(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082020
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】水廻り部材及び水廻り部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20230606BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
E04F15/00 F
E04F15/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040493
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2021553408の分割
【原出願日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019198641
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019198644
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亮太
(72)【発明者】
【氏名】浅地 正博
(72)【発明者】
【氏名】揖斐 秀実
(72)【発明者】
【氏名】増川 功一
(72)【発明者】
【氏名】植田 真矢
(72)【発明者】
【氏名】信田 健太郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面の一部の色が薄く見えることを抑制できる水廻り部材及び水廻り部材の製造方法を提供する。
【解決手段】水廻り部材1は、水廻り基材3、水廻り基材3の表面30に密着した加飾フィルム4、を備える。水廻り基材3は、屈曲したコーナー部6を有する。コーナー部6の表面は、塗装されている。水廻り部材1の製造方法は、塗布工程と押圧工程と密着工程を備える。塗布工程では、水廻り基材3が有する屈曲したコーナー部6の表面が塗装される。押圧工程では、水廻り基材3の表面30に、加熱により軟化させた加飾フィルム4を押し当てる。密着工程では、真空圧空成形又は真空成形により加飾フィルム4を水廻り基材3の表面30に密着させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水廻り基材と、
前記水廻り基材の表面に密着した加飾フィルムと、を備え、
前記水廻り基材は、屈曲したコーナー部を有し、
前記コーナー部の表面は、塗装されている、
水廻り部材。
【請求項2】
前記水廻り基材は、
床部と、
前記床部の端縁部から立ち上がった立ち上がり部と、を有し、
前記コーナー部は、前記床部と前記立ち上がり部とがなす角部分を含む、
請求項1に記載の水廻り部材。
【請求項3】
前記コーナー部の前記表面には、着色プライマーが塗布されている、
請求項1又は2に記載の水廻り部材。
【請求項4】
前記着色プライマーは、前記加飾フィルムと同系色である、
請求項3に記載の水廻り部材。
【請求項5】
前記加飾フィルムは、前記コーナー部を覆う部分に前記加飾フィルムの他の部分よりも薄肉の伸び部を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の水廻り部材。
【請求項6】
前記伸び部は、前記他の部分よりも色が薄く、透光可能である、
請求項5に記載の水廻り部材。
【請求項7】
水廻り基材が有する屈曲したコーナー部の表面が塗装される塗布工程と、
前記水廻り基材の表面に、加熱により軟化させた加飾フィルムを押し当てる押圧工程と、
真空圧空成形又は真空成形により前記加飾フィルムを前記水廻り基材の前記表面に密着させる密着工程とを備える、
水廻り部材の製造方法。
【請求項8】
前記塗布工程では、前記コーナー部の前記表面に、着色プライマーが塗布される、
請求項7に記載の水廻り部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水廻り部材及び水廻り部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材と、基材の表面側に積層された表面材とを備える浴室用の洗い場床(例えば床パンなどの水廻り部材)が記載されている。表面材の表面には、滑り止め等のための凹凸が形成されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の洗い場床では、基材と表面材との積層構造を得るにあたって、それらを一体に熱間成型することによって相互に溶着固定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国公開特許公報2010-59652号
【発明の概要】
【0005】
本開示は、表面の一部の色が薄く見えることを抑制することができる水廻り部材及び水廻り部材の製造方法を提供することを、目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る水廻り部材は、水廻り基材と、前記水廻り基材の表面に密着した加飾フィルムと、を備える。前記水廻り基材は、屈曲したコーナー部を有する。前記コーナー部の表面は、塗装されている。
【0007】
本開示の一態様に係る水廻り部材の製造方法は、塗布工程と押圧工程と密着工程とを備える。前記塗布工程は、水廻り基材が有する屈曲したコーナー部の表面が、塗装される工程である。前記押圧工程は、前記水廻り基材の表面に、加熱により軟化させた加飾フィルムを押し当てる工程である。前記密着工程は、真空圧空成形又は真空成形により前記加飾フィルムを前記水廻り基材の前記表面に密着させる工程である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1の水廻り部材(床パン)を示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、
図1のA部分を拡大して示す斜視図であり、
図2Bは、同上の水廻り部材(床パン)を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3Aから
図3Dは、同上の水廻り部材(床パン)を製造する方法を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態2の水廻り部材(床パン)を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態3の水廻り部材(床パン)を示す概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態4の水廻り部材(床パン)の一部(
図1のA部分に対応する部分)を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の水廻り部材(床パン)を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の水廻り部材(床パン)の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
1.概要
図1、
図2A及び
図2Bに示す実施形態1の水廻り部材(床パン1)は、複数の凸部2を表面30に有する水廻り基材(床パン基材3)と、表面30に密着した加飾フィルム4と、を備える。加飾フィルム4は、直径が1μm以上30μm以下であり、かつ加飾フィルム4の他の部分よりも軟化温度が高い粒材5を有する。
