(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082137
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】MRIにおける動きのリアルタイムなモニタリング及び予測
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058925
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2019548627の分割
【原出願日】2018-03-08
(31)【優先権主張番号】62/468,858
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(71)【出願人】
【識別番号】503061809
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドセンバッハ、ニコ
(72)【発明者】
【氏名】コラー、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー、アヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ミロ、エイミー
(72)【発明者】
【氏名】フェア、ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】アール、エリック
(72)【発明者】
【氏名】クライン、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲズ、オスカー・ミランダ
(72)【発明者】
【氏名】ペローネ、アンダーズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによって、MRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングする方法、コンピュータ可読記憶装置、及びシステムが提供される。
【解決手段】本方法は、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含む、フレーム統合リアルタイムMRIモニタリング(「FIRMM」)コンピュータ装置上で実施される。本方法の態様は、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、受信したデータフレームを先行データフレームに対してアライメントするステップと、受信したデータフレーム及び先行データフレーム間における身体部分の動きを算出するステップと、合計フレーム変位量を算出するステップと、合計フレーム変位量についての予め定められた閾値を超えるカットオフ値を有するデータフレームを除外するステップと、を含む。
【選択図】
図31
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含み、かつMRI(磁気共鳴画像化)システムと通信するコンピュータ装置上で実施される、MRIデータをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、
前記コンピュータ装置によって、x、y、z、θx、θy、及びθzの6つのフレームアライメントパラメータを使用して、前記受信したデータフレーム及び前記基準画像間における前記患者の身体部位の動きを算出するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、
前記コンピュータ装置によって、各フレームの前記合計フレーム変位量を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記基準画像は、前記MRIシステムによって受信された先行データフレームであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記MRIスキャンの完了時に使用できる、前記合計フレーム変位量が予め定められた閾値を下回る使用可能フレームの数の予測するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記使用可能フレームの前記予測された数を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記合計フレーム変位量が予め定められた閾値を下回る使用可能フレームを予め定められた数だけ得るのに十分なスキャン期間を予測するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記記MRIスキャンの前記予測されたスキャン期間を前記MRIシステムのオペレータに対して表示するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記使用可能フレームの数を予測する前記ステップは、
線形モデル(y=mx+b)を適用するステップを含むことを特徴とする方法。
上記の線形モデルの式中、
yは、前記MRIスキャンの完了時に使用できる使用可能フレームの予測数であり、
xは、連続フレームカウントであり、
m及びbは、対象毎のリアルタイムの推定値である。
【請求項6】
請求項2に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記受信したデータフレームを前記先行データフレームに対してアライメントする前記ステップは、一連の剛体変換T
iを算出するステップを含み、
前記iは、前記受信したデータフレームの前記先行データフレームに対する空間位置合わせのインデックス付けであり、
前記一連の剛体変換の各々は、下記の式にしたがって、位置合わせ誤差を最小にすることによって算出されることを特徴とする方法。
【数1】
式中、
【数7】
におけるフレーム強度であり、
sは、平均信号強度のばらつきを補償するスカラー因子である。
【請求項7】
請求項6に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記一連の剛体変換の各々は、下記の式に示す、回転と変位との組み合わせによって表されることを特徴とする方法。
【数2】
式中、
R
iは、回転の3×3の行列を表し、
【数8】
は、変位の3×1の列ベクトルを表し、
R
iは、各軸における3つの初等回転を表す。
【請求項8】
請求項2に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記合計フレーム変位量を算出する前記ステップは、
前記受信したデータフレームの変位量から前記先行データフレームの変位量を減算するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載のコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記MRIスキャン中に取得された高品質の低動きフレームの数に関する集計カウントをリアルタイムで作成するステップと、
前記作成された集計カウントを、前記MRIシステムのオペレータ及び患者の少なくとも一方に対して送信するステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータシステムであって、
当該コンピュータシステムは、MRIシステムと関連しており、かつ、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、
前記受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、
x、y、z、θx、θy、及びθzの6つのフレームアライメントパラメータを使用して、前記受信したデータフレーム及び前記基準画像間における前記患者の身体部位の動きを算出するステップと、
前記6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、
各フレームの前記合計フレーム変位量を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
を実行するようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータシステムであって、
前記基準画像は、前記MRIシステムによって受信された先行データフレームであることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のコンピュータシステムであって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記MRIスキャンの完了時に使用できる、前記合計フレーム変位量が予め定められた閾値を下回る使用可能フレームの数の予測するステップと、
前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記使用可能フレームの前記予測された数を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
をさらに実行するようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項10に記載のコンピュータシステムであって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記患者の前記身体部位の前記算出された動きに基づく視覚フィードバックを、前記MRIシステムの前記オペレータに対してリアルタイムで表示するステップをさらに実行するようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のコンピュータシステムであって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記患者の前記身体部位の前記算出された動きに基づく感覚フィードバックを、前記患者に対して表示するステップをさらに実行するようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のコンピュータシステムであって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
一般的なノッチフィルタ及び患者固有のノッチフィルタのうちの少なくとも一方を使用して、前記患者の呼吸によって生じる呼吸アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするステップをさらに実行するようにプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
MRI(磁気共鳴画像化)システムと通信し、かつ、MRIデータをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするためのコンピュータ実行可能命令を格納した、少なくとも1つの一時的でないコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、
前記受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、
x、y、z、θx、θy、及びθzの6つのフレームアライメントパラメータを使用して、前記受信したデータフレーム及び前記基準画像間における前記患者の身体部位の動きを算出するステップと、
前記6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、
各フレームの前記合計フレーム変位量を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
を実行させることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記基準画像は、前記MRIシステムによって受信された先行データフレームであることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記MRIスキャンの完了時に使用できる、前記合計フレーム変位量が予め定められた閾値を下回る使用可能フレームの数の予測するステップと、
前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記使用可能フレームの前記予測された数を前記MRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、
をさらに実行させることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記合計フレーム変位量が予め定められた閾値を下回る使用可能フレームを予め定められた数だけ得るのに十分なスキャン期間を予測するステップと、
前記患者が前記MRIスキャンを受けているときに、前記記MRIスキャンの前記予測されたスキャン期間を前記MRIシステムのオペレータに対して表示するステップと、
をさらに実行させることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
感覚フィードバックを前記患者に対して表示するステップをさらに実行させることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
請求項16に記載のコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
一般的なノッチフィルタ及び患者固有のノッチフィルタのうちの少なくとも一方を使用して、前記患者の呼吸によって生じる呼吸アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするステップをさらに実行させることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含み、かつMRI(磁気共鳴画像化)システムと通信するコンピュータ装置上で実施される、MRIデータをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記受信したデータフレーム及び前記基準画像間における前記患者の身体部位の動きを算出するステップと、
前記算出された動きに基づいて、前記患者に対して感覚フィードバックを表示するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記MRIシステムのオペレータによって選択された頻度で前記表示された感覚フィードバックを更新するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、
前記感覚フィードバックを表示する前記ステップは、
前記患者に対して第1の色の固定視標を表示するステップと、
前記MRIスキャン中の前記患者の動きを検出するステップと、
前記検出された動きに基づいて、前記固定視標の前記第1の色を第2の色に変化させるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法であって、
前記感覚フィードバックを表示する前記ステップは、
前記患者に対してムービークリップを表示するステップと、
前記MRIスキャン中の前記患者の動きを検出するステップと、
前記検出された動きに基づいて、前記ムービークリップの少なくとも一部に対する前記患者の視覚アクセスを制限する視覚遮蔽を前記ムービークリップに対して追加するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、
前記感覚フィードバックを表示する前記ステップは、
前記患者に対して音楽を再生するステップと、
前記MRIスキャン中の前記患者の動きを検出するステップと、
前記検出された動きに基づいて、前記音楽の再生を停止または変更するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含み、かつMRI(磁気共鳴画像化)システムと通信するコンピュータ装置上で実施される、MRIデータをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータ実施方法であって、
前記コンピュータ装置によって、前記MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、
前記コンピュータ装置によって、前記受信したデータフレーム及び先行データフレーム間における前記患者の身体部位の動きを算出するステップと、
前記算出された動きを、ノッチフィルタを使用してフィルタリングすることによって、前記患者の呼吸によって生じる呼吸アーチファクトを除去するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
少なくとも1つのフィルタリングパラメータが、前記MRIシステムのオペレータによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、
少なくとも1つのフィルタリングパラメータが、前記MRIデータに基づいて前記コンピュータ装置によって設定されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2017年3月8日出願の米国仮出願第62/468、858号(標題「MRIにおける動きのリアルタイムなモニタリング及び予測」)に基づく優先権を主張するものである。上記出願の内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(政府支援の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所から交付された助成金番号K23 NS088590、R01 MH096773、R01 MH115357、U24 DA041123、U01 DA041148、及びU54 HD087011の下に、米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本開示の分野は、磁気共鳴画像化法(MRI)に関し、より詳細には、MRI中にリアルタイムで、患者の動きをモニタリングする、患者の動きを予測する、及び患者の動きに関するフィードバックを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
頭部の動きなどの身体の動きは、ヒトにおける質の高い脳MRIデータの収集に対する最大の障害となる。頭部の動きは、構造的(T1加重、T2加重など)MRIデータと、機能的MRIデータ(タスク駆動型[fMRI]及び安静時機能結合[rs-fcMRI])との両方を歪ませる。ある場合には、ミリメートル未満の頭部の動き(例えば、微細な動き)でさえも、構造的MRIデータ及び機能的MRIデータを系統的に変化させる。そのため、MRIデータから頭部の動きに関連する歪みを除去するための、データ取得後の方法の開発に多くの努力が費やされてきた。
【0005】
或るMRIデータフレームとその次のフレームとの間での頭部の動きは、基準フレームから離れる絶対変位量よりもむしろ、最重要のMRI信号歪みを引き起こすと考えられている。動きに関連する歪みは、フレーム変位量(FD:framewise displacement)の測定値、及び、DVARSと強く相関する。フレーム変位量(FD)は、フレーム間での6つの剛体方向の全ての方向における頭部の絶対変位量の和である。DVARSは、MRI画像の各ボクセルを経時的に微分した導関数のRMS(二乗平均平方根)である。このように、MRIデータ取得中の対象(患者)の動きの全体的な影響をキャプチャするFD及びDVARSなどの測定値が、様々な事後方法においてデータ品質を評価するために用いられてきた。例えば、所定の閾値を超えるFD値を有する全てのMRIデータフレームを除去する事後フレーム検査(例えば、FD値>0.2mmのデータフレームを除外)は、機能的MRIデータの品質を向上させるために一般的に用いられる方法になっている。
【0006】
アーチファクトを減らすために必要であるが、フレーム検査(frame censoring)にはかなりのコストがかかる。例えば、フレーム検査は、その対象(患者)の特定のパラメータ及び基礎データの品質に基づき、コホートから収集されたrs-fcMRIデータの50%以上を除外することができる。フレーム数が多いほどMRI測定の精度が向上するので、信頼できるデータを得るためには、最低限のデータフレームが必要となる。検査後に残っているフレームの数が少なすぎると、調査者は、参加者から取得した全てのデータを損失する恐れがある。この損失を回避するために、調査者は通常、追加の「バッファ」データの収集という、コストのかかる作業を行うが、それだけでは、所与の参加者についての十分に高品質なMRIデータを保証することができない。所望のデータ品質を達成するのに十分なサンプルサイズを維持しながら、動きによって歪んだデータを除去するために必要な「オーバースキャン」により、脳MRIのコスト及び期間は大幅に増加した。
【0007】
最近開発された、予測動き補正を含む構造的MRIシーケンスは、同様のアプローチを用いて、頭部の動きの有害な影響を低減させる。このMRIシーケンスは、各々の構造的データ取得を、脳全体の高速かつ低解像度のスナップショット(エコープラナーイメージ=EPI(echo-planar image))とペアにし、それを頭部の動きについてのマーカまたはナビゲータとして使用する。この動き補正構造的シーケンスは、連続するナビゲータ画像間の相対変位量を算出し、その情報を使用して、リンクされた構造的データフレームを除外及び再取得のためにマークする。このようにして、構造的データフレームは「検査され(censored)」され、これにより、構造的MRIの期間及びコストが増大する。
【0008】
構造的MRIと機能的MRIとの両方について、スキャン中にスキャナ内での頭部の動きに関するリアルタイム情報にアクセスすることができれば、オーバースキャンが不要となるので、MRIのコストを大幅に削減することができる。リアルタイムの動きモニタリングによって得られる頭部の動きの評価により、スキャナオペレータは、過度のバッファスキャンを必要とせずに、所望の数の低動きデータフレームが取得されるまで、各スキャンを継続することができるであろう。
【0009】
リアルタイムの動きモニタリングに対する既存のアプローチは、高価なカメラ及びレーザを使用してFD(フレーム変位量)の代替物(proxies)を測定する。残念ながら、このような頭部の動きの代替物は一般的に、顔及び頭皮の動きを脳の動きと区別できないため、FDとの相関性が低い。そのため、MRIにおける動き歪みを解決するための別の方法及びシステムが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによって、MRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータ実施方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含み、かつMRIシステムと通信するコンピュータ装置上で実施される。この方法は、コンピュータ装置によって、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、コンピュータ装置によって、受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、コンピュータ装置によって、x、y、z、θx、θy、及びθzの6つのフレームアライメントパラメータを使用して、受信したデータフレーム及び基準画像間における患者の身体部位の動きを算出するステップと、コンピュータ装置によって、6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、コンピュータ装置によって、各フレームの合計フレーム変位量をMRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、を含む。
【0011】
別の態様では、MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによって、MRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするコンピュータシステムが提供される。このコンピュータシステムは、MRIシステムと関連している。このコンピュータシステムは、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含む。少なくとも1つのプロセッサは、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、6つのフレームアライメントパラメータを使用して、受信したデータフレーム及び基準画像間における患者の身体部位の動きを算出するステップと、6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、各フレームの合計フレーム変位量をMRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、を実行するようにプログラムされている。6つのフレームアライメントパラメータは、x、y、z、θx、θy、及びθzである。
【0012】
別の態様では、磁気共鳴画像化(MRI)システムと通信し、かつ、MRIデータをアライメントすることによってMRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングするためのコンピュータ実行可能命令を格納した、少なくとも1つの一時的でないコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、少なくとも1つのプロセッサに、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、6つのフレームアライメントパラメータを使用して、受信したデータフレーム及び基準画像間における患者の身体部位の動きを算出するステップと、6つのフレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位量を算出するステップと、各フレームの合計フレーム変位量をMRIシステムのオペレータに対してリアルタイムで表示するステップと、を実行させる。6つのフレームアライメントパラメータは、x、y、z、θx、θy、及びθzである。
