(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082018
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】シヌクレイノパチーの治療のためのアルファ-シヌクレインタンパク質のC末端からのペプチド免疫原及びその製剤
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230606BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230606BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230606BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230606BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230606BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230606BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20230606BHJP
A61P 25/16 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/18
C07K14/46
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P25/28
A61K39/395 N
A61P37/04
G01N33/53 D
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/117 Z
A61P25/16
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040466
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2020519016の分割
【原出願日】2018-06-15
(31)【優先権主張番号】62/521,287
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】519447961
【氏名又は名称】ユナイテッド ニューロサイエンス
【氏名又は名称原語表記】UNITED NEUROSCIENCE
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャン イ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルファ-シヌクレイン(αSyn)ペプチド免疫原コンストラクト、組成物、コンストラクトにより誘発される抗体、ならびにコンストラクト及びその組成物を作製及び使用する方法を提供する。
【解決手段】全長αSynのアミノ酸G111近辺からアミノ酸D135近辺までに対応するα-SynのC末端フラグメントからの約10から約25アミノ酸残基を含む、B細胞エピトープと;特定のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTヘルパーエピトープと;アミノ酸Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lysからなる群から選択される必要に応じた異種スペーサーと、を含み、前記B細胞エピトープが、前記Tヘルパー細胞エピトープに直接または前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合している、前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ-シヌクレイン(α-Syn)ペプチド免疫原コンストラクトであって、
配列番号1のアミノ酸G111近辺からアミノ酸D135近辺までに対応するα-SynのC末端フラグメントからの約10から約25アミノ酸残基を含む、B細胞エピトープと;
配列番号70~98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTヘルパーエピトープと;
アミノ酸Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)からなる群から選択される必要に応じた異種スペーサーと、を含み、
前記B細胞エピトープが、前記Tヘルパー細胞エピトープに直接または前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合している、前記α-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項2】
前記B細胞エピトープが、配列番号12~15、17、及び49~63からなる群から選択される、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項3】
前記Tヘルパーエピトープが、配列番号81、83、及び84からなる群から選択される、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項4】
前記必要に応じた異種スペーサーが、(α,ε-N)Lysまたはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)である、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項5】
前記Tヘルパーエピトープが、前記B細胞エピトープのアミノ末端に共有結合している、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項6】
前記Tヘルパーエピトープが、前記B細胞エピトープのアミノ末端に前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合している、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項7】
以下の式:
(Th)m-(A)n-(α-SynのC末端フラグメント)-X
または
(α-SynのC末端フラグメント)-(A)n-(Th)m-X
を含み、
式中、
Thは前記Tヘルパーエピトープであり、
Aは前記異種スペーサーであり、
(α-SynのC末端フラグメント)は、前記B細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは、1から約4であり、
nは1から約10である、
請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項8】
配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項9】
配列番号107、108、及び111~113からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項10】
請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む、組成物。
【請求項11】
1を超える請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む、組成物。
【請求項12】
前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが配列番号112及び113のアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト及び薬学的に許容される送達媒体及び/またはアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項14】
a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記アジュバントが、Al(OH)3またはAlPO4からなる群から選択されるアルミニウムの無機塩である、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトがCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されて、安定化された免疫刺激複合体を形成する、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項17】
前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトに結合した、請求項16に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項18】
請求項9に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項19】
請求項16に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む組成物。
【請求項21】
a.配列番号112のB細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと、
b.配列番号113のB細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと、
の混合物を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
宿主においてα-Synを認識する抗体を産生する方法であって、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原と送達媒体及び/またはアジュバントとを含む組成物を前記宿主に投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
動物のα-Syn凝集を阻害する方法であって、薬理学的に有効な量の請求項1のα-Synペプチド免疫原を前記動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
動物のα-Syn凝集体の量を低減する方法であって、薬理学的に有効な量の請求項1のα-Synペプチド免疫原を前記動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
生体試料中の異なるサイズのα-Syn凝集体を同定する方法であって、
a.生体試料を、請求項16に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが前記α-Syn凝集体に結合することを可能にする条件下で曝露することと、
b.前記生体試料中の前記α-Syn凝集体に結合した前記抗体またはそのエピトープ結合断片の量を検出することと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,287号の権益を主張するPCT国際出願であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、シヌクレイノパチーの治療のためのアルファ-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質のC末端に基づくペプチド免疫原コンストラクト及びその製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
シヌクレインタンパク質(ウェブサイト:en.wikipedia.org/wiki/Synucleinにおいて概説される)は、主に神経組織及び特定の腫瘍で発現する脊椎動物に共通の可溶性タンパク質のファミリーである。シヌクレインファミリーには、3つの既知のタンパク質:アルファ-シヌクレイン(ウェブサイト:en.wikipedia.org/wiki/Alpha-synucleinにおいて概説される)、ベータ-シヌクレイン(ウェブサイト:en.wikipedia.org/wiki/Beta-synucleinにおいて概説される)、及びガンマ-シヌクレインが含まれる。すべてのシヌクレインは、交換可能なアポリポタンパク質のクラスA2脂質結合ドメインと類似性のある、高度に保存されたアルファヘリックス脂質結合モチーフを共有している。一部のデータは膜安定性及び/または代謝回転の調節における役割を示唆しているが、正常な細胞機能はシヌクレインタンパク質のいずれについても決定されていない。
【0004】
全長アルファ-シヌクレインタンパク質(α-Syn)は140アミノ酸のタンパク質(受託番号NP_000336)であり、SNCA遺伝子によってコードされている。選択的スプライシングにより、少なくとも3つのα-Synのアイソフォームが生成される。主な形態は、完全長のタンパク質である。他のアイソフォームは、エクソン3の喪失により残基41~54が欠如しているα-Syn-126、及びエクソン5の喪失により残基103~130が欠如しているα-Syn-112である。
【0005】
α-Synの一次構造は、通常3つの異なるドメインに分けられる:(1)残基1~60:アポリポタンパク質結合ドメインに類似した構造的アルファヘリックス傾向を有するコンセンサス配列KTKEGVを含む4つの11残基リピートが支配的な両親媒性N末端領域;(2)残基61~95:タンパク質凝集に関与する非アミロイドβコンポーネント(NAC)領域を含む中央の疎水性領域;(3)残基96~140:明確な構造的傾向を有さない高酸性のプロリンに富む領域。NAC領域の35アミノ酸のα-Synフラグメントは、アミロイドに富む画分にAβとともに存在することが発見された。NACは、その前駆体タンパク質である、現在ヒトのα-Synと呼ばれる、ゴマフシビレエイ(Torpedo californica)からのシヌクレインの全長ヒト相同体であると後に決定された、NACPのフラグメントであることが後に示された。
【0006】
HPLCで精製されたα-Synのin vitroでの高分解能イオン移動度質量分析(IMS-MS)の使用により、α-Synが自己タンパク質分解性(自己タンパク質分解性)であり、インキュベーション時にさまざまな低分子量フラグメントを生成することが示された。14.46kDaの完全長タンパク質は、C末端及びN末端の短縮化によって形成される12.16kDaフラグメント(アミノ酸14~133)及び10.44kDaフラグメント(アミノ酸40~140)、ならびに7.27kDaフラグメント(アミノ酸72~140)を含む多数の小さなフラグメントを生成することが見出された。NAC領域の大部分を含む7.27kDaフラグメントは、全長α-Synよりもかなり速く凝集することが示された。これらの自己タンパク質分解性産物は、α-Synの凝集における中間体または補因子としての役割を果たす可能性がある。
【0007】
α-Synは、ヒトの脳で豊富であり、脳及びグリア細胞の細胞質にあるすべてのタンパク質の1%を占めている。α-Synは、新皮質、海馬、歯状回、嗅球、線条体、視床、及び小脳で広く発現している。また、B細胞、T細胞、及びNK細胞、ならびに単球及び血小板を含む造血細胞でも高度に発現している。少量のα-Synが心臓、筋肉、及びその他の組織で見出される。脳では、α-Synは主にシナプス前終末と呼ばれる特殊な構造の神経細胞(ニューロン)の先端に見出される。これらの構造内で、α-Synはリン脂質及びタンパク質と相互作用する。シナプス前終末は、シナプス小胞として知られているコンパートメントから、ドーパミンなどの神経伝達物質と呼ばれる化学メッセンジャーを放出する。神経伝達物質の放出は、ニューロン間の信号を中継し、認知を含む正常な脳機能にとって重要である。
【0008】
溶液中のα-Synは、単一の安定した3D構造を欠いているという点で、天然変性タンパク質であると考えられている。α-Synはチューブリンと顕著に相互作用し、α-Synはタウのような潜在的な微小管関連タンパク質としての活性を持つ可能性があることが示されている。α-Synは古典的に非構造化可溶性タンパク質であると考えられてきたが、非変異α-Synは凝集に抵抗する安定に折り畳まれた四量体を形成する。それにもかかわらず、α-Synは凝集して、レビー小体を特徴とする病態において不溶性原線維を形成し得る。これらの障害はシヌクレイノパチー(ウェブサイト:en.wikipedia.org/wiki/Synucleinopathiesにおいて概説される)として知られている。
【0009】
シヌクレイノパチーは、共通の病理学的特徴を共有する神経変性障害の多様なグループであり、神経病理学的検査では、不溶性のα-Synの異常な凝集体を含む特徴的な病変が、ニューロン及びグリア細胞の選択的脆弱集団に存在する。最も一般的なシヌクレイノパチーには、パーキンソン病(PD)、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、及びレビー小体を伴う認知症(DLB)などのレビー小体障害(LBD)、ならびに多系統萎縮症(MSA)または脳鉄蓄積型I(NBIAタイプI)の神経変性が含まれる。これらの疾患の現在の治療選択肢には、L-ドーパなどの対症療法薬、抗コリン薬、及びモノアミンオキシダーゼの阻害薬が含まれる。しかしながら、現在のすべての治療の機会は、症候性の緩和につながるだけであり、患者に長期にわたる疾患修飾効果を誘発するものではない。
【0010】
LBDは、振戦、硬直、運動緩慢、及び脳内のドーパミン作動性ニューロンの喪失を特徴とする進行性の神経変性障害である。DLB及びPDDの場合、兆候には認知障害も含まれる。西欧諸国の60歳を超える人口の2%までがPD/LBDの典型的な兆候を示す。遺伝的感受性と環境因子が疾患の発症に関与しているらしい。この疾患に苦しむ患者は、特にドーパミン作動性ニューロンまたはニューロン突起の含有量が高い領域の脳の皮質及び皮質下領域に、レビー小体(LB)と呼ばれる特徴的な細胞内封入体を発達させる。LBDでは、α-Synは影響を受ける脳領域全体のLBに蓄積する。さらに、α-Syn遺伝子の単一の点変異、及び重複または増殖は、まれな家族型のパーキンソン症候群と関連していることが実証できた。
【0011】
多系統萎縮症(MSA)は、L-ドーパ抵抗性パーキンソン症候群、小脳性運動失調、及び自律神経障害の症状を特徴とする散発性の神経変性障害である。線条体、黒質、小脳、脳橋、ならびに下オリーブ核、及び脊髄を含むさまざまな脳領域で、多系統の神経損失に苦しむ患者が影響を受ける。MSAは、α-Syn陽性グリア細胞質(GCI)及び中枢神経系全体のまれな神経細胞封入体を特徴とする。
【0012】
さまざまな神経軸索ジストロフィーなどのその他のまれな障害にもα-Syn病態があり、α-Synはレビー小体原線維の主要な構造成分である。しばしば、レビー小体にはタウタンパク質が含まれるが、α-Synとtauは、同一の封入体内のフィラメントの2つの特徴的なサブセットを構成する。α-Syn病理は、アルツハイマー病の散発性と家族性の両方の症例でも見出される。
【0013】
α-Synの凝集メカニズムは不明である。単量体のα-Synは溶液中において自然に折り畳み構造がほどけるが、αヘリカルの形態で膜に結合することもできる。折り畳み構造がほどけた単量体は、最初に凝集してβ-シートのような相互作用によって安定化できる小さなオリゴマー種になり、次に高分子量の不溶性原線維になる。α-Synは、非構造、アルファヘリックス、及びベータシートに富む配座異性体が平衡状態にある混合物として存在する。凝集を改善することが知られている変異または緩衝液条件は、ベータ配座異性体の集団を強く増加させ、したがって、これが病原性凝集に関連する立体配座である可能性を示唆している。凝集、そして最終的にはレビー小体の前駆体となり得るベータ構造に富んで構造化された中間体の証拠が存在する。
【0014】
(1)1つ以上のキナーゼによるリン酸化;(2)カルパインなどのプロテアーゼによる短縮化;及び(3)炎症中に存在する一酸化窒素(NO)または他の反応性窒素種によるニトロ化を含む、いくつかの生理学的要因がα-Synを修飾し、凝集体の形成をもたらす可能性がある。ER-ゴルジ輸送、シナプス小胞、ミトコンドリア、リソソーム、及びその他のタンパク質分解機構は、そのような凝集によるα-Syn媒介毒性に関連する提案された細胞標的の一部である。
【0015】
シヌクレイノパチーを治療する戦略には、α-Synの凝集を阻害する化合物がある。低分子クミンアルデヒドは、α-Synのフィブリル化を阻害することが示されている。低分子療法に加えて、最近の報告は、α-Syn凝集体が免疫療法の標的となる可能性があることを示唆している(Lee JS and Lee S-J, 2016の総説)。しかしながら、この報告では、(1)α-Synの正常な生理学的機能への潜在的な干渉;(2)脳実質への抗体薬の送達の困難性;及び(3)免疫療法の有効性を含む、α-Syn免疫療法の開発に伴ういくつかの潜在的な問題または課題を指摘している。
【0016】
現在まで、シヌクレイノパチーを患っている患者の費用効果の高い治療のための部位特異的ペプチド免疫原及びその製剤を開発する必要性はまだ満たされていない。
【0017】
参照文献:
1. ”Alpha-synuclein,”Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address:en.wikipedia.org/w/index.php?title=Alpha-synuclein&oldid=781366541(2017年5月30日にアクセスされた).
2. ”Synucleinopathies,” Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address:en.wikipedia.org/w/index.php?title=Synucleinopathies&oldid=686287116(2017年5月30日にアクセスされた).
3. ”Beta-synuclein,” Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address:en.wikipedia.org/w/index.php?title=Beta-synuclein&oldid=763171134(2017年5月30日にアクセスされた).
4. ”Synucleinopathies,” Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address:en.wikipedia.org/w/index.php?title=Synucleinopathies&oldid=686287116(2017年5月30日にアクセスされた).
5. LEE, J.S., et al., “Mechanism of Anti-α-synuclein Immunotherapy”,J./Mov Disord:, 9(1): 14-19(2016)
6. TRAGGIAI, E., et al.“An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells:potent neutralization of SARS coronavirus”, Nat Med:, 10(8):871-875(2004)
7. WANG, C., et al.“Versatile Structures of α-Synuclein”, Front Mol Neurosci.9:48(2016)
【発明の概要】
【0018】
本開示は、アルファ-シヌクレインタンパク質(α-Syn)のペプチド免疫原コンストラクトに関する。本開示はまた、ペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物、ペプチド免疫原コンストラクトを作製及び使用する方法、ならびにペプチド免疫原コンストラクトによって産生される抗体に関する。
【0019】
開示されるペプチド免疫原コンストラクトは、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに直接または必要に応じて異種スペーサーを介して連結されたα-SynからのB細胞エピトープを含む。ペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープ部分は、全長α-Syn(配列番号1)のアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端領域からの約10から約25アミノ酸残基を含む。ペプチド免疫原コンストラクトの異種Thエピトープ部分は、病原性タンパク質に由来するアミノ酸配列に由来する。ペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープ部分及びThエピトープ部分は、宿主に投与されると一緒に作用して、コンストラクトのα-SynのB細胞エピトープ部分を特異的に認識して結合する抗体の生成を刺激する。
【0020】
いくつかの実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、(a)配列番号1のアミノ酸G111近辺からアミノ酸D135近辺に対応するα-SynのC末端フラグメントからの約10~約25個のアミノ酸残基を含むB細胞エピトープと、(b)配列番号70~98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTヘルパーエピトープと、(c)アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)からなる群から選択される必要に応じた異種スペーサーと、を含み、B細胞エピトープは、直接または必要に応じた異種スペーサーを介してTヘルパーエピトープに共有結合している。特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
本開示はまた、医薬組成物を含む、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物に関する。開示される医薬組成物は、宿主において開示されたペプチド免疫原コンストラクトに対する免疫応答及び抗体の産生を誘発することができる。開示される組成物は、開示されたペプチド免疫原コンストラクトの1つまたは1つを超えるものの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、担体、アジュバント、緩衝液、及び他の適切な試薬を含む追加の成分と一緒に、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む。ある特定の実施形態において、組成物は、アジュバントが必要に応じて補充されたCpGオリゴマーとの安定化された免疫刺激複合体の形態で開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む。
【0022】
特定の実施形態では、組成物は、配列番号107、108、111~113、115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、配列番号107、108、111~113、115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むα-Synペプチド免疫原コンストラクト、及び薬学的に許容可能な担体またはアジュバントを含む医薬組成物である。
【0023】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクトで免疫化された宿主によって産生される抗体に関する。開示される抗体は、ペプチド免疫原コンストラクトのα-SynのB細胞エピトープ部分を特異的に認識して結合する。開示されるα-Syn抗体は、モノマー、オリゴマー、または原線維の形態でα-Synのβ-シートに対して予想外に高い交差反応性を有する。それらの独特の特徴及び特性に基づいて、開示される抗体は、シヌクレイノパチーの標的化、同定、及び治療に対する免疫療法的アプローチを提供することができる。
【0024】
特定の実施形態では、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、配列番号107、108、111~113、115~147からなる群から選択されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープに特異的に結合する。
【0025】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクト、抗体、及び組成物を作製及び使用する方法に関する。開示される方法は、ペプチド免疫原コンストラクト及びコンストラクトを含む組成物の低コストの製造及び品質管理を提供し、これはシノパシー(synopathy)を予防及び治療する方法で使用することができる。
【0026】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクト及び/またはペプチド免疫原コンストラクトに対する抗体を使用してシヌクレイノパチーを治療及び/または予防する方法を含む。いくつかの実施形態では、シヌクレイノパチーを治療及び/または予防する方法は、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物を宿主に投与することを含む。ある特定の実施形態では、方法で利用される組成物は、静電結合により、CpGオリゴマーなどの負に帯電したオリゴヌクレオチドとの安定な免疫刺激複合体の形で開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含み、この複合体は、必要に応じて、シヌクレイノパチーの患者への投与のためのアジュバントとしての無機塩または油がさらに補充される。開示される方法は、シヌクレイノパチーのリスクがある、またはシヌクレイノパチーを有する宿主にペプチド免疫原コンストラクトを投与するための投与計画、剤形、及び経路も含む。
【0027】
様々な実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクト及び/またはα-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発された抗体を使用する方法が記載されている。特定の実施形態では、方法は、抗体を産生し、α-Syn凝集を阻害し、α-Syn凝集体の量を低減し、異なるサイズのα-Syn凝集体を同定するためのものであり、それが記載されている。さまざまな方法は、薬理学的に有効な量のα-Synペプチド免疫原を、それを必要とする宿主に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】α-SynのC末端に対する抗体の存在下(試料1~4)または媒体対照の存在下(試料5)での6日後のin vitroでのα-Syn凝集のレベルを示すグラフである。具体的には、α-Syn凝集は、α-Syn
