IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-積層シート 図1
  • 特開-積層シート 図2
  • 特開-積層シート 図3
  • 特開-積層シート 図4
  • 特開-積層シート 図5
  • 特開-積層シート 図6
  • 特開-積層シート 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081992
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】積層シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/027 20190101AFI20230606BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B32B7/027
B32B3/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037636
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2020030545の分割
【原出願日】2018-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 大地
(57)【要約】
【課題】電線が固定される第1シート部材に第2シート部材を重ね合せてしっかり固定できるようにすることを目的とする。
【解決手段】積層シート30は、第1シート部材32と、前記第1シート部材32の他方主面側に固定された第2シート部材36と、を備え、前記第1シート部材32と前記第2シート部材36との一方に、他方が溶けて充填可能な空間38が形成され、第1シート部材32と第2シート部材との他方が、一方の空間38に溶けて充填されて固化した状態で、第1シート部材32と第2シート部材36とが重ね合されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート部材と、
前記第1シート部材の他方主面側に固定された第2シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材と前記第2シート部材との一方に、他方が溶けて充填可能な空間が形成され、
前記第1シート部材と前記第2シート部材との前記他方が、前記一方の前記空間に溶けて充填された固化した状態で、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが重ね合されている、積層シート。
【請求項2】
請求項1に記載の積層シートであって、
前記第1シート部材と前記第2シート部材のうち前記一方の融点が、前記他方の融点よりも高い、積層シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層シートであって、
前記第1シート部材は、内部が一様に埋ったシート状の部材であり、
前記第2シート部材は、複数の繊維を含み、前記複数の繊維の間に前記空間が形成された不織シート部材であり、
前記第1シート部材が溶けて、前記不織シート部材の前記空間に充填されて固化した状態で、前記第1シート部材と前記不織シート部材とが重ね合されている、積層シート。
【請求項4】
請求項3に記載の積層シートであって、
前記不織シート部材のうち前記第1シート部材側の前記空間に前記第1シート部材が溶けて充填されて固化しており、
前記不織シート部材のうち前記第1シート部材から離れた部分では前記空間が残存している、積層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、線状伝送部材とシート部材とを備える配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被覆電線を軟質樹脂シート上に平行に並べる構成を開示している。被覆電線と軟質樹脂シートとを結合する手段としては、加熱加圧溶着手段等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58-192408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟質樹脂シートとしては、被覆電線との結合に適した材質のものを選定することが好ましい。例えば、被覆電線と軟質樹脂シートとを加熱加圧溶着手段で結合することを想定する。この場合、軟質樹脂シートとしては、被覆電線の被覆が容易に溶着するもの、例えば、被覆の樹脂材料と同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0005】
しかしながら、軟質樹脂シートとして、被覆電線との結合に適したものを選定すると、他の性能に劣ることがあり得る。この場合に、軟質樹脂シートに他のシートを重ね合せて、当該他の性能を補うことが考えられる。
【0006】
ところが、軟質樹脂シートと他のシートとの材質の組合せ等によっては、両者を重ね合せてしっかり固定できない場合があり得る。
【0007】
そこで、本発明は、電線が固定される第1シート部材に第2シート部材を重ね合せてしっかり固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、積層シートは、第1シート部材と、前記第1シート部材の他方主面側に固定された第2シート部材と、を備え、前記第1シート部材と前記第2シート部材との一方に、他方が溶けて充填可能な空間が形成され、前記第1シート部材と前記第2シート部材との前記他方が、前記一方の前記空間に溶けて充填された固化した状態で、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが重ね合されているものである。
【発明の効果】
【0009】
第1シート部材と第2シート部材との一方の空間に他方が溶けて充填されて固化した状態で、第1シート部材と第2シート部材とが重ね合されているため、第1シート部材と第2シート部材とをしっかりと重ね合せて固定することができる。また、第1シート部材と第2シート部材とを化学的な相互作用による接着性の良否とは関係無く、重ね合せることができるため、例えば、第1シート部材を他の部材への固定に適した材料とし、第2シート部材を他の機能確保に適した構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る配線部材を示す概略斜視図である。
図2図1のII-II線における部分断面図である。
図3】配線部材を製造する一工程を示す説明図である。
図4】第1変形例に係る配線部材を示す概略斜視図である。
図5】第2変形例に係る配線部材を示す概略斜視図である。
