IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バークレー ライツ,インコーポレイテッドの特許一覧

特開2023-82046患者特異的抗癌治療剤の製造方法及びその治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082046
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】患者特異的抗癌治療剤の製造方法及びその治療方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0781 20100101AFI20230606BHJP
【FI】
C12N5/0781
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023046052
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021102173の分割
【原出願日】2017-01-13
(31)【優先権主張番号】62/279,341
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/411,690
(32)【優先日】2016-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/412,092
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514304762
【氏名又は名称】バークレー ライツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,ケヴィン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マーク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオフア
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ミンハ
(72)【発明者】
【氏名】スタッドラー,グイド ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ロー,ジュニア,ランドール ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グアン ラドストローム,シャオ
(72)【発明者】
【氏名】マキューエン,ジェイソン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ガン,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ジョージ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ラデル,ペギー エー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】研究調査に必要とされる時間を最小限に抑えてできる限り早く治療を始められるように、対象の患者に最大の利益を提供する抗体を同定する方法を提供する。
【解決手段】癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する単離されたB細胞を同定する方法であって、フロー領域と、複数のチャンバであって、それぞれのチャンバが、前記フロー領域に流体接続され、非掃引領域である分離領域を備える複数のチャンバと、を有するマイクロ流体デバイスに、患者から得られた固形腫瘍サンプル由来の解離細胞サンプルをロードすることと、少なくとも1つのB細胞を前記解離細胞サンプルから前記複数のチャンバの各チャンバに移動させることにより、少なくとも1つの単離されたB細胞を得ることと、癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することと、を含む方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.患者から得られた少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから解離細胞サンプルを提供することと、
b.少なくとも1つのフロー領域と前記フロー領域に流体接続された少なくとも1つの分離領域とを有するマイクロ流体デバイスに前記解離細胞サンプルをロードすることと、
c.少なくとも1つのB細胞を前記解離細胞サンプルから前記マイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域に移動させることにより少なくとも1つの単離されたB細胞を得ることと、
d.癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することと、
を含む、抗体治療剤の調製方法。
【請求項2】
前記分離領域が、B細胞リンパ球生存能を向上させる少なくとも1つの調整された表面を含み、前記調整された表面が、共有結合された分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離領域が、B細胞リンパ球生存能を向上させる複数の調整された表面を含み、各調整された表面が、共有結合された分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの調整された表面又は前記複数の各調整された表面が、共有結合された親水性分子の層を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記親水性分子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せの群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分離領域が、B細胞生存能を向上させるコーティング材料でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分離領域が、B細胞生存能を向上させるコーティング材料でそれぞれコーティングされた複数の表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング材料が親水性分子を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記親水性分子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せの群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、前記マイクロ流体デバイス内でデッドエンドを形成し、前記フロー領域が流動する第1の流体培地で実質的に充填されると共に前記分離領域が第2の流体培地で実質的に充填される場合、
a.前記第2の培地の成分が前記第1の培地中に拡散可能であると共に前記第1の培地の成分が前記第2の培地中に拡散可能であり、
b.前記フロー領域から前記分離領域内への前記第1の培地のフローが実質的にノーフローである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体デバイスの前記フロー領域がマイクロ流体チャネルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、対応する隔離チャンバの一部であり、且つ各隔離チャンバが、対応する分離領域を前記マイクロ流体チャネルに流体接続する接続領域を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接続領域が約20ミクロン~約60ミクロンの幅Wconを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、前記対応する接続領域の幅Wconよりも大きい幅Wisoを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、約50ミクロン~約250ミクロンの幅Wisoを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記隔離チャンバのそれぞれが、約0.5nl~約2.5nlの容積を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロ流体デバイスが、DEP構成を有する基板を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのB細胞を前記少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、DEP力を用いて前記少なくとも1つのB細胞を移動させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのB細胞が、重力及び/又は局在化流体フローを用いて前記少なくとも1つの分離領域内に移動される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項20】
前記解離細胞サンプルをロードする前に、前記解離細胞サンプル中のB細胞を検出可能マーカーで標識することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのB細胞を前記少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、移動させる少なくとも1つのB細胞を前記検出可能マーカーの検出に基づいて選択することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのB細胞を少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、複数の個別B細胞を対応する複数の個別分離領域内に移動させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのB細胞とB細胞活性化を刺激する刺激剤とを接触させること
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項24】
前記刺激剤がCD40アゴニストを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記CD40アゴニストがCD40L、その誘導体、又は抗CD40抗体を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記刺激剤が1つ以上のCD40L+支持細胞を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のCD40L+支持細胞がT細胞又はその誘導体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記刺激剤がトール様受容体(TLR)アゴニストを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記TLRアゴニストがCpGオリゴヌクレオチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのB細胞が1~10日間にわたり前記刺激剤に接触される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのB細胞が1~10日間にわたり前記刺激剤に実質的に連続的に接触される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
培養培地を前記少なくとも1つのB細胞に提供すること
を更に含み、前記培養培地が、B細胞増殖を促進する1つ以上の成長誘導剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の成長誘導剤が、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-21、及びBAFFの群から選択される少なくとも1つの作用剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記提供された培養培地が前記刺激剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのB細胞に1~10日間にわたり培養培地が提供される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つのB細胞の各B細胞が、約8~20細胞の細胞数まで前記マイクロ流体デバイスの分離領域で培養される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのB細胞と前記刺激剤とを接触させるステップ及び培養培地を前記少なくとも1つのB細胞に提供するステップが、実質的に同一の時間にわたり行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのB細胞と前記刺激剤とを接触させることが、前記解離細胞サンプルを前記マイクロ流体デバイス内にロードする少なくとも前に行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つのB細胞と前記刺激剤とを接触させることが、前記少なくとも1つのB細胞を前記少なくとも1つの分離領域内に移動させた少なくとも後に行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つのB細胞と前記刺激剤とを接触させることが、前記癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する前記少なくとも1つの単離されたB細胞を同定するステップの少なくとも間に行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する前記少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することが、前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項42】
前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することが、前記癌細胞関連抗原を含む流体培地を前記マイクロ流体デバイス内に導入することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌細胞関連抗原が前記流体培地中に可溶化される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することが、前記癌細胞関連抗原を含む微小物体を前記マイクロ流体デバイス内に導入することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記微小物体が、細胞、リポソーム、脂質ナノラフト、及びビーズから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記微小物体がビーズであり、且つ前記癌細胞関連抗原が前記ビーズにコンジュゲートされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記癌細胞関連抗原が、前記少なくとも1つの腫瘍サンプル中に存在する癌細胞の細胞表面上に存在する膜関連抗原である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ビーズにコンジュゲートされた前記癌細胞関連抗原が、前記少なくとも1つの腫瘍サンプルから単離された癌細胞から得られる細胞膜調製物に由来する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記微小物体が癌細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記癌細胞が、前記患者の少なくとも1つの腫瘍サンプルの癌細胞により提示されるマーカーを呈する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記癌細胞が前記少なくとも1つの腫瘍サンプルから単離される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記癌細胞が、異なる患者から得られた1つ以上の腫瘍サンプルから単離される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの固形腫瘍サンプルが得られた前記患者及び前記異なる患者が、同一のタイプの癌と診断されている、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記癌細胞が癌細胞株に由来する、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することが、
前記癌細胞関連抗原を含む微小物体を含有する流体培地を前記マイクロ流体デバイスの前記フロー領域に通して流動させることと、
前記培地中の前記微小物体の少なくとも幾つかが、前記少なくとも1つの分離領域に近接する前記フロー領域の一部に位置決めされたとき、前記流体培地のフローを停止することと、
を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することが、前記微小物体の少なくとも1つを前記マイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域内に移動させることを更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの微小物体を前記マイクロ流体デバイスの前記少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、少なくとも1つの微小物体を複数の分離領域に移動させることを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つの微小物体を、少なくとも1つのB細胞を含有する少なくとも1つの分離領域内に移動させることにより、少なくとも1つの微小物体と少なくとも1つのB細胞とを有する少なくとも1つの分離領域を生成する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つ微小物体及び前記少なくとも1つのB細胞が、異なる分離領域内に移動される、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記異なる分離領域が前記マイクロ流体デバイス内で互いに隣接する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する前記少なくとも1つの単離されたB細胞を同定するこが、
標識された抗体結合剤を含有する流体培地を前記マイクロ流体デバイスの前記フロー領域に通して流動させることと、
前記流体培地中の前記標識された抗体結合剤の少なくとも幾つかが、前記少なくとも1つの分離領域に近接する前記フロー領域の一部に位置決めされたとき、前記流体培地のフローを停止することと、
前記癌細胞関連抗原への前記標識された抗体結合剤の結合を監視することと、
を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項62】
前記標識された抗体結合剤が、標識された抗IgG抗体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記標識された抗体結合剤が蛍光標識に共有結合されている、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記標識された抗体結合剤が前記癌細胞関連抗原との混合物で提供される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記標識された抗体結合剤が、前記癌細胞関連抗原を提供した後に提供される請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記癌細胞関連抗原への前記標識された抗体結合剤の結合を監視することが、前記マイクロ流体デバイスの撮像を行うことを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記撮像が蛍光撮像を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記撮像が複数の像を取り込むことを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記複数の像が一定の時間間隔で取り込まれる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記解離細胞サンプルが1つの固形腫瘍サンプルから得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項71】
前記解離細胞サンプルが複数の固形腫瘍サンプルから得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項72】
解離細胞サンプルを提供することが、前記少なくとも1つの固形腫瘍サンプルを得ることと、前記少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから単一細胞を解離することとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項73】
前記解離細胞サンプルの個別細胞が、
a.コラゲナーゼ+DNase消化、及び/又は
b.細胞ディソシエータ装置
により前記少なくとも1つの腫瘍サンプルから解離される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項74】
前記解離細胞サンプルをロードする前に、
前記解離細胞サンプルを分画して元の解離サンプルよりも大きい濃度のB細胞を有するB細胞富化画分を単離することと、
前記B細胞富化画分を前記マイクロ流体デバイス内にロードすることと、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項75】
前記分画することが、CD19、CD20、IgM、IgD、CD38、CD27、CD138、PNA、及びGL7から選択される少なくとも1つのマーカーを用いて前記解離細胞サンプルからB細胞を選択することを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記解離細胞サンプル又は前記B細胞富化画分を前記マイクロ流体デバイス内にロードする前に、前記解離細胞サンプル中の癌細胞を検出可能マーカーで標識することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項77】
前記解離細胞サンプルをロードする前に、
前記解離細胞サンプルを分画して元の解離サンプルよりも大きい濃度の癌細胞を有する癌細胞富化画分を単離することと、
前記癌細胞富化画分を前記マイクロ流体デバイス内にロードすることと、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも1つの分離領域内に移動させる少なくとも1つの癌細胞を選択することを更に含む、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
少なくとも1つの分離領域内に移動させる少なくとも1つの癌細胞を選択することを更に含み、且つ前記少なくとも1つの癌細胞が、前記検出可能マーカーの検出に基づいて選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記B細胞を前記マイクロ流体デバイス内にロードし、前記分離領域内に移動させる前に、前記少なくとも1つの癌細胞を前記マイクロ流体デバイス内にロードし、前記マイクロ流体デバイスの前記分離領域内に移動させる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記B細胞を前記マイクロ流体デバイス内にロードし、前記分離領域内に移動させた後、前記癌細胞富化画分を前記マイクロ流体デバイスの前記フロー領域内にロードする、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記癌細胞が前記分離領域に進入しない、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記癌細胞が前記癌に特異的な少なくとも1つのマーカーを用いて富化される、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記癌細胞が形態学的差を用いて富化される、請求項77に記載の方法。
【請求項85】
前記癌細胞が、前記癌細胞から正常細胞を単離するために癌細胞でダウンレギュレートされる少なくとも1つのマーカーを用いて富化される、請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記B細胞が、FACSを用いて前記解離細胞サンプルを処理することにより富化される、請求項74に記載の方法。
【請求項87】
前記B細胞が、磁気ビーズベースの選別を用いて前記解離細胞サンプルを処理することにより富化される、請求項74に記載の方法。
【請求項88】
前記固形腫瘍サンプルが腫瘍生検物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項89】
前記少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した腫瘍が三次リンパ様構造を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項90】
前記少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した腫瘍が、乳癌、泌尿生殖器癌、腎細胞癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、頸癌、神経系癌、神経芽腫、腸癌、結腸直腸癌、肺癌、又は黒色腫である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項91】
前記少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した前記腫瘍が髄様乳癌である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した前記腫瘍が中皮腫である、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記マイクロ流体デバイスから前記少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するクローンB細胞集団を搬出すること
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項94】
各同定されたB細胞又はそれに由来するクローンB細胞集団が個別に搬出される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するB細胞のクローン集団の一部若しくは全部で抗体シーケンシングを行うこと
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項96】
抗体シーケンシングを行うことが、前記少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するB細胞の前記クローン集団の一部若しくは全部から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの抗体配列を決定することを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記少なくとも1つの同定されたB細胞から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの配列の一部又は全部を含む抗体治療剤を生成することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項98】
T細胞又はNK細胞が前記解離細胞サンプル中に存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項99】
元の解離サンプルよりも大きい濃度のT細胞又はNK細胞を有する画分を単離するように前記解離細胞サンプルで選択を行うことを更に含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記T細胞又はNK細胞が同一の患者の固形腫瘍サンプルから得られる、請求項98に記載の方法
【請求項101】
a.前記T細胞が、CD4、CD8、CD25、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD69、及びCD3から選択される少なくとも1つのマーカーを用いて前記解離細胞サンプルから分離されるか、又は
b.前記NK細胞が、CD56をマーカーとして用いて前記解離細胞サンプルから分離される、
請求項99に記載の方法。
【請求項102】
個別のT細胞又はNK細胞が前記患者から選択及びクローニングされる、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記患者の癌細胞及び他の供給源由来の癌細胞の両方に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つのB細胞を同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項104】
前記B細胞により産生された抗体が非癌細胞に結合可能であるかを同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項105】
前記非癌細胞及び前記癌細胞が、前記少なくとも1つの腫瘍サンプルを提供した前記患者に由来する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
癌細胞及び非癌細胞への前記抗体の結合を同定するために同一のマイクロ流体デバイスが使用される、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記癌細胞及び非癌細胞が同一の流路に逐次的にロードされる、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
癌を有する患者の治療方法であって、請求項1又は2に記載の方法により産生された抗体又はそのフラグメントを用いて前記患者を治療することを含む方法。
【請求項109】
腫瘍サンプルが、治療される同一の患者から採取される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記腫瘍サンプルの取得から治療までの時間が多くとも約2ヵ月である、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
前記抗体又はそのフラグメントが一本鎖抗体である、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
前記抗体又はそのフラグメントが2本の重鎖と2本の軽鎖とを有する、請求項108に記載の方法。
【請求項113】
前記抗体が工学操作T細胞又はNK細胞上に提示される、請求項108に記載の方法。
【請求項114】
前記工学操作T細胞がキメラ抗原受容体T細胞であるか、又は前記工学操作NK細胞がキメラ抗原受容体NK細胞である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記T細胞又はNK細胞が、前記抗体を提示するように工学操作される前に同一の患者から得られたものである、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
前記T細胞又はNK細胞が前記患者の腫瘍サンプルから得られたものである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記抗体又はそのフラグメントが他の療法と組み合わせて投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項118】
前記組合せ療法が、手術、放射線療法、化学療法、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、T細胞療法、他の免疫療法、又は免疫刺激分子若しくは腫瘍特異的ウイルスの投与である、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
患者において癌を標識又は検出する方法であって、検出可能標識にコンジュゲートされた抗体又はそのフラグメントを投与することを含み、前記抗体又はそのフラグメントが請求項1又は2に記載の方法により産生される、方法。
【請求項120】
a.請求項1又は2に記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖CDR、
b.請求項1又は2に記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖のCDR、
c.請求項1又は2に記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖可変領域、又は
d.請求項1又は2に記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖の可変領域、
を含む、工学操作抗体構築物。
【請求項121】
請求項1又は2に記載の方法により同定された抗体の変異体である、工学操作抗体構築物。
【請求項122】
前記構築物が、Fab、Fab’(2)、scFv、多価scFv、ミニボディー、二重特異的抗体、又はラクダ機能性重鎖可変ドメインである、請求項120に記載の工学操作抗体構築物。
【請求項123】
外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作T細胞又はNK細胞であって、前記抗体又はそのフラグメントが請求項1又は2に記載の方法により同定される、工学操作T細胞又はNK細胞。
【請求項124】
前記T細胞又はNK細胞及び前記抗体又はそのフラグメントが同一の患者から得られたものである、請求項123に記載の工学操作T細胞又はNK細胞。
【請求項125】
外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作T細胞の調製方法であって、
a.腫瘍サンプルに結合する抗体を請求項1又は2に記載の方法により同定することと、
b.前記抗体又はそのフラグメントを発現するようにT細胞を遺伝子工学操作することと、
を含む方法。
【請求項126】
前記T細胞、前記抗体を発現するB細胞、及び前記腫瘍サンプルが同一の患者から得られたものである、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作NK細胞の調製方法であって、
a.腫瘍サンプルに結合する抗体を請求項1又は2に記載の方法により同定することと、
b.前記抗体又はそのフラグメントを発現するようにNK細胞を遺伝子工学操作することと、
を含む方法。
【請求項128】
前記NK細胞、前記抗体を発現するB細胞、及び前記腫瘍サンプルが同一の患者から得られたものである、請求項127に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の規定により2016年1月15日出願の米国仮特許出願第62/279,341号、2016年10月23日出願の米国仮特許出願第62/411,690号、及び2016年10月24日出願の米国仮特許出願第62/412,092号(それらの開示はそれぞれその全体が参照により本明細書に援用される)に基づく利益を主張する非仮出願である。
【0002】
分野
癌特異的抗体を産生するB細胞の単離方法更にはそうした抗体及び/又はその誘導体を用いた治療方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
免疫療法は、患者自身の免疫系を用いて癌との闘いを支援する急成長中の分野である。患者自身の免疫系の刺激による癌細胞の攻撃又は外部源からの免疫系成分の投与をはじめとする様々な免疫療法ストラテジーが評価されてきた。例えば、生体内で癌細胞を攻撃するように設計されたモノクローナル抗体は、単独で又は遺伝子工学操作構築物として投与されてきた。そのほか、CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法が研究されてきた。この治療方法では、遺伝子工学操作T細胞は、その表面上に抗体含有融合タンパク質を発現することにより、T細胞が対象の癌を標的としてT細胞が癌細胞を死滅させる。CAR-T細胞は患者の体内に永久移植された状態になり得るので、この方法は特に有望と思われる。しかし、これらの方法は依然として更なる改善を必要とする。
【0004】
モノクローナル抗体療法又はCAR-T療法の主要な問題の1つは、治療が開始可能になる前又は有意な罹患及び死亡の回避が治療の成功に必要とされる前に患者が非常に短い時間ウィンドウを有する可能性があることに留意して、対象の患者に最大の利益を提供する抗体を同定又は設計することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、研究調査に必要とされる時間を最小限に抑えてできる限り早く治療を始められるように、対象の患者に最大の利益を提供する抗体を同定する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書によれば、抗体治療剤の調製方法は、
a)患者から得られた少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから解離細胞サンプルを提供することと、
b)少なくとも1つの分離領域を有するマイクロ流体デバイスに解離細胞サンプルをロードすることと、
c)少なくとも1つのB細胞を解離細胞サンプルからマイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域に移動させることにより少なくとも1つの単離されたB細胞を得ることと、
d)癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することと、
を含む。
【0007】
本方法及び本明細書に記載の他の方法は、幾つかの実施形態では患者が罹患しているタイプの癌を標的とするために患者自身の生体が産生したB細胞を同定する利点を提供する。マイクロ流体デバイスを用いてこうした抗体を単離することにより、複数のB細胞を比較的迅速なアッセイ方式で並行して検査可能であると共に対象の特定のB細胞の同定、培養、及びシーケンシングが可能である(又はハイブリドーマの産生に使用可能である)。これにより研究者による患者特異的抗癌抗体の産生が可能になり、こうした抗体をモノクローナル抗体若しくはそのフラグメント又は遺伝子工学操作構築物として、例えば、融合タンパク質又はCAR-T治療剤として投与したり検出方法等に使用したりすることが可能になる。
【0008】
そのほかの実施形態は、本明細書の方法により産生された抗体又はそのフラグメントを用いて患者を治療することを含む癌を有する患者の治療方法を含む。検出可能な標識にコンジュゲートされた抗体又はそのフラグメントを用いて患者の癌を標識又は検出することも可能である。治療用組成物として、表面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作T細胞、更には本明細書に明記された抗体の少なくとも重鎖CDR、少なくとも重鎖及び軽鎖のCDR、少なくとも重鎖可変領域、又は少なくとも重鎖及び軽鎖の可変領域を含む工学操作抗体構築物を提供し得る。
