IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-レ-ダー装置 図1
  • 特開-レ-ダー装置 図2
  • 特開-レ-ダー装置 図3
  • 特開-レ-ダー装置 図4
  • 特開-レ-ダー装置 図5
  • 特開-レ-ダー装置 図6
  • 特開-レ-ダー装置 図7
  • 特開-レ-ダー装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082242
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】レ-ダー装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230607BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G01S7/40 121
G01S7/02 218
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195851
(22)【出願日】2021-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 孝男
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD06
5J070AK04
(57)【要約】
【課題】レ-ダー装置の到来方向推定誤差を低減できる技術を提供する。
【解決手段】レ-ダー装置100は、1個以上の送信アンテナ112から送信波を送信させる送信部110と、複数個の受信アンテナ122を用いて外部物体によって前記送信波が反射された反射波を受信する受信部120と、受信部による受信結果を用いて、外部物体の距離を決定するとともに、校正行列によるCΓ補正で補正された補正受信信号を用いて外部物体の方位を決定する処理部130と、を備える。処理部は、Nを2以上の整数としたとき、受信アンテナの視野角をN個の補正区間に分割し、個々の補正区間内では校正行列が受信角度に依存しないものとして、校正行列によるCΓ補正を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レ-ダー装置(100)であって、
1個以上の送信アンテナ(112)から送信波を送信させる送信部(110)と、
複数個の受信アンテナ(122)を用いて、外部物体によって前記送信波が反射された反射波を受信する受信部(120)と、
前記受信部による受信結果を用いて、前記外部物体の距離を決定するとともに、校正行列によるCΓ補正で補正された補正受信信号を用いて前記外部物体の方位を決定する処理部(130)と、
を備え、
前記処理部は、Nを2以上の整数としたとき、前記受信アンテナの視野角をN個の補正区間に分割し、個々の補正区間内では前記校正行列が受信角度に依存しないものとして、前記校正行列による前記CΓ補正を実行する、レ-ダー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレ-ダー装置であって、
前記N個の補正区間に対応するN個の前記校正行列は、互いに異なる行列要素値を有する、レ-ダー装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、
前記N個の補正区間に対応するN個の前記校正行列を求める際に使用するN個の校正区間のそれぞれを、対応する補正区間を包含し前記補正区間よりも広い区間に設定し、
各校正区間内にわたる複数の受信角度で得られた受信信号を用いて、各校正区間に対応する前記校正行列を決定する、
レ-ダー装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記N個の補正区間に対応するN個の前記校正行列を求める際に使用するN個の校正区間の大きさを、各校正区間の位置に応じて変更する、レ-ダー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記N個の校正区間の大きさを、前記視野角の中央に近いほど大きく、前記視野角の両端に近いほど小さくする、レ-ダー装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記N個の補正区間の大きさを、各補正区間の位置に応じて変更する、レ-ダー装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記N個の補正区間の大きさを、前記視野角の中央に近いほど大きく、前記視野角の両端に近いほど小さくする、レ-ダー装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記N個の補正区間に対応するN個の前記校正行列を求める際に使用するN個の校正区間のそれぞれにおいて、異なる受信角度で受信信号を受けるために設定する受信角度のステップ幅を、各校正区間の位置に応じて変更する、レ-ダー装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレ-ダー装置であって、
