(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082076
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】糖尿病の処置のためのペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20230606BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230606BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230606BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230606BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230606BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230606BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230606BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230606BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20230606BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230606BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20230606BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230606BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20230606BHJP
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C12N 9/10 20060101ALN20230606BHJP
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C07K 14/31 20060101ALN20230606BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20230606BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20230606BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230606BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
A61K38/10
A61K35/12 ZNA
A61K48/00
A61K47/64
A61K38/28
A61K38/26
A61K45/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P5/14
A61P3/00
A61K38/08
A61K38/45
A61K38/47
A61K38/48
A61K51/04 200
A61K51/04 320
A61K51/08 200
C12N15/10 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/10
C07K7/64
C07K14/31
C07K14/605
C07K14/62
C07K19/00
C12N9/99
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051477
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2019555219の分割
【原出願日】2018-05-04
(31)【優先権主張番号】17169500.0
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519358380
【氏名又は名称】フォリクム エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アレンフォール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥネール,ポンチュス
(72)【発明者】
【氏名】ハルトガード ニルソン,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルス,ビョルン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】哺乳動物の内分泌性、栄養性および/または代謝性疾患の処置における薬剤を提供する。
【解決手段】a)i)特定のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;ii)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)からなるペプチドと、からなる群から選択されるペプチド;かつb)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチド;c)b)のポリヌクレオチドを含むベクター;またはd)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞、を含む、薬剤とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、V(ベータ-D)TYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:167)、VDTY(ベータ-D)GDISVVYGLR(SEQ ID NO:168)、およびVDTYDG(ベータ-D)ISVVYGLR(SEQ ID NO:169)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;
ii)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)からなるペプチドと、
からなる群から選択されるペプチド;かつ
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクター;または
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞、
を含む、薬剤。
【請求項2】
ポリエチレングリコール(PEG)、単糖類、フルオロフォア、クロモフォア、放射性化合物、および細胞透過性ペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
グリコシル化されることにより、またはPEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/もしくはアルキル化により、さらに修飾されている、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
タンデムリピートを含む、またはそれからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項5】
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)およびプロテインAからなる群から選択される別のポリペプチドに融合されている、またはタグに融合されている、請求項1~4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
環状である、請求項1~5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
前記薬剤が、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニドおよびナトリウム・グルコースコトランスポータ-2(SGLT2)阻害剤からなる群から選択される、第二の、またはさらなる有効成分を含む、請求項1~6のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
医薬としての使用のための、請求項1~7のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項9】
哺乳動物の内分泌性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための医薬であって、前記医薬が、
a)(i)VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:1)、VDTYDGDISVVYGL(SEQ ID NO:3)、VDTYDGDISVVYG(SEQ ID NO:6)、GDISVVYGLR(SEQ ID NO:26)、VDTYDGDIS(SEQ ID NO:28)、VDTYDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:67)、VDVPNGDISLAYGLR(SEQ ID NO:69)、VDVPNGDISLAYGL (SEQ ID NO:71)、DVPNGDISLAYGLR( SEQ ID NO:72)、VDVPNGDISLAYG(SEQ ID NO:74)、PNGDISLAYGLR(SEQ ID NO:81)、VDVPNGDISLA(SEQ ID NO:83)、GDISLAYGLR(SEQ ID NO:94)、VDVPNGDIS(SEQ ID NO:96)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEGDIELSYGIK(SEQ ID NO:147)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、V(ベータ-D)TYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:167)、VDTY(ベータ-D)GDISVVYGLR(SEQ ID NO:168)、VDTYDG(ベータ-D)ISVVYGLR(SEQ ID NO:169)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;
(ii)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)からなるペプチドまたはペプチド類似体と、
からなる群から選択されるペプチド;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチド;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクター;または
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞、
を含む薬剤を含む、医薬。
【請求項10】
前記薬剤が、環状である、請求項9に記載の使用のための医薬。
【請求項11】
前記薬剤が、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニドおよびナトリウム・グルコースコトランスポータ-2(SGLT2)阻害剤からなる群から選択される、第二の、またはさらなる有効成分を含む、請求項9または10に記載の使用のための医薬。
【請求項12】
前記内分泌性疾患および/または代謝性疾患が、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、栄養不良関連糖尿病、特定された糖尿病、特定されていない糖尿病、グルコース調節および膵臓内分泌の障害、インスリン抵抗性症候群、耐糖能障害、高血糖症、高インスリン血症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9~11のいずれかに記載の使用のための医薬。
【請求項13】
前記内分泌性疾患および/または代謝性疾患が、甲状腺の障害、内分泌腺の障害、栄養不良、栄養欠乏症、肥満、過栄養、ならびに代謝障害からなる群から選択される、請求項9~12のいずれかに記載の使用のための医薬。
【請求項14】
前記内分泌性疾患および/または代謝性疾患が、非糖尿病性低血糖性昏睡、膵臓内分泌の障害、局在化された脂肪症、過栄養、過栄養の続発症、芳香族アミノ酸代謝の障害、分枝鎖アミノ酸代謝および脂肪酸代謝の障害、アミノ酸代謝の障害、ラクトース不耐性、炭水化物代謝の障害、スフィンゴリピド代謝の障害、脂質蓄積障害、グリコサミノグリカン代謝の障害、糖タンパク質代謝の障害、リポタンパク質代謝の障害、脂肪血症、プリンおよびピリミジン代謝の障害、ポルフィリンおよびビリルビン代謝の障害、ミネラル代謝の障害、嚢胞性線維症、アミロイドーシス、体液量減少、体液、電解質および酸・塩基平衡の障害、ならびに処置後内分泌および代謝障害からなる群から選択される、請求項9~14のいずれかに記載の使用のための医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、糖尿病および関連障害の処置に有用なペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
