(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082105
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】潜在性硬化促進剤
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
C08G59/68
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023054626
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2019534406の分割
【原出願日】2017-12-21
(31)【優先権主張番号】16205610.5
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナポリ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ナガルカル,アミット
(72)【発明者】
【氏名】スコビー,ケネス・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】エルマー,スザンヌ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】貯蔵安定性を有し、より長時間(ポットライフ)に亘り加工が可能であり、優れた機械的及び熱的特性を有する硬化製品を生成する、硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)分子当たり平均1つを超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;(B)式A[-X-CO-CH2-CN]n(1)の化合物;及び(C)70℃を超える温度に加熱した際、塩基性化合物を解放することが可能な付加物又は塩の形態の保護塩基を含む硬化性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子当たり平均1つを超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;
式
A[-X-CO-CH2-CN]n (1)、
(式中、Aは、水素、又は非置換、若しくは1つ以上のC1-C12アルコキシ基、C1-C12アルキルカルボニル基、C7-C25アリールカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-C12アルキルアミノ基、C1-C12ジアルキルアミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されたC1-C12アルキルであり、又は
Aは、二価脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族又は複素環式有機基であり、
Xは、-O-又は-NR1-を示し、ここでR1は、水素、又は非置換、若しくは1つ以上のC1-C12アルコキシ基、C1-C12アルキルカルボニル基、C7-C25アリールカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-C12アルキルアミノ基、C1-C12ジアルキルアミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されたC1-C12アルキルであり、
nは、1~4である)の化合物;及び
70℃を超える温度に加熱した際、塩基性化合物を解放することが可能な付加物又は塩の形態の保護塩基
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
成分(A)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
成分(B)として、式(1)(式中、Aは、3-ジメチルアミノプロピル、シクロヘキサン-1,3-ジイル、m-フェニレン又は式
【化1】
の基を表す)の化合物を含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
成分(C)として、有機窒素含有化合物のフェノール塩、カルボン酸塩、エポキシド付加物又は三ハロゲン化ホウ素付加物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
成分(C)として、酢酸、2-エチルヘキサン酸、エチレンジアミン四酢酸、サリチル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物の塩、又はBF3付加物を含む、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
成分(C)として、尿素誘導体又はイミダゾール若しくはアミジン誘導体の付加物又は塩を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
成分(C)として、1-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)の付加物又は塩を含む、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
成分(A)及び(B)を、エポキシ基1mol当たり0.1mol~10molの-C
O-CH2-CN基が存在するような量で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
エポキシ基1mol当たり0.001mol~0.1molの量の成分(C)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を100℃~250℃の温度に加熱することを含む、硬化物品の製造方法。
【請求項11】
接着剤、コーティング、鋳造材料又は複合材料の製造のための、請求項1に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2016年12月21日に出願された欧州特許出願第16205610.5号による利益を主張するものであり、該出願の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援の研究又は開発に関する記述
