(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082068
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】インターフェース型創傷被覆材用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20230606BHJP
C08L 25/16 20060101ALI20230606BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230606BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20230606BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20230606BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230606BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20230606BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L25/16
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/44
A61L15/22 310
A61L15/24 100
A61P17/02
A61L15/28 100
A61L15/20 100
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023050899
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2020500856の分割
【原出願日】2018-07-12
(31)【優先権主張番号】1756589
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】516175711
【氏名又は名称】エイチシーピー ヘルスケア アジア ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】メイエ ナデージュ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨格を有しなくても良好な順応性及び良好な引裂き強さを有するインターフェース型創傷被覆材を調製することが可能になる、自己支持性インターフェース型創傷被覆材のための組成物を提供する。
【解決手段】2つのスチレン熱可塑性末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマーブロックBを含むABAトリブロック共重合体に基づき、芳香族樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む新規な組成物であって、特に、強化材を有するか、支持体を有するか、又は自己支持性である、好ましくは自己支持性であるインターフェース型創傷被覆材を製造するために使用することができる組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
- 5~20%の、スチレン-飽和オレフィン-スチレンのタイプの2種のトリブロック共重合体の混合物であって、第1のトリブロック共重合体は、トルエン中の5%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有し、第2トリブロック共重合体は、トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する混合物と、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤と、
- 5~20%の、80~125℃、好ましくは90~110℃の範囲の軟化点を有する少なくとも1種のα-メチルスチレン樹脂と
を含み、
- トリブロック共重合体の含有量が5~10重量%である場合、樹脂の含有量は、前記組成物の総重量に対して15~20重量%であり、
- トリブロック共重合体の含有量が10重量%超である場合、樹脂の含有量は、前記組成物の総重量に対して5~20重量%であり、
前記百分率は前記組成物の総重量に対するものである組成物。
【請求項2】
前記樹脂が、95~105℃若しくは115~125℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂又は95℃~115℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記可塑剤が、鉱油及びワセリンの混合物から構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総重量に対して25重量%以下の量の親水コロイド粒子を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量に対して0.01~20重量%、好ましくは1~15重量%の量の、治癒を誘導若しくは加速するための、又は創傷の処置において有益な役割を果たすことができる1種以上の活性物質を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の組成物から、好ましくは前記組成物の薄層の形成及び圧縮、又は高温注型により得られることを特徴とするエラストマーマトリクス。
【請求項7】
骨格又は基材を含むか、又は自己支持性であることを特徴とする請求項6に記載のエラストマーマトリクス。
【請求項8】
貫通孔を含むことを特徴とする請求項7に記載の自己支持性エラストマーマトリクス。
【請求項9】
約4mm2の網目サイズ、約800ミクロンの厚さ及び約400g/m2の坪量を有する通気性ネットの形状にあることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の自己支持性エラストマーマトリクス。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載のエラストマーマトリクスを含むことを特徴とするインターフェース型創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、2種のスチレン熱可塑性末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマーブロックBを含むABAトリブロック共重合体、並びに芳香族樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂に基づく新規な組成物であって、特に、骨格若しくは基材を含むインターフェース型創傷被覆材(ドレッシング材)、又は自己支持性インターフェース型創傷被覆材、好ましくは自己支持性インターフェース型創傷被覆材を製造するために使用することができる新規な組成物に関する。