図6】同上の変形に係る配線部材を示す部分断面図である。
図7】配線部材に熱によって変色する材料を設けた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る配線部材及び積層シートについて説明する。
【0012】
図1は配線部材10を示す概略斜視図であり、図2図1のII-II線における部分断面図である。
【0013】
配線部材10は、線状伝送部材20と、積層シート30とを備える。積層シート30は、第1シート部材32と、第2シート部材36とが積層された構成とされている。
【0014】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材20は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0015】
ここでは線状伝送部材20が一般電線20(以下、単に電線20と呼ぶ)であるものとして説明する。電線20は、伝送線本体としての芯線24と、芯線24を覆う被覆26としての絶縁被覆26とを有する。電線20に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、線状伝送部材20の各例示物に適用可能である。
【0016】
芯線24は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。芯線24が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていてもよい。絶縁被覆26は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線24の周囲に押出成形されるなどして形成される。ここでは電線20は、横断面が円形のいわゆる丸電線である。
【0017】
ここでは、複数(図1では3つ)の電線20が並列状態で積層シート30に固定されている。電線20は、1本でもよいし、複数本であってもよい。電線20は、積層シート30上で曲って固定されていてもよい。複数の電線20は、途中で分岐するように積層シート30に固定されていてもよい。
【0018】
積層シート30は、主面31上に電線20が固定されるシート状の部材である。積層シート30の主面31上に電線20が固定されることによって、当該電線20が主面31において所定の経路に沿って保持される。積層シート30は、容易に曲げ可能な柔軟性を有していてもよいし、一定の形状を保つことができる程度の剛性を有する部材であってもよい。
【0019】
積層シート30は、第1シート部材32と、第2シート部材36とが積層された構成とされている。
【0020】
第1シート部材32は、シート状の部材である。ここでは、第1シート部材32は、細長い方形状に形成されている。この第1シート部材32の一方主面33に電線20が固定される。
【0021】
第2シート部材36は、シート状の部材である。ここでは、第1シート部材32は、細長い方形状に形成されている。上記第1シート部材32の他方主面34に第2シート部材36が重ね合せ状態で固定される。
【0022】
ここでは、第1シート部材32と第2シート部材36とは同じ形状であり、第1シート部材32の他方主面34の全体に第2シート部材36が固定されている。第1シート部材が第2シート部材よりも大きく、第1シート部材の他方主面の一部に第2シート部材が固定されていてもよい。逆に、第1シート部材が第2シート部材よりも小さく、第2シート部材の一方主面の一部に第1シート部材が固定されていてもよい。
【0023】
上記第1シート部材32に電線20が固定されることから、第1シート部材32は、第2シート部材36と比較して電線20の固定に適した部材とされている。
【0024】
第1シート部材32として、電線20の固定に適したものを採用すると、何らかの機能が不十分になったり、不足したりする恐れがある。そこで、第2シート部材36によって、第1シート部材32の何らかの機能を補強したり、付加したりする。
【0025】
第1シート部材32に対して電線20を固定する態様は、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。
【0026】
ここで接触部位固定とは、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、他の固定用の部材が線状伝送部材(電線20)を第1シート部材32に向けて押え込む等して、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが固定された状態に維持するものである。
【0027】
接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0028】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0029】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成した部分(線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0030】
接触部位直接固定の場合、線状伝送部材(電線20)の被覆に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、第1シート部材32に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。これらの場合において、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついて固化した状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。また、接触部位直接固定の場合、線状伝送部材(電線20)の被覆に含まれる樹脂と第1シート部材32に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。この場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、線状伝送部材(電線20)の被覆と第1シート部材32とが、同じ樹脂材料など、相溶し易い樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0031】
非接触部位固定の態様としては、例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、線状伝送部材(電線20)を第1シート部材32に向けて押え込む等して、線状伝送部材(電線)とシート材とが固定された状態に維持することが考えられる。
【0032】