【0013】
別の態様では、MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによって、MRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングする別のコンピュータ実施方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータ装置上で実施される。コンピュータ装置は、MRIシステムと通信する。この方法は、コンピュータ装置によって、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、コンピュータ装置によって、受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、コンピュータ装置によって、受信したデータフレーム及び基準画像間における患者の身体部位の動きを算出するステップと、算出された動きに基づいて、患者に対して感覚フィードバックを表示するステップと、を含む。
【0014】
別の態様では、MRI(磁気共鳴画像化)データをアライメントすることによって、MRIスキャンを受けている患者の動きをモニタリングする別のコンピュータ実施方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのメモリデバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータ装置上で実施される。コンピュータ装置は、MRIシステムと通信する。この方法は、コンピュータ装置によって、MRIシステムからデータフレームを受信するステップと、コンピュータ装置によって、受信したデータフレームを基準画像に対してアライメントするステップと、コンピュータ装置によって、受信したデータフレーム及び先行データフレーム間における患者の身体部位の動きを算出するステップと、算出された動きを、ノッチフィルタを使用してフィルタリングすることによって、患者の呼吸によって生じる呼吸アーチファクトを除去するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付図面と併せた以下の詳細な説明により、本開示の態様を容易に理解することができるであろう。態様は例として示されており、添付図面の図に限定されるものではない。
【0016】
【
図1】本開示の一態様によるFIRMM(フレーム統合リアルタイムMRIモニタリング)グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を示す。
【
図2A】患者の年齢の関数として平均FD値を要約するグラフであり、各ポイントは、各患者の診断(対照、アルコール依存症の家族歴[FHA]、注意欠陥多動性障害[ADHD]、及び自閉症スペクトラム障害(ASD))にしたがって網掛けされている。
【
図2B】患者の年齢の関数として平均FD値を要約するグラフであり、各ポイントは、各患者の性別にしたがって網掛けされている。
【
図3A】各参加者(x軸)について、両方の方法の低動きの平均数でソートされた各参加者について得られた低動きMRIデータの時間(FD<0.2)(y軸)の要約を示す図である。
【
図3B】FIRMMによって生成された低動きデータ(分)の推定値(x軸)と、基準のオフライン事後アプローチを使用して特定された低動きデータ(y軸)との相関(黒の線形適合)を示す図である。
【
図4A】
図2Aに示す各コホートからの個別のサンプルについての累積スキャン時間(分;x軸)に対する低動きデータの蓄積(FD<0.2;y軸)を示す図である。
【
図4B】
図2Aに示す各コホート、及びすべてのコホートの合計サンプルについて、FD<0.2mmの少なくとも5分間のデータのうち、選択されたデータ基準に到達した参加者の割合を示す図である。
【
図5A】
図2Aに示す各コホート、及びサンプル全体(ブロック)についての平均FDを、参加者がスキャナ内で既に費やした時間の関数として示す図である。
【
図5B】
図2Aに示す各コホートについてのスキャンにおいて、すべての時点におけるFD<0.2のデータフレームの割合を示す図である。
【
図5C】スキャン時間(x軸)と、各コホートについて蓄積された低動きデータの平均量との間の関係を示す図である。
【
図5D】実験中に様々な時点で行われたFIRMM予測を比較した、単一の個別のMRI参加者についてのFDトレース(網掛けトレース)を示す図である。
【
図5E】
図5Fと同一の対象についてのスキャンの長さ(x軸)にわたるFIRMMの予測誤差(%;y軸)を示す図である。
【
図5F】すべての群(黒線)についての経時(x軸)的なFIRMMの平均誤差(%)を示す図である。
【
図6A】スキャンセッションの終了に向かって寝入った子供についてのFIRMMトレースを示す図である。
【
図6B】スキャン#4で非常に大きい頭部の動きがあった子供のFIRMMトレースを示す図である。
【
図7A】診断(対照、アルコール依存症の家族歴[FHA]、注意欠陥多動性障害[ADHD]及び自閉症スペクトラム障害[ASD])によって分類された参加者についての基準FD<0.2のデータフレームの割合を示す図である。
【
図7B】性別によって分類された参加者についての基準FD<0.2のデータフレームの割合を示す図である。
【
図7C】
図7Aのコホートによって分類された参加者についての基準FD<0.3のデータフレームの割合を示す図である。
【
図7D】性別によって分類された参加者についての基準FD<0.3のデータフレームの割合を示す図である。
【
図7E】
図7Aのコホートによって分類された参加者についての基準FD<0.4のデータフレームの割合を示す図である。
【
図7F】性別によって分類された参加者についての基準FD<0.4のデータフレームの割合を示す図である。
【
図8】本開示による、MRIスキャンにより取得したMRI(磁気共鳴画像化)データをMRIスキャンにおける選択されたフレームに対してアライメントする処理を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の一態様による、MRI画像の取得中に、患者の動きをリアルタイムでモニタリングするシステムを概略的に示すブロック図である。
【
図10】本開示の一態様によるコンピュータ装置の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図11】本開示の一態様による、FIRMM(フレーム統合リアルタイムMRIモニタリング)グラフィカルユーザインターフェース(GUI)のスクリーンショット画像を示す。
【
図12A】患者の動きの3つのレベル:低動き/動きなし、中程度の動き、及び大きい動きについてのフィードバックを含む、安静状態でMRIスキャンを受けている対象についてのリアルタイム視覚フィードバックディスプレイのサンプルスクリーンショットを示す図である。
【
図12B】患者の動きの3つのレベル:低動き/動きなし、中程度の動き、及び大きい動きについてのフィードバックを含む、ムービー状態でMRIスキャンを受けている対象についてのリアルタイム視覚フィードバックディスプレイのサンプルスクリーンショットを示す図である。
【
図13A】フィードバックなし、固定フィードバック、及び適応フィードバックでの、安静条件及びムービー条件の両方についての平均FD値を示す図である。
【
図13B】フィードバックなし、固定フィードバック、及び適応フィードバックでの、安静条件及びムービー条件の両方についてのボリューム検査後に保持されたフレーム(FD<0.3mm)の割合を示す図である。
【
図14A】すべての状態における、使用可能な機能的結合性(FC)データを有する17人の対象についての左角回(タライラッハ座標-46、-63、31)のシードマップを示す図である。
【
図14B】すべての状態における、使用可能な機能的結合性(FC)データを有する17人の対象についての右運動皮質(タライラッハ座標39、-19、56)のシードマップを示す図である。
【
図15A】フィードバックなしの安静状態及びムービー状態の両方について、ネットワークによって編成された264個の予め定義された関心領域(ROI)間のFCを表示する相関マトリックスを示す図である。
【
図15B】固定フィードバックの安静状態及びムービー状態の両方について、ネットワークによって編成された264個の予め定義されたROI間のFCを表示する相関マトリックスを示す図である。
【
図15C】適応フィードバックの安静状態及びムービー状態の両方について、ネットワークによって編成された264個の予め定義されたROI間のFCを表示する相関マトリックスを示す図である。
【
図16A】フィードバックなしの安静状態とフィードバックなしのムービー状態との間のFCデータの差異を示す図である。
【
図16B】フィードバックなしの安静状態と固定フィードバックのムービー状態との間のFCデータの差異を示す図である。
【
図16C】フィードバックなしの安静状態と適応フィードバックのムービー状態との間のFCデータの差異を示す図である。
【
図16D】固定フィードバックの安静状態と適応フィードバックのムービー状態との間のFCデータの差異を示す図である。
【
図17】フィードバックなしの安静状態とフィードバックなしのムービー状態との間のネットワークレベルの有意差を示す図である。
【
図18A】マルチバンド撮像を用いた動きの小さい対象のBOLD視覚化データ(BVD)プロットを示す図である。
【
図18B】シングルバンド撮像を用いた動きの小さい対象のBOLD視覚化データ(BVD)プロットを示す図である。
【
図19A】本開示の品質測度を用いた定量的評価の実施における第1のステップを示す図。
【
図19B】本開示の品質測度を用いた定量的評価の実施における第2のステップを示す図。
【
図19C】本開示の品質測度を用いた定量的評価の実施における第4のステップを示す図。
【
図19D】本開示の品質測度を用いた定量的評価の実施における第5及び最後のステップを示す図。
【
図20A】すべての対象にわたるデータ品質メトリクス順の結果のプロットされた位置づけ(ランク)を示す図である。
【
図20B】本開示による、すべての対象にわたるデータ品質メトリクス順の結果のプロットされた位置づけを示す図である。
【
図20C】ヒートマップによって表されたすべての対象にわたるデータ品質メトリクス順の結果のプロットされた位置づけを示す図である。
【
図21A】マルチバンドデータでの、単一の代表的な対象における剛体位置合わせパラメータの6方向の動き推定値を示す図である。
【
図21B】最も小さい動きの対象から最も大きい動きの対象までランク付けされたすべての対象にわたるパワースペクトルを示す図であり、最も大きい動きの対象はマルチバンドデータの図の一番下に位置する。
【
図22A】シングルバンド(例えば、シングルショット)取得データでの単一の代表的な対象における剛体位置合わせパラメータの6方向の動き推定値を示す図である。
【
図22B】最も小さい動きの対象から最も大きい動きの対象までランク付けされたすべての対象にわたるパワースペクトルを示す図であり、最も大きい動きの対象はシングルバンドデータの図の一番下に位置する。
【
図22C】異なるTRにおける呼吸数(例えば、サンプリング数)のエイリアシングを示すデータの図である。
【
図22D】TR=0.72秒における呼吸数のデータを示す図である。
【
図22E】TR=0.80秒における呼吸数のデータを示す図である。
【
図22F】TR=2.00秒における呼吸数のデータを示す図である。
【
図22G】TR=2.50秒における呼吸数のデータを示す図である。
【
図23A】TR=0.8ミリ秒における0.33Hzでの呼吸数の動きスペクトルを示す図である。
【
図23B】TR=1.5秒における0.33Hzでの呼吸数の動きスペクトルを示す図である。
【
図23C】TR=2.0秒における0.33Hzでの呼吸数の動きスペクトルを示す図である。
【
図23D】TR=2.5秒における0.33Hzでの呼吸数の動きスペクトルを示す図である。
【
図23E】
図23A-23Dに示されるデータに相関する異なるTRにおける呼吸数のエイリアシングを示すグラフである。
【
図24A】フィルタを実装していない結果を、BVDプロットに定性的に示す図である。
【
図24B】一般的なフィルタを実装した結果を、BVDプロットに定性的に示す図である。
【
図24C】フィルタを実装していない結果を、中程度の動きのABCDの子供についてのBVDプロットに定性的に示す図である。
【
図24D】一般的なフィルタを実装した結果を、
図23の中程度の動きのABCDの子供についてのBVDプロットに定性的に示す図である。
【
図25A】一般的なフィルタを実装した後の、
図21Aにおいて提供されたデータの複製を示す図である。
【
図25B】一般的なフィルタを実装した後の、
図21Bにおいて提供されたデータの複製を示す図である。
【
図26A】対象者特異的なフィルタを実装した後の、
図21Aにおいて提供されたデータの複製を示す図である。
【
図26B】対象者特異的なフィルタを実装した後の、
図21Bにおいて提供されたデータの複製を示す図である。
【
図27A】特定の対象についての、フィルタを適用していない場合の動き推定値の定量的測定値を示す図である。
【
図27B】特定の対象についての、一般的なフィルタを実装した後の動き推定値の定量的測定値を示す図である。
【
図27C】特定の対象についての、対象者特異的なフィルタを実装した後の動き推定値の定量的測定値を示す図である。
【
図27D】すべての対象についての、フィルタを適用していない場合の動き推定値の定量的測定値を示す図である。
【
図27E】すべての対象についての、一般的なフィルタを実装した後の動き推定値値の定量的測定値を示す図である。
【
図27F】すべての対象についての、実行特異的なフィルタを実装した後の動き推定値の定量的測定値を示す図である。
【
図27G】フィルタを適用していない場合の動き推定値のヌル分布に関連した各ポイントの位置づけを示す図である。
【
図27H】一般的なフィルタを実装した後の動き推定値のヌル分布に関連した各ポイントの位置づけを示す図である。
【
図27I】実行特異的なフィルタを実装した後の動き推定値のヌル分布に関連した各ポイントの位置づけを示す図である。
【
図28】フィルタ適用なしと一般的なフィルタの適用との間、及びフィルタ適用なしと対象特異的なフィルタの適用との間の有意差を示す、フィルタリングされたFD値のCDFとフィルタリングされていないFD値とのCDFを比較するプロットを示す図である。
【
図29A】本開示の一態様による、フィルタリングされていないFIRMM GUIのスクリーンショット画像である。
【
図29B】本開示の一態様による、フィルタリングされたFIRMM GUIのスクリーンショット画像である。
【
図29C】低動きのオフラインデータの割合と比較した、フィルタリングされていない低動きのFIRMMデータの割合を示すグラフである。
【
図29D】低動きのオフラインデータの割合と比較した、フィルタリングされた低動きのFIRMMデータの割合を示すグラフである。
【
図30A】すべての対象ウィンドウについての不正確な動きの数の理論プロット及び正確な動きの数の理論プロットを示す図である。
【
図30B】各ウィンドウがヌル分布に対してランク付けされている場合の不正確な動きの数の理論プロット及び正確な動きの数の理論プロットを示す図である。
【
図30C】各ウィンドウがビニングされたヌル分布に対してランク付けされている場合の不正確な動きの数の理論プロット及び正確な動きの数の理論プロットを示す図である。
【
図31】本開示の一態様による、データ品質メトリックに基づく感覚フィードバック表示の生成を示すフローチャートである。
【
図32】本開示の一態様による、フレーム変位を算出する前に動き推定値から呼吸関連アーチファクトを除去するためのN次フィルタの使用を示すフローチャートである。
【
図33】本開示の一態様による、フレーム変位を算出する前に動き推定値から呼吸関連アーチファクトを除去するための適応フィルタの使用を示すフローチャートである。
【
図34】本開示の一態様による、動き推定値から呼吸関連アーチファクトを除去する適応フィルタの開発を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な態様では、MRIスキャン中の患者の身体部位の動き、これに限定しないが例えば頭部の動きのリアルタイムなモニタリング及び予測のためのフレーム統合リアルタイムMRIモニタリング(Framewise Integrated Real-time MRI Monitoring:FIRMM)システム、装置、及び方法が開示される。より具体的には、MRIスキャン中に患者の身体部位の動きをモニタリングするために、MRIスキャンによって収集されたフレームなどのMRI(磁気共鳴画像化)データを基準画像に対してアライメント(aligning)するための方法、コンピュータ可読記憶媒体、及びシステムが開示される。様々な態様では、基準画像は、全フレームの変位または動きを取得して比較することができる共通基準を提供する。
【0018】
様々な態様では、本開示のFIRMMコンピュータ実施方法は、MRIデータ品質の向上と、MRIデータ取得に関連するコストの低減とを同時に実現する。一態様では、FIRMM方法は、MRIデータ取得中にデータ品質メトリクス(data quality metrics)及び/または要約動き統計値(summary motion statistics)をリアルタイムで算出及び表示するソフトウェアスイートの形態で実施される。非限定的な例として、脳MRIデータの取得中に作成されたGUIのスクリーンショットを
図1に示す。本開示のFIRMM方法及びシステムは、本明細書では、機能的MRIデータ取得に関連して一般的に説明されているが、様々な他の態様では、本開示のFIRMM方法及びシステムは、他の構造的または解剖学的MRIのシーケンス中(これに限定しないが、例えば動きナビゲータを用いるシーケンス中)における頭部及び身体の動きのリアルタイムなモニタリングに適している。
【0019】
本開示のFIRMMシステム及び方法は、従来のシステムの少なくともいくつかの欠点のうちの1または複数を克服する。従来のシステムにおける、動きによって歪んだデータを補償するための「オーバースキャン」に関連する欠点を解決するために、本明細書に開示されるFIRMMシステム及び方法は、MRIスキャナのオペレータ及びスキャンを受けている患者の両方に対して、リアルタイムのフィードバックを提供する。より具体的には、本開示のFIRMMシステム及び方法は、リアルタイムで算出されたデータ品質メトリクス及び要約動き統計値に基づいて、スキャン中に患者に対して感覚フィードバックを提供する。これにより、患者は、提供されたフィードバックに応じて、自分自身の動きを適切にモニタリング及び調節することができる(例えば、静止を維持する)。さらに、本開示のFIRMMシステム及び方法は、固定十字線またはムービークリップの表示などの刺激条件を提供して、患者の関心を引き付けると共に、患者に対してリアルタイムのフィードバックを提供する。
【0020】
本開示のFIRMMシステム及び方法は、MRIスキャナのオペレータが、所望の数の低動きデータ(low-movement data)フレームを取得できるまで、各スキャンを継続することを可能にすることによって、上述の従来技術の欠点を解決する。所望の数の低動きデータフレームを取得する方法の非限定的な例としては、(i)スキャンの終了時(完了時)に使用できる使用可能データフレームの数を予測すること、(ii)予め設定された基準時間長さ(preset time-to-criterion)(低動きフレーム変位(FD)データの分数)が得られるまで、所与の患者をスキャンする必要のある時間長さを予測すること、及び、(iii)実際の及び予測される低動きデータ量に含めるための特定の個人のスキャンの選択及び選択解除を可能にすること、が挙げられる。
【0021】
従来、脳MRIにおける動き推定値は一般的に、所与の患者のデータ収集の完了後、または通常は、コホート全体のデータ収集の完了後に、大規模なバッチで、オフラインで分析されていた。頭部の動きの分析の先送りは、特に、以前に研究されていない患者集団をスキャンする場合や、データ収集プロトコルまたは人員に変更を加えた後では、コストが高い、かつリスクを伴う。
【0022】
より具体的には、頭部の動きに関するリアルタイム情報は、頭部の動きを低減するために、様々な方法で使用することができる。様々な方法としては、これに限定しないが、例えば、(1)MRIスキャナのオペレータの行動に対して影響を与えること、及び、(2)MRIスキャン中の患者の行動に対して影響を与えること、が挙げられる。MRIスキャナのオペレータは、患者の頭部の動きの突然の変化または異常な変化についての警告を受けることができ、これにより、患者が不快を感じたために動き始めたか、あるいは、トイレ休憩、毛布、再ポジショニング、または他の介入が彼らをより快適に感じさせることができるかどうかを調査するために、MRIスキャンを中断することが可能となる。いくつかの態様では、本開示のFIRMM方法は、スキャン後に及び/またはリアルタイムで、頭部の動きに関する情報を患者に対してフィードバックするためのオプションをさらに含む。本開示のFIRMM方法により、MRIスキャナのオペレータは、必要量の低動きデータを最小コストで提供するスイートスポットを見つけることができる。スキャンを停止し、静止を維持することを試みる方法を患者に指示または再通知し、スキャンを再取得することができる。
【0023】
本開示のFIRMM方法及びシステムは、後述するように、異なる患者及び対照コホートから得られたいくつかの大規模なrs-fcMRIデータセットを使用して、正確性及びコスト削減について検証された。加えて、本開示のFIRMM方法及びシステムは、29人の参加者からなる追加コホートを用いて、現実世界での有用性及び耐久性についてさらに試験された。
【0024】
一態様では、本開示のFIRMM方法は、画像フレームなどのフレームをMRI(磁気共鳴画像化)システムから受信し、受信したフレームを基準画像に対してアライメントするステップを含む。様々な態様では、基準画像は、MRIスキャンにより収集されたフレームから選択された単一のフレームであり得る。MRIスキャンにより収集されたフレームとしては、これに限定しないが、例えば、第1のフレーム、ナビゲータフレーム、または、MRIスキャン中に収集された複数のフレームから選択された任意の他の適切なフレームが挙げられる。他の態様では、基準画像は、解剖学アトラスから検索された画像であり得る。様々な他の態様では、基準画像は、解剖学アトラスから検索された画像であり得る。様々な別の態様では、基準画像は、MRIスキャン中に収集された2以上のフレームのコンポジットまたは組み合わせ、これに限定しないが2以上のフレームの平均を含む、であり得る。一態様では、各現在フレームは、該フレームの直前に収集され、かつ所与のMRIスキャンのために収集された基準画像に対して反復的にアライメントされた先行フレームに対してアライメントされる。
【0025】
本開示のFIRMM方法の一態様では、受信したフレームを基準画像に対してアライメントするステップは、一連の剛体変換Tiを含む。iは、受信したフレームiの基準画像に対する空間的位置合わせ(spatial registration)のインデックス付けである。各剛体変換Tiは、下記の式(1)にしたがって、位置合わせ誤差(registration error)を最小化するか、または、位置合わせ誤差に対する停止条件(stop condition)に到達させることによって算出される。
【0026】
【0027】
【0028】
におけるフレーム強度であり、
sは、フレームの少なくとも一部、これに限定しないが例えば頭部などの患者の身体部位のMRI画像に対応するフレームの一部にわたって空間的に平均化された平均信号強度のばらつきを補償するスカラー因子である。
【0029】
様々な態様では、各剛体変換Tiは、下記の式(2)に示すように、回転と変位との組み合わせによって表される。
【0030】
【0031】
式中、
Riは、3つの軸(後述する実施例1を参照)の各々における3つの初等回転(elementary rotation)を含む回転の3×3の行列を表し、
【0032】
【0033】
は、変位の3×1の列ベクトルを表す。
【0034】
一態様では、画像フレームは、4dfp cross_realign3d_4dfpアルゴリズム(この参照によりその内容全体が本明細書に援用される「Smyser, C. D. et al. Cerebral cortex 20, 2852-2862, (2010)」を参照されたい)を使用して再アライメントされる。いくつかの態様では、cross_realign3d_4dfpアルゴリズムは、全ての再アライメントされたデータよりむしろ、フレーム間画像強度正規化の無効化及びアライメントパラメータのみの出力を含む、算出速度について最適化され得る。
【0035】
