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特開2023-82080治療用ワクチンとしての使用のためのナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082080
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】治療用ワクチンとしての使用のためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230606BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 35/13 20150101ALI20230606BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
A61K45/00
A61K38/19
A61K39/395 U
A61P35/02
A61K33/24
A61K9/16
A61K35/13
A61K35/14
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023051686
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2017561738の分割
【原出願日】2016-05-27
(31)【優先権主張番号】15305810.2
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506377178
【氏名又は名称】ナノビオティックス
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOTIX
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マリル,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ポティエ,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ローラン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌を患っておりかつ放射線療法に曝露された被験体における有効なワクチンを提供する。
【解決手段】転移癌又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~20Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転移癌又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~20Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物。
【請求項2】
転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物。
【請求項3】
電離放射線量が1.8~20Gray(Gy)の範囲にある、請求項2に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項4】
癌が転移癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む転移癌の腫瘍部位の1つ、多くて2つにインビボ適用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項5】
癌が転移癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の癌試料にエクスビボ適用され、そして、エクスビボで致死的に照射された癌細胞と癌試料由来の関連する細胞上清の少なくとも一部が、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項6】
癌が液性癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の液性癌試料にエクスビボ適用され、そして、照射された液性癌試料が、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項7】
液性癌試料が被験体の血液試料又は全血液量である、請求項6に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項8】
エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料が、少なくとも1つの追加の免疫療法薬と一緒に、被験体に少なくとも部分的に再投与され、エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料と少なくとも1つの追加の免疫療法薬が、被験体に同時又は別々のいずれかで投与される、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項9】
電離放射線量が、1分割照射処置当たり1.8、2、2.4、2.5、3、3.2、3.6、4、4.5、5、5.5、6、7、8、10、15及び20Gyから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項10】
転移癌が(i)結合組織を侵し、かつ、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、悪性線維性組織球腫から選択され、(ii)内皮又は中皮組織を侵し、かつ、血管肉腫、管肉腫、リンパ管肉腫及び中皮腫から選択され、(iii)筋組織を侵し、かつ、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫から選択され、(iv)上皮組織を侵し、かつ、腺癌、扁平上皮癌及び類表皮癌から選択され、(v)神経組織を侵し、かつ、多形膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、神経線維肉腫及び神経鞘腫から選択され、並びに(vi)APUD系を侵し、かつ、甲状腺癌、膵臓癌、胃癌及び腸癌から選択される;又は転移癌が黒色腫である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項11】
転移癌が、皮膚癌、中枢神経系の癌、頭頚部癌、肺癌、腎臓癌、乳癌、消化器癌(GIST)、前立腺癌、肝臓癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、食道癌、男性泌尿生殖器癌、婦人科癌、副腎及び後腹膜癌、骨及び軟組織の肉腫、小児癌、神経芽細胞腫、中枢神経系の癌並びにユーイング肉腫から選択される癌であるか、又はそれに由来する、請求項10に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項12】
液性癌が、血液又はリンパ系細胞組織を侵し、かつ、白血病、骨髄腫及びリンパ腫から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項13】
ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、少なくとも1つの免疫療法薬と一緒に、処置されるべき被験体に投与され、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体と少なくとも1つの免疫療法薬が、被験体に同時又は別々のいずれかで投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項14】
組成物が薬学的に許容し得る担体又はビヒクルをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項15】
組成物が少なくとも1つの免疫療法薬をさらに含む、請求項14に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項16】
(i)少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成されるナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体であって、各々が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又は請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物を(ii)少なくとも1つの免疫療法薬と一緒に含む、キット。
【請求項17】
少なくとも1つの免疫療法薬が、モノクローナル抗体、サイトカイン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載の使用のためのワクチン組成物又は請求項16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトの健康の分野に関するものであり、より明確には、癌、特に転移癌又は液性癌を患っている被験体における放射線療法という状況下にある治療用ワクチンとしての使用のための、ナノ粒子それ自体又は組成物に含まれるナノ粒子に関係するものである。その使用が本明細書に記載されるナノ粒子は、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成される。各ナノ粒子は、生理学的流体中でpH6.5~7.5でのその安定性を与える、生体適合性コーティング剤で被覆される。照射されると、これらのナノ粒子は、特に、転移癌を患っている被験体において、好ましくは、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体において、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体において、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体において、及び液性癌を患っている被験体において、放射線療法単独で得られた癌細胞の破壊と比較して、最適化された被験体自身の免疫系の刺激のおかげで癌細胞の破壊を高めることができる。本発明のおかげで、放射線療法という状況下にある、好ましくは分割放射線療法という状況下にある被験体に投与される照射線量は、周囲の健康な組織にさらに悪影響を及ぼすことなく、癌細胞破壊という点ではるかにより効率的である。本明細書は、加えて、新規組成物及びキット並びにその使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌は、2012年の死者数のうち820万人を占める、世界で一番多い死亡原因である。年間の癌の症例は、2012年の1400万件から次の20年以内には2200万件に上昇すると予想されている(WHO)。癌は、局所的に成長し、かつ/又は、リンパ系経路若しくは血行性経路を通じて全身的に伝播し得る。
【0003】
外科手術、放射線療法、及び医薬、特に化学療法薬は、癌の処置において最も重要であり、その各々を、処置されている癌の種類に応じて、単独で又は組み合わせて使用することで疾患のリスクがある全ての部位に対処することができる。治療されるべき悪性腫瘍は、局所レベルと全身レベルの両方で制御されなければならない。
【0004】
幾つかの悪性腫瘍の検出及び処置における近年の進歩にもかかわらず、転移は、依然としてよく起こり、かつ、癌死のおよそ80~90%を占める。ほとんどの患者の癌における転移性疾患に対する標準的な処置は、全身性の細胞毒性化学療法及びホルモン除去である(Dhara M. MacDermed et al. Journal of Surgical Oncology 2008)。転移癌を有する患者の処置に対する新規根治療法の開発が切実に必要とされている。
【0005】
幾つかの特定の腫瘍/癌は、選択された臓器へ伝播する類似点を有する。最もよく見られる転移の部位は、肺(例えば、原発性癌が肉腫であるとき)、肝臓(例えば、原発性癌が消化器癌であるとき)、骨(例えば、原発性癌が乳癌又は前立腺癌であるとき)及び脳(例えば、原発性癌が肺癌、腎臓癌、又は黒色腫であるとき)である。
【0006】
放射線療法は、医薬の前に二番目に多く使用される癌の処置であり、新たに診断された全癌患者のうち推計半分が、その疾患過程の幾つかの時点で放射線療法を受けている。放射線療法は、高エネルギー粒子又は高エネルギー波、例えばX線、ガンマ線、電子ビーム、又は陽子を使用して、癌細胞を破壊又は損傷する。
【0007】
