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特開2023-82101置換グリシン化合物の共結晶およびそれの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082101
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】置換グリシン化合物の共結晶およびそれの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230606BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230606BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230606BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61K47/12
A23L33/10
A23L33/175
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053835
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2019542698の分割
【原出願日】2018-01-11
(31)【優先権主張番号】15/430,750
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518343246
【氏名又は名称】シニュークス インターナショナル(タイワン)コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クオチョアン エミル ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】シエ ティエン-ラン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、少なくとも一部は、適当な置換グリシン化合物:コホーマー比(例えば1:1、2:1、3:1、または6:1)を有する、置換グリシン化合物(例えばN-メチルグリシン)の望ましい共結晶を製造するための適当なコホーマー(例えば酒石酸やフマル酸)の同定に基づく。そのような共結晶は、吸湿性、加工可能性および水溶解性といった予想外の改善された性質を呈する。
【解決手段】従って本開示は、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーとの共結晶、それを含む組成物、並びに精神神経疾患(例えば統合失調症、精神異常、抑うつ障害、自殺念慮および/または行動、強迫性障害またはアルツハイマー病)を治療するおよび/またはリスクを低減するためのそれの使用を提供する。当該共結晶を調製するための方法も提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶であって、前記コホーマーが酒石酸若しくはフマル酸又はその幾何異性体であり、前記置換グリシン化合物と前記コホーマー間の分子比が6:1~1:1の範囲である共結晶。
【請求項2】
前記置換グリシンがN-メチルグリシン、N-ジメチルグリシンまたはN-トリメチルグリシンである、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
前記コホーマーが酒石酸である、請求項1又は2のいずれかに記載の共結晶。
【請求項4】
前記置換グリシン化合物がN-メチルグリシンである、請求項3に記載の共結晶。
【請求項5】
前記コホーマーがD-酒石酸であり、そして前記共結晶が11.0, 14.2, 18.2, 19.4, 19.9, 21.6, 22.0, 22.5, 24.0, 24.8, 26.2, 26.7, 27.0, 28.3, 28.6, 30.5, 30.9, 31.6, 32.4, 33.3, 34.1, 35.3, 35.9, 36.4, 36.8, 37.3, 38.6, 38.9, 39.4, 40.0, 40.3, 41.5, 41.8, 41.9, 42.1, 42.2, 42.3, 42.5, 42.6, 42.8, 43.0, 43.3, 43.5, 43.8, 44.0, 及び44.1の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンと、139℃の融点に相当する発熱ピークを有する;又は
前記コホーマーがL-酒石酸であり、前記共結晶が11.0, 14.2, 18.2, 19.4, 20.0, 21.7, 22.0, 22.5, 24.1, 24.8, 26.2, 26.7, 27.0, 28.3, 28.6, 28.8, 30.5, 30.9, 31.6, 32.5, 33.1, 33.3, 34.1, 35.3, 35.9, 36.4, 36.8, 37.3, 38.6, 38.8, 39.3, 40.0, 40.3, 41.5, 41.6, 41.9, 42.5, 43.0, 43.4, 及び43.9の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンと、138℃付近の融点に相当する発熱ピークを有する;又は
前記コホーマーがDL-酒石酸であり、そして前記共結晶が10.9, 14.2, 18.2, 19.4, 19.9, 21.7, 22.0, 22.5, 24.0, 24.8, 26.2, 26.6, 27.0, 28.3, 28.5, 28.8, 30.5, 30.9, 31.5, 32.4, 33.1, 33.3, 34.1, 35.2, 35.9, 36.4, 36.8, 37.3, 38.6, 38.8, 39.3, 39.9, 40.0, 40.2, 41.5, 41.6, 41.8, 42.3, 42.5, 42.9, 43.0, 43.4, 及び43.8の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンと、120℃の融点に相当する発熱ピークを有する;
請求項1~4のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項6】
前記共結晶中のN-メチルグリシン対酒石酸との間の分子比が3:1~1:1である、又は前記共結晶中のN-メチルグリシン対酒石酸との間の分子比が2:1または1:1である、請求項4に記載の共結晶。
【請求項7】
前記コホーマーがフマル酸である、請求項1又は2のいずれかに記載の共結晶。
【請求項8】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンである、請求項7に記載の共結晶。
【請求項9】
前記置換グリシンとコホーマーとの間の分子比が6:1、3:1、2:1または1:1である、請求項7又は8のいずれかに記載の共結晶。
【請求項10】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が1:1であり、そして前記共結晶が9.81, 11.10, 12.44, 13.99, 15.05, 17.63, 18.65, 19.20, 20.05, 20.80, 20.94, 22.41, 22.60, 23.51, 23.84, 24.61, 25.01, 26.95, 27.25, 28.07, 28.66, 29.23, 29.75, 30.05, 31.85, 33.23, 33.42, 35.49, 36.12, 37.94, 38.15, 及び38.58の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンを有する;又は
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が2:1であり、そして前記共結晶が7.66, 9,89, 12.06, 12.78, 14.00, 15.52, 16.40, 16.58, 17.14, 17.49, 18.42, 19.74, 20.12, 20.75, 22.22, 22.46, 22.93, 23.16, 23.93, 24.29, 24.52, 24.66, 25.32, 25.66, 26.18, 26.98, 27.86, 29.00, 31.06, 31.41, 31.62, 32.96, 33.28, 33.46, 34.45, 34.70, 35.55, 及び37.01の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンを有する;又は
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が3:1であり、そして前記共結晶が12.03, 12.70, 14.12, 15.50, 16.42, 16.52, 17.21, 18.29, 20.15, 22.16, 22.35, 22.88, 23.02, 23.17, 24.11, 24.43, 25.66, 26.22, 27.09, 27.87, 28.30, 28.53, 29.00, 30,41, 31.24, 31.38, 31.65, 33.13, 33.42, 34.33, 34.68, 35.55, 36.37, 36.92, 及び39.79の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンを有する;又は
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が6:1であり、そして前記共結晶が9.66, 12.30, 15.00, 16.55, 17.07, 18.51, 19.98, 20.39, 22.43, 22.79, 23.43, 24.63, 24.99, 25.84, 26.06, 26.92, 27.11, 27.90, 28.17, 29.05, 29.40, 30.19, 30.49, 32.81, 33.29, 33.34, 34.52, 34.76, 34.97, 35.20, 35.57, 35.99, 37.75, 及び38.36の特徴的な2θピークを有する粉末X線回折パターンを有する;
請求項9に記載の共結晶。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の共結晶の有効量と担体とを含む組成物。
【請求項12】
前記組成物が医薬組成物、栄養補給組成物、健康食品または医療用食品である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
対象における精神神経疾患を治療するまたはリスクを低減するために用いられる組成物であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の共結晶または請求項11もしくは請求項12の組成物の治療有効量を含む組成物。
【請求項14】
前記精神神経疾患が、統合失調症、精神異常、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児学習障害、月経前症候群、抑うつ、自殺念慮および/または自殺行動、気分変調性障害、双極性障害、不安症、外傷後ストレス障害、慢性疼痛、摂食障害、嗜癖障害、パーソナリティ障害、パーキンソン病、ハンチントン病、または筋委縮性側索硬化症から成る群より選択される、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の共結晶の調製方法であって、
(i) 置換グリシン化合物とコホーマーを溶媒中で40~110℃の温度で混合して飽和溶液を形成させ、ここで前記置換グリシン化合物とコホーマーが10:1~1:10の分子比であり;
(ii) 該溶液を40~110℃の温度で1~10時間更に加熱し;
(iii) 該溶液を4~30℃の温度に10~36時間冷却して共結晶の形成を可能にし;そして
(iv)(iii)で形成された共結晶を回収する
ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月13日出願の米国非仮出願第15/430,750号に対する優先権を主張し、その出願は参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
共結晶は、少なくとも1つの医薬物質(例えば活性成分)と少なくとも1つのコホーマー(Coformer)とを含み、それらが超分子シントンにより一緒に抱合される、均一多成分系である。薬用共結晶は、医薬物質の潜在的に有利な物理化学的特性、例えば、溶解性、溶解速度、バイオアベイラビリティ、物理的および/または化学的安定性、流動性、吸湿性、加工可能性等の改善に共結晶が貢献するという理由で、相当な関心を集めている。更に、医薬物質の吸湿性を最小限に抑えることは、医薬品開発と製造における最も困難な作業の1つでありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
共結晶の開発段階で、特定の医薬物質の薬用共結晶を製造するのに適当なコホーマーは、通常は試行錯誤的なアプローチによって同定される。よって、望ましい薬用共結晶を製造するための医薬物質にとって適当なコホーマーの選択と、該医薬物質とコホーマーとの比の選択、並びにそのような共結晶を製造する方法が、特定の医薬物質のための薬剤共結晶を製造する上での主な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、少なくとも一部は、適当な置換グリシン化合物:コホーマー比(例えば1:1、2:1、3:1、または6:1)を有する、置換グリシン化合物(例えばN-メチルグリシン)の望ましい共結晶を製造するための適当なコホーマー(例えば酒石酸やフマル酸)の同定に基づく。そのような共結晶は、吸湿性、加工可能性および水溶解性といった予想外の改善された性質を呈する。
【0005】
従って、本明細書には、置換グリシン化合物とコホーマーの共結晶であって、ここで前記コホーマーが本明細書中に記載の式(I)の化合物である共結晶、そのような共結晶を含む組成物とキット、そのような共結晶の製造方法、並びに神経精神病疾患(例えば統合失調症、精神異常、疼痛またはアルツハイマー病)を治療するおよび/またはリスクを低減するための該共結晶の使用が提供される。
【0006】
一態様では、本開示は、置換グリシン化合物(例えばN-メチルグリシン、N-ジメチルグリシン、N-トリメチルグリシン等)とコホーマーとの共結晶であって、該コホーマーが式(I)の化合物:
【0007】
【化1】
【0008】
〔ここで
AとBは独立にOHまたはHであり;
WはOまたはNHであり;
XはHであるか存在せず;
YはC=OまたはCR12であり、ここでR1とR2は独立にH、アルキル、アルケニルまたはアルキニルから選択され;
ZはOHまたは-CH(OH)R3であり、ここで-CH(OH)R3のC原子は(R)-配置にあり、そしてR3はHまたはアルキルであり;そして
【0009】
【化2】
【0010】
はC2-C1またはC2=C1であり、ここでC1とC2は各々SP3またはSP2配位にあり;そしてXが存在せずかつR1かR2のいずれかが存在しない場合、YとWは単結合により結合することができる〕
である共結晶を提供する。本明細書に記載の共結晶における置換グリシンとコホーマー間の分子比は、6:1~1:5、例えば6:1~1:1の範囲であることができる。
【0011】
【化3】
【0012】
がC2-C1である時、共結晶中の置換グリシンとコホーマー間の分子比は1:1~1:5の範囲であることができる。
【0013】
一態様では、本開示は置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶であって、ここで該コホーマーが式(I)の化合物:
【0014】
【化4】
【0015】
〔ここで
AとBは各々独立にOHまたはHであり;
WはOまたはNHであり;
XはHであるか存在せず;
YはC=OまたはCR12であり、ここでR1とR2は独立にH、アルキル、アルケニルまたはアルキニルから選択され;
ZはOHまたは-CH(OH)R3であり、ここで-CH(OH)R3のC原子は(R)-配置にあり、そしてR3はHまたはアルキルであり;
【0016】
【化5】
【0017】
はC2-C1またはC2=C1であり、ここでC1とC2はSP3またはSP2配位にあり;そしてXが存在せずかつR1かR2のいずれかが存在しない場合、YとWは単結合により結合することができる〕
である共結晶を提供し;
ここで該共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が6:1~1:1の範囲内である。
ある実施形態では、式(I)のコホーマー化合物が式(IA):
【0018】
【化6】
【0019】
の化合物であり、ここで
【0020】
【化7】
【0021】
およびZは前に記載の通りである。ある例では、式(IA)の化合物が、L-酒石酸、D-酒石酸またはDL-酒石酸を含む、酒石酸:
【0022】
【化8】
【0023】
である。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が1:1または2:1であることができる。
幾つかの実施形態では、式(I)のコホーマー化合物が、式(IB):
【0024】
【化9】
【0025】
の化合物であり、ここで
【0026】
【化10】
【0027】
、A、B、W、XおよびZは前に定義された通りである。ある例では、
【0028】
【化11】
【0029】
がC2=C1であることができ;A、Bまたはその両方が水素であることができ;WがOであることができ;そして/またはXがHであることができる。一例では、式IIの化合物はフマル酸:
【0030】
【化12】
【0031】
である。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が1:2~6:1の範囲(例えば1:1、2:1、3:1または6:1)であることができる。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が6:1~1:1の範囲であることができる。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が3:1~1:1の範囲であることができる。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が2:1~1:1の範囲であることができる。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が2:1または1:1である。ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が6:1、3:1、2:1、または1:1である。
幾つかの実施形態では、式(I)のコホーマー化合物が、式(IC):
【0032】
【化13】
【0033】
の化合物であり、ここでC1、C2およびZは前に記載の通りである。ある実施形態では、Zが-CH(OH)R3であり、その中のC原子は(R)-配置にあり、そしてR3はHまたはアルキル(例えばOHにより置換されたアルキル、例えばCHOH)である。一例では、式(IC)の化合物はエリソルビン酸である:
【0034】
【化14】
【0035】
ある例では、置換グリシンとコホーマー間の分子比が1:1であることができる。
本明細書に記載の共結晶のいずれにおいても、置換グリシン化合物はN-メチルグリシン(別名サルコシン)、N-ジメチルグリシンまたはN-トリメチルグリシンであることができる。ある例では、置換グリシン化合物はN-メチルグリシンであることができる。
【0036】
本明細書に記載の共結晶の特定例においては、
(i) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがD-酒石酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとD-酒石酸との比が1:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図2に描写されるような粉末X線回折パターンと、約139℃の融点に相当する吸熱ピークを有する;
(ii) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがL-酒石酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとL-酒石酸との比が1:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図6に描写されるような粉末X線回折パターンと、約138℃の融点に相当する吸熱ピークを有する;
(iii) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがDL-酒石酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとDL-酒石酸との比が1:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図10に描写されるような粉末X線回折パターンと、約120℃の融点に相当する吸熱ピークを有する;
【0037】
(iv) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがフマル酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとフマル酸との比が1:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図20に描写されるような粉末X線回折パターンを有する;
(v) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがフマル酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとフマル酸との比が2:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図21に描写されるような粉末X線回折パターンを有する;
(vi) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがフマル酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとフマル酸との比が3:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図22に描写されるような粉末X線回折パターンを有する;または
(vii) 置換グリシンがN-メチルグリシンであり、コホーマーがフマル酸であり、共結晶中のN-メチルグリシンとフマル酸との比が6:1であり、そして場合により該共結晶が実質的に図23に描写されるような粉末X線回折パターンを有する。
【0038】
ある例では、共結晶であって、置換グリシンがN-メチルグリシンであり、ここで共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が1:1であり、そして共結晶が実質的に図20に描写されるような粉末X線回折パターンを有する。ある例では、共結晶であって、置換グリシンがN-メチルグリシンであり、ここで共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が2:1であり、そして共結晶が実質的に図21に描写されるような粉末X線回折パターンを有する。ある例では、共結晶であって、置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が3:1であり、そして共結晶が実質的に図22に描写されるような粉末X線回折パターンを有する。ある例では、共結晶であって、置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が6:1であり、そして共結晶が実質的に図23に描写されるような粉末X線回折パターンを有する。
【0039】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載の1以上の共結晶の有効量と担体とを含む組成物を提供する。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物が医薬的に許容される担体を含む医薬組成物である。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物が栄養補給用組成物である。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物が健康食品である。ある実施形態では、本明細書に記載の組成物が医療食品である。本明細書に記載の組成物はいずれも、有効量の本明細書に記載の共結晶を含む。前記有効量は、治療的有効量または予防的有効量でありうる。
【0040】
別の観点では、本開示は精神神経疾患〔すなわち、中枢神経系(CNS)障害、例えば統合失調症、精神異常、抑うつ、自殺念慮および/または行動、疼痛、アルツハイマー病、または認知症〕を治療するおよび/またはリスクを低減する方法であって、処置が必要な対象にいずれかの本発明組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。別の観点では、本開示は、例えば肥満、高血圧、糖代謝または脂質代謝疾患を治療するおよび/またはリスクを低減する方法であって、処置が必要な対象に本発明組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0041】
標的とする精神神経疾患としては、限定されないが、統合失調症、精神異常、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害(例えばアスペルガー障害)、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児学習障害、月経前症候群、抑うつ、自殺念慮および/または自殺行動、気分変調性障害、双極性障害、不安症、外傷後ストレス障害、慢性疼痛、摂食障害、嗜癖障害、パーソナリティ障害、パーキンソン病、ハンチントン病、または筋委縮性側索硬化症が挙げられる。
【0042】
標的とする糖代謝または脂質代謝障害としては、限定されないが、肥満、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、または高脂血症が挙げられる。
【0043】
本明細書に記載の治療法のいずれにおいても、処置される対象は哺乳類(例えばヒトまたは非ヒト哺乳類)であることができる。例えば、対象は、本明細書に記載のような標的疾患を有するかまたは有する疑いのあるヒト患者である。
【0044】
本開示の別の観点は、本明細書に記載の共結晶またはその組成物が中に入っている容器を含むキットに関する。本明細書に記載のキットは、1回量または複数回量の共結晶または組成物を含んでもよい。該キットは本開示の方法に有用である。ある実施形態では、該キットは共結晶または組成物を使用するための指示書を更に含む。
【0045】
更に別の態様では、本開示は、本明細書に記載のような精神神経疾患または糖もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはリスクを低減するのに用いられる、および/または標的疾患を治療するのに用いられる医薬を製造するために用いられる、本明細書に記載の共結晶と組成物を提供する。ある例では、対象において精神神経疾患を治療するおよび/またはリスクを低減するのに用いられる組成物が提供され、ここで該組成物は治療的有効量の本発明の共結晶を含む。ある例では、精神神経疾患を治療するまたはリスクを低減するのに用いられる医薬を製造するための、治療的有効量の本発明の共結晶および組成物の使用が提供される。
【0046】
本開示の1以上の態様の詳細は下記に提供される。本開示の別の特徴、目的および利点は、詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかであろう。
〔定義〕
【0047】
特定の官能基と化学用語の定義は下記に詳細に記載される。化学元素は、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics, 第75版(本の見返し)に従って特定され、そして特定の官能基は一般に本明細書に記載の通りに定義される。その上、有機化学の一般理論、並びに特定の官能基と反応性については、Thomas Sorrell, Organic Chemistry, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith & March, March's Advanced Organic Chemistry, 第5版, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; およびCarruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 第3版, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。本開示はいかなる形でも本明細書に記載の置換基の典型例により限定されるものではない。
【0048】
