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特開2023-82150二重特異性および多重特異性生物学的物質の区画化されたアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082150
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】二重特異性および多重特異性生物学的物質の区画化されたアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230606BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20230606BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230606BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6897 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060110
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2021520203の分割
【原出願日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】62/742,837
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/784,171
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521147145
【氏名又は名称】アンバーストーン・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Amberstone Biosciences, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・グイカイ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレイ・シャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための系を提供する。
【解決手段】スクリーニングするための系は、複数の区画化されたナノボリュームを含み、各ナノボリュームが、二重特異性又は多重特異性生物学的物質のユニークな遺伝子変異型をコードする核酸配列を含む、第1の細胞;レポーター分子をコードする核酸配列を含む、第2の細胞を含むものであって、第1及び第2の細胞の少なくとも1つが、二重特異性又は多重特異性生物学的物質のための1つ又はそれ以上の標的を含み、並びにレポーター分子が、二重特異性又は多重特異性生物学的物質が1つ又はそれ以上の標的に結合すると活性化されることにより、二重特異性又は多重特異性生物学的物質の遺伝子変異型が二重特異性又は多重特異性生物学的物質の機能的変異型をコードすることを示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームにおいてアッセイを実施するための方法であって、
複数の少なくとも2つの異なるタイプの細胞を供する工程であって、2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞が、分泌型の二重特異性または多重特異性生物学的物質のために1細胞ごとに実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、2つまたはそれ以上の第2タイプの細胞が、第1タイプの細胞によって発現される前記生物学的物質の機能的変異型によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を生成するように選択され、または操作されている工程;
複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームが、それぞれ実質的に1つの第1タイプの細胞および1つまたはそれ以上の第2タイプの細胞で供される工程;
前記ナノボリュームを一定期間インキュベートして、前記ナノボリューム内における前記生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程;
前記ナノボリューム内で分泌された生物学的物質によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程;次いで
前記陽性レポーターシグナル分子を用いて前記ナノボリュームから細胞を回収し、前記生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記区画化されたナノボリュームが、約0.03nL~約100nL、または約0.1nL~約4nLの均一またはほぼ均一サイズを有するマイクロチャンバーまたは液滴である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二重特異性または多重特異性生物学的物質が、IgG重鎖、IgG軽鎖、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、単一ドメイン抗体、VHH抗体、ナノボディ、非抗体代替足場、細胞表面タンパク質の細胞外フラグメント、ケモカインまたはケモカイン様分子、サイトカインまたはサイトカイン様分子、および前記分子の組み合わせまたは誘導体からなる群から選択される少なくとも2つの異なる標的結合部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的物質の標的結合部分が、ヘテロ二量体化ドメイン、ヘテロ三量体化ドメイン、約2~約30個のアミノ酸または約10~約50個のアミノ酸の長さを有するリンカーペプチドからなる群から選択される、少なくとも1つの非標的結合部分によって連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記二重特異性生物学的物質が、共通のIgG軽鎖と2つの異なるIgG重鎖を含む抗体、または共通のIgG重鎖と2つの異なるIgG軽鎖を含む抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記二重特異性生物学的物質が、約2~約30個のアミノ酸のリンカーペプチドを介して単一のキメラポリペプチドとして融合させた、scFv、Fab、VHH、および単一ドメイン抗体から選択される2つの異なる部分を含む抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二重特異性生物学的物質が、サイトカインまたはそのサイトカイン様ポリペプチドに融合させた、抗体もしくは抗体誘導体または抗体様分子を含む免疫サイトカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記二重特異性生物学的物質が、少なくとも2つの異なるサイトカインまたはそのサイトカイン様ポリペプチドを含むキメラ融合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1タイプの細胞が、前記第1タイプの細胞のゲノムに組み込まれる実質的に1つまたは2つの異なる発現カセットまたは発現担体を用いて操作されるものであって、前記組み込まれた発現カセットまたは発現担体から前記生物学的物質の単一の遺伝子変異型を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二重特異性または多重特異性生物学的標的が、前記区画化されたナノボリュームで供される細胞の少なくとも1つによって発現される細胞表面標的または2つまたはそれ以上の異なる細胞表面標的にある、2つまたはそれ以上の異なる部位を標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2タイプの細胞における前記陽性レポーターシグナル分子が、蛍光タンパク質、蛍光発生分子、または蛍光分子もしくは複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2タイプの細胞における前記陽性レポーターシグナル分子が、ルシフェラーゼ、発光分子もしくは複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記陽性レポーターシグナル分子が、第2タイプの細胞のゲノムに組み込まれた発現カセットによって遺伝学的にコードされている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記陽性レポーターシグナル分子が、第2タイプの細胞における細胞表面標的の下流のエフェクター分子であり、第1タイプの細胞によって発現される機能的な生物学的物質による標的結合が、前記エフェクター分子の蓄積を引き起こす、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記陽性レポーターシグナル分子が、前記生物学的物質の2つの異なる標的と各々結合したFRETドナーおよびアクセプターの適合する対である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記陽性レポーターシグナル分子が、レポーターをコードする配列を、前記生物学的物質を表す配列に結合するリンケージポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、続いて前記リンケージPCR産物の遺伝子配列決定を行うことによって遺伝学的に検出される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
3つの異なるタイプの細胞が供されるものであって、第1タイプの細胞が、前記生物学的物質の単一の変異型を発現するように操作され、第2タイプの細胞が、レポーター細胞として選択されるか、または供するように操作され、ならびに第3タイプの細胞が、標的を発現する細胞として選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程が、光学的検出デバイスを用いてレポーターに由来する光学的シグナルを検出することによる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程が、一部では、レポーター遺伝子の転写物を表し、別の部分では、前記生物学的物質を表す結合した核酸配列を配列決定することによる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの異なるタイプの細胞が、哺乳動物細胞、または哺乳動物細胞の派生物もしくは操作された形態である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも2つの異なるタイプの細胞のうちの1つが、哺乳動物細胞であり、他方が、酵母または真菌細胞である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞が、二倍体酵母細胞であり、前記2つまたはそれ以上の第2タイプの細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記二倍体酵母細胞が、反対の交配型の2つの一倍体株間の交配に由来し、第1の一倍体株が、前記生物学的物質の少なくとも1つの部分をそれぞれコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、ならびに第2の一倍体株が、前記生物学的物質の残りの部分をコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作されている。請求項22に記載の方法。
【請求項24】
機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームでアッセイを実施するための方法であって、
複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームが、それぞれ実質的に単一の二倍体酵母細胞および少なくとも1つの哺乳動物細胞で供され、前記酵母細胞が、分泌型の二重特異性または多重特異性生物学的物質の単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、前記哺乳動物細胞が、前記酵母細胞によって発現される前記生物学的物質の機能的な変異型によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択される工程;
前記区画化されたナノボリュームを一定期間インキュベートして、前記ナノボリューム内の前記生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程;
前記ナノボリューム内の分泌された機能的な生物学的物質によって引き起こされる陽性レポーターシグナルを表すデータを収集する工程;次いで
陽性レポーターシグナルを用いてナノボリュームから細胞を回収し、前記生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程
を含む、方法。
【請求項25】
前記二倍体酵母細胞が、反対の交配型の2つの一倍体株間の交配に由来し、第1の一倍体株が、前記生物学的物質の少なくとも1つの部分をそれぞれコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、ならびに第2の一倍体株が、前記生物学的物質の残りの部分をコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記区画化されたナノボリュームが、約0.03nL~約100nL、または約0.1nL~約4nLの均一またはほぼ均一なサイズを有するマイクロ流体マイクロチャンバーまたは液滴である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記二重特異性または多重特異性生物学的物質が、IgG重鎖、IgG軽鎖、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、単一ドメイン抗体、VHHドメイン抗体、ナノボディ、非抗体代替足場、サイトカインまたはサイトカイン様ポリペプチド、細胞表面タンパク質の細胞外フラグメント、ケモカインまたはケモカイン様分子、および前記分子の組み合わせまたは誘導体からなる群から選択される、少なくとも2つの機能的に異なる標的結合部分を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記生物学的物質の標的結合部分が、ヘテロ二量体化ドメイン、ヘテロ三量体化ドメイン、約2~約30個のアミノ酸または約10~約50個のアミノ酸の長さを有するリンカーペプチド、または前記ドメインとリンカーの組み合わせからなる群から選択される前記生物学的物質の少なくとも1つの非標的結合部分によって結合されている、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記二重特異性生物学的物質が、共通のIgG軽鎖と2つの異なるIgG重鎖を含む抗体、または共通のIgG重鎖と2つの異なるIgG軽鎖を含む抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記二重特異性生物学的物質が、抗体または抗体誘導体または抗体様分子、ならびにサイトカインまたはサイトカイン様分子を含む、免疫サイトカインである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記二重特異性生物学的物質が、少なくとも2つの異なるサイトカインまたはサイトカイン様分子を含む、単一のキメラ融合タンパク質または複合体である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための系であって、
複数の液滴またはマイクロチャンバーを含み、各液滴またはマイクロチャンバーが、
多重特異性生物学的物質の第1の成分の遺伝子変異型をコードする核酸配列を含み、前記多重特異性生物学的物質の第2の成分の遺伝子変異型をコードする核酸配列を含む、第1の細胞;
レポーター分子をコードする核酸配列を含む、第2の細胞
を含むものであって、
前記第1または第2の細胞が、前記第1の成分のための第1の標的を含み、前記第2の細胞が、前記第2の成分のための第2の標的を含み、ならびに
前記レポーター分子が、前記第1の成分が前記第1の標的に結合し、前記第2の成分が前記第2の標的に結合すると転写され、前記多重特異性生物学的物質の前記第1および第2の成分の遺伝子変異型が前記多重特異性生物学的物質の機能的な変異型をコードすることを示す、前記系。
【請求項33】
前記多重特異性生物学的物質が、二重特異性または三重特異性生物学的物質を含む、請求項32に記載の系。
【請求項34】
前記生物学的物質が、抗体、サイトカイン、または免疫サイトカインを含む、請求項32に記載の系。
【請求項35】
二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む成分の適切な一対を直接スクリーニングするための区画化された系であって、
複数の液滴またはマイクロチャンバーを含むものであって、各液滴またはマイクロチャンバーが、
第1の哺乳動物細胞であって、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1の成分の遺伝子変異型をコードする核酸;および
前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第2の成分の遺伝子変異型をコードする核酸を含む、第1の哺乳動物細胞、ならびに
第2の哺乳動物細胞であって、第1の標的、第2の標的、およびレポーター分子をコードする核酸を含み、前記レポーター分子が、機能的二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインによる前記第1および第2の標的の活性化により転写される、第2の哺乳動物
を含むものであって、
前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの前記第1および第2の成分が、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの前記第1および第2の成分の遺伝子変異型が、機能的変異体であり、一緒に結合して前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカイン形成する場合に、機能的であり、前記第1および第2の標的に結合する、前記系。
【請求項36】
多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための方法であって、
多重特異性生物学的物質の第1の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第1のDNAライブラリーを供する工程;
前記多重特異性生物学的物質の第2の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第2のDNAライブラリーを供する工程;
前記第1および第2のDNAライブラリーを複数の細胞に導入して細胞ライブラリーを取得する工程であって、前記細胞ライブラリーの細胞が、前記第1および第2の成分の変異型を発現する工程;