上記各固定態様を前提とすると、第1シート部材32は、第2シート部材36と比較して電線20の固定に適した部材とされていることの意義については、例えば、次のように考えることができる。
【0033】
接触部位固定の一例である接触部位間接固定の態様として、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが、その間に設けられた粘着剤、両面粘着テープ等の粘着部材を介して粘着固定される態様を考える。この場合、第1シート部材32は、第2シート部材36と比較して電線20の固定に適した部材であるということは、粘着部材を第1シート部材32及び第2シート部材36に粘着した場合に、第2シート部材36に対する粘着力よりも、第1シート部材32に対する粘着力の方が大きいと考えてもよい。一般的には、ざらついた面、不織布のように微細な構造物が表面に分離可能な態様で存在している面を有する部材に対しては、粘着部材の粘着力が小さい。
【0034】
接触部位固定の一例である接触部位間接固定の態様として、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが、その間に設けられた接着剤によって固定される態様を考える。この場合、線状伝送部材(電線20)の接着に適した接着剤に対して、第1シート部材32が第2シート部材36よりも接着力が大きいと考えてもよい。一般的に、接着剤は、相溶性(親和性)が良好な部材に対して良好な接着性を示し、特に、同系の樹脂に対して良好な接着性を示すため、線状伝送部材(電線20)の被覆と第1シート部材32とは同系の樹脂とするとよい。
【0035】
接触部位固定の一例である接触部位直接固定の態様として、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32とが、それらの少なくとも一方の樹脂表面が溶けて固化して固定される態様を考える。上記したように、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32の少なくとも一方の樹脂表面は、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。この場合、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)と第1シート部材32の樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力が、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)と第2シート部材36の樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力よりも大きいと考えてもよい。一般的に、相溶性(親和性)が良好な樹脂材料同士であれば、それらの少なくとも一方が溶けた場合に、良好な固着力を示し、特に、同系の樹脂材料同士であれば、良好な固着力を示す。このため、線状伝送部材(電線20)の表面部分(被覆)と第1シート部材32とは同系の樹脂とするとよい。つまり、線状伝送部材の表面部分の樹脂と第1シート部材32の樹脂の相溶性は、線状伝送部材の表面部分の樹脂と第2シート部材36の樹脂との相溶性よりも良好であるとよい。
【0036】
非接触部位固定の態様として、縫糸が、線状伝送部材(電線20)を囲いつつ第1シート部材32に縫われること等で、当該縫糸が、線状伝送部材(電線20)を第1シート部材32に縫付けている態様を考える。この場合、縫糸によって第1シート部材32が第2シート部材36よりも千切れ難く、従って、縫糸によって第1シート部材32に縫付けられた線状伝送部材(電線20)が、同じ構成によって第2シート部材36に縫付けられている構成よりも、強固に固定されていると考えてもよい。
【0037】
非接触部位固定の態様として、シート材、粘着テープ等が、線状伝送部材(電線20)を覆った状態で第1シート部材32に固定されることで、線状伝送部材(電線20)が第1シート部材32に固定されている態様を考える。この場合、別のシート材、粘着テープ等が粘着部材を介して第1シート部材32に固定されているのであれば、第1シート部材32に対する別のシート材、粘着テープ等の粘着力が、第2シート部材36に対する粘着力よりも、大きいと考えてもよい。
【0038】
押え付けのためのシート材が第1シート部材32に対して接着剤によって固定されている態様、押え付けのためのシート材が第1シート部材32に対して縫糸で固定されている態様、押え付けのためのシート材が当該シート材又は第1シート部材32の少なくとも一方の樹脂表面が溶けることで固定されている態様については、それぞれ、線状伝送部材(電線20)の被覆と第1シート部材32との固定態様に関する上記考えを適用することができる。
【0039】
まとめると、第1シート部材32が第2シート部材36と比較して線状伝送部材(電線20)の固定に適しているとは、次のように捉えることができる。すなわち、線状伝送部材(電線20)を同じ構成で第1シート部材32及び第2シート部材36に固定した場合に、第1シート部材32に対する線状伝送部材(電線20)の固定力が、第2シート部材36に対する線状伝送部材(電線20)の固定力よりも大きくなることである。
【0040】
ここでは、線状伝送部材(電線20)が第1シート部材32に対して接触部位直接固定、より具体的には、線状伝送部材(電線20)と第1シート部材32との少なくとも一方の樹脂表面が溶けて固化して、線状伝送部材(電線20)が第1シート部材32に対して固定されている例で説明する。
【0041】
この場合、上記したように、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)と第1シート部材32の樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力が、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)と第2シート部材36の樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力よりも大きいと考えてもよい。
【0042】
上記条件を満たすものであれば、第1シート部材32を構成する材料は特に限定されるものではなく、例えば、第1シート部材32は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、などの樹脂を含む材料によって形成される。いずれの材料が適しているかについては、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)の材料との関係で選定すればよい。
【0043】