【0002】
本発明は、良好な引裂き強さを有するがゆえにより取り扱いやすい自己支持性インターフェース型創傷被覆材にも関する。
【背景技術】
【0003】
創傷と接触して置くことを意図された「インターフェース型創傷被覆材」と呼ばれる創傷被覆材による創傷の処置は、かなり以前から知られており、このインターフェース型創傷被覆材には、創傷と滲出物を吸収するために創傷被覆材に置かれる吸収性圧定材(compresse absorbante)との間にインターフェースが設けられている。
【0004】
Laboratoires URGOにより2000年から販売されているURGOTUL(ウルゴチュール)(登録商標)創傷被覆材は、インターフェース型創傷被覆材の具体例である。URGOTUL(登録商標)製品は、オープンメッシュ生地から作製された骨格から構成され、この生地の糸は、メッシュが実質的に閉塞しないまま留まるように凝集性ゲルで被覆されている。このゲルは、ABA(スチレン-飽和オレフィン-スチレン)トリブロック共重合体をベースとし、分散状態で少量の親水コロイドの親水性粒子を含有する十分に可塑化されたエラストマーマトリクスから構成される組成物から形成されている。この創傷被覆材及びその組成物は、特許出願、国際公開第00/16725号パンフレットの実施例1に記載されている。この創傷被覆材のエラストマーマトリクスの定性的及び定量的な組成は、治癒プロセスの促進及び、特に、線維芽細胞の増殖という点で、創傷被覆材に顕著な特性をもたらす。
【0005】
しかしながら、例えば創傷の場所のため、覆うことが困難な創傷にURGOTUL(登録商標)創傷被覆材を施用(貼付)することが望まれる場合、URGOTUL(登録商標)は、その骨格の剛性のため順応性を欠くという短所を有する。
【0006】
この問題を解決するために、(骨格を持たない)自己支持性インターフェース型創傷被覆材が特許出願、仏国特許出願公開第2936158号明細書に記載されている。この出願に記載されている製品は、取り扱われるために良好な弾性及び十分な凝集性の両方を有する。しかしながら、この文献に記載されている自己支持性インターフェース型創傷被覆材は、URGOTUL(登録商標)創傷被覆材で用いられているABAトリブロック重合体とは異なる構成成分を使用し、そのため、治癒特性及び線維芽細胞の増殖は保持されない。
【0007】
さらに、経済的な収益性という点では、本出願人がすでに製造しているURGOTUL(登録商標)創傷被覆材及びそのバリエーションの製造のために使用される化合物と同じタイプの化合物、又はさらには同一の化合物から自己支持性インターフェース型創傷被覆材を製造できることが、本出願人にとって望ましいであろう。
【0008】
経済的な態様に加えて、これは、活性化合物、換言すれば治癒プロセス又は創傷の処置に対して作用を有する化合物、例えば銀塩等の抗菌剤、又はショ糖オクタ硫酸エステルカリウム等のMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の阻害剤等、を自己支持性インターフェース型創傷被覆材の組成物の中に組み込むことが望まれる場合にも、無視することができない利点を提示することになろう。実際、このタイプの組成物中に活性成分を組み込むことは、常に繊細で複雑であり、その組成物の各化合物は、他と相互作用する可能性があり、組成物のレオロジー特性及び物理化学的特性を改変する可能性があり、又は活性成分の安定性又は溶解性に影響を及ぼす可能性さえある。
【0009】
それゆえ、URGOTUL(登録商標)創傷被覆材の製造のために既に使用されている化合物と同じタイプの化合物を使用することにより、所望の利点を有する新規な組成物を開発する機会が最適化される。
【0010】
最後に、URGOTUL(登録商標)創傷被覆材を製造するために使用される化合物と同じタイプの化合物、又はさらには同一の化合物を使用することで、線維芽細胞の増殖及び治癒プロセスに対するURGOTUL(登録商標)製品の顕著な特性を保持することが可能になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ、骨格を有しなくてさえも、良好な順応性及び良好な引裂き強さを有するインターフェース型創傷被覆材を調製することが可能になる、URGOTUL(登録商標)製品で使用される化合物と同じタイプの化合物又は同一の化合物から構成されるインターフェース型創傷被覆材のための組成物を有することは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、2つの熱可塑性スチレン末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマーブロックBを含むABAトリブロック重合体から作製され、好ましくは自己支持性である創傷被覆材で使用できるエラストマーマトリクスの調製を可能にする組成物であって、このマトリクスが非常に良好な引裂き強さを有する特定の組成物を開発した。
【0013】
より具体的には、スチレン-飽和オレフィン-スチレンのタイプの少なくとも2種の特定のトリブロック共重合体(エラストマー)と、重量による所定量で組成物内に存在する少なくとも1種の芳香族樹脂とを含む組成物により、向上した機械的特性を有する創傷被覆材を製造することが可能になるということが見出され、これが本発明の基礎を構成する。実際、本発明のエラストマーマトリクスを用いて得られる創傷被覆材は取り扱いやすく、医療従事者による創傷被覆材の施用時又は取り除き時の引き裂きのリスクが低減される。施用されると、これらのエラストマーマトリクスを用いて得られる創傷被覆材は改善された順応性を有し、それゆえ創床との接触が促進される。その改善された弾性のため、上記創傷被覆材は、患者の動きに追従することがよりよく可能であり、その機械的特性の強化により、長期間にわたる創傷の滲出物との接触の後であっても、創傷被覆材が創傷中で崩壊することが防止される。
【0014】
特定の樹脂の添加により、エラストマー混合物の粘度を低下させること、及びエラストマーマトリクスを機械的に強化することが可能になる。これは、エラストマーマトリクスの製造方法において特に有利である。低下した粘度により、この組成物がより簡単に骨格に塗工されることが可能になる。自己支持性創傷被覆材の場合には、エラストマーマトリクスの凝集の改善により、そのより良好な成形及び離型が可能になる。加えて、使用される特定の樹脂に起因して、当該組成物の製造温度は、およそ10℃低下されることが可能であり、このことにより、例えば活性成分等の熱処理で変質しやすい成分をこの混合物に導入することが可能になる。好ましい実施形態によれば、本発明に係る創傷被覆材は、ラテックス製の手術用手袋に付着しない。
【0015】