本明細書に記載の化合物は1以上の不斉中心を有することができ、よって、様々な異性体形、例えばエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの形で存在しうる。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは幾何異性体の形で存在することができ、あるいは、立体異性体の混合物の形、例えばラセミ混合物の形、および1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物の形であることができる。異性体は、当業者に周知の方法、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびキラル塩の形成と晶出により、混合物から単離することができ;あるいは好ましい異性体を不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacques他、Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience, New York, 1981); Wilen他、Tetrahedron 33:2725 (1977); Eliel, Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962);および Wilen, Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268 (E.L. Eliel編, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照されたい。本開示は更に、別の異性体を実質的に含まない個々の異性体としての、あるいは種々の異性体の混合物としての、本発明の化合物を包含する。
【0049】
数値に一定範囲が列挙されるとき、それは各々の数値とその範囲内の部分的範囲を包含することを意図する。例えば、「C1-6」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、およびC5-6を包含するつもりである。
【0050】
用語「脂肪族」は、飽和と不飽和の両方の直鎖状(すなわち非分枝状)、分枝状、非環式、環式または多環式の脂肪族炭化水素を包含し、これらは場合により1以上の官能基で置換されてよい。当業者により理解されるように、「脂肪族」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基を包含するが、それらに限定されないことを意図する。従って、用語「アルキル」は、直鎖状、分枝状および環状アルキル基を含む。同様な規定が「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般的な用語に適用される。更に、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」等は、置換された基と非置換の基の両方を包含する。ある態様では、「低級アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(環式、非環式、置換、非置換、分枝状または非分枝状)を示すために用いられる。
【0051】
ある実施形態では、本開示で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。ある別の実施形態では、本開示で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基が1~10個の脂肪族炭素原子を含む。更に別の実施形態では、本開示で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は1~8個の脂肪族炭素原子を含む。更に別の実施形態では、本開示で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基が1~6個の脂肪族炭素原子を含む。更に別の実施形態では、本開示で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基が1~4個の炭素原子を含む。例示的な脂肪族基としては、例えば、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、-CH2-シクロプロピル、ビニル、アリル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロブチル、-CH2-シクロブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、シクロペンチル、-CH2-シクロペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、シクロヘキシル、-CH2-シクロヘキシル基等が挙げられ、それらは同様に、1または複数の置換基を有してもよい。アルケニル基としては、限定されないが、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル等が挙げられる。代表的なアルキニル基としては、限定されないが、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、1-プロピニル等が挙げられる。
【0052】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝状飽和炭化水素基(「C1-10アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例は、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C4)(例えば、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C5)(例えば、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、第三級アミル)、およびヘキシル(C6)(例えば、n-ヘキシル)である。アルキル基の更なる例としては、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)等が挙げられる。特に断わらない限り、アルキル基の各例は、1個の以上の置換基(例えばFなどのハロゲンまたは-OH)により独立に置換されない(「非置換アルキル」)または置換される(「置換アルキル」)。特定の実施形態では、アルキル基は非置換のC1-10アルキル(例えば非置換C1-6アルキル、例えば-CH3)である。特定の実施形態では、アルキル基は置換C1-10アルキル(例えば置換C1-6アルキルまたは置換C1-3アルキル、例えば-CF3または-CH2OH)である。
【0053】
「アルケニル」は、2~20個の炭素原子、1個以上の炭素-炭素二重結合を含むが三重結合は1つも含まない直鎖または分枝状炭化水素基(「C2-20アルケニル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~10個の炭素原子を有する(「C2-10アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~6個の炭素原子を有する「(C2-6アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2個の炭素原子を有する(「C2アルケニル」)。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、分子内(例えば2-ブテニルのように)または末端(例えば1-ブテニルのように)であってもよい。C2-4アルケニル基の例としては、エテニル(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)等が挙げられる。C2-6アルケニル基の例としては、前述のC2-4アルケニル基、並びにペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)等が挙げられる。アルケニル基の追加の例には、ヘプテニル(C7)、オクテニル(C8)、オクタトリエニル(C8)、などが挙げられる。特に断わらない限り、アルケニル基の各例は独立に、場合により置換されてもよく、すなわち、1つ以上の置換基により置換されていない(「非置換アルケニル」)または置換されている(「置換アルケニル」)。特定の実施形態において、アルケニル基は非置換C2-10アルケニルである。特定の実施形態において、アルケニル基は置換C2-10アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が特定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH3または
【0054】
【化15】
【0055】
)は(E)または(Z)-二重結合であることができる。
【0056】
「アルキニル」は、2~20個の炭素原子、1個以上の炭素-炭素三重結合、および場合により1個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状炭化水素基(「C2-20アルキニル」)を指す。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~10個の炭素原子を有する(「C2-10アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルキニル」)。幾つかの実施形態において、アルキニル基は2個の炭素原子を有する(「C2アルキニル」)。1個以上の炭素-炭素三重結合は、分子内(例えば2-ブチニルのように)または末端(例えば1-ブチニルのように)であってもよい。C2-4アルキニル基の例としては、限定されないが、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)等が挙げられる。C2-6アルキニル基の例としては、上述したC2-4アルキニル基並びにペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)等が挙げられる。アルキニル基の追加の例は、ヘプチニル(C7)、オクチニル(C8)等である。特に断らない限り、アルキニル基の各例は、独立に、場合により1つ以上の置換基により置換されており、すなわち、置換されていない(「非置換アルキニル」)かまたは置換されている(「置換アルキニル」)。ある実施態様では、アルキニル基は非置換C2-10アルキニルである。特定の実施形態では、アルキニル基は置換C2-10アルキニルである。
【0057】
「カルボシクリル」または「炭素環」は、非芳香族環系中に3~10個の環炭素原子と0個のヘテロ原子を有する非芳香族環状炭化水素基(「C3-10カルボシクリル」)を指す。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10カルボシクリル」)。典型的なC3-6カルボシクリル基としては、限定されないが、シクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)等が挙げられる。典型的なC3-8カルボシクリル基としては、限定されないが、上述したC3-6カルボシクリル基、並びにシクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)、シクロオクチル(C8)、シクロオクテニル(C8)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(C7)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C8)等が挙げられる。例示的なC3-10カルボシクリル基としては、限定されないが、上述したC3-8カルボシクリル基並びにシクロノニル(C9)、シクロノネニル(C9)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C9)、デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)等が挙げられる。上記例が示すように、特定の実施形態では、カルボシクリル基は単環(「単環式カルボシクリル」)であるかまたは縮合、架橋もしくはスピロ環系、例えば二環系(「二環式カルボシクリル」)を含み、そして飽和であるかまたは部分的に不飽和であることができる。「カルボシクリル」は、上記に定義したような炭素環が1個以上のアリールまたはヘテロアリール基と縮合されている環系を含み、ここで付着点は炭素環上であり、そしてそのような場合、炭素の数は炭素環系中の炭素の数を表し続ける。特に断らない限り、各場合のカルボシクリル基は独立に、場合により1つ以上の置換基により置換されており、すなわち置換されていない(「非置換カルボシクリル」)かまたは置換されている(「置換カルボシクリル」)である。特定の実施形態では、カルボシクリル基は非置換C3-10カルボシクリルである。特定の実施形態では、カルボシクリル基は置換3-10カルボシクリルである。
【0058】
いくつかの実施形態において、「カルボシクリル」は、3~10個の炭素原子を有する単環式飽和カルボシクリル基(「C3-10シクロアルキル」)である。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5~6個の環炭素原子を有する(「C5-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例は、シクロペンチル(C5)とシクロヘキシル(C6)を含む。C3-6シクロアルキル基の例は、上述したC5-6シクロアルキル基並びにシクロプロピル(C3)とシクロブチル(C4)を含む。C3-8シクロアルキル基の例は、上述したC3-6シクロアルキル基並びにシクロヘプチル(C7)とシクロオクチル(C8)を含む。特に断わらない限り、シクロアルキル基の各例は、場合により1個の以上の置換基で置換されていない(「非置換シクロアルキル」)かまたは置換されている(「置換シクロアルキル」)。特定の実施形態において、シクロアルキル基は非置換C3-10シクロアルキルである。特定の実施形態において、シクロアルキル基は置換C3-10シクロアルキルである。
【0059】
「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、環炭素原子と1~4個のヘテロ原子を有する3~10員の非芳香族環系を指し、ここで各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リンおよびケイ素から選択される(「3~10員のヘテロシクリル」)。1個以上の窒素原子を含むヘテロシクリル基では、付着点は、原子価が許す限り、炭素または窒素原子であることができる。ヘテロシクリル基は単環式(「単環式ヘテロシクリル」)または縮合、架橋もしくはスピロ環系、例えば二環系(「二環式ヘテロシクリル」)のいずれかであることができ、飽和であっても部分的不飽和であってもよい。ヘテロシクリル二環式環系は、一方または両方の環の中に1個以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロシクリル」は、上記で定義したような複素環が1個以上のカルボシクリル基と縮合されており、ここで付着点は炭素環上か複素環上のいずれかであり、または上記で定義したような複素環が1個以上のアリールもしくはヘテロアリール基と縮合されており、ここで付着点は複素環上であり、そしてそのような場合、環構成員の数は複素環系の中の環構成員の数を表したままである。特に断らない限り、各場合のヘテロシクリルは独立に、場合により1個以上の置換基により置換されてよく、すなわち置換されない(「非置換ヘテロシクリル」)かまたは置換される(「置換ヘテロシクリル」)。特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は3~10員の非置換ヘテロシクリルである。特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は3~10員の置換ヘテロシクリルである。
【0060】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の非芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は独立に、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リンおよびケイ素から選択される(「5~10員のヘテロシクリル」)。幾つかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の非芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~8員のヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の非芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は独立に、窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~6員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素および硫黄から選択された1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素および硫黄から選択された1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素および硫黄から選択された1個の環ヘテロ原子を有する。
【0061】
1個のヘテロ原子を含む典型的な3員ヘテロシクリル基は、限定されないが、アジリジニル、オキシラニル、チイラニルを含む。1個のヘテロ原子を含む典型的な4員ヘテロシクリル基は、限定されないが、アゼチジニル、オキセタニルおよびチエタニルを含む。1個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロシクリル基は、限定されないが、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、およびピロリル-2,5-ジオンを包含する。2個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロシクリル基は、限定されないが、ジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル、およびオキサゾリジン-2-オンを含む。3個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロシクリル基は、限定されないが、トリアゾリニル、オキサジアゾリニルおよびチアジアゾリニルを包含する。1個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロシクリル基は、限定されないが、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジニルおよびチアニルを包含する。2個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロシクリル基は、限定されないが、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニルおよびジオキサニルを含む。2個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロシクリル基は、限定されないが、トリアジナニルを含む。1個のヘテロ原子を含む典型的な7員のヘテロシクリル基は、限定されないが、アゼパニル、オキセパニルおよびチエパニルを包含する。1個のヘテロ原子を含む典型的な8員のヘテロシクリル基は、限定されないが、アゾカニル、オキセカニルおよびチオカニルを含む。C6アリール環に縮合された典型的な5員ヘテロシクリル基(5,6-二環式複素環とも称する)は、限定されないが、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリノニル等を含む。アリール環に縮合した典型的な6員ヘテロシクリル基(6,6-二環式複素環とも称する)は、限定されないが、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられる。
【0062】
「アリール」は、芳香族環系中に6~14個の環炭素原子と0個のヘテロ原子を有する、単環式または多環式(例えば二環式または三環式)4n+2の芳香族環系(例えば環状に配列した6、10または14個のπ電子を共有する)の基を指す(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態では、アリール基は6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」、例えばフェニル)。いくつかの実施形態では、アリール基は10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」、例えばナフチル、例えば1-ナフチルおよび2-ナフチル)。いくつかの実施形態では、アリール基は14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」、例えばアントラシル)。「アリール」はまた、上記に定義したアリール環が1個以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合されている環系も包含し、ここで付着の残基または付着点はアリール環上であり、そしてそのような場合には、炭素原子の数がアリール環系中の炭素原子の数を指定し続ける。特に断らない限り、各例のアリール基は独立に、場合により1個以上の置換基で置換されてよく、すなわち置換されていない(「非置換アリール」)かまたは置換されている(「置換アリール」)。いくつかの実施形態では、アリール基は非置換C6-14アリールである。特定の実施形態では、アリール基は置換C6-14アリールである。
【0063】
「置換グリシン化合物」とは、式IIの化合物を指す:
【0064】
【化16】
【0065】
(ここでR1、R2およびR3は各々独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロアリールである)。特定の実施形態にでは、式II中、R1、R2およびR3が独立に存在しない。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のいずれか1つが存在しない。特定の実施形態では、式II中、R1、R2およびR3の全てが存在し、そして窒素が正に帯電している。
【0066】
特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの1つがC1-6アルキル(例えば非置換C1-6アルキル)である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの1つが非置換C1-3アルキルである。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの1つが存在しない。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの1つが非置換C1-3アルキルであり、そしてR1、R2およびR3のうちの1つが水素である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの2つがC1-6アルキル(例えば非置換C1-6アルキル)である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3のうちの2つがC1-6アルキル(例えば非置換C1-6アルキル)であり、そしてR1、R2およびR3の他の1つが水素である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3の3つ全部が各々C1-6アルキル(例えば非置換C1-6アルキル)である。特定の実施形態では、R1、R2およびR3の3つ全部が各々非置換C1-3アルキルである。
【0067】
特定の実施形態では、R1が水素であり、R2がC1-6アルキルであり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1が水素であり、R2が非置換C1-3アルキルであり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1が水素であり、R2が非置換のメチルであり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1がC1-6アルキルであり、R2が水素であり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1が非置換C1-3アルキルであり、R2が水素であり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1が非置換のメチルであり、R2が水素であり、そしてR3が存在しない。特定の実施形態では、R1が存在せず、R2が水素であり、そしてR3がC1-6アルキルである。特定の実施形態では、R1が存在せず、R2が水素であり、そしてR3が非置換C1-6アルキルである。特定の実施形態では、R1が存在せず、R2が水素であり、そしてR3が非置換のメチルである。
【0068】
特定の実施形態では、置換グリシン化合物が
【0069】
【化17】
【0070】
(N-メチルグリシン、別名サルコシン)、
【0071】
【化18】
【0072】
(N-ジメチルグリシン)、または
【0073】
【化19】
【0074】
(N-トリメチルグリシン)
である。
【0075】
2価の架橋基であるアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、接尾辞「-エン」を用いて呼称され、例えばアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、カルボシクリレン、ヘテロシクリレン、アリーレンおよびヘテロアリーレンを指す。
【0076】
「アラルキル」は、アルキルおよびアリールのサブセットであり、場合により置換されるアリール基で置換されることがある、場合により置換されてよいアルキル基を指す。特定の実施形態において、アラルキルは、場合により置換されるベンジルである。特定の実施形態では、アラルキルはベンジルである。特定の実施形態では、アラルキルは場合により置換されるフェネチルである。特定の実施形態では、アラルキルはフェネチルである。
【0077】
「ヘテロアリール」は、芳香族環系中に環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子とを有する5~10員の単環式または二環式4n+2芳香族環系(例えば環状の配列で6個または10個のπ電子を共有している)の基を指し、ここで各ヘテロ原子は、独立に窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。1個以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、付着点は原子価が許す限り炭素または窒素原子である。ヘテロアリール二環系は、一方または両方の環上に1個以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」は、上記で定義したヘテロアリール環が1個以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合されている環系を含み、ここで付着点はヘテロアリール環上にあり、そしてそのような場合、環構成員の数は、ヘテロアリール環系中の環構成員の数を示し続ける。「ヘテロアリール」は、上記で定義されるヘテロアリール環が1個以上のアリール基と縮合されている環系を含み、ここで付着点はアリールまたはヘテロアリール環上のいずれかであり、そしてそのような場合、環構成員の数は縮合(アリール/ヘテロアリール)環系中の環構成員の数を示し続ける。二環式ヘテロアリール基は、1個の環がヘテロ原子を含まず(例えばインドリル、キノリニル、カルバゾイル等)、付着点がいずれか一方の環上、すなわちヘテロ原子を有している環(例えば2-インドリル)またはヘテロ原子を含まない環(例えば5-インドリル)のいずれかの上にある。
【0078】
幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系中に環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子とを有する5~10員の芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は個別に窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系中に環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子とを有する5~8員の芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系中に環炭素原子と1~4個の環ヘテロ原子とを有する5~6員の芳香族環系であり、ここで各ヘテロ原子は独立に窒素、酸素および硫黄から選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。幾つかの実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素および硫黄から選択された1~3個の環ヘテロ原子を有する。幾つかの態様では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素および硫黄から選択された1~2個の環ヘテロ原子を有する。幾つかの態様では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素および硫黄から選択された1個の環ヘテロ原子を有する。特に断らない限り、ヘテロアリール基の各例は独立に、場合により置換されてよく、すなわち置換されていない(「非置換ヘテロアリール」)かまたは置換されている(「置換ヘテロアリール」)。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は非置換5~14員ヘテロアリールである。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は置換5~14員ヘテロアリールである。
【0079】
1個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、ピロリル、フラニルおよびチオフェニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられる。3個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、トリアゾリル、オキサジアゾリルおよびチアジアゾリルが挙げられる。4個のヘテロ原子を含む典型的な5員ヘテロアリール基としては、限定されないが、テトラゾリルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロアリール基は、限定されないが、ピリジニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロアリール基は、限定されないが、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニルが挙げられる。3個または4個のヘテロ原子を含む典型的な6員ヘテロアリール基は、限定されないが、それぞれトリアジニルおよびテトラジニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む典型的な7員ヘテロアリール基としては、限定されないが、アゼピニル、オキセピニルおよびチエピニルが挙げられる。典型的な5,6-二環式ヘテロアリール基としては、限定されないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニルおよびプリニルが挙げられる。典型的な6,6-二環式ヘテロアリール基としては、限定されないが、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニルおよびキナゾリニルが挙げられる。
【0080】
「不飽和」または「部分不飽和」は、少なくとも1個の二重結合または三重結合を含む基を指す。「部分不飽和」環系は、更に、複数の不飽和部位を有する環を包含するものであるが、芳香族基(例えばアリールまたはヘテロアリール基)を含むことは意図しない。同様に、「飽和」は二重結合または三重結合を含まない基を指し、すなわち全て単結合を含む基である。
【0081】
明らかに異なって示されない限り、本明細書中に記載の原子、構成成分または基は、原子価が許す限り、非置換であっても置換されてもよい。用語「場合により置換される」とは、置換または非置換を指す。
【0082】
明らかに異なって示されない限り、基は場合により置換されることがある。用語「場合により置換される」とは、置換または非置換を指す。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール基は、場合により置換される(例えば「置換」または「非置換」アルキル、「置換」または「非置換」アルケニル、「置換」または「非置換」アルキニル、「置換」または「非置換」カルボシクリル、「置換」または「非置換」ヘテロシクリル、「置換」または「非置換」アリール、「置換」または「非置換」ヘテロアリール基)。一般に、「場合により」という用語が前に付けられているかどうかに関わらず、用語「置換」とは、1つの基(例えば炭素または窒素原子)上に存在する少なくとも1つの水素原子が、許容される置換基、例えば置換されると安定な化合物を生じるような置換基、例えば自発的に転位、環化、脱離または他の反応による等の変換を受けない化合物を生じるような置換基で、置換されることを意味する。異なって指摘されない限り、「置換」された基は、その基の1つ以上の置換可能な位置に置換基を有し、そして任意の与えられた構造の中の複数の位置が置換される場合には、その置換基は各位置で同じであっても異なってもよい。用語「置換」は、有機化合物の全ての許容される置換基による置換を包含し、安定な化合物の形成をもたらすような本明細書に記載の置換基の全てを包含するものである。本開示は、安定な化合物に到達するために、ありとあらゆるそのような組み合わせを企図する。本開示の目的上、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基および/または、該ヘテロ原子の原子価を満たしかつ安定な成分の形成をもたらすような本明細書に記載の任意の適当な置換基を有することができる。特定の実施形態において、置換基は炭素原子置換基である。特定の実施形態では、置換基は酸素原子置換基である。特定の実施形態では、置換基は窒素原子置換基である。特定の実施形態では、置換基は硫黄原子置換基である。
【0083】
典型的な炭素原子置換基としては、限定されないが、ハロゲン、
【0084】
【化20】
【0085】
1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-10アリールおよび5~14員ヘテロアリールが挙げられる。ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に、0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され;そしてX-は対イオンであり;
または同一炭素原子上に結合した2つの水素原子が、=O, =S,=NN(Rbb)2, =NNRbbC(=O)Raa, =NNRbbC(=O)ORaa, =NNRbbS(=0)2Raa, =NRbb または =NORcc基で置き換えられ;
各場合のRaaが独立に、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6-14アリールおよび5~14員のヘテロアリールから選択され、または2つのRaa基が連結して3~14員のヘテロシクリル環または5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され;
【0086】
各場合のRbbは独立に、水素、-OH, -ORaa, -N(Rcc)2, -CN, -C(=O)Raa, -C(=O)N(Rcc)2, -CO2RRaa, -S02Raa, -C(=NRcc)ORaa, -C(=NRcc)N(Rcc)2, -SO2N(Rcc)2, -SO2Rcc , -SO2ORcc, -SORaa, -C(=S)N(Rcc)2, -C(=O)SRcc, -C(=S)SRcc, -P(=O)(Raa)2, -P(=O)(ORcc)2, -P(=O)(N(Rcc)2)2, C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6-14アリールおよび5~14員のヘテロアリールから選択され、または2つのRbb基が連結して3~14員のヘテロシクリル環または5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され;ここでX-は対イオンであり;
各場合のRccは独立に、水素、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6-14アリールおよび5~14員のヘテロアリールから選択され、または2つのRcc基が連結して3~14員のヘテロシクリル環または5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され;
【0087】
各場合のRddは独立に、-CN, -N02, -N3, -SO2H, -S03H, -OH, -ORee, -ON(Rff)2, -N(Rff)2, -N(Rff)3 +X-, -N(ORee)Rff, -SH, -SRee, -SSRee, -C(=O)Ree, -C02H, -CO2Ree, -OC(=O)Ree, -OC02Ree, -C(=O)N(Rff)2, -OC(=O)N(Rff)2, -NRffC(=O)Ree, -NRffCO2Ree, -NRffC(=O)N(Rff)2, -C(=NRff)ORee, -OC(=NRff)Ree, -OC(=NRff)ORee, -C(=NRff)N(Rff)2, -OC(=NRff)N(Rff)2, -NRffC(=NRff)N(Rff)2, -NRffS02Ree, -SO2N(Rff)2, -S02Ree, -S020Ree, -OS02Ree, -S(=O)Ree, -Si(Ree)3, -OSi(Ree)3 -C(=S)N(Rff)2, -C(=O)SRee, -C(=S)SRee, -SC(=S)SRee, -P(=O)(Ree)2, -P(=O)(Ree)2, -OP(=O)(Ree)2, -OP(=O)(ORee)2,C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~10員のヘテロシクリル、C6-10アリールおよび5~10員のヘテロアリールから選択され、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRgg基で置換され;または同一原子に結合した2つのRdd置換基が一緒になって=Oまたは=Sを形成し;ここでX-は対イオンであり;
各場合のReeは独立に、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、C6-10アリール、3~10員のヘテロシクリルおよび3~10員のヘテロアリールから選択され、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRgg基で置換され;そして
各場合のRffは独立に、水素、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~10員のヘテロシクリル、C6-10アリールおよび5~10員のヘテロアリールから選択され、または2つのRff基が連結して3~14員のヘテロシクリル環または5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRgg基で置換され;そして
【0088】
各場合のRggは独立に、ハロゲン、-CN, -N02, -N3, -SO2H, -S03H, -OH, -OC1-6アルキル, -ON(C1-6アルキル)2, -N(C1-6アルキル)2, -N(C1-6アルキル)3 +X-, -NH(C1-6-アルキル)2 +X-, -NH2(C1-6アルキル)+X-, -NH3 +X-, -N(OC1-6アルキル)(C1-6アルキル), -N(OH)(C1-6アルキル), -NH(OH), -SH, -SC1-6アルキル, -SS(C1-6アルキル), -C(=O)(C1-6アルキル), -C02H, -CO2(C1-6アルキル), -OC(=O)(C1-6アルキル), -OC02(C1-6アルキル), -C(=O)NH2, -C(=O)N(C1-6アルキル)2, -OC(=O)NH(C1-6アルキル), -NHC(=O)N(C1-6アルキル), -N(C1-6アルキル)C(=O)(C1-6アルキル), -NHCO2(C1-6アルキル), -NHC(=O)N(C1-6アルキル)2, -NHC(=O)NH(C1-6アルキル), -NHC(=O)NH2, -C(=NH)O(C1-6アルキル), -OC(=NH)(C1-6アルキル), -OC(=NH)OC1-6アルキル, -C(=NH)N(C1-6アルキル)2, -C(NH)NH(C1-6アルキル), -C(=NH)NH2, -OC(=NH)N(C1-6アルキル)2, -OC(NH)NH(C1-6アルキル),-OC(NH)NH2, -NHC(NH)N(C1-6アルキル)2, -NHC(=NH)NH2, -NHSO2(C1-6アルキル), -SO2N(C1-6アルキル)2, -S02NH(C1-6アルキル), -S02NH2, -S02C1-6アルキル, -SO2OC1-6アルキル, -OSO2C1-6アルキル, -SOC1-6アルキル, -Si(C1-6アルキル)3, -OSi(C1-6アルキル)3, -C(=S)N(C1-6アルキル)2, -C(=S)NH(C1-6アルキル), C(=S)NH2, -C(=O)S(C1-6アルキル), -SC(=S)SC1-6アルキル, -SC(=S)SC1-6アルキル, -P(=O)(OC1-6アルキル)2, -P(=O)(C1-6アルキル)2, -OP(=O)(C1-6アルキル)2, -OP(=O)(OC1-6アルキル)2, C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、C6-10アリール、3~10員のヘテロシクリル、5~10員のヘテロアリールから選択され;または同一原子に結合した2つのRgg置換基が一緒になって=Oまたは=Sを形成し;ここでX-は対イオンである。
【0089】
各場合のRggは独立に、ハロゲン、-CN, -N02, -N3, -SO2H, -S03H, -OH, -OC1-6アルキル, -ON(C1-6アルキル)2, -N(C1-6アルキル)2, -N(C1-6アルキル)3 +X-, -NH(C1-6-アルキル)2 +X-, -NH2(C1-6アルキル)+X-, -NH3 +X-, -N(OC1-6アルキル)(C1-6アルキル),-N(OH)(C1-6アルキル), -NH(OH), -SH, -SC1-6アルキル, -SS(C1-6アルキル), -C(=O)(C1-6アルキル), -C02H, -CO2(C1-6アルキル), -OC(=O)(C1-6アルキル), -OC02(C1-6アルキル), -C(=O)NH2, -C(=O)N(C1-6アルキル)2, -OC(=O)NH(C1-6アルキル), -NHC(=O)N(C1-6アルキル), -N(C1-6アルキル)C(=O)(C1-6アルキル), -NHCO2(C1-6アルキル), -NHC(=O)N(C1-6アルキル)2, -NHC(=O)NH(C1-6アルキル),-NHC(=O)NH2, -C(=NH)O(C1-6アルキル), -OC(=NH)(C1-6アルキル), -OC(NH)NH(C1-6アルキル), -OC(NH)NH2, -NHC(NH)N(C1-6アルキル)2, -NHC(=NH)NH2, -NHSO2(C1-6アルキル), -SO2N(C1-6アルキル)2, -S02NH(C1-6アルキル), -S02NH2, -S02C1-6アルキル, -SO2OC1-6アルキル, -OSO2C1-6アルキル, -SOC1-6アルキル, -Si(C1-6アルキル)3, -OSi(C1-6アルキル)3, -C(=S)N(C1-6アルキル)2, -C(=S)NH(C1-6アルキル), C(=S)NH2, -C(=O)S(C1-6アルキル), -C(=S)SC1-6アルキル, -SC(=S)SC1-6アルキル, -P(=O)(OC1-6アルキル)2, -P(=O)(C1-6アルキル)2, -OP(=O)(C1-6アルキル)2, -OP(=O)(OC1-6アルキル)2, C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、C6-10アリール、3~10員のヘテロシクリル、5~10員のヘテロアリールから選択され;または同一原子に結合した2つのRgg置換基が一緒になって=Oまたは=Sを形成し;ここでX-は対イオンである。
【0090】
「対イオン」または「アニオン性対イオン」は、電子的な中性を維持するために、正電荷の基と会合する負電荷をもつ基である。アニオン性対イオンは一価(すなわち1個の形式負電荷を含む)であってよい。アニオン性対イオンはまた、二価または三価のように、多価(すなわち、複数の形式負電荷を含む)であってもよい。典型的な対イオンとしては、ハロゲン化物イオン(例えばF-, Cl-, Br-, I-)、NO3 -、ClO4 -、OH-、H2PO4 -、HSO4 -、スルホン酸イオン(例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホン酸、エタン-1-スルホン酸-2-スルホン酸イオンなど)、カルボン酸イオン(例えば酢酸、プロパン酸、安息香酸、グリセリン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸イオンなど)、BF4 -、PF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、B [3,5-(CF3)2C6H3]4]-、BPh4 -、Al(OC(CF3)3)4 - 、およびカルボランアニオン(例えば、CB11H12 -または(HCB11Me5Br6)- )が挙げられる。多価であってもよい典型的な対イオンとしては、CO3 2-、HPO4 2-、PO4 3-、B4O7 2-、SO4 2-、S2O3 2-、カルボン酸アニオン(例えば酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、サリチル酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸イオン等)、およびカルボランが挙げられる。
【0091】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、またはヨウ素(ヨード、-I)を指す。
【0092】
「アシル」は、-C(=O)Raa, -CHO, -CO2Raa, -C(=O)N(Rbb)2, -C(=NRbb)Raa, -C(=NRbb)ORaa, -C(=NRbb)N(Rbb)2, -C(=O)NRbbSO2Raa, -C(=S)N(Rbb)2, -C(=O)SRaa または-C(=S)SRaaからなる群より選択された基を指し、ここでRaaとRbbは前に定義した通りである。
【0093】
窒素原子は、原子価が許す限り置換または非置換であることができ、そして、第一級、第二級、第三級および第四級窒素原子を含むことができる。典型的な窒素原子置換基としては、限定されないが、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2, -CN、-C(=O)Raa, -C(=O)N(Rcc)2, -CO2Raa, -SO2Raa, -C(=NRbb)Raa, -C(=NRcc)ORaa, -C(=NRcc)N(Rcc)2, -SO2N(Rcc)2, -SO2Rcc, -SO2ORcc, -SORaa, -C(=S)N(Rcc)2, -C(=O)SRcc, -C(=S)SRcc, -P(=O)(ORcc)2, -P(=O)(Raa)2, -P(=O)(N(Rcc)2)2, C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6-14アリール、および5~14員のヘテロアリールが挙げられ、または1つの窒素原子に結合した2つのRcc基が一緒になって3~14員のヘテロシクリルまたは5~14員のヘテロアリール環を形成し;ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され、そしてRaa、Rbb、RccおよびRddは上記に定義した通りである。
【0094】
特定の実施形態では、窒素原子上に存在する置換基は、窒素保護基(アミノ保護基とも称する)である。窒素保護基としては、限定されないが、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2, -C(=O)Raa, -C(=O)N(Rcc)2, -CO2Raa, -SO2Raa, -C(=NRcc)Raa, -C(=NRcc)ORaa, -C(=NRcc)N(Rcc)2, -SO2N(Rcc)2, -SO2Rcc, -SO2ORcc, -SORaa, -C(=S)N(Rcc)2, -C(=O)SRcc, -C(=S)SRcc, C1-10アルキル(例えばアラルキル)、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、および5~14員のヘテロアリール基が挙げられ、ここで各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アラルキル、アリールおよびヘテロアリールは独立に0,1,2,3,4または5個のRdd基で置換され、そしてRaa、Rbb、RccおよびRddは上記に定義した通りである。窒素保護基は当業界で周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T.W. Greene & P.G.M. Wuts, 第3版, John Wiley & Sons, 1999中に詳細に記載されたものを含み、それは本明細書中に参考として組み入れられる。
【0095】
例えば、アミド基のような窒素保護基(例えば-C(=O)Raa)としては、限定されないが、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p-フェニルベンズアミド、o-ニトロフェニルアセトアミド、o-ニトロフェノキシアセトアミド、アセトアセトアミド、(N′-ジチオベンジルオキシアシルアミノ)アセトアミド、3-(p-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3-(o-ニトロフェニル)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-ニトロフェノキシ)プロパンアミド、2-メチル-2-(о-フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、4-クロロブタンアミド、3-メチル-3-ニトロブタンアミド、o-ニトロシンナミド、N-アセチルメチオニン誘導体、о-ニトロベンズアミド、およびo-(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミドが挙げられる。
【0096】
カルバメート基のような窒素保護基(例えば-C(=O)ORaa)としては、限定されないが、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9-フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、9-(2-スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9-(2,7-ジブロモ)フルオレニルメチルカルバメート、2,7-ジ-t-ブチル-[9-(10,10-ジオキソ-10,10,10,10-テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバメート(DBD-Tmoc)、4-メトキシフェナシルカルバメート(Phenoc)、2,2,2-トリクロロエチルカルバメート( Troc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、2-フェニルエチルカルバメート(hZ)、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチルカルバメート(Adpoc)、1,1-ジメチル-2-ハロエチルカルバメート、1,1-ジメチル-2,2-ジブロモエチルカルバメート(DB-t-BOC)、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエチルカルバメート(TCBOC)、1-メチル-1-(4-ビフェニリル)エチルカルバメート(Bpoc)、1-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-メチルエチルカルバメート(t-Bumeoc)、2-(2′-および4′-ピリジル)エチルカルバメート(Pyoc)、2-(N,N-ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバメート、t-ブチルカルバメート(BOCまたはBoc)、1-アダマンチルカルバメート(Adoc)、ビニルカルバメート(Voc)、アリルカルバメート(Alloc)、1-イソプロピルアリルカルバメート(Ipaoc)、シンナミルカルバメート(Coc)、4-ニトロシンナミルカルバメート(Noc)、8-キノリルカルバメート、N-ヒドロキシピペリジニルカルバメート、アルキルジチオカルバメート、ベンジルカルバメート(Cbz)、p-メトキシベンジルカルバメート(Moz)、p-ニトロベンジルカルバメート、p-ブロモベンジルカルバメート、p-クロロベンジルカルバメート、2,4-ジクロロベンジルカルバメート、4-メチルスルフィニルベンジルカルバメート(Msz)、9-アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメート、2-メチルチオエチルカルバメート、2-メチルスルホニルエチルカルバメート、2-(p-トルエンスルホニル)エチルカルバメート、[2-(1,3-ジチアニル)]メチルカルバメート(Dmoc)、4-メチルチオフェニルカルバメート(Mtpc)、2,4-ジメチルチオフェニルカルバメート(Bmpc)、2-ホスホニオエチルカルバメート(Peoc)、2-トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバメート(Ppoc)、1,1-ジメチル-2-シアノエチルカルバメート、m-クロロ-p-アシルオキシベンジルカルバメート、p-(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバメート、5-ベンズイソオキサゾリルメチルカルバメート、2-(トリフルオロメチル)-6-クロモニルメチルカルバメート(Tcroc)、m-ニトロフェニルカルバメート、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、о-ニトロベンジルカルバメート、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート、フェニル(о-ニトロフェニル)メチルカルバメート、t-アミルカルバメート、S-ベンジルチオカルバメート、p-シアノベンジルカルバメート、シクロブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、シクロペンチルカルバメート、シクロプロピルメチルカルバメート、p-デシルオキシベンジルカルバメート、2,2-ジメトキシアシルビニルカルバメート、o-(N,N-ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバメート、1,1-ジメチル-3-(N,N-ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバメート、1,1-ジメチルプロピニルカルバメート、ジ(2-ピリジル)メチルカルバメート、2-フラニルメチルカルバメート、2-ヨードエチルカルバメート、イソボリニルカルバメート、イソブチルカルバメート、イソニコチニルカルバメート、p-(p′-メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバメート、1-メチルシクロブチルカルバメート、1-メチルシクロヘキシルカルバメート、1-メチル-1-シクロプロピルメチルカルバメート、1-メチル-1-(3,5-ジメトキシフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-(p-フェニルアゾフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-フェニルエチルカルバメート、1-メチル-1-(4-ピリジル)エチルカルバメート、フェニルカルバメート、p-(フェニルアゾ)ベンジルカルバメート、2,4,6-トリ-t-ブチルフェニルカルバメート、4-(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバメート、および2,4,6-トリメチルベンジルカルバメートが挙げられる。
【0097】
スルホンアミド基のような窒素保護基(例えば-S(=O)2-Raa)としては、限定されないが、p-トルエンスルホンアミド(Ts)、ベンゼンスルホンアミド、2,3,6-トリメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6-トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6-ジメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6-テトラメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、2,6-ジメトキシ-4-メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β-トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9-アントラセンスルホンアミド、4-(4′,8′-ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、およびフェナシルスルホンアミドが挙げられる。
