(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082061
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】試料表面を撮像するための方法および機器
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230606BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230606BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/64 E
G01N21/65
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023050447
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019545275の分割
【原出願日】2018-02-22
(31)【優先権主張番号】102017203492.0
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】62/466,691
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512182197
【氏名又は名称】ウィテック ウイッセンシャフトリッヒエ インストルメンテ ウント テヒノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スピツィーク ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ホリリヒャー オラフ
(72)【発明者】
【氏名】イバッハ ヴォルフラム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トポグラフィを有する試料の表面を、共焦点顕微鏡法としての共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法を用いて撮像する方法であって、ラマン散乱光および/または蛍光のための励起放射を生成するために使用される機器としての第1のレーザ光源、および、第1の光源とは独立に制御可能な焦点位置を有する第2の機器としての第2のレーザ光源またはスーパールミネセントダイオード(SLED)が準備される方法に関する。
【解決手段】第1の光源が第1の波長範囲の光を放射し、第2の光源が第2の波長範囲の光を放射し、第1および第2の光源の第1および第2の波長範囲が重ならず、第2の光源の焦点面が、別個に制御可能な焦点位置によって、試料の表面内/上に、第2の光源の焦点位置の信号を用いて試料のトポグラフィが確立されるように、移動させられ、および/または、試料が、この信号のために、第1の光源の焦点面内に移動させられる。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トポグラフィを有するサンプルの表面を、共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法によってイメージングする方法であって、ラマン散乱光および/または蛍光のための励起放射を生成するための第1の光源、並びに、第2の光源が準備され、
- 前記第1の光源は、第1の波長範囲内の光を放射し、前記第1の波長範囲の限界は、調査される前記サンプルの放射される発光スペクトルおよび/またはラマンスペクトルの限界によって定められ、
- 前記第1の光源からの光は、光学系によって前記サンプルの上に差し向けられ、
- 前記第2の光源は、第2の波長範囲内の光を放射し、前記第2の波長範囲は、前記第1の波長範囲と重なることなく前記第1の波長範囲の上または下にあり、
- 前記光学系および200Hz~800Hzまたは50kHz~1MHzの周波数で周期的に励磁される電気的合焦可能レンズを伴う前記第2の光源の光は、前記サンプルの表面上にもたらされ、結果として周期的な焦点が得られ、それにより、
- 前記サンプルの前記トポグラフィは、前記第2の光源の焦点面の信号、および、制御/調整機器を用いて検出された前記第2の光源の検出光から決定され、前記第1の光源の焦点は、この信号に基づき前記光学系によって追跡されかつ前記サンプルに適用され、前記第2の光源の周期的な焦点の変調範囲は、前記信号に基づき前記光学系によって追跡される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の光源の前記焦点面内への導入は、顕微鏡対物レンズとサンプルとの間の距離を変えることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の光源からの光は、同じ顕微鏡対物レンズを通して誘導されることを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の光源の焦点面は周期的に変化させられ、前記サンプルの前記トポグラフィは、前記サンプルの前記表面において、前記第2の光源の反射された光および/または散乱された光の強度の極大の時間的推移から決定されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記周期的に励磁される電気的合焦可能レンズは、焦点距離が電圧の印加によりまたは電流によって制御される電気的合焦可能レンズであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
顕微鏡対物レンズとサンプルとの間の距離の変化は、前記サンプルを前記顕微鏡の光軸の方向に移動させることによって達成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の機器、ラマン散乱光および/または蛍光のための励起放射を生成するための第1の光源は、前記第2の機器、前記第2の光源と同時に放射、光を放射することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の光源によって励起されたラマン散乱光および/または蛍光の測定、および、前記第2の光源による前記サンプルの前記トポグラフィの測定は、実質的に同時に起こることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の光源は、第1の焦点サイズを有する第1の焦点を備え、前記第2の光源は、第2の焦点サイズを有する第2の焦点を備え、前記第1および第2の焦点サイズは実質的に同一であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