活性薬剤を放出するためのエラストマーベースの組成物は、例えば文献、米国特許出願公開第2002/0128345号明細書ですでに提案されている。この文献は、組成物に付着特性を与える粘着性付与樹脂と組み合わせて高粘度トリブロック共重合体を使用する感圧接着剤組成物を記載する。特に、この組成物は、好ましくは特に高粘度のジブロック共重合体を含む。こうして、米国特許出願公開第2002/0128345号明細書に記載されている組成物によって得られるマトリクスは、皮膚への特に高い接着特性を有する。しかしながら、このような組成物は、創傷と接触して置かれる必要がある自己支持性インターフェース型創傷被覆材での使用に好適ではなく、というのも、創傷被覆材の非外傷性の取り除きを可能にするために、自己支持性インターフェース型創傷被覆材は創傷に接着しないことが強制されるからである。このようなインターフェース型創傷被覆材は、一般にテープ(二次創傷被覆材とも呼ばれる)等の保持デバイスと合わせて使用される。加えて、米国特許出願公開第2002/0128345号明細書に係る接着剤組成物は、そのような創傷被覆材に対する所望の取り扱いやすさを有しない。最後に、このような組成物に与えられる粘着性は、これらの組成物から得られるマトリクスの凝集(自己支持性インターフェース型創傷被覆材に関しては、凝集は機械的挙動を意味する)を本質的に変える。実際、この文献に記載されている組成物は、特に粘性が高く、製造過程のあいだにその構造の中に気泡を閉じ込める。従って、これらの気泡は、このような組成物から得られるマトリクスの構造の中に組み込まれ、その構造を弱める。
【0016】
従って、第1の態様によれば、本発明は、創傷被覆材の製造のために特に有用な組成物であって、
- 5~20%の、スチレン-飽和オレフィン-スチレンのタイプの2種のトリブロック共重合体の混合物であって、第1のトリブロック共重合体は、トルエン中の5%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有し、第2トリブロック共重合体は、トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する混合物と、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤と、
- 5~20%の、80~125℃、好ましくは90~110℃の範囲の軟化点を有する少なくとも1種のα-メチルスチレン樹脂と
を含み、
- トリブロック共重合体の含有量が5~10重量%である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して15~20重量%であり、
- トリブロック共重合体の含有量が10重量%超である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して5~20重量%であり、
上記百分率は当該組成物の総重量に対するものである組成物に関する。
【0017】
第2の態様によれば、本発明は、このような組成物から得られるエラストマーマトリクス、及びこのエラストマーマトリクスを含む、基材を有するか又は自己支持性であるインターフェース型創傷被覆材に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
エラストマー
本発明に係る組成物は、2種のABAトリブロック共重合体の少なくとも1つの混合物を含む。
【0019】
特に、2種の共重合体のこの混合物は、トルエン中の5%質量/質量溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体及びトルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体を含む。
【0020】
本発明に関して使用されるブロック共重合体は、2つの熱可塑性スチレン末端ブロックA及び飽和オレフィンである中央エラストマーブロックBを含むABAトリブロック共重合体である。飽和オレフィンのBブロックは、例えば、エチレン-ブチレン、エチレン-プロピレン又はエチレン-エチレン-プロピレンブロックである。
【0021】
簡明さのため、本明細書中では、上記の共重合体を構成する重合体ブロックは、その繰り返し単位の性質によって呼ばれる。従って、表現「ブロック」又は「スチレンブロックA」はポリ(スチレン)ブロックを指し、表現「ブロック」又は「飽和オレフィンブロック」はポリ(飽和オレフィン)ブロックを指す。
【0022】
飽和の中央ブロックを有するトリブロック共重合体は、当業者にとっては周知であり、例えば、
- ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)ブロック共重合体(SEBSと略される)については、KRATONにより、KRATON(登録商標)Gの名称で、特に、グレードKRATON(登録商標)G1651、KRATON(登録商標)G1654、KRATON(登録商標)G1657、KRATON(登録商標)G1652又はKRATON(登録商標)G1650で、並びにKURARAYにより、SEPTON(登録商標)の名称で、特に、グレード8006又は8004で、
- KURARAYにより、ポリ(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)ブロック共重合体(SEPSと略される)については、SEPTON(登録商標)の名称で、特にグレード2005、2006又は2063で、ポリ(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)ブロック共重合体(SEEPSと略される)については、特にグレード4033、4044、4055、4077又は4099で
販売されている。
【0023】
本発明の枠組みでは、SEBS、SEPS又はSEEPSトリブロック共重合体であって、このSEBS、SEPS又はSEEPS共重合体の重量に対して25~45重量%のスチレン含有量を有するSEBS、SEPS又はSEEPSトリブロック共重合体が好ましい。
【0024】
トルエン中の5%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有する共重合体としては、KRATONによりKRATON(登録商標)G1651及びKRATON(登録商標)G1654のグレードで販売されている共重合体、並びにKURARAYによりSEPTON(登録商標)2005、2006、8006、4055、4077、4044又は4099のグレードで販売されている共重合体が挙げられる。
【0025】
トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する共重合体としては、KRATONによりKRATON(登録商標)G1650、KRATON(登録商標)G1657及びKRATON(登録商標)G1652のグレードで販売されている共重合体、並びにKURARAYによりSEPTON(登録商標)2063又は4033のグレードで販売されている共重合体が挙げられる。
