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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082183
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】フローコントロールステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20230606BHJP
   A61F 2/844 20130101ALI20230606BHJP
   A61F 2/94 20130101ALI20230606BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/844
A61F2/94
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061195
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2021127941の分割
【原出願日】2018-10-02
(31)【優先権主張番号】62/567,679
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パロマー-モレノ、ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】フォラン、マーティン ジー
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー、エマ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モイラン、シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ホリー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘガティ、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カラン、ダレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生体管腔間に制御された流路又はアクセス通路を確保するための装置を提供する。
【解決手段】医療装置100は細長管状本体110を備える。細長管状本体は、1つ以上のフィラメント織物体、フィラメント編組体、又はフィラメント編物体から形成される。細長管状本体の拡張形態は、近位部と遠位部との間に延びる、拡張されたサドル領域130を画成する。サドル領域は、細長管状本体の近位部に近接する第1の端部134と、細長管状本体の遠位部に近接する第2の端部136と、第1の端部と第2の端部との間に設けられた括れ部138とを備える。括れ部は、少なくとも第1の端部の外径又は第2の端部の外径の一方を一定に維持しつつ第1の直径形態と第2の直径形態との間で移行するように構成される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
1つ以上のフィラメント織物体、フィラメント編組体、若しくはフィラメント編物体、又は、1つ以上のフィラメント織物体、フィラメント編組体、及びフィラメント編物体から形成され、近位部と、遠位部と、前記近位部と前記遠位部との間の長手部とを備え、前記長手部に沿って全体に延びるルーメンを画成する細長管状本体を備え、
前記細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有し、前記拡張形態は、前記近位部と前記遠位部との間に延びる、拡張されたサドル領域を画成し、
前記サドル領域は、前記細長管状本体の前記近位部に近接する第1の端部と、前記細長管状本体の前記遠位部に近接する第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に設けられた括れ部とを備え、
前記括れ部は、前記第1の端部の外径又は前記第2の端部の外径の少なくとも一方を一定に維持しつつ第1の直径形態と第2の直径形態との間で移行するように構成される、医療装置。
【請求項2】
前記1つ以上のフィラメント編組体は、形状記憶材料で形成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記括れ部は、前記1つ以上のフィラメントと一体形成される請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記括れ部は、閾値の力が当該括れ部に作用した場合に、前記第1の直径形態と前記第2の直径形態との間で移行するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項5】
前記第1の直径形態において、前記括れ部は流体若しくはデブリ又はそれらの双方が内部に流通することを阻止するように構成され、前記第2の直径形態において、前記括れ部は、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項6】
前記括れ部は、前記サドル領域の略中間点に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項7】
前記細長管状本体の少なくとも一部は、被覆されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記細長管状本体の前記近位部の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内表面に接触するように構成されており、前記細長管状本体の前記遠位部の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内表面に接触するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項9】
前記細長管状本体の拡張形態において、前記近位部は近位保持部材に拡張し、前記遠位部は遠位保持部材に拡張し、
前記近位保持部材と前記遠位保持部材は、前記サドル領域に沿って前記近位保持部材と前記遠位保持部材との間に前記第1の生体管腔の組織壁と前記第2の生体管腔の組織壁の並置を維持するように構成される、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
本医療装置は第1のステントからなるとともに、前記細長管状本体の前記近位部の外表面と前記細長管状本体の前記遠位部の外表面は、第2のステントの開口内部通路の内面に接触するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の医療装置。
【請求項11】
前記近位保持部材は、単壁のフランジ構造を含むとともに、前記遠位保持部材は、単壁のフランジ構造を含む、請求項9に記載の医療装置。
【請求項12】
前記単壁のフランジ構造は、前記サドル領域から径方向に延びる、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記近位保持部材の直径と前記遠位保持部材の直径は前記サドル領域の直径よりも大きい、請求項9に記載の医療装置。
【請求項14】