トポグラフィを有するサンプルの表面を、共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法によってイメージングするための機器(1)であり、
ラマン散乱光および/または蛍光のための第1の光源、および第2の光源を備える、機器(1)であって、
- 前記第1の光源は第1の波長範囲の光を放射し、前記第1の波長範囲の限界は、調査される前記サンプルの放射される発光スペクトルおよび/またはラマンスペクトルの限界によって定められ、
- 前記第2の光源は第2の波長範囲の放射を放射し、前記第2の波長範囲は、前記第1の波長範囲と重なることなく前記第1の波長範囲の上または下にあり、
- 前記第1の光源および前記第2の光源からの光は、同じ光学系を通して誘導され、
- 前記機器は、前記第2の光源の焦点面を前記サンプルの表面内/上にもたらすための、200Hz~800Hzの周波数で周期的に励磁される電気的合焦可能レンズ、並びに、
前記第2の光源の前記焦点面の信号から前記サンプルのトポグラフィを決定し、この信号および前記第2の光源の検出された光に基づいて、前記サンプルを前記第1の光源の焦点面内に移動させる制御/調整機器、を備える、
ことを特徴とする、機器。
【請求項11】
前記機器は、
共焦点ラマン顕微鏡、
共焦点蛍光顕微鏡、
共焦点ラマン/蛍光顕微鏡、
のうちの1つであることを特徴とする、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記機器は、共焦点ラマン顕微鏡および/または蛍光顕微鏡であり、前記第1の光源を用いて前記サンプル内で光放射が励起され、前記機器は、放射されたラマンおよび/または蛍光の光子を検出するための検出器を備えることを特徴とする、請求項11に記載の機器。
【請求項13】
前記共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡は、対物レンズ(2029)を備え、それにより、前記第1および/または第2の光源の光が前記サンプル上に集束されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
前記第1の波長範囲は、350nm~1000nmの波長を含み、前記第2の波長範囲は、1000nm~2000nmの波長を含むことを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
前記機器は、昇降式テーブルおよび/またはピエゾ素子を有するテーブルを備えることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の機器。
【請求項16】
多孔性および/または粗いサンプルのラマンおよび/または蛍光信号の高分解能測定のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項17】
熱的および/または機械的ドリフトを伴うサンプルのラマンおよび/または蛍光信号の測定のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項18】
乾燥するサンプルまたは蒸発する液体のラマンおよび/または蛍光信号の測定のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項19】
サンプルのラマンおよび/または蛍光信号並びに表面トポグラフィの同時測定のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面、特にトポグラフィを有する試料の表面を、共焦点顕微鏡法を用いて表面の多数の領域を走査することによって撮像するための方法および機器に関する。共焦点顕微鏡法においては、表面の領域の共焦点像が結像面内に配置された検出器によって生成される。具体的には、本発明は、いわゆる共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡、或いは、共焦点蛍光および/またはラマン顕微鏡法のための機器に関するが、それらに限定されない。
【0002】
表面、具体的にはトポグラフィを有する試料の表面を撮像する方法に加えて、共焦点顕微鏡法或いは共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法を用いる、試料を撮像するための機器がさらに説明される。ラマン測定または蛍光測定は、光源によって試料を励起し、試料によって放射される光に基づいて化学的に異なる材料を撮像するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
共焦点顕微鏡法において、光源からの光は、対物レンズを通して試料まで誘導され、試料表面の基本的に点状の領域(エアリディスク)に集束される。同時に、対物レンズは、試料によって放射される光、具体的には放射されるラマン光または蛍光を捕捉し、それを検出器に送るように使用することができる。従って、この対物レンズを用いて、領域、すなわち、照明および/またはビーム検出経路の方向に基本的に垂直な、試料の基本的に点状の領域を共焦点撮像することが可能になる。試料或いは対物レンズまたは照明が動かされる場合、x-y方向の走査、従って試料全体を走査することが可能である。
【0004】
共焦点撮像において、光源、好ましくは基本的に点状の光源、好ましくはレーザ光源が、基本的に点状の領域の上、理想的には試料の一点の上の、光の波動性から生じる焦点に結像される(アッベ(Abbe)の条件)。次に、このピクセルが、好ましくは同じ光学系、すなわち同じ対物レンズにより、検出器の前のピンホール上に焦点を結ばれる。検出器の前に分離したピンホールを配置する代わりに、検出器自体がピンホールを表すことも可能である。共焦点撮像が顕微鏡のために用いられる場合、対物レンズの焦点面からの光だけが撮像に寄与するために、画像コントラストの著しい増加が実現される。
【0005】
共焦点光学顕微鏡法に関して、共焦点対物レンズを有する顕微鏡が詳しく記載されている特許文献1が参照される。
【0006】
共焦点測定は、存在する散乱光背景が非常に強く抑制されるので、多くの用途、例えば、ラマンおよび/または蛍光測定において利点を有する。焦点面からの光だけが測定されるので、共焦点顕微鏡法は、透明な試料の場合には、実際の試料表面の下の試料領域を測定することも可能にする。
【0007】
