(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081942
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】抗PD-L1モノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230606BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230606BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230606BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230606BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031932
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2020506702の分割
【原出願日】2018-04-11
(31)【優先権主張番号】2017113141
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(71)【出願人】
【識別番号】516261966
【氏名又は名称】ジョイント・ストック・カンパニー “バイオキャド”
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ウリティン,アンドレイ・ボリソビッチ
(72)【発明者】
【氏名】エキモワ,ビクトリア・ミハイロフナ
(72)【発明者】
【氏名】ソフロノワ,エカテリーナ・ウラジミロフナ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニイ,ユリア・セルゲエフナ
(72)【発明者】
【氏名】アゲエフ,セルゲイ・アンドレエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミロワ,アンナ・コンスタンティノフナ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロフ,アレクセイ・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】グレブネフ,パベル・アレクセエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソロフエフ,バレリイ・ウラディミロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウストイウゴフ,ヤコフ・ユレビッチ
(72)【発明者】
【氏名】イアコフレフ,パベル・アンドレエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネマンキン,ティモフェイ・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】モロゾフ,ドミトリ・バレンチノビッチ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PD-L1に特異的に結合する抗体、前記抗体をコードするDNA、対応する発現ベクター、ならびに前記抗体を産生する方法および前記抗体を用いた治療法を提供する。
【解決手段】PD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
-それぞれ特定のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、CDR3を含む重鎖可変ドメイン、および、
-それぞれ特定のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、CDR3を含む軽鎖可変ドメイン、
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
-配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
-配列番号7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変ドメインが配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
軽鎖可変ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖の重鎖可変ドメインが、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
重鎖可変ドメインが配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、請求項4記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
軽鎖可変ドメインが、配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
軽鎖可変ドメインが配列番号5~7のアミノ酸配列を含む、請求項6記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
-重鎖可変ドメインが、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが、配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項8記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
-重鎖可変ドメインが配列番号1~3のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが配列番号5~7のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
重鎖可変ドメインが、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
重鎖可変ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項10記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
軽鎖可変ドメインが、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
軽鎖可変ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項12記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって
-重鎖可変ドメインが、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
請求項14記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって
-重鎖可変ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
請求項1記載のモノクローナル抗体であって:
-配列番号9に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
-配列番号10に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、前記モノクローナル抗体。
【請求項17】
請求項16記載のモノクローナル抗体であって:
-重鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖が配列番号10のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体。
【請求項18】
PD-L1に特異的に結合する抗体が全長IgG抗体である、請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
全長IgG抗体が、ヒト抗体IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のアイソタイプである、請求項18記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
全長IgG抗体が、ヒト抗体IgG1のアイソタイプである、請求項19記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸。
【請求項22】
DNAである、請求項21記載の核酸。
【請求項23】
請求項21または請求項22の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するように適応されている宿主細胞を産生する方法であって、宿主細胞を請求項23記載の発現ベクターで形質転換する工程を含む、前記方法。
【請求項25】
請求項21または請求項22の核酸を含む、請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するための、宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するための方法であって、培地中で、抗体を得るために十分な条件下で、請求項25記載の宿主細胞をインキュベーションし、そして所望により、得た抗体の単離および精製が続く、前記方法。
【請求項27】
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組成物であって、請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、および1つまたはそれより多くの薬学的に許容されうる賦形剤を含む、前記薬学的組成物。
【請求項28】
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための請求項27記載の薬学的組成物であって、PD-L1によって仲介される疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、前記薬学的組成物。
【請求項29】
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組み合わせであって、請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、および少なくとも1つの療法的抗腫瘍化合物を含む、前記薬学的組み合わせ。
【請求項30】
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための請求項29記載の薬学的組み合わせであって、PD-L1によって仲介される疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、前記薬学的組み合わせ。
【請求項31】
請求項29~30のいずれか一項記載の薬学的組み合わせであって、療法的抗腫瘍化合物が、化学療法剤、抗体または抗ホルモン剤からなる群より選択される、前記薬学的組み合わせ。
【請求項32】
PD-L1の生物学的活性を阻害する必要がある被験体において、PD-L1の生物学的活性を阻害するための方法であって、該被験体に、請求項1~20のいずれか一項に定義するような抗体またはその抗原結合断片の療法的有効量を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項33】
PD-L1によって仲介される疾患または障害を治療する必要がある被験体において、PD-L1によって仲介される疾患または障害を治療するための、請求項1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは請求項27記載の薬学的組成物の使用。
【請求項34】
疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、請求項33記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に、特に抗体またはその抗原結合断片およびその使用に関する。より具体的には、本発明は、PD-L1(CD274、B7-H1、プログラム細胞死リガンド-1)に特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明はまた、抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸、発現ベクター、抗体を産生するための方法、および細胞仲介性免疫反応を上方制御し、そしてT細胞機能不全関連障害、例えば腫瘍免疫を治療し、そして癌を治療するために、T細胞機能を増進するための該抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球発生および活性化
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要なタイプは、T(胸腺細胞)およびB(骨髄由来)である。これらの細胞は、骨髄および胎児肝臓において、リンパ発生経路にプログラミングされている、造血幹細胞に由来する。これらの幹細胞の子孫は、分岐する経路にしたがって、BまたはTリンパ球のいずれかに成熟する。ヒトBリンパ球発生は、完全に、骨髄内で行われる。一方、T細胞は、未成熟な前駆細胞から発生し、該前駆細胞は骨髄を離れ、そして血流を通じて胸腺に移動し、そこで増殖し、そして成熟Tリンパ球に分化する。
【0003】
胸腺または骨髄から発生する成熟リンパ球は、静止または「休止」状態にあり、すなわちこれらは有糸分裂的に不活性である。血流内に分散した際、これらの「未使用の(virgin)」または「ナイーブな」リンパ球は、多様な二次的または末梢リンパ臓器、例えば脾臓、リンパ節または扁桃腺に移動する。大部分の未使用リンパ球は、生得的に短い寿命によって特徴づけられ、そして骨髄または胸腺を離れた後、数日を待たずに死ぬ。しかし、こうした細胞が抗原の存在を示すシグナルを受け取った場合、細胞は活性化され、そして細胞分裂の連続周期を経ることも可能である。次いで、生じる子孫のある細胞は、休止状態に戻り、そして本質的に刺激性アレルゲンとの次の出会いのためにプライミングされているBおよびT細胞である、メモリーリンパ球になる。活性化されたナイーブ・リンパ球の他の子孫は、数日間しか生存しないが、特異的防御活性を実行するエフェクター細胞である。
【0004】
リンパ球活性化は、一連の秩序だった事象であり、休止リンパ球は、ひとたび刺激されると、該事象を経て、分裂し、そして子孫を産生し、該子孫のいくつかがエフェクター細胞となる。全反応には、細胞増殖(有糸分裂誘発)の誘導および免疫学的機能の発現の両方が含まれる。リンパ球は、特定のリガンドが該リンパ球の表面上の受容体に結合した際に活性化される。リガンドは、T細胞およびB細胞で異なるが、生じる細胞内生理学的機構は類似である。
【0005】
ある種の(some)外来性(foreign)抗原、特に、B細胞上の表面免疫グロブリン、またはT細胞上の他の糖タンパク質を架橋する巨大ポリマー性抗原は、それ自体、リンパ球活性化を誘導可能である。しかし、大部分の抗原はポリマー性ではなく、そして多数のB細胞への直接結合でさえ、活性化を生じることに失敗する。これらのより一般的な抗原は、近傍の活性化されたヘルパーTリンパ球で共刺激された際にB細胞を活性化する。こうした刺激は、T細胞によって分泌されるリンホカインから生じうるが、最も効率的には、特定のB細胞表面受容体と相互作用して二次シグナルを生じるT細胞表面タンパク質と、B細胞の直接接触によって伝達される。
【0006】
T細胞
Tリンパ球は、免疫グロブリンを発現しないが、その代わり、T細胞受容体(TCR)と称される表面タンパク質を通じて、外来性物質の存在を検出する。これらの受容体は、直接接触によって、または他の免疫細胞の活性に影響を及ぼすことを通じて、抗原を認識する。マクロファージとともに、T細胞は、細胞仲介性免疫に関与する主な細胞タイプである。
【0007】
B細胞と異なり、T細胞は、特定の条件でのみ、外来性物質を検出可能である。特に、Tリンパ球は、外来性タンパク質が、まず、小さいペプチドに切断され、次いで抗原提示細胞(APC)と称される、第二の宿主細胞の表面上にディスプレイされた際にのみ、該タンパク質を認識する。宿主細胞の多くのタイプは、何らかの条件下で抗原を提示しうるが、特定のタイプは、このためにより特異的に適応し、そしてマクロファージおよび他のB細胞を含めて、T細胞活性の制御に特に重要である。抗原提示は、部分的に、提示細胞の表面上の、主要組織適合複合体(MHC)タンパク質と称される特定のタンパク質に依存する。したがって、細胞仲介性免疫を刺激するため、外来ペプチドは、MHCペプチドと組み合わせて、T細胞に提示されなければならず、そしてこの組み合わせがT細胞受容体によって認識されなければならない。
【0008】
2つの重要なT細胞サブセット:細胞傷害性Tリンパ球(Tc細胞またはCTL)およびヘルパーT(TH)細胞があり、該細胞は大まかに、マーカーCD8およびCD4の細胞表面発現に基づいて同定されうる。Tc細胞は、ウイルス防御において重要であり、そして特定の細胞表面発現ウイルスペプチドを認識することによって、直接ウイルスを殺すことが可能である。TH細胞は、他の細胞タイプの増殖、成熟および免疫学的機能を促進し、例えばリンホカインを分泌して、B細胞、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞の活性を制御する。ナイーブおよびメモリーTリンパ球はどちらも、通常、休止状態にとどまり、そしてこの状態では、これらは有意なヘルパー活性または細胞傷害活性を示さない。活性化された状態で、これらの細胞は、数周期の有糸分裂を経て、娘細胞を産生する。これらの娘細胞のあるものは、メモリー細胞として休止状態に戻るが、他のものは、ヘルパー活性または細胞傷害活性を活発に示すエフェクター細胞になる。これらの娘細胞は、その親と類似であり:CD4+細胞は、CD4+子孫しか産生できず、そしてCD8+細胞は、CD8+子孫のみを生じる。エフェクターT細胞は、休止T細胞上には発現されない細胞表面マーカー、例えばCD25、CD28、CD29、CD40L、トランスフェリン受容体およびクラスII MHCタンパク質を発現する。活性化刺激なしでは、細胞傷害活性またはヘルパー活性は、エフェクター細胞が死ぬかまたは休止状態に戻るかするにつれて、数日間に渡って次第に鎮まる。
【0009】
B細胞活性化と同様、大部分の抗原に対するTリンパ球反応もまた、2つのタイプの同時刺激を必要とする。第一のものは、抗原提示細胞上のMHCタンパク質によって適切にディスプレイされ、T細胞受容体によって認識されそして結合されることが可能な、抗原である。この抗原-MHC複合体は、シグナルを細胞内部に送らず、通常、T細胞活性化を生じるには不十分である。完全な活性化、例えばヘルパーT細胞で起こるようなものは、抗原提示細胞の表面上で発現される、共刺激因子と称される他の特定のリガンドでの共刺激を必要とする。一方で、細胞傷害性T細胞活性化は、一般的に、活性化されたヘルパーT細胞によって分泌されるサイトカインであるIL-2を必要とする。
【0010】
PD-1経路
T細胞活性化を制御する、重要な負の共刺激シグナルは、プログラム細胞死-1受容体(PD-1、CD279)、ならびにそのリガンド結合パートナー、PD-L1(B7-H1、CD274)およびPD-L2(B7-DC、CD273)によって提供される。PD-1の負の制御上の役割は、PD-1ノックアウト(Pdcd1-/-)によって明らかにされ、該ノックアウトは自己免疫の傾向があった(Nishimuraら, Im
munity JJ: 141-51(1999); Nishimuraら, Science 291: 319-22(2001))。PD-1はCD28およびCTLA-4に関連するが、ホモ二量体化を可能にする膜近位システインを欠く。PD-1の細胞質ドメインは、免疫受容体チロシン結合阻害モチーフ(ITIM、V/IxYxxL/V)を含有する。PD-1はPD-L1およびPD-L2にしか結合しない(Freemanら, J. Exp. Med. 192: 1-9(2000); Dongら, Nature Med. 5: 1365-1369(1999); Latchmanら, Nature Immunol 2: 261-268(2001); Tsengら, J. Exp. Med. 193: 839-846(2001))。
【0011】
PD-1は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラーT細胞、活性化された単球および樹状細胞(DC)上で発現されうる。PD-1は、活性化されたヒトCD4+およびCD8+
T細胞、B細胞および骨髄細胞によって発現されるが、未刺激のものによっては発現されない。これは、CD28およびCTLA-4のより制限された発現とは区別される(Nishimuraら, Int. Immunol. 8: 773-80(1996); Boettlerら, J. Virol. 80: 3532-40(2006))。活性化されたヒトT細胞からクローニングされているPD-1の少なくとも4つの変異体があり、これには(i)エクソン2、(ii)エクソン3、(iii)エクソン2および3または(iv)エクソン2~4を欠く転写物が含まれる(Nielsenら, Cell. Immunol. 235: 109-16(2005))。PD-1Δex3を例外として、すべての変異体は、休止末梢血単核細胞(PBMC)において、全長PD-1と類似のレベルで発現される。すべての変異体の発現は、抗CD3および抗CD28抗体でヒトT細胞を活性化した際に、有意に誘導される。PD-1Δex3変異体は、膜貫通ドメインを欠き、そして自己免疫において重要な役割を果たす可溶性CTLA-4と類似である(Uedaら, Nature 423: 506-11(2003))。この変異体は、関節リウマチ患者の滑液および血清中で濃縮される(Wanら, J. Immunol. 177: 8844-50(2006))。2つのPD-1リガンドでは、発現パターンが異なる。PD-L1は、マウスTおよびB細胞、CD、マクロファージ、間葉系幹細胞および骨髄由来マスト細胞上で恒常的に発現される。(Yamazakiら, J. Immunol. 169: 5538-45(2002))。PD-L1は、多数の非造血細胞(例えば角膜、肺、血管上皮、肝臓非実質細胞、間葉系幹細胞、膵島、胎盤合胞体栄養細胞、角化細胞等)上で発現され[Keirら, Annu. Rev. Immunol. 26: 677-704(2008)]、そして活性化後、多数の細胞タイプ上で上方制御される。I型およびII型インターフェロン、IFNはどちらも、PD-L1を上方制御する(Eppihimerら, Microcirculation 9: 133-45(2002)); Schreinerら, J. Neuroimmunol 155: 172-82(2004))。細胞株におけるPD-L1発現は、MyD88、TRAF6およびMEKが阻害されている場合、減少する(Liuら, Blood HO: 296-304(2007))。JAK2もまた、PD-L1誘導に関連づけられてきている(Leeら, FEBS Lett, 580: 755-62(2006); Liuら, Blood HO: 296-304(2007))。ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)およびAktシグナル伝達を修飾する細胞ホスファターゼである、ホスファターゼおよびテンシン相同体(PTEN)の喪失または阻害は、癌において、転写後PD-L1発現を増加させた(Parsaら, Nat. Med. 13: 84-88(2007))。
【0012】
PD-L2発現は、PD-L1よりもより制限されている。PD-L2は、DC、マクロファージ、および骨髄由来マスト細胞上で、誘導可能に発現される。PD-L2はまた、休止腹腔B1細胞の約半数から3分の2で発現されるが、通常の(conventional)B2 B細胞上では発現されない(Zhongら, Eur. J. Immu
nol. 37: 2405-10(2007))。PD-L2+B1細胞は、ホスファチジルコリンに結合し、そして細菌抗原に対する生得的免疫反応に重要でありうる。IFN-γによるPD-L2の誘導は、部分的に、NF-KBに依存する(Liangら, Eur. J. Immunol. 33_: 2706-16(2003))。PD-L2はまた、GM-CF、IL-4およびIFN-γによって、単球およびマクロファージ上で誘導されうる(Yamazakiら., J. Immunol. 169: 5538-45(2002); Lokeら, PNAS 100: 5336-41(2003))。
【0013】
PD-1シグナル伝達は、典型的には、細胞増殖に対してよりもサイトカイン産生に対してより大きな影響を有し、IFN-γ、TNF-αおよびIL-2産生に有意な影響を有する。PD-1仲介性阻害性シグナル伝達はまた、TCRシグナル伝達の強度にも依存し、TCR刺激が低レベルであれば、より大きな阻害が提供される。この減少は、CD28を通じた共刺激[Freemanら, J. Exp. Med. 192: 1027-34(2000)]またはIL-2の存在[Carterら, Eur. J. Immunol. 32: 634-43(2002)]によって克服されうる。
【0014】
PD-L1およびPD-L2を通じたシグナル伝達が二方向性でありうる証拠が増えてきている。すなわち、TCRまたはBCRシグナル伝達の修飾に加えて、シグナルはまた、PD-L1およびPD-L2を発現する細胞にも戻って送達されうる。ワルデンストレームマクログロブリン血症患者から単離された天然のヒト抗PD-L2抗体で樹状細胞を処理すると、MHC IIまたはB7共刺激分子の上方制御は見られない一方、こうした細胞は、より多量の炎症促進性サイトカイン、特にTNF-αおよびIL-6を産生し、そしてT細胞増殖を刺激した(Nguyenら, J. Exp. Med. 196:
1393-98(2002))。この抗体でのマウス処理はまた、(1)移植されたb16黒色腫に対する耐性を増進し、そして腫瘍特異的CTLを迅速に誘導し(Radhakrishnanら, J. Immunol. 170: 1830-38(2003); Radhakrishnanら, Cancer Res. 64: 4965-72(2004); Heckmanら, Eur. J. Immunol. 37:
1827-35(2007));(2)アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて、気道炎症性疾患の発展をブロックした(Radhakrishnanら, J. Immunol. 173: 1360-65(2004); Radhakrishnanら,
J. Allergy Clin. Immunol. UJy. 668-74(2005))。
【0015】
樹状細胞(「DC」)への逆シグナル伝達のもう1つの証拠は、可溶性PD-1(Ig定常領域に融合されたPD-1 ECドメイン-「s-PD-1」)と培養した骨髄由来DCの研究から得られた(Kuipersら, Eur. J. Immunol. 36: 2472-82(2006))。このsPD-1は、抗PD-1投与を通じた可逆的方式で、DC活性化を阻害し、そしてIL-10産生を増加させた。さらに、いくつかの(some)研究によって、PD-1とは独立に、PD-L1またはPD-L2に関する受容体が同定された。B7.1は、PD-L1に関する結合パートナーとすでに同定されている(Butteら, Immunity 27: 111-22(2007))。化学的架橋研究は、PD-L1およびB7.1が、そのIgV様ドメインを通じて相互作用しうることを示している。B7.1:PD-L1相互作用は、T細胞への阻害性シグナル伝達を誘導しうる。CD4+ T細胞上のPD-L1のB7.1による連結、またはCD4+ T細胞上のB7.1のPD-L1による連結は、阻害性シグナルを提供する。CD28およびCTLA-4を欠くT細胞は、抗CD3に加えてB7.1でコーティングされたビーズによって刺激した際、減少した増殖およびサイトカイン産生を示す。B7.1に関するすべての受容体(すなわちCD28、CTLA-4およびPD-L1)を欠くT
細胞において、T細胞増殖およびサイトカイン産生は、もはや、抗CD3に加えてB7.1でコーティングされたビーズによっては阻害されなかった。これは、B7.1が、CD28およびCTLA-4の非存在下で、T細胞上のPD-L1を通じて特異的に作用することを示す。同様に、PD-1を欠くT細胞は、抗CD-3に加えてPD-L1でコーティングされたビーズの存在下で刺激した際、減少した増殖およびサイトカイン産生を示し、T細胞上のB7.1に対するPD-L1連結の阻害性効果を立証した。T細胞が、PD-L1に関するすべての既知の受容体を欠く(すなわちPD-1およびB7.1がない)場合、T細胞増殖は、もはや、抗CD3に加えてPD-L1でコーティングされたビーズによって損なわれなかった。したがって、PD-L1は、B7.1またはPD-1のいずれかを通じて、T細胞に阻害性効果を発揮しうる。
【0016】
B7.1およびPD-L1の間の直接相互作用は、共刺激の現在の理解が不完全であることを示し、そしてT細胞上のこれらの分子の発現の重要性を強調する。PD-L1-/- T細胞の研究によって、T細胞上のPD-L1が、T細胞によるサイトカイン産生を下方制御しうることが示されている(Latchmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 10691-96(2004))。PD-L1およびB7.1の両方が、T細胞、B細胞、DCおよびマクロファージ上で発現されるため、これらの細胞タイプ上のB7.1およびPD-L1の間の方向性相互作用の可能性がある。さらに、非造血細胞上のPD-L1は、T細胞上のB7.1ならびにPD-1と相互作用可能であるため、PD-L1がその制御に関与するかどうかという疑問が生じる。B7.1:PD-L1相互作用の阻害性効果に関する1つのありうる説明は、T細胞PD-L1が、CD28との相互作用から、APC B7.1を捕捉するか、または分離しうることである。
【0017】
その結果、PD-1、B7.1のいずれかまたは両方との相互作用からPD-L1をブロッキングすることを含めて、PD-L1を通じたシグナル伝達と拮抗し、それによって、PD-L1がT細胞および他の抗原提示細胞への負の共刺激シグナルを送ることが妨げられ、それが感染(例えば急性および慢性)に反応した免疫および腫瘍免疫を増進するようである。さらに、本発明の抗PD-L1抗体を、PD-1:PD-L1シグナル伝達の他の構成要素のアンタゴニスト、例えば抗PD-1および抗PD-L2抗体のアンタゴニストと組み合わせてもよい。
【0018】
特に、PD-L1シグナル伝達の阻害は、癌(例えば腫瘍免疫)、ならびに急性および慢性(例えば持続性)感染を含む感染の治療のために、T細胞免疫を増進させる手段として提唱されてきている。
【0019】
PD-L1:PD-1相互作用をブロッキングする阻害剤は、とりわけ、WO2001014557、WO2002086083、WO2007005874、WO2010036959、WO2010077634、およびWO2011066389から知られる。
【0020】
現在、初期段階臨床試験において、抗PD-L1構成要素を含む、10より多い単一および二重特異性薬剤がある。
1つの単一特異性抗PD-L1抗体、MPDL3280A(アテゾリズマブ、Roche)は、臨床試験(CT)を成功裡に通過して、そして臨床実施において用いられている。アテゾリズマブは、転移性尿路上皮性癌の患者における使用に関して、FDAによって認可されており;非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌、結腸直腸癌(CRC)、および乳癌(BC)患者において、第III相CTが続けられている。調製物は、修飾Fc領域(ADCC効果を除去するため)を有するIg1抗体である。アテゾリズマブは、WO2010077634に記載される。
【0021】
最終期CTにある他の抗PD-L1調製物は、アベルマブ(Pfizer)およびデュルバルマブ(AZ)調製物である。デュルバルマブ(MEDI-4736)は、WO2011066389に記載される。アベルマブは、WO2013079174に記載される。アベルマブ調製物の主な相違は、抗体におけるADCC効果が存在することであり、さらに、これは、IFNgまたはIL12(NCT01772004)で増進されうる。さらに、アベルマブ調製の安全性プロファイルは、他の抗PD-1/PD-L1調製物のものに対応する(Cancer Immunol Res; 3(10) October
2015; Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity Activity of a Novel Anti-PD-L1 Antibody Avelumab on Human Tumor Cells; Benjamin Boyerinas)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】WO2001014557
【特許文献2】WO2002086083
【特許文献3】WO2007005874
【特許文献4】WO2010036959
【特許文献5】WO2010077634
【特許文献6】WO2011066389
【特許文献7】WO2010077634
【特許文献8】WO2011066389
【特許文献9】WO2013079174
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Nishimuraら, Immunity JJ: 141-51(1999)
【非特許文献2】Nishimuraら, Science 291: 319-22(2001)
【非特許文献3】Freemanら, J. Exp. Med. 192: 1-9(2000)
【非特許文献4】Dongら, Nature Med. 5: 1365-1369(1999)
【非特許文献5】Latchmanら, Nature Immunol 2: 261-268(2001)