様々な態様では、本開示のFIRMM方法は、或るフレームとその直前のフレームとの間における、患者の頭部などの身体部位の動きを算出するステップをさらに含む。様々な態様では、患者の頭部などの身体部位の動きは、これに限定しないが例えばx、y、z、θx、θy、及びθzなどの複数のフレームアライメントパラメータから算出される。x、y、及びzは、3つの座標軸における平行移動であり、θx、θy、及びθzは、各座標軸を中心とした回転である。様々な態様では、本開示のFIRMM方法は、複数フレームアライメントパラメータを使用して合計フレーム変位(total frame displacement)を算出するステップをさらに含む。例えば、人間の頭部のMRIスキャンでは、第2のフレームから開始して、フレーム間の頭部再アライメントパラメータを算出することにより、頭部の動きの多次元(例えば6次元)の時系列データを生成する。頭部の動きは、例えば、下記の式(3)にしたがって、スカラー量に変換することができる。
【0036】
【0037】
式中の各要素は下記の通りである。
【0038】
【0039】
様々な態様では、患者の頭部のモニタリングにおける非限定的な例では、回転変位は、球体、例えば、健常若年成人の大脳皮質から頭部中心までの平均距離である半径50mmの球体の表面上の変位を算出することによって、角度からミリメートルに変換される。FD(フレーム変位)は、各データフレームを基準画像に対して再アライメントし、変位i(現在フレームに対応)から変位i-1(先行フレームに対応)を差し引くことによって算出される。
【0040】
様々な態様では、FIRMM方法は、MRIスキャンの最後に少なくともn個の使用可能フレームが存在するか否かを予測するステップをさらに含む。各データフレームは基準画像に対して再アライメントされるため、フレーム変位(FD:frame displacement)は、変位i(現在フレームに対応)から変位i-1(先行フレームに対応)を差し引くことによって算出される。様々な態様では、使用可能フレームの数を予測するステップは、線形モデル(y=mx+b)を適用するステップを含む。上記の線形モデルの式中、yは、スキャンの終了時(完了時)における良好なフレームの予測数であり、xは、連続フレームカウントであり、m及びbは、患者毎にリアルタイムで推定される。一態様では、先行フレームでのオブジェクトの位置を基準として使用して、現フレームでのオブジェクトの相対変位が所与の閾値(例えば、mm単位)未満である場合に、そのフレームを使用可能とラベル付けすることができる。使用可能なデータフレームについてのカットオフ閾値の非限定的な一例は0.2である。ただし、一態様では、MRIスキャナのオペレータは、所望に応じて、FIRMMソフトウェアスイートに関連する設定ファイルを編集して異なる閾値を選択することができる。様々な態様では、使用可能フレームは、合計フレーム変位についての予め割り当てられたカットオフ値に基づいて決定され得る。カットオフ値としては、これに限定しないが、例えば、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、または約2mm未満が挙げられる。別のアライメントアルゴリズムも、様々な他の態様で使用することができる。様々な態様では、FDを算出するための1以上のEPI画像レジストレーション方法を用いることができる。そのような方法としては、これに限定しないが、脳ソフトウェアライブラリの機能的MRI(FSL)、機能的神経画像解析(AFNI)、及び統計的パラメトリックマッピング(SPM)が挙げられる。
【0041】
いくつかの態様では、動きモニタリング情報が、オペレータ及び/またはMRIスキャン中の患者に提供される。一態様では、スキャンのパラメータの視覚的表示が、ユーザに対して表示される。様々な他の態様では、各スキャンの終了時に、そのスキャンについてのカウントの要約が、頭部の動きの要約データを表にしたリストに、各スキャンについて別々に、及び/または、アクティブスキャンセッションにおいてこれまでに取得された全てのデータの合計について表示される。特定の態様では、予め設定された基準時間長さ(低動きFDデータの分数)が得られるまで、所与の患者をスキャンする必要のある時間長さについての予測が提供され得る。例えば、予め設定された基準時間長さに対しての、「高品質の」フレームをスキャンするために費やされた実際の時間長さ(例えば、分及び秒、またはパーセンテージ)のグラフが提供され得る。このような情報は、これに限定しないが、視覚表示、聴覚信号、または情報を提供する任意の他の既知の手段の形態で提供され得る。
【0042】
様々な態様では、FDは、新しいフレーム/スキャン/ボリュームが取得されるたびに、新しいデータポイントがFD対フレーム番号のグラフ(例えば、
図11参照)に追加されるように、リアルタイムでオペレータに提供される。以下の実施例で実施されるように、本開示のFIRMM方法は、GUIを使用して、リアルタイムでのFDのトレースを含む表示を生成することができる。加えて、本開示のFIRMM方法は、(例えば、>0.2、>0.3、>0.4などの特定のカットオフ・プリセット値が指定された場合)既に取得された「高品質の」フレームの数を表す更新された集計カウントを、表形式及び/または色分けされた棒グラフとして連続的に生成することができる。データ取得実行の終了時に、その実行についての最終的な集計カウントが、そのスキャンセッション中に実行された各実行の頭部の動きの集計データを表にしたリストに表示される。さらに、特定の態様では、データ取得実行の終了時に使用できる使用可能なデータフレームの予測される数、並びに、使用可能フレームの予め設定された基準数を達成するためのさらなるスキャンの予測される時間長さ(例えば、分及び秒)が提供される。
【0043】
いくつかの態様では、本開示のFIRMM方法は、実際の及び予測される低動きデータ量に含めるための特定の個人のスキャンの選択及び選択解除を提供する。
【0044】
様々な態様では、本開示のFIRMM方法は、追加的なEPIデータ品質メトリック(data quality metrics)としてのパラメータDVARSの表示をさらに提供する。本明細書で使用されるDVARSは、MRI画像の各ボクセルの経時的な導関数のRMSを指す。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、DVARSは、ボリューム間の信号変化を定量化し、それにより、これに限定しないが例えば頭部の動きなどの身体部位の動きを含む、全身スケールで画像化された身体部位に影響を及ぼす現象に起因する大きな偏差をキャプチャすると考えられる。非限定的な例として、DVARSは、信号変化のソースとは無関係に、各データフレーム間で脳全体の信号強度がどの程度変化するかを測定する。DVARSトレースは、フレーム間での頭部の動きに対して非常に敏感であり、突然の頭部の変位に関連したエコープレーンイメージング(EPI)における信号損失の観測に起因して、原理上は、DVARSは頭部の動き以外のソースからのEPI信号異常も検出することができる。
【0045】
一態様では、DVARSは、下記の式にしたがって算出される。
【0046】
【0047】
【0048】
における画像強度を表し、
山括弧(angle bracket)は、脳または他の画像化された身体部位の全体における空間平均を表す。
【0049】
様々な態様では、FIRMM方法は、適切なフィードバック装置を介してMRIスキャン中の患者に伝達される感覚フィードバック提示を生成する。感覚フィードバック提示は、フィードバック装置を使用して、FIRMM法によって、これに限定しないがMRIスキャナ内の患者の任意の既知の感覚モダリティに対して提供することができる。フィードバック装置としては、これに限定しないが、視覚フィードバック提示、聴覚フィードバック提示、または任意の他の適切な感覚フィードバック提示が挙げられる。適切な感覚フィードバック装置の非限定的な例としては、これに限定しないが、視覚フィードバック提示を伝達するためのミラーまたは他の光学要素を介してMRIスキャナ内の患者が視認できるモニタ、MRIスキャナ内の患者が視認できるスクリーンを介した視覚フィードバック提示を伝達するためのプロジェクタ、聴覚フィードバック提示を伝達するためのスピーカまたはヘッドフォン、または任意の他の適切な感覚フィードバック装置が挙げられる。
【0050】
図31は、一態様でのデータ収集中に、MRIシステムのオペレータ及び/またはMRIシステムのMRIスキャナ内の患者に対して感覚フィードバックを提供する方法3100を示すフローチャートである。この態様では、方法3100は、上述したように、スキャン中にMRI装置内の患者について求められた動きの1以上の成分に基づいて、データ品質メトリックを算出するステップ3102を含む。ステップ3102で算出されるデータ品質メトリックとしては、これに限定しないが、上述の1以上の変位成分、上述の合計フレーム変位、上述のDVARSを含む他のデータ品質メトリック、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0051】
再び
図31を参照すると、方法3100は、ステップ3102で算出されたデータ品質メトリックの少なくとも一部に基づいて、MRIシステムのオペレータに対する視覚表示をリアルタイムで生成するステップ3104をさらに含む。適切な視覚フィードバック提示の非限定的な例には、
図1に示したGUIのようなGUIの少なくとも一部が含まれる。様々な態様の詳細については後述する。MRIシステムのオペレータに対する視覚フィードバック提示は、視覚要素を含み得る。視覚要素としては、これに限定しないが、そのスキャンで取得した全てのフレームのデータ品質メトリクスを表示する1以上のグラフ、現在のスキャン及び前のスキャンの品質に関する要約統計表、現在のスキャンで取得した使用可能フレームの累積数を伝達するグラフまたは表形式要素、現在のスキャンの残りの時間長さ及び/または現在のスキャンの予測される残りの時間長さを伝達する表または図要素、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。様々な態様では、視覚フィードバック提示の要素は、各関連量が算出されるときに各表示を更新するリアルタイムレートまでの任意の予め選択されたレートで更新してもよい。また、視覚フィードバック提示の要素は、MRIシステムのオペレータからの要求に応じて更新してもよい。また、視覚フィードバック提示の要素は、これに限定しないが例えば、フレーム間のモニタリングされる患者の動きの大幅な増加、累積動き、または任意の他の適切な基準などの複数の要素のうちの少なくとも1つに応じて動的に更新してもよい。
【0052】
再び
図31を参照すると、方法3100は、MRIデータの取得中にスキャナ内の患者に対する感覚フィードバック提示を生成するステップ3106をさらに含む。詳細については後述するが、ステップ3104で生成される感覚フィードバック提示は、これに限定しないが例えば患者の年齢及び状態などの複数の要素のうちの少なくとも1つに基づいて、スキャン終了時の単一の更新からリアルタイムでの連続的な更新までの範囲の広範なリフレッシュレートで更新することができる。
【0053】
様々な態様では、方法3100は、ステップ3106で生成された感覚フィードバック提示に応じて、先行フレームと現在フレームとの間における患者の総変位を求めるステップ3108をさらに含む。一態様では、方法3100は、複数の要素のうちの少なくとも1つを評価して、現在のMRIスキャンを終了すべきか否かを決定するステップ3110をさらに含む。様々な態様では、スキャンは、複数の終了基準のうちの少なくとも1つにしたがって終了させることができる。複数の終了基準には、これに限定しないが、許容できないほど大きい1以上の動き、許容できないほど多い数の比較的小さい動き、適切な数の使用可能フレームが得られたという判断、適切な数の使用可能フレームがスキャンの残り時間内に得られないという予測、適切な数の使用可能フレームが適切な累積スキャン時間内に得られないという予測、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。ステップ3110でスキャンを継続する(スキャンを終了しない)と判定された場合、方法3100は、ステップ3102でデータ品質メトリックを算出するために部分的に使用される少なくとも1つのフィードバック信号を通信して(ステップ3112)、後続フレームに対する方法3100の別の反復を開始することができる。
【0054】
一態様では、本開示のFIRMM方法は、MRIスキャンを受けている患者に対して視覚フィードバック提示を提供する。この態様では、上述したようにFIRMM法を用いて検出された患者の動きに基づいて、視覚フィードバック提示の特徴を変化させることによって、患者の動きの発生を伝達することができる。視覚フィードバック提示の1または複数の要素の特徴は、動きの発生を伝達するために変化させるように選択することができ、そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、サイズ、形状、色、テクスチャ、明るさ、焦点、位置、点滅速度、視覚要素の任意の他の適切な特徴、及びそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0055】
別の態様では、本開示のFIRMM方法は、MRIスキャンを受けている患者に対して聴覚フィードバック提示を提供することができる。この態様では、上述したようにFIRMM法を用いて検出された患者の動きに基づいて、聴覚フィードバック提示の特徴を変化させることによって、患者の動きの発生を伝達することができる。聴覚視覚フィードバック提示の1または複数の要素の特徴は、動きの発生を伝達するために変化させるように選択することができ、そのようなものとしては、これに限定しないが、例えば、音楽の再生の一時停止、音楽の再生の再開、音声キュー、音量、音のピッチ、一連の音の各々の持続時間、一連の音の各々の繰り返し率、音のピッチまたは音量における安定性または揺らぎ、聴覚フィードバックの任意の他の適切な特徴、及びそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。
【0056】
様々な態様では、感覚フィードバック提示の特徴は、MRIスキャナ内の患者から検出された動きの程度または大きさに基づいて変化させることができる。一態様では、感覚フィードバック提示の特徴は、検出された患者の動きの程度に比例して連続的に変化させることができる。別の態様では、感覚フィードバック提示の特徴は、特徴の離散集合内で変化させることができ、その離散集合内の各特徴は、或るレベルの動きの発生を伝達するように構成される。或るレベルの動きとしては、これに限定しないが、動きなし、小さい動き、中程度の動き、及び大きい動きなどが挙げられる。
【0057】
様々な他の態様では、感覚フィードバック提示は、x、y、またはzの単一方向における平行移動、またはx、y、またはzの単一の軸を中心とした回転などの動きの単一成分の変化に応じて変化させることができる。また、感覚フィードバック提示は、2以上の動き成分の組み合わせの変化に応じて変化させることができる。また、感覚フィードバック提示は、上述のフレーム変位などの全体的な動きメトリックに応じて変化させることができる。一態様では、感覚フィードバック提示の単一の特徴を変化させて、動きの発生を患者に伝達する。別の態様では、感覚フィードバック提示の2以上の特徴は、動きの発生を患者に伝達するために独立的に変化し、各特徴は、動きの要素のサブセットに基づいて変化する。非限定的な例として、感覚フィードバック提示には、x方向における患者の動きに基づいて変化する第1の特徴と、y方向及びz方向における患者の動きの組み合わせに基づいて独立的に変化する第2の特徴とが含まれ得る。
【0058】
様々な態様では、感覚フィードバック提示の特徴を更新する頻度は、これに限定しないが、スキャン中に十分に低い動きが維持されたか否かを伝達するためのスキャン終了時の単一のフィードバック提示、FIRMM法により動きがモニタリングされるリアルタイムの頻度と同じ頻度、または、それらの中間の頻度であり得る。様々な態様では、感覚フィードバック提示の特徴を更新する頻度は、MRIスキャナ内の患者の少なくとも1つの特徴、これに限定しないが、患者の年齢、注意欠陥障害または学習障害などの患者の状態、及び、患者の他の関連する特徴、に基づいて選択することができる。様々な態様では、FIRMM方法は、単一フレームからの動き値、または複数フレームにわたる動き値の組み合わせに基づくフィードバックを提供する。様々な他の態様では、FIRMM方法は、リアルタイムフィードバック及び時間遅延フィードバックを提供する。非限定的な例として、非常に幼い子供に対する感覚フィードバック提示が高頻度で更新される場合、感覚フィードバック提示は、より楽しい動的な感覚フィードバック体験を提供する方法として、MRIスキャナ内での動きを増加させるように子供に促すことができる。様々な態様では、感覚フィードバック提示の特徴の更新頻度は、MRIスキャンを通じて一定の更新頻度であるように指定してもよいし、または、患者の動きの瞬間的及び/または累積的評価に基づいて動的に変化させてもよい。
【0059】
非限定的な例として、MRIスキャンを受けている患者は、固定十字線(例えば、照準)を見るように指示される。この例では、十字線は、患者の検出された動き(例えば、頭部の動き)に基づいて色分けされ、患者は、スキャン中に静止を維持することによって、固定十字線を或る色(例えば、第1の色)に維持するように指示される。検出された患者の動きの変化の結果として、十字線が第2の色(例えば、中程度の動きを表すために)または第3の色(例えば、大きい動きを表すために)に変化し、それによって、患者がスキャン中に自分自身の動きをモニタリングして調節することが可能となる。別の非限定的な例では、MRIスキャンを受けている患者は、ムービークリップを見るように指示される。患者の動きのレベル(小さい動き、中程度の動き、大きい動き)に基づいて、ムービークリップ上の視覚遮蔽(visual impediment)によって、患者がムービークリップの一部を見えないようにする。例えば、患者は、ムービークリップの遮蔽されていないビューを見るために、スキャン中に静止を維持するように指示される。患者の動きのレベルに基づき、ムービークリップは、特定のサイズの長方形のブロック(例えば、中程度の動きに対しては小さい黄色の長方形、大きい動きに対しては大きい赤色の長方形)によって遮られる。したがって、患者は、リアルタイムの視覚フィードバックに基づいて、スキャン中に自分自身の動きをモニタリングして調節することができる。
【0060】
他の態様では、FIRMM方法は、上述のリアルタイム視覚ディスプレイのための固定型フィードバック条件または適応型フィードバック条件をさらに提供する。一態様では、固定型フィードバック条件の場合、小さい動き、中程度の動き、及び大きい動きについての閾値は、MRIスキャン中は一定に保持される。別の態様では、適応型フィードバック条件の場合、小さい動き、中程度の動き、及び大きい動きについての閾値は、MRIスキャン中に変更され、より厳しい(例えば、より低い)閾値に置き換えられる。適応型フィードバック条件により、MRIスキャナは、患者の静止を維持する能力に適応することができ、例えば、クロスヘアを第1の色に保つこと、またはムービークリップを遮られずに見えるように保つことの難易度を高めることができる。
【0061】
いくつかの態様では、MRI取得手法(これに限定しないが、マルチバンドイメージングを含む)の変更により、以前のMRI取得手法と比較して、時間的及び空間的分解能の向上が可能となる。しかしながら、向上した時間的及び空間的分解能は、主に呼吸中の胸部の動きによって引き起こされると考えられる、取得後フレームアライメント手法による動き推定におけるアーチファクトを伴い得る。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、呼吸に関連する胸部の動きは、MRIデータ取得中に静磁場(B0)を変化させ、実際の頭部の動きが存在しない場合であっても、リアルタイムの動きモニタリングで使用されるフレーム間アライメント手法を、「頭部の動き」を補正するようにだます。一態様では、FIRMM方法は、動き推定値から呼吸に関連するアーチファクトを除去するために、任意選択のバンドストップ(またはノッチ)フィルタを組み込み、それによって、動きのリアルタイム表示の精度を高める。
【0062】
様々な態様では、FIRMM方法は、ノッチフィルタ(例えば、バンドストップフィルタ)を動き測定に適用して、患者の呼吸によって生じる動き推定値からアーチファクトを除去する。より具体的には、実施例4で後述するように、患者の呼吸は、fMRIにおける動きの推定値の品質を低下させ、それによって、取得されたMRIデータの品質を歪ませる。実施例5で後述するよう、いくつかの態様は、一般的なノッチフィルタを使用して、サンプル集団における出力に関する呼吸ピークの大部分をキャプチャする。他の態様では、患者の呼吸ベルトデータに対して特異的なフィルタパラメータに基づいた、患者特異的フィルタを使用することができる。
【0063】
一態様では、バンドストップ(例えば、ノッチフィルタ)を実施することにより、エイリアシングされた呼吸数に対応する動き推定におけるスプリアス信号を除去することができる。概念的には、このフィルタは、望ましくない周波数成分を除去し、他の成分には影響を与えない。ノッチフィルタは、(a)中心カットオフ周波数と、(b)除去する帯域幅または周波数範囲との2つの設計パラメータを有する。中心カットオフ周波数及び帯域幅のためのパラメータを確立するために、MRIデータ取得中の様々な患者から得られた呼吸数の分布を分析することができ、分布の中央値をカットオフ周波数として使用することができ、分布の第2四分位及び第3四分位を使用して、様々な態様でノッチフィルタの帯域幅を決定することができる。これらのパラメータを確立した後、IIRノッチフィルタ機能を使用してノッチフィルタを設計することができる。所与のサンプリングレート(1/TR)に対して、呼吸数はエイリアシングされないことに留意されたい。別の場合では、TRと呼吸数との組み合わせがエイリアシングをもたらす場合には、エイリアシングされた呼吸数を代わりに使用するべきである。
【0064】
一態様では、設計されたフィルタは、差分方程式である。動き推定を表すシーケンスに適用される場合、この差分方程式は、瞬間的にフィルタリングされた信号を提供するために、2つの前のサンプルを再帰的に重み付けする。この手法は3番目のサンプルから開始し、2つの前のポイントに重み付けし、最後のタイムポイントがフィルタリングされるまで続ける。このタイプの実施のトレードオフの1つは、フィルタリングされた信号が、元の信号に対する位相遅れを有することである。一態様では、この位相遅れは、フィルタを2回適用し、1回目は前方に、2回目は後方に適用して、反対側の位相遅れを互いに相殺するように補償することができる。このことを行うために、フィルタをシーケンス全体に適用した後、同じフィルタ(差分方程式)を逆方向に再適用し、前方にフィルタリングされたシーケンスの最後の時点がフィルタの後方適用のための最初の時点として使用され、再帰プロセスは、前方にフィルタリングされたシーケンスの最初の時点がフィルタリングされるまで続ける。様々な態様では、設計されたノッチフィルタ(一般的なノッチフィルタ、または、患者特異的なノッチフィルタ)が、データ品質を向上させるために、処理後の動き推定シーケンスに適用され得る。
【0065】
図32は、N次フィルタを使用して、検出された動きデータから呼吸に関連するアーチファクトを除去する方法3200を示すフローチャートである。一態様では、方法3200は、N次フィルタを生成するために使用される2N+1フレームをMRIシステムから受信するステップ3202を含む。2N+1フレームに加えて、方法3200は、最小及び最大の呼吸数(1分間あたりの回数)に基づいてN次フィルタを作成するステップ3204をさらに含む。本明細書中にさらに詳細に記載される様々な態様では、患者の呼吸数は、様々な装置及び方法、これに限定しないが、患者に取り付けられた呼吸モニタベルト、MRIスキャナ内の患者から取得されたMRI信号から呼吸数情報を抽出すること、及び任意の他の適切な方法、を用いて得ることができる。
【0066】
再び
図32を参照して、方法3200は、本開示の方法を用いて患者の身体部位の動きを算出するステップ3206をさらに含み得る。この方法は、ステップ3202で作成されたN次フィルタを、現在フレームセットに対して、データ取得時間に関して順方向及び逆方向の両方向に適用するステップ3208をさらに含む。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、N次フィルタは、両方向において、フィルタリングされたデータから位相遅れを除去する。ステップ3210で算出されたフィルタリングされた動き推定値を使用して、これに限定しないがフレーム変位(framewise displacement)を含むデータ品質メトリックがステップ3210で算出される。ステップ3212で追加のフレームが得られた場合、本方法は、ステップ3202で前回に受信した2N+1フレームのうちの最も早いフレームをステップ3212で受信したフレームに置き換えて、本方法3200の次の反復を開始することができる。
【0067】
様々な態様では、設計されたフィルタは、リアルタイムで適用することもできる。なぜなら、動きの瞬間的推定値の各々は、ノッチフィルタの差分方程式にしたがって以前の推定値を重み付けすることによって、フィルタリングすることができるからである。しかし、上述したように、このアプローチは位相遅れをもたらす。一態様では、位相遅れを最小にするために、フィルタは擬似リアルタイムで実行される。この態様では、5つのサンプルを取得した後、フィルタを2回適用することができ、最良の推定値は、第3のサンプルに対応する値である。この遅延信号は、位相遅れを持たない。新たなサンプルが得られるたびに、フィルタを全シーケンスに対して2回適用することができ、そして、このプロセスを繰り返すことができる。新しいサンプルが測定されるたびに、フィルタリングされたシーケンスは、フィルタがシーケンス全体に対して2回適用されたときに得られる最適な出力により近づく。所与の実行の最終フレームでは、フィルタリングされたシーケンスは、後処理中に得られたフィルタリングされたシーケンスと同一となる。したがって、設計されたノッチフィルタをリアルタイムで使用することにより、上述のFIRMMの頭部の動き予測方法を用いて、動きのリアルタイム推定の精度を向上させることができる。