【0026】
これらの粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)モデルLVI粘度計を使用して、共重合体の分子量に応じて、トルエン中の5%又は15%(質量/質量)溶液で、30℃で測定される。特に、粘度は、規格ISO2555に従って測定される。
【0027】
一般に、最終組成物中の共重合体の量は、組成物の総重量に対して5~20重量%、好ましくは7~15重量%であってよい。
【0028】
本発明に関しては、2種のSEBSブロック共重合体、特に共重合体KRATON(登録商標)G1654及びKRATON(登録商標)G1650の組み合わせを使用し、KRATON(登録商標)G1654が組成物の総重量に対して5~10重量%の量で存在し、KRATON(登録商標)G1650が組成物の総重量に対して2~5重量%の量で存在することが特に好ましい。
【0029】
それゆえ、好ましくは、2種の共重合体のこの混合物は、組成物の総重量に対して、少なくとも5~10重量%の、トルエン中の5%質量/質量溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有する1種の共重合体と、少なくとも2~5%の、トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する共重合体とを含む。
【0030】
特に、本発明に係る組成物は、ジブロック重合体を含まず、特にスチレン-水素化イソプレンジブロック重合体を含まない。
【0031】
樹脂
本発明に係る組成物で使用される樹脂は、芳香族炭化水素樹脂であり、換言すれば芳香族単量体のみから作製されている。これらは、脂肪族単量体のみから作製された脂肪族樹脂とも、脂肪族単量体及び芳香族単量体から作製された脂肪族/芳香族樹脂とも異なる。何らかの特定の理論に結び付けられることは望まないが、これらの樹脂は、ABA共重合体のブロックAへの良好な溶解性を有し、このスチレンブロックを強化し、これにより、得られる最終のエラストマーマトリクスの凝集を改善するように思われる。
【0032】
芳香族単量体は、特に、α-メチルスチレンである。従って、特に好ましい実施形態によれば、上記芳香族炭化水素樹脂は、α-メチルスチレンの単独重合体樹脂及び共重合体樹脂から選ばれる。
【0033】
試験された芳香族樹脂の中で、いくつかのものは、必ずしも満足できるものではなかった。実際、いくつかのグレードの樹脂は、本発明の組成物を製造するためには、その高い軟化点に起因して高温(140℃超)に加熱される必要がある。このような温度で作業をするとき、可塑剤が揮発するというリスクがある。親水コロイド(カルボキシメチルセルロース等)又は活性成分が当該組成物に添加される場合、これらが分解する可能性がある。
【0034】
従って、本発明に係る組成物で使用される樹脂は、80~125℃、好ましくは90~110℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂である。
【0035】
これらの樹脂は、製造過程、破断荷重及び破断点伸びの点で最良の結果を与える。このような樹脂の添加により、上記混合物の粘度を低下させ、当該組成物を機械的に強化し、従って耐引き裂き性の重合体マトリクスへのその変換を容易にする。
【0036】
軟化点は、規格ISO 4625(「環球」式)に従って測定される。
【0037】
好ましくは、本発明に係る樹脂は、95~105℃若しくは115~125℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂又は95℃~115℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂である。
【0038】
上記の好ましい樹脂は、当業者にとっては周知であり、市販されており、例えば以下の商品名で販売されている。
- Arizona ChemicalからのSylvares SA 100及びSylvares SA 120:それぞれ、95~105℃又は115~125℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂、
- Cray ValleyからのCleartack W90又はNorsolene W90樹脂:85~95℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Eastmanからの樹脂Kristalex 3100LV、Kristalex F100、Kristalex 3105SD及びKristalex F115:それぞれ100℃、又は96~104℃又は105℃、又は114~120℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物は、上記のα-メチルスチレン以外の樹脂を含まず、特に粘着性付与樹脂又は付着性樹脂、換言すれば一定温度で永続的な接着特性をエラストマーマトリクスにもたらす樹脂を含まない。
【0040】
本発明に関しては、上記樹脂は、好ましくは、当該組成物の総重量に対して5~20%、より好ましくは5~15重量%の量で存在する。
【0041】
本発明に関しては、
- トリブロック共重合体の含有量が5~10重量%である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して15~20重量%であり、
- トリブロック共重合体の含有量が10重量%超である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して5~20重量%であり、
上記百分率は当該組成物の総重量に対するものである。
【0042】
本発明に関しては、トリブロック共重合体及び樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して16~40重量%、好ましくは20~35重量%である。
【0043】
可塑剤
インターフェース型創傷被覆材を製造するために、本発明に係る組成物中の上記共重合体の混合物及び上記樹脂は1種(以上)の可塑剤化合物と合わされる。
【0044】
本発明で使用するのに好適な可塑剤は周知であり、上記共重合体の伸縮性、柔軟性、押出性又は使用特性を改善することが意図されている。必要に応じて、1以上の可塑剤をこの目的のために使用することができる。
【0045】
一般に、好ましい可塑剤は、上記のブロック共重合体の中央の飽和オレフィンブロックと相溶性の液体化合物である。
【0046】
この目的のために使用するのに好適な可塑剤としては、特に、可塑化鉱油が挙げられる。
【0047】
あるいは、飽和炭化水素液体混合物から作製される合成物、例えば、TOTALによりGEMSEAL(登録商標)の名称で販売されている製品、特に完全水添石油留分由来のイソパラフィン混合物である製品GEMSEAL(登録商標)60等を使用することも可能である。
