かかる適切な塩基の例として、限定することなく、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅及び/又は鉄の水酸化物及び/又は酸化物が挙げられる。上清溶液からの懸濁した不純物及び沈殿した不純物の分離は、混合物中の不純物を凝集させることを含んでいてもよい。適切な凝集剤として、限定することなく、硫酸アルミニウムカリウム;硫酸アルミニウムナトリウム;硫酸アンモニウムアルミニウム;塩化カルシウム;リン酸ナトリウム;水酸化アルミニウム;塩化アルミニウム;塩化第二鉄;硫酸第二鉄;硫酸第一鉄;ケイ酸ナトリウム;ケイ酸カルシウム;リン酸カルシウム;塩化亜鉛;炭酸カルシウム;重炭酸カルシウム;硫酸カリウム;リン酸マグネシウム;アクリルアミド;アクリル酸;アルミニウムクロロハイドレート;ポリ塩化アルミニウム;タンニン;ホルムアルデヒド;メラミン;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド;第4級N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド;及びポリジアリルジメチル-アンモニウムクロライドが挙げられる。凝集剤の上記列挙から分かるように、いくつかの実施形態において、凝集剤は、不純物沈殿剤であってよい。上清溶液からの沈殿した、懸濁した及び/又は凝集した不純物の分離は、不純物と上清溶液との混合物の遠心分離、濾過、析出及び流体力学的流動分離のうちのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0070】
前記方法は、前記出発フカン組成物を提供することの前に前記出発フカン組成物を脱塩することをさらに含んでいてもよい。前記脱塩は、TFFフィルタを通して水性溶液として前記出発フカン組成物を透析濾過することを含んでいてもよい。前記透析濾過は、前記出発フカン組成物を蒸留水によって透析濾過することを含んでいてもよい。前記透析濾過は、MWCOが5kDa、10kDa、30kDa、50kDa、70kDa又は100kDaであるTFFフィルタを通して前記出発フカン組成物を透析濾過することを含んでいてもよい。前記透析濾過は、適切なプレフィルタを通して前記出発フカン組成物を予備濾過して、粒子状物を除去することをさらに含んでいてもよい。
【0071】
前記方法は、約7~14のpHを維持して、酸性環境におけるフカンの分解を抑制又は防止することをさらに含んでいてもよい。この約7~14のpHの維持には、適切な塩基、例えば、水酸化ナトリウムの添加を含んでいてもよい。適切な塩基が、イオン性多価不純物沈殿剤を用いて溶液から不純物を沈殿させる前に出発フカン組成物に添加されてもよい。他の実施形態においては、適切な塩基が、イオン性多価不純物沈殿剤を用いて溶液から不純物を沈殿させた後に、沈殿した不純物と上清溶液との混合物に添加されてもよい。さらに他の実施形態においては、適切な塩基が、懸濁した不純物及び沈殿した不純物を上清溶液から分離した後に上清溶液に添加されてよい。
【0072】
上記の方法による処理に適切なフカンの例として、限定することなく、フコイダンが挙げられ、溶液中のフカン濃度は0.01%w/v~50%w/vでありうる。上記の方法によって除去されうる不純物として、限定することなく、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギネート、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAが挙げられる。
【0073】
溶解及び凝集
高レベルの不純物を含有する、原料フカン組成物などの出発フカン組成物は、溶解及び凝集に供される。この例における前記方法は、出発フカン組成物を提供すること;前記出発フカン組成物をアルカリ性にすること;前記出発フカン組成物に細胞破壊剤を添加して、反応混合物を生成すること、ここで前記細胞破壊剤は、前記出発フカン組成物における細胞成分を溶解し、生体分子成分を含む溶解物をアルカリ性の反応混合物中に放出する;前記反応混合物から前記細胞破壊剤及び前記不純物の少なくとも一部を除去して、分解されていない所望の前記フカンを残すことを含みうる。
【0074】
前記細胞破壊剤を除去することは、沈殿、凝集、タンジェンシャルフロー濾過、ミセル相分離、イオン吸着、及び疎水性吸着のうちのいずれか1又は複数を含んでいてもよい。不純物を除去することは、沈殿、凝集、タンジェンシャルフロー濾過、ミセル相分離、イオン吸着、及び疎水性吸着のうちのいずれか1又は複数を含んでいてもよい。これらの除去方法のいずれか又は除去方法の組み合わせは、固体相と液体相とのいずれかの混合物の遠心分離、濾過、析出又は流体力学的流動分離を含んでいてもよい。
【0075】
適切な細胞破壊剤としては、限定することなく、アニオン性、非イオン性又はカチオン性の界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化ベンザルコニウム、Triton X100(登録商標)、Triton X114(登録商標)、Brij(登録商標)界面活性剤、Tween(登録商標)界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホネートが挙げられる。
【0076】
前記方法の一実施形態において、細胞破壊剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、細胞破壊剤を除去することは、細胞破壊剤をアルカリ性反応混合物に不溶にすることにより細胞破壊剤を沈殿させるための沈殿剤を添加することを含む。この実施形態において、細胞破壊剤を除去することは、凝集剤を反応混合物に添加して、沈殿した細胞破壊剤を少なくとも一部の不純物と共に凝集させることをさらに含んでいてもよい。細胞破壊剤を除去することは、凝集後に遠心分離することをさらに含んでいてもよい。
【0077】
ドデシル硫酸ナトリウム及びアルキルベンゼンスルホネートに適切な沈殿剤としては、限定することなく、水酸化カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム及び塩化バリウムが挙げられる。適切な凝集剤としては、限定することなく、硫酸アルミニウムカリウム;硫酸アルミニウムナトリウム;硫酸アンモニウムアルミニウム;塩化カルシウム;リン酸ナトリウム;水酸化アルミニウム;塩化アルミニウム;塩化第二鉄;硫酸第二鉄;硫酸第一鉄;ケイ酸ナトリウム;ケイ酸カルシウム;リン酸カルシウム;塩化亜鉛;炭酸カルシウム;重炭酸カルシウム;硫酸カリウム;リン酸マグネシウム;アクリルアミド;アクリル酸;アルミニウムクロロハイドレート;ポリ塩化アルミニウム;タンニン;ホルムアルデヒド;メラミン;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩;及びポリジアリルジメチル-アンモニウムクロライドが挙げられる。
【0078】
細胞破壊剤は、沈殿のプロセスにおいて変化を経ることが本明細書により理解されるべきである。例えば、限定されないが、細胞破壊剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるとき、沈殿剤は水酸化カリウム(KOH)であり得、ナトリウムカチオンは沈殿プロセスの一部としてカリウムにより置き換えられ、得られるドデシル硫酸カリウムは反応混合物に不溶性であるため、沈殿する。硫酸ドデシルカチオンは、機能的にはSDSの細胞破壊部分であり、このプロセスにおいてそのまま(intact)である。
【0079】
前記方法のさらに他の実施形態において、細胞破壊剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びデオキシコール酸ナトリウムのうちの1又は複数であってよく、細胞破壊剤を除去することは、アニオン吸着を含む。アニオン吸着は、適切な正に帯電した吸着剤を適切な時間量で添加すること、続いて吸着剤を除去することを含んでいてもよい。アニオン吸着は、適切な正に帯電した吸着剤で充填されたカラム又はフィルタを通して適切な流量で反応混合物を流すことをさらに含んでいてもよい。
【0080】
前記方法のさらに他の実施形態において、細胞破壊剤は、塩化ベンザルコニウムであってよく、細胞破壊剤を除去することは、カチオン吸着を含む。カチオン吸着は、適切な負に帯電した吸着剤を適切な時間量で添加すること、続いて吸着剤を除去することを含んでいてもよい。カチオン吸着は、適切な負に帯電した吸着剤で充填されたカラム又はフィルタを通して適切な流量で反応混合物を流すことをさらに含んでいてもよい。
【0081】
前記方法のさらに他の実施形態において、細胞破壊剤は、Triton X100(登録商標)、Triton X114(登録商標)、Brij(登録商標)及びTween(登録商標)界面活性剤のうちの1又は複数であってよく、細胞破壊剤を除去することは、ミセル相分離を含む。ミセル相分離は、反応混合物の温度が細胞破壊剤の曇り点を超えるように反応混合物の温度を変更することを含んでいてもよい。ミセル相分離は、反応混合物を遠心分離して所望の相分離を得ることを含んでいてもよい。
【0082】
方法のさらなる実施形態において、細胞破壊剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化ベンザルコニウム、Triton X100(登録商標)、Triton X114(登録商標)、Brij(登録商標)界面活性剤、Tween(登録商標)界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホネートのうちの1又は複数であってよく、細胞破壊剤を除去することは、疎水性吸着並びに希釈及びタンジェンシャルフロー濾過(TFF)の組み合わせのうちの1又は複数を含む。疎水性吸着は、適切な疎水性吸着剤を適切な時間をかけて添加すること、続いて吸着剤を除去することを含んでいてもよい。疎水性吸着は、適切な疎水性吸着剤で充填されたカラム又はフィルタを通して適切な流量で反応混合物を流すことをさらに含んでいてもよい。希釈及びTFFによる除去は、細胞破壊剤がその臨界ミセル濃度未満まで低下することにより、フカンを含有する保持液からの細胞破壊剤の透過を可能にする適切な分画分子量(MWCO)TFFフィルタを通してのタンジェンシャルフロー濾過を利用して細胞破壊剤が除去されうるように、反応混合物を希釈することを含んでいてもよい。希釈及びTFFによる除去は、適切なダイアボリューム数を用いてTFFフィルタを通して反応混合物を透析濾過することを含んでいてもよい。
【0083】
前記方法は、キレート剤を反応混合物に添加して反応混合物中の遊離多価カチオンにキレートさせることをさらに含んでいてもよい。キレート剤は、出発フカン組成物を提供した後で細胞破壊剤を除去する前に添加されうる。前記方法は、反応混合物中の酸化剤を反応制御することをさらに含んでいてもよい。酸化剤を反応制御することは、細胞破壊剤を除去する前又は後に酸化剤-反応停止剤を反応混合物に添加することを含んでいてもよい。
【0084】
前記方法は、静菌剤を反応混合物に添加することを含んでいてもよい。静菌剤は、出発フカン組成物を提供した後で細胞破壊剤を除去する前に添加されうる。適切な静菌剤としては、限定することなく、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、塩化ベンザルコニウム、エタノール、及びチオ尿素が挙げられる。
【0085】
適切なキレート剤としては、限定することなく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン及びクエン酸が挙げられる。適切な酸化剤-反応停止剤としては、限定することなく、亜硫酸塩、亜硝酸塩及び亜リン酸塩が挙げられる。上記から明らかであるように、列挙されている化合物のいくつかは、前記方法において1つを超える機能を有しうる。
【0086】
適切な疎水性吸着剤としては、限定することなく、活性炭、珪藻土、アクリル酸エステル非イオン性樹脂、ポリスチレン非イオン性樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン(DVB)非イオン性樹脂が挙げられる。適切なアニオン吸着剤としては、限定することなく、アミン官能基を有したスチレン-DVB樹脂、アミン官能基を有したメタクリレート樹脂、アミン官能基を有したメタクリル酸メチル樹脂、アミン官能基を有したメタクリル酸ブチル樹脂、アミン官能基を有したアガロース樹脂、アミン官能基を有したデキストラン樹脂、アミン官能基を有したセラミック系樹脂、アミン官能基を有したケイ酸塩、及び脂質除去剤(LRA)が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記出発フカン組成物は、溶液として提供されうる。上記の方法による処理に適したフカンの例としては、限定することなく、フコイダンが挙げられる。出発フカン組成物は、溶液中のフカン濃度が0.1%w/v超~30%w/v未満であってよい。細胞破壊剤は、溶液中のフカン濃度が0.1%w/v超~60%w/v未満であってよい。上記の方法によって除去されうる不純物としては、限定することなく、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAが挙げられる。
【0088】
液液抽出
望ましくないレベルの不純物を含む原料フカン組成物などの出発フカン組成物中のフカンは、液液抽出に供される。前記方法は、水性出発溶液中に前記出発フカン組成物を提供すること、前記水性出発溶液を有機溶媒と混合して精製/改変フカンを含む水性部分と疎水性不純物を含む有機部分とを有する水相有機相混合物を得ること、前記有機部分から前記水性部分を分離すること、及び前記精製/改変フカンを含む前記水性部分を回収すること、を含んでいてもよい。
【0089】
前記方法は、水性出発溶液と有機溶媒とを混合する前に出発フカン組成物を脱塩することをさらに含んでいてもよい。脱塩は、水溶液である前記出発フカン組成物を分画分子量(MWCO)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)フィルタを通して透析濾過することを含んでいてもよい。透析濾過は、前記出発フカン組成物を蒸留水で透析濾過することを含みうる。分画分子量TFFフィルタは、前記精製/改変フカン内又はフカンの望ましい分離点又は標的の分子量よりも小さい分画分子量を有していてもよく、例えば、5kDa、10kDa、30kDa、50kDa、70kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa、又は1000kDaの分画分子量である。透析濾過は、出発フカン組成物を適切なプレフィルタを通して予備濾過して、粒子状物質を除去することをさらに含みうる。
【0090】
前記水性出発溶液を有機溶媒と混合することは、水性有機溶媒混合物を振盪し、前記水性有機溶媒混合物を撹拌し、前記水性有機溶媒混合物を高剪断に曝露し、水性相を有機相に再循環させ、有機相を水相に再循環させることを含みうる。
【0091】
前記水性部分を前記有機部分から分離することは、遠心分離、デカンテーション、分離漏斗分離、及び流体力学的フロー分離のうち少なくとも1つを含みうる。
【0092】
この方法での使用に適した有機溶媒には、相対極性度が0.765未満である有機溶媒、例えば、ヘプタン、酢酸イソブチル、アニソール、酢酸イソプロピル、1-ブタノール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ペンタン、1-ペンタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、及び酢酸プロピルが挙げられる。前記有機相は、例えば、限定されないが、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、タンパク質、フコキサンチン、及び/又はクロロフィルなどの不純物を含有しうる。
【0093】
透析濾過
望ましくないレベルの不純物を含む原料フカン組成物などの出発フカン組成物中のフカンは、透析濾過に供される。前記方法は、出発溶液中の前記出発フカン組成物を、第1のタンジェンシャルフロー濾過フィルタを通しての透析濾過にキレート剤溶液を用いて供し、第1保持フカン組成物及びキレート化カチオン成分の濾過生成物を生成すること、及び前記第1保持フカン組成物を、第2のタンジェンシャルフロー濾過フィルタを通しての透析濾過に二次透析濾過溶液を用いて供し、前記第1の保持液キレート剤を前記第1保持フカン組成物から分離することにより、所望の精製/改変フカンを含む第2保持フカン組成物を生成すること、を含んでいてもよい。前記第1保持フカン組成物を第2のタンジェンシャルフロー濾過フィルタを通しての透析濾過に供することは、第1保持フカン組成物を前記第1のフロー濾過フィルタを通しての透析濾過に供することを含みうる。すなわち、同じフィルタを両方の透析濾過処理で使用可能である。
【0094】
前記出発フカン組成物を透析濾過に供することは、プレフィルタを通して前記出発フカン組成物を予備濾過して、望ましくない粒子状物質を除去することを含みうる。前記出発フカン組成物をキレート剤による透析濾過に供することは、前記出発フカン組成物を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン、又はクエン酸の1つによる透析濾過に供することを含みうる。
【0095】
前記出発フカン組成物は、溶液中のフカン濃度が0.1%w/v超且つ30%w/v未満であってもよい。前記キレート剤は、溶液中の濃度が0.1%w/v超且つ60%w/v未満であってもよい。前記得られる第1及び/又は第2の保持液組成物は、本質的にナトリウム及び/又はカリウムからなるカチオン含有量を有しうる。
【0096】
図1は、カチオン含有量及び/又は出発フカン組成物のレベルに変更を得るためのカチオン含有量変更システム1200の概略図を示す。溶液中の出発フカン組成物は、流入供給ライン1202を介してフカン容器1216に供給される。適切な溶媒中の出発物質のフコイダンを、プレフィルタ1204を通して予備濾過して、望ましくない粒子状物質を除去することができる。プレフィルタのゲージは、通常、カチオン含有量変更システム1200によって分離される最大のポリマー分子よりも大きい。
【0097】
TFF流入ポンプ1214は、出発フカン組成物を、TFF供給ライン1212を介してTFFフィルタ1210にポンプ輸送する。TFFフィルタ1210は通常、供給された流入流体がその保持液側のフィルタを通過できるように設計され、濾過生成物は1つの流出ラインから出て、処理された流入液は別の流出ラインを介して保持液とするカセットとして供給される。TFF流入ポンプ1214は、その保持液側と濾過生成物側との間のTFFフィルタ1210にあるレベルの圧力を付与する。
図1では、TFFフィルタ1210の保持液は、TFF保持液戻りライン1218及びTFF保持液バルブ1217を介してフカン容器1216に戻され、一方で、TFF濾過生成物流出ライン1219を介して生成された濾過生成物は、カチオン含有量変更システム1200の外側で使用されるか、又は廃棄されることとなる。
【0098】