【0068】
様々な態様では、最小二乗適応フィルタリングなどの適応フィルタリング方法は、測定された患者の動きデータ(これに限定しないが例えばフレーム変位データ)に位相遅れを導入することなく、該データから心拍数及び/または呼吸数などの望ましくない高頻度の信号成分を識別して除去するために、リアルタイムで適用される。一態様では、リアルタイム適応フィルタを使用して、MRIデータから呼吸関連アーチファクトを除去することができる。
【0069】
図34に示す一態様では、適応フィルタリング方法は、フィルタリングされていない信号3402を使用する。フィルタリングされていない信号3402としては、これに限定しないが、上述のFIRMM方法を使用してMRIスキャナ内の患者から取得された画像から導出されたフレーム変位(FD)データ、及び、適応フィルタ3406を使用して除去されるノイズ信号3404の最良推定値が挙げられる。適応フィルタ方法3400は、望ましくない信号の測定された信号への寄与を勾配降下法によってリアルタイムで最小化し、最適なフィルタリング済みシーケンス3408を提供する。適応フィルタ3406に入力される適切なノイズ信号3404の非限定的な例としては、MRIスキャナ内の患者の呼吸数のリアルタイム測定、患者の呼吸数に対応する周波数とは異なる位相における複数の正弦波信号の合計、及び患者の呼吸数の任意の他の適切な推定値が挙げられる。一態様では、T1wまたは前回のシーケンス中に患者の呼吸数が取得され、ノイズ信号入力3404として使用され得る。
【0070】
再び
図34を参照すると、一態様では、適応フィルタ方法3400は、上述のFIRMM方法を用いて測定された各方向(すなわち、x、y、z、θ
x、θ
y、θ
z)における頭部の動き3402の最初の推定値を受け取るステップを含む。この頭部の動きの最初の推定値3402は、実際の頭部の動き(s)と、望ましくないアーチファクト(n
0)との両方を含む。重要なことには、これら2つの信号s及びn
0は互いに独立しており、相関していないと仮定される。この方法3400では、望ましくないアーチファクト
【0071】
【0072】
の最良の推定値からなる追加の入力3404が受信される。望ましくないアーチファクトn0が呼吸数に相当する場合、この信号3404は、呼吸数のリアルタイムな測定値として提供される。別の態様では、呼吸のリアルタイム測定が利用できない場合、複数の正弦波信号の和を含む正弦波信号が生成され、その場合、最も可能性の高い呼吸数が、スキャナ内の患者に対応する。この誤差信号3404は、適応フィルタ3406によってフィルタリングされ、誤差信号3410(y(T))の最適化された推定値を生成する。この態様では、適応フィルタ3406の目的は、誤差信号3410(y(T))の最適化された推定値と、頭部の動き3402(d(T))の測定された推定値との相関を最大化することにある。最初のフレームを使用する場合、適応フィルタ3406は、誤差信号3410
【0073】
【0074】
に対して影響を与えないことに留意されたい。この態様では、頭部の動きの推定された推定値3402(d(T))から誤差信号3410の最適化された推定値(y(T))を差し引くことによって、誤差信号3408(すなわち、e(T)=s+n0-y(T))が算出される。この誤差信号3408は、適応フィルタ3406のパラメータを修正して、誤差信号3410(y(t))を推定値3402(d(T))に可能な限り相関させるためのフィードバック信号3412として使用される。実際の頭部の動き(s)と実際のアーチファクト(n0)とは相関していないため、
【0075】
【0076】
との相関関係の最大化は、
【0077】
【0078】
との一致によってなされる。したがって、これらの信号(3402及び3410)を減算することにより、望ましくないアーチファクトが除去される。一態様では、適応フィルタ方法3400は、望ましくないアーチファクトの推定を最大化するために二次差分方程式のパラメータが最適化される、十分に確立された方法を用いて実施される。
【0079】
様々な態様では、フィルタの効果を定量的に調べるために、
図19A~19Dに示すように、品質制御方法を用いて、フィルタリング後の改善された動き推定値を定量的に測定する。このアプローチは検査(censoring)を伴わず、任意のデータセット及び任意のデータ品質メトリックに対して適用することができる。
図19A~
図19D及び
図30A~
図30Cに示すように、品質制御方法は、
図19Aに示すように、時間的順序に関係なく、品質を低下させることによって、患者のボリュームを並べ替えるステップを含む。この方法は、
図19Bに示すように、データの異なる部分における相関を算出する品質順序付けされたデータに、スライディングウィンドウを通すステップをさらに含む。加えて、この方法は、
図19Cに示すように、1つまたはいくつかの第1のウィンドウの相関行列を、他のウィンドウで得られた行列と比較するステップを含む。動きアーチファクトが距離依存性を減少させることを確立した後、マルチバンドデータに対して最初に示された本開示のアプローチを短距離接続のΔrの代わりに使用した。この態様における方法は、
図19Dに示されるように、ボリューム(例えば、所与のフレームに対するFD値)に割り当てられたデータ品質メトリック値を変更しながら、上述のステップを繰り返し、ヌル分布を用いて各スライディングウィンドウにおける品質順序付けされた結果の重要性を決定し、決定された重要性をスライディングウィンドウに含まれるデータ品質メトリック値の各々にマッピングして戻すことによって、結果測定のヌル分布を確立するステップをさらに含む。
【0080】
図33は、
図34に示すように開発された適応フィルタを使用する方法3300を示すフローチャートである。
図33を参照すると、本方法は、MRIシステムから現在フレームを受信するステップ3302と、基準画像と現在フレームとの間における身体部位の動きを算出するステップ3304とを含む。方法3300は、適応フィルタを使用して、ステップ3304で算出された患者の身体部位の動きから、呼吸に関連する望ましくない信号のばらつきを除去するステップ3306をさらに含む。適応フィルタは、
図34に要約した方法3400にしたがって決定される。方法3300は、ステップ3304及びステップ3306で算出されたフィルタリングされた動きデータを使用して、これに限定しないが例えばフレーム変位などのデータ品質メトリックを算出するステップ3308をさらに含む。方法3300は、追加フレームが得られたか否かを判定し、必要に応じて方法3300の別の反復を開始するステップ3310をさらに含むことができる。
【0081】
図8は、一態様では、患者の動きを補償するべく一組のMRIフレームを基準画像に対してアライメントするために一連のMRIフレームを処理するFIRMM方法800の非限定的な一例を示す。FIRMM方法800は、MRIフレームまたは画像の形態で、MRI(磁気共鳴画像化)システムからデータを受信するステップ802を含む。MRIフレームは、コンピュータ装置によって、ネットワークを介して、またはコンピュータ装置に接続された若しくはコンピュータ装置と通信している記憶媒体を介して、MRIシステムからデータを受信することができる。
【0082】
再び
図8を参照すると、FIRMM方法800はまた、受信したフレームを基準画像に対してアライメントするステップ804を含む。各フレームは、一連の剛体変換T
iによって、基準画像に対してアライメントすることができる。iは、第2のフレームから開始された、受信したフレームiのフレーム1の基準画像に対する空間的位置合わせのインデックス付けである。各変換は、位置合わせ誤差を、絶対最小値または選択されたカットオフ未満に最小化することによって算出される。
【0083】
【0084】
【0085】
における画像強度であり、
sは、脳の全体にわたって空間的に平均化された平均信号強度のばらつきを補償するスカラー因子である(山括弧)。
【0086】
特定の態様では、4dfp cross_realign3d_4dfpアルゴリズムを使用して再アライメントされる(この参照によりその内容全体が本明細書に援用される「Smyser, C. D. et al. Cerebral cortex 20, 2852-2862, (2010)」を参照されたい)。別のアライメントアルゴリズムを使用して、フレームをアライメントさせてもよい。
【0087】
FIRMM方法800はまた、受信したフレームと先行フレームとの間における身体部位の相対動きを算出することを含む。身体部位(例えば、頭部の動き)の相対動きは、6つのフレームアライメントパラメータx、y、z、θx、θy、及びθzから算出される。x、y、zは、3つの座標軸における平行移動であり、θx、θy、及びθzは、各座標軸を中心とした回転である。
【0088】
FIRMM方法800はまた、合計フレーム変位を算出して、頭部の動きの複数の変位ベクトルを生成するステップ808を含む。非限定的な例として、合計フレーム変位は、身体部位(例えば、頭部)の6つの方向絶対変位を合計することによって算出され、これより、身体部位を剛体として扱うことができる。この非限定的な例では、i番目のフレームの頭部の動きは、下記の式にしたがって、スカラー量に変換することができる。
【0089】
【0090】
式中の各要素は下記の通りである。
【0091】
【0092】
回転変位|Δαi|、|Δβi|、及び|Δγi|は、画像化される身体部位を表す3Dボリュームの表面上の変位を算出することによって、角度からミリメートルに変換される。非限定的な例として、頭部を画像化する場合、変位を算出するために選択される3Dボリュームは球体であり得る。各データフレームは基準画像に対して再アライメントされるので、FD(フレーム変位)は、(現在フレームについての)変位iから(先行フレームについての)変位i-1を差し引くことによって算出される。
【0093】
いくつかの態様では、FIRMM方法800は、合計フレーム変位が予め定められた閾値を超えるカットオフを有するフレームを除外するステップ810をさらに含む。このステップ810を完了すると、FIRMM方法800は、MRIスキャンにおける各後続フレームに対して次の反復を開始する。
【0094】
様々な態様では、方法800は、MRIシステム及び1以上のプロセッサまたはコンピュータ装置を含むシステムによって実施され得る。様々な態様では、本明細書に記載された1以上の演算は、その演算を実行するようにプログラムされた物理回路を有する1以上のプロセッサによって実施される。様々な他の態様では、FIRMM方法800の1以上のステップは、1以上のプロセッサまたはコンピュータ装置によって自動的に実行される。様々な別の態様では、
図8に示した様々な処理は、図示したシーケンスで行ってもよいし、他のシーケンスで行ってもよいし、並列で行ってもよいし、または、場合によっては省略してもよい。
【0095】
コンピュータシステム
【0096】
いくつかの態様では、上述のFIRMM方法及びプロセスは、1または複数のコンピュータを含むコンピュータシステムを使用して実施される。特に、本開示のFIRMM方法及びプロセス、例えば本開示の方法は、コンピュータアプリケーション、コンピュータサービス、コンピュータAPI、コンピュータライブラリ、及び/または他のコンピュータプログラム製品として実現され得る。
【0097】
図9は、本開示のFIRMM方法、これに限定しないが
図8に示した方法800を実施するためのシステム900の簡略化したブロック図を示す。再び
図9を参照すると、FIRMMコンピュータ装置904は、(i)MRI(磁気共鳴画像化)システム902からMRIデータフレームを受信するステップと、(ii)受信したフレームを、MRIシステム902から受信した基準画像、解剖学的アトラスから検索した基準画像、または本明細書に記載された任意の他の適切な基準画像に対してアライメントするステップと、(iii)受信したフレームと基準画像との間における身体部位の動きを算出するステップと、(iv)受信したフレームと基準画像との間における身体部位の算出された動きに少なくとも部分的に基づいてデータ品質メトリックを算出するステップと、(v)事前に識別されたデータ品質メトリックの閾値を用いて、各フレームのデータ品質メトリックに基づきフレームを分類するステップと、(vi)オペレータ用コンピュータ装置910を介して、オペレータに対してフィードバックをリアルタイムで送信するステップと、(vii)患者用コンピュータ装置912を介して、MRIスキャン中を受けている対象(例えば、患者)に対して感覚フィードバックを表示するステップと、を実施するように構成されている。
【0098】
システム900は、データを格納するデータベース908に通信可能に接続されたデータベースサーバ906をさらに含む。一態様では、データベース908は、頭部の動きのパラメータ、各データフレームに関連するフレーム変位(FD)値、及び完了したスキャンセッションに関連するデータ(例えば、保存されたデータフレーム)を含み得る。追加的または代替的に、データベース908はまた、リアルタイム画像表示及びフィードバック条件に関連するデータ、例えば、MRIを受けている患者に対して表示されるムービークリップまたは色分けされた十字線、及び画像表示のための事前に設定された閾値(例えば、動きなし、中程度の動き、または大きい動きのための閾値)など、を含み得る。例示的な態様では、データベース908は、FIRMMコンピュータ装置904から遠隔に格納され得る。いくつかの態様では、データベース908は、分散化され得る。
【0099】
様々な態様では、FIRMMコンピュータ装置904は、MRIシステム902に関連するコンピュータネットワークに通信可能に接続されるか、またはそのコンピュータネットワークの一部であり得る。MRIシステム902は、MRI画像を取得するように構成される。例示的な態様では、FIRMMコンピュータ装置904は、MRIシステム902の少なくとも1つのMRIスキャナからMRIデータフレームを受信する。
【0100】
FIRMMコンピュータ装置904はまた、1以上のオペレータ用コンピュータ装置910と関連し得る。様々な態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、オペレータがスキャナを制御することを可能にするコンピュータである。オペレータ用コンピュータ装置910は、オペレータが、FIRMMコンピュータ装置904から受信した、患者の身体の動きについてのリアルタイム及び事後の視覚フィードバックを見ることを可能にする。より具体的には、オペレータ用コンピュータ装置910は、これに限定しないが例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、または統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)、デジタルアップ接続、デジタル加入者線(DSL)、携帯電話接続、及びケーブルモデムのうちの少なくとも1つを含む様々なインタフェースを介して、インターネットに通信可能に接続され得る。オペレータ用コンピュータ装置910は、これに限定しないが例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ファブレット、ウェアラブル電子機器、スマートウォッチ、または他のウェブベースの接続可能な機器またはモバイルデバイスなどのインターネットにアクセス可能な任意のデバイスであり得る。
【0101】
例示的な態様では、FIRMMコンピュータ装置904は、オペレータ用コンピュータ装置910を介して、リアルタイムのフィードバックをオペレータに送信する。さらに別の態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、表示装置(例えば、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、「電子インク」ディスプレイ)、またはグラフィカルユーザインターフェース(例えば、ウェブブラウザ及び/またはクライアントアプリケーション)をオペレータに提示するように構成された他の電子ディスプレイであってもよいし、または、それを含んでもよい。いくつかの態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、オペレータからの入力を受信する入力装置を含み得る。オペレータは、MRIスキャン中に入力装置を使用して、これに限定しないが、FIRMMコンピュータ装置904から受信したデータに応答することができ、それによって、例えば、MRIデータフレームを選択及び/または削除、またはMRIスキャンの停止を行うことができる。他の態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、(例えば、タッチスクリーンの操作、アイコンの操作、ジョイスティックまたはノブなどの入力装置の操作によって)オペレータからの入力を受け取ることができる。これらの態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、FIRMMコンピュータ装置904の1以上のプロセッサに対して、入力を(能動的及び/または受動的に)伝達することができる。特定の態様では、オペレータ用コンピュータ装置910は、スキャンセッションの終了時に、FIRMMコンピュータ装置904によって生成されたMRIスキャンレポートを表示することができる。
【0102】
FIRMMコンピュータ装置904は、MRIスキャンを受けている対象(例えば、患者)に関連する1以上の患者用コンピュータ装置912に通信可能に接続される。より具体的には、患者用コンピュータ装置912は、これに限定しないが例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)、デジタルアップ接続、デジタル加入者線(DSL)、携帯電話接続、及びケーブルモデムのうちの少なくとも1つを含む様々なインタフェースを介して、インターネットに通信可能に接続され得る。患者用コンピュータ装置912は、これに限定しないが例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ファブレット、ウェアラブル電子機器、スマートウォッチ、または、他のウェブベースの接続可能な機器若しくはモバイルデバイスなどのインターネットにアクセス可能な任意のデバイスであり得る。例示的な態様では、患者用コンピュータ装置912は、FIRMMコンピュータ装置904からリアルタイムな視覚フィードバックを受信する。例示的な態様では、患者用コンピュータ装置912は、表示装置(例えば、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、または「電子インク」ディスプレイ)である。患者用コンピュータ装置912は、例えばムービークリップまたは色分けされた十字線などの刺激条件を表示して患者の関心を引き、FIRMMコンピュータ装置904から受信したリアルタイムフィードバックをMRIスキャン中の患者に対して提供する。いくつかの態様では、オペレータ用コンピュータ装置910及び/または患者用コンピュータ装置912は、MRIシステム902の一部である。
【0103】
図10は、本開示の方法及びプロセスのうちの1以上を実施するように構成された別の態様のコンピュータ装置1000を概略的に示す。コンピュータ装置1000は、
図9に示したFIRMMコンピュータ装置904と同様であり得る。再び
図10を参照すると、コンピュータ装置1000は、
図9に示したMRIシステム902などのMRIシステムに動作可能に接続され、MRIシステムと通信するか、またはMRIシステムに含まれ得る。
【0104】
本開示の範囲から逸脱することなく、任意のコンピュータアーキテクチャを制限なく使用することができることを理解されたい。別の態様では、コンピュータ装置1000は、マイクロコンピュータ、集積コンピュータ回路、プリント回路基板(PCB)、マイクロチップ、メインフレームコンピュータ、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ホームエンターテインメントコンピュータ、ネットワークコンピュータ装置、モバイルコンピュータ装置、モバイル通信装置、ゲーム装置などの形態を取り得る。
【0105】
一態様では、コンピュータ装置1000は、論理サブシステム1002及びデータ保持サブシステム1004を含む。コンピュータ装置1000は、任意選択で、表示サブシステム1006、通信サブシステム1008、画像化サブシステム1010、及び/または
図10に示されていない他の追加の構成要素を含み得る。コンピュータ装置1000はまた、任意選択で、ユーザ入力デバイス、例えば、手動で操作されるボタン、スイッチ、キーボード、マウス、ゲームコントローラ、カメラ、マイク、及び/またはタッチスクリーンなど、を含み得る。
【0106】
論理サブシステム1002は、1以上の機械可読命令を実行するように構成された1以上の物理デバイスを含み得る。例えば、論理サブシステムは、1以上のアプリケーション、サービス、プログラム、ルーチン、ライブラリ、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、または他のロジカルコンストラクトの一部である1以上の命令を実行するように構成することができる。このような命令は、タスクの実行、データタイプの実施、1以上のデバイスの状態の変換、または所望の結果に至るように実施され得る。
【0107】
論理サブシステムは、ソフトウェア命令を実行するように構成された1以上のプロセッサを含み得る。例えば、1以上のプロセッサは、本明細書に記載された様々な演算を実行するようにプログラムされた物理回路を含み得る。追加的または代替的に、論理サブシステムは、ハードウェアまたはファームウェア命令を実行するように構成された1以上のハードウェアまたはファームウェア論理マシンを含み得る。論理サブシステムのプロセッサは、シングルコアであってもマルチコアであってもよく、そのコア上で実行されるプログラムは、並列処理または分散処理用に構成され得る。論理サブシステムは、任意選択で、2以上の装置に分散された個々の構成要素を含み得る。2以上の装置は、互いに遠隔に配置されるか、あるいは、協働的に処理を実行するように構成され得る。論理サブシステムの1以上の態様は、クラウドコンピューティング構成内に構成された遠隔アクセス可能なネットワーク化されたコンピュータ装置によって仮想化され、実行され得る。
【0108】
データ保持サブシステム1004は、論理サブシステムによって実行可能なデータ及び/または命令を保持して、本明細書に記載の方法及びプロセスを実施するように構成された1以上の物理的な、一時的でない装置を含み得る。このような方法及びプロセスが実施される場合、データ保持サブシステム1404の状態は変更され得る(例えば、異なるデータを保持するために)。
【0109】
データ保持サブシステム1004は、取り外し可能な媒体及び/または内蔵装置を含み得る。データ保持サブシステム1004は、とりわけ、光メモリデバイス(例えば、CD、DVD、HD-DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクなど)、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、EPROM、EEPROMなど)、及び/または磁気メモリデバイス(例えば、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、テープドライブ、MRAMなど)を含み得る。データ保持サブシステム1404は、揮発性、不揮発性、動的、静的、読取り/書込み、読取り専用、ランダムアクセス、シーケンシャルアクセス、ロケーションアドレス指定可能、ファイルアドレス指定可能、及びコンテンツアドレス指定可能のうちの1以上の特徴を有するデバイスを含み得る。いくつかの態様では、論理サブシステム1002及びデータ保持サブシステム1004は、例えば特定用途向け集積回路やチップ上のシステムなどの1以上の共通デバイスに統合され得る。
【0110】
図10はまた、本明細書に記載の方法及びプロセスを実施するために実行可能なデータ及び/または命令を格納及び/または転送するために使用することができる、取り外し可能なコンピュータ可読記憶媒体1012の形態のデータ保持サブシステムの一態様を示す。取り外し可能なコンピュータ可読記憶媒体1012は、とりわけ、CD、DVD、HD-DVD、Blu-Ray(登録商標)ディスク、EEPROM、フラッシュメモリカード、USB記憶装置、及び/またはフロッピー(登録商標)ディスクの形態を取ることができる。
【0111】
データ保持サブシステムが含まれる場合、表示サブシステム1006は、データ保持サブシステム1004によって保持されているデータの視覚表示を提示するために使用される。本明細書で説明される方法及びプロセスは、データ保持サブシステムによって保持されているデータを変更し、したがって、データ保持サブシステム1004の状態を変更する。例えば、表示サブシステム1006の状態も同様に、基礎的データの変化を視覚的に表示するように変更される。表示サブシステム1006は、実質的にあらゆる種類の技術を利用する1以上の表示装置を含み得る。このような表示装置は、共有筐体内の論理サブシステム1002及び/またはデータ保持サブシステム1004と組み合わせてもよいし、または周辺表示装置であってもよい。
【0112】
