(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082108
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】腫瘍溶解性ウイルス療法および免疫療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20230606BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230606BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230606BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230606BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230606BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230606BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K35/761 ZNA
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K39/395 T
C12N7/01
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/861 Z
C07K14/54
C12N15/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023054969
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2019556860の分割
【原出願日】2018-04-20
(31)【優先権主張番号】62/488,181
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正崇
(72)【発明者】
【氏名】ローズウェル ショー,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,キャロライン・イレーン
(72)【発明者】
【氏名】渡部 紀宏
(72)【発明者】
【氏名】ブレナー,マルコム・ケイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンビナトリアルがん療法を含む有効ながん療法を提供する。
【解決手段】(i)腫瘍溶解性ウイルス;(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を利用するがんの併用療法を提供する。特定の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含む。
【選択図】
図24D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;
(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;および
(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【請求項2】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の組合せ。
【請求項3】
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の使用。
【請求項4】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および
(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【請求項5】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の組合せ。
【請求項6】
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の使用。
【請求項7】
前記CARを含む細胞が、前記腫瘍溶解性ウイルスに特異的である、請求項1または4に記載の方法、請求項2または5に記載の組合せ、または請求項3または6に記載の使用。
【請求項8】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および
(ii)該腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【請求項9】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)該腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞の組合せ。
【請求項10】
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)該腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞の使用。
【請求項11】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項12】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルス5(Ad5)に由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項13】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、Ad5によってコードされたE1Aタンパク質と比較して
低下したRbタンパク質への結合を呈示するE1Aタンパク質をコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項14】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アミノ酸配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したE1Aタンパク質をコードする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項15】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるE1Aタンパク質をコードする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項16】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、1つまたはそれより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項17】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項18】
前記がん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞が、T細胞である、請求項1~7または11~17のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項19】
前記CARが、HER2への特異的な結合が可能な抗原結合ドメインを含む、請求項1~7または11~18のいずれか一項に記載の方法組合せまたは使用。
【請求項20】
前記CARが、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号57;
LC-CRD2:配列番号58;
LC-CRD3:配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号60;
HC-CRD2:配列番号61;
HC-CRD3:配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原-結合ドメインを含む、請求項1~7または11~19のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項21】
前記CARが、
配列番号16に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号17に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号25に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号33に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH;
または
配列番号63に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号64に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH
を含む抗原結合ドメインを含む、請求項1~7または11~20のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項22】
前記免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)である、請求項1~3または11~21のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項23】
前記免疫調節因子が、エフェクター免疫応答のアゴニストまたは免疫調節応答のアンタゴニストから選択される、請求項1~3または11~22のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項24】
前記免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含む、請求項1~3または11~23のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項25】
前記免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸を含む、請求項1~3または11~24のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項26】
前記酵素が、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、シトクロムP450、カルボキシペプチダーゼG2、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびカルボキシルエステラーゼから選択される、請求項25に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項27】
前記がんを処置する方法が、
(a)対象から少なくとも1つの細胞を単離すること;
(b)がん細胞抗原に特異的なCAR、またはがん細胞抗原に特異的なCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、該少なくとも1つの細胞を改変すること、
(c)任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および;
(d)該改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与すること
を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項28】
前記がんを処置する方法が、
(a)対象から免疫細胞を単離すること;
(b)腫瘍溶解性ウイルスのペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下での培養によって該免疫細胞を刺激することを含む方法によって、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成または拡大すること、および;
(c)該腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与すること
を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項29】
前記がんが、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法、組合せまたは使用。
【請求項30】
アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるE1Aタンパク質をコードする腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
【請求項31】
STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
【請求項32】
配列番号51またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%の配列同一性を有する核酸配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
【請求項33】
配列番号55またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%の配列同一性を有する核酸配列を含む、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
【請求項34】
IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)。
【請求項35】
加えて、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸を含む、請求項34に記載のHDAd。
【請求項36】
前記酵素が、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、シトクロムP450、カルボキシペプチダーゼG2、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびカルボキシルエステラーゼから選択される、請求項34または35に記載のHDAd。
【請求項37】
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号57;
LC-CRD2:配列番号58;
LC-CRD3:配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号60;
HC-CRD2:配列番号61;
HC-CRD3:配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項38】
配列番号16に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号17に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号25に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号33に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH
または
配列番号63に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号64に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH
を含む抗原結合ドメインを含む、請求項37に記載のCAR。
【請求項39】
請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、または請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、1つまたは複数の核酸であって、任意選択で単離されたまたは人工の核酸である、上記核酸。
【請求項40】
請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、
請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、または請求項39に記載の1つまたは複数の核酸を含む細胞。
【請求項41】
請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項39に記載の1つまたは複数の核酸、または請求項40に記載の細胞、および医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項42】
請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項39に記載の1つまたは複数の核酸、請求項40に記載の細胞、または請求項41に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【請求項43】
がんを処置する方法で使用するための、請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項39に記載の1つまたは複数の核酸、請求項40に記載の細胞、または請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
がんを処置するための医薬品の製造における、請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項39に記載の1つまたは複数の核酸、請求項40に記載の細胞、または請求項41に記載の医薬組成物の使用。
【請求項45】
前記がんが、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される、請求項42に記載の方法、請求項43に記載の使用のためのOncAd、HDAd、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞、もしくは医薬組成物、または請求項44に記載の使用。
【請求項46】
予め決定された量の請求項30~33のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、請求項34~36のいずれか一項に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、請求項37または38に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、請求項39に記載の1つまたは複数の核酸、請求項40に記載の細胞、または請求項41に記載の医薬組成物を含むパーツのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、細胞生物学、分子生物学、免疫学、ウイルス学、およびがん療法などの医学の分野に少なくとも関する。特定の実施態様において、本開示は、腫瘍溶解性ウイルス療法と免疫療法の使用を含む併用処置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)のための腫瘍溶解性ウイルス療法
HNSCCは、世界で6番目に高い発生率のがんである。局所進行性の再発性および転移性HNSCCの処置は、多くの場合、毒性比率に対する不利な効能によって制限され、転移性疾患を有する患者の生存期間中央値は1年未満のままである(ZandbergおよびStrome, Oral Oncology(2014)50:627~632)。HNSCCは、体の表面またはその近辺に
存在する局所領域的な疾患であるため、アデノウイルスベクター(Ad)の最初の腫瘍内注射の影響を受けやすく、局所領域的な抗腫瘍免疫応答を促し、さらに全身性抗腫瘍免疫応答さえも促す(Liuら、Nature Clinical Practice Oncology(2007)4:101~117)。
治療的導入遺伝子をコードする制限増殖型Ad(OncAd)または複製欠陥型Adの数々の臨床試験は、をHNSCCのAd遺伝子治療の安全性および実行可能性実証しているが、集中的な局所処置は、化学/放射線療法と組み合わせた場合でも遠位部位への転移を予防しなかったことから、改善された全生存を示すことができなかった(Liuら、上記)
。OncAdは一般的に腫瘍内に投与されるが、転移した腫瘍への再標的化は不十分である(Koksiら、Molecular Therapy:The Journal of the American Society of Gene Therapy(2015)23:1641~1652)。
【0003】
免疫調節性分子を発現するヘルパー依存性Ad(HDAd)を有するOncAd
アデノウイルスベースのベクター(Ad)は、様々な悪性細胞に感染して、高レベルの溶解性抗原と免疫原性導入遺伝子を発現できることから、がん遺伝子治療のための薬剤として魅力的である(Cerulloら、Advances in Cancer Research(2012)115、265~318)
。OncAdはがん細胞中で選択的に複製し、がん遺伝子治療のための臨床試験ではAdベースのベクターとして一般的に使用される。しかしながら、OncAdは、限定的な導入遺伝子に関するコード化能力しか有していない(約1.5kb)。ヘルパー依存性Ad(HDAd)は、ウイルスコード配列を欠いており、単一のベクター中に複数の導入遺伝子を挿入するための最大34kbのカーゴ能力が可能である(Suzukiら、Human Gene Therapy(2010)21;120~126)。HDAdベクターDNAはパッケージングシグナルをコードするため、OncAd複製機構はトランスで作用して、感染した腫瘍細胞内でOncAdとHDAdの両方を複製してパッケージングし、HDAd(コンビナトリアルアデノウイルスベクター:CAd-VEC;Farzadら、Molecular Therapy - Oncolytics(2014)1、14008)によってコードされた腫瘍溶解性ウイルスと導入遺伝子の両方の生産および放出の複数サイクルをもたらす。
【0004】
CAR T細胞療法
近年、がん療法剤としてのT細胞の使用は、がん細胞抗原に向けられたキメラ抗原受容体の発現によって促進されつつある(CAR;Kershawら、Nature(2013)13:525~541
で総論されている)。CAR改変T細胞は、血液学的悪性腫瘍の処置に有望であることが示されているが(Garfallら、The New England Journal of Medicine(2015)373:1040
~1047)、固形腫瘍の処置ではそれほど有効がなく、これは、部分的に固形腫瘍の微小環境における高度に免疫抑制の性質の結果に起因する可能性がある(Quailら、Nature Medicine(2013)19:1423~1437)。腫瘍部位における免疫抑制メカニズムのために、CAR
T細胞は、1または2種の共刺激エンドドメインの発現にもかかわらず長期にわたり拡
大し持続することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ZandbergおよびStrome, Oral Oncology(2014)50:627~632
【非特許文献2】Liuら、Nature Clinical Practice Oncology(2007)4:101~117
【非特許文献3】Molecular Therapy:The Journal of the American Society of Gene Therapy(2015)23:1641~1652
【非特許文献4】Cerulloら、Advances in Cancer Research(2012)115、265~318
【非特許文献5】Suzukiら、Human Gene Therapy(2010)21;120~126
【非特許文献6】Farzadら、Molecular Therapy - Oncolytics(2014)1、14008
【非特許文献7】Kershawら、Nature(2013)13:525~541
【非特許文献8】Garfallら、The New England Journal of Medicine(2015)373:1040~1047
【非特許文献9】Quailら、Nature Medicine(2013)19:1423~1437
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の開示は、コンビナトリアルがん療法を含む有効ながん療法に対する長年にわたる切実な必要性への解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔な要約
一形態において、本発明の開示は、
(i)腫瘍溶解性ウイルス;
(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;および
(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。
【0008】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の組合せも提供される。
【0009】
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の使用も提供される。
【0010】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および
(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法も提供される。
【0011】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の組合せも提供される。
【0012】
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくと
も1つの細胞の使用も提供される。
【0013】
一部の実施態様において、CARを含む細胞は、腫瘍溶解性ウイルスに特異的である。
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および
(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞
を対象に投与することを含む、がんを処置する方法も提供される。
【0014】
がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞の組合せも提供される。
がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス、および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞の使用も提供される。
【0015】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)である。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス5(Ad5)に由来する。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、Ad5によってコードされたE1Aタンパク質と比較して低下したRbタンパク質への結合を呈示するE1Aタンパク質をコードする。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、アミノ酸配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したE1Aタンパク質をコードする。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるE1Aタンパク質をコードする。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、1つまたはそれより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む。
【0016】
一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)である。一部の実施態様において、免疫調節因子は、エフェクター免疫応答のアゴニストまたは免疫調節応答のアンタゴニストから選択される。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含む。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸を含む。一部の実施態様において、酵素は、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、シトクロムP450、カルボキシペプチダーゼG2、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびカルボキシルエステラーゼから選択される。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、チミジンキナーゼをコードする核酸を含む。
【0017】
一部の実施態様において、がん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞は、T細胞である。一部の実施態様において、CARは、HER2への特異的な結合が可能な抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号57;
LC-CRD2:配列番号58;
LC-CRD3:配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号60;
HC-CRD2:配列番号61;
HC-CRD3:配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0018】
一部の実施態様において、CARは、
