(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082057
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】電気化学セル用のセパレータ及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20230606BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230606BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230606BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/403 Z
H01M50/426
H01M50/443 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049575
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2020520281の分割
【原出願日】2018-10-09
(31)【優先権主張番号】62/569,964
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511108208
【氏名又は名称】オプトドット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】OPTODOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン エー カールソン
(72)【発明者】
【氏名】デービッド ダブリュー エイビソン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スローン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気化学セルにおける使用に適した自立型且つ実質的に全セラミック製の改良された複合セパレータを多孔質ポリマ基材なしで提供する。
【解決手段】電気化学セル用のセパレータを製造する方法であって、第1の多孔質層及び少なくとも第2の多孔質層を所定の順序で剥離基材上に塗工する工程と、第1及び第2の多孔質層を剥離基材から剥離してセパレータを形成する工程と、を備え、第1の多孔質層は無機酸化物及び無機窒化物からなる群から選択される粒子60~95重量%と、第1の有機ポリマバインダと、を備え、第2の多孔質層は無機粒子と第1の多孔質層内の第1の有機ポリマバインダとは異なる少なくとも1つの膨潤特性を有する第2の有機ポリマバインダと、を備え、セパレータは多孔質ポリマ基材を備えておらず、セパレータは220℃1時間での収縮が1%未満でありセパレータはプロピレンカーボネートに1時間浸したときの膨潤が5%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル用のセパレータを製造する方法であって、
(a)第1の多孔質層及び少なくとも第2の多孔質層を所定の順序で剥離基材上に塗工する工程と、
(b)前記第1の多孔質層及び前記少なくとも第2の多孔質層を前記剥離基材から剥離してセパレータを形成する工程と、を備え、
前記第1の多孔質層は、
(i)無機酸化物及び無機窒化物からなる群から選択される粒子60~95重量%と、
(ii)第1の有機ポリマバインダと、を備え、
前記少なくとも第2の多孔質層は、
(i)無機粒子と、
(ii)前記第1の多孔質層内の前記第1の有機ポリマバインダとは異なる少なくとも1つの膨潤特性を有する第2の有機ポリマバインダと、を備え、
前記セパレータは多孔質ポリマ基材を備えておらず、
前記セパレータは220℃、1時間での収縮が1%未満であり、
前記セパレータはプロピレンカーボネートに1時間浸したときの膨潤が5%未満である、
電気化学セル用のセパレータを製造する方法。
【請求項2】
(i)前記工程(a)において前記第1の多孔質層及び少なくとも第2の多孔質層を前記剥離基材の両面に塗工する工程、又は
(ii)前記所定の順序で塗工する前記工程(a)の後に、1つ以上の追加の層を積層する工程、又は
(iii)前記セパレータの狭いレーンにおけるスリッティングの前に前記狭いレーンにおける厚さを減少させる圧縮工程であって、所定幅の前記セパレータを形成すると共に前記スリッティングにより形成された前記セパレータのエッジに沿って機械的強度を増大させる圧縮工程、又は
(iv)電解質の充填の前にケーシング内の乾燥セルにおける前記セパレータに対する130℃以上の温度での真空乾燥工程、又は
(v)可溶性材料を除去するための液体抽出工程、又は
(vi)狭いレーンにおけるスリッティングの前の前記狭いレーンにおける塗工工程であって、所定幅の前記セパレータを形成すると共に前記セパレータのエッジに沿って機械的強度を増大させ、塗工される物がポリマを備える塗工工程、又は
(vii)狭いレーンにおけるスリッティングの前の前記狭いレーンにおける圧縮工程に続く前記狭いレーンにおける塗工工程であって、所定幅の前記セパレータを形成すると共に前記セパレータのエッジに沿って機械的強度を増大させ、塗工される物がポリマを備える塗工工程、又は
(viii)前記1つ以上の追加の多孔質層を形成するための相反転プロセス、又は
(ix)剥離に係る前記工程(b)の前の圧縮工程であって、前記第1の多孔質層及び少なくとも第2の多孔質層の厚さを減少させる圧縮工程を更に備える、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記セパレータは、少なくとも1700psiの引張応力と15%の破断伸びとを有する、
請求項1の方法。
【請求項4】
前記セパレータは、前記セパレータの厚さを20ミクロンに正規化した場合のガーレー通気度数が600秒/100cc以下である、
請求項1の方法。
【請求項5】
前記第1の多孔質層は、架橋剤を備える、
請求項1の方法。
【請求項6】
前記第1の多孔質層内の前記無機酸化物は、ベーマイト粒子を含む、
請求項1の方法。
【請求項7】
前記ベーマイト粒子は、疎水的に改質されたベーマイト粒子である、
請求項6の方法。
【請求項8】
前記第1の多孔質層は、ポリビニリデンジフルオライドポリマを含む、
請求項1の方法。
【請求項9】
前記セパレータは、少なくとも2000psiの引張応力を有する、
請求項1の方法。
【請求項10】
前記セパレータは、前記セパレータの厚さを20ミクロンに正規化した場合のガーレー通気度数が300秒/100cc未満である、
請求項1の方法。
【請求項11】
前記第2の有機ポリマバインダは、熱可融性粒子を含む、
請求項1の方法。
【請求項12】
前記熱可融性粒子は、ポリマ粒子を含む、
請求項11の方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れかの方法により製造されたセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年10月9日出願の米国仮特許出願第62/569,964号の利益及び優先権を主張し、その全内容は参照によりここに組み入れられる。
【連邦支援の研究又は開発に関する陳述】
【0002】
本発明は、国防総省から授与されたW56HZV-13-C-0063の下での政府支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、再充電可能リチウムイオン電池等の電気化学セルにおける使用のためのセパレータ並びにセパレータ及びセパレータを組み込んだ電気化学セルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
再充電可能リチウムイオン電池を用いることによる電気エネルギ貯蔵における継続的な改善は、広範な用途、例えば、個人用電子デバイス、電気自動車、家庭用エネルギ貯蔵、再生可能発電貯蔵等において特に重要である。携帯型デバイスについては、高温動作安定性、小型化、製造の容易さ等における改善が特に重要である。特に、アノードとカソードの間のセパレータは、電子デバイスでの使用のためのリチウムイオン電池における重要な要素である。そのようなセパレータは、従来、多孔質ポリマ基材材料のシートの片面又は両面にセラミック材料を配置することにより作製され、所謂セラミック塗工プラスチックセパレータ(ceramic-coated plastic separators)(CCS)と称され、電極間に配置されてきた。セパレータに用いられる材料に対する数ある考慮事項の1つは、電池使用中の高温に対する許容範囲であり、プラスチック材料はかなりの高温には適さない傾向がある。リチウムイオン電池は、それほど安全ではない高エネルギ密度の電極材料を、多セル電池パックにおける40Ah~100Ahリチウムイオンセル等、サイズが増大しつつあるより大きなエネルギ密度の電池に組み込んできているので、セラミック塗工プラスチックセパレータ(CCS)は、電池の強制短絡の釘刺し試験等、必要とされる高い安全性を提供しない。110℃あたりの温度で始まるCCSのプラスチックポリマ支持材料の熱収縮もまた、乾燥リチウムイオンセルに電解質を充填するのに先立ち残留水分及び他の揮発性物質を除去するためにCCSやCCSと電極の積層物を真空乾燥する能力を制限する。また、プラスチックポリマ支持材料は断熱材であり、セル内で突発的な加熱事象が生じたときに熱を効率的に拡散させてより高い安全性を提供する熱伝導性を有していない。
【0005】
ポリマ基材に関連する上述の問題に鑑みて、例えばスー等(Xu et al.)に対する米国特許出願公開第2013/0171500号及びゲッツェン等(Goetzen et al.)に対する米国特許公開第2015/0030933号に記載されるように、電気化学セルにおける使用のための自立型全セラミックセパレータ(free-standing all-ceramic separators)(CSP)を形成する技術が開発されてきた。従前のCSPsでの1つの課題は、セパレータの破損を伴わないセル組み立てに対する十分な機械的強度を得ると共に、セルサイクリングの機械的強度に耐えながら、許容可能なイオン伝導性に必要なセパレータの高い%多孔率を提供し、電池セルの化学的性質による劣化及び非互換性を示さないことである。セパレータの機械的強度に対する要求は、電池のコストを下げるためのセル組み立て速度の大幅な増加により、近年著しく増大してきている。セパレータの機械的強度の他、セパレータにとって重要なことは、セル組み立てに際しての伸びを回避するために最大でも2%伸びまでの高い弾性率を有していることと、セル組み立てに際しての曲げ及び折り畳みに耐える高レベルの柔軟性を有していることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に鑑み、本発明の目的は、リチウムイオンセル等の電気化学セルにおける使用に適した自立型且つ実質的に全セラミック製の改良された複合セパレータ(composite separator)(CSP)を多孔質ポリマ基材なしで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な実施形態では、1つ以上の多孔質無機/有機複合セパレータ層を組み込んだ電気化学セルは、概ね80mm/sで貫通する約3mm直径の釘を用いて実施される釘刺し試験において100℃以下のピーク温度に達する。
【0008】
例示的な実施形態では、1つ以上の無機/有機複合セパレータ層を組み込んだ電気化学セルは、150℃以下で少なくとも3時間、好ましくは200℃以下で少なくとも2時間、より好ましくは100℃以下で少なくとも30時間は動作を維持する(加速レート熱量計(accelerating rate calorimeter)(ARC)試験において上記各温度で上記各時間加熱された場合)。
【0009】
例示的な実施形態では、複合セパレータは、全体の厚さが20ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは12ミクロン以下の1つ以上の多孔質無機/有機複合セパレータ層を備える。
【0010】
例示的な実施形態では、複合セパレータは、1つ以上の多孔質無機/有機複合セパレータ層を備え、この複合セパレータ層は、非水電解質又はプロピレンカーボネートに1時間浸した後の膨潤が5%以下、好ましくは3%以下である。
【0011】
例示的な実施形態では、複合セパレータは、1つ以上の多孔質無機/有機複合セパレータ層を備え、この複合セパレータ層は、全体抵抗が1.5オーム以下、好ましくは1.4オーム以下、より好ましくは1.0オーム以下である。
【0012】
例示的な実施形態では、複合セパレータは、1つ以上の多孔質無機/有機複合セパレータ層を備え、この複合セパレータは、最大引張応力が少なくとも約1700psi、最大引張荷重が少なくとも約0.5kg、パーセンテージ破断伸びが少なくとも約15%である。
【0013】
例示的な実施形態では、複合セパレータは、1つ以上の複合セパレータ層を所定の順序で剥離基材上に塗工し、これらの層を剥離基材から剥離し、剥離した層を約130℃~150℃で約1時間~4時間かけて真空乾燥して自立型複合セパレータを提供することにより作製される。
【0014】
例示的な実施形態では、多層複合セパレータは、粒子と非水電解質中で非膨潤性であるポリマとを備える多孔質層と、この多孔質層の片面又は両面上の多孔質無機/有機複合セパレータ層と、を備え、この複合セパレータ層は、非水電解質中で膨潤するポリマを備える。
【0015】
例示的な実施形態では、粒子は、無機酸化物及び無機窒化物からなる群から選択される無機粒子を備える。
【0016】
例示的な実施形態では、無機粒子はベーマイト粒子を備える。
【0017】
例示的な実施形態では、粒子は、水に不溶性であるポリマ粒子を備える。
【0018】
例示的な実施形態では、粒子は、プロピレンカーボネートに不溶性であるポリマ粒子を備える。
【0019】
例示的な実施形態では、多孔質層は、前記ポリマ粒子と反応する架橋剤を備える。
【0020】
例示的な実施形態では、粒子は、無機酸化物及び無機窒化物からなる群から選択される無機粒子を備え、水に不溶性であるポリマ粒子を更に備える。
【0021】
例示的な実施形態では、前記多孔質層中のポリマは、ポリビニルアルコールである。
【0022】
例示的な実施形態では、前記複合セパレータ層中のポリマは、ポリビニリデンジフルオライド(PVdF)である。
【0023】
例示的な実施形態では、複合セパレータ層は、無機酸化物及び無機窒化物からなる群から選択される無機粒子を備える。
【0024】
例示的な実施形態では、無機粒子はベーマイト粒子を備える。
【0025】
例示的な実施形態では、前記複合セパレータ層中の無機粒子の重量パーセントは、60%~95%である。
【0026】
例示的な実施形態では、複合セパレータ層はキセロゲル層である。
【0027】
例示的な実施形態では、多孔質層は安全シャットダウン層である。
【0028】
例示的な実施形態では、多層複合セパレータは、電解質に1時間浸した後の膨潤が0.5%以下である。
【0029】
例示的な実施形態では、多層セパレータは、多孔質層及び1つ以上の複合セパレータ層を所定の順序で剥離基材上に塗工し、これらの層を剥離基材から剥離して自立型多層複合セパレータを提供することにより作製される。
【0030】