上記したように、線状伝送部材(電線20)の樹脂表面(被覆)と第1シート部材32とは同系の樹脂とするとよい。例えば、電線20の被覆26がPVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成されている場合、第1シート部材32を、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成するとよい。
【0044】
また、ここでは、第1シート部材32は、内部が一様に埋ったシート状の部材とされている。
【0045】
上記のように、第1シート部材32の材料を、電線20の固定に適するという観点から選ぶと、配線部材として望ましいとされる何らかの機能が不十分となる、或は、何らかの機能を欠く場合があり得る。
【0046】
例えば、上記のように、第1シート部材32を、電線20の被覆26の材料に合せて、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成する場合を考える。この場合、PVC(ポリ塩化ビニル)は伸び易い樹脂であるため、配線部材10に加わる引っ張り力を十分に受けることができず、電線20自体に引っ張り力が大きく作用してしまうことがあり得る。
【0047】
そこで、第1シート部材32に第2シート部材36を重ね合せて固定する。第2シート部材36は、第1シート部材32に、何らかの機能を補充し又は付加する目的で選定されるため、電線20の固定に適さないものが選定される場合があり得る。第1シート部材32としては、電線20への固定に適したものが選定されるため、第2シート部材36を第1シート部材32に重ね合せ状態で固定するのに適さないことがあり得る。
【0048】
例えば、上記のように、第1シート部材32として、電線20の被覆26の材料に合せて、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成されたものを選定するとする。この場合、第1シート部材32は伸び易くなるため、第2シート部材36として伸び難いものを選定するとよい。例えば、第2シート部材36を、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)等の樹脂で形成したとする。
【0049】
そして、第1シート部材32及び第2シート部材36の少なくとも一方の樹脂表面を溶かして両者を固定することを考える。この場合、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成された第1シート部材32は、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)等の樹脂で形成された第2シート部材36とくっつき難く、両者が容易に剥離してしまうことがあり得る。
【0050】
そこで、第2シート部材36として、第1シート部材32が溶けて充填可能な空間が形成されたものを用い、第1シート部材32が溶けて第2シート部材36の空間に充填されて固化した状態で、第1シート部材32と第2シート部材36とが重ね合された状態とする。
【0051】
ここでは、第2シート部材36として、不織シート部材を用いる。不織シート部材は、複数の繊維37が織られずに絡み合ってシート状に形成された部材である。繊維37として、第1シート部材32を構成する樹脂よりも伸び難い樹脂、例えば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PE(ポリプロピレン)等を用いれば、不織シート部材自体も伸び難くなる。このため、かかる不織シート部材によって形成された第2シート部材36を、第1シート部材32に重ね合せて接合することで、積層シート30自体も伸び難くなる。不織シート部材には、バインダと称される接着樹脂が含まれていてもよい。接着樹脂は、上記繊維37の融点よりも低い融点を有しており、上記繊維37同士をくっつける役割を果すものである。接着樹脂は、上記複数の繊維の全部又は一部を覆うものであってもよいし、上記繊維とは別に繊維状又は粒状に混じるものであってもよい。
【0052】
不織シート部材によって形成された第2シート部材36は、複数の繊維37の間に空間38が形成される。この空間38が、第1シート部材32が溶けて充填可能な空間38である。
【0053】
不織シート部材によって形成された第2シート部材36の融点を、第1シート部材32の融点よりも高くすることが好ましい。すなわち、不織シート部材によって形成された第2シート部材36の空間38に、第1シート部材32を溶かして充填するためには、第1シート部材32が溶けた状態で、空間38が潰れずに残存していることが好ましい。このためには、第2シート部材36の繊維37の融点を、第1シート部材32の融点よりも高くするとよい。
【0054】
例えば、第1シート部材32を、融点が85~210度であるPVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂で形成し、第2シート部材36の繊維として、融点がおよそ250度のPP(ポリプロピレン)を用いることが考えられる。
【0055】
なお、繊維37の融点が第1シート部材32の融点よりも高いことは必須ではない。接着樹脂の融点は第1シート部材32の融点よりも大きくなくてもよい。第2シート部材36の融点は、空間38を形成する主たる部分(繊維37)の温度である。
【0056】
第1シート部材32と第2シート部材36とは、例えば、図3に示すようにして、重ね合せて固定することができる。
【0057】
まず、第1シート部材32と第2シート部材36とを準備する。そして、第1シート部材32と第2シート部材36とを重ね合せた状態で、第1プレス部材50及び第2プレス部材52によって挟込む。第1プレス部材50及び第2プレス部材52の少なくとも一方にヒータ54が設けられている。主として第1シート部材32を加熱することができるように、ヒータ54は、少なくとも第1シート部材32を押す側の第1プレス部材50側に設けられているとよい。
【0058】
第1プレス部材50及び第2プレス部材52によって、第1シート部材32と第2シート部材36とを重ね合せた状態で加圧及び加熱すると、第1シート部材32の少なくとも一部が溶ける。そして、第1シート部材32の溶けた部分が、第2シート部材36の繊維37の空間38に流れ込み、当該空間38に充填された状態となる。
【0059】
この後、加熱が停止されると、第1シート部材32のうち溶けて空間38に充填された部分が固化し、第1シート部材32と第2シート部材36とが重ね合せ状態で固定された状態となる。
【0060】
第1シート部材32を加熱する際、第1シート部材32の全体が溶けてもよいし、第2シート部材36に近い側の一部のみが溶けてもよい。第1シート部材32のうち溶けた部分は、第2シート部材36の第1シート部材32側の空間38のみに充填されてもよいし、第2シート部材36の厚み方向全体の空間38に充填されてもよい。図2では、第2シート部材36のうち第1シート部材32側の空間38に、第1シート部材32が溶けて充填されて固化しており、第2シート部材36のうち第1シート部材32から離れた部分では空間38の少なくとも一部が残存したままとなっている。
【0061】
第1シート部材32と第2シート部材36とは、それらの接触面全体で固定されてもよいし、部分的な固定箇所又は固定領域で固定されてもよい。
【0062】
第1シート部材32に対する電線20の固定は、第1シート部材32と第2シート部材36とを固定する前になされてもよいし、第1シート部材32と第2シート部材36とを固定した後になされてもよい。第1シート部材32に電線20を固定した後に、第1シート部材32と第2シート部材36とを固定する場合には、電線20の固定箇所を避けて、第1シート部材32と第2シート部材36とを加圧及び加熱してもよい。
【0063】
第2シート部材36の材料、性状等は、第1シート部材32に対して補充又は付加を望まれる機能によって異なる。例えば、防音性、クッション性等を補充又は付加する目的である場合には、第2シート部材36は、伸び易い繊維で形成された不織シート部材であってもよい。また、例えば、剛性等を補充又は付加する目的である場合には、第2シート部材36は、第1シート部材32よりも高剛性なシートであってもよい。
【0064】
このように構成された配線部材10、積層シート30によると、第1シート部材32は、第2シート部材36と比較して電線20の固定に適した部材であるため、電線20を第1シート部材32にしっかりと固定できる。
【0065】
また、第1シート部材32が第2シート部材36の空間38に溶けて充填されて固化した状態で、第1シート部材32と第2シート部材36とが重ね合されているため、アンカー効果によって、第1シート部材32が第2シート部材36に固定されて、剥離強度が強くなり、両者をしっかりと重ね合せて固定することができる。換言すれば、第1シート部材32と第2シート部材36とは、主として物理的な作用によって固定されるため、第2シート部材36として、電線20、第1シート部材32への化学的な固着力等を考慮せず、任意の材質で形成されたものを選定でき、望ましいとされる任意の機能を付加又は補完し易い。
【0066】
また、第1シート部材32の融点よりも第2シート部材36の融点よりも高くすると、第1シート部材32と第2シート部材36とを重ね合せた状態で加圧及び加熱した際に、第2シート部材36に空間38が残存したままの状態で、第1シート部材32が溶け易い。このため、第1シート部材32が溶けて第2シート部材36の空間38に充填されて固化した状態に容易に固定することができる。これにより、第1シート部材32と第2シート部材36とをより確実にしっかりと重ね合せて固定することができる。
【0067】
また、第1シート部材32は、内部が一様に埋ったシート状の部材であるため、線状の電線20を第1シート部材32に安定して固定し易い。また、第2シート部材36は、不織シート部材であるため、絡み合う複数の繊維37の間に多数の空間38が形成されており、溶けた第1シート部材32が多数の空間38間に容易に充填される。また、この状態で、複数の繊維37が溶けた第1シート部材32の内部に複雑に入り込んだ状態となるため、溶けた第1シート部材32が複数の繊維37の間の空間38から脱し難い。このため、第1シート部材32と第2シート部材36とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【0068】
また、不織シート部材である第2シート部材36のうち、第1シート部材32側の空間に第1シート部材32が溶けて充填されて固化しており、第2シート部材36のうち第1シート部材32から離れた部分では空間38が残存しているため、不織シート部材による保護性能、防音性能を得ることができる。
【0069】
また、第1シート部材32の樹脂材料と線状伝送部材(電線20)の表面の樹脂材料(被覆26の材料)とを同系の樹脂で形成すれば、線状伝送部材(電線20)の表面(被覆26)を第1シート部材32にしっかりと固定し易い。
【0070】
例えば、線状伝送部材の表面部分(電線20の被覆26)及び第1シート部材32を、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂で形成すれば、両者をしっかりと固定できる。そして、第2シート部材36として、第1シート部材32よりも伸び難い樹脂(例えば、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)等)で形成すれば、積層シート30全体として伸び難くすることができ、配線部材10に引っ張り力が加わった場合に、これを積層シート30で受止めることができ、電線20に引っ張り力が作用し難くなる。
【0071】
{変形例}
上記実施形態を前提として、各種変形例について説明する。
【0072】
上記実施形態では、第1シート部材32が、内部が一様に埋ったシート状の部材であり、第2シート部材36が不織シート部材である例で説明した。
【0073】
逆に、図4に示す第1変形例に係る配線部材110のように、電線20が固定される第1シート部材132が、不織シート部材であり、第2シート部材136が、内部が一様に埋ったシート状の部材であってもよい。この場合でも、第1シート部材132が電線20の固定に適したものであれば、電線20を第1シート部材132にしっかりと固定でき、かつ、第1シート部材132と第2シート部材136とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【0074】
例えば、電線20の被覆26と不織シート部材である第1シート部材132とが、ポリ塩化ビニル(PVC)等の同系樹脂材料で形成されることで、両者が固定に適した組合せとなっていてもよい。また、例えば、第2シート部材136が伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)等で形成され、伸び難さを付加するものであってもよい。
【0075】
つまり、電線が固定される第1シート部材が、隙間を有する部材であり、第2シート部材が溶けて当該隙間に充填されて固化する構成であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、空間38を有する第2シート部材36が不織シート部材である例で説明したが、第2シート部材は、第1シート部材が溶けて充填して固化可能な空間を有する部材であればよい。
【0077】