TFF流入ポンプ1214が予備濾過されたフコイダンと保持液をTFFフィルタ1210に再循環させる間、キレート剤、例えば、限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン、又はクエン酸の1つを、第1透析濾過溶液供給ライン1225を介して第1透析濾過溶液容器1220からフカン容器1216内の出発フカン組成物に加えてもよい。前記キレート剤は、TFF濾過生成物流出ライン1219上の濾過生成物を介して失われた溶媒を補充するため、及び/又は所定のダイアボリューム(diavolume)数の流入フカン及びキレート剤がTFFフィルタ1210上に循環することを確実にするための両方に使用される。前記キレート剤は、出発フカン組成物中のカチオン、特に多価カチオンをキレートとして隔離し、次いでキレートがTFFフィルタ1210を通過して濾過生成物になる。第1透析濾過溶液バルブ1224を制御することにより、前記キレート剤をパルス処理で加えることができる。他の実施形態では、前記キレート剤を連続モードで添加してもよい。TFFフィルタ1210上で処理するキレート剤のダイアボリューム数は、予め決定されていてもよい。前記処理は、所定の期間、例えば、約1~約6時間、約3~約12時間、又は約10~約24時間継続してもよい。この処理は、キレート剤の所定数のダイアボリューム、例えば、約1~約4ダイアボリューム、約3~約6ダイアボリューム、約5~約10ダイアボリューム、又は約7~約20ダイアボリュームの範囲内で継続してもよい。前記処理を継続し、フカン容器1216のカチオン含有量を測定し、望ましいカチオン含有量、例えば、含まれる多価カチオンが10ppm未満、1ppm未満、0.1ppm未満、又は0.01ppm未満であるカチオン含有量が達成された時点で、TFF処理を終了してもよい。第1透析濾過溶液を用いて、TFFフィルタ1210を介する溶液中の出発フカン組成物の透析濾過により、カチオン含有量が変更された第1保持フカン組成物を得る。
【0099】
前記処理の次の工程は、フカン容器1216内の第1保持フカン組成物から残存するキレート剤を除去することである。これは、第1透析濾過溶液バルブ1224、カチオン含有量変更システムの流出バルブ1206を閉じて、第2透析濾過溶液容器1230からの二次透析濾過溶液が、第2透析濾過溶液供給ライン1235及び第2透析濾過溶液バルブ1234を介してフカン容器1216に入るのを可能にすることにより、実行し得る。続いて、フカン容器1216内の混合物は、TFF供給ライン1212、TFF流入ポンプ1214、TFF保持液戻りライン1218、及びTFF保持液バルブ1217を介して、前述のようにTFFフィルタ1210を通してのTFFに供される。前記二次透析濾過溶液は、例えば、限定されないが、脱イオン水、静菌剤の溶液、及び塩のいずれか1又は複数を含んでいてもよい。前記静菌剤は、例えば、限定されないが、亜硫酸ナトリウム、EDTA、塩化ベンザルコニウム、エタノール、チオ尿素でありうる。適切な塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、リン酸緩衝生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
前記第二次透析濾過溶液は、TFF濾過生成物流出ライン1219上の濾過生成物を介して失われた溶媒を補充するため、及び/又は所定数のダイアボリュームの前記第1保持フカン組成物及び二次透析濾過溶液をTFFフィルタ1210を通して確実に循環させるための両方に使用される。第2透析濾過溶液バルブ1234を制御することにより、前記二次透析濾過溶液をパルス処理で添加することができる。他の実施形態では、前記二次透析濾過溶液は連続モードで添加してもよい。TFFフィルタ1210で処理する二次透析濾過溶液のダイアボリューム数は、予め決定されていてもよい。前記処理は、所定の期間、例えば、約1~約6時間、約3~約12時間、又は約10~約24時間継続しうる。この処理は、所定数のダイアボリューム、例えば、約1~約4ダイアボリューム、約3~約6ダイアボリューム、約5~約10ダイアボリューム、又は約7~約20ダイアボリュームの範囲内のキレート剤で、例えば、10ppm未満、1ppm未満、0.1ppm、又は0.01ppm未満の多価カチオンを含むカチオン含有量となるまで、継続しうる。処理を継続し、フカン容器1216内の残留キレート剤濃度を測定し、適切な低い残留キレート剤濃度、例えば、10ppm未満、1ppm未満、0.1ppm未満、又は0.01ppm未満の残留キレート剤濃度が達成された時点でTFF処理を終了することができる。フカン容器1216内に得られた第2保持フカン組成物は、カチオン含有量変更システム1200の処理による精製/改変フカン生成物を含む。所望により、フカン容器1216内に得られた第2保持フカン組成物は、カチオン含有量変更システム流出ライン1208を介してフカン容器1216から取り出してもよい。
【0101】
超臨界流体抽出
望ましくないレベルの不純物を含む出発フカン組成物などのフカン組成物中のフカンは、超臨界流体抽出に供される。前記方法は、前記出発フカン組成物を超臨界抽出装置に配置すること、前記超臨界抽出装置内の前記出発フカン組成物に70バールを超える適切な圧力を付与すること、前記超臨界抽出装置内の前記出発フカン組成物を30℃超の適切な温度に加熱すること、前記超臨界抽出装置に超臨界流体を充填して、精製/改変フカン及び抽出された不純物を含む超臨界流体を生成すること、前記抽出された不純物を含む超臨界流体を所定の時間後に除去すること、及び前記精製/改変フカンを回収すること、を含みうる。
【0102】
前記超臨界抽出装置に超臨界流体を充填することは、前記超臨界抽出装置に二酸化炭素を充填することを含みうる。超臨界二酸化炭素に、2%v/v~10%v/vのエタノールを添加してもよい。いくつかの実施形態では、超臨界二酸化炭素に、共溶媒として約5%v/vエタノールを添加してもよい。この方法で使用する二酸化炭素の代替の超臨界流体には、エタノール、エタン、塩酸、フッ化水素酸、硫酸(sulfuric acid)、及び硝酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
前記出発フカンに適切な圧力を付与することは、前記出発フカン組成物に約70バール~約2000バールの圧力を付与することを含みうる。前記出発フカン組成物を適切な温度に供することは、前記出発フカン組成物を約30℃~約300℃の温度に供することを含みうる。
【0104】
抽出された不純物を含む超臨界流体を所定の時間後に除去することは、約5分~約50時間後、例えば、約10分~約1時間、約30分~約5時間、約1時間~約24時間、又は約5時間~約48時間後に超臨界流体を除去することを含みうる。
【0105】
前記方法は、前記出発フカン組成物を超臨界抽出装置に配置する前に脱塩することをさらに含みうる。脱塩は、水溶液である前記出発フカン組成物を分画分子量(MWCO)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)フィルタを通して透析濾過することを含んでいてもよい。透析濾過は、前記出発フカン組成物を蒸留水で透析濾過することを含みうる。分画分子量TFFフィルタは、前記精製/改変フカン内又はフカンの望ましい分離点又は標的の分子量よりも小さい分画分子量を有していてもよく、例えば、50kDa、70kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa、又は1000kDaの分画分子量である。透析濾過は、適切なプレフィルタを通して出発フカン組成物を予備濾過して粒子状物質を除去することをさらに含みうる。
【0106】
化学構造修飾
本明細書において考察されている方法、システムなどは、前記フカン、特に、フカン組成物中の前記フカンの化学構造修飾を含みうる。化学構造修飾は、フカン由来の官能基、例えば、フカン構造由来のO-アセチル、N-アセチル、メトキシ、ヒドロキシ、カルボン酸及び/又は硫酸官能基の除去を含みうる。前記化学構造修飾は、広範な化学試薬、例えば、酸、塩基、界面活性剤及び/又は酸化剤の使用を含みうる。
【0107】
タンジェンシャルフロー濾過
本明細書において考察される方法のうちいくつかは、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)を利用する。タンジェンシャルフロー濾過(TFF)フィルタの典型的な識別と同じく、所定のTFFフィルタの名目分画分子量(MWCO)値は、フィルタバリアを越えず、したがって、一般的にバリアを透過物側へ越える/浸透する分子の分子量より大きい分子量及び/又は大きさを有する分子を含む溶液を、選択的にその保持物側(retentate side)に保持する。したがって、TFFフィルタの分画分子量値は、典型的には、任意の所与のポリマー又は名目分画値について絶対的なもの(absolute)ではない。所与のTFFフィルタは、名目分画分子量値を上回る分子及び下回る分子の両方をいくつか通すか又は保持するであろう。特定のポリマーのための名目TFFフィルタの実際の分画/選択値(selectively values)及び効果は、前記特定のポリマーについてルーチン的に決定されうる。
【0108】
多くの因子が前記TFFフィルタの透過挙動に影響を及ぼしうる。これらの因子は、TFFフィルタ自体に依存していることも、又は標的ポリマーの属性に依存していることもあり、例えば、標的ポリマーの折りたたみ挙動及び折りたたみ構造は、TFFフィルタのMWCOバリアを越える/越えないという標的ポリマーの挙動に影響を及ぼしうる。TFFフィルタ自体に関しても、知られているように、多くの因子がTFFフィルタの透過挙動に影響を及ぼしうる。例えば、製造方法によって、特定のTFFフィルタの中において多様な孔サイズが生じさせることができ、かかる多様さには、名目MWCOより大きい孔及び小さい孔の両方が含まれ得る。したがって、名目分画分子量値を有するTFFフィルタは、実質的に名目分画分子量値で分子を通す/保持するが、かかる値を下回る分子及び/又は上回るいくつかの分子を通す/保持するであろう。
【0109】
ゲル浸透クロマトグラフィー
実施例について得られた分子量分布を評価するためにゲル浸透クロマトグラフィーを用いた。ゲル浸透クロマトグラフィーにおける使用のために利用可能な多数の異なるパラメータ、カラム及び標準品があり、分子量の分析に利用できる多様な計器装備構成がもたらされる。本明細書における分子量測定のために、以下のパラメータを用いてGPCを行った。移動相は、0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム流であった。カラムコンパートメント及び検出器は30℃であった。検出のためにWaters2414示差屈折率検出器を用いた。
【0110】
適切なGPCカラムとしては、水性溶媒と適合性のあるGPCカラム、例えば、スルホン化スチレンジビニルベンゼン、NH官能基を有したアクリレートコポリマー網、変性シリカ及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルのうち少なくとも1つが充填されたカラムが挙げられる。本明細書における分析のために、6μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填された内径(ID)が6mmの長さ40mmの1つのガードカラム、続いて、排除限界が約7,000kDaで、有効分子量範囲が約50kDa~約5,000kDaの12μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されたIDが7.8mmの第1の300mm分析GPCカラム、続いて、排除限界が約7,000kDaで、有効分子量範囲が約1kDa~約6,000kDaの10μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されたIDが7.8mmの第2の300mm分析GPCカラムを含む3つのカラムを直列で用いた。カラム構成の総有効分子量範囲は、約1kDa~約6,000kDaであった。このカラム構成の例は、直列に接続されたUltrahydrogel(登録商標)ガードカラム-Ultrahydrogel(登録商標)2000カラム-Ultrahydrogel(登録商標)Linearカラムでありうる。
【0111】
American Polymer Standards Corporationのトレース可能な標準品、すなわち、DXT3755K(ピーク分子量=2164kDa)、DXT820K(ピーク分子量=745kDa)、DXT760K(ピーク分子量=621kDa)、DXT670K(ピーク分子量=401kDa)、DXT530K(ピーク分子量=490kDa)、DXT500K(ピーク分子量=390kDa)、DXT270K(ピーク分子量=196kDa)、DXT225K(ピーク分子量=213kDa)、DXT150K(ピーク分子量=124kDa)、DXT55K(ピーク分子量=50kDa)、DXT50K(ピーク分子量=44kDa)及びDXT5K(ピーク分子量=4kDa)(これらの標準品のピーク分子量は約4kDa~約2,200kDaである)を含む標準曲線に対して試料流を定量した。用いられる標準曲線は、例えば、Dextran3755kDa、Dextran50kDa及びDextran55kDaのうち少なくとも1つ並びに本明細書において考察される3~6つの追加的なトレース可能な標準品を含んでもよく、較正点は、用いられる検量体のピーク分子量である。例示的な較正曲線は、DXT3755K、DXT820K、DXT530K、DXT500K、DXT225K及びDXT55Kからなることができる。本明細書において用いられたカラムは、フカンの定量のために用いられた標準品のピーク分子量範囲を包含し且つそれを超えて拡張された総有効分子量範囲を有するものであった。
【0112】
本明細書におけるフカン/フコイダンポリマーについて述べられた分子量は、分子量が特定の分子量から離れて増加又は減少するにつれて量又は割合が増加又は減少する、より高い及びより低い分子量の分子の分布が常にある分子量の値である。前記分布は、一般的なガウス形状又は歪んだガウス形状を有してよいが、それが必要であるわけではない。
【0113】
本明細書中の表の結果は、分子量分布の特定の特性について使用される略語を含む。ゲル浸透クロマトグラフィーはGPC、ピーク保持時間はPRT、ピーク分子量はPMW、重量平均分子量はWAMW、数平均分子量はNAMW、百分率分布は%dist、分子量はMW、多分散指数はPDI、分画分子量はMWCOと表される。
【0114】
疾患及び状態
線維性癒着
線維性癒着は、通常は手術(外科的癒着)後に、身体の2つの部分の間に形成される瘢痕のタイプである。線維性癒着は、深刻な問題を引き起こす可能性がある。例えば、雌性生殖器官(卵巣、卵管)を巻き込んだ線維性癒着は、不妊、性交疼痛症、および重度の骨盤痛を引き起こす可能性がある。腸に生じる線維性癒着は、腸の閉塞(obstruction)または閉鎖(blockage)を引き起こす可能性があり、また線維性癒着は、心臓、脊椎、および手のような他の場所でも形成されうる。手術に加えて、線維性癒着は、例えば子宮内膜症、感染、化学療法、放射線、外傷およびがんにより生じることもある。
【0115】
本明細書では、様々な線維性癒着が考察されている。外科的癒着(surgical adhesion)、外科手術後癒着(post-surgical adhesion)、術後癒着(postoperative adhesions)、骨盤炎症性疾患による癒着、機械的損傷による癒着、放射線による癒着、放射線治療による癒着、外傷による癒着、異物の存在による癒着などの用語は全て、同様のメカニズムによる組織同士の相互の付着を意味し、全てが線維性癒着という用語に包含される。
【0116】
線維性癒着形成は、通常は身体内で分離している組織同士が互いの組織内に侵食成長する(grow into each other)複雑なプロセスである。外科的癒着(手術後癒着としても知られている)は、外傷に対する組織の、さもなければ正常であったであろう創傷治癒反応から進展し、全腹腔部手術患者の3分の2超(over two-thirds)に生じることが報告されている(Ellis,H.,Surg.Gynecol.Obstet.133:497(1971))。これらの線維性癒着の転帰は多様であり、関係する手術部位や疾患部位など他の部位によって異なる。問題としては、慢性疼痛、腸の閉塞、さらに心臓手術の後の死亡のリスクの増加も挙げられうる(diZerega,G.S.,Prog.Clin.Biol.Res.381:1-18(1993);diZerega,G.S.,Fertil.Steril.61:219-235(1994);Dobell,A.R.,Jain,A.K.,Ann.Thorac.Surg.37:273-278(1984))。生殖可能年齢の女性においては、全不妊症例の約20%は子宮、卵管又は卵巣を含む線維性癒着が原因であると推定される(Holtz,G.,Fertil.Steril.41:497-507(1984);Weibel,M.A.及びMajno,G.Am.J.Surg.126:345-353(1973))。
【0117】
線維性癒着形成のプロセスは、最初に、フィブリンフレームワークの確立及び正常組織の修復が関与する。正常修復プロセスでは中皮の修復に伴い線維素分解が起こる。しかし、線維性癒着形成においては、線維芽細胞の組織網内における増殖の際に線維素のマトリックスが成長して血管形成させ、約3~5日間以内に組織化された線維性癒着が確立線維される(Buckman,R.F.,et al.,J.Surg.Res.21:67-76(1976);Raferty,A.T.,J.Anat.129:659-664(1979))。炎症プロセスには、外傷組織内における好中球の活性化、線維素沈着及び隣接組織同士の結合、マクロファージ浸潤、前記領域内への線維芽細胞増殖、コラーゲン沈着、血管形成並びに永続的線維性癒着組織の確立が含まれる。
【0118】
外科的癒着を予防するために様々な方法が試されてきた。これらには、手術性外傷を伴う生物化学及び細胞作用に影響を及ぼすことを目的とした薬理的アプローチ並びに患部組織を分離する隔壁法が含まれる。例えば、腹腔洗浄、ヘパリン化溶液、凝血原(procoagulants)の使用、例えば顕微鏡外科手技又は腹腔鏡外科手技の使用など外科手技の改変、手術用手袋からのタルクの除去、さらに細い縫合糸の使用、及び漿膜表面の付着(apposition)を最小限に抑える物理的バリア(フィルム、ゲル又は溶液)の使用が全て試みられてきた。現在のところ、予防的治療には、線維素沈着の予防、炎症の軽減(ステロイド性抗炎症薬及び非ステロイド性抗炎症薬)並びに線維素沈着物の除去も含まれている。
【0119】
術後癒着の形成を予防するための介入的試みには、ハイドロフローテーション(hydroflotation)手法又はバリア器具の使用が含まれてきた。ハイドロフローテーションは、関与する器官を分離状態にしておくように大量のポリマー溶液、例えばデキストラン(Adhesion Study Group,Fertil.Steril.40:612-619(1983))又はカルボキシメチルセルロース(Elkins,T.E.,et al.,Fertil.Steril.41:926-928(1984))などを手術部位へ点滴注入することを含む。酸化再生セルロース(例えば、Interceed(商標))やポリテトラフルオロエチレン(Gore-tex手術用膜体)から製造された合成バリア膜及び変性ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(HA/CMC)のの組み合わせ(Seprafilm(商標))から製造された完全再吸収膜も、動物及びヒトの両方における術後癒着形成を軽減させるために用いられてきた(Burns,J.W.,et al.,Eur.J.Surg.Suppl.577:40-48(1997);Burns,J.W.,et al.,Fertil.Steril.66:814-821(1996);Becker,J.M.,et al.,J.Am.Coll.Surg.183:297-306(1996))。これらHA/CMC膜の成功は、線維性癒着が形成される際の腹膜傷部修復プロセス中に組織を分離させる膜の能力によるものであろう。前記膜は適用後の3~5日間をかけて損傷組織上に透明粘性コーティングを形成することが観察された。この修復期間は手術後の癒着形成期間と合致する(Ellis,H.,Br.J.Surg.50:10-16(1963))。残念なことに、これらの方法で認められる成功は限定的であった。