【0010】
上記構成を備える実施形態1の水廻り部材(床パン1)では、粒材5によって加飾フィルム4の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に凹凸を形成しやすい。実施形態1の水廻り部材(床パン1)では、例えば、加飾フィルム4を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面30に密着させる場合に、加飾フィルム4の他の部分は軟化するものの、粒材5は軟化しない。そのため、実施形態1の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム4の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、粒材5による凹凸を形成しやすい。
【0011】
また、実施形態1の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、押圧工程と密着工程とを備える。押圧工程は、複数の凸部2を表面30に有する水廻り基材(床パン基材3)の表面30に、加熱により軟化させた加飾フィルム4を押し当てる工程である。密着工程は、真空圧空成形又は真空成形により加飾フィルム4を水廻り基材(床パン基材3)の表面30に密着させる工程である。加飾フィルム4は、直径が1μm以上30μm以下であり、かつ加飾フィルム4の他の部分よりも軟化温度が高い粒材5を有する。
【0012】
上記構成を備える実施形態1の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム4を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面30に密着させる際に、加飾フィルム4の他の部分は軟化するものの、粒材5は軟化しない。そのため、実施形態1の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム4の表面、つまり水廻り部材(床パン1)の表面に、粒材5による凹凸を形成しやすい。
【0013】
2.詳細
続いて、
図1、
図2A及び
図2Bに示す実施形態1の水廻り部材(床パン1)について更に詳しく説明する。以下では、
図1に示す前後方向、左右方向及び上下方向を用いて、各構成について詳しく説明する。
【0014】
なお、本実施の形態において水廻り部材は、浴室用の洗い場床に使用される床パン1を用いて詳細に説明する。
【0015】
2-1.水廻り基材(床パン基材)
床パン基材3は、複数の凸部2を上面に有する床部31と、床部31の端縁部から立ち上がった複数の立ち上がり部32と、を有する。複数の立ち上がり部32は、隣接する二つの立ち上がり部32が角をなすように連続している。
【0016】
本実施形態では、床部31は、上方から見て、矩形状である。複数の立ち上がり部32は、床部31の四つの端辺のそれぞれから立ち上がった四つの立ち上がり部32a,32b,32c,32dを有する。四つの立ち上がり部32a,32b,32c,32dは、上方から見て矩形枠状に連続しており、四つの角を形成している。
【0017】
立ち上がり部32aは、床部31の後側の端辺から立ち上がった部分であり、立ち上がり部32bは、床部31の前側の端辺から立ち上がった部分であり、立ち上がり部32c,32dは、床部31の左右の端辺から立ち上がった部分である。
【0018】
立ち上がり部32b,32c,32dは、形状が共通している。以下では、右側の立ち上がり部32dについて詳しく説明する。
図2Aに示すように、立ち上がり部32dは、床部31の端辺(詳しくは右側の端辺)から上方に突出した縦板部320と、縦板部320の上端から水平方向外側(詳しくは右側)に突出した横板部321とを有する。立ち上がり部32dは更に、横板部321の水平方向外側の端部(詳しくは右端部)から上方に突出した第二縦板部322を有する。
【0019】
後側の立ち上がり部32aは、床部31の後側の端辺から上方に突出した縦板部323と、縦板部323の上端から後側に突出した横板部324及び左右一対の傾斜板部325と、を有する。
【0020】
縦板部323の上端のうち左右両端部は、左右方向外側の部分ほど下方に位置するように傾いている。縦板部323の上端のうち左右両端部を除く残りの部分は、床部31に対して平行である。横板部324は、縦板部323の上端のうち、左右両端部を除く残りの部分から後方に突出している。左右一対の傾斜板部325は、縦板部323の上端のうち左右両端部から後方に突出している。左右一対の傾斜板部325は、左右方向外側の部分ほど下方に位置しており、横板部324に対して傾いている。左右一対の傾斜板部325は、横板部324の左右両端に連続している。
【0021】
右側の傾斜板部325は、右側の立ち上がり部32dの横板部321の後端部と連続している。左側の傾斜板部325は、左側の立ち上がり部32cの横板部321の後端部と連続している。
【0022】
四つの立ち上がり部32a,32b,32c,32dは、隣接する二つの縦板部同士(縦板部320,323又は縦板部320,320)が角を形成して連続している。
【0023】
複数の凸部2のそれぞれは、本実施形態では、扁平な直方体状である。複数の凸部2のそれぞれは、左右方向に対して平行な長手方向と、前後方向に対して平行な短手方向と、上下方向に対して平行な厚み方向と、を有する。複数の凸部2は、形状及び寸法が互いに同じである。複数の凸部2は、床部31の表面(上面)の全体にわたるように、左右方向及び前後方向に列をなして並んで、マトリクス状に配置されている。
【0024】
複数の凸部2のそれぞれは、上面20(突出方向の先端面)と側面21とを有する。上面20は、本実施形態では、上方から見て矩形状(詳しくは長方形)であり、側面21は、前後方向を向く一対の矩形状の面と、左右方向を向く一対の矩形状の面とを含む。
【0025】
床部31は、床部31の上面のうち複数の凸部2を除く部分である溝部33を有する。本実施形態では、溝部33は、上方から見て格子状である。複数の凸部2のそれぞれは、溝部33によって囲まれている。床部31の上面の外周部(端縁部)は、溝部33で構成されている。
【0026】
床パン基材3は、
図1に示すように、床部31の後端部の左右方向の中央部に位置する排水凹部34を更に有する。排水凹部34は、上方から見て矩形状の凹みである。排水凹部34は、中央に排水孔340が形成された平面視矩形状の底壁341と、底壁341の前側の端辺及び左右の端辺から上方に突出した三つの側壁342と、を有する。立ち上がり部32aの縦板部323のうち左右方向の中央部は、底壁341の後側の端辺から上方に突出している。三つの側壁342と立ち上がり部32aの縦板部323とは、隣接する部材同士が角をなして連続している。
【0027】
左右の側壁342のそれぞれは、上下方向の中央部に、底壁341の上面に対して平行な支持部343を有する。支持部343は、排水凹部34に着脱可能に取り付けられる蓋を支持する部分である。
【0028】
床パン基材3は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される樹脂成型品である。床パン基材3は、ガラス繊維を含有するSMC(Sheet Molding Compound)材料から形成されてもよいし、アクリル又はポリエステルなどを主成分として含む人工大理石で形成されてもよい。
【0029】
床パン基材3の表面30には、