配列番号16に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号17に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号25に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号33に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号63に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号64に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVH
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0019】
一部の実施態様において、本方法は、加えて、
(a)対象から少なくとも1つの細胞を単離することであって、具体的な実施態様において、細胞は免疫細胞である、単離すること;
(b)がん細胞抗原に特異的なCAR、またはがん細胞抗原に特異的なCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、少なくとも1つの細胞を改変すること、
(c)任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および;
(d)改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与することであって、具体的な実施態様において、改変された細胞は、投与のとき、がん療法のための1つまたはそれより多くの他の薬剤と共に対象に提供される、投与すること
を含む。
【0020】
一部の実施態様において、がんを処置する方法は、
(a)対象から少なくとも1つの細胞を単離すること;
(b)がん細胞抗原に特異的なCAR、またはがん細胞抗原に特異的なCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、少なくとも1つの細胞を改変すること、
(c)任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および;
(d)改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与すること
を含む。
【0021】
一部の実施態様において、がんを処置する方法は、
(a)対象から免疫細胞を単離すること;
(b)腫瘍溶解性ウイルスのペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下での培養によって免疫細胞を刺激することを含む方法によって、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成または拡大すること、および;
(c)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与することを含む。
【0022】
一部の実施態様において、がんは、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される。
【0023】
本発明の開示はまた、アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるE1Aタンパク質をコードする腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)も提供する。
【0024】
本発明の開示はまた、STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)も提供する。一部の実施態様において、OncAdは、配列番号51またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0025】
配列番号55またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有する核酸配列を含むOncAdも提供される。一部の実施態様において、OncAdは、アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるE1Aタンパク質をコードする。
【0026】
本発明の開示はまた、IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)も提供する。一部の実施態様において、HDAdは、加えて、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸を含む。一部の実施態様において、酵素は、チミジン
キナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、シトクロムP450、カルボキシペプチダーゼG2、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびカルボキシルエステラーゼから選択される。
【0027】
一部の実施態様において、HDAdは、加えて、チミジンキナーゼをコードする核酸を含む。HDAd核酸がIL-12および抗PD-L1抗体をコードする場合において、それぞれの発現配列は、同じ調節配列によって調節されてもよいし、またはそうでなくてもよい。HDAd核酸がIL-12および抗PD-L1抗体の両方をコードする場合において、HDAd核酸上での位置は、あらゆる好適な立体配置の位置であってもよく、例えば5’から3’方向で、IL-12をコードする核酸領域は、抗PD-L1抗体をコードする核酸領域の上流または下流のいずれかにある。
【0028】
本発明の開示はまた、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号57;
LC-CRD2:配列番号58;
LC-CRD3:配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号60;
HC-CRD2:配列番号61;
HC-CRD3:配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)も提供する。
【0029】
一部の実施態様において、CARは、
配列番号16に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号17に少なくとも75%、80%、85%、90%、9
5%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号25に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号33少なくとも75%、80%、85%、90%、95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号63に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号64に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0030】
本発明の開示はまた、本発明の開示に係る、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、1つまたは複数の核酸、任意選択で単離された1つまたは複数の核酸も提供する。
【0031】
本発明の開示はまた、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、または本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸を含む細胞も提供する。
【0032】
本発明の開示はまた、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR);本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸または細胞を含む医薬組成物であって、医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを伴っていてもよいし、またはそれに含まれていてもよい、上記医薬組成物も提供する。
【0033】
本発明の開示はまた、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸、細胞または医薬組成物を対象に投与することを含む、がんを処置する方法も提供する。
【0034】
本発明の開示はまた、がんを処置する方法で使用するための、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸、細胞または医薬組成物も提供する。
【0035】
本発明の開示はまた、がんを処置するための医薬品の製造における、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸、細胞または医薬組成物の使用も提供する。
【0036】
一部の実施態様において、本発明の開示の様々な形態によれば、がんは、頭頸部がん、
上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される。
【0037】
本発明の開示はまた、予め決定された量の、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸、細胞または医薬組成物を含むパーツのキットも提供する。
【0038】
〔詳細な説明〕
本発明の開示は、がんの処置のための複数の治療剤の併用に関する。特定には、(i)腫瘍溶解性ウイルス、(ii)免疫調節因子を提供するウイルス、および(iii)がん細胞抗原に特異的なCARを有する免疫細胞(例えばT細胞)が、がん療法として組み合わせて使用される。治療剤を組み合わせて、薬剤のいずれか1つが単独で使用される場合に見られる作用と比較して改善された処置作用を提供する。特定の実施態様において、3つの治療剤のうち少なくとも2つは、相加的に作用してがんを処置し、それに対して、他の実施態様において、3つの異なる治療剤のうち少なくとも2つは相乗的に作用して、がんを処置する。
【0039】
いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、改善された処置作用は、CAR-T細胞の増殖と活性に好都合な免疫環境を提供することと共に、腫瘍溶解性ウイルス療法(例えば固形腫瘍の有効な処置)およびCAR-T細胞療法(例えばびまん性/転移がんの有効な処置)の有利な特徴を組み合わせることによって達成されると考えられる。
【0040】
腫瘍溶解性ウイルス
本発明の開示は、腫瘍溶解性ウイルスを採用する。がんを処置するための腫瘍溶解性ウイルスおよびその使用は、例えば、その全体が参照により組み入れられるChioccaおよびRabkin Cancer Immunol Res(2014)2(4):295~300で総論されている。
【0041】
腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞中で複製し、がん細胞の溶解を引き起こす。しばしば腫瘍溶解性ウイルスは、非がん性細胞に対してがん細胞に選択的であり、例えば、腫瘍溶解性ウイルスは一般的に、非分裂細胞より優先して分裂細胞中で複製する。したがって腫瘍溶解性ウイルスは、正常な非がん性細胞/組織に実質的なダメージを与えずに、選択的にがん細胞を致死させ腫瘍を破壊するのに有用である。
【0042】
腫瘍溶解性ウイルス療法は、数々の有利な特徴を伴う。腫瘍溶解性ウイルスはしばしば、数々の腫瘍形成性経路を標的化し、細胞傷害性に関する複数のメカニズムを使用し、耐性が生じる機会を最小化する。上述したように、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍中で選択的に複製し非病原性であるため、最小の毒性を呈示する。腫瘍におけるウイルス用量も、ウイルスの複製のために長期にわたり増加し、腫瘍溶解性ウイルスは、例えば薬物に対する感受性操作することによって、安全性が改善するように遺伝学的に操作することもできる。
【0043】
腫瘍溶解性ウイルスには、以下の2つの主要なクラスがある:
(i)天然にがん細胞で優先的に複製するウイルスであって、これは、自然の抗ウイルスシグナル伝達への感受性または腫瘍形成性のシグナル伝達経路への依存性が高いことにしばしば起因して、ヒトにおいて非病原性であるウイルスであり、例えば、自律性パルボウイルス、粘液腫ウイルス(MYXV;ポックスウイルス)、ニューカッスル病ウイルス(NDV;パラミクソウイルス)、レオウイルス、およびセネカバレーウイルス(SVV;ピコルナウイルス)などが挙げられる;
(ii)がん細胞ではなく正常な細胞での複製に必要な、例えば遺伝子中の突然変異/
欠失で遺伝子操作されたウイルスであって、例えば、アデノウイルス(Ad)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス(VV)、および水疱性口内炎ウイルス(VSV;ラブドウイルス)などが挙げられ;またはワクチンベクターとして使用するために遺伝子操作されたウイルスであって、例えば、麻疹ウイルス(MV;パラミクソウイルス)、ポリオウイルス(PV;ピコルナウイルス)、およびVV(ポックスウイルス)などが挙げられる。
【0044】
遺伝子操作としては、がん細胞に対する選択性の強化、安全性を提供したり、および/またはウイルス親和性を改変したりするための、機能的な配列の挿入/変更を挙げることができる。
【0045】
例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、標的細胞においてウイルスの翻訳のみを許容する組織特異的な内部リボソーム進入部位(IRES)が導入されるように、および/またはmiRNAs/miRNA応答エレメント(MRE)が導入されるように遺伝子操作されていてもよく、そのようにすることで、健康な細胞または特定の組織と腫瘍細胞との間の差次的なmiRNA発現は、ウイルスが健康な細胞/組織を標的化しないようにすることができる。また腫瘍溶解性ウイルスは、細胞または組織特異的な調節領域、例えばプロモーター/エンハンサー(例えば腫瘍細胞特異的プロモーター)の制御下でウイルスゲノムの転写が起こるように操作されていてもよい。一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、このような目的のための1つまたはそれより多くの改変を含んでいてもよい。
【0046】
ウイルスはまた、例えば、腫瘍細胞を標的化するおよび/または健康な細胞/組織を脱標的化するように、ウイルス受容体/外殻タンパク質の改変を介して、形質導入の標的化のために改変されてもよい。
【0047】
腫瘍溶解性ウイルスは、上記のChioccaおよびRabkinで記載されたように、対象におけ
る抗腫瘍溶解性ウイルス応答(例えば抗ウイルス抗体による中和)および肝臓での捕捉を最小化し、腫瘍送達を最大化するような方法で投与されてもよい。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、例えば間葉系間質細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、神経幹細胞、T細胞、サイトカイン誘導キラー細胞、または放射線照射された腫瘍細胞中の細胞担体に投与されてもよいし、またはナノ粒子でコーティングされてもよい。
【0048】
一部の実施態様において、本発明の開示の腫瘍溶解性ウイルスは、例として、アデノウイルス(Ad)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス(VV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV);自律性パルボウイルス、粘液腫ウイルス(MYXV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、レオウイルス、セネカバレーウイルス(SVV)麻疹ウイルス、レトロウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス(SINV)またはポックスウイルスであるかもしくはそれに由来する。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルスではない。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルスJX-594ではない。
【0049】
本明細書で使用されるように、参照ウイルス「由来の」腫瘍溶解性ウイルスは、参照ウイルスが有する核酸配列またはアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、参照ウイルス「由来の」腫瘍溶解性ウイルスは、参照ウイルスが有する1つまたはそれより多くの遺伝子を含む。一部の実施態様において、「由来の」腫瘍溶解性ウイルスは、参照ウイルスによってコードされた1つまたはそれより多くのタンパク質をコードする。
【0050】
一部の実施態様において、参照ウイルスに由来する腫瘍溶解性ウイルスは、参照ウイルスの1つまたはそれより多くの機能的なエレメントをコードする核酸配列を含んでいても
よい。「機能的なエレメント」は、例えば、転写調節因子(例えばプロモーター/エンハンサー)、転写後プロセシングの調節因子、翻訳調節因子、転写後プロセシングの調節因子、応答エレメント、反復配列、またはウイルスタンパク質であってもよい。一部の実施態様において、参照ウイルスに由来する腫瘍溶解性ウイルスは、参照ウイルスの1つまたはそれより多くの遺伝子、またはそれによってコードされたタンパク質を含んでいてもよい。
【0051】
一部の実施態様において、本発明の開示の腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス(OncAd)であるかまたはそれに由来する。OncAdは、例えば、その全体が参照により組み入れられるLarsonら、Oncotarget.(2015)6(24):19976~19989で総論されている。
【0052】
一部の実施態様において、OncAdは、A、B、C、D、E、FまたはG種ヒトアデノウイルス(すなわちHAdV-A、HAdV-B、HAdV-C、HAdV-D、HAdV-E、HAdV-FまたはHAdV-G)であるかまたはそれに由来する。一部の実施態様において、OncAdは、C種ヒトアデノウイルスであるかまたはそれに由来する。一部の実施態様において、OncAdは、Ad5、Ad2、Ad1、Ad6またはAd57であるかまたはそれに由来する。
【0053】
一部の実施態様において、OncAdは、制限増殖型アデノウイルス(またはCRAd)である。
一部の実施態様において、OncAdは、例えばOncAdの元となるアデノウイルスの遺伝学的改変の結果として、非がん性細胞に感染する、その中で複製する、および/またはそれを溶解させる能力が低下している(同等のがん性細胞に感染する/その中で複製
する、および/またはそれを溶解させる能力と比較して)。
【0054】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、1つまたはそれより多くのタンパク質をコードする配列に対する改変を含む。一部の実施態様において、改変は、コードされたタンパク質の生産または活性を変更する。一部の実施態様において、改変は、タンパク質の短縮化または欠失である。
【0055】
一部の実施態様において、OncAdは、アデノウイルス初期タンパク質への改変を含む。一部の実施態様において、改変は、E1Aタンパク質をコードする領域への改変である。一部の実施態様において、OncAdは、野生型E1Aタンパク質(例えばOncAdの元となるアデノウイルスによってコードされたE1A)と比較してRbタンパク質に結合する能力が低下したE1Aタンパク質をコードする。一部の実施態様において、OncAdは、アミノ酸配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したE1Aタンパク質をコードする。アミノ酸配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したE1Aタンパク質をコードするOncAdの例は、配列番号55に示されるOnc5/3Ad2E1Δ24である。
【0056】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号34に少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるE1Aタンパク質をコードする。
【0057】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、1つまたはそれより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を提供する核酸配列を含む。一部の実施態様において、転写因子は、活性化転写因子(すなわち転写活性化因子)である。1つまたは
それより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位は、好ましくは、1つまたはそれより多くの機能的なエレメント(例えばウイルスタンパク質)をコードする核酸配列に対して上流に(すなわち5’側に)提供される。
【0058】
一部の実施態様において、転写因子は、同等の非がん性細胞(例えば同じ組織/細胞型由来の非がん性細胞)と比較して、がん性細胞において発現が増加した、または活性が増加した転写因子である。
【0059】
本明細書において、「発現」は、遺伝子発現を指す場合もあるし、またはタンパク質発現を指す場合もある。遺伝子発現は、当業者公知の様々な手段によって、例えば定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)によってmRNAのレベルを測定すること、またはレポーターベースの方法によって測定することができる。同様に、タンパク質発現は、様々な当業界において周知の方法によって、例えば抗体ベースの方法によって、例えばウェスタンブロット、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、ELISA、ELISPOT、またはレポーターベースの方法によって測定することができる。
【0060】
1つまたはそれより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を含むOncAdの例は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるRojasら、2010 Mol Ther 18 1960-1971に記載のICOVIR15である。ICOVIR15は、転写因子E
2Fのための8つの結合部位を含む。
【0061】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、その遺伝子もしくはタンパク質発現または細胞中での活性が、免疫細胞によって生産または発現される因子に応答して上方調節される転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を含む。一部の実施態様において、免疫細胞によって生産または発現される因子は、エフェクター免疫細胞、例えばCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、CD4+Tヘルパー1(TH1)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞によって生産された少なくとも1つのサイトカイン/ケモカイン、またはその細胞表面で発現されるタンパク質であってもよい。
【0062】
一部の実施態様において、本発明の開示の腫瘍溶解性ウイルスは、STAT転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を含む。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を含む。本明細書に記載されるICOSTAT OncAdは、STAT1のための8つの結合部位を有し、STAT1は、IFNγによって上方調節されることが公知である。特定の実施態様において、がん細胞に対する宿主の免疫応答がインサイチュで腫瘍溶解性ウイルスの複製を促進すると予想されるため、ICOSTATは、がんにとって特に有効な処置である。
【0063】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、STAT1のための1つより多くの結合部位、例えばSTAT1のための少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の結合部位を含む。一部の実施態様において、STAT1のための結合部位は、配列TTCCGGGAA(配列番号53)、またはTTCTCGGAA(配列番号54)を含んでいてもよいし、またはそれからなるもしくはそれから本質的になっていてもよい。一部の実施態様において、本発明の開示の腫瘍溶解性ウイルスは、配列TTCCGGGAA(配列番号53)またはTTCTCGGAA(配列番号54)の1つまたはそれより多くのコピーを含む。
【0064】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号51またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%
、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0065】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号55またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0066】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号55に示される核酸を含むか、それからなるまたはそれから本質的になる腫瘍溶解性ウイルスによってコードされたタンパク質と同じタンパク質をコードする。一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号51に示される核酸を含むか、それからなるまたはそれから本質的になる腫瘍溶解性ウイルスによってコードされたタンパク質と同じタンパク質をコードする。
【0067】
免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス
本発明の開示は、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスを採用する。ウイルスは、免疫調節因子を送達するためのベクターとして作用する。特定の実施態様において、ウイルスは、1つより多くの免疫調節因子をコードする核酸を含む。
【0068】
細胞(例えば初代ヒト免疫細胞)に免疫調節因子をコードする核酸を導入することが可能なあらゆるウイルスを使用することができる。好適なウイルスとしては、ガンマレトロウイルス(例えばマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター)、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスおよびヘルペスウイルス、例えば、両方ともその全体が参照により組み入れられるMausら、Annu Rev Immunol(2014)32:189~225またはMorganおよびBoyerinas、Biomedicines 2016年4月9日に記載されたようなものが挙げられる。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、またはヘルペスウイルスであるかまたはそれに由来する。
【0069】
一部の実施態様において、少なくとも1つの免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、少なくとも1つの免疫調節因子をコードする核酸を含む腫瘍溶解性ウイルスである。
【0070】
本発明の開示に係る免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスによってコードされた免疫調節因子は、好ましくは、対象におけるがんに対する免疫応答、特定には細胞媒介免疫応答が容易になるように選択される。一実施態様において、免疫調節因子は、エフェクター免疫細胞(例えばCTL、TH1細胞、NK細胞またはNKT細胞)の活性化、補充、増殖、活性および/または生存にとって好都合な条件を提供する。
【0071】
一部の実施態様において、免疫調節因子は、エフェクター免疫応答のアゴニスト、例えば、エフェクター免疫細胞の活性化、補充、増殖、活性および/または生存を促進するサイトカインもしくはケモカイン(例えばIL-2、IL-7、IL-17、IL-12、IL-21、IL-15、MIP-1αまたはRANTES)、共刺激受容体のためのアゴニスト抗体(例えば4-1BB、OX40、CD28、CD27、ICOS、CD30
またはGITR)、または共刺激受容体のためのリガンド(例えば4-1BBL、OX40L、CD80、CD86、CD70、ICOSL、CD30LまたはGITRL)であってもよい。一部の実施態様において、エフェクター免疫応答のアゴニストは、免疫チェックポイント阻害剤のアンタゴニスト、または免疫チェックポイント阻害剤のアンタゴニストリガンド、例えばPD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3、Gal-9、TIGIT、VISTAもしくはBTLAに対するアンタゴニスト抗体、またはエフェクター免疫応答のアンタゴニストであるサイトカイン/ケモカインのアンタゴニスト、例えばTGFβ(すなわちアンタゴニスト抗TGFβ抗体または可溶性/デコイTGFβ受容体)であってもよい。一部の実施態様において、エフェクター免疫応答のアゴニストは、T細胞およびNK細胞などのバイスタンダーエフェクター免疫細胞と結合してそれを利用する分子であってもよい。