一態様では、通信サブシステム1008は、コンピュータ装置1000を1以上の他のコンピュータ装置に通信可能に接続されるように構成され得る。通信サブシステム1008は、1以上の異なる通信プロトコルと互換性のある有線及び/または無線の通信装置を含み得る。非限定的な例として、通信サブシステム1008は、無線電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク、有線ローカルエリアネットワーク、無線ワイドエリアネットワーク、有線ワイドエリアネットワークなどを介して通信するように構成され得る。いくつかの態様では、通信サブシステムは、コンピュータ装置1000が、インターネットなどのネットワークを介して他の装置との間でメッセージを送受信することを可能にする。
【0113】
一態様では、画像化サブシステム1010は、コンピュータ装置1000と通信する様々なセンサまたは画像化装置から、任意の適切な画像データを取得及び/または処理するのに使用される。例えば、画像化サブシステム1010は、MRIシステム、例えば上述のMRIシステム902の一部として、MRI画像データを取得するように構成され得る。画像化サブシステム1010は、共通筐体内の論理サブシステム1002及び/またはデータ保持サブシステム1004と組み合わせてもよいし、または周辺画像化装置であってもよい。画像化サブシステム1010から受信したデータは、例えば、データ保持サブシステム1004、及び/または取り外し可能なコンピュータ可読記憶媒体1012によって保持され得る。
【0114】
様々な態様では、本開示のFIRMM方法は、インストール及び使用をより容易かつ信頼性の高いものにするために、それぞれ特定の目的を有する少なくともいくつかのソフトウェアパッケージのうちの1以上の形態で実施され得る。これに限定しないが、任意の既知のオペレーティングシステム上で実行可能な任意の既知のタイプのソフトウェアパッケージを使用して、本開示のFIRMM方法を実施することができる。
【0115】
非限定的な例として、Docker対応Linux(登録商標)システムを使用して、本開示のFIRMM方法を実現することができる。この例では、プレビルドDockerイメージを使用するように調整されたシェルスクリプトを使用して、FIRMMソフトウェアパッケージを起動させてもよい。この例のFIRMM実施で使用されているコンポーネントには、コンパイルされたMATLAB(R2016b)バイナリバックエンド(これを実行するため、含まれているMATLABコンパイラランタイムを実行する必要がある)、画像処理用のシェルスクリプト、画像処理ソフトウェアの依存関係を含むDockeイメージ、及び、Djangoウェブアプリケーションフロントエンドが含まれる。コンパイルされたMATLABバイナリバックエンドは、現在の日付を持ち、過去数分以内に作成された画像を含む新しいサブフォルダを待っている受信フォルダをモニタリングする。バックエンドは、新しい機能的画像に対してのみシェルスクリプト画像処理を行う。この例に必要な画像処理ソフトウェアは、Dockerイメージ内に既にインストールされ、設定されている。この例では、結果は、ウェブブラウザを介して、Djangoウェブアプリケーションのフロントエンドに図表として視覚的に表示される。
【0116】
この例では、EPI(エコープラナーイメージング)データの各フレーム/ボリュームが取得され、医療情報交換のための標準規格(DICOM:Digital Imaging and Communications in Medicine)フォーマットに再構成された後にすぐに、FIRMMソフトウェアが新しい画像をモニタリングする予め指定されたフォルダに転送される。Siemensスキャナを使用すると、ideacmdtoolユーティリティで「送信IMA」のオプションを選択することにより、DICOMの高速転送を実現できる。FIRMMソフトウェアは、DICOMヘッダを読み込み、ヘッダ情報を使用して各DICOMをジョブキューイングシステムに順次入力する。DICOMは、取得した順に処理される。FIRMMソフトウェアは、DICOMを、niftiフォーマットに変換し、その後の処理の前に4dfpフォーマットに変換する。FIRMMは、4dfp cross_realign3d_4dfpアルゴリズム(この参照によりその内容全体が本明細書に援用される「Smyser, C. D. et al. Cerebral cortex 20, 2852-2862, (2010)」を参照されたい)を使用してEPIデータを再アライメントする。FIRMMソフトウェアによって実行されるcross_realign3d_4dfpアルゴリズムは算出速度について最適化されており、したがって、フレーム間の画像強度の正規化は無効化され、再アライメントされたデータは書き出されず、アライメントパラメータのみが書き出される。niftiフォーマットデータ上で実行される別のアライメントアルゴリズムも利用可能である。EPI画像では、オフラインデータ分析で一般的に利用される前処理ステップは実施されない。空間分解能が4mm3よりも小さいEPI画像については、処理速度を増加させるために、再アライメント前にデータを4mm3にダウンサンプリングした。
【0117】
頭部の再アライメントを推定するために、各実行の各データフレーム(ボリューム)は、一連の剛体変換Tiによって基準画像に対してアライメントされる。iは、フレームiの基準画像に対する空間的位置合わせのインデックス付けである。各変換は、位置合わせ誤差を最小化することによって算出される。
【0118】
【0119】
【0120】
における画像強度であり、
sは、脳の全体にわたって空間的に平均化された平均信号強度のばらつきを補償するスカラー因子である(山括弧)。
【0121】
各変換は、下記の式に示すように、回転と変位との組み合わせによって表される。
【0122】
【0123】
式中、
Riは、回転の3×3の行列を表し、
【0124】
【0125】
は、変位の3×1の列ベクトルを表す。
Riは、次の式で表される3つの軸の各々における3つの初等回転から構成される
【0126】
【0127】
フレーム変位(FD)を算出するために、頭部の再アライメントパラメータを、第2フレームから始まる複数フレームにわたって算出して、頭部の動きの6つの変位ベクトルを生成した。頭部の動きは、下記の式にしたがって、スカラー量に変換される。
【0128】
【0129】
式中の各要素は下記の通りである。
【0130】
【0131】
回転変位は、健常若年成人の大脳皮質から頭部中心までの平均距離である半径50mmの球体の表面上の変位を算出することによって、角度からミリメートルに変換される。様々な態様では、回転変位を度からミリメートルに変換する別のスキームが、これに限定しないが、患者の身体サイズまたは年齢のばらつきを考慮するために、または頭部/脳とは異なる身体部位に適合させるために使用され得る。各データフレームは基準画像に対して再アライメントされるため、フレーム変位(FD)は、変位i(現在フレームに対応)から変位i-1(先行フレームに対応)を差し引くことによって算出される。
【0132】
フレーム変位(FD)をリアルタイムで視覚化するために、一態様でのFIRMMソフトウェアは、Django(www.djangoproject.com)及びChart.js (www.chartjs.org)で設計されたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を使用して、FDトレース及びデータ品質の集計カウントをリアルタイムで表示することができる。代表的なGUI1100の例を
図11に示す。GUI100は、スキャン時間の関数として、各フレームのFDのグラフ1101を連続的に表示及び更新することができる。GUI100はまた、テーブル形式1102で既に取得された「高品質」の低動きフレームの数に関する集計カウントを、色分けされた棒グラフ1104として連続的に表示及び更新することができる。上述したように、低動きフレームは、FDカットオフ・プリセット値を下回るFDを有するフレームとして識別され得る。これに限定しないが、例えば、0.2mm、0.3mm、及び0.4mmのFDカットオフ・プリセット値を含む、任意の1以上の適切なFDカットオフ・プリセット値が選択され得る。各データ取得エポック(例えば、スキャン)の終わりに、そのスキャンについての集計カウントが、頭部の動きの集計データを表にしたリスト1106に、各スキャンについて別々に、及び、アクティブスキャンセッションにおいてこれまでに取得された全てのデータの合計について表示される。GUIはまた、予め設定された基準時間長さ(pre-set time-to-criterion)(例えば、動きが小さいFDデータの分数)が得られるまでスキャンする必要がある長さについての予測1108を表示することができる。GUIは、予め設定された基準時間長さが得られるまでフレームをスキャンした実際の時間長さ(分及び秒の単位)のグラフをさらに含み得る。ユーザは、簡単な設定ファイルを使用して、FDカットオフ及びデータ量基準をカスタマイズすることができる。
【0133】
一態様では、FDを予測するための頭部の動き(FD)の予測アルゴリズムは、新しいデータフレーム毎に更新される線形モデル(y=mx+b)である。式中、yは、スキャンまたは実験の終了時に、所定のFDカットオフ値を下回る低動きフレームの予測数であり、xは、連続フレームカウントであり、m及びbは、患者毎にリアルタイムで推定される。先行フレームでのオブジェクトの位置を基準として使用して、現フレームでのオブジェクトの相対変位が所与の閾値(例えば、mm単位)未満である場合に、所与のフレームは使用可能とラベル付けされる。
【0134】
様々な態様では、FIRMMソフトウェアの実施は、BOLD画像を迅速に再構成し転送するように構成されたMRIスキャナを使用する。FIRMMソフトウェアはここでは、シーメンス(Siemens)から提供されるEPIモザイクを想定しているが、ゼネラル・エレクトリック(General Electric:GE)やフィリップス(Philips)などの他のMRIデバイスメーカーに関連付けられた非モザイクフォーマットで動作するようにカスタマイズしてもよい。一態様では、FIRMMソフトウェアは、Siemens3T Tim Trioスキャナ及び/またはSiemens3T Prismaスキャナ上に実装され得る。様々な態様では、FIRMMソフトウェアは、広範囲のシーケンスとEPI画像タイプとの互換性を可能にするように構成され得る。非限定的な例として、Siemensスキャナと共に使用するために、FIRMMソフトウェアは、バッファリングを無効にしたideacmdtool SendIMAオプションを利用してもよい。あるいは、迅速なDICOM転送をSiemensシーケンスに直接組み込んで、FIRMMソフトウェアとの通信を可能にしてもよい。
【0135】
一態様では、FIRMMソフトウェアは、スキャナオペレーティングシステムを実行する第2のコンピュータにネットワーク接続されたDocker対応Linux(登録商標)コンピュータ上に実装され得る。スキャナオペレーティングシステムは通常、研究で使用される既存のMRIスキャンシステムに含まれる。FIRMMソフトウェアは、Dockerイメージに自己完結的に含まれ得る。
【0136】
非限定的な一例では、FIRMMソフトウェアは、Linux(登録商標)(Ubuntu 14.04 LTS)及び以下のハードウェア仕様のコンピュータを使用して実行される:CPU=Intel Core i7 4790K 4.0 GHzクアッドコア、マザーボード=ASUS Z97M-PLUS、メモリ=16GB DDR3、ハードドライブ=Samsung850EVO120GB、グラフィックス=GPU NVIDIA GTX960。
【0137】
一態様では、FIRMMソフトウェアは、DICOMヘッダ情報を使用して、検査毎に一時的処理フォルダを保存する。そのフォルダに、FIRMMソフトウェアは、各データフレームに関連付けられた頭部の動きのパラメータ及びFD値を保存する。FIRMMソフトウェアはまた、スキャンセッションの終了時に、GUIに表示されるすべての情報を含むJSONファイルを生成して保存する。完了したスキャンのJSONをロードすることで、ユーザは以前のスキャンセッションの最終的なFIRMM表示を再作成することができる。
【0138】
実施例
【0139】
以下の実施例は、本開示の様々な態様を例示する。
【0140】
実施例1:FIRMMによる頭部の動きの予測の検証
【0141】
上述のFIRMMの頭部の動き予測方法を検証するために、以下の実験を行った。
【0142】
本研究では、平均年齢12.4歳(範囲=7.2-19.6歳)の、ティーンエイジャー及び若年成人である参加者の合計1,134回のスキャン(457人の女性のスキャン)から得られた既存のrs‐fcMRIデータを用いて、FIRMMのFD計算を標準的な事後手法(Power et al.,2012;Power et al.,2015)と比較し、スキャン時にFIRMMが利用可能である場合のスキャンコストの削減を推定した。同一のデータを、FIRMMの頭部の動きの予測アルゴリズムの検証にも使用した。
【0143】
既存のデータセット1及び2にFIRMMを適用した後、29人の定型発達参加者(FIRMM試験;データセット3:女性11人、平均年齢=11.5歳、年齢範囲=5.9-15.9歳)の新たなコホートにおいて、FIRMMの有用性を、スキャナオペレータに対して試験した。
【0144】
これらの実験で使用された既存のrs‐fcMRIデータには、注意欠陥多動性障害(ADHD;データセット1:参加者425人、女性140人)、自閉症スペクトラム障害(ASD;データセット1:参加者84人、女性17人)、アルコール使用の家族歴(FHA;データセット2:参加者308人、女性143人)、及び同年齢の定型発達対照(対照;データセット1、2:341人の参加者、157人の女性)を有するコホートが含まれていた。
【0145】
データセット1:ADHD、ASD、定型発達対照
【0146】
ADHDコホート及びASDコホートは、同年齢の定型発達対照とともに、Fair及びNiggの研究室で進行中の2件の縦断的研究の一部として募集された。定型発達及びADHDの参加者については、地域社会での大量メール送信に応じてボランティアをした家族から参加者を募集した。彼らの診断分類を、「子供の感情病及び統合失調症用面接基準(K-SADS-E)」(Orvaschel,H.,Lewinsohn,P.M.&Seeley,J.R.,Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry34,1525-1535,(1995))と、「Connerの評価尺度」の第3版、「ADHD評価尺度」、及び「子どもの強さと困難さアンケート」などの保護者及び教師の標準化評価尺度を用いた保護者の臨床面接を含む、最良推定である多段階の症例発見手順で慎重に評価した。「参加者のためのウェクスラー知能検査」の3つのサブテスト短縮形式(ブロック設計、語彙、及び情報)で知能を評価し、「ウェクスラー個別式学力検査」の読字及び数値演算サブテストで学力を評価した。最良推定の診断チームが、得られたすべての情報を検討し、独立して診断を下した。ADHD/非ADHD状態に関する彼らの合意は受け入れられた(ADHD及びADHDサブタイプを含むサンプルにおいて、基準率>5%で発生したすべての診断についてk>0.85)。
【0147】
ADHDまたは非ADHD群の基準を満たしていない場合、すなわち、チック障害、精神病性障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、または精神遅滞の徴候がある場合には、参加者(例えば、対象)を除外した。参加者の両親によって報告された神経疾患の病歴、慢性医学的問題、感覚運動障害、または重大な頭部外傷(意識消失を伴う)のために、参加者をさらに除外した。精神刺激薬以外の向精神薬を服用している参加者も除外した。MRI取得を示す可能性があるか、または画像アーチファクトを引き起こす可能性がある金属(例えば、歯列矯正具、頭蓋内動脈瘤クリップ)を体内に有している参加者も除外した。対照の参加者についての追加の除外基準は、行為障害、または大うつ病性障害の存在であった。右利きの参加者のみを本試験に含めた。精神刺激薬を処方された参加者については、最低5半減期(例えば、製剤に応じて24-48時間)の休薬期間後にスキャンを行った。
【0148】
ASD参加者については、集学的臨床チームが、ADOS(Lord,C.et al.J.Autism Dev Disord30,205-223(2000))を用いて診断を決定した。全参加者は、DSM-IV基準(米国精神医学会、2000年)を用いたADI-RのASD基準(Lord,C.,Rutter,M&Le Couteur,A.J.Autism Dev Disord24,659-685(1994))も満たしていた。ASDの参加者についても、上記と同一の試験方法でADHDについて評価した。上述したように、精神刺激薬を服用しているASDの参加者については参加を許可したが、神経画像診断の前に、少なくとも24-48時間(処方に応じて)、または製剤の少なくとも7半減期(例えば、身体が薬物の投与量の半分を代謝/排泄するために要する時間)の間、休薬させた。非刺激性の向精神薬(例えば、三環系抗うつ薬、SSRI、MAO阻害薬、または抗精神病薬及びアトモキセチン)を服用している参加者は、本試験から除外した。
【0149】
データセット2:アルコール使用の家族歴、定型発達対照
【0150】
10-16歳の参加者を、地域社会から募集した。家族歴陽性(FHP)の青少年はNagelの研究室で進行中の縦断的研究の一部であり、家族歴陰性の参加者(定型発達対照)と人口統計的特性について一致させた。適格性を決定するために、参加者及び両親の1人に電話で構造的インタビューを行った。除外基準は以下を含んでいた:家族歴に関する情報の欠如、精神病性障害(例えば、統合失調症または双極I型)の家族歴、DSM-IV精神疾患の診断、顕著な生涯でのアルコールまたは物質の使用(生涯に11杯以上の飲酒または一度の機会に3杯以上の飲酒、6回以上のマリファナの使用、1日に5本以上の喫煙、その他の薬物の使用)、神経疾患、顕著な頭部外傷(2分超の意識消失)、重篤な医学的状態、精神遅滞または学習障害、薬物またはアルコールへの出生前曝露、左利き、早産(36週間未満)、MRI禁忌、妊娠または妊娠の可能性。
【0151】
1親等の近親者(実親)、並びに2親等の近親者(実の祖父母)または実のおば及びおじにおけるDSM-IV基準によって定義されたAUDの存在を評価するために、家族歴評価基準尺度(Rice,J.P.et al.Comparison of direct interview and family history diagnoses of alcohol dependence.Alcoholism,clinical and experimental research 19,1018-1023(1995))を、少なくとも1人の実親、及び参加した青少年に用いた。この情報に基づいて青少年を家族歴陰性(FHN)または家族歴陽性(FHP)に分類した。FHNの青少年には、AUD歴を有する近親者はいなかった。FHPの青少年には、AUD歴を有する親族と同一の家系に、少なくとも1人の親、または2人以上の二親等の近親者若しくは実のおば及びおじがいた。FHP青少年について、家族性AUDの程度を示す家族歴密度(FHD)スコアを算出した:両親は0.5、祖父母は0.25、おば及びおじは0.25を兄弟の数で割った重み付き比率だけ寄与していた。FHP群では、スコアは0.04-1.50の範囲であった。
【0152】
知能指数(IQ)を、ウェクスラー短縮知能検査(Wechsler,D.Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence(WASI)(Psychological Corp,1999))の2つのサブテスト版を用いて評価した。
【0153】
検証データ取得パラメータ
【0154】
データセット1及び2の参加者を、オレゴン健康科学大学(OHSU)のAdvanced Imaging Research Centerに設置されている12チャネルヘッドコイルを備えたSiemens Tim Trio 3.0 Tesla Magnetom Tim Trio system(ドイツ、エアランゲン所在、Siemens Medical Solutions社)上でスキャンした。高分解能T1強調MPRAGEシーケンスを得た(分解能=1×1×1.1mm)。BOLDコントラストの機能画像を、T2*強調エコープラナーイメージ(TR=2500ミリ秒、TE=30ミリ秒、フリップ角=90°、FOV=240mm2、全脳スライス36枚、スライス厚=3.8mm、分解能=3.75×3.75×3.8mm)を用いて(前後の交連に沿って)収集した。5分間の安静状態のBOLDデータのスキャンを3回取得し、その間、参加者に、静止を維持し、スキャナのヘッドから投影され、かつ12チャンネルのヘッドコイルに取り付けられたミラーによって見ることができる黒い画面の中央の白い十字線に焦点を合わせるように指示した。
【0155】
結果
【0156】
頭部の動きは若年参加者、患者において最大である。
【0157】
頭部の動き(例えば、運動)が非常に大きい人口統計学的集団におけるMRIスキャンは、FIRMM分析を利用することによって大きな利益を得られる可能性がある。したがって、本発明者らは、7-19歳の対象からの1,134回のスキャンセッションのセットにおいて、有害な頭部の動きに対する年齢、性別、及び異なる神経精神医学的状態の影響を試験した(
図2A及び
図2B)。先行研究と一致して、より若い年齢で平均FD値が有意に大きいことが、多変量線形回帰分析(GLM:年齢、コホート、性別)によって示された(年齢の影響、F=5.6、p<0.00001)。
図2A及び
図2Bは、頭部の動きに対する年齢、診断、及び性別の影響を示す。MRIスキャン参加者1,134人の平均FD値(Y軸)を、参加者の年齢(X軸)と比較して示した。全コホート内で、頭部の動きは個人間のばらつきが大きい。
図2Aは、以下の診断:対照、アルコール依存症の家族歴(FHA)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、及び自閉症スペクトラム障害(ASD)に基づく参加者についての平均フレーム単位変位(FD)値を示す。
図2Bは、性別及び年齢に基づく参加者の平均FD値を示す。患者及びリスクのあるコホートは、対照よりも全体的に大きなFD値を有していた(コホートの効果、F=19.3、p<0.00001)。さらに、
図2Bに示されるように、男性は、女性よりも有意に大きなFD値を有していた(性別の影響、F=5.5、p<0.02)。
図2A及び2Bに示される平均FDの代わりに、
図7A-7Fに示される低動きフレーム(FD<0.2mm、FD<0.3mm、及びFD<0.4mm)の割合を用いて同一の分析を行った場合にも、同一のパターンが当てはまった。
【0158】
図7A-7Fは、頭部の動きに対する年齢、診断(例えば、対照、FHA、ADHD、及びASD)、及び性別の影響を示す。1,134人のMRIスキャン参加者についてのFD基準カットオフ(Y軸)未満のMRIデータフレームの、参加者の年齢(X軸)に対する割合が示されている。具体的には、
図7Aは、上述の診断(例えば、コホート)によってソートされた参加者についての基準FD<0.2未満のデータフレームの割合を示し、
図7Bは、性別によってソートされた参加者についての同一のデータを示す。
図7Cは、コホートによってソートされた参加者についての基準FD<0.3未満のデータフレームの割合を示し、
図7Dは、性別によってソートされた参加者についての同一のデータを示す。
図7Eは、コホートによってソートされた参加者についての基準FD<0.4未満のデータフレームの割合を示し、
図7Fは、性別によってソートされた参加者についての同一のデータを示す。
【0159】
人口統計学はスキャナ内の頭部の動きを予測できない。
【0160】
人口統計学的グループ内のFDにおける個人間のばらつきが小さい場合、異なる人口統計学的グループについて異なるスキャン長を単に使用することによって、MRIスキャン期間の最適化を試みることができた。しかし、対象全体の平均FD値のばらつきは、サンプル全体にわたって、約0.1-2.0mmの範囲の全コホートで非常に高いことが分析によって示された。何人かの8歳未満の非常に若い参加者(例えば、患者)は、頭部の動きがほとんどなかった(平均FD 約0.1mm)が、何人かの定型発達の青年は、非常に高い平均FD値(0.4mm以上)を示した。GLM分析は、年齢、診断、及び性別が平均FD値に有意に影響することを示したが、これらの因子は、対象全体の分散の13%(R
2=0.13)を説明したにすぎなかった。全コホートにわたるFDにおける個人間分散が大きいことは、人口統計学的基準が、最小数の低動きデータフレーム(
図7A-7F参照)を保持するために、所与の参加者についてデータをどれだけ取得する必要があるかという、不十分な予測因子であることを示す。
【0161】
FIRMMのリアルタイムFD計算は正確である。
【0162】
FIRMMのFD計算は、標準的な、一般的に使用されるオフラインの事後処理ストリーム(Power et al.,2012、Power et al.,2015、Siegel et al.,2014)と比較すると、高速であるだけでなく正確でもある。
図3A及び
図3Bは、FIRMM及びオフラインアプローチによって生成されたFD値の比較を示す。より具体的には、TRが2.5秒である計360のrs‐fcMRIデータフレームが収集された(合計15分)、597人の参加者(ADHD患者、及び対照)からのFDデータを示す。さらに、
図3Aは、各参加者(X軸)について両方の方法(例えば、FIRMM及びオフライン)にわたる低動きフレームの平均割合によってソートされた、試験に含まれた各参加者についての低動きデータ(FD<0.2)(Y軸)の割合を示す。