図2Bに示すように、イソシアネート系のプライマーを塗布して形成されるプライマー層35が積層される。床パン基材3の表面30は、床部31の表面(上面)、四つの立ち上がり部32a,32b,32c,32dの表面、及び排水凹部34の表面を意味する。
【0030】
四つの立ち上がり部32a,32b,32c,32dの表面とは、前後の立ち上がり部32a,32bの上方を向く面と前後方向内側を向く面と、左右の立ち上がり部32c,32dの上方を向く面と左右方向内側を向く面とを意味する。排水凹部34の表面とは、底壁341の上面と、左右の側壁342の上方を向く面と左右方向内側を向く面と、前側の側壁342の後側を向く面とを意味する。
【0031】
2-2.加飾フィルム
加飾フィルム4は、真空圧空成形又は真空成形によって床パン基材3の表面30に密着される部材である。本実施形態では、加飾フィルム4は、熱可塑性を有するフィルム本体40を有する。粒材5は、フィルム本体40に混合し、フィルム本体40よりも軟化温度が高い。
【0032】
フィルム本体40は、その表面(つまり加飾フィルム4の表面)を構成する表面層41と、表面層41の裏側に位置するベース層42と、を含む。フィルム本体40は更に、表面層41とベース層42との間に位置する印刷層43と、ベース層42の裏側に位置する接着層44とを含む。
【0033】
表面層41は、例えば、透明なPMMA(Polymethyl methacrylate)で形成される。表面層41の厚みは、例えば、30μm以上100μm以下であり、本実施形態では、50μmである。表面層41は、透明なPMMAに限らず、フッ素が含有又はアロイされた透明なPMMAで形成されてもよいし、透明なPVC(polyvinyl chloride)で形成されてもよい。また、表面層41は、加飾されたPMMA、PVC、ABS(Acrylonitrile butadiene styrene)で形成されてもよい。表面層41には、表面層41の表面に凹凸が形成されるように、複数の粒材5が混合されて分散している。本実施形態では、表面層41のうち、床パン基材3の床部31を覆う部分にのみ、複数の粒材5が混合されており、複数の立ち上がり部32及び排水凹部34を覆う部分には、複数の粒材5が混合されていない。
【0034】
粒材5は、フィルム本体40を加熱により軟化させるときの加熱温度で熱変形しない、又は熱変形しにくい材料で形成される。粒材5は、例えば、シリカ等の無機系フィラーである。粒材5は、シリカに限らず、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機系フィラーであってもよいし、アクリル系フィラー、又は有機系フィラーであってもよい。また、粒材5は、上記の各種の粒材5の組み合わせであってもよい。
【0035】
粒材5の直径は、5μm以上30μm以下である。粒材5の直径が5μmより小さい場合には、加飾フィルム4のフィルム本体40の表面に表れる凹凸が小さくて、滑り止めの機能が十分に得ることができない。また、粒材5の直径が30μmより大きい場合には、加飾フィルム4のフィルム本体40の表面粗さが大きくなり過ぎて、肌触りが悪化する。表面層41に混合される粒材5の直径及び量は、表面層41の厚みや必要な滑り止め機能に応じて、適宜設定される。粒材5の直径が、上記範囲の場合、加飾フィルム4の表面、つまり床パン1の表面に滑り止め機能を付与できる他、床パン1の表面に疑似親水も発現させることができて、床パン1の表面の水はけ性の向上を図ることもできる。
【0036】
ベース層42は、例えば、硬質PVCで形成される。ベース層42の厚みは、例えば、50μm以上250μm以下であり、本実施形態では、110μmである。ベース層42は、硬質PVCに限らず、軟質PVCやABSで形成されてもよい。
【0037】
印刷層43は、加飾フィルム4の表面に柄や色を表示させるための層である。印刷層43の柄や色は、表面層41を透過して加飾フィルム4の表面側から見える。
【0038】
接着層44は、ベース層42の裏面に積層している。接着層44の厚みは、例えば、50μmである。接着層44は、加水分解しにくいPMMA系接着剤で形成される。接着層44は、PMMA系に限らず、エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系、変形シリコン系、又はポリエステル系の接着剤で形成されてもよい。
【0039】
上述した加飾フィルム4は、プライマー層35を介して床パン基材3の表面30に密着するように貼り合わされる。床パン基材3の表面30への加飾フィルム4の密着は、後述する真空圧空成形又は真空成形により行われる。
【0040】
3.水廻り部材(床パン)の製造方法
床パン1は、TOM(Three Demension Overlay Method)成形(言い換えると真空圧空成形)によって、加飾フィルム4を床パン基材3の表面30に密着させることで製造される。
【0041】
詳しくは、床パン1の製造方法は、塗布工程、設置工程、減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程を備える。
【0042】
床パン1は、例えば、
図3Aから
図3Cに示す成形機100を用いて真空圧空成形される。成形機100は、上チャンバー101、下チャンバー102、ヒーター103、台座104、昇降装置105、真空タンク、及び圧空タンクを備える。
【0043】
真空タンクは、上チャンバー101と下チャンバー102のそれぞれに接続されており、チャンバー101,102内をそれぞれ独立して真空状態まで減圧することができる。圧空タンクは、上チャンバー101に接続されており、上チャンバー101内を圧空することができる。
【0044】
上チャンバー101は、下チャンバー102との間に加飾フィルム4を挟み込む位置と、下チャンバー102から離れた位置との間で移動可能である。上チャンバー101は、下面が開口した箱型である。上チャンバー101内には、ヒーター103が設置されている。ヒーター103は、加飾フィルム4が軟化する温度まで、加飾フィルム4を加熱することができる。
【0045】
下チャンバー102は、上面が開口した箱型である。下チャンバー102内には、台座104が設置されており、台座104は昇降装置105によって上下に移動可能である。台座104上には、床パン基材3を水平方向に移動不可に支持する支持台106が載置される。
【0046】
続いて、床パン1の製造方法の各工程について詳しく説明する。
【0047】
塗布工程では、床パン基材3の表面30の全体に、プライマーを塗布してプライマー層35を形成する。
【0048】
次いで、設置工程では、
図3Aに示すように、下チャンバー102内の台座104上の支持台106の上に床パン基材3を設置し、下チャンバー102の上面の開口を塞ぐように、加飾フィルム4を下チャンバー102の上面に設置する。次いで、上チャンバー101を降下させて、上チャンバー101と下チャンバー102とで加飾フィルム4を挟み込む。このとき、チャンバー101,102内は密閉状態となる。
【0049】
次いで、減圧工程では、
図3Bに示すように、真空タンクによってチャンバー101,102内をそれぞれ減圧して真空状態とする。
【0050】
次いで、加熱工程では、ヒーター103によって、加飾フィルム4を加熱し、軟化させる。このとき、加飾フィルム4では、フィルム本体40が軟化するものの、複数の粒材5は軟化せず、フィルム本体40の表面に粒材5による凹凸が形成された状態を維持することができる。
【0051】
次いで、押圧工程では、