前記細胞ライブラリーの細胞を液滴に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴が、前記細胞ライブラリーの実質的に単一の細胞をそれぞれ含む工程;
レポーター細胞を液滴に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴が1つまたはそれ以上のレポーター細胞をそれぞれ含む工程;
前記液滴をインキュベートする工程;
前記レポーター細胞によって生成されたシグナルを検出する工程;次いで
前記検出されたシグナルに基づいて、前記多重特異性生物学的物質の機能的変異型を含むシグナルを同定する工程
を含む、方法。
【請求項37】
二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む成分の適切な一対を直接スクリーニングするための方法であって、
二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第1のDNAライブラリーを供する工程;
前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第2の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第2のDNAライブラリーを供する工程;
前記第1および第2のDNAライブラリーを複数の細胞に導入して細胞ライブラリーを取得する工程であって、前記細胞ライブラリーの各細胞が、前記細胞ライブラリーの他の細胞の各々に関して、前記第1の成分の異なる変異型および前記第2の成分の異なる変異型を実質的に発現する工程;
前記細胞ライブラリーの細胞を液滴に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴が前記細胞ライブラリーの実質的に単一の細胞をそれぞれ含む工程;
複数のレポーター細胞を前記液滴に導入する工程であって、各液滴が、第1の標的、第2の標的、およびレポーター分子をコードする核酸を含むレポーター細胞をさらに含み、前記レポーター分子が、機能的な二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインによる前記第1および第2の標的の活性化により転写され、それによりレポーターシグナルを生成する工程;
前記液滴をインキュベートして、各液滴において前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの前記第1および第2の成分の転写および構築を可能にする工程であって、各液滴において、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの前記第1および第2の成分が、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの前記第1および第2の成分の遺伝子変異型が、機能的変異型であり、一緒に結合して前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインを形成する場合に、機能的であり、前記第1および第2の標的に結合する工程;
前記レポーターシグナルを検出する工程;次いで
前記検出されたレポーターシグナルに基づいて、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む液滴を同定する工程
を含む、方法。
【請求項38】
前記細胞ライブラリーの各細胞が、前記第1の成分の各変異型、および前記第2の成分の各変異型を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記多重特異性生物学的物質が、二重特異性または三重特異性生物学的物質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的物質が、抗体、サイトカイン、または免疫サイトカインを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記多重特異性生物学的物質の機能的変異体を含む液滴を同定する工程が、前記液滴中の細胞の核酸を配列決定する工程を含む、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームでアッセイを実施するための方法であって、
複数の少なくとも2つの異なるタイプの細胞を供する工程であって、2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞が、(1)分泌型の二重特異性または多重特異性生物学的物質のための細胞ごとに実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、(2)生物学的物質を対象とした少なくとも1つの標的を発現するように操作され、または選択され、および(3)前記第1タイプの細胞を、前記生物学的物質を対象とした少なくとも別の異なる標的を発現する異なる第2タイプの細胞に結合させる前記生物学的物質の機能的変異型によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を生成するように操作され、または選択される、工程;
複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームが、実質的に1つの第1タイプの細胞、および1つまたはそれ以上の第2タイプの細胞でそれぞれ供される工程;
前記ナノボリュームを一定期間インキュベートして前記ナノボリューム内の前記生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程;
前記ナノボリューム内の分泌された生物学的物質によって引き起こされた前記陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程;次いで
前記陽性レポーターシグナル分子を用いて前記ナノボリュームから細胞を回収し、前記生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この国際出願は、2018年12月21日に出願の米国仮特許出願番号第67/784,171号、および2018年10月8日に出願の米国仮特許出願番号第67,742/837号の優先権の利益を主張するものであって、これらの内容は参照によりこれら全体が組み込まれるものである。
【0002】
技術分野
本開示は、区画化されたナノボリュームに基づく生物学的アッセイの様々な実施態様、より具体的には、一般的な用途、特に治療用途のための二重特異性および多重特異性生物学的物質のマイクロ流体液滴またはマイクロチャンバーに基づくアッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
二重特異性および多重特異性生物学的物質は、リガンドおよび受容体を含む同一または異なる標的上の少なくとも2つの分子部位で結合することができる単一の生物学的分子である。例として、二価または多価標的戦略のための新規でより重要なアプローチとして、二重特異性抗体(BsAb)、免疫サイトカイン(すなわち、抗体部分とサイトカイン部分との融合)、およびキメラサイトカインが含まれる。一部のBsAbは、疾患治療に有用でありうる。
【0004】
従来、二重特異性または多重特異性生物学的物質は、2つまたはそれ以上の機能的部分(またはサブユニット)の合理的または無作為な対形成または組み立てによる複数工程の方法を用いてスクリーニングすることができ、生物学的物質の各部分は、細胞内またはインビトロで共発現され、組み立てられ、生じた各集合体は、各々が生物学的物質の変異型を示し、標的への結合または機能的活性についてインビトロで試験される。あるいは、各集合体は、細胞表面上に提示され、結合アッセイに供され、そこで陽性結合物質が選択され、クローン化され、さらに機能確認アッセイで発現され、スクリーニングされる。
【0005】
臨床開発の進歩に伴い、機能的に活性な二重特異性抗体、より広範囲の二重特異性および多重特異性生物学的物質の非常に効率的なスクリーニングを可能にする革新的でありながら強力な基盤技術の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【0006】
概要
以下の概要は、例示に過ぎず、決して限定を意図するものではない。すなわち、以下の概要は、本明細書に記載の系、方法、技術、および機器の新規で非自明な実施態様の概念、ハイライト、利点、および長所を紹介するために供される。選択された実施は、以下の詳細な説明で詳細に記載される。よって、以下の概要は、請求する主題の本質的な特徴を特定することを目的とするものでなく、請求する主題の範囲を決定するために用いられることを目的とするものでもない。
【0007】
ある実施態様は、細胞工学および生物学的アッセイと組み合わせたマイクロ流体技術を利用する。いくつかの実施態様によれば、本明細書で供される方法は、従来のアッセイアプローチにおける二重特異性または多重特異性生物学的物質の各部分の偏った選択の問題を回避する。ナノボリュームの液滴またはマイクロチャンバーの使用はまた、大量の試料量を必要とすることなく、候補の大規模なプールから単一細胞レベルで機能的な生物学的物質をより深く効率的にスクリーニングすることを可能にする。
【0008】
いくつかの実施態様において、区画化されたナノボリュームにおける二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするための方法が本明細書で提供される。ある実施態様において、区画化された各ナノボリュームは、少なくとも2つの異なるタイプの細胞を実質的に供するものであって、第1タイプの細胞は、前記生物学的物質のための細胞ごとに単一の変異型を発現するように操作され、第2の細胞は、機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質による誘発によりレポーターシグナルを生成するように選択され、前記第1および第2の細胞のうちの少なくとも1つは、前記生物学的物質の1つまたはそれ以上の異なる細胞表面標的を同時に発現するものである。機能的な生物学的物質の適切な発現、組み立ておよび分泌、ならびに目的とする分子標的とのその相互作用は、ナノボリューム内に陽性レポーターシグナルを生成し、それにより前記生物学的物質を発現する細胞の検出および回収、続いてその後の生物学的物質の各機能的な変異型の遺伝学的同定を可能にする。
【0009】
本明細書に開示されるように、いくつかの実施態様は、機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームでアッセイを実施するための方法に関する。いくつかの実施態様において、前記方法は、複数の少なくとも2つの異なるタイプの細胞を供する工程であって、2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞が、分泌形態で二重特異性または多重特異性生物学的物質について細胞ごとに実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、2つまたはそれ以上の第2タイプの細胞が、第1タイプの細胞によって発現される前記生物学的物質の機能的変異型によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を生成するように選択され、または操作される工程、複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームが、実質的に1つの第1タイプの細胞、および1つまたはそれ以上の第2タイプの細胞で各々供される工程、前記ナノボリュームを一定期間インキュベートして、前記ナノボリューム内での前記生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程、前記ナノボリューム内の分泌された生物学的物質によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程を含む。いくつかの実施態様において、前記方法は、陽性レポーターシグナル分子を用いてナノボリュームから細胞を回収する工程、次いで前記生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施態様において、前記区画化されたナノボリュームは、約0.03nL~約100nLの均一またはほぼ均一なサイズを有するマイクロチャンバーまたは液滴である。いくつかの実施態様において、前記サイズ(例えば、体積)は、約0.1nL~約4nLの範囲である。さらなる実施態様において、前記体積は、記載された数字間(およびそれを含む)のいずれかの体積を含む約0.03~約100nLの範囲であり得る。
【0011】
ある例において、二重特異性または多重特異性生物学的物質は、少なくとも2つの異なる標的結合部分を含む。実施態様に応じて、前記標的結合部分は、IgG重鎖、IgG軽鎖、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、VHH抗体、ナノボディ、非抗体代替足場、細胞表面タンパク質の細胞外フラグメント、ケモカインまたはケモカイン様分子、サイトカインまたはサイトカイン様分子、および前記分子の組み合わせまたは誘導体であり得る。
【0012】
いくつかの実施態様において、前記生物学的物質の標的結合部分は、相互に結合されている。例えば、いくつかの実施態様において、それらは、ヘテロ二量体化ドメイン、ヘテロ三量体化ドメイン、約2~約30個のアミノ酸または約10~約50個のアミノ酸の長さを有するリンカーペプチドからなる群から選択される少なくとも1つの非標的結合部分によって結合されている。多重特異性結合部分が用いられる実施態様において、前記リンカーは、同一タイプ(例えば、ドメインおよび/または長さ)であってもよく、またはタイプおよび/または長さが異なっていてもよい。
【0013】
いくつかの実施態様において、前記二重特異性生物学的物質は、共通のIgG軽鎖と2つの異なるIgG重鎖を含む抗体である。いくつかの実施態様において、前記二重特異性生物学的物質は、共通のIgG重鎖と2つの異なるIgG軽鎖を含む抗体である。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記二重特異性生物学的物質は、2つの異なる部分を含む抗体である。例えば、ある実施態様において、前記部分は、scFv、Fab、VHH、および単一ドメイン抗体から(各々)選択される。いくつかの実施態様において、前記部分は、約2~約30個のアミノ酸のリンカーペプチドを介して単一のキメラポリペプチドとして融合される。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記二重特異性生物学的物質は、サイトカインまたはそのサイトカイン様ポリペプチドに融合されている抗体もしくは抗体誘導体または抗体様分子を含む免疫サイトカインである。
【0016】
いくつかの実施態様において、前記二重特異性生物学的物質は、少なくとも2つの異なるサイトカインまたはそのサイトカイン様ポリペプチドを含むキメラ融合タンパク質である。
【0017】
いくつかの実施態様において、前記第1タイプの細胞は、前記第1タイプの細胞のゲノムに組み込まれている1つまたはそれ以上の異なる発現カセットまたは発現担体で操作される。よって、このような第1タイプの細胞は、組み込まれた発現カセットまたは担体から前記生物学的物質の単一の遺伝子変異型を発現する。
【0018】
いくつかの実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学的物質は、細胞表面標的、または区画化されたナノボリュームで供される細胞の少なくとも1つによって発現される2つまたはそれ以上の異なる細胞表面標的上の2つまたはそれ以上の異なる部位を標的とする。
【0019】
いくつかの実施態様において、前記第2タイプの細胞における陽性レポーターシグナル分子は、蛍光タンパク質、蛍光発生分子、または蛍光分子または複合体である。いくつかの実施態様において、前記第2の細胞における陽性レポーターシグナル分子は、ルシフェラーゼ、発光分子または複合体である。いくつかの実施態様において、前記陽性レポーターシグナル分子は、第2タイプの細胞のゲノムに組み込まれた発現カセット(または複数のカセット)によって遺伝学的にコードされている。
【0020】
いくつかの実施態様において、前記陽性レポーターシグナル分子は、第2タイプの細胞における細胞表面標的の下流のエフェクター分子であって、第1タイプの細胞によって発現される機能的生物学物質による標的結合が、前記エフェクター分子の蓄積を引き起こし、これにより前記第1の細胞によって発現された生物学的物質が第2の細胞における標的との相互作用に成功したことを示す検出可能なシグナルを生成する。
【0021】
いくつかの実施態様において、前記陽性レポーターシグナル分子は、前記生物学的物質の2つの異なる標的と各々結合したFRETドナーおよびアクセプターの適合した対である。
【0022】
いくつかの実施態様において、前記陽性レポーターシグナル分子は、レポーターをコードする配列を、前記生物学的物質を示す配列に結合するリンケージポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、続いてリンケージPCR産物の遺伝子配列決定によって遺伝学的に検出される。
【0023】
いくつかの実施態様において、3つの異なるタイプの細胞が供されるものであって、第1タイプの細胞は、前記生物学的物質の単一の変異型を発現するように操作され、第2タイプの細胞は、レポーター細胞として機能するように選択され、または操作され、ならびに第3タイプの細胞は、標的を発現する細胞として選択される。
【0024】
いくつかの実施態様において、陽性レポーターシグナル分子の活性化を表すデータを収集する工程は、光学的検出デバイスを用いてレポーター由来の光学的シグナルを検出することによるものである。いくつかの実施態様において、陽性レポーターシグナル分子の活性化を表すデータを収集する工程は、一部では、レポーター遺伝子の転写物を表し、別の部分では、前記生物学的物質を表す結合された核酸配列を配列決定することによる。
【0025】
いくつかの実施態様において、少なくとも2つの異なるタイプの細胞は、哺乳動物細胞、または哺乳動物細胞の派生物もしくは操作された形態である。いくつかの実施態様において、少なくとも2つの異なるタイプの細胞には、哺乳動物細胞が含まれ、もう一方は、酵母または真菌細胞である。いくつかの実施態様において、2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞は、二倍体酵母細胞であり、2つまたは以上の第2タイプの細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様において、二倍体酵母細胞は、反対の交配型の2つの一倍体株間の交配に由来するものであって、第1の一倍体株は、前記生物学的物質の少なくとも1つの部分を各々コードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、第2の一倍体株は、前記生物学的物質の残りの部分または複数の部分をコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作されている。
【0026】
