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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082235
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】筆記補助具
(51)【国際特許分類】
   B43L 15/00 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
B43L15/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195819
(22)【出願日】2021-12-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】721000088
【氏名又は名称】北川 吉文
(72)【発明者】
【氏名】北川 吉文
(57)【要約】
【課題】手紙や年賀状、ノートなどに文字を書いたり、絵を描いたりする時に、用紙に接触している小指や手のひらが汚れたり、書いた文字や描いた絵を汚したり滲ませてしまったりする課題がある。
【解決手段】手を汚さないために、用紙との距離をとり、書いた文字や描いた絵を汚したり滲ませにくくしたりするために、用紙との接触面積を減らす筆記補助具を開発した。本発明では、用紙と接触する部分は、接触突部だけとし、接触面積を減らした。また、改行などで、ノートのへりや中央部の凹みを乗り越えやすくするために補助具本体から湾曲突部を作って、書いたり描いたりする時の負担を軽減した。筆記する動作に違和感が無いように、できる限り指の形に添わせつつ、用紙から離れないような薄さを目指した。持ち運びができて、どこでも使えるように小型化した。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手が載置される補助具本体と、前記補助具本体に設けられ且つ前記補助具本体に載置さられた小指の内側及び外側に位置する内側及び外側握り込み部と、前記補助具本体の底面に設けられた接触突部とを備え、筆記具を握る手の小指を前記内側及び外側握り込み部の内に挿入し、挿入した小指でもって前記内側握り込み部を握り込むようにして使用する筆記補助具。
【請求項2】
前記接触突部は、前記補助具本体の前記底面に複数設けられ、前記複数の接触突部の先端部は、細長い円弧状乃至円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記補助具。
【請求項3】
前記補助具本体の先端側角部には、円弧状に上方に延びる湾曲突部が設けられ、前記湾曲突部は、前記複数の接触突部の1つから連続して円弧状に延びていることを特徴とする請求項2に記載の筆記補助具。
【請求項4】
前記外側握り込み部は、前記補助具本体の長手方向において、前記内側握り込み部よりも先端側に位置し、前記内側握り込み部と前記外側握り込み部との間の挿入空間の中心線は、前記補助具本体の長手方向に対して、先端側に向けて内側に傾斜していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の筆記補助具。
【請求項5】
前記内側握り込み部の先端部には、前記外側握り込み部に向けて突出する内係止部が設けられ、前記外側握り込み部の先端部には、前記内側握り込み部に向けて突出する外係止部が設けられ、前記内側握り込み部及び前記外側握り込み部は、前記挿入空間に挿入された小指に作用することを特徴とする請求項4に記載の筆記補助具。
【請求項6】
前記外側握り込み部には、装飾物を取り付けるための取付部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の筆記補助具。



















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記する際に用いる筆記補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の筆記補助具としては、用紙に設置して利用するもの(以下、「設置型補助具」と表記する。)や、筆記する手や手首に装着して利用するもの(以下、「装着型補助具」と表記する。)があり、このような設置型補助具及び装着型補助具として種々のものが提案されている(特許文献1~10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-282192号公報(設置型)
【特許文献2】実開昭54-033743号公報(装着型)
【特許文献3】特開2001-213090号公報(装着型)
【特許文献4】特開2010-228433号公報(装着型)