共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡は、公開された特許文献2によって知られている。
【0008】
しかし、共焦点測定または共焦点顕微鏡法の問題は、ドリフト、トポグラフィ、試料の不均一性、粗さにより、しかしさらに、試料の傾きにより、撮像される面または領域、特に表面が、試料が走査されるときに焦点面内に留まらないことが多いことである。
【0009】
従って、満足できる結果のために、多くの用途は、測定される表面による焦点安定性または焦点追跡のための拡張された方法および機器を必要とする。
【0010】
共焦点顕微鏡と組み合わせられる、AFM顕微鏡またはSTM顕微鏡が、特許文献3から知られている。AFMまたはSTMチップを用いると、試料は特にz方向に走査することもできる。
【0011】
特許文献3によれば、AFMチップを用いて、深さ情報が得られる。AFM測定、具体的にはAFMトポグラフィ測定中に、AFMトポグラフィ測定から得られるトポグラフィデータを光学データと相関させることができるように、光学信号もまた記録される。特許文献3によれば、共焦点測定は常に、トポグラフィ測定と同時に行われる。特許文献3の不利点は、x-y面内における100μmから最大で300μmまでの範囲にある、限定された走査範囲である。さらに、AFMチップは、z方向において最大で5~10μmの範囲における深さ情報のみを与えることができる。従って、特許文献3は、>300μmの試料領域および>10μmの粗さの測定を可能にしない。
【0012】
表面、特に大きい試料領域、特に>300μm、および工芸表面上の、共焦点顕微鏡法、特に共焦点ラマン顕微鏡法および/または蛍光顕微鏡法において、十分に平坦な試料トポグラフィが存在しないことが多いため、画像を得ることが非常に難しいという問題が生じる。所与の面内の走査、いわゆるX-Y走査中に、試料の表面は、顕微鏡の焦点面から繰り返し離れるので、試料表面または試料の簡単かつ完全な撮像が可能でなくなる。
【0013】
特許文献4には、初めに、試料の表面トポグラフィを共焦点顕微鏡法のために決定し、次いで、撮像される表面を、表面トポグラフィ値を用いて共焦点面に移動させることを可能とする方法および機器が記載されている。特許文献4は、この目的にための表面トポグラフィセンサを有する機器を提案している。その表面トポグラフィセンサは、好ましくは反射および/または回折コンポーネントを有する光学系を有する共焦点センサとすることができる。代替的に、特許文献4は、粗面計、AFM、白色光干渉計、三角測量センサまたはレーザ走査システムなどの、接触センサを明示している。特許文献4のシステムの不利点は、初めに試料全体の表面トポグラフィが決定され、次に、決定された表面トポグラフィを考慮に入れて、実際の蛍光またはラマン測定が行われることである。これは、トポグラフィと蛍光またはラマン測定との間の比較的大きな時間のずれをもたらす。機器または試料のドリフト或いは時間変動する試料(例えば、試料の蒸発または乾燥による)がこの方法に大変な困難さをもたらす可能性がある。
【0014】
上記の逐次測定、すなわち、トポグラフィ決定後のラマンまたは蛍光測定に対する代替物として、特許文献4はさらに単一経路方法を記載している。この場合、初めに、各々のラスタ点において、表面トポグラフィセンサ、具体的には色センサを用いて距離測定が行われ、それから表面トポグラフィ特有の距離信号が決定され、この距離信号が次に、共焦点顕微鏡、具体的には共焦点ラマン顕微鏡、の焦点面または共焦点面を追跡するために、この1つのラスタ点に関して直接使用され、その後、このサイクルが次のラスタ点において繰り返される。このことは、各ラスタ点において初めにトポグラフィが測定されること、および、この測定の完了後およびトポグラフィによる追跡の完了後にのみ、共焦点測定、具体的には共焦点ラマンまたは蛍光測定が開始されることを意味する。共焦点ラマンまたは蛍光信号は、サイクルの大きい時間範囲、特に全体のトポグラフィ測定および1つのラスタ点から次のラスタ点への試料の移動中には、検出されない。
【0015】
要約すると、特許文献4に記載されているこの単一経路方法はまた、種々の測定モードおよび測定サイクルの複雑な行きつ戻りつの切り替えによって特徴付けられる。これは、その間には共焦点信号、具体的にはラマンまたは蛍光信号を検出できない大きい時間間隔を伴う。さらに、この方法は、非常に遅くかつ複雑である。
【0016】
特許文献4に記載された方法の別の不利点は、例えば、使用される共焦点色センサは、その測定原理のために、短い測定時間で十分なトポグラフィ分解能を達成するために可能な限り広帯域で同時に非常に強い白色光源を必要とすることである。通常、ラマンまたは蛍光測定に使用されるレーザのような単色光源とは対照的に、強い広帯域光源は、普通は点光源ではなく、明らかに巨視的な広がりを有する。しかし、点光源からの光だけが最小の回折限界焦点に投射され得る。これは、実際問題として、回折限界ラマンまたは蛍光測定とは対照的に、共焦点色センサによるトポグラフィ測定の達成し得る横方向分解能を約10μmに制限する。トポグラフィ測定の横方向分解能の、回折限界ラマンおよび/または蛍光測定の横方向分解能に対する、およそ1桁の明白な差異は、特に、微細な構造または粗い多孔性表面の高分解能測定の場合に、ラマンまたは蛍光測定のための焦点面を、横方向に小さい試料のトポグラフィによって正確に追跡することができないという事実につながる。
【0017】
特許文献4において示唆されているように、特にラマンまたは蛍光測定並びにトポグラフィ測定が同じレンズによって行われる場合には、ラマンおよび蛍光測定の両方、並びに共焦点色トポグラフィ測定が、可能な限り広いスペクトル周波数範囲、理想的には実際的に全可視スペクトル範囲を使用することが、さらに別の不利点である。従って、スペクトルの重なりを避けることが困難である。トポグラフィ測定並びにラマンおよび蛍光測定の波長範囲を、特許文献4に記載されているように、2つの重ならないスペクトル範囲に分離する場合には、これは、レンズが、全体の結果として得られる合計されたスペクトル範囲に対して最適化される必要があるので、共通の光学系のコーティングに対して極端に高い要求を課す。
【0018】
従って、特許文献4はさらに、拡張された焦点法と呼ばれる、より簡単な単一経路法を導入している。第1の励起光源の他には、表面検出のための他の光源は不要である。その代わりに、試料がz方向において調節され、反射されたローリー光(Raleigh light)に特徴的な信号が記録される。試料が焦点内にある場合、最大のローリー光が検出される。調節の間、ローリー光に特徴的な信号は、次に、その周りで試料トポグラフィを用いて調節が行われる、試料の平均z位置を追跡するのに用いられる。従って、少なくとも中央z位置が焦点内に残る。ラマンまたは蛍光測定は、全調節期間中に行われる。