図3Cに示すように、昇降装置105によって台座104を上昇させて、床パン基材3の表面30に軟化した状態の加飾フィルム4を押し当てる。
【0052】
次いで、密着工程では、圧空タンクによって上チャンバー101内を圧空する。これにより、床パン基材3の表面30の全体に、軟化した状態の加飾フィルム4が押し当てられて、床パン基材3の表面30の形状に加飾フィルム4が変形し、加飾フィルム4が表面30に密着する。次いで、加飾フィルム4を冷却して硬化させる。
【0053】
次いで、離型工程では、上チャンバー101内及び下チャンバー102内をそれぞれ大気圧にし、上チャンバー101を上昇させて、支持台106から、加飾フィルム4が表面30に密着した床パン基材3を取り外す。
【0054】
次いで、切除工程では、
図3Dに示すように、加飾フィルム4のうち、床パン基材3の表面30からはみ出した部分を切除する。これにより、床パン1が形成される。
【0055】
上記の各工程を経て製造された床パン1では、床パン基材3の表面30の全体に加飾フィルム4が密着している。詳しくは、加飾フィルム4は、床パン基材3の床部31の表面の複数の凸部2のそれぞれの上面20及び側面21の全体に密着し、上面20及び側面21に沿って変形している。床パン基材3の表面30と加飾フィルム4との間には空気が介在しない。
【0056】
床パン1では、加飾フィルム4の表面に複数の粒材5による凹凸が形成されている。これにより、床パン1の底部の上面(床部31を覆う加飾フィルム4の上面)には、滑り止め機能が付与されている。粒材5は、TOM成形時の加飾フィルム4を加熱する加熱温度では軟化しない又は軟化しにくい部材であるため、床パン1の底部の上面に所望の大きさの凹凸を形成することができる。
【0057】
4.変形例
以上説明した本実施形態の床パン1及びその製造方法の変形例について説明する。
【0058】
床パン1は、TOM成形(真空圧空成形)に限らず、真空成形によって床パン基材3の表面30に加飾フィルム4が密着されたものであってもよい。この場合、床パン基材3には、床パン基材3の表面30から裏面にわたって貫通する貫通孔が設けられる。そして、床パン1の製造工程のうち、密着工程では、床パン基材3に設けた貫通孔を通じて、加飾フィルム4を床パン基材3側に真空引きする。これにより、加飾フィルム4は、床パン基材3の表面30に密着される。
【0059】
粒材5は、表面層41のみに限らず、表面層41とベース層42の両方に含まれていてもよいし、また、印刷層43にも含まれていてもよい。また、粒材5は、表面層41のうち床部31を覆う部分のみに限らず、表面層41の全体に含まれてもよい。
【0060】
粒材5は、フィルム本体40の軟化温度よりも高ければよく、中実に限らず、中空であってもよい。
【0061】
床パン基材3は、床部31と立ち上がり部32のうち、床部31のみを有してもよい。
【0062】
複数の凸部2は、形状及び寸法が互いに同じでなくてもよく、種々の形状や寸法のものが混在していてもよい。
【0063】
床パン1の製造方法は、上述した塗布工程、設置工程、減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程の全てを備えなくてもよく、例えば、床パン基材3の材質によっては、塗布工程は省略可能である。
【0064】
(実施形態2)
続いて、
図4に示す実施形態2の床パン1及びその製造方法について説明する。以下では、実施形態2の床パン1及びその製造方法について、実施形態1の床パン1及びその製造方法と共通する構成については図中に同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1の床パン1及びその製造方法とは異なる構成については詳しく説明する。
【0065】
実施形態2の床パン1では、加飾フィルム4は、熱可塑性を有するフィルム本体40と、フィルム本体40の表面に設けられた塗膜45と、を有する。塗膜45に粒材5が含まれている。粒材5の直径は、1μm以上30μm以下である。
【0066】
塗膜45は、例えばPMMAを主成分とする塗料で形成される。粒材5は、塗膜45を形成する塗料に含まれている。塗膜45は、複数の粒材5を含む塗料をフィルム本体40の表面層41の表面に塗布することで、フィルム本体40の表面に設けられる。
【0067】
塗膜45の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下である。本実施形態では、塗膜45の厚みは5μmであり、粒材5の直径は10μmである。塗膜45は、真空圧空成形又は真空成形時に伸びることができる。
【0068】
フィルム本体40の表面層41は、透明なPMMAで形成される。表面層41は、粒材5を含まない。
【0069】
続いて、本実施形態の床パン1の製造方法について詳しく説明する。
【0070】
本実施形態の製造方法では、設置工程において、フィルム本体40の表面に粒材5を含んだ塗膜45が設けられた加飾フィルム4を用いる。その他の工程については、実施形態1の床パン1の製造方法と同じである。
【0071】
以上説明した実施形態2の床パン1においても、実施形態1の床パン1と同様に、加飾フィルム4の表面に複数の粒材5による凹凸が形成されて、床パン1の底部の上面(床部31を覆う加飾フィルム4の上面)に、滑り止め機能を付与することができる。
【0072】
以上説明した実施形態2の床パン1及びその製造方法は、上述した実施形態1の床パン1及びその製造方法の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0073】
(実施形態3)
続いて、
図5に示す実施形態3の床パン1及びその製造方法について説明する。以下では、実施形態3の床パン1及びその製造方法について、実施形態1の床パン1及びその製造方法と共通する構成については図中に同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1の床パン1及びその製造方法とは異なる構成については詳しく説明する。
【0074】
実施形態3の床パン1では、加飾フィルム4は、熱可塑性を有するフィルム本体40と、フィルム本体40の表面に設けられた塗膜46と、を有する。塗膜46に粒材5が含まれている。粒材5の直径は、1μm以上30μm以下である。
【0075】
塗膜46は、例えばPMMAを主成分とする塗料で形成される。粒材5は、塗膜46を形成する塗料に含まれている。塗膜46は、真空成形又は真空圧空成形の後に、粒材5を含む塗料をフィルム本体40の表面層41の表面に塗布することで、フィルム本体40の表面に設けられる。
【0076】
塗膜46の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下である。本実施形態では、塗膜46の厚みは5μmであり、粒材5の直径は10μmである。塗膜46は、真空圧空成形又は真空成形後に、形成されるものであるため、真空圧空成形又は真空成形時に伸びる性質を有さなくてもよい。
【0077】
フィルム本体40の表面層41は、透明なPMMAで形成される。表面層41は、粒材5を含まない。
【0078】
続いて、本実施形態の床パン1の製造方法について詳しく説明する。
【0079】
本実施形態の製造方法は、押圧工程と、密着工程と、塗布工程と、を備える、押圧工程では、複数の凸部2を表面30に有する床パン基材3の表面30に、加熱により軟化させたフィルム本体40を押し当てる。密着工程では、真空圧空成形又は真空成形によりフィルム本体40を床パン基材3の表面30に密着させる。塗布工程では、床パン基材3に密着したフィルム本体40の表面に、直径が1μm以上30μm以下の粒材5を含む塗料を塗布する。