111-132(試料1);α-Syn
121-135(試料2);α-Syn
123-135(試料3);α-Syn
126-135(試料4)によって誘発される抗α-Syn抗体または媒体対照(試料5)の存在下で実施された。α-Syn凝集のレベルは、凝集体のチオフラビン-T(ThT)染色により測定された。試料1~4は、試料5の媒体対照に対して標準化された。エラーバーは、二重化された各研究のSEM(平均の標準誤差)を表す。
【
図2】α-SynのC末端に対する抗体(試料1~3)または免疫前血清対照(試料4)の存在下で3日間、凝集体をインキュベートした後、事前に形成されたin vitroでのα-Syn凝集体の解離レベルを示すグラフである。具体的には、予め形成されたα-Syn凝集体を、α-Syn
111-132(試料1);α-Syn
126-135(試料2)によって誘発される抗α-Syn抗体、及びα-Syn
111-132及びα-Syn
126-135によって誘発される抗体の組み合わせ(試料3)、または免疫前血清対照(試料4)とともにインキュベートした。α-Syn凝集のレベルは、凝集体のチオフラビン-T(ThT)染色により測定された。試料1~3は、試料4の免疫前血清対照に対して標準化された。エラーバーは、二重化された各研究のSEM(平均の標準誤差)を表す。
【
図3】α-SynのC末端に対する抗体(試料1~4)または媒体対照(試料5)の存在下で神経成長因子(NGF)とともにインキュベートされたα-Syn過剰発現PC12細胞におけるα-Syn凝集及びα-Syn脱凝集のレベルを示すグラフである。具体的には、PC12細胞は、α-Syn
111-132(試料1);α-Syn
121-135(試料2);α-Syn
123-135(試料3);α-Syn
126-135(試料4)によって誘発される抗α-Syn抗体または媒体対照(試料5)とともにインキュベートされた。試料1~4は、試料5の媒体対照に対して標準化された。エラーバーは、三重化された各研究のSD(標準誤差)を表す。
【
図4】α-SynのC末端に対する抗体(試料1~4)または媒体対照(試料5)の存在下でインキュベートされた細胞からのα-Syn凝集体を介したTNF-α及びIL-6の放出レベルを示すグラフである。具体的には、ミクログリア細胞は、α-Syn
111-132(試料1);α-Syn
121-135(試料2);α-Syn
123-135(試料3);α-Syn
126-135(試料4)によって誘発される抗α-Syn抗体または媒体対照(試料5)とともにインキュベートされた。試料1~4は、試料5の媒体対照に対して標準化された。エラーバーは、三重化された各研究のSD(標準誤差)を表す。
【
図5】
図5A~
図5Cは、NGFで誘導された神経分化PC12細胞における外因性の予め形成されたα-Syn凝集体を有するin vitro神経変性モデルでの抗α-Syn抗体の効果を示すグラフである。
図5Aは、NGF単独(濃い実線);外因性の予め形成されたα-Syn凝集体を伴うNGF(点線);免疫前血清を伴うNGF(明るい実線);ならびに外因性の予め形成されたα-Syn凝集体及び免疫前血清を伴うNGF(破線)で処理したPC12細胞の神経突起長を評価する。
図5Bは、媒体を伴うNGF(濃い実線);外因性の予め形成されたα-Syn凝集体を伴うNGF(点線);α-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体を伴うNGF(明るい実線);ならびに外因性の予め形成されたα-Syn凝集体及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体を伴うNGF(破線)で処理したPC12細胞の神経突起長を評価する。
【
図6】
図5Cは、媒体を伴うNGF単独(濃い実線);外因性の予め形成されたα-Syn凝集体を伴うNGF(点線);α-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された抗α-Syn抗体を伴うNGF(明るい実線);ならびに外因性の予め形成されたα-Syn凝集体及びα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された抗α-Syn抗体を伴うNGF(破線)で処理したPC12細胞の神経突起長を評価する。
【
図7】
図6A及び
図6Bは、NGFで誘導された神経分化野生型α-Syn過剰発現PC12細胞を用いたin vitro神経変性モデルにおける細胞数及び神経突起長に対する抗α-Syn抗体の効果を示すグラフである。細胞を媒体対照(試料1);α-Syn
101-132(試料2)、α-Syn
111-132(試料3)、α-Syn
121-135(試料4)、α-Syn
123-135(試料5)、α-Syn
126-135(試料6)によって誘発される抗α-Syn抗体、α-Syn
111-132及びα-Syn
126-135によって誘発される抗α-Syn抗体の組み合わせ(試料7);または免疫前血清対照(試料8)によって処理した。
図6Aは、PC12細胞の数の回復に対する各試料それぞれの保護効果を評価する。
図6Bは、各試料で処理した細胞の神経突起長を評価する。試料1~8は、NGFで誘導された神経分化野生型PC12細胞に対して標準化された。t検定は有意性を検定するために使用された(0.05未満のp値は統計的に有意であると定義され、アスタリスク(*)で示されている)。
【
図8】
図7A及び
図7Bは、ウエスタンブロット解析により、異なるサイズのα-Syn凝集体を認識及び結合する抗α-Syn抗体の能力を示している。
図7Aは、市販の抗α-Syn抗体であるSyn211(レーン1);免疫前血清対照(レーン2);Syn
111-132により誘発される抗α-Syn抗体(レーン3);Syn
111-135によって誘発される抗α-Syn抗体(レーン4);Syn
121-135によって誘発される抗α-Syn抗体(レーン5);Syn
123-135によって誘発される抗α-Syn抗体(レーン6);及び、α-Syn
126-135によって誘発される抗α-Syn抗体(レーン7)を比較するウエスタンブロットの画像である。
【
図9】
図7Bは、さまざまなサイズのα-Syn分子複合体(単量体、二量体、三量体、四量体、及びオリゴマーを含む)に結合する各抗体の相対的能力を示す棒グラフである。
図7Aに示したウエスタンブロットのバンドの化学発光シグナルを定量化し、
図7Bの棒グラフに報告した。
【
図10】
図8A~
図8Cは、α-SynのC末端に対する抗体が異なる種のα-Syn(すなわち、αヘリックス単量体、β-シート単量体、β-シートオリゴマー及びβ-シート原線維)のみを認識して結合するが、他のアミロイド形成タンパク質(すなわち、Aβ1-42及びTau441)の同じ種には認識も結合もしないことを示すドットブロットの画像である。
図8Aは、モルモットの免疫前血清から精製した抗体が、アッセイしたすべてのタンパク質種に対して検出可能なレベルを示さなかったことを示す対照試料である。
図8Bは、α-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体がα-Syn、Aβ1-42、及びTau441タンパク質の異なる種を認識して結合する能力を評価する。
図8Cは、α-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された抗α-Syn抗体がα-Syn、Aβ1-42、及びTau441タンパク質の異なる種を認識して結合する能力を評価する。
【
図11】
図9は、免疫細胞化学(ICC)研究で陽性シグナルによって測定された、さまざまなPC12細胞株における細胞内α-Synに対するα-SynのC末端に対する抗体の相対的な結合親和性をまとめた表である。具体的には、α-Syn
111-132、α-Syn
121-135、α-Syn
126-135によって誘発された抗α-Syn抗体、または免疫前血清対照試料の相対的結合親和性を、NGF処理時の、親PC12細胞、モック対照PC12細胞、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞、及びA53T変異α-Syn過剰発現PC12細胞で評価した。
【
図12】
図10A~
図10Cは、α-SynのC末端に対する抗体がPD脳切片のα-Synにのみ結合し、健康な脳切片では結合しないことを示す。
図10Aは、α-Synペプチド免疫原コンストラクトに誘発されたα-Syn抗体及び免疫前抗体が、脳切片を含む正常ヒト組織のパネルで免疫反応性の検出を示さなかったことを示す。
【
図13】
図10Bは、矢じりで示されるように、PD視床切片のα-Syn凝集体に対する抗体の免疫反応性を示す。
【
図14】
図10Cは、顕微鏡観察下で陽性染色を計数することにより決定された、PD及び健常な脳の切片におけるα-Syn凝集体に対するα-SynのC末端に対する抗体及び免疫前血清対照の免疫反応性を報告する表である。
【
図15】
図11A及び
図11Bはアジュバント単独(白丸)またはα-Syn
111-132(白四角);α-Syn
126-135(黒丸);もしくは、α-Syn
111-132とα-Syn
126-135の組み合わせ(黒四角)を含むペプチド免疫原による3回の免疫化後のPDマウスモデルの血清中の抗α-Syn IgGのレベルを示すグラフである。
図11Aは、MPP
+誘導マウスモデルのIgGレベルを示す。
図11Bは、線維性α-Synを接種したマウスモデルのIgGレベルを示す。
【
図16】
図12A及び
図12Bは、アジュバント単独(白丸)またはα-Syn
111-132(白四角);α-Syn
126-135(黒丸);もしくは、α-Syn
111-132とα-Syn
126-135の組み合わせ(黒四角)を含むペプチド免疫原による3回の免疫化後のPDマウスモデルの末梢循環中のα-Synのレベルを示すグラフである。
図12Aは、MPP
+誘導マウスモデルのα-Synレベルを示す。
図12Bは、線維性α-Synを接種したマウスモデルのα-Synレベルを示す。
【
図17】
図13A及び
図13Bは、アジュバント単独(レーン2)またはα-Syn
111-132を含むペプチド免疫原(レーン3)による3回の免疫化を行った未処理の健康なマウスモデル(レーン1)またはPDマウスモデル(レーン2~3)の脳試料中のオリゴマーα-Synのレベルを示す。未処理のBalb/cマウスは健康なマウスモデルを表し、MPP+誘導マウスはPDマウスモデルを表す。
図13Aは、試料中のオリゴマーα-Synのレベル及びタンパク質ローディング対照としてのGAPDHのレベルを示すウエスタンブロットである。
図13Bは、タンパク質レベルをGAPDHレベルで標準化し、未処理の健康なマウスモデル溶解物の比率を比較のために1.00のレベルにさらに標準化した後、
図13Aのウエスタンブロットに示される相対的オリゴマーα-Synレベルを比較するグラフである。
【
図18】
図14A~
図14Gは、アジュバント単独(レーン2)またはα-Syn
111-132(レーン3)もしくはα-Syn
126-135(レーン4)を含むペプチド免疫原による3回の免疫化を行った未処理の健康なマウスモデル(レーン1)またはPDマウスモデル(レーン2~4)の脳試料中のオリゴマーα-Syn及びチロシンヒドロキシラーゼのレベルを示す。未処理のFVBマウスは健康なマウスモデルを表し、線維性α-Syn接種マウスはPDマウスモデルを表す。
図14Aは、同側の黒質の溶解物中のオリゴマーα-Syn及びチロシンヒドロキシラーゼのレベル、ならびにタンパク質ローディング対照としてのGAPDHのレベルを示すウエスタンブロットである。
図14Bは、タンパク質レベルをGAPDHレベルで標準化した後、
図14Aのウエスタンブロットに示される相対的オリゴマーα-Synレベルを比較するグラフである。
図14Cは、タンパク質レベルをGAPDHレベルで標準化した後、
図14Aのウエスタンブロットに示される相対的チロシンヒドロキシラーゼタンパク質レベルを比較するグラフである。
【
図19】
図14Dは、同側の線条体の溶解物中のオリゴマーα-Syn及びタンパク質ローディング対照としてのGAPDHのレベルを示すウエスタンブロットである。
図14Eは、タンパク質レベルをGAPDHレベルで標準化した後、
図14Cのウエスタンブロットに示される相対的オリゴマーα-Synレベルを比較するグラフである。
【
図20】
図14Fは、反対側の線条体の溶解物中のオリゴマーα-Syn及びタンパク質ローディング対照としてのGAPDHのレベルを示すウエスタンブロットである。
図14Gは、タンパク質レベルをGAPDHレベルで標準化した後、
図14Eのウエスタンブロットに示される相対的オリゴマーα-Synレベルを比較するグラフである。
【
図21】
図15A~
図15Cは、生理食塩水(レーン1)もしくはアジュバント単独(レーン2)で処理した健康なマウスモデル(レーン1~2)、あるいはアジュバント単独(レーン3)またはα-Syn
126-135(レーン4)もしくはα-Syn
111-132(レーン5)を含むペプチド免疫原のいずれかで免疫化したPDマウスモデル(レーン3~5)において、CatWalk(商標)XTで測定したマウスの運動機能を評価するグラフである。t検定は有意性を検定するために使用された(0.05未満のp値は統計的に有意であると定義され、アスタリスク「*」で示されている)。
図15Aは、処理マウスの左後肢立ち(秒)を評価し、未処理のFVBマウスは健康なマウスモデルを表し、線維性α-Syn接種マウスはPDマウスモデルを表す。
図15Bは、処理マウスの走行時間(秒)を評価し、未処理のFVBマウスは健康なマウスモデルを表し、線維性α-Syn接種マウスはPDマウスモデルを表す。
図15Cは、処理マウスの走行時間(秒)を評価し、未処理のBalb/cマウスは健康なマウスモデルを表し、MPP+誘導マウスはPDマウスモデルを表す。
【
図22】
図16Aは、PD-021514(α-Syn
85-140、wpi 08)が最高の親和性でα-Synひずみ原線維を認識することを示す。ひずみリボンと原線維-91への良好な結合が観察される。オリゴマー及びフィブリル-65への不十分な結合。α-Syn単量体及びC末端の30アミノ酸残基を欠く原線維(Fib-110)への不十分な結合。
【
図23】
図16Bは、PD-021522(α-Syn
85-140、wpi 13)がすべてのひずみ/オリゴマーに結合し、単量体に結合せず、シグナルにおける濃度依存的増加を観察しないことを示す。抗体は、C末端の30アミノ酸残基を欠く原線維(Fib-110)に結合する。したがって、エピトープはこの領域内にない。
【
図24】
図16Cは、PD-100806(α-Syn
126-135、wpi 09)がすべてのひずみに結合し、リボンに対して最も高い親和性を示すことを示す。その抗体は、低い効率で天然オリゴマーのα-Synと結合する。グルタルアルデヒド、ドーパミン架橋オリゴマー、及び単量体α-Synへの結合はほとんど観察されない。抗体は、C末端30アミノ酸残基を欠く原線維(Fib-110)に結合しないため、おそらくはα-Syn30 C末端アミノ酸残基に対するものである。
【
図25】
図16Dは、市販の抗体Syn1(クローン42、BD bioscience)が、グルタルアルデヒド架橋を除くすべてのα-Synひずみ及びオリゴマーに結合することを示す。その抗体はまた、単量体のasynに結合する。そのエピトープは、残基91から96/99にまたがると記載されている。それと一致して、その抗体は、C末端の30アミノ酸残基を欠く原線維(Fib-110)に結合する。
【
図26】
図16Eは、PRX002が単量体α-Synと比べてわずかに良好な親和性で線維性α-Synを認識することを示す。
【
図27】
図16Fは、モルモットで生成された抗体のバックグラウンドの対照を示す。
【
図30】
図17A~
図17Dは、レビー小体型認知症(DLB)患者の大脳基底核におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、被殻(
図17A)、内包(
図17B)、及び島皮質(
図17C)の総面積7.5mm
2について決定された。各抗体による被殻の免疫染色の代表的な顕微鏡画像を
図17Dに示す。UNS抗体は、被殻(ANOVAによるF(3,7)=1.550、p=0.284)、内包(ANOVAによるF(3,7)=1.356、p=0.332)、及び島皮質(ANOVAによるF(3,8)=2.050、p=0.195)でより高いパーセンテージ面積のα-Syn凝集体を検出した。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図31】
図18A~
図18Dは、パーキンソン病(PD)患者の大脳基底核におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、3症例のPDの被殻(
図18A)、内包(
図18B)、及び島皮質(
図18C)の総面積7.5mm
2について決定された。免疫染色の代表的な顕微鏡画像を、被殻について
図18Dに示す。UNS抗体は、被殻(ANOVAによるF(3,18)=4.152、p=0.047)、内包(ANOVAによるF(3,8)=1.995、p=0.1934)、及び島皮質(ANOVAによるF(3,8)=0.4044、p=0.754)でより高いパーセンテージ面積のα-Syn凝集体を検出した。NCL-L-ASYNと比較して、PD100806ではα-Synの有意に高いパーセンテージ面積が検出された(PD100806対NCL-L-ASYNについてp=0.023;n=3)。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。一元配置ANOVAに続いてダネット検定を行った。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図32】
図19A~
図19Cは、多系統萎縮症(MSA)患者の大脳基底核におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、3症例のMSAの被殻(
図19A)、及び内包(
図19B)の総面積7.5mm
2について決定された。MSA患者の島皮質では病理が検出されなかったため、定量化されなかった。UNS抗体は、被殻(ANOVAによるF(3,8)=1.56、p=0.273)及び内包(ANOVAによるF(3,8)=1.126、p=0.395)でより高いパーセンテージ面積のα-Syn凝集体を検出した。免疫染色の代表的な顕微鏡画像を、被殻について
図19Cに示し、各抗体はCに示す。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図33】
図20A~
図20Eは、異なるシヌクレイノパチー患者の中脳におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、PD(
図20A)、DLB(
図20B)、及びMSA(
図20C)の患者の黒質の総面積7.5mm
2について決定された。各抗体によって染色されたパーセンテージ面積を、診断抗体であるNCL-L-ASYNと比較した。UNS抗体は、MSA(ANOVAによるF(3,8)=0.830、p=0.51)、DLB(ANOVAによるF(3,7)=2.493、p=0.144)、及びPD(ANOVAによるF(3,7)=0.189、p=0.900)の患者の黒質でより高いパーセンテージ面積のα-Syn凝集体を検出した。
【
図34】各抗体による免疫染色の代表的な顕微鏡画像を
図20D(MSA)及び
図20E(DLB)に示す。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図35】
図21A~
図21Fは、異なるシヌクレイノパチー患者の側頭皮質の白質及び灰白質におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、PD(
図21A及び21D)、DLB(
図21B及び21E)、ならびにMSA(
図21C及び21F)の患者の皮質灰白質及び皮質下白質の総面積7.5mm
2について決定された。各抗体によって染色されたパーセンテージ面積を、診断抗体であるNCL-L-ASYNと比較した。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。一元配置ANOVAに続いてダネット検定を行った。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図36】
図22A~
図22Cは、異なるシヌクレイノパチー患者の小脳におけるα-Synに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で染色されたα-Syn凝集体の平均パーセンテージ面積は、PD(
図22A)、DLB(
図22B)、及びMSA(
図22C)の患者の小脳白質の総面積7.5mm
2について決定された。UNS抗体は、MSA(ANOVAによるF(3,8)=0.929、p=0.469)、DLB(ANOVAによるF(3,6)=1.426、p=0.325)、及びPD(ANOVAによるF(3,6)=2.509、p=0.157)でより高いパーセンテージ面積のα-Syn凝集体を検出した。各抗体によって染色されたパーセンテージ面積を、診断抗体であるNCL-L-ASYNと比較した。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図37】
図23A及び
図23Bは、各抗体による非罹患対照患者の脳からの黒質(
図23A)及び被殻(
図23B)の免疫染色の代表的な画像である。いずれのUNS抗体も、NCL-L-ASYN診断抗体に匹敵するα-Syn病理をいっさい検出しなかった。
【
図38】
図24A~
図24Dは、DLB患者またはPD患者の大脳基底核の島皮質におけるLBに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で検出された免疫陽性LBの平均パーセンテージ面積は、PD(
図24A)、及びDLB(
図24B)の患者の島皮質の総面積7.5mm
2について決定された。LBのパーセンテージ面積は、各抗体で検出された総α-Synの割合として表される。UNS抗体は、DLB(ANOVAによるF(3,7)=0.836、p=0.516)及びPD(ANOVAによるF(3,4)=0.913、p=0.510)の患者の島皮質で、より低い割合のLB(またはより高い割合のLN)を検出した。各抗体によって染色されたパーセンテージ面積を、診断抗体であるNCL-L-ASYNと比較した。
【
図39】各抗体による免疫染色の代表的な顕微鏡画像を
図24C(PD)及び
図24D(DLB)に示す。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図40】
図25A~
図25Dは、DLB患者またはPD患者の側頭皮質の灰白質におけるLBに対するUNS抗体の特異性のIHC分析である。各抗体(PD062220、PD062205、PD100806、及びNCL-L-ASYN)で検出された免疫陽性LBの平均パーセンテージ面積は、PD(
図25A)、及びDLB(
図25B)の患者の灰白質の総面積7.5mm
2について決定された。LBのパーセンテージ面積は、各抗体で検出された総α-シヌクレインの割合として表される。UNS抗体は、PD(ANOVAによるF(2,3)=1.983、p=0.282)及びDLB(ANOVAによるF(3,7)=1.906、p=0.217)の患者の灰白質で、より低い割合のLB(またはより高い割合のLN)を検出した。各抗体によって染色されたパーセンテージ面積を、診断抗体であるNCL-L-ASYNと比較した。
【
図41】各抗体による免疫染色の代表的な顕微鏡画像を
図25C(PD)及び
図25D(DLB)に示す。P<0.05(*);P<0.01(**);P<0.001(***)。データは平均+SD(エラーバー)として示される。
【
図42】
図26A及び
図26Bは、PD(
図26B)のDLB(
図26A)患者の中脳の黒質におけるUNS抗体及びNCL-L-ASYNによる免疫染色の代表的な画像である。NCL-L-ASYNと比較して、UNS抗体によるLNの高い検出が見られる。
【
図43】
図27A~
図27Cは、α-Synの細胞特異的凝集。PD(
図27A)、DLB(
図27B)、及びMSA(
図27C)を有するヒトの症例の大脳基底核及び中脳からのα-Syn凝集体の最大投影オーバーレイ共焦点画像である。α-Syn(PD062205、赤)は、PDとDLBの症例ではニューロン内(HuD、緑)に凝集するが、MSAでは凝集しない。α-Syn(PD062205)及びHuDは、出願とともに提出されるグレースケールの図面でラベル付けされているが、要求に応じてカラーコピーを利用できる。スケールバー:10μM。
【
図44】
図28A~
図28Cは、α-Synの細胞特異的凝集。PD(
図28A)、DLB(
図28B)、及びMSA(
図28C)のヒトの症例からのα-Syn凝集体の最大投影オーバーレイ共焦点画像である。α-Syn(PD062205、赤)凝集体は、MSAの場合は希突起膠細胞(Olig2、緑)内にあるが、PDまたはDLBではそうではない。α-Syn(PD062205)及びOlig2は、出願とともに提出されるグレースケールの図面でラベル付けされているが、要求に応じてカラーコピーを利用できる。スケールバー:10μM。
【0029】
発明の詳細な説明
本開示は、アルファ-シヌクレインタンパク質(α-Syn)のペプチド免疫原コンストラクトに関する。本開示はまた、ペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物、ペプチド免疫原コンストラクトを作製及び使用する方法、ならびにペプチド免疫原コンストラクトによって産生される抗体に関する。
【0030】
開示されるペプチド免疫原コンストラクトは、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに直接または必要に応じて異種スペーサーを介して連結されたα-SynからのB細胞エピトープを含む。ペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープ部分は、全長α-Syn(配列番号1)のアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端からの約10から約25アミノ酸残基を含む。ペプチド免疫原コンストラクトの異種Thエピトープ部分は、病原性タンパク質に由来するアミノ酸配列に由来する。ペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープ部分及びThエピトープ部分は、宿主に投与されると一緒に作用して、コンストラクトのα-SynのB細胞エピトープ部分を特異的に認識して結合する抗体の生成を刺激する。
【0031】
本開示はまた、医薬組成物を含む、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物に関する。開示される医薬組成物は、宿主において開示されたペプチド免疫原コンストラクトに対する免疫応答及び抗体の産生を誘発することができる。開示される組成物は、開示されたペプチド免疫原コンストラクトの1つまたは1つを超えるものの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、担体、アジュバント、緩衝液、及び他の適切な試薬を含む追加の成分と一緒に、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む。ある特定の実施形態において、組成物は、アジュバントが必要に応じて補充されたCpGオリゴマーとの安定化された免疫刺激複合体の形態で開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む。
【0032】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクトで免疫化された宿主によって産生される抗体に関する。開示される抗体は、ペプチド免疫原コンストラクトのα-SynのB細胞エピトープ部分を特異的に認識して結合する。開示されるα-Syn抗体は、モノマー、オリゴマー、または原線維の形態でα-Synのβ-シートに対して予想外に高い交差反応性を有する。それらの独特の特徴及び特性に基づいて、開示される抗体は、シヌクレイノパチーの標的化、同定、及び治療に対する免疫療法的アプローチを提供することができる。
【0033】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクト、抗体、及び組成物を作製及び使用する方法に関する。開示される方法は、ペプチド免疫原コンストラクト及びコンストラクトを含む組成物の低コストの製造及び品質管理を提供し、これはシノパシー(synopathy)を予防及び治療する方法で使用することができる。
【0034】
本開示はまた、開示されるペプチド免疫原コンストラクト及び/またはペプチド免疫原コンストラクトに対する抗体を使用してシヌクレイノパチーを治療及び/または予防する方法を含む。いくつかの実施形態では、シヌクレイノパチーを治療及び/または予防する方法は、開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物を宿主に投与することを含む。ある特定の実施形態では、方法で利用される組成物は、静電結合により、CpGオリゴマーなどの負に帯電したオリゴヌクレオチドとの安定な免疫刺激複合体の形で開示されるペプチド免疫原コンストラクトを含み、この複合体は、必要に応じて、シヌクレイノパチーの患者への投与のためのアジュバントとしての無機塩または油がさらに補充される。開示される方法は、シヌクレイノパチーのリスクがある、またはシヌクレイノパチーを有する宿主にペプチド免疫原コンストラクトを投与するための投与計画、剤形、及び経路も含む。
【0035】