【0009】
そのほかの目的及び利点は、部分的には以下の説明に示され、部分的にはその説明から明らかであろう。又は、実施すれば分かり得る。目的及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘された要素及び組合せにより実現及び達成されるであろう。
【0010】
以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、例示的且つ解説的なものにすぎず、特許請求の範囲を制限するものではないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、1つ(幾つか)の実施形態を例示し、本記載内容と合わせて本明細書に記載の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】幾つかの実施形態による関連する制御機器を含めてマイクロ流体デバイス及びマイクロ流体デバイス用システムの例を示す。
図1B】幾つかの実施形態によるマイクロ流体デバイスの垂直断面図を示す。
図1C】幾つかの実施形態によるマイクロ流体デバイスの水平断面図を示す。
図2A】幾つかの実施形態による分離ペンを有するマイクロ流体デバイスの垂直断面図を示す。
図2B】幾つかの実施形態による分離ペンを有するマイクロ流体デバイスの水平断面図を示す。
図2C】幾つかの実施形態による隔離チャンバの詳細水平断面図を示す。
図2D】幾つかの実施形態による分離ペンを有するマイクロ流体デバイスの部分水平断面図を示す。
図2E】幾つかの実施形態による隔離チャンバの詳細水平断面図を示す。
図2F】幾つかの実施形態による隔離チャンバの詳細水平断面図を示す。
図2G】実施形態による各フローチャネルが複数の隔離チャンバに流体接続された複数のフローチャネルを含有するフロー領域を有するマイクロ流体デバイスを示す。
図2H】幾つかの実施形態による基部の内向き表面及びカバーの内向き表面が調整された表面であるマイクロ流体デバイスの部分垂直断面図を示す。
図3A】幾つかの実施形態によるマイクロ流体デバイスに作動結合するように構成されたシステムネスト及び関連する制御機器の具体例を示す。
図3B】幾つかの実施形態によるマイクロ流体デバイスを制御するためのシステムの光学縦列を示す。
図4】幾つかの実施形態による癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体を発現するB細胞リンパ球を同定するための例示的なワークフローのステップを示す。
図5A】複数の隔離チャンバにそれぞれ流体接続された複数のマイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体デバイスを示す。各隔離チャンバは、複数のマウス脾細胞を含有する。マイクロチャネルデバイスの一部の明視野像である。
図5B】複数の隔離チャンバにそれぞれ流体接続された複数のマイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体デバイスを示す。各隔離チャンバは、複数のマウス脾細胞を含有する。テキサスレッドフィルターを用いて得られた蛍光像である。像は、実施例1に記載の抗原特異性アッセイの開始5分後に得た。
図5C】複数の隔離チャンバにそれぞれ流体接続された複数のマイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体デバイスを示す。各隔離チャンバは、複数のマウス脾細胞を含有する。テキサスレッドフィルターを用いて得られた蛍光像である。像は、実施例1に記載の抗原特異性アッセイの開始20分後に得た。白矢印は、アッセイで陽性シグナルを生成した隔離チャンバを指している。
図6】ジャーカット細胞の各種画分のウェスタンブロットを示す。
図7】抗CD3抗体、抗CD45抗体、又は抗Na/K-ATPアーゼ抗体で染色されたジャーカット細胞膜画分でコーティングされたビーズを示す。
図8図7と同一の抗体で染色されたHEK293細胞でコーティングされたビーズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の詳細な説明
I.定義
本明細書には、本発明の例示的な実施形態及び適用が記載されている。しかし、本発明は、これらの例示的な実施形態及び適用にも、例示的な実施形態及び適用を行う方式やそれについての本明細書に記載の方式にも、限定されるものではない。更に、図は、簡略図又は部分図を示し得ると共に、図中の要素の寸法は、誇張されたりさもなければ比例していなかったりし得る。そのほか、「~上」、「~に付着される」、「~に接続される」、「~に結合される」という用語又は類似語が本明細書で使用される場合、一方の要素が直接他方の要素上にあるか、それに付着されるか、それに接続されるか、若しくはそれに結合されるか、又は一方の要素と他方の要素との間に1つ以上の介在要素があるかにかかわらず、一方の要素(例えば、材料、層、基板等)は、他方の要素「上」にあるか、それ「に付着される」か、それ「に接続される」か、又はそれ「に結合される」。また、文脈上特に規定されない限り、方向(例えば、上、下、頂、底、側、上向き、下向き、下方、上方、上側、下側、水平、垂直、「x」、「y」、「z」等)は、提供された場合、相対的なものであり、単なる例として説明及び考察が容易になるように提供されたものであり、限定を目的としたものではない。そのほか、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)が参照された場合、かかる参照は、列挙された要素のいずれか1つだけ、列挙された要素の全てに満たない任意の組合せ、及び/又は列挙された要素の全ての組合せを含むことが意図される。本明細書でのセクション分割は、概説を容易にすることのみを目的としたものであり、考察される要素のいずれの組合せにも限定されるものではない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「実質的に」とは、意図された目的で機能するのに十分であることを意味する。そのため、「実質的に」という用語は、当業者により予想されるような、ただし、全体性能にそれほど影響を及ぼさない、絶対的又は完全な状態、寸法、測定、結果等からのわずかな有意でない変動を許容する。数値又は数値として表現可能なパラメータ若しくは特性に対して用いられる場合、「実質的に」とは10パーセント以内を意味する。
【0015】
「ones(もの)」という用語は2つ以上を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上であり得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「配置される」という用語は、その意味内に「位置決めされる」を包含する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「マイクロ流体デバイス」又は「マイクロ流体装置」とは、流体を保持するように構成された1つ以上の離散マイクロ流体回路(各マイクロ流体回路は、限定されるものではないが、領域、流路、チャネル、チャンバ、及び/又はペンをはじめとする相互接続回路要素を含む)と、マイクロ流体デバイスに対して流体(及び任意選択的に流体中に懸濁された微小物体)の流入及び/又は流出を可能にするように構成された少なくとも2つのポートとを含むデバイスのことである。典型的には、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体回路は、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルと少なくとも1つのチャンバとを含み、約1mL未満、例えば、約750μL未満、約500μL未満、約250μL未満、約200μL未満、約150μL未満、約100μL未満、約75μL未満、約50μL未満、約25μL未満、約20μL未満、約15μL未満、約10μL未満、約9μL未満、約8μL未満、約7μL未満、約6μL未満、約5μL未満、約4μL未満、約3μL未満、又は約2μL未満の体積の流体を保持するであろう。特定の実施形態では、マイクロ流体回路は、約1~2μL、約1~3μL、約1~4μL、約1~5μL、約2~5μL、約2~8μL、約2~10μL、約2~12μL、約2~15μL、約2~20μL、約5~20μL、約5~30μL、約5~40μL、約5~50μL、約10~50μL、約10~75μL、約10~100μL、約20~100μL、約20~150μL、約20~200μL、約50~200μL、約50~250μL、又は約50~300μLを保持する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ナノ流体デバイス」又は「ナノ流体装置」とは、約1μL未満、例えば、約750nL未満、約500nL未満、約250nL未満、約200nL未満、約150nL未満、約100nL未満、約75nL未満、約50nL未満、約25nL未満、約20nL未満、約15nL未満、約10nL未満、約9nL未満、約8nL未満、約7nL未満、約6nL未満、約5nL未満、約4nL未満、約3nL未満、約2nL未満、約1nL以下の体積の流体を保持するように構成された少なくとも1つの回路要素を含有するマイクロ流体回路を有するタイプのマイクロ流体デバイスのことである。ナノ流体デバイスは、複数の回路要素(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10,000個、又はそれ以上)を含み得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの回路要素の1つ以上(例えば、全て)は、約100pL~1nL、約100pL~2nL、約100pL~5nL、約250pL~2nL、約250pL~5nL、約250pL~10nL、約500pL~5nL、約500pL~10nL、約500pL~15nL、約750pL~10nL、約750pL~15nL、約750pL~20nL、約1~10nL、約1~15nL、約1~20nL、約1~25nL、又は約1~50nLの体積の流体を保持するように構成される。他の実施形態では、少なくとも1つの回路要素の1つ以上(例えば、全て)は、約20nL~200nL、約100~200nL、約100~300nL、約100~400nL、約100~500nL、約200~300nL、約200~400nL、約200~500nL、約200~600nL、約200~700nL、約250~400nL、約250~500nL、約250~600nL、又は約250~750nLの体積の流体を保持するように構成される。
【0020】
本明細書で使用される「マイクロ流体チャネル」又は「フローチャネル」とは、水平寸法及び垂直寸法の両寸法よりも有意に長い長さを有するマイクロ流体デバイスのフロー領域を指す。例えば、フローチャネルは、水平寸法又は垂直寸法のいずれかの長さの少なくとも5倍、例えば、その長さの少なくとも10倍、その長さの少なくとも25倍、その長さの少なくとも100倍、その長さの少なくとも200倍、その長さの少なくとも500倍、その長さの少なくとも1,000倍、その長さの少なくとも5,000倍、又はそれ以上であり得る。幾つかの実施形態では、フローチャネルの長さは、介在する任意の範囲を含めて約50,000ミクロン~約500,000ミクロンの範囲内である。幾つかの実施形態では、水平寸法は、約100ミクロン~約1000ミクロン(例えば、約150~約500ミクロン)の範囲内であり、且つ垂直寸法は、約25ミクロン~約200ミクロン、例えば、約40~約150ミクロンの範囲内である。フローチャネルは、マイクロ流体デバイス内で多種多様な空間構成を有し得るので、完全に線状の要素に制限されないことに留意されたい。例えば、フローチャネルは、次の構成、すなわち、カーブ、ベンド、スパイラル、傾斜、下降、フォーク(例えば、複数の異なる流路)、及びそれらの任意の組合せのいずれかを有する1つ以上のセクションを含み得る。そのほか、フローチャネルは、その中に所望の流体フローを提供するように、その通路に沿って異なる断面積、拡幅、及び狭窄を有し得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「障害物」という用語は、一般に、マイクロ流体デバイスの2つの異なる領域間又は回路要素間の標的微小物体の移動を部分的に(完全にではなく)妨げるのに十分な大きさのバンプ又は類似のタイプの構造物を指す。2つの異なる領域/回路要素は、例えば、マイクロ流体隔離チャンバ及びマイクロ流体チャネル、又はマイクロ流体隔離チャンバの接続領域及び分離領域であり得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「狭窄」という用語は、一般に、マイクロ流体デバイスの回路要素(又は2つの回路要素間のインターフェース)の幅の狭小化を指す。狭窄は、例えば、マイクロ流体隔離チャンバとマイクロ流体チャネルとの間のインタフェース又はマイクロ流体隔離チャンバの分離領域と接続領域との間のインタフェースに位置決めし得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「透明」という用語は、透過の際に光を実質的に変化させることなく可視光を透過させる材料を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「微小物体」という用語は、一般に、本発明に従って単離及び収集し得る任意の微視的物体を指す。微小物体の非限定的な例としては、無生物微小物体、例えば、マイクロ粒子、マイクロビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ、Luminex(商標)ビーズ等)、磁気ビーズ、マイクロロッド、マイクロワイヤ、量子ドット等、生物学的微小物体、例えば、細胞(例えば、胚、卵母細胞、卵細胞、精子細胞、組織解離細胞、真核細胞、原生生物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、免疫細胞、ハイブリドーマ、培養細胞、細胞株由来細胞、癌細胞、感染細胞、トランスフェクト及び/若しくはトランスフォーム細胞、レポーター細胞、原核細胞等)、生物学的オルガネラ、ベシクル若しくは複合体、合成ベシクル、リポソーム(例えば、合成若しくは膜調製物由来)、脂質ナノラフト(Ritchie et al. (2009) “Reconstitution of Membrane Proteins in Phospholipid Bilayer Nanodiscs,” Methods Enzymol., 464:211-231に記載)等、又は無生物微小物体と生物学的微小物体との組合せ(例えば、細胞付着マイクロビーズ、リポソームコーティングマイクロビーズ、リポソームコーティング磁気ビーズ等)が挙げられる。ビーズは、共有結合又は非共有結合された他の部分/分子、例えば、蛍光標識、タンパク質、低分子シグナリング部分、抗原、又はアッセイで使用可能な化学的/生物学的種を更に有し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、植物細胞、動物細胞(例えば哺乳動物細胞)、細菌細胞、菌類細胞等であり得る生体細胞を指す。哺乳動物細胞は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、霊長動物等に由来し得る。
【0026】
コロニー中の複製可能な生細胞の全てが単一の親細胞に由来する娘細胞である場合、生体細胞のコロニーは「クローン」である。「クローン細胞」という用語は、同一のクローンコロニーの細胞を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、生体細胞の「コロニー」とは、2細胞以上(例えば、2~20、4~40、6~60、8~80、10~100、20~200、40~400、60~600、80~800、100~1000細胞、又は1000細胞超)を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「細胞を維持する」という用語は、細胞の生存及び/又は増殖を続けるのに必要な条件を提供する、流体及び気体の両成分と任意選択的に表面とを含む環境を提供することを指す。
【0029】
流体培地の「成分」は、溶媒分子、イオン、低分子、抗生物質、ヌクレオチド及びヌクレオシド、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖、炭水化物、脂質、脂肪酸、コレステロール、代謝物等をはじめとする培地中に存在する任意の化学分子又は生化学分子である。
【0030】
流体培地を参照して本明細書で使用される場合、「拡散する」又は「拡散」とは、流体培地の成分が濃度勾配の下方に熱力学的に移動することを指す。
【0031】
「培地のフロー」という語句は、拡散以外の任意の機構に主に起因する流体培地のバルク移動を意味する。例えば、培地のフローは、点間の圧力差に起因する一方の点から他方の点への流体培地の移動を含み得る。かかるフローは、液体の連続フロー、パルスフロー、周期フロー、ランダムフロー、間欠フロー、若しくは往復フロー、又はそれらの任意の組合せを含み得る。一方の流体培地が他方の流体培地に流入する場合、培地の乱流及び混合を生じ得る。
【0032】
「実質的にノーフロー」という語句は、時間平均で流体培地中への又は流体培地中での材料の成分(例えば、対象のアナライト)の拡散速度未満の流体培地の流速を指す。かかる材料の成分の拡散速度は、例えば、温度、成分のサイズ、及び成分と流体培地との間の相互作用の強度に依存し得る。
【0033】
マイクロ流体デバイス内の異なる領域を参照して本明細書で使用される場合、「流体接続される」という語句は、異なる領域が流体培地等の流体で実質的に充填されたときに各領域内の流体が単一体の流体を形成するように接続されることを意味する。このことは、異なる領域内の流体(又は流体培地)が必ずしも同一の組成であることを意味するものではない。より正確には、マイクロ流体デバイスの異なる流体接続領域内の流体は、溶質がそのそれぞれの濃度勾配の下方に移動するときに及び/又は流体がデバイスを貫流するときに流束内で異なる組成(例えば、タンパク質、炭水化物、イオン、他の分子等の溶質の濃度が異なる)を有し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「流路」とは、培地のフローの軌道を規定する且つその対象となる1つ以上の流体接続回路要素(例えば、チャネル、領域、チャンバ等)を意味する。そのため、流路は、マイクロ流体デバイスの掃引領域の例である。他の回路要素(例えば、非掃引領域)は、流路の培地のフローの対象とならない流路を含む回路要素に流体接続し得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、μmとはマイクロメートルを意味し、μm3とは立方マイクロメートルを意味し、pLとはピコリットルを意味し、nLとはナノリットルを意味し、且つμL(又はuL)とはマイクロリットルを意味する。
【0036】
本明細書でのセクション分割は、概説を容易にすることのみを目的としたものであり、考察される要素のいずれの組合せにも限定されるものではない。
【0037】
II.抗体治療剤の調製方法
抗体治療剤は、以下のステップ、すなわち、
a)患者から得られた少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから解離細胞サンプルを提供するステップと、
b)フロー領域とフロー領域に流体接続された少なくとも1つの分離領域とを有するマイクロ流体デバイスに解離細胞サンプルをロードするステップと、
c)少なくとも1つのB細胞を解離細胞サンプルからマイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域に移動させることにより少なくとも1つの単離されたB細胞を得るステップと、
d)癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定するステップと、
を含む方法を用いて調製し得る。
【0038】
抗体を同定する本方法は、抗体を産生するB細胞と治療剤が望まれる患者に問題を引き起こしている癌細胞との関係を有するという1つの潜在的目標を念頭において、多種多様な形態で実施し得る。特定の一方法400は、図4に概説される。
【0039】
特定の場合には、本方法は、同定されたB細胞から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの抗体配列を決定することを更に含む。例えば、癌細胞に結合する抗体を産生する少なくとも1つのB細胞をマイクロ流体デバイスから搬出した後、シーケンシングを行い得る。他の場合には、本方法は、少なくとも1つの単離されたB細胞からハイブリドーマを生成することを含む。抗体配列が決定された場合、本方法はまた、少なくとも1つの同定されたB細胞から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの配列の一部又は全部を含む抗体治療剤を生成することを含み得る。例えば、方法は、少なくとも1つの同定されたB細胞から重鎖及び軽鎖の可変ドメインの配列の6個のCDRを全て含む抗体又はその機能部分を調製することを含み得る。
【0040】
A.解離細胞サンプルの調製
特定の場合には、本方法は、固形腫瘍からサンプルを得るステップを含む。例えば、図4の方法400のステップ410に示される通り。固形腫瘍サンプルは、外科切除生検物や細針吸引物(FNA)等の腫瘍生検物であり得る。幾つかの場合には、腫瘍は、増殖性B細胞及び/又はB細胞濾胞を含み得る三次リンパ様構造を有する。腫瘍は、乳癌、泌尿生殖器癌、神経系癌、腸癌、肺癌、黒色腫、又は他のタイプの癌であり得る。幾つかの実施形態では、乳癌は髄様乳癌であり得る。幾つかの実施形態では、泌尿生殖器癌は、腎臓(例えば、腎細胞癌)、尿管、膀胱、尿道等の尿路に発生する癌であり得る。幾つかの実施形態では、泌尿生殖器癌は、男性生殖管の癌(例えば、精巣癌、前立腺癌、又は精嚢、精管、若しくは陰茎の癌)或いは女性生殖管の癌(例えば、卵巣癌、子宮癌、頸癌、腟癌、又は卵管癌)であり得る。幾つかの実施形態では、神経系癌は神経芽腫であり得る。幾つかの実施形態では、腸癌は結腸直腸癌であり得る。幾つかの実施形態では、肺癌は中皮腫であり得る。
【0041】
幾つかの場合には、単一の腫瘍サンプルが得られる。他の場合には、多発性腫瘍サンプルが得られる。一例では、全ての腫瘍サンプルが同一の患者に由来する。例えば、患者に由来する1つの腫瘍サンプル(例えば、単一の生検物)を使用し得るか、又は同一の患者に由来する複数の腫瘍サンプル(例えば、患者の同一の腫瘍又は異なる腫瘍に由来する複数の生検物)を使用し得る。
【0042】
他の場合には、異なる患者に由来する腫瘍サンプルを使用し得る。例えば、B細胞は第1の患者に由来し得ると共に、癌細胞(例えば、癌細胞関連抗原源として使用される癌細胞)は第2の患者に由来する。こうした形態の幾つかでは、B細胞は治療を望む患者に由来する。こうした形態の幾つかでは、癌細胞は癌細胞株に由来する。また、サンプルが異なる患者に由来する場合、抗体を産生するB細胞と癌細胞関連抗原との何らかの関係を保持し得る。例えば、癌細胞関連抗原が同一の患者の癌細胞に由来するものでない場合、幾つかの実施形態では、それは同一のタイプの癌に由来し得る。特定の場合には、マイクロ流体デバイスで使用されるさもなければ癌関連抗原を提供するために使用される癌細胞は、患者が罹患している腫瘍のタイプに特徴的である1種以上のマーカーを呈する。例えば、癌細胞は、患者の腫瘍サンプルにも存在する1つ以上のかかるマーカーを有し得る。
【0043】
特定の場合には、本方法は、解離細胞サンプルを生成するように腫瘍サンプルを処理するステップを含む。例えば、図4の方法400のステップ420に示される通り。解離細胞サンプルは、腫瘍(例えば、腫瘍生検物又はFNA)から解離させた少なくとも1つの単一細胞を含み得る。幾つかの場合には、細胞は全て単一細胞形態である。他の場合には、細胞の一部は単一細胞形態ではなく、約2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の細胞の集塊として残留し、更に他の細胞は単一細胞形態である。解離細胞サンプルは、解離形態で培養下で成長させた癌細胞株を含む。そのため、細胞は、能動的に解離させ得るか(少なくとも1つの固形腫瘍サンプルを得て少なくとも1つの単一細胞を解離させることにより)、又は受動的に解離させ得る(予め解離させた又は解離形態で成長させたサンプルを得ることにより)。
【0044】
解離は、幾つかの方法で行い得る。例えば、腫瘍サンプルは、コラゲナーゼ+DNase消化を用いて解離させ得る。腫瘍サンプルはまた、Miltenyi Biotec製gentleMACS(商標)装置等の細胞ディソシエータ装置を用いて解離させ得る。
【0045】
幾つかの場合には、本方法は、元の解離サンプルよりも大きいパーセント及び/又は濃度のB細胞を有する画分を単離するために、ローディング前に解離細胞サンプルの選択を行うことを更に含む。例えば、図4の方法400のステップ430に示される通り。所望により、B細胞は、少なくとも1つのマーカー、例えば、CD19、CD20、IgM、IgD、CD38、CD27、CD138、PNA、及びGL7から選択されるマーカーを用いて、解離細胞サンプルから選択し得る。代替的又は追加的に、非B細胞を除去するためにネガティブ選択を行い得る(例えば、B細胞上に発現されない少なくとも1つのマーカーを用いて)。例えば、解離細胞サンプルから癌細胞(例えば、癌細胞特異的マーカーを用いて)及び/又はT細胞(例えば、CD3、CD4、CD8等のT細胞特異的マーカーを用いて)を枯渇させ得る。更に他の場合には、解離細胞サンプルは、B細胞の富化処理を行うことなくマイクロ流体デバイスにロードされる。
【0046】
解離細胞サンプルでB細胞の富化処理を行うかどうかにかかわらず、解離細胞サンプルはマイクロ流体デバイスにロードされる。例えば、図4の方法400のステップ440を参照されたい。幾つかの場合には、単一の解離細胞サンプルをマイクロ流体デバイスにロードし得る。単一の解離細胞サンプルは、B細胞及び他のタイプの細胞(例えば、癌細胞)の両方を含み得る。他の場合には、(i)単一の解離細胞サンプル又は(ii)異なる解離細胞サンプルの個別画分(例えば、それぞれ個別に及び/又は異なる方式で分画されたもの)を異なる時点でロードし得る。幾つかの場合には、解離細胞サンプルは、最初のサンプルよりも大きいパーセント及び/又は濃度の癌細胞を有する画分を生成するように処理し得る。癌細胞画分は、B細胞の選択後に残留する画分であり得るか、又はその逆であり得る。
【0047】
所望により、癌に特有の少なくとも1つのマーカーを用いて、癌細胞を解離細胞サンプルから選択し得る。幾つかの場合には、形態学的差を用いて細胞を分離し得る。癌細胞は、多くの場合、不規則な細胞サイズ(例えば、より大きな細胞サイズ若しくはより小さな細胞細胞)、より大きな核を呈するか、より多くのDNAを含有するか、又は核構造変化を含有する。多くの場合、これらの差は、視覚により及び/又は自動化し得る画像解析により識別可能である。かかる解析を容易にするために又は促進するために、解離細胞サンプルの核酸を染色し得るか(例えば、核酸結合染料で染色した場合、癌細胞は、多くの場合、正常細胞よりも明るく染色される)、又は核膜、核小体、及び/若しくは核マトリックスに関連するマーカーを染色し得る。かかるマーカーの例としては、ラミン(例えば、A型又はB型ラミン)、核膜タンパク質(例えば、エメリン等の核ラミナ関連タンパク質)、フィブリラリン、核孔タンパク質(NUP、例えば、Nup153、Nup210等)、ヒストンタンパク質、及び核マトリックスタンパク質(例えば、p84))が挙げられる。これらはいずれも、核構造の差を強調し得る。
【0048】
形態学的差以外に、特定のタイプの癌細胞を同定するのに有用な様々なマーカーが当技術分野で知られている。例えば、限定されるものではないが、以下の通りである。
【0049】
乳癌では、CD44、HLA-DR、Ki-67(又はMK167)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1(ALDH1)、及びガングリオシドGD2は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト表皮成長因子受容体2(HER2)、及びCD24は、癌細胞に存在しない又は少ない傾向があり、髄様乳癌を同定するために、ER/PR/HER2/HLA-DRを使用可能であり、且つ乳癌幹細胞を同定するために、CD44hi/CD24lo/ALDH1hi又はCD44hi/CD24lo/GD2hiを使用可能である。
【0050】
腎臓癌では、C反応性タンパク質、アクアポリン-1(AQP1)、アディポフィリン(ADFP)、インスリン様成長因子IImRNA結合タンパク質3(IGF2BP3又はIMP3)、B7-H1(又はPD-L1)、及びKi-67(MK167)は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向がある。
【0051】
膀胱癌では、核分裂装置タンパク質(NMP22)、膀胱腫瘍抗原(BTA)、及びフィブリン/フィブリノーゲン分解産物は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、脂肪細胞脂肪酸結合タンパク質(A-FABP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼμ(GST-μ)、プロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(PGDH)、及びケラチン13は、存在しない又は正常細胞と比べて少ない傾向があり、遺伝子レベルで、p16腫瘍サプレッサー遺伝子又は9p21遺伝子座は、癌細胞に欠失し得る。
【0052】
尿路上皮癌では、補体因子H関連タンパク質(CFHrp)は、癌細胞でレベルの増加及び/又は分泌を呈し得ると共に、核レベルで、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)は、癌細胞でmRNA発現の増加を呈する傾向がある。
【0053】
子宮内膜癌では、癌抗原15-3(CA15-3)、癌抗原125(CA125)、癌抗原19.9(CA19.9)、癌抗原72.4(CA72.4)、及び癌胎児性抗原(CEA)は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向がある。
【0054】
卵巣癌では、腫瘍関連トリプシン阻害剤(TATI)、癌抗原125(CA125)、クローディン5、ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)、癌胎児性抗原(CEA)、VCAM-1、及びmiR-181aは、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、TATI、CA125、及びクローディン5は、卵巣癌を診断するために組み合わせて使用されており、HE4及びCA125も同様であり、任意選択的にCEA及びVCAM-1が併用され、STAT1は、化学療法に反応する卵巣癌とそうでない卵巣癌とを識別するために使用可能である。
【0055】
頸癌では、ヒトパピローマウイルス(HPV)(例えば、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、6、11、42、43、及び44型)、p16INK4a、及びインスリン様成長因子IImRNA結合タンパク質3(IGF2BP3又はIMP3)は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向がある。
【0056】
前立腺癌では、前立腺特異的抗原(PSA)、サルコシン(代謝物)、前立腺癌遺伝子3(PCA3)、及びTMPRSS2:ERG融合産物は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、前立腺性酸性ホスファターゼ、フィブリノーゲンα鎖前駆体、コラーゲンα-1(III)、コラーゲンα-1(I)、乾癬感受性1候補遺伝子2タンパク質、肝細胞癌関連タンパク質TB6、ヒストンH2BB、オステオポンチン、高分子Ig受容体、Na/K輸送ATPアーゼγ、膜貫通分泌成分、及びセメノゲリン1は、存在しない又は正常細胞と比べて少ない傾向がある。
【0057】
神経芽腫では、バニリルマンデリン酸(VMA)、ホモバニリン酸(HVA)、及びフェリチンのレベルの増加及び/又は分泌は、癌細胞に関連付けられ、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、及びガングリオシドGD2は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、ゲノムレベルで、染色体1p及び11qの部分欠失並びに17qの部分重複は、癌細胞に関連付けられる。
【0058】
結腸直腸癌では、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原19-9(CA19-9)、結腸癌特異的抗原3(CCSA-3)、結腸癌特異的抗原4(CCSA-4)、及びB-Raf突然変異V600Eは、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、遺伝子レベルで、結腸直腸癌細胞は、マイクロサテライト不安定性及び各種K-Ras突然変異を呈する。
【0059】
小細胞肺癌では、ガングリオシドGD2は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、非小細胞肺癌では、B-Raf突然変異V600Eは、癌細胞に存在する傾向があり、中皮腫では、カルレチニン、サイトケラチン5/6、及びWT1は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)(例えば、MOC-31又はBer-EP4抗体により検出される)、ルイスY血液型(例えば、BG-8抗体により検出される)、及びB72.3抗体により検出される腫瘍関連糖タンパク質は、存在しない又は少ない傾向があり、それとは逆に、経肺腺癌では、CEA、Ep-CAM(例えば、MOC-31又はBer-EP4抗体により検出される)、ルイスY血液型(例えば、BG-8抗体により検出される)、及びB72.3抗体により検出される腫瘍関連糖タンパク質は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、カルレチニン、サイトケラチン5/6、及びWT1は、存在しない又は少ない傾向がある。
【0060】
黒色腫では、ヒト内在性レトロウイルス(HERV-K)、ガングリオシドGD2、B-Raf突然変異V600E、Hsp90、Gタンパク質シグナリング1レギュレーター(RGS1)、オステオポンチン、ヒト表皮成長因子受容体3(HER3)、核受容体コアクチベーター3(NCOA3)、ミニ染色体維持複合体成分4及び6(それぞれ、MCM4及びMCM6)は、癌細胞に存在する及び/又は多い傾向があり、一方、阻害剤又は成長タンパク質3及び4(それぞれ、ING3及びING4)は、存在しない又は正常細胞と比べて少ない傾向がある。
【0061】
幾つかの場合には、癌細胞は、癌に特有の少なくとも2つのマーカーを用いて解離細胞サンプルから選択し得る。例えば、2つ以上のマーカーは、形態学的マーカー、少なくとも1つの陽性マーカー(例えば、癌細胞に存在する及び/又は多いマーカー)、及び/又は少なくとも1つの陰性マーカー(例えば、存在しない又は正常細胞と比べて少ないマーカー)、又はそれらの任意の組合せを含み得る。特定の形態では、B細胞(例えば、メモリB細胞、血漿B細胞等、及びそれらの組合せ)及び/又は癌細胞は、FACSにより解離細胞サンプルから選択し得る。代替的又は追加的に、B細胞(例えば、メモリB細胞、血漿B細胞等、及びそれらの組合せ)及び/又は癌細胞はまた、磁気ビーズベース選別を用いて解離サンプルから選択し得る。選択は、サンプルにおいてCD27(又は幾つかの他のメモリB細胞マーカー)を発現するB細胞又はCD138(又は幾つかの他の形質細胞マーカー)を発現するB細胞を富化し得る。選択はポジティブであり得る(例えば、B細胞特異的マーカー又は癌細胞特異的マーカーに基づく)。代替的に、選択はネガティブであり得る。例えば、非B細胞細胞型は、DYNABEADS(商標)UntouchedヒトB細胞試薬(Thermo Fisher)、B細胞単離キット(Miltenyi)、RosetteSepヒトB細胞富化カクテル(Stem Cell Technologies)等でサンプルを処理する等の当技術分野で周知の技術を用いて、解離細胞サンプルから枯渇させ得る。他の例として、選択は、IgM抗体、IgA抗体、IgD抗体、IgG抗体、又はそれらの任意の組合せを発現するB細胞をサンプルから枯渇させ得る。代替的又は追加的に、B細胞及び/又は癌細胞は、以下で更に考察されるようにマイクロ流体デバイスを用いて選択し得る。
【0062】
B.マイクロ流体デバイス内へのB細胞のローディング及びマイクロ流体デバイス内でのB細胞の移動
解離細胞サンプル(以上で考察したように任意選択的に分画されたもの)は、デバイスの流入口を介してフロー領域内にサンプル細胞を流入させることによりマイクロ流体デバイス内にロードすることが可能である。例えば、図4に示される方法400のステップ440は、マイクロ流体デバイス内への解離細胞サンプルのローディングを提供する。幾つかの実施形態では、フロー領域はフローチャネル(又はマイクロ流体チャネル)を含み、且つ解離細胞サンプルのローディングはフローチャネル内に細胞を流入させることを含む。
【0063】
解離細胞サンプルをマイクロ流体デバイスのフロー領域(又はフローチャネル)内にロードした後、サンプル中のB細胞をマイクロ流体デバイスの分離領域内に移動させることが可能である。例えば、方法400のステップ450に例示されるように(図4)、フロー領域(又はフローチャネル)に流体接続された且つそれから開口した分離チャンバ内に位置決めし得る1つ以上の分離領域内にフロー領域(又はフローチャネル)からB細胞を移動させることが可能である。B細胞は、例えば、CD27B細胞又はCD138B細胞であり得る。幾つかの実施形態では、B細胞はメモリB細胞である。他の実施形態では、B細胞は形質細胞である。B細胞の移動は、本明細書で一般的に考察されるように、重力の利用(例えば、マイクロ流体デバイスを傾けることにより)、局在化流体フローの誘導(例えば、分離領域に隣接又は近接して位置決めされたマイクロ流体デバイスの変形可能表面を押圧又は牽引することにより)、誘電泳動(DEP)力の適用(例えば、光電子ピンセット(OET)により)、又はそれらの任意の組合せを含めて、様々な手段により達成し得る。
【0064】
幾つかの場合には、解離細胞サンプルをロードする前に、本方法は、少なくとも1つの検出可能マーカーで解離細胞サンプル中のB細胞を標識することを更に含む。マーカーは、B細胞特異的マーカー、例えば、本明細書に開示されるB細胞マーカー(例えば、CD19、CD20、IgM、IgD、CD38、CD27、CD138、PNA、GL7等)のいずれか1つであり得る。例えば、DEP力を適用することによりB細胞を移動させる実施形態では、マーカーは、検出可能マーカーの検出に基づいて移動するB細胞の選択を支援し得る。代替的に、検出可能マーカーは、T細胞マーカーや癌細胞関連マーカー等の非B細胞マーカーに結合させ得る。かかる場合には、検出可能マーカーの欠如に基づいて移動するB細胞を選択し得る。
【0065】
マイクロ流体デバイスの分離領域にロードされるB細胞は、メモリB細胞、形質細胞等の異なるB細胞型の混合物を含み得る。幾つかの実施形態では、分離領域内に移動させる形質細胞を選択することが望まれ得る。幾つかの実施形態では、分離領域内に移動させるIgG型抗体を発現するB細胞を選択することが望まれ得る。