膵臓のランゲルハンス島においてβ細胞により産生されるペプチドホルモンのインスリンは、血中グルコースレベルの上昇に応答して放出される。こうしてグルコースは、標的組織、例えば脂肪組織、骨格筋および肝臓の細胞膜に位置するグルコーストランスポーターのインスリン依存性刺激により血液から除去される。インスリンは、膜結合インスリン受容体(IR)に結合してそれを活性化し、それにより細胞内シグナル伝達イベントのカスケードを開始してグルコースおよび脂質代謝などの複数の生物学的プロセスを調節することにより、生物学的効果を発揮する。
【0003】
現在、1型および2型糖尿病の両方の糖尿病の処置は、主にインスリン処置に頼っている。インスリン処置への補助薬が、長期作用型グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト、即ち、GLP-1と同じ受容体で作用する誘導体である。GLP-1は、インスリン分泌を刺激する代謝ホルモンである。GLP-1は、グルコース依存的に膵臓からのインスリン分泌を増加させること以外に、αおよびβ細胞の両方でインスリン感受性を上昇させること;β細胞量、インスリン発現、翻訳後修飾、および分泌を増加させること;ならびに膵臓からのグルカゴン分泌を減少させることが知られている。血漿グルコースレベルを低下させる目的でインスリン処置に補助的に用いられる他の医薬としては、DPP-IV阻害剤、メトホルミン、SGLT-2阻害剤およびスルホニル尿素が挙げられる。
【0004】
体重増加、ならびに癌および低血糖症のリスク増大などの特定の欠点が、インスリンの長期使用に関連する。したがって、インスリン抵抗性および高血糖症に取り組むことにより糖尿病を処置するだけでなく、関連の、そして結果的な合併症を低減することにより糖尿病を処置することが可能な新規な非インスリン化合物への要求が、当該分野において高まっている。
【0005】
このため、グルコース代謝を回復させて糖尿病および関連障害を処置することが可能な新規化合物を同定することは、非常に妥当性がある。複数のアプローチが企図され得るが、いずれも当業者に明白でない。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明者らは、β細胞増殖を刺激し、糖毒性条件により誘導されたアポトーシスからβ細胞を救済する能力を有し、ラットINS-1 β細胞および単離されたマウス膵島からのインスリン分泌を刺激する、ペプチドを見出した。さらに本発明者らは、耐糖能テストにおいて、該ペプチドがインビボで血漿グルコースレベルを低下させ、1型糖尿病モデルであるBB lyp/lypラットの糖尿病疾患の発病を遅延させることを見出した。こうして本開示のペプチドは、内分泌性、栄養性および代謝性疾患および障害の処置における使用に適する。
【0007】
一態様において、本開示は、
a)一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドもしくはペプチド類似体
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、該ペプチドが、25を超えないアミノ酸を含み、
条件として、X2が、Pであり、X5が、Eであり、X6が、Iであり、X7が、Dであり、 X8が、Sであり、X10が、Eであり、X12が、Sであれば、該ペプチドが、85を超えないアミノ酸残基を含む)、または
CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEGDIELSYGIK(SEQ ID NO:147)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)、およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)
からなる群から選択される、その生物活性断片および/もしくは変異体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む、またはそれからなる薬剤に関する。
【0008】
一態様において、本開示は、
a)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、V(ベータ-D)TYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:167)、VDTY(ベータ-D)GDISVVYGLR(SEQ ID NO:168)、VDTYDG(ベータ-D)ISVVYGLR(SEQ ID NO:169)
を含む、またはそれからなるペプチドまたはペプチド類似体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む薬剤に関する。
【0009】
一態様において、本開示は、本明細書の先に記載された薬剤を含む組成物に関する。
【0010】
一態様において、本開示は、医薬としての使用のための薬剤、または上記薬剤を含む組成物に関する。
【0011】
一態様において、本開示は、哺乳動物の内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための、
a)(i)一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドまたはペプチド類似体
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、該ペプチドが、25を超えないアミノ酸残基を含む);
(ii)一般式:
VDZ3Z4Z5GZ7Z8SZ10Z11YGLR(SEQ ID NO:68)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド
(式中、
Z3は、TまたはVであり;
Z4は、YまたはPであり;
Z5は、DまたはNであり;
Z7は、DまたはGであり;
Z8は、IまたはGであり;
Z10は、VまたはLであり;
Z11は、VまたはAである)、ならびに
(iii)KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)、およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む薬剤に関する。
【0012】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患を処置するための方法に関する。
【0013】
一態様において、本開示は、内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置のための医薬の製造のための、本明細書に記載された薬剤の使用に関する。
【0014】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、糖尿病の発病を遅延させるための方法に関する。
【0015】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、血中グルコースレベルを低下させるための方法に関する。
【0016】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、ベータ細胞の形態を改善するための方法、例えばインビトロ法に関する。
【0017】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、ベータ細胞の生存性を改善するための方法に関する。
【0018】
一態様において、本開示は、個体における膵臓の疾患、障害または損傷の診断のための診断組成物の調製のための、本明細書に記載された薬剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】FOL-005およびFOL-014はβ細胞の増殖を誘導した。溶液中の上昇濃度のFOL-005の添加が、48時間後のINS-1細胞の増殖増加を誘導した(
図1A)。FOL-005でコーティングされ、ウシ血清アルブミン(BSA)で遮断されたウェルは、BSAのみをコーティングされた対照(ctrl)ウェルに比較してβ細胞のより多くの増殖を誘導した(
図1B)。FOL-014でプレコーティングされ、BSAで遮断されたウェルは、BSAのみをコーティングされたウェルに比較してより多くの増殖を誘導した(
図1C)。データを、未刺激対照(ctrl)細胞に比較した計数/分(CPM)として表す。平均±SDを、各群の10~12の異なる観察について表す。
【
図2】FOL-005はβ細胞を糖毒性から防御した。20mMグルコース中で48時間インキュベートされたINS-1細胞は、5mMグルコースでインキュベートされた細胞に比較してより多くのアポトーシス細胞(アネキシンV陽性)を示した。20mMグルコースと共にインキュベートされた細胞へのFOL-005の添加は、20mMグルコースのみに比較してアポトーシス細胞のレベルを低下させた(
図2A)。カスパーゼ-3活性により測定されたアポトーシスは、5mMグルコースに比較して20mMでINS-1細胞において増加した。FOL-005の添加は、糖毒性誘導性カスパーゼ-3活性の割合を低減した(
図2B)。平均±SDを、各群の4~8の異なる観察について表す。
【
図3】FOL-005刺激後に膵島およびβ細胞からインスリン分泌が増加した。FOL-005は、β細胞および膵島インスリン分泌を刺激した。INS-1細胞からのインスリン放出は、非刺激対照(ctrl)およびスクランブル対照のペプチド(FOL-015)に比較して、非グルコース含有培地中でのFOL-005(6μM)刺激後に増加した(
図3A)。FOL-005は、低(5mM)および高(20mM)グルコースの両方でINS-1からのインスリン放出を刺激した(
図3B)。FOL-005(6μm)またはGLP-1(100nM)で刺激された単離マウス膵島は、未刺激対照膵島に比較してより多くのインスリンを分泌した(
図3C)。平均±SDを、各群の5~6の異なる観察について表す。
【
図4】FOL-014刺激後に膵島およびβ細胞からインスリン分泌が増加した。FOL-014は、β細胞および膵島からのインスリン分泌を刺激した。FOL-014(6μM)で刺激されたINS-1細胞は、未刺激対照細胞に比較してより多くのインスリンを分泌した(
図4A)。FOL-014(6μm)で刺激された単離マウス膵島は、対照膵島に比較してより多くのインスリンを分泌した(
図4B)。GLP-1(100nM)またはFOL-014(0.6μM)の添加は、インスリン分泌への影響を有さなかった。平均±SDを、各群の5~6の異なる観察について表す。
【
図5】インスリン分泌に及ぼすFOL-014の影響は用量依存性であった。FOL-014の用量を増加させることによるINS-1細胞の刺激が、テストされた濃度全てでインスリン分泌の有意な増加をもたらした。インスリン分泌は、0.6nM~60nMの範囲内のFOL-014の存在下で直線的に増加した。より高濃度では、インスリン分泌に及ぼす影響はそれほど明白でないようであった。さらに、FOL-014で誘導されたインスリン分泌は、100nM GLP-1の影響と同等であった。バーは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図6】FOL-014のインスリン分泌に及ぼす影響はグルコース濃度依存性であった。未処置の、またはFOL-014に暴露されたINS-1細胞からのインスリン分泌を、上昇するグルコース濃度の存在下で測定した。5.5mM以上のグルコースレベルでは、インスリン分泌は、未処置対照細胞に比較してFOL-014処置細胞で有意に高かった。バーは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図7】ネイティブGLP-1と共に投与されたFOL-005およびFOL-014はインスリン分泌に及ぼす相加的影響を誘発した。INS-1細胞からのインスリン放出を、GLP-1と、それぞれFOL-005およびFOL-014(3種のペプチドは全て100nM濃度)との併用処置後に測定し、各ペプチドのみの影響と比較した。GLP-1とFOL-014との組み合わせは、各ペプチドのみに比較してインスリン分泌を有意に増加させた。増加は、FOL-005とGLP-1との組み合わせでも観察された。バーは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図8】FOL-014は膵島におけるインスリンおよびグルカゴン分泌に影響を与えた。2つの異なる濃度のFOL-014をテストして、低(2.8mM)(A、C)および高(16.7mM)(B、D)濃度のグルコースでの単離されたマウス膵島に及ぼす100nM GLP-1の影響と比較した。低グルコース試料では、FOL-014の存在は、インスリン分泌を増加させず、対照およびGLP-1と比較してグルカゴン分泌を減少させた。高グルコース試料では、600nM FOL-014およびGLP-1は、6μM FOL-014と異なり、インスリン分泌を有意に増加させ(B)、GLP-1と両濃度のFOL-014は、グルカゴン分泌を効率的に減少させた(D)。バーは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図9】FOL-014はグルコース注射後にインビボでの血漿グルコースレベルを低下させた。腹腔内耐糖能テスト(IPGTT)を、野生型C57bl/6マウスで実施した。200nmol/kgで投与されたFOL-014は、15分目、30分目および45分目に対照に比較して血漿グルコースレベルを有意に低下させた(P=0.0027)。30nmol/kg用量では、FOL-014は、グルコース注射後45分目に有意な影響でグルコースレベルを低下させた。点線は、平均非絶食グルコースレベルに対応する。データは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。統計解析は、スチューデントt検定を用いて実施した。
【
