(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081934
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】多段階ポリマーラテックス、そのようなラテックスを含有するコーティング組成物、及びそれによりコーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230606BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230606BHJP
C09D 121/02 20060101ALI20230606BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20230606BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20230606BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230606BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230606BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D121/02
C08L33/06
C08L71/00
C08L67/00
C08L23/00
C08L51/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031526
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2020511960の分割
【原出願日】2018-08-31
(31)【優先権主張番号】62/553,309
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,204
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ロバート・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュテュッテルベルグ,マーク・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドスーザ,ジョセフ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】スカンドラーリ,メアリー・ジョー
(72)【発明者】
【氏名】コーク,ニコラウス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ポーリン,スティーブン・エス
(72)【発明者】
【氏名】フセイン,ヌスラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビスフェノールAを意図的に使用せずに作製されるコーティング組成物であり、食品又は飲料容器においてこのようなコーティング組成物を使用できるようにするために厳格なコーティング特性のバランスを呈する、改善されたコーティング組成物を提供する。
【解決手段】コーティング組成物は、多段階ラテックスを含む樹脂系を含む。いくつかの実施形態では、多段階ラテックスは、水分散性ポリマーを含む水性分散物の存在下で2つ以上の段階を乳化重合することを含むプロセスを使用して形成される。特定の好ましい実施形態では、水分散性ポリマーはポリエーテルポリマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品または飲料の容器に対してスプレー可能である、樹脂系を含んでなる水性コーティング組成物であって、
前記樹脂系は、水性担体液中に水分散性ポリマーと2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスとを含み、ここで、前記水分散性ポリマーは、有機溶液重合されたアクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー又はこれらの混合物若しくはこれらのコポリマーを含み、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、前記水性担体液が、水性担体液の総重量に基づいて5重量%超の有機溶媒を含むものであり、
前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、
のうちの一方又は両方を有する、上記組成物。
【請求項2】
食品若しくは飲料の容器若しくは容器構成要素に形成されているか、又はそれに形成されることになる物品であって、
前記物品は、水性コーティング組成物から形成されたコーティングを少なくとも1つの表面上に有する金属基材を含み、前記水性コーティング組成物は、水性担体液中に水分散性ポリマーと2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスとを含む樹脂系を含み、ここで、前記水分散性ポリマーは、有機溶液重合されたアクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー又はこれらの混合物若しくはこれらのコポリマーを含み、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、水性担体液が、水性担体液の総重量に基づいて5重量%超の有機溶媒を含むものであり、
前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃のTg差がある勾配Tg、
のうちの一方又は両方を有する、上記物品。
【請求項3】
前記水分散性ポリマーがポリオレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物または請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記水分散性ポリマーがテトラメチルビスフェノールFに由来するものである、請求項1~4のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項6】
前記2つ以上の乳化重合段階が、前記水分散性ポリマーの存在下で乳化重合される、請求項1~5のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項7】
前記多段階ポリマーラテックスが、前記ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総重量に基づいて、かつ、ラテックスの重合前または重合開始時にシードポリマーを作製するために用いられる任意のモノマーの重量を除外して、0.5重量%超の低分子量界面活性剤を含まず、かつそれに由来しない、請求項1~6のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項8】
前記水分散性ポリマーが、1グラムあたり40~200mgKOHの酸価を有する、請求項1~7のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項9】
前記ラテックスが、30℃未満の算出Tgを有する低Tg乳化重合段階と、50℃を超える算出Tgを有する高Tg乳化重合段階と、を有する、請求項1~8のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項10】
前記ラテックスが、前記高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも40℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階を有し、前記乳化重合段階の50重量%超が、少なくとも40℃の算出Tgを有する、請求項1~9のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項11】
前記水性コーティング組成物が、全樹脂固形分に基づいて、少なくとも50重量%の前記2つ以上の乳化重合段階を含み、前記水性コーティング組成物が、前記コーティング組成物中の全樹脂固形分に基づいて、重合エチレン性不飽和モノマーからの樹脂固形分を70重量%超含有する、請求項1~10のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項12】
前記乳化重合段階のうちの少なくとも1つが、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのうちの1つ以上を少なくとも80重量%含むモノマーから形成される、請求項1~11のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項13】
前記ラテックスが勾配Tgを有する、請求項1~12のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まず、前記コーティング組成物が、ハロゲン化モノマーを使用して調製されたものでなく、前記コーティング組成物が、前記ラテックスを作製するために用いられる前記エチレン性不飽和モノマー構成要素及び重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%以下のアクリルアミド型モノマーを含むか、又はそれに由来する、請求項1~13のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項15】
前記コーティング組成物が、スチレン及び置換スチレン化合物を実質的に含まない、請求項1~14のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項16】
前記水性コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、
(i)50ppm未満のグローバル抽出結果と、
(ii)前記缶が、脱イオン水中の1%NaClで充填され、本明細書に開示される初期金属露出試験方法に従って試験されたとき、平均して3mA未満の金属露出と、
を呈する、請求項1~15のいずれかに記載の組成物または物品。
【請求項17】
前記コーティング組成物が、硬化され、かつアルミニウム飲料缶の内部食品接触コーティング上にある、請求項1~16のいずれかに記載の組成物または物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] ビスフェノールAは、様々な特性及び用途を有するポリマーを調製するために使用されてきた。例えば、ビスフェノールAは、エピクロロヒドリンと反応して、包装用コーティングに有用なポリマーを提供する場合がある。食品又は飲料容器コーティングにおける特定のビスフェノールAに由来するポリマーの使用を低減するか又はなくしたいという要望がある。ビスフェノールAなしで作製されるいくつかの代替のコーティング組成物が提案されてきたが、一部の代替の組成物は、金属基材上での不十分な耐腐食性、不十分な可撓性、又は不十分な堅牢性などの不十分なコーティング特性を呈してきた。
【0002】
[0002] コーティング組成物を食品又は飲料缶コーティングとして使用するために好適なものにするために必要とされるコーティング性能属性のバランスは、特に厳しく、他のコーティングの最終用途とは異なる。このように、他の最終用途のために設計されたコーティングは、典型的には、食品又は飲料缶コーティングとして使用するために好適ではない。
【0003】
[0003] 例えば、食品又は飲料容器に使用するためのコーティングは、包装された食品又は飲料製品の味を不適当に変化させることを避けなければならず、また包装された製品の中へと剥がれ落ちたり欠け落ちたりすることも避けなければならない。また、当該コーティングは、長期間(例えば、数年間)にわたって、化学的に攻撃的な食品又は飲料製品(塩、酸、糖、脂肪などを含む、複雑な化学的プロファイルを有する可能性がある)に対しても耐性を有しなければならない。また、食品又は飲料容器コーティングは、その下に存在する基材に対して良好に接着しなければならず、硬化後に十分に可撓性のままでなければならないが、その理由は、後続の加工、及び輸送、保管、又は使用中の(例えば、落下による)へこみによって金属基材が変形することがあり、これによってコーティングが曲がるためである。脆弱なコーティングは、曲げている間に亀裂が生じ、容器の金属が包装された製品に露出され、これは時に容器内に漏れを引き起こすことがある。多数の食品及び飲料容器が生産されることを考えると、たとえコーティング不良の可能性が低くても、かなりの数の容器に漏れを引き起こす場合がある。
【0004】
[0004] したがって、ビスフェノールAを意図的に使用せずに作製されるが、食品又は飲料容器においてこのようなコーティング組成物を使用できるようにするために厳格なコーティング特性のバランスを呈する、改善されたコーティング組成物が当該技術分野において必要とされていることが理解されよう。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 一態様では、本発明は、水性担体液中に2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む水性コーティング組成物を提供し、ラテックスは、
(i)高ガラス転移温度(「Tg」)乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有し、
355mL(12米液量オンス)の番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、硬化したコーティング組成物は、
(iii)50ppm未満のグローバル抽出結果と、
(iv)缶が、脱イオン水中の1%NaClで充填され、本明細書に開示される初期金属露出試験方法に従って試験されたとき、平均して3mA未満の金属露出と、を呈する。
【0006】
[0006] 別の態様では、本発明は、食品若しくは飲料の容器若しくは容器構成要素に形成されているか、又はそれに形成されることになる物品を提供し、物品は、水性コーティング組成物から形成されたコーティングを少なくとも1つの表面上に有する金属基材を含み、水性コーティングは、
水性担体液中に2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含み、ラテックスは、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有し、
355mL(12米液量オンス)の番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、硬化したコーティング組成物は、
(iii)50ppm未満のグローバル抽出結果と、
(iv)缶が、脱イオン水中の1%NaClで充填され、本明細書に開示される初期金属露出試験方法に従って試験されたとき、平均して3mA未満の金属露出と、を呈する。
【0007】
[0007] 別の態様では、本発明は、コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法を提供し、方法は、
(a)本体部分及び端部部分を有する金属製の食品缶又は飲料缶の内面に、水性担体液中に2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む水性コーティング組成物をスプレー塗布する工程であって、ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、を含み、
硬質化したコーティングは、
(iii)50ppm未満のグローバル抽出結果と、
(iv)缶が、脱イオン水中の1%NaClで充填され、本明細書に開示される初期金属露出試験方法に従って試験されたとき、平均して3mA未満の金属露出と、を呈する。
【0008】
[0008] 別の態様では、本発明は、コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法を提供し、方法は、
(a)食品又は飲料の容器又は容器構成要素の少なくとも1つの金属基材表面に、水性担体液中に2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む水性コーティング組成物から形成されたコーティングを塗布する工程であって、ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、
を含み、
硬化したコーティング組成物は、
(iii)50ppm未満のグローバル抽出結果を呈し、
(iv)約0.6グラム/平方メートル(「gsm」)~約13gsmの乾燥コーティング重量を有する。
【0009】
[0009] 別の態様では、本発明は、水性コーティング組成物を提供し、水性コーティング組成物は、
水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含み、水分散性ポリマーは、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、ラテックスは、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。
【0010】
[0010] 別の態様では、本発明は、食品若しくは飲料の容器若しくは容器構成要素に形成されているか、又はそれに形成されることになる物品を提供し、物品は、水性コーティング組成物から形成されたコーティングを少なくとも1つの表面上に有する金属基材を含み、水性コーティングは、
水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含み、水分散性ポリマーは、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、ラテックスは、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。
【0011】
[0011] 別の態様では、本発明は、食品又は飲料の容器又は容器構成要素をコーティングするのに有用なラテックス分散物を作製するための方法を提供し、方法は、
(a)水分散性ポリマーの水性分散物を提供する工程と、
(b)水性分散物の存在下で2つ以上の段階を乳化重合して、多段階ポリマーラテックスを形成する工程と、を含み、ラテックスは、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。
【0012】
[0012] 別の態様では、本発明は、コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法を提供し、方法は、
(a)本体部分及び端部部分を有する金属製の食品缶又は飲料缶の内面に、水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含む水性コーティング組成物をスプレー塗布する工程であって、水分散性ポリマーが、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、を含む。
【0013】
[0013] 別の態様では、本発明は、コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法を提供し、方法は、
(a)食品又は飲料の容器又は容器構成要素の少なくとも1つの金属基材表面に、水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含む水性コーティング組成物から形成されたコーティングを塗布する工程であって、水分散性ポリマーが、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、を含む。
【0014】
[0014] 別の態様では、本発明は、2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含み、かつ食品缶又は飲料缶の金属基材上に食品接触コーティングを形成する際の使用に適している、水性分散物を提供する。ラテックスは、(i)「高」Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する「低」Tg乳化重合段階、又は(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。いくつかの実施形態では、多段階ポリマーラテックスは、水分散性ポリマー(例えば、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらの混合物若しくはコポリマー)を含む樹脂系中に存在し、水分散性ポリマーは、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方である。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、上記の水性コーティング組成物は、水性担体液と、水性担体中に分散された2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む樹脂系とを含み、ラテックスは、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。いくつかの実施形態では、ラテックスが上記(i)を有する場合、乳化重合段階の50重量%超は、好ましくは、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、又は少なくとも80℃の算出Tgを有する。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態では、上記の水性コーティング組成物は、水性担体液、及び水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含
む樹脂系を含む。水分散性ポリマーは、好ましくは、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方である。ラテックスは、好ましくは、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。
【0017】
[0017] いくつかの実施形態では、以下の式(I)の少なくとも1つのモノマーAを用いて、乳化重合段階のうちの1つ以上を調製する。
CH2=C(R1)-Xn-C(CH3)t(R2)3-t (I)
(式中、
R1は、水素又はアルキル基、より典型的には水素又はメチル基であり、
nは、0又は1、より典型的には1であり、
Xは、存在する場合、二価結合基、より典型的には、アミド、カーボネート、エステル、エーテル、尿素、又はウレタン結合、更により典型的には、いずれかの方向性のエステル結合(すなわち、-C(O)-O-又は-O-C(O)-)であり、
tは、0~3であり、
それぞれのR2は、存在する場合、独立して、所望によりそれ自体分枝鎖であってもよい有機基、より典型的には、所望により1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、P、Siなど)を含んでもよいアルキル基であり、かつ、
2つ以上のR2は、所望により、互いに環状基を形成してもよい)。
【0018】
[0018] いくつかの実施形態では、以下の式(II)の少なくとも1つの(メタ)アクリレートを用いて、乳化重合段階のうちの1つ以上を調製する。
CH2=C(R3)-CO-OR4 (II)
(式中、
R3は、水素又はメチルであり、
R4は、好ましくは1~16個の炭素原子を含有するアルキル基、脂環式基、アリール基、シラン基、又はこれらの組み合わせである)。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態では、上記の水性コーティング組成物は、水性担体液と、2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む樹脂系とを含み、多段階ラテックスは、水分散性ポリマーの水性分散物の存在下でエチレン性不飽和モノマーを乳化重合することによって形成される。ラテックスは、好ましくは、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。水分散性ポリマーは、好ましくは、ポリエーテルポリマーを含む。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態では、上記の水性コーティング組成物は、水性担体液と、水分散性ポリマー(例えば、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらの混合物若しくはコポリマー)の存在下で2つ以上の段階(例えば、低Tg段階及び高Tg段階)中にエチレン性不飽和モノマーを乳化重合することによって形成された多段階ポリマーラテックスを含む樹脂系とを含み、乳化重合エチレン性不飽和モノマーは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-
ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの2つ以上(例えば、2、3、4、又は5つ)を少なくとも80重量%含む。
【0021】
[0021] いくつかの実施形態では、上記のコーティング組成物は、約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満のポリエーテル化合物若しくはポリマーを含有するか、又はポリエーテル化合物若しくはポリマーを含有しない。いくつかの実施形態では、上記のコーティング組成物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まないか、又は含有しない。いくつかの実施形態では、上記のコーティング組成物は、所望により、スチレンを実質的に含まないか、又は含有しない。
【0022】
[0022] 更に別の態様では、上記のコーティング組成物のうちの1つ以上がその上に位置する基材(例えば、金属基材)も開示される。いくつかの実施形態では、基材は、開示されるコーティング組成物の発明が外面、内面、又は両方の組み合わせに塗布された金属製の食品若しくは飲料の缶若しくは容器、又はその一部(例えば、ねじ切り密閉蓋、缶の端部、飲料缶の端部、缶の側壁本体部分及び底端部分など)である。本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、例えば、アルミニウム製飲料缶を含め、食品又は飲料缶の内面へのスプレー塗布に特に適していることが見出された。
【0023】
[0023] 更に別の態様では、本発明は、食品又は飲料缶をコーティングする方法を提供する。方法は、好ましくは、金属基材を食品若しくは飲料缶又はその一部分へと成形する前又は後に、上記のコーティング組成物の1つ以上を金属基材の表面に塗布すること(例えば、スプレー塗布すること、ロールコーティングすることなど)を含む。
【0024】
[0024] 更に別の態様では、本発明は、食品接触多段階ラテックス分散物、及び食品接触多段階ラテックス分散物を作製する方法を提供する。好ましい実施形態では、方法は、水分散性ポリマー(例えば、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらの混合物若しくはコポリマー)の水性分散物を提供することと、水性分散物の存在下で2つ以上のラテックス段階を乳化重合して、多段階ポリマーラテックスを形成することと、を含み、ラテックスは、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも、好ましくは、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する。
【0025】
[0025] 本発明の上記の「発明の概要」は、本発明のそれぞれの開示された実施形態又は全ての実施を記載することを意図したものではない。以下の記載により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧をとおして指針を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記述された一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、限定的又は排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0026】
[0026] 本発明の1つ以上の追加の実施形態の詳細を以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び実施形態により明らかとなるであろう。
選択された定義
[0027] 特に明記しない限り、以下の用語は、本明細書で使用するとき、以下に提供された意味を有する。
【0027】
[0028] 用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に使用
される。したがって、例えば、「1つの(a)」ポリエーテルポリマーを含むコーティン
グ組成物は、そのコーティング組成物が「1つ以上の」ポリエーテルポリマーを含むことを意味する。
【0028】
[0029] 「アクリレート」及び「アクリル」という用語は、本明細書において広く使用され、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、又は任意のアクリレート若しくはメタクリレート化合物のうちの1つ以上から調製される物質を包含する。したがって、例えば、「アクリレート」成分が完全に重合(メタ)アクリル酸からなるポリエーテル-アクリレートコポリマーは、たとえ(メタ)アクリレートモノマーが使用されていなくてもやはり「アクリレート」成分を含むことになる。
【0029】
[0030] 「ビスフェノール」という用語は、それぞれが環の炭素原子に結合しているヒドロキシル基を有する2つのフェニレン基を有する多価ポリフェノールモノマーであって、当該2つのフェニレン基の環が共通していかなる原子も共有していないモノマーを指す。
【0030】
[0031] 「含む(comprises、comprising)」という用語及びその変形は、それ
らの用語が説明及び実施形態に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
【0031】
[0032] 「二価モノフェノール」という用語は、アリール環又はヘテロアリール環に結合したヒドロキシル基を2つだけ含有する多価モノフェノールを指す。
[0033] 「ジフェノール」という用語は、2つのフェニレン基がそれぞれ1つのヒドロキシル基を有するポリフェノールを指す。
【0032】
[0034] 「イージーオープンエンド(easy open end)」という用語は、(i)
脆弱な開口部分(いくつかの飲料缶端部では飲み口として機能する)と、(ii)脆弱な開口部分を開けて缶の内部に収容された製品に到達する目的でプルタブを取り付けるリベット加工部分と、を含む缶端部(典型的には食品缶又は飲料缶の端部)を指す。
【0033】
[0035] 「エストロゲン活性」又は「エストロゲンアゴニスト活性」という用語は、内因性エストロゲン受容体、典型的には内因性ヒトエストロゲン受容体との相互作用を介してのホルモン様活性を模倣する化合物の能力を指す。
【0034】
[0036] 「風味スカルピング(flavor scalping)」という用語は、コーティン