図3Bは、FIRMM(X軸)と、標準的なオフライン事後アプローチ(Y軸)とによって算出された低動きデータの推定値の間の相関(r=0.98;線形適合を表示、y=1.07x-5.12の線形方程式)を示す。
【0163】
FIRMMのFD計算の正確性を試験するために、1,134回のスキャンセッションから得られたFDデータを、7-19歳(
図2A及び
図2Bに示す)の年齢の間のいくつかの小児患者またはリスクのあるコホート、及び年齢の一致した対照にわたる対象から組み合わせた。全対象にわたって、リアルタイムFIRMMによって算出されたFD値は、標準オフライン処理アプローチによって生成された事後FD数と強く相関し、R値は0.981であった(
図3Aに示す)。使用可能な低動きフレーム数(FD<0.2)におけるオフライン処理とFIRMMとの間の相関(r)は、0.984であった(
図3Bに示す)。
【0164】
データ基準に達するまでFIRMMを用いてスキャンすると、スキャン時間が短縮される。
【0165】
最も厳密なフレーム検査によって、FD値>0.2mmのすべてのデータフレームが廃棄される。
図4A及び4Bは、低動きデータ(FD<0.2mm)の蓄積を示す。より具体的には、
図4Aは、各コホートからのサンプル個体についてスキャンに費やされた時間(分;X軸)に対する低動きデータ(FD<0.2;Y軸)の蓄積を示す。標準化のために、各コホートについて、15分間のスキャン後の利用可能なデータの50パーセンタイルでの参加者についての累積プロットを提示用に選択した。
図4Bは、各コホート及び総サンプルについてのFD<0.2mmの少なくとも5分間のデータのうち、選択されたデータ基準に到達した参加者の割合を示す。
図5Bの曲線下面積は、すべての参加者を20分間スキャンする代わりに、基準までスキャンを行った場合に短縮された相対時間を表す。短縮された相対時間は、サンプル全体について57%、対照について63%、FHAについて64%、ADHDについて49%、及びASDについて43%であった。
【0166】
単一対象の機能的結合性マトリックスの適度に安定した推定値を得るために、多くの研究グループは、1対象毎に少なくとも5分間の低動きデータをデータ基準として必要としている。この基準を1,134回のスキャンセッションのサンプル全体に適用すると
図4A及び
図4Bに示すように、20分間のrs-fcMRIデータから、参加者の91%において少なくとも5分間の低動き(FD<0.2mm)データが得られたことがわかる。しかしながら、参加者の75%については、10分以内にスキャンが中止された。参加者のさらに12%については、10-15分の間にデータ取得が中止された。別の4%の参加者は、15-20分のスキャンのデータ基準に到達した。
【0167】
単一対象の機能的結合性マトリックスの適度に安定した推定値を得るために、多くの研究グループは、1対象毎に少なくとも5分間の低動きデータをデータ基準として必要としている。この基準を1,134回のスキャンセッションのサンプル全体に適用すると、
図4A及び
図4Bに示すように、20分間のrs-fcMRIデータから、参加者の91%において少なくとも5分間の低動き(FD<0.2mm)データが得られたことがわかる。したがって、FIRMMを用いてデータ基準(5分間FD<0.2mm)に達するまで各参加者をスキャンすると、このサンプルについての合計rs-fcMRIスキャン時間及び関連コストを57%削減することができた。rs-fcMRIデータのスキャン時間に関しては、約216時間短縮することができた。時間当たりのMRIスキャン費用の合計が控えめに見積もって600ドル/時間(MRIスキャナ使用料、スキャナオペレータの給与及び手当、研究参加者への支払い)であったとしても、FIRMMを用いた基準までのスキャンによって、rs-fcMRIデータ取得コストが13万ドル削減された。
【0168】
最近の研究では、機能的結合性の正確性の高い推定には5分間より有意に長いrs‐fcMRIデータが必要であることが示唆されている。rs-fcMRI基準を、5分(FD<0.2mm)を超えて増加させると、MRIスキャンのコストが大幅に増加し、それに伴って、FIRMMを用いた基準までのスキャンからコストが削減される可能性が高まる。
【0169】
低動きデータの線形蓄積により、基準時間長さが予測可能になる。
【0170】
スキャン時間及びコストを削減するFIRMMの有用性をさらに向上させるために、低動きデータ基準に到達するまでに必要なスキャン時間を正確に予測するアルゴリズムを構築した。
【0171】
この予測アルゴリズムを作成する際、
図5A-
図5Cに示すように、MRIスキャナにおいて費やされる時間の、頭部の動きに対する影響を視覚化した。
図5A-Fは、低動きデータの線形蓄積によって、基準時間長さの正確な予測が可能になることを示す。
図5Aは、少なくとも3×5分間のrs-fcMRIスキャンを含む全てのスキャンセッションについての連結された平均FDトレースを示す。注目すべき点がいくつかある。
図5Aに示されるように、より大きい動きの臨床コホートにおいて、平均FD値は、スキャナ内で時間とともに増加した。さらに、小さな「リセット」が平均FDに存在し、後続のスキャンセッションの開始時の頭部の動きが先行のセッションの終了時と比較して小さくなっている。対照的に、より小さい動きの対照コホートでは、平均FDは時間の経過とともにごく僅かしか増加していない。しかしながら、平均FDは、スキャンセッションの長さにわたる低動きフレームの平均割合よりも重要ではない。したがって、
図5Bに示されているコホート全体の低動きフレーム(FD<0.2mm)の割合は、各コホートにわたる低動きフレーム(FD<0.2mm)の割合がスキャナ内で費やされた時間とともにごく僅かしか減少しないことを示す。
図5Bは、低動きフレーム(FD<0.2mm)の経時的な累積が比較的直線性であるべきだと示唆しており、これは、
図5Cの低動きフレーム累積プロットによって確認される。これらの所見から、FIRMMユーザによって指定されたデータ基準に到達するために各参加者がスキャンされる必要がある時間の長さについてリアルタイム予測を行うべく、基本線形モデルを選択した(
図5D)。
【0172】
このモデルを用いて、100のデータフレームを取得した後、FIRMMは、一定数の低動きデータフレームに到達するために、参加者がどれだけ長くスキャナ内に留まるべきであるか、正確に予測することを示した。
図5Eは、
図5Dと同一の対象についてのFIRMMの予測誤差(分単位;Y軸)、及びスキャンの長さ(X軸)にわたる実際のデータ蓄積(例えば、実際の実現値)を示す。FIRMMの連続的更新予測アルゴリズムは、
図1に示されているように、予め指定された低動きデータ基準に到達するために要する時間の推定値をスキャナオペレータに提示する。割り当てられたスキャナ時間の間に必要な量の低動きデータを収集できるかどうかをスキャナオペレータが推定するのに役立つので、この特徴は、非常に大きい動きの個人について特に有益である。
図5Fは、線形予測アルゴリズムの堅牢性を示す。より具体的には、
図5Fは、各コホート及び全グループについて、時間(X軸)にわたるFIRMMの平均予測誤差(%)を示す。
【0173】
非常に大きい動きの対象におけるスキャンの早期終了のためのFIRMMモニタリングの使用により、合計スキャン時間が短縮される。
【0174】
FIRMMは、データ基準に到達する可能性が極めて低い参加者について、スキャナオペレータがスキャンを早期に終了できるようにすることによって、追加のスキャン時間を節約することができる。例えば、ADHDコホートでは、15分間のスキャン後、425人の参加者のうち40人が2.5分間(60フレーム)の使用可能な低動きデータしか提供しなかった(
図12-12Fに示すように)。このような大きい動きの対象については、さらに5分間スキャンしても基準に到達しない可能性が高く、4回のスキャンではなく3回のスキャン後にデータ収集を中止した。FIRMMの線形予測モジュールを使用すると、何人かの参加者のrs-fcMRIスキャンをより早期に終了することができた。このようにして、FIRMMは、MRIスキャナオペレータが、試験プロトコルにおける後続のMRIシーケンスに迅速に移行すること、または、実験全体を単に終了することを可能にし、それによって、参加者及びオペレータの貴重な時間を節約することができる。
【0175】
実施例1の要約
【0176】
これらの実験の結果により、開示されたFIRMMの頭部の動き予測方法の妥当性が実証された。FIRMMの頭部の動き予測方法により、正確なリアルタイムFD計算と、低動きデータ基準に到達するのに必要なスキャン時間に関する正確な予測とが提供される。さらに、開示されたFIRMMの頭部の動き予測方法は、スキャン時間を短縮するために使用されてもよく、それによって「オーバースキャン」に関連する時間及びコストが削減される。さらに、FIRMMの頭部の動き予測方法によって、必要な低動きデータ基準に到達する可能性が極めて低い参加者についてオペレータによる早期のスキャンの終了を可能にすることにより、スキャン時間がさらに短縮される。
【0177】
実施例2:スキャナオペレータによるFIRMMシステムの評価
【0178】
スキャナオペレータによる上述のFIRMMの頭部の動き予測方法(例えば、FIRMM)の使用を評価するために、以下の実験を行った。既存のデータセット1及び2にFIRMMを適用した後、29人の定型発達参加者(FIRMM試験;データセット3:女性11人、平均年齢=11.5歳、年齢範囲=5.9-15.9歳)の新たなコホートにおけるFIRMMの有用性を、スキャナオペレータに対して試験した。
【0179】
これらの実験で使用された既存のrs‐fcMRIデータには、注意欠陥多動性障害(ADHD;データセット1:参加者425人、女性140人)、自閉症スペクトラム障害(ASD;データセット1:参加者84人、女性17人)、アルコール使用の家族歴(FHA;データセット2:参加者308人、女性143人)、及び同年齢の定型発達対照(対照;データセット1、2:341人の参加者、157人の女性)を有するコホートが含まれている。
【0180】
データセット3:FIRMM使用試験(定型発達対照)
【0181】
5-16歳の合計29人の定型発達の参加者を地域社会から募集し、スキャナオペレータにFIRMMへのアクセスを提供する試験のためにrs‐fcMRIスキャンを行った。参加者を、ASD、躁病、精神病、脳性麻痺、てんかん、知的遅延/障害または脳機能を有意に変化させると考えられる薬剤の慢性使用、チック、OCD、ADHD、及び皮質視覚障害などの、医学的、神経学的または精神医学的診断のため除外した。また、参加者を、不整脈の病歴、妊娠、ペースメーカー、体内の金属物、広範囲の歯科用ワーク、閉所恐怖症(対象に、狭い空間にいるときに不安/パニックの感情などの閉所恐怖症の症状を経験したことがあるかどうかを尋ねることによって決定した)、及び5分超の意識消失を伴う脳震盪を含むMRIに対する禁忌のため除外した。左利きは除外基準ではなかった。
【0182】
すべての参加者は、K-SADSのチック、OCD、及びADHD基準尺度(Kaufman et al.,1997)及び実行機能の行動評価尺度(BRIEF)(Gioia et al.,2002)、児童及び青年の経験調査、育児関与尺度、児童抑欝尺度、現在のADHD評定尺度、過去/生涯のADHD評定尺度、(参加者の)エール・ブラウン強迫尺度(CY-BOCS)を完了した。エジンバラ利き手テスト、Barrattの社会的地位の簡易測定(BSMSS)、Constantinoの対人応答性尺度(SRS)、子供の行動チェックリスト(CBCL)、「Pediatric Quality of Life Inventory Parent Report(PedsQL)」、子供の感覚尺度(CSQ)、育児ストレスインデックス(PSI)、行動抑制系及び行動賦活系(BIS/BAS)を含む標準的な人口統計学及び病歴に加えて、参加者の両親は、ワシントン大学が主催したREDCap(Research Electronic Data Capture)を用いた一連の調査(Harris et al.,2009)も完了した。
【0183】
検証データ取得パラメータ
【0184】
データセット3の参加者を、12チャネルヘッドコイルを備えたSiemens Tim Trio 3.0 Tesla Magnetomシステム(ドイツ、エアランゲン所在、Siemens Medical Solutions社)でスキャンした。高分解能T1強調MPRAGEシーケンスを得た(分解能=1×1×1mm)。
【0185】
BOLDコントラスト感受性エコープラナーシーケンス(TE=27ミリ秒、フリップ角=90°、面内分解能4×4mm;ボリュームTR=2.5秒)を用いて機能的画像を取得した。全脳範囲を、32個の隣接インタリーブの4mm軸スライスによって得た。参加者は、最大7回の6.8分間のBOLDスキャンを完了した。7回のスキャンのうち2回のスキャンの間、参加者を、黒い背景上の中央に表示された白い十字線(1°未満の視角)を見ることからなる安静状態においた。他の5回のスキャン中、参加者は短いムービーを観た、及び/または、頭部の動きに関する視覚フィードバックを受けた。
【0186】
結果
【0187】
FIRMMにより、頭部の動きにおける予期しない変化がスキャナオペレータに警告される。
【0188】
図6A及び6Bは、上述したFIRMMの頭部の動き予測方法を実施した後のサンプルFDトレースを示す。示されたMRIスキャンについて、FIRMMのリアルタイムFDトレースにアクセスすることによって、スキャナオペレータがMRIデータの品質に介入し、向上させることができた。29人の定型発達の参加者の新たなコホートにおいてFIRMMの実際の有用性を試験することにより、さらなる有益性が明らかになった。例えば、
図6Aに示されるように、スキャンセッションの終了に向かって参加者のFD値が非常に突然かつ有意に減少したことによって、寝入ったことがわかった参加者をチェックするように、スキャナオペレータに警告した。また、FIRMMによって、実験者は、所与の参加者における頭部の動きに対する異なるスキャン条件の影響を迅速に試験することができた。
【0189】
図6Bは、若干異なる条件下で7回のBOLDスキャンを受けた1人の参加者のデータを示す。条件の1つ(スキャン#4)では頭部の動きが大きく増加したことがすぐに明らかになったが、他のすべての実験条件では十分に許容された。
図11は、FIRMMグラフィカルユーザインターフェース(GUI)のスクリーンショット画像を示す。例示的な態様では、スキャナオペレータのオペレータ用コンピュータ装置910(
図9に示す)は、これに限定しないが、例えばスキャンの過程にわたる参加者のFD値、取得された使用可能フレーム数に基づいた完了の推定時間、及び参加者のFD値に基づいて取得された良好データ画像及び不良データ画像の数などのリアルタイムデータを提示することができる。さらなる態様では、FD閾値(例えば、FD<0.2mm、FD<0.3mm、FD<0.4mm)は、画面オペレータのオペレータ用コンピュータ装置910上に提示されたリアルタイムデータプロットまたはテーブル上で色分けされ得る。例えば、
図11に示すFD視覚表現は、スキャン中に取得されたデータフレームの品質についてスキャナオペレータに警告するために、FD値<0.2mmについては緑色であり、FD値<0.3mmについては黄色であり、かつ、FD値<0.4mmについては赤色である。
【0190】
ベータ試験センターによって提供された他の使用事例には、FIRMMを使用して、参加者への動機付けのために頭部の動きについての特定の実行後フィードバックを提供するステップが含まれていた。この使用方法には、スピーカーシステムを介して低動きデータフレームの割合を共有するステップ、またはフィードバック及びトレーニング目的でスキャナルームの参加者の画面にFIRMM GUI(
図1と同様)を表示するステップが含まれていた。
【0191】
実施例2の要約
【0192】
これらの実験の結果によって、開示されたFIRMMの頭部の動き予測方法のスキャナオペレータによる使用の妥当性が実証された。FIRMMの頭部の動き予測方法によって、例えば、オペレータのGUI上にリアルタイムでデータを提示することによりスキャナオペレータにリアルタイムのフィードバックが提供され、これにより、突然の変化(例えば、FD値の増加または減少)がオペレータに警告される。これにより、MRIスキャン中に介入するための手段をとることによって、FIRMMにより提供されるフィードバックにオペレータが応答することが可能になる。
【0193】
実施例3:FIRMM方法を用いてMRI対象に提供される、頭部の動きに対する頭部位置フィードバックの効果
【0194】
上述のFIRMMの頭部の動き予測方法を用いてMRI対象に頭部位置フィードバックを提供する効果を検証するために、以下の実験を行った。ムービークリップを観ること、固定十字線を見ること(例えば、安静)、及びスキャン中の頭部の動きに関するリアルタイム視覚フィードバックを受けることの効果を、24人の参加者及び青年において調査した。
【0195】
データセット4:頭部位置フィードバック参加者
【0196】
合計24人の参加者及び5-15歳の青少年を地元のワシントン大学コミュニティから募集した。24人の参加者のうち、10人が女性であり、14人が男性であり、平均年齢は11.1歳であった。参加者は、「K-SADSのチック、OCD、及びADHD基準尺度(Kaufman et al.,1997)」、及び「最近のADHD評価尺度、生涯のADHD評価尺度(Conners et al.,1998)」、「参加者のための多面的評価尺度(MASC)(March et al.,1997)」、「対人応答性尺度(SRS)(Constantino et al.,2003)」、「カウフマン式簡易知能検査II(K-BIT II)(Kaufman and Kaufman,2004)」、Barrattの社会的地位の簡易測定(BSMSS)、及びエジンバラ利き手テスト(Oldfield,1971)を完了した。ワシントン大学が主催したREDCap(Research Electronic Data Capture)(Harris et al.,2009)を用いて評価を収集した。24人の参加者のうち、6人はKSADSを完了せず、1人はKBITを完了せず、3人はADHD評価尺度、SRS、MASC、またはBSMSSを完了しなかったが、いずれも時間的制約に起因していた。
【0197】
参加者を、参加者の両親によって報告された精神病、躁病、ASD、脳性麻痺、てんかん、知的遅延/障害、及び皮質視覚障害のため除外した。また、参加者を、不整脈、ペースメーカー、体内の金属製の物体、広範囲の歯科作業、閉所恐怖症(狭い場所にいるときに不安やパニックなどの閉所恐怖症の症状を経験したことがあるかどうかを子供に尋ねることによって決定される)、及び5分超の意識消失を伴う脳震盪の既往歴など、MRIに対する任意の禁忌について除外した。チック障害、不安障害、ADHD、向精神薬の服用、利き手については、参加者を除外しなかった。参加者のうち2人は過去にADHDと診断されており、どちらも刺激薬を服用していた。他の参加者は精神作用薬を服用していなかった。1人の参加者はOCDの診断基準を満たし、1人はKSADS後の一時的なチック障害の診断基準を満たしていた。
【0198】
検証データ取得パラメータ
【0199】
画像取得
【0200】
データセット4の参加者を、12チャネルヘッドコイルを備えたSiemens Tim Trio 3.0 Tesla Magnetom Tim Trio system(ドイツ、エアランゲン所在、Siemens Medical Solutions社)上でスキャンした。高分解能T1強調MPRAGE構造画像(分解能=1×1×1mm)を各参加者について取得した。機能画像を、BOLDコントラスト感受性エコープラナーシーケンス(TE=27ミリ秒、フリップ角=90°、面内分解能4×4mm;ボリュームTR=2.5秒)を用いて取得した。全脳被覆は32個の隣接インタリーブ4mm軸スライスで得た。参加者は、7回の、6分50秒のBOLD実行を完了した。
【0201】
実験デザイン
【0202】
頭部の動きをモニタリングし、上述のFIRMMの頭部の動き予測方法を用いた頭部の動きのリアルタイム計算に基づいて、MRIスキャンを受けている対象にフィードバックを提示した。参加者は、固定十字線を見ている間の安静実行と、ムービークリップを観ている間のムービー実行とを完了した。これらの刺激条件(例えば、安静実行及びムービー実行)の各々について、参加者は3つのフィードバック条件:なし、固定、及び適応、を受けた。固定及び適応フィードバック条件の間、参加者は頭部の動きに関するオンラインフィードバックを受けた。このように、実験は2(刺激)×3(フィードバック)のデザインからなり、6つの条件が得られた。最初のBOLD実行は、標準的な開眼安静状態スキャン中の各参加者の動きのベースライン評価を得るために、常にベースライン安静実行から構成されていた。以下の6回の実行は6つの実験条件からなり、その順序は参加者間でカウンターバランスされていた。
【0203】
参加者には、すべてのスキャン中、できるだけリラックスし、静止を維持するように指示した。参加者に、安静時のスキャンの間は「プラス記号」(例えば、十字線)を見るように指示し、ムービーのスキャン間はムービーを観るように指示した(
図12A及び
図12Bに示すように)。フィードバックスキャンでは、黄色/赤のプラス記号(安静)またはボックス(ムービー)によって、参加者が動きすぎているかどうかをスキャナが参加者に知らせるゲームを追加し、プラス記号を白に保つこと(安静)、またはボックスを遠ざけたまま保つこと(ムービー)が目標であることを参加者に伝えた。適応フィードバック条件では、安静状態であるときには、スキャナがゲームを次のレベルに進めて、ゲームの難易度を高めることを伝えた。
【0204】
刺激
【0205】
図12A及び12Bは、参加者に提供される例示的なフィードバック視覚ディスプレイの概略図を示す。より具体的には、
図12Aは、安静スキャンについての3つのフィードバック条件(例えば、動きなし~小さい動きのフィードバック、中程度の動きのフィードバック、及び大きい動きのフィードバック)を示し、
図12Bは、ムービースキャンについての同一のフィードバック条件を示す。
図12Aに示されるように、安静スキャンについては、十字線は、動きなし~小さい動きについて第1の色の十字線1202(例えば、白)、中程度の動きについて第2の色の十字線1204(例えば、黄色)、大きい動きについて第3の色の十字線1206(例えば、赤)であるように色分けされ得る。実験中、黒い背景の中央に白い十字線(1°未満の視角)を表示した。フィードバック(例えば、中程度の動き及び大きい動き)を含む安静条件では、フィードバックは、中程度の動きについての黄色、または「高」動きについての赤色に色が変化する十字線から構成される。動きを、フレーム毎変位(FD;以下の説明を参照)を用いて決定した。中程度の動き及び大きい動きについての基準は、ベースラインの安静スキャン中に個々の参加者のFDを抽出することによって、個々に合わせて調整した。ベースライン安静スキャンの各フレームのFDを、最大から最小にソートした。フレームの上位10%に対応するFDを高動き閾値として使用し、フレームの上位25%に対応するFDを中動き閾値として使用した。底の閾値を、0.3mm(高動き)及び0.2mm(中動き)に設定した。固定フィードバック条件の場合は、実行中、閾値を一定に保った。適応フィードバック条件の場合、各実行の最初の20フレームについては、閾値は、開始時の値に保持した。そして、その後の各フレームについては、閾値は、現在フレーム(スキャン)より前の20フレームを使用して、同一の基準(10及び25%)にしたがって再計算した。新たなFD閾値が現在のFD閾値より低い(例えば、より厳しい)場合にのみ、現在のFD閾値を新たなFD閾値に置き換えた。このように、参加者は実行の最後まで、または0.3及び0.2mmの底の閾値に到達するまで、FD閾値を減少させることができた。
【0206】
図12Bに示すように、上述したフィードバック条件は、ムービースキャンについて用いられ得る。ムービースキャンでは、画面の中心に置かれた長方形でムービーを遮蔽することにより、中程度の動きについての視覚フィードバックがFIRMMによって対象に提供され得る。長方形は中程度の動きを示す第1の色の長方形1208(例えば、黄色)であり得る。大きい動きについては、長方形は、より大きな第2の色の長方形1210(例えば、赤)であり得る。実験中、アニメの大作ムービーのクリップを参加者に上映した。3つのムービーを使用して合計7つのムービークリップを作成し、ランダムな順序で参加者に見せた。ムービークリップは、実験者が決定したように、魅力的であるが、過度に興奮させたり、動揺させたりしないことに基づいて選択した。参加者について、ムービー条件ごとに異なるクリップを表示した。フィードバックのあるムービー条件の場合、フィードバックは、中程度の動きについては画面(500×375ピクセル)を中心に置かれた黄色の長方形から構成され、または大きい動きについては画面(800×600ピクセル)の中心に置かれたより大きい赤の長方形から構成され、再生を続けている間、ムービーは遮蔽された。固定及び適応フィードバック条件についてのフィードバック基準は、安静フィードバック条件についてのフィードバック基準と同一であった。
【0207】
MatlabのPsychophysics Toolbox Version3を用いて刺激を与え、スキャナボアの端部でMR適合背面投影画面に逆投影し、参加者はそれをヘッドコイルに取り付けたミラーを介して見た。画面サイズは1024×768ピクセルであった。MR対応ヘッドフォンを使用して、スキャナのノイズを抑え、ムービーの再生中にムービーの音声を聞いた。
【0208】
画像の前処理
【0209】