例示的な実施形態では、各層は塗工工程によって提供される。
【0031】
例示的な実施形態では、積層工程は、1つ以上の塗工工程の後に行われる。
【0032】
例示的な実施形態では、多層セパレータは、狭いレーンにおけるスリッティングに先立ち狭いレーンにおける厚さにおいて圧縮されて、所望幅を提供する共に多層セパレータのエッジに沿って機械的強度を増大させる。
【0033】
例示的な実施形態では、多層複合セパレータは、非水電解質中で非膨潤性であるポリマを備える多孔質層であって、相反転法によって形成される多孔質層と、この多孔質層の片面又は両面上の多孔質無機/有機複合セパレータ層と、を備え、この複合セパレータ層は、非水電解質中で膨潤するポリマを備える。
【0034】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から容易に明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の上記の及び関連する目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて、本発明の例示的ではあるが好ましい実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるはずである。
【
図1A】
図1Aは、本発明の例示的な実施形態に従うバインダ溶液調製プロセスを示すフロー図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の例示的な実施形態に従うセラミック分散物調製プロセスを示すフロー図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の例示的な実施形態に従うセパレータ塗工混合物調製プロセスを示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施形態に従う混合チャンバの平面図である。
【
図3A】
図3Aは、
図1Cに示されるプロセス100cから得られるセラミックセパレータ塗工混合材料の粘度を反映するグラフである。
【
図3B】
図3Bは、
図1Cに示されるプロセス100cから得られるセラミックセパレータ塗工混合材料の粒子サイズ分布を反映するグラフである。
【
図3CDEFG】
図3CDEFGは、本発明の例示的な実施形態に従って形成されたCSPの断面側面顕微鏡写真(走査型電子顕微鏡、「SEM」による)であり、C、D、E、F、及びGはそれぞれ異なる倍率の写真である。
【
図3H】
図3Hは、本発明の例示的な実施形態に従って形成された塗工及び乾燥後のCSPの比較細孔サイズ分布を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な実施形態に従う自立型全セラミックセパレータを製造するためのアセンブリの代表的な図である。
【
図5】
図5は、本発明の例示的な実施形態に従う複合セパレータ層上に配置されたシャットダウン層の断面図である。
【
図6】
図6は、CSP-Aセパレータを備えた「CSP1」セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
【
図7】
図7A、7B、7C、及び7Dは、それぞれ20μmCSP-Aセパレータを備えた「CSP2」セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
【
図8】
図8A、8B、8C、及び8Dは、それぞれ「アノード上シャットダウン」(即ち、アノード近傍のシャットダウン層を備えたCSP-Aセパレータ)セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
【
図9】
図9は「アノード上シャットダウン」セルとの比較のために、「アノード上CCS1」セルに対して行った試験の結果を示す図である。
【
図10】
図10は「カソード上シャットダウン」(即ち、カソード近傍のシャットダウン層を備えたCSP-Aセパレータ)セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
【
図11】
図11は、「アノード上シャットダウン」セルとの更なる比較のために、「アノード上CCS2」セルに対して行った試験の結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は「CSP」セルとの比較のために、PEセパレータセル「コントロール1」及び「コントロール2」に対して実施した試験の結果を示す図である。
【
図13】
図13は「CSP」セルとの比較のために、PEセパレータセル「コントロール1」及び「コントロール2」に対して実施した試験の結果を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、本発明の例示的な実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだ電気化学セルサンプルの完全なセル故障前の突発的加熱事象の選択的プロットである。
【
図14B】
図14Bは、比較サンプルの完全なセル故障前の突発的加熱事象の選択的プロットである。
【
図15】
図15は、本発明の例示的な実施形態に従って作製されたセパレータサンプル及び比較セパレータサンプルの熱伝導率の結果を示すグラフである。
【
図16A】
図16Aは、コントロールセルサンプルについての釘刺し試験の継続時間に対する温度及び電圧のグラフプロットである。
【
図16B】
図16Bは、本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPセルサンプルについての釘刺し試験の継続時間に対する温度及び電圧のグラフプロットである。
【
図16C】
図16Cは、コントロールセルサンプルについての釘刺し試験における時間に対する温度のグラフプロットである。
【
図16D】
図16Dは、本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPセルサンプルについての釘刺し試験における時間に対する温度のグラフプロットである。
【
図17A】
図17Aは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図17B】
図17Bは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図18A】
図18Aは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するサイクリングレート能力試験結果のグラフプロットである。
【
図18B】
図18Bは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するサイクリングレート能力試験結果のグラフプロットである。
【
図18C】
図18Cは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するサイクリングレート能力試験結果のグラフプロットである。
【
図18D】
図18Dは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製された種々のCSP寸法を組み込んだセルに対するサイクリングレート能力試験結果のグラフプロットである。
【
図19A】
図19Aは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する28日間放電容量保持試験結果のグラフプロットである。
【
図19B】
図19Bは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する28日間電圧降下試験結果のグラフプロットである。
【
図20A】
図20Aは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する1年間放電容量保持試験結果のグラフプロットである。
【
図20B】
図20Bは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する1年間電圧降下試験結果のグラフプロットである。
【
図21A】
図21Aは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する放電抵抗試験結果のグラフプロットである。
【
図21B】
図21Bは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する放電抵抗試験結果のグラフプロットである。
【
図21C】
図21Cは、コントロールセルサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSPを組み込んだセルに対する放電抵抗試験結果のグラフプロットである。
【
図22】
図22は、コントロールセパレータサンプル及び本発明の例示的な実施形態に従って作製されたセパレータサンプルに見られる熱誘導寸法変化の試験結果のグラフプロットである。
【
図23A】
図23Aは、種々の乾燥プロセスを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図23B】
図23Bは、種々の乾燥プロセスを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図23C】
図23Cは、種々の乾燥プロセスを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図23D】
図23Dは、種々の乾燥プロセスを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図23E】
図23Eは、種々の乾燥プロセスを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルに対するライフサイクル試験結果のグラフプロットである。
【
図24】
図24は、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルのサイクリングレート能力比較のグラフプロットである。
【
図25】
図25は、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータを組み込んだセルのパルス電力試験に際してのセル電圧比較のグラフプロットである。
【
図26A】
図26Aは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26B】
図26Bは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26C】
図26Cは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26D】
図26Dは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26E】
図26Eは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26F】
図26Fは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図26G】
図26Gは、本発明の実施形態に従って作製されたセパレータの乾燥プロセスの前と後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図27A】
図27Aは、コントロールセパレータ及び本発明の実施形態に従って作製されたセパレータのカレンダリングプロセス後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図27B】
図27Bは、コントロールセパレータ及び本発明の実施形態に従って作製されたセパレータのカレンダリングプロセス後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図27C】
図27Cは、コントロールセパレータ及び本発明の実施形態に従って作製されたセパレータのカレンダリングプロセス後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図27D】
図27Dは、コントロールセパレータ及び本発明の実施形態に従って作製されたセパレータのカレンダリングプロセス後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図27E】
図27Eは、コントロールセパレータ及び本発明の実施形態に従って作製されたセパレータのカレンダリングプロセス後における機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図28A】
図28Aは、本発明の実施形態に従って作製された架橋剤塗工セパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図28B】
図28Bは、本発明の実施形態に従って作製された架橋剤塗工セパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図28C】
図28Cは、本発明の実施形態に従って作製された架橋剤塗工セパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図28D】
図28Dは、本発明の実施形態に従って作製された架橋剤塗工セパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図29A】
図29Aは、特定の架橋剤塗工パラメータを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図29B】
図29Bは、特定の架橋剤塗工パラメータを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図29C】
図29Cは、特定の架橋剤塗工パラメータを伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図30A】
図30Aは、特定の架橋剤塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図30B】
図30Bは、特定の架橋剤塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図30C】
図30Cは、特定の架橋剤塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31A】
図31Aは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31B】
図31Bは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31C】
図31Cは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31D】
図31Dは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31E】
図31Eは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31F】