本明細書に使用される節の見出しは、構成目的のものに過ぎず、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。本出願で引用されるすべての参考文献または参考文献の一部は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0036】
別途説明されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、本発明の所属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。「a」、「an」、及び「the」という単数形の用語には、文脈が他を明確に示さない限り、複数の指示対象が含まれる。同様に、「または」という単語は、文脈で明確に示されていない限り、「及び」を含むことを意図している。したがって、「AまたはBを含むこと」とは、AもしくはB、またはA及びBを含むことを意味する。さらに、ポリペプチドに与えられた全てのアミノ酸サイズ、及び全ての分子量または分子質量値が近似であり、説明のために提供されていることを理解されたい。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法及び物質を開示される方法の実施または試験において使用することができるが、適切な方法及び物質を以下に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が優位となるであろう。更に、物質、方法、及び例は、例示にすぎず、限定を意図しない。
【0037】
α-Synペプチド免疫原コンストラクト
本開示は、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに直接または必要に応じて異種スペーサーを介して共有結合されたα-SynからのB細胞エピトープを含むペプチド免疫原コンストラクトを提供する。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「α-Synペプチド免疫原コンストラクト」という語句は、(a)全長α-Syn(配列番号1)のアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端からの約10から約25アミノ酸残基を有するB細胞エピトープと、(b)異種Thエピトープと、(c)必要に応じた異種スペーサーと、を含む、ペプチドを指す。
【0039】
ある特定の実施形態では、ペプチド免疫原コンストラクトは、式:
(Th)m-(A)n-(α-SynのC末端フラグメント)-X
または
(α-SynのC末端フラグメント)-(A)n-(Th)m-X
で表すことができ、
式中、
Thは異種Tヘルパーエピトープであり、
Aは異種スペーサーであり、
(α-SynのC末端フラグメント)は、α-SynのC末端から約10から約25のアミノ酸残基を持つB細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは、1~約4であり、
nは、0~約10である。
【0040】
開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトのさまざまな構成要素を以下に説明する。
【0041】
a. α-Syn及びα-SynのC末端フラグメント
本明細書で使用されるとき、「α-Syn」、「アルファ-シヌクレイン」、「α-シヌクレイン」などの用語は、α-Synを発現する任意の生物由来の(a)全長α-Synタンパク質及び/または(b)そのフラグメントを指す。α-Synは、膜結合、細胞質、及びアミロイド凝集の状態でのさまざまな条件に適応し、汎用性の高い機能を果たす、極端な立体構造の多様性を特徴とする。いくつかの実施形態では、α-Synタンパク質はヒト由来である。ある特定の実施形態では、全長ヒトα-Synタンパク質(受託番号NP_000336)(配列番号1)は140個のアミノ酸を有する。
【0042】
本明細書で使用されるとき、α-Synの「C末端領域」または「C末端」という語句は、α-Synのカルボキシル末端部分からの任意のアミノ酸配列を指す。特定の実施形態では、α-SynのC末端領域またはC末端は、α-Synの残基96~140の間のアミノ酸配列、またはそのフラグメントに関する。α-SynのC末端領域は、プロリンと負に帯電した残基に富み、これらは溶解性を維持する天然変性タンパク質に見られる一般的な特性である。α-SynのC末端領域は、疎水性が低く、正味の負電荷が大きいため、一般的にランダムコイル構造で存在する。in vitroの研究により、これらの負電荷を中和するpHの低下によってα-Syn凝集が誘発できることが明らかになっている。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「α-SynのC末端フラグメント」または「α-SynのC末端からのB細胞エピトープ」という語句は、全長α-Synのアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端からの約10から約25アミノ酸残基を含む全長α-Syn配列の一部を指す。α-SynC末端フラグメントは、本明細書ではα-SynのG111-D135ペプチド及びそのフラグメントとも呼ばれる。本明細書に記載される様々なα-SynのC末端フラグメントは、配列番号1により表されるα-Synの全長配列に対するそれらのアミノ酸位置により言及される。
【0044】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトで使用されるα-SynCの末端フラグメントのアミノ酸配列は、多くの設計原理に基づいて選択された。これらの原理のいくつかには、以下のα-Synペプチド配列の使用が含まれる:
(i)β-Synはα-Synに結合してその凝集を防ぐことができるため、β-Synと交差反応する抗体の生成を避けるために、ベータ-シヌクレイン(β-Syn)と大幅な配列相同性を共有しない。
(ii)アルツハイマー病の治療のためにAβ1-42を標的とするAN1792ワクチンを使用した臨床試験で以前に報告されているように、髄膜炎菌性脳炎を引き起こす脳の炎症をもたらす可能性のある自己T細胞活性化を防ぐために、α-Syn内に自己Tヘルパーエピトープを欠く。
(iii)その天然の形態からの立体構造変化の影響を受けやすいα-Synの領域内に含まれる。
(iv)自己分子であるため、それ自体は非免疫原性である。
(v)タンパク質担体または強力なTヘルパーエピトープ(複数可)によって免疫原性を付与できる。
(vi)免疫原性を付与され、宿主に投与されるとき:
(a)タンパク質担体または強力なTヘルパーエピトープ(複数可)ではなく、α-Synペプチド配列(B細胞エピトープ)に対する高力価抗体を誘発する。
(b)単量体、オリゴマー、または原線維の形態で、α-Synの変性β-シートと反応する高力価抗体を誘発し、そのような抗体がα-Synの凝集を防ぎ、あらゆるα-Synの凝集体を脱凝集させ、毒性のあるα-Synオリゴマー、凝集体、及び/または原線維の除去をもたらし、したがって、脳内に負荷されるα-Syn凝集体が軽減または防止される。
(c)天然α-Synは広い組織分布を持つ主要な細胞タンパク質であるため、高い安全性の懸念を呈する天然α-Synと反応する抗体を誘発しない。
【0045】
これらの設計原理を考慮して、α-SynのC末端領域がペプチド免疫原設計の標的として選択された。さらに、α-SynのC末端領域が選択されたのは、その構造特性に基づいて、この領域がα-Synの他の領域と比較して抗体または他の物理的要因による調節に最も影響を受けやすいと考えられたからである。
【0046】
実施例でさらに説明するように、α-Synに由来する多数のペプチド配列の評価により、上述の設計原理を満たす複数のα-Synペプチドの同定及び選択がもたらされた。具体的には、設計原理を満たす配列には、全長α-Synのアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端領域からの約10から約25アミノ酸残基を有するペプチドが含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、配列番号12で表される25アミノ酸のα-SynのG111-D135ペプチドである。他の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、配列番号12で表されるα-SynG111-D135ペプチドの約10個の連続したアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、配列番号12で表されるα-SynG111-D135ペプチドの、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続したアミノ酸を含む。特定の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、表1に示されるように、配列番号12~15、17、または49~64によって表されるアミノ酸配列を有する。
【0048】
本開示のα-SynのC末端フラグメントはまた、α-SynG111-D135ペプチドの免疫学的に機能的な類似体または相同体、及びそのフラグメントを含む。α-SynG111-D135ペプチド及びそのフラグメントの機能的免疫学的類似体または相同体には、元のペプチドと実質的に同じ免疫原性を保持するバリアントが含まれる。免疫学的に機能的な類似体は、アミノ酸位置の保存的置換;全体的な電荷の変更;別の部分への共有結合;またはアミノ酸の付加、挿入、もしくは削除;及び/またはそれらの任意の組み合わせを有することができる。
【0049】
保存的置換とは、あるアミノ酸残基が、類似の化学的性質を持つ別のアミノ酸残基に置換されるときである。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれ;正に帯電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが含まれ;負に帯電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸とグルタミン酸が含まれる。
【0050】
免疫学的に機能的な類似体には、α-SynG111-D135ペプチドと交差反応する免疫応答を誘発する1~約4個のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失、または挿入を含むアミノ酸配列が含まれる。保存的置換、付加、及び挿入は、天然または非天然のアミノ酸により達成できる。非天然アミノ酸には、ε-Nリジン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、アミノ安息香酸、6-アミノカプロン酸(Aca;6-アミノヘキサン酸)、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸(MPA)、3-ニトロチロシン、ピログルタミン酸などが含まれるがこれらに限定されない。天然に存在するアミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが含まれる。
【0051】
一実施形態では、特定のペプチドの機能的免疫学的類似体は、元のペプチドと同じアミノ酸配列を含み、α-SynG111-D135ペプチド及びそのフラグメントのB細胞エピトープペプチドのアミノ末端に付加された3個のリジン残基(Lys-Lys-Lys)をさらに含む。この実施形態では、元のペプチド配列に3個のリジン残基を含めることにより、元のペプチドの全体的な電荷が変化するが、元のペプチドの機能は変化しない。
【0052】
ある特定の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントの機能的類似体は、元のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する。他の実施形態では、機能的類似体は、元のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有する。さらに他の実施形態では、機能的類似体は、元のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有する。さらに他の実施形態では、機能的類似体は、元のアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。
【0053】
b.異種Tヘルパー細胞エピトープ(Thエピトープ)
本開示は、異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに直接または必要に応じて異種スペーサーを介して共有結合されたα-SynからのB細胞エピトープを含むペプチド免疫原コンストラクトを提供する。
【0054】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトの異種Thエピトープは、α-SynのC末端フラグメントの免疫原性を増強し、合理的設計を通じて最適化された標的B細胞エピトープ(すなわち、α-SynのC末端フラグメント)に対する特異的高力価抗体の産生を促進する。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「異種」という用語は、α-Synの野生型配列の一部ではない、またはそれと相同ではないアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を指す。したがって、異種Thエピトープは、α-Synに天然に見られないアミノ酸配列に由来するThエピトープであり(すなわち、Thエピトープはα-Synに対して自己ではない)。Thエピトープはα-Synと異種であるため、異種Thエピトープがα-SynのC末端フラグメントに共有結合しているとき、α-Synの天然アミノ酸配列はN末端またはC末端のいずれの方向にも伸長していない。
【0056】
本開示の異種Thエピトープは、α-Synに天然に見出されるアミノ酸配列を有さない任意のThエピトープであり得る。Thエピトープは、任意の種(例えば、ヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ラット、マウス、モルモットなど)に由来するアミノ酸配列を有することができる。Thエピトープは、複数の種のMHCクラスII分子に対する無差別結合モチーフも有することができる。ある特定の実施形態では、Thエピトープは、免疫応答の開始及び調節をもたらすTヘルパー細胞の最大活性化を可能にする複数の無差別MHCクラスII結合モチーフを含む。Thエピトープは、それ自体で免疫サイレントであることが好ましく、すなわち、α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって生成される抗体は、いくらかあるとしても、ほとんどがThエピトープに対するものではないため、α-SynのC末端フラグメントの標的化B細胞エピトープに対する非常に焦点の合った免疫応答を可能にする。
【0057】
本開示のエピトープには、表2(配列番号70~98)に例示されるように、外来病原体に由来するアミノ酸配列が含まれるが、これらに限定されない。さらに、Thエピトープには、理想化された人工Thエピトープ及び理想化された人工Thエピトープの組み合わせが含まれる(例えば、配列番号71及び78-84)。コンビナトリアル配列として提示される異種Thエピトープペプチド(例えば、配列番号79-82)は、その特定のペプチドの相同体の可変残基に基づいて、ペプチドフレームワーク内の特定の位置に表されるアミノ酸残基の混合物を含む。コンビナトリアルペプチドの集合は、1つの特定のアミノ酸の代わりに、指定された保護アミノ酸の混合物を合成プロセス中の指定された位置で追加することにより、1つのプロセスで合成することができる。そのようなコンビナトリアル異種Thエピトープペプチドの集合は、多様な遺伝的背景を有する動物の広範なThエピトープカバレージを可能にし得る。異種Thエピトープペプチドの代表的なコンビナトリアル配列には、表2に示す配列番号79~82が含まれる。本発明のエピトープペプチドは、遺伝的に多様な集団の動物及び患者に広範な反応性及び免疫原性を提供する。
【0058】
Thエピトープを含むα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、α-SynのC末端フラグメントと並行して単一の固相ペプチド合成で同時に生成される。Thエピトープには、Thエピトープの免疫学的類似体も含まれる。免疫学的Th類似体には、免疫増強類似体、交差反応性類似体、及びα-SynのC末端フラグメントに対する免疫応答を増強または刺激するのに十分なこれらのThエピトープの任意のセグメントが含まれる。
【0059】
Thエピトープペプチドの機能的免疫学的類似体も有効であり、本発明の一部として含まれる。機能的免疫学的Th類似体には、ThエピトープのTh刺激機能を本質的に改変しないThエピトープ中の1~約5個のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失及び挿入が含まれ得る。保存的置換、付加、及び挿入は、α-SynのC末端フラグメントについて上述したように、天然または非天然のアミノ酸で実現できる。表2は、Thエピトープペプチドの機能的類似体の別のバリエーションを同定する。特に、MvF1及びMvF2のThの配列番号71及び78は、それぞれN末端及びC末端の2つのアミノ酸の欠失(配列番号71及び78)または包含(配列番号81及び83)によってアミノ酸フレームにおいて異なる、MvF4及びMvF5の配列番号81及び83の機能的類似体である。これらの2つの一連の類似配列間の相違は、これらの配列内に含まれるThエピトープの機能に影響を与えないであろう。したがって、機能性免疫学的Th類似体には、麻疹ウイルス融合タンパク質MvFl-4 Th(配列番号71、78、79、81、及び83)、ならびに肝炎表面タンパク質HBsAg1-3 Th(配列番号80、82、及び84)に由来するThエピトープのいくつかのバージョンが含まれる。
【0060】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトのThエピトープは、α-SynのC末端ペプチドのN末端またはC末端に共有結合し得る。いくつかの実施形態では、Thエピトープは、α-SynのC末端ペプチドのN末端に共有結合している。他の実施形態では、Thエピトープは、α-SynのC末端ペプチドのC末端に共有結合している。ある特定の実施形態では、1を超えるThエピトープがα-SynのC末端フラグメントに共有結合している。1を超えるThエピトープがα-SynのC末端フラグメントに結合しているとき、各Thエピトープは同じアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を有することができる。さらに、1を超えるThエピトープがα-SynC末端フラグメントに結合しているとき、Thエピトープは任意の順序で配置できる。たとえば、Thエピトープは、α-SynのC末端フラグメントのN末端に連続して結合するか、またはα-SynのC末端フラグメントのC末端に連続して結合するか、またはThエピトープをα-SynのC末端フラグメントのN末端に共有結合し得るが、別のThエピトープはα-SynのC末端フラグメントのC末端に共有結合する。α-SynのC末端フラグメントに関連するThエピトープの配置に制限はない。
【0061】
いくつかの実施形態では、Thエピトープがα-SynのC末端フラグメントに直接共有結合している。他の実施形態では、Thエピトープがα-SynのC末端フラグメントに、以下に詳細に記載される異種スペーサーを介して共有結合している。
【0062】
c.異種スペーサー
開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、必要に応じて、α-SynからのB細胞エピトープを異種Tヘルパー細胞(Th)エピトープに共有結合させる異種スペーサーを含む。
【0063】
上述したように、「異種」という用語は、α-Synの野生型配列の一部ではない、またはそれと相同ではないアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を指す。したがって、異種スペーサーをα-SynからのB細胞エピトープに共有結合させるとき、スペーサーがα-Syn配列に対して異種であるので、α-Synの天然アミノ酸配列はN末端またはC末端のいずれの方向にも伸長していない。
【0064】
スペーサーは、2つのアミノ酸及び/またはペプチドを一緒に結合できる任意の分子または化学構造である。スペーサーは、用途に応じて長さや極性を変えることができる。スペーサー結合は、アミド結合またはカルボキシル結合を介して行うことができるが、他の官能基も同様に可能である。スペーサーは、化合物、天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸を含むことができる。
【0065】
スペーサーは、α-Synペプチド免疫原コンストラクトに構造的特徴を提供できる。構造的に、スペーサーは、α-SynのC末端フラグメントのB細胞エピトープからThエピトープを物理的に分離する。スペーサーによる物理的分離は、ThエピトープをB細胞エピトープに結合することによって作成された任意の人工的な二次構造を破壊する可能性がある。さらに、スペーサーによるエピトープの物理的分離により、Th細胞応答及び/またはB細胞応答間の干渉を排除することができる。さらに、スペーサーは、ペプチド免疫原コンストラクトの二次構造を作成または改変するように設計できる。例えば、ThエピトープとB細胞エピトープの分離を強化するために、柔軟なヒンジとして機能するようにスペーサーを設計できる。柔軟なヒンジスペーサーは、提示されたペプチド免疫原と適切なTh細胞及びB細胞との間のより効率的な相互作用を可能にし、Thエピトープ及びB細胞エピトープに対する免疫応答を強化することができる。柔軟なヒンジをコードする配列の例は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域に見られ、多くの場合プロリンに富む。スペーサーとして使用できる特に有用な柔軟なヒンジの1つは、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro配列(配列番号148)によって提供され、式中、Xaaは任意のアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸である。
【0066】
スペーサーはまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクトに機能的特徴を提供できる。たとえば、スペーサーは、α-Synペプチド免疫原コンストラクトの全体的な電荷を変更するように設計でき、これは、ペプチド免疫原コンストラクトの溶解性に影響を与える可能性がある。さらに、α-Synペプチド免疫原コンストラクトの全体的な電荷を変更すると、ペプチド免疫原コンストラクトが他の化合物や試薬と結合する能力に影響を及ぼす可能性がある。以下でさらに詳細に記載するように、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、静電結合を介してCpGオリゴマーなどの高荷電オリゴヌクレオチドと安定した免疫刺激複合体を形成できる。α-Synペプチド免疫原コンストラクトの全体的な電荷は、これらの安定した免疫刺激複合体の形成に重要である。
【0067】
スペーサーとして使用できる化合物には、(2-アミノエトキシ)酢酸(AEA)、5-アミノ吉草酸(AVA)、6-アミノカプロン酸(Ahx)、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEA、ミニ-PEG1)、12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(ミニ-PEG2)、15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサペンタデカン酸(ミニ-PEG3)、トリオキサトリデカン-コハク酸(Ttds)、12-アミノ-ドデカン酸、Fmoc-5-アミノ-3-オキサペンタン酸(O1Pen)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
天然に存在するアミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが含まれる。
【0069】
非天然アミノ酸には、ε-Nリジン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、アミノ安息香酸、6-アミノカプロン酸(Aca;6-アミノヘキサン酸)、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸(MPA)、3-ニトロチロシン、ピログルタミン酸などが含まれるがこれらに限定されない。
【0070】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトのスペーサーは、Thエピトープ及びα-SynのC末端ペプチドのN末端またはC末端に共有結合し得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、ThエピトープのC末端及びα-SynのC末端ペプチドのN末端に共有結合している。他の実施形態では、スペーサーは、α-SynのC末端ペプチドのC末端及びThエピトープのN末端に共有結合している。ある特定の実施形態では、例えば、ペプチド免疫原コンストラクトに1を超えるThエピトープが存在するとき、1を超えるスペーサーを使用することができる。1を超えるスペーサーを使用するとき、各スペーサーは互いに同一でも異なっていてもよい。さらに、ペプチド免疫原コンストラクトに1を超えるThエピトープが存在するとき、Thエピトープはスペーサーで分離することができ、Thエピトープは、ThエピトープをB細胞エピトープから分離するために使用されるスペーサーと同一でも異なっていてもよい。Thエピトープまたはα-SynのC末端フラグメントに関するスペーサーの配置に制限がない。
【0071】
ある特定の実施形態では、異種スペーサーは、天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸である。他の実施形態では、スペーサーは、1を超える、天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を含む。特定の実施形態では、スペーサーはLys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、またはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)である。
【0072】
d.α-Synペプチド免疫原コンストラクトの特定の実施形態
α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、式:
(Th)m-(A)n-(α-SynのC末端フラグメント)-X
または
(α-SynのC末端フラグメント)-(A)n-(Th)m-X
で表すことができ、
式中、
Thは異種Tヘルパーエピトープであり、
Aは異種スペーサーであり、
(α-SynのC末端フラグメント)は、α-SynのC末端から約10から約25のアミノ酸残基を持つB細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは、1~約4であり、
nは、0~約10である。
【0073】
ある特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトの異種Thエピトープは、表2に示す配列番号70~98のいずれか、またはその組み合わせから選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、Thエピトープは、配列番号78~84のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは1を超えるThエピトープを含む。
【0074】
特定の実施形態では、必要に応じた異種スペーサーは、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)、及びそれらの組み合わせのいずれかから選択される。特定の実施形態では、異種スペーサーは、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)である。
【0075】
特定の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、全長α-Synのアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端領域からの約10から約25アミノ酸残基を有する。特定の実施形態では、α-SynのC末端フラグメントは、表1に示されるように、配列番号12~15、17、または49~64によって表されるアミノ酸配列を有する。
【0076】
ある特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、表3に示す配列番号107~108、111~113、及び115~147のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、配列番号107~108、及び111~113のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0077】
組成物
本開示はまた、開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物を提供する。
【0078】
a.ペプチド組成物
開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物は、液体または固体の形態であり得る。液体組成物は、水、緩衝液、溶媒、塩、及び/またはα-Synペプチド免疫原コンストラクトの構造的または機能的特性を変えない他の許容可能な試薬を含むことができる。ペプチド組成物は、開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトの1つ以上を含むことができる。