【0048】
本発明に関しては、可塑化油が好ましくは使用され、特に様々な割合のパラフィン化合物若しくはナフテン化合物、又はこれらの混合物から形成された鉱油が使用される。
【0049】
特に好ましい可塑化鉱油は、パラフィン化合物及びナフテン化合物の混合物、特にパラフィン化合物の割合が多くを占める混合物から形成されている。
【0050】
特に好適な可塑化油としては、SHELLによりONDINA(登録商標)、特にONDINA(登録商標)919の名称で販売されている製品、又はPETRO CANADAによりPURETOL(登録商標)9Dの参照名で販売されている油、又はSonnebornにより販売されている油BLANDOL、又はここでもHansen & Rosenthalにより販売されている油Pionier 2076Pが挙げられる。
【0051】
油に加えて、上記可塑剤は、ワセリンも含んでよい。本発明の組成物で使用されるワセリンは仏国薬局方に準拠した市販のワセリンである。
【0052】
本発明に関しては、このワセリンは、当該組成物の総重量に対して1~30%、好ましくは5~25重量%の量で存在する。
【0053】
本発明に関しては、上記可塑剤は、当該組成物の総重量に対して50~80%、好ましくは60~70重量%の量で存在する。
【0054】
上記可塑剤は、好ましくは鉱油及びワセリンの混合物から構成され、この鉱油は、当該組成物の総重量に対して45~60重量%の範囲の量で存在し、上記ワセリンは、当該組成物の総重量に対して5~20重量%の範囲の量で存在する。
【0055】
本願の実施例に記載される試験に基づくと、1.5~2.5N/cmの破断荷重及び640%~900%、好ましくは700%~900%の破断点伸びを有するエラストマー織物が改善された機械的特性を有する。樹脂を有しない同じ配合物との比較で、この破断荷重は、少なくとも40%向上している。
【0056】
この結果を得るために、本発明に係る組成物は、好ましくは
- 5~20重量%の、トルエン中の5%質量/質量溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体及びトルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する少なくとも1種の共重合体を含む2種の共重合体の混合物と、
- 50~80重量%の油及びワセリンの混合物と、
- 5~20重量%の、95~105℃若しくは115~125℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂又は95℃~115℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂から選ばれる樹脂と
を含むことが決められた。
【0057】
当該組成物は、骨格を有するか又は有しない創傷被覆材を調製するためにも使用される。
【0058】
親水コロイド
自己支持性であり、基材を有するか又は創傷の治癒のための骨格を有するインターフェース型創傷被覆材を製造することに関する本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物は、親水コロイドの親水性粒子(又は親水コロイド粒子)を含む。
【0059】
これらの粒子により、治癒を促進するために、インターフェース型創傷被覆材の無痛の引き剥がし及び湿潤環境における創傷上でのその保持が可能になる。
【0060】
この効果に向けて、かくして、少量の親水コロイドの親水性粒子は、エラストマーマトリクスが形成されるとそのエラストマーマトリクスの表面上に堆積されるか、好ましくは、本発明に係る組成物内に均一に分散される。
【0061】
本明細書中において、「親水コロイド」又は「親水コロイド粒子」は、水、生理的血清又は創傷の滲出物等の水性液体を吸収する能力のために、当業者によって通常使用されるあらゆる化合物を意味するものとする。
【0062】
好適な親水コロイドとしては、例えば、ペクチン、アルギン酸塩及びアルギン酸エステル、特にカラヤガム等の天然植物ガム、カルボキシメチルセルロース及びそれらのナトリウム又はカルシウム等のアルカリ金属塩の塩等のセルロース誘導体、並びに「超吸収材」の名称で知られるアクリル酸塩をベースとする合成ポリマー、例えばCIBA Specialty ChemicalsによりSALCARE(登録商標)SC91の名称で販売されている製品、並びにこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0063】
10マイクロメートル未満の粒径を有するため「マイクロコロイド」と呼ばれるこれらの超吸収材の特定のものも、当然、使用することができる。
【0064】
本発明に関して好ましい親水コロイドは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、特に、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムである。
【0065】
親水コロイドの粒径は、一般に50~100ミクロン(50~100μm)、有利には約80ミクロン(80μm)である。
【0066】
一般に、本発明に係る組成物に組み込まれる親水コロイド粒子の量は、有利には、当該組成物の総重量に対して25重量%以下、有利には、約2~20重量%、好ましくは5~18重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0067】
親水コロイド粒子が、エラストマーマトリクスが形成されるとそのエラストマーマトリクスの表面に堆積される場合、それらの量は、好ましくは、エラストマーマトリクスの総重量に対して、約1~10重量%、より具体的には2~5重量%になろう。
【0068】
滲出物の吸収の間に貫通孔の閉塞を生じる当該組成物のゲル化を回避するために、これらの値の範囲内での親水コロイド粒子の量の選択は、インターフェース型創傷被覆材の製造、特に自己支持性で通気性のインターフェース型創傷被覆材の製造にとっては重要である。
【0069】
酸化防止剤
本発明に係る組成物は、酸化防止剤も含んでよい。
【0070】
本明細書中で、「酸化防止剤」は、特に酸素、熱、オゾン又は紫外線に対して組成物中の化合物の安定性を確実にするために、当業者によって一般に使用される化合物を意味するものとする。
【0071】
好適な酸化防止剤の例としては、特にフェノール系酸化防止剤、特にBASFによりIRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)565及びIRGANOX(登録商標)1076の名称で販売されている製品等が挙げられる。
【0072】
一般に、これらの酸化防止剤は、単独又は組み合わせて、当該組成物の総重量に対して約0.05~1重量%、好ましくは0.05~0.2重量%の量で使用することができる。
【0073】