図10】FOL-014は、BB lyp/lypラットにおける1型糖尿病の発病を遅延させた。FOL-014で処置されたBB lyp/lypラットは、11.1mmol/l未満の血漿グルコースで定義された糖尿病の発病の有意な遅延を示した。各ラットの糖尿病の発病齢を(A)に示しており、未処置群と処置群の間に有意差があった。各日に1型糖尿病を発症した動物の割合を(B)に示しており、群間に有意差があった。(A)のエラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図11】FOL-005またはFOL-014に由来するペプチド類似体のインスリン分泌に及ぼす影響。新規なペプチド類似体を、高グルコース(16.7mM)条件下でインスリン分泌を誘導する能力について、2種の別個のINS-1細胞株(AおよびB)でテストした。この影響を、ネイティブGLP-1、FOL-005およびFOL-014に加え、高グルコースのみの影響と比較した。高グルコース対照の平均未満のインスリン放出を誘導した類似体は、非機能的と見なされた(図示しない)。インスリン分泌のレベルを、新規類似体では黒のバー、そして比較物質では対照的なパターンで示している。バーは、平均値および平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図12】FOL-005およびFOL-014は、マウスへの注射後の特異的分泌パターンを示した。
3H-FOL-005の皮下投与後に、放射能の最高の全レベルが、注射後1時間(A)および2時間(B)目の膵臓および注射部位で示された。
3H-FOL-005の蓄積は、肝臓、腎臓、唾液腺でも可視である。Pearl Trilogy Small Animal Imaging Systemを用いて、皮下注射を介したNMRIヌードマウスにおけるCy7.5標識FOL-005(C)およびFOL-014(D)のインビボ生体分布および組織局在化を検討した。初期対照造影に続いて、マウスあたり10nmol用量を投与して、ライブ造影を、5分目、20分目、50分目、60分目、2時間目、4時間目、6時間目、24時間目および48時間目に実施した。両ペプチドの高度の蓄積が、膵臓領域および注射部位で明らかであった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な記載
本開示は、特許請求の範囲に定義された通りである。
【0021】
一態様において、本開示は、一般式:
a) KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、ペプチドが、25を超えないアミノ酸を含み、
条件として、X2が、Pであり、X5が、Eであり、X6が、Iであり、X7が、Dであり、X8が、Sであり、X10が、Eであり、X12が、Sであれば、ペプチドが、85を超えないアミノ酸残基を含む)と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドまたはペプチド類似体に関する。
【0022】
一実施形態において、本開示は、一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LSYGIK(SEQ ID NO:162)
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、Iまたは非存在であり;
X7は、D、Gまたは非存在であり;
X8は、S、Gまたは非存在であり;
X10は、EまたはGであり、
ここで非存在は、アミノ酸X5がアミノ酸X10にカップリングされていることを意味する)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドまたはペプチド類似体に関する。
【0023】
一実施形態において、本開示は、
KX2LAX5IX10LSYGIK(SEQ ID NO:163)
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X10は、EまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドに関する。
【0024】
一実施形態において、本開示は、
a)i)SEQ ID NO:136、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、および156のアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド;
ii)任意の1つのアミノ酸が別のタンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸のために改変されているが、条件として5を超えないアミノ酸がそのように改変されている、i)のペプチドの任意の1つの生物活性の配列変異体;
iii)i)またはii)の任意の1つの少なくとも10の連続するアミノ酸を含む、i)またはii)の任意の1つのペプチドの生物活性断片、
からなる群から選択されるペプチドと;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む薬剤に関する。
【0025】
一実施形態において、本開示は、
a)GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む薬剤に関する。
【0026】
一実施形態において、本開示は、一般式:
VDVPZ5GDISLAYZ13LR(SEQ ID NO:164)
(式中、
Z5は、EまたはNであり;
Z13は、RまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドに関する。
【0027】
一実施形態において、本開示は、一般式:
VDVTYDGZ7Z8SVVYGLR(SEQ ID NO:165)
(式中、
Z7は、DまたはGであり;
Z8は、IまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドに関する。
【0028】
一実施形態において、本開示は、一般式:
GDPNZ5Z6Z7Z8Z9SVVYGLR(SEQ ID NO:166)
(式中、
Z5は、DまたはGであり;
Z6は、DまたはGであり;
Z7は、IまたはRであり;
Z8は、Gまたは非存在であり;
Z9は、Dまたは非存在である)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドに関する。
【0029】
本明細書で用いられる用語「非存在」、例えば「X6が、C、Iまたは非存在である」は、非存在のアミノ酸に直接隣接するアミノ酸残基が従来のアミド結合によって互いに直接つながっていることと理解されなければならない。
【0030】
本明細書に記載される用語「ペプチド類似体」は、非天然由来ペプチドを含む、またはそれからなるペプチドを指す。
【0031】
本明細書で用いられる用語「アミノ酸」は、標準の20の遺伝子コードされたアミノ酸および「D」形態(天然の「L」形態に比較して)の対応する立体異性体、オメガアミノ酸および他の天然由来アミノ酸、非従来型アミノ酸(例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸など)、ならびに化学的に誘導されたアミノ酸を包含する(以下参照)。
【0032】
「アラニン」または「Ala」または「A」など、アミノ酸が具体的に列挙されている場合、他に明白に言及されない限り、L-アラニンおよびD-アラニンの両方を指す。所望の機能的性質が、ペプチドにより保持される限り、他の非従来型アミノ酸が、本開示のペプチドに適切な成分であってもよい。示されたペプチドの場合、適宜、各コードされたアミノ酸残基が、従来のアミノ酸の普通の名称に対応する一文字の呼称により表される。
【0033】
1つまたは複数のアミノ酸の化学的誘導体は、機能的側鎖基との反応により実現され得る。そのような誘導体としては、例えば遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するように遊離アミノ基が誘導されたそれらの分子が挙げられる。遊離カルボキシル基を誘導体化して、塩、メチルおよびエチルエステル、または他のタイプのエステルおよびヒドラジドを形成させてもよい。遊離ヒドロキシル基を誘導体化して、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成させてもよい。同じく、化学的誘導体として含まれるのは、20種の標準的アミノ酸の天然由来アミノ酸誘導体を含有するそれらのペプチドである。例えば、4-ヒドロキシプロリンで、プロリンを置換していてもよく;5-ヒドロキシリシンで、リシンを置換していてもよく;3-メチルヒスチジンで、ヒスチジンを置換していてもよく;ホモセリンでセリンを置換し、オルニチンでリシンを置換していてもよい。必須の活性が維持される限り、誘導体はまた、1種または複数の付加または欠失を含むペプチドを含む。他の含まれる修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化またはチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニアまたはメチルアミンでの)および類似の末端修飾である。
【0034】
本開示のペプチドの幾つかは、天然由来のオステオポンチンタンパク質の部分領域とアミノ酸配列類似性を共有する。幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、天然由来オステオポンチンタンパク質の活性断片、または断片などの変異体と見なされてもよい。
【0035】
本開示のペプチドの幾つかは、天然由来のテネイシンタンパク質の部分領域とアミノ酸配列類似性を共有する。幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、天然由来テネイシンタンパク質の活性断片、または断片などの変異体と見なされてもよい。
【0036】
「断片」には、アミノ酸配列の少なくとも5つの隣接するアミノ酸、例えばアミノ酸配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14または15の隣接するアミノ酸が、含まれる。したがって該断片は、15以下のアミノ酸長、例えば14、13、12、11、10、9、8、7、6または5アミノ酸長であってもよい。
【0037】
一実施形態において、上記ペプチドは、80を超えない、75を超えない、70を超えない、65を超えない、60を超えない、55を超えない、50を超えない、55を超えない、40を超えない、35を超えない、30を超えない、28を超えない、26を超えない、24を超えない、22を超えない、20を超えない、19を超えない、18を超えない、17を超えない、16を超えない、15を超えない、14を超えない、13を超えない、12を超えない、11を超えない、10を超えないアミノ酸長など、85を超えないアミノ酸長である。
【0038】
別の実施形態において、上記ペプチドは、5~20の間、8~20の間、8~16の間、10~15の間のアミノ酸長など、5~30の間のアミノ酸長である。
【0039】
さらに別の実施形態において、上記断片は、14未満のアミノ酸長、13未満のアミノ酸長、12未満のアミノ酸長、11未満のアミノ酸長、10未満のアミノ酸長、9未満のアミノ酸長、8未満のアミノ酸長、7未満のアミノ酸長、6未満のアミノ酸長、5未満のアミノ酸長など、15以下のアミノ酸長を含む。
【0040】
用語「変異体」は、親ペプチドと100%のアミノ酸配列同一性を共有しないペプチドを指し、即ち、1種または複数のアミノ酸が突然変異されていなければならない。「突然変異された」は、親ペプチド内の指定された位置のアミノ酸を改変することを指す。例えば指定された位置のアミノ酸が、欠失、改変、置換されていてもよく、または1つもしくは複数のアミノ酸の挿入/付加の部位であってもよい。該置換が保存的または非保存的であり得ることは、当業者に察知されよう。
【0041】
一実施形態において、上記ペプチド変異体は、5を超えないアミノ酸が別のタンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸で改変されており、4を超えないアミノ酸、3を超えないアミノ酸、2を超えないアミノ酸、1を超えないアミノ酸などが、改変されている、配列を含む、またはそれからなる。一実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸が、保存的に置換されている。「保存的に置換された」は、ペプチドの機能が有意に改変されないような、1つのアミノ酸の、類似の特性(サイズ、疎水性など)を有する別のアミノ酸での置換を指す。したがって「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの意図する組み合わせである。
【0042】
別の実施形態において、上記ペプチドは、該配列のN-および/もしくはC-末端で、ならびに/または内部に挿入された、1つまたは複数の追加のアミノ酸を含む、またはそれからなる。一実施形態において、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20の追加のアミノ酸など、少なくとも2の追加のアミノ酸が挿入されている。該追加のアミノ酸は、野生型ヒトオステオポンチン(SEQ ID NO:66)の対応する位置からの、または野生型ネズミオステオポンチン(SEQ ID NO:134)の対応する位置からのアミノ酸であってもよい。野生型オステオポンチンの「対応する位置」という用語は、追加のアミノ酸が上記の野生型オステオポンチンの中の同等の位置に存在するものと同じである、ということを本発明者らは意味する(イメージとしては、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列で、SEQ ID NO:66の斜体の下線が引かれた配列が置き換えられている)。