【0066】
幾つかの場合には、分離領域の全てにロードするか否かにかかわらず、1つのB細胞のみを各分離領域内に移動させる。他の場合には、最初に1つ以上の分離領域内にB細胞をプールし、後で個別分離領域内に分離し得る(すなわち、1つの分離領域当たり1つのB細胞)。癌細胞に結合する抗体を産生するB細胞をスクリーニングする場合、後者の実施形態ではより大きいスループットが可能である。各分離領域内に1つのB細胞のみを配置することによりB細胞のクローン増殖が可能になるので、対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの配列の同定を容易にし得る。
【0067】
特定の実施形態では、癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイスにロードする前、B細胞をマイクロ流体デバイスにロードして分離領域内に移動させる。他の実施形態では、癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイスにロードして分離領域内に移動させた後、B細胞をマイクロ流体デバイスにロードして分離領域内に移動させる。更に他の実施形態では、B細胞及び癌細胞関連抗原を同時にマイクロ流体デバイスにロードする(例えば、B細胞及び癌細胞の両方を含む解離細胞サンプルの一部として)。幾つかの実施形態では、B細胞を分離領域にロードした後、B細胞は、癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つのB細胞の同定後までそこに残留する。
【0068】
C.抗体を産生するB細胞と癌細胞関連抗原との接触
開示された方法は、癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体をB細胞が発現しているかを検出するステップを含む。例えば、図4の方法400のステップ470を参照されたい。かかる発現を検出するために、発現された抗体を癌細胞関連抗原と相互作用させなければならない。
【0069】
癌細胞関連抗原は単純型又は複合型であり得る。また、抗原は、タンパク質、炭水化物基若しくは炭水化物鎖、タンパク質や炭水化物以外の生物学剤若しくは化学剤、又はそれらの任意の組合せ上のエピトープであり得ると共に、エピトープは、リニア又はコンフォメーショナルであり得る。癌細胞関連抗原は、癌細胞(例えば、1つ以上の特定のタイプの癌細胞)を一義的に同定する又は正常細胞での発現と比較して癌細胞でアップレギュレートされる抗原であり得る。典型的には、癌細胞関連抗原は、癌細胞の表面上に存在するので、抗体により確実に認識可能である。抗原は、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の腫瘍に見いだし得る任意のタイプの癌細胞を含めて、任意のタイプの癌細胞に関連付け可能である。特に、抗原は、肺癌、乳癌、黒色腫等に関連付け可能である。本明細書で使用される場合、「癌細胞に関連付けられる」という用語は、抗原に関連して使用されるとき、抗原が癌細胞により直接産生されること又は癌細胞と正常細胞との間の相互作用により生じることを意味する。
【0070】
B細胞発現抗体が癌細胞関連抗原に特異的に結合するかの検出は、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスで行い得る。特に、マイクロ流体デバイスは、フロー領域(例えば、マイクロ流体チャネル)と隔離チャンバとを有するエンクロージャを含み得る。隔離チャンバは、分離領域と接続領域とを含み得ると共に、接続領域は、分離領域とフロー領域との間に流体接続を提供する。隔離チャンバは、約0.5nL~約5.0nl又はその中の任意の範囲(例えば、約0.5nl~約1.0nl、約0.5nl~約1.5nl、約0.5nl~約2.0nl、約1.0nl~約1.5nl、約1.0nl~約2.0nl、約1.0nl~約2.5nl、約1.5nl~約2.0nl、約1.5nl~約2.5nl、約1.5nl~約3.0nl、約2.0nl~約2.5nl、約2.0nl~約3.0nl、約2.0nl~約3.5nl、約2.5nl~約3.0nl、約2.5nl~約3.5nl、約2.5nl~約4.0nl、約3.0nl~約3.5nl、約3.0nl~約4.0nl、約3.0nl~約4.5nl、約3.5nl~約4.0nl、約3.5nl~約4.5nl、約3.5nl~約5.0nl、約4.0nl~約4.5nl、約4.0nl~約5.0nl、約4.5nl~約5.0nl、又は上記の端点の1つにより規定される任意の範囲)の容積を有し得る。接続領域は、本明細書に一般的に記載される幅Wcon(例えば、約20ミクロン~約100ミクロン又は約30ミクロン~約60ミクロン)を有し得る。分離領域も同様に、本明細書に一般的に記載される幅Wisoを有し得る(例えば、分離領域は、接続領域の幅Wconよりも大きい幅Wisoを有し得る)。特定の実施形態では、分離領域は、約50ミクロン~約250ミクロンの幅Wisoを有する。
【0071】
フロー領域、隔離チャンバ、及び/又は隔離チャンバの分離領域は、抗体発現B細胞(例えば、メモリーB細胞又は形質細胞)の生存能を向上させるコーティング材料を用いてコーティングされた少なくとも1つの表面を含み得る。これとの関連で用いられる場合、「生存能を向上させる」とは、コーティングされていない等価な表面と比較してコーティングされた表面でB細胞の生存能がより良好であることを意味する。特定の実施形態では、フロー領域、隔離チャンバ、及び/又は分離領域は、B細胞の生存能を向上させるコーティング材料でそれぞれコーティングされた複数の表面を有する。コーティング材料は、当技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載の任意の好適なコーティング材料であり得る。コーティング材料は、例えば、親水性分子を含み得る。親水性分子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、炭水化物基を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択可能である。
【0072】
フロー領域、隔離チャンバ、及び又は隔離チャンバの分離領域は、B細胞(例えば、メモリーB細胞又は形質細胞)の生存能を向上させる少なくとも1つの調整された表面を含み得る。これとの関連で用いられる場合、「生存能を向上させる」とは、調整されていない等価な表面と比較して調整された表面でB細胞の生存能がより良好であることを意味する。特定の実施形態では、フロー領域、隔離チャンバ、及び/又は分離領域は、B細胞の生存能をそれぞれ向上させ得る複数の調整された表面を有する。調整された表面は、共有結合された分子を含み得る。共有結合された分子は、例えば、共有結合された親水性分子を含めて、当技術分野で公知である及び/又は本明細書に開示される任意の好適な分子であり得る。親水性分子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、炭水化物基を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択可能である。親水性分子は、本明細書に記載されるように、共有結合された親水性分子の層を形成可能である。
【0073】
癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体を発現するB細胞の検出は、抗原がB細胞に近接して位置決めされた状態になるように癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイスに導入することを含み得る。マイクロ流体デバイスへの癌細胞関連抗原の導入は、例えば、癌細胞関連抗原を含有する流体培地をマイクロ流体デバイスのフロー領域に流入させることと、癌細胞関連抗原がB細胞に近接して位置決めされたときに流体培地のフローを停止することとを含み得る。B細胞に「近接する」位置は、B細胞から1ミリメートル(mm)以内(例えば、B細胞から750ミクロン以内、600ミクロン以内、500ミクロン以内、400ミクロン以内、300ミクロン以内、200ミクロン以内、100ミクロン以内、又は50ミクロン以内)であり得る。
【0074】
癌細胞関連抗原は、当技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載の任意の好適な微小物体(例えば、細胞、リポソーム、脂質ナノラフト、又はビーズ)であり得る微小物体の一部として提供可能である。そのため、マイクロ流体デバイスへの癌細胞関連抗原の導入は、B細胞が位置決めされる隔離チャンバの接続領域に隣接して又は接続領域内にかかる微小物体を配置することを含み得る。代替的に、癌細胞関連抗原の導入は、B細胞が位置決めされる隔離チャンバの分離領域内にかかる微小物体を移動させることを含み得る。
【0075】
微小物体は、癌細胞から分画された抗原、例えば、癌細胞膜調製物に見いだされる膜関連抗原を含み得る。開示された方法に使用される微小物体を生成するために、かかる単離された膜関連抗原はビーズにコンジュゲートし得る。代替的に、微小物体は、実質的に純粋な抗原(例えば、精製されたタンパク質)を含み得る。抗原分子、例えば、精製されたタンパク質、細胞膜調製物等をビーズにコンジュゲートする方法は、当技術分野で公知である及び/又は本明細書の実施例に記載される。同様に、癌細胞から抗原を単離する方法は、当技術分野で公知である(例えば、Bachleitner-Hoffmann et al. (2002), J. Clin. Endocrin. & Metab. 87(3): 1098-1104; and He et al. (2016), Oncology Letters 12:1101-06を参照されたい)。そのため、癌細胞関連抗原の単離は、当技術分野で公知の様々な方法により行い得る。他の実施形態では、微小物体は、癌細胞(例えば、患者のサンプルから単離されたもの)や癌細胞株細胞等の細胞であり得る。
【0076】
上述したように、微小物体(例えば、癌細胞又は抗原コンジュゲートビーズ)は、デバイスの流入口を介してフロー領域内に微小物体を流入させることによりマイクロ流体デバイスにロードし得る(抗体結合を検出するために)。幾つかの実施形態では、フロー領域はフローチャネルを含み、且つ微小物体のローディングはフローチャネル内に微小物体を流入させることを含む。
【0077】
幾つかの実施形態では、微小物体は、マイクロ流体デバイスのフロー領域(又はフローチャネル)にロードされ、マイクロ流体デバイスから搬出されるまでフロー領域(又はフローチャネル)内に残留する。幾つかの実施形態では、微小物体は分離領域に入らない。幾つかの実施形態では、微小物体は、フロー領域(又はフローチャネル)に存在する以外に分離チャンバの接続領域内に浸入する。これらの実施形態のいずれかでは、微小物体(例えば、癌細胞又は抗原コンジュゲートビーズ)は、少なくとも約1×10、2.5×10、5×10、7.5×10、又は1×10個の微小物体/mlの濃度でフロー領域(又はフローチャネル)にロードし得る。
【0078】
幾つかの実施形態では、微小物体は、マイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域内に移動される。B細胞と同様に、微小物体(例えば、癌細胞又は抗原コンジュゲートビーズ)の移動は、重力の利用(例えば、マイクロ流体デバイスを傾けることにより)、局在化流体フローの誘導(例えば、分離領域に隣接又は近接して位置決めされたマイクロ流体デバイスの変形可能表面を押圧又は牽引することにより)、誘電泳動(DEP)力の適用(例えば、光電子ピンセット(OET)により)、又はそれらの任意の組合せを含めて、様々な手段により達成し得る。かかる実施形態では、1個以上(例えば、1個のみ、約2、3、4、5、6、7、8、9、10個、若しくはそれ以上、又は約1~20、1~10、1~5、1~3、1~2個)の微小物体をマイクロ流体デバイスの個別分離領域内に移動させ得るので、単離された微小物体又は一群の単離された微小物体を有する少なくとも1つの分離領域が得られる。単離された微小物体及びB細胞は、同一の分離領域内に配置し得る。代替的に、単離された微小物体及びB細胞は、異なる分離領域(例えば、隣接分離領域)内に配置し得る。
【0079】
マイクロ流体デバイス内の微小物体の所望の位置に関係なく、癌細胞をマイクロ流体デバイスにロードする前に、癌細胞である微小物体を1つ以上の検出可能マーカーで標識し得る。所望の形態が少なくとも1つの分離領域内への少なくとも1つの癌細胞の移動を含む場合、移動する少なくとも1つの癌細胞を選択するために検出可能マーカーを使用し得る。代替的又は追加的に、移動する少なくとも1つの癌細胞を選択するために、細胞サイズ、細胞形状、核サイズ、又は核構造の形態学的評価を使用し得る。癌細胞はまた、形態学的評価と任意選択的に組み合わせて細胞マーカーの不在により選択し得る。
【0080】
特定の実施形態では、癌細胞は、患者から採取された1つ以上の固形腫瘍サンプルから得られる解離細胞サンプルに由来するので、患者自身の癌細胞である。以上で考察したように、癌細胞は、解離細胞サンプルから選択(又は分画)し得る、及び/又は癌細胞は、B細胞を含有する同一の解離細胞サンプルの一部としてマイクロ流体デバイスにロードし得る。特定の実施形態では、癌細胞は、癌細胞に結合可能な抗体を産生するB細胞をアッセイする前に、培養及び/又はクローニングされる。かかる培養及び/又はクローニングは、マイクロ流体デバイス内で又はマイクロ流体デバイスに癌細胞をロードする前に行い得る(例えば、腫瘍サンプルに由来する癌細胞を選択、培養、及び/又はクローニングする従来技術を用いて)。それにもかかわらず、癌細胞を選択、培養、及び/又はクローニングして少なくとも約1×10、2.5×10、5×10、7.5×10、又は1×10細胞/mlの濃度にし得る。
【0081】
当技術分野で周知のように、腫瘍に由来する癌細胞集団は、集団を構成する個別細胞の形態学的及び遺伝的特性に関して比較的不均一であり得る。例えば、集団は、癌幹細胞(徐々に分裂し得る)及びより分化した癌細胞(より迅速に分裂し得ると共に癌促進突然変異の様々なサブセットを含有し得る)を含有し得る。癌細胞のマーカーベースの選択及び/又はクローニングを用いることにより、より均一な細胞集団を提供することが可能である。したがって、特定の実施形態では、幾つかの実施形態で、複数の不均一な癌細胞をマイクロ流体デバイスにロードし得る。代替的に、マイクロ流体デバイスにロードする前に個別癌細胞を選択してクローニングし得る。そのため、他の実施形態では、実質的に均一な癌細胞集団をマイクロ流体デバイスにロードして、癌細胞に結合可能な抗体を産生するB細胞を同定するために使用し得る。実質的に均一な集団は、少なくとも1つの腫瘍を提供する患者又は異なる患者に由来する癌細胞株であり得る。
【0082】
更に他の実施形態では、癌細胞関連抗原の提供は、可溶性抗原を含む溶液をマイクロ流体デバイスのフロー領域に通して流動させることと、B細胞が位置決めされる隔離チャンバに可溶性抗原を拡散導入可能にすることとを含み得る。かかる可溶性抗原は、検出可能標識(例えば、蛍光標識)に共有結合させ得る。
【0083】
D.結合の検出及びB細胞の処理
癌細胞関連抗原へのB細胞により産生された抗体の結合は、様々な方法で検出し得る。例えば、癌細胞をマイクロ流体デバイスに導入する場合、凝集アッセイで生じ得るような細胞集塊を検出し得る。代替的に、結合された抗体を有する微小物体(例えば、癌細胞又は抗原コンジュゲートビーズ)を標識するために、標識(例えば、蛍光標識)にコンジュゲートされた抗ヒト抗体等の二次抗体を添加し得る。そのため、幾つかの実施形態では、本方法は、標識された抗体結合剤を癌細胞関連抗原の前又はそれと同時に提供することを更に含む。かかる実施形態では、B細胞により発現された抗体への抗原の結合の監視は、癌細胞関連抗原への標識された抗体結合剤の間接結合を検出することを含み得る。標識された抗体結合剤は、蛍光標識されたものであり得る標識された抗IgG抗体であり得る。特定の実施形態では、標識された抗体結合剤は、癌細胞関連抗原との混合物で提供される。他の実施形態では、標識された抗体結合剤は、癌細胞関連抗原の提供後に提供される。
【0084】
特定の実施形態では、本方法は、癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体を発現する少なくとも1つの抗体発現B細胞(例えば、形質細胞又はメモリーB細胞)を同定することを更に含み得る。以下でより詳細に考察されるように、マイクロ流体デバイスは、シグナル(例えば、癌細胞集塊又は微小物体の表面への標識の蓄積)の可視化を可能にする撮像デバイスを含み得る。例えば、撮像デバイスは、マイクロ流体デバイスの撮像を周期的に行うことが可能であり、経時的にかかるシグナルのいかなる増加も検出可能である。像は、例えば、数秒ごとに(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60秒ごとに、若しくはそれ以上の間隔で)又は数分ごとに(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10分ごとに、若しくはそれ以上の間隔で)取得可能である。幾つかの実施形態では、複数の像を互いに重ねてオーバーレイすることにより「合わせた」像を形成することが可能であり、これはバックグラウンドシグナルを平均化する一般的効果を有し、真のシグナルとバックグラウンドシグナルとのより良好なコントラストを形成する。シグナルの検出は、人が像を精査するときに行われるように手動であり得るか又は自動であり得る(例えば、適切な画像解析ソフトウェアを用いる)。
【0085】
癌細胞関連抗原とB細胞により産生された抗体との結合を検出した後、かかる抗体を産生するB細胞を同定することが可能であり、且つその位置(例えば、位置決めされる分離領域又は分離チャンバ)を確認及び/又は記録することが可能である。例えば、図4の方法400のステップ480を参照されたい。任意選択的に、癌細胞への抗体結合を検出した後、フロー領域(又はフローチャネル)をフラッシュし得る。かかるフラッシングは、癌細胞関連抗原(例えば、癌細胞又は抗原コンジュゲートビーズ)に結合する抗体を産生するB細胞の同定前又は同定後に行い得る。他の任意選択的なステップとして、癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生しなかったB細胞は、マイクロ流体デバイスから廃棄し得る。
【0086】
特定の実施形態では、癌細胞関連抗原に結合する抗体を産生するとして同定されるB細胞は、マイクロ流体デバイスから搬出可能である。例えば、(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の)シーケンシング又はハイブリドーマの調製のいずれかの目的でB細胞を単離するために、癌細胞に結合する抗体を産生するB細胞をマイクロ流体デバイスから搬出し得る。幾つかの場合には、各細胞又はクローン細胞集団は個別に搬出される。
【0087】
E.B細胞活性化の刺激
以上の実施形態のいずれかでは、マイクロ流体デバイスの分離領域内に移動させたB細胞は、抗体の産生を助長する条件下でインキュベート可能である。幾つかの場合には、そうした抗体は、マイクロ流体デバイス内の培地を介して癌細胞関連抗原(癌細胞若しくは抗原コンジュゲートビーズに含まれるか又は溶液中にあるかにかかわらず、且つ同一の分離領域内、主要フローチャネル内、又は隣接分離領域内にあるかにかかわらず)の位置に拡散可能である。隣接分離領域の例として、幾つかのマイクロ流体デバイスでは、2つの隣接する分離領域間の薄壁に小さなギャップが存在し、一方の分離領域から他方の分離領域に抗体を直接拡散させることが可能であるので、必ずしも主要フローチャネルに進入させて隣接分離領域内に拡散させる必要はない。かかる小さなギャップは、抗体の拡散を可能にするが、癌細胞もB細胞も分離領域を離れることが許されない。
【0088】
幾つかの場合には、癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体を発現するB細胞の検出は、B細胞活性化を刺激する刺激剤にB細胞を接触させるステップを含み得る。例えば、図4の方法400のステップ460を参照されたい。刺激剤は、CD40アゴニスト、例えば、CD40L、その誘導体、又は抗CD40抗体であり得る。そのため、刺激剤は、CD40L+支持細胞を含み得るか、それから本質的になり得るか、又はそれからなり得る。CD40L+支持細胞は、T細胞(例えば、ジャーカットD1.1細胞)又はその派生物であり得る。代替的に、支持細胞は、CD40L発現構築物でトランスフェクト/トランスフォームされた細胞株(例えば、NIH-3T3細胞)であり得る。刺激剤は、トール様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、TLR9アゴニスト)を更に含む。TLRアゴニストは、例えば、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、CpG2006)であり得る。CpGオリゴヌクレオチドは、約1マイクログラム/mL~約20マイクログラム/mL(例えば、約1.5~約15マイクログラム/mL、約2.0~約10マイクログラム/mL、又は約2.5~約5.0マイクログラム/mL)の濃度で使用可能である。B細胞は、1~10日間(例えば、2~8日間、3~7日間、又は4~6日間)にわたり刺激剤に接触させることが可能である(例えば、実質的に連続的に又は周期的/間欠的に)。
【0089】
癌細胞関連抗原に特異的に結合する抗体を発現するB細胞の検出は、B細胞増殖を促進する1種以上の成長誘導剤を含む培養培地にB細胞を提供するステップを更に含み得る。1種以上の成長誘導剤は、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-21、及びBAFFの群から選択される少なくとも1種の作用剤を含み得る。IL-2及び/又はIL-4は、約10ng/mL~約1マイクログラム/mLの濃度で提供可能である。IL-6、IL-10、及び/又はIL-21は、約10ng/mL~約100ng/mLの濃度で提供可能である。BAFFは、約10ng/mL~約50ng/mLの濃度で提供可能である。特定の実施形態では、培養培地は、1~10日間(例えば、2~8日間、3~7日間、又は4~6日間)にわたりB細胞に提供される。培養培地は、刺激剤(例えば、CD40アゴニスト及び/又はTLRアゴニスト)を含み得る。そのため、例えば、B細胞への培養培地の提供は、B細胞と活性化剤との接触と同時に行い得る。特定の実施形態では、B細胞リンパ球と刺激剤とを接触させるステップ及びB細胞リンパ球に培養培地を提供するステップは、時間をオーバーラップさせて(例えば、実質的に同一の時間にわたり)行われる。そのほか、他の任意選択的なステップとして、マイクロ流体デバイス内でB細胞を培養してクローン集団にし得る。かかる培養は、例えば、約2~3日間にわたり及び/又は細胞数が約8~20細胞になるまで行い得る。
【0090】
III.マイクロ流体デバイス
A.マイクロ流体デバイス用語
幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、「掃引」領域及び「非掃引」領域を含み得る。拡散を可能とするが掃引領域と非掃引領域との間で培地が実質的にノーフローとなるように流体接続が構造化される限り、非掃引領域は掃引領域に流体接続可能である。そのため、マイクロ流体デバイスは、掃引領域と非掃引領域との間で実質的に拡散流体連通のみを可能にしつつ掃引領域内の培地のフローから非掃引領域を実質的に分離するように構造化可能である。
【0091】
特定の生体物質(例えば、抗体等のタンパク質)を産生する生物学的微小物体(例えば、生体細胞)の能力は、かかるマイクロ流体デバイスでアッセイ可能である。例えば、対象のアナライト(抗体等)の産生に関してアッセイされる生物学的微小物体(B細胞等)を含むサンプル材料は、マイクロ流体デバイスの掃引領域内にロードし得る。生物学的微小物体のうち特定の特徴を有するものを選択し、非掃引領域内に配置することが可能である。次いで、残留サンプル材料を掃引領域から流出させ、アッセイ材料を掃引領域に流入させることが可能である。選択された生物学的微小物体は非掃引領域内にあるので、選択された生物学的微小物体は、残留サンプル材料の流出やアッセイ材料の流入の影響を実質的に受けない。選択された生物学的微小物体は、対象のアナライトの産生を可能にし得る。この場合、対象のアナライトは、非掃引領域から掃引領域内に拡散可能であり、掃引領域では、対象のアナライトは、アッセイ材料と反応して局在化された検出可能な反応を引き起こすことが可能であり、各反応は、特定の非掃引領域に関連付け可能である。検出された反応に関連付けられる任意の非掃引領域を分析して、非掃引領域内のどの生物学的微小物体(もしあれば)が対象のアナライトの十分なプロデューサーであるかを決定することが可能である。
【0092】
B.マイクロ流体デバイスを含むシステム
図1Aは、インビトロで癌由来B細胞を単離又はスクリーニングすることに使用することができるマイクロ流体デバイス100及びシステム150の例を示す。カバー110を一部切り欠き、マイクロ流体デバイス100内の部分図を提供するマイクロ流体デバイス100の斜視図を示す。マイクロ流体デバイス100は、一般に、流路106を含むマイクロ流体回路120を含み、流路106を通って流体培地180が流れることができ、任意選択的に1つ又は複数の微小物体(図示せず)をマイクロ流体回路120内及び/又はマイクロ流体回路120を通して搬送する。1つのマイクロ流体回路120が図1Aに示されているが、適するマイクロ流体デバイスは、複数(例えば、2又は3個)のそのようなマイクロ流体回路を含むことができる。それに関係なく、マイクロ流体デバイス100はナノ流体デバイスであるように構成され得る。図1Aに示されるように、マイクロ流体回路120は、複数のマイクロ流体隔離チャンバ124、126、128、及び130を含み得、ここで、各隔離チャンバは、流路106に流体接続する1つ又は複数の開口部を有し得る。図1Aのデバイスの幾つかの実施形態では、隔離チャンバは、流路106と流通する1つのみの開口部を有し得る。更に以下で考察するように、マイクロ流体隔離チャンバは、培地180が流路106を通って流れているときであっても、マイクロ流体デバイス100等のマイクロ流体デバイスに微小物体を保持するように最適化された様々な特徴及び構造を含む。しかし、上記を参照する前に、マイクロ流体デバイス100及びシステム150の概説を提供する。
【0093】
図1Aに概して示されるように、マイクロ流体回路120はエンクロージャ102により画定される。エンクロージャ102は異なる構成で物理的に構造化することができるが、図1Aに示される例では、エンクロージャ102は、支持構造体104(例えば、基部)、マイクロ流体回路構造108、及びカバー110を含むものとして示されている。支持構造体104、マイクロ流体回路構造108、及びカバー110は、互いに取り付けることができる。例えば、マイクロ流体回路構造108は、支持構造体104の内面109に配置することができ、カバー110は、マイクロ流体回路構造108を覆って配置することができる。支持構造体104及びカバー110と一緒に、マイクロ流体回路構造108は、マイクロ流体回路120の要素を画定することができる。
【0094】
図1Aに示されるように、支持構造体104は、マイクロ流体回路120の下部にあり得、カバー110はマイクロ流体回路120の上部にあり得る。代替的に、支持構造体104及びカバー110は、他の向きで構成され得る。例えば、支持構造体104は、マイクロ流体回路120の上部にあり得、カバー110はマイクロ流体回路120の下部にあり得る。それに関係なく、それぞれがエンクロージャ102内又は外への通路を含む1つ又は複数のポート107があり得る。通路の例としては、弁、ゲート、貫通孔等が挙げられる。示されるように、ポート107は、マイクロ流体回路構造108のギャップにより作られる貫通孔である。しかし、ポート107は、カバー110等のエンクロージャ102の他の構成要素に配置することができる。1つのみのポート107が図1Aに示されているが、マイクロ流体回路120は2つ以上のポート107を有することができる。例えば、流体がマイクロ流体回路120に入るための流入口として機能する第1のポート107があり得、流体がマイクロ流体回路120を出るための流出口として機能する第2のポート107があり得る。ポート107が流入口として機能するか、それとも流出口として機能するかは、流体が流路106を通って流れる方向に依存し得る。
【0095】
支持構造体104は、1つ又は複数の電極(図示せず)と、基板又は複数の相互接続された基板を含むことができる。例えば、支持構造体104は、1つ又は複数の半導体基板を含むことができ、各半導体基板は電極に電気的に接続される(例えば、半導体基板の全て又はサブセットは、1つの電極に電気的に接続することができる)。支持構造体104は、プリント回路基板組立体(「PCBA」)を更に含むことができる。例えば、半導体基板はPCBA上に搭載することができる。
【0096】
マイクロ流体回路構造108は、マイクロ流体回路120の回路要素を画定することができる。そのような回路要素は、マイクロ流体回路120に流体が充填される場合、流体的に相互接続することができる、フロー領域(1つ又は複数のフローチャネルを含み得る)、チャンバ、ペン、トラップ等の空間又は領域を含むことができる。図1Aに示されるマイクロ流体回路120では、マイクロ流体回路108は、枠114及びマイクロ流体回路材料116を含む。枠114は、マイクロ流体回路材料116を部分的又は完全に囲むことができる。枠114は、例えば、マイクロ流体回路材料116を実質的に囲む比較的剛性の構造であり得る。例えば、枠114は金属材料を含むことができる。
【0097】
マイクロ流体回路材料116には、キャビティ等をパターニングして、マイクロ流体回路120の回路要素及び相互接続を画定することができる。マイクロ流体回路材料116は、ガス透過可能であり得る可撓性ポリマー(例えば、ゴム、プラスチック、エラストマー、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)等)等の可撓性材料を含むことができる。マイクロ流体回路材料116を構成することができる材料の他の例としては、成形ガラス、シリコーン(フォトパターニング可能シリコーン又は「PPS」)等のエッチング可能材料、フォトレジスト(例えば、SU8)等が挙げられる。幾つかの実施形態では、そのような材料 - したがって、マイクロ流体回路材料116 - は、剛性及び/又はガスを実質的に不透過であり得る。それに関係なく、マイクロ流体回路材料116は、支持構造体104上及び枠114内部に配置することができる。
【0098】
カバー110は、枠114及び/又はマイクロ流体回路材料116の一体部分であり得る。代替的に、カバー110は、図1Aに示されるように、構造的に別個の要素であり得る。カバー110は、枠114及び/又はマイクロ流体回路材料116と同じ又は異なる材料を含むことができる。同様に、支持構造体104は、示されるように枠114若しくはマイクロ流体回路材料116とは別個の構造であってもよく、又は枠114若しくはマイクロ流体回路材料116の一体部分であってもよい。同様に、枠114及びマイクロ流体回路材料116は、図1Aに示されるように別個の構造であってもよく、又は同じ構造の一体部分であってもよい。
【0099】
幾つかの実施形態では、カバー110は剛性材料を含むことができる。剛性材料は、ガラス又は同様との特性を有する材料であり得る。幾つかの実施形態では、カバー110は変形可能材料を含むことができる。変形可能材料は、PDMS等のポリマーであり得る。幾つかの実施形態では、カバー110は、剛性材料及び変形可能材料の両方を含むことができる。例えば、カバー110の1つ又は複数の部分(例えば、隔離チャンバ124、126、128、130上に位置する1つ又は複数の部分)は、カバー110の剛性材料と界面を接する変形可能材料を含むことができる。幾つかの実施形態では、カバー110は1つ又は複数の電極を更に含むことができる。1つ又は複数の電極は、ガラス又は同様の絶縁材料でコーティングし得る、インジウム-錫-酸化物(ITO)等の導電性酸化物を含むことができる。代替的に、1つ又は複数の電極は、ポリマー(例えば、PDMS)等の変形可能ポリマーに埋め込まれた単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、ナノワイヤ、導電性ナノ粒子のクラスタ、又はそれらの組合せ等の可撓性電極であり得る。マイクロ流体デバイスで使用することができる可撓性電極は、例えば、米国特許出願公開第2012/0325665号(Chiouら)に記載されており、この内容は参照により本明細書に援用される。幾つかの実施形態では、カバー110は、細胞の接着、生存、及び/又は成長を支持するように変更することができる(例えば、マイクロ流体回路120に向かって内側に面する表面の全て又は部分を調整することにより)。変更は、合成ポリマー又は天然ポリマーのコーティングを含み得る。幾つかの実施形態では、カバー110及び/又は支持構造体104は、光を透過することができる。カバー110は、ガス透過可能な少なくとも1つの材料(例えば、PDMS又はPPS)を含むこともできる。
【0100】
図1Aは、マイクロ流体デバイス100等のマイクロ流体デバイスを動作させ制御するシステム150も示す。システム150は、電源192、撮像デバイス(撮像モジュール164内に組み込まれ、デバイス194自体は図1Aに示されていない)、及び傾斜デバイス190(傾斜モジュール166の部分であり、デバイス190は図1Aに示されていない)を含む。
【0101】
電源192は、電力をマイクロ流体デバイス100及び/又は傾斜デバイス190に提供し、バイアス電圧又は電流を必要に応じて提供することができる。電源192は、例えば、1つ又は複数の交流(AC)及び/又は直流(DC)電圧源又は電流源を含むことができる。撮像デバイス(以下で述べられる撮像モジュール164の一部)は、マイクロ流体回路120内部の画像を捕捉する、デジタルカメラ等のデバイスを含むことができる。幾つかの場合、撮像デバイスは、高速フレームレート及び/又は高感度(例えば、低光用途用)を有する検出器を更に含む。撮像デバイスは、刺激放射線及び/又は光線をマイクロ流体回路120内に向け、マイクロ流体回路120(又はマイクロ流体回路120内に含まれる微小物体)から反射されるか、又は発せられる放射線及び/又は光線を収集する機構を含むこともできる。発せられる光線は可視スペクトル内であり得、例えば、蛍光放射を含み得る。反射光線は、LED又は水銀灯(例えば、高圧水銀灯)若しくはキセノンアーク灯等の広域スペクトル灯から発せられた反射放射を含み得る。図3Bに関して考察するように、撮像デバイスは顕微鏡(又は光学縦列)を更に含み得、これは接眼レンズを含んでもよく、又は含まなくてもよい。
【0102】
システム150は、1つ又は複数の回転軸の周りでマイクロ流体デバイス100を回転させるように構成される傾斜デバイス190(以下で述べられる傾斜モジュール166の一部)を更に含む。幾つかの実施形態では、傾斜デバイス190は、マイクロ流体デバイス100(したがって、マイクロ流体回路120)を水平向き(すなわち、x軸及びy軸に相対して0°)、垂直向き(すなわち、x軸及び/又はy軸に相対して90°)、又はそれらの間の任意の向きで保持することができるように、少なくとも1つの軸の周りでマイクロ流体回路120を含むエンクロージャ102を支持及び/又は保持するように構成される。軸に相対するマイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)の向きは、本明細書では、マイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)の「傾斜」と呼ばれる。例えば、傾斜デバイス190は、x軸に相対して0.1°、0.2°、0.3°、0.4°、0.5°、0.6°、0.7°、0.8°、0.9°、1°、2°、3°、4°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、90°、又はそれらの間の任意の度数でマイクロ流体デバイス100を傾斜させることができる。水平向き(したがって、x軸及びy軸)は、重力により定義される垂直軸に垂直なものとして定義される。傾斜デバイスは、マイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)をx軸及び/又はy軸に相対して90°よりも大きい任意の角度に傾斜させるか、又はマイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)をx軸若しくはy軸に相対して180°に傾斜させて、マイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)を真逆にすることもできる。同様に、幾つかの実施形態では、傾斜デバイス190は、流路106又はマイクロ流体回路120の何らかの他の部分により定義される回転軸の周りでマイクロ流体デバイス100(及びマイクロ流体回路120)を傾斜させる。
【0103】
幾つかの場合、マイクロ流体デバイス100は、流路106が1つ又は複数の隔離チャンバの上方又は下方に位置するように、垂直向きに傾斜する。「上方」という用語は、本明細書で使用される場合、流路106が、重力により定義される垂直軸上で1つ又は複数の隔離チャンバよりも高く位置する(すなわち、流路106の上方の隔離チャンバ内の物体が流路内の物体よりも高い重力位置エネルギーを有する)ことを示す。「下方」という用語は、本明細書で使用される場合、流路106が、重力により定義される垂直軸上で1つ又は複数の隔離チャンバよりも下に位置する(すなわち、流路106の下方の隔離チャンバ内の物体が流路内の物体よりも低い重力位置エネルギーを有する)ことを示す。
【0104】
幾つかの場合、傾斜デバイス190は、流路106と平行な軸の周りでマイクロ流体デバイス100を傾斜させる。更に、マイクロ流体デバイス100は、流路106が、隔離チャンバの真上又は真下に配置されずに、1つ又は複数の隔離チャンバの上方又は下方に配置されるように、90°未満の角度に傾斜することができる。他の場合、傾斜デバイス190は、流路106に直交する軸の周りでマイクロ流体デバイス100を傾斜させる。更に他の場合、傾斜デバイス190は、流路106に平行でもなく直交もしない軸の周りでマイクロ流体デバイス100を傾斜させる。
【0105】
システム150は培地源178を更に含むことができる。培地源178(例えば、容器、リザーバ等)は、それぞれが異なる流体培地180を保持する複数のセクション又は容器を含むことができる。したがって、培地源178は、図1Aに示されるように、マイクロ流体デバイス100の外部にある、マイクロ流体デバイス100とは別個のデバイスであり得る。代替的に、培地源178は、全体的又は部分的に、マイクロ流体デバイス100のエンクロージャ102内部に配置することができる。例えば、培地源178は、マイクロ流体デバイス100の部分であるリザーバを含むことができる。
【0106】
図1Aは、システム150の一部を構成し、マイクロ流体デバイス100と併せて利用することができる制御及び監視機器152の例の簡易ブロック図表現も示す。示されるように、そのような制御及び監視機器152の例は、培地源178を制御する培地モジュール160と、マイクロ流体回路120での微小物体(図示せず)及び/又は培地(例えば、培地の液滴)の移動及び/又は選択を制御する原動モジュール162と、画像(例えば、デジタル画像)を捕捉する撮像デバイス(例えば、カメラ、顕微鏡、光源、又はそれらの任意の組合せ)を制御する撮像モジュール164と、傾斜デバイス190を制御する傾斜モジュール166とを含むマスタコントローラ154を含む。制御機器152は、マイクロ流体デバイス100に関する他の機能を制御、監視、又は実行する他のモジュール168を含むこともできる。示されるように、機器152は、表示デバイス170及び入/出力デバイス172を更に含むことができる。