本発明に関しては、当該組成物の総重量に対して0.05~0.2重量%の量での製品IRGANOX(登録商標)1010の使用が好ましい。
【0074】
さらなる活性成分
酸化防止剤に加えて、本発明に係る組成物は、治癒を誘導若しくは加速するか、又は創傷の処置において好ましい役割を果たすための1種以上の他の活性物質を含んでもよい。
【0075】
これらの活性物質としては、特に、例として
- 治癒を促進する薬剤、例えばレチノール、ビタミンA、ビタミンE、N-アセチルヒドロキシプロリン、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のエキス、パパイン、シリコーン、タイム、ニアウリ、ローズマリー及びセージの精油、ヒアルロン酸、ショ糖オクタ硫酸エステルカリウム、スクラルファート、アラントイン及びメトホルミン、
- 抗菌剤、例えば銀の塩又は錯体(硫酸銀、硝酸銀、フルファミド銀又はさらには銀ベースのゼオライト等)、亜鉛塩又は銅塩、メトロニダゾール、ネオマイシン、ペニシリン類、クラブラン酸、テトラサイクリン類、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、アミノグリコシド類、アミカシン、ゲンタマイシン及びプロバイオティクス、
- 防腐剤、例えばクロルヘキシジン、トリクロサン、ビグアニド、ヘキサミジン、チモール、複方ヨード・グリセリン、ポビドン-ヨウ素,塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム、
- 鎮痛剤、例えばパラセタモール、コデイン、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、モルヒネ及びその誘導体、副腎皮質ステロイド(コルチコステロイド)類及びそれらの誘導体、
- 局所麻酔薬、例えばリドカイン、ベンゾカイン、ジブカイン、プラモキシン塩酸塩、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン及びエチドカイン、
- 抗炎症薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アスピリン又はアセチルサリチル酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ケトロラク、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、インドメタシン、ナプロキシノド、ニメスリド、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、フェニルブタゾン、ニフルミン酸及びメフェナム酸
が挙げられる。
【0076】
これらの活性薬剤は、当該組成物の総重量に対して約0.01~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは2~10重量%の量で使用することができる。
【0077】
当該組成物内の親水コロイドの存在は、これらの活性薬剤の放出を促進する。
【0078】
当然、本発明に係る組成物は、洗浄相における作用について公知の1以上の他の化合物を含んでもよく、このような化合物としては、例えば
- 酵素、
- 尿素
が挙げられる。
【0079】
添加剤
本発明に係る組成物での使用に好適な添加剤としては、活性薬剤の放出を促進するための公知の化合物、例えば活性薬剤を組み込むURGOTUL(登録商標)製品で一般に使用される製品Montanox(登録商標)80又はSepinov(登録商標)EMT 10等が挙げられる。
【0080】
これらの添加剤は、当該組成物の総重量に対して約1~15重量%の量で使用することができる。
【0081】
明らかに、これまで記載されてきた特定の実施形態は、別々に又はそれらの組み合わせのうちのいずれかに従って実施することができる。
【0082】
本発明に係る組成物により、特に、自己支持性インターフェース型創傷被覆材又は骨格又は基材を有するインターフェース型創傷被覆材を製造することが可能になる。
【0083】
インターフェース型創傷被覆材を製造することに関しては、製品URGOTUL(登録商標)で使用されている化合物(共重合体、鉱油、ワセリン、酸化防止剤及び親水コロイド)と同じタイプ、又は同一の化合物を含む組成物を使用することが好ましい。
【0084】
エラストマーマトリクス
創傷被覆材を製造するために、本発明に係る組成物は、エラストマーマトリクスを形成するために、薄層として、好ましくは上記層に分散して配置される貫通孔を有する薄層として、成形される。
【0085】
本発明は、別の態様によれば、例えば上記のとおりの本発明に係る組成物から得られるエラストマーマトリクスにも関する。
【0086】
貫通孔は、単独で、又は創傷被覆材製造のために一般に使用される仮基材若しくは保護膜と組み合わせて薄層として予め成形された本発明に係る組成物を穿孔若しくは打抜加工することにより、又は仮基材上へのスクリーンコーティングによってさえも製造することができる。
【0087】
あるいは、本発明に係る重合体マトリクスは、貫通孔を形成するために選択されたパターンが刻まれたプレート上での上記の組成物の高温注型、並びにその後の冷却及び離型により製造することができる。
【0088】
一般に、本発明に係る重合体マトリクスは、0.4mm~2mm、好ましくは0.5mm~1mm、より好ましくは約0.6~0.7mmの厚さを有する。
【0089】
上記貫通孔はいずれの形状であってもよく、例えば、円形、矩形、台形又は正方形の断面を有することになろう。
【0090】
表面積は、一般に1~7mm2である。
【0091】
これらの孔は、好ましくは、孔の総表面積が創傷被覆材の総表面積の20~70%、好ましくは30~60%であるような密度で、規則的に分布している。
【0092】
好ましい実施形態によれば、上記重合体マトリクスは、好ましくは自己支持性インターフェース型創傷被覆材で使用される場合には、好ましくは、
- 0.4~2mmのネットの厚さ、
- 1~10mm、好ましくは1~5mmの「糸幅」(2つの連続する孔の間の空間の幅)、
- 200~1700g/m2、好ましくは300~800g/m2の坪量
を有する正方形目の通気性ネット(又は格子)の形態を有する。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、このようなエラストマーマトリクスは、
- およそ750ミクロン(750μm)のネットの厚さ、
- 約0.8mmの糸厚(又は網目サイズ)、
- 約390g/m2の坪量
を有する正方形目の通気性ネットの形態にある。
【0094】
このようなエラストマーマトリクスを製造するために、さらなる詳細は特許出願、仏国特許出願公開第2936158号明細書に見出すことができる。
【0095】
骨格又は基材をコーティングするためにこのエラストマーマトリクスを使用することも想定されてれもよい。
【0096】