【0072】
一部の実施態様において、免疫調節因子は、免疫調節応答のアンタゴニスト、例えば、免疫調節性細胞、例えば調節性T細胞(Treg)および/または骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、例えばCCL9、CXCL10、CCL20、CCL22の活性化、補充、増殖、活性および/または生存を促進するサイトカイン/ケモカインのアンタゴニストであってもよい。
【0073】
一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、加えて、さらなる機能的な配列をコードする核酸を含んでいてもよい。例えば、ウイルスは、感染細胞の成長/増殖/生存を低下させるためのタンパク質、または感染細胞を所与の薬剤での処置に対して感受性にするためのタンパク質、または免疫細胞浸潤を容易にするために腫瘍構造を崩壊させるためのタンパク質(例えば腫瘍マトリックスを消化するための酵素)をコードする核酸を含んでいてもよい。
【0074】
一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、加えて、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸を含む。酵素は、非毒性のプロドラッグの、その活性な細胞傷害性の形態への変換を触媒することができる。
【0075】
酵素/プロドラッグ系は当業界において周知であり、その例としては、その全体が参照により組み入れられるMalekshahら、Curr Pharmacol Rep.(2016)2(6):299~308に記載されるものが挙げられる。非毒性のプロドラッグ、その活性な細胞傷害性の形態、および非毒性のプロドラッグのその活性な細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素の例は、Malekshahらの
図2に示される。
【0076】
一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、加えて、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、シトクロムP450、カルボキシペプチダーゼG2、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよび/またはカルボキシルエステラーゼをコードする核酸を含む。
【0077】
例えば、ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をガンシクロビル(GCV)、アシクロビル(ACV)および/またはバラシクロビルでの処置に対して感受性にするために、チミジンキナーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞を、シトシンデアミナーゼによって5-フルオロウラシル(5-FU)に変換される5-フルオロシトシン(5-FC)での処置に対して感受性にするために、シトシンデアミナーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をCB1954、ニトロ-CBI-DEIおよび/またはPR-104Aでの処置に対して感受性にするために、ニトロレダクターゼをコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をオキサアザホスホリン(例えばシクロホスファミドまた
はイフォスファミド)での処置に対して感受性にするために、シトクロムP450をコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をナイトロジェンマスタードベースの薬物(例えばCMDAまたはZD2767P)での処置に対して感受性にするために、カルボキシペプチダーゼG2をコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞を6-メチルプリン2-デオキシリボシドおよび/またはフルダラビン(例えば6-メチルプリン-2’-デオキシリボシド(MeP-dR)、2-F-2’-デオキシアデノシン(F-dAdo)またはアラビノフラノシル-2-F-アデニンモノホスフェート(F-araAMP)での処置に対して感受性にするために、プリンヌクレオシドホスホリラーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をインドール-3-酢酸(IAA)での処置に対して感受性にするために、ホースラディッシュペルオキシダーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルスは、ウイルスを発現する細胞をイリノテカンでの処置に対して感受性にするために、カルボキシルエステラーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。
【0078】
一部の実施態様において、ウイルスは、増殖因子のアンタゴニストをコードする核酸を含んでいてもよい。
一部の実施態様において、ウイルスは、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)であってもよい。HDAdは、例えば、その全体が参照により組み入れられるRosewellら、J Genet Syndr Gene Ther(2011)Suppl 5:001で総論されている。
【0079】
HDAdはウイルスタンパク質のコード配列を欠いているため、目的のコード配列を形質導入するための大きいキャパシティー(最大37Kb)を有する。HDAdは非統合型であり、細胞周期とは独立して多種多様の細胞型を効率的に形質導入することができ、慢性的な毒性を生じることなく長期の導入遺伝子発現を媒介する。
【0080】
HDAdは、ゲノム複製(逆方向末端反復(ITR))およびキャプシド化(ψ)に必要なシス作用性ウイルスエレメントのみを含み、したがって伝播に関してヘルパーウイルス依存性である。細胞がヘルパーウイルスとHDAdの両方に感染すると、ヘルパーウイルス複製機構がトランスで作用して、HDAdを複製してパッケージングする。
【0081】
本発明の開示の特定の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、OncAdであり、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、HDAdであり、OncAdおよびHDAdは、がんの細胞中で同時感染して複製することができる。
【0082】
HDAdのOncAdの補助への依存は、免疫調節因子の高度に局在化した発現を提供する。すなわち、HDAdは、OncAdで同時感染した細胞中でのみ増殖でき、これはOncAdががん細胞における複製に選択的であることを意味することから、HDAdによってコードされた因子の発現はがん細胞/組織に限定され、副作用が最小化される。
【0083】
さらに、OncAdおよびHDAdは腫瘍細胞を効率的に標的化し感染することから、それらの細胞における免疫調節因子の発現は、通常免疫抑制性の腫瘍微環境を変化させて、エフェクター免疫細胞の活性化、補充(すなわち腫瘍の浸入/浸潤)、増殖、活性および/または生存を促進する条件を提供することができる。
【0084】
特定には、処置の方法がCAR-T細胞の使用を採用する本発明の開示の状況で、HDAdによってコードされた免疫調節因子の発現は、CAR-T細胞の活性化、補充、増殖、活性および/または生存の強化をもたらす。
【0085】
本明細書に記載の特定の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、IL-12p70、HSV-1チミジンキナーゼおよびアンタゴニスト抗PD-
L1ミニボディをコードする核酸を含むHDAdである。
【0086】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、IL-12をコードする。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、配列番号35に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0087】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、PD-1/PD-L1シグナル伝達のアンタゴニストをコードする。一部の実施態様において、PD-1/PD-L1シグナル伝達のアンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。
【0088】
一部の実施態様において、抗PD-L1抗体は、
LC-CRD1:配列番号39;
LC-CRD2:配列番号40;
LC-CRD3:配列番号41を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号42;
HC-CRD2:配列番号43;
HC-CRD3:配列番号44を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0089】
一部の実施態様において、抗PD-L1抗体は、配列番号45に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号46に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVHを含む。
【0090】
一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、配列番号38に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0091】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、チミジンキナーゼをコードするアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、配列番号36に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0092】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、配列番号50またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%
、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0093】
キメラ抗原受容体(CAR)およびCAR発現細胞
本発明の開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞を採用する。
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原と結合する機能と免疫細胞を活性化する機能の両方を提供する組換え受容体である。CARの構造と操作は、例えば、その全体が参照により組み入れられるDottiら、Immunol Rev(2014)257(1)で総論されている。CARは、細胞膜アンカー領域に連結された抗原結合領域およびシグナル伝達領域を含む。任意選択のヒンジ領域によって抗原結合領域と細胞膜アンカー領域との間が分離されている場合もあり、このようなヒンジ領域はフレキシブルなリンカーとして作用し得る。
【0094】
CARの抗原結合領域は、CARが標的化される抗原、または標的に結合することが可能な他の薬剤に特異的な抗体の抗原結合領域をベースとしていてもよい。例えば、CARの抗原-結合ドメインは、相補性決定領域(CDR)に関するアミノ酸配列、または標的タンパク質に特異的に結合する抗体の全軽鎖および重鎖可変領域アミノ酸配列を含んでいてもよい。CARの抗原-結合ドメインは、他のタンパク質:タンパク質相互作用、例えばリガンド:受容体結合をベースとした標的抗原であってもよく、例えば、IL-13Rα2標的化CARが、IL-13をベースとした抗原-結合ドメインを使用して開発されている(例えばKahlonら、2004 Cancer Res 64(24):9160~9166を参照)。
【0095】
本発明の開示のCARは、がん細胞抗原に特異的な抗原結合領域を含む。CARの抗原結合領域は、あらゆる好適な様式で、例えばscFv、Fabなどとして提供されてもよい。一部の実施態様において、CARの抗原結合領域は、がん細胞抗原結合scFvを含むかまたはそれからなる。
【0096】
がん細胞抗原は、がん細胞によって発現される抗原である。がん細胞抗原は、あらゆるペプチド/ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、グリカン、グリコリピド、脂質、またはそれらのフラグメントであってもよい。がん細胞抗原の発現は、がんに関連する可能性がある。がん細胞抗原は、がん細胞によって異常に発現されることもあり(例えばがん細胞抗原は、異常な局在化を伴い発現されることがある)、またはがん細胞によって異常な構造で発現されることもある。がん細胞抗原は、免疫応答を惹起することが可能な場合もある。
【0097】
一部の実施態様において、抗原は、がん細胞の細胞表面で発現される(すなわちがん細胞抗原は、がん細胞表面抗原である)。一部の実施態様において、本発明の開示の二重特異性の抗原結合ポリペプチドと結合する抗原の一部は、がん細胞の外部表面上に提示される(すなわち細胞外である)。一部の実施態様において、抗原は、例えば膜貫通ドメインまたは他の膜アンカー(例えば脂質アンカー、例えばGPIアンカー)を介して細胞膜に固定される。一部の実施態様において、がん細胞抗原は、がん細胞の細胞表面で発現されるが(すなわち細胞膜中または細胞膜で発現される)、細胞の内部で発現される場合もある(すなわち同等の非がん性細胞の内部で発現される)。
【0098】
がん細胞抗原は、がん関連抗原であってもよい。一部の実施態様において、がん細胞抗原は、その発現が、がんの発症、進行および/または症状の重症度に関連する抗原である。がん関連抗原は、がんの原因または病理に関連する場合もあるし、またはがんの結果と
して異常に発現される場合もある。一部の実施態様において、抗原は、その発現が、例えば同等の非がん性細胞(例えば同じ組織/細胞型由来の非がん性細胞)による発現レベルと比較して、がんの細胞によって上方調節される(例えばRNAおよび/またはタンパク質レベルで)抗原である。
【0099】
一部の実施態様において、がん関連抗原は、がん細胞によって優先的に発現され、同等の非がん性細胞(例えば同じ組織/細胞型由来の非がん性細胞)によって発現されないものでもよい。一部の実施態様において、がん関連抗原は、突然変異した腫瘍遺伝子または突然変異した腫瘍抑制遺伝子の生成物であってもよい。一部の実施態様において、がん関連抗原は、過剰発現させた細胞タンパク質の生成物、腫瘍ウイルスによって生産されたがん抗原、腫瘍胎児性抗原、または細胞表面グリコリピドもしくは糖タンパク質であってもよい。
【0100】
がん細胞抗原は、Zarour HM、DeLeo A、Finn OJら、Categories of Tumor Antigens. In:Kufe DW、Pollock RE、Weichselbaum RRら編、Holland-Frei Cancer Medicine.第6版
、Hamilton (ON):BC Decker; 2003によって総論されている。がん細胞抗原としては、腫瘍胎児性抗原:CEA、未成熟ラミニン受容体、TAG-72;腫瘍ウイルス抗原、例えばHPVE6およびE7;過剰発現したタンパク質:BING-4、カルシウム活性化塩素チャネル2、サイクリン-B1、9D7、Ep-CAM、EphA3、HER2/neu、テロメラーゼ、メソテリン、SAP-1、サバイビン(surviving);がん精巣抗原
:BAGE、CAGE、GAGE、MAGE、SAGE、XAGE、CT9、CT10、NY-ESO-1、PRAME、SSX-2;系統制御抗原:MART1、Gp100、チロシナーゼ、TRP-1/2、MC1R、前立腺特異的抗原;突然変異した抗原:β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、MART-2、p53、Ras、TGF-βRII;翻訳後修飾によって変更された抗原:MUC1、イディオタイプ抗原:Ig、TCRが挙げられる。他のがん細胞抗原としては、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、グルコース制御タンパク質78(GRP78)、ビメンチン、ヌクレオリン、胎児関連膵臓タンパク質(FAPP)、アルカリホスファターゼ胎盤様2(ALPPL-2)、シグレック-5、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、およびシクロフィリンBが挙げられる。
【0101】
一部の実施態様において、がん細胞抗原は、HER2である。一部の実施態様において、本発明の開示のCARは、HER2への特異的な結合が可能な抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、HER2への特異的な結合が可能な抗体のCDRを含む抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、HER2への特異的な結合が可能な抗体のVLおよびVH領域を含む抗原結合ドメインを含む。
【0102】
特定の実施態様において、CAR発現細胞は、それぞれ異なるがん細胞抗原を標的化する2つの別個のCARを含み、特定の形態において、CARの少なくとも一方が、HER2を標的とする。一部の場合において、CARは、2種の異なるがん細胞抗原に対して二重特異性であり、2種の異なるがん細胞抗原のうち1種はHER2であってもよい。
【0103】
一部の実施態様において、CARは、
LC-CRD1:配列番号10、配列番号18、配列番号26または配列番号57;
LC-CRD2:配列番号11、配列番号19、配列番号27または配列番号58;
LC-CRD3:配列番号12、配列番号20、配列番号28または配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13、配列番号21、配列番号29または配列番号60;
HC-CRD2:配列番号14、配列番号22、配列番号30または配列番号61;
HC-CRD3:配列番号15、配列番号23、配列番号31または配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0104】
一部の実施態様において、CARは、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0105】
一部の実施態様において、CARは、
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0106】
一部の実施態様において、CARは、
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0107】
一部の実施態様において、CARは、を含むVLドメイン:
LC-CRD1:配列番号57;
LC-CRD2:配列番号58;
LC-CRD3:配列番号59を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号60;
HC-CRD2:配列番号61;
HC-CRD3:配列番号62を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む。
【0108】
一部の実施態様において、CARは、配列番号16、24、32または63に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる軽鎖可変領域(VL
)を含む抗原結合ドメインを含む。
【0109】
一部の実施態様において、CARは、配列番号17、25、33または64に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる重鎖可変領域(VH)を含む抗原結合ドメインを含む。
【0110】
一部の実施態様において、CARは、配列番号16に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号17に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVHを含む抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、配列番号24に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号25に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVHを含む抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、配列番号32に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号33に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVHを含む抗原結合ドメインを含む。一部の実施態様において、CARは、配列番号63に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるまたはそれから本質的になるVL、および配列番号64に少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるまたはそれから本質的になるVHを含む抗原結合ドメインを含む。
【0111】
一部の実施態様において、本発明の開示のCARは、本発明の開示に係る抗体/抗原結合フラグメントを含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる抗原結合領域を含む。
【0112】
細胞膜アンカー領域は、CARの抗原結合領域とシグナル伝達領域との間に提供される。細胞膜アンカー領域は、CARを、細胞外空間中の抗原結合領域と細胞内部のシグナル伝達領域で、CAR発現細胞の細胞膜に固定するために提供される。好適な膜貫通ドメインとしては、CD28、CD3-ζ、CD4またはCD8由来の膜貫通領域が挙げられる。
【0113】
一部の実施態様において、細胞膜アンカー領域は、配列番号4に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0114】
CARのシグナル伝達領域は、T細胞の活性化を可能にする。CARシグナル伝達領域は、CD3-ζの細胞内ドメインのアミノ酸配列を含んでいてもよく、これは、CARを発現するT細胞のリン酸化および活性化のための免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を提供する。また他のITAM含有タンパク質の配列を含むシグナル伝達領域も、CAR、例えばFcγRIのITAM含有領域を含むドメインで採用されている(Haynesら、2001 J Immunol 166(1):182~187)。CD3-ζの細胞内ドメイン由来
のシグナル伝達領域を含むCARは、第1世代CARと称されることが多い。
【0115】
一部の実施態様において、細胞膜アンカー領域は、配列番号6に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0116】
またCARのシグナル伝達領域は、標的タンパク質に結合したときのCARを発現するT細胞の活性化を容易にするために、共刺激分子のシグナル伝達領域由来の共刺激配列を含んでいてもよい。好適な共刺激分子としては、少なくともCD28、OX40、4-1BB、ICOSおよびCD27が挙げられる。追加の共刺激配列を含むシグナル伝達領域を有するCARは、第2世代CARと称されることが多い。
【0117】
一部の場合において、CARは、異なる細胞内シグナル伝達経路の共刺激がもたらされるように操作される。例えば、CD28共刺激に関連するシグナル伝達は、優先的にホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(P13K)経路を活性化し、それに対して4-1BB媒介シグナル伝達は、TNF受容体関連因子(TRAF)アダプタータンパク質を介する。それゆえにCARのシグナル伝達領域は時に、1種より多くの共刺激分子のシグナル伝達領域由来の共刺激配列を含有する。複数の共刺激配列と共にシグナル伝達領域を含むCARは、第3世代CARと称されることが多い。
【0118】
一部の実施態様において、本発明の開示のCARは、CD28、OX40、4-1BB、ICOSおよびCD27のうち1つまたはそれより多くの細胞内ドメインのアミノ酸配列を含むか、それからなるもしくはそれから本質的になるか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる1つまたはそれより多くの共刺激配列を含む。
【0119】
一部の実施態様において、細胞膜アンカー領域は、配列番号5に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0120】
任意選択のヒンジ領域は、抗原-結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に分離をもたらすことができ、フレキシブルなリンカーとして作用することができる。ヒンジ領域は、結合部分を異なる方向に向けることができるフレキシブルなドメインであってもよい。ヒンジ領域は、IgG1由来であってもよいし、または免疫グロブリンのCH2CH3領域由来であってもよい。一部の実施態様において、本発明の開示のCARは、IgG1のヒンジ領域または免疫グロブリンのCH2CH3領域のアミノ酸配列を含むか、それからなるもしくはそれから本質的になるか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるヒンジ領域を含む。
【0121】
一部の実施態様において、細胞膜アンカー領域は、配列番号9に少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0122】
一部の実施態様において、CARは、配列番号1、2、3または56に少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になる。
【0123】
本発明の開示はまた、本発明の開示に係るCARを含むかまたはそれを発現する細胞も提供する。本開示に係るCARをコードする核酸を含むかまたはそれを発現する細胞も提供される。T細胞へのCARの操作は、培養中、インビトロで、形質導入および拡大のために実行することができ、例えば、養子T細胞療法のためのT細胞の拡大中に実行することができる。CARを発現するように免疫細胞を操作するための方法は当業者公知であり、例えば、その全体が参照により組み入れられるWangおよびRiviere Mol Ther Oncolytics(2016)3:16015に記載される。「少なくとも1つの細胞」は、複数の細胞を包含し、
例えばこのような細胞の集団を包含することが理解されるものとする。
【0124】
本発明の開示に係るCARを含むかまたはそれを発現する細胞は、真核細胞、例えば哺乳類細胞であってもよい。哺乳動物は、ヒト、またはヒト以外の哺乳動物(例えばウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のげっ歯類(げっ歯目のあらゆる動物を含む)、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ(畜牛、例えば乳牛、またはウシ属のあらゆる動物を含む)、ウマ(ウマ科のあらゆる動物を含む)、ロバ、および非ヒト霊長類)であってもよい。
【0125】
一部の実施態様において、細胞は、ヒト対象由来であってもよいし、またはヒト対象から得られたものでもよい。CAR発現細胞が対象の処置に使用される場合、細胞は、CAR発現細胞で処置しようとする対象由来であってもよいし(すなわち細胞は自己であってもよい)、または細胞は、異なる対象由来であってもよい(すなわち細胞は異種であってもよい)。
【0126】
細胞は、免疫細胞であってもよい。細胞は、造血細胞起源の細胞、例えば好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球、または単球であってもよい。リンパ球は、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞もしくは自然リンパ球系細胞(ILC)、またはそれらの前駆体であってもよい。細胞は、例えばCD3ポリペプチド(例えばCD3γ、CD3ε、CD3ζ、またはCD3δ)、TCRポリペプチド(TCRαまたはTCRβ)、CD27、CD28、CD4またはCD8を発現していてもよい。
【0127】
一部の実施態様において、細胞は、T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+、CD8+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。
【0128】
CAR T細胞の使用は、CAR T細胞は全身投与でき、原発主要と転移した腫瘍の両方に存在するようになるという利点に関連する(Manzoら、Human Molecular Genetics
(2015)R67~73)。
【0129】
一部の実施態様において、細胞は、抗原特異的T細胞である。本明細書に記載の実施態様において、「抗原特異的」T細胞は、T細胞が特異的な抗原、または前記抗原を発現する細胞に応答してT細胞の特定の機能特性を呈示する細胞である。一部の実施態様において、特性は、エフェクターT細胞、例えば細胞傷害性T細胞に関連する機能特性である。
【0130】