ある態様は、機能的な二重特異性または多重特異性生物学物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームでアッセイを実施するための方法であって、複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームは、実質的に単一の二倍体株酵母細胞および少なくとも1つの哺乳動物細胞で各々供され、前記酵母細胞が、分泌型で二重特異性または多重特異性生物学物質の単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、前記哺乳動物細胞が、前記酵母細胞によって発現される前記生物学的物質の機能的な変異型によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択される工程、前記区画化されたナノボリュームを一定期間インキュベートして、前記ナノボリューム内で生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程、前記ナノボリューム内で分泌された機能的な生物学的物質によって引き起こされた陽性レポーターシグナルを表すデータを収集する工程、次いで陽性レポーターシグナルを用いて前記ナノボリュームから細胞を回収する工程を含む方法に関する。いくつかの実施態様において、前記方法は、生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、前記二倍体酵母細胞は、反対の交配型の2つの一倍体株間の交配に由来するものであって、第1の一倍体株は、前記生物学的物質の少なくとも1つの部分を各々コードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、第2の一倍体株は、前記生物学的物質の残りの部分または複数の部分をコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作されている。
【0028】
ある例において、前記区画化されたナノボリュームは、約0.03nL~約100nL、または約0.1nL~約4nLの均一またはほぼ均一なサイズを有するマイクロ流体マイクロチャンバーまたは液滴である。
【0029】
ある例において、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質には、IgG重鎖、IgG軽鎖、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、VHHドメイン抗体、ナノボディ、非抗体代替足場、サイトカインまたはサイトカイン様ポリペプチド、細胞表面タンパク質の細胞外フラグメント、ケモカインまたはケモカイン様分子、および前記分子の組み合わせまたは誘導体からなる群から選択される少なくとも2つの機能的に異なる標的結合部分が含まれる。
【0030】
ある例において、前記生物学的物質の標的結合部分は、ヘテロ二量体化ドメイン、ヘテロ三量体化ドメイン、約2~約30個のアミノ酸または約10~約50個のアミノ酸の長さを有するリンカーペプチド、または前記ドメインとリンカーの組み合わせからなる群から選択される前記生物学的物質の少なくとも1つの非標的結合部分によって結合されている。
【0031】
ある例において、前記二重特異性生物学的物質は、共通のIgG軽鎖と2つの異なるIgG重鎖を含む抗体、または共通のIgG重鎖と2つの異なるIgG軽鎖を含む抗体である。
【0032】
ある例において、前記二重特異性生物学的物質は、抗体または抗体誘導体または抗体様分子、ならびにサイトカインまたはサイトカイン様分子を含む免疫サイトカインである。
【0033】
ある例において、前記二重特異性生物学的物質は、少なくとも2つの異なるサイトカインまたはサイトカイン様分子を含む、単一のキメラ融合タンパク質または複合体である。
【0034】
ある態様は、多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための系に関するものであって、
複数の液滴またはマイクロチャンバーを含むものであって、各液滴またはマイクロチャンバーは、
多重特異性生物学的物質の第1の成分の遺伝子変異型をコードする核酸配列を含み、前記多重特異性生物学的物質の第2の成分の遺伝子変異型をコードする核酸配列を含む第1の細胞;
レポーター分子をコードする核酸配列を含む第2の細胞
を含むものであって、前記第1または第2の細胞は、第1の成分のための第1の標的を含み、前記第2の細胞は、第2の成分のための第2の標的を含み、
前記レポーター分子は、前記第1の成分が前記第1の標的に結合し、前記第2の成分が前記第2の標的に結合すると転写され、前記多重特異性生物学的物質の第1および第2の成分の遺伝子変異型が多重特異性生物学的物質の機能的なものをコードすることを示すものである。
【0035】
ある例において、前記多重特異性生物学的物質には、二重特異性または三重特異性生物学的物質が含まれる。
【0036】
ある例において、前記生物学的物質には、抗体、サイトカイン、または免疫サイトカインが含まれる。
【0037】
ある態様は、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む成分の適切な対形成を直接スクリーニングするための区画化された系に関するものであって、前記系は、複数の液滴またはマイクロチャンバーを含み、各液滴またはマイクロチャンバーは、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1の成分の遺伝子変異型をコードする核酸、および前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの遺伝子変異型をコードする核酸を含む第1の哺乳動物細胞、ならびに第1の標的、第2の標的、およびレポーター分子をコードする核酸を含む第2の哺乳動物細胞を含むものであって、前記レポーター分子は、機能的な二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインによる第1および第2の標的の活性化時に転写され、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1および第2の成分は、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1および第2成分の遺伝子変異型が、機能的変異型であり、一緒に結合して前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインを形成する場合に、機能的であり、前記第1および第2の標的に結合する。
【0038】
ある態様は、多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための方法であって、多重特異性生物学的物質の第1の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第1のDNAライブラリーを供する工程、細胞の遺伝子変異体のライブラリーを含む第2のDNAライブラリーを供する工程、前記多重特異性生物学的物質の第2の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第2のDNAライブラリーを供する工程、前記第1および第2のDNAライブラリーを複数の細胞に導入して、細胞ライブラリーを取得する工程であって、前記細胞ライブラリーの細胞は、前記第1および第2の成分の変異型を発現する工程、前記細胞ライブラリーの細胞を液滴(またはマイクロチャンバー)に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴は、前記細胞ライブラリーの実質的に単一の細胞を各々含む工程、レポーター細胞を前記液滴に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴は、1つまたはそれ以上のレポーター細胞を各々含む工程、前記液滴をインキュベートし、前記レポーター細胞によって生成されるシグナルを検出する工程;次いで、前記検出されたシグナルに基づいて、多重特異性生物学的物質の機能的変異体を含む液滴を同定する工程を含む方法に関する。
【0039】
ある態様は、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む成分の適切な対を直接スクリーニングする方法であって、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第1のDNAライブラリーを供する工程、二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第2の成分の遺伝子変異型のライブラリーを含む第2(またはさらなる)DNAライブラリーを供する工程、前記第1および第2の(および/またはさらなる)DNAライブラリーを複数の細胞に導入して、細胞ライブラリーを取得する工程であって、前記細胞ライブラリーの各細胞は、前記細胞ライブラリーの他の細胞の各々と比較して、実質的に前記第1の成分の異なる変異型および前記第2の成分の異なる変異型を発現する工程、前記細胞ライブラリーの細胞を液滴に導入する工程であって、少なくとも2つの液滴は、前記細胞ライブラリーの実質的に単一の細胞を各々含む工程、複数のレポーター細胞を前記液滴に導入する工程であって、これにより各液滴は、第1の標的、第2の標的、およびレポーター分子をコードする核酸を含むレポーター細胞をさらに含み、前記レポーター分子は、機能的な二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインによる前記第1および第2の標的の活性化におり転写され、それによりレポーターシグナルを生成する工程、前記液滴をインキュベートして、各液滴における二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1および第2の成分の転写および構築を可能にする工程であって、各液滴において、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1および第2成分は、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの第1および第2の成分の遺伝子変異体が、機能的変異体であり、一緒に結合して前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインを形成する場合に、機能的であり、前記第1および第2の標的に結合する工程、次いで前記レポーターシグナルを検出する工程を含む方法に関する。いくつかの実施態様において、前記方法は、検出されたレポーターシグナルに基づいて、前記二重特異性抗体、サイトカインまたは免疫サイトカインの機能的変異型を含む液滴を同定することをさらに含む。
【0040】
ある例において、前記細胞ライブラリーの各細胞は、第1の成分の各変異型、および第2の成分の各変異型を含む。
【0041】
ある例において、前記多重特異性生物学的物質は、二重特異性または三重特異性生物学的物質を含む。
【0042】
ある例において、前記生物学的物質には、抗体、サイトカイン、または免疫サイトカインが含まれる。
【0043】
ある例において、前記多重特異性生物学的物質の機能的変異型を含む液滴を同定する工程は、前記液滴中の細胞の核酸を配列決定することを含む。
【0044】
ある態様は、機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするために区画化されたナノボリュームでアッセイを実施するための方法であって、複数の少なくとも2つの異なるタイプの細胞を供する工程であって、2つまたはそれ以上の第1タイプの細胞が、(1)分泌型の二重特異性または多重特異性生物学的物質のための細胞ごとに実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、(2)前記生物学的物質を対象とした少なくとも1つの標的を発現するように操作され、または選択され、ならびに(3)前記第1タイプの細胞を、前記生物学的物質を対象とした少なくとも別の異なる標的を発現する異なる第2タイプの細胞に結合させる前記生物学的物質の機能的変異型によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を生成するように操作され、または選択されるものである工程、複数の区画化されたナノボリュームを供する工程であって、2つまたはそれ以上のナノボリュームは、実質的に1つの第1タイプの細胞、および1つまたはそれ以上の第2タイプの細胞で各々供される工程、前記ナノボリュームを一定期間インキュベートして、前記ナノボリューム内の前記生物学的物質の発現および分泌を可能にする工程、前記ナノボリューム内の分泌された生物学的物質によって引き起こされる陽性レポーターシグナル分子を表すデータを収集する工程、次いで前記陽性レポーターシグナル分子を用いて前記ナノボリュームから細胞を回収し、前記生物学的物質の各機能的変異型を表す遺伝学的情報を抽出する工程を含む方法に関する。
【0045】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、構成する。図面は、本開示の実施態様を例示し、本明細書とともに、本開示の原理を説明するために供する。図面は、例示された主題の特定の特徴をより示すために、必ずしも縮尺通りではない場合がある。特に明記されていない限り、様々な図面の同様の注釈記号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、2つの標的結合部分および1つの非標的結合部分を有する単一のキメラタンパク質(図1A)、またはそれぞれが標的結合部分および非標的結合部分を有する2つのサブユニット(図1B)を含む二重標的結合二重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図2図2(A)および(B)は、二重標的結合二重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図3図3は、二重標的化二重特異性生物学的物質のための異なるタイプの3つの細胞を用いた区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す概略図である。
図4図4(A)および(B)は、一標的二部位結合二重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す概略図である。
図5図5(A)および(B)は、三重標的結合多重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図6A図6(A)は、3つまたは4つの部分を含む二重標的結合二重特異性生物学的物質のための異なるタイプの3つの細胞を用いた区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図6B図6(B)は、3つまたは4つの部分を含む二重標的結合二重特異性生物学的物質のための異なるタイプの3つの細胞を用いた区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図7図7(A)および(B)は、三重標的多重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す概略図である。
図8図8(A)および(B)は、三重標的多重特異性生物学的物質のための区画化されたナノボリュームに基づくアッセイのある実施態様の一般的な原理および特徴を示す。
図9図9は、機能的な共通の軽鎖二重特異性抗体(BsAb)をスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図10図10は、共通の軽鎖BsAbをスクリーニングするためのマイクロチャンバーに基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図11A図11(A)は、二重特異性scFv融合タンパク質をスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図11B図11(B)は、二重特異性scFv融合タンパク質をスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図12図12は、二重特異性免疫サイトカイン(抗体とサイトカインのキメラ融合タンパク質)をスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図13図13は、液滴中の二重特異性免疫サイトカイン(抗体とサイトカインのキメラ融合)をスクリーニングするための区画化されたアッセイの非限定的な例を示す。
図14図14は、液滴中の三重特異性サイトカイン融合物(3つの異なるサイトカインのキメラタンパク質)をスクリーニングするための区画化されたアッセイの非限定的な例を示す。
図15図15は、細胞表面上の同一のGPCR標的における2つの部位を標的とするアゴニストの共通軽鎖BsAbをスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図16図16は、細胞表面上の同一のイオンチャネル標的における2つの部位を標的とするアゴニストの共通軽鎖BsAbをスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図17A図17(A)は、FRETに基づくレポーターを介して2つの異なる細胞表面標的について共通軽鎖BsAbをスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図17B図17(B)は、FRETに基づくレポーターを介して2つの異なる細胞表面標的について共通軽鎖BsAbをスクリーニングするための液滴に基づくアッセイの非限定的な例を示す。
図18図18は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に基づいて、癌細胞2つの分子標的を標的とする共通軽鎖BsAbをスクリーニングするための3つの異なるタイプの細胞を用いた液滴アッセイの例を示す。
図19図19(A)は、標的細胞(第1の細胞)およびT細胞(第2の細胞)に対するBiTE(抗CD3×CD19 BiTE)の作用機序を示す液滴アッセイの一例;(B)細胞画像;(C)レポーターGFP強度(±Raji細胞)を示す。
図20図20は、区画化されたナノボリュームにおいて機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質のためのアッセイを実施するための非限定的なワークフローおよびプロセスを示す図である。
図21図21は、区画化されたナノボリュームにおいて機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質のためのアッセイを実施するためのワークフローおよびプロセスの非限定的な例を示す図である。
図22図22は、生物学的物質の単一の変異型を発現する酵母細胞を用いることに関する、区画化されたナノボリュームにおける機能的な二重特異性または多重特異性生物学的物質をスクリーニングするためのアッセイを実施するためのワークフローの非限定的な例を示す図である。
図23図23は、NANOPENS(登録商標)マイクロチャンバーを含む半密閉型マイクロチャンバーデバイス(例えば、Berkeley Lights Inc.のOptoSelect(登録商標)デバイス)を示す。
図24図24は、薄膜またはプラスチック層で囲まれた半密閉型マイクロチャンバーデバイス(例えば、SingleCellTechnologiesのマイクロ流体デバイス(米国))を示す。
図25図25は、サブユニットをコードするための別の設計を示す。生物学的物質をコードする全の成分(サブユニット)はは、細胞2に導入される。