各参加者からの機能的画像を、(i)それぞれの個々のスライスの取得時間における差を考慮した、最初のスライスの時間的中間点に対する全スライスのsinc補間、(ii)実行中及び実行全体にわたる頭部の動きについての補正、及び(iii)各実行についての1000の(ボクセル及びTRにわたる)全脳モード値(whole brain mode value)に対する強度正規化を含む、アーチファクト(Shulman et al.,2010)を減少させるために前処理した。機能データのアトラス変換を、MPRAGE T1強調スキャンを用いて、各個人について計算した。1人の参加者について、T1強調スキャンには適切な位置合わせのための過剰な動きアーチファクトが含まれていたため、T2強調画像を使用した。縦横の長さが等しい(isotropic)3mm格子上のアトラス空間に各機能的実行を再サンプリングし、動き補正とアトラス変換とを単一の補間(single interpolation)で結合した。標的アトラスは、事前に、本試験で使用したものと同一のSiemens 3T Trioで収集した13人の7-9歳の参加者(男性7人)、及び12人の21-30歳の成人(男性6人)のMPRAGEスキャンから作成した。このアトラスを、Lancasterら(1995)の空間正規化方法を用いて、タライラッハアトラス空間に適合させた。
【0210】
機能的結合性の前処理
【0211】
安静状態の機能的結合性MRI分析について、神経活動を反映する可能性の低い偽のばらつき(spurious variance)を減少させるための追加の前処理ステップを用いた。これらのステップには、(i)平均除去(demeaning)及びトレンド除去(detrending)、(ii)BOLDデータから得られた撹乱変数(nuisance variable)の重回帰(撹乱変数には、ボルテラ展開(Friston et al.,1996)によって導出された動きリグレッサ、Freesurferのセグメンテーションを使用して構築された個別化された脳室及び白質の信号、全脳にわたって平均化された脳信号、及びこれらの信号の導関数が含まれていた)、(iii)時間的なバンドパスフィルタリング(0.009Hz<f<0.008Hz)、及び(iv)空間スムージング(半値全幅6mm)が含まれていた。T1画像に悪影響を及ぼす過度の動きを示した1人の参加者について、FSLの高速セグメンテーションを用いた撹乱リグレッサマスク(the nuisance regressor masks)の作成のためにT2強調画像を用いた。
【0212】
動き検査方法
【0213】
FD>0.3でボリュームを識別し、データから検査を行うボリューム検査方法(Power et al.,2014)を実施した。この動き閾値では、最良の成績を収めた対象であっても、フィードバック条件下ではあまりに動きが大きいという「赤」警告を受けたので、0.3の閾値を選択した。このアプローチでは、平均FDと検査後に保持されたフレーム数との両方を算出することによって頭部の動きが表示された。
【0214】
結果
【0215】
リアルタイムのフィードバック及びムービー視聴によって、若年参加者の動きが減少した。
【0216】
FDに対するリアルタイムフィードバック及びムービー鑑賞の効果を試験するために、平均FDを従属変数として用いて、かつ、対象内要因刺激(安静、ムービー)及びフィードバック型(なし、固定、適応)で、反復測定ANOVAを実行した。刺激の有意な主効果があり、FDは安静(M=0.60、SD=0.91)よりムービー(M=0.28、SD=0.30)で低かった(F(1、23)=4.77、p=0.039)。フィードバック型の有意な主効果があり、FDが固定条件(M=0.26、SD=0.23)について最低であり、次いで適応条件(M=0.45、SD=0.61)であり、フィードバックなし(M=0.61、SD=0.98)についてFDが最高であり、F(2、46)=3.8、p=0.03であった。刺激×フィードバック型の交互作用は、有意ではなかった(p=0.15)。
【0217】
スキャナ内での頭部の動きに対する年齢及び性別の潜在的影響を考慮して、同一の刺激×フィードバック型ANOVAを、(a)年齢群(若年[5-10歳、n=11]、年長[11-15歳、n=13])、及び(b)性別(男性、女性)の追加の対象間要因を用いて実行した。刺激(F(1、20)=8.26、p=0.009)、フィードバック型(F(2、40)=4.95、p=0.12)、及び、若年群(M=0.74、SD=0.79)が年長群(M=0.18、SD=0.73)より高いFDを有するような年齢群(F(1、20)=6.36、p=0.02)の、有意な主効果があった。対象の性別による主効果はなかった(p=0.995)。有意な刺激×年齢群の交互作用(F(1、20)=8.92、p=0.007)、及び有意なフィードバック×年齢群の交互作用(F(2、40)=3.61、p=0.036)も存在した。性別との交互作用は有意ではなかった。
【0218】
さらに、刺激×フィードバック×年齢群の交互作用は有意に近く、F(2、40)=3.14、p=0.054であった。
図13A及び13Bは、FDに対するムービー鑑賞及びフィードバックの効果が若年の参加者において強いことを示すことによって、この交互作用の性質を示す。より具体的には、
図13Aは、3つのフィードバック条件(例えば、フィードバックなし、固定フィードバック、及び適応フィードバック)について、安静時スキャン及びムービースキャンで若年参加者(5-10年)及び年長参加者(11-15年)について算出された平均FDを示す。
図13Bは、ボリューム検査後に保持されたMRIフレームの割合を示す(FD<0.3mm)。
図13A及び13Bにおけるエラーバーは、平均値の標準偏差を示す。
【0219】
条件の順序は釣り合いがとれているが、実行(7回の実行で7レベル、最初はベースライン安静実行であった)を対象内要因として用いた一元配置分散分析を実施することによって、スキャナ内の時間の影響を試験した。実行の有意な効果はなかった(p=0.67)。
【0220】
ムービーを視聴し、上述のフレーム検査アプローチを用いて保持されたフレームの数(例えば、FD<0.3mmの場合)に関するオンラインフィードバックを受信することの効果を
図13Bに示す。反復測定ANOVAを、保持されたフレーム数を従属変数として実行した。刺激(安静、ムービー)×フィードバック型(なし、固定、適応)ANOVAによって、安静(M=124、SD=35.4)中に保持されたフレーム数がムービー(M=136.1、SD=28.7)中よりも少ない、刺激の有意な主効果(F(1、23)=10.4、p=0.004)と、フィードバックなし(M=123.9、SD=41.3)の間に保持されたフレーム数が適応フィードバック(M=129.6、SD=33.4)の場合よりも少ない、フィードバック型の有意な主効果とが明らかになった。ほとんどのフレームは、固定フィードバック((M=136.7、SD=23.6)中保持されたF(2、46)=3.79、p=0.03)。刺激×フィードバック型の有意な交互作用はなかった(p=0.26)。
【0221】
年齢群及び性別を対象間要因として含めた。再び、刺激(F(1、20)=11.5、p=0.003)、及びフィードバック型(F(2、40)=4.15、p=0.023)の有意な主効果が見出された。若年群(M=116.74、SD=42.9)では年長群(M=142.39、SD=40.5)よりも保持されたフレームが少ないという年齢群の有意な主効果(F(1、20)=4.54、p=0.046)もあったが、性別の主効果はなかった(p=0.45)。刺激×年齢群の交互作用は有意(F(1、20)=5.88、p=0.025)であり、
図13A及び13Bは、平均FDと同様に、その効果は若年参加者において強いことを示している。
【0222】
シードマップ及びネットワーク構造を条件全体にわたって定性的に保存した。
【0223】
全員が動き検査後の各条件において少なくとも72フレーム(3分)のデータを保持していた17人の参加者から、撮像データを分析した。他の参加者は、分析のための1以上の条件において十分なデータを有していなかった。重要なことに、動き検査後のデータ量及び平均FDは、これらの17人の参加者の条件の間で有意な差はなかった(すべてのp>0.1)。これらのデータから、以下の6つの標準的なシード領域:左運動野(タライラッハ座標:-38、-29、57)、右運動野(39、-19、56)、左角回(-46、-63、31)、左楔前部(9、-56、16)、前頭前野腹内側部(7、37、0)、及び前帯状皮質背側部(-1、10、46)、についてシードマップを構築した。正準座標を中心とする直径10mmのシードを作成した後、シード領域の時間経過を脳における他の全ボクセルと相互相関させた。各条件(安静・フィードバックなし、安静・固定フィードバック、安静・適応フィードバック、ムービー・フィードバックなし、ムービー・固定フィードバック、ムービー・適応フィードバック)についてシードマップを生成した。
【0224】
図14A及び14Bは、標準的な機能的結合性(FC)プロファイルを再現したグループ平均シードマップを示す。より具体的には、
図14Aは、すべての条件において使用可能なFCデータを有する17人の参加者についての左角回(タライラッハ座標:-46,-63,31)についてのシードマップを示し、
図14Bは、すべての条件において使用可能なFCデータを有する17人の参加者についての右運動野(タライラッハ座標:39,-19,56)についてのシードマップを示す。予め定義された標準的シード領域の6つのFCマップは、期待されたFCプロファイルを示した。例えば、左角回に配置されたシードは、同位置の角回と後帯状皮質とを含むデフォルトモードネットワークに属する他の領域と相関があった。RSFCシードマップは、スキャン条件すべてにわたって定性的に類似していた。
【0225】
適切な撮像データを有する17人の対象についてFC相関行列を構築した。各参加者について、264の既定義の関心領域(ROI)からFC時間経過を抽出した。全264のROI(直径10mmの球体)間の相互相関を算出した。これらの相関は、前述した機能的ネットワーク体系にしたがって組織化された領域を有する行列形式に見出すことができる。相関行列を各条件での各参加者について構築し、フィッシャーのz変換を用いて正規化した。各条件で期待されるブロック構造(例えば、ネットワーク相関内で強い)を確認するために、行列を参加者間で平均化した。
【0226】
行動介入がFCに有意に影響したかどうかを試験するために、オブジェクト指向データ分析(OODA)の対バージョンである、(La Rosa et al.,2012;La Rosa et al.,2016)に開示されたコネクトームを対照する方法を用いて、相関行列を、条件すべてにわたって統計的に比較した。簡単に説明すると、OODAは各条件についてギブス分布にしたがう平均重み付け行列を算出し、それらの間のユークリッド距離を取得することによって行列を比較する。観測された差にp値を割り当てるために、サンプルをブートストラップ(N=1000回)し、距離の分布を作成した。
【0227】
図15A-15Cは、ネットワークによって組織化された264個の予め定義された関心領域(ROI)間の機能的結合性を提示する相関マトリックスを示す。すべての条件において使用可能なFCデータを有する17人についてのデータが示されている。より具体的には、
図15Aは、安静・フィードバックなしのフィードバック条件、及びムービー・フィードバックなしのフィードバック条件についてのデータを示す。
図15Bは、安静・固定フィードバックのフィードバック条件、及びムービー・固定フィードバックのフィードバック条件についてのデータを示す。
図15Cは、安静・適応フィードバックのフィードバック条件、及びムービー・適応フィードバックのフィードバック条件についてのデータを示す。
図15A-15Cは、ネットワーク内相関が強く、かつ、ネットワーク間相関が低い、予測ネットワーク構造を示す。予測されるブロック構造はすべての条件について存在し、ネットワーク相関間よりもネットワーク内で相関が強いことを示している。
図15A-15C、16A-16D、及び17について、Aud=聴覚性、CB=小脳、CO=帯状弁蓋(cingulo-opercular)、DAN=背側注意ネットワーク、DMN=デフォルトモードネットワーク、FP=前頭頭頂、PMN=頭頂記憶ネットワーク(parietal memory network)、Sal=顕著性、SC=皮質下、SM=体性運動(somatomotor)、SM(lat)=外側体性運動(somatomotor lateral)、VAN=腹側注意ネットワーク、及びVis=視覚性(visual)である。
【0228】
FCはムービーによって大きく変化されるが、フィードバックによっては変化されない。
【0229】
対であるサンプルのt検定によって、フィードバック条件(安静・フィードバックなし 対 安静・固定フィードバック、安静・フィードバックなし 対 安静・適応フィードバック、安静・固定フィードバック 対 安静・適応フィードバック)間のコントラストについての多重比較補正では、関連性は残らないことが明らかになった。安静・フィードバックなし条件とムービー・フィードバックなし条件とを比較すると、48の機能的結合は有意に異なっており、そのほとんどは視覚性ネットワーク間の結合であった。試験の数が多く、多重比較補正が必要であることを考慮すると、これらの分析は非常に慎重であり、真の差異のすべてを明らかにはしていない。OODAは、条件間の相関マトリックス全体を直接比較することを可能にし、したがって、相違を検出する際、より敏感であり得る。これらの分析により、安静・フィードバックなしとムービー・フィードバックなしとの間の有意差(p<0.001)が明らかになったが、安静・フィードバックなしと安静・固定フィードバックとの間(p=0.33)、安静・フィードバックなしと安静・適応フィードバックとの間(p=0.45)、及び安静・固定フィードバックと安静・適応フィードバックとの間(p=0.9)に有意差はなかった。したがって、
図16A-16Dに示すように、安静状態と比較した場合、ムービーはFCを有意に変化させたが、フィードバックはFCを有意に変化させなかった。
【0230】
図16A-16Dは、キー条件間のFCにおける差を示す。ムービーと安静との間には差異が得られた(かつ、有意であった)が、フィードバック条件間の差はより少なかった(かつ、有意ではなかった)。
図16Aは、安静・フィードバックなしとムービー・フィードバックなしとの間のFCにおける差を示す。
図16Bは、安静・フィードバックなしと安静・固定フィードバックとの間のFCにおける差を示す。
図16Cは、安静・フィードバックなしと安静・適応フィードバックとの間のFCにおける差を示す。
図16Dは、安静・固定フィードバックと安静・適応フィードバックとの間のFCにおける差を示す。
【0231】
安静・フィードバックなし条件とムービー・フィードバックなし条件との間の有意差の本質を調べるために、異なる特定のネットワーク間ブロックを識別するための事後並べ替え分析を実行した。
図17は、その結果を提示し、ムービー鑑賞の具体的かつ組織的な効果を示す。より具体的には、
図17は、安静・フィードバックなし条件とムービー・フィードバックなし条件との間の有意なネットワークレベルの差を示す。有意なネットワーク間ブロックについての相関係数の絶対差が示されている。
図17において見られるように、前頭頭頂ネットワークのFCと、感覚運動処理ネットワーク(体性、聴覚性、視覚性)、トップダウン制御ネットワーク(帯状弁蓋、背側注意、及びデフォルトモードネットワークを含む他の多くのネットワーク)との間に有意差があった。また、視覚性ネットワーク内及び視覚性ネットワーク間、並びに聴覚性ネットワークと他のネットワークとの間で、FCにおいて差があった。これらの結果は、ムービー鑑賞により、感覚運動処理及びトップダウン制御の両方を含む特定の機能的ネットワーク内及びネットワーク間でFCが変化されることを示している。
【0232】
実施例3の要約
【0233】
これらの実験の結果により、開示されたFIRMMによる頭部予測方法を用いた頭部の動きのリアルタイム計算に基づいて、MRIスキャンを受けている対象に視覚フィードバックを提示することの有効性が実証された。リアルタイムの頭部の動きフィードバックは、一般に、若年参加者においてMRIスキャン中に動きを減少させた。特に若年参加者において、MRIスキャン中のムービー鑑賞は頭部の動きを減少させた。これらの実験の結果により、フィードバックではなく、ムービーが機能的結合性(FC)MRIデータを有意に変化させることがさらに明らかになった。したがって、MRIスキャンを受けている対象に対して(a)十字線の色を変化させるステップ、及び(b)スキャナオペレータの介入なしに、対象がそれに応じて自身の身体の動きを調整するために、様々なサイズの色分けされた長方形によってムービークリップを遮蔽するステップを行うことによって、FIRMMによるリアルタイム視覚フィードバックが提供され得る。
【0234】
実施例4:fMRIでの動き推定値における呼吸アーチファクトの識別
【0235】
動き推定に悪影響を及ぼす呼吸アーチファクトを識別するために、以下の実験を行った。より具体的には、MRIスキャン中に視覚刺激すなわち「呼吸の合図」を与えられた対象から、マルチバンドデータ及びシングルバンド(例えば、シングルショット)データを得た。MRIスキャン全体を通して対象の呼吸を正確に11Hzに制御するために、視覚刺激を与えた。呼吸トレースとパワースペクトルとを2つのデータ型(例えば、マルチバンド撮像データ及びシングルバンド撮像データ)の間で比較した。
【0236】
データセット4:ABCD-マルチバンド
【0237】
ABCD試験から得られたデータを用いた。ABCDの参加者は9-10歳であり、オレゴン健康科学大学(OHSU)から選択された。ABCDの参加者及び家族は、米国人口を表す民族及び人口統計学的サンプルに到達することを目的として、学校及び地域社会に基づくメール送信によって募集された。除外基準は、その大部分が、参加者が試験プロトコルを完了できることを確実にするために設定され、精神病性障害(例えば、統合失調症)、中等度から重度の自閉症スペクトラム障害、知的障害、またはアルコール/物質使用障害、英語の流暢さの欠如(子供についてのみ)、矯正不可能な感覚障害、主要な神経学的障害(例えば、脳性麻痺、脳腫瘍、多発性硬化症、30分超の意識消失を伴う外傷性脳損傷)、在胎期間<28週または出生時体重<1.2kg、出生後1ヶ月を超える入院をもたらす新生児合併症、及びMRI禁忌(例えば、歯の矯正)の現在の診断を含んでいた。
【0238】
MRIスキャンの前に、参加者の肋骨の周りに(センサを胸部の真下に水平に位置合わせして)呼吸モニタリングベローズ(例えば、ベルト)を快適であるように配置した。さらに、脈拍酸素モニタを参加者の非利き手の人差し指に配置した。すべての参加者は、試験(例えば、4、5分間の実行)のために十分なEPIデータと、生理学的モニタ及び呼吸ベルトに組み込まれたSiemensから得られた高品質の生理学的データとの両方を有していた。
【0239】
データセット5:定型発達対照
【0240】
OHSUの院内の「シングルショット」(例えば、シングルバンド)データセットから得られた定型発達対照(例えば、対照コホート)に関するデータを用いた。対照群は321回のスキャンセッションから構成され、149回は女性のスキャンセッションであった。これらの定型発達対照は、Fair及びNiggの研究室で進行中の2つの縦断的研究の一部として募集された。参加者は、地域社会の大量メール送信に応じてボランティアをした家族から募集された。参加者の診断カテゴリ(例えば、対照)を、最良推定である多段階の症例発見手順で慎重に評価した。
【0241】
ADHD、チック障害、精神病性障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、行為障害、大うつ病性障害、知的障害、神経疾患、慢性医学的問題、感覚運動障害、及び重大な頭部外傷(意識消失を伴う)についての除外基準を設定した。さらに、向精神薬または精神刺激薬を服用している参加者を除外した。MRIに対して禁忌を有する参加者も除外した。右利きの参加者のみを本試験に含めた。
【0242】
評価データ取得パラメータ
【0243】
ABCD参加者を、OHSUのAdvanced Imaging Research Centerに設置されている32チャネルヘッドコイルを備えたSiemens 3.0 T Magnetom Prisma system(ドイツ、エアランゲン所在、Siemens Medical Solutions社)上でスキャンした。高分解能T1強調MPRAGEシーケンスを得た(分解能=1×1×1mm)。BOLDコントラストの機能画像を、T2
*強調エコープラナーイメージ(TR=0.80ミリ秒、TE=30ミリ秒、フリップ角=90°、FOV=240mm
2、全脳スライス36枚、スライス厚=3.8mm、分解能=3.75×3.75×3.8mm)を用いて(前後の交連に沿って)収集した。5分間の安静状態のBOLDデータの実行を4回取得し、その間、ABCD参加者に、静止を維持し、スキャナのヘッドから投影され、かつ32チャンネルのヘッドコイルに取り付けられたミラーによって見ることができる黒い画面の中央の白い十字線に焦点を合わせるように指示した。これは上述した安静状態であり、
図12Aに示すフィードバック視覚提示と同様である。
【0244】
定型発達対照の参加者(例えば、シングルショットデータセット)を、OHSUのAdvanced Imaging Research Centerに設置されている12チャネルヘッドコイルを備えたSiemens Tim Trio 3.0 T Magnetom Tim Trio system(ドイツ、エアランゲン所在、Siemens Medical Solutions社)上でスキャンした。高分解能T1強調MPRAGEシーケンスを得た(分解能=1×1×1mm)。BOLDコントラストの機能画像を、T2
*強調エコープラナーイメージ(TR=2500ミリ秒、TE=30ミリ秒、フリップ角=90°、FOV=240mm
2、全脳スライス36枚、スライス厚=3.8mm、分解能=3.75×3.75×3.8mm)を用いて(前後の交連に沿って)収集した。5分間の安静状態のBOLDデータの実行を3回取得し、その間、対照参加者に、静止を維持し、スキャナのヘッドから投影され、かつ32チャンネルのヘッドコイルに取り付けられたミラーによって見ることができる黒い画面の中央の白い十字線に焦点を合わせるように指示した。これは上述した安静状態であり、
図12Aに示すフィードバック視覚提示と同様である。
【0245】
データ処理パラメータ
【0246】
すべてのデータを、Human Connectome Projectから得られた、若干変更された処理パイプラインにしたがって処理した。このようなパイプラインでは、FSL(Smith et al.2004;Jenkinson et al.2012;Woolrich et al.2009)、及びFreeSurferツール(Dale et al.1999;Desikan et al.2006;Fischl&Dale 2000)を使用する必要がある。すべての参加者について質の高いT2画像が作成されなかったので、このパイプラインでのT2特異的な画像を削除した。
【0247】
勾配歪み補正したT1強調ボリュームを、最初にMNIのAC‐PC軸に対してアライメントした後、MNIアトラスに対して非線形正規化した。その後、アライメントを改善するために、境界ベースの位置合わせ(boundary based registration)(Greve&Fischl 2009)を用いてT1強調ボリュームを再アライメントした。FreeSurferのrecon-allを用いて、T1強調の脳をさらに分割した。BOLDデータを、磁場歪みについて補正し(FSLのTOPUPを使用)、最初のフレームに対して予備的な6自由度の線形位置合わせを行うことによって処理した。この最初のアライメントの後、平均フレームを算出し、最終基準として用いた。その後、すべての個別の位置合わせを単一の位置合わせに連結させることによって、すべて単一のステップで、BOLDデータをこの最終基準及びT1強調ボリュームに位置合わせした。
【0248】
表面位置合わせ。灰白質に限定されたboldデータを、皮質リボンによって画定された中厚のプロファイルにしたがうメッシュに記録した。皮質リボンを、T1強調及びT2強調ボリュームを考慮して定義した。このリボンを用いて、BOLDデータにおける各ボクセルの部分寄与を定量化した。皮質メッシュ内の時間経過は、メッシュ内の各頂点に隣接するボクセルの加重平均を得ることによって算出され、加重は、皮質リボン内の全体的または部分的なボクセルの平均数によって得られた。
【0249】
組織割り当てが困難であることを示すか、または大きな血管を含む、変動係数の高いボクセルを除外した。次に、このメッシュで得られた時間経過を、脳アトラスにおいて定義され、かつ2mm半値全幅ガウスフィルタによって平滑化した後に各参加者の脳に独自にマッピングされたアンカーポイント(灰白質の縦座標;grayordinates)の標準空間内にダウンサンプリングした。皮質下領域を処理し、ボリュームとして登録した。灰白質の2/3は皮質リボン内に位置する頂点であったが、残りの灰白質は皮質下ボクセルであった。
【0250】
撹乱回帰(Nuisance regression)。BOLDデータにおける望ましくない信号の影響を最小化するために、HCPパイプラインによって報告された最小処理時間をさらに前処理した。この追加のステップは、灰白質、白質、及び心室から得られた平均信号を回帰させるステップから構成されていた。この追加のステップはさらに、実際のTR及び先行のTR、並びにそれらの正方形上の6つの画像アライメントパラメータx、y、z、θx、θy、及びθzのフレーム間の動きから得られた平均信号を回帰させるステップから構成され、このステップは動きのボルテラ級数展開に対応する。回帰係数(重みβ)は、低動きフレームのみに基づいて算出されるが、回帰は、時間領域でのフィルタリングのためにデータの時間的順序を保持するべく、すべてのフレームを考慮して算出される。次に、1次のバターワースバンドパスフィルタを用いて時間経過をフィルタリングし、0.009-0.080Hzの周波数を保持した。