前記サドル領域の直径は、前記非拡張形態における前記細長管状本体の直径よりも大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、医療装置の分野に関し、生体管腔間の流体連通の確保に関する。特に、本発明は、生体管腔間に制御された流路又はアクセス通路を確保するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な状況及び条件下で、2つの生体管腔間に、一方から他方への流体連通を形成するためのアクセスを確保するという要望がある。様々な医療装置(例えば、吻合装置、ドレナージステントなど)で、生体管腔間に開放流若しくはアクセス通路を確保することが可能である。例えば、胃壁又は腸壁に密着している症候性膵仮性嚢胞の経胃的ドレナージ又は経十二指腸的ドレナージを促す吻合装置又はドレナージ装置は、最大60日間にわたって植え込まれたままとなることがある。その装置によって提供されるオープンアクセス経路によって、膵仮性嚢胞から胃又は十二指腸への流体及び/若しくはデブリの継続的な流れが可能となり得る。アルカリ性を中和するとともに流体及び/若しくはデブリの粘度を高める酸性胃液が仮性嚢胞に流入することによって、膵仮性嚢胞の解消はさらに促進されることがある。状況によっては、医療装置を通した継続的な一方向又は双方向の流れが効果的である場合があるが、様々な医学的状態では、制御された周期的若しくは間欠的なドレナージ及び/又は生体管腔若しくは生体器官へのアクセスが必要となる。
【発明の概要】
【0003】
例えば、有限期間又は限定期間にわたって制御的に生体管腔若しくは生体器官のインフュージョン及び/又はドレナージを可能とする、本発明の装置及び/又は方法によって、様々な優れた医学的転帰を実現し得る。
【0004】
一態様では、本発明は、医療装置に関するものであり、この医療装置は、近位部と、遠位部と、近位部と遠位部との間の長手部とを備える細長管状本体を備え、細長管状本体は、その長さに沿ってルーメンを画成している。細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有することができ、拡張形態において、近位部は近位保持部材に拡張し、遠位部は遠位保持部材に拡張し、近位保持部材と遠位保持部材との間に延びる円筒状サドル領域が留まっている。円筒状サドル領域は、第1の直径形態と、第1の直径形態よりも大きい第2の直径形態との間で移行するように構成された括れ部を含み得る。括れ部は、括れ部に付与された閾値レベルの力に応答して第1の直径形態から第2の直径形態に移行し得る。括れ部は、円筒状サドル領域の略中間点に配置され得る。遠位保持部材、近位保持部材、並びに/又は円筒状サドル領域は、その内面及び/若しくは外面を被覆若しくはコーティングする膜を含み得る。細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体、フィラメント織物体、又はフィラメント編物体で形成され得る。近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成されることができ、遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成され得る。第1の生体管腔及び第2の生体管腔の組織壁は、近位保持部材と遠位保持部材との間に、円筒状サドル領域に沿って並置され得る。あるいは、近位保持部材の表面と遠位保持部材の表面とは、他の医療装置の開口内部通路の内面に接触するように構成され得る。近位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含むことができ、遠位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含み得る。近位保持部材と遠位保持部材とは、円筒状サドル領域から径方向に延出し得る。近位保持部材の直径と遠位保持部材の直径とは、円筒状サドル領域の直径よりも大きくなり得る。
【0005】
他の態様では、本発明は、医療装置に関するものであり、この医療装置は、近位部と、遠位部と、近位部と遠位部との間の長手部とを備える細長管状本体を備え、細長管状本体は、その長さに沿ってルーメンを画成している。細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有することができ、拡張形態において、近位部は近位保持部材に拡張し、遠位部は遠位保持部材に拡張し、近位保持部材と遠位保持部材との間に延びる円筒状サドル領域が留まっている。円筒状サドル領域内には、プラグを配置し得る。プラグは、閉形態と開形態との間で移行するように構成され得る。例えば、プラグは、シース内に配置された少なくとも第1と第2の膜を含み得る。第1と第2の膜のそれぞれは、その表面に貫通して延びる少なくとも1つのスリットを含み得る。各々のスリットは、第1と第2の膜に付与された閾値レベルの力に応答して閉形態から開形態に移行するように構成され得る。プラグの外径は、円筒状サドル領域の内径以上であり得る。シースは、熱収縮材料を含み得る。シースは、水性環境において膨潤するように構成されたヒドロゲルコーティングを含み得る。遠位保持部材、近位保持部材、及び/又は円筒状サドル領域は、その内面及び/又は外面を被覆若しくはコーティングする膜を含み得る。細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体で形成され得る。近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成されることができ、遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成され得る。第1の生体管腔及び第2の生体管腔の組織壁は、近位保持部材と遠位保持部材との間に、円筒状サドル領域に沿って並置され得る。近位保持部材の表面と遠位保持部材の表面とは、他の医療装置の開口内部通路の内面に接触するように構成され得る。近位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含むことができ、遠位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含み得る。近位保持部材と遠位保持部材とは、円筒状サドル領域から径方向に延出し得る。近位保持部材の直径と遠位保持部材の直径とは、円筒状サドル領域の直径よりも大きくなり得る。
【0006】