【非特許文献6】Tsengら, J. Exp. Med. 193: 839-846(2001)
【非特許文献7】Nishimuraら, Int. Immunol. 8: 773-80(1996)
【非特許文献8】Boettlerら, J. Virol. 80: 3532-40(2006)
【非特許文献9】Nielsenら, Cell. Immunol. 235: 109-16(2005)
【非特許文献10】Uedaら, Nature 423: 506-11(2003)
【非特許文献11】Wanら, J. Immunol. 177: 8844-50(2006)
【非特許文献12】Yamazakiら, J. Immunol. 169: 5538-45(2002)
【非特許文献13】Keirら, Annu. Rev. Immunol. 26: 677-704(2008)
【非特許文献14】Eppihimerら, Microcirculation 9: 133-45(2002)
【非特許文献15】Schreinerら, J. Neuroimmunol 155: 172-82(2004)
【非特許文献16】Liuら, Blood HO: 296-304(2007)
【非特許文献17】Leeら, FEBS Lett, 580: 755-62(2006)
【非特許文献18】Liuら, Blood HO: 296-304(2007)
【非特許文献19】Parsaら, Nat. Med. 13: 84-88(2007)
【非特許文献20】Zhongら, Eur. J. Immunol. 37: 2405-10(2007)
【非特許文献21】Liangら, Eur. J. Immunol. 33_: 2706-16(2003)
【非特許文献22】Yamazakiら., J. Immunol. 169: 5538-45(2002)
【非特許文献23】Lokeら, PNAS 100: 5336-41(2003)
【非特許文献24】Freemanら, J. Exp. Med. 192: 1027-34(2000)
【非特許文献25】Carterら, Eur. J. Immunol. 32: 634-43(2002)
【非特許文献26】Nguyenら, J. Exp. Med. 196: 1393-98(2002)
【非特許文献27】Radhakrishnanら, J. Immunol. 170: 1830-38(2003)
【非特許文献28】Radhakrishnanら, Cancer Res. 64: 4965-72(2004)
【非特許文献29】Heckmanら, Eur. J. Immunol. 37: 1827-35(2007)
【非特許文献30】Radhakrishnanら, J. Immunol. 173: 1360-65(2004)
【非特許文献31】Radhakrishnanら, J. Allergy Clin. Immunol. UJy. 668-74(2005)
【非特許文献32】Kuipersら, Eur. J. Immunol. 36: 2472-82(2006)
【非特許文献33】Butteら, Immunity 27: 111-22(2007)
【非特許文献34】Latchmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 10691-96(2004)
【非特許文献35】Cancer Immunol Res; 3(10) October 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)の有効な阻害剤を提供する必要性がある。
上記を参照すると、PD-L1に有効に結合する新規抗体を提供することが非常に重要
である。
【0025】
BCD-135抗体は、PD-L1に選択的に結合し、そしてプログラム細胞死リガンド-1の有効な阻害剤である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、結合分子、特にPD-L1に結合するよう向けられた抗体に関する。こうした抗体を、PD-L1によって仲介される疾患または障害を治療するために用いてもよい。
【0027】
1つの側面において、本発明は、PD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0028】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0029】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0030】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号5~7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0031】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0032】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号5~7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0033】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0034】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0035】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4に少な
くとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0036】
ある態様において、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0037】
ある態様において、モノクローナル抗体は、配列番号9に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号10に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0038】
ある態様において、モノクローナル抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
ある態様において、PD-L1に特異的なモノクローナル抗体は、全長IgG抗体である。
【0039】
ある態様において、全長IgG抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4のアイソタイプである。
ある態様において、モノクローナル抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである。
【0040】
1つの側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれかをコードする、核酸に関する。
ある態様において、核酸はDNAである。
【0041】
1つの側面において、本発明は、任意の上記核酸を含む、発現ベクターに関する。
1つの側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれかを産生するように適応されている宿主細胞を産生する方法であって、細胞を上記ベクターで形質転換する工程を含む、前記方法に関する。
【0042】
1つの側面において、本発明は、上記核酸いずれかを含む、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれかを産生するための、宿主細胞に関する。
1つの側面において、本発明は、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれかを産生するための方法であって、培地中で、前記抗体を得るために十分な条件下で、上記宿主細胞をインキュベーションし、そして所望により、得た抗体の単離および精製が続く、前記方法に関する。
【0043】
1つの側面において、本発明は、PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組成物であって、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれか、および1つまたはそれより多くの薬学的に許容されうる賦形剤を含む、前記薬学的組成物に関する。
【0044】
ある態様において、薬学的組成物は:HNSCC、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIの群より選択される、PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のために意図される。
【0045】
1つの側面において、本発明は、PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組み合わせであって、上記抗体またはその抗原結合断片、および少なくとも1つの療法的に活性である抗腫瘍化合物を含む、前記薬学的組み合わせに関する。
【0046】
ある態様において、薬学的組み合わせは:HNSCC、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIの群より選択される、PD-L1仲介性疾患または障害の防止または治療のために意図される。
【0047】
ある態様において、薬学的組み合わせは、化学療法剤、抗体または抗ホルモン剤より選択される療法的に活性である抗腫瘍化合物を含む。
1つの側面において、本発明は、PD-L1の生物学的活性を阻害する必要がある被験体において、PD-L1の生物学的活性を阻害するための方法であって、該被験体に、上記抗体またはその抗原結合断片のいずれかの有効量を投与する工程を含む、前記方法に関する。
【0048】
1つの側面において、本発明は、PD-L1仲介性疾患または障害の治療の必要がある被験体における、PD-L1仲介性疾患または障害の治療のための、上記抗体またはその抗原結合断片、あるいは上記薬学的組成物のいずれかの使用に関する。
【0049】
ある態様において、本発明は:HNSCC、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIの群より選択される、PD-L1仲介性疾患または障害の治療のための上記抗体またはその抗原結合断片、あるいは上記薬学的組成物のいずれかの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】ヒト・コンビナトリアル・ナイーブ・ライブラリー合成のためのスキーム。
【
図2】Fabファージディスプレイライブラリークローニングのためのファージミドのマップ。
【
図3】Fab産生のための発現プラスミドのマップ。
【
図4】還元条件下(4A、12%SDS-PAGE)、非還元条件下(4B、8%SDS-PAGE)のBCD-135電気泳動図。
【
図5】PD-L1および他の抗原とのBCD-135相互作用の酵素連結免疫吸着アッセイ。
【
図6】Jurkat-NFAT-PD-1レポーター細胞株における、抗PD-L1抗体でのNFATシグナル伝達再活性化。
【
図7】Octet RED 96装置上での、FcRnおよびFcγ受容体とのBCD-135相互作用の分析。
【
図8】異なる種由来のPD-L1とのBCD-135相互作用の免疫酵素的分析。
【
図9】Octet RED 96装置上での、ヒトおよびカニクイザル(cynomolgus monkey)PD-L1とのBCD-135相互作用の分析。
【
図10】BCD-135のコンホメーション安定性分析。
【
図12】リン酸(A)、酢酸(B)、およびヒスチジン(B)緩衝液中のBCD-135の熱安定性分析。x軸は時間を示し、Y軸は吸収を示す。
【
図13】ヒト血清中のBCD-135の安定性分析。Aは、ウェルに添加されたBCD-135の濃度に対する光学密度依存性を示す検量線である。Bは、インキュベーション時間に対する、ヒト血清中でインキュベーションした際のBCD-135濃度の依存性を示す、要約表である。
【
図14】BCD-135およびPD-L1抗原のN末端Igドメインの間の複合体の三次元モデル。Aは、3Dモデルの一般的な外観であり;Bは、直接抗原-抗体接触の領域における詳細なモデルである(実施例18中の表を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
定義および一般的な方法
別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、一般の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するであろう。本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料を、本発明の態様の実施または試験において用いてもよいが、例示的な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が本明細書に援用される。矛盾の場合は、定義を含めて本明細書が統制するであろう。多くの文書を本明細書に引用するが、この引用は、これらの文書のいずれかが、当該技術分野における共通の一般的な知識の一部を形成することの承認ではない。
【0052】
さらに、背景が別に必要としない限り、単数形の用語には複数形の用語が含まれ、そして複数形の用語には単数形の用語が含まれる。典型的には、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医学および薬学的化学、ならびに本明細書記載のタンパク質および核酸のハイブリダイゼーションおよび化学で用いる分類および方法は、当業者に周知であり、そしてこの分野で広く用いられる。酵素反応および精製技術を、製造者の特定にしたがって、または当該技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載するように、実行してもよい。
【0053】
本説明および態様において、単語「有する(have)」および「含有する(contain)」またはその変形、例えば「有する(has)」、「有すること(having)」、「含有する(contains)」、または「含有すること(containing)」は、示す整数または整数群を含むが、いかなる他の整数または整数群の排除も伴わないと理解されるものとする。
【0054】
抗体に関連する定義
PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)はまた、表面分類抗原274(CD274)または相同体B7(B7-H1)としても知られ、40kDaの1型膜貫通タンパク質である。該タンパク質は、3つのドメイン:Ig VおよびC様ドメインによって示される細胞外(220)、膜貫通(21)および細胞内(31)からなる。該タンパク質は、妊娠、外来組織の移植、ある種の疾患、例えば肝炎中に、免疫系抑制において重要な役割を果たす。通常の条件下では、自己抗原に反応して、特定の量の抗原特異的CD8+ Tエフェクター細胞がリンパ節および脾臓中に集積し、自己免疫プロセスを防止するため、PD-1/PD-L1またはB7-1/PD-L1複合体が形成され、リンパ節においてCD8+ T細胞増殖を減少させる阻害性シグナル伝達を生じる。したがって、PD-1/PD-L相互作用は、免疫寛容の発展における重要な事象の1つである。
【0055】
「機能不全」は、免疫機能不全の背景において、抗原刺激に対する免疫減少反応性の状態を指す。該用語には、抗原認識は起こりうるが、後に続く免疫反応が、感染または腫瘍増殖を制御するには不十分である、消耗および/またはアネルギーの両方の一般的な要素が含まれる。
【0056】
「T細胞機能の増進」は、T細胞が、持続されたまたは増幅された生物学的機能を有するか、あるいは消耗したかまたは不活性なT細胞を再生するかまたは再活性化するように誘導するか、引き起こすかまたは刺激することを意味する。T細胞機能の増進の例には:介入前のこうしたレベルに比較して、CD8+ T細胞からのγ-インターフェロンの分泌の増加、増殖増加、抗原反応性の増加(例えばウイルスまたは病原体クリアランス)が含まれる。1つの態様において、増進レベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増進を測
定する方式は、一般の当業者に知られる。
【0057】
「T細胞機能不全障害」は、抗原刺激に対する反応性の減少によって特徴づけられるT細胞の障害または状態である。特定の態様において、T細胞機能不全障害は、特に、PD-1を通じた、不適切に増加したシグナル伝達に関連する。別の態様において、T細胞機能不全障害は、T細胞がアネルギーであるか、あるいはサイトカインを分泌するか、増殖するかまたは細胞溶解活性を実行する能力が減少しているものである。特定の側面において、反応性減少は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の無効な制御を生じる。T細胞機能不全障害によって特徴づけられるT細胞機能不全障害の例には、解決されない急性感染、慢性感染および腫瘍免疫が含まれる。
【0058】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを逃れるプロセスを指す。したがって、療法的概念として、腫瘍免疫は、こうした回避を減弱させ、そして腫瘍が免疫系によって認識され、そして攻撃された際、「治療可能」である。腫瘍認識の例には、腫瘍結合、腫瘍縮小および腫瘍クリアランスが含まれる。
【0059】
本明細書において使用される用語「ワクチン」には、宿主に接種された際に、特定の病原体に対して防御免疫を誘導する、任意の非病原性免疫原が含まれる。ワクチンは多くの形を取ってもよい。ワクチンは、病原体と抗原を共有するが、それ自体は病原性ではない生物全体であってもよい(例えば牛痘)。ワクチンはまた、殺された(例えばソーク・ポリオワクチン)または弱毒化された(疾患を生じる能力を失っている、例えばサビン・ポリオワクチン)病原体から調製されてもよい。ワクチンはまた、病原性生物から単離された精製巨大分子から調製されてもよい。例えば、可溶性細菌毒素の不活性型を含有し、そして損なわれていない(intact)細菌に対する免疫ではなく、抗毒素抗体の産生を生じる、トキソイドワクチン(例えば破傷風およびジフテリア)。サブユニットワクチン(例えばB型肝炎)は、関心対象の病原体から単離された単一の免疫原性タンパク質のみを含有する。ハプテンコンジュゲートワクチンは、関心対象の病原体から単離された特定の炭水化物またはポリペプチドエピトープを、免疫原性キャリアー、例えば破傷風トキソイドに付着させる。これらの戦略は、本質的に、ハプテンとしてエピトープを用いて、抗体産生を誘導し、該抗体が次いで、天然病原体において同じエピトープを認識する。しかし、最大限に有効であるためには、こうしたワクチンは、BおよびT細胞エピトープの両方を取り込まなければならず、そしてT細胞エピトープが宿主個体の免疫系によって認識され、提示され、そして反応されうることが確実になるように、該エピトープを選択しなければならない。DNAワクチンは、宿主細胞が、筋内注射された、病原性タンパク質をコードするDNAを取り込み、そしてこれを発現する可能性を利用する。免疫原に対する宿主反応は、免疫原がアジュバントとの混合物として投与された場合、増進されうる。免疫アジュバントは、以下の方式の1つまたはそれより多くで機能する:(1)免疫原の保持の延長、(2)免疫原の有効サイズの増加(そしてしたがって、食作用およびマクロファージへの提示の促進)、(3)マクロファージまたは他の免疫細胞の注射部位への流入の刺激、あるいは(4)局所サイトカイン産生および他の免疫学的活性の促進。アジュバントの例には、完全フロイントアジュバント(CFA)、アルミニウム塩、およびマイコバクテリア由来タンパク質、例えばムラミルジペプチドまたはトリペプチドが含まれる。
【0060】
この遺伝子の増幅および/またはそのタンパク質の過剰発現は、HNSCC、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIを含む、多くの癌において見出されてきている。
【0061】
用語「結合分子」には、抗体および免疫グロブリンが含まれる。
用語「抗体」(Ab)または「免疫グロブリン」(Ig)には、本明細書において、全
抗体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはその個々の鎖が含まれる。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常領域を含有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、より保存されるフレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分されうる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRおよび4つのFRで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一の構成要素(C1q)を含む、宿主組織または因子への、免疫グロブリンの結合を仲介しうる。
【0062】
用語、抗体の「抗原結合タンパク質」(あるいは単に「抗体部分」または「抗体断片」)は、本明細書において、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたはそれより多い断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実行されうることが示されてきている。用語、抗体の「抗原結合部分」内に含まれる結合断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなる、Fv断片;(v)VH/VHHドメインからなる、dAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子にコードされているが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子を形成する、単一の連続鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;およびHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)として作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて、これらを連結してもよい。こうした一本鎖抗体はまた、用語、抗体の「抗原結合部分」内に含まれることも意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られる慣用的技術を用いて得られ、そして該断片は、損なわれていない抗体と同じ方式でスクリーニングされる。
【0063】
好ましくは、本発明の抗体の抗原結合領域のCDRまたは全抗原結合部分は、マウス、ラマ(llama)またはドナーヒトライブラリーから得られるか、あるいは実質的にヒト起源であって、特定の抗体特性、例えばKD、koff、IC50、EC50、ED50が最適化されるように、特定のアミノ酸残基が修飾され、例えば異なるアミノ酸残基で置換されている。好ましくは、本発明にしたがった抗体フレームワーク領域は、ヒト起源であるか、または実質的にヒト起源である(少なくとも、80、85、90、95、96、97、98または99%ヒト起源)。
【0064】
他の態様において、本発明の抗体抗原結合領域は、限定されるわけではないが、マウス、ラマ、ウサギ、ラットまたはハムスターを含む、他の非ヒト種に由来していてもよい。あるいは、抗原結合領域は、ヒト種に由来してもよい。
【0065】
用語「可変」は、可変ドメインの特定のセグメントが、抗体間で、配列が広範に異なる事実を指す。Vドメインは、抗原結合を仲介し、そして特定の抗原に関する特定の抗体の特異性を定義する。しかし、可変性は、可変ドメインの110のアミノ酸スパンに渡って
均一には分布しない。その代わり、V領域は、非常に可変性である「超可変領域」またはCDRまたは「HVR」または「HV」と称されるより短いストレッチによって分離される、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される比較的不変の断片からなる。天然重鎖および軽鎖の各可変ドメインは、大部分ベータシートの立体配置を与えられる、4つのFRを含有し、FRは3つの超可変領域によって連結され、該超可変領域は、ベータフォールド構造を結合し、そしてある場合には該構造の一部であるループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRによって非常に近接して一緒に保持され、そして他の鎖由来の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest. 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, メリーランド州ベセスダ(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原への抗体結合には直接関与せず、異なるエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体関与を示す。
【0066】
用語「超可変領域」(「HVR」または「HV」)は、本明細書において、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。典型的には、超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基、および/または「超可変ループ」由来のこうした残基を含む。
【0067】
ある場合(In some cases)、CDR領域の1つまたはそれより多いアミノ酸残基を修飾して、ターゲットエピトープに対する結合アフィニティを増加させることが好ましい可能性もまたある。これは、「アフィニティ成熟」として知られ、そしてある場合、ヒト化と関連して実行されてもよく、例えば、抗体のヒト化が結合特異性またはアフィニティの減少を生じ、そして逆突然変異のみによる結合特異性またはアフィニティの十分な改善が不可能である場合である。多様なアフィニティ成熟法、例えば、Burksら, Proc Natl Acad Sci USA, 94:412-417(1997)によって記載されるin vitroスキャニング飽和突然変異誘発法、およびWuら, Proc Natl Acad Sci USA 95:6037-6042(1998)に示唆される段階的in vitroアフィニティ成熟法が当該技術分野に知られる。
【0068】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、典型的には、FR1、FR2、FR3およびFR4として同定される4つのFRを有する。KabatにしたがってCDRが定義される場合、軽鎖FR残基は、ほぼ残基1~23(LCFR1)、35~49(LCFR2)、57~88(LCFR3)、および98~107(LCFR4)に位置し、そして重鎖FR残基は、重鎖中、ほぼ残基1~30(HCFR1)、36~49(HCFR2)、66~94(HCFR3)、および103~113(HCFR4)に位置する。CDRが超可変ループ由来のアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、軽鎖中、ほぼ残基1~25(LCFR1)、33~49(LCFR2)、53~90(LCFR3)、および97~107(LCFR4)に位置し、そして重鎖FR残基は、重鎖残基中、ほぼ残基1~25(HCFR1)、33~52(HCFR2)、56~95(HCFR3)、および102~113(HCFR4)に位置する。ある例で、CDRがKabatによって定義されるようなCDRおよび超可変ループのものの両方のアミノ酸を含む場合、FR残基はそれにしたがって調節される。例えば、CDRH1にアミノ酸H26-H35が含まれる場合、重鎖FR1残基は、1~25位であり、そしてFR2残基は36~49位である。
【0069】
ターゲット抗原に「結合する」本発明の抗体は、タンパク質あるいは抗原発現細胞または組織をターゲティングした際に、診断および/または療法剤として抗体を使用可能であ
るように、十分なアフィニティで抗原に結合する抗体であり、そしてわずかに他のタンパク質と交差反応性である。分析法:蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、放射性免疫沈降(RIA)またはELISAに基づいて、こうした態様において、抗体が非ターゲットタンパク質に(「オフターゲットタンパク質」に)結合する度合いは、特定のターゲットタンパク質への抗体結合の10%未満である。ターゲット分子への抗体の結合に関して、用語、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープへの「特異的結合」またはこれらに「特異的に結合する」またはこれらに「特異的である」は、非特異的相互作用とは検出可能に(測定可能に)異なる結合を意味する(例えば、bH1-44またはbH1-81に関して、非特異的相互作用は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ウシ胎児血清、またはニューラビジン(neuravidin)への結合である)。例えば、対照分子の結合に比較して、分子の結合を決定することによって、特異的結合を測定してもよい。例えば、ターゲットと類似の別の分子、例えば過剰な非標識ターゲットとの競合反応によって、特異的結合を決定してもよい。この場合、プローブへの標識ターゲットの結合が、過剰な非標識ターゲットによって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。本明細書において、例えば、少なくとも約200nM、または少なくとも約150nM、または少なくとも約100nM、または少なくとも約60nM、または少なくとも約50nM、または少なくとも約40nM、または少なくとも約30nM、または少なくとも約20nM、または少なくとも約10nM、または少なくとも約8nM、または少なくとも約6nM、または少なくとも約4nM、または少なくとも約2nM、または少なくとも約1nM、またはそれよりも大きい、ターゲットに関するKdを有する分子によって、用語、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドターゲット上のエピトープへの「特異的結合」、あるいは句、これらに「特異的に結合する」またはこれらに「特異的である」が示されうる。1つの態様において、用語「特異的結合」は、分子が、他のいかなるポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに対しても実質的に結合せずに、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合を指す。
【0070】
用語「Ka」は、本明細書において、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指し、一方、用語「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。
「結合アフィニティ」は、一般的に、分子(例えば抗体)およびその結合パートナー(例えば抗原)の単一の結合部位の間の非共有相互作用の総計の強度を指す。別に示さない限り、「結合アフィニティ」は、結合対のメンバー(例えば抗体および抗原)の間の1:1相互作用を反映する、本質的な(生得的な、真の)結合アフィニティを指す。分子Xの、そのパートナーYに関するアフィニティは、一般的に、解離定数(Kd)によって示されうる。望ましくは、Kdは、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、またはそれ未満である。本明細書に記載するものを含めて、当該技術分野に知られる一般的な方法によって、アフィニティを測定してもよい。低アフィニティ抗体は、一般的に、抗原にゆっくりと結合し、そして容易に解離する傾向がある一方、高アフィニティ抗体は、一般的に、より迅速に抗原に結合し、そしてより長く結合したままである傾向がある。結合アフィニティを測定するための多様な方法が当該技術分野に知られ、本発明の目的のために、このうちのいずれを用いてもよい。
【0071】
1つの態様において、~10反応単位(RU)で、固定抗原CM5チップを用い、25℃で、BIAcoreTM-2000またはBIAcoreTM-3000装置(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上、表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって、本発明にしたがった「Kd」または「Kd値」を測定する。簡潔には、製造者の指示にしたがって、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore, Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイ
ミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(~0.2μM)濃度に希釈し、そして次いで、5μl/分の流速で、装填(注入)して、結合タンパク質のおよそ10反応単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mエタノールアミン溶液を注入して、未反応基をブロッキングする。動力学測定のため、Fabの2倍連続希釈(例えば0.78nMから500nM)を、およそ25μl/分の流速で、25℃で、0.05% Tween20を含むPBS(PBST)中で注入する。会合および解離センサグラムを同時にフィットさせることによって、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェア、バージョン3.2)を用いて、会合速度(kоn)および解離速度(kоff)を計算する。比kоff/kоnとして、平衡解離定数(Kd)を計算する。例えば、Chen, Y.ら(1999)J. Mol.