局所電離放射線の治療的使用は、癌細胞を効果的に排除する目的を達成するよう設計された戦略によって大きく左右される。唯一の治療法としての放射線療法は、例えば膀胱癌及び喉頭癌という状況下において、臓器機能温存の可能性を提供することができる。補助療法として、放射線療法は、外科手術前に与えられると切除を容易にすることができ、又は、外科手術後に与えられると顕微鏡的遺残病変を処置することができる(乳房温存腫瘤摘出手術後の処置など)。新たな開発は、少数転移性疾患の部位を除去するための体幹部定位放射線療法(SBRT)の使用である。SBRTは、単回又は数分割の高線量放射線(典型的には5Gy~25Gy)による、癌の高度に限局性の処置を可能にする。少数転移状態の存在は、「完全に局所的な病変と広範囲に転移性の病変との中間」に基づく。典型的には、1個から最大で5個、例えば1、2、3、4又は5個の転移又は転移性病変に対してSBRTが考慮される(Dhara M. MacDermed et al. Journal of Surgical Oncology 2008; Ralph R. Weichselbaum Nat. Rev. Clin. Oncol. 2011)。
【0008】
しかしながら、多くの遠隔転移(典型的には、5超の、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20超の転移)を有する転移性悪性腫瘍は、予後不良と関連している(Ralph R. Weichselbaum Nat. Rev. Clin. Oncol. 2011)。
【0009】
広汎性の全身性疾患を有する患者(多くの転移を示す患者はまた「多転移性」患者と認定される)は、典型的には、腫瘍医によって、放射線療法などの現行の局部処置によって根治可能であると見なされない。その一方で、緩和的放射線療法は、症状の緩和に使用され、かつ、根治的処置として送達される放射線療法とは異なる(Sonam Sharma et al. Seminars in Oncology 2014)。緩和的放射線療法は、余命が短いことが見込まれる患者であっても、局所的進行性又は転移性の腫瘍に由来する多くの症状に対する有効な処置である(Sonam Sharma et al. Seminars in Oncology 2014)。ここで、放射線療法は、疼痛、神経学的症状、閉塞症状(胆管又は尿路閉塞など)の軽減、及び出血又は潰瘍病変の軽減に効果的な処置でありうる。また、罹患しやすくかつ症候性になりやすい領域において局所的腫瘍制御の維持を援助するために、緩和的放射線療法を使用してもよい。緩和的放射線療法における典型的な線量分割照射スキームは、以下である:
-合併症のない骨転移に対して1×8Gy、5~6×4Gy、10×3Gyを1日から最大で2週間;
-全脳放射線療法に対して5×4Gy;10×3Gy、15×2.5Gyを1週間から最大で3週間;
-気道閉塞、上大静脈症候群を引き起こす肺における進行癌に対して2×7.5~8.5Gy、10×3Gy、15×2.5Gyを1週間から最大で3週間;
-疼痛、閉塞の症状、出血を引き起こす内臓転移に対して1×8~10Gy、5×4Gy、10×3Gy、15~30×2~3Gyを1日から最大で6週間;
-良好な一般状態、期待される長期予後及び/又はわずかな転移を有する患者に対して一般的に施行される定位固定放射線療法について1~5×6~24Gyを1から最大で5日(Sonam Sharma et al. Seminars in Oncology 2014, Table 3)。
【0010】
その上、入手可能な証拠は、臨床的に治療的な線量での局所放射線が、先天及び適応免疫系の活性化をある程度誘発することを示唆している。放射線は、免疫原性細胞死(ICD)を誘導して腫瘍をインサイチューワクチンへ潜在的に変換すると示されており、これは、特に、樹状細胞による瀕死の細胞の取り込み、腫瘍由来抗原のT細胞への交差提示、及び細胞毒性CD8+T細胞の活性化を含む抗腫瘍T細胞の活性化を促進する3つの分子シグナル:腫瘍細胞表面のカルレチクリン(CRT)の露出、高移動度グループタンパク質B1(HMGB1)の放出、及びATPの放出によって特徴付けられる(Oliver Kepp et al. Oncoimmunology 2014)。
【0011】
また、放射線に対する腫瘍応答がDNA損傷を含むこと、及び、腫瘍由来DNAのセンシングがIFN産生をトリガーして、免疫原性腫瘍に対して抗腫瘍T細胞応答を生成し得ることが知られている(例えば、Theresa L. Whiteside et al. 2016 を参照のこと)。
【0012】
放射線は、腫瘍微小環境の複雑な修飾因子であり、かつ、それ自体、治療的に重要な抗腫瘍免疫応答を誘導するのに十分であることはほとんどない。なぜなら、放射線はまた、免疫抑制経路を有害に活性化することもできるからである。ICDを受けている腫瘍細胞の割合及び腫瘍微小環境の再構成が放射線後に変化する。このバランスの結果によって、瀕死の癌細胞を効果的なインサイチューワクチンに変換する放射線の能力が最終的に決まる(Sandra Demaria and Silvia C. Formenti, 2012)。
【0013】
放射線と免疫療法薬との併用は、免疫応答を刺激すると報告されている。サイトカイン[インターロイキン-2(IL2)及びインターフェロン-アルファ(IFNα)]は、治療的アプローチとして数十年間にわたり使用されている。今日、腫瘍免疫回避を克服するための多数の戦略が評価段階にある。臨床評価段階にある免疫療法的アプローチの例は、(1)T細胞チェックポイント阻害薬又はT細胞活性化経路に対する作動薬(2)IL12及びIL15などの新規サイトカイン、(3)治療用ワクチン、(4)免疫抑制細胞の排除、並びに(5)免疫細胞機能を増強するよう設計された他の薬剤及びアプローチを含む(Scott J. Antonia et al. 2014; Theresa L. Whiteside et al. 2016)。
【0014】
しかしながら、効果的な処置ワクチンを製造することは、依然として困難でありかつ課題が残っている。効果的であるために、癌処置ワクチンは、2つの目標を達成しなければならない。第一に、癌処置ワクチンは、正確な標的細胞(すなわち、癌細胞)に対して特異的な免疫応答を刺激しなければならない。第二に、免疫応答は、これらの細胞が宿主免疫系による、典型的にはB細胞及びナチュラルキラーT細胞による攻撃から自身を保護するために使用するバリアを克服するのに十分に力強くなければならない。
【0015】
発明の概要
本発明者等は、今般、治療用ワクチンとしての、それ自体又は組成物(典型的には、治療用組成物、特にワクチン組成物である)に含まれる、ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体の、癌を患っておりかつ放射線療法に曝露された被験体における、有利な使用を本明細書に記載する。該ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体、並びにナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含む組成物は、典型的には、癌を処置するための使用のためのものである。このようなナノ粒子と放射線療法との併用は、宿主の抗癌免疫応答を大きく増強させ、かつ、包括的な処置を、特に、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)、典型的には2~15Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法という状況下において、最適化する。本発明は、科学技術によって許容されるアブスコパル効果のおかげで広汎性の全身性疾患(本明細書上記に定義される通り)へと進展した転移癌に対して及び液性癌に対して特に効率的であり、そして、完全かつ永続的な抗腫瘍活性に有利に働く。
【0016】
アブスコパル効果は、特定の腫瘍部位の局所照射がその照射体積から遠位にある部位で応答を引き起こす、転移癌の処置において観察される現象である。放射線療法は、抗癌免疫応答を誘発するために、弱い免疫原性腫瘍関連抗原に対する抵抗性を反転させるのを助け得る。しかしながら、アブスコパル効果は、依然として、放射線療法が単独で使用されるときの稀な臨床事象のままである。Kobe Reynders等は、1973~2013年の間に放射線療法後のアブスコパル効果(abscopal affect)の臨床例を23件報告した(Kobe Reynders et al. Cancer Treatment Review 2015)。
【0017】
本発明のおかげで、局所照射は、放射線療法単独と比較して持続した抗腫瘍応答の進行を誘発し、それによって腫瘍の制御を局所的と全身的の両方で増強することができる。
【0018】
本発明者等によって初めて提供された本明細書における例は、該ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を治療用ワクチンとして使用したときの、瀕死の癌細胞[放射線感受性細胞株(ヒト結腸直腸HCT 116癌細胞株など)及び放射線耐性細胞株(ヒト膠芽腫42 MG BA細胞株又はヒト膵臓PANC-1癌細胞株など)を含む、本明細書において試験される癌細胞株]によって誘導される損傷関連分子パターン(DAMP)のインビトロ増幅を実証している。
【0019】
最も興味深いことに、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体で処置されてインビトロ照射されたマウス結腸直腸CT-26癌細胞による免疫応答性マウスのワクチン接種は、7日後に動物に健康/生存CT-26癌細胞をチャレンジしたとき、放射線療法単独と比較して腫瘍の形成を著しく抑制する。驚くべきことに、このような結果は、本発明のナノ粒子と放射線療法の併用が、免疫応答を増幅させ、かつ、瀕死の癌細胞を癌細胞に対する効率的なワクチンへ変換することを実証している。
【0020】
ある好ましい態様において、本明細書に記載される本発明の生成物(ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体、並びにこのようなナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含む組成物)は、好ましくは、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体、及び液性癌を患っている被験体から選択される被験体における使用のためのものであり、そして、好ましくは、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、及び液性癌を患っている被験体から選択される被験体における使用のためのものである。
【0021】
転移癌を患っている被験体は、主として、典型的に広汎性の全身性疾患へと進展した多くの遠隔転移を有する癌を患っている本明細書に定義される通りの被験体である。多くの遠隔転移を有する被験体はまた、本明細書において、「多転移性」被験体又は患者と定義される。
【0022】
したがって、本明細書に記載されるのは、癌、典型的には転移癌[本明細書において典型的には多くの/多数の遠隔転移を伴うものとして定義されており、かつ、典型的には広汎性の全身性疾患に関連するものと見なされている、転移癌]、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌、又は液性癌を患っている被験体における、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)、典型的には2~15Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法という状況下にある使用のための(典型的には、癌を処置するための使用のための)、治療用ワクチンとしての使用のためのナノ粒子及び/若しくはナノ粒子の凝集体、又は、治療用組成物、典型的にはワクチン組成物を調製するための使用のためのナノ粒子及び/若しくはナノ粒子の凝集体であって、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体である。
【0023】
該ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体は、主として、好ましくは選択された被験体/患者の集団における、典型的には転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのものである。
【0024】
また、本明細書に開示されるのは、癌、典型的には転移癌(特に、広汎性の全身性疾患へと進展した転移癌)、又は液性癌を患っている被験体における、放射線療法という状況下にある、好ましくは分割放射線療法という状況下にある使用のための、典型的には癌を処置するための使用のための、ワクチン組成物である。
【0025】