さらなる他の態様では、本発明は、医療装置に関するものであり、この医療装置は、近位部と、遠位部と、近位部と遠位部との間の長さとを含む細長管状本体を備え、細長管状本体は、その長さに沿ってルーメンを画成している。細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有することができ、拡張形態において、近位部は近位保持部材に拡張し、遠位部は遠位保持部材に拡張し、近位保持部材と遠位保持部材との間に延びる円筒状サドル領域が留まっている。細長管状本体の一部に、コーンを装着又は一体形成し得る。コーンは、コーンに付与された閾値レベルの力に応答して、円筒状サドル領域内で第1の直径形態と拡張された第2の直径形態との間で移行するように構成され得る。近位保持部材、遠位保持部材、円筒状サドル領域、並びに/又はコーンは、その内面及び/若しくは外面を被覆若しくはコーティングする膜を含み得る。細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体で形成され得る。コーンは、細長管状本体の1つ以上のフィラメント編組体に一体形成又はその他の方法で装着され得る。コーンは、複数の重なった可撓性フィラメントループを含み得る。コーンは、遠位保持部材に装着されるとともに遠位保持部材を越えて遠位方向に延出するノーズコーンであり得る。追加的又は代替的に、コーンは、円筒状サドル領域内に配置された内部コーンであり得る。内部コーンは、円筒状サドル領域の略中間点に配置され得る。内部コーンは、遠位保持部材に向かって直径が先細りする部分を含み得る。内部コーンは、近位保持部材に向かって直径が先細りする部分を含み得る。細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体で形成され得る。近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成されることができ、遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成され得る。第1の生体管腔及び第2の生体管腔の組織壁は、近位保持部材と遠位保持部材との間に、円筒状サドル領域に沿って並置され得る。近位保持部材の表面と遠位保持部材の表面とは、他の医療装置の開口内部通路の内面に接触するように構成され得る。近位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含むことができ、遠位保持部材は、単壁又は二重壁のフランジ構造を含む。近位保持部材と遠位保持部材とは、円筒状サドル領域から径方向に延出し得る。近位保持部材の直径と遠位保持部材の直径とは、円筒状サドル領域の直径よりも大きくなり得る。
【0007】
本発明の非限定的な実施態様について、例として添付の図面を参照して説明する。それらの図面は、概略的なものであって、縮尺通りに描かれたものではない。それらの図面では、図示される同じ構成要素又は略同じ構成要素は、通常、それぞれ1つの同じ数字で表している。明確にするため、すべての図面においてすべての構成要素にラベル付けしているわけではなく、また、当業者が本発明を理解できるために例示の必要がない場合には、各実施態様のすべての構成要素を図示しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図1B】本発明の一実施形態による医療装置の正面斜視図。
図2】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図3】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図4A】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図4B】本発明の一実施形態による医療装置の正面斜視図。
図5A】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図5B】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図5C】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図5D】本発明の一実施形態による医療装置の斜視図。
図6A】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図6B】本発明の一実施形態による医療装置の正面斜視図。
図7】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図8A】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図8B】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図8C】本発明の一実施形態による医療装置の側面斜視図。
図9A】本発明の一実施形態による医療装置に貫通して延びる、医療装置の側面斜視図。
図9B】本発明の一実施形態による医療装置に貫通して延びる、医療装置の側面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、記載する特定の実施形態に限定されるものではない。本明細書で使用する用語は、単に具体的な実施形態を説明する目的のものにすぎず、添付の請求項の範囲に加えて限定するものではない。本明細書で使用する技術用語はいずれも、特に定義されている場合を除き、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に捉えるのと同じ意味を持つものである。
【0010】
本発明の実施形態は、胃壁若しくは十二指腸壁から腹腔への、又はそれらの間で、制御された周期的若しくは間欠的な流路又はアクセス通路を確保するため及び/若しくは維持するための医療装置(例えば、吻合装置、ドレナージステントなど)及びシステムを特に参照して説明しているが、そのような医療装置は、様々な生体器官、管腔、管、脈管、瘻孔、嚢胞、及び/若しくは腔(例えば、真皮、胃、十二指腸、空腸、小腸、胆嚢、腎臓、膵臓、膵胆道系、膀胱、尿管、膿瘍、被包化膵臓壊死(WOPN:Walled-Off
Pancreatic Necrosis)、胆管など)から、又はそれらの間で、制御された周期的若しくは間欠的な流路又はアクセス通路を確保及び/又は維持するための、経管腔的内視鏡手術(NOTES:Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)処置など(例えば、外胆汁ドレーン変換、腸腸吻合術、胃空腸吻合術、胃十二指腸吻合術及び胃回腸吻合術、胃十二指腸経結腸的手術、経胃的手術、経気管的手術、経膣的手術、胆石症手術、総胆管結石症手術など)、様々な医療処置で使用され得るということは理解されるべきである。諸装置は、例えば経皮的、内視鏡的、腹腔鏡的、又はそれらの何らかの組み合わせなど、様々に異なるアクセスポイント及びアプローチによって、挿入されることが可能である。本明細書で開示する医療装置は、自己拡張型のものであるが、他の実施形態において、例えばバルーンカテーテルなど、他の手段によって医療装置を拡張可能であり得る。さらに、そのような医療装置は、ドレナージに限らず、治療薬の送達及び/又はある部位から他の部位に流体若しくは固形物を迂回又はバイパスさせるための経路の形成、閉塞物の除去及び/又は組織の非侵襲的若しくは最小侵襲的な操作、のような他の目的で、器官、脈管、又は生体管腔への制御されたアクセスを助ける場合がある。
【0011】
本明細書で使用される場合の単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に文脈で明確に示していない限り、複数形も含むものである。さらに、本明細書で使用される場合の「comprises」及び/若しくは「comprising」又は「includes」及び/若しくは「including」という表現は、記載される特徴、領域、ステップ、要素、及び/又はコンポーネントの存在を規定するものと理解されるが、ただし、1つ以上の他の特徴、領域、整数値、ステップ、オペレーション、要素、コンポーネント、及び/又はそれらからなる群の存在若しくは追加を除外するものではない。
【0012】