Biol. 293:865-881を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによって、オン速度が106M-1s-1を超えている場合、分光計、例えばストップフロー分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)を用いて測定した際の、抗原濃度増加の存在下での、PBS、pH7.2中、20nM濃度の抗-抗原抗体(Fab型)溶液の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)における増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって、決定してもよい。
【0072】
用語「kоff」は、結合分子および抗原の間の特定の相互作用の解離速度定数を指す。例えばOctetTM系を用いて、バイオレイヤー・インターフェロメトリーによって、解離速度定数kоff+を測定してもよい。
【0073】
~10反応単位(RU)で、固定抗原CM5チップを用い、25℃で、BIAcoreTM-2000またはBIAcoreTM-3000装置(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた、上記と同じ表面プラズモン共鳴技術を用いて、本発明にしたがった「会合速度」(「オン速度」)または「kоn」もまた、決定してもよい。簡潔には、製造者の指示にしたがって、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore, Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(~0.2μM)濃度に希釈し、そして次いで、5μl/分の流速で、装填(注入)して、結合タンパク質のおよそ10反応単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mエタノールアミン溶液を注入して、未反応基をブロッキングする。動力学測定のため、Fabの2倍連続希釈(例えば0.78nMから500nM)を、およそ25μl/分の流速で、25℃で、0.05% Tween20を含むPBS(PBST)中で注入する。会合および解離センサグラムを同時にフィットさせることによって、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore評価ソフトウェア、バージョン3.2)を用いて、会合速度(kоn)および解離速度(kоff)を計算する。比kоff/kоnとして、平衡解離定数(Kd)を計算する。例えば、Chen, Y.ら(1999)J. Mol. Biol. 293:865-881を参照されたい。しかし、上記表面プラズモン共鳴アッセイによって、オン速度が106M-1s-1を超えている場合、分光計、例えばストップフロー分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)を用いて測定した際の、抗原濃度増加の存在下での、PBS、pH7.2中、20nM濃度の抗-抗原抗体(Fab型)溶液の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)における増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって、決定してもよい。
【0074】
別に言及しない限り、本発明のポリペプチドに関する、句「生物学的に活性」および「
生物学的活性」および「生物学的特性」は、生物学的分子に結合する能力を有することを意味する。
【0075】
句「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、およびその組み合わせを指す。1つの態様において、生物学的分子は、天然に存在する。
慣用法による、全抗体のペプシンまたはパパイン加水分解によって、抗体断片、例えばFabおよびF(ab’)2断片を得てもよい。さらに、本明細書に記載するように、標準的組換えDNA技術を用いて、抗体、抗体部分、および免疫接着分子を得てもよい。
【0076】
用語「組換え抗体」は、抗体をコードするヌクレオチド配列(単数または複数)を含む細胞または細胞株から発現される抗体を指し、ここで前記ヌクレオチド配列(単数または複数)は、該細胞と天然には関連しない。
【0077】
用語「変異体」抗体は、本明細書において、親抗体配列に比較して、1つまたはそれより多いアミノ酸残基を付加し、除去し、そして/または置換することによって、その「親」抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する抗体を指す。好ましい態様において、変異体抗体は、親抗体に比較して、アミノ酸の少なくとも1つまたはそれより多い(例えば1~12、例えば2、3、4、5、6、7、8または9、10、11または12、そして本発明のある態様において1~約10の)付加、欠失および/または置換を含む。ある態様において、本発明の付加、欠失および/または置換は、CDR変異体抗体部位で作製される。変異体抗体配列に関する同一性または相同性は、本明細書において、配列を整列させ、そして最大パーセント配列同一性を達成するために、必要であればギャップを導入した後、親抗体残基と同一である変異体抗体配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。変異体抗体は、親抗体に結合する同じ抗原、そして好ましくはエピトープに結合する能力を保持し、そしてある態様において、少なくとも1つの特性または生物活性は、親抗体の類似の特性より大きい。例えば、変異体抗体は、例えば、親抗体に比較して、発現される結合アフィニティ、より長い半減期、より低いIC50、または抗原の生物学的活性を阻害する能力の増進を有してもよい。本明細書において特に関心対象となるのは、親抗体の生物学的活性の少なくとも2倍(好ましくは少なくとも5倍、10倍または20倍)より大きい生物学的活性を示す変異体抗体である。
【0078】
用語「二重特異性抗体」は、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープに特異的に結合可能である、または2つの異なる生物学的分子上のエピトープに特異的に結合可能である、単数または複数の抗原結合ドメインを含有する抗体を意味する。二重特異性抗体はまた、本明細書において、「二重特異性」を有すると称されるか、または「二重特異性」を持つ抗体であると称される。
【0079】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体由来の1つまたはそれより多い領域、および1つまたはそれより多い他の抗体由来の1つまたはそれより多い領域を含有する抗体であって、典型的には、部分的にヒト起源および部分的に非ヒト起源の、すなわち、部分的に非ヒト動物、例えばマウス、ラット、または他の齧歯類、あるいはラクダ科、例えばラマまたはアルパカ(alpaca)から得られた抗体を、広く指す。ヒト抗体に対して向けられる免疫反応、例えばネズミ抗体の場合、ヒトにおいてネズミ抗体に向けられる反応のリスクを減少させるために、非ヒト抗体よりも、キメラ抗体が好ましい。典型的なキメラ抗体の例は、可変領域配列がネズミである一方、定常領域配列がヒトであるものである。キメラ抗体の場合、抗体ヒト化のため、非ヒト部分をさらなる変化に供してもよい。
【0080】
用語「ヒト化」は、抗体が完全にまたは部分的に非ヒト起源、例えば、関心対象の抗原での、それぞれマウスまたはラマの免疫によって得られたマウスまたはラマ抗体である場合、あるいはこうしたマウスまたはラマ抗体に基づくキメラ抗体である場合、ヒトにおけ
る免疫反応を回避するかまたは最小限にするために、重鎖および軽鎖のいくつかのアミノ酸、特にフレームワーク領域および定常ドメイン中のアミノ酸を置換してもよいという事実を指す。抗体およびターゲット抗原の間の相互作用の特異性は、主に、6つの重鎖および軽鎖CDR領域に位置するアミノ酸残基に生得的である。したがって、CDR領域内のアミノ酸配列は、CDR領域外の配列に比較して、異なる抗体間で、はるかにより多様である。CDR領域配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、例えば、特定の抗体由来のCDR領域配列を、別の抗体のフレームワーク配列内で発現する発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体、またはより一般的には、所定のアミノ酸配列を有する任意の特定の抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である。その結果、非ヒト抗体を「ヒト化」し、そして親抗体の結合特異性およびアフィニティを実質的に保持することが可能である。ヒト抗体に対する免疫原性、そしてしたがって免疫反応を正確に予測することは不可能であるが、特定の抗体、非ヒト抗体は、一般的に、ヒト抗体よりもより免疫原性である。外来性(例えばラクダまたは齧歯類)定常領域がヒト起源の配列によって置換されているキメラ抗体は、一般的に、完全に外来性起源の抗体よりも、より低い免疫原性を示し、そして療法性抗体としてヒト化または完全ヒト抗体を用いる傾向がある。したがって、非ヒト起源のキメラ抗体または他の抗体をヒト化して、ヒトにおいて、抗体に対して向けられる免疫反応のリスクを減少させてもよい。
【0081】
キメラ抗体に関して、ヒト化は、一般的に、可変領域配列のフレームワーク領域の修飾を伴う。相補性決定領域(CDR領域)の一部であるアミノ酸残基は、ヒト化によって変化しない可能性が最も高いが、ある場合では、例えばグリコシル化部位、脱アミド化部位、アスパラギン異性化セクション、あるいは望ましくないシステインまたはメチオニン残基を取り除くため、CDR領域中の個々のアミノ酸残基を変化させることが望ましい可能性もある。N連結グリコシル化は、トリペプチド配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr、式中、XはPro以外の任意のアミノ酸であってもよい、におけるアスパラギン残基へのオリゴ糖鎖付加によっておこる。N-グリコシル化部位の除去を、AsnまたはSer/Thr残基の別の残基での突然変異によって、好ましくは保存的置換によって、達成してもよい。アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミド化は、pHおよび表面曝露などの要因に応じて起こりうる。アスパラギン残基は、脱アミド化を特に受けやすく、特に、これらがAsn-Gly配列中に存在する場合に受けやすく、そして他のジペプチド、例えばAsn-Ala中ではより低い度合いで受けやすい。こうした脱アミド化領域、特に、CDR領域配列中のAsn-Glyでは、関与する残基の1つを除去するために、一般的には保存的置換によって、この領域を取り除くことが好ましい可能性もある。
【0082】
抗体配列をヒト化するための多くの方法が当該技術分野に知られる;例えばAlmargo & Fransson, Front Biosci. 13:1619-1633(2008)による概説を参照されたい。最も一般的に用いられる方法の1つは、CDR領域の移植であり、例えば、ネズミ起源のキメラ抗体が、ネズミ可変領域遺伝子に対するヒト生殖系列遺伝子同等物の同定およびこのフレームワーク内へのマウスCDR領域配列の移植を伴う場合である。CDR領域移植は、KabatによるCDR領域定義に基づいてもよいが、より後の刊行物(Magdelaine-Beuzelinら, Crit Rev. Oncol Hematol. 64:210-225(2007))は、IGMT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報系(登録商標)、www.imgt.org)による定義が、ヒト化結果を改善しうる(Lefrancら, Dev. Comp Immunol. 27:55-77(2003))と示唆する。ある場合、CDR領域移植は、由来する親抗体CDR領域に比較して、非ヒトCDR移植抗体における結合特異性およびアフィニティ、そしてしたがって生物学的活性を減少させる可能性がある。親抗体の結合アフィニティおよび特異性を回復するため、CDR移植抗
体中、通常フレームワーク領域中の選択した位に、逆突然変異(ときに、「フレームワーク領域修復」と称される)を適用してもよい。文献において、そして抗体データベースにおいて入手可能な情報を用いて、逆突然変異のためのありうる位の決定を行ってもよい。逆突然変異の候補であるアミノ酸残基は、典型的には、抗体分子の表面上に曝露される一方、深くに位置するかまたは表面曝露の度合いが低い残基は、通常変化しないであろう。ヒト化のCDR領域移植および逆突然変異法に対する代替法は、表面変化であり、この場合、非ヒト起源の非曝露残基が保持される一方、曝露される残基はヒト残基に置換される。
【0083】
完全ヒト抗体を得るためには2つの技術がある:in vitroで構築されたファージライブラリーを用いるもの、またはヒト化動物(マウス、ラット等)のin vivo免疫である。
【0084】
ファージディスプレイは、抗体同定のために、最初にそして最も広く用いられるin vitro技術である。1985年、Smithは、クローニングされた遺伝子配列が、融合タンパク質として、ファージ粒子表面上で発現されるように、外来性DNA配列を糸状バクテリオファージM13内にクローニングしうることを発見した(Smith GP: Filamentous fusion phage: novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface. Sience 1985, 228:1315-1317)。したがって、他のタンパク質に結合する能力に基づいて、関心対象の融合タンパク質を選択してもよい。この発見は、免疫グロブリン遺伝子のcDNAレパートリーをクローニングして、ターゲット特異的モノクローナル抗体を迅速に検索するために使用可能な、可変ドメインを含有する多様なファージライブラリーを生成することを可能にするPCR増幅技術と組み合わされた。ファージライブラリーのレパートリーは、ライブラリーを生成するためにその血液を用いた各ヒトまたは動物のBリンパ球抗体のレパートリーを反映する。1995年、2つの論文が、完全ヒト抗体を発現する遺伝子操作マウスを生成し、そのレパートリーはハイブリドーマ技術によって産生されたものとマッチング可能であったことを報告した(Lonberg N, Taylor LD, Harding FA, Trounstine M, Higgins KM, Schramm SR, Kuo CC, Mashayekh R, Wymore K, McCabe JGら:Antigen-specific human antibodies from mice comprising four distinct genetic modifications. Nature 1994, 368:856-859; Green LL, Hardy MC, Maynard-Currie CE, Tsuda H, Louie DM, Mendez MJ,
Abderrahim H, Noguchi M, Smith DH, Zeng
Yら: Antigen-specific human monoclonal antibodies from mice engineered with human Ig heavy and light chain YACs. Nat Genet 1994, 7:13-21)。これらの動物は、動物自身の免疫グロブリンの内因性重鎖およびκ軽鎖の破壊されターゲティングされた遺伝子、ならびにヒト重鎖およびκ軽鎖遺伝子のセグメントに相当する導入された導入遺伝子を有する。ヒト遺伝子レパートリーは、マウス免疫系によって用いられて、より多様な抗原に対する高特異的および高アフィニティ抗体を生成することが見出された。ヒト免疫グロブリン・トランスジェニックマウスが、本質的にマウスおよびヒト構成要素のハイブリッド(例えばヒト免疫グロブリン、マウスIgαおよびIgβおよび他のシグナル伝達分子)である、B細胞受容体を発現するという事実にもかかわらず、そのB細胞は、正常に発生し、そして成熟する。ある場合、ターゲットエピトープに対する結合アフィニティを増加させるため、CDR領域の1つまたはそれより多くのアミノ酸残基を修飾することもまた好ましい可能性がある。
これは、「アフィニティ成熟」として知られ、そしてある場合、ヒト化と関連して実行されてもよく、例えば、抗体のヒト化が結合特異性またはアフィニティの減少を生じ、そして逆突然変異のみによる結合特異性またはアフィニティの十分な改善が不可能である場合である。多様なアフィニティ成熟法、例えば、Burksら, Proc Natl Acad Sci USA, 94:412-417(1997)によって記載されるin
vitroスキャニング飽和突然変異誘発法、およびWuら, Proc Natl Acad Sci USA 95:6037-6042(1998)に示唆される段階的in vitroアフィニティ成熟法が当該技術分野に知られる。
【0085】
用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、細胞の個々のクローン集団によって合成されそして分泌される抗体を指す。クローン集団は、不死化細胞のクローン集団であってもよい。ある態様において、クローン集団中の不死化細胞は、典型的には、リンパ細胞性腫瘍由来の個々の細胞と、免疫された動物由来の個々のBリンパ球の融合によって産生されるハイブリッド細胞、ハイブリドーマである。ハイブリドーマは、操作された細胞タイプであり、そして天然には存在しない。
【0086】
「天然抗体」は、典型的には、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって、重鎖に連結される一方、重鎖間のジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプ間で多様である。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔が空いた鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、これにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、そして他端に、定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと整列し、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられる。
【0087】
本開示の多様な抗体を記載するために用いられる、「単離された」(「分離された」)の定義は、同定され、そして発現される細胞または細胞培養から単離されそして/または再生された抗体を指す。その天然環境の混入構成要素(混入物質)は、通常、ポリペプチドの診断的または療法的使用に干渉する物質であり、そしてこれには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性種が含まれうる。好ましい態様において、抗体は、(1)スピニングカップ配列決定装置(エドマン配列決定装置)の使用によって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な度合いまで、あるいは(2)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた、還元または非還元条件下で、SDS-PAGE法によって均一になるまで、精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないため、単離抗体には、組換え細胞内のin situの抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0088】
「単離」核酸分子は、同定され、そして抗体核酸の天然供給源において、通常会合している少なくとも1つの混入核酸分子から分離されている核酸分子である。単離核酸分子は、天然にみられる型またはセッティングとは区別される。したがって、単離核酸分子は、天然細胞に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離核酸分子には、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色体位置にある場合、抗体を通常発現する細胞に含有される核酸分子が含まれる。
【0089】
用語「エピトープ」は、本明細書において、結合分子(例えば抗体または関連分子、例えば二重特異性結合分子)に特異的に結合する、抗原の部分(決定因子)を指す。エピトープ性決定因子は、通常、分子、例えばアミノ酸または糖側鎖の化学的に活性である表面
グループからなり、そして通常、特異的三次元構造特性、ならびに特異的電荷特性を有する。エピトープは、「直鎖」または「コンホメーション性」であってもよい。直鎖エピトープにおいて、タンパク質(例えば抗原)および相互作用分子(例えば抗体)の間の相互作用点はすべて、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線形に存在する。コンホメーション・エピトープにおいて、相互作用点は、一次アミノ酸配列において、互いに分離されている、タンパク質上のアミノ酸残基に渡って存在する。望ましい抗原エピトープが同定されたならば、当該技術分野に周知の技術を用いて、このエピトープに対する抗体を生成してもよい。さらに、抗体または他の結合分子の生成および特徴づけは、望ましいエピトープに関する情報に光を当てうる。この情報に基づいて、次いで、結合分子を、同じまたは類似のエピトープに対する結合に関して、例えば抗原への結合に関して競合する結合分子を見出す競合研究によって、競合的にスクリーニングしてもよい。
【0090】
用語「ペプチドリンカー」は、本明細書において、任意のアミノ酸配列を含有する、互いに結合するドメインに応じた長さで、ドメインを連結する能力を有する任意のペプチドを意味する。好ましくは、ペプチドリンカーは、5アミノ酸より長い長さを有し、そしてG、A、S、P、E、T、D、Kより選択されるアミノ酸の任意のセットからなる。
【0091】
用語、抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(Fc領域天然配列または変異体Fc領域アミノ酸配列)と会合し、そして抗体アイソタイプに応じて多様である、生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合;補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)の下方制御およびB細胞活性化である。
【0092】
「細胞の抗体依存性細胞仲介性細胞傷害性」、および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、細胞、およびマクロファージ)が、ターゲット細胞上の結合した抗体を認識し、そして続いてターゲット細胞溶解を誘導する、細胞仲介性反応を指す。ADCCを仲介する主な細胞、NK細胞は、FcγRIIIしか発現しない一方、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92(1991)の464ページの表3に要約される。関心対象の分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されるようなin vitro ADCCアッセイを行ってもよい。こうしたアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいはまたはさらに、関心対象の分子のADCC活性を、in vivoで、例えばClynesら PNAS(USA)95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて評価してもよい。
【0093】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたはそれより多いFcRを発現し、そしてエフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、そしてADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを仲介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が含まれ;PBMCおよびNK細胞が好ましい。本明細書に記載するように、エフェクター細胞を、その天然供給源から、例えば血液またはPBMCから単離してもよい。
【0094】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために用いられる。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するFcR(受容体ガンマ)であり、好ましい受容体には受容体のFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスが含まれ、これにはこ
れらの受容体のアレル変異体および選択的スプライシング型が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは類似のアミノ酸配列を有し、主に細胞質ドメインが異なる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインにおいて、免疫受容体のチロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインにおいて、免疫受容体のチロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15: 203-234
(1997)を参照されたい)。RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457-92 (1991); Capelら, Immunomethods 4: 25-34 (1994);ならびにde Haasら, J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41 (1995)において、FcRの概説が提供される。将来同定されるであろうFcRを含む、他のFcRが、本明細書において、用語「FcR」内に含まれる。該用語にはまた、母性IgGの胎児への移入に関与する、新生受容体、FcRnも含まれる(Guyerら, J. Immunol. 117: 587 (1976)、およびKimら, J. Immunol. 24: 249 (1994))。
【0095】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下で、分子がターゲットを溶解する能力を指す。補体活性化経路は、その抗原と複合した分子(例えば抗体)と、補体系の第一の構成要素(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するため、例えば、Gazzano-Santoroら, J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されるようにCDCアッセイを行ってもよい。
【0096】
用語「同一性」または「相同性」は、必要であれば、全配列の最大パーセント同一性を達成するため、そして配列同一性のいかなる部分も、保存されると考慮されるものに置換せず、配列を整列させ、そして「ギャップ」を導入した後、同じアミノ酸残基に比較して対応する配列を持つ候補配列中の残基の割合を意味すると解釈すべきである。NまたはC末端いずれかの伸長および挿入は、同一性または相同性を減少させるとは見なされないものとする。整列のための方法およびコンピュータプログラムが周知である。配列分析ソフトウェア(例えば配列分析ソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Ave., Madison, WI 53705)を用いて、配列同一性を測定してもよい。このソフトウェアは、多様な置換、欠失(除去)、および他の修飾に関して、相同性の度合いを決定することによって、こうした配列に有用である。
【0097】
用語、抗体ポリペプチド配列に関する「相同」は、ポリペプチド配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、そして最も好ましくは95%の配列同一性を示す抗体と見なされなければならない。核酸配列と関連する該用語は、核酸配列に対して、少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、そして最も好ましくは97%の配列同一性を示すヌクレオチド配列と見なされなければならない。
【0098】
本明細書に記載する抗体のアミノ酸配列における修飾(単数または複数)を提供する。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが望ましい可能性もある。抗体核酸内に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって、抗体のアミノ酸配列変異体を調製する。こうした修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/またはこうした配列内への残基の挿入、および/またはこうした配列内の残基の置換が含まれる。最終構築物が望ましい特性を所持するという条件で、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを行って、最終構
築物を得る。アミノ酸改変はまた、抗体における翻訳後プロセスも改変してもよく、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化させてもよい。
【0099】
アミノ酸置換による抗体のアミノ酸配列を修飾するための変異。こうした変異は、抗体分子における少なくとも1つのアミノ酸残基の別の残基での置換である。置換性突然変異誘発のための関心対象の部位には、超可変領域またはCDRが含まれるが、置換はまた、FRまたはFc領域中でも意図される。保存的置換を、「好ましい置換」の見出し以下で、表1中に示す。こうした置換が生物学的活性の変化を生じる場合、表Aにおける例示的な置換と称される、またはアミノ酸クラスに関連して以下にさらに記載するように、より実質的な変化を導入してもよく、そして産物をスクリーニングしてもよい。
【0100】
【0101】
用語「核酸」、「核配列(nucleic sequence)」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」は、交換可能に用いられ、修飾されたまたは修飾されないヌクレオチドの正確な配列を示し、非天然ヌクレオチドを含有するかまたは含有しない核酸断片または領域を決定し、そして二本鎖DNAまたはRNAあるいは一本鎖DNAまたはRNAいずれかであるか、あるいは前記DNAの転写産物である。
【0102】
本発明が、その天然染色体環境、すなわち天然状態にある、該ヌクレオチド配列に関連しないことが理解されなければならない。本発明の配列は、単離されそして/または精製されており、すなわちこれらは、直接または例えばコピーによって間接的に収集されており、その環境は少なくとも部分的に修飾されている。したがって、遺伝子組換えによって、例えば細胞(宿主細胞)を受け取ることによって得られたか、または化学合成によって得られた単離核酸もまた、本明細書に意図されるものとする。
【0103】
ヌクレオチド配列に対する言及は、別に明記しない限り、その相補体を含む。したがって、特定の配列を有する核酸に対する言及は、その相補配列を有するその相補鎖を含むと理解されなければならない。
【0104】
表現「制御配列」は、特定の宿主生物において、機能可能であるように連結されたコード配列の発現のために必要なDNA配列を指す。原核生物に適切な制御配列には、例えば、プロモーター、所望によりオペレーター、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られる。
【0105】
核酸は、別の核酸配列と機能的関連にあるように配置される場合、「機能可能であるように連結されている」。例えば、プレ配列または分泌性リーダーDNA配列は、ポリペプチド分泌に関与するプレタンパク質として発現されるならば、ポリペプチドDNAに機能可能であるように連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、配列転写に影響を及ぼすならば、コード配列に機能可能であるように連結されており;あるいはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されているならば、コード配列に機能可能であるように連結されている。一般的に、「機能可能であるように連結されている」は、連結されたDNA配列が連続性であり、そして分泌リーダーに関して、連続性であり、そしてリーディング相にあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続性でなくてもよい。連結は、存在する制限部位での連結によって達成される。こうした部位が存在しない場合、慣用的実施にしたがって、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを用いる。