典型的な組成物は、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物である。
【0026】
ワクチン組成物は、本明細書に記載される通りのナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を好ましくは薬学的に許容し得る担体又はビヒクルと一緒に含む。特定のワクチン組成物は、少なくとも1つの免疫療法薬と場合により癌を処置するための治療剤をさらに含む。
【0027】
また、本明細書に記載されるのは、本明細書に定義される通りのナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体又は治療用組成物の、被験体における、好ましくは選択された被験体/患者の集団における、典型的には転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用、並びに、それを必要とする被験体における癌を処置するための対応する方法であって、前記被験体に本明細書に定義される通りのナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体又は治療用組成物を投与する工程を含む方法である。
【0028】
さらに、本明細書に記載されるのは、キット、典型的にはワクチンキットであって、(i)本明細書に記載される通りのナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又は、このようなナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体を含む組成物を、好ましくは(ii)少なくとも1つの免疫療法薬及び/若しくは癌を処置するための治療剤と一緒に含む、キットである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(単回照射で送達される5Gy)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の濃縮された細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。
図2】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(単回照射で送達される10Gy)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の濃縮された細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。
図3A】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに単回照射で送達される放射線療法に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。A)癌細胞株は、HCT 116ヒト結腸直腸細胞株であり、そして、照射線量は、4Gy及び6Gyに相当する;B)癌細胞株は、42 MG BAヒト膠芽腫細胞株であり、そして、照射線量は、10Gy及び15Gyに相当する;C)癌細胞株は、PANC-1ヒト膵臓細胞株であり、そして、照射線量は、8Gyに相当する。インビトロで線量(単回照射で送達される)を癌細胞の放射線感受性に適合させることはよく知られている。放射線感受性の癌細胞株、例えばHCT 116細胞株は、放射線耐性がより高い癌細胞株、例えば42 MG BA細胞株及びPANC-1細胞株と比較して、より低い放射線量を受け得る。インビトロで観察されたDAMPの増加した生成は、インビボの免疫応答を増強すると予測する。
図3B】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに単回照射で送達される放射線療法に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。A)癌細胞株は、HCT 116ヒト結腸直腸細胞株であり、そして、照射線量は、4Gy及び6Gyに相当する;B)癌細胞株は、42 MG BAヒト膠芽腫細胞株であり、そして、照射線量は、10Gy及び15Gyに相当する;C)癌細胞株は、PANC-1ヒト膵臓細胞株であり、そして、照射線量は、8Gyに相当する。インビトロで線量(単回照射で送達される)を癌細胞の放射線感受性に適合させることはよく知られている。放射線感受性の癌細胞株、例えばHCT 116細胞株は、放射線耐性がより高い癌細胞株、例えば42 MG BA細胞株及びPANC-1細胞株と比較して、より低い放射線量を受け得る。インビトロで観察されたDAMPの増加した生成は、インビボの免疫応答を増強すると予測する。
図3C】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに単回照射で送達される放射線療法に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。A)癌細胞株は、HCT 116ヒト結腸直腸細胞株であり、そして、照射線量は、4Gy及び6Gyに相当する;B)癌細胞株は、42 MG BAヒト膠芽腫細胞株であり、そして、照射線量は、10Gy及び15Gyに相当する;C)癌細胞株は、PANC-1ヒト膵臓細胞株であり、そして、照射線量は、8Gyに相当する。インビトロで線量(単回照射で送達される)を癌細胞の放射線感受性に適合させることはよく知られている。放射線感受性の癌細胞株、例えばHCT 116細胞株は、放射線耐性がより高い癌細胞株、例えば42 MG BA細胞株及びPANC-1細胞株と比較して、より低い放射線量を受け得る。インビトロで観察されたDAMPの増加した生成は、インビボの免疫応答を増強すると予測する。
図4】実施例1からのHfOナノ粒子(NP)懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(単回照射で送達される6Gy)に曝露させた又は曝露させていないHCT 116癌細胞からのATP分泌は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。
図5】免疫応答性マウスにおいてマウス結腸直腸CT-26細胞株を用いて実施したワクチン接種アッセイプロトコルの説明であって、3群:群1(対照群)、群2(照射群:単回照射で送達される6Gy)及び群3(照射に曝露させた実施例1からのHfONP:単回照射で送達される6Gy)についての注射のスケジュールを提示する説明。
図6】群1(対照)、群2(RTx、6Gy)及び群3(実施例1のHfO NP+RTx、6Gy)についての無腫瘍マウスの百分率がワクチン接種後の日数の関数として提示される、ワクチン接種アッセイプロトコル。
【0030】
発明の詳細な説明
放射線療法
癌、特に転移癌、好ましくは広汎性の全身性疾患へと進展した転移癌、又は液性癌を患っている被験体における、放射線療法という状況下にある、すなわち、ナノ粒子が投与され、次いで放射線療法に曝露される被験体における、治療用組成物又はワクチン(組成物)としての使用のための、ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体、並びにこのようなナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含む任意の組成物が本明細書に記載される。言い換えれば、治療用ワクチンとして使用可能になるために、ナノ粒子は、電離放射線に曝露されるべきであり、すなわち、ナノ粒子が放射線療法と併用されることを意味する。
【0031】
広汎性の全身性疾患へと進展した癌は、典型的には、多くの遠隔転移、典型的には5超の、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20超の転移を伴い、かつ、大抵の場合予後不良と関連している(Ralph R. Weichselbaum Nat. Rev. Clin. Oncol. 2011 を参照のこと)。このような癌を患っている被験体は、前記癌に関連する転移性病変/部位に加えて、明確に異なる原発性癌/腫瘍に関連する原発性及び/又は転移癌病変である他の癌細胞部位/病変をさらに含み得る。
【0032】
本明細書に記載される特定の組成物は、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その放射線療法が断念された(典型的には、(包括的な)根治的処置として断念された)転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって(従来的に/古典的に)処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物である。
【0033】
本発明の状況下で、被験体又は患者は、哺乳動物である。ある特定の実施態様において、哺乳動物はヒトであり、その年齢又は性別は問わない。被験体は、癌を患っている。
【0034】
本発明から恩恵を受ける可能性が高い好ましい被験体は、典型的には、固形癌又は液性癌を患っている。
【0035】
ある特定の態様において、被験体は、放射線療法によって古典的に処置される癌を患っているか、あるいは、放射線療法が古典的処置であるか若しくは特定の被験体にとって最も適する処置である又は放射線療法が適応され得る、癌を患っている。
【0036】
別の特定の好ましい態様において、本発明から恩恵を受ける被験体は、癌を患っている被験体であって、典型的には被験体が緩和的処置下にあるとき又は放射線療法が断念されたとき、放射線療法が、処置選択肢として考慮されないだろう(又は、言い換えれば、考慮される被験体について従来の処置としても可能な根治的処置としても考慮されないか、又は、1個若しくは数個、典型的には5個未満の癌細胞部位/病変(前記病変は、被験体中に存在する多数の癌細胞部位/病変の中で転移性又は原発性癌病変である)に対してだけ使用される)又は(根治的)処置選択肢としてもはや考慮されないだろう、癌を患っている被験体である。緩和的処置下にあるとき、被験体は、まだ放射線療法に曝露されるが、前記放射線療法は、根治的放射線療法としてもはや考慮され得ない。
【0037】
この状況において、先に説明された通り、被験体は、好ましくは、多くの/多数の遠隔転移(すなわち、広汎性の転移)、典型的には5超の、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20超の転移を有する転移癌を患っている被験体である。
【0038】
言い換えれば、本発明のナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体は、電離放射線に曝露されたとき、放射線療法が腫瘍医によって根治的処置として考慮されない患者の集団にとっての解決策を提供し得る。
【0039】
本発明は、今般、このような特定の被験体に根治的な癌処置選択肢を提供する。
【0040】
本発明から恩恵を受ける可能性が高い癌を患っている典型的な被験体は、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、放射線療法によって(従来的に/古典的に)処置されていない癌を患っている被験体、及び液性癌を患っている被験体から選択される。好ましくは、被験体は、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、及び液性癌を患っている被験体から選択される。
【0041】
当技術分野及び本発明の状況下において、用語「根治的処置」又は「根治的療法」は、処置されるべき被験体に、被験体が罹患している癌[原発性腫瘍並びに対応する転移性病変]を処置するための、すなわち前記被験体を包括的に処置するための根治的解決策を提供する、処置又は療法、特に「放射線療法」を指す。
【0042】
当業者に周知の通り、緩和的放射線療法は、症状の緩和に使用され、かつ、放射線療法、すなわち根治的処置として送達される放射線療法(本明細書において「根治的放射線療法」と認定される)とは異なる。実際に、緩和的放射線療法は、当業者によって、余命が短いことが見込まれる患者であっても、局所的進行性又は転移性の腫瘍によって誘導される多くの症状を処置するための有効な処置として考慮される。
【0043】
典型的には、転移癌は、(i)結合組織を侵し、かつ、好ましくは、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、悪性線維性組織球腫から選択され、(ii)内皮又は中皮組織を侵し、かつ、好ましくは、血管肉腫、管肉腫、リンパ管肉腫及び中皮腫から選択され、(iii)筋組織を侵し、かつ、好ましくは、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫から選択され、(iv)上皮組織を侵し、かつ、好ましくは、腺癌、扁平上皮癌及び類表皮癌から選択され、(v)神経組織を侵し、かつ、好ましくは、多形膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、神経線維肉腫及び神経鞘腫から選択され、そして、(vi)APUD系を侵し、かつ、好ましくは、甲状腺癌、膵臓癌、胃癌及び腸癌から選択される。別の好ましい実施態様において、転移癌は、黒色腫である。