【0120】
腹膜炎には腹膜の炎症が関与する。腹膜炎は激しい症状を引き起すことがある。例えば、腹痛、腹部圧痛及び腹壁防御などがある。腹膜炎には、特発性炎症、解剖に伴う(anatomic)炎症及び/又は腹膜透析関連に伴う炎症が関与する場合がある。腹膜炎には感染が関与する場合もあり、例えば、管腔臓器の穿孔、腹膜の破損、特発性細菌感染腹膜炎及び全身感染によって感染及び腹膜炎が生じることがある。腹膜炎には感染が関与しないこともあり、例えば、腹膜内への滅菌体液の漏出及び滅菌腹部手術によって腹膜炎が生じうる。腹膜炎の予防及び/又は処置のために、様々な試みがなされてきた。例えば、経静脈補水、抗生剤及び手術などの一般的対症療法である。腹膜炎を、望ましくはさらに効果的に、しかも少ない副作用で、抑制又はそれ以外の場合処置及び/若しくは予防するための化合物、組成物、方法及び同種のもの(送達アプローチを含む)に対しては、未だ満たされない需要が存在する。
【0121】
本明細書において考察される精製/改変フカンは、患者における線維性癒着を処置するために使用することができ、線維性癒着を処置するために構成され且つ組成される精製/改変フカン医療機器、精製/改変フカン組み合わせ(combination)若しくは精製/改変フカン医薬品の成分として含まれるか、又は線維性癒着を処置するために構成され且つ組成される精製/改変フカン医療機器、精製/改変フカン組み合わせ若しくは精製/改変フカン医薬品でありうる。例えば、生理的塩類溶液に溶解された本明細書に記載の精製/改変フカンを約0.02mg/mL~約100mg/mL、例えば、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.5mg/mL、0.9mg/mL、1mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mL、又は7.5mg/mLで含む精製/改変フカン医療組成物又は医療機器でありうる。前記生理的塩類溶液は、例えば、乳酸リンゲル液USP(LRS)、生理食塩液又は生理的デキストラン溶液であってよい。
【0122】
本明細書に記載の精製/改変フカン医療組成物又は医療機器は、液体組成物又は液体医療機器(liquid medical device)であってもよいものであり、医薬的に許容し得る賦形剤、例えば、緩衝剤、安定剤、保存剤、アジュバントなどを含んでもよい。かかる精製/改変フカン医療組成物又は医療機器は、前段落におけるフカン医療組成物又は医療機器を約0.01mL/kg(患者又は標的の体重1キログラム当たり)~約10mL/kg又は15mL/kg投与することによって手術前、手術中又は手術後の線維性癒着を処置するために使用されうる。前記精製/改変フカン医療組成物又は医療機器の患者の手術部位への投与量としては、例えば、約0.03mL/kg、0.1mL/kg、0.2mL/kg、0.4mL/kg、0.5mL/kg、0.6mL/kg、1mL/kg、1.2mL/kg、2mL/kg、3mL/kg、4mL/kg、5mL/kg、8mL/kg、10mL/kg又は15mL/kgが挙げられる。さらなる実施形態において、かかる精製/改変フカン医療組成物又は医療機器は、約0.04mg/kg、0.1mg/kg~約25mg/kg、又は50mg/kgを投与することによって、任意の選択された標的部位、例えば、病変、擦過傷、傷害部位、手術部位及び手術後の部位における線維性癒着を処置するために使用されうる。かかる投与量のいくつかの例としては、例えば、患者の手術部位への、約0.04mg/kg、0.075mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.3mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg又は50mg/kgの、例えば本明細書に記載の精製/改変フカンを含む、本明細書に記載のフカンが挙げられる。前記投与は、例えば、前記標的領域の全体にわたって液体医療組成物又は医療機器を点滴すること;前記標的領域の中の(1又は複数の)特定位置に前記液体医療組成物又は医療機器を仕向けること;前記標的領域の中の全体若しくは(1又は複数の)特定位置に液体医療組成物又は医療機器を噴霧すること、又は、特に線維性癒着しやすい若しくは線維性癒着の発現の懸念があると外科医又は他の専門家が同定した(1又は複数の)特定位置上へ、トロカール、カテーテル、内視鏡若しくは他の侵襲性が最小限である装置を通じて噴霧塗布器でありうる塗布器を介して、液体医療組成物又は医療機器を噴霧する若しくはそれ以外の場合送達すること、によって達成されうる。別の態様において、前記投与は、手術創が開いた後でありかつ外科的手技の前、外科的手技の間、又は外科的手技の後でありかつ手術創が閉じる前、に為されうる。所望により、液体医療組成物又は医療機器を、(例えば注射器及び針によって)手術が完了した後で投与することも可能であり、また同様に非外科的標的部位に投与することも可能である。患者の手術部位は、例えば、骨盤腔、腹腔、背側腔(dorsal cavity)、頭蓋腔、脊椎腔、腹部腔、胸腔、胸膜腔、心膜腔、皮膚、関節又は筋肉のうち少なくとも1つでありうる。患者の手術部位内への精製/改変フカン医療組成物又は医療機器の投与は、約15分未満、約10分未満、約8分未満、約6分未満、約5分未満、約4分未満、約3分未満、約2分未満、約1分未満、約45秒未満、約30秒未満、約20秒未満、約15秒未満、約10秒未満又は約5秒未満で達成されうる。
【0123】
手術部位への精製/改変フカン医療組成物又は医療機器での投与の例としては、手術創を開いた後、手術の間、手術創を閉じる前及び/又は手術創を閉じた後における、帝王切開外科的手技、微小血管遊離皮弁再建外科的手技、全層植皮外科的手技、V-Y伸展皮弁外科的手技、筋膜回旋皮弁外科的手技、関節形成外科的手技、乳房切除外科的手技、腐骨摘出外科的手技、杯形成外科的手技、骨切断外科的手技、骨形成外科的手技、膝蓋骨切除外科的手技、滑膜切除外科的手技、被膜切除外科的手技、腱又は靭帯を修復する外科的手技、腱剥離外科的手技、外科的腱切除、筋膜切開外科的手技、半月板修復外科的手技、脊椎切除外科的手技、篩骨切除外科的手技、コールドウェル・ルック手術外科的手技、涙嚢鼻腔吻合外科的手技、溶解鼻癒着外科的手技(lysis nasal synechia surgical procedure)、胸腺摘出外科的手技、肺剥離外科的手技、肺切除外科的手技、胸形成外科的手技、二肺葉切除外科的手技、門脈圧亢進手術外科的手技、脾摘出外科的手技、食道切除外科的手技、腹膜炎手術外科的手技、胃切除手術外科的手技、空腸吻合手術外科的手技、腹腔鏡下胆嚢切除手術外科的手技、腹腔鏡下総胆管検査外科的手技、胃腸吻合外科的手技、肥満手術外科的手技、腸切除及び吻合外科的手技、分節的(segemental)肝除去外科的手技、肺葉切除外科的手技、膵切開外科的手技、膵十二指腸切除外科的手技、腫瘍切除外科的手技、腹腔鏡下腎切除外科的手技、膀胱切除外科的手技、腹部又は骨盤の癒着溶解外科的手技、子宮卵管造瘻外科的手技、卵管形成外科的手技、子宮外妊娠腹腔鏡下手術外科的手技、関節置換外科療法外科的手技、骨折修復外科的手技、子宮摘出外科的手技、胆嚢除去外科的手技、心臓バイパス外科的手技、血管形成外科的手技、粥腫切除外科的手技、乳房生検外科的手技、頚動脈内膜切除外科的手技、白内障手術外科的手技、冠状動脈バイパス外科的手技、子宮内膜掻爬術外科的手技、ヘルニア修復外科的手技、腰痛手術外科的手技、結腸部分切除外科的手技、前立腺切除外科的手技及び扁桃摘出外科的手技の手術部位における精製/改変フカン医療組成物又は医療機器での投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
がん一般
がんは、米国における2番目に多い死因であり、全死亡者数のうち20%超(over 20%)の原因である。がんは、増殖性疾患であり、1又は複数の腫瘍の形成につながり得るある種の細胞の無制御の分裂によって特徴づけられる。がんを処置するために、手術、放射線療法、化学療法及びそれらの併用を含む多くの方法が用いられている。手術は、いくつかの限局性腫瘍のために用いられる比較的一般的な方法であるが、腫瘍切除後の腫瘍再発の可能性は依然として顕著である。
【0125】
がん及び他の増殖性疾患の処置は、非がん性健常組織に対する損傷又は毒性の可能性により制約を受けていた。放射線療法及び外科的処置において、手技は、一般的に腫瘍部位に限られ、また腫瘍部位の近位で行われてきた。しかし、がん組織の外科的除去を受ける患者には著しいリスクがありうる(例えば、前立腺腫瘍又は脳腫瘍の除去においては、例えば非腫瘍組織の切除の必要が潜在的に低いことによって、周囲の主要組織に対して修復不能な傷害を与える著しいリスクの可能性がある)。さらに、前立腺がんのための第1選択の処置として行われてきた集束放射線による処置でも同様のリスクがある。がんの化学療法による処置において、薬物は全身投与されてきたが、その結果、全身が前記薬物に曝露される。これらの薬物は、がん細胞に対して毒性があるように設計されているが、非がん性細胞に対しても(一般的には)毒性があり、その結果、患者は、がんのための薬物処置を受ける場合に非常に不調になる。経験を通して、腫瘍医は、ある程度の患者が忍容性を示しうる投与量でこれらの薬物を投与することが可能である。しかしながら、これらの投与量では、多くの場合、がんの処置に成功しない。
【0126】
がんを処置するあらゆる方法に伴う1つの問題は、当該疾患の局所再発であった。例えば、毎年およそ700,000人のアメリカ人が限局性がんと診断され(全がん患者のおよそ64%)、約500,000人が、外科的方法を用いて処置される。残念ながら、手術で処置された患者の32%が初期処置後に再発する(およそ21%が初期手術部位で再発し、11%が遠隔転移部位で再発する)。毎年約100,000人の患者ががんの限局性再発によって死亡する。このことは、とりわけ乳がんで当てはまったが、乳腺腫瘤摘出を受ける患者の39%が前記疾患の局所再発を経験することになる。
【0127】
ステージ分類は、患者におけるがん(固形腫瘍)の進行を判断する方法である。簡略化されたアプローチによって、がんがどの程度進行したのかに基づいて、患者は3つの群又はステージに入れられる。
【0128】
ステージ1:器官の一部を外科的に除去することによってがんを処置することができる。これは、切除が可能なステージとしても知られている。
【0129】
ステージ2:がんは、切除が可能なポイントを過ぎて進行したが、依然として器官自体に限定される。
【0130】
ステージ3:腫瘍が他の器官に広がっている。
【0131】
多くのがんは、例えば、5-フルオロウラシル(Efudex(登録商標))、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標)))、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)))、シスプラチン(Platinol-AQ(登録商標))、塩酸ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、メトトレキセート及びパクリタキセルを含む抗増殖剤で処置される。抗増殖剤であるメトトレキセート及びパクリタキセルに関連した毒性のいくつかの例は、本明細書において他の箇所で考察される。メトトレキセートは、例えば、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、頭頚部がん、肝がん、肺がん及び精巣がんを含むいくつかのがんを処置するために用いられてきた。パクリタキセルは、例えば、卵巣がん、乳がん及び非小細胞性肺がんを含むいくつかのがんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。
【0132】
5-フルオロウラシルによる毒性としては、心筋虚血などの心臓血管毒性;多幸感、急性小脳症候群及びおよび運動失調などの中枢神経系毒性;脱毛症及び皮膚炎などの皮膚病学的毒性;悪心、嘔吐及び口腔内潰瘍又は胃腸潰瘍などの胃腸毒性;白血球減少症、血小板減少症及び貧血などの血液学的毒性;過敏症及び接触過敏症などの過敏症毒性;流涙増加、羞明及び結膜炎などの眼毒性;並びに発熱などの他の毒性を挙げることができる。5-フルオロウラシルは、例えば、乳がん、結腸直腸がん、胃がん、肝がん、膀胱がん、頭頚部がん、非小細胞性肺がん、卵巣がん、膵がん及び前立腺がんを含む多くのがんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。
【0133】
ビンクリスチンによる毒性としては、子供の発作や幻覚などの中枢神経系毒性;脱毛症などの皮膚病学的毒性;発疱(vesicant)などの血管外遊走毒性;悪心、嘔吐、便秘及び口内炎などの胃腸毒性;骨髄抑制などの血液毒性;末梢神経障害及び自律神経ニューロパシーなどの神経性毒性;複視、一過性失明及び視神経萎縮などの眼毒性;尿閉、高尿酸血症及び膀胱弛緩などの腎臓/代謝毒性;息切れなどの呼吸器毒性;並びに子供の発熱などの他の毒性が挙げられる。この抗増殖剤は、例えばホジキン病、小細胞肺がん、ウィルムス腫瘍及び精巣がんを含むいくつかのがんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。
【0134】
ドキソルビシンによる毒性としては、心電図異常及び心筋症などの心臓血管毒性;脱毛症や爪の変化などの皮膚病学的毒性;発疱などの血管外遊走障害毒性;悪心、嘔吐及び口内炎などの胃腸毒性;尿の赤色着色などの尿生殖器毒性;骨髄抑制などの血液毒性;過敏症及び皮膚発疹などの過敏症毒性;結膜炎などの眼毒性;不妊症などの繁殖毒性;並びに高尿酸血症などの他の毒性が挙げられる。この抗増殖剤は、例えば、乳がん、肺小細胞がん及び卵巣がんを含むいくつかのがんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。
【0135】
シスプラチンによる毒性としては、心電図変化などの心臓血管毒性;色素沈着過剰などの皮膚病学的毒性;刺激(irritant)などの血管外遊走障害毒性;悪心及び嘔吐などの胃腸毒性;骨髄抑制及び溶血性貧血などの血液学的毒性;過敏症などの過敏症毒性;末梢神経障害及び急性変性脳疾患などの神経筋毒性;球後視神経炎などの眼毒性;聴力損失及び耳鳴などの耳科学的毒性;中毒性ネフロパシー及び低カリウム血症などの腎臓/代謝毒性;並びに不妊症などの他の毒性が挙げられる。この抗増殖剤は、例えば、膀胱がん、肺小細胞がん、卵巣がん、精巣がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、頭頚部がん、肝芽腫及び甲状腺がんを含むいくつかのがんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。塩酸ゲムシタビンによる毒性としては、例えば、骨髄抑制などの血液学的毒性;悪心、嘔吐及び口内炎などの胃腸毒性;血清トランスアミナーゼの一過性上昇などの肝毒性;蛋白尿、血尿、溶血性尿毒症症候群及び腎不全などの腎毒性;発疹及び脱毛症などの皮膚病学的毒性;浮腫及び末梢性浮腫などの浮腫毒性;並びに発熱などの他の毒性が挙げられる。この抗増殖剤は、膵がん及び非小細胞性肺がんを処置するために用いられてきた(Compendium of Pharmaceutical and Specialties Thirty-fifth Edition,2000)。
【0136】
本考察は、前立腺、乳房、膵臓、肝臓、腎臓、泌尿生殖器系、脳、胃腸系、呼吸器系及び頭頸部の限局性がん又は固形腫瘍など、処置することが可能な限局性がん又は固形腫瘍の予防又は処置を含む。本明細書における前記組成物等は、拡散又はさらに全身輸送により有効濃度の精製/改変フカンを前記腫瘍及び/又は転移に到達させ、前記標的腫瘍からいくらか遠隔部位における精製/改変フカンの制御放出を可能にすることによって、転移を含むがんを予防又は処置しうる。以下の段落において、これらのがんのうちいくつかをさらに考察する。
【0137】
前立腺がん
前立腺がんは、前立腺を覆う細胞で起こる悪性腫瘍である。米国では、推定で200,000人の患者が、今年、前立腺がんを発症し、30,000人超が前記疾患で死亡する。前立腺がんは、新たな症例に対する死亡の比率が約15%である。前記がんは、前立腺の中に残る可能性があるか、又はそれは、周囲組織若しくは遠隔部位(ほとんどの場合、リンパ節及び骨)に広がる。通常、前立腺がんは静かに広がり、それが前立腺を越えて進行した場合のみ症候を生じる。前立腺がんが診断されて早期ステージの間に処置された場合、いくつかの研究において、患者の5年生存率は94%であった。
【0138】
前立腺がんは、多くの場合、50歳を過ぎた(over age 50)男性の疾患として考察される。実際、前立腺がんの男性の80%が60歳以上である。男性が生涯の間に前立腺がんと診断される可能性は、10の内、約1であり、女性が乳がんになる可能性とおおむね同じである。前記疾患を、多くの場合症候が発現するずっと前に、その発現の早期に検出し得る試験の向上の結果として、新規症例が報告される数は、近年著しく上昇した。ある年に前立腺がんを発症する可能性は、年齢と共に増加するが、50歳以降で著しく上昇する。
【0139】
前立腺がんのための現行の処置の選択肢は、疾患進行の程度、患者の年齢及び全体的健康に依存する。早期ステージのがんだけに罹患しているか、又はさらなるより重篤な疾患に罹患している高齢患者は、保存的に処置されうるが、がんが進行している高齢患者は、より積極的な処置を受けうる。前立腺がんは、放射線治療(外部ビーム放射又は近接照射療法)、ホルモン消退又は去勢(外科的又は化学的)、抗増殖剤、手術、待期的治療(すなわち、「注意深い経過観察」)を含む各種方法によって処置されてきた。処置は、完治を保証するものではなく、一部にはかなりの副作用がある。
【0140】
早期ステージの前立腺がん(すなわち、腫瘍が前立腺に限局性である)は、「注意深い経過観察」で扱われてもよい。前立腺がんの手術は、それ以外の面で全体的健康が良好であり、腫瘍が前立腺に限定される患者について推奨されてきた。70歳未満の男性の前立腺の限局性がんのための一般的処置は、根治的前立腺切除(すなわち、前立腺の外科的除去)であった。
【0141】
がんが前立腺領域内において限局性である患者は、一般に、外部ビーム放射(EBR)で処置される。前記放射は、がん細胞を死滅させ、腫瘍を縮小させる。EBRは、限局性前立腺がん処置の20%未満を占め、これらの患者のおよそ50%が前記疾患の放射後再発を経験する。早期ステージの前立腺がんの検出及び患者からの需要増大に相まって、近接照射療法(すなわち、局所放射線治療)の使用が増えることが予測されている。1995年には、近接照射療法を用いて処置されたのは新規に診断された患者のわずか2.5%であった。近接照射療法は、前立腺腫瘍内に放射性金属の「種」を埋め込むことを含む。
【0142】