図31Fは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図31G】
図31Gは、エッジ補強塗工を伴い本発明の実施形態に従って作製されたセパレータサンプルの機械的特性に関する試験結果のグラフプロットである。
【
図32A】
図32Aは、本発明の例示的な実施形態に従う非膨潤多孔質層及びCSP層の層構造の断面図を示す。
【
図32B】
図32Bは、本発明の実施形態に従う積層サンプルのガーレー通気度(Gurley air permeability)と非膨潤層ブレンドの重量分率との間の関係を示す試験結果のグラフである。
【
図32C】
図32Cは、本発明の実施形態に従う積層サンプルの膨潤率(%)と非膨潤層ブレンドの重量分率との間の関係を示す試験結果のグラフである。
【
図33A】
図33Aは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに対する引張応力に関する試験結果の図である。
【
図33B】
図33Bは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに対する伸びに関する試験結果の図である。
【
図33C】
図33Cは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに対するガーレー通気度に関する試験結果の図である。
【
図33D】
図33Dは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに対するインピーダンスに関する試験結果の図である。
【
図33E】
図33Eは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに対するプロピレンカーボネート中の%膨潤に関する試験結果の図である。
【
図34A】
図34Aは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【
図34B】
図34Bは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【
図34C】
図34Cは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【
図34D】
図34Dは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【
図34E】
図34Eは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【
図34F】
図34Fは、本発明の実施形態に従って作製されたCSPセパレータサンプルに関する抽出プロセスの前と後の試験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に示す例示的な実施形態を詳細に参照する。全図を通して、可能な限り、同一又は類似の部分を参照するために同一の参照番号を用いる。
【0037】
「基材」という用語は、セラミック塗工セパレータ(CCS)を製造するために用いられる多孔質ポリオレフィンの基材又は層等の多孔質ポリマ材料の薄いシート又はポリマセパレータ層あるいはセラミック塗工セパレータ及びセラミック含侵セパレータを製造するために用いられる多孔質不織布ポリマーの基材又は層を含む任意の支持構造を参照するが、これに限定されない。「基材」という用語はまた、本発明の実施形態を製造する方法において用いられるプラスチック剥離フィルムの厚いが柔軟なシートを参照する。
【0038】
電気化学セルにおける使用するための、取り付けられた基材のない自立型複合セパレータ、即ち全セラミックセパレータ(CSP)は、その製造及びセル製造の容易さ並びにポリマ基材を備える従来のCCSとの比較における高温性能から望ましい。本発明は、電気化学セル内の電極間に配置される自立要素として適用可能な実質的にセラミック材料を備えるセパレータを形成するための技術に関する。本発明はまた、CSPの化学組成、配合、物理的特性、及び性能特性を含むCSPそれ自体に関する。
【0039】
I.塗工混合物プロセス
本発明の例示的な実施形態に従うセパレータ材料を形成するためのプロセスが、
図1A、1B、及び1Cに示されている。先ず、
図1Aは、本発明の例示的な実施形態に従うバインダ溶液調製プロセス100aを示すフロー図である。
図1Aを参照すると、工程S110において、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)(例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズから入手可能なソレフ(登録商標)5130(Solef(登録商標) 5130 available from Solvay Specialty Polymers))等のポリマ樹脂を混合チャンバ内で低速攪拌しながらN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒に加える。好ましい実施形態によると、溶媒は、セパレータ材料の溶解及び改善された最終塗工レオロジーを促進するために、実質的に全てNMPである。
図2は、本発明の例示的な実施形態に従う混合チャンバ200を平面図で示す。
図2に示すように、混合チャンバ200は、プロセス工程S110における樹脂の溶解を促進するために、その円周内壁に沿って配置された1つ以上のバッフル205を含む円筒形ペールであってよい。本発明の例示的な実施形態によると、混合チャンバ200の内壁には、帯電防止ライナ(図示せず)が取り付けられている。攪拌は、攪拌シャフト215に取り付けられたコールズブレード(Cowles blade)210等によって行われてよい。バインダ調製物の10kgスケールに対して、混合チャンバは5ガロンの容量を有していてよく、混合チャンバには4インチ(4")コールズブレード210が取り付けられている。対応して、工程S110において900gのPVdf樹脂を9.1kgのNMPに加えてよい。
【0040】
PVdF樹脂を加えた後、
図1Aの工程S120において、攪拌シャフト215の攪拌速度を2650RPMまで高め、混合物を約60分間攪拌する。好ましい実施形態によると、昇温温度で、例えば約40~60℃の間で混合物を撹拌して、PVdFバインダの完全な可溶化を促進すると共に、混合物が部分的に可溶性のゲルを保持する可能性を最小限にする。加えて、本発明の好ましい実施形態においては、コールズブレード210を用いて剪断力を増加させ、それにより可溶化を強化する。特に、PVdfポリマは、分子量が約1,000,000ダルトンと非常に高く、また固形分が9%と高いことにより粘度が非常に高く、完全に溶解するには積極的な撹拌が必要である。攪拌後、工程S125において、混合物を室温まで冷却する。
【0041】
図1Bは、本発明の例示的な実施形態に従うセラミック分散物調製プロセス100bを示すフロー図である。本発明の好ましい実施形態において、セパレータを形成するための主要なセラミック材料としてベーマイトを用いる。
図1Bを参照すると、工程S130において、ベーマイト粒子(例えば、粉末形態)等のセラミック材料を混合チャンバ内、例えば
図2に示す混合チャンバ200内で低速(例えば、500rpm)にて攪拌しながらNMP等の溶媒に加える。好ましい実施形態において、溶媒は、ベーマイトの好ましいブレンドの最終塗工レオロジー及びより微細な分散を改善するために、実質的に全てNMPである。また、工程S130において、2つ以上の異なるグレードのベーマイト材料をそれぞれの比率、レート、及び継続時間で所定の順序で追加してよい。好ましい実施形態では、工程S130において、疎水的に改質されたグレードのベーマイトを最初に加える。
図1Aに示すバインダ調製物に対応する10kgスケールのセラミック分散調製物に対して、工程S130において、5kgのベーマイトを5kgのNMPに加えてよい。
【0042】
ベーマイトを加えた後、工程S140において、攪拌シャフト215の攪拌速度を2650RPMまで高め、混合物を約60分間攪拌する。好ましい実施形態によると、昇温温度で、例えば約40~60℃の間で混合物を撹拌して、完全な分散を促進する。攪拌後、工程S145において、混合物を室温まで冷却する。
【0043】
次に
図1Cを参照して、
図1A及び1Bに示すプロセス100a及び100bにおいてそれぞれ形成されたバインダ溶液及びセラミック分散物を混合してセパレータ材料(塗工混合物)を形成するプロセス100cを説明する。
図1Cに示すように、工程S150において、バインダ溶液、例えば
図1Aに示すプロセス100aにより形成したバインダ溶液を混合チャンバ内、例えば
図2に示す混合チャンバ200内で穏やかに攪拌しながらNMP等の溶媒に加える。好ましい実施形態によると、溶媒は、セパレータ材料の溶解及び最終塗工レオロジーを促進するために、実質的に全てNMPである。10kgスケールに対して、工程S150において、約4444gのバインダ溶液(9%不揮発性物質又はNV)を約2756gのNMPで希釈してよい。
【0044】
バインダ溶液を希釈した後、工程S160において、攪拌シャフト215の攪拌速度を1000RPMまで高め、セラミック分散物、例えば
図1Bに示すプロセス100bにより形成されたベーマイト分散物を加える。工程S170において、撹拌速度を1000RPMに維持し、又は必要であれば、空気の巻き込みを最小限に抑えながら流体反転(fluid turnover)を確実にするように、約30分にわたって攪拌速度を調節する。好ましい実施形態によると、昇温温度で、例えば約40~60℃の間で混合物を撹拌して、完全な均一混合を促進する。10kgスケールに対して、工程S160において、約2.8kgのベーマイト分散物(50%NV)を加えてよい。好ましい実施形態においては、より大きな/より広い最終粒子サイズ分布をもたらす可能性のあるベーマイト粒子の不可逆的な凝集を防ぐために、混合チャンバ200内でコールズブレード210を用いて、混合及び剪断力を高めて混合物を攪拌する。攪拌後、工程S175において、混合物を室温まで冷却する。
【0045】
本発明の例示的な実施形態によると、CSPセパレータを製造するための塗工混合物は、それぞれのグレードのセラミック材料及びバインダ材料の比率を変えて、
図1A~1Cに示すプロセス100a~100cによって形成してよい。
【0046】
実施例1
実施例として、規定のおおよその材料比率を有する4つの特定タイプのCSPセパレータを、以下の表1に示す満足できる試験結果で作製した。
【0047】
【0048】
サソル、レイクチャールズ、LA(Sasol, Lake Charles, L A)及びデューレン、ドイツ(Duren, Germany)からのベーマイト顔料の特性を以下にまとめる。
<サソルディスパル(登録商標)10F4の化学的及び物理的特性>
Al2O3(%):83
H3COO-(%):0.25
緩みかさ密度(g/l):550
粒子サイズ(d50)(μm):30
表面積(BET)*(m2/g):100
細孔容積*(ml/g):0.8
結晶サイズ(120)(nm):40
分散粒子サイズ(nm):240
PCSでの測定:
ディスク遠心分離機での測定:
表面処理:-
<サソルディスペラル(登録商標)60の化学的及び物理的特性>
Al2O3(%):80
H3COO-(%):-
緩みかさ密度(g/l):300~500
粒子サイズ(d50)(μm):35
表面積(BET)*(m2/g):95
細孔容積*(ml/g):0.9
結晶サイズ(120)(nm):60
分散粒子サイズ(nm):未満
PCSでの測定:350
ディスク遠心分離機での測定:250
表面処理:-
<サソルディスパル(登録商標)10SRの化学的及び物理的特性>
Al2O3(%):78
H3COO-(%):-
緩みかさ密度(g/l):-
粒子サイズ(d50)(μm):30
表面積(BET)*(m2/g):100
細孔容積*(ml/g):0.8
結晶サイズ(120)(nm):40
分散粒子サイズ(nm):不適用
PCSでの測定:
ディスク遠心分離機での測定:
表面処理:p-トルエンスルホン酸
(*550℃で3時間活性化)
【0049】
CSP-Aセパレータ、CSP-Bセパレータ、CSP-B2セパレータ、及びCSP-B3セパレータについて行われた試験に関する本実施例及びそれに続く実施例において、10F4ベーマイトはギ酸で表面処理され、10SRベーマイトはp-トルエンスルホン酸(p-TSA)で表面処理されている。ベーマイト粒子をギ酸で表面処理すると、ベーマイトは水において及びアルコール等のプロトン性溶媒においてより分散性になるが、PVdFを3重量%及びより高い固形分で完全に溶解することが可能な幾つかの非プロトン性溶媒の1つであるNMPにおいては非分散性である。ここで用いられる場合、「不溶性(insoluble)」及び「非溶解性(not soluble)」という用語は、室温又は25℃で当該材料の3重量%未満しか特定の溶媒又は水に溶解しなかった又は可溶性ではなかったことを意味する。ベーマイト粒子をp-トルエンスルホン酸で表面処理すると、NMP中での分散が可能になる。ここでの説明に基づいて、当業者であれば、材料比率、それぞれの粒子の表面処理等が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更されてよいことを理解するであろう。種々のタイプのベーマイト等の無機粒子は表面処理されていてもされていなくてもよく、これらを異なる比率でブレンドして、CSPセパレータ層を形成してよい。例えば、ベーマイト2に対するベーマイト1の比率は、CSP-B2及びCSP-B3の場合のような60重量%-40重量%から、75重量%-25重量%を含むそれ以下まで増やしてよい。ベーマイト2に対するベーマイト1のこの比率の増加には、P:B比における対応する増加が付随していてよい。無機粒子の他のブレンドをP:B比と共に同様に調整することにより、得られるセパレータの多孔性及びレート能力を維持し又は高めつつ、機械的強度を維持し又は高めると共に有機カーボネート溶媒及び電解質における膨潤を低減することができる。
【0050】
II.混合ろ過
高いフィラー負荷(high filler loading)、ベーマイト粒子サイズ分布の最適化、及び表面処理(surface-ti-eated)/「未処理(“un-treated”)」(例えば、上述した10SR/10F4又は10SR/D60)ベーマイトのブレンド比を考慮すると、これは、セパレータ性能を最適化するために除去する必要がある大きな(>10ミクロン)凝集体を必然的に少量生じさせる。例示的な実施形態によると、ダイ塗工プロセスに先立ち、塗工混合物の適切なろ過を約10~25ミクロンのフィルタ細孔サイズで行う。
【0051】
実施例2
図1A~1Cに示す上述したプロセス100a~100cによる塗工混合物のサンプルを特性評価のために作製した。特に、この実施例では、実施例1で説明したCSP-Aに適合する比率のサンプルを作製した。
図3A及び3Bは、それぞれ、
図1Cに示すプロセス100cから得られたCSP-Aセラミックセパレータ塗工混合物材料の粘度プロファイル及び粒子サイズ分布を反映するグラフである。#63スピンドルを備えたブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)を用いた場合、23℃での18%V塗工混合物の粘度は、スピンドル速度5rpmでの5,000cPsからスピンドル速度30rpmでの3,000cPsの範囲にあった。