【0044】
転移癌は、例えば、皮膚癌、中枢神経系の癌、頭頚部癌、肺癌、腎臓癌、乳癌、消化器癌(GIST)、前立腺癌、肝臓癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、食道癌、男性泌尿生殖器癌、婦人科癌、副腎及び後腹膜癌、骨及び軟組織の肉腫、小児癌、神経芽細胞腫、中枢神経系の癌並びにユーイング肉腫から選択される癌であり得るか、又はそれに由来し得る。
【0045】
典型的には、液性癌は、血液又はリンパ系細胞組織を侵す。液性癌は、典型的には、白血病、骨髄腫及びリンパ腫から選択される。
【0046】
被験体は、腫瘍を有し得る。本開示において別段の定めがない限り、腫瘍は、悪性腫瘍である。
【0047】
別の実施態様において、被験体は、腫瘍医によって放射線療法が適応される液性癌(例えば、リンパ腫)を患っている。
【0048】
好ましくは、被験体が曝露されるべき放射線療法は、分割放射線療法、有利なことには、少なくとも1つの照射工程、典型的には幾つかの照射工程を含む分割放射線療法(本明細書において「分割照射処置」と認定される)であって、電離放射線量が1照射工程当たり1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)、好ましくは1.8~15Gray(Gy)の範囲にある、分割放射線療法である。
【0049】
分割放射線療法という状況下において、電離放射線の総線量は、数日間にわたって幾つかのより小さい線量に分けられる。これは、癌に対する放射線の効果を最大限に高め、かつ、健康な細胞に対する負の副作用を最小限に抑える。最近の研究は加速分割照射(1日当たり2回の送達及び/又は週末にも同じく送達)の恩恵を考慮しているが、典型的な分割照射スキームは、総線量を、6週間にわたって平日に毎日送達される30ユニット/分割照射に分ける。
【0050】
用語「電離放射線」は、原子又は分子をイオン化することができる、高エネルギー粒子又は高エネルギー波を指す。電離能は、個々の粒子又は波のエネルギーに依存し、それらの数には依存しない。大量の粒子又は波は、個々の粒子又は波がエネルギー的に不十分であるならば、通常、イオン化を引き起こさないだろう。典型的な電離放射線は、エネルギーが少なくとも1.8KeVである放射線である。
【0051】
ある好ましい実施態様において、1照射工程当たりの電離放射線量は、1分割照射処置当たり、1.8、2、2.2、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、20、25及び30Gyから選択される。電離放射線量は、好ましくは、1分割照射処置当たり、1.8、2、2.4、2.5、3、3.2、3.6、4、4.5、5、5.5、6、7、8、10、15、20、25及び30Gy、さらにより好ましくは、2、3、5、6、7、8、10、15、20、25及び30Gyから選択される。
【0052】
好ましい分割放射線療法は、2Gyの25回の分割照射(合計:50Gy)、2Gyの30回の分割照射(合計:60Gy)、2Gyの35回の分割照射(合計:70Gy)、2Gyの40回の分割照射(合計:80Gy)、3Gyの5回の分割照射(合計:15Gy)、3Gyの10回の分割照射(合計:30Gy)、3Gyの15回の分割照射(合計:45Gy)、3Gyの回の20回の分割照射(合計:60Gy)、3Gyの25回の分割照射(合計:75Gy)、4Gyの3回の分割照射(合計:12Gy)、4Gyの5回の分割照射(合計:20Gy)、4Gyの8回の分割照射(合計:32Gy)、4Gyの10回の分割照射(合計:40Gy)、4Gyの15回の分割照射(合計:60Gy)、4Gyの20回の分割照射(合計:80Gy)、5Gyの2回の分割照射(合計:10Gy)、5Gyの3回の分割照射(合計:15Gy)、5Gyの4回の分割照射(合計:20Gy)、5Gyの5回の分割照射(合計:25Gy)、5Gyの6回の分割照射(合計:30Gy)、5Gyの8回の分割照射(合計:40Gy)、5Gyの10回の分割照射(合計:50Gy)、6Gyの1回の分割照射(合計:6Gy)、6Gyの2回の分割照射(合計:12Gy)、6Gyの3回の分割照射(合計:18Gy)、6Gyの4回の分割照射(合計:24Gy)、6Gyの5回の分割照射(合計:30Gy)、6Gyの6回の分割照射(合計:36Gy)、6Gyの10回の分割照射(合計:60Gy)、7Gyの1回の分割照射(合計:7Gy)、7Gyの2回の分割照射(合計:14Gy)、7Gyの3回の分割照射(合計:21Gy)、7Gyの4回の分割照射(合計:28Gy)、7Gyの5回の分割照射(合計:35Gy)、8Gyの1回の分割照射(合計:8Gy)、8Gyの2回の分割照射(合計:16Gy)、8Gyの3回の分割照射(合計:24Gy)、8Gyの4回の分割照射(合計:32Gy)、8Gyの5回の分割照射(合計:40Gy)、9Gyの1回の分割照射(合計:9Gy)、9Gyの2回の分割照射(合計:18Gy)、9Gyの3回の分割照射(合計:27Gy)、9Gyの4回の分割照射(合計:36Gy)、9Gyの5回の分割照射(合計:45Gy)、10Gyの1回の分割照射(合計:10Gy)、10Gyの2回の分割照射(合計:20Gy)、10Gyの3回の分割照射(合計:30Gy)、10Gyの4回の分割照射(合計:40Gy)、15Gyの1回の分割照射(合計:15Gy)、15Gyの2回の分割照射(合計:30Gy)、15Gyの3回の分割照射(合計:45Gy)、15Gyの4回の分割照射(合計:60Gy)、20Gyの1回の分割照射(合計:20Gy)、20Gyの2回の分割照射(合計:40Gy)、20Gyの3回の分割照射(合計:60Gy)、25Gyの1回の分割照射(合計:25Gy)、25Gyの2回の分割照射(合計:50Gy)、25Gyの3回の分割照射(合計:75Gy)、30Gyの1回の分割照射(合計:30Gy)、及び30Gyの2回の分割照射(合計:60Gy)から選択され得る。
【0053】
ある特に好ましい態様において、被験体は、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体、その放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、又は放射線療法によって処置されていない癌を患っている被験体であり、そして、分割放射線療法は、6Gyの1回の分割照射(合計:6Gy)、6Gyの2回の分割照射(合計:12Gy)、6Gyの3回の分割照射(合計:18Gy)、6Gyの4回の分割照射(合計:24Gy)、6Gyの5回の分割照射(合計:30Gy)、7Gyの1回の分割照射(合計:7Gy)、7Gyの2回の分割照射(合計:14Gy)、7Gyの3回の分割照射(合計:21Gy)、7Gyの4回の分割照射(合計:28Gy)、8Gyの1回の分割照射(合計:8Gy)、8Gyの2回の分割照射(合計:16Gy)、8Gyの3回の分割照射(合計:24Gy)、8Gyの4回の分割照射(合計:32Gy)、9Gyの1回の分割照射(合計:9Gy)、9Gyの2回の分割照射(合計:18Gy)、9Gyの3回の分割照射(合計:27Gy)、10Gyの1回の分割照射(合計:10Gy)、10Gyの2回の分割照射(合計:20Gy)、10Gyの3回の分割照射(合計:30Gy)、15Gyの1回の分割照射(合計:15Gy)、15Gyの2回の分割照射(合計:30Gy)、20Gyの1回の分割照射(合計:20Gy)、20Gyの2回の分割照射(合計:40Gy)、25Gyの1回の分割照射(合計:25Gy)及び30Gyの1回の分割照射(合計:30Gy)から選択される。
【0054】
ナノ粒子
本発明の状況下で使用されるナノ粒子は、有利なことには、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成される。ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体は、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される。
【0055】
本発明の精神において、用語「ナノ粒子」は、ナノメートル範囲、典型的には1nm~500nmの間のサイズを有する、生成物、特に合成生成物を指す。
【0056】
用語「ナノ粒子の凝集体」は、互いに強く結合、典型的には共有結合している、ナノ粒子の集合体を指す。
【0057】
透過電子顕微鏡法(TEM)を使用して、ナノ粒子のサイズを測定することができる。同様に、動的光散乱法(DLS)を使用して、溶液中のナノ粒子の流体力学的直径を測定することができる。さらに、これらの2つの方法を交互に使用して、サイズ測定値を比較して、前記サイズを確認してよい。好ましい方法は、DLSである(International Standard ISO22412 Particle Size Analysis-Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation (ISO) 2008 を参照のこと)。本明細書に定義される通りのナノ粒子の最大寸法は、典型的には、約4nm~約250nmの間、好ましくは約4nm又は10nm~約100nm又は約200nmの間、さらにより好ましくは約20nm~約150nmの間である。
【0058】
粒子の形状がその「生体適合性」に影響を与え得るため、かなり均一な形状を有する粒子が好ましい。薬物動態学的理由で、形状が本質的に球形、円形又は楕円形であるナノ粒子がしたがって好ましい。このような形状はまた、ナノ粒子の細胞との相互作用又は細胞による取り込みに有利に働く。球形又は円形の形状が特に好ましい。
【0059】
典型的には、最大寸法は、円形若しくは球形の形状のナノ粒子の直径であるか、又は楕円形若しくは卵型のナノ粒子の最長の長さである。
【0060】
組成物中に存在するナノ粒子の無機材料は、好ましくは、少なくとも7の理論的(バルク)密度を有し、そして、この特性を示す任意の材料から選択してよく、かつ、化学・物理学ハンドブック(Handbook of Chemistry and Physics(David R. Lide Editor-In-Chief, 88th Edition 2007-2008))の4~43ページにある無機化合物の物理定数(Physical Constants of Inorganic Compounds)の表において同定してよい。
【0061】
ナノ粒子を構成する無機材料は、好ましくは、少なくとも25、好ましくは少なくとも40又は41、より好ましくは少なくとも50又は51、より好ましくは少なくとも60、61、62又はさらに63の有効原子番号(Zeff)を有する材料である。
【0062】
有効原子番号は、原子番号と似ているが、原子というよりむしろ、化合物(例えば、水)及び異なる材料の混合物(組織及び骨など)に使用される用語である。有効原子番号は、化合物又は材料の混合物についての平均原子番号を算出する。それは、Zeffと略記される。
【0063】
有効原子番号は、化合物中の各原子の分率を取得し、それに原子の原子番号を掛けることによって算出される。有効原子番号Zeffを求める式は、以下の通りである:
【数1】

[式中、
は、各元素と関連する電子の総数の割合であり、そして
は、各元素の原子番号である]
【0064】
原子番号(陽子数としても知られている)は、原子の核に見られる陽子の数である。それは、伝統的に記号Zで表される。原子番号は、化学元素を一意的に同定する。中性電荷の原子では、原子番号は、電子の数と等しい。
【0065】
一例は、2つの水素原子(Z=1)と1つの酸素原子(Z=8)から構成される水(HO)である。電子の総数は、1+1+8=10である。2つの水素に対応する電子の割合は2/10であり、そして、唯一の酸素に対応する電子の割合は(8/10)である。それ故、水のZeffは、以下である:
【数2】
【0066】
effは、ナノ粒子の入射放射線の吸収能に関与する。
【0067】
ナノ粒子を構成する無機材料は、典型的には、酸化物、金属、硫化物及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0068】