【0043】
別の実施形態において、該ペプチドは、SEQ ID NO:1、136、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、67、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、135、137、138、139、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、167、168および169;
【化1】
からなる群から選択される。
【0044】
一実施形態において、上記ペプチドは、哺乳動物オステオポンチン変異体および/または断片などのオステオポンチンに由来する。
【0045】
一実施形態において、上記ペプチドは、非タンパク質原性アミノ酸残基を含むペプチドなどの非天然由来である。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、PEG、単糖類、フルオロフォア、クロモフォア、放射性化合物、および細胞透過性ペプチドからなる群から選択され得る部分にさらにコンジュゲートされている。一実施形態において、該フルオロフォアは、ルシファイエロー、ビオチン、5,6-カルボキシルテトラメチルローダミン(TAMRA)、インドジカルボシアニン(C5)、Alexa Fluor(登録商標) 488、 Alexa Fluor(登録商標) 532、Alexa Fluor(登録商標) 647、ATTO 488、ATTO 532、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、Alexa Fluor(登録商標) 350、DY-415、ATTO 425、ATTO 465、Bodipy(登録商標) FL、フルオレセインイソチオシアナート、Oregon Green(登録商標) 488、Oregon Green(登録商標) 514、Rhodamine Green(商標)、5’-テトラクロロ-フルオレセイン、ATTO 520、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、Yakima Yellow(商標)色素、Bodipy(登録商標) 530/550、ヘキサクロローフルオレセイン、Alexa Fluor(登録商標) 555、DY-549、Bodipy(登録商標) TMR-X、シアニンホスホラミダイト(シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7.5)、ATTO 550、Rhodamine Red(商標)、ATTO 565、カルボキシ-X-ローダミン、テキサスレッド(スルホローダミン101酸塩化物)、LightCycler(登録商標) Red 610、ATTO 594、DY-480-XL、DY-610、ATTO 610、LightCycler(登録商標) Red 640、Bodipy 630/650、ATTO 633、Bodipy 650/665、ATTO 647N、DY-649、LightCycler(登録商標) Red 670、ATTO 680、LightCycler(登録商標) Red 705、DY-682、ATTO 700、ATTO 740、DY-782、IRD 700、IRD 800、CAL Fluor(登録商標) Gold 540nm、CAL Fluor(登録商標) Gold 522nm、CAL Fluor(登録商標) Gold 544nm 、CAL Fluor(登録商標) Orange 560nm、CAL Fluor(登録商標) Orange 538nm、CAL Fluor(登録商標) Orange 559nm、CAL Fluor(登録商標) Red 590nm、CAL Fluor(登録商標) Red 569nm、CAL Fluor(登録商標) Red 591nm、CAL Fluor(登録商標) Red 610nm、CAL Fluor(登録商標) Red 590nm、CAL Fluor(登録商標) Red 610nm、CAL Fluor(登録商標) Red 635nm、Quasar(登録商標) 570nm、Quasar(登録商標) 548nm、Quasar(登録商標) 566nm (Cy 3)、Quasar(登録商標) 670nm、Quasar(登録商標) 647nm、Quasar(登録商標) 670nm、Quasar(登録商標) 705nm、Quasar(登録商標) 690nm、Quasar(登録商標) 705nm (Cy 5.5)、Pulsar(登録商標) 650 Dyes、SuperRox(登録商標) Dyes)からなる群から選択される。
【0047】
別の実施形態において、上記ペプチドは、グリコシル化されることなど、またはPEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/もしくはアルキル化により、さらに修飾されている。
【0048】
一実施形態において、上記ペプチドは、本明細書に記載された配列の任意の1つまたは複数のアミノ酸配列を含み得る、またはそれからなり得るタンデムリピートを含む、またはそれからなる。
【0049】
一実施形態において、上記ペプチドは、環状である。該環状構造は、任意の適切な合成方法により実現され得る。したがってヘテロデチックなつながりとしては、ジスルフィド架橋、システイン架橋、アルキレン架橋またはスルフィド架橋を介した形成を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0050】
さらなる実施形態において、該ペプチドは、融合を含む、またはそれからなる。例えば該ペプチドは、SEQ ID NO:1または136のアミノ酸配列の融合を含んでいてもよい。
【0051】
ペプチドの「融合」という用語は、例えば任意の他のペプチドに融合されたSEQ ID NO:1または136(またはその断片もしくは変異体)、に対応するアミノ酸配列に関する。例えば上記ペプチドは、上記ペプチドの精製を容易にするために、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはプロテインAなどのポリペプチドに融合されていてもよい。そのような融合の例は、当業者に周知である。同様に上記ペプチドは、His6などのオリゴ-ヒスチジンタグに、または周知のMycタグエピトープなどの抗体によって認識されるエピトープに、融合されていてもよい。上記ペプチドの任意の変異体または誘導体への融合もまた、本開示の範囲に含まれる。
【0052】
あるいは該融合された部分は、当業者に公知の通り、該ポリペプチドの細胞内取り込みを促進することが可能な親油性分子またはペプチドドメインであってもよい。
【0053】
新規なペプチド
一実施形態において、本開示は、KPLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:136)、GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、またはそれらの変異体もしくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドに関する。
【0054】
一実施形態において、本開示は、KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEDISIELSYGIK(SEQ ID NO:145)、KPLAEIGDIELSYGIK(SEQ ID NO:146)、KPLAEGDIELSYGIK(SEQ ID NO:147)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KPLAEIDSIELTYGIK(SEQ ID NO:149)、KPLAEIDGIELSYGIK(SEQ ID NO:150)、KPLAEIDGIELTYGIK(SEQ ID NO:151)、KPLAEIGSIELSYGIK(SEQ ID NO:152)、KGLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:153)、KPLAGIDSIGLSYGIK(SEQ ID NO:154)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)、またはそれらの変異体もしくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドに関する。
【0055】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KPLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:136)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0056】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KPLAGIDSIGLSYGIK(SEQ ID NO:154)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0057】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KGLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:153)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0058】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0059】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KPLAEIDGIELTYGIK(SEQ ID NO:151)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0060】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KPLAEIGSIELSYGIK(SEQ ID NO:152)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0061】
一実施形態において、本開示は、アミノ酸配列KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなるペプチドを含む薬剤に関する。
【0062】
一実施形態において、本開示は、
b)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、V(ベータ-D)TYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:167)、VDTY(ベータ-D)GDISVVYGLR(SEQ ID NO:168)、VDTYDG(ベータ-D)ISVVYGLR(SEQ ID NO:169)を含む、またはそれからなるペプチドまたはペプチド類似体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む薬剤に関する。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記変異体は、任意の1つのアミノ酸が別のタンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸で改変されている配列を含む、またはそれからなるが、条件として、5を超えないアミノ酸がそのように改変されており、4を超えないアミノ酸、3を超えないアミノ酸、2を超えないアミノ酸、1を超えないアミノ酸などが改変されている。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸が、保存的に置換されている。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、該配列のN-および/もしくはC-末端で、ならびに/または内部に挿入された、1つまたは複数の追加のアミノ酸を含む、またはそれからなる。一実施形態において、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20の追加のアミノ酸など、少なくとも2の追加のアミノ酸が挿入されている。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、80を超えない、75を超えない、70を超えない、65を超えない、60を超えない、55を超えない、50を超えない、55を超えない、40を超えない、35を超えない、30を超えない、28を超えない、26を超えない、24を超えない、22を超えない、20を超えない、19を超えない、18を超えない、17を超えない、16を超えない、15を超えない、14を超えない、13を超えない、12を超えない、11を超えない、10を超えないアミノ酸長など、85を超えないアミノ酸長である。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、PEG、単糖類、フルオロフォア、クロモフォア、放射性化合物、および細胞透過性ペプチドからなる群から選択され得る部分にさらにコンジュゲートされている。
【0067】
一実施形態において、上記ペプチドは、グリコシル化されることなど、またはPEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/もしくはアルキル化により、さらに修飾されている。
