(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082239
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】土嚢集合ユニット、土嚢構造体、及び、土嚢連結装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20230607BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
E02B3/04 301
E02D17/20 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195842
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】嶋 丈示
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳樹
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DA01
2D118AA28
2D118BA01
2D118BA07
2D118BA14
2D118CA02
2D118CA07
2D118DA01
2D118GA46
(57)【要約】
【課題】水の流れを阻害せず強固に土嚢を連結できる土嚢集合ユニット、この土嚢集合ユニットを土嚢構造体、及び土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置を提供する。
【解決手段】土嚢集合ユニットU1は、複数個の土嚢10を隣接させて配置して成る土嚢グループ10Gと、土嚢グループ10Gの側周面の少なくとも一部を覆うシート体21と、シート体21を土嚢グループ10Gの側周面上に固定して、土嚢10の相対移動を拘束する固定具24とを含む。複数個の土嚢10が一体化されるので、外力に対し変位が生じにくくなる。シート体21により表面が平滑になるので流下物の引っ掛かりが抑えられ、流下物の衝突に対する耐久性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の土嚢を隣接させて配置して成る土嚢グループと、
前記土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うシート体と、
前記シート体を前記土嚢グループの側周面上に固定することにより、前記土嚢の相対移動を拘束する固定具とを含む、
土嚢集合ユニット。
【請求項2】
前記シート体は、前記土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うように水平方向に巻き付けられ、
前記固定具は、前記シート体における水平方向の端部どうしを連結する、
請求項1記載の土嚢集合ユニット。
【請求項3】
前記固定具は、前記シート体における前記水平方向の端部間の距離を縮小させる締め付け手段を含む、請求項2記載の土嚢集合ユニット。
【請求項4】
前記固定具は、前記シート体の上下方向に間隔を置いて配置される複数個の前記締め付け手段を含む請求項3記載の土嚢集合ユニット。
【請求項5】
前記固定具は、前記シート体における前記水平方向の端部間に配置されるワイヤーロープを含む、請求項2から請求項4のいずれかに記載の土嚢集合ユニット。
【請求項6】
前記シート体は繊維補強ゴムシートである、請求項1から請求項5のいずれかに記載の土嚢集合ユニット。
【請求項7】
前記繊維補強ゴムシートは、繊維素材から成る繊維層の両面を、ゴム素材から成るゴム層で挟み込んだ構造である、請求項6記載の土嚢集合ユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の土嚢集合ユニットの複数個が、予め定めた配列方向に沿って隣接し、且つ、前記複数個の土嚢集合ユニットそれぞれの前記シート体の表面が前記配列方向に沿うように配列されて成る土嚢構造体。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の土嚢集合ユニットの複数個が、前後に列を成し、且つ、前記土嚢集合ユニットにおける水平方向の端部位置が前後の列で異なるように配列されて成る、土嚢構造体。
【請求項10】
複数個の土嚢を隣接させて配置して成る土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うシート体と、