【0106】
用語「ベクター」は、本明細書において、連結される別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。本発明のある態様において、ベクターは、プラスミド、すなわち、DNAの環状二重鎖片であって、この中にさらなるDNAセグメントを連結可能な前記環状二重鎖片である。本発明のある態様において、ベクターは、ウイルスベクターであって、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に連結可能である、前記ウイルスベクターである。本発明のある態様において、ベクターは、ベクターが導入された宿主細胞において、自律複製が可能である(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。本発明の他の態様において、ベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると、宿主細胞ゲノム内に組み込まれることが可能であり、そしてそれによって、宿主遺伝子とともに複製される。さらに、特定のベクターは、機能可能であるように連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。こうしたベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。
【0107】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。本発明は、例えば、本発明にしたがった上記のベクターが含まれてもよい、宿主細胞に関する。本発明はまた、例えば重鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいは本発明の三重特異的結合分子中の第一の結合ドメインおよび/または第二の結合ドメインの両方を含む、宿主細胞にも関する。「組換え宿主細胞」および「宿主細胞」は、特定の対象細胞を指すだけでなく、こうした細胞の子孫も指すよう意図されることを理解しなければならない。修飾は、突然変異または環境的影響のいずれかのため、続く世代でも保持されうるため、こうした子孫は、実際、親細胞と同一でない可能性もあるが、こうした細胞はなお、本明細書において、用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0108】
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明の化合物(単数または複数)以外の任意の成分を記載する。
「薬学的組成物」は、本発明の抗体、ならびに薬学的に許容されうるおよび薬理学的に適合するビヒクル、溶媒、希釈剤、キャリアー、補助剤、分配剤および受容(receptive)剤、送達剤、例えば保存剤、安定化剤、充填剤、分散剤、保水剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味料、香料、フレーバー剤、抗細菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、および延長送達調節剤からなる群より選択される構成要素の少なくとも1つを含む組成物を意味し、その選択および適切な比率は、投与および投薬の性質および方法に依存する。例示的な懸濁剤は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン、ソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガーおよびトラガカント、ならびにその混合物である。多様な抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、および類似の化合物によって、微生物作用に対する保護を提供してもよい。組成物には、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等も含まれてもよい。吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸およびゼラチンを用いることによって、組成物の作用延長を提供してもよい。適切なキャリアー、溶媒、希釈剤、または送達剤の例は、水、エタノール、ポリアルコールおよびその混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能有機エステル(例えばオレイン酸エチル)である。例示的な充填剤は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等である。分散剤および分配剤の例は、デンプン、アルギン酸およびその塩、ケイ酸塩である。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量のポリエチレングリコールである。剤の、単独でのまたは別の剤と組み合わせた、経口、舌下、経皮、筋内、静脈内、皮下、局所または直腸投与のための薬学的組成物を、慣用的薬学的キャリアーとの混合物として、標準投与型で、動物およびヒトに投与してもよい。適切な標準投与型には、経口型、例えば錠剤、ゼラチンカプセル、丸剤、粉末、顆粒、チューインガムおよび経口溶液または懸濁物、舌下および頬側投与型、エアロゾル、移植物、局所、経皮、皮下、筋内、静脈内、鼻内、または眼内投与型および直腸投与型が含まれる。
【0109】
「薬剤(医薬品)」は、ヒトおよび動物において、生理学的機能を回復するか、修正するかまたは修飾することが意図される、そしてまた、疾患の治療および防止、診断、麻酔、避妊、美容術、およびその他のための、錠剤、カプセル、注射剤、軟膏型および他のすぐ使用できる型の物質(または薬学的組成物型の物質混合物)を意味する。
【0110】
用語「PD-L1仲介性疾患または障害」は、疾患または障害の病因、発生、進行、持続または病理を含めて、PD-L1に直接または間接的のいずれかで関連するすべての疾患または障害を意図する。
【0111】
「治療する」、「治療」および「療法」は、生物学的障害および/またはその関連する症状の少なくとも1つを減弱させるかまたは排除する方法を指す。本明細書において、疾患、障害または状態を「緩和する」ことは、疾患、障害または状態の症状の重症度および/または発生を減少させることを意味する。さらに、本明細書における「治療」への言及には、治癒的、対症的および予防的療法への言及が含まれる。
【0112】
1つの側面において、治療の被験体または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。上記被験体は、任意の年齢の男性または女性であってもよい。
用語「障害」は、本発明の治療によって改善されうる任意の状態を意味する。この用語の定義には、慢性および急性障害または疾患が含まれ、これには、哺乳動物の障害顕在化に対する素因を引き起こす病理学的状態が含まれる。治療すべき疾患の限定されない例には、良性および悪性腫瘍;白血病およびリンパ悪性疾患、特に乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓、前立腺または膀胱癌;神経、グリア、星状細胞、視床下部および他の腺、マクロファージ、上皮、間質および胞胚腔(blastocoelic)障害;炎症性、血管新生および免疫学的障害が含まれる。本発明にしたがって治療すべき好ましい障害は、癌である。
【0113】
用語「癌」および「癌性」は、典型的には、制御されない細胞成長/増殖によって特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態を指すかまたは記載する。この定義に含まれるのは、良性および悪性癌である。癌の例には、限定されるわけではないが、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病が含まれる。こうした癌のより特定の例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃(gastricまたはstomach)癌、膵臓癌、神経膠芽腫、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(例えば腎細胞癌)、前立腺癌、膣癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、および多様なタイプの頭頸部癌が含まれる。
【0114】
用語「免疫反応」、「自己免疫反応」、および「自己免疫炎症」は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食作用細胞、顆粒球、およびこれらの細胞または肝細胞によって産生される可溶性巨大分子(侵襲性病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌性細胞、あるいは自己免疫または病的炎症の場合、正常ヒト細胞または組織に対する選択的損傷、これらの破壊、あるいはヒト体内からのこれらの排除から生じる、抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用を指す。
【0115】
「療法的有効量」は、治療中の疾患の1つまたはそれより多い症状を、ある程度まで緩和するであろう、治療中に投与される療法剤の量と見なされる。
用語「長期の(chronic)」適用は、長期間、初期の療法効果(活性)を維持するような、急性(短期)投与とは対照的な、剤(単数または複数)の連続(延長された)使用を指す。
【0116】
「断続的」使用は、中断を伴わずに一貫して実行するのではなく、事実上、周期的である治療を指す。
本明細書において、そして続く請求項において、背景が別に必要としない限り、単語「有する(have)」、「含有する(contain)」および「含む(comprise)」あるいはその変形、例えば「有する(has)」、「有すること(having)」、「含有する(contains)」、「含有すること(containing)」、「含む(comprises)」または「含むこと(comprising)」は、言及する整数または整数群を含むが、いかなる他の整数または整数群の排除も伴わないと理解されるものとする。
【0117】
発明の詳細な説明
抗体
本発明は、PD-L1(プログラム細胞死リガンド1タンパク質)に結合する抗体または抗原結合断片に関する。
【0118】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)APLLLAMTFGVGS(配列番号3)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR3を含む重鎖可変領域、および
(b)ALYMGNGGHM(配列番号7)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0119】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)APLLLAMTFGVGS(配列番号3)のアミノ酸配列を持つCDR3を含む重鎖可変領域、および
(b)ALYMGNGGHM(配列番号7)のアミノ酸配列を持つCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0120】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
(i)DYAMS(配列番号1)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR1、
(ii)DISWSGSNTNYADSVKG(配列番号2)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR2、
(iii)APLLLAMTFGVGS(配列番号3)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR3
を含む重鎖可変領域、および
(b)
(i)GLSSGTVTAINYPG(配列番号5)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR1、
(ii)NTNTRHS(配列番号6)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR2、
(iii)ALYMGNGGHM(配列番号7)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つCDR3
を含む軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0121】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
(i)DYAMS(配列番号1)のアミノ酸配列を持つCDR1、
(ii)DISWSGSNTNYADSVKG(配列番号2)のアミノ酸配列を持つC
DR2、
(iii)APLLLAMTFGVGS(配列番号3)のアミノ酸配列を持つCDR3を含む重鎖可変領域、および
(b)
(i)GLSSGTVTAINYPG(配列番号5)のアミノ酸配列を持つCDR1、
(ii)NTNTRHS(配列番号6)のアミノ酸配列を持つCDR2、
(iii)ALYMGNGGHM(配列番号7)のアミノ酸配列を持つCDR3
を含む軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0122】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
【0123】
【0124】
(配列番号4)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、および
(b)
【0125】
【0126】
(配列番号8)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0127】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
【0128】
【0129】
(配列番号4)のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、および
(b)
【0130】
【0131】
(配列番号8)のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域
を含む、単離抗体またはその抗原結合断片に関する。
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
【0132】
【0133】
(配列番号9)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、および
(b)
【0134】
【0135】
(配列番号10)の配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域
を含む、単離抗体に関する。
【0136】
1つの態様において、本発明は、PD-L1に結合し、そして:
(a)
【0137】
【0138】
(配列番号9)のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域;
(b)
【0139】
【0140】
(配列番号10)のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域
を含む、単離抗体を提供する。
本発明の1つの態様において、PD-L1に結合する単離抗体は、モノクローナル抗体である。
【0141】
本発明の1つの態様において、PD-L1に結合するモノクローナル抗体は、全長IgG抗体である。
本発明の1つの態様において、全長IgG抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプのものである。
【0142】
本発明の1つの態様において、全長IgG抗体はヒトIgG1アイソタイプのものである。
本発明の1つの態様において、単離抗体は、PD-L1に結合し、そして配列番号3のアミノ酸配列を持つCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号7のアミノ酸配列を持つCDR3を含む軽鎖可変領域を含有する、BCD-135抗体である。
【0143】
本発明の1つの態様において、単離抗体は、PD-L1に結合し、そして配列番号1~3の対応するアミノ酸配列を持つCDR1~3を含む重鎖可変領域、および配列番号5~7の対応するアミノ酸配列を持つCDR1~3を含む軽鎖可変領域を含有する、BCD-135抗体である。
【0144】
本発明の1つの態様において、単離抗体は、PD-L1に結合し、そして配列番号4のアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、および配列番号8のアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域を含有する、BCD-135抗体である。
【0145】
本発明の1つの態様において、単離抗体は、PD-L1に結合し、そして配列番号9のアミノ酸配列を持つ重鎖、および配列番号10のアミノ酸配列を持つ軽鎖を含有する、BCD-135抗体である。
【0146】
核酸分子
本発明はまた、本明細書に記載する本発明の抗PD-L1抗体をコードする核酸分子および配列にも関する。ある態様において、抗PD-L1抗体の第一のドメインおよび第二のドメインのアミノ酸配列は、多様な核酸分子によってコードされる。第一のドメインおよび/または第二のドメインが重鎖および軽鎖を含む場合、ある態様において、重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、多様な核酸によってコードされる。他の態様において、重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、同じ核酸分子によってコードされる。特定の態様において、核酸分子は、第一および第二のドメインの任意の組み合わせのアミノ酸配列(例えば重鎖および軽鎖配列)をコードしてもよい。特定の態様において、核酸分子は、第一の結合ドメインのアミノ酸配列および第二の結合ドメインの軽鎖アミノ酸配列をコードしてもよく、所望により、それらを連結するペプチドリンカーの任意の配列を含んでもよい。ヌクレオチ
ド配列に対する言及は、別に明記しない限り、その相補体を含む。したがって、特定の配列を有する核酸に対する言及は、その相補配列を有するその相補鎖を含むと理解しなければならない。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において、長さ少なくとも10塩基の、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかであるか、あるいはヌクレオチドのいずれかのタイプの修飾型の、ヌクレオチドのポリマー型を意味する。該用語には、一本鎖および二本鎖型が含まれる。
【0147】
本発明はまた、配列番号1~3、5~7からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする上記ヌクレオチド配列の1つまたはそれより多くに、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列にも関する。特定の態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号4または8からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。本発明はまた、配列番号9~10からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする上記ヌクレオチド配列の1つまたはそれより多くに、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列にも関する。
【0148】
1つの側面において、本発明は、配列番号1~10より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。核酸分子はまた、これらのヌクレオチド配列の任意の組み合わせも含んでもよい。1つの態様において、核酸分子は、配列番号3のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列および配列番号7のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、核酸分子は、配列番号1~3のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列および配列番号5~7のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、核酸分子は、配列番号4のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列および配列番号8のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。1つの態様において、核酸分子は、配列番号9のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列および配列番号10のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0149】
上記態様のいずれにおいても、核酸分子は単離されていてもよい。
抗PD-L1抗体またはその部分を産生する任意の供給源から、本発明の核酸分子を単離してもよい。特定の態様において、本発明の核酸分子を合成するが単離しなくてもよい。
【0150】
ある態様において、本発明の核酸分子は、任意の供給源由来の重鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームでカップリングした、本発明の抗PD-L1抗体由来の第一または第二のドメインのVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。同様に、本発明の核酸分子は、任意の供給源由来の軽鎖定常ドメインをコードするヌクレオチド配列にインフレームで組み合わされた、本発明の抗PD-L1抗体由来の第一または第二のドメインのVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0151】
本発明の別の側面において、第一または第二の結合ドメインの重(VH)鎖および軽(VL)鎖の可変ドメインをコードする核酸分子を、全長抗体遺伝子に「変換」してもよい。1つの態様において、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(単数または複数)に機能可能であるように連結され、そして/またはVLセグメントがベクター内のCLセグメントに機能可能であるように連結されるように、それぞれ、重鎖定常(CH)または軽鎖定常(CL)ドメインをすでにコードする発現ベクター内に挿入することによって、VHまたはVLドメインをコードする核酸分子を全長抗体遺伝子に変換する。別の態様において、標準的分子生物学技術を用いて、CHおよび/またはCLドメインをコードする核酸分子に、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を結びつける、例
えば連結することによって、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸分子を、全長抗体遺伝子に変換する。次いで、全長重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子を、これらが導入されている細胞から発現させてもよい。
【0152】
核酸分子を用いて、多量の組換え抗PD-L1抗体を発現させてもよい。核酸分子を用いて、本明細書に記載するようなヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、ディアボディ、突然変異抗体および抗体誘導体を産生してもよい。
【0153】
ベクター
さらに別の側面において、本発明は、本明細書記載の任意のヌクレオチド配列の発現に適したベクターに関する。
【0154】
本発明は、本明細書に記載するような抗PD-L1抗体またはその部分(例えば第一の結合ドメイン重鎖および第二の結合ドメイン重鎖および/または軽鎖配列)のアミノ酸配列いずれかをコードする核酸分子を含有するベクターに関する。本発明はさらに、融合タンパク質、修飾抗体、抗体断片をコードする核酸分子を含むベクターに関する。
【0155】
本発明の別の態様において、核酸分子およびベクターを用いて、突然変異抗PD-L1抗体を産生してもよい。第一および/または第二の結合ドメイン重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン内で抗体を突然変異させて、例えば抗PD-L1抗体の結合アフィニティを改変してもよい。例えば、突然変異は1つまたはそれより多いCDR領域中で生じて、抗PD-L1抗体のKDを増加させるかまたは減少させるか、kоffを増加させるかまたは減少させるか、あるいはPD-L1に対する抗体の結合特異性を修飾してもよい。別の態様において、1つまたはそれより多くの突然変異に供されるのは、本発明の抗PD-L1抗体の第一または第二の結合ドメインに対応する抗体において、生殖系列に比較して改変されていることが知られるアミノ酸残基である。これらの突然変異を、可変ドメインまたは定常ドメイン内のCDR領域またはフレームワーク領域中で行ってもよい。本発明の好ましい態様において、可変ドメイン内で突然変異を産生する。本発明の別の態様において、1つまたはそれより多くの突然変異に供されるのは、本発明の抗PD-L1抗体中の可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域において、生殖系列に比較して改変されていることが知られるアミノ酸残基である。
【0156】
ある態様において、遺伝子が、必要な発現制御配列、例えば転写および翻訳制御配列に機能可能であるように連結されるように、発現ベクターにおいて、上述のように得られる、第一および第二の結合ドメインの配列(例えば結合ドメインが重鎖および軽鎖の配列を含む、重鎖および軽鎖の配列)を部分的にまたは完全にコードするDNAを挿入することによって、本発明の抗PD-L1抗体を発現する。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソーム等が含まれる。ベクターにおける転写および翻訳を制御する配列が、DNA転写および翻訳制御の意図される機能をもたらすように、DNA分子をベクター内に連結してもよい。用いる発現宿主細胞と適合するように、発現ベクターおよび発現制御配列を選択してもよい。第一および第二の結合ドメインの部分または全長配列(例えば結合ドメインが重鎖および軽鎖の配列を含む、重鎖および軽鎖配列の配列)をコードするDNA分子を、別個のベクター内に挿入してもよい。本発明の1つの態様において、上記DNA分子の任意の組み合わせを、同じ発現ベクター内に導入する。標準法(例えば抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位の連結、または制限部位がない場合は平滑端連結)によって、DNA分子を発現ベクター内に導入してもよい。
【0157】
適切なベクターは、上述のように、ヒトCHまたはCL免疫グロブリンの機能的に完全な配列をコードして、任意のVHまたはVL配列を容易に取り込み、そして発現することが可能であるように、適切な制限部位を設計するものである。こうしたベクター内のNAおよびLCコード遺伝子は、対応するmRNAを安定化させることによって、タンパク質抗体産物の全体の増加を導くイントロン配列を含有してもよい。イントロン配列は、スプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位に取り巻かれ、これらの部位は、どこでRNAスプライシングが起こるかを決定する。いくつかのイントロンを用いる場合、イントロン配列は、抗体鎖の可変または定常領域内のいずれか、あるいは可変および定常領域の両方に位置してもよい。ポリアデニル化および転写終結は、天然染色体部位をコードする領域の下流であってもよい。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞による抗体鎖の産生を容易にするシグナルペプチドもコードしてもよい。免疫グロブリン鎖のリーディングフレームアミノ末端にシグナルペプチドが連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター内にクローニングしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち天然免疫グロブリンタンパク質のものではないシグナルペプチド)であってもよい。
【0158】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を所持してもよい。当業者は、制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因に応じる可能性もあることを認識するであろう。哺乳動物発現宿主細胞に好ましい制御配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を確実にする、ウイルス要素、例えばレトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばラージ・アデノウイルス後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびに強力な哺乳動物プロモーター、例えば天然免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターが含まれる。ウイルス制御要素、およびその配列のさらなる説明に関しては、例えば、米国特許第5,168,062号;第4,510,245号;および第4,968,615号を参照されたい。植物における結合分子、例えば抗体の発現のための方法は、プロモーターおよびベクターの説明、ならびに植物の形質転換を含めて、当該技術分野に知られる。例えば米国特許第、6,517,529号を参照されたい。細菌細胞または真菌細胞、例えば酵母細胞におけるポリペプチドの発現のための方法もまた、当該技術分野に周知である。
【0159】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)および選択可能マーカー遺伝子を所持してもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば米国特許第4,399,216号;第4,634,665号;および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に対して、薬剤、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートに対する耐性を与える。例えば、選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)(選択/MTX増幅とともに、dhfr宿主細胞において使用するためのもの)、neо遺伝子(G418での選択のため)、およびグルタミン酸シンテターゼ遺伝子が含まれる。
【0160】
用語「発現制御配列」は、本明細書において、これらが連結されるコード配列の発現およびプロセシングを達成するために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増進させる配列(すなわちKozakコンセンサス
配列);タンパク質安定性を増進させる配列;ならびに、所望により、タンパク質分泌を増進させる配列が含まれる。こうした制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物においては、こうした制御配列には、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれ;真核生物においては、一般的に、こうした制御配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「制御配列」には、その存在が、発現およびプロセシングに必須である少なくともすべての構成要素が含まれ、そしてまた、これにはその存在が有用であるさらなる構成要素、例えばリーダー配列および融合した細胞配列も含まれてもよい。
【0161】
宿主細胞
本発明のさらなる側面は、本発明の抗PD-L1抗体を産生するための方法に関する。本発明の1つの態様は、抗PD-L1抗体を発現可能な組換え宿主細胞を提供し、前記宿主細胞を、抗PD-L1抗体の産生に適した条件下で培養し、そして産生された抗PD-L1抗体を回収する工程を含む、本明細書に定義するような抗PD-L1抗体を産生するための方法に関する。こうした組換え宿主細胞におけるこうした発現によって産生された抗PD-L1抗体は、本明細書において、「組換え抗PD-L1抗体」と称される。本発明はまた、こうした宿主細胞の子孫細胞に、そして同じ方法によって得られた抗PD-L1抗体にも関する。