【0068】
幾つかの実施形態において、上記ペプチドは、本明細書の先に記載された配列の任意の1つまたは複数のアミノ酸配列を含み得る、またはそれからなり得るタンデムリピートを含む、またはそれからなる。
【0069】
一実施形態において、上記ペプチドは、環状である。該環状構造は、任意の適切な合成方法により実現され得る。したがってヘテロデチックなつながりとしては、システイン架橋、ジスルフィド架橋、アルキレン架橋またはスルフィド架橋を介した形成を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
適応症
本開示の薬剤は、内分泌性、栄養性および代謝性疾患および障害の処置における使用に適する。
【0071】
一実施形態において、該内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置を必要とする哺乳動物は、ヒトである。
【0072】
幾つかの実施形態において、該内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患は、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、栄養不良関連糖尿病、グルコース調節および膵臓内分泌の障害、インスリン抵抗性症候群、耐糖能障害、高血糖症、高インスリン血症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
幾つかの実施形態において、該内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患は、糖尿病、甲状腺の障害、グルコース調節および膵臓内分泌の障害、内分泌腺の障害、栄養不良、栄養欠乏症、肥満、過栄養、ならびに代謝障害からなる群から選択される。
【0074】
一実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、栄養不良関連糖尿病、特定された糖尿病、および特定されていない糖尿病からなる群から選択される。
【0075】
一実施形態において、グルコース調節および膵臓内分泌の障害は、非糖尿病性低血糖性昏睡および膵臓内分泌の障害からなる群から選択される。
【0076】
一実施形態において、肥満および過栄養の障害は、局在化された脂肪症、過栄養、および過栄養の続発症からなる群から選択される。
【0077】
一実施形態において、栄養欠乏症の障害は、芳香族アミノ酸代謝の障害、分枝鎖アミノ酸代謝および脂肪酸代謝の障害、アミノ酸代謝の障害、ラクトース不耐性、炭水化物代謝の障害、スフィンゴリピド代謝の障害、脂質蓄積障害、グリコサミノグリカン代謝の障害、糖タンパク質代謝の障害、リポタンパク質代謝の障害、脂肪血症、プリンおよびピリミジン代謝の障害、ポルフィリンおよびビリルビン代謝の障害、ミネラル代謝の障害、嚢胞性線維症、アミロイドーシス、体液量減少、体液、電解質および酸・塩基平衡の障害、ならびに処置後内分泌および代謝障害からなる群から選択される。
【0078】
組成物
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤を含む組成物に関する。
【0079】
一態様において、本開示は、哺乳動物における内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための、
a)(i)一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、該ペプチドが、25を超えないアミノ酸残基を含む);ならびに
(ii)一般式:
VDZ3Z4Z5GZ7Z8SZ10Z11YGLR(SEQ ID NO:68)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド
(式中、
Z3は、TまたはVであり;
Z4は、YまたはPであり;
Z5は、DまたはNであり;
Z7は、DまたはGであり;
Z8は、IまたはGであり;
Z10は、VまたはLであり;
Z11は、VまたはAである)、ならびに
(iii)KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)、およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド、
からなる群から選択されるペプチドまたはペプチド類似体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
からなる群から選択される薬剤に関する。
【0080】
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤を含む、内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための組成物に関する。一実施形態において、上記組成物は、医薬組成物である。
【0081】
一実施形態において、該薬剤は、第二の有効成分をさらに含む。上記第二の有効成分は、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、ビグアニド、フォルスコリン化合物、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチジンおよびナトリウム・グルコースコトランスポータ-2(SGLT2)阻害剤からなる群から選択されてもよい。
【0082】
他の方法
一態様において、本開示は、本明細書に記載された薬剤を必要とする対象に投与することを含む、内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患を処置する方法に関する。
【0083】
一態様において、本開示は、哺乳動物における内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための、医薬の製造のための薬剤の使用に関する。
【0084】
一態様において、本開示は、発現の際に本明細書に記載されたペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。一態様において、本開示は、発現の際に本明細書に記載されたペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドを含むベクターに関する。一態様において、本開示は、発現の際に本明細書に記載されたペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドまたは上記ベクターを含む細胞に関する。
【0085】
一態様において、本開示は、本明細書に記載されたペプチドの治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、インスリン分泌を増加させるための方法に関する。一実施形態において、上記方法は、インビトロ法である。
【0086】
一態様において、本開示は、本明細書に記載されたペプチドの治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、血中グルコースレベルを低下させるための方法に関する。一実施形態において、上記方法は、インビトロ法である。一実施形態において、インスリン分泌が、増加される。別の実施形態において、グルコースの細胞内取り込みが、増加される。さらに別の実施形態において、インスリン産生が、増加される。別の実施形態において、グルカゴン産生が、減少される。
【0087】
一態様において、本開示は、本明細書に記載されたペプチドの治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、β細胞の形態を改善するための方法、例えばインビトロ法に関する。
【0088】
一態様において、本開示は、本明細書に記載されたペプチドの治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、β細胞の生存性を改善するための方法に関する。
【0089】
一態様において、本開示は、本明細書に記載されたペプチドの治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、糖尿病、ならびに糖尿病関連の障害および疾患の発病を遅延させるための方法に関する。
【0090】
本開示の一実施形態において、該薬剤は、検出可能な部分をさらに含み得る。例えば検出可能な部分は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123Iおよび201Tlからなる群から選択される放射性同位体などの放射性同位体を含んでも、またはそれからなってもよい。したがって該結合部分は、マルチイメージング(例えば、SPECT、PET、MRI、光学または超音波)の能力を有するナノ粒子にカップリングされていてもよい。あるいは該検出可能な部分は、常磁性の同位体を含んでいても、またはそれからなってもよく、常磁性の同位体などは、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feからなる群から選択される。
【0091】
該薬剤が、検出可能な部分を含む場合、該検出可能な部分は、SPECT、PET、MRI、光学または超音波造影などの造影技術により検出可能であり得る。
【0092】
一態様において、本開示は、個体における膵臓の疾患、障害または損傷の診断のための診断性組成物の調製のための、本明細書に記載された薬剤の使用に関する。
【0093】
項目
1.a)ペプチドであって、該ペプチドまたはペプチド類似体が、一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチド
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、該ペプチドが、25を超えないアミノ酸残基を含み、
条件として、X2が、Pであり、X5が、Eであり、X6が、Iであり、X7が、Dであり、 X8が、Sであり、X10が、Eであり、X12が、Sであれば、該ペプチドが、85を超えないアミノ酸残基を含む)、または
SEQ ID NO:140で示される生物活性断片および/もしくは変異体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む、薬剤。
【0094】
2.一般式:
VDVPZ5GDISLAYZ13LR(SEQ ID NO:164)
(式中、
Z5は、EまたはNであり;
Z13は、RまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、薬剤。
【0095】
3.一般式:
VDTYDGZ7Z8SVVYGLR(SEQ ID NO:165)
(式中、
Z7は、DまたはGであり;
Z8は、IまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、薬剤。
【0096】
4.一般式:
GDPNZ5Z6Z7Z8Z9SVVYGLR(SEQ ID NO:166)
(式中、
Z5は、DまたはGであり;
Z6は、DまたはGであり;
Z7は、IまたはRであり;
Z8は、Gまたは非存在であり;
Z9は、Dまたは非存在である)
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む、薬剤。
【0097】
5.a)GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチドと;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む、項目2~4に記載の薬剤。
【0098】
6.該ペプチドが、一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LSYGIK(SEQ ID NO:162)
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、Iまたは非存在であり;
X7は、D、Gまたは非存在であり;
X8は、S、Gまたは非存在であり;
X10は、EまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、項目1に記載の薬剤。
【0099】
7.該ペプチドが、一般式:
KX2LAX5IX10LSYGIK(SEQ ID NO:163)
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X10は、EまたはGである)
で示されるアミノ酸配列を含む、項目6に記載の薬剤。
【0100】
8.a)アミノ酸配列GDPNDGRGDSVVYGLR(SEQ ID NO:137)、VDTYDGGISVVYGLR(SEQ ID NO:138)、VDTYDGDGSVVYGLR(SEQ ID NO:139)、VDVPEGDISLAYGLR(SEQ ID NO:157)、LDGLVRAYDNISPVG(SEQ ID NO:158)、GDPNGDISVVYGLR(SEQ ID NO:159)、VDVPNGDISLAYRLR(SEQ ID NO:160)、VDVPEGDISLAYRLR(SEQ ID NO:161)、V(ベータ-D)TYDGDISVVYGLR(SEQ ID NO:167)、VDTY(ベータ-D)GDISVVYGLR(SEQ ID NO:168)、VDTYDG(ベータ-D)ISVVYGLR(SEQ ID NO:169)
を含む、またはそれからなるペプチドまたはペプチド類似体と;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
を含む、薬剤。
【0101】