前記シート体を前記土嚢グループの側周面上に固定して前記土嚢の相対移動を拘束する固定具とを含む、
土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の土嚢を用いた土嚢集合ユニット、この土嚢集合ユニットを複数個用いた土嚢構造体、及び、土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土嚢は一般に土砂等を充填した袋体から成り、河岸や海岸に設置して河川の氾濫や高潮被害を防止する仮護岸工、土石流の発生が予測される地域に設置して土石流を安全な地域へ誘導するための導流工、地震や豪雨等で地盤や堤防等の土木構造物が損壊したときの応急対策工等の各種土嚢構造物を構築するのに用いられる。
【0003】
これらの土嚢構造物は、基本的には複数個の土嚢を積み上げることによって構築されるが、河川の水流や海の波力から受ける外力が大きく、特に外力が局所的に集中した場合は、その個所で一部の土嚢が離脱したり土嚢構造体の崩壊が生じたりするおそれがある。
【0004】
そこで、大きな外力にも耐えることができる土嚢構造体が、特許文献1、2で提案されている。特許文献1記載の土嚢構造体は、袋体の側面及び底面の一部に吊りベルトを縫着した土嚢を用い、この土嚢の複数個を吊りベルトに巻回した結束ベルトで連結したものである。このような構造体とすることにより、従来よりも大きな外力に対し転倒や滑動を防止することができるとされている。
【0005】
又、特許文献2記載の土嚢構造体は、複数の土嚢を左右方向及び前後方向に並べて積上げ体を構成し、土嚢どうしをロープで結束すると共に、積上げ体全体にネットを被せる構造としたものである。この構造により、複数個の土嚢を一体化するだけでなく、ネットにより衝撃吸収効果を向上させたので、落石等による衝撃力を広い範囲で吸収し、1点に集中させないから、積み上げ土嚢が転倒するのを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-75464号公報
【特許文献2】特開2019-82065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載の土嚢構造体は、土嚢用の袋体の表面に、土嚢どうしを連結する結束ベルトやロープを通すための吊りベルトを設ける必要があるため、袋体の製造時に吊りベルトを縫着する縫製工程を追加しなくてはならない。しかも、連結時の土嚢どうしの引張り力に充分耐え得る強度が袋体に要求されるため、袋体自体にも補強が必要となるので、結果的に袋体の製造コストを増大させるという問題がある。
【0008】
又、特許文献1記載の土嚢構造体にあっては、河川に設置した際に、土嚢を連結する結束ベルトが表面の凹凸を形成するので、円滑な水流を阻害する流動抵抗となる。又、結束ベルトは、流木等の流下物が引っ掛かり易いため、これが河川の流れを一層阻害する要因となる可能性があった。
【0009】
他方、特許文献2記載の土嚢構造体にあっては、土嚢の積上げ体の表面をネット体で覆う構造のため、流木等の流下物が引っ掛かり易い。そして引っ掛かる流木等が蓄積することで、土嚢構造体の崩壊や流出を招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、特別な加工を土嚢の袋体に施す必要がなく、水流に対する流動抵抗を小さくし、表面に流下物が引っ掛かりにくくし、土嚢の離脱や構造体の崩壊を生じさせにくくできる手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、複数個の土嚢を隣接させて配置して成る土嚢グループと、土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うシート体と、シート体を土嚢グループの側周面上に固定することにより、土嚢の相対移動を拘束する固定具とを含む、土嚢集合ユニットである。
【0012】
このように構成すると、複数個の土嚢を一体化した土嚢集合ユニットが得られる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、シート体は、土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うように水平方向に巻き付けられ、固定具は、シート体における水平方向の端部どうしを連結するものである。
【0014】