【0162】
本発明の抗PD-L1抗体をコードする核酸分子、およびこれらの核酸分子を含むベクターを、適切な哺乳動物、植物、細菌または酵母宿主細胞のトランスフェクションに用いてもよい。変換は、宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための任意の既知の方法によって起こってもよい。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞内に導入するための方法は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、デキストラン仲介性トランスフェクション、核酸および正荷電ポリマー複合体トランスフェクション、核酸およびリン酸カルシウム沈降トランスフェクション、ポリブレン仲介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム中に被包されたポリヌクレオチドによるトランスフェクション、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。さらに、ウイルスベクターによって、核酸分子を哺乳動物細胞内に導入してもよい。細胞を形質転換するための方法は、当該技術分野に周知である。例えば、米国特許第4,399,216号;第4,912,040号;第4,740,461号;および第4,959,455号を参照されたい。植物細胞を形質転換するための方法が当該技術分野に周知であり、これには、例えばアグロバクテリウム仲介性形質転換、微粒子銃形質転換、直接注入、エレクトロポレーション、およびウイルス形質転換が含まれる。細菌および酵母細胞を形質転換するための方法もまた、当該技術分野において周知である。
【0163】
形質転換のための宿主として用いられる哺乳動物細胞株は、当該技術分野に周知であり、そしてこれには、多くの不死化された入手可能な細胞株が含まれる。これらには、特に、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NS0細胞、SP2、HEK-293T細胞、Freestyle 293細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル(African green monkey)腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、A549細胞、および多くの他の細胞株が含まれる。細胞株は、どの細胞株が、産生されるタンパク質の高発現レベルを有し、そしてその望ましい特性を提供するかを決定することを通じて選択される。用いてもよい他の細胞株は、昆虫細胞株、例えばSf9またはSf21細胞である。抗PD-L1抗体をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞内に導入する場合、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地中での抗体の放出に十分な期間、宿主細胞を培養することによって、抗体を産生する。標準的タンパク質精製法を用いて、培地から抗PD-L1抗体を回収してもよい。植物宿主細胞には、例えばタバコ属(Nicotiana)、シロ
イヌナズナ属(Arabidopsis)、ウキクサ(duckweed)、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ等が含まれる。細菌宿主細胞には、大腸菌(E. coli)およびストレプトミセス属(Streptomyces)種が含まれる。酵母宿主細胞には、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0164】
さらに、多くの既知の方法を用いて、産生細胞株からの本発明の抗PD-L1抗体の産生レベルを増進させてもよい。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で、発現を増進させるために非常に一般的である。GS系は、一般的に、または部分的に、EP特許第0216846号、第0256055号、第0323997号、および第0338841号と関連して論じられる。
【0165】
異なる細胞株またはトランスジェニック動物由来の抗PD-L1抗体は、グリコシル化プロファイルが異なる可能性がある。しかし、本明細書記載の核酸分子によってコードされるか、または本明細書に示すアミノ酸配列を含む、すべての抗PD-L1抗体は、結合分子グリコシル化状態にかかわらず、そして一般的に、翻訳後修飾の存在または非存在に関わらず、本発明の一部である。
【0166】
抗体調製
本発明はまた、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片を産生するための方法およびプロセスにも関する。
【0167】
モノクローナル抗体
Kohlerら, Nature, 256, 1975, p. 495に最初に記載されたハイブリドーマに基づく方法を用いてモノクローナル抗体を作製してもよいし、または組換えDNA法によって作製してもよい(US 4,816,567)。
【0168】
ハイブリドーマに基づく方法において、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを、本明細書に上述するように免疫して、免疫に用いるタンパク質に特異的に結合することが可能な抗体を産生するかまたは産生することが可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。免疫後、リンパ球を単離し、そして適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて、骨髄腫細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic
Press, 1986, pp. 59-103)。
【0169】
こうして調製したハイブリドーマ細胞を、融合していない親骨髄腫の増殖または生存を阻害する1つまたはそれより多い物質を好ましくは含有する、適切な培地中にプレーティングし、そして増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)、すなわちHGPRT不全細胞の増殖を防止する物質を含むものとする。
【0170】
細胞融合の構成要素として用いることが好ましい骨髄腫細胞は、容易に融合し、選択した抗体産生細胞による安定な高レベルの抗体産生を維持し、そして未結合親細胞を選択する選択培地に感受性である細胞である。好ましい骨髄腫細胞株は、ネズミ骨髄腫細胞株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、米国カリフォルニア州サンディエゴから入手可能な、MOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍由来のもの、ならびにAmerican Type Culture
Collection、米国メリーランド州ロックビルから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞である。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されてきている(Kozbor, J. Immunol., 133, 1984, p. 3001;およびBrodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker Inc., New York, 1987, pp. 51-63)。
【0171】
好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、決定される。
【0172】
また、Munsonら, Anal. Biochem., 107, 1980, p. 220に記載されるスキャッチャード分析によって、モノクローナル抗体またはその一部の結合アフィニティを決定してもよい。
【0173】
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞の同定に際して、限界希釈法によってクローンをサブクローニングして、そして標準法によって増殖させてもよい(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986, pp. 59-103)。この目的のために有用な培地には、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、例えばマウスへの細胞の腹腔内(i.p.)注射によって、動物における腹水腫瘍として、ハイブリドーマ細胞をin vivoで増殖させてもよい。
【0174】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体を、慣用的免疫グロブリン精製法、例えばアフィニティクロマトグラフィ(例えばプロテインAまたはプロテインQ-セファロース)またはイオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析等によって、培地、腹水、または血清から分離してもよい。
【0175】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用的方法を用いて(例えばネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離し、そして配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、こうしたDNAの好ましい供給源として働く。ひとたび単離されたら、DNAを発現ベクター内に入れてもよく、これを次いで、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクションして、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体合成を提供する。抗体をコードするDNAの細菌における組換え体発現に関する概説論文に関しては、Skerraら, Curr. Opinion in Imunol.,
5, 1993, pp. 256-262、およびPliickthun, Immunol. Revs. 130, 1992, pp. 151-188を参照されたい。
【0176】
本発明のさらなる態様において、McCaffertyら, Nature, 348, 1990, pp. 552-554に記載される技術を用いて生成される抗体ファージライブラリーから、モノクローナル抗体または抗体断片を単離してもよい。Clacksonら, Nature, 352, 1991, pp. 624-628およびMarksら, J. Mol. Biol., 222, 1991, pp. 581-597は、ファージライブラリーを用いて、それぞれ、ネズミおよびヒト抗体の単離を記載する。続く刊行物は、鎖シャフリングによる、高アフィニティ(nM範囲)のヒト
抗体の産生(Marksら, Bio/Technology, 10, 1992, pp. 779-783)、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染およびin vivo組換え(Waterhouseら, Nucl. Acids. Res., 21, 1991, pp. 2265-2266)を記載する。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマに基づく技術に対する有望な代替法である。
【0177】
また、例えば、重鎖および軽鎖(CHおよびCL)定常領域の配列を、相同ネズミ配列に対して置換することによって(US 4,816,567;およびMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 81, 1984, p. 6851)、あるいは非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)をコードする配列のすべてまたは一部に対して免疫グロブリンコード配列を共有連結することによって、例えばキメラまたは融合抗体ポリペプチドが得られるように、抗体をコードするDNAを修飾してもよい。非免疫グロブリンポリペプチド配列を、抗体定常領域で置換するか、または抗体抗原結合部位の可変領域で置換して、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位、および別の抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含有する、キメラ二価抗体を生成してもよい。
【0178】
ヒト化抗体
非ヒト動物において、「ヒト化」抗体を生成するための方法が当該技術分野に知られる。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒト供給源由来の本明細書に取り込まれる1つまたはそれより多いアミノ酸残基を有する。非ヒト供給源から得られるこれらのアミノ酸残基は、通常、「移入される(imported)」可変領域から得られるため、しばしば、「移入」残基と称される。超可変領域配列を、対応するヒト抗体の配列で置換することによって、Winterおよび同僚ら(Jonesら, Nature, 321, 1986, pp. 522-525; Riechmannら, Nature, 332, 1988, pp. 323-327; Verhoeyenら, Science, 239, 1988, pp. 1534-1536)の方法にしたがって、ヒト化を本質的に実行してもよい。したがって、「ヒト化」抗体は、損なわれていない(intact)ヒト可変領域より実質的に少ない領域が、非ヒト種から対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(US 4,816,567)。実際、ヒト化抗体は、典型的には、ある超可変領域残基、並びに、おそらくあるFR残基が、齧歯類抗体中の類似領域由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0179】
ヒト化抗体を作製する際に用いるべき軽鎖および重鎖両方のヒト可変ドメインの選択は、抗体をヒト治療に意図する際、抗原性およびHAMA反応(ヒト抗ネズミ抗体)を減少させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法にしたがって、齧歯類抗体の可変領域の配列を、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。齧歯類のものに最も近いヒトV領域配列を同定し、そしてヒト化抗体で使用するために適したヒトフレームワーク(FR)をその中で選択する(Simsら, J. Immunol., 151, 1993, p. 2296); Chothiaら, J. Mol. Biol., 196, 1987, p. 901)。別の方法は、ヒト抗体軽鎖または重鎖すべての特定の下位群のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを用いる。いくつかの異なるヒト化抗体に関して、同じフレームワークを用いてもよい(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 89, 1992, p. 4285; Prestaら, J. Immunol., 151, 1993, p. 2623)。
【0180】
抗原に対する高い結合アフィニティおよび他の好ましい生物学的特性を保持しながら、
抗体をヒト化することがさらに重要である。この目的を達成するため、好ましい方法にしたがって、親およびヒト化配列の概念的三次元モデルを用いた、親配列および多様なヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、そして当業者によく知られる。選択された候補免疫グロブリン配列のありうる三次元コンホメーション構造を例示し、そしてディスプレイする、コンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイを検査することで、候補免疫グロブリン配列が機能する際の残基のありうる役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。この方法で、所望の抗体特性、例えばターゲット抗原(単数または複数)に対するアフィニティ増加が達成されるように、レシピエントおよび移入配列からFR残基を選択し、そして組み合わせてもよい。一般的に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼす際に、直接、そして最も実質的に関与する。
【0181】
ヒト化抗体は、所望により、1つまたはそれより多い細胞傷害剤(単数または複数)とコンジュゲート化して、免疫コンジュゲートを生成する、抗体断片、例えばFab断片であってもよい。あるいは、ヒト化抗体は、全長抗体、例えば全長IgG1抗体であってもよい。
【0182】
ヒト抗体およびファージディスプレイライブラリー技術
ヒト化の代替物として、ヒト抗体を得てもよい。例えば、現在、免疫に際して、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の全範囲を産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異体マウスにおいて、抗体重鎖連結領域(JHセグメント)遺伝子のホモ接合性欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されてきている。こうした生殖系列突然変異体マウス内へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイのトランスファーは、抗原曝露に際して、ヒト抗体の産生を生じる(例えば、Jakobovitsら,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 90, 1993, p. 2551; Jakobovisら, Nature, 362, 1993, pp. 25-258; Bruggemannら, Year in Immuno.,
7, 1993, p. 33; US 5,545,806; 5,569,825; 5,591,669 (すべてGenPharm); US 5,545,807;およびWO 97/17852を参照されたい)。
【0183】
あるいは、免疫されたドナー由来の免疫グロブリン変異領域(V)範囲からin vitroでヒト抗体および抗体断片を産生するため、ファージディスプレイ技術を用いてもよい(McCaffertyら, Nature, 348, 1990, pp. 552-553)。この技術にしたがって、抗体V領域遺伝子を、糸状バクテリオファージ、例えばM13またはfdのエンベロープタンパク質のメジャーまたはマイナーいずれかの遺伝子と同じリーディングフレームでクローニングして、そしてファージ粒子表面上で、機能性抗体断片として提示させる。糸状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択はまた、前記特性を有する抗体をコードする遺伝子の選択も生じる。したがって、ファージは、B細胞のある種の特性を模倣する。多様な形式で、ファージ提示を実行してもよい(概説に関しては、例えば、Johnson Kevin S.およびChiswell David J., Current
Opinion in Structural Biology, 3, 1993,
pp. 564-571を参照されたい)。ファージ提示のため、V遺伝子セグメントの異なる供給源を用いてもよい。Clacksonら, Nature, 352, 1991, pp. 624-628は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さい恣意的コンビナトリアルライブラリーから、多様なセットの抗オキサゾロン抗体を単離した。免疫ヒトドナーから得られる多様なV遺伝子を設計することが可能であり、そして異な
るセットの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、一般的に、Marksら, J. Mol. Biol., 222, 1991, pp. 581-597、またはGriffithら, EMBO J., 12, 1993, pp. 725-734に記載される方法にしたがって、単離してもよい(US 5,565,323;および5,537,905もまた参照されたい)。
【0184】
また、上述のように、活性化B細胞によって、in vitroでヒト抗体を産生してもよい(US 5,567,610およびUS 5,229,275を参照されたい)。
抗体断片
特定の場合、全抗体よりも抗体断片を用いることが望ましい。より小さいサイズの断片は、迅速なクリアランスに寄与し、そして固形腫瘍内へのより優れた浸透に寄与しうる。
【0185】
抗体断片の産生のため、多様な技術が開発されてきている。伝統的には、これらの断片は、損なわれていない抗体のタンパク質分解的消化を通じて得られた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24, 1992, pp. 107-117、およびBrennanら, Science, 229, 1985, p. 81を参照されたい)。しかし、現在は、これらの断片を、組換え宿主細胞によって直接産生してもよい。抗体のFab、FvおよびscFv断片を、多量のこれらの断片の産生を容易にすることを可能にする大腸菌で発現させ、そして該大腸菌から分泌させてもよい。上記ファージ抗体ライブラリーから、抗体断片を単離してもよい。別の態様において、大腸菌から、Fab’-SH断片を直接単離し、そして化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成してもよい(Carterら, Bio/Technology, 10, 1992, pp. 163-167)。別のアプローチにしたがって、組換え宿主細胞の培養から、F(ab’)2断片を直接単離してもよい。エピトープ結合受容体の残基が保持されている、増加したin vivo半減期を持つFabおよびF(ab’)2断片が、US 5,869,046に記載される。抗体断片を調製する他の方法が、当業者に明らかであるはずである。他の態様において、選択する抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である(WO 93/16185、US 5,571,894、およびUS 5,587,458を参照されたい)。FvおよびsFvのみが、定常領域を欠く、損なわれていない結合部位を持つ種である;その結果、in vivoで用いる際、非特異的結合を減少させるために、これらを用いてもよい。sFvを所持する融合タンパク質を設計して、sFvのNまたはC末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合を生じてもよい(Antibody Engineering, Borrebaeck監修、上記を参照されたい)。抗体断片はまた、例えばUS 5,641,870に記載されるように、「直鎖抗体」であってもよい。直鎖抗体のこうした断片は、単一特異性または二重特異性であってもよい。
【0186】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに特異的に結合することが可能な抗体である。例えば、二重特異性抗体は、PD-L1タンパク質の2つの異なるエピトープに結合しうる。他の二重特異性抗体は、別のタンパク質に関する結合部位と組み合わせて、PD-L1に関する結合部位を所持してもよい。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば二重特異性抗体のF(ab’)2断片)として得られてもよい。
【0187】
二重特異性抗体を作製するための方法が、当該技術分野に周知である。全長二重特異性抗体の伝統的な産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで、両鎖は異なる特異性を有する(Millsteinら, Nature, 305, 1983, pp. 537-539)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな仕分けのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在
的な混合物を産生し、このうち1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常、いくつかのアフィニティクロマトグラフィ工程によって行われる正しい分子の精製は、かなりやっかいで、そして産物収量は低い。類似の方法が、WO 93/08829、およびTrauneckerら, EMBO J., 10, 1991, pp. 3655-3659に開示される。
【0188】
異なるアプローチにしたがって、所望の結合特性を持つ抗体可変ドメイン(抗体抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常領域配列に融合させる。融合は、好ましくは、ヒンジCH2およびCH3領域の少なくとも一部を含むIg重鎖定常領域で行われる。融合体の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および望ましい場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクター内に挿入し、そして適切な宿主生物内に同時トランスフェクションする。これは、最適な収量を提供するため、構築物中で3つのポリペプチド鎖の不均等な比率を用いる場合の態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に、大きな柔軟性を提供する。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収量を生じるか、または比が特に重要でない場合、1つの発現ベクター中に、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することも可能である。
【0189】
このアプローチの好ましい態様において、二重特異性抗体は、1つのアームにおける第一の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)で構成される。分離を容易にするために、二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在するため、この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから、望ましい二重特異性分子の分離を容易にすることが見出された。このアプローチは、WO 94/04690に開示される。二重特異性抗体を生成するさらなる詳細に関しては、例えば、Sureshら, Methods in Enzymology, 121, 1986,
p. 210を参照されたい。
【0190】
US 5731168に記載される別のアプローチにしたがって、抗体分子対の間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大限にしてもよい。好ましい界面は、CH3領域の少なくとも部分を含む。この方法において、第一の抗体分子の界面に由来する1つまたはそれより多い小分子アミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置換される。大きなアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えばアラニンまたはスレオニン)で置換することによって、第二の抗体分子の界面で、大きい側鎖(単数または複数)に対する同一のまたは類似のサイズの代償性「空洞」を生成する。これは、他の望ましくない最終産物、例えばホモ二量体よりもヘテロ二量体の収量を増加させるための機構を提供する。
【0191】
二重特異性抗体には、架橋された抗体または「ヘテロコンジュゲート」が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の1つをアビジンにカップリングし、他方をビオチンにカップリングしてもよい。例えば、こうした抗体を用いて、望ましくない細胞に対して免疫系細胞をターゲティングしてもよく(US 4,676,980)、そしてHIV感染の治療のために用いてもよい(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)。任意の好適な架橋法を用いて、ヘテロコンジュゲート抗体を作製してもよい。適切な架橋剤が当該技術分野に周知であり、そして多くの架橋技術とともに、US 4,676,980に記載される。
【0192】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術もまた、文献に記載されてきている。例えば、化学的連結を用いて、二重特異性抗体を調製してもよい。Brennanら,
Science, 229, 1985, p. 81は、損なわれていない抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab’)2断片を生成する方法を記載する。これらの断片は、ジチオール錯化剤、例えばヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接するジチオールを安定化させ、そして分子間ジスルフィド結合形成を防止する。次いで、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、メルカプトエチルアミンで還元することによって、Fab’-TNB誘導体の1つをFab’-チオールに再変換して、そして等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を生成する。産生した二重特異性抗体を、酵素の選択的固定のための剤として用いてもよい。
【0193】
現在の進歩は、Fab’-SH断片を大腸菌から直接回収することを促進することが可能であり、これを化学的にカップリングして二重特異性抗体を形成してもよい。Shalabyら, J. Exp. Med., 175, 1992, pp. 217-225は、完全ヒト化二重特異性抗体分子F(ab’)2断片の産生を記載した。各Fab’断片を大腸菌から別個に分離し、そしてin vitroで直接化学的カップリングに供して、二重特異性抗体を形成した。こうして得た二重特異性抗体は、ErbB2受容体の過剰発現によって特徴づけられる細胞、および正常ヒトT細胞に結合する能力を有するとともに、ヒト乳房腫瘍によってターゲティングされるヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を刺激する能力を有した。
【0194】
組換え細胞培養から直接、二重特異性抗体断片を作製し、そして単離するための多様な技術もまた記載されてきている。例えば、ロイシン「ジッパー」を用いて、二重特異性抗体を産生してもよい(Kostelnyら, J. Immunol., 148(5), 1992, pp. 1547-1553)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシン「ジッパー」ペプチドを、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’断片に連結した。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して、単量体を形成し、そして次いで、再度酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体を産生するために用いてもよい。Hollingerら, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 90, 1993, pp. 6444-6448に記載される「ディアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替機構である。該断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変(VL)領域に連結された、重鎖可変(VH)領域を含む。したがって、1つの断片のVHおよびVL領域は、別の断片の相補的VLおよびVH領域と対形成するように強いられ、それによって、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用に基づいて、二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略もまた、報告されてきている(Gruberら, J. Immunol, 152, 1994, p. 5368を参照されたい)。
【0195】
2より多い価数を有する抗体もまた、本発明の範囲内に属する。例えば、三重抗体を調製してもよい(Tuttら, J. Immunol., 147, 1991, p.