9.非天然由来、例えば非タンパク質原性アミノ酸残基を含む、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0102】
10.ある部分にコンジュゲートされている、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0103】
11.該部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、単糖類、フルオロフォア、クロモフォア、放射性化合物、および細胞透過性ペプチドからなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0104】
12.グリコシル化されることなど、またはPEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化および/もしくはアルキル化により、さらに修飾されている、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0105】
13.タンデムリピートを含む、またはそれからなる、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0106】
14.該タンデムリピートが、先行項目に記載の配列の任意の1つまたは複数のアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0107】
15.別のポリペプチドに融合されている、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0108】
16.上記ポリペプチドが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)およびプロテインAからなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0109】
17.タグに融合されている、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0110】
18.上記タグが、オリゴ-ヒスチジンタグである、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0111】
19.該ペプチドが環状であるなど、該薬剤が環状である、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0112】
20.該ペプチドまたはペプチド類似体が、例えば環状または部分環状ペプチドを形成するように、少なくとも1つの分子内システイン架橋を形成することができる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0113】
21.該ペプチドまたはペプチド類似体が、KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEDISIELSYGIK(SEQ ID NO:145)、KPLAEIGDIELSYGIK(SEQ ID NO:146)、KPLAEGDIELSYGIK(SEQ ID NO:147)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KPLAEIDSIELTYGIK(SEQ ID NO:149)、KPLAEIDGIELSYGIK(SEQ ID NO:150)、KPLAEIDGIELTYGIK(SEQ ID NO:151)、KPLAEIGSIELSYGIK(SEQ ID NO:152)、KGLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:153)、KPLAGIDSIGLSYGIK(SEQ ID NO:154)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)、またはそれらの変異体もしくは断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0114】
22.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KPLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:136)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0115】
23.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KPLAGIDSIGLSYGIK(SEQ ID NO:154)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0116】
24.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KGLAEIDSIELSYGIK(SEQ ID NO:153)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0117】
25.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0118】
26.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KPLAEIDGIELTYGIK(SEQ ID NO:151)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0119】
27.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KPLAEIGSIELSYGIK(SEQ ID NO:152)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0120】
28.該ペプチドまたはペプチド類似体が、アミノ酸配列KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、またはそれらの変異体もしくは断片を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0121】
29.該変異体が、任意の1つのアミノ酸が別のタンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸で改変されている配列を含む、またはそれからなるが、条件として、5を超えないアミノ酸がそのように改変されている、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0122】
30.該変異体が、4を超えないアミノ酸、3を超えないアミノ酸、2を超えないアミノ酸、1を超えないアミノ酸が改変されているなど、5を超えないアミノ酸が、別のタンパク質原性または非タンパク質原性アミノ酸で改変されている配列を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0123】
31.1つまたは複数のアミノ酸が、保存的に置換されている、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0124】
32.該ペプチドまたはペプチド類似体が、該配列のN-および/もしくはC-末端で、ならびに/または内部に挿入された、1つまたは複数の追加のアミノ酸を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0125】
33.該ペプチドまたはペプチド類似体が、N-またはC-末端のいずれかにコンジュゲートされた1つの追加のアミノ酸を含む、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0126】
34.80を超えない、75を超えない、70を超えない、65を超えない、60を超えない、55を超えない、50を超えない、55を超えない、40を超えない、35を超えない、30を超えない、28を超えない、26を超えない、24を超えない、22を超えない、20を超えない、19を超えない、18を超えない、17を超えない、16を超えない、15を超えない、14を超えない、13を超えない、12を超えない、11を超えない、10を超えないアミノ酸など、85を超えないアミノ酸を含む、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0127】
35.該ペプチドのN-またはC-末端にコンジュゲートされた。少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20のアミノ酸など、少なくとも2の追加のアミノ酸を含む、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤。
【0128】
36. 検出可能な部分をさらに含む、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0129】
37.該検出可能な部分が、放射性同位体を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0130】
38.該放射性同位体が、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123Iおよび201Tlからなる群から選択される、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0131】
39.該検出可能な部分が、SPECT、PET、MRI、光学または超音波造影などの造影技術により検出可能である、先行項目のいずれかに記載の薬剤。
【0132】
40.個体における膵臓の疾患、障害または損傷の診断のための診断性組成物の調製のための、先行項目のいずれかに記載の薬剤の使用。
【0133】
41.先行項目のいずれかに記載の薬剤を含む組成物。
【0134】
42.医薬組成物である、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
【0135】
43.医薬としての使用のための、先行項目のいずれか1項に記載の薬剤または組成物。
【0136】
44.哺乳動物の内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための、
a)(i)一般式:
KX2LAX5X6X7X8IX10LX12YGIK(SEQ ID NO:140)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド
(式中、
X2は、C、PまたはGであり;
X5は、EまたはGであり;
X6は、C、DまたはIであり;
X7は、D、I、SまたはGであり;
X8は、S、DまたはGであり;
X10は、EまたはGであり;
X12は、SまたはTであるが、
条件として、X12が、Tであれば、該ペプチドが、25を超えないアミノ酸残基を含む);
またはSEQ ID NO:140で示される生物活性断片および/もしくは変異体;
(ii)一般式:
VDZ3Z4Z5GZ7Z8SZ10Z11YGLR(SEQ ID NO:68)
で示されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるペプチド
(式中、
Z3は、TまたはVであり;
Z4は、YまたはPであり;
Z5は、DまたはNであり;
Z7は、DまたはGであり;
Z8は、IまたはGであり;
Z10は、VまたはLであり;
Z11は、VまたはAである):
からなる群から選択されるペプチドと;
b)発現の際にa)のペプチドをコードするポリヌクレオチドと;
c)b)のポリヌクレオチドを含むベクターと;
d)b)のポリヌクレオチドまたはc)のベクターを含む細胞と、
からなる群から選択される、薬剤。
【0137】
45.該ペプチドが、KCLAECDSIELSYGIK(SEQ ID NO:141)、CLAEIDSC(SEQ ID NO:142)、CFKPLAEIDSIECSYGIK(SEQ ID NO:143)、KPLAEIELSYGIK(SEQ ID NO:148)、KCLAEIDSCELSYGIK(SEQ ID NO:155)、およびCFKPLAEIDSIEC(SEQ ID NO:156)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、項目44に記載の使用のための薬剤または組成物。
【0138】
46.該ペプチドが、SEQ ID NO:141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、および156からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0139】
47.該ペプチドが、SEQ ID NO:1、136、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、67、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、135、137、138、139、157、158、159、160、161、167、168および169からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0140】
48.上記薬剤が、第二の、またはさらなる有効成分を含む、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0141】