【0019】
このことは、試料が、比較的長い時間、ラマンまたは蛍光信号のための実際の焦点の外部に在り得ることを示し、それ故に、長い時間の間にラマンまたは蛍光信号が何も検出されないか、または望ましくないラマンまたは蛍光信号のみが検出され、弱いまたはぼやけたラマンまたは蛍光信号をもたらす。同時に、この調節は、関心のある試料表面の上下の領域もまた測定されるラマンまたは蛍光信号に寄与するので、測定の共焦点性を損なう。
【0020】
従って、視野のより高い空間分解能および高深度などの共焦点光学顕微鏡法の証明された利点は、この方法においては失われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】独国特許出願公開第199 02 234(A1)号
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2009 015 945(A1)号
【特許文献3】米国特許第5,581,082(B1)号
【特許文献4】国際公開第2011/131311(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の目的は、従来技術の不利点、特に国際公開第2011/131311(A1)号において提示された従来技術の不利点、を避けることができる方法および機器を提供することである。具体的には、不均一な試料表面についても簡単かつ迅速なラマンおよび/または蛍光測定を可能にする方法および機器が提供されることになる。さらに、本発明は、平面または表面、具体的には試料の表面を共焦点撮像することを、すなわち、共焦点顕微鏡法を用いて、可能にする。このことは、試料が、全測定中、例えば湾曲した試料の不十分に平坦な試料トポグラフィがあっても、常に焦点内に保持されることを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、この目的は、平面または表面、具体的にはトポグラフィを有する表面を、共焦点顕微鏡法、具体的には共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法を用いて撮像するための方法において解決され、ここで、この方法を実行するための機器は、ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法のための励起放射を生成する第1の光源、並びに、第1の光源の波長範囲、または例えば、ラマン光/蛍光などの検出される波長範囲、とは一致しない狭い波長範囲の放射を生成するための第2の同時に活動状態にある光源を有する。この用途において、「同時に」は、第1および第2の光源が試料上に光を同時に、すなわち一緒に、放射すること、並びに、一方で焦点追跡のための試料のトポグラフィ測定、他方でラマンまたは蛍光測定、を同時に行うことができることを意味する。さらに、第2の光源の焦点面は、試料の表面内/上に、別個の制御可能な焦点位置によって移動させられ、このようにして決定された試料のトポグラフィは、制御可能焦点位置の制御信号から、第1の光源の焦点面を制御/調整するために用いられる。本発明による方法により、ラマンおよび/または蛍光測定は常に活動状態で焦点内に留まり、同時に行われる焦点追跡のための試料のトポグラフィ測定によって影響されない。従って、この方法は、ラマンおよび/または蛍光測定、並びにトポグラフィ測定が同時に行われることで特徴付けられる。第1の光源および第2の光源の両方は、それに限定することなしに、レーザ光源とすることができる。光源としてスーパールミネセントダイオード(SLED:Super luminescent diodes)もまた可能であろう。レーザダイオードと同様に、SLEDはp-n接合に基づき、貫通方向において操作される。放射される平均波長は、バンドギャップに基づき、インジウムヒ素(InAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)またはリン化インジウム(InP)などの種々異なる半導体材料を選択することによって影響され得る。レーザダイオードとは対照的に、SLEDは、ミラーによる光学的フィードバックを示す共振器を有しない。
【0024】
本発明による方法において、近似的に同じサイズの2つの横方向焦点、すなわち、第1および第2の焦点の焦点サイズが近似的に同じであり、それ故に同一の試料領域を評価することができる、2つの横方向焦点が用いられる。第1の焦点は、第1の光源、すなわち、ラマンまたは蛍光励起のためのレーザ光源、の焦点である。第2の焦点は、第2の光源の焦点であり、トポグラフィを決定するために役立つ。第2の光源の焦点面は、別個に制御可能な焦点位置によって試料の表面上に移動させられる。別個に制御可能な焦点位置は、例えば、電気的に合焦可能なレンズを用いて調節することができる。レンズの周期的励磁が特に好ましく、これがその焦点位置をz方向において周期的に変化させる。第2の光源の焦点が、試料の表面内に位置するときはいつでも、信号が検出される。これは、共焦点原理の結果として、第2の光源の焦点が表面上に位置するときにのみ、光が、信号を検出することができるのに十分な強度で、検出器上に後方反射されるという事実による。制御可能な焦点位置の制御信号から決定された試料のトポグラフィは、試料を、共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法の焦点面内に移動させるのに使用される。従って、本発明により、第2の光源の焦点面を連続的に評価することによって、試料をラマンおよび/または蛍光測定の共焦点面内に持続的に保持することが可能になる。同時に、ラマンおよび/または蛍光測定は、トポグラフィの決定および調整によって妨げられず、持続的に活動状態に留まることができる。このことは、追跡システムを提示するのみの国際公開第2011/131311(A1)号による制御システムによって達成されるものと比べて、ラマンおよび/または蛍光信号を著しく増幅する。従って、本発明による方法を用いると、熱的および/または機械的ドリフトを補償することが可能となり、その結果、国際公開第2011/131311(A1)号から知られる方法に比べて、熱的および機械的ドリフトが補償されるために、より長い測定時間が可能になる。高分解能測定、或いは、多孔質または粗い試料の測定もまた、トポグラフィ並びにラマンおよび/または蛍光測定の同等の横方向分解能によって大きく改善される。