本明細書で使用される場合の、「遠位」という用語は、装置を患者に導入するときに医療専門家から最も遠い端を指し、一方、「近位」という用語は、装置を患者に導入するときに医療専門家に最も近い端を指す。
【0013】
一実施形態において、本発明は、医療装置(例えば、吻合装置、ドレナージステントなど)に関するものであり、これにより、治療効果を最大限とし、かつ患者の不快感を最小限とするために、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、治療薬、薬剤、細胞治療液など、先進治療医薬品(ATMP:Advanced Therapy Medical Product)の内視鏡による直接送達を容易とする、生体管腔若しくは生体器官への制御された周期的なアクセスのための、効率的な機構を確保し得る。例えば、本発明の医療装置は、罹患した器官若しくは組織を含む体腔又はそれに隣接した体腔への、胃壁又は十二指腸壁を通した、免疫増強治療液の制御された反復的/間欠的な内視鏡送達を支援し得る。
【0014】
図1Aを参照して、一実施形態において、本発明の医療装置100は、ルーメンを形成するとともに近位部112と遠位部122と長さと直径とを備える細長管状本体110を含み得る。細長管状本体110は、非拡張形態(図示していない、例えば、拘束形態、非展開形態、又は送達形態)と拡張形態(例えば、非拘束形態、送達済形態、又は展開形態)とを有することができ、拡張形態において、近位部112は径方向に拡張して近位保持部材114となり、遠位部122は径方向に拡張して遠位保持部材124となり、近位保持部材と遠位保持部材との間に延びる円筒状サドル領域130が留まっている。円筒状サドル領域130の直径は、非拡張形態における細長管状本体110の直径よりも大きくなり得る。近位保持部材114及び遠位保持部材124は、それぞれ面116、126を画定するように、細長管状本体110から径方向に(例えば、その外周に対して直角に)延出し得る。円筒状サドル領域130は、大径の第1の端部134と第2の端部136との間に配置された括れ部又は狭窄部138(例えば、弁)を含み得る。一実施形態において、括れ部138は、これを通過する流体及び/若しくはデブリの流れを制限又は阻止する第1の直径形態(例えば、閉形態)と、第1の直径よりも大きい第2の直径形態であって、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供する第2の直径形態(例えば、開形態)との間で移行するように構成され得る。例えば、以下でさらに詳細に説明するように、括れ部138は、例えば円筒状サドル領域130を介して進入される医療装置によって付与される、括れ部に付与された閾値レベルの力に応答して、第1の直径形態から第2の直径形態に移行するように構成され得る。医療装置100は、例えば形状記憶材料である、1つ以上のフィラメント織物体、フィラメント編組体、及び/又はフィラメント編物体で構成することができ、これにより、円筒状サドル領域130内から医療装置を抜去/除去したときに、括れ部138が第1の直径形態に戻ることを可能とし得る。
【0015】
図1Bは、円筒状サドル領域に貫通して延びる開口又はアクセス通路がほとんどないように、括れ部138が第1の直径形態にある、医療装置100の正面斜視図を提示している。種々の実施形態において、本発明の医療装置100は、図1Aに示す構成に限定されることなく、様々に異なる構成及び/又は寸法を有し得る。例えば、図2を参照して、一実施形態において、本発明の医療装置200は、近位保持部材214及び遠位保持部材224と、円筒状サドル領域230とを含むことができ、円筒状サドル領域230は、円筒状サドル領域の中央に向かって直径が先細りするとともに括れ部238の各側に配置された第1の端部234及び第2の端部236を有する。図3は、ガイドワイヤ250上に被せられ、部分的に展開された構成の、本発明の医療装置100、200の斜視図を提示している。円筒状サドル領域130、230は、本発明の医療装置100、200の構成要素として示されているが、種々の実施形態において、円筒状サドル領域の構成は、本明細書で開示する医療装置300、400、500、600のいずれかに組み入れられ得る。
【0016】
図4A図4Bを参照して、一実施形態において、本発明の医療装置300は、円筒状サドル領域330が一定の内径及び外径を有することを除いて、医療装置100、200と同一又は同等の構成及び要素を含み得る。一実施形態において、医療装置300は、円筒状サドル領域330内に配置されたプラグ331を含み得る。プラグ331は、第1のワッシャ335と第2のワッシャ336との間で、シース又はハウジング332内に配置された第1の膜333及び第2の膜334を含み得る。第1の膜333及び第2の膜334は、これを通過する流体及び/若しくはデブリの流れを制限又は阻止する第1の形態(例えば、閉形態)と、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供する第2の形態(例えば、開形態)との間で移行するように構成された1つ以上のスリット333a/333b、334a/334b(図5A)を含み得る。例えば、スリット333a/333b、334a/334bは、例えば近位保持部材を通して円筒状サドル領域に進められる医療装置によって付与される、第1の膜333及び第2の膜334に付与された閾値レベルの力に応答して、第1の形態から第2の形態に移行するように構成され得る。種々の実施形態において、第1の膜333及び第2の膜334を構成する材料(例えば、発泡体、ゴム、シリコーン、ネオプレンなど)によって、プラグ331内から医療装置を抜去/除去したときに、スリット333a/333b、334a/334bが第1の形態に戻ることを可能とし得る。
【0017】
図4Bは、円筒状サドル領域に貫通して延びる開口又はアクセス通路がほとんどないように、第1の膜333のスリット333a/333bが第1の形態にある、医療装置300の正面斜視図を提示している。本発明の膜333、334を、略円形状として示しているが、種々の実施形態において、プラグ331は、様々なサイズ、形状、形態、及び/又は厚さの任意の数の膜(例えば、単一の膜、3つ以上の膜など)を含み得る。同様に、膜333、334内に形成されたスリット333a/333b、334a/334bを、「X」形状又は十字形状で交差する一対のスリットとして示しているが、種々の実施形態において、スリットの数、長さ、配置、及び/又は向きは、様々であり得る。
【0018】
図5A図5Dを参照して、一実施形態において、プラグ331は、第1のワッシャ335と第2のワッシャ336との間で、シース332内に第1の膜333及び第2の膜334を配置することにより、組み立てられ得る。第1のワッシャ335及び第2のワッシャ336のそれぞれは、当該第1,第2のワッシャ335,336に流体を通過させるための開口内部通路を画成し得る。図5Bに示すように、第1の膜333と第2の膜334、及び、第1のワッシャ335と第2のワッシャ336は、それぞれ、シース332内で所定の距離又は間隔で隔てられ得る。図5Cを参照して、一実施形態において、シース332は、高温(例えば、100℃~150℃)にさらされると、その内部の第1の膜333及び第2の膜334並びに第1のワッシャ335及び第2のワッシャ336の位置/向きをロック若しくは固定するために、しぼみ、収縮するように構成されたポリマ材料又はプラスチック材料(例えば、熱収縮材料)を含み得る。一実施形態において、組み立て済みの熱収縮したプラグ331は、円筒状サドル領域330の内壁の一部と、摩擦嵌合、圧縮嵌合、又は締まり嵌合を形成し得るように、円筒状サドル領域330の内径d図4A)と略等しい外径d図5C)又はそれよりもわずかに大きい外径を有し得る。追加的又は代替的に、シース332の外面を円筒状サドル領域330の内壁に堅固に係合させるために、シース332は、水性流体(例えば、体液)に接触すると膨張若しくは膨潤するヒドロゲル材料で、コーティング又は含浸され得る。