図26図26は、3Dプリンタを用いて生分解性軟固体ポリマー材料で印刷される別のマイクロチャンバー型デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
請求された主題の詳細な実施態様は、本明細書に開示される。しかしながら、開示された実施態様は、様々な形態で具体化されうる請求された主題の単なる例示であることが理解されるべきである。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の例示的な実施態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろこれらの例示的な実施態様は、本開示の記載が詳細で完全であり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるために提供される。以下の記載において、周知の特徴および技術の詳細は、示される実施態様を不必要に不明瞭とすることを避けるために省略されうる。
【0048】
概要
本明細書に記載の系および方法のある実施態様は、マイクロ流体デバイスにおける複数の区画化されたナノボリュームにおける複数の二重特異性または多重特異性生物学的物質の操作されたライブラリーからの機能的単一変異型の直接かつ迅速なスクリーニングのための一般的なアッセイ原理、スキーム、構成成分、および方法を含む、区画化されたナノボリュームにおける生物学的アッセイに関する。本明細書で用いられるように、ナノボリュームは、約0.03nLから約100nL(ナノリットルとしても公知)の範囲の均一またはほぼ均一な体積を有するナノリットルおよびサブナノリットルのマイクロ流体の液滴またはマイクロチャンバーを意味するものとする。いくつかの実施態様において、前記ボリュームは、約0.05から約10nLの範囲である。ある例において、前記ナノボリュームは、約0.1nL、0.2nL、0.3nL、0.4nL、0.5nL、0.6nL、0.7nL、0.8nL、0.9nL、1nL、2nL、3nL、4nL、5nL、6nL、7nL、8nL、9nL、10nL、11nL、12nL、13nL、14nL、15nL、16nL、17nL、18nL、19nL、20nL、21nL、22nL、23nL、24nL、25nL、26nL、27nL、28nL、29nL、30nL、31nL、32nL、33nL、34nL、35nL、36nL、37nL、38nL、39nL、40nL、41nL、42nL、43nL、44nL、45nL、46nL、47nL、48nL、49nL、50nL、51nL、52nL、53nL、54nL、55nL、56nL、57nL、58nL、59nL、60nL、61nL、62nL、63nL、64nL、65nL、66nL、67nL、68nL、69nL、70nL、71nL、72nL、73nL、74nL、75nL、76nL、77nL、78nL、79nL、80nL、81nL、82nL、83nL、84nL、85nL、86nL、87nL、88nL、89nL、90nL、91nL、92nL、93nL、94nL、95nL、96nL、97nL、98nL、99nL、または100nLである。ある実施態様において、前記ボリュームは、約0.1nLから約4nL、約0.1nLから約1nL、または約5nLから約10nLの範囲である。
【0049】
ある実施態様において、区画化されたナノボリュームには、液滴が含まれる。他の実施態様において、区画化されたナノボリュームは、密閉型または半密閉型のデバイス内に含有される。
【0050】
本明細書で用いられるように、液滴は、その一般的な意味が与えられ、油中水型エマルジョン、例えば、非混和性の油相に囲まれた水性液体をカプセル化する一定の体積の各水性微小区画を意味するものとする。本明細書で用いられるように、マイクロチャンバーは、その一般的な意味が与えられ、一般に、単相水性液体を収容するために用いられる一定の体積のマイクロ流体チャンバーまたはマイクロポアを意味するものとする。当業者によって理解されるように、マイクロチャンバーは、立方体、直方体、円柱、台形、球、および楕円体からなる群から選択される1つまたはそれ以上の多面体を表す形状、特徴、または形状を有しうる。
【0051】
本明細書で用いられるように、二重特異性生物学的物質は、その一般的な意味が与えられ、タンパク質もしくはこれらのタンパク質フラグメント、ペプチド、糖、または核酸、あるいはこれらの物質の複数の組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの標的結合部分を含む一体の単一分子または複合体を意味するものとし、前記生物学的物質は、同一の標的分子または2つの別個の標的分子上の2つの分子部位に結合するものとされる。
【0052】
本明細書で用いられるように、多重特異性生物学的物質は、その一般的な意味が与えられ、タンパク質もしくはこれらのタンパク質フラグメント、ペプチド、糖、または核酸、あるいはこれらの物質の複数の組み合わせからなる群から選択される少なくとも3つの標的結合部分を含む一体の単一分子または複合体を意味するものとし、前記生物学的物質は、同一の標的分子または2つもしくは3つの別個の標的分子上の3つまたはそれ以上の分子部位に結合するものとされる。
【0053】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学的物質に含まれる好ましい標的結合部分は、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、またはこれらの物質の組み合わせである。ある実施態様において、より好ましい標的結合部分は、(1)抗体および抗体様分子、ならびにこれらの前記分子のさらなる誘導体または操作された形態、(2)サイトカイン、成長因子、ケモカイン、細胞膜の細胞外ドメインまたは受容体などの表面タンパク質を含む、サイトカインまたはサイトカイン様分子、ならびにこれらの前記分子のさらなる誘導体または操作された形態、(3)非抗体代替足場、(4)抗体-サイトカイン融合物または免疫サイトカインで例示される上記(1)、(2)および(3)の組み合わせまたは一対、ならびにそれらの誘導体および改変体の様々な形態である。
【0054】
1の態様において、抗体誘導体を表す部分は、scFv(すなわち、単鎖フラグメント可変領域)、Fab、Fab’、F(ab’)、単一ドメイン抗体、CrossMab、VHHドメイン抗体、ナノボディ、IgG重鎖、IgG軽鎖、およびこれらの抗体誘導体分子の操作された形態または組み合わせからなる群から選択できることが当業者に理解される。ある実施態様において、好ましい抗体誘導体は、一本鎖(IgG重鎖または軽鎖)、scFv、Fab、CrosMab、VHHドメイン抗体、およびナノボディである。別の態様において、非抗体代替足場は、アフィボディ、アフィリン、アルファボディ、ノッティン、DARPin、アンチカリン、クニッツドメインペプチド、FN3足場、フィノマー(Fynomer)、Cys-knots、モノボディ(Monobody)、アフィマー(Affimer)、およびレクチンドメインからなる群から選択することができる。
【0055】
当業者によって理解されるように、サイトカインまたはサイトカイン様分子を表す部分は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、細胞膜タンパク質の細胞外ドメイン、およびこれらの前記サイトカインまたはサイトカイン様分子の誘導体または操作された形態から選択することができ、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-2様、CD132、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10様、LIF、OSM、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-25、IL-27、IL35、IL-38、G-CSF、GM-CSF、IFNβ、IFNγ、TGFβ、TNFα、TNFβ、TNFスーパーファミリーメンバー、CD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL、APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、TRANCE、M-CSF、SCF、MSP、EPO、TPO、Flt-3L、およびTGFβ受容体およびIL-15受容体の細胞外ドメインなどのサイトカイン受容体の細胞外ドメインからなる記載で表される。
【0056】
ある実施態様において、標的結合部分に加え、非標的結合部分は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の不可欠な部分として含まれることが当業者によって理解される。ある実施態様において、非標的結合部分は、2つまたはそれ以上の標的結合部分を一緒に物理的に結合させて、生物学的物質の単一のキメラポリペプチドまたはサブユニットを形成させる。ある実施態様において、非標的結合部分は、生物学的物質に好ましい薬学的または薬理学的な性質を供するために付与する「付加物」または化学的修飾である。非標的結合部分の組成、長さ、硬化度、配向、および形態は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の適切な構築および機能的活性のために重要である場合が多い。
【0057】
ある実施態様において、非標的結合部分は、単一のキメラポリペプチドにおいて2つの標的結合部分を共有結合するペプチドリンカーである。いくつかの実施態様において、ペプチドリンカーは、(1)約1~約49個のアミノ酸の長さ、好ましくは、2~30個のアミノ酸の長さの可動性リンカー(fliexible linker)であって、G/Sリッチリンカー、例えば、(G)、(SG)、(GS)、(GSG)、(GGS)、(GGGS)、(GGSG)、(GGGGS)、(GGSGG)、(GKPGS)、(GKPGGS)、(GKPGGGS)(式中、nは、1~9の整数である)によって表されるリンカー、(2)約1~約49個のアミノ酸の長さ、好ましくは約2~30個のアミノ酸の長さを有する堅固なリンカー(式中、nは、1~8の整数である)であって、A(EAAAK)AおよびT(AT)AAAなどのE/A/Pリッチリンカーによって表されるリンカー、(3)天然タンパク質に由来するペプチドリンカーであって、FNRGECおよびEPSGP(IgG上部ヒンジ領域に由来)、LGGCおよびVEPKEC(IgGのカッパ軽鎖のC末端に由来)、およびPSGQAGAAASESLFVSNHAY(ヒト筋肉アルドラーゼに由来)によって表されるリンカー、(4)AKTTPKLEEGEFSEAR、AKTTPKLEEGEFSEARV、AKTTPKLGG、SAKTTPKLGG、AKTTPKLEEGEFSEARV、SAKTTP、SAKTTPKLGG、RADAAP、RADAAPTVS、RADAAAAGGPGS、RADAAAA(GGGGS)1-3、SAKTTPKLEEGEFSEARV、ADAAP、ADAAPTVSIFPP、TVAAP、TVAAPSVFIFPP、QPKAAP、QPKAAPSVTLFPP、AKTTPP、AKTTPPSVTPLAP、AKTTAP、AKTTAPSVYPLAP、GPAKELTPLKEAKVS、ASTKGP、ASTKGPSVFPLAP、GENKVEYAPALMALS、GHEAAAVMQVQYPAS、およびVEGGSGGSGGSGGSGGVDで表されるペプチド配列、(4)様々な組成または生物物理学的特性を有する前記(1)、(2)、(3)、および(4)ペプチドリンカー間の組み合わせである。ある実施態様において、非標的結合部分は、単一のキメラ融合タンパク質において2つの標的結合部分を共有結合する化学リンカーである。例示的な化学リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸コグリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)である。ある実施態様において、好ましい非標的結合部分は、約2~30個のアミノ酸の長さを有するペプチドである。
【0058】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学物質に含まれる非標的結合部分は、IgGのFcまたはFc由来ドメインおよびドックアンドロック(DNL)ドメインによって表されるヘテロ二量体化または多量体化ドメイン(例えば、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)およびAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)に由来するロイシンジッパー)である。ある実施態様において、好ましいヘテロ二量体化ドメインは、いわゆる「ノブ・イン・ホール」、「静電ステアリング」、「Dock&Block(登録商標)」または「XmAb(登録商標)によって表される生物物理学的特徴を有するように変異されたFcによって表される、二重特異性または多重特異性生物学的物質の安定性を改善するように操作されたFcまたはFcドメインの誘導体であって、これらはホモ二量体化よりもヘテロ二量体化が好ましい。
【0059】
二重特異性または多重特異性生物学的物質の標的結合部分または非標的結合部分に対するさらなる修飾が好ましい医薬的および薬理学的特性を達成することができることが当業者に理解される。1の実施態様において、アルブミンまたは生体適合性ポリマー分子(例えば、PEG(ポリエチレングリコール))は、生物学的物質の血清半減期を延長するために(すなわち、より良好な薬物動態プロファイル)、二重特異性生物学的物質に含めることができる。さらなる実施態様において、毒性分子(例えば、ドキソルビシンまたは他の治療薬)は、その標的殺傷活性を改善するために(例えば、より良好な効力)、二重特異性抗体に連結されうる。さらなる実施態様において、点変異(Fcの特定の残基におけるグリコシル化に影響を与える変異を含む)は、IgGのFc領域に導入することができ、前記変異は、主にFcγR-III受容体を介してNK(ナチュラルキラー)またはNK様細胞により介在される二重特異性抗体のADCC活性の低下または増強に関連して、FcとFcγR受容体との結合を減少し、消失し、または高めることができる。さらなる例において、IL-2は、3つの異なるIL-2受容体サブユニット(CD25、CD122、およびCD132)に同時に結合することが公知のサイトカインであり、特定のアミノ酸残基において変異を入れ、またはペグ化して、自己免疫関連の治療用途のためにCD25に対して、あるいは癌適応のためにその低親和性標的CD122に対して改善された特異性を有する多重特異性生物学的物質を得ることができる。
【0060】
二重特異性または多重特異性生物学的物質に含まれる2つまたはそれ以上の部分は、単一の標的分子、あるいは2つまたはそれ以上の同一または異なる標的分子上の異なる分子部位を標的とすることができる。複合的な生物学的物質において2つまたはそれ以上の機能的に異なる部分を一緒に組み合わせることにより、二重または多重標的化が達成されて、治療用途に好ましい(例えば、相乗的)標的特異性、有効性、またはその両方を可能にしうる。例えば、二重特異性抗体を示す生物学的物質は、同一の標的分子における2つの異なる分子部位または細胞における2つの異なる分子部位に結合することが意図される、抗体および抗体様分子の記載から選択される2つの異なる標的結合部分を組み込むことによって構築されてもよい。同様に、三重特異性(別名「三重特異性」)抗体は、単一の細胞または異なる細胞における同一または異なる標的分子上の3個の異なる分子部位を標的とすることが意図される、抗体および抗体様分子の記載から選択される3つの異なる標的結合部分を組み込むことによって構築されてもよい。利用可能な多様な形態の抗体および抗体様分子を組み合わせ、または対にすることにより、100個を超える異なるBsAbまたは多重特異性抗体を構築することができることが理解される。例えば、カツマキソマブは、CD3(T細胞標的)およびEpCAM(癌細胞標的)の両方を標的とする、悪性腹水の治療に承認された最初の二重特異性生物学的薬剤であり、エミシズマブは、因子IXaおよびXを標的とする二重特異性IgG4様抗体であり、因子VIII阻害剤を用いる血友病A患者の出血エピソードの日常的な予防に承認され、ブリナツモマブは、CD3およびCD19を標的とし、特定の形態の白血病の治療に承認された。臨床開発における代表的な二重特異性生物学的物質は、CD3T細胞とCD20癌細胞に関与するCD3xCD20二重標的化BsAb;CD3T細胞とBCMA癌細胞に関与するCD3xBCMA二重標的化BsAb;癌細胞におけるHER2分子の2つの分子部位に関与するHER2xHER2二重標的化BsAb;腫瘍細胞におけるPD-L1および腫瘍微小環境におけるTGFβを標的とするPD-L1xTGFβ二重標的化免疫サイトカイン;IL-2およびp53特異的単一分子TCR(T細胞受容体)を含むIL-2Rxp53二重標的化生物学的物質である。
【0061】
生物学的物質の部分の2つまたはそれ以上の同一またはほぼ同一のコピーは、単一の生物学的物質の分子に含ませることができることが当業者に理解される。ある実施態様において、多くのコピー数は、前記生物学的物質の標的結合価または結合力を高め、治療用途に有利でありうる。
【0062】
いくつかの実施態様によれば、遺伝物質をコードする二重特異性または多重特異性生物学的物質のライブラリーは、それぞれが生物学的物質の単一の遺伝子変異型、まとめると多様な変異型プールをコードしており、標的結合および非標的結合部分(例えば、抗原未処理および免疫化された動物、ならびにヒト対象に由来するリード抗体候補に由来するドメイン)のプールを遺伝学的に組み合わせ、または対にすることにより操作することができる。前記遺伝学的ライブラリーは、既存の生物発現DNAを種テンプレート(seed template)として用いて、直接DNA合成、エラープローンPCRまたは簡潔ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、遺伝子編集によって、あるいはDNAシャッフリングおよびギブソンアセンブリなどの組換え方法によって作成し、さらに多様化させることもできる。例えば、二重特異性抗体の場合、このような種テンプレートは、当業者による主要な抗体の一般的なスクリーニング方法に由来していてもよい。
【0063】
ある実施態様において、選択した細胞タイプは、二重特異性または多重特異性生物学的物質の多様なライブラリーを発現するように操作することができ、各細胞はそれぞれ、前記生物学的物質の単一の変異型を発現し、集合的に、これらの細胞は、生物学的物質を発現する細胞ライブラリーを構成する。当業者は、前記生物学的物質の遺伝学的ライブラリーを、選択した細胞タイプへのレトロウイルスまたはレンチウイルスによる遺伝学的組み込みにより、単一変異型を発現する細胞ライブラリーを作成しうることが理解される。ある実施態様において、単一変異型の細胞ゲノムへの組み込みを確実なものとするために、低い感染効率(MOI)のウイルスが用いられ、例えば、細胞感染について低いウイルス対細胞比(例えば、1または0.5以下のMOI)が用いられる。レトロウイルスまたはレンチウイルスを用いた方法では、通常、非常に効率的なゲノム組込み(最大95%の効率)を実現することができる。ある実施態様において、CRISPRまたは組換え酵素(例えば、インテグラーゼまたはトランスポゾン)に基づく遺伝子工学的アプローチ、または一時的トランスフェクションおよび選別は、生物学的物質を発現するDNA物質の単回挿入を行うために利用することができる。ある実施態様において、CRISPRまたは組換え酵素に基づく方法を用いて、特にCHO293およびHeLa細胞などのトランスフェクション適合性細胞について適度に高い効率のゲノム組込み(最大約30%の効率)を達成することができる。本明細書で用いられるように、用語「単一変異型」、「単一変異型」および「単一遺伝子変異型」は、交換可能に使用することができ、一般に、所定の単一細胞内の同一の変異型を示す単一の遺伝暗号配列または2コピーまたはそれ以上の同一の遺伝暗号配列を意味する。