グフィルムの破損により起こり得るような、香気若しくは他の風味成分が包装(例えば、内部飲料缶コーティング)に吸収されること、又は包装に収容された食品若しくは飲料が包装から望ましくない香気若しくは風味成分を吸収することのいずれかに起因する、包装された物品における品質の損失を指す。
【0035】
[0037] 用語「食品接触面」は、食品若しくは飲料製品と接触する物品又は接触するのに適した物品(例えば、食品若しくは飲料用容器)の表面を指す。
[0038] 「組み込まれた」という用語は、ラテックスポリマー又は粒子に組み込まれた水分散性ポリマーに関して使用される場合、水分散性ポリマー及びラテックスが洗浄又は分離などの技術を使用して容易に分離されることができないように、水分散性ポリマーが、ラテックスのポリマー粒子に物理的に絡み合っているか、含浸しているか、又は共有結合していることを意味する。
【0036】
[0039] 同じであっても異なってもよい基は、「独立して」何かであると称される。「基」という用語は、単一原子部分も包含する。したがって、例えば、ハロゲン原子を基とすることもできる。
【0037】
[0040] 「低分子量」という用語は、約2,000未満又は約1,000未満の分子量を有する、本質的に概ねモノマー又はオリゴマーの物質を指す。様々な分子量を有する分子を含有するオリゴマー材料の場合、「低分子量」という用語は数平均分子量を指す。
【0038】
[0041] 「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」において使用するとき、「(メタ)」という用語は、水素又はメチル基のいずれかがモノマーの適切な炭素原子に結合する場合があることを示すことを意図する。例えば、「エチル(メタ)アクリレート」は、エチルアクリレート、エチルメタクリレートの両方、及びこれらの混合物を包含する。
【0039】
[0042] ラテックスポリマーに関して使用されるときの「多段階」という用語は、ポリマーが、2つ以上のモノマーの不連続の仕込量を使用して作製されたこと、2つ以上のモノマーの変化する(例えば、連続的に変化する)仕込量を使用して作製されたこと、又は2つ以上のモノマーの不連続の仕込量及び変化する仕込量の両方の組み合わせを使用して作製されたことを意味する。最終ラテックス中での10重量%以下のラテックスポリマー固体を表す初期ラテックスポリマー反応混合物中の「シード」粒子の存在は、それが、無機粒子状シード(例えば、粘土又はガラス粒子)としてか、予形成された粒子状ポリマーシードとしてか、又はその場で形成された粒子状シードポリマーとしてかであるかにかかわらず、多段階ポリマーの段階を提供することも、そのようなシードポリマーを使用して作製された一段階ポリマーを多段階ポリマーと呼ぶための基礎を提供することもないとみなされる。ラテックス組成物中での別個の非ラテックスポリマーの存在は、多段階ポリマーの段階を提供することも、そのような別個のポリマーを使用して作製された一段階ポリマーを多段階ポリマーと呼ぶための基礎を提供することもないとみなされる。
【0040】
[0043] 「上に(on)」という用語は、表面若しくは基材上に(on)塗布されたコーティングという文脈で使用される場合、表面若しくは基材に直接又は間接的に塗布されたコーティングの両方を含む。したがって、例えば、基材を覆っている下塗り層に塗布されたコーティングは、基材上に塗布されたコーティングを構成する。
【0041】
[0044] 項目、選択肢、又は他の可能性のセットに関して使用されるときの「又は」という用語は、そのような項目、選択肢、又は他の可能性の包括的選択又は排他的選択のいずれかを指す。
【0042】
[0045] 「フェニレン」という用語は、任意の置換基(例えば、水素原子、炭化水素基、酸素原子、ヒドロキシル基などを含む)を有することができる、6個の炭素原子のアリール環(例えば、ベンゼン基におけるような)を指す。したがって、例えば、以下のアリール基:-C6H4-、-C6H3(CH3)-、及び-C6H(CH3)2(OH)-は、それぞれフェニレン環である。加えて、例えば、ナフタレン基のそれぞれのアリール環はフェニレン環である。
【0043】
[0046] 「多価フェノール」という用語(二価フェノールを含む)は、1つ以上のアリール又はヘテロアリール基(より典型的には、1つ以上のフェニレン基)と、同一又は異なるアリール又はヘテロアリール環に結合する少なくとも2つのヒドロキシル基とを有する任意の化合物を概して指す。したがって、例えば、ヒドロキノン及び4,4’-ビフェノールの両方が、多価フェノールであると考えられる。本明細書で使用するとき、
多価フェノールは、典型的には、アリール環中に6個の炭素原子を有するが、他のサイズの環を有するアリール又はヘテロアリール基が使用されてもよいことが想到される。
【0044】
[0047] 「多価モノフェノール」という用語は、(i)アリール又はヘテロアリール環に結合している少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアリール又はヘテロアリール基(より典型的には、フェニレン基)を含み、(ii)環に結合しているヒドロキシル基を有するいかなる他のアリール又はヘテロアリール環も含まない多価フェノールを指す。
【0045】
[0048] 「多価ポリフェノール」という用語(ビスフェノールを含む)アリール環又はヘテロアリール環に結合した少なくとも1つのヒドロキシ基をそれぞれ有する2つ以上のアリール又はヘテロアリール基を含む多価フェノールを指す。
【0046】
[0049] 「ポリフェノール」という用語は、2つ以上のフェニレン基を有する多価物質において、各フェニレン基が、炭素原子6個からなる環とその環の炭素原子に結合したヒドロキシル基とを含有し、フェニレン基の環が何ら原子を共有しない多価物質を指す。
【0047】
[0050] 「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーのポリマー)の両方を含む。同様に、特に指定のない限り、例えば「ポリエーテル」などのポリマークラスを表す用語の使用は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマー)の両方を含むことを意図する。
【0048】
[0051] 用語「好ましい」及び「好ましくは」とは、特定の状況下で特定の利益をもたらす場合がある実施形態を指す。しかし、同一の又は他の状況下において、他の実施形態も好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0049】
[0052] 特定の化合物を含有し得るコーティング組成物に関して使用されるときの「実質的に含まない」という用語は、コーティング組成物が1,000百万分率(ppm)未満の記述される化合物(0.1重量%未満に相当する)を、その化合物がコーティング中で可動性であるか、又はコーティングの構成成分に結合しているかにかかわらず、含有することを意味する。特定の化合物を含有し得るコーティング組成物に関して使用されるときの「本質的に含まない」という用語は、コーティング組成物が100百万分率(ppm)未満の記述される化合物を、その化合物がコーティング中で可動性であるか、又はコーティングの構成成分に結合しているかにかかわらず、含有することを意味する。特定の化合物を含有し得るコーティング組成物に関して使用されるときの「本質的に完全に含まない」という用語は、コーティング組成物が5百万分率(ppm)未満の記述される化合物を、その化合物がコーティング中で可動性であるか、又はコーティングの構成成分に結合しているかにかかわらず、含有することを意味する。特定の化合物を含有し得るコーティング組成物に関して使用されるときの「完全に含まない」という用語は、コーティング組成物が20十億分率(ppb)未満の記述される化合物を、その化合物がコーティング中で可動性であるか、又はコーティングの構成成分に結合しているかにかかわらず、含有することを意味する。「~を含まない」(前述の語句の文脈以外で)、「~を含有しない」、「いかなる~も含まない」、及びこれに類する語句を本明細書において使用するとき、このような語句は、存在する可能性があるが意図的に使用したわけではない微量の関連する構造体又は化合物の存在、例えば、環境汚染物質の存在を除外することを意図するものではない。当業者には理解されるように、成分、ポリマー、配合物、又は他の構成要素中の化合物の量は、典型的には、使用される出発物質の量、及びそのような成分、ポ
リマー、配合物、又は他の構成要素を作製する際に得られる収率に基づいて計算され得る。
【0050】
[0053] 端点による数値域の詳細説明は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。更に、範囲の開示は、より広い範囲内に含まれる全ての部分範囲の開示を含む(例えば、1~5は、1~4、1.5~4.5、及び4~5などを開示する)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[0054] 本発明は、多段階ポリマーラテックスを含むコーティング組成物に関し、このコーティング組成物は、包装用コーティング、とりわけ食品又は飲料缶コーティング、を処方する際の使用に特に適している。本発明のコーティング組成物は、好ましくは、水性コーティング組成物であり、この水性コーティング組成物は、所望により、1つ以上の有機溶媒を含み得る。好ましい実施形態では、多段階ポリマーラテックスは、水分散性ポリマーと組み合わせて処方される。典型的には、多段階ポリマーラテックスは、水分散性ポリマーの存在下で形成される。理論に束縛されるものではないが、水分散性ポリマーは、多段階ポリマーラテックスの形成及び安定性を支持する界面活性剤として機能し得ると考えられる。
【0052】
[0055] 過度に重合した乳化重合アクリル系を有するエポキシアクリレートコポリマー(エポキシアクリルコポリマーとも称される)は、食品又は飲料缶コーティングにおいて使用されてきた。このような系のエポキシポリマー部分は、従来、BPA系(例えば、ビスフェノールAとビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの反応により形成されたポリマー)であり、アクリル系は、スチレン含有量が豊富であった。一般に、このような従来のエポキシアクリル系の特定の最終用途臨界コーティング性能属性(例えば、食品又は飲料缶コーティング最終用途のための十分な可撓性)が、主に、又は更には排他的に、エポキシポリマーに由来し、アクリル含有量が、主に安価な充填剤として機能して、より高価なエポキシポリマーの量を最小限に抑えることを可能にすることは、当業者によって理解された。このような従来の系におけるアクリル含有量は、コーティング性能特性にほとんど寄与しないと考えられたため、このようなエポキシアクリル系中のエポキシポリマーの量は、一般に、コーティング特性の不適当な劣化を回避するために、樹脂系全体の約50重量%超であるべきことが、当業者によって理解された。
【0053】
[0056] 本発明の系は、驚くべきことに、使用されるエポキシポリマーの量が、このような従来の系と比較して劇的に低減されることを可能にすると同時に、依然として同等のバランスのコーティング特性を、いくつかの実施形態では、BPA又はスチレンのいずれも使用せずに、達成している。例えば、以下の「実施例」の項では、80重量%の全「アクリル」ポリマー含有量及び20重量%しかないポリエーテルポリマー含有量(例えば、それを作製するために使用される反応物質に起因して、「エポキシ」ポリマーとも称され得る)で好適なバランスのコーティング特性を呈するラテックス樹脂系が例示される。驚くべきことに、このような結果は、BPA又はスチレンのいずれも使用せずに達成されたものであり、一般に、BPA及びスチレンは、代替物質で再現することが困難である有益なコーティング特性をもたらすものとして当業者によって認められている。
【0054】
[0057] 上記の段落では、「アクリルポリマー含有量」という文脈における「アクリル」という用語は、存在する重合(乳化重合又は他の重合)エチレン性不飽和モノマーの量を示すように広く解釈されることが意図されている。このようなエチレン性不飽和モノマーは、典型的にはビニルモノマーであり、その一部又は全ては、典型的には(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレートのいずれかである。コーティング組成物のアクリルポリマー含有量の大半(例えば、>50重量%、>60重量%、>70重量%、>80
重量%、>90重量%など)及び、いくつかの実施形態では、その全て又は実質的に全ては、乳化重合エチレン性不飽和モノマー(例えば、低Tg及び高Tg乳化重合段階)を含む。いくつかの実施形態(例えば、水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレート、ポリエステル-アクリレートなどである実施形態)では、アクリルポリマー含有量はまた、典型的には、1つ以上の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレートを含む、有機溶液重合エチレン性不飽和モノマーも含む。好ましい実施形態では、アクリルポリマー含有量は、水分散性ポリマーと、乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーとの組み合わせ重量に基づいて、50重量%超、好ましくは少なくとも60重量%、更により好ましくは少なくとも65重量%、更により好ましくは少なくとも70重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%、最適には80重量%以上の樹脂系を構成する。いくつかの実施形態では、樹脂系は、コーティング組成物中の全樹脂固形分の70~100重量%を構成する。
【0055】
[0058] 理論に束縛されるものではないが、優れた可撓性を含む、本発明のラテックス樹脂系の好ましい実施形態によって呈されるコーティング特性の好適なバランスは、ラテックス樹脂系の新規な多段階構造体により、非常に少量のポリエーテルポリマー又は他の水分散性ポリマーを使用する場合であっても、達成され得ると考えられる。特に、好ましくは、所望のバランスのコーティング特性を達成するために十分に異なるTg値を有する2つ以上の異なる乳化重合段階を含む多段ラテックス樹脂系が用いられる。そのようなTg差は、複数のアプローチを介して達成され得、そのうちのいくつかは以下に記載される。
【0056】
[0059] 通常、多段階ラテックスは、示差走査熱量測定(「DSC」)を介して測定したときに、単一のTg変曲点を呈さない。例えば、2つ以上のモノマーの不連続の仕込量を使用して作製された多段階ラテックスのDSC曲線は、2つ以上のTg変曲点を呈し得る。また、2つ以上のモノマーの連続して変化される仕込量を使用して作製された多段階ラテックスのDSC曲線は、Tg変曲点なしを呈し得る。更なる説明として、単一のモノマーの仕込量又は2つのモノマーの変化しない仕込量を使用して作製された一段階ラテックスのDSC曲線は、単一のTg変曲点のみを呈し得る。時折、1つのTg変曲点のみが観察される場合、ラテックスが多段階ラテックスを表すかどうかを判定することは困難であり得る。そのような場合、時に更なる(例えば、より低い又はより高い)Tg変曲点がより詳細な検査で検出され得るか、又は、ラテックスを作製するために使用された合成スキームを調査して、多段階ラテックスが生成されると予測されるか否かを判定し得る。このようなTg変曲点を評価するとき、ラテックスポリマー組成物中に同様に存在し得る非ラテックスポリマーの変曲点を除外することが必要であり得る。
【0057】
[0060] いくつかの実施形態では、多段階ラテックスポリマーは、「低」Tgエチレン性不飽和モノマー構成要素及び「高」Tgエチレン性不飽和モノマー構成要素を含む成分から形成される。低Tg及び高Tgモノマー構成要素は、互いに対して相対的な任意の時間に乳化重合され得る。いくつかの実施形態では、低Tg又は高Tgモノマー構成要素は、第1の段階中に重合され、他方のモノマー構成要素は、第1の段階の乳化重合が完了した後に、後の第2の段階中に乳化重合される。他の実施形態では、第2の段階の乳化重合は、第1の段階の乳化重合の完了前に開始され得る。任意の好適なTgの1つ以上の追加のエチレン性不飽和モノマー構成要素もまた、所望により、使用され得、それらは、低Tg又は高Tgモノマー構成要素の重合前、重合後、重合間、又は重合中に乳化重合され得る。したがって、いくつかの実施形態では、多段階ラテックスポリマーは、3つ以上の乳化重合段階を含み得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、多段階ラテックスポリマーの乳化重合部分は、それぞれ、高Tgエチレン性不飽和モノマー構成要素及び低Tgエチレン性不飽和モノマー構成要素から形成された段階(典型的には2つの段階)から本質的になる。
【0058】
[0061] 低Tg乳化重合段階は、好ましくは、高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い、少なくとも30℃低い、少なくとも35℃低い、少なくとも40℃低い、少なくとも50℃低い、少なくとも60℃低い、又は少なくとも70℃低い算出Tgを有する。便宜上、以下の考察において、「段階」という用語は「乳化重合段階」の代わりに使用される。好ましくは、多段階ラテックス中に存在する段階の50重量%超は、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、又は少なくとも80℃の算出Tgを有する。
【0059】
[0062] 典型的には、高Tg段階は、40℃超、45℃超、50℃超、60℃超、70℃超、又は80℃超の算出Tgを有することになる。高Tg段階のTgは、特に限定されるものではないが、典型的には、約105℃以下になる。低Tg段階は、典型的には、40℃未満、より典型的には35℃未満、更により典型的には30℃未満の算出Tgを有することになる。いくつかの実施形態では、低Tg段階は、20℃未満、10℃未満、0℃未満、又は更には-10℃以下の算出Tgを有する。低Tg段階は、典型的には、約-54℃以上の算出Tgを有することになる。
【0060】
[0063] 特定の好ましい実施形態では、高Tg段階は、40℃超の算出Tgを有し、低Tg段階は、40℃未満の算出Tgを有し、高Tg段階のTg値は、低Tg段階のTg値よりも少なくとも20℃高い。いくつかの実施形態では、高Tg段階は、45℃超の算出Tgを有し、低Tg段階は、35℃未満の算出Tgを有し、高Tg段階のTg値は、低Tg段階のTg値よりも少なくとも20℃高い。いくつかの実施形態では、高Tg段階は、50℃超の算出Tgを有し、低Tg段階は、30℃未満の算出Tgを有する。いくつかの実施形態では、高Tg段階は、60℃超の算出Tgを有し、低Tg段階は、20℃未満の算出Tgを有する。いくつかの実施形態では、高Tg段階は、70℃超の算出Tgを有し、低Tg段階は、10℃未満の算出Tgを有する。
【0061】
[0064] 特定の段階、又は段階の組み合わせのTgは、Fox式を使用して推定(すなわち、算出)することができる。例えば、2つのモノマー供給材料から作製されたポリマーの場合、理論Tgは、以下のようにFox式を使用して算出され得る。
【0062】
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb
式中、Tga及びTgbは、モノマー「a」及び「b」から作製されたホモポリマーのそれぞれのガラス転移温度であり、かつ、
Wa及びWbは、ポリマー「a」及び「b」のそれぞれの重量分率である。
【0063】
追加のモノマー供給材料「c」、「d」などが使用される場合、追加の分率Wc/Tgc、Wd/Tgdなどが、上記の式の右辺に追加される。別途記載のない限り、本明細書において参照される「算出された」段階又はコポリマーTgは、Fox式を使用して算出される。また、算出は、段階を形成するために一緒に反応される全てのモノマーに基づき、このようなモノマーの一部のみに基づくものではない。乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素(例えば、高Tg段階又は低Tg段階を形成するために使用されるモノマー混合物)が、(例えば、モノマーがホモ重合されることができないため)ホモポリマーTgを有しない1つ以上のモノマーを5重量%超含む場合、Fox式に依存する代わりに、一段階参照ラテックスが、乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素と同じ全体のモノマー組成を使用して作製され、実際のTgがDSCを介して測定され得る。乳化重合エチレン性不飽和構成要素が、ホモポリマーTgを有しない1つ以上のモノマーを5重量%以下含む場合、1つ以上のこのようなモノマーは無視され、TgがFox式によって判定され得る。
【0064】
[0065] いくつかの実施形態では、多段階ラテックスポリマー、又は多段階ラテックスポリマーの一部を重合するために、勾配Tgアプローチが使用され得る。勾配Tgアプローチが使用される場合、特定のラテックスポリマーの個別のTgを測定することは不可能であり得、特定の勾配Tgラテックスポリマーは、ほぼ無限の数のTg段階を含有し得ることに留意されたい。例えば、高Tgモノマー組成物で開始し、次いで、重合における特定の時点で、低Tg段階モノマー組成物を高Tg段階モノマー供給材料に供給し始めてよい(逆もまた同様)。得られる多段階ラテックスポリマーは、高から低までの勾配Tgを有することになる(逆もまた同様)。「自動供給(power feed)」プロセスを使用して、このような組成物を調製することができる。また、勾配Tgポリマーを、複数の多段階Tgポリマーと共に使用してもよい。一例として、高Tgモノマー供給材料(F1)及び低Tgモノマー供給材料(F2)を調製することができる。F1をラテックス反応槽に供給し始め、高Tg「硬質段階」モノマー組成物の重合を開始させる。次いで、F1供給中の特定の期間において、F2をF1に供給するが、F2供給速度は反応槽へのF1+F2の全体供給速度よりも速い。その結果、F1へのF2供給が完了すると、F1+F2モノマー供給ブレンドの全体的なTgは、より低いTg「軟質段階」モノマー組成物となる。勾配Tgアプローチが採用される場合、複合Tgは、どの段階がそのようなモノマーを含有し得るかに関係なく、最終コポリマー中の全てのモノマー及びそれらのそれぞれの分率に対してフォックス式を使用することによって計算され得る。いくつかの実施形態では、複合Tgは、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃である。このような勾配Tgラテックスポリマーを生成するために使用されるモノマーが、(例えば、モノマーがホモ重合しないため)ホモポリマーTgを有しない1つ以上のモノマーを含む場合、非自動供給法において、同じ全体モノマー組成を使用して非勾配参照ラテックスを作製し、これを使用してTgを測定することができる。
【0065】
[0066] 勾配Tgラテックスポリマーの場合、Fox式を使用して、重合開始時にモノマー供給材料から作製されたコポリマーの理論Tgを算出し、その結果を重合終了時にモノマー供給材料から作製されたコポリマーに対する算出理論Tgと比較することによって、Tg差が判定され得る。このような勾配Tgアプローチを使用して作製された多段階ポリマーの場合、勾配供給モノマーの重合開始時に供給されたモノマーの算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際のTg差は、好ましくは、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、又は少なくとも70℃である。
【0066】
[0067] 高Tg段階に対する低Tg段階の任意の好適な重量比が採用され得る。いくつかの実施形態では、低Tg段階に対してわずかから実質的に大部分の高Tg段階が採用される。典型的には、高Tg段階に対する低Tg段階の重量比(すなわち、低Tg段階:高Tg段階)は、5:95~95:5、より典型的には20:80~70:30、更により典型的には25:75~48:52になる。上記の重量比は、それぞれの段階を生成するために使用されるエチレン性不飽和構成要素(典型的にはモノマー)の重量に基づく。特定の好ましい実施形態では、高Tg段階は、全乳化重合段階(すなわち、低Tg段階、高Tg段階、及び所望により存在し得る任意の追加の段階の組み合わせ重量)の50重量%超を構成する。理論に束縛されるものではないが、敏感な風味製品(例えば、特定の香味料が非常に低い濃度で存在する特定のコーラ)又は化学的に攻撃的な食品若しくは飲料製品(例えば、高酸、高塩、又は高脂肪)に暴露されることになる内部缶コーティングは、十分な量の好適な高Tg構成要素(例えば、高Tg段階)を含めることから利益を得ることができる。しかしながら、このような状況における課題は、例えば、コーティング可撓性を含め、コーティング特性の全体的なバランスを保つことである。やはり、理論に束縛されるものではないが、十分な量の好適な低Tg構成要素(例えば、低Tg段階)を含めることは、例えば、可撓性など、他の所望のコーティング特性における不適当な劣
化を回避する助けとなり得ると考えられる。
【0067】
[0068] 多段階ラテックスポリマーの段階のそれぞれを形成するために、任意の好適なエチレン性不飽和モノマー又はモノマーの組み合わせを使用することができる。典型的には、2つ以上のモノマーの混合物を使用して、各段階を形成する。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、全樹脂固形分に基づいて、2つ以上の乳化重合段階を少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%含む。いくつかのこのような実施形態では、コーティング組成物は、全樹脂固形分に対して高Tg及び低Tg段階を形成するために使用される反応物質の総量に基づいて、そのような量の高Tg及び低Tg段階を含む。
【0068】
[0069] 本明細書で論じられるように、樹脂系はまた、所望により、乳化重合以外の重合技術(例えば、フリーラジカル有機溶液重合)を使用して重合されている重合エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。好ましい実施形態では、重合エチレン性不飽和モノマーの総量は、コーティング組成物の全樹脂固形分の50重量%超、好ましくは60重量%超、更により好ましくは70重量%超、最適には80重量%以上を構成する。
【0069】
[0070] いくつかの実施形態では、高Tg及び低Tg段階の乳化重合モノマーは、コーティング組成物中に存在する重合エチレン性不飽和モノマーの総量の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも85重量%以上を構成する。
【0070】
[0071] 本発明のコーティング組成物は、好ましくは、水分散性ポリマーと2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を使用して処方される。水分散性ポリマーは、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり得る。本明細書で好ましい実施形態では、2つ以上の乳化重合段階は、水分散性ポリマーの存在下でそのような段階を作製するために使用されるモノマーを乳化重合することによって形成される。
【0071】
[0072] 1つ以上のエチレン性不飽和モノマー構成要素が水分散性ポリマーとは別個に重合され得ることは想到されるが、好ましい実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を作製するために使用されるエチレン性不飽和モノマー構成要素は、分散した水分散性ポリマーを中に含む水性組成物中で重合される。好ましくは、水分散性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマー構成要素を含有する2つ以上の段階の乳化重合を支持するのを助ける「ポリマー界面活性剤」として機能する。例として、従来の外部界面活性剤の補助がある場合にのみ水性媒体中で安定的に分散可能であるポリマーは、水分散性であるとはみなされない。更なる例として、このような外部界面活性剤の補助がある場合にのみ重合可能であるラテックスポリマーの段階(例えば、第1の段階)は、それ自体が本明細書の水分散性ポリマーであるとはみなされない。いくつかの実施形態では、多段階ラテックスは、従来の非ポリマー界面活性剤を使用せずに(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(288.4g/mol)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(348.5g/mol)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(444.5g/mol)、アミン中和ドデシルベンゼンスルホン酸(アミン分子量を計数しない326.5g/mol)、例えば、エトキシル化脂肪族アルコールエーテル硫酸ナトリウム塩(1.022g/mol+エチレンオキシド重量)又は他のそのような従来の界面活性剤などの低分子量界面活性剤を使用せずに)水分散性ポリマーの存在下で乳化重合される。したがって、いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、及び、多くの場合、樹脂系全体は、低分子量非ポリマー界面活性剤、例えば、低分子量のアニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤を含まず、それに由来しない。任意のこのような界面活性剤が用いられる場合、その総量は、好ましくは、ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総
重量の0.5重量%以下、より好ましくは0.25重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下であり、ラテックスの重合前又は重合開始時にシードポリマーを作製するために用いられる任意のモノマーの重量を除外する。このような界面活性剤はまた、アミンが焼成硬化条件下でコーティングから揮発する傾向があるため、好ましくは、アミン官能性界面活性剤又はアミン中和界面活性剤である。
【0072】
[0073] いくつかの実施形態では、多段階ラテックスはまた、又は代わりに、1つ以上の重合性界面活性剤の存在下で乳化重合される。好適な重合性界面活性剤の例としては、米国特許出願公開第2002/0155235号、国際公開第2016/105504(A1)号に開示されているものに加えて、株式会社アデカ(東京、日本)から商標名「REASOAP」として、第一工業製薬株式会社(東京、日本)から商標名「NOIGEN」及び「HITENOL」として、並びにSolvay Rhodia(Brussels,Belgium)から商標名「SIPOMER」として市販されているものが挙げられる。重合性界面活性剤を含む実施形態では、重合性界面活性剤は、反応物質モノマーの総重量に基づいて、約0.1重量%超、約1重量%超、約2重量%超、又は約3重量%超を構成し得る。重合性界面活性剤はまた、ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総重量に基づいて、かつラテックスの重合前又は重合開始時にシードポリマーを作製するために用いられる任意のモノマーの重量を除外して、約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、又は約10重量%未満を構成し得る。