前記処理部は、前記受信角度のステップ幅を、前記視野角の中央に近い校正区間ほど大きく、前記視野角の両端に近い校正区間ほど小さくする、レ-ダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レ-ダー装置における到来方向推定誤差の低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダーの高性能化に向けて、物標からの受信信号の到来方向の推定誤差を低減する技術が求められている。有望な到来方向推定誤差低減手法として、CΓ補正技術が挙げられる。ここで、Cはアンテナ間の相互結合を表す行列であり、Γはアンテナ特性のばらつきによる利得・位相誤差を表す行列である。CΓ補正技術は、これらの誤差をあらかじめ測定し、校正行列Q(=CΓ)を使用して受信信号を補正することによって、誤差の低減を目指す手法である。
【0003】
特許文献1,2には、到来方向角度の全範囲を一括して補正するグローバル補正と言われる技術が開示されている。グローバル補正は、校正行列Qが受信角度に依存しないという前提の手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-211241号公報
【特許文献2】特開2019-128235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しなしながら、従来技術では、視野角の中心からの角度が大きくなると推定誤差が大きくなるという問題があった。一方、校正行列Qが受信角度に依存するローカル補正と言われる手法がある。しかしながら、ローカル補正では、アンテナ位置の誤差によるサイドローブが大きくなるという問題があった。なお、これらの問題は、ミリ波以外の電磁波を用いるレ-ダー装置にも共通する問題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、レ-ダー装置(100)が提供される。このレ-ダー装置は、1個以上の送信アンテナ(112)から送信波を送信させる送信部(110)と、複数個の受信アンテナ(122)を用いて、外部物体によって前記送信波が反射された反射波を受信する受信部(120)と、前記受信部による受信結果を用いて、前記外部物体の距離を決定するとともに、校正行列によるCΓ補正で補正された補正受信信号を用いて前記外部物体の方位を決定する処理部(130)と、を備え、前記処理部は、Nを2以上の整数としたとき、前記受信アンテナの視野角をN個の補正区間に分割し、個々の補正区間内では前記校正行列が受信角度に依存しないものとして、前記校正行列による前記CΓ補正を実行する。
【0007】
このレ-ダー装置によれば、従来のグローバル補正において受信角度が視野角の中心からずれるほど誤差が増加していた欠点を改善することができる。また、校正行列は補正区間内で角度に依存しないため、受信角度に依存する校正行列を用いるローカル補正で発生するサイドローブも改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】レ-ダー装置の構成を示すブロック図。
図2】第1実施形態における校正区間と補正区間を示す説明図。
図3】校正行列を求めるための測定系を示す平面図。
図4】レ-ダー装置の受信アンテナの構成を示す説明図。
図5】区間分割ありと区間分割なしの補正条件を示す図。
図6】区間分割ありと区間分割なしのMUSIC補正結果を示す図。
図7】第2実施形態における校正区間と補正区間を示す説明図。
図8】第3実施形態における校正区間と補正区間を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、レ-ダー装置100は、送信部110と、受信部120と、処理部130とを備える。送信部110は、発振部114と変調部116とを有し、送信アンテナ112から送信波を送信させる。受信部120は、複数個の受信アンテナ122を用いて、外部物体によって送信波が反射された反射波を受信する。処理部130は、受信部120による受信結果を用いて、外部物体の距離を決定するとともに、校正行列によるCΓ補正で補正された補正受信信号を用いて外部物体の方位を決定する。外部物体の距離の決定方法は周知なので説明を省略する。校正行列によるCΓ補正については後述する。本実施形態のレ-ダー装置100は、ミリ波レーダーであるが、ミリ波以外の電磁波を使用するレ-ダー装置にも本開示を適用可能である。
【0010】