フレーム又は基材を備えるインターフェース型創傷被覆材を製造するための技術も、当業者にとっては周知であり、例えば、特許出願、国際公開第00 16725号パンフレット及び仏国特許出願公開第2936159号明細書又は国際公開第2015/018720号パンフレットに記載される方法を参照することができる。
【0097】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物によって得られるエラストマーマトリクスは付着性ではなく、換言すればこのエラストマーマトリクスは、40cN/cm未満、好ましくは35cN/cm未満の、方法EN 1939に従って求められる皮膚への接着力を有する。幅20mm及び長さ150mmの基材試料が前腕に置かれる。10分後、接着力が、90°の角度で、900mm/分の牽引速度で動力計を使用して測定される。
【0098】
創傷被覆材
本発明は、好ましい実施形態によれば、上記のエラストマーマトリクスを含むことを特徴とするインターフェース型創傷被覆材にも関する。
【0099】
目下好ましい実施形態によれば、本願は、滲出物の通過を許容するための貫通孔を保有する薄層の形態のエラストマーマトリクスを含む自己支持性インターフェース型創傷被覆材であって、上記エラストマーマトリクスは、
- 5~20%の、スチレン-飽和オレフィン-スチレンのタイプの2種のトリブロック共重合体の混合物であって、第1のトリブロック共重合体は、トルエン中の5%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有し、第2トリブロック共重合体は、トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する混合物と、
- 50~80重量%の少なくとも1種の可塑剤と、
- 5~20%の、80~125℃、好ましくは90~110℃の範囲の軟化点を有する少なくとも1種のα-メチルスチレン樹脂と
を含む組成物から得られ、
- トリブロック共重合体の含有量が5~10重量%である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して15~20重量%であり、
- トリブロック共重合体の含有量が10重量%超である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して5~20重量%であり、
上記百分率は当該組成物の総重量に対するものである自己支持性インターフェース型創傷被覆材に及ぶことが意図されている。
【0100】
好ましくは、本発明に係るインターフェース型創傷被覆材は、ラテックスグローブに接着しない。これを達成するために、上記組成物は、好ましくは
100重量部の、スチレン-飽和オレフィン-スチレンのタイプの2種の特定のトリブロック共重合体の混合物Pであって、そのうちの第1のトリブロック共重合体は、トルエン中の5%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~1Pa.sの粘度を有し、第2のトリブロック共重合体は、トルエン中の15%(質量/質量)溶液で測定した場合に0.01~0.5Pa.sの粘度を有する混合物Pに対して、
- 300~1000重量部の可塑剤H、好ましくは油可塑剤、及び
- 90~600重量部のワセリンV
を含んでもよく、
- エラストマー、可塑剤及びワセリンの混合物のP+H+Vによって表される全量は490~1700重量部であり、
- P+H+V/Vによって表される、エラストマー、可塑剤及びワセリンの混合物の全量とワセリンの量との間の比は11未満であり、
2種の共重合体の上記混合物は、少なくとも20重量%の上記第1共重合体を含み、
上記組成物は、5~20重量%の、80~125℃、好ましくは90~110℃の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂をも含むことも特定され、
- トリブロック共重合体の含有量が5~10重量%である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して15~20重量%であり、
- トリブロック共重合体の含有量が10重量%超である場合、樹脂の含有量は、当該組成物の総重量に対して5~20重量%であり、
上記百分率は当該組成物の総重量に対するものである。
【0101】
当該組成物を外部環境から保護するために、当該インターフェース型創傷被覆材は、使用者により使用前に取り除かれることになる仮保護膜により、好ましくは創傷被覆材の面の各々が、被覆されることが可能である。
【0102】
当該インターフェース型創傷被覆材の取り扱いをさらに容易にするために、特に当該インターフェース型創傷被覆材が自己支持性である場合に、上記2つの仮保護膜は、特許出願、国際公開第2008/145884号パンフレット又は特許出願、国際公開第2015/018720号パンフレットに記載されるもの等の単一保護材によって置き換えられてもよく、その単一保護材の構造は、創傷へのこの創傷被覆材の施用を特に容易にする。
【0103】
本発明は、以降に提示される非限定的な実施例において例証される。
【実施例0104】
組成物の調製
例1~26の組成物を、下記表1に記載される、重量パーセントで表される割合で以下の構成成分を使用して開発した。
【0105】
エラストマー:ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)を有するブロック共重合体(SEBSと略される):
- KRATON(登録商標)G1654 ES トルエン中の5%(質量/質量)での粘度:0.02Pa.s
- KRATON(登録商標)G1650 E トルエン中の15%(質量/質量)での粘度:0.2Pa.s
可塑剤:鉱油 SHELLにより販売されているOndina(登録商標)919又はHansen & Rosenthalにより販売されているPionier 2076P
ワセリン:AIGLONにより販売されているワセリン Codex(登録商標)A
酸化防止剤:BASFにより販売されているIRGANOX(登録商標)1010
親水コロイド:ASHLANDにより販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウム CMC BLANOSE(登録商標)7H4XF、
樹脂:
- Wingtack 86、Cray Valleyにより販売されている84~90℃の範囲の軟化点を有するC9変性C5炭化水素樹脂、
- Norsolene W90又はCleartack W90、Cray Valleyにより販売されている85~95℃の範囲の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Norsolene W140、Cray Valleyにより販売されている135~145℃の範囲の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Escorez 5380、Exxon Mobilにより販売されている80~90℃の範囲の軟化点を有する脂環式炭化水素樹脂、