【0098】
他の窒素保護基としては、限定されないが、フェノチアジニル-(10)-アシル誘導体、N′-p-トルエンスルホニルアミノアシル誘導体、N′-フェニルアミノチオアシル誘導体、N-ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、N-アセチルメチオニン誘導体、4,5-ジフェニル-3-オキサゾリン-2-オン、N-フタルイミド、N-ジチアスクシンイミド(Dts)、N-2,3-ジフェニルマレイミド、N-2,5-ジメチルピロール、N-1,1,4,4-テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加物(STABASE)、5-置換1,3-ジメチル-1,3,5-トリアザシクロヘキサン-2-オン、5-置換1,3-ジベンジル-1,3,5-トリアザシクロヘキサン-2-オン、1-置換3,5-ジニトロ-4-ピリドン、N-メチルアミン、N-アリルアミン、N-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N-3-アセトキシプロピルアミン、N-(1-イソプロピル-4-ニトロ-2-オキソ-3-ピロリン-3-イル)アミン、第四級アンモニウム塩、N-ベンジルアミン、N-ジ(4-メトキシフェニル)メチルアミン、N-5-ジベンゾスベリルアミン、N-トリフェニルメチルアミン(Tr)、N-[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N-9-フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N-2,7-ジクロロ-9-フルオレニルメチレンアミン、N-フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N-2-ピコリルアミノN′-オキシド、N-1,1-ジメチルチオメチレンアミン、N-ベンジリデンアミン、N-p-メトキシベンジリデンアミン、N-ジフェニルメチレンアミン、N-[(2-ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N-(N′,N′-ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N′-イソプロピリデンジアミン、N-p-ニトロベンジリデンアミン、N-サリチリデンアミン、N-5-クロロサリチリデンアミン、N-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N-シクロヘキシリデンアミン、N-(5,5-ジメチル-3-オキソ-1-シクロヘキセニル)アミン、N-ボラン誘導体、N-ジフェニルボロン酸誘導体、N-[フェニル(ペンタアシルクロミウムまたはタングステン)アシル]アミン、N-銅キレート、N-亜鉛キレート、N-ニトロアミン、N-ニトロソアミン、アミンN-オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホロアミデート、ジベンジルホスホロアミデート、ジフェニルホスホロアミデート、ベンゼンスルフェンアミド、о-ニトロベンゼンスルフェンアミド(Nps)、2,4-ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2-ニトロ-4-メトキシベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2-ニトロ-4-メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、および3-ニトロピリジンスルフェンアミド(Npys)が挙げられる。
【0099】
典型的な酸素原子置換基としては、限定されないが、-Raa、-C(=O)SRaa, -C(=O)Raa, -CO2Raa, -C(=O)N(Rbb)2, -C(=NRbb)Raa, -C(=NRbb)ORaa, -C(=NRbb)N(Rbb)2, -S(=O)Raa, -SO2Raa, -Si(Raa)3, -P(Rcc)2, -P(Rcc)3 +X-, -P(ORcc)2, -P(ORcc)3 +X-, -P(=O)(Raa)2, -P(=O)(ORcc)2および-P(=O)(N(Rbb)2)2が挙げられ、ここでX-、Raa、RbbおよびRccは前に定義した通りである。
【0100】
特定の実施形態では、酸素原子上に存在する酸素原子置換基は、酸素保護基である(ヒドロキシル保護基とも称する)。酸素保護基は当業界で周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis, T.W. Greene & P.G.M. Wuts, 第3版, John Wiley & Sons, 1999中に詳細に記載されたものを含む(これは参考として本明細書に組み込まれる)。典型的な酸素保護基としては、限定されないが、メチル、t-ブチルオキシカルボニル(BOCまたはBoc)、メトキシメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t-ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p-メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4-メトキシフェノキシ)メチル(p-AOM)、グアヤコールメチル(GUM)、t-ブトキシメチル、4-ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2-メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2-トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3-ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1-メトキシシクロヘキシル、4-メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4-メトキシテトラヒドロチオピラニル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S-ジオキシド、1-[(2-クロロ-4-メチル)フェニル]-4-メトキシピペリジン-4-イル(CTMP)、1,4-ジオキサン-2-イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-7,8,8-トリメチル-4,7-メタノベンゾフラン-2-イル、1-エトキシエチル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、1-メチル-1-メトキシエチル、1-メチル-1-ベンジルオキシエチル、1-メチル-1-ベンジルオキシ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-トリメチルシリルエチル、2-(フェニルセレニル)エチル、t-ブチル、アリル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、2,4-ジニトロフェニル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、о-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、p-フェニルベンジル、2-ピコリル、4-ピコリル、3-メチル-2-ピコリルN-オキシド、ジフェニルメチル、p,p′-ジニトロベンズヒドリル、5-ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α-ナフチルジフェニルメチル、p-メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p-メトキシフェニル)メチル、4-(4′-ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、4, 4′,4″-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4, 4′,4″-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4, 4′,4″-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3-(イミダゾール-1-イル)ビス(4′,4″-ジメトキシフェニル)メチル、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1′-ピレニルメチル、9-アントリル、9-(9-フェニル)キサンテニル、9-(9-フェニル-10-オキソ)アントリル、1,3-ベンゾジスルフラン-2-イル、ベンズイソチアゾリルS,S-ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ-p-キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t-ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルメート、ベンジルホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p-クロロフェノキシアセテート、3-フェニルプロピオネート、4-オキソペンタノエート(レブリネート)、4,4-(エチレンジチオ)ペンタノエート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4-メトキシクロトネート、ベンゾエート、p-フェニルベンゾエート、2,4,6-トリメチルベンゾエート(メシトエート)、アルキルメチルカーボネート、9-フルオレニルメチルカーボネート(Fmoc)、アルキルエチルカーボネート、アルキル2,2,2-トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2-(トリメチルシリル)エチルカーボネート(TMSEC)、2-(フェニルスルホニル)エチルカーボネート(Psec)、2-(トリフェニルホスホニオ)エチルカーボネート(Peoc)、アルキルイソブチルカーボネート、アルキルビニルカーボネート、アルキルアリルカーボネート、アルキルp-ニトロフェニルカーボネート、アルキルベンジルカーボネート、アルキルp-メトキシベンジルカーボネート、アルキル3,4-ジメトキシベンジルカーボネート、アルキルo-ニトロベンジルカーボネート、アルキルp-ニトロベンジルカーボネート、アルキルS-ベンジルチオカーボネート、4-エトキシ-1-ナフチルカーボネート、メチルジチオカーボネート、2-ヨードベンゾエート、4-アジドブチレート、4-ニトロ-4-メチルペンタノエート、o-(ジブロモメチル)ベンゾエート、2-ホルミルベンゼンスルホネート、2-(メチルチオメトキシ)エチル、4-(メチルチオメトキシ)ブチレート、2-(メチルチオメトキシメチル)ベンゾエート、2,6-ジクロロ-4-メチルフェノキシアセテート、2,6-ジクロロ-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチレート、モノスクシノエート、(E)-2-メチル-2-ブテノエート、o-(メトキシアシル)ベンゾエート、α-ナフトエート、ニトレート、アルキルN,N,N′,N′-テトラメチルホスホロジアミデート、アルキルN-フェニルカルバメート、ボレート、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4-ジニトロフェニルスルフェネート、スルフェート、メタンスルホネート(メシレート)、ベンジルスルホネート、およびトシレート(Ts)が挙げられる。
【0101】
用語「医薬的に許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトや下等動物の組織と接触させた状態で使用するのに適しており、かつ合理的な利益/リスク比に相応しい塩を指す。医薬的に許容される塩は当該技術分野で周知である。例えば、Berge他は、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19頁に詳細に医薬的に許容される塩を記載しており、それは参考により本明細書中に組み込まれる。
【0102】
本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される塩は、適切な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。医薬的に許容される非毒性の酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸と共に、または例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸と共に形成されるアミノ基の塩、またはイオン交換のような当業界で既知の他の方法により形成される塩である。他の医薬的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1-4アルキル)4 -塩を含む。典型的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。更なる医薬的に許容される塩としては、適当ならば、非毒性のアンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、および例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオン塩が挙げられる。
【0103】
「溶媒和物」という用語は、通常、加溶媒分解反応により、溶媒と会合している化合物の形態を指す。この物理的会合は水素結合を含みうる。従来の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルなどが挙げられる。本明細書に記載の化合物は、例えば結晶形で調製することができ、そして溶媒和されてもよい。適当な溶媒和物は、医薬的に許容される溶媒和物を含み、更に、化学量論的溶媒和物と非化学量論的溶媒和物の両方を含む。特定の場合、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合、単離することができるであろう。「溶媒和物」は、液相と単離可能溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物としては、水和物、エタノレートおよびメタノレートが挙げられる。
【0104】
用語「結晶」または「結晶形」は、実質的に三次元秩序を示す固体形態を指す。特定の実施形態では、固体の結晶形は実質的に非晶質でない固体形態である。特定の実施形態では、結晶形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、1つ以上の鋭く境界の明確なピークを含む。
【0105】
用語「非晶質」または「非晶質形」は、固体の一形態(「固体形」)を指し、その形は実質的に三次元秩序を欠いている。特定の実施形態では、固体の非晶質形態は、実質的に結晶質でない固体形態である。特定の実施形態では、非晶質形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、CuKα放射線を使用して、例えば20°~70°の間(両境界を含む)の、2θにピークを有する幅広い散乱バンドを含む。特定の実施形態では、非晶質形のXRPDパターンは、結晶構造に起因する1つまたは複数のピークを更に含む。特定の実施形態では、20°~70°(両境界を含む)の間の2θの所に観察される結晶構造に起因する1つ以上のピークのいずれか1つの最大強度は、前記幅広の散乱バンドの最大強度の300倍以下、100倍以下、30倍以下、10倍以下、または3倍以下である。特定の実施形態では、非晶質形のXRPDパターンは、結晶構造に起因するピークを1つも含まない。
【0106】
用語「共結晶」は、少なくとも2つの異なる成分(例えば、N-メチルグリシンとコホーマー)を含む結晶構造を指し、ここで該成分の各々は独立に、原子、イオン、または分子である。結晶形である時、イオン性またはイオン結合性結晶化合物である塩とは異なり、共結晶は、非イオン性でかつ非共有結合性の結合によって会合された同一の結晶格子内の2種以上の異なる分子を含む。つまり、特定の実施形態では、共結晶中の各構成成分が、結晶塩化合物とは対照的に、プロトン移動を受けない、中性状態にある。特定の実施形態では、構成成分のいずれも溶媒ではない。特定の実施形態では、構成成分の少なくとも1つが溶媒である。N-メチルグリシンとコホーマーの共結晶は、N-メチルグリシンとコホーマーから形成された塩とは全く異なる。塩の場合は、コホーマーからN-メチルグリシンへのプロトン移動(例えば完全プロトン移動)が室温で起こるような様式で、N-メチルグリシンがコホーマーと錯生成する。しかしながら、共結晶の場合は、コホーマーからN-メチルグリシンへのプロトン移動が室温では容易に起こらないような様式で、N-メチルグリシンがコホーマーと錯生成する。ある態様では、共結晶において、コホーマーからN-メチルグリシンへのプロトン移動が全く起こらない。ある態様では、共結晶において、コホーマーからN-メチルグリシンへの部分的なプロトン移動が起こる。共結晶は、N-メチルグリシンの特性(例えば、溶解性、安定性、製剤の容易さ、またはバイオアベイラビリティ)を改善するのに有用であろう。
【0107】
用語「互変異性体」または「互変異性」とは、水素原子の少なくとも1つの幾何学的移動と、少なくとも1つの原子価の変化(例えば、単結合から二重結合へ、三重結合から単結合へ、またはその逆)から生じる、2以上の相互変換可能な化合物を指す。互変異性体の正確な比率は、温度、溶媒およびpHをはじめとする幾つかの要因に依存する。互変異性化(すなわち、互変異性体ペアを提供する反応)は、酸または塩基により触媒することができる。例示的な互変異性化としては、ケト-エノール間、アミド-イミド間、ラクタム-ラクチム間、エナミン-イミン間、エノール-ケト間、およびエナミン-(別のエナミン)間の互変異性化が挙げられる。
【0108】
同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質や配列、またはそれらの原子の空間的な配置が異なっている化合物を「異性体」と称することも理解すべきである。それらの原子の空間配置が異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。
【0109】
互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせられない鏡像であるものは「エナンチオマー(鏡像異性体)」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば不斉中心が4つの異なる基に結合している時、一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置により特徴付けることができ、Cahn & PrelogのR-とS-順序付けルールにより記載されるか、または分子が偏光面を回転し、右旋性または左旋性(すなわちそれぞれ(+)または(-)異性体)として指定される方法により記載される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、またはそれらの混合物として存在することができる。均等な割合のエナンチオマーを含有する混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0110】
用語「多形」は、特定の結晶最密充填配置における化合物(またはその塩、水和物もしくは溶媒和物)の結晶形を意味する。すべての多形体は同じ元素組成を有する。異なる結晶形は通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形、光学および電気的特性、安定性、および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、貯蔵温度、および他の要因は、1つの結晶形を卓越化させることが可能である。化合物の様々な多形体は、異なる条件下での結晶化によって調製することができる。
【0111】
用語「プロドラッグ」は、切断可能な基を有し、かつ、加溶媒分解によりまたは生理学的条件下で、インビボで医薬的に活性である本発明化合物となる化合物を指す。そのような例としては、限定されないが、コリンエステル誘導体等、N-アルキルモルホリンエステル等が挙げられる。本明細書に記載の化合物の別の誘導体は、それらの酸と酸誘導体の両形態で活性を有するが、酸感受性形においてしばしば溶解性、組織適合性または遅延放出の利点を提供する(Bundgard, H., Design of Prodrugs, 7-9, 21-24頁, Elsevier,アムステルダム,1985を参照のこと)。プロドラッグは、例えば、親の酸と適切なアルコールとの反応により調製されたエステル、または親の酸化合物と置換もしくは非置換アミンとの反応により調製されたアミド、または酸無水物もしくは混合無水物、といった当業者に周知の酸誘導体を包含する。本明細書に記載の化合物上の酸性基ペンダントから誘導される単純な脂肪族または芳香族エステル、アミドおよび無水物は、特定のプロドラッグに該当する。ある場合には、(アシルオキシ)アルキルエステルまたは((アルコキシカルボニル)オキシ)アルキルエステルなどの二重エステル型プロドラッグを調製することが望ましい。本明細書に記載の化合物のC1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、アリール、C7~C12置換アリール、およびC7~C12アリールアルキルエステルが好ましい場合もある。
【0112】
用語「阻害」、「阻害し」、「阻害する」または「阻害剤」は、賦形剤に比較して、細胞の特定の生物学的過程の活性を低減する、減速する、停止させるまたは防止する共結晶の能力を指す。
【0113】
共結晶、医薬組成物、方法、使用またはキットが、第一のタンパク質を「選択的に」、「特異的に」または「競合的に」結合すると言及される時、共結晶は、第二のタンパク質(すなわち第一のタンパク質とは異なるタンパク質)を結合するよりも高い結合親和性(例えば約2倍以上、約5倍以上、約10倍以上、約30倍以上、約100倍以上、約1,000倍以上、または約10,000倍以上)で、第一のタンパク質を結合する。共結晶がタンパク質の活性を「選択的に」、「特異的に」または「競合的に」調節すると言及される時、共結晶は、第一のタンパク質とは異なる少なくとも1つのタンパク質の活性よりも大きい程度に(例えば約2倍以上、約5倍以上、約10倍以上、約30倍以上、約100倍以上、約1,000倍以上、または約10,000倍以上)、該タンパク質の活性を調節する。
【0114】
用語「異常な活性」とは、正常活性から逸脱している活性を指す。用語「増加した活性」とは、正常活性よりも高い活性を指す。
【0115】
用語「組成物」および「製剤」は互換的に使用される。
【0116】
投与が企図される「対象」は、ヒト〔すなわち、あらゆる年齢層の男性または女性、例えば小児対象(例えば幼児、児童または青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢者)〕、または非ヒト動物を指す。「患者」とは、疾患の治療を必要とするヒト対象を指す。
【0117】
用語「投与する」、「投与し」または「投与」は、対象に対し、本明細書に記載の共結晶またはその組成物を、移植、吸収、摂取、注射、吸入、または他の方法で導入することを指す。
【0118】
用語「治療」、「治療する」および「治療し」は、本明細書に記載の疾患の進行を逆転、軽減、発症の遅延、または阻害することを指す。いくつかの実施形態では、該疾患の1以上の徴候または症状が発生した後または観察された後で、治療を施すことができる。別の実施形態では、疾患の徴候または症状の不在下で治療を施すことができる。例えば、症状の発症の前に、病気の発生を遅らせるまたは予防するために、罹患しやすい対象(例えばそれまでの症状を考慮しておよび/または病原への暴露を考慮して)に治療を施すことができる。治療は症状が消散した後でも、例えば再発を遅らせるまたは予防するために、治療を続行してもよい。
【0119】
用語「状態」、「疾患」および「障害」は互換的に使用される。
【0120】
本明細書に記載の共結晶の「有効量」は、所望の生物学的応答を惹起させるのに十分な、すなわち疾患を治療するのに十分な量を指す。当業者により理解されるように、本明細書に記載の共結晶の有効量は、所望の生物学的評価項目、共結晶の薬物動態、治療すべき状態、投与形式、並びに対象の年齢と健康状態などの因子に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、有効量は治療有効量である。いくつかの実施形態では、有効量は予防有効量である。いくつかの実施形態では、有効量は、単回投与における本明細書に記載の共結晶の量である。いくつかの実施形態では、有効量は、複数回投与における本明細書に記載の共結晶の合計量である。
【0121】
本明細書に記載の共結晶の「治療有効量」は、疾患の処置に際して治療上の利益を提供するのに十分な、または疾患に関連した1以上の症状を遅らせるもしくは最小限に抑えるのに十分な量である。共結晶の治療有効量は、疾患の処置において治療上の利益を提供する、単独でのまたは他の療法と併用した治療薬の量を意味する。用語「治療有効量」は、治療全体を改善する、病気の症状、徴候もしくは原因を低減または回避する、そして/または別の治療薬の治療効力を増強する量を包含しうる。
【0122】
本明細書に記載の共結晶の「予防有効量」は、疾患、または該疾患に関連する1以上の症状を予防するまたはその再発を防止するのに十分な量である。共結晶の予防有効量は、疾患の予防において予防上の利益を提供する、単独でのまたは他の療法と併用した治療薬の量を意味する。用語「予防有効量」とは、予防全体を改善するか、別の予防薬の予防効力を増強する量を包含しうる。
【0123】