一部の実施態様において、抗原特異的T細胞は、以下の特性:細胞傷害性、例えばT細胞が特異的な抗原を含む/抗原を発現する細胞に対する細胞傷害性;例えばT細胞が特異的な抗原またはT細胞が特異的な抗原を含む/発現する細胞に応答する、増殖、IFNγ発現、CD107a発現、IL-2発現、TNFα発現、パーフォリン発現、グランザイム発現、グラニュライシン発現、および/またはFASリガンド(FASL)発現1つまたはそれより多くを示すものでもよい。抗原特異的T細胞は、適切なMHC分子によって提示されると、細胞が特異的な抗原のペプチドを認識することが可能なTCRを含む。抗原特異的T細胞は、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞であってもよい。
【0131】
一部の実施態様において、T細胞が特異的な抗原は、ウイルス、例えばアデノウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、または単純疱疹ウイルス(HSV)のペプチドまたはポリペプチドであってもよい。
【0132】
ウイルスの抗原に特異的なT細胞は、ウイルス特異的T細胞(VST)と本明細書で言及される場合がある。VSTは、CD4+T細胞(例えばTH細胞)および/またはCD8+T細胞(例えばCTL)であってもよい。特定のウイルスの抗原に特異的なT細胞は、関連ウイルスに特異的であると記載される場合があり、例えば、アデノウイルスの抗原に特異的なT細胞は、アデノウイルス特異的T細胞、または「AdVST」と称する場合もある。CAR-T細胞生成のためのウイルス特異的T細胞の使用は、ナイーブT細胞は、輸注後に限定的な長期持久性しか有さない場合があるが、メモリー区画由来のウイルス特異的T細胞(VST)、および遺伝子操作されたVSTは、幹細胞移植受容者において、輸注後に10年にわたり持続することが示されたという利点に関連する(Cruzら、Cytotherapy(2010)12:743~749)。例えば、GD2.CARを発現するVSTは、低い腫
瘍負荷量の患者において、輸注後に長期間持続し、完全な腫瘍応答をもたらすことが示されている(Sunら、Journal for Immunotherapy of Cancer(2015)3:5およびPuleら、Nature Medicine(2008)14:1264~1270)。
【0133】
一部の実施態様において、CARを含む/発現する細胞は、ウイルス特異的T細胞(VST、例えばウイルス特異的CD4+T細胞(例えばTH細胞)および/またはウイルス特異的CD8+T細胞(例えばCTL)である。一部の実施態様において、CAR発現細胞は、アデノウイルス特異的T細胞(AdVST)、サイトメガロウイルス特異的T細胞(CMVST)、エプスタイン-バーウイルス特異的T細胞(EBVST)、インフルエンザウイルス特異的T細胞、麻疹ウイルス特異的T細胞、B型肝炎ウイルス特異的T細胞
(HBVST)、C型肝炎ウイルス特異的T細胞(HCVST)、ヒト免疫不全ウイルス特異的T細胞(HIVST)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス特異的T細胞(LCMVST)、単純疱疹ウイルス特異的T細胞(HSVST)またはヒトパピローマウイルス(HPVST)である。
【0134】
一部の実施態様において、CARを含む/発現する細胞は、腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞(例えば腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞)であり、例えば本明細書に記載されるようなものである。
【0135】
本開示のあらゆる細胞は、細胞の単離された集団中に含まれていてもよく、この集団は、均一であってもよいし、またはそうでなくてもよい。具体的な実施態様において、細胞集団は、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞である細胞および/またはCAR発現細胞の大部分を有する。細胞集団中の細胞は、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、ならびに/またはOncAd、HDAd、および/もしくはCARの1つまたはそれより多くをコードする1つまたは複数の核酸を含んでいてもよい。特定の実施態様において、細胞集団は、少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、キメラ抗原受容体(CAR)、ならびに/またはOncAd、HDAd、および/もしくはCARの1つまたはそれより多くをコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞を有する。
【0136】
腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞
本発明の開示の形態は、腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞(本明細書では、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞とも称される)を提供する。腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、腫瘍溶解性ウイルスの抗原のペプチドを認識することが可能な受容体を発現する/含む(例えばMHC分子によって提示される場合)。免疫細胞は、このような抗原受容体をコードする内因性の核酸の発現の結果として、またはこのような受容体を発現するように操作された結果として、このような受容体を発現する/含むことができる。
【0137】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、造血細胞起源の細胞、例えば好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球、または単球であってもよい。リンパ球は、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞または自然リンパ球系細胞(ILC)、またはそれらの前駆体であってもよい。細胞は、例えばCD3ポリペプチド(例えばCD3γ、CD3ε、CD3ζ、またはCD3δ)、TCRポリペプチド(TCRαまたはTCRβ)、CD27、CD28、CD4またはCD8を発現していてもよい。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、T細胞、例えばCD3+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+、CD4+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+、CD8+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、Tヘルパー細胞(TH細胞)である。一部の実施態様において、T細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。
【0138】
腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞(例えば腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞)は、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスに特異的であってもよい。すなわち腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスの1つまたはそれより多くの抗原に特異的であってもよい。
【0139】
目的の抗原および/または目的のウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大するための方法は当業界において周知であり、例えば、その全体が参照により組み入れられるWangおよびRiviere Cancer Gene Ther.(2015)22(2):85~94に記載されている。
【0140】
このような方法は、免疫細胞(例えば末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL))のヘテロジニアスな集団を、目的の抗原の1つまたはそれより多くのペプチド、またはそのような抗原/ペプチドを含む/発現する細胞と接触させることを含んでいてもよい。抗原/ペプチドを含む/発現する細胞は、抗原を含む/コードするウイルスでの感染、細胞によるその抗原/ペプチドの取り込み、またはその抗原/ペプチドの発現の結果として上記接触を行ってもよい。提示は、抗原提示細胞の細胞表面におけるMHC分子の環境下にある。
【0141】
抗原/ペプチドを含む/を発現する細胞は、当業者に周知の方法に従って抗原のペプチドと接触させたものでもよい(抗原のペプチドで「パルス」したものでもよい)。抗原性ペプチドは、ペプチド混合物のライブラリー(1つまたはそれより多くの抗原に対応する)の形態で提供されてもよく、これは、ペプミックス(pepmix)と称することもできる。ペプミックスのペプチドは、長さが8~20アミノ酸のオーバーラップするペプチドであってもよいし、関連抗原のアミノ酸配列の全てまたは一部をカバーしていてもよい。
【0142】
ペプチドに特異的な受容体を含む免疫細胞の集団中の細胞は、適切な共刺激シグナルの環境下で、抗原提示細胞(APC)によって提示された抗原のペプチドの認識後、活性化されてもよい(増殖するように刺激されてもよい)。「腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞」は、複数形の細胞を包含し、例えばこのような細胞の集団を包含することが理解されるものとする。このような集団は、インビトロおよび/またはエクスビボで生成/拡大させることができる。
【0143】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞は、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、例えば本明細書に記載されるOncAdに特異的である。一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞は、OncAdの抗原に特異的である。一部の実施態様において、抗原は、OncAdタンパク質、例えば初期遺伝子(例えばE1(例えばE1A、E1B)、E2(例えばE2A、E2B)、E3またはE4)によってコードされたタンパク質、後期遺伝子(例えばL1、L2、L3、L4またはL5)によってコードされたタンパク質、IXによってコードされたタンパク質、またはIVa2によってコードされたタンパク質であるかまたはそれに由来する。一部の実施態様において、抗原は、OncAdのヘキソンおよび/またはペントンであるかまたはそれに由来する。
【0144】
本発明の開示の様々な形態に係る一部の実施態様において、ウイルスに特異的な免疫細胞は、ウイルスのペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下での培養によって、免疫細胞の集団を刺激することを含む方法によって生成/拡大することができる(またはそれにより生成/拡大されたものでもよい)。
【0145】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞は、ヒトアデノウイルス3ヘキソンに対応するオーバーラップするペプチドの混合物を含むペプミックス、および/またはヒトアデノウイルス5ペントンに対応するオーバーラップするペプチドの混合物を含むペプミックスを採用する方法によって調製される。
【0146】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、CAR、例えば本明細書に記載されるCARを発現する/含む。腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞は、例えば、CARをコードする核酸での腫瘍溶解性ウイルス特異的免疫細胞のトランスフェクション/形質導入によって、CARを発現するように操作されてもよい。
【0147】
本開示の組合せ
本発明の形態は、(i)腫瘍溶解性ウイルス;(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を含む/採用する組成物および方法を含む。
【0148】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を含む/採用する組成物および方法(すなわち必然的に免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスも採用しない)も提供される。
【0149】
(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を含む/採用する組成物および方法も提供される。
本明細書に記載される様々な形態に係る一部の実施態様において、CARを含む/発現する細胞は、採用される腫瘍溶解性ウイルスに特異的である(例えば、腫瘍溶解性ウイルスの抗原に特異的な抗原受容体(例えばTCR)を含む)。すなわち、一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスとCARを含む/発現する細胞の特異性は、適合している。一例として、一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルスであり、CARを含む/を発現するCAR発現細胞は、アデノウイルス特異的T細胞である。
【0150】
同様に、本明細書に記載される様々な形態において、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞(すなわち同じ腫瘍溶解性ウイルス)と組み合わせて採用される。
【0151】
本明細書で言及される「組合せ」は、組合せの成分を含む生成物および組成物(例えば医薬組成物)を包含する。「組合せ」はまた、組合せの成分を採用する治療レジメンも包含する。
【0152】
一部の実施態様において、組合せの成分は、別個の組成物で提供される。一部の実施態様において、1つより多くの組合せの成分は、1つの組成物で提供される。一部の実施態様において、組合せの成分は、1つの組成物で提供される。
【0153】
同様に、一部の実施態様において、組合せの成分は、別々に投与される。一部の実施態様において、組合せの成分は、組合せの別の成分と共に投与される。一部の実施態様において、組合せの成分は、一緒に投与される。
【0154】
例証として、腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスおよびがん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞を含む組合せの例において、腫瘍溶解性ウイルスおよび免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、一緒に投与されてもよく、がん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞は、別々に(例えばその後に)投与されてもよい。
【0155】
組合せの成分が一緒に投与される場合、投与は、本明細書の以下で記載されるような同時投与であってもよい。組合せの成分が別々に投与される場合、投与は、本明細書の以下で記載されるような同時投与または逐次投与であってもよい。組合せの成分が別々に投与される場合において、別個の成分の投与は、同じ投与経路を介して投与されてもよいし、またはそうでなくてもよい。
【0156】
機能特性
本発明の開示の薬剤は、1つまたはそれより多くの機能特性への参照によって定義することができる。薬剤は、例えば実験の実施例に記載されたような分析によって、機能特性に関して評価することができる。同様に、本発明の開示の組合せおよび方法は、1つまたはそれより多くの機能特性および/または作用への参照によって定義することができ、例
えば実験の実施例に記載されたような分析によって、このような特性/作用に関して評価することができる。
【0157】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスは、以下の機能の1つまたはそれより多くを有していてもよい:
・がん細胞中で複製する、および/またはがん細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・がん細胞中で複製する、および/またはがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して低下した、非がん性細胞中で複製する、および/または非がん性細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・当業界において公知の1つまたはそれより多くの腫瘍溶解性ウイルスの能力と比較して、がん細胞の細胞致死を引き起こす同等のまたは改善された能力;
・ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)の複製を助ける能力;
・当業界において公知の1つまたはそれより多くの腫瘍溶解性ウイルスの能力と比較して、がん細胞中で複製する同等のまたは改善された能力。
【0158】
一部の実施態様において、本発明の開示に係るがん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞は、以下の機能の1つまたはそれより多くを有していてもよい:・HER2に結合する能力;
・HER2発現細胞に結合する能力;
・HER2発現細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・HER2発現細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して低下した、HER2を発現しない細胞の細胞致死を引き起こす能力。
【0159】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節物質をコードする核酸を含むウイルスおよびがん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞の組合せは、以下の機能の1つまたはそれより多くを有していてもよい:
・成分のいずれか1つの単独での使用による、または成分のいずれか2つを組み合わせて使用することによるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して改善された、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・単独で使用される成分によるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して相乗的な(すなわち相加効果を超える)、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力。
【0160】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスとがん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞との組合せは、以下の機能の1つまたはそれより多くを有していてもよい:
・単独で使用されるいずれかの成分によるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して改善された、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・単独で使用される成分によるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して相乗的な(すなわち相加効果を超える)、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力。
【0161】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスおよび腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の組合せは、以下の機能の1つまたはそれより多くを有していてもよい:
・単独で使用されるいずれかの成分によるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して改善された、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力;
・単独で使用される成分によるがん細胞の細胞致死を引き起こす能力と比較して相乗的な(すなわち相加効果を超える)、がん細胞の細胞致死を引き起こす能力。
【0162】
がん細胞の細胞致死を引き起こす能力の分析は、例えばインビトロで、がん細胞の数/生存率の分析によって評価することができる。がん細胞の細胞致死を引き起こす能力の分析はまた、インビボにおいて、適切なモデルで、例えば、がん細胞の数、腫瘍のサイズ/
体積および/またはその他いくつかのがん細胞数との相互関係(例えば疾患の進行、がんの症状の重症度など)の分析によって分析することもできる。
【0163】
治療用途
本発明の開示の形態は、特定には、対象におけるがんの処置における、腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、およびがん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つのT細胞の使用に関する。
【0164】
したがって、本発明の開示は、腫瘍溶解性ウイルス;免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;およびがん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つのT細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。
【0165】
本発明の開示はまた、がんを処置する方法で使用するための、腫瘍溶解性ウイルス;免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;およびがん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つのT細胞も提供する。がんを処置するための医薬品の製造における、腫瘍溶解性ウイルス;免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;およびがん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つのT細胞の使用も提供される。
【0166】
本発明の開示はまた、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法も提供する。がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞も提供される。がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の使用も提供される。
【0167】
本発明の開示はまた、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法も提供する。がんを処置する方法で使用するための、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞も提供される。がんを処置する方法に使用するための医薬品の製造における、(i)腫瘍溶解性ウイルス;および(ii)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の使用も提供される。
【0168】
本発明の開示のOncAd、HDAd、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞および医薬組成物を対象に投与することを含む、がんを処置するための方法も提供される。がんを処置するための方法で使用するための、本発明の開示のOncAd、HDAd、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞および医薬組成物も提供される。がんを処置するための医薬品の製造における、本発明の開示のOncAd、HDAd、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞および医薬組成物の使用も提供される。
【0169】
「処置」は、例えば、がんの発達もしくは進行の低減、がんの症状の軽減、またはがんの病理の低減であり得る。がんの処置または軽減は、がんの進行を予防する、例えば状態の悪化を予防する、またはより重度の病状の発達速度を遅くするのに有効な場合がある。一部の実施態様において、処置または軽減は、がんの改善、例えばがんの症状の低減、またはがんの重症度/活性のその他いくつかの相関の低減をもたらすことができる。がんの予防は、状態の悪化の予防またはがんの発達の予防、例えば、早期がんが後期段階に発達することを予防することを指す場合もある。
【0170】
一部の実施態様において、処置は、対象におけるがん細胞の数またはがん細胞を含む組
織の量を低下させることを目的としていてもよい。一部の実施態様において、処置は、対象における少なくとも1つの腫瘍のサイズを低下させること、および/またはその成長を予防することを目的としていてもよい。
【0171】
一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与することを含む。一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスを含むかまたはそれをコードする細胞または細胞の集団を対象に投与することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、腫瘍溶解性ウイルスおよび本発明の開示に係る免疫調節因子をコードするウイルスを対象に投与することを含む。一部の実施態様において、処置は、腫瘍溶解性ウイルスを含むかまたはそれをコードする細胞もしくは細胞の集団、および/または本発明の開示に係る免疫調節因子をコードするウイルスを対象に投与することを含んでいてもよい。
【0172】
一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係るCARを含む/発現するように細胞または細胞の集団を改変することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、本発明の開示のCARを含む/発現するように改変された細胞または細胞の集団を対象に投与することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、例えば本発明の開示に係るCAR発現細胞を投与すること、または本発明の開示に係るCAR発現細胞を生成することによって、がん細胞抗原に特異性を有する免疫細胞または免疫細胞の集団を対象に提供することを目的とする。
【0173】
一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞/免疫細胞の集団を対象に投与することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、腫瘍溶解性ウイルスへの特異性を有する免疫細胞/免疫細胞の集団を対象に提供することを目的とする。一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大することを含んでいてもよい。
【0174】
一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係るCARを含む/発現するように改変された、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞/免疫細胞の集団を対象に投与することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、腫瘍溶解性ウイルスへの特異性を有し、さらにがん細胞抗原への特異性も有する免疫細胞/免疫細胞の集団を対象に提供することを目的とする。一部の実施態様において、処置は、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大すること、および細胞または集団の細胞を、本発明の開示に係るCARを含む/発現するように改変することを含んでいてもよい。
【0175】
処置しようとする対象は、あらゆる動物またはヒトであってもよい。対象は、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。対象は、ヒト以外の哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒトである。対象は、男性または女性であってもよいし、またはあらゆる性別を有していてもよい。対象は、患者であってもよい。対象は、処置を必要とするがんと診断された対象でもよいし、このようながんを有する疑いがある対象でもよいし、またはこのようながんが発達するリスクがある対象でもよい。
【0176】
一部の実施態様において、処置しようとするがんは、がん細胞抗原、例えば本明細書に記載されるがん細胞抗原(例えばHER2)を発現する細胞を含む。一部の実施態様において、上記細胞は、がん細胞抗原(例えばHER2)を細胞表面で発現する。
【0177】
一部の実施態様において、処置しようとするがんは、CARが特異的ながん細胞抗原を発現する細胞を含む。一部の実施態様において、CARは、がん細胞抗原結合ドメインを
含み、処置しようとするがんは、がん細胞抗原を発現する細胞、例えばがん細胞抗原を細胞表面で発現する細胞を含む。
【0178】