例えば、図5に示す第2変形例に係る配線部材210では、第2シート部材236として網状の部材が用いられている。図5では、第1シート部材32に第2シート部材236を固定する前の状態を示している。網状の第2シート部材236は、縦横に組合わされた線状の部材の間に、空間238を有している。つまり、網目が空間238である。第2シート部材236は、上記実施形態と同様に、第1シート部材32に機能を付加又は補完するものである。例えば、第2シート部材236は、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリプロピレン)、金属等で形成されていてもよい。
【0078】
そして、上記実施形態と同様に、第1シート部材32と第2シート部材236とを重ね合せて加圧及び加熱すると、図6に示すように、第1シート部材32が溶けて、第2シート部材236の空間238(網目)内に充填されて固化する。このため、電線20を第1シート部材32にしっかりと固定できるようにしつつ、第1シート部材32と第2シート部材236とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【0079】
第2シート部材としては、空間が形成されたシートであればよく、上記のような網の他、糸を縦横に組合わせた織布、糸を織った織物等であってもよい。織布、網布は、組合わされた又は織られた糸の間に空間が形成されているため、第1シート部材を溶かして当該空間に充填して固化させることができる。また、第2シート部材としては、シートに表裏に貫通する孔、又は、有底の凹みが形成され、当該孔の内部空間又は有底の凹みの内部空間が、第1シート部材が溶けて充填して固化される空間とされたものであってもよい。
【0080】
また、電線20と第1シート部材32とを熱によって溶かして固定する際には、電線20と第1シート部材32とに熱がしっかりと加えられてしっかりと固定されているか否かを確認できるようにすることが好ましい。
【0081】
そのためには、図7に示す配線部材310のように、電線20が固定されるシートである第1シート部材32と、電線20の被覆26(線状伝送部材の表面をなす樹脂)との少なくとも一方に、熱によって変色する材料を設けるとよい。熱によって変色する材料は、第1シート部材32又は被覆26を形成する材料に混合してもよいし、それらの表面に付着させてもよい。
【0082】
熱によって変色する材料は、電線20と第1シート部材32とを熱によって固定する際に、電線20と第1シート部材32との接触部分が加熱されるべき温度(例えば、電線20の融点と第1シート部材32の融点のうち低い方の温度)以上の所定温度で、変色することが好ましい。
【0083】
熱によって変色する材料は、不可逆的に変色するものであってもよいし、可逆的に変色するものであってもよい。加工後、ある程度の時間が経過した後にも、電線20と第1シート部材32とに熱がしっかりと加えられたか否かを検査するためには、熱によって変色する材料は、不可逆的に変色するものであることが好ましい。熱によって変色する材料が、可逆的に変色するものである場合、熱加工中又は直後に、目視にて、又は、カメラにて撮像し変色箇所を抽出する機能を有する画像処理検査装置にて検査を行うとよい。
【0084】
不可逆的に変色する材料としては、コバルト、ニッケル、銅等を含む化合物顔料であり、熱分解等によって組成が変って変色するものを用いることができる。かかる材料として、例えば、不可逆性示温塗料として周知のものを用いることができる。
【0085】
可逆的に変色する材料としては、化合物の結晶系の転移等の物理的変化を利用した塗料を用いることができる。例えば、ヨウ化水銀(II)酸塩等を用いた塗料を用いることができる。かかる材料として、例えば、不可逆性示温塗料として周知のもの(サーモカラー、Temp-Alarm、サーモペイント等)を用いることができる。
【0086】
この例によると、電線20と第1シート部材32とを加熱して固定する場合、しっかりと熱が加えられた箇所350は、当該熱によって変色する。これに対して、しっかりと熱が加えられた箇所352は、元の色のままであるか、変色の程度が低い。このため、しっかり熱を加えた固定ができていないことを視覚的に確認することができる。
【0087】
図7では、電線20が第1シート部材32に対して複数箇所で点状に固定されているが、電線20は、その長手方向全体に亘って第1シート部材32に対して固定されてもよい。
【0088】
本構成は、上記実施形態に説明した配線部材10に限らず、線状伝送部材(電線20)をシート状部材に固定する場合に、広く適用可能である。
【0089】
第1シート部材32及び第2シート部材36の少なくとも一方に、熱によって変色する材料が設けられ、両者を固定する際に、熱が所望の箇所又は領域に加わったか否かを検査できるようにしてもよい。
【0090】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。例えば、第1変形例と第2変形例とを組合せ、電線20が固定される第1シート部材として網状のものを用い、第2シート部材として内部が一様に埋ったシート状の部材を用いてもよい。
【0091】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0092】
本開示は、以下の各態様を開示している。
【0093】
第1の態様に係る配線部材は、線状伝送部材と、前記線状伝送部材が一方主面に固定された第1シート部材と、前記第1シート部材の他方主面側に固定された第2シート部材と、を備え、前記第1シート部材は前記第2シート部材と比較して前記線状伝送部材の固定に適し、前記第1シート部材と前記第2シート部材との一方に、他方が溶けて充填可能な空間が形成され、前記第1シート部材と前記第2シート部材との前記他方が、前記一方の前記空間に溶けて充填されて固化した状態で、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが重ね合されているものである。
【0094】
第2の態様は、第1の態様に係る配線部材であって、前記第1シート部材と前記第2シート部材のうち前記一方の融点が、前記他方の融点よりも高いものである。
【0095】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る配線部材であって、前記第1シート部材は、内部が一様に埋ったシート状の部材であり、前記第2シート部材は、複数の繊維を含み、前記複数の繊維の間に前記空間が形成された不織シート部材であり、前記第1シート部材が溶けて、前記不織シート部材の前記空間に充填されて固化した状態で、前記第1シート部材と前記不織シート部材とが重ね合されているものである。
【0096】
