(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082130
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】動物健康管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20230606BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057339
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2022577783の分割
【原出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
(57)【要約】 (修正有)
【課題】飼育者が動物の健康状態を早期に把握する動物健康管理システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】管理サーバが、飼い主端末及び医療機関端末のそれぞれに対して通信ネットワークを介して通信可能に接続して動物の健康を管理する定期検診システムであって、管理サーバは、動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、動物種に対応付けて動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、質問に対する回答を入力データとし、カルテ情報に含まれる疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、動物の動物種に対応する質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、飼い主端末から質問に対する回答を受信する回答受信部と、受信した回答を学習モデルに与えて、動物が罹りうる疾病又は怪我を推定する推定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の健康を管理するシステムであって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする動物健康管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、タイムラグに対応付けて、前記タイムラグ後までに罹患する前記疾病又は怪我を推定する前記学習モデルを記憶すること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、複数の前記タイムラグのそれぞれについて、前記学習モデルを記憶しており、
前記推定部は、最も短い前記タイムラグに対応する前記学習モデルを用いること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の動物健康管理システムであって、
前記推定部は、前記タイムラグのそれぞれに対応する前記学習モデルに前記回答を与えて前記疾病又は怪我を推定し、
最も短い前記タイムラグに対応する前記疾病又は怪我が存在する場合に、来院が必要と判断する来院要否判定部と、
前記来院要否とともに、他の前記タイムラフに対応する前記疾病又は怪我を飼い主端末に送信する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする動物健康管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
複数の前記質問の少なくとも一部には、前記動物を撮影した画像により回答をするべきものが含まれること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記疾病又は怪我に対応付けて介入情報を記憶する介入情報記憶部と、
推定された前記疾病又は怪我とともに、当該疾病又は怪我に対応する前記介入情報を飼い主端末に送信する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする動物健康管理システム。
【請求項7】
動物の健康を管理する方法であって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定するステップと、
を実行することを特徴とする動物健康管理方法。
【請求項8】
動物の健康を管理する方法であって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置に、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物健康管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介して問診を行うことが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に問診は患者が自覚症状を感じたときに行われる。しかしながら、獣医療においては飼育者が健康状態を把握する必要がある。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、飼育者が動物の健康状態を早期に把握することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、動物の健康を管理するシステムであって、前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定する推定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飼育者が動物の健康状態を早期に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の定期検診システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態の定期検診システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