図3Bに示すように。CSP-A塗工混合物は、中央値129nm付近で顕著な粒子サイズ濃度を呈し、混合物の大部分に対して狭い分布範囲を伴い、また粒子サイズ径が約1.5ミクロンから約30ミクロンの大きな凝集塊を幾つか伴っていた。これらのより大きな凝集物は、塗工混合物の適切なろ過により実質的に低減されてよい。狭い粒子サイズ分布は、
図3C、3D、3E、3F、及び3Gの顕微鏡写真に反映されており、これらは比較的均一な粒子サイズを示している。この実施例2で用いられたベーマイト粒子は、ほぼ立方体の形状を有している。
【0052】
対応して、
図3Hに反映されているように、CSP-Aセパレータサンプルは、
図3Hにおける最も高い狭いピークに見られるように、約35nmあたりに狭い細孔サイズ分布を呈した。この細孔サイズピークは、CSP-Aセパレータの2つの異なるベーマイトの両方の主要粒子の結晶サイズに類似している。CSP-Bセパレータ及びCSP-B2セパレータのサンプルは、対応する狭い分布をそれぞれ約50nm及び約60nm付近に示し、これはCSP-Bセパレータ及びCSP-B2セパレータにおける2つのグレードのベーマイト粒子の主要粒子結晶サイズの中間である。
図3Hにおける他の2つの細孔サイズ曲線は、2つの異なる市販セラミック塗工セパレータ(CCS)のものである。一方のCCS曲線は、約0.1ミクロン及び約0,9ミクロンに比較的広い細孔サイズ径ピークを示し、これらのピークは、約20nm、即ち約0.02ミクロンから約0.6ミクロンまでの、約80nm、即ち約0.08ミクロンに広いピークを伴うポリマ基材の典型的な非常に広い細孔サイズ分布曲線に重畳されている。他方のCCS曲線は、約0.4ミクロンでのセラミック塗工に対する比較的広い細孔サイズピークを示し、このピークは、ポリマー基材の非常に広い細孔サイズ曲線に重畳されている。
【0053】
III.セラミックダイ塗工プロセス
本発明の例示的な実施形態に従うCSPセパレータへの薄膜セラミック前駆体を作製するためのプロセスを
図4に示す。先ず、厚い非多孔質ポリマ基材405、例えば、
図4に示すように、125μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製の片面又は両面塗工の再使用可能剥離ライナを、いずれかの面上の1つ以上のセラミック塗工混合物ディスペンサ410aとの対応において配置し、随意的には別のディスペンサ410bとの対応においても配置する。ライナ405、又はディスペンサ410a及び410bは、縦方向(MD)に搬送されてよい一方で、プロセス100cから得られたセラミック塗工混合物は、ディスペンサ410a及び410bから分注される。本発明の例示的な実施形態によると、塗工混合物は、再使用可能な剥離ライナ上における約1.5~2メートル幅且つ最大約125m/分のMDライン速度でのスロットダイ塗工によって、あるいは連続ベルトキャスティングによって、分注される。
図4に示すように、乾燥後の混合物は、厚さが約6~20μmのフィルム415a及び415bに形成される。ライナ405の対向面上のディスペンサ410a及び410bからそれぞれ得られたフィルム415a及び415b(随意的)は、次いで、以下で説明する更なる処理のために剥離によってライナ405から取り外されて、自立型多孔質CSPフィルムセパレータを形成する。
【0054】
本発明の例示的な実施形態によると、フィルム415a及び415bは、ライナ405から取り外され、電池セルへの組み立てのための幅にスリッティングされる。以下で更に説明するように、真空乾燥は、セルに電解質を充填するのに先立ちフィルム415a及び415bをセルに組み立てる前及び/又は後に実施されてよい。
【0055】
高いフィラー負荷、高い粘度、特定の好ましい溶媒系(NMP)、及び特定のレオロジー特性を考慮すると、塗工混合物流体の塗工ダイ、例えばディスペンサ410a及び410bへの(及び塗工ダイを通しての)ポンピングにより、固有の課題が生じることがある。本発明の例示的な実施形態によると、ポンプ又は塗工流体を劣化させずに連続使用するために、プログレッシブキャビティポンプ(progressive cavity pumps)を適切なNMP耐性フィッティングでディスペンサ410a及び410bへの供給のために用いてよい。
【0056】
IV.セル製造
ダイ塗工に続いて、本発明の例示的な実施形態によると、以下で更に詳細に説明するように、フィルム415a(及び/又は)415bは、特性改善のための1つ以上のプロセスを受けてよく、この1つ以上のプロセスは、限定はされないが、真空乾燥(VD)、架橋(又は架橋剤塗工)、及びエッジ補強(ER)の1つ以上を含む。以下に詳述するように、VDは、セル積層又はセル積層物をケーシングに挿入することの前及び/又は後(且つ電解質充填の前)に実施されてよい。また、以下で更に詳細に説明するように、ダイ塗工フィルム(415a及び/又は415b)並びにグラビア塗工等の代替的塗工方法により作製されたセパレータは、複数のセラミック塗工層を含んでいてよく、また、本発明の例示的な実施形態に従うセル製造の前に、1つ以上の非膨潤層及び/又は安全シャットダウン層と共に組み込まれてよい。
【0057】
セル製造の準備が整うと、スリッティング後のセパレータフィルム(415a及び/又は415b)は、セル積層のためにリール形態に巻回される。セル積層は、多くの既知のプロセスによって行うことができ、上述した及び以下に説明するセパレータフィルム(415a及び/又は415b)に対する特性改善は、そのようなセル積層及び関連するセル製造プロセスによって生じる課題に対処し、例えば、セパレータフィルム(415a及び/又は415b)に対するエッジ補強処理は、特に、セル積層及び製造機械によりフィルムを取り扱う際のエッジ引き裂き抵抗を改善する。
【0058】
本発明の例示的な実施形態によると、リール形態のセパレータフィルム(415a及び/又は415b)は、中央「積層(stacking)」位置においてz折り積層機械を通して引っ張られる。セル積層は、好ましくはクリーンルーム環境で行われる。次いで、アノード及びカソードが積層物上に置かれると、セパレータが前後に折り畳まれる。積層物が十分な電極層(例えば、積層物内の17のカソードと18のアノード)で構築されると、セパレータが積層物の周りに所定回数だけ巻回されると共に切断/テーピングされて、「乾燥セル積層物」が形成される。次いで、「乾燥セル積層物」は、アノードタブ及びカソードタブを接続して2つのそれぞれのリード(プラス及びマイナス)を作製するために、タブ付け/溶接ステーション、例えば超音波溶接に移動させられる。タブ付きセルは次いでハイポット(HiPot)(欠陥)テスタ内に置かれ、そこで高電圧が短時間印可される。セパレータに穴があり、あるいはセルを短絡させたり電流をジャンプさせたりする他の欠陥がある場合、セルは不合格になる。次いで、合格した積層物は、ポーチ等のケーシングに入れられ、ポーチの開口を介して電解質を追加するためのそのような開口を残して密封される。電解質充填工程が完了すると、ポーチは完全に密封される。セルは次いで最終セル形成処理を受け、この処理は、セルを加熱して、ポーチを開封することによって次いで除去されるガスを形成することと、ポーチを再密封することと、を含んでいてよい。セルは、最終使用のための完成したセル製品として販売される前に、セル形成プロセスにおいて所定の回数サイクル(充電及び放電)されてもよい。
【0059】
V.シャットダウン層
本発明の例示的な実施形態によると、多孔質熱可融性粒子充填塗工(porous thermally fusible particle-filled coating)の1つ以上のシャットダウン層をセラミックベースのナノ複合材の片面又は両面に配置して、自立型CSPセパレータを形成してよい。シャットダウン層は、2つのセラミックベースのナノ複合材層の中間にあってもよい。
図5は、シャットダウン層を組み込んだCSPセパレータの概略断面図を示し、このシャットダウン層は、製造に際してリチウムイオン電池のアノード及び/又はカソード近傍の表面上に配置されてよい。
図5に示すように、セラミックベースの(例えば、ベーマイト)ナノ複合材層は、約6~20μmの厚さを有していてよく、シャットダウン層塗工物は、約2~6μmの厚さを有していてよい。セルにおいて、シャットダウン層は、セルが110℃等まで過熱したときにリチウムイオンの流れを遮断するように機能し、それによりセルの動作をシャットダウンすると共にセルのエネルギの更なる放電を防止する。セルの動作のこの遮断は、セパレータの多孔性の損失によるセルのインピーダンス又は抵抗の大幅な増大に起因する。セルにおける加熱に際しての多孔性のこの損失は、加熱されたときのセパレータに対するガーレー通気度数値の大幅な増加に対応している。
【0060】
実施例3
上述の方法で製造したCSPフィルムを備えるリチウムイオンセルの熱安定性について試験を実施した。特に、全てポーチ形態である種々の異なるセパレータを備えたセルに対して、約5Ahの定格放電容量でそのようなリチウムイオンセルについて加速レート熱量測定(ARC)を行った。即ち、
a.2つのセラミック(のみ)メンブレン(CSP-A設計の20ミクロン「CSP」)と、
b.2つのセラミック塗工ポリオレフィンセパレータ(「アノード上にCCSシャットダウン」)と、
c.負極に対向するシャットダウン塗工物を備えた1つのセラミック(のみ)メンブレン(CSP-A)(「アノード上にシャットダウン」)と、
d.正極に対向するシャットダウン塗工物を備えた1つのセラミック(のみ)メンブレン(CSP-A)(「カソード上にシャットダウン」)と、
e.2つのコントロール(16ミクロンのポリオレフィン(PE)セパレータ)と、である。
【0061】
本実施例における「CSP」ARC試験のために、CSP-Aバージョンセパレータを備えたポーチセルを用いた。セルは、CC/CV充電プロトコルを用いて、0.5C充電レート、4.20V充電カットオフ電圧、及びC/20レートテーパ充電カットオフで完全に充電した。セルは、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)正極化学組成及び炭素(グラファイト)負極化学組成を用いた。余分なポーチ材料は折り畳んでテープ止めした。絶縁電線をセルタブに接続し、次いで試験に際しての電圧測定のために外部データロガーに接続した。セルを加速レート熱量計(ARC)チャンバに入れ、高温テープを用いてポーチの側面に熱電対を貼り付けた。
【0062】
ARC試験は、「熱-待機-検索(Heat- Wait-Search)」モードで行われ、このモードにおいて、ARCは、チャンバを開始温度50℃まで加熱し、サンプル温度がチャンバ温度に一致するまで待機する。システムは次いで、サンプルからの発熱を検索しながら規定の時間待機する。発熱が検出されない場合、システムはチャンバ及びサンプルを次のステップまで加熱する(加熱ステップ=5℃)。閾値を超える発熱が検出された場合、ARCはチャンバ温度をサンプル温度に一致させ続け、もはや加熱ステップを受けない(断熱領域)。結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
表2を参照すると、断熱環境(周囲への熱損失なし)で試験した場合、セルは以下の特性で自己加熱し始めた。CSP-Aセル(即ち「CSP1」及び「CSP2」)(2試験)は、セル温度が150℃を超えると自己発熱開始を示した。試験された他のセルは、開始が145℃で発生した1つの特異的な「アノード上CCS」サンプルを除き、87℃と129℃の間の開始温度を呈した。セル電圧挙動(例えば、シャットダウン又はセパレータ故障)は、セパレータの材料に依存していた。1つの特異的な「アノード上CCS」サンプルを除き、ポリマセパレータ(完全又は部分的)を備えたセルは、一般的なポリマポリエチレン(PE)セパレータ材料の溶融温度と一致する約130℃あたりで電圧降下を呈した。2つの「CSP」セルは、セルの温度が190℃を超えるまでセル電圧を維持した。完全なセル故障(d2T/dt2>100℃/min2の場合として定義される)の前に、殆どのセルにおいて突発的な加熱事象が明らかであった。非「CSP」セルにおいては、発熱の開始が200℃を超えた1つの特異的な「アノード上CCS」サンプルを除き(他のポリマセパレータセルは約130℃で発熱の開始を示した)、120℃と170℃の間で加熱事象が観察された。両方の「CSP」セルにおいて200℃を超える温度で加熱事象が発生し、この加熱事象は、ポーチセルの開封及び揮発性電解質溶媒の放出により誘発されたと考えられる。これらの結果に反映されるように、試験されたCSPセルは、220℃以上の温度でも収縮がなく、比較セルに対してより高い温度まで動作が維持され、自己発熱開始温度及び電圧降下温度は両方ともより高かった。少なくとも「CCS」サンプル及び「コントロール」サンプルに対して改善した結果は、約130℃で収縮及び溶融する多孔質ポリマ基材がないことに起因している。
【0065】
図6A、6B、6C、及び6Dは、それぞれ20μm厚CSP-Aセパレータを備えた「CSP1」セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
図6B及び6Dは、それぞれ
図6A及び6Cの拡大部分である。「CSP1」セルは4.1410Vの開路電圧で試験された。
図6A~6Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は次の通りであった。
a. 温度(℃):
i. 開始:157.5
ii. 突発的電圧降下:192.0
b. 時間(時間):
i. 開始:30.1
ii. 電圧降下:32.2
【0066】
図7A、7B、7C、及び7Dは、それぞれ20μmCSP-Aセパレータを備えた「CSP2」セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
図7B及び7Dは、それぞれ
図7A及び7Cの拡大部分である。「CSP2」セルは4.126Vの開路電圧で試験された。
図7A~7Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は、
図6A~6Dに示す「CSP1」の結果に大部分対応しており、次の通りである。
a. 温度(℃):
i. 開始:152.2
ii. 突発的電圧降下:204.3
iii. 通気:110
b. 時間(時間):
i. 開始:30.1
ii. 電圧降下:32.2
iii. 通気:14
【0067】
図7Aに示すように、セル電圧は、試験の中ほどで数時間「0V」で記録されたが、これは加熱中のセルポーチの膨張によるものであった可能性がある。
図7C及び7Dは、110℃での可能なセル通気を示しており、これは、典型的には、セルが断熱条件で自己発熱している間におけるセルの温度(及び自己加熱レート)の突発的降下により記されている。
【0068】
図8A、8B、8C、及び8Dは、それぞれ「アノード上シャットダウン」(即ち、アノード近傍のシャットダウン層を備えたCSP-Aセパレータ)セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
図8B及び8Dは、それぞれ
図8A及び8Cの拡大部分である。セルは4.108Vの開路電圧で試験された。
図8A~8Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:102.2