広まった前立腺がんの処置には、精巣を除去すること又はホルモン治療が含まれる。がんの増殖を引き起こしてきたテストステロンの生成を抑制又は止めるには両方が用いられる。ホルモン消退治療を受けるのは全ての前立腺がん患者のおよそ20%である。ホルモン治療は、酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標))又は酢酸ロイプロリド(Lupron(登録商標))を含む。前立腺がんを処置するために用いる抗増殖剤としては、5-フルオロウラシルが挙げられている。
【0143】
乳がん
米国において、乳がんは、女性の間で最もよくみられるがんであり、毎年約180,000件の新規症例が診断される(男性の乳がんは、全ての診断された乳がんの約5%を占める)。女性の死因として乳がんを超えるのは肺がんのみであり、乳がんは、毎年およそ50,000の死亡の原因となった。アメリカ人の女性において、その生涯の間に乳がんを発症する可能性があるのは8人のうち1人(又は約13%)である。過去10年にわたって、最も報告された乳がんは、小さい、原発性の(独立して生じる;転移によって引き起こされない)腫瘍であった。新規に診断された患者のおおむね70%~80%が早期疾患(ステージ1又は2)を示し、大多数には腋窩(わきの下)リンパ節の併発がなかった。
【0144】
ほとんどの乳がんは、がん腫(すなわち、上皮組織から増殖する悪性腫瘍)である。肉腫又は結合組織、骨、筋肉若しくは脂肪から生じる腫瘍は乳房がんの1%未満である。また、ほとんどの乳がん(約75%)は、乳管を覆う組織内で生じる腺管がんである。ずっと少ない数のがん(約7%)が乳腺小葉内で認められ、小葉がんと呼ばれる。他の形態の乳がんのほとんど全ての原因はページェット病(小室及び乳首のがん)及び炎症性がんである。
【0145】
乳がんの処置は、複雑になっており、多くの因子に依存する。2つの重要な因子は、腫瘍の型及び進行のステージである。腫瘍の特性は、特に、個々を、2つの群、すなわち、(1)がん再発のリスクが低い個体、及び(2)がん再発のリスクが高い個体、に分けるのに役立つ。特定の予後因子によって、患者はこれらの群のうちいずれかに入る。これらの因子としては、腫瘍の大きさ;女性ホルモンエストロゲン及びプロゲステロン(ER/PR)受容体の存在;細胞の増殖周期(腫瘍細胞が活発に分裂しているのか、又は「S期」であるのかどうか);「her-2-neuタンパク質」として知られているタンパク質の存在;腫瘍悪性度、すなわち、腫瘍細胞の分化又は変化の指標;及び腫瘍倍数性、すなわち、腫瘍細胞内の遺伝物質の組の数、が挙げられる。
【0146】
著しいリンパ節併発のない原発疾患の処置は、乳腺腫瘤摘出及び放射線治療によるものである。より著しいリンパ節併発は、乳房切除及び補助的リンパ節の除去の根拠となり得る。このステージにおいて、転移及び局所再発の可能性は高い。転移性疾患の処置は症状緩和目的であり、放射線治療及び化学療法を含むものであって、これらは免疫を抑制し、細胞を障害し白血球を減少させる。乳がんに対する使用のために、例えば、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、メトトレキセート及びパクリタキセルを含む抗増殖剤が承認されている。
【0147】
膵がん
膵臓は、胃及び小腸の近くに位置する消化器系の器官である。それは、2つの主要な機能、すなわち、酵素及びホルモンの生成を有する。膵臓のがんは、外分泌(すなわち、酵素)膵臓内で生じ得(例えば、古典的な膵臓腺がん)、又は内分泌(すなわち、ホルモン)膵臓内で生じ得る。
【0148】
外分泌膵臓のがんは、非常に重篤な健康問題である。米国において、およそ28,000人の患者が膵がんと診断されるが、一方でほぼ同じ数が毎年この疾患で死亡する。膵がんは、男性及び女性で同程度に生じる。診断における困難、膵がんの固有の攻撃的性質、及び利用可能な全身処置の選択肢が乏しいことのため、膵臓腺がん診断後に5年間生存するのは診断された患者のおよそ4%のみである。膵がんは、乳がん、肺がん、結腸がん及び前立腺がんに続く、がんによる死亡の5番目の原因である。
【0149】
膵がんの処置の選択は、腫瘍のステージに大きく依存する。可能な処置としては、手術、抗増殖剤、放射線及び生物学的療法が挙げられる。手術は、通常、がんが切除可能であると考えられるステージ1の患者のために確保されている。場合によっては、手術の前又は後に投与される放射線及び抗増殖剤などの治療の併用によって、患者の生存可能性が増加しうる。切除不能であると考えられる膵がん(通常、ステージII以降)は、臨床試験における抗増殖剤を用いて処置されうる。例えばゲムシタビン又は5-フルオロウラシルなどの抗増殖剤は、膵がんに対して多少の効果を有し、ゲムシタビンは、症状緩和目的の剤として用いられてきた。これらの抗増殖剤による毒性は、本明細書に記載の別の箇所において考察される。放射線治療は、化学療法と併用して用いられる場合、膵がんに対する多少の効果を有する。放射線治療単独で症候が抑えられることがある。この形態の処置は、ステージII以降の膵がんにおいても用いられている。
【0150】
膀胱がん
1998年には、米国で膀胱がんの新規症例が54,000件超診断され、該疾患に起因する死亡は約15,000件と推定された。膀胱がんは、アメリカ人の男性の中で4番目に多いがんであり、アメリカ人の女性の中で9番目に多いがんである。膀胱がんは女性よりも男性に3倍頻繁に起こる。より高齢の男性の主要な疾患である膀胱がんは、疾病及び死亡の著しい原因である。膀胱がんのリスクは、年齢と共に急激に増加し(症例の80%が50歳を過ぎた人々に起こる)、膀胱がんでの全死亡の半分超が70歳以降で起こる。65歳を過ぎた白人において、膀胱がんの年間疾病率は、1,000人当たりおよそ2症例であり、このことは、65歳未満では1,000人当たり0.1症例の割合であることと対照をなす。一人が生涯の間において膀胱がんを発症する確率は3%より高いが、膀胱がんで死亡する確率は小さい(<1%)。膀胱がんが40歳より若い人々に起こることは稀である。
【0151】
最近の研究は、ある種の遺伝子及び遺伝性の代謝能力が膀胱がんにおいて役割を果たす可能性があることを示唆する。移行上皮がん(TCC)は、膀胱がんの最もよくみられる形態である。TCCは、通常、茎状基部上の表在性(表面)腫瘤、乳頭状(疣状)腫瘤、外方増殖性(外側に増殖する)腫瘤として生じる。しかし、場合によっては、TCCは、広範な基部に付着する可能性があるか、又はそれは、(窪んだ病変内で)潰瘍化したようにみえる可能性がある。乳頭状TCCは、多くの場合、後に脱分化するか又は個別細胞の特性を喪失する過形成の領域として開始する。乳頭状TCCの約10%~30%のみが浸潤がんに進行する。対照的に、TCCの非乳頭状形態は浸潤性になる可能性が高い。記載したように、かかるTCCは、潰瘍化しているか又は平坦にみえることがある。未分化上皮から構成された平坦で非乳頭状のTCCは、上皮内がん(CIS又はTIS)として分類されている。CISの組織は、大きく、顕著な核小体(細胞内の丸い実体;タンパク質合成に関与する)を有し、正常な極性を欠いた細胞を含んでいる。
【0152】
膀胱がんの処置は、多くの因子に依存する。これらの因子で最も重要なものは、存在する腫瘍の型及びそのステージである。一般的な処置としては、経尿道的切除(TUR)、電気外科手術、レーザー外科手術、膀胱内治療、抗増殖剤、外科的治療、膀胱切除及び放射線治療が挙げられる。膀胱がんを処置するために用いられる抗増殖剤の例としては、例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン及びメトトレキセートが挙げられる。延期抗増殖剤である5-フルオロウラシル、シスプラチン及びメトトレキセートによる毒性は、本明細書において他の箇所で考察される。
【0153】
脳がん
脳腫瘍は、手術不能であることがしばしばであり、患者の80%超が診断から12ヵ月以内に死亡する。米国では原発性頭蓋内(脳)がんの新規症例が毎年およそ18,000件診断される。脳腫瘍は、全ての成人がんの約2パーセントを示す。脳腫瘍のうち50パーセント超は、高悪性度神経膠腫(すなわち、多形性神経膠芽細胞腫及び退形成星細胞腫腫瘍)である。これらの腫瘍の患者は、しばしば、運動機能障害、発作及び視力障害などの重度の障害に苦しむ。
【0154】
脳組織内で発生する腫瘍は、原発性脳腫瘍として知られている。原発性脳腫瘍は、それらが発生する組織の型によって分類される。最も一般的な脳腫瘍は、神経膠(支持)組織内で発生する神経膠腫である。他のものとしては、星細胞腫、脳幹部神経膠腫、上衣腫及び乏突起神経膠腫が挙げられる。
【0155】
脳腫瘍の外科的除去は、ほとんどのタイプについて、またほとんどの位置において推奨されるが、神経機能の保存の制約の中でできるだけ完全であるべきである。この規則の例外は、臨床的エビデンスに基づき診断され、およそ50%で(approximately 50% of the time)初期手術なしで処置される、脳橋神経膠腫などの深在腫瘍の場合である。しかしながら、多くの場合は、生検による診断が行われる。到達し且つ切除することが困難な病変については、定位生検を用いることができる。治癒がまれであるか又は切除不能な脳腫瘍に罹患している患者は、前記腫瘍の局所的制御を向上させるために外部ビーム放射線治療と併用して用いられる放射線増感剤、温熱療法若しくは組織内近接照射療法を評価する臨床試験又は新しい薬物及び生体応答調節剤を評価する研究のための候補と考えられるべきである。
【0156】
放射線治療は、ほとんどの腫瘍タイプの処置において主要な役割を有し、治癒率を上昇させること又は無病生存期間を延長させることが可能である。放射線治療は、最初に手術単独で処置された患者における再発の処置においても有用でありうる。手術及び放射線治療の前、間又は後に、化学療法を用いてもよい。同様に、再発性腫瘍も化学療法で処置される。脳がんの処置で用いられる抗増殖剤としては、シスプラチンが挙げられる。この抗増殖剤に関連した毒性の例は、本明細書において他の箇所で考察される。
【0157】
再狭窄
再狭窄は、血管壁肥厚と、血管により組織へ供給される血流の喪失とにつながる、慢性血管損傷の形態である。この炎症性疾患は、血管閉塞を軽減する任意の操作を含む血管再建手技に応答して生じることがある。したがって、再狭窄は、これらの手技の有効性を限定する主要な制限的因子である。
【0158】
本考察は、例えば治療上有効量のオリゴヌクレオチド治療薬と抗炎症剤との配合物を血管に投与することによる再狭窄の予防又は処置を含む。適切な組成物は、再狭窄部位若しくは潜在的再狭窄部位で外科的に埋め込まれ得るポリマー担体を含むか、又はポリマーペースト若しくはポリマーゲルとしてカテーテルを介して注入されうる。適切な組成物は、本明細書において考察される精製/改変フカンを含んでもよい。
【0159】
関節炎
関節リウマチ(RA)は、関節組織の疼痛、腫脹、滑膜細胞増殖(パンヌス形成)及び破壊を特徴とする消耗性慢性炎症性疾患である。進行期において、前記疾患はしばしば重要な器官を損傷し、致死的となり得る。前記疾患は、免疫系(マクロファージ/単球、好中球、B細胞及びT細胞)複合的サイトカイン相互作用並びに滑膜細胞の機能不全及び増殖の複数の要素を含む。メトトレキセートなどの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)による早期の積極的処置が推奨されており、該薬物は、本明細書において他の箇所で考察される。
【0160】
結晶誘発性関節炎は、関節内におけるマクロファージ及び好中球の結晶誘発性活性化を特徴とされてきたものであり、その後、何日間も激痛が生じる。前記疾患は、発症の間の間隔が短くなり、患者が病的状態であることが増えるように進行する。この疾患は、概して、ジクロフェナクナトリウム(Voltaren(登録商標))などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)で対症的に処置されてきた。この抗炎症剤は、浮動性めまい及び頭痛などの中枢神経系毒性;発疹及びそう痒などの皮膚病学的毒性;悪化した潰瘍性大腸炎及びクローン病などの胃腸毒性;急性腎不全及び腎乳頭壊死などの尿生殖器毒性;無顆粒球症、白血球減少症及び血小板減少症などの血液学的毒性;肝トランスアミナーゼ上昇及び肝炎などの肝毒性;並びに喘息及び過敏症などの他の毒性を含む毒性を有する。
【0161】
本考察は、例えば治療上有効量のオリゴヌクレオチド治療薬及び所望により抗炎症剤を患者に投与することによる、関節リウマチの予防又は処置を含む。適切な組成物は、前記抗炎症剤の制御放出担体として関節に注入されうるポリマー担体と、(前記ポリマー担体中に組み込まれた)前記オリゴヌクレオチド治療薬の制御放出担体としての微粒子とを含む。適切な組成物は、本明細書において考察される精製/改変フカンを含みうる。かかるポリマー担体は、ポリマー微小球、ペースト又はゲルの形態を取りうる。
【0162】
炎症状態
本明細書に記載の前記組成物などは、例えばオリゴヌクレオチド治療薬及び抗炎症剤を含む組成物を患者に投与することを含む、好中球が関与する炎症状態の抑制又は処置を、所望により行うことができる。かかる状態の例としては、結晶誘導性関節炎、骨関節炎、非リウマチ様炎症性関節炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、サルコイドーシス、乾癬、湿疹、炎症性大腸疾患、慢性炎症性肺疾患、神経障害及び多発性硬化症が挙げられる。これらの疾患の一部は、以下の段落でさらに考察される。
【0163】
慢性炎症性皮膚疾患(乾癬及び湿疹を含む)
乾癬は、痒みがあり、ひりひりし、チクチクし、容易に出血する、隆起し、肥厚し、鱗片状である病変を特徴とする一般的な慢性炎症性皮膚疾患である。これらの疾患は、前記疾患の後期に細胞増殖成分及び血管形成成分を有するが、患者は、多くの場合、付随的な関節炎状態を有する。症状は、プレドニゾンなどのステロイド性抗炎症剤又はメトトレキセートなどの抗増殖剤によって処置されてもよく、それらの剤は、本明細書において他の箇所で考察される。慢性炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬及び/もしくは湿疹の抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防のために、本明細書における前記組成物を用いてもよい。
【0164】
以下は、本明細書において考察される組成物で処置することが可能な、例えば、動静脈奇形(血管奇形)における動脈塞栓術;月経過多;急性出血;中枢神経系障害;脾機能亢進;乾癬などの炎症性皮膚疾患;湿疹様疾患(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹);免疫水疱性疾患;並びに関節リウマチ、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、サルコイドーシス、結晶誘発性関節炎及び骨関節炎(それらの全ては、顕著な症候として、炎症を起こした、痛みを伴う関節を特徴とする)を含む様々な状態を含む炎症性関節炎を含む炎症性疾患のいくつかのさらなる代表的例を提供する。
【0165】
虚血
虚血(ischemia)又は乏血(ischaemia)には血液供給における制限が関与し、前記制限としては、適切な組織機能のために必要な酸素、グルコース及び他の成分の供給の不足が挙げられ、組織の傷害及び/又は機能障害を引き起こす。虚血は、重度の問題を引き起こす可能性がある。例えば、組織が無酸素化して壊死したりする可能性があり、血液凝固が発生する可能性がある。虚血の予防及び/又は処置を行うために各種試みが行われてきた。例えば、血流復活治療あるいは再灌流治療がある。しかし、血液復活治療には酸素の再導入が関与し、これはフリーラジカルの生成によるさらなる損傷を引き起こす可能性があり、再灌流による傷害を発生させる可能性がある。再灌流傷害は深刻な問題を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の組成物は、虚血及び/もしくは再灌流傷害を抑制するか又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0166】
内毒素血症
内毒素血症は、血液中にエンドトキシンが存在することである。内毒素血症は深刻な問題を引き起こす可能性がある。例えば、内毒素血症は敗血症性ショックにつながる可能性がある。本明細書に記載の組成物は、内毒素血症を抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0167】
ケロイド瘢痕
ケロイド形質は、創傷を、隆起した瘢痕を伴って治癒させる。ケロイド形質の隆起瘢痕には異常な線維性瘢痕化が含まれる。ケロイド形質は、重度の問題、例えば疼痛や外観上の問題(disfigurement)を引き起こす。本明細書に記載の組成物は、ケロイド形質及びその結果として生じる隆起瘢痕を抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0168】
ケロイド(ケロイド瘢痕)は、正常な皮膚の上に増殖して広がるタイプの瘢痕である。ケロイドにはI型及びIII型コラーゲンの異常増殖を含む異常コラーゲン増殖が関与する。ケロイドは、重度の問題、例えば、疼痛、そう痒を引き起こし、感染した場合は潰瘍化する可能性がある。ケロイドを処置又は予防するために、外科手術、包帯、ステロイド注入及びレーザー治療の使用を含む試みが為されてきた。本明細書に記載の組成物は、ケロイドを抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0169】
皮膚炎
皮膚炎にはアトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎を含む皮膚の炎症が含まれる。例えば、接触性皮膚炎には、皮膚の異物との接触の後に発症する局所的発疹及び/又は皮膚の刺激が関与する。例えば、アトピー性皮膚炎は、慢性的に再発性である掻痒性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎は時にベニエー痒疹、神経皮膚炎、内在性湿疹、屈面性湿疹、乳児皮膚炎、小児期湿疹及び急性単純性痒疹(prurigo diathsique)と称される。湿疹は、皮膚炎の形態の疾患である。他のタイプの皮膚炎としては、海綿状皮膚炎、脂漏性皮膚炎(ふけ)、汗疱状皮膚炎(汗疱)、蕁麻疹、小疱性皮膚炎(水疱性皮膚炎)及び丘疹性蕁麻疹(popular urticaria)が挙げられる。皮膚炎は、重度の問題を引き起こす可能性がある。例えば、乾燥肌、皮膚発疹、皮膚浮腫、皮膚発赤、皮膚掻痒、痂皮形成、ひび割れ、水膨れ、滲出及び出血である。皮膚炎を処置又は予防するために、コルチコステロイド及びコールタールの使用を含む試みが為されてきた。本明細書に記載の組成物は、アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎、海綿状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、汗疱状皮膚炎、蕁麻疹、小疱性皮膚炎及び丘疹性蕁麻疹を含む皮膚炎を抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0170】
酒さ
酒さは、典型的には顔面紅斑を特徴とする慢性疾患又は慢性状態である。酒さは、重度の問題を引き起こす可能性がある。例えば、酒さは典型的には額、鼻又は頬上の発赤として発生し、頸部、耳、頭皮及び胸部上の発赤を引き起こすこともある。例えば、酒さは、毛細血管拡張、丘疹、膿疱、痛痒感を含むさらなる症候を引き起こし、進行した場合には鼻瘤(赤色の分葉状の鼻)を発症しうる。酒さのサブタイプとしては、紅斑毛細血管拡張型酒さ、丘疹膿疱性酒さ、瘤腫型酒さ(phymatous rosacea)及び眼型酒さが挙げられる。酒さを処置又は予防するために、抗炎症剤及び抗生剤の使用を含む試みが為されてきた。本明細書に記載の組成物は、紅斑毛細血管拡張酒さ、丘疹膿疱性酒さ及び眼性酒さのサブタイプを含む酒さを抑制又は、それ以外の場合、処置及び/もしくは予防するために用いられてもよい。