動物の健康を管理するシステムであって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする動物健康管理システム。
[項目2]
項目1に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、タイムラグに対応付けて、前記タイムラグ後までに罹患する前記疾病又は怪我を推定する前記学習モデルを記憶すること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目3]
項目2に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、複数の前記タイムラグのそれぞれについて、前記学習モデルを記憶しており、
前記推定部は、最も短い前記タイムラグに対応する前記学習モデルを用いること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目4]
項目3に記載の動物健康管理システムであって、
前記推定部は、前記タイムラグのそれぞれに対応する前記学習モデルに前記回答を与えて前記疾病又は怪我を推定し、
最も短い前記タイムラグに対応する前記疾病又は怪我が存在する場合に、来院が必要と判断する来院要否判定部と、
前記来院要否とともに、他の前記タイムラフに対応する前記疾病又は怪我を飼い主端末に送信する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする動物健康管理システム。
[項目5]
項目1乃至4のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
複数の前記質問の少なくとも一部には、前記動物を撮影した画像により回答をするべきものが含まれること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目6]
項目1乃至5のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記疾病又は怪我に対応付けて介入情報を記憶する介入情報記憶部と、
推定された前記疾病又は怪我とともに、当該疾病又は怪我に対応する前記介入情報を飼い主端末に送信する送信部と、
をさらに備えることを特徴とする動物健康管理システム。
[項目7]
動物の健康を管理する方法であって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定するステップと、
を実行することを特徴とする動物健康管理方法。
[項目8]
動物の健康を管理する方法であって、
前記動物について診断された疾病又は怪我を含むカルテ情報を記憶するカルテ情報記憶部と、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、前記カルテ情報に含まれる前記疾病又は怪我を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置に、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて、前記動物が罹りうる前記疾病又は怪我を推定するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【0011】
<システムの概要>
以下、本発明の一実施形態に係る定期検診システムについて説明する。本実施形態の定期検診システムは、動物の定期検診を支援しようとするものである。
【0012】
本実施形態の定期検診システムは、獣医療機関側からペット等の動物の飼い主に対して定期的な問診を行うことにより、動物の健康状態、とくに来院の要否(トリアージ)を判断しようとするものである。本実施形態では、AIを用いてトリアージを行うことができる。AIは、来院の要否を分類する分類器とすることができる。本実施形態では、AIは、カルテ情報に含まれている疾病(怪我を含む。以下同じ。)の診断を教師データとし、問診の回答を入力データとして学習を行うことができる。これにより、問診の回答と疾病との関係を学習することができ、当該学習結果の学習モデルを用いて罹りうる疾病を判定することが可能となり、これに応じて来院要否を判定することができる。また、本実施形態の定期検診システムでは、AIの学習にあたり動物種を入力データとして与えることができる。また、AIの学習にあたり、飼い主が動物の特定部位を撮影した画像を入力データとして与えることができる。
【0013】
図1は、本実施形態の定期検診システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の定期検診システムは、管理サーバ20を含んで構成される。管理サーバ20は、飼い主端末10および医療機関端末30とのそれぞれに対して通信ネットワーク40を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク40は、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0014】