【0251】
呼吸特性の推定
【0252】
正常な呼吸数の生理学的範囲は、出生時の毎分44回(44bpm)から18歳時の16bpmまで、年齢とともに変化する。対応する周波数(Hz)は、対象の呼吸数(bpm)を60で割ることによって得られる。ティーンエイジャーの典型的な値である20bpmの呼吸数については、対応する周波数は0.(3)Hz(循環小数)である。これは、パワースペクトルグラフにおいて、20bpmの呼吸数が0.(3)Hzの周波数におけるピークによって明らかにされることを意味する。
【0253】
boldデータを、1/TRの周波数で取得した。特にABCD試験については、TR=0.8秒であり、サンプリング周波数は1.25Hz(1.25=1/0.8)であった。1.25Hzで取得された信号のパワースペクトルは、追加された場合に、元の時間信号を再現することができる個別の(及び、直交の)正弦波信号を示す。これらの個別のの正弦波信号は、0-0.625Hz、例えば1.25/2Hz、すなわち、一般にナイキスト周波数として知られているサンプリング周波数の半分の周波数を有する。0.625Hz>0.(3)Hzであるので、存在する場合には、20bpm(0.(3)Hz)の信号が、動き推定値のスペクトル中に見られる。
【0254】
例えば、対照の(例えば、OHSUの)データセット(TR=2.5秒)の、より長いTR(すなわち、呼吸数の増加)について、呼吸数信号を動き推定値に「エイリアシング」することができる。換言すると、呼吸数のピークは、より低い周波数でのピークであるように見える。エイリアシングは、低いサンプリングレート(サンプリング数)で高いプロセスが取得される場合に発生する。一般に、サンプリングされたプロセスについて、ナイキスト(例えば、サンプリング周波数の1/2)よりも周波数の高い信号は、スペクトル内でエイリアシング(折り返し)される。エイリアシングは、二つの因子:TR及び対象の呼吸数、の組み合わせによって発生する(図xx「エイリアスの表示」を参照)。例えば、20bpm(0.(3)Hz)の同一の信号は、2秒のTRで0.1(6)Hzの周波数におけるピークであるように見える(図xx「エイリアスの表示」を参照)。一般に、エイリアス周波数は下記の式にしたがって算出できる。
【0255】
【0256】
式中、RRa,HZはエイリアスされた呼吸数の周波数(Hz)であり、RRHZは実呼吸数の周波数(Hz)であり、fSはサンプリング周波数(Hz)であり、かつ1/TRとして計算することができる。最後に、fNyはナイキスト周波数であり、サンプリング周波数RRHZの1/2である。
【0257】
動き周波数成分の推定
【0258】
動き推定の周波数成分を、パワースペクトル密度推定を用いて算出した。パワー推定によって、追加された場合に元の信号を再構築することができる個別の構成要素の平均振幅がわかっている。信号処理におけるこの標準手順は、データウィンドウイングするステップと、各ウィンドウのフーリエ変換を算出するステップと、各周波数の振幅をウィンドウ間で平均化するステップとからなる。データのセグメント化に関連する周波数の漏洩を最小化するために、異なるウィンドウタイプ(例えば、「テーパ」)を用いて各セグメントを複数回ウィンドウイングした。この算出を、Matlabでpmtm関数を用いて行った。
【0259】
シード領域の相関結果の検討によって実施された定性評価
【0260】
Powersらによって導入されたフォーマットにおいて、BOLDデータに対する動きの影響を用いて定性的評価を行った。
図18A及び18Bに示すように、この表現のバージョンを使用した。
図18A及び18Bに見られるように、それぞれのマスクされたEPIフレームから得られたデータ(各ボクセル、または、表面データの場合は灰白質の縦座標を表す)は、ベクトルとして提示される。「BOLD実行」の各フレームを再び表す各ベクトルは、時間ドメイン内で水平方向にスタックされる。この手順によって、所与の対象についての所与の実行(または、連結実行による完全な調査)で表されるすべてのデータを一度に表示することができる。
図18A及び18Bに示されるBOLDデータのこれらの長方形の灰色プロット(例えばBVDプロット)は、他で詳細に説明されている。
【0261】
図18A及び18Bに示されるように、BVDプロットの上部には、結合性の前処理の前(「回帰前」)、前処理の回帰過程の後(「回帰後」)、及びフィルタリングを含むすべての処理後(「すべての処理後」)の、DVARS測定値(Dは時間の導関数、VARはボクセル間のRMS分散を表す)がある。DVARSは、フレームの再アライメントに依存しない良好な動きの推定値である。また、全脳信号の平均値(「平均」)、及び標準偏差(「標準偏差」)のプロットも含まれている。
【0262】
フレーム変位(FD)は、実行全体にわたってプロットされている。FDラインプロットにおける各フレームまたはデータポイントには、所与のフレームがその後の分析から除外されるFD閾値を表す色付きの円形マークがある。対応する閾値線は、プロット内で水平方向に一致する色で表示されている。例えば、第1の色のドット(例えば、灰色のドット)は、FD閾値0.6(より高い閾値でも除外されない限り)で除外されるフレームを表している。第2の色(例えば、緑色のドット)のドットは、FD閾値0.1を表し、第3の色(例えば、オレンジ色)のドットは、FD閾値0.2を表している。様々な閾値をBVDプロットに対して容易に比較することができるように、これらのドットはグラフの上限に複製されている。ここでは、破損データの望ましくない動きを除去するための適切な閾値は、少なくとも視覚的には、BVDプロットによって可視化された破壊データと整列すべきであると考えられている。
【0263】
品質尺度を用いて実施された定性評価
【0264】
定性的評価を、Powerら(2014)によって導入された品質尺度を用いて実施した。ステップを
図19A-19Dに示し、結果を
図30A-30Cに示す。
図19Aは、FD値を使用し、品質を低下させることによって対象のボリュームを順序付けする第1のステップを示す。
図19Bに示すように、第2のステップでは、複数のボリュームのスライディングウィンドウを用いて相関を算出する(1-50、2-51のボリュームなど)。最初の10の長方形における平均相関を0と定義する。第3のステップでは、短距離接続におけるΔrの代わりに、ベースラインマトリックスと所与のスライディング長方形マトリックスとの間の相関(r)を結果尺度として用いる。相関は、
図19Cに示されている。ステップ4は、
図19A-19Cに示すように、結果測定のヌル分布を確立するために、データ品質メトリクス値(例えば、FD値)の順序の変更を用いてステップ1-3を繰り返すステップからなる。ステップ5は、
図19Dに示すように、どのFD値においてマトリックスがランダムと異なるかをp<0.05の信頼度で示すために、真の値をゼロ分布と比較するステップを含む。
図19Dに示すように、0に近い灰色の値は、ランダムと有意差がない。プロットの下部にある灰色の値は、ランダムと有意差がある。
【0265】
すべての対象のデータ品質メトリクス順の結果を生成した後、すべての条件(例えば、フィルタなし、一般的なフィルタあり、対象特異的なフィルタあり)について、データ品質メトリクス順の結果を分析して、どの手順が全体として最も類似しているか、すなわちランダムから外れているかを決定した。対象全体にわたるデータ品質メトリクス順の結果の順序付けを、
図20Aに示すようにプロットし、
図20Cに示すようにビニングした。
図20Cに見られるように、この手順は、データ品質メトリクスビニングにおける順序付けの垂直分布を提供する。
【0266】
図20A-20Cに示されるグラフは、FDトレースがBOLDデータ内の動きを正確に表している場合、平均FD値が上昇するにつれて、よりランダムに分布した順序付けからのシフトが急速に生じると解釈される。この結果が生じるのは、スキャナ内の真の動きを示すときにFDが完全に正確である最適なケースにおいて、ベースライン測定値(例えば、最も品質の高いフレーム)はほとんど動きを有していないためである。したがって、動きがより大きいフレームと比較すると、
図20A-20Cに示されるように、発散は急速に発生する(例えば、ランダムから急速に発散する)。FDがBOLD内の真の動きとランダムに関連する場合、ベースライン測定値は他の測定値と比較して等しい量の動きフレームを有しているので、したがって、最も正確なFD測定値は、他の測定値に対して左方向にずれているべきである。
【0267】
結果
【0268】
シングルバンドデータと比較した場合、マルチバンドデータによって生成された動きトレースには基本的な違いが存在する。
【0269】
上述したように、
図18A及び18Bは、マルチバンド取得及びシングルバンド取得の両方で5分間スキャンされた非常に小さい動きの対象についてのBVDプロットの例を提供している。対象には、実行の間、呼吸が正確に11Hzに設定されるように、視覚刺激すなわち「呼吸の合図」も与えた。
図18A及び18Bは、FDによって測定された動き値が、シングルバンドよりもマルチバンドの場合に高いことを示している。実際に、全脳のBOLDデータまたはDVARSの他の品質測定値若しくは標準偏差において明らかなアーチファクトが示されていないにもかかわらず、多くのフレームはマルチバンドデータのみのFD<0.2の標準カットオフを通過しない。これらの定性的観察により、シングルショット(例えば、シングルバンド)データと比較したときの、マルチバンドデータによって提供される動き推定値における基本的な違いが示唆される。
【0270】
マルチバンド撮像により、従来認識されていなかったFD計算の歪みが明らかにされた。
【0271】
シングルバンドデータと比較したマルチバンドデータについて、動き推定値が違う可能性を確認した後、2つのデータタイプ間の呼吸トレース及びパワースペクトルを比較した。
図21Aは、単一の代表的な対象における推定値を示し、これによって、呼吸データを、BOLDデータのサンプリングレートに一致するように再サンプリングした。この場合、TRは800ミリ秒である。目視検査による比較を容易にするために、呼吸数信号の上に、6方向の剛体位置合わせパラメータのそれぞれについて、動き推定値についての時間経過を示すプロットを提供した。これらの信号についての並列スペクトルも
図21Aに提供した。
図21Aの中央の行は、対象に対する実行の完全なトレースを提供し、
図21Aの最初の行は、同一の実行の10フレームの小さなスクリーンショットを提供する。
図21Aは、動きトレースが、ある点で呼吸トレースにしたがう傾向を示す。この対応は、いくつかの方向、特にy方向(例えば、位相エンコード方向)において生じる。
【0272】
図21Aの下の行は、動きトレース及び呼吸トレースの両方についてのパワースペクトルを、同一の対象についての実行にわたってプロットすることによって、この関連を確認している。呼吸のピーク振幅は、動きトレースのピーク振幅と一致する。重要なのは、最大の「バンプ」がy方向(期待されるような位相エンコード方向)において発生するが、アーチファクトは他の方向にも「滲む」ように見えることである。これは、対象の相対的頭部位置が実行の最初から最後まで変化することが多いという事実と関係し得る。
【0273】
図21Bは、最も小さい動きの対象から最も大きい動きの対象まで並べられたすべての対象にわたるパワースペクトルを示す。
図21Bは、y方向及びz方向の矢印によって示されるように、ほとんどの対象にアーチファクトが存在していることを示す。多くの対象において、アーチファクトは、より少ない程度ではあるが、複数の方向にも存在している。スキャナ内で最も動いている参加者(例えば、
図21Bの一番下)については、アーチファクトが減少しているように見える。この現象は、所与の対象についての動きに対する呼吸からのパワースペクトルへの寄与が減少したことの2次的なものである可能性が高い。
【0274】
単一バンドFD値も同一の呼吸アーチファクトを有する。
【0275】
図22A-22Gは、
図21A及び21Bに示されるものと同一のデータを示すが、シングルバンド(例えば、シングルショット)取得データによるものである。これらのデータについては、呼吸データは入手できなかった。マルチバンドデータによって示されるアーチファクトの類似タイプがシングルショットデータに存在していることが、シングルショットデータからわかる。具体的には、
図22Bは、アーチファクトが主にY方向(例えば、位相エンコード方向)において発生していることを示している。しかしながら、パワースペクトルのプロファイルは、はるかに広く、かつ、あまり特有でないように見える(例えば、パワーのピークは非常に広い)。
【0276】
この現象は、シングルショットデータのより遅いサンプリング速度(例えば、TR)は、十分に速くないので呼吸の真の速度をキャプチャすることができないという事実の2次的なものである可能性が高い。むしろ、呼吸は他の周波数にエイリアシングされている。この影響を
図22C-22Gに示す。サンプリングレートの半分(例えば、ナイキスト限界)よりも高い周波数を有する信号は、低い周波数を有する信号として誤って検出される。例えば、10Hzでサンプリングされた2Hz信号は、2Hzで読み出される。10Hzでサンプリングされた5Hz信号は、まさにナイキスト限界であるので、5Hzで読み出される。しかしながら、10Hzでサンプリングされた6Hz信号は、6Hzとしては読み出されず、より低いサンプリング周波数で読み出される。この例では、信号がナイキスト限界より高いので、信号は4Hzとして読み出された。
【0277】
図22C-22Gは、所与の呼吸数及び所与のTR(例えば、サンプリングレート)について、どの周波数が予測され得るかを示す。
図22Cは、毎分15、20、及び25回の呼吸の3つの例を示す。
図22Eから、800ミリ秒(すなわち0.8秒)のTRについての動きトレースにおけるアーチファクトは所与の参加者の真の呼吸数に一致する可能性が高いことがわかるが、
図22F及び22Gに示されるより遅いTRについては、呼吸数は異なる周波数にエイリアシングされる。したがって、
図22Aに示されるように、スキャン中の呼吸数のいかなる変動も、様々な周波数に広まり、所与のプロファイルを広げる可能性が高い。真の呼吸数と動きトレースで観察された呼吸数との間のこの不整合は、動きデータにおけるこれらのアーチファクトが、これまでシングルショットデータ上で報告されていなかった理由の1つである。
【0278】
図23A-23Eは、0.33Hzという非常に具体的な呼吸数で呼吸する対象についてのBOLDデータを示す。TR=0.8ミリ秒、1.5秒、及び2秒で、同一のマルチバンドシーケンスを用いてデータを収集した。また、TR=2.5秒でのシングルショットデータを用いてデータを収集した。呼吸信号のエイリアシングが、
図22C-
図22Gの概略を示す理論値によく一致することは、補足資料からわかる。
【0279】
実施例4の要約
【0280】
これらの実験の結果により、動き推定値に対する呼吸の影響が実証された。より具体的には、fMRIにおいて、呼吸が動き推定値に悪影響を及ぼすことが実証された。定性的観察によって、シングルバンドデータと比較して、マルチバンドデータによって生成された動きトレースにおける基本的な違いが強調された。さらに、より速い反復時間とより高い空間分解能とを有するマルチバンド撮像によって、従来認識されていなかったFD計算の歪みが明らかになった。加えて、シングルショットFD値は、より少ない程度ではあるが、同一の呼吸アーチファクトを有することが示された。
【0281】
実施例5:頭部の動きデータにおける呼吸によって生じる歪みを除去するためのノッチフィルタと統合されたFIRMMシステムの評価
【0282】
実施例4において動き推定値に対する呼吸の影響を確認した後、以下の実験を行い、呼吸によって歪んだ頭部の動きデータ上の、ノッチフィルタと統合されたFIRMMの頭部の動き予測方法を検証した。対象の息づかい(例えば、呼吸)は、前処理、及び/またはリアルタイムモニタリング中の従来のフレームアライメント手順から得られた動き推定値において、アーチファクトを生じさせる。これらのアーチファクトの影響は、結合性に関連した結果に有害な影響を及ぼす可能性がある。動き推定値において望ましくない信号を補正するために、中心カットオフ周波数及び帯域幅の2つの設計パラメータを有するノッチフィルタを、青少年における脳の認知機能の発達に関する研究(ABCD)によって提供されたデータから得られた呼吸数の分布に基づいて設計した。設計されたフィルタ(例えば、一般的なフィルタ及び対象特異的なフィルタ)をマルチバンド及びシングルバンド(例えば、シングルショット)データの両方に実装し、対象の呼吸数に対応する望ましくない信号を除去するために、上述したFIRMMの頭部の動き予測方法と統合した。
【0283】
評価データ取得パラメータ
【0284】
実施例4で説明したように、データセット4の同一のABCD研究参加者、及びデータセット5の定型発達対照の参加者が、実施例5の実験に参加した。ABCD及び定型発達対照の参加者を、実施例4において上述したものと同一の方法及び同一の装置でスキャンした。
【0285】
結果
【0286】
FDトレースのフィルタリングにより、呼吸アーチファクトは補正され、BOLDデータ品質の推定が改善された。
【0287】
ノッチフィルタを、2つの方法で適用した。最初に、広範囲の、出来る限りの呼吸数をキャプチャするために、一般的なフィルタを生成した。一般的なフィルタは、パワーに関してABCDサンプル集団呼吸ピークの大部分をキャプチャするように設計された。このフィルタは、結合性の結果の改善において有効であった。このフィルタは、次に、対象特異的なフィルタを設計して、対象の呼吸ベルトデータに対して特異的なフィルタパラメータを生成した。対象特異的なフィルタは、一般的なフィルタよりもわずかに良好に機能した。
図24Aは、フィルタを適用していない結果を示し、
図24Bは、BOLD可視化データ(BVD)プロットを用いて一般的なノッチフィルタを実装した結果を示す。
図24Cは、中程度の動きのABCD参加者から得られたデータについて、フィルタを適用していない結果を示す。
図24Dは、
図24Cに示した同一の中程度の動きのABCD参加者から得られたデータに、一般的なノッチフィルタを適用した結果を示す。
【0288】
図24B及び24Dから、一般的なフィルタを適用すると、動き推定値が減少することがわかる。FDによって測定した動きトレースは、実際のデータにおける動きアーチファクトをより正確に反映しているように見える。これは、
図24B及び24Dの「回帰後」の灰色プロットに示されている。FDカットオフ<0.2mmのフィールドの一般標準を考慮すると、灰色のプロットの帯(strip)、及び「すべての処理後」のDVARSラインのスパイクによって示されているように、この閾値を超えるフレームは、回帰後の動きアーチファクトとより密接に整列していることが分かる。
【0289】
さらに、
図24B及び24Dのプロットにおける「すべての処理後」のDVARS及び「標準偏差」によって示されるように、DVARSによって測定されるばらつきの量は、動きフィルタを使用している場合、若干減少しているように見える。この結果は、信号から動きを回帰したときに、実際の動きアーチファクトに対する動き値(例えば、動きの数及び回転数)のより近い対応を反映している可能性がある。換言すれば、bold信号から動きを回帰するために使用される線形モデルフィッティングは、呼吸によって誘発されるアーチファクトがない場合に、より強力である。
【0290】
図25A及び25Bは、一般的なフィルタを適用した結果を示し、
図9A及び9Bは、対象特異的なフィルタを適用した結果を示す。より具体的には、
図25A及び25Bは、マルチバンドデータ及びシングルバンドデータの間の呼吸トレース及びパワースペクトルを示す。
図25A及び25Bは、一般的なフィルタ及び対象特異的なフィルタを適用した後の、上述した
図21A及び21Bの複製を提供する。
図25B(一般的なフィルタ)及び
図26B(特異的なフィルタ)の両方は、一般的なフィルタ及び対象特異的なフィルタを実装する方法が、呼吸によって引き起こされるアーチファクトを完全にはキャプチャしないことを開示している。
図26A及び26Bに示されるように、動きの大きい対象(例えば、グラフの一番下)については特に、フィルタによって、真の動きの値に影響が及ぼされる。
【0291】
フィルタリングされた推定により、向上したデータ品質が提供される。
【0292】
フィルタリングされた推定値は改善されたデータ品質を提供することを、動き推定値を結合性データに関連付ける定量的測定が示唆していることが、
図27A-27L及び
図28によって示されている。
図27A-27Lの説明は、FDトレースがBOLDデータにおいて動きを正確に表している場合、曲線は左へシフトされるべきであるというものである。この結果が生じるのは、スキャナ内の真の動きを示すときにFDが完全に正確である最適なケースにおいて、ベースライン測定値(例えば、最も品質の高いフレーム)はほとんど動きを有していないためである。したがって、動きがより大きいフレームと比較すると、発散は急速に発生する(例えば、ランダムから急速に発散する)。FDがBOLD内の真の動きとランダムに関連する場合、ベースライン測定値は、他の測定値(
図20A-20C参照)と比較して等しい(または同様の)動きフレーム量を有するので、発散はない。要するに、最も正確なFD測定値は、他の測定値に対して左方向にずれているべきである。
【0293】
図27A-27Lは、一般的なフィルタまたは実行特異的なフィルタを使用するFD測定値とは対照的に、FD測定値は、フィルタを使用しない場合に最もランダムに見えることを示している。このことは、
図27G及び27Jの累積分布の左へのシフトと共に、
図27A及び27Dの、より少ない「薄い灰色」の点によって視覚化することができる。
図27C、27F、27I及び27Lに示されるような対象特異的なフィルタは、
図27B、27E、27H及び27Kに示されるように、一般的なフィルタと大きく重複する分布を生じた。さらに、
図28に示されるように、CDF間の有意差を検査するためにkstest2を使用した。
図28は、フィルタなしと一般的なフィルタとの間の差が有意(p<0.0001)であることを示す。また、kstest2は、一般的なフィルタと比較して、実行特異的なフィルタのCDFが有意(p<0.0001)に異なっていることも示す。
【0294】
FIRMMの頭部の動き予測方法によるノッチフィルタのリアルタイム統合によって、より正確な動きデータが提供される。
【0295】
ノッチフィルタリング手法をFIRMMに直接統合した。ノッチフィルタをFIRMMに統合することによって、
図29A及び29Bに示すように、スキャナオペレータ及び研究調査員は、(a)ノッチフィルタをリアルタイムで適用するオプション、及び(b)自身のフィルタパラメータを入力するオプション、を得ることができた。
図29A及び
図29Bは、FIRMMによってオペレータ用コンピュータ装置910(
図9に示す)などのオペレータ用コンピュータ装置に提示されるディスプレイのスクリーンショットを示す。より具体的には、
図29Aは、5分間の安静実行を3回行った対象のフィルタリングされていないデータについてのディスプレイを示す。
図29Bは、5分間の安静実行を3回行った同一の対象のフィルタリングされたデータについてのディスプレイを示す。リアルタイムフィルタの設計を、後処理の数とよく一致するように生成した。
図29C及び
図29Dに示すように、フィルタリングされたFD数(
図29D)は、後処理の数とよく一致している。
【0296】
さらに、FIRMMの頭部の動き予測方法によって、ノッチフィルタはオン及びオフにされることができ、これにより、スキャナオペレータ及び調査者は、対象の必要性、集団(例えば、乳児のような特別な集団はノッチフィルタを必要としない)、及び/または研究目的によってMRIスキャンを調整することができた。
【0297】
実施例5の要約
【0298】
これらの実験の結果は、ノッチフィルタをFIRMMの頭部の動き予測方法と統合する開示されたアプローチの妥当性を実証した。ノッチフィルタを統合したFIRMMの頭部の動き予測方法は、FDトレースをフィルタリングして呼吸アーチファクトを修正し、BOLDデータ品質の推定値を改善するのに有効であった。さらに、動き推定値を結合性データに関連付ける定量的測定により、フィルタリング推定値の改善されたデータ品質が提供されることが示唆される。さらに、ノッチフィルタをFIRMMの頭部の動き予測方法とリアルタイムで統合することによって、より正確な頭部の動きデータが得られ、スキャナオペレータがリアルタイムMRIスキャン中に自身のフィルタを設定する際のオプションが増加した。
【0299】
本明細書に記載された構成、及び/または手法は本質的に例示的であり、これらの特定の態様または実施例は、多数の変形が可能であるので、限定的な意味では考慮されるべきではないことを理解されたい。本明細書に記載された特定の手順または方法は、任意の数の処理方法のうちの1以上を表し得る。このように、図示された種々の動作は、図示された順序で、他の順序で、並列で、またはいくつかの場合には省略して、実行されてもよい。同様に、上述した処理の順序が変更されてもよい。
【0300】
本開示の主題は、本明細書に開示された様々な方法、システム及び構成、及び他の特徴、機能、動作、及び/または特性、並びにそれらの任意かつすべての均等物の、すべての新規かつ非自明の組合せ及び部分的組合せを含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。