【0019】
プラグ331を、本発明の医療装置300の構成要素として示しているが、種々の実施形態において、プラグは、本明細書で開示する医療装置100、200、400、500、600のいずれかに組み入れられ得る。
【0020】
図6Aを参照して、一実施形態において、本発明の医療装置400は、ルーメンを形成するとともに近位部412と遠位部422と長さと直径とを備える細長管状本体410を含み得る。細長管状本体410は、非拡張形態(図示していない、例えば、拘束形態、非展開形態、又は送達形態)と拡張形態(例えば、非拘束形態、送達済形態、又は展開形態)とを有することができ、拡張形態において、近位部412は径方向に拡張して近位保持部材414となり、遠位部422は径方向に拡張して遠位保持部材424となり、近位保持部材と遠位保持部材との間に延びる円筒状サドル領域430が一定の内径及び外径で留まっている。円筒状サドル領域430の直径は、非拡張形態における細長管状本体410の直径よりも大きくなり得る。近位保持部材414及び遠位保持部材424は、それぞれ面416、426を画定するように、細長管状本体410から径方向に(例えば、その外周に対して直角に)延出し得る。複数の重なった可撓性ループからなるノーズコーン432が、遠位保持部材424を越えて遠位方向に延出し得る。それらのループの各々は、その内面及び/若しくは外面を被覆若しくはコーティングする膜を含み得る。一実施形態において、ノーズコーン432は、細長管状本体410を構成するフィラメント織物体、フィラメント編組体、及び/又はフィラメント編物体で一体形成され得る。追加的又は代替的に、ノーズコーン432の近位端436は、当該技術分野で一般的に知られているように、適切なグルー、接着剤、樹脂、半田、又は他の接合技術を用いて、遠位保持部材に付着され得る。一実施形態において、複数の重なった可撓性ループの各々は、円筒状サドル領域への流体の流れを制限又は阻止する第1の直径形態(例えば、閉形態)と、第1の直径形態よりも大きい第2の直径形態であって、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供する第2の直径形態(例えば、開形態)との間で移行するように構成されたノーズコーン432を形成するように、カール形状又はテーパ形状を有し得る。例えば、ノーズコーン432は、例えば近位保持部材、円筒状サドル領域、及び遠位保持部材を介して進入される医療装置によって付与される、ノーズコーンに付与された閾値レベルの力に応答して、第1の直径形態から第2の直径形態に移行するように構成され得る。例えば形状記憶繊維又は形状記憶フィラメントで構成された複数のループによって、円筒状サドル領域内から医療装置を抜去/除去したときに、ノーズコーン432が第1の直径形態に戻ることを可能とし得る。図6Bは、ノーズコーン432を通って円筒状サドル領域内に及ぶ開口又はアクセス通路がほとんどないように、複数の重なった可撓性ループのそれぞれの遠位端が(例えば、互いに接触している)第1の形態にある、医療装置400の正面斜視図を提示している。
【0021】
種々の実施形態において、第1の生体管腔内及び第2の生体管腔内で、又はそれらの間で、展開された医療装置の動き/移動を阻止又は制限するために、例えば医療装置100、200、300、400の、近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁(例えば、内壁)に非侵襲的に係合し得るとともに、遠位保持部材の表面は、第2の(例えば、隣接した、又は並置された)生体管腔の組織壁(例えば、内壁)に非侵襲的に係合し得る。あるいは、一実施形態において、展開された医療装置の動き/移動を阻止又は制限するために、近位保持部材及び遠位保持部材のそれぞれの表面は、1つの同じ組織壁の対向する両側に非侵襲的に係合し得る。
【0022】
一実施形態において、本発明の医療装置は、展開前若しくは展開後の他の医療装置(例えば、従来のドレナージステント)の開口内部通路内に、これを通過する周期的なフロー及び/又はアクセスを提供するために配置されるように構成され得る。例えば、図7を参照して、一実施形態において、本発明の医療装置500は、ある例外を除いて医療装置400と同一又は同等の構成及び要素を含み得る。該例外は、後述するように、近位保持部材514及び遠位保持部材524がそれぞれ平坦面516、526を備えた細長い形態(例えば、「ランドフレア」形態)を含み、該平坦面516、526は、本医療装置500がその内部で展開された別体の医療装置の内面に係合するように構成されることである。
【0023】
図8Aを参照して、一実施形態において、本発明の医療装置600は、ノーズコーンが円筒状サドル領域内に配置された内部コーン632で置き換えられたことを除いて、医療装置500と同一又は同等の構成及び要素を含み得る。内部コーンは、遠位保持部材に向かって直径が先細りする部分を含み得る。種々の実施形態において、内部コーン632は、例えば形状記憶繊維又は形状記憶フィラメントで構成された複数のループを含むことができ、それらは、円筒状サドル領域を構成するフィラメント編組体に一体形成されている。上述のように、ループの各々は、その内面及び/若しくは外面を被覆若しくはコーティングする膜を含み得る。追加的又は代替的に、内部コーン632の外面は、当該技術分野で一般的に知られているように、適切なグルー、接着剤、樹脂、半田、又は他の接合技術を用いて、円筒状サドル領域内に付着され得る。上述のように、一実施形態において、複数の重なった可撓性ループの各々は、円筒状サドル領域を通過する流体及び/若しくはデブリの流れを制限又は阻止する第1の直径形態(例えば、閉形態)と、第1の直径形態よりも大きい第2の直径形態であって、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供する第2の直径形態(例えば、開形態)との間で移行するように構成されるとともに遠位方向に向いた内部コーン632を形成するように、カール形状又はテーパ形状を有し得る。例えば、内部コーン632は、例えば近位保持部材、円筒状サドル領域、及び遠位保持部材を介して進入される医療装置によって付与される、内部コーンに付与された閾値レベルの力に応答して、第1の直径形態から第2の直径形態に移行するように構成され得る。複数の可撓性ループを構成し得る形状記憶繊維又は形状記憶フィラメントによって、円筒状サドル領域内から医療装置を抜去/除去したときに、内部コーン632が第1の直径形態に戻ることが可能となる。図8Aでは、図7を参照して上述したように、「ランドフレア」構成を有する本体内に示しているが、本体に一体形成又は付着される内部コーンを、本明細書に記載の様々なフランジ形態のいずれかを有する本体内に用い得る。
【0024】