このように構成すると、シート体を土嚢グループの側周面に巻き付け、シート体の端部どうしを固定具で連結することで、土壌集合ユニットが形成される。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、固定具は、シート体における水平方向の端部間の距離を縮小させる締め付け手段を含むものである。
【0016】
このように構成すると、土嚢グループの側周面に巻き付けたシート体の端部間の距離を締め付け手段で縮小することで、シート体が土嚢グループの側周面に固定される。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、固定具は、シート体の上下方向に間隔を置いて配置される複数個の締め付け手段を含むものである。
【0018】
このように構成すると、シート体の上下方向に間隔を置いて複数の締め付け手段が配置される。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明において、固定具は、シート体における水平方向の端部間に配置されるワイヤーロープを含むものである。
【0020】
このように構成すると、シート体の水平方向の端部どうしの連結にワイヤーロープが用いられる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、シート体は繊維補強ゴムシートであるものである。
【0022】
このように構成すると、土嚢グループの側周面の少なくとも一部が繊維補強ゴムシートで覆われる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、繊維補強ゴムシートは、繊維素材から成る繊維層の両面を、ゴム素材から成るゴム層で挟み込んだ構造である。
【0024】
このように構成すると、シート体は、表面が平滑性を有するゴム層から成り、内部に耐衝撃性の高い繊維層を有するものとなる。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の土嚢集合ユニットの複数個が、予め定めた配列方向に沿って隣接し、且つ、複数個の土嚢集合ユニットそれぞれのシート体の表面が配列方向に沿うように配列されて成る土嚢構造体である。
【0026】
このように構成すると、所定の配列方向に沿ってシート体の表面が連続する土嚢構造体となる。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の土嚢集合ユニットの複数個が、前後に列を成し、且つ、土嚢集合ユニットにおける水平方向の端部位置が前後の列で異なるように配列されて成る、土嚢構造体である。
【0028】
このように構成すると、複数個の土嚢集合ユニットが、前後で水平方向の端部位置が異なるように配置される。
【0029】
請求項10記載の発明は、複数個の土嚢を隣接させて配置して成る土嚢グループの側周面の少なくとも一部を覆うシート体と、シート体を土嚢グループの側周面上に固定して土嚢の相対移動を拘束する固定具とを含む、土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置である。
【0030】
このように構成すると、シート体で土嚢グループの側周面の一部を覆い、固定具によってシート体を土嚢グループに固定して一体化する。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、複数個の土嚢が一体化されるので、外力に対し変位が生じにくくなる。局所的に外力が作用したときに、作用個所の周囲の土嚢も一体となって外力を支持するから、単に隣接させて配置しただけの土嚢集合体と比べて大きな外力に抵抗することができる。シート体により土嚢の表面が保護されるので、流下物の衝突に対する耐久性が向上し、土嚢の長寿命化を図れる。土嚢用の袋体に特別な加工を施す必要がなくなるので、袋体の製造コストを抑えられる。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、シート体を土嚢グループの側周面に巻き付け、シート体の端部どうしを固定具で連結することで、土壌集合ユニットが形成されるので、予め設置した土嚢を移動させずにシート体を巻き付けて、土嚢集合ユニットを構築することが可能である。
【0033】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、土嚢グループの側周面に巻き付けたシート体の端部間の距離を締め付け手段で縮小することで、シート体が土嚢グループの側周面に固定されるので、土嚢とシート体とが強固に一体化すると共に、シート体表面の平滑性が向上する。
【0034】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、シート体の上下方向に間隔を置いて複数の締め付け手段が配置されるので、土嚢グループに対するシート体の締め付け状態が上下方向に均一化されるため、シート体が土嚢グループから脱落しにくくなる。
【0035】
請求項5記載の発明によれば、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、シート体の水平方向の端部どうしの連結にワイヤーロープが用いられるので、長さの異なるワイヤーロープに変更することで、土嚢の使用個数や、使用するシート体の寸法の変更に容易に対応できる。
【0036】
請求項6記載の発明によれば、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、グループの側周面の少なくとも一部が繊維補強ゴムシートで覆われるので、シート体の強度が高まり、流木や岩石の衝突に耐えることができる。
【0037】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、シート体は、表面が平滑性を有するゴム層から成り、内部に耐衝撃性の高い繊維層を有するものとなるので、シート体の表面が平滑になり流下物の引っ掛かりが抑えられると共に、内部の繊維層が耐衝撃性を有し外力に対し高い抵抗力を発揮して、土嚢を保護する。
【0038】
請求項8記載の発明によれば、所定の配列方向に沿ってシート体の表面が連続する土嚢構造体となるので、土嚢構造体を護岸工等の水と接する個所に用いたときに、水流と接する面が凹凸の少ないシート体の表面であるから、水の流動抵抗が小さくなると共に、流木等の流下物が引っ掛かりにくくできるため、土嚢が水流や流下物から受ける外力を減少させることができる。
【0039】
請求項9記載の発明によれば、複数個の土嚢集合ユニットが、前後で水平方向の端部位置が異なるように配置されるので、最前列の1つの土嚢集合ユニットに作用した外力を、後列の複数の土嚢集合ユニットに分散させて支持することができるから、大きな外力に抵抗することができる。
【0040】
請求項10記載の発明によれば、シート体で土嚢グループの側周面の一部を覆い、固定具によってシート体を土嚢グループに固定して一体化するので、外力に対し変位が生じにくく、大きな外力に抵抗できる土嚢集合ユニットを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る土嚢集合ユニットを示すものであって、(A)は正面側から見た斜視図であり、(B)は背面側から見た斜視図である。
【
図2】(A)は
図1に示す土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置を分解して示す斜視図であり、(B)はシート体の一部の拡大断面図である。
【
図3】
図1に示す土嚢集合ユニットの構築手順を示す平面図である。
【
図4】(A)は土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の一例において、外力の支持状況を説明する平面図であり、(B)は従来の土嚢構造体における外力の支持状況を説明する平面図である。
【
図5】土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の異なる例を示す平面図である。
【
図6】土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の更に異なる例を示すものであって、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す平面図である。
【
図8】
図7に示す土嚢集合ユニットの複数個を用いて土嚢構造体を構築する手順を示す平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第4の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[第1の実施の形態]
<土嚢集合ユニット>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る土嚢集合ユニットを示すものであって、(A)は正面側から見た斜視図であり、(B)は背面側から見た斜視図である。
図2の(A)は
図1に示す土嚢集合ユニットを構築するための土嚢連結装置を分解して示す斜視図であり、(B)はシート体の一部の拡大断面図である。
図3は