60)。
【0196】
多価抗体
抗原を発現する細胞によって、多価抗体は内在化(そして/または異化)可能であり、該抗原に該抗体は二価抗体よりも迅速に結合する。本発明の抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に調製可能である、3つまたはそれより多い抗原結合部位(例えば四価抗体)を含む多価抗体(非IgMクラス)であってもよい。多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つまたはそれより多い抗原結合部位を含んでもよい。好ましい二量体化ドメインは、Fc断片またはヒンジ領域を含む(またはそれらからなる)。こうした場合、抗体は、Fc断片、およびFc断片に対してN末端に位置する3
つまたはそれより多い抗原結合部位を含有するはずである。本明細書において、好ましい多価抗体は、3つ~約8つであるが、好ましくは4つの抗原結合部位を含む(またはそれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(および好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖(単数または複数)は、2つまたはそれより多い可変領域を含む。例えば、ポリペプチド鎖(単数または複数)は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含んでもよく、ここで、VD1は第一の可変ドメインであり、VD2は第二の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2はアミノ酸またはポリペプチドを示し、そしてnは0または1である。例えば、ポリペプチド鎖(単数または複数)は、以下の鎖:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域;またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域を含んでもよい。本明細書に提供する多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つ(および好ましくは4つ)の軽鎖可変領域ポリペプチドをさらに含む。本明細書に提供する多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変領域ポリペプチドを含む。本明細書において、軽鎖可変領域ポリペプチドは、軽鎖可変領域を含み、そして所望により、CL領域をさらに含む。
【0197】
薬学的組成物
本発明の別の側面は、活性成分として(または単一活性成分として)PD-L1に特異的な抗体を含む、薬学的組成物である。薬学的組成物には、本明細書に記載するような任意の抗PD-L1抗体が含まれてもよい。本発明のある態様において、組成物は、PD-L1活性に関連しうる障害を改善するか、予防するか、または治療するためのものである。
【0198】
一般的に、本発明の抗PD-L1抗体は、例えば、本明細書で以下に記載するような、1つまたはそれより多い薬学的に許容されうる賦形剤と組み合わせて、投薬型として使用するために適している。
【0199】
本発明の薬学的組成物は、少なくとも1つの抗PD-L1抗体、および1つまたはそれより多いそれぞれの表面受容体をターゲティングする、1つまたはそれより多いさらなる結合分子(例えば抗体)を含有してもよい。
【0200】
薬学的組成物は、無菌である(aseptic)、すなわち生存微生物およびその胞子を含まない場合、「滅菌された(sterile)」ものである。
薬学的組成物は、活性剤が、保存温度、例えば2~8℃の温度で、その保存可能期間に渡って、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を保持するならば、「安定な」ものである。活性剤が、その物理的および化学的安定性、ならびにその生物学的活性を保持することが望ましい。保存期間は、加速されたおよび天然の保存条件下での安定性研究の結果に基づいて選択される。
【0201】
用語「賦形剤」は、本明細書において、本発明の化合物(単数または複数)以外の任意の成分を記載する。不活性賦形剤の選択は、大部分、投与の特定の様式、溶解度および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに投薬型の性質などの要因に応じる。本明細書において、「薬学的に許容されうる賦形剤」には、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、および類似の生理学的に適合する物質が含まれる。薬学的に許容されうる賦形剤のある例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝剤、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびその組み合わせである。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物内に含むことが好ましい。薬学的に許容されうる物質のさらなる例は、抗体の保存可能期間または有効性を増進させる、湿潤剤または微量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤である。
【0202】
「緩衝剤」によって、その組成物を構成する、酸性およびアルカリ性構成要素の間の相互作用により、pH値を維持することが可能な溶液を意味する。一般的に、薬学的組成物のpHは、好ましくは4.5~7.0の間である。当業者に知られ、そして文献に見出されうる緩衝剤の例には、限定されるわけではないが、ヒスチジン、クエン酸、コハク酸、酢酸、リン酸、リン酸-塩、クエン酸-リン酸緩衝剤、およびトロメタミンに基づく緩衝剤等、または適切な混合物が含まれる。
【0203】
「等張剤」によって、溶液の等張浸透圧を提供する、補助物質、あるいは2つまたはそれより多い補助物質の混合物を意味する。「等張」は、約250~350mOsm/kgの浸透圧を生成する溶液と見なされる。等張剤として、ポリオール、単糖または二糖、アミノ酸、金属塩、例えば塩化ナトリウム等を用いてもよいが、これらに限定されない。用語「低張」は、ヒト血液のものより低い浸透圧を持つ組成物を記載する。対応して、用語「高張」は、ヒト血液のものより高い浸透圧を持つ組成物を記載する。
【0204】
用語「表面活性剤」(界面活性剤(detergent)または表面活性剤またはSASとも称される)は、本明細書において、液体抗体調製物の表面張力を変化させうる賦形剤を指す。特定の態様において、表面活性剤は、液体抗体調製物の表面張力を減少させる。他の態様において、「表面活性剤」は、調製物中の任意の抗体のコロイド安定性または溶解度における改善にも寄与しうる。表面活性剤は、産生された抗体調製物の凝集を減少させ、そして/または調製物中の微粒子の形成を最小限にし、そして/または吸着を減少させることも可能である。表面活性剤はまた、凍結/融解周期中またはその後、および振盪中の抗体の安定性も改善しうる。表面活性剤は、イオン性または非イオン性であってもよい。本発明の配合物中に含まれうる例示的な非イオン性表面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド(例えばオクチルグルコシドおよびデシルマルトシド)、脂肪アルコール、例えばセチルアルコールおよびオレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、およびコカミドTEAが含まれる。本発明の配合物中に含まれうる特定の非イオン性表面活性剤には、例えばポリソルベート、例えばポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート81、およびポリソルベート85;ポロキサマー、例えばポロキサマー188(Kolliphor P188)、ポロキサマー407;ポリエチレン-ポリプロピレングリコール;またはポリエチレングリコール(PEG)、エチレンおよびプロピレングリコールコポリマー(例えばプルロニック(登録商標)PF68等)が含まれる。
【0205】
「安定化剤」によって、活性剤の物理的および/または化学的安定性を提供する、補助物質あるいは2つまたはそれより多い補助物質の混合物を意味する。安定化剤として、アミノ酸を用いてもよく、これには、例えば、限定されるわけではないが、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、リジン、グルタミン、プロリン;表面活性剤、例えば限定されるわけではないが、ポリソルベート20(商標名Tween20)、ポリソルベート80(商標名Tween80)、ポリエチレン-ポリプロピレングリコールおよびそのコポリマー(商標名ポロキサマー)、プルロニック(登録商標)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);酸化防止剤、例えば限定されるわけではないが、メチオニン、アセチルシステイン、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、硫酸の塩等;キレート剤、例えば限定されるわけではないが、EDTA、DTPA、クエン酸ナトリウム等がある。
【0206】
「薬学的に許容されうる酸」には、配合される濃度および型で非毒性である、無機および有機酸が含まれる。例えば、適切な無機酸には、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、硫酸、スルファニル酸、リン酸、炭酸等が含まれる。適切な有機酸には、直鎖および分枝鎖アルキル、芳香族、環状、環状脂肪酸、アリール脂
肪酸、複素環酸、飽和、不飽和、モノ、ジ、およびトリカルボン酸が含まれ、例えばギ酸、酢酸、2-ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、トリメチル酢酸、t-ブチル酢酸、アントラニル酸、プロパン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-オキソプロパン酸、プロパン二酸、シクロペンタンプロピオン酸、シクロペンタンプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、ブタン酸、ブタン二酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2-アセトキシ-安息香酸、アスコルビン酸、桂皮酸、ラウリル硫酸、ステアリン酸、ムコン酸、マンデル酸、コハク酸、エンボン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、グリコン酸、グルコン酸、ピルビン酸、グリオキサル酸、シュウ酸、メシル酸、コハク酸、サリチル酸、フタル酸、パルモン(palmoic)酸、パルメン(palmeic)酸、チオシアン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-コロベンゼンスルホン(chorobenzenesulfonic)酸、ナフタレン-2-スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-3-(ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、ヒドロキシナフトエ酸が含まれる。
【0207】
「薬学的に許容されうる塩基」には、配合される濃度および型で非毒性である、無機および有機塩基が含まれる。例えば適切な塩基には、無機塩基形成金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピぺリジン、ならびに、一級、二級および三級アミン、置換アミン、環状アミンを含む有機非毒性塩基および塩基性イオン交換樹脂[例えば、N(R’)4+(式中、R’は、独立にHまたはC1-4アルキルである、例えばアンモニウム、Tris)]、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等が含まれる。特に好ましい有機非毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。本発明で有用なさらなる薬学的に許容されうる塩および塩基には、アミノ酸、例えばヒスチジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアスパラギンに由来するものが含まれる。
【0208】
本明細書において、関心対象の「希釈剤」は、薬学的に許容可能であり(ヒトへの投与のために安全でそして非毒性である)、そして液体組成物の調製、例えば凍結乾燥後に再構成される組成物に有用であるものである。例示的な希釈剤には、水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、無菌生理食塩水溶液、リンゲル溶液またはデキストロース溶液が含まれる。代替態様において、希釈剤には、塩および/または緩衝剤の水溶液が含まれてもよい。
【0209】
「保存剤」は、細菌活性を減少させるために、本明細書に提供する組成物に添加してもよい化合物である。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(multi-use)(多数用量)組成物の産生を容易にしうる。潜在的な保存剤の例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが含まれる。他のタイプの保存剤には、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチルおよびベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、お
よびm-クレゾールが含まれる。本明細書で提供する最も好ましい保存剤はベンジルアルコールである。
【0210】
用語「凍結乾燥された」は、本明細書において、調製物の凍結、および次いで、凍結内容物からの氷の昇華を含む、フリーズドライとして当該技術分野に知られるプロセスに供されている調製物を指す。
【0211】
用語「アミノ酸」は、本明細書において、アミノ酸(遊離アミノ酸、すなわちペプチドまたはタンパク質配列中のアミノ酸ではない)を示す。アミノ酸は、本明細書において、限定されるわけではないが、例えば、アルギニン、グリシン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、メチオニンおよびプロリンを含む。
【0212】
本発明の薬学的組成物およびその調製法は、当業者には疑いなく明らかである。こうした組成物およびその調製法は、例えば、Remington, The Science
and Practice of Pharmacy, 第21版, Troy, Beringer., Lippincott Williams and Wilkins., Philadelphia, PA 2006に見出されうる。薬学的組成物の産生は、好ましくは、GMP(製造管理および品質管理に関する基準)を満たす。
【0213】
本発明の薬学的組成物を、単一単位用量、または複数の単一単位用量として、製造し、パッケージングし、または一般的に流通させてもよい。用語「単一単位用量」は、本明細書において、あらかじめ決定した量の活性成分を含む、薬学的組成物の別個の量を意味する。活性成分の量は、一般的に、被験体に投与するであろう活性成分の投薬量と等しいか、あるいは投薬量の好適な部分、例えばこうした投薬量の半量または1/3量である。
【0214】
当該技術分野に許容されるペプチド、タンパク質または抗体を投与するための任意の方法を、本発明の抗PD-L1抗体に関して適切に用いてもよい。
本発明の薬学的組成物は、一般的に、非経口投与のために適している。本明細書において、用語、薬学的組成物の「非経口投与」には、被験体組織の完全性の物理的攪乱および組織の破損を通じた組織内への薬学的組成物の投与によって特徴づけられる任意の投与経路が含まれ、一般的に該投与は血流、筋内、または内部臓器への直接接触を生じる。したがって、非経口投与には、限定されるわけではないが、組成物の注射による薬学的組成物の投与によるもの、外科的切開を通じた組成物の投与によるもの、組織貫通性非外科的創傷を通じた組成物の適用によるもの等が含まれる。特に、非経口投与には、限定されるわけではないが、皮下、腹腔内、筋内、静脈内、動脈内、クモ膜下腔内、心室内、尿道内、頭蓋内、関節内注射または注入;ならびに腎臓透析および注入技術が含まれると想定される。腫瘍内送達、例えば腫瘍内注射もまた有用でありうる。また、局所灌流が意図される。好ましい態様には、静脈内および皮下経路が含まれる。
【0215】
非経口投与に適した薬学的組成物の投薬型は、好適に、薬学的に許容されうるキャリアー/賦形剤、例えば滅菌水または滅菌等張生理食塩水と関連する活性成分を含む。こうした投薬型を、ボーラス投与または連続投与に適した型で、調製するか、パッケージングするか、または流通させてもよい。注射投薬型を、単位投薬型で、例えば保存剤を含有するアンプルまたは多数用量容器中で、調製するか、パッケージングするか、または流通させてもよい。非経口投与のための投薬型には、限定されるわけではないが、懸濁物、溶液、油性または水性基剤中のエマルジョン、ペースト等が含まれる。こうした投薬型はまた、限定されるわけではないが、懸濁剤、安定化剤、または分散剤を含む、1つまたはそれより多いさらなる成分も含有してもよい。非経口投与のための本発明の組成物の1つの態様において、活性成分を、再構成された配合物の非経口投与前に、適切な基剤(例えば滅菌
発熱物質不含水)に溶解するための乾燥型(すなわち粉末または顆粒)で提供する。非経口投薬型にはまた、充填剤、例えば塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは、3~9のpH、そしてより好ましくは4.5~7のpH)を含有してもよい水溶液が含まれるが、ある種の適用に関しては、より適切な投薬型は、滅菌非水性溶液、または適切な基剤、例えば滅菌発熱物質不含水と組み合わせて使用するための乾燥型であってもよい。非経口投与型の例には、滅菌水性溶液、例えば水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の溶液または懸濁物が含まれる。こうした投薬型は所望により緩衝されていてもよい。非経口投与のための他の適切な投薬型には、微結晶型でまたはリポソーム調製物中に活性成分を含むものが含まれてもよい。非経口投与のための投薬型は即時および/または修飾放出のために作製されてもよい。修飾放出を伴う投薬型には、遅延、持続、パルス、制御、ターゲティング化およびプログラム放出が含まれる。
【0216】
例えば、1つの側面において、必要に応じて、上に列挙する成分の1つまたは組み合わせとともに、適切な溶媒中に、必要な量の三重特異的抗PD-L1抗体を取り込み、その後、フィルター滅菌することによって、滅菌注射溶液を調製してもよい。一般的に、基本分散媒体および上に列挙するものから必要な他の成分を含有する滅菌溶媒内に、活性化合物を取り込むことによって、分散物を調製する。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製のための方法は、活性成分の粉末に加えて、以前に滅菌濾過されたその溶液に由来する任意のさらなる望ましい成分を生じる、フリーズドライ(凍結乾燥)である。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散物の場合、必要な粒子サイズの維持によって、そして表面活性剤を用いて、溶液の適切な流動性を維持してもよい。組成物内に吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことによって、そして/または修飾放出コーティング(例えば緩慢放出コーティング)によって、注射組成物の吸収延長を達成してもよい。
【0217】
また、本発明の抗PD-L1抗体を、鼻内投与または吸入によって、典型的には、乾燥粉末吸入器、例えばエアロゾル加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは細かいミストを産生するために、電気水力学の原理を用いるアトマイザー)またはネブライザーから、適切な噴霧剤を使用してまたは使用せず、あるいは点鼻薬として、乾燥粉末の形で(単独で、混合物として、または混合構成要素の粒子の形で、例えば適切な薬学的に許容されうる充填剤と混合して)、投与してもよい。
【0218】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、一般的に、例えば活性剤を分散させるか、溶解するかまたはその放出を延長するために適切な剤、溶媒としての噴霧剤を含む、本発明の結合分子の溶液または懸濁物を含有する。
【0219】
乾燥粉末または懸濁剤で使用する前に、薬剤は、通常、吸入による送達のために適したサイズ(典型的には5ミクロン未満)に微粒子化される。これは、任意の適切な粉砕(comminuting)法、例えばスパイラルジェットミルにおける製粉、ジェットミル流体化ベッド、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧ホモジナイズ、またはスプレー乾燥によって達成されてもよい。
【0220】
吸入器(inhalerまたはinsuffloator)で使用するためのカプセル、ブリスターおよびカートリッジが、本発明の化合物および適切な粉末基剤および活性修飾剤の粉末混合物を含有するように設定してもよい。
【0221】
電気水力学原理を用いて、細かいミストを産生するアトマイザーにおいて使用するための溶液の適切な配合物は、作動あたりの本発明の抗PD-L1抗体の適切な用量を含有してもよく、そして加圧あたりの体積は、例えば1μl~200μl、より好ましくは1μl~100μlで、多様であってもよい。
【0222】
吸入/鼻内投与に意図される本発明の投薬型に対して、適切なフレーバー剤、例えばメントールおよびレボメントール、あるいは甘味料、例えばサッカリンまたはサッカリンナトリウムを添加してもよい。
【0223】
即時および/または修飾放出のため、非経口投与のための投薬型を作製してもよい。修飾放出を伴う投薬型には、遅延、持続、パルス、制御、ターゲティング化およびプログラム放出が含まれる。
【0224】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合、投薬単位は、測定される量を送達するバルブによって確立される。本発明にしたがった単位は、通常、本発明の結合分子の測定される用量または「注射」を投与するよう設定される。1日総用量は、一般的に、単回用量で、または1日に渡って分割された用量として、より頻繁に投与されるであろう。
【0225】
本発明の抗PD-L1抗体はまた、経口投与のための投薬型で設定されてもよい。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように、嚥下を伴ってもよく、そして/または頬側、舌または舌下投与は口から直接血流に進入する。
【0226】
経口投与に適した投薬型には、固形、半固形および液体系、例えば錠剤;マルチまたはナノ粒子、液体、または粉末を含有する、軟または硬カプセル;ロゼンジ(液体充填を含む);チュアブル型;ゲル;迅速溶解投薬型;フィルム;座薬;スプレー;および頬側/粘膜付着パッチが含まれる。
【0227】
液体投薬型には、懸濁物、溶液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。こうした配合物を軟または硬カプセル(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)中で充填剤として使用してもよく、そして該配合物は、典型的には、キャリアー、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油、および1つまたはそれより多い乳化剤および/または懸濁剤を含む。液体投薬型はまた、例えばサシェからの固形物の還元(reduction)によって調製されてもよい。
【0228】
本発明の抗PD-L1抗体の療法的使用
1つの側面において、本発明の抗PD-L1抗体を、PD-L1活性と関連する疾患および障害、例えば:HNSCC(頭頸部扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSI(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の群より選択される疾患または障害の治療に用いる。
【0229】
1つの側面において、治療の被験体または患者は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体である。上記被験体は、任意の年齢の男性または女性であってもよい。
腫瘍(例えば癌)の場合、抗体または抗体断片(例えばPD-L1に特異的に結合する抗体または抗体断片)の療法的有効量は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを減少させ;癌細胞が末梢臓器内に浸潤することを阻害し(すなわちある程度遅延させ、そして好ましくは停止し);腫瘍転移を阻害し(すなわちある程度遅延させ、そして好ましくは停止し);腫瘍増殖をある程度阻害し;そして/または障害と関連する症状の1つまたはそれより多くを、ある程度軽減することも可能である。抗体または抗体断片は、存在する癌細胞の増殖をある程度防止し、そして/または該癌細胞を殺し、細胞分裂停止および/または細胞傷害性効果を提供することも可能である。癌療法のため、有効性は、例えば、寿命、疾患進行までの時間(TTP)、反応速度(RR)、反応期間および/または生活の質
によって測定することも可能である。
【0230】
本明細書において、用語、抗PD-L1抗体と1つまたはそれより多い他の療法剤を指す「併用処方」、「併用処方する」および「組み合わせて」は、以下を意味するか、指すかまたは含むと見なされる:
1)本発明の抗PD-L1抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療を必要とする患者への同時投与であって、こうした構成要素が、前記構成要素が実質的に同時に前記患者に放出される1つの投薬型に一緒に配合される、前記同時投与;
2)本発明の抗PD-L1抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療を必要とする患者への同時投与であって、こうした構成要素を異なる投薬型に別個に配合し、前記患者へのその導入がほぼ同時に行われた際、前記構成要素が、前記患者に実質的に同時に放出される、前記同時投与;
3)本発明の抗PD-L1抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療を必要とする患者への連続投与であって、こうした構成要素が、互いに別々に、別個の投薬型に配合され、この投薬型が、前記患者によって、各投与の間の十分な時間間隔で連続して摂取された際、前記構成要素が、前記患者に実質的に異なる時点で放出される、前記連続投与;および
4)本発明の抗PD-L1抗体および療法剤のこうした組み合わせの、治療を必要とする患者への連続投与であって、こうした構成要素が、単一の投薬型に一緒に配合され、ここから、これらの構成要素の放出が、制御された方式で行われた際、これらが、前記患者に、同じ時点および/または異なる時点で同時に、連続してまたは一緒に放出され、各部分が、1つの経路によってまたは異なる経路によって投与されうる、前記連続投与。
【0231】
本発明の抗PD-L1抗体を、さらなる療法的治療を伴わずに、すなわち個別療法として処方してもよい。さらに、本発明の抗PD-L1抗体の治療には、少なくとも1つのさらなる療法的治療(併用療法)が含まれてもよい。ある態様において、抗PD-L1抗体を、癌治療のための別の薬物/薬物療法とともに投与してもよいし、または配合してもよい。
【0232】
用語「細胞傷害剤」は、本明細書において、細胞の機能を阻害するかまたは防止し、そして/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。該用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、ならびにその断片および/または変異体を含めて、細菌、真菌、植物または動物起源の毒素、例えば小分子毒素または酵素的に活性である毒素を含むと意図される。
【0233】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ、およびウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラルニン(trimethylolomelarnine)を含む、エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARENOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体、トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフ
ィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノヴェムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシン・ガンマIIおよびカリケアマイシン・オメガII(例えばAngew, Chem. Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)));ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、PEG化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガファー(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモファー、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;抗副腎剤(anti-adrenal)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロフェルマライウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子配合物(ABRAXANE)、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトリオトレキセート;白金剤、例えばシ
スプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標))、FILDESIN(登録商標)、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリン重合が微小管を形成することを妨げるビンカ類;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノヴァントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイド、例えばレチノイン酸;ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBENEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))。アレンドロネート(FOSAMAJX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF-R)などの発現を阻害するもの;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えばPS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファルニブ(811577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義を参照されたい);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照されたい);および上記いずれかの薬学的に許容されうる塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれより多くの組み合わせ、例えばシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語であるCHOP、ならびに5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN)を用いた治療スケジュールの略語であるFOLFOXが含まれる。
【0234】
この定義にやはり含まれるのは、腫瘍に対するホルモン作用を制御するかまたは阻害するよう作用する抗ホルモン剤、例えば混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを持つ抗エストロゲンであり、これには、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、および選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、例えばSERM3;アゴニスト特性を伴わない純粋抗エストロゲン、例えばフルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800(こうした剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ER代謝回転を増加させ、そして/またはERレベルを抑制することも可能である);ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤、例えばフォルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、および非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えばアナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミド、およびボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、イミダゾールを含む他のアロマターゼ阻害剤;リュープロリド(LUPRON(登録商標)およ
びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプテレリンを含む、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プロゲスチン、例えば酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロン、エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロールおよびプレマリン、およびアンドロゲン/レチノイド、例えばフルオキシメステロン、オールトランスレチノイン酸およびフェンレチニドを含む性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御剤(ERD);抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;テストラクトン;および上記いずれかの薬学的に許容されうる塩、酸、または誘導体;ならびに上記の2つまたはそれより多くの組み合わせが含まれる。
【0235】
本発明の抗PD-L1抗体と組み合わせて用いてもよい他の療法剤は、増殖因子機能阻害剤であってもよく、例えばこうした阻害剤には、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体(例えば抗erbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチン]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ[エルビタックス、C225]ならびに、Sternら Critical reviews in oncology/haematology, 2005, Vol. 54, pp11-29に開示される任意の増殖因子または増殖因子受容体抗体);抗血管新生剤、例えば血管内皮増殖因子の阻害効果[例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体、ベバシズマブ(Avastin)]、抗血管内皮増殖因子受容体抗体、例えば抗KDR抗体および抗flt1抗体;アンチセンス療法、例えば上記ターゲットに向けられるもの、例えばISIS 2503、抗rasアンチセンス剤またはG3139(Genasense)、抗bcl2アンチセンス剤;例えば異常なp53あるいは異常なBRCA1またはBRCA2などの異常な遺伝子の置換を含むアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いたGDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)アプローチ、および化学療法または放射療法に対する患者の寛容性を増加させることを目的とするアプローチ、例えば多剤耐性遺伝子治療を含む、遺伝子治療アプローチ;例えばCD52に向けられるモノクローナ
ル抗体、アレムツズマブ(キャンパス-1H)での治療、またはCD22に向けられる抗体での治療、患者の腫瘍細胞の免疫原性を増加させるex vivoおよびin vivoアプローチ、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させることを目的とするアプローチ、例えばCTLA-4を阻害するモノクローナル抗体での治療、トランスフェクションされた免疫細胞、例えばサイトカインでトランスフェクションされた樹状細胞を用いたアプローチ、サイトカインでトランスフェクションされた腫瘍細胞株を用いたアプローチ、および抗イディオタイプ抗体を用いたアプローチ、ex
vivoで非特異的活性化に曝露されたかまたは関心対象の特定の抗原にターゲティング化されたT細胞を用いたT細胞の養子移入を含む、免疫療法アプローチ;タンパク質分解阻害剤、例えばプロテアソーム阻害剤、例えばベルケード(ボルテゾミド);例えばリガンド受容体を隔離するか、受容体へのリガンド結合を遮断するか、または受容体シグナル伝達を弱める(例えば受容体分解増加または発現レベル減少による)ペプチドまたはタンパク質(例えば抗体または外部受容体ドメインの可溶性構築物)を用いた、生体療法的療法アプローチが含まれる。
【0236】
投与用量および経路
本発明の抗PD-L1抗体を、被験体の状態を治療するために有効な量で、すなわち、所望の結果を達成するために必要な用量および期間、投与する。療法的有効量は、治療しようとする患者の特定の状態、年齢、性別および体重、ならびに抗PD-L1抗体の投与が、個別の治療であるか、あるいは1つまたはそれより多くのさらなる抗自己免疫または抗炎症治療法と組み合わせて実行されるかなどの要因に応じて多様でありうる。
【0237】
投薬スケジュールを調節して、最適な所望の反応を提供してもよい。例えば、1つのボ
ーラスを投与してもよいし、ある期間に渡って、いくつかの別個の用量を投与してもよいし、あるいは療法的状況の急性の度合いに応じて、用量を比例的に減少させるかまたは増加させてもよい。特に有用であるのは、投与および投薬の均一性を単純にするための、単位投薬型での非経口組成物産生である。本明細書において、単位投薬型は、治療しようとする患者/被験体のための単位用量として適切な、物理的に別個の単位に関し:各単位は、望ましい薬学的キャリアーと組み合わせて、望ましい療法効果を産生するように計算された、あらかじめ決定された量の活性化合物を含む。典型的には、本発明の単位投薬型の明細が定義され、そしてこれは、(a)化学療法剤のユニークな特性、および達成しようとする特定の療法的または予防的効果、ならびに(b)被験体における感受性を治療するためのこうした活性化合物に関する配合技術に本質的な限界に直接依存する。
【0238】
したがって、当業者は、本明細書に提供する開示に基づいて、用量および投薬スケジュールが、療法技術において周知の方法にしたがって調節されることを認識するであろう。すなわち、最大許容用量は、容易に確立可能であり、そして患者に対して検出可能な療法的利益を提供する有効量もまた決定可能であり、患者に対する検出可能な療法的利益を提供する各剤の投与に関する時間的な必要性も同様である。したがって、いくつかの用量および投薬スケジュールを、例として本明細書に提供するが、これらの例は、いかなる意味でも、本発明を実施する際に、患者に関して必要とされうる用量および投薬スケジュールを限定しない。
【0239】
投薬の価値は、軽減しようとする状態のタイプおよび重症度に応じて多様である可能性もあり、そしてこれには、1つまたはそれより多い用量が含まれてもよいことが注目される。さらに、任意の特定の患者に関して、個々の必要性にしたがった時間に渡って、そして組成物の投与を実行するかまたは管理する医師の裁量で、特定の投薬スケジュールを調節すべきであり、そして本明細書の濃度範囲は例としてのみ提供され、そして請求する組成物の範囲または実施を制限するようには意図されないことが理解されるものとする。さらに、本発明の組成物での投薬スケジュールは、疾患のタイプ、年齢、体重、性別、患者の健康状態、状態の重症度、投与経路、および使用する特定の抗PD-L1抗体を含む、異なる要因に基づいてもよい。したがって、投薬措置は、非常に多様であってもよいが、標準法を用いて、規則通りに決定可能である。例えば、臨床効果、例えば毒性効果または実験室の値を含んでもよい、薬物動態学的および薬力学的パラメータに基づいて、用量を決定してもよい。したがって、本発明は、当業者によって決定されるような、個々の用量増大を含む。必要な用量および措置の決定は、関連する業に周知であり、そして本明細書の開示を洞察した際、当業者によって認識されるであろう。
【0240】
投与の適切な経路の例を上に提供する。
本発明の抗PD-L1抗体の適切な用量は、0.1~200mg/kg、好ましくは0.1~100mg/kgの範囲であり、約0.5~50mg/kg、例えば約1~20mg/kgを含むことが意図される。例えば少なくとも0.25mg/kg、例えば少なくとも0.5mg/kgで、少なくとも1mg/kgを含めて、例えば少なくとも1.5mg/kgで、例えばならびに少なくとも2mg/kgで、例えば少なくとも3mg/kgで、少なくとも4mg/kgを含めて、例えば少なくとも5mg/kgで;そして例えば最大で50mg/kgまでで、最大で30mg/kgまでを含めて、例えば最大で20mg/kgまでで、最大で15mg/kgまでを含めて、抗PD-L1抗体を投与してもよい。投与は通常、適切な時間間隔で、例えば週1回、2週に1回、3週ごとに1回または
4週ごとに1回、そして医師が推奨できると判断する限り長く反復され、そして必要であれば、用量は、医師によって所望により増加されるかまたは減少されてもよい。
【0241】
物品(製品)およびキット
本発明のさらなる態様は、癌、特にHNSCC、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀
胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIの治療のための製品を含む物品である。製品は、容器および容器上に配置されてもまたは容器内に挿入されてもよいラベルまたはパッケージ挿入物である。許容されうる容器は、例えば、缶、バイアル、シリンジ等である。容器は、多様な材料、例えばガラスまたはプラスチックで作製されていてもよい。容器は、特定の状態を治療するために有効な組成物を含有し、そして滅菌入口チャネルを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射用の針で穿刺可能な栓を提供された、静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性物質は、本発明の抗PD-L1抗体である。ラベルまたはパッケージ挿入物は、特定の状態を治療するために組成物を用いることを示す。ラベルまたはパッケージ挿入物は、さらに、患者に抗体組成物を投与するための使用説明書を含有すべきである。
【0242】
パッケージ挿入物は、販売のために提供される療法製品のパッケージを含む通常の使用説明書を含有し、これには、こうした療法製品の使用に関する、適応症、使用、用量、投与経路、禁忌および/または注意の例示的な情報が含まれる。本発明の1つの態様において、パッケージリーフレットは、組成物を、癌、特にHNSCC、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC、CRC、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、CRC MSIの治療に用いることを示す。
【0243】
さらに、物品は、薬学的に許容されうる緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液を含む第二の容器をさらに含んでもよい。さらに、これには、商業的および使用者の観点から必要な他の産物、特に、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針およびシリンジが含まれてもよい。
【0244】
本発明はまた、多様な目的のために、例えば哺乳動物臓器の組織、細胞または体液中で、PD-L1を検出するために用いてもよいキットにも関する。こうしたキットは、PD-L1疾患に関するスクリーニングに適しているであろう。キットには、本発明の特異的結合剤または抗体、ならびに存在する場合、PD-L1と特異的結合剤または抗体の反応上のふるまいを示す手段が含まれる。1つの態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。1つの態様において、PD-L1結合抗体は標識される。別の態様において、抗体は、非標識一次抗体であり、そしてキットはさらに、一次抗体検出剤を含む。1つの態様において、検出剤は、抗免疫グロブリンである標識二次抗体を含む。抗体は、蛍光色素、酵素、放射性核種物質および放射線乳白剤からなる群より選択されるマーカーで標識されていてもよい。キットは、in vitroで、例えばELISAまたはウェスタンブロッティングにおいて、PD-L1を検出し、そして定量化するための抗体を含むキットであってもよい。また、物品と同様に、キットは、容器および容器上にまたは容器内に配置されるラベルまたはパッケージ挿入物を含む。容器は、本発明にしたがった少なくとも1つの抗PD-L1抗体を含む組成物を含有する。さらなる容器は、例えば、希釈剤および緩衝剤、対照抗体を含有してもよい。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物の説明、およびin vitroでまたは診断目的のための使用のための使用説明書を含んでもよい。
【0245】
診断使用および組成物
また、本発明の抗PD-L1抗体を診断プロセスで用いてもよい(例えばin vitroまたはin vivo)。例えば、抗PD-L1抗体を用いて、患者から得た試料(例えば組織試料または体液試料、例えば炎症性滲出物、血液、血清、腸液、唾液または尿)中のPD-L1を検出するかまたはそのレベルを測定してもよい。適切な検出および測定技術には、免疫学的技術、例えばフローサイトメトリー、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光分析、ラジオイムノアッセイ、および免疫組織学が含まれる。本発明はさらに、本明細書に記載するような抗PD-L1抗体を含むキット(例えば診断キ
ット)を提供する。
【0246】
本発明を最適に理解するため、以下の実施例を提供する。以下の実施例は例示目的のためのみに提供され、そしていかなる意味でも、本発明の適用範囲を限定するとは見なされないものとする。
【0247】
本明細書に引用するすべての刊行物、特許および特許出願は、本明細書に援用される。前述の発明は、多義性の解釈を排除する目的のため、例示および例によってある程度詳細に記載されてきているが、当業者は、本明細書に開示する概念に基づいて、本発明の基本的な原理および付随する態様の範囲から逸脱することなく、特定の改変および修飾を行ってもよいことを明らかに認識するであろう。
【実施例0248】
実施例1
懸濁哺乳動物細胞培養における組換え抗原および抗体の産生
公表されるプロトコルにしたがって、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1)から得た樹立された細胞株において、抗体および抗原を産生した[Biotechnol Bioeng. 2005 Sep 20; 91(6):670-677、Liao Metal., 2004; Biotechnol Lett. 2006 Jun;28(11):843-848; Biotechnol Bioeng. 2003 Nov 5;84(3):332-342]。EBNA1タンパク質(エプスタイン・バーウイルス核抗原1)の遺伝子を恒常的に発現する細胞を用いた。Life Technologies社の血清不含培地を用い、そして製造者の指針にしたがって、軌道振盪装置上のフラスコ中で、懸濁培養を行った。一過性発現のため、直鎖ポリエチレンイミン(PEI MAX、Polyscienecs)を用いて、2*106/mlの濃度で、細胞をトランスフェクションした。DNA/PEI比は、1:3/1:10であった。トランスフェクションの5~7日後、細胞培養を2000gで20分間遠心分離して、そして0.22μmフィルターを通じて濾過した。アフィニティクロマトグラフィによって、培養液からターゲットタンパク質を単離した。
【0249】
タンパク質のC末端にEPEAタグ(グルタミン酸-プロリン-グルタミン酸-アラニン)を含有する組換えPD-L1タンパク質を単離し、そしてCaptureSelect Cタグアフィニティマトリックス吸着剤を用いて、培養液から精製した。5mlのC-タグ吸着剤をあらかじめ充填したクロマトグラフィカラムに培養液を通過させ、次いで、カラムを25mlのPBSで洗浄して、非特異的結合構成要素を洗い流した。結合した抗原を、20 mM Tris、2M MgCl2 pH 7.0~7.4の穏やかな条件で溶出させた。次いで、半透性透析膜を用いて、タンパク質をPBS(pH 7.4)に透析し、濾過し(0.22μm)、チューブに移して、そして-70℃で保存した。
【0250】
プロテインAアフィニティ(affine)HPLCカラムを用いて、培養液から組換えタンパク質PD-1およびPD-L1-Fcを単離し、そして精製した。清浄化した培養液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で平衡化した5ml HiTrap rProtein AセファロースFFカラム(GE Healthcare)に通過させた。次いで、5体積のPBSでカラムを洗浄して、非特異的に結合した構成要素を除去した。結合した抗原を0.1Mグリシン緩衝液pH3で溶出させた。主要タンパク質溶出ピークを収集し、そして1M Tris緩衝液(pH8)で中性pHにした。すべての段階を、110cm/hの流速で行った。次いで、半透性透析膜を用いて、単離したタンパク質をPBS(pH 7.4)に透析し、濾過し(0.22μm)、チューブに移して、そして-70℃で保存した。
【0251】
抗原に関して上述した方法にしたがって、IgG1抗体を1ml HiTrap rProtein A FFカラム(GE Healthcare)上で精製した。SDS-PAGEによって、得たタンパク質溶液の純度を評価した(
図4Aおよび4B)。
【0252】
実施例2
ナイーブヒト抗体Fabライブラリー、MeganLibTMの生成
提供されるプロトコルにしたがって、RNeasyミニキット(QIAGEN)を用いて、1000を超えるヒトドナーから収集した血液試料由来の総Bリンパ球RNAを単離した。Nanovueキット(GE Healthcare)を用いてRNA濃度アッセイを行い、そして単離したRNAの品質を、1.5%アガロースゲル電気泳動によって試験した。
【0253】
MMuLV逆転写酵素およびプライマーとしてランダム六量体オリゴヌクレオチドを用いて、推奨されるプロトコルにしたがって、MMLV RTキット(Evrogen)を用いて、逆転写反応を行った。
【0254】
2段階ポリメラーゼ連鎖反応において、逆転写産物をテンプレートとして用いて、著者のプロトコルにしたがって、オリゴヌクレオチドセットを用いて、制限部位が隣接した可変ドメイン遺伝子を産生した[J Biol Chem. 1999 Jun 25; 274(26): 18218-30]。
【0255】
得たDNA調製物VL-CK-VH(
図1)を、制限酵素NheI/Eco91Iで処理し、そして元来のファージミドpH5に連結した(
図2)。連結産物を、[Methods Enzymol. 2000;328: 333-63.]に記載されるプロトコルにしたがって調製したエレクトロコンピテントSS320細胞に形質転換した。コンビナトリアルファージFabディスプレイライブラリーMeganLibTMのレパートリーは、10
11形質転換体であった。Fabライブラリーからのファージ調製物を、上述の方法[J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3): 581-97]にしたがって調製した。
【0256】
実施例3
ファージ抗体Fabライブラリーの選択
コンビナトリアルファージFabディスプレイライブラリーMeganLibTMから、特異的ファージヒト抗PD-L1 Fab抗体を得た。ファージディスプレイ法[Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-14; J Mol Biol.1991 Dec 5;222(3): 581-97]によって、ヒトPD-L1に対して選択を行ったが、磁気粒子およびKingFisher Flex装置を用い、これはこの技術の使用が、バイオパニングの最大96の異なるスキームおよび変形を並行して行うことを可能にするためである。
【0257】
バイオパニング選択において、回転装置上、室温で1時間、タンパク質と粒子をインキュベーションすることによって、ストレプトアビジン磁気粒子の表面上に、10μg/mlの濃度のビオチン化PD-L1-Fcを固定した。次いで、粒子をPBS(pH7.4)で洗浄し、次いで、PBS(pH7.4)上で1時間、粒子を2%スキムミルク溶液でブロッキングした。次いで、2%スキムミルクを含むPBS(pH7.4)中のファージ溶液を、抗原が結合した磁気粒子に添加し、ファージ粒子の濃度は2.5
*10
12/mlであった。混合物を攪拌しながら40分間インキュベーションした。0.1%Tween20を含むPBS溶液(pH7.4)で磁気粒子を数回洗浄する間、未結合ファージが取り除かれた。洗浄の回数を周期ごとに増加させた(第一周期では10回、第二周期では20回、そして第三周期では30回)。磁気粒子表面上の抗原と結合したままであったフ
ァージを、攪拌しながら、15分間、100mM Gly-HCl溶液(pH2.2)で粒子から溶出させ、そして次いで、1M TRIS-HCl(pH7.6)で中和した。得たファージで大腸菌TG1細菌を感染させ;ファージが該大腸菌で産生され、そしてこれを単離し、そして次の選択周期で用いた。2~3周期後、DNA(ファージミド)をファージから単離し、そして大腸菌細胞においてFabを産生するため、抗体可変ドメイン遺伝子を発現ベクター(
図3)内にクローニングした。
【0258】
実施例4
ヒトPD-L1に特異的に結合するFabのスクリーニング
ELISAを用いて、ヒトPD-L1へのFab結合に関して検索した。陽性対照として、公表された配列を持つFab、アテゾリズマブ(Genentech)を用いた。特異的結合アッセイのため、ELISAプレートウェル(Greiner bio one、中程度結合(medium binding))を50μlのPD-L1-FE(1x炭酸緩衝液中、0.2μg/ml)でコーティングし、気密性に密封し、そして4℃で一晩インキュベーションした。続くすべての工程を、GenetixQ-Qpix2xt(Molecular Device)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)ロボット系に基づくハイスループット自動化プラットホームを用いて、標準的ELISAプロトコルにしたがって、実行した。非特異的結合をブロッキングするため、ブロッキング緩衝液BB(PBS中、0.5%スキムミルク、200μL)を添加した。プレートを振盪装置上、室温で1時間インキュベーションした。PBS-Tweenで洗浄した後、等体積のBBと混合した試験Fabを含有する試験細胞上清をウェルあたり50μl添加した。再び、プレートをインキュベーションし、室温で1時間振盪し、その後、PBS-Twin緩衝液で各プレートウェルを3回洗浄した。洗浄したら、(50μL/ウェル)抗ヒトFab HRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce-ThermoScientific)を、PBS-Tween中、1:5000の比で添加した。プレートを回転振盪装置上で振盪し(50分間、室温)、そしてFSB-Twin緩衝液で上述のように3回洗浄した。飽和するまでTMB(50μL/ウェル)を添加することによって、比色シグナルを発展させ(平均3~5分)、次いで、停止溶液(30μL/ウェル、10%硫酸)を添加することによって、発色を停止した。適切なTecan-Sunriseプレート読み取り装置(Tecan)を用いて、450nmの波長で色シグナルを測定した。抗体結合レベルは、生じる色シグナルと比例した。対照抗体からのシグナルよりも大きい色シグナルを有するクローンを、非特異的結合に関して、ELISAで試験した。
【0259】
実施例5
選択したFabの他の抗原との非特異的結合の分析
ELISAを用いて、研究したFab断片の他の抗原との非特異的結合を測定する。上述のように、しかし、IL6R-Fc、INFα2b、PCSK9-VG-FE、PD-1-Fc(1x炭酸緩衝剤中、2.5μg/ml)を固定のための抗原として用いて、該研究を行った。PD-L1-Fc(1x炭酸緩衝液中、0.2μg/ml)を特異的結合に関する対照として用いた。すべてのさらなる段階を、GenetixQ-Qpix2xt(Molecular Device)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)ロボット系に基づくハイスループット自動化プラットホームを用いて、標準的ELISAプロトコルにしたがって、実行した。特異的結合からのシグナルよりも大きくない非特異的結合の色シグナルを有するクローンを、リガンドおよび受容体の間の相互作用を遮断するアンタゴニストFabを同定するため、競合ELISAアッセイで試験した。
【0260】
実施例6
PD-L1およびそのPD-1受容体の間の相互作用を遮断する競合ELISA
競合ELISAを用いて、PD-1受容体との相互作用を遮断する能力に関して、あらかじめ選択した抗ヒトPD-L1特異的Fabを試験した。陽性対照アンタゴニストとして、公表される配列を持つFab、アテゾリズマブ(Genentech)を用いた。
【0261】
PD-1-Fcを、1x炭酸緩衝液中、1μg/mlの濃度の50μlで、ELISAプレートウェル(Greiner bio oneの中程度結合)に固定し、そして4℃で一晩インキュベーションした。続くすべての工程を、GenetixQ-Qpix2xt(Molecular Device)およびTecan Freedom EVO 200(Tecan)ロボット系に基づくハイスループット自動化プラットホームを用いて、標準的ELISAプロトコルにしたがって、実行した。非特異的結合をブロッキングするため、ブロッキング緩衝液BB(PBS中、0.5%スキムミルク、200μL)を添加した。プレートを振盪装置上、室温で1時間インキュベーションした。
【0262】
平行して、試験FabおよびPD-L1-Fc(PBS-Twin中、2μg/mlの最終濃度で)を含有する細胞上清を、非吸着プレート中で、1:1の比で混合し、室温でそして500rpmで振盪しながら45分間インキュベーションした。
【0263】
PD-1受容体を含有するプレートからBB洗浄した後、FabおよびPD-L1の混合物をそこに添加し、室温でそして500rpmで振盪しながら45分間インキュベーションした。その後、各プレートウェルをPBS-Twin緩衝液で3回洗浄し、50μl/ウェルの抗ヒトFab HRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce-ThermoScientifc)を、PBS-Tween中、1:5000の比で添加した。これらを室温でそして500rpmで振盪しながら45分間インキュベーションし、その後、各プレートウェルをPBS-Twin緩衝液で上述のように3回洗浄した。飽和するまでTMB(50μL/ウェル)を添加することによって、比色シグナルを発展させ(平均3~5分)、次いで、停止溶液(30μL/ウェル、10%硫酸)を添加することによって、発色を停止した。適切なTecan-Sunriseプレート読み取り装置(Tecan)を用いて、450nmの波長で色シグナルを測定した。Fab結合レベルは、生じる色シグナルと反比例した。対照Fab抗体、アテゾリズマブのレベルでブロッキングを示すクローンを、陽性と記録し、そしてさらなる分析に用いた。陽性クローン由来の可変ドメイン遺伝子を、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer装置(Applied Biosystems)上で、標準プロトコルにしたがって配列決定し、そして分析した。
【0264】
実施例7
Koffに基づくヒト抗PD-L1 Fab候補の比較スクリーニング
Pall Forte Bio Octet Red 96装置を用いて、Koffスクリーニングを行った。抗FABCH1バイオセンサー(SA)を、10mM PBS、pH7.2~7.4、0.1%Tween-20、0.1%BSAを含有する反応緩衝液中で、30分間再水和した。反応緩衝液を、1xの最終濃度まで、研究大腸菌上清試料に添加した。次いで、抗FABCH1バイオセンサーを、候補抗体のFab断片を含有する大腸菌上清に4℃で12時間浸した。表面に固定されたFab断片を含むセンサーを、反応緩衝液を含むウェル内に移し、ここでベースラインを記録した(60秒間)。次に、センサーを、抗原-抗体複合体と会合させるため(300s)、分析物溶液(PD-L1、30μg/mL)を含むウェルに移した。次いで、センサーを、次の解離工程のため、反応緩衝液を含有するウェルに戻した(600s)。各実験後、再生緩衝液(Gly-HCl、pH1.7)に3回入れることによって、用いたセンサーを再生し、その後、これらを次の実験に用いた。1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析(バージョン7.0)ソフトウェアを用いて、得られる曲線分析を行った。