ナノ粒子を構成する無機材料が酸化物であるとき、この酸化物は、有利なことには、酸化セリウム(IV)(CeO)、酸化ネオジム(III)(Nd)、酸化物サマリウム(III)(Sm)、酸化ユウロピウム(III)(Eu)、酸化ガドリニウム(III)(Gd)、酸化テルビウム(III)(Tb)、酸化ジスプロシウム(III)(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化ツリウム(III)(Tm)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ルテチウム(lu)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)、酸化タンタル(V)(Ta)、酸化レニウム(IV)(ReO)、酸化ビスマス(III)(Bi)から選択される。本発明の状況下において、無機酸化物の混合物を使用して、本発明のナノ粒子を調製することもできる。
【0069】
ナノ粒子を構成する無機材料が金属であるとき、この金属は、有利なことには、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、イッテルビウム(Yb)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ホルミウム(Ho)、鉄(Fe)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ルテチウム(Lu)から選択される。本発明の状況下において、金属の混合物もまた可能である。本発明の状況下において、無機酸化物の混合物及び金属の混合物を使用して、本発明のナノ粒子を調製することもできる。
【0070】
ナノ粒子を構成する無機材料が硫化物であるとき、この硫化物は、好ましくは、硫化銀(AgS)である。
【0071】
ある好ましい実施態様において、関心対象の組成物を調製するために本発明の状況下で使用されるナノ粒子を、ステルス特性を示す作用物質から選択される生体適合性材料でコーティングすることができる。実際に、本発明のナノ粒子が被験体に静脈内(IV)経路を介して投与されるとき、ナノ粒子の生体内分布を最大限に高めるために、ステルス特性を示す作用物質から選択される材料での生体適合性コーティングが特に有利である。前記コーティングは、ナノ粒子のいわゆる「ステルス特性」の一因となる。
【0072】
ステルス特性を示す作用物質は、立体的な基(steric group)を提示する作用物質であってよい。このような作用物質を、例えば、ポリエチレングリコール(PEG);ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリアクリラート;ポリアクリルアミド(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド));ポリカルバミド;生体高分子;デキストラン、キシラン及びセルロースなどの多糖類;コラーゲン;ポリスルホベタインなどの双性イオン化合物;などから選択してよい。
【0073】
別の好ましい実施態様において、ナノ粒子を、生物学的標的との相互作用を可能にする作用物質から選択される生体適合性材料でコーティングすることができる。そのような作用物質は、典型的には、ナノ粒子の表面を正電荷又は負電荷にすることができる。この電荷を、ゼータ電位測定によって、典型的には、濃度が0.2~10g/Lの間で変化し、ナノ粒子が6~8からなるpHの水性媒体中に懸濁されているナノ粒子懸濁液に対して実施される、ゼータ電位測定によって決定することができる。
【0074】
ナノ粒子表面に正電荷を形成する作用物質は、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン又はポリリジンであることができる。ナノ粒子表面に負電荷を形成する作用物質は、例えば、リン酸塩(例えば、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩など)、カルボン酸塩(例えば、クエン酸塩又はジカルボン酸、特にコハク酸)又は硫酸塩であることができる。
【0075】
ナノ粒子又は凝集体の全面生体適合性コーティングが、粒子表面と任意の認識要素(マクロファージ、オプソニンなど)の相互作用を回避するために、特に静脈内(IV)状況において有利であり得る。「全面コーティング」は、粒子の表面に少なくとも1つの完全な単層を作製することができる、生体適合性分子の非常に高い緊密さの存在を暗に示す。
【0076】
生体適合性コーティングは、特に、流体、例えば生理学的流体(血液、血漿、血清など)、又は薬剤の投与に必要な任意の等張媒体若しくは生理学的媒体中における安定性をナノ粒子に与える。
【0077】
安定性は、乾燥オーブンを使用した乾燥抽出物定量によって確認してよく、かつ、典型的には0.22又は0.45μmのフィルタで濾過する前後に、ナノ粒子懸濁液に対して測定してよい。
【0078】
有利なことに、コーティングは、インビボにおける粒子の完全性を保持し、その生体適合性を保証又は改善し、かつ、その任意の官能化(例えば、スペーサー分子、生体適合性高分子、標的化剤、タンパク質などによる)を容易にする。
【0079】
本発明に係る特定のナノ粒子は、標的細胞上に存在する認識要素との相互作用を可能にする標的化剤をさらに含むことができる。このような標的化剤は、典型的には、標的部位にナノ粒子が蓄積したら作用する。標的化剤は、ヒト又は動物の体内に存在する分子に親和性を示す任意の生物学的又は化学的構造物であることができる。例として、標的化剤は、ペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチド、タンパク質、核酸(DNA、RNA、siRNA、tRNA、miRNAなど)、ホルモン、ビタミン、酵素、病的細胞によって発現される分子のリガンド、特に腫瘍抗原、ホルモン受容体、サイトカイン受容体又は成長因子受容体のリガンドであることができる。前記標的化剤を、例えば、LHRH、EGF、葉酸、抗B-FN抗体、E-セレクチン/P-セレクチン、抗IL-2R□抗体、GHRHなどからなる群において選択することができる。
【0080】
組成物
本発明者等はまた、本明細書に定義される通りの癌、好ましくは転移癌又は液性癌を患っている被験体における、本明細書に定義される通りの放射線療法、典型的には分割放射線療法という状況下にある使用のための、治療用組成物、典型的にはワクチン組成物であって、(i)ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体であって、各ナノ粒子が少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆されている、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を、好ましくは(ii)薬学的に許容し得る担体又はビヒクルと一緒に含む、組成物を本明細書に記載する。
【0081】
ある特定の実施態様において、転移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、その(根治的)放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、放射線療法によって処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するための使用のためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)、好ましくは1.8~20Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成され、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ワクチン組成物が本明細書に記載される。該組成物は、該ナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体に加えて、薬学的に許容し得る担体又はビヒクルを含んでよい。
【0082】
薬学的に許容し得る担体又はビヒクルは、例えば生理食塩水、等張の無菌緩衝液、非水性ビヒクル溶液などの、当業者にとって任意の古典的な支持体であることができる。典型的な担体は、NaCl、PBS及び/又はグルコースを含む等張媒体又は生理学的媒体である。担体は、例えば、グルコース(5%)若しくはデキストロース(5%)及び/又はNaCl(0.9%)を含むことができる。
【0083】
該組成物はまた、安定剤、甘味剤、界面活性剤、ポリマーなどを含むことができる。
【0084】
該組成物は、固体、液体(懸濁液中の粒子)、エアロゾル、ゲル、ペーストなどの形状であることができる。好ましい組成物は、液体又はゲルの形状である。特に好ましい組成物は、液体の形状である。
【0085】
該組成物は、当業者に公知の医薬製剤の技術を使用することによって、例えば、アンプル、シリンジ、エアロゾル、瓶、バイアル、錠剤、カプセル剤として製剤化することができる。
【0086】
一般に、液体又はゲル形状の組成物は、約0.05g/L~約450g/Lの間のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体、約0.05g/L~約250g/Lの間のナノ粒子、好ましくは、少なくとも約10g/L、11g/L、12g/L、13g/L、14g/L、15g/L、16g/L、17g/L、18g/L、19g/L、20g/L、21g/L、22g/L、23g/L、24g/L、25g/L、26g/L、27g/L、28g/L、29g/L、30g/L、31g/L、32g/L、33g/L、34g/L、35g/L、36g/L、37g/L、38g/L、39g/L、40g/L、41g/L、42g/L、43g/L、44g/L、45g/L、46g/L、47g/L、48g/L、49g/L、50g/L、51g/L、52g/L、53g/L、54g/L、55g/L、56g/L、57g/L、58g/L、59g/L、60g/L、61g/L、62g/L、63g/L、64g/L、65g/L、66g/L、67g/L、68g/L、69g/L、70g/L、71g/L、72g/L、73g/L、74g/L、75g/L、76g/L、77g/L、78g/L、79g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/L、100g/L、150g/L、200g/L、250g/L、300g/L、350g/L、又は400g/Lの間のナノ粒子を含む。
【0087】
組成物中のナノ粒子の濃度は、乾燥抽出によって測定することできる。乾燥抽出は、理想的には、乾燥オーブン内にてナノ粒子を含む懸濁液の乾燥工程に続いて測定される。
【0088】
ある特定の実施態様において、該組成物は、少なくとも1つの免疫療法薬と場合により癌を処置するための追加の治療剤をさらに含む。
【0089】
用語「免疫療法薬」は、本明細書において、典型的には、被験体の免疫系を高めることができる、任意の分子、薬物、細胞又は細胞ベースワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、DNAベースワクチン、ペプチドベースワクチン、toll様受容体作動薬、細胞由来の小胞、並びにそれらの任意の組み合わせを示し、かつ、当業者によってそれ自体認識される。
【0090】
該分子又は薬物は、例えば、モノクローナル抗体、サイトカイン、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0091】
該薬物は、典型的には、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害薬、例えば1-メチル-D-トリプトファンであることができる。
【0092】
ある好ましい実施態様において、モノクローナル抗体は、CTLA-4分子、又はPD-1とそのリガンドの相互作用を阻害する。モノクローナル抗体は、有利なことには、抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2から選択される。モノクローナル抗体は、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ及びランブロリズマブから選択することができる。
【0093】
別の好ましい実施態様において、モノクローナル抗体は、CD27シグナル伝達、CD137シグナル伝達、OX-40シグナル伝達、GITRシグナル伝達及び/又はMHCIIシグナル伝達を増強し、かつ/又はCD40を活性化する。モノクローナル抗体は、例えば、ダセツズマブ、ルカツムマブ、及びウレルマブから選択することができる。
【0094】
さらなる実施態様において、モノクローナル抗体は、TGF-βシグナル伝達又はKIRシグナル伝達を阻害する。モノクローナル抗体は、例えば、フレゾリムマブ及びリリルマブから選択することができる。
【0095】
サイトカインは、有利なことには、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、IFN-α、IFN-α2b、IFNγ、IL2、IL-7、IL-10及びIL-15から選択することができる。