【0073】
[0074] いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素は、主に低分子量界面活性剤、例えば、低分子量のアニオン性若しくは非イオン性界面活性剤を使用して、又はこれのみを使用して、誘導される。このような低分子量界面活性剤の濃度は、任意の他の重合性又はポリマー界面活性剤の存在を含めて、反応物質構成要素の種類及び濃度に依存して変動し得る。低分子量界面活性剤を含む実施形態では、低分子量界面活性剤は、ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総重量に基づいて、かつラテックスの重合前又は重合開始時にシードポリマーを作製するために用いられる任意のモノマーの重量を除外して、約0.01重量%超、約0.05重量%超、又は約0.1重量%超を構成し得る。低分子量界面活性剤はまた、ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総重量に基づいて、かつラテックスの重合前又は重合開始時にシードポリマーを作製するために用いられる任意のモノマーの重量を除外して、約10重量%未満、約7重量%未満、又は約5重量%未満を構成し得る。
【0074】
[0075] 任意の好適な量の水分散性ポリマーが使用され得る。好ましい実施形態では、水分散性ポリマーと乳化重合段階との重量比は、50:50未満、好ましくは40:60未満、及び更により好ましくは30:70未満、25:75未満、又は20:80未満である。
【0075】
[0076] 水分散性ポリマーは、例えば、1つ以上のアクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリシリコーンポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらのコポリマー(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマー、ポリエステル-アクリレートコポリマーなど)を含む、任意の好適なポリマー又はポリマーの組み合わせとすることができる。典型的には、水分散性ポリマーは、水性媒体中で形成されず、代わりに、例えば、溶媒媒体中又は無溶媒プロセス中で形成され、次いで、例えば、ポリマー上の1つ以上の基を中和して、そのような基を水分散基に変換することによって、水性媒体に分散可能にされ得る。水分散性ポリマーは、任意の好適な水分散基を有してもよい。本明細書で使用するとき、「水分散基」という用語は、水可溶性基も包含する。典型的には、水分散性ポリマーは、1つ以上の極性基、より典型的には1つ以上の塩の基(例えば、塩基で中和された酸又は無水物基などのアニオン性塩の基又は酸で中和された塩基基などのカチオン性塩の基)又は塩形成基(例えば、塩基基
又は酸若しくは無水物基)を含むことになる。好ましい実施形態では、水分散性ポリマーは、好ましくは好適な量の酸又は無水物基が、好適な塩基、より好ましくは不安定性塩基(fugitive base)(例えば、アンモニア又はアミンなどの窒素含有塩基)で中和されて
いる、酸又は無水物官能性ポリマーである。
【0076】
[0077] 水分散性ポリマーは、ポリマーが好ましくは水に安定に分散することができる限り、任意の好適な酸価を有していてよい。好ましい酸又は無水物官能性水分散性ポリマーは、ポリマー1gあたり少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約55、更により好ましくは少なくとも約70ミリグラム(mg)KOHの酸価を有する。好適な酸価の上限範囲は特に限定されないが、典型的には、酸価は、ポリマー1gあたり約400mgKOH未満、より典型的には約300mgKOH未満、更により典型的には約200mgKOH未満になることになる。本明細書で言及する酸価は、BS EN ISO 3682-1998標準に従って計算してもよく、あるいは反応物質モノマーに基づいて理論的に判定してもよい。
【0077】
[0078] 中和された酸基の例としては、好適な塩基で少なくとも部分的に中和されたカルボン酸基又は無水物基が挙げられる。不安定性塩基がここでは好ましく、窒素含有塩基が好ましく、アミン(例えば、一級、二級、又は三級アミン)が特に好ましい。特定の実施形態では、アミンは三級アミンである。好ましくは、三級アミンは、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても知られている)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、及びこれらの混合物から選択される。特定の好ましい実施形態では、酸又は無水物官能性ポリマーは、水中においてアミンで少なくとも25%中和される。
【0078】
[0079] いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、フリーラジカル重合エチレン性不飽和モノマー構成要素(例えば、スチレンを含有する又はスチレンを含まないビニル付加構成要素)を含む。好ましいこのような実施形態では、ビニル付加構成要素は、1つ以上の酸又は無水物官能性モノマー(例えば、メタクリル酸)及び典型的には1つ以上の(メタ)アクリレート、より典型的には1つ以上のメタクリレート、更により典型的には1つ以上のアルキルメタクリレート(例えば、エチルメタクリレート又はブチルメタクリレート)を含むエチレン性不飽和モノマー混合物から、所望により1つ以上のアクリレート又はアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート)と組み合わせて形成され、当該モノマー混合物は、水分散性ポリマーの存在又は非存在下において有機溶媒中で重合される。
【0079】
[0080] いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、ポリエーテル-アクリレートコポリマー(代替的に「ポリエーテル-アクリル」コポリマーと称される)、より好ましくは、所望によりスチレンに由来するいかなる構造単位も含有しない、芳香族ポリエーテル-アクリレートである。このような実施形態では、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成するために用いられるポリエーテルポリマーは、好ましくは、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも60重量%以上を構成する。典型的には、ポリエーテルポリマーは、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの95重量%未満、より典型的には90重量%未満、更により典型的には85重量%未満を構成する。
【0080】
[0081] いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、リン酸塩ポリマーであってよい。このような水分散性ポリマーの例としては、オキシラン基を有するポリマー、好ましくはオキシラン基を有する芳香族ポリエーテルポリマーと、リン酸又は関連化合物との反応生成物が挙げられる。このような水分散性ポリマーの具体例は、芳香族ポリエーテルリン酸エステルポリマーである。このようなリン酸化ポリマーは、所望の分子量及び水分散性特性を実現することができるようにするために1つ以上の他の塩の基を更に含んでいてもよい。
【0081】
[0082] 水分散性ポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。典型的には、水分散性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)及びポリスチレン標準を使用して測定されると、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも3,000、又は少なくとも4,000になる。典型的には、水分散性ポリマーは、50,000未満、20,000未満、10,000未満、又は8,000未満のMnを有することになる。
【0082】
[0083] いくつかの実施形態では、ポリエステルポリマーは、少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも60℃、及び更により好ましくは少なくとも70℃又は少なくとも80℃の算出Tgを有する。典型的には、ポリエーテルポリマーのTgは、150℃未満、より典型的には130℃未満、更により典型的には110℃未満になる。この文脈では、Tgは、ポリエーテルポリマー単独のTg値を指す(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成する前)。水分散性ポリマーがポリエーテルポリマー又はポリエーテルポリマーを含む成分から形成されるポリエーテル-アクリレートコポリマーである実施形態では、ポリエーテルポリマーは、典型的には、少なくとも2,000、より典型的には少なくとも3,000、更により典型的には少なくとも4,000の数平均分子量(Mn)を有する。当該ポリエーテルポリマーの分子量は、所望の用途に必要とされる分子量と同様に高くてもよい。しかし、典型的には、ポリエーテルポリマーのMnは約11,000を超えない。一部の実施形態では、ポリエーテルポリマーのMnは約5,000~約8,000である。水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレートコポリマーである実施形態では、ポリマー全体の分子量は、上述のものよりも高い場合があるが、ポリエーテルポリマー部分の分子量は、典型的には上記のとおりである。しかし、典型的には、このようなポリエーテル-アクリレートコポリマーのMnは、約20,000未満である。
【0083】
[0084] 様々な酸若しくは無水物官能性モノマー又はその塩を、水分散性ポリマーに組み込むことができ、これらの選択は、所望の最終的なポリマー特性に依存する。いくつかの実施形態では、このようなモノマーは、エチレン性不飽和、より好ましくはアルファ、ベータ-エチレン性不飽和である。本発明のために好適なエチレン性不飽和酸又は無水物官能性モノマーとしては、反応性炭素-炭素二重結合及び酸性若しくは無水物基を有するモノマー又はその塩が挙げられる。好ましいこのようなモノマーは、3~20個の炭素、少なくとも1部位の不飽和、及び少なくとも1個の酸若しくは無水物基、又はその塩を有する。
【0084】
[0085] 好適な酸官能性モノマーとしては、ポリマーを調製するために使用される所望による他のモノマーと共重合可能なエチレン性不飽和酸(例えば、一プロトン性又は二プロトン性)、二塩基酸の無水物又はモノエステルが挙げられる。例示的な一塩基酸は、構造CH2=C(R5)-COOH(式中、R5は水素又は1~6個の炭素原子のアルキル基である)によって表されるものである。好適な二塩基酸としては、式R6(COOH)C=C(COOH)R7及びR6(R6)C=C(COOH)R8COOH(式中、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素、1~8個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン、3~7個の炭素原子のシクロアルキル基、又はフェニル基であり、R8は、1~6個
の炭素原子のアルキレン基である)によって表されるものが挙げられる。これら酸と1~8個の炭素原子のアルカノールとの半エステルも好適である。
【0085】
[0086] 有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーの例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アルファ-クロロアクリル酸、アルファ-シアノアクリル酸、クロトン酸、アルファ-フェニルアクリル酸、ベータ-アクリルオキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アルファ-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、ベータ-ステアリルアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、メチレングルタル酸などの酸、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なエチレン性不飽和無水物モノマーの例としては、上記酸に由来する化合物が挙げられる(例えば、純粋な無水物又はこのような混合物として)。好ましい無水物としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、及びマレイン酸無水物が挙げられる。必要に応じて、上記酸の水性塩を使用してもよい。
【0086】
[0087] ポリエーテルポリマーは、好ましい水分散性ポリマーであり、芳香族ポリエーテル又は他の環状基が豊富なポリエーテルが好ましく、これは、好ましくは、BPA、BPF、及びBPS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない又は含有せず、特に好ましい。このようなポリエーテルポリマーは、典型的には二級ヒドロキシル基、より典型的には主鎖-CH2CH(OH)CH2-セグメント中に存在する二級ヒドロキシル基を含む。好ましい実施形態では、ポリエーテルポリマーは、(i)脂肪族、脂環式、又は芳香族のジエポキシドと、(ii)ポリマーを形成するためにジエポキシドの分子量を構築することができる展延剤化合物と、を含む成分に由来する。上記(i)及び(ii)は、適切な比で、例えば、約1.05:1~約1:1.05の化学量論比などで、互いに反応する場合がある。いくつかの実施形態では、ジエポキシド及び展延剤は、類似の構造単位(例えば、ジエポキシド中のジフェノールの残基及び展延剤中の同じジフェノール)を含有する。他の実施形態では、ジエポキシド及び展延剤は、類似しない構造単位(例えば、ジエポキシド中のジフェノールの残基及び展延剤中の異なるジフェノール)を含有する。いくつかの実施形態では、ジエポキシド、展延剤、又はその両方は、2個の環酸素原子を含み、少なくとも1つの置換基又は結合(例えば、アリール環への結合)が、環酸素原子に対してオルト位に位置する。他の実施形態では、ジエポキシド、展延剤、又はその両方は、2個の環酸素原子を含み、置換基又は結合が、環酸素原子に対して両方のオルト環位置に位置する。更なる実施形態では、ジエポキシド、展延剤、又はその両方は、2個の環酸素原子を含み、環酸素原子に対してオルト位に位置する置換基も結合も存在しない。
【0087】
[0088] 好適な展延剤化合物の例としては、ジオール、二酸、及び酸とヒドロキシル基との両方を有する化合物が挙げられる。多価フェノール(例えば、二価フェノール)は、好ましい展延剤であり、特定の実施形態では、多価モノフェノール(例えば、二価モノフェノール)が好ましい。二価モノフェノール化合物の例としては、カテコール及び置換カテコール(例えば、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコールなど);ヒドロキノン及び置換ヒドロキノン(例えば、メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、2,5-ジエチルヒドロキノン、トリエチルヒドロキノン
、テトラエチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンなど);レゾルシノール及び置換レゾルシノール(例えば、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、4-ブチルレゾルシノール、4,6-ジ-tert-ブチルレゾルシノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルレゾルシノールなど);並びにこれらの変異体及び混合物が挙げられる。二価ジフェノール化合物の例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)(テトラメチルビスフェノールF)、4,4’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール、4,4’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、テトラブロモビスフェノールA、2,2’-ビフェノール、及びフェノール酸素原子に対してオルト位に位置する環間架橋連結部を有する他の架橋二価フェノールなどが挙げられる。他の好適な二価ジフェノール化合物としては、米国特許出願公開第2015/0197597(A1)号及び国際公開第2018/125895(A1)号に記載されているものが挙げられる。全ての例での使用に好ましいわけではないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSなどのビスフェノール化合物は、いくつかの最終用途において、いくつかの管轄において、又は他の展延剤化合物と混合して、例えば、原材料コストを低減するために、使用され得る。
【0088】
[0089] 好適なジエポキシドの例としては、置換二価フェノール(例えば、テトラメチルビスフェノールFなどのオルト置換二価フェノール、ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,2’-ビフェノール、及びフェノール酸素原子に対してオルト位に位置する環間架橋連結部を有する他の架橋二価フェノールなど)、芳香族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、フランジメタノールなど)、芳香族二酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどのシクロブタンジオール、及びシクロヘキサンジメタノール)、脂環式二酸(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジカルボン酸などのシクロブタン二酸)、及びこれらの組み合わせ、のジエポキシド(例えば、これらのジグリシジルエーテル又はエステル)が挙げられる。他の好適なジエポキシドとしては、米国特許出願公開第2015/0197597(A1)号並びに国際公開第2017/079437(A1)号及び同第2018/125895(A1)号に記載のジグリシジルエーテル化合物が挙げられる。全ての例での使用に好ましいわけではないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSなどのビスフェノール化合物のジエポキシド(例えば、ジグリシジルエーテル)は、いくつかの最終用途において、いくつかの管轄において、又は他のジエポキシドと混合して、例えば、原材料コストを低減するために、使用され得る。
【0089】
[0090] いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、(例えば、適切な比(例えば、約1.05:1~約1:1.05の化学量論比)で反応した)二価フェノール及び二価フェノールのジエポキシドを含む成分の反応生成物である。
【0090】
[0091] 好適なポリエーテルポリマーの例としては、米国特許第9,409,219(B2)号に、米国特許出願公開第2015/0021323(A1)号、同第2015/0151878(A1)号、同第2015/0197597(A1)号、同第2016/0272576(A1)号、同第2017/0051177(A1)号、同第2017/0096521(A1)号、及び同第2017/0096579(A1)号に、並びに国際公開第2017/079437(A1)号及び同第2018/125895(A1)号に開示されているものが挙げられる。
【0091】
[0092] いくつかの実施形態(例えば、水分散性ポリエーテルポリマーを使用せずに調製されたもの)では、開示されるラテックス分散物、樹脂系、及び水性コーティング組成物のうちの1つ以上は、ポリエーテル化合物もポリエーテルポリマーも含有しない。他の実施形態では、このようなポリエーテル化合物又はポリマーの総量は、分散物、樹脂系、又はコーティング組成物中の全固形分に基づいて、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満になる。
【0092】
[0093] 当業者に周知の技術を使用して、水中で還元できないポリマーを水分散性にすることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、芳香族ポリエーテルポリマー又は他のポリマー)は、1つ以上の水分散基(例えば、塩又は塩形成基)を有する1つ以上の物質(例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマー)に共有結合して、ポリマーを水分散性にする。塩、塩形成、又は水分散基を含有する物質は、例えば、(i)ポリマーの形成前、形成中、若しくは形成後にその場で形成されるか、又は(ii)予形成された若しくは新たに形成された(nascent)ポリマーと反応した予形成物質として
提供されるオリゴマー又はポリマーであってもよい。共有結合は、例えば、炭素-炭素二重結合、水素引き抜きを伴う反応を介して(例えば、米国特許第4,212,781号に記載されているものなどの、水素引き抜きを介した過酸化ベンゾイルにより媒介されるグラフト化を伴う反応を介して)、又は例えば、縮合反応において生じるものなどの相補的な反応性官能基の反応を含む、任意の好適な手段によって達成されてもよい。一実施形態では、連結化合物は、ポリマー及び塩又は塩形成基を含有する物質を共有結合させるために利用される。特定の好ましい実施形態では、塩又は塩形成基を有する1つ以上の物質は、ビニル付加構成要素(例えば、ビニル付加ポリマー)であり、これは、典型的にはアクリル物質(例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、及びこれに類するもののうちの1つ以上を含むエチレン性不飽和モノマー構成要素から形成される)であり、より好ましくは酸又は無水物官能性アクリル物質である。
【0093】
[0094] 一実施形態では、水分散性ポリマーは、アミン、より好ましくは三級アミンの存在下で、予形成ポリマー(例えば、(a)例えば、オキシラン官能性ポリエーテルポリマーなどのオキシラン官能性ポリマー、及び(b)例えば、酸官能性アクリルポリマーなどの酸官能性ポリマー)から形成されてもよい。必要に応じて、酸官能性ポリマーを、オキシラン官能性ポリマーとの反応前にアミン、より好ましくは三級アミンと組み合わせて、少なくとも部分的に中和することができる。
【0094】
[0095] 別の実施形態では、水分散性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーと反応して酸官能性ポリマーを形成するオキシラン官能性ポリマー(より好ましくは本明細書に記載されるポリエーテルポリマー)から形成されてもよく、次いで、これを、例えば三級アミンなどの塩基で中和してもよい。したがって、例えば、一実施形態では、水分散性ポリマーは、酸官能性アクリル基を(例えば、過酸化ベンゾイルの使用を介して)オキシラン官能性ポリマーへとグラフトするための手法について記載している、米国特許第4,285,847号又は同第4,212,781号のアクリルの重合の教示に従って形成されてもよい。別の実施形態では、アクリルの重合は、エチレン性不飽和モノマーのポリマー中に存在する不飽和物との反応をとおして達成されてもよい。例えば、このような手法の例に関しては、米国特許第4,517,322号又は米国特許出願公開第2005/0196629号を参照されたい。
【0095】
[0096] 別の実施形態では、水分散性ポリマーは、構造E-L-Aを有して形成されてもよく、式中、「E」は、ポリエーテルポリマーから形成されたポリマーのポリエーテル部分であり、「A」は、ポリマーの重合アクリル部分であり、「L」は、EをAに共有結合させるポリマーの結合部分である。このようなポリマーは、例えば、(a)好ましくは約2つのオキシラン基を有するポリエーテルポリマーと、(b)好ましくは(i)
炭素-炭素二重結合、共役炭素-炭素二重結合、又は炭素-炭素三重結合及び(ii)オキシラン基と反応することができる官能基(例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基など)を有する不飽和結合化合物とから調製され得る。好ましい連結化合物は、12個以下の炭素原子を含有し、ソルビン酸が、好ましいこのような連結化合物の一例である。アクリル部分は、好ましくは、1つ以上の塩の基又は塩形成基(例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー中に存在するような酸基)を含む。このようなポリマーは、例えば、上記の米国特許第9,409,219(B2)号、米国特許出願公開第2015/0021323(A1)号、同第2015/0151878(A1)号、同第2016/0272576(A1)号、同第2017/0051177(A1)号、同第2017/0096521(A1)号、同第2017/0096579(A1)号、及び国際公開第2018/125895(A1)号に記載されているようなBPA及びBADGEを含まないポリエーテルポリマーを、所望により、米国特許第5,830,952号又は米国特許出願公開第2010/0068433(A1)号に開示されている物質及び手法と組み合わせて使用して形成され得る。
【0096】
[0097] アクリル成分を使用してポリマーを水分散性にする上記アプローチでは、アクリル成分は、典型的には、1つ以上のα,β-不飽和カルボン酸を含むエチレン性不飽和モノマー混合物から形成されるが、任意の好適な酸又は無水物官能性モノマーを使用してよい。1つ以上のα,β-不飽和カルボン酸は、好ましくは塩基による中和後にポリマーを水分散性にする。好適なα,β-不飽和カルボン酸モノマーとしては、本明細書において既に参照したもののうちのいずれかが挙げられる。多段階ラテックスポリマーと水分散性ポリマーとを一緒にブレンドすることが可能であり得るが、本明細書で好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー構成要素の少なくともいくらか(及びいくつかの実施形態では全て)は、少なくともいくらかの水分散性ポリマーを含む水性分散物中で乳化重合される。
【0097】
[0098] 理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の多段階ラテックスと共に、任意のポリエーテルポリマーを使用することなく、又は任意の水分散性ポリマーを使用することなく、食品若しくは飲料缶コーティング領域内で特定の最終用途のための望ましいコーティング性能を達成することは可能であり得る。それでもなお、本明細書で好ましい実施形態は、水分散性ポリマーを含み、ポリエーテルポリマー(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマー)が、好ましい水分散性ポリマーである。
【0098】
[0099] BPA又はスチレンが使用されてもよいが、本明細書で好ましい実施形態では、本発明のコーティング組成物は、(i)スチレン、並びに(ii)ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、及びビスフェノールS(「BPS」)、のうちの1つ以上を実質的に含まないか、又は含有しない。例として、BPA、BPF、及びBPSのそれぞれを実質的に含まないコーティング組成物は、必然的に、BPAのジグリシジルエーテル(「BADGE」)、BPFのジグリシジルエーテル、及びBPSのジグリシジルエーテルのそれぞれも実質的に含まない。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、かなりの量のBPA及びスチレンの両方を利用する従来のエポキシ-アクリレートコーティング系と遜色ない、食品又は飲料缶コーティングの最終用途におけるコーティング特性のバランスを呈する。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、置換スチレン化合物(例えば、アルファ-メチルスチレン、メチルスチレン(例えば、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びこれに類するもの)、ジメチルスチレン(例えば、2,4-ジメチルスチレン)、トランス-ベータ-スチレン、ジビニルベンゼン、及びこれに類するもの)も実質的に含まないか、又は含有しない。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ビニル芳香族化合物を実質的に含まないか、又は含有しない。
【0099】
[0100] 2つ以上の乳化重合段階には、1つ以上の(メタ)アクリレートの任意の組み合わせが含まれていてもよい。好適な(メタ)アクリレートとしては、本明細書で参照されるもののいずれか、及び上記の式(II)の構造を有するものが挙げられる。
【0100】
CH2=C(R3)-CO-OR4 (II)
(式中、
R3は、水素又はメチルであり、
R4は、好ましくは1~16個の炭素原子を含有するアルキル基、脂環式基、アリール基、シラン基、又はこれらの組み合わせである)。
【0101】
[0101] 必要に応じて、R4は、所望により、例えば、ヒドロキシ、ハロ、フェニル、及びアルコキシなどの1つ以上の(例えば、1~3つの)部分で置換されていてもよい。好適な(メタ)アクリレート(例えば、好適なアルキル(メタ)アクリレートを含む)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど、これらの置換変異体(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレートの環置換変異体)、並びにこれらの異性体及び混合物が挙げられる。
【0102】
[0102] 以下の考察では、2つ以上の乳化重合段階の構成要素に関して様々な重量パーセントが提供される。当業者には理解されるように、具体的に反することが示されない限り、これらの重量パーセントは、関連する段階を形成するために使用される反応物質(典型的にはモノマー)の総重量に基づく。
【0103】
[0103] 典型的には、(メタ)アクリレート(例えば、1つの(メタ)アクリレート、又は2つ以上の(メタ)アクリレートの混合物)は、2つ以上の段階のそれぞれのかなりの部分を構成することになる。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートは、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、少なくとも95重量%、又は更には100重量%を構成し得る。上述の重量パーセントは、モノマーのうちの1つ以上が、以下に記載されるような「モノマーA」としても認められ得るかどうかにかかわらず、特定の段階中に存在する全ての(メタ)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のメタクリレートモノマーが、この段落内に記述される量で存在する。
【0104】
[0104] いくつかの実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートは、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、少なくとも95重量%、又は更には100重量%を構成し得る。上述の重量パーセントは、全てのこのようなモノマーも(メタ)アクリレートであるという事実にかかわらず、また、モノマーのうちの1つ以上が「モノマーA」としても認められ得るかどうかにかかわらず、存在する全てのアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0105】
[0105] いくつかの実施形態では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、又は5つ)を少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%含む。いくつかの実施形態では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマー)は、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、又はその両方を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの乳化重合段階を形成するために使用されるモノマー、及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマーは、(i)n-ブチルメタクリレートと、エチルメタクリレート又はメチルメタクリレートの一方又は両方と、の両方、及び(ii)所望により、エチルアクリレート、メチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレートのうちの1つ以上を含む。
【0106】
[0106] いくつかの実施形態では、1つ以上の段階(例えば、高Tg段階)を形成するために使用されるモノマー中に存在する(メタ)アクリレートの大部分(例えば、>50重量%、≧60重量%、≧70重量%、≧80重量%、≧90重量%、≧95重量%など)、又は更には全ては、メタクリレート、より好ましくはアルキルメタクリレートである。好ましいメタクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、及びこれらの異性体(例えば、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートなど)が挙げられる。加えて、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレートが使用され得、好ましい例としては、エタンジオールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、及びブタンジオールジメタクリレート(例えば、1,3-ブタンジオールジメタクリレート及び1,4-ブタンジオールジメタクリレート)が挙げられる。
【0107】
[0107] したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の段階(例えば、高Tg段階、及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも95重量%の1つ以上のアルキルメタクリレートを含む。
【0108】
[0108] いくつかの実施形態(例えば、特定のスチレンを含まない実施形態)では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマーは、脂環式基、若しくは少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素基(以後まとめて「モノマー構成要素A」又は「モノマーA」と短縮して呼ぶ)、又は両方の混合物を含む、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む。任意の好適なエチレン性不飽和モノマーAを使用してよいが、このようなモノマーは、典型的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族(例えば、アリール(メタ)アクリレートを含む)、ビニルエステル、及びこれに類するものなどのビニルモノマーになる。1つ以上のヘテロ原子は、所望により、脂環式基又はC4以上の炭化水素基内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、炭素原子及び水素原子のみが、脂環式基又はC4以上の炭化水素基内に存在する。C4以上の炭化水素基は、任意の好適な構造を有することができるが、いくつかの実施形態では直鎖又は分岐した直鎖が好ましく、特定の実施形態では、少なくとも3個の炭素原子を含む最長鎖を有する直鎖又は分岐した直鎖基が特に好ましい。指定の基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、好ましいこのようなモノマー
Aの例であるが、このような基を有する任意の好適な種類のエチレン性不飽和モノマーを使用してもよい。
【0109】
[0109] 理論に束縛されるものではないが、脂環式基、又は少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含むことは、数ある中でも、好適に高いレベルの疎水性を付与するのを助けることができると考えられる。これは、例えば、耐水性又は耐レトルト性を強化し、特定の水性の包装された製品(例えば、特定のコーラ)中に存在する低濃度の香味料のコーティングへの分配(「スカルピング(scalping)」)を低減するのを助けるなどの複数の理由のため、望ましい場合があると考えられる。不適当なレベルの風味スカルピングに対する耐性は、内部缶コーティングに対して、特に、例えば、コーティングへの香味料の有意な分配が製品風味の知覚可能な変化をもたらし得る、比較的低い香味料濃度を含有し得る特定のコーラなどの製品を包装するために使用され得る内部飲料缶コーティングに対して、一般に所望される。
【0110】
[0110] モノマーA中に含めるのに好適なC4以上の炭化水素基の例としては、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、又は8個以上の炭素原子を有する炭化水素基が挙げられ、好ましいこのような炭化水素基は、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びこれらの異性体(例えば、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルなど)である。このようなモノマーAのいくつかの具体例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルメタクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、これらの誘導体及び異性体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、4~6個の炭素原子を有するC4以上の炭化水素基が好ましい。理論に束縛されるものではないが、長い直鎖状炭素鎖(例えば、C7以上、特定の例ではC5又はC6)を有するモノマーAを過剰量含むと、特定の缶内部コーティング用途に対して不適当に低いガラス転移温度を有するラテックスが生じる場合があると考えられる。例えば、4員環、5員環、6員環、又は更には7員環以上の脂環式基を含む任意の好適な脂環式基をモノマーAで使用してもよい。また、脂環式基は、単環式であっても多環式(例えば、二環式、三環式、四環式など)であってもよい。例えば、架橋多環式環系(例えば、ノルボルナン基)、縮合多環式環系、又はこれらの組み合わせ(例えば、トリシクロデカン基)を含む、任意の好適な多環基を使用してもよい。典型的には、環(複数可)を構成する原子は炭素原子であるが、上で論じたように、環内に1つ以上のヘテロ原子も存在していてもよい。脂環式基を有するモノマーAの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、これらの変異体(variants)及び異性体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0111】
[0111] いくつかの実施形態では、ブチル(メタ)アクリレートが好ましいモノマーAである。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、ブチルアクリレート及びメタクリル酸ブチルの両方を含む。いくつかのこのような実施形態では、ブチルアクリレートの量に対して過剰量のブチルメタクリレートを使用することが好ましい場合がある。
【0112】
[0112] 上述したように、いくつかの実施形態では、以下の式(I)の少なくとも1つのモノマーAを用いて、乳化重合段階のうちの1つ以上を調製する。
CH2=C(R1)-Xn-C(CH3)t(R2)3-t (I)
(式中、
R1は、水素又はアルキル基、より典型的には水素又はメチル基であり、
nは、0又は1、より典型的には1であり、
Xは、存在する場合、二価結合基、より典型的には、アミド、カーボネート、エステル、エーテル、尿素、又はウレタン結合、更により典型的には、いずれかの方向性のエステル結合(すなわち、-C(O)-O-又は-O-C(O)-)であり、
tは、0~3であり、
それぞれのR2は、存在する場合、独立して、所望によりそれ自体分枝鎖であってもよい有機基、より典型的には、所望により1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、P、Siなど)を含んでもよいアルキル基であり、かつ、
2つ以上のR2は、所望により、互いに環状基を形成してもよい)。
【0113】
[0113] いくつかの実施形態では、tは1であり、両R2基中に存在する炭素原子の総数は、6、7、又は8である。このようなモノマーAの例としては、Hexionから市販されているVEOVA 9(Tg 70℃)、VEOVA 10(Tg -3℃)、及びVEOVA 11(Tg -40℃)モノマーが挙げられる。
【0114】
[0114] いくつかの実施形態では、tは0、1、又は2であり、少なくとも1つのR2は分枝鎖有機基、より典型的には分枝鎖アルキル基である。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、三級又は四級炭素原子を含む少なくとも1つのR2が存在する。VEOVA 9モノマーは、このような分岐状モノマーの例である。
【0115】
[0115] いくつかの実施形態では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つ(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、少なくとも30重量パーセント(「重量%」)、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は更には80重量%以上の1つ以上のモノマーAを含む。上限量は限定されないが、使用されるとき、1つ以上のモノマーAは、典型的には、100重量%、より典型的には80重量%未満、更により典型的には75重量%未満、更により典型的には65重量%未満の量で(特定の段階中に、又は2つ以上の段階を形成するために使用されるモノマーの集合体中に)存在する。
【0116】
[0116] いくつかの実施形態では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、少なくとも4個の炭素原子を含み、かつ少なくとも3個の炭素原子の最長鎖長を有する、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を有する、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は更には80重量%以上含む。
【0117】
[0117] いくつかの実施形態では、乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマーは、C1~C3炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む。メタクリル酸のアルファ炭素に結合しているメチル基は、このようなC1~C3炭化水素基であるとはみなされない。同様に、ビニルモノマーのビニル基は、このようなC1~C3炭化水素基中に存在するとはみなされない。好ましいこのような炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、及びイソプロピル基が挙げられる。このようなモノマーの例としては、アルキル基(例えば、上記の式(II)におけるR4基)が、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びこれらの混合物などの、C1~C3アルキル基である、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。C1~C3炭化水素基を有する好ましいこのようなモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素は、例えば、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%を含む、任意の好適な量
のこのようなモノマーを含むことができる。典型的には、C1~C3炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーは、70重量%未満、より典型的には60重量%未満、更により典型的には50重量%未満を構成することになる。
【0118】
[0118] 多官能性モノマーが使用され得、多エチレン性不飽和モノマーが、好ましい多官能性モノマーの一例である。好適な多エチレン性不飽和(メタ)アクリレートの例としては、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート)、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールブタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘプタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソソルビドジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート、及びこれらの混合物など、アクリル酸又はメタクリル酸の多価アルコールエステルが挙げられる。(メタ)アクリレート以外の多エチレン性不飽和モノマーの例としては、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0119】
[0119] いくつかの実施形態では、少なくとも1つの段階を形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、少量(例えば、5重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満)の酸又は無水物官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。好適なこのような酸又は無水物官能性モノマーの例としては、本明細書に開示されるポリエーテル-アクリレートコポリマーのいずれかのアクリレート部分と共に使用するために開示されているもののいずれかが挙げられる場合がある。
【0120】
[0120] また、エチレン性不飽和モノマー構成要素は、任意の他の好適なモノマーも含んでいてよい。例えば、好適な他のビニルモノマーとしては、イソプレン、ジアリルフタレート、共役ブタジエン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなど)、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びこれに類するもの、並びにこれらの変異体及び混合物が挙げられ得る。
【0121】
[0121] いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素は、いかなるオキシラン基含有モノマーも含有しない。
[0122] 本明細書で好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、より好ましくは樹脂系全体は、いかなるアクリルアミド型モノマー(例えば、アクリルアミド又はメタクリルアミド)も含まず、それに由来しない。任意のこのようなモノマーが用いられる場合、その総量は、好ましくは、樹脂系を作製するために用いられる重合性モノマーの総重量の0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0122】
[0123] 乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、所望により、スチレン以外の1つ以上のビニル芳香族化合物を含んでもよい。このようなビニル芳香族化合物は、置換スチレン化合物及び/又は他の種類のビニル芳香族化合物(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなどの本明細書に記載されるアリール基含有エチレン性不飽和モノマーのい
ずれか)であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの段階を形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)は、あれば、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満のビニル芳香族化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、ラテックスを形成するために使用されるモノマーは、そのような化合物を実質的に含まないか、又は含有しない。
【0123】
[0124] 本明細書に記載の乳化重合反応の条件に関して、多段階ラテックスの2つ以上の段階(例えば、高Tg及び低Tg段階)は、好ましくは、本明細書に記載の1つ以上の水分散性ポリマーの存在下で、水溶性フリーラジカル反応開始剤を用いて水性媒体中で重合される。本明細書では好ましくないが、2つ以上の段階の乳化重合エチレン性不飽和構成要素のうちのいくつか(又は更には全て)が、別個に乳化重合され、次いで、1つ以上の水分散性ポリマーと後で混合され得ることも想到される。
【0124】
[0125] 重合温度は、典型的には、0℃~100℃、好ましくは50℃~90℃、より好ましくは70℃~90℃、更により好ましくは80℃~約85℃である。水性媒体のpHは、通常、5~12のpHに維持される。
【0125】
[0126] 例えば、フリーラジカル反応開始剤として作用することが知られている1つ以上の水溶性ペルオキシドから、フリーラジカル反応開始剤を選択することができる。例としては、過酸化水素及びt-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。当該技術分野において周知のレドックス反応開始剤系(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、エリソルビン酸、及び第一鉄錯体)も使用され得る。いくつかの実施形態では、ベンゾインと過酸化水素との混合物が使用される。
【0126】
[0127] 使用することができる重合開始剤の更なる例としては、重合温度で熱分解してフリーラジカルを発生する重合開始剤が挙げられる。例としては、水溶性の種と水不溶性の種との両方が挙げられる。使用することができるフリーラジカル反応開始剤の更なる例としては、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム又は過硫酸アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、又はリチウム)など);アゾ化合物(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び1-t-ブチル-アゾシアノシクロヘキサンなど);ヒドロペルオキシド(t-アミルヒドロペルオキシド、メチルヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシドなど);過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化カプリリル、ジ-t-ブチルペルオキシド、エチル3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3’-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルオキシピビレート(pivilate)など);過酸エステル(過酢酸t-ブチル、過フタル酸t-ブチル、及び過安息香酸t-ブチルなど);並びに過炭酸塩(ジ(1-シアノ-1-メチルエチル)ペルオキシジカーボネートなど);過リン酸塩など;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0127】
[0128] 重合開始剤は、単独で又はレドックス系の酸化成分として用いることができ、これは、好ましくは、例えば、アスコルビン酸、リンゴ酸、グリコール酸、シュウ酸、乳酸、チオグリコール酸、又はアルカリ金属亜硫酸塩などの還元成分も含み、より具体的には、ヒドロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩、又はメタ重亜硫酸塩(ヒドロ亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、及びメタ重亜硫酸カリウムなど)、又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせも含む。還元成分は、促進剤又は触媒活性化剤と称されることが多い。
【0128】
[0129] (存在する場合)反応開始剤及び促進剤は、好ましくは、共重合するモ
ノマーの重量に基づいて、それぞれ約0.001%~5%の割合で使用される。必要に応じて、コバルト、鉄、ニッケル、又は銅の塩化物及び硫酸塩などのプロモーターを少量用いることができる。レドックス触媒系の例としては、tert-ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)、及び過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。
【0129】
[0130] 必要に応じて、連鎖移動剤を使用してポリマーの分子量を制御することができる。例示的な連鎖移動剤としては、メルカプタン、及び当業者によく知られている他の物質が挙げられる。
【0130】
[0131] 水分散性ポリマーの水性分散物の存在下におけるエチレン性不飽和モノマーの重合反応は、バッチ、間欠、又は連続操作として実行されてもよい。
[0132] 典型的には、適切な量の水及び水分散性ポリマーを反応器に仕込む。典型的には、次いで、反応器をフリーラジカル反応開始温度まで加熱し、次いで、第1の段階の(例えば、高Tg段階又は低Tg段階の)エチレン性不飽和モノマーを仕込む。水混和性溶剤もいくらか存在していてもよい。この温度で、フリーラジカル反応開始剤を添加し、重合温度で一定期間反応させ、重合温度、使用される具体的な反応開始剤、並びに重合するモノマーの種類及び量に依存して変動する添加速度で、残りのエチレン性不飽和モノマー構成要素(第1の段階のものが存在する場合)を漸増式に添加する。第1の段階の重合の完了後、又は完了前に、第2の段階(例えば、他方の高又は低Tg段階)のエチレン性不飽和モノマーを、典型的には追加のフリーラジカル反応開始剤と共に、反応器に仕込む。全てのモノマーを仕込んだ後、最後の加熱を行って重合を完了させる。次いで、反応器を冷却し、ラテックスを回収する。既に議論したように、方法はまた、任意の好適な時間において(例えば、高Tg及び低Tg段階に加えて)1つ以上の追加の所望による段階の乳化重合を含んでもよい。上記方法論は単なる例示であり、他の好適なプロセスも使用してもよいことを理解すべきである。
【0131】
[0133] 必要に応じて、非ポリマー界面活性剤(又は乳化剤)を用いて、ラテックスの段階のうちの1つ以上の乳化重合を促進してもよい。このような界面活性剤は、所望により重合可能であってもよく、水分散性ポリマーの代わりに、又はそれに加えて、使用されてもよい。好適なこのような非ポリマー界面活性剤の例は、例えば、国際公開第2016/105504(A1)号及び同第2017/112837(A1)号に提供されている。
【0132】
[0134] 既に議論したように、好ましい実施形態では、水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合段階は、両方ともラテックス中に存在し(例えば、両方とも同じラテックス粒子又はラテックスコポリマー中に存在し)、当該ラテックスは、好ましくは、水分散性ポリマーの存在下で2つ以上の段階を乳化重合することによって形成される。水分散性ポリマー、及び乳化重合段階のうちの1つ以上は、所望により、互いに共有結合してもよい。同様に、2つ以上の乳化重合段階(例えば、高Tg及び低Tg段階)は、互いに共有結合してもよい。
【0133】
[0135] 本発明のコーティング組成物は、好ましくは、水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合段階を含有する、本明細書に記載される樹脂系を少なくともフィルム形成量含む。コーティング組成物は、典型的には、コーティング組成物の全樹脂固形分重量に対する水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合段階の固形分重量に基づいて、少なくとも10重量%、より典型的には少なくとも20重量%、更により典型的には少なくとも50重量%、及び更により典型的には少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の樹脂系を含む。コーティング組成物は、コーティング組成物の全樹脂固形分重量に対する水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合段階の固形分重量に
基づいて、100重量%以下、より典型的には99重量%未満、更により典型的には95重量%未満の樹脂系(好ましくはラテックス樹脂系)を含む。
【0134】
[0136] 典型的には、樹脂固形分は、コーティング固形分の少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%以上を構成する。いくつかの実施形態では、樹脂固形分は、コーティング固形分の全て又は実質的に全て(例えば、90若しくは95重量%超又は更には100重量%)を構成する。
【0135】
[0137] コーティング組成物は、所望により、1つ以上の添加剤を含むか、又は様々なコーティング用途のためにレオロジー改質する(例えば、スプレーコーティング用途のために希釈する)ことによって、ラテックスエマルションから処方してよい。コーティング組成物が1つ以上の添加剤を含む実施形態では、添加剤は、好ましくは、ラテックスエマルション、又はコーティング組成物から形成される硬化したコーティングに悪影響を与えない。例えば、このような所望による添加剤は、組成物の審美性を高めるため、組成物の製造、加工、取り扱い、及び塗布を容易にするため、並びにコーティング組成物又はそれから得られる硬化したコーティングの特定の機能特性を更に向上させるためにコーティング組成物中に含まれてもよい。
【0136】
[0138] このような所望による添加剤としては、例えば、触媒、染料、顔料、トナー、展延剤、充填剤、潤滑剤、防食剤、流動制御剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、硬化剤、補助樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。それぞれの所望による添加剤は、好ましくは、意図する目的を果たすのに十分な量であるが、コーティング組成物又はそれから得られる硬化したコーティングに悪影響を及ぼさない量で含まれる。
【0137】
[0139] 1つの好ましい所望による添加剤は、硬化速度を増大させるための触媒である。触媒の例としては、強酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、CytecからCYCAT 600として入手可能)、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(pTSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、及びトリフリン酸)、四級アンモニウム化合物、リン化合物、並びにスズ、チタン、及び亜鉛化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキル又はテトラアリールホスホスニウムヨウ化物又は酢酸塩、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、トリフェニルホスフィン、及び当業者に公知の類似の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
[0140] 使用される場合、触媒は、好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。更に、使用される場合、触媒は、これも好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、約3重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の不揮発性量で存在する。
【0139】
[0141] 別の有用な所望による成分は、潤滑剤(例えば、ワックス)であり、これは、コーティングされた金属基材のシートに潤滑性を付与することによって、金属クロージャ及び他の製造されたコーティング物品の製造を容易にする。好ましい潤滑剤としては、例えば、カルナバワックス及びポリエチレン型潤滑剤が挙げられる。使用される場合、潤滑剤は、好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも約0.1重量%、好ましくは約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0140】
[0142] 別の有用な所望による成分は、シロキサン系又はポリシリコーン系物質
などの、オルガノシリコン物質である。好適なこのような物質の代表例は、国際公開第2014/089410(A1)号及び同第2014/186285(A1)号に開示されている。
【0141】
[0143] 別の有用な所望による成分は、二酸化チタンなどの顔料である。使用される場合、顔料は、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、約70重量%以下、より好ましくは約50重量%以下、更により好ましくは約40重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0142】
[0144] また、コーティング組成物には、1つ以上の所望による硬化剤(例えば、時に「架橋剤」と称される架橋性樹脂)も組み込んでもよい。特定の架橋剤の選択は、典型的には、処方される具体的な生成物に依存する。例えば、いくつかのコーティングは、濃く着色される(例えば、金色のコーティング)。これらのコーティングは、典型的には、それ自体が黄色みを帯びた色を有する傾向がある架橋剤を使用して処方されてもよい。対照的に、白色コーティングは、一般的に、非黄変架橋剤を使用して、又は黄変架橋剤を少量のみ使用して処方される。好ましい硬化剤は、BPA、BPF、BPS、及びエポキシノボラックのそれぞれを実質的に含まないか、又は含有しない。
【0143】
[0145] 周知のヒドロキシル反応性硬化性樹脂のいずれを使用することができる。例えば、フェノプラスト、ブロックイソシアネート、及びアミノプラスト硬化剤、並びにこれらの組み合わせを用いてもよい。更に又は別の方法としは、カルボキシル反応性硬化樹脂を使用してもよい。
【0144】
[0146] フェノプラスト樹脂は、アルデヒドとフェノールとの縮合生成物を含む。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが、好ましいアルデヒドである。様々なフェノール、例えば、フェノール、クレゾール、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノ-ル、p-tert-アミルフェノール、及びシクロペンチルフェノールを使用することができる。
【0145】
[0147] アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及びベンズアルデヒドなどのアルデヒドと、尿素、メラミン、及びベンゾグアナミンなどのアミノ又はアミド基含有物質との縮合生成物である。好適なアミノプラスト架橋性樹脂の例としては、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、エステル化メラミン-ホルムアルデヒド、及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。好適なアミノプラスト架橋剤の1つの具体例は、Cytec Industries,Inc.から商標CYMEL 303として市販されている完全にアルキル化したメラミン-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0146】
[0148] 他の一般的に好適な硬化剤の例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、及びこれに類するものなどのブロックされているか又はブロックされていない脂肪族、脂環式、又は芳香族の、二価、三価、又は多価のイソシアネートである。一般的に好適なブロックイソシアネートの更なる例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートの異性体、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約650、更により好ましくは少なくとも約1,000の数平均分子量を有するブロックイソシアネートを使用する。
【0147】
[0149] 他の好適な硬化剤としては、例えば、ベンゾオキサジンベースのフェノ
ール樹脂などのベンゾオキサジン硬化剤が挙げられ得る。ベンゾオキサジンベースの硬化剤の例は、米国特許出願公開第2016/0297994(A1)号に提供されている。
【0148】
[0150] アルカノールアミド型硬化剤も使用してもよい。好ましいこのような硬化剤としては、例えば、EMS-CHEMIE AGによって商標PRIMID(例えば、PRIMID XL-552及びQM-1260製品)として販売されているものなどのベータ-ヒドロキシアルキル-アミド架橋剤が挙げられる。
【0149】
[0151] コーティング組成物中の硬化剤(例えば、架橋剤)の濃度は、硬化剤の種類、焼成の時間及び温度、並びにコポリマー粒子の分子量に依存する場合がある。使用される場合、架橋剤は、典型的には、約50重量%以下、好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約15重量%以下の量で存在する。使用される場合、架橋剤は、典型的には、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約1重量、更により好ましくは少なくとも約1.5重量%の量で存在する。これらの重量%は、コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づく。
【0150】
[0152] いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、外部架橋剤を使用することなく(例えば、フェノール性架橋剤なしで)硬化されてもよい。更に、コーティング組成物は、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド含有物質を実質的に含んでいない場合があり、より好ましくはこれらの化合物を本質的に含まず、更により好ましくはこれらの化合物を本質的に完全に含まず、最も好ましくはこれらの化合物を完全に含まないか、又は含有しない。
【0151】
[0153] 上述したように、好ましい実施形態では、開示されるコーティング組成物は、(i)スチレンと、(ii)BPA、BPF、及びBPSのそれぞれとのうちの1つ以上を実質的に含まないか、又は含有しない。加えて、コーティング組成物は、好ましくは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。より好ましくは、コーティング組成物は、BPS以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ビスフェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。例として、ビスフェノールのエポキシドに由来する構造単位(例えば、ビスフェノールのジグリシジルエーテル)は、ビスフェノールに由来する構造単位であるとみなされる。
【0152】
[0154] 更により好ましくは、コーティング組成物は、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,6-ジブロモフェノール)を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。最適には、コーティング組成物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。エストロゲンアゴニスト活性は、MCF-7細胞増殖アッセイ(「MCF-7アッセイ」)又はMCF-7アッセイの代わりに使用され得る若しくは共通の参照化合物の分析をとおしてMCF-7アッセイに相関し得る他のアッセイなどの、好適な、要求にかなうインビトロヒトエストロゲン受容体アッセイを使用して評価され得る。例えば、このような構造単位及び適用可能な試験方法の考察については、米国特許出願公開第2013/0316109(A1)号を参照されたい。
【0153】
[0155] 好ましい実施形態では、コーティング組成物は、塩素化ビニルモノマーなど、ハロゲン化モノマー(遊離しているか重合しているかは問わない)を使用して調製されない。更なる好ましい実施形態では、コーティング組成物は、ハロゲン化モノマーを実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない。
【0154】
[0156] コーティング組成物は、所望により、様々なコーティングの塗布のためにレオロジー改質もまたされていてもよい。例えば、コーティング組成物中の総固形分含量を低減するために、コーティング組成物を追加量の水性担体で希釈してもよい。あるいは、コーティング組成物中の総固形分含量を増大させるために、水性担体の一部を除去して(例えば、蒸発させて)もよい。コーティング組成物中の最終的な総固形分含量は、用いられる具体的なコーティングの塗布(例えば、スプレーコーティング)、具体的なコーティングの使用(例えば、缶の内面用)、コーティング厚さ、及びこれに類するものに依存して変動してもよい。
【0155】
[0157] 必要に応じて、コーティング組成物は、例えば、1つ以上のアクリルポリマー、アルキドポリマー、エポキシポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリシリコーンポリマー、ポリエステルポリマー、並びにこれらのコポリマー及び混合物などの1つ以上の他の所望によるポリマーもまた含んでもよい。
【0156】
[0158] 特定のスプレーコーティングの塗布(例えば、アルミニウム製飲料缶を含む、食品又は飲料缶のための内側スプレー)のためなどのいくつかの実施形態では、コーティング組成物の総固形分重量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約5%超、より好ましくは約10%超、更により好ましくは約15%超であってもよい。これらの実施形態では、コーティング組成物の総固形分重量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約40%未満、より好ましくは約30%未満、更により好ましくは約25%未満であってもまたよい。これらの実施形態のうちのいくつかでは、コーティング組成物は、約18%~約22%の範囲の総固形分重量を有してもよい。水性担体は、コーティング組成物の重量の残りを構成してもよい。
【0157】
[0159] コーティング組成物の水性担体は、水を含み、更に1つ以上の所望による有機溶媒を更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の約20重量%超、より好ましくは約35重量%超、更により好ましくは約50重量%超を構成する。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の100重量%以下、より好ましくは約95重量%未満、更により好ましくは約90重量%未満を構成する。
【0158】
[0160] 理論に束縛されるものではないが、好適な量の有機溶媒を含むことは、いくつかの実施形態では有益である(例えば、ある特定のコイルコーティングの塗布に対して、コーティング組成物の流動及び平滑性を修正し、ふくれを制御し、コイルコーターのライン速度を最大化する)可能性がある。したがって、特定の実施形態では、有機溶媒は、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の0重量%超、より好ましくは約5重量%超、更により好ましくは約10重量%超を構成してもよい。これらの実施形態では、有機溶媒は、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の約80重量%未満、より好ましくは約65重量%未満、更により好ましくは約50重量%未満もまた構成してもよい。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、水性担体の40重量%未満を構成する。
【0159】
[0161] コーティング組成物の粘度は、好ましくは、所与のコーティングの塗布に好適である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の平均粘度は、以下に記載する粘度試験(25℃におけるFord Viscosity Cup #2)に基づいて、約20秒超、より好ましくは25秒超、更により好ましくは約30秒超であってもよい。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の平均粘度は、以下に記載する粘度試
験(25℃におけるFord Viscosity Cup #2)に基づいて、約80秒未満、より好ましくは60秒未満、更により好ましくは約50秒未満であってもまたよい。
【0160】
[0162] 本発明のコーティング組成物は、様々な異なるコーティング技術(例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、洗浄コーティング、浸しなど)を用いて、様々な異なる基材に塗布されてもよい。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、内側スプレーコーティングとして、容器若しくはその一部分若しくはその構成要素に、又はそのような容器の内側の一部若しくは全てとなる基材表面に塗布される。上に簡潔に記載したとおり、コーティング組成物から形成される硬化したコーティングは、金属製の食品及び飲料缶(例えば、2ピース缶、3ピース缶など)上での使用に特に適している。2ピース缶(例えば、2ピースビール又はソーダ缶、及び特定の食品缶)は、典型的には、絞りしごき成形(「D&I」)プロセスによって製造されており、食品及び飲料産業内でますます普及している。また、硬化コーティングは、食品又は飲料と接触する状況(本明細書ではまとめて「食品接触」と称する)において用いるためにも好適であり、このような缶の内側で用いても又は外側で用いてもよい。
【0161】
[0163] 本発明の好ましいコーティング組成物は、アルミニウム又は鋼製の2ピース絞り及びしごき飲料又は食品缶上にスプレー塗布された内部コーティングを形成するうえで特に好適である。
【0162】
[0164] 本開示のコーティング組成物は、単層コーティング系の1つの層として存在してもよく、又は多層コーティング系の1つ以上の層として存在してもよい。当該コーティング組成物は、下塗り、中塗り、上塗り、又はこれらの組み合わせとして使用されてもよい。特定の層及びコーティング系全体のコーティング厚さは、使用されるコーティング材料、基材、コーティング塗布方法、及びコーティングされた物品の最終用途に応じて異なることになる。開示されるコーティング組成物から形成される1つ以上の層を含む単層又は多層コーティング系は、任意の好適な全体コーティング厚さを有してもよいが、典型的には、全体平均乾燥コーティング重量は約0.6グラム/平方メートル(「gsm」)~約13gsm、より典型的には約1.0gsm~約6.5gsmであり、選択されるコーティング重量は、多くの場合、所望の最終用途に依存する。また、最小平均乾燥フィルム重量も、好適なコーティング性能を依然として維持しながら、十分な被覆を確実にするために重要である。例えば、飲料缶の場合、典型的な最小乾燥フィルム重量は、ビール飲料缶では約1.6グラム/平方メートル(gsm)(典型的な硬化コーティング密度の場合の約1.4マイクロメートル又は約0.055ミルのコーティング厚さに対応する)、ソーダ缶では約2.3gsm(約2マイクロメートル又は約0.079ミルに対応する)、スポーツ及びエナジードリンク、ワイン、ミキサー、並びにカクテルドリンクなどの「保持しにくい」製品を包装する際に使用することが意図される缶では約3.4gsm(約3マイクロメートル又は約0.117ミルに対応する)である。食品又は飲料容器用の密閉部(例えば、ねじ切り金属密閉部)上で使用するためのコーティング系の平均全コーティング重量は、約5.2gsm(約4.6マイクロメートル又は約0.18ミルに対応する)以下であってもよい。スプレーされたブリキ製食品缶では、典型的な最小乾燥フィルム重量は、約5.4gsm(約4.8マイクロメートル又は約0.19ミルに対応する)である。他の用途のための最小乾燥フィルム重量は、約7.9gsm(約6.9マイクロメートル又は約0.27ミルに対応する)、約9.5gsm(約8.4マイクロメートル又は約0.33ミルに対応する)、及び約11.7gsm(約10.4マイクロメートル又は約0.41ミルに対応する)であってもよい。コーティング組成物をドラム(例えば、食品又は飲料製品と共に使用するためのドラム)上の内面コーティングとして使用する特定の実施形態では、典型的な最小乾燥フィルム重量は、約13gsm(約11.7マイクロメートル又は約0.46ミルに対応する)であってもよい。しかしながら、経済
性、硬化速度、及び効率性を含む理由から、上記の様々な用途の最大乾燥コーティング重量はまた、約15gsm(約13.5マイクロメートル又は約0.53ミルに対応する)未満であってもよい。
【0163】
[0165] 剛性の食品若しくは飲料缶又はその一部を形成する際に使用される金属基材は、典型的には約125マイクロメートル~約635マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する。電気錫めっき鋼、冷延鋼板、及びアルミニウムが、食品若しくは飲料缶又はその一部用の金属基材として一般的に使用される。例えば、包装用物品の形成に金属箔基材が採用される実施形態では、金属箔基材の厚さは上記よりも更に薄くすることもできる。
【0164】
[0166] 本開示のコーティング組成物は、基材が、例えば、食品若しくは飲料用容器又はその一部分などの物品へと成型される前又は後のいずれかで、基材に塗布されてもよい。一実施形態では、食品若しくは飲料缶又はその一部を形成する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載されるコーティング組成物を金属基材に塗布すること(例えば、当該組成物を、平面コイル又はシートの形態の金属基材に塗布すること)と、当該組成物を硬質化させることと、当該基材を(例えば、スタンピングを介して)包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料缶又はその一部)へと成形することと、を含む。例えば、二部分若しくは三部分からなる缶又はその一部分、例えば、リベット加工の飲料用缶端部(例えば、ソーダ又はビール缶)の表面上に本開示のコーティング組成物の硬化コーティングを施したものは、かかる方法で形成され得る。別の実施形態では、食品又は飲料缶を形成する方法が提供され、この方法は、包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料缶又はその一部)を提供することと、本明細書に記載されるコーティング組成物を、(例えば、スプレー塗布、浸しなどを介して)このような包装容器又はその一部の内側部分、外側部分、又は内側部分と外側部分との両方に塗布することと、当該組成物を硬質化させることと、を含む。
【0165】
[0167] コーティング組成物を基材上に塗布した後に、この組成物を、例えば、従来法若しくは対流法のいずれかによるオーブン焼成、又はコーティングを硬化させるために好適な高温をもたらす任意の他の方法を含む、様々なプロセスを使用して硬化させることができる。硬化プロセスは、個別工程又は組み合わせ工程のいずれかで実施可能である。例えば、コーティング組成物を大部分が架橋されていない状態のままにするために、基材を周囲温度で乾燥させることができる。次いで、コーティングされた基材を加熱し、組成物を完全に硬化させる。ある特定の状況では、本開示のコーティング組成物は、1つの工程で乾燥及び硬化されてもよい。
【0166】
[0168] 硬化条件は、塗布の方法及び意図される最終用途に応じて異なる。硬化プロセスは、例えば、約100℃~約300℃、より典型的には約177℃~約250℃の範囲のオーブン温度を含む、任意の好適な温度において実施してもよい。コーティングされる基材が金属コイル(例えば、飲料缶の端部を形成するための金属コイル)である場合、例えば、コーティングされた金属基材を好適な期間にわたって、好ましくは約177℃超のピーク金属温度(「PMT」)に加熱することによって、塗布されたコーティング組成物の硬化を行ってもよい。より好ましくは、コーティングされた金属コイルは、少なくとも約218℃のPMTまで好適な期間(例えば、約5~900秒間)加熱される。硬化した(すなわち、硬質化した)コーティングは、好ましくは、連続的な硬化したコーティング(すなわち、好適に低い初期金属露出値を呈し、それによって、基材が効果的にコーティングされていることを示すコーティング)である。
【0167】
[0169] いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、食品又は飲料缶(例えば、2ピース食品又は飲料缶)の内面上にスプレー塗布されて、効果的かつ均一に基材
をコーティングし、連続的な硬化したコーティングを形成することができる内側スプレーコーティング組成物である。
【0168】
[0170] 硬化したコーティングの好ましいTg値としては、約50℃超、より好ましくは約60℃超、更により好ましくは約70℃超、いくつかの実施形態では約80℃超のものが挙げられる。硬化したコーティングの好ましいTg値としては、約120℃未満、より好ましくは約115℃未満、更により好ましくは約110℃未満、いくつかの実施形態では約100℃未満のものが挙げられる。
【0169】
[0171] 更に、意図する食品又は飲料製品によるコーティング透過を防ぐか又は別の方法で低減するために、硬化したコーティングは、好ましくは、好適に疎水性である。例えば、硬化したコーティングは、周囲条件下で試験したとき、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を有することができる。いくつかの実施形態では、硬化したコーティングは、上記のレベル以外の接触角を有してもよい。
【0170】
[0172] いくつかの実施形態では、硬化したコーティングは、好ましくは、食品及び飲料容器用の内部食品接触コーティング(例えば、内側スプレーコーティング)として用いるための所望の特性を呈する。したがって、味若しくは毒性の懸念、又は政府の規制の要件を潜在的に満たせないなどの要因により食品接触用途には不適当である物質を使用することは、回避することが望ましい。加えて、このようなコーティングの場合、十分な硬度及び他の関連する硬化フィルム特性を、食品及び飲料の包装容器及び容器構成要素を作製する際に用いられる比較的短いオーブン硬化時間(例えば、コイルコーティングでは約1分未満、内側スプレー飲料缶コーティングでは約2分未満又は約1分未満、食品容器では10分以下)の間に付与することができる硬化化学物質を選択することが必要である。これらの時間は、多くの他のコーティング最終用途に典型的に用いられるものよりもはるかに短い。また、このようなコーティングは、食品及び飲料コーティングに用いられる非常に薄いフィルムの重量及び厚さで十分な性能を提供することも必要になる。これらのフィルムの重量及び厚さは、多くの場合、多くの他のコーティング最終用途に用いられるフィルム重量及び厚さの1/10以下である。
【0171】
[0173] 潜在的な味及び毒性の懸念を最小限に抑える一般的な指針として、開示される多段階ラテックスから作製される硬化した食品接触コーティングは、以下のグローバル抽出試験に従って、好ましくは約50ppm未満、より好ましくは約25ppm未満、更により好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約1ppm未満のグローバル抽出値を呈する。これらのグローバル抽出値は、建築用塗料及び他の住宅用又は工業用コーティング用途に使用される典型的な多段階ラテックスコーティング組成物を除外するのに十分に厳格である。低減されたグローバル抽出値は、硬化したコーティング中の可動性である又は潜在的に可動性である種の量を制限することによって得られ得る。したがって、通常は、不純ではなく純粋な反応物質を使用すること、過度に低い収率をもたらす、又は望ましくない副反応につながる反応スキームを避けること、モノマー、オリゴマー、反応開始剤、架橋剤、及び触媒を含む未反応又は未消費の種の量を制限するように、適切な化学量論を選択すること、容易に加水分解可能な種又は結合の存在を避けること、多段階ラテックスを乳化重合するために、従来の低分子量乳化重合界面活性剤を使用するのではなく、開示される水分散性ポリマーを使用すること、他の低分子量アジュバント(例えば、低分子量酸化防止剤、殺生物剤、緩衝剤、合体剤、顔料又は着色剤のための分散助剤、消泡剤、pH調整剤、非水性溶媒及び共溶媒、並びに様々なコーティングアジュバントに付随する場合がある他の可動性成分)の使用を制限する又は避けること、並びに計画された硬化サイクル内で完全な硬化が起こることを確実にすることが望ましい場合がある。
【0172】
[0174] 更に、硬化コーティングは、好ましくは、以下の初期金属露出試験に従って、約5ミリアンペア(mA)未満、より好ましくは約2mA未満、更により好ましくは約1mA未満の金属露出を呈する。低減された金属露出値は、より高い可撓性のコーティングを形成することによって得られ得る。一段階ラテックスを使用する従来のラテックス系コーティングの場合、典型的には、可撓性と風味スカルピングに対する耐性との間にトレードオフが存在する。すなわち、許容可能な可撓性を有する傾向があるアクリル系はまた、香味料を不適当に高い程度にスカルピングする傾向があり、その一方で、香味料を不適当な程度にスカルピングすることに抵抗する傾向があるアクリル系はまた、不適当な可撓性を有する傾向がある。このコーティング特性のトレードオフは、スチレンを使用せずに作製されたアクリル系に特に顕著である。理論に束縛されるものではないが、一段階ラテックスではなく多段階ラテックスを本発明において使用することは、そのようなトレードオフの範囲を低減し得、それにより、スチレンを使用せずに作製されたアクリル系であっても、十分な風味スカルピング耐性と共に満足な可撓性を達成することを可能にすると思われる。
【0173】
[0175] 内側スプレーコーティングにとって、及び多くの他の食品又は飲料缶コーティングにとって、硬化後の加工工程(例えば、ネッキング及びドーム再形成)の間、及び輸送又は使用中に合理的な高さから缶が落下した場合に、コーティングが金属基材と共にたわむことが可能であるために、可撓性が特に重要である。いくつかの好ましい実施形態では、硬化したコーティングは、好ましくは、以下の落下損傷後金属露出試験に従って、約10mA未満、より好ましくは約3.5mA未満、更により好ましくは約2.5mA未満、最適には約1.5mA未満の金属露出を呈する。
【0174】
[0176] また、本開示のコーティング組成物は、他のコーティング塗布においても用途を与える。これらの追加の塗布としては、洗浄コーティング、シートコーティング、及びサイドシームコーティング(例えば、食品缶のサイドシームコーティング)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、電着塗装、押出コーティング、積層、粉末コーティングなどの他の商業的コーティング塗布及び硬化法も想到される。また、コーティング組成物は、例えば、薬物接触表面を含む定量吸入器(「MDI」)の表面を含む、医療又は化粧品包装用途においても有用であり得る。
【0175】
[0177] 以下の実施例に記載されているものなどのポリマー及びコーティング組成物は、以下を含む様々な試験を使用して評価され得る。
1.粘度試験
[0178] この試験は、スプレー性及び他のコーティング塗布特性などのレオロジー的目的のために、ラテックスエマルション又はコーティング組成物の粘度を測定する。25℃でFord Viscosity Cup #2を使用し、ASTM D1200-88に従って試験を実施した。結果は秒単位で測定された。
【0176】
2.硬化条件
[0179] 飲料内側スプレーの焼成については、硬化条件は、缶ドームで測定される温度を188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)に55秒間維持することを伴う。食品缶内側スプレーの焼成については、硬化条件は、缶ドームにおける温度を208℃~218℃の範囲内に2分間維持することを伴う。飲料端コイルの焼成については、硬化条件は、指定された時間内にピーク金属温度を提供するのに十分な温度の使用を伴う(例えば、204℃で10秒間とは、例えば、オーブン内で10秒間であり、ピーク金属温度が204℃に達することを意味する)。
【0177】
3.飲料缶内側スプレー試験
[0180] 市販の予形成されたアルミニウムD&I缶の内部への開示されるコーテ
ィング組成物のスプレー塗布を容易にするために、各コーティングの粘度は、Ford粘度カップ(#2オリフィス)を通る各コーティングの流量が20~80秒の範囲内になるように、低減される。この粘度測定は、コーティング組成物の清浄で濾過されたサンプルを用いて25℃の温度で実施される。試験される缶は、従来の355mL(12米液量オンス)の番号「211」の直径の缶である。コーティング組成物は、Reynolds DG-250から市販されている実験室規模D&Iスプレーユニットを使用して、缶コーティング重量あたり115ミリグラム(乾燥重量)でスプレー塗布される。この実験室ユニットは、工業用D&I飲料缶スプレーユニットの有効な複製物であると考えられる。塗布されたコーティングは、Ross Co.から市販されている実験室規模D&I缶オーブンを用いて、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化される。
【0178】
4.食品缶内側スプレー試験
[0181] 市販の予形成されたブリキ製D&I缶の内部への開示されるコーティング組成物のスプレー塗布を容易にするために、各コーティングの粘度は、Ford粘度カップ(#2オリフィス)を通る各コーティングの流量が20~80秒の範囲内になるように、低減される。この粘度測定は、コーティング組成物の清浄で濾過されたサンプルを用いて25℃の温度で実施される。試験缶は、0.113mの高さ、0.076mの直径、及び0.032m2の内部面積に対応する、「300×407」の取引上の表示を有する。試験される缶は、改善された耐圧潰性を缶に付与する従来の側壁ビーディング部を含む。加えて、それぞれはフランジ付きであり得、これは、適切な300の直径の市販の食品缶端部を有する缶の効果的なシーミング及び閉鎖を可能にする。コーティング組成物は、H.L.Fisher Co.から市販されている実験室規模D&Iスプレーユニットを使用して、缶コーティング重量あたり250~375ミリグラム(乾燥重量)でスプレー塗布される。この実験室ユニットは、工業用D&I食品缶スプレーユニットの有効な複製物であると考えられる。塗布されたコーティングは、Ross Co.から市販されている実験室規模D&I缶オーブンを用いて、208℃~218℃(缶において測定)で2分間硬化される。
【0179】
5.初期金属露出
[0182] 「エナメルレーター試験」と呼ばれる場合があるこの試験方法は、缶及び電解質を通る電流の流れを測定することによって、缶の内面上の乾燥コーティングの被覆率及び完全性を評価する。缶に電解質を充填し、電極をこの溶液中に沈める。一定電圧を印加し、結果として生じた電流をミリアンペアで測定する。電圧レベル、暴露時間、及び電解質溶液は全て、必要に応じて変化させることができ、包装施設又は包装最終用途を含む要因に応じて異なっていてもよい。代表的な手順では、内部「内側スプレー」コーティングは、高圧エアレススプレーと、ビール缶には1.6グラム/平方メートル(gsm)、ソーダ缶には2.3gsm、スポーツドリンク、エナジードリンク、ワイン、ミキサー、又はカクテルなどの「保持しにくい」飲料製品を包装する際に使用することが意図される缶には3.4gsm、及び内側スプレーコーティングされたブリキ製食品缶には5.4gsmの最小乾燥フィルム重量と、を使用して塗布される。
【0180】
[0183] コーティングされた缶に、脱イオン水中に1重量%の塩化ナトリウムを含有する室温電解質溶液を充填し、電気プローブを、缶の外面上のコーティングされていない導電部分に取り付ける。第2のプローブを、缶の内側で電解質溶液の中央に沈める。6.3VDCの一定電圧を4秒間連続的に印加し、Wilkens-Anderson Companyによって供給されるWACO Enamel Rater II又は同様の試験機を使用して平均電流をミリアンペアで測定する。缶の内面上に未コーティングの金属部分が存在する場合、電流が、これら2つのプローブ間で流れ、試験機によって表示される。観察された電流は、コーティングで効果的に覆われていない金属の量に正比例する。目標は、缶の内面上で100%のコーティング被覆率を達成することであり、これは
、0mAの金属露出値をもたらすことになる。好ましいコーティングは、3mA未満の金属露出値、より好ましくは2mA未満の値、更により好まくは1mA未満の値を与える。商業的に容認可能な金属露出値は、典型的には、平均して2mA未満である。
【0181】
6.落下損傷後金属露出
[0184] 落下損傷耐性は、充填済み缶の落下をシミュレートする条件に供した後に、亀裂に対する耐性を有するコーティングされた容器の能力を測定するものであり、飲料容器及び食品容器の両方に使用され得る。亀裂の存在は、初期金属露出の項で既に記載したとおり、電解質溶液を介する電流の通過によって測定される。コーティングされた容器に電解質溶液(脱イオン水中1%NaCl)を充填し、初期金属露出を記録する。電解質溶液を除去し、次いで、缶に室温の水道水を充填する。「内側スプレー」飲料又は食品缶では、初期金属露出試験で記載したフィルム重量を使用することができる。
【0182】
[0185] 「上部」缶端を備えていない水を充填した缶を、缶の底部を下にして、2と7/8インチ(7.3センチメートル)の内径を有する円筒形チューブを通して、衝撃用楔(例えば、上向きに33度の角度の付いた斜面板)上に落下させる。缶の底端が側壁と接触する縁領域(典型的には、飲料缶の「出縁(chime)」と称される)にへこみが
形成されるように、衝撃用楔をチューブに対して位置決めする。水を充填した缶を24インチ(61センチメートル)の高さ(缶の底部と衝撃用楔上の衝撃点との間で測定)からチューブを通して斜面板の上へと落下させて、出縁領域にへこみを生じさせる。次いで、缶を180度回転させ、このプロセスを繰り返す。
【0183】
[0186] 次いで、缶から水を除去し、金属露出を再度上記のとおり測定する。損傷がない場合、初期金属露出値に対して電流(mA)の変化は観察されないことになる。典型的には、6個又は12個の容器の試験の平均を記録する。落下前及び落下後の金属露出結果を絶対値として報告する。ミリアンペア値が低いほど、落下損傷に対するコーティングの耐性がより良好である。好ましいコーティングは、10mA未満、より好ましい値は3.5mA未満、更により好ましい値は2.5mA未満、最適値は1.5mA未満の落下損傷後の金属露出値を与える。
【0184】
[0187] 落下損傷は、多くの場合、「デルタ」又は「Δ」mA値として報告され、この値は、落下損傷前の初期測定電流通過量(上記の初期金属露出試験を使用して測定)に対する落下損傷試験後の測定電流通過量(「金属露出」)の差である。測定電流通過量の変化がほとんど(例えば、<1mA)又は全くないことは、コーティングが最終用途に対して良好な可撓性を有することを示す。以下の実施例の項において、表3及び表4に報告されている落下損傷Δ値は、4.0gsm(115mg/缶に対応する)の内側スプレーコーティング乾燥フィルム重量を使用した標準的な12オンス(355mL)211径のアルミニウム製飲料缶を使用して実施したものである。
【0185】
7.ネッキング試験
[0188] この試験は、以下の商業的ネッキングプロセス後のフィルムの可撓性及び接着性を測定する。ネッキングは、容器を密封することを可能にする容器端部の適用を容易にするために行われ、飲料缶に対して一般に実施されるものである。試験は、推奨される膜厚で容器にコーティングを塗布し、容器を推奨される焼成に供することを含む(上記、項目2~4についての缶、コーティング、及び焼成の仕様を参照されたい)。ネッキングプロセスの前、サンプル缶は、典型的には、上記のとおり電解質溶液を使用して評価したとき、<1.0mAの金属露出値(12個の缶の平均)を有する。ネッキングプロセスの後、缶は、12個のネッキングされていない缶の平均と比較して、金属露出の増加を示さないはずである。上昇したmA値は、フィルムの破損を構成するフィルムの裂け目を示す。
【0186】
8.接着性
[0189] コーティングされる基材にコーティングが接着するかどうかを評価するために、接着性試験を実施する。接着性試験は、3M Company(Saint Paul,Minn)から入手可能なSCOTCH 610テープを使用して、ASTM D 3359-Test Method Bに従って実施した。一般的に、接着性は0~10の尺度を用いて評点付けされ、ここで評点「10」は、接着不良がないことを示し(最良)、評点「9」は、コーティングの90%が接着したままであることを示し、評点「8」は、コーティングの80%が接着したままであることを示し、以下同様である。商業的に実現可能なコーティングについては、典型的には、評点10の接着が望ましい。
【0187】
9.白化耐性
[0190] 白化耐性は、様々な溶液による攻撃に対する耐性を示すコーティングの能力を測定する。典型的には、白化は、コーティングされたフィルムに吸収される溶液(例えば、水)の量によって測定される。フィルムが水を吸収する場合、一般的に、曇ったようになるか又は白く見える。白化は、一般的に0~10の尺度を用いて視覚的に測定され、ここで評点「10」は白化がないことを示し(最良)、評点「0」はフィルムが完全に白くなっていることを示す(最悪)。商業的に実現可能なコーティングについては、典型的には、白化の評点は7以上が望ましく、9~10が最適である。
【0188】
10.耐食性
[0191] これらの試験は、異なるレベルの攻撃性の溶液による攻撃に対する耐性を示すコーティングの能力を測定する。簡潔に述べると、所与のコーティングを下記のとおり特定の溶液に曝し、次いで、これもそれぞれ以下に記載するとおり接着性及び白化耐性について測定する。それぞれの試験について、結果は、接着耐性、白化耐性、又は白化接着耐性に基づいて0~10の尺度を用いて与えられ、評点「10」が最良であり、評点「0」が最悪である。
【0189】
A.脱イオン水
[0192] 脱イオン水を82℃に加熱する。コーティングされたパネルを、加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、そして乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0190】
B.酢酸溶液
[0193] 酢酸(C2H4O2)の3%脱イオン水溶液を調製し、100℃に加熱する。コーティングされたパネルを、加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、そして乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0191】
C.クエン酸溶液
[0194] クエン酸(C6H8O7)の2%脱イオン水溶液を調製し、溶液温度が121℃に達するのに十分な圧力に供しながら加熱する。コーティングされたパネルを、加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、そして乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0192】
11.低温殺菌
[0195] 低温殺菌試験は、容器に包装された様々な種類の食品製品の加工条件にコーティングがどのように耐えているかを判定する。典型的には、コーティングされた基材を水浴に浸漬し、65℃~100℃の範囲の温度で5~60分間加熱する。本評価については、コーティングされた基材を85℃で45分間脱イオン水浴、又は100℃で30
分間脱イオン水中の3%酢酸(C2H4O2)溶液のいずれかに浸漬した。次いで、コーティングされた基材を当該浴から取り出し、上記のとおりコーティングの接着及び白化について試験する。商業的に実現可能なコーティングは、好ましくは、完全な接着性(評点10)、及び5以上、最適には9~10の白化評点を有する適切な低温殺菌耐性を提供する。
【0193】
12.ガラス転移温度(「Tg」)
[0196] DSC試験用のサンプルは、最初に液体樹脂組成物をアルミニウムシートパネル上へと塗布することによって調製されてもよい。次いで、このパネルを、Fisher ISOTEMP電気オーブン内にて300°F(149℃)で20分間焼成して、揮発性物質を除去する。室温まで冷却した後、サンプルをパネルからかき取り、計量して標準的なサンプルパンの中へ入れ、標準的な加熱/冷却/加熱法を用いてDSCを介して分析する。サンプルを-60℃で平衡化し、次いで、毎分20℃で200℃まで加熱し、-60℃まで冷却し、次いで、再度毎分20℃で200℃まで加熱する。最後の加熱サイクルのサーモグラムからガラス転移を計算する。ガラス転移を転移の変曲点において測定する。
【0194】
13.風味スカルピング
[0197] 風味スカルピングは、「Latex Coating Composition Having Reduced Flavor Scalping Properties」と題された国際公開第2018/013766(A1)号に記載されているように評価され得る。保管中の試験溶液から失われた各アルデヒドの量を測定し、元の濃度の百分率として算出する。風味スカルピングを、現在の業界標準のコーティング配合物に対して相対的な失われたアルデヒドの%として報告し、高い報告パーセント値は、低いパーセント値よりも好ましい。
【0195】
14.グローバル抽出
[0198] グローバル抽出試験は、コーティングから出て、コーティングされた缶の中に包装された食品内へと潜在的に移行する可能性のある遊離物質の総量を見積もるように設計されている。典型的には、様々な条件の下で、コーティングされた基材を水又は溶媒ブレンドに曝露させることで、所与の最終用途をシミュレートする。容認可能な抽出条件及び媒体は、連邦規則第21条175.300項(d)及び(e)に見出すことができる。FDA規制によって規定される許容可能なグローバル抽出限度は、50百万分率(ppm)である。本発明で用いられる抽出手順は、連邦規則第21条175.300項(e)(4)(xv)に記載されており、最悪の事態の性能を確保するために、(1)アルコール(エタノール)含有量を10重量%に増加させ、かつ(2)充填された容器を10日間の平衡化期間にわたって37.8℃(100°F)で保持するという修正を施した。これらの条件は、食品接触物質の届出(Food Contact Notifications)準備に関するFDA刊行物「Guidelines for Industry」に準ずる。
【0196】
[0199] コーティングされた飲料缶に10重量%のエタノール水溶液を充填し、低温殺菌条件(65.6℃、150°F)に2時間曝し、続いて、37.8℃(100°F)で10日間の平衡化期間に供した。抽出物の量の判定は、連邦規則第21条175.300項(e)(5)の記載に従って判定し、355ミリリットルの容積を有する、缶の端部を含まない(no end)表面積44平方インチに基づいてppm値を計算した。好ましいコーティングの大域的抽出結果は50ppm未満、より好ましい結果は10ppm未満、及び更により好ましい結果は1ppm未満である。最も好ましくは、グローバル抽出結果は、最適には検出不可能である。
【0197】
[0200] 食品又は飲料容器上の包装コーティングとして以前に使用されたことの
ない材料(例えば、建築用又は工業用コーティング材料)では、コーティング材料が、食品及び飲料包装用コーティングに典型的に必要とされる低コーティング重量及び低粘度で以前に塗布されたことがない場合があるので、上記の手順を使用してグローバル抽出を測定することは困難であり得る。また、コーティング材料は、食品及び飲料コーティングに典型的に用いられるオーブン硬化手順を使用して以前に熱硬化されたことがない可能性もある。そのような場合、代わりに、上記のように材料を飲料缶に塗布するが、その既存の用途(例えば、その建築又は工業用途)に開示又は推奨されるようにコーティング重量及び粘度を使用し、続いて、その既存の用途に開示又は推奨されるようにコーティングを乾燥又は別の方法で硬質化させ、次いで、材料がタックフリー状態に到達してから1時間以内に、乾燥したコーティングを、上記の最悪の事態の修正を施した上記の連邦規則第21条175.300項(e)(4)(xv)抽出手順に供することによって、材料を評価し得る。例えば、多段階ラテックスを含有するラテックス壁塗料では、塗料製造業者の推奨するスプレー塗装手順及び粘度を使用して塗料を塗布し、塗布したコーティングを風乾させ、次いで、コーティングがタックフリー状態に到達してから1時間以内に抽出手順を実施することによって、グローバル抽出を決定する必要があり得る。そのように塗布され、乾燥され、評価される壁塗料及び他の工業用コーティングは、不完全な硬化、並びに共溶媒、低分子量界面活性剤、合体剤、及び他のコーティング材料アジュバントなどの抽出可能な種の存在に起因して、記述した50ppmのグローバル抽出限度を超える可能性がある。
【実施例0198】
[0201] 本開示は、例示のみを意図する以下の実施例により具体的に記載されるが、その理由は、本開示の範囲内の多くの修正及び変更が当業者に明らかになることになるためである。特に指示しない限り、全ての部及び割合は重量基準である。別途記載のない限り、上記の試験方法を使用して、以下の表に含まれるデータを生成した。
【0199】
例1(実施例):予形成されたアクリルA
[0202] 197.35部の氷メタクリル酸(MAA)、59.28のn-ブチルメタクリレート(BMA)、88.88部のエチルメタクリレート(EMA)、44.45部のエチルアクリレート(EA)、113.36部のブタノール、及び12.63部の脱イオン(「DI」)水のモノマープレミックスを別個の容器内で調製した。18.54部のLUPEROX 26開始剤及び41.63部のn-ブタノール(「ブタノール」)の開始剤プレミックスを調製した。反応器は、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えており、加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができた。反応器に、141.39部のブタノール及び6.94部の脱イオン水を添加した。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、内容物を97℃に加熱した。この温度になったら、1.03部のLUPEROX 26開始剤を添加し、バッチを5分間保持した。5分後、反応物質を97℃~100℃に維持しながら、モノマープレミックス及び残りの開始剤プレミックスを2時間かけて容器に添加した。添加が完了したとき、18.06部のブタノールを使用して、モノマープレミックス容器を反応器にすすぎ洗いし、6.03部のブタノールを使用して、開始剤プレミックス容器を反応器にすすぎ洗いした。バッチを98℃~99℃で30分間保持した後、1.85部のLUPEROX 26開始剤を添加し、1.86部のブタノールですすぎ洗いした。バッチを98℃で60分間保持した後、1.85部のLUPEROX 26の第2の添加物を添加し、1.86部のブタノールですすぎ洗いした。バッチを98℃~100℃で2時間保持した。2時間の保持後、235.78部のブチルセロソルブ及び7.26部の脱イオン水を添加し、反応器の内容物を、冷却してから、反応器から取り出した。結果して得られたアクリルプレポリマーは、50.6/15.2/22.8/11.4でのメタクリル酸/ブチルメタクリレート/エチルメタクリレート/エチルアクリレートのモノマー比(重量部)と、90℃のFox式算出Tgとを有するポリマーを与える。ブタノール対ブチルセ
ロソルブ比は、~58/42重量であった。固形分含量は、~312mgKOH/g樹脂の酸価及び7700センチポアズの粘度を有する~40.3%であった。
【0200】
例2(実施例):予形成されたアクリルB
[0203] 実施例1について上述したプロセスを使用して、60/15/10/15でのメタクリル酸/ブチルメタクリレート/メチルメタクリレート(MMA)/エチルアクリレートのモノマー重量比、及び100℃のFox式算出Tgを使用して、第2の予形成されたアクリルを調製した。ブタノール対ブチルセロソルブ比を~76/24重量に調整した。固形分含量は、~384mgKOH/g樹脂の酸価及び28,000センチポアズの粘度を有する~38.6%であった。
【0201】
例3(実施例):水性ポリエーテル-アクリレートコポリマー系分散物
[0204] 加熱及び冷却されること、並びに不活性ガス又は窒素及び真空でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、1204.12部のテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテル、295.1部のヒドロキノン、0.71部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物、35.23部のカルビトール、及び131.36部のブチルセロソルブを添加した。(テトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルの好適な調製物は、例えば、国際公開第2017079437(A1)号に記載されている。)攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、内容物を155℃に加熱した。ピーク温度を最大~194℃に制御するために真空を適用して還流を生じさせたとき、系を181℃まで発熱させた。ピーク温度に達したら、30分間の保持を開始し、温度を下降させ、圧力を大気圧に戻した。30分間の保持後、0.08部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物を添加した。ピーク温度から1時間後、固形樹脂100グラムあたり0.039当量のエポキシ価が達成されるまで、30分毎にサンプルを採取した。所望のエポキシ価において、144.15部のブチルセロソルブ及び64.15部のヘキシルセロソルブを添加し、温度を下降させた。次いで、1617.58部の実施例1の予形成されたアクリルAを添加した。入れた後、この物質を92.98部のブチルセロソルブですすぎ洗いした。内容物を30分間混合すると同時に、温度を99℃に調整した。30分後、194.43部の脱イオン水を添加し、温度を93℃に調整した。この温度において、142.87部のジメチルエタノールアミン(「DMEOA」)を5分間かけて添加した。次いで、バッチを96℃~101℃で1時間保持した。この時間の終了時に、全ての外部熱をオフにし、撹拌を増加させ、1982.62部の脱イオン水を50分間かけて均一に添加した。水を入れた後、別の2768.62部の脱イオン水を30分間かけて添加した。全ての水を入れたら、バッチを30分間保持して均一性を確保した。これにより、23.9%の固形分、88.7mgKOH/g樹脂の酸価、6.52のpH、0.17マイクロメートルの粒径、及び35秒の#4 Ford粘度を有するポリエーテル-アクリレートコポリマーの水性分散物を生成した。
【0202】
例4(実施例):代替水性ポリエーテル-アクリレートコポリマー系分散物
[0205] 加熱及び冷却されること、並びに適用されることが可能である不活性ガス又は窒素及び真空でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、1202.92部のテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテル、289.64部のヒドロキノン、0.71部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物、及び165.84部のブチルセロソルブを添加した。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、内容物を145℃に加熱した。系を184℃まで発熱させた。ピーク温度に達したら、30分間の保持を開始し、温度を下降させた。30分間の保持後、0.08部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物を添加した。ピーク温度から1時間後、固形樹脂100グラムあたり0.039当量のエポキシ価が達成されるまで、30分毎にサンプルを採取した。所望のエポキシ価において、2
36.04部のブチルセロソルブ及び63.9部のヘキシルセロソルブを添加し、温度を下降させた。次いで、1964.03部の実施例2の予形成されたアクリルBを添加した。内容物を15分間混合し、次いで、121.25部の脱イオン水を添加した。バッチを更に5分間混合し、次いで、174.25部のジメチルエタノールアミンを5分間かけて添加した。次いで、バッチを98℃~101℃で90分間保持した。90分間の保持の終了時に、全ての外部熱をオフにし、撹拌を増加させ、1973.91部の脱イオン水を50分間かけて均一に添加した。水を入れた後、別の3807.40部の脱イオン水を約40分間かけて添加した。全ての水を入れたら、バッチを30分間保持して均一性を確保した。これにより、23.1%の固形分、113.6mgKOH g/樹脂酸価、6.52のpH、及び~9100センチポアズの粘度を有する水性分散物を生成した。
【0203】
例5(比較例):一段階乳化重合伸張部を有する水性ポリエーテル-アクリレートコポリマー分散物
[0206] 実施例3の反応器の内容物を85℃に加熱した。この温度において、373.9部のブチルメタクリレート、467.79部のエチルメタクリレート、及び93.34部のブチルアクリレートを~60分間かけて添加した。使用したモノマーは、30℃のFox式算出Tgを有する、重量比が40/50/10のブチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルアクリレートであった。モノマーの添加が完了したとき、残留モノマー混合物を、345.56部の脱イオン水を用いて反応器内にすすぎ洗いした。反応器の内容物が82℃の状態で、7.33部のベンゾイン及び7.33部の34%過酸化水素を添加し、7.59部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを2時間保持し、温度を88℃まで上昇させた。この2時間の後、2.0部のベンゾイン及び2.0部の34%過酸化水素を添加し、7.59部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを1時間保持し、その後、2.0部のベンゾイン及び2.0部の34%過酸化水素を添加し、7.59部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチをこの温度で1時間保持し、次いで冷却した。これにより、30.8%の固形分、63.0の酸価、6.42のpH、0.21マイクロメートルの平均粒径、及び73秒の#4 Ford粘度での水性分散物を生成した。
【0204】
例6(実施例):低減したポリエーテル含有量のための多段階乳化重合伸長部を有する水性ポリエーテル-アクリレートコポリマー分散物
[0207] 加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、714.34部の実施例5及び189.04部の脱イオン水を添加した。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、物質を75℃~82℃に加熱した。この温度において、8.78部のブチルメタクリレート、74.43部のエチルメタクリレート、及び4.35部のブチルアクリレートを添加した。これは、51℃のFox式算出Tgを有する、重量比が10/85/5のブチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルアクリレートのモノマーブレンドであった。モノマーの添加が完了したとき、残留モノマー混合物を、4.52部の脱イオン水を用いて反応器内にすすぎ洗いした。反応器の内容物が82℃の状態で、0.73部のベンゾイン及び0.73部の34%過酸化水素を添加し、0.76部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを2時間保持し、温度を85℃まで上昇させた。この2時間の後、0.20部のベンゾイン及び0.20部の34%過酸化水素を添加し、0.76部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを1時間保持し、その後、0.20部のベンゾイン及び0.20部の34%過酸化水素を添加し、0.76部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチをこの温度で1時間保持し、次いで冷却した。これにより、30.7%の固形分、43.2の酸価、6.48のpH、0.22マイクロメートルの平均粒径、及び21秒の#4 Ford粘度を有する水性分散物を生成した。
【0205】
例7~9(実施例):追加の多段階ラテックス含有樹脂系
[0208] 実施例6に記載した方法を使用して、3つの追加の樹脂系実施例(すなわち、実施例7~9)を調製した。実施例6と同様に、実施例7~9の樹脂系は、比較例5の一段階ラテックスの存在下で高Tg段階(「段階2」)を乳化重合して、多段階ラテックスを含む樹脂系を得ることによって調製した。以下の表1は、これらの系及び実施例6を比較例5に対して比較しており、比較例5は、単一の乳化重合段階のみ及びより高いポリエーテル濃度を含む。別途記載のない限り、表1の量は全て重量部である。特定のラテックスを作製するために使用される水性ポリエーテル-アクリレートコポリマー分散物中に存在するポリエーテルポリマー部分及びアクリルポリマー部分の重量寄与は、「ポリエーテルの全体%」及び「予形成されたアクリルの%」として別々に示される。第1の乳化重合段階及び第2の乳化重合段階のそれぞれの重量寄与は、それぞれ、「段階1の%」及び「段階2の%」と称される。重合エチレン性不飽和モノマーの全体パーセント(すなわち、予形成されたアクリル及び一段階又は多段階ラテックスからの寄与は、「アクリルの全体%」として報告される。実施例6~9では、段階1は低Tg乳化重合段階に対応し、段階2は高Tg乳化重合段階に対応し、低Tg段階は、高Tg段階よりも前に乳化重合された。
【0206】
【0207】
例10~19(樹脂系実施例):追加の多段階ラテックス含有樹脂系
[0209] 以下のプロセスを使用して、実施例10~19のそれぞれの樹脂系を生成した。示される量は、実施例13を生成するために使用したものである。残りの実施例10~12及び14~19で使用される成分のそれぞれの量は、実施例13の量と共に以下の表2に示す。表2に示すように、様々な実施例に対して調整を行って、異なるモノマー比、異なるポリマーTg、及び異なる段階2対段階1の比を提供した。
【0208】
[0210] 加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、39
9.5部の実施例4コポリマー及び114.0部の脱イオン水を添加した。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、混合物を81℃に加熱した。この温度において、16.25部のブチルメタクリレート、16.25部のブチルアクリレート、及び9.0部のメチルメタクリレートを添加した。これは、-2℃のFox式算出Tgを有する、重量比が39/39/22のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートのモノマーブレンドである。モノマーの添加が完了したとき、残留モノマー混合物を、31.25部の脱イオン水を用いて反応器内にすすぎ洗いした。反応器の内容物が82℃の状態で、0.75部のベンゾインを35.0部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを82℃に加熱し、0.75部の34%過酸化水素を添加した。バッチを1時間保持し、温度を88℃まで上昇させた。1時間の保持後、モノマーのポリマーへの変換は、93%であると判定された。更に1時間の保持後、サンプルを採取し、75部の脱イオン水を反応器に添加した。サンプルは、モノマーの95%がポリマーに変換されたと判定された。バッチを82℃に加熱し、11.87部のブチルメタクリレート、5.87部のブチルアクリレート、及び100.75部のメチルメタクリレートのモノマーブレンドを添加した。このブレンドは、ブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートを10/5/85の比で有し、Fox式算出Tgが82℃である。モノマーの添加が完了したとき、残留モノマー混合物を、81.25部の脱イオン水を用いて反応器内にすすぎ洗いした。次いで、0.87部のベンゾイン及び0.87部の34%過酸化水素を添加し、37.0部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを1時間保持し、その後、0.12部のベンゾイン及び0.12部の34%過酸化水素を添加し、7.37部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチをこの温度で90分間保持した。次いで、0.12部のベンゾイン及び0.12部の34%過酸化水素を添加し、7.37部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いした。バッチを2時間保持し、次いで冷却した。これにより、30.0%の固形分、35.8mgKOH/g樹脂の酸価、及び0.34ミクロンの平均粒径で物質を得た。
【0209】
[0211] 以下の表2は、実施例10~19の樹脂系の組成構成を比較する。別途記載のない限り、表2の量は全て重量部である。表2では、ポリエーテルポリマー部分及びアクリルポリマー部分の重量寄与は、表1で用いた同一の命名法を使用して示されている。実施例10~19では、段階1は低Tg乳化重合段階に対応し、段階2は高Tg乳化重合段階に対応し、低Tg段階は、高Tg段階よりも前に乳化重合された。
【0210】
【0211】
仕上げ例6~9:内側スプレーコーティング組成物
[0212] 内側スプレー飲料缶コーティング組成物を、比較例5及び実施例6~9のそれぞれの樹脂系を使用して処方した。結果として得られた内側スプレーコーティング組成物は、以下の表3に「仕上げ」例6~9として示されており、特定のコーティング性能特性が、比較例5を使用して作製された内側スプレーコーティング組成物と比較して報告されている。特定の仕上げ例番号は、内側スプレーコーティング組成物に組み込まれた、示された樹脂系に対応する。
【0212】
【0213】
[0213] 比較仕上げ例5では、2つのTg値が観察されたが、44℃の値は一段階ラテックスに起因し、106℃の値はポリエーテル-アクリレートコポリマー分散物に起因する。
【0214】
[0214] 表3にあるように、内側スプレー飲料缶コーティング組成物はまた、実施例10~19のそれぞれの樹脂系も使用して処方された。結果として得られた内側スプレーコーティング組成物は、以下の表4に「仕上げ」例10~19として示されており、特定のコーティング性能特性が報告されている。特定の仕上げ例番号は、内側スプレーコーティング組成物に組み込まれた、示された樹脂系に対応する。
【0215】
【0216】
[0215] 表3及び表4に含まれるコーティング性能データによって示されるように、多段階ラテックスの使用は、ポリエーテルポリマー濃度の実質的な低下を、対応するアクリル濃度の上昇及び特定の重要な最終用途性能属性の維持と共に、可能にした。それらの属性には、落下損傷後の金属露出値の小さい変化で示されている可撓性、及び対照例(すなわち、比較仕上げ例5、例えば、仕上げ例13を比較する)に対して同等の風味スカルピング耐性が含まれていた。特に、対照例の樹脂系が49重量%パーセントのポリエーテル及び51重量%のアクリルを含有したのに対し、仕上げ例の樹脂系は20~35重量%のポリエーテル及び65~80重量%のアクリルを含有したのにもかかわらず、仕上げ例のうちのいくつかでは、対照例に匹敵する可撓性が達成された。驚くべきことに、樹脂系が80重量%ものアクリルを含有する多くの仕上げ例においても良好な可撓性が達成された。この結果は、上述したように、典型的には、従来のアクリル系において、特にスチレンを使用せずに作製されたアクリルでは、可撓性と風味スカルピング耐性との間にトレードオフが存在するため、重要であった。
【0217】
[0216] 実施例10~19のものと同様であるが、高Tg段階及び低Tg段階の一方又は両方に少量の多エチレン性不飽和モノマー(例えば、1,4-ブタンジオールジメタクリレート)を含む、追加の多段階ラテックス系も生成した。このような多エチレン性モノマーを含むことが、樹脂系から処方された内側スプレー飲料缶コーティングの耐食性及び白化耐性の両方を改善することができる一方で、コーティングの有利な落下損傷耐性特性又は風味スカルピング耐性特性のいずれにも悪影響を及ぼさないことが観察された(データは示されていない)。このような有益な特性は、例えば、全ての乳化重合段階を生成するために使用されるモノマーの総重量(例えば、低Tg段階及び高Tg段階を形成するために使用されるモノマーの総重量)に対する多エチレン性不飽和モノマーの重量に基づいて、約2.5~約5重量%の多エチレン性不飽和モノマー(例えば、1,4-ブタンジオールジメタクリレート)を含む樹脂系に対して観察された。
【0218】
例20(実施例):低分子量界面活性剤を用いて作製された勾配Tgラテックス
[0217] 加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、318.6部の脱イオン水、及び9.6部のRHODAPON UB(29~30%活性ラウリル硫酸ナトリウム、CAS番号68585-47-7、Solvayから市販されている)を添加する。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、混合物を80℃に加熱する。別個の容器内で、52.8部の脱イオン水、4.2部のRHODAPON UB、119.4部のブチルメタクリレート、29.9部のブチルアクリレート、14.9部のメチルメタクリレート、及び1.7部のメタクリル酸の混合物を調製する。使用されるモノマーは、9.6℃のFox式算出Tgを有する、重量比が72/18/9/1のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸である。この混合物は、重合性モノマープレエマルション1(ME-1)を表す。第2の容器内で、71.3部の脱イオン水、5.4部のRHODAPON UB、21.7部のブチルメタクリレート、10.9部のブチルアクリレート、171.6部のメチルメタクリレート、19.7部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び2.2部のメタクリル酸の混合物を調製する。使用されるモノマーは、78.0℃のFox式算出Tgを有する、重量比が10/5/75.2/8.8/1のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/HEMA/メタクリル酸である。この混合物は、重合性モノマープレエマルション2(ME-2)を表し、そのHEMA含有量は、好適な架橋剤(例えば、フェノール樹脂又はメラミン樹脂)を使用したフィルム架橋を容易にする。反応器温度が80℃に達したら、50部の脱イオン水中に溶解した1.9部の過硫酸アンモニウムを添加する。5分間の保持後、ME-1を240分間にわたって反応器内へ直接供給する。同時に、ME-2を225分間にわたってME-1容器内へ供給する。240分後、40部の脱イオン水を使用して、ME-1容器及びME-2容器の残りの内容物を反応器内にすすぎ洗いする。バッチを、約70℃まで冷却しながら更に30分間保持する。バッチ温度が約70℃に達したら、25部の脱イオン水中の0.95部のtert-ブチルヒドロペルオキシドの溶液を添加し、続いてすぐに、25部の脱イオン水中に溶解した0.43部のエリソルビン酸の溶液を添加する。バッチをこの温度で30分間保持し、次いで冷却する。バッチが≦40℃まで冷却されたら、十分なジメチルアミノエタノールを添加してpHを約8.0まで上げる。ラテックスを100マイクロメートルのフィルタバッグに通して濾過する。結果として得られた勾配Tgラテックスは、約40%の固形分を含有し、約8のpHを有するはずである。
【0219】
例21(実施例):低分子量界面活性剤を用いて作製された勾配Tgラテックス
[0218] 加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、318.0部の脱イオン水及び10.0部のRHODAPON UBを添加する。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、混合物を80℃に加熱する。別個の容器内で、55.2部の脱イオン水、4.3部のRHODAPON UB、125.0部のブチルメタクリレート、31.3部のブチルアクリレート、11.9部のメチルメタクリレート、3.9部のHEMA、及び1.7部のメタクリル酸の混合物を調製する。使用されるモノマーは、8.9℃のFox式算出Tgを有する、重量比が72/18/6.8/2.2/1のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/HEMA/メタクリル酸である。この混合物は、重合性モノマープレエマルション1(ME-1)を表す。第2の容器内で、72.2部の脱イオン水、5.7部のRHODAPON UB、22.4部のブチルメタクリレート、11.4部のブチルアクリレート、185.6部のメチルメタクリレート、6.6部のHEMA、及び2.3部のメタクリル酸の混合物を調製する。使用されるモノマーは、81.0℃のFox式算出Tgを有する、重量比が10/5/81.2/2.8/1のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/HEMA/メタクリル酸である。この混合物は、重合性モノマープレ
エマルション2(ME-2)を表す。反応器温度が80℃に達したら、50部の脱イオン水中に溶解した2.0部の過硫酸アンモニウムを添加する。5分間の保持後、ME-1を240分間にわたって反応器内へ直接供給する。同時に、ME-2を225分間にわたってME-1容器内へ供給する。240分後、40部の脱イオン水を使用して、ME-1容器及びME-2容器の残りの内容物を反応器内にすすぎ洗いする。バッチを、約70℃まで冷却しながら更に30分間保持する。バッチ温度が約70℃に達したら、25部の脱イオン水中の0.97部のtert-ブチルヒドロペルオキシドの溶液を添加し、続いてすぐに、25部の脱イオン水中に溶解した0.44部のエリソルビン酸の溶液を添加する。バッチをこの温度で30分間保持し、次いで冷却する。バッチが≦40℃まで冷却されたら、十分なジメチルエタノールアミンを添加してpHを約8.0まで上げる。ラテックスを100マイクロメートルのフィルタバッグに通して濾過する。結果として得られた勾配Tgラテックスは、約40%の固形分を含有し、約8のpHを有するはずである。
【0220】
例22(実施例):水分散性ポリマー界面活性剤を用いて作製された勾配Tgラテックス
[0219] 加熱及び冷却されること、及び不活性ガス又は窒素でブランケット又はスパージされることができる、攪拌器、還流冷却器、及び熱電対を備えた反応器に、399.5部の実施例4コポリマー及び220.3部の脱イオン水を添加する。攪拌しながら、容器を不活性ガスでブランケットした状態で、混合物を82℃に加熱する。別個の容器内で、65.15部のブチルメタクリレート、16.29部のブチルアクリレート、9.05部のメチルメタクリレート、及び0.75部のベンゾインの混合物を調製する。使用されるモノマーは、9℃のFox式算出Tgを有する、重量比が72/18/10のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートである。この混合物は、段階1重合性モノマーを表す。別の容器内で、1.62部の34%過酸化水素及び72部の脱イオン水を混合することによって開始剤溶液を調製する。更に別の容器内で、11.87部のブチルメタクリレート、5.87部のブチルアクリレート、100.75部のメチルメタクリレート、及び0.87部のベンゾインの混合物を調製する。使用されるモノマーは、82℃のFox式算出Tgを有する、重量比が10/5/85のブチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートである。この混合物は、段階2重合性モノマーを表す。反応器温度が81℃に達したら、段階1モノマー混合物及び開始剤溶液を240分間にわたって反応器内へ別個に供給する。同時に、段階2モノマー混合物を225分間にわたって段階1モノマー混合物内へ供給する。240分後、81.25部の脱イオン水を使用して、段階1及び2のモノマー混合物容器の両方を反応器内にすすぎ洗いする。反応器の内容物が82℃の状態で、0.12部のベンゾイン及び0.12部の34%過酸化水素を添加し、7.37部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いする。バッチを30分間保持し、発熱させる。30分後、0.12部のベンゾイン及び0.12部の34%過酸化水素を添加し、7.37部の脱イオン水で反応器内にすすぎ洗いする。バッチをこの温度で1時間保持し、次いで冷却する。結果として得られた勾配Tgラテックスは、約30%の固形分を含有し、約36mgKOH/gの酸価及び0.3マイクロメートルの平均粒径を有するはずである。
【0221】
[0220] 本発明は、以下の実施形態で更に開示される。
[0221] 1.水性コーティング組成物であって、
2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスであって、ラテックスは、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)勾配Tg、のうちの一方又は両方を有し、但し、ラテックスが(i)を有する場合、乳化重合段階の50重量%超は、好ましくは、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、又は少なくとも80℃の算出Tgを有する、多段階ポリマーラテックス
と、
水性担体液と、を含み、
水性コーティング組成物が、食品又は飲料缶コーティング組成物である、水性コーティング組成物。
【0222】
[0222] 2.水性コーティング組成物であって、
水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系であって、水分散性ポリマーが、多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、ラテックスが、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、樹脂系と、
水性担体液と、を含み、
水性コーティング組成物が、食品又は飲料缶コーティング組成物である、水性コーティング組成物。
【0223】
[0223] 3.2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーが、水分散性ポリマーの存在下で乳化重合される、実施形態2に記載のコーティング組成物。
[0224] 4.水分散性ポリマーが、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらの混合物若しくはコポリマーを含む、実施形態2又は3に記載のコーティング組成物。
【0224】
[0225] 5.水性コーティング組成物であって、
2つ以上の乳化重合段階を有する多段階ポリマーラテックスを含む樹脂系であって、多段階ラテックスが、水分散性ポリマーの水性分散物の存在下でエチレン性不飽和モノマーを乳化重合することによって形成され、
ラテックスが、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)勾配Tg、のうちの一方又は両方と、
ポリエーテルポリマーを含む水分散性ポリマーと、を有する、樹脂系と、
水性担体液と、を含み、
水性コーティング組成物が、食品又は飲料缶コーティング組成物である、水性コーティング組成物。
【0225】
[0226] 6.但し、ラテックスが(i)を有する場合、乳化重合段階の50重量%超が、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、又は少なくとも80℃の算出Tgを有する、実施形態2~5のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0226】
[0227] 7.水性コーティング組成物であって、
水分散性ポリマー(例えば、ポリエーテルポリマー)の存在下で2つ以上の段階(例えば、低Tg段階及び高Tg段階)中にエチレン性不飽和モノマーを乳化重合することによって形成された多段階ポリマーラテックスを含む樹脂系であって、乳化重合エチレン性不飽和モノマーが、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの2つ以上(例えば、2、3、4、又は5つ)を少なくとも80重量%含む、樹脂系と、
水性担体液と、を含み、
コーティング組成物が、食品又は飲料缶コーティング組成物である、水性コーティング組成物。
【0227】
[0228] 8.樹脂系が、水分散性ポリマーと、乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーとの組み合わせ重量に基づいて、エチレン性不飽和モノマーに由来する単位を少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%含む、実施形態2~7のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0228】
[0229] 9.高Tg乳化重合段階が40℃超の算出Tgを有し、低Tg乳化重合段階が40℃未満の算出Tgを有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0229】
[0230] 10.高Tg乳化重合段階が45℃超の算出Tgを有し、低Tg乳化重合段階が35℃未満の算出Tgを有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0230】
[0231] 11.高Tg乳化重合段階が50℃超の算出Tgを有し、低Tg乳化重合段階が30℃未満の算出Tgを有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0231】
[0232] 12.高Tg乳化重合段階が60℃超の算出Tgを有し、低Tg乳化重合段階が20℃未満の算出Tgを有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0232】
[0233] 13.高Tg乳化重合段階が70℃超の算出Tgを有し、低Tg乳化重合段階が10℃未満の算出Tgを有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0233】
[0234] 14.低Tg乳化重合段階が、高Tg乳化重合段階よりも前に乳化重合される、実施形態1~13のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0235] 15.低Tg乳化重合段階が、高Tg乳化重合段階よりも後に乳化重合される、実施形態1~13のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0234】
[0236] 16.高Tg乳化重合段階に対する低Tg乳化重合段階の重量比が、5:95~95:5、20:80~70:30、又は25:75~48:52の範囲である、実施形態1~15のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0235】
[0237] 17.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも95重量%(又は更には100重量%)の1つ以上の(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0236】
[0238] 18.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも95重量%(又は更には100重量%)の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~17のいず
れか1つに記載のコーティング組成物。
【0237】
[0239] 19.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも95重量%の1つ以上のアルキルメタクリレートを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0238】
[0240] 20.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、脂環式基、又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は更には80重量%以上含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0239】
[0241] 21.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、少なくとも4個の炭素原子を含み、かつ少なくとも3個の炭素原子の最長鎖長を有する、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を有する、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は更には80重量%以上含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0240】
[0242] 22.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマー)が、1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0241】
[0243] 23.1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレートが、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態22に記載のコーティング組成物。
【0242】
[0244] 24.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマー)が、脂環式基、又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーと、1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレートとを含む、実施形態20~23のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0243】
[0245] 25.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマー(及び、いくつかの実施形態では、2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体)が、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、又は5つ)を少なくとも80重量%含む、実施形態1~6又は8~24のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0244】
[0246] 26.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用され
るモノマー(及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマー)が、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、又はその両方を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0245】
[0247] 27.少なくとも1つの乳化重合段階を形成するために使用されるモノマー、及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマーが、n-ブチルメタクリレートと、エチルメタクリレート又はメチルメタクリレートの一方又は両方と、の両方を含む、実施形態26に記載のコーティング組成物。
【0246】
[0248] 28.少なくとも1つの乳化重合段階を形成するために使用されるモノマー、及び、いくつかの実施形態では、対応の2つ以上の乳化重合段階のそれぞれを形成するために使用されるモノマーが、エチルアクリレート、メチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレートのうちの1つ以上を更に含む、実施形態27に記載のコーティング組成物。
【0247】
[0249] 29.乳化重合段階のうちの少なくとも1つを形成するために使用されるモノマーが、多エチレン性不飽和モノマー(例えば、多エチレン性不飽和(メタ)アクリレート)を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0248】
[0250] 30.コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、実施形態1~29のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0249】
[0251] 31.コーティング組成物が、ハロゲン化モノマーを使用して調製されないか、又はハロゲン化モノマーを実質的に含まない、完全に含まない、若しくは含有しない、実施形態1~30のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0250】
[0252] 32.コーティング組成物が、スチレンを実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有せず、所望により、置換スチレン化合物も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、実施形態1~31のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0251】
[0253] 33.樹脂系(及び、所望により、コーティング組成物)が、ビニル芳香族化合物を実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、実施形態1~32のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0252】
[0254] 34.2つ以上の乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーの集合体の算出Tgが、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃である、実施形態1~33のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0253】
[0255] 35.低Tg及び高Tg乳化重合段階(及び、所望により、任意の追加の所望による乳化重合段階)を形成するために使用されるモノマーが、ホモポリマーTgを有しないいかなるモノマーも含まない、実施形態1~34のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0254】
[0256] 36.低Tg及び高Tg乳化重合段階を形成するために使用されるモノマーが、低Tg及び高Tg段階を形成するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、ホモポリマーTgを有しないモノマーを、それが存在する場合は5重量%未満含む、実
施形態1~35のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0255】
[0257] 37.樹脂系が、水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合エチレン性不飽和モノマーから本質的になる、実施形態2~36のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0256】
[0258] 38.2つ以上の乳化重合段階が、低Tg及び高Tg乳化重合段階から本質的になる、実施形態1~37のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0259] 39.水分散性ポリマーが、1つ以上の中和された酸性基又は塩基性基を含む、実施形態2~36のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0257】
[0260] 40.水分散性ポリマーが、エチレン性不飽和モノマーに由来する1つ以上の構造単位、より典型的にはアクリレート又はメタクリレートに由来する1つ以上の構造単位を含む、実施形態2~39のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0258】
[0261] 41.水分散性ポリマーが、酸又は無水物官能性エチレン性不飽和モノマーに由来する1つ以上の構造単位を含む、実施形態40に記載のコーティング組成物。
[0262] 42.水分散性ポリマーが、1つ以上のアンモニアで中和された又はアミンで中和された酸性基若しくは無水物基を含む、実施形態39~41のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0259】
[0263] 43.水分散性ポリマーと乳化重合段階との重量比が、50:50未満、40:60未満、30:70未満、25:75未満、又は20:80未満である、実施形態2~42のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0260】
[0264] 44.水分散性ポリマーが、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、又は80~110℃の算出Tgを有するポリエーテルポリマーを含む、実施形態2~43のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0261】
[0265] 45.水分散性ポリマーが、芳香族ポリエーテルポリマーを含む、実施形態2~44のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0266] 46.水分散性ポリマーが、少なくとも2,000、少なくとも3,000、又は少なくとも4,000の数平均分子量を有する、実施形態2~45のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0262】
[0267] 47.水分散性ポリマーが有機溶液重合ポリマーを含む、実施形態2~46のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0268] 48.水分散性ポリマーが、展延剤及びジエポキシドを含む反応物質から形成されたポリエーテルポリマーを含む、実施形態2~47のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0263】
[0269] 49.ジエポキシドが、二価フェノールのジエポキシドを含む、実施形態48に記載のコーティング組成物。
[0270] 50.二価フェノールがオルト置換二価フェノールを含む、実施形態49に記載のコーティング組成物。
【0264】
[0271] 51.オルト置換二価フェノールのジエポキシドが、テトラメチルビスフェノールFのジエポキシド(例えば、テトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテル)を含む、実施形態50に記載のコーティング組成物。
【0265】
[0272] 52.オルト置換二価フェノールのジエポキシドが、2,2’-ビフェノール、又はフェノール酸素原子に対してオルト位に位置する環間架橋連結部を有する他の架橋二価フェノール、のジエポキシドを含む、実施形態50に記載のコーティング組成物。
【0266】
[0273] 53.ジエポキシドが、芳香族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、フランジメタノールなど)、芳香族二酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどのシクロブタンジオール)、脂環式二酸(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジカルボン酸などのシクロブタン二酸)、又はこれらの組み合わせのジエポキシドを含む、実施形態48に記載のコーティング組成物。
【0267】
[0274] 54.展延剤が二価フェノールを含む、実施形態48~53のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0275] 55.展延剤が二価モノフェノールを含む、実施形態54に記載のコーティング組成物。
【0268】
[0276] 56.二価モノフェノールがヒドロキノンを含む、実施形態55に記載のコーティング組成物。
[0277] 57.展延剤が、2,2’-ビフェノール、又はフェノール酸素原子に対してオルト位に位置する環間架橋連結部を有する他の架橋二価フェノールを含む、実施形態54に記載のコーティング組成物。
【0269】
[0278] 58.水分散性ポリマー(及び、所望により、コーティング組成物)が、ビスフェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、実施形態2~50及び53~56のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0270】