【0080】
詳しくは、本実施形態の製造方法は、実施形態1の製造方法の、塗布工程、設置工程、減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程に加えて、密着工程よりも後に行われる塗布工程(以下「第二塗布工程」という)を備える。
【0081】
本実施形態の製造方法では、設置工程において、表面に塗膜46が形成されていないフィルム本体40を用いる。減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程は、実施形態1の製造方法の各工程と同様の工程である。減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程においても、表面に塗膜46が形成されていないフィルム本体40を用いる。
【0082】
第二塗布工程は、例えば、切除工程の後に行う。第二塗布工程では、床パン基材3の表面30に密着し、表面30と同形状に変形したフィルム本体40の表面に、粒材5を含む塗料を塗布する。塗布した塗料を硬化させることで、フィルム本体40の表面に粒材5を含む塗膜46が形成される。これにより、本実施形態の床パン1が製造される。
【0083】
以上説明した実施形態3の床パン1においても、実施形態1の床パン1と同様に、加飾フィルム4の表面に複数の粒材5による凹凸が形成されて、床パン1の底部の上面(床部31を覆う加飾フィルム4の上面)に、滑り止め機能を付与することができる。また、複数の粒材5による凹凸によって床パン1の表面に疑似親水も発現させることができて、床パン1の表面の水はけ性の向上を図ることもできる。
【0084】
以上説明した実施形態3の床パン1及びその製造方法は、上述した実施形態1の床パン1及びその製造方法の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0085】
(実施形態4)
続いて、
図6及び
図7に示す実施形態4の床パン1及びその製造方法について説明する。以下では、実施形態4の床パン1及びその製造方法について、実施形態1の床パン1及びその製造方法と共通する構成については図中に同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1の床パン1及びその製造方法とは異なる構成については詳しく説明する。
【0086】
実施形態4の床パン1は、屈曲したコーナー部6を有する床パン基材3と、コーナー部6の表面に塗布された着色プライマー7と、床パン基材3の表面30に密着した加飾フィルム4と、を備える。加飾フィルム4は、コーナー部6を覆う部分に他の部分よりも薄肉の伸び部47を有する。伸び部47は、着色プライマー7を介してコーナー部6に密着している。
【0087】
実施形態4の床パン1の製造方法は、塗布工程、押圧工程、及び密着工程を備える。塗布工程は、屈曲したコーナー部6を有する床パン基材3のコーナー部6の表面に、着色プライマー7を塗布する工程である。押圧工程は、床パン基材3の表面30に、加熱により軟化させた加飾フィルム4を押し当てる工程である。密着工程は、真空圧空成形又は真空成形により加飾フィルム4を床パン基材3の表面30に密着させる工程である。加飾フィルム4は、密着工程において形成され、加飾フィルム4の他の部分よりも薄肉である伸び部47を有する。伸び部47は、着色プライマー7を介してコーナー部6に密着される。
【0088】
本実施形態の床パン1及びその製造方法では、加飾フィルム4の薄肉の伸び部47が着色プライマー7を介してコーナー部6に密着するため、コーナー部6と伸び部47との密着性の向上が図れる。また、本実施形態の床パンの製造方法では、伸び部47が透けても着色プライマー7が伸び部47の表面に表示されるため、床パン基材3の透け防止を図ることができる。
【0089】
以下では、本実施形態の床パン1及びその製造方法について更に詳しく説明する。
【0090】
床パン基材3は、コーナー部6として、床部31の四隅に位置する四つの第一コーナー部6aと、排水凹部34の底壁341の四隅に位置する四つの第二コーナー部6bとを有する。第一コーナー部6aは、四つの立ち上がり部32のうちの隣接する二つの立ち上がり部32と床部31とで囲んで形成される内隅部分である。第二コーナー部6bは、排水凹部34の三つの側壁342と後側の立ち上がり部32aのうちの隣接する二つの部材と底壁341とで囲んで形成される内隅部分である。
【0091】
本実施形態では、各コーナー部6の表面には、着色プライマー7が塗布されて着色プライマー層36が形成される。本実施形態では、着色プライマー層36は、四つの第一コーナー部6a及びその周辺部分と、四つの第二コーナー部6b及びその周辺部分のそれぞれの表面に、形成されている。
【0092】
着色プライマー7は、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、変形シリコン系などの合成樹脂プライマーに顔料等の着色剤を混ぜて、着色したものである。着色プライマー7の色は、加飾フィルム4のうち伸び部47を除いた他の部分の色と同系色である。着色プライマー7の色は、例えば、加飾フィルム4のうち伸び部47を除いた他の部分の色と同色、又は、コの他の部分の色に対して色調のみ異なる色である。着色プライマー7の色は、加飾フィルム4の伸び部47の表面に表示される色が、加飾フィルム4の他の部分と同色に見えるように、適宜選択可能である。なお、着色プライマー7の色は、加飾フィルム4の他の部分と同色に見えるような色であれば、無色に近い色であってもよい。
【0093】
着色プライマー層36は、床パン基材3のコーナー部6の表面に直接積層されてもよいし、コーナー部6の表面に積層されたプライマー層35の表面に積層されてもよい。
【0094】
本実施形態では、床パン基材3の表面30の全体に積層されたプライマー層35は、加飾フィルム4と同系色ではないプライマーで形成される。このプライマーは、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、変形シリコン系などの合成樹脂プライマーである。プライマー層35は、着色プライマー7で形成されてもよい。
【0095】
本実施形態では、加飾フィルム4は、加熱前の状態では、例えば矩形状の1枚のシートであり、全体にわたって厚みが一定である。加飾フィルム4は、加熱前の状態では、全体にわたって色が同じである。加飾フィルム4は、床パン基材3とは異なる色で形成されている。加飾フィルム4の色は、適宜設定可能であるが、例えば、茶色等の濃色である。
【0096】
加飾フィルム4は、加熱により軟化した状態において、真空圧空成形又は真空成形によって床パン基材3の表面30に密着されることで、コーナー部6を覆う部分に他の部分より薄肉の伸び部47が形成される。伸び部47は、四つの第一コーナー部6aのそれぞれを覆う部分と、四つの第二コーナー部6bのそれぞれを覆う部分とに形成される。
【0097】
伸び部47は、加飾フィルム4のうち伸び部47を除いた他の部分よりも色が薄く、本実施形態では、透光可能である。伸び部47を通じてその裏側の部分の色が伸び部47の表面に表示される。本実施形態では、コーナー部6及びその周辺部分に着色プライマー7が塗布されているため、伸び部47の表面には加飾フィルム4の他の部分の表面と略同じ色が表示される。これにより、加飾フィルム4の表面全体に、同じ色が表示される。