図8B図8Cを参照して、種々の実施形態において、医療装置600は、上述のように、予め展開された従来のドレナージステント700内に、その開口内部通路を周期的な流路又はアクセス通路に変換するために配置され得る。近位保持部材614及び遠位保持部材624のそれぞれの表面616、626は、展開済みの従来の医療装置700の内面に、その内部で医療装置600の移動を阻止するために摩擦係合し得る。図8B及び図8Cでは、従来の自己拡張型ドレナージステント700のルーメン(図8B)又は円筒状サドル領域(図8C)内に配置された医療装置600を示しているが、種々の実施形態において、図7の医療装置500を、予め展開された従来のドレナージステント内に配置してもよい。
【0025】
図9Aを参照して、一実施形態において、使用者は、医療器具440(例えば、ドレナージカテーテル、インフュージョンカテーテル、マイクロインフュージョンカテーテルなど)を、その医療器具用に予め配置されたガイドワイヤを用いて、又はガイドワイヤを用いることなく、予め植え込まれた医療装置400を介して、例えば内視鏡による誘導下で進入させ得る。種々の実施形態において、医療器具440は、罹患した組織又は器官の周囲若しくは隣接の腔又は空間内に治療薬を送達し得る。最大の薬効を得るために有効量の治療薬を標的管腔内に直接送達することに加えて、例えばノーズコーンを有する医療装置400が閉姿勢と開姿勢との間で移行することが可能であることによって、患者に過度の不快感を与えることなく、1つ以上の治療薬が投与される長期(例えば、数週間、数ヶ月、又は数年)のレジメンが可能となり得る。追加的又は代替的に、医療器具440は、膿瘍又は仮性嚢胞内から流体及び/若しくはデブリを洗浄及び/又は吸引するように構成され得る。図9Bを参照して、他の実施形態において、予め植え込まれた医療装置400内に、これを通過する開口流路を提供するために、例えば内視鏡による誘導下でドレナージ装置450(例えば、ピッグテールステントなど)を配置し得る。医療器具(図9A)又はドレナージ装置(図9B)を医療装置400内から近位方向に抜去すると、ノーズコーンは、これを通過する流れを制限及び/又は阻止する第1の位置(例えば、閉位置)に戻り得る。図9A図9Bでは、予め植え込まれた医療装置400を介して導入された医療器具440又はドレナージ装置450を示しているが、種々の実施形態において、これら(及びその他の)医療器具並びにドレナージ装置を、本明細書で開示する医療装置100、200、300、500、600のいずれかを介して導入し得る。
【0026】
使用時には、例として、本発明の医療装置100、200、300、400は、非拡張形態で、組織穿通要素を含み得るデリバリカテーテルのルーメン内に配置され得る。組織穿通要素の先鋭遠位端を、第1の生体管腔(例えば、胃又は十二指腸)の組織壁に貫通させ、第2の生体管腔(例えば、腹腔)の組織壁に貫通させて進入させ得る。追加的又は代替的に、組織穿通要素は、開口を形成する目的で熱又はエネルギー(例えば、RFエネルギー)を受け取るように構成された導電性要素(例えば、近位方向に延出するアームを有するハローワイヤコーン)を備え得る。
【0027】
種々の実施形態において、ガイドワイヤに被さって組織穿通要素を進入させ得る。前記ガイドワイヤは、当該ガイドワイヤの遠位端が第2の生体管腔内に配置されるように、第1の生体管腔及び第2の生体管腔を介して予め進入されている。あるいは、上記の方法において、経路を形成するために、先鋭遠位チップを有する別個の器具を、上記の経路に沿って第2の生体管腔内に進入させ得る。その別個の器具を誘導するために使用される場合のガイドワイヤを、導入又は留置することができ、そのガイドワイヤに被さって、その別個の器具は抜去される。
【0028】
デリバリカテーテルに装填された、上記の種々の実施形態による医療装置100、200、300、400を、ガイドワイヤに被せて挿入することができ、その後、その医療装置を以下で概説するステップに従って展開させる。
【0029】
次に、医療装置100、200、300、400の遠位部を、デリバリカテーテル(組織穿通要素を含んでも含まなくてもよい)のルーメンを越えて遠位方向にさらに進入させることができ、かつ/又はデリバリカテーテルのアウタシースを医療装置から退避させることができ、これにより、遠位保持部材は、第2の生体管腔内で完全に展開されて、遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内面に接触する。次に、デリバリカテーテルを、第1の生体管腔内へと、さらに近位方向に退避させることができ、医療装置100、200、300、400の近位部を、デリバリカテーテルのルーメンを越えて遠位方向に進めて、かつ/又はデリバリカテーテルのアウタシースを医療装置の周囲からさらに退避させることができ、これにより、近位保持部材は、第1の生体管腔内で完全に展開されて、近位保持部材の表面は、その組織壁の内面に接触する。
【0030】
あるいは、本発明の医療装置500、600は、拡張形態で、アウタシースを含むデリバリカテーテルのルーメン内に配置され得る。デリバリカテーテルの遠位端を、第1の生体管腔と第2の生体管腔との間に予め留置された従来のドレナージ装置の開口内部通路内に、上記で概説したステップを用いて進入させ得る。種々の実施形態において、デリバリカテーテルを、ドレナージ装置が予め留置された部位まで、内視鏡による誘導下で進入させ得る。次に、医療装置500、600の遠位部を、デリバリカテーテルのルーメンを越えて遠位方向に進入させることができ、かつ/又はデリバリカテーテルのアウタシースを医療装置の周囲から退避させることができ、これにより、遠位保持部材は、従来の医療装置の開口内部通路の遠位部内で完全に展開されて、遠位保持部材の表面は、開口内部通路の内面に接触する。次に、医療装置500、600の近位部を、デリバリシースのルーメンを越えて遠位方向に進入させることができ、かつ/又はデリバリカテーテルのアウタシースを、医療装置の周囲からさらに退避させることができ、これにより、近位保持部材は、従来の医療装置の開口内部通路の近位部内で完全に展開されて、近位保持部材の表面は、開口内部通路の内面に接触する。
【0031】
図1A図9Bに示す医療装置100、200、300、400、500、600のいずれかの細長管状本体を、1つ以上のフィラメント編組体(例えば、ニチノールワイヤなど)で形成し得る。近位保持部材、遠位保持部材、円筒状サドル領域、ノーズコーン、及び/又は内部コーンは、これを通過する制御されたフロー(例えば、体液、物質など)及び/又はアクセスのために構成された連続した開口内部通路を画成するように、その内面及び/若しくは外面を被覆若しくはコーティングする膜をさらに含み得る。そのコーティングは、非拡張形態及び拡張形態の医療装置にコーティングがフィットするように、例えば、シリコーン、ゴム、ポリエチレン、PVDF、Chronoflex(登録商標)、及び熱可塑性エラストマなど、(例えば、胆汁のような体液に暴露されたときに)非分解性かつ生体適合性の様々なポリマ材料を含み得る。
【0032】