【特許文献5】実用新案登録第3220090号公報(装着型)
【特許文献6】実願2001-3807号公報(装着型)
【特許文献7】実開昭57-9597号公報(装着型)
【特許文献8】実開昭51-101846号公報(装着型)
【特許文献9】実開昭54-174459号公報(装着型)
【特許文献10】特開2014―94468号公報(装着型)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した設置型補助具の利点は、筆記する用紙と手が一切触れないことにより、全く手が汚れないことと、筆記する用紙に手が触れないことにより、手と用紙との摩擦がないため、手の運搬が非常に便利であることなどである。また、手が用紙に触れないため、用紙に書いた文字や絵を汚すことなども利点である。一方で、設置しなければならない関係上、形状が大きくなりがちであり、持ち運びに不便なことが課題として挙げられる。また、人間の筆記する動作は、かなり洗練された動作であり、ほんの少し普段の位置より高いだけで、違和感があり、設置型補助具のように大きく手と用紙との距離があると普段使いしにくい面がある。
【0005】
一方、上述した装着型補助具は、手と一体化されているものが多く、手と用紙との距離での違和感をなくしている利点がある。また、小型化でき、持ち運びに便利である点も利点である。課題は、装着している筆記補助具と用紙との摩擦が大きくなってしまう事により筆記の負担が増えることと、筆記補助具と用紙が触れるため、書いた文字や絵が汚れたり、滲んだりしてしまう事とノートのへりを乗り越えにくいという点などである。
【0006】
用紙と筆記補助具との摩擦を減らし、書いた文字や絵を汚さないようにするためには、当然ながら、用紙と接地する面積を小さくする必要が生まれる。そのため、表現は様々であるが、接触突部や先端部・突出部として、補助具本体(小指や掌の横を乗せる部分であり、以下、「補助具本体」と表記する。)より突起物を生やしている事が多い。それらの突起物(以下、「接触突部」と表記する。)をどのように配置するかも重要であるが、大きさも重要になる。当然、小さい方が用紙と接する面が小さく、文字や絵を汚す可能性も減り、筆記する動作の負担にもなりにくいので有効である。だが、小さくするだけでは、1つ1つの摩擦することは抑えられても、ノートのへりにぶつかって改行等の移動で大きな負担になることがある。特に、2021年現在では、左利きは、そのまま左利きとして育てられることが多く、また、文字の表記は横書きが主流となっているため、左利きにとって、ノートで改行するのは、ほぼノートのへりや中央を乗り越える必要が出る。その時に、小さい接触突部が多くあれば、その1つ1つが、ノートのへりにひっかかり筆記する作業の負担になる。
【0007】
筆記補助具として、重要な点は、手と用紙に書いた文字や絵を汚さない点と、筆記の補助ができる点にある。手と用紙に書いた文字や絵を汚さない点については、先行研究でも様々な取り組みがなされている。また、筆記の補助という面でも、様々な研究がされている。人間が、文字を書いたり、絵を描いたりする動作は、とても洗練された動作である。言い換えると、動きが複雑、かつ、長い修練の結果、習得したものである。そのため、ほんの些細なことが、違和感につながったり、不便さにつながったりする。そのため、小指だけや小指と薬指だけに装着する手袋のような発明(以下、「手袋型」と表記する。)もある。装着型の中でも手袋型は、違和感は最も少なくできる代わりに、摩擦を大きく受けることになる。さらに、長く使用すると蒸れて不快感が出たり、書いた文字や絵を汚しまったりすることがある。
【0008】
特許文献9(実開昭54-174459号公報)の補助具では、本発明と同じように握り込むタイプであるが、意識して握らなければならず、人間の筆記する動作には、大きな負担になる点が課題である。本発明でも、補助具本体から上部に設置されている小指で握る棒状のもの(以下、「内側握り込み部」と表記する。)を試作したが、握らなければならないという状況では、筆記が非常に困難なものになることが判明している。
【0009】
また、特許文献10(特開2014―94468)の補助具では、安定性に欠ける点や、準備に時間がかかる点が課題である。また、長時間使用すると、手汗等により快適性が失われる点も課題である。
【0010】
本発明の目的は、筆記する際の手の汚れの防止と、用紙に記入した文字や絵の汚れを緩和させ、正しい持ち方を促すことができる筆記補助具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の筆記補助具では、手が載置される補助具本体と、前記補助具本体に設けられ且つ前記補助具本体に載置された小指の内側及び外側に位置する内側及び外側握り込み部と、前記補助具本体の底面に設けられた接触突部とを備え、筆記具を握る手の小指を前記内側及び外側握り込み部の内に挿入し、挿入した小指でもって前記内側握り込み部を握り込むようにして使用することを特徴とする。
このような筆記補助具においては、補助具本体の底面に複数の接触突部を設けるのが好ましく、このように構成することによって、ノートのへりを違和感なく超えて移動させることができる。また、乗り越えを容易にすえるために、接触突部の形を細長い円弧状乃至円弧状にするが好ましい。
【0012】
また、補助具本体の先端側角部に、円弧状に上方に延びる湾曲突部を設け、この湾曲突部が複数の接触突部の1つから連続して円弧状に延びるのが好ましく、このように構成することによって、湾曲突部の外側が曲面になり、一般的なノートの厚さを超えつつも、筆記する際に不便を感じるような高さを出すことがなく、スムーズにノートのヘリや中央部を移動できる。
【0013】
この筆記補助具では、外側握り込み部が、補助具本体の長手方向において内側握り込み部よりも先端側に位置するようにするのが好ましく、このように構成することにより、握りこんだ時に、補助具本体がしっかりと、小指や手を支えてくれるようになる。握り込み部が横並びで補助具本体と垂直に設置されていると、人間の手で握りこんだときに、補助具本体の後ろ、つまり手のひらの横の部分が補助具本体に乗らなくなってしまう。このズレ(天井視点では、斜めの配置になっている。)を入れることにより、握り込んだ時に、補助具本体が小指から手のひらの横まで、幅広く受け止めてくれるようになる。小指の内側の握り込み部を原点とすると、小指の外側の握り込み部は、およそ10~80度程度の位置にあるのが好ましい。
【0014】
また、内側握り込み部と外側握り込み部との間の挿入空間の中心線は、補助具本体の長手方向に対して、先端側に向けて内側に傾斜しているのが好ましい。握り込み部に傾きがないと、筆記する際、手の平に握り込み部が当たってしまい、大きな違和感につながってしまうが、この傾きがあることで、自然な筆記の形となり、違和感なく、筆記することができる。この傾きは、手のひら側に約15~75度程度であるのが好ましい。
【0015】
また、内側握り込み部の先端部に外側握り込み部に向けて突出する内係止部を設け、外側握り込み部の先端部に内側握り込み部に向けて突出する外係止部を設けるのが好ましく、このように構成することによって、内側握り込み部と外側握り込み部との間に小指を挿入すると、内側握り込み部の内係止部と外側握り込み部の外係止部とが挿入した指の上側に作用し、これによって、意識的に握らずとも、握り込み部が小指にフィットし、握る意識がなくとも、筆記補助具が手に追随する状況となり、自由に筆記ができるようになる。また、このように構成することにより、小指を握らず、伸ばしてしまったとしても、落下することはない。
【0016】
また、この筆記補助具では、外側握り込み部に装飾物用の取付部を設けるようにしてもよく、このようにすることにより、この取付部にブタや象や鳥などの動物、キャラクターなどの顔や上半身、花や木などの植物などの造形物を取り付けることができる。この筆記補助具の使用者が低年齢であればあるほど、楽しんで活用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筆記補助具によれば、次の5つの効果が得られる。1つ目は、補助具本体によって、手を完全に汚さないようにすることができる。安全に、快適に手を載せることができる点である。2つ目は、接触突部を設けたことによって、摩擦を少なくすることができ、またノートのヘリを乗り越え易くすることができる。また、接地面積が少ないため、書いた文字や絵がにじんだり汚れたりするリスクが減った点である。3つ目は、特徴的な握り込み部、即ち内側及び外側握り込み部によって、握る意識を必要としない、手にフィットする筆記補助具を提供することができ、血が止まったりする危険性もなく、様々な握り方に対応し、指を伸ばしたとしても、簡単には外れない点である。4つ目は、そのサイズを小さくすることができる。筆箱に入る大きさであることから、持ち運びが容易で外出先でも気楽に使用でき、今日問題になっているコロナに対しても、多くの人が触る用紙に接触しないので、安心してアンケートの記入や名簿等に記述ができる点である。5つ目は、それぞれの部品を必要最低限の形まで洗練させたことにより、不必要な部分を覆う必要がないため、手汗等の蒸れを手袋型などより軽減できる点である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】筆記補助具の一実施形態を分解して示す分解斜視図。
図2図1の筆記補助具を合成した状態で示す斜視図。
図3図2におけるA-A線で切断した断面図。
図4図2の筆記補助具の底面図。
図5】第1の変形形態の接触突部を備えた筆記補助具の底面図。
図6】第2の変形形態の接触突部を備えた筆記補助具の底面図。
図7図2の筆記補助具を斜め前方から見た斜視図。
図8図2の筆記補助具を上方から見た平面図。
図9図5の筆記補助具を切断した断面図。
図10図2の筆記補助具の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の筆記補助具の実施形態を図面を参照して説明する。以下の説明では、右利き用のものを一例として図に示しているが、左利き用のものであれば、鏡のように反対の鏡対象の形態となる。
【0020】
まず、図1図4を参照して、筆記補助具の一実施形態について説明する。図1は、筆記補助具を分解してその部品を示したものであり、図1及び図2において、図示の筆記補助具は、補助具本体3と、一対の握り込み部1,2とを備えている。補助具本体3の前部及び後部は略半円状に内側に突出し、この前部と後部の間に円弧状の凹部が設けられている。一対の握りこみ部1,2は、例えば、点線で示すように接着剤などを用いて合成(接合)されるが、補助具本体と一体的に構成するようにしても良い。
【0021】
この補助具本体3の長さ(長手方向の長さ)は、例えば3~15cm程度であり、その幅(短手方向)は、例えば1~10cm程度であり、その厚さは、例えば0.1~30mm程度である。また、筆記補助具の全体としての高さは、例えば1~6cm程度であり、このような大きさにすることにより、筆箱に入るような大きさにすることができる。
【0022】
一方の握り込み部2は、内側握り込み部として機能し、小指で握る側となり、小指の内側に位置付けられる。他方の握り込み部1は、外側握り込み部として機能し、小指の外側に位置付けられる。外側握り込み部1及び内側握り込み部2は、補助具本体3の上面に設置され、この補助具本体3から上方に延びでおり、この内側握り込み部2を小指で握ることにより、小指と掌の横の部分が、補助具本体3に載るようになる。
【0023】
外側握り込み部1及び/又は内側握り込み部2にカットを施すようにしてもよい。外側及び内側握り込み部1,2は、基本的に円柱形状である。もちろん、単なる円柱形状でも良いが、この円柱形状の外周側面を削って、小指の形状に添わせることで、より快適に使用することができる。例えば、内側握り込み部2については、その傾きに合わせてカットが入っている。そして、その外周側面は、小指が握りやすいように、小指の形に合わせたカットが入っている。また、外側握り込み部1については、小指が触れる部分に、小指の形状に合わせてカットが入っている。
【0024】
このように2つの握り込み部、即ち外側握り込み部1及び内側握り込み部2を設けることによって、次の特徴が生じる。この筆記補助具が指のサイズに多少合わず、例えば幾分小さかったとしても、指の血がとまることなく、安全に使用でき、また例えば幾分大きかったとしても、意識的に握りこんだり、指を伸ばした時に落下したりせずに利用できる。これは、指輪のような形状を一対の握り込み部(外側及び内側握り込み部1,2)として制作したときに、幾分小さなサイズを作成してしまい、無理に入れた結果、抜けにくくなったことと、血が止まってしまったことから考えた形状である。
【0025】
この一対の握り込み部(外側及び内側握り込み部1,2)の形状のイメージとしては、かなり太い指輪(ドーナツのような形)を想像し、その指輪を筆記補助具の補助具本体3に5分の4(4/5)程度埋めて設置し、そこから、上部の5分の1(1/5)程度を切り取って、牛の角のように2本に別れさせ、更に、Z軸(高さを表す軸として表記する。)を基軸として、ズレ(内側握り込み部2を起点として反時計回りに回転させた位置に外側握り込み部1)を入れ、筆記するときの手の傾きと同じ程度、傾けると、2つの握り込み部のイメージに近くなる。
【0026】
この補助具本体3の先端側角部(具体的には、内側握り込み部2の先端側)に湾曲突部4が設けられている。この湾曲突部4は、補助具本体3に載せた手の小指を覆う形をしている。この湾曲突部4は、図3に示すように、上方に向けて内側に湾曲して円弧状に延びており、後述する接触突部の一つ(この形態では、補助具本体3の前側に設けられた接触突部5)と組み合わさることで、ノートのへりを滑らかに乗り越えるようになっている。
【0027】
図4をも参照して、この補助具本体3の底面側(ノートなどと接触する面)には、一対の接触突部5,6が設けられている。一方の接触突部5は補助具本体3の前部側底面に設けられ、他方の接触突部6は補助具本体3の後部側底面に設けられ、これら接触突部5,6は、船底形のような細長い円弧状に形成され、補助具本体3の幅方向に延びており、このような形状にすることよって、筆記する用紙との接地面積を限りなく減らし、かつ、ノートのへりや中央部のへこみをスムーズに乗り越えられるようにしている。この船底形状の接触突部5,6は、補助具本体3の湾曲突部4と連結することでより高い効果を発揮することになるので、その長さは、補助具本体3の横幅と同程度である。
【0028】
また、接触突部5,6の高さについては、小学校などで板書を筆記する際は、5mm方眼の厚さ5mm程度のノートを使用することが多く、その時に、ノートのへりをスムーズに乗り越えることができつつも、筆記補助具を使用していない時となるべく差が出ないような高さにするのが好ましく、このようなことから接触突部5,6の高さは、例えば0.1~30mm程度となる。
【0029】
前側の接触突部5に関連して、図3に示すように、この接触突部5から上述の湾曲突部4に連続して円弧状に延びる形状となっており、このような形状にすることにより、接触突部5から湾曲突部4までの外側が連続した曲面になり、一般的なノートの厚さを超えつつも、筆記する際に不便を感じるような高さを出すことがなく、スムーズにノートのヘリや中央部を移動することができる。
【0030】
より具体的に説明すると、この湾曲突部4の外側が曲面になっていて、補助具本体3の底面に設けられた船底形状の接触突部5と組み合わせると、略半月状の形状となり、一般的なノートの厚さを超えつつも、筆記する際に不便を感じるような高さを出すことがなく、スムーズにノートのヘリや中央部を移動することが可能となる。
【0031】
図2は、図1で示した各構成要素を接着剤などで接着固定したものである。この筆記補助具は、例えば、ABS樹脂などの合成樹脂から形成することができ、このような合成樹脂から形成することにより、非常に安定していて、軽く持ち運びに便利で、丈夫であり、かつ、摩擦が比較的少なく、筆記する時に便利である。そのことから、プラスチックのような軽くてある程度の丈夫さがある材質が良く、光造形のレジンでも同じような成果が得られる。
【0032】
この筆記補助具は、その形態が優秀であるがゆえに、木や金属、紙、アルミなどでも適用が可能である。また、文鎮などに使われる材質など、多少重たい物でも、文鎮としても活用でき、また、筆記補助具ともなりえるため、軽い材質から重い材質まで適用可能である。更に言えば、補助具本体3を例えば2層又は3層以上に分け、例えば上層部をゴムなどにすることで、利用する際に気持ちよく使用できたり、また例えば内側握り込み部2を硬質ゴムなどにすることで、柔軟性を高めたりすることも可能である。
【0033】
図1及び図2では、内側握り込み部2及び外側握り込み部1は、補助具本体3の表面から上方に延びているが、これら握り込み部1,2については、それらの半径が例えば0.1~30mm程度で、それらの高さが例えば0.1~50mm程度の略円柱形状に形成される。これら握り込み部1,2は、活用頻度が高く、負担もある部分であることから、折れない強度が必要とされる。
【0034】
補助具本体3も、しなってしまうと、用紙との接地面積を増やすことにもなり、壊れやすくもなることから、普段、筆記している手が触れている机のように、しっかりとしている必要がある。
【0035】
図3は、図2におけるA-A線により切断した断面図である。図2の外側握り込み部1が図3において補助具本体3の右側に位置するような配置となるような角度から見て示している。図3において、補助具本体3の湾曲突部4は、小指の形状に合わせるように曲面状になっている。図3では、この湾曲突部4は、この外側握り込み部1よりも高さを低くするのが好ましい。
【0036】
また、図3では、湾曲突部4の先端部が尖っているように描いているが、けがをしないように、なめらかな曲面形状となるようにするのが望ましい。図3において、前側の接触突部5が断面でもって示している。この接触突部5は、船底形状と記載しているが、図3からも理解されるように、子供が描く船やヨットの形と同じような形状の細長い円弧状に形成されている。このように、補助具本体3の長手方向(前後方向)の両端部を持ち上げたような円弧状にすることによって、衝突することなくノートのへりに触れるようになるため、開いたノードの表面をスムーズに乗り越えることができるようになる。また、このような形状に代えて、船底の底部を横方向(前後方向に対して垂直な方向)に切ったような形状、即ち上底が長い台形のような形状にすることをできる。このような形状にすると、用紙との接地面積は増えてしまうが、安定性や制作においては有効である。
【0037】
図4は、筆記補助具の底面図を示しており、この図4において、一方の接触突部5は補助具本体4の前部側に設けられ、他方の接触突部6は、その後部側に設けられている。これら接触突部5,6は、相互にほぼ平行であるが、補助具本体4の長手方向(前後方向)に対して垂直ではなく、外側に向けて後側に傾斜するように斜めに設けられている。このように、斜めに設けることで、接触突部5,6の先端部からノートのへりとぶつかることができるようになるのである。
【0038】
これら接触突部5,6の傾斜角度α(図4参照)は、例えば10~80度程度、好ましくは20~60度程度であるのが好ましい。このような傾斜角度とすることにより、ノートのへりとぶつかるときに、なるべく船底型の正面側から乗り越えられるようにするためである。別の表現をすると、ノートを海とし、へりを高い波とすれば、船の正面からぶつかることで、波を乗り越えやすくなり、このような理屈に基づいている。即ち、船が横から波を受けると、大きな抵抗を受けて弱くなり、正面から受けると抵抗が少なく強いように、正面で捉えられる角度にしている。
【0039】
この例では、一対の接触突部5,6の傾斜角度を等しくしているが、これらの傾斜角度を変えるようにしてもよい。また、図で示してはいないが、これら接触突部5,6を細くして、真ん中に3本目の接触突部を追加したり、ほぼ等間隔で4本の接触突部を設けるようにしてもよい。
【0040】
図5は、第1の変形形態の接触突部を備えた筆記補助具の底面図である。図5において、この形態では、補助具本体3の底面に4つの接触突部20,21,22,23が設けられている。一対の接触突部20,21は、補助部本体3の前部側に配設され、この前部の両側端部に設けられ、残りの一対の接触突部22,23は補助具本体3の後部側に配設され、この後部の両側端部に設けられている。
【0041】
この変形形態では、接触突部20~23の形状が半球状の円弧状に形成されており、このような形状にすることによっても、滑らかに移動することができる。これら接触突部20~23については、それらの半径が例えば0.3~30mm程度に、それらの高さが、例えば0.1~50mm程度である。図5では、接触突部20~23がかなり短く描かれているが、高さの変更は可能であり、写経などの時は、もう少し接触突部を延ばし、高くすることで書きやすくもなる。
【0042】
図6は、第2の変形形態の接触突部を備えた筆記補助具の底面図である。図6において、この第2の変形形態では、補助具本体3の底面に3つの接触突部24,25,26が設けられている。ノートなどに筆記する時は、筆記具を持っている方に重心がかかるため、そちら側、即ち内側部分に2つの接触突部24,25を設けて2点で支え、反対側の外側部分に1つの接触突部26を設けて1点で支える形となっている。これら接触突部24~26の配置は、おおよその位置であり、重心がかかる側に2点と反対側に1点であれば、多少のずれがあっても問題がない。他にも、長手方向前方(握り込み部方向)(前部側の部分)に2点、長手方向後方(後部側の部分)に1点設けるなど、筆記する際に、補助具本体が傾かない配置であれば、問題はない。
【0043】
図7は、筆記補助具を斜め前上方から見た斜視図である。図7を用いて説明したいのは内側握り込み部2である。図7の垂線Bは、補助具本体3の表面から垂直に立って延びている。内側握り込み部2は、この垂線Bに対して、平行ではなく、内側(即ち、外側握り込み部1側)に傾斜して倒れており、この倒れ傾斜角度β(図7参照)は、例えば1~70度程度であるのが好ましい。内側握り込み部2のこの倒れこみが、筆記をする際は、じゃんけんのグーではなく、倒れている角度を表しているのである。
【0044】
一般に、人間は、筆記をする際に、じゃんけんのグーのようにまっすぐに握りこんでいるわけではなく、用紙に手のひらを傾け、筆記がしやすいようにしている。そのため、握り込み部に傾きがないと、筆記する際、手の平に握り込み部が当たってしまい、大きな違和感につながってしまう。一方、上述の傾斜角度βを設けることにより、自然な筆記の形となり、違和感なく、筆記することができ、この傾傾斜角度βは、人間が筆記する際の手の傾きとおおよそ一致している。
【0045】
この実施形態では、外側握り込み部1も内側(即ち、内側握り込み部2側)に幾分傾斜して倒れ込んでいるが、必ずしも内側に倒すようにしなくてもよい。尚、図7において、参照番号4は、補助具本体3に設けられた湾曲突部であり、参照番号5は接触突部である。この接触突部5は、船底形状でもよいが、半球形状でもよい。
【0046】
図1図2及び図7に明確に示されているように、外側握り込み部1の先端部に、内側握り込み部2に向けて突出する外係止部31が設けられ、内側握り込み部2の先端部に、外側握り込み部1に向けて突出する内係止部32が設けられている。これら外側握り込み部1及びその外係止部31と内側握り込み部2及びその内係止部32とは、小指を挿入するための挿入空間を規定し、小指を挿入した状態では、外係止部31及び内係止部32が挿入した小指に係止し、これにより、手を持ち上げたときなどにおいて、補助筆記具が小指から落脱するのを防止することができる。
【0047】
これら外係止部31及び内係止部32については、例えば、次のようにして形成することができる。外側及び内側握り込み部1,2の先端部に例えば球状部を設けることで、意識的に握らずとも、外側及び内側握り込み部1,2が挿入した小指にフィットし、握る意識がなくとも、筆記補助具が手に追随する状況となり、自由に筆記ができるようになる。更に、この球がついていることにより、小指を握らず、伸ばしてしまったとしても、落下することはない。
【0048】
この実施形態では、この球状部の形を限界まで削り、最も筆記する際の違和感をなくすようにしている。その形状として、まず、球状部の上部を小指の高さ程度でカットしている。そして、出てきた傾きで小指の内側握り込み部2をカットしている。一方、外側握り込み部1の球状部は、その外側を削っている。それは、筆記する際に、薬指が小指の上に大きく乗ってしまう握り方に対応するためである。正しい持ち方の場合は、薬指は、小指の上から少しはみ出る程度であるが、大きくはみ出してしまう握り方をする者もいる。その場合、このカットがあることで、痛みや違和感なく筆記補助具を使用できる。
【0049】
図8は、筆記補助具を上方から見た平面図である。図8において、補助具本体3の長手方向(前後方向)を縦とし、短手方向(幅方向)を横として説明する。数学的に言えば、X軸が横であり、Y軸が縦であるとすると、内側握り込み部2及び外側握り込み部1は、はY軸方向において、同一の位置にないことが確認でき、このことが、上述した長手方向(前後方向)のズレである。図8において、例えば、内側握り込み部2を原点(0,0)とすれば、外側握り込み部1は、この原点に対して(1,0)の位置ではなく、例えば(1,1)の位置もしくは、(1,2)の位置又は(1,3)の位置など、この原点に対してY>0の位置に配置され、具体的には、この外側握り込み部1は、補助具本体3の長手方向において内側握り込み部2よりも前端側の位置に設けられる。
【0050】
この内側握り込み部2を原点とする外側握り込み部1の傾斜角度θは、例えば10~80度であるのが好ましく、このような角度にして前後方向のズレを生じさせることにより、内側握り込み部2を握り込んだときに、補助具本体3が小指から手のひらの横まで、幅広く受け止めてくれるようになる。
【0051】
内側握り込み部2に対する外側握り込み部1の前側へのズレ(Y軸上において、同一の位置ではないこと)こそ、内側握り込み部1を握った時に、補助具本体3が小指と掌の横の部分を支える位置になってくれるのである。この筆記補助具は、使用するに際して補助具本体3の上に手を載せてから握るのではなく、内側握り込み部2を握ることからスタートする。つまり、握った瞬間に、即座に補助具本体3が、小指と掌の横の部分を支える場所に移動するようになり、この配置であるがゆえに、握った瞬間に、補助具本体3が支えてくれるようになる。
【0052】
この筆記補助具では、内側握り込み部2と外側握り込み部1との間に、小指を挿入して位置付けるための挿入空間が存在し、この挿入空間の中心線は、補助具本体3の長手方向(前後方向)に対して先端側に向けて内側に傾斜しているのが好ましく、この内側への傾斜角度γ(図8参照)は、15~75度であるのが好ましく、30~50度であるのが更に好ましい。
【0053】
図9は、4つの接触突部20~23を備えた筆記補助具(図5に示す形態)の断面図である。図9において、湾曲突部4は、補助具本体3から円弧状に延びており、この補助具本体の前部側に2つの接触突部20,21が設けられ、その後部側に残りの2つの接触突部(図9において図示せず)が設けられている。この形態のものでは、図1図4に示す船底形状のものと違い、内側(内側握り込み部2側)の接触突部20と外側(外側の握り込み部1側)の接触突部21のと間に空間が存在しており、このような構成では、用紙との接地面積が少なくなり、書いた文字や絵を汚したり、にじませたりするリスクは減らすことができるのである。一方で、内側の接触突部20がノートのへりを乗り越えたあと、再度、外側の接触突部21がノートのへりを乗り越える必要があるため、2回も乗り越える負担があるが、写経やアンケートなど、1枚の用紙に記入するのであれば、記述したものを汚すリスクが減り、乗り越える負担も少ないため、利用価値がある。
【0054】
図10は、この筆記補助具の使用状態の一例を示す図である。この筆記補助具では、外側握り込み部1の基部の外側面に取付部(図示せず)が設けられ、この取付部に装飾物40が取り付けられている。この取付部は、外側握り込み部1の先端部の外側面にもうけるようにしてもよく、使用者の好みに応じて外側握り込み部1の適当な部位に凹蹴ることができる。この取付部は、例えば、装飾物40を着脱自在に取り付ける取付突部又は取付凹部などから構成することができ、この装飾物40を接着剤などにより固定的に取り付けるようにしてもよい。また、装飾物40として、例えばキャラクター、動物の顔、鳥、花などの種々の造形物を用いることができる。
【0055】
この筆記補助具では、外側握り込み部1の外側部位が、個性ポイントになってくるのである。筆記補助具として、必要部位まで、極限に洗練した形であるがゆえに、使用する状態においては、筆記補助具自体をほとんど見ることがない。だが、唯一、外側握り込み部1の外側部位だけは、使用していることを確認することができる。そこで、この外側部位にデザインとして、造形物などの装飾物を取り付けるものである。
【0056】
図10では、厚みが表現できていないが、厚みのあるデザイン(3次元の縦横高さのある造形物など)を取り付けることで、その存在が一層引き立ち、使用者を楽しませて、使用を促すようになっている。また、造形物などの装飾物が出っ張っていることにより、小指の上から薬指が大きくはみ出している握り方であると、造形物に薬指がぶつかって、痛みや違和感が出るため、正しい持ち方への移行を促すのである。筆記する動作は、長期間の訓練の成果でもあるため、矯正が難しい場合も多い。そのように正しい持ち方でなく、薬指が小指側に落ち込んでしまう握り方をする使用者用に、厚みをなくして、絵を描くなどの2次元的なデザインを施すようにしてもよく、或いは、造形物自体を薬指を支える形状にして、デザインを施すようにすることも可能である。
【0057】
図示の実施形態では、補助具本体などの部品にデザインを施していないが、補助具本体自体をハート形状にしたり、この補助具本体の表面にパウダーなどを利用して星空を表現したり、爪につける薄いものをレジンで中に閉じ込めて、握ったときだけでなく、握る前から、見て楽しみ、使いたくなるようなデザインを施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 外側握り込み部
2 内側握り込み部
3 補助具本体
4湾曲突部
5,6,20,21,22,23,24,25,26 接触突部
31外係止部
32 内係止部











図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手が載置される補助具本体と、前記補助具本体に設けられ且つ前記補助具本体に載置された小指の内側及び外側に位置する内側及び外側握り込み部と、前記補助具本体の底面に設けられた接触突部とを備え、前記補助具本体の先端側角部には、円弧状に上方に延びる湾曲突部が設けられ、前記湾曲突部は、前記接触突部から連続して円弧状に延びて形成され、筆記具を握る手の小指を前記内側及び外側握り込み部の内に挿入し、挿入した小指でもって前記内側握り込み部を握り込むようにして使用する筆記補助具。
【請求項2】
前記接触突部は、前記補助具本体の前記底面に複数設けられ、前記複数の接触突部の先端部は、細長い円弧状乃至円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記補助具。
【請求項3】
手が載置される補助具本体と、前記補助具本体に設けられ且つ前記補助具本体に載置された小指の内側及び外側に位置する内側及び外側握り込み部と、前記補助具本体の底面に設けられた接触突部とを備え、前記外側握り込み部は、前記補助具本体の前後方向において、前記内側握り込み部よりも先端側に位置し、前記内側握り込み部と前記外側握り込み部との間の挿入空間の中心線は、前記補助具本体の前後方向に対して、先端側に向けて内側に傾斜し、筆記具を握る手の小指を前記内側及び外側握り込み部の内に挿入し、挿入した小指でもって前記内側握り込み部を握り込むようにして使用する筆記補助具。
【請求項4】
前記内側握り込み部の先端部には、前記外側握り込み部に向けて突出する内係止部が設けられ、前記外側握り込み部の先端部には、前記内側握り込み部に向けて突出する外係止部が設けられ、前記内側握り込み部及び前記外側握り込み部は、前記挿入空間に挿入された小指に作用することを特徴とする請求項3に記載の筆記補助具。
【請求項5】
前記接触突部は、前記補助具本体の前記底面に複数設けられ、前記複数の接触突部の先端部は、細長い円弧状乃至円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の筆記補助具。
【請求項6】
前記外側握り込み部には、装飾物を取り付けるための取付部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項3のいずれかに記載の筆記補助具。