一部の実施態様において、がんは、がん細胞抗原を過剰発現する。がん細胞抗原の過剰発現は、等価な非がん性細胞/非腫瘍組織による発現レベルより大きいがん細胞抗原の発現レベルを検出することによって決定することができる。
【0179】
一部の実施態様において、がんは、HER2を発現するがん、例えばHER2を細胞表面で発現するがんである。一部の実施態様において、がんは、HER2を過剰発現する。HER2の過剰発現は、等価な非がん性細胞/非腫瘍組織によるHER2の発現レベルより大きいHER2の発現レベルを検出することによって決定することができる。
【0180】
一部の実施態様において、本発明の開示に係る処置しようとする対象は、対象から得られたがん細胞または腫瘍によるがん細胞抗原の発現/過剰発現の検出に基づく処置のために選択される。
【0181】
所与のがん細胞抗原の発現は、あらゆる好適な手段によって決定することができる。発現は、遺伝子発現であってもよいし、またはタンパク質発現であってもよい。遺伝子発現は、例えばがん細胞抗原をコードするmRNAの検出によって、例えば定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)によって決定することができる。タンパク質発現は、例えばがん細胞抗原の検出によって、例えば抗体ベースの方法によって、例えばウェスタンブロット、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、またはELISAによって決定することができる。
【0182】
本発明の開示に従って処置/予防しようとするがんは、あらゆる不要な細胞増殖(または不要な細胞増殖が出現するあらゆる疾患)、新生物または腫瘍であってもよい。がんは、良性でも悪性でもよく、原発性でも続発性(転移性)でもよい。がんは、抵抗性であってもよいし(最初に、または処置後に)、および/または、がんは、再発性であってもよい。新生物または腫瘍は、細胞のあらゆる異常な成長または増殖であってもよく、あらゆる組織に存在する可能性がある。がんは、例えば副腎、副腎髄質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、盲腸、中枢神経系(脳を含む場合もあれば、含まない場合もある)、小脳、子宮頸、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎臓の上皮)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝臓、肺、リンパ液、リンパ節、リンパ芽球、上顎、縦隔、腸間膜、子宮筋層、上咽頭、網、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S字結腸、皮膚、小腸、軟部組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、口蓋扁桃、気管、子宮、陰門、白血球由来の組織/細胞であってもよい。
【0183】
処置/予防しようとするがんは、あらゆる種類のがんであってもよく、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連のがん(例えばカポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、皮膚の基底細胞癌、胆管がん(例えば胆管細胞癌)、膀胱がん、骨がん(例えばユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明癌、心臓腫瘍、中枢神経系のがん(例えば非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、中枢神経系原発リンパ腫)、子宮頸がん、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性新生物、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫(例えば菌状息肉腫、セザリー症候群)、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜がん(子宮がん)、上衣細胞腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼のがん(例えば眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、卵管がん、骨の悪性線維性組織球
腫、胆嚢がん、胃(gastric、stomach)がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、卵巣胚細胞腫瘍、睾丸がん、妊娠性絨毛性疾患、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、心腫瘍、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、膵島細胞腫瘍(膵内分泌腫瘍)、腎臓(腎細胞)がん、喉頭がん、乳頭腫症、白血病、口唇口腔がん、肺がん(非小細胞肺がん(NSCLC)および小細胞肺がん(SCLC))、リンパ腫、男性乳がん、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移がん、潜在性原発性の転移性頸部扁平上皮がん、NUT遺伝子関与の正中線癌、口のがん、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、口唇口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、パラガングリオーマ、副鼻腔がん、鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、クロム親和性細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠および乳がん、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、再発がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、血管性腫瘍、子宮肉腫、皮膚がん、小腸がん、皮膚の扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、咽喉がん、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、尿道がん、膣がん、外陰がんまたはウィルムス腫瘍のいずれか1つが挙げられる。
【0184】
一部の実施態様において、処置しようとするがんは、上咽頭癌(NPC;例えばエプスタイン-バーウイルス(EBV)陽性NPC)、子宮頸癌(CC;例えばヒトパピローマウイルス(HPV)陽性CC)、中咽頭癌(OPC;例えばHPV陽性OPC)、胃癌(GC;例えばEBV陽性GC)、肝細胞癌(HCC;例えばB型肝炎ウイルス(HBV)陽性HCC)、肺がん(例えば非小細胞肺がん(NSCLC))、および頭頸部がん(例えば唇、口、鼻、副鼻腔、咽頭または喉頭の組織に由来するがん、例えば頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))の1つまたはそれより多くである。
【0185】
一部の実施態様において、がんは、ウイルスと関連するかまたはウイルスによって引き起こされる。一部の実施態様において、がんは、EBV陽性がんである。一部の実施態様において、がんは、HPV陽性がんである。
【0186】
一部の実施態様において、がんは、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、口腔咽頭がん(OPC)、子宮頸がん(CC)、胃(gastric/stomach)がん、胃癌または肺がんの1つである。
【0187】
薬物療法の方法はまた、自己および/または異種細胞または不死化細胞株を使用するものを含む、インビボの療法、エクスビボの療法、および養子免疫療法を含んでいてもよい。
【0188】
投与
投与は、好ましくは「治療有効量」でなされ、これは、個体にとって利益を示すのに十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置される疾患の性質および重症度によって決まると予想される。処置の処方、例えば投薬の決定などは一般開業医や他の医師の責務の範囲内であり、典型的には、処置しようとする状態、個々の患者の状態、送達の部位、投与方法および医師に公知の他の要因を考慮に入れる。上述の技術およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000年公開、Lippincott, Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0189】
本発明の開示に係るウイルス、CAR、核酸、および細胞は、臨床用途のための医薬組成物または医薬として製剤化することができ、このような医薬組成物または医薬は、医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでいてもよい。組成物は
、局所、非経口、全身性、腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、眼球内、結膜内、腫瘍内、皮下、皮内、髄腔内、経口または経皮経路投与のために製剤化されてもよく、このような投与は、注射または輸注を含み得る。好適な製剤は、滅菌または等張媒体中にウイルス、CAR、核酸、または細胞を含んでいてもよい。医薬および医薬組成物は、流体、例えばゲル形態(フォーム)などに製剤化されてもよい。流体製剤は、ヒトまたは動物の体の選択される領域への注射または輸注(例えばカテーテルを介した)による投与のために製剤化されてもよい。
【0190】
腫瘍溶解性ウイルスおよび/または免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、腫瘍内投与のために製剤化されてもよい。一部の実施態様において、本方法は、腫瘍溶解性ウイルスおよび/または免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスの腫瘍内投与を含んでいてもよい。
【0191】
CARを含む細胞および/または腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞は、静脈内投与のために製剤化されてもよい。一部の実施態様において、本方法は、CARを含む細胞および/または腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の静脈内投与を含んでいてもよい。
【0192】
本発明の開示の組合せの成分(例えば腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;がん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つのT細胞;本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞)の投与は、同時であってもよいし、または逐次的であってもよい。本発明の開示はまた、本発明の開示のOncAd、HDAd、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞および医薬組成物の同時または逐次投与も予期する。
【0193】
同時投与は、一緒に、例えば薬剤を含有する医薬組成物(すなわち複合製剤)として薬剤を投与すること、または互いの直後に、任意選択で同じ投与経路を介して、例えば同じ動脈、静脈または他の血管に投与することを指す。特定の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスおよび免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスは、複合製剤の形態で同時に投与してもよい。特定の実施態様において、同時投与のとき、2種またはそれより多くの薬剤を、異なる投与経路を介して投与してもよい。一部の実施態様において、同時投与は、同時に、または例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間もしくは48時間以内に投与することを指す。
【0194】
逐次投与は、薬剤の1種またはそれより多くを投与し、それに続き、所与の時間間隔の後、他の薬剤を別々に投与することを指す。2つの薬剤は、必ずしも同じ経路で投与されなくてもよいが、一部の実施態様において、そのような場合もある。時間間隔は、数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年などあらゆる時間間隔であってもよい。一部の実施態様において、逐次投与は、少なくとも10分、30分、1時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月のいずれかの時間間隔で隔てて投与することを指す。
【0195】
一部の実施態様において、処置は、他の治療または予防の介入、例えば化学療法、免疫療法、放射線療法、外科手術、ワクチン接種および/またはホルモン療法をさらに含んでいてもよい。このような他の治療または予防の介入は、本開示に包含される療法の前、その間および/またはその後に行ってもよく、他の治療または予防の介入の送達は、本開示の療法と異なる投与経路を介して行ってもよい。化学療法および放射線療法はそれぞれ、薬物での、または電離放射線(例えばX線またはγ線)を使用する放射線療法でのがんの処置を指す。薬物は、化学実体、例えば小分子の医薬、抗生物質、DNAインターカレー
ター、タンパク質阻害剤(例えばキナーゼ阻害剤)、または生物学的物質、例えば抗体、抗体フラグメント、核酸もしくはペプチドアプタマー、核酸(例えばDNA、RNA)、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質であってもよい。薬物は、医薬組成物または医薬として製剤化されてもよい。製剤は、1種またはそれより多くの薬物(例えば1種またはそれより多くの活性薬剤)を、1種またはそれより多くの医薬的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と共に含んでいてもよい。
【0196】
化学療法剤は、1つまたはそれより多くの投与経路、例えば非経口、静脈注射、経口、皮下、皮内または腫瘍内経路によって投与されてもよい。
化学療法は、処置計画に従って施すことができる。処置計画は、化学療法投与の予め決定されたタイムテーブル、計画、スキームまたはスケジュールであってもよく、このような計画は、医師または医療技術者が準備してもよく、処置を必要とする患者に適合するように調整してもよい。
【0197】
処置計画は、患者に投与される化学療法のタイプ;各薬物または放射線の用量(線量);投与間の時間間隔;各処置の長さ;処置猶予日があれば、その数および性質などの1つまたはそれより多くを指示するものであり得る。併用療法の場合、どのように各薬物を投与すべきかを指示する単一の処置計画が提供されてもよい。
【0198】
化学療法薬および生物製剤は、アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イフォスファミド;プリンまたはピリミジン代謝拮抗物質、例えばアザチオプリンまたはメルカプトプリン;アルカロイドおよびテルペノイド、例えばビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン)、ポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、タキサン、例えばパクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばI型トポイソメラーゼ阻害剤であるカンプトテシン、イリノテカン、およびトポテカン、またはII型トポイソメラーゼ阻害剤であるアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド;抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン(anthracyline)抗生物質)、例えばダクチノマイシン、ドキソルビシン(Adriamycin(商標))、エピルビシン、ブレオマイシン、ラパマイシン;抗体ベースの薬剤、例えば抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体、抗CTLA-4、抗4-1BB、抗GITR、抗CD27、抗BLTA、抗OX43、抗VEGF、抗TNFα、抗IL-2、抗GpIIb/IIIa、抗CD-52、抗CD20、抗RSV、抗HER2/neu(erbB2)、抗TNF受容体、抗EGFR抗体、モノクローナル抗体または抗体フラグメント、例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アブシキシマブ、ダクリズマブ、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ(Mabthera(登録商標))、パリビズマブ、トラスツズマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ニモツズマブ;EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ、セツキシマブおよびゲフィチニブ;抗血管形成剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標));がんワクチン、例えばシプリューセル-T(Provenge(登録商標))から選択することができる。
【0199】
さらなる化学療法薬は、13-cis-レチノイン酸、2-クロロデオキシアデノシン、5-アザシチジン5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アブラキサン、Accutane(登録商標)、Actinomycin-D Adriamycin(登録商標)、Adrucil(登録商標)、Afinitor(登録商標)、Agrylin(登録商標)、Ala-Cort(登録商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、Alkaban-AQ(登録商標)、Alkeran(登録商標)、オールトランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アナグレ
ライド、Anandron(登録商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、Aranesp(登録商標)、Aredia(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Aromasin(登録商標)、Arranon(登録商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA Avastin(登録商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、BEXXAR(登録商標)、ビカルタミド、BiCNU、Blenoxane(登録商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、Busulfex(登録商標)、ロイコボリンカルシウム、Campath(登録商標)、Camptosar(登録商標)、カンプトテシン-11、カペシタビン、Carac(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、Casodex(登録商標)、CC-5013、CCI-779、CCNU、CDDP、CeeNU、Cerubidine(登録商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、シトロボラム因子、クラドリビン、コルチゾン、Cosmegen(登録商標)、CPT-11、シクロホスファミド、Cytadren(登録商標)、Cytarabine Cytosar-U(登録商標)、シトキサン(登録商標)、Dacogen、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標)、デカドロン、デシタビン、Delta-Cortef(登録商標)、Deltasone(登録商標)、デニロイキン、ジフチトクス、DepoCyt(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、デキサゾン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ジオデックス(Diodex)、ドセタキセル、Doxil(登録商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、Droxia(商標)、DTIC、DTIC-Dome(登録商標)、Duralone(登録商標)、Eligard(商標)、Ellence(商標)、エロキサチン(商標)、Elspar(登録商標)、Emcyt(登録商標)、エピルビシン、エポエチンアルファ、アービタックス、エルロチニブ、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチオール(Ethyol)、Etopophos(登録商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、Eulexin(登録商標)、エベロリムス、Evista(登録商標)、エキセメスタン、Faslodex(登録商標)、Femara(登録商標)、フィルグラスチム、フロクシウリジン、Fludara(登録商標)、フルダラビン、Fluoroplex(登録商標)、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ホリニン酸、FUDR(登録商標)、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、Gleevec(商標)、Gliadel(登録商標)ウェハー、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Herceptin(登録商標)、ヘキサドロール、Hexalen(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、Hycamtin(登録商標)、Hydrea(登録商標)、Hydrocort Acetate(登録商標)、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンリン酸エステル、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、Idamycin(登録商標)、イダルビシン、Ifex(登録商標)、IFN-アルファ、イフォスファミド、IL-11、IL-2、メシル酸イマチニブ、イミダゾールカルボキサミド、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ-2b(PEGコンジュゲート)、インターロイキン-2、インターロイキン-11、Intron A(登録商標)(インターフェロンアルファ-2b)、Iressa(登録商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イキサベピロン、Ixempra(商標)、キドロラーゼ(Kidrolase)、Lanacort(登録商標)、ラパチニブ
、L-アスパラギナーゼ、LCR、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、Leukine(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、Leustatin(商標)、リポソームAra-C、Liquid Pred(登録商標)、ロムスチン、L-PAM、L-サルコリシン、Lupron(登録商標)、Lupron Depot(登録商標)、Matulane(登録商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、Medralone(登録商標)、Medrol(登録商標)、Me
gace(登録商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、Mesnex(商標)、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メチルプレドニゾロン、Meticorten(登録商標)、マイトマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロン、M-Prednisol(登録商標)、MTC、MTX、Mustargen(登録商標)、ムスチン、Mutamycin(登録商標)、Myleran(登録商標)、Mylocel(商標)、Mylotarg(登録商標)、Navelbine(登録商標)、ネララビン、Neosar(登録商標)、Neulasta(商標)、Neumega(登録商標)、Neupogen(登録商標)、Nexavar(登録商標)、Nilandron(登録商標)、ニルタミド、Nipent(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、Novaldex(登録商標)、Novantrone(登録商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、Oncospar(登録商標)、Oncovin(登録商標)、Ontak(登録商標)、Onxal(商標)、オプレルベキン、Orapred(登録商標)、Orasone(登録商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、Panretin(登録商標)、Paraplatin(登録商標)、Pediapred(登録商標)、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG-INTRON(商標)、PEG-L-アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、Platinol(登録商標)、Platinol-AQ(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、Prelone(登録商標)、プロカルバジン、PROCRIT(登録商標)、Proleukin(登録商標)、Prolifeprospan 20 with Carmustine Implant Purinethol(登録商標)、ラロキシフェン、Revlimid(登録商標)、Rheumatrex(登録商標)、Rituxan(登録商標)、リツキシマブ、Roferon-A(登録商標)(インターフェロンアルファ-2a)、Rubex(登録商標)、塩酸ルビドマイシン、Sandostatin(登録商標)、Sandostatin LAR(登録商標)、サルグラモスチム、Solu-Cortef(登録商標)、Solu-Medrol(登録商標)、ソラフェニブ、SPRYCEL(商標)、STI-571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、Sutent(登録商標)、タモキシフェン、Tarceva(登録商標)、Targretin(登録商標)、Taxol(登録商標)、Taxotere(登録商標)、Temodar(登録商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、Thalomid(登録商標)、TheraCys(登録商標)、チオグアニン、Thioguanine Tabloid(登録商標)、チオホスファミド、Thioplex(登録商標)、チオテパ、TICE(登録商標)、Toposar(登録商標)、トポテカン、トレミフェン、Torisel(登録商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、Treanda(登録商標)、トレチノイン、Trexall(商標)、Trisenox(登録商標)、TSPA、TYKERB(登録商標)、VCR、Vectibix(商標)、Velban(登録商標)、Velcade(登録商標)、Vepesid(登録商標)、Vesanoid(登録商標)、Viadur(商標)、Vidaza(登録商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、Vincasar Pfs(登録商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM-26、ボリノスタット、VP-16、Vumon(登録商標)、Xeloda(登録商標)、Zanosar(登録商標)、Zevalin(商標)、Zinecard(登録商標)、Zoladex(登録商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザ、Zometa(登録商標)から選択され得る。
【0200】
本発明の開示の実施態様において、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸/ウイルスが採用され、本方法は、酵素のためのプロドラッグ基質と共に投与することをさらに含んでいてもよい。プロドラッグは、非毒性因子の細胞傷害性の形態への変換を触媒することが可能な酵素をコードする核酸/ウイルス
の投与と同時に投与してもよいし、または逐次的に投与してもよい。
【0201】