【0107】
マスタコントローラ154は、制御モジュール156及びデジタルメモリ158を含むことができる。制御モジュール156は、例えば、メモリ158内に非一時的データ又は信号として記憶される機械実行可能命令(例えば、ソフトウェア、ファームウェア、ソースコード等)に従って動作するように構成されるデジタルプロセッサを含むことができる。代替的に又は追加として、制御モジュール156は、ハードワイヤードデジタル回路及び/又はアナログ回路を含むことができる。培地モジュール160、原動モジュール162、撮像モジュール164、傾斜モジュール166、及び/又は他のモジュール168は、同様に構成され得る。したがって、マイクロ流体デバイス100又は任意の他のマイクロ流体装置に関して実行されるものとして本明細書で考察される機能、プロセス、行動、動作、又はプロセスのステップは、上述したように構成されるマスタコントローラ154、培地モジュール160、原動モジュール162、撮像モジュール164、傾斜モジュール166、及び/又は他のモジュール168の任意の1つ又は複数により実行され得る。同様に、マスタコントローラ154、培地モジュール160、原動モジュール162、撮像モジュール164、傾斜モジュール166、及び/又は他のモジュール168は、通信可能に結合されて、本明細書において考察される任意の機能、プロセス、行動、動作、又はステップで使用されるデータを送受信し得る。
【0108】
培地モジュール160は培地源178を制御する。例えば、培地モジュール160は、培地源178を制御して、選択された流体培地180をエンクロージャ102に入れる(例えば、流入口107を介して)ことができる。培地モジュール160は、エンクロージャ102からの培地の取り出し(例えば、流出口(図示せず)を通して)を制御することもできる。したがって、1つ又は複数の培地を選択的にマイクロ流体回路120に入れ、マイクロ流体回路120から搬出することができる。培地モジュール160は、マイクロ流体回路120内部の流路106での流体培地180のフローを制御することもできる。例えば、幾つかの実施形態では、培地モジュール160は、傾斜モジュール166が傾斜デバイス190に所望の傾斜角までマイクロ流体デバイス100を傾斜させる前に、流路106内及びエンクロージャ102を通る培地180のフローを停止させる。
【0109】
原動モジュール162は、マイクロ流体回路120での微小物体(図示せず)の選択、捕捉、及び移動を制御するように構成され得る。図1B及び図1Cに関して後述するように、エンクロージャ102は、誘電泳動(DEP)構成、光電子ピンセット(OET)構成、及び/又は光電子ウェッティング(OEW)構成(図1Aに示されず)を含むことができ、原動モジュール162は、電極及び/又はトランジスタ(例えば、フォトトランジスタ)のアクティブ化を制御して、流路106及び/又は隔離チャンバ124、126、128、130で微小物体(図示せず)及び/又は培地の液滴(図示せず)を選択し移動させることができる。
【0110】
撮像モジュール164は撮像デバイスを制御することができる。例えば、撮像モジュール164は、撮像デバイスから画像データを受信し、処理することができる。撮像デバイスからの画像データは、撮像デバイスにより捕捉された任意のタイプの情報を含むことができる(例えば、微小物体、培地の液滴、蛍光標識等の標識の蓄積の有無等)。撮像デバイスにより捕捉された情報を使用して、撮像モジュール164は、物体(例えば、微小物体、培地の液滴)の位置及び/又はマイクロ流体デバイス100内のそのような物体の移動速度を更に計算することができる。
【0111】
傾斜モジュール166は、傾斜デバイス190の傾斜移動を制御することができる。代替的に又は追加として、傾斜モジュール166は、重力を介して1つ又は複数の隔離チャンバへの微小物体の移送を最適化するように、傾斜率及びタイミングを制御することができる。傾斜モジュール166は、撮像モジュール164と通信可能に結合されて、マイクロ流体回路120での微小物体及び/又は培地の液滴の移動を記述するデータを受信する。このデータを使用して、傾斜モジュール166は、マイクロ流体回路120の傾斜を調整して、マイクロ流体回路120内で微小物体及び/又は培地の液滴が移動する率を調整し得る。傾斜モジュール166は、このデータを使用して、マイクロ流体回路120内での微小物体及び/又は培地の液滴の位置を繰り返し調整することもできる。
【0112】
図1Aに示される例では、マイクロ流体回路120は、マイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ124、126、128、130を含むものとして示されている。各ペンは、チャネル122への開口部を含むが、ペンがペン内部の微小物体を流体培地180及び/又はチャネル122の流路106又は他のペン内の微小物体から実質的に分離することができるように、その他では閉じられている。隔離チャンバの壁は、ベースの内面109からカバー110の内面まで延び、エンクロージャを提供する。マイクロ流体チャネル122へのペンの開口部は、フロー106がペン内に向けられないように、フロー106に対して傾斜して向けられる。フローは、ペンの開口部の平面に対して接線方向にあり得るか又は直交し得る。幾つかの場合、ペン124、126、128、130は、1つ又は複数の微小物体をマイクロ流体回路120内に物理的に囲い入れるように構成される。本開示による隔離チャンバは、以下に詳細に考察し示すように、DEP、OET、OEW、流体フロー、及び/又は重力との併用に最適化された様々な形状、表面、及び特徴を含むことができる。
【0113】
マイクロ流体回路120は、任意の数のマイクロ流体隔離チャンバを含み得る。5つの隔離チャンバが示されているが、マイクロ流体回路120は、より少数又はより多数の隔離チャンバを有し得る。ここで、「隔離チャンバ」及び「隔離ペン」は、互換可能に使用される。示されるように、マイクロ流体回路120のマイクロ流体隔離チャンバ124、126、128、及び130は、隣接B細胞からあるB細胞を単離するように、細胞特異的な抗体分泌を検出するに当たり有用な1つ又は複数の利点を提供し得る異なる特徴及び形状をそれぞれ含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体回路120は、複数の同一のマイクロ流体隔離チャンバを含む。
【0114】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体回路120は、複数のマイクロ流体隔離チャンバを含み、その場合、隔離チャンバの2つ以上は、細胞の異なる種類の維持おいて異なる利点を提供する異なる構造及び/又は特徴を含む。非限定的な一例として、あるタイプのペン内にB細胞を維持しながら、異なるタイプのペン内に癌細胞を維持することを挙げることができる。
【0115】
図1Aに示される実施形態では、1つのチャネル122及び流路106が示される。しかし、他の実施形態は、それぞれが流路106を含むように構成される複数のチャネル122を含み得る。マイクロ流体回路120は、流路106及び流体培地180と流体連通する流入弁又はポート107を更に含み、それにより、流体培地180は、流入口107を介してチャネル122にアクセスすることができる。幾つかの場合、流路106は1つの経路を含む。幾つかの場合、1つの経路はジグザグパターンで配置され、それにより、流路106は、交互になった方向で2回以上にわたってマイクロ流体デバイス100にわたり移動する。
【0116】
幾つかの場合、マイクロ流体回路120は、複数の平行チャネル122及び流路106を含み、各流路106内の流体培地180は同じ方向に流れる。幾つかの場合、各流路106内の流体培地は、順方向又は逆方向の少なくとも一方で流れる。幾つかの場合、複数の隔離チャンバは、隔離チャンバが標的微小物体と並列に配置されることができるように構成される(例えば、チャネル122に相対して)。
【0117】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体回路120は、1つ又は複数の微小物体トラップ132を更に含む。トラップ132は、一般に、チャネル122の境界を形成する壁に形成され、マイクロ流体隔離チャンバ124、126、128、130の1つ又は複数の開口部の逆に位置し得る。幾つかの実施形態では、トラップ132は、流路106から1つの微小物体を受け取り、又は捕捉するように構成される。幾つかの実施形態では、トラップ132は、流路106から複数の微小物体を受け取り、又は捕捉するように構成される。幾つかの場合、トラップ132は、1つの標的微小物体の容積に概ね等しい容積を含む。
【0118】
トラップ132は、標的微小物体のトラップ132へのフローを支援するように構成される開口部を更に含み得る。幾つかの場合、トラップ132は、1つの標的微小物体の寸法に概ね等しい高さ及び幅を有する開口部を含み、それにより、より大きい微小物体が微小物体トラップに入らないようにされる。トラップ132は、トラップ132内への標的微小物体の保持を支援するように構成される他の特徴を更に含み得る。幾つかの場合、トラップ132は、微小流体隔離チャンバの開口部と位置合わせされ、微小流体隔離チャンバの開口部に関してチャネル122の逆側に配置され、それにより、マイクロ流体チャネル122に平行な軸の周りでマイクロ流体デバイス100を傾斜されると、捕捉された微小物体は、微小物体を隔離ペンの開口部に落とす軌道でトラップ132を出る。幾つかの場合、トラップ132は、標的微小物体よりも小さく、トラップ132を通るフローを促進し、それによりトラップ132内への微小物体の捕捉確率を増大させるサイド通路134を含む。
【0119】
幾つかの実施形態では、誘電泳動(DEP)力は、1つ又は複数の電極(図示せず)を介して流体培地180にわたり適用されて(例えば、流路及び/又は隔離チャンバにおいて)、内部に配置された微小物体の操作、輸送、分離、及びソートを行う。例えば、幾つかの実施形態では、DEP力は、マイクロ流体回路120の1つ又は複数の部分に適用されて、1つの微小物体を流路106から所望のマイクロ流体隔離チャンバに輸送する。幾つかの実施形態では、DEP力を使用して、隔離チャンバ(例えば、隔離ペン124、126、128、又は130)内の微小物体が隔離ペンから変位しないようにする。更に、幾つかの実施形態では、DEP力を使用して、本開示の形態により前に収集された微小物体を隔離チャンバから選択的に取り出す。幾つかの実施形態では、DEP力は、光電子ピンセット(OET)力を含む。
【0120】
他の実施形態では、光電子ウェッティング(OEW)力が、1つ又は複数の電極(図示せず)を介してマイクロ流体デバイス100の支持構造体104(及び/又はカバー110)での1つ又は複数の位置(例えば、流路及び/又は隔離チャンバの画定に役立つ位置)に適用されて、マイクロ流体回路120に配置された液滴の操作、輸送、分離、及びソートを行う。例えば、幾つかの実施形態では、OEW力は支持構造体104(及び/又はカバー110)の1つ又は複数の位置に適用されて、1つの液滴を流路106から所望のマイクロ流体隔離チャンバに輸送する。幾つかの実施形態では、OEW力を使用して、隔離チャンバ(例えば、隔離チャンバ124、126、128、又は130)内の液滴が隔離ペンから変位しないようにする。更に、幾つかの実施形態では、OEW力を使用して、本開示の形態により前に収集された液滴を隔離チャンバから選択的に取り出す。
【0121】
幾つかの実施形態では、DEP力及び/又はOEW力は、フロー及び/又は重力等の他の力と組み合わせられて、マイクロ流体回路120内の微小物体及び/又は液滴の操作、輸送、分離、及びソートを行う。例えば、エンクロージャ102は傾斜して(例えば、傾斜デバイス190により)、流路106及び流路106内に配置された微小物体をマイクロ流体隔離チャンバの上に位置決めすることができ、重力は、微小物体及び/又は液滴をチャンバ内に輸送することができる。幾つかの実施形態では、DEP力及び/又はOEW力は、他の力の前に適用することができる。他の実施形態では、DEP力及び/又はOEW力は、他の力の後に適用することができる。更に他の場合、DEP力及び/又はOEW力は、他の力と同時に又は他の力と交互に適用することができる。
【0122】
図1B図1C及び図2A図2Hは、本開示の形態に使用することができるマイクロ流体デバイスの様々な実施形態を示す。図1Bは、マイクロ流体デバイス200が光学作動動電学的デバイスとして構成される実施形態を示す。光電子ピンセット(OET)構成を有するデバイス及び光電子ウェッティング(OEW)構成を有するデバイスを含め、様々な光学作動動電学的デバイスが当技術分野で既知である。適するOET構成の例は、以下の米国特許文献に示されており、各文献は全体的に参照により本明細書に援用される:米国特許第RE44,711号(Wuら)(元々は米国特許第7,612,355号として発行された);及び米国特許第7,956,339号(Ohtaら)。OEW構成の例は、米国特許第6,958,132号(Chiouら)及び米国特許出願公開第2012/0024708号(Chiouら)に示されており、これらは両方とも全体的に参照により本明細書に援用される。光学作動動電的デバイスの更に別の例は、OET/OEW結合構成を含み、その例は、米国特許出願公開第20150306598号(Khandrosら)及び同第20150306599号(Khandrosら)並びにそれらの対応するPCT公報である国際公開第2015/164846号及び国際公開第2015/164847号に示されており、これらは全て全体的に参照により本明細書に援用される。
【0123】
B細胞、T細胞、又は癌細胞のような癌由来細胞を配置し、培養し、及び/又は監視することができる隔離ペンを有するマイクロ流体デバイスの例は、例えば、米国特許出願公開第2014/0116881号(出願番号14/060,117、2013年10月22日出願)、米国特許出願公開第2015/0151298号(出願番号14/520,568、2014年10月22日出願)、及び米国特許出願公開第2015/0165436号(出願番号14/521,447、2014年10月22日出願)に記載されており、これらはそれぞれ全体的に参照により援用される。米国特許出願公開第14/520,568号及び同第14/521,447号は、マイクロ流体デバイスで培養された細胞の分泌物を分析する例示的な方法についても記載している。上記の各出願は、光電子ツイーザ(OET)等の誘電泳動(DEP)力を生成するように構成されるか、又は光電子ウェッティング(OEW)を提供するように構成されるマイクロ流体デバイスを更に記載している。例えば、米国特許出願公開第2014/0116881号の図2に示される光電子ツイーザデバイスは、本開示の実施形態で利用して、個々の生物学的微小物体又は生物学的微小物体のグループを選択し移動させることができるデバイスの例である。
【0124】
C.原動マイクロ流体デバイス構成
上述したように、システムの制御及び監視機器は、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体回路において微小物体又は液滴等の物体を選択し移動させる原動モジュールを含むことができる。マイクロ流体デバイスは、移動される物体のタイプ及び他の考慮事項に応じて様々な原動構成を有することができる。例えば、誘電泳動(DEP)構成を利用して、マイクロ流体回路において微小物体を選択し移動させることができる。したがって、マイクロ流体デバイス100の支持構造体104及び/又はカバー110は、マイクロ流体回路120内の流体培地180内の微小物体に対してDEP力を選択的に誘導し、それにより個々の微小物体又は微小物体群の選択、捕捉、及び/又は移動を行うDEP構成を含むことができる。代替的に、マイクロ流体デバイス100の支持構造体104及び/又はカバー110は、マイクロ流体回路120内の流体培地180内の液滴に対して電子ウェッティング(EW)力を選択的に誘導し、それにより個々の液滴又は液滴群の選択、捕捉、及び/又は移動を行う電子ウェッティング(EW)構成を含むことができる。
【0125】
DEP構成を含むマイクロ流体デバイス200の一例を図21B及び図1Cに示す。簡潔にするために、図1B及び図1Cは、領域/チャンバ202を有するマイクロ流体デバイス200のエンクロージャ102の部分の側面断面図及び上面断面図をそれぞれ示すが、領域/チャンバ202が、成長チャンバ、隔離ペン、フロー領域、又はフローチャネル等のより詳細な構造を有する流体回路要素の部分であり得ることを理解されたい。更に、マイクロ流体デバイス200は他の流体回路要素を含み得る。例えば、マイクロ流体デバイス200は、マイクロ流体デバイス100に関して本明細書に記載される等の複数の成長チャンバ、或いは隔離ペン及び/又は1つ若しくは複数のフロー領域又はフローチャネルを含むことができる。DEP構成は、マイクロ流体デバイス200の任意のそのような流体回路要素に組み込み得るか、又はその部分を選択し得る。上記又は下記の任意のマイクロ流体デバイス構成要素及びシステム構成要素がマイクロ流体デバイス200内に組みこまれ得、及び/又はマイクロ流体デバイス200と組み合わせて使用し得ることを更に理解されたい。例えば、培地モジュール160、原動モジュール162、撮像モジュール164、傾斜モジュール166、及び他のモジュール168の1つ又は複数を含む上述した制御及び監視機器152を含むシステム150は、マイクロ流体デバイス200と併用し得る。
【0126】
図1Bにおいて見られるように、マイクロ流体デバイス200は、下部電極204及び下部電極204に重なる電極活性化基板206を有する支持構造体104と、上部電極210を有するカバー110とを含み、上部電極210は下部電極204から離間される。上部電極210及び電極活性化基板206は、領域/チャンバ202の両面を画定する。したがって、領域/チャンバ202に含まれる培地180は、上部電極210と電極活性化基板206との間に抵抗接続を提供する。下部電極204と上部電極210との間に接続され、領域/チャンバ202でのDEP力の生成のために必要に応じて電極間にバイアス電圧を生成するように構成される電源212も示されている。電源212は、例えば、交流(AC)電源であり得る。
【0127】
特定の実施形態では、図1B及び図1Cに示されるマイクロ流体デバイス200は、光学作動DEP構成を有することができる。したがって、原動モジュール162により制御し得る光源216からの光218の変更パターンは、電極活性化基板206の内面208の領域214においてDEP電極の変更パターンを選択的に活性化又は非活性化することができる。(以下ではDEP構成を有するマイクロ流体デバイスの領域214を「DEP電極領域」と呼ぶ)。図1Cに示されるように、電極活性化基板206の内面208に向けられる光パターン218は、正方形等のパターンで、選択されたDEP電極領域214a(白色で示される)を照明することができる。照明されないDEP電極領域214(斜線が付される)を以下では「暗」DEP電極領域214と呼ぶ。DEP電極活性化基板206を通る相対電気インピーダンス(すなわち、下部電極204から、フロー領域106において培地180と界面を接する電極活性化基板206の内面208まで)は、各暗DEP電極領域214での領域/チャンバ202において培地180を通る(すなわち、電極活性化基板206の内面208からカバー110の上部電極210まで)相対電気インピーダンスよりも大きい。しかし、照明DEP電極領域214aは、各照明DEP電極領域214aでの領域/チャンバ202での培地180を通る相対インピーダンス未満である電極活性化基板206を通る相対インピーダンスの低減を示す。
【0128】
電源212が活性化されている場合、上記のDEP構成は、照明DEP電極領域214aと隣接する暗DEP電極領域214との間に流体培地180内で電場勾配を生じさせ、次に、電場勾配は、流体培地180内の付近の微小物体(図示せず)を引き寄せるか、又は排斥する局所DEP力を生成する。したがって、流体培地180内の微小物体を引き寄せるか、又は排斥するDEP電極は、光源216からマイクロ流体デバイス200に投射される光パターン218を変更することにより、領域/チャンバ202の内面208での多くの異なるそのようなDEP電極領域214において選択的に活性化及び非活性化することができる。DEP力が付近の微小物体を引き寄せるか、それとも排斥するかは、電源212の周波数並びに培地180及び/又は微小物体(図示せず)の誘電特性等のパラメータに依存し得る。
【0129】
図1Cに示される照明DEP電極領域214aの正方形パターン220は単なる例である。マイクロ流体デバイス200に投射される光パターン218により、任意のパターンのDEP電極領域214を照明する(それにより活性化する)ことができ、照明/活性化されるDEP電極領域214のパターンは、光パターン218を変更又は移動させることにより繰り返し変更することができる。
【0130】
幾つかの実施形態では、電極活性化基板206は、光伝導性材料を含むか、又は光導電性材料からなることができる。そのような実施形態では、電極活性化基板206の内面208は、特徴を有さないことができる。例えば、電極活性化基板206は、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)の層を含むか、又はa-Si:Hの層からなることができる。a-Si:Hは、例えば、約8%~40%の水素を含むことができる(水素原子の数/水素及びケイ素原子の総数に100を掛けたものとして計算)。a-Si:Hの層は厚さ約500nm~約2.0μmを有することができる。そのような実施形態では、DEP電極領域214は、光パターン218により、電極活性化基板206の内面208上の任意の場所に任意のパターンで作成することができる。したがって、DEP電極領域214の数及びパターンは、固定される必要がなく、光パターン218に対応することができる。上述したような光伝導層を含むDEP構成を有するマイクロ流体デバイスの例は、例えば、米国特許第RE44,711号(Wuら)(元々は米国特許第7,612,355号として発行された)に記載されており、その内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0131】
他の実施形態では、電極活性化基板206は、半導体分野で既知等の半導体集積回路を形成する複数のドープ層、絶縁層(又は領域)、及び導電層を含む基板を含むことができる。例えば、電極活性化基板206は、例えば、横型バイポーラフォトトランジスタを含む複数のフォトトランジスタを含むことができ、各フォトトランジスタはDEP電極領域214に対応する。代替的に、電極活性化基板206は、フォトトランジスタスイッチにより制御される電極(例えば、導電性金属電極)を含むことができ、そのような各電極はDEP電極領域214に対応する。電極活性化基板206は、パターンになったそのようなフォトトランジスタ又はフォトトランジスタ制御される電極を含むことができる。パターンは、例えば、図2Bに示される等、行列に配置された実質的に正方形のフォトトランジスタ又はフォトトランジスタ制御される電極のアレイであり得る。代替的に、パターンは、六角形格子を形成する実質的に六角形のフォトトランジスタ又はフォトトランジスタ制御される電極のアレイであり得る。パターンに関係なく、電気回路素子は、電極活性化基板206の内面208におけるDEP電極領域214と下部電極210との間に電気接続を形成することができ、それらの電気接続(すなわち、フォトトランジスタ又は電極)は、光パターン218により選択的に活性化又は非活性化することができる。活性化されない場合、各電気接続は、電極活性化基板206を通る(すなわち、下部電極204から、領域/チャンバ202内の培地180と界面を接する電極活性化電極206の内面208まで)相対インピーダンスが、対応するDEP電極領域214における培地180を通る(すなわち、電極活性化基板206の内面208からカバー110の上部電極210まで)相対インピーダンスよりも大きいような高いインピーダンスを有することができる。しかし、光パターン218内の光により活性化される場合、電極活性化基板206を通る相対インピーダンスは、各照明DEP電極領域214での培地180を通る相対インピーダンス未満であり、それにより、上述したように、対応するDEP電極領域214でのDEP電極を活性化する。したがって、培地180内の微小物体(図示せず)を引き寄せるか、又は排斥するDEP電極は、光パターン218により決まるように、領域/チャンバ202での電極活性化基板206の内面208での多くの異なるDEP電極領域214において選択的に活性化及び非活性化することができる。
【0132】
フォトトランジスタを含む電極活性化基板を有するマイクロ流体デバイスの例は、例えば、米国特許第7,956,339号(Ohtaら)(例えば、図21及び図22に示されるデバイス300並びにその説明を参照されたい)、及び米国特許出願公開第2016/0184821号(Hobbsら)(例えば、その図面全体を通して示されるデバイス200、502、504、600及び700、並びにその説明を参照されたい)に記載されており、このそれぞれの内容全体は参照により本明細書に援用される。フォトトランジスタスイッチにより制御される電極を含む電極活性化基板を有するマイクロ流体デバイスの例は、例えば、米国特許出願公開第2014/0124370号(Shortら)に記載されており(例えば、図面全体を通して示されるデバイス200、400、500、600、及び900並びにその説明を参照されたい)、これらの内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0133】
DEP構成のマイクロ流体デバイスの幾つかの実施形態では、上部電極210はエンクロージャ102の第1の壁(又はカバー110)の一部であり、電極活性化基板206及び下部電極204は、エンクロージャ102の第2の壁(又は支持構造体104)の一部である。領域/チャンバ202は、第1の壁と第2の壁との間にあり得る。他の実施形態では、電極210は第2の壁(又は支持構造体104)の一部であり、電極活性化基板206及び/又は電極210の一方又は両方は、第1の壁(又はカバー110)の一部である。更に、光源216は代替的に、下からエンクロージャ102を照明するのに使用することができる。
【0134】
DEP構成を有する図1B及び図1Cのマイクロ流体デバイス200を用いて、原動モジュール162は、光パターン218をマイクロ流体デバイス200に投射して、微小物体を囲み捕捉するパターン(例えば、正方形パターン220)で電極活性化基板206の内面208のDEP電極領域214aでの第1の組の1つ又は複数のDEP電極を活性化することにより、領域/チャンバ202での培地180内の微小物体(図示せず)を選択することができる。次に、原動モジュール162は、光パターン218をマイクロ流体デバイス200に相対して移動させて、DEP電極領域214での第2の組の1つ又は複数のDEP電極を活性化することにより、インサイチューで生成され捕捉された微小物体を移動させることができる。代替的に、マイクロ流体デバイス200を光パターン218に相対して移動させることができる。
【0135】
他の実施形態では、マイクロ流体デバイス200は、電極活性化基板206の内面208でのDEP電極の光活性化に依存しないDEP構成を有することができる。例えば、電極活性化基板206は、少なくとも1つの電極を含む表面(例えば、カバー110)とは逆に位置する、選択的にアドレス指定可能且つエネルギー付与可能な電極を含むことができる。スイッチ(例えば、半導体基板のトランジスタスイッチ)を選択的に開閉して、DEP電極領域214でのDEP電極を活性化又は非活性化し得、それにより、活性化されたDEP電極の近傍での領域/チャンバ202内の微小物体(図示せず)に対する正味DEP力を生成する。電源212の周波数及び培地(図示せず)及び/又は領域/チャンバ202内の微小物体の誘電特性等の特徴に応じて、DEP力は、付近の微小物体を引き寄せるか、又は排斥することができる。DEP電極の組(例えば、正方形パターン220を形成するDEP電極領域214の組における)を選択的に活性化又は非活性化することにより、領域/チャンバ202における1つ又は複数の微小物体を捕捉し、領域/チャンバ202内で移動させることができる。図1Aの原動モジュール162は、そのようなスイッチを制御し、したがって、DEP電極の個々の電極を活性化及び非活性化して、領域/チャンバ202の周囲の特定の微小物体(図示せず)を選択、捕捉、及び移動させることができる。選択的にアドレス指定可能且つエネルギー付与可能な電極を含むDEP構成を有するマイクロ流体デバイスは、当技術分野で既知であり、例えば、米国特許第6,294,063号(Beckerら)及び同第6,942,776号(Medoro)に記載されており、これらの内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0136】
更なる別例として、マイクロ流体デバイス200は電子ウェッティング(EW)構成を有することができ、EW構成は、DEP構成の代わりであってもよく、又はDEP構成を有する部分とは別個のマイクロ流体デバイス200の部分に配置されてもよい。EW構成は、光電子ウェッティング構成又は誘電体上の電子ウェッティング(EWOD)構成であり得、これらは両方とも当技術分野で既知である。幾つかのEW構成では、支持構造体104は、以下に記載するように、誘電層(図示せず)と下部電極204との間に挟まれた電極活性化基板206を有する。誘電層は、疎水性材料を含むことができ、及び/又は疎水性材料でコーティングすることができる。EW構成を有するマイクロ流体デバイス200の場合、支持構造体104の内面208は、誘電層の内面又はその疎水性コーティングである。
【0137】
誘電層(図示せず)は、1つ又は複数の酸化物層を含むことができ、厚さ約50nm~約250nm(例えば、約125nm~約175nm)を有することができる。特定の実施形態では、誘電層は、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム又は酸化ハフニウム)等の酸化物の層を含むことができる。特定の実施形態では、誘電層は、酸化ケイ素又は窒化物等の金属酸化物以外の誘電材料を含むことができる。厳密な組成及び厚さに関係なく、誘電層は約10kオーム~約50kオームのインピーダンスを有することができる。
【0138】
幾つかの実施形態では、領域/チャンバ202に向かって内側に面した誘電層の表面は、疎水性材料でコーティングされる。疎水性材料は、例えば、フッ素化炭素分子を含むことができる。フッ素化炭素分子の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、TEFLON(登録商標)又はポリ(2,3-ジフルオロメチレニル-ペルフルオロテトラヒドロフラン)(例えば、CYTOP(商標))などのパーフルオロポリマーが挙げられる。疎水性材料を構成する分子は、誘電層の表面に共有結合され得る。例えば、疎水性材料の分子は、シロキサン基、ホスホン酸基、又はチオール基等のリンカーにより、誘電層の表面に共有結合され得る。したがって、幾つかの実施形態では、疎水性材料は、アルキル末端シロキサン、アルキル末端ホスホン酸、又はアルキル末端チオールを含むことができる。アルキル基は長鎖炭化水素(例えば、少なくとも10個の炭素又は少なくとも16個、18個、20個、22個、若しくはそれを超える個数の炭素の鎖を有する)であり得る。代替的に、フッ素化(又はパーフルオロ化)炭素鎖をアルキル基の代わりに使用することができる。したがって、例えば、疎水性材料は、フルオロアルキル末端シロキサン、フルオロアルキル末端ホスホン酸、又はフルオロアルキル末端チオールを含むことができる。幾つかの実施形態では、疎水性コーティングは約10nm~約50nmの厚さを有する。他の実施形態では、疎水性コーティングは厚さ10nm未満(例えば、5nm未満又は約1.5~3.0nm)を有する。
【0139】
幾つかの実施形態では、電子ウェッティング構成を有するマイクロ流体デバイス200のカバー110も同様に疎水性材料(図示せず)でコーティングされる。疎水性材料は、支持構造体104の誘電層のコーティングに使用されるものと同じ疎水性材料であり得、疎水性コーティングは、支持構造体104の誘電層の疎水性コーティングの厚さと略同じである厚さを有することができる。更に、カバー110は、支持構造体104の様式で、誘電層と上部電極210との間に挟まれた電極活性化基板206を含むことができる。電極活性化基板206及びカバー110の誘電層は、電極活性化基板206及び支持構造体104の誘電層と同じ組成及び/又は寸法を有することができる。したがって、マイクロ流体デバイス200は2つの電子ウェッティング表面を有することができる。
【0140】
幾つかの実施形態では、電子活性化基板206は、上述した光伝導性材料等の光伝導性材料を含むことができる。したがって、特定の実施形態では、電極活性化基板206は、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)の層を含むか、又はa-Si:Hの層からなることができる。a-Si:Hは、例えば、約8%~40%の水素を含むことができる(水素原子の総数及びケイ素原子の総数/水素原子の総数に100を掛けたものとして計算)。a-Si:Hの層は厚さ約500nm~約2.0μmを有することができる。代替的に、電子活性化基板206は、上述したように、フォトトランジスタスイッチにより制御される電極(例えば、導電性金属電極)を含むことができる。光電子ウェッティング構成を有するマイクロ流体デバイスは当技術分野で既知であり、及び/又は当技術分野で既知の電極活性化基板を用いて構築することができる。例えば、内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許第6,958,132号(Chiouら)には、a-Si:H等の光伝導性材料を有する光電子ウェッティング構成が開示されており、一方、上記で引用した米国特許出願公開第2014/0124370号(Shortら)には、フォトトランジスタスイッチにより制御される電極を有する電極活性化基板が開示されている。
【0141】
したがって、マイクロ流体デバイス200は光電子ウェッティング構成を有することができ、光パターン218を使用して、電極活性化基板206での光応答性EW領域又は光応答性EW電極を活性化することができる。電極活性化基板206のそのような活性化されたEW領域又はEW電極は、支持構造体104の内面208(すなわち、重なった誘電層の内面又はその疎水性コーティング)において電子ウェッティング力を生成することができる。電子活性化基板206に入射する光パターン218を変更する(又は光源216に相対してマイクロ流体デバイス200を移動させる)ことにより、支持構造体104の内面208に接触する液滴(例えば、水性培地、水溶液又は水性溶媒を含む)は、領域/チャンバ202内に存在する不混和流体(例えば、油媒体)を通って移動することができる。
【0142】
他の実施形態では、マイクロ流体デバイス200は、EWOD構成を有することができ、電極活性化基板206は、活性化のために光に依存しない、選択的にアドレス指定可能且つエネルギー付与可能な電極を含むことができる。したがって、電極活性化基板206は、パターンになったそのような電子ウェッティング(EW)電極を含むことができる。パターンは、例えば、図2Bに示される等の行列に配置された略正方形のEW電極のアレイであり得る。代替的に、パターンは、六角形格子を形成する略六角形のEW電極のアレイであり得る。パターンに関係なく、EW電極は、電気スイッチ(例えば、半導体基板のトランジスタスイッチ)により選択的に活性化(又は非活性化)することができる。電極活性化基板206でのEW電極を選択的に活性化及び非活性化することにより、重なった誘電層の内面208又はその疎水性コーティングに接触する液滴(図示せず)は、領域/チャンバ202内で移動することができる。図1Aの原動モジュール162は、そのようなスイッチを制御することができ、したがって、個々のEW電極を活性化及び非活性化して、領域/チャンバ202の周囲で特定の液滴を選択し移動させることができる。選択的にアドレス指定可能且つエネルギー付与可能な電極を有するEWOD構成を有するマイクロ流体デバイスは、当技術分野で既知であり、例えば、米国特許第8,685,344号(Sundarsanら)に記載されており、この内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0143】
マイクロ流体デバイス200の構成に関係なく、電源212を使用して、マイクロ流体デバイス200の電気回路に給電する電位(例えば、AC電源電位)を提供することができる。電源212は、図1で参照される電源192と同じ又は電源192の構成要素であり得る。電源212は、上部電極210及び下部電極204にAC電圧及び/又は電流を提供するように構成され得る。AC電圧の場合、電源212は、上述したように、領域/チャンバ202内の個々の微小物体(図示せず)を捕捉して移動させ、及び/又はこれらも上述したように、領域/チャンバ202内の支持構造体104の内面208(すなわち、誘電層及び/又は誘電層上の疎水性コーティング)のウェッティング特性を変更するのに十分に強い正味DEP力(又は電子ウェッティング力)を生成するのに十分な周波数範囲及び平均又はピーク電力(例えば、電圧又は電流)を提供することができる。そのような周波数範囲及び平均又はピーク電力範囲は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許第6,958,132号(Chiouら)、米国特許第RE44,711号(Wuら)(元々は米国特許第7,612,355号として発行された)、並びに米国特許出願公開第2014/0124370号(Shortら)、同第2015/0306598号(Khandrosら)、及び同第2015/0306599号(Khandrosら)を参照されたい。
【0144】
D.隔離チャンバ
一般的な隔離チャンバ224、226、及び228の非限定的な例は、図2A図2Cに示されるマイクロ流体デバイス230内に示されている。各隔離チャンバ224、226、及び228は、分離領域240と、分離領域240をチャネル122に流体接続する接続領域236とを画定する分離構造体232を含むことができる。接続領域236は、マイクロ流体チャネル122への基端開口部234及び分離領域240への先端開口部238を含むことができる。接続領域236は、マイクロ流体チャネル122から隔離チャンバ224、226、228内に流れる流体培地(図示せず)のフローの最大侵入深さが分離領域240内に及ばないように構成され得る。したがって、接続領域236に起因して、隔離チャンバ224、226、228の分離領域240内に配置された微小物体(図示せず)又は他の材料(図示せず)は、チャネル122内の培地180のフローから分離され、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフローにより実質的に影響されないことができる。
【0145】