適用なし
【0003】
技術分野
本開示は、硬化剤としてのシアノ酢酸誘導体と、硬化開始剤としての塩又は付加物の形態の保護塩基とを含む、貯蔵安定性を有する一液型エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
エポキシ樹脂、硬化剤、及び、場合により硬化促進剤からなる一液型(1K)エポキシ樹脂組成物(1K系)は、高温での短い硬化時間と共同して長いポットライフを可能とする。
【0005】
通例の1Kエポキシ樹脂組成物は、ジシアンジアミド又はジアミノジフェニルスルホンのような固体アミンを硬化剤として含み得る。前記硬化剤の固体状態及びそれに関連した粒子サイズは、(例えば、繊維強化複合材料の)一定の製造プロセスに制約を課す場合がある。更に、これらの混合物は、低温(-18℃~+8℃)での貯蔵を必要とする。
【0006】
安定な1Kエポキシ樹脂組成物に対する他のアプローチは、イミダゾール、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体類(boron trihalogenide amine complexes)の促進剤、又はエポキシ単独重合のための陽イオン性開始剤を使用し得る。そのような機構を用いる硬化材料は、典型的には、脆性、及びそれに関連した不十分な機械的特性の問題を有し、特性劣化を補う添加剤及び配合物を必要とする。
【0007】
特許文献1は、硬化剤としてのシアノ酢酸誘導体を、硬化促進剤としてのフェノール尿素誘導体と組み合わせて使用することを提案している。これらのエポキシ樹脂組成物は、高い貯蔵安定性を示し、良好な靭性を有する硬化製品を提供するが、ポットライフは全用途に関して十分ではない。更に、達成される貯蔵安定性は、硬化促進剤の濃度に完全に依存し、安定性と反応性との間のバランスの達成を困難なものとしている。その結果、より安定な組成物は、中程度の硬化温度(120℃未満)で非常にゆっくりと反応する傾向があり、又は、容認可能な時間で硬化するには、より高い温度が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,283,520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
背景
従って、本開示の根底にある問題点は、加工条件下での硬化時間を犠牲にすることなく、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を改善することである。本発明者らは、驚くべきことに、保護塩基触媒を提供することにより、貯蔵安定性を有する1Kエポキシ樹脂組成物が
予想外にもたらされることを見出し、該組成物は、より長い時間(ポットライフ)に亘り加工が可能であり、優れた機械的及び熱的特性を有する硬化製品を迅速に生成することができる。本開示は、酸を注意深く選択して塩基との塩を形成することにより、又は塩基に保護基を付加することにより、エポキシベースの組成物において異なる反応性を得るための系を提案する。次いで、塩基は組成物を所定の温度に加熱することにより活性化される。そのような温度は、用いる保護機構に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、
(A)分子当たり平均1つを超えるエポキシ基を含むエポキシ樹脂;
(B)式
(i)A[-X-CO-CH2-CN]n (1)
(式中、Aは、水素、又は非置換、若しくは1つ以上のC1-C12アルコキシ基、C1-C12アルキルカルボニル基、C7-C25アリールカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-C12アルキルアミノ基、C1-C12ジアルキルアミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されたC1-C12アルキルであり、又は
Aは、二価脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族又は複素環式有機基であり、
Xは、-O-又は-NR1-を示し、ここでR1は、水素、又は非置換、若しくは1つ以上のC1-C12アルコキシ基、C1-C12アルキルカルボニル基、C7-C25アリールカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-C12アルキルアミノ基、C1-C12ジアルキルアミノ基、シアノ基若しくはハロゲン原子で置換されたC1-C12アルキルであり、
nは、1又は2である)の化合物、及び
(C)70℃を超える温度に加熱した際、塩基性化合物を解放することが可能な付加物又は塩の形態の保護塩基
を含む硬化性組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分(A)として好適なエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂技術において日常的なものである。成分(A)として好適なエポキシ樹脂の例は:
【0012】
I)分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物を、各々エピクロロヒドリン及びβ-メチルエピクロロヒドリンと反応させることにより得ることができるポリグリシジル及びポリ(β-メチルグリシジル)エステル。この反応は、好ましくは塩基の存在下で行われる。
【0013】
分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物として、脂肪族ポリカルボン酸を使用することができる。そのようなポリカルボン酸の例は、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸又は二量体化若しくは三量体化リノール酸である。
【0014】
しかしながら、環状脂肪族ポリカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸又は4-メチルヘキサヒドロフタル酸を使用することも可能である。