【0098】
続いて、本実施形態の床パン1の製造方法について説明する。
【0099】
本実施形態の製造方法は、実施形態1の製造方法と同様に、塗布工程、設置工程、減圧工程、加熱工程、押圧工程、密着工程、離型工程、及び切除工程を備える。
【0100】
塗布工程において、床パン基材3のコーナー部6及びその周辺部分の表面に、着色プライマー7を塗布して着色プライマー層36を形成する。本実施形態では、床部31の四隅の四つの第一コーナー部6a及びその周辺部分と、排水凹部34の四隅の四つの第二コーナー部6b及びその周辺部分のそれぞれに、着色プライマー7を塗布して着色プライマー層36を形成する。着色プライマー層36の形成は、床パン基材3の表面30の全体に、加飾フィルム4とは非同系色のプライマーを塗布してプライマー層35を形成したうえで行ってもよいし、コーナー部6に対してプライマー層35を介さずに直接形成してもよい。
【0101】
密着工程において、床パン基材3の表面30の全体に、軟化した状態の加飾フィルム4が押し当てられて、床パン基材3の表面30の形状に加飾フィルム4が変形し、加飾フィルム4が表面30に密着する。このとき、加飾フィルム4のうち、コーナー部6a,6bに密着する部分が延びて薄肉の伸び部47が形成される。
【0102】
上記の各工程を経て製造された床パン1では、床パン基材3の表面30の全体に加飾フィルム4が密着している。加飾フィルム4の複数の伸び部47のそれぞれの表面には、着色プライマー7の色が表示され、これにより、床パン1の表面全体には、同じ色が表示される。
【0103】
以上説明した実施形態4の床パン1及びその製造方法は、上述した実施形態1の床パン1及びその製造方法の変形例と適宜組み合わせ可能である。また、実施形態4の床パン1及びその製造方法は、実施形態2,3の床パン1及びその製造方法と組み合わせ可能である。
【0104】
また、床パン基材3は、屈曲したコーナー部6を有するものであればよく、立ち上がり部32を有さず、床部31と排水凹部34のみを有してもよい。また、床パン基材3は、床部31と立ち上がり部32とを有し、排水凹部34を有さなくてもよい。また、床パン基材3は、屈曲したコーナー部6を形成するその他の部分を有してもよい。
【0105】
排水凹部34は、平面視矩形状に限らず、平面視円形状等の、側壁342が角を形成して連続しない形状であってもよい。
【0106】
着色プライマー7は、
図8に示す床パン1の変形例のように、複数の立ち上がり部32のそれぞれと床部31とがなす角部分及びその周辺部分(つまり床部31の各端辺及びその周辺部分)に更に塗布されてもよい。そして、着色プライマー7は、排水凹部34の左右の側壁342の支持部343よりも上方の部分と支持部343とがなす角部分及びその周辺部分に更に塗布されてもよい。
【0107】
また、着色プライマー7は、排水凹部34の複数の側壁342のそれぞれと底壁341とがなす角部分及びその周辺部分(つまり底壁341の各端辺及びその周辺部分)に更に塗布されてもよい。つまり、着色プライマー7は、床パン基材3のうち、密着工程において加飾フィルム4に形成される伸び部47に対応する箇所の全体又はその一部に、塗布されてもよい。着色プライマー7は、床パン基材3の角部分(伸び部47に対応する箇所)に限らず、床パン基材3の表面30の全体に塗布されてもよい。
【0108】
着色プライマー7は、加飾フィルム4のうち伸び部47を除いた他の部分と同系色でなくてもよく、伸び部47の表面に表示される色が加飾フィルム4の他の部分の表面に表示される色と略同じとなるように、適宜選択可能である。
【0109】
床パン1は、プライマー層35を有さなくてもよく、この場合、加飾フィルム4のうち伸び部47を除いた残りの部分は、接着層44の接着力によって、床パン基材3の表面30に直接接着される。
【0110】
(まとめ)
以上説明した各実施形態及びその変形例のように、第一態様の水廻り部材(床パン1)は、下記の構成を備える。
【0111】
すなわち、第一態様の水廻り部材(床パン1)は、複数の凸部(2)を表面(30)に有する水廻り基材(床パン基材3)と、水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着した加飾フィルム(4)と、を備える。加飾フィルム(4)は、直径が1μm以上30μm以下であり、かつ加飾フィルム(4)の他の部分よりも軟化温度が高い粒材(5)を有する。
【0112】
上記構成を備える第一態様の水廻り部材(床パン1)では、粒材(5)によって加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に凹凸を形成しやすい。第一態様の水廻り部材(床パン1)では、例えば、加飾フィルム(4)を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる場合に、加飾フィルム(4)の他の部分は軟化するものの、粒材(5)は軟化しない。そのため、第一態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、粒材(5)による凹凸を形成しやすい。
【0113】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第二態様の水廻り部材(床パン1)は、第一態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0114】
すなわち、第二態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)は、熱可塑性を有するフィルム本体(40)を有する。粒材(5)は、フィルム本体(40)に混合し、フィルム本体(40)より軟化温度が高い。
【0115】
上記構成を備える第二態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる場合に、フィルム本体(40)は軟化するものの、粒材(5)は軟化しない。そのため、第二態様の床パン(1)では、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、粒材(5)による凹凸を形成しやすい。
【0116】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第三態様の水廻り部材(床パン1)は、第一態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0117】
すなわち、第三態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)は、熱可塑性を有するフィルム本体(40)と、フィルム本体(40)の表面に設けられた塗膜(45,46)と、を有する。粒材(5)は、塗膜(45,46)に含まれている。
【0118】
上記構成を備える第三態様の水廻り部材(床パン1)では、塗膜(45,46)に含まれる粒材(5)によって、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、凹凸を形成することができる。
【0119】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第四態様の水廻り部材(床パン1)は、第一から第三のいずれか一つの態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0120】