ii. 突発的電圧降下:166.0
b.時間(時間):
i. 開始:11.7
ii. 電圧降下:20.8
【0069】
「アノード上シャットダウン」セルとの比較のために、「アノード上CCS1」セルに対して試験を行った。その結果を
図9A~9Dに示す。
図9B及び9Dは、それぞれ
図9A及び9Cの拡大部分である。セルは4.131Vの開路電圧で試験された。
図9A~9Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は、「アノード上シャットダウン」と比較した場合に顕著な欠陥を伴っており、次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:87.1
ii. 突発的電圧降下:129.0
iii. 通気:144.5(プロット)
b.時間(時間):
i. 開始:8.6
ii. 電圧降下:14.9
iii. 通気:14.9
【0070】
図10A、10B、10C、及び10Dは、それぞれ「カソード上シャットダウン」(即ち、カソード近傍のシャットダウン層を備えたCSP-Aセパレータ)セルに対するARC試験における「時間対温度」の結果及び「自己加熱レート対温度」の結果を反映するグラフプロットである。
図10B及び10Dは、それぞれ
図10A及び10Cの拡大部分である。セルは4.122Vの開路電圧で試験された。
図10A~10Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:91.0
ii. 突発的電圧降下:105.1
b.時間(時間):
i. 開始:6.0
ii. 電圧降下:8.7
【0071】
リチウムイオンセルは典型的には約110℃で急速な熱暴走を生じるので、105℃でシャットダウンを達成することは、リチウムイオンセルにとって長い間望まれていた結果であり、熱暴走の温度に達する前にセルの動作を終了させることが重要である。更に、安全性及びセル性能上の理由から、リチウムイオンセルは、約100℃に達してセルに何らかの劣化が生じた後は使用すべきではなく、105℃でセルをシャットダウンすることにより、リチウムイオンセルの更なる使用及び動作が自動的に止められる。以下の実施例から理解できるように、PE基材を備えたCCS及びPEセパレータは、120℃~130℃以上等のかなりの高温になるまでシャットダウンせず、またそれらの温度で高い発熱及びセル燃焼を生じるので、揮発性及び可燃性の有機電解質溶媒を含むリチウムイオン電気化学セルの燃焼及び爆発を確実に防止する安全シャットダウン層ではない。
【0072】
「アノード上シャットダウン」セルとの更なる比較のために、「アノード上CCS2」セルに対して試験を行った。その結果を
図11A~11Dに示す。
図11B及び11Dは、それぞれ
図11A及び11Cの拡大部分である。セルは4.122Vの開路電圧で試験された。
図11A~11Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は、次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:145.1
ii. 突発的電圧降下:167.0
b.時間(時間):
i. 開始:20.9
ii. 電圧降下:22.4
【0073】
最後に、「CSP」セルとの比較のために、PEセパレータセル「コントロール1」及び「コントロール2」に対して試験を実施した。その結果を
図12A~12D及び13A~13Dにそれぞれ示す。「コントロール1」に対して、
図12B及び12Dは、それぞれ
図12A及び12Cの拡大部分である。「コントロール1」セルは4.154Vの開路電圧で試験された。
図12A~12Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は、「CSP1」及び「CSP2」と比較した場合に顕著な欠陥を伴っており、次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:122.6
ii. 突発的電圧降下:128.7
b.時間(時間):
i. 開始:19.1
ii. 電圧降下:19.2
【0074】
「コントロール2」に対して、
図13B及び13Dは、それぞれ
図13A及び13Cの拡大部分である。「コントロール2」セルは4.192Vの開路電圧で試験された。
図13A~13Dに示すように、ARC試験の特定の経時的結果は、「CSP1」及び「CSP2」と比較した場合に顕著な欠陥を伴っており、次の通りであった。
a.温度(℃):
i. 開始:129.1
ii. 突発的電圧降下:126.9
b.時間(時間):
i. 開始:18.2
ii. 電圧降下:17.4
【0075】
要約すると、「CSP1」及び「CSP2」セルは、特に従来のCCS及びPEの「コントロール1」及び「コントロール2」セルと比較して、熱安定性における顕著な改善を示した。
図14A及び14Bは、完全なセル故障前の「CSP1」及び「アノード上CCS1」についての突発的加熱事象(d
2T/dt
2>100℃/min
2、即ち熱レートの2次導関数)の選択的プロットである。これらの図と表2に示すように、「CSP1」セルは、セルが200℃を超えて218℃に達する後まで、突発的加熱、非常に発熱的な事象を呈さなかった。対照的に、「アノード上CCS1」サンプルは、132℃で突発的加熱、非常に発熱的な事象を生じた。表2に示すように、PEセパレータサンプルを備えた2つのセルにおいても、132℃付近で突発的加熱事象が生じた。
【0076】
実施例4
上述した方法で製造したセパレータとしての使用のためのCSPフィルムの熱伝導率についても、対応する寸法を有するCCS及びポリマシートと比較して、試験を実施した。本実施例における「CSP」熱伝導率試験に対して、CSP-Aバージョンと同様に2つの異なる処理ベーマイトを備えたCSPバージョンセパレータを用いた。従来のCCSセパレータにおけるようなポリマ基材を除外することの利点を、20μmCSPセパレータ(「CSP20」)及びPEポリマシートに対するASTM E1461に準拠したレーザフラッシュ(過渡)試験によって確認した。ASTM E1461法は、薄いセパレータサンプルの定量的で再現可能な熱伝導率測定を提供する点において正確である。
図15に反映されるように、CSPセパレータは、25℃及び50℃の両温度で熱伝導率に顕著な改善を示し、50℃での熱伝導率は25℃での熱伝導率に比べて約10%高く、ポリマシートに対する約0.14~0.15W/m・Kと比較すると約0.6~0.7W/m・Kであった。セパレータのより高い熱伝導率は、セル内の熱蓄積のより速い拡散において有益であり、これによりホットスポットの温度が下がり、セルのある領域で短絡その他の突発的加熱事象が生じた場合の安全性が改善される。
【0077】
実施例5
PE(ポリエチレン)ポリマセパレータを組み込んだポーチセルとの比較において、セパレータとして上述した方法で製造したCSPフィルムを組み込んだリチウムイオンポーチセルについて、釘刺し安全性試験を実施した。3.5Ah容量のセル及び75Ahセルについて、それぞれ個別の試験を実施した。本実施例における「CSP」釘刺し安全性試験については、CSP-Aバージョンセパレータを備えたポーチセルを用いた。
【0078】
試験前に高電圧3.5Ahポーチセルを4.4Vまで充電し、直径3mmの釘を駆動してセルのほぼ中心を約8.13cm/秒で貫通させた。試験の結果を以下の表3に示す。
【0079】
【0080】
試験前に75Ahポーチセルを4.1Vまで充電し、直径3mmの釘を駆動してセルのほぼ中心を約8cm/秒で貫通させた。試験の結果を以下の表4に示す。
【0081】
【0082】
表3及び4の両方に示すように、CSPセルは、釘刺し試験において大幅に改善された機械的安全性及び付随する耐火安全性を提供し、両セットの試験において、CSPセルに発火は見られず、ピーク温度は100℃未満であった。40Ahセル等のようにセルが大きくなるのに従い、またセルが80:10:10ニッケルマンガンコバルト(811NMC)や高ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)のカソード材料及びシリコンアノード材料等の安全性の低い電極材料を用いるのに従い、CSS、特にPEセパレータでは釘刺し試験に合格するのはますます困難になる。安全性は、リチウムイオン電池において最も重要な特性であり絶対的な必要条件であるので、セパレータが熱的に十分に安定で且つ熱伝導性であり、CCS及びプラスチックセパレータと比較してそれ自体で電池の安全性を高めることができるとすれば、非常に有益である。リチウムイオンセルの安全性を改善するものとして知られる他のセル設計も幾つかあるが、それらは高価であり、必ずしも効果的ではないこともあるので、優れた安全特性を有するセパレータを用いることができるとすれば、非常に有用である。従って、この試験は、発火事象を防止すること、及び動作中における導電性金属によるセパレータ及びセルの貫通等の誘発された機械的故障を経ても発火ピーク温度未満に維持することにおいて、ここに説明した方法において本発明に従い形成されたCSPを組み込んだセルの改善された安全性を反映している。
【0083】
図16A及び16Bは、それぞれ3.5Ahの「コントロール」PEセル及びCSP-Aセルについての釘刺し試験の継続時間に対する温度及び電圧のグラフプロットである。これらの図に示すように、PEセパレータセルは、僅か10秒後に電圧降下を生じ、温度は、釘刺しの後、セルの表面上の1つの熱電対で700℃まで上昇し、セルの表面に取り付けられた第2の熱電対で約580℃まで上昇した。これら700℃及び580℃のピーク温度には、釘刺しの後、僅か30~40秒で到達した。対照的に、
図16Bに示すように、CSP-Aセルは、釘刺しの後の最初の3100秒で4.2Vから3.6Vへのゆっくりとした直線的な電圧低下のみを示し、セルの外面の2箇所に取り付けられた熱電対によって測定されたピーク温度は、釘刺し試験の3100秒の第2の継続時間にわたってセルがゆっくりと3.6Vまで放電するのにつれて、約50℃のピークで始まって約40度まで低下した。PEセパレータ(表6におけるコントロールPE#1)及びCSP-Aセパレータ(表6におけるCSP-A 16ミクロン)を備えた5Ahポーチセルについての釘刺し試験に対して、同様の結果がそれぞれ
図16C及び16Dに示されている。PEセパレータを備えた5Ahセルは、3秒未満で爆発及び燃焼を伴う即時のハードショートを生じた。16ミクロン厚CSP-Aセパレータを備えた75Ahセルは、約5分間にわたってゆっくりと放電し、安全性上の事象はなかった。
【0084】
5Ah CSP-Aポーチセルについて変更条件下で追加の釘刺し試験を更に実施した。この試験では、電極はNMC/グラファイト、5Ah CSP-Aセルは有機カーボネート溶媒系を備えたLiPF6構成とし、試験は100%の充電状態(SOC)(4.2V)で実施した。以下の表5の結果が示すように、全てのCSPセルは最高温度を70℃未満に維持した。
【0085】
【0086】
別の釘刺し試験では、コントロールポリオレフィン(PE)セパレータセルとの対比において、16ミクロン及び20ミクロンのCSP-Aセパレータを備え100%SOCの5Ahポーチセルを、3mm直径の釘を用いて2.5cm/秒の貫通速度で試験した。以下の表6に示すように、CSPセパレータセルは安全性の改善を示した。
【0087】
【0088】
表6においては、PEセパレータセルでの即時のハードショートは、0ボルトへの電圧降下及び約3秒内でのセルの爆発によって示された。この結果、セルのエネルギの多くが即座に放電され、セルは測定された非常に高いピーク温度まで急速に加熱された。CSP-Aセパレータでの有意な短絡は、セルを完全に0ボルトまで放電するのに約5分から1時間かかった短絡によって示された。このかなり緩やかなエネルギ放電により、セルのピーク温度は100℃未満に保たれた。これらの結果は、75Ahポーチセルの釘刺し試験において
図16C及び16Dに反映されている。釘刺し試験における本発明のCSPのこの強化された安全性の主たる理由の1つは、600℃以上までの温度でCSPの収縮がない(1%未満の収縮、典型的には0.5%未満の収縮)ことである。このように収縮がないことにより、釘刺しに起因するセパレータ内の穴が拡大すること、及びより大きな面積がアノードとカソードの間の短絡にさらされることが阻止される。釘の周囲の局所温度が600℃あたりに達すると、カソードの薄いアルミニウム金属集電体層はその温度で溶けるが、CSPは、溶けたり縮んだりはせずに釘穴周辺の電気絶縁特性を維持し、それにより、セルの強制短絡放電の速度及びそれに伴う高熱の発生がゆっくりになる。この結果、釘刺し試験においてセルの安全上の事象が生じることはなく、即ち、セルは煙がでることもなく、焦げることもなく、燃焼することもなく、あるいは爆発することもない。安全性及び安定性の試験の他に、上述のような本発明の例示的な実施形態に従って作製されたCSP-Aセパレータを備えるセルについて、許容範囲の性能を確保するための動作試験を行った。
【0089】
実施例6
CSP-Aバージョンセパレータを備えたCSPセパレータを組み込んだ幾つかの5Ahポーチセルについてライフサイクル試験を行い、これらはコントロールポリマ(ポリオレフィン)(PE)セパレータセルと同等の性能を示した。この実施例における「CSP」ライフサイクル試験では、CSP-Aバージョンセパレータを備えたポーチセルを用いた。
【0090】
図17Aに示すように、16μmのCSPセパレータを備えた5Ahポーチセルは、16μmのPEセパレータを備えたセルとの対比において、約85%の容量保持率における1C充電/放電での3000回の充電/放電ライフサイクル試験で同等に機能した。
図17Bは、
図17AにおけるPEセパレータとの比較に対応する、異なる厚さの種々のCSP-Aのライフサイクル試験結果を示す。これらの図に示すように、全てのCSP-AセルはPEセルと同等に機能した。
【0091】
実施例7
種々の厚さのCSP-Aセパレータを組み込んだ5Ahポーチセルのレート能力を評価した。本実施例における「CSP」レート能力試験では、CSP-Aバージョンのセパレータを備えたポーチセルを用いた。
図18A~18Dに反映されるように、16ミクロンCSPセパレータを備えたセルは、0℃、25℃、及び45℃での2C放電レート(Cレート)まで、22ミクロンCSPセパレータを備えたセル及び16ミクロンPEセパレータを備えたセル(「コントロール」)より性能で上回っていた。例えば、16ミクロンCSPセル及び16ミクロンPEセルの25℃での2Cサイクリングに対する相対容量は、それぞれ91%及び89%であった。本実施例で示したように、CSP-Aセルは、満足がいく程度にはコントロールPEセルと同等の性能を発揮した。
【0092】
実施例8
CSPセパレータを組み込んだセルの種々の保存特性を評価した。28日間の保存試験では、20ミクロンCSPセパレータ(CSP-Aバージョン)を備えたセルを、16ミクロンPEセパレータ(「コントロール」)を組み込んだセルと比較した。
図19Aに示すように、CSPセパレータセルは、95%を僅かに下回る容量保持率のコントロールセルを上回る約96%の改善された容量保持率、及び保持一貫性(retention consistency)を呈した。対応して、CSPセパレータセルはまた、
