(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008214
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】食用海老及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/40 20160101AFI20230112BHJP
【FI】
A23L17/40 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111592
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】390023456
【氏名又は名称】株式会社極洋
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 允朗
(72)【発明者】
【氏名】井上 柊
(72)【発明者】
【氏名】廣本 好美
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AD39
4B042AE10
4B042AG72
4B042AH01
4B042AK04
4B042AP07
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】食感と味の良さを保持しつつ透明度の高い未加熱の食用海老及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の1つの食用海老は、酸性水溶液に接触させた開き海老の、下記の(1)~(3)に従った処理により導出された透明度が、80%以上である。
(1)鉛直上方から撮影したときに、CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、L値が10以下であるとともに、a値の絶対値及びb値の絶対値がいずれも5以下である板状体の上に、前記開き海老の開いた側の面を上に向けて前記開き海老を載置する載置処理
(2)前記載置処理された前記開き海老を鉛直上方から撮影し、前記開き海老の画像を取得する画像取得処理
(3)該画像を256階調の輝度値の情報を有する二次元のグレースケール画像に変換した後、該輝度値が50%以上である領域を白画像とし、該輝度値が50%未満である領域を黒画像として識別する白黒二値化処理をすることにより、該黒画像の該領域の割合を該透明度として導出する二値化評価処理
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性水溶液に接触させた開き海老の、下記の(1)~(3)に従った処理により導出された透明度が、80%以上である、食用海老。
(1)CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、L値が10以下であるとともに、a値の絶対値及びb値の絶対値がいずれも5以下である板状体の上に、前記開き海老の開いた側の面を上に向けて前記開き海老を載置する載置処理
(2)前記載置処理された前記開き海老を鉛直上方から撮影し、前記開き海老の画像を取得する画像取得処理
(3)該画像を256階調の輝度値の情報を有する二次元のグレースケール画像に変換した後、該輝度値が50%以上である領域を白画像とし、該輝度値が50%未満である領域を黒画像として識別する白黒二値化処理をすることにより、前記黒画像の該領域の割合を該透明度として導出する二値化評価処理
【請求項2】
前記透明度が、85%以上である、請求項1に記載の食用海老。
【請求項3】
前記透明度が、96%以上である、請求項1に記載の食用海老。
【請求項4】
剥き海老を開く前に、pH値が4以下の酸性水溶液に接触させる酸性水溶液接触工程と、
前記酸性水溶液接触工程の後に、前記剥き海老を開くことにより開き海老を形成する、開き処理工程と、を含む
食用海老の製造方法。
【請求項5】
前記酸性水溶液が、食用有機酸の水溶液である、
請求項4に記載の食用海老の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用海老及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市民の生活水準が向上し豊富な食材が供給可能な環境下では美食家が増える。他の食材と同様、平均的な消費者が海老・カニに代表される魚介類(商品)を選ぶ目は、市民の生活水準が向上するにつれて肥えてくるため、特に魚介類に慣れ親しんだ国の消費者の魚介類の品質に対する目は、非常に厳しいといえる。魚介類の加工品を製造販売する企業にとっては、消費者の舌を満足させる商品の開発と提供を常に追求していく姿勢が市場において求められる。