【0064】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学的物質の全ての必要な部分は、単一の遺伝子発現カセットによってコードされる単一の人工融合タンパク質に組み込まれる。そのため、生物学的物質を発現する細胞を作成するためには、単一のゲノム組込み事象が適切である。ある実施態様において、生物学的物質の部分は、2つまたはそれ以上の異なる発現カセットに分散される。前記発現カセットは、単一の発現担体としてさらに構築され、その後に選択された細胞タイプの単一のゲノム遺伝子座に組み込むことができる。ある実施態様において、前記カセットは、2回またはそれ以上の組換え事象により2つまたはそれ以上の異なるゲノム遺伝子座にそれぞれ挿入させることができる。ある実施態様において、前記カセットは、図1および2に示されるように、2つ以下の異なるゲノム遺伝子座に挿入されなければならない。
【0065】
本明細書で用いられるように、用語「ゲノム組込み」は、ゲノム挿入または組換えと交換可能に使用される。本明細書で用いられるように、用語「遺伝子発現カセット」は、その一般的な意味が与えられ、一般に、遺伝子プロモーター、遺伝子コードオープンリーディングフレーム、終止コドン、およびポリアデニル化シグナル配列を含み、適宜、1つまたはそれ以上の調節DNA配列を含んでいてもよいDNA構築物を意味する。任意選択的に、単一の発現カセットの形式において、それぞれが少なくとも1つの生物学的物質の部分をコードする2つまたはそれ以上のオープンリーディングフレームは、単一の遺伝子プロモーターの制御下にあってもIRES(内部リボソーム侵入部位)または自己切断配列(例えば、P2A、F2A、E2AおよびT2Aペプチド)を介して連結させることができる。本明細書で用いられるように、用語「発現担体」は、一般に、2つまたはそれ以上の発現カセットを含むDNA構築物(生物学的物質の部分および任意選択的に選択マーカーをコードするものを含む)を意味する。
【0066】
生物学的物質を発現する細胞ライブラリーは、選択マーカーを用いることによって豊富にされてもよく、その陰性集団(生物学的物質を発現する遺伝物質が組み込まれていない集団)は最小にされるか、または除去される。
【0067】
生物学的物質を発現させるために選択された細胞タイプは、一般に、ヒト細胞、動物細胞、融合されたハイブリッド細胞、ハイブリドーマ細胞、真菌細胞、酵母細胞、操作された真核細胞、ウイルス感染細胞、トランスフェクトされた細胞、昆虫細胞、または薬物処理された細胞でありうることが理解される。ある実施態様において、酵母発現系は、ヘテロ二量体化または三量体化を介して連結されている少なくとも2つのポリペプチドサブユニットを有する生物学的物質の大きなライブラリー(最大10個のクローン多様性を有する)を作成するために用いられる。例えば、一方で、交配型aを有する一倍体酵母株の第1のライブラリーは、それぞれが1つのサブユニットを表す複数の遺伝子変異型を形質転換することによって作成され、交配型αを有する一倍体酵母株の第2のライブラリーは、それぞれが残りのサブユニットを表す複数の遺伝子変異型を形質転換することによって作成される。反対の交配型を有する前記2つの酵母ライブラリーを交配することにより、コンビナトリアル二倍体酵母ライブラリーが作成されてもよく、各二倍体酵母細胞は、前記生物学的物質の実質的に単一の変異型を発現する。
【0068】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学的物質に含まれる少なくとも1つの部分は、例えば、そのN末端において、分泌シグナルで供される。本明細書で用いられるように、分泌シグナルは、リーダー配列、リーダーペプチド、シグナルペプチド、またはシグナル配列を交換可能に意味し、各生物学的物質の部分または全体として適切に組み立てられた生物学的物質の細胞外への分泌を指示するために用いられる。ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学物質に含まれる少なくとも1つの部分は、エクソンスキッピングまたは読み飛ばし(leaky)終止コドン機構により除去可能な膜アンカードメインで供され、膜アンカードメインの条件付き除去時に、所定の細胞内の生物学的物質の一部が細胞表面膜に結合され、一方で別の部分が細胞外空間に分泌される。
【0069】
ある実施態様において、1つまたはそれ以上のレポーター細胞は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の特定の単一変異型を発現し、および分泌する第1タイプの細胞と共に区画化されたアッセイで供される。前記レポーター細胞は、前記生物学的物質のための少なくとも1つの目的とする標的分子の適切な量を、安定して発現するその固有の能力に基づいて一部選択されるか、または安定して発現するように遺伝学的に操作される。ある実施態様において、前記第1の細胞はまた、異なる標的分子を発現し、合わせて、前記第1および第2の細胞は、例えば、図1から8に示されるように、前記生物学的物質の目的とする全ての標的分子を発現する。ある実施態様において、レポーター細胞は、ヒト細胞、動物細胞、融合されたハイブリッド細胞、ウイルス感染細胞、トランスフェクトされた細胞、薬物処理された細胞、昆虫細胞、酵母細胞、またはこれらの前記細胞の派生物もしくは操作された形態であるものとする。
【0070】
ある実施態様において、図25で例示されるように、レポーター細胞は、1細胞あたり単一の二重特異性または多重特異性生物学的物質の変異型の全ての部分で操作されるように選択され、一方で前記生物学的物質の全ての目的とする標的または少なくとも目的とする1つの標的が第2タイプの細胞で発現される。
【0071】
ある実施態様において、第2タイプの少なくとも1つの細胞(例えば、レポーター細胞)は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の特定の単一変異型を発現し、および分泌する第1の細胞と共にアッセイにおいて供される。前記レポーター細胞は、前記生物学的物質のための少なくとも1つの目的とする標的分子の適切な量を、安定して発現するその固有の能力に基づいて一部選択されるか、または安定して発現するように遺伝学的に操作される。ある実施態様において、前記第1の細胞はまた、異なる標的分子を発現し、合わせて、前記第1および第2の細胞は、例えば、図1から8に示されるように、前記生物学的物質の目的とする全ての標的分子を発現する。ある実施態様において、レポーター細胞は、ヒト細胞、動物細胞、融合されたハイブリッド細胞、ウイルス感染細胞、トランスフェクトされた細胞、薬物処理された細胞、昆虫細胞、酵母細胞、またはこれらの前記細胞の派生物もしくは操作された細胞であるものとする。
【0072】
ある実施態様において、3つの異なるタイプの細胞が区画化されたアッセイで供され、第1の細胞は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の単一の変異型を発現するように操作され、第2タイプの1つまたはそれ以上の細胞は、レポーター細胞として選択され、または供するように操作され、および第3タイプの1つまたはそれ以上の細胞は、前記生物学的物質の少なくとも1つの異なるタイプの目的とする標的を発現する標的発現細胞として選択され、または操作される。例えば、NK(またはNK様)細胞は、標的を発現する癌細胞および共通する軽鎖BsAbを発現する細胞と共に液滴に含まれて、前記癌細胞に対して分泌されたBsAbのNK依存性ADCC活性(抗体依存性細胞傷害性)が示されうる。
【0073】
ある実施態様において、レポーター細胞は、適切に組み立てられた機能的な生物学的物質による特異的結合および機能的調節によりレポーターシグナルを生成するその能力に基づいて選択されるか、または遺伝学的に操作される。本明細書で用いられるように、機能的調節は、一般に、目的とする標的分子の中和、遮断、活性化、クラスター化、エンドサイトーシスまたは分解を意味し、程度は低いが、機能的調節は、前記レポーター細胞の獲得された新しい生物学的機能、またはプログラムされた死を意味する場合がある。本明細書で用いられるように、レポーターシグナルは、一般に、細胞内、細胞表面、または細胞外の分子またはシグナルを意味し、その存在量は、前記生物学的物質の直接的または間接的な調節に従い、その強度または存在は、確立された選択する方法およびツールを用いて検出される。
【0074】
ある実施態様において、前記レポーターシグナルは、遺伝学的に駆動されるレポーター遺伝子に由来し、前記レポーター遺伝子の転写活性化は、生物学的物質による標的の機能的調節に応答する応答エレメントを有するプロモーターによって制御される。ある実施態様において、前記レポーターシグナルは、その存在量が、前記生物学的物質による転写後または翻訳レベルで調節される細胞因子である。ある実施態様において、前記レポーターシグナルは、cAMP、cGMP、およびカルシウムなどの小分子であって、その存在量は、前記生物学的物質の機能的活性に従う。
【0075】
ある実施態様において、レポーター遺伝子は、転写により駆動され、光学的に検出される蛍光タンパク質をコードするものであって、前記レポーター遺伝子は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的活性に応答する応答エレメントを有するプロモーターの制御下にある。例としての蛍光タンパク質は、青色蛍光タンパク質、例えば、BFPおよびmTagBFPなど、シアン蛍光タンパク質、例えば、ECFPおよびTagCFPなど、緑色蛍光タンパク質、例えば、EGFPおよびZsGreenなど、黄色蛍光タンパク質、例えば、EYFPおよびZsYellow1など、赤色蛍光タンパク質、例えば、mRFPおよびmCherryなど、遠赤色蛍光タンパク質、例えば、E2-クリムゾンなど、蛍光タンパク質の誘導体または操作された形態、ならびにおよび機能的な生物学的物質によって誘導される酵素による切断時に成熟蛍光ポリペプチドを生成しうる切断可能な蛍光発生キメラタンパク質である。前記蛍光および蛍光発生タンパク質のコード配列は、当業者に公にアクセス可能であるか、または様々な商業的供給源から入手可能であることが理解される。
【0076】
ある実施態様において、レポーター遺伝子は、供される適切な蛍光発生基質の触媒作用により蛍光シグナルを生成しうる蛍光発生タンパク質をコードするものであって、前記レポーター遺伝子は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的活性に応答する応答エレメントを有するプロモーターの制御下にある。例としての蛍光発生タンパク質は、β-ガラクトシダーゼ、ホスファターゼ、ペプチダーゼ、またはプロテアーゼの特定の形態である。β-ガラクトシダーゼの例としての蛍光発生基質は、フルオレセインジガラクトシド、レゾルフィンガラクトシド、およびジメチルアクリジノン(DDAO)ガラクトシドである。ホスファターゼの例としての蛍光発生基質は、フルオレセインジホスフェート、DDAOホスフェート、およびメチルウンベリフェリルホスフェート(MUP)である。ペプチダーゼまたはプロテアーゼの例としての蛍光発生基質は、7-アミノクマリン骨格に基づく化学物質、例えば、7-アミノ-4-メチルクマリンなど、およびローダミン-110骨格に基づく化学物質、例えば、ビス-(CBZ-Arg)-R110などである。前記蛍光発生タンパク質および関連する蛍光発生基質のコード配列は、当業者に容易にアクセス可能であるか、または様々な商業的製造業者から広く入手可能であるか、または当業者によって化学実験室で作製されうることが理解される。
【0077】
ある実施態様において、レポーター遺伝子は、発光タンパク質をコードするものであって、前記遺伝子は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的活性に応答する応答エレメントを有するプロモーターの制御下にある。例としての発光タンパク質は、Firefly(登録商標)ルシフェラーゼ、Renilla(登録商標)ルシフェラーゼ、NanoBiT(登録商標)ルシフェラーゼ、およびルシフェラーゼの誘導体または操作された形態である。
【0078】
ある実施態様において、レポーター遺伝子は、発光タンパク質をコードするものであって、前記遺伝子は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的活性に応答する応答エレメントを有するプロモーターの制御下にある。例としての発光タンパク質は、対応する発光基質がプロルシフェリンであるシトクロムP450またはN-アセチルトランスフェラーゼ-2(NAT2)の特定のアイソフォームである。
【0079】
ある実施態様において、レポーターシグナルは、細胞代謝産物、またはカルシウム、亜鉛、およびマグネシウムなどのイオンのための蛍光センサー色素であって、前記細胞代謝産物のレベルまたは細胞内の前記イオンの流動は、イオンチャネルなどの目的とする細胞表面標的に対する二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的活性による調節の対象となる。ある実施態様において、例としてのイオンは、カルシウムであって、イオンチャネル標的を介したカルシウム流動は、蛍光センサー色素、例えば、Fura-2 AM、Fura Red AM、Fluo-4 Dert、およびIndol-1 AMなどを用いて光学的に検出することができる。
【0080】
ある実施態様において、レポーターシグナルは、エフェクターまたはメッセンジャー分子、例えば、cAMPおよびcGMPなどのための蛍光センサー色素であって、前記エフェクター分子の細胞レベルは、非常に魅力的な治療標的の一クラスであるGタンパク質共役受容体(GPCR)の機能的な状態に応答する。
【0081】
ある実施態様において、レポーターシグナルは、フォスター共鳴エネルギー移動(FRET)またはAlfalLISA(登録商標)に基づく発光シグナル増幅を可能にするドナーとアクセプターの適合した対に由来するものであって、前記ドナーは、第1の標的と結合し、前記アクセプターは、第2の標的と結合する。ある実施態様において、区画化されたナノボリュームで発現され、および分泌される機能的な二重特異性生物学的物質が、前記第1および第2の標的に同時に結合し、その結果、前記2つの標的が所望の短い距離内(すなわち、FRETペアのフォスター半径内)にある場合、FRETは励起時に生じうる。前記FRETは、機能的な二重特異性生物学的物質の存在を示す発光シグナルとして光学的に検出されうる。
【0082】
当業者は、ウイルス組込み、CRISPRによる組換え、ランディングパッドによる部位特異的組換え、およびランダム組込みを含む様々な方法により、標的応答性プロモーターおよびレポーターコード遺伝子を含むレポーター発現カセットを容易に調製できることが理解される。
【0083】
ある実施態様において、レポーターは、二重特異性または多重特異性生物学的物質の目的とした標的分子の生物学的調節経路の下流に位置するエフェクター遺伝子である。前記生物学的物質によるこのようなレポーターの活性化は、一般に、例えば、リンケージPCRにより遺伝学的に検出することができるものであって、共通のオリゴDNAプライマーは、少なくとも2つの遺伝子領域:(a)二重特異性または多重特異性生物学的物質の一部または全体を示す遺伝子配列、および(b)適切に組み立てられた機能的な生物学的物質の機能的活性に応答するエフェクター遺伝子を示す遺伝子配列からPCRをプライミングするために供される。例としてのエフェクター遺伝子は、エフェクターサイトカイン、例えば、IL-2、IL-6、IL-10、TNFα、IFNγなど、およびエフェクター酵素、例えば、パーフォリンおよびグランザイムなどをコードするものであって、前記エフェクターの上流調節は、一方のアームでT細胞受容体を標的とし、もう一方のアームで腫瘍抗原を標的とする機能的な二重特異性抗体によって誘導することができる。
【0084】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性生物学的物質の各部分からのランダムで多様な組み合わせまたは対を含むように設計された遺伝子ライブラリー内において、組み合わせまたは対の多くは、適切な機能的活性を有する生物学的物質を効率的に生じない。ある実施態様において、生物学的物質の変異型のごく一部のみ(0.3%以下)が適切に組み立てられ、機能的活性を示すことは当技術分野で十分に理解されている。従来、これらの稀な機能的クローンのアッセイは、マイクロタイターウェルプレート形式に基づく複数回のスクリーニングに大きく依存しており、長期にわたり極めて非効率で費用がかかることが多い。あるいは、細胞表面上に二重特異性または多重特異性生物学的物質の各変異型を表示し、続いてフローサイトメトリーによるスクリーニングと機能確認を複数回行うことを選択することもできる。このような代替案であっても、機能的活性ではなく結合因子をスクリーニングするために同様に非効率的である。本明細書で用いられるように、クローンは、変異型として交換可能に用いることができる。そのため、単一の変異型は、単一のクローンを意味する。
【0085】
ある実施態様において、複数の区画化されたナノボリューム、特にマイクロチャンバーおよび油中水型液滴は、超ハイスループット法において二重特異性または多重特異性生物学的物質の操作されたライブラリーから機能的な単一の変異型を直接かつ迅速にスクリーニングするための生物学的アッセイのマイクロリアクター系として用いられる。ある実施態様では、区画化されたナノボリュームのスループットは、約10,000から約800,000,000、約40,000から約1000,000,000、または約100,000から約20,000,000である。
【0086】
ある実施態様において、区画化されたナノボリュームは、二重特異性または多重特異性生物学物質の各々全ての必要な部分の単一の変異型を発現するように操作されている第1の細胞、および前記第1の細胞から発現され、分泌される機能的な生物学的物質を示すレポーターシグナルを生成するレポーター細胞として機能する少なくとも第2の細胞を含む。
【0087】
ある実施態様には、マイクロ流体の使用が含まれる。1の態様において、マイクロ流体は、不均一な試料の大量のプールを多くの隔離された少量の区画に分割することにより、有効な分析物濃度を迅速に増加させ、同時に同一の大量の試料に存在する無関係な種からの阻害を減少させる。別の態様において、これは、区画化の能力、流体操作の柔軟性、および単一細胞レベルでの超ハイスループットスクリーニングの能力を兼ね備える。
【0088】
当業者は、複数のマイクロ流体マイクロチャンバーまたは液滴を容易に調製しうるものである。例えば、液滴は、シリンジポンプもしくは圧力ポンプ、フローフォーカスもしくはTジャンクション形状のマイクロ流体チップ、および生体適合性界面活性剤を添加した生体適合性オイル、例えば、3M(登録商標)Novec-7500(登録商標)オイルおよびFluorinert(登録商標)FC40オイルなどを用いて、1つまたはそれ以上の細胞で高速(1秒あたり最大数千の液滴)でカプセル化されるものであって、これらの全ては、製造業者、適切な設備を有する機械工学もしくは生物医学工学の研究室、または微小電気機械システム(MEMS)コア施設から入手可能である。