図19Bに示すように、室温及び100%充電状態(「SOC」)での28日間の保存に対して約70mVの最小電圧降下において、より一貫性を示した。
【0093】
1年を超える環境条件での保存にわたる放電容量変化及び電圧変化についても、CSP-セパレータ(CSP-Aバージョン)セルを試験した。その結果を
図20A及び20Bに示す。
図20Aに示すように、CSP-Aセパレータセルは、1年経過の前と後でのC/3放電/充電サイクリングによって測定された放電容量により示されるように、1年の保存期間後に放電容量を保持していた。また、
図20Bに示すように、CSP-Aセパレータセルは、約3.7Vにて50%SOCで開始してから1年の保存期間後に50%SOCで約30~40mVの電圧降下しか示さなかった。
【0094】
実施例9
16ミクロンCSPセパレータ(CSP-Aバージョン)を組み込んだ5Ahポーチセルを、10秒間パルス抵抗法を用いて50%SOCで16ミクロンPEセパレータセル(「コントロール」)に対する放電抵抗について評価した。本実施例の放電抵抗試験では、CSP-Aバージョンのセパレータを備えたセルを用いた。
図21B及び21Cに示すように、CSPセパレータセルは、0℃でコントロールセルと同等の放電抵抗を示した。15℃~45℃の温度範囲では、CSP-Aセパレータセルは、
図21A及び21Cに反映されているように、僅かにより高い放電抵抗を呈した。
【0095】
実施例10
CCS、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びCSPセパレータ(CSP-Aバージョン)について、それぞれ熱機械分析(TMA)を実施した。両CCSサンプルは、片面セラミック塗工PE(CCS1)と両面セラミック塗工PE(CCS2)であった。本実施例において実施したTMAでは、CSP-Aバージョンのセパレータを用いた。
図22に示すように。CSPセパレータは220℃までの温度で収縮のない寸法安定性を示したのに対し、HDPE及びCSSの比較サンプルは全て、190℃未満のより低い温度範囲で20%以上の大きな寸法変化を呈した。
【0096】
VI.真空乾燥(CSP-A)
上述したように、本発明の例示的な実施形態によると、CSPセパレータセルは、ライフサイクル性能を改善するために、電解質充填の前に、例えば非密封のポーチ内において、昇温温度で真空乾燥されてよい。好ましい実施形態においては、セルは、電解質を充填する前に、約130℃~150℃で、又は加熱の温度及び時間がアノード、カソード、ポーチケーシング材料、又は乾燥セルの任意の他の部品を損傷又は劣化させない限り130℃を超える温度で、約1~4時間真空乾燥されてよい。
【0097】
実施例11
電解質充填前に未乾燥の、真空乾燥され、積層乾燥された(stack dried)CSPセパレータセルについて、ライフサイクル試験を実施した。本実施例において実施されたライフサイクル試験では、CSP-Aバージョンのセパレータを組み込んだセルを用いた。
図23に示すように、130℃で4時間真空乾燥されたセルは、約200回を超える1C充電/放電100%放電深度(DoD)サイクルで放電容量保持の顕著な改善を示し、2000回の1C充電/放電100%DoDサイクルの後では、非乾燥セルの放電容量保持が82%であったのに対して、放電容量保持が86%まで改善された。
【0098】
また、
図23B及び23Cに示すように、電解質充填前に130℃で4時間真空乾燥されたセル(ポーチケーシング内のCSP-Aバージョン)は、積層後でセルケーシング又は筐体、例えばポーチ内に置かれる前に乾燥された積層乾燥セルとの対比において、室温及び45℃の両方で1C/1C充電/放電サイクルに対して改善された放電容量を呈し、45℃、500サイクルでの92%容量保持、及び室温、1000サイクルでの93%容量保持からの推定では、約50%長いサイクルライフに改善された。積層真空乾燥セルと比較したポーチ真空乾燥セルのサイクルライフのこの改善は、室温及び45℃での2C/2C充電/放電サイクル試験によって確認された。その結果を
図23D及び23Dに示す。室温では、500サイクル後の積層セルの86%の容量保持と比較して、500サイクル後のポーチセルの容量保持は91%であった。45℃では、500サイクル後の積層セルの78%の容量保持と比較して、500サイクル後のポーチセルの容量保持は85%であった。
【0099】
CSP-B、CSP-B2、及びCSP-B3を備えた追加の実施例
表1を含めて上述したように、全セラミック自立型セパレータは、塗工混合物中のそれぞれのベーマイトグレードの比率を変えることによって形成されてよい。上述したCSP-B、CSP-B2、及びCSP-B3の比率を有する塗工混合物からのセパレータは、リチウムイオンセルでの使用に適した品質を呈するものとして示され、CSP-Aセパレータを備えたリチウムイオンセルについてここで説明した結果と同等であった。
【0100】
実施例12
CSP-A及びCSP-B(上述)バージョンのセパレータを備えたCSPセパレータセルについて、それぞれサイクリングレート能力試験を実施した。
図24は、20Cの放電レートまで23℃においてより高い放電レートでCSP-Aセパレータセルを上回るCSP-Bセパレータセルの改善されたサイクリングレート能力を示すグラフである。10Cの放電レートでは、CSP-Aセパレータの保持容量が平均で55%であったのに対し、CSP-Bセパレータの保持容量は平均で73%であった。
【0101】
対応して、CSP-A及びCSP-B(上述)バージョンのセパレータを備えたCSPセパレータセルについて、それぞれコールドクランクアンプ(cold crank amp)(CCA)測定試験を実施した。
図25は、CSP-Aセパレータセルを上回るCSP-Bセパレータセルの改善された結果を示すグラフプロットである。
図24に示し、また後述の
図33C及び33Dに更に詳細に反映されように、CSP-Aセパレータと比較したときに、より大きな平均粒子サイズ、より高い空気透過率(air permeability)、より高い多孔率を有するCSP-B(及び特にCSP-B2)セパレータは、高いレートでより低いインピーダンス及び改善された容量保持率を呈した。
【0102】
VII.真空乾燥(CSP-B2)
上述したように、本発明の例示的な実施形態によると、CSPセパレータセルは、ライフサイクル性能を改善するために、電解質充填の前に、例えば非密封のポーチ内において昇温温度で真空乾燥されてよい。例示的な実施形態では、自立型CSPセパレータ、又はロール形態のその前駆体もまた、機械的特性を改善するために、セル製造の前に真空乾燥されてよい。昇温温度での真空乾燥は、結晶化度、及び従って結果として得られる機械的特性に影響を与える。真空状態は、水分の除去にとって重要であり、おそらく残留NMP及びp-TSA等の他の揮発性物質にとっても重要である。また、最初の塗工及び乾燥プロセスは、ベーマイト又は他のセラミック粒子の存在下でPVdFバインダのアニーリングを提供することができ、その結果、セルの製造中に機械的特性の強化が期待される。
【0103】
好ましい実施形態においては、セパレータ(例えば、上述したフィルム415a及び415b)は、約130℃~150℃で約1時間~4時間真空乾燥されてよい。
【0104】
実施例13
ロール形態での真空乾燥の前と後の機械的特性について、20ミクロンのCSP-B2サンプルを試験した。
図26Aは、130℃で4時間の真空乾燥の前と後のそのようなサンプルのそれぞれの縦方向(MD)引張曲線を示す。選択的パラメータの結果を以下の表7にまとめてある。
【0105】
【0106】
図26A及び上掲の表7に反映されるように、CSPサンプルの物理的特性は、完成したロール形態で真空乾燥することにより改善された。最大引張応力は増加し、破壊エネルギ/靭性は増加し、ガーレー通気度数値は減少し、プロピレンカーボネート(PC)中での膨潤は減少した。引張応力数値は、非乾燥のCSP-B2セパレータと比較して、真空乾燥されたCSP-B2の方が約10%高かった。PCにおける膨潤測定は、10×10cmのセパレータ片を平らなガラスプレート上でPCに浸し、1時間の浸しの後に両エッジ上でMD方向(縦方向)及びCD方向(横方向)の%膨潤を測定し、4つの結果を平均化することによって行われる。PCに浸すと、有機カーボネート溶媒と約15重量%の濃度のリチウム塩とを含有する有機電解質に浸したときの%膨潤の推定値が得られる。有機電解質で濡らしたときの5%を超える膨潤等のセパレータの過度の膨潤は望ましくなく、セル製造の収率及び品質に問題を生じる可能性がある。CSP-B2セパレータに関するこれらの結果により、応力によりよく耐えるための機械的特性及び電解質膨潤特性の改善とセル製造プロセスに付随するセパレータ位置合わせ要件の改善とが確認される。
【0107】
実施例14
以下の表8にまとめてあるように、ベーマイト粒子の同じブレンド比並びに種々の顔料:バインダ比率及びセパレータ厚さを有するCSP-B2、CSP-B3、及び他のフィルムについて、追加の機械的試験を真空乾燥の前と後で実施した。その結果を
図26B~26Dに示す。
【0108】
【0109】
図26B及び26Cに示すように、全てのサンプルは、0.75インチ幅のセパレータサンプルでより高い最大引張荷重を呈し、初期の乾燥前状態(初期)と比較して、真空乾燥(VD)後の2300~3000psiの範囲の値に対して約20%~30%のより高い最大引張応力を呈した。これは、CSPの機械的強度にとって重要な利点である。
図26Dに示すように、幾つかのサンプルは、真空乾燥後の破断伸び(%)の僅かな減少を示したが、真空乾燥後も15%を超える、典型的には25%~40%の許容範囲内の伸びを有していた。
【0110】
実施例15
CSP-B2及びCSP-B3サンプルについて、種々のパラメータの下で追加の機械的試験を真空乾燥の前と後で実施した。
図26Eは、それぞれ130℃で3時間、150℃で1時間、及び150℃で3時間の真空乾燥の前と後での同じ領域におけるそのようなサンプルの等価重量を示している。CSP-B2サンプル(又は「G2r2」)は、より高い温度での真空乾燥後に等価重量の僅かな増加を示した一方で、CSP-B3サンプル(又は「G2r3」)も、真空乾燥後に重量の僅かな増加を示した。これらの重量の変化は非常に小さく、
図26Eにおけるデータの各バーに対して標準偏差バーで示すように、実験誤差の範囲内である。
図26Fは、真空乾燥前と後のサンプルの厚さを示す。
図26Fに示すように、CSP-B2サンプルは、短い1時間の真空乾燥期間の後に厚さの僅かな減少を示し、厚さは、より長い3時間の乾燥後にほぼ初期状態に戻った。対応して、CSP-B3サンプルは、より高い温度での真空乾燥後に厚さが僅かに減少した。ドーシーゲージ(Dorsey gauge)で測定された厚さのこれらの変化は、
図26Fのデータの各バーの標準偏差バーで示すように非常に小さく、実験誤差の範囲内である。最後に、
図26Gは、サンプルのガーレー通気度を示し、それらは真空乾燥後に顕著な変化を示さなかった。
図26Gは、ガーレー数値が約280秒/100cc空気であるCSP-B3(又は「G2r3」)が、ガーレー数値が約600秒/100ccであるCSP-B2(又は「G2r2」)よりも著しく低い通気度数値及び大きな空気透過率又は多孔率を有していることを示している。
【0111】
VIII.カレンダリング
本発明の例示的な実施形態によると、
図4を参照して上述したフィルム415a及び415bは、リチウムイオンセルにおける使用のための許容範囲にある機械的及び電気的特性を維持しつつ厚さを減少させるために、セル製造に先立ちカレンダリングを受けてよい。例示的な実施形態においては、フィルム415a及び415bは、ポリマ(例えばPET)フィルム基材に対して、上部ロールと下部ロールの間でカレンダリングされてよい。
【0112】
実施例16
CSP-Aフィルム、CSP-B2フィルム、及びCSP-B3フィルムのサンプルを上述したように製造し、剥離の前に切断して、CSP層をPET剥離基材上に残したまま最大で約12インチ幅で長さが約18~24インチのシートを提供し、底部ロールを加熱しながらカレンダリングを行った。
【0113】
サンプルは異なる構成でカレンダリングされた。「上(Up)」は、CSP側が上部の非加熱ロールに対向していたことを意味し、PETフィルム側は加熱された底部ロールに対向しており、これは逆に「下(Down)」である。
【0114】
最初の実験は、約110°Fから約140°Fに温められた底部ロールを用いて、約1500psi(又はリニアインチあたり約1250ポンド)の圧力で行った。
【0115】
サンプル(1)は、20ミクロンのCSP-B2、3.75ピグメン(pigmen)のバインダ(P:B)であった。サンプル(1)、(1)A、及び(1)Bは、「上」向きで1回通過のカレンダリングを受けた。開始時に20ミクロンのCSPは、約13~15ミクロンの厚さへのカレンダリングでより透明になったが、これは約30%の厚さの減少である。サンプル(1)Cはカレンダ機を2回通過し、2回目の通過は反対向きで行われた。厚さは2回目のカレンダリング通過によっては大幅には変化していないようであった。シートの幅全体にわたるカレンダリング圧力の不均一性に起因して、これらのサンプルの透明化は均一ではなく、片面はより透明であり、サンプルには部分的に透明で部分的に少し不透明な領域があった。
【0116】
サンプル(1)D及び(1)Eは20ミクロンのCSP-B2であり、「下」向きで実行された。これによる厚さの減少は「上」向きの場合と比較して小さく、厚さは16~17ミクロンまでしか減少なかった。サンプル(1)Fは2回通過であったが、CSP-B2の厚さを更に減らしてはいないようであった。
【0117】
サンプル(2)は、20ミクロンのCSP-B3、4.25:1のP:Bであった。サンプル(2)及び(2)Aは「上」向きで実行され、CSPの厚さは約16~17ミクロンになった。サンプル(2)Bでは、2回通過で厚さに大きな変化はなかった。サンプル(2)C及び(2)Dは「下」位置でカレンダリングされ、CSPの厚さは約17~18ミクロンになった。サンプル2(E)では、2回通過で厚さに大きな変化はなかった。
【0118】
サンプル(3)は12ミクロン(表9では10ミクロンと表示されている)のCSP-B2、3.75:1のP:Bであった。サンプル(3)及び(3)Aは「上」向きで実行され、CSPの厚さは約10ミクロンになった。サンプル(3)Bでは、2回通過で厚さに大きな変化はなかった。20ミクロンのCSPとは異なり、カレンダリング操作により所々に12ミクロン厚CSP塗工の多少の「剥がれ落ち(pickoff)」があった。これは、カレンダロールへのCSP層の接着よりはむしろ、より薄いCSPの摩耗及び裂けに起因しているものと思われた。サンプル(3)Bでは、2回通過で厚さに大きな変化はなかった。厚さ変化は、1回通過のサンプル(3)C及び3(D)並びに2回通過のサンプル(3)Eで変わらなかった。
【0119】
サンプル(4)は、厚さが約26~27ミクロンのCSP-A、3.75P:Bであった。サンプル(4)は、「上」向きでカレンダリングされ、厚さは約20~21ミクロンになった。
【0120】
サンプル(4)Aは、「下」向きでカレンダリングされ、厚さは約20~21ミクロンになった。
【0121】