一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがチミジンキナーゼをコードする場合、プロドラッグは、ガンシクロビル(GCV)、アシクロビル(ACV)および/またはバラシクロビルから選択される。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがシトシンデアミナーゼをコードする場合、プロドラッグは、5-フルオロシトシン(5-FC)である。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがニトロレダクターゼをコードする場合、プロドラッグは、CB1954、ニトロ-CBI-DEIおよび/またはPR-104Aから選択される。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがシトクロムP450をコードする場合、プロドラッグは、オキサアザホスホリン(例えばシクロホスファミドまたはイフォスファミド)である。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがカルボキシペプチダーゼG2をコードする場合、プロドラッグは、ナイトロジェンマスタードベースの薬物(例えばCMDAまたはZD2767P)である。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがプリンヌクレオシドホスホリラーゼをコードする場合、プロドラッグは、6-メチルプリン2-デオキシリボシドおよび/またはフルダラビン(例えば6-メチルプリン-2’-デオキシリボシド(MeP-dR)、2-F-2’-デオキシアデノシン(F-dAdo)またはアラビノフラノシル-2-F-アデニンモノホスフェート(F-araAMP)である。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがホースラディッシュペルオキシダーゼをコードする場合、プロドラッグは、インドール-3-酢酸(IAA)である。一部の実施態様において、例えば核酸/ウイルスがカルボキシルエステラーゼをコードする場合、プロドラッグは、イリノテカンである。
【0202】
複数回の用量の本発明の開示の薬剤(例えばウイルス(OncAd、HdAd)、CAR、1つまたは複数の核酸、ベクター、細胞、組成物、組合せ、プロドラッグ)を提供することもできる。用量の1つまたはそれより多くまたは各々は、別の治療剤の同時または逐次投与を伴っていてもよい。
【0203】
複数回の用量は、予め決定された時間間隔で隔てられていてもよく、時間間隔は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくはそれより長い時間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくは31日、もしくは1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月のいずれかであるように選択してもよい。一例として、用量は、7、14、21または28日(プラスまたはマイナス3、2、または1日)ごとに1回与えてもよい。
【0204】
養子移入
本発明の開示の実施態様において、処置の方法は、免疫細胞の養子移入を含む。養子細胞移入(ACT)は、一般的に、典型的には細胞が単離される血液サンプルの採取によって対象から細胞(例えば免疫細胞)を得ることによるプロセスを指す。次いで細胞を、典型的には何らかの方法で処置または改変し、次いで同じ対象(養子移入は、自己細胞移入である)または異なる対象(養子移入は、異種細胞移入である)のいずれかに投与する。この処置の目的は、典型的には、対象に、特定の望ましい特徴を有する細胞の集団を提供すること、またはその対象において、このような特徴を有する細胞の頻度を増加させることを目的とする。本発明の開示において、養子移入は、対象に細胞または細胞の集団を導入する、および/または対象における細胞または細胞の集団の頻度を増加させる目的で実行することができる。
【0205】
一部の実施態様において、細胞が単離される対象は、改変された細胞が投与される対象
である(すなわち養子移入は、自己細胞移入である)。一部の実施態様において、細胞が単離される対象は、改変された細胞が投与される対象と異なる対象である(すなわち、養子移入は、異種細胞移入である)。
【0206】
T細胞の養子移入は、例えば、その全体が参照により組み入れられるKalosおよびJune 2013、Immunity 39(1):49~60に記載されている。NK細胞の養子移入は、例えば、その全体が参照により組み入れられるDavisら、2015、Cancer J. 21(6):486~491に記載されている。
【0207】
このような細胞は、例えば好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球、または単球であってもよい。リンパ球は、例えばT細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞または自然リンパ球系細胞(ILC)、またはそれらの前駆体であってもよい。一部の実施態様において、細胞は、T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+、CD4+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、CD3+、CD8+T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、Tヘルパー細胞(TH細胞)である。一部の実施態様において、T細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。一部の実施態様において、T細胞は、ウイルス特異的T細胞である。一部の実施態様において、T細胞は、EBV、HPV、HBV、HCVまたはsHIVに特異的である。
【0208】
一部の実施態様において、細胞は、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞である。したがって、一部の実施態様において、本方法は、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与することを含む。一部の実施態様において、本開示の方法は、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大すること、および腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与することを含む。
【0209】
一部の実施態様において、本方法は、
(a)対象から免疫細胞を単離すること;
(b)腫瘍溶解性ウイルスのペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下での培養によって免疫細胞を刺激することを含む方法によって、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成または拡大すること、および;
(c)腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与することを含む。
【0210】
一部の実施態様において、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を生産するための本方法の工程は、対象から血液サンプルを採取すること;血液サンプルからPBMCを単離すること;腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大すること(例えば、腫瘍溶解性ウイルスの抗原/ペプチドを含む/発現する細胞(例えばAPC)の存在下でPBMCを培養することによって);インビトロまたはエクスビボの細胞培養で腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること;腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を収集すること;腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞をアジュバント、希釈剤または担体と混合すること;改変された細胞を対象に投与することの1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。
【0211】
本発明の開示はまた、がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を投与することを含む、対象におけるがんを処置する方法も提供する。この本開示の特徴と関連して、一部の実施態様において、本方法は、加えて、がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を生産するための工程を含む。CARは、第1世代、第2世代または第3世代CARまたは後続の世代のC
ARであってもよい。CARは、例えば、1、2、3つ、またはそれより多くの共刺激ドメインを含んでいてもよい。
【0212】
一部の実施態様において、本方法は、本開示に係るCARを発現するかまたは含むように、対象から得られた少なくとも1つの細胞を改変すること、任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与することを含む。
【0213】
一部の実施態様において、本方法は、
(a)対象から少なくとも1つの細胞を単離すること;
(b)本発明の開示に係るCARまたは本発明の開示に係るCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、少なくとも1つの細胞を改変すること、
(c)任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および;
(d)改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与すること
を含む。
【0214】
一部の実施態様において、がん細胞抗原に特異的なCARを含む/発現する細胞は、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞である。一部の実施態様において、本方法は、本開示に係るCARを発現するかまたは含むように、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を改変すること、任意選択で、改変された腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を拡大すること、および改変された腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を対象に投与することを含む。
【0215】
一部の実施態様において、本方法は、
(a)対象から免疫細胞を単離すること;
(b)腫瘍溶解性ウイルスのペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下での培養によって免疫細胞を刺激することを含む方法によって、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成または拡大すること;
(c)本発明の開示に係るCARまたは本発明の開示に係るCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を改変すること、
(d)任意選択で、改変された腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を拡大すること、および;
(e)改変された腫瘍溶解性ウイルスに特異的な少なくとも1つの免疫細胞を対象に投与すること
を含む。
【0216】
本発明の開示に従って改変された少なくとも1つの細胞は、当業者に周知の方法に従ってCARを含む/発現するように改変してもよい。改変は、移入された核酸の永続的または一過性発現のための核酸移入を含んでいてもよい。本発明の開示に従って細胞を改変するために、あらゆる好適な遺伝子工学プラットフォームを使用することができる。細胞を改変するための好適な方法としては、例えばガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、DNAトランスフェクション、トランスポゾンベースの遺伝子送達およびRNAトランスフェクションなどの遺伝子工学プラットフォームの使用、例えば上記での参照により本明細書に組み入れられるMausら、Annu Rev Immunol(2014)32:189~225に記載されたようなものが挙げられる。
【0217】
一部の実施態様において、がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を生産するための本方法の工程は、対象から血液サンプルを採取すること;血液サンプルから、少なくとも1つの細胞を単離および/または拡大すること;
インビトロまたはエクスビボの細胞培養で少なくとも1つの細胞を培養すること;少なくとも1つの細胞を、本明細書に記載されるCARまたは本明細書に記載されるCARをコードする核酸に導入することによって、少なくとも1つの細胞を改変すること;少なくとも1つの改変された細胞を拡大すること;少なくとも1つの改変された細胞を収集すること;改変された細胞をアジュバント、希釈剤または担体と混合すること;改変された細胞を対象に投与することの1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。
【0218】
一部の実施態様において、本方法は、加えて、CARまたはCARをコードする核酸の発現を誘導/強化する細胞を処置することを含んでいてもよい。例えば、この核酸は、特定の薬剤での処置に応答して核酸からのCARの発現を誘導性上方調節するための制御エレメントを含んでいてもよい。一部の実施態様において、処置は、本開示に従って改変された細胞が投与された対象に薬剤を投与することによって、インビボでなされてもよい。一部の実施態様において、処置は、エクスビボまたはインビトロでの培養物中の細胞に薬剤を投与することによって、エクスビボまたはインビトロでなされてもよい。
【0219】
当業者は、例えば参照によりその全体が組み入れられるDaiら、2016 J Nat Cancer Inst 108(7):djv439への参照によって、本発明の開示に係る細胞の養子移入のための適切な試薬および手順を決定することができる。
【0220】
関連する形態において、本発明の開示は、改変された細胞を調製する方法であって、本発明の開示に係るCARまたは本発明の開示に係るCARをコードする核酸を、細胞に導入することによって、少なくとも1つの細胞を改変することを含む、上記方法を提供する。本方法は、好ましくはインビトロまたはエクスビボで実行される。
【0221】
組成物/生成物/キット
本発明の開示はまた、任意選択で単離された本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスも提供する。任意選択で単離された腫瘍溶解性ウイルスをコードする核酸も提供される。任意選択で単離された、腫瘍溶解性ウイルスを含む、または腫瘍溶解性ウイルスをコードする核酸を含む細胞も提供される。
【0222】
本発明の開示はまた、任意選択で単離された本明細書に記載される免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスも提供する。任意選択で単離されたウイルスをコードする核酸も提供される。任意選択で単離された、ウイルスを含む、またはウイルスをコードする核酸を含む細胞も提供される。
【0223】
本発明の開示はまた、任意選択で単離された、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)も提供する。任意選択で単離されたCARをコードする核酸も提供される。任意選択で単離された、CARを含む、またはCARをコードする核酸を含む細胞も提供される。
【0224】
本発明の開示はまた、本開示に係る腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、1つまたは複数の核酸、または細胞を含む組成物も提供する。
【0225】
腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、本発明の開示に係る1つまたは複数の核酸または細胞は、臨床用途のための医薬組成物として製剤化されてもよく、医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含んでいてもよい。本発明の開示の組合せは、単一の組成物で提供されてもよいし、または組合せの成分を含む複数の組成物として提供されてもよい。
【0226】
本発明の開示に従って、医薬的に有用な組成物の生産のための方法も提供され、このような生産方法は、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、1つまたは複数の核酸または細胞を単離すること;および/または本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、1つまたは複数の核酸または細胞を、医薬的に許容される担体、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合することから選択される1つまたはそれより多くの工程を含んでいてもよい。
【0227】
例えば、本発明の開示のさらなる形態は、がんの処置で使用するための医薬または医薬組成物を製剤化または生産する方法であって、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、1つまたは複数の核酸または細胞を、医薬的に許容される担体、アジュバント、賦形剤または希釈剤と混合することによって、医薬組成物または医薬を製剤化することを含む、上記方法に関する。
【0228】
本発明の開示はまた、本発明の開示に係る腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、核酸、細胞または組成物の1つまたはそれより多くを含むパーツのキットも提供する。
【0229】
一部の実施態様において、キットは、本開示に係る予め決定された量の腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、キメラ抗原受容体、1つまたは複数の核酸、または細胞または本発明の開示に係る組成物を有する少なくとも1つの容器を有していてもよい。キットは、本発明の開示の組合せの個々の成分を含有する容器を有していてもよいし、または本発明の開示の組合せの成分の組合せを含有する容器を有していてもよい。
【0230】
キットは、腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、CAR、核酸、細胞または組成物を、特定されたがんを処置するための患者の投与に関する説明書と共に提供することができる。腫瘍溶解性ウイルス、免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス、CAR、1つまたは複数の核酸、細胞または組成物は、腫瘍または血液への注射または輸注にとって好適になるように製剤化することができる。
【0231】
一部の実施態様において、キットは、本発明の開示に係る細胞を生産するための材料を含んでいてもよい。例えば、キットは、本発明の開示に係るウイルスまたはその抗原/ペプチド、CARまたは1つまたは複数の核酸を発現するかまたは含むように細胞を改変するための材料、または本発明の開示に係るウイルスまたはその抗原/ペプチドまたは1つまたは複数の核酸を細胞に導入するための材料を含んでいてもよい。キットは、腫瘍溶解性ウイルスに特異的な免疫細胞を生産するための材料を含んでいてもよく、例えば、キットは、1つまたはそれより多くの腫瘍溶解性ウイルスの抗原のペプミックスを含んでいてもよい。
【0232】
一部の実施態様において、キットは、予め決定された量の別の治療剤(例えば抗感染剤または化学療法剤)を有する少なくとも1つの容器をさらに含んでいてもよい。このような実施態様において、キットはまた、第2の医薬または医薬組成物を含んでいてもよく、その場合、がんのための組み合わされた処置が提供されるように、2種の医薬または医薬組成物は、同時に投与されてもよいし、または別々に投与されてもよい。また治療剤は、腫瘍または血液への注射または輸注にとって好適になるように製剤化することができる。
【0233】
配列同一性
2つまたはそれより多くのアミノ酸または核酸配列間のパーセント同一性を決定する目的のためのペアワイズおよび複数の配列アライメントは、当業者に公知の様々な方法で、
例えば、公共的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えば、ClustalOmega(Soding, J. 2005、Bioinformatics 21、951~960)、T-coffee(Notredameら、2000、J. Mol. Biol.(2000)302、205~217)、Kalign(Lassmann and Sonnhammer 2005、BMC Bioinformatics、6(298))およびMAFFT(KatohおよびStandley 2013、Molecular Biology and Evolution、30(4)772~780)ソフトウェアを使用し
て達成することができる。このようなソフトウェアを使用する場合、例えばギャップペナルティーおよび伸長ペナルティーに関して、デフォルトパラメーターを使用することが好ましい。
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
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【0244】
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【0259】
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【0267】
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【0271】
【0272】
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【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
本開示は、記載された形態および好ましい特徴の組合せを含み、ただしこのような組合せが明らかに容認できないかまたは明示的に回避される場合を除く。
本明細書で使用される章の見出しは、単に系統化する目的のためであり、記載された主題を制限するものとして解釈されないものとする。
【0278】
ここで本発明の開示の形態および実施態様を添付の図面を参照しながら一例として例示する。さらなる形態および実施態様は当業者には明らかであると予想される。本明細書で述べられた全ての文書は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0279】
本明細書にわたり、それに続く特許請求の範囲を含め、文脈上別の意味で解釈すべき場合を除き、言葉「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含むこ
と」などの変化形は、他のあらゆる整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外するのではなく、述べられた整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含することを示すと理解されるものとする。
【0280】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「
1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複
数形の指示対象を包含することに留意しなければならない。範囲は、本明細書において、「約」の1つの特定の値から、および/または「約」の別の特定の値までと表される場合がある。このような範囲が表される場合、別の実施態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、先行する「約」の使用によって値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施態様を形成することが理解されるものとする。
【0281】
核酸配列が開示される場合、それらの逆相補鎖も明示的に予期される。
図面の簡単な説明
ここで本開示の原理を例示する実施態様および研究を添付の図面を参照しながら論じる。
【図面の簡単な説明】
【0282】
【
図1A】
図1Aは、HER2特異的CARコンストラクトの例の概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、T細胞を形質導入してHER2特異的CAR-Tを生産するためのプロトコールの例の略図を示す。
【
図2】フローサイトメトリーによって決定された、示されたHER2-CARコンストラクトで形質導入したT細胞におけるHER2-CAR、CCR7、CD45ROおよびPD-1の発現を示すグラフである。
【
図3】フローサイトメトリーによって決定された抗HER2クローンE4CARコンストラクトでの形質導入後の、CD4およびCD8T細胞におけるHER2-CAR、CCR7、CD45RO、PD-1、LAG-3およびTIM-3の発現を示すグラフである。
【
図4A】
図4Aは、インビトロにおける、
51Cr放出アッセイによって決定された、MDA細胞の細胞致死(細胞表面でHER2を発現しない;陰性対照)、MDA-HER2細胞(細胞表面でHER2を発現する;陽性対照)、抗HER2クローンC5によるFaDuおよびSCC47細胞、E4およびF1のCAR-T細胞(または非形質導入(NT)細胞)を示す棒グラフである。
【
図4B】
図4Bは、フローサイトメトリーによって決定された、MDA細胞ではなくMDA-HER2細胞、FaDuおよびSCC47細胞でのHER2の発現を示すグラフを示す。
【
図5】インビトロにおける、ffLuc活性アッセイによって決定された、抗HER2クローンC5、E4およびF1のCAR-T細胞(または非形質導入(NT)細胞)による、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現するように遺伝子改変されたFaDuおよびSCC47細胞の細胞致死を示す棒グラフである。データは平均±SD(n=4)として提示される。
*P<0.001。
【
図6】
図6は、ICOSTAT腫瘍溶解性アデノウイルスコンストラクトの例の配列の概略図を示す。
【
図7A】MTS生存率アッセイによって決定された、示された濃度のウイルス粒子(Vp)で感染させた後の、A549細胞(
図7Aおよび7F)、FaDu細胞(
図7B)、SCC47細胞(
図7C)、WI-38細胞(
図7D)およびARPE-19細胞(
図7E)を致死させるICOSTAT腫瘍溶解性アデノウイルスの能力を示すグラフである。対照条件としてヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)が含まれる。
【
図8A】定量リアルタイムPCRによるコピー数分析によって決定された、複製し、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)の複製のためのヘルパーとして作用するICOSTAT腫瘍溶解性アデノウイルスの能力を示す棒グラフである。「Onc5/3AdicoSTAT」と命名されたウイルスがICOSTATである。「+HD」は、ICOSTATとHDAdとの重感染を示す。
【
図9A】細胞培養培地中、10ng/mlのIFNγの存在または非存在下におけるFaDu細胞(
図9A)におけるICOSTAT腫瘍溶解性アデノウイルスの複製を示すグラフである。
【
図9B】細胞培養培地中、10ng/mlのIFNγの存在または非存在下におけるSCC47細胞(
図9B)におけるICOSTAT腫瘍溶解性アデノウイルスの複製を示すグラフである。
【
図10A】
図10Aは、HDAdIL-12_TK_PDL1コンストラクトの概略図である。
【
図10B】
図10Bは、示されたヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)コンストラクトでトランスフェクトされた細胞によるIL-12p70の生産を示す棒グラフである。
【
図10C】
図10Cは、HDAdコンストラクトでトランスフェクトされた細胞による抗PD-L1ミニボディの生産を示すウェスタンブロットの写真である。
【
図10D】
図10Dは、HDAdコンストラクトでトランスフェクトされた細胞によるHSVチミジンキナーゼ生産を実証するウェルの写真である。
【
図11】GFPをコードするプラスミド(pGFP;陰性対照)、上記のTanoueらに記載されている抗PD-L1ミニボディをコードするプラスミド(pPDL1ミニTanoue)またはHDAdIL-12_TK_PD-L1によってコードされた抗PD-L1ミニボディをコードするプラスミド(pPDL1ミニ)でトランスフェクトされたA549細胞の連続希釈した細胞培養培地を使用した、組換えヒトPD-L1に対するPD-L1ミニボディ結合活性のELISA分析を示すグラフである。連続希釈した抗ヒトPD-L1抗体を陽性対照として使用した(PDL1 IgG)。
【
図12A】Onc5/2E1Δ24腫瘍溶解性アデノウイルスコンストラクトの例の配列(
図12A)の概略図である。
【
図12B】Onc5/2E1Δ24腫瘍溶解性アデノウイルスコンストラクトをコードするプラスミドの配列(
図12B)の概略図である。
【
図13A】MTS生存率アッセイによって決定された、示された濃度のウイルス粒子(Vp)で感染させた後の、FaDu細胞(
図13A)、SCC47細胞(
図13B)、WI-38細胞(
図13C)およびARPE-19細胞(
図13D)を致死させるOnc5/3Ad2E1A腫瘍溶解性アデノウイルスの能力を示すグラフである。対照条件としてヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)が含まれる。
【