【0096】
別の好ましい実施態様において、免疫療法薬は、免疫サイトカイン、例えば免疫サイトカインL19-IL2である(Nicolle H. Rekers Radiotherapy and Oncology 2015)。
【0097】
免疫療法薬として使用される通りの細胞は、典型的には、腫瘍抗原、好ましくは処置されるべき癌に特異的な腫瘍抗原を提示する若しくは腫瘍抗原に感作される免疫細胞、例えば、樹状細胞若しくはT細胞;免疫原性分子を分泌する細胞;又は免疫原性細胞死を受けている死腫瘍細胞若しくは瀕死の腫瘍細胞、すなわち、ICDに典型的な量でCRTを発現する及び/若しくはHMGB1を産生する及び/若しくはATPを産生する細胞、例えば放射線療法に曝露された瀕死の若しくは死腫瘍細胞である。該細胞は、自己細胞又は同種異系細胞であることができる。該細胞は、好ましくは、処置されるべき被験体から単離された自己細胞である。死腫瘍細胞又は瀕死の腫瘍細胞は、腫瘍成熟細胞又は腫瘍幹細胞であることができる。
【0098】
toll様受容体作動薬は、有利なことには、TLR2/4作動薬、TRL7作動薬、TRL7/8作動薬及びTRL9作動薬から選択される。toll様受容体作動薬は、例えば、イミキモド、カルメット-ゲラン桿菌(bacillus Calmette-Guerin)及びモノホスホリルリピドAから選択することができる。
【0099】
免疫療法薬の好ましい組み合わせは、例えば、サイトカイン、モノクローナル抗体、Toll様受容体作動薬及びペプチドベースワクチンから選択することができる。
【0100】
用語「癌を処置するための治療剤」は、本明細書において、典型的には、生物学的化合物、低分子標的化治療薬、又は細胞毒性化合物などの、従来の癌の処置において使用される作用物質を示す。
【0101】
生物学的化合物は、例として、抗体、好ましくは、モノクローナル抗体(「mAb」)、例えばアレムツズマブ、ブレンツキシマブ・ベドチン、カツマキソマブ、デノスマブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブ・チウキセタン、ペルツズマブ、オファツムマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ又はトシツモマブである。
【0102】
低分子標的化治療薬は、一般に、悪性細胞内の突然変異されたタンパク質、過剰発現されたタンパク質、又は他の重要なタンパク質(癌処置という状況下にある潜在的な標的)上の酵素ドメインを阻害する。幾つかの治療剤は、細胞分裂を標的化するもの(例えば、オーロラキナーゼ阻害薬又はサイクリン依存性キナーゼ阻害薬)、並びにタンパク質代謝回転及びクロマチン修飾などの他の生物学的機序を標的化するもの(例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬)を含む。低分子標的化治療薬は、例えば、イマチニブ、ラパマイシン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ボルテゾミブ及びアトルバスタチンなどから選択することができる。
【0103】
細胞毒性化合物は、例えば、DNA修飾剤、例えばアントラサイクリン(anthracyclin)(デキサメタゾン、ダウノルビシン、イダルビシン又はメトトレキサートなど)又は抗有糸分裂剤(ビンクリスチン又はビンブラスチンなどの紡錘体毒);タキサン、例えばドセタキセル、ラロタキセル、カバジタキセル、パクリタキセル(PG-パクリタキセル及びDHA-パクリタキセル)、オルタタキセル、テセタキセル又はタクサオプレキシン;ゲムシタビン;エトポシド;マイトマイシンC;アルキル化剤(例えば、メルファラン又はテモゾロミド);白金系成分、例えばオキサリプラチン又はカルボプラチン;TLR(Toll様受容体)-3リガンド;並びにプロドラッグである。
【0104】
プロドラッグ(例として、カペシタビン又はイリノテカン)は、インビボでその活性形態に代謝され、その期待される治療効果をもたらす。
【0105】
他の典型的な細胞毒性化合物は、典型的には、本明細書に記載される通りの又は熟練の腫瘍医に公知である通りの化学療法剤から選択される。
【0106】
少なくとも1つの免疫療法薬をおそらくは癌を処置するための少なくとも1つの治療剤と組み合わせて含む本明細書に記載されるワクチン組成物を、処置されるべき被験体に、本明細書に記載される通りのナノ粒子又はナノ粒子の凝集体と同時又は別々のいずれかで投与することができる。
【0107】
キット
本発明者等はまた、(i)少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料で構成されるナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体であって、各々が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆される、ナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又は本明細書に記載される通りのワクチン組成物を、好ましくは(ii)本明細書に記載される通りの少なくとも1つの免疫療法薬及び/若しくは癌を処置するための治療剤と、場合により(iii)放射線療法という状況下においてワクチン接種を実施するための説明書を提供するリーフレットと一緒に含むワクチンキットを本明細書に記載する。
【0108】
プロトコル
本明細書に記載される通りのナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体又はこのようなナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体を含む組成物は、有利なことには、放射線療法、典型的には分割放射線療法が適用される前に、癌細胞と接触させる。ナノ粒子と癌細胞との接触は、生検若しくは血液試料採取に続いてエクスビボで実施するか、あるいは、全身的か又は腫瘍、腫瘍床(外科手術による腫瘍切除後)若しくは腫瘍転移に直接的かのいずれかによる処置されるべき被験体への投与を通してインビボで実施することができる。
【0109】
インビボで投与されるとき、本発明のナノ粒子を、局所[腫瘍内(IT)、動脈内(IA)]、皮下、静脈内(IV)、皮内、気道(吸入)、腹腔内、筋肉内、関節内、髄腔内、眼内又は経口経路(per os)などの異なる可能な経路を使用して、好ましくはIT、IV又はIAを使用して、被験体に投与することができる。
【0110】
適切な場合には、ナノ粒子の反復注射又は投与を実施することができる。
【0111】
ある特定の実施態様において、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体は、有利なことには、処置されるべき被験体に少なくとも1つの免疫療法薬と一緒に投与される。ナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又はこのようなナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体を含む組成物と少なくとも1つの免疫療法薬を、被験体に同時又は別々のいずれかで投与することができる。
【0112】
ある特定の実施態様において、癌が、転移癌であるとき及び/又は放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む転移癌の腫瘍部位の1つ、多くて2つにインビボ適用される。ワクチンとして使用されるナノ粒子又はナノ粒子の凝集体のおかげで、被験体の免疫系の効率的な動員に起因する照射領域又は部位以外での放射線療法の抗癌作用を観察することができる。
【0113】
典型的には、本発明者等は、本明細書において、放射線感受性のHCT 116(ヒト結腸直腸癌細胞株)と放射線耐性の42 MG BA(ヒト神経膠芽腫細胞株)及びPANC-1(ヒト膵臓癌細胞株)の両方において、単回線量の放射線を使用して、電離放射線に曝露された本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を用いると、放射線単独と比較して、瀕死の癌細胞から放出されるHMGB1の顕著な増加が観察されることを実証する。さらに、HCT 116癌細胞株において、電離放射線に曝露された本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を用いると、放射線単独と比較して、瀕死の癌細胞からのATP分泌の顕著な増加が観察される。
【0114】
これらのDAMPは、癌細胞の免疫原性細胞死の指標であり、そして、本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体は、放射線療法に曝露されたとき、それらの分泌及び放出を増幅させることができる。
【0115】
加えて、免疫応答性マウスにおいて実施されたワクチン接種アッセイの結果は、最初に、照射された癌細胞を動物にワクチン接種し、次いで、7日後に生存癌細胞をチャレンジしたときに腫瘍の出現を抑制する、動物の免疫系を効率的に動員する本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体の能力を示す:ナノ粒子及び6Gyで処置した癌細胞をワクチン接種した群では動物の66%が無腫瘍であるが、一方で、6Gy単独を照射した癌細胞をワクチン接種したときには動物の33%だけが無腫瘍である。
【0116】
これらのデータは、これらのナノ粒子又はナノ粒子の凝集体のワクチンとしての使用によって、被験体の免疫系の効率的な動員に起因する照射領域又は部位以外での放射線療法の抗癌作用を生成することを強く支持している。
【0117】
ある好ましい実施態様において、本発明のナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又はこのようなナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体を含む本発明の組成物は、肺(例えば、原発性癌が、例えば肉腫、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌又は前立腺癌であるとき)、肝臓(例えば、原発性癌が、例えば消化器癌、乳癌、結腸癌、肺癌又は皮膚癌であるとき)、骨(例えば、原発性癌が、例えば乳癌、前立腺癌又は肺癌であるとき)及び/又は脳(例えば、原発性癌が、例えば肺癌、腎臓癌、黒色腫又は乳癌であるとき)に存在する転移癌細胞の変化又は破壊を可能にする。
【0118】
別の特定の実施態様おいて、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の癌試料にエクスビボ適用され、そして、エクスビボで致死的に照射された癌細胞が、癌試料由来の関連する細胞上清の少なくとも一部と一緒に、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される。
【0119】
照射された癌試料由来の細胞上清は、典型的には、HMGB1、ATP、熱ショックタンパク質(HSP)ファミリー、とりわけ70kDaの熱ショックタンパク質(HSP70)及び90kDaの熱ショックタンパク質(HSP90)の種々のシャペロン、インターフェロンα(IFNα)のような免疫刺激性サイトカイン、スフィンゴミエリン代謝物、細胞外マトリックスの破壊に由来する生成物などの免疫原性分子を含む。本発明の状況下において、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む照射された癌試料由来の細胞上清中の免疫原性分子の増強された放出は、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が存在しない照射された癌試料と比較して(実施例4を参照のこと)、抗癌処置をさらに増幅することができる。
【0120】
処置されるべき被験体への再投与は、典型的には、皮下又は皮内注射を通して実施される。
【0121】
癌が液性癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、典型的には、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の液性癌試料にエクスビボ適用され、そして、照射された液性癌試料が、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される。
【0122】
処置されるべき被験体への再投与を、皮下又は皮内注射を通して実施することができる。再投与はまた、動脈内(IA)、静脈内(IV)又は腹腔内(IP)注射を通して実施することもできる。
【0123】