次のカレンダリング実験は、750psiで行われた。これは約700pli(1リニアインチあたりのポンド)である。これによる透明化はそれほどではなかった。サンプル(1)Gは「上」向きでカレンダリングされ、CSPの厚さは16ミクロンになった。サンプル(1)Hは、「下」位置でカレンダリングされた。サンプル(2)F及び(2)Gは、それぞれ「上」向き及び「下」向きでカレンダリングされた。サンプル(3)F及び(3)Gは、それぞれ「上」向き及び「下」向きでカレンダリングされた。サンプル(4)B及び(4)Cは、それぞれ「上」向き及び「下」向きでカレンダリングされた。
【0122】
次いで、カレンダ機は、「ホット」カレンダリングのために250°F(その最大設定)に設定された。温度の読みは約280°Fであった。この温度は、ベースのPETフィルムを変形させることなくカレンダリングするには高すぎた。以下のサンプルを実行した。サンプル(1)l及び(1)Jは、「上」向きで1回通過のカレンダリングを受け、CSPの厚さは約14~15ミクロンになった。サンプル(1)Kでは、2回通過で厚さに大きな変化はなかった。他のサンプルを実行したが、全てPET基材に多少の歪みがあった。これは、カレンダロールの温度がこの一連の実験に対して高すぎる設定になっていたことを示している。
【0123】
上述したカレンダリング条件を以下の表9にまとめておく。
【0124】
【0125】
表9のサンプル(1、1A、1B、1C(2×)、及び1G)及び(2G)を機械的特性及び通気度(ガーレー)について試験した。その結果は
図27A~27Eに反映されている。
図27Aに示すように、サンプル(1、1A、1B、及び1C(2×))(CSP-B2又は「G2r2」PC3.75)は、
図27A~27Dの左端に示されるカレンダリングしていないサンプルであるコントロールサンプルと比較して、約10%大きい最大引張応力(≒2200psi)を呈した。また、
図27Aに示すように、サンプル2G(CSP-B3又は「G2r3」PC4.25)は、
図27A~Dの左から2番目に示されるカレンダリングしていないサンプルであるコントロールサンプルと比較して、約20%大きい約2000psiの最大引張応力を示した。サンプル(1B)及び(2G)(CSP-B3又は「G2r3」PC4.25)の両方とも、
図27Bに示すように、0.75インチ幅のサンプルと同等の最大引張荷重(≒0.5~0.55kg)を示した。ここで注目すべき重要な点は、カレンダリングされたサンプルは約5%~30%薄くなっているため、カレンダリングされていないサンプルと同等の引張荷重を依然としてもたらしつつ厚さの減少という大きな利点を有することである。
図27Cに示すように、サンプル(1、1A、1B、1C(2×)、及び1G)は、%伸びが約40%であるコントロールのカレンダリングされていないCSP-B2と比較して、破断伸びが約25%~40%であった。これらの結果は、CSP-B2の伸び及び柔軟性がカレンダリングによってはそれほど低下しないことを示している。
図27Cに示すように、CSP-B3のサンプル2Gは、破断伸びが約15%であった。これはカレンダリングされていないコントロールCSP-B3サンプルの伸びと同等である。サンプル(1、1A、1B、1C(2×)、及び1G)及び(2G)の両方とも、コントロールサンプルと比較して、比較的高いガーレー通気度数値を示した。
図27Dは、CSPサンプル間の相対的なガーレー通気度数値をより詳細に示している。高レベルのカレンダリング後のこれらのより高いガーレー通気度数値は、電解質がCSPをカレンダリング前の元の状態に膨潤させることによるイオン伝導率の対応する低下をもたらすとは予想されない。これらのカレンダリングの結果は、カレンダリングが、セパレータのより高い機械的強度とより高い%多孔率との間のトレードオフを最適化するための別の有用な選択肢を提供することを示している。例えば、CSP-B3はCSP-B2よりも機械的強度が低く多孔率が高いが、CSP-B3(又は更に高い顔料:バインダ比だが機械的強度が低いバージョン)は、良好な多孔性及びイオン導電性を維持しつつ、カレンダリングにより機械的により強固に作製することができる。
【0126】
図27Eは、種々のCSP-A(20ミクロン厚)、CSP-B2(12及び20ミクロン厚)、及びCSP-B3(20ミクロン厚)のサンプルのプログレッシブ圧縮(progressive compressions)に対するガーレー通気度を示す。
図27Eに示すように、カレンダリングによる10%圧縮では、CSP-Aのガーレー数値はカレンダリング前の値よりも約8倍高かった。10%圧縮におけるCSP-B2及びCSP-B3の20ミクロン厚サンプルでは、カレンダリングに際してのガーレー数値の増加は約1.5倍以下であった。このことは、より高い多孔率及びより低いガーレー数値のCSP-B2及びCSP-B3セパレータの、大きくてより小さなグレードのベーマイト粒子のブレンドでの設計は、CSP-Aセパレータ設計よりも良好に、カレンダリングにより機械的強度を高めること、及びセパレータのエッジ領域を圧縮することによりエッジ補強及び強度を提供することに役立つという証拠を裏付けている。
【0127】
IX.架橋
本発明の例示的な実施形態によると、得られるセパレータの機械的特性を高めるために、セル製造に先立ち、架橋塗工材料をCSPフィルム、例えば上述したフィルム415a及び415bに適用してよい。架橋塗工物は、ポリアジリジン架橋剤、イソシアネート架橋剤等であってよい。
【0128】
実施例17
CSP-A及びCSP-B2の塗工混合物に組み込まれた二官能性及び三官能性イソシアネート架橋剤を適用したCSPフィルム(CSP-A及びCSP-B2)のサンプルを、機械的特性について試験した。
【0129】
ベースライン配合(CSP-Aバージョン)としてソレフ(登録商標)5130(Solef(登録商標) 5130)と共にCSPを3.5:1で用い、テラキュア(登録商標)N33(Teracure(登録商標) N33)(デスモジュール(登録商標)N3300(Desmodur(登録商標) N3300))(三官能性)及びデスモジュール(登録商標)W(二官能性)をそれぞれ0.375phr(樹脂100部あたり(per hundred parts resin))及び0.75phrの負荷で利用した。
【0130】
サンプルは、剥離塗工されたSR2/SKC スカイロール(登録商標)SH-400 PET(SR2 / SKC Skyrol(登録商標) SH-400 PET)ライナ基材上に20ミクロンの目標乾燥塗工厚さで塗工した。乾燥条件は、400°Fで約2分間及びライン速度5.5fpm(フィート/分)であった。各セクションの一部分に、同じ乾燥条件下でのコーターの2回通過をさせた。
【0131】
図28A~28Dは、それぞれ、架橋剤塗工サンプルの最大引張応力(
図28A)、%破断伸び(
図28B)、「靭性」(
図28C)、及びガーレー通気度(
図28D)を示し、加えてこれらの図の左側に示す三官能性イソシアネート架橋剤で塗工されたサンプルの結果をその対応する架橋剤分子と共に示し、またこれらの図の右側に示す二官能性イソシアネート架橋剤で塗工されたサンプルの結果をその対応する架橋剤分子と共に示している。
図28Cに示す「靭性」、即ち破断を生じさせるのに必要な単位体積あたりのエネルギは、それぞれのサンプルの応力-歪曲線の下で積分面積によって表される。
図28A~28Dは、それらのそれぞれのx軸上での架橋剤レベル/コーター通過回数(1又は2)によるサンプルの結果を示す。
図28Aに示すように、添加剤レベルと1回又は2回の通過の両方で、三官能性架橋剤は、架橋剤なしでコーター及びそのオーブンを1回又は2回通過させた場合の約1500psiの引張応力値に対して有意な変化をもたらさなかった。対照的に、二官能性架橋剤は、より低い添加剤レベルでコーターオーブンを2回通過させた場合又は2倍の添加剤レベルで1回通過させた場合に、引張応力値が約1600psiまで増加した。2倍の添加剤レベルでコーターオーブンを2回通過させることにより、引張応力値は約1720psiまで更に増加した。
【0132】
図28A~28D(左側)に示すように、三官能架橋剤(デスモジュール(登録商標)N3300)サンプルは、引張強度の有意な増加を示しておらず、伸び/延性は架橋剤の負荷に伴い低下した。対応して、二官能性架橋剤サンプルは、三官能性架橋剤サンプルとの対比において、架橋剤の負荷による引張強度のより顕著な増加を示し、負荷に伴う伸びのより低レベルへの低下を示した。更に、追加の加熱(コーターの2回目の通過)により、二官能性架橋剤を伴うこれらのセクションで伸び/靭性が明確に増加した。例えば、0.75phrの架橋剤及びコーターオーブンの2回通過での%破断伸びは、約25%であり、架橋剤なしのコントロールCSP-B2と変わらなかった。また、架橋剤の負荷及び追加の乾燥は、いずれかの架橋剤についてガーレー通気度数値への影響が最小限であった。
【0133】
これらの結果は、標準のCSPセパレータ、即ち架橋剤を伴わない3.5:1の顔料バインダ(P:B)比のCSPセパレータの機械的特性が、二官能性架橋剤を伴う4.0:1の顔料:バインダ比を用いた場合と同等である一方で、非常に低いガーレー値及び、おそらく、より高い多孔率も達成しているであろうことを暗示している。
【0134】
実施例18
また、以下の化学式のデスモジュール(登録商標)REシリーズ架橋剤で塗工されたCSP-B2(又は「G2r2」)サンプルを試験のために調製した。
【化1】
【0135】
図29A~29Cは、サンプルの機械的試験結果を示す。
図29A及び29Bに示すように、PVdFバインダ上の0phrからPVdFバインダの6phrまでの範囲にわたって、サンプルは、得られたフィルムの初期引張強度の単調増加を示した。
図29Bは、CSP-B2(又は「G2r2」)の引張応力が、約130kg/cm
2から架橋剤の2phr負荷で約145kg/cm
2まで、架橋剤の4phr負荷で約150kg/cm
2まで、架橋剤の6phr負荷で約160kg/cm
2まで増加することを示している。一方、
図29Cは、2phr負荷で約32%の破断伸びの最大値を示しており、これは「靭性」の最適化における1つの要因としての負荷であることを暗示しており、即ち上述した引張応力と延性/破断伸びの組み合わせである。
【0136】
延性の低下は、RE架橋剤のより高い負荷に伴うシステムの脆弱性の増大(ポリマの架橋に際して一般的)又は追加の「点欠陥」、例えば、ゲル又はベーマイトの凝集体の導入に関連付けられる場合がある。同時に、
図29Cに示すように、6phr負荷での約18%の伸びは、架橋剤なしのCSP-B2の%破断伸び24%を僅かに下回るにすぎず、4phr負荷も約24%で有意差を示していない。
【0137】
実施例19
ポリアジリジン架橋剤(PZ-33-ペンタエリスリトールトリス(3-(1-アジリジニル)プロピオネート)又はPZ-28-トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート))で塗工されたCSP-Aサンプルを調製し、機械的特性を試験した。その結果を
図30A~30Cに示す。これらの図に示すように、サンプルは、ガーレー通気度数値への最小限の影響で「靭性」の改善を示した。ポリアジリジン架橋剤の0.5phr及び1phrでの添加により、
図30Aに示すように、架橋剤なしのCSP-Aセパレータの引張応力が1540psiからそれぞれ1650psi及び1700psiまで増加し、また
図30Bに示すように、架橋剤なしのCSP-Aセパレータの破断伸びが20%からそれぞれ34%及び38%まで増加した。
【0138】
X.エッジ補強
本発明の例示的な実施形態によると、CSPフィルム、例えば上述したフィルム415a及び415bのエッジを補強し、引き裂き抵抗及び機械的強度特性を改善するために、後続のスリッティングを行って所望幅でCSPロールを提供すべき狭いレーンにおいて、あるいはCSPがあるサイズにスリッティングされた後でセル製造の前に、エッジ補強塗工がCSPフィルムに適用されてよい。エッジ塗工物は、UV硬化材料、化学的に架橋された材料、強固で柔軟なポリマ材料等であってよい。追加的な引き裂き抵抗及び機械的強度のために、このエッジ塗工は、スリッティング前又はスリッティング後のいずれかにおけるエッジ領域でのCSPの圧縮と組み合わされてもよい。
【0139】
実施例20
ポリエチレングリコールジアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート(72:25)ブレンドを、種々の固体のMEK(メチルエチルケトン)溶液と共に、#3マイヤーロッド(#3 Mayer rod)を用いて種々の塗工付着重量で「標準」CSP-Aサンプルに適用した。試験目的で、スリッティング後のエッジ補強レーンを提供するために狭いレーンで塗工するのではなく、サンプルに完全被覆率で塗工した。オリゴマー/モノマーブレンドがMEKからの溶液として適用されたが、塗工は100%NVで適用されてもよい。この実験ではMEK溶液を用いて、塗工の付着重量及び基材の濡れ性を確実に制御した。塗工物をオーブン内において100℃で60秒間乾燥して、MEKを除去した。次いで、結果として得られた塗工されたセパレータに、フュージョンUVシステム(Hバルブ、20ipm)(Fusion UV system (H bulb, 20 ipm))の1回通過をさせた。各塗工サンプルから、100cm2のサンプルを1つ取り、基本重量(質量/面積)及び厚さ(4X/サンプル)を測定した。
【0140】
図31A及び31Bは、それぞれサンプルの塗工固形分(%NV)に対する基本重量及び厚さを示す。
図31Aに示すように、予想どおり、塗工固形分が増加すると基本重量も最大で8グラム/平方メートル(gsm)増加した。しかし、
図31Bに示すように、用いた配合の範囲(付着のために#3ロッドを使用)にわたり厚さは塗工固形分に従って増加することはなかった。これは、塗工物がセパレータの細孔に望まれたように吸収されたことを暗示している。換言すると、試験は、セパレータの厚さプロファイルに大きく影響することなくセパレータエッジの引き裂き抵抗及び機械的強度特性を改善することが実現可能であろうことを示した。エッジ上のより多くの材料の積み重ねによりエッジでの厚さが増加したとすると、積み重ねられ、より厚くなり、場合によっては割れて損傷したエッジとなることなしに500メートル以上の長いスリッティングされたセパレータロールに巻き上げる能力が悪影響を受けることになる。
【0141】
実施例21
放射線硬化型配合物(PEGDA/エトキシル化TMPTA、75:25、MEK中で種々の%V[20%~40%])を「標準」CSP-A(P:B=3.5:1、20ミクロン)サンプル上に完全被覆率で塗工することによって、エッジ補強塗工について追加の試験を実施した。その後、サンプルを熱乾燥(120秒@110℃)及びUV硬化(フュージョンユニット、20ipmを1回通過)させた。
【0142】
図31Bに対応して
図31Cに示すように、厚さは塗工重量に従って増加することはなかった。これは、UV硬化塗工物が細孔に吸収されて細孔内でUV硬化していたことを暗示している。また、より高い塗工重量での厚さ測定値は、6gsmで約19.5ミクロンから19.0ミクロンへの僅かな厚さの減少、おそらくは重合に際しての化学物質の収縮に伴うセパレータの僅かな「緻密化」を示唆した。
【0143】
図31Dは、ガーレー通気度数値が塗工重量の増加に伴って著しく増加したが、この増加は2gsmを超える塗工までは顕著にならなかったことを示している。セパレータの片方又は両方のエッジ上の2~4ミクロン等の補強エッジの狭いレーンは、全て又は殆どがセルの活性電極及び電解質の積層物の外側にあるので、エッジ補強領域は、リチウムイオンがサイクリングに際して当該領域を通って拡散することができるように多孔性である必要はない。このように、セパレータのこれらの領域が強固な補強材料で完全に充填されていれば、セル性能は許容範囲内にあり、実際、これらのエッジ領域はセル積層物のエッジで自立していることが多く、ケーシングからの応力やセル組み立てに際しての応力にさらされるので、望ましくは可能な限り強固で柔軟である必要がある。
図31Eは、破断時の引張応力が補強塗工重量の増加に伴い僅かに減少したことを示しているが、
図31Fに反映されるように、補強化学薬品の添加により弾性が劇的に向上し、破断時の約10%の伸びから1.5phrのかなり低い付着レベルで約30%の最大値にまでなっている。
図31Gは、それぞれ約2.3mN/ミクロン及び約2.1mN/ミクロンのエッジ補強塗工を伴う(「NP16飽和」)及び伴わない(「NP16」)16ミクロンCSP-Aサンプルのノッチなし引き裂き抵抗を示す。
図31Gに示すように、塗工サンプルは引き裂き抵抗の顕著な改善を示した。
【0144】
ここで注目すべき極めて重要な点は次の通りである。即ち、CSPのエッジ補強層は、幅が約2~4mmである必要があるだけであり、従って、絶縁性の高いセパレータがない場合の短絡から保護するためにセパレータはリチウムイオン電池の電極より広いので、これらのエッジは電極領域の外側にあることになる。このため、CSPのこれらのエッジ領域が更なる機械的強度のために強化材料で部分的又は完全に充填されている場合、セルのエネルギ容量及びサイクリングへの影響は全く又は殆どない。また、これらのエッジがCSPの残部よりも厚いと、場合によっては長さが2,000メートルにまでなるCSPのスリッティングされたロールを巻き上げる場合に問題になるので、これらのエッジがCSPの残部よりも厚くないことが重要である。上記の結果は、エッジ上で厚さを増加させることなくエッジ補強材料を高多孔性CSP層内に吸収できることを示している。
【0145】
XI.非膨潤層
上述したように、自立型CSPセパレータを形成するためのバインダ材料としてPVdFを用いてよい。PVdFの望ましい特徴の1つは、リチウムイオンセル及びリチウム金属セルにおける5Vまでの安定性である。但し、ソレフ(登録商標)5140等の極めて高い分子量のPVdFは、電解質溶媒中で約20%~50%膨潤し、これは電解質の湿潤及びインピーダンスの低下には有利である場合があるが、CSPセパレータの膨潤が結果として大きくなりすぎる可能性がある。CSPにおける無機材料は、PVdFの膨潤をある程度は低減する。有機電解質の存在下で有機ポリマ及びセパレータが数パーセント膨潤する可能性がある電気化学セルにおいて無機/有機複合セパレータの過剰な膨潤を回避するために、1つ以上の非膨潤多孔質層を複合セパレータに追加して膨潤を許容範囲のレベルまで低減してよい。この多層アプローチには、(1)単一のセパレータ層からピンホールが生じにくい多層のセパレータ層にすることによりピンホールの可能性を低減すること、及び(2)安全シャットダウン、遷移金属イオンの泳動の阻害、及び機械的強度の増大等の他の有用な特性を有してよい非膨潤層を提供することの利点もある。1つ以上の非膨潤層は、無機酸化物、無機窒化物等によって形成されてよく、水又はプロピレンカーボネート等の他の溶媒に不溶性であってよいポリマ、例えば、プロピレンカーボネートに不溶性でプロピレンカーボネート中で膨潤しないポリビニルアルコール(PVA)等を備えていてよい。別の例としては、ポリマは、ルミフロン(登録商標)及びジョンクリル(登録商標)(Lumiflon(登録商標) and Joncryl(登録商標))の商品名での製品等、直径約150nmの水不溶性ポリマラテックス粒子を有していてよい。上述したように、CSPセパレータの1つ以上の層は、ポリマ粒子と反応する架橋剤を備えていてよい。
【0146】
例示的な実施形態においては、1つ以上の非膨潤層は、両面の無機/有機複合層の間にあってよく、即ち「サンドイッチ」構成であってよい。これによる利点は、電極の1つにおける表面との直接的な相互作用から中間の非膨潤層を保護して、セルにおいてより優れた一貫性及び長期性能が提供される点である。他の構成を用いて、1つ以上の非膨潤層を組み込んでもよく、例えば、
(1)1つの非膨潤層と1つのPVdF膨潤層とを組み込んでよく、
(2)PVdF膨潤層の両面上にそれぞれ非膨潤層を設けてよく、
(3)中央に非膨潤層を伴って共に積層された2つのCSP層を設けてよく、
(4)セパレータが後でスリッティングされるレーンに対して追加の圧縮又はカレンダリングを行うことにより上記の構成(1)、(2)、及び(3)に対してエッジ強化レーンを追加してよい。
【0147】
本発明の例示的な実施形態においては、上述したように1つ以上の非膨潤層を組み込んだCSPセパレータは、プロピレンカーボネート又は有機電解質に1時間浸したときに、約3%~4%の、又は好ましくは1%未満~2%の、又はより好ましくは0.5%未満の減少した膨潤を有していてよい。電解質が加えられたときにセパレータが金属ケース内で非常に制約される円筒型又は金属製角柱型セルに対して膨潤許容度は増加してよい一方で、膨潤の低減による利益は、ケースが金属化プラスチックであるポーチセルに対して、より顕著であってよい。
【0148】
実施例22
ポリアミド(エルバミド(登録商標)8063(Elvamide(登録商標) 8063))/ポリビニルブチラール(バトバー(登録商標)B-98(Butvar(登録商標) B-98))ブレンドの非溶媒誘起相反転(non-solvent induced phase inversion)によって、非膨潤微孔質層のサンプルを形成した。種々のブレンドの7ミクロン厚非膨潤層を2つの3.5ミクロン厚CSP-B2層の間に積層した。
【0149】
図32Aは、非膨潤多孔質層及びCSP-B2(「CSP」)層の層構造の断面図を示しており、CSP層は、中心に非膨潤多孔質層を備えたセパレータの両面上にある。
図32Bは、得られた積層物サンプルのガーレー通気度数値と非膨潤層ブレンドの重量分率との間の関係を示すグラフである。対応して、
図32Cは、積層物サンプルの%膨潤率と非膨潤層ブレンドの重量分率との間の関係を示すグラフである。低いガーレー数値は、非膨潤ポリマブレンド中のE-8063ポリアミドの重量分率0.7まで維持されている。これらの図に示すように、相反転法によって作製された非膨潤層は、非水電解質の溶媒の代表であるプロピレンカーボネート中での膨潤を低減するのに効果的であったし、結果としてガーレー通気度数値は200秒/100ccを僅かに下回った。
【0150】
実施例23
対応するCSP-非膨潤層-CSP構造を有するサンプルを膨潤について別々に試験した。カールソンら(Carlson, et al)への米国特許第8,883,354号の実施例1の第4段落に従って作製された、11部のエチレンカーボネート、6部のトリエチレングリコールのジビニルエーテル(DVE-3)、及び3部のポリエチレンオキシド(分子量200)を備えた約16ミクロン厚のポリビニルアルコール(PVA)-ベーマイト層が、厚さが約11ミクロンの2つのCSP-B2層の間に積層された非膨潤層として機能した。
【0151】
積層物の得られた特性を以下の表10にまとめてある。
【0152】
【0153】
上記表10に示すように、積層物は、プロピレンカーボネートに1時間浸した後0.5%未満の膨潤を示した。このように、溶媒膨潤性であるが強固且つ柔軟で高温でもリチウムイオン電池において非常に安定且つ安全であるCSPのバージョンを非膨潤性であるが伸びの小さい層に積層して正味の膨潤を低下させることの有効性が確認された。サンプルはCSP-B2セパレータに比べて引張強度の正味の低下と伸び/延性の低下を呈したが、これは、非膨潤層の組成におけるより良好な伸び/延性のための調整により、難燃性PVdFポリマバインダを備えたCSP-A、CSP-B、CSP-B2、及びCSP-B3についてここで説明したような溶媒膨潤性で高い安全性のCSPのバージョンのより高い破断前伸びに対してより良く整合するように改善され得る。ガーレー通気度数値に対する正味の影響は無視することができた(20ミクロンに一旦正規化)。
【0154】
実施例24
CSP-Bブレンド比率及びCSP-B2ブレンド比率に従って形成されたセパレータのサンプルを、CSP-A塗工混合物ブレンド比率で形成されたサンプルに対して評価した。
【0155】
図33Aは、3つのセパレータバージョンCSP-A、CSP-B、及びCSP-B2のサンプルの最大引張強度(psi)結果を示す図である。
図33Aに示すように、CSP-B2サンプルは、バインダを少なく用いたにもかかわらず(CSP-B2の3.75:1のP:B対CSP-Aの3.5:1のP:B)、CSP-Aと比較して2000Psiで約10%の機械的強度の増加をもたらした一方で、以下に詳述するように、他の特性のバランスを考慮すると、CSP-Bバージョンに対して許容範囲内のレードオフを呈した。
【0156】
図33Bは、3つのセパレータバージョンCSP-A、CSP-B、及びCSP-B2のサンプルの%破断伸びを示す図である。
図33Bに示すように、CSP-B2サンプルは、約30%の伸びを伴うSP-Aと比較して、約25%の僅かに低い伸びを示した。
【0157】
図33C及び33Dは、3つのセパレータバージョンCSP-A、CSP-B、及びCSP-B2のサンプルのガーレー通気度数値とセパレータインピーダンスをそれぞれ示している。
【0158】
CSP-B2セパレータは、CSP-Bセパレータと極めて近い機械的強度を維持しつつ、CSP-Aに対する1050秒/100cc及びCSP-Bに対する900秒/100ccのガーレー通気度数値と比較して、約550秒/100ccへの有意な減少を示した。CSP-Bセパレータは、
図33A及び33Bに反映されるように、CSP-Aと比較して機械的強度の実質的な改善を示した一方で、僅かに低いガーレー通気度数値を有しているにもかかわらず、
図33Dに示すように、より高いインピーダンスを示した。結果的に、CSP-B2サンプルは、許容範囲内の機械的特性を維持しつつ、ガーレー値(
図33C)のかなり大きな減少と共に、セパレータインピーダンスをCSP-Aのそれから約25%低下させる望ましい改善をもたらした。
【0159】
図33Eは、3つのセパレータバージョンCSP-A、CSP-B、及びCSP-B2のサンプルの線形寸法変化(膨潤特性)を示している。
図33Eに示すように、CSP-Bサンプルは、約6.5%の%膨潤を伴うCSP-Aと比較して、プロピレンカーボネート中で約3.3%までセパレータ膨潤の大幅な減少を示した。対応して、細孔径が更に大きくPVdFバインダが少ないCSP-B2バージョンでは、CSP-Bと比較して約3.0%の僅かに低い膨潤で更なる改善が得られた。
【0160】
上記で示したように、CSP-B2ブレンドは、CSP-Aセパレータよりもガーレー値、セパレータインピーダンス、及び膨潤特性を大幅に低下させつつ、機械的強度が約2,000psiに改善されたセパレータをもたらした。結果の要約を以下の表11に更に示す。
【0161】
【0162】
XII.抽出
上述したように、塗工混合物ブレンド中の1つ以上のセラミック成分は、例えばp-トルエンスルホン酸で表面処理されて、セル性能を低下させる可能性のある低分子量種及び潜在的に泳動性の成分をもたらすことがある分散剤を用いる代わりに、有機溶媒中での分散を促進し得る。更に、上述したように、架橋剤を適用すること、つまり主要セパレータ成分(ベーマイト及びPVdFバインダ等)に化学結合により完全に「結合」し得ない低分子量添加物を添加することは、CSPの機械的特性及び/又は電気化学的特性の更なる改善のための多くの選択肢の1つである。
【0163】
上記で更に説明したように、デスモジュール(登録商標)REは、試験において、CSPセパレータにおける約1%~6%w/wのPVdFポリマバインダの負荷レベル(即ち非常に低い全体負荷)で改善された機械的特性を示した架橋剤の一例である。この例では、結果として得られるセパレータ塗工は、特徴的なピンクパープル色である(架橋剤の負荷及び光への暴露に依存する)。懸念の原因の1つは、この特徴的な色が電解質溶媒にさらされたときにセパレータから容易に浸出してしまうことである。そこで、抽出試験を行って、溶剤にさらされたときの有益な機械的特性の維持を確認した。
【0164】
実施例25
アルコール水溶液を用いた改質CSP-A乾燥セパレータ(D10SR/D10F4 50:50、S5140、2%RE)の抽出を、水/IPA(イソプロピルアルコール)(50:50)浴中で60分にわたって行った。続いて、抽出したサンプル及びコントロールサンプルを100℃で60分間乾燥させた。
【0165】
図34Aは、架橋された「初期」サンプルと「抽出」サンプルとの間の異なる着色を示す写真であり、水/アルコール抽出が、RE改質CSP塗工物から殆どの「色」を除去していることを示している。
【0166】
図34Bは、それぞれのサンプルの代表的な引張曲線のグラフであり、抽出による僅かな引張強度の改善を反映している。これらの結果は、
図34C及び34Dに示す最大引張荷重及び最大引張応力によって確認される。
【0167】
図34Eに示すように、伸び/延性は、抽出後に変化しなかった。
図34Fに示すように、ガーレー値は僅かだが統計的に有意な低下を示した。
【0168】
要約すると、CCSセパレータと比較して改善された安全性、熱安定性、及び熱伝導特性を備えた自立型CSPセパレータが提供される。本発明のCSPの追加された熱安定性は、CSP、CSPを伴う電極のセル積層物、及びCSPを備えた乾燥セルの、CCSでは可能ではない130℃~150℃等の高温真空乾燥を可能にする。この高温真空乾燥により、結果として、セルのサイクルライフ、レート能力、及びセルの保存安定性が向上する。極めて重要な点は、CSPが、ARC及び釘刺し試験方法によってセルで試験されたときに、CCSと比較して優れた安全性結果を示すことである。
【0169】
本発明の自立型CSPセパレータは、優れた伸び/延性並びにより高いイオン伝導率及びレート能力を提供しつつ、特により高い機械的強度において、従来のCSPセパレータよりも改善された性能を有する。本発明のCSPセパレータの改善された性能を得るための多くのプロセス及び材料の選択肢がここに説明されており、これらの選択肢は、限定はされないが、セラミック粒子の特定のブレンド並びにこれらのブレンドを伴うCSP塗工のための混合及び濾過のプロセスの使用と、好ましい官能性及び分子量を伴うソレフ(登録商標)5130及びソレフ(登録商標)5140等の官能化PVdFの使用と、電解質中のCSPの膨潤を低減するための異なる非膨潤多孔質層の使用と、CSP及びCSPを備えた乾燥セルの両方に対する高温での真空乾燥と、スリットエッジ上でのエッジ補強材料の使用と、CSP層における架橋剤の使用と、CSPに対するカレンダリングプロセスの使用と、可溶性材料を除去するための溶媒/水抽出の使用と、シャットダウン層の追加と、これらの組み合わせと、を含む。
【0170】
以上、本発明の種々の実施形態が示され、詳細に説明されてきたので、それに対する種々の修正及び改良が、当業者には容易に明らかになるはずである。従って、本発明の精神及び範囲は、明細書によって限定されることなく、広く解釈されるべきである。