飼い主端末10は、動物の介護者(飼い主または世話をしている人)が操作するコンピュータである。飼い主端末10は、たとえば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどである。飼い主端末10は、カメラ(不図示)を備え、撮影が可能となっていることを想定する。
【0015】
医療機関端末30は、獣医療機関での獣医療関係者(動物病院の看護師や医師などが)が操作するコンピュータである。医療機関端末30は、たとえば、タブレットコンピュータである。医療機関端末30は、たとえば、スマートフォンやパーソナルコンピュータなど、任意のコンピュータとすることができる。
【0016】
管理サーバ20は、定期的な問診を行い、動物患者の来院要否を判断するコンピュータである。管理サーバ20は、たとえばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現される仮想コンピュータとしてもよい。
【0017】
図2は、管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。後述する管理サーバ20の各機能部は、CPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ20の各記憶部は、メモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0018】
<管理サーバ20のソフトウェア構成>
図3は、管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ20は、問診送信部211、回答受信部212、疾病推定部213、来院要否判定部214、来院要否送信部215、来院要否取得部215、学習処理部216、飼い主情報記憶部231、動物情報記憶部232、質問記憶部233、問診記憶部234、回答履歴記憶部235、学習モデル記憶部237、カルテ情報記憶部238、介入情報記憶部239を備える。
【0019】
==記憶部==
飼い主情報記憶部231は、獣医療機関を受診する動物(患者動物)の飼い主に関する情報(以下、飼い主情報という。)を記憶する。飼い主情報には、飼い主を特定する飼い主ID、氏名、住所、連絡先を含む。氏名、住所、連絡先以外の飼い主に関する情報を含めてもよい。
【0020】
動物情報記憶部232は、患者動物に関する情報(以下、動物情報という。)を記憶する。動物情報には、患者動物の飼い主を示す飼い主IDおよび患者動物を特定する動物IDに対応付けて、患者動物の名称及び動物種など、患者動物の各種属性を含めることができる。
【0021】
質問記憶部233は、動物の健康状態についての質問に係る情報(以下、質問情報という。)を記憶する。質問情報には、質問を特定する質問IDと、当該質問が該当する動物種とに対応付けて、質問及び提示条件を含めることができる。質問には、フリーテキストでの回答を予定する質問、2択または3択以上の選択肢から1つ以上を選択する回答を予定する質問、所定の範囲内での値(実数または整数)の回答を予定する質問などを含めることができる。質問は、例えば、テキストデータとすることができ、画像や音声を含めるようにすることもできる。本実施形態では、質問には、特定の部位を撮影した画像により回答するべき質問が含まれるものとする。提示条件は、質問を問診に含める条件を設定することができる。提示条件には、一番最初に行う質問であること、当該質問よりも前の質問に対する回答が特定の内容であったこと(たとえば、「食欲があるか」という質問に対する回答として「ない」と回答した場合など)、日付が特定の期間にあたること(たとえば、質問時点の季節が冬である場合など)など、任意の判定可能な条件を設定することができる。
【0022】
問診記憶部234は、1回の問診に関する情報(以下、問診情報という。)を記憶する。問診情報には、問診を識別する問診IDに対応付けて、問診対象とした動物を示す動物ID及び問診に含める質問を示す質問IDを含む。1つの問診IDに対して質問IDは複数設定されてよい。問診情報には、飼い主を示す飼い主ID又は患者動物を示す動物IDを含めて、特定の動物患者に対する問診を設定するようにしてもよい。
【0023】
回答履歴記憶部235は、問診に係る質問に対する飼い主からの回答の履歴を記憶する。回答履歴記憶部235が記憶する回答履歴には、問診ID、動物ID及び問診を行った(又は回答を受け付けた)日時に対応付けて、質問を示す質問IDと、当該質問に対する回答とが含まれる。なお、1つの問診IDに対して、質問の数だけ質問ID及び回答のセットが登録されうる。
【0024】
学習モデル記憶部237は、問診結果に基づいて罹りうる疾病を推定する学習モデルを記憶する。学習モデル記憶部237は、動物種に対応付けて学習モデルを記憶することができる。また、学習モデル記憶部237は、タイムラグにも対応付けて学習モデルを記憶することができる。タイムラグは、疾病が発生するまでの時間を示し、例えば、1日、3日、1週間、1か月、四半期、半年、1年など任期の期間とすることができる。本実施形態では、1週間の短期と1年の中長期と2種類のタイムラグを準備するものとする。すなわち、学習モデルは、特定の動物種について、短期又は中長期の期間内に罹患する可能性のある疾病を推定することができる。また、本実施形態では、学習モデルは、当該動物種の動物が、タイムラグ後において、所与の複数の疾病のいずれに該当するかの分類器であるものとし、分類器によって、各疾病の罹患可能性を求めることもできいるものとする。
【0025】