液性癌試料は、典型的には、処置されるべき被験体の血液試料又は全血液量である。被験体の全血液量が照射されるべきであるとき、照射された全血液量が被験体に完全に再投与される体外循環プロトコルの間に、エクスビボで照射を実施することができる。
【0124】
興味深いことに、Y. Suzuki等(2012)は、腫瘍抗原特異的T細胞応答が化学放射線療法後の食道扁平上皮癌(ESCC)を有する患者の38%で観察されたこと、及びこれらの応答がこれらの患者の血清中において上昇したHMGB1濃度と共存していたことを報告した。腫瘍微小環境内のHMGB1は、ESCCを有する患者において術前化学放射線療法ありでは大幅にアップレギュレーションされたが、化学放射線療法なしではアップレギュレーションされず、そして、HMGB1の度合いは、患者生存と正に相関した。
【0125】
ある好ましい実施態様において、エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料は、本明細書に記載される通りの少なくとも1つの追加の免疫療法薬及び/又は癌を処置するための治療剤と一緒に、被験体に少なくとも部分的に再投与される。
【0126】
エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料と少なくとも1つの追加の免疫療法薬及び/又は癌を処置するための少なくとも治療剤を、被験体に同時又は別々のいずれかで投与することができる。
【0127】
本発明の他の態様及び利点は、以下の実施例において明らかとなるが、該実施例は、説明を目的として与えられるものであって、限定するために与えられるものではない。
【0128】
実験の部
実施例1:官能化酸化ハフニウム(HfO)ナノ粒子の合成及び特性決定
水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)溶液をHfCl溶液40gに加える。最終懸濁液のpHが7~13からなるpHに達するまでTMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿物が得られる。
【0129】
沈殿物をさらにオートクレーブに移し、120℃~300℃からなる温度で加熱して結晶化を実施する。冷却後、懸濁液を脱イオン水で洗浄する。
【0130】
安定なナノ粒子又はナノ粒子凝集体の懸濁液を得るためにペプチゼーション(解膠)工程を実施する。
【0131】
次いで、ヘキサメタリン酸ナトリウムの懸濁液を解膠溶液に加え(加えられたヘキサメタリン酸ナトリウムの量は、LD50/5以下である)、懸濁液のpHを6.5~7.5からなるpHに調整する。
【0132】
インビトロ実験のために、この段階で、例えば0.22μmフィルタを使用して滅菌工程を実施する。
【0133】
インビボ実験のために、グルコース5%を使用した製剤化工程を、滅菌工程の前後に実施することができる。
【0134】
以下の表は、このように得られた生体適合性ナノ粒子又はナノ粒子凝集体の懸濁液の主要な特性を示す。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例2:金ナノ粒子の合成及び異なるサイズの金ナノ粒子の物理化学特性決定
クエン酸ナトリウム水溶液で塩化金を還元することによって金ナノ粒子を得る。プロトコルは、G. Frens Nature Physical Science 241 (1973) 21 から出典されたものであった。
【0137】
典型的な実験では、HAuCl溶液を加熱沸騰させる。その後、クエン酸ナトリウム溶液を加える。得られた溶液を沸騰下にさらに5分間維持する。
【0138】
クエン酸塩と金前駆体の比を注意深く変更することによってナノ粒子のサイズを15~最大で105nmに調整する(表1を参照のこと)。
【0139】
次いで、調製されたままの金ナノ粒子懸濁液を、30kDaのセルロース膜を備えた限外濾過装置(Amicon stirred cell model 8400 from Millipore)を使用して濃縮する。
【0140】
最後に、得られた懸濁液を、層流フード(laminar hood)下で0.22μmのカットオフ膜フィルタ(Millipore製のPES膜)に通して濾過して、4℃で保存する。
【0141】
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して200超の粒子を計数し、サイズ測定のためのナノ粒子の最長寸法を取得することによって粒子のサイズを決定する。
【0142】
【表2】
【0143】
実施例3:酸化ハフニウム材料で少なくとも部分的に被覆された金材料を含むナノ粒子懸濁液
水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)溶液を塩化ハフニウム(HfCl)溶液に加える。最終懸濁液のpHが7~13からなるpHに達するまでTMAOH溶液の添加を実施する。白色の沈殿物が得られる。
【0144】
実施例2からの金粒子懸濁液を、激しい混合下で白色沈殿物にゆっくり加える。
【0145】
得られた沈殿物をさらにオートクレーブに移し、100℃~300℃からなる温度で加熱する。冷却後、懸濁液を水で洗浄する。
【0146】
酸化ハフニウム材料中に少なくとも部分的に封入された金材料を含む安定なナノ粒子の懸濁液を得るためにペプチゼーション工程を実施する。
【0147】
次いで、ヘキサメタリン酸ナトリウムの懸濁液を解膠溶液に加え、懸濁液のpHを6~8からなるpHに調整する。
【0148】
実施例4:瀕死の癌細胞からのHMGB1放出
瀕死の癌細胞からのHMGB1放出を、42 MG BAヒト膠芽腫細胞株を使用して研究した。細胞株42-MG-BAを、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zelkulturen GmbH German Collection of Microorganism and Cell Cultures(Braunschweig, Germany)から購入した。
【0149】
細胞を、T25フラスコ中に1.5×10~2×10個の細胞/フラスコの範囲内で分散させた。細胞がプレートに付着したら、400μMに等しい濃度の実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液を、放射線量を送達する前に、細胞に一晩(12時間~15時間)加えた。細胞を抗生物質(Penistrepto)と共に培養した。
【0150】
5Gy又は10Gyの単回X線照射線量を、X線発生装置(200kV、15mA、0.2mm銅濾過)を使用して1.26Gy min-1の線量率で送達した。
【0151】
細胞を、5%CO加湿雰囲気下37℃で96時間培養した。96時間後、細胞上清を収集し、セントリコンを使用して濃縮した。
【0152】
ヒトHMGB1に特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用して、濃縮された細胞上清中でHMGB1を定量した。
【0153】
図1は、瀕死の癌細胞から放出されたHMGB1を示す。実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(1分割照射で送達される5Gy)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の濃縮された細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照(すなわち、照射なしの42 MG BA細胞株)と比較した倍率変化として報告される。
【0154】
図2は、瀕死の癌細胞から放出されたHMGB1を示す。実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(1分割照射で送達される10Gy)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の濃縮された細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照(すなわち、照射なしの42 MG BA細胞株)と比較した倍率変化として報告される。
【0155】
結論
5Gy又は10Gyの単回照射線量に曝露させたときの実施例1からの酸化ハフニウムナノ粒子で処置した細胞由来の濃縮された細胞上清において、放射線単独と比較して、瀕死の癌細胞から放出されたHMGB1の顕著な増加が観察される。これらの結果は、放射線療法という状況下においてこれらのナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を治療用ワクチンとして使用するための合理性を支持している。
【0156】
実施例5:細胞株全体にわたる瀕死の癌細胞からのHMGB1放出
瀕死の癌細胞からのHMGB1放出を、HCT 116ヒト結腸直腸細胞株、42 MG BAヒト膠芽腫細胞株及びPANC-1ヒト膵臓細胞株を使用して研究した。細胞株を、「American Type Culture Collection」(ATCC)(HCT 116、カタログ番号CCL-247及びPANC-1、カタログ番号CRL-1469)、又は「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen」(DSMZ)(42 MG BA、カタログ番号ACC 431)から購入した。
【0157】
細胞を、T25フラスコ中に1×10個の細胞/フラスコで分散させた。細胞がプレートに付着したら、800μM(HCT 116の場合)又は400μM(PANC-1及び42 MGの場合)に等しい濃度の実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液を、放射線量を送達する前に、細胞に一晩(12時間~15時間)加えた。細胞を抗生物質と共に培養した(1%ペニシリン-ストレプトマイシン含有培地)。
【0158】
X線照射線量を、X線発生装置(320kV、X-RAD 320)を使用して1Gy.min-1の線量率で送達した。各細胞株についての放射線量は、表3に与えられる。
【0159】
【表3】
【0160】
HCT 116細胞株:細胞を、5%CO加湿雰囲気下37℃で72時間培養した。72時間後、細胞上清を収集した。
【0161】
42 MG BA及びPANC-1細胞株:細胞を、5%CO加湿雰囲気下37℃で96時間培養した。96時間後、細胞上清を収集し、セントリコンを使用して濃縮した。
【0162】
HMGB1を、ヒトHMGB1に特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用して、細胞上清中で定量した(例えば、IBL international製の「HMGB1 ELISA Kit」、カタログ番号ST51011)。
【0163】
図3は、瀕死の癌細胞から放出されたHMGB1を示す。実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(1分割照射で送達される)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の細胞上清中に放出されたHMGB1は、未処置対照と比較した倍率変化として報告される。
【0164】
図3Aは、瀕死のHCT 116癌細胞から放出されたHMGB1を表す。照射線量は、4Gy及び6Gyに等しかった。実験は、三連で実施されプールされた2つの独立した実験の平均である。
【0165】
図3Bは、瀕死の42 MG BA癌細胞から放出されたHMGB1を表す。照射線量は、10Gy及び15Gyに等しかった。実験は、三連で実施されプールされた2つの独立した実験の平均である。
【0166】
図3Cは、瀕死のPANC-1癌細胞から放出されたHMGB1を表す。照射線量は、8Gyに等しかった。実験は、三連で実施されプールされた2つの独立した実験の平均である。
【0167】
結論
単回照射線量に曝露させたときの実施例1からの酸化ハフニウムナノ粒子で処置した細胞由来の上清において、放射線単独と比較して、瀕死の癌細胞から放出されたHMGB1の顕著な増加が観察される。これらの結果は、多種多様な癌にわたる放射線療法という状況下においてこれらのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を治療用ワクチンとして使用するための合理性を支持している。
【0168】
実施例6:瀕死の癌細胞からのATP分泌
瀕死の癌細胞からのATP分泌を、HCT 116ヒト結腸直腸癌細胞株を使用して研究した。細胞株HCT 116を、「American Type Culture Collection」(ATCC)(HCT 116、カタログ番号CCL-247)から購入した。
【0169】