【0025】
例えば、測定中に乾燥するかまたは液体が蒸発する試料のラマンおよび/または蛍光測定もまた、本発明による調整が表面の連続的な追跡をもたらすために、可能となる。
【0026】
本発明によれば、試料を、ラマンおよび/または蛍光測定のための焦点面内に保持するために、特定の調整/制御が使用される。
【0027】
平面または表面、具体的には試料の表面を、共焦点顕微鏡法、具体的にはラマンおよび/または蛍光顕微鏡法によって、撮像するステップは、平面または表面、特に表面の複数の領域を、平面または表面、特に表面の領域を共焦点撮像するための機器を用いて、走査することによって達成される。
【0028】
本出願において、表面のトポグラフィまたは試料トポグラフィによって意味されるものは、一例として、しかし断定的ではなく、共焦点ラマン顕微鏡に関して説明されることになる。そのような構成において、試料トポグラフィは、1nmより大きく、特に10nmより大きく、好ましくは100nmより大きい試料の不均一さを意味する。試料の不規則性は試料表面のz方向における偏差であり、これはまた粗さとも呼ばれる。
【0029】
走査される平面はx/y平面である。ラマン顕微鏡または蛍光顕微鏡のx/y平面内の分解能は、少なくとも0.1μm、好ましくは少なくとも1μm、好ましくは1μm~50μmである。
【0030】
本発明によれば、第2の光源の焦点面の位置は絶えず決定される。このために、第2の光源の焦点位置は、例えば、電気的合焦可能レンズを用いて変化させることができ、ここでそのレンズは、例えば200Hz~800Hzの周波数で周期的に励磁されることが好ましい。焦点が電気的に変えられるレンズに加えて、レンズを機械的に周期的に動かすことも可能である。200Hz~800Hzに明示された周波数範囲の代替は、50kHz~1MHzの周波数範囲である。第2の光源の焦点位置を変化させることによって、焦点面の位置を決定するとき、焦点の変調度、或いは、試料の粗さまたはトポグラフィの焦点位置を調節することが必要である。
【0031】
試料は、第2の光源および、例えば、電気的合焦可能レンズを用いて決定された第2の光源の焦点面に基づいて、共焦点ラマンまたは蛍光顕微鏡法の共焦点面に移動させられる。この、ラマン/蛍光顕微鏡法の共焦点面内への移動は、従って、第2の光源の焦点位置の測定と同時にまたは同じ時間に行われる。
【0032】
第2の光源、具体的には第2のレーザ光源を用い、電気的合焦可能レンズを用いて第2の光源の焦点を通過させることによって、例えば、ラマン顕微鏡を、ラマン顕微鏡の焦点面または共焦点面に持続的に保持し、および従って、顕著な、すなわち、非平面の試料トポグラフィの場合にも、共焦点ラマン顕微鏡法を動作させることが可能になる。
【0033】
本発明の特に好ましい実施形態において、ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法のための第1の光源の焦点面の再調節は、例えば、顕微鏡対物レンズと試料との間の距離を変えることによって、行われることが定められる。これは、試料テーブルおよび/または顕微鏡対物レンズを動かすことによって行うことができる。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態は、第1および第2の光源からの光が、同じ顕微鏡対物レンズを通るように誘導されることである。
【0035】
特に簡単な光学装置は、第2の光源の焦点位置が、基本的に、第2の光源の焦点が顕微鏡の光軸に沿って移動するように制御される場合に、実現することができる。
【0036】
試料のトポグラフィの簡単な決定は、第2の光源の焦点位置が周期的に変えられ、試料のトポグラフィが第2の光源の反射または散乱された光の強度の極大の時間的推移によって決定される場合に、可能となる。
【0037】
第2の光源の焦点位置が、ビーム経路内の、第2の光源のビーム経路のみに影響を与える合焦可能レンズによって制御される場合が有利である。焦点距離が電圧の印加によりまたは電流によって決定される電気的合焦可能レンズは、焦点位置を変化させるために使用できる特に簡単な設計である。
【0038】
代替的に、第2の光源の焦点位置を、摺動レンズまたは数個のレンズを用いて制御することが可能である。
【0039】
第2の光源の横方向の焦点サイズが、第1の光源の横方向の焦点サイズに基本的に対応する場合が特に好ましい。これは、一方でトポグラフィ決定が、他方でラマンまたは蛍光測定が、同じ試料範囲および同じ試料容積を評価するという利点を有する。他方、2つの光源の横方向の焦点サイズが大きく異なったとすると、特に、第1の光源の焦点サイズが、第2の光源の焦点サイズより著しく大きかったとすると、第1の光源の焦点サイズより小さい試料の細孔または粒子などの全てのトポグラフィ細部が、それらの小さいサイズのためにトポグラフィ決定から漏れ、従って、これらの試料位置におけるラマンまたは蛍光測定が焦点内に保持されないことになる。第1および第2の光源の、基本的に同一の横方向焦点サイズにより、理想的なトポグラフィ補償が達成され、その理由は正確に同じトポグラフィ細部が修正または釣り合わされるためであり、このことはまたラマンまたは蛍光測定によっても解決される。
【0040】
制御/調整によって決定された、顕微鏡対物レンズと試料との間の距離の必要な変化は、試料を顕微鏡の光軸の方向に移動させることによって達成することができる。代替的に、顕微鏡を顕微鏡の光軸の方向に移動させることができ、または、顕微鏡対物レンズを顕微鏡の光軸の方向に移動させることができる。
【0041】
第2の光源の波長範囲が、検出されるラマン散乱光および/または蛍光の波長範囲と重ならない場合が特に好ましい。
【0042】
方法に加えて、本発明はさらに、x/y面内において表面の複数の領域を走査することにより試料の表面を撮像するための機器であって、焦点面内の表面の領域を検出器上に共焦点結像するための手段を備え、第1および第2の光源を有する、機器を提供する。
【0043】
共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡の光、すなわち、第1の光源の光は、本発明により第1の波長範囲にあるように出現し、第2の光源の光は第2の波長範囲にあり、ここで、第1および第2の波長範囲は重ならない。第1の波長範囲は、普通、第1の波長範囲が、調査される試料の、放射される発光スペクトルおよび/またはラマンスペクトルの範囲によって定められるように、選択され、第2の波長範囲は、第1の波長範囲と重ならない第1の波長範囲より上またはより下にある。例えば、調査される試料の放射される発光スペクトルおよび/またはラマンスペクトルの第1の波長範囲は、350nm~1000nm、好ましくは500nm~1000nm、特に532nm~650nmの範囲とすることができる。第2の波長範囲は、1000nm~2000nm、好ましくは1000nm~1500nmの範囲とすることができる。