すなわち、第四態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)は、複数の凸部(2)のそれぞれの上面(20)及び側面(21)に密着して、複数の凸部(2)のそれぞれの上面(20)及び側面(21)に沿うように変形している。
【0121】
上記構成を備える第四態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、水廻り基材(床パン基材3)の複数の凸部(2)の形状が表れやすくて、複数の凸部(2)による滑り止め機能を発揮しやすい。
【0122】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第五態様の水廻り部材(床パン1)は、第二態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0123】
すなわち、第五態様の水廻り部材(床パン1)では、フィルム本体(40)は、フィルム本体(40)の表面を構成する表面層(41)と、表面層(41)の裏側に位置するベース層(42)と、を含む。粒材(5)は、表面層(41)に含まれている。
【0124】
上記構成を備える第五態様の水廻り部材(床パン1)では、フィルム本体(40)の表面に粒材(5)による凹凸を形成しやすく、また、フィルム本体(40)の表面に凹凸を形成するために必要な粒材(5)の量を抑えることができる。
【0125】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第六態様の水廻り部材(床パン1)は、第一から第五のいずれか一つの態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0126】
すなわち、第六態様の水廻り部材(床パン1)では、粒材(5)は、中実である。
【0127】
上記構成を備える第六態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる場合に、粒材(5)が潰れる等して加飾フィルム(4)の表面に形成される凹凸の大きさが小さくなることを防ぐことができる。そのため、第六態様の水廻り部材(床パン1)では、中実の粒材(5)によって加飾フィルム(4)の表面に意図した大きさの凹凸を形成しやすい。
【0128】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第七態様の水廻り部材(床パン1)は、第一から第六のいずれか一つの態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0129】
すなわち、第七態様の水廻り部材(床パン1)では、水廻り基材(床パン基材3)は、複数の凸部(2)を上面に有する床部(31)と、床部(31)の端縁部から立ち上がった立ち上がり部(32)と、を有する。加飾フィルム(4)は、床部(31)の上面と立ち上がり部(32)の表面のそれぞれに、密着している。
【0130】
上記構成を備える第七態様の水廻り部材(床パン1)では、水廻り基材(床パン基材3)のうち、床部(31)の表面に対応する部分だけでなく、立ち上がり部(32)の表面に対応する部分にも、粒材(5)による凹凸を形成することができる。
【0131】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第八態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、下記の構成を備える。
【0132】
すなわち、第八態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、押圧工程と密着工程とを備える。押圧工程は、複数の凸部(2)を表面(30)に有する水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に、加熱により軟化させた加飾フィルム(4)を押し当てる工程である。密着工程は、真空圧空成形又は真空成形により加飾フィルム(4)を水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる工程である。加飾フィルム(4)は、直径が1μm以上30μm以下であり、かつ加飾フィルム(4)の他の部分よりも軟化温度が高い粒材(5)を有する。
【0133】
上記構成を備える第八態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる際に、加飾フィルム(4)の他の部分は軟化するものの、粒材(5)は軟化しない。そのため、第六態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)の表面、つまり水廻り部材(床パン1)の表面に粒材(5)による凹凸を形成しやすい。
【0134】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第九態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、第八態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0135】
すなわち、第九態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、加飾フィルム(4)は、熱可塑性を有するフィルム本体(40)を有する。粒材(5)は、フィルム本体(40)に混合し、フィルム本体(40)よりも軟化温度が高い。
【0136】
上記構成を備える第九態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)を加熱して軟化させて水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる際に、フィルム本体(40)は軟化するものの、粒材(5)は軟化しない。そのため、第九態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、粒材(5)による凹凸を形成しやすい。
【0137】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、第八態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0138】
すなわち、第十態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)は、熱可塑性を有するフィルム本体(40)と、フィルム本体(40)の表面に設けられた塗膜(45)と、を有する。粒材(5)は、塗膜(45)に含まれている。
【0139】
上記構成を備える第十態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、塗膜(45)に含まれる粒材(5)によって、加飾フィルム(4)の表面、つまり、水廻り部材(床パン1)の表面に、凹凸を形成することができる。
【0140】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十一態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、下記の構成を備える。
【0141】