[0279] 59.水分散性ポリマーが、ポリエーテルポリマー及びビニル付加構成要素の両方を含むコポリマーを含む、実施形態2~58のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0271】
[0280] 60.水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む、実施形態59に記載のコーティング組成物。
[0281] 61.ビニル付加構成要素が、(i)(メタ)アクリル酸及び(ii)(メタ)アクリレートの両方を含むモノマー混合物から形成される、実施形態59又は60に記載のコーティング組成物。
【0272】
[0282] 62.ポリエーテル-アクリレートコポリマーが、三級アミンの存在下で酸又は無水物官能性アクリレートポリマーと反応したオキシラン官能性ポリエーテルポリマーの反応生成物を含む、実施形態60又は61に記載のコーティング組成物。
【0273】
[0283] 63.ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成するために使用されるポリエーテルポリマーが、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの30~95重量%を構成する、実施形態60~62のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0274】
[0284] 64.水分散性ポリマーが、1グラムあたり40~200mgKOHの酸価を有する、実施形態2~63のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0285] 65.水分散性ポリマーが二級ヒドロキシル基を含む、実施形態2~6
4のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0275】
[0286] 66.水分散性ポリマーが、-CH2CH(OH)CH2-セグメントを含む、実施形態2~65のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0287] 67.コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、実施形態1~66のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0276】
[0288] 68.コーティング組成物が、20~80秒の粘度を有し(Ford Cup#2、25℃)、かつ食品缶又は飲料缶用の内側スプレーコーティング組成物である、実施形態1~67のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0277】
[0289] 69.コーティング組成物が、355mLの番号211の絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムの乾燥フィルム重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、121℃での加圧下にて2%クエン酸中でレトルトした後、3M Company(Saint Paul,Minn.)から入手可能なSCOTCH 610テープを使用して、ASTM D 3359-Test Method Bに従って試験されると、9又は10の下側壁接着採点値を呈する、実施形態1~68のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0278】
[0290] 70.コーティング組成物が、355mLの番号211の絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムの乾燥フィルム重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を呈する、実施形態1~69のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0279】
[0291] 71.樹脂系が、コーティング組成物中の樹脂固形分の総重量に対する水分散性ポリマーと2つ以上の乳化重合段階との組み合わせ重量に基づいて、コーティング組成物の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも99重量%を構成する、実施形態1~70のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0280】
[0292] 72.コーティング組成物が架橋剤を含む、実施形態1~71のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0293] 73.架橋剤がフェノプラストを含む、実施形態72に記載のコーティング組成物。
【0281】
[0294] 74.水性担体液が、少なくとも50重量%の水を含む、実施形態1~73のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
[0295] 75.コーティング組成物が、5重量%~40重量%の固形分、より典型的には、10重量%~30重量%の固形分、及び15重量%~25重量%の固形分を含む、実施形態1~74のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0282】
[0296] 76.コーティング組成物が、全樹脂固形分に基づいて、少なくとも50重量%の2つ以上の乳化重合段階を含む、実施形態1~75のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0283】
[0297] 77.コーティング組成物が、全樹脂固形分に基づいて、水分散性ポリマー及び2つ以上の乳化重合段階を、水分散性ポリマーと2つ以上の乳化重合段階との組
み合わせ重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%含む、実施形態2~76のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0284】
[0298] 78.重合エチレン性不飽和モノマーの総量が、コーティング組成物の全樹脂固形分の50重量%超、好ましくは60重量%超、更により好ましくは70重量%超、最適には80重量%以上を構成する、実施形態2~77のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0285】
[0299] 79.高Tg及び低Tgの乳化重合モノマーが、コーティング組成物中に存在する重合エチレン性不飽和モノマーの総量の少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも85重量%以上を構成する、実施形態78に記載のコーティング組成物。
【0286】
[0300] 80.重合エチレン性不飽和モノマーが、水分散性ポリマーと重合エチレン性不飽和モノマーとの総組み合わせ重量の少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%を構成する、実施形態2~79のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0287】
[0301] 81.コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、本明細書に開示される落下損傷後金属露出試験に従って試験されると、3.5mA未満の金属露出を与える、実施形態1~80のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0288】
[0302] 82.コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、ネッキング後の金属露出の変化が1.0mA未満、より好ましくは変化が0.1mA小さい、更により好ましくは測定可能な変化がないことによって示されるように、ネッキング及びフランジング試験に合格することができる、実施形態1~81のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0289】
[0303] 83.金属基材の少なくとも一部分の上に位置する実施形態1~82のいずれか1つに記載のコーティング組成物から形成された硬化したコーティングを有する、食品若しくは飲料缶、又はその一部。
【0290】
[0304] 84.全体平均乾燥コーティングフィルム重量が、1.0~6.5グラム/平方メートルである、実施形態83に記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
[0305] 85.金属基材が、125~635マイクロメートルの平均厚さを有する、実施形態83又は84に記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
【0291】
[0306] 86.コーティングが、アルミニウム飲料缶の内部食品接触コーティングである、実施形態82~84のいずれか1つに記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
【0292】
[0307] 87.硬化したコーティングが、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を呈する、実施形態83~86のいずれか1つに記載の食品又は飲料缶。
【0293】
[0308] 88.包装された食品又は飲料製品を収容している、実施形態83~87のいずれか1つに記載の食品又は飲料缶。
[0309] 89.金属基材を食品若しくは飲料缶又はその一部へと成形する前又は後に、金属基材の表面に実施形態1~82のいずれか1つに記載のコーティング組成物を塗布することを含む、食品又は飲料缶をコーティングする方法。
【0294】
[0310] 90.コーティング組成物が、側壁本体部分及び端部部分を含む缶の内面上へとスプレー塗布される、実施形態89に記載の方法。
[0311] 91.缶がアルミニウム飲料缶である、実施形態89又は90に記載の方法。
【0295】
[0312] 92.実施形態1に記載の多段階ポリマーラテックス又は実施形態2~81に記載のいずれか1つの樹脂系。
[0313] 93.ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有せず、かつ、所望により、スチレンも実質的に含まないか、完全に含まないか、又は含有しない、ラテックス分散物を作製する方法であって、方法は、
水分散性ポリマー(例えば、実施形態1~92のいずれか1つに記載の水分散性ポリマー)の水性分散物を提供することと、
水性分散物の存在下で2つ以上の段階を乳化重合して、多段階ポリマーラテックスを形成することであって、ラテックスが、(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも、好ましくは、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、若しくは少なくとも70℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は(ii)勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、ことと、を含む、方法。
【0296】
[0314] 94.水分散性ポリマーがポリエーテルポリマーを含む、実施形態93に記載の方法。
[0315] 95.ポリエーテルポリマーが、塩基で中和された酸性基、酸で中和された塩基性基、又はこれらの組み合わせを有する芳香族ポリエーテルポリマーを含む、実施形態93に記載の方法。
【0297】
[0316] 96.水分散性ポリマーと乳化重合段階との重量比が、50:50未満、40:60未満、30:70未満、25:75未満、又は20:80未満である、実施形態93~95のいずれか1つに記載の方法。
【0298】
[0317] 97.重合エチレン性不飽和モノマーが、水分散性ポリマーと重合エチレン性不飽和モノマーとの総組み合わせ重量の少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%を構成する、実施形態93~95のいずれか1つに記載の方法。
【0299】
[0318] 98.低Tg乳化重合段階が、高Tg乳化重合段階よりも前に乳化重合される、実施形態93~97のいずれか1つに記載の方法。
[0319] 99.低Tg乳化重合段階が、高Tg乳化重合段階よりも後に乳化重合される、実施形態93~97のいずれか1つに記載の方法。
【0300】
[0320] 100.実施形態93~99のいずれか1つにより得られるラテックス分散物。
[0321] 101.乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、より好ましくは
ラテックス全体が、ラテックスを作製するために用いられるエチレン性不飽和モノマー構成要素及び重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下の低分子量界面活性剤を含むか、又はそれに由来する、実施形態1~100のいずれか1つに記載のコーティング組成物、缶、方法、ポリマーラテックス、又はラテックス分散物。
【0301】
[0322] 102.乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、より好ましくはラテックス全体が、主に低分子量界面活性剤を使用して、又はそれのみを使用して、誘導される、実施形態1~100のいずれか1つに記載のコーティング組成物、缶、方法、ポリマーラテックス、又はラテックス分散物。
【0302】
[0323] 103.乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、より好ましくはラテックス全体がまた、又は代わりに、1つ以上の重合性界面活性剤の存在下で乳化重合される、実施形態1~102のいずれか1つに記載のコーティング組成物、缶、方法、ポリマーラテックス、又はラテックス分散物。
【0303】
[0324] 104.乳化重合エチレン性不飽和モノマー構成要素、より好ましくはラテックス全体が、ラテックスを作製するために用いられるエチレン性不飽和モノマー構成要素及び重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下のアクリルアミド型モノマーを含むか、又はそれに由来する、請求項1~103のいずれか一項に記載のコーティング組成物、缶、方法、ポリマーラテックス、又はラテックス分散物。
【0304】
[0325] 全ての特許、特許出願、及び刊行物(実施例において使用される原材料及び成分の化学物質安全データシート、テクニカルデータシート、並びに製品パンフレットを含む)、並びに本明細書に引用される電子的に利用可能な文書の完全な開示は、あたかも個々に組み込まれているかのように参照により本明細書に組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を助けるためにのみ与えられものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではなく、当業者に対して明らかな変形は実施形態において規定される本発明の範囲に含まれることになる。いくつかの実施形態では、本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の不在下で好適に実行されてもよい。
[1]
水性コーティング組成物であって、
水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含み、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃の差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、水性コーティング組成物。
[2]
食品若しくは飲料の容器若しくは容器構成要素に形成されているか、又はそれに形成されることになる物品であって、前記物品は、水性コーティング組成物から形成されたコーティングを少なくとも1つの表面上に有する金属基材を含み、前記水性コーティング組成物は、
水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含み、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃のTg差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、物品。
[3]
食品又は飲料の容器又は容器構成要素をコーティングするのに有用なラテックス分散物を作製するための方法であって、前記方法は、
(a)水分散性ポリマーの水性分散物を提供する工程と、
(b)前記水性分散物の存在下で2つ以上の段階を乳化重合して、多段階ポリマーラテックスを形成する工程であって、前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃のTg差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、を含む、方法。
[4]
コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法であって、前記方法は、
(a)本体部分及び端部部分を有する金属製の食品缶又は飲料缶の内面に、水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含む水性コーティング組成物をスプレー塗布する工程であって、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃のTg差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)前記コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、を含む、方法。
[5]
コーティングされた、食品又は飲料の容器又は容器構成要素を作製するための方法であって、前記方法は、
(a)食品又は飲料の容器又は容器構成要素の少なくとも1つの金属基材表面に、水性担体液中に水分散性ポリマーと多段階ポリマーラテックスの2つ以上の乳化重合段階とを含む樹脂系を含む水性コーティング組成物から形成されたコーティングを塗布する工程であって、前記水分散性ポリマーが、前記多段階ポリマーラテックスに組み込まれているか、前記多段階ポリマーラテックスとブレンドされているか、又はその両方であり、前記ラテックスが、
(i)高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも20℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階、又は
(ii)重合開始時に供給されたモノマーの前記算出Tgを重合終了時に供給されたモノマーと比較した際に少なくとも20℃のTg差がある勾配Tg、のうちの一方又は両方を有する、工程と、
(b)前記コーティング組成物を硬化させて、硬質化したコーティングを形成する工程と、を含む、方法。
[6]
前記水分散性ポリマーが、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらの混合物若しくはコポリマーを含む、[1]に記載の組成物、[2]に記載の物品、又は[3]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]
前記水分散性ポリマーがポリオレフィンポリマーを含む、[1]に記載の組成物、[2]に記載の物品、又は[3]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[8]
前記水分散性ポリマーがポリエーテルポリマーを含む、[1]に記載の組成物、[2]に記載の物品、又は[3]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[9]
前記水分散性ポリマーが、少なくとも60℃の算出Tgを有する芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[1]に記載の組成物、[2]に記載の物品、又は[3]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[10]
前記水分散性ポリマーが、展延剤と、芳香族ジオール、芳香族二酸、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール脂環式二酸又はこれらの組み合わせのジエポキシドとを含む反応物質から形成されたポリエーテルポリマーを含む、[1]若しくは[9]に記載の組成物、[2]若しくは[9]に記載の物品、又は[3]~[5の9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
前記水分散性ポリマーが、展延剤と、芳香族ジオールのジエポキシドとを含む反応物質から形成されたポリエーテルポリマーを含む、[1]若しくは[9]に記載の組成物、[2]若しくは[9]に記載の物品、又は[3]~[5の9]のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記水分散性ポリマーが、展延剤と、オルト置換二価フェノールのジエポキシドとを含む反応物質から形成されたポリエーテルポリマーを含む、[1]若しくは[9]に記載の組成物、[2]若しくは[9]に記載の物品、又は[3]~[5の9]のいずれか一項に記載の方法。
[13]
前記水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む、[1]若しくは[9]~[12]のいずれか一項に記載の組成物、[2]若しくは[9]~[12]のいずれか一項に記載の物品、又は[3]~[5]若しくは[9]~[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14]
前記2つ以上の乳化重合段階が、前記水分散性ポリマーの存在下で乳化重合される、[1]~[13]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[15]
前記2つ以上の乳化重合段階が、1つ以上の重合性界面活性剤の存在下で乳化重合される、[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[16]
前記2つ以上の乳化重合段階が、非ポリマー界面活性剤を使用することなく乳化重合される、[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[17]
前記多段階ポリマーラテックスが、前記ラテックスを作製するために用いられる重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%超の低分子量界面活性剤を含まず、かつそれに由来しない、[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[18]
前記水分散性ポリマーが、1グラムあたり40~200mgKOHの酸価を有する、[1]~[17]のいずれか1項に記載の組成物、物品、又は方法。
[19]
水分散性ポリマーと乳化重合段階との重量比が40:60未満である、[1]~[18]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[20]
前記ラテックスが、30℃未満の算出Tgを有する低Tg乳化重合段階と、50℃を超える算出Tgを有する高Tg乳化重合段階とを有する、[1]~[19]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[21]
前記ラテックスが、20℃未満の算出Tgを有する低Tg乳化重合段階と、60℃を超える算出Tgを有する高Tg乳化重合段階とを有する、[1]~[20]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[22]
前記ラテックスが、前記高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも40℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階を有する、[1]~[21]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[23]
前記ラテックスが、前記高Tg乳化重合段階の算出Tgよりも少なくとも60℃低い算出Tgを有する低Tg乳化重合段階を有する、[1]~[22]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[24]
前記乳化重合段階の50重量%超が、少なくとも40℃の算出Tgを有する、[1]~[23]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[25]
前記乳化重合段階のうちの2つ以上が、全体として少なくとも30℃の算出Tgを有するモノマーから形成される、[1]~[24]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[26]
前記水性コーティング組成物が、全樹脂固形分に基づいて、少なくとも50重量%の前記2つ以上の乳化重合段階を含む、[1]~[25]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[27]
前記水性コーティング組成物が、前記コーティング組成物中の全樹脂固形分に基づいて、重合エチレン性不飽和モノマーからの樹脂固形分を70重量%超含有する、[1]~[26]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[28]
前記乳化重合段階のうちの少なくとも1つが、1つ以上の(メタ)アクリレートを少なくとも50重量%含むモノマーから形成される、[1]~[27]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[29]
前記乳化重合段階のうちの少なくとも1つが、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのうちの1つ以上を少なくとも80重量%含むモノマーから形成される、[1]~[28]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[30]
前記乳化重合段階のうちの少なくとも1つが、多エチレン性不飽和モノマーを含むモノマーから形成される、[1]~[29]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[31]
前記ラテックスが勾配Tgを有する、[1]~[30]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[32]
前記コーティング組成物が、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSのそれぞれを実質的に含まない、[1]~[31]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[33]
前記コーティング組成物が、ハロゲン化モノマーを使用して調製されない、[1]~[32]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[34]
前記コーティング組成物が、スチレン及び置換スチレン化合物を実質的に含まない、[1]~[33]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[35]
前記コーティング組成物が、前記ラテックスを作製するために用いられる前記エチレン性不飽和モノマー構成要素及び重合性モノマーの総重量に基づいて、0.5重量%以下のアクリルアミド型モノマーを含むか、又はそれに由来する、[1]~[34]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[36]
前記水性コーティング組成物が架橋剤を更に含む、[1]~[35]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[37]
前記水性コーティング組成物がフェノプラスト架橋剤を更に含む、[1]~[36]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[38]
前記水性コーティング組成物が、20~80秒の粘度を有し(Ford Cup#2、25℃)、かつ食品缶又は飲料缶用の内側スプレーコーティング組成物である、[1]~[37]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[39]
前記水性コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、
(i)50ppm未満のグローバル抽出結果と、
(ii)前記缶が、脱イオン水中の1%NaClで充填され、本明細書に開示される初期金属露出試験方法に従って試験されたとき、平均して3mA未満の金属露出と、を呈する、[1]~[38]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[40]
前記水性コーティング組成物が、355mLの番号211の絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムの乾燥フィルム重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、121℃での加圧下にて2%クエン酸中でレトルトした後、ASTM D 3359-Test Method Bに従って試験すると、9又は10の下側壁接着採点値を呈する、[1]~[39]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[41]
前記水性コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、本明細書に開示される落下損傷後金属露出試験に従って試験されると、3.5mA未満の金属露出を与える、[1]~[40]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[42]
前記水性コーティング組成物が、355mLの番号211の2ピース絞りしごき成形アルミニウム飲料缶の内面に1缶あたり115ミリグラムのコーティング重量でスプレー塗布され、188℃~199℃(缶ドームにおいて測定)で55秒間硬化されるとき、ネッキング後の金属露出の変化が1.0mA未満であることによって示されるように、ネッキング及びフランジング試験に合格することができる、[1]~[41]のいずれか一項に記載の組成物、物品、又は方法。
[43]
前記コーティング組成物が、硬化され、かつアルミニウム飲料缶の内部食品接触コーティング上にある、[2]に記載の物品又は[3]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[44]
前記コーティング組成物が硬化され、前記容器が、包装された食品又は飲料製品を更に含む、[2]に記載の物品又は[3]~[5]のいずれか一項に記載の方法。