【0089】
ある実施態様において、区画化されたナノボリュームは、約0.05nLから約10nL、約0.03nLから約100nL、約0.1nLから約4nL、約0.1nLから約1nL、またはは約5nLから約10nLの範囲のサブナノリットルまたはナノリットルサイズを有する。ある例において、前記ナノボリュームは、約0.1nL、0.2nL、0.3nL、0.4nL、0.5nL、0.6nL、0.7nL、0.8nL、0.9nL、1nL、2nL、3nL、4nL、5nL、6nL、7nL、8nL、9nL、10nL、11nL、12nL、13nL、14nL、15nL、16nL、17nL、18nL、19nL、20nL、21nL、22nL、23nL、24nL、25nL、26nL、27nL、28nL、29nL、30nL、31nL、32nL、33nL、34nL、35nL、36nL、37nL、38nL、39nL、40nL、41nL、42nL、43nL、44nL、45nL、46nL、47nL、48nL、49nL、50nL、51nL、52nL、53nL、54nL、55nL、56nL、57nL、58nL、59nL、60nL、61nL、62nL、63nL、64nL、65nL、66nL、67nL、68nL、69nL、70nL、71nL、72nL、73nL、74nL、75nL、76nL、77nL、78nL、79nL、80nL、81nL、82nL、83nL、84nL、85nL、86nL、87nL、88nL、89nL、90nL、91nL、92nL、93nL、94nL、95nL、96nL、97nL、98nL、99nL、または100nLである。
【0090】
ある実施態様において、区画化されたナノボリュームは、光学的な検出を可能にするためのレポーターシグナルを標識するために用いられる検出試薬をさらに含んでいてもよい。例えば、cAMPまたはカルシウムに特異的な蛍光センサー色素は、生物学的物質を発現する細胞およびレポーター細胞と共に、液滴に共カプセル化されてもよい。占有されたGPCRまたはイオンチャネル標的において発現された生物学的物質のクローンの陽性二重標的化機能は、cAMPまたはカルシウムの細胞蓄積を引き起こし、それは次に光学的検出モジュールによって光学的に検出される。
【0091】
ある実施態様において、二重特異性または多重特異性のために目的とされる標的分子は、主に、前記生物学的物質を発現するように操作された第1の細胞の表面上、またはレポーター細胞として機能する第2の細胞、または標的陽性細胞であるか、もしくは同時に別の異なるレポーター細胞として機能するために用いられる第3の細胞で発現させることができる。ある実施態様において、前記標的分子は、図1~8に示されるように、前記第1、第2、および第3の細胞のうちの2つまたは3つにそれぞれ分布されている。前記第1、第2および第3の細胞は、その細胞表面上で標的を発現するその固有の能力について選択されるか、あるいは前記標的を安定して発現するように操作されていてもよく、これは、レンチウイルスまたはレトロウイルス法、CRISPR/cas9による遺伝子編集法、および組換え酵素による方法などのゲノム組込み方法を用いて達成することができる。
【0092】
ある実施態様において、1つまたはそれ以上の異なるタイプの細胞は、液滴生成装置を用いて共カプセル化により液滴に同時に供される。ランダムな分布環境において、正確に単一の細胞を含む液滴の割合は、一般に、特定のポアソン統計学に従い、そのため、単一の細胞を含む液滴の割合は低く(約32%)、2つのタイプの細胞を含む液滴は存在量がさらに少ない(約10%)。ある実施態様において、2つまたはそれ以上の異なるタイプの対の細胞を含む液滴の割合を改善するために、複数の各細胞タイプは、液滴への共カプセル化工程の直前に、慣性マイクロ流体フロー法によりそれぞれ整列させることができる。ある実施態様において、第1の細胞が第1の液滴にカプセル化され、第2の細胞が別々に第2の液滴にカプセル化され、次いで前記2つの第1および第2の液滴が合体して単一のさらに大きな液滴となる(すなわち、2つの液滴が1つに融合する)。
【0093】
ある実施態様において、適切な培養培地は、前記液滴中の細胞の生存および機能性を促進するために、区画化されたナノボリューム中で供される。このような培養培地は、区画化された環境により適合性を有するようにさらに改変されてもよい。例えば、さらに、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、グルタミン、およびグルタミン酸に加えて、いくつかの抗酸化化学物質(例えば、β-メルカプトエタノール)を含めて、液滴またはマイクロチャンバー内の細胞の生存を促進されうる。当業者は、商業的製造業者を通じて前記培地成分を容易に調達することができることが理解される。
【0094】
ある実施態様において、供される生存細胞を含む区画化されたナノボリュームは、マイクロ流体デバイス(例えば、オンデバイス)または容器、チャンバー、バイアルもしくはチューブ(例えば、オフデバイス)内において、温度制御モジュール(例えば、約4℃~約37℃の温度範囲)、酸素制御モジュール(例えば、約0.0001%~約20%のOレベル)、二酸化炭素制御モジュール(例えば、約0.1%~約20%のCOレベル)、および湿度制御モジュール(例えば、約40%~約99%の湿度レベル)からなる記載から選択される1つまたはそれ以上の環境制御モジュールの存在下で一定期間インキュベートすることができる。
【0095】
ある実施態様において、生存細胞を含む区画化されたナノボリュームは、適切なレポーターシグナル検出器を用いて検出することができる。例としての検出器は、蛍光および発光シグナルなどの光学的シグナルを検出するための光学検出器である。例としての光学検出器は、光子センサーおよびシグナル増幅ユニットを一部含む検出モジュールであり、これらは、電荷結合素子(CDD)カメラ、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサー、光電子増倍管(PMT)、およびアバランシェフォトダイオード(APD)からなる群から選択することができる。前記検出モジュールは、シグナル取得および処理ボードに接続することができ、前記信号取得および処理ボードは、プロセス制御またはユーザーインターフェイスソフトウェアを備えたコンピュータと統合することができる。陽性レポーターシグナルを示すデータの収集は、機能的な生物学的物質によって引き起こされる蓄積されたレポーターによって生成される光学的シグナルを収集することによって行うことができる。
【0096】
ある実施態様において、陽性レポーターシグナルを示すデータの収集は、1つの時点、または2つ、3つ、またはそれ以上の時点で行われる。ある実施態様において、レポーター検出およびデータ処理は、リアルタイムまたは非リアルタイムモードで実行されるものであって、陽性レポーターシグナルの存在は、生物学的物質を発現する細胞を、陽性レポーターシグナルを伴うナノボリュームから回収する下流の選別工程を引き起こす。
【0097】
ある実施態様において、液滴の選別は、誘電泳動(DEP)、超音波、マイクロバルブ、圧電、動的ストリーム偏向、または電気容量メカニズムに基づく選別モジュールを用いて行われる。ある実施態様において、前記選別は、DEPまたは超音波に基づく選別モジュールを用いて行われる。ある実施態様において、マイクロチャンバー内の細胞の回収は、マイクロピペットモジュールを用いて行われる。本明細書で用いられるように、用語「選別」は、1つまたはそれ以上の細胞を、区画化されたナノボリュームから単離するという文脈において、制御された方法で「採取」または「回収」と交換可能に使用されることがある。
【0098】
ある実施態様において、選別された細胞は、一般に利用可能な溶解緩衝液を用いて溶解させ、次いで逆転写(RT)および1回またはそれ以上のPCRにかけて、生物学的物質をコードする配列を示すDNAを増幅させる。増幅させたDNAは、DNA配列決定法と必要な遺伝学的解析にかける。これらのRT-PCR、配列決定および遺伝学的解析の工程は、一般に当業者に公知であることが理解される。
【0099】
ある実施態様において、本明細書で提供される製品は、デジタル通信およびコンピュータまたはモバイルデバイスアプリケーションと同期され、または統合される。ある実施態様において、本明細書で提供される製品は、単一、二重、または多重アッセイ形式において化学物質、生物学的物質、または単一細胞を検出し、および定量化するためのアッセイで用いられる。
【0100】
ある実施態様において、前記細胞は、ヒト細胞、動物細胞、融合されたハイブリッド細胞、ハイブリドーマ細胞、真菌細胞、酵母細胞、操作された真核細胞、ウイルス感染細胞、トランスフェクトされた細胞、または薬物処理された細胞である。任意選択的に、選択したタイプの不均一な細胞プールは、各々の液滴またはマイクロチャンバーに分割され、単一細胞レベルで特徴付けられ、画像化され、操作され、および選別されうる。任意選択的に、複数の区画化されたナノボリュームは、2つの異なるタイプの1対1の完全に対になった細胞のみではなく、同一または異なるタイプの0個の細胞、単一の細胞、2つまたはそれ以上の細胞も含まれうる。
【実施例0101】
非限定的で例示的な実施態様
図1(A)は、二重特異性単一融合タンパク質のためのナノボリューム(マイクロ流体液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、供される第1の細胞は、単一の組み込されたゲノム遺伝子座を介して前記生物学的物質の3つの部分を発現するように操作され、供される第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、または操作され、前記生物学的物質は、機能的な形態として細胞外空間で適切に組み立てられ、分泌されることにより、前記第1の細胞の表面上で発現される第1の標的、および前記レポーター細胞で発現される第2の異なる標的を標的とすることが意図されている。図1(B)は、前記二重特異性生物学的物質が、2つのゲノム遺伝子座に挿入された2つの異なるサブユニットに散在する4つの機能的部分を含み、2つの非標的結合部分(部分3および部分4)がヘテロ二量体化ドメインとして供されることを除いて、図1(A)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0102】
図2(A)は、生物学的物質の発現担体が単一のゲノム遺伝子座に挿入されていることを除いて、図1(B)と同様のアッセイ原理および特徴を共有する、4つの異なる部分を含む二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示す。図2(B)は、二重特異性生物学的物質が、1つのさらなる部分(部分5)を含み、前記部分5が、異なるゲノム遺伝子座に挿入されている発現カセットから発現される、部分5が、部分1および部分2各々との直接相互作用を介して部分的に標的結合に関与していることを除いて、図2(A)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0103】
図3は、二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、第1の細胞が供され、前記第1の細胞は、2つの組み込まれたゲノム遺伝子座を介して前記生物学的物質の5つの部分を発現するように操作されており、第2の細胞が供され、前記第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、操作されており、前記生物学的物質は、機能的な形態で適切に組み立てられ、分泌されると、前記第1および第2の細胞各々で発現される2つの異なるタイプの標的を標的とすることが意図されており、第3の細胞もまた供され、前記第3の細胞は、生物学的物質の機能を誘発し、または促進し、あるいは前記第2の細胞とは異なるレポーターを有するレポーター細胞として供される。
【0104】
図4(A)は、前記生物学的物質が、レポーター細胞で発現される同一の標的分子における2つの異なる分子部位を標的とすることが予想されることを除いて、図1(A)と同様のアッセイ原理および特徴を共有する、二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示す。図4(B)は、前記生物学的物質が、レポーター細胞で発現される同一の標的分子における2つの異なる分子部位を標的とすることが予想されることを除いて、図1(B)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0105】
図5(A)は、前記生物学的物質が、レポーター細胞で発現される同一の標的分子における2つの異なる分子部位を標的とすることが予想されることを除いて、図2(A)と同様のアッセイ原理および特徴を共有する、二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示す。図5(B)は、前記生物学的物質が、レポーター細胞で発現される同一の標的分子における2つの異なる分子部位を標的とすることが予想されることを除いて、図2(B)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0106】
図6(A)は、二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、第1の細胞が供され、前記第1の細胞は、2つの組み込まれたゲノム遺伝子座を介して前記生物学的物質の5つの部分を発現するように操作されており、第2の細胞が供され、前記第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、または操作されており、前記生物学的物質は、機能的な形態で適切に組み立てられ、分泌されると、前記第2の細胞で発現される2つ異なる標的を標的とすることが意図されており、第3の細胞も供され、生物学的物質の機能を誘発し、または促進するか、または第2の細胞とは異なるレポーターを有する別のレポーター細胞として機能として供される。
【0107】
図6(B)は、二重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、第1の細胞が供され、前記第1の細胞は、2つの組み込まれたゲノム遺伝子座を介して前記生物学的物質の5つの部分を発現するように操作されており、前記部分は、前記生物学的物質の3つの単一融合タンパク質サブユニットを構成し、第2の細胞が供され、前記第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、または操作される第2の細胞が提供されており、前記生物学的物質は、機能的な形態で適切に組み立てられ、分泌されると、前記第2の細胞で発現される2つの異なる標的を標的とすることが意図されている。
【0108】
図7(A)は、単一のキメラタンパク質としての三重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、第1の細胞が供され、前記第1の細胞は、ゲノム遺伝子座に組み込まれた単一の発現カセットを介して前記生物学的物質の5つの部分を発現するように操作されており、第2の細胞が供され、前記第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、または操作されており、前記生物学的物質は、機能的な形態で適切に組み立てられ、分泌されると、前記第1および第2の細胞各々の表面上で発現される3つの異なる想定される標的を標的とすることが意図されている。図7(B)は、3つの異なるタイプ全ての標的分子が、第2の細胞(すなわち、レポーター細胞)で主にまたは排他的に発現されることを除いて、図7(A)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0109】
図8(A)は、三重特異性生物学的物質のためのナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)に基づくアッセイのある実施態様の一般的な概念およびスキームを示すものであって、第1の細胞が供され、前記第1の細胞は、2つの異なるゲノム遺伝子座に各々組み込まれた2つの発現カセットから発現される2つの非対称ヘテロ二量体化サブユニットに散在する前記生物学的物質の5つの部分を発現するように操作されており、第2の細胞が供され、前記第2の細胞は、前記生物学的物質によって引き起こされるレポーターシグナルを生成するように選択され、または操作されており、前記生物学的物質は、機能的な形態で適切に組み立てられ、分泌されると、前記第1および第2の細胞の表面で発現される3つの異なる想定される標的タイプを標的とすることが意図されている。図8(B)は、三重特異性生物学的物質が、同一の部分3を共有する2つのヘテロ二量体化サブユニットを含み、前記2つの部分3のコピーが、両方とも前記第1の細胞で発現される標的1との結合に関与することを除いて、図8(A)と同様のアッセイ原理および特徴を示す。
【0110】
非限定的で例示的な実施例
実施例1:単一細胞で2つの異なる標的に結合する共通軽鎖二重特異性抗体のスクリーニング
図9は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(共通の軽鎖、第1の重鎖および第2の重鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通軽鎖二重特異性抗体のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示すものであって、前記共通軽鎖および前記第1の重鎖は、IRESエレメントによって連結された2つのオープンリーディングフレームを有する単一の発現カセットによってコードされている。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性抗体が、レポーター細胞上の2つの細胞表面標的に結合し、これによりレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴は、液滴選別モジュールによって選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0111】
図9に記載された例と同様の別の例として、異なる形態のBsAb、例えば、2つの異なる標的に結合するscFvを有する単一の融合タンパク質が、前記共通の軽鎖BsAb形態に代わりに用いることができることが理解される。
【0112】
実施例2:2つの隣接する細胞に関与する共通軽鎖二重特異性抗体のスクリーニング。
図10は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(共通軽鎖、第1の重鎖および第2の重鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通軽鎖二重特異性抗体のためのマイクロチャンバーに基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性抗体が、細胞1上の一方の細胞表面標的および細胞2(レポーター細胞)上のもう一方の細胞表面標的に結合し、これによりレポーター遺伝子(RFP)の転写活性を生じる。蓄積されたRFPシグナルは、蛍光顕微鏡下で光学的に検出される。次に、RFP陽性マイクロチャンバー内の細胞1は、顕微鏡ガイド下でマイクロピペットによって各々回収され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0113】
実施例3:2つの隣接する細胞に関与する機能的なキメラscFv融合タンパク質のスクリーニング