【0015】
芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸、及びテトラヒドロフタル酸又は4-メチルテトラヒドロフタル酸等の部分水素化芳香族ポリカルボン酸も使用することができる。
【0016】
II)アルカリ性条件下での、又は酸触媒の存在下と続くアルカリ処理による、少なくとも2つの遊離アルコール性ヒドロキシ基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を有する
化合物と、エピクロロヒドリン又はβ-メチルエピクロロヒドリンとの反応により得ることができるポリグリシジル又はポリ(β-メチルグリシジル)エーテル。
【0017】
この種類のグリシジルエーテルは、例えば、非環式アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール又は高次ポリ(オキシエチレン)グリコール(higher
poly(oxyethylene) glycols)、プロパン-1,2-ジオール又はポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロール-プロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトールから、またポリエピクロロヒドリンからも誘導される。
【0018】
この種類の更なるグリシジルエーテルは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン若しくは2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の脂環式アルコールから誘導され、又は、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン若しくはp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタン等の芳香族基及び/若しくは更なる官能基を含むアルコールから誘導される。グリシジルエーテルはまた、単核フェノール、例えばレゾルシノール若しくはヒドロキノン、又は多核フェノール、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン若しくは2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンに基づくものであってもよい。
【0019】
グリシジルエーテルの調製に好適な更なるヒドロキシ化合物は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラール又はフルフルアルデヒド等のアルデヒドと、非置換又は塩素原子若しくはC1-C9アルキル基により置換されたフェノール又はビスフェノール、例えばフェノール、4-クロロフェノール、2-メチルフェノール又は4-tert-ブチルフェノールとの縮合により得ることができるノボラックである。
【0020】
III)エピクロロヒドリンと、少なくとも2つのアミン水素原子を含むアミンとの反応生成物の脱塩化水素により得ることができるポリ(N-グリシジル)化合物。そのようなアミンは、例えば、アニリン、n-ブチルアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシリレンジアミン又はビス(4-メチルアミノフェニル)メタンである。
【0021】
しかしながら、ポリ(N-グリシジル)化合物はまた、イソシアヌル酸トリグリシジル、エチレン尿素又は1,3-プロピレン尿素等のシクロアルケン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、及び5,5-ジメチルヒダントイン等のヒダントインのジグリシジル誘導体も含む。
【0022】
IV)ジチオール、例えばエタン-1,2-ジチオール又はビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導されたポリ(S-グリシジル)化合物、例えばジ-S-グリシジル誘導体。
【0023】
V)脂環式エポキシ樹脂、例えばビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタン又は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0024】
しかしながら、1,2-エポキシ基が異なるヘテロ原子又は官能基に結合したエポキシ
樹脂を使用することも可能である。そのような化合物としては、例えば、4-アミノフェノールのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテルグリシジルエステル、N-グリシジル-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントイン及び2-グリシジルオキシ-1,3-ビス(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンが挙げられる。
【0025】
本開示の文脈における用語「脂環式エポキシ樹脂」は、脂環式構造単位を有する、即ち、脂環式グリシジル化合物及びβ-メチルグリシジル化合物の両方を含む任意のエポキシ樹脂、並びにシクロアルキレンオキシドに基づく任意のエポキシ樹脂を示す。「室温(RT)で液体」は、25℃で液体である、即ち低~中程度の粘度(Rheomat装置、タイプ115;MS DIN 125;D=11/sにより25℃で決定して約20000mPa・s未満の粘度)の注入可能な化合物を意味するとして理解するべきである。
【0026】
好適な脂環式グリシジル化合物及びβ-メチルグリシジル化合物は、テトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸及び4-メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステル及びβ-メチルグリシジルエステルである。
【0027】