図2A図2Cの隔離チャンバ224、226、及び228は、マイクロ流体チャネル122に対して直接開く単一の開口部をそれぞれ有する。隔離チャンバの開口部は、マイクロ流体チャネル122から横に開く。電極活性化基板206がマイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、及び228の両方の下にある。隔離チャンバのフロアを形成する、隔離チャンバのエンクロージャ内の電極活性化基板206の上面は、マイクロ流体デバイスのフローチャネル(又はそれぞれフロー領域)のフロアを形成する、マイクロ流体チャネル122(又はチャネルが存在しない場合、フロー領域)内の電極活性化基板206の上面と同じ高さ又は略同じ高さに配置される。電極活性化基板206は、特徴を有さなくてもよく、又は約3μm未満、約2.5μm未満、約2μm未満、約1.5μm未満、約1μm未満、約0.9μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、約0.2μm未満、約0.1μm未満、又はそれを下回って最高隆起部から最低陥没部まで変化する不規則又はパターン化表面を有してもよい。マイクロ流体チャネル122(又はフロー領域)及び隔離チャンバの両方にわたる基板の上面の隆起の変動は、隔離チャンバの壁の高さ又はマイクロ流体デバイスの壁の高さの約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.5%未満、約0.3%未満、又は約0.1%未満であり得る。マイクロ流体デバイス200について詳細に説明したが、これは、本明細書に記載される任意のマイクロ流体デバイス100、230、250、280、290、320、400、450、500、700にも当てはまる。
【0146】
したがって、マイクロ流体チャネル122は掃引領域の例であり得、隔離チャンバ224、226、228の分離領域240は非掃引領域の例であり得る。述べたように、マイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、228は、1つ又は複数の流体培地180を含むように構成され得る。図2A図2Bに示される例では、ポート222はマイクロ流体チャネル122に接続され、流体培地180がマイクロ流体デバイス230内に導入又は外に取り出せるようにすることができる。流体培地180を導入する前に、マイクロ流体デバイスは、二酸化炭素ガス等のガスでプライミングし得る。マイクロ流体デバイス230が流体培地180を含むと、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242は選択的に生成及び停止させることができる。例えば、示されるように、ポート222はマイクロ流体チャネル122の異なる位置(例えば、両端部)に配置することができ、流入口として機能するあるポート222から流出口として機能する別のポート222への培地のフロー242を生成することができる。
【0147】
図2Cは、本開示による隔離チャンバ224の例の詳細図を示す。微小物体246の例も示されている。
【0148】
既知のように、隔離チャンバ224の基端開口部234を越えたマイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242は、隔離チャンバ224内及び/又は外への培地180の2次フロー244を生じさせることができる。隔離チャンバ224の分離領域240内の微小物体246を2次フロー244から分離するために、隔離チャンバ224の接続領域236の長さLcon(すなわち、基端開口部234から先端開口部238まで)は、接続領域236への2次フロー244の侵入深さDよりも大きい値であるはずである。2次フロー244の侵入深さDは、マイクロ流体チャネル122内を流れる流体培地180の速度並びにマイクロ流体チャネル122及びマイクロ流体チャネル122への接続領域236の基端開口部234の構成に関連する様々なパラメータに依存する。所与のマイクロ流体デバイスでは、マイクロ流体チャネル122及び開口部234の構成は固定され、一方、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242の速度は可変である。したがって、隔離チャンバ224毎に、2次フロー244の侵入深さDが接続領域236の長さLconを超えないことを保証するチャネル122内の流体培地180のフロー242の最高速度Vmaxを識別することができる。マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242の流量が最大速度Vmaxを超えない限り、結果として生成される、マイクロ流体チャネル122及び接続領域236への2次フロー244を制限することができ、分離領域240に入らないようにすることができる。したがって、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフロー242は、微小物体246を分離領域240外に引き込まない。むしろ、分離領域240内に配置された微小物体246は、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242に関係なく、分離領域240内に留まる。
【0149】
更に、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフロー242の流量がVmaxを超えない限り、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242は、様々な粒子(例えば、微粒子及び/又はナノ粒子)をマイクロ流体チャネル122から隔離チャンバ224の分離領域240内に移動させない。したがって、接続領域236の長さLconを2次フロー244の最大侵入深さDよりも大きくすることで、ある隔離チャンバ224の、マイクロ流体チャネル122又は別の隔離チャンバ(例えば、図2Dの隔離チャンバ226、228)からの様々な粒子による汚染を回避することができる。
【0150】
マイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、228の接続領域236は、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフロー242により影響を及ぼすことができるため、マイクロ流体チャネル122及び接続領域236は、マイクロ流体デバイス230の掃引(又はフロー)領域と見なすことができる。他方、隔離チャンバ224、226、228の分離領域240は、非掃引(又は非フロー)領域と見なすことができる。例えば、マイクロ流体チャネル122内の第1の流体培地180中の成分(図示せず)は、実質的に、マイクロ流体チャネル122から接続領域236を通り分離領域240内の第2の流体培地248への第1の培地180の成分の拡散によってのみ、分離領域240内の第2の流体培地248と混合することができる。同様に、分離領域240内の第2の培地248の成分(図示せず)は、実質的に、分離領域240から接続領域236を通り、マイクロ流体チャネル122内の第1の培地180への第2の培地248の成分の拡散によってのみ、マイクロ流体チャネル122内の第1の培地180と混合することができる。幾つかの実施形態では、拡散による隔離チャンバの分離領域とフロー領域との間での流体媒体交換の程度は、流体交換の約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%よりも高い割合である。第1の培地180は、第2の培地248と同じ培地であってもよく、又は異なる培地であってもよい。更に、第1の培地180及び第2の培地248は、同じ培地として開始され、異なるようになることができる(例えば、分離領域240内の1つ又は複数の細胞により又はマイクロ流体チャネル122を通って流れる培地180を変更することにより、第2の培地248を調整することを通して)。
【0151】
マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242により生じる2次フロー244の最大侵入深さDは、上述したように、幾つかのパラメータに依存し得る。そのようなパラメータの例としては、マイクロ流体チャネル122の形状(例えば、チャネルは、培地を接続領域236に向けることができ、接続領域236から培地を逸らすことができ、又はマイクロ流体チャネル122への接続領域236の基端開口部234に実質的に直交する方向に培地を向けることができる)、基端開口部234でのマイクロ流体チャネル122の幅Wch(又は断面積)及び基端開口部234での接続領域236の幅Wcon(又は断面積)、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242の速度V、第1の培地180及び/又は第2の培地248の粘度等が挙げられる。
【0152】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、228の寸法は、マイクロ流体チャネル122内の流体培地180のフロー242のベクトルに対して以下のように向けることができる:マイクロ流体チャネル幅Wch(又はマイクロ流体チャネル122の断面積)は、培地180のフロー242に略直交することができ、開口部234での接続領域236の幅Wcon(又は断面積)は、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフロー242に略平行であり得、及び/又は接続領域の長さLconは、マイクロ流体チャネル122内の培地180のフロー242に略直交することができる。上記は単なる例であり、マイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、228の相対位置は、互いに対して他の向きであり得る。
【0153】
図2Cに示されるように、接続領域236の幅Wconは、基端開口部234から先端開口部238まで均一であり得る。したがって、先端開口部238での接続領域236の幅Wconは、基端開口部234での接続領域236の幅Wconについて本明細書において識別された任意の範囲内にあり得る。代替的に、先端開口部238での接続領域236の幅Wconは、基端開口部234での接続領域236の幅Wconよりも大きい値であり得る。
【0154】
図2Cに示されるように、先端開口部238での分離領域240の幅は、基端開口部234での基端領域236の幅Wconと略同じであり得る。したがって、先端開口部238での分離領域240の幅は、基端開口部234での接続領域236の幅Wconについて本明細書において識別された任意の範囲内であり得る。代替的に、先端開口部238での分離領域240の幅は、基端開口部234での接続領域236の幅Wconよりも大きくてもよく、又は小さくてもよい。更に、先端開口部238は基端開口部234よりも小さくてよく、接続領域236の幅Wconは、基端開口部234と先端開口部238との間で狭め得る。例えば、接続領域236は、様々な異なるジオメトリ(例えば、接続領域を面取りする、接続領域に勾配を付ける)を使用して基端開口部と先端開口部との間で狭め得る。更に、接続領域236の任意の部分又はサブ部分を狭め得る(例えば、基端開口部234に隣接する接続領域の部分)。
【0155】
図2D図2Fは、図1Aの各マイクロ流体デバイス100、回路132、及びチャネル134の変形形態であるマイクロ流体回路262及びフローチャネル264を含むマイクロ流体デバイス250の別の例示的な実施形態を示す。マイクロ流体デバイス250は、上述した隔離チャンバ124、126、128、130、224、226、又は228の追加の変形形態である複数の隔離チャンバ266も有する。特に、図2D図2Fに示されるデバイス250の隔離チャンバ266をデバイス100、200、230、280、290、300での上述した隔離チャンバ124、126、128、130、224、226、又は228のいずれかで置換可能なことを理解されたい。同様に、マイクロ流体デバイス250は、マイクロ流体デバイス100の別の変形形態であり、上述したマイクロ流体デバイス100、200、230、280、290、300と同じ又は異なるDEP構成及び本明細書に記載される任意の他のマイクロ流体システム構成要素を有することもできる。
【0156】
図2D図2Fのマイクロ流体デバイス250は、支持構造体(図2D図2Fでは見えないが、図1Aに示されるデバイス100の支持構造体104と同じ又は概して同様であり得る)、マイクロ流体回路構造256、及びカバー(図2F図2Fでは見えないが、図1Aに示されるデバイス100のカバー122と同じ又は概して同様であり得る)を含む。マイクロ流体回路構造256は枠252及びマイクロ流体回路材料260を含み、これらは図1Aに示されるデバイス100の枠114及びマイクロ流体回路材料116と同じ又は概して同様であり得る。図2Dに示されるように、マイクロ流体回路材料260により画定されるマイクロ流体回路262は複数のチャネル264(2つが示されるが、より多くのチャネルがあり得る)を含むことができ、チャネル264に複数の隔離チャンバ266が流体接続される。
【0157】
各隔離チャンバ266は、分離構造272、分離構造272内の分離領域270、及び接続領域268を含むことができる。マイクロ流体チャネル264の基端開口部274から分離構造272での先端開口部276まで、接続領域268はマイクロ流体チャネル264を分離領域270に流体接続する。一般に、図2B及び図2Cの上記考察によれば、チャネル264内の第1の流体培地254のフロー278は、マイクロ流体チャネル264から隔離チャンバ266の各接続領域268内及び/又は外への第1の培地254の2次フロー282をもたらすことができる。
【0158】
図2Eに示されるように、各隔離チャンバ266の接続領域268は、一般に、チャネル264の基端開口部274と分離構造272の先端開口部276との間に延びるエリアを含む。接続領域268の長さLconは、2次フロー282の最大侵入深さDよりも大きい値であり得、その場合、2次フロー282は、分離領域270に向かってリダイレクトされずに接続領域268内に延びる(図2Dに示されるように)。代替的に、図2Fに示されるように、接続領域268は、最大侵入深さDよりも小さい長さLconを有することができ、その場合、2次フロー282は、接続領域268を通って延び、分離領域270に向かってリダイレクトされる。この後者の状況では、接続領域268の長さLc1及びLc2との和は最大侵入深さDよりも大きく、したがって、2次フロー282は分離領域270内に延びない。接続領域268の長さLconが侵入深さDよりも大きいか否か又は接続領域268の長さLc1及びLc2の和が侵入深さDよりも大きいか否かに関係なく、最大速度Vmaxを超えないチャネル264内の第1の培地254のフロー278は、侵入深さDを有する2次フローをもたらし、隔離チャンバ266の分離領域270内の微小物体(示されていないが、図2Cに示される微小物体246と同じ又は概して同様であり得る)は、チャネル264内の第1の培地254のフロー278により分離領域270外に引き出されない。チャネル264内のフロー278は、様々な材料(図示せず)もチャネル264から隔離チャンバ266の分離領域270内に引き込まない。したがって、マイクロ流体チャネル264内の第1の培地254内の成分をマイクロ流体チャネル264から隔離チャンバ266の分離領域270内の第2の培地258内に移動させることができる唯一の機構は、拡散である。同様に、隔離チャンバ266の分離領域270内の第2の培地258内の成分を分離領域270からマイクロ流体チャネル264内の第1の培地254内に移動させることができる唯一の機構も拡散である。第1の培地254は、第2の培地258と同じ培地であり得、又は第1の培地254は、第2の培地258と異なる培地であり得る。代替的に、第1の培地254及び第2の培地258は、同じ培地から始まり、例えば、分離領域270内の1つ又は複数の細胞により又はマイクロ流体チャネル264を通って流れる培地を変更することにより、第2の培地を調整することを通して異なるようになることができる。
【0159】
図2Eに示されるように、マイクロ流体チャネル264内のマイクロ流体チャネル264の幅Wch(すなわち、図2Dにおいて矢印278で示されるマイクロ流体チャネルを通る流体培地フローの方向を横断してとられる)は、基端開口部274の幅Wcon1に略直交することができ、したがって、先端開口部276の幅Wcon2に略平行であり得る。しかし、基端開口部274の幅con1及び先端開口部276の幅Wcon2は、互いに略直交する必要はない。例えば、基端開口部274の幅Wcon1が向けられる軸(図示せず)と、先端開口部276の幅Wcon2が向けられる別の軸との間の角度は、直交以外であり得、したがって、90°以外であり得る。代替的に向けられる角度の例としては、以下の任意の範囲内の角度を含む:約30°~約90°、約45°~約90°、約60°~約90°等。
【0160】
隔離チャンバの様々な実施形態(例えば、124、126、128、130、224、226、228、又は266)では、分離領域(例えば、240又は270)は、複数の微小物体を含むように構成される。他の実施形態では、分離領域は、1つのみ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は同様の相対的に少数の微小物体を含むように構成され得る。したがって、分離領域の容積は、例えば、少なくとも1×10立方μm、少なくとも2×10立方μm、少なくとも4×10立方μm、少なくとも6×10立方μm、又はこれを超える大きさであり得る。
【0161】
隔離チャンバの様々な実施形態では、基端開口部(例えば、234)でのマイクロ流体チャネル(例えば、122)の幅Wchは、以下の任意の範囲内であり得る:約50~1000μm、約50~500μm、約50~400μm、約50~300μm、約50~250μm、約50~200μm、約50~150μm、約50~100μm、約70~500μm、約70~400μm、約70~300μm、約70~250μm、約70~200μm、約70~150μm、約90~400μm、90~300μm、約90~250μm、約90~200μm、約90~150μm、約100~300μm、約100~250μm、約100~200μm、約100~150μm、及び約100~120μm。幾つかの他の実施形態では、基端開口部(例えば、234)におけるマイクロ流体チャネル(例えば、122)の幅Wchは、約200~800μm、約200~700μm、又は約200~600μmの範囲であり得る。上記は単なる例であり、マイクロ流体チャネル122の幅Wchは、他の範囲(例えば、上記列挙された任意の端点により定義される範囲)であってもよい。更に、マイクロ流体チャネル122の幅Wchは、隔離チャンバの基端開口部以外のマイクロ流体チャネルの領域において、これらの任意の範囲であるように選択することができる。
【0162】
幾つかの実施形態では、隔離チャンバは、約30~約200μm又は約50~約150μmの高さを有する。幾つかの実施形態では、隔離チャンバは、約1×10~約3×10平方μm、約2×10~約2×10平方μm、約4×10~約1×10平方μm、約2×10~約5×10平方μm、約2×10~約1×10平方μm、又は約2×10~約2×10平方μmの断面積を有する。
【0163】
隔離チャンバの様々な実施形態において、基端開口部(例えば、234)におけるマイクロ流体チャネル(例えば、122)の高さHchは、以下の任意の範囲内であり得る:20~100μm、20~90μm、20~80μm、20~70μm、20~60μm、20~50μm、30~100μm、30~90μm、30~80μm、30~70μm、30~60μm、30~50μm、40~100μm、40~90μm、40~80μm、40~70μm、40~60μm、又は40~50μm。上記は単なる例であり、マイクロ流体チャネル(例えば、122)の高さHchは、他の範囲(例えば、上記列挙された任意の端点により定義される範囲)であってもよい。マイクロ流体チャネル122の高さHchは、隔離チャンバの基端開口部以外のマイクロ流体チャネルの領域において、これらの任意の範囲であるように選択することができる。
【0164】
隔離チャンバの様々な実施形態において、基端開口部(例えば、234)におけるマイクロ流体チャネル(例えば、122)の断面積は、以下の任意の範囲内であり得る:500~50,000平方μm、500~40,000平方μm、500~30,000平方μm、500~25,000平方μm、500~20,000平方μm、500~15,000平方μm、500~10,000平方μm、500~7,500平方μm、500~5,000平方μm、1,000~25,000平方μm、1,000~20,000平方μm、1,000~15,000平方μm、1,000~10,000平方μm、1,000~7,500平方μm、1,000~5,000平方μm、2,000~20,000平方μm、2,000~15,000平方μm、2,000~10,000平方μm、2,000~7,500平方μm、2,000~6,000平方μm、3,000~20,000平方μm、3,000~15,000平方μm、3,000~10,000平方μm、3,000~7,500平方μm、又は3,000~6,000平方μm。上記は単なる例であり、基端開口部(例えば、234)におけるマイクロ流体チャネル(例えば、122)の断面積は、他の範囲(例えば、上記列挙された任意の端点により定義される範囲)であってもよい。
【0165】
隔離チャンバの様々な実施形態では、接続領域(例えば、236)の長さLconは、以下の任意の範囲内であり得る:約1~600μm、5~550μm、10~500μm、15~400μm、20~300μm、20~500μm、40~400μm、60~300μm、80~200μm、又は約100~150μm。上記は単なる例であり、接続領域(例えば、236)の長さLconは、上記例と異なる範囲(例えば、上記列挙される任意の終点により定義される範囲)内であることもできる。
【0166】
隔離チャンバの様々な実施形態では、基端開口部(例えば、234)での接続領域(例えば、236)の幅Wconは、以下の任意の範囲内であり得る:20~500μm、20~400μm、20~300μm、20~200μm、20~150μm、20~100μm、20~80μm、20~60μm、30~400μm、30~300μm、30~200μm、30~150μm、30~100μm、30~80μm、30~60μm、40~300μm、40~200μm、40~150μm、40~100μm、40~80μm、40~60μm、50~250μm、50~200μm、50~150μm、50~100μm、50~80μm、60~200μm、60~150μm、60~100μm、60~80μm、70~150μm、70~100μm、及び80~100μm。上記は単なる例であり、基端開口部(例えば、234)の接続領域(例えば、236)の幅Wconは、上記例と異なることができる(例えば、上記列挙される任意の終点により定義される範囲)。
【0167】
隔離チャンバの様々な実施形態において、接続領域の基端開口部の幅Wprは、隔離チャンバが意図される微小物体(例えば、細胞等の生物学的微小物体)の最大寸法と少なくとも同じ大きさであり得る。例えば、幅Wprは、約50μm、約60μm、約100μm、約200μm、約300μm、又は約50~300μm、約50~200μm、約50~100μm、約75~150μm、約75~100μm、又は約200~300μmの範囲であり得る。
【0168】
隔離チャンバの様々な実施形態において、接続領域(例えば、236)の長さLconと基端開口部234における接続領域(例えば、236)の幅Wconとの比率は、以下の任意の比率以上であり得る:0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、又はこれを超える比率。上記は単なる例であり、接続領域236の長さLconと基端開口部234における接続領域236の幅Wconとの比率は、上記例と異なってもよい。
【0169】
マイクロ流体デバイスの様々な実施形態100、200、23、250、280、290、300において、Vmaxは、約0.2マイクロリッター/秒、約0.3マイクロリッター/秒、約0.4マイクロリッター/秒、約0.5マイクロリッター/秒、約0.6マイクロリッター/秒、約0.7マイクロリッター/秒、約0.8マイクロリッター/秒、約0.9マイクロリッター/秒、約1.0マイクロリッター/秒、約1.1マイクロリッター/秒、約1.2マイクロリッター/秒、約1.3マイクロリッター/秒、約1.4マイクロリッター/秒、又は約1.5マイクロリッター/秒に設定することができる。
【0170】
隔離チャンバを有するマイクロ流体デバイスの様々な実施形態において、隔離チャンバの分離領域(例えば、240)の容積は、例えば、少なくとも5×10立方μm、少なくとも8×10立方μm、少なくとも1×10立方μm、少なくとも2×10立方μm、少なくとも4×10立方μm、少なくとも6×10立方μm、少なくとも8×10立方μm、少なくとも1×10立方μm、少なくとも5×10立方μm、少なくとも1×10立方μm、少なくとも5×10立方μm、少なくとも8×10立方μm、又はそれを超える容積であり得る。隔離チャンバを有するマイクロ流体デバイスの様々な実施形態において、隔離チャンバの容積は、約5×10立方μm、約6×10立方μm、約8×10立方μm、約1×10立方μm、約2×10立方μm、約4×10立方μm、約8×10立方μm、約1×10立方μm、約3×10立方μm、約5×10立方μm、又は約8×10立方μm、又はそれを超える容積であり得る。幾つかの他の実施形態では、隔離チャンバの容積は、約1ナノリットル~約50ナノリットル、2ナノリットル~約25ナノリットル、2ナノリットル~約20ナノリットル、約2ナノリットル~約15ナノリットル、又は約2ナノリットル~約10ナノリットルであり得る。
【0171】
様々な実施形態において、マイクロ流体デバイスは、本明細書に記載される任意の実施形態でのように構成された隔離チャンバを有し、その場合、マイクロ流体デバイスは、約5~約10個の隔離チャンバ、約10~約50個の隔離チャンバ、約100~約500個の隔離チャンバ、約200~約1000個の隔離チャンバ、約500~約1500個の隔離チャンバ、約1000~約2000個の隔離チャンバ、又は約1000~約3500個の隔離チャンバを有する。隔離チャンバは、全て同じサイズである必要はなく、様々な構成(例えば、異なる幅、隔離チャンバ内の異なる特徴を含み得る。
【0172】
図2Gは、一実施形態によるマイクロ流体デバイス280を示す。マイクロ流体デバイス280は図2Gに示され、マイクロ流体デバイス100の定型化された図である。実際には、マイクロ流体デバイス280及びその構成回路要素(例えば、チャネル122及び隔離チャンバ128)は本明細書で考察された寸法を有する。図2Gに示されるマイクロ流体回路120は、2つのポート107、4つの別個のチャネル122、及び4つの別個の流路106を有する。マイクロ流体デバイス280は、各チャネル122に通じる複数の隔離チャンバを更に含む。図2Gに示されるマイクロ流体デバイスでは、隔離チャンバは、図2Cに示されるペンと同様のジオメトリを有し、したがって、接続領域及び分離領域の両方を有する。したがって、マイクロ流体回路120は、掃引領域(例えば、チャネル122及び2次フロー244の最大侵入深さD内の接続領域236の部分)及び非掃引領域(例えば、分離領域240及び2次フロー244の最大侵入深さD内にない接続領域236の部分)の両方を含む。
【0173】
E.システムネスト
図3A図3Bは、本開示によるマイクロ流体デバイス(例えば、100、200、230、250、280、290、300)を動作させるため及び観測のために使用することができるシステム150の様々な実施形態を示す。図3Aに示されるように、システム150は、マイクロ流体デバイス100(図示せず)又は本明細書に記載される任意の他のマイクロ流体デバイスを保持するように構成された構造体(「ネスト」)300を含むことができる。ネスト300は、マイクロ流体デバイス320(例えば、光学的に作動される動電学的デバイス100)と界面を接することができ、電源192からマイクロ流体デバイス320への電気接続を提供することができるソケット302を含むことができる。ネスト300は、一体型電気信号生成サブシステム304を更に含むことができる。電気信号生成サブシステム304は、マイクロ流体デバイス320がソケット302により保持されているとき、バイアス電圧がマイクロ流体デバイス320内の電極の対にわたり印加されるように、バイアス電圧をソケット302に供給するように構成され得る。したがって、電気信号生成サブシステム304は電源192の部分であり得る。バイアス電圧をマイクロ流体デバイス320に印加する能力は、マイクロ流体デバイス320がソケット302により保持されている場合には常にバイアス電圧が印加されることを意味しない。むしろ、大半の場合、バイアス電圧は、断続的に、例えば、マイクロ流体デバイス320内での電気泳動又は電子ウェッティング等の動電力の生成を促進するために必要な場合にのみ印加される。
【0174】
図3Aに示されるように、ネスト300は、プリント回路基板組立体(PCBA)322を含むことができる。電気信号生成サブシステム304は、PCBA322に搭載され、PCBA322に電気的に集積することができる。例示的な支持体は、同様にPCBA322に搭載されるソケット302も含む。
【0175】
通常、電気信号生成サブシステム304は波形生成器(図示せず)を含む。電気信号生成サブシステム304は、波形生成器から受信される波形を増幅するように構成されたオシロスコープ(図示せず)及び/又は波形増幅回路(図示せず)を更に含むことができる。オシロスコープは、存在する場合、ソケット302により保持されるマイクロ流体デバイス320に供給される波形を測定するように構成され得る。特定の実施形態では、オシロスコープは、マイクロ流体デバイス320の基端位置(及び波形生成器の先端位置)において波形を測定し、それにより、デバイスに実際に印加されている波形を測定するに当たりより大きい精度を保証する。オシロスコープ測定から得られるデータは、例えば、フィードバックとして波形生成器に提供され得、波形生成器は、そのようなフィードバックに基づいて出力を調整するように構成され得る。適する結合された波形生成器及びオシロスコープの例は、Red Pitaya(商標)である。
【0176】
特定の実施形態では、ネスト300は、電気信号生成サブシステム304の検知及び/又は制御に使用される、マイクロプロセッサ等のコントローラ308を更に含む。適するマイクロプロセッサの例としては、Arduino Nano(商標)等のArduino(商標)マイクロプロセッサが挙げられる。コントローラ308を使用して機能及び分析を実行し、又は外部マスタコントローラ154(図1Aに示される)と通信して機能及び分析を実行し得る。図3Aに示される実施形態では、コントローラ308は、インタフェース310(例えば、プラグ又はコネクタ)を通してマスタコントローラ154と通信する。
【0177】
幾つかの実施形態では、ネスト300は、Red Pitaya(商標)波形生成器/オシロスコープユニット(「Red Pitayaユニット」)を含む電気信号生成サブシステム304と、Red Pitayaユニットにより生成された波形を増幅し、増幅電圧をマイクロ流体デバイス100に渡す波形増幅回路とを含むことができる。幾つかの実施形態では、Red Pitayaユニットは、マイクロ流体デバイス320での増幅電圧を測定し、次に、マイクロ流体デバイス320での測定電圧が所望の値であるように、必要に応じてそれ自体の出力電圧を調整するように構成される。幾つかの実施形態では、波形増幅回路は、PCBA322に搭載されるDC-DCコンバータの対により生成される+6.5V~-6.5V電源を有することができ、その結果、マイクロ流体デバイス100において13Vppまでの信号が生成される。
【0178】
図3Aに示されるように、支持構造体300(例えば、ネスト)は、熱制御サブシステム306を更に含むことができる。熱制御サブシステム306は、支持構造体300により保持されるマイクロ流体デバイス320の温度を調整するように構成され得る。例えば、熱制御サブシステム306は、ペルチェ熱電デバイス(図示せず)及び冷却ユニット(図示せず)を含むことができる。ペルチェ熱電デバイスは、マイクロ流体デバイス320の少なくとも1つの表面と界面を接するように構成された第1の表面を有することができる。冷却ユニットは、例えば、液冷アルミニウムブロック等の冷却ブロック(図示せず)であり得る。ペルチェ熱電デバイスの第2の表面(例えば、第1の表面とは逆の表面)は、そのような冷却ブロックの表面と界面を接するように構成され得る。冷却ブロックは、冷却ブロックを通して冷却流体を循環させるように構成された流体路314に接続することができる。図3Aに示される実施形態では、支持構造体300は、流入口316及び流出口318を含む、外部リザーバ(図示せず)から冷却された流体を受け取り、冷却された流体を流体路314に導入し、冷却ブロックを通し、次に、冷却された流体を外部リザーバに戻す。幾つかの実施形態では、ペルチェ熱電デバイス、冷却ユニット、及び/又は流体路314は、支持構造体300のケース312に搭載することができる。幾つかの実施形態では、熱制御サブシステム306は、ペルチェ熱電デバイスの温度を調整して、マイクロ流体デバイス320の標的温度を達成するように構成される。ペルチェ熱電デバイスの温度調整は、例えば、Pololu(商標)熱電電源(Pololu Robotics and Electronics Corp.)等の熱電電源により達成することができる。熱制御サブシステム306は、アナログ回路により提供される温度値等のフィードバック回路を含むことができる。代替的に、フィードバック回路はデジタル回路により提供され得る。
【0179】
幾つかの実施形態では、ネスト300は、抵抗(例えば、抵抗1kオーム+/-0.1%、温度係数+/-0.02ppm/C0)及びNTCサーミスタ(例えば、公称抵抗1kオーム+/-0.01%を有する)を含むアナログ分圧回路(図示せず)であるフィードバック回路を有する熱制御サブシステム306を含むことができる。幾つかの場合、熱制御サブシステム306は、フィードバック回路からの電圧を測定し、次に、計算された温度値をオンボードPID制御ループアルゴリズムへの入力として使用する。PID制御ループアルゴリズムからの出力は、例えば、Pololu(商標)モーター駆動デバイス(図示せず)上の方向信号及びパルス幅変調信号ピンの両方を駆動して熱電電源を作動させることができ、それにより、ペルチェ熱電デバイスを制御する。
【0180】
ネスト300はシリアルポート350を含むことができ、シリアルポート324により、コントローラ308のマイクロプロセッサは、インタフェースを介して外部マスタコントローラ154と通信することができる。加えて、コントローラ308のマイクロプロセッサは、電気信号生成サブシステム304及び熱制御サブシステム306と通信することができる(例えば、Plinkツール(図示せず)を介して)。したがって、コントローラ308、インタフェース310、及びシリアルポート324の組合せを介して、電気信号生成サブシステム304及び熱制御サブシステム306は、外部マスタコントローラ154と通信することができる。このようにして、マスタコントローラ154は、特に、出力電圧調整のためにスケーリング計算を実行することにより電気信号生成サブシステム304を支援することができる。外部マスタコントローラ154に結合された表示デバイス170を介して提供されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)(図示せず)は、熱制御サブシステム306及び電気信号生成サブシステム304からそれぞれ得られる温度データ及び波形データをプロットするように構成され得る。代替的に又は追加として、GUIは、コントローラ308、熱制御サブシステム306、及び電気信号生成サブシステム304への更新を可能にすることができる。
【0181】
F.システム撮像デバイス
上述したように、システム150は撮像デバイスを含むことができる。幾つかの実施形態では、撮像デバイスは光変調サブシステム330(図3B参照)を含む。光変調サブシステム330は、デジタルミラーデバイス(DMD)又はマイクロシャッタアレイシステム(MSA)を含むことができ、これらのいずれかは、光源332から光を受け取り、受け取った光のサブセットを顕微鏡350の光学縦列に送るように構成され得る。代替的に、光変調サブシステム330は、有機発行ダイオードディスプレイ(OLED)、液晶オンシリコン(LCOS)デバイス、強誘電性液晶オンシリコンデバイス(FLCOS)、又は透過型液晶ディスプレイ(LCD)等のそれ自体の光を生成する(したがって、光源332の必要性をなくす)デバイスを含むことができる。光変調サブシステム330は、例えば、プロジェクタであり得る。したがって、光変調サブシステム330は、構造化光及び非構造化光の両方を発することが可能であり得る。適する光変調サブシステム422の一例は、Andor Technologies(商標)のMosaic(商標)システムである。特定の実施形態では、システム150の撮像モジュール164及び/又は原動モジュール162は、光変調サブシステム330を制御することができる。
【0182】
特定の実施形態では、撮像デバイスは顕微鏡350を更に含む。そのような実施形態では、ネスト300及び光変調サブシステム330は、顕微鏡350に搭載されるように個々に構成され得る。顕微鏡350は、例えば、標準の研究等級の光学顕微鏡又は蛍光顕微鏡であるように構成され得る。したがって、ネスト300は、顕微鏡350のステージ344に搭載するように構成され得、及び/又は光変調サブシステム330は、顕微鏡350のポートに搭載されるように構成され得る。他の実施形態では、本明細書に記載されるネスト300及び光変調サブシステム330は、顕微鏡350の一体構成要素であり得る。
【0183】
特定の実施形態では、顕微鏡350は1つ又は複数の検出器348を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、検出器348は撮像モジュール164により制御される。検出器348は、接眼レンズ、電荷結合素子(CCD)、カメラ(例えば、デジタルカメラ)、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。少なくとも2つの検出器348が存在する場合、1つの検出器は、例えば、高速フレームレートカメラであり得、一方、他の検出器は高感度カメラであり得る。更に、顕微鏡350は、マイクロ流体デバイス320から反射された光及び/又は発せられた光を受け取り、反射光及び/又は放射光の少なくとも部分を1つ又は複数の検出器348に結像するように構成された光学縦列を含むことができる。顕微鏡の光学縦列は、各検出器での最終倍率が異なることができるように、異なる検出器で異なるチューブレンズ(図示せず)を含むこともできる。
【0184】
特定の実施形態では、撮像デバイスは、少なくとも2つの光源を使用するように構成される。例えば、第1の光源332は、構造化光(例えば、光変調サブシステム330を介する)を生成するために使用可能であり、第2の光源334は、非構造化光を提供するために使用可能である。第1の光源332は、光学作動動電性及び/又は蛍光励起のために構造化光を生成可能であり、第2の光源334は、明視野照明を提供するために使用可能である。これらの実施形態では、原動モジュール164は、第1の光源332を制御するために使用可能であり、撮像モジュール164は、第2の光源334を制御するために使用可能である。顕微鏡350の光学縦列は、(1)デバイスがネスト300により保持されたとき、光変調サブシステム330から構造化光を受け取ってマイクロ流体デバイスの少なくとも第1の領域、例えば、光学作動動電デバイスに構造化光を集束させるように、且つ(2)マイクロ流体デバイスから反射光及び/又は発光光を受け取ってかかる反射光及び/又は発光光の少なくとも一部を検出器348に集束させるように、構成可能である。光学縦列は、デバイスがネスト300により保持されたとき、第2の光源から非構造化光を受け取って、マイクロ流体デバイスの少なくとも第2の領域に非構造化光を集束させるように、更に構成可能である。特定の実施形態では、マイクロ流体デバイスの第1及び第2の領域はオーバーラップ領域であり得る。例えば、第1の領域は、第2の領域のサブセットであり得る。他の実施形態では、第2の光源334は、追加的又は代替的に、任意の好適な波長の光を有し得るレーザーを含み得る。図3Bに示される光学システムの図は模式図にすぎず、光学システムは、追加のフィルタ、ノッチフィルター、レンズ等を含み得る。第2の光源334が明視野及び/又は蛍光励起更にはレーザー照明のための1つ以上の光源を含む場合、光源の物理的構成は、図3Bに示されるものと異なり得ると共に、レーザー照明は、光学システム内の任意の好適な物理的位置に導入し得る。光源432及び光源402/光変調サブシステム404の模式的位置は、同様に交換し得る。