図14】インビトロで、示されたCARコンストラクトで形質導入してからの示された日数細胞培養した後のHER2特異的CAR T細胞の数を示すグラフである。
【
図15A】
図15A~Cは、頭頸部扁平上皮癌の正位のFaDu細胞由来モデルにおける養子移入したルシフェラーゼを発現するT細胞の抗がん活性のインビボ分析の結果を示す画像およびグラフである。
図15Aと
図15Bは、細胞の輸注後の示された日における、マウス中の、ルシフェラーゼを発現する非形質導入T細胞(NT)、およびC5、F1またはA3HER2特異的CARを発現するルシフェラーゼを発現するT細胞を発現する細胞の数および配置を示す。
図15Cは、細胞の輸注後の示された日における、異なる処置グループ中の生存する対象のパーセンテージを示す。マウスにT細胞が投与されなかった陰性対照条件は(-)とも示される。
【
図16A】
図16A~Cは、インビボでのNSGマウスにおける養子移入したT細胞の分析の結果を示す画像およびグラフである。
図16Aは、細胞の輸注後の示された日における、マウス中の、ルシフェラーゼを発現する非形質導入T細胞(NT)、およびC5、F1またはA3HER2特異的CARを発現するルシフェラーゼを発現するT細胞を発現する細胞の数および配置を示す。
【
図16B】
図16Bは、細胞の輸注後の示された日における、異なるグループのマウスごとの腹側表面の総流束(1秒当たりの光子;p/秒)に関する測定を示す。
【
図16C】
図16Cは、0日目の体重のパーセンテージとして表される、細胞の輸注後の示された日における、異なる処置グループ中のマウスの体重を示す。
【
図17A】
図17A~Cは、インビボにおけるCAdtrioと養子移入したT細胞との組合せの抗がん活性の分析のための実験で使用されるF1HER2特異的CAR T細胞のフローサイトメトリーによる特徴付けの結果を示す散布図およびヒストグラムである。
図17Aは、F1.CAR-T集団中のCD4+T細胞およびCD8+T細胞のパーセンテージを示す。
【
図17B】
図17Bは、細胞表面でHER2 CARを発現する細胞のパーセンテージを示す。
【
図17C】
図17Cは、CCR7および/またはCD45ROを発現するF1.CAR-T集団中の細胞のパーセンテージを示す。
【
図18A】
図18A~Dは、頭頸部扁平上皮癌の正位のFaDu細胞由来モデルにおけるCAdtrioと養子移入したT細胞との組合せの抗がん活性のインビボにおける分析の結果を示す画像およびグラフである。
図18Aは、細胞の輸注後の示された日における、マウス中の、ルシフェラーゼを発現する非形質導入T細胞(NT)、およびF1HER2特異的CARを発現するルシフェラーゼを発現するT細胞を発現する細胞の数および配置を示す右上の図(Y軸は、総流束として標識される)は、「CAR T細胞注射後の日数」である。下の2つの図は、「CAdtrioの注射後の日数」である。
【
図18B】
図18Bは、CAdtrioの投与後の示された日における、異なるグループのマウスごとの腹側表面の総流束(1秒当たりの光子;p/秒)に関する測定を示す。
【
図18C】
図18Cは、0日目の体重のパーセンテージとして表される、CAdtrioの投与後の示された日における異なる処置グループ中のマウスの体重を示す。
【
図18D】
図18Dは、CAdtrio投与後の示された日における異なる処置グループ中の生存する対象のパーセンテージを示す。またマウスにCAdtrioまたはT細胞を投与しなかった陰性対照条件も(-)と示した。
【
図19A】
図19A~Cは、頭頸部扁平上皮癌の正位のFaDu細胞由来モデルにおける、異なる比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1および養子移入したHER2特異的CAR T細胞の組合せの抗がん活性のインビボにおける分析の結果を示す画像およびグラフである。
図19Aは、CAdtrioの投与後の示された日における、マウス中のルシフェラーゼを発現するFaDu細胞の数および配置を示す。
【
図19B】
図19Bは、CAdtrioの投与後の示された日における、異なるグループのマウスごとの腹側表面の総流束(1秒当たりの光子;p/秒)に関する測定を示す。
【
図19C】
図19Cは、0日目の体重のパーセンテージとして表される、CAdtrioの投与後の示された日における異なる処置グループ中のマウスの体重を示す。
【
図20A】
図20A~Dは、頭頸部扁平上皮癌の異所性FaDu細胞由来モデルにおけるOnc5/3Ad2E1Δ24およびHDAdIL-12_TK_PD-L1およびガンシクロビル(GCV)の組合せのインビボにおける分析の結果を示す棒グラフおよびグラフである。
図20Aと20Bは、GCV処置有りまたは無しで、感染後22日にOnc5/3Ad2E1Δ24およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(CAdtrio)の組合せを投与したマウスの腫瘍におけるOnc5/3Ad2E1Δ24(
図20A)およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(
図20B)のGAPDHで正規化したコピー数を示す。
【
図20B】
図20Aと
図20Bは、GCV処置有りまたは無しで、感染後22日にOnc5/3Ad2E1Δ24およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(CAdtrio)の組合せを投与したマウスの腫瘍におけるOnc5/3Ad2E1Δ24(
図20A)およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(
図20B)のGAPDHで正規化したコピー数を示す。
【
図20C】
図20Cは、GCV処置有りまたは無しで、CAdtrio注射後の示された日にOnc5/3Ad2E1Δ24およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(CAdtrio)の組合せを投与したマウスのmm
3での腫瘍体積を示す。
【
図20D】
図20Dは、GCV処置有りまたは無しで、CAdtrio注射後の示された日に得られた血液サンプルのELISA分析によって検出されたIL-12レベルを示す。
【
図21A】
図21A~Cは、ガンシクロビル(GCV)の存在または非存在下で培養した、異なるHDAdウイルスで感染させたがん細胞株における導入遺伝子発現の分析の結果を示す棒グラフおよび画像である。
図21Aは、ELISAによって決定された細胞培養上清中のIL-12のレベルを示す。
【
図21B】
図21Bは、ウェスタンブロットによって細胞培養上清中で検出された抗PD-L1ミニボディを示す。
【
図21C】
図21Cは、実験の最後におけるクリスタルバイオレット染色によって生存可能な細胞を示す。
【
図22A】
図22Aと
図22Bは、実施例9の実験で使用されたアデノウイルス特異的T細胞(AdVST)のフローサイトメトリーによる特徴付けの結果を示す散布図である。
図22Aは、AdVST集団中のCD4+T細胞およびCD8+T細胞のパーセンテージを示す。
【
図22B】
図22Bは、CCR7および/またはCD45ROを発現するAdVST集団中の細胞のパーセンテージを示す。
【
図23A】
図23A~Cは、実施例9の実験で使用されたF1.CARで形質導入したAdVSTのフローサイトメトリーによる特徴付けの結果を示す散布図およびヒストグラムである。
図23Aは、形質導入された集団中のCD4+T細胞およびCD8+T細胞のパーセンテージを示す。
【
図23B】
図23Bは、細胞表面でHER2 CARを発現する細胞のパーセンテージを示す。
【
図23C】
図23Cは、CCR7および/またはCD45ROを発現するF1.CAR-AdVST集団中の細胞のパーセンテージを示す。
【
図24A】
図24A~Dは、アデノウイルス特異的T細胞(AdVST)、F1.CARで形質導入したAdVST、F1.CARで形質導入したAdVSTとOnc5/3Ad2E1Δ24との組合せ、およびF1.CARで形質導入したAdVSTとOnc5/3Ad2E1Δ24+HDAdIL-12_TK_PD-L1(「CAdtrio」)との組合せの抗がん活性のインビボにおける分析の結果を示す画像およびグラフである。
図24Aは、CAdtrioの投与後の示された日における、マウス中のルシフェラーゼを発現するFaDu細胞の数および配置を示す。
【
図24B】
図24Bは、CAdtrioの投与後の示された日における、異なるグループのマウスごとの腹側表面の総流束(1秒当たりの光子;p/秒)に関する測定を示す。
図24Bに関して、
*P<0.04、
**P<0.07、
***P<0.02。
【
図24C】
図24Cは、0日目の体重のパーセンテージとして表される、CAdtrioの投与後の示された日における異なる処置グループ中のマウスの体重を示す。
図24Cに関して、
*P<0.01、
**P<0.04、
***P<0.02。
【
図24D】
図24Dは、CAdtrioの投与後の示された日における異なる処置グループ中の生存する対象のパーセンテージを示す。
図24Dに関して、
*P=0.03、
**P=0.02。
【発明を実施するための形態】
【0283】
番号付けした開示の記述
以下の番号付けした段落(パラグラフ)は、本発明の開示の特定の形態および実施態様を記載する:
1.(i)腫瘍溶解性ウイルス;(ii)免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルス;および(iii)がん細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【0284】
2.前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)である、パラグラフ1に記載の方法。
3.前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルス5(Ad5)に由来するパラグラフ1またはパラグラフ2に記載の方法。
【0285】
4.前記腫瘍溶解性ウイルスが、Ad5によってコードされたE1Aタンパク質と比較して低下したRbタンパク質への結合を呈示するE1Aタンパク質をコードする、パラグラフ1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0286】
5.前記腫瘍溶解性ウイルスが、アミノ酸配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したE1Aタンパク質をコードする、パラグラフ1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.前記腫瘍溶解性ウイルスが、アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるE1Aタンパク質をコードする、パラグラフ1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0287】
7.前記腫瘍溶解性ウイルスが、1つまたはそれより多くの転写因子のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む、パラグラフ1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0288】
8.前記腫瘍溶解性ウイルスが、STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む、パラグラフ1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)である、パラグラフ1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0289】
10.前記免疫調節因子が、エフェクター免疫応答のアゴニストまたは免疫調節応答のアンタゴニストから選択される、パラグラフ1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含む、パラグラフ1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0290】
12.免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスが、チミジンキナーゼをコードする核酸を含む、パラグラフ1~11のいずれか一項に記載の方法。
13.前記がん細胞抗原に特異的なCARを含む少なくとも1つの細胞が、T細胞である、パラグラフ1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0291】
14.前記CARが、HER2への特異的な結合が可能な抗原結合ドメインを含む、パラグラフ1~13のいずれか一項に記載の方法。
15.パラグラフ1~14のいずれか一項に記載の方法であって、前記CARが、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含む、方法。
【0292】
16.パラグラフ1~15のいずれか一項に記載の方法であって、前記CARが、
配列番号16に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号17に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号25に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号33に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH
を含む抗原結合ドメインを含む、方法。
【0293】
17.パラグラフ1~17のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法が、加えて、
(a)対象から少なくとも1つの細胞を単離すること;
(b)がん細胞抗原に特異的なCAR、またはがん細胞抗原に特異的なCARをコードする核酸を発現するかまたは含むように、少なくとも1つの細胞を改変すること、
(c)任意選択で、改変された少なくとも1つの細胞を拡大すること、および;
(d)改変された少なくとも1つの細胞を対象に投与すること
を含む、パラグラフ1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0294】
18.前記がんが、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される、方法。
19.アミノ酸配列の配列番号34を含むか、またはそれからなるE1Aタンパク質をコードする腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
【0295】
20.STAT1のための1つまたはそれより多くの結合部位を有する核酸を含む腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)。
21.配列番号51またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも60%の配列同一性を有する核酸配列を含む、パラグラフ20に記載のOncAd。
【0296】
22.IL-12および/またはアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)。
23.前記HDAdが、加えて、チミジンキナーゼをコードする核酸を含む、パラグラフ22に記載のHDAd。
【0297】
24.キメラ抗原受容体(CAR)であって、
LC-CRD1:配列番号10;
LC-CRD2:配列番号11;
LC-CRD3:配列番号12を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号13;
HC-CRD2:配列番号14;
HC-CRD3:配列番号15を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号18;
LC-CRD2:配列番号19;
LC-CRD3:配列番号20を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号21;
HC-CRD2:配列番号22;
HC-CRD3:配列番号23を含むVHドメイン;
または
LC-CRD1:配列番号26;
LC-CRD2:配列番号27;
LC-CRD3:配列番号28を含むVLドメイン;
および
HC-CRD1:配列番号29;
HC-CRD2:配列番号30;
HC-CRD3:配列番号31を含むVHドメイン
を含む抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【0298】
25.前記CARが、
配列番号16に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号17に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号24に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVL、および配列番号25に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH;
または
配列番号32に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるVL、および配列番号33に少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるもしくはそれから本質的になるVH
を含む抗原結合ドメインを含む、パラグラフ24に記載のCAR。
【0299】
26.パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、またはパラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸であって、任意選択で単離されたまたは人工の核酸である、上記核酸。
【0300】
27.パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、またはパラグラフ26に記載の核酸を含む細胞であって、任意選択で、細胞は人工で
あり、天然に見出されない、上記OncAd、HDAd、CARまたは細胞。
【0301】
28.パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、パラグラフ26に記載の核酸、またはパラグラフ27に記載の細胞、および医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントを含む医薬組成物。
【0302】
29.パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、パラグラフ26に記載の核酸、パラグラフ27に記載の細胞またはパラグラフ28に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
【0303】
30.がんを処置する方法で使用するための、パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、パラグラフ26に記載の核酸、パラグラフ27に記載の細胞またはパラグラフ28に記載の医薬組成物。
【0304】
31.がんを処置するための医薬品の製造における、パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、パラグラフ26に記載の核酸、パラグラフ27に記載の細胞またはパラグラフ28に記載の医薬組成物の使用。
【0305】
32.前記がんが、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される、パラグラフ29~31のいずれか一項に記載の方法、使用または使用。
【0306】
33.予め決定された量の、パラグラフ19~21のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、パラグラフ22またはパラグラフ23に記載のヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)、パラグラフ24またはパラグラフ25に記載のキメラ抗原受容体(CAR)、パラグラフ26に記載の核酸、パラグラフ27に記載の細胞またはパラグラフ28に記載の医薬組成物を含むパーツのキット。
【実施例0307】
以下の実施例において、発明者らは、新規のHER-2特異的CARおよびCAR-T細胞、腫瘍溶解性アデノウイルスおよびヘルパー依存性アデノウイルスの生成上の機能的な特徴付けを説明する。
【0308】
実施例1:HER2特異的CAR-T細胞
1.1 HER2特異的CARコンストラクトおよびCAR-T細胞の生成
HER2結合CARコンストラクトを調製した。簡単に言えば、抗HER2抗体クローンC5、E4、F1またはA3のためのscFv(すなわちリンカー配列によって一体化したVLドメインおよびVHドメイン)をコードするDNAを、5’シグナルペプチド(SP)、ならびにCD28膜貫通(TM)および細胞内ドメイン配列を3’CD3ζ細胞内ドメイン配列と共に含むCARコンストラクト骨格にクローニングした。
図1Aに、3つのHER2結合CARコンストラクトを模式的に示す。
【0309】
HER2特異的CAR-T細胞を、
図1Bで図表的に示したように生成した。簡単に言えば、フィコール密度勾配遠心分離によって、ヒトPBMCを血液サンプルから単離した。IL-2の存在下における抗CD3(OKT3)/抗CD28での刺激によって細胞を処理して、T細胞の活性化と増殖を促進し、細胞をHER2 CARコンストラクトをコードするレトロウイルスで形質導入した。100IU/mLの組換えヒトIL-2の存在下で培養することによりT細胞を拡大し、形質導入から6日後にこれを凍結した。HER2特異的CARコンストラクトで形質導入したT細胞をインビトロで培養することによって直ちに拡大した(例えば
図14を参照)。
【0310】
T細胞を融解し、100IU/mLの組換えヒトIL-2の存在下で5日間拡大し、インビトロ/インビボでの実験および表現型分析のために使用した。
1.2 HER2特異的CAR-T細胞の特徴付け
1.2.1 表面マーカーおよびHER2 CARの発現
抗HER2抗体クローンE4のscFvをコードするHER2 CARコンストラクトで形質導入したT細胞を、異なる細胞表面分子の発現に関してフローサイトメトリーによって特徴付けた。拡大したHER2特異的CAR T細胞を、蛍光標識したモノクローナル抗体で4℃で30分間染色した。生細胞/死細胞の識別を、染色に7AAD(BDファーミンジェン(BD Pharmingen))を含めることによって達成した。染色された細胞を、G
alliosフローサイトメーターおよびKaluzaソフトウェア(BDバイオサイエンス(BD Bioscience))を製造元の説明書に従って使用して分析した。
【0311】
図2および3に結果を示す。形質導入された細胞において、HER2-CARの強い表面発現が検出された(
図2)。
図3は、HER2(E4)-CARで形質導入したT細胞の特徴付けの結果を示す。CD3+細胞、CD4+細胞およびCD8+細胞を発現するHER2(E4)-CARは、非形質導入細胞と比較して、PD-1、LAG-3およびTIM-3の発現が増加し、CCR7の発現レベルが低下したことを示した(
図3)。
【0312】
1.2.2 細胞致死活性
細胞致死アッセイにおいて、インビトロでHER2を発現するがん細胞を致死させる能力に関して、HER2-CAR-T細胞を分析した。
【0313】
第1の実験で、HER2陰性MDA細胞株の細胞(陰性対照)、HER2を安定して発現するMDA細胞(MDA-HER2;陽性対照)、咽頭扁平上皮癌細胞株FaDuまたは頭頸部扁平上皮癌細胞株SCC47細胞をクロム-51(
51Cr)で標識し、非形質導入T細胞(NT)または示されたCARを発現するHER2-CAR-T細胞と、20:1のエフェクター:標的細胞の比率で4時間共培養した。遠心分離の後、液体シンチレーションカウンターを使用して細胞培養培地中の
51Crレベルを計数した。
図4Aに結果を示す。HER2-CAR-T細胞は、HER2を発現するがん細胞を致死させることが示された。この実験を10:1のエフェクター:標的細胞の比率を使用して実行したところ、類似の結果が得られた。
【0314】
MDA-HER2、FaDuおよびSCC47におけるHER2の発現を、フローサイトメトリーによって確認した。簡単に言えば、蛍光標識したモノクローナル抗HER2抗体またはアイソタイプ対照抗体で、細胞を4℃で30分間染色した。生細胞/死細胞の識別を、染色に7AAD(BDファーミンジェン)を含めることによって達成した。染色された細胞を、GalliosフローサイトメーターおよびKaluzaソフトウェア(BDバイオサイエンス)を製造元の説明書に従って使用して分析した。
図4Bに結果を示す。MDA細胞はHER2を発現しないが、MDA-HER2、FaDuおよびSCC47はHER2を発現することが確認された。
【0315】
別の実験において、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現するように遺伝子改変されたFaDuおよびSCC47細胞を24-ウェルプレートのウェルにシーディングし、HER2(C5)-CAR-T細胞、HER2(E4)-CAR-T細胞、またはHER2(F1)-CAR-T細胞と、1:5のエフェクター:標的細胞の比率で3日間共培養し、プレートリーダー(ライフテクノロジーズ(Life Technologies))を使用してf
fLuc活性を測定した。
図5に結果を示す。HER2-CAR-T細胞は、ffLuc活性(相対発光量、RLU)の低減によって証明されたように、HER2を発現するがん細胞を致死させることが示された。1:20のエフェクター:標的細胞の比率を使用して実験を実行したところ、類似の結果が得られた。
【0316】
実施例2:OncAdコンストラクト
2.1 OncAdコンストラクトの生成
組換えDNA技術を使用して、腫瘍溶解性アデノウイルスをコードする新規のコンストラクトを調製する。特定の実施態様において、OncAdは、公知のウイルスの改変で生産される。例えば、アデノウイルス5由来のE1Aタンパク質をコードする領域、例えばRbタンパク質との結合に関与する配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したものは、同様に配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したアデノウイルス2由来のE1Aタンパク質をコードする配列で置き換えられる。
【0317】
図6に示されるICOSTATを、例えばRojasら、2010 Mol Ther 18 1960~1971で開示されたICOVIR15から生産した。簡単に言えば、転写因子E2Fのための結合部位の8つのコピーをコードするICOVIR15の領域を、転写因子STAT1のための結合部位の8つのタンデムコピーをコードする領域で置き換えた。配列番号51にICOSTATの配列を示す。
【0318】
組換えDNA技術を使用することによって、配列番号55に示され、
図12で模式的に表されたOnc5/3Ad2E1Δ24(本明細書では、「Onc5/2E1Δ24」とも称される)も調製した。Onc5/3Ad2E1Δ24は、例えばFueyoら、2000 Oncogene 19:2~12(その全体が参照により組み入れられる;Onc5Δ24は、Fueyoらで
は「Δ24」とも称される)で開示されたOnc5Δ24と類似の構造を有するが、Onc5/3Ad2E1Δ24は、配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したアデノウイルスタイプ5(Ad5)由来のE1Aタンパク質ではなく、配列LTCHEACF(配列番号52)が欠失したアデノウイルスタイプ2(Ad2)由来のE1Aタンパク質をコードするという点で異なる。
【0319】
2.2 細胞致死活性
選択された腫瘍溶解性アデノウイルスまたは実施例2.1で生成したICOSTATのがん細胞を致死させる能力は、例えばMTSアッセイによって分析することができる。簡単に言えば、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞株A549細胞、FaDu細胞、SCC47細胞、または非がん性WI-38ヒト肺線維芽細胞またはARPE-19ヒト網膜色素上皮細胞の細胞を96-ウェルプレートのウェルにシーディングし、異なる量のヘルパー依存性、非複製アデノウイルス(HDAd;陰性対照として)、選択された腫瘍溶解性アデノウイルス(例えば実施例2.1に記載されるOnc5/3Ad2E1Δ24)、または上記の実施例2.1に記載されるICOSTATで感染させた。
【0320】
細胞は、例えば4日間培養してもよく、次いで各ウェルにMTS試薬(プロメガ(Promega))を添加して、細胞を37℃で2時間インキュベートしてもよい。生細胞は、プレ
ートリーダーを用いて吸光度を490nmで測定することによって分析することができる。読み取り値は、各タイプの未処理細胞に対する読み取り値(すなわち未処理細胞=10
0%の細胞生存率)を使用して正規化してもよく、細胞を含まないウェルが0%とみなされることになる。
【0321】
特定の実施態様において、選択された腫瘍溶解性ウイルスは、用量依存性の方式でがん細胞を致死させることができる。選択された腫瘍溶解性ウイルスはまた、具体的な実施態様において、がん性細胞のウイルスによる致死のレベルと比較して、それより低いレベルの非がん性細胞、例えばWI-38やARPE-19細胞の細胞致死も示す。
【0322】
図7A~7Fは、ICOSTATは、用量依存性の方式でがん細胞(すなわちA549、FaDuおよびSCC47細胞)を致死させることができることを示し(
図7A~7Cおよび7F)、がん性細胞の致死のレベルと比較して、それより低いレベルの非がん性細胞WI-38およびARPE-19細胞の細胞致死を示す(