更なる好適な脂環式エポキシ樹脂は、1,2-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3-ジヒドロキシシクロヘキサン及び1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサ-3-エン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン及びビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)スルホン等の脂環式アルコールのジグリシジルエーテル及びβ-メチルグリシジルエーテルである。
【0028】
シクロアルキレンオキシド構造を有するエポキシ樹脂の例は、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エタン、ビニルシクロキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートである。
【0029】
好ましい脂環式エポキシ樹脂は、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4-メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4-メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及び特にヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルである。
【0030】
脂肪族エポキシ樹脂も成分(A)として使用することができる。「脂肪族エポキシ樹脂」として、不飽和脂肪酸エステルのエポキシ化生成物を使用することが可能である。12~22個の炭素原子及び30~400のヨウ素数を有するモノ及びポリ脂肪酸、例えばラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、リカン酸、アラキドン酸及びクルパノドン酸から誘導されたエポキシ含有化合物を使用することが好ましい。
【0031】
例えば、以下のもののエポキシ化生成物が好適である:大豆油、亜麻仁油、エゴマ油、キリ油、オイチシカ油、ベニバナ油、ケシ油、ヘンプ油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、
多不飽和トリグリセリド、ユーホルビア植物由来のトリグリセリド、落花生油、オリーブ油、オリーブ核油、アーモンド油、カポック油、ヘーゼルナッツ油、アンズ核油、ブナノキ油、ルーピン油、トウモロコシ油、ゴマ油、ブドウ種子油、ラッレマンチア油、ヒマシ油、ニシン油、イワシ油、メンヘーデン油、鯨油、トール油及びそれらの誘導体。
【0032】
続くこれらの油の脱水素反応により得ることができる、より高度の不飽和誘導体も好適である。
【0033】
上述した化合物の不飽和脂肪酸基のオレフィン性二重結合は、既知の方法に従って、例えば、場合により触媒、アルキルヒドロペルオキシド又は過酸、例えば過ギ酸若しくは過酢酸の存在下、過酸化水素と反応させることによりエポキシ化することができる。本開示の範囲内で、完全エポキシ化油と、遊離二重結合を依然として含む部分エポキシ化誘導体との両方を成分(A)に使用することができる。
【0034】
上述したエポキシ樹脂I)~V)の混合物も使用することができる。成分(A)は、好ましくは、25℃で液体又は固体である芳香族又は脂環式グリシジルエーテル又はグリシジルエステル、好ましくはビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はジグリシジルエステルを含む。好ましいエポキシ樹脂は、ポリグリシジルエーテル及びポリグリシジルエステルと、ジオール等のアルコールとの反応によっても得ることができる。ジオールとの反応は、分子量を増大させる。
【0035】
等モル量未満のビスフェノールAと反応させたビスフェノールAグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0036】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、成分(A)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む。
【0037】
N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンのようなN-グリシジル化合物が成分(A)として使用される場合、このN-グリシジル化合物はシアノ酢酸誘導体を脱プロトン化することにより硬化反応を開始させるのに十分アルカリ性であるため、成分(C)として保護塩基を加える必要はない。しかしながら、上記の混合物に成分(C)を加えることによって、貯蔵安定性に影響を及ぼすことなく硬化温度及び時間を有意に低減することができる。
【0038】
成分(B)として好適なシアノ酢酸誘導体は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,283,520号に記載されている。
【0039】
成分(B)は、式
A[-X-CO-CH2-CN]n (1)
の化合物であることができる。
【0040】
一価基としての式(1)のAは、例えば、水素 メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソオクチル、ベンジル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル、ジ-n-ブチルアミノ、N-molホリノ又はフェニルアミノであることができる。
【0041】
二価基としての式(1)のAは、例えば、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、2,2-ジメチルプロパンジイル、1,3-シクロヘキシレン、1,4-
シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンジメチレン、1,4-シクロヘキシレンジメチレン、m-フェニレン、p-フェニレン、又は以下の式の基:
【化1】
であることができる。
【0042】
Aが3-ジメチルアミノプロピル、ヘキサメチレン、シクロヘキサン-1,3-ジイル、m-フェニレン又は式
【化2】
の基を表す式(1)の化合物が成分(B)として好ましい。
【0043】
成分(C)は、「保護塩基」である。本明細書で使用される用語「保護塩基」は、シアノ酢酸誘導体を脱プロトン化することによりエポキシド(A)のオキシラン環と反応させ、硬化反応を開始させることができる塩基性又は求核性化合物の全ての塩又は付加物を指す。成分(C)を調製するための出発化合物は、例えば、7.5超(アセトニトリル中)、好ましくは8.0超、より好ましくは8.5超、特に9.5超の共役酸のpKa値を示し、ブレンステッド酸又はルイス酸又はエポキシドの添加により可逆的に遮断され得る、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族又は複素環式アミン、グアニジン及びN-複素環式化合物であることができる。
【0044】
温度を70℃超、好ましくは85℃超、より好ましくは100℃超に加熱した際、遮断が逆転し、シアノ酢酸誘導体を脱プロトン化することによりエポキシド分子のオキシラン環と反応させ、硬化反応を開始させるのに十分塩基性である化合物が解放されることが必須である。
【0045】
そのような化合物の例は、エチルアミン又はジメチルオクチルアミン等の脂肪族アミン、N’-(4-クロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素及びN’-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素等のウロン、ジシアンジアミド及びジジアンジアミド(didyandiamide)/イミダゾリン塩等のグアニジン、1-メチルイミダゾール及び1-メチル-3-エチルイミダゾール等のイミダゾール、並びに1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)等のアミジンである。
【0046】
成分(C)として使用できる化合物の更なる例は、アルカリアルコキシド及びアルカリフェノレートである。
【0047】
好ましい実施形態では、硬化性組成物は、成分(C)として尿素誘導体、又はイミダゾール若しくはアミジン誘導体の付加物又は塩を含む。
【0048】
1-メチル-3-エチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)の付加物又は塩が成分(C)として特に好ましい。
【0049】
有機窒素含有化合物のアルカリ度を低下させ、70℃を超える温度で再び解放させる遮断剤は、ブレンステッド酸又はルイス酸又はエポキシドである。
【0050】
遮断剤として好適なブレンステッド酸の例は、フェノール、o-、m-及びp-クレゾール、ビスフェノールA及びビスフェノールF等のフェノール、並びに酢酸、2-エチルヘキサン酸、サリチル酸、トリメリット酸及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のカルボン酸である。
【0051】
遊離酸の代わりに、対応する無水物、例えばトリメリット酸無水物も適用することができる。
【0052】
三ハロゲン化ホウ素、好ましくはBF3及びBCl3等の好適なルイス酸を使用することができる。
【0053】
好ましくは、本開示による硬化性組成物は、成分(C)として、有機窒素含有化合物のフェノール塩、カルボン酸塩、エポキシド付加物又は三ハロゲン化ホウ素付加物を含む。
【0054】
成分(C)として、酢酸、2-エチルヘキサン酸、エチレンジアミン四酢酸、サリチル酸、トリメリット酸の塩、又は三フッ化ホウ素若しくは三塩化ホウ素付加物を含む硬化性組成物が特に好ましい。
【0055】
更に、成分(C)として尿素誘導体、又はイミダゾール若しくはアミジン誘導体の付加物又は塩を含む硬化性組成物が好ましい。
【0056】
より好ましくは、本発明による硬化性組成物は、成分(C)として1-メチル-3-エチルイミダゾール又は1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エンの付加物又は塩を含む。
【0057】
好適な成分(C)の例は:1-メチルイミダゾール/酢酸、1-メチルイミダゾール/2-エチルヘキサン酸等のイミダゾール塩、及びN-シアノシアンアミド(cyanocyanamide)との1H-イミダゾリウム、3-エチル-1-メチル-、塩(1:1);DBU/フェノール、DBU/m-クレゾール、DBU/o-クレゾール、DBU/p-クレゾール、DBU/酢酸、DBU/トリフルオロ酢酸、DBU/2-エチルヘキサン酸、DBU/EDTA及びDBU/トリメリット酸等のアミジン塩;並びにDBU/BF3等のアミジン/三ハロゲン化ホウ素付加物である。
【0058】
特に好ましい成分(C)は、DBU/フェノール、DBU/酢酸、DBU/BF3、及びN-シアノシアンアミド(cyanocyanamide)との1H-イミダゾリウム、3-エチル-1-メチル-、塩(1:1)である。
【0059】
成分(A)及び成分(B)は、好ましくは、ほぼ当量で、即ち式(1)の化合物のアミノ窒素原子に結合した酸性メチレン水素原子及び活性水素原子と、反応性エポキシ基とに
基づいて使用される。しかしながら、当量よりも多い又は少ないエポキシ成分又は硬化剤を使用することも可能である。使用される量は、当業者に既知のように、反応生成物の所望の最終特性に依存する。
【0060】
好ましくは、本開示による硬化性組成物は、エポキシ基1mol当たり0.1~1.0mol、より好ましくは0.2~0.8mol、より好ましくは0.25~0.45molの-CO-CH2-CN基の量となるような成分(A)及び(B)を含む。
【0061】
硬化性組成物中の成分(C)の量は、エポキシ基1mol当たり、好ましくは0.001~0.1mol、より好ましくは0.005~0.05mol、より好ましくは0.01~0.04molである。
【0062】
本開示による組成物は、必要であれば好適なミル、例えばボールミル若しくはピンミル、混錬機又は混合器を用いて、個々の成分を室温又は僅かに高い温度で混合することにより調製することができる。
【0063】