【0185】
図3Bでは、光を光変調サブシステム330に供給している第1の光源332が示されており、光変調サブシステム330は構造化光をシステム355(図示せず)の顕微鏡350の光学縦列に提供する。ビームスプリッタ336を介して非構造化光を光学縦列に提供している第2の光源334が示される。光変調サブシステム330からの構造化光及びに示されるように、第2の光源334からの非構造化光は、ビームスプリッタ336から光学縦列を通って一緒に移動して、第2のビームスプリッタ(又は光変調サブシステム330によって提供される光に応じて、ダイクロイックフィルタ338)に到達し、ここで、光は反射し、対物レンズ336を通して試料面342まで下がる。次に、試料面342からの反射光及び/又は放射光は再び対物レンズ340を通って移動し、ビームスプリッタ及び/又はダイクロイックフィルタ338を通り、ダイクロイックフィルタ346に到達する。ダイクロイックフィルタ346に達する光の一部のみが透過され、検出器348に到達する。
【0186】
幾つかの実施形態では、第2の光源334は青色光を発する。適切なダイクロイックフィルタ346を用いて、試料面342から反射された青色光は、ダイクロイックフィルタ346を透過し、検出器348に到達することが可能である。これとは対照的に、光変調サブシステム330から来る構造化光は、試料面342で反射されるが、ダイクロイックフィルタ346を透過しない。この例では、ダイクロイックフィルタ346は、495nmよりも長い波長を有する可視光を濾波して除外する。光変調サブシステム330からの光のそのような濾波は、光変調サブシステムから発せられる光が495nmよりも短いいかなる波長も含まない場合にのみ完了する(示されるように)。実際には、光変調サブシステム330から来る光が495nmよりも短い波長(例えば、青色波長)を含む場合、光変調サブシステムからの光の幾らかがフィルタ346を透過して検出器348に到達する。そのような実施形態では、フィルタ346は、第1の光源332から検出器348に到達する光の量と第2の光源334から検出器348に到達する光の量とのバランスを変更する役割を果たす。これは、第1の光源332が第2の光源334よりもはるかに強力な場合、有益であり得る。他の実施形態では、第2の光源334は、赤色光を発することができ、ダイクロイックフィルタ346は、赤色光以外の可視光(例えば、650nmよりも短い波長を有する可視光)を濾波して除外することができる。
【0187】
G.被覆溶液及び被覆剤
理論による限定を意図せずに、マイクロ流体デバイス(例えば、DEP構成及び/又はEW構成マイクロ流体デバイス)内での生物学的微小物体(例えば、生体細胞)の維持は、マイクロ流体デバイスの少なくとも1つ又は複数の内面が、マイクロ流体デバイスと内部に維持される生物学的微小物体との間の主な界面を提供する有機分子及び/又は親水性分子の層を提示するように調整又は被覆される場合に促進し得る(すなわち、生物学的微小物体は、マイクロ流体デバイス内で生存率の増大、より大きい増殖、及び/又はより大きい可搬性を示す)。幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの内面の1つ又は複数(例えば、DEP構成マイクロ流体デバイスの電極活性化基板の内面、マイクロ流体のカバー、及び/又は回路材料の表面)は、有機分子及び/又は親水性分子の所望の層を生成するように、被覆溶液及び/又は被覆剤により処理又は修飾し得る。
【0188】
被覆は、生物学的微小物体を導入する前又は後に塗布してもよく、又は生物学的微小物体と同時に導入してもよい。幾つかの実施形態では、生物学的微小物体は、マイクロ流体デバイスの1つ又は複数の被覆剤を含む流体媒体中に搬入し得る。他の実施形態では、マイクロ流体デバイス(例えば、DEP構成マイクロ流体デバイス)の内面は、生物学的微小物体をマイクロ流体デバイスに導入する前に、被覆剤を含む被覆溶液を用いて処理又は「プライミング」される。
【0189】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの少なくとも1つの表面は、生物学的微小物体の維持及び/又は増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供する(例えば、後述するような調整面を提供する)被覆剤を含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの略全ての内面は被覆材料を含む。被覆された内面は、フロー領域(例えば、チャネル)の表面、チャンバの表面、隔離チャンバの表面、又はそれらの組合わせを含み得る。幾つかの実施形態では、複数の隔離チャンバのそれぞれは、被覆材料で被覆された少なくとも1つの内面を有する。他の実施形態では、複数のフロー領域又はチャネルのそれぞれは、被覆材料で被覆された少なくとも1つの内面を有する。幾つかの実施形態では、複数の隔離チャンバのそれぞれ及び複数のチャネルのそれぞれの少なくとも1つの内面は、被覆材料で被覆される。
【0190】
被覆剤/溶液
限定ではなく、血清又は血清因子、ウシ血清アルブミン(BSA)、ポリマー、洗剤、酵素、及びそれらの任意の組合わせを含む任意の従来の被覆剤/被覆溶液を使用することができる。
【0191】
ポリマーベースの被覆材料
少なくとも1つの内面は、ポリマーを含む被覆材料を含み得る。ポリマーは、少なくとも1つの表面に共有結合又は非共有結合し得る(又は非特異的に付着し得る)。ポリマーは、ブロックポリマー(及びコポリマー)、星型ポリマー(星型コポリマー)、並びにグラフト又は櫛形ポリマー(グラフトコポリマー)に見られる等の多種多様な構造モチーフを有し得、これらは全て本明細書に開示される方法に適し得る。
【0192】
ポリマーは、アルキレンエーテル部分を含むポリマーを含み得る。広範囲のアルキレンエーテル含有ポリマーが、本明細書に記載されるマイクロ流体デバイスでの使用に適し得る。アルキレンエーテル含有ポリマーの非限定的で例示的な一クラスは、ポリマー鎖内で異なる比率及び異なる場所にあるポリエチレンオキシド(PEO)サブユニット及びポリプロピレンオキシド(PPO)サブユニットのブロックを含む両親媒性非イオンブロックコポリマーである。Pluronic(登録商標)ポリマー(BASF)は、このタイプのブロックコポリマーであり、生細胞と接触する場合の使用に適することが当技術分野で既知である。ポリマーは、平均分子質量Mで、約2000Da~約20KDaの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、PEO-PPOブロックコポリマーは、約10よりも大きい(例えば、12~18)の親水性親油性バランス(HLB)を有することができる。被覆された表面をもたらすのに有用な特定のPluronic(登録商標)ポリマーは、Pluronic(登録商標)L44、L64、P85、及びF127(F127NFを含む)を含む。別のクラスのアルキレンエーテル含有ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG M<100,000Da)又は代替的にポリエチレンオキシド(PEO、M>100,000)である。幾つかの実施形態では、PEGは約1000Da、5000Da、10,000Da、又は20,000DaのMを有し得る。
【0193】
他の実施形態では、被覆材料は、カルボン酸部分を含むポリマーを含み得る。カルボン酸サブユニットは、アルキル、アルケニル、又は芳香族部分含有サブユニットであり得る。非限定的な一例はポリ乳酸(PLA)である。他の実施形態では、被覆材料は、ポリマー骨格の末端又はポリマー骨格からのペンダントのいずれかにリン酸部分を含むポリマーを含み得る。更に他の実施形態では、被覆材料は、スルホン酸部分を含むポリマーを含み得る。スルホン酸サブユニットは、アルキル、アルケニル、又は芳香族部分含有サブユニットであり得る。非限定的な一例はポリスチレンスルホン酸(PSSA)又はポリアネトールスルホン酸である。更なる実施形態では、被覆材料はアミン部分を含むポリマーを含み得る。ポリアミノポリマーは、天然ポリアミンポリマー又は合成ポリアミンポリマーを含み得る。天然ポリアミンの例としては、スペルミン、スペルミジン、及びプトレッシンが挙げられる。
【0194】
他の実施形態では、被覆材料は、糖類部分を含むポリマーを含み得る。非限定的な例では、キサンタンガム又はデキストラン等のポリサッカリドが、マイクロ流体デバイスにおける細胞の突き刺しを低減又は阻止し得る材料を形成するのに適し得る。例えば、約3kDaのサイズを有するデキストランポリマーを使用して、マイクロ流体デバイス内の表面に被覆材料を提供し得る。
【0195】
他の実施形態では、被覆材料は、リボヌクレオチド部分又はデオキシリボヌクレオチド部分を有し、高分子電解質表面を提供し得る、ヌクレオチド部分、すなわち、核酸を含むポリマーを含み得る。核酸は、天然ヌクレオチド部分のみを含んでもよく、又は限定ではなく、7-デアザアデニン、ペントース、メチルホスホン酸、又はホスホロチオエート部分等の核酸塩基、リボース、リン酸塩部分類似物を含む非天然ヌクレオチド部分を含んでもよい。
【0196】
更に他の実施形態では、被覆材料は、アミノ酸部分を含むポリマーを含み得る。アミノ酸部分を含むポリマーは、天然アミノ酸含有ポリマー又は非天然アミノ酸含有ポリマーを含み得、これらのいずれかはペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を含み得る。非限定的な一例では、被覆剤として、タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)並びに/或いはアルブミン及び/又は1つ又は複数の他の同様のタンパク質を含む血清(又は複数の異なる血清の組合わせ)であり得る。血清は、限定ではなく、ウシ胎仔血清、ヒツジ血清、ヤギ血清、ウマ血清等を含む任意の好都合のソースからのものであり得る。特定の実施形態では、被覆溶液中のBSAは、5mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、又はそれを超えるか、若しくはそれらの間の任意の値を含め、約1mg/mL~約100mg/mLの範囲で存在する。特定の実施形態では、被覆溶液中の血清は、25%、30%、35%、40%、45%、又はそれを超えるか、若しくはそれらの間の任意の値を含め、約20%(v/v)~約50%v/vの範囲で存在し得る。幾つかの実施形態では、BSAは、5mg/mLで被覆溶液中に被覆剤として存在し得、一方、他の実施形態では、BSAは、70mg/mLで被覆溶液中に被覆剤として存在し得る。特定の実施形態では、血清は、30%で被覆溶液中に被覆剤として存在する。幾つかの実施形態では、フォスター細胞成長への細胞の付着を最適化するために、細胞外基質(ECM)タンパク質を被覆材料内に提供し得る。被覆材料に包含し得る細胞基質タンパク質としては、限定ではなく、コラーゲン、エラスチン、RGD含有ペプチド(例えば、フィブロネクチン)、又はラミニンを挙げることができる。更に他の実施形態では、成長因子、サイトカイン、ホルモン、又は他の細胞シグナリング種をマイクロ流体デバイスの被覆材料内に提供し得る。
【0197】
幾つかの実施形態では、被覆材料は、アルキレンオキシド部分、カルボン酸部分、スルホン酸部分、リン酸塩部分、サッカリド部分、ヌクレオチド部分、又はアミノ酸部分の2つ以上を含むポリマーを含み得る。他の実施形態では、ポリマーの調整された表面は、被覆材料に独立して又は同時に組み込み得る、アルキレンオキシド部分、カルボン酸部分、スルホン酸部分、リン酸塩部分、サッカリド部分、ヌクレオチド部分、及び/又はアミノ酸部分をそれぞれ有する2つ以上のポリマーの混合物を含み得る。
【0198】
共有結合される被覆材料
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの内面は、マイクロ流体デバイス内の生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供して、そのような細胞に調整面を提供する共有結合分子を含む。
【0199】
共有結合分子は結合基を含み、結合基は、後述するように、マイクロ流体デバイスの1つ又は複数の表面に共有結合する。結合基は、生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分にも共有結合する。
【0200】
幾つかの実施形態では、生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される共有結合部分は、アルキル又はフルオロアルキル(ペルフルオロアルキルを含む)部分;モノ又はポリサッカリド(デキストランを含み得るが、これに限定されない);アルコール(プロパルギルアルコールを含むが、これに限定されない);ポリビニルアルコールを含むが、これに限定されないポリアルコール;ポリエチレングリコールを含み得るが、これに限定されないアルキレンエーテル;高分子電解質(ポリアクリル酸又はポリビニルホスホン酸を含むが、これに限定されない);アミノ基(アルキル化アミン、モルホルニル又はピペラジニル等であるが、これらに限定されない非芳香族化された窒素環原子を含むヒドロキシアルキル化されたアミノ基、グアニジニウム基、及びヘテロ環基等であるが、これらに限定されないその誘導体);プロピオル酸(カルボン酸塩アニオン表面を提供し得る)を含むが、これに限定されないカルボン酸;エチニルホスホン酸(ホスホン酸塩アニオン表面を提供し得る)を含むが、これに限定されないホスホン酸;スルホン酸アニオン;カルボキシベタイン;スルホベタイン;スルファミン酸;又はアミノ酸を含み得る。
【0201】
様々な実施形態では、マイクロ流体デバイスにおける生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される共有結合部分は、アルキル部分、フルオロアルキル部分(ペルフルオロアルキル部分を含むが、これに限定されない)等の置換アルキル部分、アミノ酸部分、アルコール部分、アミノ部分、カルボン酸部分、ホスホン酸部分、スルホン酸部分、スルファミン酸部分、又はサッカリド部分等の非ポリマー部分を含み得る。代替的には、共有結合部分は、上述した任意の部分であり得るポリマー部分を含み得る。
【0202】
幾つかの実施形態では、共有結合部分は、線状鎖(例えば、少なくとも10個の炭素又は少なくとも14、16、18、20、22、若しくはそれを超える個数の炭素の線状鎖)を形成する炭素原子を含むことができ、且つ直鎖アルキル部分であり得る。幾つかの実施形態では、アルキル基は置換アルキル基を含み得る(例えば、アルキル基の炭素の幾つかはフッ素化又はパーフルオロ化することができる)。幾つかの実施形態では、アルキル基は、非置換アルキル基を含み得る第2のセグメントに結合される、ペルフルオロアルキル基を含み得る第1のセグメントを含み得る。第1及び第2のセグメントは、直接又は間接的(例えば、エーテル結合により)に結合され得、ここで、アルキル基の第1のセグメントは、結合基の先端部に配置し得、アルキル基の第2のセグメントは、結合基の基端部に配置し得る。
【0203】
他の実施形態では、共有結合部分は、2つ以上の種類のアミノ酸を含み得る少なくとも1つのアミノ酸を含み得る。したがって、共有結合部分は、ペプチド又はタンパク質を含み得る。幾つかの実施形態では、共有結合部分は、双性イオン性表面を提供して、細胞成長、生存、可搬性、又はそれらの任意の組合せを支持し得るアミノ酸を含み得る。
【0204】
他の実施形態では、共有結合部分は、少なくとも1つのアルキレンオキシド部分を含み得、上述した任意のアルキレンオキシドポリマーを含み得る。アルキレンエーテル含有ポリマーの有用な1クラスは、ポリエチレングリコール(PEG M<100,000Da)又は代替的にはポリエチレンオキシド(PEO、M>100,000)である。幾つかの実施形態では、PEGは約1000Da、約5000Da、約10,000Da、又は約20,000DaのMを有し得る。
【0205】
共有結合部分は1つ又は複数のサッカリドを含み得る。共有結合サッカリドはモノ、ジ、又はポリサッカリドであり得る。共有結合サッカリドは、表面に付着するような結合又は加工を可能にする反応ペア部分を導入するように修飾し得る。例示的な反応ペア部分は、アルデヒド、アルキン、又はハロ部分を含み得る。ポリサッカリドは、ランダムに修飾し得、各サッカリドモノマーが修飾されてもよく、又はポリサッカリド内のサッカリドモノマーの一部のみが、表面に直接若しくは間接的に結合され得る反応ペア部分を提供するように修飾される。一例は、直鎖リンカーを介して表面に間接的に結合され得るデキストランポリサッカリドを含み得る。
【0206】
共有結合部分は1つ又は複数のアミノ基を含み得る。アミノ基は、置換アミン部分、グアニジン部分、窒素含有ヘテロ環部分又はヘテロアリール部分であり得る。アミノ含有部分は、マイクロ流体デバイス内及び任意選択的に隔離チャンバ及び/又はフロー領域(例えば、チャネル)内の環境のpH変更を可能にする構造を有し得る。
【0207】
調整面を提供する被覆材料は、一種のみの共有結合部分を含んでもよく、又は2つ以上の異なる種類の共有結合部分を含んでもよい。例えば、フルオロアルキル調整面(ペルフルオロアルキルを含む)は、全て同じ、例えば、表面への同じ結合基及び共有結合、同じ全体長、及びフルオロアルキル部分を含む同数のフルオロメチレン単位を有する複数の共有結合部分を有し得る。代替的には、被覆材料は、表面に付着する2種類以上の共有結合部分を有し得る。例えば、被覆材料は、指定された数のメチレン又はフルオロメチレン単位を有する共有結合アルキル又はフルオロアルキル部分を有する分子を含み得、被覆面においてより嵩張った部分を提示する能力をお提供し得る、より多数のメチレン又はフルオロメチレン単位を有するアルキル又はフルオロアルキル鎖に共有結合した荷電部分を有する更なる組の分子を更に含み得る。この場合、異なる、立体的に要求が余り厳しくない末端及びより少数の骨格原子を有する第1の組の分子は、基板表面全体を官能化し、それにより基板自体を構成するケイ素/酸化ケイ素、酸化ハフニウム、又はアルミナへの望ましくない付着又は接触を回避するのに役立つことができる。別の例では、共有結合部分は、表面上でランダムに交流電荷を提示する両性イオン表面を提供し得る。
【0208】
調整面特性
調整された表面の組成以外で、疎水性材料の物理的厚さ等の他の要因がDEP力に影響し得る。調整された表面が基板に形成される様式(例えば、蒸着、液相堆積、スピンコーティング、フラッディング、及び静電コーティング)等の様々な要因が調整された表面の物理的厚さを変更し得る。幾つかの実施形態では、調整面は、約1nm~約10nm、約1nm~約7nm、約1nm~約5nm、又はそれらの間の任意の個々の値の厚さを有する。他の実施形態では、共有結合部分により形成される調整面は、約10nm~約50nmの厚さを有し得る。様々な実施形態では、本明細書において記載されるように準備される調整面は、10nm未満の厚さを有する。幾つかの実施形態では、調整面の共有結合部分は、マイクロ流体デバイスの表面(例えば、DEP構成基板表面)に共有結合した場合、単層を形成し得、10nm未満(例えば、5nm未満又は約1.5nm~3.0nm)の厚さを有し得る。これらの値は、約30nmの範囲の厚さを有するCYTOP(登録商標)(Asahi Glass Co., Ltd.、日本)フルオロポリマースピンコーティングの厚さとは対照的である。幾つかの実施形態では、調整面は、DEP構成マイクロ流体デバイス内での動作に適宜機能的であるために、完全に形成された単層を必要としない。
【0209】
様々な実施形態では、マイクロ流体デバイスの調整面を提供する被覆材料は、所望の電気特性を提供し得る。理論による限定を意図せずに、特定の被覆材料が被覆された表面の堅牢性に影響する一因子は、本質的に電荷捕獲である。異なる被覆材料は電子を捕獲し得、これは被覆材料の破壊に繋がる恐れがある。被覆材料の欠陥は、電荷捕獲を増大させ、被覆材料の更なる破壊に繋がる恐れがある。同様に、異なる被覆材料は異なる絶縁耐力(すなわち、絶縁破壊が生じる最小印加電場)を有し、これは電荷捕獲に影響を有し得る。特定の実施形態では、被覆材料は、その電荷捕獲量を低減又は制限する全体構造(例えば、高密度単層構造)を有することができる。
【0210】
調整された表面は、その電気特性に加えて、生体分子との併用に有利な特性を有することもできる。例えば、フッ化(又はパーフルオロ化)炭素鎖を含む調整された表面は、表面ファウリング量を低減するに当たり、アルキル末端鎖と比較して利点を提供し得る。表面ファウリングは、本明細書で使用される場合、タンパク質及びその老廃物、核酸及び各老廃物等のバイオ材料の永久的又は半永久的な堆積を含み得る、マイクロ流体デバイスの表面への無差別材料堆積量を指す。
【0211】
単一又は複数パートの調整面
共有結合被覆材料は、後述するように、マイクロ流体デバイスにおける生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分を既に含む分子の反応により形成し得る。代替的には、共有結合被覆材料は、生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分を、それ自体が表面に共有結合した表面修飾リガンドに結合することにより、2部シーケンスで形成し得る。
【0212】
共有結合された被覆材料を準備する方法
幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイスの表面(例えば、隔離チャンバ及び/又はフロー領域の少なくとも1つの表面を含む)に共有結合した被覆材料は、式1又は式2の構造を有する。被覆材料は、表面に1ステップで導入される場合、式1の構造を有し、一方、被覆材料は、複数ステッププロセッサで導入される場合、式2の構造を有する。
【化1】

【0213】
被覆材料は、DEP構成又はEW構成基板の表面の酸化物に供給結合し得る。DEP又はEW構成基板は、ケイ素、酸化ケイ素、アルミナ、又は酸化ハフニウムを含み得る。酸化物は、基板の元の化学構造の一部として存在してもよく、又は後述するように導入し得る。
【0214】
被覆材料は、結合基(「LG」)を介して酸化物に結合し得、LGは、シロキサン基又はホスホン酸基と酸化物との反応から形成されるシロキシ又はホスホネートエステル基であり得る。マイクロ流体デバイスにおける生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分は、本明細書に記載される任意の部分であり得る。結合基LGは、マイクロ流体デバイスにおける生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分に直接又は間接的に接続し得る。結合基LGがその部分に直接接続される場合、任意選択的なリンカーLは存在せず、nは0である。結合基LGが部分に間接的に接続される場合、リンカーLが存在し、nは1である。リンカーLは、線状部の骨格が、当技術分野で既知の化学結合制約を受けるケイ素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びリン原子の任意の組合せから選択される1~200個の非水素原子を含み得る線状部を有し得る。それは、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、アミド基、又はリン酸基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、又はヘテロ環基の群から選択される1つ又は複数の部分の任意の組合せで中断され得る。幾つかの実施形態では、リンカーLの骨格は10~20個の炭素を含み得る。他の実施形態では、リンカーLの骨格は約5原子~約200原子、約10原子~約80原子、約10原子~約50原子、又は約10原子~約40原子を含み得る。幾つかの実施形態では、骨格原子は全て炭素原子である。
【0215】
幾つかの実施形態では、生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分は、複数ステッププロセスで基板の表面に追加し得、上で示された式2の構造を有する。この部分は、上述した任意の部分であり得る。
【0216】
幾つかの実施形態では、結合基CGは、反応部分Rとペアとなる反応部分Rpx(すなわち、反応部分Rと反応するように構成される部分)との反応の結果生成される基を表す。例えば、典型的な1つの結合基CGはカルボキサミジル(carboxamidyl)基を含み得、これは、アミノ基と、活性化エステル、酸クロリド等のカルボン酸の誘導体との反応の結果である。他のCGは、トリアゾリレン(triazolylene)基、カルボキサミジル(carboxamidyl)、チオアミジル、オキシム、メルカプチル(mercaptyl)、二硫化物、エーテル、又はアルケニル基、又は反応部分とペアとなる各反応部分との反応時に形成し得る任意の他の適する基を含み得、結合基CGは、リンカーLの第2の端部(すなわち、マイクロ流体デバイスにおける生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分に近い端部)に配置し得、これは上述した要素の任意の組合せを含み得る。幾つかの他の実施形態では、結合基CGは、リンカーLの骨格を中断し得る。結合基CGは、トリアゾリレン(triazolylene)である場合、クリック結合反応からの結果である産物であり得、更に置換し得る(例えば、ジベンゾシクロオクチル溶融トリアゾリレン(triazolylene)基)。
【0217】
幾つかの実施形態では、被覆材料(又は表面修飾リガンド)は、化学蒸着を使用してマイクロ流体デバイスの内面に堆積する。蒸着プロセスは任意選択的に、例えば、溶媒浴への露出、超音波処理、又はそれらの組合せにより、カバー110、マイクロ流体回路材料116、及び/又は基板(例えば、DEP構成基板の電極活性化基板206の内面208又はEW構成基板の支持構造体104の誘電層)を予めクリーニングすることにより改善することができる。代替又は追加として、そのような事前クリーニングは、カバー110、マイクロ流体回路材料116、及び/又は基板を酸素プラズマクリーナにおいて処理することを含むことができ、酸素プラズマクリーナは、様々な不純物を除去することができ、それと同時に酸化表面(例えば、表面における酸化物、本明細書に記載されるように共有結合的に修飾し得る)を導入することができる。代替的には、塩酸と過酸化水素との混合物又は硫酸と過酸化水素との混合物(例えば、硫酸と過酸化水素との比率が約3:1~約7:1であり得るピラニア溶液)等の液相処理を酸素プラズマクリーナの代わりに使用することもできる。
【0218】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体デバイス200が組み立てられて、マイクロ流体回路120を画定するエンクロージャ102を形成した後、蒸着を使用して、マイクロ流体デバイス200の内面を被覆し得る。理論による限定を意図せずに、そのような被覆材料を完全に組み立てられたマイクロ流体回路120に堆積させることは、マイクロ流体回路材料116と電極活性化基板206の誘電層及び/又はカバー110との結合の弱化により生じる剥離を回避するに当たり有利であり得る。2ステッププロセスが利用される実施形態では、表面修飾リガンドは、上述したように蒸着を介して導入し得、続けて、生物学的微小物体の維持/増殖に適した有機分子及び/又は親水性分子の層を提供するように構成される部分が導入される。続く反応は、表面修飾マイクロ流体デバイスを溶液中の適する結合試薬に露出させることにより実行し得る。
【0219】
図2Hは、調整面を提供する例示的な共有結合被覆材料を有するマイクロ流体デバイス290の断面図を示す。示されるように、被覆材料298(概略的に示される)は、DEP基板であり得る基板286の内面294と、マイクロ流体デバイス290のカバー288の内面292と、の両方に共有結合した高密度分子の単層を含むことができる。被覆材料298は、幾つかの実施形態では、上述したように、マイクロ流体デバイス290内の回路要素及び/又は構造の画定に使用されるマイクロ流体回路材料(図示せず)の表面を含む、マイクロ流体デバイス290のエンクロージャ284に近くエンクロージャ284に向かって内側に面する略全ての内面294、292に配置することができる。代替の実施形態では、被覆材料298は、マイクロ流体デバイス290の内面の1つのみ又は幾つかに配置することができる。
【0220】
図2Hに示される実施形態では、被覆材料298は、オルガノシロキサン分子の単層を含むことができ、各分子は、シロキシリンカー296を介してマイクロ流体デバイス290の内面292、294に共有結合する。上記の被覆材料298のいずれかを使用することができ(例えば、アルキル末端、フルオロアルキル末端部分、PEG末端部分、デキストラン末端部分、又はオルガノシロキサン部分に正電荷又は負電荷を含む末端部分)、末端部分は、エンクロージャに面する末端に配置される(すなわち、内面292、294に結合されず、エンクロージャ284に近い被覆材料298の単層の部分)。
【0221】
他の実施形態では、マイクロ流体デバイス290の内面292、294の被覆に使用される被覆材料298はアニオン部分、カチオン部分、両性イオン部分、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。理論による限定を意図せずに、カチオン部分、アニオン部分、及び/又は両性イオン部分をマイクロ流体回路120のエンクロージャ284の内面に提示することにより、被覆材料298は、その結果生成される水和の水が、生物学的微小物体を非生物学的分子(例えば、基板のケイ素及び/又は酸化ケイ素)との相互作用から分離する層(又は「シールド」)として機能するような、強力な水との水素結合を形成することができる。加えて、被覆材料298が被覆剤と併用される実施形態では、被覆材料298のアニオン、カチオン、又は両性イオンは、エンクロージャ284内の媒体180(例えば、被覆溶液)中に存在する非共有結合被覆剤(例えば、溶液中のタンパク質)の荷電部分とイオン結合を形成することができる。
【0222】
更に他の実施形態では、被覆材料は、エンクロージャに面した末端において親水性被覆剤を含み得るか、又は提示するように化学的に修飾し得る。幾つかの実施形態では、被覆材料は、PEG等のアルキレンエーテル含有ポリマーを含み得る。幾つかの実施形態では、被覆材料は、デキストラン等のポリサッカリドを含み得る。上述した荷電部分(例えば、アニオン部分、カチオン部分、及び両性イオン部分)のように、親水性被覆剤は、その結果生成される水和の水が、生物学的微小物体を非生物学的分子(例えば、基板のケイ素及び/又は酸化ケイ素)との相互作用から分離する層(又は「シールド」)として機能するような、強力な水との水素結合を形成することができる。
【0223】
適切な被覆処理及び修飾の更なる詳細については、2016年4月22日に出願された米国特許出願公開第15/135,707号において見出し得、この特許出願は全体的に参照により本明細書に援用される。
【0224】
マイクロ流体デバイスの隔離チャンバ内の細胞の生存性を維持する追加のシステム構成要素
細胞集団の成長及び/又は増殖を促進するために、システムの追加の構成要素により、機能的な細胞の維持を促す環境状況を提供し得る。例えば、そのような追加の構成要素は、栄養素、細胞成長シグナリング種、pH調整、ガス交換、温度制御、及び細胞からの老廃物の除去を提供することができる。
【0225】
IV.そのほかの実施形態
A.T細胞又はNK細胞を用いた実施形態
特定の場合には、解離細胞サンプル中にT細胞が存在し得る。かかる場合には、本方法は、元の解離サンプルよりも大きいパーセント又は濃度のT細胞を有する画分を単離するように解離細胞サンプルで選択を行うことを更に含み得る。このようにして、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を同一の患者の腫瘍サンプルから得ることができる。他の場合には、T細胞を同一の患者の血液から得ることができる。例えば、同一の患者から得られる血液サンプル(又は末梢血単核細胞(PBMC)サンプル)からT細胞を選択できる。更に他の場合には、少なくとも1つの固形腫瘍を提供する患者でない被験者(例えば、血液ドナー又は組織ドナーである被験者)からT細胞を得ることができる。T細胞は、CD4、CD8、CD25、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD69、及びCD3から選択される少なくとも1つのT細胞マーカーを用いて解離細胞サンプル又は血液/PBMCサンプルの他の細胞から分離し得る。T細胞源又は使用される選択手順(もしあれば)にかかわらず、得られたT細胞は、クローニングし得る及び/又は本明細書に開示される方法に使用し得る。例えば、T細胞(患者特異的又はドナー由来にかかわらず)は、CAR-T治療剤を調製するために使用し得るか、又は他のタイプの免疫療法、例えば、TILと他の治療剤(例えば、本明細書に開示される方法に従って調製される抗体)とを含む組合せ療法に使用し得る。
【0226】
T細胞と同様に、ナチュラルキラー(NK)細胞を本明細書に開示される方法に使用可能である。例えば、Topfer et al. (2015), J. Immunol. 194(7):3201-3212に記載されるように、CAR治療剤を調製するためにNK細胞を使用可能である。NK細胞は、例えば、血液サンプル又は組織サンプル(例えば、腫瘍から得られる解離細胞サンプル)から得ることができる。NK細胞は、CD56等の少なくとも1つのNKマーカーを用いてサンプル中の他の細胞から単離可能である。
【0227】
B.外部細胞源に依拠する実施形態
幾つかの実施形態では、細胞源は全て、単一の患者に由来する。他の実施形態では、このサブセクションで考察されるように、細胞源は、異なる患者又は異なる供給源に由来し得る。一態様では、本方法は、患者の癌細胞及び他の供給源の癌細胞の両方に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つのB細胞を同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを含む(例えば、2ステッププロセスで)。一実施形態では、B細胞は、患者自身の癌細胞の調製時及び/又は培養時(例えば、患者の癌細胞をマイクロ流体デバイスにロードする前)に癌細胞株に対して試験される。T細胞又はNK細胞はまた、同一の患者又は異なる供給源から得られ得る。
【0228】
C.正常細胞を利用した実施形態
所望により、B細胞により産生された抗体の特異性は、癌細胞及び非癌細胞(すなわち、正常細胞)の両方に結合する能力を比較することにより評価可能である。このため、任意選択的に、本方法は、B細胞により産生された抗体が非癌細胞に結合可能であるかを同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを更に含み得る。非癌細胞及び癌細胞は、同一の腫瘍サンプルから解離し得る。代替的に、非癌細胞及び/又は癌細胞は、少なくとも1つの固形腫瘍サンプルを提供する患者以外の被験者に由来し得る。
【0229】
癌細胞及び非癌細胞への抗体の結合を同定するために同一のマイクロ流体デバイスを使用し得る。癌細胞及び非癌細胞は、マイクロ流体デバイスの異なる部分にロードし得る。例えば、癌細胞(又は非癌細胞)は、B細胞と同一の分離チャンバ内に配置可能であり、且つ非癌細胞(又は癌細胞)は、分離チャンバがフローチャネル内に開口する場所に近接するフローチャネル内の位置に流入可能である。他の例では、癌細胞(又は非癌細胞)は、B細胞を含有する分離チャンバに隣接する分離チャンバ内に配置可能であり、且つ非癌細胞(又は癌細胞)は、B細胞を含有する分離チャンバがフローチャネル内に開口する場所に近接するフローチャネル内の位置に流入可能である。更に他の例では、癌細胞(又は非癌細胞)は、B細胞と共に分離チャンバ内に配置可能であり、且つ非癌細胞(又は癌細胞)は、B細胞を含有する分離チャンバに隣接する分離チャンバ内に配置可能である。癌細胞及び/又は非癌細胞の配置にかかわらず、同一のマイクロ流体デバイスを用いて抗体(例えば、B細胞により産生されたもの)が癌細胞及び/又は非癌細胞に結合するかを同時に評価することが可能である。他の実施形態では、癌細胞及び非癌細胞は、同一の流路(又は同一の分離領域)内に逐次的にロードして、(1)抗体と癌細胞との間及び(2)抗体と非癌細胞との間の結合の逐次検出を可能にし得る。
【0230】
V.治療方法及び治療用組成物
癌を有する患者は、本明細書に記載の方法により産生された抗体又はそのフラグメントにより治療し得る。一例では、腫瘍サンプルは、治療される同一患者から採取される。この方法の利点の1つは、所与の患者に対する個別化治療を設計可能であり、幾つかの場合には、比較的短い時間ウィンドウで個別化治療を施し得るので、患者の疾患状態に必要とされる時間で治療有効性が得られることである。例えば、幾つかの実施形態では、腫瘍サンプルを得てから治療に至るまでの時間は多くとも約2ヶ月であり得る。
【0231】
B細胞により産生された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を決定した後、可変配列の全部又は一部のいずれかを含有する多種多様な抗体又は抗体フラグメントの構築物を調製し得る。幾つかの場合には、患者は一本鎖抗体により治療し得る。他の場合には、患者は、2本の重鎖と2本の軽鎖とを有する抗体又はそのフラグメントにより治療し得る。幾つかの実施形態では、工学操作抗体構築物は、Fab又はFab’(2)フラグメント、scFv、多価scFv(例えば、ダイアボディー又はトリボディー)、ミニボディー(例えば、scFv-CH3ダイマー)、二重特異的Ab、又はラクダ機能性重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態では、工学操作抗体構築物は、本明細書の方法により同定された抗体の任意の変異体を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はフラグメントは、単離された形態で投与し得る。
【0232】
例えば、工学操作抗体構築物は、(a)本明細書の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖CDR、(b)本明細書の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖のCDR、(c)本明細書の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖可変領域、又は(d)本明細書の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖の可変領域を含み得る。
【0233】
他の場合には、抗体又はフラグメントを用いて各種構築物を調製し得る。例えば、工学操作T細胞又は工学操作NK細胞上に抗体を提示し得る。幾つかの実施形態では、工学操作T細胞はキメラ抗原受容体T細胞である。T細胞は、抗体を提示するように工学操作される前に、同一の患者から、例えば、患者の腫瘍サンプル又は患者から得られた血液サンプルから、得られ得る。かかるT細胞は、抗体又はそのフラグメントを発現するように遺伝子工学操作し得る。同様に、他の実施形態では、工学操作NK細胞はキメラ抗原受容体NK細胞である。NK細胞は、抗体を提示するように工学操作される前に、同一の患者から、例えば、患者の腫瘍サンプル又は患者から得られた血液サンプルから、得られ得る。かかるNK細胞は、抗体又はそのフラグメントを発現するように遺伝子工学操作し得る。