図1に示す土嚢集合ユニットの構築手順を示す平面図である。
【0043】
本例の土嚢集合ユニットU1は、複数個(本例では3個)の土嚢10を隣接させて配置して成る土嚢グループ10Gを土嚢連結装置20で一体化することによって構築される。土嚢連結装置20は、土嚢グループ10Gの側周面の少なくとも一部を覆うシート体21と、シート体21を土嚢グループ10Gの側周面上に固定して土嚢10の相対移動を拘束する固定具24とを含む。
【0044】
土嚢10は、防水性を有する袋体に土砂等を充填して形成されるものである。袋体には、例えば、吊り上げるための吊り部と充填物の注入・排出ができる開口部とを備えるフレキシブルコンテナ等の、公知の袋体製品を使用することができる。尚、土嚢10は、円柱状等の自立可能な形態のものを使用するのが作業の効率上好ましい。又、袋体には、吊りベルト等を縫着する等の特別な加工を必要としない。
【0045】
シート体21は、防水性、耐水性、耐衝撃性を有するものであって、可撓性を備え、少なくとも外側に面する表面が平滑な部材であることが好ましい。又、シート体21は、土嚢10の袋体の伸縮や変形に追従できる伸縮性を有するものであり、袋体と同程度の伸び量を備える材質であるか、又は、袋体の破断時伸び量よりも大きな伸び量を備える材質であることが好ましい。具体的には、シート体21の伸び量は、20%以上であればよく、35%以上であればより好ましい。このような条件を満たすものとして、例えば
図2(B)に示すような、ナイロン繊維等の繊維素材から成る繊維層21cの両面を、ゴム素材から成るゴム層21a、21bで挟み込んだ構造の繊維補強ゴムシートを、シート体21として用いればよい。このような構造のシート体21であれば、シート体21の表面が平滑性を有するゴム層21a、21bから成るので流下物の引っ掛かりを抑えることができる。又、内部の繊維層21cが耐衝撃性を有するので、外力に対し高い抵抗力を発揮して、土嚢を保護することができる。
【0046】
尚、シート体21の形態は長方形状とし、その寸法は、使用する土嚢10の大きさと、1ユニット当たりの土嚢数とに基づいて決定すればよい。尚、シート体21の水平方向の寸法は、土嚢グループ10Gに固定したときにその側周面の半分以上を覆うことができる長さであるのが好ましい。即ちシート体21は、土嚢10に密着し、且つ、土嚢グループ10Gにおける外圧がかかる面の半分以上を覆う状態で、各土嚢10どうしを結束するものであればよい。
【0047】
本例の固定具24は、シート体21における水平方向の端部21L、21Rどうしを連結するものであって、締め付け手段であるターンバックル22とワイヤーロープ23とを含んでいる。締め付け手段(ターンバックル22)は端部21L、21R間の距離を縮小させるためのものである。尚、本例では、ターンバックル22及びワイヤーロープ23が、シート体21の上下方向に間隔を置いて複数組が配置されている。ターンバックル22は両端にフックを有する形態である。ワイヤーロープ23は、一方の端部にリング状部分を有するか、又は両端にリング状部分を有し少なくとも一方が開閉可能である。シート体21の各端部21L、21Rにはそれぞれ開孔21P、21Qが設けられ、一方の開孔21Pにターンバックル22の一方のフックを係止させ、もう一方の開孔21Qにはワイヤーロープ23の一端が結び付けられるか、又は一方のリング状部分が通される。開孔21P、21Qには、ターンバックル22のフックやワイヤーロープ23の一端部を直接通してもよいが、シャックル等の適当な接続具を介して連結してもよい。
【0048】
尚、開孔21P、21Qは、ターンバックル22を締め付けたときの引張り力に対抗できる強度を有することが望ましい。このため、端部を折り返して複層にすることや、開孔21P、21Qにハトメによる補強を設けてもよい。更に、シート体21の端部を折り曲げ、その内側にロープ等の紐状の補強部材を配置する構造として、開孔21P、21Qにかかる負荷を補強部材の部分でも負担できるようにすることで、開孔21P、21Qの破損を抑制するようにしてもよい。
【0049】
次に、
図3を参照して、土嚢集合ユニットU1を構築する手順を説明する。ここで説明の便宜上、図面の下側を土嚢10の前側、上側を土嚢10の後側とする。始めに、
図3の(A)に示すように、土嚢構造体を設置する領域に、複数個の土嚢10を隣接させて配置し、土嚢グループ10Gを形成する。本例では、4個の土嚢10を、各中心が特定の直線上に位置するよう一列に並べて、土嚢グループ10Gとした。次いで、
図3の(B)に示すように、シート体21を土嚢グループ10Gの側周面に少なくともその前側を覆うように巻き付け、水平方向の端部21L、21Rを土嚢グループ10Gの後側へ巻き込む。そして、ターンバックル22のフックをシート体21の一方の端部21Lの開孔21Pに係止させ、ワイヤーロープ23の一方のリング状部分をシート体21のもう一方の端部21Rの開孔21Qに挿し通し、更にターンバックル22とワイヤーロープ23とを係合させたのち、ターンバックル22の長さを短縮させて、シート体21の両端部21L、21R間の距離を縮小する。これにより、シート体21が土嚢グループ10Gの側周面に固定されると共に、シート体21で圧接することにより各土嚢10が一体化される。
【0050】
このようにして構築される土嚢集合ユニットU1は、局所的に外力が作用したときに、作用個所の周囲の土嚢10も一体となって外力を支持するから、単に隣接させて配置しただけの土嚢集合体と比べて変位が生じにくくなり、大きな外力に抵抗することができる。シート体21が土嚢10の表面を保護して耐衝撃性を向上させるから、土嚢の長寿命化を図れる。又、上記の構築手順によれば、予め設置した土嚢10を移動させずにシート体21を巻き付けて土嚢集合ユニットU1を構築できるという利点が得られる。シート体21には、端部間の距離を縮小することで水平方向に張力が作用するので、シート体21表面の平滑性が向上している。又、外力が作用したときの復元力も大きくなっている。複数の締め付け手段をシート体21の上下方向に間隔を置いて配置したので、シート体21の締め付け状態が上下方向に均一化され、シート体21が土嚢グループ10Gから脱落しにくくなる。固定具24の一部にワイヤーロープ23を用いたので、土嚢10の使用数や、シート体21の水平方向寸法の変更に対し、長さの異なるワイヤーロープ23を準備することで容易に対応できる。更に、土嚢10の袋体には特別な加工を施す必要がないので、製造コストを抑えられる等の多くの利点が得られる。
【0051】
<土嚢構造体>
図4(A)は土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の一例において、外力の支持状況を説明する平面図であり、(B)は従来の土嚢構造体における外力の支持状況を説明する平面図である。
【0052】
図4の(A)に、4個の土嚢10を土嚢連結装置で一体化して形成した土嚢集合ユニットU1の複数個を、左右方向及び前後方向に隣接させて並べることで構築した土嚢構造体30Aの一例を示す。この例では、各ユニットにおける土嚢10の配列方向に沿って複数個の土嚢集合ユニットU1を隣接させて配列することによりユニットの列を形成し、この列を前後に3列密接させて並べて土嚢構造体30Aとしている。又、本例の土嚢構造体30Aは、土嚢集合ユニットU1の列を前後に配置するに際し、各土嚢集合ユニットU1における水平方向の端部Tの位置を、前後の列で異なるように配列している。この構成により、シート体21に対し直交する方向に作用する外力に対する耐久性を高めて、大きな外力に抵抗することが可能となっている。これを
図4の(A)を参照して説明する。
【0053】
土嚢構造体30Aの最前列の土嚢集合ユニットU1-1に局所的に外力Fが作用した場合、その外力Fはまず第2列に位置する2つの土嚢集合ユニットU1-2、U1-3に分散されて伝達される。そして外力は更に第3列に位置する3つの土嚢集合ユニットU1-4、U1-5、U1―6に分散される。各土嚢集合ユニットU1―1~6は、1ユニット当たり4個の土嚢10を一体化したものであるから、結果的に外力Fは全部で24個の土嚢10によって支持されることになる。
【0054】
これに対し、
図4の(B)に示すような、複数個の土嚢を積み上げただけの従来の土嚢構造体50では、外力Fが最前列の1つの土嚢10-1に局所的に作用した場合、この外力Fは第2列の2つの土嚢10-2、10-3及び第3列の3つの土嚢10-4、10-5、10-6に分散される。即ち従来の土嚢構造体50では、外力Fの支持に関与する土嚢は全部で6個にしか過ぎないものとなっている。このように、本例の土嚢構造体30Aは、最前列の1つの土嚢集合ユニットに作用した外力を、後列の複数の土嚢集合ユニットに分散させて支持するから、従来よりも大きな外力に抵抗できるものとなっている。
【0055】
図5は土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の異なる例を示す平面図である。
【0056】
本例の土嚢構造体30Bは、例えば河川の仮護岸工や土石流の導流工等に適用されるものであって、各土嚢集合ユニットU1を、シート体21の表面の主要部が水流側を向くように配置すると共に、シート体21の表面が水流の流動方向Eに沿う方向となるように設定したものである。この構成により、各シート体21の表面が土嚢集合ユニットU1の配列方向に沿って連続するものになると共に、凹凸の少ないシート体21の表面で水流と接する。その結果、水流に及ぼす流動抵抗が小さくなると共に、流木等の流下物が引っ掛かりにくくなるので、本例の土嚢構造体30Bは、河川等の水流に対する影響を抑制できると共に、土嚢10が受ける外力を減少させることができる。又、ロープやネットで土嚢を連結する従来の土嚢構造体は、流木等の漂流物があった場合に土嚢に直接衝突することになるため、土嚢自体の耐久性を向上させるものではなかった。これに対し本例の土嚢構造体30Bは、土嚢10における水流と接する側面をシート体21で覆うため、漂流物が土嚢に直接衝突するのを防止できるから、土嚢10の耐久性向上を図ることができる。
【0057】
図6は土嚢集合ユニットの複数個を用いて構築した土嚢構造体の更に異なる例を示すものであって、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【0058】
本例の土嚢構造体30Cは、複数個の土嚢集合ユニットU1を、複数列を形成するように配置すると共に、上下方向にも複数層を積み上げて構築したものである。このような土嚢構造体30Cの場合、特定の列を上下方向にずらして配置することにより、土嚢構造体30Cに高さ方向の一体性を付与することができる。
【0059】
具体的には、
図6の(B)に示すように、土嚢集合ユニットU1で形成される前側の3列L1~L3の設置面S
0 に対し、その後方の3列L4~L6の設置面S
1 ~S
3 の高さレベルを前側の設置面S
0 よりも低く設定すると共に、設置面S
1 ~S
3 の高さレベルが列L4で最も低く、列L5、L6に向かって段階的に高くなる構成としている。これにより、列L4~6では最下部の土嚢10の下方の一部が設置領域に埋設されると共に、後側4列L4~L7における土嚢集合ユニットU1の上端位置及び下端位置が前後でずれるものとなる。
【0060】
このような構成とすることで、土嚢構造体30Cに前側から外力が作用したとき、この外力が各列へ伝播する際に、後側4列L4~L7の土嚢集合ユニットU1では外力を上下に分散させる。しかも後側3列L4~L6の土嚢集合ユニットU1は、下方の一部を設置領域に埋設させることで、外力に対する抵抗力を増大させている。その結果、本例の土嚢構造体30Cは、大きな外力が作用しても土嚢の移動や崩壊が生じにくいという効果を発揮する。
【0061】
[第2の実施の形態]
図7は本発明の第2の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す平面図であり、
図8は
図7に示す土嚢集合ユニットの複数個を用いて土嚢構造体を構築する手順を示す平面図である。
【0062】
本例は、3個の土嚢10をそれぞれの中心がほぼ正三角形の頂点に位置するように配置して成る土嚢集合ユニットU2を用いて、土嚢構造体を構築するものである。
図7を参照して、このような土嚢構造体を構築するには、始めに(A)に示すように、3つの土嚢10をそれぞれの中心が三角形の各頂点に位置するように密接させて配置した土嚢グループ10Gを形成する。次いで(B)に示すように、土嚢グループ10Gの側周面にシート体21を巻き付ける。そして(C)に示すように、シート体21の水平方向の両端部21L、21Rを固定具24で連結することにより、土嚢集合ユニットU2が構築される。
【0063】
引き続き
図8を参照して、(A)に示すように、上記のようにして構築した土嚢集合ユニットU2の側面に、次の土嚢集合ユニットU2を構築するためのシート体21を配置して仮止めする。次いで(B)に示すように、新たな3つの土嚢10を各中心が三角形の各頂点に位置するように密接させて配置して土嚢グループ10Gを形成する。そして、(C)に示すように、シート体21を、仮止めを外して、上記と同様に土嚢グループ10Gの側周面に巻き付けた後、その水平方向の両端部を固定具で連結する。これにより、次の土嚢集合ユニットU2が最初の土嚢集合ユニットU1に隣接して構築される。引き続き(C)(D)に示すように、上記の手順を繰り返すことにより、目的とする土嚢構造体を得ることができる。
【0064】
[第3の実施の形態]
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す斜視図である。
【0065】