用語「神経疾患」とは、中枢神経系(脳、脳幹、脊髄および小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)および自律神経系(中枢神経系と末梢神経系の間に位置する部分)が関係する疾患をはじめとする、神経系の任意疾患を指す。神経変性疾患は、神経細胞の喪失により特徴づけられる神経疾患の種類を指し、その例としては限定されないが、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、タウオパシー(前頭側頭型認知症を含む)、多系統萎縮症、およびハンチントン病が挙げられる。神経疾患の例としては、限定的でなく、頭痛、昏迷と昏睡、認知症、発作、睡眠障害、外傷、感染症、腫瘍、神経眼科疾患、運動障害、脱髄疾患、脊髄障害、並びに末梢神経、筋肉および神経筋接合部の障害が挙げられる。中毒や精神疾患は、うつ病、自殺念慮および/または自殺行為を含み、双極性障害および統合失調症も、神経疾患またはCNS障害の定義に含まれる。神経疾患のさらなる例としては、後天性てんかん様失語症;急性散在性脳脊髄炎;副腎白質ジストロフィー;脳梁欠損症;失認;アイカルディ症候群;アレキサンダー病;アルパーズ病;交代性片麻痺;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;無脳症;アンジェルマン症候群;血管腫症;無酸素症;失語症;失行;くも膜嚢胞;くも膜炎; アーノルド・キアリ奇形;動静脈奇形;アスペルガー症候群;毛細血管拡張性運動失調症;注意欠陥・多動性障害;自閉症;自律神経機能障害;背痛;慢性疼痛;バッテン病;ベーチェット病;ベル麻痺;良性本態性眼瞼けいれん;良性限局性筋萎縮症;良性頭蓋内圧亢進;ビンスヴァンガー病;眼瞼けいれん;ブロッホ・ズルツバーガー症候群;上腕神経叢損傷;脳膿瘍;脳損傷;脳腫瘍(多形性膠芽腫を含む);脊髄腫瘍;ブラウン・セカール症候群;カナバン病;手根管症候群(CTS);灼熱病;中枢性疼痛症候群;橋中心髄鞘崩壊;頭部障害;脳動脈瘤;脳動脈硬化症;脳萎縮;脳性巨人症;脳性まひ;シャルコー・マリー・トゥース病;化学療法誘発性神経障害および神経障害性疼痛;キアリ奇形;舞踏病;慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP);慢性疼痛;慢性限局性疼痛症候群;コフィン・ローリー症候群;遷延性植物状態を含む昏睡;先天性顔面両側麻痺;大脳皮質基底核変性症;頭蓋動脈炎;頭蓋骨癒合症;クロイツフェルト・ヤコブ病;累積外傷障害;クッシング症候群;サイトメガロ封入体疾患(CIBD);サイトメガロウイルス感染;眼振-足振症候群;ダンディー・ウォーカー症候群;ドーソン病;ド・モルシェ症候群;ドゥジュリーヌ・クルンプケ麻痺;痴呆;皮膚筋炎;糖尿病性神経障害;硬化症びまん;自律神経障害;書字障害;失読症;ジストニア;早期乳児てんかん性脳症;エンプティ・セラ症候群;脳炎;脳ヘルニア;脳三叉神経領域血管腫症;てんかん;エルブ麻痺;本態性振戦;ファブリー病;ファール症候群;失神;家族性痙性麻痺;熱性けいれん;フィッシャー症候群;フリードライヒ失調症;前頭側頭型認知症および他の「タウオパチー」;ゴーシェ病;ゲルストマン症候群;巨細胞性動脈炎;巨細胞性封入体疾患;球様細胞白質萎縮症;ギランバレー症候群;HTLV-1関連脊髄症;ハレルフォルデン・スパッツ病;頭部外傷;頭痛;片側顔面痙攣;遺伝性痙性対麻痺;遺伝性多発神経炎性失調;耳帯状疱疹;帯状疱疹;平山症候群;HIV関連認知症および神経障害(AIDSの神経学的症状も参照のこと);全前脳症;ハンチントン病および他のポリグルタミンリピート病;水無脳症;水頭症;副腎皮質機能亢進症;低酸素症;免疫媒介性脳脊髄炎;封入体筋炎;色素失調症;乳児フィタン酸蓄積症;小児レフサム病;乳児けいれん;炎症性筋疾患;頭蓋内嚢胞; 頭蓋内圧亢進; ジュベール症候群。キーンズ・セイアー症候群; ケネディ病;キンスボーン症候群;クリッペル・フェイル症候群;クラッベ病;クーゲルベルグ・ヴェランダー病;クールー;ラフォラ病;ランバート・イートン症候群;ランダウ・クレフナー症候群;横髄(ウォーレンバーグ)症候群;学習障害;リー病;レンノックス・ガストー症候群;レッシュ・ナイハン症候群;白質萎縮症;レビー小体型認知症;滑脳症;閉じ込め症候群;ルー・ゲーリック病(別名:運動ニューロン疾患または筋萎縮性側索硬化症);腰椎椎間板疾患;ライム病-神経学的後遺症;マシャド・ヨセフ病;大脳髄症;巨大脳髄症;メルカーソン・ローゼンタール症候群;メニエール病;髄膜炎;メンケス病;異染性白質ジストロフィー;小頭;片頭痛;ミラー・フィッシャー症候群;軽度の脳卒中;ミトコンドリア筋症;メビウス症候群;単肢筋委縮症;運動ニューロン疾患;もやもや病;ムコ多糖症;多発脳梗塞性認知症;多巣性運動ニューロパチー;;多発性硬化症および他の脱髄疾患;起立性低血圧を伴う多系統萎縮症;筋ジストロフィー;重症筋無力症;ミエリン破壊びまん性硬化症;乳幼児ミオクローヌス脳症;ミオクローヌス;ミオパシー;先天性ミオトニー;ナルコレプシー;神経線維腫症;神経弛緩悪性症候群;エイズ(AIDS)の神経学的兆候;ループスの神経学的後遺症;神経筋炎;神経セロイドリポフスチン症;神経細胞の遊走障害;ニーマン・ピック病;オサリバン・マクラウド症候群;後頭神経痛;不顕性脊髄癒合不全;大田原症候群;オリーブ橋小脳萎縮症;オプソクローヌス・ミオクローヌス;視神経炎;起立性低血圧;酷使症候群;感覚異常;パーキンソン病;先天性筋緊張性痙攣;腫瘍随伴疾患;発作性攻撃;パリー・ロンバーグ症候群;ペリツェウス・メルツバッハー病;周期性四肢麻痺;末梢神経障害;痛みを伴う神経障害および神経障害性疼痛;遷延性植物状態;広汎性発達障害;光くしゃみ反射;フィタン酸蓄積症;ピック病;挟ま神経;下垂体腫瘍;多発性筋炎;孔脳症;ポリオ後症候群;帯状疱疹後神経痛(PHN);感染後脳脊髄炎;起立性低血圧;プラダー・ウィリー症候群;原発性側索硬化症;プリオン病;プログレッシブ;片側顔面萎縮;進行性多巣性白質脳症;進行性硬化性ポリオジストロフィー;進行性核上性麻痺;偽脳腫瘍;ラムゼイ・ハント症候群(I型およびII型);ラスムッセン脳炎;反射性交感神経性ジストロフィー症候群;レフサム病;反復運動障害;反復ストレス損傷;不穏下肢症候群;レトロウイルス関連脊髄症;レット症候群;ライ症候群;聖ヴィート舞踏病;サンドホフ病;シルダー病;裂脳症;中隔-視覚異形成症;揺さぶられっ子症候群;帯状疱疹;シャイ・ドレーガー症候群;シェーグレン症候群;睡眠時無呼吸;ソト症候群;痙縮;二分脊椎;脊髄損傷;脊髄腫瘍;脊髄性筋萎縮症;全身硬直(スティッフパーソン)症候群;脳卒中;スタージ・ウェーバー症候群;亜急性硬化性全脳炎;くも膜下出血;皮質下動脈硬化性脳症;シデナム舞踏病; 失神;脊髄空洞症;遅発性ジスキネジア;テイ・サックス病;側頭動脈炎;繋留脊髄症候群;トムセン病;胸郭出口症候群;疼痛性チック; トッドの麻痺;トウレット症候群;一過性脳虚血発作;伝達性海綿状脳症;横断性脊髄炎;外傷性脳損傷;振戦;三叉神経痛;熱帯性痙性対麻痺;結節性硬化症;血管性認知症(多発梗塞性認知症);側頭動脈を含む血管炎;フォンヒッペル・リンダウ病(VHL);ヴァレンベルク症候群;ウェルドニッヒ・ホフマン病;ウェスト症候群;むち打ち;ウィリアムズ症候群;ウィルソン病;およびゼルウィガー症候群が挙げられる。
【0124】
用語「精神障害」は心の病を意味し、米国精神医学会(ワシントンDC)により発行された“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders”第4版と第5版(DSM-IV, DSM-V)(1994年、2015年)中に列挙された疾患と障害を含む。精神障害としては、限定されないが、不安障害(例えば急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、社会恐怖症、および特定の恐怖症)、小児期の障害(例えば注意欠陥/多動性障害、行為障害および反抗的行為障害)、摂食障害(例えば拒食症や過食症)、気分障害(例えばうつ病、双極性I型障害および双極性II型障害、循環病、気分変調性障害、および大うつ病性障害)、自殺念慮および/または行為、パーソナリティ障害(例えば反社会的人格障害、回避性人格障害、境界性人格障害、依存性人格障害、演技性人格障害、自己陶酔性人格障害、強迫性人格障害、妄想性人格障害、分裂病質人格障害、および統合失調症性人格障害)、精神異常(例えば短期精神異常、妄想性障害、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、統合失調症、および共有精神異常)、物質関連障害(例えばアルコール依存または中毒、アンフェタミン依存または中毒、大麻依存または中毒、コカイン依存または中毒、幻覚剤依存または中毒、吸引剤依存または中毒、ニコチン依存または中毒、覚せい剤依存または中毒、フェンシクリジン依存または中毒、および鎮静剤依存または中毒)、およびトゥレット症候群が挙げられる。
【0125】
神経疾患または精神障害またはCNS障害のいずれかを含む用語「精神神経障害」は、脳器質障害によって引き起こされる精神科的症状または症候群を含む障害を指す。精神神経症状の主な特徴には、様々な精神科的症状の発生、認知障害、神経症状または早期脳の発達症状の可能性が含まれる。
【0126】
用語「健康食品」や「健康食料品」は、基本的な行動機能、多動性、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、痛覚閾値、記憶および/または認識機能、体重などを改善するために、または本明細書に記載の標的疾患のいずれかの治療を容易にするために用いられる、任意の種類の液体および固体/半固体材料を指す。用語「栄養補給組成物」は、食料源からの成分を含み、食品に認められる基本的栄養価に加えて、追加の健康効果を付与する組成物を意味する。
【0127】
用語「医療用食品」は、通常、本明細書に記載されるものなど、標的疾患の特定の食事管理のために医師の監督の下で使用される食品を含む、腸内消費されまたは腸内投与されるように処方された食品を指す。「医療用食品」組成物は、治療を必要とする患者(例えば病気を患っているヒト患者または特別な食事管理によって疾患もしくは状態を緩和するために主活性薬剤としての製品の使用を必要とするヒト患者)のために特別に調合され加工処理される組成物(自然な状態で使用される天然に存在する食料品ではなく)を指す。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1図1は、実施例1からのN-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1共結晶)の1H-NMR分析を示す。
【0129】
図2図2は、実施例1からのN-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1共結晶)のX線粉末回折(XRPD)を示し、2θ角で以下のピークを有する(°): 11.0、14.2、18.2、19.4、19.9、21.6、22.0、22.5、24.0、24.8、26.2、26.7、27.0、28.3、28.6、30.5、30.9、31.6、32.4、33.3、34.1、35.3、35.9、36.4、36.8、37.3、38.6、38.9、 39.4、40.0、40.3、41.5、41.8、41.9、42.1、42.2、42.3、42.5、42.6、42.8、43.0、43.3、43.5、43.8、44.0、44.1。
【0130】
図3図3は、実施例1からのN-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1共結晶)の熱重量分析(TGA)を示す。
【0131】
図4図4は、実施例1からのN-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1共結晶)の示差走査熱量計(DSC)データを示す。
【0132】
図5図5は、実施例2からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)の1H-NMRを示す。
【0133】
図6図6は、実施例2からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)のX線粉末回折(XRPD)を示し、2θ角で以下のピークを有する(°):11.0、14.2、18.2、 19.4、20.0、21.7、22.0、22.5、24.1、24.8、26.2、26.7、27.0、28.3、28.6、28.8、30.5、30.9、31.6、32.5、33.1、33.3、34.1、35.3、35.9、36.4、36.8、37.3、 38.6、38.8、39.3、40.0、40.3、41.5、41.6、41.9、42.5、43.0、43.4、および43.9。
【0134】
図7図7は、実施例2からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)のTGAを示す。
【0135】
図8図8は、実施例2からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)のDSCを示す。
【0136】
図9図9は、実施例3からのN-メチルグリシン:DL-酒石酸(1:1共結晶)の1H-NMRを示す。
【0137】
図10図10は、実施例3からのN-メチルグリシン:DL-酒石酸(1:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°):10.9、14.2、18.2、19.4、19.9、21.7、22.0、22.5、24.0、24.8、26.2、26.6、27.0、28.3、28.5、28.8、30.5、30.9、31.5、32.4、33.1、33.3、34.1、35.2、35.9、36.4、36.8、37.3、38.6、38.8、39.3、39.9 、40.0、40.2、41.5、41.6、41.8、42.3、42.5、42.9、43.0、43.4、および43.8。
【0138】
図11図11は、実施例3からのN-メチルグリシン:DL-酒石酸(1:1共結晶)のTGAを示す。
【0139】
図12図12は、実施例3からのN-メチルグリシン:DL-酒石酸(1:1共結晶)のDSCを示す。
【0140】
図13図13は、実施例4からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の1H-NMRを示す。
【0141】
図14図14は、実施例4からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°): 8.1、10.0、11.9、12.7、13.3、13.7、15.5、 15.9、16.3、16.7、17.8、18.9、19.8、20.1、21.2、22.1、24.0、24.7、25.0、25.9、26.2、27.6、28.0、28.6、29.4、29.9、30.1、30.2、30.6、31.3、31.8、31.9、 32.2、32.6、33.4、33.8、34.7、35.8、36.4、37.0、38.8、39.2、39.7、39.9、40.2、41.1、41.5、41.8、41.9、42.0、42.8、42.9、43.1、44.0、44.1、および44.5。
【0142】
図15図15は、実施例4からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)のTGAを示す。
【0143】
図16図16は、実施例4からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)のDSCを示す。
【0144】
図17図17は、実施例5からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶、左側)およびN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶、右側)の吸湿性を示す。
【0145】
図18図18は、実施例6からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)およびN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の吸湿性を示す。
【0146】
図19図19は、N-メチルグリシン、L-酒石酸、および実施例8からのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)の吸湿性を示す。
【0147】
図20図20は、実施例11からのN-メチルグリシン:フマル酸(1:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°): 9.81、11.10、12.44、13.99、15.05、17.63、18.65、19.20、20.05、20.80、20.94、22.41、22.60、23.51、23.84、24.61、25.01、26.95、27.25、28.07、28.66、29.23、29.75、30.05、31.85、33.23、33.42、35.49、36.12、37.94、38.15、および38.58。
【0148】
図21図21は、実施例11からのN-メチルグリシン:フマル酸(2:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°):7.66、9、89、12.06、12.78、14.00、15.52、16.40、16.58、17.14、17.49、18.42、19.74、20.12、20.75、22.22、22.46、22.93、23.16、23.93、24.29、24.52、24.66、25.32、25.66、26.18、26.98、27.86、29.00、31.06、31.41、31.62、32.96 、33.28、33.46、34.45、34.70、35.55、および37.01。
【0149】
図22図22は、実施例11からのN-メチルグリシン:フマル酸(3:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°):12.03、12.70、14.12、15.50、16.42、16.52、17.21、18.29、20.15、22.16、22.35、22.88、23.02、23.17、24.11、24.43、25.66、26.22、27.09、27.87、28.30、28.53、29.00、30、41、31.24、31.38、31.65、33.13、33.42、34.33、34.68、35.55 、36.37、36.92、および39.79。
【0150】
図23図23は、実施例11からのN-メチルグリシン:フマル酸(6:1共結晶)のXRPDを示し、2θ角で以下のピークを有する(°): 9.66、12.30、15.00、16.55、17.07、18.51、19.98、20.39、22.43、22.79、23.43、24.63、24.99、25.84、26.06、26.92、27.11、27.90、28.17、29.05、29.40、30.19、30.49、32.81、33.29、33.34、34.52、34.76、34.97、35.20、35.57、35.99、37.75 、および38.36。
【0151】
図24図24は、N-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1)共結晶(N-MG/L-TA 1:1)が、マウスモデルにおいて観察した時に用量依存形式でMK-801誘発性高移動運動を減少させることを示す。
【0152】
図25図25は、MK-801により破壊されたプレパルス阻害を回復させるN-MG/L-TA共結晶の効果を示す。
【0153】
図26図26は、MK-801処置マウスにおける移動運動活性の回復速度に対するN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶(2:1および1:1)の効果を示す。
【0154】
図27図27は、MK-801処置マウスにおける移動運動活性に対する様々な用量のN-MG/L-TA 2:1共結晶の効果を示す。
【0155】
図28図28は、MK-801処置マウスにおける移動運動活性の回復速度に対する様々な用量のN-MG/L-TA 2:1共結晶の効果を示す。
【0156】
図29図29は、MK-801により破壊されたプレパルス阻害を回復させることにおけるN-MG/L-TA 2:1共結晶の効果を示す。
【0157】
図30図30は、MK-801処置マウスにおける空間記憶検索に対するN-MG/L-TA 2:1共結晶の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0158】
本開示は、N-メチルグリシン、N-ジメチルグリシンまたはN-トリメチルグリシンのような置換グリシン化合物と、本明細書に記載のような式(I)の化合物であるコホーマーとの共結晶を提供する。そのような共結晶は、非共結晶形または異なる共結晶形である置換グリシン化合物に比較して、有利な物理的、化学的、生理学的および/または治療的特徴を有すると期待される。例えば、置換グリシン共結晶は、改善された吸湿性、溶解性、溶解速度、物理的安定性、化学的安定性、バイオアベイラビリティ、加工可能性、および優れた薬理学的または治療的性質をはじめとする、有利な性質を示すと期待される。当該共結晶は、対象において精神神経疾患などの様々な疾患と障害を治療するおよび/またはリスクを低減するのに有用である。よって、本明細書に記載の任意の標的疾患を治療するおよび/またはリスクを低減するための、本明細書に記載の共結晶を調製する方法、組成物、キットおよび使用方法も提供される。
【0159】
置換グリシン化合物とコホーマーの共結晶
本発明の一態様は、本明細書に記載の置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶、並びにそれらの水和物、多形、互換異性体、立体異性体、同位体標識された誘導体、またはプロドラッグに関する。それらの共結晶は、対象において精神神経疾患を治療するおよび/またはリスクを低減するのに有用である。
【0160】
特定の実施形態において、本明細書に記載の共結晶は、N-メチルグリシン、N-ジメチルグリシンまたはN-トリメチルグリシンのような置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶であって、前記コホーマーが式(I)の化合物:
【0161】
【化21】
【0162】
(式中、A,B,W,X,Y,Zおよび
【0163】
【化22】
【0164】
は前に定義した通りである)である前記共結晶、
またはそれの溶媒和物、水和物、多形、互変異性体、立体異性体、同位体標識された誘導体もしくはプロドラックである。
【0165】
式(I)において、幾つかの実施形態では、AはOHであることができる。幾つかの実施形態では、AはHであることができる。
式(I)において、幾つかの実施形態では、BはOHであることができる。幾つかの実施形態では、BはHであることができる。
【0166】
式(I)において、幾つかの実施形態では、WはOであることができる。幾つかの実施形態では、WはNHであることができる。
式(I)において、ある実施形態では、XはHであることができる。幾つかの実施形態において、Xは存在しない。
【0167】
いくつかの実施形態では、YはC=Oであることができる。幾つかの実施形態では、Yは-CR12であり、ここでR1とR2は独立にH、アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。幾つかの実施形態では、Yは-CH2であることができる。幾つかの実施形態では、Yは-CH(C1-6アルキル)(例えば-CHMeまたは-CHEt)であることができる。幾つかの実施形態では、Yは-CH(非置換C1-3アルキル)であることができる。幾つかの実施形態では、Yは-C(C1-6アルキル)2(例えば-CMe2または-CEt2)であることができる。幾つかの実施形態では、Yは-C(非置換C1-3アルキル)2であることができる。
【0168】
幾つかの実施形態では、ZはOHであることができる。幾つかの実施形態では、Zは-CH(OH)R3であることができ、ここで-CH(OH)R3のC原子は(R)配置にあり、そしてR3はHまたはアルキル(例えば-OH基により置換されてもよい)であることができる。幾つかの実施形態では、Zは-OHで置換されたC1-6アルキルであることができる。幾つかの実施形態では、Zは-OHで置換されたC1-3アルキル(例えばCHOH)であることができる。幾つかの実施形態では、Zは-CH(OH)H2であることができる。幾つかの実施形態では、Zは-CH(OH)(非置換C1-3アルキル)であることができる。幾つかの実施形態では、Zは-CH(OH)Meであることができる。幾つかの実施形態では、Zは-CH(OH)Etであることができる。
幾つかの実施形態では、
【0169】
【化23】
【0170】
がC2-C1であり、ここでC2とC1は単結合により連結される。幾つかの実施形態では、
【0171】
【化24】
【0172】
がC2=C1であり、ここで、C2とC1は二重結合により連結される。幾つかの実施形態では、
【0173】
【化25】
【0174】
において、C1とC2が共にSP3またはSP2配位の炭素である。
【0175】
幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:0.5~1:1.5の範囲の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:0.6~1:1.4の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:0.7~1:1.3の範囲の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:1~1:1.5の範囲、例えば1:1~1:1.3の範囲の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:1~1:1.2の範囲の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、1:1~1:1.1の範囲の分子比において共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーは、6:1~1:1の範囲、例えば6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1の分子比において共結晶中に存在することができる。
【0176】
幾つかの実施形態では、式(I)のコホーマー化合物が式(IA):
【0177】
【化26】
【0178】
の化合物であり、ここで
【0179】
【化27】
【0180】
とZは前に定義した通りである。幾つかの実施形態では、該コホーマー化合物が式:
【0181】
【化28】
【0182】
の化合物(酒石酸)である。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物がL-酒石酸である。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物がD-酒石酸である。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物がDL-酒石酸である。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物がメソ酒石酸である。
【0183】
幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:0.5~1:2.5の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:0.6~1:2.4の範囲、例えば1:0.6~1:1.4の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:0.7~1:1.3または1:0.7~1:2.3の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:1~1:1.5または1:1~1:2.5の範囲、例えば1:1~1:1.3または1:1~1:2.3の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:1~1:1.2または1:1~1:2.2の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:1~1:1.1または1:1~1:2.1の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが1:1の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IA)のコホーマーが2:1の分子比で共結晶中に存在することができる。
【0184】
特定の実施形態では、本明細書に記載の共結晶が、N-メチルグリシンのような置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶であって、該コホーマーが式(IB)の化合物:
【0185】
【化29】
【0186】
(式中、
【0187】
【化30】
【0188】
A,B,W,XおよびZは前に記載した通りである)
である共結晶であり、またはそれの溶媒和物、水和物、多形、互換異性体、立体異性体、同位体標識誘導体またはそれのプロドラッグである。
【0189】
式(IB)において、ある実施形態では、AはHであることができそしてBはHであることができる。幾つかの実施形態では、AはOHであることができそしてBはHであることができる。幾つかの実施形態では、AはHであることができそしてBはOHであることができる。
【0190】
式(IB)において、ある実施形態では、WはOであることができる。幾つかの実施形態では、WはNHであることができる。
式(IB)において、ある実施形態では、XはHであることができる。
式(IB)において、ある実施形態では、ZはOHであることができる。幾つかの実施形態において、ZはNH2であることができる。
幾つかの実施形態では、
【0191】
【化31】
がC2-C1であり、ここでC2とC1は単結合により連結される。幾つかの実施形態では、
【0192】
【化32】
【0193】
がC2=C1であり、ここで、C1とC2は二重結合により連結される。幾つかの実施形態では、
【0194】
【化33】
【0195】
において、C1とC2が共にSP3またはSP2配位の炭素である。
幾つかの実施形態では、式(IB)のコホーマーが
【0196】
【化34】
【0197】
(フマル酸)であり、置換グリシン化合物とこのコホーマーが1:2~6:1の範囲の分子比において共結晶中に存在する。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが1:1~5:1の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが2:1~4:1の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが2:1~3:1の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが2:1の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが1:1.5の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と該コホーマーが1:2の分子比で共結晶中に存在することができる。
【0198】