【0265】
実施例8
PD-L1および他の抗原との抗PD-L1抗体相互作用の酵素イムノアッセイ
ELISAを用いて、抗PD-L1抗体および他の抗原の相対アフィニティを測定した。結合アッセイのため、ELISAプレートウェル(Greiner bio oneの中程度結合)を、50μlのPD-L1-Fc、fPCSK9-EPEA、Ang2-H6F、GM-CSF-FE、CD3-ED-Fc、IL17a、CD38-Fc、IL6R-Fc(1x炭酸緩衝液中、1μg/ml)でコーティングし、気密性に密封し、そして4℃で一晩インキュベーションした。続くすべての段階を、標準的ELISAプロトコルにしたがって、実行した。非特異的結合をブロッキングするため、緩衝液BB(PBS中、0.5%スキムミルク、200μL)を添加した。プレートを振盪装置上、室温で1時間インキュベーションした。PBS-Tweenで1回洗浄し、PBS-Twin中、5μg/mlの濃度の試験BCD-135抗体をウェルあたり50μl添加した。再び、プレートをインキュベーションし、室温で1時間振盪し、その後、PBS-Twin緩衝液で各プレートウェルを3回洗浄した。洗浄したら、(50μL/ウェル)抗ヒトFab
HRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce-ThermoScientific)を、PBS-Tween中、1:5000の比で添加した。プレートを回転振盪装置上で振盪し(50分間、室温)、そしてFSB-Twin緩衝液で上述のように3回洗浄した。飽和するまでTMB(50μL/ウェル)を添加することによって、比色シグナルを発展させ(平均3~5分)、次いで、停止溶液(30μL/ウェル、10%硫酸)を添加することによって、発色を停止した。適切なTecan-Sunriseプレート読み取り装置(Tecan)を用いて、450nmの波長で色シグナルを測定した。抗体結合比は、生じる色シグナルと比例した(
図5)。抗PD-L1抗体は、PD-L1に特異的に結合し、そして研究した他の抗原には結合しない。
【0266】
実施例9
Jurkat-NFAT-PD-1レポーター細胞株における、抗PD-L1抗体でのNFATシグナル伝達再活性化
ゲノム内に2つの遺伝子構築物を導入することによって、ヒトT細胞由来株Jurkatの操作を行った。一方の構築物は、ヒトPD-1受容体遺伝子をコードした。もう一方の構築物は、NFAT感受性遺伝子要素の制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子をコードした。その結果、表面膜上にPD-1受容体を発現し、そしてルシフェラーゼ遺伝子転写を指示するNFAT依存性プロモーターを含有する、Jurkat-NFAT-PD-1レポーター細胞株を得た。この株の細胞におけるルシフェラーゼ酵素の合成は、NFAT活性のレベルに比例し、これは次に、T-リンパ球活性化の全体のレベルを反映する。
【0267】
以下のように、この細胞株を用いて、抗PD-L1抗体の活性を分析した:抗CD3および抗CD28抗体によるTCR受容体の活性化は、細胞内カスケードを誘発して、NFATプロモーター活性化を導いた。PD-L1は、インターフェロンによって活性化されたMDA-MB-231細胞の表面上に提示される。PD-L1およびPD-1の間の相互作用は、TCR受容体からNFATプロモーターへのシグナル伝達を阻害した。抗PD-L1抗体は、PD-L1-PD-1の相互作用を切断し、そして細胞内シグナル伝達を再活性化した。
【0268】
MDA-MB-231細胞を、PD-L1産生のため、インターフェロン-ガンマ溶液で活性化し、この目的のため、アッセイの72時間前、インターフェロンガンマを20ng/mlの濃度まで細胞懸濁物に添加し、次いで、細胞を10,000細胞/ウェルの率で96ウェル培養プレート中にプレーティングした。
【0269】
活性化72時間後、MDA-MB-231細胞を含むプレートから増殖培地を除去し、そして10μg/ml~0.001μg/mlの細胞増殖培地中で、分析する抗体、対照
抗体およびアイソタイプ対照の希釈物を添加し、室温で30分間インキュベーションした。
【0270】
さらに、Jurkat-NFAT-PD-1細胞の懸濁物および活性化抗体aCD3/aCD28/a-マウスIgGの溶液を各ウェルに添加した。プレートをCO2インキュベーター中に6時間入れた。
【0271】
ルシフェラーゼBio-Gloルシフェラーゼアッセイ系(Promega)のため、あらかじめ調製した基質をV細胞/V基質に添加した。Fluoroscan Ascent上で、発光レベルを測定した(
図6)。抗PD-L1抗体は、Jurkat-PD-1-NFATレポーター株における発光レベルを再活性化した。
【0272】
実施例10
Octet RED 96を用いたFcRnおよびFcγ受容体との抗PD-L1抗体相互作用のアッセイ
FcgRIIIaV、FcgRIa、FcRn受容体との抗体相互作用をアッセイするため、Fortebio Octet RED96装置を用いた。C末端ビオチン化受容体およびストレプトアビジンコーティングバイオセンサー(SA-ストレプトアビジン)を用いた。
【0273】
ビオチン化受容体をセンサーの表面上に固定した。さらに、会合段階を実行した:結合した抗原を伴うセンサーを、異なる濃度の抗体溶液内に浸した(あらかじめ、作業緩衝液中の一連の抗体希釈を調製し、そして96ウェルプレートの適切なウェル内に入れた)。この後、解離段階を行った:抗体溶液から作業緩衝液を含むウェルにセンサーを移した。
【0274】
FcgRIIIaV、およびFcgRIaに対する抗体アフィニティ定数をアッセイするため、リン酸緩衝液pH7.4を用い、FcRnに関しては、リン酸緩衝液pH6.0を用いた。
【0275】
Forte Bioデータ分析8.2ソフトウェアおよび1:1結合モデルを用いて、得られた曲線の分析を行った。結果を
図7に示す。修飾IgG1抗体のFcg受容体に対する結合は、野生型変異体に比較して検出されず、これは分析した抗体にエフェクター機能が存在しないことを示唆した。分析した抗PD-L1抗体におけるFcRnのアフィニティ定数は、1.69E-08 1/Mであった。
【0276】
実施例11
異なる生物由来の抗PD-L1抗体およびPD-L1の間の相互作用の酵素連結免疫吸着アッセイ
ELISAを用いて、異なる生物由来の抗PD-L1抗体の相対アフィニティを測定した。結合アッセイのため、ELISAプレートウェル(Greiner bio oneの中程度結合)を、50μlのヒト、カニクイザル、ネズミ、ラット、イヌ、ウサギPD-L1-Fc(1x炭酸緩衝液中の0.5μg/ml)でコーティングし、気密性に密封し、そして4℃で一晩インキュベーションした。続くすべての工程を、上述の標準的ELISAプロトコルにしたがって、実行した。抗PD-L1抗体は、ヒトおよびカニクイザルPD-L1に特異的に結合し、そして研究した他の受容体には結合しなかった(
図8)。
【0277】
実施例12
Octet RED 96装置上のヒトおよびカニクイザルPD-L1との抗PD-L1抗体相互作用の分析
ヒトおよびカニクイザルPD-L1への抗体結合アフィニティの定数をOctetRed 96装置(ForteBio)で測定した。AR2Gセンサー調製および固定に関する製造者の指示にしたがい、標準プロトコルにしたがって、30μg/mlの濃度のBCD-135抗体を、第二世代アミノ反応性バイオセンサー(ForetBio、AR2G)の表面上に非特異的に固定した。反応緩衝液として、0.1%Tween-20および0.1%BSAを含有するPBSを用いて、30℃でアッセイを行った。センサーに結合した抗体に対するヒトおよびサルPD-L1溶液の結合を、10μg/ml~1μg/mlの抗原濃度を含む作業緩衝液中で分析した。
【0278】
1:1相互作用モデルを用いた標準法にしたがって、Octetデータ分析(バージョン8.2)ソフトウェアを用いて、参照シグナルを減じた結合曲線を分析した。抗PD-L1抗体は、特異的にそしてアフィニティをもって(affinely)、それぞれ<1.0E-12および5.55E-10 1\Mの定数で、ヒトおよびカニクイザルPD-L1抗原に結合する(
図9)。
【0279】
実施例13
抗PD-L1抗体安定性決定
動的光散乱技術(DLS)を用いて、タンパク質凝集点に基づいて、BCD-135のコンホメーション安定性を評価した。ZetasizerナノZSP装置を用いて、研究タンパク質(1mg/ml)のタンパク質凝集点決定を行った。この目的のため、0.5mlの溶液を無塵水晶キュベット内に入れ、装置中で、散乱光強度を持続して測定しながら、該キュベットを次第に50℃から90℃に加熱した。BCD-135抗体は、20mM酢酸緩衝液中で、高いコンホメーション安定性を示し、融点は80℃より高かった(
図10)。
【0280】
PEG-タンパク質凝集法によって、候補のコロイド安定性を評価した。実験のため、5mg/mlのタンパク質濃度を持つ試料を用いた。UV分光プレートに対して、計算した量の試料、プラセボ溶液、およびPEG6000溶液を添加した。ウェル中のすべての溶液をピペッティングによってよく混合した。さらに、溶液濁度を視覚的に評価し、そしてλ=320nmの溶液光学密度もまた測定した。BCD-135抗体は、高いコロイド安定性を示した(
図11)。
【0281】
3つの異なる緩衝液:20mMリン酸緩衝液、pH6.0(
図12A)、20mM酢酸緩衝液、pH5.0(
図12B)および20mMヒスチジン緩衝液、pH5.5(
図12C)中、50℃で48時間、熱ストレスによって、抗体熱安定性を評価した。HPLC法(SEC HPLC)によって、均一性管理を行った。
【0282】
【0283】
~5mg/mlのタンパク質濃度の試験試料を、2つの部分に分け、そして別個のチュ
ーブに入れた:各配合物に関して1つのチューブを4℃の冷蔵庫に保存し、残りをサーモスタット中に入れ、そして50℃で72時間インキュベーションした。ウォームアップが終わったら、チューブをサーモスタットから取り除き、そして分析のために移した(
図12A、12Bおよび12C、赤は+4℃で維持した対照を示し、青は熱ストレス後の試料を示す)。抗PD-L1抗体は、3つの緩衝液すべてで高い熱安定性を示した(熱ストレス前および後の溶液中の凝集物の内容量の間の相違は、5%を超えなかった):
正常ヒト血清におけるBCD-135の安定性もまた、37℃で7日間評価した。この目的のため、組換えPDL1(100μl、1x炭酸緩衝液中、2.5μg/ml)を96ウェル高吸収ELISAプレートのウェル内に添加した。これを4℃で18時間インキュベーションした。さらに、ウェルの内容物を除去し、そしてブロッキング緩衝液(TBST中、0.5%スキムミルクの200μl)を添加した。プレートを37℃で30分間インキュベーションし、次いで、TBST溶液で2回洗浄した。
【0284】
検量線をプロットするため、ブロッキング緩衝液中で希釈した、0;7.8;15.6;31.25;62.5;125.0;250.0ng/mlの濃度で、BCD-135を含有する100μlの溶液を、第一の縦の列のウェルに添加した。
【0285】
プレートを37℃で30分間インキュベーションし、次いで、プレートをTBST溶液で3回洗浄した。さらに、100μl溶液のセイヨウワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼとコンジュゲート化した抗ヒトIgG Fc断片ヤギポリクローナル抗体を各ウェルに添加した。プレートを37℃で30分間インキュベーションした。次いで、プレートをTBST溶液で4~5回洗浄した。洗浄し、そして乾燥させたウェルに、100μlのTMB溶液を添加して、発色させた。プレートを適所に置き、遮光して、そして発色のため、22℃の温度で20~25分間インキュベーションした。ウェルに50μlの0.9M硫酸の停止溶液を添加することによって、反応を停止した。450nmの波長で、マイクロプレート読み取り装置上、ウェル中の溶液光学密度を測定した。
【0286】
得たデータに基づいて、ウェルに添加したBCD-135の濃度に対する光学密度依存を示す、検量線をプロットした(
図13A)。曲線をプロットするため、溶液光学密度算術平均を用いた。検量線に基づいて、試料中のBCD-135濃度値は、実験で得られた光学密度の値に対応することが見出された。
【0287】
研究結果に基づいて、ヒト血清中、37℃で7日間保存した後、決定したBCD-135濃度は、分析直前に調製した血清試料中で決定した濃度と有意には異ならず(
図13B)、抗体の安定性が示された。
【0288】
実施例14
PD-L1に特異的なBCD-135突然変異体抗体のライブラリー構築
PD-L1に特異的なBCD-135突然変異体抗体を構築するため、BIOCADのYLabソフトウェアパッケージおよびPD-L1モデル(PDB 4ZQK、PDB 4Z18)を用いて、3Dモデリングに基づく構造分析を行った(実施例18もまた参照されたい)。計算モデルに基づいて、部分的に縮重したコドンを持つBCD-135遺伝子のライブラリー(FUH Gら, Improving antibody binding affinity and specificity for therapeutic development, Methods Mol Biol., 2009, 525, 353-376)を、配列番号4の重鎖可変ドメインの第一および第三のCDR領域中、ならびに配列番号8の軽鎖可変ドメインの第三のCDR中の位で合成した。ランダム化遺伝子の生じたDNAを、実施例2に記載するプロトコルにしたがって、ファージディスプレイプラスミドpH5(
図2)内にクローニングした。SS320株へのこれらの構築物の形質転換は、方法[Methods Enzymol. 2000;
328: 333-63]にしたがったライブラリーのための5
*10e7の独立の形質転換体を生じた。以前記載された方法[Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3): 581-97]にしたがって、突然変異体VH BCD-135ライブラリーのファージ調製物を調製した。
【0289】
上述のもの(実施例3)と類似の条件下で、得たファージ突然変異体BCD-135 Fabライブラリーの選択を行った。
ヒト組換えPD-L1産物に対する上述のライブラリーの選択の第三周期後、ポリクローナルファージ産物で行ったELISAアッセイによって、有意な濃縮、および非特異的結合バックグラウンドの10倍過剰より多い結合が明らかになった。ヒトPD-L1-Fcに特異的なBCD-135突然変異体Fab抗体の濃縮ファージライブラリーからの遺伝子プールを、ELISA検出のため、C末端にmycタグペプチドを含有する発現プラスミドpLL(
図3)内に再クローニングした。
【0290】
実施例15
PD-L1に特異的なBCD-135突然変異体Fab抗体の比較ELISAアッセイ
ELISAを用いて、実施例4に記載するものと同様に、ヒトPD-L1への試験突然変異体Fab抗体の結合を測定する。BCD-135突然変異体Fab抗体を産生する試験クローンの数は、400単位であった。配列番号4および配列番号8の配列を持つBCD-135 Fab抗体の野生型を、陽性対照として用いた。
【0291】
その結果、対照野生型BCD-135 Fab抗体より高いかまたはそれと類似のシグナルを生じる85の陽性クローンを選択した(0.7~1.2相対単位の範囲の値)。
実施例16
PD-L1に対して特異的なBCD-135突然変異体Fab抗体の特徴づけ
対照野生型BCD-135 Fab抗体より高いかまたはそれと類似のシグナルを生じる85のELISAスクリーニング(実施例15)陽性クローン候補を、製造者によって推奨されるプロトコルにしたがって、Applied Biosystems 3130配列決定装置上で配列決定した。その結果、25の配列がユニークなクローンを得た。実施例7記載のOctet Red 96装置上で、動力学解離定数を定量化することによって、ユニークなクローンの8つの突然変異体Fab抗体をさらに分析した。
【0292】
実施例7に示すものと同様に、Pall Forte Bio Octet Red 96装置を用いて、Koffスクリーニングを行った。抗FABCH1バイオセンサー(SA)を、10mM PBS、pH7.2~7.4、0.1%Tween-20、0.1%BSAを含有する反応緩衝液中で、30分間再水和した。反応緩衝液を、1xの最終濃度まで、研究大腸菌上清試料に添加した。次いで、抗FABCH1バイオセンサーを、候補抗体のFab断片を含有する大腸菌上清に4℃で12時間浸した。表面に固定されたFab断片を含むセンサーを、反応緩衝液を含むウェル内に移し、ここでベースラインを記録した(60秒間)。次に、センサーを、抗原-抗体複合体と会合させるため(300s)、分析物溶液(PD-L1、30μg/mL)を含むウェルに移した。次いで、センサーを、次の解離工程のため、反応緩衝液を含有するウェルに戻した(600s)。各実験後、再生緩衝液(Gly-HCl、pH1.7)に3回入れることによって、用いたセンサーを再生し、その後、これらを次の実験に用いた。1:1相互作用モデルを用い、標準法にしたがって、Octetデータ分析(バージョン7.0)ソフトウェアを用いて、得られる曲線分析を行った。
【0293】
その結果、突然変異体Fab抗体の動力学解離定数を得て、これは、BCD-135 Fabの野生型と匹敵する特性を、そしてしたがって、可変ドメインの3つのCDRに関する置換の最大8%の寛容性を示した。
【0294】
BCD-135の抗PDL1 VH
【0295】
【0296】
【0297】
実施例17
安定細胞株の生成、抗PD-L1抗体の産生および精製
親懸濁細胞株CHO-Sを、最適化された比で抗体の軽鎖および重鎖を含有するベクター構築物で、Neonトランスフェクション系(Life Technologies)デバイスを用いてエレクトロポレーションすることによって、モノクローナル抗体BCD-135を産生する安定細胞株を得た。ClonePixロボット化プラットホーム(Molecular Devices)、および異なる培養形式で抗生物質を用いたミニプール選択の予備的段階を用いて、高レベルの生産性(1000mg/Lより高い)を持つクローン株を作製した。Octet RED96分析系(Pall Life Sciences)を用いて、生産性アッセイを行った。Biomek FXロボット工学コンピュータに基づく系(Beckman Coulter)を用いて、基本培地選択およびインキュベーションスケジュールのDOEを行った。産生細胞をインキュベーションするため、血清不含培地および動物タンパク質を含まないフィーディングを用いた。50lの作業体積を有する、HyLone使い捨てバイオリアクター(Thermo Fisher
Scientific)発酵装置中で、前臨床研究のためのBCD-135調製を行っ
た。
【0298】
Millistak C0HCデプスフィルター(Merck-Millipore)上で培養液を清澄化した。プロテインAを含むアフィニティ吸着剤上で、清澄化したCLから抗体の一次精製を行った。グリシン緩衝液中、pH3.3~3.8の酸性条件下で、ターゲットタンパク質の特異的溶出を行った。生じた溶出物を、酸性pHで30~60分間維持して、ウイルスを不活性化し、そして次いで、1M Tris-OH溶液で、pH6.5~7.0に中和した。CaptoAdhere吸着剤(GE HealthCare LifeSciences)上、ブレークスルーモードで、最終クロマトグラフィ精製を行って、残渣DNA、産生細胞タンパク質、アフィニティ吸着剤の切断されたリガンド、抗体凝集体および断片を取り除いた。この目的のため、6.5~7.0のpH、低伝導度(<3mS/cm2)で、タンパク質溶液を、調製した吸着剤に通過させた。精製タンパク質を、Viresolve PROフィルターセット(Millipore)、濃縮、ならびに酢酸緩衝剤(pH5.0~5.5)およびトレハロースを含有する最終緩衝液に対するダイアフィルトレーションを用いて、抗ウイルス濾過に供した。生じたタンパク質の濃度は、50mg/mlまたはそれより高かった。
【0299】
実施例18
BCD-135抗体およびヒトPD-L1複合体のインシリコモデリング
PD-L1に特異的なBCD-135突然変異体抗体を生成するため、SchrodingerのSchrodinger SuiteソフトウェアおよびBIOCADのYLABパッケージを用いて、3Dモデリングに基づく構造分析を行った。ターゲットの結晶構造として、PD-1に重点を置いた際、古典的4ZQK構造よりも、より結晶化されたアミノ酸を有するため、PDB 5C3Tを選択した。HEDGE装置(BIOCADのYLabパッケージの一部)を用いて、ドッキングを行った。10ナノ秒分子動力学間隔での自由エネルギーを概算することによって、最適位の選択を行った(Desmond装置、Schrodinger Suiteパッケージの一部)。SchrodingerのPyMOL装置を用いて、生じた構造の視覚化を生成した。可変ドメインBCD-135を含むモデルを
図14Aに示し、一方、
図14Bは、緊密なタンパク質間接触を形成する、単離されたアミノ酸残基との抗原および抗体相互作用の領域を示す。
【0300】
表Bは、密なタンパク質間相互作用を引き起こす、抗体および抗原両方の重要なアミノ酸残基を提示する。
【0301】
【0302】
表B. 中央列は、ヒトPD-L1と相互作用するBCD-135抗体のアミノ酸残基を示す。右列は、BCD-135抗体と相互作用する、PD-L1抗原の対応するアミノ酸残基を列挙する。
疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、請求項18記載の使用。
表B. 中央列は、ヒトPD-L1と相互作用するBCD-135抗体のアミノ酸残基を示す。右列は、BCD-135抗体と相互作用する、PD-L1抗原の対応するアミノ酸残基を列挙する。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
PD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって:
-配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン;
-配列番号7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメイン
を含む、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様2]
重鎖可変ドメインが配列番号3のアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様3]
軽鎖可変ドメインが配列番号7のアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様4]
重鎖の重鎖可変ドメインが、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様5]
重鎖可変ドメインが配列番号1~3のアミノ酸配列を含む、態様4記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様6]
軽鎖可変ドメインが、配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様7]
軽鎖可変ドメインが配列番号5~7のアミノ酸配列を含む、態様6記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様8]
態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
-重鎖可変ドメインが、配列番号1~3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが、配列番号5~7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様9]
態様8記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
-重鎖可変ドメインが配列番号1~3のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが配列番号5~7のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様10]
重鎖可変ドメインが、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様11]
重鎖可変ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含む、態様10記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様12]
軽鎖可変ドメインが、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様13]
軽鎖可変ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む、態様12記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様14]
態様1記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって
-重鎖可変ドメインが、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様15]
態様14記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって
-重鎖可変ドメインが配列番号4のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖可変ドメインが配列番号8のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[態様16]
態様1記載のモノクローナル抗体であって:
-配列番号9に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖;
-配列番号10に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、前記モノクローナル抗体。
[態様17]
態様16記載のモノクローナル抗体であって:
-重鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含み;
-軽鎖が配列番号10のアミノ酸配列を含む
前記モノクローナル抗体。
[態様18]
PD-L1に特異的に結合する抗体が全長IgG抗体である、態様1記載のモノクローナル抗体。
[態様19]
全長IgG抗体が、ヒト抗体IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のアイソタイプである、態様18記載のモノクローナル抗体。
[態様20]
全長IgG抗体が、ヒト抗体IgG1のアイソタイプである、態様19記載のモノクローナル抗体。
[態様21]
態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸。
[態様22]
DNAである、態様21記載の核酸。
[態様23]
態様21または態様22の核酸を含む、発現ベクター。
[態様24]
態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するように適応されている宿主細胞を産生する方法であって、宿主細胞を態様23記載の発現ベクターで形質転換する工程を含む、前記方法。
[態様25]
態様21または態様22の核酸を含む、態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するための、宿主細胞。
[態様26]
態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片を産生するための方法であって、培地中で、抗体を得るために十分な条件下で、態様25記載の宿主細胞をインキュベーションし、そして所望により、得た抗体の単離および精製が続く、前記方法。
[態様27]
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組成物であって、態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、および1つまたはそれより多くの薬学的に許容されうる賦形剤を含む、前記薬学的組成物。
[態様28]
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための態様27記載の薬学的組成物であって、PD-L1によって仲介される疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、前記薬学的組成物。
[態様29]
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための薬学的組み合わせであって、態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、および少なくとも1つの療法的抗腫瘍化合物を含む、前記薬学的組み合わせ。
[態様30]
PD-L1によって仲介される疾患または障害の防止または治療のための態様29記載の薬学的組み合わせであって、PD-L1によって仲介される疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、前記薬学的組み合わせ。
[態様31]
態様29~30のいずれか一項記載の薬学的組み合わせであって、療法的抗腫瘍化合物が、化学療法剤、抗体または抗ホルモン剤からなる群より選択される、前記薬学的組み合わせ。
[態様32]
PD-L1の生物学的活性を阻害する必要がある被験体において、PD-L1の生物学的活性を阻害するための方法であって、該被験体に、態様1~20のいずれか一項に定義するような抗体またはその抗原結合断片の療法的有効量を投与する工程を含む、前記方法。
[態様33]
PD-L1によって仲介される疾患または障害を治療する必要がある被験体において、PD-L1によって仲介される疾患または障害を治療するための、態様1~20のいずれか一項の抗体またはその抗原結合断片、あるいは態様27記載の薬学的組成物の使用。
[態様34]
疾患または障害が:SCCHN(頭頸部の扁平上皮癌)、子宮頸癌、原発不明癌、神経膠芽腫、食道癌、膀胱癌、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)、CRC(結腸直腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、NSCLC(非小細胞肺癌)、腎臓癌、卵巣癌、ホジキンリンパ腫、MSI-H CRC(高頻度マイクロサテライト不安定性を有する結腸直腸癌)の1つである、態様33記載の使用。