図7Dおよび7E)。
【0323】
図13A~13Dは、Onc5/3Ad2E1Δ24は、用量依存性の方式でがん細胞(すなわちFaDuおよびSCC47細胞)を致死させることができることを示し(
図13Aおよび13B)、がん性細胞の致死のレベルと比較して、それより低いレベルの非がん性のWI-38およびARPE-19細胞の細胞致死を示す(
図13Cおよび13D)。
【0324】
2.3 ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)を助ける能力
選択された腫瘍溶解性アデノウイルスまたは実施例2.1で生成したICOSTATの、ヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)の複製を補助する能力は、がん細胞をOncoAdとHDAdとで共感染させ、ウイルスコピー数を決定することによって分析することができる。簡単に言えば、FaDuまたはSCC47細胞を24-ウェルプレートで平板培養し、HDAd細胞単独で、またはOncAd+HDAdで(1:10のOncAd:HDAdの比率で)、HDAd細胞1個当たり10個のウイルス粒子で感染させた。細胞を感染後48時間で回収し、DNAを抽出し、バイオ・ラッドiQ5リアルタイムPCR検出システム(バイオ・ラッド(Bio-Rad))、およびアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)SYBRグリーンPCRマスターミックス(ライフ・テクノロジー
ズ)を使用した定量リアルタイムPCR(95℃で10分、次いで95℃で10秒、60℃で15秒、および72℃で30秒を45サイクル)によって、HDAdおよびOnc.Adベクターコピーの両方を分析する。GAPDHに関して検出されたコピー数を使用してコピー数を正規化する。
【0325】
特定の実施態様において、選択された腫瘍溶解性ウイルスは、それ自身とHDAdを十分に複製することができる。
図8Aおよび8Bは、ICOSTAT(図では「Onc5/3AdicoSTAT」と命名)が、それ自身(
図8A)とHDAd(
図8B)を複製できることが見出されたことを示す。
【0326】
2.4 がん細胞におけるICOSTAT複製へのIFNγの作用
ICOSTAT OncAd複製へのIFNγ処置の作用を分析した。簡単に言えば、FaDuおよびSCC47細胞を24-ウェルプレートで平板培養し、10vp/細胞の選択された腫瘍溶解性ウイルスまたはicoSTATで細胞を感染させ、感染後3時間、細胞培養培地を、10ng/mLの組換えIFNγ含有または非含有の培地で感染後3時間で交換し、細胞培養培地を、ここでも感染後24および48時間で、10ng/mLの組換えIFNγを含有/非含有の新鮮な培地で交換する。感染後3、24、48および72時間で細胞を回収し、DNAを細胞から抽出し、ウイルスコピー数を定量リアルタイムPCRによって分析し、GAPDHに関して検出されたコピー数を使用して正規化する。
【0327】
図9Aおよび9Bは、ICOSTATが、IFNγの存在または非存在下でFaDu細胞およびSCC47細胞中で複製することができたことを示す。
実施例3:ヘルパー依存性Ad(HDAd)コンストラクト
3.1 HDAdコンストラクトおよび生産
ヘルパー依存性アデノウイルスをコードする新規のコンストラクトを、組換えDNA技術を使用して調製した。
図10Aに、HDAdIL-12_TK_PD-L1と命名された得られたコンストラクトのコード配列を模式的に示す。HDAdIL-12_TK_PD-L1は、(i)ヒトIL-12p70(アルファおよびベータ鎖をコードする配列)、(ii)HAタグを含むHSV-1チミジンキナーゼ、および(iii)抗PD-L1ミニボディ(抗PD-L1クローンH12_glのCDRを含み、例えばWO2016111645A1に記載されている)のための発現カセットをコードする配列を含有する。3つのコード配列はそれぞれそれら自身のポリAシグナル配列を有する。
【0328】
CMVプロモーターによって駆動するEGFP導入遺伝子を含有するHDAd HDΔ28E4EGFPコンストラクト(HDAdeGFP)を、Farzadら、Oncolytics 2014 1:14008に記載されたようにして生産した。
【0329】
HDAd「HDIL12_PDL1」は、ヒトIL-12p70タンパク質およびYW243.55.S70由来の抗PD-L1ミニボディ(アテゾリズマブ)をコードする配列を含有する。このコンストラクトの抗PD-L1ミニボディは、ヒトIgG1のヒンジ、CH2およびCH3領域ならびにC末端HAタグと融合したYW243.55.S70のscFvからなる(例えばTanoueら、Cancer Res.(2017)77(8):2040~2051に記載される通り)。
【0330】
3.2 コードされたタンパク質の発現
プラスミドHDAdベクターでトランスフェクトされたがん細胞、および培地サンプルを収集して、トランスフェクトされた細胞の細胞培養培地中のIL-12p70および抗PD-L1ミニボディレベルをトランスフェクション後48時間で分析した。
【0331】
培地中のIL-12p70レベルを、BDサイトカインマルチプレックスビーズアレイシステム(BDバイオサイエンス)を製造元の説明書に従って使用して測定した。
図10Bに結果を示す。HDAdIL-12_TK_PD-L1コンストラクトでトランスフェクトされた細胞は、HDIL-12_PD-L1コンストラクトでトランスフェクトされた細胞より高いレベルのIL-12p70を生産することが見出された。
【0332】
細胞培養培地への抗PD-L1ミニボディの分泌を、抗HA抗体(HAタグを有するミニボディを検出するため)を使用したウェスタンブロット分析によって検出した。
図10Cは、HDAdIL-12_TK_PD-L1コンストラクトでトランスフェクトされた細胞が、細胞培養培地に抗PD-L1ミニボディを分泌したことを示す。
【0333】
別の実験において、異なるコンストラクトでトランスフェクトされた細胞の細胞培養培地を、トランスフェクション後8時間で、10ng/mlガンシクロビル(GCV)を含有する培地で交換した。次いで細胞培養培地を、24時間ごとに10ng/mlを含有する培地で交換し、7日後、ウェルをクリスタルバイオレット溶液で染色して、生存可能な細胞を明らかにした。
【0334】
図10Dに示した結果によれば、HDAdIL-12_TK_PD-L1コンストラクトでトランスフェクトされた細胞はチミジンキナーゼを発現することが確認される。
さらなる実験で、A549、FaDuまたはSCC47細胞(条件1つ当たりn=4ウェル)を、インビトロでHDAdIL-12_TK_PD-L1、HDAd_PD-L1
(例えばTanoueら、上記を参照)、またはeGFPをコードする対照HDAd(Farzadら、上記を参照)に感染させた。細胞は、ガンシクロビルの非存在下で48時間培養するか、または感染後8時間で培地を交換し、その後24時間ごとに10ng/mlガンシクロビルを含有する培地で交換するかのいずれかとした。
【0335】
細胞培養上清へのIL-12の分泌をELISAによって分析し、抗PD-L1ミニボディの分泌を抗HA抗体(抗PD-L1ミニボディは、C末端HAタグを含む)を使用したウェスタンブロットによって分析した。実験の最後に、ウェルをクリスタルバイオレット溶液で染色して、生存可能な細胞を明らかにした。
【0336】
図21A~21Cに結果を示す。分析された異なるがん細胞株におけるHDAdによってコードされた導入遺伝子の発現が確認された。
3.3 PD-L1に結合する抗PD-L1ミニボディの確認
HDAdIL-12_TK_PD-L1によってコードされた抗PD-L1ミニボディのPD-L1に結合する能力をELISAによって分析した。
【0337】
簡単に言えば、Immulon 2高結合96-ウェルプレート(VWR)を、500ng/ウェルの組換えヒトPD-L1(BioVision)でコーティングした。プレートを3
%のBSAを含有するPBS-Tでブロッキングした後、GFPをコードするプラスミド(pGFP;陰性対照)、上記のTanoueらに記載されている抗PD-L1ミニボディをコードするプラスミド(pPDL1ミニTanoue)またはHDAdIL-12_TK_PD-L1によってコードされた抗PD-L1ミニボディをコードするプラスミド(pPDL1ミニ)でトランスフェクトされたA549細胞の連続希釈した細胞培養培地を添加し、4℃で24時間インキュベートした。10μg/ウェルから始めて連続希釈した抗ヒトPD-L1抗体(BioLegend)を陽性対照として使用した(PDL1 IgG)。プレ
ートをPBS-Tで洗浄した後、HRP標識抗ヒトIgG(PD-L1ミニおよびPDL1ミニTanoueの場合)またはHRP標識抗マウスIgG(バイオ・ラッド;PD-L1 IgGおよびIso IgGの場合)を、検出のために添加し、室温で1時間インキュベートした。次いでプレートを展開し、テカン(Tecan)リーダー(テカン(TECAN))を使用して吸光度を450nmで測定した。
【0338】
図11に結果を示す。抗PD-L1抗体クローンH12のCDRを含む抗PD-L1ミニボディは、用量依存性の様式でヒトPD-L1に結合することが見出され、これは、上記のTanoueらで記載された抗PD-L1ミニボディによる結合の結合活性と比較して同等の(またはそれより大きい)結合活性であった。
【0339】
実施例4:インビボにおけるがん処置の分析
マウス異種移植片腫瘍モデルで、インビボで、(1)選択された腫瘍溶解性ウイルス+HDAdIL-12_TK_PD-L1+HER2-CAR-Tおよび(2)ICOSTAT+HDAdIL-12_TK_PD-L1+HER2-CAR-Tの組合せでの処置の抗がん作用を実証する。
【0340】
第1の実験において、PBS中1×106個のFaDu細胞をNSG雄マウスの皮下に注射する。12日後、1×108個のウイルス粒子(1)腫瘍溶解性ウイルスおよびHDAdIL-12_TK_PD-L1または(2)ICOSTAT+HDAdIL-12_TK_PD-L1を、1:20の比率のOncAd:HDAdで腫瘍内注射する。
【0341】
第2の実験において、0.5×106個のFaDu細胞をNSG雄マウスの正位に注射する。6日後、1×108個のウイルス粒子(1)腫瘍溶解性ウイルスおよびHDAdIL-12_TK_PD-L1または(2)ICOSTAT+HDAdIL-12_TK_
PD-L1を、1:20の比率のOncAd:HDAdで腫瘍内注射する。
【0342】
両方の実験において、ウイルス粒子投与の3日後、1×106個のHER2-CAR T細胞を静脈内投与する。
両方の実験において、対照条件は、以下に挙げる通りである:
【0343】
【0344】
腫瘍サイズをモニターし、腫瘍体積を、式:幅2×長さ×0.5を使用して計算する。
腫瘍溶解性ウイルス、HDAdIL-12_TK_PD-L1およびHER2 CAR-Tの組合せの使用(試験条件1)は、単独の薬剤のいずれかの使用(条件8、10または11)と比較して、または3つの薬剤のうち2つの使用(条件3、4および6)と比較して、改善された抗腫瘍作用を有することが見出される。
【0345】
同様に、ICOSTAT、HDAdIL-12_TK_PD-L1およびHER2 CAR-Tの組合せの使用(試験条件2)は、単独の薬剤のいずれかの使用(条件9、10または11)と比較して、または3つの薬剤のうち2つの使用(条件3、5および7)と比較して改善された抗腫瘍作用を有することが見出される。
【0346】
SCC47細胞およびA549細胞を使用して異種移植片腫瘍が確立される場合も類似の結果が観察される。
実施例5:インビボにおけるHER2特異的CAR-T細胞の抗がん活性の分析
HER2特異的CAR-T細胞の抗がん活性(上記の実施例1を参照)を、インビボで、頭頸部扁平上皮がんのFaDu細胞由来異種移植片モデルで調査した。
【0347】
簡単に言えば、0.5×106個のFaDu細胞をNSG雄マウスの正位に注射した。9日後、マウスに、1×106個のHER2-CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するように遺伝子改変されたT細胞、1×106個のC5、F1またはA3CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するT細胞を尾静脈を介して注射した。9日目にマウスにT細胞を注射しなかった実験を、対照条件として含めた。
【0348】
マウスのルシフェラーゼ活性(したがって投与されたT細胞の数および分布)、体重、生存を長期にわたりモニターした。D-ルシフェリンを腹膜内注射し(マウス1匹当たり1.5mg)、IVISイメージャー(キセノジェン(Xenogen))を使用して10分後
マウスを画像化することによって、ルシフェラーゼ活性をモニターした。
【0349】
図15Aおよび15Bは、ルシフェラーゼを発現するT細胞(すなわち非形質導入T細胞またはHER2特異的CAR-T細胞)の注射後の0、4、7、14、28、42、5
6および70日目に獲得した画像を示す(日は、ffLuc T細胞注射後の日数を指す)。全身注入されたT細胞が正位の腫瘍部位に移動したことが示された。HER2特異的CARを発現するように改変されなかったT細胞は、7日後、検出不可能であった。それに対して、HER2特異的CAR-T細胞は存続し、実験にわたり検出可能なままであった。
【0350】
図15Cは、実験経過にわたり異なる処置に供されたマウスの生存パーセンテージを示す。HER2特異的CAR-T細胞の投与は、生存を増加させることが見出された。
別個の実験において、NOD scidガンマ(NSG)マウスに、1×10
6個のHER2-CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するT細胞、または1×10
6個のC5、F1またはA3CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するT細胞を尾静脈を介して注射した。ルシフェラーゼ活性を上述したようにモニターし、長期にわたりマウスの体重もモニターした。
【0351】
図16A~16Cに実験の結果を示す。C5 CAR-T細胞は、NSGマウスにおいて非特異的に拡大することが見出された(
図16A)。HER2特異的CAR-T細胞が投与されたNSGマウスにおいて有意な体重の減少は観察されなかった(
図16C)。
【0352】
実施例6:インビボにおける腫瘍溶解性ウイルス、HDAdウイルスおよびHER2特異的CAR-T細胞の組合せの抗がん活性の分析
腫瘍溶解性ウイルス、HdAdおよびHERに特異的なCAR-T細胞療法の組合せの抗がん活性を、インビボで、頭頸部扁平上皮がんのFaDu細胞由来異種移植片モデルで調査した。
【0353】
簡単に言えば、0.5×106個のFaDu細胞をNSG雄マウスの正位に注射した。次いで6日後、マウスの1つのグループに、Onc5/3Ad2E1Δ24(実施例2.1に記載される)およびHDAdIL-12_TK_PD-L1(実施例3.1に記載される)の組合せを腫瘍内注射した(このOncAdおよびHdAdの組合せは、本明細書では「CAdtrio」と称される)。合計1×107個のウイルス粒子を、1:10の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1で投与した。
【0354】
3日後、マウスに、1×106個の、クローンF1に対応するHER2特異的CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するように操作されたT細胞を尾静脈を介して注射した。CAdtrioが投与されなかったマウスの対照グループに、1×106個のHER2-CARコンストラクトで形質導入されたホタルルシフェラーゼを発現するT細胞を尾静脈を介して注射し、さらなるマウスの対照グループにはCAdtrioを投与しなかったかまたはT細胞を注射しなかった。マウスのルシフェラーゼ活性、体重および生存を長期にわたりモニターした。
【0355】
実験で使用する前に、F1.CART細胞をフローサイトメトリーで特徴付けた。
図17A~17Cに結果を示す。この細胞は、72.5%のCD4+細胞およびCD8+細胞を含むことが見出された。この細胞の87%が、細胞表面でHER2 CARを発現することが決定された。細胞の39%がCCDR7+CD45RO+であり、細胞の59.2%がCCR7-CD45RO+であった。
【0356】
図18A~18Dに、インビボでがんを処置するための腫瘍溶解性ウイルス、HDAdウイルスおよびHER2特異的CAR-T細胞の組合せの治療効能を分析する実験の結果を示す。Onc5/3Ad2E1Δ24、HDAdIL-12_TK_PD-L1およびF1.CARTの組合せは、単独のF1.CART細胞での処置よりも生存を改善するこ
とが見出された。
【0357】
さらなる実験において、Onc5/3Ad2E1Δ24とHDAdIL-12_TK_PD-L1との2つの異なる比率を調査した。
簡単に言えば、0.5×106個のホタルルシフェラーゼを発現するように改変されたFaDu細胞をNSG雄マウスの正位に注射した。6日後、マウスに、以下を腫瘍内注射した:
(i)1:10の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1の、1×107個のCAdtrioのウイルス粒子;
(ii)1:20の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1の、1×107個のCAdtrioのウイルス粒子;
(iii)1:10の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1の、1×108個のCAdtrioのウイルス粒子;または
(iv)1:20の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1の、1×108個のCAdtrioのウイルス粒子。
【0358】
3日後、マウスに、1×106個のF1のCARコンストラクトで形質導入されたT細胞(ホタルルシフェラーゼを発現しない)を尾静脈を介して注射した。上述したようにルシフェラーゼ活性の分析によってがんを長期にわたりモニターし、マウスの体重もモニターした。
【0359】
図19A~19Cに実験の結果を示す。1:10の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1を投与したマウスは、一般的に、1:20の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1を投与したマウスより少ないルシフェラーゼを発現するFaDu細胞を有し、1×10
8個のCAdtrioのウイルス粒子を投与したマウスは、一般的に、1×10
7個のCAdtrioのウイルス粒子を投与したマウスより少ないルシフェラーゼを発現するFaDu細胞を有していた(
図19B)。
【0360】
実施例7:インビボにおける腫瘍溶解性ウイルス、HDAdウイルスおよびガンシクロビル(GCV)の組合せの抗がん活性の分析
腫瘍溶解性ウイルスおよびHdAd(チミジンキナーゼをコードする)(すなわちCAdtrio)とガンシクロビル(GCV)の組合せの抗がん活性を、インビボで、頭頸部扁平上皮がんのFaDu細胞由来異種移植片モデルで調査した。
【0361】
マウス脇腹にFaDu細胞を皮下注射することによって異所性のFaDu腫瘍を確立した。その後マウスに、1×108個のCAdtrioのウイルス粒子を1:10の比率のOnc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1で腫瘍内注射した。次いでマウスの1つのグループ(n=5)に、CAdtrio注射後の2、3、4、5、7、10、14、17およびの21日目に、10mg/kgのガンシクロビルを腹腔内注射した。
【0362】
2、7、14および21日目に血液サンプルをマウスから収集し、ELISAによってIL-12発現に関して分析した。腫瘍体積を実験にわたりモニターした。22日目に、定量リアルタイムPCR分析によって腫瘍から抽出されたDNAにおけるOnc.AdおよびHDAdベクターのコピー数を決定した、GAPDHに関して検出されたコピー数を使用して正規化した。
【0363】
図20A~20Dに実験の結果を示す。22日目において、ガンシクロビル(GCV)処置は、Onc.Adベクターコピー数に有意に影響を与えなかったが(
図20A)、H
DAdベクターコピー数を有意に減少させた(
図20B)。GCV処置も腫瘍制御を改善することが見出されたが(
図20C)、血液中のIL-12のレベルに有意に影響を与えなかった(
図20D)。
【0364】
実施例8:腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞およびHERに特異的なCARを発現する腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞の生成
8.1 腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞の生成および特徴付け
アデノウイルス特異的T細胞(AdVST)および活性化T細胞(ATC)を以下のように調製した。
【0365】
抗CD3(クローンOKT3)および抗CD28アゴニスト抗体を、0.5mlの1:1000希釈の1mg/ml抗体の添加によって組織培養プレートのウェル上にコーティングし、37℃で2~4時間、または4℃で一晩インキュベートした。
【0366】
PBMCを、標準的なフィコール-パック方法に従って健康なドナーから得られた血液サンプルから単離した。
ATC:
1×106個のPBMC(2mlの細胞培養培地中)を、10ng/mlのIL-7および5ng/mlのIL-15が補充されたCTL細胞培養培地(50%アドバンストRPMI、50%クリック培地、10%FBS、1%グルタマックス(Glutamax)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有)中の抗CD3/CD28アゴニスト抗体でコーティングされたプレート上で培養することによって刺激した。細胞を37℃、5%CO2雰囲気中で維持した。次の日、1mlの細胞培養培地を20ng/mlのIL-7および10ng/mlのIL-15を含有する新鮮なCTL培地で交換した。
【0367】
ATCを培養中に維持し、その後回収し、実験で使用するかまたは5日目から7日目の間に低温保存した。
AdVST:
1×106個のPBMC(2mlの細胞培養培地中)を、10ng/mlのIL-7および100ng/mlのIL-15が補充されたCTL細胞培養培地中の抗CD3/CD28アゴニスト抗体でコーティングされたプレート上で培養することによって刺激した。
【0368】
20μlの200倍希釈のアデノウイルス特異的ヘキソンペプミックス(JPTカタログ番号PM-HAdV3)またはペントンペプミックス(JPTカタログ番号PM-HAdV5)をウェルに添加した。細胞を、5%CO2雰囲気中、37℃で維持した。48時間後、細胞にCTL培地をフィードして、10ng/mlのIL-7および100ng/mlのIL-15の最終濃度までIL-7およびIL-15を添加した。
【0369】
8.2 CARを発現する腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞の生成
3日目に、10ng/mlのIL-7および100ng/mlのIL-15を含有するCTL細胞培養培地中0.125×106個の細胞/mlの濃度でAdVSTを再懸濁した。
【0370】
PBSで1:100に希釈したレトロネクチン(クロンテック(Clontech))を37℃で2~4時間、または4℃で一晩インキュベートすることによって、レトロネクチンでコーティングされたプレートを調製した。ウェルをCTL培地で洗浄し、HER2特異的CARレトロウイルスの1mlのレトロウイルス上清をウェルに添加し、プレートを2000gで1.5時間遠心分離した。遠心分離工程の最後に、レトロウイルスの上清を吸引し、プレートのウェルに2mlのAdVST懸濁液(すなわち0.25×106個の細胞)を添加した。プレートを400gで5分間遠心分離し、5%CO2雰囲気中、37℃でイ
ンキュベートした。
【0371】
48時間後(すなわち6日目)、細胞培養培地を吸引し、10ng/mlのIL-7および100ng/mlのIL-15を含有するCTL細胞培養培地で交換した。
9日目に、細胞を回収し、実験で使用するかもしくは低温保存し、または第2の刺激に供してCARを発現するAdVSTを拡大した(実施例8.3を参照)。
【0372】
8.3 AdVSTおよびCAR-AdVSTの拡大
AdVSTおよびCARを発現するAdVSTを、要求に応じて、さらなる刺激によって以下のように拡大した。
【0373】
ペプミックスでパルスした自己ATC をAPCとして使用し、K562cs細胞(例えばNgoら、J Immunother.(2014)37(4):193~203を参照)を共刺激細胞として使用
した。刺激培養におけるAdVSTまたはCAR-AdVST:ATC:K562cs細胞の最終的な比率は、1:1:3~5であった。
【0374】
AdVSTまたはCAR-AdVSTを、CTL培地中0.2×106個の細胞/mlの濃度に再懸濁した。
1×106個のATCを、10μlの200倍希釈のアデノウイルス特異的ヘキソンペプミックス(JPTカタログ番号PM-HAdV3)またはペントンペプミックス(JPTカタログ番号PM-HAdV5)と共に37℃で30分間インキュベートした。その後ATCを30Gyで放射線照射し、回収した。3~5×106個のK562cs細胞を100Gyで放射線照射された。
【0375】
次いでATCおよびK562cs細胞を5mlのCTL培地の総体積で混合し、20ng/mlのIL-7および200ng/mlのIL-15を添加し、1mlのこの混合物を24ウェルプレートのウェルに添加し、1mlのAdVST懸濁液またはCAR-AdVST懸濁液をウェルに添加した。
【0376】
細胞を、5%CO2雰囲気中、37℃で維持した。3~4日後、必要に応じて細胞培養培地を添加し、6~7日後、拡大したAdVSTまたはCAR-AdVSTである細胞を実験で使用するために回収した。
【0377】
実施例9:インビボにおける腫瘍溶解性ウイルス、HDAd、腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞およびCARを発現する腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞の組合せの抗がん活性の分析
腫瘍溶解性ウイルス、HDAd、腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞およびCARを発現する腫瘍溶解性ウイルス特異的T細胞の異なる組合せの抗がん活性を、インビボで、頭頸部扁平上皮がんのFaDu細胞由来異種移植片モデルで調査した。
【0378】
簡単に言えば、0.5×106個のホタルルシフェラーゼを発現するように操作されたFaDu細胞をNSG雄マウスの正位に注射した。6日後、マウスのグループに、以下を腫瘍内注射した:
(i)Onc5/3Ad2E1Δ24:HDAdIL-12_TK_PD-L1の1:10の比率の1×107個のCAdtrioのウイルス粒子;または
(ii)1×107個のウイルス粒子のOnc5/3Ad2E1Δ24。
【0379】
3日後、マウスに以下を尾静脈を介して注射した:
(a)1×106個のAdVST、または
(b)1×106個の抗HER2 CARクローンF1(実施例8に記載したように調
製された)で形質導入したAdVST。
【0380】
実験で使用する前、AdVSTおよびF1.CAR-AdVSTをフローサイトメトリーによって特徴付けた。
図22Aおよび22B、ならびに
図23A~23Cに分析の結果を示す。
【0381】
がんを上述したようにルシフェラーゼ活性の分析によって長期にわたりモニターし、マウスの体重もモニターした。
図24A~24Dに実験の結果を示す。最大レベルの腫瘍制御がCAdtrio+HER2特異的CARを発現するAdVSTの組合せで処置したマウス(すなわち処置グループ(i)(b))で観察された。
がんの治療のために使用される、IL-12およびアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)を含む医薬であって、
治療がさらに
(i)腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)、および
(ii)キメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞
の投与を含む、前記医薬。
(i)腫瘍溶解性アデノウイルス(OncAd)および(ii)IL-12およびアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)を含む、がんの治療のために使用される医薬であって、治療がさらに、キメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞を投与することを含む、前記医薬。
IL-12およびアンタゴニスト抗PD-L1抗体をコードする核酸を含むヘルパー依存性アデノウイルスが、さらにチミジンキナーゼをコードする核酸を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬。
前記腫瘍溶解性ウイルスが、Ad5によってコードされたE1Aタンパク質と比較して低下したRbタンパク質への結合を呈示するE1Aタンパク質をコードする、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬。
前記腫瘍溶解性ウイルスが、配列番号55またはコドン縮重の結果としての等価な配列に少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬。
前記がんが、頭頸部がん、上咽頭癌(NPC)、子宮頸癌(CC)、中咽頭癌(OPC)、胃癌(GC)、肝細胞癌(HCC)および肺がんから選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬。