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  • 特開-レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082229
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230607BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230607BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/064 K
B23K26/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020078181
(22)【出願日】2020-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 恵司
(72)【発明者】
【氏名】大口 恒之
(72)【発明者】
【氏名】瀧 成治
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA01
4E168CB03
4E168DA26
4E168DA28
4E168EA17
4E168EA24
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】保護ガラスのメンテナンス時期を適切に判断できるようにする。
【解決手段】保護ガラス24から放射された赤外線IRがビームスプリッタ23の出射端面で反射される。検出部27では、ビームスプリッタ23で反射された赤外線IRの赤外線量が検出される。判定部31では、検出部27の検出値に基づいて、保護ガラス24の状態が判定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してレーザ光を出射するレーザ加工ヘッドであって、
前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、
前記伝送ファイバで伝送された前記レーザ光を平行化するコリメータレンズと、
前記コリメータレンズで平行化された前記レーザ光を集光するフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズで集光された前記レーザ光を透過させるビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタよりも出射側に配置された保護ガラスと、
前記保護ガラスから放射されて前記ビームスプリッタで反射された赤外線の赤外線量を検出する検出部と、
前記検出部の検出値に基づいて、前記保護ガラスの状態を判定する判定部とを備えた、レーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記ビームスプリッタと前記検出部との間に配置された集光光学系を備え、
前記集光光学系は、前記赤外線を集光して前記検出部に出射する、レーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ビームスプリッタには、前記ワークを加工する加工用波長の反射率が最も低いARコートが設けられている、レーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項3において、
前記ARコートは、前記加工用波長よりも長波長側で反射率が高くなっている、レーザ加工ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1つに記載のレーザ加工ヘッドと、
前記伝送ファイバの入射端に接続され、レーザ光を発振するレーザ発振器とを備えた、レーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記保護ガラスの状態を示す所定の報知動作を行う報知部を備えた、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、保護ガラスが着脱可能に取り付けられたレーザ加工ヘッドが開示されている。保護ガラスは、レーザ加工時にワークから発生するスパッタやフュームがレンズ光学系に付着しないように、レンズ光学系を保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-42795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、保護ガラスに汚れが付着した状態では、レーザ出力が低下してしまい、ワークの加工品質が悪化する。そのため、保護ガラスの洗浄や交換などのメンテナンス作業を定期的に行う必要がある。
【0005】
しかしながら、レーザ加工ヘッドの使用状況によっては、保護ガラスに付着する汚れの量が想定していたよりも多くなり、保護ガラスの定期的なメンテナンス時期が経過する前に、レーザ出力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保護ガラスのメンテナンス時期を適切に判断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークに対してレーザ光を出射するレーザ加工ヘッドを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記レーザ光を伝送する伝送ファイバと、前記伝送ファイバで伝送された前記レーザ光を平行化するコリメータレンズと、前記コリメータレンズで平行化された前記レーザ光を集光するフォーカスレンズと、前記フォーカスレンズで集光された前記レーザ光を透過させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタよりも出射側に配置された保護ガラスと、前記保護ガラスから放射されて前記ビームスプリッタで反射された赤外線の赤外線量を検出する検出部と、前記検出部の検出値に基づいて、前記保護ガラスの状態を判定する判定部とを備えている。
【0009】
第1の発明では、保護ガラスから放射された赤外線がビームスプリッタで反射される。検出部では、ビームスプリッタで反射された赤外線の赤外線量が検出される。判定部では、検出部の検出値に基づいて、保護ガラスの状態が判定される。
【0010】
具体的に、保護ガラスにスパッタやヒュームが付着して汚れが生じている場合、汚れ部分にレーザ光が照射されて熱が生じることで、保護ガラスから放射される赤外線の赤外線量が増加する。そのため、赤外線の赤外線量が増加していることを検出部で検出すれば、保護ガラスに汚れや異常が発生していると判断することができる。
【0011】
これにより、保護ガラスの洗浄や交換などのメンテナンス時期を適切に判断することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記ビームスプリッタと前記検出部との間に配置された集光光学系を備え、前記集光光学系は、前記赤外線を集光して前記検出部に出射する。
【0013】
第2の発明では、ビームスプリッタで反射された赤外線を集光光学系で集光して、検出部に出射するようにしている。集光光学系は、例えば、コリメータレンズ及びフォーカスレンズで構成される。
【0014】
これにより、検出部で検出される赤外線の赤外線量を増加させて検出精度を高めることができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ビームスプリッタには、前記ワークを加工する加工用波長の反射率が最も低いARコートが設けられている。
【0016】
第3の発明では、ビームスプリッタにARコートが設けられる。ARコートは、ワークを加工する加工用波長の反射率が最も低くなっている。
【0017】
これにより、加工用波長のレーザ光がビームスプリッタを透過し易くなる一方、加工用波長以外の光がビームスプリッタで反射し易くなる。そのため、検出部で検出される赤外線の赤外線量を増加させて検出精度を高めることができる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、前記ARコートは、前記加工用波長よりも長波長側で反射率が高くなっている。
【0019】
第4の発明では、ARコートにおいて、加工用波長よりも長波長側の光の反射率が高くなっている。これにより、長波長側の光である遠赤外線がビームスプリッタで反射し易くなり、保護ガラスの温度状態の変化を捉えやすくなる。
【0020】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つに記載のレーザ加工ヘッドと、前記伝送ファイバの入射端に接続され、レーザ光を発振するレーザ発振器とを備えた、レーザ加工装置である。
【0021】
第5の発明では、レーザ発振器で発振したレーザ光を、伝送ファイバを介して、第1乃至第4の発明のうち何れか1つに記載のレーザ加工ヘッドに入射することで、レーザ加工装置を構成するようにしている。
【0022】
第6の発明は、第5の発明において、前記判定部の判定結果に基づいて、前記保護ガラスの状態を示す所定の報知動作を行う報知部を備えている。
【0023】
第6の発明では、報知部において、判定部の判定結果に基づいて所定の報知動作が行われる。例えば、保護ガラスに汚れや異常が発生している場合に、警報ブザーを鳴らす、警報ランプを点灯させる、警報メッセージを表示する等の報知動作を行うようにしている。
【0024】
これにより、作業者は、所定の報知動作に基づいて、保護ガラスの洗浄や交換などのメンテナンス時期を判断することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、保護ガラスのメンテナンス時期を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
図2】レーザ加工ヘッドの内部構成を示す図である。
図3】ビームスプリッタに入射されたレーザ光の波長と反射率との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
〈レーザ加工装置の構成〉
図1に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ発振器10と、伝送ファイバ11と、レーザ加工ヘッド20と、ロボット15と、制御部30とを備えている。
【0029】
レーザ発振器10は、レーザ光LBを発振する。レーザ発振器10は、例えば、固体レーザ光源、気体レーザ光源、ファイバレーザ光源を用いることができる。また、レーザ発振器10は、半導体レーザからの出射光を直接に用いる半導体レーザ光源や、複数のレーザ光エミッタを備える半導体レーザアレイであってもよい。
【0030】
レーザ発振器10は、伝送ファイバ11の入射端に接続されている。レーザ加工ヘッド20は、伝送ファイバ11の出射端に接続されている。レーザ発振器10から出射されたレーザ光LBは、伝送ファイバ11を介してレーザ加工ヘッド20に伝送される。
【0031】
レーザ加工ヘッド20は、ロボット15に取り付けられている。レーザ加工ヘッド20は、ロボット15を動作させることで、ワークWに対するレーザ光LBの出射位置及び焦点位置を変更可能となっている。
【0032】
制御部30には、レーザ発振器10、レーザ加工ヘッド20、及びロボット15が接続されている。制御部30は、レーザ加工ヘッド20の移動速度の他に、レーザ光LBの出力開始や停止、レーザ光LBの出力強度などを制御する。
【0033】
制御部30には、所定の報知動作を行う報知部35が接続されている。報知部35では、例えば、警報ブザーを鳴らす、警報ランプを点灯させる、警報メッセージを表示する等の所定の報知動作が行われる。
【0034】
制御部30は、判定部31を有する。詳しくは後述するが、判定部31は、レーザ加工ヘッド20の保護ガラス24(図2参照)の状態を判定する。
【0035】
〈レーザ加工ヘッドの構成〉
図2に示すように、レーザ加工ヘッド20は、コリメータレンズ21と、フォーカスレンズ22と、ビームスプリッタ23と、保護ガラス24と、検出部27とを有する。
【0036】
コリメータレンズ21は、伝送ファイバ11の出射端から出射されたレーザ光LBを平行化する。
【0037】
フォーカスレンズ22は、コリメータレンズ21で平行化されたレーザ光LBを集光する。
【0038】
ビームスプリッタ23は、フォーカスレンズ22で集光されたレーザ光LBを透過させる。ビームスプリッタ23は、板状の光学素子であり、レーザ光LBの光軸に対して所定の角度(図2では45度)をなすように配置されている。
【0039】
保護ガラス24は、ビームスプリッタ23よりも出射側に配置されている。保護ガラス24は、ワークWのレーザ加工時に発生するヒュームやスパッタがビームスプリッタ23に付着しないように、ビームスプリッタ23を保護している。
【0040】
フォーカスレンズ22で集光されたレーザ光LBは、ビームスプリッタ23及び保護ガラス24を透過して、ワークWに出射される。
【0041】
ビームスプリッタ23の出射端面には、ARコート23aが設けられている。詳しくは後述するが、ビームスプリッタ23は、フォーカスレンズ22で集光されたレーザ光LBを透過する一方、保護ガラス24で放射された赤外線IRを反射するように構成されている。
【0042】
ビームスプリッタ23と検出部27との間には、ミラー25と、集光光学系26とが配置されている。
【0043】
ミラー25は、ビームスプリッタ23の出射端面に対向する位置に配置されている。ミラー25は、ビームスプリッタ23で反射された赤外線IRの光軸に対して所定の角度(図2では45度)をなすように配置されている。
【0044】
集光光学系26は、コリメータレンズ26aと、フォーカスレンズ26bとを有する。コリメータレンズ26aは、ミラー25で反射された赤外線IRを平行化する。フォーカスレンズ26bは、コリメータレンズ26aで平行化された赤外線IRを集光する。フォーカスレンズ26bで集光された赤外線IRは、検出部27に出射される。
【0045】
検出部27は、例えば、赤外線センサで構成されている。検出部27は、赤外線IRの赤外線量を検出する。検出部27の検出値は、制御部30に送られる。
【0046】
〈保護ガラスの汚れの検出〉
ところで、保護ガラス24に汚れが付着した状態では、レーザ出力が低下してしまい、ワークWの加工品質が悪化する。そのため、保護ガラス24の洗浄や交換などのメンテナンス作業を定期的に行う必要がある。
【0047】
ここで、本願発明者は、保護ガラス24にスパッタやヒュームが付着して汚れが生じている場合、汚れ部分にレーザ光LBが照射されて熱が生じることで、保護ガラス24から放射される赤外線IRの赤外線量が増加することに着目した。
【0048】
そこで、本実施形態では、保護ガラス24から放射される赤外線IRの赤外線量を検出することで、保護ガラス24の状態を判定できるようにした。
【0049】
具体的に、ビームスプリッタ23の出射端面には、ARコート23aが設けられている。図3に示すように、ARコート23aは、ワークWを加工する加工用波長の反射率が最も低くなっている。
【0050】
これにより、加工用波長のレーザ光LBがビームスプリッタ23を透過し易くなる一方、加工用波長以外の光である赤外線IRがビームスプリッタ23で反射し易くなる。
【0051】
また、ARコート23aは、加工用波長よりも長波長側で反射率が高くなっている。これにより、長波長側の光である遠赤外線がビームスプリッタ23で反射し易くなり、保護ガラス24の温度状態の変化を捉えやすくなる。
【0052】
ビームスプリッタ23で反射された赤外線IRは、ミラー25で反射され、集光光学系26に入射する。集光光学系26では、赤外線IRが集光されて検出部27に出射される。これにより、検出部27で検出される赤外線IRの赤外線量を増加させて検出精度を高めることができる。
【0053】
検出部27は、赤外線IRの赤外線量を検出する。検出部27の検出値は、制御部30に送られる。
【0054】
制御部30は、判定部31を有する。判定部31は、検出部27の検出値に基づいて、保護ガラス24の状態を判定する。ここで、保護ガラス24の状態とは、保護ガラス24に汚れが付着している状態や、保護ガラス24の光吸収率が変化して熱歪みが生じている状態などをいう。
【0055】
判定部31は、検出部27の検出値が所定の閾値よりも大きい場合に、保護ガラス24に汚れが付着する等の異常が生じていると判定する。なお、閾値としては、例えば、汚れが付着していない初期状態の保護ガラス24から放射される赤外線IRの赤外線量を用いればよい。
【0056】
報知部35は、判定部31の判定結果に基づいて、保護ガラス24の状態を示す所定の報知動作を行う。例えば、保護ガラス24に汚れや異常が発生している場合に、警報ブザーを鳴らす、警報ランプを点灯させる、警報メッセージを表示する等の報知動作を行うようにしている。
【0057】
これにより、作業者は、所定の報知動作に基づいて、保護ガラス24の洗浄や交換などのメンテナンス時期を判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、保護ガラスのメンテナンス時期を適切に判断することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0059】
1 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
11 伝送ファイバ
20 レーザ加工ヘッド
21 コリメータレンズ
22 フォーカスレンズ
23 ビームスプリッタ
23a ARコート
24 保護ガラス
26 集光光学系
27 検出部
31 判定部
35 報知部
IR 赤外線
LB レーザ光
W ワーク
図1
図2
図3