図11(A)は、哺乳動物細胞(細胞1)内の単一のゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(標的1を対象とする第1のscFv、標的2を対象とする第2のscFv、および前記2つのscFVを連結する短いペプチドリンカー)を含む単一の融合タンパク質を各々コードする、複数の遺伝子変異型からの機能的なキメラscFv融合タンパク質のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的なscFv融合タンパク質が、細胞1上の一方の細胞表面標的および細胞2(レポーター細胞)上のもう一方の細胞表面標的に結合し、これによりレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴が液滴選別モジュールで選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および機能的なキメラscFv融合物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0114】
図11(B)は、哺乳動物細胞(細胞1)内の単一のゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(標的1を対象とする第1のVHH、標的2(CD3)を対象とする第2のVHH、および2つのVHHを連結する短いペプチドリンカー)を含む単一の融合タンパク質を各々コードする、複数の遺伝子変異型からの機能的な二重特異性キメラVHH融合タンパク質のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、次いで細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性VHH融合タンパク質が、細胞1上の一方の細胞表面標的および細胞2(レポーター細胞)のもう一方の細胞表面標的(CD3)に結合し、これによりNFAT応答エレメントの制御下でレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよび光学的検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴が液滴選別モジュールで選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および機能的なキメラVHH融合物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0115】
実施例4:細胞型の2つの異なる標的を標的とする二重特異性免疫サイトカインのスクリーニング
図12は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(軽鎖、重鎖、およびサイトカイン)を各々含む、複数の変異型からの機能的な二重特異性免疫サイトカインのための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性免疫サイトカインが、抗体標的、およびレポーター細胞(細胞2)の細胞表面上のサイトカイン受容体に結合し、これによりレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性免疫サイトカインの機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0116】
実施例5:2つの隣接する細胞に関与する二重特異性免疫サイトカインのスクリーニング
図13は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(軽鎖、重鎖、およびサイトカイン)から組み立てられた抗体およびサイトカインを各々含む、複数の変異型からの機能的な二重特異性免疫サイトカインのための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、次いで細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性免疫サイトカインが、レポーター細胞(細胞2)上の抗体標的および第1の細胞(細胞1)上のサイトカイン受容体に結合し、これによりレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性免疫サイトカインの機能的構築物をコードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0117】
実施例6:単一細胞上の3つの異なる受容体標的を標的とする三重特異性サイトカイン様生物学的物質のためのスクリーニング
高親和性IL-2受容体(CD25(IL-2Rα、CD122およびCD132サブユニットを含む)およびIL-15受容体(IL-15Rα、CD122およびCD132サブユニットを含む)によって表される多くのサイトカイン受容体は、3つのサブユニット全てが単一の同族サイトカイン分子と結合するヘテロ三量体複合体として公知である。サイトカインなどのIL-2もしくはIL-15または三重特異性標的活性を有する生物学的物質を操作することにより重要な治療用途が見出される可能性がある。
【0118】
非限定的な例(図14)として、三重特異性サイトカイン様融合タンパク質は、3つの異なる標的結合部分および2つのリンカーペプチドを各々含む、複数の変異型からの液滴に基づくスクリーニングアッセイを用いてスクリーニングされる。前記サイトカイン様タンパク質の単一の変異型は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内のゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される。発現、適切な組み立て、次いで細胞外空間への分泌により、機能的な三重特異性変異体が、レポーター細胞(細胞2)上の3つの異なる受容体に結合し、これによりレポーター遺伝子(GFP)の転写活性を生じる。蓄積されたGFPシグナルは、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって光学的に検出される。次に、GFP陽性液滴が液滴選別モジュールで選別され、さらに細胞溶解、RT-PCR、および機能的な三重特異性サイトカイン様分子を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0119】
実施例7:GPCR標的に対する共通重鎖二重特異性抗体のためのスクリーニング
図15は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(共通重鎖、第1の軽鎖、および第2の軽鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通重鎖二重特異性抗体のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性抗体が、レポーター細胞上の単一のGPCR標的の2つの異なる分子部位に結合し、これによりシグナルの活性と下流のエフェクター分子cAMP(レポーターシグナル)の蓄積を生じる。蓄積されたcAMPは、供されるcAMP特異的な蛍光センサー色素に結合し、その後、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって検出される。次に、センサー陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに、細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0120】
実施例8:イオンチャネルに拮抗する二重特異性単一ドメイン抗体(sdAB)融合タンパク質のためのスクリーニング
図16は、哺乳動物細胞(細胞1)内の単一のゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(第1のsdAB、第2のsdAB、およびペプチドリンカー)を各々含む、複数の変異型からの機能的な二重特異性sdAB融合タンパク質のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの例を示す。発現、適切な組み立て、および細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性sdABs融合タンパク質が、レポーター細胞上の単一のカルシウムチャネル標的の2つの異なる分子部位に結合し、これによりカルシウム流動およびレポーター細胞内の蓄積を生じる。蓄積されたカルシウムイオンが、供される蛍光カルシウムセンサー色素に結合し、その後、レーザーおよびPMTに基づく検出モジュールによって検出される。次に、センサー陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに、細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性sdAB融合タンパク質の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0121】
実施例9:細胞上の2つの異なる標的を標的とする共通軽鎖二重特異性抗体のためのスクリーニング
図17(A)は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(共通軽鎖、第1の重鎖、および第2の重鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通軽鎖二重特異性抗体のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な共通軽鎖二重特異性抗体が、レポーター細胞上の2つの異なる細胞表面標的に結合するものであって、前記2つの発現された標的は、細胞外SNAP(登録商標)およびCLIP(標的)タグを用いて各々操作される。SNAPタグは、一方の末端においてO-ベンジルグアニンおよびもう一方の末端においてFRETドナーで標識された供されるオリゴDNAと共有結合し、CLIPタグは、一方の末端においてO-ベンジルシトシンおよびもう一方の末端においてFRETアクセプターで標識された別の供されるオリゴDNAと共有結合する。機能的な共通軽鎖抗体による二重特異性標的化は、ドナーとアクセプターを近接近内(すなわち、有効なフォスター半径内)とし、これにより適切なレーザー波長による励起によりFRETシグナルを生じる。前記FRETシグナルは、PMTに基づくFRET適合性検出モジュールによって光学的に検出される。次に、FRET陽性液滴が、液滴選別モジュールによって選別され、さらに、細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0122】
図17(B)は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)内の1つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なる部分(共通軽鎖、第1の重鎖、および第2の重鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通軽鎖二重特異性抗体のための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、次いで細胞外空間への分泌により、機能的な共通軽鎖二重特異性抗体が、細胞(細胞2)で発現されるか、または捕捉ビーズ(もしくは粒子、ポリマーマトリックス)に結合させた標的1に結合する。前記共通軽鎖二重特異性抗体はまた、液滴中の蛍光標識された可溶性分子として供される標的2に結合する。二重特異性抗体/標識された標的2複合体の蓄積は、必要に応じて光学的に検出することができる蛍光焦点を形成する。次に、蛍光焦点陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに、細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0123】
実施例10:適切なADCC活性を有する共通軽鎖二重特異性抗体のためのスクリーニング
図18は、単一の哺乳動物細胞(細胞1)の2つのゲノムに組み込まれた発現カセットから発現される3つの異なるサブユニット(共通軽鎖、第1の重鎖、および第2の重鎖)を各々含む、複数の変異型からの機能的な共通軽鎖BsAbのための液滴に基づくスクリーニングアッセイの実施態様を示す。発現、適切な組み立て、続いて細胞外空間への分泌により、機能的な二重特異性抗体が、第2の細胞(癌細胞)上の2つの細胞表面標的に結合し、その一方で、前記BsAbのFc領域が、第3の細胞(NKまたはNK様細胞)で供されるFcγR-III受容体に結合し、これにより前記第3の細胞の活性化、続いてADCC関連エフェクター(例えば、パーフォリンおよびグランザイム)の放出を生じる。供される蛍光発生基質を用いて、蓄積されたエフェクターは、PMTまたはCCDなどの光学検出器によって検出される。次に、蛍光陽性液滴が液滴選別モジュールによって選別され、さらに、細胞溶解、RT-PCR、および前記二重特異性抗体の機能的構築物を各々コードする各変異型の遺伝学的同定に供されうる。
【0124】
実施例11:液滴内の抗CD3xCD19二重特異性T細胞誘導(BiTE)の機能アッセイ
図19は、(A)BiTE(例えば、抗CD3xCD19 BiTE)の作用機序、R.E、プロモーター応答エレメント、(B)液滴内のRaji細胞(CD19リンパ腫細胞株)および組換え抗CD3xCD19 BiTEの存在下での非活性化(0時間)および活性化(6時間)されたJurkat-D1レポーターT細胞の顕微鏡画像(スケールバー、100μm。緑、GFPレポーターシグナル。赤、Rajiのために予め標識した細胞トラッキング色素)、(C)液滴内の共カプセル化後9時間経過にわたるRaji細胞の存在または非存在下における前記抗CD3xCD19 BiTEを10ng/mlで添加したJurkat-D1細胞における動力学的GFPシグナル強度の変化を示す。
【0125】
非限定的で例示的なプロセス
図20は、本開示の実施による例示的なプロセス1000を示す。プロセス1000は、図1図18に関して上記で記載した様々なスキーム、概念、および例のうちの1つまたはそれ以上のような推奨される概念およびスキームを実施する態様を表しうる。より具体的には、プロセス1000は、超ハイスループット法において、機能的な単一の変異体を、二重特異性または多重特異性生物学的物質の操作されたライブラリーから直接かつ迅速にスクリーニングするための区画化ナノボリュームに基づくアッセイに関する推奨される概念およびスキームの態様を表しうる。プロセス1000には、ブロック1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080および1090のうちの1つまたはそれ以上で示されるように、1つまたはそれ以上の操作、作用、または機能が含まれうる。各ブロックとして示されているが、プロセス1000の様々なブロックは、望ましい実施に応じて、さらなるブロックに分割され、より少ないブロックに結合され、または排除されてもよい。さらに、プロセス1000のブロックは、図20に示される順序で、あるいは別の順序で行われてもよい。また、プロセス1000のブロックは、反復して行われてもよい。プロセス1000は、ブロック1010から開始してもよい。
【0126】
1010において、プロセス1000は、遺伝子変異型DNAライブラリー1を供することに関しうるものであって、各変異型は、単一の発現構築物において、二重特異性または多重特異性生物学的物質に含まれる少なくとも1つの部分をコードする。プロセス1000は、1010から1020に進行されうる。
【0127】
1020において、プロセス1000は、ライブラリー1を、複数の選択したタイプの細胞の単一のゲノム遺伝子座に導入して、操作された細胞ライブラリー1を取得することに関しうるものであって、各細胞は、前記遺伝子変異型ライブラリー1によってコードされる前記部分の実質的に単一の変異型を発現する。プロセス1000は、1020から1040に進行されうる。
【0128】
1030において(1010および1020と並行して行われてもよい)、プロセス1000は、遺伝子変異型DNAライブラリー2を供することに関しうるものであって、各変異型は、単一の発現構築物において、二重特異性または多重特異性の生物学的物質に含まれるが、遺伝子変異型DNAによってコードされない残りの部分をコードする。プロセス1000は、1030から1040に進行されうる。
【0129】
1040において、プロセス1000は、DNAライブラリー2を1020で操作された細胞ライブラリー1に導入して、生物学的物質を発現する細胞ライブラリー2を取得することに関しうるものであって、各細胞は、組み込まれた生物学的物質の各々全ての部分の実質的に単一の変異型を発現し、分泌する。プロセス1000は、1040から1060に進行されうる。
【0130】
1050において(1040と並行して行われてもよい)、プロセス1000は、複数のレポーター細胞を供することに関しうる。プロセス1000は、1050から1060に進行されうる。
【0131】
1060において、プロセス1000は、操作された細胞ライブラリー2からの実質的に1つの生物学的物質を発現する細胞、および1050で供される1つまたはそれ以上のレポーター細胞とともに区画化された複数のナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)を取得することに関しうる。プロセス1000は、1060から1070に進行されうる。
【0132】
1070において、プロセス1000は、試料のインキュベートおよびレポーターシグナルの光学的検出を行うことに関しうる。プロセス1000は、1070から1080に進行されうる。
【0133】
1080において、プロセス1000は、シグナル検出データを処理し、レポーター陽性細胞の試料を回収することに関しうる。プロセス1000は、1080から1090に進行されうる。
【0134】
1090において、プロセス1000は、回収された試料から各生物学的物質の変異型の遺伝子配列を同定することに関しうる。
【0135】
図21は、本開示の実施による例示的なプロセス1100を示す。プロセス1100は、図1図19に関して上記で記載した様々なスキーム、概念、および例のうちの1つまたはそれ以上のような推奨される概念およびスキームを実施する態様を表しうる。より具体的には、プロセス1100は、超ハイスループット法において、機能的な単一の変異体を、二重特異性または多重特異性生物学的物質の操作されたライブラリーから直接かつ迅速にスクリーニングするための区画化ナノボリュームに基づくアッセイに関する推奨される概念およびスキームの態様を表しうる。プロセス1100には、ブロック1110、1120、1130、1140、1150、1160および1170のうちの1つまたはそれ以上で示されるように、1つまたはそれ以上の操作、作用、または機能が含まれうる。各ブロックとして示されているが、プロセス1100の様々なブロックは、望ましい実施に応じて、さらなるブロックに分割され、より少ないブロックに結合され、または排除されてもよい。さらに、プロセス1100のブロックは、図21に示される順序で、あるいは別の順序で行われてもよい。また、プロセス1100のブロックは、反復して行われてもよい。プロセス1100は、ブロック1110から開始してもよい。
【0136】
1110において、プロセス1100は、遺伝子変異型DNAライブラリーを供することに関しうるものであって、各変異型は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の全ての必要な部分をコードする。プロセス1100は、1110から1120に進行されうる。
【0137】
1120において、プロセス1100は、1110からのDNAライブラリーを複数の選択した細胞タイプに導入して、操作された生物学的物質を発現する細胞ライブラリーを取得することに関しうるものであって、各細胞は、前記生物学的物質の各々全ての部分の実質的に単一の変異型を発現し、分泌する。
【0138】
図22は、本開示の実施による例示的なプロセス1200を示す。プロセス1100は、図1図18に関して上記で記載した様々なスキーム、概念、および例のうちの1つまたはそれ以上のような推奨される概念およびスキームを実施する態様を表しうる。より具体的には、プロセス1200は、超ハイスループット法において、機能的な単一の変異体を、二重特異性または多重特異性生物学的物質の操作されたライブラリーから直接かつ迅速にスクリーニングするための区画化ナノボリュームに基づくアッセイに関する推奨される概念およびスキームの態様を表しうる。プロセス1200には、ブロック1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290、および1295のうちの1つまたはそれ以上で示されるように、1つまたはそれ以上の操作、作用、または機能が含まれうる。各ブロックとして示されているが、プロセス1100の様々なブロックは、望ましい実施に応じて、さらなるブロックに分割され、より少ないブロックに結合され、または排除されてもよい。さらに、プロセス1200のブロックは、図22に示される順序で、あるいは別の順序で行われてもよい。また、プロセス1100のブロックは、反復して行われてもよい。プロセス1200は、ブロック1210から開始してもよい。
【0139】
1210において、プロセス1200は、遺伝子変異型DNAライブラリー1を供することに関しうるものであって、各変異型は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の少なくとも1つの部分をコードする。プロセス1200は、1210から1230に進行されうる。
【0140】
1220において(1210と並行して行われてもよい)、プロセス1200は、遺伝子変異型DNAライブラリー2を供することに関しうるものであって、各変異型は、二重特異性または多重特異性生物学的物質の残りの全ての必要な部分をコードする。プロセス1200は、1220から1240に進行されうる。
【0141】
1230において、プロセス1200は、1210で取得されたDNAライブラリー1を、交配a遺伝子型を有する複数の一倍体酵母細胞に形質転換して、一倍体酵母ライブラリー1を取得することに関しうる。プロセス1200は、1230から1250に進行されうる。
【0142】
1240において、プロセス1200は、1220で取得されたDNAライブラリー2を、交配α遺伝子型を有する複数の一倍体酵母細胞に形質転換して、一倍体酵母ライブラリー2を取得することに関しうる。プロセス1200は、1230から1250に進行されうる。
【0143】
1250において、プロセス1200は、相補的な交配型の酵母ライブラリー1および2を交配して、二倍体酵母ライブラリーを取得することに関しうるものであって、各二倍体酵母細胞は、前記生物学的物質の実質的に単一の変異型を発現し、分泌する。プロセス1200は、1250から1270に進行されうる。
【0144】
1270において、プロセス1200は、操作された細胞ライブラリー2からの実質的に1つの生物学的物質を発現する二倍体酵母細胞、およびブロック1260で並行して供される1つ以上のレポーター細胞とともに区画化される複数のナノボリューム(液滴またはマイクロチャンバー)を取得することに関しうる。プロセス1200は、1270から1280に進行されうる。
【0145】
1280において、プロセス1200は、試料のインキュベートおよびレポーターシグナルの光学的検出を行うことに関しうる。プロセス1000は、1280から1290に進行されうる。
【0146】
1290において、プロセス1200は、シグナル検出データを処理し、レポーター陽性酵母細胞を回収することに関しうる。プロセス1000は、1290から1295に進行されうる。
【0147】
1295において、プロセス1200は、回収された二倍体酵母細胞から各生物学的物質の変異型の遺伝子配列を同定することに関しうる。
【0148】
非限定的で例示的なプロセス
いくつかの実施態様は、液滴に基づく区画化プラットフォームを用いる。ある実施態様は、半密閉型マイクロチャンバー形態を用いる。例えば、半密閉型マイクロチャンバーデバイスが図23に示される。Berkeley Lights Inc.のOptoSelect(登録商標)デバイス(Berkeleylights.comのワールドワイドウェブを参照)では、それぞれが半密閉型の数千またはそれ以上のマイクロチャンバー(いわゆるNANOPENS(登録商標))を備えたプラットフォームである。各細胞は、制御されたレーザー光によってNANOPENS(登録商標)の内/外に正確に「移動」することができる。細胞はクローン化され、各々500pLまたは1nLのNANOPENS(登録商標)でアッセイされる。各ペンはマイクロウェルの約100,000分の1以下である。
【0149】
その他のデバイスは、Abcellera Biologics(カナダ)(abcellera.comのワールドワイドウェブ)、Xcella Biosciences(米国)(xcellabio.comのワールドワイドウェブ)、およびSingle Cell Technologies(米国)によって提供されている。これらのデバイスでは、各デバイスは、約20,000、30,000、40,000、50,000個、またはそれ以上のマイクロチャンバーまたは「マイクロポア」を有し、これらも半密閉されており(図24を参照)、各チャンバーは、約0.5nLから約4nLの容積を有し、デバイスの上部が、薄膜、高分子プラスチック層、または疎水性油層である。各細胞は、ランダムで、または制御された方法でチャンバーに流れ込み、チャンバーを満たし、確立された方法、例えば、デバイスの上部フィルムから直接ニードルを用いて細胞を吸引することによって回収することができる。
【0150】
別の細胞ライブラリー設計
いくつかの実施態様において、生物学的物質をコードする全ての構成成分(サブユニット)は、細胞1に組み込まれる(例えば、図1を参照のこと)。ある実施態様において、生物学的物質をコードする全ての構成成分(サブユニット)は、細胞1に組み込まれる(図25を参照)。
【0151】
いくつかの実施態様において、レポーター細胞は、機能的な生物学的物質(二重特異性または多重特異性)によって活性化することができる遺伝学的に操作された蛍光タンパク質/複合体またはルシフェラーゼもしくは発光タンパク質を含む。
【0152】
いくつかの実施態様において、遺伝学的に操作されたエフェクタータンパク質は、エフェクター分子(例えば、モジュラーセンサータンパク質(細胞外、細胞内、または細胞表面に基づく))に結合する蛍光プローブを用いて光学的に検出することができる。
【0153】
いくつかの実施態様において、内在性エフェクター分子は、機能的な生物学的物質によって活性化し、または上方制御することができる。前記エフェクター分子は、蛍光プローブを用いて光学的に検出することができる。このようなエフェクター分子は、細胞表面または細胞内で発現することができ、例えば、内在性GPCRは、活性化されることにより、第2のメッセンジャー(cAMPおよびカルシウム)を含むエフェクター分子の上方制御を生じることができる。これらのエフェクター分子(「レポーター分子」)は、蛍光分子または発光分子を用いて光学的に検出することができる。
【0154】
さらなるレポーター細胞の実施態様において、複数ステップの検出スキーム、例えば、(1)生物学的物質の2つ以上の標的への結合の検出(フローサイトメトリーと同様)、(2)細胞の回収、および(3)リンケージPCRと配列決定法を用いることができる。
【0155】
別の実施態様において、図26は、3Dプリンタを用いることにより、生分解性の軟固体ポリマー材料で印刷される別のマイクロチャンバー類似のデバイスを示す。このデバイスには、数千個の円筒型のマイクロウェル(高さ100μmx直径100μm)が含まれ、適宜、ミネラルオイルまたはフィルムの層で包装されていてもよく、複数のこのようなマイクロウェルが、実質的に、標的細胞(CD19白血病細胞、Raji)および1つまたはそれい以上のレポーター細胞(Jurkat由来のレポーターT細胞)に加え、ブリナツモマブ(CD3XCD19二重特異性分子(またはBiTE))と共に供される。CD3XCD19二重特異性分子によるCD3とCD19との間の機能的な架橋は、NFAT応答性調節エレメントによって駆動されるzsGreen蛍光タンパク質であるレポーター分子の転写および発現を活性化する。Raji細胞は、CellTrace Violet(青色蛍光)で染色され、Jurkat細胞は、CellTrace Far Red(赤色蛍光)で染色された。コントロールとして、レポーター細胞は、標的細胞の存在しないマイクロチャンバーウェルでは活性化されない。
【0156】
ある実施態様が上記で開示されているが、それらは本開示の範囲を限定することが意図されるものではない。様々な改変および変更が、本開示の範囲または精神から逸脱することなく本開示の開示された実施態様になされうることは当業者に明らかである。上記を考慮して、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲およびこれらの同等物によって定義されるものとする。
【0157】
本明細書は、様々な実施態様の具体的に詳細を説明しているが、本明細書は単なる例示に過ぎず、いずれも限定するものとして解釈されるべきではないことが理解される。さらに、このような実施態様およびその改変の様々な応用は、当業者によってなされうるが、本明細書に記載の一般的な概念に包含されるものである。本明細書に記載の各々全ての特徴、およびこのような特徴の2つまたはそれ以上の全ての組み合わせは、このような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しない限り本発明の範囲内に含まれる。
【0158】
上記で参照される全ての図、表、および添付書類、ならびに特許、出願、および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
いくつかの実施態様は、添付の図面に関連して記載されている。ただし、図は一定の縮尺で描かれていないことが理解されるべきである。距離、角度などは単なる例示であり、図示された装置の実際の寸法および設計とは必ずしも正確な関係を示すわけではない。構成要素は、追加、削除、および/または再構成することができる。さらに、様々な実施態様に関連するいずれか特定の特徴、態様、方法、性質、特徴、品質、属性、要素などの本明細書の開示は、本明細書に記載の全ての他の実施態様で用いることができる。また、本明細書に記載のいずれの方法も、記載されるステップを実施するのに適切ないずれのデバイスを用いて行われてもよいことが理解されうる。
【0160】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に記載されている。必ずしも全てのこのような利点がいずれか特定の実施態様により達成されうるものではないことが理解されるべきである。よって、例えば、当業者は、本開示が、本明細書で教示され、または示唆されうる他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または一群の利点を達成する方法で具体化され、または実施されうることを理解する。
【0161】
本明細書に開示される発明の実施態様は、特定の好ましい実施態様および例の文脈中で開示されいるが、本発明は、具体的に開示される実施態様を超えて、様々な発明の他の代替的な実施態様および/または用途、ならびにその自明な改変および同等物まで拡張されることが当業者によって理解される。さらに、本発明のいくつかの変更が詳細に示され、説明されているが、本発明の範囲内にある他の改変は、本開示に基づいて当業者にとって容易に明白である。実施態様の特定の特徴と態様の様々な組み合わせまたは部分的な組み合わせがなされてもよく、それもまた本発明の範囲内にあるものとされる。開示された実施態様の様々な特徴および態様は、相互に組み合わされるか、または置き換えられることにより、開示される発明の様々な様式が形成されうることが理解されるべきである。さらに、開示されたプロセスおよび方法の実施は、実施を再構成し、および/またはさらなる実施を挿入し、および/または実施を削除することを含むいずれかの方法で変更されうる。よって、本明細書に開示される本発明の少なくともいずれかの範囲は、上記に記載の特定の開示された実施態様によって限定されるべきではないものとされる。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲で用いられる文言に基づいて広く解釈され、本明細書に記載される実施例に限定されるべきではなく、または出願審査中には、これらの実施例は非排他的であると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的変異型をスクリーニングするための系であって、
複数の区画化されたナノボリュームを含み、各ナノボリュームが、
二重特異性または多重特異性生物学的物質のユニークな遺伝子変異型をコードする核酸配列を含む、第1の細胞;
レポーター分子をコードする核酸配列を含む、第2の細胞
を含むものであって、
前記第1および第2の細胞の少なくとも1つが、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質のための1つまたはそれ以上の標的を含み、ならびに
前記レポーター分子が、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質が前記1つまたはそれ以上の標的に結合すると活性化されることにより、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の前記遺伝子変異型が前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の機能的変異型をコードすることを示す、前記系。
【請求項2】
前記第1の細胞に含まれる前記二重特異性または多重特異性生物学的物質をコードする核酸が、抗体、IgG重鎖、IgG軽鎖、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、単一ドメイン抗体、VHH抗体、ナノボディ、非抗体代替足場、細胞表面タンパク質の細胞外フラグメント、ケモカインまたはケモカイン様分子、サイトカインまたはサイトカイン様分子、免疫サイトカイン、および前記分子の組み合わせまたは誘導体からなる群から選択される、少なくとも2つの異なる標的結合部分をコードする、請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記第1の細胞に含まれる前記二重特異性または多重特異性生物学的物質をコードする核酸が、ヘテロ二量体化ドメイン、ヘテロ三量体化ドメイン、および約2~約30個のアミノ酸または約10~約50個のアミノ酸の長さを有するリンカーペプチドからなる群から選択される、少なくとも1つの非標的結合部分をコードする、請求項1に記載の系。
【請求項4】
前記区画化されたナノボリュームが、液滴、または密閉型もしくは半密閉型マイクロチャンバーであり、ならびに約0.03nL~約100nL、または約0.1nL~約4nLの均一またはほぼ均一な体積を有する、請求項1に記載の系。
【請求項5】
前記第2の細胞によって発現されるレポーター分子からの光学的シグナルを検出するために構成された光学的デバイスをさらに含む、請求項1に記載の系。
【請求項6】
前記第1タイプの細胞が、前記第1タイプの細胞のゲノムに組み込まれる実質的に1つまたは2つの異なる発現カセットまたは発現担体を用いて操作されるものであって、前記組み込まれた発現カセットまたは発現担体から前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の単一の遺伝子変異型が発現される、請求項1に記載の系。
【請求項7】
前記二重特異性または多重特異性生物学的物質が、前記区画化されたナノボリュームで供される細胞の少なくとも1つによって発現される、細胞表面標的または2つもしくはそれ以上の異なる細胞表面標的にある、2つまたはそれ以上の異なる部位に結合する、請求項1に記載の系。
【請求項8】
前記第2タイプの細胞におけるレポーター分子が、蛍光タンパク質、蛍光発生分子、蛍光分子もしくは複合体、またはFRET対である、請求項1に記載の系。
【請求項9】
前記第2タイプの細胞におけるレポーター分子が、ルシフェラーゼ、発光分子もしくは複合体である、請求項1に記載の系。
【請求項10】
前記レポーター分子が、第2タイプの細胞のゲノムに組み込まれた発現カセットによってコードされていてもよい、請求項8または9に記載の系。
【請求項11】
前記レポーター分子が、前記第2タイプの細胞に含まれる細胞表面標的の下流のエフェクター分子である、請求項8または9に記載の系。
【請求項12】
陽性レポーター分子シグナルを表すデータを収集する工程が、光学的検出デバイスを用いてレポーターに由来する光学的シグナルを検出することによる、請求項1に記載の系。
【請求項13】
前記少なくとも2つの異なる細胞タイプの1つまたはそれ以上が、哺乳動物細胞、または哺乳動物細胞から派生し、もしくは操作された形態である、請求項1に記載の系。
【請求項14】
前記少なくとも2つの異なる細胞タイプの1つまたはそれ以上が、酵母または真菌細胞である、請求項1に記載の系。
【請求項15】
前記酵母または真菌細胞が、二倍体細胞である、請求項14に記載の系。
【請求項16】
前記酵母または真菌細胞が、反対の交配型の2つの一倍体株間の交配に由来し、第1の一倍体株が、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の少なくとも1つの部分を各々コードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作され、ならびに第2の一倍体株が、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の残りの部分をコードする実質的に単一の遺伝子変異型を発現するように操作されている、請求項15に記載の系。
【請求項17】
前記レポーター分子が、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の2つの異なる標的と結合したFRETドナーおよびアクセプターの適合した一対である、請求項1に記載の系。
【請求項18】
3つの細胞タイプが供されるものであって、第1タイプの細胞が、前記二重特異性または多重特異性生物学的物質の単一の遺伝子変異型を発現するように操作されており、第2タイプの細胞が、レポーター細胞として選択され、または供するように操作され、ならびに第3タイプの細胞が、標的を発現する細胞として選択される、請求項1に記載の系。
【請求項19】
細胞を回収することが、単一細胞の分注または選別を含む、請求項1に記載の系。
【請求項20】
遺伝学的情報を抽出することが、遺伝子配列を決定することを含む、請求項1に記載の系。
【外国語明細書】