すなわち、第十一態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、押圧工程と密着工程と塗布工程とを備える。押圧工程は、複数の凸部(2)を表面(30)に有する水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に、加熱により軟化させたフィルム本体(40)を押し当てる工程である。密着工程は、真空圧空成形又は真空成形によりフィルム本体(40)を水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる工程である。塗布工程は、水廻り基材(床パン基材3)に密着したフィルム本体(40)の表面に、直径が1μm以上30μm以下の粒材(5)を含む塗料を塗布する工程である。
【0142】
上記構成を備える第十一態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、塗料に含まれる粒材(5)によって、フィルム本体(40)の表面、つまり水廻り部材(床パン1)の表面に粒材(5)による凹凸を形成することができる。
【0143】
(その他)
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十二態様の水廻り部材(床パン1)は、下記の構成を備える。
【0144】
すなわち、第十二態様の水廻り部材(床パン1)は、屈曲したコーナー部(6)を有する水廻り基材(床パン基材3)と、コーナー部(6)の表面に塗布された着色プライマー(7)と、水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着した加飾フィルム(4)と、を備える。加飾フィルム(4)は、コーナー部(6)を覆う部分に他の部分よりも薄肉の伸び部(47)を有する。伸び部(47)は、着色プライマー(7)を介してコーナー部(6)に密着している。
【0145】
上記構成を備える第十二態様の水廻り部材(床パン1)では、加飾フィルム(4)の薄肉の伸び部(47)が着色プライマー(7)を介してコーナー部(6)に密着するため、コーナー部(6)と伸び部(47)との密着性の向上が図れる。また、第十二態様の床パン(1)では、伸び部(47)が透けていても着色プライマー(7)の色が伸び部(47)の表面に表示されるため、水廻り基材(床パン基材3)の透け防止を図ることができる。
【0146】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十三態様の水廻り部材(床パン1)は、第十二態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0147】
すなわち、第十三態様の水廻り部材(床パン1)では、水廻り基材(床パン基材3)は、床部(31)と、床部(31)の端縁部から立ち上がった複数の立ち上がり部(32)と、を有する。コーナー部(6)は、複数の立ち上がり部(32)のうち隣接する二つの立ち上がり部(32)と床部(31)とで形成される角部分(第一コーナー部6a)を含む。この角部分に、着色プライマー(7)が塗布されている。
【0148】
上記構成を備える第十三態様の水廻り部材(床パン1)では、複数の立ち上がり部(32)のうち隣接する二つの立ち上がり部(32)と床部(31)とで形成される角部分において、伸び部(47)との密着性の向上や、水廻り基材(床パン基材3)の透け防止を図ることができる。
【0149】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十四態様の水廻り部材(床パン1)は、第十二又は第十三態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0150】
すなわち、第十四態様の水廻り部材(床パン1)では、水廻り基材(床パン基材3)は、排水孔(340)が設けられた排水凹部(34)を有する。排水凹部(34)は、底壁(341)と、底壁(341)の端縁部から立ち上がった複数の側壁(342)と、を含む。コーナー部(6)は、複数の側壁(342)のうち隣接する二つの側壁(342)と底壁(341)とで形成される角部分(第二コーナー部6b)を含む。この角部分に、着色プライマー(7)が塗布されている。
【0151】
上記構成を備える第十四態様の水廻り部材(床パン1)では、複数の側壁(342)のうち隣接する二つの側壁(342)と底壁(341)とで形成される角部分において、伸び部(47)との密着性の向上や、水廻り基材(床パン基材3)の透け防止を図ることができる。
【0152】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十五態様の水廻り部材(床パン1)は、第十二から第十四のいずれか一つの態様の水廻り部材(床パン1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0153】
すなわち、第十五態様の水廻り部材(床パン1)では、着色プライマー(7)は、加飾フィルム(4)のうち、伸び部(47)を除いた他の部分と同系色である。
【0154】
上記構成を備える第十五態様の水廻り部材(床パン1)では、伸び部(47)の表面に表示される色が、加飾フィルム(4)のうち伸び部(47)を除いた他の部分の表面に表示される色と同じとなりやすい。
【0155】
また、上述した各実施形態及びその変形例のように、第十六態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、下記の構成を備える。
【0156】
すなわち、第十六態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法は、塗布工程、押圧工程、及び密着工程を備える。塗布工程は、屈曲したコーナー部(6)を有する水廻り基材(床パン基材3)のコーナー部(6)の表面に、着色プライマー(7)を塗布する工程である。押圧工程は、水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に、加熱により軟化させた加飾フィルム(4)を押し当てる工程である。密着工程は、真空圧空成形又は真空成形により加飾フィルム(4)を水廻り基材(床パン基材3)の表面(30)に密着させる工程である。加飾フィルム(4)は、密着工程において形成され、加飾フィルム(4)の他の部分よりも薄肉である伸び部(47)を有する。伸び部(47)は、着色プライマー(7)を介してコーナー部(6)に密着される。
【0157】
上記構成を備える第十六態様の水廻り部材(床パン1)の製造方法では、加飾フィルム(4)の薄肉の伸び部(47)が着色プライマー(7)を介してコーナー部(6)に密着されるため、コーナー部(6)と伸び部(47)との密着性の向上が図れる。また、第十六態様の床パンの製造方法では、伸び部(47)が透けても着色プライマー(7)の色が伸び部(47)の表面に表示されるため、水廻り基材(床パン基材3)の透け防止を図ることができる。
【0158】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【0159】
以上説明した本開示においては、水廻り部材が床パンである場合について説明したが、水廻り部材は、床パンに限らず、例えば、浴室内の壁を形成する壁パネルや、キッチンに用いられる天板などであってもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 床パン
2 凸部
20 上面
21 側面
3 床パン基材
30 表面
31 床部
32 立ち上がり部
4 加飾フィルム
40 フィルム本体
41 表面層
42 ベース層
45 塗膜
46 塗膜
5 粒材