カルテ情報記憶部238は、動物の診察に関するカルテ情報を記憶する。カルテ情報は、カルテを特定するカルテID、動物を特定する動物ID、及び日時に対応付けて、診断結果が含むことができる。診断結果は、動物について、当該動物が疾病に罹っているか否かを示す情報とする。カルテ情報には、獣医療機関において行われた動物の生体検査の結果、獣医師による診断、獣医師による処置や手術、処方された薬などの情報が含まれることもできる。カルテ情報記憶部238は、獣医療機関においてカルテとして管理される情報を任意に含むことができる。カルテ情報記憶部238は、管理サーバ20が備えずに、カルテデータベースなど外部のサーバに管理されているものにアクセスするようにしてもよい。
【0026】
介入情報記憶部239は、疾病についての介入情報を記憶する。介入情報記憶部239は、動物種及び疾病に対応付けて介入情報を記憶することができる。介入情報には、動物にさせるべき行動(アクション)と、獣医療従事者からのアドバイスとが含まれうる。アクションには、来院の必要性を含めることもできる。アクションには、例えば、「散歩させましょう」「ご飯をもう少し食べましょう」といった、動物にさせるべき行動を設定することができる。アクションの選択肢は事前に設定することができる。アドバイスはテキストデータ、画像(静止画像、動画像)、音声のいずれか又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0027】
==機能部==
問診送信部211は、問診を定期的に飼い主端末10に送信する。問診送信部211は、患者動物の動物種に対応する質問記憶部233に記憶されている質問事項を1つ又は複数選択して1つの問診を作成することができる。問診送信部211は、患者動物の動物種に対応する質問事項のうち、提示条件が満たされているものを、例えば、ランダムに所定数選択することができる。また、問診送信部211は、例えば、事前に設定された所定のルールに従って質問を選択するようにしてもよい。
【0028】
回答受信部212は、問診の各質問に対する回答を飼い主端末10から受信する。回答受信部212は、質問事項に、特定の部位を撮影した画像により回答するべき質問が含まれていた場合には、画像のアップロードを受け付けることができる。回答受信部212は、受信した回答を回答履歴記憶部235に登録することができる。
【0029】
疾病推定部213は、患者動物が罹りうる疾病を推定する。疾病推定部213は、問診結果(問診の各質問に対する回答)を学習モデルに与えることにより、患者動物が罹りうる疾病を推定することができる。疾病推定部213は、患者動物の動物種に対応する学習モデルを用いることができる。また、疾病推定部213は、短期(例えば1週間等)及び長期(例えば1年等)のタイムラグに対応する学習モデルを用いることができる。本実施形態では、疾病推定部213は、短期及び長期のタイムラグのそれぞれと患者動物の動物種とに対応する、学習モデルを学習モデル記憶部237から特定し、特定した短期及び長期の学習モデルのそれぞれに問診結果を与えて、短期に罹りうる疾病と長期に罹りうる疾病とを推定することができる。本実施形態では、疾病推定部213は、学習モデルに問診結果を与えることにより、対応するタイムラグ後において、所与の複数の疾病のそれぞれについて罹りうる確率を算出することができる。
【0030】
来院要否判定部214は、患者動物の来院要否を判定する。来院要否判定部214は、疾病推定部213により推定された疾病が存在するか否かに応じて来院要否を判定することができる。また、来院要否判定部214は、疾病推定部213が推定した疾病の罹患可能性(確率)が、所定の閾値以上の疾病が存在する場合に、来院が必要と判定することができる。また、来院要否判定部214は、短期の学習モデルを用いて推定された疾病(すなわち、1週間などの短期間に罹りうる疾病)が存在する場合に、来院が必要と判定することができる。また、来院要否判定部214は、短期の学習モデルを用いて推定された各疾病の罹患可能性が所定の閾値以上であるものが存在する場合に来院が必要と判定することができる。
【0031】
また、来院要否判定部214は、カルテ情報に含まれている診断結果とは異なる疾病が推定された場合に、来院が必要と判定することができる
【0032】
来院要否送信部215は、来院要否を飼い主端末10に送信する。来院要否送信部215は、推定された疾病とともに来院要否を送信することができる。また、来院要否送信部215は、長期のタイムラグに対応する学習モデルにより推定された疾病を、要注意の疾病として飼い主端末10に送信するようにしてもよい。また、来院要否送信部215は、推定された疾病に対応する介入情報(アクション及び/又はアドバイス)を飼い主端末10に送信するようにしてもよい。
【0033】
また、来院要否送信部215は、動物患者に対応する動物情報、推定された疾病とともに、来院要否を医療機関端末30に送信するようにしてもよい。
【0034】
学習処理部216は、カルテ情報の診断結果を学習して学習モデルを作成及び更新する。学習処理部216は、動物種ごとに、当該動物種に対応する問診内容を入力データとし、対応するカルテ情報の診断結果(診断された疾病)を教師データとして機械学習を行い、機械学習により作成された学習モデルを学習モデル記憶部237に登録することができる。本実施形態では、所定のタイムラグ(短期及び長期)について、診断結果に診断された疾病が含まれているカルテ情報のそれぞれについて、カルテ情報の日時からタイムラグの時間前の日時からカルテ情報の日時までの回答情報を入力データとし、カルテ情報の診断結果の疾病を教師データとして機械学習を行うことができる。あるいは、学習処理部216は、回答履歴のそれぞれについて、回答履歴の日時からタイムラグ後までの日時及び回答履歴の動物IDに対応するカルテ情報に含まれる診断結果(に含まれる診断された疾病のみを抽出することができる。)を教師データとして学習を行うようにしてもよい。