【0044】
上述のように、共焦点顕微鏡法において、ラマンおよび/または蛍光測定のための単色の第1の光源の光が、試料に向かう途中にある対物レンズを通るように誘導され、従って、試料表面の基本的に一点に集束される。特に、機器が共焦点ラマン顕微鏡である場合、分光計が、試料によって放射される光、すなわち、ラマン光または蛍光をスペクトル分解すると定めることができる。そのようなスペクトル分解は、例えば、回折格子またはプリズムを有する分光計内で行うことができる。このように分解された光がCCDカメラで記録される場合、試料によって散乱されたラマン光または蛍光の完全なスペクトルを記録することが可能になる。ラマン顕微鏡内でのラマン光のスペクトル分解の利点は、例えば、分光計内で回折格子を回転させることにより、測定のための検出器に対して任意のスペクトル範囲を選択することができることである。
【0045】
機器、具体的には共焦点顕微鏡、好ましくは共焦点ラマンおよび/または共焦点蛍光顕微鏡は、x/y方向に移動させることができる試料テーブルを有することができ、これが、例えば、試料を走査することによって試料表面を撮像することを可能にする。代替的にまたは付加的に、試料の画像を得るために対物レンズまたは顕微鏡自体を移動させることができる。また、試料のスペクトル特性の空間マップを記録することも可能である。特に共焦点撮像により、非常に高い深さ分解能が達成される。
【0046】
第2の光源を用い、特に電気的合焦可能レンズと組み合わせて、第2の光源の焦点面を、本発明により、別個に制御可能な焦点位置により試料の表面内/上に移動させることができる。制御可能な焦点位置の制御信号から、ラマン顕微鏡法のための第1の光源の焦点面を制御するために、試料のトポグラフィが決定される。この制御/調整は、試料表面を、走査中に共焦点ラマン顕微鏡法のための共焦点面内に絶えず保持することを可能にする。このために、試料のx-y走査はx-y-z走査に拡張され、ここでz走査は試料トポグラフィを補償するのに役立つ。このために、試料テーブルおよび/またはレンズを、x/y方向に加えてz方向に移動させることができる。
【0047】
国際公開第2011/131311(A1)号とは対照的に、本発明による方法においては、制御/調整のための表面トポログラフィを初めに記録し、次いでその後に試料面を焦点内まで追跡する必要がない。その代わりに、第2の光源を用いた焦点位置の連続的な決定が、試料を同時に、共焦点ラマンおよび/または蛍光顕微鏡法のための対物レンズの焦点面内に移動させることを可能にする。これは、国際公開第2011/131311(A1)号におけるような単なる追跡によるよりも遥かに強いラマンおよび/または蛍光信号が得られるという利点を有する。
【0048】
本発明は、以下で、実施形態の例を参照しながら詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1a】第1および第2の光源を有し、第1および第2の光源のビーム経路が描かれている、ラマン顕微鏡の主要な構造を示す。
【
図1b】第1および第2の光源を有し、ラマン測定のための第1の光源の励起焦点が、第2の光源の焦点と同じ対物レンズを通して誘導される、ラマン顕微鏡の主要な構造を示す。
【
図2a】第2の光源のための電気的合焦可能レンズの調節および検出される信号を示す。
【
図2b】第2の光源のための電気的合焦可能レンズの調節および検出される信号を示す。
【
図2c】第1および第2の光源の焦点並びに不均一な試料表面の主要な表示を示す。
【
図4】調整によらずに、ラマンおよび/または蛍光分光法の共焦点内に試料を移動させる、
図3による試料の画像を示す。
【
図5】調整により、ラマンおよび/または蛍光分光法の共焦点内に試料を移動させる、
図3による試料の画像を示す。
【
図6】調整によるおよびよらないラマン信号の強度プロファイル、並びに試料の表面トポグラフィを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、以下で、特に散乱されるラマン光を用いて試料表面を撮像するための機器、いわゆる共焦点ラマン顕微鏡の実施形態の例に関して説明されるが、本発明はこれに限定されない。むしろ、本発明は全ての共焦点顕微鏡、具体的には共焦点光学顕微鏡または蛍光顕微鏡を含む。電気的合焦可能レンズを有する第2の光源はさらに、表面トポグラフィに応じて、試料をラマン顕微鏡法の共焦点面内に移動させるためにこのような共焦点顕微鏡のために使用することができる。
【0051】
図1aは、試料表面を記録するための共焦点ラマン顕微鏡の第1の実施形態の主要な構造を示す。共焦点ラマン顕微鏡法は、液体および固体コンポーネントの化学的性質および相を、約200ナノメートルの回折限界分解能範囲に至るまで、分析するために使用することができる。試料を、蛍光顕微鏡法において使用されるような蛍光物質でマーク付けする必要はない。共焦点構造は、試料を、例えば、切断する必要なく、深さ方向に分析することを可能にする深さ分解能をもたらす。
【0052】
共焦点顕微鏡法においては、点状光源、好ましくはレーザが、試料の一点に結像される。次に、このピクセルが、好ましくは同じ光学系により、検出器の前のピンホール上に焦点を合わせられる。ピンホール開口のサイズは、照明画像の回折限界画像に適合させる必要がある。この画像は、ここで、試料上の測定点を走査する、すなわち、試料を1点ずつ走査することによって生成される。このタイプの撮像により、レンズの焦点面だけが撮像に寄与するので、画像コントラストの著しい増加が達成される。さらに分解能は、回折点とピンホールの開口との畳み込みのために、√2から約λ/3までの因子だけ減少され得る。さらに、試料構造の3次元画像を、約1波長の距離分解能で得ることができる。
【0053】
共焦点顕微鏡法に関して、例えば、独国特許出願公開第199 02 234(A1)号が引用される。
【0054】
図1aは、共焦点ラマン顕微鏡、例えば、ドイツ国、D-89081ウルム所在のWITec GmbHのアルファ300R型顕微鏡の可能な構造を示す。共焦点ラマン顕微鏡1により、第1の光源10の光が、ビーム拡大器14の後のビームスプリッタミラー12において、試料16の方向にある試料テーブル18の上に差し向けられる。第1の光源、具体的には第1のレーザの光は、好ましくはラマンまたは蛍光発光のための励起光であり、350nm~1000nm、好ましくは500nm~1000nmの波長範囲にある。励起光の屈折された光ビーム19は、適切な光学系21によって、試料16上の基本的に点状の領域20に集束される。第1の光源、具体的にはレーザ光源10の光は、試料16の物質と相互作用する。一方で、後方散乱された、入射光と同じ波長のローリー光が生成される。この光はビームスプリッタ12を介してエッジフィルタまたはノッチフィルタ13の方へ屈折され、検出光学系には到達しない。
【0055】
試料によって放射される、ローリー光とは異なる周波数または複数の周波数を有する光、すなわち、ラマン光はビームスプリッタ12を通過する。ビームスプリッタ12の後方で、ラマン光は参照番号22でマーク付けされている。ラマン光22はピンホール(図示せず)を介して光ファイバ30内に注入され、分光計40に達する。分光計40の中で、ラマン光のビームが、適切な光学系によって再び広げられ、ビーム42を生じ、これが回折格子型スペクトルフィルタ44に当たる。回折格子型スペクトルフィルタ44は光を、その波長によって異なる方向に回折し、それによりスペクトル信号がCCDチップ50上でその位置に依存して捕捉され得る。例えば、CCDチップ50は1024個のチャネルを有し、その結果、CCDチップの合計で1024個のチャネルが異なる波長の光を吸収することができる。
【0056】
試料の画像は、矢印130の方向においてx/y面内で走査することによって創出される。
【0057】
白色光源120からの光もまた、調節または観測のために試料16上に注入することができる。
【0058】
共焦点ラマン顕微鏡1はさらに第2の光源80を備える。第2の光源80は、共焦点ラマン顕微鏡1の第1の光源の他に存在する。第2の光源は、
図1aに示されるように、それ自体の独立したビーム経路を備え、これがミラー82を介してレンズの光学系21内に結合する。第2の光源のビーム経路は、第1のレーザ光源のラマンおよび/または蛍光測定のための励起光ビームと同じ光学系21を介して試料に当たり、ミラー82を介してビームスプリッタに差し向けられ、ビームスプリッタは第2の光源からの光をミラー82および光学系21の方向に通過させ、試料表面から後方反射された光が、光ダイオード86に差し向けられるように、光学系21によって表面から後方反射された光を分離する。そこで、反射信号が検出され、評価ユニット(図示せず)に与えられる。評価ユニットは、反射信号から、電気的合焦可能レンズ84の励磁信号に対する光ダイオード信号の極大の位相位置を決定する。この位相位置は、試料の表面の高さ変化の尺度となる。位相位置に応じて、次に試料テーブルが、試料がラマンおよび/または蛍光顕微鏡法の焦点面内に連続的に配置されるように、移動させられる。試料テーブルの進行は、位相位置に応じて制御または調整される。
【0059】
さらに、第2の光源80の後に、電気的合焦可能レンズ84がビーム経路内に挿入され、これが第2の光源80の焦点位置を変化させるように働く。電気的合焦可能レンズは、例えば、オプトチューン(Optotune、スイス AG、Bernstrasse 388,CH-8953 Dietikon)からの電気的に調節可能な、すなわち、合焦可能なレンズEL-16-40TCとすることができ、これは30℃において-2~+3ジオプトリの範囲内の離調を可能にする。このレンズはまた、所望の位置へのレンズの調節のために使用することができる。電気的合焦可能レンズEL-16-40TCの口径は16mmであり、波長範囲450nm~950nmにおける透過率は90%超である。説明された電気的レンズは例示的であって限定的ではない。電気的調整可能レンズに関するオプトチューン スイスAGの技術データシートの開示内容は、本出願の開示内容に含まれる。電気的合焦可能レンズは、周期的に、特に200~500Hzの範囲の周波数で励磁されることが好ましい。他の周波数もまた可能である。第2の光源の焦点位置は、電気的合焦可能レンズの周期的励磁によって周期的に変化する。焦点面が試料内/上に留まるときは必ず、光ダイオード86において信号が検出される。この信号から、電気的合焦可能レンズの励磁信号に対する光ダイオード信号の位相位置を決定することができ、従って、試料トポグラフィから推測することができる。位相位置に応じて、次に試料テーブルが、試料の表面トポグラフィが釣り合わされて試料が常にラマンおよび/または蛍光顕微鏡法の焦点面内に存在するように、移動させられる。このことは
図2a~
図2bに詳細に記載されている。
【0060】
図1bは、共焦点ラマン顕微鏡の主要な構造を示し、ここでラマン測定用の第1の光源2010すなわちレーザからの光は、トポグラフィ測定のための第2の光源2080からの光と平行に誘導される。以前の
図1aにおけるのと同じコンポーネントは、2000だけ増した参照数字でマーク付けされている。
図1bに示されるラマン顕微鏡2001においては、ラマン効果を励起するための第1の光源2010からの光と、第2の光源2080からの光との両方が、2029内の同じ光学系により、試料2016の基本的に同じ横方向領域2020に集束される。ラマン測定のための焦点位置、すなわち、第1の光源2010の励起レーザ光の共焦点は、ラマン効果の励起のために選択される。第1の光源2010からの光は、試料2016内に、ビームスプリッタ2012.1によって注入される。光ビーム2019はビームスプリッタ2012.1内で試料2016の方向に差し向け直され、さらに別のビームスプリッタ2012.2を通過する。試料との相互作用によって生成されたラマン光は、ビームスプリッタ2012.1およびビームスプリッタ2012.2の両方を通過し、ビームスプリッタ2012.2の後ろの参照数字2022で示される。ビームスプリッタ2012.2の後ろで、光ビーム2022は、検出器(図示せず)の前のピンホール2013の上に集束される。第2の光源の光路は参照数字2092でマーク付けされる。第2の光源2080から試料2016までの光路の中には、電気的合焦可能レンズ2094が配置される。
【0061】
試料内のラマン効果を励起するために使用される光源2010からの光に加えて、さらに別のビームスプリッタ2012.2が第2の光源2080からの光2092を、ラマン効果を励起するための光と同じ光学系2029を通して試料2016に差し向ける。この光ビームは参照数字2019でマーク付けされる。試料に照射される第2の光源2080の光は、試料によって反射される。この反射光2089は、さらに別のビームスプリッタ2012.2を介して、再びビームスプリッタの上に差し向けられ、そこからダイオード2096の上に差し向けられる。ダイオード2096によって記録される信号は、評価ユニット2100に与えられる。評価ユニット2100は同時にスキャナの調整器であり、スキャナは光ダイオードの信号によってz方向に移動させられる。