【0171】
医療機器、医療材料、組み合わせ及び医薬製品
本明細書における考察は、医療機器、組み合わせ製品又は医薬的に許容し得る容器内に本明細書において考察される組成物を含む、医療機器、組み合わせ及び医薬製品も提供する。前記製品(products)は前記容器に添付された注意事項をさらに含んでもよい。注意事項は典型的には、医療機器、医療材料、組み合わせ及び医薬又は生物医薬の製造、使用又は販売を規制する所管官庁によって規定された形態であり、これによって注意書きは、例えば、精製/改変フカンが、例えば、増殖性疾患又は炎症性疾患(例えば、炎症性関節炎、再狭窄、外科的癒着、乾癬及び腹膜炎など)の処置のためにヒト又は動物に投与するための抗増殖剤又は抗炎症剤として承認されている旨など、官庁による前記組成物の承認を反映するものとなる。本明細書に記載の精製/改変フカンの使用のための説明書も含まれてよい。かかる説明書は、患者の投与及び投与方法に関する情報を含んでもよい。
【0172】
本出願は、前記フカン及び組成物自体を製造することを含む、本明細書において考察される前記精製/改変フカン、システムなどの各種要素の製造方法、並びにその使用方法、例えば、本明細書に記載の状態、前記疾患などの処置をさらに対象とする。
【0173】
本出願は、線維性癒着、関節炎、乾癬又は所望の他の疾患を処置するための、本明細書に示された精製/改変フカン及びフカン組成物を含む医療機器、医療材料、医薬組み合わせ製品及び医薬品を含む。前記材料などは、外科的癒着、関節炎、乾癬又は他の所望の疾患などの線維性癒着を処置するための医薬において使用することができる。医薬的に有効な量の、本明細書において考察されるフコイダンなどのフカンを医薬的に許容し得る賦形剤又は緩衝剤と併用することを含む、ヒト患者を含む患者における線維性癒着、関節炎及び乾癬のうち少なくとも1つに関連した症状を軽減させることが可能なかかる医薬の製造方法及び使用方法も提供される。
【実施例0174】
以下の実施例は、本明細書におけるある種の実施形態の例示的考察を提供するが、本開示及び請求項は、それらに限定されるものではない。
【0175】
実施例1:化学的構造的改変
ラミナリア・ヒペルボレア(Laminaria Hyperborea)から滲出物-抽出物を得た。前記滲出物-抽出物を濾過し、100kDaフィルタを用いた(over)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって小分子を除去した。改変させられないかぎり未改変の試料A(otherwise unmodified sample A)を得るために、得られた保持物(retentate)の試料を凍結乾燥した。得られた保持物を、10MのNaOH溶液の添加によって0.25MNaOHとし、室温で16時間静置した。次いで、得られた試料を50kDaのフィルタを用いて遠心濾過し、得られた保持物を回収して凍結乾燥し、塩基処理試料Bを得た。陽子磁気共鳴分光法(
1H-NMR)によって未改変試料A及び塩基処理試料Bの両方を分析した。得られた
1H-NMRスペクトルを
図2Aに示す。
【0176】
図2Aは、前記フカンの化学的構造的改変を示すが、前記未改変試料Aに存在する約2.0ppmのケミカルシフトを伴うブロードピークは、前記塩基処理試料Bには存在しない。
【0177】
さらに、2D
1H-
13C異核多重量子コヒーレンス(HMQC)によって未改変試料A及び塩基処理/改変試料Bを分析した。
図2Bに示されるHMQCスペクトルを、5mmのコールドプローブを備えた600MHz分光計によって、溶媒シグナルを抑制しつつ70℃で取得した。前記HMQCスペクトルの多くの走査を、各回256~512回の走査として8ずつ回数を増加させつつ、炭素次元における10~30ppmの範囲で取得し、かかる走査を組み合わせて
図2Bの前記スペクトルを作製した。
【0178】
未改変試料Aについての前記HMQCスペクトルは、
図2Bにおいて円で囲まれたシグナルによって示されるO-アセチル基に対応するクロスピークを有する。このクロスピークは、塩基処理試料Bについての前記スペクトルには存在しない。このことは、前記フカンからアセチル基が除去されたことを示しており、ひいては、前記NaOH処置により塩基処理試料Bにおいて前記フカンが化学的構造改変していることを示している。
【0179】
実施例2 物理的に誘導される凝集
茶色の粉末原料フコイダンを約10%w/vで蒸留水に溶解して、出発溶液を得た。塩化ナトリウムを前記出発溶液に添加して、約0.1Mの最終塩化ナトリウム濃度を有する混合物を生成した。前記混合物を10~15分間沸騰近くまで加熱した。この温度での前記混合物の処理は、懸濁不純物及び粒子状の非フコイダン物質の凝集を引き起こした。前記混合物を2300G(遠心力)で40分間遠心分離して、フコイダン含有溶液を凝集した非フコイダン成分から分離した。前記フコイダン含有溶液を目視検査すると、粒子状物質及び色の視覚的減少が観察された。前記フコイダン含有溶液の凍結乾燥部分は、使用した原料フコイダンよりも著しく色が少ないオフホワイトの粉末を含んでいた。例えば、水中10mg/mLの原料フコイダンの紫外/可視スペクトル及び水中10mg/mLの精製/改変フカンの紫外/可視スペクトルを取得すること、約400nm~約700nmの範囲内のスペクトルの可視領域の総吸光度を決定すること、及び前記原料フコイダンと比較して、精製/改変フカンの総吸光度が少なくとも約5%、10%、又は20%減少していることを確認することによって、色の喪失を定量化して比較できる。
【0180】
実施例3 固相抽出
茶色の粉末原料フコイダンを、70%v/vエタノール/水中の0.5M水酸化ナトリウム(NaOH)の40℃の混合物に添加した。得られた反応混合物を攪拌し、40℃で2時間維持した。次に、前記反応混合物を遠心分離して、固体の精製/改変フコイダンを、抽出した不純物を含む70%v/vエタノール/水の上清中の0.5M水酸化ナトリウム(NaOH)から分離した。
【0181】
視覚化すると、前記固体の精製/改変フコイダンは、原料フコイダンよりも、肉眼的には含まれる色が著しく少ないことが判明した。この色の損失は、フロロタンニンなどの不純物が除去されたことを示しており、フカンには発色団が含まれていないため、完全に純粋になると無色になることによる。例えば、水中10mg/mLの原料フコイダンの紫外/可視スペクトル及び水中10mg/mLの精製/改変フカンの紫外/可視スペクトル(ultraviolet/visible (UV/Vis spectrum))を取得すること、約400nm~約700nmの範囲内のスペクトルの可視領域の総吸光度を決定すること、及び前記原料フコイダンと比較して、精製/改変フカンの総吸光度が少なくとも約5%、10%、又は20%減少していることを確認することによって、色の喪失を定量化して比較できる。
【0182】
実施例4 化学的に誘導される沈殿
原料フコイダン組成物を15%w/vで蒸留水に溶解して、出発溶液を形成した。観察により、前記出発溶液は懸濁した粒子状物を含むことが判明した。塩化カルシウムを前記出発溶液に0.5Mの濃度まで添加して、反応混合物を生成した。天然フコイダンの既知の不純物をシミュレートするために、アルギン酸ナトリウムを5%w/wアルギン酸/フコイダンの濃度で添加し、デンプンを5%w/wデンプン/フコイダンの濃度で添加した。この場合、デンプンをラミナリンの模倣物として使用した。10M水酸化ナトリウム(NaOH)を前記反応混合物に滴下して、pHを7~8にした。これは、前記反応混合物中のフコイダンの分解を避けるために行った。その後のリン酸の添加による前記反応混合物の酸性化を回避するために、最小量の10M水酸化ナトリウム(NaOH)を前記反応混合物に再度添加した。リン酸の添加により、反応混合物を0.5Mリン酸塩にした。これにより、塩化カルシウムとリン酸との反応により形成されたリン酸カルシウムの作用を介して、懸濁した粒子状物及び沈殿不純物の凝集が開始された。前記反応混合物を室温で10分間放置して、凝集を継続させた。前記反応混合物を17568Gで17分間遠心分離して、上清溶液中の所望の精製フコイダンを凝集不純物から分離した。前記上清溶液を目視検査して、色及び粒子状物の除去を定性的に評価した。前記上清溶液のアリコートを300~800nm領域の紫外/可視吸収によって分析して、紫外/可視スペクトル領域の光を散乱及び/又は光を吸収する非フコイダン成分の除去を評価した。前記上清溶液のアリコートも凍結乾燥して、フカン含有量(fucan content)を得た。前記上清溶液のアリコートも3M塩酸(HCl)で90℃で加水分解し、パルスドアンペロメトリック検出付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)で分析して総炭水化物を検出し、ラミナリン及びアルギン酸塩の除去を評価した。ラミナリン、単量体マンヌロン酸、及び単量体グルロン酸の除去を評価して前記アルギン酸塩の除去を評価するために、不純物の定量化を、単量体グルコース標準に対して行った。
【0183】
出発物質であるフコイダン及び得られた精製/改変フカンの分析結果を以下の表1に示す。
【0184】
【0185】
実施例5 化学的に誘導される沈殿
原料フコイダン組成物を15%w/vで蒸留水に溶解して、出発溶液を形成した。観察により、前記出発溶液は懸濁した粒子状物を含むことが判明した。天然フコイダンの既知の不純物をシミュレートするために、アルギン酸ナトリウムを5%w/wアルギン酸/フコイダンの濃度で添加し、デンプンを5%w/wデンプン/フコイダンの濃度で添加した。この場合、デンプンをラミナリンの模倣物として使用した。10M水酸化ナトリウム(NaOH)を前記反応混合物に滴下して、pHを7~8にした。これは、後の硫酸アルミニウム添加が前記出発溶液を酸性とするためのものである場合における前記出発溶液中でのフコイダンの分解を避けるために行われた。前記出発溶液を硫酸アルミニウム濃度0.1M(0.1 M aluminum sulfate)として反応混合物を生成した。これにより、同時に形成された水酸化アルミニウムによって不純物の沈殿並びに不純物及び懸濁粒子状物の凝集が開始された。前記反応混合物を室温で10分間放置して、凝集を継続させた。前記反応混合物を17568Gで17分間遠心分離して、上清溶液中の所望の精製フコイダンを凝集不純物から分離した。前記上清溶液を目視検査して、色及び粒子の除去を定性的に評価した。前記上清溶液のアリコートを300~800nm領域の紫外/可視吸収によって分析して、紫外/可視スペクトル領域の光を散乱及び/又は光を吸収する非フコイダン成分の除去を評価した。前記上清溶液のアリコートも凍結乾燥して、フカン含有量を得た。前記上清溶液のアリコートも3M塩酸(HCl)で90℃で加水分解し、パルスドアンペロメトリック検出付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)で分析して総炭水化物を検出し、ラミナリン及びアルギン酸塩の除去を評価した。ラミナリン、単量体マンヌロン酸、及び単量体グルロン酸の除去を評価して前記アルギン酸塩の除去を評価するために、不純物の定量化を、単量体グルコース標準に対して行った。
【0186】
出発物質のフコイダン及び得られた精製/改変フカンの分析結果を以下の表2に示す。
【0187】
【0188】
実施例6 化学的に誘導される沈殿
出発フコイダン組成物を15%w/vで蒸留水に溶解して、出発溶液を形成した。観察により、前記出発溶液は懸濁した粒子状物を含むことが判明した。天然フコイダンの既知の不純物をシミュレートするために、アルギン酸ナトリウムを5%w/wアルギン酸/フコイダンの濃度で添加し、デンプンを5%w/wデンプン/フコイダンの濃度で添加した。この場合、デンプンをラミナリンの模倣物として使用した。塩化カルシウムを前記出発溶液に0.5Mの濃度まで添加して、反応混合物を生成した。これによりアルギン酸の沈殿が開始された。10M水酸化ナトリウム(NaOH)を前記反応混合物に滴下して、pHを7~8にした。これは、前記反応混合物中のフコイダンの分解を避けるために行った。反応混合物の硫酸アルミニウム濃度を0.5Mにした。これにより、塩化カルシウムと硫酸アルミニウムとの反応によって形成された硫酸カルシウムの作用を介し、また反応混合物中の硫酸アルミニウムから形成された水酸化アルミニウムの作用により、懸濁した粒子状物、アルギン酸カルシウム沈殿物及び他の不純物の凝集が開始された。前記反応混合物を室温で10分間放置して、凝集を継続させた。前記反応混合物を17568Gで17分間遠心分離して、上清溶液中の所望の精製フコイダンを凝集不純物から分離した。前記上清溶液を目視検査して、色及び粒子状物の除去を定性的に評価した。前記上清溶液のアリコートを300~800nm領域の紫外/可視吸収によって分析して、紫外/可視スペクトル領域の光を散乱及び/又は光を吸収する非フコイダン成分の除去を評価した。前記上清溶液のアリコートも凍結乾燥して、フカン含有量を得た。前記上清溶液のアリコートも3M塩酸(HCl)で90℃で加水分解し、パルスドアンペロメトリック検出付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)で分析して総炭水化物を検出し、ラミナリン及びアルギン酸塩の除去を評価した。ラミナリン、単量体マンヌロン酸、及び単量体グルロン酸の除去を評価して前記アルギン酸塩の除去を評価するために、不純物の定量化を、単量体グルコース標準に対して行った。
【0189】
出発物質のフコイダン及び得られた精製/改変フカンの分析結果を以下の表3に示す。
【0190】
【0191】
実施例7:液液抽出
不純物を含有する出発フカン組成物を蒸留水中に溶解して10mg/mLの水性出発溶液を生成する。出発フコイダン組成物を含有する水性出発溶液に20%v/vヘプタンを添加し、有機-水性混合物を次いで高剪断にて30分間混合する。この混合を終了させ、前記有機-水性混合物を分離漏斗に入れて有機相を水性相から分離する。所望のフカン成分を含有する、より濃厚な水性相が、前記分離漏斗の底部に沈降する一方で、不純物を含む、濃厚さの低い有機相が、前記分離漏斗の上端に存在する。前記有機-水性混合物を前記分離漏斗において10分間静置する。前記水性相を次いでデカントし、溶液中の所望の精製/改変フカンとして回収する。溶液中の前記精製/改変フカンの脂肪酸、フロロタンニン、タンパク質、フコキサンチン及び/又はクロロフィルの含有量は前記出発フカン組成物よりも約30%、約50%又は約70%から約100%まで少ないことがわかりうる。
【0192】
実施例8:液液抽出
不純物を含有する出発フカン組成物を蒸留水中に溶解して10mg/mLの水性出発溶液を生成する。出発フコイダン組成物を含有する水性出発溶液に20%v/v1-ブタノールを添加し、有機-水性混合物を次いで高剪断にて30分間混合する。この混合を終了させ、前記有機-水性混合物を分離漏斗に入れて有機相を水性相から分離する。所望のフカン成分を含有する、より濃厚な水性相が、前記分離漏斗の底部に沈降する一方で、不純物を含む、濃厚さの低い有機相が、前記分離漏斗の上端に存在する。前記有機-水性混合物を前記分離漏斗において10分間静置する。前記水性相を次いでデカントし、溶液中の所望の精製/改変フカンとして回収する。溶液中の前記精製/改変フカンの脂肪酸、フロロタンニン、タンパク質、フコキサンチン及び/又はクロロフィルの含有量は前記出発フカン組成物よりも約30%、約50%又は約70%から約100%まで少ないことがわかりうる。
【0193】
実施例9:液液抽出
不純物を含有する出発フカン組成物を蒸留水中に溶解して10mg/mLの水性出発溶液を生成する。出発フコイダン組成物を含有する水性出発溶液に20%v/v酢酸エチルを添加し、有機-水性混合物を次いで高剪断にて30分間混合する。この混合を終了させ、前記有機-水性混合物を分離漏斗に入れて有機相を水性相から分離する。所望のフカン成分を含有する、より濃厚な水性相が、前記分離漏斗の底部に沈降する一方で、不純物を含む、濃厚さの低い有機相が、前記分離漏斗の上端に存在する。前記有機-水性混合物を前記分離漏斗において10分間静置する。前記水性相を次いでデカントし、溶液中の所望の精製/改変フカンとして回収する。溶液中の前記精製/改変フカンの脂肪酸、フロロタンニン、タンパク質、フコキサンチン及び/又はクロロフィルの含有量は前記出発フカン組成物よりも約30%、約50%又は約70%から約100%まで少ないことがわかりうる。
【0194】
実施例10 透析濾過
約8%w/vを含む出発溶液又は出発物質のフコイダン組成物を提供した。前記出発溶液を0.22ミクロンのフィルタで濾過した。濾過された出発溶液のアリコートのカチオン含有量を、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって測定したところ、0.01%w/w超のアルミニウム/フカン、10-5%w/w超のヒ素/フカン、及び0.01%w/w超のカルシウム/フカンを含有することが判明し、全てそれぞれのカチオンの望ましくないレベルであった。0.1M EDTA且つ0.01M水酸化ナトリウム(NaOH)である溶液4ダイアボリュームに対して前記出発溶液を透析濾過した。次に、得られた保持フコイダン溶液を、5mM亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)且つ5mM塩化ナトリウム(NaCl)である溶液約2.5ダイアボリュームに対して透析濾過した。得られた二次保持フコイダン溶液を、ICP-MSによってカチオン含有量についてアッセイした。前記出発物質のフコイダン組成物及び得られた精製/改変フカンの結果を以下の表4に示す。
【0195】
【0196】
実施例11 超臨界流体抽出
約100gの固体出発物質のフコイダン組成物を提供する。前記固体を超臨界抽出装置に配置する。前記抽出装置を5800psiに加圧し、50℃に加熱してから、100mL/minの超臨界二酸化炭素で3時間パージする。超臨界二酸化炭素を前記抽出装置からパージし、固体の改変/精製フコイダンを回収して不純物について分析する。回収された固体の改変/精製フコイダンの脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、遊離イオン、細菌、及び/又はDNAの含有量は前記出発物質のフコイダン組成物よりも約30%~約100%少ないことがわかりうる。
【0197】
実施例12 化学的に誘導される沈殿、溶解、及び凝集
約0.70%w/wの総窒素を含有することが判明した出発物質のフコイダン組成物を15%w/vで蒸留水に溶解して、出発溶液を形成した。総窒素の存在は、細胞成分、DNA、タンパク質、及び細菌などの望ましくない不純物の存在を示す。窒素含有不純物はフコイダン分子に化学結合又はイオン結合しうることから、この場合、総窒素の減少は、出発物質のフコイダン組成物又はフコイダンポリマーからこれらの窒素含有不純物が除去されたことを示す。
【0198】