【0035】
学習処理部216はまた、カルテ情報が登録又は更新されたことを契機として、カルテ情報の動物IDに対応する回答履歴及びカルテ情報の診断結果を用いて機械学習を行い、当該動物IDに対応する動物情報の動物種に対応する学習モデルを更新することができる。ここでも、所定のタイムラグ(短期及び長期)について、カルテ情報の日時からタイムラグの時間前までの回答情報を入力データとして、学習を行うことができる。
【0036】
<動作>
図4は、本実施形態の定期検診システムの動作を説明する図である。
【0037】
管理サーバ20は、問診を作成する(S301)。問診は、質問記憶部233に記憶されている質問のうち、患者動物の動物種に対応し、提供条件が満たされているものを所定数読み出すことにより作成することができる。管理サーバ20は、作成した問診を飼い主端末10に送信する(S302)。
【0038】
飼い主端末10では問診が表示される。問診は例えばチャット形式により行うようにしてもよいし、Webページのフォームにより行うようにしてもよい。また、画像により回答することが求められている質問については、飼い主端末10が備えるカメラ(不図示)を起動してカメラの撮影画像を回答として取得することもできる。飼い主端末10は、入力された回答を管理サーバ20に送信する。
【0039】
管理サーバ20は、飼い主端末10から回答を受信し(S303)、受信した回答を回答履歴記憶部235に登録することができる。管理サーバ20は、患者動物の動物種及び短期のタイムラグに対応する学習モデルを学習モデル記憶部237から読み出し、読み出した学習モデルに回答を与えて各疾病に短期罹患可能性を推定する(S304)。管理サーバ20は、推定された罹患可能性が閾値以上であれば(S305:YES)、来院が必要と判断し(S306)、罹患可能性が閾値未満であれば(S306:NO)、来院不要と判断する(S307)。
【0040】
管理サーバ20は、来院要否を飼い主端末10に送信する(S308)。ここで管理サーバ20は、疾病のうち、長期のタイムラグに対応する学習モデルに回答を与えて推定された罹患可能性が所定の閾値以上であるものについて、注意を促すメッセージを飼い主端末10に送信するようにしてもよい。また、短期及び/又は長期の罹患可能性が所定値以上の疾病について、対応する介入情報(アクション及びアドバイス)を飼い主端末10に送信するようにしてもよい。
【0041】
管理サーバ20は、定期的な問診の送信を行う期間が終了するまで(S309:NO)、定期的にS301からの処理を繰り返す。なお、2回目以降のステップS301では、問診の内容を変更することができる。
【0042】
以上のようにして、本実施形態の定期検診システムでは、獣医療機関側が主体的に、定期的に問診を患者動物の飼育者に対して送信し、患者動物の健康状態を確認することができる。また、AI(学習モデル)を用いて問診結果に基づいて患者動物の疾病の罹患可能性を推定し、これに応じて来院要否を判定することができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0044】
例えば、本実施形態では、動物種ごとに学習モデルを作成するものとしたが、全体で1つ又は複数の学習モデルを用いるようにして、特徴量として動物種を与えるようにしてもよい。
【0045】
また、学習モデルには飼い主端末10において撮影した画像を学習モデルの特徴量に含めることができる。これにより、例えば、皮膚病などの発症部位を撮影した写真や動画等に基づいて皮膚病等の罹患可能性を判定することができ、必要に応じて適切なタイミングで患者動物に医療処置を施すことができる。
【0046】
また、疾病の罹患可能性に限らず、患者動物の健康が良好である度合を推定するようにしてもよい。この場合、学習モデルは、健康が良好である度合を予測する予測器とすることができ、医療機関端末30からは健康が良好である度合の入力を受け付けて教師データとし、機械学習を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、問診結果に基づいて動物の疾病の罹患可能性を推定する学習モデル(疾病モデル)を用いるものとしたが、これに加えて、問診結果に基づいて当該動物の取るべきアクションを推定する学習モデル(アクションモデル)を用いるようにしてもよい。アクションモデルは、問診結果を入力データとし、とるべきアクションを教師データとした機械学習により事前に作成しておくことができる。なお、アクションモデルに与える特徴量としてカルテ情報に含まれる項目を含めるようにしてもよい。アクションモデルの学習時に与える問診結果には、過去所定期間の問診結果やカルテ情報を含めるようにすることもできる。来院要否判定部214は、問診結果(及びカルテ情報、ならびにこれらの過去のデータ)を疾病モデル及びアクションモデルに与えて、疾病の罹患可能性とアクションとを推論するようにすることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 飼い主端末
20 管理サーバ
30 医療機関端末
211 問診送信部
212 回答受信部
213 疾病推定部
214 来院要否判定部
215 来院要否送信部
216 学習処理部
231 飼い主情報記憶部
232 動物情報記憶部
233 質問記憶部
234 問診記憶部
235 回答履歴記憶部
237 学習モデル記憶部