【0062】
光信号を捕捉するダイオード2096は、例えば、InGaAsダイオードである。
【0063】
ラマン効果の励起用の光と第2の光源の光との両方を同じ光学系を通過させるために、異なるスペクトル範囲または時分割多重機器を使用することが有利である。例えば、第2の光源の光を1000nm~2000nmの波長範囲にし、ラマン効果の励起のための光の波長を532nm、すなわち、350nm~1000nmの範囲にすることができる。そのような配置は、通常532nmより上のラマンスペクトルの記録を可能にすることになる。もちろん、他の波長の選択も考えられるであろう。
【0064】
図1bに示される構造は、試料表面をラマン測定の共焦点面内に、第2の光源2080および合焦可能レンズ2094、特に電気的合焦可能レンズを用いる調整方法によって、移動させることを可能にする。スキャナの調整および/または制御は、調整器および/または制御器によって行うことができる。
【0065】
ラマン測定のための調整/制御に加えて、純粋なトポグラフィ測定のみも可能である。非接触トポグラフィ測定は、傷つきやすい試料、またはそのトポグラフィがAFMのためには既に高過ぎる(>5μm)試料、またはその横方向構造がピエゾスキャナの典型的な走査範囲、例えば、100μmより遥かに大きい試料に特に適している。
【0066】
図2aは、第2の光源のレンズの焦点の正弦変調を示す。この例において選択された変調周波数は400Hzである。レンズの焦点の正弦変調により、第2の光源の焦点位置もまた、
図2aに示されるように正弦曲線的に進む。
図2aにおいて、調査された表面の2つの高さが、正弦変調された進路内に描かれている。第1の高さはH
1、第2の高さはH
2とマーク付けされる。第2の光源の正弦曲線状焦点が試料の高さH
1の表面上にある場合、共焦点条件が満たされ、
図2bに示される信号1000がダイオードにおいて検出される。信号1000の位相位置は約15°である。試料の高さが、例えば、熱膨張によって増加する場合、高さはH
1からH
2へ変化する。今度は、信号1000の代わりに信号1100が検出される。
図2bに示されるように、信号1100は、信号1000に対して右方へ変化し、信号1100の位相位置は30°であり、第1の信号と第2の信号との間の位相位置の差異は15°である。第2の光源の焦点が高さH
2の表面に来るとき、信号1100が再び検出される。従って、ダイオードにおいて検出された第2の光源の信号の位相変化は、試料の高さが変化する仕方の尺度となり、試料の高さの差異を補償するため、および試料をラマンおよび/または蛍光顕微鏡法のための第1の光源の焦点面に移動させるために、試料を制御または調整するための調整または制御変数として使用することができる。
図2bに示されるように、光ダイオードにおける信号は、H
1からH
2への高さ変化において、1000から1100へ、右方へ(信号群1)および左方へ(信号群2)動く。しかし、調整のためには一方向における移動のみが用いられ、この場合、信号群1による右方への移動が用いられる。
【0067】
図2cは、高さH
試料を有する試料であって、高さH
試料がラマン顕微鏡法の焦点の高さH
焦点より低い試料を示す。第2の光源の焦点は参照数字4000で示され、例えば、4100と4200との間の捕捉範囲内で正弦変調される。このことは、試料の高さH
試料を第2の光源の焦点位置から決定することを可能にする。図示される例におけるように、例えば、H
試料の後ろへのH
焦点の深化により、高さが減少する場合、ラマン測定の焦点5000は試料の外部にあることになる。第2の光源の焦点位置の限界4100と4200との間の正弦変調のために、高さH
試料が検出され、位相位置によって、試料が、制御または調整により、ラマン測定の焦点5000に戻される。H
試料からH
焦点への試料の移動は、参照数字10000でマーク付けされている。
【0068】
図3は、試料のトポログラフィを示す。この試料は、x方向において5000μmの膨らみを有する。z方向において、試料は±30μmの深さで湾曲している。
【0069】
図4は、
図3に示された高さプロファイルを有する試料の、共焦点ラマン顕微鏡法による画像であって、試料が動かされずおよび共焦点面内への試料の調整が行われなかった画像を示す。ラマン測定の焦点内に試料の狭縁領域のみがあり、その結果この領域のみが鮮明に撮像されていることが明瞭に分かる。撮像された鮮明な領域が明るい領域であり、ぼやけた領域は暗い。
【0070】
図5は、
図3に示された表面のラマン測定を示し、ここで
図4とは対照的に、試料は、第2の光源の焦点により制御される仕方で共焦点面内に移動させられた。この結果は完全に鮮明な明るい画像である。
【0071】
図6は、本発明による調整の効果を示す。
図6は、試料の表面の進路を参照数字2000で示す。試料の表面は、7000μmのx展開にわたって100μmの深さまたはz偏差を有する。曲線2100は、調整なしのラマン強度を表す。曲線2100から分かるように、ラマン信号は、試料がラマン測定の共焦点面内にあるときにだけ生じる。これはまさに2つの表面値に対する場合である。表面のより高いまたはより低い領域は共焦点面の外部にあり、信号を示さない。しかし、第2の光源を用いて、表面を常にラマンおよび/または蛍光測定の共焦点面内に保持することが、本発明による調整による第2の光源の焦点位置の評価によって、可能であるので、ラマン信号2200が試料全体にわたって検出される。
【0072】
図に示されように、調整によるラマン信号2200は、試料が焦点内に調整なしに動かされるときに検出される2つのピーク2100と同様に強度が大きい。このことは、焦点内の試料の信号に対応する信号が、調整の間、2000の表面進路にも関わらず、試料全体にわたって得られることを意味する。
【0073】
本発明は、第1に、試料の表面に関する情報を、共焦点顕微鏡法を用いて迅速かつ容易に得ることを可能にする機器を提供する。具体的には、これは第2の励起および検出経路を用いて達成され、第2の励起および検出経路は、共焦点主要測定を、最も難しい試料を用いても、持続的に焦点内に保持することを可能にする。表面トポグラフィは、第2の励起および検出経路にのみ影響を及ぼす合焦可能レンズを調節することによって決定することが好ましい。
【外国語明細書】