観察により、前記出発溶液は懸濁した粒子状物を含むことが判明した。塩化カルシウムを前記出発溶液に0.5Mの濃度まで添加して、反応混合物を生成した。これにより、不純物を含有すると考えられる固体部分の沈殿が開始した。約15mLの10M水酸化ナトリウム(NaOH)を前記反応混合物に滴下して、pHを7~8にした。これは、前記反応混合物中のフコイダンの分解を避けるために行った。リン酸の添加により、反応混合物をリン酸濃度0.5M(0.5 M phosphate)にした。これにより、塩化カルシウムとリン酸との反応により形成されたリン酸カルシウムの作用を介して、懸濁粒子状物及び沈殿不純物の凝集が開始された。前記反応混合物を33,746Gで5分間遠心分離して、上清溶液中の第1の精製/改変フコイダンを凝集不純物から分離した。第1の精製/改変フコイダンは、約0.10%w/wの総窒素を含有することが判明した。上清溶液中の第1の精製/改変フコイダンの一部を、MWCOが100kDaである遠心フィルタを用い、6ダイアボリュームの5mM塩化ナトリウム(NaCl)に対して透析濾過することにより、さらに精製した。得られた第1の保持精製/改変フコイダンは約0.08%w/wの総窒素を含有することが判明した。
【0199】
第1の精製/改変フコイダンのさらなる一部を、細胞破壊剤としてドデシル硫酸ナトリウムの1M溶液を0.010Mの濃度になるまで添加することによりさらに処理した。水酸化ナトリウム(NaOH)の10M溶液を0.26Mの濃度になるままで添加し、混合物を塩基性にした。得られた反応混合物を室温で約30分間撹拌して、濁った淡褐色の混合物を得た。
【0200】
約30分後、45%w/v水酸化カリウム(KOH)溶液を約0.04Mの濃度になるまで添加した。カリウムを添加すると、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に望ましくない不純物が沈殿した。48%w/v硫酸アルミニウム溶液を約0.06Mの濃度になるまで添加した。水酸化アルミニウムの形成により、反応混合物中の望ましくない不純物が凝集した。亜硫酸ナトリウム固体を添加し、0.02Mの濃度に溶解して、反応混合物に含まれ得る酸化剤を反応制御した。
【0201】
得られた反応混合物を冷蔵庫に約16時間保存し、続いて33,746Gで5分間遠心分離して、上清溶液中の第2の精製/改変フコイダンを凝集不純物から分離した。第2の精製/改変フコイダンは、約0.06%w/wの総窒素を含有することが判明した。第2の精製/改変フコイダンの一部を、MWCOが100kDaである遠心フィルタを用い、6ダイアボリュームの5mM塩化ナトリウム(NaCl)に対して透析濾過することにより、さらに処理して、第2の保持精製/改変フコイダンを提供した。得られた第2の保持精製/改変フコイダンは約0.03%w/wの総窒素を含有することが判明した。
【0202】
実施例13 5種類の精製/改変フカンの調製
本明細書で考察される方法は、精製/改変フカンを得るために、任意の方法で使用し、組み合わせ、変更し、また順序を変更することが可能である。実施例4、実施例5、実施例6、及び実施例10で説明した化学的に誘導される沈殿及び透析濾過の組み合わせを使用して5種類の精製/改変フカンを調製し、医学的用途及び外科的用途における精製/改変フカンの有効性を評価した。これらの5種類のフカンは、本明細書ではフカン1~フカン5と称される。フカン1及びフカン2は、実施例4及び実施例10で説明した方法を使用して、約2kgの規模で製造した。フカン3及びフカン5は、実施例4及び実施例10で説明した方法を使用して、約30gの規模で製造した。フカン4は、実施例5及び実施例10で説明した方法を使用して、約1kgの規模で製造した。フカン1~フカン5は、低導電率塩溶液に対する透析濾過とそれに続く凍結乾燥によって白色の固体を得ることで、固体の精製/改変フカンに変換した。2種類のさらなるフカンは褐藻から抽出されたものであり、本明細書ではフカン6及びフカン7と称される。フカン6はFMCBioPolymer(登録商標)によって固体組成物として提供されたものである。上記の処理はいずれも、フカン6の製造には使用されていない。フカン7は、準沸騰塩酸(near boiling HCl)によって褐藻から抽出された。沈殿剤としてエタノールを使用する選択的沈殿により、不純物の一部を除去した。選択的沈殿後、該フカンをエタノールでさらに沈殿させ、遠心分離し、凍結乾燥することにより、フカンを固体組成物として回収した。フカン7を実施例3で考察された方法でさらに処理し、次に水に溶解し、脱イオン水に対して透析濾過した後、凍結乾燥して、フカン7を固体組成物として得た。フカン1~フカン7のフコース、ガラクトース、硫酸、及び総対イオンのレベルは、以下の実施例14及び実施例15で考察されるように算定される。これらのフカン1~フカン7は、例えば、実施例16及び表6において、以下でさらに考察される。
【0203】
実施例14 フカン1~フカン7の補正フコース含有量及び補正ガラクトース含有量の測定
72%w/w硫酸に固体フカン組成物を40mg/mLで溶解し、45℃の水浴で30分間インキュベートした。次に、酸加水分解物を高圧チューブ内で硫酸濃度4%w/w(4% w/w sulfuric acid)まで希釈し、120℃で60分間インキュベートした。得られた第2の酸加水分解物を蒸留水で1/333濃度に希釈し、パルスドアンペロメトリック検出付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)を備えた高性能陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで分析した。アイソクラティックポンプを使用して10mM水酸化ナトリウム(NaOH)溶離液を1.0mL/minで流して分析することにより、分析対象物の分離を行った。
【0204】
前記フカンの未補正フコース含有量は、フコースの標準曲線での補間によって算定した。前記フカンの未補正ガラクトース含有量は、標準添加の方法で算定した。補正フコース含有量は、フコースにおいてグリコシド結合の加水分解に際して水が1分子添加され、硫酸エステル結合2つの加水分解に際してヒドロキシル基が2つ添加されることを考慮して算定した。補正ガラクトース含有量は、グリコシド結合の加水分解に際して水が1分子添加されることを考慮して算定した。
【0205】
この分析の結果を下の表5に示す。
【0206】
実施例15 フカン1~フカン7の総硫酸含有量、総対イオン含有量、及び総含水量の測定
固体フカン組成物を脱イオン水に溶解し、酸性条件下で加水分解し、ICP-MSで硫黄及び対イオンの総含有量(%w/w)を分析した。硫黄含有量を、硫黄含有量に硫酸対硫黄のモル比を掛けることによって硫酸含有量に変換し、精製/改変フカンの硫酸含有量(%w/w)を得た。ここで考察される精製/改変フカンで観察された対イオンには、カリウム対イオン及びナトリウム対イオンが含まれていた。この分析の結果を下の表5に示す。
【0207】
補正フコース、補正ガラクトース、及び硫酸の総含有量の結果(%w/w)も、以下の表5に示す。フコース、ガラクトース、及び硫酸の総含有量の結果は、補正フコース、補正ガラクトース、及び硫酸の値を合わせて加算することにより算定され、上述の態様を含むより詳細で完全な計算は、以下の式1に示される。総対イオン含有量は、総ナトリウム及び総カリウムの含有量を合わせて加算することによって算定される。
【0208】
【0209】
表5は、含まれる不純物が約12%w/w未満、約10%w/w未満、約9%w/w未満、約8%w/w未満、約7%w/w未満、約6%w/w未満、約5%w/w未満、約4%w/w未満、約3%w/w未満、又は約2%w/w未満の精製/改変フカンが本明細書で考察される方法を使用して調製できることを示す。
【0210】
表5はさらに、ガラクトース、フコース、及び硫酸の総含有量が約77%w/w~約87%w/wである精製/改変フカンが生成されたことを示している。
【0211】
表5はさらに、フカンに対しての総対イオン含有量が約9%w/w~約14%w/wである精製/改変フカンを示している。
【0212】
フカン1、フカン3、フカン4、及びフカン5の総含水量は、104℃における乾燥減量(LOD)によって測定した。総含水量は、それぞれの精製/改変フカンの3.8%w/w、2.4%w/w、3.2%w/w、及び4.7%w/wと算定された。
【0213】
実施例16 フカン3及びフカン4の分子量分布の測定
精製/改変フカンであるフカン3及びフカン4について得られた分子量分布を評価するためにゲル浸透クロマトグラフィーを用いた。ゲル浸透クロマトグラフィーにおける使用のために利用可能な多数の異なるパラメータ、カラム及び標準品があり、分子量の分析に利用できる多様な計器装備構成がもたらされる。本明細書における分子量測定のために、以下のパラメータを用いてGPCを行った。移動相は、0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム流であった。カラムコンパートメント及び検出器は30℃であった。検出のためにWaters2414示差屈折率検出器を用いた。
【0214】
適切なGPCカラムとしては、水性溶媒と適合性のあるGPCカラム、例えば、スルホン化スチレンジビニルベンゼン、NH官能基を有したアクリレートコポリマー網、変性シリカ及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルのうち少なくとも1つが充填されたカラムが挙げられる。本明細書における分析のために、6μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填された内径(ID)が6mmの長さ40mmの1つのガードカラム、続いて、排除限界が約7,000kDaで、有効分子量範囲が約50kDa~約5,000kDaの12μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されたIDが7.8mmの第1の300mm分析GPCカラム、続いて、排除限界が約7,000kDaで、有効分子量範囲が約1kDa~約6,000kDaの10μmの粒径のヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されたIDが7.8mmの第2の300mm分析GPCカラムを含む3つのカラムを直列で用いた。カラム構成の総有効分子量範囲は、約1kDa~約6,000kDaであった。このカラム構成の例は、直列に接続されたUltrahydrogel(登録商標)ガードカラム-Ultrahydrogel(登録商標)2000カラム-Ultrahydrogel(登録商標)Linearカラムでありうる。
【0215】
American Polymer Standards Corporationのトレース可能な標準品、すなわち、DXT3755K(ピーク分子量=2164kDa)、DXT820K(ピーク分子量=745kDa)、DXT760K(ピーク分子量=621kDa)、DXT670K(ピーク分子量=401kDa)、DXT530K(ピーク分子量=490kDa)、DXT500K(ピーク分子量=390kDa)、DXT270K(ピーク分子量=196kDa)、DXT225K(ピーク分子量=213kDa)、DXT150K(ピーク分子量=124kDa)、DXT55K(ピーク分子量=50kDa)、DXT50K(ピーク分子量=44kDa)及びDXT5K(ピーク分子量=4kDa)(これらの標準品のピーク分子量は約4kDa~約2,200kDaである)を含む標準曲線に対して試料流を定量した。用いられる標準曲線は、例えば、Dextran3755kDa、Dextran50kDa及びDextran55kDaのうち少なくとも1つ並びに本明細書において考察される3~6つの追加的なトレース可能な標準品を含んでもよく、較正点は、用いられる検量体のピーク分子量である。例示的な較正曲線は、DXT3755K、DXT820K、DXT530K、DXT500K、DXT225K及びDXT55Kからなることができる。本明細書において用いられたカラムは、フカンの定量のために用いられた標準品のピーク分子量範囲を包含し且つそれを超えて拡張された総有効分子量範囲を有するものであった。
【0216】
以下の表6の結果は、分子量分布の特定の特性について使用される略語を含む。ゲル浸透クロマトグラフィーはGPC、ピーク分子量はPMW、重量平均分子量はWAMW、数平均分子量はNAMW、百分率分布は%dist、分子量はMWと表される。
【0217】
【0218】
実施例17 乾燥による高純度フカン組成物の調製
約100mgのフカン1をるつぼに入れた。フカン1を含むるつぼを105℃のオーブンに30分間入れて、以下でフカン1’と称する、さらに精製されたフカン組成物を生成した。さらに精製されたフカン1’組成物を含むるつぼをオーブンから取り出し、デシケーターに配置した。さらに精製されたフカン1’組成物は、フコース及びガラクトースの総含有量をHPAE-PADによって、硫黄及び対イオンの総含有量をICP-MSによって、無水分(絶乾)雰囲気下で分析され、フコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンの総含有量が99.9%w/w以上、すなわち不純物が0.1%未満であることが判明する。
【0219】
実施例18 乾燥による高純度フカン組成物の調製
約600mgのフカン1をオーハウス(Ohaus)MB90水分分析装置のアルミニウム皿上に配置した。前記装置は、さらに精製されたフカン1’’組成物を生成するために、105℃で30分間フカン1を加熱するようにプログラムした。さらに精製されたフカン1’’組成物を前記装置から取り出し、デシケーターに入れた。前記試料は、フコース及びガラクトースの総含有量をHPAE-PADによって、硫黄及び対イオンの総含有量をICP-MSによって、無水分(絶乾)雰囲気下で分析され、フコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンの総含有量が99.9%w/w以上で不純物が0.1%未満であることが判明する。
【0220】
実施例19 フカン1で処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における精製/改変フカン1の有効性を測定するために、合計2匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ケタミン及びキシラジンの前投薬によって、手術のために準備した。
【0221】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の0.33mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過によって滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術中は滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、正中腹部切開によって進入した。子宮角の位置を確定し、体外に露出させ、擦過して傷害を誘導した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。損傷した子宮角及び側壁領域に最小量のフコイダン溶液を適用した。傷害を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。切開を閉じる前に、ウサギ体重あたり約15mL/kgのフコイダン溶液を腹腔に適用した。前記手術の2週後に癒着を評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。総傷害子宮角長に対する癒着の長さの割合である子宮角癒着被覆率を、
式2:癒着被覆率(%)=100×子宮角癒着長÷総傷害子宮角長
として算出した。
【0222】
ニュージランドホワイト種ウサギに、同じ外科的方法を適用し、フコイダン溶液の代わりに対照である乳酸リンゲル液USP(LRS)を約15mL/kg投与した。LRSが投与された対照群は、式2を用いて算定したところ癒着被覆率は63%であった。表7は、精製/改変フカンの代表例であるフカン2について、上記で考察されている方法を用いて得られた結果を示す。以下の表における結果は、対照群に比しての癒着被覆率の低下として示される。
【0223】
表7は、フカン1による6個の子宮角の処置の結果を提供する。
【0224】
【0225】
表7の結果から分かるように、本明細書に記載の精製/改変フカンは、手術後の子宮角癒着を首尾よく処置するのに使用されうる。
【0226】
実施例20 フカン4で処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における精製/改変フカン4の有効性を測定するために、合計4匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ケタミン及びキシラジンの前投薬によって、手術のために準備した。
【0227】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の3.75mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過により滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術全体を通して滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、腹部正中切開により進入した。子宮角の位置を確定し、露出させ、擦過して損傷を誘発した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。4mLの体積のフコイダン溶液を損傷した左側の子宮角及び側壁領域に直接適用し、4mLのフコイダン溶液を損傷した右側の子宮角及び側壁領域に直接適用した。損傷を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。切開を閉鎖する前にドレナージ管を腹腔に配置した。前記ドレナージ管を手術後48時間で除去した。前記手術の2週後に癒着を評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。子宮角癒着被覆率を、式2を使用して算出した。
【0228】
3匹のニュージランドホワイト種ウサギに、同じ外科的方法を適用し、フコイダン溶液の代わりに一方あたり4mL/kg(4 mL per side)の乳酸リンゲル液USP(LRS)を対照として投与した。LRSが投与された対照群は、式2を用いて算定したところ癒着被覆率は73%であった。表8は、精製/改変フカンの代表例であるフカン4組成物について、上記で考察されている方法を用いて得られた結果を示す。以下の表における結果は、対照群に比しての癒着被覆率の低下として示される。
【0229】
表8は、フカン4による8個の子宮角の処置の結果を提供する。
【0230】
【0231】
表8の結果から分かるように、精製/改変フカンは、手術後の子宮角癒着を首尾よく処置するのに使用されうる。
【0232】
実施例21 フカン6で処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における精製/改変フカン6の有効性を測定するために、合計4匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ケタミン及びキシラジンの前投薬によって、手術のために準備した。