幾つかの実施形態において、共結晶は、実質的に図2に示されるような粉末X線回折パターンを有する。幾つかの実施形態では、共結晶は、実質的に図2に示されるような粉末X線回折パターンと、約140℃の融点に相当する吸熱ピークを有する。幾つかの実施形態では、吸熱ピークが約140℃の融点に相当する。幾つかの実施形態では、共結晶は、実質的に図2に示されるような粉末X線回折パターンと、約139℃の融点に相当する吸熱ピークを有する。幾つかの実施形態では、吸熱ピークが約139℃の融点に相当する。ある実施形態では、共結晶は、実質的に図6に示されるような粉末X線回折パターンを有する。ある実施形態では、共結晶が実質的に図6に示されるような粉末X線回折パターンと、約138℃の融点に相当する吸熱ピークを有する。ある実施形態では、吸熱ピークが約138℃の融点に相当する。ある実施形態では、共結晶は、実質的に図10に示されるような粉末X線回折パターンを有する。ある実施形態では、共結晶は、実質的に図10に示されるような粉末X線回折パターンと約120℃の融点に相当する吸熱ピークを有する。ある実施形態では、共結晶は実質的に図20に示されるような粉末X線回折パターンを有する。ある実施形態では、共結晶は実質的に図21に示されるような粉末X線回折パターンを有する。ある実施形態では、共結晶は実質的に図22に示されるような粉末X線回折パターンを有する。ある実施形態では、共結晶は実質的に図23に示されるような粉末X線回折パターンを有する。
【0199】
幾つかの実施形態では、式(I)中、Xは存在しなくてもよい。幾つかの実施形態では、式(I)中、Xは存在しなくてもよく、R1またはR2のいずれか一方が存在しなくてもよく、そしてYとWは単結合により連結されてもよい。幾つかの実施形態では、WはOであることができる。幾つかの実施形態では、式(I)のコホーマー化合物が式(IC)の化合物:
【0200】
【化35】
【0201】
であり、ここでC1、C2およびZは上述した通りである。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物が式:
【0202】
【化36】
【0203】
であり、ここでR3は上述した通りである。幾つかの実施形態では、コホーマー化合物が式:
【0204】
【化37】
【0205】
(エリソルビン酸)である。
【0206】
幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IB)のコホーマーが1:0.5~1:1.5の範囲(ただし1:0.5を除く)の分子比において共結晶中に存在する。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IB)のコホーマーが1:0.6~1:1.4の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IC)のコホーマーが1:0.7~1:1.3の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IB)のコホーマーが1:1~1:1.5の範囲の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IC)のコホーマーが1:1~1:1.3の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IC)のコホーマーが1:1~1:1.2の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IC)のコホーマーが1:1~1:1.1の分子比で共結晶中に存在することができる。幾つかの実施形態では、置換グリシン化合物と式(IC)のコホーマーが1:1の分子比で共結晶中に存在することができる。
【0207】
合成方法
ある実施形態において、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマー化合物との共結晶の合成は、該置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーとを混合する第一工程に続き、その溶液を加熱・攪拌する工程、該溶液を冷却・攪拌する工程、およびそうして形成された共結晶を収集する工程を含む。ある実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマーとの共結晶の合成の第一工程が、該置換グリシン化合物と該コホーマーとを約40~110℃の温度で混合して飽和溶液とする工程であり、ここで置換グリシンとコホーマーとが10:1~1:10の分子比である。ある実施形態では、置換グリシンとコホーマーとが40~50℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが40~60℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが40~80℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが40~100℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが50~110℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが50~100℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが60~110℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが80~110℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施工程では、置換グリシンとコホーマーとが100~110℃の温度で混合されて飽和溶液を形成する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが10:1~1:10の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが8:1~1:8の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが6:1~1:6(例えば6:1~3:1)の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが5:1~1:5の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが4:1~1:4の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが3:1~1:3(例えば3:1~1:1)の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが2:1~1:2の範囲の分子比で存在する。ある実施態様では、置換グリシンとコホーマーとが1:1または2:1の分子比で存在する。
【0208】
特定の実施形態では、置換グリシン化合物と式(I)のコホーマー化合物との共結晶の合成の第2工程は、約40~110℃の温度で溶液を加熱・攪拌する工程である。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約40~110℃の温度で約1~10時間加熱・撹拌する。幾つかの実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約50~110℃の温度で加熱・攪拌する。幾つかの実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約60~110℃の温度に加熱・攪拌する。幾つかの実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約70~110℃の温度に加熱・攪拌する。幾つかの実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約100~110℃の温度に加熱・攪拌する。幾つかの実施形態では、共結晶の合成の第2工程において、溶液を約1~5時間、約1~10時間、約1~15時間、または約1~20時間加熱・攪拌する。
【0209】
特定の実施形態では、置換グリシンと式(I)(例えば式IA、IBまたはIC)のコホーマー化合物との共結晶の合成の第3工程は、該溶液を約10~30℃の温度で冷却・攪拌して共結晶を形成させる工程である。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約4~30℃の温度で約10~36時間冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約15~30℃の温度に冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約20~30℃の温度に冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約25℃の温度に冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約4℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、または約35℃の温度に冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、共結晶の合成の第3工程において、溶液を約5~40時間、約5~36時間、約5~30時間、約10~36時間、約10~30時間、または約10~25時間、冷却・攪拌する。ある特定の実施形態では、置換グリシンと式(I)のコホーマー化合物との共結晶の合成の最終工程は、第3工程において形成された共結晶を回収する工程である。
【0210】
上述した共結晶のいずれも、飽和溶液の加熱に続き冷却を伴う方法により調製することができる。
【0211】
幾つかの実施形態において、結晶化は、飽和溶液を加熱し、続いて冷却することにより達成することができる。置換グリシンと共結晶形成剤(コホーマー)は、10:1~1:10の範囲の分子比で混合され、そして室温または昇温(例えば60~65℃)の水浴に入れた丸底フラスコの中に置かれる。溶媒(例えばメタノール、エタノール等)を、例えばフラスコ中に滴下漏斗を介して滴下添加することができ、そして全ての粉末が完全に溶けるまで生じた溶液を攪拌した。混合物は最初に約45~55℃で加熱・攪拌し、次いで約20~25℃で冷却・攪拌することで、共結晶の形成を可能にすることができる。共結晶は吸引ろ過により回収し、そして必要であれば、室温でまたはオーブン中の昇温での一晩の乾燥にかける前に、母液を洗浄することができる。
【0212】
組成物
本開示は、本明細書に記載の共結晶と担体とを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、担体が医薬的に許容される賦形剤である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物が、本発明の共結晶と担体とを含む。本明細書に記載の組成物は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減することにおいて有用である。
【0213】
特定の実施形態において、該組成物は医薬組成物である。ある実施形態では、組成物が栄養補給組成物である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、任意の種類の液体および固体/半固体材料であることができる健康食品または健康食料品であることができ、それらはヒトや動物に栄養補給するため、基本的な行動機能、多動性、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶および/または認知機能を改善するため、あるいは本明細書に記載の標的疾患(例えば、精神神経障害またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害、本明細書に記載のものを含む)の任意の治療を容易にするために用いられる。健康食品は、食品〔例えば茶ベースの飲料、ジュース、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、ゼリー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバー、ハーブエキス、乳製品(例えばアイスクリームやヨーグルト)〕、食品/栄養補助食品(サプリメント)、または栄養補助製剤であることができる。
【0214】
本明細書に記載の健康食品は、本明細書に記載されるように、製品に1以上の利点を付与する可食性担体を含んでもよい。可食性担体の例としては、デンプン、シクロデキストリン、マルトデキストリン、メチルセルロース、カルボメトキシセルロース、キサンタンガム、およびそれらの水溶液が挙げられる。他の例としては、溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、当業者に周知であるような材料およびそれらの組み合わせが挙げられる。 幾つかの例では、本明細書に記載の健康食品は、神経保護食品、例えば魚油、亜麻油および/またはベンゾエートを更に含むことができる。
【0215】
いくつかの例では、健康食品は、食物源からの成分を含みつつ、基本的な栄養価に加えて余分の健康上の利点を付与する組成物を意味する栄養補助食品組成物である。本明細書に記載される栄養補助組成物は、本明細書に記載の共結晶(例えば置換グリシン化合物と本明細書に記載のコホーマーとの共結晶)並びに、健康を増進しそして/または該共結晶の安定性と生物活性を強化する追加の成分およびサプリメントを含む。
【0216】
栄養補助組成物の作用は、急速および/または短期であってもよく、例えば精神神経障害またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を有しているかまたはそのリスクがあるヒト対象において、本明細書に記載したもののような長期的な健康目標を達成するのを助けてもよく、例えば、基本的な行動機能、多動性、不安、抑うつ、感覚運動ゲーティング、疼痛閾値、記憶および/または認知機能を改善する作用であることができる。栄養補助組成物は、可食性材料中に、例えば栄養補助食品または医薬製剤として含めることができる。栄養補助食品として、例えばビタミン、ミネラルまたはアミノ酸などの追加の栄養素が含まれてもよい。組成物はまた、飲料や食料品、例えば、紅茶、ソフトドリンク、ジュース、牛乳、コーヒー、クッキー、シリアル、チョコレート、スナックバーであることもできる。必要であれば、組成物は、ソルビトール、マルチトール、水素化グルコースシロップ、および水素化デンプン水解物、ブドウ糖果糖液糖、甘蔗糖、甜菜糖、ペクチンまたはスクラロースのような甘味剤を添加することにより、甘くすることができる。
【0217】
本明細書中に開示される栄養補助食品組成物は、溶液の形態であってもよい。例えば、栄養補助食品製剤は、緩衝剤、溶剤、希釈剤、不活性担体、油、またはクリームのような媒質中に提供することができる。いくつかの例では、製剤は、所望によりアルコールなどの非水性共溶媒を含有する水溶液中に存在する。栄養補助組成物は、粉末、ペースト、ゼリー、カプセルまたは錠剤の形態であることもできる。カプセル剤用の希釈剤としてそして錠剤用の担体として、ラクトースやコーンスターチが汎用される。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤は、典型的には錠剤を成形するために添加される。
【0218】
健康食品は、例えば、適当な投与経路に合わせて、例えば経口投与用に、製剤化することができる。経口投与の場合、組成物は例えば錠剤またはカプセル剤の形をとることができ、それらの製剤は例えば、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム); 滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ); 崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム); または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)といった、許容される賦形剤を用いた常用手段により調製することができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることができる。また、バーや他のチュアブル製剤も含まれる。
【0219】
幾つかの例では、健康食品は液体形態であることができ、1以上の可食性担体が溶媒または分散媒、例えば非限定的に、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、脂質(例えばトリグリセリド、植物油、リポソーム)またはそれの組み合わせを含む溶媒または分散媒であることができる。例えばレシチンのようなコーティングの使用により;例えば液体ポリオールや脂質のような担体中への分散によって必要な粒径を維持することにより;例えばヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤の使用により;またはそれらの組み合わせにより、適切な流動性を維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせを含めることが推奨されるだろう。
【0220】
経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形をとることができ、またはそれらは、使用前に水や他の適当なビヒクルでの再構成のため乾燥製品として提供することができる。一実施形態では、液体製剤は、フルーツジュースとの投与用に処方することができる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油); および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ベンゾエートまたはソルベート)のような医薬的に許容される添加剤を用いて常用手段により調製することができる。
【0221】
特定の実施形態では、組成物が医療食品である。医療食品は、消費されまたは経腸投与されるように配合された食品です。そのような食品は、通常、本明細書に記載のものなどの標的疾患の特別な食事管理のため、医師の監督下で使用される。いくつかの事例では、このような医療食品組成物は、治療を必要とする患者(例えば、罹患しているヒト患者または特別な食事管理によって疾患もしくは状態を改善するために主活性剤として生成物の使用を必要とするヒト患者)のために特別に処方され加工される(自然な状態で使用される自然食材とは異なり)。幾つかの例では、本明細書に記載の医療食品組成物は、疾患または状態の症状を管理するまたはリスクを低減するための総合的食事管理の一部として、医師により単純に推奨されるようなものの1つではない。
【0222】
置換グリシン化合物と式(I)のコホーマー並びに少なくとも1つの担体(例えば本明細書に記載のもの)を含む、本明細書に記載の医療食品組成物は、下記に詳述するような、溶液;粉末、バー、ウェハース、適切な液体中または適当な乳液中の懸濁液の形態であることができる。天然のまたは合成(非天然)のいずれかの少なくとも1つの担体は、該組成物中の置換グリシン化合物とコホーマーに1以上の利点、例えば安定性、バイオアベイラビリティおよび/または生物活性を付与するだろう。本明細書に記載の担体はいずれも、医療食品組成物を製造するために用いることができる。いくつかの実施形態では、医療食品組成物は、限定されないが、天然香料、人工香料、主要な微量および超微量ミネラル、ミネラル、ビタミン、オート麦、ナッツ、スパイス、牛乳、卵、塩、小麦粉、レシチン、キサンタンガムおよび/または甘味剤を含む群より選択された1つ以上の追加の成分を更に含んでもよい。医療用食品組成物は、適当な容器の中に入れてもよく、更に少なくとも1つの追加の治療薬、例えば本明細書に記載されるものを更に含んでもよい。
【0223】
特定の実施形態において、本明細書に記載の共結晶は、医薬組成物に有効な量で提供される。特定の実施形態において、有効量は、治療的有効量(例えば、治療を必要とする対象において精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝疾患を治療するおよび/またはリスクを低減するのに有効な量)である。特定の実施形態では、精神神経疾患が、神経学的疾患、例えばアルツハイマー病である。特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝疾患が肥満である。特定の実施形態において、有効量は、予防的有効量(例えば、処置を必要とする対象において精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝疾患を予防するのに有効な量)である。
【0224】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬理学の技術分野で周知の任意方法により調製することができる。一般に、そのような調製方法は、本明細書に記載の共結晶(すなわち「活性成分」)を、担体もしくは賦形剤、および/または1以上の別の補助成分と会合させ、次いで、必要および/または所望ならば、該生成物を所望の単回投与または複数回投与単位に成形しそして/または包装することを含む。
【0225】
医薬組成物は、単位用量として、および/または複数の単位用量として、調製し、包装し、そして/またはバルクで販売することができる。「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、対象に投与されるであろう活性成分の投与量および/またはそのような投与量の1/2もしくは1/3という便利な分数に一般に等しい。
【0226】
本明細書に記載の医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象のアイデンティティ、サイズ、および/または状態に応じて、そして更に該組成物が投与されるであろう経路に応じて異なるだろう。組成物は0.1%~100%(w/w)の活性成分を含むことができる。
【0227】
本明細書に提供される医薬組成物の製造に用いられる医薬的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、分散および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、および/または油が挙げられる。ココアバターおよび坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などの賦形剤も、本組成物中に存在してよい。
【0228】
経口および非経口投与用の液体剤形は、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、液体剤形は、当業界で汎用される不活性希釈剤、例えば水または別の溶剤、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールとソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含んでよい。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤などのアジュバント、甘味料、香料、および芳香剤を含むことができる。非経口投与のための特定の実施形態において、本明細書に記載の抱合体は、可溶化剤、例えばCremophor(登録商標)、アルコール、油、改質油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの混合物と混合される。
【0229】
注射用製剤、例えば無菌注射用水性または油性懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤と懸濁剤を使って既知技術に従って製剤化することができる。無菌注射製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤中の無菌注射液、懸濁液または乳液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であることができる。許容される賦形剤や溶剤の中で、米国薬局方の水、リンガー溶液および等張食塩水が使用できる。更に、無菌の固定油も溶剤または懸濁媒体として好都合に利用できる。このためには、合成モノまたはジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を使用できる。また、オレイン酸のような脂肪酸も注射用製剤に使用できる。
【0230】
注射用製剤は、例えば細菌を保持するフィルターを通したろ過により、または無菌の固形組成物の形の滅菌剤(これは使用前に無菌精製水または他の無菌注射媒質中に溶解または分散させることができる)を含めることにより滅菌することができる。
【0231】
薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水溶解度の低い結晶または非晶質材料の液体懸濁液を使用することで達成することができる。薬物の吸収速度はそれの溶解速度に依存し、ひいては結晶の大きさや結晶の形に依存し得る。あるいは、非経口投与される剤形の遅延吸収は、薬物を油性賦形剤に溶解または懸濁することによって達成することもできる。
【0232】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および粒剤が含まれる。このような固体剤形では、活性成分は、少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または(a) 充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、(b) 結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア、(c)湿潤剤、例えばグリセロール、(d) 崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカでんぷん、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(e) 溶解遅延剤、例えばパラフィン、(f) 吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(g) 湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、(h) 吸収材、例えばカオリンおよびベントナイト土、並びに(i) 潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤およびピル剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0233】
同様なタイプの固体組成物は、ラクトースや乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングや薬理学の技術分野で公知の他のコーティングなど、コーティングやシェル(外殻)を用いて製剤することができる。それらは任意に乳白剤を含んでもよく、または所望により遅延様式で、消化管の特定の部分にのみ優先的に、活性成分を放出する組成物であることができる。使用することができるカプセル化組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。同様なタイプの固形組成物は、ラクトースまたは乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使って軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。
【0234】
活性成分は、上述のような1以上の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態であることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御(徐放)コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。このような固体剤形では、活性成分は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができる。そのような剤形は、通常のプラクチス通り、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば錠剤化潤滑剤および他の錠剤化助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースを含んでもよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでよい。それらは所望により乳白剤を含んでもよく、または所望により遅延様式で、消化管の特定の部分にのみ優先的に、活性成分を放出する組成物であることができる。使用することができるカプセル化剤の例は、限定されないが、ポリマー物質およびワックスである。
【0235】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は主としてヒトへの投与に適した医薬組成物に向けられるが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与に適している。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適した組成物に改変することは、十分に理解されており、通常の技術の獣医薬理学者は、日常的な実験によりそのような改変を設計および/または実施することができる。
【0236】