49.該第二の、またはさらなる有効成分が、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチジンおよびナトリウム・グルコースコトランスポータ-2(SGLT2)阻害剤からなる群から選択される、項目48に記載の使用のための薬剤または組成物。
【0142】
50.哺乳動物における内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための、先行項目のいずれかに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0143】
51.該哺乳動物が、ヒトである、項目50に記載の使用のための薬剤または組成物。
【0144】
52.該内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患が、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、栄養不良関連糖尿病、グルコース調節および膵臓内分泌の障害、インスリン抵抗性症候群、耐糖能障害、高血糖症、高インスリン血症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0145】
53.該内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患が、糖尿病、甲状腺の障害、グルコース調節および膵臓内分泌の障害、内分泌腺の障害、栄養不良、栄養欠乏症、肥満、過栄養、ならびに代謝障害からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0146】
54.該糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病、栄養不良関連糖尿病、特定された糖尿病、および特定されていない糖尿病からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0147】
55.該グルコース調節および膵臓内分泌の障害が、非糖尿病性低血糖性昏睡および膵臓内分泌の障害からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0148】
56.該肥満および過栄養の障害が、局在化された脂肪症、過栄養、および過栄養の続発症からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0149】
57.該栄養欠乏症の障害が、芳香族アミノ酸代謝の障害、分枝鎖アミノ酸代謝および脂肪酸代謝の障害、アミノ酸代謝の障害、ラクトース不耐性、炭水化物代謝の障害、スフィンゴリピド代謝の障害、脂質蓄積障害、グリコサミノグリカン代謝の障害、糖タンパク質代謝の障害、リポタンパク質代謝の障害、脂肪血症、プリンおよびピリミジン代謝の障害、ポルフィリンおよびビリルビン代謝の障害、ミネラル代謝の障害、嚢胞性線維症、アミロイドーシス、体液量減少、体液、電解質および酸・塩基平衡の障害、ならびに処置後内分泌および代謝障害からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための薬剤または組成物。
【0150】
58.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤を必要とする対象に投与することを含む、内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患を処置する方法。
【0151】
59.哺乳動物における内分泌性疾患、栄養性疾患および/または代謝性疾患の処置における使用のための医薬の製造のための、先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の使用。
【0152】
60.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、糖尿病、ならびに糖尿病関連の障害および疾患の発病を遅延させるための方法。
【0153】
61.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、血中グルコースレベルを低下させるための方法。
【0154】
62.該インスリン分泌が、増加される、項目61に記載の方法。
【0155】
63.該グルコースの細胞内取り込みが、増加される、項目61に記載の方法。
【0156】
64.該インスリン産生が、増加される、項目61に記載の方法。
【0157】
65.該グルカゴン産生が、減少される、項目61に記載の方法。
【0158】
66.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、ベータ細胞の生存性を改善するための方法。
【0159】
67.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、ベータ細胞の形態を改善するための方法。
【0160】
68.先行項目のいずれか1つに記載の薬剤の治療有効量を必要とする個体に投与することを含む、膵島の生存性および/または形態を安定化または改善するための方法。
【0161】
実施例
本開示は、以下の実施例によりさらに示されるが、実施例は本開示を限定するものと解釈されてはならない。これらの実施例は、本開示の模範的ペプチドがβ細胞増殖を刺激し、糖毒性条件により誘導されたアポトーシスからβ細胞を防御および救済する能力を有することを実証している。模範的ペプチドがラットβ細胞および単離されたマウス膵島からのインスリン分泌を刺激する能力を有することも実証され、該ペプチドがグルカゴンレベルを低下させることも実証される。さらに実施例は、該ペプチドが耐糖能テストにおいてインビボで血漿グルコースレベルを低下させること、および該ペプチドがBB lyp/lypラットにおける1型糖尿病の発病を遅延させることを実証している。
【0162】
実施例1:ペプチドの設計
新規なペプチドを、以下の合理的な構造活性研究に従って設計した。FOL-005(SEQ ID NO:1)では、該ペプチドを、RGD部位周辺で設計したが、潜在的に異なるインテグリンと相互作用する可能性がある異なる構造を作製するために突然変異させた。FOL-005と類似の配列が、テネイシンCにおける第三のフィブロネクチンIII型リピートドメイン(TNfn3)において同定され、FOL-005の突然変異RGD部位と適度に類似していることが見出された。1つのペプチドをこの配列から設計し、FOL-014で表した。テネイシン3 TNfn3ドメインのX線結晶構造(PDB code 1 TEN、Leahy et al. (1992) Science 258(5084):987-91)を解析した。FOL-014(SEQ ID NO:136)配列は、βターンの前および3番目のベータシート全体に広がる。FOL-014変異体を設計して、三次元分子構造の構造的修飾および安定化を可能にした。具体的には該ペプチド変異体は、ベータターン領域が露出した側鎖および幾つかの環状変異体で覆われていて、幾何学的構造が維持されていた。
【0163】
ペプチドは全て、複数のペプチド製造業者を利用して固相ペプチド合成により合成された。主に該ペプチド変異体は、カリフォルニア所在のBiopeptide Inc.により提供された。
【0164】
実施例2:FOL-005およびFOL-014はINS-1細胞の増殖を誘導した
FOL-005およびFOL-014が、β細胞の増殖を誘導し得るか否かを検討するために、本発明者らは、INS-1細胞を用いた。ラットINS-1細胞を、補充されたRPMI培地中で96ウェルプレートに播種し、2時間後に培地を補充のないRPMIに交換した。
【0165】
増殖実験の際に、細胞を異なるテスト条件(FOL-005、FOL-014、コーティングあり、または溶液中、48時間インキュベーション)でインキュベートし、培養期間の最後の20時間に、細胞を1μCi/ウェル[メチル-3H]チミジンでパルス標識した。その後、細胞を、FilterMateハーベスターを使用してガラス繊維フィルター上に回収した。フィルターを風乾し、結合した放射能を、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。FOL-005がβ細胞増殖に影響を及ぼすか否かを試験するために、INS-1細胞を増加量の可溶性FOL-005(0.06~6μM)で48時間処置し、増殖を、新たに合成されたDNAへの放射能標識チミジン取り込みで測定した。FOL-005は、INS-1細胞の増殖を刺激した(
図1A)。FOL-005またはFOL-014のいずれかをコーティングされ、後にウシ血清アルブミン(BSA)でブロックされ、その後、INS-1細胞を添加されたウェルもまた、対照(Ctrl)コーティングウェルに比較して増殖を刺激した(
図1B~C)。
【0166】
これにより、FOL-005およびFOL-014がβ細胞と相互作用し、増殖を誘導することが実証された。
【0167】
実施例3:FOL-005は糖毒性からのβ細胞を防御した
膵臓β細胞における糖毒性は、2型糖尿病の確立されたプロセスであるため、本発明者らは次に、糖毒性条件でのβ細胞に及ぼすFOL-005の防御効果を検討した。最初に本発明者らは、20mMグルコースが48時間暴露後にINS細胞において細胞アポトーシスを誘導することを確認した。高グルコース(20mM)含有RPMI培地は、5mMグルコースを含有する培地とインキュベートされた細胞に比較して、INS細胞においてより多くのアネキシンV陽性細胞およびより大きなカスパーゼ-3活性を誘導した(
図2A~B)。FOL-005と同時間での20mMグルコースへのINS-1細胞の暴露は、アネキシンV染色およびカスパーゼ-3活性の両方の検出で細胞アポトーシスを減少させた(
図2A~B)。INS-1細胞におけるアポトーシスの割合は、カスパーゼ-3アッセイキットで測定するか、またはアネキシンVアポトーシス検出キットおよび7-AADで染色した。カスパーゼ-3活性は、380nmの励起波長および440nmの発光波長での蛍光により測定した。その後、カスパーゼ-3活性を、各ウェルのタンパク質濃度に正規化した。アネキシンV染色細胞の測定は、CyAn ADPフローサイトメーターを利用して実施し、Summit V4.3ソフトウエアで解析した。
【0168】
結論として、糖毒性がβ細胞アポトーシスを誘導することは周知であるが、FOL-005の存在下では、糖毒性誘導性アポトーシスが低減された。
【0169】
実施例4:FOL-005はINS-1細胞からのインスリン分泌を誘導した
インスリン分泌に及ぼすFOL-005の刺激性効果を検討するために、INS-1 β細胞を以下の実験に用いた。細胞をcRPMI中に一晩、播種し、その後、PBSで洗浄して、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンを補充されたクレブス・リンゲル重炭酸緩衝液(KRB)(pH7.4)中、37℃で60分間プレインキュベートした。プレインキュベーションの後、緩衝液を交換して、INS-1細胞を異なるテスト条件(0mM、5mMまたは20mMグルコース)でインキュベートして、37℃で60分間、ペプチドFOL-005もしくはFOL-015(SEQ ID NO:158)で刺激するか、または未処置のまま放置した。インキュベーションの直後に、該緩衝液のアリコットを取り出して、インスリンラジオイムノアッセイキットを用いた次のインスリンアッセイのために凍結した。
【0170】
結果から、FOL-005ペプチドで刺激されたβ細胞は、グルコース不含の条件下で、未刺激の対照細胞またはFOL-015対照ペプチドで刺激された細胞に比較してより多くのインスリンを分泌することが実証された(
図3A)。グルコース(5mMまたは20mM)に供されたINS-1 β細胞は、FOL-005ペプチド(6μM)刺激の後のインスリン分泌により応答した(
図3B)。20mMグルコースの存在下、6μM FOL-005ペプチドで刺激されたINS-1細胞は、5mMグルコースと共にインキュベートされたFOL-005刺激細胞に比較してより多くのインスリン分泌により応答した(
図3B)。
【0171】
実施例5:FOL-005はマウス膵島からのインスリン分泌を誘導した
マウス膵島を、8週齢C57BL/6J雄マウス(Taconic)から単離した。マウスを過剰用量のイソフルランおよび頸椎脱臼により殺処分した。0.9U/mlコラーゲナーゼP 3mlを膵管に注射して、膵臓を膨張させた。その後、膵臓を取り出し、コラーゲンを37℃で19分間消化させた。試料を激しく振とうして、組織を破壊した。消化物を、Ca2+およびMg2+を含む氷冷ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に移入した。該懸濁液を10分間静置して膵島を沈ませ、膵島を新鮮なHBSSで4回洗浄した。その後、膵島をサイズに応じて精選および選別した。膵島(96ウェルプレートのウェルあたりn=3)を、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンを補充されたKRB緩衝液(pH7.4)中、37℃で10分間プレインキュベートした。プレインキュベーションの後、緩衝液を交換して、膵島を、0.1%ウシ血清アルブミンを含む新しいKRB緩衝液中の異なるテスト条件(非処置Ctrl、FOL-005ペプチド、またはGLP-1)により37℃で60分間インキュベートした。インキュベーションの直後に、該緩衝液のアリコットを取り出して、次のインスリンアッセイのために凍結した。
【0172】
結果から、GLP-1(100nM)またはFOL-005(6μM)で刺激された単離マウス膵島が、未刺激の対照膵島に比較してより多くのインスリンを分泌することが実証された(
図3C)。
【0173】
実施例6:FOL-014はINS-1細胞からのインスリン分泌を誘導した