【0079】
b.医薬組成物
本開示はまた、開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物に関する。
【0080】
医薬組成物は、薬学的に許容される送達システムに担体及び/または他の添加物を含むことができる。したがって、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/または希釈剤、添加剤、安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝液などの他の賦形剤とともに、医薬有効量のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含むことができる。
【0081】
医薬組成物は、特定の抗原効果自体を持たずに、α-Synペプチド免疫原コンストラクトに対する免疫応答を加速、延長、または増強するように作用する1つ以上のアジュバントを含むことができる。医薬組成物に使用されるアジュバントには、油、アルミニウム塩、ウイロソーム、リン酸アルミニウム(ADJU-PHOS(登録商標)など)、水酸化アルミニウム(ALHYDROGEL(登録商標)など)、リポシン、サポニン、スクアレン、L121、Emulsigen(登録商標)、モノホスホリルリピドA(MPL)、QS21、ISA 35、ISA 206、ISA50V、ISA51、ISA 720、及びその他のアジュバントと乳化剤が含まれ得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Montanide(商標)ISA 51(油中水型エマルジョンの製造のための植物油及びマンニドオレエートからなる油アジュバント組成物)、Tween(登録商標)80(ポリソルベート80またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートとしても知られる)、CpGオリゴヌクレオチド、及び/またはそれらの任意の組み合わせを含む。他の実施形態では、医薬組成物は、アジュバントとしてエムルシゲンまたはエムルシゲンDを含む水中油中水型(すなわち、w/o/w)エマルジョンである。
【0083】
医薬組成物は、即時放出製剤として、または持続放出製剤用に製剤化することができる。さらに、医薬組成物は、免疫原の捕捉及び微粒子との同時投与による全身性または局所粘膜免疫の誘導用に製剤化することができる。そのような送達システムは、当業者によって容易に決定される。
【0084】
医薬組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができる。α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む液体ビヒクルは、注射の前に調製することもできる。医薬組成物は、例えば、i.d.、i.v.、i.p.、i.m.、鼻腔内、経口、皮下などの任意の適切な適用様式によって、及び任意の適切な送達装置で投与することができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内投与用に製剤化される。経口及び鼻腔内適用を含む他の投与様式に適した医薬組成物も調製することができる。
【0085】
医薬組成物は、即時放出製剤として、または持続放出製剤用に製剤化することができる。さらに、医薬組成物は、免疫原の捕捉及び微粒子との同時投与による全身性または局所粘膜免疫の誘導用に製剤化することができる。そのような送達システムは、当業者によって容易に決定される。
【0086】
医薬組成物は、適切な単位剤形で製剤化することもできる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、体重1kgあたり約0.5μgから約1mgのα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む。医薬組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物、及び治療が予防的または治療的であるかどうかを含む多くの種々の要素に依存して変動する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック動物を含む非ヒト哺乳動物もまた治療できる。複数回投与で送達されるとき、医薬組成物は、単位剤形あたり適切な量に都合よく分割され得る。投与される用量は、治療技術分野でよく知られているように、対象の年齢、体重、及び全体的な健康状態に依存するだろう。
【0087】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は1を超えるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む。1を超えるα-Synペプチド免疫原コンストラクトの混合物を含む医薬組成物は、コンストラクトの免疫効果を相乗的に増強することができる。1を超えるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物は、MHCクラスIIが広範囲に及ぶため、より大きな遺伝集団でより効果的であり、したがってα-Synペプチド免疫原コンストラクトに対する免疫応答が改善される。
【0088】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号107~108、111~113、115~147から選択されるα-Synペプチド免疫原コンストラクト、ならびにその相同体、類似体及び/または組み合わせを含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、配列番号107~108、111~113、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む。
【0089】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物を使用して、投与時に宿主で免疫応答を誘発し、抗体を産生することができる。
【0090】
c.免疫刺激複合体
本開示はまた、CpGオリゴヌクレオチドとの免疫刺激複合体の形態のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物に関する。そのような免疫刺激複合体は、アジュバント及びペプチド免疫原安定剤として作用するように特に適合されている。免疫刺激複合体は微粒子の形態であり、免疫系の細胞にα-Synペプチド免疫原を効率的に提示して免疫応答を生じさせることができる。免疫刺激複合体は、非経口投与用の懸濁液として製剤化されてもよい。免疫刺激複合体は、α-Synペプチド免疫原の、非経口投与後の宿主の免疫系細胞への効率的な送達のために、無機塩またはin situゲル化ポリマーと組み合わせた懸濁液として、w/oエマルジョンの形態で製剤化することもできる。免疫刺激複合体は、保護/治療効果があるα-Synのβ-シートに対する免疫応答を生成することができる(例えば、実施例13の
図8A、8B、及び8C)。
【0091】
安定化された免疫刺激複合体は、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを陰イオン分子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または静電結合を介したそれらの組み合わせと複合化することにより形成できる。安定化された免疫刺激複合体は、免疫原送達システムとして医薬組成物に組み込まれ得る。
【0092】
ある特定の実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、5.0~8.0の範囲のpHで正に帯電した陽イオン部分を含むように設計されている。α-Synペプチド免疫原コンストラクト、またはコンストラクトの混合物のカチオン部分の正味電荷は、各リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)に+1電荷を割り当て、各アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)に-1電荷を割り当て、配列内の他のアミノ酸に0の電荷を割り当てることによって計算される。電荷は、α-Synペプチド免疫原コンストラクトのカチオン部分内で合計され、正味の平均電荷として表される。適切なペプチド免疫原は、正味の平均正電荷が+1のカチオン部分を有する。好ましくは、ペプチド免疫原は、正味の正電荷が+2より大きい範囲である。いくつかの実施形態では、α-Synペプチド免疫原コンストラクトのカチオン性部分は異種スペーサーである。ある特定の実施形態では、スペーサー配列が(a,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)であるとき、α-Synペプチド免疫原コンストラクトのカチオン性部分は、+4の電荷を有する。
【0093】
本明細書に記載されるとき、「アニオン性分子」は、5.0~8.0の範囲のpHで負に帯電した任意の分子を指す。特定の実施形態では、アニオン性分子はオリゴマーまたはポリマーである。オリゴマーまたはポリマーの正味の負電荷は、オリゴマーの各ホスホジエステルまたはホスホロチオエート基に-1電荷を割り当てることにより計算される。適切なアニオン性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフの反復数が1~10の範囲である、8~64ヌクレオチド塩基の一本鎖DNA分子である。好ましくは、CpG免疫刺激性一本鎖DNA分子は、18~48ヌクレオチド塩基を含み、CpGモチーフの反復数は3~8の範囲である。
【0094】
より好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’ X1CGX2 3’で表され、式中、C及びGはメチル化されておらず;X1はA(アデニン)、G(グアニン)、及びT(チミン)からなる群から選択され;X2はC(シトシン)またはT(チミン)である。あるいは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’ (X3)2CG(X4)2 3’で表され、式中、C及びGはメチル化されておらず;X3は、A、T、またはGからなる群から選択され;X4はCまたはTである。
【0095】
得られる免疫刺激複合体は、典型的には1~50ミクロンの範囲のサイズの粒子の形態であり、相互作用種の相対電荷化学量論及び分子量を含む多くの要因の関数である。微粒子化された免疫刺激複合体は、in vivoで特定の免疫応答のアジュバント化及び上方制御を提供するという利点を有する。さらに、安定化された免疫刺激複合体は、油中水型エマルジョン、無機塩懸濁液、及びポリマーゲルを含むさまざまなプロセスによって医薬組成物を調製するのに適している。
【0096】
抗体
本開示はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクトにより誘発される抗体を提供する。
【0097】
全長α-Synのアミノ酸111位のグリシン(G111)近辺からアミノ酸135位のアスパラギン(D135)近辺までの配列に対応するα-SynのC末端領域からの約10から約25アミノ酸残基を有するα-SynのC末端フラグメントは、それ自体では非免疫原性または弱免疫原性である。しかしながら、α-SynのC末端フラグメント、異種Thエピトープ、及び必要に応じた異種スペーサーを含む開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、宿主に投与されたときに免疫応答及び抗体の産生を誘発することができる。α-Synペプチド免疫原コンストラクトの設計は、自己α-Synに対する寛容を破壊し、線形ではなく立体構造のエピトープを認識する部位特異的抗体の産生を誘発することができる。
【0098】
驚くべきことに、α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって産生された抗体は、天然型のα-Syn単量体の天然のアルファヘリックスに結合しない。代わりに、α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって生成された抗体は、単量体、オリゴマー、原線維の形態の、α-Synの変性β-シートを認識して結合する。さらに、a-Synペプチド免疫原コンストラクトによって産生される抗体は、他のアミロイド生成タンパク質(すなわち、Aβ1-42及びTau441)の類似構造に結合しない。したがって、α-Synペプチド免疫原コンストラクト(α-SynのC末端フラグメント、異種Thエピトープ、及び必要に応じた異種スペーサーを含む)の特定の設計により、汎用性の高いα-SynのC末端フラグメントの立体構造を変化させてβシート様の立体構造を可能にする。
【0099】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化した動物の免疫血清に由来する抗体の広範な比較は、多くの機能アッセイで行われた。これらの比較により、抗体が神経成長因子(NGF)処理されたPC12細胞のα-Synに、β-シート単量体及びα-Synのオリゴマーのみに対する高い特異性で結合し、他の種のアミロイド生成タンパク質には結合しない能力を実証した(実施例9を参照されたい)。
【0100】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発された抗体は、驚くべきことに、α-Synの凝集を防ぎ(抗凝集活性)、予め形成されたα-Syn凝集体を解離(脱凝集活性)できる。さらに、抗体は驚くべきことに、ミクログリア細胞が誘導するTNF-α及びIL6産生を減少させることができ、これはこれらの抗体がα-Syn凝集体または原線維媒介ミクログリア活性化を効果的に減少できることを示す。これらの抗体は、外因性のα-Syn凝集体とα-Syn過剰発現細胞の内因性α-Syn凝集体の両方によって引き起こされる神経変性を減少させることも見出された。さらに、そのような抗体は、病的なα-Synオリゴマー凝集体または原線維を特異的に認識して結合するが、非病的α-Synには反応しない。具体的には、抗体は、アルファシヌクレイノパチーのパーキンソン病の患者から採取した脳切片のレビー小体と反応するが、正常なヒト組織とは反応しない。
【0101】
また、驚くべきことに、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物を投与した2つのパーキンソンマウスモデル(MPP+誘発マウスモデル及び線維性α-Syn接種マウスモデル)が、(a)α-Synのβ-シートに高度に交差反応性の抗体を産生し、(b)α-Syn血清レベルが低下し、(c)脳内のオリゴマーα-Synレベルが低下し、(d)神経病理学が低下して運動機能の回復をもたらす。
【0102】
本発明のα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化された動物から得られた免疫応答は、コンストラクトが、天然形態のC末端α-Synのランダムなコイル構造ではなく、単量体、オリゴマー、及び原線維の形態のα-Synの変性β-シートと反応する強力な部位特異的抗体を産生する能力を示した。
【0103】
In vitro機能アッセイ
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって産生される抗体は、in vitro機能アッセイに使用できる。これらの機能アッセイには以下が含まれるが、これらに限定されない:
(a)組換えα-Syn凝集のin vitro阻害;予め形成された組換えα-Syn凝集体を脱凝集する(実施例8を参照されたい);
(b)細胞内のα-Syn凝集のin vitro阻害、及び細胞内での予め形成されたα-Syn凝集体の解離(実施例9を参照されたい);
(c)ミクログリアTNF-α及びIL6分泌の減少(実施例10を参照されたい);
(d)外因性α-Syn凝集体によって引き起こされる神経変性の減少(実施例11を参照されたい);
(e)α-Syn過剰発現細胞における神経変性の減少(実施例12を参照されたい);
(f)血清α-Synレベルの低下、脳のオリゴマーα-Synレベルの低下、神経病理学の低下及び運動活動の回復を示すマウスの線維性α-Syn接種及びMPP+誘発性パーキンソン病モデルでの有効性のin vivo証明(実施例15を参照されたい)。
【0104】
方法
本開示はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクト、組成物、及び医薬組成物を作製及び使用する方法に関する。
【0105】
a.α-Synペプチド免疫原コンストラクトの製造方法
本開示のα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、当業者によく知られている化学合成法により作製することができる(例えば、Fields et al., Chapter 3 in Synthetic Peptides:A User’s Guide, ed. Grant, W. H. Freeman & Co., New York, NY, 1992, p. 77を参照されたい)。α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、例えば、Applied Biosystemsペプチドシンセサイザーモデル430Aまたは431の側鎖保護アミノ酸を使用して、t-BocまたはF-moc化学のいずれかで保護されたα-NH2によって固相合成の自動Merrifield技術を使用して合成できる。Thエピトープのコンビナトリアルライブラリーペプチドを含むα-Synペプチド免疫原コンストラクトの調製は、特定の可変位置でカップリングするための代替アミノ酸の混合物を提供することで実現できる。
【0106】
所望のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを完全に組み立てた後、標準的な手順に従って樹脂を処理して、ペプチドを樹脂から切断し、アミノ酸側鎖の官能基を非ブロック化できる。遊離ペプチドは、HPLCにより精製され、例えばアミノ酸分析または配列決定により生化学的に特徴付けられ得る。ペプチドの精製及び特徴付け方法は、当業者に周知である。
【0107】
この化学プロセスによって生成されるペプチドの品質を制御及び定義することができ、その結果、α-Synペプチド免疫原コンストラクトの再現性、免疫原性、及び収率を保証できる。固相ペプチド合成によるα-Synペプチド免疫原コンストラクトの製造の詳細な説明は、実施例1に示される。
【0108】
意図した免疫学的活性の保持を可能にする構造的変動性の範囲は、小分子薬による特定の薬物活性の保持を可能にする構造的変動性の範囲、または生物由来の薬物と共生成される大きな分子に望ましい活性と望ましくない毒性よりもはるかに順応性があることが見出されている。したがって、意図的に設計されたペプチド類似体、または意図されたペプチドに類似したクロマトグラフィー及び免疫学的特性を有する欠失配列副産物の混合物として合成プロセスのエラーによって必然的に生成されたものは、所望のペプチドの精製調製物と同じくらいしばしば有効である。これらのペプチドを使用した最終製品の再現性と有効性を保証するために、製造プロセスと製品評価プロセスの両方を監視するための識別可能なQC手順が開発されている限り、設計された類似体と意図しない類似体の混合物は効果的である。
【0109】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、核酸分子、ベクター、及び/または宿主細胞を含む組換えDNA技術を使用して作成することもできる。したがって、α-Synペプチド免疫原コンストラクト及びその免疫学的に機能的な類似体をコードする核酸分子も本発明の一部として本開示に包含される。同様に、核酸分子を含む発現ベクターを含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞も本発明の一部として本開示に包含される。
【0110】
様々な例示的実施形態はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクト及びα-SynG111-D135フラグメント由来ペプチド免疫原コンストラクトの免疫学的に機能的な類似体の製造方法を包含する。例えば、方法は、α-Synペプチド免疫原コンストラクト及び/またはその免疫学的に機能的な類似体をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞を、ペプチド及び/または類似体が発現されるような条件下でインキュベートするステップを含むことができる。より長い合成ペプチド免疫原は、よく知られた組換えDNA技術によって合成することができる。このような技術は、詳細なプロトコールを備えたよく知られた標準マニュアルで提供されている。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、好ましくは遺伝子が発現される生物にとって最適なコドンを有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、典型的には、ペプチド及び必要に応じて任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することにより、合成遺伝子が作製される。合成遺伝子は、適切なクローニングベクターに挿入され、宿主細胞にトランスフェクトされる。次いで、ペプチドは、選択された発現系及び宿主に適切な条件下で発現される。ペプチドは精製され、標準的な方法で特徴付けられる。
【0111】
b.免疫刺激複合体の製造方法
様々な例示的な実施形態はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクト及びCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)分子を含む免疫刺激複合体を生成する方法を包含する。安定化された免疫刺激複合体(ISC)は、α-Synペプチド免疫原コンストラクトのカチオン部分とポリアニオンCpG ODN分子に由来する。自己集合システムは、電荷の静電中和によって駆動される。α-Synペプチド免疫原コンストラクトのカチオン性部分とアニオン性オリゴマーのモル電荷比の化学量論は、会合の程度を決定する。α-Synペプチド免疫原コンストラクトとCpG ODNの非共有静電的結合は、完全に再現可能なプロセスである。ペプチド/CpG ODN免疫刺激複合体の凝集体は、免疫系の「プロフェッショナル」抗原提示細胞(APC)への提示を促進し、したがって複合体の免疫原性をさらに増強する。これらの複合体は、製造中の品質管理のために容易に特徴付けられる。ペプチド/CpG ISCは、in vivoで十分に許容される。CpG ODNとα-SynG111-D135フラグメント由来ペプチド免疫原コンストラクトとを含むこの新しい微粒子システムは、CpG ODNの使用に関連する一般化されたB細胞マイトジェン性を利用しつつ、バランスのとれたTh-1/Th-2型応答を促進するように設計された。
【0112】
開示される医薬組成物中のCpG ODNは、反対の電荷の静電的中和により媒介されるプロセスで免疫原に100%結合し、ミクロンサイズの微粒子の形成をもたらす。粒子形態は、CpGアジュバントの従来の使用からのCpGの投与量の大幅な削減、有害な自然免疫応答の可能性の低下を可能にし、抗原提示細胞(APC)を含む代替免疫原プロセシング経路を促進する。結果として、そのような製剤は概念的に新規であり、代替メカニズムによる免疫応答の刺激を促進することにより潜在的な利点を提供する。
【0113】
c.医薬組成物の製造方法
様々な例示的な実施形態はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物を包含する。特定の実施形態では、医薬組成物は、油中水型エマルジョン及び無機塩を含む懸濁液を使用する。
【0114】
医薬組成物を大規模な集団で使用し、α-Syn凝集の予防も投与の目標の一部とするために、安全性は考慮すべき別の重要な要素となる。臨床試験の多くの製剤にヒトの油中水エマルジョンを使用しているにもかかわらず、ミョウバンはその安全性のために製剤で使用するための主要な補助剤のままである。したがって、ミョウバンまたはその無機塩であるリン酸アルミニウム(ADJUPHOS)は、臨床応用のための調製においてアジュバントとして頻繁に使用される。
【0115】
d.医薬組成物を使用する方法
本開示はまた、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物を使用する方法を含む。
【0116】
ある特定の実施形態において、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物は、以下のために使用することができる:
(a)宿主でのα-Syn凝集を阻害する;
(b)宿主で予め形成されたα-Syn凝集体の分解を誘発する;
(c)宿主のミクログリアTNF-α及びIL6分泌を減少させる;
(d)宿主の外因性α-Syn凝集体によって引き起こされる神経変性を減少させる;
(e)α-Syn過剰発現細胞の神経変性を減少させる;
(f)宿主の血清α-Synレベルを低減する;
(g)宿主の脳内のオリゴマーα-Synレベルを低減する;
(h)神経病理を軽減し、宿主の運動活動の回復;など。
【0117】
上述の方法は、薬理学的に有効な量のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む医薬組成物を、それを必要とする宿主に投与することを含む。
【0118】
特定の実施形態
本発明の特定の実施形態には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
(1)α-シヌクレイン(α-Syn)ペプチド免疫原コンストラクトであって、
配列番号1のアミノ酸G111近辺からアミノ酸D135近辺までに対応するα-SynのC末端フラグメントからの約10から約25アミノ酸残基を含む、B細胞エピトープと;
配列番号70~98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むTヘルパーエピトープと;
アミノ酸Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)からなる群から選択される必要に応じた異種スペーサーと、を含み、
前記B細胞エピトープが、前記Tヘルパー細胞エピトープに直接または前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合している、前記α-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0119】
(2)前記B細胞エピトープが、配列番号12~15、17、及び49~63からなる群から選択される、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0120】
(3)前記Tヘルパーエピトープが、配列番号81、83、及び84からなる群から選択される、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0121】
(4)前記必要に応じた異種スペーサーが、(α,ε-N)Lysまたはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)である、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0122】
(5)前記Tヘルパーエピトープが、前記B細胞エピトープのアミノ末端に共有結合している、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0123】
(6)前記Tヘルパーエピトープが、前記B細胞エピトープのアミノ末端に前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合している、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0124】
(7)以下の式:
(Th)m-(A)n-(α-SynのC末端フラグメント)-X
または
(α-SynのC末端フラグメント)-(A)n-(Th)m-X
を含み、
式中、
Thは前記Tヘルパーエピトープであり、
Aは前記異種スペーサーであり、
(α-SynのC末端フラグメント)は、前記B細胞エピトープであり、
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり、
mは、1から約4であり、
nは1から約10である、
(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0125】
(8)配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0126】
(9)配列番号107、108、及び111~113からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【0127】
(10)(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物。
【0128】
(11)1を超える(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む、組成物。
【0129】
(12)前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが配列番号112及び113のアミノ酸配列を有する、(11)に記載の組成物。
【0130】
(13)(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト及び薬学的に許容される送達媒体及び/またはアジュバントを含む医薬組成物。
【0131】
(14)a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記アジュバントが、Al(OH)3またはAIPO4からなるグループから選択されるアルミニウムの無機塩である、
(13)に記載の医薬組成物。
【0132】