図1A図9Bに示す医療装置100、200、300、400、500、600のいずれかの近位保持部材と遠位保持部材とは、それらの保持部材の1つ以上が、細長管状本体に対して必ずしも直角ではない角度で、細長管状本体の長手軸から径方向に延出し、かつ/又はそれらの表面が必ずしも平面状ではないなど、様々な構成を有し得る。種々の実施形態において、細長管状本体の外周及び長手軸に対する保持部材の角度は、他の角度(例えば、30度、45度、60度、75度など)をとることができ、又は保持部材に変曲点を形成して、保持部材の長手に沿った角度が変化し得る。例えば、近位保持部材と遠位保持部材の一方又は両方は、細長管状本体の端に向かって外向きに延出するか、細長管状本体の中央部に向かって戻るように延出するか、又はこの2通りの何らかの組み合わせで方向が変化し得る。
【0033】
例えば、近位保持部材と遠位保持部材の一方又は両方は、拡張形態にあるときには、円筒状サドル領域の相対する両端においてフランジ形態となるように、円筒状サドル領域の長手軸から離間する方向に広がり得る。それぞれのフランジ形態は、フランジの第1と第2のセグメントを規定し得る少なくとも第1と第2の変曲点を含み得る。第1のセグメントは、管状本体の長手軸に対して直角な中心面に向かって、第1の変曲点から延出することができ、第2のセグメントは、中心面から離間するように、第1の変曲点から延出し得る。第1のセグメントと円筒状サドル領域によって規定される第1の変曲点の角度は、第1のセグメントと第2のセグメントによって規定される第2の変曲点の逆の角度と、少なくとも同程度の大きさであり得る。
【0034】
他の例として、それぞれのフランジは、フランジの第1と第2のセグメントを規定する少なくとも第1と第2の変曲点を含むことができ、その場合、第2の変曲点は、第1の変曲点よりも、長手軸から径方向にさらに多く離間していることができ、かつ第2の変曲点は、第1の変曲点よりも、長手軸に沿った中心面に近接し得る。円筒状サドル領域の相対する両端におけるフランジは、長手軸に平行な平面であって、長手軸の上方と下方のそれぞれ少なくとも1つの平面に対して、それらの平行な平面に沿った少なくとも2つの別々の点において接触し得る。
【0035】
さらなる他の例として、それぞれのフランジ形態は、フランジの第1と第2のセグメントを規定する少なくとも第1と第2の変曲点を含み得る。第1のセグメントは、管状本体の長手軸に対して直角な中心面に向かって、第1の変曲点から延出していることができ、第2のセグメントは、中心面から離間するように、第2の変曲点から延出し得る。円筒状サドル領域と第1のセグメントとの交点は、第1の変曲点を規定し得るとともに、第1のセグメントと第2のセグメントとの交点は、第2の変曲点を規定し得る。第1の変曲点の角度は、90度以下であることができ、第2の変曲点の逆の角度は、90度以下であり得る。
【0036】
種々の実施形態において、近位保持部材と遠位保持部材の一方又は両方は、円筒状サドル領域の外径dよりも大きい外径dを有し得る。例えば、外径dは、円筒状サドル領域の外径dよりも75%~100%大きい程度であり得る。非限定的な例として、外径dは、約7.0mm~約30mmであることができ、外径dは、約3.0mm~約15.0mmであり得る。種々の実施形態において、近位保持部材及び遠位保持部材のサイズ(例えば、幅)を増加又は減少させる(例えば、近位保持部材と遠位保持部材との間に、圧縮される組織層の表面積を増加又は減少させる)ことによって、第1の生体管腔と第2の生体管腔との間に形成される開口のサイズ(例えば、直径)を増加又は減少させ得る。追加的又は代替的に、拡張形態における細長管状本体の長さは、非拡張形態にあるときの細長管状本体の長さよりも、例えば少なくとも40%短く、短縮され得る。
【0037】
例えば、医療装置100、200、300、400といった本発明の種々の実施形態は、拡張形態において、細長管状本体の各端に、近位保持部材及び遠位保持部材として二重壁のフランジを含み得る。他の様々な実施形態において、近位保持部材及び/又は遠位保持部材は、限定するものではないが、各端に単壁のフランジ構造、及び/又は各端に2つ以上の単壁若しくは二重壁のフランジ構造など、様々な他の構成を有し得る。長手軸の上方及び/又は下方のフランジの壁は、対称であることができ、又は非対称であり得る。長手軸の上方及び/又は下方のフランジの壁は、上述のように、壁が長手軸から離間する径方向に延びるにつれて方向が変化するフランジの壁のセグメントを規定する複数の変曲点を有し得る(例えば、セグメントは、本体の径方向中心線に対して平行に、及び/又は径方向中心線から離間するように、及び/又は径方向中心線に向かうように、径方向に延出することが可能である)。それらのセグメントは、直線に沿って延出していることができ、又は曲線状であることができ、又は直線と曲線の組み合わせを含み得る。
【0038】
種々の実施形態において、第1の生体管腔から第2の生体管腔への流体及び/若しくはデブリの流れ(例えば、逆流)を阻止又は最小限に抑えるために、例えば、ノーズコーン又は内部コーンの一部が、近位保持部材に向かって直径が先細りするように、ノーズコーン又は内部コーンの方向を逆にし得る。追加的又は代替的に、種々の実施形態において、第1の生体管腔から第2の生体管腔への流体及び/若しくはデブリの流れ(例えば、逆流)を阻止又は最小限に抑えるという同じ目的を達成するために、本明細書で開示する医療装置のいずれかを、近位保持部材を第2の生体管腔の組織壁に接触させ、遠位保持部材を第1の生体管腔の組織壁に接触させるように、患者の体内に留置し得る。
【0039】
種々の実施形態において、細長管状本体、ノーズコーン、及び/又は内部コーンを構成するフィラメント織物体、フィラメント編組体、及び/又はフィラメント編物体のいずれかは、様々に異なる断面形状(例えば、楕円形、円形、扁平形、方形など)を有することができ、さらに、形状記憶金属及び形状記憶ポリマなどの金属及び/又はポリマで形成され得る。フィラメント織物体、フィラメント編組体、及び/又はフィラメント編物体は、織り重ねた単一のフィラメント、又は織り合わせた複数のフィラメントをさらに含み得る。
【0040】
本明細書において開示するとともに請求項に記載している装置及び/又は方法はいずれも、本発明に照らして、過度の実験を行うことなく、製造及び実行することが可能である。本発明の装置及び方法について、好ましい実施形態によって説明しているが、本発明の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の装置及び/又は方法、並びに方法のステップ若しくはステップの順序において、変更を適用できることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかな、かかる同等のものによる置換及び変更はいずれも、添付の請求項で規定される本発明の趣旨、範囲、及び概念の範囲内にあるものとみなされる。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
医療装置であって、
近位部と、遠位部と、前記近位部と前記遠位部との間の長手部とを備え、前記長手部に沿ってルーメンを画成する細長管状本体を備え、
前記細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有し、前記拡張形態において、前記近位部は近位保持部材に拡張し、前記遠位部は遠位保持部材に拡張し、前記近位保持部材と前記遠位保持部材との間にわたって円筒状サドル領域が延びており、
前記細長管状本体は、第1の直径形態と、前記第1の直径形態よりも大きい第2の直径形態との間で移行するように構成された内部コーンを含み、
前記内部コーンは、複数の重なった可撓性フィラメントループからなる、医療装置。
[項目2]