【0234】
幾つかの形態では、抗体又はそのフラグメントは、他の療法と組み合わせて投与し得る。かかる場合には、組合せ療法は、手術、放射線療法、化学療法、CAR-T療法、T細胞療法(例えば、TIL等の患者自身のT細胞を単に増幅してそれを再導入することにより)、他の免疫療法(PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、VISTA、BTLA、又はそれらの任意の組合せに対する阻害抗体等の機能阻止抗体を用いて、T細胞機能を阻害する既知の抗原を標的とすることにより)、又はICOS、OX40、41BB、抗腫瘍ワクチン、サイトカイン、腫瘍特異的ウイルス等の免疫刺激剤の投与であり得る。
【0235】
VI.標識方法及び検出方法
本明細書の方法に従って産生された抗体はまた、検出方法に使用し得る。例えば、抗体を検出可能標識で標識して、癌細胞(患者自身の腫瘍細胞を含む)を検出又は標識するために生体内又は生体外で使用し得る。例えば、腫瘍の強調、外科切除の向上、及び生存率の増加のために、フルオロフォアコンジュゲート抗体を用いて蛍光ガイド下手術を行い得る。Alexa Fluor 488等のフルオロフォアを使用し得る。抗体-フルオロフォアコンジュゲートは、静脈内に注射し得るか又は手術時に切除表面に適用し得る。本明細書で産生される抗体はまた、他の検出方法又は標識方法にも使用し得る。
【実施例0236】
実施例
実施例1.腫瘍生検物の処理及び解離細胞サンプルの断片化
A.腫瘍サンプルの解離
腫瘍サンプルは、自身の腫瘍の外科切除を受けた患者から得られる。腫瘍切除の当日、手順の直後に実験室で検体を受け取る。検体は、無菌容器に入った無菌生理食塩水に浸漬する。スカルペル及び無菌フォーセプスを用いてラミナーフローフード内で生存可能腫瘍組織を生存不能組織及び健常(非癌)組織から切除する。生存可能腫瘍組織の他のサンプルを他の評価のために得てもよい。少量の無菌HBSSを含有する50ml遠心分離管に解離用腫瘍サンプルを秤取して保持する。細胞培養用の培地は、10%ヒト血清(56℃で30分間熱不活性化)と、最終濃度のペニシリンG(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、ゲンタマイシン(50μg/ml)、Hepes(25mM)、及び2-メルカプトエタノール(5.5×10-5M)とをRPMI1640に追加することにより調製される。
【0237】
組織試料は、無菌カッティング表面(裁断板又はオープンペトリ皿)上に配置される。無菌スカルペル及びフォーセプスを用いて、検体を小さな(3~5mm)断片にカットする。カットされた断片は、gentleMACS(登録商標)C管に移される。酵素培地(EM)を管に添加し(0.2~2gの組織に対して5ml及び2~5gに対して10ml)、かすかなクリック音が聞かれるまでキャップを回すことにより管を確実に密閉する。EMは、gentleMACS(登録商標)プログラムラン間の短いインキュベーション時間の間、外科試料からの細胞の分散を支援するために使用される。酵素含有培地RPMI1640は血清を含有しないが、ペニシリンG(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、ゲンタマイシン(50μg/ml)、Fungizone(登録商標)(1.25μg/ml)、コラゲナーゼ(1mg/ml)、及びPulmozyme(登録商標)(約30単位/ml)を含有する。酵素ストックは-20℃で貯蔵された乾燥粉末である。
【0238】
gentleMACs Sleeve内にキャップ側を下向きにしてC管を鉛直に設置する。適正に設置することにより回転力及び軸方向力に対してC管を確実に適所に保持する。内部gentleMACS(登録商標)ディソシエータメモリーにより所定のプログラムが提供される。プログラムは強度がさまざまであるので、処理される組織のテクスチャーに依存して適切なプログラムを選択する。より軟質の組織は、より緩速の回転(より低速)を必要とし、より硬質の組織は、より激しいより長時間の回転を必要とする。ラン間で行われる解離状態の評価により、複数の解離ランを行い得る。解離組織は、250ml遠心分離管の頂部のオートクレーブ処理された漏斗内に配置されたオートクレーブ処理されたワイヤメッシュに通して濾過される。無菌HBSSでワイヤメッシュを濯ぎ、追加の無菌HBSSを管に充填する。次いで、1500rpmで10分間遠心分離することにより解離組織を1回洗浄する。上清を吸引し、ペレットを既知量のHBSS中に再懸濁する。
【0239】
B.腫瘍解離の代替手順
gentleMACS(登録商標)装置を用いて腫瘍解離を行う代替法として、消化緩衝液を使用し得る。腫瘍組織は、フォーセプスを用いて引き裂くか、又は小片(2~5mm)にカットする。組織は、解離緩衝液(RPMI及び10%ヒト血清中の100単位/mlのコラゲナーゼ及び100μg/mlのDNase(56℃で30分間熱不活性化))中に配置される。消化は、37℃のインキュベーター中で30分間進行させる。インキュベーション後、ピペットを用いてサンプルを上下にピペッティングし、易流動性単一細胞懸濁液を得る。
【0240】
懸濁液を70ミクロンフィルターに通して濾過し、10%ヒト血清が追加されたMACs分離緩衝液(56℃で30分間熱不活性化)で2回洗浄する。細胞懸濁液を400×gで10分間遠心分離する。ペレットを10mlのMACs緩衝液で濯ぎ、同一設定では再び遠心分離する。次いで、解離細胞を100μlのMACs緩衝液中に再懸濁させる。
【0241】
C.解離細胞サンプルからの細胞型の細分
以上のプロトコルのいずれかを用いて単一細胞を含む解離細胞サンプルを調製した後、解離細胞サンプルからB細胞、T細胞、NK細胞、及び癌細胞を細分し得る。抗CD20磁気ビーズを用いてB細胞を選択し得る。抗CD4及び/又は抗CD8磁気ビーズを用いてT細胞を選択し得る。抗CD56磁気ビーズを用いてNK細胞を選択し得る。癌細胞に特異的な抗体に付着された磁気ビーズを用いて、癌細胞を選択し得るか、又は形態学的評価を用いて癌細胞を手動で除去し得る。
【0242】
細分される第1の細胞型を標的とする抗体標識マイクロビーズ(10細胞当たり約10μl)を解離細胞サンプルに添加する。管を軽くフリッキングし、光を遮蔽して4~8℃で15分間インキュベートすることにより、管を十分に混合する。10mlのMACs緩衝液を添加して400×gで10分間遠心分離することにより細胞を洗浄する。上清を注加(又は吸引)により除去し、細胞を500μlのMACs緩衝液中に再懸濁させる。新しいカラムをマグネットセパレーターに適用する。選択されたカラムに適切な量のMACs緩衝液で濯ぐことによりカラムをプライミングする。カラムのプライミング後、1×10細胞ごとに1つのカラムを使用して細胞懸濁液をカラムの頂部に適用する。いずれの非標識細胞(通過)も収集し、異なる細胞型の単離のために保存する。第1の洗浄では、合計で1.5~2.5mlの流体洗浄液となるように500μl量でカラムを最小で3回且つ最大で5回洗浄する。純度に影響を及ぼし得ると共に細胞生存能の損失をもたらし得る枯渇が起こらないように、カラム中の流体フローを維持する)。
【0243】
第2の洗浄では、死滅又は瀕死の腫瘍細胞に由来する固着性デブリを洗い流すために、コラゲナーゼとDNaseとを含む解離緩衝液ミックスでカラムを洗浄する(RPMI及び10%ヒト血清中の100単位/mlのコレゲナーゼ及び100μg/mlのDNase(56℃で30分間熱不活性化))。第3の洗浄では、洗浄液が完全に透明に見えるまで、再びMACs緩衝液を使用する。
【0244】
カラムを磁気分離器から取り出し、好適な収集管上に配置する。2mlの緩衝液をカラム上に配置し、カラムに付属するプランジャーをしっかりと適用することにより磁気標識細胞を収集する。
【0245】
代替的に、AutoMACS(登録商標)により磁気分離を行い得る。
【0246】
B細胞、T細胞、NK細胞、及び癌細胞のそれぞれを単離するために、追加の分離ステップを行う。所望により磁気ビーズを細胞から除去する。
【0247】
実施例2.マイクロ流体デバイスにおけるIgG抗体を分泌するマウス脾細胞のスクリーニング
ヒトCD45に結合するIgG型抗体を分泌するマウス脾細胞を同定するために、スクリーニングを行った。実験設計は、次のステップ、すなわち、
1.CD45抗原コーティングビーズの生成、
2.マウス脾細胞の採取、
3.マイクロ流体デバイスへの細胞のローディング、及び
4.抗原特異性のアッセイ、
を含んでいた。
【0248】
実験に使用した試薬は、表1に示されるものを含んでいた。
【0249】
【表1】
【0250】
CD45抗原コーティングビーズの生成
CD45抗原コーティングマイクロビーズを以下のように生成した。
・50μgの担体フリーCD45を500μLのPBS(pH7.2)中に再懸濁させた。
・slide-a-lyzer miniカップを500μLのPBSで濯ぎ、次いで、遠心分離管に入れた。
・濯いだslide-a-lyzer miniカップに50μLの0.1μg/μL CD45溶液を添加した。
・170μLのPBSを2mgのNHS-PEG4-ビオチンに添加した後、4.1μLのNHS-PEG4-ビオチンをCD45抗原の入ったslide-a-lyzer miniカップに添加した。
・NGS-PEG4-ビオチンをCD45抗原と共に室温で1時間インキュベートした。
・インキュベーション後、slide-a-lyser miniカップを遠心分離管から取り出して第2の遠心分離管内の1.3mlのPBS(pH7.2)中に配置し、揺動させながら第1の1時間にわたり4℃でインキュベートした。続いて、slide-a-lyser miniカップを1.3mlの新鮮なPBS(pH7.2)の入った第3の遠心分離管に導入し、揺動させながら第2の1時間にわたり4℃でインキュベートした。この最終ステップを更に3回繰り返し、1時間のインキュベーションを合計で5回行った。
・100μLのビオチン化CD45溶液(約50ng/μL)をピペッティングにより標識管に入れた。
・500μLのSpherotechストレプトアビジンコーティングビーズをピペッティングにより遠心分離管に入れ、PBS(pH7.4)で3回洗浄し(1000μL/洗浄)、次いで、3000RCFで5分間遠心分離した。
・ビーズを500μlのPBS(pH7.4)中に再懸濁させ、5mg/mlのビーズ濃度を得た。
・50μLのビオチン化タンパク質と再懸濁させたSpherotechストレプトアビジンコーティングビーズとを混合した。揺動させながら2時間にわたり混合物を4℃でインキュベートし、次いで、4°、3000RCFで5分間にわたり遠心分離した。上清を廃棄し、CD45コーティングビーズを1mLのPBS(pH7.4)で3回洗浄した。次いで、4℃、3000RCFでビーズを更に5分間遠心分離した。最後に、CD45ビーズを500μLのPBS pH7.4中に再懸濁させ、4℃で貯蔵した。
【0251】
マウス脾細胞の採取
CD45で免疫されたマウスから脾臓を採取し、DMEM培地+10%FBS中に配置した。ハサミを用いて脾臓をミンスした。
【0252】
ミンスした脾臓を40μm細胞ストレーナー中に配置した。10mlピペットを用いて単一細胞を細胞ストレーナーに通して洗浄した。ガラス棒を用いて脾臓を更に破壊し、単一細胞を押圧して細胞ストレーナーに通し、その後、10mlピペットを用いて単一細胞を再び細胞ストレーナーに通して洗浄した。
【0253】
市販のキットを用いて赤血球を溶解させた。
【0254】
細胞を200×Gで遠心沈降させ、10mlのピペットを用いて生の脾細胞をDMEM培地+10%FBS中に2e細胞/mlの濃度で再懸濁させた。
【0255】
マイクロ流体デバイス内の細胞のローディング
脾細胞をマイクロ流体チップ内に取り込み、20~30細胞/ペンを含有するようにペン内にロードした。100マイクロリットルの培地を1μL/sでデバイスに通して流動させ、望ましくない細胞を除去した。温度を36℃に設定し、培養培地を0.1μL/secで30分間かん流させた。
【0256】
抗原特異性アッセイ
1:2500ヤギ抗マウスF(ab’)2-Alexa 568を含有する細胞培地を調製した。
【0257】
1:2500希釈のヤギ抗マウスF(ab’)2-Alexa 568を含有する22μLの細胞培地中に100μLのCD45ビーズを再懸濁させた。
【0258】
次いで、脾細胞を含有するペンに隣接して、ただし、そのすぐ外側に位置決めされるまで、再懸濁させたCD45ビーズを1μL/secの速度でマイクロ流体チップのメインチャネルに流入させた。次いで、流体フローを停止させた。
【0259】
次いで、明視野でマイクロ流体チップの撮像を行ってビーズの位置を決定した。
【0260】
次いで、テキサスレッドフィルターを用いて細胞及びビーズの像をキャプチャーした。5分ごとに1時間にわたりそれぞれ露光持続時間1000ms及びゲイン5で像を取り込んだ。
【0261】
結果
特定のペンからメインチャネル内に拡散してCD45コーティングビーズに結合可能なIgGアイソタイプ抗体の拡散を反映して、ビーズ上に発生する陽性シグナルが観測された。ビーズに抗CD45抗体が結合することにより、二次ヤギ抗マウスIgG-568がビーズと一体化して検出可能なシグナルを生成した。図5Cの白矢印を参照されたい。
【0262】
本明細書に開示される方法を用いて、陽性シグナルに関連付けられた各脾細胞群を分離し、単一細胞として新しいペン内に移動させ、再分析することが可能であった。このようにして、抗CD45IgG抗体を発現する単一細胞を検出することが可能であった。
【0263】
実施例3.膜の調製及びビーズへの膜抗原のコンジュゲーション
次のプロトコルにより、対象のサンプル細胞からタンパク質(及び他のバイオ分子)、特に膜結合タンパク質又は膜関連タンパク質を含有するサンプルを得ることが可能であることを実証する。このプロトコルをジャーカット細胞で行うことにより、かかる細胞に存在することが知られるタンパク質に関して得られたサンプルを試験することが可能である。このプロトコルは、腫瘍生検物から単離された癌細胞を含めて他の細胞型に容易に拡張可能であるので、抗原への反応性を示す免疫細胞(例えば、B細胞)をスクリーニングするのに有用な腫瘍細胞特異的(又は他の細胞型に特異的な)抗原を含有するサンプルが得られる。
【0264】
材料:
・ジャーカット細胞(ATCC TIB-152)
・LiDS-サンプル緩衝液:0.02g/mL LiDS、10%グリセロール、0.51mM EDTA、247mM Tris、pH8.5(ThermoFisher B0008)
・Qiashredder(Qiagen 79654)
・DPBS(カルシウム及びマグネシウムを含有、ThermoFisher 14040-182)
・超純水(ThermoFisher 10977-015)
・EZ-Linkスルホ-NHS-SS-ビオチン(ThermoFisher 21328):-20℃で貯蔵し、使用約30分前に取り出して室温で加温する。短時間の遠心沈降を行って管の底にあるもの全てを収集する。使用直前に、1mgのスルホ-NHS-SS-ビオチンの入った1つの管に164μLの超純水を添加し、上下に数回ピペッティングして溶解させる(10mM溶液が得られる)。
・Complete Ultra mini(Sigma 5892791001):20×溶液を調製する。ボルテックスすることにより500μLの水に1つの錠剤を溶解させる(4℃又は-20℃で4週間安定)。
・Minute形質膜タンパク質単離キット(Invent Biotechnologies SM-005):使用前に、溶液A及びBを解凍し、以下のようにプロテアーゼ阻害剤を添加する。
・各サンプルに対して500μLの緩衝液A+25μLの20×プロテアーゼ阻害剤(氷上で貯蔵)
・各サンプルに対して200μLの緩衝液B+10μLの20×プロテアーゼ阻害剤(氷上で貯蔵)
・各サンプルに対して1つのフィルターカートリッジを氷上に準備する。
・BSA:Chromatopurウシアルブミン(MP Biomedicals 02180561)
・ストレプトアビジンコーティング磁気マイクロスフェア(Bangs Laboratories CM01N Lot# 11806)、使用前に以下のように洗浄しブロックする。
・ビーズをボルテックスし、300μL/サンプルを取り出し、1.5mL管に移す。
・PBSで洗浄する。
・0.5%BSA中に再懸濁し、4℃で(回転しながら)少なくとも1時間インキュベートする。
・PBSで洗浄し、500μLのDPBS(+プロテアーゼ阻害剤)/サンプル中に再懸濁する。
・抗α1ナトリウムカリウムATPアーゼ(Na/K ATPアーゼ)抗体(Abcam ab7671)
・抗ヒトCD3抗体、クローンSK7(BioLegend 344802)
・抗ヒトCD45抗体、クローンHI30(BioLegend 304002)
・F(ab’)2ヤギ抗マウスIgG(H+L)、Alexa Fluor 488(ThermoFisher A-11017)
【0265】
膜タンパク質のビオチン化:
・ジャーカット細胞数をカウントする。
・ウェスタンブロット分析用のアリコートの準備:
・2×106細胞を遠心分離する。
・PBSで洗浄する。
・LiDS-サンプル緩衝液に溶解させ、Qiashredderカラムを介して遠心分離し、DNAを剪断する。
・数日であれば4℃で、より長期間であれば-80℃で貯蔵する。
・DPBSを用いて遠心分離により複数組の15×10細胞を3回洗浄する。
・各ペレットを500μLのDPBS中に再懸濁し、1.5mL管に移し、10μLの新たに調製した10mMスルホ-NHS-SS-ビオチンを添加する。
・室温で30分間回転させる。
・冷DPBSで3回洗浄し、続いて細胞ペレットの膜画分の富化を進める。
・ウェスタンブロット分析用に1つのサンプルを処理する(上記参照)。
【0266】
図6は、形質膜中に存在するタンパク質Na/K-ATPアーゼ及びサイトゾルタンパク質GAPDHを染色した例示的なウェスタンブロットを示す。
【0267】
Minute形質膜単離キットを用いた膜画分の富化:
・全てのステップを氷上で行い、4℃で遠心分離する。
・緩衝液A:<5×10細胞の場合は200μl及び>5×10細胞の場合は500μl中にペレットを再懸濁する。
・氷上で10分間インキュベートする。
・10~30秒間激しくボルテックスし、ただちに、氷上のフィルターカートリッジに移す。
・フィルターカートリッジにキャップをし、16,000gで30秒間遠心分離する(細胞ライセートが通り抜けない場合、2分間まで延長する)。
・収集管内でペレットを再懸濁し、同一のフィルタに移し、再び遠心分離する。
・フィルタを廃棄し、激しく10秒間ボルテックスすることによりペレットを再懸濁する。
・700gで1分間遠心分離する(インタクト核をペレット化する)。
・新しい1.5ml管で上清を16,000g/4℃で30分間遠心分離する(→上清はサイトゾルを含有し、ペレット=全膜タンパク質画分である)。
・ボルテックスすることにより又は上下にピペッティングすることにより200μlの緩衝液B中にペレットを再懸濁する。
・7,800g/4℃で20分間遠心分離する→ペレットはオルガネラ膜タンパク質を含有する。
・新しい2.0ml管に上清(膜画分)を注意深く移す。
【0268】
ストレプトアビジンコーティング磁気マイクロスフェアへの膜画分の結合:
・80μLの各膜画分を500μLのビーズに添加する。
・4℃で一晩回転させる。
・ウェスタンブロット分析用に非結合画分を保存する。
・0.5%BSA/PBS+プロテアーゼ阻害剤中で30分間回転させる。
・PBSで洗浄する。
・250μLの0.1%BSA/PBS+プロテアーゼ阻害剤中に再懸濁する。
・ビーズからの膜画分の放出(DTTを用いてS-S結合を切断する):
・50μLのビーズのアリコートを取り出す。
・磁石を作動し、溶液を除去する。
・50mM DTT(1×還元剤、ThermoFisher B0009)を含有する50μLのLiDS-サンプル緩衝液中にビーズを再懸濁する。
・室温で2時間インキュベートする(約30分ごとに混合する)。
【0269】
抗体染色:
・各抗体に対して以下の希釈率でビーズの50μLのアリコートを取り出す(ステップ24から)。
・CD3(1:200)
・CD45(1:100)
・Na/K-ATPアーゼ(1:100)
・一次抗体なし
・4℃で30分間回転させる。
・800μLのPBSを添加して洗浄し、PBSでもう1回洗浄する。
・二次抗体(Alexa 488コンジュゲートヤギ抗マウス)中、4℃、1:300で30分間インキュベートする(回転させながら、体積:200μL、0.5%BSA/PBS+プロテアーゼ阻害剤中)。
・800μLのPBSを添加して洗浄し、PBSでもう1回洗浄する。
・20μLの0.5%BSA/PBS+プロテアーゼ阻害剤中に再懸濁する。
・蛍光顕微鏡の撮像を行う。
【0270】
図7は、CD3、CD45、又はNa/K-ATPアーゼを染色してジャーカット細胞膜画分でコーティングされたビーズを示す。よりかすかなスポットとして現れるNA/K-ATPアーゼと比較して、CD3及びCD45は両方とも強く現われる。図8は、HEK293細胞との比較を示す。ここでは、Na/K-ATPアーゼは同じに染色されるが、CD3及びCD45は不在である。
【0271】
細胞膜調製物から単離されたタンパク質は、ビーズにうまく結合可能であることが、結果から実証される。かかるビーズを免疫細胞と混合して、どの細胞が細胞膜調製物中に存在する抗原(タンパク質であるか否かにかかわらず)に反応するかを決定することが可能であった。
【0272】
実施例4.ビーズコンジュゲート癌細胞由来抗原に結合する抗体を発現するB細胞の同定
患者自身の髄様乳癌細胞に結合する抗体を発現する患者特異的B細胞を同定するために、スクリーニングを行うことが可能である。実験設計は、以下のステップ、すなわち、
・B細胞及び癌細胞の採取及び選択を行うステップと、
・癌細胞から細胞膜調製物を得て膜抗原をビーズにコンジュゲートするステップと、
・B細胞をマイクロ流体デバイス内にロードするステップと、
・癌細胞由来膜抗原にコンジュゲートされたビーズをマイクロ流体デバイス内にロードするステップと、
・B細胞により産生された抗体とビーズとの結合をアッセイするステップと、
を含み得る。
【0273】
A.細胞の採取及び選択
髄様乳癌腫瘍の生検物は患者から得られ、生検物の細胞は実施例1(上記)に記載したように解離される。B細胞は、得られた解離細胞サンプルから抗CD-20磁気ビーズを用いて選択されるので、B細胞富化細胞サンプルが生成される。次いで、抗ER(エストロゲン受容体)磁気ビーズと抗PR(プロゲステロン受容体)磁気ビーズと抗HER2磁気ビーズとの混合物を用いて、B細胞枯渇解離細胞サンプル中に残留する細胞から非髄様乳癌細胞を枯渇させると、三重陰性乳癌細胞富化サンプルが生成される。
【0274】
B.乳癌細胞からの細胞膜の調製及びビーズへの膜抗原のコンジュゲーション
パートAで得られた三重陰性乳癌細胞富化サンプルから出発して、癌細胞由来の細胞膜を調製し、以上の3に記載されるように、ビーズにコンジュゲートすることが可能である。
【0275】
C.マイクロ流体デバイス内への細胞のローディング
次いで、B細胞富化細胞サンプルは、0.1~1.0マイクロリットル/secの速度で1~3マイクロリットルのサンプルをフローチャネルに流入させることによりマイクロ流体チップにロードされる。次いで、サンプルのフローは停止されるが、サンプル中の細胞はフローチャネル内に位置決めされ、B細胞はDEP力(例えば、OET)を用いて選択的に捕捉され、フローチャネルに接続された分離チャンバの分離領域内に移動される。単一のB細胞は、複数の分離チャンバのそれぞれに配置される。使用されるマイクロ流体チップのサイズに依存して、3000細胞以上のB細胞は、単一のチップで個別に単離可能である。一般に、より少数のB細胞がサンプル中に存在すると予想される。結果として、サンプル中のB細胞は全て、単離可能である。B細胞を分離チャンバ内に移動させた後、フローチャネルから望ましくない細胞及びデブリを排除するために、フローチャネルは、新鮮培地を用いてフラッシュされる。
【0276】
フローチャネルを清浄化した後、三重陰性乳癌細胞富化サンプルがチップにロードされる。B細胞富化サンプルと同様に、1~3マイクロリットルの癌細胞富化サンプルが、0.1~1.0マイクロリットル/secの速度でフローチャネルに流入され、次いで、フローが停止される。形態学的形質を用いて、複数の癌細胞(例えば、3~6個)がDEP力(例えば、OET)を用いて選択され、B細胞を含有する各分離チャンバ内に移動される。癌細胞を分離チャンバ内に移動させた後、フローチャネルから望ましくない細胞及びデブリを排除するために、フローチャネルは、新鮮培地を用いてフラッシュされる。このようにして、マイクロ流体チップの複数の分離チャンバ内に単一のB細胞及び複数の髄様乳癌細胞がロードされる。
【0277】
D.マイクロ流体デバイス内へのビーズのローディング
フローチャネルを清浄化した後、三重陰性乳癌細胞富化サンプルから得られた膜抗原にコンジュゲートされたビーズがチップにロードされる。B細胞富化サンプルと同様に、1~3マイクロリットルの癌細胞関連抗原コンジュゲートビーズが、0.1~1.0マイクロリットル/secの速度でフローチャネルに流入され、次いで、フローが停止される。ビーズは、B細胞を含有する各分離チャンバ内に移動される。ビーズを分離チャンバ内に移動させた後、フローチャネルから望ましくないビーズ及びデブリを排除するために、続いて、フローチャネルは、新鮮培地を用いてフラッシュされる。このようにして、マイクロ流体チップの複数の分離チャンバ内に単一のB細胞及び複数の癌細胞関連抗原コンジュゲートビーズがロードされる。代替的に、ビーズは、以上の実施例2に記載されるように、チャネルに残存させ得る。
【0278】
E.抗体結合アッセイ
単離されたB細胞のいずれかが、癌細胞関連抗原に結合する抗体を産生するかを決定するために、マイクロ流体チップ内のB細胞は、抗体発現を助長する条件下でインキュベートされる。かかるインキュベーションの後、ヒト抗体の定常領域に結合する二次抗体の混合物を含有する培地をマイクロ流体チップに流入させ、次いで、停止させる。蛍光標識された抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgM抗体、及び任意選択的にヒトIgA、IgE、及び/又はIgDに対する抗体を含有し得る抗体混合物中の抗体は、分離チャンバ内を拡散可能であり、且つB細胞により産生された抗体に結合可能である。B細胞により産生された抗体が、対応する分離チャンバ内のビーズにコンジュゲートされた癌細胞関連抗原の1つ以上に結合する場合、抗ヒト二次抗体(及びその標識)は、ビーズの表面に検出可能に結合された状態になるであろう。ビーズがチャネルに残留する場合、蛍光標識二次抗体は、ビーズをマイクロ流体デバイスに流入させる前にビーズと混合可能である。
【0279】
二次抗体のインキュベーションステップ時、蛍光シグナル検出用フィルター(例えば、テキサスレッドフィルター)を用いてマイクロ流体チップの撮像が周期的に行われる。5分ごとに1時間にわたりそれぞれ露光持続時間1000msで像を取り込むことが可能である。
【0280】
F.結果
陽性シグナルは、癌細胞関連抗原に結合する抗体を発現するB細胞を含有する任意の分離チャンバ内の(又はそれに近接する)ビーズの表面に発生して観測可能である。本方法を用いて、対象の抗体を発現する個別B細胞を特異的に同定することが可能である。興味深い抗体を何ら産生しないB細胞は、その分離チャンバから移動させてマイクロ流体チップから搬出し廃棄可能である。患者の髄様乳癌細胞由来の抗原に結合する抗体を発現するとして同定されたB細胞は、分離チャンバから移動させて(例えば、OET等のDEP力を用いて)、発現された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の増幅及びシーケンシングのために搬出可能である。抗体の発現を誘導しつつB細胞を増殖させた場合、B細胞のクローン集団は、発現された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の増幅及びシーケンシングのために搬出可能である。
【0281】
実施例5.癌細胞に結合する抗体を発現するB細胞の同定
代替的に、患者自身の髄様乳癌細胞に結合する抗体を発現する患者特異的B細胞を同定するために、スクリーニングを行うことが可能である。実験設計は、以下のステップ、すなわち、
・B細胞及び癌細胞の採取及び選択を行うステップと、
・マイクロ流体デバイスに細胞をロードするステップと、
・B細胞により産生された抗体と癌細胞との結合をアッセイするステップと、
を含み得る。
【0282】
A.細胞の採取及び選択
髄様乳癌腫瘍の生検物は患者から得られ、生検物の細胞は実施例1(上記)に記載したように解離される。B細胞は、得られた解離細胞サンプルから抗CD-20磁気ビーズを用いて選択されるので、B細胞富化細胞サンプルが生成される。次いで、抗ER(エストロゲン受容体)磁気ビーズと抗PR(プロゲステロン受容体)磁気ビーズと抗HER2磁気ビーズとの混合物を用いて、B細胞枯渇解離細胞サンプル中に残留する細胞から非髄様乳癌細胞を枯渇させると、三重陰性乳癌細胞富化サンプルが生成される。
【0283】
B.マイクロ流体デバイス内への細胞のローディング
次いで、B細胞富化細胞サンプルは、0.1~1.0マイクロリットル/secの速度で1~3マイクロリットルのサンプルをフローチャネルに流入させることによりマイクロ流体チップにロードされる。次いで、サンプルのフローは停止されるが、サンプル中の細胞はフローチャネル内に位置決めされ、B細胞はDEP力(例えば、OET)を用いて選択的に捕捉され、フローチャネルに接続された分離チャンバの分離領域内に移動される。単一のB細胞は、複数の分離チャンバのそれぞれに配置される。使用されるマイクロ流体チップのサイズに依存して、3000細胞以上のB細胞は、単一のチップで個別に単離可能である。一般に、より少数のB細胞がサンプル中に存在すると予想される。結果として、サンプル中のB細胞は全て、単離可能である。B細胞を分離チャンバ内に移動させた後、フローチャネルから望ましくない細胞及びデブリを排除するために、フローチャネルは、新鮮培地を用いてフラッシュされる。
【0284】
フローチャネルを清浄化した後、三重陰性乳癌細胞富化サンプルがチップにロードされる。B細胞富化サンプルと同様に、1~3マイクロリットルの癌細胞富化サンプルが、0.1~1.0マイクロリットル/secの速度でフローチャネルに流入され、次いで、フローが停止される。形態学的形質を用いて、複数の癌細胞(例えば、3~6個)がDEP力(例えば、OET)を用いて選択され、B細胞を含有する各分離チャンバ内に移動される。癌細胞を分離チャンバ内に移動させた後、フローチャネルから望ましくない細胞及びデブリを排除するために、フローチャネルは、新鮮培地を用いてフラッシュされる。このようにして、マイクロ流体チップの複数の分離チャンバ内に単一のB細胞及び複数の髄様乳癌細胞がロードされる。
【0285】
C.抗体結合アッセイ
単離されたB細胞のいずれかが、癌細胞に結合する抗体を産生するかを決定するために、マイクロ流体チップ内のB細胞は、抗体発現を助長する条件下でインキュベートされる。かかるインキュベーションの後、ヒト抗体の定常領域に結合する二次抗体の混合物を含有する培地をマイクロ流体チップに流入させ、次いで、停止させる。蛍光標識された抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgM抗体、及び任意選択的にヒトIgA、IgE、及び/又はIgDに対する抗体を含有し得る抗体混合物中の抗体は、分離チャンバ内を拡散可能であり、且つB細胞により産生された抗体に結合可能である。B細胞により産生された抗体が、対応する分離チャンバ内の癌細胞の1つ以上に結合する場合、抗ヒト二次抗体(及びその標識)は、髄様乳癌細胞の表面に検出可能に結合された状態になるであろう。
【0286】
二次抗体のインキュベーションステップ時、蛍光シグナル検出用フィルター(例えば、テキサスレッドフィルター)を用いてマイクロ流体チップの撮像が周期的に行われる。像は、5分ごとに1時間にわたりそれぞれ露光持続時間1000msで取り込まれる。
【0287】
D.結果
陽性シグナルは、癌細胞に結合する抗体を発現するB細胞を含有する任意の分離チャンバ内の癌細胞の表面に発生して観測可能である。本方法を用いて、対象の抗体を発現する個別B細胞を特異的に同定することが可能である。興味深い抗体を何ら産生しないB細胞は、その分離チャンバから移動させてマイクロ流体チップから搬出し廃棄可能である。患者の髄様乳癌細胞に結合する抗体を発現するとして同定された各B細胞は、分離チャンバから移動させて(例えば、OET等のDEP力を用いて)、発現された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の増幅及びシーケンシングのために搬出可能である。抗体の発現を誘導しつつB細胞を増殖させた場合、B細胞のクローン集団は、発現された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の増幅及びシーケンシングのために搬出可能である。
【0288】
実施例6.CAR-Tと腫瘍崩壊ウイルスとを用いた組合せ療法
キメラ抗原受容体(CAR)リダイレクトT細胞は、癌治療で大きな利益を提供する可能性を有する。神経芽腫等の癌を有する患者は、生検又は外科切除を受け、癌に結合する抗体を産生するB細胞は、上記の実施例を用いて同定される。CAR-T細胞株は、同定されたB細胞により産生される抗体に対応する抗体又はそのフラグメントを発現するように工学操作される(対応するとは、少なくとも同一の重鎖CDR、少なくとも同一の重鎖及び軽鎖のCDR、少なくとも可変重鎖、又は少なくとも可変重鎖及び可変軽鎖を有することを意味する)。この患者では、CAR-T細胞株は、scFvを発現するように工学操作され、重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする遺伝子は、RT-PCRによりクローニングされる。コンビナトリアルscFv遺伝子は、スプライシングバイオーバーラップPCRにより生成され、次いで、ベクターファージDNAの制限部位内にライゲートされる。
【0289】
scFv配列は、SFGレトロウイルス骨格等のレトロウイルス骨格内にインフレームでクローニングされる。レトロウイルス上清は、239T細胞を用いて調製される。レトロウイルスを含有する上清は、48及び72時間後に収集される。トランスダクションでは、OKT3抗体(Ortho Biotech, Bridgewater, NJ)及びCD28抗体(Becton Dickinson, Mountain View, CA)並びに組換えヒトIL-12(100単位/ml、Proleukin, Chiron, Emeryville, CA)で活性化された0.5×10/ml末梢血単核細胞(PBMC)が、組換えフィブロネクチン断片(FN CH-296、レトロネクチン、宝酒造株式会社、日本国大津市)でプレコートされた24ウェルプレート中の完全培地(RPMI 1640 45%、クリック培地45%、並びに10%熱滅菌ヒト血清及び2mM L-グルタミン)にプレーティングされる。ウイルス上清の添加後、細胞をスピン処理し、5%CO2中37℃でインキュベートする。Tリンパ球上のCAR発現は、72時間後に測定され、細胞は、3日ごとにrIL-2(50単位/ml)が追加される完全培地中、培養下で維持される。
【0290】
かかるCAR-T細胞は、腫瘍崩壊アデノウイルス等の腫瘍崩壊ウイルスの投与と共に患者に養子導入される。腫瘍崩壊アデノウイルスはAd5D24であり得ると共に、任意選択的に組換えIL15、RANTES、又はそれらの組合せを発現する。患者は有意な臨床改善を有すると予想される。
【0291】
例示的な実施形態のリスト
1.抗体治療剤の調製方法であって、
患者から得られた少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから解離細胞サンプルを提供することと、
少なくとも1つのフロー領域とフロー領域に流体接続された少なくとも1つの分離領域とを有するマイクロ流体デバイスに解離細胞サンプルをロードすることと、
少なくとも1つのB細胞を解離細胞サンプルからマイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域に移動させることにより少なくとも1つの単離されたB細胞を得ることと、
癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することと、
を含む方法。
【0292】
2.前記分離領域が、B細胞リンパ球生存能を向上させる少なくとも1つの調整された表面を含み、前記調整された表面が、共有結合された分子を含む、実施形態1に記載の方法。
【0293】
3.前記分離領域が、B細胞リンパ球生存能を向上させる複数の調整された表面を含み、各調整された表面が、共有結合された分子を含む、実施形態1に記載の方法。
【0294】
4.前記少なくとも1つの調整された表面又は前記複数の各調整された表面が、共有結合された親水性分子の層を含む、実施形態2又は3に記載の方法。
【0295】
5.前記親水性分子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
【0296】
6.前記分離領域が、B細胞生存能を向上させるコーティング材料でコーティングされた少なくとも1つの表面を含む、実施形態1に記載の方法。
【0297】
7.前記分離領域が、B細胞生存能を向上させるコーティング材料でそれぞれコーティングされた複数の表面を含む、実施形態1に記載の方法。
【0298】
8.前記コーティング材料が親水性分子を含む、実施形態6又は7に記載の方法。
【0299】
9.前記親水性分子が、ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリマー、アミノ酸を含むポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態8に記載の方法。
【0300】
10.少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、マイクロ流体デバイス内でデッドエンドを形成し、且つフロー領域が流動する第1の流体培地で実質的に充填されると共に分離領域が第2の流体培地で実質的に充填される場合、第2の培地の成分が第1の培地中に拡散可能であると共に第1の培地の成分が第2の培地中に拡散可能であり、且つフロー領域から分離領域内への第1の培地のフローが実質的にノーフローである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0301】
11.マイクロ流体デバイスのフロー領域がマイクロ流体チャネルを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0302】
12.少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、対応する隔離チャンバの一部であり、且つ各隔離チャンバが、対応する分離領域をマイクロ流体チャネルに流体接続する接続領域を更に含む、実施形態11に記載の方法。
【0303】
13.接続領域が約20ミクロン~約60ミクロンの幅Wconを有する、実施形態12に記載の方法。
【0304】
14.少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、対応する接続領域の幅Wconよりも大きい幅Wisoを有する、実施形態12又は13に記載の方法。
【0305】
15.少なくとも1つの分離領域のそれぞれが、約50ミクロン~約250ミクロンの幅Wisoを有する、実施形態14に記載の方法。
【0306】