INS-1 β細胞を用いて、インスリン分泌に及ぼすFOL-014の刺激性効果を検討した。細胞を一晩、播種し、その後、PBSで洗浄して、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンを補充されたクレブス・リンゲル重炭酸緩衝液(KRB)(pH7.4)中、37℃で60分間プレインキュベートした。プレインキュベーションの後、緩衝液を交換して、INS-1細胞を、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンを補充された新しいKRB緩衝液中でインキュベートして、37℃で60分間、ペプチドFOL-014で刺激するか、または未処置のまま放置した。インキュベーションの直後に、該緩衝液のアリコットを取り出して、次のインスリンアッセイのために凍結した。
【0174】
結果から、FOL-014ペプチドで刺激されたβ細胞が、未刺激対照細胞に比較してより多くのインスリンを分泌することが実証された(
図4A)。
【0175】
実施例7:FOL-014はマウス膵島からのインスリン分泌を誘導した
マウス膵島を、実施例5に記載された通り8週齢C57BL/6J雄マウスから単離した。その後、膵島をサイズに応じて精選および選別した。膵島(96ウェルプレートのウェルあたりn=5)を、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンを補充されたKRB緩衝液(pH7.4)200μl中、37℃で10分間プレインキュベートした。プレインキュベーションの後、緩衝液を交換して、膵島を、0.1%ウシ血清アルブミンを含む新しいKRB緩衝液中、異なるテスト条件(非処置Ctrl、FOL-014ペプチド、およびGLP-1)により37℃で60分間インキュベートした。インキュベーションの直後に、該緩衝液のアリコットを取り出して、次のインスリンアッセイのために凍結した。
【0176】
結果から、FOL-014(6μM)で刺激されたマウス膵島が、未刺激対照膵島に比較してより多くのインスリンを分泌したことが示される(
図4B)。GLP-1(100nM)またはFOL-014(0.6μm)は、インスリン分泌に影響を及ぼさなかった(
図4B)。
【0177】
実施例8~11:FOL-014、FOL-005および関連のペプチドによるINS-1細胞株からのインスリン分泌の刺激
材料と方法:他に断りがなければ、ラットINS-1 β細胞(60~70継代)を、cRPMI培地(10%ウシ胎児血清、50IU/ml ペニシリン、50mg/Lストレプトマイシン、10mM HEPES、2mM L-グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、および50μM ベータ-メルカプトエタノールを補充されたRPMI1640)中、37℃および5%CO2で培養した。INS-1細胞をcRPMI培地中で96ウェルプレートに播種し(2×103細胞/ウェル)、一晩インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄して、10mM HEPES、0.1%ウシ血清アルブミンおよび2.8mMグルコースを補充されたクレブス・リンゲル重炭酸緩衝液(pH7.4)中、37℃で120分間プレインキュベートした。プレインキュベーションの後、緩衝液を、先に記載された通りで、以下に記載される個々の実験用の特別なグルコース濃度およびペプチドを補充された新しいクレブス・リンゲル緩衝液と交換した。37℃で60分間インキュベーションした直後に、該緩衝液のアリコットを取り出して、次のインスリンELIZAアッセイのために凍結した。
【0178】
実施例8.FOL-014が誘導したインスリン分泌は非直線的な用量依存性である
INS-1細胞からのインスリン放出を、上昇濃度のFOL-014に暴露された後に測定して、高グルコース濃度(16.7mM)の際のGLP-1および未処置対照の刺激性効果と比較した。テストされたFOL-014の濃度は全て、未処置対照と比較して有意に高いインスリン放出を誘発した。FOL-014は、6nM以上では100mM GLP-1と同じ範囲内のインスリン放出を惹起した。0.6~60nM範囲の濃度では、インスリン分泌が、FOL-014濃度上昇に関係して直線的に増加した。600nM以上のFOL-014濃度への暴露は、インスリン分泌を増加させなかった(
図5)。
【0179】
結果から、FOL-014がインビトロでのINS-1 β細胞からのインスリン分泌を非直線的な用量依存性で有意に増加させることが実証された。
【0180】
実施例9.インスリン分泌を誘導するFOL-014の能力はグルコース依存性である
INS-1細胞からのインスリン放出を、上昇濃度のグルコースで60nM FOL-014への暴露後に測定した。未処置対照試料では、高濃度のグルコースでは、11.1mM以上のグルコースがインスリン分泌を増加させた。FOL-014の存在下では、インスリン分泌が、既に5.5mMグルコースから、グルコース依存性で有意に増加した(
図6)。
【0181】
結果から、FOL-014の存在がインビトロでのINS-1 β細胞からのインスリン分泌をグルコース濃度依存性で有意に増加させること、およびFOL-014がわずかに高いグルコースレベルで効果的であることも実証された。
【0182】
実施例10.GLP-1と組み合わせたFOL-014またはFOL-005はいずれかのペプチドのみと比較してインスリン分泌を増加させた
INS-1細胞からのインスリン分泌を、FOL-005、FOL-014、GLP-1、またはそれらの組み合わせへの暴露後に測定し、未処置対照に対するパーセンテージとして表した。GLP-1とFOL-014の組み合わせによる効果は、GLP-1のみまたはFOL-014のみよりも有意に高いインスリン放出率をもたらした。FOL-005とGLP-1の組み合わせによる相加的影響は、それほど顕著でなかったが、GLP-1のみと比較してインスリン分泌を増加させた。実験は、16.7mMグルコースの存在下で実施した(
図7)。
【0183】
結果から、GLP-1とFOL-014の組み合わせが各ペプチドのみと比較して、インビトロでのINS-1細胞からのインスリン分泌をさらに増強させ得ることが実証された。さらにFOL-005とGLP-1の組み合わせは、インスリン分泌を傾向的に増加させた。
【0184】
実施例11.膵臓β細胞株においてインスリン分泌を誘導する新規なペプチド類似体の能力を検討した
FOL-005またはFOL-014のいずれかに由来する新規なペプチド類似体を、16.7mMグルコースの存在下で2種の別個のINS-1細胞株におけるインスリン分泌を誘導する能力に関してテストした。FOL-005、FOL-014およびGLP-1に加え、高グルコース(16.7mM)および低グルコース(2.8mM)対照(図示しない)を各実験に含め、ペプチド濃度は100nMであった。実験間の変動を修正するために、全ての値を、個々の実験における高グルコース対照の平均値に対して正規化し、そのパーセンテージとして表した。次に、類似体を性能に従ってランク付けした(
図11Aおよび11B)。高グルコース対照平均値未満のインスリン応答を誘発したペプチド類似体は、非機能的と見なされ、このため除外された(図示しない)。
【0185】
結果から、インビトロでのINS-1 β細胞からのインスリン分泌を増大させる複数の新規なペプチド類似体の能力が実証された。
【0186】
実施例12.FOL-014はマウス由来膵島からのインスリン分泌を増加させる
12週齢雄C57/b16マウスを、イソフルランおよび頸椎脱臼で安楽死させた。肝管を締めた後、0.9U/mlコラーゲナーゼP 3mlを胆管に注射して、膵臓を膨張させた。その後、膵臓を取り出して、37℃で19分間消化させた。試料を激しく振とうして、組織を破壊した。消化物を、Ca2+およびMg2+を含む氷冷ハンクス平衡塩溶液に迅速に移し入れた。懸濁液を8分間静置して膵島を沈ませ、膵島を同じ手法で4回洗浄した。その後、膵島を、サイズに応じて精選および選別した。
【0187】
単離されたばかりの膵島を、96ウェルプレート内の5の群に播種し、クレブス・リンゲル重炭酸緩衝液(pH7.4)中、37℃で1時間プレインキュベートした。膵島を、0.6もしくは6μMのFOL-014、または100nM GLP-1を補充された、あるいは対照として補充されないままのクレブス・リンゲル緩衝溶液中、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションの直後に、培地を、MercodiaのELISAキットを利用したインスリンおよびグルカゴンのアッセイ用に取り出した。単離されたマウス膵島からのインスリン(
図8AおよびB)およびグルカゴン(
図8CおよびD)分泌に及ぼすFOL-014の影響を、低グルコース(2.8mM;
図8AおよびC)または高グルコース(16.7mM;
図8BおよびD)濃度の存在下で測定した。FOL-014の有意な影響が、インスリンについては高グルコースの存在下で、そしてグルカゴンについては高および低の両方のグルコースの存在下で観察された。FOL-014の影響は、GLP-1と異なっており、低グルコース試料でもインスリン分泌を増大させたが、グルカゴン分泌は低グルコース条件では阻害できなかった。
【0188】
結果から、FOL-014が膵島におけるインスリン分泌を増大し、グルカゴン分泌を阻害することが実証された。
【0189】
実施例13.FOL-014はマウスにおける腹腔内耐糖能テスト(IPGTT)において血漿グルコースレベルを低下させた
全血を、グルコースおよびインスリン測定のために、10週齢野生型雄C57b1/6マウスから採取した。マウスを、4時間の絶食後に3群に分類し、生理食塩水、30nmol/kgペプチド(
図9A)または200nmol/kgペプチド(
図9B)のいずれかの腹腔内注射(ip)を与えた。FOL-014または生理食塩水(対照)注射の15分後に、マウスに2gグルコース/kgをipにより投与した。血中グルコース濃度を、グルコース注射後5、15、30、45および60分目に測定した。統計計算は、スチューデントt検定を利用して実施した。200nmol/kg用量のFOL-014は、血漿グルコースレベルを曲線下面積として測定された場合に、対照に比較して有意に低下させた。加えて、その差は、15、30および45分目に有意であった。30nmol/kg用量では、FOL-014は、血漿グルコースレベルを低下させ、グルコース注射後45分後に有意な影響を示した。
【0190】
結果から、FOL-014が健常野生型マウスで実施された耐糖能テストにおいて血漿グルコースレベルを低下し得ることが実証された。
【0191】
実施例14.FOL-014はBB lyp/lypラットにおい1型糖尿病の発病を遅延させた
BB lyp/lypラットを、血漿グルコースレベル≧11.1mMとして定義された1型糖尿病の発病までの、40日目から週3回のプラセボ(塩化ナトリウム、9mg/ml)またはFOL-014処置のために無作為化した。生理食塩水中の100nmol/kg用量のFOL-014ペプチドまたはプラセボ(生理食塩水)を皮下投与して、動物が限界の血漿グルコースレベルを超えたら、直ちに中止した。FOL-014処置動物とプラセボ処置を受けた動物の間の差は、1型糖尿病の発病の平均齢として表した場合(
図10A)、および1日あたりの1型糖尿病発症動物のパーセンテージとして記載された場合に(
図10B)の両方で有意であった。
【0192】
結果から、FOL-014処置がBB lyp/lypラットにおける1型糖尿病の発病を有意に遅延させることが実証された。
【0193】
実施例15.FOL-005およびFOL-014はマウスにおいて臓器特異的分布パターンを示した
C57Bl/6マウスに、H
3標識FOL-005を皮下注射し、注射後1時間目(
図12A)または2時間目(
図12B)に安楽死させた。全身を区分した後、標識されたペプチドの分布を視覚化した。強い結合が、膵臓および注射部位で明らかとなった。Pearl Trilogy Small Animal Imaging Systemを用いて、皮下注射によるNMRIヌードマウスにおける2種のCy7.5標識ペプチドFOL-005(
図12C)およびFOL-014(
図12D)のインビボ生体分布および組織局在化を検討した。高度のペプチド蓄積が、膵臓組織エリアで明らかとなった。同じ分布パターンが、i.v.投与後に見出された(図示しない)。各ペプチドの用量は、10nmol/マウスであった。マウスを、標識ペプチドの注射前、投与後5分目、20分目、50分目、60分目、2時間目、4時間目、6時間目、24時間目および48時間目に造影した。
【0194】
実施例16.診断利用のための組織特異的造影
本明細書の先に定義された通り調製された薬剤を、当業者に公知の方法を利用した適切な造影プローブまたは部分へのコンジュゲーションにより標識する。コンジュゲートされたペプチドプローブ剤を、次に対象に投与して、次に生体分布を例えば投与後48時間まで、モニタリングする。コンジュゲート化された薬剤を、こうして膵臓状態の検討のための診断または予知ツールとして用いる。そのため、該コンジュゲート化された薬剤は、疾患、疾患のプロセスおよび進行、感受性を検出、診断、またはモニタリングするのに、そして処置の有効性を計測するのに適する。該薬剤は、対象の糖尿病状態をモニタリングするのに特に適する。該コンジュゲート化された薬剤はまた、疾患、具体的には糖尿病をモニタリングするため、そして/またはその発症リスクを予測するために用いられる。該テストは、単独で、または血液テスト、遺伝子検査、尿テスト、および生検などの当業者に公知の他のテストと共に用いられる。
【0195】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】