【0003】
これまで、魚介類、とりわけ海老は、多様な調理方法を用いて各国で食されてきた。海老が、惣菜、サラダ、又は寿司などの未加熱の状態で調理されることは、海老の代表的な活用例である。また、該食用海老は、広く一般に食される食材として、コンビニエンスストア等においても食材の一つとして提供されている。
【0004】
食用海老に関する従来の技術として、えび、かになどの甲殻類を赤色に発色させる方法に関するものであり、さらに詳しくはカロテノプロテインを有するえび、かになどの甲殻類を高温加熱せずに、生鮮状態で赤色に発色させる方法が、本願出願人により開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未加熱の食用海老、より正確には、加熱処理によるタンパク質の変性等に起因する白色化が実質的に生じていない又は実質的に進んでいない食用海老(以下、総称して「未加熱の食用海老」という。)に求められる代表的な要素の一つは、見た目の美しさ、とりわけ透明感であるといえる。一方、消費者の食欲をそそることから、朱色又は赤色に発色した未加熱の食用海老が好まれるが、その発色に伴って透明感が低下する、又は失われることはよく知られている。従って、そのような発色をした食用海老であっても、透明度の低い、換言すれば、白色化が進んでいる海老は、加熱済みの食用海老との差別化が難しくなるために商品価値が低下するだけでなく、食感と味とが劣化している可能性がある。また、たとえ食感と味が落ちていなくても、商品価値が低いというだけで販売の対象から外れてしまうこともある。これは、昨今、世界中で社会問題化している食品ロス(food loss)の問題につながるため、軽視することができない。
【0007】
従って、食感と味の良さを保持しつつ、朱色又は赤色に発色した、透明度の高い未加熱の食用海老を実現することは、消費者の食に対する欲求を満足させるだけでなく、食品ロスの問題の解決にも貢献することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食感と味の良さを保持しつつ、朱色又は赤色に発色した、透明度の高い、未加熱の食用海老及びその製造方法の実現に大きく貢献するものである。
【0009】
本発明者らは、未加熱の海老として提供することができる食用海老に関して、上述の効果を実現し得る食用海老の実現に向けて鋭意研究と分析を重ねた。その結果、本発明者らは、特に食用海老の製造工程に着目して研究を進めたところ、主に朱色又は赤色に海老を発色させることを目的とする酸性水溶液への該食用海老の接触処理と、該食用海老の「開き処理」との順序を異ならせることによって、最終的に得られる該食用海老の透明度が変化することと知得した。
【0010】
具体的には、酸性水溶液への該食用海老の接触処理が、該開き処理よりも前に行われると、上述の発色をさせた場合であっても、該食用海老の透明度が高いことが明らかとなった。一方、大変興味深いことに、酸性水溶液への該食用海老の接触処理が、該開き処理よりも後に行われるという従来の工程を採用した場合は、発色はしたとしても透明度が低いか、あるいは透明度がある程度得られたとしても発色が不十分になることが確認された。加えて、透明度が高い該食用海老は、その食感と味が良好であるという知見も得られた。
【0011】
また、本発明者らが研究と分析を進める中で、上述の効果が、1つの特定の種類の酸性水溶液に限定されず、複数の種類の酸性水溶液においても奏され得ることを、本発明者らは見出した。本発明は、上述の各視点に基づいて創出された。
【0012】
本発明の1つの食用海老は、酸性水溶液に接触させた開き海老の、下記の(1)~(3)に従った処理により導出された透明度が、80%以上である。
(1)CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、L値が10以下であるとともに、a値の絶対値及びb値の絶対値がいずれも5以下である板状体の上に、該開き海老の開いた側の面を上に向けて該開き海老を載置する載置処理
(2)該載置処理された該開き海老を鉛直上方から撮影し、該開き海老の画像を取得する画像取得処理
(3)該画像を256階調の輝度値の情報を有する二次元のグレースケール画像に変換した後、該輝度値が50%以上である領域を白画像とし、該輝度値が50%未満である領域を黒画像として識別する白黒二値化処理をすることにより、前記黒画像の該領域の割合を該透明度として導出する二値化評価処理
【0013】
この食用海老によれば、酸性水溶液に接触させることによって朱色又は赤色に食用海老を発色させた場合であっても、高い透明度の該食用海老を実現することができる。加えて、この食用海老によれば、良好な食感と味を実現し得る。その結果、食用海老は、食品ロスの問題解決にも貢献し得る。
【0014】
また、本発明の1つの食用海老の製造方法は、剥き海老を開く前に、pH値が4以下の酸性水溶液に接触させる酸性水溶液接触工程と、該酸性水溶液接触工程の後に、該剥き海老を開くことにより開き海老を形成する、開き処理工程と、を含む。
【0015】
この食用海老の製造方法によれば、酸性水溶液に接触させることによって朱色又は赤色に食用海老を発色させた場合であっても、高い透明度の食用海老を製造することができる。また、この食用海老の製造方法によれば、良好な食感と味を実現し得る食用海老を製造することができる。その結果、食用海老の製造方法は、食品ロスの問題解決にも貢献し得る。
【0016】
ところで、本出願における「剥き海老」は、水揚げ後、殻剥き以外の処理がされていない生の剥き海老、及び該生の剥き海老が一旦冷凍された後に、解凍された剥き海老を含む。なお、本出願における「剥き海老」は、頭部及び/又は尾部が取り除かれているか否かを問わない。代表的な「剥き海老」は、少なくとも頭部及び/又は尾部以外の外骨格及び脚が取り除かれている状態の食用海老である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の1つの食用海老によれば、酸性水溶液に接触させることによって朱色又は赤色に食用海老を発色させた場合であっても、高い透明度の該食用海老を実現することができる。
【0018】
また、本発明の1つの食用海老の製造方法によれば、酸性水溶液に接触させることによって朱色又は赤色に食用海老を発色させた場合であっても、高い透明度の食用海老を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態における食用海老の製造工程を示すフローチャートである。
【
図2】本実施形態の酸性水溶液接触工程が行われる前の、開かれた状態の食用海老の開いた側の面を示す写真である。
【
図3】比較例の食用海老の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態における画像処理前の食用海老と画像処理後の食用海老(
図4(A))と、比較例における画像処理前の食用海老と画像処理後の食用海老(
図4(B))である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態における食用海老及び該食用海老の製造方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における食用海老の製造工程(ステップS0~ステップS8)を示すフローチャートである。また、
図2は、本実施形態の酸性水溶液接触工程が行われる前の、開かれた状態の食用海老の開いた側の面を示す写真である。また、
図3は、比較例の食用海老の製造工程(ステップCS0~ステップCS8)を示すフローチャートである。本実施形態においては、一例として、
図1に示す本実施形態の食用海老の製造過程における各処理工程を経ることにより、本実施形態の食用海老が製造され得る。なお、
図1に示す例の海老の種類はバナメイエビである。なお、本実施形態はバナメイエビを食用海老として採用しているが、本実施形態の食用海老の対象はバナメイエビに限定されない。例えば、生鮮状態において暗い茶色の外観を有する食用海老、具体的には、バナメイエビ、ウシエビ、クマエビ、シンチュウエビ、及びクルマエビの群から選択される1種の食用海老を採用することは、本実施形態の他の一態様である。
【0022】
<食用海老の製造工程>
具体的には、まず、凍結状態の食用海老が解凍された(ステップS0)後、該食用海老の殻剥き処理(ステップS1)、及び必要に応じて頭部及び脚部の除去処理が施される。なお、本実施形態においては、凍結状態から解凍された食用海老が採用されるが、本実施形態はそのような食用海老に限定されない。例えば、該食用海老の代わりに、水揚げされて未凍結状態の食用海老を採用することも、本実施形態の他の一態様である。
【0023】
次に、本実施形態においては、殻が剥かれた状態であって、後述する開き処理が行われていない状態の食用海老を、pH値が4以下(より好適には、3以下)の酸性水溶液に、例えば300秒間接触させる酸性水溶液接触工程が行われる(ステップS2)。なお、本実施形態における酸性水溶液は、以下の(a)に示す酸性水溶液である。
(a)生理学的に許容可能な酸性水溶液の一例である食用有機酸の水溶液、より具体的には、クエン酸を含有する水溶液
【0024】
ところで、本実施形態の酸性水溶液の酸度の範囲は特に限定されないが、代表的には、酸度は、1%以上10%以下である。加えて、本実施形態においては、処理時間の条件を揃えるために300秒間の接触時間を採用しているが、食用海老を朱色又は赤色に発色させる観点からいえば、酸性水溶液接触工程は、300秒未満の接触時間で足り得る。
【0025】
その後、必要に応じて行われる水洗処理(ステップS3)を経て、本実施形態の食用海老は、開き処理工程(ステップS4)及び必要に応じて背腸処理(背腸の内容物(背わた)を除去する処理)が行われることによって、
図2に示すような開かれた状態の食用海老(以下、「開き海老」ともいう。)が形成される。なお、
図2に示す開き海老は、刃を用いて腹(脚)側から切込みを入れることによって海老が開かれているが、本実施形態の開き海老はその態様に限定されない。例えば、刃を用いて背側から切込みを入れることによって開かれた開き海老を採用することも、本実施形態の他の一態様である。
【0026】
続いて、開き海老を、必要に応じてアルカリ性水溶液に、例えば数分間~数十分間接触させるアルカリ性水溶液接触工程が行われる(ステップS5)。該工程は、主として、上述の酸性水溶液接触工程によって酸性化した該食用海老を中和するために行われる。なお、本実施形態におけるアルカリ性水溶液は、代表的には炭酸ナトリウムを含有するアルカリ性水溶液である。
【0027】
その後、再び、水洗処理(ステップS6)を経て、必要に応じて包装(ステップS7)され、及び/又は凍結され(ステップS8)得る。なお、上述のアルカリ性水溶液接触工程が行われない場合は、前述の水洗処理(ステップS6)が、上述の酸性水溶液接触工程によって酸性化した該食用海老を中和する役割を担い得る。
【0028】
一方、
図3の比較例の食用海老の製造工程を示すフローチャートに示すように、比較例の食用海老の製造工程は、酸性水溶液接触工程(ステップCS3)が開き処理工程(ステップCS2)よりも後に行われる点を除いて、本実施形態の食用海老の製造工程と実質的に同じである。
【0029】
<食用海老の評価>
図1及び
図3に示す上述の各製造工程を経て製造された本実施形態の食用海老及び比較例の食用海老について、本発明者らは、下記の(v1)~(v4)の指標に基づいて、該食用海老の評価を行った。なお、下記の各評価のうち、(v1)~(v3)の官能評価については、11名の評価者が、「良好」と「不良」とからなる2つの成績区分に分ける評価を行い、多数を占める回答を代表させた。なお、該評価においては、凍結状態の食用海老が解凍された(ステップS0)後に殻剥き処理(ステップS1)が施されただけの食用海老、換言すれば、殻剥き処理(ステップS1)以外の処理が何ら行われていない食用海老を参考例(未処理)として採用し、透明度の指標について本実施形態の食用海老との対比が可能となるようにした。
[指標]
(v1)赤色又は朱色への発色の状態(視覚による官能評価)
(v2)食感(味覚による官能評価)
(v3)味(味覚による官能評価)
(v4)透明度
【0030】
また、本実施形態においては、該評価における「透明度」を、下記の(処理1)~(処理3)に従った処理により導出された値と定義した。
(処理1)CIE1976(L*,a*,b*)表色系において、L値が10以下(より狭義には、5以下)であるとともに、a値の絶対値及びb値の絶対値がいずれも5以下(より狭義には、3以下)である板状体の上に、開き海老の開いた側の面を上に向けて該開き海老を載置する載置処理
(処理2)該載置処理された該開き海老を鉛直上方から撮影し、該開き海老の画像を取得する画像取得処理
(処理3)該画像を256階調の輝度値の情報を有する二次元のグレースケール画像に変換した後、該輝度値が50%以上である領域を白画像とし、該輝度値が50%未満である領域を黒画像として識別する白黒二値化処理をすることにより、前記黒画像の該領域の割合を該透明度として導出する二値化評価処理
【0031】
ここで、(処理1)においては、上述のとおり、開き海老が、十分に明度の低い暗色(代表的には、黒色)の板状体の上に、該開き海老の開いた側の面(例えば、
図2においては腹(脚)側の面)を上に向けて載置される。
【0032】
また、(処理2)においては、該開き海老を鉛直上方から撮影することにより、該開き海老の画像が取得される。このとき、各実施例の代表的な写真として取り上げた
図4(A)の画像処理前の写真に示すように、背景色である板状体の表面の暗色(黒色)が食用海老を通して透けて視認できる領域の割合が比較的多いことが分かる。一方、各比較例の代表的な写真として取り上げた
図4(B)の画像処理前の各写真に示すように、背景色である板状体の表面の暗色(黒色)が食用海老を通して透けて視認できない領域の割合が比較的多いことが分かる。なお、一例としての該画像の撮影条件は、次のとおりである。
ISO感度:200
絞り:F6.3
シャッタースピード:1/50
照度:約1500Lux
【0033】
なお、
図4(A)の画像処理前の写真は、実施例1-3におけるステップS8後、さらに解凍した後の食用海老の写真であり、
図4(B)の画像処理前の写真は、比較例1-3におけるステップCS8後、さらに解凍した後の食用海老の写真である。
【0034】
また、(処理3)においては、(処理2)によって取得された画像が、公知のアプリケーションソフト(例えば、「パワーポイント」(登録商標,マイクロソフト コーポレーション製))を用いて256階調の明度又は輝度値の情報を有する二次元のグレースケール画像に変換される。その後又はそのグレースケール画像への変換と同時に、該輝度値が50%未満(すなわち、128/256未満)である領域を黒画像とし、該輝度値が50%以上(すなわち、128/256以上)である領域を白画像として識別する「白黒二値化処理」が行われる。
【0035】
その結果、公知のアプリケーションソフト(例えば、「Photoshop」(登録商標,アドビ インコーポレイテッド製))を用いて、黒画像の領域面積の、評価対象となる食用海老の全体の面積に対する割合(すなわち、透明度)を、百分率を用いて表すことにより、各実施例及び各比較例の透明度を導出する。
【0036】
例えば、
図4(A)の画像処理後の写真に示すように、黒画像の領域面積の全体に対する割合が比較的多い(すなわち、透明度が比較的高い)ことが確認される。一方、
図4(B)の画像処理後の写真に示すように、黒画像の領域積の全体に対する割合が比較的少ない(すなわち、透明度が比較的低い)ことが確認される。
【0037】
表1は、酸性水溶液接触工程において、2wt%~10wt%の濃度範囲、より具体的には、2wt%(pH値は、約2.0、酸度は約2.0%)、5wt%(pH値は、約1.9、酸度は約4.5%)、及び10wt%(pH値は、約1.8、酸度は約9.3%)の各クエン酸の水溶液を用いたときの、本実施形態(実施例1-1~1-3)及び比較例(比較例1-1~1-3)における上述の(v1)~(v4)の指標の成績又は結果を示している。また、凍結状態の食用海老が解凍された(ステップS0)後に殻剥き処理(ステップS1)が施されただけの食用海老の該成績又は該結果を、参考例(未処理)として示している。
【0038】
【0039】
表1に示すように、実施例1―1,1-2,及び1-3のいずれにおいても、(v1)~(v4)の全ての評価項目において良好な結果が得られた。一方、比較例1―1,1-2,及び1-3については、(v1)~(v4)のいずれか1つ又は2つ以上の項目において「不良」の結果となった。
【0040】
なお、本実施形態において透明度が80%以上である食用海老は、視覚的に十分な透明度が得られる食用海老である。なお、該透明度が80%以上である食用海老は、比較例1-2~1-3の食用海老と比べて、視覚的に明確に違いが分かるものであった。また、該透明度が85%以上(より、好適には90%以上、更に好適には96%以上)である食用海老は、透明度が80%以上である食用海老と比べて、商品価値を更に高めることができる透明度を有する食用海老である。
【0041】
なお、表1は、クエン酸の濃度が2wt%以上10wt%以下の範囲の評価結果を示しているが、表1に示す本実施形態の効果が得られる濃度範囲は、前述の濃度範囲に限定さない。例えば、クエン酸の濃度が2wt%以上30wt%以下(確度高く、高い透明度を実現する観点、及び/又は高い透明度を得るために要するクエン酸の量を低減することによって食用海老の製造コストを削減する観点から言えば、より好適には、2wt%以上20wt%以下)であれば、本実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。
【0042】
上述のとおり、本実施形態の食用海老、及び食用海老の製造方法によれば、食感と味の良さを保持しつつ透明度の高い、未加熱の食用海老を実現し得る。
【0043】
<第2の実施形態>
本実施形態においては、第1の実施形態の酸性水溶液接触工程において採用されたクエン酸を含有する酸性水溶液の代わりに、以下の(b)に示す酸性水溶液を採用したことを除き、第1の実施形態の食用海老及びその製造方法と同一である。よって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
(b)生理学的に許容可能な酸性水溶液の一例である食用有機酸の水溶液、より具体的には、氷酢酸を含有する水溶液
【0044】
上述のとおり、本実施形態及び比較例の各酸性水溶液接触工程においては、濃度が10wt%の氷酢酸を含有する酸性水溶液(pH値は、約2.2、酸度9.9%)が採用された。なお、本実施形態の酸性水溶液接触工程(ステップS2)は、第1の実施形態と同様に、
図1に示す各工程の順序に従って行われた。また、比較例の酸性水溶液接触工程(ステップCS3)は、第1の実施形態における比較例と同様に、
図3に示す各工程の順序に従って行われた。
【0045】
表2は、本実施形態及び比較例の食用海老に対する、第1の実施形態において説明した(v1)~(v4)の指標の成績又は結果を示している。
【0046】
【0047】
表2に示すように、実施例2の食用海老は、(v1)~(v4)の全ての評価項目において良好であった。一方、比較例2の食用海老については、(v2)~(v4)の項目において「不良」の結果となった。
【0048】
第1の実施形態及び本実施形態における食用海老の評価結果によれば、酸性水溶液接触工程(ステップS2)において、生理学的に許容可能な酸性水溶液、より具体的には、食用有機酸の水溶液を採用することにより、食感と味の良さを保持しつつ透明度の高い、未加熱の食用海老を実現し得る。
【0049】
<第3の実施形態>
本実施形態においては、第1の実施形態の酸性水溶液接触工程において採用されたクエン酸を含有する酸性水溶液の代わりに、以下の(c)に示す酸性水溶液を採用したことを除き、第1の実施形態の食用海老及びその製造方法と同一である。よって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
(c)食用無機酸の水溶液、より具体的には、塩酸を含有する水溶液
【0050】
上述のとおり、本実施形態及び比較例の各酸性水溶液接触工程においては、濃度が2wt%の氷酢酸を含有する酸性水溶液(pH値は、約0.5、酸度3.5%)が採用された。なお、本実施形態の酸性水溶液接触工程(ステップS2)は、第1の実施形態と同様に、
図1に示す各工程の順序に従って行われた。また、比較例の酸性水溶液接触工程(ステップCS3)は、第1の実施形態における比較例と同様に、
図3に示す各工程の順序に従って行われた。
【0051】
表3は、本実施形態及び比較例の食用海老に対する、第1の実施形態において説明した(v1)~(v4)の指標の成績又は結果を示している。
【0052】
【0053】
表3に示すように、実施例3の食用海老は、(v1)~(v4)の全ての評価項目において良好であった。一方、比較例3の食用海老については、(v2)~(v4)の項目において「不良」の結果となった。
【0054】
第1の実施形態、第2の実施形態、及び本実施形態における食用海老の評価結果によれば、酸性水溶液接触工程(ステップS2)において、食用有機酸を用いる場合のみならず、食用無機酸を用いた場合であっても、第1の実施形態の食用海老が奏する効果と同様の効果が奏され得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の1つの食用海老及びその製造方法は、食感と味の良さを保持しつつ透明度の高い、未加熱の食用海老を求める、食品業、飲食業及び水産業に限らず、該加工品を扱う各種の産業(航空産業及び鉄道産業など)においても極めて有用である。