(15)a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されて安定化された免疫刺激複合体を形成する、
(13)に記載の医薬組成物。
【0133】
(16)(1)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0134】
(17)前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトに結合した、(16)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0135】
(18)(9)に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【0136】
(19)(16)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む組成物。
【0137】
(20)(18)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む組成物。
【0138】
(21)a.配列番号112の前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと、
b.配列番号113の前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントと、
の混合物を含む、(20)に記載の組成物。
【0139】
(22)(1)に記載のα-Synペプチド免疫原と送達媒体及び/またはアジュバントとを含む組成物を宿主に投与することを含む、宿主においてα-Synを認識する抗体を産生する方法。
【0140】
(23)薬理学的に有効な量の(1)のα-Synペプチド免疫原を動物に投与することを含む、動物のα-Syn凝集を阻害する方法。
【0141】
(24)薬理学的に有効な量の(1)のα-Synペプチド免疫原を動物に投与することを含む、動物のα-Syn凝集体の量を低減する方法。
【0142】
(25)生体試料中の異なるサイズのα-Syn凝集体を同定する方法であって、
a.生体試料を、(16)に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントがα-Syn凝集体に結合することを可能にする条件下で曝露することと、
b.前記生体試料中の前記α-Syn凝集体に結合した前記抗体またはそのエピトープ結合断片の量を検出することと、
を含む、前記方法。
【0143】
使用される手順の詳細な説明は、次の実施例で提供される。
実施例1
アルファシヌクレインの関連ペプチドの合成及びその製剤の調製
a.α-SynのC末端フラグメントの合成
α-Synペプチド免疫原コンストラクトの開発努力に含まれていたデザイナーα-SynC末端フラグメントの合成方法を説明する。ペプチドは、血清学的アッセイ、実験室でのパイロット及びフィールド研究に有用な少量で、ならびに、医薬組成物の産業/商業生産に有用な大規模(キログラム)量で合成された。有効なα-Synペプチド免疫原コンストラクトで使用するための最適なペプチドコンストラクトのスクリーニング及び選択のために、約10から40アミノ酸の長さの配列を持つα-Syn関連抗原ペプチドの大きなレパートリーが設計された。
【0144】
さまざまな血清学的アッセイでのエピトープマッピングに使用された、代表的な全長α-Syn(配列番号1)及びβ-Syn(配列番号2)、α-Syn111-132、α-Syn126-135などのα-Synセグメント、10merペプチドなどを表1に示す(配列番号1及び3~69)。表2(配列番号70~98)で同定される、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎表面抗原タンパク質(HBsAg)インフルエンザ、Clostridum tetani、及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)を含む病原体タンパク質由来の慎重に設計されたヘルパーT細胞(Th)エピトープに合成的に結合することにより、選択されたα-Synフラグメントをα-Synペプチド免疫原コンストラクトにした。Thエピトープは、単一の配列(配列番号70~78及び83~98)またはコンビナトリアルライブラリ(配列番号79~82)のいずれかで使用され、それぞれのα-Synペプチド免疫原コンストラクトの免疫原性を増強した。
【0145】
100を超えるペプチドコンストラクトから選択された代表的なα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、表3(配列番号99~147)で同定されている。抗α-Syn抗体の検出及び/または測定のための免疫原性研究または関連する血清学的検査に使用されるすべてのペプチドは、Applied BioSystems Models 430A、431及び/または433のペプチドシンセサイザーによるF-moc化学を使用して小規模で合成された。各ペプチドは、N末端でのF-moc保護及び三官能性アミノ酸の側鎖保護基を使用して、固相支持体上での独立した合成によって生成された。完成したペプチドを固体支持体から切断し、90%トリフルオロ酢酸(TFA)により側鎖保護基を除去した。合成ペプチド調製物は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析法によって評価され、正しいアミノ酸含有量が確保された。また、各合成ペプチドを逆相HPLC(RP-HPLC)で評価し、合成プロファイルと調製物の濃度を確認した。合成プロセスの厳密な制御(カップリング効率の段階的なモニタリングを含む)にもかかわらず、ペプチド類似体は、アミノ酸の挿入、欠失、置換、及び中途終止などの伸長サイクル中の意図しない事象により生成された。したがって、合成された調製物は、典型的には、標的ペプチドとともに複数のペプチド類似体を含んでいた。そのような意図しないペプチド類似体の包含にもかかわらず、得られた合成ペプチド調製物は、免疫診断(抗体捕捉抗原として)及び医薬組成物(ペプチド免疫原として)を含む免疫学的用途での使用になおも適していた。典型的には、これらのペプチドを使用した最終製品の再現性と有効性を保証するための製造プロセスと製品評価プロセスの両方をモニターするための識別可能なQC手順が開発されている限り、意図的に設計されるかまたは副産物の混合物として合成プロセスで生成されるかのいずれかのそのようなペプチド類似体は、所望のペプチドの精製製剤と同じくらい頻繁に有効である。数百グラムから数キログラムの量での大規模ペプチド合成は、カスタマイズされた自動ペプチドシンセサイザーUBI2003などで15mmoleから50mmoleのスケールで実施された。臨床試験の最終的な医薬組成物に使用される有効成分については、α-Synペプチドコンストラクトは浅い溶離勾配の下で分取RP-HPLCにより精製され、MALDI-TOF質量分析、アミノ酸分析、及びRP-HPLCにより純度と同一性について特徴付けられた。
【0146】
b.α-Synペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物の調製
油中水型エマルジョン及び無機塩を含む懸濁液を使用する製剤を調製した。医薬組成物を大規模な集団で使用するよう設計し、予防も投与の目標の一部とするために、安全性は考慮すべき別の重要な要素となる。臨床試験の多くの医薬組成物にヒトの油中水エマルジョンを使用しているにもかかわらず、ミョウバンはその安全性のために医薬組成物で使用するための主要な補助剤のままである。したがって、ミョウバンまたはその無機塩であるADJUPHOS(リン酸アルミニウム)は、臨床応用のための調製においてアジュバントとして頻繁に使用される。
【0147】
簡潔に述べると、以下に説明する各研究群で指定される製剤には、一般的にすべてのタイプのデザイナーα-Synペプチド免疫原コンストラクトが含まれていた。100を超えるデザイナーα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、免疫原のBエピトープペプチドを代表する対応するα-Synペプチドとの相対的な免疫原性、及び配列番号1~153を持つものから選択された異なるペプチドでコーティングされたプレートを用いるELISAアッセイによるさまざまな相同ペプチド間の血清学的交差反応性の評価について、モルモットで最初に評価された。
【0148】
α-Synペプチド免疫原コンストラクトは、(i)ヒトでの使用に承認されたオイルとしてSeppic Montanide(商標)ISA 51を含む油中水型エマルジョン中で、または(ii)無機塩ADJUPHOS(リン酸アルミニウム)またはALHYDROGEL(ミョウバン)と混合し、指定されたペプチドコンストラクトのさまざまな量で調製された。組成物は典型的に、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを約20~800μg/mLで水に溶解して調製し、Montanide(商標)ISA 51で油中水型エマルション(体積で1:1)に、または無機塩またはALHYDROGEL(ミョウバン)(体積で1:1)で製剤化された。組成物を室温で約30分間維持し、免疫化の前に約10~15秒間ボルテックスにより混合した。一部の動物は、筋肉内経路により、特定の組成物の2回から3回の投与で免疫され、それは0時(プライム)及び初期免疫後3週(wpi)(ブースター)、必要に応じて2回目の追加免疫のために5または6wpiで投与された。次いで、これらの免疫された動物を選択したBエピトープペプチド(複数可)で試験し、製剤に存在するさまざまなα-Synペプチド免疫原コンストラクトの免疫原性と、関連する標的ペプチドまたはタンパク質との交差反応性を評価した。モルモットの初期スクリーニングにおいて強力な免疫原性を有するこれらのα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、免疫化プロトコールで指示されるように、指定の期間にわたる投与計画の間、霊長類で、油中水型エマルジョン、無機塩、ミョウバンベースの製剤でさらに試験された。
【0149】
最も有望なα-Synペプチド免疫原コンストラクトのみが、シヌクレイノパチー患者における、治験薬の申請及び臨床試験の提出に備えたGLPガイド前臨床研究において、免疫原性、期間、毒性、及び有効性研究の最終製剤に組み込まれる前に、さらに広範囲に評価された。
【0150】
実施例2
組換えアルファシヌクレインタンパク質の調製
α-Syn遺伝子のpGEX-4T1へのクローニングは、Neurotoxicology and teratology 2004, 26 (3):397-406で、以前記載されていた。標的配列(配列番号1)をBamHIとXhoI制限部位の間でpGEX-4T1ベクターに挿入した。フラグメントは、KAPA HiFi DNAポリメラーゼ(Kapa Biosystems, Inc., Woburn, MA, USA)を使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された。プライマー配列は以下の通りである:フォワードプライマー5’-cgggatccgatgtgtttatgaaaggtctgag-3’(配列番号149);リバースプライマー5’-ggaattccgatgtgtttatgaaaggtctgag-3’(配列番号150)。PCR条件は以下の通りであった:94℃で1分間の変性後、94℃で15秒間の30サイクルの変性、60℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の伸長、さらに68℃で5分間の後終了。Q5 Site-Directed Mutagenesis Kit(New England BioLabs, Beverly, MA, USA)を使用して、A53Tα-Synの部位特異的変異導入を実施した。変異型α-Synのためのプライマー配列は以下のとおりである:フォワードプライマー5’-tcatggtgtgaccaccgttgcag-3’(配列番号151);リバースプライマー5’-accacgccttctttggttttg-3’(配列番号152)。
【0151】
pGEX-4T1 GSTベクターにクローニングされたα-Synは、タンパク質発現のためにE. coli BL21(DE3)に形質転換された。E. coliを37℃のLBブロスで培養し、OD600が0.8に達したときにイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を4mMの最終濃度まで添加した。4時間のインキュベーション後、4℃における5,000×gで20分間の遠心分離により細胞を収集した。収集した細胞をPBSに再懸濁し、氷上で超音波処理して破壊し、5,000×gで20分間遠心分離した。上清画分を、PBSで平衡化したグルタチオンセファロース-4Bカラム(GE Healthcare)にロードした。PBSで3回洗浄した後、トロンビン1mL(PBS中20U/mL)を4℃で一晩消化するために添加して、融合タンパク質からGSTを放出させた。次いで、タグフリーのα-Synを溶離し、続いてトロンビンをHiTrap Benzamidine FFカラム(GE Healthcare)で除去した。透析されたα-Synは、直ちに-80℃で凍結された。10%SDS-PAGEで分離した後、14kDa MWの精製α-Synを、抗α-Syn抗体(1:2000、Millipore、α-Syn111-131を標的とする)を用いたウエスタンブロッティングにより同定した。
【0152】
実施例3
血清学的アッセイ及び試薬
合成ペプチドコンストラクト及びその製剤の機能的免疫原性を評価するための血清学的アッセイ及び試薬について、以下に詳述する。
【0153】
a.抗体特異性分析のためのペプチドベースのELISA試験
以下の実施例に記載されている免疫血清試料を評価するためのELISAアッセイが開発され、以下に記載されている。96ウェルプレートのウェルを、10mMのNaHCO3緩衝液、pH9.5中(特に明記しない限り)、2μg/ml(特に明記しない限り)での、標的ペプチドであるα-SynフラグメントA85-A140、A91-A140、A101-A140、A111-A140、D121-A140、E126-A140、K97-D135、G101-D135、G111-D135、D121-D135、E123-D135、E126-D135、G101-132、及びG111-G132ペプチド(配列番号:4~17)の100μlで37℃において1時間、個別にコーティングした。
【0154】
b.ThペプチドベースのELISA試験によるThペプチドに対する抗体反応性の評価
ペプチド(配列番号70~98)でコーティングされたウェルを、非特異的タンパク質結合部位をブロッキングするために、PBS中の3重量%のゼラチン250μLによって37℃で1時間インキュベートし、その後、0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含むPBSで3回洗浄して乾燥させた。分析対象の血清は、20体積%の正常ヤギ血清、1重量%のゼラチン、及び0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含むPBSで1:20に希釈した(特に明記しない限り)。希釈した検体(例えば、血清、血漿)100マイクロリットル(100μL)を各ウェルに添加し、37℃で60分間反応させた。次いで、結合していない抗体を除去するために、PBSの0.05体積%TWEEN(登録商標)20でウェルを6回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合の種(例えば、マウス、モルモット、またはヒト)に特異的なヤギ抗IgGは、陽性ウェルで形成された抗体/ペプチド抗原複合体と結合する標識トレーサーとして使用された。あらかじめ滴定された最適希釈で、PBS中0.05体積%のTWEEN(登録商標)20を含む1体積%の正常ヤギ血清中のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗IgGの100マイクロリットルを各ウェルに添加して37℃でさらに30分間インキュベートした。ウェルをPBS中の0.05体積%のTWEEN(登録商標)20で6回洗浄して未結合抗体を除去し、0.04重量%の3’,3’,5’,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を含む基質混合物100μLと反応させ、クエン酸ナトリウム緩衝液中の0.12体積%の過酸化水素をさらに15分間反応させた。この基質混合物を使用して、着色生成物を形成することによりペルオキシダーゼ標識を検出した。100μLの1.0MのH2SO4を添加して反応を停止させ、450nmの吸光度(A450)を決定した。さまざまなα-Syn由来ペプチド免疫原を投与された免疫動物の抗体価の決定のために、1:100から1:10,000までの血清の10倍連続希釈が試験され、Log10として表される試験された血清の力価は、カットオフA450を0.5に設定したA450の線形回帰分析によって計算された。
【0155】
c.B細胞エピトープクラスターの10merペプチドベースのELISA試験によるα-Synフラグメントに対する詳細な特異性分析とエピトープマッピング
免疫された宿主における抗α-Syn抗体の詳細な特異性分析は、エピトープマッピングによって決定された。簡潔に述べると、96ウェルプレートのウェルは、ウェルあたり0.1mLあたり0.5μgで個々のα-Synの10merペプチド(配列番号18~69)でコーティングされ、その後、100μLの血清試料(PBS中1:100希釈)を、上記の抗体ELISA法のステップに従って、10merプレートウェルで二重化してインキュベートした。α-Synペプチド免疫原コンストラクトのB細胞エピトープと、免疫された宿主における免疫血清の抗α-Syn抗体の関連する詳細な特異性分析は、対応するα-Synペプチド(配列番号99、102、108、110、112、113)もしくはスペーサー及びTh配列なしのそのフラグメント、または追加の反応性と特異性の確認のためのβ-Syn(配列番号153)についても試験された。
【0156】
d.免疫原性評価
動物から免疫前及び免疫血清試料を実験的免疫プロトコールに従って収集し、56℃で30分間加熱して血清補体因子を不活性化した。医薬組成物の投与後、プロトコールに従って血液試料が得られ、特定の標的部位(複数可)に対するそれらの免疫原性が評価された。連続希釈した血清を試験し、正の力価を相互希釈のLog10として表した。特定の医薬組成物の免疫原性は、標的抗原内の所望のエピトープ特異性に対する高い力価のB細胞抗体応答を誘発する一方で、利用される「ヘルパーT細胞エピトープ」に対する抗体反応性を低いものから無視できるものに維持し、所望のB細胞応答の増強をもたらす能力によって評価される。
【0157】
e.マウス免疫血清のα-Synレベルのイムノアッセイ
α-Syn由来ペプチド免疫原を投与されたマウスの血清α-Synレベルは、捕捉抗体として抗α-Syn抗体及び検出抗体としてビオチン標識抗α-Syn抗体を使用して、サンドイッチELISA(Cloud-clon、SEB222Mu)によって測定された。簡潔に述べると、抗体を96ウェルプレートにコーティング緩衝液(15mMのNa2CO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)中100ng/ウェルで固定し、4℃で一晩インキュベートした。コーティングされたウェルは、200μL/ウェルのアッセイ希釈液(PBS中、0.5%BSA、0.05%TWEEN(登録商標)-20、0.02%ProClin 300)により室温で1時間ブロッキングされた。プレートを200μL/ウェルの洗浄緩衝液(0.05%TWEEN(登録商標)-20を含むPBS)で3回洗浄した。精製組換えα-Synを使用して、5%マウス血清を含むアッセイ希釈液で標準曲線(2倍連続希釈で156~1250ng/mLの範囲)を作成した。50μLの希釈血清(1:20)と標準液をコーティングしたウェルに添加した。インキュベーションは室温で1時間行った。すべてのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄緩衝液で6回洗浄した。捕捉されたヒトα-Synを、室温で1時間、100μLの検出抗体溶液(アッセイ希釈液中の50ng/mlのビオチン標識HP6029)とインキュベートした。次いで、ストレプトアビジンpoly-HRP(1:10,000希釈、Thermo Pierce)を1時間(100μL/ウェル)使用して、結合したビオチン-HP6029を検出した。すべてのウェルを吸引し、200μL/ウェルの洗浄緩衝液で6回洗浄し、100μL/ウェルの1MのH2SO4の添加により反応を停止させた。標準曲線は、SoftMax Proソフトウェア(Molecular Devices)を使用して作成され、4つのパラメーターロジスティック曲線適合を生成し、試験されたすべての試料のα-Synの濃度を計算するために使用された。Prismソフトウェアを使用することにより、スチューデントt検定を使用してデータを比較した。
【0158】
f.組換えα-Synによるα-Syn凝集体の調製
凝集したα-Synを調製するために、精製した野生型またはA53T変異型α-Syn[100μLのPBS/KCl凝集緩衝液(1×PBS、pH7.4中、2.5mMのMgCl2、50mMのHEPES、及び150mMのKCl)中、0.1μg/μl]を振とうせずに、サーモミキサー(Eppendorf)で7日間、1.5mLエッペンドルフチューブ中で、37℃でインキュベートした。凝集したα-Synは、後で使用するためにすぐに-80℃で凍結した。
【0159】
g.抗α-Syn抗体の精製
抗α-Syn抗体は、アフィニティーカラム(Thermo Scientific、Rockford)を使用することによって、異なる配列のペプチド(配列番号99~121)を含むα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモットの注射後3~15週間(WPI)に収集した血清から精製した。簡潔に述べると、緩衝液(0.1Mリン酸及び0.15M塩化ナトリウム、pH 7.2)平衡化後、400μLの血清をNabプロテインGスピンカラムに添加し、10分間の転倒混和と5,800×gで1分間の遠心分離を行った。カラムを結合緩衝液(400μL)で3回洗浄した。続いて、溶離緩衝液(400μL、0.1MグリシンpH 2.0)をスピンカラムに添加し、5,800×gで1分間遠心分離した後、抗体を溶離した。溶離した抗体を中和緩衝液(400μL、0.1M Tris pH 8.0)と混合し、これらの精製抗体の濃度を、BSA(ウシ血清アルブミン)を標準として、OD280でNan-Dropを使用して測定した。
【0160】
h.サイズの異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体の特異性
ウエスタンブロットを使用して、異なるサイズのα-Syn分子複合体への結合特異性について、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体をスクリーニングした。20μMのα-Synを12%Tris-グリシンSDS-PAGEで分離し、光誘起架橋(PICUP)処理の前にニトロセルロース(NC)膜に転写した。膜を、モルモット抗血清から精製した1μg/mLでの抗α-Syn抗体とともにインキュベートし、次いで、HRP(706-035-148、Jackson)と結合したロバ抗モルモット抗体とともにインキュベートした。ブロットは化学発光試薬Western Lightning ECL Pro(PerkinElmer)で視覚化された。その結果、単量体α-Syn(Mw14,460Da)は14kDaのサイズ付近でブロットされたが、二量体、三量体、またはオリゴマーの分子量は14kDaの単量体α-Synのサイズよりも数倍大きくなった。二量体、三量体、及びより大きなオリゴマーなどのさまざまなオリゴマー種を検出できる市販の抗体、Syn211(Abeam)を陽性対照として使用した。
【0161】
i.アミロイド形成タンパク質の異なる種を用いたドットブロットアッセイ
Aβ1-42、Tau、及びα-Synのα-ヘリックス単量体、β-シート単量体、β-シートオリゴマー、及びβ-シート原線維の調製は以下のとおりである。
1.Aβ1-42α-ヘリックス単量体:20μgのAP1-42β-シート単量体(50μL)を20%トリフルオロ酢酸及び20%ヘキサフルオロイソプロパノール(10μL)を含む1×PBSに添加し、4℃で24時間インキュベートしてα-ヘリックス単量体を形成した。
2.Aβ1-42β-シート単量体:37℃で24時間凝集した5%TFAを含む120μLのl×PBS中の60μgのAβ1-42を10kDaカットオフフィルター(Millipore)に移し、β-シート単量体を回収した。
3.Aβ1-42β-シートオリゴマー:37℃で3日間凝集した120μLの1×PBS中の60μgのAβ1-42を氷上で超音波処理し、10及び30kDaカットオフフィルター(Millipore)に移して35kDa未満のβシートオリゴマー原線維を回収した。
4.Aβ1-42β-シート原線維:37℃で3日間凝集した120μLの1×PBS中の60μgのAβ1-42を氷上で超音波処理し、30kDaカットオフフィルター(Millipore)に移してβシート原線維を単離した。
5.α-Synα-ヘリックス単量体:新たに調製した40μgのα-Synを4℃の100μLの冷1×PBSに溶解し、直ちに10kDaカットオフフィルター(Millipore)に移してα-ヘリックス単量体を回収した。
6.α-Synβ-シート単量体:100μLのPBS/KCl緩衝液で37℃、24時間インキュベートした40μgのα-Synを10kDaカットオフフィルター(Millpore)に移し、β-シート単量体を回収した。
7.α-Synβ-シートオリゴマー:100μLのPBS/KCl緩衝液で37℃、8日間凝集した40μgのα-Synを氷上で超音波処理した後、30及び100kDaカットオフフィルターに移してβシートオリゴマーを回収した。
8.α-Synβ-シート原線維:100μLのPBS/KCl緩衝液で37℃、8日間凝集した40μgのα-Synを氷上で超音波処理した後、30及び100kDaカットオフフィルターに移してβシート原線維を単離した。Tau441α-ヘリックス単量体: 4℃で100μLのl×PBSで調製した60μgのTauを100kDaカットオフに移し、αヘリックス単量体を回収した。
9.Tau441β-シート単量体:25℃で48時間、10ユニット/mLヘパリンを含む100μLの1×PBSで凝集した60μgのTauを4℃で100kDaカットオフフィルターに移し、βシート単量体を回収した。
10.Tau441β-シートオリゴマー:37℃で48時間、10ユニット/mLヘパリンを含む100μLのl×PBSで凝集した60μgのTauを、4℃で100及び300kDaカットオフフィルター(Pall)に移してβシートオリゴマーを回収した。
11.Tau441β-シート原線維:37℃で6日間、10ユニット/mLヘパリンを含む100μLのl×PBSで凝集した60μgのTauを、4℃で300kDaカットオフフィルター(Pall)に移し、βシート原線維を単離した。
【0162】
これらの単量体及びオリゴマーは、チオフラビン-T(ThT、Sigma)蛍光またはPAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)によって検証された。アミロイド形成タンパク質の濃度は、市販のアミロイド形成Aβ1-42ストックを標準としてNano-Dropで測定した。これらの単量体とオリゴマーは、Aβ1-42について3μg、α-Synについて4μg、Tauについて7μgの量で、PVDF膜に個別にスポットされた。膜を、一次抗体としてモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体(1:1000希釈)とインキュベートした後、抗モルモットHRP結合二次抗体(1:5000;Vector Laboratories)とのハイブリダイゼーションを行った。膜をLuminata Western HRP基質(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)で処理し、シグナルをChemiDoc-It 810デジタル画像システム(UVP Inc.、Upland、CA、USA)で検出した。
【0163】
i.神経成長因子(NGF)処理時のα-Syn過剰発現PC12細胞における凝集したα-Synへの結合特異性
NGF処理後の親PC12、モック対照PC12、及びα-Syn過剰発現PC12細胞で、8または9WPIで収集したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体を用いた免疫細胞化学(ICC)を行って、免疫後に誘発された抗体の結合親和性を評価した。細胞核をDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)で対比染色した。蛍光顕微鏡で写真を撮影し、細胞の総数に対する陽性染色された細胞の数の比率を、1%未満、1~15%、16~50%、50%を超えるものを表す、-、+、++、及び+++で分類してスコア化した。
【0164】
実施例4
免疫原性及び有効性の研究に使用される細胞及び動物
a.α-Syn過剰発現PC12細胞:
全長ヒト野生型α-SynまたはA53T変異型α-SynをコードするcDNA配列を、CMVプロモーターを持つpZD/XOL-Lベクターに挿入することにより、pZD/XOL-L-α-Synプラスミドを構築した。製造業者の手順に従って、リポフェクタミンLTXトランスフェクション試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を使用して、コンストラクトをPC12細胞にトランスフェクトした。2.5μLのトランスフェクション混合物、500μLのOpti-MEM培地、2.5μLのPLUS試薬、及び8.75μLのリポフェクタミンLTXを混合し、室温で25分間インキュベートした。培地を1.5mLのRPMI1640増殖培地に交換した後、500μLのトランスフェクション混合物を各ウェルに直接添加し、37℃で1日間インキュベートした。トランスフェクション効率は、PCR及びウエスタンブロッティングで確認された。
【0165】
b.モルモット:
免疫原性の研究は、成熟した、ナイーブな、成体のオス及びメスのダンカン・ハートレー・モルモット(300~350g/BW)で実施された。実験では、群ごとに少なくとも3匹のモルモットを使用した。ダンカン・ハートレー・モルモット(8~12週齢;Covance Research Laboratories、Denver、PA、USA)を含むプロトコールは、承認されたIACUC申請の下で、契約動物施設、及びスポンサーとしてUBIで実行された。
【0166】
c.線維性α-Synを接種したパーキンソンマウスモデル
FVBメスマウス(体重25~30g)は、12時間の明期:12時間の暗期のサイクルで飼育され、動物のケアはAAALACが承認したガイドラインに従った。繊維性α-Synは、α-Synペプチド(5mg/mL)を0.1%NaN3含有PBS/高KCl緩衝液中で、37℃で振とうせずに7日間インキュベートすることにより調製した。ThT蛍光を測定することによって線維化をモニターし、シグナルが元のα-Syn単量体の3倍を超えて増加したときに確認した。ウエスタンブロット法はまた、イソフルラン麻酔動物の片側黒質(前-後;-3.0mm;内側-外側:-1.3mm;背-腹:ブレグマ及び硬膜から-4.7mm)、ならびに背部新線条体(前-後;+0.2mm、内側-外側;-2mm、背-腹:ブレグマ及び硬膜から-3.2mm)への接種の前にα-Synの凝集を検証するために使用された。
【0167】
d.MPP+誘導パーキンソンマウスモデル
Balb/cメスマウス(体重18~20g)は、12時間の明期:12時間の暗期のサイクルで飼育され、動物のケアはAAALACが承認したガイドラインに従った。MPP+ヨージド(Sigma、St. Luis、MO)を生理食塩水に溶解し、18μgのMPP+ヨージド(0.8mg/kg)を含む10μlの溶液を麻酔動物の片側脳室に注射した。注射部位の定位座標は、ブレグマ-1.0mm、横1.0mm、深さ2.0mmであった。
【0168】
実施例5
アルファシヌクレインペプチド免疫原コンストラクトを組み込んだ多成分医薬組成物の設計原理、スクリーニング、同定、及び最適化
a.設計の歴史
各α-Synペプチド免疫原コンストラクトまたは免疫療法製品には、特定の疾患メカニズムと介入に必要な標的タンパク質(複数可)に基づいた独自の設計フォーカスとアプローチが必要である。設計の対象となる標的には、病気の経路に関与する細胞タンパク質、または病原体由来のいくつかのタンパク質が関与する可能性のある感染因子が含まれ得る。研究から商品化までのプロセスは非常に長く、典型的には、達成するまでに10年以上必要とする。
【0169】
標的分子を選択したら、広範な血清学的検証プロセスが必要である。標的分子内のB細胞及びT細胞エピトープの同定と分布は、分子α-Synペプチド免疫原コンストラクトの設計にとって重要である。標的B細胞エピトープが認識されると、小動物での連続的なパイロット免疫原性研究が実施され、デザイナーペプチドの医薬組成物によって誘発される抗体の機能的特性が評価される。次いで、誘発された抗体のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの免疫原性及び機能特性のさらなる検証のために、そのような血清学的適用が標的種の動物で行われる。すべての研究は複数の並行群で実施され、血清は評価のために免疫された宿主から収集された。標的種またはヒト医薬組成物の場合の非ヒト霊長類における初期の免疫原性研究も実施され、免疫原性及び設計の方向性をさらに検証する。次いで、さまざまな混合物で標的ペプチドを調製し、組み合わせて使用してそれぞれの製剤設計を調製するとき、ペプチドコンストラクト間のそれぞれの相互作用に関連する機能特性の微妙な相違を評価する。追加の評価の後、最終的なペプチドコンストラクト、ペプチド組成物、及びその製剤が、製剤のそれぞれの物理的パラメーターとともに確立され、最終製品開発プロセスをもたらす。
【0170】
b.シヌクレイノパチー患者を治療する可能性のある医薬組成物のためのα-Syn由来ペプチド免疫原コンストラクトの設計と検証
医薬品組成物に組み込むための最も強力なペプチドコンストラクトを生成するために、麻疹ウイルス融合(MVF)タンパク質配列またはB型肝炎表面抗原(HBsAg)タンパク質からさらに設計された、さまざまな病原体または人工Tヘルパーエピトープに由来する無差別Tヘルパーエピトープの大きなレパートリーは、モルモットの免疫原性研究に組み込まれた。α-Syn126-140、α-Syn121-140、α-Syn111-140、α-Syn101-140、α-Syn91-140、α-Syn85-140、α-Syn121-135、α-Syn111-135、α-Syn101-135、α-Syn97-135、α-Syn123-135、α-Syn126-135、α-Syn111-132、及びα-Syn101-132由来のペプチドコンストラクトの代表的な研究は、表3(配列番号99~121)に示され、α-Synペプチドは、スペーサー(複数可)としてεK及び/またはKKKを介して、個々の無差別Tヘルパーエピトープと結合していた。
【0171】
i)ペプチド免疫原設計の標的としてのα-SynのC末端部分の選択。
α-Synは天然変性タンパク質である。それは、140個のアミノ酸で構成され、3つの領域に分かれている。N末端領域(残基1~60)は、膜の認識と結合の典型的な立体構造である両親媒性ヘリックスを形成できる。残基61~95を含む中央領域は、AD老人斑で最初に同定された非アミロイドβ成分(NAC)としてよく知られている。この領域は、βに富む立体配座を形成する傾向が高く、凝集しやすい傾向がある。この領域内の異なるタイプの翻訳後修飾は、α-Syn凝集の調節に明確に異なる効果を示す。残基96~140のC末端領域は、プロリンと負に帯電した残基に富み、これは、溶解性を維持する天然変性タンパク質に見られる一般的な特性である。このC末端ドメインは、疎水性が低く、正味の負電荷が大きいため、一般的にランダムコイル構造で存在する。in vitroの研究により、これらの負電荷を中和するpHの低下によってα-Syn凝集が誘発できることが明らかになっている。α-Synは、膜結合、細胞質、及びアミロイド凝集の状態でのさまざまな条件に適応し、汎用性の高い機能を果たす、極端な立体構造の多様性を特徴とする。タンパク質が溶解性を維持するために重要なC末端のランダムコイルと天然変性領域は、ペプチド免疫原設計の標的として選択されたが、この領域がN末端両親媒性ヘリックスと中央のβに富む立体配座領域と比べて抗体または他の物理的要因による調節に最も影響を受けやすいと考えられたからである。
【0172】
ii)α-Syn Bエピトープ設計における除外のための自己Thエピトープの同定。
予備的な免疫原性分析により、α-Syn配列のN末端からのペプチド配列の削除により、α-Syn126-140(配列番号9)、α-Syn121-140(配列番号8)、α-Syn111-140(配列番号7)ペプチドを完全に非免疫原性にするが、いくつかの中程度の免疫原性が、α-Syn101-140(配列番号6)、α-Syn91-140(配列番号5)、及びα-Syn85-140(配列番号4)ペプチド(表4)で観察され、C末端配列内に潜在的な自己Th様構造の存在を示し、α-SynのC末端にヘルパーT細胞エピトープ(複数可)構造の存在が確認された。Bエピトープ(複数可)設計にこのような配列を含めると、先立つアルツハイマー病ワクチンのAN1792のように、自己T細胞の活性化による追加免疫での脳の炎症を引き起こす可能性がある。したがって、この発見では、Bエピトープ設計に自己T細胞エピトープ(複数可)が含まれる可能性を避けるために、アミノ酸残基G111から始まるB細胞エピトープ(複数可)でα-Synペプチド免疫原コンストラクトを設計する必要がある。
【0173】
iii)異種Tヘルパーエピトープのランキングと、選択されたα-Syn Bエピトープペプチドの免疫原性を回復及び強化するためのα-Synペプチド免疫原コンストラクト設計へのそれらの包含。
表2には、B細胞エピトープ免疫原性を強化するために、マウス、ラット、モルモット、ヒヒ、マカクなどから得られた多種の相対効力について群内で試験された合計29の異種Thエピトープ(配列番号70~98)が列挙される。表5に示すように、MvFタンパク質に由来するUBITh1(配列番号83)及びUBITh2(配列番号84)T細胞エピトープは、両方とも非免疫原性α-Syn101-140(配列番号6)ペプチドをそれぞれ強力及び中程度の免疫原性に増強することができる。複数のα-Syn由来のペプチド免疫原コンストラクトの広範な試験が実行され、これらの免疫原コンストラクト間の相対的な免疫原性のランキングが可能になった。UBITh3(配列番号81)でも、長いα-SynペプチドA91-A140(配列番号5)でコーティングしたプレートで、ELISAで試験するとき、表6に示すように、スペーサーを介してさまざまなC末端α-Synペプチド(配列番号4~9)に共有結合するとき、同様の免疫増強活性が見られる。
【0174】
iv)対応するα-Syn及びβ-Synとの抗体反応性に関するC末端α-Synペプチド免疫原コンストラクトの免疫原性の評価。
シヌクレインファミリーには、3つの既知のタンパク質、α-Syn、β-Syn、及びガンマ-シヌクレインが含まれる。すべてのシヌクレインは、交換可能なアポリポタンパク質のクラスA2脂質結合ドメインと類似性のある、高度に保存されたアルファヘリックス脂質結合モチーフを共有している。β-Synは、α-Synと非常に相同である。β-Synは、パーキンソン病などの神経変性疾患で起こるα-Syn凝集の阻害剤であることが示唆されている。したがって、β-Synは、α-Synの神経毒性作用から中枢神経系を保護する可能性がある。したがって、対応する凝集保護β-Synではなく、α-シヌクレインと優先的に反応する抗体を誘発するために、α-Synペプチド免疫原コンストラクトを有することが好ましい。C末端がA140で終わる6つのペプチド免疫原コンストラクトを試験するとき、これらのコンストラクトの免疫血清に由来するすべての抗体は、表6に示すように、対応するサイズのβ-Synと大幅な交差反応性を示した。α-Synとβ-Syn(配列番号1及び2)の間の配列相同性を綿密に調べると、C末端の5個のアミノ酸YEPEAに対応する配列が2つのタンパク質間で同一であることが示された。したがって、これらのYEPEAの5個のアミノ酸を含む配列を除くBエピトープ(複数可)を設計することが望ましい。したがって、表6に示す免疫原性研究からの発見は、Bエピトープ(複数可)設計におけるYEPEA(Y136~A140)の削除をもたらす。スペーサー配列、及び、例えば人工TヘルパーペプチドUBITh1(配列番号83)のα-Synペプチド免疫原コンストラクトへの組み込みの際、表7のα-Synペプチド免疫原(配列番号107~114)で示されるYEPEAテールを除くB細胞エピトープ配列を使用する設計は、長いα-SynペプチドK97-A140(配列番号110)で評価すると、すべて高い免疫原性となった。どの免疫血清もβ-Synと反応しなかった。したがって、表6及び表7から得られたデータから、ペプチド免疫原コンストラクトのBエピトープ設計は、α-SynG111からD135及びそのフラグメントに限定される。
【0175】
v)αSynペプチド免疫原コンストラクトによって誘発された抗体は、α-ヘリックス単量体ではなく、ベータシート単量体、オリゴマー、または原線維とのみ反応した。
α-Synペプチド免疫原の設計に適切な原理を使用したが、設計されたα-Synペプチド免疫原コンストラクトから生成された抗体が、G111で始まりD135で終わる配列またはそのフラグメントを持つBエピトープを持つことが驚くべきことに見出され、誘発された抗体は、β-シートα-Syn単量体、オリゴマー、及び原線維と特異的に反応するが、β-シートAβ
1-42またはTau1-441と反応しないため、
図8のα-Synペプチド免疫原コンストラクト(配列番号112及び113)で代表的に示されるように、理想的なα-Synペプチド免疫原コンストラクトの候補を提供する。
【0176】
vi)α-Syn由来のペプチド免疫原コンストラクトと異なる無差別Tヘルパーエピトープを使用することによるMHCカバレッジの拡大。
多様な遺伝的背景を持つ患者を治療するための医薬組成物を設計するとき、設計を多様な遺伝的背景を持つ最大人口をカバーできるようにすることが重要である。したがって、このような組み合わせに対するα-Syn由来ペプチド免疫原コンストラクトの相乗的免疫原性効果について調査された。MVFまたはHBsAgに由来する無差別Tヘルパーエピトープは、このような免疫原性の強化を提供する最も強力なものの1つであるため、ヘルパーTエピトープを含むペプチドコンストラクトの組み合わせは、そのような探索のために設計された。同じBエピトープを持つ2つのペプチド免疫原コンストラクトの混合物は、それぞれの個々のペプチドコンストラクトによって誘発される免疫応答と比較したときに、かなりの免疫応答を誘発することが見出された。
【0177】
実施例6
α-Synペプチド免疫原コンストラクトにより標的化B細胞エピトープのみに対して誘発される焦点化抗体応答
標的化B細胞エピトープペプチドに対する免疫応答を、そのようなB細胞エピトープペプチドのそれぞれの担体タンパク質への化学的コンジュゲーションによって増強するために使用されるすべての担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはジフテリアトキソイド(DT)及び破傷風トキソイド(TT)タンパク質などの他の担体タンパク質)は、免疫された宿主において、90%を超える強化担体タンパク質に対する抗体、及び10%未満の標的化B細胞エピトープに対する抗体が誘発される。したがって、本発明のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの特異性を評価することは興味深い。免疫原性評価のために、スペーサー配列を介して異種T細胞エピトープUBITh1(配列番号83)に結合されたさまざまな長さのB細胞エピトープを持つ、一連の8つのα-Synペプチド免疫原コンストラクト(配列番号107から114)を調製した。UBITh1(Bエピトープ免疫増強に使用されるTヘルパーペプチド)をプレートにコーティングし、モルモット免疫血清を使用して、免疫増強に使用したUBITh1ペプチドとの交差反応性を試験した。表6及び表7に示すように、Bエピトープ(複数可)に対して生成された高力価の抗体によって示されるように、対応する標的化Bエピトープに対するこれらのコンストラクトの高い免疫原性とは対照的に、表8に示すように、すべてではないが、免疫血清の多くは、UBITh1ペプチドに対して非反応性であることが見出された。
【0178】
要約すると、慎重に選択されたTヘルパーエピトープに結合した標的B細胞エピトープを組み込んだ簡単な免疫原設計により、α-SynB細胞エピトープのみを標的とする焦点化された欠点のない免疫応答の生成が可能になる。医薬組成物の設計では、免疫応答がより特異的になればなるほど、組成物に提供される安全性プロファイルが高くなる。したがって、本発明のα-Synペプチド免疫原コンストラクトは、その標的に対して非常に特異的であるが非常に強力である。
【0179】
実施例7
さまざまなアルファ-シヌクレインペプチド免疫原コンストラクトに対する免疫血清(9 WPI)による詳細な特異性分析のためのエピトープマッピング
α-SynのC末端領域内の特定の残基への抗体結合部位(複数可)を決定する詳細なエピトープマッピング研究(表9)では、(K80-A140)のα-Synアミノ酸配列を包含する、52の重複する10mer(配列番号18~69)が合成された。(97-135、配列番号10)及び(111-132、配列番号17)の2つのより長いペプチドを陽性対照として使用した。これらの10merペプチドと2つのより長いペプチドを、固相免疫吸着剤としての96ウェルマイクロタイタープレートウェルに個別にコーティングした。プールしたモルモット抗血清を、試料希釈緩衝液で1:100希釈して、2.0μg/mLの10merペプチドでコーティングしたプレートウェルに添加し、次いで、37℃で1時間インキュベートした。プレートウェルを洗浄緩衝液で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合プロテインA/Gを添加し、30分間インキュベートする。PBSで再度洗浄した後、ELISAプレートリーダーで450nmの吸光度を測定するために基質をウェルに添加し、試料を二重化して分析した。抗血清とBエピトープ免疫原コンストラクトの対応する長いα-Synペプチドとの結合は、最大の結合を表す。
【0180】
表9に示すように、6つのα-Synペプチド免疫原コンストラクト[(K97-D135、配列番号110)、(G111-D135、配列番号108)、(G111-G132、配列番号113)、(E126-D135、配列番号112)、(G101-A140、配列番号104)、及び(E126-A140、配列番号99)]からそれぞれ得られたプールされた9wpiモルモット免疫血清は、詳細なエピトープマッピングのために選択された。さまざまな長さのこれらの6つのBエピトープ断片は、α-シヌクレインのC末端領域の97~140の配列を完全に包含している。ELISAの結果は、6つの免疫血清すべてが代表的なα-Synの長いペプチド(97-135、配列番号10)と強く反応することを示した。10merの詳細なエピトープマッピング研究の結果、AA114から125の領域(配列番号52、53、54のペプチド114~123、115~124、116~125)近辺を包含する免疫原性エピトープと、ペプチド131-140(配列番号69)で表されるC末端での高度の免疫原性の領域とを明らかにした。興味深いことに、C末端α-Synペプチド免疫原コンストラクトに由来する多くの免疫血清は、EGYQDYEPEA(配列番号69)の配列を持つα-SynのC末端に位置し、β-Synタンパク質との交差反応性を担うエピトープを除き、線形ではなく立体構造エピトープを認識する抗体を誘発した。
【0181】
このエピトープマッピングの結果はあまり予期されなかったが、これらの抗体が、α-Synの変性β-シートに類似し、天然のα-Synのαヘリックスと非交差反応性の配座構造をもたらす異種Thエピトープ構造に結合したα-SynのC末端ランダムコイル領域からのα-Syn111-132(配列番号113)及びα-Syn126-135(配列番号112)で表されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトに由来するという発見とよく相関した。
【0182】
実施例8
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:組換えアルファシヌクレインタンパク質に対する、抗凝集及び脱凝集効果
組換えα-Synに対するモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体を使用して、in vitro抗凝集アッセイ及び脱凝集アッセイにおけるα-Synペプチド免疫原コンストラクトの効果を評価した。
【0183】
a.α-Syn凝集の阻害
潜在的な抗凝集能について、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモットから精製した異なる抗α-Syn抗体の初期スクリーニングアッセイを、実施例3に記載されるように、チオファビンT測定によりα-Syn凝集の変化のレベルを定量化することにより実施した。PBSで100μMに調製した組換えα-Synを、384ウェルプレートで5μMの濃度で、40μLのPBS/KCl緩衝液(1×PBS、pH7.4中2.5mMのMgCl2、50mMのHEPES、及び150mMのKCl)でさらに6日間インキュベートして凝集を引き起こした。異なる時点で収集された異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体の異なる濃度(0.05、0.5、または5μg/mL)をインキュベーション混合物に添加し、α-Synの凝集を阻害するそれぞれの効果を評価した。インキュベーションの終わりまでに、ThTアッセイを使用して凝集レベルを決定した。各試験実施から得られた測定値は、媒体対照の凝集レベルを100%とし、α-Synの非存在下で得られた測定値を0%として標準化された。
【0184】
表10に要約されるように、9WPI以上で収集されたα-Syn
111-132、α-Syn
121-135、またはα-Syn
126-135によって誘発された3つの抗α-Syn抗体は、α-Syn凝集に対する、より強力な、濃度依存的な阻害を明らかにした。アッセイしたすべての抗α-Syn抗体のうち、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、α-Syn
123-135(配列番号111)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された4つの選択された抗体(9WPIで収集)は、100%の媒体対照の凝集レベルと比較して、ほぼ40%のα-Syn凝集に対する抑制効果を示した(
図1)。
【0185】
b.予め形成されたα-Syn凝集体の解離
上記の研究から、特定のα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体が、α-Syn凝集の阻害に効果があることが認められた。α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発された抗体が、予め形成されたα-Syn凝集体の解離に有効であるかどうかをさらに評価するために、モルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体を使用したin vitro脱凝集アッセイを実施した。
【0186】
α-Synは、5μMの濃度で、200μLのPBS/KClバッファー中で3日間凝集した。遠心分離(13,000×g、4℃、30分)後、α-Syn凝集体を回収し、ThTアッセイで確認した。次いで、予め形成されたα-Syn凝集体を、モルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体(5μg/mL)を含むまたは含まない100μLのPBS/KCl緩衝液中で3日間インキュベートした。インキュベーション後、4℃、13,000×gで30分間の遠心分離後に凝集物を収集し、実施例3に記載されているようにThTアッセイで定量した。媒体対照での自発的な解離後の残留α-Syn凝集体を、100%に標準化した。
【0187】
α-Syn
111-132(配列番号113)またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された2つの選択された抗α-Syn抗体、ならびにα-Syn
111-132(配列番号113)誘発及びα-Syn
126-135(配列番号112)誘発抗α-Syn抗体の組み合わせは、このin vitro脱凝集アッセイで試験された。その結果、α-Syn
126-135(配列番号112)及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体は、予め形成されたα-Syn凝集体に対して、100%としての媒体対照と比較してほぼ50%の解離効果を実証したが、他の抗a-Syn抗体及び事前免疫動物から精製した抗体は、同等の効果を示すことができなかった(
図2)。
【0188】
実施例9
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:α-Syn過剰発現細胞におけるα-Syn凝集速度論に対する抗凝集効果及び脱凝集効果
α-Syn凝集は神経分化中に加速することが知られている。α-Synペプチド免疫原コンストラクトが細胞ベースの条件でα-Syn凝集を阻害すること、または予め形成されたα-Syn凝集体を解離することのいずれかに対するα-Synペプチド免疫原コンストラクトの効果を評価するために、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトによって免疫化したモルモット抗血清から生成された抗α-Syn抗体を、NGF処理、神経分化α-Syn過剰発現PC12細胞ベースの抗凝集アッセイ及び脱凝集アッセイで評価した。
【0189】
a.α-Syn凝集の阻害
α-Syn過剰発現PC12細胞をポリ-D-リジンプレコート96ウェルプレートに播種し、次いで、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモットから精製した抗α-Syn抗体(0または0.5μg/mL)とともに神経成長因子(NGF)(100ng/mL)で4日間処理し、抗凝集活性を検証した。
【0190】
処理した細胞を溶解し、20μgの細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、次いでα-Syn抗体(BD)で検出した。高分子量領域で検出されたα-Synシグナルの量を定量化し、100%としての媒体対照群に標準化された。
図3にも示すように、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、α-Syn
123-135(配列番号111)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された4つの選択されたすべての抗α-Syn抗体では、媒体対照での凝集したα-Synの量と比較して、凝集したα-Synの量に対する80~90%までの阻害効果が観察された。
【0191】
b.予め形成されたα-Syn凝集体の解離
予め形成されたα-Syn凝集体の脱凝集活性を検証するために、α-Syn過剰発現PC12細胞を神経分化してα-Synの凝集を開始するためにNGF(100ng/mL)で3日間処理し、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモットから精製した抗α-Syn抗体(0または0.5μg/mL)で追加の4日間さらに処理した。
【0192】
処理した細胞を溶解し、20μgの細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、次いでα-Syn抗体(BD)で検出した。高分子量領域で検出されたα-Synシグナルの量を定量化し、100%としての媒体対照群に標準化された。
図3にも示すように、α-Syn
111-135(配列番号107)、α-Syn
123-135(配列番号111)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)ペプチド免疫原コンストラクトにより誘発された抗α-Syn抗体では、凝集したα-Synの量の50~60%の低下が観察されたが、一方、α-Syn
111-132(配列番号113)により誘発された抗α-Syn抗体は、凝集したα-Synの量の90%を超える低下を示した。
【0193】
実施例10
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:ミクログリアTNF-α及びIL-6分泌の減少に対する影響
黒質のニューロン損傷は、凝集したα-Synを黒質に放出し、炎症誘発性メディエーターの産生によりミクログリアを活性化し、それによりPDの持続的かつ進行性の黒質神経変性をもたらすと考えられている。異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモットから精製した抗α-Syn抗体によるミクログリア活性化の低減効果を評価するために、異なる抗α-Syn抗体の存在下または非存在下においてα-Syn凝集体で処理する際にミクログリアによって放出される炎症誘発性メディエーター、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)及びIL-6(インターロイキン-6)の量を測定した。
【0194】
マウスBV2細胞またはヒトSVG p12細胞を、1%FBSを補充したRPMI1640培地に5,000細胞/ウェルで播種した。細胞を1μMのα-Synで処理し、37℃、5%CO2、加湿雰囲気で24時間インキュベートした。その後、培地を回収し、遠心分離し、上清を分離した。上清中のBV2細胞によって分泌されたIL-6及びSVG p12細胞によって分泌されたTNF-αの濃度を、それぞれマウスIL-6またはヒトTNF-αマウスELISAキット(Thermofisher)を使用して三重化して分析した。シグナルは、100%としての媒体対照に標準化された。
【0195】
データは、α-Syn
111-132(配列番号113)及びα-Syn
123-135(配列番号111)によって誘発される抗α-Syn抗体が、SVG p12細胞によるα-Syn凝集体を介したTNF-α放出を30~50%減少させるが、一方、α-Syn
123-135(配列番号111)によって誘発される抗α-Syn抗体は、SVGp12細胞によるIL-6放出を約30%減少させた(
図4)。結果は、α-Syn
123-135(配列番号111)によって誘発される抗α-Syn抗体は、α-Syn凝集体媒介ミクログリア活性化の緩和において試験した他の抗α-Syn抗体よりも強力であることを示した。
【0196】
実施例11
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:外因性アルファシヌクレインによって誘発される神経変性の減少に対する影響
異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体の神経保護効果を評価するために、NGF処理された神経分化PC12細胞での外因性の予め形成されたα-Syn凝集体を持つin vitro神経変性モデルが採用された。
【0197】
PC12細胞をNGF(100 ng/mL)で6日間処理して、神経分化を誘導した。神経分化細胞の形態を確認し、InCellハイコンテンツ画像分析システム(GE Healthcare)で分析した。NGFの神経栄養効果は、神経突起伸長に反映され、神経分化細胞の数が定量化された。神経突起伸長のレベルと神経分化細胞の数は、標準化後のパーセンテージ(平均値±SEM)で示された。NGF処理を有するものと有さないもののPC12細胞の神経突起長は、それぞれ100%と0%とした。6日間のNGF処理による神経分化PC12細胞の数は、100%に標準化された。
【0198】