【0233】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の0.33mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過によって滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術中は滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、正中腹部切開によって進入した。子宮角の位置を確定し、体外に露出させ、擦過して傷害を誘導した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。損傷した子宮角及び側壁領域に最小量のフコイダン溶液を適用した。傷害を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。切開を閉じる前に、ウサギ体重あたり約15mL/kgのフコイダン溶液を腹腔に適用した。前記手術の2週後に癒着を評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。子宮角癒着被覆率を、式2を使用して算出した。
【0234】
4匹のニュージランドホワイト種ウサギに、同じ外科的方法を適用し、フコイダン溶液の代わりに対照である乳酸リンゲル液USP(LRS)を約15mL/kg投与した。LRSが投与された対照群は、式2を用いて算定したところ癒着被覆率は71%であった。表9は、フカン6について、上記で考察されている方法を用いて得られた結果を示す。以下の表における結果は、対照群に比しての癒着被覆率の低下として示される。
【0235】
表9は、フカン6による8個の子宮角の処置の結果を提供する。
【0236】
【0237】
表9の結果から分かるように、公知の方法を用いて調製され非フカン成分総含有量が50%超であるフカン6は、線維性癒着の処置には有効ではなかった。
【0238】
実施例22 フカン7で処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における精製/改変フカン7の有効性を測定するために、合計4匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ケタミン及びキシラジンの前投薬によって、手術のために準備した。
【0239】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の0.33mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過によって滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術中は滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、正中腹部切開によって進入した。子宮角の位置を確定し、体外に露出させ、擦過して傷害を誘導した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。損傷した子宮角及び側壁領域に最小量のフコイダン溶液を適用した。傷害を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。切開を閉じる前に、ウサギ体重あたり約15mL/kgのフコイダン溶液を腹腔に適用した。前記手術の2週後に癒着を評価した。調製された各フコイダン濃度で3匹のウサギを評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。子宮角癒着被覆率を、式2を使用して算出した。
【0240】
4匹のニュージランドホワイト種ウサギに、同じ外科的方法を適用し、フコイダン溶液の代わりに対照である乳酸リンゲル注射液USP(LRS)を約15mL/kg投与した。LRSが投与された対照群は、式2を用いて算定したところ癒着被覆率は76%であった。表10は、フカン7について、上記で考察されている方法を用いて得られた結果を示す。以下の表における結果は、対照群に比しての癒着被覆率の低下として示される。
【0241】
表10は、フカン7による8個の子宮角の処置の結果を提供する。
【0242】
【0243】
表10の結果から分かるように、公知の方法を用いて調製され非フカン成分総含有量が50%超であるフカン7は、線維性癒着の処置には有効ではなかった。
【0244】
実施例23 フカン4で処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における精製/改変フカン4の有効性を測定するために、合計3匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ケタミン及びキシラジンの前投薬によって手術のために準備した。
【0245】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の5mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過によって滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術全体を通して滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、腹部正中切開により進入した。子宮角の位置を確定し、露出させ、擦過して損傷を誘発した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。損傷を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。筋肉切開の上から1/3及び下から1/3を閉じ、ウサギ体重あたり5mL/kgのフコイダン溶液を腹腔に適用した。筋肉切開を一時的に閉じ、前記フコイダン溶液を腹腔内に30分間静置した。筋肉切開を再び開き、10mL/kgのLRSで腹腔を洗浄した。切開を閉じる前に、腹腔内の大部分の液を吸引除去した。前記手術の2週後に癒着形成を評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。総損傷子宮角長に対する癒着の長さの割合である子宮角癒着被覆率を、式2を用いて算出した。
【0246】
表11は、精製/改変フカンの代表的な例であるフカン4について、上記で考察された方法を用いて得られた結果を示す。以下の表の結果は、評価された6つの子宮角にわたる平均癒着長として示される。
【0247】
表11は、フカン4による6個の子宮角の処置の結果を提供する。
【0248】
【0249】
表11の結果から分かるように、精製/改変フカンは、手術後の子宮角癒着を、首尾よく抑制するか、予防するか、除去するか、軽減させるか、又は、それ以外の場合、処置するために使用することができる。
【0250】
実施例24 精製/改変フカン組成物によって処置された子宮角線維性癒着
外科的癒着の抑制における、フコース、ガラクトース、硫酸、及び対イオンの総含有量が92%w/w以上である精製/改変フカン組成物の有効性を測定するために、合計20匹のニュージランドホワイト種ウサギの両方の子宮角に、以下の二重子宮角(DUH)手術を行った。手術前に、前記ウサギの体重を量り、次いで、ミダゾラム及びデクスメデトミジンの前投薬によって、手術のために準備した。
【0251】
乳酸リンゲル液USP(LRS)中の0.02mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL又は2.5mg/mLのフコイダン溶液を調製し、濾過により滅菌した。全ての器具は滅菌され、手術全体を通して滅菌野を維持した。腹部を清潔にし、腹部正中切開により進入した。子宮角の位置を確定し、露出させ、擦過して損傷を誘発した。擦過した子宮角の近傍の腹壁も擦過した。損傷を受けた子宮角及び腹壁を互いに隣に配置し、縫合糸で固定した。切開を閉じる前に、ウサギ体重当たり約2mL/kgのフコイダン溶液を腹腔に適用した。前記手術の2週後に癒着を評価した。調製された各フコイダン濃度で5匹のウサギを処置し評価した。子宮角癒着の長さを定規で測定した。子宮角癒着被覆率を、式2を使用して算出した。
【0252】
対照群として追加の5匹のニュージランドホワイト種ウサギに同じ外科的方法を適用し、それぞれにフコイダン溶液の代わりに約2mL/kgの対照の乳酸リンゲル液USP(LRS)を投与した。LRSが投与された対照群は、式2を用いて算定したところ癒着被覆率は100%であった。表12は、精製/改変フカン組成物について、異なる濃度及び用量で、上記に考察された方法を用いて得られた結果を示す(精製/改変フカン組成物の各濃度に対し10個ずつ、計40個の子宮角が処置された)。結果は、対照群に比しての癒着被覆率の低下として示される。
【0253】
【0254】
表12の結果から分かるように、精製/改変フカン組成物は、手術後の子宮角癒着を、首尾よく抑制するか、予防するか、除去するか、軽減させるか、又は、それ以外の場合、処置するために使用することができる。
本明細書において用いられる全ての用語は、特に文脈又は定義が明確に指示しない限り、それらの通常の意味に従って用いられる。また、特に明示的に示されない限り、本開示において、「又は」の使用は「及び」を含み、且つ、逆もまた同じである。非限定的な用語は、明示的に述べられない限り、又は特に文脈が明確に指示しない限り、限定的なものとして解釈されるものではない(例えば、「含む(including)」、「有する(having)」及び「含む(comprising)」は、典型的には、「含むが、これに限定されるものではない(including without limitation)」を示す)。単数形、例えば、「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「前記(the)」は、請求項におけるものを含め、明示的に述べられない限り、又は特に文脈で明確に別途示されない限り、複数の参照(plural reference)を含む。
特に断らない限り、実施形態の1つの特徴又は複数の特徴の条件又は関係特性を修飾する「実質的に」及び「約」などの本明細書における形容詞は、前記条件又は特性が、それが意図される適用のための実施形態の実施のために許容し得る許容範囲内に規定されることを示す。
本方法、本組成物、本システムなどの範囲は、ミーンズ・プラス・ファンクション概念及びステップ・プラス・ファンクション概念の両方を含む。しかし、請求項は、「手段」という語が請求項において具体的に記載されない限り「ミーンズ・プラス・ファンクション」関係を示すと解釈されるものではなく、「手段」という語が請求項において具体的に記載される場合には「ミーンズ・プラス・ファンクション」関係を示すと解釈される。同様に、請求項は、「ステップ」という語が請求項において具体的に記載されない限り「ステップ・プラス・ファンクション」関係を示すと解釈されるものではなく、「ステップ」という語が請求項において具体的に記載される場合には「ステップ・プラス・ファンクション」関係を示すと解釈される。
上文から、具体的な実施形態が例示の目的のために本明細書において考察されたが、本明細書における考察の精神及び範囲から逸脱することなく各種修正を為してもよいことは理解されよう。したがって、前記システム及び前記方法などは、かかる修正並びに本明細書において記載される主題の全ての順列及び組み合わせを含むものであって、添付の請求項又は本明細書における考察及び図における適切な裏付けを有する他の請求項によるものを除き、限定されるものではない。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1>
フカンポリマー構造及び対イオンを含むフカン、ここで前記フカンポリマー構造は本質的にフコース、ガラクトース及び硫酸(sulfate)からなり、前記フカンは約17%以下の対イオンを含み、且つ前記フカンはフコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が90%w/w超である。
<2>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が94%w/w超である精製/変性フカンである、<1>に記載のフカン。
<3>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が94%w/w超である、<1>に記載のフカン。
<4>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が95%w/w超である、<1>~<3>のいずれか一項に記載のフカン。
<5>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が97%w/w超である、<1>~<3>のいずれか一項に記載のフカン。
<6>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が99%w/w超である、<1>~<3>のいずれか一項に記載のフカン。
<7>
フコース、ガラクトース、硫酸及び対イオンの総含有量が99.9%w/w超である、<1>~<3>のいずれか一項に記載のフカン。
<8>
フコース含有量が25%w/w超である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<9>
フコース含有量が30%w/w超である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<10>
フコース含有量が35%w/w超である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<11>
ガラクトース含有量が10%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<12>
ガラクトース含有量が5%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<13>
対イオンの総含有量が17%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<14>
対イオンの総含有量が14%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<15>
対イオンの総含有量が10%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<16>
対イオンの総含有量が7%w/w未満である、<1>~<7>のいずれか一項に記載のフカン。
<17>
前記対イオンが医薬的に許容される対イオンである、<1>~<16>のいずれか一項に記載のフカン。
<18>
前記医薬的に許容される対イオンがアルミニウム、アルギニン、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、エチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ヒスチジン、リジン、N-メチルグルカミン、メグルミン、プロカイン、トリエチルアミン、亜鉛、カルシウム、及びマグネシウムのうち少なくとも1つを含む、<17>に記載のフカン。
<19>
前記医薬的に許容される対イオンがナトリウム及びカリウムのうち少なくとも1つを含む、<17>に記載のフカン。
<20>
前記医薬的に許容される対イオンが本質的にナトリウム及びカリウムのうち少なくとも1つからなる、<17>に記載のフカン。
<21>
有効分子量範囲が約50kDa~約5,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム1つ、有効分子量範囲が約1kDa~約6,000kDaでありヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が7.8mmの300mm分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム1つ、及びヒドロキシル化ポリメタクリレート系ゲルが充填されている内径が6mmの40mmガードカラム1つ、ここで前記2つの分析ゲル浸透クロマトグラフィーカラム及び前記1つのガードカラムは約30℃のカラムコンパートメントに収容されている;
約30℃の示差屈折率検出器;
0.6mL/分の0.1M硝酸ナトリウム移動相流;及び
ピーク分子量が約2,200kDaの第1デキストラン標準品、ピーク分子量が約720kDa~約760kDaの第2デキストラン標準品、ピーク分子量が約470kDa~約510kDaの第3デキストラン標準品、ピーク分子量が約370kDa~約410kDaの第4デキストラン標準品、ピーク分子量が約180kDa~約220kDaの第5デキストラン標準品、及びピーク分子量が約40kDa~55kDaの第6デキストラン標準品から実質的になるピーク分子量標準曲線と照らし合わせての定量(quantification)
から実質的になる水系ゲル浸透クロマトグラフィー構成を用いて測定される場合に、分布の少なくとも60%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有する、<1>~<20>のいずれか一項に記載のフカン。
<22>
分布の少なくとも92%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有する、<21>に記載のフカン。
<23>
分布の少なくとも97%w/wが100kDa超となっている分子量分布を有する、<21>に記載のフカン。
<24>
100kDaより大きい重量平均分子量を有する、<21>に記載のフカン。
<25>
硫酸化レベルが約20%w/w~60%w/wである、<1>~<24>のいずれか一項に記載のフカン。
<26>
硫酸化レベルが約30%w/w~55%w/wである、<1>~<24>のいずれか一項に記載のフカン。
<27>
硫酸化レベルが約35%w/w~52%w/wである、<1>~<24>のいずれか一項に記載のフカン。
<28>
総炭水化物含有量が約27%w/w~80%w/wである、<1>~<24>のいずれか一項に記載のフカン。
<29>
グルクロン酸、グルコース、マンノース、ラムノース及びキシロースの総含有量が、総炭水化物含有量に対する割合として約12%w/w未満である、<28>に記載のフカン。
<30>
水に50mg/mLの濃度で溶解される場合に約4cP~50cPの粘度を有する、<1>~<29>のいずれか一項に記載のフカン。
<31>
水に50mg/mLの濃度で溶解される場合に約10cP~40cPの粘度を有する、<1>~<29>のいずれか一項に記載のフカン。
<32>
水に50mg/mLの濃度で溶解される場合に約15cP~30cPの粘度を有する、<1>~<29>のいずれか一項に記載のフカン。
<33>
白色固体である、<1>~<32>のいずれか一項に記載のフカン。
<34>
水に1mg/mL~100mg/mLの濃度で溶解される場合に透明無色である溶液を形成する、<1>~<33>のいずれか一項に記載のフカン。
<35>
アセチル含有量が約5%w/w未満である、<1>~<34>のいずれか一項に記載のフカン。
<36>
アセチル含有量が約2%w/w未満である、<1>~<34>のいずれか一項に記載のフカン。
<37>
5mmのコールドプローブを備えた600MHz分光計により、溶媒シグナルを抑制しつつ70℃で、各回256~512回の走査として8ずつ回数を増加させつつ、炭素次元における10~30ppmの範囲で、2D1H-13C異核多量子コヒーレンスによって測定される場合に、前記フカンの有するアセチル含有量が実質的に0%w/wである、<1>~<34>のいずれか一項に記載のフカン。
<38>
<1>~<37>のいずれか一項に記載のフカンを作製することを含む方法。
<39>
<1>~<37>のいずれか一項に記載のフカンを使用することを含む方法。
<40>
前記使用することが線維性癒着を処置することを含む<39>に記載の方法。
<41>
医学的に許容しうる緩衝剤又は希釈剤の中に治療上有効量の<1>~<37>のいずれか一項に記載のフカンを含む、医学的に許容しうる組成物。