処理部130は、プロセッサー132とメモリー134を備えたマイクロコンピュータである。メモリー134は、例えばROMおよびRAMである。マイクロコンピュータの各種機能は、メモリー134に格納されたコンピュータープログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリー134が、コンピュータープログラムを格納した非遷移有形記録媒体に該当する。プロセッサー132が実行する機能の一部または全部を、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0011】
本実施形態では、送信アンテナ112の個数は1であり、SIMO(Single-Input Multiple-Output)レーダーとして構成されている。但し、本開示は、送信アンテナ112の個数が2個以上のMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)レーダーにも適用可能である。以下で説明するCΓ補正において、p個の送信アンテナ112とm個の受信アンテナ122を有するMIMOレーダーは、p×m個の受信アンテナを有するSIMOレーダーと等価なものとして取り扱うことが可能である。
【0012】
図2に示すように、本開示では、レ-ダー装置100の視野角をN個の区間に分割し、分割された個々の区間では、受信信号のCΓ補正で使用する校正行列Q(=CΓ)が受信角度θに依存しないものとする。視野角は、受信角度の全範囲θ~θを意味する。図2において、校正行列Qを用いて受信信号の補正を行う補正区間PQと、校正行列Qを求めるために使用する校正区間RQとが示されている。ここで、kは、区間の順序を示す序数であり、1~Nの値を取る。区間の数Nは、2以上であり、5以上とすることが好ましい。
【0013】
第1実施形態では、補正区間PQの大きさと校正区間RQの大きさは等しく、一定値である。視野角の最小角度をθとし、最大角度をθとすると、分割されたk番目の補正区間PQの角度範囲はθk-1~θである。補正区間PQ内のCΓ補正で使用する校正行列Qは、この補正区間PQ内では角度に依存せず、同じ校正行列Qが適用される。但し、校正行列Qはkに依存する。また、N個の校正行列Qは、互いに異なる行列要素値を有することが好ましい。ここで、「互いに異なる行列要素値を有する」とは、少なくとも1つの行列要素の値が異なることを意味する。
【0014】
このように、視野角をN個の補正区間PQに分割し、個々の補正区間PQ内で使用する校正行列Qは補正区間PQ内で変化しないものとすることによって、受信角度が視野角の中心からずれるほど誤差が増加するグローバル補正の欠点を改善することができる。また、校正行列Qは補正区間PQ内で角度に依存しないため、校正行列Qが角度に依存するローカル補正で発生するサイドローブも改善することができる。
【0015】
図3に示すように、校正行列Qを求めるための測定系では、レ-ダー装置100を回転させるローテーター200と、ターゲットとしてのコーナーリフレクター210とが使用される。まず、ローテーター200を用いてレ-ダー装置100を角度θだけ回転させることによって、コーナーリフレクター210からの反射波の受信角度θを設定し、その時の受信信号を測定する。図3は平面図であり、角度θは水平方向の角度である。また、方向Dnは、角度θがゼロの方向を示しており、角度θは方向Dnから時計回りに測定するものとする。校正行列Qを求める際には、nを2以上の整数としたとき、個々の校正区間において角度θがn個の異なった値に設定され、受信信号がそれぞれ測定される。n個の角度を「補正ポイント」と呼ぶ。また、角度の差分を「補正ステップ」又は「受信角度のステップ幅」と呼ぶ。校正区間毎の角度θの設定数nは、受信アンテナ122の数m以上に設定されることが好ましい。
【0016】
図4に示すように、m個の受信アンテナ122は、アンテナ間隔dが一定である等間隔リニアアレーである。jを1~mの整数としたとき、j番目の受信アンテナ122から受信信号X(t)が得られる。m個の受信信号X(t)~X(t)を「受信データ」と呼ぶ。処理部130は、校正区間毎にn個の異なった角度θでの受信データからCΓ補正に用いる校正行列Qを求める。校正行列Qを求める方法については後述する。
【0017】
処理部130は、校正行列Qを用いて受信信号X(t)を補正し、補正後の受信信号を用いて、相関行列による固有値解析から雑音空間ベクトルと理想のモードベクトルを求め、MUSIC(Multiple Signal Classification)法によって受信信号X(t)の到来方向、すなわち受信角度θを推定する。到来方向を「外部物体の方位」とも呼ぶ。n個の補正ポイントでの正しい受信角度はローテーター200の角度θと等しく、既知なので、MUSIC法で推定された受信角度とローテーター200の角度θとの差を、到来方向の推定誤差として算出できる。
【0018】
校正行列Qを用いたCΓ補正は、以下のように行うことが可能である。実際に受信アンテナ122に入力される信号は、理想的な信号ではなく、何らかの誤差を含んでいる。その誤差となる要因は、素子間相互結合、各アンテナ素子特性(振幅、位相)のばらつき、素子位置誤差、アンテナ近傍の散乱体、熱雑音等が挙げられる。上記要因の中で高SN環境下での誤差の主要因は、素子間相互結合および各アンテナ素子特性のばらつきであると考えられるので、実際に受信した信号は、以下の式でモデル化することができる。
X=CΓ・Xideal ・・・(式1)
X:実際の受信信号
ideal:理想の受信信号
C:素子間相互結合による行列(素子間相互結合行列)
Γ:各素子の特性による行列(素子特性行列)
【0019】
一方、理想のモードベクトルをa(θ)、実際のモードベクトルをa(θ)、校正行列をQとすると、次式が成立する。
(θ)=Q・a(θ) ・・・(式2)
【0020】
受信アンテナ122をアンテナ間隔dでアンテナ数mのリニアアレーとすると、理想のモードベクトa(θ)は次式で表される。
a(θ)=[1,exp(j2π(d/λ)・sinθ), exp(j2π(d/λ)2・sinθ),,,exp(j2π(d/λ)(m-1)・sinθ] ・・・(式3)
ここで、[ ]は転置を表す。
【0021】
また、n個の補正ポイントθ1~θnでの理想のモードベクトルからなる行列をA、実際のモードベクトルからなる行列をAとすると、以下の式が成立する。
A=[a(θ1), a(θ2) ,,, a(θn)] ・・・(式4)
=[a(θ1), a(θ2) ,,, a(θn)] ・・・(式5)
=Q・A ・・・(式6)
【0022】
上述した式1において、Xideal=a(θ)、X=a(θ)とみなせば、校正行列Qは、次式のようにCΓ補正行列に等しい。
CΓ=Q ・・・(式7)
【0023】
校正行列Qを求める手法は各種存在するが、本実施形態では以下の簡単な手法を使用することができる。まず、実際の受信信号Xを決めたスナップショット数から受信信号Xの平均値を計算し、あるチャンネルを基準として位相を正規化し、振幅はm個のアンテナの平均値で正規化することによって、実際のモードベクトルa(θ)を求める。理想のモードベクトルからなる行列Aはm×n行列なので、行列Aの疑似逆行列pinv(A)から、次式に従って校正行列Qを求めることができる。
Q=A・pinv(A) ・・・(式8)
【0024】
この代わりに、行列Aのエルミート共役(複素共役+転置)Aはn×m行列であり、両者の積AAはm×m行列となるので、次式に従って校正行列Qを求めることも可能である。但し、この場合には、n≧mの条件が必要となる。
Q=A(AA)-1 ・・・(式9)
【0025】
校正行列Q(=CΓ)はm×mの正方行列なので、校正行列Q(=CΓ)の逆行列(CΓ)-1を求めることができる。この逆行列(CΓ)-1と受信信号Xとの積を取ることによって、理想の受信信号Xidealを得ることができる。
ideal=(CΓ)-1・X ・・・(式10)
【0026】
上記式10による補正を「CΓ補正」と呼ぶ。また、CΓ補正で得られた受信信号Xidealを「補正受信信号Xideal」と呼ぶ。この補正受信信号Xidealの相関行列による固有値解析から、雑音空間ベクトルと理想のモードベクトルを求め、MUSIC法によって到来方向の推定、すなわち、受信角度θの推定を行うことが可能である。また、n個の補正ポイントでの正しい受信角度θは既知なので、MUSIC法で推定された受信角度とローテーター200の角度θとの差を、到来方向の推定誤差として算出できる。
【0027】
図5に示すように、実施例と比較例において、受信アンテナ数m=12のレーダーを用い、ローテーター200の角度θを、下限値-θと上限値θの範囲内でθ/30のステップ幅で変化させて、61個の受信データを取得した。比較例では、視野角の範囲-θ~θの全体を1つの補正区間とし、1つの校正行列Qを用いて受信信号のCΓ補正を行った。実施例では、視野角の範囲-θ~θを5つの補正区間に等分割し、各補正区間において異なる校正行列Qを用いて受信信号のCΓ補正を行った。
【0028】
図6には、図5に示した比較例と実施例について、MUSIC法による受信角度の推定誤差の結果が示されている。横軸は受信角度θをその最大値θで規格化した値であり、縦軸はMUSIC法による受信角度の推定誤差Δθをθで規格化した値である。受信角度の真値をθ、MUSIC法による受信角度の推定値をθ^とすると、受信角度の推定誤差Δθは、Δθ=θ^-θとなる。区間分割なしの比較例の結果は点線で示し、区間分割ありの実施例の結果は実線で示している。実施例では、比較例に比べて受信角度の推定誤差Δθが減少しており、方位推定の精度が向上していることが理解できる。特に、視野角の両端近傍では、実施例における誤差Δθの低減効果が顕著である。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、受信アンテナの視野角をN個の補正区間に分割し、個々の補正区間内では校正行列Qが受信角度θに依存しないものとして校正行列QによるCΓ補正を実行するので、従来のグローバル補正において受信角度が視野角の中心からずれるほど誤差が増加していた欠点を改善することができる。また、校正行列Qは補正区間内で角度に依存しないため、受信角度に依存する校正行列を用いるローカル補正で発生するサイドローブも改善することができる。