神経変性は、外因性の予め形成されたα-Syn凝集体をニューロン分化PC12細胞に加えることにより観察された。予め形成されたα-Syn凝集体の存在下では、神経突起長が短縮され、神経分化PC12細胞の細胞数が減少した。このα-Syn凝集体駆動性の神経変性は、添加された外因性α-Syn凝集体の量に比例し、濃度依存的な方法で、α-Syn凝集体の神経毒性に対する神経保護効果で広く知られているクルクミンによってブロックし得た。市販の抗α-Syn抗体(BD bioscience)は、α-Syn凝集体駆動神経変性を弱めたが、ナイーブモルモットから精製された抗体ではそうならなかった。このモデルは、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製したどの抗α-Syn抗体が、濃度依存性の様式で、神経突起の成長と神経細胞の生存を回復する神経保護効果を有するかを識別するスクリーニングプラットフォームとして採用された(表11及び表12)。
【0199】
その結果、半数を超える異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体が、神経突起成長を濃度依存的に回復し(表11)、ほぼすべての異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体は、神経分化PC12細胞をα-Syn凝集体によって誘発される神経細胞死から保護した(表12)。2つの異なるパラメーターを合わせると、アッセイした抗α-Syn抗体のほぼ3分の1が、神経突起長とα-Syn凝集体の神経毒性に対する細胞の生存の両方に効果があることが見出された。α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された抗α-Syn抗体、及びナイーブモルモットからの免疫前抗体の抗神経変性効果が観察され、神経突起長及び蛍光生細胞標識色素であるカルセインAM(Life Technologies)による細胞数が定量化された。神経突起に富む神経分化PC12細胞では、α-Syn
111-132(配列番号113)(
図5B)及びα-Syn
126-135(配列番号112)(
図5C)によって誘発される抗α-Syn抗体がα-Syn凝集体が媒介する神経突起長の短縮に対する保護効果を示したが、ナイーブモルモットから精製された免疫前抗体(
図5A)ではそうならなかったことが見出された。
【0200】
実施例12
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:α-Syn過剰発現細胞の神経変性の減少に対する効果
異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体の神経保護効果を評価するために、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞及びA53T変異型α-Syn過剰発現PC12細胞によるin vitro神経変性モデルが採用された。
【0201】
NGFとのインキュベーション後、モック対照細胞(プラスミドベクターでトランスフェクトされた)は長い神経突起伸長を発達させ、親の野生型PC12細胞と同様に細胞数を増加させたが、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞及びA53T変異型α-Syn過剰発現PC12細胞は、同等の神経突起伸長または細胞数の増加を発現せず、NGF処理時に凝集したα-Synを伴う神経変性効果を確認した。NGF処理時の野生型α-Syn過剰発現PC12細胞での過剰発現α-Synの特性評価では、NGF処理後の野生型α-Syn過剰発現PC12細胞の細胞溶解物を用いてウエスタンブロット及びThTアッセイを実施した。ウエスタンブロット法の結果は、NGF処理時に野生型α-Synを過剰発現するPC12細胞の細胞溶解物でα-Synが過剰発現することを示し、ThTアッセイの結果は、NGF処理時に野生型α-Synを過剰発現するPC12細胞の細胞溶解物中のα-Synがβ-シート構造であったことを示した(すなわち、ThT蛍光シグナルの上昇)。NGF処理を伴わない野生型α-Syn過剰発現PC12細胞のウエスタンブロット法及びThTアッセイの結果と比較して、β-シートオリゴマーα-Synの神経変性効果を後にもたらす可能性のある、過剰発現α-Synのαヘリックスからβ-シートへの構造移行がNGF誘導神経分化時に起きることが示唆された。さらに、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞と比較して、過剰発現したA53T変異型α-Synは、NGF処理時の神経突起長の短縮と細胞数の減少の両方に反映される強力な神経変性効果をもたらし、A53T変異型α-Synは、α-Syn過剰発現PC12細胞において、野生型α-Synよりも強い神経変性効果を引き起こしたことを示す。
【0202】
α-Syn
101-132(配列番号114)、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、α-Syn
123-135(配列番号111)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体、ならびにα-Syn
111-132(配列番号113)及びα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体の組み合わせは、神経変性に対する個々の保護効果を評価するための野生型α-Syn過剰発現PC12細胞を用いたin vitro神経変性モデルによってアッセイされた。野生型α-Syn過剰発現PC12細胞をNGFで3日間処理して神経分化を開始し、その後、抗α-Syn抗体(最終濃度5μg/mL)とNGFの両方とともにさらに3日間インキュベートした。インキュベーション期間の終わりまでの細胞の顕微鏡観察により、選択された抗α-Syn抗体との共インキュベーションにより、媒体対照と比較して、神経突起長が回復し、細胞数が増加したことが明らかになった。神経突起長及び細胞数の定量化は、100%に標準化された6日間NGFで処理された親PC12細胞の読み取り値で行われた。その結果、媒体対照と比較したとき、α-Syn
101-132(配列番号114)、α-Syn
111-132(配列番号113)、またはα-Syn
123-135(配列番号111)によって誘発される抗α-Syn抗体、ならびにα-Syn
111-132(配列番号113)及びα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体の組み合わせが、大幅に多い細胞数を示し、一方で、α-Syn
101-132(配列番号114)、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
123-135(配列番号111)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体、ならびにα-Syn
111-132(配列番号115)及びα-Syn
126-135(配列番号114)によって誘発される抗α-Syn抗体の組み合わせは、大幅に長い神経突起長を示した(
図6A及び
図6B)。
【0203】
実施例13
α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって誘発される抗体とその製剤:ベータシートオリゴマー及び線維性アルファシヌクレインタンパク質に対する特異性
異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体の特異性をよりよく特徴付けるために、一連のin vitroアッセイを、異なるサイズのα-Syn分子複合体、α-Syn、Aβ、及びtauタンパク質を含む異なるアミロイド形成タンパク質、ならびにNGF処理時のα-Syn過剰発現PC12細胞で凝集したα-Synで実施した。
a.大きなα-Syn分子複合体に対する特異性
異なるサイズのα-Syn分子複合体のウエスタンブロットは、一次抗体として異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化されたモルモット抗血清から精製された抗α-Syn抗体を使用して実施された。結果は、すべての抗α-Syn抗体が、より小さなサイズの単量体α-Synに加えて、二量体、三量体、四量体、及びオリゴマーを含むより大きなサイズのα-Syn分子複合体と強く反応することを示した。市販の抗α-Syn抗体、Syn211(Abcam)と比較するとき、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、α-Syn
123-135(配列番号111)、及びα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体は、より大きなサイズのα-Syn分子複合体(二量体、三量体、四量体、及びオリゴマーを含む)のシグナルの、より小さなサイズの単量体α-Synのシグナルに対する比率が高いことを示し(
図7A及び
図7B)、抗α-Syn抗体がより大きなα-Syn分子複合体に対する特異性を有していることを示唆している。
【0204】
b.異なるアミロイド形成タンパク質間のα-Synに対する特異性
実施例3に記載されているように調製された異なるアミロイド生成タンパク質(すなわち、α-Syn、Aβ
1-42及びTau441)の異なる種(すなわち、α-ヘリックス単量体、β-シート単量体、β-シートオリゴマー、及びβ-シート原線維)によるドットブロットアッセイは、異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体を一次抗体として使用して実施した。その結果、α-Syn
126-135(配列番号112)及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体は、α-Synのすべてのβ-シート型(単量体、オリゴマー、原線維種)に特異的に反応することが示されたが、α-ヘリックス単量体には反応しなかった(
図8A、
図8B、及び
図8C)。さらに、α-Syn
126-135(配列番号112)及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体は、β-シートの-シート単量体よりも、α-Synのβ-シート原線維及びα-Synのβ-シートオリゴマーにより強く反応した。対照的に、α-Syn
126-135(配列番号112)及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体は、β-Synまたはアミロイド形成タンパク質Aβ
1-42及びTau441の異なる種(すなわち、αヘリックス単量体、βシート単量体、βシートオリゴマー及びβシート原線維)に対して、検出される反応性をまったく示さなかった(
図8A、
図8B、及び
図8C)。この発見は、α-Syn
126-135(配列番号112)及びα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発される抗α-Syn抗体が、β-シート単量体、β-シートオリゴマー、及びβ-シート繊維状形態のα-Synに対する特異性を有することを示唆した。
【0205】
c.NGF処理時のα-Syn過剰発現PC12細胞における凝集したα-Synへの結合特異性
異なるα-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化したモルモット抗血清から精製した抗α-Syn抗体を用いた免疫細胞化学(ICC)は、親PC12細胞、モック対照PC12細胞、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞、及びA53T変異型α-Syn過剰発現PC12細胞で実施され、実施例3に記載されるように、NGF処理時に凝集したα-Synに対する抗体の結合親和性を評価した。
図9に示すように、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発される抗α-Syn抗体は、NGF処理時の、親PC12細胞またはモック対照PC12細胞よりも野生型α-Syn過剰発現PC12細胞及びA53T変異型α-Syn過剰発現PC12細胞でより強い反応性が実証された。過剰発現α-Syn凝集がNGF処理により誘導されたため、この発見は、α-Syn
111-132(配列番号113)、α-Syn
121-135(配列番号107)、またはα-Syn
126-135(配列番号112)によって誘発された抗α-Syn抗体が、NGF処理時の、野生型α-Syn過剰発現PC12細胞及びA53T変異型α-Syn過剰発現PC12細胞において凝集したα-Synに対する特異性を有していたことを示唆した。
【0206】
実施例14
α-Synペプチド免疫原コンストラクト及びその製剤の組織特異性の評価のためのパーキンソン病によるヒト脳の免疫組織化学的染色
免疫前、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発される抗α-Syn抗体、及び両方の抗α-Syn抗体の1:1の組み合わせを用いる免疫組織病理学研究は、特異性及び望ましくない抗体の自己反応性をモニターするために、正常なヒト組織で実施された。ヒト組織パネル(Pantomics)をキシレンで脱パラフィン化し、エタノールで再水和し、次いでPBS中に0.5%CaCl
2を含む0.25%トリプシン溶液で30分間処理し、メタノール中の1%過酸化水素でインキュベートして内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックし、その後、PBS中の10%Block Ace(Sigma)とのインキュベーションをし、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)によって免疫化されたモルモットからの抗α-Syn抗体、及び両方の抗体の1:1の組み合わせ(1:300希釈)を適用した。切片は3-3’ジアミノベンジジン(DAB)で発色し、顕微鏡で検査される前にヘマトキシリンで対比染色された。市販の抗α-Syn抗体(BD、610708)の陽性反応とは対照的に、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)で免疫化したモルモットから精製した抗α-Syn抗体、及び両方の抗体の1:1の組み合わせは、正常なヒト組織に対して負の反応性を示したが、これは、ナイーブモルモットの免疫前抗体のパターンに適合した(
図10A)。
【0207】
免疫前、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発される抗α-Syn抗体、及び両方の抗α-Syn抗体の1:1の組み合わせを用いる別の免疫組織病理学研究は、ヒトのパーキンソン病の脳との反応性を試験するために実施された。3つの領域(すなわち、小脳、脳梁、及び視床)の組織切片(BioChain)をアッセイした。その結果、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗α-Syn抗体、及び両方の抗α-Syn抗体の1:1の組み合わせが健康な脳切片の負の反応性と比較して、3つの領域すべてのPD脳切片に対する陽性の反応性を示した(矢印による)(
図10B及び
図10C)。PD脳切片中のα-Syn凝集体に対する反応性の定量化は、顕微鏡観察下で陽性染色を計数することにより行った。結果は、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発される抗α-Syn抗体、及び両方の抗α-Syn抗体の1:1の組み合わせは、健康なヒトの脳切片と比較して、PD脳切片で強い陽性を有したことを示した。そして、アッセイされた3つの異なる抗α-Syn抗体のうち、α-Syn
111-132(配列番号113)によって誘発された抗体は、PD脳切片のα-Syn凝集体に対して最も強い免疫反応性を有した。
【0208】
実施例15
動物モデルにおけるα-Synペプチド免疫原コンストラクト及びその製剤の有効性の証明
a.免疫化と血液/脳組織の収集
パーキンソン病(PD)マウスモデルは、実施例4で記載されたように確立された。MPP+注射の2週間後、または線維性α-Syn接種の7週間後、マウスを、アジュバント群(組成物の調製に使用されるアジュバント及び溶媒で免疫化された(ISA 51 VG、CpG3、0.2%TWEEN(登録商標)-80))に加えて、UBITh1結合α-Syn111-132(配列番号113)ペプチド、UBITh1結合α-Syn126-135(配列番号112)ペプチド、及び両方のペプチドの組み合わせを含む3つの群にランダムに分けた。筋肉内(IM)免疫を40μgの用量で3週間の間隔で3回投与した。投与及び採血のスケジュールは、表13に従って実施された。
【0209】
各時点で、200μLの血液が顔面静脈採血により採取された。穿刺した顎下静脈から滴る血液をマイクロチューブに集め、300rpmで10分間遠心分離して血清を調製した。動物を犠牲にした後、脳組織試料をウエスタンブロッティングのために収集した。
【0210】
b.α-Syn111-132(配列番号113)または/及びα-Syn126-135(配列番号112)ペプチド免疫原コンストラクトを含む組成物を投与されたPDモデルマウスにおける免疫応答
各処理群のプールされた血清試料を1%BSA(PBST中)で希釈し、次いで、0.1M炭酸水素ナトリウム(α-Syn濃度4.4μg/μl、pH 9.6)中の200μLのα-Syn全長ペプチド(Cloud-clone)でコーティングしたELISAプレートに適用した。室温で2時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した後、1%BSAで1:3000に希釈したHRP結合抗マウスIgG抗体100μlを添加して、室温で2時間反応させた。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、100μlの3,3,5,5-テトラメチルベンジジン(TMB)とともに暗所で10分間インキュベートした。次いで、100μLの2MのH2SO4を添加し、15~30分間インキュベートした後、SpectraMax i3xマルチモード検出(Molecular Devices)で450nmの光学濃度(OD)値を測定した。
【0211】
製剤化されたα-Syn
111-132(配列番号113)、製剤化されたα-Syn
126-135(配列番号112)、または両方のペプチド免疫原コンストラクトの組み合わせで免疫化された2つのPDマウスモデルには、それぞれ、MPP
+誘導モデル(
図11A)または線維性α-Syn接種モデル(
図11B)で、2回目の免疫後、3.0を超える抗α-Syn抗体光学濃度(OD)値があり、初期免疫後15週間また19週間の研究の終了時まで上昇を維持したが、アジュバント投与動物は測定可能な抗α-Syn免疫応答を誘発しなかった。
【0212】
線維性α-Syn接種モデルでは、α-Syn
111-132コンストラクトはα-Syn
126-135コンストラクトより強い免疫応答を誘発したが(
図11B)、MPP
+誘導モデルでは免疫原性の違いは観察されなかった(
図11A)ことに留意されたい。
【0213】
c.血清α-Synレベルの低下
各群の動物からプールされた血清のα-Synレベルは、実施例3に記載されるように、アルファヘリックスとβ-シートのα-Synの両方を検出できるELISAキット(SEB222Mu、USCN)を使用してアッセイされた。
【0214】
α-Syn定量ELISAは、免疫化群の抗α-Syn抗体応答が、未処理動物と比較した場合の末梢α-Synの減少量と関連しているかどうか試験するためのものであった。MPP
+誘導モデル(
図12A)及び線維性α-Syn接種モデル(
図12B)の両方において、α-Syn
126-135(配列番号112)、α-Syn
111-132(配列番号113)、またはこれらのコンストラクトの組み合わせによって免疫すると、アジュバント投与動物と比較して、α-Synレベルの光学濃度(OD)値が減少したことが示された。結果は、α-Synペプチド免疫原コンストラクトで免疫化するときに抗α-Syn抗体応答が発生すると、末梢循環のα-Synの量がそれに応じて減少したことを示唆した。
【0215】
d.脳でのオリゴマーα-Synレベルの減少
動物を犠牲にした後、脳組織試料をウエスタンブロッティングのために収集した。MPP+誘導マウスでは、脳を摘出し、ホモジナイズしたが、一方、線維性α-Synを接種したマウスでは、線条体及び黒質領域を最初に分離してからホモジナイズした。溶解緩衝液(Amresco)及び1×プロテイナーゼ阻害剤(Roche)をホモジネートに添加することにより、脳組織溶解物を調製した。次いで、溶解物を10%SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分離し、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に転写し、PBS中の5%ミルクで一晩インキュベートした。ドーパミン作動性ニューロンの存在量を検出するために、膜を抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(1:1000希釈、Abcam)とインキュベートし、続いてヤギ抗ウサギIgG(H+L)HRP結合二次抗体(1:5000希釈、Jackson Immunoresearch)でハイブリダイズした。視覚化には、Luminata Western HRP Substratesを使用し、結果のシグナルをChemiDoc-It 810デジタル画像システムでキャプチャした。オリゴマーα-Synレベルの定量化は、GAPDHレベルで標準化することにより行われ、非病変溶解物の比率は、比較のために100%にさらに標準化された。
【0216】
MPP
+誘導モデルでは、α-Syn
111-132ペプチド免疫原コンストラクトで免疫化した動物において、オリゴマーα-Syn画分の減少が示された(
図13A)。同様に、線維性α-Synを接種したマウスでは、線維性α-Syn接種と同側の黒質及び線条体の溶解物(
図14A及び14D)ならびに線維性α-Syn接種の反対側の線条体の溶解物(
図14F)を用いたウエスタンブロットは、アジュバント対照マウスで見られる2~3倍までのオリゴマーα-Synレベルの増加が、製剤化されたα-Syn
111-132(配列番号113)及びα-Syn
126-135(配列番号112)コンストラクトでの処理後に軽減されたことを示した。ウエスタンブロッティングの結果の定量化は、
図13B、
図14B、
図14C、
図14D、及び
図14Gに示される。
【0217】
e.神経病理学の減少
線維性α-Synを接種したマウスの場合、黒質領域を最初に単離し、次いでホモジナイズした。溶解緩衝液(Amresco)及び1×プロテイナーゼ阻害剤(Roche)をホモジネートに添加することにより、組織溶解物を調製した。次いで、溶解物を10%SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分離し、フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に転写し、PBS中の5%ミルクで一晩インキュベートした。ドーパミン作動性ニューロンの存在量を検出するために、膜を抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(1:1000希釈、Abcam)とインキュベートし、続いてヤギ抗ウサギIgG(H+L)HRP結合二次抗体(1:5000希釈、Jackson Immunoresearch)でハイブリダイズした。視覚化には、Luminata Western HRP Substratesを使用し、結果のシグナルをChemiDoc-It 810デジタル画像システムでキャプチャした。α-Synの発現レベルは、タンパク質ローディング対照として使用されるGAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)に対して標準化された。
【0218】
その結果、α-Syn
111-132コンストラクトによる免疫化により、チロシンヒドロキシラーゼの量が非病変の正常動物と同等のレベルに回復することが実証され(
図14C-14D)、マウスに接種された凝集α-Synに関連する神経毒性に対するα-Synペプチド免疫原コンストラクトの神経保護効果が示唆された。
【0219】
f.運動活動の回復
CatWalk(商標)XT(Noldus information Technology、Wageningen、Netherlands)は、ビデオベースの分析システムであり、各フットフォールの位置、圧力、表面積に基づいて、フットフォールのさまざまな側面を動的に客観的に測定する。すべてのマウスは、実験前に少なくとも1日3回、一貫した方法でランウェイを横断するように訓練された。成功した実行とは、動物が中断またはためらうことなくランウェイを走り抜けたと定義され、訓練に失敗したマウスは研究から除外された。
【0220】
各マウスの平均5回の横断を分析した。線維性α-Syn接種は右脳で行われたため、左後肢立ち時間は、走行時間だけで参照パラメーターとみなされた。
【0221】
線維性α-Syn接種モデルでは、α-Syn
126-135(配列番号112)またはα-Syn
111-132(配列番号113)を含む組成物で処理した後、左後肢立ち時間の測定に有意差が見られた(
図15A)。一方、線維性α-Syn接種モデル及びMPP+誘発モデルの両方で、α-Syn
111-132(配列番号113)を含む組成物で処理した後、走行時間の測定値に有意差が見られた(
図15B及び15C)。結果は、製剤化されたα-Syn
126-135(配列番号112)または製剤化されたα-Syn
111-132(配列番号113)のα-Synペプチド免疫原コンストラクトによる処理と2つのPDマウスモデルの運動機能の改善との間の関連性を示唆した。
【0222】
実施例16
神経変性疾患で見出された異なるα-Syn系統を有するα-Synペプチド免疫原コンストラクトにより生成される抗体の反応性
【0223】
α-Synはパーキンソン病及びその他のシヌクレイノパチーを駆動する。α-Synタンパク質は、サイズと構造が異なり、細胞に及ぼす影響が異なる明確に区別されるタイプの凝集体を形成できるため、これらの各疾患は1つ以上の異なるタイプの凝集体によって引き起こされる。異なる形状のα-Syn凝集体は、脳にさまざまな損傷パターンを引き起こし、明確に区別される脳疾患を引き起こすことさえある。この研究は、α-Synペプチド免疫原コンストラクトによって生成された抗体が、神経変性疾患に見られるさまざまなα-Syn系統と相互作用する方法を評価するために設計された。
【0224】
Ronald Melki博士はこの研究の共同研究者であった。ラボでは、次のような異なる種類のα-Syn凝集体が生成された。(a)原線維-α-Synタンパク質の長い、ねじれた、チャック式に一緒になった鎖;(b)リボン-より広く平らな構造、及び(c)α-Synオリゴマー(O550)、ドーパミン安定化(ODA)及びグルタルアルデヒド安定化(OGA)オリゴマー。
【0225】
本明細書に開示される様々なα-Synペプチド免疫原コンストラクトによりモルモットで生成された抗体は、それらの相対的親和性について試験された。PD-021514(α-Syn85-140、wpi 08)、PD-021522(α-Syn85-140、wpi 13)、PD-100806(α-Syn126-135、wpi 09)からの代表的な試料、PRX002、及び市販のモノクローナル抗体Syn1(クローン42)は、フィルタートラップアッセイを使用して対照単量体とともに、原線維、リボン、原線維65、原線維91、原線維110、線維性アセンブリ経路α-Synオリゴマー(O550)、ドーパミン安定化(ODA)及びグルタルアルデヒド安定化(OGA)オリゴマーを含む個別のα-Synアセンブリで試験された。
【0226】
方法及び材料
a.α-Synの原線維とリボンへのアセンブリ
原線維形成のために、可溶性WTα-Synを緩衝液A(50mMのTris-HCl、pH7.5、150mMのKCl)で、600r.p.mに設定したEppendorf Thermomixerで連続的に振盪しながら37℃でインキュベートした。磁気攪拌棒(6×3mm)を使用して、攪拌(100r.p.m.)下で1×1cmキュベット中のチオフラビンT(15μM)の存在下で、440nmに設定された励起波長と440nm及び480nmに設定された発光波長、ならびに1秒の平均時間で、Cary Eclipse分光蛍光光度計(Varian Inc.、Palo Alto、CA、USA)によって、アセンブリを連続的にモニターした。リボン形成のために、WTα-Synを4℃で1,000倍の緩衝液B(5mMのTris-HCl pH7.5)に対して16時間透析し、次いで、600r.p.mに設定したEppendorf Thermomixerで連続的に振盪しながら37℃でインキュベートした。440nmの散乱光の測定により、アセンブリをモニターした。代替的に、35,000×gでの沈降後に上清に残っているタンパク質の量を、Hewlett Packard8453ダイオードアレイ分光光度計で280nmの吸光度を測定することにより決定した。オリゴマー種の性質は、Jeol1400(Jeol Ltd.)TEMを使用して、炭素コーティング200メッシュグリッドへの試料の吸着と1%酢酸ウラニルによるネガティブ染色を使用して評価した。画像はGatan Orius CCDカメラ(Gatan)で記録された。α-Synアセンブリのコンゴレッドへの結合能を次のように評価した:α-Syn原線維及びリボンを、20mMのTris緩衝液(pH7.5)中の100μMのCongo Red(Sigma-Aldrich、St Louis、MO、USA)とともに1時間インキュベートした。次いで、ポリマーをTL100卓上Beckman超遠心分離機(Beckman Instruments、Inc.、Fullerton、CA、USA)で、20℃で、25,000gで30分間沈殿させた。等量の水を使用してペレットを4回洗浄した。ペレットの再懸濁後、アリコートをカバーガラス上に置き、すぐに画像化するか、または乾燥させた。試料は、交差偏光子を装備したライカ(MZ12.5)顕微鏡(Leica Microsystems、Ltd.、Heerbrugg、Switzerland)を使用した偏光顕微鏡により、明視野及び交差偏光で観察された。