細胞を、T25フラスコ中に2×10個の細胞/フラスコに等しい濃度で分散させた。細胞がプレートに付着したら、800μMに等しい濃度の実施例1からのHfOナノ粒子を、放射線量を送達する前に、細胞に一晩(12時間~15時間)加えた。細胞を抗生物質と共に培養した(1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有する培地)。
【0170】
6Gyの単回X線照射線量を、X線発生装置(320kV、X-RAD 320)を使用して1Gy.min-1の線量率で送達した。
【0171】
細胞を、5%CO加湿雰囲気下37℃で9時間培養した。9時間後、細胞上清を収集した。
【0172】
ATP分泌を、ATP測定用の生物発光検出キット(例えば、Promega製の「ENLITEN(登録商標)ATP Assay System」、カタログ番号FF2000)を使用して細胞上清中で定量した。
【0173】
図4は、瀕死のHCT 116癌細胞からのATP分泌を示す。実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液で処置して又は処置せずに放射線療法(1分割照射で送達される6Gy)に曝露させた又は曝露させていない細胞由来の細胞上清中のATP分泌は、未処置対照(すなわち、照射なしのHCT 116細胞株)と比較した倍率変化として報告される。実験は、三連で実施されプールされた3つの独立した実験の平均である。
【0174】
結論
単回照射線量に曝露させたときの実施例1からの酸化ハフニウムナノ粒子で処置した細胞由来の上清において、放射線単独と比較して、瀕死の癌細胞からのATP分泌の顕著な増加が観察される。これらの結果は、放射線療法という状況下においてこれらのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を治療用ワクチンとして使用するための合理性を支持している。
【0175】
実施例7:ワクチン接種アッセイ
「Consensus guidelines for the detection of immunogenic cell death」という表題の文献(Oliver Kepp et al. OncoImmunology 2014)に示されている通り、真のICDを引き起こす特異的な刺激の能力を評価する至適基準のアプローチは、ワクチン接種アッセイに依拠する。この設定では、選択したマウス癌細胞を免疫原性細胞死(ICD)の誘導因子にインビトロ曝露させ、最終的に免疫応答性同系マウス(理想的には、1群当たり5~10匹)の脇腹の一方(ワクチン接種部位)に皮下注射(s.c.)した。1週間後、マウスに、同じ種類の生癌細胞をチャレンジし、これを反対側の脇腹(チャレンジ部位)にs.c.接種する。腫瘍発生及び成長を、両注射部位において、ルーチンで1~2カ月にわたってモニタリングする。ワクチン接種部位での新生物病変の発達は、調査中の刺激が、適応免疫の誘発と一致する程度に細胞死を引き起こすことができないことを示す(試験された条件下)。反対に、ワクチン接種部位に腫瘍が存在しない場合、真のICDを促進する検査中の刺激の能力は、チャレンジ部位で発達した新生物病変の数と逆相関する。
【0176】
ここで、ワクチン接種アッセイ用にマウスCT 26結腸直腸癌細胞を選択した。細胞株を、「American Type Culture Collection」(ATCC)(CT26、カタログ番号CRL2638)から購入した。
【0177】
細胞を、T300フラスコ中に10×10個の細胞/フラスコで分散させた。細胞がプレートに付着したら、400μMに等しい濃度の実施例1からのHfOナノ粒子懸濁液を、放射線量を送達する前に、細胞に一晩(12時間~15時間)加えた。細胞を抗生物質と共に培養した(1%ペニシリン-ストレプトマイシン含有培地)。
【0178】
X線照射線量を、X線発生装置(320kV、X-RAD 320)を使用して1Gy.min-1の線量率で送達した。実施例1からのHfO NPで処置した又は処置していない細胞に6Gyの単回照射を送達した。
【0179】
細胞を、5%CO加湿雰囲気下37℃で48時間培養した。48時間後、細胞を収集し、トリプシン処理前にPBSで洗浄し、そして、免疫応答性Balb/cマウスの左脇腹に1.10個の生存細胞を皮下注射した。対照群については、PBS 100μLをマウスの左脇腹に皮下注射した。
【0180】
数日後、マウスに未処置のCT 26生細胞をチャレンジした:3.10個の細胞を、マウスの右脇腹に皮下注射した(図5)。腫瘍発生及び成長を、両注射部位において、1週間に2回47日にわたってモニタリングした(図6)。
【0181】
結論
ワクチン接種後47日目、6Gy照射単独で処置したマウスでは33%が無腫瘍あったのに対して、実施例1からのHfO NP及び6Gy照射で処置した群ではマウスの66%が無腫瘍であった。実施例1からの酸化ハフニウムナノ粒子で処置して単回照射線量に曝露させた細胞でワクチン接種を実施したとき、放射線単独と比較して、無腫瘍マウスの顕著な増加が観察される。これらの結果は、放射線療法という状況下においてこれらのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を治療用ワクチンとして使用するための合理性を支持している。
【0182】
これらのデータは、放射線療法単独と比較して、放射線療法に曝露させたときの本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体の、被験体の免疫系の効率的な動員を確立する能力を実証している。
【0183】
放射線療法に曝露させたときの本発明のナノ粒子又はナノ粒子の凝集体の使用によってトリガーされるこのような効率的な免疫応答は、選択された患者集団、典型的には転移癌を患っている及び/又は緩和的放射線療法を受けている被験体、その放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体、放射線療法によって(従来的に)処置されていない癌を患っている被験体、又は液性癌を患っている被験体にとって特に興味深い。
【0184】
参考文献
【表4】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移癌を患っておりかつ緩和的放射線療法を受けている被験体における、又はその被験体に対する放射線療法が断念された転移癌を患っている被験体における、又は放射線療法によって処置されていない癌を患っている被験体における、又は液性癌を患っている被験体における、癌を処置するため使用するためのナノ粒子及び/又はナノ粒子の凝集体を含むワクチン組成物であって、該処置が、被験体を、電離放射線量が1.8~30Gray(Gy)の範囲にある少なくとも1つの照射工程を含む分割放射線療法に曝露させることを含み、そして、各ナノ粒子が、少なくとも7g/cm3の密度を有する材料からなりかつ酸化ハフニウム(IV)(HfO )であり、そして、各ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆されている、ワクチン組成物。
【請求項2】
電離放射線量が1.8~20Gray(Gy)の範囲にある、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
癌が転移癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む転移癌の腫瘍部位の1つ、多くて2つにインビボ適用される、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
癌が転移癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の癌試料にエクスビボ適用され、そして、エクスビボで致死的に照射された癌細胞と癌試料由来の関連する細胞上清の少なくとも一部が、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
癌が液性癌であるとき、少なくとも1つの照射工程が、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体を含む被験体の液性癌試料にエクスビボ適用され、そして、照射された液性癌試料が、被験体における任意の場合による後続の癌のインビボ処置の前に前記被験体に少なくとも部分的に再投与される、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
液性癌試料が被験体の血液試料又は全血液量である、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料が、少なくとも1つの追加の免疫療法薬と一緒に、被験体に少なくとも部分的に再投与され、エクスビボで致死的に照射された癌細胞又は照射された液性癌試料と少なくとも1つの追加の免疫療法薬が、被験体に同時又は別々のいずれかで投与される、請求項のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
電離放射線量が、1分割照射処置当たり1.8、2、2.4、2.5、3、3.2、3.6、4、4.5、5、5.5、6、7、8、10、15及び20Gyから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
転移癌が(i)結合組織を侵し、かつ、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫及び悪性線維性組織球腫から選択され、(ii)内皮又は中皮組織を侵し、かつ、血管肉腫、管肉腫、リンパ管肉腫及び中皮腫から選択され、(iii)筋組織を侵し、かつ、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫から選択され、(iv)上皮組織を侵し、かつ、腺癌、扁平上皮癌及び類表皮癌から選択され、(v)神経組織を侵し、かつ、多形膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、髄膜腫、神経線維肉腫及び神経鞘腫から選択され、並びに(vi)APUD系を侵し、かつ、甲状腺癌、膵臓癌、胃癌及び腸癌から選択される;又は転移癌が黒色腫である、請求項1~のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
転移癌が、皮膚癌、中枢神経系の癌、頭頚部癌、肺癌、腎臓癌、乳癌、消化器癌(GIST)、前立腺癌、肝臓癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、食道癌、男性泌尿生殖器癌、婦人科癌、副腎及び後腹膜癌、骨及び軟組織の肉腫、小児癌、神経芽細胞腫、中枢神経系の癌並びにユーイング肉腫から選択される癌であるか、又はそれに由来する、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
液性癌が、血液又はリンパ系細胞組織を侵し、かつ、白血病、骨髄腫及びリンパ腫から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体が、少なくとも1つの免疫療法薬と一緒に、処置されるべき被験体に投与され、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体と少なくとも1つの免疫療法薬が、被験体に同時又は別々のいずれかで投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
組成物が薬学的に許容し得る担体又はビヒクルをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
組成物が少なくとも1つの免疫療法薬をさらに含む、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
(i)少なくとも7g/cm3の密度及び少なくとも25の原子番号(Z)を有する材料からなるナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体であって、ナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体の各々が、生理学的流体中でpH6.5~7.5での安定性をナノ粒子に与える、生体適合性コーティング剤で被覆されている、ナノ粒子若しくはナノ粒子の凝集体、又は請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を(ii)少なくとも1つの免疫療法薬と一緒に含む、キット。
【請求項16】
少なくとも1つの免疫療法薬が、モノクローナル抗体、サイトカイン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載のワクチン組成物又は請求項15に記載のキット。
【外国語明細書】