<42>
動物における状態又は疾患を処置する方法であって、前記状態又は前記疾患を処置するために<41>に記載の医学的に許容しうる組成物を選択すること、及び前記動物に約0.5mg/kg~50mg/kgを含む治療上有効量の前記フカンを投与すること、を含む方法。
<43>
動物における状態又は疾患を処置する方法であって、前記状態又は前記疾患を処置するために<41>に記載の医学的に許容しうる組成物を選択すること、及び前記動物に約0.04mg/kg~25mg/kgを含む治療上有効量の前記フカンを投与すること、を含む方法。
<44>
前記治療上有効量が約0.2mg/kg~10mg/kgである、<43>に記載の方法。
<45>
前記治療上有効量が約1mg/kg~5mg/kgである、<43>に記載の方法。
<46>
前記治療上有効量が約1.5mg/kg~3mg/kgである、<43>に記載の方法。
<47>
前記治療上有効量が約5mg/kg~10mg/kgである、<43>に記載の方法。
<48>
前記状態又は前記疾患が、前記動物における標的部位における線維性癒着であり、前記投与が、前記標的部位に前記治療上有効量を投与することを含む、<42>~<47>のいずれか一項に記載の方法。
<49>
<1>~<37>のいずれか一項に記載のフカンを約0.02mg/mL~100mg/mL含む医療組成物であって、動物における疾患又は状態を処置するために構成され且つ組成される、医療組成物。
<50>
前記フカンを約0.5mg/mL~5mg/mL含む<49>に記載の医療組成物。
<51>
前記フカンを約2.5mg/mL含む<49>に記載の医療組成物。
<52>
前記医療組成物が医療デバイスである、<49>~<51>のいずれか一項に記載の医療組成物。
<53>
前記医療組成物が液体医療デバイスである、<49>~<51>のいずれか一項に記載の医療組成物。
<54>
前記医療組成物が医薬組成物である、<49>~<51>のいずれか一項に記載の医療組成物。
<55>
前記医療組成物が液体医薬組成物である、<49>~<51>のいずれか一項に記載の医療組成物。
<56>
前記疾患又は前記状態が線維性癒着である、<49>~<55>のいずれか一項に記載の医療組成物。
<57>
動物における疾患又は状態を処置するための約0.01mL/kg~15mL/kgを含む用量範囲の<49>~<56>のいずれか一項に記載の医療組成物の使用。
<58>
動物における疾患又は状態を処置するための約0.03mL/kg~4mL/kgを含む用量範囲の<49>~<56>のいずれか一項に記載の医療組成物の使用。
<59>
動物における疾患又は状態を処置するための約0.06mL/kg~2mL/kgを含む用量範囲の<49>~<56>のいずれか一項に記載の医療組成物の使用。
<60>
動物における疾患又は状態を処置するための約2mL/kg~4mL/kgを含む用量範囲の<49>~<56>のいずれか一項に記載の医療組成物の使用。
<61>
患者における選択された疾患又は状態を処置するための方法であって、患者における前記選択された疾患もしくは状態を含むか又は前記選択された疾患もしくは状態に罹患しやすいといえる(reasonably susceptible)選択された標的部位を同定すること、及びその後に、前記患者における標的部位に<49>~<56>のいずれか一項に記載の医療組成物を投与することを含む方法。
<62>
前記疾患又は前記状態が線維性癒着である、<61>に記載の方法。
<63>
前記標的部位が手術部位であり、前記投与がa)前記手術部位における手術創を開けた後、b)手術中、及びc)前記手術創を閉じた後、のうち少なくとも1つにおいて行われる、<61>又は<62>に記載の方法。
<64>
前記投与が手術後且つ前記手術創を閉じる前に行われる、<61>又は<62>に記載の方法。
<65>
前記投与が3分間未満かかる、<61>又は<62>に記載の方法。
<66>
前記投与が2分間未満かかる、<61>又は<62>に記載の方法。
<67>
前記投与が1分間未満かかる、<61>又は<62>に記載の方法。
<68>
前記標的部位が、病変、擦過傷及び傷害部位のうち少なくとも1つである、<61>~<67>のいずれか一項に記載の方法。
<69>
前記標的部位が、骨盤腔、腹腔、背側腔、頭蓋腔、脊髄腔、腹側腔、胸腔、胸膜腔、心膜腔、関節、筋肉、腱及び靭帯のうち少なくとも1つである、<61>~<68>のいずれか一項に記載の方法。
<70>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
凝集助剤を前記出発フカン組成物に添加して反応混合物を生成すること、
前記反応混合物を加熱することによって前記不純物を凝集させて、凝集した不純物を生成すること、及び
前記凝集した不純物を除去すること
を含む方法。
<71>
前記出発フカン組成物を提供することは、前記出発フカン組成物を溶液として提供することを含む、<70>に記載の方法。
<72>
不純物が低減された溶液中の前記精製/変性フカンを回収することをさらに含む、<70>に記載の方法。
<73>
前記不純物を凝集させることが、大気圧を超える圧力において前記反応混合物を加熱することを含む、<70>に記載の方法。
<74>
前記凝集助剤は塩を含む、<70>に記載の方法。
<75>
前記塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び/又はアンモニウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩及び/又はシアン化物を含む、<74>に記載の方法。
<76>
前記凝集助剤は塩基を含む、<70>に記載の方法。
<77>
前記塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び/又はアンモニウムの水酸化物及び/又は酸化物を含む、<76>に記載の方法。
<78>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<70>~<77>のいずれか一項に記載の方法。
<79>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
固体である出発フカン組成物と、不純物を溶解するように構成されているがフカンを溶解できない抽出媒体とを提供すること、
前記出発フカン組成物と前記抽出媒体とを混合して前記精製/変性フカンと前記抽出媒体との混合物を作製すること、及び
前記抽出媒体から前記精製/変性フカンを分離すること
を含む方法。
<80>
固体である前記精製/変性フカンを回収することをさらに含む、<79>に記載の方法。
<81>
前記抽出媒体は、相対極性が0.765未満である有機溶媒を少なくとも1種含む、<79>に記載の方法。
<82>
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンゼン、ジエチルエーテル、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、ヘプタノール、オクタノール及びデカノールのうち少なくとも1つを含む、<81>に記載の方法。
<83>
前記抽出媒体は、塩基、界面活性剤及び酸化剤のうち少なくとも1つをさらに含む、<81>に記載の方法。
<84>
固体である前記出発フカン組成物を提供することは、溶液から前記出発フカン組成物を沈殿させることを含む、<79>に記載の方法。
<85>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<79>~<84>のいずれか一項に記載の方法。
<86>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
溶液中の懸濁不純物を含む、不純物を含有する出発フカン組成物を提供すること、
イオン性多価不純物沈殿剤を用いて前記不純物を前記溶液から沈殿させることにより、懸濁不純物と沈殿不純物と上清溶液との混合物を生成すること、及び
前記上清溶液から前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を分離すること
を含む方法。
<87>
前記精製/変性フカンを含有する前記上清溶液を回収することをさらに含む、<86>に記載の方法。
<88>
前記イオン性多価不純物沈殿剤は二価又は三価のカチオンの塩を含む、<86>に記載の方法。
<89>
前記塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩及び/又はシアン化物である、<88>に記載の方法。
<90>
前記カチオンは、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅及び/又は鉄である、<88>に記載の方法。
<91>
前記イオン性多価不純物沈殿剤は、二価又は三価のカチオンの塩基を含む、<86>に記載の方法。
<92>
前記塩基は、アルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、銅及び/又は鉄の、水酸化物及び/又は酸化物である、<91>に記載の方法。
<93>
前記上清溶液から前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を分離することは、懸濁不純物と沈殿不純物と上清溶液との前記混合物に凝集剤を添加することにより、前記懸濁不純物及び前記沈殿不純物を凝集させることを含む、<86>~<92>のいずれか一項に記載の方法。
<94>
前記凝集剤は、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カリウム、リン酸マグネシウム、アクリルアミド、アクリル酸、アルミニウムクロロハイドレート、ポリ塩化アルミニウム、タンニン、ホルムアルデヒド、メラミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩及びポリジアリルジメチル-アンモニウムクロライドのうち少なくとも1つを含む、<93>に記載の方法。
<95>
約7~14のpHを維持することをさらに含む、<86>~<94>のいずれか一項に記載の方法。
<96>
前記pHを維持することは、塩基を添加することを含む、<95>に記載の方法。
<97>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<86>~<96>のいずれか一項に記載の方法。
<98>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
前記出発フカン組成物のpHを約8~14に調整すること、
細胞成分を溶解するように構成されている細胞破壊剤を前記出発フカン組成物に添加して、前記細胞破壊剤と、生体分子溶解物と、前記出発フカン組成物とを含む反応混合物を生成すること、及び
前記細胞破壊剤及び生体分子溶解物を前記反応混合物から除去すること
を含む方法。
<99>
前記出発フカン組成物を提供することは、溶液である前記出発フカン組成物を提供することを含む、<98>に記載の方法。
<100>
不純物が低減された溶液中の前記精製/変性フカンを回収することをさらに含む、<98>に記載の方法。
<101>
前記細胞破壊剤は界面活性剤を含む、<98>に記載の方法。
<102>
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤である、<101>に記載の方法。
<103>
前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤である、<101>に記載の方法。
<104>
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤である、<101>に記載の方法。
<105>
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化ベンザルコニウム、Triton(登録商標)X100、Triton(登録商標)X114、Brij(登録商標)界面活性剤、Tween(登録商標)界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム及びアルキルベンゼンスルホネートのうち少なくとも1つを含む、<101>に記載の方法。
<106>
前記細胞破壊剤及び生体分子溶解物を除去することは、前記細胞破壊剤及び生体分子溶解物を凝集させるよう構成された凝集剤を前記混合物に添加することを含む、<98>~<105>のいずれか一項に記載の方法。
<107>
前記細胞破壊剤を除去することは、前記細胞破壊剤を前記反応混合物に不溶にするように構成された沈殿剤を前記反応混合物に添加して、沈殿物を生成することを含む、<98>~<105>のいずれか一項に記載の方法。
<108>
前記生体分子溶解物を除去することは、前記生体分子溶解物を前記反応混合物に不溶にするように構成された沈殿剤を前記反応混合物に添加して、沈殿物を生成することを含む、<98>~<107>のいずれか一項に記載の方法。
<109>
前記沈殿物を凝集させるよう構成された凝集剤を前記反応混合物に添加することをさらに含む、<107>及び<108>のいずれか一項に記載の方法。
<110>
前記凝集剤は、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カリウム、リン酸マグネシウム、アクリルアミド、アクリル酸、アルミニウムクロロハイドレート、ポリ塩化アルミニウム、タンニン、ホルムアルデヒド、メラミン、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル四級塩及びポリジアリルジメチル-アンモニウムクロライドのうち少なくとも1つを含む、<106>~<109>のいずれか一項に記載の方法。
<111>
前記アニオン性界面活性剤を除去することはアニオン吸着を含む、<102>に記載の方法。
<112>
前記カチオン性界面活性剤を除去することはカチオン吸着を含む、<103>に記載の方法。
<113>
前記非イオン性界面活性剤を除去することはミセル相分離を含む、<104>に記載の方法。
<114>
前記界面活性剤を除去することは疎水性吸着を含む、<101>に記載の方法。
<115>
前記界面活性剤を除去することは、
前記界面活性剤の濃度が所定の濃度未満になるまで前記反応混合物を希釈すること、及び
前記界面活性剤を含む前記反応混合物を、分子量カットオフが前記界面活性剤の最大分子量を超えるタンジェンシャルフロー濾過フィルタによる透析濾過に供すること
を含む、<101>に記載の方法。
<116>
前記出発フカン組成物を提供した後且つ前記細胞破壊剤を除去する前に、キレート剤を前記反応混合物に添加することをさらに含む、<98>~<115>のいずれか一項に記載の方法。
<117>
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン及び/又はクエン酸を含む、<116>に記載の方法。
<118>
前記細胞破壊剤を除去する前に酸化剤反応停止剤(oxidant-quenching agent)を前記反応混合物に添加して、前記反応混合物中の酸化剤の反応を停止(quench)することをさらに含む、<98>~<117>のいずれか一項に記載の方法。
<119>
前記出発フカン組成物を提供した後且つ前記細胞破壊剤を除去する前に、静菌剤(bacteriostatic agent)を前記反応混合物に添加することをさらに含む、<98>~<118>のいずれか一項に記載の方法。
<120>
前記静菌剤は、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、塩化ベンザルコニウム、エタノール及び/又はチオ尿素を含む、<119>に記載の方法。
<121>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<98>~<120>のいずれか一項に記載の方法。
<122>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
不純物を含む出発フカン組成物を水性出発溶液中に提供すること、
前記水性出発溶液を有機溶媒と混合して、水相有機相混合物を生成すること、及び
前記水相有機相混合物を分離して水性部分及び有機部分を得ること
を含む方法。
<123>
前記精製/変性フカンを含有する前記水性部分を回収することをさらに含む、<122>に記載の方法。
<124>
前記有機溶媒は、相対極性が0.765未満である有機溶媒を少なくとも1種含む、<122>に記載の方法。
<125>
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、ベンゼン、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ヘプタン、酢酸イソブチル、アニソール、酢酸イソプロピル、1-ブタノール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ペンタン、1-ペンタノール、エチルエーテル及び酢酸プロピルのうち少なくとも1つを含む、<122>~<124>のいずれか一項に記載の方法。
<126>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<122>~<125>のいずれか一項に記載の方法。
<127>
出発フカン組成物のカチオン含有量を変更する方法であって、
出発フカン組成物を出発溶液中に提供すること、及び
タンジェンシャルフロー濾過フィルタを通るキレート剤溶液を用いて前記出発溶液をタンジェンシャルフロー濾過フィルタを通して透析濾過し、保持フカン組成物を生成すること
を含む方法。
<128>
前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、エチレンジアミン、ポルフィン及びクエン酸のうち少なくとも1つを含む、<127>に記載の方法。
<129>
前記保持フカン組成物の有するカチオン含有量が本質的にナトリウム及び/又はカリウムからなる、<127>又は<128>に記載の方法。
<130>
精製/変性フカンを得るために出発フカン組成物から不純物を除去する方法であって、
不純物を含む出発フカン組成物を提供すること、
超臨界抽出装置で70バールを超える適切な圧力及び30℃を超える適切な温度に前記出発フカン組成物を供すること、
超臨界抽出装置に超臨界流体を充填して、前記超臨界流体中に不純物を除去すること、及び
前記抽出された不純物を含む超臨界流体を所定の時間後に除去すること
を含む方法。
<131>
前記超臨界抽出装置に残留している前記精製/変性フカンを回収することをさらに含む、<130>に記載の方法。
<132>
前記圧力は約70バール~約2000バールである、<130>に記載の方法。
<133>
前記温度は約30℃~約300℃である、<130>に記載の方法。
<134>
前記出発フカン組成物は液体である、<130>に記載の方法。
<135>
前記出発フカン組成物は固体である、<130>に記載の方法。
<136>
前記超臨界流体は、二酸化炭素、エタノール、エタン、塩酸、フッ化水素酸、硫酸及び硝酸のうち少なくとも1つを含む、<130>に記載の方法。
<137>
前記所定の時間は約5分~50時間である、<130>に記載の方法。
<138>
前記除去される不純物は、粒子状物、脂質、脂肪酸、フロロタンニン、ラミナリン、アルギン酸塩、タンパク質、メイラード反応生成物、フコキサンチン、クロロフィル、細菌、細胞成分及びDNAのうち少なくとも1つを含む、<130>~<137>のいずれか一項に記載の方法。