【0227】
b.α-Syn原線維及びリボン濃度の決定
α-Syn原線維とリボンの長さの不均一性は、75%振幅、0.5秒パルスに設定された超音波プロセッサーUIS250v(250W、2.4kHz、Hielscher Ultrasonic、Teltow、Germany)を搭載したVialTweeterの2mlEppendorfチューブで、氷上で20分間超音波処理することにより減少させた。α-Syn原線維とリボンの沈降速度を測定した。沈降境界は、大きな粒子の不均一混合物に最適な最小二乗境界モデリング1s-g*(s)を使用して、Sedfitソフトウェアで分析された。これにより、α-Synリボンでは50~150S、α-Syn原線維では100~1,000Sの沈降係数の範囲の粒子の分布が得られ、α-Synリボン及び原線維では、それぞれ沈降係数が約90S及び375Sの種を中心とし、α-Synリボンの場合、約11,500kDaの分子量を有する粒子に対応し、例えば、約800個のα-Syn分子(12,000kDa/14.5kDa)で構成され、α-Syn原線維の場合、約102,000kDaの分子量を有する粒子に対応し、例えば、約7,000個のα-Syn分子(10,2000kDa/14.5kDa)で構成される。したがって、試料の遠心分離によりペレット画分においてタンパク質の100%が見つかるため、α-Synの100%は定常状態でリボンまたは原線維にアセンブリすると仮定すれば、20μMの使用濃度では、α-Synリボン及び原線維の粒子全体の濃度は、α-Synリボン及び原線維の場合、それぞれ20μM/約800=約0.02μM、20μM/約7,000=約0.003μMである。
【0228】
c.さまざまなα-Syn原線維及びリボンに対するエンドボディの親和性の評価
本明細書に開示されるα-Synペプチド免疫原コンストラクトにより生成された抗体の親和性は、抗体を参照として用いるフィルタートラップアッセイを使用して、別個のα-Synアセンブリについて評価された。α-Synアセンブリ(原線維、リボン、原線維65、原線維91、原線維110、原線維アセンブリ経路α-Synオリゴマー(O550)、ドーパミン安定化(ODA)及びグルタルアルデヒド安定化(OGA)オリゴマー)は、Bousset L. et al., 2013 Nat Commun 4:2575; Makky A. et al., 2016 Sci Rep 6:37970; 及びPieri L. et al, 2016 Sci. Rep 6:24526に記載されている。対照の単量体α-Synも使用された。
【0229】
スロットブロットろ過装置を使用して、ニトロセルロースフィルター上に、20pg~200ngの範囲で増加する量の線維性、オリゴマー、または単量体α-Synをスポットした。次いで、フィルターを脱脂乳でブロッキングし、指定の希釈度での、PRX002またはSyn1抗体、または本開示の試験GP抗体とともにインキュベートした。徹底的な洗浄後、2次抗ヒトまたは抗モルモットIgG-HRPを使用して、一次抗体結合プロファイルを検出した。二次抗体のみの対照も試験された。Super Signal ECL(Pierce#34096)をブロットに使用し、次いでブロットをBioRadイメージャー(Chemidoc MPイメージングシステム/BioRad imagelabソフトウェア)でイメージングした。露出時間とダイナミックレンジは、
図16A~
図16Hに示されている。この一連の測定では、DLB症例のヒト脳ホモジネートが膜にスポットされた。
【0230】
d.結果
免疫化したGPからのモルモット(GP)抗体PD-021514(α-Syn85-140、wpi 08)、PD-021522(α-Syn85-140、wpi 13)、PD-100806(α-Syn126-135、wpi 09)、PRX002及び市販の抗体Syn1(クローン42)の親和性を、フィルタートラップアッセイを使用して、異なるα-Synアセンブリについて比較した。使用されたα-Synアセンブリには、対照単量体α-Synとともに、原線維、リボン、原線維65、原線維91、原線維110、原線維アセンブリ経路α-Synオリゴマー上(O550)、ドーパミン安定化(ODA)、及びグルタルアルデヒド安定化(OGA)オリゴマーが含まれる。
【0231】
図16A~
図16Hは、単量体α-Synと比較した場合、参照抗体PRX002が、繊維性α-Synに対してわずかに良好な親和性で認識し、一方、両方とも本開示のα-Syn
126-135ペプチドコンストラクトに対するPD-100806及びPD-021514は、単量体α-Synと比較して線維性α-Synに対してはるかに高い親和性を有し、両方が線維性α-Synへの優先的結合を有することを示す。オリゴマー及び線維性α-Synに対するPRX002の親和性は類似していることが見出された。Syn1モノクローナル抗体は、繊維性α-Synならびにオリゴマー及び単量体α-Synに結合したが、それほど差別化された選好性はなかった。
【0232】
実施例17
パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、及びレビー小体型認知症(DLB)を患う患者の脳切片にα-Synペプチド免疫原コンストラクト由来の抗体の免疫組織化学的研究
本発明の代表的なα-Syn126-135ペプチド免疫原コンストラクトによるモルモットの免疫から得られた抗体は、免疫化学的研究で使用され、α-シヌクレイノパチー患者の脳切片に存在するα-Synに結合する能力を特徴付けた。この研究は、Roxana Carare教授と共同で実施された。PD、LBD、及びMSA患者から得られた脳切片に存在するα-Synに結合する抗体の能力を評価した。健康な組織は、陰性対照として研究に含まれていた。NCL-L-ASYNは、α-シヌクレイノパチーの死後診断に使用される市販のモノクローナル抗体であり、陽性対照として含まれていた。この調査は、ヒトPD、LBD、及びMSA患者の脳の組織切片上のα-Syn126-135ペプチド免疫原コンストラクトに対する抗体の陽性免疫反応性の証拠を提供する。結合は、シヌクレオパチー患者の脳で特に見られたが、非患者の脳では見られず、市販の診断抗体よりも試験抗体の方が、結合が顕著であった。
【0233】
方法及び材料
a.使用する試薬とその供給者の説明
代表的なα-Syn126-135ペプチド免疫原コンストラクトによるモルモットの免疫から得られた抗体を1:100希釈で使用した。PD062220-09-1-2-Syn;PD062205-09-1-2-Syn;PD100806-09-1-2-SynはUnited NeuroScience(UNS)によって提供され、NCL-L-ASYN(1:100希釈で使用されるマウスモノクローナル抗体)はLeica Biosystemsにより提供され、HuD(E-I)(1:100希釈でのマウスモノクローナル抗体)はSanta Cruz Biotechnologyにより提供され、Olig2(1:100希釈でのウサギ抗体)はMilliporeにより提供され、Alexa Flour 594(1:200希釈でのヤギ抗モルモット)及びAlexa Flour 488(1:200希釈でのヤギ抗マウス)ならびにAlexa Flour 488(1:200希釈でのヤギ-ウサギ)は、Molecular Probes life technologiesにより提供された。
【0234】
b.ヒト脳組織
この研究では、μm厚さの切片をUCL脳バンクから入手した。すべての試料は、National Research Ethics Service承認の手続きに従って収集及び準備された。
【0235】
組織は、多系統萎縮症(MSA;n=3)、レビー小体型認知症(DLB;n=3)、及びパーキンソン病(PD;n=3)を含む原発性α-Syn病態の対象(表15)から得られた。対象は公表された基準**に従って死後診断された。
【0236】
c.シヌクレイノパチーのヒト対象の免疫組織化学
United Neuroscience(UNS)が製造した3つの抗体のα-Syn凝集体に対する特異性を定量的に比較するために、3つの異なるシヌクレイノパチー(MSA、DLB、及びPD)のヒト対象の免疫組織化学(IHC)を実施した。α-Syn凝集体に対するUNS抗体(PD062220、PD062205、及びPD100806)の特異性を、市販の診断抗体(NCL-L-ASYN)の特異性と比較した。抗体の特異性は、各患者の対象と疾患の種類の次の4つの脳領域で分析された。(1)被殻、内包、及び島皮質;(2)中脳:黒質;(3)側頭皮質:皮質灰色物質;(4)小脳:皮質下白質;小脳白質。
【0237】
これらの脳領域は、さまざまな程度で、各疾患タイプの疾患進行のさまざまな段階でα-Syn凝集の影響を受けることが知られている。一般に、大脳基底核及び中脳は、DLB、PD、及びMSAの初期段階で影響を受け、また凝集体の総負荷が最も高い。側頭皮質及び小脳は疾患の後期に影響を受け、PD及びDLBには小脳凝集体がほとんど存在しない。二次抗体の非特異的結合が存在しないことを確認するために、各IHCプロトコールと一緒に陰性対照(一次抗体を使用しない)を実行した。パラフィン包埋スライドを60℃のオーブンで15~20分間脱ろうし、次いでキシレンI及びIIにそれぞれ5分間浸漬した。組織を、それぞれ5分間、100%~50%のIMSの4希釈で再水和した。組織を1×PBSで5分間3回洗浄し、その後、抗原回復のために100%ギ酸で3分間インキュベートした。内因性ペルオキシダーゼ活性を3%H2O2で10分間クエンチする前に、組織を1×PBSで徹底的に洗浄した。組織を冷却し、1×PBSでさらに3回(各5分)洗浄した後、クエン酸緩衝液(15mMクエン酸トリスナトリウム、TWEEN、pH6)で、25分間中温で電子レンジにかけ、実行ごとに同等の電子レンジを確保するために、3つの容器中の3ラックのスライドを、毎回含めた。スライドを冷却し、1×PBSで3回(5分)洗浄した後に、非特異的結合部位を15%正常ヤギ血清でブロッキングした。組織を一次抗体(0.1%TBS/t中1:100)で、4℃で一晩インキュベートした。組織を1×PBSで3×5分間洗浄し、ビオチン化二次抗体中で1時間(RT)インキュベートした。ABC溶液は、その適用の30分前に調製された。組織を3×5分、l×PBSで洗浄した後、ABCで、室温で1時間インキュベートした。VIPペルオキシダーゼ基質は、製造元の説明書に詳述されているように、ImmPACTVIPペルオキシダーゼキットを使用して調製した。VIPペルオキシダーゼ基質をRTで7分間添加し、dH2Oで洗浄した。DPXにマウントする前に、IMS50%、70%、95%、100%、100%ならびにキシレンI及びIIをそれぞれ2分間で、組織を脱水した。二重免疫蛍光染色では、一次抗体を適用する前に組織を3%H2O2でクエンチしなかった。最初の一次抗体及び同等の二次抗体を適用した後、組織を15%正常ヤギ血清で30分間ブロッキングし、前述のように第2の一次抗体及び二次抗体とともにインキュベートした。蛍光標識二次抗体の最終適用後、組織を1%Sudan Blackで5分間インキュベートして自己蛍光をクエンチし、0.1%TBS/Tで洗浄し、すぐにmowiol cituflourにマウントした。蛍光染色された組織は、画像化されるまで4℃で保存された。
【0238】
d.画像分析と統計
OlympusVS110高スループットVirtual Microscopy SystemまたはOlympus dot Slide Virtual Microscopy Systemを使用して、20倍対物レンズでの分析のためにスライドをスキャンした。各対象の各領域の同等エリアからOlympus VSソフトウェアを使用して、スキャンした画像から30枚の画像(各500μm
2)をキャプチャした(
図17A~
図17D、
図18A~
図18D、
図19A~
図19C、
図20A~
図20E、
図21A~
図21F、
図22A~
図22C、
図24A~
図24D、及び
図25A~
図25Dを参照されたい)。これにより、各脳領域の総面積7.5mm
2の分析が可能になった。ImageJバージョンFiji windows-64ソフトウェアは、各画像のα-Syn免疫反応性の定量分析に使用された。
【0239】
各抗体によって検出されたα-Synの総量の分析のために、免疫反応性は画像の総面積のパーセンテージとして報告された。α-Syn陽性免疫反応性の選択に適用される閾値は、結果に影響を与える可能性のあるバックグラウンド染色の差異を説明するために、分析された各脳領域に対して調整された。α-Syn陽性凝集体によって包含される平均パーセンテージ面積は、分析された各抗体及び脳領域について計算された。
【0240】
LBまたはLNに対する各抗体の相対的特異性の分析のために、Fijiソフトウェアを使用して、サイズと真円度のパラメーターに基づいてLBの免疫反応性を定量化し、LNと区別した(
図24A~
図24D、
図25A~
図25D、及び
図26A~
図26Bを参照されたい)。偽陽性を回避するために、LB及びLNの異なる形態を持つ脳領域がこの分析のために選択され、大脳基底核の島皮質及び側頭皮質の皮質灰白質が含まれていた。LB免疫反応性は、総α-Syn免疫反応性のパーセンテージとして表された。
【0241】
統計学的分析は、GraphPad Prism v7.01ソフトウェアを使用して実施され、平均値+SDとして報告される(特に指定のない限り)。結果は、一元配置分散分析(ANOVA)で分析され、その後、該当する場合は、ダネット補正による事後分析が続いた。p<0.05(*)の場合、差は有意とみなされた。数字(n)は、各実験に使用された対象の数を指す。
【0242】
ニューロンまたはグリア内のα-Synの位置の定性分析は、上述のように二重免疫蛍光染色によって達成された。Leica SP8レーザー走査共焦点顕微鏡でスライドを観察した。最大投影オーバーレイ画像は、40倍対物レンズで連続して取得された。これらの画像は、相対的な位置を示すためにオーバーレイされた両方のカラーチャネルと一緒に積み重ねられた一連のzスライド画像で構成されていた。
【0243】
e.α-Syn126-135抗体は、NCL-L-ASYNと比較して異なるパターンのα-Syn凝集体を検出した
α-Syn凝集体の細胞型と細胞内局在は、異なるシヌクレイノパチーの間で異なる。MSAはグリア細胞質内封入体(GCI)によって特徴付けられるが、DLB及びPDでは、ニューロン細胞体(LB)及び軸索突起(LN)内でα-Syn凝集が発生する。染色された面積のパーセンテージの分析により、各抗体によって検出された総α-Syn凝集体の定量化が可能になった。しかしながら、これは、検出された凝集体のタイプまたは細胞内位置の相違を考慮しなかった。PD及びDLBの場合の細胞体及び神経突起内のα-Syn凝集体の明確に異なるパターンにより、これらの異なるタイプのα-Syn凝集体に対する本開示のUNS抗体の相対的感度を定量化することができた。
【0244】
これを調べるために、DLB及びPDの場合の各抗体について、細胞体内で検出された凝集体の割合を推定した。FIJIソフトウェアを使用して、細胞体内の凝集体は、それらのサイズと真円度に基づいて選択された。次いで、細胞体凝集体の平均パーセンテージ面積を、検出された総α-Synの割合として計算し、結果を
図24A~
図24D及び25A~
図25Dに示す。総α-Syn及び細胞体α-Synの面積のパーセンテージの差異は、組織の定性分析に基づいたα-Synの軸索凝集体(LN)に起因した。細胞体α-Syn検出の割合が減少すると、LN検出の増加をもたらす。この分析は、側頭皮質と島皮質の灰白質で行われたが、これは、これらの領域がLB及びLNのような病態の両方を示したためである。LNは非常にまばらであり、被殻と被膜全体に不均一に広がっていたため、この分析では大脳基底核のこれらの領域は選択しなかった。同様の相関が中脳の黒質で観察され(
図26A及び
図26B)、本開示のUNS抗体はDLB及びPDのNCL-L-ASYNと比較してより高いレベルのLNを検出した。しかしながら、LNとLBの複雑な形態により、同じ方法でこれらを確実に区別して定量化することはできなかった。
【0245】
図24A~
図24Dの結果は、各抗体によって検出された総α-Synのうち、細胞体内で検出された凝集体の割合がNCL-L-ASYNと比較してUNS抗体で減少したことを示す。これは、細胞体の封入体のLNに対する比率が減少し、LNのより高い割合がUNS抗体によって検出されたことを意味する。UNS抗体のうち、PD062205は、島皮質におけるLNの高い割合の検出においてDLBとPDの間で一貫していた(
図17A~
図17D及び18A~
図18D)。対照的に、すべてのα-Syn
126-135抗体は、DLB及びPD症例の側頭皮質灰白質におけるNCL-L-ASYNと比較して、より高い割合の細胞体凝集体を検出した(
図25A~
図25B)。
【0246】
f.α-Synの凝集は細胞型特異的である
α-Syn含有凝集体は、MSA、DLB、及びPDを含むシヌクレイノパチーの特徴的な病原性の特徴である。α-Syn凝集はシヌクレイノパチーの主な原因タンパク質であるが、凝集のパターンと凝集形成を起こしやすい細胞型は特定の疾患サブタイプ間で異なる。MSA、DLB、及びPDの臨床的特徴は、DLBとPDの両方における細胞体及びニューロンの浅海神経突起内へのα-Synの蓄積を説明するが、MSAでは主にグリア細胞及び希突起膠細胞内に見出される。
【0247】
細胞特異的なα-Syn凝集体に対するα-Syn126-135抗体の選択性を確立するために、PD062205とニューロン(HuD)または希突起膠細胞(Olig2)のいずれかのマーカーを使用して二重免疫蛍光法を実施した。
【0248】
図27A~
図27Cの結果は、PD062205によって検出されたα-Synが、MSAではなく、PD及びDLBの大脳基底核及び中脳(高病態領域)の神経細胞体内に共局在することを示す。希突起膠細胞のマーカー(Olig2)を使用すると、
図28A~
図28Cは、PDまたはDLではなくMSAでα-Synがグリア細胞内で凝集することを示す。これらの結果は、α-Syn
126-135抗体がこれらのシヌクレイノパチーの臨床的特徴と一致し、α-Synの病的凝集体に対するこれらの抗体の特異性を確認していることを示す。
【0249】
結果
a.免疫療法用の代表的なα-Syn126-135ペプチド免疫原コンストラクトを用いたモルモットの免疫に由来する抗体の定量分析
免疫療法のための新規抗α-Syn抗体の使用を調査するために、α-Synに対する各抗体の関連特異性の定量分析を3つのシヌクレイノパチー(MSA、DLB、及びPD)のヒトの症例における免疫組織化学(IHC)によって実施した。
【0250】
b.代表的なα-Syn
126-135ペプチド免疫原コンストラクトによるモルモットの免疫に由来する抗体は、α-Syn凝集体への結合において、市販の診断抗体よりも感度が高い
開示されるα-Syn
126-135抗体の相対的抗原性を調べるために、各抗体で検出されたα-Syn負荷を、シヌクレイノパチーの市販の診断抗体(NCL-L-ASYN)と比較した。最初に
図17A~
図Dから
図22A~
図22Cに示された結果の全体的なパターンを調べることにより、NCL-L-ASYNと比較して、α-Syn
126-135抗体によって検出されたα-Synの平均パーセンテージ面積における顕著な増加があることを見出すことができる。この傾向は、各脳領域及び疾患タイプ全体で一貫しており、開示されるα-Syn
126-135抗体は、NCL-L-ASYNよりも凝集したα-Synへの結合においてより高感度または選択的であることを示唆している。この研究では、試料サイズは比較的小さかった(n=3)が、データには明確な傾向がなおも見られる。α-Synに対する開示されるα-Syn
126-135抗体の特異性は、非罹患対照患者の脳の同じ脳領域で確認された。
図23A~
図23Bに示すこれらの結果は、NCL-L-ASYNを含む各抗体による免疫陽性染色がまったくないことを示している。これらのデータは、開示されるα-Syn
126-135抗体がα-Synの病的形態に特異的であることを示している。
【0251】
c.α-Syn126-135抗体を使用して検出されたより高いレベルのα-Synは、市販の抗体と比較した場合の感度と特異性の向上を示している
本開示のα-Syn126-135抗体は、NCL-L-ASYNと比較してより多くのα-Synを検出し、これは、開示される抗体がこれらのα-Syn凝集体のクリアランスを促進する免疫療法での使用により好ましいことを示す。
【0252】
免疫療法試薬として使用するための適切な抗体を選択する第1のステップは、一次α-Syn病変を有するヒト脳組織における標的抗原(α-Syn)に対する抗体の選択性を確立することである。異なるシヌクレイノパチーは、α-Syn凝集のメカニズム及び神経解剖学的パターン、ならびに凝集に対する特定の細胞型の脆弱性が異なる。
【0253】
一般的なシヌクレイノパチーの免疫療法としての試薬の使用を調査するために、異なる神経病理学を有する異なるシヌクレイノパチーにおけるα-Synに対するα-Syn
126-135抗体の選択性を評価することが重要である。PD、DLB、及びMSAの臨床的に確認された症例がこの目的のために選択された。PD及びDLBは認知症の2番目に一般的な形態であり、主にニューロン(LB及びLN)内のα-Synの蓄積によって引き起こされる。PDとは対照的に、アミロイドベータとtauの病理は、DLB2の神経変性に寄与することが知られている。α-Syn凝集の異なるパターンがMSAで見られ、凝集体はニューロンではなくグリア細胞内で主に形成される(
図27A~
図27C及び
図28A~
図28B)。さらに、α-Syn病理の進行は疾患タイプ間で異なり、中脳及び大脳基底核は初期病理の一般的な領域である。疾患のさまざまな段階で影響を受ける脳領域の各抗体の抗原性を調べることで、疾患の初期段階の治療にどの抗体がより効果的であるかについての洞察が得られる。
【0254】
d.α-Syn
126-135抗体(PD062220、PD062205、及びPD100806)は、PD、DLB、及びMSAのヒト脳組織におけるα-Synの病的凝集体に特異的に結合することができ(
図17A~
図Dから
図22A~
図22Cまで)、健康な対照におけるシヌクレインの病態をまったく検出しない(
図23A~
図23B)。
開示されるα-Syn
126-135抗体によるα-Synの検出は、臨床神経病理学に記載されているのと同じ細胞型特異性で達成された(
図27A~
図27B及び
図28A~
図28B)。重要なことに、開示されるα-Syn
126-135抗体は、すべての形態のヒトα-Synに対して同等の抗原性を示さなかった。
【0255】
PD062205及びPD100806の特異性は、大脳基底核でNCL-L-ASYNよりも大きな割合のLNを検出する各抗体の能力でさらに検証された(
図24A~
図24D)。これは、中脳でも視覚的に観察された(
図26A~
図26B)。まとめると、PD062205及びPD100806によって検出されるα-Synのパーセンテージ面積が高いことから、これらの結果は、開示されるα-Syn
126-135抗体によって検出される追加のα-Synが、これらの抗体のLNに対する特異性の増加に部分的に起因し得ることを示している。疾患の初期段階では、LNが大脳基底核におけるα-Syn凝集の主要な形態であるため、これらの結果は免疫療法に有益である。前臨床開発中のシヌクレイノパチーを治療するための他の試薬は、LNのIHC検出を提供しない。したがって、開示されるペプチド免疫原コンストラクト及びペプチド免疫原コンストラクトから生成されたα-Syn
126-135抗体は、他の市販製品と比較して独特の特性と特徴を有している。
【0256】
本研究では、罹患した脳領域のα-Syn凝集体の平均量を測定することにより、開示されるペプチド免疫原コンストラクトによって誘発されたα-Syn126-135抗体の感度を、IHCを使用して分析した。脳試料中のα-Synの平均パーセンテージ面積を定量化した本研究は、開示されるα-Syn126-135抗体が、市販の抗体と比較して、MSA、DLB、及びPDの疾患進行の早期にα-Syn検出に非常に高感度であることを実証している。
【0257】
この研究で見出されたより高い感度は、診断抗体であるNCL-L-ASYNよりも、開示される抗体のLNに対する特異性が高いことに起因する。これらの結果は、開示されるα-Syn126-135抗体は、シヌクレイノパチーにおけるα-Syn凝集体の抗体補助クリアランスの調査のための最も効果的な候補である可能性が高いことを示唆している。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ-シヌクレイン(α-Syn)ペプチド免疫原コンストラクトであって、
配列番号12~15、17及び49~64からなる群から選ばれるα-SynのC末端フラグメントからのアミノ酸残基を有するB細胞エピトープ;
配列番号81、83及び84からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有するTヘルパーエピトープ;及び
アミノ酸Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、及びε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)からなる群から選択される必要に応じた異種スペーサー;を有し、
前記B細胞エピトープが、前記Tヘルパー細胞エピトープと直接又は前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合する、上記α-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項2】
前記必要に応じた異種スペーサーが、(α,ε-N)Lysまたはε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号148)である、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項3】
前記Tヘルパーエピトープが、前記B細胞エピトープのアミノ末端に直接又は前記必要に応じた異種スペーサーを介して共有結合する、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項4】
式:(Th)m-(A)n-(α-SynのC末端フラグメント)-X;又は
式:(α-SynのC末端フラグメント)-(A)n-(Th)m-X
(式中、Thは前記Tヘルパーエピトープであり;
Aは前記異種スペーサーであり;
(α-SynのC末端フラグメント)は前記B細胞エピトープであり;
Xはアミノ酸のα-COOHまたはα-CONH2であり;
mは1から4であり;
nは1から10である)
を有する請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項5】
配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトを1つ以上有する組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のα-Synペプチド免疫原コンストラクトが配列番号112のアミノ酸配列、配列番号113のアミノ酸配列、又はその組み合わせを有する請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクト及び薬学的に許容される送達媒体及び/またはアジュバントを有する医薬組成物。
【請求項9】
a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記アジュバントが、Al(OH)3及びAlPO4からなる群から選択されるアルミニウムの無機塩である、
請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
a.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトが、配列番号107、108、111~113、及び115~147からなる群から選択され、
b.前記α-Synペプチド免疫原コンストラクトがCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されて、安定化した免疫刺激複合体を形成する、
請求項8又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原コンストラクトの前記B細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを有する組成物。
【請求項13】
a.配列番号112のB細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント;及び
b.配列番号113のB細胞エピトープに特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント;
の混合物を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
動物においてα-Synを認識する抗体を産生する方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原と送達媒体及び/またはアジュバントとを有する組成物を前記動物に投与することを有する、前記方法。
【請求項15】
動物におけるα-Syn凝集を阻害する方法であって、薬理学的に有効な量の請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原を前記動物に投与することを有する、前記方法。
【請求項16】
動物におけるα-Syn凝集体の量を低減する方法であって、薬理学的に有効な量の請求項1~5のいずれか一項に記載のα-Synペプチド免疫原を前記動物に投与することを有する、前記方法。
【請求項17】
生体試料中の異なるサイズのα-Syn凝集体を同定する方法であって、
a.生体試料を、請求項11に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに、前記抗体またはそのエピトープ結合フラグメントが前記α-Syn凝集体に結合することを可能にする条件下で曝露すること;及び
b.前記生体試料中の前記α-Syn凝集体に結合した前記抗体またはそのエピトープ結合断片の量を検出すること;
を有する、前記方法。