本例の土嚢集合ユニットU3は、各土嚢10に、その上面側部分を覆うキャップ体11を被せたものである。キャップ体11は、使用する土嚢10が円柱形状の場合、例えば有蓋無底の円筒形状を有するものとし、これを被せることで土嚢10の上面部を覆うものである。土嚢集合ユニットU3を構築するに当たっては、予めキャップ体11を被せた土嚢10の複数個を、シート体21と固定具とで一体化すればよい。
【0066】
このようにして得られる土嚢集合ユニットU3は、キャップ体11によって上面部が覆われるので、土嚢10の上面部の耐水性、耐久性が向上するから、土嚢10の上面部に水を流しても土嚢10内部の土砂等の充填物の流出を防ぐことできる。このため、この土嚢集合ユニットU3を用いることで、応急砂防ダムを構築し、水流し部を設けることも可能となる。更に、土嚢10の上面部を覆うことで、袋体における日光暴露面積が少なくなるから、土嚢10の長寿命化がもたらされる。
【0067】
[第4の実施の形態]
図10は、本発明の第4の実施の形態に係る土嚢集合ユニットの構築手順を示す斜視図である。
【0068】
本例の土嚢集合ユニットU4は、上記の実施の形態のキャップ体に代えて、各土嚢10の上面側部分を防水シート12で覆ったものである。防水シート12は、耐水性を有し、土嚢10の上面部を覆える形状、寸法を有するシート状部材であればよい。この土嚢集合ユニットU4を構築するに当たっては、予め防水シート12を被せた土嚢10の複数個を、シート体21と固定具とで一体化すればよい。この土嚢集合ユニットU4は、前記第3の実施の形態の土嚢集合ユニットU3と同様の機能、効果を発揮するものである。
【0069】
[その他の実施の形態]
上記の各実施の形態において、土嚢集合ユニットを構築するのに用いる土嚢の個数は特に制限はなく、2個であってもよく、5個以上であってもよい。複数個の土嚢の配置形態は、直列、並列、多角形など、設置場所に応じた形態にすればよい。又、土嚢の大きさに特に制限はないが、円柱形状の場合、直径約1mで、容量約1m3 とするのが実用的である。但し、直径が1m未満でも1m超であってもよく、容量が1m3 未満でも1m3 超であってもよい。
【0070】
シート体は、繊維層の両面をゴム層で挟み込んだ構造の繊維補強ゴムシートを用いる場合、繊維の材質には、前述のナイロンのほか、ビニロン、ポリエステル、アラミド等を使用してもよい。又、繊維層に代えて、上記の繊維を用いた網状の補強材を、ゴム層の内部に配置する構造としてもよい。
【0071】
シート体の両端部を連結する手段は、ターンバックルとワイヤーロープとの組み合わせのほか、ベルト状の面ファスナー、ラチェットベルト、繊維ロープとチェーンとの組み合わせ等を用いてもよい。又、ターンバックルにゴム材のような伸縮可能な弾性材料を用いてもよい。更に、ワイヤーロープに代えて、ゴム材のような弾性材料から成るロープ材を用いてもよい、この場合、伸縮性を有するロープ材を用いることで、寸法調整やシート体
に張力を付与する機能を十分発揮するならば、ターンバックルを省略してもよい。更には、シート体の水平方向の両端部に互いに係合できる構造を設け、両端部どうしを直接連結する構成としてもよい。
【0072】
土嚢集合ユニットのシート体の表面に図柄や模様等のデザインを施してもよい。これにより、従来では困難であった、周囲の景観に配慮した土嚢構造体を提供することが可能となる。又、景観を損ねないため、応急対策工としての短期間の使用だけではなく、中期的な使用も可能となる。
【0073】
尚、土嚢集合ユニットを構築する際、配置された土嚢どうしの間に隙間を有していてもよい。
【0074】
土嚢は、市販の袋体を用いて形成することが可能であり、土嚢の形態は、円柱状以外に、角柱状等、なるべく自立可能な形態とするのが好ましいが、その他の形態であってもよい。
【0075】
土嚢集合ユニットは現場で構築する以外に、予め工場等で組み付けた状態とし、ユニット単位で現場へ運搬するようにしてもよい。この場合、吊り下げた際に土嚢が変形し、シート体が緩む可能性があるため、土嚢の底部にコンクリートや鋼材等の自重強度に充分耐え得る部材を配置し、この部材を介して運搬すればよい。
【符号の説明】
【0076】
10…土嚢
10G…土嚢グループ
11…キャップ体
12…防水シート
20…土嚢連結装置
21…シート体
22…ターンバックル(締め付け手段)
23…ワイヤーロープ
30A~30C…土嚢構造体
U1~U4…土嚢集合ユニット
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。