本明細書に提供される共結晶は、典型的に投与の簡便性と投薬量の均一性のために投薬単位形態で処方される。しかしながら、本明細書に記載の組成物の総1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で医師により決定されるだろうということが理解されよう。任意の特定の対象または生物体に対する特定の治療的有効量のレベルは、治療される疾患および障害の重症度;使用する特定の活性成分の活性;使用する特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;投与の時期、投与の経路、および使用される特定の活性成分の排出速度;処置の存続時間;使用される特定の活性成分と併用してまたは同時に使用される薬物;並びに医療分野で周知の同様の因子をはじめとする様々な因子に依存する。
【0237】
また、キット(例えば、医薬包装)も本開示に包含される。提供されるキットは、本明細書に記載の医薬組成物または共結晶と、容器(例えば、バイアル、アンプル、ボトル、シリンジおよび/またはディスペンサー包装、または他の適切な容器)を含むことができる。いくつかの実施形態では、提供されるキットは、場合により、本明細書に記載の医薬組成物または共結晶を希釈または懸濁するための医薬賦形剤を含有する第二の容器を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一容器と第二容器内に提供された本明細書に記載の医薬組成物または共結晶は、単回投与剤形(1回量)を形成するために一緒に組み合わされる。
【0238】
特定の実施形態において、本明細書に記載のキットは、本明細書に記載の共結晶または組成物を含有する第一容器を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載されるキットは、必要とする対象において精神神経障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減するのに、あるいはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減するのに有用である。
【0239】
特定の実施形態では、本明細書に記載のキットは、該キット中に含まれる共結晶または組成物を使用するための指示を更に含む。本明細書に記載のキットは、米国食品医薬品局(FDA)のような規制当局により要求される情報も含むだろう。ある実施形態では、該キット中に含められる情報は、処方情報である。ある実施形態では、キットと指示は、処置が必要である対象において精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減させるために提供される。本明細書に記載のキットは、別々の組成物として本明細書に記載の1以上の追加の薬剤を含んでもよい。
【0240】
治療方法
本開示は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減させる方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載の共結晶またはその組成物の有効量(例えば治療的有効量)を投与することを含む方法を提供する。
【0241】
本開示の別の態様は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を予防する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載の共結晶またはその組成物の有効量(例えば予防的有効量)を投与することを含む方法を提供する。
【0242】
本明細書に記載の共結晶および組成物は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝疾患を治療するおよび/または予防するのに有用である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が統合失調症である。特定の実施形態では、精神神経疾患が精神異常である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がアルツハイマー病である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が前頭側頭型認知症である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が認知症である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が軽度認知機能障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が良性健忘症である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が閉鎖性頭部外傷である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がアスペルガー障害などの自閉症スペクトラム障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が注意欠陥障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が強迫障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がチック障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が小児学習障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が月経前症候群である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が気分変調や死別などを伴ううつ病である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が自殺念慮および/または自殺行為である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が双極性I型障害とII型障害を含む双極性障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がパニックと恐怖性障害を含む不安障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が心的外傷後ストレス障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が慢性疼痛である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が過食症と拒食症を含む摂食障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が薬物依存と薬物乱用を含む嗜癖障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が人格障害である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がパーキンソン病である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患がハンチントン病である。ある特定の実施形態では、精神神経疾患が筋萎縮性側索硬化症である。ある特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝障害が肥満である。ある特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝障害が糖尿病である。ある特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝障害が高コレステロール血症である。ある特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝障害が高脂血症である。ある特定の実施形態では、グルコース代謝または脂質代謝障害が高血圧症である。
【0243】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、該対象に追加の薬剤を投与することを更に含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、生物学的試料を追加の薬剤と接触させることを更に含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、組織を追加の薬剤と接触させること更に含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞を追加の薬剤と接触させることを更に含む。
【0244】
本明細書で提供される共結晶および組成物は、任意の経路、例えば腸内(例えば経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、皮下、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉剤、軟膏、クリームおよび/または点滴薬によるような)により投与することができる。具体的に意図される経路は、経口投与、静脈内投与(例えば全身静注)、血液および/またはリンパへの供給を介した局所投与、および/または幹部への直接投与である。一般に、最も適当な投与経路は、薬剤の性質(例えば消化管環境内でのそれの安定性)、および/または対象の状態(例えば対象が経口投与を寛容できるかどうか)をはじめとする、様々な要因に依存するだろう。
【0245】
有効量を達成するのに必要な共結晶の正確な量は、例えば、対象の種、年齢および全身状態、副作用または疾患の重症度、特定の共結晶のアイデンティティ、投与形式などに依存して、対象ごとに異なるであろう。有効量は、単回投与量(例えば、単回経口投与量)または複数回投与量(例えば、複数回の経口投与量)に含まれうる。ある実施形態では、複数回投与量が対象に投与されるかまたは生物学的試料、組織もしくは細胞に適用される場合、複数回量のうちの任意の2つの用量が、異なるかまたは実質的に同じ量の本明細書に記載の共結晶を含む。ある特定の実施形態では、複数回投与量を対象にまたは生物学的試料、組織もしくは細胞に投与する場合、対象に複数回投与量を投与する頻度または組織もしくは細胞に複数回投与量を適用する頻度は、1日に3回投与、1日に2回投与、1日に1回投与、隔日に1回投与、3日に1回投与、毎週1回投与、隔週に1回投与、毎月1回投与または隔月に1回投与である。ある特定の実施形態では、複数回投与量が対象に投与されるかまたは生物学的試料、組織もしくは細胞に適用される時の投与の頻度は、1日1回である。ある特定の実施形態では、複数回投与量が対象に投与されるかまたは組織もしくは細胞に適用される時の投与の頻度は、1日2回投与である。ある特定の実施形態では、複数回投与の初回投与と最終投与との間の期間が、1日、2日、4日、1週間、2週間、3週間、1か月、2カ月、3か月、4カ月、6か月、9カ月、1年、2年、3年、4年、5年、7年、10年、15年、20年、または対象、生物学的試料、組織もしくは細胞の寿命期間である。ある特定の実施形態では、複数回投与の初回投与と最終投与の間の期間は、3か月、6か月、または1年である。ある特定の実施形態では、複数回投与の初回投与と最終投与の間の期間は、対象、生物学的試料、組織もしくは細胞の寿命期間である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量(例えば、単回投与または複数回投与のいずれかの用量)は、独立に、1 mg~3 mg、3 mg~10 mg、10 mg~30 mg、30 mg~100 mg、100 mg~300 mg、300 mg~1,000 mg、または1 g~10 g(上下限を含む)の本明細書に記載の共結晶を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、独立に3 mg~10 mg(3 mgと10 mgを含む)の本明細書に記載の共結晶を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、独立に10 mg~30 mg(10 mgと30 mgを含む)の当該共結晶を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、独立に30 mg~100 mg(30 mgと100 mgを含む)の当該共結晶を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、独立に100 mg~300 mg(100 mgと300 mgを含む)の当該共結晶を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の投与量は、独立に300 mg~1000 mg(300 mgと1000 mgを含む)の当該共結晶を含む。
【0246】
本明細書に記載されるような用量範囲は、成人への当該医薬組成物の投与のための指標を提供する。例えば児童や青年に投与すべき量は、例えば、医療従事者や当業者により決定することができ、そしてそれは成人に投与される量より少量であるかまたは同量であることができる。
【0247】
本明細書に記載の共結晶または組成物は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝を治療するおよび/またはそのリスクを低減するのに有用な、1つ以上の追加の薬剤(例えば治療的および/または予防的に活性な剤)と併用して投与することができる。該共結晶または組成物は、それらの活性〔例えば、必要とされる対象において精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝を治療するおよび/またはそのリスクを低減する活性(例えば潜在力および/または効力)〕を改善する、バイオアバベイラビリティを向上させる、安全性を高める、薬剤耐性を減少させる、代謝を減少および/または改変する、排出を阻害する、そして/または対象、生物学的試料、組織もしくは細胞中での分布を改変するために、追加の薬剤と併用して投与することができる。使用される治療法は、同じ疾患に対して所望の効果を果たすことができ、そして/またはそれは異なる効果を果たしてもよいことは理解されるだろう。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の共結晶と追加の薬剤とを含む当該医薬組成物は、該共結晶と追加の薬剤のうちの一方を含むが両方は含まない医薬組成物の場合には存在しないような、相乗効果を示す。
【0248】
共結晶または組成物は、1つ以上の追加の薬剤と同時に、前にまたは後に投与することができ、これは例えば対象における精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減するための併用療法として、有用でありうる。そのような薬剤には、治療的に活性な剤が含まれる。該薬剤には、予防的に活性な剤も含まれる。薬剤としては、有機小分子、例えば薬用化合物またはそれの共結晶(例えば、米国連邦規制基準(CFR)に提示されるような、米国食品医薬品局によりヒトまたは獣医学的使用に関して承認された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、抗体のようなタンパク質に連結された小分子、糖タンパク、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミンおよび細胞が挙げられる。特定の実施形態では、追加の薬剤は、対象において精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝を治療するおよび/またはそのリスクを低減するための、規制当局(例えば米国FDA)により承認された薬剤である。各追加の薬剤は、その薬剤について決定された用量および/またはタイムスケジュールで、投与することができる。追加の薬剤は、互いに一緒におよび/または1回量での本明細書に記載の共結晶もしくは組成物と一緒にまたは異なる投与量で個別に投与されてもよい。投与計画において使用する特定の組合せは、本発明の共結晶と追加の薬剤(1または複数)との適合性(compatibility)、および/または達成されるべき所望の治療効果および/または予防効果を考慮に入れるだろう。一般に、併用される追加の薬剤(1または複数)は、それらが個別で使用される時のレベルを超えないようなレベルで使用されると予想される。幾つかの実施形態では、併用して使用されるレベルは個別に使用されるレベルよりも低いだろう。
【0249】
特定の実施形態では、追加の薬剤は、精神神経疾患を治療するおよび/またはリスクを低減するための剤、グルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはそのリスクを低減するための剤、またはそれらの組み合わせである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の共結晶または医薬組成物は、精神神経疾患またはグルコース代謝もしくは脂質代謝障害を治療するおよび/またはリスクを低減するための療法と組み合わせて投与される。
【0250】
更に詳述しなくても、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると確信する。従って、以下の特定の実施形態は、単に例示目的であり、どんな形にせよ開示の残部を限定するものではないと理解されるべきである。本明細書中に引用される全ての刊行物は、本明細書で参照する目的や主題のために参考として援用される。
【実施例0251】
本開示をより十分に理解するために、次の実施例を記載する。本願明細書に記載の合成例と生物学的例は、本明細書に提供される共結晶、化合物、組成物および方法を説明するために提供され、決してそれらの範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0252】
以下は、本明細書に記載の共結晶を調製する典型的方法である。
実施例1:飽和溶液中での加熱に続き冷却による、N-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1共結晶)の調製
【0253】
N-メチルグリシン(5.0 g、56.1ミリモル)とD-酒石酸(10.1 g、67.3ミリモル)を62 mLのメタノール中に入れ、全ての試薬が溶解して溶液となるまで50℃で攪拌した。その溶液を50℃で更に5時間攪拌し、次いで室温に一晩冷却して、固体の沈殿を生じさせた。沈殿が収まった後、溶液をろ過し、集めた固体を室温で24時間真空乾燥し、11.0 gのN-メチルグリシン:D-酒石酸(1:1)共結晶を得た。こうして得られた共結晶を下記に記載の通りに1H-NMR、粉末X線回折および熱分析により分析した。
【0254】
・熱重量分析(TGA):TGAデータは、Pyris 1 TGA(Perkin Elmer)により、10℃/分の昇温速度で50℃-700℃の範囲に渡り白金るつぼを用いて測定した。
【0255】
・示差走査熱量測定法:共結晶の融点を、示差走査熱量分析(DSC)法を使って測定した。DSCデータは、10℃/分の昇温速度でかつ40℃-230℃の加熱範囲でTゼロ(熱的変化のない)アルミニウム低質量量蒸発皿を用いてDSC 25(TA Instruments)により測定した。
【0256】
・粉末X線回折(XRPD)法:X線回折パターンは、D8 ADVANCE(Bruker AXS GmbH, ドイツ)装置上で得た。40 kVと40 mAでの回転ステージ上でCu-Kα放射線を用いて0.02°のステップ幅で0~45°(2θ)の連続モードにおいてサンプルをスキャンした。入射光光路に0.2 mmの発散スリットと0.02 mmの空気散乱スクリーンを備え付けた。回折ビームにはニッケルフィルターを装備した。検出はLynxeye検出器(Bruker AXS)を用いて実施した。
【0257】
1H-NMR: 1H-核磁気共鳴(NMR)分析は、例えばd-メタノールまたはD2Oのような重水素化溶媒中でBruker Fourier 400(Bruker)上で25℃にて実施した。図1、5、9および13のNMRは、25℃でD2O中で実施した。
【0258】
実施例1に記載の方法により得られた共結晶の1H-NMR、粉末X線回折および熱分析の結果をそれぞれ図1~4に示す。
【0259】
実施例2:飽和溶液中での加熱に続く冷却による、N-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)の調製
【0260】
N-メチルグリシン(5.0 g、56.1ミリモル)とL-酒石酸(10.1 g、67.3ミリモル)を62 mLのメタノール中に添加し、全ての試薬が溶解するまで生じたスラリーを50℃で撹拌した。その混合物を50℃で5時間撹拌し、室温に一晩冷却して固体を沈澱させた。次いで固体を濾過により回収し、室温で24時間真空乾燥して11.0 gのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1)共結晶を得た。実施例2に記載の方法により得られた共結晶の1H-NMR、粉末X線回折および熱分析の結果をそれぞれ図5~8に示す。
【0261】
実施例3:飽和溶液中での加熱に続く冷却による、N-メチルグリシン:DL-酒石酸(1:1)共結晶の調製
メタノール75 mLに50℃でN-メチルグリシン(5.0 g、56.1ミリモル)とDL-酒石酸(12.6 g、84.0ミリモル)を添加し、全ての試薬が溶けるまで混合物を攪拌した。こうして得られた溶液を50℃で更に5時間撹拌し、次いで室温に一晩冷却して固体を生じさせた。固体を濾過により単離し、室温で24時間真空乾燥して10 gのN-メチルグリシン:DL-酒石酸1:1共結晶を得た。実施例3に記載の方法により得られた共結晶の1H-NMR、粉末X線回折および熱分析の結果を、それぞれ図9~12に示す。
【0262】
実施例4:N-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の調製
N-メチルグリシン(25.0 g、280.6ミリモル)とL-酒石酸(21.0 g、139.9ミリモル)を140 mLの60%エタノール/水に添加した。全ての試薬が溶解するまで混合物を40℃で撹拌子、次いで種結晶の添加のため30℃に冷却した。混合物を更に4℃に冷却し、続いて420 mLのエタノールを添加し、そして生じた溶液を一晩攪拌した。その溶液を25℃に戻し、更に一晩攪拌した。形成した固体を濾過により回収し、室温で24時間真空乾燥し、N-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1)共結晶を得た。得られた共結晶を、図13~16に示すように、1H-NMR、粉末X線回折および熱分析に供した。
【0263】
実施例5:N-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)対N-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の吸湿性試験-条件1
各100 mgのN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)およびN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)を、室温で3日間、高湿度条件(70~75%RH)に暴露した。結果は、1:1共結晶が白色微粉末として保持されたのに対し、2:1共結晶は湿った状態になり、幾分粘着性の白色固体に変化した。図17。この結果は、1:1共結晶が2:1共結晶よりもずっと吸湿性が低いことを証明する。
【0264】
実施例6:N-メチルグリシン:酒石酸共結晶の吸湿性試験-条件2
各100~150 mgのN-メチルグリシン:L-酒石酸1:1共結晶、N-メチルグリシン:DL-酒石酸1:1共結晶、N-メチルグリシン:L-酒石酸2:1共結晶、N-メチルグリシン:DL-酒石酸2:1共結晶、およびN-メチルグリシンを計量し、次いで湿潤チャンバー内の30℃と75%RHの条件下でバイアル中に入れた。各共結晶の1時間、2時間、3時間、5時間、24時間、48時間および72時間目の重量変化を測定し、下の表1に記載した。
【0265】
表1.種々のN-メチルグリシン:酒石酸共結晶の吸湿性試験
【0266】
【表1】
【0267】
上記結果は、72時間後に、1:1のN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶がわずか0.6%の水分を吸収し、白色粉末として保持されたのに対し、2:1のN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶は約1.1%の水分を吸収し、一部液体に変化した。このことは、図18により示される通り、1:1共結晶が吸湿性に関して2:1共結晶よりも有意に優れていることを示す。要約すれば、1:1のN-メチルグリシン:酒石酸共結晶は2:1のN-メチルグリシン:酒石酸共結晶よりもずっと吸湿性が低く、1:1のN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶は2:1のN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶よりもずっと吸湿性が低く、一方で1:1のN-メチルグリシン:DL-酒石酸共結晶は2:1のN-メチルグリシン:DL-酒石酸共結晶よりもずっと吸湿性が低い。
【0268】
更に、5時間後では、1:1のN-メチルグリシン:DL-酒石酸共結晶は18.7%の水分を吸収して一部液体に変化し始めたが、一方でN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶はわずか0.4%の水分しか吸収せず、このことは、単一エナンチオマー形のコホーマー、すなわちD-またはL-酒石酸と、N-メチルグリシンとの共結晶が、ラセミ形のコホーマー、すなわちDL-酒石酸とN-メチルグリシンとの共結晶よりも、吸湿性が少ないことを示す。
【0269】
実施例7:N-メチルグリシン:酒石酸2:1共結晶の吸湿性試験-条件3
N-メチルグリシン、N-メチルグリシン:DL-酒石酸2:1共結晶、N-メチルグリシン:D-酒石酸2:1共結晶、およびN-メチルグリシン:L-酒石酸2:1共結晶の各々の吸湿性を、比較のためDVS Advantage (Surface Measurement Systems Ltd., ロンドン)上での動的蒸気収着により測定した。測定は、10分または180分/ステップのためにdm/dt=+0.01%/分に設定された平衡を含むステップあたり10%RHの増分で25℃で0~90%~0%RHまで測定値を取った。全ての試料が、180分の最大設定点に達する前に各ステップで平衡に達した。結果を下記の表に要約する。
表2.N-メチルグリシン:酒石酸2:1共結晶の吸湿性試験
【0270】
【表2】
【0271】
上記結果は、RHが70%に上昇すると、N-メチルグリシン:D-酒石酸2:1共結晶と、N-メチルグリシン:L-酒石酸2:1共結晶が、N-メチルグリシン:DL-酒石酸2:1共結晶の3.12%に比較して、それぞれわずか0.31%および0.18%の水分を吸収したことを示す。90%RHでは、2:1のD-酒石酸およびDL-酒石酸共結晶の場合の14.27%と30.35%に比較して、N-メチルグリシン:L-酒石酸2:1共結晶は、10.74%の水分を吸収した。要約すると、N-メチルグリシンとL-酒石酸の共結晶は、D-酒石酸およびDL-酒石酸との共結晶に比較して、吸湿性が最小であった。同時に、L-酒石酸共結晶はD-酒石酸共結晶よりもずっと吸湿性が低かった。
【0272】
実施例8:N-メチルグリシン、L-酒石酸、およびN-メチルグリシン:L-酒石酸1:1共結晶の吸湿性試験-条件4
N-メチルグリシン、L-酒石酸、およびN-メチルグリシン:L-酒石酸1:1共結晶の各々の吸湿性を比較のためDVS Advantage(Surface Measurement Systems Ltd.,ロンドン)上での動的蒸気収着により測定した。測定は、10分または180分/ステップのためにdm/dt=+0.01%/分に設定された平衡を含むステップあたり10%RHの増分で25℃で0~70~0%RHまで測定値を取った。全ての試料が、180分の最大設定点に達する前に各ステップで平衡に達した。結果は、図19に示される通り、N-メチルグリシン:L-酒石酸1:1共結晶がN-メチルグリシンまたはL-酒石酸個々のものよりも吸湿性が低いことを示した。
【0273】
実施例9:N-メチルグリシンと酒石酸の共結晶の融点
N-メチルグリシンとL-酒石酸、D-酒石酸およびDL-酒石酸との1:1および2:1共結晶の各々の融点を、DSC法により測定し、表3に要約した。N-メチルグリシンと単一エナンチオマー形のコホーマー(すなわちD-またはL-酒石酸)との1:1および2:1共結晶が、ラセミ形のコホーマー(すなわちDL-酒石酸)との共結晶よりも高い融点を示し、従って高温での熱応力下でより安定であることが明らかであった。
【0274】
【表3】
【0275】
実施例10:N-メチルグリシンと酒石酸の共結晶対N-メチルグリシンの水溶解性比較
【0276】
0.1~1.0 gの各試料を計量した後、水を徐々に添加して最大溶解度を求めた。N-メチルグリシンとL-酒石酸との1:1および2:1共結晶の溶解度がそれぞれ1250 g/Lおよび1121 g/Lであり、N-メチルグリシンの660 g/Lよりも高いことが分かった。また、1:1共結晶は、実施例5と6に示したように低い吸湿性であるにもかかわらず、2:1共結晶よりも高い水溶解度を示した。