前記内部コーンは、前記内部コーンに付与された閾値の力に応答して、前記第1の直径形態から前記第2の直径形態に移行するように構成される、項目1に記載の医療装置。
[項目3]
前記内部コーンは、前記円筒状サドル領域の略中間点に配置される、項目1又は2に記載の医療装置。
[項目4]
前記内部コーンは、前記遠位保持部材に向かって直径が先細りする部分を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目5]
前記遠位保持部材、前記近位保持部材、前記円筒状サドル領域、及び前記内部コーンは、被覆されている、項目1~4のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目6]
前記細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体で形成されている、項目1~5のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目7]
前記内部コーンは、前記円筒状サドル領域の内壁に装着されている、項目1~6のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目8]
前記内部コーンは、前記細長管状本体の前記1つ以上のフィラメント編組体に一体形成されている、項目6に記載の医療装置。
[項目9]
前記近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成されており、前記遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内面に接触するように構成される、項目1~8のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目10]
前記近位保持部材と前記遠位保持部材とは、前記第1の生体管腔の組織壁と前記第2の生体管腔の組織壁とを、前記近位保持部材と前記遠位保持部材との間に前記円筒状サドル領域に沿って並置するように構成される、項目9に記載の医療装置。
[項目11]
前記医療装置は、第1のステントを構成しており、前記近位保持部材の表面と前記遠位保持部材の表面とは、第2のステントの開口内部通路の内面に接触するように構成される、項目1~8のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目12]
前記近位保持部材は、単壁のフランジ構造を含むとともに、前記遠位保持部材は、単壁のフランジ構造を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目13]
両単壁のフランジ構造は、前記円筒状サドル領域から径方向に延出している、項目12に記載の医療装置。
[項目14]
前記近位保持部材の直径と前記遠位保持部材の直径とは、前記円筒状サドル領域の直径よりも大きい、項目1~13のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目15]
前記複数の重なった可撓性フィラメントループの各々は、その内面及び外面の少なくともいずれか一方を被覆若しくはコーティングする膜を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A1]
医療装置であって、
近位部と、遠位部と、前記近位部と前記遠位部との間の長手部とを備え、前記長手部に沿ってルーメンを画成する細長管状本体を備え、
前記細長管状本体は、非拡張形態と拡張形態とを有し、前記拡張形態において、前記近位部は近位保持部材に拡張し、前記遠位部は遠位保持部材に拡張し、前記近位保持部材と前記遠位保持部材との間にわたってサドル領域が延びており、
前記サドル領域は、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に設けられた括れ部とを備え、前記第1の端部と前記第2の端部とは、それぞれが前記括れ部よりも大きな直径を有し、
前記括れ部は、少なくとも前記第1の端部の外径又は前記第2の端部の外径を一定に維持しつつ第1の直径形態と第2の直径形態との間で移行するように構成される、医療装置。
[項目A2]
前記細長管状本体は、1つ以上のフィラメント編組体で形成される、項目A1に記載の医療装置。
[項目A3]
前記括れ部は前記1つ以上のフィラメント編組体と一体形成される項目A2に記載の医療装置。
[項目A4]
前記括れ部は、閾値の力が当該括れ部に作用した場合に、前記第1の直径形態と前記第2の直径形態との間で移行するように構成される、項目A1からA3のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A5]
前記第1の直径形態において、前記括れ部は流体若しくはデブリ又はそれらの双方が内部に流通することを阻止するように構成され、前記第2の直径形態において、前記括れ部は、これを通過する開放流若しくはアクセス通路を提供するように構成される、項目A1からA4のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A6]
前記括れ部は、前記サドル領域の略中間点に配置される、項目A1からA5のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A7]
前記遠位保持部材、前記近位保持部材、若しくは前記サドル領域、又はこれらを組み合わせたものは、被覆されている、項目A1からA6のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A8]
前記近位保持部材の表面は、第1の生体管腔の組織壁の内表面に接触するように構成されており、前記遠位保持部材の表面は、第2の生体管腔の組織壁の内表面に接触するように構成される、項目A1からA7のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A9]
前記細長管状本体は、前記サドル領域に沿って前記近位保持部材と前記遠位保持部材との間に前記第1の生体管腔の組織壁と前記第2の生体管腔の組織壁の並置を維持するように構成される、項目A8に記載の医療装置。
[項目A10]
本医療装置は第1のステントからなるとともに、前記近位保持部材の外表面と前記遠位保持部材の外表面は、第2のステントの開口内部通路の内面に接触するように構成される、項目A1からA9のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A11]
前記近位保持部材は、単壁のフランジ構造を含むとともに、前記遠位保持部材は、単壁のフランジ構造を含む、項目A1からA10のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A12]
前記単壁のフランジ構造は、前記サドル領域から径方向に延びる、項目A11に記載の医療装置。
[項目A13]
前記近位保持部材の直径と前記遠位保持部材の直径は前記サドル領域の直径よりも大きい、項目A1からA12のいずれか一項に記載の医療装置。
[項目A14]
前記サドル領域の直径は、前記非拡張形態における前記細長管状本体の直径よりも大きい、項目A1からA13のいずれか一項に記載の医療装置。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B