16.隔離チャンバのそれぞれが、約0.5nl~約2.5nlの容積を含む、実施形態12~15のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
17.少なくとも1つのB細胞が、重力及び/又は局在化流体フローを用いて少なくとも1つの分離領域内に移動される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
18.マイクロ流体デバイスが、DEP構成を有する基板を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
19.少なくとも1つのB細胞を少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、DEP力を用いて少なくとも1つのB細胞を移動させることを含む、実施形態18に記載の方法。
【0310】
20.解離細胞サンプルをロードする前に、方法が、解離細胞サンプル中のB細胞を検出可能マーカーで標識することを更に含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
21.少なくとも1つのB細胞を少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、移動させる少なくとも1つのB細胞を検出可能マーカーの検出に基づいて選択することを含む、実施形態20に記載の方法。
【0312】
22.少なくとも1つのB細胞を少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、複数の個別B細胞を対応する複数の個別分離領域内に移動させることを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
23.少なくとも1つのB細胞とB細胞活性化を刺激する刺激剤とを接触させることを更に含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
24.刺激剤がCD40アゴニストを含む、実施形態23に記載の方法。
【0315】
25.CD40アゴニストがCD40L、その誘導体、又は抗CD40抗体を含む、実施形態24に記載の方法。
【0316】
26.刺激剤が1つ以上のCD40L+支持細胞を含む、実施形態23に記載の方法。
【0317】
27.1つ以上のCD40L+支持細胞がT細胞又はその誘導体である、実施形態26に記載の方法。
【0318】
28.刺激剤がトール様受容体(TLR)アゴニストを含む、実施形態23~27のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
29.TLRアゴニストがCpGオリゴヌクレオチドである、実施形態28に記載の方法。
【0320】
30.少なくとも1つのB細胞が1~10日間にわたり刺激剤に接触される、実施形態23~29のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
31.少なくとも1つのB細胞が前記1~10日間にわたり実質的に連続的に刺激剤に接触される、実施形態30に記載の方法。
【0322】
32.培養培地を少なくとも1つのB細胞に提供することを更に含み、培養培地が、B細胞増殖を促進する1つ以上の成長誘導剤を含む、実施形態23~31のいずれか1つに記載の方法。
【0323】
33.1つ以上の成長誘導剤が、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-21、及びBAFFの群から選択される少なくとも1つの作用剤を含む、実施形態32に記載の方法。
【0324】
34.提供される培養培地が刺激剤を含む、実施形態32又は33に記載の方法。
【0325】
35.少なくとも1つのB細胞に1~10日間にわたり培養培地が提供される、実施形態32~34のいずれか1つに記載の方法。
【0326】
36.少なくとも1つの単離されたB細胞の各B細胞が、約8~20細胞の細胞数までマイクロ流体デバイスの分離領域で培養される、実施形態32~35のいずれか1つに記載の方法。
【0327】
37.少なくとも1つのB細胞と刺激剤とを接触させるステップ及び培養培地を少なくとも1つのB細胞に提供するステップが、実質的に同一の時間にわたり行われる、実施形態32~36のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
38.少なくとも1つのB細胞と刺激剤とを接触させることが、解離細胞サンプルをマイクロ流体デバイス内にロードする前に行われる、実施形態23~37のいずれか1つに記載の方法。
【0329】
39.少なくとも1つのB細胞と刺激剤とを接触させることが、少なくとも1つのB細胞を少なくとも1つの分離領域内に移動させた後に行われる、実施形態23~38のいずれか1つに記載の方法。
【0330】
40.少なくとも1つのB細胞と刺激剤とを接触させることが、癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定するステップ時に行われる、実施形態23~39のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
41.癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することが、癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイス内に導入することを含む、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
42.癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイス内に導入することが、癌細胞関連抗原を含む流体培地をマイクロ流体デバイス内に導入することを含む、実施形態41に記載の方法。
【0333】
43.癌細胞関連抗原が流体培地中に可溶化される、実施形態42に記載の方法。
【0334】
44.癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイス内に導入することが、微小物体をマイクロ流体デバイス内に導入することを含み、微小物体が癌細胞関連抗原を含む、実施形態41に記載の方法。
【0335】
45.微小物体が、細胞、リポソーム、脂質ナノラフト、及びビーズから選択される、実施形態44に記載の方法。
【0336】
46.微小物体がビーズであり、且つ癌細胞関連抗原がビーズにコンジュゲートされる、実施形態45に記載の方法。
【0337】
47.癌細胞関連抗原が、少なくとも1つの腫瘍サンプル中に存在する癌細胞の細胞表面上に存在する膜関連抗原である、実施形態45又は46に記載の方法。
【0338】
48.ビーズにコンジュゲートされた癌細胞関連抗原が、少なくとも1つの腫瘍サンプルから単離された癌細胞から得られる細胞膜調製物に由来する、実施形態47に記載の方法。
【0339】
49.微小物体が癌細胞である、実施形態45に記載の方法。
【0340】
50.癌細胞が、患者から得られた少なくとも1つの腫瘍サンプルの癌細胞により提示されるマーカーを呈する、実施形態49に記載の方法。
【0341】
51.癌細胞が少なくとも1つの腫瘍サンプルから単離される、実施形態49に記載の方法。
【0342】
52.癌細胞が、異なる患者から得られた1つ以上の腫瘍サンプルから単離される、実施形態49又は50に記載の方法。
【0343】
53.少なくとも1つの固形腫瘍サンプルが得られた患者及び異なる患者が、同一のタイプの癌と診断されている、実施形態52に記載の方法。
【0344】
54.癌細胞が癌細胞株に由来する、実施形態49又は50に記載の方法。
【0345】
55.癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイス内に導入することが、癌細胞関連抗原を含む微小物体を含有する流体培地をマイクロ流体デバイスのフロー領域に通して流動させることと、培地中の微小物体の少なくとも幾つかが、少なくとも1つの分離領域に近接するフロー領域の一部に位置決めされたとき、流体培地のフローを停止することとを含む、実施形態41~54のいずれか1つに記載の方法。
【0346】
56.癌細胞関連抗原をマイクロ流体デバイス内に導入することが、微小物体の少なくとも1つをマイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域内に移動させることを更に含む、実施形態54に記載の方法。
【0347】
57.少なくとも1つの微小物体をマイクロ流体デバイスの少なくとも1つの分離領域内に移動させることが、少なくとも1つの微小物体を複数の分離領域のそれぞれに移動させることを含む、実施形態56に記載の方法。
【0348】
58.少なくとも1つの微小物体を、少なくとも1つのB細胞を含有する少なくとも1つの分離領域内に移動させることにより、少なくとも1つの微小物体と少なくとも1つのB細胞とを有する少なくとも1つの分離領域を生成する、実施形態56又は57に記載の方法。
【0349】
59.少なくとも1つの微小物体及び少なくとも1つのB細胞が、異なる分離領域内に移動される、実施形態56に記載の方法。
【0350】
60.異なる分離領域がマイクロ流体デバイス内で互いに隣接する、実施形態59に記載の方法。
【0351】
61.癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することが、標識された抗体結合剤を含有する流体培地をマイクロ流体デバイスのフロー領域に通して流動させることと、流体培地中の標識された抗体結合剤の少なくとも幾つかが、少なくとも1つの分離領域に近接するフロー領域の一部に位置決めされたとき、流体培地のフローを停止することと、癌細胞関連抗原への標識された抗体結合剤の結合を監視することとを更に含む、実施形態41~60のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
62.標識された抗体結合剤が、標識された抗IgG抗体である、実施形態61に記載の方法。
【0353】
63.標識された抗体結合剤が蛍光標識に共有結合されている、実施形態61又は62に記載の方法。
【0354】
64.標識された抗体結合剤が癌細胞関連抗原との混合物で提供される、実施形態61~63のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
65.標識された抗体結合剤が、癌細胞関連抗原を提供した後に提供される、実施形態61~63のいずれか1つに記載の方法。
【0356】
66.癌細胞関連抗原への標識された抗体結合剤の結合を監視することが、マイクロ流体デバイスの撮像を行うことを含む、実施形態61~65のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
67.撮像が蛍光撮像を含む、実施形態66に記載の方法。
【0358】
68.撮像が複数の像を取り込むことを含む、実施形態66又は67に記載の方法。
【0359】
69.複数の像が一定の時間間隔で取り込まれる、実施形態68に記載の方法。
【0360】
70.解離細胞サンプルが1つの固形腫瘍サンプルから得られる、実施形態1~69のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
71.解離細胞サンプルが複数の固形腫瘍サンプルから得られる、実施形態1~69のいずれか1つに記載の方法。
【0362】
72.解離細胞サンプルを提供することが、少なくとも1つの固形腫瘍サンプルを得ることと、少なくとも1つの固形腫瘍サンプルから単一細胞を解離することとを含む、実施形態1~71のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
73.解離細胞サンプルの個別細胞が、コラゲナーゼ+DNase消化及び/又は細胞ディソシエータ装置により少なくとも1つの腫瘍サンプルから解離される、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
74.解離細胞サンプルをロードするステップが、解離細胞サンプルを分画して元の解離サンプルよりも大きい濃度のB細胞を有するB細胞富化画分を単離することと、B細胞富化画分をマイクロ流体デバイス内にロードすることとを含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0365】
75.分画することが、CD19、CD20、IgM、IgD、CD38、CD27、CD138、PNA、及びGL7から選択される少なくとも1つのマーカーを用いて解離細胞サンプルからB細胞を選択することを含む、実施形態74に記載の方法。
【0366】
76.解離細胞サンプル又はB細胞富化画分をマイクロ流体デバイス内にロードする前に、方法が、解離細胞サンプル中の癌細胞を検出可能マーカーで標識することを更に含む、実施形態1~75のいずれか1つに記載の方法。
【0367】
77.解離細胞サンプルをロードするステップが、解離細胞サンプルを分画して元の解離サンプルよりも大きい濃度の癌細胞を有する癌細胞富化画分を単離することと、癌細胞富化画分をマイクロ流体デバイス内にロードすることとを更に含む、実施形態1~76のいずれか1つに記載の方法。
【0368】
78.方法が、少なくとも1つの分離領域内に移動させる少なくとも1つの癌細胞を選択することを更に含む、実施形態76に記載の方法。
【0369】
79.方法が、少なくとも1つの分離領域内に移動させる少なくとも1つの癌細胞を選択することを更に含み、且つ少なくとも1つの癌細胞が、検出可能マーカーの検出に基づいて選択される、実施形態77に記載の方法。
【0370】
80.B細胞をマイクロ流体デバイス内にロードして分離領域内に移動させる前、少なくとも1つの癌細胞をマイクロ流体デバイス内にロードしてマイクロ流体デバイスの分離領域内に移動させる、実施形態79に記載の方法。
【0371】
81.B細胞をマイクロ流体デバイス内にロードして分離領域内に移動させた後、癌細胞富化画分をマイクロ流体デバイスのフロー領域内にロードする、実施形態77に記載の方法。
【0372】
82.癌細胞が分離領域に進入しない、実施形態77に記載の方法。
【0373】
83.癌細胞が、解離細胞サンプルから選択されるか、又は癌に特異的な少なくとも1つのマーカー(例えば、本明細書に開示される癌関連マーカーのいずれか)を用いて富化される、実施形態76~82のいずれか1つに記載の方法。
【0374】
84.癌細胞が、解離細胞サンプルから分離されるか、又は形態学的差を用いて富化される、実施形態76~83のいずれか1つに記載の方法。
【0375】
85.癌細胞が、癌細胞から正常細胞を単離するために癌細胞でダウンレギュレートされる少なくとも1つのマーカーを用いて解離細胞サンプルから選択される、実施形態76~84のいずれか1つに記載の方法。
【0376】
86.B細胞及び/又は癌細胞が、FACSにより解離細胞サンプルから選択される、実施形態74~85のいずれか1つに記載の方法。
【0377】
87.B細胞及び/又は癌細胞が、磁気ビーズベースの選別により解離細胞サンプルから選択される、実施形態74~86のいずれか1つに記載の方法。
【0378】
88.固形腫瘍サンプルが腫瘍生検物である、実施形態1~87のいずれか1つに記載の方法。
【0379】
89.少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した腫瘍が三次リンパ様構造を有する、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法。
【0380】
90.少なくとも1つの腫瘍サンプルを生成した腫瘍が、乳癌、泌尿生殖器癌(例えば、腎臓(例えば、腎細胞癌)、尿管、膀胱、尿道等の尿路に発生する癌、男性生殖管の癌(例えば、精巣癌、前立腺癌、又は精嚢、精管、若しくは陰茎の癌)、又は女性生殖管の癌(例えば、卵巣癌、子宮癌、頸癌、腟癌、若しくは卵管癌))、神経系癌(例えば、神経芽腫)、腸癌(例えば、結腸直腸癌)、肺癌、黒色腫、又は他のタイプの癌である、実施形態1~89のいずれか1つに記載の方法。
【0381】
91.腫瘍が髄様乳癌である、実施形態90に記載の方法。
【0382】
92.腫瘍が中皮腫である、実施形態90に記載の方法。
【0383】
93.方法が、マイクロ流体デバイスから少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するクローンB細胞集団を搬出することを更に含む、実施形態1~92のいずれか1つに記載の方法。
【0384】
94.各同定されたB細胞又はそれに由来するクローンB細胞集団が個別に搬出される、実施形態93に記載の方法。
【0385】
95.少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するB細胞のクローン集団の一部若しくは全部で抗体シーケンシングを行うことを更に含む、実施形態1~94のいずれか1つに記載の方法。
【0386】
96.抗体シーケンシングを行うことが、少なくとも1つの同定されたB細胞又はそれに由来するB細胞のクローン集団の一部若しくは全部から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの抗体配列を決定することを含む、実施形態95に記載の方法。
【0387】
97.方法が、少なくとも1つの同定されたB細胞から対をなす重鎖及び軽鎖の可変ドメインの配列の一部又は全部を含む抗体治療剤を生成することを更に含む、実施形態1~96のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
98.T細胞又はNK細胞が解離細胞サンプル中に存在する、実施形態1~97のいずれか1つに記載の方法。
【0389】
99.方法が、元の解離サンプルよりも大きい濃度のT細胞又はNK細胞を有する画分を単離するように解離細胞サンプルで選択を行うことを更に含む、実施形態98に記載の方法。
【0390】
100.T細胞又はNK細胞が同一の患者の固形腫瘍サンプルから得られる、実施形態98又は99に記載の方法。
【0391】
101.T細胞が、CD4、CD8、CD25、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD69、及びCD3から選択される少なくとも1つのマーカーを用いて解離細胞サンプルから分離されるか、又はNK細胞が、CD56をマーカーとして用いて解離細胞サンプルから分離される、実施形態98~100のいずれか1つに記載の方法。
【0392】
102.個別のT細胞又はNK細胞が患者から選択及びクローニングされる、実施形態98~101のいずれか1つに記載の方法。
【0393】
103.方法が、患者の癌細胞及び他の供給源由来の癌細胞の両方に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つのB細胞を同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを含む、実施形態1~102のいずれか1つに記載の方法。
【0394】
104.方法が、B細胞により産生された抗体が非癌細胞に結合可能であるかを同定するためにマイクロ流体デバイスを使用することを更に含む、実施形態1~103のいずれか1つに記載の方法。
【0395】
105.非癌細胞及び癌細胞が、少なくとも1つの腫瘍サンプルを提供した患者に由来する、実施形態104に記載の方法。
【0396】
106.癌細胞及び非癌細胞への抗体の結合を同定するために同一のマイクロ流体デバイスが使用される、実施形態104又は105に記載の方法。
【0397】
107.癌細胞及び非癌細胞が同一の流路に逐次的にロードされる、実施形態106に記載の方法。
【0398】
108.癌を有する患者の治療方法であって、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により産生された抗体又はそのフラグメントを用いて患者を治療することを含む方法。
【0399】
109.腫瘍サンプルが、治療される同一の患者から採取される、実施形態108に記載の方法。
【0400】
110.腫瘍サンプルの取得から治療までの時間が多くとも約2ヵ月である、実施形態108又は109に記載の方法。
【0401】
111.抗体又はそのフラグメントが一本鎖抗体である、実施形態108~110のいずれか1つに記載の方法。
【0402】
112.抗体又はそのフラグメントが2本の重鎖と2本の軽鎖とを有する、実施形態108~110のいずれか1つに記載の方法。
【0403】
113.抗体が工学操作T細胞又はNK細胞上に提示される、実施形態108~111のいずれか1つに記載の方法。
【0404】
114.工学操作T細胞がキメラ抗原受容体T細胞であるか、又は工学操作NK細胞がキメラ抗原受容体NK細胞である、実施形態113に記載の方法。
【0405】
115.T細胞又はNK細胞が、抗体を提示するように工学操作される前に同一の患者から得られたものである、実施形態113又は114に記載の方法。
【0406】
116.T細胞又はNK細胞が患者の腫瘍サンプルから得られたものである、実施形態115に記載の方法。
【0407】
117.抗体又はそのフラグメントが他の療法と組み合わせて投与される、実施形態108~116のいずれか1つに記載の方法。
【0408】
118.組合せ療法が、手術、放射線療法、化学療法、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、T細胞療法、他の免疫療法、又は免疫刺激分子若しくは腫瘍特異的ウイルスの投与である、請求項117に記載の方法。
【0409】
119.患者において癌を標識又は検出する方法であって、検出可能標識にコンジュゲートされた抗体又はそのフラグメントを投与することを含み、抗体又はそのフラグメントが実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により産生される、方法。
【0410】
120.実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖CDR、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも軽鎖CDR、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖のCDR、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖可変領域、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも軽鎖可変領域、又は実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の少なくとも重鎖及び軽鎖の可変領域を含む、工学操作抗体構築物。
【0411】
121.工学操作抗体構築物であって、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定された抗体の変異体(例えば、同定された抗体の軽鎖及び/又は重鎖の可変領域に1~20、1~15、1~10、又は1~5アミノ酸の置換、付加、又は欠失を有する変異体)である工学操作抗体構築物。
【0412】
122.構築物が、Fab、Fab’(2)、scFv、多価scFv、ミニボディー、二重特異的抗体、又はラクダ機能性重鎖可変ドメインである、実施形態120又は121に記載の工学操作抗体構築物。
【0413】
123.外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作T細胞又はNK細胞であって、抗体又はそのフラグメントが実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定される、工学操作T細胞又はNK細胞。
【0414】
124.T細胞又はNK細胞及び抗体又はそのフラグメントが同一の患者から得られる、実施形態123に記載の工学操作T細胞又はNK細胞。
【0415】
125.外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作T細胞の調製方法であって、腫瘍サンプルに結合する抗体を実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定することと、抗体又はそのフラグメントを発現するようにT細胞を遺伝子工学操作することとを含む方法。
【0416】
126.T細胞、抗体を発現するB細胞、及び腫瘍サンプルが同一の患者から得られたものである、実施形態125に記載の方法。
【0417】
127.外面上に提示された抗体又はそのフラグメントを含む工学操作NK細胞の調製方法であって、腫瘍サンプルに結合する抗体を実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法により同定することと、抗体又はそのフラグメントを発現するようにNK細胞を遺伝子工学操作することとを含む方法。
【0418】
128.NK細胞、抗体を発現するB細胞、及び腫瘍サンプルが同一の患者から得られたものである、実施形態127に記載の方法。
【0419】
均等物
上記の書面の明細書は、当業者による実施形態の実施を可能とするのに十分であると考えられる。以上の説明及び実施例は、特定の実施形態を詳述し、企図される最良形態を記述する。しかし、以上の内容が本文でいかに詳細に見えても、実施形態は多くの方法で実施し得、且つ添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物に従って解釈すべきであることは分かるであろう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する単離されたB細胞を同定する方法であって、
フロー領域と、複数のチャンバであって、それぞれのチャンバが、前記フロー領域に流体接続され、非掃引領域である分離領域を備える複数のチャンバと、を有するマイクロ流体デバイスに、患者から得られた固形腫瘍サンプル由来の解離細胞サンプルをロードすることと、
少なくとも1つのB細胞を前記解離細胞サンプルから前記複数のチャンバの各チャンバに移動させることにより、少なくとも1つの単離されたB細胞を得ることと、
癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの単離されたB細胞を同定することと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記B細胞が、誘電泳動(DEP)力、重力、及び/又は局在化流体フローを用いて少なくとも1つの前記分離領域内に移動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記B細胞と、B細胞の活性化を刺激する刺激剤と、を接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激剤が、CD40L+支持細胞を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CD40L+支持細胞が、T細胞又はその誘導体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記刺激剤が、CpGオリゴヌクレオチドを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの前記B細胞が、1から10日間にわたり、前記刺激剤に接触される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記B細胞が、前記1から10日間にわたり、前記刺激剤に実質的に連続的に接触される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
培養培地を少なくとも1つの前記B細胞に提供することをさらに含み、
前記培養培地が成長誘導剤を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記B細胞に1から10日間にわたり前記培養培地が提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの前記B細胞と前記刺激剤とを接触させることと、前記培養培地を少なくとも1つの前記B細胞に提供することが、実質的に同一の時間にわたり行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの前記B細胞と前記刺激剤とを接触させることが、前記解離細胞サンプルを前記マイクロ流体デバイス内にロードする少なくとも前に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの前記B細胞と前記刺激剤とを接触させることが、少なくとも1つの前記B細胞を少なくとも1つの前記分離領域内に移動させた少なくとも後に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの前記B細胞と前記刺激剤とを接触させることが、前記癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの前記単離されたB細胞を同定するステップの少なくとも間に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞関連抗原に結合可能な抗体を産生する少なくとも1つの前記単離されたB細胞を同定することが、前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記癌細胞関連抗原を前記マイクロ流体デバイス内に導入することが、前記癌細胞関連抗原を含む微小物体を前記マイクロ流体デバイス内に導入することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記微小物体が、細胞、リポソーム、脂質ナノラフト、及びビーズから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微小物体が癌細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記癌細胞が、前記患者の腫瘍サンプルの癌細胞により提示されるマーカーを呈する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記癌細胞が、前記腫瘍サンプルから単離される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記癌細胞が、異なる患者から得られた腫瘍サンプルから単離される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記癌細胞が癌細胞株に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記解離細胞サンプルの個別細胞が、
a.コラゲナーゼ+DNase消化、及び/又は
b.細胞ディソシエータ装置
により前記少なくとも1つの腫瘍サンプルから解離される、
請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクロ流体デバイスが、約1μL未満の体積を有する、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記チャンバが、約0.5nLから約5.0nLの体積を有する、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
図1Aは、マイクロ流体デバイス100等のマイクロ流体デバイスを動作させ制御するシステム150も示す。システム150は、電源192、撮像デバイス194(撮像モジュール164内に組み込まれ)、及び傾斜デバイス190(傾斜モジュール166の部分であり、デバイス190は図1Aに示されていない)を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
電源192は、電力をマイクロ流体デバイス100及び/又は傾斜デバイス190に提供し、バイアス電圧又は電流を必要に応じて提供することができる。電源192は、例えば、1つ又は複数の交流(AC)及び/又は直流(DC)電圧源又は電流源を含むことができる。撮像デバイス(以下で述べられる撮像モジュール164の一部)は、マイクロ流体回路120内部の画像を捕捉する、デジタルカメラ等のデバイスを含むことができる。幾つかの場合、撮像デバイス194は、高速フレームレート及び/又は高感度(例えば、低光用途用)を有する検出器を更に含む。撮像デバイスは、刺激放射線及び/又は光線をマイクロ流体回路120内に向け、マイクロ流体回路120(又はマイクロ流体回路120内に含まれる微小物体)から反射されるか、又は発せられる放射線及び/又は光線を収集する機構を含むこともできる。発せられる光線は可視スペクトル内であり得、例えば、蛍光放射を含み得る。反射光線は、LED又は水銀灯(例えば、高圧水銀灯)若しくはキセノンアーク灯等の広域スペクトル灯から発せられた反射放射を含み得る。図3Bに関して考察するように、撮像デバイスは顕微鏡(又は光学縦列)を更に含み得、これは接眼レンズを含んでもよく、又は含まなくてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
特定の実施形態では、図1B及び図1Cに示されるマイクロ流体デバイス200は、光学作動DEP構成を有することができる。したがって、原動モジュール162により制御し得る光源216からの光218の変更パターンは、電極活性化基板206の内面208の領域214においてDEP電極の変更パターンを選択的に活性化又は非活性化することができる。(以下ではDEP構成を有するマイクロ流体デバイスの領域214を「DEP電極領域」と呼ぶ)。図1Cに示されるように、電極活性化基板206の内面208に向けられる光パターンは、正方形光パターン220等のパターンで、選択されたDEP電極領域214a(白色で示される)を照明することができる。照明されないDEP電極領域214(斜線が付される)を以下では「暗」DEP電極領域214と呼ぶ。DEP電極活性化基板206を通る相対電気インピーダンス(すなわち、下部電極204から、フロー領域106において培地180と界面を接する電極活性化基板206の内面208まで)は、各暗DEP電極領域214での領域/チャンバ202において培地180を通る(すなわち、電極活性化基板206の内面208からカバー110の上部電極210まで)相対電気インピーダンスよりも大きい。しかし、照明DEP電極領域214aは、各照明DEP電極領域214aでの領域/チャンバ202での培地180を通る相対インピーダンス未満である電極活性化基板206を通る相対インピーダンスの低減を示す。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0145
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0145】
図2A図2Cの隔離チャンバ224、226、及び228は、マイクロ流体チャネル122に対して直接開く単一の開口部をそれぞれ有する。隔離チャンバの開口部は、マイクロ流体チャネル122から横に開く。電極活性化基板206がマイクロ流体チャネル122及び隔離チャンバ224、226、及び228の両方の下にある。隔離チャンバのフロアを形成する、隔離チャンバのエンクロージャ内の電極活性化基板206の上面は、マイクロ流体デバイスのフローチャネル(又はそれぞれフロー領域)のフロアを形成する、マイクロ流体チャネル122(又はチャネルが存在しない場合、フロー領域)内の電極活性化基板206の上面と同じ高さ又は略同じ高さに配置される。電極活性化基板206は、特徴を有さなくてもよく、又は約3μm未満、約2.5μm未満、約2μm未満、約1.5μm未満、約1μm未満、約0.9μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、約0.2μm未満、約0.1μm未満、又はそれを下回って最高隆起部から最低陥没部まで変化する不規則又はパターン化表面を有してもよい。マイクロ流体チャネル122(又はフロー領域)及び隔離チャンバの両方にわたる基板の上面の隆起の変動は、隔離チャンバの壁の高さ又はマイクロ流体デバイスの壁の高さの約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.9%未満、約0.8%未満、約0.5%未満、約0.3%未満、又は約0.1%未満であり得る。マイクロ流体デバイス200について詳細に説明したが、これは、本明細書に記載される任意のマイクロ流体デバイス100、230、250、280、290、320にも当てはまる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0169
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0169】
マイクロ流体デバイスの様々な実施形態100、200、23、250、280、290、300において、Vmaxは、約0.2マイクロリッター/秒、約0.3マイクロリッター/秒、約0.4マイクロリッター/秒、約0.5マイクロリッター/秒、約0.6マイクロリッター/秒、約0.7マイクロリッター/秒、約0.8マイクロリッター/秒、約0.9マイクロリッター/秒、約1.0マイクロリッター/秒、約1.1マイクロリッター/秒、約1.2マイクロリッター/秒、約1.3マイクロリッター/秒、約1.4マイクロリッター/秒、又は約1.5マイクロリッター/秒に設定することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0185
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0185】
図3Bでは、光を光変調サブシステム330に供給している第1の光源332が示されており、光変調サブシステム330は構造化光を撮像デバイス194の顕微鏡350の光学縦列に提供する。ビームスプリッタ336を介して非構造化光を光学縦列に提供している第2の光源334が示される。光変調サブシステム330からの構造化光及びに示されるように、第2の光源334からの非構造化光は、ビームスプリッタ336から光学縦列を通って一緒に移動して、第2のビームスプリッタ(又は光変調サブシステム330によって提供される光に応じて、ダイクロイックフィルタ338)に到達し、ここで、光は反射し、対物レンズ340を通して試料面342まで下がる。次に、試料面342からの反射光及び/又は放射光は再び対物レンズ340を通って移動し、ビームスプリッタ及び/又はダイクロイックフィルタ338を通り、ダイクロイックフィルタ346に到達する。ダイクロイックフィルタ346に達する光の一部のみが透過され、検出器348に到達する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1A
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1B
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1B
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1C
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1C
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2A
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2H
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2H
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3A
【外国語明細書】