第4の態様は、第3の態様に係る配線部材であって、前記不織シート部材のうち前記第1シート部材側の前記空間に前記第1シート部材が溶けて充填されて固化しており、前記不織シート部材のうち前記第1シート部材から離れた部分では前記空間が残存しているものである。
【0097】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記第1シート部材は、前記線状伝送部材の被覆と同系の樹脂で形成されているものである。
【0098】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記線状伝送部材の被覆及び前記第1シート部材は、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂で形成されており、前記第2シート部材は、前記第1シート部材よりも伸び難い樹脂で形成されているものである。
【0099】
第7の態様に係る積層シートは、第1シート部材と、前記第1シート部材の他方主面側に固定された第2シート部材と、を備え、前記第1シート部材と前記第2シート部材との一方に、他方が溶けて充填可能な空間が形成され、前記第1シート部材と前記第2シート部材との前記他方が、前記一方の前記空間に溶けて充填された固化した状態で、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが重ね合されているものである。
【0100】
第1の態様によると、線状伝送部材を第1シート部材にしっかりと固定できる。また、第1シート部材と第2シート部材との一方の空間に他方が溶けて充填されて固化した状態で、第1シート部材と第2シート部材とが重ね合されているため、第1シート部材と第2シート部材とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【0101】
第2の態様によると、第1シート部材と第2シート部材とを重ね合せた状態で加熱すると、前記第1シート部材と前記第2シート部材のうち前記他方が先に溶け易い。このため、第1シート部材と第2シート部材との一方の空間に他方が溶けて充填されて固化された状態に容易に加工することができる。
【0102】
第3の態様によると、線状伝送部材を、内部が一様に埋ったシート状の第1シート部材に安定して固定し易い。また、第1シート部材が溶けて、不織シート部材の複数の繊維の間の空間に充填されて固化した状態で、第1シート部材と不織シート部材とが重ね合されているため、第1シート部材と不織シート部材とをしっかりと重ね合せ状態に保つことができる。
【0103】
第4の態様によると、不織シート部材のうち前記第1シート部材から離れた部分では空間が残存しているため、不織シート部材による保護性能、防音性を得ることができる。
【0104】
第5の態様によると、第1シート部材は、線状伝送部材の被覆と同系の樹脂で形成されているため、線状伝送部材の被覆を第1シート部材にしっかりと固定し易い。
【0105】
第6の態様によると、線状伝送部材の被覆と第1シート部材とを固定し易い。また、ポリ塩化ビニルは伸び易いため、第1シート部材よりも伸び難い樹脂で形成された第2シート部材によって、重ね合せた第1シート部材及び第2シート部材を伸び難くできる。
【0106】
第7の態様によると、第1シート部材と第2シート部材との一方の空間に他方が溶けて充填されて固化した状態で、第1シート部材と第2シート部材とが重ね合されているため、第1シート部材と第2シート部材とをしっかりと重ね合せて固定することができる。また、第1シート部材と第2シート部材とを化学的な相互作用による接着性の良否とは関係無く、重ね合せることができるため、例えば、第1シート部材を他の部材への固定に適した材料とし、第2シート部材を他の機能確保に適した構成とすることができる。
【符号の説明】
【0107】
10、110、210 配線部材
20 電線(線状伝送部材)
26 被覆
30 積層シート
32、132 第1シート部材
33 第1シート部材の一方主面
34 第1シート部材の他方主面
36、136、236 第2シート部材
37 繊維
38、238 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート部材と、
前記第1シート部材の他方主面側に固定された第2シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材と前記第2シート部材との一方に、他方が溶けて充填可能な空間が形成され、
前記第1シート部材と前記第2シート部材との前記他方が、前記一方の前記空間に溶けて充填された固化した状態で、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが重ね合されており、
前記第1シート部材がポリ塩化ビニルを含む樹脂によって形成され、前記第2シート部材がポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンを含む樹脂によって形成されている、積層シート。
【請求項2】
請求項1に記載の積層シートであって、
前記第1シート部材と前記第2シート部材のうち前記一方の融点が、前記他方の融点よりも高い、積層シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層シートであって、
前記第1シート部材は、内部が一様に埋まったシート状の部材であり、
前記第2シート部材は、複数の繊維を含み、前記複数の繊維の間に前記空間が形成された不織シート部材であり、
前記第1シート部材が溶けて、前記不織シート部材の前記空間に充填されて固化した状態で、前記第1シート部材と前記不織シート部材とが重ね合されている、積層シート。
【請求項4】
請求項3に記載の積層シートであって、
前記不織シート部材のうち前記第1シート部材側の前記空間に前記第1シート部材が溶けて充填されて固化しており、
前記不織シート部材のうち前記第1シート部材から離れた部分では前記空間が残存している、積層シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
また、ここでは、第1シート部材32は、内部が一様に埋ったシート状の部材とされている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
例えば、上記のように、第1シート部材32として、電線20の被覆26の材料に合せて、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成されたものを選定するとする。この場合、第1シート部材32は伸び易くなるため、第2シート部材36として伸び難いものを選定するとよい。例えば、第2シート部材36を、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等の樹脂で形成したとする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