- YS Resin SX 100、YASUHARA CHEMICALにより販売されている100℃の軟化点を有するポリスチレン樹脂、
- Sylvares SA 100、Arizona Chemical/Kraton Polymerにより販売されている95~105℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン樹脂、
- Sylvares SA 120、Arizona Chemical/Kraton Polymerにより販売されている115~125℃の範囲の軟化点を有するα-メチルスチレン、
- Kristalex 3100LV、Eastmanにより販売されている100℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Kristalex F100 Eastmanにより販売されている96~104℃の範囲の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)、
- Kristalex F115、Eastmanにより販売されている114~120℃の範囲の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Kristalex 5140、Eastmanにより販売されている139℃の軟化点を有するポリ(スチレン-co-α-メチルスチレン)樹脂、
- Sukorez SU-400、Kolon Industriesにより販売されている97~107℃の範囲の軟化点を有するポリシクロペンタジエン樹脂。
【0106】
組成物の製造
上記可塑剤、親水コロイド及びワセリンを連続して90℃の設定温度の竪型混合機に導入し、均一な混合物が得られるまで撹拌した。
【0107】
次いで、上記共重合体(1又は複数種)、酸化防止剤及び樹脂(1又は複数種)を撹拌下で導入し、次いで温度を150℃の設定温度まで上げ、均一な混合物が得られるまで撹拌した。次いで、この混合物の中に存在する気泡を除去するために、この混合機を真空下に置いた。
【0108】
このあと、混合機を放冷し、次いで排出した。
【0109】
次に、重合体マトリクスを、油圧プレスによって高圧をかけることにより、以下のプロトコルに従って、試験するべき組成物から製造した。
【0110】
油圧プレスの2つのプレートを予熱した。非粘着性のプラスチックフィルム、例えばケイ素化フッ素化されたポリエステルフィルムをプレスの下側プレートの上に重ねた(ケイ素化フッ素化された面を下側プレートの反対側にして配置した)。上記の組成物のうちの1つのおよそ12gを上記面に重ね、ケイ素化ポリエステルフィルムで覆った(ケイ素化側をこの組成物と接触させて配置した)。2つの0.75mmのスペーサを、プレスの下側プレートの端部でこれら2つのポリエステルフィルムの間に置き、この組み立て体を200barの圧力及び約90~100℃の温度に曝した。
【0111】
このようにして製造したプレートを放冷し、それらの厚さを、約650μmの厚さを有するモデルを得るように、マイクロメータを使用してチェックした。
【0112】
破断荷重及び破断点伸びの測定
試験を実施するための条件及び使用したモデルは以下のとおりであった。
【0113】
この測定の原理は、動力計を使用して、ダンベル試験片(ダイカットしたエラストマー布帛に対応する)に一定速度Vで破断するまで引張り力を加えることである。
【0114】
従って、破断強度及び破断点伸びを測定する。
【0115】
材料及び装置
自動プレス+厚さスペーサ、
電子動力計(0.1~999mm/分)、
力センサー(測定するべき力に対して調整される)、
ダイカットしたダンベル試験片、
材料種、メカニカルポリウレタンフォーム 400μm Exopack。
【0116】
サンプリング/サンプル調整
試験片の数、n≧5
調整時間T>24時間
温度T=23℃±2℃
湿度測定RH=50%±15%。
【0117】
動作条件:
- l(試験片の幅)=12.7mm
- l0(動力計の顎部の間の距離)=90mm
- V(牽引速度)=300mm/分
【0118】
手順
試験片の調製
- 分析するべき組成物を予め脱気する、
- 自動プレスを使用して、上記脱気した組成物(750μmスペーサ)から厚さ650μmを有するエラストマーマトリクスプレートを調製する、
- 開始しないように注意して、切断ダイを使用してダンベル試験片を切り出す。
【0119】
測定
- (顎部中での試験片のせん断を回避するために)2つの端を予めメカニカルPUフォーム400μmで被覆して、幅12.7mmのダンベル試験片をl0=90mmの間隔の動力計の顎部に置き、
- 速度V=300mm/分で試験片の破断まで引張試験を続け、
- 破断フロントが試験片の真っ直ぐな(直線的な)部分で生成されることを確認する。
【0120】
算出/結果の表現
- 破断時の力の値及び関連する破断点伸びを曲線から抽出する。
- 各試料参照項目について、
- 最小値、
- 最大値、
- 平均、
- 標準偏差、及び
- CV
を算出する。
【0121】
【0122】
樹脂を含有しない例1及び例15で得られたマトリクスは、破断荷重及び破断点伸びについて劣る結果を呈する。
【0123】
例2及び例3で得られたマトリクス(及び例5~14のマトリクス)は、10重量%未満のトリブロック共重合体の全含有量及び15%未満の樹脂含有量を有し、これらからは、破断荷重及び破断点伸びについて良好な結果が得られない。対照的に、10重量%未満のトリブロック共重合体の全含有量及び20%の樹脂含有量を有する本発明に係る例4で得られるマトリクスは、破断荷重及び破断点伸びについての良好な結果を呈し、これは、良好な機械的特性、特に引裂き強さに顕れる。
【0124】
さらに、本発明によらない樹脂を使用する例5、例6、例7、例11、例12、例13及び例14で得られるエラストマーマトリクスは、良好な破断荷重及び破断点伸びの結果を与えない。
【0125】
例5、例6、例7、例11及び例12で得られるエラストマーマトリクスは、白っぽい色も呈し、これは、混合物の不安定性の特徴であり、美的な観点からは許容できないものである。
【0126】
本発明に係る例16、例17、例18、例20、例21、例22、例25及び例27で得られるエラストマーマトリクスは、破断荷重及び破断点伸びについての良好な結果を有し、これは、良好な機械的特性、特に引裂き強さとして顕れる。
【0127】
本発明によらない樹脂を使用する例19及び例26で得られるエラストマーマトリクスは、良好な破断荷重及び破断点伸びの結果を与えない。
【0128】
本発明に係る単一のトリブロックカラムしか含有しない例23及び例24のエラストマーマトリクスも、引裂き強さの点で満足できるものではない。