混合物は、並外れた貯蔵安定性を有し、即ち、室温で成分間の相当な化学反応が起こらない。低温での保存は必要ではない。
【0064】
硬化性組成物は、エポキシ樹脂技術において一般的な充填剤、補助剤及び添加剤を含むことができる。
【0065】
可能な充填剤は、例えば:金属粉末、木粉、ガラス粉、ガラス粒、SiO2(珪砂、珪砂粉末、シラン処理珪砂粉末、合成珪砂粉末、シラン処理合成珪砂粉末)、酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化ジルコン等の半金属及び金属酸化物、Mg(OH)2、Al(OH)3、シラン処理Al(OH)3及びAlO(OH)等の金属水酸化物、半金属及び金属炭化物(SiC及び炭化ホウ素)、金属炭酸塩(苦灰石、白亜、CaCO3)、金属硫化物(重晶石、石膏)、水苦土石及びハント石由来の岩粉、並びにゼオライト(特にモレキュラーシーブ)、タルク、雲母、カロイン(kaloin)、珪灰石等のケイ酸塩の組(row)由来の天然又は合成鉱物、並びにその他である。
【0066】
上述した充填剤に加えて、硬化性混合物は、抗酸化剤、例えば立体障害性フェノール、難燃剤、結晶水を含む充填剤、希釈剤、着色剤、顔料、防カビ剤、チキソトロープ剤 及
び疎水性剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤(antistatica)、潤滑剤、沈殿防止剤、湿潤剤、柔軟剤、希釈剤及び離型剤等の通常の補助剤及び添加剤を含むことができる。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、場合により更に、例えば、流動調節添加剤、消泡剤、垂れ防止剤、顔料、補強剤、充填剤、エラストマー、安定剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、促進剤、着色剤、繊維性物質、チキソトロープ剤、防食顔料及び溶媒から選択される無機及び/又は有機添加剤を含むことができる。
【0068】
本明細書に開示した組成物の好ましい実施形態は、いわゆる1.5K系であり、成分(A)及び(B)が適量で混合され、室温で保存される。適用直前に成分(C)が添加される。このことは、標的温度での非常に急速な硬化と組み合わされた、極めて長いポットライフを可能にする。
【0069】
適切な成分(C)の選択により、約30分~4カ月超の非常に広い範囲のポットライフの変動が可能となる。
【0070】
本明細書に開示した組成物の硬化は、既知の方法により行うことができる。硬化は、一般に、混合物を70℃~250℃、好ましくは100℃~180℃の温度で加熱することにより行われる。
【0071】
本発明の更なる目的は、開示した組成物の硬化により得ることができる架橋生成物である。
【0072】
本明細書に記載されるエポキシ樹脂組成物及び硬化材料は、例えば、コーティング、接着剤、床仕上げ材、鋳造樹脂、ツーリング樹脂、含浸樹脂又は封入樹脂として使用することができる。
【0073】
好ましくは、本発明の組成物は、接着剤、コーティング又は複合材料の製造に使用される。
【0074】
以下の実施例は、本明細書に開示した組成物を説明する役割を果たす。実施例において、特に示さない限り、「部」は重量部であり、「パーセント」は重量パーセントである。
【実施例0075】
実施例1:ビス(シアノアセチルアミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン+ビスフェノールAジグリシジルエーテルの一液型混合物の合成
ガラス反応器(500ml)にビス(アミノメチル)-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(50g、0.26mol)を入れる。撹拌している溶液に、エチルシアノアセテート(61.12g、0.54mol、2.1eq)を30分間かけてゆっくり加え、内部温度が決して50℃を超えて上昇しないよう注意を払う。混合物を室温(RT)で1時間撹拌する。次いで、真空(約80mbar)を適用して、形成されたエタノールを除去すると共に、温度を30分間かけて80℃にゆっくり上昇させる。混合物を80℃で更に2時間撹拌する。完全な変換を確実にするために、次いで混合物を、依然として真空下で、100℃に1時間加熱する。液体窒素トラップ中に収集したエタノールの量を測定する。混合物を80℃に冷却させ、真空を解除する。294gのAraldite(登録商標)GY 250樹脂(平均エポキシ当量187を有するHuntsman Advanced Materials製のビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル)を加え、混合物を真空下で80℃で30分間保ち、次いで60℃に冷却し、反応器から降ろす(deloaded)。
50℃での混合物の最終混合粘度=2.5Pas
【0076】
実施例2:ビス(シアノアセチルアミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン+N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンの一液型混合物の合成
ガラス反応器(500ml)にビス(アミノメチル)-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(50g、0.26mol)を入れる。撹拌している溶液に、エチルシアノアセテート(61.12g、0.54mol、2.1eq)を30分間かけてゆっくり加え、内部温度が決して50℃を超えて上昇しないよう注意を払う。混合物を室温で1時間撹拌する。次いで、真空(約80mbar)を適用して、形成されたエタノールを除去すると共に、温度を30分間かけて80℃にゆっくり上昇させる。混合物を80℃で2時間撹拌する。完全な変換を確実にするために、次いで混合物を、依然として真空下で、100℃に1時間加熱する。液体窒素トラップ中に収集したエタノールの量を測定する。混合物を80℃に冷却させ、真空を解除する。樹脂(179gの、平均エポキシ当量114を有するHuntsman Advanced Materials製のMY 721樹脂)を加え、混合物を真空下で80℃で30分間保ち、次いで60℃に冷却し、反応器から降ろす。