そして、第1シート部材32及び第2シート部材36の少なくとも一方の樹脂表面を溶かして両者を固定することを考える。この場合、PVC(ポリ塩化ビニル)を主成分とする樹脂によって形成された第1シート部材32は、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等の樹脂で形成された第2シート部材36とくっつき難く、両者が容易に剥離してしまうことがあり得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
ここでは、第2シート部材36として、不織シート部材を用いる。不織シート部材は、複数の繊維37が織られずに絡み合ってシート状に形成された部材である。繊維37として、第1シート部材32を構成する樹脂よりも伸び難い樹脂、例えば、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PE(ポリエチレン)等を用いれば、不織シート部材自体も伸び難くなる。このため、かかる不織シート部材によって形成された第2シート部材36を、第1シート部材32に重ね合せて接合することで、積層シート30自体も伸び難くなる。不織シート部材には、バインダと称される接着樹脂が含まれていてもよい。接着樹脂は、上記繊維37の融点よりも低い融点を有しており、上記繊維37同士をくっつける役割を果すものである。接着樹脂は、上記複数の繊維の全部又は一部を覆うものであってもよいし、上記繊維とは別に繊維状又は粒状に混じるものであってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
また、第1シート部材32は、内部が一様に埋ったシート状の部材であるため、線状の電線20を第1シート部材32に安定して固定し易い。また、第2シート部材36は、不織シート部材であるため、絡み合う複数の繊維37の間に多数の空間38が形成されており、溶けた第1シート部材32が多数の空間38間に容易に充填される。また、この状態で、複数の繊維37が溶けた第1シート部材32の内部に複雑に入り込んだ状態となるため、溶けた第1シート部材32が複数の繊維37の間の空間38から脱し難い。このため、第1シート部材32と第2シート部材36とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
例えば、線状伝送部材の表面部分(電線20の被覆26)及び第1シート部材32を、ポリ塩化ビニルを主成分とする樹脂で形成すれば、両者をしっかりと固定できる。そして、第2シート部材36として、第1シート部材32よりも伸び難い樹脂(例えば、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等)で形成すれば、積層シート30全体として伸び難くすることができ、配線部材10に引っ張り力が加わった場合に、これを積層シート30で受止めることができ、電線20に引っ張り力が作用し難くなる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
上記実施形態では、第1シート部材32が、内部が一様に埋ったシート状の部材であり、第2シート部材36が不織シート部材である例で説明した。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
逆に、図4に示す第1変形例に係る配線部材110のように、電線20が固定される第1シート部材132が、不織シート部材であり、第2シート部材136が、内部が一様に埋ったシート状の部材であってもよい。この場合でも、第1シート部材132が電線20の固定に適したものであれば、電線20を第1シート部材132にしっかりと固定でき、かつ、第1シート部材132と第2シート部材136とをしっかりと重ね合せて固定することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
例えば、電線20の被覆26と不織シート部材である第1シート部材132とが、ポリ塩化ビニル(PVC)等の同系樹脂材料で形成されることで、両者が固定に適した組合せとなっていてもよい。また、例えば、第2シート部材136が伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)等で形成され、伸び難さを付加するものであってもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
例えば、図5に示す第2変形例に係る配線部材210では、第2シート部材236として網状の部材が用いられている。図5では、第1シート部材32に第2シート部材236を固定する前の状態を示している。網状の第2シート部材236は、縦横に組合わされた線状の部材の間に、空間238を有している。つまり、網目が空間238である。第2シート部材236は、上記実施形態と同様に、第1シート部材32に機能を付加又は補完するものである。例えば、第2シート部材236は、伸び難いPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、金属等で形成されていてもよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。例えば、第1変形例と第2変形例とを組合せ、電線20が固定される第1シート部材として網状のものを用い、第2シート部材として内部が一様に埋ったシート状の部材を用いてもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る配線部材であって、前記第1シート部材は、内部が一様に埋ったシート状の部材であり、前記第2シート部材は、複数の繊維を含み、前記複数の繊維の間に前記空間が形成された不織シート部材であり、前記第1シート部材が溶けて、前記不織シート部材の前記空間に充填されて固化した状態で、前記第1シート部材と前記不織シート部材とが重ね合されているものである。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
第3の態様によると、線状伝送部材を、内部が一様に埋ったシート状の第1シート部材に安定して固定し易い。また、第1シート部材が溶けて、不織シート部材の複数の繊維の間の空間に充填されて固化した状態で、第1シート部材と不織シート部材とが重ね合されているため、第1シート部材と不織シート部材とをしっかりと重ね合せ状態に保つことができる。