【0030】
図7に示すように、第2実施形態では、N個の校正行列Q~Qを求める際に使用するN個の校正区間RQ~RQのそれぞれを、対応する補正区間PQ~PQを包含し、補正区間PQ~PQよりも広い区間に設定している。但し、補正ステップ(受信角度のステップ幅)は、第1実施形態と同様に一定値のままである。校正行列Q~Qは、各校正区間RQ~RQ内にわたる複数の補正ポイントで得られた受信信号を用いて決定される。N個の補正区間PQ~PQの大きさは一定である。校正区間RQ~RQのそれぞれを、対応する補正区間PQ~PQよりも広い区間すれば、校正行列Q~Qを決定する際に用いる補正ポイントの数を増やせるので、受信角度の推定誤差を更に低減することができる。
【0031】
図7に示す第2実施形態において、N個の校正区間RQ~RQの大きさを、各校正区間RQ~RQの位置に応じて変更するようにしてもよい。こうすれば、受信角度の推定誤差を更に低減することができる。具体的には、例えば、N個の校正区間RQ~RQの大きさを、視野角の中央に近いほど大きく、視野角の両端に近いほど小さくするようにしてもよい。換言すれば、受信角度が0に近い校正区間ほど、その大きさを大きくするようにしてもよい。こうすれば、受信角度の推定誤差を更に低減することが可能である。
【0032】
図8に示すように、第3実施形態では、N個の補正区間PQ~PQの大きさを、各補正区間PQ~PQの位置に応じて変更している。こうすれば、受信角度の推定誤差を更に低減することができる。具体的には、例えば、N個の補正区間PQ~PQの大きさを、視野角の中央に近いほど大きく、視野角の両端に近いほど小さくするようにしてもよい。換言すれば、受信角度が0に近い補正区間ほど、その大きさを大きくするようにしてもよい。こうすれば、受信角度の推定誤差を更に低減することが可能である。
【0033】
第3実施形態では、個々の補正区間PQ~PQの大きさと、対応する校正区間RQ~RQの大きさが互いに等しく設定されている。また、補正ステップ(受信角度のステップ幅)は、第1実施形態と同様に一定値のままである。なお、上述した第2実施形態と第3実施形態を同時に適用してもよい。例えば、第3実施形態において、N個の校正区間RQ~RQのそれぞれを、対応する補正区間PQ~PQを包含し、補正区間PQ~PQよりも広い区間に設定するようにしてもよい。また、N個の校正区間RQ~RQの大きさを各校正区間RQ~RQの位置に応じて変更し、これと同時に、N個の補正区間PQ~PQの大きさを各補正区間PQ~PQの位置に応じて変更するようにしてもよい。これらの形態によっても、受信角度の推定誤差を更に低減することができる。
【0034】
また、上述した第1~第3実施形態において、補正ステップ(受信角度のステップ幅)を小さくすれば、受信角度の推定誤差を低減することが可能である。そこで、N個の校正区間RQ~RQのそれぞれにおいて、補正ステップを各校正区間RQ~RQの位置に応じて変更するようにしてもよい。例えば、補正ステップを、視野角の中央に近い校正区間ほど大きく、視野角の両端に近い校正区間ほど小さくするようにしてもよい。こうすれば、受信角度の推定誤差を更に低減することが可能である。
【0035】
本開示に記載の処理部及びその手法は、コンピュータープログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサー及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の処理部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサー及びメモリーと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサーとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータープログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0036】
本開示は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。また、上述した種々の特徴的な構成は、互いに矛盾しない限り、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
100…レ-ダー装置、110…送信部、112…送信アンテナ、114…発振部、116…変調部、120…受信部、122…受信アンテナ、130…処理部、132…プロセッサー、134…メモリー、200…ローテーター、210…コーナーリフレクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8