80℃での混合物の最終混合粘度=2.3Pas
【0077】
実施例3:DBU/酢酸塩の合成
丸底フラスコに酢酸(6g、0.1mol)、THF(40ml)及び撹拌バーを入れ、氷浴で冷却する。撹拌している溶液に、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)(15.2g、0.1mol)を注射器を介して滴加する。混合物を室温で2時間撹拌し、THFをロータベーパー上で蒸発させて、化合物を粘性油として得る。
【0078】
実施例4:DBU/BF3塩の合成
丸底フラスコにDBU(15.2g、0.1mol)、THF(40ml)及び磁気撹拌バーを入れ、氷浴で冷却する。撹拌している溶液に、BF3-エーテレート(14.2g、0.1mol)を注射器を介して滴加する。混合物を室温で2時間撹拌し、THFをロータベーパー上で蒸発させて、化合物を白色固体として得る。
【0079】
実施例5:DBU/酢酸塩を用いた1K混合物の硬化
実施例1の一液型混合物(約10g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、実施例3のDBU/酢酸塩(0.173g、エポキシ基の数に対して約2mol%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールにより加熱して:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間、約155℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0080】
実施例6:DBU/BF3塩を用いた1K混合物の硬化
実施例1の一液型混合物(約10g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、実施例4のDBU/BF3塩(0.18g、エポキシ基のモルに対して約2mol%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールにより加熱して:1時間/80℃、1時間/140℃、1時間/170℃、約165℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0081】
実施例7:イミダゾール付加物保護塩基を用いた1K混合物の硬化
実施例1の一液型混合物(10g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、市販のAradur(登録商標)3123硬化剤、1-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ナフタレン-2-オール、CAS番号:185554-99-8(0.19g、エポキシ基の数に対して2mol%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールにより加熱して:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間、約170℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0082】
実施例8:不斉尿素保護塩基を用いた1K混合物の硬化
実施例1の一液型混合物(10g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、市販の1,1-(4-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3”-ジメチル尿素)(Dyhard UR 500、Alzchem)、CAS番号:17526-94-2(0.216g、エポキシ基の数に対して2mol%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールにより加熱して:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間、約150℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0083】
実施例9:高分子塩を用いた1K混合物の硬化
実施例1の一液型混合物(約8.3g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、市販のAradur(登録商標)1167硬化剤(0.17g、2重量%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールによ
り加熱して:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間、約120℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0084】
比較例1:非保護塩基としてのDBUを用いた1K混合物の硬化
実施例5に記載したように、実施例1の一液型混合物(50g)をガラス反応器内で40℃で加熱し、実施例3のDBU(0.63g、エポキシ基の数に対して約2mol%)を加える。混合物を真空下で40℃で15分間撹拌した後、鋳型内に注ぐ。鋳型を以下の硬化スケジュールにより加熱する:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間。
約150℃のガラス転移温度を有する硬質材料を得る。
【0085】
実施例5~7のポットライフと硬化製品のガラス転移温度を表1に纏める:
【表1】
*DBU-BF
3触媒を除いた全サンプルに関する硬化スケジュール:110℃で30分間+140℃で30分間及び170℃で10分間。
**ポットライフは、23℃で系の粘度を2倍にするのに要する時間として定義する。
***DSC(スキャン速度10℃/分)転移温度の中間点により測定。
全触媒は、実施例9が2重量%で使用したことを除いて、エポキシ基のモルに対して2mol%の負荷量で使用する。
成分(A)が、ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。