【0277】
実施例11:N-メチルグリシンとフマル酸との共結晶の調製
様々な比率(1:1、2:1、3:1および6:1)のN-メチルグリシンとフマル酸との共結晶を、N-メチルグリシンとフマル酸を対応する比率でエタノール中に溶解し、続いて実施例1に記載の手順に従うことにより調製した。1:1、2:1、3:1および6:1共結晶のXRPDを図20、21、22および23に示す。
【0278】
実施例12:N-メチルグリシンとフマル酸の共結晶の吸湿性試験
各々0.1 g~0.5 gの1:1、2:1、3:1および6:1のN-メチルグリシン共結晶を、周囲条件下でバイアルに入れた。各共結晶の様々な時点での重量変化を測定し、その結果を下記の表4に示した。
表4.N-メチルグリシン:フマル酸共結晶の吸湿性試験
【0279】
【表4】
【0280】
上記の結果は、N-メチルグリシンとフマル酸との1:1共結晶が、実施例5と6の知見と同様に、2:1、3:1および6:1共結晶よりもずっと低い吸湿性であることを示唆した。
【0281】
実施例13:MK-801で処置したマウスにおけるN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶 保護効果
この実験の目的は、MK-801モデルにおいてCNS疾患を治療することにおけるN-メチルグリシン(N-MG):L-酒石酸(L-TA)共結晶(1:1)の使用を評価することであった。MK-801で誘導された過活動を伴う動物モデルは、様々な精神神経疾患の研究において、限定されないが、統合失調症、双極性障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム、脆弱性運動失調症候群、パーキンソン病、レビー小体型認知症および老人性痴呆症をはじめとする病的状態の分析法の開発において、汎用されている(Rubia他、2010; Sheppard & Bradshaw, 1999; Bent他、2004; Powell & Miyakawa, 2006; Nestler & Hyman, 2010; Bubeni’kava’-Vales’ova他、2008; Gobira他、2013; Lai他、2014; Maio他、2014; Sontag他、2010; Ding他、2014; Walitza他、2007; Finestone他、1982; Golimstok他、2011)。
【0282】
方法と材料:
(i)動物と飼育条件
【0283】
C57BL/6J雄マウスを、動物室でのポリスルホン換気付ケージ(Alternative Design, AR, USA)中で飼料と水を自由に摂取できる状態で群飼した。コロニーを22±2℃の温度で12/12時間の明/暗周期に維持し、すべての行動試験は暗サイクル中に実行する。本試験で用いる全ての動物は成体マウスであった(少なくとも2.5ヶ月齢)。
【0284】
(ii)薬剤投与
マウスを無作為に次の6グループに割り当てた:
グループ1:ddH2O+生理食塩水の対照群;
グループ2:ddH2O+MK-801;
グループ3:N-MG(278 mg/kg)+MK-801;
グループ4:N-MG(745 mg/kg)+MK-801;
グループ5:N-MG/L-TA=1/1(746 mg/kg)+MK-801;および
グループ6:N-MG/L-TA=1/1(2000 mg/kg)+MK-801。
【0285】
グループ2~6の各マウスは、移動運動試験の20分前に、腹腔内(i.p.)注射により生理食塩水中に溶かした0.2 mg/kgまたは0.3 mg/kgのMK-801(Sigma-Aldrich, USA)の急性投与を受けた。グループ3~4の各マウスは、MK-801投与の20分前に、生理食塩水中に溶かした278 mg/kgと745 mg/kg(3.1ミリモル/kgおよび8.4ミリモル/kg)のN-MGそれぞれの経口(p.o.)による急性投与を受けた。グループ5~6の各マウスは、MK-801投与の20分前に、p.o.によりそれぞれ生理食塩水に溶かした746 mg/kgおよび2000 mg/kgの1:1共結晶(N-MG/L-TA=1/1)〔グループ3~4のマウスに投与したN-MGの量(3.1ミリモル/kgおよび8.4ミリモル/kg)と等量の含量を含む〕の急性経口投与を受けた。
【0286】
結果
(i) MK-801処置マウスにおける移動運動活性に対するN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)の効果
オープンフィールド・試験は、マウスとラットの両方における新規に誘発される探索行動と一般活動性の日常的測定である。この試験では、マウスを50~65ルクス(lux)の光強度の下、プレキシグラス(登録商標)製ケージ(47.1 cm×25.1 cm×20.9 cm)の中に入れた。それらのマウスの自発的移動運動活性は、フォトビーム・アクティビティシステム・オープンフィールド(San Diego Instruments, San Diego, CA, USA)を使って60分間に渡り測定した。各マウスのビームブレークの数を、移動運動活性の指標として測定した。
【0287】
対照群(グループ1)に比較して、MK-801群(0.2 mg/kg)は高い移動運動活性を示した。図24に示されるように、MK-801群に比較して、N-メチルグリシン群(グループ3と4)は著しく低い移動運動活性を示し、一方で1:1共結晶群(グループ5と6)は、有意に低い移動運動活性を示した。
【0288】
(ii) MK-801処置マウスにおけるプレパルス抑制に対するN-メチルグリシン:L-酒石酸(1:1共結晶)の効果
前注意過程は、自覚している意識の外側で自発的にかつ迅速に動作する傾向があり、一方で意図的な注意過程は限定されたリソースを有し、努力を要し、よりゆっくりと動作する。前注意過程の一般測定法はプレパルス抑制である。このパラダイムは数種の精神疾患、例えば限定されないが、統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、チック障害、強迫性障害、トゥーレット病、眼瞼痙攣、外傷後ストレス障害、パニック障害、アスペルガー障害、軽度のアルツハイマー認知症、レヴィー小体病、ハンチントン病、人格障害、夜尿症、および非てんかん発作(McAlonan他、2002;Braff他、2001;Giakoumaki他、2007;Ueki他、2006;Perriol他、2005;Ludewig他、2002;Castellanos他、1996;Cadenhead他、2000;Matsuo他、2017;Lai他、2014参照)を含む精神疾患のマウスモデルにおいて一般に試験されている。というのは、そのような障害がヒト症状に類似した形式で現れるからである。
【0289】
プレパルス抑制は、SR-LABの驚愕刺激装置(San Diego Instruments, San Diego, CA,USA)を使って感覚運動ゲーティング機能の指標として用いた。65 dB(デシベル)のバックグラウンドノイズの下、各セッションは、4ブロックに分けた中で5分の累積時間に続く64回の試行から成った。パルスのみ(PA)の試行は40 ms(ミリ秒)、120 dBのホワイトノイズバーストであった。プレパルス(pp)+パルス試行では、71 dB(pp6)、75 dB(pp10)、および83 dB(pp18)の20 msホワイトノイズ・プレパルス刺激を100 ms間与えた後40 ms間の120 dBパルスを与えた。非刺激(NS)試行では、バックグラウンドノイズのみを与えた。初期ブロックと最終ブロックはそれぞれ6回のPA試行から構成された。2つの中間のブロックは、PA、pp+パルス、およびNS試行から成った。それらの試行は、平均15秒の種族間間隔(10~20秒の間で変動する)により分断され、疑似ランダム化されて提供された。プレパルス抑制率(%)は、次の式により評価した:%PPI=100×〔(PAスコア)-(pp-Pスコア)〕/(PAスコア)。ここでPAスコアは中間ブロックでのPA値の平均であった。
【0290】
対照群(グループ1)に比較して、MK-801(0.3 mg/kg)群は全てのプレパルス強度においてロバストなプレパルス抑制欠損を誘発した。高用量の1:1共結晶(2000 mg/kg)群が、全てのプレパルス強度において、MK-801により誘発されたプレパルス抑制の欠損に対して有意に高いレスキュー(救済)/保護効果を示した。そのような結果は、図25に示されるように、N-メチルグリシン群と低用量の1:1共結晶群(746 mg.kg)の両群では全く観察されなかった。
【0291】
実施例14:MK-801処置マウスでの移動運動に対するN-メチルグリシン:L-酒石酸(N-MG/L-TA 1:1共結晶)およびN-メチルグリシン:L-酒石酸(N-MG/L-TA 2:1共結晶)の効果
オープンフィールド・試験は、マウスとラットの両方における新規に誘発される探索行動と一般活動性の日常的測定である。この試験では、マウスを50~65ルクス(lux)の光強度の下、プレキシグラス(登録商標)製ケージ(47.1 cm×25.1 cm×20.9 cm)の中に入れた。それらのマウスの自発的移動運動活性は、フォトビーム・アクティビティシステム・オープンフィールド(San Diego Instruments, San Diego, CA, USA)を使って60分間に渡り測定した。各マウスのビームブレークの数を、移動運動活性の指標として測定した。
【0292】
マウスを指示した通りのMK-801モデル条件の下、N-メチルグリシン(「N-MG」)、N-MG/L-TA 1:1共結晶、またはN-MG/L-TA 2:1共結晶で処置した:N-MG (745 mg/kg)+MK-801;N-MG/L-TA=1/1 (2000 mg/kg)+MK-801;N-MG (1078 mg/kg)+MK-801;N-MG/L-TA=2/1 (2000 mg/kg)+MK-801。MK-801での処置条件は、実施例13に記載の通りである。共結晶で処置したマウスに投与される総N-MG含量は、N-MGで処置したマウスに投与されるものと同じである。
【0293】
745 mg/kgおよび1078 mg/kgのN-メチルグリシンで処置した動物は、それぞれ45%および63%の回復率で低い移動運動活性を示した。対照的に、N-MG/L-TA共結晶で処置した動物は、1:1共結晶と2:1共結晶についてそれぞれ65%と93%の回復率を示し、この値はN-MGで処置した動物よりもはるかに高い。2:1共結晶も1:1共結晶より高い回復率を示し、図26に示されるように、より好ましい治療効果を指摘する。
【0294】
実施例15:MK-801処置マウスでの移動運動に対するN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の種々の投与レベルの効果
マウスを次の条件に従って、MK-801と組み合わせて上記実施例14に記載の通りN-MGまたは2:1共結晶で処置した:
- 生理食塩水;
- 生理食塩水+MK-801(0.2 mg/kgのMK-801);
- N-MG (539 mg/kg)+MK-801 (0.2 mg/kg);
- N-MG (1078 mg/kg)+MK-801 (0.2 mg/kg) ;
- N-MG/L-TA=2/1_1000MK-801(539 mgのN-MGを含む1000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801 (0.2 mg/kg);および
- N-MG/L-TA=2/1_2000MK-801(1078 mg/kgのN-MGを含む2000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801 (0.2 mg/kg)。
【0295】
MK-801処置と移動運動活性(ビームブレーカーの数により表される)の測定の手順は、上記実施例13に提供されている通りである。図27に示すように、MK-801処置は、マウスモデルにおいて移動運動活性を増強し;N-MGと共結晶の両方が、MK-801により誘発される移動運動活性を減少させた。共結晶、特に2:1共結晶は、MK-801処置マウスにおけるN-MGと比較して移動運動活性の減少が有意に高かった。
【0296】
実施例16:MK-801処置マウスでの回復率に対するN-メチルグリシンに比較したN-メチルグリシン:L-酒石酸(2:1共結晶)の効果
マウスを次の条件に従って、MK-801と組み合わせてN-MGまたはN-MG/L-TA 2:1共結晶で処置した:
- N-MG (539 mg/kg)+MK-801 (0.2 mg/kg);
- N-MG (1078 mg/kg)+MK-801 (0.2 mg/kg) ;
- N-MG/L-TA=2/1_1000MK-801(539 mgのN-MGを含む1000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801 (0.2 mg/kg);および
- N-MG/L-TA=2/1_2000MK-801(1078 mg/kgのN-MGを含む2000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801 (0.2 mg/kg)。
【0297】
MK-801処置と移動運動活性回復率の測定のための手順は実施例13に上述した通りである。
図28に示すように、N-MG/L-TA 2:1共結晶で処置したマウスは、MK-801処置マウスでの2用量でのN-MGに比較して、有意に高い移動運動活性回復率を示した。
【0298】
実施例17:MK-801処置マウスにおけるN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶の保護効果
本実験の目的は、以下の条件に従って本明細書に記載のMK-801マウスモデルを使ってCNS障害を治療することにおける、N-メチルグリシン(N-MG):L-酒石酸(L-TA)共結晶(2:1)の使用を評価することであった。
- 生理食塩水;
- 生理食塩水+MK-801(0.2 mg/kgのMK-801);
- N-MG (1078 mg/kg)+MK-801 (0.3 mg/kg) ;
- N-MG/L-TA=2/1_2000MK-801(1078 mg/kgのN-MGを含む2000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801(0.3 mg/kg)。
【0299】
MK-801処置およびプレパルス抑制保護効果の測定のための手順は実施例13に記載の通りである。
図29に示されるように、上記のもので処置したマウスにおけるMK-801誘導プレパルス抑制、およびMK-801誘導プレパルス抑制は、N-MGとN-MG/L-TA 2:1共結晶の両者によりレスキューされた。更に、同用量のN-MG、N-MG/L-TA 2:1共結晶は、N-MGに比較してMK-801誘導プレパルス抑制に対して有意に高いレスキュー/保護効果を示した。
【0300】
実施例18:MK-801処置マウスにおけるN-メチルグリシン:L-酒石酸共結晶の空間記憶検索効果
空間学習と記憶
マウスは、前述のように、それらの空間学習と記憶を調べるためにバーンズ迷路で試験した(Barnes, J. Comp. Physiol. Psychol., 93(1): 74-104 [1979])。試験装置は、外周の周りに等間隔で配置された20個の穴(直径7 cm、穴と穴の間隔7 cm)を有する、基準面より高く置かれた(床上50 cm)円形プレキシグラス(登録商標)製プレート(直径100 cm)であった。モリス水迷路試験における隠蔽プラットフォームに類似したようにデザインされた、目標の穴の背後に隠された逃避ボックスを識別するようにプレート上で訓練した。目標の穴の位置は、各マウスごとに選択されたが、マウス全体に渡って無作為化した。マウスを最初に不透明なシリンダーによりカバーされたプレートの中心に乗せ、そして試験の開始から10秒後に該シリンダーを取り外し、不快トーン(440 Hz, 85 dB)と光(100ルクス)の両スイッチを入れた。連続3日間に渡り1日3回の訓練試行のため、周囲の視覚刺激(キュー)に従って目標の穴に入りそして不快なトーンから逃避するようにマウスを訓練した。空間記憶は「探索試験」により測定した。訓練試行と探索試行は全て3分間ビデオテープに録画した。次いで、訓練試行の逃避潜時と探索試験の間に種々の象限(目標、左、右、および反対側)にいる時間の割合を分析した。
【0301】
マウスをバーンズ迷路で試験し、下記の条件に従って本明細書に記載のMK-801マウスモデルを使って、CNS障害を治療する際のN-メチルグリシン(N-MG):L-酒石酸(L-TA)共結晶(2:1)の使用を評価した:
- N-MG (1078 mg/kg)+MK-801 (0.2 mg/kg) ;
- N-MG/L-TA=2/1_2000MK-801(1078 mgのN-MGを含む2000 mgのN-MG/L-TA 2:1共結晶)+MK-801 (0.2 mg/kg)。
【0302】
MK-801処置の手順は実施例13に記載の通りである。
図30に示されるように、MK-801とN-MG/L-TA 2:1共結晶で同時処置したマウスは、MK-801およびN-MGで同時処置したマウスに比較して、潜時により測定した時、3日目に優れた空間記憶を示した。
【0303】
同等物および範囲
特許請求の範囲では、異なって指摘されるかまたは状況から明らかに別なように指摘されない限り、「a」、「an」および「the」のような冠詞は、1または複数を意味する。異なって指摘されるかまたは状況から明らかに別なように指摘されない限り、群の1以上のメンバーの間に「または」を含む請求項または記載は、その群の1メンバー、複数メンバーまたは全メンバーが特定の生成物または方法に存在する、使用される、または他の形で関連するならば、成立されると考えられる。本発明は、その群の正確に1のメンバーが特定の生成物または方法に存在する、使用されるまたは他の形で関連するような態様を包含する。本発明は、その群の複数または全部のメンバーが特定の生成物または方法に存在する、使用される、または他の形で関連するような態様も包含する。
【0304】
更に、本発明は、列挙された請求項のうちの1または複数の請求項からの1以上の限定、要素、節および記述用語が別の請求項に導入されている、全ての変形、組合せ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項を、同じ基本請求項に従属する任意の別の請求項中に見られる1以上の限定を含むように改変することができる。要素がリストとして与えられる場合、例えばマーカッシュ形式で与えられる場合、それらの要素の各サブグループも開示され、そして任意の要素がその群から除去されてもよい。一般に、発明または発明の観点が、特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、本発明の幾つかの特徴または本発明の観点は、そのような要素および/または特徴から構成されるかまたは本質的に構成される。簡易化の目的で、それらの態様は代わりに(in haec verba)本明細書中に具体的に記載されていない。また、用語「含む」および「含有する」という用語は追加の要素または工程の包含を許容することが意図されることに注意されたい。範囲が与えられている場合、エンドポイントが含まれる。更に、異なって指摘されるかまたは状況もしくは当業者の理解から明らかに異なっていない限り、範囲として表現されている数値は、本発明の様々な実施形態に言及される範囲内の任意の特定の値または該範囲の下限の単位の10分の1までの、本発明の様々な態様に言及された範囲内の部分範囲をとることができる。
【0305】
本出願は、様々な発行された特許、公開された特許出願、学術論文、および他の出版物を指し、その全てが本明細書に参照として援用される。組み込まれた参考文献と本願明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。加えて、先行技術に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか一つ以上から明確に除外してもよい。そのような実施形態は、当業者に既知であるとみなされるので、たとえ除外が明示的に本明細書に記載されていない場合であってもそれらは除外することが可能である。本発明の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連するかどうかにかかわらず、何らかの理由で、任意の請求項から除外することができる。
【0306】
当業者は、日常的な実験にすぎない実験を使って本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの等価物を突き止めることができるだろう。本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲は、上記説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載される。当業者は、以下の特許請求の範囲で定義されるように、本明細書の記載に対する種々の変更および改変が、本発明の精神または範囲から逸脱することなく成し得ることを理解するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2023-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換グリシン化合物とコホーマーとの共結晶であって、前記コホーマーが式(I)の化合物:
【化1】
〔ここで
AとBは独立にOHまたはHであり;
WはOまたはNHであり;
XはHであるかまたは存在せず;
YはC=OまたはCR12であり、ここでR1とR2は独立にH、アルキル、アルケニルまたはアルキニルから選択され;
ZはOHまたは-CH(OH)R3であり、ここで-CH(OH)R3のC原子は(R)-配置にあり、そしてR3はHまたはアルキルであり;
【化2】
はC2-C1またはC2=C1であり、ここでC1とC2はSP3またはSP2配位にあり;そしてXが存在せずかつR1かR2のいずれかが存在しない場合、YとWは単結合により結合することができる〕
であり、前記置換グリシン化合物と前記コホーマー間の分子比が6:1~1:1の範囲である共結晶。
【請求項2】
前記置換グリシンがN-メチルグリシン、N-ジメチルグリシンまたはN-トリメチルグリシンである、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
前記コホーマーが式(IA)の化合物:
【化3】
(ここで
【化4】
およびZは請求項1に定義した通りである)
である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項4】
前記コホーマーが酒石酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項5】
前記置換グリシン化合物がN-メチルグリシンである、請求項4に記載の共結晶。
【請求項6】
前記コホーマーがD-酒石酸であり、そして所望により前記共結晶が実質的に図2に描写されるような粉末X線回折パターンと、約139℃の融点に相当する発熱ピークを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項7】
前記コホーマーがL-酒石酸であり、そして所望により前記共結晶が実質的に図6に描写されるような粉末X線回折パターンと、約138℃の融点に相当する発熱ピークを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項8】
前記コホーマーがDL-酒石酸であり、そして所望により前記共結晶が実質的に図10に描写されるような粉末X線回折パターンと、約120℃の融点に相当する発熱ピークを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項9】
前記共結晶中のN-メチルグリシン対酒石酸との間の分子比が3:1~1:1である、請求項6~8のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項10】
前記共結晶中のN-メチルグリシン対酒石酸との間の分子比が2:1または1:1である、請求項6~8のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項11】
前記コホーマーが式(IB)の化合物:
【化5】
(ここで
【化6】
A、B、W、XおよびZは請求項1に定義された通りである)
である、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項12】
前記
【化7】
がC2=C1であり、AとBが各々独立にHであり、WがOであり、そしてXがHである、請求項11に記載の共結晶。
【請求項13】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンである、請求項11または請求項12に記載の共結晶。
【請求項14】
前記コホーマーがフマル酸である、請求項11~13のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項15】
前記置換グリシンとコホーマーとの間の分子比が6:1、3:1、2:1または1:1である、請求項11~14のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項16】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が1:1であり、そして前記共結晶が実質的に図20に描写されるような粉末X線回折パターンを有する、請求項15に記載の共結晶。
【請求項17】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が2:1であり、そして前記共結晶が実質的に図21に描写されるような粉末X線回折パターンを有する、請求項15に記載の共結晶。
【請求項18】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が3:1であり、そして前記共結晶が実質的に図22に描写されるような粉末X線回折パターンを有する、請求項15に記載の共結晶。
【請求項19】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンであり、前記共結晶中の置換グリシン化合物とコホーマー間の分子比が6:1であり、そして前記共結晶が実質的に図23に描写されるような粉末X線回折パターンを有する、請求項15に記載の共結晶。
【請求項20】
前記コホーマーが式(IC)の化合物:
【化8】
であり、ここでZは請求項1に定義された通りである、請求項1または2に記載の共結晶。
【請求項21】
Zが-CH(OH)R3であり、その中のC原子は(R)-配置にあり、そしてR3はHまたはアルキルである、請求項20に記載の共結晶。
【請求項22】
3が-OHで置換されたC1-3アルキルである、請求項21に記載の共結晶。
【請求項23】
前記コホーマーがエリソルビン酸である、請求項22に記載の共結晶。
【請求項24】
前記置換グリシンがN-メチルグリシンである、請求項20~23のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項25】
前記共結晶中の置換グリシンとコホーマー間の分子比が1:1である、請求項20~24のいずれか一項に記載の共結晶。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の共結晶の有効量と担体とを含む組成物。
【請求項27】
前記組成物が医薬組成物、栄養補給組成物、健康食品または医療用食品である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
対象における精神神経疾患を治療するまたはリスクを低減するために用いられる組成物であって、請求項1~25のいずれか一項に記載の共結晶または請求項26もしくは請求項27の組成物の治療有効量を含む組成物。
【請求項29】
前記精神神経疾患が、統合失調症、精神異常、アルツハイマー病、認知症、前頭側頭型認知症、軽度認知障害、良性健忘症、閉塞性頭部外傷、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、チック障害、小児学習障害、月経前症候群、抑うつ、自殺念慮および/または自殺行動、気分変調性障害、双極性障害、不安症、外傷後ストレス障害、慢性疼痛、摂食障害、嗜癖障害、パーソナリティ障害、パーキンソン病、ハンチントン病、または筋委縮性側索硬化症から成る群より選択される、請求項28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
対象における精神神経疾患を治療するためまたはリスクを低減するための医薬を製造するための、請求項1~25のいずれか一項に記載の共結晶の治療有効量の使用。
【請求項31】
請求項1~25のいずれか一項に記載の共結晶の調製方法であって、
(i) 置換グリシン化合物とコホーマーを溶媒中で約40~110℃の温度で混合して飽和溶液を形成させ、ここで前記置換グリシン化合物とコホーマーが10:1~1:10の分子比であり;
(ii) 該溶液を約40~110℃の温度で1~10時間更に加熱し;
(iii) 該溶液を約4~30℃の温度に10~36時間冷却して共結晶の形成を可能にし;そして
(iv)(iii)で形成された共結晶を回収する
ことを含む方法。